予算委員会 第3号
- 発言数
- 327 件
- 登壇者
- 25 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1976/01/30
会議録
○荒舩委員長 これより会議を開きます。 昭和五十一年度一般会計予算、昭和五十一年度特別会計予算及び昭和五十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。不破哲三君。
○不破委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、三木総理を初め関係閣僚に、特に経済と国民生活に関する諸問題、それからまた、政府の政治姿勢に関する問題について質問をしたいと思います。 まず最初に、経済と国民生活に関する問題でありますが、この質問に入る前に、総理に一言御要望したいことがあります。 本会議の席上でわが党の議員が質問をいたしますと、総理は、共産党は大企業をつぶす立場に立っているからということで、非常にイデオロギー的な答弁をされます。しかし、私どもは、日本の国の経済の問題について、昨年十二月に決定しました中央委員会総会での政策においても、当面の経済の民主的な再建の構想を発表しております。念のために関係部分を読み上げますと、「日本共産党のこの政策は、大企業を国有化して社会主義をめざすというものではなく、資本主義のわく内で、経済民主主義を実現しようというものです。大企業の横暴やもうけすぎをおさえ、国民本位の民主的改革をすすめることは、大企業をつぶすというのではなく、大企業にも国民本位の経済発展の道にそって、その役割を果たさせるようにすることです。」こういう基本的な態度を明記しております。 総理はイデオロギー論争はいやだと言われますが、そういうイデオロギー的な答弁は避けられて、私どもが提起する問題点について、私どもの質問に沿って答弁をお願いしたいということをまず最初に申し上げておきます。よろしいですね。——それでは、そのことを確認いただいたことにして、本論に入りますが、第一の問題は高度成長型の政治の問題であります。 総理は、昨年来、施政方針演説のたびに、高度成長型の時代は終わった、この高度成長からの転換が問題だということを繰り返し強調されます。しかし、国の経済政策を問題にする場合、転換と言う場合には、ただ国民経済の成長率が結果として高いものから低いものに下がる、このことだけを問題にするわけにはいかないわけであります。問題は、どういう型の政治を行うかであります。どういう型の政治からどういう型の政治に転換するかであります。 この点で申し上げたいと思うのですが、自民党政府が高度成長政策ということを日程に上せてからずいぶん長いことになります。その中で、国民に非常に生々しい記憶として残っている一つの計画を言いますと、ちょうど十五年前、十六年になりますか、池田内閣の時代に、所得倍増計画というものを政府は発表されました。これが、大きな意味では、今日問題になっている高度成長政策のいわば最初の段階の代表であろうかと思います。この所得倍増計画は、当時政府が国民に約束をした公約でありました。長期の公約でありました。その基本的な考え方を言えば、国民生活を、完全雇用と生活水準の向上を実現する、これが目的である。そのための手段として経済成長を行う。そして、この経済成長のための諸手段は次のとおりということがこれには明証されておりました。 それ以来十五年余りにわたってそのレールを走ってきたわけですが、手段である経済成長、これは確かに超過達成されました。中でも大企業の成長ぶりというのは、これは私が事細かに挙げないでも相当なものであります。若干申し上げますと、最近私どもの方で、十二の産業分野の六十四の代表的な企業について計算をしてみましたが、この計画が始まった一九六〇年から最近まで、六十四社の売上高は九・四倍、固定資産は五・四倍、なかんずく持っている土地の量は十六・九倍であります。それからまた、よく世界で上位百社はどこにあるかということを発表します。六〇年当時には、世界じゅうの資本主義国の企業の上位両社を集めてみると、その中では日本はわずか一社。それが現在では上位百社のうちで十二社で、アメリカに次いで第二位の地位を占めるようになっております。この点では、確かに手段としての大企業の成長には大いに成功した。 ところが、国民の生活の問題、目的であったはずの生活の問題はどうかというと、政府自体がいろいろな分野で中間総括など発表されておりますが、これはなかなか目的どおり進行していない。しかも、具体的に言えば、高度成長の結果の中から物価の値上がりの問題が起きる。公害が野放しになる。生活基盤のおくれというものはだれしも認めざるを得ない状態だ。それから、福祉が犠牲になる。農業、漁業、中小企業、同じ産業の中でもそういう弱い立場の産業や企業の困難は加重をする。こういう四重、五重の困難と圧迫が、目的であるはずの国民生活の分野で起きてきたというのが現実だと思います。私は、ここに検討すべき最大の問題があると思う。 こういう結果を生み出した高度成長政策の性格を、われわれは大企業優先の政策と呼んでおります。中身はこれから問題にいたしますが、この大企業優先の立場、政府が手段としてうたったはずの大企業の高度成長にはあらゆる手だてを尽くしたが、結果として公約したはずの目的の方はさっぱり進行しない。この型の政治を、本来の国民生活本位の国民生活向上を実現するための政策に転換するかどうか、これが私どもが考えている大企業高度成長型の政治から新しい国民本位の政治への転換であります。もし本当に三木総理が転換を問題にされるなら、ここを問題にしなければいけない。特に現在は不況とインフレの二重苦で、昨年の中小企業の倒産だけでも一万二千数百件を数える。完全失業者、政府発表は百万ですが、実際の失業者数は三百万から五百万とも推定されている。こういう困難な中で、つまり国民生活の困難な低成長、インフレのもとで大企業中心の政治が実行されるところにわれわれ国民は、多くの国民は非常な危惧と批判を持つわけであります。総理が転換を問題にされるなら、この転換に本当に大胆に思い切って取り組むつもりがあるのかどうか、まずその姿勢について最初にお伺いしたいと思います。
○三木内閣総理大臣 高度経済成長というものが国民の生活水準を高め、いろいろな雇用の機会を増大した、これは大変に大きなメリットがあったと思います。けれども、それは、いま御指摘になったような環境問題とかあるいは社会資本の立ちおくれとか、いろいろなひずみというものが非常にあらわれてきたことは事実であります。また、資源という問題に対しての考え方も違ってきた。そういうことで今日はいわゆる安定成長ということに路線を切りかえるときに来たわけですが、安定成長ということは、結局、量的な拡大から国民の生活を中心とした質的な充実に向かって政治の方向を向けていくということでありますから、したがって、いま言われたように、立ちおくれた社会資本あるいはまた、国民生活の質的な向上に向かって今後の政治の方向は向けられていかなければならぬと考えておる次第でございます。
○不破委員 抽象的な方向づけのお答えでしたが、やはり政治の問題は具体的であると思うのです。ですから、具体的な幾つかの問題を指摘して御質問したいと思うのですが、たとえば税金の問題です。高度成長時代につくられた日本の税金が、租税特別措置法とかあるいは法人税法の準備金や引当金の扱いとかいう点で、企業の蓄積に非常に有利にできてきた。これはもう内外で有名なことであります。その結果、これは、たしか大蔵省側から大蔵委員会にも提出したことがある資料だと思うのですが、企業にかかっている税金の実効税率を資本の階層別に比べてみると、一番大きな企業が税率が一番低いという逆累進の結果が生まれております。大蔵大臣に伺いますが、大蔵省の側で計算された資本の階層別の実効税率はどういうようになっているでしょうか。
○大平国務大臣 大企業と中小企業の税負担の比較の問題でございますが、資料の制約もございまして推計計算が必要でございますので、実質的な比較となりますと大変むずかしゅうございますけれども、一つの試算といたしまして、大蔵省が資本金階級別法人税負担割合というのをつくりまして、四十六年度分以降国会に提出いたしております。それによりますと、四十六年度は資本金一億円以下が三三・六%、一億円から百億円未満が三四・八%、百億円以上が三一%となっております。これが、その後四十七年は第一分類が三四・一%、その次が三五%、百億円以上が三四・一%。四十八年が三三・四%、三五・四%、三二・五%となっております。それから、四十九年に税法が改正になりまして、法人税率が上がりましたけれども、中小法人の場合には税率は据え置いた経緯がございますし、その後の特別措置の整理の関係等がございますので、今日は、この四十八年度の負担割合というものには相当実質的な変更があるのではないかと考えております。
○不破委員 いま大蔵大臣が四十六年、四十七年、四十八年の数字を出されましたが、いまの発表でも明らかなように、資本金百億円以上の巨大企業の場合には平均よりも低い。それから、四十八年度の場合について言いますと、資本金一億円以下の中小企業の場合よりも低い。つまり、大企業にいくほど税率が低くなるというのが大蔵省の調査の結果でもはっきりあらわれているわけであります。 私ども、大蔵省、国税庁から出された資料でもう少し細かい階層別の試算をしてみたことがありますが、それによりますと、私どもの計算は、法人事業税など地方税分もこの負担に加味するとか、あるいは実効税率の分母の方に引当金を入れるとか、大蔵省の計算と多少方式が違いますので数字は照合しませんが、たとえば四十七年度の数字で言うと、一番高い税率負担をしているのが、資本金千万円から五千万円未満の中小企業、これが四三・四%でした。それに対して資本金百億円以上の企業は三九・〇%でした。 それからまた、四十八年度は、資本金千万円以上五千万円未満の中小企業がやはり四五・二%で最高で、百億円以上の企業は三六・五%で最低、こういう結果が出ております。 私は、こういうように資本の規模、経済の規模が大きくなればなるほど税率が低くなるという逆累進の結果というのは、世界の資本主義国の中でも余り例のないものではないかと思うのです。この点は、私どもだけではなしに、銀行などの側でも自覚をしておりまして、たとえば、これは昨年の三井銀行の調査月報という銀行側の分析ですけれども、日本の場合に企業の投資量が相対的に多いのは、租税特別措置法とかあるいは引当金、準備金、それから減価償却などの面で世界でも有数の優遇を受けているからだということを、資本側としても明確な分析を出しております。私は、ここにメスを入れることが、いまの財政問題では、総理が言う高度成長、企業奉仕型から国民生活奉仕型へ転換するいわば一つの試金石、物差しではないかと思うのです。 それで伺いたいのですが、そういう特に大企業が大幅に利用している優遇措置に関して、抜本的な見直しをするつもりがあるかどうか、今回たしか政府は若干の見直しをされましたが、その見直しの量は金額にして一体幾らぐらいになるのか。これから先の抜本的な見直しはどういうプログラムになっているのか。この点を続けてお伺いしたいと思います。
○大平国務大臣 敗戦後のわが国経済の再建の過程におきまして、壊滅いたしました経済の基盤を確立いたしまして、ともかくも再建の基礎をつくり上げるという道程におきまして、租税特別措置が政策手段といたしまして活用されてまいりましたことは、不破さんも御承知のとおりでございます。しかし、これはそういう過程における過渡的な政策手段でございまして、漸次経済の復興、正常化とともに見直してまいることは当然のことでございまして、今日までも鋭意その努力は払ってまいったつもりでございます。 現在の段階におきまして、減税効果を持つ特別措置はどれだけ残っておるかと申しますと、百九十六項目あるわけでございます。今回の見直しにおきましては、このうち六十九項目を見直しの対象といたしまして、十一項目を廃止し、五十八項目について縮減を実行いたしたわけでございます。これは法人税、所得税を含めて、その他の税を含めての計算でございますが、いまあなたの問題にされておる法人税関係だけをとってみますと、現在あるのは九十八項目でございますけれども、そのうち五十九項目を整理、合理化の対象といたしております。 租税特別措置の整理、合理化は、これまではほぼ一割程度をやってまいったのが通例でございましたけれども、今回全体として三分の一を超える見直し、整理をいたしたわけでございます。すなわち、百九十六項目のうち六十九項目に手をつけました。法人税関係だけをとってみますと、九十八項目のうち五十九項目に手をつけたわけでございます。 その結果、増収額はどれだけかと申しますと、法人税関係で平年度九百六十億円を見込んでおるわけでございます。これは、法人関係の現行べースで試算いたしました五十一年度の特別措置による平年度減収額が約三千二百億円と推定されておりますので、それの約三分の一に相当するものと思っております。ただ、この場合、さらに交際費の課税が強化されまして、平年度百九十億円の増収が見込まれておりますので、都合、千百五十億円の増収を招くだけの整理をこの際断行することにしたわけでございます。これにつきましては、きのうからも、本委員会におきまして、まだなまぬるいといういろいろな御批判をあなた以外からもちょうだいいたしておるわけでございますけれども、私どもといたしましては、既得の権益を奪っていくわけでございますので、異常な精力をこの整理に傾けたわけでございまして、これだけの戦果が上がりましたことにつきましては、それだけの評価をいただきたいものと思います。
○不破委員 同時に、今度政府が実行されようとしている会社臨時特別税の延長をやらないことですね。これによる減収分は幾らぐらいになりますか。
○大倉政府委員 五十一年度は、会社臨時特別税の税収がなお約二百億円見込まれておりますが、仮に現行制度のまま延長いたしましたといたしますと、五十年度補正で約千億円の税収を見込んでおりましたから、差し引きいたしますると、御質問の御趣旨に沿って申し上げれば、まあ八百億円ぐらいが減るという計算はできるわけでございます。
○不破委員 時間の節約のためにちょっとコメントしますと、さっき平年度と言いましたが、初年度はたしか百五十億円。今度の増収ですね。つまり租税特別措置法で増収する分は、今年度は百五十億円。それから会社臨時特別税をやめることで、かなりいま控え目な計算だと思ったのですが、減収になる分が八百億円。差し引きしますと、大企業向けの税金のプラス、マイナスは、いまの政府の御答弁でも今年度は六百五十億円マイナスになる。これが私は問題だと思うのです。つまり、その一方で、しかも所得減税を見送った。これは大蔵側から資料をいただきましたら、たしか出された資料ですが、仮に春闘の賃上げを一三%に押さえたとしても、それによる減収は、所得者抜いても六千億円から七千億円になる。増税分ですね、実際に。つまり、今度の税制は抜本的な見直しをやらないばかりか、大企業に向けては、いまの発表でも実際に六百億円を超える減税をやりながら、所得減税を見送ることで勤労者に対しては六千億円、七千億円という増税を事実上課すことになっている。私は、ここに三木内閣の、税金の問題でも高度成長型の時代に続けられた大企業本位の姿勢というのが具体的な数字であらわれていると思うのです。これの転換がいま国民に求められているところであります。特に、今度のように七兆円を超える国債を発行して、インフレ誘発の非常な危険のある、三割もの国債依存率のような財政を組む場合、この状況を放置することは、だれが考えても許されないわけであります。税制の改革は不可避であります。この税制の改革を問題にするときに、高度成長時代につくり上げられた世界でもまれな、大銀行や産業界自体が自覚している大企業優遇の税制に思い切ってメスを入れて、そこから改革の道を探るのか。それとも、先日来問題になっておりますように、付加価値税のような、国民、消費者全般に負担を加え、特に中小企業、商業、工業を問わず、中小商工業に負担を加えるようなそういう大衆課税の方向に向かうのか。私は、単に今日ここだけの問題ではなしに、税制という例の問題で三木内閣の姿勢、自民党政治の今後の姿勢が問われていると思います。 大蔵大臣に伺いたいのですが、現在の問題含めて今後の税制改革について、付加価値税のような大衆課税の方向に重点を置くつもりなのか。それとも、大企業本位のこの世界にもまれな税制に抜本的にメスを入れるつもりなのか。このどちらの立場に立つのかを明確に伺いたいとともに、そういう見地からするなれば、付加価値税のようなもう戦後二十年近く問題にしてきながら国民の反対で実際に実現できなかった最大の大衆課税、悪税については、これを検討して来年度国会にかけるというようなプログラムは思い切ってあきらめて、いまの実情にふさわしい、大企業本位の税制の転換を図る、こういう方向に踏み切ることを強く求めたいと思うのですが、この点についての政府の見解を伺いたいと思います。
○大平国務大臣 異常な経済の落ち込みによりまして、昨年来、中央、地方を通じまして財政が非常な危機にありますことは御指摘のとおりでございまして、いかにしてこの事態に対処するかということでございますけれども、政府といたしましては、この段階において税制に卒然として手をつけるということを差し控えまして、増税を差し控えるかわりに減税も御遠慮いただくということを基本の姿勢といたしまして、財源の不足はとりあえず公債に仰ぐということにいたしたわけでございます。しかし、これはあくまでも過渡的な異例の措置でございまして、仰せのように、なるべく早くこの事態を脱却するために本格的な歳入政策を考えなければならないわけでございます。 その場合に、政府としていま何をどういう方向で考えておるかという御質問でございます。すでに本委員会において申し上げておりますように、政府としては、五十一年度におきまして本格的な税制改正を行うべき状況にはないと判断いたしておりますけれども、五十一年度におきまして十分税制の本格的な検討は開始しなければならない年であると存念いたしまして、まず税制調査会に対しまして、あなたのいま御指摘になっておる租税特別措置法の本格的な見直しを求めたわけでございます。その結果といたしまして、いま私が御報告申し上げましたように、企業関係におきまして約三分の一の整理をいたすことにいたしたわけでございまして、法人税関係におきましていま残っておりますのは、減税効果を持つ特別措置としては二千二百億程度残っておるにすぎない状況になったわけでございます。 それと同時にわれわれが税制調査会の検討を求めたのは、日本の今日の状況におきましてどの程度租税負担をお願いするのが適当と考えるかという基本の問題について、公正な御意見を求めたわけでございます。したがって、これに対しまして、税制調査会といたしましての見解は一応示されておるわけでございますが、私ども、それがいままでやったことでございまするので、これに対して、税目別に、今後これは増徴する、あるいは増徴をしない、あるいは減税する、こういう税目は新しく起こすというようなことを考えるのは、これからのわれわれの検討の問題になるわけでございまして、いまどういう税目について政府はこれを実行しようといたしておるかということを国会で御報告する用意はまだないわけでございます。したがって、いまあなたが御指摘の付加価値税というような問題を取り上げて政府が税制調査会に検討を求めた経緯はまだございません。 ただ、わが国の税制がいま直接税に大変偏向した状態になっておりますので、今後新たな税源を税制の中で求めるといたしますならば、さらに直接税に求めるべきか、間接税に求めるべきかということは確かに今後の検討の材料になることになりましょうし、間接税に求めることになった場合におきまして、付加価値税というような問題も検討の材料にはなるかと私は思うのでございますけれども、しかし、そのことを、直ちにいまそれを実行しようという下心を政府が持っておるというようにお受け取りになられては困るのでございまして、私どもいま、どういう税目をとらえて増減税を考えるかということにつきましてはまだ白紙の状態にありまして、これを検討する基礎的な資料をいま整備中であると御承知を願いたいと思います。
○不破委員 長い答弁の割りには内容のないお答えでしたが、そういう答弁はできるだけ節約されるように今後ともお願いをしたいと思います。 そして、一番避けられたのは、大企業本位の税制にメスを入れるかどうかという点について明確な回答がなかった。白紙が回答でしょうが。これが今後の最大の問題であり、われわれ一貫してさらに政府にこの予算委員会の中でも具体的に追及していきたいということを申し上げて、次に移りたいと思います。 この所得倍増計画について政府の公約を言いましたが、この公約の不履行のもう一つの点が物価の問題であります。 この計画を見ますと、物価の安定を維持することはこの計画達成のために不可欠の要件であるということが明記されております。つまり、物価上昇のない経済成長ということを十五年前に政府は国民に公約をした。ところが、十五年たった今日、どこに来ているかというと、これは政府統計で計算をしても、日本、イギリス、アメリカ、ドイツ、フランス、イタリアという資本主義国の主な国を並べたときに、この十五年間の物価の上昇が三倍を超えているのは日本だけであります。つまり、世界最高の物価上昇を実現してしまった。ここに私は、政府が高度成長から転換するという場合、最大の反省点のもう一つがなければいけないと思う。 しかも、この点で重要なことは、私どもがこの十何年来物価上昇に悩んできたわけですけれども、一九六一年から一九七二年までは物価上昇率が対前年比で最高七・六%、最低三・八%。三%台から七%台の間で物価がこうなっていたのを例年の物価値上がりといって国民は苦しんでいたわけであります。その後、最近二年、七三年に消費者物価で前年比プラス一一・七%、七四年にプラス二四・五%。狂乱という言葉があって、まさにこれは異常であります。この異常な状態がおさまった。三木さんが、来年三月度で一〇%以内におさまれば成功だと言われた。しかし、この一〇%台というのは、この成長計画をやってきた十三年間には日本になかったものであります。だから、狂乱がようやくおさまったと言える程度のことであって、まだまだ狂乱の初期段階といいますか、末期段階といいますか、これまでの十数年間の高度成長の中では最高の部類の物価値上がりをわれわれは経験している。 ところが、三木さんのあの施政方針演説を見ますと、去年とは違って、物価対策がないのが特徴であります。成功はしたが、今後とも監視は続けなければいけない、もう安定してしまったから、これで監視するんだ、もうすっかり済んだと言わんばかりの演説を聞いて、私、偶然としました。それを補足して福田さんの演説で、次の年に八%に抑えよう。八%というものも最近二年間までにはなかった数字であります。高度成長時代十何年間、対前年比八%になったことはない。長期計画を見ますと、これからの五年間で六%以内に抑える。こう考えていきますと、三木内閣は物価の六%、八%という大幅値上げ状態を正常化しようというのを物価対策にしているのじゃないか、こういう危惧さえ抱かざるを得ないのですが、その点について、一体政府が目指している物価安定とは、物価の値上がりを抑えることなのか。六%、八%という値上がりをいつまでも続ける計画なのか。ここの点をはっきりと承りたいと思います。
○三木内閣総理大臣 不破君も御承知のように、この政府がいかに物価問題を重視したかということは、いま御指摘のような二四・五%という消費者物価の年率値上がりを受けて三木内閣は出発をしたわけです。この状態を一五%以内に翌年の三月までにするという公約は、その当時余りにも大胆な公約であると人に言われたわけですね、あの狂乱物価の中ですから。しかし、それは実現をしたわけで、そして次なる目標の一〇%以内にということに努力をし、また中期経済計画でも六%台に持っていきたいというのですから、これは、いかにこの内閣が物価の安定というものを経済政策の最重点項目にしておることであるかはおわかりのとおりであります。 だから、不況と物価高の谷間の中にあって、政府は物価安定というものを経済政策の重点に置いたわけなんです。そのために不況というものを伴いましたけれども、経済政策の重点を物価安定に置き、インフレのない経済成長というものがやはりわれわれの目指す日本の経済の将来の目標でありますから、物価問題に対して関心を払わないというようなことば絶対にありません。今後景気の回復を図るにしても、常に物価の安定ということを頭に置きながら景気の回復を図ろうということであって、頭に離れないものは、経済政策のかじ取りの中で物価安定にある。このことはひとつ誤解なく御理解を願いたいのであります。
○不破委員 どうも三木内閣は、明確な答えを回避するという点では総理のもとにみんな非常に意思統一をされているようで、この問題でも求めた答えは得られませんでしたが、行動が事を証明している。つまり、物価問題は解決済みだというようなことを前提にしているもとに立って、今度の大幅な公共料金の値上げ、国鉄の五割値上げとか、またまた来年五割値上げするということが企てられておる。私はこの行動が、もう物価はおしまいで、今度はという三木内閣の姿勢をあらわしていると思うのですが、この問題についてはさらに引き続いて同僚議員がこの国会の中で追及すると思いますので、もう一つの所得倍増計画の公約不履行に触れたいと思うのです。 それは公共投資の問題であります。私どもは、私どもの民主的な再建計画あるいは不況打開政策の中でも、投資の流れを変えようというスローガンを上げました。つまり、産業基盤重点の大企業擁護の投資から、生活基盤重点の国民本位の投資に政府の公共投資を切りかえようじゃないか。所得倍増計画を読んでみましたら、そういう趣旨のことが書いてあります。十年間の倍増計画の前半は産業投資に力を置くが、後半は生活投資に重点がだんだん移っていくという意味のことが書かれてあります。ところが、一九六〇年から始まった所得倍増計画がもうとっくに終わって、次の次の計画ぐらいに入っているのに、後半はさっぱり来ないで、産業基盤重点の投資がずっと続いている。その結果、いまの日本の状態の大企業本位のひずみというのはここに非常によくあらわれていると思うのです。 所得倍増計画では、たとえば住宅問題の抜本解決ということも約束されておりましたが、現在、政府の調査によっても、水準以下の居住世帯というのが、つまり一定の生活水準以下の居住世帯というのがいまだに九百八十万世帯、日本の三三%を占めているような状態。それから所得倍増計画で下水道を十年間で一五%から四〇%に引き上げる。十年間の計画の公約でしたが、現在ではまだたしか二〇%台の下の方のはずであります。それからまた学校は、小学校や中学校は十年計画が終わったときには、いまの過密学級をやめて四十人定員の学級に編制するだけの施設をつくると公約をされておりました。ところがいまだに四十五人定員の完全実施に努力をされていて、しかも、人口急増地域では小学校、中学校の不足校舎が、昭和三十九年、十年前の約二千校舎からいまでは一万三千校舎に、六倍にもふえている状態であります。この間の全国知事会の要望によれば、高校が足りない、すぐ二、三年内に手を打たなければいけないものが四百四十六校もある。これだけ投資を重ねてきた日本で国民生活にかかわり合いのある生活関係の建設事業がこれだけおくれている、ここにやはり大企業本位と言わざるを得ない十五年間の高度成長の結果があらわれている。 不況の打開の公共投資を考える場合にも、私はここが問題だと思います。たとえば住宅とか学校とか——よく二兆円プロジェクト、三兆円プロジェクトと言いますが、その二兆円、三兆円を住宅や学校問題の抜本的な解決に投下すること、これが総理が言う発想の転換であり、そういう本当の景気転換策であろうと私は思う。たとえばそうなれば、この投資は産業界の需要ではなしに直接国民の需要にこたえる。それから第二に、特定の地域や特定の路線だけを潤すのではなしに、日本全国でこういう事業が行われますから全国的な景気の振興になる。第三に、波及効果という点では道路や橋よりも学校や住宅の方が高いことは証明されているし、しかも、その波及の対象が特定大企業ではなしに中小企業に広く及ぶ。第四に、こういうプロジェクトなら公害や環境の心配をする必要は全くない。こういう点でも、いま日本の公共投資には、不況打開のための投資でも生活基盤中心の投資への転換が求められている。 ところが、今度三木内閣が五十一年度予算で提起したのは、本四架橋とか新幹線に象徴されているような、田中内閣の列島改造時代に一遍企てられて総需要抑制で引っ込められたものの総ざらいの復活であります。私はここに問題があると思うのです。そして、財界が昨年七月集まって、本四架橋その他について要望を決めたら、八月にはもう本四架橋のことが決まる、こういうような状態。ここに私は公共投資の大きな問題があると思うのですが、時間もありますので、その大型プロジェクトの三木内閣の政策の一つの問題として、いま挙げました本四架橋の問題についてわれわれが疑問と思っている点を若干ただしたいと思います。 私も、私の両親は四国の出身ですから、四国と本土の間に橋がかかるとか交通が便利になるということに関しては、これは頭から否定するものじゃありません。しかし、そのやり方、ここにはさまざまな問題があります。たとえば、まず伺いたいのですが、一ルート三橋ということが言われております。一体、いま政府が本州と四国の間に橋をかける問題について、結局のところは三つのルートを田中内閣時代どおり最後的にはかける方針なのか。それとも一ルートを決めてあとは見送る方針なのか。この一ルート三単独橋という、だれに聞いてもわからない方針について、ここで明確な御答弁をまず伺いたいと思います。
○金丸国務大臣 四国架橋の問題につきましては、一ルートということが当面の問題でありまして、あとの二地域につきましては地域開発ということで考えておるということで、問題は将来二十年、三十年先に、そのときの日本の状況がこれをつくるにふさわしい経済状態であれば、そのときの夢まで摘む必要はないんじゃないかというような考え方で、一ルートということが当面の考え方であります。
○不破委員 では念を押して聞きますが、その一ルートは三全総で決められると言われておりますね。そうすると、三全総はたしか昭和六十年までの計画ですね。一ルートが決まったら、三全総の期間にほかのルートに、夢に取りかかるということはない。二十年、三十年先と言われましたが、少なくとも三全総の期間ぐらいは一ルートでがまんするのだ、これが政府の方針だと理解をしてよろしいのですね。
○金丸国務大臣 一ルートにつきましてはそういう考え方をいま申し上げたわけでありますが、あとの二つの地域につきましては、その状況により、地域の開発ですから、島と島をつなぐことによってメリットがある、こういう考え方でございます。
○不破委員 そうすると、三全総の間には地域開発橋以外は一ルート以外はつくらない、そういうことですね。
○金丸国務大臣 三全総の中には一ルートを入れるだけであります。
○不破委員 そうするときわめて奇妙なことが起きるわけですね。たとえば、昨年十二月に大三島橋というのが認可をされました。この橋は二つの島をつなぐ橋であります。一つの島が一万三千人の人口、一つの島が一万人の人口です。ここに、行く行くは二万台の自動車が通る橋をかけるわけであります。合わせて二万三千人の人口で、一つの家で何台自動車を持っても、つまり、人口一人当たり一台ぐらいの自動車を持たないとこんな二万台もの自動車が通る橋は要らないわけであります。地域開発のための目的で、まだこれがルートになることは決まっていない。これが外れるとすれば、これが本州と四国をつなぐ橋になることは遠い将来の問題であるということになったときに、何で一体、一万人の島と一万三千人の島の間にそういう、自動車が一日二万台も通るような条件の橋をつくるのか、そこの考えをちょっと伺いたいと思うのです。
○金丸国務大臣 それは、いろいろ考え方はあると思うのでございますが、後藤新平さんが東京駅をつくったときはまことに大きな東京駅だということでありますが、きょう考えてみれば後藤新平さんのつくった東京駅というものは余りにも小さいじゃないか、というようなことを考えてみれば、まあ、将来この島から島につないでいくという立場から考えれば、私は、そういうものをつくっておいた方が将来のために、子孫のためにいいんじゃないかという考え方は当然だと思います。
○不破委員 大三島やその島の人たちの注文から言えば、お互いの島の間に二万台自動車の通れる橋がつくられても事態の改善には余りならないわけです。水が欲しいというのですが、お互いつなげても水は供給できないわけですから。四国とつながってこそ、これは初めて地域開発に役立つ。ところが、地域開発の問題でありながら、島をより大きな経済地域とつなげる橋を最初にかけないで、出先の島だけをつなぐ橋をかける。これは地域開発の理屈から言えば、いまもその話をしましたら自民党席からも笑い声が上がりますが、まさに笑い話であります。私は、笑い話でこの国政上の重要な問題、瀬戸内海の将来にかかわる問題を処理するというところに三木内閣の非常に重大な姿勢があると思う。 もう一つこの問題で伺いたいのです。仮に、この広島と愛媛を結ぶ橋が、コースが、三全総でこの一ルートに決まらないとしましょう。しかしやがて、金丸さんの話によるとだんだんつながって、地域開発を七つも八つもつなげていったら最後はルートになるということだとしましょう。しかし、その場合には、そういう展望を持つ橋をつくるならば、そのルートになった場合に、十年先、二十年先になるかもしれませんが、私は金丸さんがそこまであきらめていると思いませんが、そのルートになったときに、一体このルートを立てることが環境上どうかということをあらかじめ調べておかないとこの橋には手がつけられないはずなんです。たとえば、もし一ルートということがほかで決まったら、この一ルート全体について環境事前調査、アセスメントが行われるでしょう。ところが、きわめて奇々怪々なことば、大三島橋とか大鳴門橋というのは大体ルートからは外れるようだということが前提になっているために、政府は、これを自然環境保全審議会のこの橋の部会にかけるときに、これは絶対に後ではつながないんだからその先々のことは考えないでよろしい、そういうことで終始学者、研究者に意見を求めているわけであります。この点は学者、研究者も、あるいはこの部会にいる多くの関係者も、だれでも不思議に思うから徹底的に追及したそうであります。絶対つながないんだ、そういうことでこの大三島橋の着工が決まった。しかし皆さん、二万台の自動車が通ることで環境にどんな変化が起こるかということを一番心配しなければならないのは、これが本州とつながるところの尾道の方面、ここで二万台の新しい交通量がどうなるか、このことが一番環境調査をしなければいけないはずなんです。ところが、そういうルート全体についての環境調査をしないまま、つまりそういう部会はごまかしたまま、この橋をどんどん着工していく。大鳴門橋でも同じであります。絶対明石のところはつなげないんだ、淡路島どまりなんだということでいま審議を要求している。一体、明石までつながないところに何で鉄道の線が州本と徳島の間に必要なのか、新幹線が必要なのか、私はさっぱりわかりませんけれども、そういうことで、政府は審議会の方は終始通してごまかしている。 私は、本来、橋をかけるならば正々堂々と全コースにわたって、この橋をかけることによって瀬戸内海にどんな変化が起きるのか、あるいは公害問題でどんなことになるのか、特に一番交通量の多い根元のところで公害問題が起きないかどうか、そういうことを全部総合的に責任をもって事前調査をやり、結論を出してこそ初めて個々の橋の着工も可能になると思うのですけれども、いわば一ルート三単独橋というわけのわからないスローガンのごまかしで、そういう全般的な事前調査なしに橋の着工がどんどん行われている。これは環境庁長官の実績のある三木さんのもとでの内閣としては絶対あってはならないことだと思いますが、三木総理、この点どういう御見解をお持ちでしょうか。
○三木内閣総理大臣 不破君の御指摘のように、環境の変化というものは事実でなければならぬわけですから、本州四国連絡橋公団においても学会とか協会等の協力を求めていままで環境調査をやってきたわけですが、さらに現地調査などをしまして、環境に与える影響というものについては十分に今後ともいたす所存でございます。
○不破委員 そうではないのです。将来全ルートになる夢を金丸長官はお持ちだと言った。それならば、それの一部を着工するならば、その全ルートを通ったときにルートの先でも公害が起きないか、環境破壊にならないかどうか、そこまで審議して初めて個々の橋の着工もできるはずだと言うわけです。ここに橋をかけることで、こちらの島とこちらの島、そこにどんな変化が起こるか、それだけを調べたんでは、三木さんが言う十分慎重な、国民の納得のできる環境事前調査と言えないと思う。それなしにいま大三島橋の着工が始まり、大鳴門橋が審査を求められている。はっきり言えば、これは一種のペテン的なやり方で、なし崩し着工をやろうとしていると言われても仕方のないものであります。そのことについての見解を伺っているわけであります。
○三木内閣総理大臣 金丸長官も申しておるように、これは地域開発としてやるわけですから、そういう前提のもとに環境調査を行うことは現段階において妥当である、こう考えるわけでございます。
○不破委員 三木さんは、総理は、かつて環境庁長官の時代に、まだいまから二年半ほど前でありますが、環境汚染、自然破壊という人間の自殺行為について、絶対に許されないことだという演説を各地でやられております。その、前の環境庁長官の、こういうことを日本と世界に公約された長官のもとでこういうめちゃくちゃが行われているということについて、私は非常に重大な問題だと思うわけであります。 しかし、この問題は考えてみますと、この橋の問題は実はあなたの環境庁長官時代にさかのぼるのです。そのことについて伺いたいのですが、昭和四十八年十月、これは自然公園法に基づいて、瀬戸内海に橋をかけるということは国立公園に橋をかけることですから、環境庁長官との協議が法律で求められている。建設関係からたしか環境庁に協議があったはずであります。それで、自然公園法に基づく環境庁長官の義務、これは国立公園区域内の自然の景観の保護が最終的な最大の任務であるはずであります。だから恐らくそのときに、建設省との協議に当たって、環境庁長官であるあなたは、この橋の着工が自然の景観の保護という点でプラスであるのかマイナスであるのか、マイナスがどの程度であるのか、これを一番考えなければいけなかったはずであります。ところが、その四国の三橋の問題について、自然景観の保護ということについては、あの本四架橋公団が国立公園協会というこの問題では一番の権威者のいる協会に意見を求めました。その答申案が出ているはずであります。その答申案は三木さん御存じですか。
○三木内閣総理大臣 環境庁からお答えをいたさせます。
○不破委員 三木さんが御存じかということは、三木さん以外には答えられないはずであります。——ちょっと委員長、三木さんが御存じかという質問なんですから、環境庁長官が三木さんが知っているかどうか、何で答えられるのですか。それはやめてください。別に質問以外のことに答える必要はない。三木さんが御存じですかと聞いているのですから。
○三木内閣総理大臣 昭和四十八年三月、「本四連絡橋計画に対する景観調査報告書」が確かに文書として出ておりますが、詳しい記憶はないのでございまして、これに対しての詳しい報告は環境庁からお答えをいたさせます。
○荒舩委員長 いいですか、答弁なくても。
○不破委員 答弁はそれで十分です。
○荒舩委員長 十分ですから……。
○不破委員 初めて質問に対する正確な答弁が得られました。私が知っているかというのに対して、どうもいま初めてごらんのようであります。 ところが、この「本四連絡橋計画に対する景観調査報告書」、この結論は何かといいますと、「全般的に言うなら本四連絡橋の背定は、自然景観を基調とする国立公園概念の否定であり、国立公園の概念の強調は、逆に本四連絡橋計画の否定である。」、そして具体的にそれぞれのルートについて問題にしております。 神戸−鳴門ルート。三木さんが関心を比較的お持ちだと思いますが、このルートについては、「わが国最大の渦潮現象を併有し瀬戸景観としては、わが国を代表するすぐれた自然景観である。この地区に対する架橋計画は、突出した細長い岬とそれに続いて海上に線状に点在する岩礁と渦潮に対して、致命的な破壊になる。自然景観を尊重する国立公園の立場に立つとこの地区における架橋計画は強力に否定されるのが正論である。」、これが結論であります。 第二に児島−坂出ルート。大平さんの関心事かもしれませんが、この「架橋計画は、巨大な吊橋の連続であり、三ツ子島附近のアバットメントなどは島嶼を飲み込むほどの計画であるから、文字通り繊細優美な景観の致命的な破壊になる。このルートこそ正に保護と開発とが正面から対立する部分である。」 第三に尾道−今治ルート。宮津さんが関係をお持ちかもしれませんが、「このルートについても自然景観尊重の立場に立てば、原則的には架橋計画は否定されるが、上述」いろいろな事情を挙げて「両者との妥協が成立つ余地が残されている。」 つまり、景観問題に関する最高の責任ある結論としては、明石−鳴門ルート、それからまた児島—坂出ルートは致命的な破壊になる。第三のルートを含めて全体が否定さるべきだが、多少情状酌量の余地があるとすれば最後のところしか残らぬ、こういうことが「本四連絡橋計画に対する景観調査報告書」としてはっきり答申が出されているわけです。 一体、自然公園法で国立公園の景観保護を任務とされている環境庁長官が、この重大な報告書について何で無視されたのか。何で存在を知らなかったのか。そのまま環境庁の方から建設省に、三年前の十月に建設結構ですという連絡がされたのか。当時の環境庁長官として三木さんに伺いたいと思います。いまの環境庁長官はそのときは長官でないようですから、三木さんの答弁を求めたいと思います。
○三木内閣総理大臣 自然公園の国立公園協会、これはやはり自然の景観を保護するという立場ですから、環境の保全に対して厳しい態度をとることは当然だと思う。一方において、やはり地域開発なら地域開発をやりたいという開発という問題もありまして、それをどのように自然の環境を保護しながら開発を行っていくかというところに環境問題のむずかしさがあるわけで、何でも自然の状態に置いていけば——何らかの開発をしようとすれば変化が起こることは当然ですが、それをどう環境保全との間に両立を図るかというところにこそ、環境と開発との問題点があるわけでございますから、環境庁においても、こういう報告は十分に検討を加えて建設省にそういう返答をしたものと思いますから、こういう厳しい態度をとるということは当然だと思います。それを踏まえて今後の開発というものは進めていくべきである。全部、もう自然の景観というものに対してはいささかも変更してはならないのだ、何らかの変化はもたらしますから、変更していかないのだということになれば、一切の開発はできないわけでございますから、この点は、この問題を踏まえて開発計画というものを立てるというところに調和点を見出すよりほかにはないと私は思います。
○不破委員 三木さんは、環境庁というものの職分をよくのみ込んでおられないのじゃないか。つまり、環境庁は開発の推進者ではないわけであります。開発側が環境庁に、この開発が環境上許されるかどうかということの協議を求めている。そのときに、その協議の衝に当たる環境庁の長官が、こういう重大な答申についても尊重と——私、尊重をするかしないか聞くつもりだったのですが、尊重の以前の問題として存在も知らなかった、そういう扱いがされている。もっとはっきり言えば、このときに自然環境保全審議会の自然公園部会で審議がされております。この答申が出てもう半年以上もたっているときなのに、この協議をやるときに、その日の朝この答申を部会の参加者に配っている。そして答えを求めている。こんな、いまもらったんじゃ議論できないじゃないかということも議論されたが、もう結局のところ、政府の方針は決まっているのだからということで押し切られてしまったということが報告をされております。しかも、たった一日の会議であります。この自然景観の保護ということに関して自然公園法で義務を負わされている環境庁側の態度としては、私はこれはまことに許すべからざることだと思う。しかもそのときに、この自然環境保全審議会の問題に関連して言えば、この自然環境保全審議会の責任者をやっている委員の方がだれかというと、この間まで首都高速道路公団の理事長をやっていた人が今度は環境保全審議会の責任者をやっている。私はこれも、環境庁が考えているやり方としてはきわめて奇異なことだと思う。つまり、一番肝心な環境を保護しなければいけないところで何のチェックもやられないまま、しかも、ああいう党略的なことで、三橋なぜ必要かということについても全然審議をやられないまま事態が進んでいる。私はここに、大型プロジェクト問題というものの一番暗い側面があると思うのです。 こういうことをほっておいたのでは、幾ら景気振興のためと言って合理化してみても、国民の納得を絶対得られないやり方であって、まさにこのときこそ、一たん凍結をした大型プロジェクトを本当にいまの時期にやることが経済的にどうかという問題と同時に、いままでなおざりにしてきた環境や自然景観の破壊や公害問題の事前調査を徹底的にやった上で断を下すべきだと思う。 なおもう一つ言えば、特にこの問題では、三年前に議員立法で瀬戸内海の環境保全法ができたはずであります。その瀬戸内海の保全法は三年の時限立法ですから、ことしで切れるはずであります。ところがいまだに、瀬戸内海の環境保全計画について法律に義務づけられていても、政府はこれを仕上げようとしない、提出しようとしない。その間に瀬戸内海の環境破壊が、こういう国立公園協会や関係者の心配をよそにどんどん進行している。私は、ここに重大な問題があり、この問題をさらに引き続き追及したいと思いますが、この事実を前にして、前環境庁長官であり現総理である三木さんは、何の反省点、今後の転換すべき点、再検討すべき点はないと考えておられるのかどうか、そのことだけを最後に伺っておきたいと思います。
○三木内閣総理大臣 私は、相当長期にわたって環境庁の長官をしたわけで、一々記憶にはないが、無論その当時は熱心な環境庁長官であったわけですから、いろんな提出された文書に対して全部目を通し、検討を加えたと思いますが、その経過などについて、必要がございますれば、環境庁の事務当局からお答えをいたしますが、これはかなり熱心に環境行政を進めたことは御承知のとおりであります。したがって、これは十分に検討したものだと思いますが、現在においても環境庁は環境の保全ということを第一義的に考えて、この問題に対しても環境保全の見地から調査を十分して結論を下すわけでございますから、現在の環境庁の行政に対して私は信頼を寄せるものでございます。その環境庁の判断というものを中心にして考えることは当然でございます。
○不破委員 瀬戸内海というのは、一つの政府の財産ではないはずであります。ましてや、その地域に関連のある特定の政治家の資産でもないはずであります。それからまた、その周辺の関係地域だけのものでもないわけであります。瀬戸内海の自然公園、国立公園というものは、日本の国民の財産であります。その日本の国民の財産が、ああいうようなでたらめなやり方で処理されていく。しかも、国民の負託を受けて、そのことに関して国民のかわりに環境や自然を守るべき責任がある立場の政府があるいは環境庁が、両方をマッチさせると言うけれども、片っ方は見もしないわけですからマッチのしょうがない、そういうやり方で瀬戸内海の運命というものに対して処理、対処してきたことについては、私は、日本国民として非常に残念に思うものであります。このことについては大きな疑問と問題点があるということを重ねて述べて、これは今後の追及の課題として保留して、次の問題に移ります。 いまの問題は、高度成長政策の、大企業の利益のためには自然も公害も顧みない最悪の側面が端的にあらわれた例だと思いますが、私は、高度成長政策のもう一つの大きな問題は、日本の国民の現在と将来にとってゆるがせにすることのできない幾つかの産業部門に致命的な影響を与えてきた、ここにもう一つの問題があると思います。それは一つは農業であります。高度成長政策が始まるときに、農業基本法などをつくり、こういう農業で日本の将来をやっていくのだと政府は発表しました。しかし、それがどういう結果になったかというと、これは政府が発表した新全総の中間総括の中でさえ、このままで行くならば、日本の農業は致命的なことになる、その見通しを書かざるを得ないような現状に置かれています。 それから、もう一つはエネルギーの部門であります。私はきょうは、エネルギーの問題に関して、日本の経済の今後の展望あるいは国民の安全、経済の自立性、そういう点から検討したいと思うのですが、政府側に伺います。 現在の日本の国民のエネルギーの自給率と、それの今後の展望、余り先の展望でなくても結構ですが、五年、十年という先の展望がどうなっているか、自給率の向上の計画があるのかどうか、数字を伺いたいと思います。
○河本国務大臣 エネルギー問題は、日本の産業政策上最大の課題でございます。そこで、昨年の初めから十二月までの間、政府の方ではエネルギー対策閣僚会議というものをつくりまして、エネルギー問題を根本的に検討してまいりました。その一つは、エネルギーの自給度というものを高めていくということが一つの大きな課題でございます。しかし、日本の現状におきましては、なかなか努力いたしましても自給度を高めるということについておのずから限度がございます。そこで、エネルギーの中で一番大きな分野を占めております石油につきまして、これをできるだけ他のエネルギーに転換をしていくということを非常に大きな課題として取り上げまして、現在は石油がエネルギーの全分野で七八%を占めておりますが、これを十年計画で六三%まで下げていきたい、こういうことを大きな目標としております。 それから同時に、それを実現するために原子力発電であるとか、あるいはまた石炭対策であるとか、こういうことを総合的に推進していこう、こういうことを主として議論いたしまして、昨年の十二月におおよその結論を出したわけでございます。
○不破委員 エネルギーの日給率は一九七三年、昭和四十八年の数字で政府の統計でも一〇%。九〇%が海外依存であります。こういう国は世界にはないわけですね。そして実際にエネルギー危機が言われているときに、一たん供給面で波乱が起きたら、この状態でどんなことになるか、はだが寒くなるというのは、だれしも経済関係者が言うところであります。ところが、政府のエネルギー計画によりますと、この一〇%の自給率が回復するどころかだんだん下がっていく傾向にある。私はこれが問題だと思うのです。そしていま河本さんは石炭の問題を言われましたが、十五年ほど前に、世界のエネルギーは石炭から石油にかわりつつある、流体エネルギーにかわりつつある、そういうことで日本の石炭政策が根本的に変更されました。その少し前に、わざわざ高いお金を出して海外から調査団まで呼んでソフレミン計画という、将来は年間七千万トンを超える石炭を掘ろうという計画まで一たん立てながら石炭の縮小計画に移りました。そのときに政府がとったのは、石炭の将来はないという見通しだったと思います。この点では石炭のエネルギーの将来性に関して現在の政府の考え方は違っているように伺っていますが、どういうようにいまお考えでしょうか。
○河本国務大臣 現在わが国では石炭を年間約九千万トン使っております。約七千万トンを輸入いたしまして、二千万トンを国内で生産しておりますが、今後はさらに約二千万トン近く十年間に石炭の需要がふえるはずでございます。そこで、こういう将来の見通しを踏まえまして、国内石炭の生産というものを最低、現在の水準であります二千万トンを下らないように今後も努力していこう、こういう方針を昨年決めまして、いまその実行に移ろうとしておるわけでございますが、そのために現在国内におきましても、約二十九地点におきましていろいろ開発の調査等をいたしております。
○不破委員 私が聞いたのは、エネルギーとしての石炭の将来性について、十五年前の自民党政府の認識といまの状態は変わってきているのじゃないかということを伺ったのですが、どうも通産大臣は数字の枠内でしか御承知ないようなので、私の方から若干のコメントをさせていただきます。 これは世界的にも非常に顕著な現象が起きているわけです。たとえば将来のエネルギーという点に関して言いますと、もう石油には限度がある、石油の次は石炭時代だというのがいま世界の大勢であります。アメリカの石油会社であるメージャーでさえ、国内と国外、海外の炭田の買い占めに懸命になっているということさえ生まれている。この点では十五年前の自民党政府の石炭時代は終わったという認識は、明らかに間違っていたということが証明されている。 第二に、現在価格の面でも、これは電力関係の単価を調べれば明瞭ですけれども、石炭による発電と重油による発電は、石炭が高かった時代はかつての話で、昭和四十六年以来は石炭の方が単価が安くなっております。最近の四十九年の九電力平均の数字では、一千キロカロリー当たりの発電原価が、石炭が百三十五、重油が二百六十四、石油の半分の値段になっている。高い石炭、安い石油ということは、いまではこの事情も変わってきている。 それから、公害という問題に関しても、これは科学技術庁が発表している資料にも明瞭なんですが、将来公害のないエネルギーとしては石炭をガス化、液化することが一番展望がある、これが内外の大勢であります。しかもガス化、液化する場合には、液化の過程で不純物を取り除けますから、現在の石油や原子力よりもはるかに公害のないエネルギーができる。その際に原料炭よりも一般炭の方が使いやすいということまで言われております。ところが日本は、あの三井の首切りなどがあった昭和三十五年、所得倍増計画の出発点までは、石炭のガス化や液化については世界で西ドイツとともに一、二を争う水準を持っていたのですが、それ以来徹底的に打ち切られて、石炭の研究をする者などは学者でないような扱いを受けて、完全に戦前以来のその研究面の資産も捨ててしまいました。いまではアメリカなどは、最近のアメリカのエネルギー自給計画を見ても、あるいは昨年度の予算を見ても、十八億ドルのエネルギー研究開発予算のうちに、原子力に使われるお金が七億ドル、石炭が四億ドル、原子力につぎ込むお金の半分以上のお金を石炭の研究開発につぎ込んでいる。アメリカは十五年前には日本よりははるかにおくれた技術しか持っていなかったのですが、それがいまでは世界で有数のところまで来ている。これくらい、自民党政府の十五年前の石炭放棄政策が完全な間違いだということが証明されているわけであります。当時この衝に当たった有沢氏が、最近雑誌に書いておりましたが、当時石炭の縮小をやっているときに、ヨーロッパから学者が来て、十数年がんばればまた石炭の時代が来るのだから、石炭をつぶさないで何とかわれわれは守り抜くつもりだと言われたが、日本ではそういう状況になかったということもいまになって言っておりますが、よく民族の百年の大計とか国家の運命とか言いますけれども、私はここに、自民党政府の経済政策が日本の経済の自立という問題で犯した最大の誤り、ある意味では犯罪的と言ってもいいと思うのですが、誤りの一つがある。いまここで私が求めたいのはこれの根本是正であります。もう二千万トン体制をだんだん千万トンに減らしていく、こういうことではなしに、いま日本にあるエネルギー、水力を除いてほとんど唯一のエネルギー資源ですから、これをどうやって全面的に活用できるのか、その点に科学技術の蓄積とこれからの開発の大きな部分をつぎ込むつもりで抜本的に石炭問題に当たる、これが求められていると思うのです。 ちょっとアメリカと日本の違いが余りにもひどいので言いますが、最近の統計で言いますと、石炭の液化、ガス化の研究費は、アメリカが一年間六百七十三億円であります。日本のサンシャイン計画では一年間、六七三という数字は同じなんですが、六億七千三百万円。余りにもけた違いの扱いをされている。しかも政府の計画では、この石炭まで最終的には大部分海外に頼るということが進んでいる。私は、きょうここでこれ以上は申し上げませんが、ここに日本の経済の五年先、十年先の自立という問題を考えた場合には絶対にゆるがせにできない大問題があるということを指摘したいと思う。 同時に、もう一つエネルギー問題で大事な問題は、原子力の問題であります。 科学技術庁の長官でもいいし通産相の河本さんでもいいのですが、原子力の発電計画、現在の原子炉の基数と出力、それから昭和六十年度あるいは六十五年度の出力と基数の見通し、これをちょっと伺いたいと思います。
○河本国務大臣 現在動いております原子力発電は約四百万キロでございます。それから建設中のものが約千三百万キロになっております。昭和六十年の目標は四千九百万キロ、こういうふうに想定をいたしております。
○不破委員 私は、日本における原子力開発は、いまの河本さんの報告にもありますように、新しい段階に入っていると思うのです。つまり、いまは数百万キロワット単位ですが、九年後には四千九百万キロワットといういわば高度成長計画が進められている。この四千九百万キロワット体制というのは、安全の面でも管理の面でも新しい問題を生みます。 たとえば原子炉が生み出す死の灰の問題がある。百万キロワットの原発は三キログラムのウランを毎日消費しています。それは三キログラムの燃えた燃料、つまり三キログラムの死の灰を毎日生んでいるということであります。これは広島型原爆に比べますと、死の灰の量から言えば、広島型原爆三発分が百万キロワットの原子炉の中で毎日生まれている勘定になる。四千九百万キロワットというと、それの四十九倍ですから、百四十七発分の死の灰が毎日日本の各地に、原子炉の中に生まれることになります。仮に経済稼働率八〇%として計算してみましても、一年間に四万発を超える広島型原爆に当たるだけの死の灰を日本の原子力発電が生むようになる。これ一つ考えても、これの管理の問題は新しい段階を生みます。 しかも、これは三木さんも環境庁長官時代の演説の中で、日本という国は山岳地帯が多くて二〇%しか平地がない、それだけに平地の利用にかかわる公害問題は注意しなければいかぬということを言っておりましたが、平地面積当たりの原子力開発がどのくらいになるかといいますと、この四千九百万キロワット体制というのはアメリカの十・二六倍であります、原子力の密度が。それからイギリスの五・〇二倍、フランスの三・三三倍になります。そういうところにいま日本の原発計画が進みつつある。 それから、よく原発で問題になるのは、温排水の問題があります。原発というものは、熱出力の中でエネルギーに転換するものが火力発電より少ないですから、どうしても出てくる温排水の熱の影響が大きいのです。これが四千九百万キロワット体制になりますとどれぐらい出るかというと、大体一年間に千二百億トンの水が原発から日本の周りの海に流れ出ることになる。日本の河川の自然流量は四千億トンと言われておりますけれども、これは豊水期を含めた量ですから、実際の豊水期でない時期には年率で大体二千億トンから三千億トン流れておるというのが学者の説であります。つまり、すべての河川が海へ流し出していると同じ、それに近いような、それのほぼ半分になるような原発からの温排水が日本列島の沿岸に流れ出ることになる。これは環境問題で全く新しい問題を生むわけであります。いまの原発の審査は、個々の原発地域で温排水の漁業への影響はいかんということを個別にやっておりますが、いま通産省が計画している四千九百万キロワット体制、こういうことになったら日本列島の自然環境がどう変化するか、日本列島の周りの漁業がどう変わるか、そこまで研究しなければ踏み切れないような過密原発時代にいま向かおうとしている。私は率直に言って、そういう時代にいま日本の原子力開発が向かいつつあるのに、そこにはさまざまな未知の問題があり、そこではさまざまな問題を解明して、それこそ石橋をたたくが上にたたいて進まなければ、将来、さっきの橋と同じで取り返しのつかない問題が起き得るのに、十分そういう点を検討しないまま、日本の経済成長のためにこれだけ必要だという計算だけから事態が進んでいる、ここに日本の原子力問題の実は自立性、従属性の問題もありますが、国民の安全、日本の将来という点から言えば、最大の問題の一つがあると思うのです。 そこで、きょうはこの点に問題をしぼって伺いたいと思います。 一つは、そういう段階を迎えようというのに、この原子力発電に対する安全規制の体制、これがどうなっているかという問題であります。 科学技術庁長官に伺いますが、いま原子力委員会は原子炉の場合に、たしか具体的な詳細設計ではなしに基本設計だけを安全審査の対象として扱われているはずであります。この安全審査をやるスタッフ、委員の数、これはどれぐらいの陣容でやっているか、これを伺いたいと思います。
○佐々木国務大臣 具体的な数字でございますので、かわって御説明いたさせます。
○伊原政府委員 お答え申し上げます。 ただいま原子力委員会のもとに、原子力委員会設置法に基づきまして原子炉安全専門審査会がございます。その審査委員は定数が三十名でございまして、現在二十九名の方に委員を委嘱いたしております。さらに専門的事項を調査していただきますために調査委員、これを現在二十九名お願いいたしております。なおこのほか、この審査会を補佐いたしますために原子力安全局の中に安全審査官、これを増員いたしまして、現在その安全審査の事務局側の専門官として二十名、さらに五十一年度増員が二名、こういうふうになっております。さらに庶務を含めまして五十一年度で二十四名、これが事務局として審査会の審査のお手伝いを申し上げる、こういうことになっております。 さらに、日本原子力研究所におきまして、わが国の原子力施設につきましての独自の解析を行いますための御援助、これをいただくスタッフ、これがデータ解析、コード開発等につきまして現在四十名、五十一年度さらに七名の増員になっております。それから軽水炉の安全研究、これに現在百四十六名が従事いたしておりまして、五十一年度でさらに二十五名の増員をお願いいたすことになっております。
○不破委員 いまの原子炉安全審査委員、それから調査委員の方はたしか非常勤のはずであります。つまり大学に勤めていたり研究所に勤めていたり、仕事があるときにお願いをする、非常勤の委員ですね、たしか。そして専門にこれに当たっているスタッフはいま伺ったように二十名そこそこ。この点で、こういう体制に実は「むつ」問題などを引き起こす大きな原因があるわけです。あの「むつ」の事件が起きたときに、一体なぜ、あんな科学的には考えられないような、一定の科学技術の条件を整えていたならばあんなばかげたことは絶対起きないようなことが起きるのか、国民全体が疑問に思いました。そしてそのことについて政府も責を果たすために「むつ」放射線漏れ問題調査委員会というものを設けて、俗に大山委員会と言われておりますが、そこで「「むつ」放射線漏れ問題調査報告書」というのを調査の結果まとめております。この中で、この安全審査体制の弱体にこういう「むつ」問題の大きな原因があるということがきわめて明確に指摘されているわけであります。 読んでみますと、「原子炉安全専門審査会の委員は非常勤と定められており、一般に大学、研究所の研究者がパートタイマーという形態で審査に当っているので、必ずしも常に最も適当な専門家を当て得るとは限らない。」。非常に控え目な言い方ですけれども、要するにパートタイマーではうまくいかぬ。「したがって、審査の実態についても、申請された原子炉の安全性について、」つまり電力会社から原子炉の問題が申請されると、「申請者側の計算を再計算によって確認することなどは事実上困難であり、」。つまり申請者側が一定の計算でこうなるということを言う。ところが、安全審査委員の側がそれについて自分の方で計算をして計算が間違いないかどうかということを確かめる能力も余力もない。だからその点では計算まで含めて電力会社から持ってきたものをうのみにするほかない、ということが書かれているわけであります。 それからまた大事なことは、「原則として書面審査のみであるため、」、要するに出てきた書類を審査するだけだ。「設置許可を決めた原子炉がその後どのように運転されているか、また、技術的に問題はないかなどを絶えず注意し、これを次の審査に反映させるという一貫した技術のシステムに欠けるところがある。」。基本設計の粗筋だけの設計図を見て、これがいいかどうかの審査はできるが、それが果たして具体的な設計段階でそういうようにつくられているか、設計どおりになっているかどうか、果たしてうまく動いていくかどうか、そこまではとても責任を持たされる体制にない。 そしてこの委員会が言うには、これまでに存在しない新型式の原子炉について審査、検査する場合は、実際問題としては書類だけでは完全審査は不可能だ。だから未知の技術的問題があるわけだから、この場合には設計の段階、施工の段階、監督の段階、規制の段階、そういう点で審査で発見できない新しい問題が絶えず生まれてくるのを評価し、分析し、判断して、絶えず最後まで責任を持って追求する体制がどうしても要る。いまの形式を整えるような規制を強化するだけでは不十分である。「むつ」という国民をあれだけ驚かせたあの事件についてたくさんの教訓がありますが、安全審査の問題で言うと、この大山委員会が下した最大の教訓がここにあります。このことは、日本と同じように原子力開発をやっているほかの国と比べれば非常にはっきりするのです。 アメリカは今度原子力規制委員会というものにかわりましたが、そこに常勤のスタッフが何と千九百人いるのです。技術スタッフ以外の者を含めますと二千名を超える部隊がもっぱら原子力の安全管理に当たっているのです。ですからアメリカの安全管理というのは、よく政府側の発言で、日本みたいに原発反対運動が盛んなところはない、外国じゃすいすいというような話をする人がたまにはありますけれども、ところがアメリカの原発の規制はこれは大変なもので、まず第一に、この規制委員会が着工の審査と運転の審査をやります。着工の審査は、設計図を分析するだけじゃない、設計図がどう具体化されてそして実際に本当に設計図で予定したような仕様書ができ上がるかどうかまで全部責任を持って審査するし、その審査の結果を克明に発表して、公聴会も開き、あらゆる疑問にこたえるし、それをまた第三者機関でチェックをするということもやります。それで着工が許可になる。そして実際につくり上げます。それも絶えず監督します。さあ運転という段階では、また原子力委員会の審査があります。そしてでき上がったものがちゃんと運転して大丈夫か、その審査を徹底的にやって、アメリカの報告によりますと、設計の審査の場合よりも四割手間がかかる。一・四倍の労力を投入して二段階の審査をやる。そして実はこの原子力委員会では、運転してから最後に何十年かたって原子炉を使い捨てて破棄するに至るまで、全部安全面の責任を負うわけであります。こういう一元的な原子力の安全規制体制というのは、これは名称は違いますが、イギリスにもあります。西ドイツにもあります。フランスにもあります。日本のように、一つの安全規制委員会があるけれども、設計の段階だけは責任を負うが、後は責任を負う体制にない、そういうことで何千万キロワットにわたるような原発の開発に取りかかっているような無責任な欠陥安全体制のままで原発計画に臨んでいる国は世界にどこにもないと言ってもいいのです。一体政府はこの大山委員会の報告書の結論、これをどのように評価しようとしているのか、これをまず伺いたいと思います。
○佐々木国務大臣 お説のように、基本設計と詳細設計あるいは工事の実際の監視、監督等に対するやり方は、基本設計は原子力委員会が担当し、詳細設計並びに実施の部面は通産省がこれを担当しております。しかし、その間に何ら連絡がないというのは私は少し事実と違うのじゃないかと思います。何となれば、通産省の方で詳細設計をやるのに、基本設計を理解せずして詳細設計を吟味できません。したがいまして、原子力委員会の専門部会の皆様が大体同じ陣容で兼務いたしまして、そして基本設計も通産省の顧問会というところで検討いたしまして、そして詳細設計へと進んでいるのが現状でございます。 なお、行政管理庁等でも指摘しているように、基本設計から詳細設計に移るためのいろいろな注文がございますれば、それを付加して、それを尊重しながら詳細設計への検討に入るというのが大変重要なことでございまして、いまそういう方向に実は進みつつございます。 なお、この問題に関しましては、御指摘のような点も多々ございますので、有沢座長を中心にいたしまして内閣の中に原子力行政懇談会というものをつくりまして、この審査、検査体制等をいかにすべきか、改善すべきかという点を検討いたしまして、ずいぶん長いことかかりまして、暮れにその答申が出まして、それによりまして今後わが国の審査、検査体制の強化充実を図りたいというふうに実はただいま思っておる次第でございます。
○不破委員 いまのような紋切り型の政府答弁では日本の国民の安全を守れないところに問題があるのですよ。この大山委員会の報告は、そういう連絡があることを十分専門家は承知しながら、連絡程度では片がつきませんよ、連絡程度では「むつ」のようなことが起こりますよ、ということを警告しているわけであります。その冷酷を何にも評価していない。それが科学技術庁の長官の答弁としては、私はまさに欠陥安全体制を代表する欠陥長官と言わざるを得ない。 それからまた有沢構想の話がされましたが、これも問題があります。いま私が指摘した抜本的な体制の問題が取り上げられていないだけではなしに、原発に関する審査の権限を通産省側に移す、開発側に移す。科学技術庁の審査もだらしがありませんが、通産省という形で開発側に安全審査を移すことがどんなに危険かということは、これは多くの公害の例を見れば明白であります。この点では、「むつ」のようなあれだけの大事件を起こしながら、政府はこの問題について何ら反省しないで、依然として原発企業の立場に立って、その程度の認識で対処していると思わざるを得ないのです。 話を進めますが、さらにもう一つ重大な問題が原子力発電では生まれております。それは、先ほど私は、原発の中では死の灰が生まれると言いましたが、この灰はいつまでも原子炉の中に置くわけにいかない。ですから、使用済み核燃料ということで必ず原子炉の外へ出します。毎年約四分の一の燃料が年次交代で外へ出されて、いまは大部分はそれぞれの原発の貯蔵庫のプールの中へしまわれております。ところが、このプールの容量には当然限りがあります。大体事故があったときには全部燃料棒を出すわけですから、その容量を残しておかなければなりませんから、私の調査では、若干の例外を除いて、大体のところでは一年半ないし二年原発を運転したらもう満杯になってしまう、そういう程度のプールしかつくっていないはずであります。まあ政府は原発を二年でやめるつもりはありませんでしょうから、そうすると、どうしてもこの使用済みの燃料の処理というものが生まれてくる。それからまた、これを処理して、使えるものはもう一遍サイクルで回収しないと経済採算は絶対成り立たないようになっております。ところが、四千九百万キロワットの原発生産計画だけはあるが、その再処理に関してはさっぱり具体的な計画がないように思うんですが、その点についてどういう展望を持って進んでいるのか伺いたいと思います。
○佐々木国務大臣 先ほどの点をもうちょっと補足申し上げますが……(不破委員「いや、先ほどのは要りません。時間がありませんからいまの質問に答えてください」と呼ぶ)有沢答申では不破先生の御指摘のようなことにはなっておりませんので……(発言する者あり)
○荒舩委員長 お静かに。
○佐々木国務大臣 これは後でまた御説明申し上げます。 ただいまの質問でございますけれども、再処理計画は先ほど、四千九百万キロワットを原子力発電した場合に大体四千百トンの使用済み燃料が出ますけれども、これを処理するのに動燃で大体千五百九十トン、それから海外に千七百六十トン、これはフランスあるいは英国でございますが、契約ができまして、ただいま進んでおりますけれども、若干足らずまえがございます。これは不足分は、ただいま英国のBNFLと相談中でございます。 ただ、私どもといたしましては、動燃の第一工場に次いで第二工場を圏内でつくりたい。そうして、その再処理問題は重要な問題でございますから、国産でやりたいということでただいま計画中でございますけれども、その実現を待つまでには相当の時間もかかりますし、いままでの原子力委員会の長期計画では民間にこれをやらすということになっておりますので、今後の進め方等にもいろいろむずかしい問題もあるやに承知しております。したがいまして、いまのつなぎといたしまして、海外にその不足分を発注しているということでございます。
○不破委員 いま世界で経済用のあるいは商業用の再処理工場で動いているところがありますか。
○伊原政府委員 お答え申し上げます。 商業用の再処理工場の運転状況につきましては、天然ウラン系の使用済み燃料の再処理をいたしております工場が英国とフランスにございまして、これはいずれも動いております。ただし、軽水炉からの使用済み燃料を再処理いたします工場、これは幾つかあるわけでございますけれども、改造中あるいはまだ建設の最終段階、そういうふうなことでございまして、たまたま現在のところ動いておらない実情でございます。
○不破委員 ここに問題があるんです。つまり、経済用の再処理工場は、各国がかかってみたけれども、失敗したりいろいろ問題があって、現在世界じゅうどこでも動いていないんです。イギリスのBNFLと言いましたが、これは六九年から動き出して、七三年九月に予期しない大事故を起こしていまだにストップであります。恐らくこれは一遍事故を起こした再処理工場は、やってみたけれども再運転という方向に向かわないでしょう。それからアメリカは、NFSというところで六六年から動かしておりましたが、七二年に中止しております。それからAGNSというところは七一年に着工しましたが、これは工事がストップであります。アメリカのゼネラル・エレクトリック、GEは、六千四百万ドルを投じて七三年にテストまで入りましたが、これは不可能だという結論を出して、テストまでやった施設を放棄をしております。それから、日本が動燃で技術を買ったフランスでは、天然ウランはやっているけれども、商業用のこの再処理工場というのはほぼ日本と同じ時期にテストをやっている段階で、ここもいまだに商業用で動かした経験を持たないわけであります。アメリカのエネルギー研究開発庁、ここの最近の報告によりますと、経済的規模の再処理技術は実証されていない、これがアメリカの結論なんです。つまり、これは原発も同じなんですが、軍事用で成功した、だから経済用もうまくいくだろうと思って安易にかかったところにいまの原子力の発電所問題があることはもう常識ですが、再処理も、軍事用の再処理はプルトニウム生産のためにやってみて成功しているが、さあこれを経済的に成り立つようにやってみようと思うと、どこでも成功しないで難航している。そのことを認識しないまま、まだ自分で動かしたこともないフランスから技術を買って、そしてもうそれがいまにも動くように考えたり、世界でどこでも成功していない大容量の第二工場をすぐにもできるように考えたり、そこに私は日本の原子力行政の、いわば未知への挑戦じゃなしに無知の危険が存在していると思う。 それから、その次に聞きたいのですが、再処理工場が動き出すと、そこへ使用済み核燃料を運ばなければいけません。これは原発安全問題で新しい段階なんです。つまり、原発の放射能というのは、幾ら出ても、いまは発電所の中に閉じ込められている。日本の局地的な問題であります。ところが、再処理工場が動き出しますと、その死の灰のかたまりのような使用済み核燃料を原発から、たとえば東海まで運ばなければいけない。つまり、原発に閉じ込められていた死の灰がいわば日本じゆうに動き出すという段階に入ります。いま政府の計画ですと、この輸送は船でやるそうでありますが、これは大体三トンぐらいの核燃料を運ぶのに百トンの入れ物が要るのです。なぜかというと、この核燃料は、原料のウランとば違ってしょっちゅう激しい勢いで放射能を出していますから、輸送中にも高熱を出します。だから、これを絶えず水で冷やしていかなければいけないから、冷却機つきの入れ物で、このキャスクが大体百トンになる。それで、この一本の核燃料に含まれている放射能は大体千数百万キュリーといわれます。死の灰にすれば二十八キログラムから三十キログラムの分に当たる。これを、いまの政府の計画ですと、あるいは四国の伊方の原発にしても敦賀の原発にしても、船で運んで東海村の再処理工場に運ぶという計画だそうでありますが、それは間違いありませんか。
○佐々木国務大臣 そのとおりでございます。
○不破委員 そこに私は非常にやはり問題があると思うのです。実はこの輸送はこれから始まるわけじゃなしに、敦賀とか福島とかからばすでにイギリスに向かって、敦賀、福島だけでも過去に六回輸送されています。すでにこの物を船で運ぶ計画が進んでいるのです。ところが、これは運輸省の研究でも明らかになっているはずですが、いま使われているこの使用済み核燃料の入れ物は海には余り強くありません。いままでの実験ですと、十五メートル以内の水の中では大丈夫だが、それ以上の深海に入った場合には保証されていないというのが、いま使われている世界のこの入れ物の実態なんです。これは学者の論文もあるし、運輸省の研究を含めたものも私持っております。 時間の関係で結論だけ言いますが、ところが日本のように沿岸で海難が多い。大型船でも一年間に二百隻近い海難が起こります。そういう所でこの危険な放射能のかたまりを積んだ船がもうすでに敦賀や福島から合計六回も出航している。再処理工場が動き出したら、日本じゅうの原発から東海村へ運ぶようになる。大変な問題なんです。その危険性をちょっと「むつ」と比較しますと、「むつ」で放射能が漏れて危険だということになりましたが、あのときに「むつ」の原子炉の中に存在していた死の灰は八十ミリグラム相当であります。この使用済み核燃料は一本のキャスクだけで死の灰二十八キロから三十キロですから、三十五万倍であります。それを何本も積んで船で運ぶと衝突の危険もある。これは完全密封不可能なものですから絶えず熱を放流しなければいけませんから、その意味で、沈没したときに安全性が保証されていない。「むつ」以上に危険なものが、現在すでに国民が知らないうちに何遍も運航されている。そして再処理工場が動き出したら、これが日本じゅうを歩き回る、こういう事態ですね。これについて、私は科学技術庁の一昨年の原子力開発利用計画というのを見せてもらいましたが、深海つまり海にもぐっても大丈夫なキャスクを開発しなければいかぬという計画がちょっとあるだけで、いつまでにこれができるというプログラムなしに事態が進んでいる。 時間もありませんので、もう少し問題点を言わしてもらいますと、もう一つ大事な問題はプルトニウムの問題であります。 再処理工場を動かしますとプルトニウムが生まれます。これは地球上に自然には存在しない元素で、原発の開発の中で生まれた「地獄のプルートー」という名をつけた元素であります。まさにこの名にふさわしいので、これは非常な危険があります。学者の研究によりますと、角砂糖一個分のプルトニウムがあると、〇・〇四マイクロキュリーが骨に対する許容量ですから、大体五千二百五十万人を冒すだけの量になる。角砂糖二個分で大体日本人全体を——なかなか平等に配分するのはむずかしいことで、理屈で言えば、日本人全体を汚染できるだけの許容量以上になる。それぐらいの放射能の有害の毒性を持っている。おまけにもう一つ、これは非常に簡単に原爆ができるという特性があります。 ですから、この二つの問題で、プルトニウムを実際につくり出したら、これの管理は大変な問題なのです。漏れる管理だけじゃなしに、アメリカでは核ジャックといって、これが襲撃されてだれかの手に移ったら大変だと、国家的問題になっています。ですから、アメリカでは再処理工場が動かないと先ほど言いましたが、それはこれに関係がある。再処理工場を動かすと、プルトニウムがどうしても民間の手に出てくる。軍の手ではなしに、民間の手に出てくる。そのプルトニウムをどうやって管理するか。その管理のルールがまだ確立されていない。原子力委員会が一つのGESMOという案を出しています。この案がまだ国家的に決まっていない。そのためにこれが決まるまでは再処理工場の着工が認可にならぬ。それでアメリカでは再処理工場を動かせないでいるわけです。しかも、この問題はどうしても、プルトニウムの輸送をかぎつけられないために輸送先は秘密にするとか、絶えず武装部隊で守るとか、原子力の公開の原則に反することも生まれてくる。それが一体民主主義や公開とどう両立するかという問題まで生まれています。そういう重大な問題が再処理工場の問題に関連していま世界的に生まれていて、アメリカではその答えが出ないから再処理工場の着工も認可にならない、全部ストップしているという段階なのに、日本ではそういう問題があることすら国民に知らされないで、ただひたすら四千九百万キロワット体制に向かって進んでいる。 さらにもう一つ再処理工場について言えば、その死の灰を処理すれば最後に非常に圧縮された高放射能の廃棄物が出てきます。産業廃棄物は悩みの種ですが、この高放射能の廃棄物を最後にどこに捨てるかという問題は、これは世界的にも大問題です。たとえばその中にはプルトニウムのように半減期二万四千年なんというものもあります。二万四千年たたないと危険性が半分にならぬ。つまり、とても三木内閣一代どころか、自民党政府がどのくらい続くか知りませんが、自民党政府どころか、さらに人類の将来まで責任持って管理できるような計画を立てないと、この廃棄物の処理ができぬ。だから、アメリカでは原発に手をかけてみたが、やってみると新しい問題が大変だ、経済的に成り立つかどうかもわからぬ、そこまで議論が出ている段階なんです。 私はもう時間がありませんから、最後に要望と質問を言いますが、こういう段階に原子力発電の問題があるということを政府はやはりはっきり認識すべきだ。それを認識した上でそういう問題を解決して、国民に納得のできる条件を整えた上で原子力開発のレールを進むべきだ。それをしないままに、経済成長がこれから六%に勘定すればこれだけになる、それで石炭の分が幾ら、石油の分が幾ら、残りは全部原子力にかましてしまえ、そのためには再処理工場はここでこれだけ要る、そのための体制はこうこうだというようなことば絶対に許されない問題であります。 三木さんは、先ほどの紹介した演説の中で、「私は政治家として日本の政治というものにいかに先を見通す力が欠けていたか、いかに科学的知識というものが欠如していたかということに対して恥ずかしい思いがするものであります。」ということを昭和四十八年六月七日大阪で言っております。私はこれを恥じるのはりっぱなことだと思う。しかし、あの高度成長政策が公害を引き起こしたことに関してこれだけの認識をされるんなら、これから原子力の高度成長政策を進めようとする場合に同じ反省を十年後にしたのでは、それこそ日本の国民の民族的な安全がそのときには危機に瀕しているかもしれない。そう言っても過言でない。そうでないとだれも言えないような問題が、未知への挑戦の問題がここにあるわけであります。私は、三木さんが「二十一世紀への挑戦」などと言わないで、いま現在やっていることに対して未知の部分、どうしても十分納得的な解決をしなければ進めない部分、これには大胆に未知への挑戦ということをしっかり腹に据えられて、この原子力問題ではここでこれまでの原子力行政の根本転換を図る必要があると思います。そのためには、アメリカやイギリスや西ドイツやフランスでやられているように、単なる原子炉の設計審査でなく、原子炉の設計、着工、運転から、核燃料の運搬から、将来の廃棄物の処理から、すべてにわたって責任を一元的に負えるような、開発側とは結びつかない原子力の安全体制を緊急に確立する必要があるし、このことを軸に国民に納得のできる条件をつくり出すまでは、少なくとも新しい原発の着工や新しい原子力船の着工は延期をする、こういう大胆な措置をいまこそとらないと、将来取り返しのつかない段階が生まれ得るということを申し上げて、三木総理の決意ある答弁を伺いたいと思うものであります。
○三木内閣総理大臣 これは、現在石油というものがエネルギーの中心になっておる。相当この事態は続く。しかし、その間、世界各国とも原子力発電というものが、アメリカでもヨーロッパでも石油にかわるエネルギーとして相当なウエートを占めてきておる。ことにフランスなどは非常な積極的な態度で原子力発電の開発をやっているわけで、いま不破君の御指摘のような問題は、世界共通の課題でありますから、この問題はわれわれとしても重大な関心を持たなければならぬことは当然でありますが、世界もまたこの問題については、どの国の政府だって国民の安全を考えないものはないわけですから、いろんな提起された諸問題についての研究開発というものは進めておるわけであります。こういう国際的な協力という面もわれわれは大いに進めていかなければなりませんが、とにかく日本の場合でも、石炭の問題をいろいろ提起されましたけれども、どうしても日本の場合は、アメリカとかヨーロッパ諸国と違って石炭のエネルギーというものに大きなウエートを置けない、二千万トンのベースも横ばいということで石炭はいかざるを得ないわけでありますから、原子力発電というものに対しての日本のこのエネルギー源というものは相当ウエートがこれからかかっていく。その場合に開発と安全の問題というものを一元的でなしに、やはり開発と安全の確保というものは別個の問題として、この問題を処理することが必要であるという考え方は、私もさように考えておるわけであります。原子力委員会などに対しても、そういうふうな意見というものが大勢を占めておるわけでございますから、今後開発するについて、やはり安全の確保というものに対しては一段と今日よりも体制を強化してまいりたい。科学技術庁においても安全局などを新設したこともその政府の決意のあらわれでありますが、原子力委員会等のそういう意見も徴して、やはり開発と安全の確保というものに対しては、一緒にするのでなくして、別個の考え方で安全の確保を図ってまいりたい。そういう問題の体制を整備しながら開発は進めていこうということで、全部体制が、使用済み燃料の再処理のそういう結論が出るまで原子力発電の工事を中止するという考え方は持っておりませんが、いま御指摘のようなことに対しては、政府自身としても重大な関心を持っておりますから、安全の確保というものに対しては、一段とこの問題には政府は今後の原子力行政の中で重点を置いてまいります。そして、科学者の意見も尊重しなければならない問題でありますから、そういう意見も徴して、国民の不安を解消するということは今後の原子力開発を進めていく上において重大な問題点だと考えておるわけでございます。
○不破委員 確かに多くの問題、国際共通の問題がありますが、政府が出した資料でも、一元的な安全管理体制を持たないで事に当たっているのは日本だけであります。そこが問題です。その体制を整備するまでは、私は、このままの計画に沿って事態を進めることは非常な危険が伴う、これが私の提案であります。ただ、総理が言う安全の体制と開発の体制を切り離す、通産省が一本でやるようなことをしないということは、これは大事な点でありますので、それを確認して、午前の質問をこれで終わらしてもらいまして、残りの問題は午後伺いたいと思います。(拍手)
○荒舩委員長 この際、主税局長から発言を求められております。短時間で説明……。
○大倉政府委員 先ほど、不破委員の御質問に、会社臨時特別税の税収につきまして、とっさのお尋ねで、手元に資料がないままにきわめてラフな計数をお答えいたしましたが、早速資料を取り寄せまして照合いたしました結果、五十年度補正後の税収見込み額は千百五十億円、五十一年度の税収見込みは二百億円、差し引き九百五十億円でございますので、恐れ入りますが、訂正さしていただきます。
○荒舩委員長 午後零時三十分より再開することとして、暫時休憩いたします。 午後零時四分休憩 ————◇————— 午後一時三十一分開議
○荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑を続行いたします。不破哲三君。
○不破委員 午前に引き続き質問をいたしますが、次の問題としては、衆議院の本会議で民社党の春日議員から提起されたわが党の宮本委員長に関連した問題について、政府に政治姿勢の問題として質問したいと思います。と申しますのは、ここで提起された問題、つまり春日議員の質問とそれに対する政府を代表しての稻葉法務大臣の答弁の中には、わが国の現在の民主主義の基本にかかわる問題あるいは原点にかかわる問題、これに対する重大な問題が含まれていると考えるからであります。 この問題に入る最初の問題としてまず伺っておきたいのですが、宮本委員長の復権問題、これは法的には決着がついている問題だと考えられているかどうか、稻葉法務大臣に伺いたいと思います。
○稻葉国務大臣 御質問の、法的に決着がついているかどうかという意味でございますが、決着がついていると言えばついている、ついていないと言えばついていないという、それはどういうことかと申しますと、決着がついているという意味は、判決末尾に付されておる付記にこう書いてありますから、そういう意味では、将来に向かってこの判決の効力を失うという意味で決着がついていると思います。文言は別に読まなくてもおわかりでしょうから、付記の文言は読みません。その付記の法的効果の問題に帰着すると思うのですね。将来に向かっては判決が言い渡されざるものとみなすと、こういうのですから。しかし、それによって過去に行われた東京や網走での判決の執行が、これは無効で、なくなる、そういう意味ではありません。全部御破算だという意味での決着かついているということにはならないと思います。 それからもう一つは、言うまでもないことですけれども、勅令七百三十号に上り——判決の示す犯罪事実、犯行事実がでっち上げであり、うそで間違いであったという判断の結果、刑の執行停止や資格回復をしたものでない、これは言うまでもないことでございます。そういう意味では、その決着がついているかどうかという意味、内容のとり方でございますから、将来に向かってその言い渡しがなかったものとみなすという意味で、その判決の効力が将来にはもう及ばないという意味では決着がついている、過去のものについて全部御破算にはなっていないという意味では決着はついていない、こういうことであります。
○不破委員 どうも答弁自体が決着がついていないようなわかりにくい答弁だったのですが、つまり復権という問題、法的には解決されている、ただそれの経過とか解釈とかについては政治的な議論があるというふうに理解をします。大体それでいいですね。——うなずいておられるから大体そういう解釈だと思います。 それで、この問題についてはこれからの議論全体にかかわるわけですけれども、いまの答弁でも明確なように、復権問題として法的には解決がついているその問題が、今度の国会で蒸し返されたことの問題点が重大だと思うのです。というのは、春日議員の質問にもありましたように、あの中では過去の裁判について、特に戦時下の、今日の日本の状態から考えるならば、後々述べますが、非常に異常な状態で行われた裁判について、その当否の判定を事実上国会あるいは政府に求めるような問題の蒸し返し方でありました。それからまた復権の当否についても、この法的に解決済みの問題について、それの再検討を事実上国会に求めるような、そういう問題の提起でありました。 もし裁判と国会の論議との関係でこういうことが自由勝手に行われるということになれば、私は、この問題の内容とは別個の問題としても、非常に重大な問題が生まれると思うのです。ある裁判が行われる、その裁判について気に入らないという人が、国会においてあの裁判の当否について判定をせよという議論を持ち出すようになったならば、これはまさに司法権と立法権との間の関係はめちゃくちゃになるわけであります。多数決で事を決めるような性質の問題ではないのに、そういう問題について事実上春日議員の質問は、しかも過去の裁判についてどっちがどうだったかと改めて判定を求める——ここでも私は、このやり方は議会の運営としてもきわめて不当なやり方だ。そうしてまた、これも後で問題になりますが、それに事実上応じてきた政府側の態度も、その不当性においては共通したものがある。これをまず第一に指摘する必要があると思うのです。 しかもこの問題は、論者は国会の議場の中では、国民の間に疑惑があるからそれを国会として解明する必要があるというようなことを言います。しかし、そのような議論が成り立たないことは、事の経過から言っても明白であります。たとえば、国会に問題を出した春日議員は、国会に問題を出すよりもすでに二年前に、毎日新聞という新聞の紙上で、共産党は極悪非道である、反対者を殺すのだから連合赤軍とどこが違うかということでその問題を取り上げて、すでに党内の反対者を殺したということを公然と発言をしていました。参議院選挙の最中であります。それからまた昨年は、民社党の池田園対委員長が、昨年の十二月、テレビの席上で、公開の場で、宮本委員長の党員虐殺事件、そういうことで発言をしている。つまり国民の間に疑問があるから国会の場でこれを解明するというのは、この国会の場を糊塗する全くの口実であって、こうやってずうっとやられてきたいわば反共宣伝の場に、本来、裁判の当否とか、すでに解決済みの復権問題とかいうことを取り扱うべきでない国会に、改めて持ち出した。それでこの反共的な党略的意図を果たそう、そういう企図のものであったことは、私は事の経過から言って明瞭だと思うのです。だからこれを国会の主題にして、そうしてこの当否を国会として判定するというようなやり方には、私たちはまず反対だということ、それはわが党の立場からではなしに、問題の性質から言っても認められるべきことではないということを、きょうの討論の前に、まず第一に述べておきたいと思います。 さて、提起された問題の主題に入りますけれども、初めにも言いましたように、事は日本の民主主義の原点にかかわる問題であります。と申しますのは、この日本に民主主義の政治体制が確立したのは、あの戦争に敗北をして、そして政治的な価値観の大転換、主権在民の方向への転換が行われた、これが今日の日本の民主主義の原点でありますが、その以前の状態、つまり戦前の日本の政治や社会の状態、あるいは日本が侵略戦争の主体としてアジアで、太平洋でああいう戦争を行った、その当時の状態に対する評価の問題。事はその問題にかかわっているという点できわめて重大だと考えるわけであります。たとえば稻葉法相の国会での発言にしても、あの敗戦以前の日本で行われた裁判が、あたかも現在新憲法のもとで日本で行われている裁判と実際に連続性があるかのような、形式はともかくとして、内容的に連続性があるかのような、そういう扱いが終始されております。ところが、ここに一つの大きな問題があるわけであります。そういう意味で、私は事の原点にかかわる問題として、戦前の問題についてそれに対する政府の評価、態度を聞きながら議論を進めてまいりたいと思います。 問題になりました裁判は、治安維持法下に、治安維持法を主要な手段として行われた裁判でありました。ですから、この問題について正しく考えるためには、この治安維持法について、戦後育ってきた多くの方には恐らく全く経験のない、知識もない場合も多いかと思いますが、戦前の問題、特にこの出題を理解する上でどうしても避けることのできない問題として治安維持法の問題についてまず考えてみたいと思うのです。 治安維持法というのはどういう法律だったでしょう。これは大正十四年に成立をして、昭和三年、昭和十六年、二度の改悪を経て、そして施行されました。この治安維持法で主要な罪の対象となったのは、第一に、国体を変革することを目的とした結社であります。当時の国体は天皇が絶対で国民が臣下という立場でありましたから、国体を変革する企図というのは、たとえば今日日本の国民が享受しているような主権在民の政治体制あるいは議会制民主主義の政治体制、これを願うことが国体を変革する罪とされたわけであります。第二に、私有財産制度を否認する結社、これは平たく言えば社会主義の運動であります。こういう、今日の日本では当然の権利として、あるいは日本の政治の前提とされていることが治安維持法によって犯罪とされた。これが第一の重要な問題であります。 しかも、この法律の適用に当たっては、その行動を、遂行を助ける罪ということで無限に拡大解釈された。たとえば国体を変革する罪を犯す団体としては、日本共産党やそれに友好的な態度をとる多くの団体が対象になりました。それからまた、一連の宗教団体も、国家神道に同調しないという理由で、これも治安維持法の国体変革団体として扱われました。さらには、朝鮮のような日本が不法に植民地にしていた国で独立運動を起こす、これも国体変革の罪であるということで治安維持法の対象にされました。そしてそれに関連して、実際には戦争に反対し平和を求めあるいは自由と民主主義を求めるさまざまな団体や人々や潮流がこの治安維持法の犠牲者になったわけであります。 実際に若干の数字を挙げてみますと、この治安維持法によってどれだけの人が共産主義者の名をもって逮捕されたか。これは完全な統計はありませんが、司法省の調査によって見ると、検事局に送検されただけでも七万五千六百八十一名であります。送検されない段階の逮捕を合わせれば、これが数十万に上ることは容易に察知されることであります。しかも、この治安維持法で逮捕された被告に対してはあらゆる人権が認められませんでした。そのために多くの人々が共産党員として命を落としました。治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟という組織が調査したところによりますと、逮捕されて、現場で、留置場で拷問などによって虐殺された者が六十五名、そういう拷問、虐待が原因で獄死した者が百十四名、病気その他の理由で獄死した者が千五百三名、全部で千六百八十二名が、われわれがわかっているだけでも治安維持法によって逮捕され、虐殺され、獄死しているわけであります。その中には、わが党の幹部である岩田義道のように、昭和七年十月三十日につかまって、十一月三日、四日目には留置場で死んでしまう、あるいは作家の小林多喜二のように、昭和八年二月二十日につかまって七時間で即日虐殺されてしまう、あるいはわが党の幹部である上田茂樹のように、つかまったことはわかって、死んだこともわかっているが、どこでどう殺されたのか、その死んだ日も依然としてわからない、そのままやみからやみに抹殺されてしまった、そういうことさえ枚挙にいとまのない、まさに暗黒の状態が現出されたのであります。 しかもその治安維持法の犠牲者は、単に共産党とその同調者にとどまりませんでした。人民戦線事件のときには、亡き鈴木茂三郎氏を初め、現在社会党の中で活動している多くの人々を含めて、数百名の人々がその犠牲になりました。文化人も多数の人々が犠牲になりました。さらに宗教団体についても、大本教とか天理教とかいう宗教団体が治安維持法による国体変革団体として指定されて、大量の検挙を受け、大本教の場合には二十何人の人々が獄中で憤死したり発狂したり、自殺をしたりして命を失っています。宗教団体の一つである創価教育学会についても初代会長初め二十名以上の人たちが、やはり治安維持法違反で逮捕されて、初代の会長の牧口氏は獄中で命を失っています。 これは治安維持法による犠牲者のほんの一部にすぎませんが、この治安維持法が日本の国民の権利を奪い、自由を抑え、時の政府に気に入らない者を抹殺する手段として働いた、まさに暗黒政治の支柱であったことは、以上のわずかの引例からも明瞭ではないかと思います。 この事実の上に立って私はまず三木首相に伺いたい。この治安維持法は戦後撤廃をされました。この治安維持法が撤廃されたことに関して、三木総理は、民主主義の見地から現在どのような評価と御意見をお持ちか、これを伺いたいと思うわけであります。
○三木内閣総理大臣 現状に即さないという点で撤廃されたわけだと思います。
○不破委員 ちょっと大事な問題であります。日本の現状に即さない、戦前の状態には即していたとお考えですか。
○三木内閣総理大臣 その当時においては日本で法律として通用したわけですが、今日、戦後の日本の政治体制、いろんな変革があったわけで、その状態にはこういう法律は適さないということでこの法律は廃止をされたものである。
○不破委員 きわめて重大な発言です。戦前の状態では状態に即していたわけですか。即さなくなったのは戦後だけですか。明確にもう一遍お答え願います。
○三木内閣総理大臣 戦前には法律としてこれは施行されておったわけであります。これに対して私がいろいろここで価値評価をいたす立場ではないわけであります。
○不破委員 戦前これがどうであったかということに関して、現在の時点でも総理として価値評価はできない、いいとも悪いとも言えない、そういうことですね。
○三木内閣総理大臣 それは、今日の事態から考えると、その治安維持法というものが好ましい法律であったのでないことは明らかでございます。
○不破委員 これはきわめて重大な問題ですが、後の問題にかかわり合いますので、もう一度後で取り上げたいと思います。 そして、この治安維持法を遂行する手段としてつくられたのがいわゆる特高警察であります。先ほど挙げました多くの、岩田義道や小林多喜二や野呂栄太郎というわが党の幹部で経済学者も留置場で虐殺されましたが、そういうことに加わったのもこの特高警察でありました。そして大事なことは、この特高警察がそういう運動を弾圧する際に、一番の目安にしたのは何かという問題であります。今日当時特高警察が内部で出していた資料が、あるいは「特高月報」とか内務省警保局の「社会運動の状況」とかいう形でわれわれ見ることができますが、これを見ると、その点で非常に興味があることがある。なぜ共産主義運動を抑えるのか、なぜ共産主義者を抑えるのか、そのことについて一番書かれている主要な理由は、戦争に反対していることであります。特に、中国に対して戦争を開始したとき、その年のこういう資料を見ますと、彼らはいまでも帝国主義侵略戦争反対と言っている、だから抑えなければいけない。ところが、たとえば当時進歩的な運動とあるいは見えたかもしれない無産政党の運動の中でも、戦争の問題に対する態度によっては決して治安維持法も特高警察もこれを弾圧の対象とはしなかったわけであります。 たとえば、当時の無産政党に社会大衆党という政党がありました。この社会大衆党に民社党の創立者である西尾末廣氏が加わっていたことは周知のことですけれども、この社会大衆党は、西尾氏が戦後発表した「大衆と共に」という本の中でも、社会大衆党は昭和十二年十一月の大会において、これは日中事変、中国への侵略が始まった年でありますが、「「階級闘争を通じて資本主義を改革せんとする社会運動の過去の理論は揚棄され、国家及び民族の生々発展が、資本主義の改革をその中に含まねばならぬという全体主義の指導理論がこれにとつて代らねばならぬ」と表明し、」全体主義の立場に立った。そして「この大会で皇軍慰問を決議し、これに基いて私も北支班に加つて現地の将兵を慰問した。」。戦争が始まった最初の年から戦地へ出かけていって慰問をやる、こういう戦争協力の態度に出たということを西尾氏自身が戦後も請いておりますが、こういう党に関しては、無産政党といえども特高警察は非常に寛容であります。寛容どころか歓迎であります。 たとえば、内務省が出した「社会運動の状況」という本によりますと、「満州事変以来国民間に膨湃として勃興せる国家意識は、」社会大衆党の「性格の変換を余儀なくせしめ、党は漸次時局順応の方向を示し来り、支那事変発生するや逸早く政府の方針を支持し、挙国一致的態度を率直に闡明すると共に、同年十一月の第六回全国大会に於ては従来の綱領及政策を修正して、」「全体主義的態度を決定し、」「支那事変に対しては共の意義を日本民族発展の一階段にして、支那に於ける英米資本主義の打倒と、ソ連勢力の駆逐に依る東洋民族の解放を図る聖戦なりとして之を支持」した。神聖な戦争としてこれを支持した。そして「新方針の党内浸透の為、党員の教養に努むる一方、党内粛清工作を断行し、」——戦争に少しでも批判的な者は追放したのでしょう。「外に於ては銃後活動を強化し所謂革新政党として新なる発足をなせり。」こういう歓迎的態度を特高警察はとっているわけであります。 そして私、こういう事態を考える場合に思い起こさざるを得ないのは、昭和十六年、あの帝国議会で治安維持法の最後の改悪が行われたとき、たしか三木総理も国会議員としてその議会におられたはずだと思いますが、そのときに、現在の自民党につながるような、いわばその源流に属するような政党と並んで、現在の民社党に属するような、その源流に属するような人々が、西尾末廣氏初め肩を並べて治安維持法の改悪案に満場一致で賛成したという事実。そしてこの流れの中で、いまもまた治安維持法に基づく裁判の問題がこの国会に持ち出されていることを考えると、やはり歴史の流れというものを感ぜざるを得ないわけであります。 先ほど三木さんに伺いましたから、稻葉法相に伺いたいと思います。当時の特高警察は、もうすでに常識になっておりますが、あらゆる手段を尽くして、この治安維持法を盾に弾圧を重ね、先ほどのような虐殺まで生み出しました。この特高警察もまた、治安維持法とともに戦後解体されましたが、このことについて稻葉法相が、やはり日本の民主主義の見地からどう考えておられるか、見解を伺いたいと思います。
○稻葉国務大臣 あなたの一番最初、私に……。
○不破委員 その問題は後でやりますから。最後にまた戻りますから……。
○稻葉国務大臣 そうですか、最初の問題は……。
○不破委員 いまの問題です。
○稻葉国務大臣 春日質問に対し私の答弁したこと自体も非常に不当だ、そういう立場に立って質問を続けるという、そうでないですか。
○不破委員 その話にはまた戻りますから……。
○稻葉国務大臣 戻りますか。いまの治安維持法だとか、その法律下における特高警察の犯罪取り調べのやり方とか、それらに対するあなたの批判を法務大臣はどう思うかという点に……。
○不破委員 特高警察が解体されたことをどう思うかという……。
○稻葉国務大臣 それは戦前の政治情勢や社会情勢は現在の情勢とは非常に歴史的に異なっております。思想、表現の自由等制約が存していたことは事実でありますから、今日の時点で当時の司法行政一般について一概にその是非を論評することはいたしかねまするし、なお当時の捜査の過程における取り調べの仕方や裁判の実情等について種種御指摘のような事実もあったかどうかについてその経緯の詳細を承知していないので、いま直ちにここで意見を求められてもお答えするわけにはまいりません。
○不破委員 戦後の出発点における特高警察の解体、治安維持法の廃止は日本の戦後史にとってきわめて重大な問題であったわけであります。それについて十分承知していないから明確な答えができないという人が民主主義国家をもって名とする日本の法務大臣をしているということについて、私はこれはきわめて重大な問題だと思います。しかしその問題で、次の問題に進みたいと思います。——いや、質問中ですから、発言の途中でやめるのはやめてください。その特高警察の問題に関連して……(発言する者あり)発言中ですよ、私が。
○荒舩委員長 ちょっと……不破君に申し上げます。どうぞ、ちょっと待ってください。
○不破委員 私を指したのでしょう。
○荒舩委員長 指しません。指は指していたかもしれないけれども、向こうを指したんだ。
○不破委員 そんなでたらめ言いなさんな。
○荒舩委員長 私がここで指名する人が発言権がありますから。どうぞ少しお待ちください。
○稻葉国務大臣 あなたは先ほどいろいろな人の名前を挙げ、そして警察が虐殺したとかいうことを何遍も言われましたから、そんなことは私がいま突然言われても虐殺であったのかどうであったのか、そういうことは答弁しかねる、答弁いたしたくない、こう言うのは当然じゃないですか。警察の権威に関する問題です。民主主義の権威に関する問題だもの。(発言する者あり)
○荒舩委員長 御静粛に願います。
○不破委員 じゃ伺います。話を進めます。 この特高警察が、日本共産党や民主主義の団体を弾圧するためにスパイを広範に用いていたということはこれまた明白な事実であります。しかもこのスパイは、最初の段階は党内の内情の調査、これが主でありましたが、特に共産党が大きな一定の力を持つようになると党の幹部を手引きをしてつかまえさせる。先ほど挙げた虐殺といった多くの幹部はやはりスパイの手引きによってつかまった者が大部分であります。 それからまた、さらに進んで、共産党を国民大衆から遊離させるために間違った方針を持ち込む。有名な松村某というスパイは、自分の指揮下の者にギャング事件まで引き起こさせる、こういうことまでやりましたが、社会的な破廉恥的行為を起こさせて共産党を国民から引き離す道具に使う。こういうことまで広範に行ったわけであります。いま問題になっておる小畑達夫、さらに大泉兼蔵というのは特高警察につながったスパイの二人でありました。そしてこのスパイについて、十分な嫌疑があるために、わが党の当時の中央委員会はこれがスパイであるかどうかを取り調べて明らかにするために査問を行ったわけであります。稻葉法相は国会の答弁の中で、これを、党の中央委員として小畑などを引用した判決文をそのままお読みになりましたが、あなたはこの事件について、この小畑、大泉というのは警察が派遣したスパイであったという事実を御存じなのかどうか、伺いたいと思います。
○稻葉国務大臣 治安維持法、治安維持法と言いますけれども、あなた、当時の日共というものは暴力で革命をやり、政府を転覆しようとしておった事実があるわけです。それに対して政府がいろいろ防衛手段を講ずることば当然じゃないですか。そのやり方について、先ほどのような事実があったかどうかということについては、おればつまびらかにしないから、いまここで直ちに答弁はできない、こう言ったのだ。 それから、この間の……(不破委員「スパイの問題を言ってください、討論会じゃないんだから」と呼ぶ)
○荒舩委員長 私語を禁ずる。私語を禁ずる。私が指名したとおりだ。だめだ、君。(不破委員「質問に答えてください」と呼ぶ)質問に答えるか答えないかは私が指図するんですよ。いやならやめなさい。
○稻葉国務大臣 委員長、答えますから、ちょっと待ってください。(発言する者多し)
○荒舩委員長 興奮じゃない。冷静だ、冷静だ。
○稻葉国務大臣 ちょっと静かにしてください。委員長も皆、静かにしてください。 御指摘の事件につきましては、あなたは警察から派遣したスパイを査問したんだと言われますけれども、判決ではそうなっていないという説明を私はしたのです。ですから、それがどっちが真実であるかは、もしあなた方が本当にそう思うのならば、この判決は不当で無実だからと再審でも請求されて、再審で覆るということになれば別ですよ。しかし、そうなってないでしょう。ただ、あの政令でもって、将来に向かって効力を失うということになっているわけなんです。そういう点を間違わないようにしてもらいたいと思う。
○不破委員 委員長はこの問題になると交通整理に熱心ですが、質問に的確に答えるという方向で交通整理をしてもらいたい。これを要望します。
○荒舩委員長 そのとおり。異議なし。
○不破委員 稻葉法務大臣は、あれは判決にあるから判決が法的に覆らない限りはそういうことを繰り返すんだということを言いました。そこに非常に大きな問題がある。連続性の問題を私言いましたが、戦前の治安維持法下の裁判の判決を、それがほかの判決で覆らない限り絶対正しい法の到達点なんだと考えられていること自体が重大なんです。 まずスパイの問題について言いますと、このスパイの問題については、大泉という人物自体が実は法廷で何遍も言っているわけです。初めは警察から派遣されて共産党を撲滅するために入った。しかし、おれはスパイで入っているのだから、別に厳重に裁かれることはないだろうと思って予審に臨み、法廷に臨んだ。ところが、共産党の中央委員をやっているわけですから、どんどん罪が重くなる。これは話が違うというので、予審の途中の段階から、私は実は毛利特高課長から派遣されたスパイなんだ、共産党には警察の命令で入ったんだ、だからこれを罪にしないでくれということを予審法廷の段階で盛んに主張し始めました。これは記録に残っております。しかし、裁判所はそういう事実はないと言って、判決ではそのことに一切触れていないわけであります。これは事実であります。しかし、それなら稻葉さんの議論から言えば、あの判決が法的には正しいんだから、現在有効なんだから、彼はスパイでないことになります。 私はここに一つの文書を持っております。これは戦後、昭和二十七年にジュリストという雑誌に太田耐造という人物、これは戦争中の司法省の刑事局第五、第六課長で、治安維持法の昭和十六年の改悪案を起草して、帝国議会で提案説明を行った検察側の人物であります。彼が言うには、「一時有名になったいわゆる「共産党リンチ事件」の被害者大泉兼蔵、小畑達夫は警視庁のスパイであった。」いろいろ経過を言っておりますが、「起訴された後予審において大泉は、自分が警視庁のスパイであることを自白したが、検察側は、このようなスパイ政策を容認していなかったので、これに対して断乎たる態度で臨んだ。」。スパイをやらしておいたが認めるわけにはいかないから、スパイを否認して検察側は断固たる処置を求めた、そのとおりの裁判が行われた、ということをこの当時の検察側の人物がはっきり明記しているわけであります。 ここには私は幾つかの問題がはっきりあると思う。一つは、あなたが持ち出される判決なるものは、当時の検察側の人の証言によっても、この一事を見ても真実と遠いものがあるということ。それからまたもう一つは、警察側特高の筋書きどおりの、検察側が断固たる態度で、これはスパイと認めるわけにいかないという態度で臨んだら、それをそのまま裁判所が受け入れたという事実、この二つがこの一事からも明瞭になるわけであります。私がこれを言うのは、ここにあの宮本顕治氏を裁いた治安維持法下の裁判の特徴が非常によくあらわれているからであります。 この問題に入りますと、宮本顕治氏が当時のあの戦争中の法廷でもあらゆる事実を挙げて詳しく述べたように、当時の党中央がそういうスパイを発見したときにとるべき処置はただ一つでありました。これはスパイであるかどうかを当人を問いただして明白にして、明白になったならば、党から追放してこれを公表することであります。これは党の明瞭な方針であります。その調査が行われました。しかし、不幸な偶発事件として、その調査の過程で小畑という人物が急死をした。これも一つの事実であります。(「それはおかしいよ」と呼ぶ者あり)静粛に聞きなさい。それで、この不幸な偶発事件を共産党のリンチ事件としてでっち上げるということを特高警察が当時開始したから、今日のこの問題が起こったわけであります。 宮本委員長は、戦後も書いておりますが、逮捕されたときにやはり小林多喜二や岩田義道と同じようなさんざんな拷問を受けました。そこには大泉や小畑を使っていた毛利特高課長も乗り込んできて、山県、中川警部など十数人の部下を率いて——委員長の文書を読み上げますと、「「世界一の警視庁の拷問を知らないか、知らしてやろうか」「この間いい樫の棒があったからとってある」と言いながら、椅子の背に後手にくくりつけ、腿を乱打する拷問を繰り返し、失神しそうになると水をかけた。そして、「岩田や小林のように労農葬をやってもらいたいか」とうそぶきながら拷問を続けた」。その結果、逮捕されたその日に、その夕方にも歩けなくなり、担ぎ込まれて留置場にほうり込まれる。その後も拷問は続けられたが、冬の寒い雪の降る中で一切の夜具を与えず、拷問の痛みに続けて寒さにあう拷問を加えたということが当時の取り調べの状況として記録されています。 そうしてまた、この記録の中では、(「それは何の記録だ」と呼ぶ者あり)宮本委員長自体の記録であります。それらの記録の中では、取り調べに当たった特高の警部たちが小畑が死んだということを知ったとき、これはいい材料だ、これで徹底的にデマってやって、おまえたちを国民から孤立させてやるということを豪語したということも、これも法廷で宮本顕治氏が明瞭に述べていることであります。 ここで裁判の内容について、限られた時間で詳しく述べることはいたしません。ただ、その主張が争われていたときに、当時の治安維持法下の裁判がきわめて明々白々な証拠でも無視したということのために、私は一つの事実をここで御紹介したいと思います。 当時二人のスパイの調査のために使われた場所というのは、これは人里離れた場所でも何でもない、東京渋谷の幡ケ谷の民家の一室であります。ここに当時警視庁がつくったその周りの見取り図がありますが、ここに明記されているように、隣の家とは三尺余りしか離れていない。所によっては一尺くらいしか離れていないところもある、民家に取り囲まれた所でありました。この一軒の家には、恐らく後でわかったのでしょうが、現職の警部が住んでいる。一軒の家には陸軍の幹部が住んでいる。そういう状況のもとでこの民家で調査が行われました。そうしてこの民家の調査の家の中で何事があったかは外に自由に聞こえるわけであります。ですから、警察当局は当時証拠を固めるためにこの民家の居住者に全部当たった、その記録が残されております。たとえば家を接した一軒の家、堀川という人ですが、裁縫をしている奥さんで、一日じゅう家にいる。この調査している所の中で起こっていることは全部聞こえている。こういうことを警察に言っております。「隣は昼は非常に静かであって、夜の午後九時ごろから二階に上がったりおりたりする足音と何か話をしている声が聞こえてきました。」つまり、話している声も、足音も聞こえるようなところであります。「別に悲鳴を上げる声や人を殴打するような声は聞こえませんでした。」こういうことが三軒の家の、一日じゅう家にいる奥さん方から全部証言されています。ところが、もしあの判決文に、法相が読まれたような判決文にあったような残虐なことが行われていたならば、悲鳴が起こったり物音が起こってあたりまえであります。それを調べようと思って警察側が調べたが、何にもなかったという証言が警察官の家からも、陸軍の幹部の家からも、この裁縫屋さんの家からも聞こえてきた。普通の裁判だったらば、この証言があれば、一体事件があったかどうかということについてこれを厳重に考えるのがあたりまえであります。ところが、それは絶対にされなかった。この証言についてはほとんど一顧も与えられませんでした。これが一つの問題であります。 それからまた、この国会で議論された問題の中に古畑鑑定という問題があります。これも重要な問題ですが、この古畑氏は確かに法医学の権威者ですが、あの鑑定は、事件があったときに小畑とという者の死体を古畑氏が検討して鑑定したわけでないわけであります。直接警視庁に委嘱されて鑑定したのは宮永というドクターでした。ところが、このドクターは、警察側で殴り殺したというようにしろと言われたら、大体そういうことを書く前歴のある人物でありました。これは当時の新聞にも残っておりますが、ある事件があった。そして彼が五十歳の人物だという検案書を書いた。ところが、後で事件が解決してみたら十六歳の死体であったということがあった。それについて一体あなたの検案はおかしいではないかということを問われたら、新聞に書いておりますが、この際年齢は問題にされていなかったので、予審判事の命令のままに書いたんだ、命令のままに解剖したんだということで堂々と答弁しているような人物でありました。だから、特高警察が最初殴り殺したと大宣伝をして、そのための鑑定書も用意したが、これが非常に不備であることがわかった。法廷での闘争の中で、これは再鑑定せよという主張が通りました。そのときに登場したのが古畑氏でありました。ところが、それは事件が終わってから八年もたってのことで、しかもその前の医師がやった鑑定書を見て、この鑑定書が筋が通っているかどうかという鑑定を古畑氏がやったわけであります。だから、そこで前の鑑定が間違っているという結論が出たわけですから、これはいわば翻訳で言えば、原書と照らし合わせないでも、日本語の翻訳だけを見て、これが間違っていることがわかったと同じことでありますから、前の鑑定なるものがいかにインチキであったか、これでも明瞭であります。 しかし、そういう限界のある鑑定書でありますから、これについて被告の側が疑問を持つのは当然であります、事実と違うと。いまの日本の裁判のもとでこういう証拠が出されて、被告や弁護団の側からこれに対して疑義が出たらどうでしょう。刑事訴訟法では、そういう点で反対尋問を受けない資料は、証拠としては採用できないことになっております。これはあたりまえの民主主義の原則であります。ところが、当時の裁判では、宮本顕治氏が、この鑑定を当局側が資料として出したときに、これは違う、幾つかの疑点を科学的な根拠をもとに挙げて、この議論は全部記録に残っておりますが、その点について何が正しいか真実を明らかにするために、古畑氏を証人として出廷させることを求めました。ところが、当時の裁判所は真実を明らかにすることを回避するために、いまでは当然の条件になっているこういう証人の出廷まで拒否して、反対尋問を経ないまま鑑定書の再鑑定である古畑鑑定なるものを最終結論として決定したわけであります。ここにも私は治安維持法下の裁判の問題点があると思う。 さらにもう一つ言いましょう。この宮本裁判では控訴が認められませんでした。つまり、どんな裁判でも一審には誤りがあり得ます。二審でも誤りはあり得るけれども、それを最小限に除くために、あの戦前の日本の反民主的な法律のもとでさえ、控訴制度は公判に原則として採用されておりました。ところが、昭和十六年の治安維持法の改悪で、治安維持法の被告に関してだけは、最初決めてしまったらもう控訴は認めない、一切の事実の再審理は認めないということを治安維持法の改悪で認めて、控訴審まで取り除いてしまったわけであります。ですから法務大臣が述べたように、控訴を飛んですぐ上告であります。上告というのは、書面を審査して、法的な不備がないかだけを調べるものです。そういうことが治安維持法下の裁判では行われた。これも重要な問題であります。 私はここで幾つかの論点を挙げました。特高警察の側が、最初にはこの不幸な偶発事件を故意による殺人事件に描き立てるために主張をし、それに対してこれが不幸な偶発事件であったということを主張して、リンチ事件なる非難を一貫して拒否した宮本顕治氏の態度、この二つがこの裁判の中では一貫して争われたわけであります。ところが、私がいま述べたことからも明らかなように、当時の治安維持法下の裁判所は警察側の仕組んだ筋書きどおりの結論を引き出す、その目的のために、さっきのような隣家の人の、いまで言えば最も重要な証言まで一切無視をする、あるいは重要な証拠として使うべき資料に対する反対尋問も拒否する、さらには控訴も拒否する、そういうことでむちゃくちゃに結論にただひたすら持ち込んだ。詳しく言えば切りがありませんが、これが治安維持法下の裁判の実態であります。 そこで私はあなたに伺いたい。そういう状況のもとで裁判所の一定の判決が出た。それをあなたはやはり今日でも、これにかわる判決が出ない限り、法的にはこれが正確な、正当な到達点だというようにお考えなのかどうか、そのことについて伺いたいと思います。
○稻葉国務大臣 ずいぶん長い御意見の開陳や事実の陳述がありましたが、それはあなた、確たる証拠に基づいて言っているのじゃなくて、自分は官本さんにこう聞いた、だれだれがこう言ったということだけの話でございますから、それにわしらが反論するとすれば、ちゃんと記録を読んでやらなければいかぬのですが、記録全部は読んでいませんからね。そういうことならば、そういう調査の上、確たる確実なお答えをしたいと思いますな。いま直ちにあなたから一方的にそういうことを言われて、ああそうでございます、まあ不当でございました、そんなことを返答するわけにはまいりませんよ。そうでしょう。
○不破委員 私がいま裁判の問題で言ったことは、全部法廷の記録にあることであります。この隣家の人の証言も、それからまた反対尋問を拒否されたことも、それからまた治安維持法の被告に関しては控訴審を抜かれていることも、これは法律にあることでありますが、全部客観的なことであります。そしていまの重大な問題は、稲葉氏がそういうことは全部調査しなければ物が言えないと言いながら、そういう法廷の判決だけは国会の場で求められれば幾らでも引き出して引用をして、これが正当なものであるかのように紹介する、そこに問題があります。そのことを私はこの問題として指摘をしたいと思います。 いまの稻葉氏の態度には、実は私が最初に言った戦後の民主主義の原点としての価値観の問題があるのです。というのは、侵略戦争や軍国主義の体制のために、治安維持法を中心にして組み立てられたいわば弾圧の法体系、これが戦後否定をされました。これは何のために否定をされたかというと、主権在民の民主主義の政治体制をつくるために否定をされたわけであります。つまり、この治安維持法が侵略戦争や軍国主義や暗黒政治の体制の支えであったからこそ否定されたわけであります。ところがいま法務大臣は、これは戦前から連続しているものだと言われる。そしてまた戦前の状態ではこれは妥当なものであったかのような、そう受け取られるような発言が法務大臣からも、三木総理からも聞かれる。そうなると私はさらにさかのぼって、この体制によって行われた事態、たとえば太平洋戦争についていま日本の政治を担っている三木内閣がどう考えられているか、これを聞かざるを得ないと思います。あの太平洋戦争についてはすでに歴史の審判が出ておりますが、この太平洋戦争について、いまの時点で三木総理は、あれが不正義の侵略戦争であったと考えられておられるのか、それとも当時のものとしてはやむを得なかったものと考えておられるのか、その点を総理の現在の政治的な姿勢の問題として伺いたいと思います。
○三木内閣総理大臣 再びあのようなことは繰り返してはいけないと考えます。
○不破委員 あれが不正義の侵略戦争であったということは認められるのですか。
○三木内閣総理大臣 再び繰り返してはいかぬというのですから、その戦争に対しての私の感じは当然出ておると思います。
○不破委員 しかし、侵略戦争であったと認めることは回避されるわけですね。
○三木内閣総理大臣 再び繰り返さないというのですから、そういう戦争を再び繰り返すようなことがあってはいけぬというのですから、当然に戦争に対しての反省があるはずです。
○不破委員 これだけ、三回聞いても侵略戦争あるいは不正義の戦争という断定だけは避けられる。ここに私は、三木内閣の政治的な性格が出ていると思うのです。このことを田中前総理に三年前に聞いたときにも、これは歴史の判定を待つ問題で、私としては言えないと言いました。ところが、あの日本とドイツとイタリアが結んで、世界に対して行った侵略戦争に対して、いまこの三カ国の中でその国の総理大臣があれが侵略戦争、不正義の戦争だったと言えないような国は、この日本しかない。つまり、不正義の戦争だったということを言えない政治家がその国の統治を担っているという国は、あの侵略戦争を行った三カ国の中でこの日本しかない。私はここに今度の問題の非常に大きな背景もあると思うのです。たとえば西ドイツを見てごらんなさい。西ドイツでは……(発言する者あり)不規則発言を慎みなさい。 西ドイツでは、戦前のあのヒットラー体制のもとの裁判についてさえ、そういう政治犯をつかまえたすべての裁判について、これが無効であることを宣言されたばかりか、その裁判を行った裁判官まで裁判にかけられて有罪性が明らかになっておる。これぐらい侵略戦争に対する態度は明確であります。それからまた、あの侵略戦争を行い、ナチに協力した者に対しては、いまでも西ドイツの国家そのものが国家的な犯罪者として追及をやめていない。アイヒマンのような人物があらわれれば、イスラエルが追及するだけでなしに、西ドイツの国家そのものが国家的な犯罪者として追及する。それぐらいあの侵略戦争に対する態度は、法のたてまえの上でも明確になっているわけであります。だから、その体制のもとで行われた、この侵略戦争に反対する者を逮捕し弾圧するために行われたそういうような法規も、これが戦前の状態のままでは有効であったとかそういうような議論は、新しい民主主義の原理の上に成り立った国では、こういう議論は通用しないわけであります。 ところが、いまの日本では、たてまえの上では侵略戦争は反省する、戦争は反省する、戦前の暗黒時代は繰り返さないと言いながら、この戦前の体制が事実上肯定されている。だから、特高警察が仕組み、それに従属した裁判所が、さっき私が一、二例を挙げたような理由だけでも今日の日本の裁判制度のもとでは認められないような不法な裁判でつくり上げた結論であるのに、国会でそれを問われれば法務大臣が判決はこれでございますということを堂々と紹介する。こういう戦前の暗黒裁判の肯定が行われているわけであります。(発言する者あり)不正規発言はやめなさい。 いまこの問題で持ち出されている復権の問題に関しても、同じような性質の問題があります。たとえば春日議員は復権の過程に疑義があると言いました。宮本顕治氏が網走から出たときに正規の手続を経ていない。しかし、正規の手続とは何でしょう。敗戦でポツダム宣言を受諾して民主化を約束した日本、もうあのような暗黒政治を繰り返さないと約束した日本、しかしそこに存在していたのは明治憲法であり、治安維持法を中心にして組み立てられたそういう手続の法体系であります。そしてそこへポツダム宣言を実行する立場から連合軍からいろいろな民主化の指令、政治犯の釈放、治安維持法の解体、こういう指令が出された。そういう状態のもとで法的にいまの平常時に考えられるような正規の手続が起こり得ないことはあたりまえであります。 私どもが調査したときにも、政治犯釈放令が出たときに、あるところではもう法律さえ無視して刑務所長がこれはポツダム宣言が出たのだから釈放すると言ったところもあります。あるところでは、別の理由で何とか法規に合わせようと思って刑務所側が理由をくっつけたところもあります。網走の場合には、刑務所側がもうすでに否定されている戦前の法規に合わせるために、病気による出所という手続をとったのかもしれません。これはむしろそのとき政治犯の釈放、民主化が至上命令でありながら、それを戦争中の暗黒の法体制に合わせようとするための、いわば支配者の側の苦肉の産物であります。この問題を解明するためには、このことを抜きにしていろいろな法的な不備をいま問題にするなどということは、まさに立脚点の違う話であります。 この点で法務大臣に伺いますが、戦後ポツダム宣言を受諾して民主化の措置が行われ、政治犯の釈放などが問題になったときに、日本の国の当時存在していた支配勢力の側は一体これを素直に受け入れる状態にあったのかどうか。この復権過程を問題にするならば、当然そのことが認識されていると思いますが、その点について法務大臣がどういう認識を持たれているか、伺いたいと思うのです。
○稻葉国務大臣 当時の司法当局がどういう認識を持っておったかは、当時私は法務大臣ではないのですから、その人たちに聞いてみなければわかりませんね。 ただ、あなたの言われる勅令七百三十号というのは、監禁だとか死体遺棄だとか、傷害致死だとか、そういうことは除外してある法律ですから、それだのに七百三十号で復権をしたのは法的に説明がつかないのじゃないかという春日さんの質問は、まあそのとおりでございましょうなというふうに答えただけでございます。
○不破委員 そこに問題があるのです。つまり、この当時の復権過程というのは、これは連合軍がポツダム宣言に基づいて政治犯の釈放命令を出した。ところが、それを日本の支配体制の側がこなすときに、いろいろな妨害をするわけであります。たとえば、もう戦争が終わって十月に向かいました。その前に、それまではどうしても政治犯人を釈放しない。三千人からの政治犯人が当時投獄されておりました。九月の末には、哲学者の三木清が治安維持法で逮捕されて獄中で死亡する、こういう事件まで起きました。ところが、それにもかかわらず当時の内務大臣は、新聞に発表して、われわれは治安維持法は変えない、共産主義者は獄中にとどめておく、この方針は絶対に変えないということを豪語していたわけであります。それに対して、そういうことはまかりならぬ、ポツダム宣言では許されないということで、その直後に直ちに政治犯人の釈放命令が出ました。釈放命令が出ると、それを明治憲法に合わせるために一定の法令を出します。ところが、それがまた妨害条項がさまざま含まれている。だからまた、釈放命令の後で政治犯の復権令が改めて連合軍から指令される。その指令されるものに対してまた明治憲法に合わせるような一定の勅令を出すが、それでも勅令を出しながら妨害をする。こういうことが実は先ほどの山崎内相発言にも見られるように、この復権過程には一貫して続いていたわけであります。そして、その最後の妨害が宮本顕治氏と袴田里見氏に行われた。勅令が出てもこれの復権を認めないということが多年にわたって続けられた。この問題がここに含まれているのは、当時の法の矛盾ではなしに、当時の日本が軍国主義と暗黒政治の体制を一掃するために新しい道に踏み出した、その新しい道と、明治憲法や治安維持法の体系のもとにつくられた、それからまたそれを固守しようとした勢力の矛盾が、さまざまな形で妨害となってあらわれた、これが問題であります。 もう時間も参りましたので私は最後の結論を申し上げますが、だから、いまそのことを法の矛暦として問題にしようという立場は何か。まだ明治憲法が生きている、新憲法も生まれていない、そういうときに、その当時の法体系に無理やり過程を合わせるということは、結局、治安維持法体制に逆戻りさせる立場からの、当時の民主化や治安維持法や政治犯の釈放を肯定しない立場からの蒸し返しでしかないわけであります。それからまた、裁判の問題について言えば、私が挙げたような治安維持法下の正しい結論を出さないがための裁判をいまなお有効なものとして強調する、これも同じ流れがここに存在しておるわけであります。それに終止符を打つために、あの官本顕治氏の判決の……
○荒舩委員長 時間がオーバーいたしますから。
○不破委員 最後の文章には、その判決を否定する意味で、この判決は「言渡ヲ受ケザリシモノト看做ス」という結論が出されて、治安維持法下の裁判そのものが否定されているわけであります。ここに大きな原点にかかわる政治の問題があることを申し上げて、私は質問を終わることにいたします。(拍手)
○荒舩委員長 これにて不破君の質疑は終了いたしました。 次に矢野絢也君。
○矢野委員 私は、公明党を代表いたしまして、総理初め関係大臣に御質問いたします。 最初に、経済問題について具体的にお伺いをしたいと思っております。 七一年のニクソン・ショック以来、政府の経済政策は失敗の連続ではなかったのか。もちろん、その前からも高度成長あるいは生産第一主義、こういった基本的な誤りがございます。しかし、七一年以降は客観状況の激しい変化に対する対応において誤りと後手が目立ち過ぎるのではないか。為替政策におきましても固定レートにこだわったり、それ以後も調整インフレ政策をとったり、財政金融政策で極端な過剰流動性をつくったかと思うと、今度は極端な引き締め、景気政策も抑制すべきときに刺激をしたり、刺激すべきときに抑制したり、あるいは不況対策もいつも小出しの後手おくれ、対外経済政策もニクソン・ショックあるいはフロート制の移行の見通しが全然できていなかった。中東情勢についても、その直前まで中東情勢は全く安定などと外務省では結論をしておられた。石油情勢も見通し得なかった、こういった見通しの悪さ、あるいは対応の後手、誤り、これをどう反省しておられるか、その辺のところからお聞かせいただきたいと思います。
○三木内閣総理大臣 今日の経済は、これは日本だけで判断するわけにもいかない。国際情勢というものも非常に日本の経済に影響があることは、相互依存性の高い今日では考えられるわけなんです。いろいろ矢野君御指摘になりましたが、この点は予期しないようなこともございました。石油の危機などはそうでございます。いろいろ経済の不況対策でも遅過ぎるというような御批判も言われたようでございましたが、政府のやったことがそのときどきにおいて、もう少しこうすればよかったという反省は絶えずしなければならぬ、こういうときですから。しかし、大筋において経済政策のかじ取りが大きな誤りを犯したとは思っていないのですが、個々の場合においてはいろいろ反省をすべき問題点は多いと考えております。
○矢野委員 一種の固定観念というような神話に政府はしがみついておったのじゃないかと思いますね。たとえば固定為替制というのはいつまでも続くのだ、アメリカはいつでも日本のことを考えてくれるのだ、あるいは通産省は資源が安く無尽蔵に金さえ出せば手に入るのだ、生産と輸出さえしておれば万事これでよろしいのだ、あるいは大蔵省も税金というのはいつでも自然増収があるのだ、農林省も食糧はもうアメリカがやっているのだ、心配は要らないのだ、こういうたぐいのある種の固定観念、あるいは神話に目隠しされて対応を誤ってきた。ここのところは、総理も言われたとおり、国際情勢というのはこれからば目まぐるしく変わるわけです。 〔委員長退席、小山(長)委員長代理着席〕 いままでのような目隠ししたような感じで固定観念にしがみついて、私どもが何を言ってもそうじゃないそうじゃないという態度は改めなくちゃいかぬと思うのです。だから政府の経済見通し、毎年出しておられますけれども、ここ数年当たったためしがない。そのため企業も国内の過大投資や買い占めなどに走って、その結果、設備の過剰、在庫の過剰、あるいは不動産の過剰手持ち、あるいは海外投資だってあるときはばあっとふやして、そしてそのためエコノミックアニマルだというような対外摩擦を巻き起こす、今度は急にがたんとそれが減った、対日不信を招く。輸入もある段階では思惑輸入をだあんとやって、そして繊維や木材や非鉄、こういったものの不況の原因をつくっているわけです。あるいはある段階では輸入が急減して、今度は輸出国に大変な御迷惑をかけておる。たとえば中国の生糸、豪州の肉、東南アジアの木材、日本が頼んでつくってください、こう言っておきながら、いまはもう要りません要りません、こういうような海外に対する不信感の増大、すべて見通しが悪くて後手後手でやっておるからこういうことになるのです。一般の家庭もインフレの時代、デフレの時代、こういうふうに急激に変わってくるものですから投資対象が値下がりする、あるいは賃金の上がり方が少なくなるものですから家計が苦しくなる、雇用の不安が増大する、そういったことで、たとえば住宅ローンなどである段階まではこれなら一生払っていけると思ったのが借金の重みががたんと大きくなってくる。 一事が万事こういう調子で、政府が見通しを誤ったり後手後手をやるものですから日本全体が右往左往しなくてはならぬ、こういう反省はやはり真剣にやっていかなくちゃこれからの新しい事態に対応することができないのじゃないか、私は忠告の意味で申し上げておるわけです。 そこで御質問になるわけでありますが、日銀総裁にお伺いしたいわけであります。 二十六日に、不況対策の実施がおくれておる現状から見て、このままでは政府見通しの五十年度の経済成長、つまり五十年度は二・六%、こういう予定でいらっしゃった、これを達成できるかどうか疑問だ、このままでは五十年二・六%の経済成長は困難だという発言を日銀総裁がなさったそうでありますけれども、この辺の真意をひとつ総裁からお聞かせいただきたい。
○森永参考人 お答えいたします。 ただいまの新聞記事は私も見ておりますけれども、少し私の真意を尽くしていないところがございますので改めて真意を申し述べます。 私どもといたしましては、むろん政府の見通し五十年度二・六%程度の成長はぜひ期待いたしたいわけでございますが、昨年の十二月ごろの生産、出荷等の数字などから見ますとやや足踏みの傾向がございまして、少し心配なところが出てきた。つきましては四次対策の効果の浸透、なかんずく公共事業の早急なる執行に大いに努力を必要とするような情勢になっておるのではないか、そういう努力を通じて私どもといたしましてはぜひとも二・六%程度の成長を期待いたしたい、それが私の真意でございまして、若干言葉が足りませんでしたので誤解を招いた点があろうかとも思いますが、真意は以上のとおりでございます。
○矢野委員 五十年の成長率についても下方修正をなさったわけでありますけれども、ことし五十一年度の経済見通し、GNPが名目で一三%、実質で成長率五・六%、こういった見通しで総需要の分析とかいろいろなことをやっていらっしゃるわけでありますけれども、あと具体的に、項目別に消費とか輸出とか伺いたいと思います。 まず、GNP実質五・六%、これは本当に政府として自信を持っていらっしゃるのか、福田さん簡単に言ってください。
○福田(赳)国務大臣 いま矢野さん御指摘のように、五十年度は年度途中で下方修正したわけです。そういうことにならないようにというのが、私、五十一年度の経済見通しを決める場合の基本的な考え方でございます。あつものにこりてなますを吹くということがありますが、まさになますを吹くくらいな姿勢で五十一年度の展望はしなければならぬ、そういうことで、経済見通しの各項目につきましては、かなり手がたくこれを検討しておる、そういうことでございます。
○矢野委員 そこで、具体的に伺ってみたいと思うわけです。 総需要の五〇%を占めておる個人消費の問題から伺いたいわけですけれども、経済見通しによりますと、五十一年度は個人消費が名目一三・七%、実質で五%上がるのではないかという判断をしておるわけです。しかし、仮に収入面で一〇%収入がふえましても、政府の見通しでは消費者物価は八%上がる、こういう前提に立っていらっしゃるわけですから、それだけで二%の貢献度しかないわけですね。しかも、去年の例、五十年度を見ますと、賃上げは一三・一%だ、物価上昇は九・九%、そして消費は一五・一%伸びた、しかし実質成長は二・六%だった、こういうことになっておりますね。ですから、五十一年度の消費者物価が八%上がるということを想定して、個人消費が名目一三・七、実質五%になるという根拠は一体どこにあるのですか、お聞かせいただきたいと思います。
○福田(赳)国務大臣 個人消費は、経済見通しを策定する場合において非常に重要な要素なんです。ところが、この個人消費は大変落ち込んだようなことを言われますが、実はそう大した落ち込みじゃないのです。どうも、これが非常に色立ってはなばなしいという状態ではございませんけれども、まずまず着実な伸びを示しておる。五十年度を見てみますと、大体名目で一五・一%ぐらいの伸びを示すであろう、こういうふうに見ておるわけであります。それを実質に換算いたしますと、五%程度でございます。五十一年度におきましても、大体五%の伸びはかたく踏めるんじゃないか、そういうふうに見ておる。これを、今度は逆に名目に換算する、そうすると物価も落ちついてまいるということで、一三%程度の名目の伸び、これは妥当な見方ではあるまいか、そういうふうに考えております。
○矢野委員 減税はやらないし福祉は伸び悩み、そして国民に高負担を押しつける、雇用不安は深刻、こういう状況ですから、消費が伸びるとすれば一番関係の深いのが本年度のベースアップだと私は思うわけです。 しかも一方では、全国の百貨店の販売統計を見ましても、四十九年の十月から十一月は、前年同月比で一六%台のオーバー、五十年に入りまして、一月は一六・六%アップ、四月になって一三・九%に減ってきておる、七月は九・一%、そして十一月は八・九%、十二月は七・一%というふうに昨年一年の百貨店の販売統計、これは消費の動向を端的にあらわしておると思うわけであります。去年一年、年の初めには一六%あったのが、十二月は七・一%まで下がってきておるわけです。 いろいろこれは理由があると思いますが、やはり時間外も少なくなった、雇用状況が非常に厳しい、ボーナスも少なくなった、失業がふえる、こういう状況でありましたから、こういうことになっているのだろうと思います。それでもなお名目一三・七%、実質五%、こういう見通しをされるためには、やはり先ほど言いました賃上げのパーセンテージが非常に重要なファクターとして計算の基礎になっておらなくてはいかぬ。ほかの要素でそうふえる要素はあまりないわけです。 ですから、ことしは個人消費というものを実質五%ふやす、ふえるだろう、こういう見通しを立てられた前提になる賃上げ率をどのくらいの想定をされたのか、昨年並みの一三・一%、これ以上の想定をされたのかどうか、簡単にお答えいただきたい。
○福田(赳)国務大臣 政府は賃上げにつきまして介入的態度をとる、これは非常に慎まなければならぬ。賃上げ問題は、労使双方の理解と協調のもとに決めらるべきものである、自主的に決めらるべきものである、そういう考え方で不介入の毅然たる方針を、去年もそうでありますが、ことしもまたとりたい、そういうふうに考えているのです。 ですから、いま申し上げたとおり、五十年度は名目一五%くらいな伸びをしておる。これを実質に換算すると五%程度の伸びである、これは五十年度でございます。五十一年度におきましては、実質五%と見てよかろう、物価が下がるということを考えますと一三%程度の名目、大体そういう考え方なんですが、ただ、企画庁でも、租税収入をどういうふうに見るかとか、そういうような見地から、分配面の給与所得は一体どうなるかということについては検討しておるのです。それを背景として租税収入の見積もり、それなんかもできるわけでありますが、これを言いますと、何か賃金水準を示唆したというような受け取られ方になりますので、大変慎重に私は考える。そういう方式でなくて、ことしの個人所得の名目の伸びはどうだ、したがって実質はどうだ、実質は五十一年度においてはこうなるから、名目は逆にこういうふうになっていくだろう、そういう推算をしておるわけです。
○矢野委員 あれやこれやと言われましたけれども、少なくともほかの要素で消費がふえる面がないわけです。賃上げが非常に有力な要素である。しかし、ガイドラインをつくったと言われてまた非難されるから言えないということらしいのですけれども……。 くどいようですが、この計算をされたときの基準は、一けた台でベースアップを計算されたのか、二けた台で計算されたのか、少なくとも消費を一四%近くも名目で伸ばすという——まさか一けたあるいはゼロに近い賃上げでこういう計算ができるはずがないと思いますけれども、そういう肝心のところを簡単に言ってください。
○福田(赳)国務大臣 きのう大蔵大臣が、税務計算上一二・八%という伸びで五十一年度は見ておる、こういうふうに申されておるのです。これは一人当たりに換算しますと、一一・八になるのです。これは賃金総体についての話でございます。しかし、いわゆるベースアップの、言われるところのベースとなる賃金、これは裸の賃金でありまして、時間外手当でありますとかあるいはボーナスでありますとか、そういうものは加算しないのです。ベースアップで言われるところの賃金というものは、これは総体の賃金の大体半分くらいになるわけです。その半分くらいに当たる額がいわゆる所定内賃金というのでベースアップのベースとして議論をされておるわけなんですが、それは現実の問題とすると一一・八という一人当たりの総体の賃金収入、これよりもかなり低くなる、そういうふうに見ておるのですが、どのくらいのことになるかということを私が申し上げますと、賃金問題に介入したという印象になります。そういうことで、これはひとつ差し控えさせていただきたい、かように考えます。
○矢野委員 ここであなたが言おうと言うまいと、賃金に介入していらっしゃる事実には変わりがないわけでございます。 次に、民間の設備投資の問題でありますけれども、船舶を除く機械受注額の統計、これは設備投資の六カ月ないし九カ月先の将来を占う重要なデータである、こう承知しております。ところが、この五十年の十一月は、前月比が一七・二%マイナス、さらに四十九年の十一月に比べますと二九・二%マイナス。約三割去年の十一月は機械の受注統計は減っておるわけですね。ですから、この民間設備投資というのは余り期待できない、われわれはこう判断しておるし、恐らくそういう御答弁だろうと思います。 私が申し上げたいのは、こういった状況を背景にして、企業の姿勢といいますか、態度というのは、非常に高度成長のときと変わってきておる。まあどちらも悪いことには変わりはないわけでありますが、変わってきておる。といいますのは、昔、四十年とか四十六年の不況のときには、多少不況であっても操業度は落とさない。輸出がちょっと落ち込んでも何とかいけるだろうということで、むしろフル稼働して固定費の低下というものを目指す。そして価格競争で何とかコストダウンをしようという、そういう意欲が一面ではあった。ところが、最近の企業のビヘービアというのは、操業度——これは上がらないということもあるでしょう、こういう操業度を上げないで価格上昇で固定資本費のマイナスをカバーしたい、これは企業で一番悪い面が出てきておるわけであります。こういうコストをカバーする意味での新価格体系への要望、こういうものが財界から強くなっておる。一方ではレイオフとか時間外カット、こういうものを行う。一方では設備投資の意欲は鈍ってくる。技術的なイノベーションもいまのところは見当たらない。こういうことで、御承知のとおり合併とか業務提携とかカルテルとか、つまりコストダウンを価格競争でやろうという面じゃなくして、価格の上がりやすい状況づくりをやりたいというところに企業の姿勢が来ておるわけでありまして、また政府も新価格体系だということでそれに相応じようというような姿勢が出てきておる一わけであります。 そこで、これは設備投資そのものの問題ではありませんが、公正取引委員会にこの際伺っておきたいわけでありますが、緊急避難的な意味を含めて、たとえば伊藤忠、安宅産業の合併を前提とした業務提携、あるいは綿紡三社の業務提携、あるいは三菱油化とか三井石油化学など、あるいは特殊鋼、平電炉の業界、こういうところで産業再編成の動きが非常に目立ってきておるわけであります。緊急避難だ、不況だからもうしようがないんだ、つぶれてしまうんだという、そういう意味もあるのかもわかりません。しかし、長期的にこういう動きは、独占化あるいは寡占化への心配、これは見逃すことのできない問題。さしあたりの問題よりも長期的に見ればそういう傾向が強い。そこで公取委員会に伺いたいことは、こういう産業再編成に対してどういう姿勢、方針で臨まれるのか。 あわせて、いま政府や自民党で作業が進められておる独禁法の改正案の骨抜き、これは二点考えておられるようであります。第一点は、公取委員長を閣僚にするんだ。政府の言いなりになるように公取をつくりかえたい、よい子にしたい。第二点は、以前の改正案に盛られておった構造規制、企業分割というやつですね。営業の一部譲渡命令、この規定を削除したい、こういうような動きがいま政府あるいは与党の中にあるようでございますが、先ほど言いましたとおり、いまの企業のビヘービアというのが、固定費を低下させて価格競争でがんばるんだということよりも、操業度は上がらないから価格を上げて固定資本費のマイナスをカバーしたいという、こういう悪い傾向が出てきておるだけに、独禁法の意義というのはきわめて重大だ、こうわれわれは理解しておるわけでありますけれども、いま申し上げた産業再編成や、独禁法の二点の骨抜きの問題、公取委員会の御意見をちょっと聞きたいわけであります。
○熊田政府委員 お答え申し上げます。 まず、最初の産業再編成に対する公取の対処ぶりでございますが、最近、お話のように合併あるいは業務提携というような例が新聞紙上、いろいろ伝えられております。しかしながら、まだ具体的な内容ははっきりしておらないような段階でございます。私ども公正取引委員会といたしましては、それによりまして競争制限的になるとかあるいは市場支配的になるとか、そういうようなことのないように十分に監視をしてまいりたい、こういうふうに考えております。なお、合併等の具体的な内容が明らかになりましたならば、独禁法に照らしまして厳正に対処をいたしたい、かように考えております。 それから二番目の独禁法改正の問題でございます。これにつきましては、ただいまのお話のように、公取委員長に閣僚を充てる案とか、あるいは構造規制の企業分割の条項を削除するとか、こういうような考え方が新聞紙上に報道されております。しかしながら、私ども、これが自民党内あるいは総理府におきまして検討されておるというようなことはまだ承知しておらないのでございます。したがいまして、現在の段階におきまして、こういうような改正案の内容につきまして私ども御意見を述べることは差し控えさしていただきたいと思いますが、高橋公取委員長は前国会におきまして、七十五国会における衆議院におきまして与野党一致で可決された改正案ができるだけ早く成立することを希望しておる、こういう趣旨の発言をいたしております。その高橋委員長の考え方というものは現在も変わっておらないというふうに考えております。
○矢野委員 委員長はいま病気で御出席されないということで事務局長さんからお話があったんですけれども、事務局長さんはせんだっての、二十七日でしたか、記者会見で、公取委員長を国務大臣にするということは適当ではない、現在のままでいいんだ、こういう意味の御発言をなさっておるわけでありまして、私はこれは非常に正しいお考えだと思っております。ですから、公取委員長がお留守だからということで意見を差し控えられる気持ちはわかりますが、事務局長としてひとつ個人的な見解、これは非常に大事な問題でありますので、お聞かせをいただきたいと思います。
○熊田政府委員 でき得ますならば、私も具体的な内容につきまして個人的な意見にわたります点でも申し上げさしていただきたいとは思いますけれども、まだ現在の段階におきましては具体的な改正案の内容ということになって出てきておりませんので、あるいは仮定の議論になるかもしれませんので、この際にはひとつ御容赦をお願いいたしたいと思います。
○矢野委員 いや、決して私はいじめるつもりはありません。しかし、仮定の問題ではないんです。現に公取委員長を閣僚にするんだとか分割規定を削除するというのは、これはもう明らかな動きとして政府や与党の中でそういう議論がされておるわけでありまして、しかもあなたは、個人的見解として記者会見でも明らかに御意見をおっしゃっておるわけでありますから、ここはやはり公取の良心という意味にかけておっしゃっていただきたいと思います。
○熊田政府委員 たびたびどうも同じことを申し上げまして恐縮ではございますが、まだこれ、改正案の内容というものが全く具体的になっておりませんで、先ほどのようないろいろな意見というものが果たして改正案の中に盛り込まれるものかあるいはそうでないのか、そういうような点もはっきりしておらない段階でございますので、今回はひとつ御容赦をいただきたいと思います。
○矢野委員 それじゃ公取委員会として、こういう二点の改正が政府・与党で決められて、そういうことで将来やるんだということになったときには、公取としては、あるいはあなた個人としては、それでいい、こういうふうにしか受け取れないのだけれども、もう一遍はっきり言ってください。
○熊田政府委員 それは先ほども申し上げましたけれども、高橋公取委員長は、七十五国会で衆議院で与野党一致で修正されたあの案が、できるだけ早く国会で通過するようにという答弁をいたしておりまして、それを現在でも高橋委員長としては希望しておられると思う、こういうふうに私考えますので、その点から申しまして、先ほどのような案についてはひとつ御類推をいただきたいと思います。
○矢野委員 お立場上そういう言い方しかできないということはよくわかりますし、また御真意のほどはよくわかります。 三木総理、今度は三木さんに伺いたいと思いますけれども、大体去年全部の政党が賛成して衆議院を通過しておる独禁法、あの内容だってわれわれ十分だと思っておりませんよ。しかし、成立するという前提で考えれば、これは自民党さんも賛成なさったわけでありますから、これは結構なことだということで、一歩前進ということで衆議院でわれわれ賛成したわけであります。ところが、その後一年たったわけでありますけれども、ぐずぐずなさってお出しになっていないし、いま申し上げたような、さらにあの案を骨抜きにしようという動きがある。しかも公正取引委員会の御意見としては、馬橋委員長、あの案が通ることを望んでおるんだというふうにおっしゃっておるわけでありまして、この二点について、あなた骨抜きになさるつもりなのかどうなのか、これは明確に答えていただきたい。
○三木内閣総理大臣 矢野君も御承知のように、しばしばお答えしておるように、今国会の提出を目指して調整を急いでおるわけで、内容についてはいま検討しておる最中でありますので、まだこういうふうにするつもりであるというような方向を申し上げる段階ではないわけですけれども……
○矢野委員 公取委員長の意見を尊重されるかどうか、そのことだけ。
○三木内閣総理大臣 公取委員会というよりかは、先般のこの国会でのああいう経緯というものを踏まえて、自民党は調整しなければならぬことは言うまでもございません。
○矢野委員 また悪い癖が、総理、出ておられるわけでありまして、明確にしていただきたい。これは大事な問題ですから、あいまいな青い方をする問題じゃない。公正取引委員会も昨年のあの案でやってもらいたいという気持ちを持っておる。しかも前国会においては全部の政党が賛成した。しかもポイントはこの二つの骨抜きにかかわってくるわけでありますけれども、前国会におけるすべての政党の意思を尊重し、かつ公正取引委員会の意見も尊重して、この二点については骨抜きにしないと約束できるのかできないのか、できるかできないかそれだけはっきりおっしゃっていただきたい。
○三木内閣総理大臣 いま申しておるようにいろいろな経過があったわけですから、これは当然に踏まえて検討しなければなりませんが、これに対してのいろいろな御批判というものは、法案を提出したときに十分御審議を願いたいと思うわけでございます。まだ案がこういう案だということで固まった段階ではないですから、ここで……。
○矢野委員 この二点を骨抜きなさるかどうかということだけです。
○三木内閣総理大臣 骨というのは、矢野君の言う骨がどういう骨なのか、そういうことで、やはり国民が納得のするような法案にしたいと願っておるわけで、そういう意味において、できる限りわれわれとしては今度はりっぱな独禁法の改正を提出したいと願っております。
○矢野委員 国民が納得するといっても、前国会で、国民を代表する国会で全部の政党が納得したのですよ、あなた。これ以上国民が納得する案というのは、一体どういう案なのですか。あなたは議会の子だといつもおっしゃっているわけだけれども、国民を代表する政治家が、すべての政党が賛成して衆議院を通過したのではありませんか。いまさら一体どこの国民の声をあなたは聞きなさるつもりですか。財界の声でしょう。簡単に答えてください。
○三木内閣総理大臣 だから私は申し上げておるのですが、そういうことも踏まえて、法律というものはその時点でできるだけいい法案にするということが当然にわれわれとしての務めでございますから、そういう角度から検討しておるわけで、みんなの方々がやはり御理解を願えるような法案にしたいと願っております。
○矢野委員 この問題、本当は徹底的に、これは三木さん、あなたの政治責任にもかかわってくる問題ですよ。ですから追及をしたいと思っておるわけですけれども、次の議員にこれは回しましょう。次のテーマに入りたいと思います。 総需要の中でも局間住宅の問題です、話はもとに戻りますけれども。名目は一五・三%、実質は八%伸びる。しかし、住宅金融公庫の個人住宅向けの貸付枠、融資枠というものは五十一年は二十一万四千戸、ことしは第四次不況対策に基づく追加増ということで、五十年度の貸付融資枠は二十四万一千戸ということで、去年よりもことしの方が減っておるわけですね、二十四万から二十一万ということで。しかもいろいろなデータを見ますと、これは総需要の中の局間住宅を申し上げているわけですけれども、この個人住宅の貸し付けを受ける資格というのは、公庫の問題ですね、建設される住宅の敷地が準備できておることというのが最低の資格になっているわけですよ。土地を持っている、あるいは土地を持っていないけれども、高い借地、大体この土地の値段の二分の一から五分の二を払って借地をしなければいかぬという状況ですよ。そういう条件をつくらなくちゃ融資が受けられない。これでは庶民には関係のない住宅政策だということになるわけです。しかも何とかつくりたいんだということでお金を銀行ローンで借りよう。これは一千万円借りますと、三木さんもよく聞いておいてくださいよ、あなたは民間住宅をつくるのだとライフサイクルでおっしゃっているわけですから。一千万円借りますと、これは金利九%で二十年間、毎月均等返済で一カ月八万九千九百五十円払わなければいかぬでしょう。二十年間これは払わなくちゃならないですよ、一千万借りるのに。しかも一千万で家が建ちますか。土地がなければ何千万もかかるじゃありませんか。土地があったとしても一千万円。これはしんどい状況でしょう、いまの値上がりのために。これで一カ月九万円ずつ、二十年間払いなさい。しかもそれでなおかつ一千万円しか確保できない。こういう状況で民間住宅を気楽に、一五・三%名目でふえて実質は八%だとおっしゃっていますけれども、これはどう見ても庶民に関係のない、土地を持っておる、お金を持っている人を対象にした分析ですな。 ほかにもいろいろ申し上げたいことがありますけれども、いま指摘した問題も含めてこの民間住宅が実質八%ふえるのかどうなのか。これは建設大臣と福田さんと、簡単に答えてください。
○竹下国務大臣 仮谷大臣の後任人事で就任しました竹下登でございます。 いまの住宅問題でございますが、いわゆる公庫融資住宅については、矢野委員御指摘の問題が数数あると私も承知いたしております。したがいまして、来年度におきましては、公庫住宅金融につきましてはいわゆる中古住宅の買い上げというようなところへ適用の範囲を広げる計画でありますが、要はことしの割り当て自身が、やがて御審議をいただきます五カ年計画自身の数からいたしましても第二期の計画を下回っております。これは、諸般の情勢からやはり実行可能の数量というものを目標にすべきである、このように思ったわけであります。しかし、おっしゃいますとおり、住宅建設に伴いますいわゆる宅地の問題が、抜本的に基盤が整備されなければ所期の目的はなかなかむずかしいと私も理解いたしております。したがいまして、先般答申をいただきました住宅宅地審議会の答申等に基づきましてこれから広範な施策を進めていきたい、このように考えております。
○福田(赳)国務大臣 民間住宅についての見通しといたしましては、五十年度はかなり順調に進みまして、実質で申し上げまして一三%程度となるであろう、こういうふうに見られます。 五十一年度は一体どういうふうになるか、こういうことでございますが、かなりこれはかた目に考えておるのでありまして、一三%の五十年度の実績を五十一年度においては実質で八%、その程度を見込んでおきましょう、こういうことでございます。
○矢野委員 住宅につきましては、先ほど申し上げたような非常に重大な隘路がある。三木総理、あなたの御計画、こんな状況じゃできませんよ、民間住宅をたくさんつくっていくんだなんて。独立と自主の精神でなんておっしゃっていますけれども、毎月九万円払っていけますか。あなたの計画は、国民大衆に一カ月に十万円の借金によって家を建てなさいということに等しいわけです。もっと根本的な土地政策が解決されなくてはだめだと思いますね。 次に、輸出の問題に移りますけれども、これは余り議論したくありません。ただ、昨年が四・七%マイナスだったのがことしは一三%ふえるんだという見通しでおられる。通関統計によりますと、五十年の前半というのは、前年同月比で辛うじてプラスでしたけれども、昨年の五月から——五月は五%マイナス、六月は八%、七月は七・二%マイナス、八月は一二・七%マイナス、九月は四・三%になりまして、十月になってまた一〇・八%のマイナス、十一月は二二・二%マイナスというように通関統計でいくと、昨年は終わりになるほど輸出が伸び悩んでおるわけです。 こういう実態を踏まえれば、去年四・七%マイナスで、ことしはそれがいきなり二二%ふえるというのは少し甘いのではないか。ましてや、アメリカの景気がよくなった、よくなったとおっしゃるけれども、五十年度の第一・四半期では一一%マイナスだった、第二・四半期では二%マイナスだった、第三・四半期で一三%プラスになった、ここは福田さんの努力だと思うのだけれども、この第三・四半期の二二%プラスというのは、これは御存じのとおりアメリカで在庫調整を徹底的にやった、在庫調整が終わっちゃった、その後での第三・四半期でございますから、いろいろと在庫需要というものもあった、こういう在庫調整が完璧によかったということで、一三%プラスにこれが六〇%貢献しておるのですよ。最終需要が伸びたということによって、これは四〇%しか貢献していないのです。ですから、第四・四半期になるとまた景気が行き悩んでおるということになってきておるが、これは理の当然なんです。ですから、アメリカがよくなる、だから輸出がよくなるんだというのはいささか甘い見通しじゃないか、プラント輸出が伸びておりますとかなんとかおっしゃるでしょうけれども。ここで私は、ことしのことを当て物みたいにどうだこうだと言っておるわけではない。決してそんな甘い見通しでやれるものじゃありませんよ、この輸出につきましても。アメリカの経済は必ずしもまだ本物ではないということを私は指摘しておきたいと思うのです。 それから最後の、政府が一番期待しておられる四番バッターの公共投資、これに大きな期待をかけていらっしゃるわけでありますけれども、少なくとも、去年の実績で見る限りは、第四次不況対策で公共投資がされたわけですけれども、主力部隊が援軍として早く来てくれという国民の期待に反して、少なくとも去年じゅうは、戦場には主力部隊は到着しなかった。これは、景気浮揚の主力部隊として公共投資を考えてきておるという政府の基本的な姿勢、ここに誤りがあるんだということを私は申し上げたいのです。頼むべからざるところに主力部隊として援軍を期待する。しかし、この不景気な大変なときに、重大な戦機のときにこの公共投資が間に合わない、効果を発揮しない、こういうことに現実になってきているわけです。 私たちの考えは、景気浮揚の主力部隊はむしろ消費だ。低所得層の所得を大胆に拡大するという形で、これを主力部隊にして景気浮揚を考えるべきじゃないか。これは今日まで同僚議員がいろいろと議論をしてきたところなんです。現に、公共投資、公共投資と言いますけれども、三分の一が道路の予算です。正確には三四・三%、これは道路です。この道路予算というのは六〇%土地代に食われるのですよ、いままでの実績から見たら。ですから、全体の三分の一が道路だ、その三分の二が土地代だといえば、公共予算全体で、三分の一掛ける三分の二で九分の二強、つまり二割以上が土地代に消えてしまう、道路予算の部分の土地代だけ考えてもですよ。これで本当の景気対策になるか。土地の値段をつり上げるだけじゃありませんか、この公共投資は。ましてや五十年度は、建設省関係公共事業の契約率を見ますと、当初予算と補正予算、これは合計で十一月までの数字ですけれども、国の直轄事業で七〇・六%しか消化できていない。地方との共同でやる補助関係は七二・六%、公団が六七・九%、全部で建設省関係の公共事業は七〇・六%しか消化できていない。一兆八百六十億円の契約残が残っておる。一生懸命公共事業の執行を急がれた気持ちはわかります。しかし、なぜこうおくれるか、これはいろいろ隘路があるわけです。特に地方自治体のいわゆる国から出してもらった分に対する自治体の負担、裏負担というやつ、これは財政難でどうしようもないという状況になっておるから、幾ら公共投資をふやしても執行ができないという状況に追い込まれております。だから、主力部隊が戦場に到着しないと私は申し上げているわけなのであります。しかも、こういう公共投資の拡大ということは、部分的な供給不足を招いて、ボトルネックインフレを誘発しますよ。そのままインフレの原因になる、あるいはまた、ふえたこの公共投資の金額がそのまま価格上昇に吸収されてしまう、実質の増額にならぬという面もある。 こういういろいろ問題点がある。公共投資さえふやせば景気は上がるのだ、上がるのだ、これは先ほど冒頭にも申し上げたが、固定観念と言うのです。これは一種の神話と言うのです。そうじゃないということを私は具体的に申し上げておる。この点について福田さんのお考え、ひとつ簡単に言ってください。
○福田(赳)国務大臣 五十年度の経過を考えてみましても、とにかく当初考えました景気のいい情勢というものは出てこない。しかし、その中でも、とにかく日本は世界経済総沈みという中でプラス成長なのです。実質二%強の成長の結果になるものと考えられますが、それをそう実現させたのは何だといいますと、これはやはり、ちっとも政府の対策は効果が出てこないじゃないかとおっしゃいますが、これは公共投資なんです。これを中心とする政府の財貨サービス、これが非常なふえ方だ。これが、まあ輸出はふるわない、設備投資は大変な落ち込みだ、そういう中で二%強の成長を実現させる。これと並んで、やや低い率ではありますけれども、消費がこれはかなり着実な伸びを示しておった、こういうこと、これが支えとなっておるのです。消費だけではとても二%強の成長とはならぬ。そこで第一次から第四次までの対策、公共事業中心の施策を進めたわけでありますが、これがとにかく実効を奏しておるのです。 それで、いまわが国が当面しておる最大の課題は何だといいますれば、物価安定の基調、これを崩してはならぬ、これはもちろんでありますけれども、もう不況三年目で、この辺で景気を回復しなければならぬ。景気回復として財政を使う、そうすると財源が要ります、財源が要る。その同じ財源を使うなら、これはもう公共投資をやるのが一番効果的である、これは私は、実績から見ましても、また考え方といたしましても、妥当な考え方である、そういうふうに考えております。
○矢野委員 公共投資につきまして、特に地方自治体の要求というもの、これはやはり政府としてまじめに聞かなくちゃいかぬと思うのですね。特に景気対策の主力部隊だという認識を持っておられるならばなおさらのこと、はっきり言いましてそれを実施するのは地方自治体が主体ですよ。地方自治体は、水道とか河川とか生活関連の社会資本に重点を置きたいんだ、そういうものは一生懸命やりたい、こう言っているんですよ。これはもういろいろ予算的に地方自治体は苦しいけれども、国からもらった金も何とか抱き合わせをして、最大限発注して、特に地元の中小企業を優先にやりたいんだ、こういう考え方を持っているわけですね。ですから、この生活関連中心ということが第一点。 それから第二点は、地方自治体の負担というのもやはり国が責任を持ってあげるという考え方が必要だと思うのですね。ことしのあれを見ましたら、足らぬ場合は借金してやれというのですよ。具体的に数字を申し上げてもいいわけですけれども、ほとんど足らぬ。やはりそういう裏負担については国が責任を持ってあげる、そして直轄のものについても自治体を通してやっていくという考え方が必要だろうと思います。 それから第三点は、公共事業はちょっと土木中心に偏り過ぎているのじゃないか。道路に限らないで、たとえばこれからの日本経済というのは産業構造転換のために、技術集約型とか精密機械工業とかいうのを伸ばさなければいかぬわけです。そういうことを考えますと、公共事業というのは建設省関係に限定する必要は何もないわけでありまして、財政法上の概念を変える必要があるだろうと思うのです。ですから、たとえば地元の一番必要性の高い学校、これを一遍全部つくりかえるんだ、あるいは新設について公共事業として全部めんどうを見る。保健所とか病院とか、これをやると、医療機械とか、つまり技術集約型、精密機械産業というのが育っていくわけですね。公共投資というのは土木中心であるという考え方を根本的に変えるのがこれからの経済にとって必要じゃないか。 以上、三点申し上げたわけですけれども、これについての御意見を承りたいと思います。
○福田(赳)国務大臣 公共投資につきましては、これからの経済の中で、生活中心の公共投資というふうな考え方を重点として考えていきたい、これはもう矢野さんが力説されるとおりのことを考えております。ですから、これからの五カ年間の長期展望、公共投資百兆円、その配分を見ましても、過去におきましては確かに道路費なんか相当ウエートを持っております。今度はそれをかなり落とすのです。そして、何を重視するかというと、環境衛生でありますとか、ただいまお話のありました教育施設でありますとか、あるいは福祉の関係の施設でありますとか、あるいは農村の基盤整備でありますとか、そういう方向へのシェアをふやしていく。しかし、道路費が、これが産業中心だ、そういうわけでもないのです。道路だって、これは生活に非常に関連のある部面が非常に多いのでありまして、そういうものにつきましては、これはなお進めていかなければならぬ。しかし、このウエートの置き方、これにつきましては大きな転換をしたい、かように考えております。
○矢野委員 公共投資については、要するに道路が三四%であって、その三四%の道路関係の予算のうち六〇%が土地代に食われてしまうというこの状況、これが解決されない限り、本当の生きた景気回復のてこにはならない、このことを指摘しておきたいと思います。 消費とか設備投資とかあるいは輸出とか、公共事業、政府関係の支出、いろいろと見てきたわけでありますけれども、いずれも厳しい状況であるということはお認めになっておられると思うのです。そこで、状況が厳しいのだからどうしようもないじゃないかということでは困るわけでありまして、いろいろ輸出の問題もある、設備投資は期待できない、それゆえに、政策介入としてのあるいは政策変数としての財政の役割りというものを政府は自覚していらっしゃるわけです。ただ、その場合の政府の介入、これがどうしても公共投資中心である。逆に個人消費については、減税はやらぬ、福祉は伸び悩みという状況で、消費面を伸ばそうという積極的な施策は全然ないわけですね。 ですから、政府の政策変数としての財政の役割りについては、三木さんなり皆さん方の御判断で、消費を伸ばすのじゃなしに公共事業でいくんだ、これは三木内閣の責任において決められた判断なんです。したがって、万が一この経済見通し、冒頭に申し上げたGNPの伸び率というものがもしことしの暮れになってだめでしたというのであれば、これは客観情勢が悪かったからということにはならないわけですよ。輸出とか設備投資はだめだから、財政の役割りを重視して、しかもその財政の役割りは公共投資なんだという、これは三木さんなり皆さんの判断だ。私どもは違う判断をして政府に提案しておるわけです。個人消費を伸ばしなさい。もしことしの暮れにだめだったら、国際情勢が悪かったんだということでは済まされないということだけは自覚しておいていただきたい。これは大事なことだと思うんですよ。いつも逃げ口上で国際環境云々、これは許されませんよということを申し上げておきたいのです。 さて、時間も大分たってまいりましたから、次の問題に移りたいと思いますが、福田さんは消費は悪徳だと言わんばかりの言い方をなさるわけでありますけれども、昭和五十年の経済白書、これは政府の書類ですけれども川消費性向を分析しますと、五つに分けて、所得の低い方を第一分位、高い方を第五分位というふうにやっておられるわけですね。それで消費支出の名目の増減というのを見ますと、低い方の第一分位は名目で六・七%伸びておる。第二分位は一四・九%、第三分位は一九・五%、これはだんだん所得が上がっている。第四分位は二〇・四%、一番所得の高い第五分位では三九%、所得がふえるほど名目消費支出というのははね上がっておるのです。あなたが消費は悪徳だというお説教をなさるのなら、高所得者になさるべきです。しかも物価上昇を差し引いた実質の消費支出というものは、これは第一分位から第四分位まで全部マイナスなんです。第一分位はマイナス一二・四%、第二分位は五・七%マイナス、第三分位はマイナス一・九%、第四分位は一・一%マイナスというふうに、所得が上がるほどマイナスは少なくなってくる。一番所得の低いところは一二・四%、実質支出がマイナスになっておるのです。しかも、一番所得の高いところは上がっておる。この物価上昇によってあるいは不況によって、実質的に消費を切り詰めさせられたのは低所得者なんです。こういう消費の分析というものを福田さんまじめにおやりにならなければ、ただ消費を抑えればいいんだという考え方は間違いだと私は思うのです。そこで、実質消費支出は所得がふえるほどマイナスではあるけれども、マイナスが少なくなってきておるということを言いましたけれども、第五分位になりますと、プラス一四・一%実質消費は伸びておるんですね。一番所得の低いところは物すごいマイナスになっておるけれども、高いところは逆に実質でプラス一四%ふえておる。 三木総理、福田さん、これは政府のつくった統計で申し上げておるわけです。あなたに言わせると、消費は落ち込んでないということなんだけれども、いずれにしても伸び悩んでいることは事実です。この消費の落ち込みもしくは伸び悩みというのは、低所得者層の実質消費の激減によってこういう伸び悩みが起こっているということをあなた認めますか、福田さん。
○福田(赳)国務大臣 統計で見る限り、第一分位、つまり所得の低い人ですね、これの消費性向というものは非常に低くなっており、逆に第五分位という階層の消費性向が第一分位に比べて非常に乖離が大きいと見られるのですが、しかし私は、そういう乖離という問題がどこから出てきておるか、こういうと、やはり経済の変動だと思うのです。つまりデフレ、インフレ、こういうことが交錯をする、景気、不景気、これがまた相次いで起こってくるあるいは同時に起こってくる、その過程においてだんだんと小さい弱い立場の人がさらに弱くなる、こういうことで、そういう問題に対する対策というのはどうしてもこれは経済を安定させるほかはない。もうインフレのない成長過程に国全体として持っていく、これが最大の治療である、こういうふうに私は考えています。しかし、それだけでは解決できないので、それはもうどうしても政府の財政というものがそれに介入いたしまして、特に著しい不均衡の是正というものを考える、こういうことだろうと思いますが、しかし、全体の所得ということを考えまするときに、これは私が力説しておりますのは、世の中変わってきているのです、もう使いましょう、使い捨ての方がいいのですというような時代は終わったんだ、家庭もそういう世界の情勢の変化に対応した構えというものが求められている、これを私は力説しているのです。そうでなければ——これは家庭ばかりではありません。これは企業もそうなければならぬ、国もそうなければなりません。そうでなければ、本当に国全体としての安全な経済運営というものはなかなかできないのではないか。一方において政府もどんどんと金を使います、同時に国民の方でも金を使います、みんなが金を使いますというんじゃ、これは本当に正しい経済運営というものはできない。いま矢野さんは減税の問題なんかを頭に浮かべながら消費のことを論ぜられていると思いますけれども、これは政府としても、こういう際ですから、減税なんというようなことを旗を上げたいところですよ。しかし、それはまあいまの財政の状況あるいは経済の状況から考えてどうかな、こういうふうに思うのです。 御意に沿えませんけれども、お答え申し上げます。
○矢野委員 福田さんの答えは原因と結果を取り違えておる。そういう乖離をなくするためには経済の安定が必要なんだという立場で、そのために努力するということなんでしょうけれども、私は、むしろ経済を安定させるためには、不況対策をやるためには、低所得者層ほど消費が落ち込んでおるというこの実態を修正することが景気を安定させる一番決め手になる。あなたの論理と私のと完全に入れかわっているんです。しかも私の論理によれば、困っている人を助けることになるという政策目的に従いながら、景気安定ということができるのだということを申し上げておるわけなんですよ。 しかも、平均消費性向も、くどくなりますけれども、第一分位の所得の少ない階層というのは、これは年を追って消費性向は下がってきているのですね。ところが、所得の高いところは、たとえば四十七年は平均消費性向は七四・三%、四十八年は七六・七%、四十九年は八一・六%、五十年度はこれは一〇〇%前後というふうに平均消費性向というのが上がってきておる。これは、何を意味するか。結局、これは後で税制度の問題になりますけれども、やはりもっと高額に所得を得ておられる方からは税としていただけるものをいただく。これだけたくさん使っているのですよ。この不景気の中でも消費がふえてきておるんです。そして、所得の少ない人はますます生活必需品の支出を切り詰めて——これはたくさんある中で切り詰めたというならわかるのですけれども、可処分所得は初めから少ないのですよ。こういう方々が実質消費が下がる、消費性向を下げざるを得ない。これはエンゲル係数も同様に上がってくる。ところが、高額所得者からいただくべき税金はいただいて、そして低所得層に福祉その他の形で回す。これは最大の社会主義にもかなうことでもあり、かつ景気安定策になる。消費の落ち込みの原因は、低所得層の消費の落ち込みが一番大きな原因になっておるし、経済企画庁では、今日の不況の原因は最終需要、とりわけ消費が伸び悩んでおるから不況が足踏み状態にあるんだということを、ついせんだっても発表されておるじゃありませんか。そういうことを私指摘をしておきたい。 特に総理によくわかっていただきたいことは、何で低所得者層が平均消費性向が下がるか。つまり逆に言えば、貯蓄性向が上がるか。減っていくというのは上がるということですね、貯蓄がふえていく。そういうことは、住宅とか老後の不安が将来に備える大きな柱、これが政策によって保障されていないからなんですよ。長期的に見て福祉や住宅、教育はこういう計画でちゃんとやっていくんだということになれば、消費性向は低所得層の方々も上がっていくんです。いままで教育のためにあるいは住宅のために、たとえば教育のために十万円用意しようということで、つめに火をともして十万円用意した、インフレでどんどん物価が上がっていく、しかも文教政策についての思い切った政府の施策がない、十万円用意して、これはあかぬということで十五万円用意しなければならぬということに、いじらしくも庶民は思わざるを得なく追い込まれてくるのですよ。だから、福祉を充実する、あるいはその計画をきちっと国民に理解していただくように、わかるように政府ではおつくりになる。これが低所得層の消費性向を上げていく一番の決め手になるし、現実にいま福祉をふやすことも大事だけれども、将来はこうなりますから御安心くださいという長期計画を発表なさること。これはいますぐ金が要るわけじゃない。それがそのまま最終需要の拡大につながっていく。この論理が政府の政策立案に全然欠落しておるということが私は非常にいけないことだと思うのですよ。 まあ福田さんの理屈でいくと、また私の話をひっくり返して、だから安定させなくちゃならぬというような理屈になさるのでしょうけれども、昨年の臨時国会で、わが党の正木委員があなたにこの問題でいろいろお聞きしたときに、議事録を私読みましたけれども、あなたの言いたいことはこういうことなんです。個人消費はそう冷え込んではいない、伸び悩みなんだ。冷え込んでいるわけではないんだ。第二点は、資源の制約があるから消費は抑制しなくちゃならぬ。第三点は、国債を消化しなければならぬから、消費を抑えて貯蓄を高める必要があるとあなたは言っておる。第四点、低所得層の問題を景気対策から考えるのは妥当でない。社会政策の問題として考えるべきだとおっしゃっておる。第五点は、減税よりも公共投資の方が景気刺激に効果があると、こう言っておられる。大体こういう五点にあなたのお考えは整理できるのではないかと思いますよ。しかもこの論理は、確信というより迷信に近い形で福田さんを支配しておる。 ところが、大変失礼だけれども、もう一遍経済の実態を研究し直していただいた方がいいんじゃないか。少なくともあなたの先ほどの答弁では、私の論理に対する正確な反論には少しもなってない。あなた方の考えを述べておられるだけであって、私は、あなた方の考えは間違っておる、私の考えはこうなんだというきわめて論理的に、具体的に数字を挙げて申し上げておるけれども、反論にはなってない。だから迷信に近い形で抜きがたくなっておると申し上げているわけでありますけれども、このあなたの五つの論点、もう一つ整理して申し上げます。私は反論しますよ。 個人消費は、名目では伸びても実質は伸びていない。しかも、その落ち込みは低所得層の飢え、それと耐乏の犠牲の上に、実質消費の伸び——伸び悩みということですね、低所得層の犠牲においてこういうことになっておる。高所得層というのは消費はふえておる。これを反論していただきたい。 第二点の、だから資源の浪費とか使い捨てになるはずがないのです。食料品その他生活必要物資の需要回復の決め手になることはあっても、つまり低所得層の消費が落ち込んでいるわけでありますから、この消費を伸ばしたからといって、使い捨てとかあるいは資源の浪費になる心配はこれは絶対ないのです。むしろ現にこの使い捨てや浪費をしているのは高所得層じゃありませんか。だから、あなたの資源は大切だという論理は、いまの消費の実態には当てはまらないということを自覚しなくてはならぬと思いますよ。 三番目、公債消化のために消費を抑えるというのは、これはまさにけしからぬ考え方でありまして、御用金調達のための悪徳代官と同じこれは発想だ。国債を発行するのに、そのためには貯蓄をふやしてもらわなければいかぬから、そのためには消費を抑えなければいかぬというのは、これはまさに御用金調達の悪徳代官じゃありませんか。 第四点の、景気対策としては所得対策、消費対策はやらないのだ、これはむしろ福祉政策でやるべきだとおっしゃっておるが、ことしの予算で福祉は全然伸びていないじゃありませんか。伸びた伸びたとおっしゃいますけれども、西ドイツの例からお考えください。あちらはウサギみたいに急ピッチで福祉は伸びておる。こっちはカメさんよりも歩みはのろい。福祉対策それ自体伸びてないじゃありませんか。 公共投資だっていろいろとネックがあるということは、私、指摘しました。特に第三次部門、軽工業とか組み立て工業、こういうところの雇用の吸収効果というものは非常に大きいということは、これは福田さん、私が説明しなくても御存じだと思うのですね。重化学工業の雇用吸収効果よりも、第三次部門の雇用吸収効果が大きい、これはもうおわかりのとおりだと思います。これは波及効果だってきわめて大きい。この雇用を拡大するための雇用吸収効果を考えても、その部門の消費拡大ということが景気回復あるいは雇用安定の決め手になる、こういう視角が福田さんには欠けておる。 あなたの五つの臨時国会における御答弁、私なりにいろいろ申し上げましたけれども、また長くなったらこれは困るのですけれども、もし私に反論する点があったら反論していただきたいと思います。
○福田(赳)国務大臣 まず第一点は、いまの世の中で再び使い捨てというような風潮が出てくる、こういうことを私は非常に警戒しているのです。つまり、そういう世界環境というものが非常に変わってきた。そういう中で、わが国は資源から言うと非常に貧弱な国です。どうしても省資源、省エネルギー、生活につきましてもつつましやかに、企業もまた同様な、また国も同様な態度をとって、初めて安定した社会、安定した経済運転というものができる、こういうふうに考えるのです。 そういう点に関連しまして、いま低所得層の問題を提起されておるわけですが、私は、低所得階層の消費性向というものは、これがだんだんと沈滞しているということは率直に認めます。認めますが、これはどういうところから来たのかというと、いま経済が非常に混乱状態でありまして、その先行きにつきまして国民の多くの人が非常に不安な感じを持っているのじゃないかと思う。その先行きにつきまして明るさが取り戻されるということが私は最大の問題だ。不安定な状態においては、低所得者の階層の人だけによけいに身構えをする、そういうことであろうと思う。高所得者の人は余りそういうものにとんちゃくしないで消費を進めるということになる。基本は、私は、先行きはどうなんだという明るい展望を国民全体に持っていただけるようにしなければならぬ、そこに私は問題があるということを申し上げておるのです。 それから第二の点でありますが、国債の問題です。赤字国債を発行する、しかも、これが一、二年じゃ解決しないんだ、三、四年もかかるだろう、こういうような状態です。そういうときにおいて、財政運営上、また健全な社会を維持するというために、これはどうしても考えておかなければならぬことは、国債の完全消化ですよ。これを完全消化するには一体どうするんだということになれば、国民が公債を買ってくれる、つまり完全消化というためには貯蓄がふえるという以外にないんです。もし、これだけ多額に発行する国債が売れ残ったというようなことになれば、本当に日本社会に大変な亀裂が出てくるわけなんだ。そのことを考えると、貯蓄の問題と真っ正面から対立する消費奨励政策ははなはだ危険である、そういう考えです。 それから、前の国会で正木さんは、それじゃ福祉政策として低所得者層の消費刺激を考えたらどうかと言うから、私は、この景気政策の上に消費政策、刺激という考え方は、前に申し述べたとおり非常に危険があるんです。だから、福祉政策と言うならば、これは財政上、福祉政策という見地から低所得者階層対策というものを考えるべきだ、こういうことを申し上げているので、私はこの考え方は正しい、こういうふうに思っております。 それから、最後に雇用の問題に触れられましたが、それは減税します、そうすると、減税で、これは雇用問題には直接は関連ありません。しかし、住宅をつくります、下水道を始めます、いろいろな公共事業が始まれば、当面問題とされているところの雇用問題、これには実質的に直接的な非常に大きな影響がある。そういうようなことで減税論というものに私は賛成しがたいんですということを申し上げたんです。これは景気刺激のための減税論、そういうことを言われましたものですから、大体そういうことで申し上げている。ただ、他の政策的意図をもちまして減税だというようなことにつきまして触れておる考えではございませんです。
○矢野委員 もう結論だけ申し上げたいと思いますけれども、資源を浪費してはいかぬので使い捨ては困る、困るから消費は伸びない方がいいんだという発想であります。むしろ私は、先ほど言ったとおり、そういう低所得層の消費を拡大するということは使い捨てになりませんよ、必要な生活必需品を切り詰めてまでやっておるという、この辺のところをよく御理解なさる必要があるということですね。 それから、先行きが安心できればいいんだという意味のことをおっしゃいましたけれども、もちろん先行きが安心できることはいいのに決まってますよ。しかし、それ以上に大事なことは、福祉計画とか住宅計画とか教育問題、こういうことについての政府の長期計画があるということの方がもっと安心するんです。景気というのは上がったり下がったりすることは、これはやむを得ない。しかし、どうあろうとこのラインまでは政府が保障してくれるという安心感があれば、低所得層の消費というのは伸びていくのだ、このことを申し上げているわけです。 それから、国債と貯蓄の関係でおっしゃいましたけれども、これは完全にあなたの論理と私の論理と食い違っておる。つまり、公共事業等を拡大して景気対策をやらなければいかぬ、そのためには国債を発行しなくちゃいかぬ、歳入欠陥もあるし……。そのためには貯蓄がふえなくちゃ国債の引き受け手がなくなるじゃないかという理屈ですよ。私はそうじゃないのです。消費が拡大することによって景気が持ち上がってくる、そうすれば税収面でこれはゆとりができてくるのです。大平さんがそう渋い顔をしなくてもよくなる。根本的な論理の違いがある。これはここで議論しても始まらぬでしょう。 それから、景気対策として公共投資はいろいろ効き目があるけれども、消費はそれほど役に立たないのだという意味のことをおっしゃっておる。私は逆だと思いますよ。消費の方がむらなく公平に、しかも速やかに効き目が出てくる。公共投資の方は地域的なばらつきがある、あるいはセクター間、つまり業種別のばらつきがある、あるいはそれが施行されるまでのタイムラグ、時間的なずれがある、こういう難点がある。私は、ここであえて大企業優先の公共投資なんということは言ってません、これからぼつぼつ言いますけれども……。そういう景気対策としての公共投資は、地域的ばらつき、業種的ばらつき、あるいは時間的におくれる、主力部隊として作動しない。それよりも消費が伸びる方がむらなく公平に、しかも速やかに効果が発するんじゃありませんか。しかも第一点に申し上げた、これは使い捨てとかそういうことにならないということはくれぐれも申し上げておる。しかも大前提として、これが社会正義にかなうことなんだ、いま消費が落ち込んでいるのは低所得層なんだということを、もうさっきから何遍も言っておるわけですね。 しかも、雇用効果の面で第三次部門、軽工業——これはもう時間がありませんから一々は言いませんけれども、これは産業連関分析という手法を用いて計算いたしました結果なのですけれども、たとえば重化学工業部門、軽工業に分けて考えたときに、同じ一兆円の生産をするに必要な就業労働者、これは重化学工業で大体十五万人、軽工業は二十六万人、雇用吸収力が約十万人以上も違う。さらに農林水産、第三次産業、ここへ間接的に影響してくる分を考えますと、重化学工業というのは直接間接で二十三万、軽工業部門で六十五万、これはずいぶんと数が違ってくる。その第三次部門、軽工業部門が最近雇用が非常に落ち込んできている。これは政府の統計にもあります。なぜ第三次部門の雇用が落ちてきたか、消費が落ちてきたから第三次部門の雇用が落ちてきたのだと、はっきり政府の文書に書いてある。だから、やはり消費が伸びていくということが雇用吸収効果の大きい第三次部門の拡大につながるし、それがそのまま景気対策になるということを、さっきから何遍も言っているわけですけれども、この点、やはりこれから同僚議員からこの予算委員会を通じて具体的にさらに論点を明らかにしていきたいと思いますけれども、論理の違いということだけは明確にしておきたいと思います。 次に、税制度の問題でお尋ねをしたいと思うわけでありますけれども、政府の施政方針演説、速やかに特例公債によらない財政運営に復帰するよう努力するというお話、しかし、経済回復の足取りは必ずしも力強いとは言えぬということ、あるいはわれわれは二度とかつてのような高度成長路線には戻らないことを覚悟しなくちゃいかぬとか、そういうことをおっしゃった。こういうわけですから、特例公債によらない財政運営に復帰したいけれども、経済はそうよくなるわけじゃない、かつての高度成長になるわけじゃない、つまり自然増収というものは期待できない、こういうことだろうと思うのです。そうしますと、国債に依存しないで、しかも自然増収がないということになりますと、常識的には増税を考えざるを得ないという、いままでの政府の発想からいけばそういうことだろうと思うんですよ。 うちの委員長の質問に対して、付加価値税を検討しておるんだというふうに総理はおっしゃったわけですけれども、付加価値税を導入する御意思があるのか、あるいはいまそういう方向で検討されようとしているのか、その点を総理、お答えください。
○三木内閣総理大臣 歳出面で非常な合理化をしていかなければならぬ、歳入面においても、やはりこれからの政府の財政的需要に応ずるために歳入面の増加というものも考えなければならぬことは明らかでございますが、しかしその場合に、ヨーロッパなどでは付加価値税というものは相当広範にやっておるのですが、どうも日本の風土にはああいう税金というものはなかなか問題が多いと思いますので、そういうことで、研究はするにしても、政府はきわめて慎重に付加価値税の導入というものは考えなければならぬという心境ですよ。そういうことですから、何か政府が付加価値税の導入に踏み切った、そういうことはないのですよ。これはヨーロッパでは各国において相当な税収の中心の税目になっておりますが、日本の場合は、よその国で成功しておる税制が日本の国で成功すると必ずしも私は言えないと思う。その国のいろいろ社会情勢もあれば、国民の慣習もありますし、そういう点で、この問題は検討するにしても、きわめて慎重な態度をとってまいりたいと考えております。
○矢野委員 問題は、財政あるいは税制上の根本的な改革への方向づけというのがまだ明確に出ておらない、したがって今後の赤字財政解決の見通しもついておらぬ、したがって、一方においては高度成長の復活への期待、他方においては付加価値税などによる増税、こういういままでの政府の姿勢からいけばそういう論になってくるわけですよ。だからこそ総理は、竹入委員長の質問に対して、そういうふうに検討したいというようなことをおっしゃった。いまあなたは慎重に考えたいとおっしゃる。これは予算委員会向けの現実における御発言だ。来年になったら、必ずこれはそういう方向になるだろうと思いますよ。しかし、こういうことは私は絶対に反対なんです。これは所得再配分の不公平を招きますし、大衆課税の強化ということになるし、物価つり上げにもえらい影響が出てくる。インフレ時代にはこういう一種の消費税的なものは、大蔵省としては税金を取るのに非常にぐあいがいい。税収をたくさんもらえる、こういう期待感があるのかもわかりませんけれども、これは一方で物価をつり上げ、一方でそれぞれの部門における再配分の不公正と、ダブルパンチという形で国民に大変な打撃を与えるわけでありますから、付加価値税はやらないという方針で財政構造を健全化することをお考えなさるべきだと思いますが、大蔵大臣いかがですか。
○大平国務大臣 今後の税制改革の問題でございますが、ただいままで政府が考えておりますことは、現行税制の内部におきまして不公正が伏在しておるかどうか、それをもう一度丹念に見直すということでございまして、ことし鋭意そういう努力をいたしたわけでございます。同時に、わが国の状況におきまして、どの程度税負担を国民にお願いできるであろうか、その限度はどのあたりに考えるべきだろうかという点について、税調の御審議を求めたことは事実でございます。したがって、そういう基本的な問題につきましていま検討いたしておるわけでございまして、今後の税制改革の目標は矢野さんが御指摘のとおり、まだ政府は持っていないわけでございます。 いずれ、いろいろな角度から検討がなされると思うのでありますけれども、いまあなたが御指摘の付加価値税の問題を、総理が仰せになりましたように、政府はこれをやる決意で臨んでおるということでは決してないのでございますが、同時に、これを全然検討いたさないという約束もいたしかねるわけでございます。問題は今後の検討の問題でございますが、あなたが強く反対されておるということは承っておきます。
○矢野委員 いま財政、税制上の根本的な改革の方向は持っておらぬとお認めになったわけです。それが、持ったときには付加価値税ということになりかねないわけでありますから、厳重にこれは私たち反対するということを申し上げておきたい。 そういう大衆課税の方向じゃなしに、その前にやらにゃいかぬことはたくさんあると思うんです。利子配当に対する優遇措置を廃止するとか、法人関係の期限の到来する各種準備金とか特別償却、それは中小企業向けのものを除いて廃止するとか、交際費の課税を強化するとか、診療報酬の適正化を前提として医師優遇税制を是正する、こういう租税特別措置法関係をもっと公平に改正あるいは廃止すべきじゃないか。 なぜ、私はこういうふうに念を押すかといいますと、私は去年のこの予算委員会でお医者さんの課税の特例について質問した。総理は、社会診療報酬の適正化とあわせて五十一年度の税制改正で実現する、こういう答弁をされたんですよ。五十一年というといまですよ。私は何もお医者さんは悪玉だ、そういう前提で物を言うわけじゃない。お医者さんの診療報酬の改正など医療保険制度の抜本的な改革、これは当然必要だ。何もお医者さんをことさらいじめる必要はないと思います。しかし、そういう前提になる社会診療報酬の適正化とあわせて医師課税の特例というのは、もう五十一年にはやるんだとおっしゃったわけですけれども、これはどういうことになっておるのですか。総理、あなたはこの席で一年前にお約束されたんですよ。
○三木内閣総理大臣 遺憾ながらまだ結論に達していないのが正直な答弁でございます。引き続き努力をいたします。
○矢野委員 ですから、一方でそういうふうに大衆課税の懸念が心配されているという、その前提にやはり不公正税制というものを改めなくちゃならぬ、その一つの例として申し上げているわけでございまして、そういうことをやらないで大衆課税の強化、これはいかぬと思うんです。高度成長型の税制度を改めていくということが、根本的に必要だと思うんですよ。いままでの税は、個人課税では大口の貯蓄を優遇しましょう、法人課税では蓄積と投資を促す仕掛けをつくりましょう、利子配当、資産取得の優遇措置をやりましょう、各種準備金、引当金、特別償却制度、こういうものはきちっとしていきましょう、こういうことで蓄積と投資を促す税制になっておる。だから、特別措置の再検討が絶対必要なんです。 ところが、政府の税調の答申なり政府の税制改正要綱で見ますと、特別措置に代表される不公正を徹底的に洗い出すというよりも、批判をどうごまかしていくかということに全力を挙げている。たとえば、整理すべき、整理しなくちゃいかぬという特別措置を政策税制という狭い範囲に限っているんです。それ以外は本則——これは所得税法とか法人税法、本法に吸収されるべきだ、こういう言い方を税調でしておられるわけです。これは問題のすりかえなんです。政策税制というのは、特別償却とか特別控除、特定の準備金、こういうことなんです。これは整理すべき特別措置の対象だ。それ以外の、配当金に軽く税金をかける。法人受け取りの配当の益金不算入制度、利益に入れない、配当控除制度、各種引当金、これは法人税の基本的仕組みに関する制度、だから本則に吸収されてしかるべきである、こういう税調の考え方でしょう。この租税特別措置法に置かれておろうが、所得税法とか法人税法の本法であろうが、どちらに移しかえようが、これは不公平であることには変わりがないのです。移しかえるという議論だけで済む問題じゃない。特別措置だけではなくして、この本法における企業税制のあり方全体を問題にしなければいかぬことなんですよ。政府の説明はすりかえなんです。こういう不公正というのは、特別措置であるがゆえに不当というのじゃなくして、企業税制のあり方から見て不公正なんです。特別措置法であろうが本法であろうが、不公平なんです。それを本法で扱うべき問題だという考え方、これはやはり改めなくちゃいかぬと思います。そういうことで、本法で扱うべき問題だとされたこの受取配当への課税とか、配当控除の問題とか、いろいろ各種引当金の問題、こういうものが行われなくちゃいかぬと思います。こういう問題についての根本的な改革の方向、これを伺いたいと思う。 あわせて伺いますけれども、個人課税についても同様でして、利子配当への優遇、これはこの際思い切って抜本的な改革をしなくちゃいかぬと思います。土地の譲渡課税の完全総合課税、こういうことも考えなくちゃいかぬ。あるいは富裕税、資産税についてもその創設を考えていかなくちゃいかぬと思うのですよ。インフレという状況においては資産価値というのはだんだんふえていく、いわゆるキャピタルゲインというのはますますふえてくるわけです。こういうものに、こういう不公正を富裕税とか資産税とかいう形で吸収していく。大蔵省に言わすと、いやそうじゃありません、相続税でいただきますから、こう言う。あなた、人が死ぬのを待っているみたいな税制度です、これははっきり言いまして。人が死ねば必ずもらいますからね。そういうことじゃなくしてやはり資産税とか富裕税という形でこのインフレの不公正を是正していくという方向を出さなければいかぬ、こういう問題、租税特別措置法、あるいは個人課税のこういった問題、ひとつまとめて簡潔に御答弁願いたいと思います。方向を示していただきたい。
○大平国務大臣 租税特別措置法でございますが、これは所得税関係で現行項目が五十二、法人税が九十八、登録免許税関係が三十四、その他十二、合わせて百九十六あるわけでございます。そして今度改廃いたしましたものは、そのうち廃止が十一でございます。縮減が五十八でございます。したがって、今度の見直しは私は相当彫りの深い見直しをやらしていただいたと自負いたしておるわけでございますけれども、一向評価をしていただかないのは大変残念なんでございます。 しかし、矢野さんが御指摘のように、特別措置法で取り扱っていようと本則において取り扱っていましょうと、問題の本質に顧みて適正な処理をしなければならぬということは御指摘のとおりでございますが、あなたが言われる配当所得の損金不算入の問題とかいうものは、これはまさに本則にかかわる問題でございまして、私は特別措置で扱うべき性質のものとは考えていないわけでございますが、いずれにいたしましても、わが国の税制全般にわたりましてこれを丹念に見直していくという努力を怠ってならぬことは仰せのとおりでございます。しかしながら、私は、諸外国と比較いたしまして日本の今日の法人並びに個人の所得税が著しく不当であるなんということは考えてないばかりか、相当すぐれた税制を私どもは持っておると自負いたしておるものでございます。たとえばあなたが言われる富裕税にいたしましても、いまの法人課税が諸外国に比して、日本が高額所得者に対しましてそれじゃ非常に低目な課税になっておるかというと、そうではないのでありまして、いまの累進率は相当高目な累進率になっておるとわれわれは考えておるわけでございまして、よそ様に比べて日本が低目に高額所得者を優遇しておるから、これを改めろという所説にはにわかに賛同できません。しかしながら、財政が危機的状況にございまして、いろいろなところに増収の道を図らなければなりませんので、富裕税的な領域におきましても、検討すべきものは私は検討してまいらなければならぬと考えております。
○矢野委員 政府は特別措置法に手をつけたけれども評価してもらえぬのが残念だとおっしゃるわけですけれども、しかし、やはりこれは残念ながら評価できないのです。たとえば租税特別措置法の中で二百項目以上あるのですね。うち廃止が十一項目、縮小が五十八項目です。しかも、税収面で見ますと、もっとひどいのです。五十一年度の見直しによって増収はわずか百五十億円程度です。租税特別措置法全体の減収額、この法律があるために入るべき金が入ってないこの減収額五千六百十億円ある。その中のわずか百五十億しか今度取ってない、これは五十年度の見込みでいきまして。また、これが地方税に及ぼす影響、これは租税特別措置法があるために千四百七十二億円減収になる。なければこれだけ入る。そういうことでいきますと、この百五十億程度の増収というのは、全体の租税特別措置法によって減免税している金額のたった二%しかことしは見直しをしてないということになるのですよ。やったやったと言ったって、これは評価できないです。まあ国民の批判をかわすために申しわけ程度縮小したとしか評価できないということを申し上げておきます。 しかも一方、政府は会社臨時特別税を期限到来を理由に廃止する。この税収は四十九年度千八百億円あった。これじゃ大企業は実質的に減税じゃありませんか。しかも、この税制がなぜできたか。あの狂乱物価、インフレ、そういう税制がつくられた背景や理由がもう本当に現時点において解消したという判断が持てるのですか。この点、ひとつお答え願いたいと思う。この点だけで結構です、この会社臨時特別税。
○大平国務大臣 租税特別措置について百五十億というのは初年度のことでございまして、平年度、交際費課税の強化も含めまして千百五十億円の増収を確保することになっておりますことは、念のためにあなたに申し上げておきます。 それから、会社臨時特別税でございますが、これは立法におきまして、仰せのように「最近における物価の高騰その他の我が国経済の異常な事態にかんがみ、臨時の措置として」ということで始まりまして、二年間に限り創設されたものであることは、書記長も御案内のとおりでございます。したがって、私ども、この立法の趣旨に沿いまして、期限の到来とともに廃止さるべきは当然であると考えております。これを大企業に有利な処置であるなどとは考えていないわけでございまして、これは会社臨時特別税の課税の実態から御判断いただきましても、おわかりいただけると思います。
○矢野委員 その期限が来たからもうやめるのだというお話、これは納得できません。租税特別措置、これは何遍期限が来たのですか。期限が来たのを何遍も延長してきたじゃありませんか。期限云々するのなら、それは理由にならない。不公正税制の方は期限が来ても延長していく。大企業優遇の一これは四十九年千八百億円、こういうものは期限が来ましたからといってあっさりやめてしまう。しかも物価鎮静云々と言われますけれども、預金金利をはるかに上回る物価上昇を本年度は見込んでいるではありませんか、消費者物価は。しかもこの会社臨時特別税で、税金払っているのは銀行が中心ですわ。しかも五十年九月期申告所得、これはせんだって発表がありましたけれども、所得ベストテンに、十社の中に都市銀行は八社まで入っているじゃありませんか。こんな不景気であっても銀行様はちゃんともうけてはる。この会社臨時特別税の常連は、これは銀行ですよ。なぜそうもうかっているところの課税を安くしなくちゃならぬのですか。しかも、物価が鎮静したからもうこの法律の必要はなくなったのだといったって、消費者物価指数は八%値上がり、預金金利より上ですよ。どう考えたかて、これは廃止する理由が納得できません。期限が来たというなら、租税特別措置法だってとっくにこれは廃止すべきじゃありませんか。どうですか、これは。
○大平国務大臣 期限が参りました場合、改めてこれを延長するかどうかということは政府の責任として判断しなければならぬことでございます。したがって、私どもの判断といたしましては、わが国の経済の異常な事態は経過したという判断で、立法の趣旨に忠実に実行いたしたまででございます。私ども、大法人であれ中小法人であれ、非常に大事な税源を扱っていただいておる納税者でございまして、この対象に対しましては——政治というのは筋道を立てて行うのが正しいと考えておるわけでございますので、私どもの判断といたしましてはこれは改めて再延長を国会にお願いすべきものではないと判断したわけでございます。
○矢野委員 異常な事態がなくなったから、もうこれは延長しなくていいんだ、条件がなくなったんだ。そうしたら、安定成長段階に入って、高度成長のための租税特別措置法というのは完全にその存在理由を失っているのです。資本の蓄積、投資の拡大のために租税特別措置法が制定されたいきさつは、大蔵大臣は百も御承知のはずです。この前提条件はなくなっていますよ。そっちの方は続けます。見直しといったって、これはほんまにかっこうだけ。先ほどあなたは平年度にして千何百億だとおっしゃいましたね。しかし、それだって八千億前後の金からいけばまだ八分の一、これは大ざっぱな数字ですけれども、こういうことになるんじゃありませんか。この問題は大企業優遇じゃないとあなたは言うけれども、どう考えてもこれは大企業優遇です。 それから、租税特別措置法だけじゃない、本法の問題もある。私はそう申し上げて、大蔵大臣もそうだとおっしゃいました。貸し倒れ引当金からいきますと、これは四十八年度の法人企業の実態ということになる。ここから計算したわけです。四十八年度は全企業で二兆四千億円貸し倒れ引当金を積み立てておるのです。この二兆四千億円の一兆八千億円は資本金一億円以上の大企業です。さらにこの二兆四千億円の一兆円が資本金百億円以上の巨大企業です。つまり、貸し倒れ引当金の積み立てば一億円以上の企業で七四%、百億円以上の企業で四二%、全体の金額からいきますと。これほど大企業は恩恵を受けておる。しかも、中小企業は微々たるものです。大企業ほどこれは恩恵を受けておる。退職給与引当金、製品保証引当金、こういったもの、全く同じです。法人受け取り配当金の益金不算入制度についても三千五十七億円、八七%に当たる二千六百五十七億円、これは資本金一億円以上の大企業です。五四%に当たる千六百五十二億円は百億円以上の巨大企業です。こういう制度が本法でしょう。実は大企業、一握りの巨大企業の利益隠し、これに悪用されていることは、これは余りにも明らかなんです、数字から申し上げて。ですから、中小零細企業を除いてこういったものを縮小、廃止するというのが税の不公正をなくするということであって、そういう前提をやらないで、すぐ付加価値税だとか何だかんだという話になってくる、これがいかぬということを先ほどから申し上げているんですよ。 交際費課税の問題だってそうです。課税は強化したということをおっしゃっていますけれども、その税収額は、初年度は十億円ですか、平年度で約二百億円程度ですね。一兆九千二百億円の支出総額から考えてみますと、あるいは歳入不足の現在から考えますと、全く焼け石に水ということですよ。しかも、交際費の支出額は景気、不景気に関係なくふえてきておる。限度超過額の一〇〇%課税とか、年々五%の伸びを認めているという現行法をもっと強化する、こういう方向でお考えになったらどうですか、大蔵大臣。
○大平国務大臣 貸し倒れ引当金の問題でございますけれども、これは商法におきましてもあるいは会計原則といたしましても、当然企業を継続してまいる場合に認められた制度でございまして、税法におきましても当然これは認めるべき性質と思いますけれども、御指摘のようにこれの率を妥当なものにすることは仰せのとおり必要であろうと思います。今日までの率が不当に高いじゃないかという御指摘でございますが、諸外国に比して私は決して商いものとは思いませんけれども、現実の貸し倒れの起こった実績に比べまして過当に高い状況にあることは御指摘のとおりでございます。したがって、先年来千分の十五でございましたものを漸次引き下げてまいりまして、今日千分の八にまで下げることにいたしておるわけでございます。千分の八に到達いたしました段階におきまして、さらに千分の五に下げる手順を考えることにいたしておるわけでございます。私ども、この合理化につきましては、今後も努力をいたすつもりでございます。 その他の挙げられました具体的な案件につきましても、仰せの点につきましての問題性は私どもよく承知いたしておりまするけれども、鋭意毎年洗い直しの努力は怠っていないつもりでございます。
○矢野委員 本年度予算は三分の一が国債だという未曾有の事態になっておる。一方ではこれからの財政、税制度の改革の根本的な方向が定まっていないと大蔵大臣みずからがおっしゃっておる。そういうわけですから、やはり現行の税制度に対して公正を回復するという立場で国民が納得する、こういう方向で大胆にお考えなさらなければ、この日本の税制はいつまでたっても方向が定まらないということになりますよ。これをおやりにならないで、すぐ高福祉高負担だと、高負担の方が出てくる。あるいは所得減税をやらないということが出てくる。これじゃ国民は納得しません。所得減税の話、るるお聞きしたいことがたくさんありますけれども、減税なさってない。物価が上がった分の調整減税だけでもやるのが、これはあたりまえだと思いますが、それすらもおやりにならない。ひどいことだと思うのです。 そこで、もう一点、自動車税の問題を伺いたいのですけれども、これを目的財源にしておられる、目的税。これは改めていった方がいいんじゃないかというふうに思っておるわけですよ。特にガソリン税です。道路目的財源、これはやはり産業基盤優先型という方向になっているわけでして、自動車の社会的費用の負担という面から考えて、目的財源ということでなしに 一般財源にして福祉に回す、こういう方向は、大蔵大臣どうですか。
○大平国務大臣 結論から申しますと、揮発油税、石油ガス税につきましては、道路整備緊急措置法によりまして道路の財源とされておりますが、今後の道路整備の展望を考えますと、直ちにこの道路財源から外していくということを私は考えるべきでないと思っております。 ただ、一般財源の充実ということはいまの財政上大事でございますので、自動車関係の税の一部につきましては、いままで慣行的に道路財源として取り扱われておりましたけれども、一部一般財源に還元いただいたものもあるわけでございますが、ガソリン税、石油ガス税につきましては、まだあなたがおっしゃるところまで踏み切るつもりはありません。
○矢野委員 日銀総裁、お急ぎのようでございますので……。 金融機関の問題、伺いたいわけですけれども、銀行の最大の社会的責任というのは、預金者からお預かりするお金の値打ちを下げない、そのためにはインフレと闘う、これはやはり銀行の預金者に対する義務だ、こう思うわけですけれども、昨年も私、指摘しましたが、土地買い占めの資金を提供したり、それから都市銀行の不動産に対する投資の融資は、銀行全体の融資の半分、大銀行から出ておる。総需要抑制政策や金融引き締めの進展に伴って、中小企業いじめは目に余るものがある。別にこれは肩持つわけではありませんけれども、小さな方の銀行、相互銀行や信用金庫は七割から八割を中小企業に貸しておられる。都市銀行は、資本金一億円以下の中小零細企業あるいは個人には二六・一%しか貸してない、こういうことなんですね。こういう実態が少しも、昨年いろいろ申し上げたけれども、改まっておりません。特に歩積み両建てについて、具体的データに基づいて私は昨年厳重な取り締まりを要請したわけです。名目金利は一応九%、一〇%。いまはもうちょっと安くなっているかもわかりませんけれども、しかし、預金を事実上拘束されて、実効金利が一四、一五%というひどい例が去年あったわけです。これはもう物すごいばかりで、中小零細企業をいじめました。いま金利の引き下げ方向にありますけれども、公定歩合を下げたからといって、だからといって預金金利も下げなければいかぬという議論がすぐ出てきておるようでありますけれども、預金金利を下げなければもう貸出金利はこれ以上下げることは無理なんだという理屈が産業界とか政府にあるようです。しかし、これは私もう少し考えなければいかぬ問題がたくさんあると思うのですよ。 一つは、これは日銀の発表ですけれども、昨年十二月末の都市銀行の平均貸出金利というのは八・三七五%、これは公定歩合を下げる前の昨年の三月末と比べますと、一・二〇二%しか都市銀行の平均貸出金利というのは下がっていない。 〔小山(長)委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、公定歩合はこの間四回下がっておるわけで、二・五%下がっているのですね。二・五%公定歩合が下がりながら貸出平均金利というのは一・二%しか下がっていない。半分しか下がっていない。先ほど言いましたとおり、一方で公定歩合が下がって、貸出平均金利がその半分しか下がってない。これは銀行がもうかるのはあたりまえのことです。だから五十年の九月期決算所得申告では、ベストテンのうち八社まで銀行だということになるわけです。公定歩合を下げてもその半分以下しか貸出金利が下がらぬという、こういう現状を捨て置いてすぐ預金金利を下げろという話になってくるのは、これはちょっとおかしいと思うのです。この点について、日銀総裁の御意見をちょっと聞かしていただきたいと思います。 あわせて、お急ぎのようですから、第五次公定歩合の引き下げというのはいま考えていらっしゃるのかどうか。あるいは預金金利引き下げについてどういう御意見をお持ちなのか。これをあわせてお答えいただきたい。それでお引き取りいただいて結構でございます。
○森永参考人 都市銀行についての公定歩合に対する約定平均金利の引き下げの追随率は、お話しのごとく十二月現在で四八・一%ということでございます。過去の引き下げ期における類似の期間でとってみますと、今回は追随率がことのほか順調に推移しておるわけでございまして、前回の緩和期での同じ期間をとってみますと二三・八%。それに比べれば大変進捗しておるわけでございます。 なぜ五〇%しか下がらぬのかということでございますが、御承知のごとく、この貸し出しには期限の約定がございまして、期限が参りました都度新しい金利に切りかえていく。一次から三次までのものはもうすでに切りかわったわけでございますが、第四次の引き下げは十月の下旬でございましたので、まだその切りかえが十分進んでいない。今後、切りかえが進むに従いましてもう少し引き下げられていくものと期待をいたしておる次第でございます。 ただし、過去の事例で申しましても、公定歩合の下げ幅だけ必ず下がるということではないようでございます。短期につきましては、公定歩合と連動いたしまして標準金利を自主的に公定歩合の下げ幅に追随いたしておるわけでございますが、金融機関の貸し出しには長短期さまざまございまして、長期のものにつきましては連動関係がなく、資金需給の状況、あるいは資金コストないしは債券の流通市場における流通利回り等が基準になって決まっていくわけでございますので、長短期合わせた意味での約定平均金利は、従来の例では六割近くまで追随するのが例でございました。今回の場合、私どもといたしましては、十一月から預金金利を一%下げたわけでもございますので、過去の例にこだわらず、もう少しこの追随が行われるようにと思って、目下金融機関を指導いたしておる次第でございます。 次に、公定歩合の問題でございますが、昨年来、一次から四次にわたります公定歩合の引き下げを行いまして、そのほか、預金準備率を二度にわたりまして引き下げました。さらにはまた、窓口指導の運営上弾力的な態度を持しておるわけでございまして、これらの施策を通じまして、質量両面から景気の回復に必要な資金供給の円滑化を図るとともに、企業の金利負担を軽減する施策を進めておるわけでございますが、現状では、いままで行いました施策の効果がもっともっと浸透いたすようにと努力しておる、その効果を見守っておる段階でございまして、公定歩合をさらに引き下げることにつきましては、いまのところ考えておりません。 もう一つお尋ねの公定歩合と預金金利との関係でございますが、いま申し上げましたように、現実具体的な問題としては公定歩合を下げることを考えておりませんので、預金金利の点につきましても現実具体的な問題としてお答えはいたしかねるのでございますが、仮に将来公定歩合を下げる場合に預金金利を据え置いたままでできるかどうかというお尋ねとしてお答えいたしますと、そこには若干の問題があるようでございます。一つは、金利体系上の問題でございます。もう一つは、金融機関の経理の面から、金利の低下の実効が期せられるかどうか、この二つの問題だと思います。 金利体系の問題として申し上げますと、日本では短期の標準金利は公定歩合に連動いたしますので、いま公定歩合が六分五厘でございますが、それを何がしか下げますと、それだけ標準金利が下がるわけでございます。そうしますと、いまこの短期の標準金利は六・七五%になっておりますが、ちょうど一年ものの定期預金の利率とパラレルになっておるわけでございますが、それが逆ざやになるわけでございまして、逆ざやになりますと金融機関の利ざやが縮小し、金融機関としてはその利ざやの縮小を貸し出しの量的な拡大によって補おうというような傾向をとかく生じがちでございます。過去において一年ものの定期と標準金利が逆転したことがございましたが、そのときの経験に徴しましても、金融機関としてはとかく貸し出しを膨張させがちでございますし、他方、企業といたしましても貸し出しを受けてそれをそのまま預金すればそこに利ざやが艇ずるというようなことにもなるわけでございますので、企業の方にも貸し出しを受け、預金をそのままにしておくあるいは預金をするというようなことが起こってまいりまして、とかく貸し出しの膨張傾向が起こってまいりがちでございます。四十七、八年ごろのいわゆる過剰流動性の裏にはそういう点があったわけでございますので、私どもとしてはその点が一つの問題。 もう一つは、金融機関の収益上、貸出金利低下の実効が期せられるかどうか。すでに一次から三次までは預金に手をつけずに下げてまいりましたので、それだけ利ざやが下がっております。第四次は預金を下げましたが、その預金は引き下げの効果が起こりますのには、これまた期限がございますので、まだ昔の高い負担で利子を払っておるというようなことから、もうすでにこの利ざやは、この上期には〇・七八といういままでになく低いところまで縮小いたしておるようなことでございます。もちろんそれでも私どもはもう少し金融機関の協力を得まして実効金利を下げたいと思っておりますが、そこにも限度がございますので、預金金利を据え置いたまま公定歩合を下げる場合には果たして実効金利が下がっていくかどうかという問題がある。その二点の問題を申し上げておきたいと存じます。
○矢野委員 預金金利の問題ですけれども、日本の国民大衆の貯金というのは、これは三木総理、よく聞いていただきたいのですけれども、もちろん利子、利息をもらいたいための貯金というのはあります。これはそういうことでしょうけれども、それよりも元木のため、老後のためという貯金なんですよ。ヨーロッパの金持ちなんかは利子が下がるとすぐそれを引き出して、それで金を買うたりという換物ということができる。しかし、日本の零細貯金というものはそういうものじゃないわけです。教育のため、住宅のため、老後のためということで、インフレが激しくなって目減りすることがわかっておっても、消費を減らしてでも貯金しなければいかぬというまことにせつない思いの込もった貯金であるということ。これは将来のことを考えたらそうせざるを得ないわけです。本当はもう一斉に換物するんだ、預金引き出し運動をやるんだ、それくらいのことをすれば銀行さんもいままでの横着なことはできなくなるわけでありますが、悲しいかな、そういうことができない。ヨーロッパの金持ちならそれを引き出して金にかえるという、そういうことでしょうけれども、日本の場合はそういうことができないのです。対抗手段がない。これは社会保障とか教育、住宅を三木さんが余りしっかりやらないからこういうことになる。だから、減税しても消費がふえないで貯蓄がふえると大蔵省や福田さんはおっしゃるわけです。これはまさに無慈悲な言い方なんです。減税して少々ふところが暖かくなっても消費に回らぬで貯蓄がふえるんだということは、そういう日本型貯蓄のせつないことを百も知った上で減税をやらないということになるわけです。日本の政治の無慈悲さというのは、やはりここにあると私は思うのですよ。だから景気対策としても効果なし、こういう判断をしておられるわけです。 ですから、いまるる御説明がありましたけれども、ここで三木さんにはっきり言っていただきたい。公定歩合、将来どうなるか、これは今後の問題でしょうけれども、この公定歩合に連動して預金金利は下げませんと、実効金利をもっと下げさせるように努力いたしますと——実効金利を下げさせることにもっと努力すべきです。ということを、預金金利は下げないと国民にひとつ約束してください。
○三木内閣総理大臣 日本の場合は諸外国に比べて借金経営をしておるわけですから、金利負担というものは、終身雇用制の雇用の形態、自己資本が少なくて借金をやって経営しておるということで、欧米諸国に比べて企業というものの今日の苦しみというものはよその国の比ではないわけであります。やはり金利水準というものは下げて、実効金利というものは安くしていくということが大きな方向ですよ。そうでないと、なかなか借金の比重の多い日本の企業というものは苦しいわけですから、実効金利は下げていかなければならぬ、こう考えます。
○矢野委員 預金金利は……。
○三木内閣総理大臣 預金金利、これはその下げ幅にもよるわけで、いろいろな、やはり大きな実効金利を下げていくということになって、預金はそのまま据え置くということになると、金融業というものは成り立たぬものですから、できるだけ預金金利というものは下げないことが好ましいでしょうけれども、下げ幅によったならば預金金利に手をつけなければならぬということになると思います。
○矢野委員 それは景気対策という意味を含めまして、企業のコスト高を解消するための金利負担を少なくしたい、そこで公定歩合というものを下げていくということになるのでしょうけれども、しかし、公定歩合を下げる、すぐそのまま預金金利へこの話が連動するわけです。企業の金利負担を下げる、それが景気対策になるのだというのなら、先ほど言ったように、公定歩合よりも実効金利を下げて金利負担を小さくする努力をしてあげなくてはいかぬということをさっきから言っておるわけですね。 特に歩積み両建てという問題が依然として解消されていないのです。先ほども具体例を申し上げましたけれども、公正取引委員会が五十年十一月に発表された拘束預金の実態調査がありますが、私には具体的な実例はたくさん来ておりますけれども、これはちょっと名前を申し上げるわけにいかない、またこれ銀行さんから仕返しを受けるということになるわけでございまして、だからこの公取委員会の実態で申し上げるわけですが、名実ともの狭義の拘束預金、これは借り入れまたは手形割引に関連して、質権の設定とか預金証書を差し入れるとか念書を取るとか口約束によって拘束する、こういう狭義の拘束預金は絶対額で四十九年から比べて五十年は金額がふえてきておる。広義の拘束預金、つまり事実上拘束されておるという形の拘束預金、これもやはり大幅にふえてきておる、この公取の数字を見ましても。総預金高に対する拘束預金の比率も四二・七%から四三・九%というふうに上がっておる。大体預金のうち半分近く拘束されておるということですね。四四%拘束されておる。借入金に対する広義の拘束預金の比率も一六・七%から一六・八%にふえてきておる。パーセンテージのふえ方が少ないかもわかりませんけれども、一六・八%というのは大変な拘束率です。あるいは預金対借入比率、これは三八・一%、三割以上、この預貸率、拘束されておる。こういうことでありまして、名目金利に比べて実効金利というものは非常に高くなっておる。そのために中小零細企業はもう大変なつらい思いをしておるわけでありまして、しかも文句が言えない。だから昨年私は大蔵省銀行局長さんに、しっかりこれは取り締まってくれ、そういう被害届けと言うとあれですけれども、そういう届けがあればすぐに銀行局として適切な処置をとれ、あるいはまたそれこそ抜き打ち的、臨時的に監査をやれ、そんないまの監査というものは何月何日に行きますよというような感じの監査でありまして、そんなもの見つかるはずがありませんよ。抜き打ち的に、臨時的に徹底的な監査をやる、そういう形で歩積み両建てをなくしていく。これは総理も昨年お約束をしていただいたわけでありますけれども、一向にそれこそ実効が上がっておらない。この点、改めて決意を述べていただきたいし、今度は、言葉だけでなしに、本当にやってもらいたい。これは大平さんも一言決意を述べていただきたいと思います。
○大平国務大臣 拘束性預金の自粛につきましては、行政を通じあるいは実際の検査を通じまして、自粛の徹底方を努力いたしておりまして、私の手元にある資料としては年々改善の跡が見られると思いますけれども、仰せのように、なお一段と監視を厳重にいたしまして、効果を上げるように努力をしてまいります。
○三木内閣総理大臣 しばしば指摘される問題でもありますし、今後これは監督を強化しまして……(矢野委員「本当にやってくださいよ」と呼ぶ)いや、本当にやる決意でございます。
○矢野委員 具体的な事例を挙げてもっとこれはやりたいわけですけれども、時間の関係もありますから……。 次に、ライフサイクル計画というのが非常にしゃれた言葉で出ておるわけであります。生涯設計計画、日本型福祉社会のビジョン、これは三木さんへの私的提言だという形で、どの程度まで三木首相自身の考え方と一致し、現実の政策に取り入れられるかは今後の問題だ。三木総理が直接責任を負う立場にないことは明白。これは、これを作成された学者の三木さんに対する思いやりであろうと受け取っておるわけであります。三木さんは、このレポートにどういう評価を与え、どういう立場になるのかということをひとつ聞かせていただきたい。これは後でまとめて申し上げます。 言葉だけ、福祉社会を支える基本精神だとか、個人の意思と努力次第という独立、自助の精神とか、経済的、社会的困難に陥った人に対して国が救済の手を差し伸べるという最低限の保障、連帯と相互扶助の精神、私の構想する生涯設計計画は、教育も就職も住宅も、医療も、老後も、すべてを含む総合的なもの、これはあなたの演説にあった。本当にりっぱなお話なんですけれども……。しかし、この私的提言、三木さんは、少なくともスローガン的にさわりのところだけをきわめて美文調に借用しておられるのじゃないか。この私的提言そのものも多くの批判されなくちゃならぬ点があると思います。しかし、少なくともいままでの高度成長そのものを目的と錯覚した従来の所得倍増計画その他の列島改造論、こういうものに比べて、生涯設計を目的に位置づけようとするこの発想、これは正しいと思います。批判される点はあったとしても、価値観というものが明らかにいままでの政府・自民党の考え方と違っておる、これは評価します。 しかし、この提言、三木さんは演説のときにお使いになるわけでありますけれども、昨年の七月二十九日でしたか、経済審議会総会に新経済計画の策定を正式諮問した。その際、生涯設計計画の構想を積極的に問題提起して、誘導したい、これは三木さんの考えが正しい。これはうそか本当か知りませんが、雑誌に書いてあったのだけれども、総会に先立って福田副総理から待ったがかかったといういきさつがある。これは雑誌だけでなくて関係筋からも聞きました。本当かうそか知りませんけれどもね。経済審議会の委員にも、このライフサイクル構想、これはそんなものうまいこといくのかしらと首をかしげる向きが多い、こういうふうに聞いておる。少なくとも、内部事情はともかくとしても、三木さんの言われるライフサイクル計画は、政策とか計画決定ルールにまだ乗っていない。経済審議会総会に諮問して、まだそういう答申も出ておるわけではない。これはまだルールに乗っていない。しかもどうやら政府内部においてもいろいろな意見があるわけで、三木内閣の統一した見解としてまとまったということも聞いてない、というわけですね。 ですから、この際、大平さんいらっしゃらないから福田さんに聞きますけれども、この学者が相当御苦労されてつくられたライフサイクル計画、生涯設計計画、少なくともあれは学者のことだから私は知らぬと言えません。総理大臣がそれを使っていらっしゃるわけであります。演説にもりっぱにそれをいいところを使っていらっしゃる。その限りにおいては、福田さんはこの計画、方向として全面的に御賛成なのか、あるいは伝えられるこういう待ったをかけたのかということです。この点についてひとつ聞きたいと思うし、しかもそのいきさつ以上にもっと問題がある。 この計画が現実の政策として具体化されるかどうかという問題がある。これは可能性は私はないと思っておるのです。政府内の不一致もさることながら、三木内閣が現実にとろうとしておる政策垂線、本年度予算を見たら、ライフサイクル計画なんてますます距離が大きくなっておる。たとえばナショナルミニマムを設定するための年金制度を総合改革する、これだって全然行われておりません。自力で住宅を建てる、この構想だって、少なくともことしの予算は民間住宅のための助成というのはほとんど前進しておらない。いろいろそういう矛盾点がたくさんあるわけです。少なくともライフサイクル計画、三木さんが美しく述べられるような御計画と政府の顔である予算とは全然距離が離れておる。むしろ福祉見直し論だとか財政が困難だからそう福祉をふやすことができない、高負担高福祉だとか、そういう福祉に対する冷たい空気の方が表面に出てきておりますよ、ことしの予算案には。だから、こういうことを言うと失礼かもわかりませんけれども、本当にあなたが、このライフサイクル計画、学者がおつくりになったこの計画すべてをあなたの意見にせいとは言いません。あなたのお考えもあるでしょう。演説にお使いになるくらいの方向、それをあなたが本気でお持ちなら、本年度予算にまず第一番に対決をしなくちゃならぬのは、野党よりも三木さんですよ。三木さん御自身が本年度予算に対決しなくちゃならぬ。その対決もなさらないで、演説のときだけライフサイクル、生涯設計、四つの段階における、これじゃ、ええかっこしいやと言われてもしようがないですよ、失礼ですけれども、あるいは学者の御労作をスローガン的に盗作をしていらっしゃるという非難を、私はそんなことをしたくありませんよ、しかしこれは受けてもしようがないですよ。 こういったいろいろな問題を申し上げましたけれども、時間がありませんから簡単にひとつお答え願いたい。
○三木内閣総理大臣 私は、当面と将来の一つの大きな計画と分けて考えざるを得ない。 当面は、今年度の社会保障については、いろいろ御批判もありましょうけれども、全体の予算が一四・一%の伸びの中で、社会保障関係は二二・四%の伸びと記憶しておりますが、だからそのことによって相当きめの細かい社会福祉の政策というものは織り込んだ所存であります。これは当面のもの。将来のものとして、日本の福祉社会のあり方というものは、やはり政権を担当する者として常に検討を加える責任がある。そういうことで、私の生涯の福祉計画というものの一つの大きな発想の出発点は、福祉というものをただ老後であるとか失業した場合とかこういうある時期に限らないで、一つの人間の生涯というものが福祉計画の中に乗らないものであろうか。人生をある段階で分けて、そしてその中にやはり福祉政策というものがその段階ごとに政策というものが盛り込めるような計画であるべきである。また、この福祉というものを老後の年金、社会保障というような意味ばかりでなく、教育もあるいは就職も、住宅も、いろいろな人生のわれわれが皆が直面するすべての問題をとらえて福祉政策というものと関連づけて考えるべきではないか。 もう一つは、矢野君もそういう持論のようでございますが、ある最低限のナショナルミニマムというものが保障されて、それ以上はやはり自己の努力によって、努力する者が報いられるということでなければ、だれもかれも皆社会保障というものは国とか地方の公共団体がやるべきだということになると、そういうことになれば財源の問題もございます。そういうふうな大きな前提の上に立って、福祉社会というものをひとつ計画的に考えてみようということがこの出発点です。これは各省にまたがることでございますから、矢野君御承知のように、今年度の予算を計上したわけですね。調査費を計上して、各省にまたがるようなことでございますから、これを、各省とも機構を動員して、そして総合的な計画にしていきたい。だから、今年度の予算に計上してないがと言われるのはごもっともで、これは、今年度は当面の社会保障政策としてやったので、これは将来の大きなわれわれの考えるビジョンとして打ち出したわけでございますから、調査費を初めて計上したばかりでございますから、今年度から始まるのだ、こういうことで、この問題というものは本気で取り組んでまいりたいと思っておるわけでございます。
○福田(赳)国務大臣 まず、三木総理から経済審議会に対しましてライフサイクル構想を諮問をするという要請があって、私がそれを拒否した、こういうようなお話ですが、そういう事実はございません。 それから第二に、ライフサイクル構想をどう評価するか、こういうお話です。社会的ないろいろな政策を進めるその上で住宅問題についてはいろいろ検討が進められておるし、また事実いろいろ施策が進められております。また、社会保障につきましても同様です。また、教育につきましても同様であります。しかし、三木総理は人生のあらゆる段階において生きがいのある社会、そういうものを想望し、それを何とか統合した形として政策化できないか、こういうお話なのですが、いろいろ具体的に、教育、住宅、社会保障、施策は進められておりまするけれども、そういう総合的な立場に立って、一応また見直してみる、こういうことも今後の社会づくりの上においては有効である、こういうふうに私は考えております。
○矢野委員 時間の関係がありますので次に行きたいと思いますけれども、いずれにしても、年金制度にしても住宅政策にしても医療問題にしましても、おっしゃるとおりいきなりは無理だということは理解しますよ。しかし、先ほどからるる申し上げているとおり、そういった基本的な問題についての長期計画、方向がことしの予算で一向決まってないということは明らかになっているでしょう。むしろ予算の実態は、その方向も明らかになっておらないどころか、それと逆行する方向で高福祉高負担という議論が現に政府から出てきているじゃありませんか。本当にライフサイクル計画というのを三木さんの政治信念としてやっていきたいというのであれば、私は三木さんにお願いをしておきたいわけですけれども、そういう怠慢ないままでの政府の姿勢、長期計画を決めない、今年度予算が、るる申し上げた意味で決してライフサイクル計画の方向に一歩踏み出しているわけじゃない、むしろ後ろへ下がっておる、こういうことについて、三木さん御自身がやはり厳しく対決していくという姿勢が必要じゃないかと思うのですよ。このことを私の意見として申し上げておきたいと思います。 次に、福祉問題で具体的な御質問を用意しておりましたが、時間がありませんので、次は安全保障、防衛問題に移りたいと思います。 これは防衛庁長官に聞きたいと思いますが、日本の自衛隊と韓国の軍隊、これはいままで共同の作戦計画あるいは作戦行動、共同演習あるいは軍事的な打ち合わせ等は一切ないという御答弁であったわけでありますけれども、そのとおりですか。
○坂田国務大臣 そのとおりでございます。
○矢野委員 バッジシステムによるわが国の防空識別圏での識別、これは、一つは、民間機は運輸省からフライトプランが来る。二つ目には、自衛隊機は自分のところのものだからよくわかる。初めから情報が入っておる。三番目、米軍機は情報提供によるフライトプランを承知しておるからわかる。第四番目、不明機については、レーダーから質問電波を出して回答を求める、こういう装置になっておる。バッジシステム、防空識別圏でのやり方。五番目、通常、軍用機等については国際的共通の符号は定めておらない、だから回答がなかったり解読できないものもあるので、最終的にスクランブルをかける。こういう説明が防衛庁よりあったわけです。自衛隊機や米軍機共通の電子的信号あるいは暗号を使っておって、それ以外の国のものは知らないという答えになっておりました。これはわが党の山田委員、坂井委員がかねてから質問をしてきたわけです。そういうものはないということだった。しかし、われわれが入手した資料、防衛庁のこれは秘密公文書、AKAA二八三あるいはAKAA二〇〇二、日米を含めた十一カ国で共通の電子的暗号が現に存在し作動しておる。具体的に言いますと、この十一カ国、日本を除いた十カ国には、共通の電子暗号があって、日本の防空識別圏に入ってきた軍用機は自衛隊のレーダーサイトからの信号によって回答がある。その共通の暗号によって問い合わせをし回答がある。回答はそういうできるようなシステムになっている。これもそういう御答弁だった。だから突然日本の防空識別圏に外国の飛行機が入ってきても、この信号あるいは暗号によって識別できる、すなわちスクランブルをかける必要がない、こういうことになっておるわけであります。 しかも、これも防衛庁の説明によりますと、AKAA二八三、これは識別装置を飛行機に載せて、地上から信号を送ると回答が符号で来る。パイロットが飛ぶ前にセットをしておくことができるので、それが出てくるわけです。これは敵、味方を識別する重要な意味を持っておる。一枚一枚パイロットとレーダーサイトで持っておって、済めば毎日焼却するということになっておる。AKAA二〇〇二は、音声を出して航空機と地上あるいは航空機相互の連絡に使うもので、アルファベットと数字でできておって、これも毎日使って焼却する、こういう説明が今日までなされてきました。 そこで、第一に、自衛隊が識別できますのは米軍と自衛隊機である、こういう御答弁は要するにうそであったということになるわけであります。現実にはこの十一カ国が、日米を除けば九カ国が識別できるようになっておるし、そのための暗号までちゃんと十一カ国で決まっておる。自衛隊と米軍しか識別できません、こういううそをおっしゃった。これは議事録にはっきり載っておるけれども……。実際これは自衛官がやっておるわけです。それはいいでしょう。 そこで、防空識別圏とこれに関するスクランブル、これは決して遊びじゃないわけです。場合によっては、単なるスクランブルだけじゃなくして、戦闘行動になることも予想して行われているわけであります。したがって、この十一カ国の国と暗号は決まっておる、この暗号によって出せば、回答が来ればスクランブルをかけない、こういう取り決めというものは、少なくとも自衛隊にとって敵性を帯びておらない国である、こういう判断になるわけであります。これは共通の識別の電子暗号というのが十一カ国共通でお使いになっておる。簡単に言えば、この十一カ国については、防空識別圏に入ってきても、フリーパスを与えておる。まあ大げさな言い方かもわかりませんが……。少なくとも敵性を帯びておらない。 なぜこの日本を除く十カ国が敵性を帯びないということに、どこで決めたのか。これは裏返して言えば、この十一カ国以外は敵性を帯びるということになるわけであります。十一カ国は、そういう暗号が共通だから、こちらで山と言えば川と答えるから——忠臣蔵みたいになりますけれども。だからいいんだということになるけれども、それ以外の国はスクランブルをかけるということになる。自衛隊は仮想敵国を持たないというふうに私はいままで聞いてきたつもりでありますけれども、こういう十カ国共通の暗号が存在し、かつ、それが現に使われておるということは、それ以外の国を、大げさに言えば仮想敵国とみなすということになる。 私の質問の趣旨は、どういう根拠でこういう区別、十一カ国、日本を除けば十カ国ですね、について友好国扱いをする、それ以外の国はスクランブルの対象になる。一体だれがこういう区別を決めたのか。その十一カ国と防衛協定でもあったり航空協定でもあるとか、こういうことならわかりますけれども、そういうものはない。これは一体、長官、どういうことなんでしょうか。
○丸山政府委員 技術的な面も含んでおりますので、私から御答弁申します。 まず最初の御質問で、先生のお話の中で、自衛隊のつくった文書という御指摘がございましたが、これは実はアメリカが作成をいたしたものでございまして、これを私どもの方の識別の補助として使うということになっておるわけでございます。 それから、ただいまのADIZに入りました、つまり防空識別圏に入りました国籍不明機についての識別の方法でございますが、これは先ほど先生がおっしゃったとおりでございますが、ほとんど大部分が、いわゆるフライトプランを米軍がわが方に提出をするということによりまして大体が識別ができるということになっておるわけでございます。そこで、本当のごく小部分でございますが、フライトプランの提出がおくれる場合がございますが、そういった場合にただいまの識別の信号というものが役に立つ、こういうことでございます。 したがいまして、現実に先ほどのお話にございました十一カ国というのがある、そのうちの一つについては十一カ国が関係をしてございますけれども、それらの国において現実に使用しておるのかどうかという点については、私ども確認をする方法がございません。こういった国がわが国の防空識別圏に飛んできてスクランブルをかけるあるいはかけなかったというような事例は、ただいまのところ私どもとしてはないわけでございます。
○矢野委員 これは米軍から与えられておるもので、御親切に提供されたものだ、こうおつしゃっていますけれども、航空総隊通信電子運用綱則という物々しい文書がありますけれども、この中に、AKAA二〇〇二、これは彼我識別用の固有識別書である、自衛隊の公文書として自衛隊の文書に載っていますよ。ただちょっと見せてもらって便宜上使っておるという、そんな簡単なものじゃない。自衛隊の公文書の中にこれが載っておる。そういうごまかしはだめです。しかも、通信しているとかしておらないとか、そういうことを私は言っておるのじゃない。それも問題でありますけれども、要するに自衛隊にとって防空識別圏に入ってくる飛行機が敵であるのか味方であるのか、スクランブルをかける必要があるのかないのかという判断は基本的に重大な問題を伴う判断である。その判断にすでにこの十一カ国についてはスクランブルをする必要がないんだという意味の暗号の取り決めがお互いの間でなされておる、このこと自体が問題なんだということを私は申し上げているのです。どういう根拠でこういう取り決めができるのだということを申し上げておるのです。そういうことを取り決める権利があるのですか、防衛庁には。あるいは政府が勝手にそういうことができるのですかということを私は申し上げているのです。これはあわせて後でお答え願うとして、問題はそういうことです。 それからもう一つは、AKAC六二、この文書でありますけれども、この表紙にある文章を一遍見ていただきたいのですけれども、これは三カ国の暗号である。これは防衛庁にも確認いたしましたけれども、電話で情報を通知する場合に略語として使われるもので、アルファベットと数字の組み合わせであり、月ごとに交換していくシステムである、通信連絡の秘匿度を高くするものであって、技術的なもので、政治的なものじゃない、こういう御答弁でした。しかし、先ほど申し上げたAKAA二八三がコンフィデンシャルなものであるのと比べてこれはシークレット、極秘ということになっておる。この三つの国は一体どことどことどこだ、これは何遍聞いてもお答えにならなかった。その段階ではこちらもこの資料を提出しなかったわけでありますけれども、きょうは明確に申し上げましょう。 これは、日米韓三国でこのような暗号を取り決めをしていらっしゃるわけであります。これについては、防衛庁長官は、わが党の山田委員とか坂井委員に対して、取り決めというふうなそんな大それたものじゃないんだ、御好意で提供されているものを便宜上使わせていただいているものであります、御好意で提供されたものである、こういう御答弁でありました。しかし、その答弁は通りません。この文章をごらんください。この上のものを全部読むと大変ですけれども、特に問題になるところは、一番上の方に「フォー US ジャパン ROK ユース オンリー」と明確に書いてある。つまり、米日韓専用特別取り扱い規則と明確に書いてあるのです。アメリカが使っているものを日本に提供されたというのなら、アメリカと日本と韓国のユースオンリー、専用の暗号ですよなんというようなことは書いてあるはずがない。しかもこの文書は、日米間で使う、日米間でこの暗号によって通話する、それをそのまま韓国が傍受しておれば意味がわかる。米国と韓国がこの暗号によって通話しているときには理論上日本でもわかる、同じ暗号なんですから。これは韓国だって了解しておらなければ、こんな暗号を日本に提供してくるはずはありませんよ。また、日本の自衛隊の行動も米軍とこの暗号によって通信する場合には筒抜けに韓国にわかるということになっておるわけです。それをただアメリカの御好意で提供されておるものであります、こんなものじゃ済まされません。先ほど申し上げた航空総隊通信電子運用綱則によっても——これは自衛隊の公式文書です。AKAC六二は秘匿略語である。明確にこの公文書に載っているじゃありませんか。アメリカから御親切で提供されたものだというような、そんな簡単なものじゃないということを私は申し上げているわけです。 これは何を意味するか。これは、もし政府なり防衛庁長官が御存じなかったというのであれば、制服が勝手に日米間で共同の軍事行動を行うための下地を着々とつくってきておることを意味しておる。制服が独走しておるということを意味しております。あるいはまた、政府が了解の上でこういうものをおつくりになったというのなら、どういう法的根拠に基づいてこういう日米韓三国が専用で、ユースオンリーで使う暗号をお決めになったのか、こういうところを防衛庁長官なり総理に伺いたい。 丸山さん、あなたは本当に御苦労さんで、もういいです。これはきわめて政治的な問題であって、技術的なことを伺っているのではないのです。米日韓ユースオンリー、こういう文書を何を根拠にして決められておるのですか。こんな文書は知らぬとは言わせませんよ。明確にここに載っておるのですから、この自衛隊の公文書に。
○坂田国務大臣 これは、丸山局長から御答弁申し上げましたように、それからまた、この前もお答えを申し上げましたように、入ってきます飛行機を識別する方法といたしまして米軍が好意で提供してくれたものでございます。したがいまして、これにつきまして日米間にどうだこうだ、韓国とどうだというような取り決めはございません。それだけのことでございます。まことに技術的な問題であります。
○矢野委員 意味がおわかりいただけたのかどうなのか、要するに便宜的に提供されたものだ。しかし、現実に自衛隊の公文書として、これは通信用に使うのだとはっきりなっているのですよ。しかも、日米間でこの暗号によって通信すれば、同じ暗号をこれは韓国も持っているわけですから、そのまま韓国に筒抜けなんです。それを承知でおつくりになっておる。あるいは米国と韓国と通話してもそのまま日本に筒抜けである。同じ三国共通の専用の暗号なんです、これは。米軍が、アメリカと韓国の間でつくった暗号なので、日本も知っておいた方が便利がいいでしょうと、御親切な気持ちで提供してくれたものなら、なぜ「フォーUS ジャパン ROK ユース オンリー」というような印刷がしてあるのですか。そういうあなたのおっしゃることなら、「フォー US ROK ユース オンリー コピー ジャパン」これならまだわかります。そういうことなら、自衛隊の公文書のこういう識別書という形で正式にお載せになる必要はないじゃありませんか。現実に使っているじゃありませんか、これは。まあ秘匿略語ですか。ですから、親切で提供されたものだという答弁じゃこれは済まされません、長官。
○丸山政府委員 技術的な説明を申し上げます。 ただいま御指摘がありましたように、大変政治的な意味合いを持ったものではございません。このわが国の防空識別圏に入ってまいりますものを識別いたしますために、わが方としてはいろいろな補助手段を使っておるわけでございます。ただいま御案内のように、アメリカとそれから韓国と日本と、こういったところだけに使われる識別装置がこのとおりアメリカによって決められておるわけでございまして、わが方はこれを識別をする、国籍不明機を識別する上において、この中身を承知しておくことはわが識別のための非常に有効な補助手段であるという趣旨で、これを航空総隊において正式に決めて使っておる。これはアメリカの極秘文書でございますので、わが方が提供を受けておる以上、それだけの信義をわが方としては尽くさなければならないわけでございまして、したがって、この前の国会において、中身について詳しく申し上げられないと申し上げましたのはそういう趣旨で申し上げておるわけでございます。
○矢野委員 先ほどの十一カ国のこの暗号の取り決め、これ自体も、防衛庁はそんな大それたつもりはないとおっしゃるかしらぬけれども、結果として敵性国、友好国の区分が、この暗号を十一カ国で結ぶということによってでき上がっておる。航空自衛隊がスクランブルをかけるかかけないか、これは重大な判断なんです。その判断を決める共通の暗号を十一カ国で、言うなれば勝手に決めておるのか、政府承知の上で決めさせたのか、これは重大な問題なんです。 しかも、後で提起しましたAKAC六二、これはもっと重大なんです。この後の方に載っておりますが、「このコードは戦術上の緊急事態には暗号区分を最高機密情報にも用いることができる。その際、このコードは、最高機密事項取扱要項として用いられる。」と、戦争があったときには戦争の軍事行動の暗号として使いなさいと、そういう意味のことまでここに響いてあるのです。しかも、そういう重要な暗号が、安保条約に基づいて日本とアメリカの間で決められておる、ほかの国は関係なしに。それだって私は異論があるんですよ、問題がある。それならまだ、しかし政府の立場から言えば、日米安保があるからアメリカ空軍と日本の航空自衛隊とが通信するに暗号は必要だ、これならまだわかるんです、私は反対だけれども、安保そのものには。しかし、何の関係もない韓国と日本とアメリカが共通の、しかも極秘というような、しかもそれが緊急事態には戦術用の暗号として使うべきものだというような、そういうものをなぜ韓国を含めてこれはつくらなくちゃならないんだ、その法律根拠はどこにあるんだということを私は聞いておるんです。これは技術論で丸山さん、防衛庁長官にいま昇格なさったようなことだけれども、まだ事実昇格なさってないわけだから、長官、これは技術論の問題じゃない。いいかげんな答弁では私は許しませんよ、これは。
○山田(太)委員 議事進行。 ただいまの矢野委員のこの質問は、AKAA二〇〇二あるいはAKAA二八三、ことにAKACの三国、日米韓のユースオンリーというものを、米軍の好意による供与によって、などと、そういうふうな防衛庁長官の安易な答弁でこれは済まされる問題じゃありません。なぜならばこの問題自体が、日米韓のこの軍事機密が、シークレットが国をも拘束するものであるということは明瞭な事実であります。軍事的な意味を含めて、そういう重大なものを、このような、先ほど本予算委員会の冒頭において小林委員から与野党を代表しての重大な注文がありましたけれども、これを一防衛局長によってその答弁をごまかそうとするのはもってのほかであります。決して事務的、技術的問題じゃありません。しかも、防衛庁長官が答弁することができない。したがって、委員長、もう一度この問題についての統一見解を予算委員会の理事会において提議されんことを求めたいと思います。
○荒舩委員長 ただいま山田君の御発議でございますが、防衛庁長官遅まきながら答弁をすると言っていますから、防衛庁長官。
○坂田国務大臣 これは日米間で、あるいは日韓間で取り決めしたようなものではございません。全く技術的な問題でございます。それから、こういうような技術的な識別の方法、これだけでスクランブルをかけるということではございません。いろいろな事情その他を勘案しましてスクランブルをかけるわけでございますから、そういうことが一つ。 いま一つは、やはりこれは軍事上の秘密の文書でございます。ただ、これが、こういう技術的な問題でございましても、やはりこれがこういうふうに日本で、アメリカが好意で提供してくれたものがこういうふうに漏れるということになりますと、いろいろの軍事上の情報というものを日本に与えないということになりますと、日本の安全にとって非常に問題であるというふうに私は思います。でございますから、この点については先般の委員会におきましても申し上げましたけれども、この取り扱いについては本委員会においても十分御考慮を賜りたい。日本の安全保障という立場でお考えをいただきたいということを申し上げておきたいと思います。(発言する者あり)
○荒舩委員長 静粛に願います。
○矢野委員 まず具体的に個条別に申し上げましょう。 長官はまずわかっておられない。スクランブル云々の問題はAKAC六二には関係ないのです、これは軍事上の会話の暗号ですから。 それから第二点は、先ほどくどく言っておるように「USジャパンROKユースオンリー」、形式的にこの文書に記入されておる以上は、御親切で提供されたというような言い方は通りませんぞということ。 第三点は、実質的に日米の通話が韓国にそのまま筒抜けになる、こういうことを理論上前提にした暗号というものを何の権限があってあなた方使うことができるのか。これは実質上の問題、実質的にそういう効果があるということ。 それから第四点は、あなたは、こういうことが漏れたことが重要な課題だと思う、開き直りの姿勢ですよ。私たち何もこんな暗号のめんどうなものまで見たくありませんよ、はっきり言いまして。きちっと、こういう日米韓三国で専用の共通の暗号を使うことにするがこれでよかろうかということを——暗号の中身まで教えてもらわぬでもいいです、そういうことを事前に国会にお諮りになるなりきちっと協議なさっているなら、私こういう問題を取り上げる必要はないのです。やるべきことをなさらないで、そしてこういうことが表面化したら、漏れるのは問題だ、これは開き直りじゃありませんか。こういうことじゃ質問を続けられませんよ。
○坂田国務大臣 ユースオンリーというのは向こうが書いておるわけでございまして、こちらが書いておるわけじゃございません。
○山田(太)委員 防衛庁長官の答弁ではとうてい納得いたしかねる点が——先ほどの矢野委員の質問に答えていないわけです。したがって、これまでの経緯から見ても、これまでの答弁を見ましても、質問をはぐらかしているのかあるいは故意に答弁を曲げているのかはともかくとして、これは納得できかねます。したがって、この問題についての質問は保留さしていただくと同時に、理事会においてこの扱いを協議されるように委員長から取り計らわれたいと思います。
○荒舩委員長 ただいまの山田君の御発議でございまして、理事会で取り計らうことにいたしたいと思いますが、さよう理事の皆さん取り計らってよろしゅうございますか。——御異議がないようですから、さよう取り計らいます。 なお、防衛庁に申し上げますが、どうも質問と答弁に食い違いがあるようで、まことに私といたしましても聞いていてよくわかりません。本当に遺憾千万、後の答弁に対しても十分気をつけていただくことを付言いたします。
○矢野委員 それでは、委員長からそのようにお計らいをいただきましたので、私の質問はこの件につきましては保留さしていただきまして、しかるべき段階で改めて質問さしていただきたいと思います。 次に移りますが、先日、民社党の春日委員長が問題を提起されましたいわゆる共産党スパイリンチ事件、またはスパイ査閲事件、これできわめて大きな波紋が国民の間に現時点において広がっておるようであります。しかも先ほどは、不破書記局長がこの問題について反論という立場で論陣をお張りになったわけであります。この国会は不況克服など国民生活をどういうふうにして守っていくか、国民に対して国民生活をどう守るかということが国会の責任である、義務であると思っております。したがって、私は、先ほど来るる具体的なデータに基づいて内政、外交の問題について御質問をしたわけでありますが、こういう問題が党利党略の具になる、これは好ましいことではございません。私は、こういう立場で次の三点を指摘し、総理並びに法制局長官あるいは法務省の見解を承りたいと思います。 第一点は、かつての治安維持法のもとで特定の思想が不当な弾圧を受けた、こういういきさつがある。こういういきさつにかんがみまして、民主主義を正しく育てていくために、こういった問題を今後の教訓にぜひしていかなくちゃならない。したがって、国会の責任というものは、なぜこういう事件が起こったのか、その政治、社会的な背景の分析をする、それを歴史の教訓として私ども国会は受けとめていかなくちゃならない、そういう立場の論議が必要であろうかと思っております。これが第一点。これについての総理のお考え。 第二点は、さらにそれぞれの主張、いろいろな雑誌あるいはいろいろな立場の方々が主張なさっておるわけでありますが、余りにも錯綜し、対立をしておるわけでありまして、いやしくも公党の委員長にかかわるこのような問題提起が国会の場で論ぜられる、国民の関心を集める、こういう事態に、いいか悪いかはこれは別問題にしてとにかく発展してしまっておる、こういうわけでありますから、私は、政府の調査結果や資料の提供によって、冷静に、公正に、かつ客観的な事態の解明、これがそれぞれの当事者にとって必要であると思うわけであります。そういう意味で政府の調査あるいは資料の提供についてどういうふうにお考えになっていらっしゃるか。これは冷静、公正かつ客観的な事態の解明のために必要だ、あるいはまた第一点で申し上げた戦前のそういう経験を歴史の教訓として今後生かしていくためにもそういうことは必要だと私は思います。 以上の二点は総理にお答えをいただきたいわけであります。 それから、第三点は刑事局長、法制局長官のお二方にお答えいただきたい。この宮木氏の判決原木には「将来ニ向テ共ノ刑ノ言渡ヲ受ケザリシモノト看做ス」このようにあるわけでございまして、なるほどこれでこの判決が無効になったのか、あるいはもう意味がなくなったのか、このようにこの文面において私どもは受け取れるわけであります。しかし、いずれにしても、いろいろな立場の主張はこの「将来ニ向テ其ノ刑ノ言渡ヲ受ケザリシモノト看做ス」というこの文章の法的解釈、ここに食い違いがあるような気がするわけでございます。この文章は、過去にさかのぼっていろいろな刑法に触れる事態があった、監禁致死とか傷害致死とか死体遺棄とかいうような説明が政府からなされたようでありますが、こういうような事実は過去にさかのぼってなかったのだ、つまり判決が誤りであって不当な判決だったのだ、こういうふうにこれを法律的に解釈する、つまり過去にさかのぼって事実関係は否定されるのだ、こういう意味だとするならば、もしそれならば宮本委員長はずいぶんお気の毒なことであって、無実のことであれこれ言われておる、これはお気の毒なことだということになるわけです。そういう法律的な解釈になるのか、あるいは将来に向かってということなんであって、過去の事実を否定するものではないという意味なのか、この辺について、これはお二方に答えていただきたい。順序があるから、第三点を刑事局長、法制局長官の方からお答えいただいて、あと第一、第二の点について総理から、御決意なり方針について承りたいと思っております。
○吉國政府委員 それでは、御質問の第三点についてお答え申し上げます。 判決原本に「勅令第七百三十号ニ依リ将来ニ向テ其ノ刑ノ言渡ヲ受ケザリシモノト看做ス」と書いてございます点はそのとおりでございますが、もともと昭和二十年勅令第七百三十号と申しますのは、その本文の規定において明らかに「別表一二掲グル罪ヲ犯シ本令施行前刑ニ処セラレタル者ハ人ノ資格ニ関スル法令ノ適用ニ付テハ将来ニ向テ其ノ刑ノ言渡ヲ受ケザリシモノト看做ス」云々と規定してあるわけでございまして、選挙権でございますとか、被選挙権であるとか、その他、人の公の資格を論ずるに当たって、将来に向かってその言い渡しを受けなかったものとして取り扱うというだけのことでございまして、過去のそういう判決を受けたという事実まで消滅してしまうものではございません。その点、ただいま矢野委員の御指摘のとおりでございます。
○三木内閣総理大臣 私に対しての御質問、矢野君が御指摘のように、歴史は常に大きな教訓を生んでおりますが、この教訓というものは、後々に続く者は常にその教訓というものを踏まえて、再びそういう過ちを繰り返さないことが必要だと思います。 資料の提出については、これだけ国会の論議を呼んだ問題でございますから、立法府が御請求になるならば、政府の可能な限り資料は提供して、歴史に対する国民の判断というものに対して、そしてわれわれが、政府の提供できる資料は、立法府の要求があれば、提出をいたす次第でございます。
○稻葉国務大臣 矢野さんは刑事局長にということですけれども、これはきわめて重大なことでございますから、法務省の所見を申し上げておく必要があると思います。 宮本氏の判決原本の末尾に、先ほど法制局長官が言ったような付記がなされていることは御指摘のとおりであります。その意味はどういうのかという御質問ですが、これは、たとえば公職選挙法など人の資格に関する法令の適用の場合と同じく、将来に向かって刑の言い渡しを受けなかったと同様に取り扱われるという趣旨であって、有罪の判決があったという既往の事実まで否定するものではありません。したがって、それまでになされた判決の執行等は当然有効であるし、また、判決によって認定された犯罪事実がそれによってなかったことになるわけでもありません。いわんや、これらの判決によって認定された犯罪事実がでっち上げになるわけでももちろんございません。
○矢野委員 いずれにしても、そういうことでありますと、先ほど不破書記局長は、その裁判の正当性あるいは不当性という立場でいろいろな議論をなさったわけでありまして、裁判あるいは判決それ自体が正当であったのか、不当であったのかという問題になってくるかと思いますが、いずれにしても、先ほど私、総理に申し上げたとおり、戦前の特定の思想というものがいろいろな意味での弾圧を受けた、つまり自由でなかった、これは認めざるを得ない事実だと思います。そういう経緯というもの、いきさつというものを、これからの民主主義を正しく育てるという立場からの議論にしていかなくちゃならないのであって、余り戦前の判決について公式ぶった言い方をなされるよりも、今後の教訓という意味でひとつこの問題に当たっていただきたいということを申し上げたいと思います。 委員長、どうもありがとうございました。(拍手)
○荒舩委員長 これにて矢野絢也君の質疑は終了いたしました。 次に、塚本三郎君。
○塚本委員 私は民社党を代表いたしまして、いわゆるリンチ共産党事件なるものについてお尋ねをいたします。 すでに一月二十七日、共産党の紺野与次郎氏がいち早くこの問題を本院本会議で提起され、続いてわが党春日委員長が政府に対し事実関係をただしました。さらに二十九日には、自民党の倉成氏もまたこれに関して質問をなしておられます。本日また、不破委員、そしてただいまの矢野書記長もこの問題を提起されました。 本問題は、事件の発生は遠く四十年も昔のことであり、しかも今日のごとき政治情勢とは大きく異なる社会情勢、政治情勢でありましたので、ことさらに今日の立場からこれを論じ批判することは時宜に適しないとの考えもあります。 〔委員長退席、小山(長)委員長代理着席〕 しかし、私は、その点を十分に承知いたしつつ、私ども民社党の立場を述べながら政府にお尋ねをいたします。 すなわち、文芸春秋新年特別号に「日本共産党の研究」なる論文が掲載され、その著者立花隆氏の文中に、春日委員長の名が引用されており、また、週刊新潮一月二十九日号においても、評論家藤原弘達氏が春日一幸から聞いたという発言がなされ、「春日によると」として語られております。古き時代の事件ではあるが、著名な雑誌、著名な評論家がわが党の委員長の実名を挙げ、しかも春日委員長の言として取り上げられていることは無視できません。さらにこれが反論として、日本共産党中央機関紙たる赤旗紙上では、連日この件でわが党を誹謗し、民主主義への憎しみのために行っていると書き立てております。私どもは民主主義政治を口で論ずるのみではなく実践する党であると確信いたしております。しかるに、文芸春秋や週刊新潮に掲載された春日委員長の言なる記事と赤旗との間にいかなるやりとりがあらんとも、わが党委員長が民主政治に対する憎しみのために行う言動と論じられたのでは、やはり古き時代の事件ではあっても今日的問題として事実だけはしかと政府に確かめ、国民の疑惑を晴らす必要があると信ずるのであります。 〔小山(長)委員長代理退席、委員長着席〕 特に申し述べておかなければならないのは、戦時中施行されておりました治安維持法は天下の悪法であり、私どもはこれをよい法律だとはいささかも思っておりません。現にわが党議員の中でも、本院にいま同席いたしておりますが、当時の治安維持法によって収監された議員も現にこの議場に出席をいたしております。私どもは、そのような治安維持法を善なるものと擁護しているものでは決してありません。それとともに、戦時中の事件はすべて否定することもまた独善過ぎると私たちは思っております。 本問題は、治安維持法下ではありますが、本事件は、それとあわせて起きている刑事犯罪そのもの、すなわち暴虐行為を加えたことによる外傷によってショック死したものと認定されている判決内容の事実そのものを問いたいのであります。文芸春秋や週刊新潮はその事実があったと論じ、赤旗はでっち上げのデマと論じております。真実は一つであります。天下の報道機関であり公器たる文芸春秋及び週刊新潮の論が正しいのか、それとも天下の公党の機関紙たる赤旗の論が正しいのか。双方に春日委員長の名が引用されていることにもかんがみ、特にわが党は、このような残虐無類の行為が行われたものか、それとも事実無根のことなのか。これはわが国議会制民主主義の根幹に触れる重大な問題であるのであります。その真実を究明せねばならないと考えて御質問をいたすわけでございます。その趣旨を踏んまえてお答えをいただきたいのでございます。 まず、当時の日共リンチ事件につきまして、日本共産党は、リンチ行為はなく、小畑氏の死因は異常体質による単なるショック死であるとしている。しかし、判決はそうではないと認定しており、この判決を尊重して刑の執行が行われたことは間違いないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○稻葉国務大臣 塚本さんの御質問の、ショック死か、異常体質による死か、こういう点については、判決の内容を読んでみますと、まず、宮本氏自身もピストルを持っていた事実は認めているのです。そうして、それは当時官憲などから追っかけられてとても危ないものだから、ピストルを護身用に持っている、正当防衛だというようなことを述べておられるわけです。 それから、小畑氏の自由を拘束したのは、部下のことをいじめたりしてろくなことをせぬで党紀を乱すから、それは党の結束を維持する上においてやむを得ぬことであって、違法性は阻却されるのではないかというような陳述をされておりますね。 それから、スパイをやった場合には、共産党規約により監禁、査問を受くべきことはあらかじめ承諾してある。これは承諾に基づくものだから何ら右監禁行為は不法のものでないという主張をしておられるのですね。これはしかし、そういうわけにはいかぬだろうという判定を裁判所はしておるわけです。 そういったようないろいろな事情から——そうして、ふろしきをかぶせたりして、こうやっているうちにおかしくなったから、ふろしきを取ってみたら死んでおった、そこでたまげて人工呼吸などをした、宮本氏は柔道を知っているので柔道の活を入れた、けれどもとうとう生き返らなかった、こういうような陳述をしておられるわけですね。そこで、犯意はなかったということなんです。殺意はなかったと。しかし、そういうことによって、これはやはり異常体質による自然死という——自然死ではないが、異常体質によるショック死というよりは、外傷による外傷性ショック死という裁判所の認定の方が事実に適合するように私どもは判断をいたしておる次第です。
○塚本委員 大臣、ついでにお答えいただきたいと思いますから……。 針金や細引きで縛って、そうして査問したという——死んだ事実については、いろいろと意見が分かれておるようでございますけれども、針金で縛りそして細なわで縛って査問をしたということは事実として間違いないでしょうか。
○稻葉国務大臣 事実でございます。
○塚本委員 死んだ小畑氏を縁の下に埋めたということは事実でしょうか。
○安原政府委員 ただいまの御指摘の事実は、昭和十九年十二月五日の宮本氏に関する判決の記載によりますと、御指摘のようなことが書かれております。
○塚本委員 日本共産党は、判決原文に資格回復した旨の付記がなされたことによって、先ほど矢野委員が御質問申し上げたように、この事件がでっち上げであることが確認されたと主張し、事実関係を否定しておられます。この付記があることによって判決に示された事実もなくなったことに果たしてなるのか、あるいはでっち上げを政府が認めたことになるのかということに対して、そうはならないという御答弁がありましたが、もう一遍私の質問としてお答えをいただきたいと思います。
○稻葉国務大臣 これは、先ほど矢野さんの質問の最後のところで私申し上げたとおりでございまして、そうはならない。「本判決ハ昭和二十年十二月二十九日公布勅令第七百三十号「政治犯人等ノ資格回復ニ関スル件」第一条本文ニ依リ将来ニ向テ其ノ刑ノ言渡ヲ受ケザリシモノト看做ス」という付記の法的解釈の問題に帰するわけですが、これは塚本さんもよく御存じのとおり、公職選挙法などでその資格回復の場合に、将来に向かって刑の言い渡しを受けなかったと同様に取り扱われる、こういうのと同じ趣旨でございまして、有罪の判決のあったという既往の事実まで否定するものでないことは御承知のとおりです。したがって、それまでになされた判決の執行等は当然有効でありますし、また判決によって認定された犯罪事実がそれによってなかったことになるというわけのものでは断じてありません。 もし、それがでっち上げだとかなんとか言うなら、再審を申請して、それが受理されて、再審の手続が終わって、前の判決がだめだと別な判決が下されたときに初めてでっち上げを主張するならそれはいいですけれども、その前に勝手にでっち上げだ、でっち上げだなどと言って演説をされるのは、民主主義的な司法制度上の法の支配ということを否定する考えではないかと思って、私は不当だと思っていますね。
○塚本委員 それでは、大臣の御意見はわかりました。事実関係について細かい点についてなおできるだけお尋ねをしてみたいと思っております。といいますのは、でっち上げだとか事実がないというような議論が先ほどから不破委員によって展開されておりますので。 判決には小畑の死体を床下に埋没、遺棄したとあるが、どうして死体の存在がわかったのでしょうか。
○安原政府委員 御指摘の点につきましては、私ども承知しておるのは現在のところ判決の原本そのものでございまして、判決の記載には死体を床下に埋没したという記載はございますが、いかなる経緯で死体が埋められたかということは目下のところ明らかではございません。
○塚本委員 当時の捜査及び裁判の経過並びに予審終結決定等によれば、大泉氏の逮捕によって小畑の死体埋没が判明したように受け取れるが、そういうように推定して実は小畑氏を捜したのではないかというふうに、私はあらゆる調書を見てそういうふうに判断をいたしておりますけれども、おたくの方では事実だとおっしゃるならば、判決だけか、あるいは警察の捜査や起訴に対する資料等から推定したと思いますが、その点はそのようですということですが、どのような背景によってそういうふうな判断をなされたのか、もう少しはっきりと伺いたいと思います。
○安原政府委員 私どもの手元にございますのは判決の原本そのものでございまして、その判決が確定をしておりますので、その判決に書かれておることを申し上げておるわけでございまして、いかなる資料ということは、判決に書かれておる証拠というものはわかっておりまするが、それ以上の記録については目下のところ明らかではございません。
○塚本委員 昭和十三年十月十日、東京刑事地方裁判所予審終結裁判の記録において、本件犯行は昭和九年一月十五日午後四時半ごろ、目黒区下目黒の木島隆明賃借りの二階アジトから助けを求める悲鳴、うめき声に家主須田由春が鳥居坂署所属塚本巡査に通報したため、同巡査が踏み込み、木島の女友だち、当時は情婦と言っています、横山操を逮捕し、あわせて同アジト内に監禁されていた大泉及び同人の女友だち熊沢光子を救出したのが端緒となって発覚したとされております。右横山操、大泉らの自供に基づき捜査したところ、渋谷区幡ケ谷の宮本、秋笹及び同人の女友だち木俣鈴子の賃借り中の二階建てアジトの床下から小畑の惨殺死体が発見された。このような記録になっております。私どもの調査においてはそのような状態になっておりますが、これに対する御見解はどうでしょう。
○安原政府委員 御指摘のように、昭和十三年の十月十日に宮本氏に対する予審が終結したということはわかっておりまするが、その予審終結決定の原本があるかどうか調査中でございますので、目下のところ何とも申し上げかねます。
○塚本委員 それじゃ局長、予審終結決定があったことは間違いありませんか。昭和十三年十月十日付です、私が読み上げた全体の。
○安原政府委員 御指摘のとおり、昭和十三年十月十日に予審の終結決定がございました。
○塚本委員 予審終結決定の原本があれば出していただきたい。もし原本がなければその写しなど、部内資料でもあったら提出をしていただきたいと思います。全然ないとは私は言わせません。私どもある程度資料を調査したのでありますから、あなたのところにないなんということは不思議だと思いますから、どうでしょう。
○安原政府委員 国会の正式な御要求であれば、調査の上提出を考慮したいと思いますが、目下所在を調査中でございます。
○塚本委員 小畑達夫氏が亡くなった一九三三年十二月二十四日の赤旗の号外がここにございます。昭和八年になっておる。当日の号外でございます。 「吾党中央委員会に潜入せるスパイ・挑発者の元凶片野」、これは偽名で、大泉であります。「吉川」、これは小畑であります。「革命的憤怒によって大衆的に断罪せよ!」、こういう激しい、亡くなった当日付の赤旗機関紙がここにございます。「右両人を左記の理由によってスパイ・挑発者として認定し吾党の一切の組織並に機関より放逐し、党籍より除名する。」、こういうことの決定で、膨大な論文等、赤旗がここにずっとございます。その当時の事実関係を私は周囲から調べてみたのでございます。ちょっとその一文だけ読んでみます。 血と汗のプロレタリアートの斗争を破壊せんとする最も憎むべき彼ら裏切者を革命的プロレタリアートの鉄拳に依て叩きのめせ! 銘記せよ!彼等の全体を決定的に曝く最初の英雄的イニシアと決断は、吾党に一年の斗争経歴をもつ党の古きボルシェヴイキ、英雄的労働者達に依て果断に提起されたことを! 日本の労働者階級が存在し、その赤き斗争の血の流れる限り、プロレタリアートの前衛、吾党の革命的伝統とその成長は英雄的ボルシェヴイキの不屈の魂に依て守られるであらう。 そして又銘記せよ! 吾党の躍進しつゝある経営細胞、党の再編成の達成は、スパイ・挑発者の最大の組織的防衛となるであらう。 党並に革命的諸組織よりのスパイ・挑発者の徹底的清掃万才! スパイ・挑発者に対する英雄的大衆的断罪万才! 天皇制テロルの打倒、佐野・鍋山・三田村等一切の挑発者を粉砕せよ! 日本共産党のボルシェヴイキ化、大衆化万才! コミンテルンの旗を守れ! このような激しい文脈を読んでみますと、その背景として、ふつふつとしてそのような事実を思わせるような文章になっておるわけでございます。 私は事実がどちらかということでもって——先ほど不破委員は、そうではないというような資料をお出しになったわけですが、亡くなった当日、同志が死んで縁の下に埋められておるのにかかわらず哀悼の意を少しも述べていないばかりではなくして、片野、吉川、これは大泉、小畑の偽名になっておりますが、「革命的憤怒によって大衆的に断罪せよ!」こういうふうな大見出し、タイトルでもってこのような内容がずっと書き立てられておるわけでございます。私はそのような事実を見ますと、治安維持法下でありますので警戒してでっち上げられたのではないかという疑いを持ちつつ、しかし真実を究明することによって事態をはっきりさせたいということからこのようなことを調べてみたのでございます。 このような文章からいたしますると、それらの問題の背景となる予審の記録等があればそのことがはっきりすると思います。先ほどの不破委員のお話によりますると、裁判所にあるはずだということをおっしゃったのでありまするが、その点どうでしょうか。もう少しはっきりとその中身というものはお調べになったらいかがでしょう。
○安原政府委員 先ほど来たびたび申し上げておりますように、当時の記録は目下所在を調査中でございますので、存在いたしますならば、それに基づきましてお答えをいたすことができるかと思います。
○塚本委員 文芸春秋の記事に記載されている世に言う古畑鑑定なるものを決め手としてリンチによる傷害致死、不法監禁致死等を裁判所が認定したということになっておりますけれども、古畑の再鑑定書なるものを決め手として、実はそのような裁判の判決をしたということに間違いはありませんか。
○安原政府委員 これも存在しております確定判決の原本によりますと、御指摘のように判決の摘示している証拠を見ますると、必ずしも古畑氏の鑑定書のみが唯一の証拠ということはなくて、その他、これを含めまして、関係証拠総合して、御指摘のような事実が認定されたものと理解されます。
○塚本委員 その他関係証拠でございますけれども、たとえば現存いたしております共産党副委員長袴田里見氏などの供述なども証拠として採用されていることは間違いないと私たちは調査いたしております。ただ、これは宮本さん自身の問題だけではなくして、これ自身ならば、いろいろなことのいわゆる証拠の問題等が実は本人の言によって左右させられる可能性もありますけれども、しかし、現に副委員長袴田里見氏の供述等も証拠として採用されている、みずから述べられたことをこれも傍証として判決を下されておるというふうに私たちは調べておりますが、その点はどうでしょう。
○安原政府委員 これも判決によれば、そのように記載されております。
○塚本委員 次に、ひとり宮本顕治さんや袴田里見さん、この二人だけではなく、本件についてはこの両名のほか多くの共犯者も、ここに幾つかの記録や人名やその当時の様態も全部私どもは私どもなりに調べておりました。その多くの、たとえば秋笹という名前を私先ほど出しましたけれども、これらの多くの人たちも共犯者でございます。私も若干犯罪捜査は勉強いたしたことがありますが、単独犯の場合にはなかなか真実がわかりにくいのです。しかし共犯者がたくさんある場合においては、食い違い等がありますので、そういうものを幾つか固めることによって、真実性というものは浮かんでくるということを私は考えたのでございます。したがって、ひとり共産党の委員長の宮本さんや副委員長の袴田さんのことだけではなく、共犯者として有罪の判決を受けた人があると思います。それらのことについて簡単にその経過と判決を知らしていただきたい。
○安原政府委員 御指摘の大泉、小畑両氏査問事件に関しましては、共犯として袴田里見氏、秋笹正之輔氏、逸見重雄氏、木島隆明氏、木俣鈴子氏、これらが共犯としてそれぞれ懲役十三年から、軽いのは懲役二年、三年、執行猶予という判決がなされて確定をいたしております。 なお、大串査問事件というものに関連いたしましては、共犯者として、西沢隆二、高橋善治郎両氏がそれぞれ懲役六年、懲役二年六カ月という判決を言い渡され、それぞれ確定いたしております。
○塚本委員 先ほどの不破委員の言を聞いておりますと、その事件の起こった隣の人がそのリンチのための声を聞かなかった、階段を上がる音だけ聞いたということから、そのような事件は実はでっち上げであるというふうな傍証の発言をなさっておるのを私は聞きました。私は判決を読んでみ、そして私どもの調査をした記録によりますれば、針金や細引きで縛ってしまって、さるぐつわをはめられております。硫酸がぶっかけられております。そうして多くのいわゆる暴行等の傷害が加えられております。さるぐつわをはめられて隣の人に聞こえるはずはないと私は思います。一体このような事情からいたしまするならば、隣の人が声を聞くことができなかったということは、いわゆる事実がなかったというような問題とは別の問題だというふうに私は思いますが、その点、あなたの方の調査はいかなる判断に立っておりますか。
○安原政府委員 私ども法務省事務当局といたしましては、確定した判決の事実を申し上げておるわけでありまして、その事実あるいはその裁判の是非ということを申し上げる立場にはないということを御理解いただきたいと思います。
○塚本委員 本件については、赤旗ではデマ、でっち上げと再三叫んでおられます。もしそれならば、昭和十九年の確定判決以後、虚構に基づく裁判として、本人か日本共産党から再審の請求が出されてしかるべきだと私は常識で判断をいたすわけでございます。赤旗で宣伝なさるだけではなく、少しぐらいの事実違反に対しても実は裁判に訴えられるのが日本共産党さんの現在の姿でございます。現に私もまた、選挙運動期間中の発言そのものを取り上げて、実は名誉棄損で訴えられておるわけでございます。にもかかわらず、このことが再審の請求としてなされないように先ほどから聞いておりますが、それは間違いございませんか。(発言する者あり)
○安原政府委員 私どもの承知いたしておりますところでは、今日までこの事件に関しまして再審請求の事実はございません。
○塚本委員 事実関係につきましては後からまた資料の請求もいたします。 宮本氏の釈放は肺浸潤による刑の執行停止と言うが、当時の医師の診断は虚偽であるという疑いがございますが、その執行停止されたときの診断書が実際の正しい診断ではないというふうなことが言われております。本件については、週刊新潮によれば、宮本氏は太って帰ってきた、六十キロの平常の体力に回復して帰ったという記事が出ておるわけでございます。一体診断書の中身は正しい診断書なのかどうか、この点はいかがでしょう。
○稻葉国務大臣 これは矯正局長に答弁させていただきたいと思います。
○石原政府委員 釈放につきましては矯正局の所管でございますので、私からお答え申し上げます。 私の方にある書類を調査いたしましたところ、宮本氏は昭和二十年十月九日に刑の執行を停止されて釈放されたものでございますが、その停止の事由につきましては、その書類によりますと、かねてから肺結核に罹患しておりましたが、心身の衰弱が増しまして、刑の執行に耐えられないということで執行停止になったというぐあいになっております。 その診断書がつくられました経緯につきましては、すでに三十年前のことでもございまして、目下調査中でございまして、これ以上つまびらかなところは現在承知いたしておりません。
○塚本委員 幸い、続々と真実解明のために新聞等、きょうの読売新聞の夕刊にもこのことが報道されておりますが、いずれにしても、宮本さんのいわゆる犯罪が虚偽に基づく犯罪ならば、これははっきりと一党の委員長として事実を否定して、名誉のためにみんなが協力しなければ、日本民主主義の不名誉だと私は思います。だから、真実なるものは、自分たちの有利、不利を問わずお互いに資料を提出し合って、焼けてしまっておりますから、それは裁判所になくても、当時の弁護士や裁判官や学者のいわゆる大学の中にあったり、いろいろなことで資料というものが出てまいります。一人ならば、単独犯ならばわかりません。しかし共犯でありまするから、自分たちにはいまは直接関係がないから、真実究明のために実は出されてくると私は信じております。したがって、もしこのことが事実ならば、やはり民主主義にとってきわめて不名誉なことだと言わなければなりません。そして冤罪ならば、やはりこれは払拭をしてあげなければなりません。この立場において、裁判所は真実の資料追求のために、ここまで来た以上は全力を挙げていただかなければならないと私たちは信じております。 私の調査によりますれば、網走刑務所には、釈放のために作成された診断書のほかに、真実の健康の診断書なるものが刑務所の中に現に残っておるはずでございます。そうして、宮本氏が刑務所の中でどのように移動したかという日付まできちっと実は残っておるはずでございます。さらにまた、病人で刑の執行に耐えないというときには、診断されたとか、療養食を食べたとか、あるいはまた、中における仕事等を実は回避されたとか、幾つかのことが積み重なっていって、そしていわゆる刑の執行に耐えかねるから釈放するという形がとられてくるのが当然の順序でございましょう。ところが、私どもが調べてみると、そうではなくして、実は五等食が四等食になって、健康な人たちと同じ食事が与えられておる記録がきちっと残っております。療養食が与えられておりません。(「刑務所の中のことじゃないか」と呼ぶ者あり)いま刑務所の中のことをおっしゃったけれども、実は病人だということで、健康な人に対して食糧不足だから少し悪い物を与えるということはあっても、病人によりいい物を与えるというようなことは、いまの御発言のようなことは想定できないのであります。したがいまして、健康食を与えられたということは、その診断書が実は事実に基づかないところの診断書によって釈放されたのではないかというふうに私たちは判断をするより仕方がないのであります。したがって、当時の吉田実刑務医の診断に基づいて釈放されたが、しかし、そのいわゆる診断書及び刑務所の中における記録等を提出していただきたいと思いますが、大臣、出していただけましょうか。
○石原政府委員 私どもの方では、ただいま記録につきまして調査中でございます。 ただ、一点申し上げておかなければなりませんことは、刑務所の中でつくられます記録は、やはり本人の名誉に関することでございまして、身体の状況その他いろいろな点が含まれておりますので、その点十分調査させていただきまして、この国会の御審議に必要な限りにおいては提出させていただきたいと思っております。
○塚本委員 宮本氏はその吉田実刑務医の診断に基づいて釈放されたことは事実でございます、私どもの調査によりますと。ところが、勅令七百三十号、いわゆる復権でございます。先ほどから何度も大臣が答弁なさっておられます資格回復の対象とならなかったと解されております。それはなぜか。刑事犯罪を伴う刑事犯人であるからではないか。いわゆる政治犯については七百三十号によって復権されるということになっておりますが、しかし、それと一緒になっておる、その除外例の中に含まれておる、と私どもは判断をいたすわけでございます。その点から、実は同じようにいわゆる治安維持法による残酷な刑であり裁判だといっても、恐らく同じような立場に置かれた共産党のかつての書記長でありましたか、徳田球一あるいは志賀義雄氏などはその場で実は復権になっております。だから、宮本、袴田、この両氏が実は除外されたということは、いわゆる治安維持法にかかわりはありますけれども、刑事事件犯人すなわち傷害致死あるいは不法監禁致死、こういうような一般犯罪がかかっておりましたので、実は復権することができなかったのだ、その証拠が、同時にやられておりました徳田氏や志賀氏はするっと復権をしておる、こういうことの判断に受け取っていいかどうか。どういうふうに御判断しておられましょうか。
○稻葉国務大臣 袴田、宮本両氏は七百三十号の除外例の方に入っている。刑法犯を犯しておりますからね。ですから除外している。片っ方は治安維持法だけですから、正面から七百三十号に該当するから、するっと出た。こういう違いがございますね。お説のとおりです。
○塚本委員 宮本氏の資格回復は当時の国内法令上の解釈としてはとうてい無理である、無理であったならば、実は停止が、もう一遍戻って、健康が回復した状態のときに執行されなければならない、再収監をされなければならないというふうに私どもは判断いたします。それが証拠に、実は大赦令によって無期懲役が二十年に減刑をされております。減刑はされておるけれども、実は復権はしていないということです。そうして憲法発布によって、実は二十年がなおやはり勅令によって恩恵を受けられて十五年に減刑になっております。だから、十五年という刑期の中で考えるならば、もう一遍再収監……(発言する者あり)いまそうせよと言うわけじゃないのです。先走りして心配なさる必要はございませんから、どうぞ御安心ください。 その当時、正しい法律執行者ならば、逮捕して、健康になられたのだから、もう一遍収監をしていただいて、刑期を勤めていただく。そうして、不服ならば再審の請求をなさる。これが正しい法律の運用だと思いますが、いかがでしょう。
○稻葉国務大臣 あなたの所論はきわめて明快、そのとおりであります。
○塚本委員 ところが大臣、なのにかかわらず、それがなされずに、昭和二十二年突然さかのぼって資格を回復して、そしてそのようなことがなかったというふうな資格回復が実はなされたわけであります。二十二年五月、どうしてそのようなことがなされたのか、当時のことをもう少し根拠を説明していただきたい。
○稻葉国務大臣 まことに奇妙きてれつ、不思議なことでございまして、事は重大ですから、目下調査中でございます。調査の結果は、いずれ確たる報告をしたいと思っております。
○塚本委員 これは結局のところ、その当時、戦争中から戦後のどさくさにかけて、一々連合軍、マッカーサー司令部にお伺いを立てなければならなかった、こういうような経緯からいたしますると、一つ一つの、特に政治にかかわるような人たちの問題については、法務当局が勝手に釈放したり入れたり、こういうことはできなかったという背景を私たちは想起いたしておりますが、その点はどうでしょうか。
○稻葉国務大臣 その点は、御承知のように、当時連合軍最高司令官が絶対権力の軍政下にあったわけですから、司法に限らず立法までも一々お伺いを立てるという時代でございましたから、御指摘のような背景があったことは想像にかたくありません。
○塚本委員 それじゃこの点は、もう私、次の問題に移りたいと思いますので、最後に大臣の見解とともに三木総理の御見解も伺っておきたいと思います。 聞いてみますると、まことに奇妙きてれつでございます。しかし、なお実は当時はやむを得なかった、連合軍の指示に基づくという事態のもとに行われたと私たちは判断せざるを得ないわけでございます。そういうような、いわゆるアメリカによって釈放していただいた人たち、そういう形の人たちだと私どもは判断をいたしておりますけれども、しかし、それにもかかわらず、このような奇妙なことによって執行の停止をせられたというようなこと等については、私たちもやはり何らかの反省がなければいけないのではないか。私はいかにも収監せよと言っているように共産党の方は先回りしておいでになりますけれども、私はそんなことを要求するつもりもありません。そしてまた、当時のいわゆる状態からいたしますると、共産党の仲間の諸君が大変な残虐な仕打ちを受けたことも先ほど不破委員御説明のとおりでございます。しかし、そのことといわゆるこの刑事事件というものとは、いかに治安維持法が悪法であり、そして共産党の人たちの先輩がそのような悲劇やあるいはまた被害を受けたといたしましても、そのことが事実を、このいわゆる傷害致死や不法監禁致死というその犯罪を救済すべき問題とは別問題だと思うわけでございます。しかし、それにもかかわらず、実はこういうふうな事態になったということでございますので、この点について法務大臣と総理大臣との所信を承って、私はこの問題を終わってみたいと思います。
○稻葉国務大臣 塚本さんの法律論には一言反駁の余地はありません。あなたのおっしゃるとおりです。
○三木内閣総理大臣 先ほども申し上げますように、いまいろいろその当時の不明確な点もありますので、立法府の要求があれば資料を提出して、歴史に対してはやはり正確な判断をした方がいいと私は思います。
○塚本委員 ぜひそれらの資料と——恐らくこの事件等を国民の皆様方がごらんいただいておりますので、こういうこともあった、こういう資料もあるということで、真実のために協力をしていただけることになろうと思っております。この席を通じて、政府はもちろんのこと、また国民の皆様方にも御協力を期待申し上げる次第でございます。 経済問題に移ります。(発言する者あり)
○荒舩委員長 どうぞお静かに願います。
○塚本委員 経済問題についてお伺いをいたします。 今日私ども、国会は国民の大変な期待の中に開かれておることはおのおの自覚をいたしております。ところが、実は特に福田副総理にお尋ねをしなければなりません。国民は、一体これから日本の経済はどうなっていくであろうか、こういう大変な不安があるわけでございます。というのは、かつてのような不況と、いま私たち日本の国が直面いたしております不況とは、実は根本的に次元が違ってきたのではないかという感じがするわけでございます。 それはなぜか。四十八年のあのいわゆる石油ショックを契機といたしまして、世界的に資源ナショナリズムが叫ばれてまいりました。もうこれからはいままでの不景気のように大量生産、大型投資によって乗り越えていくということはできないぞという形の自覚の中から、総需要の抑制そして安定成長、こういう形でかじを取っておいでになったと思います。この考え方は正しいと私も受けとめております。 しかし、それが御承知のような大変な不況に陥ってしまったわけでございます。景気回復のためには、私ども民社党もすでに一昨年の十月五日、方針を決定をし、景気回復に移らなければいけないということで、昨年は、主に物価安定を踏まえつつ、景気回復のために政府に対してあらゆる手段をお訴えいたしてまいったことは、副総理もあるいは大平大蔵大臣も十分御承知をいただいておるところだと存じます。しかし、今回の予算案を見ますと、夢よもう一度で、また大型の投資を行うことによって再び景気回復が、従前と同じような形で実は景気回復が考えられておるのではないか。そうするならば、実は景気はよくなってまいりまするけれども、すでに資源に対する無限ではない、公害もすでに限界に来ておる、こういう形からいたしますると、以前のようにいわゆる不況だから景気回復をやってきた、そしてまた行き過ぎたから締めて不況になってきた、この波のうねりというものが、実はすでに資源が頭打ちになったことによって、もうよくしても限界がやってきておるということだから、いままでのような景気回復とは違った手法、違った限界を見つつ景気回復をしていかなければならない。そのことができなかったならば、景気はよくなると同時に、再び物価特に基礎資材というものがそれ以上に高騰してしまいはしないかという心配を持っております。この点いかがでしょう。
○福田(赳)国務大臣 全く私も御所見のとおりだ、こういうふうに考えております。つまり、戦後ずっと日本経済の足取りを見ておりますと、一年、一年半ぐらいの不況がある、そうすると三年ぐらいの好景気、その好景気も実質一三%、四%というところまで来るのです。そうすると国際収支が悪くなる、また物価にもどうも心配が出てくる、そういうことで抑制政策がとられるわけです。それで不況になります。不況になりますが、不況好況を通じまして高度成長期には、とにかく平均いたしまして年率一一%というような成長をしてきたわけです。 今度は私は状態が大変違うと思いますのは、ことし景気がよくなる、こういうふうに期待しておりますが、仮によくなりましても、過去の景気循環のように一三%、一四%というようなそういう状態は来ないし、また来さしちゃならない。つまり夢よ再びというわけにいかないで、まあ国際情勢の変化それから国内のいろいろな環境の変化、国民意識の変化、そういうものに対応する経済誘導をしなければならぬ。 ですから、景気回復、まあことしは実現されるでありましょうが、その後、次に来るものは何かというと、かなり静かな、控え目な成長時代、こういうことになってくるだろう。 〔委員長退席、井原委員長代理着席〕 また、そうさせなければいかぬ。そこが従来の景気の推移と非常に違った点である。そういうことを踏まえながら諸政策の運営に当たっていきたい、かように考えております。
○塚本委員 副総理、実はその目標は同じ意見なんです。しかし、果たしていわゆる七%や八%の安定成長という——実は低成長です、日本の国にとっては。これで日本の企業、景気回復、大丈夫ですか。
○福田(赳)国務大臣 そこにいまわが国の経済の当面している非常にむずかしい点があると思うのです。つまり、企業ばかりじゃありません、政府も、個々の家庭においてもそうだと思いますが、そういう世界情勢の変化、また、それに応じてのわが国のこれからの行き方、そういうものに対応する姿勢の転換というものが逐次進行していかなければならぬ。ただ単に不況から脱出するということじゃなくて、経済界におきましては高度成長下で続けてきたこの姿勢といいますか、それを転換して、この機会に体質の改善、経営の合理化、そういうことに相当の注意を払い、努力をしなければならぬ、こういうふうに考えております。
○塚本委員 おっしゃったとおり、実はアメリカやヨーロッパにおいては七%、八%の成長は安定成長や低成長ではなくして、大変好況だと思います。ところが、日本は好況だというと二けたでなければ好況にはならない。 私は、いま副総理がおっしゃったように体質の改善をしなければいけない。一番根本は、日本の企業は自己資本率がきわめて少ないということだと思います。アメリカなどは六〇%近くまで行っております。日本は、聞くところによるとわずか二〇%程度。それでは金利を払っただけで実は成長率というものはだめになってしまう。だから無理やりに成長し、インフレをすることによってのみ借金と金利を払っていかなければやっていかれない、こういう体質になっておるのじゃありませんか。このことを、アメリカは七、八%だから、国際的にそうだから足並みをそろえるということを考えておいでになるし、おっしゃったようですけれども、しかしそれならば、それと同じ条件で、日本の国の企業も同じように低成長で耐えられるような企業ということを考えないと、やはりつぶれてしまうか、あるいはまたインフレをあおることによってこの利息を乗り越えていかなければならぬということになってしまうのじゃありませんか。どうでしょう。
○福田(赳)国務大臣 そのとおりに考えます。体質改善、企業運営の合理化ということを申し上げましたが、その中で自己資本体制、これは非常に重要だと思うのです。いまわが国の企業が不況をかこっておるその大きな理由というものは、借金に依存する経営形態、それは高度成長の中でそういうふうなことになってきちゃったわけなんですが、いま塚本さん二〇%とおっしゃいましたけれども、もっと悪いのです、一六%ぐらいになっておる。この問題も体質改善上非常に重要な問題である。これをどういうふうに改善していくか、これはこれからの大きな課題である、そういうふうに考えております。
○塚本委員 安定成長あるいはまた経済成長がゼロだということは、金利一〇%だといたしますと、その企業にとっては、昨年と同じだということは、いわゆる金利だけでも一〇%マイナスになる、こういうことになってくるのですね。だから勢い実は高成長をしなければ企業はやっていかれない。 いま副総理がいみじくも一六%くらいだとおっしゃった。聞いておって、果たしてこんな状態ならば一体日本経済、安定成長と言うけれども大丈夫であろうかということの心配が先に立つのは当然だと思います。選挙を控えて副総理も心配だということは大げさには言えぬかもしれませんけれども、私は、実際与党、野党の差を問わず、これは大変なことになってくるのではないか。ところがしかし、とにもかくにも企業が運営されておる。銀行を通じての借入金にしても金があることは事実でございます。そうするならば、預金を国民が銀行に預けてその金を会社が借りるという、大部分の設備や運転資金を銀行の借入金に頼るような考え方を改めて、自己資本をふやすことに全力を挙げたならばどうでございましょうか。自分の資本金ならば、もうからなければ配当ゼロにしておけばよろしい、もうかったときにはどんと株主を優遇してあげればよろしい。ところが、現在のような状態で自己資本がわずか二八%で借り入れた金が何と八四%、こんなことになってしまいますと、もうかってももうからなくても資本金の四倍以上も借りておる銀行さんに対して莫大な金利は払わなければなりません。返済金はちょっと待ってちょうだいと言って、そのかわりにお金だけではなく社長さんまで押しつけられるということはしばしばありますけれども、そうやってみても金利だけは返していかなければならぬのが日本の企業の実態であります。だから、株式会社といいながら日本の国の企業は株式会社ではなくして、銀行操作会社という形になってしまっておるのであります。だからどうするかというと、まず一番初めに銀行屋さんに相談しなければ何ともならない、こういうような変形になってしまっておる。このことは自己資本率が実は小さいこと、高度成長で伸びてくるときに麻酔のごとくその心配というものを忘れておる。しかし、もはや高度成長が先ほどのお話のように、私たちもそう思いますが、資源ナショナリズムと言われるがごとくに、いわゆる不景気になっても海外から入ってくる資源は下がりません。だからこそ、不景気で物価高がやってくるのだと思います。だからこれに対応するためには、一にも二にも企業体質を改善する以外にないと思います。自己資本率をふやすことについて真剣に取り組んでおいでになるかどうか。
○福田(赳)国務大臣 ただいま申し上げましたように、この自己資本問題は非常にこれから重要な課題だと思うのです。他にもいろいろ問題もございましょうが、とにかく当面のこの混乱から抜け出なければならぬ。その後の課題ですね。これは、体質改善という問題が大きく残っておりますが、それをどういうふうに実行しますか。実行すると言っても、急にそう華々しい改善はできないだろうと思いますが、粘り強くわが国の企業の体質を改善する、その中で自己資本問題、これは大きな課題として取り上げる、こういう考えでございます。
○塚本委員 福田副総理は、経済には一番明確な御答弁をいただき、明確な先の見通しを自民党さんの中では持っておいでになると私は信じてお伺いしておったのでございますけれども、御心配の御答弁だけで、実は明確な御答弁がいただけません。 しかし、もう少し掘り下げてみると、いわゆる資本を増大する背景は幾らでもあるのですね。いま新聞に出ておりますいわゆる第一部、第二部の株価の実態を調べてみますと、実は五十円という額面になっておりますが、大部分は四倍以上の二百円以上にみんななっておるのです、こんなに不景気であるにかかわらず。それならば銀行から金を借りるよりも、もっとどんどんと増資をすることによってふやさせるチャンスではありませんか。銀行の方が安全だというよりも、いわゆる増資に期待をして、あるいは値上がりに期待をして国民は株を買っておるのでございます。だから、もっと増資することによっていわゆる株主あるいは大衆からの金を、銀行にいくよりもどんどんと企業の中に吸収することによって借入金を返済したらどうでしょうか。 いっか討論会のときに、これからは自分の会社の株を買おうじゃないか、こういう形で、銀行へ持っていくよりも自分たちの会社の株を買って株主になる、そして会社のもうけは、いわゆるうらやましがらずに自分たちも配当をいただくという形で、会社と従業員の運命を共同にして、自分たちの生涯の職場を築いていく、こういうような方式をとるべきだという意見は私は全く賛成でございました。 だから、いまいわゆる額面から比べてみたら四倍以上に平均はなっておるのでございますから、倍にして一六%を三二%にしてみても、単純に考えるならば、二百円のものが百円になるだけでまだ実際には倍の株価になってくるのじゃございませんか。そうなるならば、銀行に納めるのを株主の方に返すことによって配当率というものもさらに健全になってくるのじゃございませんか。どういうふうな手法でやるかということは別にして、景気が落ちついてからとおっしゃったけれども、いまのうちにそういうことを並行していかなければ大変じゃございませんか。どうでしょうか。
○福田(赳)国務大臣 お説、私は全く賛成です。ですから、これからそう一挙にパーセントが変わるというほどのことはなかなかむずかしいと思いますけれども、必要な資金の調達、これは自己資本主義だ、こういうことで、大蔵省の行政もそういう立場でいくべきであるし、また、法制的に何かそれを刺激するというようなことでも考えられるならばそれもとるべし、とにかく自己資本主義をとるということは非常に重要な問題であるということで、工夫をあれこれとしてみる、こういうことじゃないかと思います。
○塚本委員 ある大企業を私が調べたことがございます。有名な一部上場の会社でございますが、調べてみますと、従業員がベースアップして人件費が大変だ、大変だと言って、社長さんたち大騒動してみえるけれども、万を数えるような企業において、従業員に払われる給料よりも銀行に払っておる利息の方が多いという企業もあるのですよ。こんなばかなことが行われておって、ベースアップ困ると言われてみても、おかしいじゃございませんか。これを払うことができない、だから銀行のものは払わずにおけと言うつもりはございません。この企業の体質を変えていくことが大事だと申し上げるのです。だから、いまもっと真剣にそのことをお考えになったらどうでしょうか。
○福田(赳)国務大臣 非常に大事な問題の御指摘です。これは真剣に考えます。
○塚本委員 ある会社が増資をいたしました。ところが、株主さんでその増資のことが十分わかっておらなかった、あるいはまた増資に応ずるだけのお金がなかったのかもしれません。したがって、実は増資に応ずる人がないということであった。そうしたら私の友達がすぐ証券会社に行って、何百万株実は増資に応ずる人がないから分けてくれないかと言ったのだそうでございます。そうしたらもうその日のうちにありませんと、こうなんです。それほどまでに実は増資に応ずる国民、預金者は多いのです。 そう考えてみると、政府がその気になっていまおっしゃったような具体策をお考えになったらどうでしょうか。いかにもそんなことをしたら銀行が困っちゃうというようなふうにしか受け取れないような気持ちになってしまうのです。 アメリカが安定成長をするということ、いわゆる七%が安定成長じゃない、最もいい景気だということは、アメリカやヨーロッパは終身雇用制じゃございませんから、そのことは直ちに失業率に反映するという企業の体質の違いもあることも私は承知しております。しかし、それでなおかつアメリカやヨーロッパが低成長で耐えられる根本はこれだと思うのです。だから、何としてでも従業員の賃金よりもよけいに、ごそっとまとめて銀行屋さんに持っていく。銀行屋さんは、いわゆる宮殿のごとき建物の中で、私たちは入っていくときにくつを脱いでしか入っていけないのかと思うほどのすばらしい状態に置かれておる。余りにも不似合いじゃございませんか。総理、どうお考えになりましょう。
○三木内閣総理大臣 全くそのとおりで、不況といいましても、やはりアメリカでもヨーロッパでも、企業は耐えていく力を持っているわけです、減配すればいいのですから。日本の場合はそうはいかないのです。やはり金利を支払わなければならぬわけです。経済をマクロ的に見れば、日本の経済は世界で一番いいのです。皆成長はマイナスですからね。アメリカもヨーロッパも、昨年はマイナス二%くらいです。日本だけですからね。それで、やはり不況感というものは日本が一番強い。それは何かと言ったら、塚本君の御指摘のような企業の体質の弱さでしょう。この点は、非常に重要な点の御指摘だと思いますが、これから適正成長の時代に生きていくためには、この持っておる企業の体質の弱さというものにわれわれは積極的に取り組んでいかなければ、こういう場合に日本の企業は非常な打撃を受けるわけですから、そしてまた、安定して長期にわたって適正成長で行こうというのですから、再び高度成長というのはもうあり得ないわけです。そうなってくると、企業の体質というものがやはり問題になってくる。重要な御指摘であると拝聴いたした次第でございます。
○塚本委員 総理のおっしゃることはいいことが多いのでございますけれども、これは本当に実行していただかないと大変なことになる。といいますことは、私、中小企業の仲間の人たちが多いものだから、あらゆる相談をいただくわけでございます。大体自分の金でもって設備をするという人がほとんど少ない。先ほどの二八%の自己資本率で明らかなように、やはり景気がよくなって、現在の生産の規模ではもはや限界だとすると、新たに倍くらいの設備をいたします。そういたしますと、大体五年間が銀行に貸していただける普通の平均した期間でございます。そうすると、二〇%ずつは返済をしていかなければなりません。そして中身は別として、表面的には金利を一〇%くらい払うとすると、実は返済金二〇%、そして金利一〇%、合わせて三〇%、前年対比三〇%プラスでなければ、ことしはいいお正月でございますと言うことができないのです。日本の景気は別にして、私の会社はと言って、各企業の人たちがおっしゃるのには、いま申し上げたように返済金二〇%、金利一〇%、合わせて三〇%を昨年と比べていわゆる増産をしなければ、あるいは売り上げをふやさなければ、ことしはいいお正月でございますと言えないのですよ。ところが、六%や七%では軒並みだめになってしまう、こういうことになるのでございます。こういう実感をみんな持ってみえる。だから、こういう中小企業の皆様方の期待にこたえるためには、国家が総動員して二けたにしていかなければ好景気にならないという形になってくるのです。 だから、先ほどから私が副総理に申し上げたように、もうそれが不可能だということは、国際的に——そしてこれ以上やれば公害も蔓延してまいります。だから、資源と公害と双方から、私たちはすでに有限になっておる。そのときに、企業をつぶさないということならば、この体質をことしじゅうにきちっとどうするのだということをおっしゃらないと、お認めになったのだから、具体的に何らかこれに手を打つということを、はっきりとひとつ総理の口から国民の前に御説明いただきたいと思いますが、いかがでしょう。
○三木内閣総理大臣 これだけの企業体質の根本の問題ですから、ことしじゅうにと言っても、ことしじゅうにこういう問題は解決できる性質のものではないわけですが、自己資本の弱さというものに対して、何らか政府が計画的に取り組んでいく第一歩を踏み出さなければならぬということに対しては、われわれも強く感ずる次第でございます。
○塚本委員 総理、ことしじゅうにそれを具体的に緒につけなかったなら、またすぐ物価高が来るんですよ。御承知のとおり、すでに新予算でもって、しかも税金が集まらぬから、公債まで出すという政府原案が発表されただけで、いま市場の中はどうなっているか御存じでしょう。銅のごときは、三十五万円が建て値で、三十三万五千円であったものがもはや四十万円で手に入りませんよ。あるいは鉄でも、丸棒、建築資材のごときは三万円台、そんなところに低迷しておりました。しかし、ずずずっと上っていって、もう五万円ですよ。なお私は、五万円になったことを悪いと申し上げるのではない。それでも企業はなおやっていかれないのです。だけれども、このテンポでそのまままた行ってしまうのですよ。かつての高値十三万円を突破してしまいますよ。ことしじゅうに公共事業等をどんとやってきたら、そうしなければいままでの元が取れないという形になってくるのです。だから、建設省を中心にしてそれやれそれやれとやられることは結構です。そしていま鉄鋼業界は大変なピンチに立っておることも御承知のとおりです。採算に合わなければ、いずれ悲劇が来るのでございますから。だけれども、このテンポを見ておりますと、また十万円すぐ超えてしまうという形になるのです。だから、一六%の自己資本が致命傷になっておるということでございます。だから、それと並行して、いやそれより先回りして、まずこの手を打っておかなかったら、直ちに物価高が来ますよ。昨年の暮れの予算編成期からこの一カ月半の間に、もうすでに二〇%から三〇%基礎資材で上がっておるんですよ。 私どもに、中小企業の業者がことしは仕事大丈夫ですかとおっしゃるから、仕事よりも先に資材を押さえておきなさいよ、仕事がないから安くとっておいて、そしてお金が借りられたからこれから資材を調達しようとしたら、資材が二割、三割上がってしまって、また損をしますよ、だから、歯ぎしりかんででも、がまんして資材を先に手に入れなさいよ、こういう説明しか私はできないのです。だから、もっと具体的にそのことをおやりにならなかったならば大変なことになるということですよ。いかがでしょう。
○福田(赳)国務大臣 いま国の経済政策としますと、当面この不況脱出という問題もあるのです。あるが、同時に企業のその先を考えますと、やはり体質改善という問題が非常に大きな問題です。そこで政府でもいま寄り寄りこれを何とかしなければならぬ、こういうので相談を始めておるわけです。その中で、いま具体的問題として御指摘の自己資本体制、これを一体どういうふうに進めるか、これは非常に大きな課題になるわけですが、とにかくことしじゅうにどうせいというお話ですが、これはことしじゅうというよりは、いまいろいろ検討しておる、相談しておる、それがまとまり次第一つ一つてきぱき実行する、そういう考えでございます。
○塚本委員 副総理はことしじゅうにとおっしゃったが、閣内にとどまっておいでになれば、あるいは総理大臣にでもおなりになれば、私はまた一年後にただいまの言明をもう一遍ただしてみなければなりませんが、この問題は日本経済にとっていままでとは根本的に違った事態がやってきておる。いままでは資源が無限でございましたから、そういうものは乗り越えることができたということだと思います。しかし、もう乗り越えることができないのだよ、そのことを前提にして考えたならば、真剣に考えていただかなかったら、企業は銀行に金を持っていくだけで、政府に税金として納めていただくわけにはいかなくなりますよ。赤字公債は来年度をもって終わるような総理の御説明でございますけれども、さらに大きな赤字公債を出さなければならないような事態になりますよということを私どもは心配をしておるわけでございます。 私は、順序を逆にして金融の問題を論じてみましたので、ついでに申し上げておきますが、そういうような状態とともに、さらに中小企業の場合はいわゆる歩積み両建てを徹底的に改めさせるという通達が何度もなされておりますが、現実にはこれがなかなか実施されておらないような状態になってきております。 大蔵大臣、この歩積み両建てがいまどんな状態になってきておるかということをお答えいただきたいと思います。
○大平国務大臣 これは大蔵省の調査でございますが、四十七年五月から五十年五月まで、まる三年間に金融機関別にどう拘束性預金比率が推移してまいったかという資料でございます。都銀で申しますと、四十七年五月は三・二%がいわば拘束性預金でございましたが、去年の五十年五月は一・八%。そういうことで申しますと、地銀においては五・六%から三・二%へ、相互銀行は八・八%から四・九%へ、信用金庫におきましては一八・九%から二・四%へ改善を見ておる調査が出ておるわけでございます。しかし、これは一応の調査でございまして、いわゆる実質金利というものの実態が一体本当にどうなっているかということにつきましては、単なるこういう推移の数字だけを見て楽観いたしておるわけにはいかないと存じておるわけでございまして、政府といたしましては、日々の行政においてはもとよりでございますけれども、定期的な検査を通じましてこの自粛の推進に精力的に当たっておる状況でございます。
○塚本委員 大蔵大臣のお話のような実態ならば、中小企業は一向に苦労いたしません。どういう点をとってそのような統計をお出しになったかわかりませんけれども、そんな、いわゆる地方相銀においても一〇%台というような状態じゃ全然ないんですよ。私はそんな数字を出されると大蔵省の権威にかかわるんじゃないかと思いますが、それは大丈夫でしょうか、大臣。
○田辺政府委員 事務的なことでございますから私からお答えいたしますが、ただいま大蔵大臣から御答弁申し上げました数字は、私ども銀行局といたしまして、各銀行から毎年五月と十一月と二回、そのときにおける拘束預金の比率を報告させておるわけでございます。それを集計したものがただいま御答弁なさった資料でございます。
○塚本委員 大蔵大臣、その向こうの報告を信じていいのですか。余りにも数字が違い過ぎておるから、私は三%や五%の違いならば向こうの信用で調査手数料というものが省ければもうしようがないと思うのですけれども、余りにも大きく違っているのですよ。何か裏づけをおとりになるような、税務署が調査なさったような、それの何分の一でも結構ですから、いわゆる借り入れをなさっておられるお客様を抜き取りででも御調査なさるということはせられたことはないのですか。
○田辺政府委員 拘束預金の比率を低下させるということは、私ども銀行行政の大きな当面の目標の一つでございまして、これは先ほども御質問がございましたが、銀行に対して定例の検査をいたしますが、これは事前通告なしに抜き打ちで検査をいたします。そのときに一つの重点項目として、この預金拘束の状態がどうであるかということを対象にしております。特に報告を行った件数、金額と実態が間違っておりますと厳しく指弾をする、こういうことでもって指導をやっておるわけでございます。 〔井原委員長代理退席、委員長着席〕
○塚本委員 その調査と実態と違っておるといいますと、実態調査はなさってみえますか。
○田辺政府委員 銀行を検査いたします。その際に、他の事項もあわせて検査をいたすわけでございますけれども、拘束預金の状態がどうであるかということは一つの重点項目にしておりまして、特にまた銀行局に報告をしましたその事実が確かであるかどうかということも検査の対象にしておるわけでございます。
○塚本委員 実際借りておるお客様、預金しておるお客様からそういう裏づけなんかは調査されたことがあるのですか。
○田辺政府委員 相手先に出向いて聞き取りをやることは間々ございますけれども、これは実は検査、調査の権限としてはないわけでございます。別途、苦情処理と申しますか、私どもの方にも投書が参ったりいろいろなことがございますし、また、全国の財務局におきましてもそういう事案につきまして、拘束をされておるのかいないのかということについてときどき紛争が起こっておるようでございますが、そういう苦情の処理をする窓口を設けておりまして、それを受け付けております。
○塚本委員 総理、お聞きになったように、実は実態と銀行の報告あるいは銀行の言ったことが間違いないかということはおやりになっておられるようですけれど、しかし、借りておるお客様からどれだけの拘束預金をとっておるかということは、いわゆる苦情処理以外には調査をしたことがないということです。この際、何度もここで各党からこのことが取り上げられておりますので、恐らく大蔵大臣自身でも困ってみえるのじゃないかと思うほどにこの問題は取り上げられておるのです。にもかかわらず、実態がそのような形になっていないということは、やはりもっと具体的にそのような、たとえば興信所なんか使うとかいうような形で、一度大蔵省みずからがそのお客様を抜き取りでそういうことを御調査なさるというような腹づもりはありませんか。
○大平国務大臣 公取がそういうアンケート調査をやりましたことがございまして、その結果は私どもも承知いたしておりますが、なお私どもとしてもそういった企業についてのアンケートをとるということは、御指摘もございますが試みてみたいと思います。
○塚本委員 大臣おやりになるということだから、ぜひひとつ、借りております中小企業の立場に立って親切に調べてあげていただきたいと思います。 それとともに、こういうことを大臣は御存じでしょうか。たとえば中小企業者が銀行に一千万円借りに参ります。 〔委員長退席、正示委員長代理着席〕 そうすると、拘束預金は百万円か二百万円定期を積んでちょうだい、こういうふうに言われるのです。いたし方ございませんと言って、大部分の人が百万か二百万は定期預金を積むわけでございます。ここで実際には九百万か八百万になるわけでございます。そうして、直ちにその残った八百万円を使おうとすると、こらと言って抑えられるのですよ。当座預金に入れておいて、当座の中で二百万は残しておいてちょうだいよと言ってにらみつけられるのです。これは利息は一銭もつきませんよ。窓口に行きますと相当部分、実はおれのところもそうだと、これを聞いておいでになります皆さん思ってみえるに違いない。二〇%定期預金、これは借りた金利の半分くらいは実は預金の金利でいただくことができます。しかし、当座預金に残しておいてちょうだいよ、こう言われると、実は実際には一千万円借りながら六百万円しか使うことができない。しかもこの二百万円という、残しておいてちょうだいという当座の金は、一銭も利息はつかないのでございます。これが恒常的に行われておるということを大蔵大臣、御存じでしょうか。
○大平国務大臣 実際におっしゃるような実態につきましては、私も耳にしないわけではございません。
○塚本委員 そういう実態について、大臣はこれを改善させるような何か具体的なことを最近においてお考えになったことや、あるいは御指示なさったことはございますか。
○大平国務大臣 本委員会でも御報告申し上げましたとおり、日々の銀行行政といたしましては、各店舗に拘束性預金についての苦情を承るように掲示いたすように励行させております。それからまた定期的な調査には、先ほど銀行局長からもお話がありましたように、拘束性預金問題は一つの重点調査、検査項目として取り上げておるわけでございます。それから各地方部局におきましても、本問題につきましては、苦情処理の問題として精力的に取り上げておるわけでございまして、私ども決して等閑に付しておるわけではないわけでございます。 ただ、銀行の膨大な業務の中の一々の取引につきまして、私どもがわきまえているわけでは決してないわけでございまするし、資金の借り入れをされる方々と銀行との力関係というものから生ずることについて、全部が全部役所の方で目を光らすわけにはなかなかまいりかねるわけでございますけれども、あらゆる方法を講じながら鋭意努力いたしました結果、徐々でございますけれども、改善の経過は私たどっておるように思うわけでございますが、なお一瞬努力してまいりたいと思います。
○塚本委員 総理大臣にこのことを申し上げてちょっと御迷惑かと思いますけれども、しかし、素朴ないわゆる国民の立場に立って実は素朴な御質問を申し上げます。 いま公定歩合は八%から三次にわたって引き下げられて、たしか六・五%で決められておると思います。ところが、一般の中小企業者が実際に銀行に払います金利はどれくらいになっておるか。大蔵大臣は専門家で統計等でおっしゃるでしょうが、素朴ないわゆる国民は、総理大臣は一体おれたちのことをどう思っているのだろうか、こういうふうな気持ちが——カンニングでお聞きになっては困るのでございますけれども、一体どれくらい実際に払っておるかというふうに、私はそんなことまで、実際は総理大臣、細かいことまで合わなくて当然だというふうに申し上げたらどうかと思いますけれども、それは御無理なことだと思います。しかし、素朴に国民は見て、実はどれくらいの金利を払っておるかというふうに御判断してみえますか。
○三木内閣総理大臣 私も、塚本君、中小企業者とときどき話をすることがございます。選挙区もあります。皆、訴えるわけですよ。一割を超える場合が相当にあるということで、中小企業の受けておる金利負担というものの高さは、これは何とかしなければいかぬという強い感じを持っております。
○塚本委員 いま総理は、一割を超える場合もあるというお話がございました。しかし、一割を超えないような、いわゆる金利の金を使っておられる業者が一体何軒あるであろうか。よほどの強い姿勢を持った、そしてよほど理解のある金融機関の支店長さんたちのおいでになるところでは間々ございます。しかし、実質に公定歩合が六・五%でありながら、実は一割を下回るような金利を使ってみえる業者は全く少ないというふうに私は判断いたしております。大蔵大臣、どうでしょう。
○大平国務大臣 実効金利は仰せのような状態だと思います。
○塚本委員 先ほど福田副総理に実はお尋ねしましたように、低成長の中で一〇%という金利を払って、そして低成長でどうしてやっていけるのでございましょうか。しかし、根本的には金融の問題よりも自分たちの企業体質を改めていかなければならない、企業体質を改めるように全力を上げていただきたいということを実は先ほどから私は申し上げておったわけです。 それとともに、やはり金融機関は金融機関として実は公的な使命を果たしていただかなければなりません。金融機関が本当にやっていかれないとか、あるいはまた手形が危ないからというようなことで手形割引のために押さえていかなければならないという、特に小さな金融機関やそういうものの実態、私は決して無視しているわけではございません。担保をどっさりとっておっても、なおかつ若干の拘束預金等は、いわゆる今日の企業の実態から言えば、ばたばたと実は破産、倒産をしております。 実は、今日の経済状態の中ですから、金融機関として自分の金ではない、預かったお金ですから、そういうことをしておる実態というものを私は決して無視して申し上げておるわけじゃございません。しかし、そういう私たちのいわゆる配慮をさらに飛び越えて、実態の金利というものをもう少し総理、これはよくお考えいただかなければなりません。 私は、ある県の信用保証協会の専務さんに電話をいたしました。先生、大体実質金利は一七、八%ですよと、こういう返事が返ってきましたよ。信用保証協会の専務さんですよ。いまここで名前は挙げません。こんなひどい実態が実はあったのか、私は、大体公定歩合の六・五%に対してその倍の一三%くらいというふうに実は踏んでおったわけでございます。ところがそんな声を聞かされてびっくりしたのでございます。しかし、それが平均だというのはちょっと君、言い過ぎだよと私は専務さんに注意をしておきました。そうしたら、向こうがむきになって言い返してこられたので、さらに私は驚いたわけでございます。こんないわば一七、八%が平均だなんてということになったら、日本じゅう高利貸しじゃございませんか。そんなことでやっていけるようなはずはとうていないと言わざるを得ないわけでございます。 しかし、私は、ここに一週間以内に私に相談のあった——実はある業者の相談を受けたわけでございます。名前は言いません。某銀行から借入金八百万円、預金六百万円、こういうふうなんです。それからもう一つ、某相互銀行、借入金三千万円、預金千九百万円、もう一つ、某相互銀行、借入金二千五百万円、預金一千万円、この三つから借りております。総計は六千三百万円でございます。ところが、預金は三千五百万円でございます。五〇%を超えておるのです。私は相談があるごとに、銀行の支店長さんやあるいはまたその責任者に電話をかけて、大蔵大臣の言うことを聞いてあげなさい、大臣が目が届かぬからといって勝手なことをしておってはいけませんよと一言ずつ申し上げてはそういうものを解除してあげておるのです。ところが、毎日のようにこうして私が郷里に帰ってまいりますると、三人か五人ずつ中小企業者が、塚本さんのところへ行くと解除してもらえると言って、商売繁盛でございます。しかし、私は銀行退治のために郷里へ帰るのではございません。(「ミニ政治献金もらっているのじゃないか」と呼ぶ者あり)銀行をかたきにしておいてお金がいただけましょうか。それでも下さるような奇特な銀行があったら、これはまた特筆大書すべきことでございましょう。 実は、こういうような形で、私はこれを見て、もうこの三つの銀行に対して注意する気がなくなってしまって、商工中金に申し上げて六千三百万円貸してあげてくださらぬか、そうして少なくとも二〇%くらいは仕方がないというふうに大体思っておるから、とりあえずそのうちの二〇%に当たります千三百万円だけ君のところの定期を買わせるから六千三百万円出しなさい、こういうふうに私が商工中金に言って、黙ってそれは借りかえさせようじゃないか、こういうふうに中金に言ったのです。先生それは困ります、銀行のお得意様を私たちがとるということは、救済融資になります、こういうふうな話でございました。しかし、まあ、ぼくもそんなに銀行ばかりそういうことのあらをほじくっておってもいかぬので、時間がないから、君やってくれよ、こういうことを言ったのでございます。そうしたら、実は、それじゃそうしましょうか。ところが先生、一つ一つ信用保証協会の保証がついております、だから保証協会にだけそのことをおっしゃってちょうだいということになったので、私は保証協会の専務に話をしたら、先生、そんなものは一七、八%平均ですよと言われて、こちらがびっくりしたのであります。現に、半分以上実は預金をとっておる、こういうような状態で、担保は担保で別にきちっと工場から自宅を押さえつけておる、こういう状態のところでございましょう。 そこへ持ってきて登記料等を合わせ、保証料等を合わせると、なるほどこれは一七、八%になってしまうのですよ。しかも定期拘束預金できちっと——わずか定期預金でもいただければ別です。先ほど申し上げたように、一千万円借りて、そうして二百万円残しておいてちょうだいよと言って、金利は一銭ももらわないと、そういう計算になるじゃございませんか。そうして一々こちらからこちらへ、そうしてこれを払ったらこちらからこちらへ、こうやっておりますと、実はこれは、私何度計算いたしましても、登記の設定等をやっておりますと一七、八%になってしまうのです。総理いかがでしょう、この実態。
○三木内閣総理大臣 中小企業者に対する金利の負担というものは、いま塚本君御指摘のように、私もこの問題は非常に苦情を聞くのです。したがって、この問題については、金融機関自体が公的な機関でありますから、金融機関自体もいろいろ自粛をしなければならぬ。たとえば拘束預金の問題についても、これだけ大蔵省などでもこのことに対して自粛を要請しておるのですし、それから金利水準なども、できるだけ経営を合理化してやはり金利水準を下げていく、そういうふうな努力というものは当然に社会的な責任の一つだと思いますが、今後この問題については、できる限り中小企業の金利水準を下げていくためにわれわれも力を入れなければならぬ問題点だと思います。
○塚本委員 大蔵大臣、もう一つ申し上げてみましょう。借入金四千万円、預金二千三百万、これは一行だけでこういう形になった。これも私のところに来て、先生、全部とは言わぬけれどもこのうちの一千万円使わしていただけるように頼んでいただけませんか。——もう一遍申します。四千万円の借入金のうちで二千三百万円が拘束預金で押さえられておる。私が行きましてもどうにもなりませんので、先生わずか一千万円だけはともかく使わしていただけませんか、こういうふうに頼まれたのでございます。つい先日のことです。私はこれについて、また別の人でございますけれども支店長さんに電話をかけて、外してやってちょうだいよ、もし外してくださらなければ、私は予算委員会で氏名を公表いたしますよと、こう申し上げておいたのです。そうしたら、ありがとうございましたと言って向こうはびっくりして——実は外せ、外すならば氏名を公表しないけれどもと、私がこんなことを言っていいかどうかわかりませんけれども、しかし、そういうふうに申し上げたら、向こうは、はい、外します、ありがとうございました、こうでございます。これは大蔵大臣、本当に実態というものを調査していただかなければ、銀行の報告と余りにも違っておるじゃございませんか。(「通産大臣はどう思うんだ」と呼ぶ者あり)その点もお聞きしなければ——大蔵大臣と通産大臣、この実態をちょっとお答えいただきたいと思います。
○大平国務大臣 拘束性預金の実態についての御指摘でございます。私ども力の及ぶ限りその改善に努力しておるわけでございますし、今後も努力してまいるわけでございますが、これの根絶を期すということは容易ならぬことだと思うのでございます。相当時間をかけて、いろいろな手段を構えて、これにかかっていかなければならぬ仕事だと思うのでございまして、私どもといたしましては、いろいろな方法によりまして御期待にこたえなければいかぬと考えております。
○河本国務大臣 いまの中小企業対策といたしましては、金融の量的な面からいろいろ対策を立てることと、それから仕事の量の面からいろいろ考えておりますが、金融面では、実際は量の面からはほとんど対策は立てておるのです。ただしかし、金利の面はいまおっしゃるような大体の水準だと思います。中小企業金融というものは一割七、八分になっておるということは私も承知しております。でありますから、この問題はやはり何とかしなければならぬ、何とかしないと日本の中小企業というものは本当によくならない、こういうふうに痛感をいたしております。(発言する者あり)
○正示委員長代理 静粛に願います。
○塚本委員 与野党各党のごそごそした御意見の中では、名前を公表せよという御意見があるようでございますから申し上げておきましょう。富士銀行、第三相互銀行、中京相互銀行。はっきり申し上げておきましょう。しかし、恐らくこれは、これだけではなくほかも同じような状態になっておると私は判断いたしております。これだけが特に悪いのではなくして、大体ほかの銀行にも、いわゆる都市銀行も地方の相互銀行も大体同じことになっておるということも、私はいままでの相談から間違いのない事実だと思っております。大蔵大臣、どうでしょう。
○大平国務大臣 ひとり御指摘の銀行ばかりじゃなく、実態は相当相似したような事態が広くあることと想像されるわけでございますので、私どもといたしましては、御指摘になりました銀行ばかりでなく全体の金融機関につきまして、一層の精力を傾けて自粛促進に当たりたいと思います。
○塚本委員 しかもこれは銀行が苦しいなら別です。五十年九月決算、大法人の申告所得ベストテン、こういうもうけ頭、これが出ております。住友銀行三百四十七億五千万円、これが一番です。二番目が三菱銀行三百四十六億五千四百万円、三位が富士銀行三百二十六億二千二百万円、第四位が三和銀行、そしてやっと第五位に東京電力、第六位に第一勧銀、そうしてその次にやっとまた中部電力、そしてまた三井銀行、東海銀行、太陽神戸銀行。十の中において電力会社が途中で二つ入っておるだけじゃございませんか。全部銀行でございますね。一体こんなに利益をためておいて——もちろんその企業努力というものを私たちは無視するつもりはございません。しかし、にもかかわらず、こういうふうな利益を上げておりますその背景には、このような状態が実はあるのだということを総理十分お考えになりまして、金融機関というものがこんな状態でいんしんをきわめておって、中小企業が大変な事態になっておる。しかもわが国の経済の背景は先ほどから論じたとおりでございます。この辺でもう少しきちっとした姿勢をおとりになる必要があると思います。総理、もう一遍国民に納得していただけるような御答弁をしかとお願いしたいと思います。
○三木内閣総理大臣 金融機関の持っておる社会的責任というものは、他の企業よりも一層大きいものがある。非常に公的な性格を帯びておりますから、今後、金融機関というものが社会的責任を感じて、そうして姿勢を正すということについては、監督の立場にある政府としても一段と意を用いることにいたします。
○塚本委員 大蔵大臣、具体的にこれらの問題をもう少し姿勢を正される方策はございませんか。何かこの際は特にこういう事態だということで国民のいわゆる期待にこたえるような施策をお打ちになる必要があると思いますが、いかがでしょう。
○大平国務大臣 金融機関のあり方という問題は厳しくいま問われておりますことは、私どももよく承知いたしております。ただ、しかしながら、この総資本に対する利益率はこの数期にわたりまして逓減の傾向を見ており、金融機関の経営状態も決してはたで見るように楽な状況ではないと私は思うのであります。ただ、金融機関にもいろいろの断層がございまして、相当合理化をし、サービスをさらに進んでお願いしなければならぬ向きは御指摘のようにあると思いますので、そういった点につきましてなお一層努力を重ねていかなければならぬと考えております。
○塚本委員 大蔵大臣に要望いたしますが、先ほどお約束いただきました、その借り入れをなさっておられる業者、その実態を大蔵省の手で、何らかの業者を使ってで結構ですから、実態をお調べになって、そして、こういうような実態をなくするためには大蔵省みずからがその実態を把握して監督をしていただかなければなりませんので、直ちに実態を把握して、何らかの機会に、ごくごく近い機会にもう一遍実は国会で聞いてみたいと思いますので、一カ月ないし二カ月のうちに早急にそのような実態を調査をしていただくということをお約束いただきたいと思いますが、いかがでしょう。
○大平国務大臣 金融機関との取引関係につきまして、企業について権限をもって調査するわけにはまいらぬと思いますけれども、ボランタリーな形でアンケートに答えていただくという姿におきまして、われわれの役所みずからがファーストハンドに材料を手にするということにいたしまして国会に御報告するようにいたしたいと思いますが、どのくらいの期間を要するかということにつきましては、私いまとっさに見当がつきませんので、それはまたいつごろ提出できるかというような点につきましては、理事会にでも御報告を申し上げさせていただきたいと思います。
○塚本委員 それじゃ、もうごく近々のうちにそれをやっていただけることだと信じますので、国会に報告できるように、しかとこのことをお願い申し上げておきます。 次は、住宅建設についてお尋ねをいたします。 建設大臣、おかわりになったばかりだから、この景気回復以後における動きについてお聞きすることがあるいは無理かもしれません。しかし、やはり統一の原則にのっとってお聞きをしなければなりません。私どもは景気回復をすべきだと党の方針として決定したのは一昨年の十月五日でございまして、十月九日に私みずから党決定をもって大平大蔵大臣に実は政策の転換を要求をいたしておいたわけでございます。いまにして景気の転換をしなかったならば大変なことになるよということで、私はみずから大臣に御注意申し上げておきました。そのときに、まず、その当時はいわゆる物価高の心配もなおなお消えておりませんでしたから、しかし、第一に行うべきは住宅建設でございます。これならば物価高にならなくて需要の拡大ができると私どもは想定いたしたわけでございます。しかもいま日本の国で足りないのは、何といっても住宅だ、こういう判断に立って、しかも住宅は総合産業だから、特に庶民住宅をたくさんおつくりになることはあらゆる部面に波及効果が大きいということで、実はそのことの要求をいたしておいたわけでございます。それからなかなか実は政府はやっていただけなくて、ようやく第一次から第四次の不況対策までいわゆる繰り上げて、あるいはまた金額をふやして実は景気対策としておとりになったはずでございます。その実効はいま国民が期待するほどに上がってないと私たちば心配いたしております。だからこそ依然としてよくならない、こういうことではないかと思います。どんな状態になっておりましょうか。
○竹下国務大臣 塚本委員にお答えをいたします。 私の関係で申しますと、この不況対策について、いわゆる住宅金融公庫関係が主体であります。塚本委員おっしゃいましたとおり、十月提言を受け、そうして第一次として、御承知のとおり五十年二月十四日に、いわゆる一月追加受け付けをやったわけであります。それから三月二十四日にさらに、これは例年より一カ月程度早めまして第二次の融資の促進を図りました。それから第三次は、これもその下期枠から繰り上げてやったわけでございますから、まだいわゆる追加には、弾力条項の発動にはなっていなかったわけでありますが、これが六月の十六日であります。それから第四次が、いわゆるこの住宅第二回申し込み受け付けに際して約七万戸を追加して、下期の残三万戸を含めて十万戸の申し込み受け付けを行ったわけであります。 したがいまして、その後の推移をずっと見てみますと、確かに塚本委員おっしゃった、十分に実効が上がってないじゃないかということでありますが、昨年同月比に比べてみますと、徐々に上がってまいっておりますが、この十一月あるいは十二月が先月に比しては少し落ち込むのじゃないか、いわゆる実効が期待ほど上がらないじゃないか、こういう懸念は幾らかございます。これはなぜかといいますと、この申し込み受け付けを行いまして、これが実際の工事となって稼働していくのは、やはりこの一月、二月というところへ集中的にこれが現実の姿となって出るのではなかろうか、こういうふうに見込んでおるわけであります。 さらに、塚本委員の御説に幾らか沿うと思うのでありますが、昨日午後財政当局との話し合いがつきまして、住宅金融公庫の事業の一部に余裕と申しますか、地方の公社等で未消化分が残ったわけでございますので、この枠を活用しまして、景気対策上、効果の早い個人住宅建設に回すために、昨年第二回の個人住宅貸し付けの補欠のうちから九千戸ほど繰り上げ当選、まあちょっと選挙みたいな表現でございますが、繰り上げ当選者を出して、それを九千件弱やると、こういうことになります。そうしますと、いま塚本委員おっしゃったとおり、大体にこの誘発係数というものが二・一八倍になりますので、率直に言って、材木から障子紙に至るまで、大変すその広い産業でございますので、この九千戸だけでも、一応大体千五百七十億円程度の需要を喚起することになりはしないか、こういうふうに思っておるわけであります。 さらに、今年度の問題につきましてはこれから御審議いただくわけでございますが、いろいろ疑問とされております中に、いわゆる当初枠よりはふえておるが、追加枠を含めたら少ないじゃないか、こういう議論があります。これは、住宅需要の状況に応じまして弾力条項を発動して期待にこたえなければならない、このように思っておるわけであります。
○塚本委員 建設大臣、そこにおってください。 実は、私、細かく聞きたいと思っておりましたが、時間がもうあと三十分しかなくなりましたのできわめて残念ですが一点だけ。 これはもう建設省だけに限らないと思うのですけれども、せっかくそのように決めて、いわゆる実効が上がるのは、それは先になりますが、しかし、その前に建設省が具体的にその施策を早く進めてくれなければいけないと思うのです。注文して金が出るというよりも、許可がおくれてしまっておる。これが大変な状態でおくれておるのです。私びっくりしましたけれども、これは庶民住宅じゃなくて、中高層の場合でありますが、実は昨年の五月二十日に受け付けたものが十月になって、ある建設会社の意見でございましたが、十三戸、大体施主にかわって、ああいうものは手続、いろいろ書類がめんどうですから、中高層になりますと、業者がかわって手続のお手伝いをするということです。五月二十日受け付けのものが十月になって一件も実は許可が来てないと、こういうことなのです。 相談を受けたものだから金融公庫の支所に問い合わせてみましたら、そのとおりでございます、八月までは受け付けの申し込みや受け付けが四倍でございましたのでその相談に時間がかかってしまいました、したがって八月までは手がつきませんでしたと、こうなのでございます。で、九月になって書類の整理をしておりますと、ぼつぼつ裏づけをと、こうなのでございます。だから住宅局長に、あなたこれを存じておるのかと言ったら、一向知りませんでした、済みませんでした、というようなおわびの連絡がございました。 一体こんな状態で、業界にしてみたならば、いまや遅しと——五月に受け付けたんですよ。それだったら、多ければ、需要喚起で結構じゃございませんか。いまの話のように、実効は二倍ほどになる。中高層はそういうふうにはならぬかもしれません。それでも住宅が早くできて、そうして景気回復の実効が上がる。にもかかわらず、申し込みがたくさんであったからというだけのことで、いま中小企業、特に建設関係の皆様方、仕事がなくて大変な状態でございまして、一家心中の記事が新聞から消えた日がないじゃございませんか。そのときに、せっかく国会で、あるいは政府が御努力なさってみたところが、お役人様がそういうことで三カ月も五カ月も実ば自分の手元で温めておるというような状態なんですよ。大臣、これはどうでしょう。
○竹下国務大臣 いま住宅局長から私の方にメモが入りまして、塚本さんからのその御意見を住宅局自身も聞いておったようでございます。で、私から、塚本委員の意思を体して直ちにやりますとおっしゃっていただいてよろしゅうございます、こう書いてあるわけでございますが、ちなみに第一回貸付分につきましては、この一〇〇%を貸し付けを終了いたしました。第二回分につきまして、十二月末までに七〇%、いまの繰り上げ当選分につきましても必ず三月中には一〇〇%の貸付契約を終わるという構えでやってまいります。 それから、来年度の問題につきましても、先般来各種会議を開きまして、また公共事業促進のための閣僚ベースにおけるそうした議論も本日の閣議でもあったわけでございますが、そういう線に沿って、いわば予算審議中に、いつから執行しますとかいうことは、私も議会の子でございますので、執行に関する類似行為を申すわけにはまいりませんが、予算成立即日からでも直ちに執行に移せるような万全の体制を立てなければならないと深く心に決しております。 以上、お答えといたします。
○塚本委員 その決意をぜひ実行していただきたいと思います。特に、建設省はそういう決意であっても、公庫、公団等におきまして手抜かりがあったらせっかくのことが効果をあらわしませんので、一つ例を参考に申し上げたわけでございます。国民は大変な期待をしておるということを特に強調いたしておきます。 さらに、民社党は、景気回復のために一兆円の減税を実施せよと本会議におきまして春日委員長がお訴えをいたしました。この点、具体的に、景気回復のためには大型投資をなさるよりも大衆減税をなさる方が実効が上がるという判断に立って、実はそのことを主張しておるのですが、いかがでしょうか。
○三木内閣総理大臣 減税という声もあったことは事実ですけれども、政府の判断は、やはり減税ということになりますと、消費の態度も非常に堅実にもなっていますし、またいろいろと将来のことも考えてでしょう、相当に貯蓄性向も高いわけですから、全部が全部需要に回っていくというものでもない。公共事業の方がやはり全部需要喚起に役立つ。これによって政府は景気を回復していこう、ということを予算編成の第一義に置いたわけです。したがって、この景気回復のために非常に消費を国民に奨励して、個人消費でもって景気を回復するというような行き方よりも、公共事業というものの方がやはりこの場合は適当ではないか。しかも一兆円減税ということになれば、また特例公債などももう少しふやさなければならぬわけでございまして、むやみな公債の発行というものも、公債の市中消化ということを考えたときに問題もある。これは考えぬわけではなかったわけですけれども、そういう政策判断というもので、この場合は公共事業を中心にして景気の回復を図ろうという、政府は選択をいたしたわけでございます。
○塚本委員 実は私どもで、五十一年度の政府の予算がそのまま通ったとして試算をいたしてみました。そうすると実は大変な増税になるわけですね。といいますのは、やはり労働組合、労働者の立場になるとベースアップの要求をいたします。政府は五%のベースアップの分の中の何がしかということで、五%の予算を実は借金でありながらお組みになっておられる。そういうことから考えてみますと、実はベースアップがあるということは当然のこととして政府みずからも構えてみえると思うのです。勤労者の立場からは当然のことでございます。 仮にここで、たとえば政府が予算を組んだ五%の倍の一〇%のベースアップがあったと仮定をして試算をしてみたわけでございます。夫婦と子供二人の四人家族で、五十年の年収の平均は大体三百万円。そうしてそういう家族の平均はマイカー一台を持っております。この昨年の年収三百万円の平均でマイカー一台を持っておるという人の生活を基準にいたしまして、今回それを一〇%ベースアップをするということで、税金がどうなるかということを試算してみました。そうすると、五十年の税金は年額十三万五十円になります。ところが今度は五十一年の税金は、一〇%ベースアップが行われたと仮定いたしますと、十六万五千六百五十円という実は税金になるわけでございます。ここでおよそ三万五千六百円ほどの増税になるわけでございます。そして今度自動車の増税等が予定されております。その税額、マイカー一台持っておる人は今度一年間に二万一千円余分に税負担がふえるわけでございます。厚生年金等の負担等も、政府の予定でいきますと、掛金が年額にいたしまして二万一千六百円ふえるわけでございます。政管の健康保険の負担金が年間で二千四百円ふえるわけでございます。こういうものを総計いたしまして——これは政府の大体予定の予算案を対象にした計算になるわけでございます。これは一〇%ベースアップという形を想定してのことでございます。 ところが、実質賃金は——大体一けたに抑えるという福田さんのいわゆるお説であります。それを一応信じましょう。そうして、一けたでもどれだけになるかということで、実は八%くらいと高く評価をして、いわゆる御努力を評価して八%とすると、一〇%のベースアップがあったといたしますと、実質は二%の増収になるわけでございます、物価が八%上がって、そしてベースアップで一〇%だといたしますと。そうすると実質二%しか上がらないということになって、三百万円に対して一〇%ではあるけれども、物価高八%を引くと六万円ということになります。 そういたしますと、実際にいわゆる六万円のべースアップの実質収入に対して、いま申し上げました税額、自動車税、厚生年金、政管健保等の増額等、政府関係のそのことによって実は上がった金額が八万円強になります。そうすると、差し引き、いわゆるこのまま政府のおっしゃるとおりにいって、福田副総理御自慢のごとく、八%に物価を抑えられたといたしまして、労働組合は一〇%賃上げを獲得したとすると、五十一年度は実質的に二万六百円の減収になるわけでございます。この計算を総理、どうお考えになりましょう。
○大平国務大臣 その計算は、仰せのとおりだと思います。
○塚本委員 もう大平さん総理になってしまわれたようで、私は総理にお聞きしようと思ったのです。 実は、おっしゃるとおりだということになりますと、これは国民に、ことしは実質二万円は、一〇%がんばっても実は減収だよと、こういうことです。減収にしておいて需要喚起になりましょうか。むしろこの際一兆円減税、大体三千万人の納税者に割り当てますと、このマイナス二万円というのをプラス一万五千円にして、政府が三万五千円をいわゆる減税によって還元をする。そうすると一兆円減税になります。マイナス二万円であったのが、プラス一万五千円増収になるということになれば、先ほど総理のお話では、なかなか需要喚起にならないとおっしゃったんですが、勤労者の心理状態というものはおよそこういうものだと思うのです。このまま動かないとすると、実は先行き不安でございます。社会保障制度が今日の日本の社会においてはいまだ十分ではございません。いつ何どきどうなるかわからないということで、いわゆる目減りすることを承知しつつ預金に回さなければなりません。ところが、減税されたんだとかあるいはまたいわゆるベースアップになった、余分に入ったと、こういうこと、この心理的効果によって、実は私ども民社党が調査をいたしますと、その減税なりあるいはベースアップで余分に入ったというときには、大体その八〇%を消費に回しておるのであります。だから、一兆円減税ということは、八千億の需要の増大につながるということです。実はその一兆円を公共事業の中に投じたならばもっと実効が上がるという総理の御見解でございましたけれども、公共事業というのは、御承知のとおり大部分その事業の中の、いまとんざをしております大きな問題等ごらんいただいてわかりますけれども、実は土地問題が絡んでまいります。解決されたとしても、その公共事業の中で二〇%から三〇%は実は土地に払われるのでございます。大金持ちの地主さんのところに入ったものは、消費よりもまたこれはどこかへ別に行くのでございますよ。だから、大衆の中にばらまいたお金の方が実効が上がっていくというのが私たちの見解であります。そうしてそれが消費に回っていけば、企業が黒字になってまた増収になって、実は税金となってはね返ってまいります。地主さんのところなんかへ入っていったものはもう出てこないのでございますよ。だから、どう考えてみても一兆円減税というのは、実は需要喚起や景気回復のための決め手ではないかと思うのです。 昨年アメリカは、御承知のとおり五兆円という減税をなさったことによって、景気が相当に上向いてきたと言われております。本年なお百億ドル、三兆円の減税があると聞いております。これは景気回復のために最も大きな手段だとして、アメリカはそのことによって効果を上げてきておるんじゃないでしょうか。だから、この際一兆円減税を素直におやりになる方が、いわゆる政府のためにも私は得策だ、こういう考え方を持っておるのであります。いかがでしょうか。
○大平国務大臣 きのうも申し上げたとおり、減税の問題と国民負担の問題との関係は何も単年度で勝負をしなければならないということでもございませんで、自由民主党・政府は過去数次にわたりまして毎年大幅な減税を敢行いたしてきたわけでございますので、財政が困難な場合におきまして、ここ一服さしていただきましても、決して私は国民の理解が得られないものではないと判断するものでございます。 第二に、景気浮揚効果から申しまして減税を推奨されておるわけでございます。私ども、それがわからないわけではございませんで、さればこそ政府は、昨年の補正からことしの本予算、来年度の予算にかけまして、大変大きな歳入欠陥でございましたけれども、中央、地方の行財政は維持いたしますし、人事院勧告は完全に実施いたしまするし、そういう不如意な中におきましても、去年は三六%の社会保障の予算の増加、ことしは二二四%の増額をいたしておるゆえんのものも、そういう予算を編成することによりまして、経済の落ち込みから経済の回復に財政としての役割を十分果たさなければならないということでやってまいっておるわけでございまして、今日までの財政政策全体を御評価いただきますならば、それが景気の浮揚策として評価していただけると私は確信するものでございます。 〔正示委員長代理退席、委員長着席〕 なお、公共事業におきましても、従来これをとめておりましたけれども、ことしは相当の増額をさしていただきまして、その乗数効果に期待をするということもあわせていたしたわけでございまするので、景気対策といたしましても、われわれの予算はその任務にこたえられるのではないか。なるほど塚本さんの言われるような一兆円減税というような姿ではございませんけれども、アプローチの方法は違いますけれども、景気対策としての対策はわれわれなりに用意いたした予算であることを御理解いただきたいと思います。
○塚本委員 しかし、今度の景気対策がそれで動かすことができない施策だとおっしゃるならば、実は大衆に対する所得減を強いることによってと、こういう形になってくるのです。先ほど申し上げたように、実は実質で、マイカー一台持っておりますと二万円の減収になるということは大蔵大臣もお認めになったはずなんです。だからこれはやはり慎重にお考えになって、そしてここにさらに一兆円の公債を発行して、そうして減税をせよということができないならば、それなら公共事業の拡大よりもむしろその中の一兆円を大衆消費に向けた方がいいから、その減税に充てるということも検討なさったらどうかということの主張を私は提言しておるわけであります。そういうことはなさる意思はないのでしょうか。
○大平国務大臣 だから、そういう方法も検討に値する御提言だと思うわけでございますけれども、政府はそういう方法でなく、先ほど私が申し上げたような手段で景気対策を用意いたしたということでございまして、そのいずれがよろしいかという点につきましては、御審議を通じて十分御検討いただきたいものと思います。
○塚本委員 この際私は、もう一つ行政の簡素化についてただしてみたいと思っております。 いま国民は大変な不景気の中でみずからのぜい肉を落とし、生き残るために懸命の努力をいたしております。政府もそれなりに御努力はなさっておいでになるとは思いますけれども、しかし、国民の側からするならば、税金が集まらなかったならば公債を発行すればいいじゃないかという形で、大量の公債を発行なさる、おれたちにはそんなことはできないんだぞ。少なくとも民間企業並みに、いわゆる民間の税金で運営されておる政府ならば、主権者である国民並みに実は体質を改善していかなかったら、いわゆる政治が国民にこたえるゆえんではないということで、この際思い切った行政の簡素化、改革をしなければ、国民の期待にこたえることにはならぬと思います。まずその総論的なことから、総理の見解をお聞きしたいと思います。
○三木内閣総理大臣 塚本君のお考えのようにわれわれも考えています。政府自身がやはり厳しい行政改革に対する態度を持たなければいかぬ。従来から国家公務員の定数の縮減、また行政機構の膨張の抑制、特殊法人の整理合理化、これは一々申し上げませんが、ある程度のこの方針、趣旨に沿うた努力はいたしてきておるわけでございますが、しかし、この厳しい今日の情勢からするならば、まだやはりもっと根本的に行政機構に対してはこの際効率化、合理化を図って、そして国民の期待にこたえなければならぬということで、今後一層この問題と真剣に取り組んでいきたいという考えでございます。
○塚本委員 総理、具体的に、今年はひとまず国民の要望にこたえて、この点だけはずばりとやってみますという具体的なものがあったらお示しいただきたいと思います。
○三木内閣総理大臣 ことしの、たとえば国家公務員数の縮減については、差し引き、新規に増員したものと、また削減するものを入れまして、四十三年から昭和五十一年度までに一万四千人減。それからまた行政機構の膨張抑制というのは、御承知のように今年度は法務省の一局だけを認めたわけで、ほかは全然認めませんでした。また特殊法人の新設も認めませんでした、いろいろ要求はあったわけですが。また、ちょうど去年の暮れでございましたが、特殊法人の整理合理化の方針を決めまして、十八法人の整理合理化を図ることにいたしました。去年の十二月にこれは決定をして実施をすることにいたしておる次第でございます。
○塚本委員 総理、実態はなかなかむずかしいことも私どもは承知いたしておりますし、さらにまた福祉国家を目指すわが国の立場からし、さらにまた公害行政等行政需要が増大しておることも私たちは無視はするつもりはありません。だから、なかなかむずかしいことは私たちも承知いたしております。しかし、ともかく今日のごとく、いま中小企業のみならず大企業においても、いわゆる国民各層にわたりまして、生き残るために、本当に生き残るために、懸命の、涙ぐましい、どこの企業で何百人実は減らされた、どこの企業で何千人転換させられた、こんな話が、中央ではありませんけれども、各新聞の地方版には、自分たちの大きな工場あるいは小さい工場、ずいぶんそういう思い切ったことがとられております。ところが、政府のいわゆる行政機構改革といいますると、結論から言いまするならば、定年でやめていく人を実は半分ぐらいしか補いませんでした、こういう結論なんです。これでは実は、いままで膨張し切ってきた、それに対して減らすということはなかなか大変でございますから、プラスマイナスすれば——その努力は私は無視するつもりはありません。しかし、総理、今日国民が本当に生き残るために、各企業が、そして民間に働く勤労者がどんなつらい思いをしておるかということ等を考えてみたならば、これはやはりもう少し思い切った施策を——いま米の検査員の話がありました。まだ二万人近いようなそういう人たちがほんのわずかな期間だけしかお働きにならないということもしばしば本院におきましても取り上げられております。私はそれだけではないと思うのです。もう少し具体的にそういう問題等を実は掘り下げて具体的に行っていただきたい。もちろん本院の決定の中に、いわゆる総定員法が決定されるときに、生首を切られる、こういう言い方はどうかと思いますけれども、とにかくいわゆる首切りは行わないとか、あるいは本人の意思に実は反したような強制的な配置転換等は行わないというような附帯決議等があって、管理庁自身もこれが実施しにくいということも承知いたしております。しかし、にもかかわらず今日の現実の厳しい経済状態の中では、実はそれをやらなければ民間企業は生き残っていかないのです。そうであるとするならば、いわゆる省の中における合理化だけではなくして、先ほどのように省外、いわゆる各省間におけるそういう配置転換等も、本人が納得できるようにもっともっと御努力をなさって、いわゆる一省の中における転換はなさっておいでになっても、省の違ったいわゆる転換等も行うように、私は無視してやれと申し上げるつもりはありません。しかし、ともかく企業は大変な努力をしております。再就職のあっせんもするでしょう。あるいはまた、いわゆる転勤するときに、実はそれがために住まいの問題等もあるでしょう。いろいろな努力を企業はやっております。政府もやはりそういうような配置転換をされる人たちに対して納得するようなことをするためには、命令だけではない、親身になって努力をしなければなりません。そういうことの努力によって、主権者である国民がしておるというならば、それに見合うだけのことを政府がやっていかなければならぬと思うわけであります。ところがこの統計を見ますと、減ってはおります。需要に対して穴埋め等は実は十分やっておらない。いわば当たりさわりなく、欠員のできたところを埋めることはもちろん必要であります、いつも新陳代謝は必要ですから。だけれども、それが実は安易にでき得るところだけしかやっていないから、二、三%、一年に一%なり二%しか各省庁は減っていないじゃございませんか。こんな企業は日本にはいまないのですよ。二けた台でもっていわゆる一生懸命そういうようなことを機会に転換する等やっておるのでございます。これをもっと具体的にその点に鋭意努力していただかなければならぬと思います。今度は管理庁長官、いかがでしょう。
○松澤国務大臣 ただいまのお話でございますが、現在の厳しい社会、経済情勢にかんがみまして、国家公務員の定員については一層厳正に管理すべきことは御指摘のとおりでございます。このような見地に立って、五十一年度において定量削減計画を繰り上げ実施するとともに、新しい行政需要というようなものに対しまして極力振りかえによって対処し、新規増員を厳に抑制することによって国家公務員の総数を縮減するというふうな考え方でいまやっておるところでございます。 また、強制配置転換についての御指摘はまことに傾聴すべきものでございますので、十分に考え、行政事務を円滑に遂行していくよう、困難な面もありますが、与野党一致の国会の附帯決議においてもこれを行うべきでないとされた経緯がありますから、従来から政府としても出血整理はもとより、強制配置転換は行わない方針をとってきているところでございます。 しかしながら、定員の配置の適正化を図ることは重要であり、このため四十三年度以降三次にわたって、ただいま総理からお話がございましたように、定員の削減計画を実施するとともに、毎年の定員審査を通じて強制配置転換を行うことなく、実質的に、各省庁における定員の振りかえ、あるいはまた省庁間を超える定員の再配置を推進してきているところでございます。今後とも定員の配置の適正化に努めてまいりたい、かように考えております。
○塚本委員 特に政府だけではなくして、公社、公団等においても同じようなことが言えるわけでございます。特に、国鉄などにおきましては顕著だと言わなければなりません。 私は、時間がもう少なくなってまいりましたので、実は問題提起だけにとどめてまいりますけれども、国鉄の問題は大変な問題になっておることは御承知のとおりでございます。各新聞におきましては、一体国鉄は立ち直ることができるのであろうかというようなことでもって実は懸命に調査をして、特集を出しております。私どもは、まことに傾聴に値する意見だというふうに思って実は読んだわけでございます。特にこの中で、私は提言申し上げておきますが、国鉄自身に対して、私たちはずいぶんいろいろな非難等や批判をいたしてきたことは事実であります。しかし、国鉄にはもう一つ内部的に見ますと鉄道弘済会、交通公社、日本通運、こういうような子会社というとちょっと表現があれですけれども、協力会社というべきものが実はございます。手っ取り早く大企業を例にとりますると、協力会社等を親会社が叱咤激励して、自分たちがまず利益を得る、そして自分たちの力で子会社も一生懸命に企業合理化にしりをたたく、こういうような形になっておるのがいわゆる親会社と協力会社との実態のようでございます。ところが、国鉄の場合は反対に、みんな国鉄にぶら下がってしまって、そして親会社は骨と皮ばかりになって身動きができない、こういう形になっておるわけであります。 たとえば荷物などのごとく、日通さん抗弁があるかもしれませんけれども、お客様をとってきたら、自分のところでトラックで運んだ方がもうかるところはトラックで運んで、かさが大きく料金が取れないようなもの、もうからないものは列車に積み込む、こういうような形になっておるところが実は多いわけでございます。国鉄みずからが荷主になって仕事を、自分でお客様をとって、子会社この仕事を与えるぞというのが親会社なんです。ところが、自分たちはやってないのです。だものだから、実は向こう様にぶら下がられてしまっておる。 調べてみますると、日通が、ちょうどきせるでいいますと真ん中のラオ、いわゆる竹が国鉄でございまして、たとえば大阪市内からここへ持ってくるのと東京から東京都内へ運ぶのと、このいわゆる吸い口と火つけ口を日通さんがやっておって、真ん中のきせるだけの長距離を国鉄さんが運んでおる、こうなるのです。これで収益はどれだけかといったら、一年間に大体八百億ずつでございます、こうなんです。都内の集配とこの長距離の平均からいいますると、実はこれは大阪−東京が妥当であるかどうかわかりませんが、大体同じ金額になっておるのです。だから、短いところやあるいはまた料金の取れるところは自分のところで運んでしまう、選別されてもうからぬものだけいただく、実はこうなんでございます。 あるいは交通公社などもっと極端でございます。飛行機のあるところ——飛行機だと一割の手数料がいただけるそうでございます。国鉄だと実は距離運賃が少ないものだから、できるだけ国鉄の窓口の方におって飛行機の切符を一生懸命売っておる、こうなんでございます。国鉄の列車の切符を売っていても、国鉄職員がセンターの中におっても実はそれは、聞いてみますと、国鉄の中で売りながら交通公社さんがちゃんと手数料を取っておるのだそうでございます。 こんなばかなことでもって国鉄がまともにやっていかれると思うでしょうか。だから経営の問題等、あるいは管理体制の問題等をかつていろいろ私は論じたことがありますけれども、しかし、それよりももっと大きな問題は、あるいは弘済会の問題でもそうでございます。弘済会、あんないい場所で一体どんなことをなさってみえるかというと、いや、あれは実は相当に社会事業を行っております、相当金を支出しております、こういうようなお話を聞きました。結構です。しかし、自分が国家のかかり人じゃありませんか。それだのに、国家のやるべきようなそういう人たちに社会事業をなさっておいでになって、そうして国家からそれの二けたも三けたも違うようなお金をせびらなければならない、そして国鉄がいわゆる立体的な経営ができないような形に、いいところは弘済会が押さえてしまっておるじゃありませんか。この問題にきちっとメスを入れていかなければ、国鉄を幾ら責めてみたって限界があると私は思うのでございます。こういうことをしなければ、民間の私鉄が努力しておるような経営合理化というものと歩調を合わせるわけにいきません。 総理、これで運賃値上げをしてみたらどうなるとお思いでしょうか。もうますます国鉄に乗らずに私鉄の方へ行ってしまって、サービスもいいし運賃も安いし、ますます減りますよ。かつて貨物がそうでしたでしょう。運賃を上げろという意見もありますけれども、運賃を上げれば上げるほど実はトラックにとられてますます貨物収入が下がってきたことが、国鉄の今日の赤字の根本じゃありませんか。旅客だって、実は同じような形で私鉄にとられますよ、いま私鉄が並行しておりますのが大部分でございますから。かつては国鉄が独占的な輸送形態でありました。運輸省でなくて鉄道省であったのです。いまは御承知のような状態であります。上げれば上げるほど実は収益が上がるんじゃないのですよ。反対に、今度五〇%も上げてしまったら、もはや私鉄の方へ行ってしまう、あるいはバスの方へ行ってしまう、飛行機の方へ行ってしまうことはわかっておるじゃありませんか。こういうことを合理的にきちっと体質を改善しなければ、いたずらにいわゆる再建計画を出せと言ってみたってだめですよ。 だから、時間が来ましたから、政府だけじゃない、いわゆる公社、公団等の体質改善もまた根本的な問題だと問題提起をいたしておきまして、またいずれかの舞台でこれを質疑してみたいと思います。総理の見解、決意だけ聞かしていただきたい。
○三木内閣総理大臣 国鉄の再建は大問題であります。やはりこの際、中途半端なことは私はできない。根本的に国鉄の経営のあり方というものにも立ち入って検討して、国鉄の再建を図らなければならぬと思っております。
○荒舩委員長 これにて塚本君の質疑は終了いたしました。 ————◇—————
○荒舩委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。 明三十一日、森永日本銀行総裁及び小倉税制調査会会長の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。 次回は、明三十一日午前十時より開会いたします。 本日は、これにて散会いたします。 午後七時七分散会