法務委員会 第12号
- 発言数
- 53 件
- 登壇者
- 5 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1976/05/18
会議録
○大竹委員長 これより会議を開きます。 この際、理事補欠選任についてお諮りいたします。 昨日、理事稲葉誠一君が委員を辞任されたことに伴い、理事が一人欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○大竹委員長 御異議なしと認めます。よって、横山利秋君を理事に指名いたします。 ————◇—————
○大竹委員長 内閣提出、民法等の一部を改正する法律案を議題といたします。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。青柳盛雄君。
○青柳委員 最初に、民法そのものの改正の案のある点についてお尋ねいたしたいと思います。 それは、離婚等によりまして復氏した後に、一定の期間内にその妻または夫、つまり婚姻によって姓が変わった人が届け出をすれば婚姻中の姓、氏を名のることができる、この制度であります。これはいろいろの事情からそういう要求が出てきたのを参酌して設けられたものだと思いますが、まず一点は、もしこの制度を貫くとするならば、一遍旧姓に戻って、それから後にまた婚姻中の姓に戻る。戻るというのか、再びそれになるというような二重の手数をしないで、離婚の際に直ちにその届け出をすることによって、旧姓に復するというようなことがなくとも済むというようなことは考えられないかどうか、まずこの点をお尋ねしたいと思います。
○香川政府委員 これは、一たん婚姻前の氏に復しまして、それから三カ月以内に戸籍法の定めるところによって届け出することによって婚姻中の氏を称することができる、かようにいたしておるわけでございまして、理論的に申しますと、婚姻中の氏を称するという意味は、厳密な意味の氏の定義から申しますと同一の氏ではない、呼称が同一であるというふうな構成に相なろうかと思うのであります。 さような意味で、いま御質問のように、離婚と同時に婚姻中の氏を称するということにしてはどうかということでございますが、理論的には、そのまま婚姻中の氏が継続するという考えではなくて、瞬間的ではございますけれども婚姻前の氏に復して、途端に婚姻中の氏を呼称として称する、こういうふうなことになるわけでございます。もちろんいまおっしゃるような、離婚と同時に瞬間的にではありますけれども婚姻中の氏を称するというふうなことも考えられるわけでありますが、実際問題といたしまして婚姻中の氏をそのまま、性質は同一の呼称である婚姻中の氏を称することについて、常にすべての人についてそういうふうにするという必要性もないと思われるのであります。通常の場合は、離婚いたしますれば当然復氏して実家の氏を称するというのが恐らくは大半であろうと思いますし、必要のある場合に限って婚姻中の氏を称するというふうなことになりますので、その間にやはり選択の余地を残す必要があるということが一つでございます。 それから真にそういう婚姻中の氏を称する必要性がある場合には、離婚の届けと一緒に婚姻中の氏を称するという届けもなされることに相なろうかと思いますので、手続的には、離婚と同時に婚姻中の氏を称するということがなされるということで事実上継続するというふうな結果になろうかと思いますので、そういう意味からすべての場合について当然に婚姻中の氏を称するというふうな手続にはいたしていないと、こういう趣旨でございます。
○青柳委員 たてまえが現行法のように、戻るのが原則だ、だからたまたま婚姻中の氏を名のるというのは、それに戻ったということではなくて、新しくそういう姓をつくったというような理解の仕方であるならば、いまの説明でも筋は通ると思いますが、そしてまた実務的には、離婚の届けをすると同時に、選択によって、しばらく旧氏に戻ってしかる後婚姻中の氏にまた変えるというようなことも可能だし、またそういうことをやってもいいし、また離婚の届けと同時に、離婚した片方が婚姻中の姓を届け出ればいいのだということであるならば、手続的にはそのままの形だから別に問題はないと思いますが、この点はそれを禁止する趣旨ではないという解釈、つまり一遍は必ず旧姓に戻らなきゃいけない、それから一定の期間を置いた後にその姓を変える、そういうむだな手数は必要としないのだということであるならば、それで支障を来さないと思いますが、そのとおりでしょうか。
○香川政府委員 そのとおりでございます。
○青柳委員 次に、これは一方的な行為なんですが、相手方の感情とか都合とかいうものは全然考慮の外に置いてあるようでありますけれども、この点について疑義を持つ向きもないわけではないと思います。離婚をした相手の婦人が自分と同じ姓を名のっている、男性の方は後妻をもらう、後妻も同じ姓になることはもちろんであります。そうすると、前の奥さんも同じ姓だし、後から結婚した奥さんも当然同じ姓だ、何となく割り切れない気分がするという声も聞かれないわけではないのです。協議上の離婚の場合は、相手方の同意を必要とするというときには協議するときに話し合うわけでよろしいのでありますけれども、裁判上の離婚とかあるいは婚姻の解消とかいう場合などには、相手方の同意を得ようなんと言ったって、それはほとんど不可能な場合がある。だから、そういうことは考えてみたところで意味ないのだという議論もありましょうと思いますけれども、いずれにしても、裁判所の許可とか相手の同意とかいうようなことを全然必要としない、こういう非常に画期的な制度にするのは、そういういま私が申し上げたような懸念に対する説明はどういうことになるのでしょうか。
○香川政府委員 今回、離婚復氏の原則に対する例外を設けました必要性は、一つは、婚姻中にその夫婦の氏でもって社会的活動をしておる女性がいたといたしますと、離婚によって当然に実家の氏に戻るということに相なりますと、自後の社会的活動上不利益を受けるおそれがあるということが一つであります。第二番目の理由は、これは現在、離婚の実態を調べてみますと、離婚の際に、母親が小さな子供を成年に達するまで養育するという事例が非常に多いわけでありまして、そういうときに母親と子供の氏が違うということによる子供に対する事実上の悪影響を防止したいという二つの理由からでございます。 そういう理由を考えますと、前者の理由によって離婚した女性が婚姻中の氏を称する場合というのは、現在、婚姻中の氏を称する形ではなしに、いわばペンネーム、通称的に婚姻中の氏をそのまま使って社会に通用しているという場合もあるわけでございまして、さような場合にもいまお示しのような問題があると言えばあるのでございますけれども、これは法律上とめようがないわけでございます。 子供の養育を母親がするというときに婚姻中の氏を称したいという場合を考えますと、これはまさに、子供は父親の戸籍にそのまま置きまして、養育だけを母親にゆだねるというケースでございますので、さような場合に夫の方も子供の立場を配慮すべきが当然であるわけでありまして、子供に対する悪影響を防止するために、養育する母親が婚姻中の氏を称したいということをむしろ拒むべきではないと思うのであります。 そういったことのほかに、ただいま申されましたように、裁判上の離婚の場合には相手方の同意、協議というふうなことはいかんともしがたい、協議上の離婚の場合に相手方の同意がなければ婚姻中の氏を称することができないというふうにいたしますと、協議上の離婚においては話し合いでいろいろ条件が決められるわけでありますが、たとえば財産的な話し合いもされるわけでございますが、その際に、一方が婚姻中の氏を称したいということを利用いたしまして、他の離婚条件について不利益な結果が出るということも十分予想されることでございますので、そういった弊害と、同意なしに当然婚姻中の氏を称することができる場合に考えられる弊害を比較考量いたしますと、立法論としては、同意なしに婚姻中の氏を称することができるようにした方がベターではなかろうか、こういうふうな考え方でございます。
○青柳委員 いま御説明のような設例の場合は、まさに相手方の方で拒否するということが不条理な感じがいたします。子供のためを思い、また別れた相手方の社会的地位を配慮するという立場から言うならば、いたずらに拒否権を行使してその実現を阻むなどということは非常識きわまる話だし、不条理な話だと思います。ただ、子供もないような場合、言ってみるならばいやがらせのような意味で、別れたのだけれども、また極端なことを言えば不貞の行為があったゆえをもって裁判所で離婚の判決を下した、これに対するしっぺ返しのような意味で旧姓を依然として名のってまだ細君であるかのごとく振る舞っている、そして再婚をしようと努力するのを妨害する、これが不法行為になったり何か差しとめることができるような極端なものならいいけれども、姓を名のるのは権利だということで、依然として離婚前の姓を名のって社会的に活動するというような、言ってみると非常識な乱用に類することですが、そういう乱用も防止することができないのかどうか、この点はいかがですか。
○香川政府委員 先ほども申し上げましたように、その通称的な意味で婚姻中の氏を社会的にそのまま使用するということは、これは実例もございますし、いかんともしようがないわけでありまして、それを、今回の婚姻中の氏を称することができる制度を悪用していやがらせをやるというふうなケースが絶対的に皆無だとは考えませんけれども、そのようなことをして再婚の邪魔をするというふうなことが功を奏するわけでもございませんし、恐らくさようなことはよほど例外中の例外としてしか起こらないのではないかというふうに考えております。 もちろん、おっしゃるようなきわめて悪質なと申しますか、相手の正当な権利を侵害するようなところまでまいりますれば、損害賠償というふうなことでの民事的な制裁は考えられると思いますが、恐らくさような事例というのは、あるといたしますれば、現在でも通称をそういうふうに使ってやるという事例があってしかるべきだと思うのでありますけれども、実際の必要がある場合しか現在さような実例はないように思うのでありまして、さほど心配することはないのではないかというふうに、比較的そこは楽観的に考えておるわけでございます。
○青柳委員 これから実際を見ていきませんと何とも言えませんので、いまのような御説明の、それは善意な場合が多いんだ、だから、ほんの例外的なことを心配して、決してこれに消極的になるべきではないんじゃないかというふうに私も理解いたします。 他国の例などを見ますと、裁判所の許可とかいうようなものがそこに介入して、そして裁判所が申請によって婚姻中の氏を称することを認める、現行の制度でもそういう道があるわけでありますが、それに相手方が異議を唱えるというような事実があると、裁判所が消極的になって、なかなか簡単に許さないというようなこともあり不自由であるから、いっそのこと思い切ってそういう許可とかいうようなことを必要としないことにしようというのが、画期的な今度の改正の趣旨だと思います。これは現行法よりも一歩進んだものであって、男女同権、妻の地位を高めるということに役立つと私も思いますので、あえて反対する立場で質問しているわけではありません。ただ、そういう懸念が一般にあるということは現実でありますので、それに対する配慮はどうなっているか、お尋ねしたわけであります。 ところで、次に私は、戸籍の改正についてお尋ねをいたしたいと思います。 もうすでに他の委員から質問がありましたので、重複することは避けますが、世間で戸籍公開の原則というような言葉が使われております。原則と言うと、いかにもいかめしくて、人類普遍の原理を反映するもののような感じもいたしますが、他国の例などを見ますと、必ずしも日本の戸籍制度とは同じではありませんが、身分を登録し、それはだれでも自由に知ることができるということでもないようでありますので、そうなると、人類普遍の原理などという大げさな話にはなりませんけれども、日本でも七十年以上も公開をされているわけでありますが、そこで公開の原則というような言葉も使われるようになったと思いますけれども、ここで余り長い時間を必要として質問しているわけではありませんが、日本の戸籍制度で、従来は公開がされていなかったのに、明治三十何年かに公開されるようになった、その経緯というものはどういうことだったのでしょうか。
○香川政府委員 いろいろ調査いたしまして、確かなかような理由、経緯でこうなったというふうな文献は遺憾ながらちょっとないのでございますけれども、最も考えられる大きな理由は、近代的な民法が制定されまして、そしてその民法の実体法を左右すると申しますか、その要件的な身分関係の重要事項が戸籍に登載されるということになります関係上、民法上のいろいろの身分行為、あるいは取引の安全の保護というふうなことから戸籍を公開して、さような法律行為の適正、円滑な処置を考えるようにしよう、こういうふうな配慮が一番強く働いたのではないだろうかというふうに考えられるわけでございます。
○青柳委員 法律行為の中にはいろいろございますが、人間関係でありますから、いわゆる商取引といいますか、そういう民法上あるいは商法上の取引の安全のために相手方の身分関係を知っておく方がよろしいという自由主義経済の立場からも、公開というのは要請されると私は思います。 同時に、婚姻とか養子縁組とかいうような場合にも、相手方の身分関係を事前によく知って、そして婚姻すべきか養子縁組をすべきかというようなことを自由な判断で決定する。十分な情報を得ないままでやって、後で大変な後悔をするということは意味のあることではありませんから、そこで情報収集の方法にはいろいろありましょうけれども、国家が身分を登録し公証している、それを見れば、本人が黙秘しておったり、あるいは偽りを述べていることが直ちに判明する、したがって、だまされることもない、仲人口など信用してうかうか婚姻してしまう、養子縁組してしまうというようなことも防げるという点で、婚姻あるいは養子縁組を自由なものとするためにも公開は必要ではないかというふうに考えます。 身分関係について国家が情報を独占し、国家の行政目的その他のことだけに利用するということも民主的ではないというようなことも言われておりますので、この点は七十年の間にほとんど問題にされなかったのではないか、それが最近問題にされ、そしてこういう法制になるに至った、その経緯を簡単に説明していただきたいと思います。
○香川政府委員 戦後におきまして、人権思想も戦前に比して一般的に普及いたしますと同時に、率直に申し上げまして、戦前はさほど人権侵害的に考えなかった事象も、戦後におきましては、人権思想の高揚と比例的にそういった事象が人権侵害ということで国民に意識されるというふうになってまいりました。そのうらはらといたしまして、戸籍の公開の制度を他人のプライバシーの侵害あるいは人権侵害のおそれにつながるようなものに利用といいますか、悪用する事例も相当問題になってきておったわけであります。もともと戦後、新戸籍法の制定と申し上げていいかと思いますが、昭和二十二年だと思いますが、国会に新戸籍法を提案しました政府原案も、実は正当な理由がある場合に限って戸籍の公開がなされるというふうなことであったわけでありますけれども、その当時におきましては、さほど戸籍公開を悪用しての人権侵害等の事象が多くございませんでしたので、国会において修正されて、現行法のような全面的公開ということになっておるわけでございます。 さようなことから、法務省といたしましても、戸籍の公開制度そのものを再検討しておったわけでございますが、外国の立法例で、日本のように全面的公開というふうな制度をとっておる国は皆無でございます。むしろ非常に厳しい公開制限をしておるのが実態でございます。 そういうこともございまして、一昨年、法務大臣の諮問機関でございます民事行政審議会に、この戸籍法の再検討ということで公開制限の問題も含めまして諮問がなされまして、一年間にわたり各層の委員の間で議論されまして、昨年の二月に答申がなされました。 その答申によりますと、戸籍の公開はやはり制限すべきである、戸籍制度は身分関係を公証する唯一の制度であるわけでありますけれども、それはあくまでも国民の身分行為あるいは取引等の法律行為の適正、円滑というふうな観点から公開さるべきであって、人のいわばプライバシーをあばき立てて人権じゅうりんにつながるような行為をするというふうなことまで公開を許すべきでないということは当然だというふうなことで、公開制限の答申がされたわけでございます。 そのような経緯によりまして、一年間、いろいろ現実の戸籍事務を管掌しております市町村長の意見等も十分聞きまして、今回の法案提出に至った、かような経緯でございます。
○青柳委員 経緯はいま御説明のようなものであって、要は、公開することが国民のプライバシーを侵害することに通ずるおそれがある、したがって、これを無制限にしておいたら、いつ何どきプライバシーが侵されるかわからないということから今度のような改正に至ったという経緯はわかりますが、プライバシーの侵害という場合、明らかに名誉棄損を構成するようなものであるならばもう問題外でありまして、公開を制限してみても脱法行為としてそういう不法な挙に出るわけでありますから、いろいろな方法で情報を得ることはできるでしょうし、これは防ぎ切れない。しかしそういう悪意がなくて、まさに婚姻の相手の従来の状況を知る、その中には前に婚姻をし離婚したことがあるのか、あるいは死亡によって婚姻が解消していることがあるのか、さらにはどういうような直系卑属がそこに存在するのか、そういったようなことを公的機関によって認証されたものを見ることによって知るというようなことは、決して名誉棄損を行おうというような悪意から出たものではない。一方、相手方にしてみると、それを秘匿して再婚しようというようなことは毛頭考えておらないというときには、何らトラブルはないわけでありますけれども、あくまでもそんなものは知られたくないのだ、離婚歴などというものは、大体自分と結婚しようという人間が知ること自体けしからぬのだというようなことであるとすれば、こちらは善意であっても、これはプライバシー侵害だというようなことになるのかどうか。 この辺のところが、プライバシーの侵害を防止すると言っても悪意の場合と善意の場合とあるわけでありますから、その善意も、たとえば部落差別はいいものだと思っているような無知、非民主的なものによる善意、これは社会的にも決して好ましい現象ではないので、それはまた説得その他の方法で防止すべきだと思いますけれども、それも一種の善意という場合もあり得るわけで、善意のすべてが社会道徳に合致するとばかりも限りませんから、そういう部落差別のようなことが正しいのだと思っているおくれた意識そのものも悪意だというふうには言い切れないわけでありますが、いずれにしても、プライバシーの保護という場合、侵害というのは不法性を持ったもの、悪意を持ったものでなければならないのかどうか。そういうものだけは防止するのだ、それ以外のものは別に侵害とは言えないから防止しないことにするのか、その点はいかがでしょうか。
○香川政府委員 既成の実定法上のと申しますか、不法行為とか、あるいは犯罪行為というふうなことを物差しにしてプライバシーの侵害とか人権侵害というふうなことを考えておるわけではないのでありまして、さような不法行為あるいは犯罪行為に至らぬものでありましても、それが他人のプライバシーを侵害し、あるいは人権侵害につながるというふうなことも当然あるわけでございます。かようなプライバシーないし人権の侵害の防止と申しますか、そのようなことは、結局は啓発活動等によりまして国民の人権意識を高揚させるというふうなしんぼう強い啓発によって、初めてなし遂げられるものでありまして、決して、戸籍の面について考えましても、今回の戸籍法のそういう改正は、そういうプライバシーあるいは人権あるいは差別というふうなことに対する積極的な保護としてさようなことを考えておるわけではないわけでございます。 言いかえますならば、戸籍を公開しておることによって、他人のプライバシーの侵害あるいは人権の侵害というふうなことにつながるようなおそれのある、そういう不当な利用までも野放しにしていいという姿勢が国の制度として不合理ではなかろうか。したがって、そういう侵害のおそれのある側の保護ということよりは、侵害するおそれのある不当なものをやはり事前にチェックできることが制度として考えておいてしかるべきだ、かような考え方であるわけであります。したがいまして、いまおっしゃるような不法行為あるいは犯罪行為というふうなことにならない、あるいは善意の場合でありましても、それが客観的に不当な目的によるものということでありますれば、やはりチェックしてしかるべきではないか、かように考えておるわけでございます。
○青柳委員 そこで、不当であるかどうかというところも実務的に非常にデリケートな問題が起こってくるわけでありまして、現行法でも不当なものと認めた場合には拒否できるわけでありますが、この前の御説明でもありますように、不当な目的かどうかということの判定が、必ずしもいまの法制のもとでは判断しにくい。本人に請求目的を書かせれば、もう明らかにこれは不当だというような目的があれば拒否できるわけです。デリケートでありまして判断が非常にしにくい、それを不当としていいのか悪いのかというような、そういう事案に逢着する場合も非常にあるかもしれないけれども、この不当を防止するというのには請求理由を書かせれば幾らか役立つんじゃないか、そういう趣旨のように私は理解したのでありますが、そのためには請求の事由というものをどの程度に明らかにさせようというふうに考えておられるのか。これは不当か不当でないかを判断するのに役立つということとの関連において、どの程度に書かせるかということが決まってくると思いますけれども、この点はどうでしょうか。
○香川政府委員 今回の改正による制度の適正、円滑な運用上から考えますと、請求の理由としてはできるだけ具体的、正確に記載されることが望ましいことは、言うまでもないのでありますけれども、一方、戸籍謄抄本の請求をされる者が、必ずしもと申しますか、大多数は法律実務家の手を経ないで本人請求が多いわけでございます。大半のものはそういった不当の目的によるものでないということは立証的にも言えるわけでございまして、そういう一般国民からの請求の場合に、余りにも法律的に厳格な、具体的、的確な記載を要求するということになってもいかがかというふうに考えられるわけであります。 さような意味から、この市町村の窓口事務の円滑な処理、あるいは国民に不当な不便をかけないという両方の観点から考えなければならないわけでありまして、こういう場合にはこう書くべきだというふうに紋切り型に決めるわけにもまいりませんが、要は市町村長において、明らかにその不当な目的によるものだということが判断できる手がかりになるような程度に記載されてなければならないわけでございます。実務的にどういうふうな記載にするか、今後施行までの間に市町村ともよく協議いたしまして、できるだけ具体的な事例に即したそういった記載を参考的に検討してみるということを考えておるわけでございます。ただ市町村の窓口で全国画一的に、統制的にと申しますか、こういう場合にはこう書かないと、それ以外に書いてあれば一切いかぬというふうな扱いになっては、はなはだ窓口事務は混乱しますので、そこのところは慎重な配慮が要るだろうと考えておるわけであります。要は、この改正の制度が十分目的を達して、しかも戸籍行政の円滑、適正さを害さないというところの兼ね合いで考えざるを得ないむずかしい問題だと考えております。
○青柳委員 現行法でも、それからこれからの改正法でも、戸籍の登録されている本人が戸籍謄本を求めるというような場合には、本人であるかどうかということの確認は必要ではありましょうけれども、これも余り厳格にやるようなことになるのかどうか、まずその点をお尋ねしたいと思うのです。 いままでは、だれでもとれるんだから、本人であるか第三者であるかというようなことについて余り神経を使わなかったと思いますけれども、本人でない者が本人を偽って請求してくるというような場合も、今度は考えられる。本人以外の者はなかなかむずかしく、とれないから、自分が本人に成りかわって、偽ってやるというようなことが考えられる、予想されるわけでありますけれども、この点どうお考えになっていますか。
○香川政府委員 十条一項の請求の場合に、請求の理由を明らかにしなければならないという一般規定、これの例外としまして、法務省令で定める場合を規定しておるわけでございますが、この法務省令の中で、戸籍に記載されている本人が請求する場合には、請求の理由を明らかにしなくてもいいという例外措置にいたしたいと考えておるわけであります。 そうなりますと、おっしゃるとおり、本人であるかどうかということを窓口において確かめなければならないことになるわけでありますが、これも余り厳格なことをやりますと、非常に窓口事務が混乱して、かえって国民に迷惑をかけるということになりますので、兼ね合いとしてはむずかしい面があると思いますけれども、たとえば選挙権行使の際に本人であるかどうかを投票所で確かめるというふうなことと同じように、生年月日を聞くとか、あるいは同じ戸籍に登載されておる兄弟とかあるいは親の何かの特徴を聞くというふうなことで、本人であるかどうかを確かめるというのも一つの方法かと考えられるわけでありますけれども、大都市は別といたしまして、大半の田舎の市町村に参りますれば、本人であるかどうかは面識ある場合も多うございますし、いろいろの余分の負担を国民にかけないことを十分配慮しながら、さような確認手続をするというふうになるように指導してまいりたい、かように考えておるわけであります。
○青柳委員 本人が窓口へやってきて請求する場合は、いまのようなお話で、何か身分証明書を出せとか自動車の免許証があったらそれを提示せいとか、そんなむずかしいことにはならずに済むだろうと思いますけれども、郵便などで請求してきた場合のことを考えた場合、いま関西あたりの方では、本人の承諾書とか委任状とかいうようなものを要求するような形で、第三者でもそういう手続を踏めば交付するというようでありますが、その際、現行法でのそういう制度ですから、もともとだれでも請求できるんだから、委任状とか承諾書が真正にできたものかどうか、私文書偽造行使みたいな形になるかならないかなんということを言わずに、本人の名前と判こがあれば第三者にも交付するというようなことを委任の場合にもしているのじゃないかと思いますけれども、これは現行法のもとだからそれで済んでいる。しかし、今度改正された場合には、これとまた立場が違いますから、非常に厳格に、郵便で請求してきた場合には、しなければならぬというようなことも予想されるのですが、この点はいかがですか。
○香川政府委員 郵送請求の場合には、確かに、さような本人であることを確かめる直接的な手段がないわけでございますので、問題はあると思いますが、請求書に、通常考えられる印でもって本人の印らしきものが押してあるということになりますと、大半の場合には、それで本人からの請求だということで処理されるのではなかろうかというふうに思いますけれども、これは相対的な問題でありまして、ほとんどの場合には、そんな他人の印章まで偽造してそういうことをやるということは通常考えられませんので、そういう扱いになるところもあろうかと思いますけれども、他方、やはり当該請求される戸籍とにらみ合わせまして、非常に悪用されるおそれもあるというふうなときには、さらに本人の印鑑証明書がなければだめだというふうな扱いにならざるを得ない場合も出てくるのではなかろうかというふうに考えますが、その辺のところは非常にむずかしい問題でございまして、やはり市町村長が運用をされる場合に、先ほども申しましたように、いろいろの場合を想定いたしまして協議を重ねて、また実例も積み重ねて、円滑な処理がされるように持っていきたいというふうに考えておるわけでございます。 郵送の場合の、本人であるかどうかの確かめというのは、これはほかの、たとえば登記の申請手続の場合にもあるわけでございまして、厳密に考えれば、非常にむずかしい問題をはらんでおるというふうに考えております。
○青柳委員 登記は公開が原則でございますから、郵便で請求しても別に問題ありませんが、戸籍について今度は、正当な理由がなければ謄抄本の請求はできないという、言ってみれば、公開の原則に対する重大な制限が加わるわけでありますから、その重大な制限を逸脱するようなことがあってはならないということになれば、従来、戸籍の請求などは手紙で何々さんの戸籍を下さいという、判こなんか一つも押さずに郵便切手などを同封してやれば、それですぐ返事が来るということでありましたが、今度は、請求書というような書式のものに署名捺印をするというようなことまで要求するのかどうか、これはなかなかむずかしい問題を含んでいると思いますので、一層研究を必要とするのじゃないかというふうに思います。 そこで、時間の関係もありますから、余り細かな点まで行きませんが、弁護士とか税理士とか司法書士とか行政書士とか家屋調査士、そういったような人たちは請求の理由は問わない。その職業上の地位を明らかにすることによって、請求の理由などは何であるかということはあえてせんさくせずに、無条件に交付する制度のように私は理解したのですが、その点はどうでしょう。
○香川政府委員 そのとおりでございます。
○青柳委員 その場合、資格証明書のようなものを提示するとか、また郵便で請求する場合にそういうものを同封してやるとか、そういうことを必要としますか。
○香川政府委員 ただいまのところ、資格証明書を同封するとか提示するというふうなことは考えていないわけでありまして、一般的に、そういった身分を偽って請求して謄抄本の交付を受けたという場合の過料の制裁規定を新たに設けておりますが、これがどこまで抑止的な効果を持つかは疑問がございますけれども、余りまたこれを常に資格証明書、身分証明書の提示を要求するというふうなことになりますと、非常に繁雑にもなりますので、そこは国民の良識に期待すると申しますか、実際問題としまして、さような悪質な事例が絶無とは考えませんけれども、それを防止するために、一般的に厳格な公式手続を要求するということになりますと、かえって全体としてマイナスではなかろうかというふうなことも配慮せざるを得ないと思うのでありまして、この辺のところの取り扱いも十分配慮いたしまして、たとえば各市町村と司法書士会等との間で連携を保ちまして、会員である司法書士の名簿を市町村に出しておくというふうなことで調査ができるような手だても一つの方法ではなかろうかというふうにも考えておりますけれども、そこまでしなければならぬかどうか、その辺のところをさらに検討してまいりたいというふうに考えております。
○青柳委員 このほかに、いわゆる秘密探偵とか興信所とかいうようないろいろの身元調査をする機関、営業としてする機関がありますが、そういう者が請求する場合、それから新聞や雑誌などの取材活動を行う場合、当然、戸籍の記載内容を知らなければその業務も行えないわけでありますが、こういうもののスムーズな業務の遂行を妨げるようなことがないのかどうか。つまり、紙一重でございまして、この情報収集活動はプライバシー侵害に通ずるおそれは常識的に想像できるわけです。だから、もう一切そういうものは許さないということであれば、これは別問題でありますけれども、それではまた大問題になってまいりますので、業者、業界、それからいまのマスコミ関係などは重大な関心を持っていると思います。この点いかがですか。
○香川政府委員 要は、請求の目的が不当であるかどうかということの価値判断になるわけでございますが、いまおっしゃったように、秘密探偵社とか等のそういった他人の身分関係その他を調査することを職業にしておる場合には、過去の実績から考えまして、えてしてプライバシーの侵害になるおそれがあるわけでございます。依頼者との間で調査した事項をそのまま伝達して、そこでそのまま外に公表されないということでありますれば、まだ弊害はないわけでありますけれども、これをいたずらに一般に公表して本人のプライバシーを侵害するというふうなことになりますれば、やはり好ましいことではないわけでございますので、さような点をできれば戸籍公開の制限のところでもチェックできるものはすべきだということになるわけでございます。したがって、その辺のところが、「不当な目的による」ということの価値判断が非常にむずかしい面はあろうかと思いますけれども一探偵社とかあるいは一般の週刊誌等の取材というふうなことで関連の戸籍を多く調査するというふうなことになりますと、市町村長としては、やはり不当な目的によるものではないかという疑いを持たざるを得ない、したがってその取り扱いには慎重にならざるを得ないというふうに考えるわけでございます。
○青柳委員 これがトラブルのもとにならなければ幸いでありますが、脱法行為として、たとえば興信所のような、秘密探偵のようなものが、先ほど話に出ました弁護士とか税理士とかそういったような特殊の地位を持っているがゆえに何ら請求の理由を明らかにせずしてもらえる人、そういう者と特約を結んでおってあちらこちらからそういう人を通じて手に入れる。これは決して正当なやり方ではないわけであります。それで問題を解決するということでは、この制度は余り実益がないといいますか、プライバシー防止の制度だと言っていても、抜け道をそういう特殊な業務に携わる者には与えておくということによって、それを使ってやられてしまう。これでは全く首尾一貫せぬことになるわけでありますが、それを防止するすべがどうも余りはっきりしないということになると、この制度は果たして前進と言えるのか、どうなのか。プライバシー防止というたてまえは非常にりっぱだけれども、裏道がちゃんとできておる。もっとも特約を結ばれたその職業上の特別な地位を持っている人ですね、そういう者の不道徳というのは職業倫理からいって批判の対象になることは当然でありますから、そういうことを予想することがおかしいのだと言われてしまうと、まさに予想する方がひねくれた物の見方かもしれませんが、世間ではこんなものをつくったってプライバシー侵害をやろうとすればその手は幾らでもあるのだよなんというようなことを悟ったように言っておりますものですから、そうだとすると、これは問題だなというふうに思うわけであります。 それからもう一つは、そういうことを神経質に考えるがゆえにむやみと制限をしていく、本人以外は事実上拒否に等しいのだということになってしまっても、これまた大問題ということになるわけでありまして、いずれにしてもこの制度の改正は非常に問題を含んでいると私どもは考えております。 そこで、もう一点だけお尋ねして、私は終わりにいたしますが、戸籍の記載事項というものは必要最小限度にとどめておくべきではないのか。前回の委員会でも、刑務所の中で出生した場合にその出生地を記載するというようなことは、その生まれた子供の一生に悪い影を残すというようなことも言われておりまして、また刑務所で不幸にして病死をしたとか、また極端な場合には、必ずあるのですが死刑の執行を受けたとかいうようなときに、死亡の場所が刑務所内である。これも明らかに記入されておれば遺族などにとってみれば非常に不名誉なことが登録されてしまう。これは公開を制限しているのだからそういうことは一般にはわからないのだと言っても、先ほど言ったように、いろいろの例外があるわけであります。 それが例外なのか原則なのか、それはともかくといたしまして、事実上公開されてしまう。だから記載事項をなるべく不必要なものは省く。かつて、華族だとか、士族だとか、平民だとかいうような身分を記載しましたけれども、これはもう封建時代の遺物でございますから戦後廃止されましたけれども、それも確かに不必要な事項、そうだとすると、本籍を除外してしまうということはどうだろうか、本籍の番地まで省略してしまいますと、同姓同名の人間があった場合にどちらの方であるかわからなくなってしまうという心配がありますから、勢い番地まで本籍は明らかにしなければならぬ。しかし本籍を転籍をした場合はどうなるかというと、どうも本人の事項欄に何町何番地から転籍をしてきたということが記入される。したがって、それを追跡調査していけば除籍の部分も判明してくるというようなことで、結局は転籍してもかつての本籍というものはなくならない。記録上不明になることはない。そうすると、この記載事項の中で本籍を記載することはやめられないということですね。しかし、出生とか、死亡とか、届け出人の名前とか、そういうものは省略することがあってもあえて構わないということは考えられないかどうか。ただ国籍を明らかにする意味において、日本国内でだれだれの間に生まれた子供であるというようなことはどうしても明らかにしなければなりませんけれども、また外国で生まれた場合でもそうだと思いますが、それにしても出生地などは都道府県単位くらいにとどめることはできないものかどうか、これをお尋ねしたいと思います。
○香川政府委員 現在は出生地、死亡地は最小行政区画、市町村まで記載しておりまして、字以下は書いてないわけでございますが、それを都道府県までにとどめたらどうか、これも一つの検討すべき案だと思いますけれども、この辺のところは非常に国民感情と申しますか、国民の意識とやはり関連のある問題でございまして、大半の人は出生の市町村をたとえば郷里というふうなことで意識しておる、そういう地縁と申しますか、そういったものについての捨てがたい一つの関心もあろうかと思うのであります。 戸籍の必要記載事項ということから申し上げますと、何も出生地を市町村まで書かなくても、おっしゃるように県まで、極端なことを言えば、日本国で生まれたからこそ戸籍に登載されるわけでございますから、出生地なんて書かなくてもいいという極端なことも考えられないではないことだと思うのでありますが、ただ単に、それを戸籍行政あるいは戸籍の役割りだけから、法律的なきわめて厳格な役割りだけから必要最小限度にとどめることが国民感情として歓迎されるかどうかというふうな問題もやはり考えざるを得ませんので、さような点も含めまして十分検討いたしたいというふうに考えております。
○青柳委員 最後に、もう一つ関連してお尋ねしておきたいことは、住民登録の住民票には本籍が書かれてあります。これは正当な理由がない場合には拒否できる。したがって、正当な理由があるかないかを判断するように、戸籍法の規定と同じように改正をしていかなければプライバシーが侵されるような危険があるというようなことも考えられるわけでありますが、そういうところまで戸籍法の改正は発展していくものでしょうか、どうでしょうか。
○香川政府委員 住民登録制度は現在自治省の所管でございまして、私ども戸籍の方がこういうふうにするということは十分自治省にも伝えてございますが、住民登録票の記載事項というものが戸籍の記載に比較しまして不当な利用を防止するというふうな必要性がどこまであるか。ただいま例示されました本籍の記載があるというふうなこと、これ自身はちょっと公開を制限する事由にはなかなかなりがたい面があるように思うのでありまして、戸籍の公開制限がこういうふうにされたといたしました場合に、住民票についてどのようにするか、これは自治省で御検討になることでございますけれども、ただいまのところは、住民票についてはそういった戸籍にならった公開制限をするというふうなことはお考えになっていないように承っております。
○青柳委員 終わります。
○大竹委員長 諫山博君。
○諫山委員 短時間に数多くのことを質問しますから、簡単に答えてください。 民法における婦人の地位向上、家庭生活における婦人の地位向上というのはもちろん広範な国民の要望です。その立場から提案された民法の改正に私たちは賛成です。ただ、今度の政府の改正案というのは、民法における婦人の地位を向上させるという点から見れば、きわめて不十分で、きわめて部分的だというふうに考えております。私たちはすでに独自の民法改正案を提出いたしましたから、その立場から幾つかの点を質問いたします。 第一は、復氏の問題です。離婚後三カ月以内に届け出るというふうになっているのですが、なぜ、こういう限定をつけなければならないのか。私たちは婚姻の姓のままか旧姓かを自由に選択できるようにすべきだ、しかもこの措置は過去にさかのぼって適用するようにしたい、さらに成人である養子の離縁の場合も同様に取り扱いたい、こういう立場で改正案を提出したのですが、この点、法務省は検討されたのかどうか。検討されたとすればなぜこういう立場にならなかったのか、御説明ください。
○香川政府委員 この案では、離婚いたしましてなお婚姻中の氏を称したいという場合に、戸籍法の定めるところによって届け出をするわけでありますが、この届け出の期間を三カ月に限定いたしております。この趣旨は、三カ月が絶対的に正しいという自信はあるわけではございませんけれども、先ほども青柳委員の御質問にございましたように、悪用の弊害も全く考えられないわけではない。したがって、真に先ほど申しましたような二つの必要性のある場合に、婚姻中の氏を称するということにされることが望ましいわけでございまして、そういうふうな理由を考えますと、できるだけ短い期間に限定いたしても何ら弊害はないし、むしろできるだけ短い期間の方が望ましいというふうなことで三カ月ということにいたしたわけであります。 それからこの改正規定を施行前にさかのぼって適用してはどうかという御質問でございますが、それも一つの考え方だと思うのでありますけれども、実際問題といたしまして、離婚復氏の例外を認める必要性というのが先ほど申しましたような二つの必要性からだといたしますと、過去にさかのぼりましても、大半は片がついておるということが一つ言える場合もございますし、もう一つは、戸籍法百七条の規定によりまして氏の変更の家庭裁判所の許可による手続規定があるわけでございます。この規定は必ずしも今回の離婚復氏、離婚した場合に婚姻中の氏を称するものとして百七条の規定が設けられておるということではございませんけれども、今回の改正が実現いたしますれば、その精神をくんで過去のものについては、百七条の規定を弾力的に活用して運用されるであろうということを期待しておる。さような意味から実体規定でございますので、よほどの必要がない限りはできるだけ遡及適用はしないという方針にも沿って、遡及適用は考えていないわけでございます。 養子の場合の離縁の復氏に対する例外措置を設けていないのはなぜかということでございますが、これはいろいろ必要性のある場合もございますけれども、ただいま法制審議会の民法部会身分法小委員会におきまして養子制度全般についていろいろ論議されておるわけでございまして、まさにこの養子縁組の離縁の場合の復氏の問題もそれと重要に関連を持っておるものでございますので、同じような必要性はありながら、やはり養子制度自身の全面的な再検討のところの一環としてこの問題もあわせて議論していただきたいというふうなことでしばらく見送っておるわけでございます。
○諫山委員 時間が限られておりますから詳しい論議はできませんが、婚姻中の姓のままか旧姓かを自由に選択できるという問題が提起されたのは、すでに弊害が生じているからこれを是正しようということからだったと思います。そうすると、この弊害で苦しんでいる人たち、とりわけ女性の立場を救済するためには、やはり過去にさかのぼらせる必要があるというふうに私たちは考えております。また養子の場合、どこまでこれを認めるべきかという問題があるんですが、私たちの改正案では、成人である養子の離縁という限定をつけました。これは将来の課題として検討されるそうですから、ぜひ私たちの改正要綱、改正案を精密に調査いただきたいと思います。 次に、離婚訴訟の場合の裁判管轄、これもさまざまな弊害が生じているわけで、これを改めようとする立場にもちろん私たちは賛成で、私たちの改正案も同じような立場をとっております。 次に、当然手がつけられなければならないのは相続分の改正だと思います。私たちは、たとえば配偶者と子が相続人である場合、現在は配偶者三分の一、子が三分の二であるのを、配偶者二分の一、子が二分の一というふうに改むべきだと考えております。配偶者と直系尊属の場合は、現在配偶者二分の一、直系尊属二分の一ですが、これを配偶者三分の二、直系尊属三分の一に改めるべきだと主張しています。配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合は、現在は配偶者三分の二、兄弟姉妹三分の一ですが、これを配偶者十割にする、そして兄弟姉妹の相続権というのは、他に相続人がいない場合にのみ認めたらどうかという立場で法案大綱を発表したし、すでに国会に出しています。この点はすでに前回幾らか論議されたようですが、将来こういう方向で検討する余地があるのかどうか。それとも当分この問題には手をつけないのか。私たちの改正案との関係で簡単に説明してください。簡単で結構です。
○香川政府委員 いまお示しの意見、考え方も一つの考え方としまして、現在法制審議会の民法部会身分法小委員会で検討されておるわけでございます。これは私どもといたしましては、身分法の分野で法制審議会で検討を煩わす事項が多々あるわけでございますけれども、相続関係についてはできるだけ早く結論を得るようにということでやっておるわけでございます。率直に申しますと、一般の国民の意識が一体どういうことを望んでおられるかということを把握することが基礎でございますが、私は、個人的な見解で恐縮でございますけれども、単に二分の一とか三分の一とかいうふうな画一的なやり方だけでは事足りないのじゃないか。つまり、借金がある場合に、仮に三分の二を相続するとなれば三分の二の借金も相続しなければならないということにもなりますし、また財産によりましては、現に居住しておる家屋の相続関係というふうなものは単に二分の一とか三分の二とかいうことではなしに、そこに住む必要性のある人に相続させるというふうなこともやはり必要でなかろうか。 そういう意味でいろいろの場合を考えまして、もう少し相続法としてはきめの細かい規定を設ける必要があるのではないかというふうに考えておりますが、いまお示しの案も一つの案としまして現に身分法小委員会で検討されておるわけでございまして、できるだけ早急に結論を出していただきたいというふうに考えております。
○諫山委員 いまの問題も検討中だそうですから深入りはいたしません。ただ、婦人団体などが婦人の地位の向上、妻の地位の向上ということで非常に関心を寄せているのはこの問題です。妻と子の関係をどう見るのか、妻と親の関係をどう見るのか、こういういわば家族関係の基本に触れる問題で、ぜひ私たちの改正案を十分検討しながら作業を進めていただきたいと思います。 次に、嫡出子、非嫡出子の法定相続分を平等にすべきだという改正案を提出しました。これもさんざん論議されたところで、学界ではほとんど異論を見ないのではないかと思うのですが、なぜこれが取り入れられていないのか。さらに、これを取り入れる検討がされているのかどうか、御説明ください。
○香川政府委員 嫡出子と非嫡の子供が生まれます前に、まあきわめて冷ややかにと申しますか考えますと、おっしゃるような相続分を平等にすべきだという議論も十分成り立つと思うのであります。しかし、これも先ほど申しましたように一般的に全く平等にするということが果たして国民感情に合致するかどうかというふうなことも十分考えなければならぬわけであります。これも法制審議会での議論では、必ずしも平等にすべきだという意見が多いわけではないのでございまして、いろいろの考え方があってまだ結論を得ていないということでございますので、いましばらくお待ち願いたいと思います。
○諫山委員 生まれた子供に罪はないという言葉でこの問題は説明されているのですが、ぜひ私たちの改正案を取り入れる立場で検討していただきたいと思います。 次の問題は、配偶者の寄与分です。これも学界でずいぶん議論されています。私たちの法案大綱では、特別の役割りをした相続人は相続のときに相続分にプラスして寄与分を認められるようにします、さらに、相続の場合と同様、離婚の際の財産分与に配偶者の寄与分が認められるようにします、こういう立場で法案を提出しています。これも当然取り入れるか入れないかということが論議されていることと思いますが、どうなっていますか。
○香川政府委員 相続分の画一的な決め方と関連いたしまして、いまの寄与分の制度も十分検討すべきことだということで法制審議会で検討中でございます。結局寄与分の制度を設けますと、現在の家庭裁判所を煩わすことになるわけでございまして、なかなかこの問題も、抽象的にはおっしゃるとおりでございますけれども、実際の運用はいろいろむずかしい問題がございますので、さような運用面もあわせて検討されておる最中でございます。
○諫山委員 この寄与分は、私たちの改正案では配偶者ということになっているのですが、現実の運用ではやはり妻の地位を向上させるという役割りを果たすと思うのです。ぜひ検討していただきたい。 さらに相続税法の問題です。私たちは次のような法案要綱を発表しています。居住用資産を夫婦間で贈与した場合、現行では結婚後二十年以上たった夫婦に限って贈与財産から一千万円を控除して贈与税をかけることになっています。これを結婚後十年以上に短縮するとともに、十年以下であっても結婚期間に比例する控除を行うように改めます。これは非常に現実的な問題です。夫婦間で財産をやりとりする場合に、莫大な税金を取られるか取られないかという問題で直接的には税法の問題ですが、妻の地位を向上するという点で緊急に解決を迫られている問題です。これは当然大蔵省でも検討してあると思いますが、法務省ではどうなんでしょう。
○香川政府委員 ただいまの御指摘の問題のみならず、相続分を決めるに当たりましても、やはり相続税法と実際問題としては非常に関連を持ってまいりますので、法制審議会で議論する過程におきまして、大蔵当局の意見も十分聞き、また私どもの希望も申し述べて善処していただくように配慮したい、かように考えております。
○諫山委員 私たちが国会に提出している民法改正案というのは、民法の抜本的な改正、全面的な改正と言うよりか、当面緊急に解決を迫られている幾つかの問題、とりわけ妻の地位を向上させるという立場からの改正案です。そういう点から見ると、政府の提出した改正案に私たちは賛成ではありますが、もっともっと多面的な改正をすべきではないかという立場から私たちの意見を述べたわけです。この点は、これで当面民法の改正は一段落ということではなくて、これからずっと継続的に改正が続けられる予定のようですから、ぜひ私たちの積極的な提案を検討し、受け入れていただきたいということを要望します。 さらに戸籍法の改正です。この問題については私も詳細に質問したし、青柳委員からも質問がありました。私は一番最初に述べましたように、この改正案に賛成だとか反対だとかいう立場から質問するのではなくして、改正案の中に含まれている疑義をただしたいという立場から質問しました。いろいろな疑義があるということを痛感したわけです。この点は青柳委員の質問も同様だったと思います。賛成とか反対という立場ではなくして、これにはこういう問題はないのかといって疑義をただすという立場からの質問です。 そこで、この戸籍法改正をどう見るのかというのはなかなか複雑な問題です。戸籍公開を制限することの是非については社会的にもまだ確たる合意ができ上がっているとは言えないと思います。解明されなければならない問題が幾つもあります。ですから私たちは、この戸籍法の改正部分については賛否の態度を留保したいと考えております。しかし今度の民法改正、これは不十分ではあるけれども現行法よりか明らかに一歩前進ですから、私たちは賛成したい。しかし、これで足れりとするのではなくして、もっともっとりっぱな民法につくりかえていくべきではないのかというのが私たちの党の正式な態度です。 このことを表明して、質問を終わります。
○大竹委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。 —————————————
○大竹委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。 本案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○大竹委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○大竹委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
○大竹委員長 次に、横山利秋君外六名提出の政治亡命者保護法案を議題とし、提出者から趣旨の説明を聴取いたします。横山利秋君。
○横山議員 ただいま議題となりました日本社会党提案の政治亡命者保護法案について、提案者を代表し、提案の理由及びその概要を御説明申し上げます。 すでに御承知のように、国際的に一九五一年の難民条約があり、わが国も速やかにその批准をするよう強く求められているのであります。 数年来、わが国に庇護を求めて入国した外国人や強制送還を拒否して訴訟を起こした外国人などがあり、その都度政治問題化しております。わが党は四十四年この課題にこたえて、国会に法案を提案いたしましたが、成立に至りませんでした。 今回六十五カ国に及ぶ難民条約加入国の増加等、国際情勢の変化にもかんがみ、新たな検討を加え、本法案を提出した次第であります。 以下法案の概要について説明申し上げます。 第一に、法の目的として世界人権宣言第十四条の規定の趣旨にかんがみ、政治亡命者の保護を図るため、これに対する在留資格の付与その他必要な事項について、出入国管理令等の特例を定めることとしております。 第二に、政治亡命者の定義は難民条約と同様とし、人権、宗教、国籍、特定の社会的集団への所属、または政治的思想を理由として自国において迫害を受けるおそれがあるため、自国の外にあり、自国の保護を受けることができず、または自国の保護を受けることを望まない者としております。 第三に、本邦にある外国人は永住許可者を除き、すべて政治亡命者としての在留資格の取得ができるものとし不法入国者、不法残留者なども法務大臣へ申請することによって、在留資格を取得できることとしております。 第四に、申請に対する許可または不許可の処分があるまでの間、不許可の処分に対する出訴期間、及び当該処分についての取り消し訴訟の係属中は本邦から退去させることができないものとしております。 第五に、政治亡命者といえども一定の場合には退去強制を求めるものとしておりますが、その事由は出入国管理令二十四条に比して著しく限定しております。 第六に、右の場合の送還先については本人の国籍国でなく、本人の希望する国としてあります。 第七に、政治亡命者としての在留資格を取得した者については、当該在留資格の取得前の不法入国等の行為は処罰しないものとしております。 その他、在留資格の変更、更新など所要の規定をしております。 一九四八年の世界人権宣言は、人類の基本的権利と自由を平等に享受することを明らかにし、国連はあらゆる機会に難民に対し深い関心を示し、この基本的権利と自由を可能な限り最大限に難民に与えようと努力し、また難民の地位に関する国際条約の批准を全世界に求めています。 近代国家としてわが国がいまもなお、世界の大勢にかかわらず難民条約の批准を怠り、国会に条約等を提出しないことは遺憾なことと言わなければなりません。 この際、政治亡命者の在留資格など最小限度の要点について難民条約の批准前といえども法定することが緊要と考え、本法案を提出した次第であります。 何とぞ御審議の上、速やかに御賛同を賜らんことをお願い申し上げます。
○大竹委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。 本案の質疑は後日に譲ることといたします。 次回は、明十九日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午前十一時三十六分散会