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80回国会衆議院1977/05/20

外務委員会 第19号

発言数
152
登壇者
23
会派数
4
開催日
1977/05/20

会議録

竹内黎一自由民主党

○竹内委員長 これより会議を開きます。  核兵器の不拡散に関する条約第三条1及び4の規定の実施に関する日本国政府と国際原子力機関との間の協定の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とルーマニア社会主義共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とブラジル合衆国との間の条約を修正補足する議定書の締結について承認を求めるの件、千九百七十一年七月二十四日にパリで改正された万国著作権条約及び関係諸議定書の締結について承認を求めるの件、子に対する扶養義務の準拠法に関する条約の締結について承認を求めるの件、税関における物品の評価に関する条約の改正の受諾について承認を求めるの件、がん原性物質及びがん原性因子による職業性障害の防止及び管理に関する条約(第百三十九号)の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。  まず、政府より順次提案理由の説明を聴取いたします。外務大臣鳩山威一郎君。     —————————————  核兵器の不拡散に関する条約第三条1及び4の規定の実施に関する日本国政府と国際原子力機関との間の協定の締結について承認を求めるの件  所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とルーマニア社会主義共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件  所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とブラジル合衆国との間の条約を修正補足する議定書の締結について承認を求めるの件  千九百七十一年七月二十四日にパリで改正された万国著作権条約及び関係諸議定書の締結について承認を求めるの件  子に対する扶養義務の準拠法に関する条約の締結について承認を求めるの件  税関における物品の評価に関する条約の改正の受諾について承認を求めるの件  がん原性物質及びがん原性因子による職業性障害の防止及び管理に関する条約(第百三十九号)の締結について承認を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     —————————————

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 ただいま議題となりました核兵器の不拡散に関する条約第三条1及び4の規定の実施に関する日本国政府と国際原子力機関との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  政府は、一九七〇年二月三日核兵器の不拡散に関する条約(NPT)の署名に際し、わが国が同条約第三条に基づき国際原子力機関(IAEA)との間に締結する保障措置協定の内容は、他の国または国群がIAEAとの間に締結する協定の内容に比して、わが国にとり実質的に不利な取り扱いとなることがあってはならない旨を明らかにいたしました。政府は、かかる平等性の確保を最重点事項として、一九七二年六月以来、IAEAとの間で保障措置協定の締結のための交渉を行ってまいりましたが、このほどかかる平等性を確保した案文について最終的に合意を見たので、本年三月四日この協定に署名いたしました。  この協定は、前文、本文九十八条及び末文、並びに議定書十八条及び末文から成っておりまして、IAEAがわが国に保障措置を適用するに当たり、わが国の国内保障措置制度を利用すること、両者の保障措置活動を調整すること、わが国に最恵国待遇を与えること、商業上及び産業上の秘密を保護する措置をとること、合理的に保障措置を実施すること、二国間協定に基づく現行の保障措置の適用を停止すること等を内容としております。  現在わが国が使用しているほとんどすべての核物質は、米、英、加、仏、豪との二国間原子力協定に基づきIAEAの査察を受けておりますが、本協定に基づく保障措置は、原則としてIAEAがわが国による自主査察の一部に立ち会うこと及び自主査察を観察することにより実施されることになっているほか、商業上等の秘密の保護について十分配慮されることになっている等の点で合理化されており、この協定を締結することは、核兵器の拡散を防止する見地及びわが国の原子力の平和利用促進の見地から多大の貢献をなすものと期待されます。  よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。  次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とルーマニア社会主義共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  政府は、ルーマニアとの間に所得に対する租税に関する二重課税の回避のための条約を締結するため、昭和五十年以来交渉を行いました結果、昭和五十一年二月十二日に東京において、わが方宮澤外務大臣と先方フィナンツ駐日大使との間でこの条約に署名を行った次第であります。  この条約は、第七十七回国会に提出されましたが継続審査となり、第七十八回国会におきまして審議未了となったものであります。  この条約は、本文二十八カ条から成り、その主な内容は、次のとおりであります。事業利得につきましては、一方の国の企業が相手国において支店等の恒久的施設を通じて事業を営む場合に限り、かつ、当該恒久的施設に帰属する利得に対してのみ相手国で課税できるものとし、船舶または航空機を国際運輸に運用することによって生ずる利得につきましては、相互に全額免税としております。投資所得に対する源泉地国での課税率につきましては、配当及び利子に関しては一〇%、使用料に関しては、文化的使用料にあっては一〇%、工業的使用料にあっては一五%を超えないものとしております。  この条約の締結によりまして、二重課税の回避の制度を通じ、両国間の経済、技術及び文化の面での交流は、一層促進されるものと期待されます。  よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。  次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とブラジル合衆国との間の条約を修正補足する議定書の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  わが国とブラジルとの間には、昭和四十二年一月二十四日に署名された所得に対する租税に関する二重課税の回避のための条約が締結されていますが、近年ブラジルが行いました税制改正を考慮に入れるとともに両国間の二重課税回避の制度の一層の整備を図るため、政府は、この条約を修正補足する議定書の締結について交渉を行いました結果、昭和五十一年三月二十三日に東京において、わが方宮澤外務大臣とブラジル側カバール駐日大使との間でこの議定書に署名を行った次第であります。  この議定書は、第七十七回国会に提出されましたが継続審査となり、第七十八回国会におきまして審議未了となったものであります。  この議定書は、本文六カ条から成り、これによる主な修正補足は次のとおりであります。すなわち、投資所得たる配当、利子及び使用料に対する源泉地国での課税率につきまして、基本的には、現行の一〇%を一二・五%に改め、また、ブラジルにおける租税の減免等によるブラジルの経済開発を促進するための特別の奨励措置の拡充等を考慮に入れ、みなし税額控除に関する規定を整備したものであります。この議定書の締結によりまして、二重課税回避の制度が一層整備され、両国間の経済交流はさらに安定した基礎の上に進められるものと期待されます。  よって、ここに、この議定書の締結について御承認を求める次第であります。  次に、千九百七十一年七月二十四日にパリで改正された万国著作権条約及び関係諸議定書の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  万国著作権条約は、米州諸国のように著作権を保護する条件として納入、登録等の方式に従うことを要求する国とわが国や欧州諸国等のように著作権を無方式で保護する国との間の橋渡しを行うものとして一九五二年に作成されたものでありますが、このパリ改正条約は、開発途上国の文化的、社会的及び経済的発展の必要性を考慮して、翻訳権及び複製権に関して開発途上国のために特別の便宜を図る措置を講じたものであります。なお、現行条約に付属している無国籍者等の著作物に対する条約の適用に関する第一附属議定書及び国際連合等の国際機関に対する条約の適用に関する第二附属議定書は、そのままの形でこのパリ改正条約に引き継がれています。  わが国は、一九五六年に万国著作権条約及び関係諸議定書を締結しており、わが国がこのパリ改正条約及び関係諸議定書を締結することは、開発途上国との友好関係を促進する見地から、また、著作物の保護のための国際協力を推進する見地から有益であると考えられます。  よって、ここに、この条約及び関係諸議定書の締結について御承認を求める次第であります。  次に、子に対する扶養義務の準拠法に関する条約の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  渉外的な私法上の法律関係につきどの国の法律を適用すべきかを指定する国際私法が国によって異なっておりますため、同種の私法関係に係る紛争が国によって異なって処理される等の不合理が生じております。この不合理を除くため、ヘーグ国際私法会議は、一八九三年以来各種の法律関係について条約を採択し、国際私法の漸進的統一作業を続けております。同会議は、一九五六年十月に開催された第八回会期において、子に対する扶養義務の準拠法に関する条約を作成しました。この条約は一九六二年一月一日に発効しており、その締約国は、一九七七年二月現在、西ドイツ、フランス、イタリア等十二カ国であります。  この条約は、子に対する私法上の扶養義務に関し、原則として、子の常居所地の法律を適用することとして、各国に共通の国際私法の規則を定めるものであります。子の扶養の問題は、子の常居所地すなわち子が実際に居住する国の生活水準等に密接に関連しておりますことより、この条約の定める共通の規則は、子の保護の見地から妥当と認められます。  近時、わが国と諸外国との間の人的交流が盛んになり、これに伴い、わが国国民の関係する渉外的な親子間の扶養の問題が法律上の紛争となる事例が漸増する傾向にあることにかんがみまして、わが国がこの条約の締約国となりますことは、子の扶養に関し国際的に共通な規則を採用するとの見地から適切であるのみならず、国際私法の漸進的統一のための国際協力を進める上からも、きわめて望ましいことであると考えられます。  よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。  次に、税関における物品の評価に関する条約の改正の受諾について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  税関における物品の評価に関する条約は、価額を課税標準として関税を課する場合の価額の定義を定めることによって税関における物品の評価方式の統一を図り、もって国際貿易を容易にし、関税交渉及び外国貿易統計の比較を簡易化することを目的として一九五〇年に作成されたものであり、わが国は一九七二年にこれに加入いたしました。  現行条約は、CIF(運賃・保険料込み価格)評価方式を採用しているため、これと異なる評価方式をとっている豪州、カナダ、米国等は、条約に加入することができません。すなわち現行条約第二条によれば、締約政府は、条約の附属書Iの価額の定義を国内法令に組み入れる義務を負っており、同定義の第一条(2)(b)に従い、輸入物品の販売及び引き渡しに伴うすべての費用を価額に含めて評価を行うこととなっております。しかしながら、この改正により、条約に新規に加入する国に限り、輸出港から輸入港までの運賃及び保険料を価額から除くとすることが認められることとなります。  わが国がこの改正を受諾することは、豪州等の条約への加入を促進することにより、税関における物品の評価方式の国際的な統一へ寄与するとともに、国際貿易の円滑化にも資するものであり、世界貿易に大きな比重を占めるわが国にとってきわめて望ましいものであると考えられます。  よって、ここに、この改正の受諾について御承認を求める次第であります。  最後に、がん原性物質及びがん原性因子による職業性障害の防止及び管理に関する条約(第百三十九号)の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、一九七四年に国際労働機関の第五十九回総会で採択されたもので、その内容は、職業上労働者がさらされることが禁止され、または許可もしくは管理の対象となるがん原性物質及びがん原性因子の決定、がん原性物質及びがん原性因子の有害性の一層低いものへの代替、労働者に対する保護措置及び適当な記録制度の確立、労働者に対する情報の提供、健康診断の実施等について規定したものであります。  この条約の規定は、わが国においては、労働安全衛生法及びこれに基づく政省令並びに他の法令により充足されているところであります。この条約を締結することは、わが国における労働者の健康を促進する上からも、また労働分野における国際協調を推進する上からも有意義であると考えられます。  よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。  以上七件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。

竹内黎一自由民主党

○竹内委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。     —————————————

竹内黎一自由民主党

○竹内委員長 ただいま議題となっております各件のうち、核兵器の不拡散に関する条約第三条1及び4の規定の実施に関する日本国政府と国際原子力機関との間の協定の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とルーマニア社会主義共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とブラジル合衆国との間の条約を修正補足する議定書の締結について承認を求めるの件に対する質疑は後刻に譲ることとし、参議院送付にかかる四件に追加して、アメリカ合衆国の地先沖合における漁業に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件、経済協力に関する日本国とモンゴル人民共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題とし、六件について審査を続けます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡部一郎君。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 アメリカ合衆国の地先沖合における漁業に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定につきまして、先日、質疑の途中、六項目の質問につきお答えをいただいたわけでございますが、不十分のため政府側で見解を調整され、本日お答えをいただくことになっているわけでございますので、それらに対する御答弁を一括して、質問、答えを整足された上、お述べいただきますようお願いをいたします。

山崎敏夫外務省アメリカ局長

○山崎政府委員 五月十三日の外務委員会におきまして渡部一郎委員から日米漁業協定に関していろいろ御質問がございましたが、この点に関して政府側で見解を取りまとめまして、ここで一括してお答えを申し上げます。  御質問の第一は、米国の二百海里水域は具体的にどのようにして線引きをするのか、これについて国際協定を結ぶことを検討してはどうか、また統一的に位置が正確にわかる方法を導入してはどうかという御質問でございました。  これに関してでございますが、まずアメリカの漁業保存水域となります二百海里水域の設定につきましては、協定第二条の一にその規定があるわけでございますが、これは米国の国内法、つまり一九七六年漁業保存管理法のことでございますが、この国内法の規定に基づくものでございます。この距岸二百海里の測定に当たりましては、海図作製上最も正確と言われておりますいわゆるジオデティックライン、これは地球の楕円面を最短に結ぶラインでございますが、このジオデティックラインを用いて測定されておりまして、具体的にはフェデラルレジスターと呼ばれます三月七日付の米国政府官報にその詳細が緯度経度を示して発表されております。したがいまして、アメリカの二百海里水域の外縁の線につきましてはこれを尊重すべきものと考えておる次第でございます。  なお、この詳細を記入しました海図に関しましては、目下アメリカ側において作製中と承知しておりますが、これを入手したい旨、かねてアメリカ側には申し入れてございます。したがいまして、これを入手次第、日本の関係漁船にも配付したいと考えておる次第でございます。  次に、ジオデティックラインを使用する方法はアメリカ、カナダでも用いられておりまして、技術的には最も正確なものと言われております。この面での統一のための国際協定を結ぶといった話はこれまでのところ出ておりません。  それぞれの船の位置の測定につきまして、日本側とアメリカ側との間に誤差が生じないように統一的な測定方法を採用すべきではないかという点でございますが、アメリカ側は将来は米国国内法に規定されているようなトランスポンダー装置、これは自動的に位置を知らせる装置でございますが、この装置を各船に装備して人工衛星によって位置測定を行う方法を採用したい旨先方から打診があったのでございます。これに対しましてわが方といたしましては、その趣旨には反対ではありませんが、漁船の財政的負担が過大にならないような方法によりたい旨を申し述べまして、アメリカ側もさしあたりわが国漁船についてはロラン等の設置で問題はないというふうに言っておるわけでございます。したがいまして、目下出漁中のわが国漁船は、これらのロラン等の装置を使用してその位置を測定して、前に述べましたアメリカ側が官報で発表した緯度経度で示したラインを守っておりまして、この点はアメリカ側も十分承知しております。  次に第二の御質問として、いままでわが国の漁船は、漁獲したスケトウダラのうち、以前は一メートル以下、最近は七十センチメートル以下のものは海に捨てているようだが、今後はそういうものも捨てないで活用すべきではないかという御質問がございました。  この点に関しましては、ミール製造設備等を持ちません小型船の場合にありましては、御指摘のとおりかつて小型の魚を捨てる場合もあったというふうに聞いております。しかしながら最近におきましては、資源の有効利用を図るために漁獲したすべての魚を完全利用するように、政府としても関係業界を強く指導している次第でございます。  第三の御質問として、救難代金の支払い等のためアメリカの漁港に、たとえば領事館を補佐してこれらを専門的に行う漁業関係法人のようなものを設置してはどうかという点がございました。  この点に関しましては、米国の二百海里法の施行に伴って、アメリカの沿岸水域で操業するわが国の漁船につきましては、この協定に基づき各種の申請書類の提出、各種の情報の連絡、通知、入漁料の支払い、その他いろいろの手続きを行う必要がございます。これらの業務は在外公館では処理し切れないものが多いので、米国についてはワシントン及びアンカレッジにこういう業務を処理させるために、大日本水産会に助成金を出しまして、同会の駐在員を昭和五十二年度から配置して、漁業界の便宜に供することにしていると承知しております。なお、御指摘のありました救難代金支払い等の業務についても、これらの駐在員を通じて行わせることになると承知しております。  御質問の第四番目として、来年以降実質的に米国各地域の地域管理委員会が漁獲量を実際上決めることになるので、だんだん対日割り当て量は減ってくるのではないか。また入漁料も大幅に上がるのではないか。また漁獲割り当て量が減った場合の国内措置はどうするのかという御質問がございました。  この点につきましては、対日割り当て量を決める基礎となる総漁獲可能量を米国としてもそう恣意的に決めてよいというわけではございません。その決定に当たりましては、アメリカは入手可能な最良の科学的証拠を基礎とするほかに、資源の最適生産を継続的に達成するために、魚種の相互依存関係、国際的に受け入れられている基準等の関連要素等を考慮すべきことがこの協定の第四条に規定されております。さらに第三条には、この協定の実施に関して、定期的に日米両国政府間で協議する旨が規定されております。したがいまして、実際上は十分わが方の見解が反映された漁獲量、入漁料が決定されることになると考えております。  いわゆる入漁料につきましては、漁獲量と同様、今後毎年決定されるわけでございますが、政府としては、わが国漁船の漁業実態を十分配慮した妥当な水準に決定されるよう、米側と鋭意交渉を行っていく所存でございます。  個々のケースにおきまして、漁獲量の減少等規制の強化によって、減船等を余儀なくされる場合には、関係漁業者と十分協議をしながら、政府としては減船対策、離職者の就職対策の推進等の総合的な対策を漁業の実態に即して講じて、漁業界に混乱を生じさせないように対処していきたいと考えております。  第五番目に、水産庁は、アメリカのコーストガードとの連絡を密にして、違反事件等を未然に防ぐようにすべきではないかという点でございます。  アメリカとカナダの二百海里の漁業水域内のわが国漁船の操業に当たりましては、政府としては漁業者に対して関係法規を厳格に守るよう強く指導するとともに、コーストガードとも緊密な連絡を保ちながら、違反事件の発生防止に努めております。  また今般、米側よりその漁業取り締まりに関する実体的な意見交換を行いたいという旨の申し入れがありまして、今月の十日、十一日の両日にわたりまして、アメリカのシアトルにおきまして取り締まり会議が開催されました。この会議には水産庁及びアンカレッジにありますわが領事館等の職員のほか、業界代表も参加して、わが国漁業の操業の実態について理解を求めるとともに、違反の未然防止という観点から、双方の意思疎通に努めた次第でございます。  具体的に事件が起きた場合にどうなるかという点でございますが、この場合は現場のコーストガードから商務省の水産局に連絡があり、さらに商務省から国務省への通報が行われ、国務省漁業部からわが方の大使館に連絡があります。大使館から本省に電報がありまして、本省より水産庁の関係課へ連絡することとなっております。いろいろなチャンネルを通ることにはなっておりますが、その間はきわめて敏速にやるように、われわれとしても従来から努力している次第でございます。  さらに緊急の処理ないし連絡を要する場合には、必要に応じて適宜、たとえばアンカレッジにあります領事館と現場のコーストガードとが話し合うということもある次第でございます。  最後に、コーストガードに比較して海上保安庁の体制が余りにも貧弱ではないかという御質問がございましたが、この点に関しましては海上保安庁より御答弁いただきたいと存じます。

間孝海上保安庁次長

○間政府委員 海上保安庁に対する御質問は、海上保安庁の体制の問題でございまして、特に領海法あるいは漁業水域法のような新しい事態に対して、海上保安庁の体制を大幅に強化すべきではないか、こういう御趣旨の御質問であったというふうに理解をいたしております。  海上保安庁は、すでに先生御承知と存じますが、現在巡視船艇が三百十隻、航空機が三十四機ございます。これはいまお話のございましたコーストガードと比べますと、船艇の数の点ではほぼ同じ程度でございます。ただコーストガードの場合には大型船が多いというのが特徴でございまして、海上保安庁は従来比較的沿岸の近いところを対象に仕事をしてまいりましたので、巡視船の中でも千トンクラス以上の、いわゆる遠洋に出られるような船は現在十隻でございまして、大部分が沿岸に比較的近いところを仕事の範囲としておる船でございます。この辺が船の点についてはコーストガードと違うところでございます。  ただし、最も違いますのは航空機の面でございます。航空機は現在海上保安庁は三十四機でございますが、コーストガードの場合は百三十機程度保有いたしております。したがいまして、この面では約四倍程度の力の差があるわけでございます。また人員の面では、コーストガードは海上保安庁の約三倍でございます。  こういうコーストガードとの比較でございますが、そこで海上保安庁といたしましては、最近の領海の拡大あるいは漁業水域の設定、こういう新しい事態を迎えまして、ぜひともその体制の強化を図らなければならないということを考えております。実は私どもはすでに昨年、新海洋法の制定ということを将来に見まして、これに対して体制の強化を図る必要があるということから、五十二年度の予算におきまして、特に運輸省といたしましても、海上保安庁の体制の強化は、国鉄問題と並んでの最重点事項に取り上げまして予算要求いたしたわけでございます。その結果船艇、航空機の整備費といたしまして百六億で、金額的にはそう大きな額ではございませんでしたけれども、前年度に比較いたしますと一六六・六%という、ほかの一般の予算に比べましたらば大幅な増が見られたわけでございます。  その内容といたしましては、ヘリコプターを搭載する巡視船が一隻、YS11型の大型の航空機が一機、三十メートル型三十ノットの高速巡視艇が二隻、中型のヘリコプター一隻、これが新しく増強として認められまして、そのほかに三百五十トンクラスの巡視船五隻、これは老朽の巡視船の代替の建造が認められた。これらが主たる内容となっているわけでございます。  しかし、この五十二年度の予算は、実は私どもが当初考えておりましたのは、将来の海洋新秩序を迎えての体制整備ということで考えておったわけでございますけれども、まだ二百海里の漁業水域を日本がことしから実施するということまでは考えていなかったわけでございます。したがいまして、新しい漁業水域法の実施という新しい事態に対処いたしまして、われわれといたしましては体制の整備計画をもう一度練り直しまして、そうして早急に強化をしなければならないと考えております。  その作業は、現在鋭意行っておるわけでございまして、まだこれを数字的に申し上げる段階にはございませんけれども、この問題はすでに各委員会におきまして、運輸大臣も海上保安庁の体制整備については万全の措置を講じるということをお答えになっておられますし、総理も海上保安庁の体制整備を図るということをお答えになっておられるところでございますので、こういう政府の大きな一つの方針に沿いまして、海上保安庁としては目下最大の努力を払ってこの整備計画の作成の作業を行っている段階でございます。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 いま六問をお答えいただいたのでありますが、多少補足させていただきます。  まず第一問は、二百海里の問題でございましたが、このジオデティックラインを使用する方法は、アメリカ、カナダ等でも用いていて正確なものである。それは球面幾何学的には確かに一番正確なものでございますが、現実にこれを実施いたしますと、アメリカ側の公報によれば、緯度経度線を表示することによって、ぎざぎざのラインでそれを表示しているはずであります。そのぎざぎざのラインはジオデティックラインによる二百海里線の外側にあるのか、内側にあるのか、その図上に載っておるのか、そしてまたその検討されている、わが国に対して公表されている緯度経度線はわが国側のどこの部局でそれをチェックなさったのか。また、わが国の漁船にはその緯度経度線が手に入り次第配付すると述べてあるにもかかわらず、後の方では米側が官報で発表した緯度経度を現に遵守していると書いてありまして、手に入らないものを遵守していると書いてあるのは論理的に矛盾しているわけでありますが、そこのところをちゃんとそろえて御答弁いただきたいと存じます。

山崎敏夫外務省アメリカ局長

○山崎政府委員 御質問の点に全部私自身からちょっとお答えいたしかねるわけでございます。  一番最後にお述べになりました点でございますが、海図を入手していないのに緯度経度で示したラインをどうして入手しているのかということでございますが、最初に申し上げましたように、官報で緯度経度はわかっておりますので、それを直線でつなげたラインによってわれわれとしてはそのラインを知り得るわけでございます。正確なところはやはり海図を入手する必要があるとは思いますが、緯度経度を直線でつなげることによって一応のラインはわかる。その辺は少し安全を見て行動すれば二百海里の線を超えることはないであろうというふうに考えております。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 アメリカ局長さん、ここには、最後のところは「米側が官報で発表した緯度経度を遵守しており、」と書いてあるでしょう。ところが前の方には「日本の関係漁船にも配付したいと考えている。」こうなっていますでしょう。「配付したいと考えている」程度ならば、まだわからないんじゃないですか。緯度経度をそのまま生の数字で漁船に渡してあるという意味ですか、これは。

米澤邦男水産庁海洋漁業部審議官

○米澤説明員 お答え申し上げます。  緯度経度は米国の官報に出ておりまして、したがいまして、その緯度経度は各漁船に通報いたして、自分がその緯度経度の内側にいるか外側にいるかということは常にわかるように指導をいたしておるということでございます。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 これはやかましく詰めますとぼろが出るだろうと思いますから、私申し上げますが、今度日ソ漁業もあることですから、こういうときもうちょっときちんと答弁ができるように、関係条約を出されるときはそれがちゃんとそろっていることを明らかにされるように希望しておきます。  それから、アメリカ局長言われたように、確かに大まかにそれらの線にひっかからないようにかなり手前で適当に漁船の方はやっておられるわけですね。あの御答弁は真相をついているのだと思うのですけれども、はっきりしたところはよくわからないわけですから、その辺もしっかり詰められまして、わが国漁民によけいな負担をかけられないように希望します。数学的にきちっと質問するとこの問題は恐らく答弁できないだろうと思いますから私は言いませんけれども、そこのところは許容したわけでは決してなくて、この法案の審査は急いでいるわけですから、その急いでいる事情を考慮してこちらも物を言っておるわけですから、今後はこういう法案を出すときに肝心なところがあいまいでないようにぜひともしていただきたい。これについては私は質問を省略しているわけですから、大臣から御決意を承ってこの点は終わりにしようと思います。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 渡部委員の御指摘のとおり、現実にこの船舶の位置を知る、誤差なく知るということは大変むずかしいことであろうと思いますし、それらの点につきましてなお一層検討させていただきたいと思います。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 それから海上保安庁の問題でございますが、先日より領海十二海里線の拡大あるいは漁業専管水域二百海里の設定等で、海上保安庁が当たらなければならない救難管理業務はきわめて大拡大をされているわけであります。運輸省最高幹部の方と懇談した際、一体どれぐらいのものを設定していいか成算もつかないぐらいいままでのレベルと違う装備あるいはシステムが必要である、まことに困っているのだと申されておりましたけれども、私はその言葉は真相を言うものだと存じます。現在の予算の枠の中でやるという意味では現在の装備が全く不十分であるとは言えないと思いますけれども、これほど大幅に対応業務が急速な勢いで広がった以上、これに見合う装備、システムが必要なことは言うまでもないと思います。  すでに昔から言われていることでありますが、北洋海域における漁船団が遭難した場合は、救難信号を発してもほとんどむだであると言われてきました。一年の半分は氷に閉ざされておる海で遭難する。遭難信号を出して、だれかがキャッチしてくれたとしても巡視艇が駆けつけても数日かかる、僚船が駆けつけても何時間もかかるという中では、救難業務それ自体がナンセンスである。したがって、飛行機を飛ばして救わなければならないのに、飛行機の代金を惜しむために北洋海域で何千という漁民が今日まで犠牲になってきたわけであります。こういうわが国国民、しかも汗を流し血を流しながら北洋漁場を開発した漁民に対して、わが国は余りにもつれなかったと言わざるを得ないのであります。  しかも、その状況は今日も続いておる。巡視艇は北海道においてもほんの数隻というような状況でありまして、とうてい海難救護とかあるいは管理とかいう意味には不十分であります。したがいまして、ヘリコプター搭載艦とかあるいは各種航空機を搭載する艦船を初めとする大幅な増強強化というものが必要であり、かつ、ただいまもさりげなく言われましたけれども、沿岸以外に出れる船はわずか十数隻しかないということでありますが、この広大な海面を十隻の船で処理しようというのは、当委員会室にノミが二匹はねているぐらいの程度のものでございましょう。それではむしろ何の意味もないと言っていいようなレベルであります。したがって、これにつきましては前年度の二〇%増しというような従来大蔵省がとってきたような増強計画ではとうてい処理し得ないことは当然であります。  また、そういう基本的な問題についての合意なく関係省庁にただ検討を命ずれば、海上保安庁としては前年より飛行機を二台増しとか、ヘリコプターを一機増しとか、船を二隻増しとかという程度でがまんしなければならぬことも、これは事実でございましょう。したがいまして、これは長く大蔵省の御担当をされておられた現外相に対し、閣僚としてこの問題をお考えをいただいておきたいと私は思うわけであります。  すなわち、海上保安庁のシステム、装備等は大増強を必要とする、そしてその大増強しなければならぬという合意を早く閣議において成立させなければならない。そして、その増強の規模を十倍、二十倍、三十倍というような極端なレベルで必要なのでありますから、そういうレベルであるということを大筋として国の施策として認めなければならない。それを認めてから作業をしたまえとかあるいは協議せよとか、おろす必要があるだろうと思うわけであります。今日までの政府御答弁は、そういう意味で不十分であり、そういう意味で将来の視点を欠くものであります。  したがって、私はここは閣僚を代表されて、外務大臣は外務省所管事項を扱われる国務大臣ではありますが、閣議出席者としてお答えをいただきたいのでありまして、それに対する対策、適当な施策を実施していただきたいと思いまして、御答弁を求めたいと思っておるわけであります。  すなわち、海上保安庁の大幅な強化の必要性について、また根本的にどう考えられるか。そしてまた、それを政府の基本的方針として樹立するためにどういう行動をとられるか。そしてその基本的方針が定まれば急速にその作業を関係各省庁に命ぜられるべきだと思いますが、その点どうお考えか、お答えをいただきたいと存じます。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 海上保安庁の守備範囲と申しますか、領海は十二海里になり、また引き続いて二百海里の漁業水域ができる、こういうことになりまして、これら両法案の際に閣議におきましても、この点はまさに海上保安庁の能力というものを飛躍的に拡大しなければならない、このようなお話は当然所管大臣からも出ました。また、大蔵大臣に対しましても閣議の席上で強い発言があり、また、総理といたしましても今後一生懸命やろう、こういう経過でございます。  したがいまして、私といたしましても当然のことながら、私でお役に立つ限りにおきましてそれは大いに努力をさせていただきたいと思いますが、内閣全体といたしましてこの問題には優先的に取り組まなければならない。そしてその際の話といたしまして、この大型船につきましてもやはり建造期間が相当かかるわけでございますから、速急にできれば補正の段階からそのような計画が実施できるような体制をとりたいというようなこともその際話があったわけでございまして、その点につきまして政府として真剣に取り組まなければいけない、そういう姿勢にあるわけでございます。なお努力をさせていただきたいと思います。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 いまの御答弁で、総括的に伺えばそれはそれなんですけれども、大型船を補正の段階から考慮するというだけでなくて、足りなければ購入することも含めてお考えにならなければいかぬ段階ではないか。私はむしろ問題の緊急性から考えると、そういう点も十分御配慮あってしかるべきだろうと一つは思います。  もう一つは、航空機に対する配慮というものはこれは船よりもさらに緊急性を要する。人員、機材の訓練からかからなければならないでしょうから、さらに大きな必要性を感ずるだろうと思います。  またその人員、機材は、船を動かすというだけじゃなくて、ソビエトの漁船団との交渉の際、海上保安庁でロシア語をしゃべれる人が二人しかいなかったなどという新聞報道も行われているわけでありますから、内容的に充実した人を急速にそろえなければならぬだろうと思います。  また一番肝心かなめなことは、どのくらいの規模にするかという目安を早くつける必要がある。いまその目安がついていない。ともかく飛躍的拡大と言われた言葉の語感は大変結構ですけれども、感じは非常にいいけれども、それは流行歌みたいなものであって、感じはいいが中身がどの程度の規模になるかという現実を表示することがなければ、行政にはなり得ないだろう。あえて踏み込んでお願いするわけでありますが、その辺を早急に結着をつけられて表示されることを、特に総理にも御伝達をいただき、閣議としても御決定をいただきたい。私は強く申し上げるのですが、いかがでございますか。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 御趣旨は全く同感でございまして、いま海上保安庁当局におきまして鋭意作業中と承っております。御趣旨のとおり、私といたしましても側面から協力をいたす所存でございます。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 終わります。

竹内黎一自由民主党

○竹内委員長 次に、井上一成君。

井上一成日本社会党

○井上(一)委員 がん原性物質及びがん原性因子による職業性障害の防止及び管理に関する条約の審議に当たって、私は冒頭に外務大臣にその御決意を承りたい。  先ほどの趣旨説明の中でも、勤労国民大衆の健康を増進のためにという御発言があったわけであります。なかんずく国際的条約の批准に当たっては、勤労国民大衆の健康増進を第一に置いた中で最大の努力をなされるお考えがおありであるかどうか、まず冒頭に聞かしていただきたいと思います。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 勤労国民の健康の保持、安全の保持は最も大切な問題であると心得て取り組みたいと思います。

井上一成日本社会党

○井上(一)委員 そこで、すでにILO総会で採択された条約が百五十件に上るわけであります。百四十七件と私は記憶しておるのですけれども、その百四十七件の中でわが国は何件批准をしたのか。そして、わが国がいわゆる先進国の仲間だという、世界的に置かれた立場からして、他の先進国、たとえばイギリスだとか、フランスだとか、西ドイツ、それらの国はどのような状態であるのかひとつ聞かせていただきたいと思います。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 ILO条約の批准数は、ことしの一月一日現在におきまして、日本は三十四でありまして、ほかの国のことを申し上げますと、フランスが九十七、イタリア七十八、英国六十九、西ドイツ六十、ソ連四十、米国七、カナダ二十六、インド三十二というような状況でございます。

井上一成日本社会党

○井上(一)委員 いまのお答えの中でも明確になったように、わが国は先進国の中では非常におくれをとっているわけです。とりわけこの百三十九号審議に当たって、ILO条約百五号について政府、外務省はどういうふうに考えられていらっしゃるのか。この百五号は現在まだ批准をしていないわけであります。なぜ批准をしないのか、あるいは何が批准をすることの妨げになっておるのかを聞かせていただきたいと思います。

村上和夫外務省国際連合局外務参事官

○村上説明員 お答え申し上げます。  百五号と申しますのは強制労働の廃止に関する条約でございますが、これにつきまして、禁止されております強制労働というものが具体的にどういうものであるかということにつきまして解釈上いろいろな疑義がございますので、さらにこの疑義について検討を加えているわけでございます。政府といたしましてもこの検討をできるだけ早く進めたいというふうに考えておるわけでございます。

井上一成日本社会党

○井上(一)委員 この百五号と官公労働者のいわゆる労働基本権とのかかわり合いはあるのですか。

岡部晃三労働省労政局労働法規課長

○岡部説明員 お答え申し上げます。  この強制労働廃止条約とストライキ権との問題につきましては、一九六八年の総合調査、ILOの専門家委員会の調査でございますが、その八十八項に「同盟罷業一般の問題を規制する文書ではないことに留意しなければならない。」とございますように、この条約はストライキ権一般の問題ではないわけでございます。この条約は特定の問題、すなわちストライキの結果強制労働に付される、わが国の場合はそれによってたとえば懲役刑が科されて、その監獄労働との関係で強制労働廃止条約との関係が出てくるわけでございます。この問題につきましては、わが国では争議行為に際しましてなされたいろいろな行為、特に公務員等の公共部門における争議行為につきまして指導的な役割りを果たした行為が刑罰法規に触れる場合があるわけでございますが、このようなわが国の法制が、ストライキに参加したことに対する制裁としての強制労働を禁止する百五号条約の一条に抵触するかどうかということにつきましては、この条約の解釈がまだ十分明らかではございません。したがいまして、この点が明らかになるのを待ちながら、引き続き検討してまいりたいと考えておる次第でございます。

井上一成日本社会党

○井上(一)委員 この百五号については九十一カ国がすでに批准をしているわけなんです。その条約をなぜ日本が批准できないのか。いまのお答えでは、ストライキ権とは別な形である、ストライキを扇動した者に対するいわゆる体刑的なものに対してのように受けとめたわけでありますけれども、私は労働基本権の確立という立場から考えても、当然百五号を批准することが労働者大衆の権利を守ることになるのではないか、このように考えるわけです。  重ねて外務大臣に。私が再三事あるごとに申し上げるように、守るべきは平和と人権である。その基本的人権にかかわるこの国際条約だと私は思うのです。労働者にとっては非常に大切な取り決めなのであります。だからいま審議をしております百三十九号についても、その中身の議論はこれからいたしますけれども、私はその必要性を理解いたしております。しかし同時に、この百五号について日本が取り組む姿勢が余りにも消極的である。消極的というよりも、むしろ何ら取り組んでおらないというふうに理解をするのですが、いかがでございましょうか。外務大臣として、国際的なこの条約に対して、労働省あるいはその他の関係各省庁と前向きに今後取り組まれるのかどうか。その点のお考えをただしたいと思います。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 百五号条約は多数の国が批准をしておる、こういう中で日本が批准してないということは、わが国といたしまして、やはりこの批准に対しまして努力をいたすべきものと考えます。したがいまして、所管労働大臣の方と連絡をとりまして検討さしていただきたいと思います。

井上一成日本社会党

○井上(一)委員 いまの外務大臣のお答えで、早急にいわゆる労働基本権を確立さす上においても百五号の批准には取り組むというお答えがありましたので、了といたします。  さらに、いま審議に入りました百三十九号において、その第一条で、がん原性物質、がん原性因子は各国が決定することになっていると取り決められてあるわけであります。そしてまた前文では「がん原性物質及びがん原性因子からの保護に関する国際基準を確立することが望ましい」と述べられているわけなんです。これは私も国際基準を確立することが望ましい、そのような考えを持つわけでありますけれども、政府の見解はいかがでございましょうか。

村上和夫外務省国際連合局外務参事官

○村上説明員 ただいま御指摘のように第一条の第一項で、がん原性物質及びがん原性因子の決定は各国にゆだねられているわけでございますが、その結果、各国の間に、がん原性物質及びがん原性因子がどういうものであるかということについての認識に若干の開きが出てくることは当然予定されているところでございます。同時に第一条の第三項に、「1の決定を行うに当たっては、国際労働事務局によって設定される実施基準又は指針に含まれる」云々ということがございまして、この「実施基準又は指針」ということが、先ほど申し上げました各国の認識についての若干の開きをこの実施基準及び指針で調整するという役割りがここに読まれるというふうに解釈するわけでございます。

井上一成日本社会党

○井上(一)委員 いま第一条の三項の「実施基準又は指針」というお答えがあったわけですけれども、私のまず尋ねたのは、政府としてはどちらが望ましいのかということを聞いているんだから、現実にはこのような形をとらざるを得ないけれども、望ましいのはこういう方向だ——私みずからは私の考えを明確にしているんだから、政府が明確な考えを示さなければだめです。それが一つ。  それから、恐らくそこに御答弁があろうかと私も予想はしておりました。そこでさらに第一条についてお尋ねをしたいのだけれども、第一条の第一項の中にもいわゆる「がん原性物質及びがん原性因子を定期的に決定する。」という表現が使われておるわけです。これは具体的に「定期的」とはどういうことを指しておるのか。それからいまお答えになられたいわゆる「国際労働事務局によって設定される実施基準又は指針」これは指針はできているのかどうか、具体的にどのような言葉によってあるいはどのような数値によってこの指針が明確にされておるのかお答えをいただきたい。

山本秀夫労働省労働基準局安全衛生部長

○山本(秀)政府委員 お答えいたします。  「定期的に決定する。」ということの内容でございますが、これは年数を限定をいたしまして決定するということには決められておらないわけであります。やはりこの勧告にもございますが、できるだけ医学的なあるいは化学的な事実が発見され次第速やかにがん原性因子を決定をいたしましてこれに対応するところの措置をとるということが私ども趣旨だろうと思っておりますので、毎年専門家の方に御意見を伺いまして決めておりまして、すでに昭和五十年あるいは五十一年それぞれ一つずつ決定をいたしまして規制をしているところでございます。

村上和夫外務省国際連合局外務参事官

○村上説明員 先ほど労働省の方からも御説明ございましたように、「定期的に決定する。」という意味は、結局一番新しい情報を常に備えておくという趣旨からこのような字句がここにあるというふうに私たちは解釈するわけでございます。

石田均労働大臣官房国際労働課長

○石田説明員 ただいまの御質問でございますが、がん原性物質なり因子なりをどういうふうに具体的に決めるべきであるのか、きちんと書いた方がいいのか、いまの条約の方式が望ましいのか、方向としてどっちだというふうな御質問のように拝聴いたしたわけでございますが、私どもといたしますと、将来展望としては、確かに先生御指摘のようにはっきりとこの条約上具体的にがん原性物質はこれである、因子はこれであると決めるべきであるというふうに考えます。ただしかし、がんというものは、私どもの理解いたしますところでは非常にむずかしいものでございまして、一体何ががん原性物質であるのか、因子であるのか、非常に疑わしいもの、あるいは疑いがあるのではないかということで研究を進めておるもの、いろいろなものがございまして、現在の科学技術の発展段階におきましては、とても一義的に決めるわけにいかない。そこで現段階としてはこの案がやはり最善のものである、こういうふうに考えておるわけでございます。

井上一成日本社会党

○井上(一)委員 私の質問の趣旨を十分理解をしていただいて的確なお答えをいただかないと、やっぱり私の方も重複した質問をしなければならないようになるわけです。  それで、いまお答えの中では「指針」もあるいは「定期的」といっても、いわば発見された時点をとらえてそのようないわゆるがん原性物質あるいはがん原性因子を決定していくんだ、こういうことなんです。それじゃ、将来にわたっては私の考えについては望ましいということをお答えになったんですけれども、しかしまだできてはないけれども、何ががん原性物質であるのか、やっぱり一応の国際基準というものはあってしかるべきではなかろうか、こういうふうに私は考えるのですが、その点についてはいかがでございますか。

石田均労働大臣官房国際労働課長

○石田説明員 ただいまの御質問でございますが、世界的ながん原性物質なり何なりの基準があるかというお尋ねでございますけれども、現在のところ国際的な基準として確立したものはございません。     〔委員長退席、有馬委員長代理着席〕 各国に事実上任された状態で続いておるというのが現状でございます。

井上一成日本社会党

○井上(一)委員 それじゃ、この条約審議に当たって、わが国ではどのような基準——あるいは他の先進国との比較ができれば非常にありがたいわけですけれども、どのような基準をお考えになっていらっしゃるのか。

石田均労働大臣官房国際労働課長

○石田説明員 わが国におきましてどういうがん原性物質について規制をしているかということにつきましては、安全衛生部長の方から専門的な立場からお答えをいただきたいと思いますけれども、外国でどうなっておるかという点につきましてだけ簡単に申し上げます。  日本では規制物質が大体二十五ございまして、製造禁止をしておるものとか、許可を要するものとか、あるいは管理すべきものとしておるものとかいうふうに分かれております。イギリスは十四、アメリカについては十七、ソ連については七、西ドイツは現在のところ特に規制した物質はないというふうなことでございます。  以上でございます。

山本秀夫労働省労働基準局安全衛生部長

○山本(秀)政府委員 私どもは一応各国の医学的な文献、特に条約の前文にもございますが、国際がん研究機構のお出しになりました文書、これを基礎にいたしまして、信頼すべきわれわれの方のそれ以外の情報も総合勘案をいたしまして規制をしようということでございます。それでただいま二十五物質を規制をしておりますが、そのうちで人にがんが発生するというふうに考えておりますのは十四物質でございまして、あとは動物に発がんが見つかったというものの中から各国が規制をしておるというようなこと、あるいは先ほどの国際機関のデータを参考にしながら決めていっているわけでございます。

井上一成日本社会党

○井上(一)委員 第三条によりわが国は、がん原性物質、がん原性因子にさらされる危険から労働者を保護するためにどのような措置をとろうとしているのか、あるいはとっているのか、この点について聞かせてください。

山本秀夫労働省労働基準局安全衛生部長

○山本(秀)政府委員 お答えいたします。  がん原性物質をそのようにして取り上げをいたしまして、その毒性、発がん性の程度によりまして、またそのほか代替性がきくかどうかというようなことも参考にいたしまして、禁止してしかるべきものにつきましては禁止という措置を講じまして、現に五物質を禁止しております。それから通常の管理をしっかりやればよろしかろうという程度の、まあ、がん原性がどちらかといえば低い方でございますが、これにつきましては通常の管理をやる。それからその中間に属しまして、これはやや厳重に管理しなければならぬというものを許可制として、これが五物質でございます。  それの内容でございますが、やはり労働者ががん原性物質に暴露することをミニマムに抑える、できれば絶無にするということが必要でございますから、したがって、生産あるいは使用設備をクローズドシステムにするというような施設工学の領域から始まりまして、記録保存あるいは健康診断、環境測定というようなもろもろの規制をし、なおそのほかに、労働者教育がきわめて重要でございますので、教育に大いに力を入れる。また現場の監督者を選任をさせまして、その監督者が必要なことにつきましては十分な管理を進めるということに法制上しておるわけでございます。

井上一成日本社会党

○井上(一)委員 同じく三条の後段で「適当な記録の制度を確立することを確保する。」というふうに決められているのですけれども「適当な記録の制度」とは一体何なのか、少し具体的に明らかにしていただきたいと思うわけです。

山本秀夫労働省労働基準局安全衛生部長

○山本(秀)政府委員 がんはいま申したような手順で予防をするわけでございますが、万が一、あるいは過去にがん原性物質に暴露しておったというようなこともございますから、したがって、暴露記録というものを各個人別にきちっと長年保存する必要があろうということで、これは三十年の保存義務を課しております。  次に、そういう物質因子によりましての身体異常の記録というものを、これまた長年保存する必要があるということで、三十年の保存義務を課しておるのでございます。  この内容はいずれも省令できちっと様式が決められております。

井上一成日本社会党

○井上(一)委員 さらに第四条では、いわゆる危険にさらされた労働者あるいは危険にさらされるおそれのある労働者に対して、そのもたらす危険及びとられるべき措置に関する利用可能なすべての情報が提供されるように措置をしなければいけない、こういうふうに書かれているわけであります。そこで、現在のわが国では、この第四条の趣旨にかんがみどのような措置をとっていらっしゃるのか、お聞きをしたいと思うのです。

山本秀夫労働省労働基準局安全衛生部長

○山本(秀)政府委員 情報提供のことにつきましては三つの方法をとっております。  一つは、まず雇い入れの際に、この危険あるいは危険を予防するための手段につきまして労働者教育を義務づけております。  それから次に、このがん原性物質が流通するということもございますから、その流通過程におきまして、あるいは流通の先におきましてそのことを労働者あるいは使用者が十分承知しなければ予防の万全が期せられませんから、その物質を入れた容器に物質名あるいは生体に与える作用、それから予防手段というものを記載をさせております。  次に、がん原性物質というのは、全員とは言いませんが、職場の中でもがんにかかることがあるわけでありますから、そこでそのような注意事項を掲示させることにしております。  そのほかに、われわれは、がん原性物質を決めるという際には当然規則、政令で決めるわけでありますが、中央労働基準審議会は三者構成で、労働者側委員が出ておりますけれども、そこにも資料を十分に提供いたしまして御意見を聞き、規則化しているところでございます。  そのほか、われわれの方の外郭団体にはいろいろの教育資料を出版しているところがございますが、そこからもこの規制したものにつきまして、あるいは外国からの新しい情報というようなものを出版させ、労使にお見せしておるという現状でございます。

井上一成日本社会党

○井上(一)委員 現在、参議院で審議をされようとしている労働安全衛生法があるわけですけれども、その中に、化学物質の有害性の調査ということについての条文があるわけであります。私は、いま労働安全衛生法で審議されておる法律の中での化学物質というものは、いわゆる発がん性のある物、がんあるいはその他の非常に重度の健康障害を生ずるおそれのある化学物質というように理解をしているのですが、それでよろしゅうございますか。

中村正労働省労働基準局安全衛生部計画課長

○中村説明員 お答えいたします。  ただいま御審議いただいております安全衛生法の改正の化学物質につきましては、がん原性物質を解明しようということに主たるねらいがあることは確かでございます。

井上一成日本社会党

○井上(一)委員 いまのお答えで明確になったわけであります。全くすべてがイコールだとは限定はし得ないけれども、非常にそれにつながる、むしろ九九%も、あるいはひょっとしたらそれ以上、まあ一〇〇%以上はないのだけれども、それを含む意味でその物質の調査をするんだ、こういうことですね。そういう御見解ならば、今度は大変ここで私はこの百三十九号の四条というものは非常に評価をしたいと思うのです。ところが片面で、わが国の労働安全衛生法では、たとえば五十七条の二の五項ですか、あるいは五十七条の三の五項で守秘の義務が課せられているわけですね。これは非常に矛盾をしていると思うのです、同じわが国の法律をつくっていく上において。だから、これは全く矛盾きわまりない立法措置ではないか。だから、あえてここでお聞きをしたいのですが、この第四条については私は評価をする、こういう考えです。それにならって、いま参議院で御審議はされておるわけでありますけれども、もう一度労働安全衛生法の守秘義務条項というものは削除されるべきである、あるいは修正を加えるべきである、こういうふうに私は理解をするわけです。担当の政府委員からじかにお聞きをすることも一つの方法ですが、外務大臣いかがでございましょうか、このように国内法と国際的な条約と矛盾した場合、外務省がいま御提案になっている、いまわれわれが審議をしているこの法律は、第四条はわれわれ非常に高く評価をします。片側の国内法においては非常に守秘の義務が課せられて不十分である。そういうことについて外務大臣、率直な御意見を聞かしてください。いま全く矛盾をしているということは、労働省の方でも理解をしてもらえると思うのですけれども、矛盾をしていなければ、していないという点を私にわかるようにお答えをいただく。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 ただいま御指摘の点、私ちょっと労働安全衛生法でございますか、その守秘義務の点は知らなかったものでございまして、いまその点につきまして私ちょっと即答し得る能力を持っておりませんので、検討させていただきたいと思います。

井上一成日本社会党

○井上(一)委員 それじゃ外務大臣よくお聞きください。私が申し上げますことについて理解をいただけるかどうか。いま審議しておりますこのがん原性物質及びがん原性因子による職業性障害の防止及び管理に関する条約の第四条というものについては、私は非常に評価をしていいということです。いわゆる情報がすべて提供されるような措置をとるということなんです。片面、国内法ではありますけれども労働安全衛生法という法律がございまして、それの五十七条の二あるいは三、この労働安全衛生法というものは、いまお答えをいただいたようにすべてががん原性因子だとかがん原性物質だという断定はしないのですけれども、それに非常に関係の深い、いわゆるそれにイコールだとされる物質を調査することなんですね。それが直接の原因であるかどうかはわからないけれども、非常に疑わしい、濃度が濃い、こういうことなんです。そういうことを学者に調査をさせた場合に、その学者はあからさまにそれを発表することはいけないと守秘の義務が課せられているのですよ。どういうお答えをいただいているかというと、そういうことをすれば労働者が精神的な安定感を欠くであろうとか、あるいはまたその他それが最終的に突きとめられない限り、これで全くこのとおりだということでない限り、動物的実験だとかそういういろいろな科学的実験を加えた後でないと断定し得ないからそれは守秘の義務を課している、こういうことなんです。片側では国際的ななにはオープンにしましょう。それは基準というものはまだ決められてありませんけれども、オープンにしましょうということはいいことです。国内法では閉めている。これは相矛盾しているわけです。だから私は、もっと端的なことを申し上げたら、そのように原因追求をしている間、その労働者は少なくともその物質によって健康を損なわれているわけなんです。その間の勤労者、いわゆる労働者の健康保持ということについての取り組み、冒頭に申し上げたように、そして外務大臣が決意を言われたように、そういうことであれば、当然この国内法について外務大臣は所見を持たれてもいいのじゃないか、こういうことです。私がいま申し上げたことはあらましですが、ごりっぱな外務大臣ですからすぐに御理解をいただけると思うのです。だから、私の考えは、すべてあからさまにすることの方が勤労国民、労働者をより大切にしていく健康保持のための前向きな姿勢だと考えております。それについて御同意をいただけるか。あるいは労働大臣でないからあなたの所管ではないかもわからないけれども、いままさにILOの百三十九号条約審議の中にあって申し上げておることですから、外務大臣からお答えをいただきたい、こういうふうに思います。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 だんだん問題の所在がわかってまいったのでございますけれども、労働安全衛生法の五十七条の二でございますか、この守秘義務がある。この点につきまして、この条文を私詳細に読んでおりませんので、はっきりしたことはお答えできないと思うのでございます。しかし、この学術的な面、そういった面よりもむしろ個々の個人とか企業とか、そういう面を保護するための守秘義務であろうと思うので、学術面等におきましてそのようなことがあるのかどうか、私もつまびらかにいたしません。しかし、研究しました結果は、これは全労働者のために活用すべきことであろうと思いますし、その辺を、よくわかりませんのでなお検討させていただきたいと思います。しかし、御趣旨の点はわかったような気がいたします。

井上一成日本社会党

○井上(一)委員 では外務大臣、ここで即答はできない、私の趣旨については理解ができたということに受け取ってよろしゅうございますね。  ではもう一つ、あえてわかっていただくためにもこれは御質問をいたします。  ILOの百三十六号条約、「ベンゼンから生ずる中毒の危害に対する保護に関する条約」というのがあるのですよ。外務大臣、これはあるのですよ。さて、もう少し。私はこの百三十六号条約をなぜここで申し上げたか。これは端的に申し上げますと、いわゆるベンゼンのゴムのりの製造禁止をしているわけなんですよ。いわゆるそういうもののがん因子、がんの職業病的な要因があるからということで労働者の健康を守ろう、これは日本政府は国内法で、いま私が申し上げた安全衛生法の五十五条に禁止をしております。百三十六号条約のたしか第一条だったと思うのですけれども、これまた禁止条項があるわけなんです。だから、いま国内法と国際条約と二つあるわけなんですが、国内法ではいわゆるベンゼンのゴムのりの製造を禁止しているけれども、ベンゼンの濃度が五%以上のものは禁止する、こういうことになっているのです。ところが、ILOの百三十六号条約のそれでは一%以上は禁止されているのですよ。さらに厳しい条件がつけられているわけなんです。おわかりですか。これはそういうことが事実だからね。どちらがいいと思われますか。いわゆる働く国民にとって健康を阻害する因子、物質であるベンゼンを、濃度五%で規制するのがいいのか、一%で規制するのがいいのか、どちらがいいと思われますか。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 ベンゼンが有害であるということからいえば濃度が低い方がそれはより労働者のためを図っておるということで、常識的にはそうだろうと思いますが、現実的にどうなっておりますかは労働省の方から御答弁……

井上一成日本社会党

○井上(一)委員 外務大臣、常識的な質疑を私はここでやっているわけなんです。私はごく簡単明瞭、平易な常識的な質疑をやっているんだから、常識が通じないということはないわけなんだから……。国内法でもベンゼンは危険な物質であるから禁止をしているんだ。私は大臣にその所管外のものまで決定を迫ることはいたしません。常識的に私も御質問したい。あなたのお考えはいかがでございますか、こういうことですよ。  私は、一%よりもより危険な五%ということよりも、さらに国際的には一%以上はだめだと禁止されているんだから、それを遵守しますというのが外務大臣の姿勢じゃないだろうか。常識的には私の言っていることが、私の質問がいい、しかしそれじゃ常識的以外に何で日本の国内法がいいんですか。     〔有馬委員長代理退席、委員長着席〕 だから、もう少し明快に答弁を願いたい。一%がいいのか、五%がいいのか。五%を一%に日本の国内法もすべきだという私の意見は持っておりますよ。しかし、それをいま外務大臣に尋ねているんじゃなくして、一%が、危険度の少ない方がいいんじゃないですか、それがお答えできないなんというのは、委員長、まさに私の質問に対して答弁ができないということなら、私はできるまで留保いたします。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 先ほどの御答弁で、常識的にはそれは低い方が労働者のためになるであろうということを申し上げたのでございます。それをお聞き取りいただけなかったかもしれませんが、ただ、わが国といたしましてこの条約がなぜ批准できないのか、この点につきましては労働省の方からお聞きいただきたいと申し上げたのでございます。

井上一成日本社会党

○井上(一)委員 わかりました。そういう答弁を最初に言えば時間がかからないのだ。  それで、そういうお考えであれば、外務省としては、このILO百三十六号を批准すべき手続を国会に、立法府に御提案をする義務がある、私はこう思うのです。いかがでございますか。百三十六号を御提案をする考えをお持ちでありましょうか。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 所管大臣とよく御相談いたしまして、できるものであればいたしたいと思います。

井上一成日本社会党

○井上(一)委員 外務大臣が労働省と相談をして出すのだというお答えで私は結構です。労働省がこれを出すことに支障があるならば労働省からお答えをいただきたい。まあ制限された時間でこの問題について深く追及するというか質疑を続けることは、かえって後の質問を予定されている方にも御迷惑だから、改めてこの労働省の見解は聞かしていただきます。  さて、勤労国民の健康を守っていくという姿勢が、少しずつですけれども、外務大臣なりに常識的な判断の中で私はうかがえた、このように思います。ぜひともこれからもひとつ前向きに、すべての国民の健康保持、憲法二十五条を忠実に守っていくのだという姿勢を随所であらわしていただきたい。とりわけいま申し上げたような国際的に関連のある問題を、国内法等はさらに十分煮詰めた上で関係当局でいい法律をつくっていただくように、そういう立場に立って私どもも協力することにやぶさかではありません。  さて、そこで最後に少し具体的なことに入りますけれども、現在わが国にがん原性物質あるいはがん原性因子にさらされて労働に従事している労働者あるいは事業所を含めて、事業所がどれぐらいであって、そこに働いていらっしゃる労働者がどれぐらいいらっしゃるのか。  もう一つ、日本における職業がん発生の状況はどうであるのか。あるいはわが国ではどのような機関でこの職業がんの研究をなさっていらっしゃるのか。あるいはどういう組織、機構を持っていらっしゃるのか。以上、三点をお尋ねいたします。

山本秀夫労働省労働基準局安全衛生部長

○山本(秀)政府委員 お答えいたします。  わが国の、関係労働者の数は、いままでのところ八万二千名とつかんでおります。それから、五十一年五月末日までに把握されたがん患者は三百五十一名でございます。  次に、研究システムですが、労働省には産業医学総合研究所がございまして、ここで職業がんの基礎的研究をしております。この基礎的研究の中身といたしましては、長期動物吸入実験及び疫学的調査でございます。  なお、そのほかに、文部省所管の国立大学あるいは研究所、それから厚生省所管のがんセンターその他で、また科学技術庁所管の放射線医学総合研究所などでも行われているところでございます。

井上一成日本社会党

○井上(一)委員 いま報告があったわけですけれども、そのような実態報告というものは定期的になされておるのか、あるいはそういう実態に対しての対応策、善後措置を加えて対応策はどうなさっていらっしゃるのか、お聞きをいたします。

山本秀夫労働省労働基準局安全衛生部長

○山本(秀)政府委員 定期的に、われわれの方では、健康診断の結果などがございます。そこでそれをもちましてうかがい知っておるところでございます。  それから、新たな物質その他につきまして、また既存物質につきましても、いろいろ調査研究をする必要がありますので、もう少し実質的に研究が実行できるような研究施設をいま用意をしつつあるというところでございます。

井上一成日本社会党

○井上(一)委員 それじゃ最後に外務大臣にさらに要望をしておきたいと思います。  国際間での取り決め、そしてそれがより国民の健康なりあるいは生活に有利な結果をもたらすというものは、一日も早くそういう条約あるいはかかわる法律を関係各省と打ち合わせられた上、強いて申し上げれば、国内法を整備して国民の生活を守る上に十分の御努力をいただきますようにお願いを申し上げて、私の質問を終わります。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 井上委員からたびたび御指摘がありまして、ILO関係の諸条約につきまして、特に国民のあるいは労働者の健康上の問題あるいは生活上の問題に直接影響のあるような問題につきましては、急ぎましてこの批准ができますように関係各省と極力連絡をとりまして、早目な措置をできますように努力をいたしたいと思います。

井上一成日本社会党

○井上(一)委員 終わります。

竹内黎一自由民主党

○竹内委員長 次に、中川嘉美君。

中川嘉美公明党・国民会議

○中川(嘉)委員 私はきょうは子に対する扶養義務の準拠法に関する条約と万国著作権条約の二件について御質問をしたいと思います。  まず子に対する扶養義務の準拠法に関する条約ですが、この条約はヘーグ国際私法会議で作成されたものでありますが、この国際私法会議は国際私法の法典化ということを目的としたものではないか。また国際公法の法典化については、国連でいろいろやっているようですけれども、各国の利害が絡んで非常にむずかしい。国際私法の場合も、特に各国での法制上の違い等があって、その法典化についてはやはり困難なものがあろうとは思いますが、まずこの点に関するお考えを伺いたいと思います。

村田良平外務省条約局外務参事官

○村田(良)政府委員 まさに先生御指摘のとおりでございまして、各国がそれぞれ異なります国際私法に関する国内法を持っておるという状況におきましては、同じような私法関係の渉外的な民事事件に関しまして適用する法律が、ある国と別の国では異なる、特にその法廷地のいかんによって異なることによりまして不合理な結果が生ずるというふうなこともあるわけでございます。そのためにこのヘーグ国際私法会議というものが何とか漸進的に国際私法のルールを統一しようということで努力をしておるわけでございます。  そもそもこのヘーグ国際私法会議が最初に行われましたのは明治二十六年のことでございまして、すでに八十年以上にわたりまして努力を続けておるわけでございますが、その結果現在までに、この国際私法の統一という点に関しまして三十一の条約が採択されたわけでございます。八十年以上の年月をけみしましてその程度ということで、非常に国際私法全般にわたります利害の調整あるいは各国のルールの統一化というものは困難な点がなおございますけれども、今後ともこの場におきまして漸進的な努力が続けられるというふうに考えております。

中川嘉美公明党・国民会議

○中川(嘉)委員 この条約は発効後十五年も批准をしなかったわけですが、このことは国際私法のいわゆる漸進的統一のための国際協力を進める上から余り望ましくはないのではないかと思いますが、この点は果たしてどうかということ。それから、そのような考え方からして、発効済みの条約のうちで近々国会に承認を求めるものがあるかどうか。発効済みの条約は何本あるかということももちろん問題になりますが、わが国が批准をしたのはどのぐらいあるか等の御答弁も含めて、ひとつ近々国会に承認を求めるものがあるかどうか。この点についても伺いたいと思います。

元木伸法務省民事局参事官

○元木説明員 お答えいたします。  確かに先生御指摘のとおり、この条約が採択されましたのは一九五六年、昭和三十一年ということでございまして、十五年間も経過しているわけでございます。これは時間的にかなり経過しておるということが言えるかと思いますけれども、実はこの当時におきましては、わが国の渉外事件というのは非常に数が少のうございまして、したがいましてこれを批准する実益が乏しかったわけでございます。ところが最近におきましてだんだん渉外事件が増加する、ことに渉外事件中でも子の扶養に関する事件が増加するという傾向がございますので、これはやはり批准した方がよろしいのではないか、こういうことになったわけでございます。  それからなお、この会議につきましては現在二十八カ国が参加しておるわけでございますけれども、現在のところこれを批准をいたしましたのは十二カ国ということになっておりますので、わが国が特に遅いということも言えない——まあ手前勝手なことでございますけれども、言えないのではないか、このように考えております。  それからまた現在のところ、私ども法務大臣の諮問機関でございます法制審議会の国際私法部会というのがございますけれども、ここにおきまして法例の全面改正ということを行っております。その作業の動向というものを見きわめた上でこの条約についても手当てをしておこう、こう考えておりましたのでそのために時日を要した、こういうこともございます。  したがいましてこの国際私法部会におきましては、いままでのところ本条約の審議を続けてきたわけでございますけれども、この次にどの条約を批准するかということをさしあたっての予定として検討中でございます。現在のところでは各国における適用法規が統一されていないというようなものがいろいろございますので、そういうものにつきまして早急にその条約を批准していきたい、そのように法制審議会においても御審議いただきたい、このように考えております。

中川嘉美公明党・国民会議

○中川(嘉)委員 この国際私法の法典化の成果という立場から、作成された条約が何本、うち発効済みが何本、わが国が批准したものが何本ということについて、お手元に資料があればいま一度確認をしていただきたい。  そのことと、たとえば、さっき国会に承認を求めるもの云々という御質問をしたわけですが、私の手元にある資料の中でも、海外において頻繁に起こり得る交通事故などを考えますと、発効済み条約の中で交通事故についての準拠法に関する条約というものが実は含まれている。こういうものはむしろ優先して承認を求めるべきではないか、このようにも考えますが、これに対するお考えとあわせてお答えをいただきたいと思います。

村田良平外務省条約局外務参事官

○村田(良)政府委員 まず条約の数等につきまして私の方から御答弁さしていただきます。  現在までこのヘーグ私法会議で採択されました条約は三十一本でございまして、そのうちの十八件が発効しております。戦後に採択されたものが三十一のうち二十五本でございますが、そのうちの十二件が発効いたしております。  なお、わが国は四件の条約に関しましてすでに締約国となっておる次第でございます。  なお、交通事故に関する御質問に関しましては、法務省の方から答弁をいただきます。

元木伸法務省民事局参事官

○元木説明員 交通事故の準拠法に関する条約でございますけれども、これは一九七一年、昭和四十六年五月四日に採択されております。この条約におきましては、まず骨子といたしまして、交通事故に適用される法律は事故が発生した地の法律ということになっております。こういう交通事故のようないわゆる不法行為でございますけれども、これに適用される法律はその発生地の法律によるというのが現在の世界的な傾向でございます。わが国の法例の十一条もこれと同じ規定をいたしておるわけでございます。したがいまして、この条約を直ちに批准するというだけの必要性がまだd直ちには乏しいのではなかろうか、そのように考えております。つまり、わが国の法例の規定によりましてすでに条約を批准したと同じ結果が現在生じている、こういうことになっております。

中川嘉美公明党・国民会議

○中川(嘉)委員 きょうは時間が非常に短縮されておりますので、次に進みたいと思います。  この条約は子の扶養について常居所地の法律が適用されるわけですが、問題は、どの法律を適用するとしても、その判決が出て、それが執行されなければ意味がない、このように思います。すなわち、常居所地における判決が出ても親元から現実に金が入らなければどうしようもない、こういうことでありますが、こういった具体的なことについてはどうなっているか。判決に対してこれが執行されなかった場合はどんなふうになるのか、この辺についてお答えをいただきたいと思います。

元木伸法務省民事局参事官

○元木説明員 お答えを申し上げます。  子の扶養義務に関する準拠法条約、この条約はいわゆる実体法の規定と申しますか、つまり扶養義務の内容を定める法律はどの法律を適用するかという分野の問題でございます。それに対しまして、この判決が出された場合に執行というのは手続の分野ということになっております。子の扶養義務に関する裁判の承認及び執行に関する条約というのがやはりヘーグの国際私法会議で採択されておりまして、これは一九五六年で、子の扶養義務の準拠法条約と同じ年でございますけれども、ただ、ただいまも申しましたように、お互いにその分野を異にしているということになっておりますので、これを同時に批准しなければ意味がないということではないのではなかろうか、このように存じております。つまり、外国において扶養義務についての裁判が行われました場合に、それをわが国で執行しようとするときには、今度は手続法によるということになるわけでございます。ところがわが国におきましては、この点につきまして民事訴訟法五百十四条、五百十五条及び二百条というものがございまして、これによって外国の裁判も執行が確保されるということになっておりますので、不都合がないという結果になるわけでございます。また先進国におきましてもおおむねわが国と同様の立法がございまして、たとえばドイツ民訴法の七百二十二条とか三百二十八条、あるいはオーストリア法の七十九条とか八十条ないし八十二条というものがございます。

中川嘉美公明党・国民会議

○中川(嘉)委員 関連して伺いますが、元来、子に対する扶養義務は親子関係その他の身分関係の基礎の上に成立をする、このような身分関係の効力の一つとして構成されるのではないかと思います。そこで、扶養義務の先決問題である親子関係、この存否はどこの法律によるべきであるか。日本は認知をもって親子ということになりますが、外国の場合には同棲によってできた場合でも親子とみなされる、こういうわけですけれども、一体どこの法律によるものか明らかにしていただきたいと思います。

元木伸法務省民事局参事官

○元木説明員 わが国の法例の二十条というもがございまして、親子間の法律関係というのは父の本国法によって定める。もし父がないときは母の本国法によるということになっております。この場合の親子間の法律関係と申しますのは、これは親子関係があるかないかということも含みますので、扶養義務の先決問題としての親子関係の存否につきましても、この法例の規定によるということになろうかと存じます。もし父がないときということの意味でございますけれども、これは父が死亡した場合と婚外子について父が確定できないという場合を言うわけでございます。世界の一般的な傾向でございますけれども、各国の準拠法も伝統的には父の本国法によるとするものが多いわけでございまして、たとえばドイツ、オーストリア、イタリア、スイス、ベネルックス等がそれでございます。これに対しまして最近の一つの傾向で、まだ国の数は少のうございますけれども、子の本国法によるという例がございます。たとえばフランスとかフィンランド等でございます。

中川嘉美公明党・国民会議

○中川(嘉)委員 次に、先ほど冒頭に申し上げたとおり、万国著作権条約について伺ってまいりたいと思いますが、現代は情報化社会と言われておりまして、コピー機械とかテープレコーダーあるいはビデオコーダー等の複製機械の発達が非常に目覚ましい。しかしながら、これらの普及そのものが著作権侵害との関係で新しい問題を生んでいるわけであります。著作権法三十条で私的使用のための複製は認められておりますが、私的利用か営利を目的とした複製か、それらのけじめ、または逸脱した私的利用の複製に対してどのように規制をしていかれる方針を持っておられるか、この点についてお伺いをしたいと思います。

小山忠男文化庁文化部著作権課長

○小山説明員 お答え申し上げます。  著作権法の第三十条に私的使用のための複製に関する規定がございまして一個人的にあるいは家庭とかこれに準ずる範囲において使用する場合には、使用する者が自由に複製を行ってよろしいという規定がございます。この規定の趣旨と申しますものは、本来著作権者に認められるべき著作権者の複製権というものを私的使用の場合に限りまして制限しようとするものでございますので、この規定の解釈に当たりましては常に厳密な態度をもって臨む必要があるものと考えます。したがいまして、営利を目的とする複製というものが私的利用等に当たらないことは当然でございますけれども、それ以外に、営利を仮に目的としない使用でございましても、たとえば無償で公衆に頒布するというような場合の複製はこの私的使用の範囲には該当しないというふうに考えております。  先生おっしゃいますように、最近テープレコーダー等の複製の機器が各家庭に普及をしておりまして、いろいろと社会的な反響を呼んでおります。この複製機器の普及ということは、社会における文化の普及という観点から見ますと、むしろ歓迎すべき現象ではございますけれども、一方それによりまして著作権者の利益が不当に害されることがあってはならないというふうに考えまして、制度の運用に当たりましては、著作権者の利益と使用者の利益、この両者の利益をどういうふうに調整していくかということが非常に大きな問題になっております。この問題は現在世界の各国におきまして共通の問題になっておりまして、各国におきまして、あるいは国際機関、国際会議等におきまして検討が進められておりますが、なかなか有効な解決策を得ることが困難であるという状況にございます。  概括的に申しますと、著作権尊重の気風、いわゆる著作権思想の普及を図るということが必要ですし、また集中的な権利処理方式あるいは強制許諾制、そういった新しい時代に即応した解決方法を導入するということを検討するような時期に至っているものと考えております。  文化庁におきましては、従来から実施しております著作権思想の普及のためのいろいろな施策、たとえば著作権講習会の実施であるとかあるいは普及資料の作製頒布であるとか、こういう従来から実施しております施策の充実を今後一層図ってまいりたいというふうに考えますし、また諸外国における実態あるいは関係者の考え方、こういった点につきましても詳細に把握をいたしまして、さらに一歩進めまして、権利者のほかに利用者、複製機器のメーカーとか学識経験者、こういった関係者の意見も十分に徴しました上で、慎重に現代の社会の実態に即応した解決策を得たいというふうに考えておるところでございます。

中川嘉美公明党・国民会議

○中川(嘉)委員 この複製機器の発達あるいは普及によって得られる利点ということとそれから著作権保護の理念とをどのように調和させていくかということ、複製機器の発達、普及によって今後さらに著作権保護が侵害されるようなことはないか、これらの点につきまして政府の御見解をお聞きしたいと思います。

小山忠男文化庁文化部著作権課長

○小山説明員 ただいまも申し上げましたように、この機器の普及に伴います文化の普及という観点と、それから著作権者の利益の保護という観点を調整する問題でございますけれども、これはなかなか簡単な解決策を得るということがむずかしいということでございまして、一つには著作権思想の普及とかあるいは強制許諾制とか集中的な権利処理方式の導入とか、そういった方法がいま各国におきまして検討され、あるいは一部実施されております。文化庁におきましても、各国のそういった実情あるいは日本における使用の実態等を勘案しまして、総合的な解決策を考えてまいりたいというふうに考えております。

中川嘉美公明党・国民会議

○中川(嘉)委員 次に、外務省に伺いますが、第二附属議定書において本条約で規定する保護は、国際連合及び国連の専門機関で最初に発行した著作物について適用することになっていますが、どういう経緯でこのような議定書が作成されたのか。また著作権法の三十二条二項には、国または地方公共団体の機関が作成した資料等は、禁止の表示がない限り他の刊行物に転載できることになっているわけでありますが、国連や専門機関で発行されるものも、その性質上このような扱いが望ましいと私は考えますが、実態はどのようなことになっているのか、この点についても伺いたいと思います。  時間の関係でもう一つあわせて伺いますが、この議定書には米州機構が発行した著作物について適用することになっております。しかし、ほかに同種の国際組織は幾つかあるにもかかわらず、この米州機構についてのみ特に規定をした理由というものはどこにあるのか、この点についてもあわせてお答えをいただきたいと思います。

村上和夫外務省国際連合局外務参事官

○村上説明員 お答え申し上げます。  著作権法の第三十二条第二項に関しまして、第二附属議定書は、国際連合であるとかあるいは国際連合と連携関係を持っておりますいろいろの専門機関あるいは米州機構が最初に発行した著作物に、各締約国は自国民の著作物に与えると同一の保護及びこの条約が特に与える保護を与えなければならないという趣旨でございます。なお、この第二附属議定書と申しますのをわが国が締結した場合には、これらの諸機関の著作物は当然わが国の著作権法の適用を受けるというふうに考えるわけでございます。  なお、先ほど先生が御質問の、この条約が国連であるとかいろいろの国連専門機関と並んで規定されております理由は、わが国及び欧州諸国のような無方式主義をとる国と、それから方式主義をとる国との間の調整の問題でございまして、方式主義をとる国はたとえば米州諸国がございますが、これらの国が加盟しております米州機構が、国連とか国連の専門機関と並んで同様にこの条約に規定されているわけでございます。

中川嘉美公明党・国民会議

○中川(嘉)委員 時間が参りましたので、最後にもう一点だけ伺いますが、第十一条によって設置される政府間委員会に関連して伺いたいと思いますが、日本政府の代表者はどういう資格あるいは地位の人がなっているのか、常任または常駐であるのか、それとも懸案のたびごとに招集されるのか、この辺をまず伺っておきたいと思います。  さらに、ユネスコがこの政府間委員会の事務局を提供することになっていると理解していいかどうか、またそう決まった理由はどこにあるのか、この点を最後にお伺いしておきたいと思います。

村上和夫外務省国際連合局外務参事官

○村上説明員 最初に御設問の第十一条による政府間の委員会でございますが、この委員につきましてはわが方からは国内の主管庁でございます文化庁から適宜委員会に出席しております。  それからユネスコがこの条約の事務局になっている理由でございますが、この条約は、いろいろの著作権の標準化につきまして、従来ユネスコの基本的な事業活動の一つだというふうに認識しておりまして、実際に経緯から申しまして、ユネスコがイニシアチブをとりまして著作権の保護の体制の確立のために非常な努力をしてまいりましたために、このような事務局をユネスコが提供することになったわけでございます。

竹内黎一自由民主党

○竹内委員長 次に、寺前巖君。

寺前巖日本共産党・革新共同

○寺前委員 前回少々委員会ががたつきまして、最後の締めくくりができませんでしたので、日米漁業協定について整理をして外務大臣並びに外務省の幹部の方からお聞きをしたいと思います。  国際的にも二百海里の経済水域なり漁業専管水域の問題がずっと流れとして現実の問題になってきました。私は、そういう状況の中で、発展途上国が最初に自分の権益を守るという立場から二百海里問題を出したものを、逆に沿岸国としてアメリカが悪乗りをして、それがてこになって国際的にいろいろ問題を波及させてきたと思うのです。今回ここにかけられているところの日米漁業協定というのは、そういう国際的な動向に対して、日米間の問題を重要なてこにして新たな策動になっていくのではないかと、私はいろいろな点で心配をするものであります。この前四つの問題を提起したと思います。  一つは溯河性魚種の米国の漁業管理権を「全回遊域」というふうに本文の前書きのところに書かれている。現実に海洋法会議で討議をしている内容を見ても、五十五条の第三項の中を見たときに、二百海里までの水域問題とそれ以外の水域問題とは分けて書かれてきているというような状況を見ると、アメリカが本文の中に持ち込んできているのは、海洋法会議の草案とはさらに一歩を出したところの姿をここには提起しているのではないか。  あるいはまた第二条の第三項で、協定の対象魚種が、カツオ類ということで、日本の政令を見るときにはカジキ類などが書かれているのにもかかわらず、それが外されている。なぜカツオ類ということでそういうものを外していくのか、うがった見方をすると、アメリカがとることを必要とする問題だけを提起するというやり方になっているじゃないか、同じ提起をするのだったならば、高度回遊性魚種を全体として国際的な機関で共同管理をするという問題として提起をしていくならば、それはそれなりに積極的な意味を感ずるわけですが、アメリカがとることを必要とするものに限ってそういう問題を提起するというのも、どうも理解しがたい問題である。  あるいはまた、ソ連との間にカニ協定なりツブ協定が結ばれてきたわけですが、そういうときには大陸だなの問題についてソビエト側の言い分に対して日本側が並記をするぐらいの主張を書いておるのにもかかわらず、この中では大陸だなの主張がそのまま認められる文章になってきている。  あるいはまた海洋法の草案第六十一条の三項では、罰則については拘禁またはその他いかなる体罰も含めてはならないと非常に明確に指摘をしているわけですが、この協定の十一条あるいは十二条では非常に厳しい問題提起を罰則問題ではかけられてきている。  こういうふうに一連見てくると、アメリカの国内法があって、アメリカの考え方によって日本がとらせてもらう立場だからというところで左右されてきているのじゃないか。そうではなくして、私はやはり積極的に新しい時代の海洋秩序から見るならば、そういうものに引きずられないようにきちんとすべきではなかったんだろうかということを、率直にこれを読ませてもらったときに感じたものであります。  そこで、日本の交渉に当たられた担当部局においては、こういうアメリカの対応に対して、私の指摘している点が間違っているのか、あるいはその問題についてどういう見解で今日まで臨んできておられたのかを、整理をして御説明をしていただきたい。  そして大臣には、私はこれは暫定段階と本段階と二段階で協定が結ばれてきているというふうにお聞きもしておりますし、また、海洋法会議がなされていって一定の方向が出てきたときに、この問題の処理をどうするつもりなのか。私は、国際水準に合わすようにやはり整理をしていくように、その段階ではしなければいけないんじゃないだろうかというようなことを感ずるわけですが、この点について大臣の御見解をいただきたい。  最初に事務当局の方から、交渉の経過に立って、以上の四点の問題について御説明をいただきたいと思います。

山崎敏夫外務省アメリカ局長

○山崎政府委員 この日米漁業協定は、御案内のようにアメリカの一九七六年漁業保存管理法に基づいて、アメリカが規定しております協定の考え方に従って結ばれたものでございます。その点において基本的にアメリカの国内法による制約があったということは、われわれとしても率直に認めるものでございます。しかしながら、これは日本だけがそれを認めておるのではなくて、日本、ソ連その他を含む十カ国の国が、やはり同じそのアメリカの考え方に沿ってこういう長期協定をつくっておるのだということを、まず御理解いただきたいと思います。  次に、先生から御指摘のございました四点について、もう少し具体的に御説明申し上げたいと思います。  第一に、溯河性魚種のサケ・マス類の問題でございますが、前回にも御指摘のございましたように、この協定に規定しておりますサケ・マス類の取り扱いと、第三次国連海洋法会議の改訂単一草案第五十五条との間には若干の食い違いがございます。  この改訂単一草案第五十五条には次のような趣旨を規定しております。第一は、溯河性魚種についてはその母川国が第一義的な利益及び責任を有し、適当な規制措置をとること。第二は、母川国は漁業国と協議の後、総許容漁獲量を設定すること。第三は、伝統的漁業国の経済的な混乱を最小にするため協力すること。第四は、取り締まりについては、経済水域の外における取り締まりは母川国と他の関係国との間の合意によること。こういうふうに規定されております。  他方、本協定の方を見ますと、第四条におきまして、アメリカは、わが国との協議をも考慮に入れて、毎年の総漁獲可能量、対日割り当て量等を決定する旨を定めております。また第五条では、対日割り当て量の決定に当たっては、米国はわが国の伝統的な漁獲、経済的混乱を最小にする必要性等を考慮に入れることを定めております。さらに合意議事録第二項におきましては、二百海里水域の外における溯河性魚種に関しての米国の取り締まり行為は、日本政府と協議を行った後にのみとられる旨が述べられております。そういうわけで、先ほど申しました改訂単一草案五十五条の趣旨は、かなり取り入れられておるものとわれわれは考えております。  しかしながら、この点は必ずしも十分ではないということはわれわれも認める次第でございますが、半年にわたる協定締結交渉を通じまして、先ほど申し上げましたように、アメリカの国内法の規定を逸脱し得ないという基本的な制約があったわけでございまして、また暫定取り決め及び長期協定の二本立てで協定を結ぶことによって本年のわが国の出漁を確保するという問題もございましたので、この協定の案文によって交渉をまとめることが適当と考えた次第でございます。  今後、海洋法会議の結果によりまして多数国間条約ができ上がりました際には、この協定の第十六条の規定にもあります再検討条項に基づいて、この日米協定については所要の改定を加えるように交渉したいと考えておる次第でございます。  第二に、高度回遊性魚種の問題でございますが、この点に関しましては海洋法会議におきましても、何が高度回遊性魚種であるかということについてはいろいろな議論がございまして、まだ定まった定義はない次第でございます。ただ、いずれにいたしましても、マグロ類などを中心としますこういう高度回遊性魚種については、その生態学的な特性にかんがみ特別の取り扱いをするということが規定されておるわけでございます。そしてその考え方としましては、この種の高度回遊性魚種につきましては、まず国際的な管理のもとに置くこと、及びその保存に関連し沿岸国と漁業国とが協力することが適当であるという考え方をとっておるわけでございます。そういうふうな特別扱いをするということが書かれておるということを申し上げたいと思います。したがいましてこの協定におきましても、カツオを含むマグロ類についてその管理権の対象から除外し、また先ほど述べましたような海洋法単一草案の考え方を合意議事録の第一項に取り入れてある次第でございます。  なお、前回の委員会におきまして寺前委員から、カジキはどうなっているのだという御指摘がございました。この点に関しましては、確かにカジキに関しましてはマグロ類と違いましてこの協定から除外されていないのでございますが、カジキのみを目的とした漁獲は従来から日本漁船は行ってはおりません。そこで合意議事録第一項に、わが国マグロ漁船がマグロを漁獲する際にカジキ等を混獲することがあることを想定した規定が置かれておりまして、マグロ類の漁獲に当たって実際上問題がないように配慮されておる次第でございます。  第三に、大陸だなの生物資源の問題でございますが、確かに、この協定におきましてアメリカは、アメリカに属する大陸だなの生物資源に漁業管理権を行使することを認めております。これは漁業保存水域、この二百海里水域における一般の魚類と同様にこの大陸だな生物資源につきましても、漁業資源の保存管理という観点から、アメリカが漁業管轄権を行使することを認めたものでございます。大陸だなの制度そのものにつきましては、まだ国連海洋法会議におきまして種々論議が重ねられておりまして、余り意見はまとまっておらないわけでございます。したがいまして、われわれとしましては、大陸だなの制度そのものから生まれる大陸だなの生物資源に対する米国の管轄権を直接に認めたものではなくて、先ほども申し上げましたように、この漁業保存水域の一般の魚類と同じような扱いと考え方でこの生物資源に対する管轄権を認めたものでございます。  第四番目に、取り締まりの問題でございますが、海洋法会議の改訂単一草案におきましては、適当な供託金等を支払うことによって速やかに釈放されるということ、また刑罰には体罰を含まないという旨が規定されております。他方、この協定におきましては、わが国は米国が取り締まり行為を行って、違反行為を行ったわが国漁船または乗組員を拿捕または逮捕すること及び違反行為については米国の裁判所が米国の法律に従って刑を科するということを認めております。しかしながら、この協定におきましては、拿捕された漁船及び逮捕された乗組員は裁判所が決定する供託金等を条件として速やかに釈放されることが規定されております。これは第十一条に規定されております。また、刑には禁錮その他いかなる形の体刑も含まれないよう、裁判所に対して米国の行政府が勧告するということが合意議事録に書かれております。  このような次第でございまして、取り締まりに関する規定に関しましては、極力改訂単一草案の趣旨に沿うよう努力いたした次第でございます。ただ、その点完全に合致していない点は事実でございますが、先ほども申し上げましたように、米国の国内法との関係でその点が十分に達成できなかったわけでございます。しかしながら、これも先ほども申し上げましたが、海洋法会議の結果として多数国間条約が採択されました際は、この協定の第十六条の規定にある再検討条項を活用いたしまして、その不一致があります場合にはアメリカ側と改めて交渉いたしたいというふうに考えておる次第でございます。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 この二十三日からニューヨークにおきまして第六会期が始まるわけでございます。この会期におきまして、二百海里時代が到来してしまった時代でございますので、この会期にはなるべく速やかに合理的な国際条約ができますように、わが国といたしましても最大限の努力をいたすべきものと考えます。そして、ただいまアメリカ局長から申し述べましたが、合理的な新しい海洋秩序ができました際に、日米間の漁業条約がそれよりも不合理な面があります場合におきましては、協定の十六条に基づきまして対米折衝いたして合理的なものに改めたい、このように考えます。

寺前巖日本共産党・革新共同

○寺前委員 終わります。

竹内黎一自由民主党

○竹内委員長 これにて各件に対する質疑は終了いたしました。     —————————————

竹内黎一自由民主党

○竹内委員長 これより各件に対する討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、順次採決いたします。  まず、アメリカ合衆国の地先沖合における漁業に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕

竹内黎一自由民主党

○竹内委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  次に、経済協力に関する日本国とモンゴル人民共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕

竹内黎一自由民主党

○竹内委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  次に、千九百七十一年七月二十四日にパリで改正された万国著作権条約及び関係諸議定書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕

竹内黎一自由民主党

○竹内委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  次に、子に対する扶養義務の準拠法に関する条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕

竹内黎一自由民主党

○竹内委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  次に、税関における物品の評価に関する条約の改正の受諾について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕

竹内黎一自由民主党

○竹内委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。  次に、がん原性物質及びがん原性因子による職業性障害の防止及び管理に関する条約(第百三十九号)の締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕

竹内黎一自由民主党

○竹内委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

竹内黎一自由民主党

○竹内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————

竹内黎一自由民主党

○竹内委員長 核兵器の不拡散に関する条約第三条1及び4の規定の実施に関する日本国政府と国際原子力機関との間の協定の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とルーマニア社会主義共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とブラジル合衆国との間の条約を修正補足する議定書の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。渡部一郎君。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 核兵器の不拡散に関する条約第三条1及び4の規定の実施に関する日本国政府と国際原子力機関との間の協定についてでございますが、まず、政府は核防条約の署名に関しまして、保障措置協定の内容につきましては、他の国がIAEAとの間に締結する協定の内容に比してわが国にとり実質的に不利な取り扱いになってはならぬ旨を再三言明もし、また交渉の最重点項目としてIAEAとの間で保障措置協定の締結のための交渉を行ったと伺っておりますが、本当に平等性は確保されたかどうか、わが方の本協定案文につきまして御説明を承りたいと存じます。

大川美雄外務省国際連合局長

○大川政府委員 いわゆるユーラトム並みという問題につきましての御質問と了解いたしますけれども、     〔委員長退席、有馬委員長代理着席〕 お手元にお配りしてあります協定テキストの第百十二ページをごらんいただきますと、この協定の不可分の一部であります議定書がございます。その議定書の第二条に「機関」、これは国際原子力機関でございますけれども、「機関は、協定の実施に当たり、国内制度の機能的独立及び技術的実効性の程度」、これは日本の話でございますが、「が他の国又は一群の国」、ここではユーラトムのことでございますけれども、「と同等の程度に達し、かつ、その程度が維持されることを条件として、」「このような国又は一群の国に与える待遇よりも不利でない待遇を日本国政府に与える。」これはまさしくユーラトム並みということを書いた規定でございます。いわゆる最恵国待遇の規定の形になっておりますけれども、ユーラトムとIAEA、国際原子力機関との同様の協定で、協定の実施の際に日本に与えられる待遇よりも有利な待遇が与えられる場合には、日本は自動的にそれに均てんできるという趣旨でございます。  そのほかに、同じくこの議定書の第九条から十六条にかけまして、いわゆる日本の国内保障措置制度と国際原子力機関の保障措置制度の間の重複を回避するためにいわゆる調整を行うという観点からの一連の規定がございます。言いかえますと、日本の国内の保障措置が有効に行われる場合には、それとダブって国際原子力機関の保障措置はなるべく行われないようにしよう、日本の国内制度の有効性を尊重して、原子力機関の保障措置は横から観察するというような形にすることで十分ではなかろうか、こういったような趣旨から九条から十六条までの一連の規定がございます。  したがいまして、第二条といまの九条から十六条までのこの一連の規定でもって、私どもとしては、いわゆるユーラトム諸国と同じような待遇を獲得することができたのだ、かように解釈いたしております。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 IAEAの設立の当初あるいはユーラトムの査察が行われた当初等におきましては、査察の内容が、査察官の一部に非常に劣等な技術水準を持つ人々による査察のため、わが国の原子力機関の業務に著しく支障を来すような事件が何件か発生したというのは著名な事実でございますが、この議定書あるいはこの協定自体においてそうした部分のエラーは防ぎ得るものかどうか、その辺ちょっとお答え願いたいと存じます。

栗原弘善科学技術庁原子力安全局保障措置課長

○栗原説明員 お答えいたします。  議定書及び協定そのものにおきまして国際原子力機関の査察というのがかかるわけでございますが、日本の保障措置制度、日本の国内査察制度とそれからIAEAの保障措置制度との整合性を図るために、議定書に書いてございますように、合同委員会というのを開催することになっております。その合同委員会等の席上を通じまして相互の意見交換ということについて確保できるものと存じておりますので、今後は先生のおっしゃいましたような査察員の資質の問題ということについてはないものと存じます。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 それは非常に希望的観測に過ぎるお答えで、ほかの国をこの委員会の席上でけなすわけにいかぬからそうお答えなすったのでしょうけれども、原子力技術水準に関するレベルというのは非常にばらつきが多うございまして、事実これまでの検査もめちゃくちゃなのがありまして、原子炉の中を全部あけて見せろなどと要求したすさまじい検査員もあったと承るものですから、この保障措置協定それ自体がそういう目的ではありませんけれども、そうした面も考慮されなければいけないと思います。つまり小学校の生徒が大学生のノートを点検するような事実が現に起こり得るわけですから、そうしたものに対する配慮も——こういう集合的な科学技術水準のレベルがきわめて差のある同士の協定がつくられる場合には、本協定に基づく検査あるいは査察等が一定の水準の科学的レベルを保たれるような何らかの保障が行われなければならぬ。その点について十分な交渉がされたとは言いがたいと思いますが、どうですか。言いがたいのはもうわかっていますから、今後何かの取り決めをなさいまして、その辺何とかなすったらいかがかと私は思いますが。

栗原弘善科学技術庁原子力安全局保障措置課長

○栗原説明員 お答えいたします。  国際原子力機関におきましても、先生の御指摘のとおり世界各国から査察員を採用するわけでございますので、そのレベルが採用した当初において均一であることは必ずしも保証しかねることはそのとおりでございます。したがいまして、国際原子力機関におきましても、採用いたしましたその後に研修をやりまして一定の技術水準まで持ち上げる、技術水準まで持ち上げました後に各国に対する査察に出す、そういうシステムがとられているやに聞いております。しかしながら、私どもといたしましても、確かに先生の御指摘のとおり国際機関の査察員の水準というのは非常に重要であると思いますので、私どももさきに述べましたような委員会その他IAEAの理事会等の場を通じましてこの点は強く主張し、確保していきたいと存じております。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 核防条約についてはわが国において非常に大きな苦労の果てに批准されたものでございますが、今回、カーター・アメリカ大統領との交渉の途上、日本政府の立場は核防条約に照らして二つの大きな予盾した方向を含んでいたのではないかと思われます。一つは、核兵器の拡散防止義務を核防条約によってわが国は背負っておるわけでありますが、少なくとも再処理をする権利を得るがために、わが国における原子力の研究を自由にさせろという主張に基づいて、核拡散というものに対する防止義務を十分考慮することが少なかったのではないかと思われる節があるということであります。一方においては、逆に今度は、わが国の原子力平和利用の権利が明らかに核防条約にはうたわれておるのでありますが、その原子力平和利用の権利と称されておる部分に対しての主張があいまいであったと思われるわけであります。私は、わが国は、原子力平和利用の権利を堅持するとともに、核兵器の拡散あるいは原子力兵器群の研究開発を阻止するために適当な施策というものを打ち上げていかなければならぬ、こういう二つの大きな命題があったと思います。新聞紙上に報じられているところでは、この両者が混乱しておったように私は感じられてならぬのでありまして、アメリカの新政権との交渉はいかがなものであったか、わが国はその点どういう立場であったか、御説明をいただきたいと存じます。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 わが国として主張いたしました考え方でございますけれども、核兵器のこれ以上の拡散という点につきましては各国とも反対であるということ、これはおおむねコンセンサスがあったと思いますし、福田総理も、核兵器がこれ以上拡散する危険があるということ、特に、核防条約に入っていない国におきまして核兵器の拡散が行われる危険があるというようなことも指摘をされておるわけであります。そういう意味で、核拡散を防ぎたいということにつきましては、各首脳とも賛成の意を開陳されたわけであります。わが国といたしましては、現行核防条約第四条におきまして、その平和利用の点については権利を持っておるということを主張されておるわけでございまして、決してただいまおっしゃったようなことはなかったと私は思っておるところでございます。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 では、少し詳しく聞きましょうか。そうすると、大臣、こういうことになるわけですね。まず、日本における原子力発電所は非常に不完全なものでございまして、現に動いているものはないというのが本日現在の状況であろうかと思います。要するに、原子力発電所というのは、商品で言うならば欠陥商品に属するものでありまして、非常に細かい、微細な事故がたくさん起こっておる。しかも、その細かい事故を十分点検できる器具があり得る、すなわち、小さな放射能の漏洩であったとしても点検できるわけですから「その点検が行われるたびに工場全体をとめて、パイプのひび割れにしてもさまざまな計器の故障にしてもきわめて厳格にチェックをされている。厳格にチェックしているのはいいのですけれども、そういうふうにチェックすればするほど、わが国においては原子力発電所は予想されたほどの効率を持って動いていないというのが実情なのです。これはもう遠慮なく認めなければならない。しかも、再処理施設は世界ですでに三カ所ばかり動いておりますけれども、もう一つ、四カ所と言った方がいいのかもしれないが、その動いている再処理施設がこれまた事故続きでございまして、一カ所だけは何とか動いているが、あとの三カ所は故障中、目下修繕中に属するわけであります。そういうときにわが国がそういうものを研究することは、確かに意味はあろうと思います。しかしながら、その再処理をやるということによって、わが国が欠陥商品の上にさらに欠陥商品を積み重ねていくということはどうなのだ、こういう反論が当然起こり得るわけですね。  では、一体、わが国は原子力について研究の段階にとどめるのか、実用の段階まで進めるのか、実用から今度は大規模な段階として、つまりエネルギー供給の部局としてそれをつくり上げるのか、このことは常に質問されていながら不明確であります。したがって、交渉の視点もまた非常にあいまいなものにならざるを得ない。核というのは必要だから交渉するのだとか、あるいは再処理というのはわが国がやりたいからやるのだという議論になりかねない。その辺をどの辺でお考えになっておられるのか。これは、原子力エネルギーの基本担当省庁の方がお答えになるのがまず第一でありますが、外務大臣は少なくともカーター政権とは実質的な交渉をなさった当の責任者でございますから、鳩山大臣に伺うのですが、鳩山大臣、どの辺のところを御考慮になってお決めになったのか。私は、その部分はきわめてあいまいだと思うのですが、まずお伺いしたい。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 わが国の原子力の開発計画、これは科学技術庁の方でおつくりになっておるわけでございますけれども、わが国においてはその原子力の開発のスケジュールによって開発が進められておる。そのスケジュールで今日問題になっておりますのは、東海村の再処理工場のホットランという問題でありますけれども、これは時期的に差し迫っているということであります。     〔有馬委員長代理退席、委員長着席〕 しかし問題といたしまして、将来のエネルギーの長期的な対処の仕方というものからいけば、どうしてもわが国といたしましては、核燃料の再処理を含む燃料のサイクル、そのような計画に基づいた研究を進めてまいるということで、目下のところは研究段階である。しかし、一九九〇年代あるいは二十一世紀の問題ということになりますと、これは研究段階の問題でないことは確かでございます。そのような一連の計画があるものですから、さしずめこの七月と言われておる東海村の運転ということが問題になるわけでございます。  しかし、いま問題にされておりますことは、やはりこれからの核燃料の再処理ないし燃料のサイクル、こういった問題についての考え方が議論をされている段階でございます。したがいまして、現実にわが国の原子力発電所は非常に故障が多い、まだ安全が不十分である、これらのことは実施の過程において十分努力をいたしまして、能率を高めるという努力をいたさなければならない。そのことと、わが国といたしましては将来のプルトニウムを活用する計画をつくっておるわけでありますから、高速増殖炉の実用まで至るその過程に現在あるわけで、その計画を実施すべきであるというのがわが国の考え方でありますが、カーター大統領の考え方は、そのようなものはどだい現在でもコストに合わない、大変不経済なことだ、他の燃料の方がいいのだという主張もされますし、また核兵器のこれ以上の拡散も防がなければならない、このような考えであります。  そこで、今回私ども、他のヨーロッパ諸国とエネルギー事情を同じようにする国といたしましては、あるいは核防条約も関係してまいると思いますけれども、これらの国際的な管理なり、核兵器のこれ以上の拡散を有効に防止する手段もあるはずではないかということから、その拡散を防ぎながら、しかも平和利用はこれを活用をしていこう、こういう主張をしておるわけでございまして、いま御質問の点、日本の現在の実情が不十分であるという御指摘はごもっともな点はあると思いますが、これとは、将来の計画という意味でちょっと次元が違うのではないかというふうに考えております。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 外務大臣、そうしますと、いま日本では原子力発電所は十幾つは動かしているわけですね、実際には、もうでき上がっておって。そしてそれは動いてない、故障が多くて。実施途中の計画を入れれば約三十ぐらいあるわけですね。もし研究中の段階なら、これは三十もこしらえる必要はまずないわけです。自動車で言えばよくわかると思いますが、自動車が一台も走らないのに、壊れる自動車を三十台も一緒に走らせる必要はない。一台じっくり走らせてみてよく研究すれば済むことでしょう。だからそれは、実用炉にしようと思っていた精神から原子力発電所をだあっとこしらえたといういきさつが一方にあるわけです。むだなんです。あなたのいまおっしゃっているところから言うと、エネルギー問題に対処して核サイクル研究を進めるということは目下大事である。目下研究段階であると言われました。それは正しいです。すばらしいです。さすが問題の本質をさっとつかまえられた。問題の本質をつかまえられたのなら、原子力発電所はそんなにたくさん動かす必要はない。一つでいいからしっかりやりなさい。そこへ予算もちゃんとつけましょう、そのかわり研究施設も充実しましょう、そしてそこでじっくり研究して——ウラニウムのまじった放射能性のある水が通過するパイプが割れてしまう、つなぎ目が切れてしまう、こういう初歩的な問題が起こる。もっとひどいことを言えば、地震が起こったときにそれに耐える構造というのができてないのです。耐震構造になってない。また当初から物すごい特許の波にさえぎられておって基礎的な研究ができてないという状況にある。そうすると、もうめちゃくちゃなんだな。次から次へ壊れるものを次から次へ建設中、目下まだ建設中ですよ。ぶっ壊れるやつばかりどんどんこしらえる。あなたは外交の担当だから、おれは知らぬと言いたいかもしれませんけれども、知らぬとは言わせない。閣議に出ておられるのだからだめですわ、それは。一つでいいからしっかり研究して、これはいかぬ、これはこんな問題があるのかというのをもっと研究なさったらいいじゃないですか、日本はお金がないのですからね。たとえば、アメリカにはブラウン博士という有名な博士がいて、ロケットを月まで打ち上げた。それで人工衛星もやったわけです。ところが、日本は後から飛び出してきて人工衛星の技術の手前までやってきました。それはペンシルロケットという本当に小さな、手の指に乗るようなロケットを打ち上げるところから始めて、見る見る追いついたという経歴があります。それは実際には大型も打ち上げなければならぬけれども、研究開発費の差というのはもう大変なものだ、日本の場合には。ロケットでは日本式のやり方は少なくとも成功したのです。何でウラニウムの原子力発電所だけがばかでかいのが次から次へとアメリカからそのまま、しかもスタイルもタイプもろくろく変わってないのを導入して、次から次へぶっ壊れるものを建てていくのか、その幼稚さが一方にある。これが第一です。研究段階とおっしゃるから私は申し上げている。  第二段階は、再処理工場は差し迫っているとおっしゃっている。これはうそですよ。差し迫っていませんよ。原子力の廃棄物なんというものは幾らでも積み上げておけばいいのですから。穴を掘って積んでおけば安全なんです。現に東海村ではドラムかんの中へ入れてずらっと並べているじゃないですか。日本は狭いですけれども、ドラムかんの置き場ぐらいには一向に不自由はしませんですよ。何をあわてておられるのですか。原爆とそれから原子力発電所から出る灰とは種類が違います。それは積んでおいたら爆発するというものじゃないです。それは固めておいて、特殊な細工をして固めれば破裂もいたしますが、現在のように十分の間隔をもって広げておくのが何が悪いのですか。怪しげな再処理施設のために大工場を運転するのは、幼稚無残をきわめておるじゃありませんか。  この二つを見たって、日本は核政策というのはない貧弱な国だとアメリカからは見えるでしょう。カーターさんから見たら、日本の代表は何を言いに来たのだろう、子供が危険なおもちゃを欲しがるように見えるでしょう。私はその点非常に非理性的だと思う。日本の将来のエネルギーをウラニウム資源に頼るというんだったら、ウラニウムを買っておくことは私はいいと思う。ためておくこともいいと思う。そして、ためておいた物を全部使う必要はないじゃないですか。積んでおけばいいじゃないですか。ウラニウム鉱石も買っておけばいいじゃないですか。金属ウランも買っておけばいいじゃないですか。そして研究もすればいいじゃないですか。なぜ幼稚な機械を山ほど運転しなければならないのか。だから、交渉の一つずつがきわめて幼稚なことになる。カーターさんが見るに見かねて、この再処理工場は不経済ですよ、最低五年待ったらどうですかと言ったカーターさんの助言は、むしろ日本国民に対する非常に落ちついた冷静な忠告として受け取るべきじゃないでしょうか。違いますか。私は、むしろカーターさんのそのせりふの方がはるかに日本国民にとってはプラスの点があると思いますよ。  しかも、日本が再処理工場をつくらせろというのでわめき立てるとすれば、日本は核武装しないかもしれない、だけれども、核武装したがっている後進国は山ほどあるじゃないですか。アメリカの大きな先制的エネルギーを利用して核武装国を減らすという方向でその力を利用することは、わが国にとっては主要な外交政策の一つでなければならない。私は、この交渉のしぶりには全くけげんな面持ちをせざるを得ない。違いますか。どうも理性のある外交方針とは思いがたい。余りにもひどいじゃないかと私は思うから、公開の席上で申し上げておるのです。  何かお話があったら、どうか御担当の方でもだれでも結構ですからお話しください。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 いまお話を伺っておりまして、アメリカの、一国の大統領が荒唐無稽なことをおっしゃっているわけでは決してなくて、大変な基礎のあることを御発言になっているわけでございます。したがいまして、いま渡部委員のおっしゃいましたことも、私もそれは傾聴すべき御議論であると思っております。しかし、使用済みの核燃料はどこかに置いておけばいいじゃないかとおっしゃいましたけれども、これはそれほど簡単な問題ではないと思います。東海村のどこかにどの程度使用済みの燃料が置いてあるかは私は存じませんけれども、使用済み燃料の保管というものは、これは相当大仕事でございます。廃棄物であれば、これは再処理した後で初めて出てまいりますから、その廃棄物の処理にも再処理を必要とするわけでございますから、そういった意味で、いまここで一々御議論は申し上げませんけれども、しかし、この核の拡散という問題も、これはいま御指摘のように、特にNPT条約に入っていない国、発展途上国の中でも、できたら核兵器も持ちたいと考えているところもあるということも指摘をされているところでございます。したがいまして、核兵器のこれ以上の拡散につきましては、これは各国の首脳とももう真剣にやらなければいかぬ、その点はもうみんな首脳は一致しておりまして、福田総理といえどもその点は賛成をしたわけでございますから、日本が核兵器の拡散につきまして無神経であるというようなことでは決してございませんから、その点は御安心いただきたいと思います。  なお、この技術的な点については関係者、専門家の方からお答えした方がいいと思いますけれども、現在日本におきます。現実にいま商業的に動かしている、また動くべき、電力会社が実施しております商業炉につきましていろいろな事故が相次いでおるということは、まことに残念なことでございます。しかし、いま政府がやっておりますことは、東海村の再処理工場は貴重な国民の税金をつぎ込んで多年研究してまいったことでございますから、したがいまして、そこの施設と、それからそれに携わっている技術者、職員、この人たちの研究を進めたいということは、これは無理もないことであろう。しかし、これが果たして一月も二月も、半年待ったらどうなるか、この点については私もつまびらかにはいたしませんけれども、できれば計画どおりやりたい、こういうことではなかろうか。しかも日本の増殖炉につきましては、一応研究段階の実験炉と申しますか、これがとにかく臨界に達したというところまで来ているのでございますから、それをこれ以上発展さしていきたいということも、これまた原子力の開発を行う科学技術庁としては、これはぜひとも計画どおりやりたい、こういう考えをとっているので、したがって日本自体はいかなる査察と管理を受けようとも、これらの既定の路線による研究は続けたいのだ、こういうことを主張しているのでございまして、決して御指摘のようなむちゃくちゃな理屈のないことを主張しているということではないので、御支援を賜りたいと思うのでございます。

川崎雅弘科学技術庁原子力局調査国際協力課長

○川崎説明員 ただいまの先生の御質問のうちの技術的な点について、若干、当方から私どもの考えております所感をお答え申し上げさせていただきたいと思います。  まず、現在わが国で主流となっております軽水型の原子力発電所は、現在運転中が十三基ございまして、稼働率は、確かに一時期は先生御指摘のとおり三〇%台という悪い時期が昭和四十九年から五十年にかけてあったことは事実でございますが、その後、所要の改良並びに所要の修理あるいはその後の研究の成果を反映いたしまして、最近に至りましては稼働率は大幅に向上をいたしております。  なお、わが国の原子力発電所の場合には、法規によりまして一年のうちに約二カ月にわたる定期検査というのが法的義務として課されておりますので、フルに動いたといたしましても、約八五%程度が原子力発電所の稼働状況でございます。ちなみに通例の火力発電所におきましては、やはりボイラー等の法律に基づきます検査のために約一カ月程度休まざるを得ない。したがいまして、フル稼働というのを一〇〇%という点ではなくて、八五ないしは火力の場合ですと九〇近くのベースにして御議論をいただく必要があろうかと思っております。  それから第二の問題といたしまして、研究段階であって非常に故障が多いという御指摘がございましたが、私どもの方の原子力委員会といたしましてのこれまでのたびたびの安全審査、並びにそれを通じて得られました知見とその後の研究開発によりまして、これらの商業用炉というものについての安全性は、現在小さい規模での故障が各部材あるいは部品の段階においてありますけれども、炉の基本的な安全性にかかわるものではなく、いわゆる初期的なトラブルであるというふうに考えております。  しかしながら、安全性の問題についてはきわめて重要であるという意識で、私どもの方では年間約百億円を投じまして、五十二年度においては約百五十億円を投じまして、安全研究の充実に一層の努力をいたしておる次第でございます。  なお、参考までに、現在の商業用発電所は世界的に見まして百七十基動いておりまして、アメリカにおきましてもすでに七十五基が稼働しておるわけでございまして、決して研究段階であるということにはならないかと思います。  それから第三点でございますが、軽水炉に続きます炉といたしましては、天然ウランの少ないわが国といたしましては、軽水炉で燃しました中でできますプルトニウムとさらに燃え残っておりますウラン235を有効に利用するためにどうしても再処理というものが必要であって、これの技術開発を軸にいたしまして、幸い先月臨界に達しました高速増殖炉、これは完全な自主技術でございますが、これを一九九〇年代にはぜひ商業化していきたい、かような路線をかねてより策定し、そのための努力を今日まで続けてきておる次第でございます。その辺を十分御理解賜れれば幸いかと存じます。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 非常にいまの御答弁こそけしからぬけれども、それはなぜけしからないのかというと、科学的な技術のわからない人を相手にしたときに言う意見として、科学者はもうちょっと謙虚に物を言わなければ危険です。私はそれをちょっといまの方に申し上げたい。私も科学技術者の端くれですから、そういう議論をするときに、これで気をつけて物を言うているつもりです。たとえば何%という数をとるときに、休止の時間が二カ月間ある、修繕の時間は一カ月間ある、三カ月というのは動いていないのだからそんなのはあたりまえじゃないかという議論をすること自体がナンセンスだ、そんなこと言うなら。それなら機関車だって同じように休止時間と手入れの時間というのがあるはずなんだ。その休止時間や手入れの時間をなおかつ含んだ上ですごい日数を修繕や調整に必要とするならば、それは余りにも機械それ自体としておくれたシステムではないかと私は言っているんじゃありませんか。  しかも、いまの意見は原子力安全の方を担当される方の意見ではなくて、原子力開発の立場から言われた。科学技術庁に原子力委員会と原子力安全委員会と二つを設けるという議論が当委員会でもあり、そうした二つの深い配慮が行われ、安全の立場から物を言わなければならなくなったのにもかかわらず、そういう開発一方型のことのみ言うというのは間違いですね。百億円の金でそれが免罪できるというのも間違いです。私はその点は十分気をつけられるのがあたりまえだと思う。そういう調子で物を議論すれば、問題の本質を失っているじゃありませんか。  科学技術の水準とレベルから言って、原子力発電所というものは非常な欠陥の多い、故障の多い、修繕期間の多い、調整期間の多いものではないかと私は申し上げている。それに対して異論はないはずです。それをわざわざそういう奇妙な細工をもって反撃をなさるのだったら、私も同じような奇妙な議論で反撃するしかなくなってしまう。それは私は論理としてはおかしいと思う。いわんや再処理施設、人員というものが相当膨大にある、いま研究している最中である、だからこのまま進めたいというような意見は、兵隊が鉄砲持って弾薬持っているから戦争したいのだという議論と同じことになってしまう。弾丸持って鉄砲持たしているのならどこかへ行ってやらなければおさまらないじゃないかというのは、昔関東軍というのがよくそんな議論をしたものだと私は思ってぞっとしておるのでありますが、大臣はそういう奇妙な論証ではなく、安全を石橋をたたいて渡るよりもきちんとなさるべきだと私は思います。  ですから、研究するという部分について日本政府の意見を述べるのは私は正しいと思いますが、いまの原子力発電所、欠陥の多いものを一挙に何十基も動かすなんということは、わが国の国益から言ってもナンセンス、費用の上から言ってもむだ遣い、研究の集中性、効率性から言ってもマイナスではないかと申し上げているわけです。  しかも、基本的なことがずいぶんたくさん抜けている。いまの技術者の方は明らかにおっしゃったが、第一次的エラーが多いとおっしゃった。第一次的エラーがまさに多い。たとえばウラニウムの棒を炉に突っ込むときに曲がっていたというので足でけ飛ばした。これは科学技術の水準が低いことを示している。また、パイプが裂けた。どうしてパイプが裂けたんだと言ったら、横を通っている材木でひっぱたいたから裂けたんだと言う。防護システムと言う前に、科学技術の水準が原子力を扱いかねている姿が全部出ているじゃないですか。だからそういうレベルの——おサルが鉄砲を持つようなものだと私は思うのですね。おサルにはおサル並みの機械なり道具なりというのが必要なんだ。まだもうちょっと十分研究した方がいいじゃないですかと私は穏やかに申し上げておるのです。それをあわててアメリカ政府と渡り合って、再処理工場のばかでかいのが必要だという議論は私はどうかと思われます。ですから、そういう基礎問題についての合意がなくて突撃すること、そしてウラニウム問題を扱うこと、発電所問題を扱うことの恐ろしさというものを私たちはいま感じなければならないと思うのですね。  私はいま、科学技術の特別委員会でなくて、わざわざ外務委員会でこんな話をするということについて、最後に注意を喚起しておきたいと思うのです。  科学技術者の言うことはすべて正しいのだというのは迷信です。科学技術者というのは常に間違える。それはなぜかというと、科学技術が何のために使われるか、だれのために奉仕するかという観点を喪失しているからです。それをチェックし続けてきた者は、常に科学技術のわからない人たちであったわけです。歴史はそれを証明しております。いま科学技術の大工場がウラニウムが必要だと言う前に、落ちついてもう一回考えていただきたい。工場がかくもぼろくて、かくも危険性が多くて、そしてかくも核拡散が多くて、そして研究に集中しなければいけないのに研究が集中的に行われていなくてという状況にあります。これを各国と交渉なさる方々にバランスをとって理解していただきたい、これが私の本意であります。  ですから、大臣、この点も十分もう一回、再三再四お考え直しをいただきまして、これはわが国の基本的な——原子爆弾と言ったら反対と言っていた時代が一つあります。そういう単純な、ある意味では論議を余り尽くさなくても国民の感情に乗って問題が解決でき得た時代がある。今度は違います。今度は新しい時代が来ております。これに対する対応というものがわが国にあっていいのではないか、そしてそういうものの上に原子力外交というものがあっていいのではないか、原子力開発というものがあっていいのではないかと思いますものですから、わざわざこの委員会で議論を申し上げたわけであります。十分御理解いただきまして、多少とも反映していただくことを希望いたしまして、大臣に対する質問といたします。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 ただいま渡部先生の御意見は御意見として拝聴をさしていただきました。確かに日本は、原子力の開発につきましては、特に欧米各国と比べましてスタートにおいて大変なおくれをとったわけで、それなりに若干いままでの開発について大変急いだという面もあろうかと思います。そういう基礎的な研究に十分な時間がかかっていないという御指摘もあろうかと思います。そういう点につきましても拝聴をさしていただいたわけで、今後の開発につきましても、私自身は担当ではございませんけれども、いまの御意見も拝聴さしていただきまして、今後勉強さしていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 それでは、ルーマニアとの租税条約について次に御質問いたしたいと存じます。  わが国政府が、今回東欧圏の諸国のうちでルーマニア政府と初めて租税条約を締結されるに至ったその理由は何なのかを御説明いただきたい。特に社会主義国でありますルーマニアとの間に二重課税防止のための協定を結ぶということがどういう意味を持っているのかを御説明いただきたいと存じます。

小野寺龍二外務省欧亜局東欧第二課長

○小野寺説明員 お答え申し上げます。  ルーマニアは、最近非居住者税制を新しく整備し、執行いたしました。それから、国内へ外国から直接投資の道を開く等、経済の国際化政策に沿って国内法制を整備してきております。そういったわけで、わが国との間につきましても現実に課税問題が生じてくるような事態になってきておりまして、租税条約によってその解決が望ましい情勢が出てきたわけでございます。社会主義国は確かに体制が異なるわけでございますけれども、このように他の西側諸国その他の国と同様の問題が生じてきたために、租税条約を結ぶことが望ましいということになったわけでございます。  加えて、体制が異なるがゆえに企業等いろいろ不安があるわけでございますけれども、そういう条約ができることによって不安が取り除かれれば、さらに経済関係が緊密化するという効果が期待されるわけでございます。それが社会主義国と初めて租税条約を結んだわれわれの考え方でございます。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 この両国の関係におきまして、租税条約を必要とするほどわが国とルーマニアとの関係は経済的に密接かつ大きな貿易量あるいは経済的な連帯を持っているのかどうか、その辺を御説明いただきたい。

小野寺龍二外務省欧亜局東欧第二課長

○小野寺説明員 お答え申し上げます。  日本とルーマニアとの貿易は昨年一億八千万ドルでございまして、ピークのときが二年前、二億四千万ドルぐらいでございましたが、これは東欧諸国の中では第二番目の規模でございます。それから、わが国の企業の駐在事務所数が十六ございまして、これまたポーランドに次ぎまして東欧の中では二番目でございます。それに並行いたしまして、在留邦人数も二番目の規模でございます。それに加えまして、ポーランドが原則として認めていない、先ほども申し上げましたように直接投資の可能性をルーマニアが開いたということ。それから、わが国との間にルーマニアは文化交流取り決め、それから科学技術協力取り決め等を結んでおります。そういうようなことで、今後、文化、人物の交流も経済交流とあわせて拡大していくことが期待されているわけでございます。  そういったような事情から、それから先ほども申し上げましたように、社会主義国であっても二重課税防止条約を結ぶ意義が十分あるという判断に基づきまして、東欧諸国中最もその必要性が高い国としてルーマニアと交渉いたしまして署名した次第でございます。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 両国における経済体制の相違が本協定の交渉中大きな問題点を惹起した点はなかったのか、また、危険性といいますか、今後の紛争を生じる可能性はないのか、その辺のところを御説明いただきたいと思います。

五味雄治大蔵省主税局国際租税課長

○五味説明員 お答えいたします。  ルーマニアとの租税条約、これは基本的にOECDモデル条約に即して締結しておりまして、それに加えて、相手国並びにわが国の税制の特性等を加味いたしまして締結されたわけでございまして、特にわが国の条約例あるいはOECDモデルと大きな相違点はございません。  ただ一つ、ルーマニアは東欧社会主義圏でございますので、国営企業が非常に多いわけでございますけれども、その国営企業は租税のかわりに納付金という形で政府に税金類似のものを払っているわけでございまして、これについても一応租税条約の適用上は租税とするということにいたしまして、たとえばわが国に払った税金につきまして、この国営企業がルーマニア政府に払う納付金から税額控除をするというような規定が特殊になっております。これは二十二条の二項にございます。  それからもう一つの点といたしましては、特に文化交流について先方は非常に積極的でございまして、ただいま東欧二課長から申し上げましたように、七五年にルーマニアとの間で文化及び教育、科学の交流に関する取り決めが行われておりまして、文化交流を促進しようということで、わが国にとってももちろんこれは歓迎するところでございますが、一般的に租税条約は、芸能人の所得につきましては、たとえばルーマニアから芸能人が来て日本で興行するというときには、興行した場所にその課税権があるということで課税をいたしているわけでございますけれども、特に文化交流を促進しようという観点から、いま申し上げました文化取り決めに基づきまして特別計画をつくりまして、それに基づく芸能人活動、これから生ずる所得についてはお互いに免税しようということにしております。これは別に争点でもございませんし、わが方もこれは全く異議がないところでございます。と同時に、同じような観点から、使用料につきましても、これはパテントとか著作権とかそういう使用料でございますけれども、一般的にこれは支払い地国で課税権がございまして、源泉徴収をするわけでございますけれども、それについてもルーマニアとの租税条約では、これは十二条二項にございますけれども、一般の使用料は一五%なんですけれども、この著作権等の文化的使用料は一〇%として源泉地国の税率を軽減しております。このように、文化促進の観点ということで二つの配慮が条約の中にされているわけでございます。  さらにルーマニアでは、先ほど東欧二課長も触れましたように、混合法人という形態がございまして、これは先方の国営企業とそれからわが国の商社なりあるいはメーカーなりとジョイントベンチャーをやろうというような場合に、それを混合法人ということにいたしまして、それについてたとえば配当があれば、それはやはり一般の法人から配当するんだというようなことにしております。  以上、大体今回のルーマニアとの租税条約の特徴でございますけれども、特にこれという争点はなかったというふうに考えていただいてよろしいと思います。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 重ねて同じことを伺うわけでありますが、先方は国営企業体が多くてこちらは一般企業体が多いわけですが、そうすると、国営企業体の自分の政府に対する納付金を租税とこちらがみなしてあげることによって、わが国側が不利になることはないのかという感じがするわけですね。まだ、先方の国営企業体が日本国にやってきて、そして実際何かの活動をやって、実は本国でこういうふうに納めていますからというふうに恐らく言う段階にないから、ここのところは余り問題はないのだろうというふうに私は見えるのですが、その辺はいかがでございますか。

五味雄治大蔵省主税局国際租税課長

○五味説明員 お答えいたします。  一般的に、国営企業でない場合には、これは自由主義諸国の場合でございますけれども、法人を例にとりますと、法人に対して所得を計算して法人税を払うということでございますけれども、仮にその法人が日本に対してパテントなりあるいは金融なりをして使用料あるいは利子、そういったものを日本の企業から取得したという場合に、それは日本側で一応源泉徴収をするわけでございます。その税金は当該パテントなりあるいは金融をした会社の法人税から税額控除する、つまり、外国に払った税金でも自国に払った税金と同じように控除するということになっているわけでございますけれども、ルーマニアの場合には税金のかわりに納付金という形になっておりますので、それを一応租税として税額控除の対象として二重課税を排除するということにしておるわけでございます。先生おっしゃったように、国際交流はそれほどいまのところはございませんけれども、仮にそういった国際経済交流が生じた場合でも、二重に税金が払われないということを確保するわけでございまして、日本側としては取るべき税金はそこで取る。それをルーマニアの国営企業なりあるいは混合法人なりが、国営企業で言いますと上納金でございますが、その上納金から日本で払った税金を控除するということで、当該国営企業が、ルーマニアの国営企業が余分な負担をしないというようなことになるわけでございまして、日本側としてその取るべき税金を取らないとか若干不利になるとかいうようなメカニズムにはならないということでございます。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 御質問の方角をちょっと変えて申しますと、先方の上納金というのが非常な大きいものであって、わが方の税額体系から言うと税金なんという種類のものでなかったというような状況であるのかどうか。もし私の危惧が大きければ、向こうとの間でこういう租税条約を結ぶということはわが国にとってはマイナスを生ずるのではないか、これは仮定の仮定の質問ですが。

五味雄治大蔵省主税局国際租税課長

○五味説明員 先生おっしゃいました点は、ちょっと私の御説明あるいは悪かったかもしれませんけれども、一応日本側で税金を取ってそれをルーマニアの国営企業が控除するということで私御説明申し上げたのですけれども、先生の御危惧はむしろその逆でございまして、向こうで払った上納金を日本の法人税あるいは個人であれば所得税から引くという場合に不利にならないかというお話でございます。  その場合には、まず最初は、先生おっしゃったようにそういうケースというのがまずないということでございます。先方での上納金というのはあくまで国営企業ということでございますので、それを日本側で税額控除するという事態はあり得ないということになるわけでございまして、もしそれがあり得るとすれば、おっしゃるようなことがあると思いますけれども、先方の国営企業がその上納金を払って日本側でそれを税額控除するということはなくて、もしあるとすれば、日本の企業が先方に上納金ではなくて、先方にも所得税制度がございまして、源泉徴収するわけでございますが、それは上納金という形ではなくて、むしろ税金という形で先方は徴収してそれを日本側で税額控除するという事態になっているわけでございます。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 要するに、両方の経済体制がくっついておりませんから、同じバランスをとって、日本の場合ですと企業体のさまざまな税金というのは企業収入の全部のほぼ半額に達する、およそ五〇%前後だというふうに言われております。先方も大体同じランクなら、これは上納金であろうと税金であろうと体制交換した場合に同じようなことになるだろうと私は思います。ところが、先方の上納金を含んだものというのはどのくらいの率になるのか、それがもし大幅に狂っておりますと、たとえば一〇%のランクで狂っておりますと、そこは問題となっております多国籍企業が十分つけ込むだけの値打ちのあるマーケットになりますし、本条約の意味そのものが見失われるだろうと私は危惧をいたしているわけでありまして、その点をお伺いしたい。

五味雄治大蔵省主税局国際租税課長

○五味説明員 お答えいたします。  税額控除をするという場合には、一般的に居住者が外国に払った税金を税額控除するということになっておりますので、いまのケースで申しますと、国営企業はルーマニアの居住者ということでございまして、上納金から控除するのは常にルーマニア側であるということになるわけでございます。日本の税金から控除するというのは、それはあくまで日本の居住者、日本の法人なりあるいは日本の個人の居住者ということでございまして、ルーマニアの国営企業は当然ルーマニアの居住者ということになりますので、引かれるべき税金というのは当該居住者が自国に払う税金から控除するということになっておりますので、上納金を租税と見たということは、あくまで先方が日本で払った税金を上納金から控除するということしか意味がないということになるわけでございます。  あと、上納金がどの程度かというお話でございますけれども、これは一応、たとえば日本で言えば専売公社のようなことで、収入から所要の経費を引いて余ったものを上納する。ですからその率はいろいろあると思いますが、その辺については最近確認したということはございませんので、若干想像というお答えにもなると思いますが、一応メカニズムはそういうことになっているわけでございます。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 そうすると、もし企業の収益金あるいは利益金あるいは明年度繰越金に該当するものが上納金として処理されているのだといたしますと、非常に大きな金額を先方企業は自国政府に対して租税のあるいは上納金の形で納めているわけですね。わが方はそれほどではない。こういう体制が両方で交換し合うわけですね。そうすると、わが方の企業が先方に出ていった場合に、それと同等の率で、あるいは税金あるいは上納金というのを課せられるという場合と、先方の企業が日本へ来て、日本の制度の上で課税されるというのを比べますと、日本側企業の方が非常な不利益になるというふうに見えると思いますね。そこのところはどうなんですか。

五味雄治大蔵省主税局国際租税課長

○五味説明員 ちょっと御説明が不十分であったと思って恐縮でございますけれども、上納金を払うのは、日本企業が先方に出ていって上納金を払うということはあり得ないわけなんでございます。上納金を払うのは、あくまでルーマニアの国営企業ということでございますので、もし日本の企業が先方に進出して事業活動をやる場合の事業形態は混合法人という形になりまして、それに対しては上納金を納めるのではなくて、三〇%の税金を先方政府に納めるということに向こうの国内法はなっております。したがって、たとえば向こうでそれだけの税金を払いますと日本側の法人税からそれを控除するという形になっておりますので、おっしゃるように、もし経済交流のボリュームが同じようになった場合に、日本側がえらく損失を受けるというような事態は上納金を通してはあり得ないということでございます。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 どうも実際的な手ざわりがよくわかりませんので、それから先は何とも申しかねるわけでありますが、現在ルーマニアに対しまして投資をいたしております本条約の適用対象ともなるわが国側企業の名前とその投資額についてお示しをいただきたいと思います。

小野寺龍二外務省欧亜局東欧第二課長

○小野寺説明員 お答え申し上げます。  わが国からの投資例というのは、先ほどから出ております現地との混合法人が一件ございます。これは会社名はロニプロドと申しまして、一九七四年四月七日に設立されました。わが方の出資は大日本インキでございます。資本金は、これはマルク表示でございますけれども、二千八百五十五万七千マルクの資本金になっておりまして、大日本インキはそのうち四二・六二%でございます。それで先方はブカレスト医薬化粧品染料工業セントラルという非常に長い名前の国営企業でございます。  以上でございます。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 一つだけですか、ほかにはないのですか。

小野寺龍二外務省欧亜局東欧第二課長

○小野寺説明員 一件だけでございます。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 ルーマニアは、わが国側企業が現地に投資しあるいは進出し、企業拠点を設ける、そういう魅力のあるところであるとみなしておられるのかどうか、その辺は状況はどうなのか伺いたいと思うのです。

小野寺龍二外務省欧亜局東欧第二課長

○小野寺説明員 お答え申し上げます。  ルーマニアがこういうふうに外国からの投資を認めたのが比較的最近でございますし、それから社会主義国としても、ユーゴスラビアのように体制がちょっと違う国は別といたしまして、ルーマニアが最初でございます。そのために、必ずしもわが国においてもルーマニアの投資環境、可能性について十分な研究がまだ行われていない段階でございます。  その状況的な例といたしまして、ルーマニアにおいて西側の諸国がどの程度そういう混合企業に投資しているかと申しますと、いままで七件ございます。イタリア、アメリカ、ドイツ、フランス、オーストリアというような諸国がいままでルーマニアに投資しております。したがって、わが国については一件でございますけれども、むしろ今後の問題でございます。  ただ、ルーマニア自身は非常に急速に工業化を進めておりまして、技術水準を高めようとしているわけでございまして、ルーマニア側は非常に熱心に西側諸国に働きかけておるわけでございます。  それから、国の体制から言いますと、投資の安全性という点では非常に安全であるというふうに見てよろしいのではないかと思います。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 この提案理由の説明の中に「船舶または航空機を国際運輸に運用することによって生ずる利得につきましては、相互に全額免税としております。」とあるのでちょっと心配になるのですが、ルーマニアからの飛行機が日本の国内に直接着陸するというようなことはまだ考えられないんだろうと思いますが、これがやがてそういう事態になるとしますと、たとえば日本の場合にはジェット料金というような形で騒音に関する税金というものを実質的に取り立てているわけであります。そういったものを免税というふうに言ってしまっていいのかどうか、その辺はどういうふうに解釈しているのか承りたい。

五味雄治大蔵省主税局国際租税課長

○五味説明員 お答えいたします。  租税条約で相互免税にしておりますのは、条約の対象税目という規定にございまして、それはあくまでその所得に対する税だということになっておりますので、いま先生が御指摘になりましたような所得に対する税以外の税につきましては条約の対象税目に入っておりませんので、この点は免除する義務はお互いに負わないということになっております。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 それから条約の本文の中で一つ気になりましたのですが、この日本文の二ページの第二条一項の(b)の(ii)「非居住者である個人及び法人の所得に対する租税」という項目がルーマニア側にございますが、「非居住者である」というのはちょっと異様な感じがいたすわけであります。居住者に対する個人及び法人の所得に対する租税というならばわかるような気がいたしますが、これはどういう意味でございますか。

五味雄治大蔵省主税局国際租税課長

○五味説明員 若干テクニカルな問題で恐縮でございますけれども、一応課税上は、納税義務者としては居住者と非居住者に分けるということに、日本の税制もそうでございますけれども、なっておりまして、たとえば当該国に永住するとかあるいは一年以上長期に居住するというような場合には居住者になりますし、そうでなくて、たとえば一年以下とか短期の滞在という場合には非居住者ということになっております。これは個人でございます。したがって、ルーマニアでもし日本の個人に課税する場合には、これは非居住者として課税する場合もかなり出てくる、長期に滞在した場合は別でございますけれども。これは法人でございますけれども、これも日本に本店が所在する法人であれば、たとえば向こうに支店なり駐在員事務所を持ったという場合には、これは非居住者である法人ということになりまして、具体的に申しますれば、日本の商社の駐在員事務所とか支店設置が認められれば、支店というのはルーマニアにとっては非居住者である法人ということになりまして、それに対する特別税率がございますので、そういったものについてこの条約を適用していくということになっているわけでございます。  補足でございますが、日本側において「所得税」「法人税」と書いておりますけれども、これは居住者、非居住者ともに所得税でカバーする、あるいは法人税も、日本法人も外国法人も法人税法の規定の中にございますので、そういう意味では書き方は若干奇異に見えますけれども、実質的には同じ立場で書いたということでございます。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 この協定の中に「工業的使用料」として「特許権、商標権、」等の記載がございますが、わが国の指定する特許権に対し、従来社会主義諸国におきましては特許権というのを認めない、一時的な対価の中にそれを繰り入れるというような国々というのがしばしばあったわけでありますが、ルーマニアの場合においてはこれらわが国側が持つ諸権利というものは十分に確保されている状況にあるのかどうか。国際的な工業的所有権を定める各種条約に対して当国の立場はどうであるのか承りたい。

五味雄治大蔵省主税局国際租税課長

○五味説明員 お答えいたします。  使用料は十二条に規定がございますけれども、パテントその他をたとえば日本法人からルーマニアの企業に供与する、供与の仕方はいろいろ先生御指摘のようにあると思います。これを貸してその使用料を継続的に取るという場合もございますし、あるいはそのパテントを譲渡する、あるいは実施権を譲渡する、いろいろ形態はあると思いますけれども、その場合には使用料あるいはその譲渡の対価として受け入れるものについては先方では国内法では一五%以上の税金がかかるわけでございますけれども、これを一五%に制限している。逆に日本がこういったパテント等を使用する場合には、わが国国内法では原則的には二〇%ということになっておりますけれども、この条約によって、そのグロスの支払いに対して一五%でその課税をとどめるということになっております。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 私はかねてから、OECDの租税条約の改定草案等の審議の途上でもあり、租税条約関係の諸条約というものが多国籍企業のビヘービアというものに対してその悪い面に対してむしろこれを保護し防護する立場にあるのではないかという観点から御質問をし続けてまいりました。今日に至りまして、多国籍企業問題は国連でも取り上げられ、さまざまな問題にもなってまいったわけでございます。本条約はOECDの租税条約改定草案を十分にそのたたき台としてモデルとしてつくられたと承っているわけでありますが、多国籍企業の問題と関連して当国とルーマニアとの関係、また本条約の締結による多国籍企業のビヘービアに対してどういう影響があるか、その辺に対する基礎的な認識を最後に承りたい。

五味雄治大蔵省主税局国際租税課長

○五味説明員 お答えいたします。  OECDでは一九六三年に租税条約のモデルを作成いたしまして、六八年以降これを改定するという観点で改定作業が行われてきたわけでございます。ことしの四月十一日にOECDの理事会でこれを承認いたしまして、今後加盟国が租税条約を結ぶ場合にはこのモデルに従ってやるべきであるというようなことを勧告しているわけでございます。それで、従来のOECDモデル条約と今回のOECDモデル条約との改定点と申しますのは、余り実質的な改定点は特に見当たらないのでございますけれども、国際的な取引が非常に複雑化してくる、それに対して非常にきめ細かい対策を講じなければならないということで、従来の条約の規定で若干あいまいあるいは疑点があるというような点を解釈を統一いたしまして、それを盛り込んだところで改定モデル条約をつくったということでございます。これはもちろん強制力がございませんで、単なる勧告で、租税条約を締結する場合にはできるだけこのようなスタイルでつくれというようなことになっているわけでございます。  主な点を簡単に申し上げますと、たとえば国際運用所得につきましても、従来の規定ではお互いにその国際運用所得については相互免税するということになっておりましたけれども、それに一項追加いたしまして、国際的な経営共同体あるいはその共同計算とかあるいはそのプール計算というような場合にも相互免税をその持ち分に対して適用していくというようなことを加えたとか、あるいは芸能人所得につきましても、本来芸能人の場合には源泉地国で、つまり興行した国で税金をかけるということになっておりますけれども、法人形態にしてそういった興行を打つというような場合には、事業所得条項との関連で恒久的施設がないと課税しないというようなことで、個人で芸能を行った場合には源泉地国で課税、法人形態の場合には課税できない、こういう不合理も出るということで、これも芸能人条項に新しく規定を追加したというようなことがございます。こういった点につきましてはむしろOECDの租税委員会でわが方の立場を強調いたしまして、わが国の条約例にも、そういった点については同じように取り扱うべきであるというようなことで入っているわけでございますけれども、そういった点をOECDの租税委員会に提出してコンセンサスを得てそういったものを条約に規定したというようなことでございまして、たとえば今回のルーマニアの条約もその線に沿ってその規定がしてあるわけでございます。  あと細かい点がいろいろございますけれども、例として申し上げましたが、特に今回の改定されたOECDモデル条約と日本とルーマニアと調印いたしました、この御審議願っている条約とのそごというものはないと申し上げてよろしいかと思います。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 それではルーマニアとの条約につきましては、私の質疑はこれで終わらしていただきたいと存じます。  次に、簡単に所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とブラジル合衆国との間の条約の方に移りたいと存じます。  昭和四十二年一月に署名されましたブラジルとの租税条約を今回修正補足する必要性、そして修正個所、その意味合いはどんなものであったかをまずまとめてお答えをいただきたいと存じます。

村田良平外務省条約局外務参事官

○村田(良)政府委員 ブラジルとの現行条約は十年前に締結されたものでございますが、その後ブラジルにおきましては逐年経済開発のためのいろいろな租税特別措置が行われまして、これに合わせて現行条約を改正した方がいいのではないかという問題が生じたわけでございます。またブラジルはわが国との条約を結びました後でいろいろな国、具体的に言いますと十カ国あるのでございますが、それらと租税条約を締結いたしまして、その中ではブラジル側の課税権を最も低く抑えたのが日本との条約であるということで、先方からブラジル側の源泉課税に関する権利をもう少し高めてくれないかという提案がございまして、これに基づきまして話し合いました結果、九条、十条、十一条、二十二条に関しまして所要の改正を加えたわけでございます。  なお、ブラジルの国の呼称が変わりましたので、その点についても関係の個所をブラジル連邦共和国というふうに改めたという技術的な修正が加えられております。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 ブラジルはオイルショック以来経済の低成長及びインフレの再燃、国際収支の悪化等の理由により輸入制限を強化してきたと聞いておりますが、日本政府は輸入制限緩和のための交渉を行ったようであります。こうした対ブラジル関係の経済的な諸施策はどのようになっておるのか、御説明をまとめていただきたいと思います。  なお、ブラジル国内の民間部門を初め、ブラジル工業開発審議会あるいは日本ブラジル経済合同委員会等の公式用ルートを通して、わが国の対ブラジル企業進出に圧力を加える動きがあったとも承っておりますが、その辺も承っておきたいと思います。

内藤武外務大臣官房審議官

○内藤政府委員 お答えいたします。  近年ブラジルとの間におきましては貿易関係が非常に増進しておりますが、ブラジルは非常に大きな石油輸入国でありまして、石油危機以来外貨負担が増大いたしまして、そのために国際収支の赤字の結果、かなり広範な輸入制限措置をとらざるを得なかった次第でございます。それに対しましては、わが方の輸出品が非常に多くそれに関連いたしますので、たとえばブラジルのガイゼル大統領が昨年九月に参りました時点におきましても、その他の機会をとらえまして、このような輸入制限措置が早期に撤廃されるように随時わが方から申し入れており、特にガイゼル大統領に対しては非常に各レベルにおいて申し入れた次第でございます。それに対してブラジル側の反応といたしましては、そのような国際収支の悪化にかんがみてやむを得ない措置ではあるけれども、しかしながらそのような事態が改善され次第、早期に撤廃することにやぶさかでないということと、これは特に日本に差別的にやったものではなく、全世界に対してやったものであるから、その点について了解していただきたい、そのようなブラジル側の態度でございます。しかしながらわが国といたしましても、その後引き続いてブラジル側に早期撤廃方申し入れておるのが現状でございます。  それからもう一つの点で、企業進出がブラジルに対して最近非常に盛んでございまして、それに応じましてすでに五百数十件の投資があったということでございます。それに対しまして、幸いにしてブラジルは資源も豊富でありますし、投資部門も広範で非常に底力があるというような事情でございますので、外資を吸収する余地が非常に多いということで、現在の時点におきましては日本からの進出企業に対してのオーバープレゼンスというようなコンプレインはまだ起こっておりません。しかしながら、そのような事態になることを防ぐために、日本側としましては、たとえばブラジルにおいてすでに投資が行われておるような産業に対して、競合するような部門に日本の投資が集中的に行われることを防止するというようなことでしかるべき指導がなされておりますし、あるいはサンパウロにおける日本商工会議所においても、そのような立場で各企業間の意思疎通を図るというようなことでやっております。そのような結果といたしまして、現在までの時点におきましては、ブラジル政府側から日本の非常に過度な企業進出に対してこれを差し控えるようにというような圧力というものはまだ来ておりません。そのような事情でございます。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 昨年九月のガイゼル大統領の訪日の際、わが国はアマゾン・アルミ製錬プロジェクトなど大型経済協力を約束しておりますが、その進捗状況はどんなものであるか。  また、これと関連して申し上げるわけでありますが、日本側の対応が非常に遅くてブラジル側の日本の経済協力に対する期待というものをしばしば裏切ってきたケースがあるのではないかと思われる節がございますが、そうした意見の食い違いというようなものは相当克服されているものかどうか。当然克服されるべきだと思いますが、どうですか。  また、ミナス製鉄所の大幅拡張計画に基づきまして、わが国に対して四十三億円の追加援助というのが求められましたが、わが国の対応はこれまた非常に冷たいということで、対日不満の原因になっておると承っておりますが、その辺もいかがでございますか。  西ドイツのブラジルに対する原子力開発に関する超大型プロジェクト、あるいは低成長下にあります——低成長というよりも破綻に頻しているというイギリス政府が、日本から借金しておいてブラジルに援助したなどというすさまじいケースもあるわけでありますが、ただの援助とかお恵みという観点でなくて、対ブラジル体制というのを強固にして、両国の友好関係、心の通う国家になり得るブラジル政府に対して、日本側の取り組みというのはもっと大型かつ徹底的なものであっていいのではないかと思われますが、その点も含めましていかがでございますか。

内藤武外務大臣官房審議官

○内藤政府委員 お答えいたします。  まず第一に、先生の触られましたアマゾン・アルミ計画の関連でございますが、ガイゼル大統領の昨年九月の訪日に先立ちまして、非常に大きなプロジェクトがブラジル側において逐次行われまして、その一つとしてアマゾン・アルミ計画もあったわけでございます。これに関しましては、幸いにしてガイゼル大統領の訪日の時期を境といたしまして、非常に各方面の協力が進み、ブラジル側におきましても日本側におきましてもその協力が進んで、幸いにしてこれについて双方の間で強力に推進するという話がまとまったわけでございます。その後これを現に推進いたしておりまして、このアマゾン・アルミ製錬計画につきましてはすでに昭和五十二年、本年の一月二十五日に日本側の投資会社日本アマゾン・アルミ株式会社が設立されております。そのようにして逐次本件は推進しつつあります。  それからもう一つ。先ほどブラジル側の期待を裏切るようなことがあるいは日本の対応の態度であったのではないかというお話がございましたが、それは恐らく昨年四月の時点においてございましたアマゾン・アルミ計画に電力を供給するツクルイ発電所の計画、これがわが方に対しても融資の要請があったにかかわらず、フランスに昨年四月にガイゼル大統領が参った際に、先方がよりよい条件を提供したためにこれがとられたということで、たまたま日本にすでに昨年の一月に申し入れてあったにかかわらずそれが向こうに行ったということで、日本としては関係方面はやや恐慌を来したということで、ブラジルに対する積極的対応の態度が十分でなければいろいろな意味において日本が出おくれるのではないかという危機感が一度あったわけでございます。しかしながら幸いにして、これが一つはある意味において参考となりまして、その他の大きなプロジェクトにつきまして、ガイゼル大統領の来日を機会に双方が積極的に進むし、日本側におきましても遅滞なく対応するというような状況が続いたもので、非常に円滑にいろいろな計画が進んだわけでございます。  それからウジミナス製鉄所に関連しての御質問でございましたが、ウジミナス製鉄所は日本、ブラジル間におきましては非常に成功した経緯がございますが、次第にその規模を増大してまいりまして、すでに第二次拡張計画であるところの二百四十万トンの計画を幸いにして達成いたしまして、現在におきましては第三次拡張計画、すなわち年産三百五十万トンまでに引き上げるということで、これに対して日本側の関係の株主に対しての増資についての約七千万ドルを一九七九年までに達成するということでございますが、それについての要請が参っておるということでございます。これにつきましても、いろいろいまの民間企業の非常な苦しい立場であるとか、そういった経済的な問題がございますし、その他にもやや問題はございますが、これは慎重に検討して、本件が円滑に、しかも所期の目的を達するようにわれわれといたしましても協力してまいりたいという考えでございます。  それからブラジルと日本との一般的な関係につきましては、たとえば一九七一年におきましては相互の貿易量は二億レベルであったものが、昨年レベルにおきましては輸出輸入とも八億ドルというほどの大きな規模ですでに進んでおりまして、投資のみならずそのような貿易につきましても、それからその他の一般の経済協力案件につきましても、非常に強力な関係が達成されつつあるということでございますので、こういった点も含めまして、かつブラジルの中南米において占める非常に大きな地位というものも考慮に入れまして両国関係を増進してまいりたい、そういうふうに一般的な立場で臨みたいと考えております。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 では最後に伺うのですが、この日伯関係、正規のいろいろな経済進出、特に日本企業を中心とする商売上のおつき合いというのが続いているわけでありますが、企業進出の対象として見るブラジルとか、日本人がたくさんいるという甘えによる対ブラジル観とか、それから貿易の取引高がふえるという意味でのブラジルとか、こうした物の見方だけでは日伯関係は安定しない、あるいは南米全体との関係というものは決してうまくならないだろうという感じがいたしますし、現にそういう反省は生まれつつあると思うわけであります。ですから、日本との借款が他に奪われそうになると、突然副総理がお出かけになって、突然すべての状況が緩和されるなどというふうに先方に受け取られることは、マイナスではあってもプラスは何にもない、非常に不安定な日伯関係だろうと思うわけですね。その不安定な日伯関係を安定したものにするためには、単に経済にとどまらず、文化関係においても人事交流についても学術交流においても、さまざまな関係が一様に調整されコントロールされ、あるいは促進されていかなければならないと思います。一部の企業の利益にくっついた日本政府というイメージは決していいものではなかろうと思います。いわんや多国籍企業の後ろ側にいて先方諸国の国内政治状況に対する干渉を行った多くの失敗の先例というものを考えますときに、わが国の態度は決してそのような前車の轍を踏んではならないと考えるわけであります。ではわが国としては日伯関係をどういうように扱っていくのかについて、政界、財界、官界等を挙げての打ち合わせとか連絡というのが不十分ではないかという感じがいたして仕方がないわけでありまして、その辺十分の御配慮を今後いただきたい。御担当で長く御苦労されておられたのですから、私が申し上げる以上にその辺は十分察しておられるとは思いますけれども、両国関係の安定、平和というものを考えますと、特にもう一回申し上げたいと思いまして締めくくりに申し上げたわけでございますが、所信のあるところをお示しいただきたいと存じます。

内藤武外務大臣官房審議官

○内藤政府委員 われわれ非常な注意をもちまして傾聴いたした次第でございます。先生がただいま御指摘になりましたように、単に経済的な関係ではなくして、すでにブラジルにおいて七十五万という日系人を持っておるという人的なつながりもございますけれども、必ずしもそれに安んずることなく、広くその面を単に日本のために利用することではなくして、強化してまいりたいという点は、われわれもふだん常に心がけておる次第でございます。たまたま遠距離であるがために、人の交流もアジアその他の地域におけるほど十分でないという点はございますけれども、幸いにしてわが方からも、十数年前になりますけれども岸総理もおいでになりましたし、田中前総理もおいでになり、福田総理も副総理のときにおいでになったということと、それから先方も、日本が現在世界において占めるところの国際的地位、あるいは日本が与え得る単に経済的なもの以外のものについてもようやく認識を改めつつあるという点もわれわれ感じておりますので、そういった面で、双方の経済的関係以外の面において非常に広い交流が行われることによって相互に利益する関係が生まれるべく、われわれも十分に心がけて努力してまいりたいと存じます。

竹内黎一自由民主党

○竹内委員長 次回は、来る二十五日水曜日午前十時理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時二十六分散会      ————◇—————

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