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80回国会衆議院1977/03/02

外務委員会 第2号

発言数
177
登壇者
19
会派数
6
開催日
1977/03/02

会議録

竹内黎一自由民主党

○竹内委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川崎秀二君。

川崎秀二自由民主党

○川崎(秀)委員 帰り新参でありますし、私は、予算委員会以外で質問をいたしますのは二十数年ぶりであります。労働、厚生委員会というのが終戦直後にありまして、そのときに質問して以来であります。  福田総理大臣は、覇権反対については日中共同声明の精神を尊重してやる、日本国憲法と抵触しなければ本文に入れようが前文であろうが問題ではない、こういう言明をされていますが、日本憲法のどこが覇権反対に抵触するのか、また不安があるのか、まず承りたい。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 川崎先生に、特に日中問題につきまして御説を拝聴できることを大変ありがたく思っておる次第でございます。  ただいまのお尋ねの福田総理の予算委員会におきます御答弁で、共同声明の、特に覇権反対のところでございますけれども、「平和憲法に基づくわが国の基本的立場につきまして中国側の理解が求められるということであれば、これは前文に入れようが本文に入れようが、それは技術的な問題でありまして、こだわっておりません」という御答弁がありましたことは、私も拝聴をしておったわけでございます。私はこの福田総理のお考えは、覇権反対というこの表現が憲法のどこかに抵触するというような趣旨で申されたのではないと思っております。日本国憲法を持っておる日本の外交姿勢と申しますか、こういった日本としてのとるべき態度というものにつきまして言及されたのだというふうに私は伺って、私はそのように理解しておりまして、日本の外交というものが平和憲法に基づく外交でなければならない。そのためにはあらゆる国と、その相手方の国情あるいは制度の違いというものはそれぞれあるわけでございますけれども、これらを皆尊重しながら、互いに世界のあらゆる国と外交関係、友好関係を深めていくということがわが国のとるべき態度であろう。そういう態度につきまして中国側の理解が得られたならば、私は、その条文としてのこれは、前文であろうが本文であろうが、これは技術的な問題にすぎないのではないか、こういうふうに理解をいたしておりますし、総理もそのような御理解の上での御発言ということと存じておりまして、日本国憲法自体に抵触するというようなことで申されたのではないというふうに私は理解をいたしておる次第でございます。

川崎秀二自由民主党

○川崎(秀)委員 覇権の反対について不安があるというのは、やはり憲法第九条関係で、いわゆる自衛権があるけれども、海外へ自衛隊を派遣することはない、これはもうはっきりしていることですが、そういう点において、あの日中共同声明第七項が、ある国が侵略してきた場合に日中が共同行動を起こす、そういうことを憂えているのが外務省あたりにあるんじゃないですか。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 ただいまの覇権反対という表現が共同行動を意味するものではないというのは、外務省皆そのように理解をいたしております。したがいまして、その表現が憲法上の直接の問題であるとは考えてないわけでございまして、このようなわが国としての理解を持つ、そのようなことは先方にも十分主張してありますので、その点につきまして私は問題になるということはなかろうというふうに信じておる次第でございます。

川崎秀二自由民主党

○川崎(秀)委員 実は、一九七二年の九月二十九日に共同声明が締結された。その前に田中前総理大臣、大平元外務大臣、この共同声明の第七項について、非常に深く突っ込んだ意見を周総理との間に交わした様子はないんですね。ないんです。薄ぼんやりとでもないんでしょうが、上海コミュニケにあるなら入れようということであったというふうに思われる節がある。いまの御説明であれば、先般、河野謙三参議院議長が、何かの機会に田中さんから、あれは共同行動を起こすというようなことをソ連が恐れておる、あるいはソ連がそれに関心を持っておるというようなニュアンスを受けて、先般蓼承志氏との会談で持ち出したそうですね。すると、そんなばかなことはない、これは両国の精神的団結の印であるということを言われておりまするし、また、きょう私手元には持っておりませんけれども、中国とマレーシアあるいは中国とタイの共同声明ないし平和条約、平和条約にも覇権主義反対をうたっておる。これは明らかに覇権主義によって被害を受けたあるいは今後脅迫されんとするアジアの諸国が、精神的共同行動を起こすあるいは国際世論の結束を図るために声明を入れているんだということを私は私なりに理解しておるんですが、したがって、タイと、マレーシアと結んだものも、軍事的、政治的同盟協定ではない、そういうふうに理解できませんか。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 マレーシアあるいはタイと中国との共同声明につきまして、覇権反対ということがうたわれておりますことも承知はいたしております。わが国と中国との間の共同声明におきましても、やはりそのような精神で私は第七項というものができておるというふうに信じておるわけでございまして、これらの私どもの理解というものが、これが中国側もよく御理解いただけるならば、私は道は開けるものというふうに考える次第でございます。

川崎秀二自由民主党

○川崎(秀)委員 これに関連してしばしば話題になっている宮澤四原則というのは、きょうはこの席では恐縮ですが、あの四原則のうちの最後には、アジア・太平洋地域に限らず覇権主義反対は全世界共通の原則である。これはよけいなことですが、中国や日本がヨーロッパや北アメリカで覇権主義をとる気遣いはないわけですから、そういう力もないし、また憲法はそれを否定している。が、あれはうたわなくてもよかったことではなかろうか。小坂外務大臣、園田君などが言っておるのは、そういう意味だろうと思っておるのです。  私はこの機会に、自民党のかっては少数派、今日では大体多くの人が、日中共同声明の趣旨に沿って条約を締結せよというのは多数の意見のように思うのですけれども、その根拠、積極的な意見というものが展開されておりませんので、これは質問というよりも、この場をかりまして私どもの意見を申し述べておきます。  第一に、覇権反対については、過去百年、詳しくは日清戦争以来ですから、九十数年になると思う。その歴史の回顧と同時に将来の発展、展望を見開いた上で議論をしなければならぬ。今日の国際情勢で右顧左べんすることはない。現在ももちろん重要であるけれども、過去の歴史並びに将来の展望というものを含まないで議論しておってはだめだということが第一であります。  第二は、日中間の衝突、摩擦、戦争は、日清戦争で日本が勝利して以来次第に大陸膨張政策をとるようになった。これに列強の角逐が中国全土にわたって展開され、清朝末期の腐敗とともにいわゆるシナ植民地化が繰り広げられたからだと思っております。その間これに災いを及ぼさなかったのは、実に皮肉なことに列強の間ではアメリカ一国である。イギリスを初めとしてロシア、フランス、スペイン、ドイツ、その他欧州列強と中国、あるいは中国と日本の入り乱れた武力紛争というものは日露戦争前後からさらに激しくなって、シベリア出兵、南京事件、済南事件、第一次大戦の膠済半島での日独戦争、遼東半島還付事件——これは三国干渉によるものである。こういう多くの事件を生み、昭和六年の満州事件まで中国の受けた国土の被害、人命がまず数百万の損害、そうして日本政府の膨張政策に過って駆使されたとはいえ、いわゆる富国強兵政策によって大陸の権益保護という名目で失われた将兵の生命は、満州事件突発までに数十万、邦人の生命、財産また莫大であった。その意味で覇権反対というのはわが国の国民にとっての一つの願いでもある。被害者はひとり中国だけではない。これをひとつ頭に入れていただきたいと思うのであります。  満州事変以来のことはもう皆さん御承知のとおりである。それ以来の数は、まず日本が侵略した東南アジア各国あるいは南方の諸国、島嶼の何百倍に当たる者が中国本土において血をすすられた。われわれの先輩も血を流しておる。こういう意味において、被害者は大は中国、小は日本である、こういう見地でこの覇権反対を貫かなければならぬ。これは日本側がむしろ積極的に言うべきことであったと思うのです。  日中間のことはすでに日中共同声明において周恩来総理が毛沢東主席の言葉を使って言われたように、これによって恨みが消えた、恨みはほどきこそすれ結んではならぬ、これは有名な毛沢東の発言であります。それで日中間のことは終わったが、当時の列強を交えての過去の歴史は抹殺することはできない。その上に立って日中平和条約の厳粛な締結をしなければならず、覇権反対ということは非常に重要な意味を持っておるということである。  それから、将来の展望ということになりますと、将来ではあるがすでに今日から糸を引いておるのは、覇権反対は、一九七二年のニクソン訪中に際して周恩来総理が発議し、キッシンジャー前アメリカ国務長官が賛同して、アジア及び太平洋地域において覇を確立しようとするものに対して反対する、自分らはもとよりであるというところに意義があると私は思っております。なぜ意義があるか。すなわち、当時アメリカはベトナムに対する世界世論の圧力によって、また賢明にも自分の見開きによって北爆を中止した。それから、ベトナムからの撤兵を声明しておる。そういうときでありまして、これは私の観測ですが、太平洋地域を席入したのは何かと言えば、そのころは中国がインドネシアその他フィリピン、いわゆる海洋地域国家に脅威を与えつつあった。中国は巻き返しに出るのではないかというようなことに対して、この一般的観測をみずから打ち消した点で二重の意義を上海コミュニケというものは持っておる。それほどの深い意義がこれには秘められておる。記録によれば、周総理とキッシンジャーは北京において、また北京—杭州間の飛行機の中で、さらに杭州滞在間、杭州—上海間の機中を通じ、三十七時間も話をしておる。それは台湾からの米軍撤兵問題が主でしょうけれども、これは覇権主義反対ということに対して双方で合意をするに至った非常にむずかしい、デリケートな問題を乗り越えたわけである。そういう意味で、覇権反対というものは将来血を流さざることを誓ったいわゆる断血外交、平和外交の基礎だというふうに思うのであります。  いま第三国、特にソ連の圧力などということがしょっちゅう言われておりますから、私は申し上げておきたいのですが、日本側が積極的決意を持てば、米国が中国に示したように、日本もまたソ連に覇権反対主義を示すことができて、もしソ連がみずから覇権に無縁であることを証明したいなら、日ソ間にも覇権反対ということを将来の条約に入れたらいい。日ソ平和条約は、領土問題で暗くてなかなかできない。できないけれども、何だか親善友好条約というようなものの提案もあるそうです。そのときにはそれを入れてもらえばすべて問題は解消すると見ておるのです。これは答弁というよりは感想を承りたい。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 ただいま川崎先生の御高見を本当に厳粛な気持ちで拝聴いたしておったわけでございます。過去の日本がたどってきたいろいろな歴史がありまして、過去の富国強兵のために隣邦がいかに迷惑をこうむったかということも私どもの大いに考えなければならない重大な点であろうかと思います。  ただいまはまた、ソ連との対応につきまして貴重な御意見を賜りまして、ここで、この席でありがたく御意見をちょうだいをいたしますということにとどめさしていただきたいわけであります。  条約問題につきまして、私どもいままでのいろいろな経緯がありますので、この経緯の上に立ちまして、この際余りこの席で——また、総理もよく申されておるのでありますけれども、共同声明のレールが敷かれておるわけでありますから、私どもは誠実にこのレールに従いまして平和友好条約の締結交渉に積極的に取り組むということを申し上げまして、私の気持ちの一端を申し上げまして御答弁にかえさせていただきます。

川崎秀二自由民主党

○川崎(秀)委員 鳩山外相が登場した意義というのは経済外交にあるというのですね。しかし、私は鳩山さんはやはり鳩山外務大臣であってほしい。鳩山外務省担当経済大臣では困るので、やはり鳩山政治大臣、行政大臣でなければいかぬ。とにかくこの間うちから見ておると、園田官房長官は園田日中問題担当大臣みたいで非常に積極的である。しかし、外務省はやっぱりイニシアチブをとらなければならぬ。ヘゲモニーでなくてもいいかもしらぬが、イニシアチブをとって推進をしてもらいたいと思うのです。  鳩山さんの歴史はこんなところで申し上げる必要もないほどです。しかし、おじいさんのときから調べてみると、国会開設運動を起こした大隈重信、それに随伴しておるですな。けさの朝日新聞を見ると、憲政記念館の三先覚に参ったのが国会議員で十四人だ。ばかなことですな。私は前の日にも見ておる。これは大隈さんとも少々関係があるから見ておるわけですが、その国会開設運動に参画して衆議院議長となり、お父さんは百折不撓擁、実に艱難をなめ尽くしてついに総理大臣になって日ソ交渉を果たした。いまから思い起こすと、自民党はまだ結党したばかりで党内は大揺れです。日ソ交渉に反対の方が多い。三木武吉さんと河野一郎氏が音羽の私邸に行った、これはもう投げようといって。私は河野さんがついてこいというものだから行ったですわ。応接間で待っておったら、二時間ほどして三木武吉さんはおりてきて、血相を変えている。河野一郎氏も何だかばかに興奮している。おれはきょうは鳩山の信念に打たれた。鳩山さんは君ら二人に閣僚の人事や党の運営を全部任してある、おれは何のために総理大臣だ、おれは日ソ交渉だけは君らに譲らぬ、君らはおれに従えばいいのだ、その気魄に二人は打たれた。この思い出はいま日中の比ではないです。日中はすでに、少々荒っぽかったけれども、田中角榮という首相が思い切ってやっちゃった。後はもうちょっと残っているだけですわ。これはどうかひとつ——鳩山一家はハトの代表者なんだ。四代に続くという、そういう議会政治、和平外交の中枢である者が口をもぐもぐしておってはだめだ。園田君と力を合わせれば、福田君も変わるですよ。福田氏は、佐藤内閣の末期のときにアヒルの水かきをやった。アヒルの水かきを盛んにやって、私が北京に行くと、向こうはカモ料理にアヒルの水かきが先に出てくると、「福田さんが出てきた」と言って笑わしたものだ。しかし今度は本気ですよ。本気になると思う。どうかそういう意味でやっていただきたい。  最後に二つ、これは重要な質問です。  外務官僚だけに任さずに、外務大臣自身が、政治家が当たるということが今度の日中友好、平和条約の決め手です。ニューヨークあたりで便宜的にちょっと会ってみたり、そんなことはだめです。真っすぐ北京へ行く、あるいは東京へ来てもらう。こっちから行けば必ず来る。どうですか、機が熟せば行く気持ちがありますか。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 ただいまの川崎先生のお話、本当に私も心を打たれた次第でございます。  私自身の行動につきましては、私は福田総理の御指示に従って、機が熟せば必ず訪中して最後の努力をいたしたい、こういう所存でございます。それまではどうか、私ども誠心誠意積極的に交渉に取り組んでまいります。その点につきましては、御鞭撻御指導はもちろんちょうだいいたしたいわけでありますけれども、どうか温かく見守っていただきたい、こう思います。

川崎秀二自由民主党

○川崎(秀)委員 非常に御丁寧な答弁ですけれども、行くか行かないか。将来機が熟せば行くか。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 当然のことでございまして、私自身労をいとうものではございませんし、もちろん私自身も誠心誠意努力をいたす所存でございます。当然どこへなりとも飛んでまいって、訪中をいたしまして、努力をいたしたいと思っております。

川崎秀二自由民主党

○川崎(秀)委員 最後に、これは答弁は要りませんが、御列席の中には岡田君のような中国に深い経験を持っておられる方もおる。私、周恩来総理というものは非常に偉かったというのは、先の見通しとともに、彼は確信しておる。田中首相が訪中すれば国交回復は一週間を必要としません、すぐ成立させます。そして平和条約は、安全保障の問題もあるわけですから多少時間がかかります、けれども、ソ連のように領土問題がありませんからそんなに長年月ということではない、そして平和条約ができたら自分が訪日する、こういうことだった。亡くなられました。しかし、いま周恩来路線に中国の外交が返ってきたというチャンスをつかまえなければいかぬ。華国鋒体制は毛沢東主義、ただし内外施策は周恩来路線、きわめて穏健現実的な路線である。このチャンスを逃がしてはならぬと切言をいたして私の質問を終わります。

竹内黎一自由民主党

○竹内委員長 次に、河上民雄君。

河上民雄日本社会党

○河上委員 ただいま大先輩から日ソ交渉のときのお話などが出まして、私も改めてその時代のことを回想しながら、けさ新聞で報道せられました日ソ漁業交渉につきまして、外務大臣の御意見を承りたいと思います。  鈴木農林大臣が訪ソされましてイシコフ漁業相と交渉をし、非常に心配されましたいわゆる安全操業につきましては当面保障せられたということで、漁業関係者に一種の安堵感を与えたわけですけれども、きょうの新聞報道によりますと、基本的な新条約ができるまでの暫定措置については、結論が出ず二週間後に再交渉、こういうふうに報道されております。いろいろ私どももまだわからない点がたくさんございますので承りたいのでありますが、まず、暫定措置が結論を得るに至らなかった、つまりだめになった理由というものはどういうところにあるとお考えですか。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 漁業交渉につきまして昨日までに話し合いが全部つかなかったという報告でございまして、私どもも詳しい報告をまだ聞いておらないのでございますけれども、いままでの議論から想像いたしますと、いずれ本協定というものは恐らく明輝ぐらいからのテンポで考えておるのではなかろうか。ソ連の二百海里という水域を認めた前提のもとで長期的な取り決めを結ぶ、それはまだ明年からということにいたしまして、その間暫定協定で何らか日本の漁業を実施できるようにしたい、こういう考えになっておった次第であります。ことしいっぱいどうするかということにつきまして、サケ、マス、ニシンにつきましては、これは現在の日ソ漁業条約がありますので、この漁業条約が廃棄通告があってから一年間は有効であるというので、この三種につきましては、現行の条約に基づいてこの十五日から漁業委員会を開いて決めようというところに話は来たようでございます。しかし、その他の魚種につきましては、これは当方としては現行の漁業条約を広げていけばできるではないかということを申しておったわけでありますが、先方は、それは現行の条約ではだめだ、こういう態度で、したがいまして、その他の魚種につきましてどういう協定のもとに今年いっぱいの暫定措置を講ずるかという点につきまして、議論に入ったと思うのであります。  その暫定措置になりますと、先方としては、当然のことながら幹部会令に基づきます国内法体制を日本側が認めて、そしてその間の暫定措置をとろう、こういう主張でありますが、わが方としては、恐らくこの協定というものは行政協定で実行していかなければならない。その行政協定でやるにつきましては、日本の国民に対しまして新たな義務を課するようなことはむずかしいんだ、こういうことで暫定協定の中に盛るべき技術的といいますか、法律的な問題につきまして、両者の見解が一致をしないということで結論が得られなかった。これは一部私の想像も入りますけれども、そのように私は理解をいたしておる次第で、その点につきまして技術的にもっと詰めようということになりまして、あと二週間後にと、それまで技術的に詰めよう、こういうことになっておるというふうに承知をいたしております。

河上民雄日本社会党

○河上委員 いま鳩山外務大臣は、暫定措置が成立しなかった、合意に達しなかった理由として、技術的な細目について意見の一致を見なかったということを挙げられたのでありますけれども、私はいまの御答弁を伺っておりましても、どうも今度の交渉に日本政府が臨むに当たって、二百海里時代に入ったんだという認識について若干の甘さがあったんではないかという懸念を非常に持っておるのであります。特にいまの御答弁を伺ってその感を深くいたしました。  そこで、まず第一に、今度の新しい基本的な条約については、二百海里というものを前提としたものを結ぶ、これはわかります。しかし、その間の暫定措置というのは一体どういう性格を持っているのか。現行の漁業条約にかわる暫定措置であるのか。それともすでにその中で新しい基本条約へ移行する、内容的にはもうそちらに乗り移った形の暫定措置であるのか。いまお話がございました技術的な点というのは、恐らく入漁料を払えとか、あるいは裁判権の帰属がソ連にあるとかいうようなことが、どうも日本の国民の権利義務に関するものであって、いわゆる行政協定にそぐわない、こういうことで合意をあきらめたというふうに承ったわけでありますけれども、このようなことを要求すること自体、実はこれは二百海里という思想の上に立った、向こう側から言えば当然の要求だと思うんです。  したがって、ソ連側はすでに暫定措置の中に二百海里というものを認めろ、すでに暫定措置ではあるけれども、内容的にはもう次の時代に移っているんだという考え方がはっきりあるのに対して、日本側は一九五六年の従来の漁業条約にかわる暫定措置である、その性質に乗った上での暫定措置であるというふうに考えて出かけたところに、そういうそごを来したのではないかというふうに私は恐れるのでございます。  一体ソ連邦との漁業条約、いま川崎委員からお話がございました、鳩山首相の時代でありますか、一九五六年の五月ですね。河野一郎氏と松平氏がサインをしてまいりましたソ連邦とのいわゆる日ソ漁業条約、その第八条の2でありますか、それによりますと、「いずれの一方の締約国も、この条約の効力発生の日から十年の期間を経過した後はいつでも、他方の締約国に対してこの条約を廃棄する意思を通告することができる。その通告があったときは、この条約は、他方の締約国が廃棄通告を受領した日の後一年で終了するものとする。」こうなっておりますね。いまの状態を廃棄通告があった後一年間有効期間というふうに見ておられるのか、いかがでございますか。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 現行の日ソ漁業条約につきましては、いまお話しのように廃棄通告があってから一年間有効である、こういうことになっておりまして、これは先方につきましてもその理解は変わっておらないと存じます。  そしてサケ、マス、ニシンにつきましては、この一年間は現行の条約によって漁獲量の交渉をしょう、こういうことに話し合いも進んでおりますので、この点はこの点でこの三種につきましては、一応私はこの暫定期間の取り扱いというものは、現行の日ソ漁業条約に従って行われるということで決着がついたのであろうと承知しておるわけでございます。  その他の魚種につきまして問題があるものですから、それらの点につきまして、いまおっしゃったような裁判管轄権をどうするかというような点につきまして話し合いがつかないという状況であろう、こう思うわけでございます。

河上民雄日本社会党

○河上委員 ひとつ外務大臣に伺いますけれども、日本の外務省は、ソ連側から廃棄通告があったというふうに認識をしておられるのか、あるいは廃棄通告というのはいつをもってその通告があった日と考えておられるのか。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 まだ正式な廃棄通告には接してはおりません。法律的にはそうだろうと思います。  ただ、交渉へ臨みましてイシコフ漁業相としては、廃棄するような意思を申し述べられていることは承知をいたしております。まだ、正式なものではないと思います。

河上民雄日本社会党

○河上委員 そうしますと、事実上廃棄通告があったも同然のような感じで交渉に臨んでおられると思うんですけれども、しかし、事は条約の手続にうるさい外務省でございますから、その点はどういうように考えておられるかということは、やはりここで確認さしていただきたいと思うんです。事務当局で結構です。

中島敏次郎外務省条約局長

○中島政府委員 お答え申し上げます。  ただいま大臣からもお話がございましたように、条約に基づくところの廃棄通告はその条約に定めるところの正式な手続をもって行わるべきものであるという立場でございます。ただ問題は、私どもただいまその点について、いつ、どういうことになるかという点についての明確なお答えができにくいのは、現在現地でまだ交渉中でございますし、その交渉ということが、今後の日ソの漁業関係の全体的、長期的な枠組みを大臣レベルで御討議になるということで進んでいるものでありますから、全体の関係がどういうことになるかという点について、私どもは非常な関心を持っておるわけでございます。  ただ先生御指摘の、その現行日ソ条約の廃棄の手続ということであれば、先ほど私が申し上げたとおりということであると思います。

河上民雄日本社会党

○河上委員 大変形式的なことにこだわるようですけれども、先ほど外務大臣は、この新基本条約というのは一年後にできる、つまり一九七八年にできるというめどで交渉に当たっているということでございますけれども、どうもその言葉の裏から感ぜられることは、一応廃棄通告があって、有効期間一年という前提で次の条約の交渉に臨んでいるような感じがするんであります。しかし、条約の手続というものは重要でございますから、もし廃棄通告がなければ、有効期間一年というのは次々後へ見送られていく形になりますね。ですから、その点はやはりどこかで明確にしておく必要があると思いますけれども、いかがですか。

中島敏次郎外務省条約局長

○中島政府委員 現行条約の規定に関する限り、全く先生のおっしゃられるとおりでございまして、正式な廃棄通告が出てから一年間して漁業条約は失効する、こういう手続になっております。

河上民雄日本社会党

○河上委員 鈴木農林大臣とイシコフ漁業相の会談の中でイシコフ漁業相から示された意思をもって、言葉をもって廃棄通告とみなすことに後からされるのかどうか、この時点ではなかなかお答えは出ないんじゃないかと思いますけれども、そういう場合もあり得るわけでございますか。

中島敏次郎外務省条約局長

○中島政府委員 手続的なことなので、私からお答えさしていただきますが、一般的に言いまして、そのようなことはあり得ないことだろうと思っております。いままで私どもが現地から報告を受けている限りにおいて、そのような事態が出現しておるという徴候は全く見当たらないということでございます。

河上民雄日本社会党

○河上委員 外務大臣に伺いますけれども、先ほど入漁料を払えとか、あるいは裁判権がソ連に帰属するというような点が一つの暗礁に乗り上げた要因であるというお話でございましたが、一九五六年に結ばれました日ソ漁業条約というのは、従来の公海自由の原則あるいは漁業資源の保存という精神でつくられたものであって、入漁料を払えとかあるいは自分がとった後よその国に回すんだ、余分を回すんだとか、あるいは裁判権はこっちにあるんだというような考え方は、これは二百海里の思想ですね。そういたしますと、この暫定措置というのは、もう完全に二百海里時代のものであると判断せざるを得ないんじゃないでしょうか。この暫定措置の中で従来の条約の原則を生かすということは非常に困難な時代に来ているというふうに判断はされませんでしょうか。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 先ほど裁判管轄権あるいは入漁料の問題をおっしゃいましたが、まだ今日段階では、イシコフ漁業相と鈴木農林大臣との間の最終的な新聞発表といいますか、そういったものの取りまとめ中でございます。したがいまして、先ほど申し上げましたことも、私の想像で申し上げました。  ただ、入漁料の点につきましては、私自身何らいままで論議された報告に接しておりませんので、その点だけはいまここで申し述べさしていただきます。  しかし、それらの問題につきましてどのようなことで暫定措置につきましてまとまらなかったか、その点につきましてはもう少しモスクワからの公式な連絡を待ちませんと、この席で御答弁申し上げるわけにはちょっとまいらないのでございます。  しかし、ただいま二百海里をもう認めざるを得ないのではないかというお話でございますが、ソ連といたしましては、国内法的には二百海里を三月一日から施行したのだ、こういう態度で臨んでおることは間違いないことであります。これにつきましてその対処ぶりをいま鋭意折衝しているというふうに御理解を賜りたいのであります。

河上民雄日本社会党

○河上委員 外務大臣は、まだ鈴木・イシコフ会談の内容というものを正確に全般的に十分把握しておらないから、お答えしにくいというようなお話でございました。いずれ三月四日には鈴木農林大臣も帰られると思いますので、当然そういう点ももう一度ここで改めてお考えを伺い、またわれわれも質問をさせていただきまして、明確にする必要はあろうと思います。  ただ、にもかかわらず、先ほど鳩山外務大臣は、国民の権利義務に関するものが出てきたので、行政協定でやるつもりであったけれども、ちょっと行政協定というわけにもいかないということで、調印をためらって帰るのだというような意味のお話がございました。だといたしますと、暫定措置も、そういう内容になった場合には国会に提出する必要はあるというふうに御判断なすっておられることを意味するわけでございますか。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 暫定措置につきまして、その内容次第によりましては国会の御承認をいただかなければならないことになる場合があろうかと思うのでございます。そのような事態になりますと相当時間がかかりますので、鈴木農林大臣とされては、時間のかからないような方法で暫定措置がとれないかということを御主張なさったものと思うのでございます。これは私の想像でございますので、はうきりしたことは公式の発表を待たなければならないわけでございますけれども、ただいまのところそのように私どもは理解をしておるということでございます。

河上民雄日本社会党

○河上委員 そういたしますと、国民の権利義務に関する要素というものが強くならないような暫定措置を結びたい、しかし万が一どうしてもそういうような内容になった場合は国会に提出する場合もあり得る、こういうふうにいまの御答弁、御発言を理解してよろしゅうございますか。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 もう漁期も近づいておりますので、ことしの出漁ができるようにするためには、行政取り決めで何とか暫定措置ができるようにしてほしいというのが恐らく鈴木農林大臣のお考えであろう、こう思うのでございまして、それ以上のことはちょっといまの段階で申し上げられないわけでございます。

河上民雄日本社会党

○河上委員 当委員会に回ってくる公算も多いわけですから、その辺を明確に伺いたかったわけであります。この暫定措置なるものが合意持ち越しになっているわけですけれども、いまの状態というのは無協定ということになるのですか。特に安全操業ということについてイシコフ漁業相が保障せられたものは、暫定措置ができた場合だと思うのです。できてないまでの間というのは、安全操業はどういうようになりますか。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 鈴木農林大臣が、会談のまず先にこの安全操業のことを申されて、この暫定措置が決まるまでの——これは二月二十八日の話でございました。三月一日から二百海里の国内措置が施行になるというので、暫定措置といいましても若干の時間がかかるであろう、それまでの間に日本漁船が拿捕されるとか退去を命ぜられる、こういうようなことになっては困るという意味で、その間しばらくはそのような措置は強行しないようにという日本政府の希望を先方が聞いてくれたもの、こういうふうに伺っております。

河上民雄日本社会党

○河上委員 もしそういうことでありますと、それで結構だと思うのでございますけれども、ただ、その場合に、現行のといいますか従来のというのか、一九五六年の日ソ漁業条約というのはいま現に生きておる、暫定措置によってある程度取ってかわられるまでは生きておる、こういうふうに判断されておるわけですか。

中島敏次郎外務省条約局長

○中島政府委員 先生の御質問の意味を必ずしも的確にとらえてないかもしれないと存ずるのでございますが、先ほど来申し上げておりますように、現在の日ソの漁業条約は生きておるわけでございます。  ただ、現在の日ソの漁業条約が対象としております魚種がサケ・マスとかニシンとかいうことに限られておりまして、現実にいま漁獲活動が行われているのは——御承知のようにサケ・マスはまだこれから漁期が始まるわけで、現実に漁獲活動が行われておりますのはほかの魚種でございます。それらの魚種の操業を行うこと自身がソ連との間でごたごたしないようにということで、不測の事態を避けるという了解が大臣間で成立しておる、こういうことでございます。

河上民雄日本社会党

○河上委員 それでは、いま暫定措置の合意のために全力を傾けておられるわけですけれども、その後には今度は新しい基本条約の交渉というさらに大きな難問が控えておると思うのですが、この新基本条約の性格につきましては、二百海里を認めた全く別個の条約になるというふうに判断しておられるのか、それとも従来の公海自由の原則に基づく条約をさらに新しく更新していくというか、新しく結んでいきたいということでありますか。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 二百海里の漁業専管水域と申しますか経済水域と申しますか、これにつきましては、世界的に二百海里時代に入ってしまった。これは国連海洋法会議の結論が出ない前にこのようなことになったのは、わが国としてはまことに遺憾に思う次第でございますけれども、世界的な趨勢として日本としてもこれは拒否し得ないのではないか、こういう考え方のもとに、二百海里の設定をソ連がするということにつきましては、これはやむを得ないものと思って、それに対処する考え方で、先々の長期協定の方はそういった考え方で臨まざるを得ない、こういうふうに思います。

河上民雄日本社会党

○河上委員 従来、漁業問題といいますと水産庁が前面に出て交渉に当たっておったわけでございます。今後もそういうことは続くかと思いますけれども、しかし、今回の日ソ漁業暫定措置をめぐりましても、一つ問題になりますのは領土問題でありますし、やはりこれは水産庁にだけ任せる、そしてそれを外務省が追認するという形ではなくて、もっと多面的な、多角的な漁業外交というものが必要になってきていると思うのであります。そういう意味で私は外務大臣の今後の御決意というものを承りたいのでありますけれども、新聞等・によりますると、暫定措置までは鈴木・イシコフ会談でやる、今回の交渉については鈴木・イシコフ会談で大枠を決めるわけですけれども、今後は外交ルートに任せるというようなことが伝えられておりますけれども、この問題、ある程度煮詰まるか、あるいはソ連のことでありまするからトップ会談を最初に要求するということもあろうと思いますけれども、鳩山外務大臣がこの問題の解決のために訪ソをされるというお考えはいかがでございますか。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 漁業問題は日本の外交の面でもこれは大変大きな、重要な問題でございます。外務省といたしましても、従来から農林省当局、水産庁と密接な連絡をとりながら臨んでおる次第でございまして、今後ともそのような体制で臨みたいと思います。  ただいま領土問題にお触れになりましたので、一言だけ申し上げますが、今回の漁業交渉におきまして、領土問題とは切り離して漁業問題を解決した方がいいのではないかというふうに考えられるわけでありまして、私自身が努力をすることによりまして何らかの効果があるならば労をいとうものではございませんが、ただいまのような情勢でございますと、鈴木農林大臣のお力によって事態の解決が図られることが、私、外務省としてもそれが適当であろう、こう思っております。当然でありますが、外務省からもついていっておるわけでございまして、外務省として関心を持たないとかそういうことでは全くないのでございますが、その点を御理解賜りたいと思います。

河上民雄日本社会党

○河上委員 しかし現実には、いわゆる水域の線引きの問題をめぐってソ連側はいわゆる北方領土四島についてはソ連側の考え方に基づいて線引きをしておるということにつきまして、園田官房長官は、まことにけしからぬ、日本政府としてはこれは認めることはできないというようなことを言われておるわけでございます。この問題、いまのお考えによれば、いわゆる固有の領土問題ということに触れずに、従来の漁業条約に基づく取り決めのように北緯何度というような線で線引きをするということを考えておられるのかどうか、果たしてそれが可能な時代であるのかどうか、外務省としてはどのようにお考えでいらっしゃいますか。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 これから新しい二百海里時代に向かいまして、それに対応するところの日ソの漁業条約をどうするかということにつきまして、内容的にはまだ何ら詰まっておらないわけでございますので、その問題につきましていまここでお答えする段階にないのでございます。  もし必要とありましたならば、条約局長からでも、また水産庁からも見えておりますので、お答えを申し上げたいと思います。

中島敏次郎外務省条約局長

○中島政府委員 ただいま大臣からお話がございましたとおりでございまして、ただいままでに私どもが把握している限り、北方四島をめぐる線引きの問題が討議されて、何らかの結論が出たというような報告は、現地からはまだ接しておりません。

河上民雄日本社会党

○河上委員 つまり、領土の問題とこの漁業の問題と切り離して処理をしたいというそのお気持ちは私どももよくわかるわけですけれども、それができるような時代になってきているのかどうか、またその秘策はどこにあるのかということを承りたいのであります。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 北方四島の問題と漁業問題は私は深いかかわり合いがあると思います。思いますが、いま領土問題をこの際に解決するということは、従来からのソ連の態度からいたしまして、それはなかなか至難のことであるということになりますと、やはりこの際は漁業の問題だけとして何らかの解決を図りたいという考え方で臨んでおるわけでございまして、その線引きとの関係をどうするんだというお尋ねに対しまして、まだ、鈴木大臣がお帰りになりませんと、何とも申し上げようがないところでございます。

河上民雄日本社会党

○河上委員 それでは、鈴木さんがお帰りになられてからまたもう一度、その問題についてソ連側と直接折衝された方の感触などに基づいて議論をさしていただきたいと思います。  いずれにせよ今回の交渉を、恐らく日本国民だれしも非常にかたずをのむような思いで見守っておったと思うのでありますが、やはりそれを通じて感ずることは、われわれが望むと望まざるとにかかわらず二百海里時代に入ってきておるということであると思うのでありまして、そういうことについて、この認識の甘さのゆえに結果的に日本の国益をかえって傷つけるということのないように、私どもは切に望みたいと思うのであります。  以上で私の質問を終わりたいと思いますけれども、ただ一つ、これはちょっと付属的なことになりますけれども、ソ連が今回北洋漁業で、二百海里の原則に基づいて日本をいわば締め出さないという従来の既得権みたいなものを認めるような暫定措置をした場合、日本が領海十二海里を設定した場合、それに基づいてソ連船を締め出すことができるかどうかという、これはわれわれ聞くまでもないことでありますけれども、現実にそういう懸念は十分にあると思うのです。外務省はそういう点についていわば不動の姿勢で臨んでおられるかどうか、そのことだけ伺って私の質問を終わりたいと思います。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 今回の交渉におきましても、ソ連側といたしましても日本の近海におきます漁業の継続ということにつきまして相当な関心を持っておると思います。しかし、領海が十二海里に拡大された場合におきまして、この十二海里の領海は、ソ連も国内法的に十二海里の領海をとっておりますし、日本がソ連の領海内には入っておらないということも事実でありますので、これはソ連側も当然のこととして尊重をしてもらえるものと期待をいたしておるわけであります。

河上民雄日本社会党

○河上委員 質問を終わります。

竹内黎一自由民主党

○竹内委員長 次に、井上一成君。

井上一成日本社会党

○井上(一)委員 まず冒頭に、私きょうの質問で若干の資料として写真を持ってきているのですが、持ち込みをお許しいただけますか。

竹内黎一自由民主党

○竹内委員長 結構でございます。

井上一成日本社会党

○井上(一)委員 前回限られた時間で、私なりの質問に対して十分お答えをいただけなかったので、改めてきょうは詳細について外務大臣並びに関係省庁の意見を承りたいと思います。  私は、戦争につながるいわゆる核、それから人類を滅亡に導くんだと言われる差別、いわゆる核と差別をなくすことが平和社会の実現の原点であるということを前回も申し上げてまいったわけであります。そこで、具体的に私は外務大臣に、核については非核三原則を遵守していくんだという御答弁がありましたが、差別についての取り組みについてひとつお伺いをしたい。  奇しくも、五十五年前の三月三日、あすですね、人間に光あれといわゆる水平社の結成がなされた日であります。そこで、ポーランドのポドゴレツキ教授が、昨年の八月三日から八月七日にかけての第九回国際社会防衛会議の中で、誤った具体的な事例を出して全く偏見と誤解に満ちたレポートを約七百人余りの学者に対して報告をしておるわけであります。これはまことに許しがたいレポートであり、全くもって日本国民の基本的人権が守られておらないということを、あるいはまた誤ったその偏見が世界に広く公の国際会議の場で発表された、こういうことについて外務大臣は御承知なのかどうか、まずお伺いをいたしたいと思います。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 率直に申しまして、ただいま御指摘のポドゴレツキ教授の講演内容につきまして私まだ勉強するいとまがございませんでした。内容を早速私自身よく勉強いたしまして申し上げたいと思いますが、今日までその余裕がなかったことをまず御理解賜りたいのでございます。もしそのような特にわが国につきましての誤った理解、そういったことが有力なる教授から言われるということは、大変残念なことでありますし、早速そのようなことは私自身調べまして、適切な措置をとりたいと思います。もし御必要とありましたならば、政府委員からお答えさせていただきます。

井上一成日本社会党

○井上(一)委員 この問題については法務省の人権擁護局が調査をされたと聞いておるんですが、調査をされ、そしてどのように対処されたのか、政府委員からお答えをいただきたいと思います。

宮本喜光法務省人権擁護局調査課長

○宮本説明員 お答えいたします。  確かに先生御指摘のような国際会議において、同和問題に関する発言があったということを私どもも知りましたので、これは国内の問題ではございませんけれども、どういう経過でこういう発言がなされたのだろうかということに関心を持ちまして、実はこの会議に出席いたしました当時岡山大学教授の森下先生からいろいろ事情を聞きました。その結果、確かに新聞報道などされているような同和問題に対する誤った偏見に基づく発言があった。しかもそれが会議の席上では十分何か口頭では話がされずに、発言のメモが配られてあって、そのメモの中にそういう記載があったということが判明いたしました。  ただ、この国際会議というものが、国家が関与した国際会議ではなくして、学者や実務家の人たちのいわば民間の国際研究機関であるということがわかりました。そこで、このような民間の研究機関における発言について、国はどういうふうな対処の仕方があるのかということが一つ問題になったわけでございます。  そこで、私どもだけでは判断いたしかねますので、外務省あるいは総理府等関係省庁と御相談申し上げた結果、やはり民間の研究団体における学者の発言であるから、それを何か民間の人から言ってもらった方がいろいろな摩擦が少なくて済むのではないかということになりまして、方法はそういうことを考えまして、しかしその問題点はあくまでもやはり行政のレベルで考えて、こういう点が問題だということを指摘して、これが誤っている、だから現在日本における同和問題というのはこういうふうに考えられているんだ、それで認識されているということを、主に同対審の答申がございますので、その趣旨に従った記載を、役所の方から森下先生にこういう趣旨であるということをお伝えをして、森下先生の方からこの発言者に対して伝達してもらうという形で差別に対する偏見を取り除いていこうという努力をいまやったところでございます。

井上一成日本社会党

○井上(一)委員 外務省と総理府と協議をして森下先生に、民間で起こった問題だから民間で処理をしていく、ぼくはまことにもって不可解な答弁だと思うのです。そんなことが行政なのか、あなたは一体特別措置法、いわゆる国の法律ですね、全党が賛成をし、そして全国民が願っている特別措置法を御存じなんですか。措置法の三条、六条を読んであなたはどうお考えなんですか。民間に任しておくんだ。——外務省のだれに話をして、だれに相談をしたのか。

宮本喜光法務省人権擁護局調査課長

○宮本説明員 私どもといたしましては、同和事業に対する諸施策を行うことは、国や地方公共団体の責務であるということ、あるいは国民的な課題であるということは十分承知しております。しかし、国際会議といっても民間の国際会議でございますから、そこにいきなり国の抗議というようなことで直接介入しますと、学問の自由に対する圧迫のような形に受け取られるといけないという配慮があったものですから、いま申し上げたような対処をしたわけでございます。  それからもう一点は、外務省とどこと相談をしたのかという御質問でございますけれども、総理府は総理府同和対策室というところがございます。ここと、それから外務省は海外広報課だったでしょうか、と相談してあるわけでございます。

井上一成日本社会党

○井上(一)委員 外務大臣はこのことについてお知りでないわけなんです。国の責務だということも十分御承知なさっているわけなんです。それで、民間の国際的な会議ではあるにしても、十分な正しい実情を広報することは行政の責任じゃないですか。そうじゃないの。外務省の海外広報課と相談をした、総理府の同和対策室は真剣に取り組んで、国内でのいわゆる正しい認識を国民に植えつけようとして努力をなさっていらっしゃる。片面、国外でこのような具体的な事実がそのままに放置されておるということですね。こんなことは許されるべき問題じゃないじゃないですか。外務省の海外広報課の取り組みについて、外務大臣からひとつお答えをいただきます。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 本件につきまして、ただいまの御趣旨の点は私も自分自身でよく考えてみたいと思います。どういう措置をとったらいいかということにつきましても、まだそこまで考えてまいるいとまがございませんでしたので、この問題につきましていかに対処していいか、いまの御趣旨もよく体しまして考えたいと思います。具体的な点はもう少し相談をさせていただきたいと思います。

井上一成日本社会党

○井上(一)委員 外務大臣、いまの答弁でいとまがない、外務大臣の同和問題に対する取り組み、これは政府自身の取り組みが外務大臣のいまの答弁に非常にあらわれていると思うのですよ。いとまがない、これほど人権にかかわる大切な問題に取り組むいとまがない。——じゃ、さっきの答弁の、海外広報課の者が大臣にまでこの問題を通していないということになって、海外広報課で握りつぶしているということに理解していいのですか。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 いいえ、そういう意味で申したのではございませんで、これからこの対処ぶりにつきまして真剣に考えたいということを申し上げたのでございます。私自身、けさこの問題を知ったものですから、率直に申し上げまして、これからどう対処していいか、真剣にこれから検討さしていただきたい、こういうことを申し上げたのでございまして、まことに大事な問題であると思います。

井上一成日本社会党

○井上(一)委員 外務省の取り組みがこういうことであるから、よりもっと偏見と誤解に満ちたいろいろな事例が引き起こる可能性がある。我妻洋というカリフォルニア大学の教授が、いわゆる「日本の見えざる種族」という形の中でこれまた誤ったレポートをしているわけです。そういうことも事実御承知でないと思うのです。御承知ですか。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 存じておりませんでした。

井上一成日本社会党

○井上(一)委員 これはれっきとした日本国籍を持った日本国民なんです。この人がいわば誤ったレポートのきっかけをつくったと私は思うのです。そういうことから考えれば、在外公館あるいは在外国民に対して、やはりもっと正しい同和問題の取り組み、正しい認識というものに、外務省が率先して総理府に協力を求めて取り組まなければいけないと私は思うのです。  これは外務大臣に重ねてお尋ねをしたいのでありますけれども、そのように差別をなくすことに真剣に取り組む意思があるのかどうか、核と差別をなくすることが世界平和の根源であるという私の主張に対してどうお考えなのか、的確にお答えをいただきたい。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 ただいまの御意見、まことにごもっともでございます。核の問題につきましては大変な問題になっておりますけれども、その差別という点につきまして、これも大変大事な点であるということは当然のことでございますし、人道問題といたしましてもこれは大変大事なことでありますので、この問題につきましても真剣に取り組みをさせていただきたいと思います。

井上一成日本社会党

○井上(一)委員 真剣に取り組むんだという御答弁がありましたので、今後十分この差別の問題についても真剣に取り組んでいただく。そういう形の中で提案があるのですが、私は、このように事実無根あるいは事実と全く相違した誤った考えが国際社会に流布されていくということは、許されるべきことではないと思うのです。そういうことを考えれば、今後の対策として、この問題について十分調査をし、そして、私が申し上げていることは事実でありますけれども、さらに外務省当局として在外公館を通して、その公的機関を通してこれを明確にすると同時に、改めて正式な抗議を申し込む考えがあるかどうか。真剣に取り組むのならば、正しい認識をしていただくためにもそのような措置が講じられていいと思うのです。あるいは抗議という形が直接行いにくいという状態であれば、正しい広報活動を一層強めていくという考えがあるのかどうか、考えだけでなく、そういう活動をするのかどうかということを外務大臣にお聞きしたいと思います。  なお、この問題については、お答えをいただいてさらに質問をするつもりですけれども、この取り組みをさらに一歩前進させるためにも、国連の人権委員会に対し日本国民の正しい基本的人権を守るべく実情を報告し、あるいは訴える考えがあるかどうかもお聞きしたいと思います。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 差別問題に対しまして具体的にどういう措置をとるべきかということにつきまして、総理府の方とよく連絡をとりまして対処ぶりを考えたいと思います。  抗議の申し込み等というお話でございますが、政府関係の者がそのような不当な発言をしたというようなことがあればこれは厳重抗議しなければいけないと思いますけれども、ただいまの本日御指摘のような問題に対しましてどのように対処したらいいか、いろいろな方法があろうと思いますので、研究をさせていただきたいと思います。

井上一成日本社会党

○井上(一)委員 この問題についてはさらに外務省の取り組みを見守りつつ、お互いに協力をしながら、基本的人権を守る立場に立って私も今後取り組んでいきたい、こういうふうに思います。希望でありますけれども、先ほど申し上げた我妻洋カリフォルニア大学教授のこの論文もお読みいただきたいと思います。  さらに、私はここで日本国民の基本的人権すら十分保障されておらないいまの政治の実態を申し上げたわけでありますけれども、そういう意味では日本国憲法を守る、あるいはまた憲法を尊重し、かつその精神をくみ取っていくという姿勢が政府当局に見られないということを強く指摘をしておきたいと思うわけであります。  とりわけ、前回も申し上げましたように、国際人権規約を一日も早く批准すべきであるという私の考え方、これについては十分なお答えが前回はなかったわけであります。そこで、きょうは改めて、国際人権規約を批准することについての取り組みとお考えを再び聞かせていただきたい、こういうふうに思います。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 人権規約につきまして先週お話を伺いました。わが国といたしましてこの人権規約を、批准ができますようにこれは国内的措置を進めなければなりません。これにつきまして関係の省庁がございますので、関係省庁と密接な連絡をとりながら今後努力をさせていただきたいのでございます。

井上一成日本社会党

○井上(一)委員 そこで私は、国際人権規約の批准は、早急に関係機関と協力をして批准に向けて努力をするというお答えを信じて、在日韓国人に対する問題でお伺いをしていく、そして具体的な事例をもって、いかに人権が守られておらないか、いわゆる人権擁護の立場に立って御質問をいたしたい。  先ほどコピーを渡したわけであります。私はここにその原本の写真を持参しておるわけですけれども、韓国語でありますから、日本語に訳したものをコピーして、重要部分について説明を加えながら質問をいたします。  いま韓国でたくさんの学生諸君が、スパイ行為だという名目のもとに獄中につながれておるわけです。私はあえてきょうは、李哲(イ・チョル)君の問題についてお尋ねをしたいと思うのであります。  彼は優秀な韓国青年であり、そして日本で国際人としての勉学に努めておったわけでありますけれども、母国韓国に帰って逮捕された。それがどのような名目で逮捕されたのかという起訴状の写しがこれであります。私はいまコピーをお渡しをいたしましたけれども、その中でとりわけ一九六九年の九月下旬に北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国に密出国をしたということが一つの起訴事実の中に書かれております。二点目には一九七三年の八月初旬、これまた夜の十一時ごろに朝鮮民主主義人民共和国に行った。これを朝鮮民主主義人民共和国との触れ合いあるいはまたそのような機会を持ったという一つの事実にしておる。もう一つ、死刑の判決を受けるまでに至った一番大切なポイントですね。起訴状を少し読みます。「釜山に居る駐韓日本総領事館に勤務している具光信の家に電話をかけ、本人と通話出来たら日本語で『神戸に住んでいる』」云々、いわゆるスパイ行為をここで立証して死刑の判決を受けているわけなんです。  いまの三点について、一九六九年の九月下旬、九月二十九日に本人は東京の新宿から熊本の吉本さんに対しての手紙を出しているわけなんです。この手紙には新宿局の九月二十九日の日付印まであるわけなんです。これが北朝鮮に渡航した、密出国をしたということを否定する一つの材料である、証拠である。七三年についてはいま獄中で本人が携帯をしておる腕時計、これは熊本の大洋デパートで購入をしているわけなんです。添付をしておきましたが、大洋デパートが八月四日にその腕時計については販売をいたしましたということが証左されているわけなんです。またそれについての保証書もそこに私は御提示をしたわけであります。なかんずくそのスパイ行為の具光信、釜山の駐韓日本総領事館に勤務している、このことについて外務省は公式文書をもって、具光信なる人物を雇用していた事実はないという書面を正式に出しているわけであります。東京第二弁護士会の会長あてに出されているわけなんです。  このように無実の青年が、そして全くでっち上げとも言えるべき要因のあるそのような起訴状で韓国青年がいま寒い獄中におるのだ、こういうことなんです。とりわけ日本の総領事館に勤務する具光信がそのパイプであった。こういうことについてひとつ外務大臣、この問題について李哲君に対する人権を擁護するためのあらゆる手段を講ずる用意があるかどうか。また李哲君の人権を守るために外務省なりの努力が必要と私は思うのですけれども、李哲君に対するこの人権を守るためのお考えを聞かせていただきたい、こういうふうに思うのです。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 李哲氏の問題につきましていまいろいろお話を伺ったわけでございます。在日韓国人が韓国で検挙されて、いろいろな問題、特にスパイの容疑といいますかそんなようなことで、韓国内におきまして韓国国内法に基づいて処遇を受けていることにつきまして、これは法律的に申しますといろいろ問題があろうと思うのでございますけれども、日本にその家族がおられる、長年日本に住んでおられた、こういうことにつきまして日本に残されておる家族の立場も大変お気の毒であるという観点から、日本政府としては関心を持っておるわけでございまして、具体的にどういう措置をとるべきかという点につきましてアジア局長の方からでも御答弁させていただきたいと思います。

中江要介外務省アジア局長

○中江政府委員 ただいま外務大臣がおっしゃいましたように、在日韓国人の学生が十七名学園浸透事件ということで韓国において逮捕されました。この事実を私ども知りまして、これに対してどういう措置をとるべきかということを考えるに当たって、少なくとも二つの点をはっきりしておかなければならぬと思ったわけで、一つは、一九六五年に日韓が正常化いたしまして、日韓基本関係条約ということで日本と韓国との間は独立主権国同士の関係に入ったということでございますので、お互いに主権を尊重しなければならないという点がございます。もう一つは、自国民を自国の法令でこれを裁判に付している、この裁判に対して外国がどれだけのことが言えるかという問題になりますと、これはまずその裁判が拒否されておれば別でございますけれども、裁判が進行しておる。いまもう第二審の判決がございますが、さらに控訴しておるわけでございますし、裁判が終結していないということでございます。進行中の司法権の行使に対してどれだけの影響力を政府として国と国の関係として行使できるかという問題は、これはまた国際法上非常に重要な微妙な問題がある。そういうことがまず一つ原則の問題としてございます。それにもかかわらずいま大臣がおっしゃいましたように、在日の韓国人学生ということで日本の社会に溶け込んでいた人であるということで、日本政府として全く無関心であるということではあり得ないことでございますので、まず第一にいま申し上げました韓国における裁判の進行を注意深く見守るということ、それからその裁判の過程において、いま先生御質問のようないろいろの事実について、たとえばその具光信という人間がいないということならば、それはいないということをはっきり日本政府として明らかにすべきだというようなことがございまして、いまおっしゃいましたように、弁護士会の方から、李哲君の救済のためのいろいろの活動の一環といたしましてそういう公文書も出しておりますし、他方、この李哲君その他の学園浸透スパイ事件につきましては、検挙者全員の即時釈放要求署名簿、これは非常に膨大な署名簿でございまして、そういうものを確実に韓国にあるこの一連の事件の弁護士の手に渡して、そして弁護士が法廷において正しく弁護活動ができるようにということで、私どもはそういう署名簿を間違いなく弁護士の手に渡すということで御協力をいたしたということもございます。そういうことで、嘆願書、署名簿、そういったものの伝達その他について便宜を供与しながら見守っているというのが、いまも出ておりました態度と現状でございます。

井上一成日本社会党

○井上(一)委員 私は、外務大臣、家族がかわいそうだからというような発想はよくないし、間違いだと思うのです。私の基本的な考え方というのは、個人の人権を、すべての国のすべての国民の基本的人権を守っていくんだ、そのためには内政干渉にならないでき得る限りの努力をする姿勢を常に私は持つべきだと言って主張している。この質問の趣旨もそうなんです。とりわけ領事館等に絡んだ問題でしょう。あるいは東京に住まいをしておりながらそういう事実がある。もっと極端なことを言えば、うがった推測かもわからないけれども、東京に住まいをしておるのに、そういうことであるというように謀議をしたんだということが起訴状に書かれておるということは、逆に日本のこの社会の中に韓国の公的機関が常に目を張ってるんだ。いわば逆に日本の主権というものが疑われるじゃありませんか。韓国の主権も大切にしなければいけない。同時に日本の主権というものが守られておるのかということになる。そういうことを考えれば、私はこの問題は、日本の主権を守っていく上にも、事実を明確にして、そして韓国の正しい裁判を期待するということが私の考えなのであります。そういうことについて外務省はどう取り組んでいかれるのか。  いま局長の答弁で若干は理解いたしましたけれども、いま一歩、私が指摘をしたように、日本の主権を守っていくんだということと、李哲君の基本的人権、いわゆる彼の人間としての権利を保障していくんだ、守っていくんだ、そのために日本政府として、外務省としてでき得る限りの努力をするというお考えがあるかどうか、一言で結構でございます。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 一言で申し上げれば、内政干渉と言われない限度におきましてとり得る措置につきまして、これは十分努力をいたすということにいたしたいと思う次第でございます。

井上一成日本社会党

○井上(一)委員 この問題については、これまた外務省の今後の努力ということに期待をいたしておきます。  もう一点だけ最後にお伺いをしたいのでありますが、前回の質問でも強く申し上げていたわけでありますけれども、このようにいまの李哲君の一例を見ても十分理解ができるわけですけれども、在日韓国人が非常に不利な立場に、いわゆるそれが故意的であるとかそういうことは別にしても、差別的な待遇あるいは常にその人権が侵害されつつあるということについて、社会福祉、社会保障の問題で私はお尋ねをいたします。  御承知のように、いまわが国の社会福祉、社会保障制度の中では、すべてが日本国国民という形の中で定義をされておるわけでありますけれども、その中で国民健康保険法については、いわゆる在日韓国人も内国民待遇という、いわゆる相互主義の形の中でこれは日本国民と同じような扱いを受けているわけなんです。あるいは生活保護法については、その法律では日本国民と規定しながら、局長通達で、準用でこれは救済をしておるわけなんです。その他児童手当あるいは老齢福祉年金等もあるわけですけれども、私は政府の社会保障、社会福祉に対するそれぞれの法律が一貫した物の考え方に立ってない、こう思うわけです。まちまちである。やはりそういうことを考えれば、この際統一をして、生活保護法なり国民健康保険法に見られるように在日韓国人に対するあるいは在日朝鮮人に対する手厚い、あるいは手厚いというよりも同等の、日本国民と同じような立場に立って法律を運用するお考えがあるのかどうかを聞かしていただきたいと思います。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 ただいま国民年金法、児童手当法の問題にお触れになりました。社会保障でも、実際面の運用によりまして措置のできるものは極力適用するように逐次なってまいったのでございますけれども、法律で明らかに決めてあり、しかも国民自身が直接取り扱う場合に問題があるようでございますので、この点につきましては鋭意厚生当局ともよく相談をして何らかの前進を図りたいと思います。

井上一成日本社会党

○井上(一)委員 もう時間がありませんのでまあこの問題については外務大臣からお答えをいただく方がかえって無理であろうと僕は思うのです。だから改めてまた厚生大臣なりのお考えを聞かしていただく。  ただ一つだけ外務大臣に、いまの日本の法律の中で、国家公務員なり地方公務員は日本国民であるということに限ったことはないわけなんですね。御承知でしょうか。ところがいわゆる外務公務員については日本国籍を有する者という規定があるわけなんです。その辺ひとつどうお考えになっていらっしゃるのか。国家公務員法、地方公務員法では、日本国籍ということは明記されてないのだけれども、外務公務員についてはそれが規定されているわけなんです。そのことについて外務大臣からお答えをいただきたいと思います。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 外務公務員法につきまして恐らくいろいろな検討がなされた結果だろうと思います。外交というものは国益の最先端でありますので、従来から日本国民ということでそういう態度がとられたのだと思います。この問題はまことに大事な問題でございますので、いま急にこれを変えるべきであるというところまで申し上げる自信はちょっとないのでございます。

井上一成日本社会党

○井上(一)委員 最後に、外務大臣、今後いろいろと研究あるいはまたいろいろな問題で取り組みをしていただくわけでありますけれども、私が冒頭にも申し上げたように、平和外交をより強く推し進めていくのだという基本的な理念、そのためにも核と差別をなくするのだということについて、強い信念で今後とも御研さんをいただくことをお願いして、質問を終えます。

竹内黎一自由民主党

○竹内委員長 午後一時三十分から再開することとし、暫時休憩します。     午後零時三十一分休憩      ————◇—————     午後一時三十五分開議

竹内黎一自由民主党

○竹内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。渡部一郎君。     〔委員長退席、有馬委員長代理着席〕

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 前回の外務委員会の際に、海上保安庁、防衛庁の皆さん方にお話をした問題点でございますが、わが国の法令違反であるものを含め、無害航行でない船舶に対する処置については、わが国政府の対応、すなわち関係部局のどこがこれを扱うかとか、あるいはこうした情報収集をどこが行うかとか、あるいは無害航行でない船舶に対する処置を決めるのはどういうルールによるものであるかとか、そうした問題点について結論が出ていないのではないかという立場から御質問いたしました。これに対する御答弁があいまいでありましたので、私は質問を留保してある形になっておりますので、この問題についての海上保安庁あるいは防衛庁のきちんとした御答弁をまずいただきたいと存じます。

間孝海上保安庁次長

○間政府委員 ただいま御質問のございました領海内での外国船の無害でない通航に関しまして、これに対して必要な措置をとる行政機関は、海上保安庁は法令上、海上におきますところの法令の励行、犯罪の予防、鎮圧、その他海上の秩序の維持の任に当たる行政機関でございますので、一般的には海上保安庁がそのような領海内の外国船の無害でない通航に対しまして措置をとるということになっております。この点が第一点でございます。  それから次に、領海内の通航の実態の把握の点でございますが、この点につきましては、無害航行を行っている船の場合と無害でない航行を行った船の場合とで把握の仕方が実は違うのでございます。御承知のとおり、外国船につきましても領海内の航行については無害航行の権利が与えられております。現在、この領海内での外国の船舶の通航隻数というものは非常に多い隻数が通っておりまして、それらにつきましては、海上保安庁といたしましては、これが何隻であるかという点、具体的な把握の仕方はいたしておりません。しかし、無害でない通航を行うものにつきましては、先ほど申し上げましたような海上保安庁がこれに対して必要な措置をとる責任を有しておりますので、海上保安庁ではこれに対しまして巡視船艇あるいは航空機によりまして常時沿岸海域の巡視、警戒をいたしております。また、他の関係の機関との間におきまして緊密な連絡、通報体制をとっておりまして、そのような無害でない外国船の通航の把握について万全を期しております。  次に、こうした無害でない通航を行いましたものにつきましては、これを発見いたしました場合にはその中止を求める、そして、それに従わない場合には領海外への退去を求める、あるいはわが国の法令に違反する行為がありました場合にはこれを検挙するという措置をとっております。  具体的に実績を申し上げますと、昨年、五十一年一年間におきまして二百六十九件の無害でない通航を確認いたしまして、これに対しまして、ただいまの領海外への退去等の措置をとっております。なお、外国の軍艦につきましては、確認されている範囲におきまして、わが国の領海内を無害でない通航をしたという事例はございません。  以上、海上保安庁の方からお答えをいたします。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 前回の混乱していた問題については丁寧にお答えいただきました。  そこで、それに続けまして、今度は外国軍艦が通航中、領海に入るとか、あるいは日本にとって望ましくない武装をしている軍艦であるとかいう理由で退去を命じなければならない場合、向こうが退去しないというような問題になった場合には、海上保安庁はどの部局と相談をされ、どこが今度は担当されるのでございますか。

間孝海上保安庁次長

○間政府委員 外国の軍艦がわが国の領海内に入りまして、国際法上無害でないと考えられるような行動をいたしますような場合、これはきわめて異例な状態であろうかと私どもは思います。したがいまして、そういう場合にどういう措置をとるかという点につきましては、これは今後国際紛争に発展する可能性も含んでおる問題でございますので、関係の各省、特に外務省と緊密な連絡をとりまして、これに対して、その事態に即した対処の仕方をとってまいりたい、こういうふうに考えております。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 伺うところによりますと、宗谷、津軽、対馬の三海峡の場合は、防衛庁がこの海峡における潜水艦の通航あるいは軍艦の通航等につきまして、設備を設け観察をいたしておられるようでありますが、海上保安庁にはそうした設備はないと承っております。そうしますと、実質的に領海の拡大あるいは国際海峡の設定等が行われれば、海上保安庁に対する防衛庁の連絡は、そうした観察機能の結果によって生ずる情報の提供は緊密かつ急速に行われなければならないと思いますし、当然そうした問題については外務省にも御通報がなければならないものと思います。典型的なのでその三省庁を申しましたが、それらの間の関係のルールづくりは今後十分御検討なさらなければならない課題だと存じますが、三省庁を代表なさいまして、国務大臣であります鳩山大臣に御答弁を承りたいと存じます。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 ただいまお示しのような事態は、わが国の防衛上も、自衛上も大変な問題でありますので、これにつきましては関係各省庁密接な連絡をとりまして、機敏なる措置をとるべきものと存ずる次第でございます。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 本日の朝刊の一部記事によりまするならば、防衛庁の見解として、国際海峡の三海里凍結には難色を示し、極力十二海里に拡大するように同庁の最高幹部会の見解をまとめた旨報じられております。この記事が正確かどうかについての御質問をすることは、私もデータを持ち合わせておりませんから、申し上げてもせんないことだと存じますが、津軽海峡について三海里凍結を容認するかのごとき見解を防衛庁がおまとめになった事実はあるのかどうかお伺いをしたい。はなはだ不本意なのは、津軽海峡の自由なる軍艦の通航を認めれば、わが国の安全保障体制に同庁が憂慮を抱く事態が発生するのではないかと私は思いますし、同庁の御見識を私は疑わねばなりません。また私は、同海峡における漁民の強い憂慮についてしばしば当委員会で御紹介をさせていただきましたけれども、これについても政府としては御考慮がないのははなはだ遺憾であります。十二海里を全面的に設定するという方針を確立した上で外交交渉をするならともかく、交渉の以前から一部海域を三海里のまま凍結するなどという方針は、わが国の外交交渉の上から言ってもかえって不利になるではないかと私は何回も申し上げたところであります。  そこで、御質問するべきところがたくさんございますから、一つずつ伺いますが、まず、防衛庁がこの問題に対して、津軽海峡だけを国際海峡にしていいと言われる論拠は何か、またそういう話は本当かどうか、それに対する御見解はどうか、その辺を承りたい。

伊藤圭一防衛庁防衛局長

○伊藤(圭)政府委員 まず、本日の記事につきまして御報告いたしますが、実は防衛庁で見解をまとめて正式に提出したということはございません。御承知のように、まだこの問題につきまして局長クラスの幹事会も、それから関係閣僚会議もその後開かれていないわけでございます。現在やっておりますのは、準備室に一人の部員を派遣いたしております。そのほか、課長クラスの会議を何回かやっております。  そのときにいろいろ議論があるわけでございますが、防衛庁といたしましては、やはり防衛的な観点からするならば、十二海里に領海が広がるならば全体として広がるというのが最も望ましいことは間違いないわけでございます。しかしながら国益を考えますと、わが国は海洋国家でございまして、世界の航海の自由あるいはまた漁業上の問題等もあると思います。したがいまして、総合的な国益の判断のもとに、必要なところ、やむを得ないところは現在の三海里のままにすることも仕方のないことだというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、いま先生がおっしゃいました国際海峡の問題までは、議論ということではなくて、現在の領海法を十二海里に広げるに当たって、三海里に残しておくというところはなるべく少なくしていただきたい、六海里から二十四海里の海峡が六十九あるという中ではなるべく少なくしていただきたいというのが私どもの基本的な考え方でございます。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 初めて防衛庁の御見解が公式に述べられたわけでありまして、十二海里に全体的に広がるのが望ましい、だが、国益の観点からいって三海里のままにするところは少なくしてほしいという御見識が明らかになったわけであります。さて、そこで私の質問のその続きを申し上げますが、そうすると、宗谷海峡、大隅海峡については三海里凍結に反対をし、対馬海峡、津軽海峡については三海里凍結にするもやむなしというこの報道に関しては、まだ一部の議論であって同庁の見解でないという意味でしょうか。あわせて、さっきから何回も申しておりますが。津軽海峡を自由航行にしていいなどということをおっしゃるとは私は思いませんが、その点も含めてお答えいただきたい。

伊藤圭一防衛庁防衛局長

○伊藤(圭)政府委員 個々の海峡について正式に意見を申し上げるという段階には至っておりません。しかしながら、いま先生がおっしゃいました津軽海峡、これを自由航行といいますか、いわゆる津軽海峡のようなところが三海里で残るというようなことは、常識的に言いまして、津軽海峡とか対馬海峡というようなところは日本海から太平洋に出る海峡でございますから、現在の領海法の中で十二海里になって閉ざされるということはないのではないかというふうには考えているわけでございます。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 そうすると、実質的にはこの記事のほとんど全部を認められた雰囲気に私には受け取れるわけでありますが、これをこれ以上詰めてもお答えしにくいことになるだろうと思います。  ただ、私はここで外務大臣に重ねて申し上げますけれども、津軽海峡の漁民は三海里凍結に反対です。漁業全体の組合の中ではその意見は埋没しておりますけれども、津軽海峡の漁民は反対です。また、同海峡はわが国の中央部を横切ることになるわけでありますから、これについて自由航行になるとか、実質領海がゼロになるような国際海峡にすることは、わが国のさまざまな観点から見て愚かな行動ではないか、私はそう思いますが、いかがですか。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 ただいまいわゆる国際海峡というところにどこを指定するかということで鋭意案をつくっておるところでございます。しかし、常識的に考えまして、津軽海峡には相当な交通量がありますので、ここを全部領海にしてしまうということについてはむずかしいというふうに考えておるわけでございます。渡部先生の沿岸漁民は反対であるということもたびたび承りました。恐らくそのとおりであろうと思います。沿岸漁民の利益という観点からは何らか確保をする、これは水産庁の問題でありますけれども、どういう点が問題であるかという点を検討して、津軽海峡におきます沿岸漁民のために何かできることはないのか、そういった点も研究していただきたいとは思っております。しかし、何分にも国連海洋法会議の結論が早く出てくれれば、それまでのつなぎでございますからほんのわずかな期間であろうと思うのでございますが、海洋法会議がなるべく早く結論が出て、国際的ないわゆる国際海峡の通航ルールというものが決められるということによって特殊な例外は早くなくなるように期待をいたしている次第でございますが、今回の措置として津軽海峡をいわゆる国際海峡としないということは、私どもの常識からはなかなかむずかしいだろうと判断はいたしております。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 では外務大臣と水産庁側と両方に伺いますが、外務大臣、海洋法会議の結論が出た際、津軽海峡に関して言うと二つ結論の出方があると思います。国際海峡になって、そして通航という観点からいきますと、あの地域については自由航行帯になって、実質領海がゼロ海里と等しいほどの通航になるのが一つ。それから、国際海峡になるが、あそこの地域についていままで三海里の領海幅を持っている部分についてはそのままで、三海里でない部分についてのみ国際海峡として認める。その変形も多少ありますでしょうが、国際海峡になったときにそのどちらに落ちるかが一つ問題になろうと思います。わが国としては、私が述べた後段の方である程度がんばらなければならないであろうと私は思うわけであります。これに対する御方針はどっちの方針で行かれているか。その一の方になる可能性も相当あるのかどうか。これはかなりめんどうな問題になります。一の方になりますと、あそこのところは漁船、商船の大通航帯になりますから、漁業権は全部つぶされてしまいます。それから、あそこのところが全面的に国際海峡、領海ゼロ海里に近い形になれば、これは安全保障の立場から言いましても問題がいろいろ生ずるだろうと思います。また、あの上は領空として、いまほとんど使用できないような曲がりくねった自由に航行できる飛行帯があるわけであります。領海三海里のおかげでほとんど使えないのですけれども、領海三海里の部分がなくなってゼロになりますと、ジェット機、ロケット機が飛べる空間になるわけであります。防衛庁の議論はその辺がちょっと甘くできておりまして、いまの領海幅三海里は確保できると信じておられる節もありますが、この問題に関しては、信ぜよ、さらば救われるというわけにはいかぬ。一のケースに行こうとしているか、二のケースに行こうとしているか、この辺いかがですか。そしてどっちで交渉しようとしているのか。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 海洋法会議でどのような結論が出るかということにつきましてはまだ明らかでないわけでございますけれども、先日来の渡部先生の御議論から言いまして、日本といたしまして後に言われた方が好ましい形ではないかと思うのでございますけれども、その点につきまして条約局長から補足をさせていただきます。

中島敏次郎外務省条約局長

○中島政府委員 海洋法会議における状況につきまして補足説明させていただきます。  まず第一に、先生いまの津軽海峡をお取り上げになって、船舶の問題で三海里の中に立ち入ることになるのかどうか、こういう点が先生の御提起になった点の一つだろうと思いますが、御承知のようにただいまの海洋法の討議の基礎になっておりますところの草案、単一非公式草案の制度は、そのような国際海峡における船舶の通航の制度として、沿岸国が航行帯を設けてそこを外国の船舶に通航させるという形になっております。現実の問題として、そのような通航帯は従来外国船舶が通航していたようなところに設定するというふうに考えるのが常識的であろうと思われるわけでございます。もちろん通航帯は航行の安全というようなことを考えながら設定するわけでございまして、いまの非公式単一草案も政府間海事機構、いわゆるIMCOと称せられるような国際機関に諮って、そこの技術的な立場からの承認を得て設定するという形になっておりますが、いずれにしろそのような航行帯が現実に設定されるのは、従来公海であった、したがって外国船舶が通航していたようなところに設定されることになるであろうと思われますので、実態の問題として三海里の中に立ち入ってくるというようなことはないというふうに考えてよろしいのじゃなかろうか。ただ御承知のようにいまの制度がそれで固まるかどうかという問題は、なおこれからの審議の状況を見なければならないかと思います。  それからもう一つ空についてもお触れになられましたが、この前の先生の御質問のときにも私ちょっと触れたのでございますが、いずれにしろいまの海洋法におきますところの国際海峡における通過制度の本旨は、現在領海が確立された国際法規上三海里であるという前提において、公海であって外国の船舶が自由に通航できるようなところが、領海が十二海里になることによって自由な通航ができなくなるということでは国際海運の自由を確保し得ないというのが本旨でございまして、従来通過していなかったようなところがそれによって通過し得るようになるということは恐らく本旨でなかろうというふうに考えるわけでございます。     〔有馬委員長代理退席、委員長着席〕 この点も含めまして、全体の制度そのものがいまだ固まってなくて今後の審議にまつ状況になるというのが事務的な私どもの立場からの御説明でございます。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 水産庁の方、いま外務大臣は津軽漁民の利益、沿岸漁民の利益を確保するため何かできることを水産庁に研究してほしいと思うとおっしゃいましたが、それを受けて何かなさるおつもりがございますか。

森実孝郎水産庁漁政部長

○森実説明員 まず、津軽海峡のわが国の漁業実態と外国の漁船の活動状況を前提として御説明を申し上げたいと思います。  現在津軽海峡はわが国の漁業としては小型のイカつり漁業とそれから漁業権漁業がございます。漁業権漁業につきましては大部分が現在三海里以内の沖出しでございますが、北海道側には四件ばかり、一割弱でございますが現に領海三海里のもとでも三海里を超える沖出しがございます。  それから津軽海峡におきます外国漁船の稼働状況でございますが、現在までのところ外国漁船が操業した報告は私どもは受けておりません。正確に申しますと、津軽海峡の東側の方で、大体常識的に言うと津軽海峡と外側との接触点あたりではないかと思いますが、二件ばかりソ連漁船が仮泊したケースと洋上転載をしたケースは報告がございます。それから、西側の方で、やはり、韓国漁船が通過した報告はございます。  私どもの見方では、実は津軽海峡は非常に潮流が早くて海底も複雑でございまして、一般の大型のまき網漁業や底びき漁業のような漁業につきましては、まずどこの国の漁船でも操業が困難なところだろうというふうに見ております。  なお漁業者からは、一部でございますが、津軽海峡も十二海里にしてほしいとかあるいはそれが困難であれば漁業専管水域を引いてほしいというふうな要望があったことは私どもも聞いております。現在のところ津軽海峡につきましては、先ほど申し上げましたように外国漁船の操業実態やそれによる被害というふうな問題はございません。今後絶対ないと言えるかどうか私ども断定はもちろんできませんが、非常に可能性は少ないのじゃないかと思いますが、現実の要望があれば十分調査して、具体的な対策はその都度考えてまいりたい。必要な外交交渉をやるということもあるでしょうしまた救済措置を講ずるということもあるでしょう。さらに将来わが国が二百海里の漁業専管水域を考える場合において、国際海峡として三海里にとどめたところにどういう保護を与えるかという問題もあると思いますので、そういう点は将来の課題として検討させていただきたいと思うわけでございます。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 それでは、二百海里の漁業専管水域をアメリカ側が設定した問題につき現地で問題が起こっている旨報道が行われておりますが、米側のこの問題に対する議会承認がおくれていたため混乱と紛糾が現場において生じているのではないかと思います。ただいまのニュースでは協定がいよいよ承認される段階直前になっていると伺っておるわけですが、早急に交渉するなりこうした問題に対応するなりするべきだとお願いをいたすわけであります。この問題に対する政府の御見解を承りたいと存じます。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 アメリカとの漁業交渉によりまして、この暫定措置関係の法案が予定どおりアメリカの国会通過が参らなかったということで御心配をおかけしたわけでございますけれども、けさほどのワシントン大使館からの連絡によりますと、日米暫定取り決めの発効にかかわる法案が米国議会での手続を了しまして、米国の東部時間で一日の午後六時四十五分、日本時間では二日の午前八時四十五分からわが国漁船が米国沖合い水域において操業ができる旨の米国政府より連絡があったのでございます。同法案につきまして大統領の署名が残っておりますが、二日中に行われる由と承っております。したがいまして今後の心配はなくなったというふうに理解されるところでございます。  結果におきまして約一日間操業自粛せざるを得なかったということになったわけでございまして、わが国としてはかかる事態になったことを遺憾とするものでございますが、わが方よりの働きかけもありまして、ともかくもわが国の漁船の操業が可能となったことを喜んでいる次第でございます。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 とりあえずそこまで来たことは大変喜ばしかったと存じますが、なお実施に当たりましてさまざまな紛争が生じた場合は、即刻に関係各官庁によりまして日本漁民保護の立場からこの問題に早急に対応されることを望みたいと存じます。  さて、日ソ間の二百海里漁業専管水域に伴う問題点が、いま日ソ間で行われている様子でございますが、まだ最終的なニュースのない段階でございますが、これらについての情報の進展があったら教えていただきたい。またこの協定と従来の日ソ漁業協定との関係あるいは従来の両国間のさまざまな漁業取り決めとの関連性、あるいはこの間から数百件、ほぼ一千件に近いほど続発しております漁業紛争に関する問題の解決等、問題はいろいろ絡み合っているように思うわけであります。今回の協定、今回の交渉においてはどの分とどの分にどういうインパクトを与えるか、どの分とどの分をどう解決していくか、こちら側だけでは言えぬ問題もございますが、その点を御担当の方から御報告をいただきたいと存じます。

宮澤泰外務省欧亜局長

○宮澤政府委員 ただいまお尋ねの点でございますが、まだ鈴木大臣モスコーにおられまして、ただいま代表団はちょうど共同コミュニケの作成にかかっておる時間でございますので、最終的にどのような成果が出ますか、いましばらく私どもも待っておるところでございますが、ただいままでの現地からの連絡によりますと、鈴木農林大臣とイシコフ漁業大臣との話し合いの結果、ソ連の布告いたしました二百海里漁業専管水域の原則に基づいて長期協定の交渉を三月中に始めるということが一つでございます。  それから、このような長期協定は当然国会の承認をいただくような事柄が含まれるものと考えられますので、これの成立までには時間を要する。したがいまして、その間暫定取り決めをやる。それで、その暫定取り決めにつきまして現在多少の折衝をいたしておりましたが、短時間のために結論を得ませんので、これにつきましてはまた三月中に改めてモスコーでこれを続行すると、こういう合意をいたしました。  さらに、ただいまお尋ねの日ソ漁業条約でございますが、これは一年間の予告をもって廃棄し得ることになっておりますが、まだ廃棄されておりませんので、この条約は生きておる。したがいまして、この条約に基づいて三月十五日から交渉が東京で行われる、この点についても合意がされたわけでございます。  したがいまして、ただいまお尋ねの点に戻りますが、常識的に考えまして、ただいままでの話し合いの結果から総合いたしまして、新協定、すなわち国会の御承認をいただく筋のものと申し上げましたその新協定は、従来の日ソ漁業条約にかわるものと考えられます。そして、その協定ができましたときには、ただいまつなぎに折衝を始めます暫定協定はその使命を終わる。したがいまして、新しい協定がすべてにかわると、大体このように考えておりますが、なお細部につきましては交渉中でございますので、まだ多少の変化があるかと思われます。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 水産庁の御担当の方から、いまの答弁に関して補足がありましたら承っておきたいと存じます。

森実孝郎水産庁漁政部長

○森実説明員 ただいま欧亜局長から御答弁がありましたのが大筋のラインではないかと思います。  なお、先生から御指摘がありました日ソの安全操業協定の問題は、日本の近海における安全操業ルールなり、損害賠償処理ルールを決めましたもので、今回の交渉の対象ではないと思っておりますし、事実そうではないようでございます。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 それでは、持ち時間いっぱいになりましたので、これで終わらしてもらいます。

竹内黎一自由民主党

○竹内委員長 次に、渡辺朗君。

渡辺朗民社党

○渡辺(朗)委員 渡辺朗でございます。新たにこの外務委員会の一員に加えさしていただきました。新人でございますので、どうかよろしく御指導をいただきますようお願いをいたします。  私は、きょう、三月の二十一日、二日というふうに新聞報道によりますとセットされている日米首脳会談、これと関連いたしまして、さらに五月に予定されているという先進国首脳会議、これの両者につきまして御質問をさせていただきたいと思っております。  なぜ二つのものを一緒にして御質問させていただくかと申し上げますと、私の感じでございますけれども、このたびの日米の首脳会談は先進国首脳会議の下敷き、あるいはまたその準備の一環でもあるというような位置づけができるのではあるまいかと存ずるからでございます。  実は最近、私は一週間ほどアメリカに行ってまいりました。ここにいらっしゃる中川委員とも御一緒でございました。特にお会いしましたのはアメリカの上院、下院の議員の方々、さらに政府関係の方々でございました。その会談やら会見を通じまして強く感じたことが三つほどございます。  一つは、いまカーター新政権が、日本とアメリカとそれからヨーロッパという三つの極を踏まえまして、その協調の上に世界の新たなデザインを考えているという点でございます。  同時に、アメリカのカーター政権が、今後もパシフィックパワーとしてアメリカは残るけれども、その決意は持っているけれども、どのような形でその役割りを果たしていくのかということについてはいま模索している最中だという印象を受けました。そこに日本とのこれからの関係あるいは責任の分担の問題こういったことが出てくるのであろうと思います。  三番目の印象といたしまして、いろいろな方とお会いしておりますと、福田総理の訪米というものにかける期待というものは非常に強いという感じを持ったわけであります。これは日米間に今日懸案事項もたくさんあるということのみならず、さきに申し上げました日米欧の三つの極の協調と、こういうデザインの必要性からであろうとも思います。私は、もう日米の首脳会談の日取りは、目前に迫ってきておりますし、新聞その他で伝えられるところを見ますると、外務省が中心になってすでに共同声明の草案も用意されているやに聞いております。  私は、そこでお聞きをしたいのでありますが、今回の首脳会談においてどのような問題を取り上げられ、そして討議される項目としておられるのか、そこら辺をまずお聞きしたいと思います。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 ただいま日米首脳会談から引き続きまして頂上会談、いわゆるサミット会談が行われるということで、この両者はきわめて密接な関係があるだろうというお話がございました。私ども議題をどういうふうに決めるかということにつきましていろいろな打ち合わせは行っておりますけれども、まだ先方とこういう議題でやろうというところまで立ち至っておらないのでございます。特に日米の首脳会談の場合には、かた苦しいいろいろなこういう議題ということでなくて、自由な両首脳の間の討議ということが一番大事なことであろうと思います。しかし、想定されますところは、およそいろいろ各新聞等にも論ぜられておりますけれども、主体は経済問題が大きな問題になるだろう、その経済問題におきましては、やはり世界経済全体の問題と、それに対するアメリカ、日本の役割りというような問題につきまして、当然のことながらいろいろお話し合いが行われるだろうということは当然であろうと思います。そのほかに、今日世界が持っております経済上の諸問題あるいは南北問題というようなことも、これまた大変な問題になっておりますので、当然のことながら議題に出るであろう、そういう想定をいたしておるわけでございます。またエネルギー関係につきましては、これからの将来の両国の経済の上でも大変大事な問題でありますし、その他、これからどういったエネルギーを確保しなければならないかということにつきまして、原子力の平和利用という問題につきましても当然のことながら議題になるであろう、そういう一応の想定をいたしておる段階でございまして、はっきりした議題ということはまだ決めていないというふうに御理解を賜りたいのであります。

渡辺朗民社党

○渡辺(朗)委員 いま想定をしてということで幾つかの点をおっしゃいましたのですが、たとえば、これは想定でございましても、貿易のアンバランスの問題一つ取り上げてみましても、そこでざっくばらんな話は結構でありますけれども、こちらの方がどのような対応をするのか。やはり確固としたこちらの方の方針がないといけないだろうと思います。  それで、私時間も余りありませんから、多くの問題についてはなかなか触れられませんけれども、一、二お聞きしたいと思います。  ちょうど、ITCのリコメンデーションが恐らくこの近々にも出るのではあるまいか。国際貿易委員会でございます。たとえばいま問題になっている当面のこととすれば、日本の急増する輸入製品という形でアメリカで問題になっている白黒テレビあるいはカラーテレビの問題が出るわけであります。ちょうど福田総理の訪米のときと時期が一致いたします。そういうときに、これはやはりざっくばらんな話し合いということだけではおさまりませんので、たとえばどういうリコメンデーションが出るかわかりませんけれども、タリフの問題あるいはクォータ制の問題というようなことになったときに、私の方はこうだというはっきりした態度が必要であろうと思うのです。あるいはまた、自分たちの要望はこれだというようなことも言わなければならぬだろうと思います。  その点で、想定された問題としてまずいまの貿易のアンバランスについてはどういうような態度で臨まれる腹構えでありますか、お聞かせいただきたい。

本野盛幸外務省経済局長

○本野政府委員 お答えいたします。  渡辺先生御指摘ございましたように、これはまさにこの貿易問題の一つの重要な決着でございますITCの決定というものは、福田総理の訪米の時期に近い時期に出るということでございまして、この問題を避けて通ることは非常にむずかしいということはお説のとおりかと存じます。  そこで、このITCの結論というものは、出ましてこれが大統領に対する勧告の形であらわれるわけでございますけれども、その勧告の決定の内容がどういうものになるかによって、またいろいろ対応策というものも考えられなければならないということで、実はいま私どもどういうような勧告が出る可能性があるのかということを鋭意情報を集めているところでございまして、それぞれにいま若干の仮説はございますけれども、ちょっといまこの場で申し上げることははばかりますけれども、そういうようなことで、関係省庁との間でいろいろ相談いたしておりまして、それに対応していくつもりでいま準備を進めている次第でございます。

渡辺朗民社党

○渡辺(朗)委員 これはまだどのような決定が出るかわからない問題でございますから、そのとおりなんですが、ただ、私は別の機会にもまたぜひ申し上げさしていただきたいと思いますけれども、日本側としてのデザインを持っておかなければならない。要望事項とそれからこちらの方針というものを持っておかなければならぬと思いますし、やはりこれは他の諸問題につきましても、たとえば核燃料の安定供給の問題につきましても、こちらの方で強くあらかじめ打ち出しておくことが必要であろうと思います。と同時に、また当然在韓米軍の撤退問題、これも爼上に上りますでしょうし、そしてまた関連して極東の安全保障についても話し合いが行われると思いますが、この極東の安全保障ということについてはどの程度の方針を打ち出す用意がございますか。  いままで他の委員会その他でお聞きしておりますと、極東の安全保障については、在韓米軍の撤退ということについては非常に慎重な態度で望んでほしいという要望が出るやに私は感じておりますが、そのような御方針で臨まれるというふうに理解してよろしいのでしょうか。その点、私は、極東の安全保障ということ、特に朝鮮半島の安全保障についてのお考えを改めて聞かしていただきたいと存じます。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 朝鮮半島の安全の問題につきまして、これはやはり今回の福田・カーター会談におきまして大きなテーマになるであろうということは、私どもも想定をいたしております。特にこの問題につきましては、これは両国の首脳が本当に腹を割って話し合うべき事項である、こういうふうに思う次第でございまして、現在のところ、この問題については日本としてこういう大方針をつくって臨むんだという態度はとっておらないところでございます。

渡辺朗民社党

○渡辺(朗)委員 私は外務大臣にぜひ望みたいところでございますが、たとえばその話し合いの中で、やはり日本としては朝鮮の平和的統一、これを望んでいるということを強くおっしゃっていただき、また朝鮮半島をめぐる安全保障の問題はこうこうしかじかすれば安全であるというような構想をも示していただいて、その中で段階的にあるいは情勢と見合いの中で在韓米軍の撤退という問題をひとつ論議をしていただきたい。これをまず私要望を申し上げておきたいと思います。  さらに、時間がありませんので、私ははしょって申し上げますが、朝鮮半島の平和的統一の問題に関連いたしまて、私ちょっと触覚のようなもので感じたのは、北朝鮮側の方もパキスタンを通じてアメリカ政府との直接的な話し合いを望んでいるというような報道も、アメリカの雑誌の上では見られたように存じました。こういった動きの中で、日本側としては北朝鮮とアメリカが話し合う、こういったものを促進するようなお気持ちはお持ちでございましょうか、お伺いをいたします。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 朝鮮半島の平和的な統一を期待をするということは、これはだれしも異存のないところでございます。今日まで現実の事態がなかなかその期待どおりに進んでおらないというところに問題があったわけでございます。したがいまして、いまおっしゃいましたような北朝鮮側が、韓国あるいは韓国と防衛条約を結んでおりますところのアメリカ、こういったところと話し合いをするという方向が出てまいることは、大変好ましいことであるというふうに当然私どもも考えるところでございまして、それらの進展に期待を持って臨むというところであろう、こう思う次第であります。

渡辺朗民社党

○渡辺(朗)委員 私さらに進めたいと思いますので、この問題についてはそれ以上に入りません。  ただ、さきに述べましたように、このたびの日米首脳会談は先進国首脳会議というものとの密接な関連の上で開かれるものだと理解しております。そうした立場を踏まえまして討議をされるわけでありますが、私は、先進国首脳会議というものには、日本は非常につらい状態になりはしないかという懸念を持っております。たとえば世界の景気刺激の問題、この問題につきましては、さきにモンデール副大統領が訪日しました際に、日本側からも説明があったやに聞いております。実質六・七%の成長を日本は年度内に達成する、こういうようなお話もあったやに聞きます。これは結構であります。しかし同時に、三つのエンジンの一つだというふうに言われ、そして期待をかけられる、その際に出てくる問題は、景気刺激と伴って世界貿易の、特に欧米——ヨーロッパ及びアメリカ、それの貿易のアンバランスの問題についてどうするのだということを迫られてくる、その場合には被告席に立たされる状態になりはしないかということであります。これに対していろいろな弁解をすることも可能かもわかりません。しかしながらその弁解が、下手をするとクロコダイルの涙にすぎないぞ、こういうような形でのむしろ逆に批判を受ける、こういう結果にもなりかねない。それだけに私は、欧米との貿易のアンバランス問題については、やはり確固たる態度をもって臨んでいただきたいと思います。これについてどのような構想をお持ちなのか、短くて結構でありますから、腹の中を聞かしていただきたいと思います。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 貿易のインバランスの問題が、これはアメリカ合衆国ともありますし、またヨーロッパともあるわけでございます。これらの情勢に対しましてわが国といたしましては、これは自由経済体制と申しますか自由貿易体制と申しますか、こういった体制を損なわないようにという従来からの方針でおるわけでございます。そして貿易というものは、一時保護貿易主義になりますと、いずれこれは保護貿易が保護貿易を呼びまして、結果的には縮小再生産になり、それがまた世界各国の経済の縮小をもたらす、こういう危険を持つものでございます。そういう意味でわが国といたしましては、貿易は拡大均衡の方向で持っていくべきであるというのがわが国の従来からの立場でございます。  しかしながら、現実の経済運営におきまして、特に失業問題が大きな問題になっておるこの世の中で、日本からの輸出が他国に対して大きな被害をもたらすというようなことは避くべきであるということのもとに、各個別の業界の問題につきましては個別の対処の仕方をしてきたわけでございまして、こういった原則に立ちまして、ヨーロッパ各国との間も、経済のお互いの立場を考慮しながら解決を図ってまいる、こういう考え方でおるわけでございます。

渡辺朗民社党

○渡辺(朗)委員 特にいまおっしゃったオーダリーマーケティングのつくり方、こういった問題についてもひとつ十分なる検討とプランを持って臨んでいただきたいと思いますし、あるいはまた、いま先進諸国の間で起こっております日本の商品の輸出の急増というような事態、こういった問題それから出てくる摩擦をいかに避けていくかということでは、早期警戒網といいますか、アーリーウォーニングシステムをどのようにつくっていくのか、こういった問題もひとつ準備をしていただいて臨んでいただきたいと存じます。  それから次に、私は、同じく先進国首脳会議の席上で被告席に立たされるという懸念は、やはり途上国、新興国に対する日本の経済援助の少ないという問題であります。先進諸国の方はEC諸国も景気が停滞している、そういう中でも大変苦労してやっている、こういう気持ちがあるのに、日本だけは黒字を抱えている、しかも先進国のうち十七カ国中十三番目であるというような問題が経済援助の額について言われている、これはこれからますます日本がつらい状態になる大きな問題であろうと私は思います。特に毎年日本の経済協力というのはどうも比率が下がってきておりますし、かつてGNPの一%は経済協力にという話がありましたが、実際にはなかなかそういったものが達成できない、あるいはまた政府の開発援助が国際的には〇・七%を目途としながら日本は非常にその点おくれておりまして、去年でございますか、GNP対比で〇・二四というような数字が示されている。こういった問題についてはもっともっと思い切ったやはり新興諸国に対する経済援助あるいは技術援助、こういったものが必要であろうと思います。恐らくカーター政権との会談の中でもこの問題が出てくると思います。これについて積極的な姿勢、どのような態度でもって臨んでいかれようとするのか、外務大臣にぜひ決意のほどを聞かしていただきたいと思います。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 経済援助の問題につきまして、わが国が従来からいわゆる先進国並みの水準になかなか達しないというので、肩身の狭い思いをしていることは事実でございます。これはいまここでいろいろ申し上げることはどうかと思いますが、日本がなぜ、こういう国際収支が大変な黒字であるにもかかわらず、なかなか援助の比率は高まらない、こういう点につきまして、やはりこれは大きな問題がある。国際収支は黒字だけれども、財政が大赤字であるというところに大きな原因があるわけで、これについては根本的な問題があることは事実でございます。しかし、その中で私どもはODAの比率を高めていくということに努力をいたしてきたわけでございます。本年のこのODAの計画、これは各省にまたがるのでございますが、規模といたしましてほぼ五千四百億円というベースになりまして、前年に対しまして事業費ではほぼ一千億近い増額を計上いたしておるわけであります。しかしながら、何分にもわが国の名目ベースの経済の大きくなり方が大変速いのでございまして、多額の措置をとりましても比率的にはだんだん落ちていくというのが従来の例でございます。  本年は苦しい財政事情のもとでできる限りの措置をお願いをしたわけでございますけれども、いまの段階では、これを全額消化いたしたとして〇・二八というところまでことしは予算化をしたわけであります。しかし、全額を使うというのは、これはいろいろな手続がありますので、どうしても若干おくれがちであるものですから、結果的に、〇・二八が年末で本当に計算をしてみますと、これが〇・二四になったりしてしまうというのが現実なのでございまして、そういう問題もありますので、これから経済援助、特にODAの関係につきましてはこの計画を敏速に実施をしてまいりたい、そういうことによりまして、ことしはODAの比率が高まることに努力をいたしたいと思います。そして毎年毎年の予算の編成に対しまして極力この枠の拡大を図ってまいるという方針でおるわけでございます。

渡辺朗民社党

○渡辺(朗)委員 もう時間がなくなりましたので、要望だけ一つしまして終わります。  今度カーター政権と会談をされるに当たりまして、ニクソン、キッシンジャー時代と異なって、恐らく率直、フランクな話し合いというものを向こう側も望んでおるでありましょうし、こちら側もそれをしなければならぬと思います。と同時に、やはり国民の前に事前に懸案の問題だとか、これからの、むずかしいことでありましても問題点はどこにあるというのをひとつ大いに知らして、そして会談に臨んでいただきたい。これをぜひお願いをいたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

竹内黎一自由民主党

○竹内委員長 次に、寺前巖君。

寺前巖日本共産党・革新共同

○寺前委員 きょうは、この間うちから問題になっておりました韓国駐留米軍の撤退問題をめぐっての若干の問題について外務大臣の所信をお聞きしたいと思います。限られた時間でございますので、要点のみをお返事いただきたいということを最初にお願いをいたします。  まず第一の問題は、カーター新政権を支える米民主党の政策綱領が昨年の七月十三日に党大会で採択されました。これはカーター政権の政策の柱ともなっているものです。それを見ますと、韓国の安全保障に関する米国の約束を再確認する、これは韓国だけでなく、日本の安全保障にとっても決定的重要性を持っている、しかし慎重な計画に基づいて韓国駐留米軍を段階的に削減し、韓国内の核兵器を撤収することが可能であるという内容の文面が出てきます。これが出されて選挙が行われ、そしてカーター新政権が生まれる。この過程で日本の政府高官の皆さん方がいろいろ発言をされました。東郷駐米大使は、昨年の十一月九日のミネアポリスの日米協会や、同じく十六日のピッツバーグの世界問題評議会で「韓国における米国の存在は朝鮮半島の勢力均衡が破れるのを阻止するセーフガードである」、安全弁であると述べて、在韓米軍の撤退に反対の意を表明されました。で、今次国会でもいろいろ論議がなされました。介入いたしませんと言いながら、意見として、朝鮮半島における微妙なバランス、これが破れるというようなことがあっては困るとしきりに答弁されました。  私は、そこで端的にお聞きをいたします。カーター新大統領みずからがおっしゃっているように、軍事的に見て韓国駐留の地上軍の削減あるいは韓国内の核兵器の撤収、いずれも朝鮮半島の微妙なバランスを破るものである、こういうふうに日本政府は解釈をしておられるのかどうか、お聞きをしたいと思います。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 朝鮮半島の南北の力のバランス、こういったことが論ぜられるわけでございます。力のバランスという以上は、やはり相互の相対的な関係ももちろん考えなければならないことであろう、こう思うわけでございます。そういう意味で、どれだけがこのバランス上必要であるかということは、抽象的にはなかなか表現しにくいことでございます。そういう意味で、これからカーター新政権が南北のバランスを損なわないようにし、朝鮮半島の安全というものを損なわないように考えながら、段階的に時間をかけて削減をしていこう、こういうようなことを承っておるわけでございます。そういうわけでございますので、削減が行われるに当たりましても、その削減の規模なり態様なりがバランス上大変微妙な関係を持つであろう、こう思いますので、いまどれだけの削減、あるいは韓国にあると言われておる核兵器が撤収された場合にどうバランスが失われるかということは、ちょっとここで抽象的な御返事はいたしかねると思います。

寺前巖日本共産党・革新共同

○寺前委員 しかし、いずれにしても微妙なバランスの変化が生まれることはお認めになったわけでございますね。間違っておったら後で訂正してください。  その次にお聞きをしたいと思います。  三木前総理がフォード前アメリカ大統領との間に共同声明を出されたことは御存じのとおりです。この共同声明の中で、朝鮮半島における平和の維持に関する諸取り決めの問題として三つの問題をお挙げになっております。すなわち、休戦協定、米韓相互防衛条約、そして日米安保条約、これを平和の維持に関するところの諸問題としてのバランス上の問題として考えなければならない枠として提起をしておられましたけれども、新しい福田内閣もこの立場を継承されるのかどうか。枠組みとしてこういうふうにお考えになるのかどうかもお尋ねしたい。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 この朝鮮半島の平和、安全問題につきましてのただいまおっしゃいました基本的な枠組みというものは、いま急激な変化はないという認識で間違いないと思います。

寺前巖日本共産党・革新共同

○寺前委員 そうすると、日米安保条約もこのバランスを崩さないための枠組みの一つとして従来も位置づけてきたし、いまも位置づけているということで私の解釈に誤りがなければ、そのとおり次に話していきたいと思います。誤りがあれば御指摘をいただきたいと思います。いいですね。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 大きな変化は起こっておらないというふうに申し上げた方がいいかと思います。

寺前巖日本共産党・革新共同

○寺前委員 そうすると、そこから理の当然として行き着く問題は、共同声明が昭和五十年の八月に出されましたときに、「韓国の安全が朝鮮半島における平和の維持にとり緊要であり、また、朝鮮半島における平和の維持は日本を含む東アジアにおける平和と安全にとり必要であることに意見の一致をみた。両者は、かかる平和を維持するために現行の安全保障上の諸取極がもつ重要性に留意した。」、これが当時のいわゆる新韓国条項という内容であったと思うのです。先ほどのお話では、微妙なバランス問題、緯圏からアメリカ軍の撤収という、すなわち米韓条約にかかわる問題において微妙な変化がそこに生まれるということになった場合には、三つの枠組みをお考えになっていたんだから、この新韓国条項、ここで指摘する日米安保条約が微妙なバランスの問題において、新しい段階における新韓国条項という問題について今度の首脳会談で当然検討され、強化をされることが問題になるのは理の必然だと思いますが、いかがでしょうか。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 日米安保体制が強化されることが理の当然かというふうに、最後のところはそうおっしゃったかと思います。この点につきましては、韓国におきます平和なり安全が日本の平和なり安全に大変密接なかかわり合いを持っておる、これは事実でございます。しかし、韓国からの陸上部隊の削減というような問題が朝鮮半島の脅威を増すとか、あるいは朝鮮半島の平和を阻害する、こういう形になることはないだろうというふうに私ども想定をいたしておるわけでございます。したがいまして、いまの論理の最後の部分の、論理的にそのように必ずなるんだというふうには、私ども必ずしもそうはならないのじゃないかというふうに考えておる次第でございます。

寺前巖日本共産党・革新共同

○寺前委員 新韓国条項の問題については、日米首脳会談で当然検討されることになるのでしょう。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 韓国に対するわが国の問題という点につきましても、これはやはり大事な問題として論議に上るだろうということは私どもとしては一応想定をしております。そして、もし日米の新しい両首脳がこれをいかにお考えになるかということにつきまして、その結論が出た場合には、何らかの文書にするかどうかということもどうせ問題にはなるかもしれないというふうには考えておりますが、いずれにいたしましても、両首脳がどういう御意見で一致をされるであろうかというところにかかっておると思うのでございます。

寺前巖日本共産党・革新共同

○寺前委員 論を進めまして、ことしの一月七日韓国政府筋が、あるいは一月十一日付の東亜日報の社説が、日米韓の三国安保協議機関の創設を主張しております。この問題について日本政府としてはどのような見解をお持ちになるのか、お聞きをしたいと思います。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 その論説を見ておりませんので、いま直ちに申し上げられないのでございます。

寺前巖日本共産党・革新共同

○寺前委員 一九七五年の十一月十六日の毎日新聞の紙上でも、朴大統領がこの内容については述べております。あるいはまた一九七五年の日韓閣僚会議の席上でも、朴大統領自身が福田副総理その他の方々に対してやはりお述べになったということがそのインタビューの中でも明らかにされているわけです。「いま韓日米の三角関係において、日米間、韓米間にはそれぞれ軍事同盟があるが、韓日間にはそれがない。」「平和維持協力の三角態勢を固めねばならない。」こういう問題提起を韓国の朴大統領がなさっているわけです。きのうきょう始まった論じゃない。しかも一方でカーター新政権が生まれてきている、日本でも福田新政権だ。福田総理自身がその話を聞いておられる。こういう事態の中においてこういう報道が韓国筋から出てきているということを見たときに、日本政府としてそれを見ていないからだけでは通用しないと私は思うのです。  ですから、日米韓の三国安保協議機関の創設ということを日本政府としては考えるのか、考えないのか、この点に対して態度を明らかにしていただきたいと思います。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 わが国は御承知のように平和憲法をいただいておるわけでございます。したがいまして、どういう趣旨で日韓間のそういった安保関係というものが考えられるか、これは私どもはまだ考えたこともありませんし、そういう論説についても余りつまびらかにいたしておりません。しかし日本は、憲法上のたてまえというものは、もうだれが何と言いましてもこれは厳然たるものでございますから、日韓においてそのようなことが何か現実の問題としてあろうとは思われないのでございます。

寺前巖日本共産党・革新共同

○寺前委員 そういう態度はとらない……。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 内容を私見てないものですから、はっきりしたことは言えませんが、そのようなことはとられないと確信をいたす次第であります。

寺前巖日本共産党・革新共同

○寺前委員 論をさらに発展をさせたいと思います。昨年の暮れに、政府が韓国へ経済調査団を派遣しておられます。宇部興産の社長の中安さんが代表格になってお行きになっておられたという、一月二十一日付のそのインタビューを新聞紙上で読ませていただきました。そこで私が感じた問題から大臣の所信をお聞きしたいわけです。  いま韓国では、第四次新五カ年計画というのを進めておられる、こういうわけです。この第四次新五カ年計画は機械工業の振興に重点を置いて、これによって軍需、兵器産業を育成するんだ、こういうふうにそのインタビューの内容からもうかがうことができるわけです。ところでそのインタビューの内容の中から、韓国側が要求しているのは十八億ドルくらいの援助であって、たいして新鋭の兵器産業を早急につくり出すというものでもないから、このくらいの援助があってもいいじゃないかという趣旨のインタビューがなされているわけです。  そこでお尋ねをしたいと思うのです。このように軍需、兵器産業を育成するという目的のもとに進められる新五カ年計画に、日本政府として協力をされるのかされないのか。明確にしていただきたいと思うのです。

菊地清明外務省経済協力局長

○菊地政府委員 御説のとおり去年の十二月八日から十七日まで、中安さんを団長とする使節団を派遣しました。この目的は、韓国の第四次五カ年計画の内容について韓国政府及び民間からその事情聴取をするということでございます。  この計画の基本的なねらいといいますのは、私たちの了解によりますと三つございまして、一つは自立経済、自立成長構造を達成する、二つには公平を増進する、つまり社会の各層間の不公平を是正する、三つには技術革新と能率向上ということでございまして、特に軍需、兵器といいますか、そういったものに重点があるというふうには承知しておらないわけでございます。  そういう前提のもとに、しからば第四次五カ年計画にどういうふうな日本の協力をするかということに関しましては、先生御指摘の数字が出されていることはたしかでございますけれども、これは政府の分それから民間の借款全部を含んだいわゆる期待額ということでございます。これは先方の期待額でございますけれども、日本としてどうするかという問題につきましては、中安使節団の報告の提出を待って慎重に検討したいというのが現在の立場でございます。

寺前巖日本共産党・革新共同

○寺前委員 外務大臣にお聞きをしたいと思うのです。  いまのお話では、軍需、兵器産業の建設が新五カ年計画の目標でないように聞いているというお話だったと思うのです。もしもそういう部門を進めるという内容だったら、日本政府としてはこれに対する協力をするわけにはいかないと言われるのか、そんな内容については関係ないとおっしゃるのか、その点が第一点。  第二点に、これも韓国の朴大統領でございますが、ことしの一月二十八日に国防省を年頭巡視をやられました。国防長官の報告を聞かれた後で会見をやっておられます。その会見の中で、一九八〇年末までに核と戦闘機の開発を除くあらゆる兵器生産を国産化する能力を持つ、その展望を明らかにされたというのです。そしてその方向の内容として、七八年の末ごろに整備させる方向で国内の建設を始めていくんだということをその席上で述べておられるわけです。私は、韓国の経済建設がそこに力点が置かれ始めてきているということは事実だろうと思うのです。とすると、いよいよもって経済援助のあり方の問題について、予算委員会で先ほどから論議になっているような、もちろん政治腐敗の問題の問題点はあるにしても、別個に軍需兵器生産の分野にこれが影響を持つ経済建設だということになってきた場合には、私はこれは日本政府として再検討しなければならないときにきているのではないかというふうに思うのですが、どうでしょうか。  外務大臣として、第一点、重ねてお聞きをしたいと思います。兵器軍需産業の分野にもしも建設が始まるとするならば、日本政府はどうするのか。もう一つは、私の指摘した問題について、そういう方向にあるのかどうか、お調べになるかどうか、二点についてお聞きしたいと思います。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 第四次五カ年計画の内容、私もいまつまびらかにいたしておりませんが、わが国の経済協力のあり方といたしましては、民生の安定、農業問題でありますとかあるいは産業の基礎になります電力でありますとか交通部門でありますとか、そういった広い意味のインフラストラクチュア的なものに協力をしてきたのが従来からの態度でございまして、これからの態度も恐らくそのような考え方のもとに行われるであろうと思います。計画経済の中で一部どのようなものがほかに行われるかということは、私どもは、それなるがゆえにほかのことも一切もうやらないということはまたいかがなものであろうか、こう思いますので、その点はまだ、あるいは関係各省当局ともいろいろ御意見も聞かなければなりません。これから先方の計画を聞きまして、それから態度を決めるということになろうと思いますので、いまの段階で予測、予断はできませんけれども、従来からのわが国の方針はそのような方針でありますので、恐らくそのような考え方を踏襲していくのではあるまいかというふうに現在のところは考えておる次第でございます。

寺前巖日本共産党・革新共同

○寺前委員 さっきの質問でもう一言、きちっとお聞きしておきたいのですが、軍需兵器の生産分野に、もしも韓国の経済建設で始まっていく、それに対する援助というのはするのかしないのか、この点だけで私は質問を終わります。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 従来からも日本政府としてはそのような考え方はとっておりません。そういうような方針で今後も進むであろうということを申し述べたいと思います。

寺前巖日本共産党・革新共同

○寺前委員 終わります。どうもありがとうございました。

竹内黎一自由民主党

○竹内委員長 次に、伊藤公介君。

伊藤公介新自由クラブ

○伊藤(公)委員 先日御質問申し上げたわけでございますが、私どもは大変残念ながら短い限られた時間でございますので、あわせて、動き出した人権外交についてお尋ねをしたいと思います。  私たちは、アメリカのカーター外交は明らかに一つの確固たる方針を持って動き出した、こういう認識に立って、われわれ、特に新自由クラブは、この資源の限られた時代に勇敢にそしてかなり思い切った外交を展開しなければならないという基本的な考え方を持っているわけでございます。  去る二月一日でございますけれども、福田・モンデール会談におきまして、韓国からの撤兵について、この撤兵は朝鮮半島の緊張緩和ということよりも、むしろ韓国の朴政権のあり方に対するアメリカの国民感情への配慮をしたものである、こう言明をしているわけでありますけれども、大変にはっきりしたこのカーター外交というものが私たちはうかがえるわけでありますが、この基本的な考え方をまずお聞きをしておきたいと思います。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 モンデール副大統領が来日されましたときに、いわゆる人権問題と朝鮮半島あるいは韓国からの陸上軍の縮減と申しますか、こういったものが関係があるというようなお話は全く聞いておりません。現在でもそのような考え方はないものと考えております。

伊藤公介新自由クラブ

○伊藤(公)委員 今度のカーター外交において、朝鮮半島から撤兵をするということは、まさにベトナム戦争以後かなり目立った外交だと私たちは受けとめているわけでございます。けれども、この韓国からの撤兵について日本の政府は事前に相談を受けておりましたでしょうか。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 大統領選挙の前に民主党としての韓国に対する政策が打ち出されたわけでございまして、そういう段階で私どもは相談を受けたという事実はないものと思います。

伊藤公介新自由クラブ

○伊藤(公)委員 撤兵をするということを明らかにされた時点で、日本の政府は何らかの打ち合わせ、これに立ち向かうという具体的な話し合いをされておりますでしょうか。

山崎敏夫外務省アメリカ局長

○山崎政府委員 ただいま外務大臣からも答弁がありましたように、この在韓米地上軍の撤退という問題は、カーター大統領が大統領選挙運動の最中に言い出されたことでございまして、このときはカーター大統領は大統領候補としての政見として述べられたわけでございます。したがいまして、そういう問題に関してこちらに御相談があるという性格のものでもございませんし、また、それに対してわれわれがとやかくの意見を述べる立場にはなかった次第でございます。

伊藤公介新自由クラブ

○伊藤(公)委員 私たちは、朝鮮半島というものがわが国の平和にとって大変大事だ、また、じっとわれわれが手をこまねいて見続けている、だけでいいのかという、多少疑念を持っておりますので、続けて御質問をしているわけでございますけれども、この朝鮮半島に関して、より具体的に、たとえば現状のこの南北朝鮮問題というものを固定化していこうとしているのか、あるいは統一をするという方向を考えておられるのか、日本の政府の考え方をお聞きしたいと思います。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 現在の韓国が南と北に分かれていることは大変不幸なことである、こういう認識は恐らく皆さん共通しておると思います。こういう事態にどう対処するかということが大変むずかしいわけでございますが、これは南北が何らかのお互いの話し合いをまず開始することが何より一番大事な基礎であるというふうに考えて、私どもも対話の再開をこいねがっているわけでございます。

伊藤公介新自由クラブ

○伊藤(公)委員 対話をして……

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 いま表現が、あるいは速記の方で直していただきますが、朝鮮半島が南北の二つに分かれておるということでございますので、これは発言のミスでございますので、訂正いたします。

伊藤公介新自由クラブ

○伊藤(公)委員 これは朝鮮半島の基本的な問題でありますが、かつて国連で、中国の国連加盟を承認するという場面があったわけでありますけれども、まだ当時私たち日本の国の中では台湾政府ということを考えている時期に、われわれがあるいは日本政府が全くそうしたことを考えない間に、アメリカのキッシンジャーはすでに中国に入って、中国国連加盟の行動が起きていたわけでございます。今後、朝鮮半島において、あるいは状況も違うし背景も違いますが、われわれが想像し得ない新しい事態が起きないとは言えない。こうした動き出したカーターアメリカ外交、そして人権外交と朝鮮半島の行方についてわれわれは大変な心配もしているわけでございます。かつて中国とのこともございましたけれども、これからの朝鮮半島に関して予想される事態、こうした問題についてもわれわれはかなりいろいろな配慮をしていかなければならないと思っておりますが、どうも私はけさから皆さんのいろいろな質疑を聞いていても、朝鮮半島の問題はもちろん、まさに外交に関しては福田内閣には外交なしという感を抱かざるを得ない。朝鮮半島に対してはどうするのか、あるいは日本は今後アメリカとの関係をどうしていくのかということの基本的な考え方が全くない。朝鮮半島に関してただわれわれが見守るというだけではなしに、国連の中における朝鮮問題をどうしていくかということをさらに具体的にお聞きをしたいと思います。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 朝鮮半島をどうするというお話でございますけれども、これは私ども外交をあずかる者の立場といたしまして、発言はやはり慎重にしたいと思います。  そこで、将来のことでございますけれども、私どもは、たびたび申し上げておりますとおり、南北間が本当に対話を再開して、そしてお互いの理解を深めるということを何よりも望んでおる。それまではやはり根気強く、忍耐強く対処していくというのがわが国として従来とってまいりました方針でございまして、これらのいままでの方針をいまここで急に変えることは適当でないというふうに考えておる次第でございます。

伊藤公介新自由クラブ

○伊藤(公)委員 一つだけお聞きしておきたいのでありますけれども、われわれはもちろん朝鮮半島の平和を望んでいるわけであります。ちまたでは、日韓の問題あるいは金大中事件以降、日本と韓国との関係は、とにかくわれわれが周辺の雑誌を開けば、新聞を開けば、そしてわれわれが聞けば、まさにこの疑惑は深まるばかりであります。われわれはこの南北を問わず公平な立場から外交を進めていかなければならないと思っているわけですが、たとえば北朝鮮側からの日本への入国という問題についてはどんな見解をお持ちになっているでしょうか。

中江要介外務省アジア局長

○中江政府委員 御承知のように、わが国はまだ北朝鮮との間に外交関係を持っておりませんし、承認もしておらないわけでございますけれども、日本と朝鮮半島の歴史的なあるいは地理的な、文化的な深い関係にかんがみまして、北朝鮮の人でも、そのわが国への入国目的が政治的なものでない、スポーツとか文化とか経済、貿易の問題だとか、そういうものに限っては、最近、特に一九七二年の南北共同声明が出まして以来、急上昇しているということでございます。ただ、冒頭に申し上げましたような関係でありますので、北朝鮮の発行する旅券によって入国するということはまだ認められるわけにはまいらぬ、こういうことでございます。

伊藤公介新自由クラブ

○伊藤(公)委員 今後北側に関していままでとはもう一歩違った方向で、たとえば入国に関しての問題であるとか、あるいはいまお話しのスポーツであるとか、そうした政治を離れての交流という点について積極的に取り組んでいこうという意向はおありでしょうか。

中江要介外務省アジア局長

○中江政府委員 私が先ほど申し上げました方針でだんだん交流を積み重ねていきたいという期待は私ども持っておりますけれども、他方また、北朝鮮から入国した人が日本でどういう行動をしているかということについては、必ずしもわれわれが期待したような行動に限定されていなかった事例もございますので、その辺のところは慎重にケース・バイ・ケースに対処していく、こういうことでございます。

伊藤公介新自由クラブ

○伊藤(公)委員 われわれはもちろん北のことだけを考えているわけではありませんで、南北の問題を並行して、また友好的にやっていくことが賢明だと考えているわけであります。しかし、現実に私たち日本の国と韓国との関係、そして日本と北との関係ということを考えますと、何かの新しい一つのアクションを起こさなければ、この関係をこのまま続けていくことが一体いいのかという、私たちは実は大変な心配をしているわけであります。決していまのままでいいとは私たちは思っていませんし、一番隣国でありますから、何か新しい問題が起きてきたときに処理をするという形ではなくて、積極的に取り組んでいただきたいということを要望して、次に移りたいと思います。  もう間もなく開催されます日米首脳会議に、先ほどから、また前回の質問で申し上げたアメリカのカーターの人権外交というものが当然一つのテーマになるかと思いますけれども、これをテーマの一つにお考えになっているかどうか、まずお尋ねしたいと思います。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 先ほどから申し上げておるのでございますけれども、今回両首脳が初めて会われるわけでございますから、やはり両首脳間で一番大事な問題が話し合われるであろうと思います。したがいまして、いま私がここでとやかく申し上げるようなことではなかろうと思うのでございます。

伊藤公介新自由クラブ

○伊藤(公)委員 すでに、どういう問題を議論をするか、また日本側としてどういう姿勢で取り組むかということは当然討議をされていると思いますし、されるべきだと思うわけでありますけれども、もしこの首脳会議で具体的に人権外交の問題がテーマとされてきた場合、日本の政府はどういう立場でこれに取り組んでまいりますでしょうか。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 この人権問題は、これはそれ自体として大事な問題でございます。この問題につきましては、やはり両首脳の間で御自由に話し合われることが一番いい問題であって、私どもが事務的にいろいろなおぜん立てをするというような問題ではないというふうに考えております。

伊藤公介新自由クラブ

○伊藤(公)委員 万一そういう提起があった場合にはどうされますでしょうか。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 両首脳の間で隔意なき意見の交換が望ましいということでございます。

伊藤公介新自由クラブ

○伊藤(公)委員 外務大臣のお考えをお聞きをしたいと思います。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 私は、先週のこの席で御質問がありまして、人権問題は大変大事な問題であります、またカーター大統領が人権問題を真剣に考えられておるということもよく承っておりますし、大変これも勇気のある行動であるというふうに評価をいたすのにやぶさかではございません。ただ、私どもとしては、外交当局がどう考えるかということにつきましては、これは一つの私どもの考え方として、人権問題というのは非常に政治的な自由、こういったものに結びついた人権問題が論議されることが多いわけでございます。そしてこの政治的な自由という問題につきまして、これは各国の国内体制と密接に結びついている問題でございます。したがいまして、日本では政治的な自由が極端に自由であります。こういう私どもから考えまして、そういった自由がない国のことについてはなかなか理解がしにくい面があろうと思います。しかしながら、日本として世界の各国とも交友関係を結んでいく場合におきましては、これは相手国の国内体制というものも十分理解した上で交友をしなければならない、こういうふうに考えておりまして、いやしくも内政干渉と言われるようなことは日本の外交としては慎重を期すべきである、こういうふうに考えておる、これは先刻も申し上げたところでございます。

伊藤公介新自由クラブ

○伊藤(公)委員 もっと具体的にお尋ねしたいと思います。  いろいろなところで議論をされてまいりましたけれども、しかし最近、このままあいまいにしておくことはならない、多くの国民の疑惑を払う意味で金大中事件をいま再調査をすべきだと私たちは思いますし、これに対して、どういう経路で日本の国からどこをどういう形で連れ去られていったのかということを、私たちは国民の前に明らかにすべきだ。そのことによって一つ一つ日本と韓国との疑惑は解けるわけでありますし、そうした国民にはっきりわかりやすい形でこうした問題を解明することによって、日本と朝鮮半島あるいは政治そのものが国民に対しても本当に開かれた政治だと言えることになると私たちは思います。この金大中事件は、私たちは一つの人権問題である、こういうとらえ方をしているわけでありますけれども、外務大臣の見解をお尋ねしたいと思います。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 金大中事件につきましてただいまおっしゃいましたような点につきましては、警察当局が捜査中でございます。私ども金大中事件、この問題につきましては、とにかく外交的にはこれ以上これを両国間の紛争事項としないという、そういう意味でこれは外交的な決着をつけたのでございますので、いまおっしゃられました点は、もっぱら警察の手による刑事事件としての解明をする、こういうことに御理解を賜りたいわけでございます。この事件というものが本当に真相が解明されることを私どももこいねがうわけでございますが、その点は警察当局の方にお尋ねいただきたいと思うのでございます。

伊藤公介新自由クラブ

○伊藤(公)委員 多くの国民は、この金大中事件を依然として深い疑惑としてとらえていると思うのです。私自身もそうでありますけれども、外務大臣は、これは疑惑のある問題だというぐあいに現実に考えていられるのか。また、先刻の予算委員会でも総理自身が、疑惑があるとすれば、これは徹底的な調査が必要である、こういう言明もしているわけでありますから、もし調査をすでにしているとすれば、その調査の結果をはっきりと御報告をいただきたい、あるいは中間報告という形でも結構でございます。われわれは、実は金大中事件とあわせていまさらに疑惑が深まっている日韓の問題について今後具体的にお尋ねをしていきたいと思いますけれども、時間が過ぎてしまいましたので、最後に、外務大臣にこの金大中事件に限って現状でなお疑惑はあるとお考えになっているのか、その感触をお尋ねをしたい。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 金大中事件の刑事事件としての側面は解明されていないわけでございます。そういう意味で私どもは事件が解決したとは言えないと思います。しかし、その点につきましては、警察当局が捜査を担当しておられますので、警察当局の方にお願いを申し上げたいということを申し上げているわけでございます。

伊藤公介新自由クラブ

○伊藤(公)委員 最後にもう一問。  この疑惑を解くために、韓国に対してもその協力をするという意思を持っていられますか。

鳩山威一郎自由民主党外務大臣

○鳩山国務大臣 韓国におきましてもこの事件の捜査はしておる、そういう状況でございますので、いま私どもとしては、この事件の解明のために直接動くという立場にないわけでございます。

伊藤公介新自由クラブ

○伊藤(公)委員 大変不十分でありますので、次回の国際情勢のときに再び質問をさせていただきたいと思います。

竹内黎一自由民主党

○竹内委員長 次回は、明後四日金曜日午前十時理事会、十時三十分より委員会を開くこととし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時二十九分散会

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