外務委員会 第25号
- 発言数
- 254 件
- 登壇者
- 19 名
- 会派数
- 6
- 開催日
- 1977/06/06
会議録
○竹内委員長 これより会議を開きます。 北西太平洋のソヴィエト社会主義共和国連邦の地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との問の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中川一郎君。 〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕
○中川(一)委員 鈴木農林大臣の大変な御苦労によりまして、曲がりなりにも日ソ漁業暫定協定が調印をされ、ここに批准の運びになりましたことは、御同慶にたえないところでございます。しかしながら、交渉経緯、結果について見ますときに、非常に多くの問題が残っております。以下、問題点について、この際、政府の所見を承りたいと存じます。 この交渉において私たちが一番問題としなければならないのは、漁獲量につきましてはわずか三日間しか交渉日数を要しておりません。その大部分はいわゆる北方問題、北方四島に関しての考え方についての議論がなされたのか、あるいはなされないまま待ちぼうけを食ったのか、非常に問題のところでございます。そこで、この際、北方四島に対するわが国の主張がどこにあり、ソビエトの主張がどこにあるかということを、外務大臣から国民の前に明確に、わかりやすく御説明をいただきたいと存じます。
○鳩山国務大臣 北方四島のいわゆる領土問題が今回の漁業交渉の大変難渋をいたした大きな原因であったことは申すまでもないところでございます。北方四島に対する見解というものは、戦後三十一年間たった今日、わが方は未解決であると考えておりますが、先方は領土問題はもう未解決の問題ではないという主張をしておることは御承知のとおりでございます。わが方の主張は、北方四島は、一八五五年、いわゆる下田条約のときに帝政ロシアと境界を画定した、それ以来日本の固有の領土であったわけであります。したがいまして、このわが方の主張というのは、歴史的な事実とそれから法的な面と双方から考えて固有の領土であるという主張をいたしております。歴史的なと申しますのは、古来日本人が居住をしていた地域であり、外国人は居住をしてなかったという事実、また当時の日本政府が番所を置いておった、このような事実を指すものでありますし、また法的という意味は、大西洋憲章から、また日本はポツダム宣言を受諾をいたしましたけれども、それに至ります各種の協定におきましても、日本といたしまして法的に、歯舞、色丹、国後、択捉、この四島につきまして日本はこれを放棄したものではない、サンフランシスコ条約におきます二条(c)項におきましてもこの四島は放棄した中に入らない、このように主張をいたし、また連合国といたしましても、アメリカは同じような見解をとっておるところでございます。それに対しましてソ連政府といたしましては、領土問題は解決済みであるというこの趣旨は、一九五六年におきます日ソ共同宣言におきまして、歯舞、色丹は平和条約の締結後に日本に返還するという条項があります。これをもって解決済みと言っておるのか、その辺はよくわからないところでございますが、一九七三年に田中・ブレジネフ会談におきまして、領土問題ということは文章上はないわけでありますけれども、戦後の未解決の問題を解決をして平和条約を結ぶ、そしてわが方といたしましてこの未解決の問題には領土問題を含むということを口頭で念を押してあるところであります。そういう意味で、ソ連側が未解決の問題はないと主張しておるところは、その内容の趣旨は当方としては、何ゆえに未解決ではないと言われているのか、それは判定できないところでありますけれども、わが方といたしましては、平和条約におきまして領土問題を解決する、これは同じく一九五六年の松本・グロムイコの書簡往復におきましても、平和条約におきまして領土問題を解決をするのだ、こういう趣旨は明らかでありますから、わが方としては未解決の問題である、このような主張は正しい根拠を持つものである、このように確信をいたしておるところであります。
○中川(一)委員 お話にありましたように、一九五六年に鳩山・ブルガーニン会談において話し合った内容としては、少なくとも歯舞、色丹は日本のものであるということを認めておったはずでございます。したがって、平和条約ができたならばこれは返還をする。でありますから、問題になりますのは、択捉、国後が問題であるというならば理解できるわけでありますが、四つの問題は解決済みということは、鳩山・ブルガーニン会談の趣旨とは変わっておるのではないか。私が指摘したいのは、ソビエトの考え方は常に流動的でときどきの情勢に応じて変わっておるのではないか。その間、三木外務大臣が訪ソいたしました際は、中間的措置によって話し合いを進めようという話もありました。あるいはわれわれが前のソビエト大使と話したときには、大野伴睦ではないが、足して二で割った考え方でこの問題を処理してはいかがか、こういう非常に前向きの時代もあったかと存じます。ところが、私たちの見るところでは、最近特に厳しくなってきた。いまお話がありましたように、田中さんが訪ソされました七三年のときにも、田中さんの御説明によれば、未解決の問題とは領土問題を含むのだ、口頭で話し合いがあった、こう言われておりますが、本朝来、朝日新聞の報ずるところでは、それは一方的で不正確であると、言下にこれを否定しておるのでございます。したがって、あの当時の田中さんの会談は玉虫色だと言われたのもその辺にあるのではないか。わが方では口頭で、四島は未解決の問題に含むとされておりますけれども、ソビエトではそれは入っておらないというふうに言っておるわけでございますが、このようにソビエトが変わっておる事実は外務省もお認めでございますか。
○宮澤政府委員 そのときどきに応じて態度を変えているように見受けられることは事実でございます。 〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕
○中川(一)委員 そうすれば、今回の態度は私はいままでの中で一番厳しい態度であったと見ておりますが、いかがでございますか。
○鳩山国務大臣 今回は二百海里という、世界で特に漁業関係につきまして二百海里水域というものを、これはアメリカが昨年国内法で実施した、こういうことから二百海里時代に突入をした。そして二百海里の水域を引くという場合に、どうしても根底に領土の問題があるということでありまして、この領土問題につきましてソ連が大変態度を変えたんだ、このように即断はできないだろう。ただ、漁業水域というものが、現実に支配をしておる現在の北方四島につきましてソ連がこれを実施してきた、こういうところに問題があるわけでございまして、領土問題自体につきまして、今回になりまして従来の態度を全く変えてきたというところまで考えることは必ずしも直接的なことではないのではないかというふうに思います。
○中川(一)委員 それは私ども納得できないところでございます。田中・ブレジネフ会談では、領土問題については大体お互い玉虫色であっても何でも両方満足して帰れたわけなんです。今回、玉虫色で田中・ブレジネフ会談を確認するというぐらいのことでやればできないことはないだろうと思うのでありますが、向こうが執拗に領土問題は解決済みだと、最高会議幹部会令を盾にとって出てきたのではないのですか。 もっと言うならば、端的にお尋ねいたします。今度の外交交渉は友好国としての扱いを日本は受けましたか、いかがでございますか。
○鳩山国務大臣 今回の交渉は、御承知のように、領土問題をこの際解決をするとか、領土問題自体から論じて漁業問題を解決する、このような考え方をとらなかったわけでございます。漁業の問題と領土の問題は切り離して対処をしたい、こういうことで、最終的にこの領土問題につきましては両者とも、両国の言い分が違う、したがいまして第八条でその旨の留保をつけたわけであります。したがいまして、領土問題と切り離すとせざるを得なかったということでございまして、しからばその水域につきまして、先方が北方四島の領有を前提とした線引きをした、これを全く認めない、先方の線引きを全く認めないということは、日本は北洋漁業に入漁することができなくなる、こういうことであったわけであります。したがいまして、領土問題は領土問題として解決を図る、そういう考えであるわけでございまして、領土問題自体は別途解決をすべきものである、このように考えるわけでございます。 なおしかし、水域の問題として、わが方としてはやはり水域自体としても問題が残るわけでありまして、わが方といたしまして、二百海里のいわゆる漁業水域についての暫定措置法、この暫定措置法というものを、北方水域をわが方の固有の領土であるという前提のもとにこれを施行するという考え方で臨んでおるわけでございまして、最終的にはこれから行われるソ日協定というものをあわせお考えをいただきたいと思うのでございます。
○中川(一)委員 私が申し上げておるのは、結果もさることながら、交渉経緯において三回も行ったり来たりしなければならなかった、待ちぼうけを食った、あるいは言ったことが転覆をされたということであります。もう一つ大事なことは、日本の海洋二法によって日本は固有の線引きをする、そのことによって日本の領土権を主張した、こういうことになっております。 それでは、今回の交渉で日本が線引きをすることを認めようと、いわゆる相打ち論というものが認められたのかどうか。私どもの伺っておるところでは、相打ち論はまだ認められておらない、ソ日交渉においてその問題は話し合うということでございますから、ソ日交渉において線引きはけしからぬと出ないとは言えないのではないか。私の見るところでは、イシコフさんはかなり前向きでありますが、上の方が非常に厳しい。従来よりは非常に厳しい関係にありますから、とりあえず暫定協定を結ぶことには成功したが、問題はすべてソ日協定に残っておる、こういう感じがいたすのでございます。 そこで水産庁にお伺いしますが、水産庁は、第一線で交渉をされまして、全体の感じとして友好国的な扱いの交渉であったのか、これはこれは厳しい交渉であったのか、また相打ち論が認められるであろうという気持ちはあるけれども、認められたという自信を国民の前に明らかにできますかどうか、この点、第一線に立たれた水産庁から伺いたいと思います。
○岡安政府委員 今回の日ソの漁業協定交渉、結論は非常に厳しいものであったと思っております。ただ、鈴木農林大臣の交渉の相手が常にイシコフ漁業相でございまして、漁業問題を中心にまさに漁業問題として交渉を行ったわけでございます。その際、イシコフ大臣がしばしば言明されましたことは、漁業問題に限りでございますけれども、本来ソビエトは自国の二百海里内においてすべての魚を利用することができる、したがって余剰はゼロである、にもかかわらず、この際、交渉において日本漁船をソ連の二百海里内に入れようとするのは日ソの友好関係を考えての結果であるということはしばしば言明をされておられました。私どもは、日ソの漁業関係に関する限り、ソビエトはやはり長年続いた日ソ漁業条約の延長に立って、日ソ友好の立場から今後も漁業関係は続けていきたいという固い意思があるものというふうには考えております。 それから、相打ち論のことでございますけれども、確かに鈴木農林大臣は、第三回目の訪ソに当たりまして、私どもの日本の立場として、第一は双務協定を結ぶ、二番目は日ソとソ日の両協定を同時に締結をする、三番目は従来から継続の日ソ協定を先行させるという三つの提案をいたしたわけでございますが、その際ソ連側は、双務協定の即時締結、それから日ソ、ソ日を同時に締結するということはいろいろ問題があるのでそれはおいて、——反対はいたしませんでした、将来の検討課題とし、この際は従来から進行している、三条以下がすでに固まっている日ソの漁業協定を進めようではないかという提案があったわけでございます。いろいろ交渉の過程におきましてソ日の規定の仕方等々若干話し合いがあったようでございますけれども、結果的にはソ日協定にどういう条文に書かれるかということは、これから始まるソ日協定の交渉いかん、心証はございますけれども、確証としましては、今後のソ日協定の交渉いかんということにかかっているわけでございます。
○中川(一)委員 時間がありませんので要約いたしますと、私どもの、あるいは国民の見る目では、ソビエトの態度は今度は厳しかった、これはもうだれも否定できない事実だろうと思うのです。それから相打ち論が今後どうなるかという問題も今後に残っておるということも事実だろうと思うわけなんです。 そこで、なぜこのように厳しくなってきたのか。これは単に漁業問題として、ソビエトが魚が大事だからこのように厳しくなったのか。私はそう思わないのです。やっぱり領土問題から絡んでいる点を見ますと、日ソ間はいまわだかまりがあるのではないか。何らかのわだかまりがあるからこうなっておるのではないかと国民が見ておるわけですが、その点はいかがですか。わだかまりができるような外的条件、環境はないと、こう見ておりますか、外務省。
○鳩山国務大臣 日ソ間のわだかまりというお話でございましたが、昨年に不幸な事件もあったということは率直に認めなければならないと思います。しかし、日ソ間が全般的にやや冷えかけておるのではないかというような感じを持つことはありますけれども、今回の漁業交渉がそれゆえに非常に難航したということではないのではないか。やはり二百海里という時代を迎えまして、それ自体が大変な問題であるということと、その二百海里問題というのがどうしても領土問題と結びつきがあるという点が、これが最大の問題であったというふうに考えておるところでございます。
○中川(一)委員 そこでこの際、私は端的にお伺いするわけでございますが、ソビエトを刺激している問題が、昨年の不幸な事件以外に日中問題があると見ておるわけでございます。朝日新聞にもけさ、これは原稿として、取材ではない、はっきりしたものとして載っておるわけでございます。非常に中国の覇権ということに対して——日本と中国が結ぶことについて言っておるとは私は言っておりません。覇権問題について非常に敏感な感じを持っているということは前々われわれ考えてきたところでございます。御承知のように、日中平和条約は国会でも決議になっております。それを受けて政府が交渉してまいりましたが、覇権問題で難航しておる。日ソ条約が領土問題でデッドロックに上げておるがごとく、いわゆる宮澤四原則というものをのむのめないでもって今日に至っておると思うわけでございます。私も、外交上中国と仲よくするならば、お互いに覇権は認めないというまではわかりますが、第三国に対する覇権はソビエトに対してもアメリカに対しても大問題があるのではないか。これを言わんとする、主張する中国には無理があるのではないか。ただ、わが方に弱いとすれば、田中さんが訪中されたときの共同声明に明らかに書いてしまった。それをなぜ条約では書けないかという中国の主張はわかりますけれども、もしこれを条約に書くとすれば、ソビエトに与える影響、またアメリカに与える影響が非常に大きいと思うのでありますが、外務省、いかがでございますか。
○鳩山国務大臣 日本は中国との関係におきまして、すでに共同声明によりまして既定の路線が敷かれておるわけでございます。また、ソビエトとの間におきましても、もう二十一年前に共同宣言が発せられておる。日本は、両方とも隣接するところの国家といたしまして、両国ともに友好親善関係を持たなければならない、これはもう日本としての宿命にあるものと思います。 いま中川先生おっしゃいますのは、具体的なこの点にお触れになりましたけれども、私どもといたしまして、はなはだ抽象的でございますけれども、両国ともに親善を深めていく、そのためにはどうしたらいいか、こういう具体的な方策になると思います。これらの点につきまして、両国ともに親善関係を増進できる道を関係国が探し出さなければいけないものというふうに私どもは思っております。日中間におきまして双方の満足し得る条件を見出して、条約締結に進みたいということを福田総理もおっしゃっているのでありますが、それはいま私が申し上げたのと同じような意味に私は解しておりまして、これは条文の文言の問題もありましょうし、また、外交努力によって解決すべき点も大いにあろうと思うのでございますが、そういったことを考えて、両国ともに友好関係の増進できるような方策をぜひとも見出さなければならないというのが、今日の状況であろうと思います。
○中川(一)委員 日中関係の一般的なことについては、私は反対するものではないのでございます。ただ、新聞の伝えるところでは、覇権問題も含めて、条約を締結するのにもう支障はなくなった、話し合いができたというようなことが伝えられておるのでございますが、外務省首脳ということになっておりますが、話し合いがもう大体詰まって、条約が結べるように、国会決議でもあるならばさっさとできるような状況まできておるのですか、いかがでございますか。
○鳩山国務大臣 ただいまの新聞等の観測でございますけれども、外務省の事務当局といたしまして、そのような最終的な点まで煮詰まっているという状況ではございません。
○中川(一)委員 そこで、私どもは北海道漁民を代表する地域から出ておりますが、その点は非常に慎重にやっていただきませんと、けさの新聞によりますと、ソビエトのブレジネフさんが中国についてはこういうことを言っております。 あるいは「覇権主義」との闘いという命題をとってみよう。この命題を危険とみなさないものもいるかも知れない。しかし、この命題を口実にして国家間に不和の種子をまこうとしているのではないのか、あるいは少なくとも国家間の関係の改善を阻もうとしているのではないのか。何のためにそんなことをしているのか。この方針には、平和と協力の利益に反する目的が覆い隠されているのではないだろうか。いずれにしても、われわれはこの問題に関してはっきりした見解を持っており、これについては日本でもよく知られている。 いわゆる覇権というものを書くということは、日本とソビエトとかその他の国との仲を悪くするように、国家の間を裂こうとしている中国のねらいであるというふうにはっきり言っているわけなんです。でありますから、お互い第三国の覇権を認めないということは、ソビエトを刺激することはもう当然のことだと前々から思っておりましたが、きょうの新聞記事から見ても明らかだと思うのでございます。第三国の覇権を認めないというようなことを条文に盛るならば、ソビエトを刺激すると私は思うし「国民もそう思うのでありますが、外務省はその点どうお考えでございますか。
○鳩山国務大臣 いわゆる覇権条項につきまして、これをいままでの新聞等で拝見をいたしておりますと、覇権条項自体よりも、中国とソ連との間でいろいろな議論があるということは、私どももよく承知をいたしておるところであります。これがしかし、表現の問題であるのか、実体の問題であるのか、その辺は微妙な点でございますけれども、現在そのようなことが特に中国とソ連との間でいろいろ議論の種になっておるということは事実で、その事実は私どもは率直に認めなければならない、こう思います。しかしまた、他方におきまして、アメリカと中国との間にも、覇権につきましては認めないというような条項がある。したがいまして、そういう条項が問題なのか、確かに、ただいまお読みになりましたブレジネフ氏の発言にありますように、その裏にあることが問題なのか、その点はむしろ後者ではなかろうかと私は思います。しかし、この点はいろいろ議論のあるところでございますから、私どもといたしましては、やはり慎重に対処する必要があると思います。
○中川(一)委員 わが国の外交は一貫性がなければならないと思うのでございます。宮澤四原則のときには、覇権問題は断じて譲れないことであったはずのが、小坂大臣になったら、それは消えてしまって、そんなことは何でもないんだというように変わり、今度は鳩山さんになったら、またその中間みたいな、慎重で、問題であるというようなことに変わっていくところに、外交の問題点があるだろうと私は思うのです。その辺のところはすきっとして割り切っていかないと、やはり迷惑をこうむるのは北方漁民そのものなんです。今度の交渉だって、なまやさしく答弁していただいておりますけれども、結果としては、漁民の苦しみのみならず、関連企業から街の灯が消えるかというようなところまできておるわけでありますし、今後これを誤ってソ日協定なり基本協定で不測の事態ができますと、これはもう北海道のみならず、日本の北洋を基地としている漁業並びに基地経済は根底からおかしくなってくる。それがまた西の方の韓国あるいは中国方面の漁業にも影響する重大な問題でありますから、これは慎重にやっていただきたいと思うわけなんです。 それから、この際覇権問題について、もう一つどうしても聞いておきたいと思うのは、日米安保条約の関係において覇権が矛盾があると私は思うのです。たとえば中国との間に、第三国の覇権はこれを認めないというような文言で、共同声明そのもののような形で仮に決まったといたします。そうなった場合、中国で内戦があった。中国は一つでありますから、台湾を武力解放するということになれば内戦でございましょう。米台条約によってアメリカがこれを抑える、台湾を守るという事態になってまいります。日米安保条約では台湾は極東の地域に入っておりますから、日本の基地を使うことを日米安保条約で約束をいたしておるはずでございます。覇権行為をするアメリカに対して日本が基地を貸すとするならば、これはまさしく覇権を認め、覇権を助ける行為になると思うのでございます。したがって、その場合、基地を貸せば日中条約の覇権に矛盾をするし、基地を貸さないとすれば日米安保条約に矛盾をする。この二つの矛盾は必ず出てくるはずだと思うのでありますが、この辺のところは一体どう覇権問題を解釈したらいいのか、御説明をいただきたいと思います。
○鳩山国務大臣 米台条約と安保条約との関係をお述べになりましたけれども、日本が中国との間に国交回復をしたそのこと自体は、日本は台湾が中国の一部であるというその主張を理解をした上で、中国との間に共同宣言をいたしたわけでありますから、そのときの認識といたしまして、将来台湾が武力によりまして統合される、あるいは武力闘争の対象になる、そういう事態は起こらないという確信のもとに行われたものと思っております。したがいまして、いま仮定のことをお述べになりましたけれども、私どもといたしまして、そのようなことは絶対ないということで日中間の対処をしたのだというふうに理解をいたしておるところでございます。 この覇権というものの内容は定義があるわけではありません。したがいまして、覇権自体は国連憲章で言われているような、そういう不法な力による威圧といいますか、こういった行為を示すものであろう、したがいまして、国連憲章が守らるべきものであれば、そのような覇権というものはこの世界におきまして起こるべきでない、こう考えるべきではなかろうかというふうに考えております。しかし、覇権条項をどうするかということにつきましては、先ほど来申し上げましたように、なお最終的な結論をわれわれは決して持っているわけではないのでございます。
○中川(一)委員 答弁としては非常におかしいのでございます。 まず第一に、台湾を武力解放することはないであろうという認識のもとに、こういう話でございます。それはどこかに約束でもしてあるのですか。約束ができたから覇権はのんだのだ、アメリカが出てくることはない、日米安保条約とは抵触しない、こういう順序で行くならば結構であります。アメリカがいま米中会談をやっているポイントはそこに置いておるわけなんです。台湾は解放しない、武力闘争しないという返事が得られるかどうかということでいま苦労しているわけでしょう。日本が交渉したときに中国が、いや台湾はそういうことはやりませんから、日米安保条約とは抵触いたしません、どうぞ御安心なさって、台湾を極東条項の中に入れておいて結構です。そういう事態はありませんという一札をとっておったならば、いまの答弁ごもっともでございますが、新聞その他、これは確かではありませんけれども、中国側がそのうちに必ずやる、こう言っているものを、日本が何でないということを言われるのか、その辺全く理解に苦しむところでございますが、いかがでございましょう。
○鳩山国務大臣 条約としてそのような文章によるものはないわけでありますけれども、しかし政策問題といたしまして、日中間の国交が正常化をするということ自体が、中華人民共和国といたしまして、現実に台湾問題に対する対処の仕方は、国交回復以前におきます状況よりも考え方が変わりつつあるように思います。これは政策判断の問題といたしまして、日中国交回復をするということ自体が平和的な方向に向かう、こういうことになるわけで、したがいまして、条文的なそういう確約というものは、もちろん中華人民共和国の国内問題である、こういうことで、そのような文章はないわけでありますけれども、そこは私は政治の選択の問題であるというふうに考えるところでございます。
○中川(一)委員 ないであろうし、私どももないことを望むし、あったら大変だと思います。日本の防衛からいっても大変なことだと思いますから、台湾の問題じゃない、日本の問題として真剣に受けとめて、ないことを期待するわけですが、理論上は、もしあった場合には、どちらを立てればどちら立たずという形になることだけは間違いないでしょうね。
○中江政府委員 中川先生の御質問が全くというか、きわめて仮定の問題として、しかも純理論上の問題としての御質問でございますので、私からそういう前提のもとでどういうふうに受けとめるべきかということを御説明したいと思うのです。 まず、いま御想定になっているような事態は、第一義的に米中間の問題であるということでございます。米中間では、これは御承知のように上海コミュニケというものがございまして、アメリカと中国との間には将来の米中関係を律する一つの指針というものが出ておりますし、その中には、アメリカが、台湾の問題は同じ中国民族の間で二つに分かれていることを非常に残念に思う、その間に平和的に話し合いによって解決されることが望ましいという期待が含まれておる。にもかかわらず米中間で何かが起きる、いま先生が御想定になっているようなことが起きました場合に、それをどう認識するかということは、米中ともに覇権を求めないという約束をしている米中の上海コミュニケのもとで、どういうふうに米中双方が認識するかということがまず前提だろうと思います。 もう一つ、今度日本になりますと、日中間に御承知の日中共同声明がございまして、この中で、日本は、台湾につきましては中華人民共和国の不可分の一部であるという中華人民共和国の主張を十分理解し尊重するということをはっきり約束しておりますので、その立場に反しない行動をとらなければならないという一つの立場というものがありますので、仮定されましたような問題が米中間で仮に起きましたときに、それを米中両方がどういうふうに認識するかという問題と、今度はそれを受けて日本が行動いたしますときには、台湾についてはいま言いました日中共同声明に定めた指針にもとらない行動をしなければならない、こういうことになろうかと思います。
○中川(一)委員 そうなった場合は日米安保条約に違反しませんかと聞いておるのです。アメリカが極東で軍事行動を起こすときには、日米安保条約で基地を提供しますという約束ができておるわけでしょう。極東の地域の中には台湾も入っておるわけでしょう。日米安保条約に違反しないのですか。
○中江政府委員 日米安保条約の適用につきましては、そのときの事態が具体的にどういうふうに展開しておるか、またそれを中国なりアメリカがどう受けとめておるかということがはっきりいたしませんと、なかなかむずかしいと思いますけれども、私が先ほど申し上げましたようなことを念頭に置いて、慎重に配慮していくということ以上のことはなかなかむずかしい、こういうことでございます。
○中川(一)委員 いま聞いてもわかるように、答弁にはなっていないのです。そのときになってみないとわからぬ。どちらを立てればどちら立たずになることだけは間違いない事実なんです。言ってみれば、日中正常化というのは、わずかな期間に十分な検討もすることなく、田中流一流の周りに起きてくるであろうことを検討しないでできたどさくさ協定と私は見ておるのです。だからこそ今度の条約は慎重に、日本の外交方針を間違えないように、あちら立てればこちら立たずなんというような玉虫色——日本では最近玉虫色というのが出てきた。こっちから見ればこうだ、あっちから見ればどうだ、こういうばかげたことを積み重ねていくと、最後はどっちについていいかわけがわからなくなって、両方からきらわれる国家になることのないよう厳重に忠告を与えておきます。 これはアメリカとの関係だけではなくて、特にソビエトとの関係についてあいまいなままに覇権条項などを入れて結びますと、日本は弱いわけですから、今度の魚の問題だって、余剰原則というのを言われたら非常に弱いのです。ソビエトが日本からとるものは非常に少ないでありましょう。日本はソビエトから相当とっておった。そこに二百海里というものが出てきたわけですから、この二百海里というものを利用されたら、さあ庭先論でいきましょう、あなたの国はあなたの庭先を使いなさい、わが国はわが国の庭先を使います。外国に上げるほど余裕がありません、これだけでまいってしまう日本なんです。でありますから、外交については慎重にも慎重を期してやっていただきませんと、思いつきでやったことが北海道の漁民をああいうことに——私はそういうことだとは断定しませんけれども、外交というのは本当に慎重にやっていってもらいたいということを警告をいたしまして、この問題はいずれ深刻に議論をしたいところでございますから、また別の機会に改めてやることといたします。 もう一つだけ言っておきますが、ソビエトが言う北方領土は解決済み、歯舞、色丹も解決済みでというのは、これは向こうの古来固有というような感じになっているのですか、これだけだめを押しておきたいと思うのですが、そういうむちゃくちゃなところまで来ているのですか。
○鳩山国務大臣 解決済みという内容は、これは明らかではないわけであります。歯舞、色丹につきましては、先ほど申し述べましたように一九五六年にはっきりした約束があるわけでありますから、これをほごにするようなことは絶対にない、こう信じております。しかし、今日までの過程におきまして、安保改定の時期におきまして先方が、それにつきましてもやや難くせ——難くせと言っては非常に語弊がありますけれども、その関係から歯舞、色丹自体につきましても簡単でないような印象を与えた経過はございますけれども、今日におきまして、私は歯舞、色丹までを返さないというようなことでは絶対にないというふうに信じております。
○中川(一)委員 それから水産庁にお伺いしますが、日ソ漁業暫定協定に基づいて引き続いて六月中にはいわゆるソ日協定、ソ日漁業暫定協定というものが行われる。けさ報道の伝うるところでは、基本協定もこの機会にやりたい、こういうことが農林大臣から発言があったようでございます。その点については、ソビエトの了解を得てやられたのでございますか。
○岡安政府委員 とりあえずは、六月から始まりますのはソ日協定だというふうに私どもは考えております。ただ、基本協定につきましては、三月十五日から日ソの暫定協定の交渉を始める際に、あわせて基本協定もこの際始めることにいたしましょうというそういうスタートはすでに切っていることは事実でございます。実質的に基本協定の協議がどの程度行われるかということはお互いの準備次第ではなかろうかと考えております。常識的には、とりあえずはやはり日ソができましたのでソ日をやりまして、それからあわせて基本協定の方に移っていくというのが常識ではなかろうかと考えております。
○中川(一)委員 私ども受けとめるところでは、日ソ協定は非常に厳しい中に行われた。そしてソ日協定の問題点である相打ちの点をまだあいまいのままに、とりあえず少ない量の魚をとらしてもらっているという情けない結果だとは思うのです。 そこで、こういう環境の中で引き続いてソ日協定あるいは基本協定について話し合って、うまくいく見通しがあるのですか。私はもうちょっと環境をよくするような、外務省レベルなりあるいはその他レベルで日ソ関係をもっとよくして、そうして真剣に取り組むという二段構えでいかなければ、いまそのままストレートでやるならば、恐ろしいというか非常に厳しい、それが北海道あるいは北洋に働く日本の漁業にまた大きくはね返ってくるのではないかという心配をいたしておるのですが、外務省、いまのままで交渉に入っていってもまあまあの結果が得られるという日ソ間の環境にあると見ておりますか。この点いかがでございましょう。
○鳩山国務大臣 今回の漁業交渉は純粋に漁業交渉としてやろう、こういうことに鈴木・イシコフ会談で徹し切っておられます。根底に領土問題があるではないかということは事実でございます。しかし、この領土問題につきましては、両国関係の見解を異にする最大の問題でございまして、この問題と切り離して漁業問題を解決する、今日までの大変長い間の両相間の折衝過程を通じまして、漁業問題は漁業問題として解決できる、私はこういう環境にあるものと考えます。
○中川(一)委員 そういう見通しであれば非常に結構でございます。漁業問題は漁業問題としてまあまあの実績が上げられるなら結構ですが、今度の日ソ協定の中でも、結果としては北転船、沖合い底びきあるいはエビかご漁業というのは漁期、漁獲量を含めてゼロに近い非常に厳しいものですね。資源問題というならば、これはことしに始まったことじゃなくて、長い間あった日本の漁業権益がこのように無残に断ち切られたということは非常に厳しい結果だと思うのですが、水産庁、いかがですか、これは大変な結果だと思うのですよ。
○岡安政府委員 確かに今回の交渉によりまして決まりましたクォータ並びに漁業規制の内容は、私ども非常に厳しいものと考えておりますし、結果につきましてははなはだ残念であると考えております。北転船につきましても、六−十二月のクォータにつきましては、むしろ一−五月が主力であるとは申しながら、北転船の操業すべき海域がほとんどないという状況でございますし、沖合い底びきの主力であるスケトウダラにつきましても、五十年の実績が六−十二月で二十六万トン余りにもかかわらず、今回は合計で十万トンという結果でもございます。またエビかごにつきましても、漁期の点におきましておっしゃるとおり非常に過ぎたようなかっこうになっておりますので、与えられたクォータを完全に消化できるかどうかという点も非常に問題がございます。確かに私ども今回の交渉におきまして、資源論を中心にして交渉を進めたいと、二、三はやったわけでございますけれども、ソビエトからは全面的に余剰原則ということが出てまいりましたので、十分資源的な論争ができ得なかったことを非常に残念に思っております。 ただ私どもは、先生御承知のとおり、長い間かかって私どもの先輩が築き上げました北洋漁業の権益でございますので、余剰原則のもとにおきましても、わが国の実情を訴え、来るべき長期協定におきましては、今回決まりましたクォータ並びに制限を幾分なりとも改善ができるようにぜひとも努力をいたしたい、かように考えております。
○中川(一)委員 そこで、時間も参りましたので、もう一つだけ。私ども北方におります者としてつくづく感じますのは、日本は幸いにして島国でございます。したがって、外国との境界線はなかった。海で囲まれておりますから領土の問題だとか海のトラブルはなかったのでありますが、過去日本であったとすれば、千島四島を含むあの付近の境界線、ソビエト海域に入った入らないというような問題、あるいはソビエト漁船がわが国に入ってくるという問題、出ていった漁師は大変惨めな姿で拿捕される、これも数は大変なものでございます。長期間抑留される、船は没収される、それは独立国家と言えない、情けない惨めな思いをして過去三十年間やってまいりました。そして近年は、外国漁船が近海まで入ってきてわが国の漁船をけ散らすという、これまた攻められる方についても独立国家とは言えない、情けない状態にあるわけなんです。今度二百海里になりますと、これがずっと広くなりまして、いままでは北方海域はわれわれの地域だけだったのですが、日本の多くに二百海里の境界線というものが出てくる。そこでのトラブルというものは相当大きくなるであろうことが想像されるわけでございますが、この点についての警備あるいは漁業秩序の維持ということについて水産庁、責任を持てるようになっておりますか。外務省、そういう点についてはがっちりやれる、漁民の皆さん御安心くださいというような見通しはございますか。
○岡安政府委員 確かに今回の海洋二法の設定によりまして、わが国の海面におきます権限といいますか、管轄権は大幅に広がったわけでございます。私ども、できました法律は必ず守らなければならないし、守ることがわが国沿岸漁民の利益に合致するわけでございますので、法律の施行の確保というものは第一義的には保安庁であろうと思っておりますけれども、私どもも保安庁に協力をいたしまして、漁業法その他によりまして法律の遵守につきましての権能が私どもにはあるわけでございますので、私どもは保安庁と協力し、この二法の実施の確保のためには全力を尽くしたい、かように考えております。
○鳩山国務大臣 二百海里時代になりまして、わが国といたしまして管轄権を守るためには大変な海上保安庁の装備と申しますか、飛躍的に拡充しなければならない。政府といたしましてもこの点は大変な問題意識を持ちまして取り組むということでありますが、また外務省といたしまして、今回の協定によりますと入漁できる海域が非常に細かく決められております。したがいまして、そういった中で拿捕を受けるような環境が非常にふえるのではないかということを心から心配をいたしております。それらの点につきましては外交努力に、できる限りの対策と申しますか、ソ連側と密接な連絡をとりながら、不当な拿捕を受けないように最大の努力をしなければならないと考えております。
○中川(一)委員 不法な拿捕をされないようにと言われても、仮に海上保安庁の船を幾らふやしてみても、船の数だけでは解決しないんです。力ずくで連れていくものをへ力ずくでとれるだけの力を持たないものは、何ぼふやしてみたって意味はないんです。また逆に、向こうが入ってきて不法な漁業をやっても、日本がソビエトの漁船を引っぱっていくような力を持たなければ、数をふやしてみても実態はとられっぱなしにとられるという形になるだろうと思うのです。この辺のところをひとつ慎重に配慮して、不要、不法なトラブルが起きないようにこれは外交交渉を通じてしっかりやってもらいたい。と同時に、日本もその辺のところをそろそろ、力ずくで来るときには力ずくでぐらいの日本にならなければ、情けない姿であったのでは、戦争は絶対あってはならないけれども、なぐられたときにはなぐり返すぐらいでなければ外交交渉もできないし、北方で働く漁民の権益も守れないということもしっかり考えていただきたい、こう思う次第でございます。 なお、外務省から御答弁のありました日中関係については、まだ話し合いもできておらないし、環境もできておらない、慎重にやるということでありますから結構でございますが、外交は時のムードや新聞論調にばかり目を向けて基本の問題を忘れるどさくさ外交にならないように、結果は日本人がやられるわけですから、最終的には今度のように意地悪されたときにはどうにもならないかっこうになりますから、本当に慎重にやってもらいたい。特に北海道の漁民はミグの問題についての犠牲になったのではないかと非常な怒りでございます。ただ、外交交渉でありますから、そのようなことを言うことによって外交交渉を弱くしてはならないと歯を食いしばっている北海道の漁民のことも真剣に考えてやってもらいませんと、ただ領土問題さえ言っていればいい、原理原則さえ言っていればいい、日中は日中だ、覇権は覇権だなんということではなくて、実態の問題もよく考えて、そして間違いのない外交なり水産の交渉なりをやっていただきたいとお願いを申し上げまして、時間でございますから質問を終わります。 どうもありがとうございました。
○竹内委員長 次に、山田久就君。
○山田(久)委員 今回のソ連の二百海里水域実施、これで非常な難交渉が起きているわけでございますけれども、いまのソ連のいろいろな出方、動きというものは、ちょうど昨年十二月十日、ソ連の方で最高幹部会令を出すとともに、大体、早晩このことは予想されておったところと思います。実際問題としてはこの二月二十四日、ソ連の方で三月一日からやるぞという通告があったとともに、やや現実的な形として、これに対するいろいろな対応策ということが考えられてきたというような感もないわけではない。実際、外交問題をやるときに一番大事なのは、的確な情報をとるということがこれは非常に重要な点でございまして、昨今、占領下の外交という長い期間を経て、そういう面では少し徹底した情報の収集というような点に欠くるところがあるんじゃないかということを私は恐れるものでございます。むろん外務当局としても、この点についての情報収集についてはいろいろな努力もされたことと思います。しかしながら、ソ連にとっての非常な利害関係の多いアメリカ、カナダあるいはEC諸国の二百海里ということもちょうど昨年実施されておるわけでございまして、そういうような点も考えてみますると、情報収集については相当広く根をはってやるべきだったと思うが、この点、ソ連の出方というようなことでどの程度に事前に察知するそういう点の努力を払われたか、また、わかっておったか、ひとつこの点についてまずお伺いしたい、こう思います。
○宮澤政府委員 まず、ソ連の二百海里水域設定に関する幹部会令の問題でございますが、これは山田委員もよく御存じのとおり、大変体制の異なった国でございますので、その他の国におけるように法律の発布その他非常にはっきりいたしませんところがございまして、本件幹部会令の施行、発布につきましても、タス通信によって報ぜられたのみでございまして、そのとき外務省、漁業省等に問い合わせましたが、御想像のとおりの大変にあいまいな回答があるのみでございまして、しかもその幹部会令に、暫定措置実施の条件及び期間は大臣会議で定めると幹部会令の六条にございまして、この大臣会議決定が出なければわからないのであろう、それからソ連側も大臣会議で細目は決める、こういうようなことを言っておりましたために、なかなかはっきりした情報が得られなかった次第でございます。そして二月に至りまして、重光大使とイシコフ大臣とようやく会談が実現いたしましたが、そのときの事情は、これはトップレベルで話す以外にない、細目その他についてはなかなか言えない、そして日本との協定をする用意があるが、これについてはトップレベルでしか話し得ない、こういうような態度でございました。 それから、大臣会議決定も実はタス通信で報ぜられたのみでございまして、その正式なたとえば官報のようなものを日本大使館、私どもが入手しようと努力いたしましたが、手に入れることができませんで、鈴木大臣が訪ソされましたときにお気がつかれたのでございますが、漁業省の役人もそのタス通信の記事を手に持って仕事をしておった、このような状態でございました。したがいまして、私どもといたしましては、大使館員その他、東京でも在京大使館との連絡等もございますけれども、大変な努力をいたしますけれども、ああいう体制の国でございますので、必ずしも満足なあるいは迅速な結果が得られていないというのがソ連に関しましては実情でございます。 それからソ連とECとの交渉、これはまだ妥結に至っておりません。いま暫定期間というようなことでございますが、ECとの交渉あるいはノルウェーとの交渉、スウェーデンとの交渉、米ソ、加ソ、このような協定につきましては、米ソにつきましてはもう米国議会の承認をいま得ておりますところで、内容等わかっておりますが、その他につきましては、わが方大使館を通じまして会談の内容とか協定の内容とか概略把握しておりますが、まだ発表になっておりませんので、私どもまあ内輪のものと解釈しております。
○山田(久)委員 共産圏関係の情報というものがとりにくいということはわれわれもよくわかっているわけです。そしてまた、もうトップレベルでなければ話をしないというような形のために入りにくかったという事情はわかりますけれども、何といってもわが方の利害関係に非常に大きな関係を持った国の出方ということでございまするので、やはりいろんな角度を広げての情報収集ということについては、ひとつこの上とも特に力を入れていただきたいということだけをこの際は要求しておきたい、こう思います。 いまちょうど宮澤君が触れた各国との協定交渉というのは、ことにECとの新協定の締結状況というのはまだ妥結に至っていないようでありますけれども、この点で特に何か今後の日本とソ連との関係をトするというような意味で注目を引くような個所、注意を要するような点でも、もしわかっているならそれはどういう点であるか、特にそういう点がなければまた別問題だけれども、そういうような点、あるかないか、あるならばちょっと教えてもらいたい、こう思います。
○宮澤政府委員 現在ECとの間にまだ交渉ができておりませんのは、ECの方は長期協定を主張しておるのに、ソ連はことしとそれから長期と二本立てでいきたい、こういうような主張がございまして、折り合ってない。それで、猶予期間を設けてもらいまして、当初三月末までソ連が現状維持しておったのでございますが、これを五月末まで延ばした、こんなようなことで、もう五月の末になりましたので、また交渉が始まるかと思います。 特に日本側として参考になる点、まだ内容が必ずしもはっきりしておりませんけれども、問題になっておりますのは、たとえばソ連がEC全体としてこれを相手にするかどうか、御存じのとおりソ連ばECというものをなかなか認めておらないわけでございますので、これを今度初めてECとしてサインすることをソ連が認めるかどうかとか、あるいはあらゆる西側諸国とソ連との協定はベルリンに適用するかどうか、こんなような点が問題になっておりますほかに、いわゆる漁獲量の問題がございまして、その均衡論ないし実績論、この点が争いになっておりますが、ソ連はいつを基準にして実績として考えるか、ソ連の最近の取り分が非常にふえておりますが、これはここ一、二年のことでございますので、過去の実績として必ずしもソ連の取り分が十分でない。そこで、ソ連は最近そのような事態を察知して、最近一、二年の実績、これをしきりに——極東においてもほぼ同じでございますが、近年に至って非常に漁獲量を上げておる、こういうところを基準にして実績を決めてもらいたいというようなことも折衝の点になっているように聞いております。これらは私どもが正式に情報として入手しておるものでございませんので、現在このようなことでソ連とECの折衝が続けられておる、このように聞いております。
○山田(久)委員 結論としてECを一体としてやるということは非常にきらっていたわけだけれども、結局そういうことでいくということに踏み切らされたわけだと思っているわけですが、それはそうなんですよね。 それからもう一つは、政治条項としてのベルリン条項、これはいまどのような成り行きになっているのか、あるいは何かその点の情報がわかっているのだったらちょっと触れてみてください。
○宮澤政府委員 御質問の第一点は、私どもの了解しております限り、大体ソ連もEC相手ということで踏み切るものと思っております。 ベルリン条項等につきましては、まことに申しわけございませんが、はっきりどのような結末になりつつあるか、承知いたしておりません。
○山田(久)委員 今度の日ソ漁業交渉の結局実質的な中心問題は、領土問題ということが絡んでいたわけですが、この領土問題というものについて、ソ連が長期的な見地で絶えず追求してくるその執拗さというようなことは御承知のとおりでありますけれども、参考として、第二次大戦後ソ連が実際上拡張してきた領土、それはどこで、どの程度のものを手に入れてきたか、そういう点、ひとつここでわかったらちょっと指摘してもらいたいと思います。
○宮澤政府委員 御承知のとおり大変たくさんございますが、全部申し上げます。 ただいま第二次大戦後とおっしゃいましたが、第二次大戦後になりますと、もう世界が平和になりましたので、その後強行したようなところは少のうございますが、大体第二次大戦勃発から今日に至るまで、そういうことでよろしゅうございますか。——実際に合わせました土地と面積程度を申します。 フィンランドからソ・フィン戦争の結果、カレリア地方、ラドガ湖の西部及び北部沿岸一帯、それからフィンランド湾内の諸島及びペッツァモ等を得まして、これが合計四万五千五百八十平方キロメートル。 それからいわゆる沿バルト三国でございますが、これを併合いたしましてソ連邦の構成共和国といたしましたので、合計これが十六万六千百六十二平方キロメートル。 それからドイツから東プロシアの北半分をロシア共和国に編入いたしまして、そしていわゆる御承知のメーメルもソ連領といたしました。これが一万三千八百四十平方キロメートル。 それからポーランドにつきましては、東部地方、すなわち西ウクライナ、西白ロシア地方でございますが、これを併合いたしましたのが十八万六千平方キロメートル。 それからチェコから一九四五年六月にザカルパート地方を獲得いたしまして、これが一万二千六百二十平方キロメートル。 ルーマニアからこれは一九四〇年でございますが、ベッサラビア及び北ブコビナを割譲させまして、これが五万四百平方キロメートル。 それからモンゴルでございますが、モンゴルから一九四四年にいわゆるタンナ・トウワの地方でございますが、これをロシアに合併いたしまして自治州といたしました。これが十五万平方キロメートル。 それから私どもの日本から樺太、千島並びに北方四島、総面積一万平方キロメートル余りでございますが、これを合わせました。 以上でございますが、これを総面積にいたしますと六十七万平方キロメートル余でございまして、わかりやすく申しますと、イギリスとイタリア、ギリシャ、この三つを合計した面積にほぼ匹敵いたします。
○山田(久)委員 ちょうど第二次大戦が始まってからでも相当な領土の拡張ということで、無論ソ連も大西洋憲章の中に参加しているという意味ではまことに明瞭な違反ということじゃないかと思うのですが、ここ百五十年ぐらいの間に、年に平均すると大体オランダ一つぐらいずつ拡張しているということが言われているのだけれども、その資料はいま手元に持ち合わせないですか。
○宮澤政府委員 大変申しわけございませんが、そのような資料はただいま持ち合わせておりません。 ただ、御承知のように中ソ論争のもととなっております領土は、愛琿条約とかネルチンスク条約とか、清朝とソ連が結びました条約がもとだというふうに中国の主張がなっております。沿海州全部というようなことにもなっておりますので、もし中国の主張が正しければ、それなど一例でございます。 それから私、前のお返事で間違いましたので、北方四島の面積を一万平方キロ余りと申しましたが、これは間違いで、樺太等を入れました面積を申し上げましたので、北方四島につきましてはほぼ五千平方キロでございます。おわびをして訂正させていただきます。
○山田(久)委員 領土問題に対するソ連の態度はかなり一貫しているところで、その強さというものを考えてまいりますと、実際問題として領土問題の解決はなかなか容易な問題ではない。これは単に定期便のような交渉で片づくものじゃない、よほどこれは手の込んだ、いろいろな内外についての処置が必要だというふうに私は思います。 この点に関連して、もう一遍ちょっと確かめておきたいと思うのだけれども、領土問題については、一九五六年の日ソ交渉の際に、御承知のように松本・グロムイコ書簡というものが交換されているわけです。 〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕 これについては、あの後での共同宣言とも関連をして、たしか時のソ連の総理大臣が自分らの方としては領土問題では相当譲ったつもりなんだけれども、しかしどうしても日本との意見が一致しない、そこでやむなく領土問題を含んで国交回復後に平和条約の継続交渉をやるんだという趣旨の談話もたしか出ておったように記憶しておるのだけれども、その後における領土問題の継続交渉、懸案解決というような場面で、このグロムイコ・松本書簡というものを余り重視して援用するというようなことが行われていないように思うのだけれども、その点どういういきさつでそういうふうになったか、これはいろいろあったと思うのだけれども、もう一遍ここでちょっとレビューしてもらいたいと思うのです。
○宮澤政府委員 私どもはこの松本・グロムイコ書簡というものを、日ソ共同宣言とあわせて非常に重要な文献として考えております。この内容は、「領土問題を含む平和条約締結に関する交渉は両国間の正常な外交関係の再開後に継続せられるものと了解するものであります。」ということを松本全権からグロムイコ外務次官に出しまして、これに対する返簡といたしましてグロムイコ外務次官から「両国間の正常な外交関係が再開された後、領土問題をも含む平和条約締結に関する交渉を継続することに同意することを言明します。」と書いてございます。 そこで、共同宣言の方が、これは鳩山総理大臣がソビエトの連邦閣僚会議議長、大統領でございますが、これとの間に交わされました国交回復の大きな文書でございまして、その中に「平和条約の締結に関する交渉を継続することに同意する。」このように書いてございますので、領土問題を含むということは共同宣言にはございませんけれども、これはこの裏打ちになっておる両国の外交の当事者間の了解として正式な文書になっておりますので、この点、両方あわせまして、私どもといたしましては当然国交回復の後に領土問題を含んで平和条約の交渉が開始されるものと考えておる次第でございます。
○山田(久)委員 まあグロムイコ氏のその領土問題を含んでというのは、たしかあれは前の晩かなにかになって共同宣言に入るやつがおっこったというようないきさつがあるのですが、それにもかかわらずこれは非常にはっきりしているので、これをもっと有効に活用していくことを考えるべきじゃないかと思います。 なお、ちょっと私が触れました、そのときのブルガーニン氏の談話、このいきさつなんか非常にあれしているので、あれば、ちょっとここで披露してもらえませんか。
○宮澤政府委員 ただいまおっしゃいましたのはブルガーニン首相の演説であろうと考えておりますが、その中にブルガーニン首相がこのように言っております。「日本との平和を心から望み、日本の希望を考慮にいれて、ソ連は前回の交渉で領土問題をも含めて日本側に譲歩を行った。しかしそれにもかかわらず日本側は平和条約に調印する用意を持たず、われわれに対して現在平和条約を締結することなく領土問題をも含む平和条約締結に関する交渉を、外交関係復活のあとで、続行するという条件付で、日ソ間関係を正常化させるとの提案をした。われわれは、日本側のこの希望に同意した。」云々と書いてございます。 この演説はございませんでも、結局私ども日本が共同宣言という形で国交回復をいたした、そのことは、そしてその共同宣言の中で歯舞、色丹は平和条約ができた後に引き渡すと書いてある、しかもそれが平和条約でない、共同宣言という形で国交が開かれたということは、まだ残された問題があってそれが解決したときに初めて平和条約だということをソ連側も了解したわけでございますから、当然歯舞、色丹以外に未解決の領土問題があることは、その事実からでも明らかであろうと私どもは解釈しております。
○山田(久)委員 専門的に言えばまさにそのとおりなんですけれども、しかしながらソ連は、理屈がわかったからといって何もそれで譲歩するようなあれじゃないのだから、そういうことはよくわかっているのだけれども、にもかかわらずそういうはっきりしたレコードはもっと活用するし、それからまた、国民の一般の啓蒙の上からもやはりそういう点を理解させておくということは、正しい意味において領土問題に対する国民の態度というものを一致させていく上において非常に重要じゃないかと思うので、そのことを特に指摘したわけです。 それから次に、かつて二面海里以前の段階においても、ソ連としてはいろいろな事情から、日本との漁獲高のパリティというようなものを基本的にねらって、そして押してくる、こういうふうに判断せざるを得なかったわけですが、今日としては、二百海里問題というものの基本的な性格というものから見て、いろいろな今回の妥協があるにかかわらず、先ほどちょっと岡安長官から、ソ連としてもわれわれの実績を相当尊重するつもりだというようなお話があったけれども、私は逆に、実は基本的には、もう日本を締め出すという方針と決意でソ連はきているというふうに、むしろこれを判断して対処する必要があるというふうに考えております。この点について、政府の情勢判断はどうであるかということとともに、二百海里時代に臨む、つまりいろいろなところから締め出されてきた後の二言海里時代のわが漁業の一大転換策というようなことについて、すでにいろいろ腹案で対処しておられる、こう思うのですけれども、この点についての政府の用意、今後の検討、方針というようなことについて、どのような構想を持っておられるかということをひとつここで披露してもらいたいと思います。
○岡安政府委員 御指摘のとおり、二百海里時代におきまして、外国の二百海里の中でわが国の漁船がどの程度操業できるか、どの程度の漁獲を上げ得るかということは、非常に厳しい見通しを持たざるを得ないというふうに考えております。ただ、私どもは、やはりわれわれが開発してまいりました遠洋漁業国としての立場、これはできるだけ維持をいたしたいという考えではございます。しかし、私どもといたしまして、新しい時代に対応いたしまして、まずわが国の二百海里内につきまして資源を見直し、さらにその資源を培養するということが中心にならざるを得ない、それは全力を挙げたいということが第一でございます。 それから第二には、やはり各国の二百海里外におきまして、残された海洋があるわけでございます。もちろん、漁業資源として見るべきものが十分あるということではございませんけれども、私どもはその開発につきまして、今後、従来にも増して努力をいたしたいというふうに思っております。 あわせまして、やはり外国の二百海里内におきましても、特に南方諸国等につきましては、漁業協力等を通じまして、実績の確保のみならず、資源の開発の観点からもわが国の漁船が引き続き操業ができ得るように交渉は重ねたいというふうに考えている次第でございます。
○山田(久)委員 ちょっと最初に指摘した点ですけれども、ソ連の、つまり明年以降非常に厳しいものになってくると思うのは、やはり基本的に、ソ連が一体二百海里というものをどのような心組みで今後日本に対処していこうという、その意図についての判断の問題だろうと思うのです。これは、私はさっき申したような点だと思っておるので、甘い考えは絶対禁物だ、こう思うのですが、この点、農林当局としてどのように考えておられるか、もう一遍ひとつその点についての判断をお聞きいたしたいと思います。
○岡安政府委員 今回の日ソ漁業暫定協定交渉におきましても、私どもは、その結果は非常に厳しいものであるということを申し上げたわけでございます。したがって、今後におきまして基本協定交渉並びにその後の交渉におきまして、私どもがソ連の二百海里内におきましてどれだけの操業ができるかという見通しは、私どもは厳しい観測を持っております。 ただ、先ほども申し上げましたとおり、ソ連としましては、アメリカ、カナダ、ECその他におきまして、ソ連の漁獲量の六割を外国の二百海里内でとっておりましたにもかかわらず、それが大幅に削減されつつあるということ、したがって自分の二百海里内におきましてそれを補充いたしたいという態度、これがまずあります。それから二百海里につきましては、やはり余剰原則というものを前面に打ち出して対処をする。そういう場合には、北洋につきましては日本に与えるものはないのが原則であるという態度、これで今後も来るだろうと考えております。 ただ、今回の交渉におきまして、先ほども申し上げたわけでございますけれども、本来ならば余剰がないのだけれども、日ソの友好関係等を考えて日本の漁船にソ連の二百海里内において操業を認めるんだということを言っております。それが今後どういうふうに具体化するかというごとは問題でございますけれども、私どもは、厳しいとは考えておりますが、ソ連との間におきましては、従来からのいろいろの実績、またわが国の漁民、のみならず関連産業が相当依存をいたしておりますので、できるだけの努力はいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
○山田(久)委員 時間が来たので、以上をもって質問を終わります。
○毛利委員長代理 大坪君。
○大坪委員 今回の日ソ漁業暫定協定の締結に当たりまして、鈴木農林大臣初め日本の代表団の方方、大変御苦労になりました点に敬意を表したいと存じます。 私は、その過程で特に問題になってまいりました、俗に言う北方四島問題の処理につきまして、今後起こるでありましょうソ日漁業暫定協定あるいは漁業基本協定の過程でも、やはり同じような問題が蒸し返されてくるのではないか。これは、実は日本の国民あるいは日本民族と申しましょうか、そういうものの長い今後の存在にかかわる非常に大きな問題でございますので、きょうはその点にだけ問題をしぼりまして、もうすでに同僚の諸先生からずいぶんいろいろと問題提起なり御質問が出ておりますけれども、そういう点の重複をなるたけ避けて、問題点の詰めを若干申し上げてみたいと思うわけでございます。 最近、日本の国民の関心というものは、新聞の論調あるいはラジオ、テレビあるいは投書、そういったものを見ましても、この北方四島の一括返還をめぐる日本当局の態度、これに対応するソビエト社会主義連邦共和国の出方、これをどういうふうにして今後話し合いの基盤に乗せて日ソの平和友好を確保していくかというところに集中してきているように思われます。日本国民の関心の非常に集中しております点は、ソビエトという非常に強力で、かつ米ソ対立などと言われておりますように、現在の地球上の最大の勢力の一つであります国が非常にきつい態度でこの問題に対処しておる、しかしわれわれの基本的な主張、論点に欠陥があるとも思えない、一体これをどうして解決していったらいいのかということにあろうかと思いますので、ここのところを、ひとつ政府のしっかりしたお考えをお聞きいたしたいと思います。 私どもの知っております範囲では、国後なり択捉というような島々あるいは歯舞、色丹といったような島々の帰趨については、第二次世界戦争の前には全く異論がなく固有の日本の領土であったわけでございます。しかも、それがはるかにさかのぼりまして、日本開国のときにすでに日本国とロシア国の通好条約の中でも、「日本国と魯西亜国との境「エトロプ」島と「ウルップ」島との間に在るへし」こうはっきり第二条で書かれておりますし、その後、一八七五年にセント・ピータースブルグ、いまのレニングラードだと思いますが、ここで署名されました樺太と千島の交換条約におきましても、日本が樺太をソ連の帰属に任せるかわりに、逆に、ソ連がそれまで一応領有権を主張しておりました北千島の諸島、いわゆるクリール群島、すなわち第一のシュムシュ島からずっと書いてありまして、「第十八「ウルップ」島共計十八島ノ権利及ビ君主ニ属スル一切の権理ヲ大日本国皇帝陛下ニ譲リ」、こう書いてあるわけでございます。これは第二款でございます。したがって、開国のときから——吉田総理がサンフランシスコ条約の署名をいたしますときにサンフランシスコ平和会議において発言をされましたように、「日本開国の当時、千島南部の二島、択捉、国後列島が日本領であることについては、帝政ロシアもなんらの異議を挾さまなかったのであります。ただ得撫以北の北千島諸島と樺太南部は、当時日露両国人の混住の地でありました。」こういうふうに確認をされ、このことはその後の外交文書なりアメリカの主張でも裏づけられてきたところでございましょう。ただ、ポツダム宣言を受諾してサンフランシスコ平和条約を調印いたしましてから、それぞれの国内の各党のお立場によって国論が分かれたということは事実でございますが、いま問題になっております択捉、国後あるいは歯舞、色丹諸島を国際法上合法的にソ連が取得した根拠は何もないと私は思っております。この点についてまず御見解を伺いたいと思います。
○宮澤政府委員 ただいまお述べになりました見解がまさに私ども政府の持っておる見解でございまして、ソ連がいわゆる北方四島を占拠しておる法的な根拠は全くない、したがって、不法占拠である、このように主張しておるわけでございます。先ほど山田委員の御質問に答えまして、私がソ連が手に入れた領土と申しましたその中に千島四島まで申しましたが、これは合法的に手に入れたということではなくて、ソ連が領土を拡張しておる、居座っておる部分も入れて申したわけでございますので、念のために申し上げておきますが、少なくともこの北方四島につきましては、私ども政府の見解は、ソ連はここを占拠する法的な根拠は全くない、したがって、その返還を請求する権利が一〇〇%私どもの側にある、このような意味でございます。
○大坪委員 法理上は欧亜局長の言われるとおりだと思います。ただ、第二次世界戦争後の国際情勢を見てまいりますと、たとえばヨーロッパ諸国の国境線は非常に入り乱れて、占領、実力支配のもとに置かれて、それが結果的に全ヨーロッパ首脳会議のようなもので固定されるというような形をとったという例もあるわけでございます。 そこで、単に根拠がない、理論上の問題だと言うだけでは、やはりこの問題の解決には必ずしもならない。領土問題というのは恐らく外交交渉上最も困難な問題の一つであろうかと存じまして、これに対しては常に一貫した根拠と論理を持たなければならない、一貫した根拠と論理に基づいた外交努力の積み上げというものが常になくてはならないだろう、しかも、領土というのは国民が生存し生活をいたします基盤でございますから、国家、国民の継続した、ある意味で言えば永遠の生命のものと関係して位置づけられるべきものであって、時の政府でありますとか時の相手方の出方でありますとか、そういうものでその論旨なり根拠が動くということはあってはならない問題ではないだろうかというふうに私は考えます。 そういう意味で言えば、実は余り世人の評価に上っておりませんけれども、戦後いろいろ言われましたけれども、私は、日本の外交当局が一貫して領有の根拠を常に示しておった、それから問題があるごとにソ連邦に対してこの根拠を繰り返し主張をしてうまなかったという点については、その努力を高く評価したいと思います。この問題は非常に重要な、しかも基本的な国家存立の論理にかかわる問題でございますから、今後ともそういう態度をぜひお続けいただきたい。 実はけさ私ども朝日新聞を拝見しましたところが、朝日新聞の質問書に対してソ連邦のブレジネフ共産党書記長が回答書を寄せられておる。 〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕 その中に、「もし日本側が故意に、受け入れがたい条件を持ち出さなければ、ソ連は両国にとって重要なこの問題をやりとげる用意がある。日本側が第二次大戦後の現実に真剣に対処すれば、この問題は解決できるし、また早く解決できるであろう。」という、ある意味で従来の態度を確認するような非常に厳しい論理を展開いたしております。しかし、「平和条約には通常、国境線の問題を含めて広範囲にわたる問題が含まれていることは、わかりきったことである。このことは、ソ日平和条約でも、例外ではない。」しかし、「両国間の関係に何か「未解決の領土問題」があるという解釈は一方的で不正確である。」こういう言い方をブレジネフ書記長はしておられます。このことは従来のソ連の態度から見てその確認にすぎないとも思われますけれども、しかし、こういう出方をソ連邦の最高責任者がしておられるわけでございます。こういう議論の中で、たとえば、これはソ連側ですけれども、善隣協力条約を結ぶように提案したけれども、どうだ、乗ってこないか、こういうような話しっぷりもございます。善隣友好条約というものの中に、たとえば、従来いろいろな関係者の方から、あるいは二、三の政党の方から、あるいは与党の中からもそういう御意見があるやに承っておりますけれども、日本の固有の領土である歯舞、色丹、国後、択捉のうち、歯舞、色丹両島は北海道そのものだ、これは問題がない、国後、択捉には若干問題があるというような言い方で、歯舞、色丹だけを先に返してもらって、あとの問題は後で何とか処理をする、それまでくぎづけにするとかたな上げにするとか、そういう論旨をなさる方もおられるようでございますけれども、特にこのブレジネフ回答が出ましたので、そういう論旨がまた出てくるのではないかと私は思うのでございます。しかし、善隣友好条約というようなものはこれは検討に値するものでございましょうけれども、それに歯舞、色丹を絡ませて、問題のいわば段階的解決と称して、従来日本がとってまいりました基本的な論理、基本的な根拠をあいまいにするようなことがあってはならないと思います。 これは外務当局にお答えを迫るのは非常につらい問題かもしれませんけれども、固有の領土である国後、択捉、歯舞、色丹というものについては、歯舞、色丹島が北海道の一部であり、国後、択捉があるいは地理上南千島と呼ばれておろうとおるまいと固有の領土であることに間違いはないわけでございますから、その点についての政府の態度というものは従来と変わらないのかどうか、この点を特に明言をしていただきたいと思う次第でございます。
○鳩山国務大臣 ただいまお述べになりましたこと、私どもも全くそのとおりに考えております。北方四島、これを一括して返還を実現をするということが政府の一致した見解でございます。また、昭和四十八年の北方領土の返還に関する決議におきましてもこのことがうたわれておるところでございまして、政府としてはその方針に何らの変更がないことをはっきり申し上げたいと思います。
○大坪委員 一九七三年十月に田中・ブレジネフ会談が行われまして、この会談の中で、私どもが聞いておりますところでは、ソビエト側はこの四島が「未解決の諸問題」に含まれるということについて明確に確認したというふうに聞いておるわけでございますが、田中・ブレジネフ会談におけるこういうような問題についての内容を私どもに聞かせていただけるならば、これはぜひひとつ聞かせていただきたい。
○宮澤政府委員 先ほど大坪委員からけさほどの朝日新聞の記事を引いて御発言がございましたが、この中で、ブレジネフ書記長の回答は、「そのとき行われた日本指導者たちとの交渉を私たちはよくおぼえている。これは、有益な交渉だったと思う。その過程で、日ソ平和条約を含め両国間の相互の諸関係を広範にわたって討議した。」云々、このように書いてございまして、お読みのとおりでございます。 この交渉に当たりまして、一九七三年の十月十日の最終会談の初めに田中総理大臣から、きょうの会談では、歯舞、色丹、国後、択捉の四島の問題を出すべき共同声明でどのように表現するかの点のみにしぼって話をしたいと述べられまして、実際、その日の会談はこの点に関するやりとりで終始したわけでございます。 その際、日本側田中総理大臣は、共同声明の中に四島の問題を明記するように強く主張されたのでございますが、ソ連側の意向もございまして、結局できました文章は、「第二次大戦の時からの未解決の諸問題を解決して平和条約を締結すること」こういう表現で共同声明をまとめることになったわけでございます。 ただし、その際田中総理大臣から、「未解決の諸問題」の中には四島の問題が入っているということを確認したい、こう述べられましたところ、ブレジネフ書記長はそのとおりであると答えましたので、田中総理大臣から重ねて、「諸問題」の中には四島の問題が入っているということをもう一度ブレジネフ書記長から確認してもらいたいと述べられましたところ、ブレジネフ書記長はうなずきながら結構であると答えた経緯がございます。これは日本側がつくっております詳細な会談録の中にそのように記載されております。
○大坪委員 いまのお話を承りまして、これは田中総理の当時の御努力の結果でもあろうと思いますけれども、そういう積み重ねで、日ソ間のこの問題についての問題未解決という態度が首脳間で確認をされておる。先ほど、先輩の先生方からの御質問で、ソ連側の態度がたびたび変わるようだというようなことが出ておりましたけれども、これは外交上の交渉のテクニックとしてそのときどきに硬軟いろいろな態度が出ることは当然のことと思いますけれども、こういう確認文書が明確にある以上は、先ほど申しましたように、どうしてもこの基本線だけは国民にもよくお知らせをいただいて、コンセンサスを得た上でしっかりした基礎の上にぜひ今後とも堅持をしていただきたい。 現在、二島返還論という言い方はまずいかもしれませんけれども、妥協的に当面の状況として返せるものだけ返してもらって話を続けたらどうだという議論は、実は結果的に一番重要な問題の解決を先に延ばすような形で現状固定に時の力をかしてしまう。領土問題では、先日の参考人のお話の中にもございましたように、ジブラルタルの南端の島嶼でしたか岩礁でしたかの帰属に関して、スペインとグレートブリテンがいまだに争っているというような問題、二百八十年もかかっておるというような問題もあると聞いております。考えようによっては、これは二百八十年も三百年もかかる問題かもしれない。しかし、その問題解決の基本的態度について立場を変える、論旨を変える、出方を変えるということは最も忌避すべきことであるというふうに私は考えます。この点について重ねて外務大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
○鳩山国務大臣 政府としては、あくまで四島一括返還ということで一致しているところでございます。したがいまして、ただいまおっしゃいましたようなことも、御趣旨のとおりに考えているところでございます。
○大坪委員 それでは最後に、法律技術的な問題でちょっと私も疑点がありますのでお聞きしたいと思いますが、今回の漁業暫定協定の第一条は「ソヴィエト社会主義共和国連邦沿岸に接続する海域における生物資源の保存及び漁業の規制に関する暫定措置に関するソヴィエト社会主義共和国連邦最高会議幹部会令第六条及びソヴィエト社会主義共和国連邦政府の決定に従って定められる北西太平洋のソヴィエト社会主義共和国連邦沿岸に接続する海域」というふうに書いてございます。そして、この閣僚会議と申しますか政府の決定と申しますか、その中には「太平洋、クリール諸島南グループ海域では右諸島及び日本領土からの同等距離の線」こう書いてある。 私が心配いたしますのは、これはもちろん漁業に関する海域の指定でございますけれども、その海域の根拠となる線引きの基礎にソビエトの沿岸を特定しておる、そしてソビエトの沿岸を特定した外交文書がこれであるということにならないのか。そうすると、いままで国際法上ソビエトには根拠がなかったと言っておりますけれども、ここに外交文書上の根拠が生まれてきたのではないか。これは八条で従来の根拠を傷つけないということで大丈夫なのか、その点を確認の意味でお聞き申し上げたいと思います。
○中島政府委員 お答え申し上げます。 御指摘の点は、まさに今回の協定交渉におきます最大の焦点の一つでございまして、協定の結論になりました第八条による留保の規定なかりせば、御疑念のような問題が生じ得るということで、わが方の領土問題に対する立場を明確に留保すべく努力して、その結果として第八条ができた、こういうことでございまして、私どもといたしましては、第八条の有効な留保によりまして、先方の大臣会議決定におきます国境線というような表現とか、ソ連邦の沿岸というような表現が、額面どおり、そのとおりの意味に受け取られていないということを協定上も明確にしたというふうに考えております。
○大坪委員 そういたしますと、国際法上の領土帰属を決める条約その他はまだできておりませんし、ソビエトが、戦後の混乱に乗じてと言うと語弊があるかもしれませんが、戦後の混乱期に、いまわれわれが固有の日本の領土である、昔からも固有の日本の領土であると主張しておりますいわゆる四島に施政権を及ぼしてしまっておるという現実を踏まえまして、こういう漁業協定の線引きを、ソビエトの沿岸としてソビエトは認識しておる、それが協定文の中に書かれておる。日本の場合は、今度は逆にソ日協定をつくるときに、当然第一条に日本の漁業水域二百海里を明記しなくてはならない。日本の場合はむしろ、地域を指定してどこからどこまでが日本の沿岸であるというふうには書かないと思いますけれども、実際上交渉に当たって、そこの接点について非常に問題が出てくる可能性があると思います。その場合に、日本の二百海里法が適用になっておるということについては明確な主張をしていただきたい。その場合に、相当会議がむずかしくなってごてるかもしれませんけれども、先ほどから申し上げておりますように、基本的な問題に関係する事項でございますから、この点については、特にその問題を重々お考えの上で精密に詰めて、できることならば、双方のやりとりが後日明白になっても国民に疑念を抱かせないような論旨の展開で御処理をいただきたいと思う次第でございます。これは御質問と申すよりは私どものいわば希望ということになりますけれども、そういう点を特に御考慮の上でお願いいたしたい。 なお今後の問題として、ジャーナリズムその他で二島返還論ということがまた蒸し返されてまいるかもしれませんけれども、二島返還論というものは、実は国論を統一して対ソ交渉に当たらなければならないわが国の実態に関して、相手側であるソ連邦側から見れば、日本政府並びに日本の国内世論についてはいろいろ異論がある、国論は分裂しているという印象を植えつけるのではないだろうか、そういう点で非常に好ましくないのではないだろうか、外交交渉の権限は政府にあるわけでございますから、政府の出方をこの際積極的に結束して見守るという立場をとるべきではないか、こういうふうにわれわれは考えるわけでございますが、政府としてこの辺を再度御確認、あるいは御見解をいただきたい。それを伺って私の質問を終わりたいと思います。
○鳩山国務大臣 先ほど第一条の表現につきまして条約局長から御答弁申し上げましたけれども、この規定の表現につきましても、当初先方は二月二十四日付の閣僚会議決定ということをここに原案は書いておったわけでございます。それは私どもといたしまして、条約の文章に、特に千島関係のはっきり書いてある閣僚会議決定というものを引用することはたえられないということで、この問題につきましても相当の日数を要してソ連の国内法という意味で抽象的な表現に直したという点も申し上げたいと思います。 また、先ほどソ日協定の問題にお触れになりましたけれども、農林大臣もたびたび申されておりますように、漁業水域に関する暫定措置法にはっきりとソ連が入漁する際の水域として掲げる、こういう方針で臨むわけでございます。北方四島に対します政府の従来からの主張、これはあくまでも堅持するということで御了承賜りたいと思います。
○大坪委員 わかりました。
○竹内委員長 次に、川田正則君。
○川田委員 日ソ漁業に関する暫定協定の審議もだんだんはかどってまいりまして、予定ではきょう本会議の方に回るということになるわけでありますが、いままでの先輩の先生方の質問をずっと聞いておりまして、私なりにまだわからない点が二、三ございますので、その点についてお尋ねをしてみたいと思うわけでありますが、特に今回、私自身初めて国会の場に出させていただきまして、外交の重要性、一歩誤れば国益を損ねるという重大なことに、大変なことだなということに理解を深めたわけでありますけれども、私は一般の国民の皆さんも同じように外交に対する認識を今回深めたのではないか。ヨーロッパ大陸のように、外交即内政、内政即外交というふうな国柄とは違って、日本の国民の皆さんは、私どもを含めて外交そのものになれていなかった。そういう観点からしますと、今回の日ソ漁業交渉というものは、一つの勉強の場になったような気がするわけであります。しかし、非常に犠牲を払った勉強の場になったのではないかという気がするわけであります。 そこで、鈴木農林大臣初め関係者の方々が長い間モスクワにおかれて御努力をされたわけでありますけれども、その御労苦を無にすることなく、この段階で一つの教訓というものを生み出さなければならない時期にきているのではないか。総括という意味ではありませんけれども、この辺で、そのままずるずるとソ日交渉なりあるいは基本協定の交渉に入らないで、ここを一つの歯どめといいますか、そういうふうな教訓をしっかり胸に秘めて次の交渉に臨まなければならないのではないか、そういう気が私はするわけであります。 そこでお尋ねするわけでありますけれども、直接交渉に当たられた水産庁長官として、今回いろいろな結果が出たわけであります。漁獲量の問題にいたしましても、また釣り堀方式といわれる海域の設定の問題にしましても、あるいはまた全く皆無の状態になった魚種もあるわけでありますし、先般の参考人の御意見の中に、北洋漁業はゼロに向かって進んでいるというお話もございました。ひとしく不満というよりも、むしろ余りの厳しさに驚いている状態になったわけであります。先ほど先輩の中川先生もお尋ねになりましたけれども、こうなった背景というものを、最後にもう一度ここで整理をしておく必要があるように思いますので、大変恐縮でありますけれども、長官にその点をお尋ねしたいわけであります。
○岡安政府委員 今回の日ソの漁業協定の交渉に当たりまして、御質問の漁獲量等について申し上げれば、非常に厳しい交渉であり、結果は、われわれ交渉した者が言うのもいかがかと思いますけれども、不満足な結果であったというふうに思っております。それで水産庁として、当初非常に甘い態度でいたのではないかという御指摘もあろうかと思います。確かに私どもは、二百海里時代を迎えたわけでございますけれども、ソ連の沿岸二百海里水域におきましては、百七十万トン前後の漁獲を上げております。これも伝統的な実績といっていいほどの実績を持っているわけでございます。この確保に向かって努力をいたしたわけでございますが、鈴木農林大臣からも何遍かお答えを申し上げましたとおり、現在の二百海里時代におきましては、伝統的実績の尊重よりも、やはり余剰原則というものが前面に出てまいりまして、ソビエトも実績の尊重よりは余剰原則で、むしろ日本には余剰として分与すべきものはないんだけれども、日ソ友好の立場からあえて日本の漁船の操業を認めるのだというような態度でございます。したがって、二十年来ソビエトとの間で日ソ漁業条約に基づくサケ・マス、ニシン等につきましての交渉を毎年やってまいりましたけれども、これは主として資源論争から始まり、その結果お互いに日ソ両国どういうふうに操業するかという交渉、これはいわば公海の話ではございましたけれども、そういう順序で交渉してまいりましたけれども、今回は資源論争というものはほとんどそれに当てられる時間がなくて、いわばクォータをどうするかという具体的な話に終始したこと、私どもは非常に厳しい現実を経験いたしたわけでございます。今後におきましてもこのような情勢というものは変わらないだろう、したがって厳しく受けとめなければならないというふうには考えておりますが、今回のソ連側が提示し、私どもも甘受せざるを得なかった漁業の海域の制限その他につきましては、私どもなおソ連側に対しまして説得の余地が若干あるというふうに考えております。特に五十度以北につきましてはカニ、ツブを除きまして全く日本船の操業を認められなくなったわけでございますけれども、来るべき基本協定交渉等におきましては、わが国の立場並びに資源状態等をるる申し述べまして、できるだけ五十度以北につきましても日本漁船の操業が認められるように、これは努力をいたしたいというふうに思っております。
○川田委員 専門的なお立場での背景といいますか、そういうことは理解ができたわけでありますけれども、そのほかに私がお尋ねをいたしたいのは、専門的な魚関係以外の問題で、たとえばいままで先輩の先生方から話に出ておりましたいろいろな問題がありますし、また、新聞紙上あるいは評論家などの記事を読みましても、そのほかにいろいろな背景があるようなことが出ております。たとえば先ほども話に出ましたミグの問題でありますとか、ソ連とECの問題でありますとか、あるいは中国の問題あるいはまた安保条約の問題、ソ連の外交のあり方、ソ連の国民性、いろいろなことがいま言われておりますけれども、そういうことがやはり今回の交渉の背景にあったと長官はお考えになりますでしょうか。
○岡安政府委員 先ほども申し上げたと思いますけれども、今回の協定交渉は、主として代表団以外の交渉は鈴木農林大臣とイシコフ漁業大臣、いわば漁業の担当大臣間のお話でございましたので、その交渉の過程におきまして先生御指摘のようなものが具体的に出たということはないわけでございます。しかし、これも御承知のとおり、八十日にも及ぶような交渉におきまして主として問題になりましたのは、確かに漁業交渉とは言いながら、領土絡みの問題に九〇%以上時間を費やさざるを得なかったということ、やはりその間におきまして、日ソ両国がこれをどう処理するかということ、これは両大臣はもとより、やはり日ソ両国の基本的な立場におきまして折衝が重ねられたというふうに考えております。 ミグ等の問題につきましては、交渉の場においては全く話は出なかったわけでございますけれども、私どもが承っておる限りにおきましては、超党派の議員団が訪ソされましてソ連の首脳部と会談をされた際には、ソ連の首脳部の方からそういう問題の指摘もあったやに伺っておりますし、それらの問題が影響あったかなかったか、これはなかなかむずかしい問題だと思いますけれども、私どもはともかくも、今後控えておりますソ日の協定、それから基本協定を通じまして、これは漁業交渉であるという立場をぜひ貫きたい。漁業問題に関する限り、イシコフ漁業大臣も日ソ友好のかけ橋は漁業問題が中心になるんだという認識でいこうということをしばしば言っておられますので、今後はそういうことを中心にいたしまして、ぜひ日ソ間におきまして漁業関係が今後も円滑に進み得るように努力はいたしたいというふうに思っております。
○川田委員 その辺に外交のむずかしさというものがあるだろうと思うわけでありますけれども、いまそのことをお聞きいたしましたのは、先般北転船の方々、沖合い底びきの方々、サケ・マス関係の方々が多数お見えになりまして、いろいろ陳情があったわけでありますが、それらの方々が異口同音に申されますのには、今回このような非常に不満な結果になった原因というのは、挙げてミグの問題にあるのだ、なぜ政府はわれわれがこういったことになるということを予測しないでああいう措置をしたのか、頭からそのように考えているわけであります。ある先生が、それはそうでないよというふうにお話をしたわけでありますけれども、てんでそのことは受け付けない。もちろん大変な状態になっている折でありますから、感情的になっていたのかもしれませんけれども、とにかく漁業関係者の一部には、直接的な原因というのがミグにあるのだということが念頭から離れないようでございます。私は決してこのままにしていいとは思えませんし、そのこと自体は誤りでないのかもしれませんけれども、やはり偏った見解を持つということは私は一種の危険な状態になるのではないかという気がするので、お尋ねをしたわけでありますが、こういった漁業関係者に対して、水産庁として何か的確ないままでの情報をお話ししていなかったのか、あるいはこれから、やはりそういうふうな特定の原因があったからこうなったということに対して、」私は水産庁として漁業関係者に話をしておくべきではないかという気がするわけでありますが、この点についてはいかがでございますでしょうか。
○鳩山国務大臣 川田さん水産庁長官にお尋ねでございますけれども、ミグの事件というものは水産庁にお尋ねになりましても無理ではないかと思いますので……。私、昨日も申し上げたのでございますが、昨年ミグ事件というのは本当に天から降ってきた災難であったわけであります。そしてこの事件がいろいろ日ソ両国の間に感情的なわだかまりを生じたのではないかということも容易に想像がつくことでございます。しかし、今回の漁業交渉が非常に長引きました、それは二百海里時代に突入をしたということで、二百海里時代というもの、二百海里制度というものがこれはある意味でやはり領土問題に対して大変な紛争の種をまくものである、そういうような指摘はすでに大分前から行われておったわけでございますし、また、一つの少なくとも人が住めるような島がどちらの領有に属するかということによりまして、その周囲二百海里という効果を及ぼすことになりますから、それにつきましても、海洋法会議におきましてもその紛争の処理というような問題が非常に大きな問題になるわけでございます。そのような問題が現実の問題として、昨年の十二月の十日のソ連の最高会議幹部会令によりまして、国内法によりまして二百海里を施行するということ自体が、これは大変な問題であったということでございまして、イシコフ、鈴木両大臣間のこれは初めての問題に対処をされたわけでございます。そういう意味で、日ソ両国にとりましてミグ事件というものはお互いに不幸な事件であって、これは早く忘れたいということを昨日も申し上げたとおりでございまして、いまその事件にお互いにこだわるということはよくないことであると思いますので、漁業者の方々に対しましては、ミグ事件はどうか忘れていただくように御指導のほどお願いをいたしたいのでございます。 今回の問題は、やはり領土の問題が根底にあったがためにこのように長期化したというふうに、私どもも率直にそう考えておりますし、それが事実である、こう思うわけであります。
○川田委員 先般、北海道の最北端の漁業の町であります稚内に参りました。従来、稚内は漁業の町で、その町へ一歩入りますと魚のにおいがぷんとくるわけでありますけれども、今回伺いましたときには魚のにおいが全く消えてしまっているわけであります。地元の市長のお話を伺いますと、従来は岸壁に打ち上げられた魚の切れ端にカラスが群がっておりまして、稚内はカラスが非常に多い町だと言われていたのが、いまは一羽のカラスの姿さえなくなってしまいまして、カラスにまで見放された町になってしまったと嘆いておられるわけでありますが、昨日の連合審査会の席で岡田先生から質問があり、魚関係に限らず、関連企業に対する措置についてお尋ねがあったわけでありますけれども、全く昨日の岡田先生の御質問どおりでありまして、私は役所側の実態の認識が甘いのではないかという気がしてなりません。きのうの御答弁を、大蔵省初めいろいろなところから答弁をされておりましたけれども、関連企業というのは魚があって初めて企業が成り立っている業種でありまして、一様に全国的なベースでそれを取り扱うということについては、私は非常に疑問を持っているわけでありますが、このことにつきましてはきのう御答弁をいただきましたので結構でありますけれども、さて、これからソ日交渉、長期協定の交渉に入るわけでありますけれども、一番被害を受けている北転船、沖合い底びきの方々は、近く行われるであろうソ日協定の中である程度期待感を抱いているような話の口端が見受けられるわけであります。やはり業界の方々は、現在の心境としてはわらをもつかみたい気持ちでありましょうから、私は当然のこととは思いますけれども、またここで期待を抱かせて、これからの再編成の問題あるいは補償、救済の問題など絡んで非常に不安を感じ、あるいはもどかしさを感じているのがいま業界の実態でありますだけに、一つ一つのお言葉の中に期待感を抱かせないように、それが期待につながれば私は非常に結構だと思いますけれども、何かそこの辺にもやもやしているものがあることは、私は実態だと思うわけであります。この辺について長官から御答弁をいただきたいわけでありますが、これからの交渉だからどうなるかわからないということは十分承知をしておりますけれども、その辺すっきりされると私どももちょっと困るわけでありますけれども、長官の御答弁をお願いしたいわけであります。
○岡安政府委員 これからの問題で、わからない点はあります。具体的に申し上げれば、北転船百五十四隻でございまして、私どもはこの百五十四隻の北転船がアメリカの二百海里内において、それから今回決まりましたソビエトの二百海里内において、どれだけ操業ができ得るかということをまず詰めなければならないというふうに思います。 それから、将来の問題といたしまして、非常に厳しいものではございますが、アメリカの二百海里内におきますクォータも、来年の分につきましてはこれから交渉をするわけでございますし、それからソビエトの二百海里におきます来年のクォータは、ソ日の交渉では無理と思いますけれども、基本協定の交渉においてこれから相談をされるわけでございます。したがって、それらがどうなるかという点は確かに現在直ちに言明するわけにはいかない部分がございますけれども、これは毎度申し上げておりますように、アメリカもやはり余剰原則を盾にしてクォータをわれわれに与えているわけでもございますし、ソ連ももとよりでございます。したがって、来年、現在のクォータが大幅に改善されると考えることは、これはあくまで非現実的なものであろうというふうに思います。私どももできるだけの努力はいたしたいと思います。努力の結果、どれだけ漁獲量が増大をされ、その結果、操業できる船がふえるかということは未定ではございますが、そんなに過大の期待を抱くことも非現実的である。 そこで、これらの点につきましては、十分業界ともお打ち合わせをいたしながら、未定の点は未定の点にいたしますけれども、やはりこの際、北転船につきまして将来の問題、たとえば諸外国の二百海里以外の新しい漁場に進出するなら進出するような相談もいたしたいと思いますし、また、調査船、監視船等に転用の御相談があればそのような御相談もいたしたい。いわば、私どもは現実の上に立ちまして、北転船の将来につきましては十分業界の方々とお打ち合わせをいたしたい、かように考えておるわけでございます。
○川田委員 それでは外務大臣にお伺いをいたしたいと思いますが、今回の日ソ漁業の問題について、国内の世論が非常に統一をされたということが言われております。また福田総理も、ある席で、日本人を見直したかのごときお言葉があったわけでありますけれども、この世論というものが外交に占めるウエートといいますか、どの程度であると外務大臣はお考えになりますでしょうか。
○鳩山国務大臣 今回の日ソ漁業交渉の経過を顧みましても、国会におかれましては超党派の議員団を訪ソさせていただいたということ、また、特に漁業者の方々が、とにかく領土を守ってもらいたい、このような強い意思を表明されたこと、これらにつきましては、本当にもう心から感謝をいたしているところでございます。政府といたしまして、この出漁がおくれる、なかなか問題が解決しないために漁業者の方々が大変な苦難を強いられたこと、これらにつきましては万全の措置を講ずる、そういう態度を早く決めたわけでございます。これらにつきまして、このようなことはいまだかつてなかったことであるというふうに考えて、福田総理も大変感激をされておったわけであります。私どもも、そのような国民的なバックがあってこそ外交ができる、こう思うわけでございまして、今回の交渉は本当にいろいろな面で大変勉強になったことと思っております。私どもといたしまして、やはり国民のすべての方々がこの北方の領土問題につきまして大変強い関心を示されたこと、これは今後の最大の未解決の問題といたしまして領土問題に取り組む場合に大きな勇気を得たという感がいたすわけでございまして、関係の皆様方に心から厚く御礼を申し上げるところでございます。
○川田委員 世論の統一といいますか、世論が外交上に占めるウエートというのは非常に大きな役割りを果たしているということはわかったわけでありますが、私は、今回のこの世論の統一の陰に泣いておられる方々がいるということを忘れないようにしていただきたいと思うわけであります。決して私は、国内全部がもろ手を挙げて統一された世論のもとに行動を起こしているとは思えません。泣いている漁業者があり、関連企業者があるということをこの際やはり肝に銘じておいていただきたいと思うわけでありますが、国内のこれからのいろいろな補償問題あるいは救済問題あるいは再編成の問題、それらに本当に心の込もった措置がなされない限り、国内対策が十分でない限り、私はこの世論というのはいつまでも続くものではないような感じがするわけであります。このことをまず関係当局に御要望申し上げたいわけであります。 さてそこで最後に、今回の領土問題にいたしましても、それだけ外交上世論というものが大切であるならば、国際世論についていままで領土問題についてどのような世論喚起をされていたのか。国際世論のあり方というものがこれから一つの外交技術上の非常に大きな戦略といいますか、大切なものになってくると私は思うわけでありますが、この国際世論の喚起ということについて、外務大臣の御意見をお伺いしたいと思うわけであります。
○鳩山国務大臣 ただいま御指摘になりました特にわが国の最大の悲願であります北方四島の問題、これは広く国際世論に訴えるべき問題である、このように考えております。御指摘のように今後ともその点につきましては努力をいたしたいと思います。
○川田委員 時間が参りましたので終わりにいたしますが、いまお話のございました世論の重要性というものにつきましては、本当にいろいろな積み重ねがあって世論というものが形成されると思いますけれども、私はここでまたそれをひっくり返しまして、世論にのみこだわっている外交のあり方というものについてはまた危険感を覚えるわけであります。一部の声の大きい人の意見がそのまま外交の政策決定に大きなウエートを占めるということがあってはこれはまた大変なことでありますし、外交政策の決定というのは、やはり一貫して一定の方が継続的にやらなければならないと思うわけであります。いろいろむずかしい外交の場を外務大臣はこれから迎えられると思いますけれども、とにかく御自分の決意を持って断固たる決意でこれからのむずかしい外交に臨んでいただきたい。私ども全面的に外務大臣の支援をするということにはやぶさかでございませんので、大いにがんばっていただきたい。このことを申し上げまして質問を終わります。ありがとうございました。
○竹内委員長 ちょっと速記をとめてください。 〔速記中止〕
○竹内委員長 速記を起こして。 この際、外務大臣から発言を求められておりますのでこれを許します。鳩山外務大臣。
○鳩山国務大臣 六月四日当委員会における日ソ漁業協定の質疑の際、渡部一郎委員より北方領土周辺のわが国の領海に関する御質問があり、これに対し政府の考え方を御説明した次第であります。渡部委員よりなお御指摘のあった点をも勘案し、本日は改めて本件に関する考え方を取りまとめ御説明いたします。 国際法上領海とは領土に付随するものであり、したがってわが国の固有の領土たる北方四島の周辺にも、わが国の領海が存在しているわけであります。ただ、現実の問題として、北方四島周辺のわが国領海に対しては、ソ連が事実上施政を行っており、このことを単なる事実として認識することは、ソ連の施政権を承認することを意味するものではありません。わが国は、わが国固有の領土である北方四島周辺の領海についても他の領海と同様に施政権を有しているのであります。したがって、わが国の領海の中に、その法的性格の上から、わが国が施政権を有する領海とそうでない領海の二種類の領海が存在するというようなことは全くあり得ないのであります。 また、今次日ソ漁業協定交渉におきましては、ソ連による北方四島及びその周辺の領海における施政の法的根拠を認めるものでは全くないことを協定第八条により明確にした上で、北方四島周辺水域を含むソ連の漁業水域におけるわが方漁船の操業の手続及び条件を定めた次第でございます。したがって、今次協定は、ソ連の北方四島占拠はその法的根拠を有するものではないという意味で不法な占拠であるという政府の従来の見解を何ら変更せしめるものではないのであります。 以上でございます。
○竹内委員長 質疑を続行いたします。渡部一郎君。
○渡部(一)委員 北方四島周辺のわが国領海及び二百海里漁業専管水域、予定されている二百海里漁業専管水域の設定については、国際法上多くの難点のある問題でありまして、私はこの問題について先ごろからかなり詳細な御質問をいたしたわけでございます。ただいまの統一見解をいただきまして政府側の御意見はこうした形で確定されたものと思いますので、もう一回改めて確認をいたすわけでありますが、領海の中で施政の及んでいる領海と施政の及んでいない領海が存在するという点についてはお認めになりますか。
○鳩山国務大臣 現実に北方四島周辺におきましてはわが国の施政が及んでおらないということは、まことに遺憾ながら認めざるを得ないのでございます。
○渡部(一)委員 施政の及んでいない水域においてわが国側の施政権に基づくさまざまな権利を本協定においては一方的に破棄せしめられ、これを条約上確定して受け入れられたということはいかがなものかと存じますが、どういう御見解でありますか。
○中島政府委員 今回の協定におきましては、第八条におきますところのわが方の留保が有効に働いておりますので、北方四島周辺の領海におけるわが方の施政権が害されることがないということになっているわけでございます。
○渡部(一)委員 本日の朝日新聞におきまして、ブレジネフソ連共産党書記長が朝日新聞の質問に対し文書で回答したものが掲載されているところでありますが、その中に日本との関係の部分で、領土問題につきソビエト側は「未解決の領土問題があるという解釈は一方的で不正確である。」と述べております。すなわち 一九七三年十月十日のソ日共同声明には、平和条約締結交渉を続けることが明記されている。もし日本側が故意に、受け入れがたい条件を持ち出さなければ、ソ連は両国にとって重要なこの問題をやりとげる用意がある。日本側が第二次大戦後の現実に真剣に対処すれば、この問題は解決できるし、また早く解決できるであろう。 平和条約には通常、国境線の問題を含めて広範囲にわたる問題が含まれていることは、わかりきったことである。このことは、ソ日平和条約でも、例外ではない。両国間の関係に何か“未解決の領土問題”があるという解釈は一方的で不正確である。 私たちの立場は、日本の指導者たちとの交渉で、繰り返し説明しており、よく知られている。 私たちが正しく理解しているとするならば、日本はまだ、平和条約を結ぶ用意はないだろう。そのことを考慮し、私たちは平和条約交渉は続けながらも、意見を交換し、善隣協力条約を結ぶよう提案した。この善隣協力条約は協定のゆるぎない基盤ができるほどまでに成熟した両国関係の分野を含むものになるだろう。これによって不信の残りかすは取り除かれ、あらゆる分野での相互協力が頼もしく発展するという急激な転換がもたらされるだろう。 と述べております。 長文にわたって読み上げたので恐縮でございますが、こうしたソビエト側の見解に対して、どういうふうにわが方は考えておられるか、その辺からお伺いしたいと存じます。
○鳩山国務大臣 本日の朝日新聞の記事におきまして、ブレジネフ書記長の談話が載っておるわけでございます。その談話の内容は、私どもは従来のソビエト側の主張がそのまま掲載されておるというふうに読んだわけでございまして、一方的であるというような記述がございます。ソ連側の主張と日本側の主張とは、その点が従来から対立しておるわけでございまして、お互いに両方の主張はまさに対立しておるのでございまして、平和条約が解決するまでは、そのような表現をお互いにせざるを得ないのではないかというふうに思うのでございます。
○渡部(一)委員 この中におきまして、まず詰めてかかりたいと思うのでありますが、用語上の相違もあるのではないかと私は思います。田中・ブレジネフ両者の間において行われました共同声明の文案におきましては、たくさんの誤訳が存在し、言葉の上で問題があったことは知られているとおりでありまして、私は本委員会で四十三カ所の誤訳があるということを指摘した経緯がございますが、この「問題」、向こうの言う「問題」は、未解決の領土問題、解決されるべき懸案事項があるという意味で使っている場合と、調整を要する問題があるという意味で使っている場合と、用語が、先方の「問題」という言葉は二通りに全く分けられております。あのときの共同声明の中では明らかに問題が二つある。「問題が」という言葉は二様に使い分けられております。ロシア文の方を見ますと。そうして、この領土問題について両国間には懸案事項がある、懸案の問題がある、その問題については、単に日本語の方で言うならば、テーマであるというような意味合いの軽い言葉が使われておりまして、重要な重たい意味合いの領土問題を含むという言葉が使われていなかったのではないか。明らかに先方のニュアンスは、両者に意見の食い違いのあるものはある、しかし、解決しようという、解決しなければならない重要な事項だというニュアンスはなかったのではないか。そこに問題の一つの始まりがあるのではないかと思われるわけであります。そのことは専門の方々がおられますから、もう十分御検討いただいていると思いますけれども、私たちの立場において、これは未解決の領土問題というふうに翻訳されていること自体が一つ——未解決という言葉でなくて、先方の言葉は、アジャストするぐらいの程度の言葉が使われているわけでありますから、こうした文章の言葉じりで、領土問題が解決していない問題として、解決すべき問題として存在しているのだというふうには言いかねるのではないかと私は考えているわけであります。 そこで、先方が一方的であると述べている論拠は、わが方としてどういうふうに認識されておるか、その一方的であるという言葉はどこから出てくるのか、領土問題に対するこっちの考え方はどこから出てくるのか、そしてわが方の主張はそれに対してどういうものかというふうに二つをたて分けなければならないと思いますので、領土問題に関する日本側の主張が一方的であるというソビエト側の立場はどういうところから出てくるか、御説明をいただきたい、その御認識を伺いたいと思います。
○宮澤政府委員 ソ連側が一方的であると主張しております根拠は私どもの理解しがたいところでございます。私どもは、このような問題を主張いたしますときに、双方が正式に合意した文書をもとにして申しておるわけでございまして、そのもとになっております合意した文書は、一九五六年の日ソ共同宣言及びその裏打ちをしております同年の松本・グロムイコ書簡でございまして、ただいま言及なされました、田中総理大臣が訪ソの際にできました日ソ共同声明は、このような日ソ間の国交回復の際の基本的な合意文書の内容を確認するためにつくられたものでございます。
○渡部(一)委員 欧亜局長に、私、遺憾ながら申し上げておかなければなりませんが、あなたは、国会におきまして御説明をなさいました際、田中・ブレジネフの議事録がある、議事録には領土問題が含まれているということを示しているのだと説明をされました。私は、あれは余り、穏当を欠く発言だと実は思っております。なぜかと言えば、合意議事録でない、両方のイニシアルもついていないこちら側の一方的な議事録で、正式に協定された文書でないものでそうしたことを主張すれば、後々きわめて奇妙なことになると思うのですが、その点はどうお考えですか。
○宮澤政府委員 この共同声明に私が言及いたしました際、これは私どもが、日本側が領土問題を未解決の問題と主張する最近の根拠の一つとして言及いたしたものでございまして、この日ソ共同声明は日ソ双方の責任者が署名をしたものでございますから合意議事録で、これはこれなりにきちんとした法的な意味を、ある程度の重要性を持つものと考えております。 それから、私が申しました会談録、これはただいま御指摘のとおり、双方で合意したものでございませんが、当時会談に立ち会いました日本側の者が克明に記録いたしました会談録でございますから、それなりに解釈の根拠となり得るものと思っております。
○渡部(一)委員 もしそれをあなたがおっしゃるのでしたら、その交渉が行われていた当時、わが当外務委員会の理事に対して政府側が直接御説明のあった際、領土問題については二回交渉を行った、三回目を持ち出した際に先方側から断わられて、とうとうその問題を引っ込めたといういきさつが私たちに対しては行われました。そうしたことを考えますと、あなたのあの御説明は、不適切かつ引用が不穏当であったと私は思います。ですから、私は、あなたが先ほどおっしゃいましたように、共同宣言並びに松本・グロムイコ、あるいは田中・ブレジネフの共同声明その本文、それについて論拠を組み立てられるというならそれはわかります。そうでない妙なものを持ち出して交渉すれば、日本政府の立場はかえって愚かなことになるのじゃないですかと私は申し上げているのです。
○宮澤政府委員 この共同声明には本文の中に「第二次大戦の時からの未解決の諸問題を解決して平和条約を締結することが、」云々とございまして、この文書をつくりますときに、当時の田中首相と先方のブレジネフ書記長との間に、この文書をつくる際に口頭でそのような確認が行われた、その証拠として外務省の記録がありますということを申し上げたわけでございます。
○渡部(一)委員 協定交渉が終わった後にそうしたものが存在すると主張をしても、それは公的なものでない以上は私はナンセンスだと思います。というのは、先方がそうした話し合いのあったことを後に認めていないからであります。協定というものが行われたときには、協定本文で後に勝負しなければならない。言うまでもないことですね。ところがあなたはそのルールを踏み外された。それは欧亜局長になられた直後だから無理はないと思うけれども、それは不穏当なことです。秀才の名を恥ずかしめるものです。ですから私はこういう席上で公式に申し上げているのです。協定のこの日本側の領土問題に関する立場を組み立てるならば、その組み立てをするためには協定本文で組み立てていかなければならない。その後の両国政府の立場を、法律的に交渉の土台をつくるあなた方が、そういうところを踏み外されてはもってのほかであると私は申し上げているのです。その点は十分今後御注意いただきたい。
○宮澤政府委員 私が外務省の記録に言及いたしましたのは、そのことを説明する何かの資料があるかという御質問に答えたのでございまして、それを根拠にしてソ連に対して領土の返還を要求するという意味で申し上げたものではございません。
○渡部(一)委員 条約局長にお伺いしますが、ソビエトと日本との関係の中において未解決の諸問題が存在するということを田中・ブレジネフ共同声明を引用して常に言われているわけであります。その未解決の諸問題という内容は、わが方の立場では何と何と何を指すのか、先方の立場においては何と何と何を指すのか、それはどうお考えか言っていただきたい。
○中島政府委員 先生は二点をお尋ねになりましたが、まず第二点からお答えさせていただきますと、先方から見て未解決の問題として何があると考えているかという点につきましては、私は、率直に申し上げまして存じておりません。 第一点の日本側として未解決の問題としては何があるかという御質問に対しましては、これは何よりも領土問題があるというふうに考えているものでございます。その最大の理由は、先生御承知のように、一九五六年の日ソ国交正常化交渉におきまして話し合いの解決がつかなかったのは、何よりも領土問題であります。しかるがゆえに日ソ共同宣言という形で交渉をまとめたわけでございまして、領土問題の解決を行うことが平和条約の締結交渉になるというのが爾来わが方の立場でございます。そういう意味におきまして、未解決の問題というのは何よりも増して領土問題であるというふうに考えております。
○渡部(一)委員 この問題はもう少し詰めて申し上げたいと思っているわけでありますが、日ソ間の共同宣言は、その当初の共同宣言において、明らかに領土問題以外のことごとくの戦後処理というものがこの条約の条文の案文から見ますと行われているということが言えると思います。しかも、その後の松本・グロムイコ書簡によってその点は補強され、平和条約成立の後に領土に関する取り決めというものが二島返還という形で明示されているという点で、領土条項までまさに押さえているような部分まで付属文書で含んでいるということであります。したがって、この名称は明らかに日ソ平和条約である。交渉の経緯を見ても先方は日ソ平和条約案としてこれを日本側に提示しておった。最後の土壇場になって、日本側が平和条約ということではこの二島返還というものはとても持ちがたいというので、国内的事情を言い立ててこれを共同宣言にしたいきさつは外務省文書に明らかにあります。 そうしますと、いまの御論拠というものは、領土問題が解決してないというこうした論拠を組み立てるためには、いささか薄弱ではないのか。私は、その辺がソビエト側と交渉するときに、いかにも貧弱かつ条約的に言って緩い、弱い議論になっているのではないかと思われる節があるので、御見識を伺っているわけであります。いかがお考えですか。
○中島政府委員 一点、先生、いま松本・グロムイコが日ソ共同宣言の後とおっしゃられましたが、これはその前でございます。 それからいま本論の問題でございますが、先生、これもいまさら私から御説明申し上げるまでもなく、一九五六年の日ソ交渉というものは日ソ平和条約締結の交渉であったわけでございます。それが長日月にわたりまして交渉を行いましたが、ついに領土問題についての妥結を見るに至らなかった。そこで平和条約交渉というものを日ソの共同宣言をまとめるという形で一たんまとめまして、平和条約の交渉はその後に続ける、そしてそこで領土問題の解決を期するということになったのは、これはソ連も否定することのできない事実関係でございます。しかるがゆえに日ソ共同宣言の第九項において「両国間に正常な外交関係が回復された後、平和条約の締結に関する交渉を継続することに同意する。」という規定が設けられたわけでございまして、この点はソ連側といえども反論することはできない事実であろうというふうに考えております。
○渡部(一)委員 時間がありませんからきょうはこれぐらいにしておきますが、私も対ソ交渉の領土問題に対する国民的な渇望を持ち合わせている一人でありますが、この交渉に対するわが方の立場は、条約論的に言いましても、あるいは政治論的に言いましても多くの問題点を含んでおりますし、国民的な大きな強い願望のある現在、これを整足し、明快ならしめることが必要だと私は思っているわけであります。その立場からきょうは幕あけをいたしたわけでありまして、この次、またじっくりいろいろとお伺いをさしていただきたいと存じまして、本日は終わりにしたいと思います。
○竹内委員長 午後二時三十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。 午後一時二十九分休憩 ————◇————— 午後二時三十五分開議
○竹内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 ただいまより総理大臣に対する質疑を行いますが、質疑者各位は、理事会で申し合わせいたしました持ち時間を厳守されますよう、あらかじめお願いを申し上げます。 質疑を続行いたします。土井たか子君。
○土井委員 福田総理は、先日の本会議におきまして、日ソ間においては領土問題を解決して平和条約を結ぶということで、対ソ関係の総仕上げをしたいという趣旨の御答弁をされました。総理とされては、領土問題は未解決というふうな御認識でいらっしゃるわけでございますか。
○福田内閣総理大臣 さようでございます。
○土井委員 そこで、このたび石田労働大臣が訪ソをされるに当たりまして、一体総理は何を御指示なすったのか、この点が一つはお伺いしたい点であります。 かねてより石田労働大臣につきましては、当初、歯舞、色丹、この二島の返還という問題に臨んで、あとの国後、択捉という二島については共同管理方式あるいはまた今世紀は凍結させるというふうな方式を考えていってはどうかという、そういう御見解をお持ちであるということを私たちもうかがい知っておりますが、そういう観点からいたしまして、今回の石田労働大臣の訪ソに当たっての総理大臣からの何らかの御指示、この問題についてひとつお伺いをしたいわけであります。いかがでございますか。
○福田内閣総理大臣 石田労働大臣につきましては、ジュネーブにおけるILOの会議に出席をする、その帰りの際に、かねて日ソ友好議員連盟の会長としての石田氏に対し、訪ソせぬかというお誘いも受けておるので、立ち寄ってまいりたい、こういうことで、それは大変結構ではありませんかと私は賛成しておるわけでありますが、その際に特定の問題につきましてこういうふうに話をしてもらいたいというようなことは、私の方からは積極的にはお願いは申しておりません。まして、いま歯舞、色丹二島だけで領土問題は解決、その他の国後、択捉につきましてはたな上げだというような、そんなような話、これは石田労働大臣が私はするというふうには考えませんし、私どもそんなことは毛頭考えておりません。どこまでも一括四島返還、これがわが国の不動の方針である、こういうふうに考えていただきたいと思います。
○土井委員 それならば、その四島一括返還という不動の政府としてのお立場でもって、石田労働大臣に対しても、ソビエトに向かわれる節はその立場でひとつ事に臨まれるようにというふうな御指示なり、総理大臣からの何らかのそういう点でのあらましの御指示というものがあったかどうか、これはいかがでありますか。
○福田内閣総理大臣 話が出れば、当然石田労働大臣としては、わが国の不動の方針を踏まえて対応するというふうに確信をいたしております。領土問題が出たらそのような話をする、これは疑いを持ちませんものですから、特にその辺は心得てやれよというような指図はしておりませんけれども、これは政府の不動の態度につきまして、石田労働大臣が違った行動をとるなんということはあり得ざることであります。
○土井委員 それは総理大臣の御感想でございまして、私お尋ねしているのは、そういう意味での具体的な御指示をなすったかどうかということをお伺いしているわけで、その点は一切不要であるというふうにお考えになっていらっしゃるのかどうか、いまの御見解を伺った限りではもう一つはっきりいたしません。どういうぐあいでございますか。
○福田内閣総理大臣 私は、石田労働大臣に対して、モスクワへ立ち寄りますというのを了承する際に、領土交渉をひとつしてきてくださいということはお願いはしておりません。ですから、この問題で話が私は両国政府間の問題として出るというふうには思いませんが、もし万一、雑談だ何だというような際にそういう問題が提起されるというようなことがありましても、石田労働大臣がこの不動の方針にそぐわない態度をとるということはあり得ざることである、そういうふうに確信をいたしております。
○土井委員 総理大臣はけさの朝日新聞をお読みになったと思います。お読みになりましたでしょうね。けさの朝日には、朝日新聞の方からの質問に対しましてブレジネフ書記長の方からの回答書が寄せられた内容がここに掲載をされているわけでございますが、この回答書の内容の一部分に、平和条約についての交渉は続けながら善隣協力条約ということを結ぶよう提案をされている部面がございます。この善隣協力条約というものを結ぶ提案に対しまして、総理大臣はどのようにこれに対しての対応策、あるいは対応策が具体的にいまなければ、総理としての御見解をお持ちになっていらっしゃるかお尋ねします。
○福田内閣総理大臣 前からソビエト側から、平和条約が領土問題でむずかしい、こういうのであれば、それは領土問題は領土問題としておいて善隣条約を結んだらどうかというような声が聞こえてくるのでありますが、しかし私は、結局日ソ間の問題というのは北方四島の帰属を一体どういうふうにするかという問題の一点だけになっている、こういうふうに思うのです。この問題が解決されないままに善隣というような条約あるいは共同宣言、そういうことをいたしましても、全く形骸的なものであり、意味のないことである、そういうふうに思いますので、この問題の処理に当たりましては、何としても領土問題を解決する、この一点に的をしぼって対ソ外交は進めていきたい、こういうふうに考えております。
○土井委員 いまの総理のような御見解でございますと、平和条約の交渉は、それはそれとして打ち切ることなく続けながら、いまの善隣協力条約というものをそれに対して先行させていくというこの提案に対して、消極的にこれを受けとめていらっしゃるというふうに理解をさせていただいていいわけでありますか、いかがでありますか。
○福田内閣総理大臣 この領土問題が片づかないで善隣条約であるというようなことになると、領土問題に対するわが国の主張がぼけてしまうような感じがするわけでありますよ。私は、ソビエト連邦との間のわが国の関係、これはもう全面的に見まして、全局的に見ましていろいろ利害関係を同じくする問題もありますので、スムーズに動いておる、こういうふうに思うのでありますが、この領土問題だけが日ソ間の一つの大きな障害になっておる、そういうふうにとらえておるのでありまして、この問題、私どもは非常に大事に思っておるのです。そういう際に善隣条約ができましたというようなことになりますと、この領土についてのわが国の主張が何かかすむというか、たな上げというか、横に置かれたというような形になるおそれがあるのじゃないか、こういうような感じがしてならないのでありまして、とにかくこの領土問題を片づける、これが日ソ間の外交案件としては最大にして唯一の問題である、こういうふうに考えております。
○土井委員 日ソ交渉の核心は領土問題であるということをただいまも総理はお答えになっているわけでありますが、その領土問題と今回の日ソ漁業暫定協定は、お魚の問題を切り離してみごとに成功させた協定の内容を持っているというふうに、先日の本会議でも総理は御答弁になっているわけであります。 ところで、私の方にこのお手紙、おはがきいただく中に、お年を召した方から、先日の本会議が終わってしばらくの時間がたって部屋に帰ってみますと、一通の手紙が寄せられておりまして、それには、漁業問題に関する限り最初から日本はソ連から翻弄されてきた。日ソの漁業問題決して満足とは申すことはできません。いろいろ鈴木農林大臣には本当に御苦労の連続であったと思いますが、現地の漁民を思うとき、涙なくしてはおられません。漁民にとっては善幸ではなく不幸でございますと、こう書いてあるわけであります。こういうお手紙を実は私はいただいたわけでありますが、総理大臣とされては、今回のこの日ソ漁業暫定協定に対しましてもし点数をおつけになるとすると、何点くらいをおつけになりますか。
○福田内閣総理大臣 私は、領土問題、この部面における今回の交渉は、わが国の主張がとにかく完全に通っているという意味において満足をいたしておるわけです。もう一つのこの交渉の焦点であった漁獲量の問題、これは私は満足というふうには思っておりません。おりませんが、鈴木農林大臣が現地において大変苦労された、その苦労された精いっぱいの成果があそこであった、こういう認識を持っておるのであります。そういうことで、点数何点なんというわけにはまいりませんけれども、領土問題においては私は満足しておる、それから漁獲量の点につきましては精いっぱいのところであった、そういう認識を持っておるということをもってお答えにかえさせていただきます。
○土井委員 日ソ暫定協定とソ日暫定協定というのは表裏一体というふうな認識を総理は先日来お持ちになっているということをうかがい知っているわけでありますが、そのとおりでありますか。表裏一体というふうに御認識になっていらっしゃいますか。
○福田内閣総理大臣 日ソの方は、これはわが国がソビエトの水域における漁獲の態様を決めたものである、またソ日の方は、これはソビエト側がわが国の水域において操業するその態様を決める、こういうものでありますので、日ソ、ソ日両暫定協定は裏返しの関係にあると申しても差し支えないかと、かように考えます。
○土井委員 裏返しの関係にあるというふうに理解をしても差し支えないというふうな御答弁は、つまり端的に言うと表裏一体というふうに考えても差し支えないということであろうと思いますが、そのとおりでございますね。 それならば、この北方領土の問題は未解決というわが国のこの認識からいたしますと、今回これからいよいよ問題になりますソ日協定、これが問題になってまいります。ソ日協定の中で当然ながらこの北方水域に対しまして、日本の漁業水域に関する暫定措置法にいう例の二百海里の線引きは、わが国の立場で、この協定の内容として明記されるべきであるというふうに私は考えておりますが、いかがでございますか。
○福田内閣総理大臣 もう暫定措置法は成立をいたしておるわけです。この暫定措置法では、わが国の領土、領域、これの沿岸、それを基点とする十二海里でありまた二百海里である、こういうことでありまして、わが国の領土というわれわれの意識、それは当然北方四島を包括しておるものである、こういうことでありますので、改めて政令を出したりなんかする必要も何もない、そういうふうな理解でございます。
○土井委員 その間の事情はただいまの御答弁でわかりましたが、私のお尋ねいたしておりますのは、そういうお立場でもって協定の内容に、北方水域に対してわが国の立場から二百海里の線引きを具体的に明文として明記なさるかどうかという問題であります。いかがでございますか。
○福田内閣総理大臣 協定がどういう形になりますか、これは話し合いの結果決まるわけでありますが、どういう決まり方をいたしましても、わが国は、御審議願いまたその結果成立いたしましたあの暫定措置法、これを大前提として交渉し、またこの協定をつくるという考えでありますので、技術的にそれをどういうふうに表現するか、そこまで話を詰めておるということは私はまだ聞いておりませんけれども、とにかく大前提、これは暫定措置法である、その暫定措置法は北方四島を含めての考え方をとっておるということで御理解願います。
○土井委員 大前提というのは御答弁をいただくまでもなくよく承知をしておるわけでありますが、ただいま私どもが審議をいたしております日ソ漁業暫定協定の第一条におきまして、総理も御承知のとおりソビエト側の最高会議幹部会令第六条に基づくソビエト政府の決定に従って北方水域の線引きが日本体的になされているわけであります。しかも、この第一条の内容についてはわが方の主張は退けられたかっこうになって、第一条の条文がこのように明文化をされたわけであります。したがいまして、日ソとソ日の両方の暫定協定が表裏一体であるという御認識を総理がお持ちであるならば、ソ日協定の内容において、ただいまの日ソ暫定協定の第一条に言うような意味においての日本側の明記の規定があって、初めて相打ちというかっこうになるわけでありますから、したがって、大前提はわかるのですけれども、条文の中で果たして日本側の北方水域における二百海里の線引きをわが国の立場で具体的に明定の規定として出すことができるかどうかが実は大問題になってくるわけであります。いかがでございますか。
○福田内閣総理大臣 その辺につきましては、これを明瞭にするというたてまえの交渉を行うということになろうと思います。
○土井委員 もしソビエト側がどうしても、いま総理の言われたとおり具体的に明文化する北方水域に対しての二百海里のわが国の立場に対して向こうがどうしてもこれに対してのまないというふうな場合、それに対してわが国としてはどういうふうな対応をなさるのか。よもや、ただいまの漁業水域に関する暫定措置法の第三条の第三項で言う、政令で認められるこの適用除外という問題を持ち出して、これは高度の政治的な判断であるということで、この内容に対して線引きの除外をお認めになるとは私たちは考えないわけでありますけれども、先日来農林大臣の当委員会における御答弁の内容を承っておりますと、わが国二百海里の第三条の適用を外すべきだというふうに向こうが主張してきた場合には、それに対しては高度な政治判断をする問題であるという意味深長な御答弁が出ているわけであります。したがって、総理大臣にひとつこの点はしかとお尋ねをしたいわけでありますけれども、よもやあの暫定措置法第三条で、北方水域に対しての線引きをする場合、この適用除外例ということをもってわが国が臨むなんというふうな態度はないでしょうね。もしそういうことがありとするならば、国民は断じてこれは許さないだろうと私はあえて申し上げたいと思います。特に参議院選挙の前でもありますから、これは自由民主党の票に響きますよ。いかがですか。
○福田内閣総理大臣 わが国は、北方四島はわが国の固有の領土である、こういう主張は、これはあくまでも貫き通す、こういう考えです。そこで、暫定措置法ではもうすでに線引きが決まっておるわけです。その線引きの中には、もちろん固有の領土である四島も入っておるわけであります。ただ、土井さんのいまの御質問に関連して考えられることでありますが、さて北方四島につきましては、ソビエトはソビエトの水域であるという主張をする。わが国の方ではわが国の水域であるという主張をする。そうすると、そこでどういう現象が起こってくるか、こういうことになろうかと思うのですが、今日この時点におきまして、実際上の問題とすると、この四島の周辺におきまして実力ある支配をしておるのはソビエト側なんです。ソビエト側がいま実力ある支配をしておるというこの事実、これを変えるということ、これはまた非常にむずかしいことではなかろうか、そういうふうに思うのです。それをどういうふうに始末をするかということ、これを鈴木農林大臣は政治的判断の問題だと、こういうふうに言っておるのじゃないかと私は思いますが、いずれにいたしましても、もう領土についての主張は曲げません。曲げませんけれども、さあその主張を具体的に適用をどういうふうにするかという、そういう際に、現実のこの水域における支配がどういうふうになっておるんだという、この現実を無視して押し通すというわけにもいくまいじゃないか、そんな感じがするのでありまして、その辺はこれからのソ日間のこの問題についての交渉にまちたい、かように考えております。
○土井委員 そういたしますと、ソ日間の交渉で、このソ日暫定協定の内容といたしましては、北方四島の周辺水域に対しましてわが国が持ち出す二百海里の線引きに対して、適用除外というこの問題もあるのであるというお含みを総理大臣としてはいま御答弁の中で意味を込めてなすったわけでありますか、いかがですか。
○福田内閣総理大臣 私は、領土権の主張は崩さない、したがって、もうそのたてまえでできておる暫定措置法、この範囲を政府として出ることはできません。そういう立場にある政府として線引きをこれはもう四島について引いておる、こういう状態にあるわけです。ただ、いまお話に対しましてお答えいたしましたとおり、実力ある支配は一体だれがいまあの四島周辺でしておるのだということを考えてみるときに、これはソビエト側が実際はその多くをしておる、こういうことなんです。その事実をまた無視して通ることもなかなかむずかしいのではあるまいか、その辺の調整をこのソ日交渉においてどういうふうにするか。これはわが方としても国益を考えないわけにいきません。いきませんが、その国益を踏まえての交渉においてどういう結果になるか、この辺につきましては、まだその交渉の成果を見ないとはっきり申し上げることができないというのが現状でございます。
○土井委員 それは交渉の結果を見なければはっきり確認はできないわけでありますけれども、交渉に臨む前夜でありますから、この問題に対しては御認識が大切なんであります。したがいまして、領土問題と魚の問題は切り離して今回の暫定協定に対しては成功したということを総理大臣はおっしゃるわけでありますから、領土問題と魚の問題を切り離してということを考えれば考えるほど、今回ソ日暫定協定においても、北方四島の周辺の水域に対しまして、わが国としては二百海里の宣言に対しての線引きの除外例をつくってはならない、こういう問題が出てこようと思うのですよ。したがって、この点はゆがめることなくこの交渉に臨まれなければならない、このように思います。いかがですか。再度これに対しての御答弁をいただいて次に進みます。
○福田内閣総理大臣 もう線引きにつきましては、これは暫定措置法でこれをやってのけておるわけなんです。ただ、そのわが方が暫定措置法に従いまして引いたところの線引きの中のこれに対する支配関係が現在どうなっておるかというと、これはソビエト側に非常に強く傾斜をしておるという現実なんです。この現実をまた全然無視することもできないのじゃないかと、こういうような感触を持っておるわけでありまして、線引きはもうとにかくしたのですから、これは問題はありません。ありませんが、さてその線引きの中、この線引きは両方ダブりますから、ダブった中でどういうふうな現実的処理をするかという問題は、交渉としてこれからどういう結果になりますか、話し合わなければならない、そういうふうに考えております。
○土井委員 今回の日ソ漁業暫定協定については、当然ながらただいま審議をしているわけでありますから、国会の承認を得なければこれに対して締結をすることができないということでありますが、これと表裏一体のソ日暫定協定についても、国会の承認を得るということは当然必要だと私たちは考えております。よもや国会の承認をソ日協定に対しては得ないで、行政協定というふうなお取り扱いをなさるようなことはないであろうと思いますけれども、この点をひとつ総理に確認をさせていただきたいと思います。
○福田内閣総理大臣 この辺はいろいろ議論のあるところになろうかと思うのです。つまり、条約を結ぶ、あるいは協定を結ぶ、それによってわが国が外国に対しまして新たなる義務を負担するとか、国民に対して新たなる義務を負担していただくとか、そういうようなことがあれば、これは当然国会の審議事項、こういうことになるわけですが、この問題はいろいろ議論の分かれるところでございます。そこで、ソ日協定ができた場合にどういうふうにこれを処置するか、国会との関係をどういうふうに処置するか、このことにつきましては、ソ日協定はこれから交渉が始まるわけでありますから、その交渉した結果どんなものができるかというようなことも見た上でひとつその取り扱いを決めたい、こういう現在の考え方でございます。
○土井委員 まことにおかしいことを総理はおっしゃるわけでありまして、本来日ソ暫定協定とソ日協定というのは表裏一体であるということばかりでなく、ソ日協定の中で討議をされる内容というのは、いままで申し上げたとおりで、日本の二百海里の線引きと、当然その二百海里の中には日本の領海十二海里というものが含まれてこれは考えられているわけであります。したがいまして、領海については日本の主権が及ぶ範囲であり、二百海里に対しては主権的権利の及ぶ範囲である。しかも、ソビエト側がここに対して入漁をするという問題に対しては、日本の国民の権利義務という問題に対して深くかかわり合いのある問題でございます。国民の権利であるとか国民の生活に対してじかに関係のある問題について、これを取り上げて問題にしている協定に対して国会の承認を得ないというのは、本来おかしい話でありまして、これ自身は許されない問題だと私は思います。国会承認を得ないで締結をしようというのは。だから、総理としては、そんな歯切れの悪い御答弁はおやめいただいて、このことに対しては明確にきっぱりとした御答弁をいただかなければ、民主主義的なルールに乗って国会という任務が一体どういう役割りを果たしているか、この問題の本質も問いただされるべき問題が出てこようかと思いますので、ひとつ総理、しっかりとした御答弁をお願いいたします。
○福田内閣総理大臣 協定は、先ほど申し上げましたとおり、その内容が国民の権利義務について新たなる問題を提起している、こういうものであるかどうか、そういうようなことでいままでも協定の国会に対する扱いは決めております。そういうようなことで、いまもう暫定措置法ができておるわけであります。その範囲内における協定である、こういうようなことになれば、本来国会の審議に付するか付さないかということについて政治的な判断を要する、こういうような問題になってくるだろうと、こういうふうに思うのです。そういうようなことを考えまして私は何か歯切れの悪いお答えをいたしておるわけでありますが、いずれにいたしましても、国会の審議権を無視するというようなことは、これはもう断じていたしませんから、ひとつ御理解願います。
○土井委員 審議権を無視されないという基本的立場からすれば、当然国会の承認を得るということがどうしても考えられる原則でございまして、この線をゆがめられないように、ひとつしかと申し上げさせていただいて、さて、今回の交渉というのは暫定交渉でございます。長期本協定の交渉というのが難航しないという保障はございません。そこで、休業補償というものが繰り返される可能性というのが当然に出てまいります。しかし、考えてまいりますと、いつまでもこの休業補償ということを繰り返していくのにも限界がございまして、この辺で、二百海里時代に対応する体制として、わが国としては、これからの漁業のあり方、漁業の総合的な抜本的なあり方というものをどういうふうに考えていくかということを問いたださなければならないときに来ているんじゃないかと思います。 外国の二百海里水域を含めまして、国際公海漁業に出漁する大臣許可漁業について、減船補償制度というものを設けて補償するということも一つは大事でありましょうし、また、許可漁業の既得権については一応これを白紙に還元いたしまして、現行の漁業法を抜本的に改正して、漁業資本の担当してきた分野というものを整理統合いたしまして公社としていくというふうな方法も、この第一つの構想として打ち出してはどうかというふうな意見が出てまいっております。こういうことに対しまして総理はどのようなお考えをお持ちになっていらっしゃるかということを一つはお尋ねをしたいと思うのです。 また、余剰漁船というものが出てまいりますが、この漁船の取り扱いについても、これを国の管理下に置いて、この二百海里の水域内における漁場の開発であるとか、水産資源なんかの調査研究であるとか、指導監視業務など、それぞれの漁場の整備開発業務にそれを充てるというふうなことなども検討してみてはどうかという意見もございますが、こういうことに対して総理としてのお考えをお伺いしたいと思います。
○福田内閣総理大臣 私は、かねて資源エネルギーの有限時代が到来した、そしてそれが海洋にも及ぼうとしておるということを申し上げてきておるのですが、現実の問題として海洋に及んでまいり、そして二百海里水域時代というのが到来したわけでございます。そういう事態に対しまして、私どもの日本の国は、とにかく世界で最大の漁業国でございます。受ける影響も非常に大きい。その大きい影響をどういうふうに処理していくかということは、わが国の政治が当面している非常に大きな問題だ、こういうふうに考え、とにかく、一つはやはり外交面の努力、これが一段と水産について重要になってきておる、こういう認識を持っております。 また同時に、やはり私どもは、二百海里時代が到来したと言いますけれども、わが国の海岸線は非常に長いわけでございます。このわが国の二百海里水域というものの活用、これを最大限に考えていくという考え方を展開しなければならぬだろうと、こういうふうに思います。つまり沿岸漁業の振興、とる魚からつくる魚というようなことを言われますけれども、そういうような考え方、これをわが国の二百海里水域において高度に推進していく必要がある。 同時に、いま土井さんの御指摘のこの転換のための対策ですね、あるいは漁業家におきまして、あるいは漁業企業の中で働いておる漁民のこと、それからさらに漁業関連業界のこと、そういうようなことも、これは、いまお話しの廃船となるその船の処理まで含めまして、総合的に、相当大規模な考え方を進めていかなければならぬ、こういうふうに考えておりまして、万遺憾なきように措置いたします。
○土井委員 最後に一問端的にお伺いをして私の質問を終えたいと思いますが、日ソ間には領土問題等を核心としていろいろな問題がございますが、この時期にまいりまして日中平和友好条約を締結するということをスムーズに動かしていけると総理自身お考えになっていらっしゃるかどうか。保利議長が訪中をされますが、日中交渉の段取りについて、福田総理は、自由民主党の総裁としてのお立場で保利自民党議員の訪中についてどういうふうに思われているか。この点のお考えをお伺いして終えたいと思います。
○福田内閣総理大臣 一時保利議長の訪中説というのが伝えられておりましたが、最近私、そういう話を保利議長から伺っておりません。 いずれにいたしましても、日中間の関係、これは一九七二年の日中共同声明、この線に沿ってスムーズに動いておるわけです。それで、まあ案件もほとんど解決されまして、残るのは平和友好条約を締結するという一点にかかっておるわけでありますが、これも双方の満足し得る状態ができて、なるべく速やかにこれが締結されるということを私はこいねがっておる、こういうふうに御理解願います。
○土井委員 ありがとうございました。終えます。
○竹内委員長 松本七郎君。
○松本(七)委員 全体の質問の時間が不十分ではありましたけれども、社会党の各議員から広範にわたって質問を展開してまいりまして、きょうが最後ですから、私は社会党として締めくくりの質問を総理大臣中心にするわけでございますが、その前に一、二確認をしておきたいと思っております。 いま土井さんもすでに指摘されたんですけれども、次に締結されるソ日協定は日ソ暫定協定と表裏一体のものである。そればかりではなしに、昨日も外務大臣なり農林大臣も指摘され、そしていま福田総理みずからが明確に言われたように、結局はこの線引きの問題が大きな焦点になってくると思うんです。日本の立場からしたところの権利と実際の実力支配の兼ね合いがどうなってくるかというのがソ日協定における中心的な課題になると思うんです。これは、各大臣の答弁からも当然はっきりと予測される以上は、ああいったさっきの答弁のようなあいまいなことではなくて、まず前提としては国会の審議を願うという、そういう姿勢が私は打ち立てられるべきだと思うんです。この点は、幸い総理大臣もおられますから、ここでひとつ、国会の審議権尊重という立場から、そしてまた予想される来るべきソ日協定の内容からいっても、審議を尊重する意味で、提出に努力するというはっきりした約束をまずしていただきたいと思います。
○福田内閣総理大臣 先ほども土井さんにお答え申し上げましたが、協定というものにはいろいろの種類のものがありますが、とにかく、私どもの基本的な考え方は、国会の審議権はこれをあくまでも尊重する、この一言に尽きるわけでありまして、御意見がありましたが、御意見はもう尊重し、そういう方向で努力してみたい、かように考えます。
○松本(七)委員 それから、いままでの政府の答弁では、領土問題と切り離したんだ、そういう態度で一貫してきたんだと。しかし、今度できました暫定協定の内容から言いますと、その表現上からいっても問題はずいぶんあると思います。けれども、一歩譲って、政府の言うように、一応これを切り離すことによって領土問題についてのかねての主張は今後も続けてできる余地を残しているんだ、こういうことになったとしましても、私は、この立場というものが、今回の日ソの漁業交渉に当たってどれだけソ連側の最高首脳にこれを理解させたかという点に、非常に疑問があるのです。それは鈴木農林大臣非常に苦労されたことはよくわかるのですけれども、ソ連の体制から言うならば、鈴木さんと対応したイシコフ漁業大臣との話し合いだけで、果たしてこれだけ高度の政治的課題、しかも、言葉は多少——未解決と解決済みという言葉では全部を言いあらわせないかもしれませんけれども、俗に言うところの未解決と解決済みという対立点が、この協定の一つの成果として政府が強調するほどソ連側に納得させられておるのかどうか。現に、先ほども午前中問題になりました、朝日新聞の秦専務の質問に対する回答によると、ブレジネフ書記長みずからが、日本政府の意見というものは一方的な、不正確なものだと、こういう批判をしているくらいなんです。ですからやはり、長い間の日ソの問題という経過を考えみますと、ただ漁業問題だから漁業大臣相手にやるというのではなくて、もっと広範囲にわたった——午前中に情報収集の問題を自民党の議員さんも指摘されておりましたが、情報収集だけではなしに、こういった交渉をもっと総合的に、政府が挙げてやるという姿勢があってよかったんではないか。それがないから、協定はできた、政府の解釈では、ソ連に言わせれば一方的な解釈をもって、これで成功したんだという宣伝をしきりにされる。ところが相手側はそれだけの了解もしていない。了解をしていないばかりではなしに、それに最高首脳が批判を加えるということがもう今日出てきているというような、こういう事態になるのじゃないか。 したがって私は、鈴木農林大臣からこの点はまず御答弁を願いたいのですが、どの程度そういった最高首脳の理解を得る努力をされたのか。せっかく大臣みずから乗り込んでいかれたんですから、そういう点もある程度は御努力されたんだろうと思いますが、その経過が今日までまだ明らかにされておりませんので、ひとつこの際明確にしていただきたいと思うのです。
○福田内閣総理大臣 日ソ間の関係はとにかく領土問題が非常に大きな障害になっておるわけなのです。私は、この領土問題というものは、ソビエト側の主張、わが国の主張、これはかなり隔たりがある。この隔たりのある大きな問題、これを一朝一夕に解決するということは非常に困難である。したがって、漁民があしたか、あさってかといって出漁を待っておる、そういう状態の中で、漁業交渉のその中においてこの領土問題を論ずるということになると、これは漁民の期待、希望、そういうものに非常に大きな打撃を与えるだろう、こういうことを憂慮いたしまして、そこでこの領土問題というものはこの際はたな上げというか、わきに置いて、そして漁業問題だけの交渉で事を処理したい、そういうふうに基本的に考えたわけです。そういう基本的な構えで鈴木農林大臣がモスクワを訪問する、そしてイシコフ漁業大臣との間で話が進む。ところがこの線引きをめぐりまして、領土問題に事が絡まってくる、もう交渉を続け得ない、こういうような状態になったので、そこで園田官房長官を私の特使といたしましてモスクワに派遣をする。そして、この領土問題と別個に、漁業問題は漁業問題として片づけましょう、日ソ関係というものはわが日本とすると大変大事な問題としてとらえておる、また、展望としてもこれを育てていけば明るいことになるんだ、それを漁業問題をこじらすというゆえをもってこの展望に傷つけるということはいかにも残念だ、やはりこれは、漁業問題は漁業問題、領土問題は領土問題という解決でいきましょう、こういう進言をしたのです。ソビエト当局におきましても、その私の伝言、また親書を踏まえまして、また漁業交渉が再開されるということになった。 それで、再開された漁業交渉はある程度円滑に進んだのです。最後の段階に至りましてまたこの領土問題と漁業問題が絡まるというような事態ができましたので、その打開のために鈴木農林大臣は大変苦心をしたのですが、最後の段階で私からまた重ねてソビエトの両首脳に対しまして親電を発しまして、そして理解を求める、こういう措置をとったわけでございます。鈴木農林大臣の報告によりますと、これがかなり大きな影響を持ったというように私は理解をいたしておりますが、ソビエト当局も最後にわが国の主張に対して理解を示しまして、そしていま御審議願っておるような協定ということになったわけです。協定の第八条がそれであります。 私はそういう経過を顧みまして、ソビエト連邦当局は日ソ間の非常に大きな問題は領土の問題にあるという理解、これにつきましてはかなり認識を深めた、こういうふうに受け取っておる次第でございます。
○松本(七)委員 第八条でそれが実現されたと理解されておられるようですけれども、現に次のソ日協定では線引きが中心的な課題になるわけですね。ですから、幾ら観念的に領土とは切り離して漁業だけの問題だ、こう日本が言いましても、ソ連側も、これは漁業協定ですから、これはそうだ、漁業なんだ、こう言うでしょう。でも、具体的に線引きの問題になれば、領土が絡まざるを得ない。そこのところを、最初から政府はそう発展せざるを得ない性質のものだということを踏まえているならば、ソ連の最高首脳に対する日本の立場の説明なり了解工作というものがもっと積極的にあってしかるべきであったのじゃないかと私は思います。 〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕 それともう一つ私は総理にただしたいのは、先ほどからもしきりに日ソ間は領土問題がたった一つ残された問題だ、こう言われる。これは確かに大きな問題です。平和条約を結ぶにはこれが解決するほかにない。けれども、その前提になる、日ソの問題という全般的な問題としてとらえてみますならば、もっともっとほかに、日ソだけでなく、あるいは日中とかあるいは日朝とか、戦後におけるいわゆる社会主義諸国全体としての位置づけというものをもう少しはっきりしないと、どうも政府の対社会主義諸国の外交を見てみますとばらばらだ。対ソ連、対中国、対朝鮮、それぞれ事情は違いますから、特殊事情は考慮しなければならないけれども、総合性というものが非常に欠けておるように思うのです。 私は、鳩山総理のあの病躯を押しての訪ソ、そしてできた共同宣言によるところの日ソ国交回復というものの歴史的意義を当時も非常に高く評価しまして、あの結んでこられたときに鳩山さんと話したことがあります。これを日ソだけにとどめずに、日中の国交回復までひとつあなたの手でやるべきじゃないかと首相官邸で私は鳩山さんに話をしたことがあります。鳩山さんは、自分は元気だったらそこまでやりたい、けれども、こういう体になって、これ以上はできない、しかし、引き続いて日中の国交回復もできるような総理にバトンタッチするつもりでいるからひとつ心配しないでくれ、こうまで言われたことがある。その後は石橋湛山さんでした。日中に大きく取り組もうとした。病気で倒れた。後、岸内閣になって、長崎国旗事件が起こり、だんだん日中の問題というのは後退してきたわけです。 そういう点から考えますと、あなたもあるいは鳩山外務大臣もこれからソ連との平和条約を目指してがんばろう、こう言っておられる。しかし、それを成功させるためには、残された懸案は確かに領土問題も大きな問題ですけれども、これが唯一だという考えでは、いつまでたっても未解決、解決済み、この平行線をたどって前進しないと思うのです。幸か不幸か、こういう非常に大事な漁業問題というものが今日、この二百海里水域を中心にして出てきた。この機会に、日本の水産業あるいは北洋漁業そのものの取り組み方もここで再検討しなければなりませんけれども、それと同時に、対ソ連の外交については、領土問題を真に解決し平和条約に行き着くためには、もっともっといままでと違った広範囲な問題に取り組む姿勢というものがなければ私はむずかしいように思うのです。この点について情報の不足もあるでしょうけれども、もっと総理みずからの指導性というか、その取り組む姿勢というものをここで考えていただきたい。 それはどういうことかといいますと、すでに今日は公にもされておりますし、また総理も知っておられると思うのです。きのうの外務大臣に対する稻富さんの質問で、政府は観測も非常に甘かったのじゃないか、こう言って指摘されました。私は、正確に情報もとっておられる、観測が甘いせいじゃないと思うのです。十分事情は知りながら、政府はなおそういった外交の姿勢をとっていない、そこにむしろ問題があるのじゃないか。情報が不足だとか観測の甘さでなく、もっと基本的な対ソ外交についての姿勢に反省すべき点があるのではないかと思うのです。これは一つの例にすぎません。けれども、よく政府は、田中元首相が訪ソされて、北方領土問題は、日本の固有の領土を中心にして、そして未解決であるということを再確認されたようにしきりに言われておる。けれども、それではこれについて、ソ連の最高首脳がそのことを了解の上で、主張は違うが日本の立場はよくわかった、そういう態度をとっておるかどうかというと、私はいろんな点で以前からこの点には疑いを持っておったのです。 それがたまたま、総理も御存じの松前さんが会長になって私どもは日本対外文化協会というものを組織しています。しょっちゅうソ連の首脳、特にソ連共産党の首脳とはいろいろ連絡があります。ちょうど松前さんが訪ソしたときのことが「欅と私」という本の中にも公にされておりますから御披露してもちっとも構わないと思うのですけれども、この中でソ連共産党の政治局員の要請によって、ソビエトの要人と領土問題を中心に日ソの全般的な問題についての会談をしたときの経過が出ています。どういうことかといいますと、田中総理が訪ソされた場合にソ連側は田中総理に何を求めたか、その内容を松前さんを通じて、ソ連側はその裏話というか真相を話しています。以前から私はこれを聞いていましたけれども、今度松前さんの本によってこれは公にされています。 その要点は、北方の領土問題は日本の要求としては提案しないでほしいということが第一です。それから第二には、アジア集団安保に同意した事実を共同声明で明らかにしてほしいということです。そしてその次には、それがもしできるならば平和条約の話し合いに移って、そこで北方領土の話し合いもしたい、こういうことを言っているのです。さらにはアジア集団安保に同意をするならば日米安保の廃棄は要求しない、これまでは要求したが、今後はこれを取り下げる。その次には、シベリア開発についても、もし日本がアジア集団安保に賛成するならば、もっと積極的に取り組みたい、こう言って、最後が非常にこれは大きな問題、しかし、台湾の中国帰属にはいかなる事態が起ころうとも同意はできない、台湾は中国から分離させたいということまで言っているのです。 こういった考え方がソ連最高首脳の基本的な態度であるということを一体どこまで日本政府は理解して、この漁業問題の打開を図ろうとしているのか。だから、領土問題だけだ、こう言っている、その領土問題は中心ですけれども、それをめぐるところのソ連の考え方というものが、こういったアジア集団安保を中心にいま展開されておる、そして台湾の帰属をめぐってまで露骨な態度がこうやって要人から打ち出されるというところに、日本の今後の外交は非常なむずかしさがあると同時に、この打開をしていくには、日本が独自のきちっとした毅然たる態度と基本的な方針を確立した上で、そしてまた漁業について言うならば、いままでのようにとにかくとり合いの競争をやる、競争から敵対が生まれる、そういうのではなくて、これからは友好的な雰囲気でお互いに協力をしていく、そしてそこに友好を確立していく、そういう経済的な相互扶助の関係というものをつくっていくことによって、初めて私は領土問題の解決の糸口もできるような関係というものができるのではないか。問題は領土問題だ、これ以外にはないんだというような、そういう考え方では、私はこれからのむずかしい外交を担当していくことはできないのではないかと思います。 先ほど条約の問題には余り触れられませんでしたけれども、共同宣言という形で国交回復ができたということ、このことも歴史的に高く評価されるならば、今後の行き方についても、先ほど土井さんが指摘しました善隣協力条約というものについても、それは賛否は別です。善隣協力条約というようなものは、その背景としてアジア集団安保とも関係があるでしょう、台湾の問題とも関連するでしょうから、賛否は別として、そういうことをむげにこれを排除するのではなしに、一つの大きな課題として取り組んでみるという、そういう姿勢が必要ではないかと思うのですが、ひとつ率直な所信を表明していただきたいのであります。
○福田内閣総理大臣 日本とソビエト連邦は、これはまさに隣邦なんです。お隣の国という関係にあるわけであります。そういうことばかりではなくて、もう日ソ間には人の交流も文化の交流も相当進んでおる。貿易も日ソ間ではもう年とともにふえてきて今日の状態になってきておる。それからシベリアの開発につきましても、日ソ共同の事業が推進されてきておる、また成果を見つつある。こういうような状態で、日ソという国は、社会形態、政治形態は違いますけれども、これはお互いに努力いたしますれば私はかなりいい善隣関係というものができていき得るのではないか、そういう展望を持っておるのでありまして、その展望を傷つけずに育て上げていきたい、こういうふうに思っておるわけであります。 そういうことで、幅広い日ソ関係を一つ一つ積み上げてまいりまして、善隣そのものの関係を築きたい、こういうふうに思っておりますが、結局、しかし日ソ間で利害が対立するという問題、これは領土の問題になってくるわけであります。どうもこの問題のけじめがつきませんと、画竜点睛というか、そこらにいかない、そのことを私は申し上げておるのです。 しかしまあ、それはそれとして重要な問題ではありますけれども、松本さん御指摘のように、日ソの関係というものは、幅広い見地におきましてこれを明るい方向へ方向へと持っていくという努力、これは総合的に、また精力的にやっていかなければならぬ問題である、こういうふうに考えております。
○松本(七)委員 特に私は最後に総理大臣に要望しておきたいのです。 社会党の領土問題に対する意見というのは、先般も申し上げましたとおり、戦争によって奪った領土でないものは本来の日本の領有権を認めるべきであるという立場に立っているわけですが、それでは自民党なり政府の言う四島に限らずに、北千島まで含めておるならば話し合いはもっと困難かというと、決してそうじゃないのです。それはもう何回も社会党の代表がソ連の最高首脳と会って話したときも、これは私直接は知りませんけれども、仄聞すれば、共産党の代表が行かれたときも、やはり将来の話し合いにしようという約束があるやに聞いておりますが、私どもは率直にソ連共産党の首脳には申し上げた。 それは、今日も新しい憲法が今度できて、そうしてブレジネフ書記長は一応スターリンの粛清に対する批判をまた新たにやっているようですけれども、私どもは、やはりスターリン時代の過ちというものは、内政面でも外交面でもいろんな広い範囲にわたっていると思うのです。それを率直に私どもは指摘をしました。そうして今度の憲法でも、御存じのようにソ連は憲法ではっきりレーニン主義というものをやはり打ち出している。外交の面でレーニンの平和外交というものを憲法でうたっているのです。ところがレーニンの平和外交というものの大きな柱の一つは、戦争の処理に当たっては、無併合そして無賠償、これがレーニンの平和外交の大きな柱の一つなんです。それなら北方領土を不法占拠しているというのは明らかにスターリン時代の過ちじゃないか、レーニン主義違反じゃないか、そういうことを私どもは率直にぶつけた。そうしたら、その論議はいまはやらずに将来やろう、そういうはっきりした約束までしている。 そうして、今度はコンブまでとれなくなりましたけれども、コンブの話でも当時ずいぶん興味ある話があった。ソ連人はコンブは食べない。だから、日本人はコンブは好きだから、コンブについてはできるだけの考慮をしようというようなこと、それが今度はだめになったわけですけれども、そういった経済状態であるにかかわらずあそこの不法占拠を続けておる理由は何かといえば、軍事的な理由なんです。だから、本当に将来軍事的に占拠しなくてもいいという時代、また国際的な環境ができて、それに日本が指導的な役割りを果たせるような状態になったならば再びそこで考えようということ、それはいろいろ将来にわたって考えようという線となって出てきている。 だからこういう点を考えますと、日ソの関係は領土問題だけだという、余りここにこだわらないで、もっと、その領土問題を解決するには非常に広範にわたる問題に積極的に取り組んでいく。そしてこれは松前さんが東海大学でもやっていることですけれども、ソ連と共同調査を持って、そうして太平洋を共同の養魚場にしようというような研究もいま進めている。そういう積極的な、競争するのでなくて協力体制を今後の漁業においても各国ととれるような方向に持っていけば、いろんな面で解決の困難な問題も糸口が出てくるのじゃないか、そういう一つの転機にいま立っているのではないか、というのが私どもの率直な考え方でございますので、ひとつ今後ももっと広い視野に立って総理大臣はがんばっていただきたい、そのことを強く要望すると同時に、率直な感想を聞いて、私の質問を終わりたいと思います。
○福田内閣総理大臣 日ソ問題を幅広い立場から検討していけという御意見、また領土に関する社会党を代表しての御意見、これは貴重な御意見として拝聴したわけであります。 日ソ関係、私は先ほどから申し上げておるとおり、これは心してまいりますれば決して暗い展望じゃない、こういうふうに考えておりますので、幅広く日ソ関係を打開していきたい、かように考えます。
○毛利委員長代理 渡部一郎君。
○渡部(一)委員 総理にお伺いしたいと存じます。 きょうはせっかくのお越しでございますので、日ソ漁業暫定協定の審議中わからないことがたくさん出てまいりました。そのわからないことは何かというと、この協定を当外務委員会におきまして審議する過程で、私たちが縦から読んでも横から読んでも問題点が大変多いという感じがするわけであります。外交当局者の中にも、これは余りできのいい協定ではなかったと後で私的には申されておる方もたくさん多いことでございます。それは何かというと、わが国が施政権を有する北方領土周辺の領海あるいは当然設定せらるべき二百海里漁業専管水域に伴うわが国の権利、権原というものが、大幅に侵されているという疑いが濃いということであります。 ここのところ、総理は聞いておられないかもしれませんのでまとめますと、わが方の領海線は北方四島の周りにある、二百海里漁業専管水域も引く、そしてわれわれの権利、権原はある、ただしその施政が現に及んでいないという言い方で御説明が行われているわけであります。そして施政の現に及んでいないこれら北方四島に対しては、さまざまな領土権に伴う権利、権原というものが大幅に傷がついておるわけでございますね。そういう立場ではないかと御質問いたしておるわけであります。そうしたら、それに対するお答えはどういうお答えであるかというと、それは領土権に伴う権利、権原はわれわれは確保しておるのだ、それはあくまでも主張しておるんだ、それは条約八条で明らかであるが、ただ、その領土権に伴う権利、権原のある種のものを交渉の過程でわれわれの安全漁獲を維持するために交渉のバーターとして提出しておるにすぎないのであって、それは何も領土権に対するわが方の主張を侵しておるものでない、こういうことでお話の論戦はここまで来ておるわけであります。 さて、そこで総理に重ねてお伺いするわけでありますが、わが国の政府の立場として総理にお尋ねしているのは、わが国の特に北方領土に関する主張は、この交渉において侵されていないとの立場であるということかどうか、改めてお伺いします。
○福田内閣総理大臣 いま渡部さんのお話を伺っておりますと、政府の考え方についての御理解、賛否は別として御理解は、私は渡部さんがよく政府の考えどおり正しく理解をしてくださっておる、こういうふうに考えます。 そこで、御質問に対しましてお答えいたしますが、この協定におきましてわが国の領土に関する主張、これはいささかも揺らいでいない、完全にわが国の主張は貫かれておる、こういうふうに考えます。
○渡部(一)委員 わが国の北方四島に関する主張は従来ともに変更がないとするならば、この議論の途中で一つ奇妙なことがあったわけでありますが、石田労働大臣が、私的には北方二島返還論を明快に唱え、当院議員の数名の方には耳打ちまでしながら旅立たれたことであります。しかもモスクワに行かれる際、外務省にただしたところによれば、総理親書を携帯してソビエト政府を訪問されたことがすでに明らかになっております。 外務省の御説明によると、親書の内容は、領土に関する部分や漁業交渉に関するものはなく、簡単なものであったという御説明でありますが、それから先はわかりません。ただ、私どもとしては、私的であるとはいえ、福田内閣の有力閣僚が二島返還論を固持しつつモスクワに行かれるというのは不穏当のきわみであると考えるわけであります。 そこで、総理にお伺いしますが、二島返還論は石田労働大臣にせよだれにせよ、福田内閣の閣僚が口に出していいものであるかどうか、また、そういう交渉がもし行われたとしたら、それを認めるのか認めないのか、明快にひとつお伺いしたいと存じます。
○福田内閣総理大臣 二島返還論なんというのは、私は余り聞いたことがありませんが、政府の不動の方針は四島一括返還である、こういうことであります。それと違った行動を石田労働大臣がとるというようなことは、私は想像できませんです。
○渡部(一)委員 もし、してこられたらどうなさいますか。
○福田内閣総理大臣 そんな政府の不動の方針に背いた行動なんというのはとることは想像できませんが、これは重大な国の方針に対する違反である、こう言うほかありません。
○渡部(一)委員 そこまでおっしゃるのですから信用したいところでありますし、すでに国会には四十八年九月二十日付の四島返還に関する決議、北方領土返還に関する決議というものが存在いたしますし、それに基づいて政府は行動していただかなければならない。また、いま不動の方針とおっしゃっているのですから、それはしかるべく処置があってしかるべきだとも私は思います。それはそのようにひとつお計らいをいただきたいと思います。 ただ、もう一回条約の本文に戻って申しますと、いままでのソ連邦との漁業条約がございます。北西太平洋の公海における漁業に関する日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の条約、恐らく今度本協定が結ばれますとこれと入れかわる前の条約でございますが、その条約の七条の三項を見ますと「前記の漁船又は人の所属する締約国の当局のみが本条に関連して生ずる事件を裁判し、かつ、これに対する刑を科する管轄権を有する。違反を証明する調書及び証拠は、違反を裁判する裁判管轄権を有する締約国にできる限りすみやかに提供されなければならない。」とありまして、裁判の管轄権はいわゆる旗国主義をとることが明示されておるのであります。 〔毛利委員長代理退席、有馬委員長代理着席〕 ところが、この暫定協定を拝見いたしますと、一方的にソビエト側の取り締まりを受け、ソビエト側の官憲の漁船立ち入り権を認め、拿捕権を認め、連行権を認め、裁判権を実質的に認めるやり方になっているわけであります。これは日ソ暫定協定だ、だからこれと同じことをソ日協定で結ぶんだ、こういう言い方で、本協定のときには前の本協定と同じようなものが生まれるんだと確定されるならば逃げ道はあろうと私は言っているわけです。ただ合意しているのじゃない。 ところが、この文章を見る限りにおいては、わが方側の立場は明らかに不利でありまして、それらの裁判管轄権を、わが国の領土権を主張する北方水域において放棄したということは初めてのケースでありますし、大幅な譲歩と見えるわけであります。この点をどう評価されますか。
○中島政府委員 お答え申し上げます。 まず第一に、先生御指摘の日ソ漁業条約は、従来の公海における漁業の自由の思想に基づいて締結され、二十数年の生命を経てきた条約であります。したがいまして、公海漁業としてその違反に対しては旗国主義による取り締まりというのが原則として盛り込まれているわけでございます。 それで、今般できましたところの、御審議を仰いでおりますところの日ソ暫定協定は、申すまでもなく二百海里の漁業水域という新たな生まれつつあるレジームに伴って生じてきた問題を片づけるものでございます。その二百海里の漁業水域におきましては、沿岸国がその漁業の取り締まりを行い、裁判を行うというのが海洋法の単一草案にも盛り込まれている思想でございまして、その考え方に立ってできました協定でございます。これは先般御審議をいただきました日米漁業条約においてもとられている方針でございます。 そこで、問題はそのような沿岸国による規制及びこれに伴うところの規則違反の場合の取り締まりとか裁判とかいう原則を、北方の四島の周辺の二百海里の水域に適用することとしたことがどうかという、こういう御質問になるかと思いますが、この点は先般来お答え申し上げましておりますとおり、その北方四島、これはわが国といた申しましてはわが国固有の領土であるということでございますけれども、その周辺に引かれましたところの漁業水域における入漁の条件は、現実にソ連側が漁業の規制を行っているという事実に立ちまして、他の漁業水域におけると同じような入漁の条件でここで操業をする。これがまたこの水域におけるところの操業の安全を期するゆえんであるということで、そう取り決めて御審議を仰いでいるのが今度の協定である。ただ、そのことによってわが国のこの北方四島に対する領有権主張が害されることがあってはならないということで、協定に第八条を設けまして、この点のわが方の立場を留保した、こういう関係でございます。
○渡部(一)委員 それはおおむねよくわかっているつもりなんですが、そうすると、私どもが今度ソ日協定を結ぶわけですね。ソ日協定を結んだ際は、本条約の一条及び二条の規定によりましてソビエト側はあの地域に対する取り締まり権あるいは裁判権あるいは拿捕権を持っているわけであります。わが方は持っていないわけであります。そうすると、ソ日協定の際にわが方は二百海里法の線を引かなければならないわけでありますが、二百海里の線を引く際に、二百海里の線を引いて、向こう側の方に割り込んで一条、二条を無視することはできるのかできないのか、それが問題になるわけです。そうして線を引かないとすれば、二百海里法はその精神を失われ、そのルールを失うわけであります。引くとするならば、三条、十四条の規定を適用して適用除外という形でそれをおやりになるのか、そこはまさに交渉の支点にかかわるものだろうと思います。総理はどういう御判断をなさいますか、お伺いしたいと存じます。
○福田内閣総理大臣 ソビエト側はとにかくいわゆる北方四島、これについての領有権を主張しておるわけなんです。これらの主張に基づいて線引きをしている。わが国は同じ地域に対しまして暫定措置法の前提といたしまして線引きをしているわけでありまして、その線引きがダブる地域、これが四島になるわけです。ところが現実このダブる水域において一体実力的支配はだれがどうやっているかと言うと、申し上げるまでもないような残念な状態になっておるわけです。この現実というもの、これをまた全然無視して通るわけにもいくまいじゃないか、こういうふうに思うわけであります。線はお互いに引いて、それがダブっておる。ダブっておる中の操業の態様をどういうふうにするかということが、今度のソ日協定のときに問題になってくる、こういう性格のものでありますので、私どもは私どもの立場を踏まえて極力努力いたしますけれども、そういう現時点におけるダブっておる水域における操業の状態、それは御承知のような状態であるということ、これもまたひとつ頭に置いてこの交渉の成り行き、これを見守っていただきたい、こう申し上げるほかないのであります。
○渡部(一)委員 そうすると、総理がおっしゃっていることは、いままでの当委員会における質疑のそのまま延長線でお答えになっておられるわけで、領土権における主張としては、両方が線引きをやっておる。だから、わが方は何もわが方の領土権に対する主張を下げたわけではない。これが一つ。 そして総理は、いま実際の操業については「残念な状態」であるという言葉遣いをなさいまして、その地域におけるわが方の権限というのが実質及んでおらず、わが方の漁業者が先方の取り締まりを受ける海域、水面になっておるということを述べられたように思うわけであります。そうすると、それを追認する形でいけば、わが方の法制上からは例の二百海里漁業専管水域法案の中の三条あるいは十四条の規定を適用して、適用除外の穴をあける、こういう方針でいく、こういうふうに受け取られますが、それでよろしゅうございますか。
○福田内閣総理大臣 私どもは、せっかくわが国の固有の領土、その周辺の水域の問題でありますから、努力はしますよ。しますけれども、そういう現実の問題があるということも、また非常に困難な問題があるということも御理解を願いたいと思います。 そういう際にどういうふうに技術的に処置をするか。これは場合によれば何らか協定に穴を一つあけておくというようなこと、こういうことも考えられるわけでございますが、しかし、とにかくわが国の固有の領土であるという前提で最大の努力をまずしてみる、こういう考えであります。
○渡部(一)委員 やり方はまさに一番めんどうなところを伺ったわけで、解答全部をここで述べろと私は申し上げておるわけでは必ずしもない。 ただ、ここで強くお願いしておきたいことは、少なくとも線引きというのはこの海域にしていただきたい。 〔有馬委員長代理退席、委員長着席〕 そうでなければ、領土交渉の最後の口実というものを失う可能性というのはきわめて高くなってくる。現実の問題として、操業を完全に認め、それに対してわが方が不法行為であると言い続けてきたこれまでの経緯というものを遮断することになる可能性というのはきわめて高いという立場から申し上げておるわけでありまして、これは今後の交渉でひとつぜひとも、非常に困難な交渉であることはわかっているわけでありますが、このソ日交渉では特にがんばっていただきたいと強くお願いしたいと思います。
○福田内閣総理大臣 まことにごもっともな御注意でございますので、その辺は最大の努力をいたしてみたい、かように考えます。
○渡部(一)委員 もう一つは、審議をしておる途中で非常にわかりませんでしたことは、総理の対ソ外交と対中外交に対する態度と申しますか、時時刻々、選挙も近いことでありますから、いろいろなところでいろいろなことを言われるということは私も理解できないわけではありません。しかしながら、新聞の字面あるいは世間の評価から見れば、中国に議長さんを行かせる、親書も出すぞ、日中やるぞ、覇権主義については本文の中に書き込むぞというのが総理の周辺のところから話が一方ではどっと出る、その次には、それに対してソビエト側が少しこわい顔をすると、今度は御自分のグループと思われるグループの中から非常に日中に対する慎重論が巻き上がってくる、そうして日ソ間におけるソ日協定あるいは基本協定はもちろんのこと、平和友好条約については外務大臣を訪ソさせ、交渉するぞというニュアンスがどっと出てくる。福田さんはいま二つの顔を使い分けておられるような気がするわけであります。こうやって拝見すると一つのお顔なんですけれども。それはテクニックでそうなさっている面があることも私は許容してわざわざ伺っているわけでありますが、総理は、まず日中平和友好条約の推進に対してどう思っておられるのか。特に今回はその言い回しが前回と違って、覇権主義反対という中国側の最も強硬に主張しておられる面に対して、総理サイドからいろいろな形で、激しい反対の部分についてはそれを認め、本文に入れることを認めたと言われることについて、総理に直接確認をいたしたいと存じます。
○福田内閣総理大臣 まず最初に申し上げたいことは、日中、日ソということが絡めて考えられるような議論がありますが、そう考えておりません。日中は日中、日ソは日ソ、こういう俄然と切り離した考え方で両国に対処いたしてまいりたい、こういうふうに考えております。 日ソ条約につきましては、これは先ほどからるる申し上げておりまするとおり、この条約交渉は何だ、こう言いますれば、これは領土交渉なんです。ですから、領土交渉をひとつ仕上げて、そしてその上に立って平和条約を結ぶという段取りにいたしたい、こういうふうに考えております。 それから日中問題につきましては、いま覇権だとかいろいろのお話がありましたが、まだ私はその平和友好条約の内容まで考え方を固めておりません。私の考え方の基本は、日中関係につきましては、一九七二年の共同声明、あれを忠実に履行することである、こういうふうに御理解願ってよかろうと思います。その中で平和友好条約につきましては、これは両国が満足し得る状態をなるべく早くつくって、そして締結をいたしたい、こういうふうに考えております。
○渡部(一)委員 そうしますと、総理、日中条約の方からお話を詰めますが、共同声明を忠実に履行する立場というのはまことにそのとおりだと思うのですけれども、総理は覇権主義反対の条項を本文に入れるかどうかについてはまだ考え方を詰めてないし、意思表示もしたことはない、こうおっしゃる立場でございますか、そしてそれは、恐らく両国間の折衝の中で当局者同士で詰めるべきテーマである、こういう立場でございますか。
○福田内閣総理大臣 この問題は三木内閣のときにちょっと接触があったのです。それでありますけれども、私の内閣になりましてからその内容の問題については、率直に申し上げますよ、まだ触れておりませんです。私は内外に表明していることは、日中共同声明を忠実に実行することである、こういうことにとどめておるわけで、いろいろ新聞面なんか見ておりますと、揣摩憶測書いてありますけれども、私の考え方の基本はそういうところである。そしてなるべく日中両国が満足し得るような状態のもとに平和条約を締結したい、こういうふうに考えておりますが、何せ、いま日ソの交渉だけ一つとってみましても大変な作業が連日続いておる、こういう状態で、まだ日中問題の中身までという段階に至っておらぬ、こういうのが現状でございます。
○渡部(一)委員 日中問題に対するそうしたお立場というのは明らかに大幅な一歩後退というふうに先方側に受け取られるだろうと私は思います。しかしそれより大事なことは、そういう評価がどうあるかは別にしまして、少なくとも日中問題はわが国にとって重要な課題でありますから、この課題に対してはむしろ積極的にこれを片づける姿勢がないと、たとえば日ソ問題のようないろいろな他の環境条件のためにこれを選択しにくいという状況が逆に生まれてくると私は思います。わが国にとっては、そういうふうに不安定な部分を幾つも持っているということは、わが国の外交の選択肢というものを逆に狭めてわが国外交を不安定にするものではないか、日中平和友好条約の締結というのは、むしろこの際着実にしかも堅実にこれを急いで、そしてわが国の外交のこの部局を安定せしめることが非常に重要ではないかと思いますが、いかがお考えですか。
○福田内閣総理大臣 私がいま日ソ漁業問題で忙しいと申し上げましたが、そのとおりなんです。とおりでありますけれども、日ソと日中というものをいやしくも絡めて考えるというような考え方はしておりませんから、その辺は明快に御理解を願いたい、こういうふうに思います。そういう中で、日中は日中といたしまして、私がかねて申し上げておる、共同声明というものがもうすでにあって、この共同声明を忠実に実行するというのが私の考え方の基本でございます。その線に沿いまして日中問題を進めてまいる、こういうことでございますから、さように正確に御理解願います。
○渡部(一)委員 正確にも何にも、総理はそれ以外言われないのですから、解釈のしようがない。 じゃどっちから言いましょうかね。総理がひっかかるように言うのはかなり骨が折れる。日ソの方からいきましょうか。総理は日ソ条約について、先ほど同僚議員の御質問に対して、善隣友好条約というのは結ばない、そんなことをしても問題の本質的解決にならない、むしろ領土問題を含む日ソ条約を結ぼうとすることが大切であると述べられました。私はそれは一つの御見識だと思いますが、それと同時に、総理は外務大臣を日ソ漁業交渉に並行して派遣してこの問題に対する糸口をつける旨、これは新聞報道その他によって報じられております。この部分についてお伺いしますが、総理は、漁業交渉と並行して領土交渉を進展せしめ、日ソ平和友好条約交渉をするお気持ちがあるかどうか、お伺いします。
○福田内閣総理大臣 私の日ソ関係の基本的な考え方、これは当面の漁業の問題と、それから平和条約締結の問題と、この二つがあるわけなんです。ほかに先ほど松本七郎さんからも御指摘があったいろいろな問題があった、そういう中でしぼって申し上げたわけですが、そういう二つの問題が当面ある。これは、漁業問題は差し迫った問題であります。差し迫った問題を急速に解決するということにしなければならないわけでございますが、これを領土問題と絡めて漁業問題を解決しよう、こういうことになりますと、漁業問題の解決が非常に長期化するということを私は恐れるわけであります。そこで、基本的に領土は領土、漁業は漁業、こういう形で漁業問題を処理したい、こういう考え方も持っておるわけでありますが、そういう形をとりつつ今日までやってきた。それから近く始まるソ日漁業交渉、これもまたそういう考え方でやっていきたい、それからまた、漁業基本条約交渉、これが秋ごろからまた始められる、そういうことになりますが、これも領土問題と絡めたら大変に長期化するおそれがある、これもそういうふうにいたしたい、こういうふうに考えておるのです。 そういう配慮から、今度の鈴木農林大臣の漁業交渉が停滞をした、これをどういうふうに打開するかというときにも、外務大臣がモスクワへ参ってこの停滞を打開するということは、事が漁業でなくて領土問題なんかについての話し合いに移る可能性も恐れまして、園田官房長官を派遣するという配慮をいたしたわけでありますが、今後のソ日暫定協定、また基本協定、これに当たりましても、領土問題とは切り離して、これを漁業問題として処理したいというのが基本的な考え方でございます。
○渡部(一)委員 持ち時間が終わりですから、最後の一問にいたしたいと存じますが、外務大臣は、すでにモスクワへ行って交渉をする決意を定められておるようでございまして、そのニュアンスは当委員会でも表示されております。恐らくこの暫定協定の交渉と並行して、領土と魚とをまぜないという立場で、この交渉を支援する立場で行かれるものとは思っておるわけであります。 しかしながら、総理の脳みその中では、この二つの協定は、漁業をやってから領土をやる、漁業の本交渉が終わってから、漁業協定の本協定が終わってから領土の交渉をするのだ、こういうふうに分けておられるのか、向こうの出方によっては同時並行でも交渉するというふうに考えておられるのか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
○福田内閣総理大臣 私は、ただいま申し上げましたような考え方から言いますと、基本協定も大体片づいた、こういうような時点で外務大臣が訪ソをする、これが一番いい、こういうふうに考えております。 しかし、時間的にどういうことになりますか、そういう点も考えますと、あるいは、まだ基本協定が交渉中であるという時点における鳩山外務大臣の訪ソということも、あるいはそういうことになるかもしれませんけれども、私は、でき得ることでありますれば、基本協定も片づいてからの鳩山外務大臣の訪ソという方が望ましい。具体的にいつどういうふうにするかということは、まだソビエト側とも話し合っておりませんです。
○竹内委員長 中村正雄君。
○中村(正)委員 総理がせっかく御出席になっておりますので、基本的な問題の二つ、三つについてお考え方をお伺いしたいと思うわけでありますが、その前に、いま当委員会で議題になっておりまする日ソの漁業暫定交渉についての今日までの委員会の質問の焦点並びにきょうの総理に対しまする質問の重点も、やはり北方領土の領有権というものが、わが国の領土権というものが、この協定の締結によって妨げられてはいないか、わが国の主張が後退しておるのではないかということが一つの大きな焦点になっておるわけでございますが、この点について私重ねてお聞きしたいとは思いませんが、ただ一点だけ特に要望申し上げて、今後の問題についての善処をお願いしたいのと、一つ確認しておきたい点があるわけでございます。 鈴木農林大臣の今日までの交渉の経過や、また当委員会におきまする委員会審議の答弁におきまして、協定の第一条に規定されておりまする海域について、ソ連の領土の主張、これを完全に認めざるを得なかったという点は、私は理解できると思います。第八条において領土と魚は完全に切り離した、こういう点は、条文上より見ましても私は不十分であると思います。しかし、この点を明らかにできるのは、本協定第二条に関連して近日中に交渉が予定されておりまするソ日漁業協定において日本の水域を明示するときであると思いますし、この点に関しましては今日までもたびたび農林大臣の答弁がございました。言いかえますならば、少なくとも本協定の第一条に相当する日本の水域を規定する場合、少なくとも北方四島がわが国の領土である、この立場のもとにその沿岸から水域の線引きをすることだけは、最低限ひとつ明らかにしていただいて、これによって本協定第一条と相打ちにできるという点を国民の前に明らかにしていただきたい。この点は特に要望しておきたいと思います。 私は、総理に確認しておきたいと思います。つの点は、ソ連水域におきまするわが国の漁業についての本協定については、いまこの国会で審議をいたしております。これに対応いたしまするわが国水域におきまするソ連の漁業を認めまする次に締結されまするソ日の漁業協定、これは総理も国民の権利義務に関係あるものであれば国会の承認を求めなくちゃいけないと、いろいろと言われておりますが、しかし、いま審議いたしておりまする日ソの協定と表裏一体でありまするこれから締結されまするソ日の協定は、これは国民の権利義務以上に、わが国の水域におきまするソ連漁船の操業でありますから、わが国の主権に関する問題でございます。したがって、どのような形の取り決めをやられますか、字句上の問題は別にして、いま審議いたしておりまする日ソの暫定協定と同じように、国会の審議だけは、国会の承認だけは求めるように私はお願いしたい。この点について、再度総理に重ねて確認いたしたいと思うわけでございます。
○福田内閣総理大臣 協定というのはいろいろありまして、先ほど原則論を申し上げたわけです。国民の新たなる権利義務に関係するというものでない場合に、国会の御審議に付さないということも多々あるわけでございます。そういう原則論を申し上げたのですが、これからできるソ日協定、この成り行きを見なければなりませんけれども、御意見のほどは十分頭に置きながら、その措置ぶりを考える、こういうふうに御理解願います。
○中村(正)委員 私、いま総理にお尋ねいたしたいと思っております基本的な問題は、今回の日ソ交渉に関連いたしまして、政府は、従来国連の海洋法会議等におきまして主張いたしておりました政府の方針を変えまして、領土の拡張、専管水域の設定ということに踏み切って、この国会で国内法が成立いたしました。領海を十二海里に拡張するということ、これは法制上の問題としては簡単にできますが、これはわが国の主権の及ぶ範囲の拡大であり、特に四面海に囲まれておりますわが国といたしましては、膨大な領域の拡大でございます。また、二百海里の水域の設定も、その内容、線引き等は政令に任されておりますのでどの程度の広さになるかは的確にはわかりませんけれども、これまた膨大な水域になることだけははっきりいたしております。問題はこれら水域におきまするわが国の防衛、警備の体制の問題でございます。この点について私は総理にお尋ねしたいわけでございます。 少なくとも本年度の予算編成のときには全く考えられていなかったことであろうと思います。日ソの漁業交渉を有利に運ぶという立場から唐突の間に提案され審議されたことは事実でございます。しかし、この二法というものは国の防衛、警備という国家存立の基本の問題に対しまする裏づけの対策がなければならないものだと私は考えます。二法案審議の際の委員会におきまする二つ三つの質疑応答を取り上げてみましても、現在の防衛庁の体制、海上保安庁の機能ではこれら地域の防衛なり警備は不十分であり不完全であるということが明らかにされております。国家存立の基礎でありまするこれら領域の防衛、警備の体制について総理は一体どのような認識をお持ちになっておるか、また今後どのように整備充実されようと考えておられるか、基本的な点についての御所見をまずお伺いしたいと思います。
○福田内閣総理大臣 今度領海が十二海里になる、また漁業水域二百海里というものが新たに設定される、こういうことに伴いまして、その監視体制、これは非常に重大な問題になってくるわけであります。私は、今日の海上保安庁の実力をもってしてはこの監視体制十分だとなかなか言い切れない、こういうふうに考えております。そういうことを考えまするときに、速やかにこの監視体制を整備しなければならぬ、そういうふうに考えるわけでございますが、これは一朝一夕にはできません。しかし、鋭意監視体制を充実する、この必要をもう当然考えなければならぬ。来年度予算ということになりましょうが、それから始まりまして鋭意充実に努めたい、かように考えております。
○中村(正)委員 この問題は膨大な予算も必要になるかもわかりませんので、今日ただいまこういう構想でやるということの答弁はむずかしいと思います。したがって、重ねて総理に御検討を注文つけたいと思いますのは、少なくとも来年度を起点にいたしましてこれらの防衛体制、警備体制の充実に対しまする長期的な計画を樹立いたしまして、初年度の予算として来年度に組まれる意思があるかないかということを、要望と同時にいまお考えであれば御答弁を願いたいと思います。
○福田内閣総理大臣 海上警備の問題につきましては、もう中村さんのおっしゃるとおりに考えております。長期の計画を立てて、その初年度を来年度から実施する、こういうふうにしたいと思います。
○中村(正)委員 私はもう一点、これは根本的な問題ではありますが、外務省という国の機構の位置づけについてせっかくの機会でありますので、総理にお尋ねをしたいわけでございます。もちろん外務省設置法等に規定されておりまする形式的な制度の問題ではございません。外務省という省を国の機関の中でどのように位置づけしなくちゃいけないか、政府の中で外務省という省をどのように位置づけすることが大切かという基本の問題でございます。 御承知のように、旧憲法のもとにおきましては、陸軍省、海軍省という世界最強の軍備を背景にした外務省でございました。時には外務省が軍部を抑えて外交手段によって国益を守った時代もございましたし、また時には軍部の意のままに動いたような印象を与えた時代もございました。しかし、いずれにしても外交によってすべての国際紛争が解決されるという制度ではなかったわけでございます。 ところが、現在は国際紛争の解決について軍事力の行使が禁止されております。いわゆる平和憲法の体制下にあるわけでございます。したがって、すべての国際紛争は外交手段によってのみ解決されなければならない時代になっておるわけでございます。世界の中に生き、世界に依存して発展しなければならないわが国としては、国際間において国益を守ることも国際紛争を未然に防ぐことも、また不幸にして紛争が起きた場合これを解決することも、すべて国の機構としては外務省の任務でございます。したがって、実質上わが国の外務省というものは、外国におきまする外務省に相当する機構の任務だけではなくして、国家存立の基本である防衛の任務も兼ね合わせて持っておるものと言わなければならないと私は考えます。現在の外務省の機構、内容は、旧憲法時代と大同小異だと私は思います。外務省の予算規模、これ自体を見ても、この点は明らかでございます。今日までの日本の外交が後手後手に回っておるとか、あるいは事が起きてからこれに対処する場当たり外交であるとか言われておる現状は、総理も御承知のとおりであります。 たとえば、今回の日ソ交渉の経過を見ましても、あるいは五年前の石油ショックを振り返ってみましても、あるいはその前のニクソン大統領の頭越しの米中交渉を見ましても、すべては出先機関の勉強不足、情報収集能力の欠缺が私はその原因であったと思います。しかし、そうかといって、私はこのことは日本の出先機関を責めることはできないと思います。人員の問題にしても予算の問題にいたしましても、これらに対応できる機構、体制になっておらないからでございます。今後は、従来にも増して国際関係は複雑になってまいりましょうし、また多岐にわたってまいります。その中にあってわが国の国益を守り、国家自体を守っていくための外務省の任務というものは非常に重大だと思うわけであります。この任務に対応できる機構、規模、体制を早急に確立しなければならないと私は考えるわけでございます。 たとえば予算規模一つにいたしましても、従来のように前年対比一〇%増しであるとかあるいは一五%増しであるような、他省との比較においてつくるという考え方でなくして、外務省の経費は国の防衛費の一部であるというように発想を転換して、根本的に考えなければならないと考えているわけでありますが、総理大臣は、この外務省という国の機構の位置づけをどのように考えておられるか御所見を承りたいと思います。
○福田内閣総理大臣 いま世界情勢が過去とは大変変わってまいりまして、世界は一体、こういうような状態になり、わが国は世界情勢と離れて存在することが許されない、こういうような状態になってきております。 そういう中で、外交の尽くすところの機能、これは非常に私は重大なことになってきておる、こういうふうに思うわけでありますが、いまその予算だとかあるいは機構だとか強化すべし、こういう御意見でございますが、その重要な外務省の外交機能、これが発揮されるように、この上とも私は努力をいたしてまいりたい、かように存じます。
○中村(正)委員 重ねての話ですが、総理も御案内と思いますけれども、たとえばわが国の出先機関、在外公館を取り上げてみましても、たとえば他の外国の高官と日常の交際をするにも足りないような予算しか持っておらない地区の在外公館もございます。その地区の、その国の本当の情報、この国の実態を調べるだけの人員を持っておらない公館は、たくさんあるわけでございます。 このような外務省の出先の機構で、これから複雑化する国際間に対処していくことはできないと思う。したがって、私はこの問題は政府の基本の問題、国政の基本の問題になると思いますので、従来の外務省の考え方でなくして、もっと発想を転換して、私は十分な御検討を来年度から願いたいという注文をつけまして、私の質問を終わります。
○竹内委員長 寺前巖君。
○寺前委員 審議もいよいよ終わりのようでございますので、改めていままで当委員会で審議をさしていただいておりました内容について、確認的な問題も提起させていただきたいと思いますので、お許しを願いたいと思います。 本、日ソ漁業協定の交渉をめぐって、国民は少なくとも三つの点でこれがうまくあってほしいということを要求しておったと思います。 その一つは、現に日ソ漁業条約というものがある。時代は変わったけれども、その条約を尊重し漁獲量が急激に減るというようなことにならないような措置を、ぜひとも頼みたい。この面において政府がやってきたことはどうだっただろうか。これを一つの基準として見守っていると思います。 第二に、ソビエトがわが国の領海内で操業をさしてくれという問題提起がありました。この問題提起に対して、国際的にもまれにしか見ることのできない領海内操業というようなことを、やるべきではないという問題がありました。これに対して、協定の文章ではあいまいだけれども、ソ日の協定の中では明らかにされるであろうと国会の答弁でも明確に御答弁になったと思うのです。これが第二の問題。 第三の問題は、領土問題の現状を追認することなく漁業と領土を正しく切り離してあってくれよ、後々それが拘束されたために大変なことになるというようなことになってくれるなよ。これが私は協定をめぐって、さしあたっての共通した問題であったと思うのです。 いま、いよいよまとめの段階に来たと思います。総理から率直にこの三つの点をめぐって、国民に対する総括的なお返事をお願いしたいと思います。
○福田内閣総理大臣 ただいま御指摘のまず第一点、漁獲量の問題につきましては、これは私は決して満足ではありません。しかし、わが国といたしまして精いっぱいの努力をした。いま漁業水域という新しい潮流が出てきておる。そういう中で漁業水域内の漁獲は、これはまず伝統的な過去の実績という主義ではなくて、みずからの国の漁獲、その余剰が出てきた場合にそれを分けてあげよう、こういうような思想が内容として大きく打ち出されておるわけであります。そういう潮流の中で精いっぱいの努力をした結果ではあった、こういうふうに思いますが、しかし残念ながら、かなりの減少になってきておる、こういうふうに認識をしておるわけであります。 それから、ソビエト連邦側のわが国の領海内における操業、これはかなり強い要請であったわけでありますが、領海はわが国の主権の及ぶ水域である、そういうことを考えますと、幾らソビエト連邦の要請が強くともこれに応ずることはできない、こういう態度で終始したわけでありますが、はっきり申し上げますが、十二海里内のソビエト漁船の操業、これは認めない。これははっきり申し上げます。 それから領土の問題につきましては、これはるる申し上げておるわけでありまするけれども、これは、漁業交渉とは全くこれを切断した形で今度の協定ができておるわけであります。領土問題につきましてわが方の態度を一歩進めた、こういうことではありませんけれども、しかしながら、わが国の領土主張がこれによって一歩後退したということでもございません。領土は領土、漁業は漁業、こういう立場でこの問題が処理された、かように御理解願いたいと思います。
○寺前委員 先ほどの御答弁の中で、いわゆる北方領土周辺の線引きの問題において、総理はダブる水域があるということをお話しになりました。ということは、今度の日ソ協定では水域としてダブらすということを明確にされるということになる御答弁だと解釈してよろしゅうございますか。
○福田内閣総理大臣 そのとおり御理解願って結構でございます。
○寺前委員 昨日の当委員会における質問において、いまおっしゃったダブる地域におけるところのソビエトの監視船から拿捕されるという事態が生まれたときには抗議をする旨のお話がございました。ということは、ダブる地域であるから主権的権利を向こう側に行わすということについてそうはいかないということを、ダブる地域なるがゆえに言うということの根拠になるわけでしょうか。
○中島政府委員 一点お断りさせていただきますが、昨日私が御答弁申し上げましたのは、四島周辺の漁業水域につきましては、それ以外の他の水域におけると同じような操業の条件で入漁をするということに今回の協定におきまして取り決めた。それは現実にソ連の漁業規制があの水域において実施されておるという実態を前提として取り決めたものでありまして、ただし、そのことによってわが方の領有権主張を害してはならないということで八条の留保を付した。したがいまして協定におきまして、四島周辺の漁業水域におきましては、他の水域におけると同じようなソ連側の漁業規制及びこの規制に違反するわが方漁船の取り締まり及び裁判の問題は他の水域と同じような条件でやるということを認めたわけでございますので、その限りで、ソ連側がその規則に違反したというかどでわが漁船を拿捕するということに対して、これに抗議をするということにはならないということを申し上げたわけでございます。
○寺前委員 よくわからないんですが、むずかしい話で……。それじゃ、くどくなってしまうのですが、重ねて総理にお聞きをしたいと思うのですが、ダブる水域というのは、要するに主権的権利なり主権なりがダブっていくことになる。しかし現実的には、施政はわれわれの側のは行われていないというところから、今日まで非常に不安定な状態が続いてきている、そういう水域になると思うのです。そこで、本当にダブらすということが明確になるならば、その水域におけるところの、いわゆる日ソ漁業協定で言うならば五条、六条、七条の項に当たる分野については特別な扱い方をしなければならないということになると思うのですが、そこはいかがなものでしょうか。私は、重ねてこの点を聞くとともに、総理が記者会見で特殊水域という問題を前にお出しになっておったことは一体何なのかを御説明いただきたいと思うのです。
○福田内閣総理大臣 私が特殊水域と申し上げましたのは、これは日ソ両方の線引きのダブる水域となる、こういうような趣旨のことなんです。 さて、両国の線引きがダブッたというその中で、安全な操業をどういうふうにやっていくか、こういう事実上の問題が残るわけでありますが、それを一体どういうふうに処理するかということになりますと、いま現実にソビエト連邦側の実効支配という状態でございます。その状態をよけて通ることはできないのじゃないか。その問題も考慮されなければならぬ問題ではないか。これは非常に残念なことなんですが、現実にそういう状態になっているものですから、その状態を変えるということは非常にむずかしい問題じゃあるまいか、そういうふうに考えているのです。もちろん、これはこれからの問題でありますから、わが方においても努力はします。しますけれども、そういう問題があるんだ。五条、六条、七条、こういうような余分の御指摘までございましたけれども、どういうふうにソ日の協定で措置いたしますか、これはその現実もまた無視し得ない問題であるということを申し上げたいのであります。
○寺前委員 本会議で私質問したときに、あの水域におけるコンブの漁の問題、今度のことでは全面的に禁止になることになります。これについて、民間の漁業協定をという話が答弁の中にあったと思うのです。ということは、ダブる水域で現実に民間のコンブ協定があるから、ダブる水域という立場に立って、現状行われていることを認めてもらいたいという角度でソ日の協定をやりたい、こういう立場で民間協定という御答弁があったのかどうか、お聞きしたいと思うのです。
○鈴木国務大臣 この問題は当委員会でしばしば御質疑がございまして、御答弁申し上げているのでありますが、今回、ソ連邦の幹部会令が適用になりました二百海里海域、この中には幹部会令の規制の措置がとられるわけでございます。また、このコンブの漁は領海十二海里の中でされるという実態でございまして、わが方は今回の交渉におきまして、第二条の問題をめぐって、わが方の十二海里の新領海の中では外国船の操業は一切認めない、こういう強い主張を一貫してとってきたわけでございます。ソ連としては、いままで三−十二海里の間で操業しておったという実態、実績を踏まえて、引き続きこの中での操業を要求いたしましたけれども、国会の御決定のとおり領海の中では一切外国船の操業は認めない、この方針を貫くために、どうしてもソ連の支配しておりますところの海域、領海内でコンブをとるという要求を政府として正面からこれを要求することが、わが方の主張と全く相反する要求になる、こういうような観点から、またもう一つは、コンブの漁はいままで民間協定でなされておった事情等も考慮いたしまして、この問題の交渉は民間の交渉にゆだねる、政府はそれを温かく支援をしていく、こういう方針にいたした次第でございます。
○寺前委員 総理にお尋ねしますが、現実を無視するわけにはいかないとおっしゃいました。そこで、ダブる水域であるということをあえておっしゃるならば、現実をまた踏まえて提起をされたらいかがか。すなわちダブる水域なのだから、他の問題とは違って現実にもコンブをとっているんだから、いわゆる相手さん国の領海に入るという問題じゃないじゃないかという立場を堅持されてもしかるべき態度ではないだろうか。とするならば、三十トン未満の漁船の安全操業の問題についても、今度は領海の外の話として行われているけれども、現実どおりにダブる水域の問題においてはすべて認め合うという方向でもってこの北方水域、すなわち総理の言われた特殊水域という問題の扱いをされるのかな、私はそういう角度で総理の提起しておられた問題を見ておるわけなんですが、総理はそういうつもりで今後のソ日協定に臨まれようとしておるのかどうか、重ねてお聞きをしたいと思います。
○福田内閣総理大臣 交渉でございますから、わが方といたしましては、わが方の立場に有利になるように、有利になるようにという交渉をするのです。しますけれども、いま四島周辺の実力支配、これはソビエト側にあるわけなんですから、そのこともひとつ頭に置いていただきたい、こういうことを申し上げておるわけです。後でいろいろ御議論もあろうかと思いますが、現実の姿がそういうふうになっておる。私どもはもちろんこれは最大の努力をします。しますけれども、現状をそう変えるということもまたむずかしい問題である、こういう御理解を求めているわけであります。
○寺前委員 特殊水域に対する発言は、現状はむずかしいという発言に下がってしまわれたようなので、私はもっと思い切ってダブる水域の発言を強めていただくようにむしろお答えがあるのかいなと実は思っておったわけですが、ちょっと残念な気がしました。 もうお約束の時間が迫っておりますので、お聞きしたいことがたくさんございますが、私はひとつ確認をしたい問題があるのです。 歯舞、色丹及び国後、択捉の一括返還を政府が要求しておられるけれども、国民は、全千島列島は日本の歴史的領土だということから、全体の返還をむしろ期待していると私どもは思うのです。サンフランシスコ条約第二条(c)項の再検討という角度でなぜ全体の返還を問題にされないのか、それが一つです。 それから昭和三十年の三月二十六日に衆議院の予算委員会で田中委員の質問に当時の鳩山総理がお答えになっておりますが、そのお答えの文章を見ますと、こういうことが書かれております。「歯舞、色丹の返還をさほどにむずかしいと言ったことはないと思います。ただ南樺太及び千島列島の返還を要求することは、歯舞、色丹の返還を要求するよう、にはいかないと思う、こう言ったつもりであります。」というふうに歯舞、色丹の返還というのは他の問題と違ってこれはやさしいんだということを当時鳩山総理はおっしゃっております。そういうふうに明らかに扱いが違う。また、現に日本とソビエトのその後の交渉の中でもこの取り扱いは共同声明で明らかになっているということになったならば、この立場はいまでも同じなのかどうか。 その次に、三十二年の四月十二日の外務委員会で、当時の井上外務政務次官はこういうことを言っております。歯舞、色丹に関してアメリカから軍事基地にしたいという要求があっても、これはわが国としては応諾する考えはない。私は、この両島が日ソの話の中でも別扱いとしての位置づけを今日まで歴史的に持ってきているというこの問題の解決のためにはこの確認が重要な位置づけをなしているということを改めて強調しなければならない。ところで総理も、この当時のこの態度はいまも変わらないのかどうか、確認のためにお聞きをしたいと思います。 そして最後に、これほど領土問題が改めて問題になったときに、総理はこの領土問題の解決のための具体的日程というのをどのように進めようとしておられるのか、お聞きをしたいと思います。
○福田内閣総理大臣 共産党において千島全域をわが国の要求すべき地域だ、こう考えろという御主張あることはよく承知しておりますし、その理由はどういうことかということも私承知しております。しかし私ども日本政府といたしましては、平和条約をもうすでに締結をいたしておるわけであります。その平和条約にいうこの千島列島とは、わが国が放棄した千島列島とは、これは固有の四島は含まないという解釈もまた定着をいたしたわけでございます。そういう立場に立ちまして、平和条約を破棄する、こういうような立場をとればともかくでございますけれども、私どもといたしましては、平和条約は平和条約としてこれを尊重するというたてまえをとっておる以上、千島全域を返還せよという主張は、これは展開しがたい、こういう立場をとるものでございます。 また、歯舞、色丹につきましては、これはいろいろ歴史があって特殊なものではないかというお話でございますが、これは確かに特殊な立場にもある。鳩山元総理大臣の訪ソの折におきましても、平和条約が締結されたならば歯舞、色丹は、これを引き渡す、こういうようなことが合意されておるわけであります。そういうことで特殊な立場にあるということは、これはまあそういう面もありまするけれども、さらばといって、この歯舞、色丹だけが返ってくる、あとの島々についてはこれはたな上げだ、こういうような形になりまするとわが方の主張というものが非常にぼやけてしまう、そういうふうに恐れるわけであります。私どもといたしましては、私どもの立場に立ちましてのこの四島の一括返還、これを目指しまして対ソ交渉を粘り強く進めていきたい、こういうふうに考えております。 それじゃ具体的日程は一体どういうふうに考えるか、こういうことでございますが、この下半期中にまず鳩山外務大臣が訪ソをする。これはちょうど年次協議という年にも当たっておるわけでありまして、わが方からモスコーに外務大臣が出かける、こういう年になっておるんです。ちょうどいい機会でありますので、この話をしてみたい、こういうふうに考えております。
○寺前委員 時間が来ましたので失礼します。
○竹内委員長 伊藤公介君。
○伊藤(公)委員 一つ一つの細かい条文についても幾たびか私どもは質疑を繰り返してまいりました。しかしこの日ソ暫定協定を初めから最後まで読み返せば読み返すほど、その中には多くの問題を抱え、そしていかにこの協定が不十分なものであるかということを認識をせざるを得ないのであります。政府は、今度の暫定協定は漁業と領土とは完全に分けて考えているのだ、こういう繰り返しを、御答弁をされているわけでありますけれども、しかしわれわれが論議を重ねれば重ねるほど領土問題が避けて通ることができない問題であるということ、領土問題がますます浮き彫りにされてまいりました。しかもこの日ソの暫定協定をわれわれが見る限り、一方においては、長い間日本の北方における漁民の方々が時には危険を冒して、あるいは長い長い時間をかけて新しい漁場の開拓をしてきた、その漁場においても大きく後退をせざるを得ない。そしてこれまた、わが国にとっては、国民一致をして関心を持ち要求をし続けてきた北方四島、北方領土の返還に対しても、今度の暫定協定が明らかにこの領土に関しても後退をしたのではないか、こういう国民感情が大きく盛り上がりつつあることも否定のしがたい事実でございます。 私も、けさ国会に来る途中で、通勤電車の中で、あなたはきのう外務委員会で質問をしたそうだけれども、日本の政府はソ連に対してはっきり物を言うことすらもできないのか、しっかりしてくれ、こういうお話をしながら私は国会に参りました。しかしそれはまさに一人だけの発言ではない。いま日本の国のすみずみに広がっている国民感情であろうと私は思わざるを得ません。今度のこの日ソの暫定協定は、この協定だけでは片肺どころか、とうてい私どもは認めることすらもできないという心境にならざるを得ません。しかし一方においては、間もなく始まるソ日協定、これなくしてはどう考えても私どもは認めることができないわけでありまして、ソ日協定の内容いかんに問題はすべてかかっている、こう言わざるを得ないわけであります。 そこで、私は総理に御質問をしたいのでありますけれども、ソ日協定に当たって日ソ協定のこの第一条と同じことを書く意思が一体あるのかどうか、まずその点についてお伺いをしたいと思います。
○福田内閣総理大臣 これからソ日協定が交渉開始、こういう段階になってくるわけでありますが、もうすでにわが国は暫定措置法ができまして線引きをしているのです。その線引きはもうでき上がっておる、こういうことであります。今度のソ日協定では、この暫定措置法を踏まえて交渉ということになるわけでございますから、当然お話の筋はこの協定の内容として入ってくる、こういうふうに御理解願います。
○伊藤(公)委員 当然にソ日協定の中に入ってくるという御答弁を踏まえて、それでは北方水域にわが国の二百海里法の線引きをするのかどうか、この問題が一番重要な問題でございます。はっきりと御答弁をお願い申し上げます。
○福田内閣総理大臣 領海十二海里それから漁業水域二百海里は、もうすでに暫定措置法ができて線引きをいたしておるわけであります。それに対して除外例が設けられるかどうか、北方四島についてどういう取り扱いをするかということは、まあ問題になってくるかもしれませんけれども、すでに線引きは終わっておる、こういうふうに御理解願います。
○伊藤(公)委員 それでは、このソ日協定でわが国の二百海里法三条の三項をわが国は主張をする意思があるのかどうか、三条の三項を発動をする考えがあるのかどうなのか、端的にお答えをいただきます。
○福田内閣総理大臣 先ほどからしばしば申し上げているのですが、二百海里の漁業水域、これはもうしいておるわけなんです。それでそれに対して、先ほどからもるる申し上げているのですが、あの四島につきましては実効支配、これはソビエト側がやっておりますので、その辺で調整を要する問題が出てくる、こういうことなんですね。そういうことでありまして、その線引き自体はもう終わっておる、こういう御理解でやっていただきたいと思います。
○伊藤(公)委員 明確に確認をしておきたいのであります。ソ日協定でわが国の二百海里法の三条の三項を発動をする、主張をする御意思がおありですか、どうですか。
○福田内閣総理大臣 お答え申し上げておるのですが、線引きはもう暫定措置法で終わっておるわけなのでありまして、いまさらどうこうという問題はあり得ないのです。まあ四島周辺につきまして、それに対しまして除外例を設けるか設けないかというその問題がこれから持ち上がってくる可能性がある、そのことも先ほど申し上げたとおりでございます。 〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕
○伊藤(公)委員 除外をするかどうかということが一番重要な問題なんです。除外をするんですか、しないんですか。
○福田内閣総理大臣 それは、これからソ日暫定協定につきましてその内容をどうするかということをいま相談というか、交渉する、こういうことになるのです。その結果どういうふうになりますか。私は先ほどから申し上げているのです。四島につきましては、これは線引きはもうしてあります。しかし向こうの方も線引きをしておる。そしてわが国の線引きとソビエト連邦側の線引きとがダブるのです。ダブる間の水域の操業を一体具体的にどういうふうにするか、こういうことになってくるわけでございますが、そのダブる地域における操業の形態をどうするか、これがソ日交渉におきまして、まあ厄介な交渉ではありまするけれども、しかし、一つ御理解おき願いたい点は、この四島の周辺において、今日この時点において実効的な支配はソビエト側がやっておる。これは、私どもはずいぶん努力はしますよ、しますけれども、なかなかこれははねのけて通ることのむずかしい問題である、こういうことでございます。
○伊藤(公)委員 冒頭に申し上げたとおり、この日ソ暫定協定は、ソ日協定がこれにつけ加えられて初めて私どもはこれを認められる、こういう内容のものでございます。そして総理お答えのように、両方が重なり合うということはもう何回も繰り返されてきたのです。ソ日協定を結ぶに当たって、いま、これを除外をしていくか、三条の三項を主張をするかどうかという確認がなければその意味がないわけでありますから、その主張をするかどうか、もう一度はっきり確認だけしていきたいと思います。
○鳩山国務大臣 ただいまのお尋ねは三条の除外例を引くかどうか、こういうお尋ねだと思います。先ほど総理が答弁されたとおりでありますけれども、鈴木農林大臣も、理論的にはそれは法律上可能であると。しかしこれから交渉に当たるわけでありますから、わが方といたしましては、そのようなことにならないように既定の方針に従って交渉に当たられる、このように申されているのでありますから、それで御了承いただきたいと思うのでございます。
○伊藤(公)委員 漁業の問題は漁業の問題、領土の問題は領土の問題と言い続けながらも、しかし、主権にかかわる、わが国国民が長い間要求をしてきたこの北方の領土問題が、いま、大きく後退をするかしないかという瀬戸際であります。たとえ漁業であろうと漁業の線引きがされるということは、明らかに領土問題においても後退である、こう言わざるを得ないわけでありますから、この点についてはソ日協定の中で強力に主張をしていっていただきたい、こう要望をしておきたいと思います。 そこで、具体的に一点だけお尋ねをしたいのでありますけれども、この協定によって今後、漁業に従事をする方々一万人、さらに関連産業を加えますと二万人近い方々が、新しい職場を求めるなりあるいは新規に漁場を求めなければならない、こういう現実の問題があるわけでありますけれども、こうした問題を踏まえて、総理は漁業基本法といったものをつくる御意思があるかどうか。さらに、この職場を失った方々に対する生活の保障あるいは就業保障等を具体的にどうお考えになっていらっしゃるのか、端的にお答えをいただきたいと思います。
○福田内閣総理大臣 いまや世界は海洋新秩序、こういう時代になってきた、そういう認識の上に立ちまして、総合的に漁業問題の処理をしなきゃならぬ、こういうふうに考えております。で、総合的な計画を立てて、そうしてそれを着実に実行していく、こういうふうな考え方をいたしております。当面、さあ減船をしなきゃならぬとか、そういう問題も出てくる、あるいは関連の事業におきましていろいろ打撃をこうむるという向きも出てくるわけであります。そういう向きに対しましては、周到な配慮をするという方針のもとにいま着実にこの施策を進めておる、これからもそうする、こういうふうに御理解願います。
○伊藤(公)委員 新しい海の秩序に対する水産外交を強力にお進めいただくことをお願いを申し上げて、次の質問をさせていただきます。 ここ数日来たびたび名前が上がってまいりました現石田労相の領土問題に対する考え方も、いろいろとお話をされてまいりました。私は、この領土問題についてもう一度確認をさせていただきたいと思います。北方四島の返還に関して、政府の考え方はいささかの変更もないかどうか、そして領土の返還問題と日ソの平和条約の締結に関してはどうお考えになっていらっしゃるのか、確認をさせていただきたいと思います。
○福田内閣総理大臣 日ソ関係につきましては、いろいろの意見を言う人があるわけでございますけれども、政府といたしましては四島一括返還、これを実現したる上平和条約を締結する、これは不動の方針でありまして、これにいささかの変更もございませんです。
○伊藤(公)委員 四島の返還をもって日ソの平和条約を締結する、四島返還が条件である、こういう御答弁でございますね。これは、福田内閣においてこの方針は全閣僚一致をしておりますが。
○福田内閣総理大臣 福田内閣は一体の内閣でございまして、その申し上げました方針に違った考え方を打ち出すというような閣僚はございませんです。
○伊藤(公)委員 それではお聞きをしたいのでありますけれども、ソ連がいま世界に向けて発行しております週刊誌「新時代」というのを、総理は御存じでしょうか。
○福田内閣総理大臣 承知いたしません。
○伊藤(公)委員 それでは、総理御存じないようでありますし、御存じないわけですから恐らく読んでいらっしゃらないと思うので、私の方から読ましていただきます。 一九七三年の三月三十日、「新時代」。これはソ連の、もちろんロシア語でありますけれども、英語、フランス語、スペイン語等々で翻訳をされて世界に向けて出ている雑誌でございます。この雑誌の中に、石田現福田内閣の労相の発言がございます。これはソ連の「新時代」の特派員、べ・ピシチク氏との対談でございます。 石田氏は「北方領土」問題の解決を条件として平和条約を締結しようとするいわゆる近視眼的政策には強く反対すると語った。 彼は、「われわれ両国は多くの分野で意見が一致しており、日本側の関心を北方領土問題に集中しようとする人々は、日ソ関係の展望に現実的見方をしない人々である」と述べた。 更に、彼は、そのような人々は大半が右翼であると付言し、両国の友好関係の発展にとってこれらの人々が何らの脅威も与えることはないと彼は信じている。こう「新時代」は報じているのでございます。 ただいま総理の御答弁の中に、四島の返還をもって日ソの平和条約の締結をするのだ、四島返還が条件だ、こう言われている。しかし、現内閣の石田労相のこの週刊誌の上における発言はいささか違うと私は思うのですが、総理の御所見をお伺いしたいと思います。
○福田内閣総理大臣 私どもの政党は自由民主党でございますから、自由な意見を開陳する、また民主的な党運営をやっている。そういうようなことで、党員の中にはいろいろな意見を持っている人があるわけですよ。意見を述べるということにつきましても、これは別に制肘はないわけでありますが、しかし、閣僚という立場におきまして一体どういうふうにこの問題を考えるか、こういうことになれば、私が申し上げておる四島一括返還、これに対しましていささかでももとるような考え方を開陳するということになりますれば、これは重大な問題です。石田さんの話、いま御指摘がありましたけれども、これはいつでしたか、七三年というようなお話でございましたが、閣僚というような立場でなくて、自分の考え方を恐らく自由に申し述べた、そのときかと思いますが、これは石田氏に確かめてみなければ正確なことはまだわかりません。
○伊藤(公)委員 それぞれが自由な意見を述べるということは私も当然だと思いますし、あり得ることだと思いますけれども、福田内閣の中におきましても、領土問題、この四島の北方領土返還に関してはそれぞれ閣僚の中で意見が必ずしも同じではない、こういう内容を持ったお答えでございますか。
○福田内閣総理大臣 閣僚としてこの問題を論ずる、そういう場合におきましては、私が述べました四島一括返還、これにいささかも考え方が違うという人は一人もないはずでございます。
○伊藤(公)委員 大変大事な問題だと思いますので、これは私の質問だけでなしに、すでに本委員会でもたびたび石田労相のこの考え方というものが議論をされてまいりました。福田内閣におきましても、個人的な見解などと言わずに、内閣の中で領土問題をどうするかということをもっと御議論をいただきたい。そして、多くの国民の皆様方が今度の漁業問題に関しては、改めて日本の主権的な権利あるいは領土というものについて強い関心を持っているということを総理みずから御確認をいただいて、わが国の主張をすべきは主張する。当然、わが国の固有の領土に対しても依然としてこのわが国のみずからの立場を主張できない、こういうことでは多くの国民も不信を抱かざるを得ない。福田内閣も来るべき参議院選挙危うしと言わざるを得ませんので、強くこの点を要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
○毛利委員長代理 山田君。
○山田(久)委員 ソ連の対外政策、外交というものを見ておりますというと、世界政略というか戦略というか、そういうものの一環として、きわめて長期的な展望に立って総合的な政策というものを行っておる、これが非常に特徴的であると考えます。そういうような意味において、今回の漁業を問題とする日ソ交渉も、そういう全般的の一つの政戦略の一環として行われている、こう見て差し支えないと思うのであります。わが国も、ソ連だけの問題じゃありませんけれども、特にソ連に対しては、このような観点で対日外交というものをやってきておりまするので、わが方もひとつ長期的な立場に立って、総合的な政略に基づいて対ソ外交をぜひ進める必要がある、こういう点を痛感されるものであります。恐らく総理もそういう点については感を等しくされておると思うのでございますけれども、ひとつこの点についての総理の所見をまず最初にお伺いいたしたいと思います。
○福田内閣総理大臣 日ソ関係は、私は暗い将来とは見ておらないのです。これは利害関係を同じくする問題が多いわけであります。いま漁業問題と言いますけれども、漁業問題一つをとりましても、これは二つの漁業大国ですね。この二つの国の間においていろいろ問題はありますけれども、今度はこの二つの国の他の国々に対する立場、こういうことになりますると、これは共通の点が非常に多いのです。また、いま日ソ両国の貿易関係を見ても年とともにふえつつある。またシベリアの開発問題、これも技術的に資金的に相協力し合う大きな問題となってくるだろう、こういうふうに思うわけでありまして、この日ソ関係というのは大事に育てていきますれば、これは非常に緊密な親善関係、善隣の関係というものが結べる、こういうふうに思うわけでございます。それを育ててまいりたい、こういう考え方でございますが、しかしこの四島の問題、これは平和条約を締結するという際におきましてはどうしても片づけなければならぬ問題だというふうに考える次第でございます。まあ粘り強く四島一括返還、こういう体制でこの問題を処理したい、こういうふうに考えますが、しかし日ソ関係これ自体、これは私はそうむずかしい展望ではない、こういう立場に立ちまして日ソ問題に取り組んでまいりたい、かような考えでございます。
○山田(久)委員 いま総合的、長期的な形で考えていく、日ソの間のいろいろな共通の利害関係、そういうものをも踏まえて考えていこうという総理のお考えを拝聴したわけでございますけれども、実際このソ連のいろいろな動きを見ておりますと、御案内のとおり、平和共存外交と言っておるけれども、その陰においては基本的な力、たとえばSALT交渉というような問題について、アメリカに対して優位を保持するというような点については遠慮なくこれを進めてくる、こういう点ではアメリカ自身もちょっと判断を間違えたのではないかというような声が出ておることはもう御承知のとおりであろうかと思います。そしてまた、ヨーロッパのこれも平和共存下における安全保障会議、この点でもやや平和共存外交についての反省期というようなことも感ぜられておりますし、一方、平和共存という形で進みながらも、目をアフリカ、中近東、あるいは地中海からアジア方面というふうに転じてみますと、現在ではいわば自由社会に対する資源の供給地としてのアフリカあるいは中近東というようなものに、気がついてみると案外このソ連の根拠地、勢力圏の扶植というようなことがかなり進捗しておるというような状況である点は私は非常に注目しておかなければならぬ点であろうかと思います。そういう点、アメリカをもってしても、情報収集、判断という点についてまだ足らざるを憂えるというような状況でございますので、無論総理もいろいろお考えでございましょうけれども、こういう点でまだまだわが方においても準備不足といいますか、そういうような点でやはり欠くるところがあるのではないかというふうにも思われます。 ことに、現在これを担当しておるところといえば、先ほども話がございましたけれども、これは外務省がそれを担当しているわけでございますけれども、外務省の人員、予算、いろいろそういうことに関連しての実際の情報収集の活動、能力、機能、あるいはそれに基づいての長期的な政策の樹立というような点では、恐らく総理自身もまだまだ不十分な点があるというようなことを感じておられるんじゃないか、こう思われます。先ほど中村委員からも、わが国は憲法上からいっても紛争解決に武力行使なんということがあってはならず、あくまでも外交に全部の責任がかかっているというこの実態から見ても、十分これが本来の機能と責任を果たしていくという点についていま一段と積極的な対策が講ぜられなければならぬという点、私はまさにそのとおりだ、こう思うわけでございます。従来、この点については総理も外務大臣をやっておられていろいろ御考慮のようでございますけれども、普通の手段ではなかなか人員の問題にしてもあるいは活動費の問題にいたしましても十分じゃない。やはり昨今外交問題というものに依存している日本の非常な重要性というものがますます大きくなっているこの段階においては、この機能の拡大強化というような点についてはひとつ抜本的な決意を持ってこれに対処していただかなければ、いつまでたっても十年河清というようなおそれがあるわけでありまして、総理の決意を促してやまないものでございますけれども、この点についての所信をひとつぜひ拝聴させていただきたいと思います。
○福田内閣総理大臣 わが国は世界の中における日本国であります。もうわが国の立場とすると、世界に平和がなければわが国にも平和はない、また世界が繁栄しなければわが国にも繁栄はない、それくらいに考えておるわけであります。そういう中で外交の持つ責任、これは非常に重大でありますので、外交機能がますます求められている、こういうふうに思うわけです。その方向で努力をいたします。
○山田(久)委員 問題をいまの協定にしぼって考えてみますと、今度の協定締結についての問題点がいろいろ大きく指摘されているようでありますけれども、結局その中心問題というのは、わがいわゆる北方の固有の領土、これに対する領土権がこのたびの協定、その規定によって阻害されるようなことになっているかいないか、こういう点が一番問題の中心のようでございます。私自身この問題にタッチした経緯等からいろいろ考えてみまして、無論今度の協定はこの第一条、これにおいて閣僚会議の決定というようなものを排除できなかったというような点、いろいろこの点について指摘されているようでございますが、無論そういう点では十分にいかなかった。にもかかわらず、これは交渉でございますので、無論そういう点はあるにかかわらず、実は第八条の規定というのは、これはよくここまでのことでソ連の譲歩をかち取ることができたということは、やはり外交交渉の面で言えばこれは高く評価されていい点であろうと私は考えるのであります。ここに至ったのは皆さんの一致した努力でございますけれども、しかしながら、私ども見ておりまして、初め第八条のような留保規定というものなしで、そしてこれは漁業の問題だということだけの了解で日本を押し切れるのじゃないかというような情勢分析をソ連側はしていたのじゃないかというようなふうに考えられます。というのは、彼らは交渉しておりますというとなかなかいろいろなことを検討しておりまして、日本の政党というのはこういう利害関係、圧力団体に非常に弱い、交渉を長引かすというようなことによって日本の方は非常に困ってくる、けれどもソ連の方は一向痛くない、しかし、日本の方ではいろいろ突き上げが出てくるであろう、あるいはまた与野党の間にもそういう点でいろいろ非難のやりとりなんということも出てくるのじゃないか、それに、そう申しては恐縮でございますけれども、先方の解釈で言えば、鈴木農林大臣はやはり水産関係に非常に密接ないままでの経験を持っておられる大臣でありますから、したがって水産関係者からの突き上げにやはり農林大臣も抗し切れなくなるのじゃないか、そういうような推測を総合して出てきた。しかしながら、これに対してはわが方の一致団結というものが実によくでき、またいたずらに話をただまとめるというような形じゃなくて、幾たびか鈴木大臣も引き返してこられた、またそういう決意で行くんだという点について強力な決断を総理も下された、この間親書の発出というようなこととも相まってこういう譲歩が初めてかち取られたんじゃないかというふうに私も評価しているわけでございます。にもかかわらず、先ほど来いろいろの委員諸君の質問を見ておりますというと、領土問題の解決の将来に支障を来さないようにこの上ともひとつ十分の措置を講じてくれということを言っているのは、ある意味では国民の声でもあろうかと思います。外交で苦労してきた者がわかるというだけじゃいけない、そこにはいろいろな国民感情の問題もあろうか、こう思いますので、この点については今後ともひとつ十分になし得る措置を講じていただきたい、これが第一点でございます。 と同時に、ただいま申し上げましたように、ここまでにいったのは、わが方の足元が一致団結、協力というものを保持する点について、特に政府としても意を用いられ、総理としても特にその点に意を用いられた結果でありますけれども、この点は今後ソ日条約というものをやるについても、あるいは今後の長期協定をやるについても、あるいはまた非常に盛り上がってきているところの領土問題というものに対するわが方の政策、国論というものの範囲について固めていくという上からも私は非常に必要な点だ、こう思うので、今後ともこの点についてはひとつ格別の意を用いてやっていただきたいということをこの機会に重ねて要望しておきたいと思いますが、重要な点でもございますので、ひとつ総理の御所見を御披瀝お願いいたしたいと思います。
○福田内閣総理大臣 今回の日ソ漁業暫定交渉はこれはなかなか紆余曲折がありましたことは御承知のとおりであり、これはひょっとすると決裂かなと思った瞬間もあるくらいなむずかしい交渉であったわけであります。それが、とにかくわが国の領土主張、これはいささかも傷つけることなく協定し得たこと、これは私は超党派の御支援、国民挙げての御激励、特に漁業関係者が歯を食いしばっても領土の問題については譲るなという御協力があったそのたまものである、こういうふうに考え、感謝をいたしておりますが、今後とも、国民的な支援というものを背景といたしまして、わが国の国益を踏まえて、欠くるところない交渉をいたしてみたいという決意でございます。 〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕
○山田(久)委員 今回の漁業交渉のむずかしさというものは、結局この二百海里時代というものの基本的な性格というものと結びついております。これはソ連ばかりじゃない、二百海里の性格というものは、基本的に沿岸諸国というものが排他的な漁業権を行使しよう、こういうことに結びついているものでございますので、これは、いずれの国にとってもこの問題の将来というものはそう楽観を許さない、わが漁業に対して大変大きな課題を与えるものだと考えております。特にソ連は、いろいろな国内事情等とも関連いたしまして、今回自身もすでに非常に渋い漁獲高の表示ということで、この点においてはわが政府も非常に不満に思っているわけでございますけれども、将来の見通しというものはもっと渋いということで、これはもう抽象論じゃなくて、名実ともに二百海里の新しい漁業というものをここに育てていくという決意でいかなければならないし、またこの決意が充実することがソ連に対するあるいは外に対する 一つの圧力として外交の裏づけになっていくのだ、私はこう考えているわけでございます。この点については、漁業外交とともに、国内の二百海里時代の新しい水産対策ということで、不退転の決意を持って対策を講じていただきたい、この点を希望しておきたいと思いますので、重ねてこの点についての総理の御所見をひとつ御表示いただきたいと思います。
○福田内閣総理大臣 ただいまの山田さんの御所見まことにごもっともでございます。そのような方向で最善を尽くしてみたい、かように考えます。
○山田(久)委員 時間が来たので、これで私の質問を終わります。
○竹内委員長 これにて本件に対する質疑は終了いたしました。 —————————————
○竹内委員長 これより本件に対する討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○竹内委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。 ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○竹内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ————————————— 〔報告書は附録に掲載〕 ————◇—————
○竹内委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。 この際、日ソ漁業交渉等に関する件について決議をいたしたいと存じます。 本件に関しましては、各党間におきまして協議を願っておりましたが、その協議が調い、案文がまとまりました。 便宜、委員長から案文を朗読いたし、その趣旨の説明にかえたいと思います。 日ソ漁業交渉等に関する件(案) 政府は、 今般の日ソ漁業暫定協定の締結が、歯舞、色丹および国後、択捉等の北方領土に対する我が国の領有権の主張を何等さまたげないとの立場に立つて今後次の諸点に留意するよう要望する。 第一 北方領土返還 我が国固有の領土である歯舞、色丹および国後、択捉等の北方領土は、未解決のまま現在に至つている。 よつて政府は、ソ連邦政府との間に領土問題を含む平和条約締結に関する交渉を行いこれら諸島を我が国に復帰せしめるよう最善の努力を払うこと。 第二 日ソ漁業交渉 一、ソ日漁業暫定協定をすみやかに締結するとともに、日ソ漁業基本協定を通じ、安定した日ソ間の漁業関係を確立すること。 二、協定交渉にあたつて、我が国の二百海里漁業水域法は北方水域に及ぶことを明確にすること。 三、我が国の領海十二海里内においては、外国漁船の操業を認めないこと。 第三 救済措置 日ソ漁業暫定協定の実施に伴い影響を受ける関係者に対し万全の救済措置を講ずること。 右決議する。 ただいま読み上げました案文を本委員会の決議とするに賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○竹内委員長 起立総員。よって、本件は本委員会の決議とすることに決しました。 この際、鳩山外務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。鳩山外務大臣。
○鳩山国務大臣 日ソ漁業暫定協定につき、本外務委員会の御承認をいただきましたことを厚く御礼申し上げます。 この協定の審議に当たり、あらゆる角度から熱心な御議論を尽くされました各位の御努力に敬意を表します。 ただいま採択されました決議につきましては、本件決議が委員会の全会一致をもって採択されたことを十分踏まえて、今後の諸問題に対処してまいりたいと考えます。 ありがとうございました。
○竹内委員長 お諮りいたします。 本決議の議長に対する報告及び関係各方面に対する参考送付等の取り扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○竹内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 次回は、来る八日水曜日午前十時三十分理事会、午前十一時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後五時四十三分散会