懲罰委員会 第2号
- 発言数
- 3 件
- 登壇者
- 2 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1976/10/27
会議録
○宇田委員長 これより会議を開きます。 去る十五日、院議をもって付託されました議員紺野与次郎君懲罰事犯の件を議題といたします。 まず、渡部一郎君から懲罰動議提出の理由について説明を求めることにいたします。渡部一郎君。
○渡部(一)議員 私は、議員紺野与次郎君を懲罰に付するの動議に関し、動議提出者を代表して、その趣旨を説明いたしたいと存じます。 紺野与次郎君は、去る九月二十八日、本院本会議場において、公明党を代表した矢野絢也議員の発言中、「反共のイヌ、イヌがほえている」と再三にわたって公然と怒号を浴びせかけたのであります。 本院本会議において、しかも公党を代表して、議員が虚偽や中傷を一切交えず、事実に基づいて冷静な質問を行っている最中に、言語道断の「イヌ」という最大級の暴言を繰り返し発言された紺野君の行為は、まさに国会法第百十九条に示された「無礼の言」であり、矢野議員並びに公明党を著しく侮辱するばかりか、国権の最高機関である国会の品位を著しく傷つけ、同僚国会議員に嫌悪の念を抱かしめたのであります。 このような議会史上前代未聞ともいうべき紺野君の発言は、国会法並びに衆議院規則に抵触するところであり、議会の尊厳と議員の品位を傷つけるものであることは、だれしもがひとしく認めるところであります。 紺野君は、その直後、みずからの愚行を恥じてか釈明もせず黙りこくったままでありました。ところが、逆に紺野君の属する日本共産党・革新共同は、主として次のように反論いたしました。 矢野質問は憲法違反の質問である。そうして、そのゆえにあたかも犬呼ばわりされても当然だと言わんばかりの論評を繰り返し、犬という表現は文学的表現であって、それを無礼な発言と受け取る方が文学的教養のない誤った受け取り方である。この点については、後ほどいかに非論理的な主張であるかは明確にいたしますが、そしてさらに、暴言に抗議いたしましたわが党正木良明議員を指して、紺野君を暴行したというすりかえの論理を展開し、正木君の暴行写真と称するものを全国的に宣伝するに至ったのであります。まず、正木君の暴行云々につきましては、全くその事実はないことを明確に述べておきます。 しかも、何を迷ってか日本共産党革新共同の諸君は、紺野君の暴言よりも正木良明議員の行為を懲罰の対象にすべきであると主張しているのであります。 私は、紺野君の暴言を明確にこの耳で聞き、また、その後の同僚の正木議員の抗議を目の前で詳細に見守っておりました一人として、当時の状況をここで明確にしておきたいと存じております。 紺野君の暴言については、右斜め前に座っておりました正木議員は、当初聞き流していたのでありますが、余り執拗に矢野議員を「イヌ、イヌ」と「イヌ」呼ばわりするために、たまりかねて後ろを振り向き、紺野君に対し、「イヌ」とは何事かとその場で抗議し、暴言の取り消しと謝罪を要求したのであります。それを日本共産党・革新共同の諸君は、強引に暴力行為に結びつけようと、正木議員がつばを吐きかけたとか三度にわたってこづいたとか等、もっともらしく主張されているのであります。これは意図的にみずから犯した暴言問題をすりかえようとする行為と言わざるを得ないのであります。 九月三十日付一般紙のコラムを見ましても、国会記者席から見ていても、正木氏がつばを吐きかけたり、三度にわたる暴力をふるったりした事実はなかったと述べているほどであります。 しかるに日本共産党は、その機関紙等であくまでも暴力行為をでっち上げようとして、分解写真なるものを針小棒大に宣伝いたしているのであります。これは正木君が紺野君に対し、指を突きつけて抗議しているのにすぎないものであります。関係者の写真ないし十六ミリフィルム等を点検いたしましても、指さしている映像はありますが、直接的に暴力をふるったというシーンなどはありませんでした。写真は、カメラ撮影の角度や距離、さらには説明の仕方によっては全く真相と異なるものとなることは周知のとおりでありますが、瞬間的な映像をもって、かかるトリックで国民を瞞着しようとするに至っては、初めの暴言に対しても全く反省がなかったものと認めざるを得ないのであります。 よって、私ども提案者は、ここに国会法第百二十一条第三項の手続に従って、紺野与次郎君懲罰の動議を提出した次第であります。 議院運営委員会理事会においては、社会党の理事より、再三にわたって釈明による話し合い解決、すなわち、紺野君の釈明、謝罪と動議取り下げの提案があわせてなされたのであります。これに対して私どもは、紺野君がもし反省し、釈明するのであれば、紳士的に動議を再検討するという柔軟な姿勢を示し、各党の御了解を得て今日まで日本共産党・革新共同より遺憾の意が表明されるのを待っていたのでありますが、日本共産党・革新共同の理事は、紺野君の暴言について釈明するどころか、かえって、不規則発言であり、会議録にも残っていないのだから動議を撤回すべきであるという意味の居直りの態度を示されたのであります。 このような態度は、無視できないところであります。すなわち、会議録に残らない不規則発言であれば、どのような暴言を吐いても一向に構わないという驚くべき主張と言わざるを得ないからであります。本会議中における不規則発言は、すでに過去において問題になった事例があり、当該議員が謝罪した先例はすでに存在しているのであり、これを覆す主張であるというべきであります。 矢野議員の質問中には、問題の暴言のほかにも、紺野君の同僚議員席から、「反共のちょうちん持ち」「自民党から幾ら金をもらった」「暗黒裁判の擁護者」「特高」「軍国主義者」など下品な口をきわめた暴言が発せられ、同議員の質問が著しく妨害されましたが、これら一連のやじも、会議録に残らないものであれば、どのような暴言、無礼の言を吐いても一向に恥じないとする態度のあらわれであったかと、いまさらながらその異常さを再認識いたしたものであります。 批判者に対する「イヌ」畜生呼ばわりは、紺野君の所属する党の出版物には多く認められるところであり、同党や同党関係者の諸君には口癖か、あるいはなれた表現かもしれませんけれども、良識ある世人にとっては重大なショックをもたらす発言であります。「イヌ」呼ばわり発言についても、日本共産党・革新共同の代表は、「犬は吠えてもキャラバンは進む」という言葉からとった文学的な香りのある表現であると、へ理屈を展開しているようであります。このような議論は世間一般では決して通用しないことは明らかであります。仮に、一般論として犬がほえることが文学的表現の比喩であったとしても、今度の場合、矢野議員を対象として犬扱いしたという意味において、文学的表現云々の弁解は一切通用しないものであります。 いわゆる世間一般の常識人の判断によれば、他人を「イヌ」と罵倒する場合、この言葉には回し者、スパイ、劣る者というような悔べつの意味が込められているのであります。日本共産党がよく引用なさる広辞苑でも同様のことが書かれております。話し合い解決をあっせんされた社会党においても、この発言の非常識さにまゆをひそめる方が多いことを、私どもは伺っているのであります。 矢野議員は、代表質問の中で、「みずからに対する批判者を犬扱いする体質、これは戦前の権力者が共産党をアカ呼ばわりしたと同じ発想で、批判拒否、独善そのものではないかと、私は疑問を持つ」と述べましたが、この疑問がはからずも現実のものとなって、国民の前に証明されたわけであります。 特に、同君は、十五日の本会議における身上弁明の際、「やむにやまれぬ抗議の声だった」「宮本委員長に対する治安維持法下の暗黒裁判の判決を全く無批判に扱ったことに対する憤りであった」「全く不当な言いがかりであった」などと強弁し、治安維持法、特高警察によって弾圧されたみずからの体験を、ことさら強調して行為の正当性を主張しているのであります。 しかし、いかに強弁しようとも、同君の行為は戦前の問題ではなく、治安維持法や特高警察など存在しない民主憲法下においてなされたことは疑いのない事実であり、その事実を打ち消すことはできないのであります。 しかも、矢野議員は、共産党リンチ事件に関する確定判決で認定している事実そのものを単に質問しただけであり、戦前の治安維持法や特高警察の正当性を容認したものでないことは明らかであります。これは本会議場において冷静に矢野質問を聞いておれば、当然理解できたはずであるからであります。 しかるに、同君はみずからの暴言行為を正当化するのみならず、矢野議員が、あたかも戦前の治安維持法や特高警察を肯定しているかのごとき発言を行い、露骨に問題の本質をすりかえようといたしたのであります。みずからの非を率直に認めず、問題をすりかえ、みずからを正当化しようとする行為は、まことに遺憾なことでございます。 紺野与次郎君と言えば、日本共産党の中でも、かつては最高幹部の一人であり、宮本委員長の先輩として一目置かれている人物と評価されておりました。この紺野君がこのような暴言をほしいままにし、何ら反省の態度を示さないことは、同君のためにもまことに残念でならないと感じておりますのは私一人ではございません。 同君の日常の温厚さから見て、同君の発言は同君の本意ではなかったのではないか、また、同君は自身の発言に対しあるいは率直に釈明したかったのではないかとさえ考えられる節もございますが、しかし、それが周囲の状況により不可能になったと思えて仕方がないのであります。 「罪を憎んで人を憎まず」との格言もございますが、私ども提案者は紺野君個人に対し何ら個人的感情を持つものでないことは、この際、はっきりと言明いたしておきたいと存じます。 しかし、この行為を無視することはできないのでございまして、これほどの暴言を放置いたしますならば、国民の信託を受けて国政を討議する権威ある良識の府である国会を、ばり雑言、誹謗、中傷の修羅場に転落させることになるからであります。 衆議院は、国権の最高機関であり、言論の府であります。憲法第五十一条によって、「議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。」と規定されています。この機能を守るためには、そして議会制民主主義がその内部から崩されないためには、国会みずからが良識と規律を持たなければならないことは当然のことであります。憲法第五十八条の「両議院は、各各その會議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。」との規定は、それを端的に示したものであります。すなわち、国会は他からの介入を徹底的に排除しているがゆえに、みずからを厳しく律する規定をも明確にいたしているわけであります。 仮にも、国会自体がその規定を踏みにじった者を放置したならば、国会の機能は遠からず麻痺し、国民の信頼を失うことは火を見るよりも明らかなのであります。 特に、国会自体がみずからを律する規定としては、国会法があり、衆議院がみずからを律する規定として衆議院規則があることは、いまさら指摘するまでもございません。 国会法では、第百十九条で「各議院において、無礼の言を用い、又は他人の私生活にわたる言論をしてはならない。」と規定し、第百二十条では「議院の会議又は委員会において、侮辱を被つた議員は、これを議院に訴えて処分を求めることができる。」と規定しております。また、衆議院規則第二百十一条では「議員は、議院の品位を重んじなければならない。」と規定し、第二百十二条では「議員は、互いに敬称を用いなければならない。」と規定いたしております。 これら一つ一つの規定は、どれ一つをとってみましても、紺野君の発言の趣旨とはほど遠いものであります。規定を踏みにじった行為は、その行為に対する反省がない限り、規定にのっとって処分を受けることはやむを得ないことであります。その行為をそのまま放置していることは、結果的に、わが国の議会制民主主義の形骸化に手をかし、究極的には議会政治を崩壊させる行為に加担したことになるのであります。 私どもが今回、紺野与次郎君の暴言に対し懲罰動議を提案いたしました最大の理由も、わが国の議会政治をみすみす崩壊させる行為を放置しておけないという立場から発したものであります。 さてここで、今回の暴言に関連して、矢野議員が共産党リンチ事件を取り上げた点に関し、共産党の諸君が憲法違反であるかのごとく主張しておりますので、この際、いわれなき批判を正すものであります。 矢野質問は、確定された判決の当否に批判を加えたものでもなければ、また、判決によって認定された事実認定の当否を論じたものでもありません。このことは、矢野質問の流れを読めば明白であります。明確に裁判によって共産党リンチ事件の事実が認定されているのに対し、共産党はあくまでも、でっち上げのキャンペーンを繰り広げているのであります。 そこで、矢野質問は、どういう事実行為に対して裁判所がいかなる認定をしたかを質問しているのにすぎません。事実、矢野質問がこの趣旨に立っていることは、法務大臣が裁判所の確定判決によって認定された事実について答弁していることでも証明されるものであります。憲法違反などと言えるものでないことは明らかであります。 意図的に特定の一部分を取り上げ、それを振り回して憲法違反かのように主張することは、ためにする批判という以外の何物でもなく、憲法違反に名をかりて言論を封殺する暴挙と言わなければならないのであります。 十五日の議院運営委員会理事会の席上、衆議院法制局長の法的見解が述べられましたが、それによりますと、「矢野議員の発言は、慎重に検討いたしましたところ、憲法違反ではない」、「この点につきまして、つぶさに議事録によって矢野発言を点検いたしましたところ、知りたいという要望は、過去の事実の有無そのものでありまして、その事実に関する裁判の事実認定の当否を問題としているとは認められません。したがって、それが直ちに裁判批判につながり、司法権の独立に対する侵害をもたらすことにはならない、と考えます。」とのことでありました。この見解は、まさに私ども提案者の立場と合致し、これを証明するものであります。 何とぞ議員諸氏におかれましては、わが国の議会政治の健全なる発展のためにも、今回私どもの提出した動議に対して、ふるって御賛同あらんことを切に要望し、かつ、この動議が、国政審議の品格を取り戻し、議会制民主主義の発展の道標となることを期待いたしまして、提案理由の趣旨説明といたします。よろしくお願いいたします。
○宇田委員長 これにて趣旨説明は終わりました。 ただいまの趣旨説明に対する質疑は後日に譲ることにいたします。 本日は、これにて散会いたします。 午前十時五十三分散会