法務委員会 第1号
- 発言数
- 278 件
- 登壇者
- 18 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1976/10/08
会議録
○大竹委員長 これより会議を開きます。 理事辞任の件についてお諮りいたします。 理事田中伊三次君から理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○大竹委員長 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。 引き続き、理事の補欠選任を行うのでありますが、その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○大竹委員長 御異議なしと認めます。 それでは、理事に中山利生君を指名いたします。 ————◇—————
○大竹委員長 次に、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。 すなわち、裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政の適正を期するため、本会期中、裁判所の司法行政に関する事項、法務行政及び検察行政に関する事項並びに国内治安及び人権擁護に関する事項につき、小委員会の設置、関係各方面からの説明聴取及び資料の要求等の方法により国政調査を行うため、議長に対し承認を求めることにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○大竹委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ————◇—————
○大竹委員長 この際、稻葉法務大臣及び羽田野法務政務次官から発言を求められておりますので、順次これを許します。稻葉法務大臣。
○稻葉国務大臣 去る九月十五日、三木内閣の改造に当たり、法務大臣に留任し、引き続き法務行政を担当いたすことに相なりました。 内外の諸情勢が厳しい折から、改めてその職責の重大さを痛感いたしております。私の場合には不徳を省み、特に言動に留意をいたし、誠心誠意努力をいたす所存でありますので、大竹委員長初め理事各位、委員各位の御指導と御協力を切にお願い申し上げる次第であります。
○大竹委員長 次に、羽田野法務政務次官。
○羽田野政府委員 このたび法務政務次官に就任いたしました羽田野忠文でございます。 時局柄大任でございますが、稻葉法務大臣のもと、かつて法務委員をさしていただきました経験を生かして、よき補佐役として法務行政の一層の推進に努力してまいりたいと存じております。どうかよろしく御指導、御鞭撻のほど心からお願い申し上げまして、簡単でございますが、ごあいさつといたします。(拍手) ————◇—————
○大竹委員長 お諮りいたします。 本日、最高裁判所勝見人事局長及び岡垣刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○大竹委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ————◇—————
○大竹委員長 次に、裁判所の司法行政、法務行政、検察行政に関する件について調査を進めます。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小島徹三君。
○小島委員 私は、きょうは実は質問するというよりも、私の希望を述べ、また、警察当局並びに検察当局にお願いをしたいと思う次第でございますので、そのつもりでお願いいたします。 まず、警察にお聞きしたいのですが、最近起きたあの寺尾判事暴行事件についてのその後の経過についてひとつ御説明願いたいと思います。もちろん捜査上秘密を要するというようなものについては、強いて述べていただく必要はございません。
○福井説明員 お答えいたします。 本件は、九月十七日の朝に、東京高等裁判所の寺尾正二判事が、新宿区市谷富久町の自宅から公用車で新宿通りを麹町方向に走っておって、九時十八分ごろ、四谷三丁目交差点付近におきまして交通混雑のため停車したところを、白いライトバンで追ってきたと思われます犯人らが、ストッキングで覆面をしまして、野球用のバットを手に持って、寺尾判事の乗用車の窓ガラスを破損いたしまして、バットで突くなどして、寺尾判事に両手甲、頭部に切創、挫傷の一週間の加療を要する傷害を与えた。同時に、車を運転しておった清水技官にも暴行を加えたという事犯でございます。 犯行直後の九時二十分に、警視庁では、通行人からの一一〇番通報で事件の発生を認知いたしまして、早速緊急配備を発令して所轄警察署員、自動車警ら隊員四十人を現場に急派して、犯人の逃走経路、遺留品の発見、押収等、初動措置に努めておりますが、残念ながら犯人逮捕には至っておりませんでした。そこで、同日、所轄の四谷警察署に所轄署長を長といたします捜査本部を設置いたしまして、三十八人の体制で現在捜査を続けておるところでございます。 これまでの捜査で明らかになった点でございますが、現場で目撃されました犯人は四人でございます。犯行後、一人は近くのバス停から都営バスで、一人は四谷三丁目の地下鉄の駅から地下鉄で中野方向へ、一人は徒歩で、もう一人は犯行に使用しました車を運転して現場から逃走しております。犯行現場には犯行に使用されました野球のバット等の遺留品が残っておりまして、これを発見領置しております。 それから、犯行に使用しました車両は、九月十九日になりまして、犯行現場から約四百メートル離れました新宿区荒木町の路上で放置してあるのを発見しておりますが、照会の結果、都下の武蔵村山市に住んでおる方が十六日の夜から十七日の朝にかけて盗まれたものであるということが判明しております。 それから、犯行前日の十六日の朝と犯行当日の十七日の朝引き続いて、寺尾判事の自宅に比較的近接をしておりまして、しかも通勤コースに当たる地点に、数人の者が乗った白い車がとまっておったのが幾人かの人に目撃されておりますところなどから、犯人らは事前に入念な調査をやっておるというふうに見ております。 それから、犯行後の九月二十六日に足立区の東綾瀬公園で行われました集会で、反帝学評系全学連の横山委員長が、九月十七日に反革命寺尾に革命的鉄槌が下った、われわれはこの行為を断固支持し、今後も革命的発展をかち取るという旨の発言をしております。それから、犯行前の四月十五日付、五月一日付、六月十五日付の同派の機関紙「解放」に、寺尾判事に対する報復、糾弾を主張する記事が載っております。また、犯行に使用された車が盗難車であって、しかも、本来の多摩ナンバーのプレートの上に、アルミ板とボール紙でつくった足立ナンバーのにせのプレートを接着テープで取りつけておる。こういう手口等からいたしまして、本件犯行は、いわゆる狭山事件の控訴審判決に不満を持った反帝学評系の犯行であるという見方を強めております。 警視庁では、九月二十七日に渋谷の道玄坂にあります現代社を、翌二十八日に明大の和泉校舎の学生会館の中にあります反帝学評系の使用しておる部屋を捜索するなどいたしまして、現在捜査を続けておるところでございます。
○小島委員 私は、こんな質問をいたしましたのは、実は御承知のように裁判官訴追委員会というものがございまして、私はその委員をいたしておるわけでございますが、このような制度が設けられておるということは、裁判官といえどもやはり人間である、裁判官に神様のような要求はできませんからして、どうしても不適格者というものが出てくる。したがって、そういう場合について、われわれ委員といたしましても、この裁判官が果たして適格であるか不適格であるかということを判断することは非常に重大な問題でございます。 ところが、裁判の当、不当ということは、私たちは干渉する余地はございませんが、もし、その裁判が不当だと思われるようなものが、外部的な事情によって裁判官の心証に大きな影響を与えておるというような場合、その外部的なことということは、つまり、たとえば請託であるとかあるいはその他の縁故関係であるとかいうような、そういう関係によって不当な裁判が与えられたという場合ははっきりいたしておりますからして、これは裁判官の適格性を疑うことができると思いますけれども、そうでない、裁判官に大きな心理的影響を与えるというような行為で、しかも外部的には全然これが想像がつかない、判断がつかないという場合があり得る。その一つが、私は今度のようなああいう寺尾判事に対する暴行事件ではないかと思います。 もし、判事が神様であるということなら別でございますけれども、そういうふうに自分の生命あるいは家族の生命に危険が起きるかもしれないというような状態が起きたときに、果たして一体、裁判官というものが本当の平常な心理状態におることができるかどうか。仮に裁判官がそういう脅威によって不当な判決をしたという場合に、確かにけしからぬとは思いますけれども、訴追委員が一人として、その裁判官をけしからぬと言って責めることができるかどうか。私は自分自身を考えてみて、自分の生命が危ない、家族の生命が危ないというようなときに、平静な気持ちで一体裁判ができるかどうかということを考えてみたときに、私は、自信をもって裁判官を責めることはできないだろうと思います。したがって、そういう事態が起きないようにするということは、これはもう公平な裁判を得ることのためには絶対必要だと思うのでございまして、そういう意味において、この事件というものは、世間ではロッキード事件とかいろいろな大きい問題が起きておるように言われておりますけれども、私は一番大きな問題じゃないかと思います。日本の司法が疑われるというような状態が起きたときには、三権分立の遂行ということは不可能になってしまう、かように考えますので、私はあえてこの質問をしたわけでございまして、この事件を何としても徹底的に捜索してもらいたい、そしていかなる困難があっても犯人を検挙してもらいたい。そうでなければ、私は、今後、裁判官訴追委員といたしましても、自信を持って裁判官の公平を守ることができなくなるんじゃないか、かように思うものでございますが、警察当局は一体犯人を逮捕するだけの確信をお持ちになっておるのかどうか、またその決意があるのかどうか、ちょっとそれをお聞きしたいと思います。
○福井説明員 お答えいたします。 最近、司法関係者等に対する完全せん滅を宣言する彼らにとりまして、これは殺害するということと同義異語であります。かような文書を一部の報道関係者に送る、あるいは救援連絡センター名で、北海道庁爆破事件被疑者の勾留状を発布した裁判官等に、不法逮捕である、今回の逮捕は札幌地裁の令状で行われた、今後は人民が法の範囲内だけで抵抗すると考えることはできないであろうといった内容の文書を送り届けるといった事犯が出てきております。法による秩序維持に真っ向から反発をして、裁判官を含む司法関係者に対する個人テロをほのめかすようなきわめて危険な徴候が出かかっておるというふうに見られるわけであります。 かような時期に起こった今回の寺尾判事に対する襲撃事件だけに、警察といたしましては、特に重視をして現在捜査をやっております。 また、いわゆる狭山事件の控訴審関係者、それから最高裁第二小法廷の上告審関係の裁判官の方々につきましては、警視庁初め北海道、新潟、静岡等の関係県警察が、状況により若干差異はございますが、判事の自宅と所轄警察署との間に非常の場合の通報装置を設けたり、特別の警らを行ったり、出退勤の際にパトカーで警戒したり、特別の場合には複数の警察官で二十四時間の張り込みの警戒をする等の措置をすでにとっております。 公共の安全と秩序の維持に任じます警察といたしましては、自己の主張に反する、即裁判官を襲撃するといった今回のような事犯につきましては、その動機の悪質性なり社会的影響の深刻さにかんがみまして、厳に警戒をし、取り締まりを行って再発抑止に努めてまいる所存であります。
○小島委員 警察当局の御決意は承りました。ありがとうございました。 検察当局にちょっとこれもお願いしておきたいと思いますが、指揮権発動ということがいいのか悪いのか、そんなことは私はもちろんわかりませんけれども、検察当局におかれましても、こういう問題について徹底的に犯人を逮捕してもらいたい。そもそも裁判官の身辺を護衛しなければならぬというようなことは末の末であって、それ以前に、こういうことが起きた場合には徹底的にこれを追及してしまうのだ、そしてその効果を上げるのだということによってのみ防ぐことができると思いますので、検察当局、ひとつその点の決意を承りたいと思います。
○安原政府委員 小島委員御指摘のとおりでございまして、かかる事犯は法秩序に対する大変な挑戦でございますので、検察当局といたしましても、絶対に検挙するという姿勢のもとに、警察と十分な協力の上で本件の解決に努めたい、かように存じております。
○小島委員 私の質問はこれで終わります。
○大竹委員長 稲葉誠一君。
○稲葉(誠)委員 ロッキードの問題についての事実関係はロッキードの特別委員会でやってくれということですので、きょうは主として刑事訴訟法の四十七条とか二百二十六条とか、こういうような法律問題についてお聞きしたい、こう思うのです。私もよくわからないところが非常に多いものですから、わかるように御説明を願いたいと思うのです。 まず刑訴法の四十七条ですね。これはもとの刑訴法にはなかった規定ですか。そこら辺はどうなっているのですか。そうだとすれば、設けられた趣旨はどういうところから出ておるのでしょうか。
○安原政府委員 御指摘のとおり、現行刑訴法になって初めて入った規定でございまして、基本的な原則は申すまでもないことでございまするから——しかし、原則もまた、私の理解するところでは、新刑訴法の公判中心主義ということからいわば原則というものが出て、裁判官の予断排除というようなことから原則が出ますとともに、その原則に対して一つの風穴をあける、特に国政調査の必要上とか他の裁判への記録の利用というような公益上の理由から原則に風穴をあける必要があったということで、このような規定が設けられたものと理解をいたしております。
○稲葉(誠)委員 この「公益上の必要その他の事由があって、相当と認められる場合は、この限りでない。」というのがありますね。従来この規定が利用された例は何かあるのでしょうか。考えられる具体的な二、三の例を挙げて説明を願いたい。こう思うのです。
○安原政府委員 国政調査に関します国会法百四条の関係の報告の要求に対しまして、不起訴事件等につきましてその内容を国会に御報告申し上げるということも、このただし書きの適用であるというふうに考えております。 と同時に、そのほかの例といたしましては、交通事故等による損害賠償請求の民事訴訟に対しまして、刑事で作成いたしました実況見聞書を裁判所に提供する、これは再現の不可能なものについてはやむを得ないということで提供するというようなのも、「その他の事由があって、相当と認められる場合」というものに該当するものと理解をいたしております。
○稲葉(誠)委員 これは訴訟に関する書類の問題ですね。そうすると、いまやかましく言われているいわゆる灰色高官の公表というものとはどういうふうに結びつくのですか。ジャンルが全然別だということなんですか、あるいは関連があるということなんですか。そこはどういうふうに理解したらいいのでしょうか。
○安原政府委員 しばしばお尋ねを受ける問題でございますが、規定は「訴訟に関する書類」となっておりますけれども、それは単にそのドキュメントそのものではなくて、問題は、非公開の原則を貫くべきは訴訟に関する書類の中に書いてある事柄というものが問題でございますので、訴訟の書類そのものを出さなくとも、書類等に書かれておる意見、意思表示あるいは見解、事実、そういうものも含めて、この公開原則から言えば例外であるということになるという意味で、「訴訟に関する書類」とは、書類そのもののみならず、そこに書かれておる内容そのものもその「訴訟に関する書類」というものに入る、したがって、それは原則として非公開であるというふうに私どもは理解をしておる次第でございます。
○稲葉(誠)委員 私もそういうふうに解釈していたのです。ところが、参議院の予算委員会で真田法制局長官は、名前を出すというのは四十七条で言う書類の公表ではない、四十七条の対象は書類で、人権の保護や裁判や捜査への影響は困るということから来ているということだ、そういうふうに答えているのじゃないですか。多少ニュアンスが違うのじゃないでしょうか。その点はどうなんですか。
○安原政府委員 確かに真田長官はそのように申されたことも私、同席で聞いておりましたが、それは、訴訟書類ではない、物理的な意味で申されたものであって、四十七条の解釈としては私の申し上げたものも入るということは同長官も同意見のように、私はかねがね接触いたしておりまして理解をいたしております。
○稲葉(誠)委員 接触していて理解するのはいいのですけれども、真田さんのことをかれこれ言うわけじゃないけれども、ちょっとおかしな答弁だとぼくは思うのだ。 それから今度は、中間報告というのを十五日にやるという予定ですね。中間報告というのは、法律的に言うとどこに根拠があるのですか。四十七条と関係があるのかないのか。どこに根拠があるのですか。
○安原政府委員 まず、十五日にやるということ、前提のお話、私それは存じません。 中間報告というものは、結局、私が先ほど申しました国会法百四条に基づきまして、委員会の要求に基づきまして報告をするということと私どもは理解しております。 四十七条とはどういう関係にあるかということは、百四条に基づく報告をいたします場合に、勢い、公訴を提起しなかった処分の内容、つまり訴訟に関する書類の内容であって、公判に提出しないものの中身をある程度申し上げるということは、やはり四十七条ただし書きの適用の一例であるというふうに理解をいたしております。
○稲葉(誠)委員 そうすると、これは大臣にお伺いしたいのですけれども、中間報告いつやるか知りませんけれども、いま法務省で原案を書いておられるという話を聞いております。刑事課長のところで書いているわけでしょう。刑事課長と山口参事官と二人で書いているのでしょう、中身のことを言っては悪いけれども。そこで、国民はいわゆる中間報告ということに対して一体どういうことを期待しているのでしょうか。ちょっと抽象的な質問ですけれども、それをお聞きするわけなのです。あなた、さっき言動に省みると言ったけれども、そんなこと関係ないですよ。遠慮しないで、国民は、いわゆる中間報告に対して一体何を期待しておるというふうにあなたは理解されておられるでしょうか。
○稻葉国務大臣 ロッキード事件が国民に知らされてから八カ月かかっているわけです。そして、三月ころの話では、検察当局から八月いっぱいくらいには片がつくような報告を受けておったのです。ところが、それが九月にずれ込み、さらにもう十月に入ってしまって、第三の児玉ルートというものの解明がおくれておる。全日空ルート、丸紅ルートは捜査がほぼ完了したということでございまして、四月二十一日議長裁定というものが出て、各党ともこの裁定に拘束されるわけですね。それには、事態の推移を見て、刑事訴訟法の立法の趣旨を踏まえて、政治的、道義的責任を国会が追及することに対し政府が協力する、こうなっていますから、もう二つのルートが捜査完了したのなら、刑事責任は免れたけれども、道義的、政治的責任を追及すると国会が言っているのですから、その国会の要求があれば、これに中間報告という形で協力しておいた方がいい。国民が政治的、道義的責任の所在もこのたびの事件については明らかに知りたいものだ、こういうふうに国民の要望があるというふうに理解し、それで、そういう国民の要望を踏まえて、国民代表たる国会が百四条に基づいて追及なさるわけですね。それに対してわれわれは協力しなければならない義務を負うておりますし、臨時国会も開かれていることですから、もうこの段階で用意すべきだな、そういうつもりで国民の要望をとらえて、それに対し準備をしているというわけであります。
○稲葉(誠)委員 政治的、道義的責任について国民は明らかに知りたいというふうに考えている、これはそのとおりですね。そうすると、そのいわゆる政治的、道義的責任の対象となるような人の名前が出てこないと、明らかに知りたいといったって知れないのじゃないですか。そういうふうには考えられないでしょうか。そう思いませんか。ぼくはそう思うな。だってわからないでしょう。明らかに知りたいといったって、名前が出てこないのじゃ明らかに知れないでしょう。そこは大臣、勇断を持ってちゃんとぴしっとやらなければだめだな。
○稻葉国務大臣 法務、検察の職責は刑事責任の追及にとどめるべきものであります。それを逸脱して、法務、検察当局が政治、道義的責任などを追及して、名前はこれこれだなんと言うのは、はなはだ越権しごく、それこそはね上がりというかはしゃぎ過ぎというか、言語道断じゃないですか。それはもっぱら国政調査権に基づく国会のお仕事だというふうにもう各党とも承知しているのです、あの議長裁定で。だから、ひとつそちらでおやりください。政治、道義的責任者というもの、灰色高官と言うのでしょうが、その定義や範囲や基準というものはそちらでお決めください。それに、範囲、定義、基準、そういうものをお決めになる過程段階においても、お決めになりやすいように、中間報告である程度しゃべりましょう、こういうわけでございます。両々相まっていきましょう、こういうわけです。つまり、道義、政治的責任の追及者は国会。国会がその権限者でありますから、権限者が発表になることをやめてくれなんてことは言えませんよ。そちらの権限のことを、やめろとかやれとか、そんなことはよけいなことだ、そういうつもりです。判断権者が発表権者、こういうことです。
○稲葉(誠)委員 いま大臣の言うとおりです。ぼくもそう思うのですよ。国会が当然それをしなければならない。あたりまえの話です。そのためには、いま言ったように材料というものがなければ、あなたの方で協力するというのでしょう、書類を持っているのはあなたの方なんだから。その書類をそのまま見せろというのは無理だから、そんなことは言いませんよ。それは、協力するというんだから、国会が判断できるだけの、その内容にふさわしい中間報告でなければならぬし、中間報告で足りないものがあれば、それに対して資料を提供するというのは、これはあたりまえ過ぎるくらいあたりまえのことじゃないでしょうか。その点は、どうなんでしょうか。
○稻葉国務大臣 ごくあたりまえのことでございますね。ですから、まず中間報告をして、それに基づいて国会が判断するについては、それじゃ足りないからここまでどうだ、それに対してまた応じていく。中間報告ですべてわかるというわけにいかぬ、それはこっちの権限外のことですから。
○稲葉(誠)委員 その中間報告には、事務当局に任せないで、大臣あなたとしては具体的にはどういうことを盛り込みたいというふうにお考えなんでしょう。
○稻葉国務大臣 中間報告をいたすまで、内容については一切申し上げかねます。
○稲葉(誠)委員 きょうは言動を慎むんだな。余り力まないでくださいよ。その問題については、具体的な問題としてはきょういろいろ聞かないことを約束しましたから——具体的な問題はぼくも聞きたいのですよ。聞きたいことがいっぱいありますよ。小佐野の病気の問題も本当は聞きたかったのですよ。小佐野の病気がどの程度かということを聞きたかった。そうすると、それから答えとしていろいろなことが出てくると思うのですよ。 それから、田中に渡った五億円の使途について、捜査が完了したと言うけれども、それは一体具体的にどういう捜査をしたのか。
○稻葉国務大臣 稻葉さん、近くロッキード調査特別委員会が開催されますから、お待ち申し上げております。
○稲葉(誠)委員 この話は後にしましょう。 そこで、アメリカのロスの連邦地裁ですか、嘱託尋問をやって堀田さんと東条さんが帰ってきたわけですが、それは日本では刑訴の二百二十六条、二百二十七条、二百二十八条、ここのところでやったと思うのですが、これは刑訴の規則によって具体的な被疑者とか被疑事実というものを特定しなければならぬわけでしょう、二百二十六条以下でやったとすれば。刑訴規則の百六十条にありますね。だから、アメリカでの嘱託尋問が刑訴の二百二十六条でやったのじゃないというなら話は別なんですよ。これでやったとするならば、結局、規則の百六十条以下で、被疑者はだれだとか被疑事実はどうだと書かなければならないわけでしょう。ここら辺のところはどういうふうになっているわけですか。
○安原政府委員 御指摘のとおり、被疑者を特定し、被疑事実を特定して嘱託をいたしました。
○稲葉(誠)委員 本件の場合は、その被疑者というのはだれになっているのですか。
○安原政府委員 それが捜査の内容でございますので、申し上げるわけにはまいりません。
○稲葉(誠)委員 捜査の内容ということはないんで、被疑者不定でもできるのじゃないですか。
○安原政府委員 解釈上は不特定でもいいようでございますが、今回の場合は特定をしております。
○稲葉(誠)委員 それはすでに起訴されているのだから、起訴された人がいるわけでしょう。起訴された方を発表しているのだから、これを発表してもいいのじゃないか。あるいは起訴されない人も含まれているという意味なの。あなたのその答えを聞くと、起訴した人以外に起訴されない人も含まれているというふうに聞いている人は理解しますよ。それでもいいかな。それは言ったっていいじゃないですか、そんなことは捜査の秘密でも何でもないですよ。
○安原政府委員 せっかくのお尋ねでございますので申し上げますと、大久保等でございます。
○稲葉(誠)委員 だから、大久保等というのはだれとだれよ。そんなことはわかっているのだから、一々聞かないでも答えなさいよ。常日ごろの安原さんらしくないぞ。
○安原政府委員 捜査は、処理を終わった者もありますが、その他の者も含むということもございますので、あえてあいまいなことを申し上げた次第でございますが、大久保が入っていることは事実でございます。
○稲葉(誠)委員 捜査が終わった者も入って、捜査が終わらない者も入っているということなら、それならそれでぼくも理解すると言っているのですよ。、捜査が終わらない者の名前までここに出せとぼくは言いませんからね。 捜査が終わらない者も入っているということは、ではコーチャン以下の証言によって、捜査が終わらない者の捜査にも今後の進展が期待できる、こう理解してよろしいでしょう、論理的にそういうふうになってくるんだもの。
○稻葉国務大臣 それはそのとおりですよ。だからいま一生懸命に第三のルートの捜査をやっているのじゃないですか。
○稲葉(誠)委員 第三のルートというと、児玉ルートという意味なの。あなたは参議院の予算委員会で、「児玉ルートの状況は。米の嘱託尋問が終わったが、捜査進展に期待できるか。」という質問に対して、「微妙だ。期待できるとかできないとかいえない。児玉ルートはP3Cにも関係するルートだが、山は高く険しい。」こう言っているんですが、山は高く険しいことはぼくも認めるのですが、「P3Cにも関係するルート」というのはどういうことなの、もう少しちょっと。きょうは内容に入らないつもりだったけれども、あなたが……。
○稻葉国務大臣 ロッキード調査特別委員会において準備万端整えてお待ち申し上げておりますから、その席にお譲り願いたい。本日はそういうことではないのですから。
○稲葉(誠)委員 ではこっちも約束を守りましょうか。答えがだんだん出てくるから自然にそこへ行っちゃうんだよね。何と言うかな、ある程度は関連——関連でもないけれども、ある程度はしょうがないけれども、では法律的な問題に戻しましょうね。 そうすると、二百二十六条、七条、八条、これはアメリカでやったときに、コーチャンなりクラッターなりが喚問に出てきたわけですね。そうすると、これに弁護士がついていますね。あれはどういう法律的な根拠で弁護士がつくの。だってあれは被疑者でも何でもないでしょう。そこはどうなってくるの。
○安原政府委員 わが国の二百二十八条の証人尋問の場合におきましては、当然には被疑者、被告人、弁護人に立ち会い権はないというのが通説でございます。ところが、嘱託尋問をした場合におきましては、嘱託を受けた外国裁判所はその外国の法制に基づきまして嘱託の趣旨に沿う尋問をするということでございますので、あくまでもそれはアメリ方法制の枠内で尋問をしてもらうということになるわけでございまして、今回の場合は、アメリカの法典の民事訴訟規則というものに基づきまして証人尋問が行われました結果、その訴訟規則によりますと、弁護人の立ち会い権があるというふうに聞いております。
○稲葉(誠)委員 いや、コーチャンなりクラッターなりエリオットなりが被疑者としてのあれならば弁護人ということも考えられるのですが、法制が違うから理解の仕方がむずかしいのですがね、証人として調べられているわけでしょう。これは民訴を適用するかわからぬけれどもね。そこで、証人について弁護士がつくというのはとうていわからないのですよ。代理人としてつくのですか、どういう形なんですか。ちょっとよくわからないですな。それから、なぜ民訴を適用するんだろう。これは民訴じゃなくて刑訴じゃないですか。その問題がよくわからぬな。ちょっと大学のゼミナールみたいになって大変恐縮ですけれども、別に楽しんでやっているわけじゃないですよ。
○安原政府委員 なぜというまで深くアメリ方法を存じませんが、アメリカの刑訴手続によると、そういう場合、特別の指示のない限りは民事訴訟規則によるということになっておるようでございますし、弁護人は証人についてもつくというのがアメリカの法制でございまして、いろんな意味における権利の保護を全うしようというアメリ方法の思想からそういうことが許されておるのじゃないかと理解いたしております。
○稲葉(誠)委員 権利保護というのは一体だれの権利保護なの。証人でしょう。証人だよ。証人として呼ばれているんだからね。ところが、日本の二百二十八条というのは、これはあなた、公判前だけれども、弁護人の立ち会いは裁判官の裁量に任されているわけでしょう。被疑者もね。被告人の場合は普段余りないのじゃないか。被疑者の段階が非常に多いと思いますがね、公判前だから。 その場合に、これは最高裁の方にお聞きした方がいいかもわかりませんね。具体的な例として、この二百二十八条の第二項に「裁判官は、捜査に支障を生ずる虞がないと認めるときは、被告人、被疑者又は弁護人を前項の尋問に立ち会わせることができる。」こうありますね。これは規則の百六十二条でもこう言っていますね。これはよくわからないのですが、条文に書いてあったことをそのまま規則に書いてあるわけですね。これはどういうわけなんですか。条文に書いてあることを規則に書く必要はないんじゃないの。それはひとつ、どういうわけなんだろう。
○岡垣最高裁判所長官代理者 その点につきましては、きょう、規則にも同じのがあるなと私も思いまして、どういうことだろうかなと思ったのです。きっと理由はあると存じますが、ちょっときょうはその点まで調査しておりませんので……。
○稲葉(誠)委員 それはどうでもいいですけれども。 それからもう一つの問題は、二百二十六条のこの場合に、実際に弁護人が立ち会ったということ、これは具体的な例としてあるのですか。まず二百二十六条の運用は一体どうかということが一つ。それから、この場合に弁護人なり被疑者なりが一体立ち会ったことがあるのか、立ち会い請求があってそれが却下されたのか、そこらのところは具体的なあれはどういうふうになっているのですか。
○岡垣最高裁判所長官代理者 二百二十六条による証人尋問の際に、検察官はもちろんですが、被告人、被疑者または弁護人がいま問題になっているわけでありまして、実際にどの程度に立ち会わしているかという実情は、必ずしも私ども十分には把握しておりません。ただ、最近の事例について個別的に調査したところでは、検察官が証人尋問に立ち会う例、これは多いわけですが、しかしそうかといって、これが全部が全部立ち会っているというわけではありませんし、それから弁護人については、検察官に比べれば立ち会っている数は少のうございますが、しかし裁判官の裁量によって立ち会いを認められているという例も若干あるようでございます。被告人もしくは被疑者については、いままで調べたところによりますとほとんどない。わずかな例はございますが、余りないということになっております。細かい数字がもしあれだったら、わかっている限度で全部申し上げます。
○稲葉(誠)委員 細かい数字は……。たとえば検事の場合は必要的立ち会いなんだけれども、ただあれはどうなんですか、立ち会い権を放棄したということになるわけですか、検察官の場合は。それは必要的立ち会いでもないのか。立ち会い権はあるけれども放棄したということでしょう。
○岡垣最高裁判所長官代理者 立ち会い権がございますので、ただそれをその場合必要ないと認めて行使しなかったということだと思います。
○稲葉(誠)委員 だから私が言うのは、それは捜査の問題であるかもわからぬけれども、アメリカの法制ではあれでしょう、いま言ったような証人にさえ弁護人がつくわけですよ。ちょっとぼくはよくわからないのですが、証人にさえ弁護人がついて、それで権利の保護のためにやっているわけですよ。ところが日本のものでは、二百二十六条、二百二十八条ですか、この関係が、普通の場合は公安事件に多いわけですけれども、その場合は弁護人も立ち会わないで調書がどんどんできてくるわけだ。どんどんかどうかは別として、ここらのところが日本の法制は非常におかしい。いま安原刑事局長が、権利の優先という考え方からアメリカでは認められているのだ、こう言うから、日本の場合は権利が優先してないわけですよ。比べてみるとこういうふうに考えられる。非常にぼくは不思議な感じを受けるのです。これは将来考えなければならないのではないか、こう思うのです。 そこで、最高裁ではいま具体的に二百二十六条以下の運用、これがどういうふうになっておるか。それから弁護人なり被疑者なり何なりが立ち会いを請求して棄却された例、あるいは立ち会いを請求しなかった例、あるいは立ち会いが認められた例というふうなことについて、いまでなくていいと思いますが、資料をいただきたいと思うのです。立ち会いを認められたとするならば、どういう事件なのか、これを後で報告していただきたい、こういうふうに思うのです。 ぼくは、これの問題は大きな問題やはり立法的に考えなければならない問題を含んでいるのだ、こういうふうに思うのです。ただこれは捜査当局としては非常にありがたいですね、これをみんな活用するのだから。 それから、問題は戻りますけれども、コーチャンなり何なりの証言調書がいま来ているわけですね。それを公判廷へ出す。そうすると、被告、弁護人側が不同意だということになってくるとどういうふうになるのですか。裁判官の面前調書になるわけですね。そういうときどうなるの。
○安原政府委員 証拠法上は三百二十一条一項三号書面でございますから、「供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明」、最後に「国外にいるため公判準備又は公判期日において供述することができず、且つ、その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないもの」であって、「信用すべき情況の下にされた」というときに証拠能力が付与されるということに相なるわけであります。
○稲葉(誠)委員 だから結局、不同意だってそのまま結論的には証拠として採用されるということになるのじゃないですか。来いと言ったって来ないでしょう、恐らく。不同意にする。証人として喚問する、国外にいるから来ない、結局その調書がそのまま生きてくる、証拠になる、こういう結論になるわけでしょう。
○安原政府委員 おっしゃるとおりです。
○稲葉(誠)委員 そういう意味から言っても、今度の場合は特別な場合かもしれませんけれども、二百二十六条の場合は、国外にいる場合は別として、国内の場合でも非常にこれはいろいろな問題が法律的にあるから、私の方も研究しますけれども、これはやはり立法的に解決しなければならない問題がある、こういうふうに思っております。 それからもう一つ別な問題で、再審の問題で、いわゆる白鳥事件、去年五月ですか、白鳥事件の再審請求棄却決定で、こういうことをぼくは聞きたいのです。証拠の新規性、明白性ということが再審の場合の大きなポイントになっておりますね。それが白鳥の再審の、これは棄却になりましたけれども、理由の中にちょっと出てくるわけですが、従来のものとこの白鳥事件の再審棄却の決定でその点は変化があったのかどうかですね。この点、これは最高裁からお聞きした方がいいと思うのですが、その点はどうなんでしょうか。
○岡垣最高裁判所長官代理者 刑事訴訟法の四百三十五条六号にいう「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」というこれに関連して、先ほど御指摘の白鳥事件の決定で、昭和五十年の五月に、その「明らかな証拠」というものの定義としまして、「確定判決に於ける事実認定につき合理的な疑いをいだかせ、その認定を覆すに足りる蓋然性のある証拠をいう。」というふうにいわれていたわけであります。しかもその証拠は、これはその証拠だけで無罪になりそうだということをいうんじゃなくて、その他の全証拠と総合的に判断した上で評価して判断するのだというふうなことになったわけでありますけれども、これについて、明白な証拠で「明らかな証拠」であるという点で、従来どちらかと言えば狭い考え方、つまりその証拠だけでも無罪になりそうだという程度の蓋然性がなくちゃいけないのだというふうな口ぶりの判決例ももちろんあったわけでございまして、そういう点から見ますと、これはその点を広げたのだというふうな言い方をされる書物その他が出ております。しかし、それは必ずしもはっきり言い切れないような面もありますのは、古い事例でございますけれども、大正十三年の九月六日大審院時代の判例がありまして、この判例では、その当時の刑事訴訟法に明確な証拠という同じような条文があったわけでございまして、このあれによりますと、有罪の言い渡しを受けた者が無罪となるべき明確なる証拠を新たに発見したときは再審開始の原由とするということが、その当時の刑事訴訟法の四百八十五条第六号ではっきり決めてありまして、それにつきまして、「苛モ其ノ証拠ニシテ確定判決ノ基礎トナリタル事実ノ認定ニ影響ヲ及ボスベキモノガアル以上ハ再審ノ原由アルモノト解スルヲ正当ナリトス」というふうな言い方をしてありまして、これはむしろ今度の白鳥事件での最高裁の考え方とほとんど同じ考え方でございます。したがいまして、変わったのかと言われると、そう変わったとも言えないと思いますが、しかし、いろいろある判例の中で、狭そうなことを言っているのと比べれば変わったと言う人があるかもしれません。しかし、その狭そうに言っている判決例も、実質のところ、実際のところでは、自分の心証の面から見ますと、果たしてそんなにきつい考えであったのか、表現方法としてただそういう表現を使っているのか、その辺のところはなかなか簡単に割り切っては言えない問題である、こういうふうに考えております。
○稲葉(誠)委員 ドイツの場合、一九五〇年のいわゆる統一化法というのがありますね。これで、いわゆる新規性という問題、これに改正が加えられた、こういうわけですね。ここら辺のところは、日本の法制と比べてどういう点が改正が加えられたのですか。ドイツの法律は大臣の方が詳しいんだな。どうですか、これは。最高裁でいいですよ。
○岡垣最高裁判所長官代理者 西ドイツの再審法の最近の改正点は、いま申された証拠の許容性の範囲の問題ではなくて、国選弁護人を付するという弁護人の点と……
○稲葉(誠)委員 それは後の法律で、それじゃなくて——統一化法じゃないよ、それは。後のもう一つの法律だよ。そうじゃないかな、ぼくの間違いかな。いいですよ、ぼくの間違いかもしれない。改正が二つあるのですよ。
○岡垣最高裁判所長官代理者 私は、御質問を最近の改正というふうに考えていますけれども、その前の改正でしたら、ちょっとそこのところ、私はっきりしておりませんので……。
○稲葉(誠)委員 統一化法の改正というのは、あれは一九五〇年でしょう。だから、これはこういう改正ではないのですか。「被告人がその責に帰すべき事由によって提出しなかった事実・証拠方法、とくに被告人が原審公判で知っており、当然に主張しえた事実または証拠方法であっても、これを無制限に援用しうるものと解されるにいたった。」と、こういうふうに言っているのですよね。日本の場合、「わが判例・学説の主流をなしているとおもわれる見解、すなわち、有罪の言渡しを受けた者の責に帰すべき事情によって原審公判で提出しなかった証拠を援用して、その者本人から再審の請求は許されないとする解釈よりもはるかに緩やかである。」こう言っている。これは、最高検の臼井滋夫さんが法律時報に書いたものですよ。 そうすると、これはドイツのいまの統一化法の改正が臼井さんの言うとおりだとすると、日本の現行の再審の規定とはどういうふうに違うのですか。日本の場合は、本人の責めに帰すべき場合で異論があった場合には、これは再審請求はだめなのか、そこら辺のところは、規定上なっているというのか、事実上なっているというのか、そこはどういうあれなんですか。
○安原政府委員 私から答えるべきことかどうかちょっと疑問でございますが、いま臼井君の書いておる論文を引用でございますが、要するに、それは何も日本の法律に書いてあるから書いてないからじゃなくて、新たなということの解釈として、いま御指摘のように、わが国では、本案の審理において、ことさらにその証拠があることを知りながら、これを提出しないで、有罪判決確定後にその証拠を援用して再審の請求をする場合は、証拠を新たに発見したときに当たらないというのが昭和二十九年の最高裁の判決でございますが、御指摘のとおり、ドイツ、フランスでは、むしろ新しいかどうかということは、裁判所にとって新しいかどうかであるから、被告人側の責めに帰すべき事由の有無ということは何ら関係がないという意味において、わが国の方が狭いのではないかというふうに思われます。
○稲葉(誠)委員 大臣、これは大臣に聞くわけじゃないですよ、考えておいてもらいたい。いまの点でも、日本の再審事由というのは狭いですよ。これは一つ問題があるのです、ドイツ、フランスのと比べて。後でドイツ、フランスの例を聞きますが、これまたドイツ、フランスと日本との比べ方がむずかしいのですよ。非常にむずかしいのです。 もう一つ、日本の場合、その後のドイツのいわゆる「小刑事訴訟法改正」というのがありますね。「刑事訴訟法および裁判所構成法の改正法律」というのがあるわけですが、この点で、「原判決に関与した裁判官の再審手続における除斥、」の問題が一つ。それから、「証拠調に際しての当事者の立会権、および再審許容決定に対する検察官の不服申し立ての禁止について新たに規定が設けられた」と、こういうふうにドイツはなっていますね。この三つの点、これは日本の現在の再審規定ではどういうふうになっているのですか。
○安原政府委員 原判決に関与した裁判官の除斥という規定は日本にはございませんが、ドイツではあります。 それから、証拠調べに際しての立ち会い権、これは日本にはございませんが、ドイツではございます。 それから、再審許容決定に対する検察官の不服申し立ての禁止、そういう禁止は日本にはございませんが、ドイツにはあると、以上三ついずれもドイツにはあるが日本にはない手続上の規定でございます。
○稲葉(誠)委員 そうすると、いまドイツの法制と日本の法制とを比べて見ると、ドイツの場合は再審がわりあいに緩やかに、まあ緩やかというか、もちろん議論がありますよ。法的安定性と具体的な正義との関係というか、その関係で確かに非常に大きな問題があるところで、一概に簡単に議論できるものではございません。これは私もよくわかりますが、しかし、そういうような法制上の差異から見ても、日本の再審というのは非常に厳しいということがよくわかるのです。 そこで一つお尋ねしたいのは、日本における再審は、いま具体的にどういうふうに行われて、何件ぐらいあって、何件ぐらい認められて、どうなっているか、こういうことをまず統計上わかっている範囲でお尋ねしたい、こう思うのです。一番新しい統計はいつごろの統計ですか。
○岡垣最高裁判所長官代理者 それでは、再審事件の処理状況について統計上わかっていることを申し上げますと、最近の五年間について見ますと、再審の請求事件の新受人員は四百十一人ということになっておりまして、既済が四百十五人、このうちの請求になった者の中で再審開始決定のあった者は百三十三人ということで、三二%ということでございます。その再審開始決定のあった百三十三人の裁判所別の内訳を見ますと、地裁が六人、簡裁が百二十七人というふうに、簡裁が大部分を占めておりますけれども、これはその多くが、略式だとか、あるいはまたは即決裁判によるいわゆる道路交通法の違反事件、あるいは業務上過失致死傷事件で、被告人が身がわり犯人であるということがわかった場合、この理由の者が非常に多いわけでございます。 それから、つけ加えまして、こういう道路交通事件なんかで数が多いではないかということになりますが、最近五年間の死刑の確定判決に対する再審請求事件、これは新受人員は四十名、それから無期懲役の確定判決に対するものは七名ということになっております。それで昭和五十年末の現在係属中のものは、死刑の確定判決について九人、それから無期懲役の確定判決について二人で、それ以外はいずれも請求棄却ということになっております。
○稲葉(誠)委員 いまの話の中で、最高裁はわりあい正直に言われたのですが、正直という言葉は悪いのですけれども、これは検察官の再審申し立てが圧倒的に多いでしょう。だから、検察官の申し立てとそれから被告人側の申し立てとちょっと区別して話してごらんなさい。これは九十何%まで申し立てが検察官でしょう、九十何%までいかないとしても。細かい数字は後でいいですよ。
○岡垣最高裁判所長官代理者 これは再審事件の終局の区分から見ますと、総数百三十六件、これは四十八年、四十九年の統計でございますけれども、これで本人側の請求が八十六件、検察官側が五十件ということになっておりますけれども、検察官側の請求が多いということは、これは交通事件が非常に多いということを示しているわけで、その内容を差し引いてみると、また別の数字になるかもしれません。
○稲葉(誠)委員 検察官側のが多いというのは、道交法と外国人登録でしょう。外国人登録が調べてみたら日本人だったというのは、前科を隠すために外国人だと言っておいて、後で日本人だとわかったというのが相当あるのですよ。これはそれでいいんです。そうなんですが、ドイツの場合の再審の件数と、それから人によってはドイツの方が多くてフランスは非常に少ないと言う人もあるし、それからフランスの場合、新聞を見ると、これは五日の毎日新聞ですが、「フランスが一八九五年、それまで重罪事件にしか認めなかった再審請求を軽犯罪にも認めるようにしたほか、判例の積み重ねで再審理由を広げ、一九六一年から七 ○年の十年間に二十六件もの再審を認めている。」こういうふうになっておるのです。私の調べたところでは、ドイツの方が多くて、フランスが非常に少ないように考えられていたんですが、いま言った数字も出てきているんですが、ドイツなりフランスなりの再審、なかなかこれは制度が違うし、いま言った道交法みたいなやつがあるとわからなくなってくるのですけれどもね。組かい点はいいですが、いずれにしても、死刑とか特に無期とか、そういうような非常に重要な事件の場合に、それが再審決定になる率がドイツの場合日本と比べて非常に多いということなんですが、そこら辺はどうなんでしょうか。
○岡垣最高裁判所長官代理者 何分にも外国のことでございまして、私どももそう正確に詳細に知っているわけではございませんが、あわてて西ドイツの連邦統計局の司法統計を見てみますと、再審開始決定された事件、再審事件の既済件数がわかるわけでございますが、それで見ますと、被告人に利益な再審というのが、これが一九七四年で三百八十九件、それから不利益な再審が九十二件、合計四百八十一件と、それから七三年の事件では、利益再審が三百七十四、不利益再審が七十三、合計四百四十七件というふうな数字が見つかりました。 それからフランスの再審の数でございますが、これもどうも確かな資料という——直接向こうの統計を当たったわけではございませんのであれですが、ジュリストに内田博文氏の論文が出ておりまして、それによりますと、破棄院の刑事部が管轄を最初になさっておるわけでございますけれども、その受理件数と結果とは、近い方から申しますと、これでわかっているのでは、七〇年に三件、六九年に三件、六八年がゼロ、六七年が三件等々、大体一けたの数字が並んでおるようでございます。
○稲葉(誠)委員 被告人に不利益な再審というのはもう廃止になったわけでしょう。
○岡垣最高裁判所長官代理者 西ドイツではございます。
○稲葉(誠)委員 ちょっと私の勘違いかもしれません。どっちかが廃止になったんじゃない。利益の再審か不利益の再審か、ドイツの場合はどっちかがなくなったんじゃなかったですか。
○安原政府委員 フランスは、いわゆる被告人の利益だけの再審でございますが、ドイツは不利益再審もあるというふうに確かに聞いております。
○稲葉(誠)委員 そこで具体的事実について聞くのですが、広島の高裁で加藤新一さんのあれがあったわけですね。これで聞きたいことはこういうことなんです。一たん再審申し立てをしたら高裁のある部で再審開始決定しなかった、棄却になった。ところが同じものを出したのか新しいものを出したのか、ちょっとそこら辺ははっきりしないのですが、出したらほかの部へ係属した。そうしたらそこで再審開始決定になった。これは名古屋の巖くつ王のときも小林裁判長のところで採用になったりなんかして、その裁判官のいわゆる人権感覚というか、その考え方というか、それによって非常に違うのですね。 まず事実関係で、広島の場合は具体的に、一たん出したものは棄却になって、それから今度はまた同じものか違うものか、付加して出したのか、そして採用になったというのか、裁判官によって何か非常に違うような印象を受けるのですが、そこのところはどういうふうになっておるわけですか。
○岡垣最高裁判所長官代理者 最初に裁判官の考え方でえらく違うというふうなお話がございましたけれども、これは特に再審の場合には、請求人がこういう理由で再審の理由があるというふうに申し立ててくる。つまり、裁判所に出される資料がまず同一かどうかということが問題になると思います。その資料が違えば当然同じ人がやっても判断は変わってくるわけでございます。 それから、仮に資料が今度全く同じであっても人によって違うかどうかという、これは自由心証ということの問題と絡んで微妙な差があることは事実でございますが、先ほど御指摘になったほどの、そんなに裁判官のあれによって違うというふうには考えていないわけでございますけれども、事実としまして、広島高裁の第一部に昭和四十九年六月十一日に加藤新一という人の再審の申し立てがございますが、これは五十年七月三日に棄却されております。この棄却された理由は、法律上の方式違反ということになっているようでありまして、それは方式違反というのは何かと申しますと、たとえば再審の理由を書いてある条文の中で、証言が偽証であるという場合には偽証罪の確定判決があるということがある。ところが、確定判決がないのに偽証だ偽証だということを言うと、それだけを理由にしておればそれは方式違反ということで取り上げられないということになるわけであります。この場合には、最初の主張は、自分は強盗殺人事件には関係していない。共犯者の名前を挙げて、これが、請求人がわら切り刀を用いて被害者を殺害した旨を共犯者は述べているけれども、しかし医師の死体検案書の状況等々から見ると、日本刀のような鋭利な刃物でやっているということになっているので、わら切りなどで切るはずない、血痕もついていないというふうな形の言い方であります。したがって、そういったことが主張に対して法律上方式違反ということではねられている。 それから昭和五十年の六月十三日にあった再審請求について、広島高等裁判所の第一部で再審開始決定を加藤老事件についてしたわけでございますけれども、申し立てが今度はもう一度新たに申し立てられまして、それの場合には再審開始決定を五十一年九月十八日にいたしておりますけれども、この場合には明らかな証拠があると六号の方で言っております。広島大学の医学部の教室の主任教授の小林博士の昭和五十年五月三十日作成の鑑定意見書のようなきわめて有力な証拠を新たに発見したので請求するということで、それを認めたという形になっております。
○稲葉(誠)委員 いまの広島高裁の最初も一部で、後も一部ですか。ちょっと部が違うように聞いたのですが、同じ部ですか。そうすると、構成裁判官も全く同じ裁判官ですか。司法権の独立の問題がありますから、内容の問題にそうタッチするつもりはありませんけれども、そこはどうなんですか。
○岡垣最高裁判所長官代理者 いまちょっと手元に——部は同じでございますが、ただこれが五十年七月三日のが最初ので、あとは五十一年九月十八日でございますから、恐らく構成に変更があったのではないかと思われますが、ちょっといま確かな資料を持っておりませんので……。
○稲葉(誠)委員 時間が来たので質問を終わりますけれども、再審の問題についてぼくも勉強不十分でわからないところはたくさんありますが、いまいろいろ例を挙げてきたのですけれども、日本の場合は法的安定性ということを非常に強く打ち出してきて、いわゆる基本的人権というようなものに対する考え方が足りないといいますか、だから刑事訴訟法も一部改正になったけれども、再審のところはほとんど改正になっていないわけです。そこら辺のところは十分考えて、日本の場合でも何か裁判官によって非常に違うような、たとえば地獄、極楽があるわけですよね、どこへ行ったって——どこへ行ったってというか、あるのですが、裁判官の人権的な感覚が非常に強い人のところにいくと助かるけれども、そうでないところにいくとはねられちゃうという印象を与えられるものですから、それでは非常に困るのです。いずれにしましても、白鳥の再審棄却決定にもありますし、今後法律的な問題についても十分検討をして、再審の規定ができるだけ針の穴だと言われるようなことのないような形に十分法務省当局としても考えていってもらいたいというふうに思うわけで、そういうことを含めて最後に法務大臣にいまの点について答弁を願って、そして私の質問を終わります。
○稻葉国務大臣 再審制度に関する稲葉委員の御意見はまことに貴重なものと拝聴いたしました。検討に値する貴重な意見であると存じます。
○大竹委員長 諫山博君。
○諫山委員 共産党の宮本顕治氏にかかわるスパイ調査問題について質問します。 この事件を殺人事件と呼ぶことの不当性が参議院の予算委員会で論議されました。そこで、私たちは持っている限りの資料をこういう観点からも検討したのですが、もともとこの事件は特高警察、検察庁が治安維持法事件のほかに殺人あるいは同未遂事件として追及してきた、検察庁はそういう立場で起訴をし、論告をした、しかし、結局裁判所は殺人、殺人未遂を認定しなかった、こういう経過だったと思いますが、刑事局長わかりますか。
○安原政府委員 裁判の経過はおっしゃるとおりでございます。
○諫山委員 宮本顕治氏は、逮捕されて釈放されるまで約十二年間、この間殺人、殺人未遂で何とかして罪にしようと警察、検察庁が全力を挙げて努力した。その過程で拷問まで行われた。しかし結局殺人事件は成立しなかったという経過に照らしても、殺人呼ばわりすることがどのくらい間違いであるかということが明らかなわけです。この問題で共産党リンチ事件という呼び方をする人もいます。 そこで、法務大臣なり刑事局長にお聞きしたいのですが、宮本顕治氏の判決の中で「リンチ」という言葉が出てきましょうか。
○安原政府委員 「リンチ」という字はございません。
○諫山委員 法務省はこの事件を公式に共産党リンチ事件と呼んでいるのでしょうか。
○安原政府委員 公式にさような俗語を使うことはございません。
○諫山委員 法律家の常識として、この事件を読み上げるとすれば、治安維持法そのほかの罪名を全部読み上げるか、あるいは治安維持法等被告事件と略称するのが当然だと思います。たとえば裁判所から関係者に呼び出しの通知をする、すべての事件名を並べるのが煩わしい場合は治安維持法等被告事件という呼び方をするはずです。現在ですと法廷の入り口に事件名を書いた札を下げます。これは治安維持法等被告事件というふうに略称するのがわれわれの常識だと思いますが、いかがでしょう。
○安原政府委員 おっしゃるとおり「宮本顕治らに係る治安維持法等被告事件」と、こう書くでしょう。
○諫山委員 そうすると、法務省が略称を使って呼ぶとすれば、いまのような呼び方になりますか。
○安原政府委員 どういう場合に使うかによりましていろいろ違いますが、われわれの間では、いわゆる日共リンチ事件と言うときもありますし、宮本顕治事件と言うこともありますし、いろいろでございまして、特に決まっておりません。事柄の実態に即した名前を使うことだけは事実でございます。
○諫山委員 あなたが参議院で答弁されたときには、宮本、袴田両氏の治安維持法等の事件という表現を使われている。これが普通の呼び方じゃないですか。だから意識せずに自然にそういう言葉が出てきたんだと思いますが、刑事局長、いかがでしょう。
○安原政府委員 国会のような公の席では、いま申したとおり無意識にでもさように申しております。
○諫山委員 この点を追及された三木総理は、法務省も共産党リンチ事件と呼んでいるようですから、私もそう呼びますというような言い方が残っているのですよ。法務省が公式にこういう呼び方をすれば事重大だ、判決にも書いてないし、しかも全く法律的でない呼び方だという観点で聞いたわけですが、公式に法務省が共産党リンチ事件というような呼び方をしていないということを重ねて確認していただけますか。
○安原政府委員 公式には私の言ったのが一番妥当な表現であろうと思います。
○諫山委員 そこで、宮本顕治氏に対する判決の中で中心的な問題となっているのは治安維治法被告事件、このことは科刑の場合に最も重い治安維持法の罪に従って処断するという表現を使われていることでも明らかです。 そこで、刑事局長に少し判決文に即して質問します。 宮本顕治氏の治安維持法違反事件というのはどういう内容だったのかということを判決文に即して説明してもらいたいのです。これは判決書の法律の適用のところでわかりやすくまとめられていると思いますが、そこをちょっと読み上げてくれませんか。「法律ニ照スニ、被告人ノ」云々と……。
○安原政府委員 せっかくのお申し越しでございますので、だれが読んでも同じだと思いますが、「法律ニ照スニ、被告人ノ判示所為中国体変革ヲ目的トスル結社ノ役員タル任務ニ従事シタル点ハ昭和十六年……」
○諫山委員 結構です。これが一つの裁判所の最終的に認定した事実なんですね。これに治安維持法を適用した。次は私が読み上げます。それから五行ぐらい後に——安原さん、ちょっと判決を見ておいてください。「私有財産制度ノ否認ヲ目的トスル結社ニ加入シ其ノ目的遂行ノ為メニスル行為ヲ為シタル点」、こういうのがありますね。宮本顕治氏の治安維持法違反事件というのは、要約すればこの二点に集中される。これが裁判所の認定ということになるはずですが、いかがでしょうか。
○安原政府委員 治安維持法違反の事実としてはこの二つでございます。あとずっと書いてございますから……
○諫山委員 それは後でまた聞きます。 宮本顕治氏の判決が治安維持法が中心だった、これは明らかなことですが、この治安維持法違反事件というのは、一つは「国体変革ヲ目的トスル結社ノ役員タル任務ニ従事シタ」ということ、つまり共産党の役員として活動したということが治安維持法違反の第一の問題であります。もう一つは、「私有財産制度ノ否認ヲ目的トスル結社ニ加入シ其ノ目的遂行ノ為メニスル行為ヲ為シタル」、言葉をかえますと、日本共産党に加入して日本共産党の目的を達成するために活動した、これが治安維持法事件のもう一つの内容、こういうことになると思いますが、この点もお認めになりますか。
○安原政府委員 おっしゃるとおりです。
○諫山委員 この判決では、治安維持法に違反する行為とその他の刑事犯とが、一個の行為にして数個の罪名に触るる場合、いわゆる観念的競合に該当するとされています。幾つかの犯罪を犯した場合には、こういうとらえ方ではなくして併合罪という立場でとらえ、併合罪として処罰するという場合の方、がむしろ多いと思います。本件に即して言うと、併合罪ではなくして観念的競合という認定を裁判所がした。このことは併合罪で認定した場合とどういう違いがあったと理解されますか。つまり治安維持法事件とその他の刑法犯との関係がどうとらえられたかということです。
○安原政府委員 せっかくの御指摘でございますが、本件の場合は一所為数法でございまして、併合罪の場合が多いとは限らない。併合罪のときは併合罪、一所為数法のときは一所為数法ということであろうと思います。 なお、併合罪になりますると併合加重ということが行われますが、最長期が無期懲役のような場合にはそういうことがないということでございます。
○諫山委員 たとえば不法監禁その他の刑法犯が共産党の活動と全く無関係に行われた、治安維持法の罪とは全く関係がなかったというような場合には併合罪というとらえ方をするんじゃないでしょうか。
○安原政府委員 具体的な案件に即して言えば、共産党の役員としての職務に従事した行為と不法監禁とが全く別個であれば当然併合罪になるわけでありまするが、今回の場合は役員としての立場で従事したことと不法監禁とがうらはらの一個の行為であったということでございます。
○諫山委員 本件ではスパイに対する調査活動、査問が問題になったわけですが、この査問というのは共産党の活動の一環であったという立場から観念的競合というとらえられ方をしたのだと思われますが、いかがですか。判決文の中にもその趣旨のことが散見するようですが。
○安原政府委員 御指摘のとおりです。
○諫山委員 そうすると、共産党としての調査活動、正式には査問と言っているわけですが、これが犯罪を構成するかしないかということは、治安維持法の罪をどう見るのかということと不可分だと思うのです。たとえば、共産党としての活動がそれ自体犯罪行為だという場合の査問活動の法的評価と、共産党の活動そのものは合法だという場合の査問に対する法的評価というのは、いろいろ相違があるのが当然だと思いますが、いかがでしょうか。 これは私は念のために言いますが、共産党としての活動であればどんなことをしてもいいというような観点で言っているんじゃないのです。純粋な法律議論として刑事局長の意見を聞きたいと思います。
○安原政府委員 一個の行為にして数個の罪名に触れる、したがって、今回の場合は共産党の役員としての任務に従事した行動が不法監禁、致傷という形であらわれたということでございますから、それは、そういう目的的行動ではなくて単に不法監禁そのものがほかの目的で行われた場合とは、おのずから法律的評価も違うということは言えると思いまするが、それだけのことで、要するに共産党の目的活動としての行為が不法監禁という刑法に触れる行為の形をとって行われたということでございますが、そういう場合にそれを重く見るか軽く見るかということは、これは裁判官の判断の問題でございます。
○諫山委員 私、一般的な議論としてもう少し聞きたいと思います。 この判決を見てみますと、査問行為というのは、「急迫不正ナル侵害ニ対シ之ヲ防止セムトシテ其ノ自由ヲ拘束シタルモノナルヲ以テ右所為ハ正当防衛ニ該当シ」云々という主張がされています。つまり正当防衛による違法性阻却ということが主張されているわけですが、正当防衛が成立するかどうかというのは、一般論としては、共産党の活動が合法なのか非合法なのかということと非常に関係があるというふうに思われますが、いかがでしょうか。私は本件について言っているんじゃなくて、こういう場合の一般的なとらえ方を聞いているのです。
○安原政府委員 正当防衛の場合において急迫不正の侵害というものは何かということに対しては、その侵害を受ける以上それは法律で保護される法益でなければならぬということはわかりますが、それ以上に、共産党の活動が不法とされておったから正当防衛が認められないのだということとは、ちょっと関係がないような気がします。
○諫山委員 私、こういう観点から聞いているのです。現在ですと日本共産党は憲法の結社の自由に基づいて組織されている合法政党だ。この合法政党を破壊したり堕落させようとした行為と、もともと共産党をつくること自体が非合法、共産党活動をすること自体が犯罪、こういう中での共産党に対する破壊活動あるいは堕落させようとする行為、この点に対する評価というのはやはり変わらざるを得ないのじゃないでしょうか。
○安原政府委員 正当防衛の主張が、共産党の結社の自由というものを侵害する行為に対する正当防衛という場合においては、共産党の結社の自由を認めるかどうかということが法律で許されておらない場合においては、法律によって保護されないというようなこともあるかもしれませんが、判決によりますと、「下部党員ニ対シ窃盗拐帯横領等ノ破廉恥的犯罪若クハテロリスト的行動ヲ煽動教唆シテ著シク党内ヲ撹乱シ道徳的堕落ヲ招来セシメツツアリタル為メ」、それが急迫不正の侵害だ、こういうことになっておりますから、どうも、共産党そのものよりも、むしろ、何か犯罪を扇動する者に対する防衛というような形になっておりますので、やや具体的にはなりまするけれども、一般論といたしましては、急迫不正の侵害という場合には、侵害を受ける利益というものは法律で守られる法益でなければならないとは思います。
○諫山委員 これ以上議論しようとも思いませんが、ただ、「テロリスト的行動」云々というようなこと、あるいは「破廉恥的犯罪」云々、こういうことで被害を受けるのは共産党そのものですからね。そして共産党を破壊するためにこういうことをやっているという立場で査問が行われたという主張ですから、傷害致死とか不法監禁とか、いろいろ言われますけれども、こういう問題の法的評価というのは、現在の時点と、共産党をつくること自体が非合法とされていた時点とは、当然基準が異なるはずだ。共産党が合法化されている現在の時点でこの判決を絶対化するというようなことは、判決の中身から言っても適当ではないのじゃなかろうかという観点で質問したわけですが、それ以上は押し問答になりますから、次に法制局長官に聞きます。 国会の中で判決の当否を議論することが憲法との関係でどうなのか。これが衆議院でも参議院でも論議され、参議院では吉國長官から見解が表明されました。吉國長官が述べた一般的な見解をもっと具体化すればどうなっていくのかという点で質問したいと思うのです。 たとえば国会の中で、リンチがあったかなかったか、こういうことを審議する、そして国会がその点で結論を出す、こういうことが認められましょうか。このリンチがあったかなかったかというのは、判決で争点になった問題についてという意味です。
○真田政府委員 リンチがあったかなかったかという事実の有無とおっしゃいましたが、それは確定判決で認定されておる事実ということでございますね。
○諫山委員 そうです。
○真田政府委員 それはやはり、私の前任者の吉國法制局長官が申しましたように、判決の当否を国会で論議することは許されないということから言いまして、そういう論議はやはり慎んでいただきたいと思います。
○諫山委員 行政機関が国会の場で、リンチ行為が果たしてあったのかなかったのか、判決で認定したような行為があったのかなかったのか、こういうことを論評するということはどうでしょうか。行政機関が国会の場で論評するという問題です。
○真田政府委員 確定判決で認定されました事実につきまして、その中身を論評するのはやはりいけないのであって、行政機関としましては、こうこういう事実を認定した判決が確定しておりますよということを述べるのが正確だと思います。
○諫山委員 国会が論議する問題、国会で行政機関が論評する問題について質問したわけですが、今度は立場を変えまして、国会議員が国会の中で、裁判で争点になったリンチ的な行為が果たしてあったのでしょうか、なかったのでしょうか、この点について、総理大臣なり法務大臣に詳細に御説明願いたい、こういう質問をすることは、いまの答弁から見れば、国会なり総理大臣、法務大臣に憲法違反のことを求めているというふうにならざるを得ないと思いますが、いかがですか。
○真田政府委員 いまおっしゃったような質問をされること自体がやはり不穏当なのであって、また仮にそういう御質問があった場合には、それに対する答弁としましては、先ほど申しましたように、そういう、いまおっしゃいました例で言えば、リンチならリンチという事実があったということを認定した確定判決がありますよという御説明にとどめるべきである、そう思います。
○諫山委員 国会の場でいまのような質問をするのは不穏当というにとどまらず、何か憲法違反を求めるというふうに見えると思うのです。もっとも、国会なり行政機関の場がそれに乗ってこなければ、憲法違反というのは完成しないわけでしょうが、それにしても、不穏当というにとどまらず、憲法違反を求める発言だというふうに聞こえるのですが、そうじゃないですか。
○真田政府委員 確定判決の当否を国会が論議するということが司法権の独立を侵すのだという面を持っているという観点からすれば、やはり憲法にそぐわないと思います。
○諫山委員 念のために申し上げますと、「リンチ的な行為が果たしてあったのでしょうか、なかったのでしょうか。」「詳細に御説明願いたいと思います。」と質問しているのは公明党の矢野書記長です。 〔委員長退席、中山(利)委員長代理着 席〕 そこで、確定判決に対する行政機関の対処の仕方の問題です。私、横浜事件というのを調べていただきたいとお願いしておったのですが、横浜事件では何名起訴され、何名有罪になったか、法務省でわかりますか。
○安原政府委員 横浜事件というのは、戦前において神奈川県下等で検挙されました幾つかの治安維持法違反事件のことを御指摘のことと存じまするが、何分にも戦前の事件でございまして、資料等も散逸いたしておりますので、いま直ちに正確にお答えすることはできません。極力調査をいたしたいと思います。
○諫山委員 私、国会図書館から「日本政治裁判史録」というのを借りてきたのです。これに横浜事件の判決の一部が集約されております。これでは、四十九人の人が起訴されて、たとえばわが党の副委員長である西沢富夫さん、あるいはかつて国会議員だった細川嘉六さん、そのほかさまざまな学者、文化人、言論人がでっち上げで有罪判決を受けた、こういうふうに、もう歴史的に評価が定着していると思います。 この中では、たとえば被告の人たちがコミンテルンの指令によって共産党の再建に努めたとか、あるいは共産党再建のためのさまざまな会合を開いて同志的な結合を図った、こういうことが認定されているわけです。しかし、歴史的には、これが架空のでっち上げ事件だったということは、もう定着したというふうに見ていいと思うのです。 同時に、横浜事件で重大なのは、こういうでっち上げを行った直接の責任者三名が特別公務員暴行傷害事件で起訴されて有罪判決を受けたとなっているのですが、この点法務省ではわかっておりますか。
○安原政府委員 早急に調べましたのでまだ不十分でございますが、神奈川県の特高に勤務しておった警察官三名が特別公務員暴行傷害被告事件で起訴されまして、有罪の判決を受けたという事実はございます。
○諫山委員 法務大臣に聞いていただきます。 三名の特高警察官が有罪判決を受けた。東京高等裁判所の拷問の部分の判示を読み上げますと、 被告人等は其の他の司法警察官等と共謀して同 人に拷問を加えて自白させようと企て、同月十 二日頃から約一週間位の間数回に亘って、神奈 川県神奈川署の警部補宿直室に於て、益田直彦 に対し或は頭髪を掴んで胯間に引き入れ或は正 座させた上手拳、竹刀のこわれたもの等で頭 部、顔面、両腕、両大腿部等を乱打し又は之に より腫れ上った両大腿部を靴下穿きの足で踏ん だり揉んだりする等の暴行凌虐の行為を為し、 よって益田の両腕に打撲傷、挫傷、両大腿部に 打撲挫傷、化膿性膿症等を被らせ就中両大腿部 の化膿性膿症については其の後治癒迄数ヶ月要 さしめたのみならず長く其の痕跡を残すに至ら しめたものであつて こういう事実を認定しながら、一人には懲役一年六月、もう一人は懲役一年、もう一人も懲役一年、いずれも実刑、こういう判決が下っている。 共産党のスパイ調査問題に関して、特高の拷問というのがいろいろ論議されました。稻葉法務大臣は、そんなことあるはずがないじゃないか、日本の警察の名誉にかけてもそんなことはないという趣旨のことを言われているのですが、こういう事実があったことは御存じだったのでしょうか。
○稻葉国務大臣 確定判決は尊重すべきものと考えます。確定判決があるのですから、私はそれを見ていないけれども、あなたがでたらめなことを読まれているとは思わない。それはそのとおりだろう。
○諫山委員 衆議院で不破さんとずいぶんあなたはこの点で論争されたのですが、当時こういう判決があったことは御存じでしたか。こういう判決を知りながら不破さんに対してああいう答弁をされたのか、それともいま指摘されて初めてわかったということなんでしょうか。
○稻葉国務大臣 不破書記局長の質問は、宮本事件について拷問があったかどうかというようなことを争うから、宮本事件についてそんなことは聞いていないな、こういうことだけなんです。
○諫山委員 今度は釈放、復権の問題を少し聞きます。 アメリカの公文書館からわが党の内藤、庄司議員が写してきた資料によりますと、戦後、治安維持法違反だけではなくして、刑法犯、経済犯がついていて終戦を迎えた人が宮本顕治氏を除いて五名いた、そして一名を除いて十月十九日までに釈放されている、こういう資料があります。この資料は一部分サンケイ新聞でも報道されています。ただ、サンケイ新聞では犯罪表の部分が省略されているのです。こういう事実は法務省でつかんでおりますか。
○安原政府委員 治安維持法等のいわゆる政治犯の罪名で、なお刑法犯等を伴っていた者で、十月十九日までに釈放された者が、宮本氏のほかに四名おるということは事実でございます。
○諫山委員 四名ではなくて、五名じゃないですか。
○安原政府委員 宮本氏を含むと五名になります。
○諫山委員 逆に、五月二十日までに釈放されなかった人が何人いましょうか。これは治安維持法事件とその他の刑法犯、経済犯がついている人です。
○安原政府委員 政治犯人で、刑法犯、経済犯を伴うため十月十日以前に釈放されなかった者が三十七名ありまして、その中に宮本氏と、共犯関係にあった袴田、二見氏らが入っておるわけですが、その後逐次刑の執行停止とか仮出獄とかあるいは満期釈放というようなことで釈放されまして、昭和二十一年五月二十一日までに合計二十八名が釈放されておるというふうに記録が残っております。
○諫山委員 いまの数字は、サンケイ新聞の省略された別表の部分に基づくものですか、その他の資料に基づくものですか。
○安原政府委員 サンケイ新聞ではなくて、国内に残存している関係記録等で明らかになっているわけであります。
○諫山委員 田島という人が治安維持法事件だけではなくして、殺人事件も含めて服役して、釈放されていますね。いつ釈放されたでしょうか。
○安原政府委員 この人の罪名は、治安維持法違反のほかに殺人がございまして、昭和二十年十月十九日に刑の執行停止ということで出ております。
○諫山委員 二見敏雄はいかがですか。
○安原政府委員 二見敏雄氏も二十年十月十九日に執行停止で出ております。
○諫山委員 二見敏雄の罪名と科刑はどれだけでしたか。
○安原政府委員 治安維持法違反、死体遺棄、強盗及び強盗未遂、爆発物取締罰則違反、火薬類取締法施行規則違反というようになっております。
○諫山委員 刑はわかりませんか。
○安原政府委員 昭和十五年二月十日、無期懲役の判決が確定をいたしております。
○諫山委員 岸勝はどうですか。
○安原政府委員 岸勝氏は、懲役十五年、昭和十年三月二十日判決確定、治安維持法違反、殺人未遂、公務執行妨害で、この人も二十年の十月十九日に刑の執行停止で出ております。
○諫山委員 ついでに、田島の刑はどれだけでしたか。
○安原政府委員 これは併合罪でございますが、確定判決があったりいたしまして、三つの刑がございまして、執行を受けたのは結局治安維持法で懲役三年、それからもう一つの治安維持法、その前のものが懲役二年でございましたが、これは五年間執行猶予でございますから、第二回目の治安維持法で懲役三年、それから第三回目の判決がありました殺人で無期懲役ということになっております。
○諫山委員 この三名は一〇・四メモランダムに基づく政治犯としての釈放ですか。
○安原政府委員 それではございません。
○諫山委員 どういう法的根拠に基づいて、どういう経過で釈放されたのでしょうか。
○安原政府委員 一〇・四覚書ではございませんが、その詳細はわかりません。刑事訴訟法の条文に従って、国内法的にメモランダムと関係なしに釈放されたもののように思われます。
○諫山委員 たとえば二見敏雄は無期懲役だったようでしたが、刑期はどれくらい残っていましたか。
○安原政府委員 昭和十五年に無期懲役が二十年に減刑されまして、二十年の十月十九日に刑の執行停止で出ております。そして、四十年の九月にこの人は死亡しておりますが、当時なお残刑期が八年五カ月七日あったということになっております。
○諫山委員 そうすると、この三名の人は、占領軍のおかげで釈放されたのですか、それとも何か根拠があって釈放されたのですか、それとも間違って釈放されたのですか。
○安原政府委員 刑事訴訟法の刑の執行停止事由に当たるとして釈放されたと認められるのでございまして、占領軍のおかげで釈放されたというもののカテゴリーではございません。
○諫山委員 戦後の民主化措置がなければ釈放されるような状況ではなかったはずだと思うのです。なぜこの人たちが釈放されたのかは調べていないのですか。
○安原政府委員 いろいろ関係もあろうかと思いまして、いろいろ調べましたが、当時の関係者も生存していないとか記憶があいまいということで、わからないわけであります。
○諫山委員 そうすると、一〇・四メモランダムとかあるいはそれに基づく翌日の刑事局長通牒ですか、いろいろ言われるけれども、実際上は、治安維持法と相当重大な刑事犯がついている人が、一斉に政治犯が釈放された時期に釈放されてきた。もちろん幾つかの例外はあるようですが、基本的にそういう状況だったということが言われると思いますが、どうですか。経過はわからないにしても、結果的には、十月十九日というのはまさに政治犯が釈放された時期です。そういう状況だったんじゃないでしょうか。
○安原政府委員 いずれにいたしましても、一〇・四覚書は十月十日までに釈放しろということでございましたから、十月十九日に釈放された者はそのカテゴリーとは何ら関係がないと言うべきであろうと思います。
○諫山委員 日本政府は政治犯として釈放された人の名簿を占領軍に報告しているわけですが、この三名はその中に入っていますか。
○安原政府委員 入っておりません。
○諫山委員 サンケイ新聞に本文が出て別表が省略されている資料、この別表を私たちはアメリカから手に入れてきたわけですが、これを見ると、「刑法に規定された犯罪及び経済犯罪の併合犯であったため釈放が延期された政治犯に対するその後の措置の調査」という資料があります。これは一九四六年五月末現在となっております。この資料があることは、法務省、お認めになりますか。
○安原政府委員 それに見合う資料が国内資料としてございます。
○諫山委員 ここに政治犯と刑事犯が一緒にくっついている人たちの名前が載っております。この表というのは司法省の刑事局から連合国に提出した資料と読めるのですが、そうですが。
○安原政府委員 占領中、終戦連絡中央事務局を通して司令部に出した司法省の資料でございます。
○諫山委員 この中には、いま私が読み上げた二見、田島、岸の名前が出てきますね。そうすると、この時点では司法省は二見、田島、岸を政治犯として報告しているということになるんじゃないですか。
○安原政府委員 治安維持法の罪もある人でございますから、いわゆる純粋政治犯ではないにしても、政治犯のカテゴリーの犯罪も犯しているから、そういう政治犯を犯した者で、経済犯、刑法犯を伴う者で十月十日までに釈放されなかった者のリストを出したということでございます。
○諫山委員 政治犯でなければ、こんなことを占領軍に出す必要はないわけでしょう。実質的な政治犯ということを安原刑事局長は使われているのですが、実質的な政治犯だったのか、それとも他の刑法犯のつかない純粋な政治犯だったのかというような考え方は当時からあったのですか。
○安原政府委員 一〇・四の覚書にもございましたように、政治犯人の釈放というときに列挙されておる治安維持法とか国防保安法違反の罪とか、ああいうものを犯した者を私は一応広い意味での政治犯人と言うべきであろうと考えて申しておるわけでありますが、ただ一〇・四覚書は、遺憾ながら諫山委員らの御主張とは反しますが、一〇・四覚書による釈放の対象となる政治犯というのを私は純粋の政治犯と言い、その場合においては刑法犯等を伴うから純粋の政治犯とは言えないということを申し上げておるつもりでございます。
○諫山委員 参議院ではマイナーオフェンスという言葉が訳語とか解釈をめぐって論議されましたね。こういう概念が一〇・四覚書に入っているというのは、刑法犯がついていてもマイナーオフェンスの場合には実質的な政治犯として取り扱う、釈放するんだというのが一〇・四メモランダムの趣旨だと解されるのですが、違いますか。
○安原政府委員 あのメモランダムだけ読むと、マイナーオフェンスというのは副次的犯罪とまで言える感じの翻訳になっておりますが、それはそれとして、マイナーオフェンスというのは何かということはよくわからないわけでございますが、しかし、その後一〇・四覚書を実施するためにその解釈を確かめた上で出ました司法省刑事局長通達によると、どうも刑法犯というようなものを犯している者、伴っている者は、マイナーオフェンスを伴っている者だというふうには解釈されなかった。要するに、刑法犯のような自然犯については、マイナーオフェンスというような、刑法典にあるような犯罪についてはマイナーオフェンスとは考えなかったというふうに思われる次第でございます。
○諫山委員 これは参議院の上田耕一郎さんと論争された問題ですから深入りしません。しかし、刑事局長の答弁を聞いていると、一〇・四メモランダムの解釈を翌日の司法省刑事局長の通牒に求めている。これは逆なんですね。本来のたてまえから言えば、一〇・四メモランダムに基づいて刑事局の通牒を解釈するというのが法律家の常識のはずです、法律と通牒ですから。 〔中山(利)委員長代理退席、委員長着席〕 ところが安原さんは、刑事局長通牒というのは占領軍も了承しているはずだから、通牒から推しはかれば、一〇・四メモランダムというのはこう解釈すべきじゃないかという議論で、どうもこれは法律家として見れば逆立ちしている。つまり通牒から法律を解釈しようとしているというところに無理を感じませんか。本来なら一〇・四メモランダムに基づいて通牒が正しいか正しくないか、こういう解釈をするのがイロハじゃないですか、どうですか。
○安原政府委員 諫山委員も御承知と思いますが、占領下の占領行政というものに対する日本政府の対処の仕方というものをよくお考えいただければ十分わかることでございまして、あれは司令部が命令して釈放せいと言ったものを、その範囲を勝手に通牒で限縮してやるなどということはできた状況ではございません。あらゆる行政はすべて司令部の指示に基づいて解釈を明確にしてやっておるわけでありまして、その当時を知っておる私といたしましては、あの通達につきましては、十分に司令部の意思を確かめてやっておる、何らそれを限定したものではないということは、これは経験上確信を持って申し上げることができます。
○諫山委員 やはり米側の資料に基づくと、当時の佐藤藤佐刑事局長は、宮本、袴田氏を恩赦法に基づいて復権させようとした。しかし、連合国としては、これは恩赦法適用の問題ではない。SCAPIN四百五十八号に基づく勅令七百三十号によって処理すべき問題である、こう言って、そこでいろいろ折衝が重ねられた。結局佐藤刑事局長のように恩赦法で復権させようというのは間違いだということになって、勅令七百三十号に基づく復権という措置がとられたと思われるのですが、まず、その佐藤刑事局長が恩赦法で復権させようとした経過はあったのですか。
○安原政府委員 その事情を、まだ佐藤刑事局長は生存しておられますので、確かめたところによりますると、要するに、たびたび申し上げておりますように、宮本、袴田両氏について恩赦の申し出があったということでございまして、それで、当時の占領行政下におきましては一々、お掘り端とわれわれは言っておりましたが、GHQの意向を伺うというのが通例でございまして、したがって司令部にその意向をサウンドしたわけであります。というのは、司法省といたしましては、たびたび申し上げておりますように、宮本、袴田両氏は決して七百三十号の対象者でもなければ、ましてやその前の政治犯の大赦令にも当たっておらない。なお刑の執行停止で出ておるが残刑は残っておる人だという考えでございますが、相当時間もたったので、この際両氏に対して何か刑を消滅させる方策はないかということで、司令部の意向を伺った。つまりその方策というのは恩赦にかけるということでございます。したがって、伺ったというのが実情でございます。
○諫山委員 そこで、司法省としては恩赦で復権させようとしたけれども、連合国としては、恩赦適用の問題ではない、勅令七百三十号によって処理すべき問題だということで結論が出た、そうなりますか。
○安原政府委員 従来の解釈あるいは既定の勅令の解釈等から明らかなように、司令部の言うような七百三十号でやれるものなら、日本政府は怠慢ではございませんから当然やっておるのに、やらないということは、あれに当らないという解釈のもとにあの二十二年の五月まできたところ、宮本氏らから恩赦の申し出があったので、恩赦ならば、それは日本政府だけの権限でやれることだから意向をサウンドしたということでありまして、あくまでも七百三十号に該当するというようなことではないことは明白であったために、そういう措置はあくまでも法規上の問題ではない。なされたのは、最後の結論を先に申し上げますが、GHQの特別の指示であると解したわけであります。
○諫山委員 特別の指示というのは、恩赦法に基づく復権じゃないのだ、七百三十号で復権さすべきだ。——首を振られましたが、ちょっといまやってください。この点はサンケイ新聞に資料が出ておりますね。あの資料はお認めになるのですか。この問題に関する資料です。
○安原政府委員 あの資料をずっとごらんになっても、あの解決は政治的解決であったということは明らかでございます。と申しますのは、同じであればあのときに、共犯であった方々についても同じような扱いをするのが日本政府の態度でありますから、たった宮本さんと袴田さんだけがあの扱いを受けたということは、あくまでも法令の解釈に基づくものではなくて、特別な扱いであったと言わざるを得ないわけであります。
○諫山委員 その他の人がそういう措置を受けてないとすれば、これは要求しなかった、闘わなかったということと関係があると私たちは思うのですが、それにしても、おかげだとか、してもらったとかいう言葉がされるけれども、これは正々堂々と日本政府と占領軍がいろいろ折衝しているという経過はあるのじゃないですか。
○安原政府委員 われわれはあの当時の特別の指示、口頭でございます指示を、超憲法的ではあっても適法なものである、有効なものであるという立場は何ら変えておらないわけでありますが、それを法令に当たるものとして扱うのが当然であり、特別の指示ならば、おかげと言うならおかげという言葉を使ってもいいのかもしれませんが、私はそういうことは一度も申しておりません。特別の指示で復権をなさったと考えておるわけでございます。
○諫山委員 当時は占領中で、占領軍の命令というのは超憲法的、超法規的、まさにそのとおりです。この指示というのはまさに個別的な占領政策なんですね。個別的な民主化措置、こうなるわけでしょう。
○安原政府委員 おっしゃるとおりです。ですから、私どもの立場でどうも諫山委員と見解の違うところは、あれが七百三十号に該当するものであったかどうかという点について、われわれは法文上該当しないという考え、したがって、該当するものとして扱われたのは特別の指示であるということでありますが、特別指示も、御指摘のとおり占領政策の一環としてのディレクティブというか命令でございます。
○諫山委員 言葉をかえれば、まあ占領軍の指示というと、いかにも何かこそこそとやったように見えるけれども、まさにこれは戦後の民主化措置そのものだ。それが全体を対象にしてやられるか、個別的に民主化措置が進められるかそれだけの問題であって、まさにこれは民主化措置なんでしょう。言葉をかえれば、ポツダム宣言に基づく民主化措置の一環としてこういう措置がとられた。
○安原政府委員 占領政策が万事民主化措置であって、占領軍の指示はすべて民主化措置であるということをイコールにするなら、民主化措置でございましょう。私どもはその辺の詳しい司令部の方針はわかりませんが、いずれにしても、司令部の指示という占領政策の一環としての指示がなされたということでございます。
○諫山委員 時間のようですから、あと二、三点聞かせていただきます。 ところで、超憲法的という言葉が使われるのですが、当時は旧憲法の時代なんですね。そして旧憲法というのはもう実質的に死んでおったのじゃないですか。それはどうですか。
○安原政府委員 当時の憲法秩序、憲法という国内の主権を超した、その主権を制約するものを私どもは超憲法的と言っておるわけでございます。それ以外の何物でもございません。
○諫山委員 それから安原さんの答弁で、復権は昭和二十二年五月十六日以後始まったみたいに言っているのですが、これは違うのじゃないですか。復権というのは勅令七百三十号が発効した昭和二十年十二月二十九日にさかのぼっているのじゃないですか、そうでなければ十五年の減刑が取り消されるはずはありませんから。
○安原政府委員 取り消したのじゃなくて、記載の誤りでございまして、先ほど来の立場から申し上げますと、そのとき以後七百三十号に該当するものとして取り扱えということですから、そのとき以後初めて復権の効果が生ずるというふうにわれわれは考えておるわけであります。 なお、超憲法的と申しますのは、ああいう刑がまだ残存している人について復権をするというようなことは、わが国の国内法である恩赦法にはないのです。恩赦法による復権というのは、刑が終わっていなければならない。宮本氏の場合は、われわれの解釈では刑は残存しておって、そして復権をさせるというような特別のものでございまするから、そういうものを勅令に当たらないのにやるということはまさに超憲法的でございます。
○諫山委員 宮本顕治氏の刑というのは、復権した時点では少なくとも消滅している。これはもう当然のことであって、安原さんの説明のように、刑法三十四条ノ二を持ち出す余地は本件ではないはずだと思うのですが、どうなんでしょう。参議院では、念のためという趣旨だろうと思いますが、刑法の時効の問題を持ち込んでいますがね。
○安原政府委員 復権というのは、御承知のように、人の資格に関する法令の適用に関しては判決が将来に向かってなかったと同じようになるということでございますから、その限度でございまして、判決を受けた、刑があったということがすぐ消えるわけではない。それを消滅させるものが、刑法三十四条ノ二の、刑の執行が終わってから何年たったときには刑の言い渡しは効力を失うというのは、将来に向かって、人の資格の適用に関するのみならず、すべてについて将来に向かって判決の効力がなくなるという意味で、三十四条ノ二の適用の余地はなお残っておるわけでございます。
○諫山委員 昭和二十二年の五月十六日、あなたの説明では、少なくともこの時点で復権している、少なくともこの時点は同時に刑が消滅している、こうなるんじゃないですか。
○安原政府委員 いや、そうではなくて、復権というのは、先ほど申しましたように、国内法制では刑の執行が終わってなければならぬ。しかるに、七百三十号に当たるものとして扱う結果復権させるなら、その前提として刑の執行が免除になっていないか、したがって残刑の執行が免除になったということでございます。
○諫山委員 つまり、残刑があって復権できるのかという観点から聞いているわけですが、そうすると、復権後もなおかつ残刑なんということはあり得ないじゃないですか。
○安原政府委員 ですから、ああいう七百三十号によって扱う以上は、特別の指示としては、復権の前提として刑の執行の免除という指示もあったというふうに考えるわけであります。
○諫山委員 法務大臣に最後に……。 共産党リンチ殺人事件という呼び方がとんでもない間違いだということはもう明らかだと思います。日共リンチ事件という呼び方も法務省としては公式にはしてないということですね。公式に呼ぶとすれば治安維持法等被告事件。稻葉法務大臣が一国会議員としていろんなことを発言することまでには私とやかく言いませんが、法務大臣である限り、そして法務大臣として公の場で物を言う限り、日共リンチ事件という呼び名は適当でない、使うべきでない、こう思いますが、どうですか。あなたが使うと、三木さんが誤解したように、法務省が公式にそういう呼び方をしているように聞こえるわけですよ。三木さんは、法務省もこう呼んでいるから私も呼びましょうという言い方をしている。これは法務省が呼んでいるのじゃなくて、あなたが勝手に使っているわけですね。だから、私要望したいのは、稻葉さんが法務大臣である限り、公の場でそういう言葉を使わないということを明言していただきたいのです。
○稻葉国務大臣 名称には、姓名でもそうですが、正式な稻葉修、こういうのと、「シュウ」さん「シュウ」さんというのとある。そういうふうに俗称あり、正式名あり、いろいろで、あの判決の内容をずっと読んでみると、日共リンチ致死事件というのが実質に即した呼び名であるように私は思うのです。
○諫山委員 確かに「シュウ」さんという呼び方があると思います。しかし、国会で「シュウ」さんというようなことを私言ったことないわけですよ。たとえば本会議場で稻葉「シュウ」さんに御質問いたしますなんということを言わないわけです。私が言っているのは、あなたが大変な共産党ぎらいで、リンチ共産党と呼びたいことは知っているのです。しかし、法務大臣である限り、公の場でそういう言い方はすべきではない、これを言っているのです。
○稻葉国務大臣 確定判決は尊重すべきものであって、その確定判決の内容をずっと読んだ結果、共産党リンチ致死事件と言うに値する、こういう判断です。
○諫山委員 リンチという言葉はこの中に入っていないわけですよ。これは刑事局長が言うたとおりですね。あなたはこの一連の経過から見ても、やはりその点では変えないということですか。
○稻葉国務大臣 刑事局長の言うたとおり、リンチという言葉は使っていない。私の刑、私刑、つまりさるぐつわだのそれから針金で体を縛る、そうしてピストルでおどかす、そういう……(諫山委員「ちょっと待ちなさい。判決の中身を、当否を論ずるというふうな……」と呼ぶ)当否じゃない。事実……(諫山委員「いや、それはもうここで……」と呼ぶ)
○大竹委員長 諫山君、許可を得て発言して下さい。
○諫山委員 聞くことだけに答えさせてください。
○稻葉国務大臣 そう書いてある。だから、そういう情景を見れば、共産党リンチ致死事件という呼び名に値する、こういう判断です、法務大臣として。
○諫山委員 私、とんでもない法務大臣が担当したものだと思っているのですが、これには強く抗議するということで、私の質問を終わります。
○大竹委員長 沖本泰幸君。
○沖本委員 矢野書記長の話が飛び出してきましたので、私もちょっとお伺いしなければならなくなりましたからお伺いしたいと思うのですけれども、先ほどからいろいろ御議論があったわけですが、伺っていると、初めは憲法に反するじゃないか、中身を云々することはどうこうというお話があったわけですが、中身じゃないでしょうけれども、判決のあった前後の事情なり何なりというものの御議論は、われわれがまた違う角度から御議論申し上げていることと、議論が違うだけで、内容的には同じだと思うのですが、そうなってくると、もうおまえさん方がやっていることは間違いだというふうに決めつけられて、後で今度はおれの方の問題はこういうことだと言われていることと何ら変わりはない、私は先ほどから伺いながらそういうふうに受け取ったわけですけれども、この点について、大臣、どういうふうにお考えになりますか。
○稻葉国務大臣 諫山委員もおられるから、ちょうどいいから。宮本顕治氏の判決に書いてある内容を言うと怒る、今度は横浜事件を引っ張り出して、これは確定判決であろう。この確定判決の中には、警察官が拷問をやった事実を、先ほどたくさん判決の内容を読み上げられて、こういうのが事実だ。自分に都合のいいのは判決を持ち出して事実だ、自分に都合の悪いのは事実でない、こういうやり方は公正じゃない、あなたのおっしゃるとおりですよ。
○沖本委員 そこで、先ほど法制局長官とのやりとりがあったわけですけれども、確定判決について当否を問うのは憲法違反である、また中身を論評するのはいけない、こういう御指摘で、それによってリンチの内容について述べろということを言ったのは矢野書記長だ、こういう御指摘があったわけです。いま手元に記録がありませんから正確には言えませんけれども、本会議のときの状況を思い起こしますと、矢野書記長が本会議場で述べたことは、前国会で法務大臣が、まことに奇妙きてれつだ、こう言われた内容について、今日的課題として伺うということで書記長は質問したと私は記憶しておるわけです。そういうことで、何も書記長が初めから憲法違反を犯してやっているとか、憲法違反であるということには当たらないということで、前国会での議論を今日的課題として取り上げますと前置きをして言っているわけですから、そういうことに当たらないと私は考えるわけですけれども、大臣はどういうふうにお考えですか。
○稻葉国務大臣 確定判決について、学者がやるような判例批判みたいなことは、国会の場では、行政ですから慎まなければいかぬと思うのですが、確定判決を尊重すべきことは当然じゃないでしょうか。それをいつまでも行政機関が争っておったのではけりがない、三審で判決を確定するということは、その問題はそれでけりがつくんだということに意味があるわけです。それをまた持ち出して、うそだとかそんなことを言ってみたところでどうしようもないんじゃないですか。だから私は、横浜事件についても確定判決にそうあれば、それは事実だ、それから宮本事件についても確定判決があってこうなっているからそれは事実だ。諫山さんのは、どうも片方はうそだ、片方は事実だみたいな話ですから、それでは困るのじゃないですか。 それから憲法違反ということは私は考えない。確定判決はどうなっているか詳細に報告せよ、こういう要求というか質問というか、それは憲法違反だとは思いませんな。
○沖本委員 それで、これは前国会じゃなくてこの間参議院の予算委員会で共産党の上田耕一郎議員が御質問になった中にあることなんで、これもおっしゃったことで伺うわけなんですが、「戦後も共産党にたいして政府のスパイ政策というのは、いぜんとしてつづいている。きのうも、四名の確定判決問題がだされたが、われわれが摘発し、調査し、除名しただけで、これまでに四百名を超えるスパイが戦後ある。おどろくべき数だ。この四百名のうち先ほど四名の名前がでたが、たった四名だということは多くのこの査問というのはきわめて紳士的に平穏におこなわれているということを示している。」この抜粋は赤旗の記事から抜粋したので、記録からではないわけですけれども、これでちょっとお伺いしたいことは、四名というのは、わが党の質問に刑事局長が数をお示しになってお答えになったわけで、きわめて紳士的に平穏的に行われたと述べておりますけれども、刑事局長がお答えになったのは四名でありますが、これは私たちがお伺いした時期が唐突で早かったので、法務省の方ではいろんな事件のケースの中から特に共産党さんにかかわる事件を拾い出されるということは非常に至難なことで、私は、その四件しかすぐには拾えなかった、確定判決を受けた分についてはそういうふうに解釈しておるわけです。このほかにまだずっとあるのじゃないかという疑問を私持っているわけですけれども、その点についてはいかがですか。
○安原政府委員 先般お答えしたときに、確定判決のあったものとして当省に報告のあったものは四件であるということを申し上げたわけで、その後も引き続いて調査をいたしております。中間の報告ではなお十件ほどあるようなことを聞いておりますが、正確に調べてみないと確かなことは申し上げる段階ではございません。
○沖本委員 これは委員長にもお願いいたします。相当たくさんの中からお調べになるわけですから、時間が大変だと思いますけれども、お調べになって、数が概略まとまるなり、あるいは四名しかなかったという答えになるか、どっちかわかりませんが、お調べの結果はまたお知らせいただけますでしょうか。
○安原政府委員 当委員会等で正式のお尋ねがあれば答えられるように調査はいたしておきます。
○沖本委員 それでは今度は単純な御質問になりますけれども、これは上田議員もスパイが戦後にある、四百名を超える、こういうお述べがあったわけです。共産党さんは査問、こうおっしゃるけれども、戦後リンチに及んだような内容のものがとりあえずは四件出てきたということに当たるわけですが、それに類似するような事件がほかの政党にあったでしょうかなかったでしょうか。また現在あるでしょうかないでしょうか。
○安原政府委員 格別調査したわけじゃございませんので、正確なことは申し上げかねますが、われわれがいままで承知いたしておりますところによりますると、各政党の内部におきまして、いわゆるスパイ査問というようなことに発する刑法犯等の不法事犯というものによって有罪の判決があったというようなことは聞いておりません。
○沖本委員 四百名というのははからずも上田議員がお出しになったわけで、聞いている私たちは驚いたのですけれども、ほかのことはまだ考えておりませんので、また次に何か問題が出てくれば、角度を変えてこれに類する質問はしていきたいと思います。 これは刑事局長に関係があるかないかわかりませんが、大臣にはお伺いしなければなりませんので、刑事局長どうぞ少し休憩していただいて結構です。 次はミグ25に関しまして御質問したいと思います。 ベレンコ中尉の亡命についてはいろいろ議論がありまして、その取り扱いが唐突過ぎたとか、いまだにいろいろな問題点を残してきておるわけですけれども、これはベトナムの難民であるとか、あるいは台湾政府に反対する亡命であるとか、あるいは韓国からの問題であるとか、難民あるいは政治亡命に当たる、あるいは犯罪を犯して逃げてくる、いろいろなものがいろいろな角度から議論されてきたわけですけれども、時間の点もありますからかいつまんでお伺いいたします。 ここに一九六二年八月二十四日の第四十一回国会での法務委員会で、猪俣委員に中川外務省条約局長が答えた内容のものがあるのです。 難民に関する国際条約にどうして日本が加入 していないのかという点でございますが、この 国際条約は非常にいいことを書いてあり、その 目的においてはまさしくわれわれ同感であるわ けでございますが、一つの技術的な問題といた しまして、一体難民というものの定義、ただい まお読み上げになりましたが、その定義が、ど うも具体的の例に当てはめます場合に、必ずし もはっきりしない面が出てくるのでございまし て、そこらの定義等につきまして、もう少しは っきりした見きわめをつけたいということが一 番大きな原因でございますが、日本としてもそ の条約の趣旨には賛成でございますので、これ に入る入らないとを問わず、人道を尊重すると いうその原則で行動すべきことは当然でござい ます。その条約自体に入ることにつきまして は、もう少し難民の定義等につきましての詳細 なことを見きわめまして、各国の扱いあるいは 国際間における実際上の扱い方というようなも のをもう少し見きわめました上で、これに入る か入らないかを決定したい、かようなことから まだこれに加入はしていないというようなことです。 これは次に六八年の四月十九日にまた猪俣委員が質問されているが、定義と条約に入る入らないという問題についてもはっきりはしていないわけで、このことにつきましては、いまお隣に座っていらっしゃいます稲葉さんも参議院の方で、政治難民かあるいは何であるかというような点についての御質問もいろいろなさっておるわけでございます。 そういうことが続いて、稲葉さんが五十八回国会の参議院予算委員会で御質問になっておるわけですけれども、このときの法務大臣は、 亡命者を帰せば、生命の危険がある場合に は、格別の配慮をして、そういうときには帰さ ないような方策を講ずる。帰すときには、生命 が安全かどうかということを十分調査する。そ ういう方針を、大体亡命者にも人権宣言の趣旨 を普及していくという方策をとっている。大体 亡命者の送還はケース・バイ・ケースに考え る。……それを日本に置くことが日本の国益に 合うか合わぬか、国益に反するようなものにつ いては送り返したい。日本の、また公安に害が あるかないか、そういう点も十分考えて、ケー ス・バイ・ケースにこれを処置して遺憾のない ような方策をとっていく。こういうふうな答弁があったわけです。 稻葉現大臣も、五十年六月二十五日に横山さんの御質問に対して、 難民条約批准の問題は、お説のとおり、今日 のこの段階で批准をおくらせるべき問題ではな い、時期は熟しておるのではないかという判断 を持っております。難民条約の批准に伴う亡命 者保護法をも含めた国内法の整備につきまして も、難民条約を批准する方向で検討する段階に 来ましたから、当然国内法整備の問題について も前向きに検討すべきである、急ぐべきである という判断を私は持っております。こういうふうに御答弁になっていらっしゃるわけでございます。これが早くまとまっておれば、今度のベレンコ中尉の、いきなり飛び込んできたという問題についても、何らかの判断基準というものが法務省と外務省との間でできていき、十分対応できるだけの措置がとられたということになると私は考えるわけです。やはり亡命する人たちに対する保護の法律なり何なりというものも急がなければならないし、当然国際条約の批准もきちっとして加入していかなければならない問題ではないかと私は考えるわけです。この問題は国際的な問題にもかかわるわけでございますから、結局日本の国内法なりこういうふうな国際法に対する日本の姿勢なり何なりというものもやはり大きな議論を呼ぶ一つの大きな問題点に、現在もなっているんでしょうし、これからもなっていくんではないかというようなことが考えられますけれども、この点についてお答えをいただきたいと思います。
○稻葉国務大臣 難民の具体的な法的対策につきましては、国際関係もありますから、関係省、外務省ともよく協議をして、これにいかに対処すべきか、事務当局に作業を命じてある段階であります。
○沖本委員 作業はお命じになったわけですけれども、作業の進展状況なりあるいは到達点なり、完成して実際に日の目を見るのはいつごろになるんでしょうか。
○吉田政府委員 大臣の御答弁のとおり、法務省といたしましてもこの条約に対する対策を外務省と慎重に検討中でございますが、最近もう一つ新しい条約をつくろうという国際的な動きが出てまいりまして、実はいま議論されております難民条約というのは古い条約でございまして、これは第二次大戦の後始末のためにつくられた条約でございまして、アジアの国は一国も入っていない。そういう事情もございまして、国際的にまた新しい条約を結ぼうという動きも出てきておりますので、それとの関連も考えなければならないと思います。また、各国が難民条約の実施をどうしているかということについても、各国にこれから調査団を出すということを考えております。 それからもう一つ新しい事態といたしましては、ベトナム難民が三百人以上入ってきております。また朝鮮半島から多数の不法入国者が入ってきております。したがいまして、こういうその後起こっております事態ともかみ合わせまして、条約との関係、現に起こっている事態を日本の国益からどう処理すべきか、こういう複雑な要素がございますので、外務省及び関係各省と慎重に検討中でございます。
○沖本委員 これは原則的な問題とか保護に関する問題だとかいう国際憲章の中身にわたって人権を尊重しなければならないという重大な観点から議論の出発があるわけです。そのいろんな議論が長年にわたって代々の法務大臣を中心にして当委員会で議論されてきておって、繰り返されてきておるという経緯があるわけです。そういうものを考えていきますと、ベレンコ中尉問題が起きなければ、またベトナムもああいうことで南北が統一されていったという事態もあるわけですし、これからのいろんな不測の事態について考えられないこともないわけですけれども、大きな問題として考えられなかったということも言えないことはないのですね。だから、そういう点を考えますと、早くきちっとしたものをつくっておかなければ、法治国家としてあるいは先進国家として、諸外国に対して非常に恥ずかしい思いをしなければならないし、日本に対する各国民の考え方というものも変わってくると思いますね。そういう点を土台にして、やはり速やかなこれの完成を見ていただかなければならないんじゃないかという考えがするわけですけれども、その点いかがでございますか。
○吉田政府委員 ミグ25の問題でございますが、入国管理局の立場からいたしますと、これは何ら特殊なケースではないのでございます。何となれば、いままで類似のケースは多数ございまして、それと全く同様に取り扱ったということでございます。すなわち、旅券または乗員手帳という正式な書類を持つことなく入国しました場合には、それはベレンコ中尉であろうとだれであろうと不法入国者として取り扱われるわけでございます。したがいまして、過去においても、いわゆる密入国者ですね、密入国者とも言いますし、不法入国者とも申しますが、そういう人たちにとった態度と全く同様な態度を入国管理局としてはとったわけでございまして、これが特殊なケースになるとは私の立場から見れば思わないのでございます。 それからもう一つ難民条約との関係でございますけれども、現在われわれ入国管理局がとっております方策で、いままでいわゆる亡命というケースを全部円満に一応処理しております。現行体制でも、一応難民条約の精神を体して、その精神に沿った処置を行ってまいりますし、今後も行う考えでおります。
○沖本委員 これは議論のむし返しみたいになりますから、この辺で切り上げたいと思いますけれども、いずれにしても、ベレンコ中尉の体だけが来た、ほかに問題がなかったということであれば、また扱い方が違っていたと思うのです。ところが大変なおみやげを持って飛び込んできたので大変な事態に立ち至ったということであり、国民の目には非常に妙なぐあいに映っているのですね。いきなり来たのを、ごちゃごちゃ言うている間にアメリカとぱっとやってしまったというふうにしか国民の目には映っていないわけです。まあ入管としてはとるべき措置は法的にきちっととってあるということなんですけれども、これは外務省も関連する問題でもあるわけで、その辺が十分でないので、国民にわかるような形でこの問題はきちっと整えていただきたいし、答えができるような形でこういう問題は将来に向かって解決していただきたいということでございます。大臣から、その辺はもう命じてあるからできるはずだ、こういうことなんでしょうか、その辺いかがですか。
○稻葉国務大臣 法務省として、ベレンコ中尉の強行着陸事件に対処するやり方といって特別にあるわけじゃないのです。飛行機で来ようと、それが軍用機であろうとなかろうと、船でやってきようと、とにかく不法に入国した外国人という取り扱いで一貫して対処して今日に至っているということで御了解を願いたいと思います。法務省としてはほかにやりようがないです。
○沖本委員 これはいろいろ問題がありまして、管理法ができてないという点にひっかかってくるとは思うのですけれども、それも十分すべての外国人が納得できるような形で、管理令ということよりも法律として整えていただくことが大事なことだと私たちも承知をしておるわけです。そういうものも含めて早急に御検討をいただきたいと思います。 それから次は、大阪と千葉の両方で起こりました暴力団の問題です。きのうすでに参議院の方でお取り上げになったわけでございますけれども、この問題について、新聞社もいろいろ取り上げて、取り締まり当局の御苦労なり何なりというものがないということではなしに、十分その点は理解できますし、いろいろなことに対してよく認識もしておりますしあれですけれども、しかし、各紙の印象から受ける問題は、市民に非常な不安を起こさしてきておって警察が後手後手に回っているんじゃないか、もうやりたいほうだいにやらせてしまっているんじゃないかというふうに受け取れるというふうにも見えます。それから、暴力団の事務所だけで、あるいはだれもいないところで暴力団同士が撃ち合いをするということではなしに、最近は、白昼、日曜日に人が一番出ているそのど真ん中で、市民も巻き込むような状態の中で事件が発生しているということです。それから、拳銃を所持して、拳銃発砲による組関係者の暴力抗争についても、やはり無辜の市民が人質にとられたりすることもあるわけですし、これからもやはり同じようなことが十分考えられる。いままでもありましたし、これからもより多くなってくるのじゃないかという予想もされるわけです。 それからもう一つは、これは私の印象だけかもわかりませんが、いままでは改造のモデルガンを使ってやったというのが新聞によく出ていたのですが、この間の日曜なんかは車の板金をぶち破っているような状態、相当遠距離のガラス窓を破って飛び込んできているような状態です。ということは、もうモデルガンからだんだん本物の威力のある銃が使用されているし、入れかわってしまったという感じもするわけです。新聞記事から推測しますと、暴力団員の末端の組員一人一人が一丁ずつ持っているということ、あるいはこの間の報道によりますと、分解して新型の連発銃を持ち込んできている。そういうようなことも検挙されたからわかっているわけです。 問題は、こういうような凶器をもぎ取ってしまうのが一番先決問題だとは思うのです。いままでも私は当委員会でよくその問題を取り上げて御質問もしたのですけれども、最近は空港なんかでも、持ち帰った物に対しては申告制をとっておるわけですから、荷物の中に危険物があるかないかということを探知器か何かを当てて全部調べているのかどうかという点、そういう検査が行われているのかどうか、ただ怪しいと思う分に関してチェックしておるのか。そうすると、いかに十分練達の税関の人たちなりあるいは当局のいろいろな人たちの目をもってしても、機械ですら間違いがあるわけですから、中をくぐって入ってくるというのが実際に多量に出てきているということにもなります。この前も指摘したわけですけれども、アメリカとの日米安保にかかわる二国間の協定によって、横田基地なりあるいはいろいろな米軍人、軍属の入る地域での持ち物のチェックが十分行われておるのか、そういうところから流れてはいないのかという心配。 それからもう一つは、結局そういうふうな凶器が末端まで行きわたっているということになると、実際にどれくらいの武力を暴力団は全体として装備して持っておるのか、あるいは拳銃だけなのか、あるいは自動小銃的なものももうすでに入手しておるのか。そういう人たちが蜂起した場合にはどういうことになるだろうか、そういう心配はないのだろうか。たとえば、何かのことで暴力団同士がやり合っている、そこへ取り締まり当局が武装して乗り込んで行った。そうすると暴力団と取り締まり当局との撃ち合いになった。だんだん向こうの武力の威力が強くなっていって、ガス銃とかいろいろありますけれども、取り締まり当局の方が威力が弱い。そうすると、結局、大変な事態、パニック状態がある地域で起こって、そこはいわゆる無法地帯になってしまうようなことがある一時期起きてしまうおそれはあるのかないのか、というような心配にまでずっと発展していくわけです。 私の選挙区の中に松田組というのがあるわけです。私、ここがそうだということを教えられてよく知っております。常時警察官がおって見てはおりますけれども、その地域の人たちは皆そこを避けて通るわけです、何かあったとき巻き添えにされないように。言いかえてみると、もうそのこと自体が無法地帯ですね。そういうふうなのが随所に見受けられるということも考えられます。 それからもう一点は、検挙した暴力団員に会わせろと言って、警察の中へ暴力団員が押しかけていってもみ合ったというようなことは、新聞の記事によると、これは暴力団員の甘えから来ているのだ、こんなに甘やかしてしまったらだめだというようなことも書かれております。こういうふうな内容を考えてきますと、これは単に町にセンセーショナルな事件が起きたということだけで事は済まされないような気がいたしますので、以上の点を取りまとめて御質問したわけですけれども、それぞれに従って一応のお答えをいただきたいと思います。 それと同時に、きのう、拳銃を所持したらこれはもう直ちに麻薬を所持したのと同じように刑法犯として刑罰がちゃんとついて体刑を受けるというところまで整備するということを言っておられますけれども、これに関して、今後の取り締まり、こんな凶器に対する問題もあわせて大臣からもお答えいただきたいと思うのです。 それからもう一点は、猟銃に関してなんですけれども、シーズンになりましたから狩猟マニアというものが非常にふえてきている。環境を守る人たち、あるいは鳥獣を愛護しなければならないという立場の人たち、または国際法のいろいろな点からの関連が出てきますけれども、その銃がどれくらい出ておるのか、それは十分監視が行き届いておるのかどうか。それから今度は、イノシシとかクマとかを撃つのは、専門の人たちだけがそういう銃をお持ちなのか。シカ撃ち銃ですね、そういう銃の所持あるいは認可する内容の問題、チェック、こういうことが各都道府県でばらばらじゃないのだろうかという点もちょっと聞いたことがございます。こういう問題も、散弾銃とい見ども近距離からやれば十分殺傷力がありますし、いままで、拳銃なんかが余り飛び出さなかった時代は、猟銃が殺人の一番大きな凶器として扱われておったということもあるわけですから、そういう点もあわせて、各都道府県のチェックなり取り締まりなり認可の状況はどういうふうなことか。これは自治省関係になるので、警察当局はわき役的なお立場だと思うのです。きょうお越しになっているのは、警察庁は捜査二課長だけですから。だけど、捜査の方のお立場から、あるいは警察の方のお立場から、現行のそういうものをどういうふうにお考えになっているか、そういうお立場でお答えしていただきたいと思います。
○平井説明員 大阪で今月三日の白昼に、御承知のような暴力団の抗争と見られる事件から、繁華街のど真ん中で殺人事件が起こりまして、市民に多大な不安を与えておりますことは、大変に遺憾に思っております。従来から暴力団のこうした銃器使用事件あるいは抗争事件というものは、その都度、少なからぬ不安、恐怖感を一般に与えるものですから、警察の取り締まりの最重点として、いろいろな角度で取り締まりを進めてまいったわけでございます。特に昨年の秋以降、抗争事件が激化したものですから、それ以降、第三次頂上作戦ということで、全国の警察を動員いたしまして抗争事件の抑圧、関係団体の構成員の検挙、拳銃等の使用凶器の押収、発見に努めてまいりまして、それ以降約一年間で全国で五万九千人の暴力団員を検挙すると同時に、約千七百丁の拳銃を押収しております。その結果、抗争事件も本年に入って若干減少する傾向にございまして、昨年一年間では八十九件発生しておりましたのが、本年は九月末までで五十三件となっております。それから、銃器の発射事件もやはり昨年より若干減少いたしまして、昨年年間百七十九件でありました・が、本年はいままでに百五件、死者も若干減っておるという状況でございます。 しかしながら、若干の減少があるとしても、なおこういう事件が相次いで発生しておるということは、やはり御指摘のような拳銃がかなり出回っておるという状況が考えられるわけでございます。昨年一年間の拳銃の押収数は千三百三十丁でございますが、本年も九月末までで千三百八丁を押収しております。 先ほどモデル改造ガンと本物の銃との比較の問題についてお話がありましたけれども、昨年の千三百三十丁のうち改造ガンは千八丁、本年は千三百八丁のうち改造ガンは八百五十一丁と、確かに押収数量はふえておりますけれども、改造ガンの占める比率というものは減っておる、それだけ外国からの密輸銃と申しますか、そういう真正拳銃が暴力団の手にかなり渡っておる状況も見受けられるわけでございます。 こうした拳銃の流れについてでありますけれども、現在までの検挙から判明したものには、最近ではハワイ経由でアメリカから密輸入されたルート、それからタイ国から密輸入されたルート、こういうケースがあります。それぞれ警視庁、神奈川、大阪などの府県でこうしたルートの解明に努め、いままで二百二丁ほど押収しておりますけれども、なおかつかなりの密輸銃が押収されずに暴力団に隠匿、所持されているのではないか、かように考えて、現在その追及、発見に努めておるところでございます。 拳銃捜査については、小型の武器を暴力団が隠匿、所持しておるということで、その発見には非常に困難性がございますが、現在これに対して講じておる方策は、各府県に専門の拳銃捜査班を設けまして、事件に使われた拳銃を押収するだけじゃなく、それをスタートにして入手経路を根元までさかのぼって徹底的に追及し、そのルート自体を断ち切る、こういう方策を講じております。また、暴力団の検挙の過程において広範囲な捜索を実施いたしまして、その発見を図ると同時に、最近では大阪のこうした事件なんかの教訓にかんがみ、外勤警察官の動員を行い、常時対象人物の職務質問、検問を反復いたしまして、身につけておる凶器を取り上げるということも現在強化して進めておる最中でございます。 なお、先ほど御質問の法規制の問題でございますけれども、これはまだ明確な成文となっておりませんし、私、内容を詳細に把握しておりませんが、こうした銃器使用事件が非常に頻発しておるのは、銃器の発見、押収や被疑者の検挙と並んでやはり可罰面でも規制を強化しなければいかぬのじゃないかということで、現在警察庁では保安部が中心になりましてその内容を検討中でございます。なるべく早く実現して暴力団に対して銃器の封圧を図りたい、こういうことで作業を進めております。 それから猟銃の問題などでございますけれども、これはちょっと、私ども直接所管しておりませんので、余り詳しい内容をここで申し上げることはできないわけでございますが、拳銃ほどじゃないにしましても、暴力団の抗争事件などで使用される回数もかなりございますし、拳銃のような小型武器と違いまして射程距離も長いものですから、また散弾銃みたいにかなり危険性の高いものもありますので、そうした面につきましても、その所持の規制の厳格化などについて主管部門の方でいろいろと検討し、実効のあるような方策を講じておると聞いております。詳細は余り知っておりませんので、以上でお許し願いたいと思います。
○森岡説明員 大蔵省関税局監視課長の森岡でございます。お答え申し上げます。 税関当局といたしましても、拳銃等の密輸入は、麻薬等と並んで社会悪事犯といたしまして、それ自体がきわめて反社会性が強いと同時に、他の凶悪な犯罪の原因ともなりかねないという観点で、取り締まりの最重点事項として監視、取り締まりに当たっているところでございます。 しかしながら、先ほど警察の方からも御答弁がございましたように、確かに拳銃等の密輸の検挙件数も最近ふえております。数字を若干申し上げますと、四十八年には押収した数量が十七件でございましたものが、四十九年には百四件になって、五十年は多少減って六十五件になっておりますけれども、本年は一月から六月までの間に六十五丁を押収いたしておりまして、これは昨無一年間の押収した数量と同じことになっております。 税関といたしましても、このような状況で検挙、取り締まりに万全を期すことでやっておりますけれども、御承知のとおり、羽田の場合でございますと一日の入国者の数は平均七千人ぐらいになっております。適正な検査と迅速な通関という両方の調和を図りつつ、あくまで麻薬、拳銃の発見に最重点を置いて取り締まりをするということで税関としては全力を挙げたいと思っております。しかしながら、先生御承知のとおり、旅客の数がふえると同時に、最近は隠匿の手段もかなり巧妙になっております。運び屋も、暴力団等が自分で持ってまいりますと捜査当局からマークされるということで、通常警察や税関に名前の通ってないような一般の人間に依頼をして持ち込んでくるというふうな形もとられておりまして、取り締まりも次第にむずかしくはなっておりますけれども、社会的な関心も非常に強い折でもございますし、税関としましてはなお一層検挙、取り締まりに万全を期したいと考えております。
○沖本委員 これは刑事局長にちょっと伺っておきたいのですが、きょうあたり新聞の社説にも暴力団の問題が出ておりますし、凶器を取り上げてしまうということと資金源を断てという二つの面が指摘されているわけですけれども、そういう面からいくと、かねていろいろ問題になっている総会屋の問題ですね。これは児玉が最大のというふうには言われておりますが、最近大きな集まりがあったとかなかったとか、一致団結してその方を大いにがんばろうというような話もあったとか、そういうことも聞くわけですけれども、この総会屋の問題に対していろいろむずかしい問題がかねて当委員会でも御質問して伺ってはおりますけれども、当局としてはこれに対する取り締まりはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
○安原政府委員 暴力団の取り締まりにつきましては、沖本委員御指摘のとおり、最近の傾向にかんがみまして、銃器の取り締まりを厳正にするということが必要でありますとともに、御指摘のとおり資金源を断つということが抜本的な対策でございまして、しかも、もうお聞き及びと思いますけれども、従来の賭博、競馬というようなものからだんだん資金のつくり方も多様化してまいりまして、いま御指摘のように、いわゆる総会屋とか金融業とか不動産業とかいうような方向に進んでおりまするが、いま特に御指摘の総会屋につきましても、恐喝等に当たる場合はもちろんといたしまして、その取り締まりの徹底を期するためには、商法に規定しております贈収賄というような、総会屋の犯罪というものも含めまして徹底的な取り締まりをしなければならぬというふうにかたく決意をしておりまして、そういう意味で多様な根源を断つ暴力団取り締まりということは検察の重大な方針の一つとして今後心がけていくつもりでございます。
○沖本委員 傍若無人な事件が起きたので改めて日本じゅうがびっくりしているわけですけれども、わが国においては許可なくしてこういう銃砲刀剣類は所持できないわけですね。ですから、美術品であるとか骨とう品であるとかそういうもの以外は一般人は持てないはずですから、それが持っておるということはこれは重大なことで、取り締まりに当たる治安当局がそれを持って、国民の生命、財産の安全を図るというところに大きな重点が置かれているわけですね。それが犯されるということになってくると事は重大だというふうにお受け取りになっていただかなければならないと思いますので、国民に少しでも社会不安を与えたりそういうことがないためには、万全を期していただくために徹底したことをやっていただくということでなければならないわけです。ですから、取り締まりの法律の改正もこれから十分御検討をいただきたいわけです。 それと同時に、その担当当局それぞれの御方針で取り締まりなり捜査なりいろんなことをおやりになることも重要でありますけれども、やはりその衝に当たる方々がどうすれば総合的にこれが解決できるかという点については十分な合同の話し合いをしていただいて、それぞれの分担を強化していただくし、連絡もし合っていただくということでなければ、こういうことは散発的で終わってしまうということになりますので、やはりその持っている凶器の数が推定どれくらいの数量になって、先ほど申し上げたとおりに、ある地域が広域的に無法地域になってしまうということも想像できるわけですから、連日にわたってドンパチドンパチあっちこっちで暴力団にやられたら、もう市民は日常生活、表にも出られないという事態は、これは想像できるわけです。そういうことになると、それから誘発するそのほかの問題がまだまだ考えられていくということになりますし、過激派の連中もやはり爆発物を使ったりいろんなこともあるわけですから、両方の面々を考えていただくにはどれが一番最高の方法であるか、寄り寄りいろいろと検討していただかなければならないと思います。 それで、まあこれはいわゆる公安の関係の最高の方にということになるわけです。これは地行の方でおやりになると思いますけれども、当委員会では法務大臣が担当大臣として最高でございますから、現在のこの事態に対して大臣、どういうふうになさるか、御決意をお述べいただきたいと思います。
○稻葉国務大臣 暴力団が非常にばっこして重大な事犯を起こしているわけでございますが、やはりその銃が入ってくるところを、税関の方の人が、そこでひとつぴしっとやらなければいかぬし、もし人数が足りないとか費用がないとかいうんなら、そういう予算もふやさなければいかぬでしょう。それから警察及び検察は、これは一体となって暴力事犯に対処する体制をきちっとしなければいかぬ。御指摘の法改正とか立法の点につきましても検討を早速させるようにいたします。
○沖本委員 以上で終わります。
○大竹委員長 青柳君。
○青柳委員 労使関係の中で明らかに法律に違反するような行為がいまだに後を絶たない。それは主に使用者側の行動によって法律違反が行われている。最も顕著なのは、刑事事犯と言えるような暴行、傷害、監禁といったような犯罪行為が行われている。使用者側が職制を通じてじかにやる場合もあれば、第二組合の組合員をそそのかしてやる場合もあるということでございます。 私は、当委員会におきまして、かつて北辰電機の問題を扱い、また芝信用金庫の問題を扱いましたが、北辰電機の問題は最近の参議院の予算委員会などでも言われております。そこで、たとえば上田参議院議員の質問に関連して、北辰電機のことが問われておりますが、それに対して安原刑事局長が、昭和四十九年一月から現在に至るまでの間に合計五十七名の事件が警察から東京地検に送付されてきた、暴力行為に関する法律違反あるいは傷害等の事件を受理して捜査したが、捜査の結果、被告訴人——大体これは告訴事件が多いからそういうふうに言ったようですが、被告訴人らに暴力の行使があったと認めがたいとか、あるいは暴力をふるわれたことは客観的に認められるが、だれが犯人であるかが特定しがたいということで、五十七名中四十五名については嫌疑不十分ということで不起訴処分になった、こういう答弁があったわけですけれども、概括的な不起訴理由説明ですから不徹底かもしれませんけれども、その後民事事件などで争われる中で、その被告訴人が被告としての答弁で、正当防衛、つまり自分は相手をけがさせたかもしれないけれども別に違法ではなかったというような抗弁を出しております。したがって、こういう点もありますので、何か大ぜいでやったことだからだれがやったかわからないというような、そんな単純な調べではなかったと思うのです。ですから、暴行は認めがたいということじゃない。暴行はあったんだけれども正当だという判断であったのかどうかですね。こういう事例、たとえば名前を指摘しますと、それは西村祐という被害者に対して、その加害者として摘発された人は小野沢という人でありますが、これは明らかに、仮定抗弁という形でありますけれども、正当防衛と主張しております。これは民事の裁判ではどうなるかわかりませんが、仮に正当防衛が認められるということになれば不法行為であることは明白。そうなると、検察庁が不起訴処分にしたということも不相当ということにもならざるを得ないわけでありますが、こういうのはお調べになっておりますか。
○安原政府委員 結果は嫌疑不十分となっておりまして、正当防衛などの主張を認めたいわゆる正当行為ということではないわけでございまして、嫌疑不十分でございます。先日も申し上げましたように、何分多数人の間における事柄でございますとともに、各関係者を綿密に調べましても供述に食い違いがございましたり、現場の写真がございましても遺憾ながら不鮮明であったりというようなことで、なかなか犯人が特定できなかったり、暴行自体を特定できなかったりということで、嫌疑不十分ということになっておる次第でございます。
○青柳委員 弁護士の船尾徹という人が現場の模様を証拠にとどめるために写真機を持って行きましたところ、これを奪われた、暴力をふるわれたということで告訴をしておることは、前回私が当法務委員会でも指摘いたしましたが、そういうことに関して、船尾弁護士の所属している東京弁護士会に弁護権侵害ということで調査を申し立てました結果、東京弁護士会では特別委員会を設けていろいろ慎重に調査をさせた結果に基づき、明らかに不法な行為があったというふうに認めざるを得ない、それは威力業務妨害罪であり、暴力行為等処罰ニ関スル法律違反であるということで、高瀬礼二東京地検検事正に昨年の六月十六日に、調査結果に基づいてこういう結論になったから、告訴事件もあることだから参考に送るということでお送りをしたようでありますが、この問題もやはり不起訴になったのではないかと思いますが、そういう弁護士会からの東京地検に対する文書の送付があった事実は認めますか。
○安原政府委員 そのこと自体の報告は受けておりませんが、青柳委員の御指摘のことでございますから、必ずあったと思います。
○青柳委員 恐らくこの後で不起訴処分になったのではないかと思いますけれども、そこは私まだ調査しておりませんからわかりませんが、いずれにしても、天下の弁護士と言えば、少し大げさな言い方ですけれども、弁護士が、労働組合あるいは労働者に対する人権侵害がたび重なるので、これは労働委員会に対する不当労働行為やその他の申し立て、あるいは民事訴訟における証拠資料というようなことで調査に赴くということは、当然職権行為としてなされるわけですが、これも暴力によって邪魔をされる、しかも一時的にカメラを奪われてしまうというようなことまで起こる、こういうことで、弁護士会もこれは非常に慎重に調査をしたと思うのですが、それすらなおかつ不起訴にしてしまうというような、不徹底な調査といいますか一方的な調査、それで当事者が東京地検に行ってどうして不起訴になるのかということについて問いただしたところでは、何分被害者といわれるものの数よりも、加害者として指摘されているものの数が多い。そしてそういう人たちの証言を聞くと、そういう事実はなかったと言っておるのであって、どうも結局は心証がとれないという、いわば簡単に言えば数の多い方が勝つというような結果にならざるを得ないと思うわけであります。これではうそも百遍言えば本当のことのようになる、あるいは大ぜいで口をそろえてうそを言えばクロもシロになるというような、まことに真実からほど遠いような結果が、民主主義の名において、要するに疑わしきは罰せずという民主主義の名においてまかり通るという現象を来すと思うのです。だから、徹底的に調べてなおかつ疑わしい場合には、これは起訴もできませんし、裁判所でも無罪になるのがあたりまえだと思いますけれでも、どうも調べが不徹底である。じゃ徹底的な調べとは何かということになりますと、ある程度の嫌疑が固まった場合には強制捜査もなお辞さない。これはいわゆるでっち上げのための強制捜査を私は言うのではありません。そういうことは厳に慎まなければいけませんけれども、何か任意捜査であるがゆえに、お互いに通謀し合うとかあるいは非常に横着に構えて白々しいうそをつくとかというようなことがあるとするならば、これは捜査の常道から言っても感心しない。最近のロッキード疑獄事件についてもそういうことがしばしば言われているわけであります。だから、やはり捜査を厳正、公平に尽くすという立場から言うならば、被告訴人側だけの言い分あるいはそれに同調する者だけの供述を主にするのではなくて、まさか被害者が、誣告的な意図とかあるいは何かほかの意図のもとに、宣伝的な意味を持って誇大に問題を提起する、そういうようなことが顕著でない限りは、やはり被害者の申し立てというものはよくよくのことであろう、まさか火のないところに煙を立てる、あるいは平地に波乱を巻き起こすというような意図でないということであったならば、それを疎明にして、強制捜査にも踏み切るということが望ましい。警察あるいは検察庁が自発的に犯罪の端緒をつかんで捜査を開始するというときは大抵そういう措置をとるけれども、何か告訴事件というようなものになると、ちょっとそれが民事崩れぐらいに考えて、片方の肩だけを持つと不公正である、つまり被害者として申告してくる者の肩ばかり持つわけにいかぬというようなことから、悪平等に陥って、そして被告訴人が罪を免れることが簡単にできるというようなことがあってはならないのは、一般論としても好ましくないし、特に労使関係で、最近使用者側の方が暴力をふるう。過去においては必ずしも使用者側とは言わない、むしろ組合の方が激して、多少団体交渉などで行き過ぎがあったというようなことはあったかもしれないし、またそういうことがとがめられて刑事事件になった例は無数にあります。ところが、最近は全く逆でございまして、使用者側はもう露骨な形で人権侵害をやるという状況があります。 そこで北辰電機の問題と同様に、芝信用金庫におきまして、現在相当の数の者が警察の方から東京地検に送付になっておりますが、それは法務省としては大体報告を受けておりますか。
○安原政府委員 御指摘の芝信用金庫におきます労働組合間の暴力事件というようなことにつきましては、第一組合員と第二組合員の双方からそれぞれ告訴がなされておりまして、東京地検では、これまでに第一組合側からの四十二件、あるいは第二組合側からの十三件の告訴を受理しております。捜査の結果、これまでに第二組合側の告訴については十三件すべてを不起訴処分に付しまして、なお第一組合側からの告訴につきましては、十九件を不起訴処分に付して、残り二十三件につきまして引き続き捜査中であるという報告を受けております。
○青柳委員 警察庁からも若田警備課長さんが見えておりますのでお尋ねしますが、過去の状況は時間の関係もありますから一応お尋ねいたしませんが、最近七月の五日、告訴人が福田克巳という方であります。それから七月の十三日に告訴人が宮川清、西山正雄、般石みね子、須貝豊、これら五名の人、これに関連して労働組合も告発人になっておりますけれども、そういうのをそれぞれの警視庁管下の警察署で受理して、そして警視庁では公安の方で総括的に見て、そして東京地検に送ったようでありますが、この場合どんな捜査の仕方をされたのでしょうか。
○若田説明員 ただいまお尋ねの件について、何件かございましたが、報告を受けておるところによりますと、それぞれ告訴人から状況をまず伺いまして、そして被告訴人につきましても呼び出しまして事情を聴取いたしまして、その周辺でいろいろ目撃したような者がある場合には参考人といたしまして呼び出しをいたしまして、調べをそれぞれ終えまして、検察庁の方へ送っておるという報告を受けております。
○青柳委員 この暴力問題については、もっと具体的にいろいろ法務省並びに警察庁の方からお尋ねしたいと思いますが、大臣が二時でお帰りになるということでありますので、私が冒頭に申しましたように、労使関係が、自由に、双方の法的に許された力関係で労働条件その他について妥結をするというか、そういう状況は好ましいことだと思いますけれども、許されない手段がその間に用いられるということになりますと、これは労使関係に国が介入するとかあるいは労働関係の自由を阻害するなどということではなくて、むしろその逆で、労使関係の自由なものを保障する役割りとして、法律違反、特に明白な犯罪事犯というものは排除しなければならないと考えますが、この点は大臣としてどう考えられますか。
○稻葉国務大臣 暴力を厳重に取り締まるべきものであるという点については、青柳委員のおっしゃるとおりです。
○青柳委員 質問も抽象的だからお答えも当然抽象的にならざるを得ないわけですが、もう一点だけお尋ねしますけれども、強制捜査を慎むということ、慎重であることは、人権尊重の立場から言って決して私どもやぶさかではないというか、何でも強くやりさえすればいいというような、人を見たらどろぼうと思え式な形で強権を発動するということはいけないと思いますけれども、場合によっては強制捜査ということも必要じゃないかと思いますが、この点はいかがですか、これも抽象的な質問ですけれども。
○稻葉国務大臣 犯罪を構成するということが十分考えられるというなら、強制捜査をしないでべろっとしているわけにはまいりませんな。
○青柳委員 その犯罪を構成するかどうかということの判断は、どの程度の資料、証拠によって見るべきであるか。告訴事件などについて、被害者であるがゆえに告訴するわけでありますが、被害届という形ではなくて、捜査権の発動を促すという意味で申告する告訴などの場合についても、相当断固たる措置を講ずる必要がある場合があるのではないかと思いますが、これはいかがですか。
○稻葉国務大臣 被告訴人が逃げたり罪証を隠滅したり、そういうおそれがなければ強制捜査までする必要はないのじゃないでしょうかね、犯罪捜査に支障のない限りは。
○青柳委員 そこで大臣、時間があったら聞いておいていただきたいのですが、確かに逃げるというような場合あるいはそのおそれがあるというような場合には、告訴事件であろうと何だろうと、これは証拠を確保するというだけでなしに、捜査を続け、公訴を維持する上からも身柄拘束ということは当然出てきますが、証拠隠滅というもの、これは非常にデリケートでございまして、往々にして証拠隠滅のおそれということで逮捕されたりあるいは長期に勾留されたりということがあって、私どもも弁護士の経験がありますので、これはなかなか不当な勾留ではないか、逮捕ではないかと思う場合もなきにしもあらずであります。証拠隠滅のおそれということで言うならば、告訴事件の場合いつでも証拠隠滅ができるという、そう単純ではありませんが、私がきょうお尋ねしたいと思いましたのは、北辰電機の場合でも、それから特に芝信用金庫の場合がそうでございますけれども、被害者は、被疑者たちというか、要するに加害者、被告訴人、こういう者に取り巻かれて、ただ孤立無援の中で暴行、脅迫あるいは傷害を受けている。したがって加害者側は多数であり、被害者はたった一人、第三者の目撃というものがあればこれにこしたことはないわけでありますけれども、これが職場の中でございまして、第三者的立場の人がほとんどいない。暴行を加える者は数名あるいは十数名、場合によったら数十名、ほとんど孤立無援の中で被害者がやられる。しかも、これが警察が飛び込んでいってそれを鎮圧しなければならぬような凶悪なものであるならば、これは何らかの方法で、あるいは第三者が一一〇番するとかいうことで、パトカーが飛んできてその現場を押さえるということはあり得るのでありますけれども、いわゆる軽犯罪法よりも強い形、だから集団的な暴力であります。したがって暴力行為等取り締まり法違反にも該当するのではないかと私は思いますけれども、多数で暴行を加え、多少の、十日ないし一週間のけがをさせる、そういうような事案で、医者に駆け込んで診断書を取りましても、その診断書だけでは原因は明確にならない。確かにけがはしているけれども、どこでどういう原因でけがをされたかということは診断書を見ただけではわからない。そういうようなことで、やはり現場の目撃証人がいない限りはどうしようもないという場合に、関係者と目される者を全部検挙するというわけにもいかないにしても、厳重に調べるというようなことをしなければ真相は明らかになってこないし、それから、それは口裏を合わせてということのおそれが多分にあるならば、最も直接の下手人と思われるような者は強制処分に付して、そして軽微ないしは付和雷同的な人物はそのままにしておいて参考人としてよく調べるというようなことがなされなければならぬと思うのでありますが、この点は、警察庁の方では、先ほど質問しました事案についてそういう措置はおとりになったのでしょうか。
○若田説明員 ただいまお尋ねのポイントは、状況があった場合に強制捜査の必要性があるのではないか、あるいはそういうことをやってなお捜査を徹底すべきではないかというところに帰すると思いますが、青柳委員御指摘のとおりに、この種の事案といいますのは、いろいろ調べてみますと、お互いに対立しますそれぞれの立場で、事情を聞いてみますと、真っ向から対立する反対のことをそれぞれ申し述べるわけでございますし、それから事案が起こります場所が、これまた御指摘のとおりに、通り等のように第三者の客観的な目撃が得られる場所ではございませんで、いわば密室と申しますか、限られたところでございまして、むしろ告訴人には不利な、告訴する方は一人あるいは二人ぐらいという少数で、そして被告訴人側に大ぜいがおりまして、それらの者の供述というのは真っ向から反対する状況にあるわけでございます。そういうことで、犯罪自体の立証、客観的な立証そのものについても大変むずかしゅうございますし、それから逮捕、強制捜査の必要性の場合には、逃走のおそれということがまず第一に挙げられますが、これも逃走のおそれは、同じ会社に働いておるわけでございましてございませんし、罪証隠滅のおそれと申しましても、その犯罪事実の客観的な立証も非常に得にくい。そして、大ぜいの者がおりますけれども、その間にそういう口裏を合わせるというような疑いが全然感じられないわけではないとは思いますが、具体的な事案の場合に、報告を受けておるところによりますと、そういうことを強制捜査でやらなければならないほど罪証隠滅のおそれというものは認められなかった、こういう報告を受けておる次第でございます。
○青柳委員 はからずも若田さんは告訴人が一人か二人とおっしゃいましたけれども、私がいま指摘しようと思う事案は、常に告訴人は一人なんです。先ほど私が数を挙げましたのはそれぞれ別なんです。 福田さんというのは、芝信用金庫の西小山支店というところにたった一人1たった一人といいますのは、第一組合と申しましょうか、従来の組合に入っている労働者としてはたった一人そこに行っている。ここで加害者は、中心人物は支店次長とかあるいは支店長代理その他職制的な労働者、そういう者が寄り集まって八人ないし十人、まあ少ないときは五人くらいで、西小山支店は六月中に二度ということでしたが、暴行、傷害を受けるわけですね。ですから、これは全く孤立無援な状態です。 それから今度二番目に神田支店で、宮川清という方、これも同様孤立無援、たった一人だけその組合員がそこに配転されておりまして、そこでやはり支店次長、支店長代理、こういう人たちからいろいろの傷害を受ける。これは三月四日、五月六日、五月九日、五月十日、七月五日、七月八日というように連続しているわけです。 それから新橋支店では、西山正雄という人が、やはり係長というような職務についた人が先頭に立って、多くの従業員がこの孤立無援な西山さんをやっつける。これは四月十四日一日じゅう、それから四月十五日、四月二十日、五月十九日、七月九日。 それから三田支店では、般石みね子という御婦人が、やはり松林、飯田、佐々木といったような人たちに、五月二十六日、六月四日、六月十二日、七月十日というように、頻繁に同様の暴行を受ける。いずれもたった一人なんですね。だから、二人同時にやられているという状況ではないのです。したがって、被害者が一人、加害者が多いときは十数名あるいは三十名という状況であります。これは全部職制と一緒になっている第二組合です。こういうことになりますと、これは、証拠隠滅はもう最初から当然のこととして、それはうそだということで押し通せるという自信があるわけですね。だから、驚くべきことに、告訴したことが会社の名誉を傷つけるような謹告であるということで、この五名の人はみんな懲戒解雇ですね。告訴したことが誣告を構成すると、まだ誣告ときちっと検察庁で決まったわけでも、また不起訴処分ということに決まったわけでもないのに、誣告であると。だから先を見越しているわけですよ。そして、もうおまえら出てこぬでもいいということで首にしてしまう。これは自然民事の法廷闘争にならざるを得ないわけでありますけれども、そういう中でも、これらの暴行の有無ということはまさに争点として調査をしなければならぬことに、民事裁判でもなると思うのです。したがって、警察とすればどの程度の調べをしたか、いまの御説明では具体的ではありませんが、たとえば被告訴人の側が、この具体的な事実の指摘、何月何日何時何分にだれだれがどういうことをやったと、たとえば取り囲んで殴るとかけ飛ばすとかつばを吐きかけるとか、あるいは非常な侮辱的な、ばばあとか、高給もらってどろぼうだから返しなさいとか、いろいろの罵声を浴びせかけるとか、それからあとは、こづくとか引っ張るとかつねるとか、衣服を引っ張ってボタンを取るとか、頭をどこか痛いところへぶっつけるとか、とにかくありとあらゆる拷問に等しいようなことをやるわけですね。これは度が過ぎるというと、左大腿部挫傷一週間あるいは二週間とか、足の背部の打撲傷一週間とか、右手背の擦過傷とか、いろいろの傷害行為が発生して、そしてこれは診断書が出ている。しかし、そんなものはだれがやったかわからない。極端なことを言えば、自分でけがして、いかにもでっち上げたんじゃないかと言わんばかりの形になってしまうわけでありますけれども、こういうのの答弁を真に受けるのかどうか。明らかに被害者と対立しますね。そういう場合にどういうふうな扱いをするのか、それをまず警察の方に承りたいと思います。
○若田説明員 一応警察といたしましては、そういう事案の告訴がございました場合には、まず告訴人からその状況を詳しく聴取をいたしまして、そしてその犯行があった場所等の実況見分を行うわけでございますが、いずれもこれについては実況見分を行いまして、そして今度は被告訴人の方を呼び出しまして、これから状況を聞くわけでございます。そして、すべての事件についてこれをやっておるわけでございますが、先ほどから御説明をいたしておりますとおりに、大変たくさんの人たちが通っております通りでの出来事と違いまして、被告訴人の人たちの話を聞きますと、御指摘のように、全く対立する、そういう事実はないというようなことを申すわけでございます。したがいまして、警察といたしましては、そういう双方に直接利害関係のない第三者の目撃でございますとか、あるいはそれを立証する客観的な写真その他の証拠がございましたら、大変役に立つと思いますけれども、そういう客観的な証拠関係も十分見つからないのが現実でございまして、警察といたしましては、できる限りの捜査をいたしまして、検察庁にお送りをいたしまして判断を仰ぐというようなことになっておる次第でございます。
○青柳委員 その中の一つについて指摘をいたしたいのでありますが、これは検察庁の方でもぜひ留意してもらいたいと思って私どもは注意を喚起しているわけでございますが、法務省でもぜひお聞き取りを願いたいと思うのです。 それは、先ほど言いましたように懲戒解雇になりましたものですから、民事事件の方で仮の地位を定めるような仮処分申請をこの被害者側が行うというようなことにならざるを得なくなりました。そういう中で、相手方の答弁あるいは相手方の疎明を見ますと、全くの事実無根である、これは作文もいいところだ、でっち上げもいいところだ、これを誣告と言わずして何ぞやと言わんばかり、大変な意気込み。そして、個々の加害行為についての労働者側の主張は全部否認するわけですが、ただ抽象的にそれは事実無根であると言うだけでなしに、アリバイを主張するという器用なことをやっているのがあるんです。そのときに私はどこにおりましたからその現場にはおりませんでした、あるいは席が遠いから何がそこで起こっているか私自身は余り関心もないし見なかった、したがって全く私には関係のないことでありますというようなことを、これは勢い余ってやったことだろうと思うのですが、そうやれば説得力があるとでも思ってアリバイを主張したと思うのです。ところが、たまたまこの般石という御婦人は、もういままでに何遍となくそういうつるし上げ、傷害を受けておりますので、何とか証拠を残す方法はないかと思って苦心惨たんの結果、録音機を体の秘匿する場所につけてその場に臨んだわけですね。そうしますと、録音するわけですよ。その暴行を加えた被疑者、加害者の——自分もそんな乱暴しないでくださいというようなことを言う。何をっと言うような形、このばかばばあと言うような形、そういうものは全部録音されて出てくるわけですね。そういうことがまさかあるとは思わないものだから、民事の仮処分でもって事細かにアリバイみたいなことを言う。これは真っ向から矛盾するわけです。こういうものはいずれ警察にも出すと言っておりますが、すでに民事裁判の方では出されているようであります。録音も出ているし、それを翻訳したものも出ている。しかしまだ、刑事事件として見るならば、その録音がいつ幾日どこでとられたものであり、そしてそこにあらわれる声、声紋が被疑者あるいは被害者とぴったり一致するかどうかというような科学的な検討も必要になってくるかと思いますが、そういうようなものが警察あるいは検察庁に提出された場合には、これをもとに被告訴人側の抗弁がいかに証拠隠滅のために作り事を言うか、そして前につくった調書を見れば、恐らく民事であんなことを言っているくらいですから、警察でもあるいは検察庁でもアリバイを主張しているんじゃなかろうかと思うわけです。こういう事実関係についてそういう証拠が提出された場合にはどういう扱いをされますか。まず警察庁の方へも、関心を求めて、すでに地検へ送ったことではあるけれども、もう一遍調べてもらえるかというようなことを被害者側では言っている。そしたらそれをやってもいいというお話があるということですが、その点いかがですか。
○若田説明員 私ども警察の立場からいたしますと、すでにそういう事犯が行われたときにそういう状態でとられておりますならば、告訴をいたされるときにあらゆる証拠をそろえて出していただければもっと事案の究明に役に立ったのではないかと思います。今後とも、そういうものがございます場合には、ぜひひとつ最初に告訴をなさるときに添えて提出をいただきたい。 いまのお話では、事後になりましたが、そういうものがある、それを事後に提出してすでに検察庁に送付済みの事件ではあるがどうかというお尋ねでございますが、これは検察庁の方ともよく連絡をとりまして、必要な場合には警察の方でも補充的な捜査をやるにやぶさかではございませんが、いずれにいたしましても、いま青柳委員御指摘のとおりに、告訴のときに提出をされていなかっただけに、その録音なりあるいは写真というようなものがございましても、大分たって提出されるようなものにつきましては、十分それが真実に——その時点でとられたものであるかどうか、声紋でございますとか、そういうものを確認して、確かにそのときのものであるということをまず確認する手段といいますか、方法が前提でございまして、それを通りましてそのときの証拠であるということが確認されました場合には、それをもとにいたしまして補充捜査をやるべきだと考えております。
○安原政府委員 いま青柳委員御指摘のような証拠の問題につきましての考え方は、いま警察の課長の申されたとおりでございまして、芝信用金庫の事件に限ってみますると、検察庁の苦心は、結局店舗の中で行われた事犯であって、それを見ている第三者的立場の目撃証人がほとんどない。そうしてしかも、主張が被告訴人と告訴人の間で対立しておる。そこに真否いずれに軍配を上げるべきかということに悩んだわけでございまして、いま御指摘のように録音というものがあるということに相なりますれば、いまも青柳委員みずから御指摘のとおり、それがその場における録音であることとの結びつき、あるいはその録音の声が被告訴人であることとの結びつきというようなことを確かめられるといたしますならば、これほど有力な証拠はないわけでございまして、この種事件につきましては、往々にして、いま警察庁からも御指摘のとおり、被害者側の協力が必ずしも十分でないということもこのような告訴事件の捜査の難点でもございますので、いま御指摘のようなことがあれば、検察庁としてぜひ前向きで処理をするものと私は確信をいたしておりますので、御協力につきましてもよろしくお願いをしたい、かように思います。
○青柳委員 いずれも前向きな御答弁で、私どももぜひそのようにしていただきたい。ただ、すぐその場でどうして出さなかったかというのについては、被害者側にも多少のんびりしたところがあるようにも見えますけれども、なかなかテープを録音再生するのにも日にちがかかるとか、いろいろの手数がかかるものですから、つい後回しになってしまったとかいうような面はあろうかと思います。 それから、これはちょっとけがの功名か何か知りませんけれども、最初にそれを出しておくと、警察あるいは検察庁と先方さんがすぐ連絡がとれ合ってもみ消されてしまうというような心配が往々にしてあるのです。だから、向こうの方で答弁をどんなようにするか、警察での答弁。検察庁の答弁というのは知るべくもないわけですが、民事になりますと、堂々と活字になって出てまいりますし、それから、向こうの疎明書の中に署名入りで、私はこのときにどうこうと出てくるものですから、もうこれはいまや後から取り返しがつかぬわけですね。そこで、これはどうだという形で出していけば非常に効果的であるというような面もなきにしもあらず。もみ消しということが捜査官憲に対して行われるというようなことはわれわれ考えたくないのでありますけれども、しかし、案外と情報が漏れるというようなことがあれば、相手方は別に捜査官憲と通謀してというようなことではなしに、いろいろともみ消しをやるおそれがありますので、告訴する際にすべて手持ちの資料を全部出すというようなことが果たして戦術的にうまくいくかどうか。それは私どもの余り関知したことではありませんが、まあそういう点もなるべく早くやってくれ、それからなるべくあるものは出して協力してくれというのは、内ゲバをやっている暴力学生たちの例を見ればよくわかりますので、被害者側は極力法治国家の国民として自分の権利を守るのにふさわしい態度で捜査官憲、治安当局にも接触を持っていく、これからもそうしてもらうように私どもいろいろと注意したいと思っておりますが、こういう集団暴力で、しかも孤立無援の中にある被害者の人権というものは、慎重の上にも慎重に保障してやらなければ、もう後は自分で、そこで自力救済ですか、自分の命を賭してでも暴行をふるう連中に立ち向かって、そうして場合によると過剰防衛だなどというようなことで自分自身が引っ張られる、しかしそこで黒白は明らかにしてもらうというようなことに突っ走らないという保証はないのですね。こうなれば、法治国の権威いずこに行ったかということにもなるわけでありまして、余り被疑者の人権、被疑者の人権というような形で消極的になるのが民主主義でもなかろうというふうにいまのような状況の中では考えます。ぜひその点は十分な留意をしていただきたいということを申し上げて、法務省、警察庁に対する質疑はこれで終わります。 次いで、最高裁判所にお尋ねをしたいと思いますが、最高裁判所にお尋ねしたいことはたった一点だけであります。 それはもうすでに二回にわたって質問を繰り返しました例の女性修習生に対する差別発言の問題であります。これは、去る九月十四日に最高裁判所の司法研修所の所長が二人の教官に対して——教官というか、一人は事務局長、一人は教官、二人の方に対して注意処分を行ったということが新聞にも発表になりましたし、非公式に研修所長談話の内容、 〔委員長退席、田中(覚)委員長代理着席〕 それから注意の理由の要旨というものを印刷したものを法務委員という形でいただいておりますのでわかりましたが、最初にお尋ねするのは、こういうような措置をおとりになるまでに、問題を提起された事務局長あるいは三人の教官から、大塚正夫所長なりあるいはその他の最高裁当局の方が親しく事情聴取をおやりになったのかどうかという点です。
○勝見最高裁判所長官代理者 例の質問書が出されました直後、該当の教官及び事務局長から書面をもってそれぞれ当時の状況につきまして報告をさせたわけでございます。その後書面はとっておりませんけれども、司法研修所所長が何回おやりになりましたか私必ずしも正確には確知しておりませんが、私どもの方も折に触れまして口頭でいろいろお尋ねしてお答えをいただいた次第でございます。
○青柳委員 口頭でいろいろ事情をお聞きになった結果、二人については注意をすべきものと認められ、他の二人については注意という措置をとる必要もないということでそういうことをおやりにならなかったんだろうと思います。九月十五日の朝日新聞では、「厳重注意は「処分」ではないが、司法研修所としては異例の措置である。問題になった四人のうち、残る二教官は「女性差別の発言とは認められない」と、不問にされた。」これは報道でございます。果たしてこのかぎ括弧のように「女性差別の発言とは認められない」というような結論になった結果、注意はしないということになったのかどうかお尋ねしたいのですが、この記事によりますと、「不問にされた。」という後に続いて「同研修所では事実調査の結果、「発言内容には若干の違いがある」としながらも、山本教官については「女性が法曹人として活躍することを否定している、と受け取られる恐れのある発言をした」との理由で、また、川寄事務局長については「女性が裁判官になることに消極的であると受け取られる恐れのある発言をした」との理由で、それぞれ今回の措置を取った。」こういうふうに事実報道されておるのでありますが、最初のこの二人の人は「女性差別の発言とは認められない」というふうな認定になったんでしょうか、どうでしょうか。
○勝見最高裁判所長官代理者 御指摘の朝日新聞の報道記事は、私どもが記者クラブで申し上げたとおり、ほとんど正確なものと考えます。 なお、御指摘の不問に付しました二教官につきまして、まず大石教官でございますが、もうすでに申し上げたとおりでございますけれども、その要旨は、とにかく社会が現在の状態では女性にとって必ずしもやりやすい状況にはない。その中で女性が法曹としてやっていくには、やはり男性にも増して覚悟と能力が要るのではないか。だから男性以上に修習に励んで能力をつける必要があるというように、大石教官の発言は私どもとしてはそういうふうに認識したわけであります。したがいまして、同教官の発言は、いわば現実の社会の姿を説明して、むしろ女性修習生を激励したものだ。発言内容について何ら非難されるべきことはないということで不問に付したものと考えております。 次いで、中山教官の方でございますが、これも前回及び前々回の当委員会における御報告とあるいは重複するかもしれませんが、中山教官の発言の要旨は、女性の修習生で、修習終了後家庭に入られまして、主婦としてりっぱな家庭を築いておる人もかなりおられる。せっかく法曹資格を取得しながら家庭に入るのは、一見もったいないような感がしないでもないけれども、主婦としてりっぱな家庭を築いて優秀な子孫を送り出すということも一つの生き方ではないかというような趣旨と私どもは解するわけでありまして、この中山教官の発言は、先ほど御指摘のような、女性差別の発言というふうには認められませんし、当時の発言の状況から申しても、女性差別と受け取られるおそれもないということで、両教官につきましては何らの措置をしないということにしたものと私どもは考えておるわけでございます。
○青柳委員 大石それから中山両教官の考え方は、積極的に差別をするというような考え方はなさそうだ、まあ現実を述べて所感を言い、それが、ある場合には激励にもなっているんではないかというようにとれるんだからこれでいいんだというお考えがあって、注意処分は——処分といいますか、注意措置はとらなかったというふうなことでありますけれども、いささか現状肯定的であり、しかも何か不利な条件を合理化するというか、女性は産休とかいろいろ男性と違ったハンディキャップを持っているんであるから、がんばれよと言うだけでは不十分であって、むしろそういう点では、不満があればどういうところを直すべきか謙虚に修習生の意見も聞いてみるとか、自分もやはり積極的な発言をするとかいうのが教官としてふさわしいのであって、何か否定的な現象を既定のものとして、それに対処する道を説教するというのでは、修習生から、あれは差別発言だというふうな印象を受けるというのはもっともじゃないかと私は思うのですね。そういう点では、なるほど事務局長や山本教官に比べれば情は軽いかもしれないけれども、現実に修習生の方の受けとめたのは同じようなものなんですね。差別がないわけです。だから、並べて指摘されて調査を依頼されているわけですから、これはいささか不公平な措置ではないか。つまり、注意を受けたお二人の方から見れば、自分たち二人だけが受ける筋のものではない。少なくとも五十歩百歩。何も大石さんと中山さんだけがいい子になるというか、りっぱなものであって、二人だけは不注意であったというようなことではないと思うのです。だから、こういう点は、どうも市川房枝さんたちが、とてもこんな処分ではがまんできないということで、何か裁判官訴追委員会の方に問題を提起するようなことが新聞に出ております。私は、そのことがいいか悪いかとここで申し上げているわけではありませんけれども、そういう訴追委員会の問題にまでならない前に自粛すべきではなかったかとかねがね思っておったし、そしてそのことも委員会でもちょっと触れたような気もするんです。ところが、この程度で終わってしまったということは非常に遺憾なことでありますので、今後とも、これらの問題については、よほど自粛自戒をしていただきたいということを申し上げて終わります。
○田中(覚)委員長代理 次回は、来る十五日金曜日午前十時理事会、十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後二時四十一分散会