法務委員会 第9号
- 発言数
- 460 件
- 登壇者
- 14 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1976/05/12
会議録
○大竹委員長 これより会議を開きます。 お諮りいたします。 本日、最高裁判所寺田事務総長、田宮総務局長、岡垣刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○大竹委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ————◇—————
○大竹委員長 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
○稲葉(誠)委員 だんだん問題に入っていくのですけれども、最初のところは余り関係ないことを聞きますけれども、刑事記録が確定しますね。確定した場合、だれでも閲覧できるわけでしょう。それはどういうわけでしょうか。
○安原政府委員 本来、裁判は公開でございますから、公開の法廷で行われた訴訟の経緯を記録したものが確定をいたしますれば、それは秘匿をする必要はないという意味で何人でも閲覧できることになっているものと思います。
○稲葉(誠)委員 いまの問題は後でひっかかってきますが、刑訴法四十七条の問題で、ただし書きがあるのとないのとではどういうふうに違うのですか。
○安原政府委員 非常に哲学的なお尋ねで、ただし書きがなければ、公益上の必要があっても公開ができないということに、一応文理上はなると思います。
○稲葉(誠)委員 そうすると、どうしてただし書きがついたのですか。
○安原政府委員 詳しい経緯は存じませんが、要するに、この事柄は別に、条文にただし書きがあるから公開ができ、ただし書きがなければ公開ができないものかどうかということ自体、いわゆる国家公務員の税法上その他の守秘義務と同じように、本来本文で秘匿することによって守ろうとする公益に優先するような公益があれば、それは優先する公益に一歩譲るべきであるということは、守秘義務全般について言えることであると同じように、訴訟法上の記録につきましても、ただし書きがあるから、ないからということでは、本質的にはないように思いますけれども、それを明らかにしておくことがよりベターであるという意味において、ただし書きができたものと思います。 私の聞くところによりますと、刑訴法立法の過程におきまして、いわゆる国政調査権というようなものに対する関係で開示する必要のあることもあるということも当然に意識されて、このようなただし書きができたものというふうに聞いております。
○稲葉(誠)委員 そうすると六法全書を見ますと、四十七条のただし書きのところの参照条文に、これは編集者が勝手に書くんで、あなた方が書くわけじゃありませんけれども、「公益上の必要の例国会一〇四報告・記録提出の請求」というふうにありますね。これは一体どういう意味なんでしょうか。これは条文には書いてないわけですけれども、「公益上の必要」の例として国会法の百四条の例がどの六法全書にも引いてあるわけですが、これは具体的にはどういうことを意味しているわけですか。
○安原政府委員 十分御承知のことをお尋ねになるので、恐縮でございますが、要するに公益上の必要性のある一つの例として国政調査権に基づく国会法百四条の記録、資料の提出要求というのが一つの適例であるということで何人もそれを列挙しており、それは全く通説でありますから、何ら間違いはないと思います。
○稲葉(誠)委員 いや、だれも間違いがあるとかなんとか言っているわけじゃないのです。 そこで、私どもの松浦議員が三月二十三日に「議院の国政調査権と公務員の守秘義務等との関係に関する質問主意書」というのを出しているわけですね。これに対する答えが三月三十日に総理大臣から議長に来ているわけですが、この中で関係しておるのは、質問では四の日のところですね。 質問を読んでみますと、 刑事訴訟法第四十七条に公判開廷前における訴訟書類の非公開をうたい、同条但書において、公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる場合には公開するものと規定されているが、国政調査権の発動による資料要求等があつた場合には、これに応ずることはもちろん、むしろ国民全体の利益のために公開されるべきものと思うがどうか。こういう質問ですね。 これは大臣に聞きます。この総理大臣からの答え、これは恐らく大臣もこれに参画したんだと思うのですが、この答えのやはり四の日のところは、こういう答えですね。 刑事訴訟法第四十七条本文が訴訟関係書類の公判開廷前における非公開の原則を定めているのは、訴訟関係人の人権を保護し、また、捜査及び裁判に対し不当な影響が及ぶことを防止しようという公益上の必要によるものである。 同条ただし書が、公益上の必要その他の事由があつて相当と認められる場合に訴訟関係書類の公開を認めているのは、非公開とすることによつて保護される公益に優先する他の公益上の必要があると認められる場合に例外的取扱いを許したものと解される。したがつて、国政調査権の発動による資料の提出要求に応じて訴訟関係書類を公開できるのは、刑事訴訟法第四十七条本文によつて保護されるべき公益より国政調査権の行使によつて得られるべき公益が優先する場合に限られるものと考える。右答弁する。こうありますね。 問題は、この最後の「したがつて、」以下ですよね。「したがつて、国政調査権の発動による資料の提出要求に応じて訴訟関係書類を公開できるのは、刑事訴訟法第四十七条本文によつて保護されるべき公益より」、これからですね、「国政調査権の行使によつて得られるべき公益が優先する場合に限られるものと考える。」、こういうわけですね。そうすると、大臣、この場合の具体的な例はどんなことがありましょうか。
○稻葉国務大臣 まあ、あれですね、あなたはロッキード事件に関して御質問になるんですからその方がわかりやすいと思いますが、起訴になればもうわかるんですから、それで刑事責任、また当然に政治的、道義的責任も伴って明瞭になるわけですな。ただ、不起訴という場合とか、あるいは不起訴の中にも、贈収賄の構成要件に該当しないという場合と時効になったという場合と両方あると思いますね。そういう場合に、仮に国会から一〇四に基づいてその資料要求があった場合にどっちが優先する公益かということになろうかと思います。
○稲葉(誠)委員 いまのは非常に抽象的な答えで、ぼくはもう少し具体的に聞きたいわけです。 まず具体的に聞きたいのは、不起訴になったという場合、いろいろの場合があるわけでしょう。いま大臣がおっしゃったように、犯罪を構成しない場合ということが一つの要件ですよね。それははっきりそうですよね。全然シロなものを公表しろというのは、これはぼくは人権じゅうりんだと思いますからあれですが、そうじゃなくて、ロッキードの問題に限って言ったときに、不起訴の中にもいろいろなジャンルがある。それから時効の場合もありますけれども、どういうジャンルが考えられるわけでしょうか。 たとえば、一応こういうことが考えられますね。資金を受け取った事実がはっきり裏づけられない場合、この場合に発表しろというのは、これはちょっとあれだとぼくは思うのです。それから資金を受け取った証拠はそろっているけれども、そのいわゆる高官の職務権限の範囲外の行為の対価であるから収賄にはならないという場合もありますね、第二の場合。第三の場合、高官自身は資金を受け取っておらず、後援会、派閥が受け取った場合で、その高官が贈賄者から特別の依頼を受けていたことの証拠がない場合、第三者贈賄の場合ですね、この場合。それと、明らかに収賄罪が成立しているが、時効にかかっている場合。こう分けなければいけないんだと私は思うのです。分けた場合、国会の方で正式な百四条の請求があった場合に、一体どの場合には公表するのが公益に合致をし、しないのが合致するかということについて、具体的にはどういうふうにお考えでしょうか。
○稻葉国務大臣 それは言えませんね。
○稲葉(誠)委員 いやいや、言えないということじゃなくて、ぼくの言うのは、言えないという理由を聞きたいわけです。ただ言えないだけじゃ答えになりませんから、その理論構成というものを聞きたいわけです。そうすると、言えないという理由はどういうところにあるわけですか。あなたも守秘義務を持っているわけですか。
○稻葉国務大臣 仮に私が、あなたのお読みになったその順序の上で、この場合にはこちらの方の公益が優先しそうですから、それは公表に応じなければならぬでしょうねというようなことを申し上げるわけにはまいりません。そういうことを申し上げると、いま捜査中の段階で邪魔が入るということに、どうしたってなりますよ。
○稲葉(誠)委員 だから、邪魔が入るというのはどういう邪魔が入るのか、ちょっとわからないな。聞いている人には本当にわからないもの。どういう邪魔が入るのか。
○稻葉国務大臣 任意捜査に応じてくれる人の範囲を狭めるということです。
○稲葉(誠)委員 ちょっとその理屈、よくわからないのですけれども……。 そうすると、あなたの答弁を聞きますと、灰色と言われる、いわゆるいろいろな内容のものがありますね。仮にいまぼくが言った四つのことを挙げたとして、その間に濃淡の差がある、そのことは認めるわけでしょう。それはもう当然ですね。
○稻葉国務大臣 濃淡の差があります。
○稲葉(誠)委員 濃淡の差があるということは、どっちが薄いか、どっちが濃いかということは、大体いまぼくが読み上げた順序だと思うのです。そうすると、濃い方の場合については、国政調査権の発動に対応する場合に公表の度合いも、比例して普通濃くなる。ここまでは言えるんじゃないですか。それはあたりまえの話だ。
○稻葉国務大臣 その場面にぶつかって、どちらの公益が優先するかという判断の問題でございまして、いま捜査中のこの段階で先のことを想定して言いますことは、先ほど言ったように、いろいろこれを捜査する場合の任意調書をとるということに対して相当な妨げになることは常識じゃありませんか。いまこの段階でそういうことを申し上げる必要はないでしょう。うやむやにするなんという考えは毛頭ありませんけれどもね。
○稲葉(誠)委員 こっちの公益とこっちの公益がどっちが優先するかということをだれが最終的には判断するのですか。いろいろ説があるんですよ。書類を持っている者が判断するんだという説もあるし、行政権の主体が判断するんだという説もあるから、そこら辺のところはどういうふうになっているわけですか。
○安原政府委員 刑事訴訟法四十七条の適用を前提にいたしますれば、これは訴訟の書類を保管している検察官が判断するものでございます。
○稲葉(誠)委員 その検察官が判断するのは第一次的な判断で、それに対しては、検察庁法なり何なりによって最終的には法務大臣あるいは内閣総理大臣が判断する、こういうふうに承ってよろしいでしょうか。
○安原政府委員 ああいう、たとえば不起訴処分になった内容の公表をするということは、いわゆる具体的な事件の取り調べ、処分に関する検察事務でございます。そういうふうにわれわれは検察庁法十四条を理解しております。したがいまして、法務大臣はそれに対しまして指揮権はお持ちでございます。また、法務大臣を介して内閣の首長である総理大臣も指揮権を持っておるというふうに考えることは、理論的にはさようなとおりであります。
○稲葉(誠)委員 ことしの二月二十三日に本会議でロッキード問題に関する決議というのがされました。ここにありますけれども、こればおわかりだと思うのですが、アメリカなり政府に対しての要請ですね。 本院は、ロッキード問題のわが国に関するいわゆる政府高官名を含む一切の未公開資料を提供されるよう米国上院及び米国政府に特段の配慮を要請する。 本院は、本問題に関するすべての疑惑を解明することが、真の日米友好にとつても重要であり、国民の要望にこたえる道であると確信する。 政府においても、右の趣旨を体し、特使の派遣等を含め本問題の解明のため万全の指置を講ずべきである。こういう一つの決議です。これはどういうふうに理解するか、理解の仕方があると思うのですが、外国に対して、こういうふうなことの一切持っておる未公開資料も要求しろと言っておるのですから、それは日本の国会が行政権の主体である日本の政府に対してもそういう資料を、アメリカからもらった資料というだけじゃなくて、いま不起訴になった場合での資料、これをも含めという趣旨を含んでおるというふうに理解していいんじゃないでしょうか。そこはどうなんですか、大臣。
○稻葉国務大臣 私は、いま挙げられました国会の決議というものは、日米間でこの事態の究明を、シロクロをはっきりさせる、こういうことが政治の不信をなくして、日米両国にとってもいいじゃないか。それにアメリカも協力してもらいたいという意味は含んでいると思いますね。アメリカから起きてきた事件のようなものだから大いに協力してもらいたい。しかし公開ということは、それぞれの国の法制、慣例があることだから、そんなことはもう当然に前提として言われているのですから、アメリカから捜査協力の意味において実務協定をした資料、それに基づいてもらった資料をいまこの段階で全部公開するなんということは、その国会決議の中には要求されていないと思います。
○稲葉(誠)委員 それはわかっているのですよ。そういうことを聞いているんじゃなくて、外国に対して未公開の資料まで公表しろということを要求しているくらいなんだから、そのことは四十七条ただし書きというか、そういうような不起訴の場合にでもそれを公表するということまでもジャンルは違いますよ、ジャンルは違うけれども、そういう意味をも国会の決議は広く包含をしている、国民の意思がそこにあるんだというふうに理解をしていいんじゃないか、こう聞いているのですよ。
○稻葉国務大臣 そういう希望のあることは、私も理解します。
○稲葉(誠)委員 そうすると、国民はいわゆるこの事件がうやむやになるのではないかという危惧を持っておる。そして、いま私が言ったように、四つの段階があるとして、不起訴になった中で、このほかにもあるかもしれませんけれども、金を受け取ったかどうかわからぬというようなことを仮に調べられたからといって、そんなものを発表しろとは要求してはいないけれども、少なくとも二、三、四の問題時効にかかったものとか、あるいは金は受け取っておらないけれども後援会に金をやった形になっていて、第三者供賄の場合、法律構成が非常にむずかしいとか、それから職務権限が非常に微妙であるとかいうふうな問題がありますね。こういうふうな問題については、国民は、こういうものも捜査の終局段階においてどこが発表するかは別として、発表するということがこの問題の解明というか政治不信というか、そういうふうなものを取り去るために必要なんだというふうに考えておるんだとあなたはお考えになりますか。
○稻葉国務大臣 私、ただいまのロッキード事件に関するこの段階では、検察庁は鋭意捜査して全部つかまえよう、捕らえよう、逃がさんぞ、こういう気持ちでやっているいまこの段階で、逃がした場合はどうなるかということについて余り深入りしたくない。すぱっとつかまえて刑事責任を明らかにすれば、道義的、政治的責任は当然伴うのだ。そうして道義的、政治的責任を追及する場所はわれわれではないのです。検察ではないのです。そればあなた方の方なんだから、あなた方のほうでそういうときに出せ、こう要求をなされるべきであり、まだそういう要求は出てないのです。あなたは希望されているかもしれないけれども、正式な要求ではないのです。そういう段階ですから、そういうことについてお答えはできません、こう言っておるのです。
○稲葉(誠)委員 刑事責任と政治道義は別だということ、これはわかりますよ。政治道義の問題は国会が究明するんだ、これもあたりまえの話。今度は特別委員会ができるし、全体がやる、あたりまえな話。そのときに、いわゆる不起訴の場合の内容があります、いま言ったように濃淡があるけれども、その不起訴の内容を公開することが政治道義の追及のために国会が必要だということになれば、そこで公開せざるを得ない、こういうことになるでしょう、あなたのお答えでは。大変力まれたけれどもそういうことになるでしょう。いいです。答えなくていいですよ。(稻葉国務大臣「いやそうじゃないです。わしはそう思わぬです」と呼ぶ)それじゃどういうふうに思うのです。これはおかしいな。
○稻葉国務大臣 その場合にどうだと言うから、その場合に考える、こう言っているのだ。その場合に出すといま言っているのじゃないですよ。その場合に考える、まだ出てこないんじゃないですか、こう言っているのです、私は。わかりましたか。
○稲葉(誠)委員 よくわかりましたから、その場合に出すということは、政治道義の追及の問題というのは検察庁ではない、これもわかります。あたりまえの話ですね。そんなことをやったら検察ファッショになっちゃう。それは大変な騒ぎになるから、国会がやるべきことだ。だから、政治道義の追及に国会が必要だと考えるときには、そのときになって考えるのだ。考えるけれども、それは当然国会の意思を体して前向きに考える。——前向きじゃなくてもいい、考えるということでしょう。
○稻葉国務大臣 国会の国政調査に協力すべきことは当然なんです。それは議長裁定に特別に書かなくても当然なことなんだ。
○稲葉(誠)委員 余り質問するとかえってあれになりますから、ここら辺でとめておきましょう。いまの答えで大体いいのじゃないかと思いますね。 そうすると、いまあなたが言われたように、うやむやにしないとか、何かうんとつかまえるとかいうような話がありましたね。そうすると、捜査は順調にいっているのですか。
○安原政府委員 順調というのはどういう意味かはなかなか微妙でございますが、鋭意捜査をしておって、よどみはございません。
○稻葉国務大臣 国会の国政調査権に協力することは当然だ、こういう意味は、必ず、この国会の要求があれば何でもかんでも出す、これこれ出せと言ったらそのまま出す、そういうことではないのですよ。
○稲葉(誠)委員 いまのは私が答弁を求めたことでもないし、大臣が言われたのは議事録に残りますけれども、大臣の言葉ですが、私はちょっと耳が悪くて聞こえませんでした。 それから、何かこの前刑事局長ですか、何委員会かで言われたのは。よどみなく進んでいるのは結構ですが、百人以上調べられたとか言われましたね。大臣が、そんなことはしゃべらない方がよかったと言って怒ったとか怒らないとかいう話があるんだけれども、そうすると、いままで調べられた人というのは、まず差し支えない範囲で分けると、国会に証人として喚問されましたね、その人も入っているわけですか。調べられたというのは被疑者として調べられたという意味もありますよね。いろいろある。参考人の場合もあり、いろいろあるんだけれども……。
○安原政府委員 いまいわば任意捜査、調査の段階でございますので、あくまでも相手方の協力を得なければ調べが進まないということでございますから、いまだれを調べたかということは、ひとつ御勘弁願いたいと思います。 ただ、抽象的ではございますが、鋭意捜査をしている一つの姿を象徴する意味で百人以上の者を取り調べたということを申し上げたわけでございまして、それによりましてひとつ御推察をいただきたいと思います。
○稲葉(誠)委員 そうすると、よくわからぬけれども、この捜査はセミの鳴くころに終わるという説もあるし、それから夏休みのころに終わるという説もあるし、(「うやむやという説もある」と呼ぶ者あり)うやむやという説はないだろうけれども、いろいろな説があるわけだよね。そうすると、おおよその時期的な目安はどこに置いているのですか。来年ぐらいかな。
○安原政府委員 未来永劫に捜査をするなどということは考えておりませんけれども、やはり真相究明ということが検察の第一の目的でございますので、いつまでに終わらなければならぬというタイムリミットも持っておりません。
○稲葉(誠)委員 児玉譽士夫の方は何か脱税と外為法で起訴しましたよね。起訴したでしょう。そうすると、片方の方はどうなっているのですか。丸紅関係はどうなっているのですか。
○安原政府委員 容疑事実のもとに押収、捜索を行ったことは公になっておりますが、いまだ起訴の段階には至っておりません。
○稲葉(誠)委員 片方が起訴になって、片方が起訴にならないというのはどういうわけなんだ。どこでそういう違いがあるんだ。片方の方はむずかしいのか、どうなの、それは。
○稻葉国務大臣 色合いの違いがあるからでしょうと思います。
○稲葉(誠)委員 まあいいでしょう、色合いの違いがあるということは。片方は外為法違反でしょう。片方も外為法違反ですね。だから、そんなに色合いの違いがあるはずないと思うのだけれども、具体的にどういうふうに色合いが違うのでしょうか。わかっている範囲でいいですよ。色合いが違うというのはどういうふうに色合いが違うのだろうか。
○安原政府委員 まさに捜査の内容でございまして、申し上げるわけにはいきません。 ただ、まだ公訴提起がない以上は、まだ公訴提起をするについての十分な証拠が集まっていないのか、あるいはまだ公訴を提起することが相当でないと考えているのか、どちらかであろうと思います。
○稲葉(誠)委員 そこで問題となってくるのは、「ロッキード・エアクラフト社問題に関する法執行についての相互援助のための手続」というのがありますね。この七条、これは現在はどういうふうに進んでおるのですか。 まず最初の質問をしましょうか。この「相互援助のための手続」を結んだときになぜ七条が入ったのですか、そこから聞いていきましょう。
○安原政府委員 この実務取り決めは、要するにロッキード・エアクラフト社の日本国内における企業活動に関連した不正行為についての究明を目的として日米両国が捜査、調査、裁判上の共助をするというのが目的でございますから、特にこのロッキード・エアクラフト社の問題につきましては、日米両国にまたがって証人、参考人となるべき者あるいは証拠物となるべき物が存在すると認められますので、当然のこととして司法共助の問題が捜査、調査、裁判の目的達成上必要になるということで、この規定が入ったものと理解しております。
○稲葉(誠)委員 七条というのは、——これは七条というのか七項というのか、「当事者は、他方の国において行われることのある刑事上、民事上及び行政上の裁判又は審理に関する手続に関連してその国の司法当局により発せられる嘱託書による嘱託事項の迅速な実施を援助することにつき最善の努力をするものとする。」と、こう書いてあるわけですね。 そうすると、これは後で聞きますが、刑訴法の二百二十六条の問題でしょう。それだけでもないかもわからぬけれども、一応これですわね。この協定を、第七項を結ぶ前に、法務省は鹽野さんとそれから吉田刑事課長が行ったのかな、その前に最高裁へ行っていろいろ相談をしているようですね。最高裁はどういうふうな相談を受けたのでしょうか。あるいは相談と言えるかどうかは別として、どういうふうな話があったのか。そこら辺のところを両方から説明願いたい、こう思います。
○安原政府委員 いま御指摘の第七項をごらんになりましても、この実務取り決めというのは、要するにわが法務省とそれからアメリカの司法省との間のその職務権限の範囲内における取り決めでございますから、裁判所の司法共助そのものを行いますということをお互いに協定するのは権限外でございますので、ここに書いてございますように、そういうことが実現されるように当事者は、すなわち米国司法省及び法務省は努力をするという努力目標をここに掲げてあるわけでございます。 そういう意味におきまして、この規定や協定をつくるに当たりまして、われわれ法務省として努力をするということを書くことが協定の内容でございますから、当然にはわが国の裁判所を拘束いたしませんので、このような規定を置くこと自体につきまして、裁判所に連絡をして了承を得たということはございません。 ただ、こういう規定を、先方のプロポーザルでございますが、ありましたことにつきまして、そういうことが可能なのかどうかということを二百二十六条の運用を含めて裁判所に見解を聞いたことはございますけれども、これはあくまでもわれわれが判断をする場合の資料として最高裁の考え方を聞いただけでございまして、この規定を置くこと自体について裁判所と相談をしたという事実はございません。
○稲葉(誠)委員 いや、この規定を置くこと自体について裁判所と相談したとは聞いていないので、この規定を置いたら具体的にどういうふうにやるかということが当然問題になるわけですね。その手続その他のことについて最高裁に、相談という言葉は悪いかもわからぬけれども、話に行ったというのか、何という言葉を使っていいかわかりませんけれども、何かあったのじゃないですか。最高裁の方からひとつ答弁願います。
○岡垣最高裁判所長官代理者 先ほど法務省の方から答弁がありましたように、七項を置くことの可否とか内容とかいうことについては相談はございません。ただ、従前外国に対して証人尋問の嘱託などをした例はあるのか、あるいはする場合にはどういうルートを通っていくのかというふうな照会がございまして、それについてわれわれの方の調査の資料から回答したことはございます。
○稲葉(誠)委員 私が不思議に思うのは、この第七項ができている以上、これは恐らく前提としてロッキード社の——名前は言いませんよ。名前はだれか別として、それを証人として何らかの形で、日本の裁判所からアメリカの裁判所に嘱託して調べるということが前提となって、結んだと思うのですよ。これはそういうことを考えて結んだと思うのですよ。それなのに、いまだに事が解決しないわけでしょう。堀田君が向こうへ行っているけれども、解決しないのでしょう。——じゃ、質問を変えましょうか。質問を変えてもいいですよ。それは後の質問にしてもいまの質問になりますけれどもね。 これは裁判所を通じての証人尋問の前提として任意捜査に応じてくれれば一番いいわけだ。そのために堀田君が二回行っているわけだ。堀田君は、第一に目的は、どういう資格で何しに行ったのかということと、行って何をしているのかということだね。そのことは一体どうなっているのです。
○安原政府委員 第一回目に堀田君が参りましたときは、法務省参事官ということでございまして、いわばいま御指摘のアメリカにおける捜査活動におけるいろいろの問題点というものを調査し、かつ先方の、何と申しますか意向を打診して帰ってきたという程度のことでございますが、今回は、彼は東京地検の検事といたしまして、もう少し具体的に先方関係者とのインタビュー、面接、取り調べの問題につきまして、向こうの受け入れ体制につきまして調査しに行っているという段階でございます。
○稲葉(誠)委員 法務省の参事官として行く場合と、東京地検の検事として行く場合とおのずから目的が違うわけだよね、いまあなたが言われたけれども。率直な話は、ロッキード社側の人を任意捜査に応じてほしいということが要望なんでしょう。その取りつけに行っているわけなんでしょう。それはだめなのか。成功しないのかい、これはどうなっているのですか。
○安原政府委員 御指摘のように、東京地検検事として行っておりますので、第一回目と違いまして非常に具体的な調査に行っておるわけでございますが、いま先方がそれに応ずることになったかどうかということは、ちょっとこの段階で申し上げることは控えさせていただきたいと思います。
○稲葉(誠)委員 それはぼくも、いまこういう段階ですから、そのことについて余り聞くのも——その点もっと聞きたいのです。聞きたいのだけれども、それは適当にしておきますけれどもね。 そうすると二百二十六条というもの、これは公判前の証人尋問の請求なんだけれども、それはいきなりできるわけではないでしょう。たとえば参考人として呼んで、何回呼んでも出てこないという場合に、その疎明資料をつくって、そして公判前の証人尋問の請求を裁判所にするわけでしょう。いま言うロッキード社のだれかれが任意捜査に応じない場合の証人尋問の請求、二百二十六条による証人尋問の請求というのは具体的にどういうふうにやるのですか。——その前に、二百二十六条というのを説明してください、なかなかわかりにくいところですから。
○安原政府委員 二百二十六条は、「犯罪の捜査に欠くことのできない知識を有すると明らかに認められる者が、第二百二十三条第一項の規定による取調」、これは検察官、司法警察職員による任意の取り調べでございますが、これに対しまして出頭を拒んだり、あるいは出頭しても供述を拒んだ場合に、第一回の公判期日前に限りまして、検察官から「裁判官にその者の証人尋問を請求することができる。」という、広い意味での証拠保全の規定でございますが、おっしゃるとおり、前提としては、出頭または取り調べを拒んだという条件がついておることは明らかでございます。
○稲葉(誠)委員 この二百二十六条というのは、刑訴ができたときに大分使われましたよね。近来はほとんど使われないわけだ。——ほとんどと言っては悪いかもわからないけれども、公安事件なんか多少使われているけれども、これは余り使わなくなったわけでしょう。日本でも二百二十六条が行われるときには、まず秘密でしょう。非公開でしょう。それから検事も弁護人も立ち会わないでしょう。日本では、具体的にどういうふうにこれは行われているのですか。
○安原政府委員 二百二十六条の具体的な運用の状況につきましては、幸い最高裁刑事局長がおいでになりますので、お尋ねいただきたいと思いますが、運用のやり方につきましては、二百二十八条と規則の百六十二条に規定がございまして、それによりますと、「裁判官は、捜査に支障を生ずる虞がないと認めるときは、被告人、被疑者又は弁護人をその尋問に立ち会わせることができる。」ということになっておりますので、原則として被告人、被疑者、弁護人は立ち会い権がないということになろうかと思いますが、検察官の立ち会いにつきましては何ら触れるところがございませんから、裁判例によりますと、総則の規定によりますと、証人尋問には立ち会えるという規定が百五十七条にございますので、検察官は立ち会い権を有するものだというふうに解するのが通説のようでございます。 それはいわば運用の前提となる解釈論でございますが、なお証人尋問の実情につきましては、個々の事件によりまして異なるものがございますので、常に立ち会っておるか、立ち会わせてないかということは一概にはお答えすることはできないと思います。
○岡垣最高裁判所長官代理者 二百二十六条の問題につきましては、解釈は先ほど法務省から答弁があったとおりだと思います。 実際の実情は、件数としましては、大体過去十年ぐらいのところを平均いたしますと、地方裁判所で十六件ぐらいございます。それから簡易裁判所で三件ぐらいでございましょうか。しかし、その場合に検察官は、これは申請している者ですから当然尋問もいたしますし、立ち会っていると思いますが、弁護人、被告人、被疑者の方は実際立ち会っておるかどうか、それは、先ほどありましたように、捜査中の問題でございますので、私たちとしても実情は存じませんけれども、恐らく立ち会ってないのじゃないかと考えております。
○稲葉(誠)委員 そうすると、アメリカにいるロッキード関係の人がそういうふうに応じないというときにはこれを使わざるを得ないでしょう。具体的にはどういうルートでどういうふうにしてやるのですか。これは外務省がいればよかったけれども、外務省でなくても法務省でわかるでしょう。
○安原政府委員 これもいわゆる外国裁判所に対する司法共助の嘱託の手続一般の問題でございますから、むしろ裁判所御当局からお答えをいただいた方がいいのかと思いますけれども、要するに、出頭を拒みあるいは供述を拒んだ場合に二百二十六条が当然一つの捜査方法として考えられることは、いま御指摘のとおりでございます。 その場合、まず私の理解しておるところでは、日本の検察官が請求して、地方裁判所の裁判官が証人尋問の嘱託をするということを御決定なさいまして、それを最高裁判所を通じて外務省、外務省から在米日本大使館に行って、そしてアメリカの司法省にその嘱託書というものが届けられて、アメリカの司法省から関係の裁判所の方にその嘱託書が回るというような手続になるものと聞いております。
○稲葉(誠)委員 これはいろいろ意見があると思うのです。意見というのは、任意に捜査に応じればいいけれども、応じなかった場合の嘱託尋問というものによって調書が得られるということ、これは本件の捜査にとってどうしても必要なものですか。そこのところはどうなんだろう、それも聞かれて困るかね。
○安原政府委員 御推察のとおり、要は捜査の内容を申し上げることになりますので、申し上げるのは困ります。 しかし、一般論といたしまして、有力な関係者がアメリカにおることはいわば公知の事実でございますので、そうなれば有力な参考人、証人を調べるのもこれは捜査の方法として当然のことでございますから、これが唯一絶対の捜査方法であるかどうかを申し上げるわけにはいきませんけれども、要するに有力な捜査方法であることは、何人も否定できないと思います。
○稲葉(誠)委員 その有力な参考人というのが、場合によっては、日本の法律のいわゆる刑法犯に将来該当するということも考えられないわけではないということかな、それは。よく落ちついて答えてくださいよ。どうですか。
○安原政府委員 ロッキード・エアクラフト社の関係者で、真相究明の結果日本の公務員に賄賂を提供している者があるということになれば、何か問いをもって問いに答えるようですが、当然考えられることでございます。
○稲葉(誠)委員 その点、法務大臣どうなの。仮にそういうことになった場合に、そこで手を緩めるようなことはないの。
○稻葉国務大臣 手を緩めることはありません。ありませんが、あなた、犯罪捜査の過程で、一体国会でこういう微妙な点をこれほど論議したことがあるでしょうか。そういう点については、しばらく捜査当局を御信頼いただいて、こうやればいいじゃないか、ああやればいいじゃないかということを議員さんから余り指示をいただかない方が、捜査が非常に自由濶達で、範囲が広くて、犯罪糾明に役立つというふうに私は思うのですが、あなたは専門家ですから私よりよく御存じなんですから、よろしくお願いします。
○稲葉(誠)委員 それでいいでしょう。話はわかりましたから、これ以上その点については聞きませんが、検察庁としても全力を挙げてしっかりやってもらいたいということです。 そこで、別のことを聞くわけなんですが、小佐野賢治という人がいますね。この人が私の聞いたところでは、よくわからないのですが、法務省関係の役職に——役職と言えるのか、またこれは問題があるのですけれども、ついていたというふうなことが言われているのですけれども、具体的にはどういうふうな——役職という言葉はちょっと違うかもわからぬから、ポストと言うか何と言うか、個人の諮問機関か何かわかりませんけれども、どういうふうなものにいつごろまでついていたわけですか。
○石原政府委員 ただいまお尋ねの件は、法務省に審議会として置かれております矯正保護審議会のことであろうかと思います。 矯正保護審議会と申しますのは、法務大臣の諮問に応じまして、矯正及び更生保護の制度の運営に関する重要な事項を審議するために昭和四十二年に発足し、現在も続いている審議会でございます。 小佐野賢治氏は、私どもの記録によりますと、昭和四十二年七月十五日に、この矯正保護審議会委員に任命されて、その後五十年九月まで矯正保護審議会委員であったというふうな記録が残っております。
○稲葉(誠)委員 その矯正保護審議会というのはどんなメンバーがいて、具体的には何をやるところなんですか。
○石原政府委員 矯正保護審議会につきましては、法務省設置法にこれを置く根拠がございますが、それに伴いまして矯正保護審議会令という政令ができております。その政令の番号は、昭和四十二年三月十七日政令第三十四号でございます。 これによりますと、先ほど申し上げましたように、「法務大臣の諮問に応じて、矯正及び更生保護の制度の運営に関する重要な事項について調査審議する。」ということでございますが、審議会の委員は四十人以内で構成されます。そうしてその任期は二年でございますが、これらの委員につきましては、関係機関の職員及び学識経験者の中から法務大臣が任命いたしまして、その委員は非常勤の委員というぐあいになっております。
○稲葉(誠)委員 いや、具体的には何をやるの。ちょっとよく聞いてなかったんだけれども、具体的には何をやるの。 それから、なぜこの人がそういうふうな審議会の委員になったのですか。
○石原政府委員 まず任命の事情でございますが、小佐野賢治氏は、前から矯正行政に深い関心と理解を持っておられたということから審議会の委員に推挙されまして、昭和四十二年の七月に任命されたのでございます。 矯正保護審議会には部会が三つございまして、一つは矯正部会、一つは更生保護部会、一つは矯正保護科学部会でございます。 矯正につきまして御説明申し上げますと、矯正は行刑密行の原則というような原則もございますように、行刑の内容を世間の方に申し上げるのは、個人の名誉等に関係いたしますので、なかなかできない場合がございます。しかしながら、民意をできるだけ反映いたしまして、矯正行政の円滑かつ適正な運営に資するために、学識経験者等から成りますこの委員会を設けまして、重要事項については、いろいろな御意見を伺うということになります。 したがいまして、たとえて申し上げますと、先般、監獄法改正につきまして法制審議会に諮問いたしたのでございますが、これは法制上の御意見を伺うということでございますが、それに伴う運用上の基本事項につきましては、矯正保護審議会委員の御意見を聞くということに相なります。 また、少年法の改正作業が行われておりまして、これも先般、矯正保護審議会を開いて御意見を聞いたのでありますけれども、そこで出ました問題は、法律のたてまえじゃなくて、いわゆる少年院の運営、具体的に少年処遇の方法をどうするか、それから少年院が現状の数でいいのか、あるいはもう少し科学的な要素を入れた形でやらなければいかぬかというような、いわば運営面にわたることについてこちらから問題点を提起いたしまして御意見を伺う、あるいはそういう機会に、一般的に少年院のあり方、処遇の方法等についての御意見を伺うということでございます。
○稲葉(誠)委員 よくわかりませんけれども、小佐野賢治さんが推薦をされて約八年間いるわけです。それはだれがどういうふうな形で推薦したのですか。そこがどうもよくわからないのです。それは記録では明らかにならないのですか。法務省の方で主体的にこの人がいいと思って頼んだのかな。これはどうなんですか。
○石原政府委員 昭和四十二年と申しますと、十年一昔のちょうど一昔前のことでございまして、はっきりした記録も残ってはおりませんが、私どもの伺っている範囲におきましては、亡くなられました正木亮先生が御推挙されたということでございます。 なお、この部会の構成は、先ほど申し上げましたように、関係機関及び学識経験者でございますが、昭和四十二年当時におきましては、学者の方が七名、一般有識者が十四名、それから関係機関が十八名でございます。現在で申し上げますと、現在は学者が九名、一般有識者が十六名、関係機関の職員は十五名、なるべく役人を少なくしていこうということで一般有識者、学者を多くしているのでございますが、小佐野賢治氏はこの一般有識者の一人として推挙されたというぐあいに聞いております。
○稲葉(誠)委員 いまはこれはやめたのですね。やめたのはどういうわけなんですか。
○石原政府委員 矯正保護審議会委員の任期は二年でございますが、一応法務省の内規で余りお一人の方が長くやられるのはいかがかということで、大体四期程度お務めになりましたときにはおやめ願うという一般的なルールによりまして、ちょうど四十二年から八年間、二年ずつ四期でございますが、それで五十年に任期満了というような形でおやめになったものでございます。
○稲葉(誠)委員 わかりました。 そこで刑事局長、あなた、何回となくと言うと言葉が悪いけれども、二回か三回か、三木総理のところに直接呼ばれて、呼ばれたのかあなたの方から行ったのかしらぬけれども、たとえば鹽野さんたちがアメリカに行くときもそうでしょう。帰ったときもそうだ。行っているわけです。三木さんに会って、相当長い時間話をしている。三十分か一時間近く話をしているときもある。どういう時期に何回ぐらい三木総理のところに呼ばれて、何を話したのですか。そこが聞きたい。記録があるはずだよ、それは。
○安原政府委員 一々記録はしておりませんが、恐らく当時の新聞を見れば、こっそりとは行っておりませんので、新聞にも全部出ておりますからわかると思いますけれども、私、実際に記憶がございませんけれども、私の行った目的は、いわゆる……(稲葉(誠)委員「何回ぐらい行ったの」と呼ぶ)二回か三回じゃございませんでしょうか。要するに、実務取り決めの内容につきまして経緯と経過と内容を説明しに行ったということに尽きるのでございます。
○稲葉(誠)委員 だから、それは法務大臣に説明すればいいので、何も総理大臣にそんなものを説明する必要はないじゃないの。どういうわけなんだ。どっちからそういう話が出てきたのか。
○安原政府委員 法務大臣にお話を申し上げまして、おまえ行って説明してこいということで行ったものでございます。
○稲葉(誠)委員 そのときに相当突っ込んだ話があったんじゃないの。大分長いよ、あなたの会っている時間は。何か話があったのじゃないか、向こうから。
○稻葉国務大臣 これは、法務大臣のところへ総理から使いが来て、だれか、あなたが説明できれば一番いいけれどもと言うから、私はだめだ、そういう刑事訴訟のむずかしい点はわからぬから刑事局長をやる、よろしいというので、刑事局長に行ってもらったのです。ですから、その内容については、いま刑事局長が言ったように、長い時間と言ったって、あの人勉強家だから、いろいろ聞くから長くなるのですよ。私らみたいに頭が悪いとばつっばつっとあれするけれども、答弁でも長いでしょう。みんな長いのですよ。
○稲葉(誠)委員 答弁は短いのがいい場合もあるし、長いのがいい場合もあるから、一概に長いから悪いとは言えない。あなただって三木内閣の一員だもの。 そこで、いろいろ当時の新聞なんか見ますと、捜査状況についてあなたが話したようにみんな出ているわけです。実務取り決めもそれは入っているかもわからぬけれども、それに付随して、捜査の状況を向こうから聞かれてある程度話したことがあるんじゃないの。(「そんなのないよ」と呼ぶ者あり)いや、ある程度の問題だよ。
○安原政府委員 総理に聞いていただいても結構なんですけれども、捜査の具体的のことについてお尋ねは一切ございません。
○稲葉(誠)委員 きのう何か斎藤特使が行きましたね。そのときもあなたはおられたでしょう。いなかった、話ししなかった、斎藤さんといろいろ打ち合わせしなかったですか。
○安原政府委員 今回の特使の使命が、第二項で日米の捜査協力を推進するということにおありでございますので、捜査に差し支えのない範囲におきまして、特使に捜査の協力について検察当局を代表してお願いをするとともに、羽田にお見送りをしたのでございます。
○稲葉(誠)委員 そうすると、斎藤特使の一つの使命というものも、この捜査に協力ということをアメリカ側でよりよくやってほしいということを要請するということも含まれているということですね。ということは、具体的にはどういうことなんだろうか。
○安原政府委員 特使の任務として、第二項に出ておりましたのは、今後とも一層捜査の協力を進めることとともに、資料の提供についても、より一層御協力を願うということでございまして、捜査の協力というものは、資料の提供以外の捜査の協力と言えば、やはり関係人の取り調べ等も入ってくるものと一般的には考えていいものと思います。
○稲葉(誠)委員 そこで、話があちこちに行ってしまって申しわけないのですけれども、私もわからないのです。全然別なことですよ。たとえば横須賀にいるアメリカの被告人だか受刑者だか知りませんけれども、それをアメリカの裁判所が日本に調べに来たということが一部伝わっておったんですよ。私はそんなことはできるわけないと思っていたんですけれども、そこら辺の真相は一体どうなんですか。
○安原政府委員 結論からいたしまして、アメリカの裁判官が来て横須賀の刑務所で面会したというようなことはございません。お尋ねの事柄は、具体的には、横須賀刑務所に在監中の外人受刑者について証言の録取があったことは事実でございますが、これはいわゆる日米領事条約に基づくものでございまして、アメリカの領事官が取り調べをやったものでございます。もっと具体的に申しますと、アメリカの北部カリフォルニア連邦裁判所に係属中のクレオファス・ジェームズ・カーニーほか三名に対する米国の麻薬法違反事件について、東京におります米国の領事官が昭和五十年の一月二十一日から二十五日まで、横須賀刑務所におきまして服役中の米国人二人の証言を録取したことがそれに当たるものと考えますが、この証言の録取は、日本国とアメリカ合衆国との間の領事条約十七条(1)(e)に基づいて適法に行われたものでございます。
○稲葉(誠)委員 そうすると、今度の場合でも、これは非常に好むことではないですし、それから法務省なり検察庁としては非常にあれなんで、そんなことは考えてないことだ、こう思うのですけれども、純粋に理論として聞くのですよ。日米領事条約に基づいていまの条項なりあるいは反面に基づいて、そうするとアメリカにいる日本の領事が向こうの人たちを調べることもできるのですか。それはどういうふうになっているのですか。
○安原政府委員 いま申し上げました両国間の領事条約の十七条(1)項(e)(ii)によれば、領事官は「派遣国の裁判所その他の司法当局のために、」したがって、アメリカにある日本国の領事官は日本国の裁判所のために、「その者が」というのは証言をする者がという意味ですが、「その者が自発的に提供する証言を録取すること。」ができるということになっておりますので、いま御指摘のように、アメリカにおる日本国の領事官に証言の録取をお願いするということはできますが、いま申し上げましたように、任意に供述をするという意味でございますので、この外国裁判所に対する嘱託の場合と異なりまして、その当該証言を録取したい人間を召喚する権限とか、あるいは偽証の制裁ということもない、全くの任意の協力がない限り、領事条約に基づいて証言を録取することは不可能であるということでございます。その辺に大きな違いがあるということでございます。
○稲葉(誠)委員 そうするといまの話、ちょっと戻って恐縮なんですけれども、二百二十六条でアメリカで証人尋問をやる場合には、アメリカの法律に従ってやるわけですね。これはあたりまえと思いますけれども、それは日本の二百二十六条の運用とは違うのですか。そこら辺のところ、どうもよくわからないのですが、コミッショナーというのがいて、弁護士は必ず立ち会わなければならないようになっているようなことも聞くのですが、そこはどういうふうになっているのですか。日米の法制が違うから何とも言えませんけれども、そこは具体的にどういうふうになっているのですか。
○安原政府委員 証言を録取してもらうということ自体は可能であると思いますけれども、どういう方式でやるのかということは、アメリカは各州によっていろいろ法律も違いますし、それから関係人の所在する所轄の裁判所がどこになるのかもいまだもう少しはっきりいたしませんので、どういう方式になるかはわかりません。したがって、アメリカでは弁護人が立ち会うということもあるのかもしれませんし、それに対して司法省の人が立ち会うということもあるのかもしれませんが、要するに、まだ方式は明確ではございません。
○稲葉(誠)委員 その場合には、日本でも検事ば立ち会うことはできるわけですね。それは立ち会うことができるのですか、必要的に立ち会うことになっているのですか。どうなっているのかよくわからぬけれども、まあいいでしょう。 そうすると、アメリカの嘱託尋問の場合には、当然日本の検事が行くということになるのですか。それについてはアメリカ側の同意が必要になってくるのですか、あるいは捜査の手続。取り決めのときに、そこまでの話が煮詰まっているのですか、そこはどうなっているのですか。
○安原政府委員 当然には日本の検察官は立ち会えないだろうと思います。もし立ち会うとすれば、向こうの承諾を得る必要がありましょう。そういう承諾が容易に得られるかどうかわかりませんが、要するに、当然には立ち会えないと思います。
○稲葉(誠)委員 だからあなた、立ち会わなければいわゆる隔靴掻痒のようなことになっちゃって、要領を得ないような尋問になってきますね。尋問事項を幾ら細かく書いたって、内容を知らない人が尋問するのですからね。と思いますがね。これは後の問題ですから、いまここで問題として云々するわけにいかぬでしょう。 そこで、時間はあるのですけれども、大臣、最後にお聞きしたいのです。これはたとえば福田赳夫さんとか大平さんにも私は予算委員会で聞いたんですけれども、児玉譽士夫という人、いまいるわけですけれども、その人とあなたはお会いになったことはあるのですか。そこら辺のところはどうなっているのか——会ったっていいんですよ。
○稻葉国務大臣 ございますよ。
○稲葉(誠)委員 あなたがお会いになったということは、大変失礼なことですけれども、ジャパンラインの何か株のあれに関連してだというふうに伝えられておるのですが、その真相を差し支えない範囲で明らかにしていただいた方がかえってよろしいんじゃないか、こう思うのですよ。
○稻葉国務大臣 そういう商売上のことで会ったのはそのことだけです。あとはパーティーで会ったりいろいろしている、それはどうでもいいでしょう。あれは何年ごろか知らぬけれども、突然やってきて、そうして河本敏夫君を紹介してくれ、会わせてくれ、こういうことです。それで河本君は会ったと思います。
○稲葉(誠)委員 いや、だから河本さんが会ったのは、河本さんは三光汽船の社長でしょう。それで児玉譽士夫があなたのところにやってきて河本君を紹介してくれと言うので——その後のことはどうなったのですか、そこのところをもう少し詳しく聞きたいのです。何か株の買い占めか何かのときに何かあなたが——それだけですか。それ以上聞いては悪いから聞かぬけれども、あなたの方から自発的なお答えを期待するわけだけれども、どうなんですか、何か中に入ったようなことを言う人もあるのです。伝えられているわけだから。突然やってきたというのはだれの紹介。——だれの紹介で来たかというのは大体見当がつくけれども、どういう経過で児玉譽士夫があなたのところに来たのですか。その経過をもう少し詳しく話してくれませんか、あなたの名誉のために。
○稻葉国務大臣 やってきまして、河本敏夫君がジャパンラインの株をうんと買い占めているので、そのことについて河本君が議会などでまたいろいろなことを問われると、あなたの友人の河本君にも悪いんだからちょっと忠告したり、いろいろ知恵を授けたいというような調子でしたな。それじゃ河本君、会った方がいいだろう、こういうことで会ってやってくれ、こういうことを頼んだことがあります、河本君に。それっきりです。
○稲葉(誠)委員 いまの話は、そうするとあれですか、河本さんのところへ児玉を紹介したのですか。三光汽船のジャパンラインの株の買い占め、結局それはどうなったのですか。その後のことにも何か関係しているようなことを言う人もいる、伝えられている、間違いだと思うのですけれども。
○稻葉国務大臣 それで、河本君にいろいろ児玉は話したけれども河木君はがんとして応じないから、口説いてくれないかということだったから河本君に話したら、あなたは法律のことについては詳しいかもしらぬけれども、商売のことについては赤ちゃんじゃないか、手を引いた方がいいよ、こんなことは、そんな煩わしいこと。こう言うから、ああそうかいと、こういうことだ。それで、よく何か稻葉君に児玉は頼んだけれども成功しなかったとか、そうしてその後そごうの社長に頼んだらうまくいったとか、そんなことになっているようですね、後のことはよく知りませんけれども。
○稲葉(誠)委員 そうすると、くどいんで恐縮ですけれども、児玉譽士夫から頼まれて、なぜあなたとしては河本さんへ紹介しなければならなかったのですかね。何だろうそれは、よくわからぬな。だれの紹介ですか、児玉譽士夫が来たのは。
○稻葉国務大臣 別に紹介するまでもなく参ったわけですね。そして前に河野一郎さんなんかのところで会っていますから。そして碁を教えてくれとか釣りに行かぬかとかそんなばかなことを言っているから、そういうことで知っているのです。だから、人の紹介を得るまでもなくやってきたんでしょう。そして話はそういうことですから、おれじゃ河本君と幾ら親しくっても——あれ同期生でずっと親しいんですからね、昭和二十四年の当選者で親しいですから。いろんなことで親しいんです、碁の仲間でもあるし。それだから彼はいろいろ情報屋で、稻葉君を介してあれしたらうまくいくという錯覚を持ったんでしょうな。私にそんな商売の話にあっせんしてくれと言ったって、私何にも知らぬもの、株は一株も持っていないんだからね。株買ったことがないんだから、稻葉を仲介にしたって成功するわけはないんだ。それは直接談判したらいいじゃないか、こういうことです。こうやったところがうまくいったかいかないか、それはわかりませんな。後は知らぬです。
○稲葉(誠)委員 いろいろほかにも質問があるんでお呼びした人なんかいて、しないで悪いんですけれども、もう一つ最後に聞くんだけれども、これはちょっとまたむずかしい問題なんでね。 トライスターの導入に関連しての運輸省の職務権限というものの中で、行政指導というものがあるでしょう。行政指導というのは一体何に基づくのかということが一つと、行政指導の場合には、職務権限に結びつく場合と結びつかない場合とがあるということなんでしょうか、そこら辺ですね。そこら辺のことを余り詳しくあなた方でしゃべるというと、後の捜査に差し支えがあるということはぼくはわかりますから、そこが今後のポイントだから、そこら辺のところは一体どうなんですか。行政指導というものの実態ですね、運輸省から一応話してもらって、それに対する法律的な職務権限の評価ね、それはどういうふうなものか。
○山元説明員 お答え申し上げます。 運輸省は、航空運送事業に関します許認可、あるいは航空機の航行の安全等に関する事務につきまして所掌いたしておりますけれども、このほかにも運輸省設置法第二十八条の二第一項第十七号におきまして、航空運送事業の発達、改善及び調整に関する事務について所掌しているところでございます。したがいまして、航空の安全確保とか、あるいは航空運送事業の秩序確立等を図るために、航空会社に対しまして行政上の処分をすることはもちろんでございますけれども、このほかにも一般的な行政指導を行う責任と権限を持っているというように運輸省としては考えております。
○稲葉(誠)委員 さっきちょっと聞いたね、いわゆる俗に言う行政指導という問題ね、いろいろあると思うんだけれども、それが職務権限とどういうふうに結びつくのか。結びつく場合もあるし、結びつかない場合もあるということなんですが、そこでトライスターの導入に関連しての問題これは捜査の一つの焦点になってきていると思うから余り聞くのもあれだけれども、差し支えない範囲で法律的な理解ですね。
○安原政府委員 まさに犯罪捜査上の問題点について、適切な御示唆なり御指摘をいただいたわけでございまして、その点についていまどう考えているかを、具体的な問題にどうしても関連いたしますので、申し上げるわけにはまいりませんが、いま運輸省御当局からもお話がございましたように、行政指導といえどもその根拠が設置法にある以上は、職務行為につながるというのが一般の解釈ではなかろうかと思います。
○稲葉(誠)委員 最後に、これで質問を終わりますが、今後この問題に関連するのは恐らく当委員会か、あるいはロッキードの特別委員会ができれば、そこで今後ずっと引き続きやれますから、きょうはこれで一応終わっておきます。
○大竹委員長 諫山博君。
○諫山委員 ロッキード事件に関する幾つかの法律問題について質問します。 第一、児玉唇士夫に関してです。稻葉法務大臣と児玉譽士夫の関係が触れられましたが、これはもっとはっきりした方がいいと思いますから、いつごろからの知り合いで何回ぐらい会ったのか、一番最後に会ったのはいつごろだったか、お知らせください。
○稻葉国務大臣 一番最初に会いましたのは、いわゆる河野派という派閥ができて、河野さんが事務所を第一ホテル地下室に持ったときに、河野さんたちがたくさん皆おった、そこへ児玉が来た、それであいさつを受けた。それが最初で、いつごろになりますか、河野派ができたのはいつごろでしたかな、それは十五年くらい前でしょう。自由民主党創立二十周年というのをやったね、その前ですから、鳩山さんの民主党の時代です。ですから、そんなところですね。それから余り回数は会っておりませんね、前後十回などは会ってないと思いますね、そういう場所に来ますからね。そして碁を打ったりいろいろ教えてくれなんて言うものですからね。そういう程度です。それで一番最後に会ったのは、いまのジャパンラインとそれから三光汽船の株の買い占めで何だかやっておる、それに児玉が入って——ジャパンラインの側のようだったね、僕が聞くと。そして、河本君の方でおりてくれるといいという意味で、私に、そういう用件です、ですからそんな危ない仕事でありませんから、ひとつ紹介だけはしてくださいよ、こういうわけで紹介をしてあげた。それが三年くらい前ですか、四年くらい前ですかな。それが最後。その後うんでもすんでもないのです。それだけです。
○諫山委員 特に稻葉法務大臣に河本さんを紹介してくれと頼みにきたというのは、よほど深いつき合いだと思われますが、当時、稻葉法務大臣は何か役職についておられましたか。
○稻葉国務大臣 ついていないようですよ。平の議員であったように思いますよ。それから河本君も、郵政大臣時代じゃない、何でもなかったですね。そういう時代です。
○諫山委員 つい先日、児玉譽士夫が外為法違反で起訴されました。これは新聞報道によれば、現金合計四億四千万円を受け取ったというのが事実の中身のようです。そしてこの事実を児玉譽士夫は一貫して否認していたということが書かれています。刑事局長、そのとおりですか。
○安原政府委員 東京地検当局が公訴事実については公にしたところでございまして、いまおっしゃるとおり四億四千万円に相当する金額の受領をして、外国為替管理法に違反したということでございますが、その証拠関係につきましては、公判廷において明らかにすることでございますので、いまの段階で申し上げるわけにはまいりません。
○諫山委員 私は証拠の中身を聞いているのじゃなくて、すでにこれは起訴した事件です。そして新聞でも、たとえば児玉譽士夫が現金三百八万円と一緒に重要書類を紛失した、その重要書類の中身が何であったかについては供述を拒んでいるということが各紙で報道されているし、四億四千万円受け取ったことも否認しているということが報道されております。これは捜査中の問題じゃなくて、捜査が終了した段階でそういう報道がされているのですが、この事実はそのとおりでしょう。
○安原政府委員 捜査の終わった事実に関係はいたしますけれども、先ほど申し上げましたように、これから公判廷において証拠によって証明していく事実に関連するだろうと思いますので、いま、公判開廷前に申し上げることは、先ほどの四十七条ではございませんが、同じように公にするわけにはまいりません。
○諫山委員 新聞紙であれだけ報道され、たくさんの日本国民が承知している問題を、検察行政が適正に行われているかどうかを審議する法務委員会でしゃべらないというのは、ちょっと秘密主義もひど過ぎると思うのです。これはもう捜査は終わっている事件ですが、どうでしょう。そして公判になれば、必要な書類は弁護人に公開するわけでしょう。それも言えないとなれば、検察行政について国会は一切くちばしを入れられないということになりますよ。
○安原政府委員 それがまさに四十七条が公開を禁止していることにずばり当たるケースでございまして、これから公判廷において明らかにしていく事柄を公判開廷前に明らかにしてはならないという刑訴法上の原則に基づきまして、申し上げるわけにはまいりませんし、そのような、司法裁判の妨げにならないようにするということばまさに重大な公益でございます。
○諫山委員 児玉譽士夫がなぜ身柄を拘束されないのかということがいろいろ世間で言われております。児玉譽士夫が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があることは明らかです。また自発的に供述していない、いま私が指摘した問題も含めて事実を否認しているということも間違いない。そうすると、検察庁としては、児玉譽土夫に逮捕状の請求、勾留状の請求をしないのは、逮捕、勾留の条件、必要性がないと判断しているからなのか、それとも彼の健康上の理由によるものなのか、どちらでしょうか。
○安原政府委員 具体的な事件の具体的な人を名指して逮捕すべき状況にあるかどうかということを、具体的に捜査の問題として申し上げることは差し控えたいと思いますが、私の聞くところによりますと、児玉氏はまだ勾留に耐え得るような健康状態ではないように聞いております。
○諫山委員 事件はこれだけ世間で問題になっておる重大内容。そして、臨床尋問は行われているようですが、余り供述が進展しているようには見受けられません。そうすると、逮捕、勾留を請求していないというのは、主として彼の病気が原因だというふうに聞いていいですか。
○安原政府委員 先ほど申したことを繰り返して恐縮でございますが、訴訟法上の逮捕、勾留をし得る状況にあるかどうかということを申し上げることは、捜査の秘密として、現段階においては答弁を差し控えさせていただきたいと思いますが、一般的に、臨床尋問等をやりましても、短時間しかそれに耐えられない健康状態であるということは明らかのようでございます。
○諫山委員 児玉譽士夫に対して検察庁は何回臨床尋問をしたのか、そして、最近の一回の尋問時間はどのくらいになっているのか、御説明ください。
○安原政府委員 数回となく取り調べておりますが、長時間ではないということでひとつ御理解をいただきたいと思います。
○諫山委員 こういうこともいろいろ新聞に報道されているのですね。どうしてそれが国会でもっと正確に言えないのでしょうか。
○安原政府委員 新聞がお書きになることは自由でございますが、そういう取り調べの内容を捜査当局から申し上げるわけにはまいらないわけでございます。
○諫山委員 世間で考えておるのは、児玉は病気だそうだから逮捕したくても逮捕されないのだろうということだと思うのです。私もいろいろそういう話を聞きます。健康を害している場合、どういうふうにして健康保持を続けながら逮捕、勾留ができるのか、これば当然研究されていると思うのです。児玉譽士夫に適合するかどうかは別として、本当は逮捕、勾留したいけれども、健康上の理由でできないという場合は、どういう方法があることになっていますか。
○安原政府委員 一般論といたしまして、逮捕、勾留に耐え得ない健康状態の者につきましては、逮捕、勾留はいたしておりません。
○諫山委員 逮捕、勾留に耐え得ない場合はもちろんそうです。しかし、そうではなくて、いわば慢性的な病気で一定の治療を施さなければならない、しかし、たとえば民間の病院に入れておくというようなこともできるといういろいろな手続があるはずです。たとえば身柄を拘束しながら病舎に入れるとか、あるいは一たん勾留して勾留執行停止、そして身柄を民間の病院を指定して移し、外部との面会を絶つというようなさまざまな方法があるわけですが、こういう問題は児玉譽士夫について検討もしていないのですか、それとも検討したけれども、まだそういう手続をとる段階ではないと判断しているのですか。
○安原政府委員 御指摘のように、一応逮捕、勾留には耐え得るが、医師の診察、診療が必要だというような場合には、いま御指摘のように、拘置所内等に収容いたしまして、病室のあるところでは病室に収容するというようなことも考えられておりますが、拘置所、監獄以外のところに勾留をするということは刑事訴訟法ではないわけでございますし、監獄法上も病院移送というような考え方で方法はございますが、これも勾留を執行停止するかどうかを判断する暫時の期間、病院に移送して看護するということでございまして、本来勾留をする場所といたしましては、病院というものは考えられておらないわけでございます。
○諫山委員 いろいろな方法があるわけです。たとえば監獄だったら自分の指定する医師を自分の費用で呼ぶというようなことも可能ですね。いろいろな方法があるわけですが、こういう一般的な方法を児玉譽士夫について当てはめるかはめないか、こういう検討はしているのですか、していないのですか。
○安原政府委員 先ほど来たびたび申し上げておりますように、児玉さんそのものにつきましての具体的なお尋ねについては、いまの段階では申し上げるわけにいきませんが、一般論として逮捕、勾留の必要があり、それが健康上も耐え得るということであれば、逮捕、勾留の必要目的を達成するために必要なあらゆる措置を法制の許す範囲において検察当局は考えるものと思います。
○諫山委員 法務省とアメリカ司法省との取り決めについて少し細かく質問します。 この資料内容の開示は、第四項で禁止されているようですが、資料の内容を説明することまで禁止されているのか、取り決めの中からはなかなかはっきりしません。この点の解釈はどう考えていますか。資料そのものの開示ではなくして、資料の一部を外部に説明するというような場合です。そして、もしこれまで禁止されているとすれば、それは何項に基づくものかです。
○安原政府委員 第四項の開示をしてはならないというこの規定の「開示」は、まさに物理的にそのものを公にするということのみならず、その資料の中身を公にすることも含んで開示してはならないということになっておりまして、これは取り決めの両当事者間で明白に確認した事柄でございます。
○諫山委員 第四項の解釈についてそのように意思を統一したという趣旨ですね。 それから第十項との関係を見れば、この取り決めに基づいて提供された資料ではないもの、たとえば政府特使がアメリカから受け取ってくるとか、あるいは超党派の国会議員団が手に入れてくるとか、こういうのはもちろんこの協定の適用を受けないわけですが、この資料を捜査上あるいは裁判上の資料として利用するということは考えているのか。利用するとすればどういう方法があり得るのか、その点はどうですか。
○安原政府委員 そのような方法は、まさにこの取り決めによって入手した資料ではございませんので、この取り決めによる制限は何らございません。 したがいまして、いま御指摘のようなことで、有力な資料が捜査上得られるといたしますれば、捜査当局としてはそれをいただきたいものだと思います。その場合には、供述によって得るか、あるいは任意提出を受けるというようなことで領置するかといういろいろな方法があろうと思いますが、それは一般の資料の捜査の過程における入手方法と何ら異なるものはないと思います。
○諫山委員 この取り決めに基づく資料の授受、これはさらに法務省としてアメリカ側と交渉しているのか、もうすでに受け取ったものでおしまいという理解なのか、その点はどうなっていますか。
○安原政府委員 これは先般、予算委員会でもお答えいたしましたけれども、これからなお資料を要求していくかどうかというようなことはいわば秘密に属することでございますが、一般論といたしまして、現在並びに将来ともに、アメリカの司法省が入手した資料をいただく可能性だけはなくなっておりません。
○諫山委員 そうすると、アメリカからいただくという表現ですが、法務省から積極的に求めるという態度はとらないのですか。
○安原政府委員 当事者の一方から要請をして相手方から資料を入手するということでございますから、ただ向こうからこんなものがあるぞ、取りに来いよということではなくて、こういうものがあるかということを、あればいただきたいというような要請も当然に考えられるわけでございます。
○諫山委員 協定の一般的な解釈じゃなくて、そういう立場で要請するのかと聞いているんです。
○安原政府委員 協定の精神が真相究明のための捜査の共助でございますから、こういうものがあれば、あるいはあるかないかというようなことを積極的に聞くということもあり得るわけでございます。
○諫山委員 この協定の中には、第三項、第五項で「刑事上、民事上及び行政上の裁判又は審理」に使用するという言葉が出てきます。刑事上の裁判に使用するというのはすぐわかるわけですが、「民事上及び行政上の裁判又は審理」に使用するというのは、どういう場合を予想したのでしょうか。
○安原政府委員 これは、実は、日米両国のロッキード・エアクラフト社の非合法な疑いのある行為に関する両当事者間の捜査の共助でございますから、わが国の方の便宜ばかりではなくて、先方の調査、捜査ということも考えなければならないわけでありまして、具体的には、この「民事上」のというものは、わが国におきましては、このロッキード・エアクラフト社の関係で国家賠償の請求でもあるというような場合には、この「民事上」ということになりましょうし、また具体的にはアメリカのSECで調査をしておる関係で民事上の問題につながっていくというようなことも考えられているようでありますし、行政上SEC等が勧告をするという場合には、行政上の裁判、審理に発展するということもあり得るということで、双方の考えられるあらゆる場合を調査、捜査、裁判について列挙して書いてあるものでございます。
○諫山委員 「行政上の裁判又は審理」というのは、たとえば児玉譽士夫が自分に対する課税処分は不当だ、取り消してもらいたいというような申し立てをし、これが国税不服審判所の問題になったり、行政裁判の問題になったりということになるわけですが、そういう場合の資料としても使ってよろしいという理解ですか。
○安原政府委員 御案内のとおり、これはロッキード・エアクラフト社の活動に関する不法行為についての問題でございますから、いまの単なる行政上の課税処分に関する不服審査というような問題については、この規定の対象外でございます。
○諫山委員 私がなぜそうではなかろうかと思ったかというと「行政上の裁判又は審理」という言葉が使われているのですね。「裁判」というのは行政訴訟で、「審理」というのは国税庁内部の不服申し立ての手続の審理ではなかろうかと理解したのですが、違いますか。
○安原政府委員 先ほど申しましたように、この「行政上の審理」というのは、SECが行政上の勧告をするというような場合の審理手続を考えたものでございまして、日本ではさしあたり、協定を結ぶ当事者間において想定したケースはございません。
○諫山委員 とすると、「行政上の裁判」というのは、私が言いましたように、たとえば課税処分を争う行政訴訟などを含みますか。
○安原政府委員 不法行為に関するものとして、いわばいわゆる刑罰ないしは法的制裁を伴う違反行為というものに関する調査、捜査、裁判ということに限定されておりますので、単なる課税処分というものについての不服に関する行政裁判には、この協定は適用がないというふうに当事者間で理解しております。
○諫山委員 それと関連しますが、第四項に「法執行の責任を有する他の機関」というのがありますね。そうすると、これには行政不服審判所とかあるいは法務省の訟務部などは含まないということになりますか。
○安原政府委員 違反行為、不法行為について調査、捜査をする機関を法執行の責任当局と考えておりますので、いま御指摘の法務省の訟務部とかそれから不服審判所等は入りません。
○諫山委員 次は、七項のいわゆる司法共助、嘱託の問題です。これがどういう場合を予想したのかという点については先ほど来説明がありましたが、その説明の中で、刑事訴訟法二百二十六条、二百二十七条の起訴前の証人尋問のほかに証拠物の押収もあり得るような説明がありましたが、そうですが。
○安原政府委員 ここでいわゆる司法共助として考えられますのは、一般には書類の送達と証人尋問の嘱託ということでございまして、証拠物の押収ということは考えておりません。
○諫山委員 お互いに捜査について協力し合うということになると、証人尋問というのが当然出てくるわけですが、同時に、たとえばアメリカのロッキードの本社に何々の証拠物がある、これはどうしても必要だというふうに日本の検察庁が判断した場合、まあ任意提出を求めることもありましょうけれども、アメリカの司法機関に嘱託してこれを押収してもらいたいと言うようなことはこの協定でできますか、できませんか。
○安原政府委員 この場合の司法共助は、いま申しましたように、通常の司法共助、したがって書類の送達とか証人尋問という限度において考えておるわけでございまして、御指摘のような証拠物の押収ということまでは考えておりませんし、したがって、ここの共助の対象にはならないと解せざるを得ないと思います。
○諫山委員 刑訴法の二百二十六条に基づく証人尋問というのが、この一週間ばかり連続的に新聞で報道されています。この報道を見ますと、検察庁は大体この手続を求める、特にコーチャン氏とクラッター氏に対してそういう手続をとるという方向で裁判所とも折衝しているように報道されていますが、その経過を少し説明してください。
○安原政府委員 先ほど稲葉委員の御質問でも御勘弁を願った、まさに捜査の具体的な内容、方法の問題でございますので、ひとつ御容赦願いたいと思いますが、先ほども申しましたように、そういう本件の特殊性にかんがみまして、アメリカにいる関係人から事情を聴取するということが真相究明のために非常に有力な手段であることは間違いないと思います。
○諫山委員 国会で論議するのに、新聞ですでに報道されていることさえ説明しないというのでは、何のための法務委員会の議論かわからないという感じを受けます。たとえば新聞では、いま私が挙げたような人たちについていろいろ任意取り調べに協力してくれるように頼んだ、アメリカ政府にもこの点協力を求めた、FBIにも頼んだ、しかしなかなか協力してくれなかったということから二百二十六条に踏み切らざるを得ない、こうなっているんですね。そうすると、アメリカ政府に、この協定に基づいていま私が言ったような協力を求めましたか。
○安原政府委員 たびたび申し上げますように、新聞にお書きになっているのは、新聞がお書きになっていることで、われわれは国会においてお尋ねに答えられないようなことを新聞に申し上げることは絶対にございませんので、決して国会を軽視したわけではございません。要は、捜査の目的達成のために、いまの段階ではこういう席上で申し上げることは控えさせていただきたいということでございます。 したがいまして、一般論といたしまして、二百二十六条の適用を請求して司法共助を求めるというためには、先ほど稲葉委員の御指摘のとおり、取り調べをしたい関係人が出頭を拒んだり、取り調べに応じなかったという条件が前提でございますので、そういう事態においては、ただいまの二百二十六条の請求による司法共助ということもあり得るということを一般論として御理解をいただきたいと思います。
○諫山委員 この嘱託をした場合には、アメリカ政府として、アメリカの司法省として「最善の努力をする」ということになっていますね。「最善の努力」というのがどの程度のものか、いろいろこの取り決めを分析したわけですが、取り決めの八項に書かれている問題は別として、これに触れない限り、日本の嘱託が実現できるようにアメリカとしては処理するという意味でしょうか。八項では、次のような場合には協力しなくていいとなっていますが、それ以外のことはアメリカ政府としては協力するのだという意味に理解できるのですが、どうでしょう。
○安原政府委員 先ほども申しましたように、この取り決めはわが法務省と向こうの司法省との取り決めでございますので、まさに司法共助の主体である裁判所同士の取り決めではございませんので、そういうことが実現できるように、可能な範囲において司法省なり法務省としては努力をいたしますという努力目標をここに約束をいたしたわけでございます。ただしその場合におきましても、努力の目標として実現する司法共助の中に、イミュニティーの特権を与えるようなことまでは要請はされていないぞということを確認をしておるわけでございます。
○諫山委員 この問題については、いろいろ報道されているし、国民はたくさんのことを知っているわけですね。ですから、法務省も秘密の壁に閉じこもるのではなくして、もっと大胆に説明することを私は要望します。 この取り決めの中の第七項ですが、嘱託できるのは「司法当局」となっていますね。司法当局がいろいろの嘱託をする。この場合、厳密な意味の「司法当局」と言うと裁判所のように思われるのですが、検察庁はどうなのかということになるんです。この嘱託できるのは裁判所を通じないとできないのか、検察庁も含む意味なのか、どうなんでしょう。
○安原政府委員 まさに御指摘のとおり、「司法当局」は裁判所だけでございます。
○諫山委員 そうすると、いろいろな嘱託を検察庁がやりたいと思えば、直接するのではなくして裁判所を通じて手続をとる。その場合の相手方も捜査当局じゃなくて相手方の裁判所ということになりますか。
○安原政府委員 おっしゃるとおりでございます。
○諫山委員 だとすれば、二百二十六条に基づいて、たとえばコーチャン氏を証人として喚問する。これはたとえばの話です。そうすると、日本の法律の場合には、これは任意捜査ではありませんから、コーチャン氏はアメリカの裁判所に出頭することを義務づけられる、出頭しなければ処罰される、証言を拒否すれば処罰される、うそを言えば処罰される、こういう関係になりますか。
○安原政府委員 日本の裁判所に検察官が二百二十六条の発動を請求いたしますと、日本の裁判所はそれが可能であるという判断に達すれば、外国にある者についてもやれるわけでありまするが、外国でわが国の裁判所が証人尋問するわけにはまいりませんので、まさに司法共助という制度があるわけでございます。 〔委員長退席、小平(久)委員長代理着席〕 したがいまして、外国の裁判所、アメリカの裁判所に証人尋問の嘱託をするというのがまさに司法共助そのものでございます。その場合におきましては、アメリカにおいて証人尋問の手続をアメリカの裁判所がとるということでございますから、当然召喚の権限もあり、偽証の制裁もあるというふうに理解しております。
○諫山委員 そうすると、出頭しなければ処罰される、供述しなければ処罰される、うそを言えば処罰される。これは日本の裁判所から証人が呼ばれた場合と同じですね。
○安原政府委員 詳しいことは承知しておりませんが、基本的にはおっしゃるとおりだと理解しております。
○諫山委員 ここでつくられた調書ですが、日本だったら裁判官の面前調書で優先的に証拠能力を持ちますね。ところが、この場合の調書はアメリカの裁判官に対する供述調書ということになって、日本の刑事訴訟法の適用が非常に微妙になると思うのです。具体的には三百二十一条一項一号の裁判官の面前調書という取り扱いを受けるのか、そうではなくて、第三号の、特に信用すべき情況のもとにつくられたという取り扱いを受けるのか。これは一般的な訴訟法上の問題ですが、法務省はどう理解していますか。
○安原政府委員 刑事訴訟法の言う裁判官なり検察官には、アメリカの裁判官、検察官は当たりませんので、御指摘のとおり、証拠能力といたしましては、三百二十一条一項三号の「前二号に掲げる書面以外の書面」でございますから、それが証拠能力を得るためにはいろいろと条件がございます。
○諫山委員 かつてラストボロフ事件で、日本の検察官がアメリカに行ってアメリカで供述調書をとってきた。ところが、その関係者が日本の法廷には出廷しなかった。この場合に、検察官面前調書が証拠能力を持つか持たないか大論争になったわけです。仮定の場合ですが、たとえばコーチャン氏について刑訴法二百二十六条でアメリカの裁判官の面前調書がつくられた、これが日本の検察庁に送られた、そして裁判が始まったけれども、彼が日本の裁判所に証人として出廷しなかったというような場合の証拠能力はどう解していますか。証人として出廷すればわりあいに事は簡単だと思いますが、彼は最後まで証人として出廷しない、結局残ったのはアメリカの裁判官の面前調書だけだという場合の証拠能力です。
○安原政府委員 そういう場合こそは、いまの三百二十一条一項三号の国外にいるため公判準備または公判期日において供述することができないという条件を満たすことになりまして、三百二十一条一項三号の書面として証拠能力を得る具体的な条件が整ってくるものと思います。
○諫山委員 憲法では証人に対する反対尋問権というのが保障されています。そうすると、いま言ったような書類が反対尋問の機会にさらされずに証拠能力を持つのかどうかというのは、相当大きな問題だと思うのですが、検察庁としてはいま説明されたような立場で刑訴法二百二十六条を検討している。つまり言葉をかえれば、二百二十六条に基づくアメリカの裁判官の面前調書が手に入れられるなら、仮にコーチャン氏が日本の法廷に将来出廷しなくてもこれは証拠として使えるのだ、こういう立場で検討しているわけですか。
○安原政府委員 たびたびで恐縮でございますが、検察庁がそういう立場で検討しておるのかというお尋ねにお答えするのは困るわけでございまして、一般論としてそういう場合には、いま申し上げましたように、三百二十一条一項三号の書面として証拠能力を持ち得るということをお答えすることで御勘弁を願いたいと思います。
○諫山委員 検察庁は秘密にしたつもりかもしれませんが、一億国民はみんなそれを読んでいるのですよ。そんな形式的な秘密主義をここで振り回して何の意味がありましょうか。検察庁はこうしようと思うが、これに問題があるのかというふうに私たちに問題を投げかけるべきではないですか。全くこれが公になってなければ、検察庁の態度もあるかもしれませんが、これは捜査上の秘密ということを口実にしながら、検察庁がやっていることにわれわれの批判を許さないという態度のように思えます。 そこで、一般論としていまのようなことを御説明されましたが、だとすれば、アメリカの裁判官だけに任せていいのか、事情を一番よく知っている日本の検察官の立ち会いというのが必要になってくるように思う、こういうことになるわけです。確かに日本の検察官は立ち会う権利はあると思うのですが、この点は立ち合わせろということを要求するのかどうか、そういうことまで検討していますか。あるいは立ち会った場合には、アメリカの裁判官だけではなくて日本の検察官も質問できるというふうに考えておりますか。日本の裁判所であれば、二百二十六条に基づく証人尋問のときに、実務上検察官が立ち会って裁判官と並んでいろいろ質問しております。この点はどういうふうに考えていますか。一般的な理論と本件についてどうしようと考えているのか、二つ説明してください。
○安原政府委員 たびたび申し上げますように、新聞にお書きになるのは自由でございますが、われわれは捜査の秘密を守ることが捜査の目的達成のためにぜひ必要であるという立場は、これはあくまでも堅持しなければならないということでございますので、申し上げられないということを申し上げておるわけであります。 そういう意味におきまして、いま諫山委員が申されました、こういうことについてはこういうことをやれば、より目的達成のためにいいじゃないかという御意見は、まことに貴重な御意見として当然に検察当局には伝えたいとは思っておりまするが、先ほど申しましたように、一般論として、当然にはアメリカの証人尋問に日本の検察官が立ち会うことは許されないわけでございますから、目的達成のために必要とあれば検察官が事実上立ち会うことも含めて、今後実施する場合には検討はしなければならないであろうと思います。
○諫山委員 新聞報道によれば、アメリカの裁判官に聞いてもらうのだから詳細な尋問事項書をつくるのだというようなことが言われているのですね。詳細な尋問事項書をつくるのも結構だけれども、一番よく事情を知っている日本の検察官が立ち会って、そしてアメリカの裁判官の質問で不十分な点があればどんどん追及して質問を深めるということが、効果的な捜査になると思うのですよ。私たちはこういう問題を積極的に提言する責任があると思うのですが、どうですか、もう少しそこを具体的に説明してくれませんか。
○安原政府委員 先ほど申しましたように、貴重な御提言として拝聴いたしまして、検察当局に伝えるつもりでおります。
○諫山委員 アメリカにいる証人について二百二十六条、二百二十七条を適用しようということは、どうももうはっきりしていると思うのですがね。児玉譽士夫についてこれがどうしてやられないのか、ほかの日本の証人についてはなぜやられないのかというもう一つの問題があるわけです。 私たちが承知しているところでは、児玉譽士夫というのは、検察庁の事実認識でももうすでに四億四千万円という金をもらった。もらって、自分のふところに入れてもこれは罪になろうし、その金を政府高官にやっても罪になる。いずれ児玉譽士夫は、所得税法とか外為法違反じゃなくて、他の刑法犯が出てくるということは、論理的に必然的に生まれてくるわけです。だとすれば、児玉譽士夫などについても、二百二十六条ないし二百二十七条の適用がなさるべきではないかという疑問が当然出てきます。アメリカの証人に対してはそういう手続を進めながら、児玉についてどうなってるんだろうかという疑問があるわけですが、児玉についてそういう条件が整っているとは思いませんか。つまり、犯罪の捜査に必要不可欠な証人だ、しかも供述を拒んでいるというような状態があると思うのですが、いかがですか。
○安原政府委員 二百二十六条は、御案内のとおり、取り調べに応ぜず、あるいは取り調べに応じても供述を拒んだ場合に初めて発動し得るということになっておるわけでございます。そういうこともございまして、二百二十六条は、供述を得るのに都合がいいからといって、ストレートに適用するわけにはまいらないという法律上の制約もございます。いずれにいたしましても、具体的な問題につきましては、検察は真相究明のために最も有効適切な手段をとるものであると信じておりますので、必要な段階においては、二百二十六条のことも当然に含めて検討するであろうというふうに思っております。
○諫山委員 二百二十六条の解釈、これは部分的に供述して肝心のところを供述しない、その場合を含む意味か。それと、うそを言っているというような場合はどうなるのか。その点、どう解釈していますか。
○安原政府委員 事務当局の解釈といたしましては、うそをついたということは供述を拒んだということではないという意味において、二百二十六条にはずばり当たらないので、取り調べに応じている以上は、真実の供述を得られるように努力を重ねるという以外はないというふうに思います。
○諫山委員 部分的に供述し、部分的に供述を拒む場合はどうなんですか。
○安原政府委員 この場における私の解釈でございますが、事項が截然と区別できるものなら、ある事項について供述を拒んでおれば、二百二十六条の尋問事項の対象とし得ると思います。
○諫山委員 児玉譽士夫が本当のことをしゃべれば、ロッキード事件の大半は一挙に解決するというのがもう常識だと思います。児玉譽士夫が金を受け取ったことは、外為法の起訴ですでに検察庁も確信しているわけです。そのほか、まだ捜査中の問題が幾らもあります。この金がどのように使われたのか、この金を受け取った者があるとすればそれはだれなのか、どういうからくりで日本の政治が汚されたのか、これを知りたがっているのです。児玉譽士夫が本当のことをどうしてしゃべらないのかということが、国民の義憤の中心になっているのです。裏から言えば、検察庁はなぜ児玉譽士夫にもっと本当のことをしゃべらせようとしないのかという点が問題なんです。 そこで、私は、児玉譽士夫を外部から遮断して、仮に病気であっても、病院に入れてでも、あるいは自分の主治医にずっと継続的に診てもらいながらでも、身柄を拘束し、接見禁止することもできるのではないか、さらに、アメリカの関係証人について言われているように、二百二十六条の発動もあり得るのではないか、こういう立場から質問したのです。こういう点について、突然の問題提起だったかもしれませんが、法務大臣、いかがでしょう。
○稻葉国務大臣 わが検察庁は、あらゆる方法、あらゆる資料でやっておりまして、決して抜かりはありません。御心配なく。
○諫山委員 そう言っても、だれも満足しません。刑事局長、いかがですか。(稻葉国務大臣「あらゆる資料、あらゆる方法でやっておりますから抜かりはありません、御心配なく、こう言ったのです」と呼ぶ)それはまじめな答弁ではありませんよ。 あらゆる方法をとっていると言うけれども、こういう方法が残されているじゃないか、こういう方法がもっと効果的ではないか、こういう提言をしているのに対して、まじめにそれを聞こうともせずに、あらゆる方法をとっていますとうそぶいているというのでは捜査は進展しません。刑事局長、いかがですか。
○安原政府委員 先ほど申しましたように、児玉については、外国為替管理法違反で公訴をいたしましたように、四億四千万円の金を受領しているということは公にしたわけでございますが、一般に検察当局といたしましては、この金の処分、流れにつきましても重大な関心を持っていることは間違いのないところでございまして、要は、真相解明のために、しかも法律の許す範囲において最も効果的な捜査方法を講ずるということには抜かりはないということを大臣が申されたわけでございまして、この点は、いま諫山委員からいろいろな捜査方法について貴重な御意見を伺いましたので、その御提言をそのまま拝聴いたしまして、検察当局に伝えることといたしたいと思います。
○諫山委員 検察庁当局にぜひ伝えていただきたいのですが、これが本当に児玉譽士夫に当てはめられないものかどうか、検討してもらいたいと思うのですが、いかがですか。
○安原政府委員 お伝えをする以上は、当然に検討に値するかどうかも検討するものと思います。
○諫山委員 さっきの質問に関連して、監獄の病舎に入れて、児玉の希望する医者を本人の費用で呼ぶ、これはできるでしょう。
○安原政府委員 先ほど申しましたように、監獄に拘置する以上は、一般の医者ではなくて、監獄の嘱託する医者に診療させるというのがたてまえでございましょう。 いずれにいたしましても、捜査の必要ということの反面におきまして、人命の尊重ということも刑事訴訟法の基本でございますので、そのような点を考えながら、法制の許す範囲において適切な方法を講ずることにいささかもちゅうちょするものではないということについて御理解をいただきたいと思います。
○諫山委員 検討されるそうですから、検討の材料として、監獄法の四十二条には、病気の人は自分の医師を指定して治療させることができる。また、監獄で適当な治療ができない者は民間の病院に入れて治療させることができるという規定もあるわけです。また、民間の病院に住居を制限して執行停止をして、そして接見禁止という措置はできないですか。これは一般論としてです。もう少し言いますと、刑事訴訟法では勾留執行停止の規定があって、これは住居を制限するでしょう。その住居制限を病院にするということはできるはずですが……。
○安原政府委員 勾留状が発付された段階で、病状が拘置に耐え得ないので執行停止ということがあり得るわけでありますが、そうなれば住居の制限ということも当然考えられることであろうと思います。
○諫山委員 私は一般論として言ったのですが、とにかく、このままだったら国民はがまんできないと言っておりますよ。ですから、私が言った幾つかの方法、私は、これが具体的な現実的な方法だし、病気を悪化させることにもならないと思いますから、ぜひ積極的に検討していただくということを要望します。 次に、警察庁に質問します。 丸紅が証拠隠滅をしたというのがずいぶん以前問題になったんですね。そして警察も大体その立場でいろいろ捜査を進めている。証拠隠滅罪が成立するのではないかということが二月ごろから言われていました。たとえば丸紅レポートはどうなっているのか。暗号コードはどうなったのか。クラッター氏と共謀して隠滅をやったのではないかということがもう何カ月か前から言われていました。最近このことは余り新聞に出なくなったようですが、この捜査はどうなりましたか。 〔小平(久)委員長代理退席、委員長着席〕
○柳館説明員 ただいま先生から御指摘の点も含めまして、現在捜査をいたしておるところでございます。
○諫山委員 そうすると、証拠隠滅ということを一つの被疑事実として捜査していますか。
○柳館説明員 それをも含めまして、事件全体を捜査いたしておる、こういうことでございます。
○諫山委員 さっき、児玉譽士夫は外為法で起訴されたのに、丸紅の起訴はどうなっているのかという指摘がありましたが、私もこの点、疑問に思っております。すでに警察は丸紅に対して強制捜査をして、このときは約五億円の金を丸紅が受け取っているということが前提にされていたはずです。だとすれば、外為法違反というのはきわめて簡単に成立するのではないかと思うのですが、いかがですか。
○柳館説明員 先生も御承知のとおりに、金額の多寡ということではなしに、事案の内容あるいはそれの立証するに足る証拠の問題等々のことがございまして、まだ現在送致いたしておらない、こういうことでございますので、御了承願いたいと思います。
○諫山委員 丸紅に対して強制捜査をした当時、捜索令状には被疑事実として五億円の受領というのが書いてあったけれども、実際に授受された金額はもっと多かった、一億円程度はすでに時効になっているから被疑事実として記載しなかったということが当時から言われておりましたが、そうですが。
○柳館説明員 その当時、令状を請求する段階におきましては、五億円以上のものについての疎明資料がございませんでした。そういうことでございます。
○諫山委員 ユニット領収証分の約一億円というのはすでに時効になっているから、被疑事実に載せなかったのだというのではなかったのですか。
○柳館説明員 先ほど申し上げましたように、それを疎明するに足る資料がございませんでしたので、それをいたさなかった、こういうことでございます。
○諫山委員 丸紅に対する捜索令状に被疑事実として書かれた五億円、これは外為法違反との関係で言えば公訴時効になるのはいつごろからですか。
○柳館説明員 四十八年八月五日でございます。
○諫山委員 そうすると、いつになれば時効になるという解釈ですか。
○柳館説明員 五十一年の八月上旬でございます。
○諫山委員 このロッキード事件というのは次々に時効が進行していく。一遍にすべての時効が完成するのじゃなくて、長期間にわたる事件だから、次々に時効が進行していく。ぐずぐずしておったらどんな悪いことをしておっても起訴できなくなるということが大きな問題なんです。 そういう観点から見ると、二月ごろから問題になっていた外為法違反とか証拠隠滅というのがいまなお処理されないということを私は大変不思議に思うのですが、どうしてこんなにおくれているのですか。
○柳館説明員 ただいま先生御指摘の時効の点もにらみながら捜査を進めることは当然だ、こう考えております。 まだどうして送致に至らぬのかということでございますけれども、鋭意ただいま捜査を進めておるということで御了解願いたいと思います。
○諫山委員 丸紅レポートについては、国会の中でも、あるいは捜査段階でもずいぶん問題になったと思います。そして、この中に黒いピーナツを食った政府高官のことが具体的に記載されているはずだ、こう言われております。また、国会に出されただけではなくて、一番肝心の時期の丸紅レポートが必ずあるはずだ、仮に文書で報告がなされていなくても、口頭報告を裏づけるような何らかの資料があるはずだ、これは国会でもさんざん論議されたし、国民はみんなそう考えております。この点については、相当突っ込んだ議論が国会でもされておりますから、警察としては現在どのように認識しているのか説明してください。
○柳館説明員 丸紅のレポートにつきましては、先般私どもが捜索した結果、差し押さえをしたものにつきましては、国会に提出したわけでございますけれども、それ以外についてはございません。 ただ、このたび外国等の資料が参りましたわけでございますけれども、これについては取り決めの問題あるいは今後の捜査の支障等の問題もあろうかと思いますので、答弁は差し控えさせていただきたい、こう思っております。
○諫山委員 警察としては、丸紅レポートは国会に出された以外にもまだあるはずだ、それが恐らく隠されたか、消滅させられたかどちらかではないかという立場で捜査を続けていますか。
○柳館説明員 先ほど御答弁申し上げましたように、そういったことを全体を含めて捜査を進めておるということでございます。
○諫山委員 丸紅レポートと並んで丸紅の暗号コードというのがずいぶん問題になりました。そしてわが党の正森委員がこの問題をいろいろ追及したわけですが、当時法務省の吉田刑事課長は、暗号コードが隠滅されたんじゃないかという立場で事実を追及していると説明していましたが、警察はどうですか。
○柳館説明員 ただいまの御指摘の点につきましては、今後の捜査の支障にわたることでございますので、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
○諫山委員 アメリカとの取り決めに基づく資料の一部を警察が受け取ったということが大きく報道されましたが、何が必要かという判断は警察がしたんですか、検察庁がしたんですか。警察が検察庁の持っている資料を全部見せてもらって、その中で必要と思うものを指摘して渡してもらったんですか。その関係、どうなっていますか。
○柳館説明員 ただいま御質問の点につきましては、具体的な報告を受けておりませんので、ここで答弁をいたすことはお許し願いたいと思います。
○諫山委員 丸紅関係は警察で、検察庁は児玉だということがずっと以前から言われておりましたが、そういう分担の違いというか、これはいまもずっと続いているんですか。というのは、結局丸紅の問題も起訴するかしないかは検察庁ですから、はっきり相手方によって区分してしまうことはできないだろうと思うのです。そうすれば、警察の調べがいま言っているような段階だとすれば、さらに丸紅について検察庁も調べる、そうするとどういうことになっていくのか、やはり時効の問題が近まってくるんじゃないかと思うから私は質問するんです。
○柳館説明員 たびたびで申しわけございませんけれども、ただいま御質問の点について答弁を申し上げることは、捜査の内容にわたってまいりますので、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
○諫山委員 警察もそうだと思いますが、丸紅がアメリカの金を受け取っている、これは濃厚な嫌疑を警察は持っているわけですね、その嫌疑に基づいて強制捜査をしたわけですから。だとすれば、たとえば警察が被疑事実としてすでに特定している五億円、これが丸紅の手元に残っておろうと、あるいは政府高官に渡っておろうと、いずれにしてもこれは犯罪になると思うのです。その点はどうですか。
○柳館説明員 御指摘のように、そういう容疑をもちまして令状請求をいたし、かつまた、捜索もいたしたわけでございます。私どもが持っている容疑が立証されれば、先生のおっしゃるように、犯罪になることば当然のことでございます。
○諫山委員 海部副長官にちょっと。三木総理は、朝日ジャーナルに載った藤木英雄論文、「不起訴でも高官名は公表できる」というのを何回も熟読玩味したというふうに言われていますが、そうですが。
○海部政府委員 それは読んでおらないということでございました。
○諫山委員 いわゆる政府高官というのは何なのかということで、この論文は四つの分類をしていますが、あなたは読まれましたか。
○海部政府委員 不勉強で申しわけありませんけれども、その分類のところを私まだ読んでおりませんです。
○諫山委員 きのう何を質問しますかと聞かれましたから、この論文のことを質問するのだ、灰色の政府高官の公表の問題だということを言ったのですがね。 簡単に説明しますと、灰色の政府高官というのにいろいろ種類がある。十五ページの一番下の段です。資金を受け取ったかどうかはっきりしない人がいる、この人については氏名を公表するのは問題であろう。しかし、資金は受け取ったが職務権限外だ、それから後援会、派閥が資金を受け取ったけれども政府高官が特別の依頼を受けていない場合、収賄罪になるけれどもすでに時効になっている、こういうのは刑事事件として起訴はされないだろうけれども、当然政治責任は免れないというのがこの論文の一つの基調です。この三つの人たちは政治責任は免れないという点についてどう考えていますか、これは刑事責任と一応区別して。刑事責任は負わされない。
○海部政府委員 これは全く一般的な問題でありますから、具体的に今回の事件に当たってどうのこうのじゃありませんけれども、そういう事実がもしきちんとした裏づけでもって立証されたとすれば、これはやはりおっしゃるように、灰色という言葉がこの場合当てはまるかどうか知りませんけれども、そういうものではなかろうかという感じはいたします。
○諫山委員 そうすると、藤木論文の四つの分類のうちの二番目、三番目、四番目のいわゆる政府高官は、やはり政治責任を負わなければならないということになると、その政治責任を追及するのは警察、検察庁というよりか国会だというふうに思うのですが、いかがですか。
○海部政府委員 仰せのとおり、国会だと思います。
○諫山委員 この藤木論文は長い文章ではないのですが、結論としては、いま挙げた三つの分類の政府高官、これは灰色の政府高官と言われている人たちですが、この人たちの氏名を公表すべきである、法律的に公表することができるというのが結論です。 私、さわりのところをちょっと読み上げますが、十八ページの一番下の段の一行目からです。「ロッキード事件で、灰色の、起訴に至らなかった政府高官の氏名を公表することは、首相を頂点とする内閣の政治的決断さえあれば法律上これをはばむカベはない、」というふうに言っております。つまり法律が禁止しているからできないんじゃなくて、決断の問題だというのが藤木論文の一つのポイントですが、この点は、いまあなたが政治責任を負わなければならないと言った人々の氏名の公表は、法律上可能だと思われます。
○海部政府委員 これはその時点になって具体的な状況、具体的な事実が判明する前の段階で、どうのこうのと断言することは適当ではないと思いますが、公益上の必要その他の事由があるのかどうか、相当と認められるのかどうかということは、これはそのときになって、具体的事実を踏まえて総理大臣なり法務大臣なりが御判断をされる問題である、こう思うのですが……。
○諫山委員 灰色の政府高官の名前を公表するかどうかというのは、もう数カ月にわたって論争されてきました。当然法律的に公表できるのだ、法律的に公表できないのだという判断は、政府として下していると思うのです。政治的に公表するかどうかという問題は別として、法律的にできないから公表しないんだという場合もあり得ると思うのですが、その点は法務大臣じゃなくて、海部さんどうですか。
○稻葉国務大臣 それはいまの段階では、まだ私ども断定してないのです。つまり、いわゆる灰色の政府高官の公表を国会の要請に基づいてすることが、協力することが法律上全然壁がないというふうに藤木さんは言っておられるけれども、私どもはそこまで断定できるとも思わないのですね。というのは、やはり犯罪捜査というのは、このロッキード事件については国民の公表の要望が強いということは、先ほど稲葉さんのあれにもありましたとおり、私もそうだと思いますよ。 だが、犯罪捜査というのは、この事件だけではなくて、何万、何千万件とあるのですから、それから将来ずっと続くわけですから、そういう将来の検察庁なり警察なりの犯罪捜査機能といいますか、それに常に灰色のものを公表する前例ができることが、果たして検察犯罪捜査機能を将来にわたって阻害するおそれなしとしないかという疑問がまだあるものですから、機構全体について非常に考えなければならぬ点が残っているものですから、全然法律的に支障はない、法律的に支障はないんだから政治的に判断すればいいんだというふうに割り切るにはなお一考を要する、検討を要するという私の考えです。
○諫山委員 これから検討しますじゃ遅過ぎるわけですよ。これだけ政府高官の名前を公表するかしないかが論争されているわけです。政府高官の名前を公表できる、これは起訴されない高官の名前も公表できるということで、藤木教授は四つの方法を提起しているのですよ。私は、きょうは海部さんにこれをあらかじめ検討していただいて、正式な見解を聞きたかったのです。 第一は、検察庁法第十四条の法務大臣の指揮監督権に基づいて、検事総長に灰色の高官名を公表させることが法律的にはできる。しかし、これは指揮権発動に通じるから好ましくないというふうに言っているのですが、この見解に対しては、海部副長官どうですか。
○稻葉国務大臣 具体的事案について検事総長を通じて指揮するのは、法律上私の権限ですからお答えしますが、私は、積極的にも消極的にも、指揮権を発動することは好ましくない、やらぬつもりだ、こう思います。
○諫山委員 私は、指揮権発動しなさいとは言っていないのですよ。法律的にはできるけれどもこれは好ましい方法ではないと言っているという、その法律的にできるという点を聞いたのです。
○稻葉国務大臣 法律的にはできますが、好ましくないという藤木教授の意見に私も賛成です。
○諫山委員 繰り返しますが、私はそれを勧めているわけじゃありませんから……。 もう一つの方法は、法務大臣が捜査経過の報告を受け、内閣の責任で法務大臣なり内閣官房長官が記者会見などで公表することば法律的に可能である。しかし、これは下手すると、政敵を陥れる手段に使いかねないという注釈がついているのですが、法的に可能である。しかも、これは内閣の責任で内閣官房長官が公表することができるとなって、まさにあなたの問題ですが、これはどう考えていますか。法律的に可能だと思っていますか。いまの三木内閣がするかしないかは別として、やろうと思えばこれはできる方法だと藤木教授が指摘しているがどうかということです。
○海部政府委員 これは、どうなっていくかという事態の推移と絡むきわめて微妙な問題でありますので、事実に基づいての問題については何とも申し上げられませんが、ただ学問的、法律的に、理論的に言うとできることだ、それは好ましい好ましくないは別として、内閣の責任において判断した場合に、法務大臣あるいは官房長官が記者会見などの形で公表する、こういうやり方も一つの一般論として、方法としてはあり得るだろうという程度にしか言えません。
○諫山委員 念を押しますが、これも、私はそれを特に勧めている、最上の方法と言っているわけじゃなく、こういう見解があるがどうかということを聞いたわけです。ただ、法律的には可能だという見解はわかりました。 三番目の方法として、以上のことを国会審議の過程で、緊急質問への答弁という形で総理大臣なり法務大臣が本会議で公表することがあり得るだろう。 四番目の方法は、国会の委員会で国政調査に基づく資料要求に応じて同様のことを公表することもあり得る。 これも、政府がやろうと思えば、起訴されていない灰色の政府高官の名前を法律的に公表できるという結論ですが、どうですか。いまからこれを研究するのでは遅過ぎるわけです。つまり、法律的にできないから公表しないのか、法律的にはできるけれども他の配慮で公表しないのか、これば全く別の問題ですから、内閣としてはどういう見解をとっているのかというのを知りたいのです。
○海部政府委員 このことは、最初から何回も申し上げておりますように、事態の推移を見て、そのときの状況、そのときの具体的事実というものに基づいて問題が提起されてくることであって、いまの段階で内閣が、いま御指摘のように、この論文に掲げてある四つの方法が一々法的にできるのかどうかということを内閣として検討して、この方法がいいとか悪いとかいうようなことを議論したことはございません。
○諫山委員 そうすると、公表するとかせぬとかあれだけ問題になっているのに、するかしないかという政治判断と別に、法律的にできるかできないのか、できるとすればどういう方法があるのかという検討は、内閣として全くしてないのですか。
○稻葉国務大臣 いま全部取っつかまえてやろうとして一生懸命になっているのですから、そういう段階で取っつかまえ損なった場合のことを想定してどうするこうするということを言わさぬでほしいですね。大体わかるでしょう、ばかじゃないのだからいろいろなことを考えているというくらいのことは。(「ばかじゃないんだからというのは取り消した方がいい」と呼ぶ者あり)いや、こっちが。こっちがばかじゃないんだから——あなたはお利口ですけれども、こっちもばかじゃないのですから。そう利口とは思いませんけれども……。
○諫山委員 刑事局長に質問します。 起訴されなかった被疑者で起訴されなかった経過、根拠を公表した事例がいろいろあるということが、この朝日ジャーナルの論文に出ております。たとえば和田教授の心臓移植事件だとか住友化学の事件だとかサリドマイド事件だとか、いろいろ世間で注目されたような事件では、不起訴事件だけれども事件の内容を公表するということはあるし、ロッキード事件については、まさに政治姿勢を正すという点から見て、海部副長官が政治責任はあると言われている人について公表することは、検察庁としても可能だし前例があるというふうにこれにも書いてあるし、私もそう思うのですが、刑事局長どうですか。
○安原政府委員 藤木教授の書かれておるようなこととして不起訴処分の内容を明らかにしたことはあるわけであります。ただあくまでも四十七条本文並びにただし書きの精神を踏んまえて、その公表することの公益の方が大であるという判断のもとに行われたものであると理解しております。
○諫山委員 副長官にもう一遍質問します。 金を受け取ったかどうかがはっきりしない人については別として、金を受け取ったけれども起訴されなかった三つの場合、これは政治責任の存在は認められましたが、こういう指摘があるのです。これは賛成かどうか。いま私が挙げたような政治家は確実な資料の裏づけのある批判は甘受しなければならない、これが政府高官の氏名を公表すべきだという一つの背景だ。政治家だから、金をもらったかもらってないかはっきりしない、こういう問題まで甘受せよというのは無理ですけれども、金をもらったということがはっきりしている、それが時効で起訴されなかったとか、あるいは何か職務権限があいまいで起訴されなかったというような場合は、刑事責任は別として、それを国民に公表するというようなことは甘受すべきだという指摘がされているのですが、内閣としてはどう考えますか。
○稻葉国務大臣 さっき稲葉さんの同様な御質問がございました。それはあなた個人でここで言われても、正式な国会調査権に基づくそういう御要求になるわけではないのでございますから、刑事訴訟法四十七条と先ほど挙げられました国会法の百四条との関係について、そういう国会の調査権の発動があった場合に決められるべき問題でございまして、それに対して応ずるとか応じないとか、この段階で申し上げることは、諫山さんも御承知のように、刑事責任の追及にいろいろな人に協力してもらわなければいかぬ場合に、任意の供述の範囲等が狭まるおそれを持ちますので、この際は答弁を差し控えさしていただくのが、国会も刑事責任の追及の担当者である検察庁に御協力をいただく意味において、どうでしょう、そういうふうにしていただけませんでしょうかな。
○諫山委員 いわゆる政府高官を割り出す、その中でだれが灰色か、こういうことを割り出す。これはアメリカ側の資料も一つの参考になるかもしれませんが、中心的には日本の捜査機関の独自の調査だと思うのです。その場合に、いわゆる灰色の政府高官の名前を公表するについて、法務省とアメリカ司法省との取り決めというのは障害になりますか。灰色の政府高官の名前を取り決めとの関係で公表できないというようなことが起こり得ましょうか。これは刑事局長、説明してください。
○安原政府委員 仮にアメリカから司法省を通じて提供を受けた資料の中に高官の名前があり、その高官の名前を公表するということは取り決め上できないわけでございますが、日本のそういう資料を端緒といたしまして、あるいはその他国内における資料を端緒として収集した結果認定された被疑者の問題については、取り決めから来る制約はございません。制約があるとすれば、それは四十七条そのものでございます。
○諫山委員 最後に、私は法務大臣と海部副長官に要望します。 私たちは、この事件は厳正迅速に刑事事件として捜査しなければならないと思うのです。しかしこれで事足れりとも思っておりません。また起訴されなかった政府高官の名前は、たまたま時効で起訴を免れたとか、あるいは職務権限がうやむやで金は莫大にもらっておったけれども起訴できなかったとか、こういう場合に、あいまいにするんじゃなくて、やはり国民の前に公表しろというのはみんなの願いです。そうして公表することはできるんだということがこの論文の結論だし、私もそのとおりだと思うのです。法律的にできる。ただ問題は、政府がやる気を持っておるかどうかだ、こういうことにあるわけです。また、ここで指摘されているのは、もしアメリカとの取り決めが灰色の政府高官公表の妨げになるようであれば、それはアメリカと交渉をやり直せということも指摘されております。 こういう点で、ただ検察庁に任せておけばそれでいいじゃないか、日本の検察庁を信用しなさいというだけでは事は済まないということを強く要望したいのですが、その点副長官いかがですか。
○稻葉国務大臣 私の申しているのは、総理もしばしば言っているように、この事件は刑事責任の面と、刑事責任は免れたけれども政治責任や道義責任は残るという面と二つあって、刑事責任追及の担当機関は捜査当局、検察庁、警察、政治的、道義的責任を解明するというのは国会調査権に基づく国会の責任、それから国家公務員法上といいますか、昔で言えば綱紀問題というのはやはり内閣の責任でしょうな。 そういう点で、それぞれ国家機関に応じて全力を尽くして事態の究明をし、責任を明らかにする、こういうことを総理も言っているのですから、もう刑事責任だけ追及してあとは知らぬ顔をしているなどということを一度も言ったことはない。それはしかし、国会の調査権に対する検察庁及び法務省としての協力の仕方の場合は、おのずから刑事訴訟法の立法の趣旨に基づく制約もあります、その場合は、大きく内閣全体の判断によることでしょう、こういうことを申し上げればいいんじゃないでしょうか。決して事態をうやむやになんてできるものじゃない。そんなことをしたら、自民党内閣のみならず、議会制民主主義というものの崩壊につながる重大問題でありますから、そういう点について、何だかアメリカとあんな協定を結んで、秘密のうちにうやむやになるんじゃないかというような御心配はなさらぬようにひとつしていただきたいのです、一生懸命やっているのですから。
○諫山委員 終わります。
○大竹委員長 沖本泰幸君。
○沖本委員 私も、ロッキード問題に関しまして御質問をいたします。 いずれ近いうちには、国会の中に特別委員会ができる。その中で取り扱われる問題もあるわけで、両方兼ねながらやるわけでございまして、きょう御質問したことですべて終わるということではない、その取っかかりになってくるんだ、こういうふうに申し上げたいわけです。 そこでまず、先ほどからお話に出ております、司法当局を信頼して、すべてそれに任せろという御発言なり何なりというものがあるわけで、その点については、私たちは十分、司法当局の実力というものは信頼もし、その点については何ら異議はないわけですけれども、それとあわせて、刑事責任の追及ということだけでなくて、国会で問題にされておるロッキードにかかわる問題で、いわゆる汚職の構造なり何なりというものをこの際解明していくという立場から、政治的な責任なり道義的な責任を常に国会の場所で追及しなければならない。国会議員として、あるいは政党にかかわる者として国民に十分責任を果たさなければならない。そういう角度で問題をとらえていっておるわけでございますから、決して司法当局の捜査をそのために妨害するとかなんとかという考えは何ら持っておるわけではないわけですけれども、しかし、そういう立場からわれわれが問題を追及していけば、これはもうどこかで必ず競合することは間違いないし、衝突することもあるんだ、こういうことになるわけですから、お互いが理解をし合いながら、お互いが協力し合いながら問題を究明して、国民の前に明らかにしていくということが一番大事な問題である、こういうふうに考えられるわけです。 そういうことですから、先ほども法務大臣は、御質問の行きがかり上、いまからいろいろな点を想定して物を言うなという点を御指摘になりましたけれども、これはあくまで国会が国民に対して政治的な責任を果たすために、国会の場であらゆる議論をやっていって、その中からあらゆる可能なものを引き出していかなければならないし、それを積み上げていかなければならない。それが当然の責任であるということになるわけですから、その点もお考えになっていただかねばなりませんし、また大臣の方も、法務当局としての行政を監督なさるお立場と、議員としてのお立場、閣僚としてのお立場、そういう両面をお持ちですから、あるときは司法当局の立場に立ってお考えになって御発言にならなければならないこともあるでしょうし、あるいはある一面からは、内閣の閣僚としてやはり責任あるお考えを御披露にならなければならない、こういうこともあるでしょうし、あるいはわれわれと同じ政治家の立場として問題を追及しなければならない、こういうものもあるわけですから、その点は一つのものだけに閉じこもってしまった御発言になるということのないようにお願いしたいわけです。 そこでまず、書かれたものの中から問題を引き出してお伺いをしたいわけですけれども、 ロッキード疑獄の核心部分は、まだ深い霧に包まれていて、一向に明らかになりそうもない。かたずをのんで見守ってきた国民のなかには、いらだちや諦めのムードさえ出かかっている。アメリカからの資料を受けとっても、捜査当局の手のなかに包みこまれたまま、「高官」名さえ発表されないままウヤムヤにされるかもしれないからだ。これまでも何回かあった黒い霧事件の“実績”からみて、わが国の法務=検察に対する信頼感が低いのも、やむをえないだろう。不幸にも、こうした一部の国民の諦観めいた予想が当たる結果になれば、捜査当局の信用だけでなく、議会をも含めた政治全体の権威も地に墜ちることは確実である。三木首相の“政治生命をかけて解明する”といった約束の空洞化は、首相個人の責任をはるかに越えて、保守政治そのものの腐朽ぶりを決定的に証明することにもなるといっていい。こういうことが週刊誌に出ておるわけです。これは全く国民の考え方を率直にあらわしているわけでもありますし、また、この事件が起きて捜査に当たるときにも、司法当局は司法当局の威信にかけて国民の信頼にこたえるというお立場に立たれておるわけです。しかし、しばしばいわゆる守秘義務という問題がむしろこういう問題をわからないようにしてしまうという点は、先ほど引用されました藤木さんの中にも指摘されておるわけで、 日本側が独自捜査で解明した事実についても、不起訴となった場合には公開されない、という従来からの慣例どおりに処理されるときには、刑事事件としては成立しないが、政治道義上の問題として、国民の前に公開され、その審判を仰いで然るべき事実が、秘密のベールによって覆われ、結局、事件もみ消しの役割を果たすことになる。という一面があるということになる。これは、過去しばしばの疑獄事件の中からこういう問題が指摘されてきておるわけです。 そういう点から、最近になって法務大臣のお答えというのが少しずついろいろ変わってきておるわけです。まあ変わってきているというか、何か事態の進展に従って御答弁がだんだんとそうなっていっているということが言えるわけですけれども、五月五日の読売新聞に、 政府筋は、四日夜、ロッキード事件の捜査の結果、「クロ」と断定できず起訴し得なかったいわゆる「灰色」の政府高官名を公表するため、政府部内ですでに具体的手順、法的根拠、範囲などの検討を終えていることを明らかにした。それによると1刑事訴訟法四七条にいう「訴訟に関する書類」をナマの形では公表できない2しかし、国会の要請があれば、捜査対象のうち公表が相当と認められる高官の名前、容疑、捜査結果など、その要旨を捜査当局にまとめさせ、公表する——というものである。こうした政府の方針によって、公表されるかされないかで論議を呼んでいる灰色高官名公表問題は、事件関係者全員の名前や捜査資料の全面公開には至らないものの、捜査終了時点で何らかの形で国民の前に明らかにされる公算が強まってきた。中で言っていることは、 検察庁は、捜査の常道として、純粋に刑事的に立件可能なものだけを捜査し、政治的、道義的責任まで考慮するのは職務でないので、容疑が濃いものなどかなり限定されたものになるとしている。具体的には、贈収賄罪の大きな構成要件である「職務権限」の有無だけが最終的に立証不能だったものや、証拠不十分のもの、起訴するほどでない罪状のもの、内偵段階で名前が報道されてしまったものなど、捜査対象としながら、結局起訴猶予か不起訴になった「灰色」高官のうち、当局が公表するのが相当と判断したものを公表するという。 公表内容と公表方針は、あくまで検察独自の判断で行うが、その前提は、国会が国会法一〇四条の行政府への報告・記録提出命令か議院証人法による検察首脳の証人喚問など、国政調査権を行使してきた場合。政府から検察当局への伝達は、法相の指揮権発動といった大げさなものではなく、これまでも法相が国会答弁に当たって検察当局に捜査の概要報告を求めて、これに応じているいわゆる「一般的指揮権」の範囲内で処理するとしている。こういうふうに新聞にあるわけなんです。 これは政府筋がこういうふうな公算が強まったという形で発表なさったというので、先ほど海部副長官にお伺いしようと思っておったのですが、時間の都合で退席されたので、法務大臣に伺いますが、この点についてはお話し合いがあったのですか、何かの具体的な御連絡があって、この程度のものについてというような段階でこの辺までが明らかになったのかどうか、その点についてお答え願いたいと思います。
○稻葉国務大臣 私は、その新聞記事に関しましては、政府部内で打ち合わせがあったという事実を存じません。 それから、大変恐縮ですが、一番最初の藤木さんの論文を読まれまして、どうも国民は事態がうやむやになるのではないかという憂えを持っておるとか、そういう可能性があるように思うとかいう点につきましては、これは難事件でございますし、大事件で、国際的にまたにかけた問題ですけれども、わが検察庁の賢明にして有能なあの陣容で事態の解明ができないわけがない。ただ実績が、過去において造船疑獄のように指揮権発動したじゃないかというのは話にならない。 ですから、そういう点で、行政、ことに政党人である法務大臣を初めとして、そういう行政権がいささかも独立、自主的な捜査権に干渉するような印象を国民にこの際与えてはますますいかぬ、実績も悪いし。そういう点で、資料はストレートに法務省を通らずに検察庁へ持っていくというような慎重な態度をとっているわけでございまして、いまいろいろ言われていますけれども、それは過去の実績も悪いし、指揮権発動なんかあったりして、悪いことも悪いのだから、じっと耐えてがまんをして、しかし最終的にはぴしっとする。どうでしょうか、国民の皆さん、わが検察庁はさすがにしっかりしているでしょうがというところにいくまでは、私はあらゆるそういう揣摩憶測、決して信頼されていない揣摩憶測に耐えていこうとして苦悩している次第です。
○沖本委員 むしろこういう考え方も一部にあるわけで、一般的に国民の皆さんと話し合っていくと、いわゆる捜査の秘密という聖域論がある。聖域論の中で、これを侵されてはならないんだ、こういうお考えのもとに、それを少しでも侵すようなことがあればというようなお考えが強いんではないだろうかというふうなのが一般国民の関心になっているわけです。そういうものが、いま大臣が御指摘になる揣摩憶測ではないか、それに耐えなければならないというものもあるわけですけれども、最初に申し上げましたとおり、これはまあ大臣にお求めするわけではなくて、司法当局の方に求めるわけですけれども、こういう事態になっており、国民すべての関心事であり、その関心を大きな公益上の問題という考えに発展させなければならない事態になってきておるわけですから、国民が知る権利に基づいて求めてきておるものは、これは最大の公益であるという考えにもなるわけで、この国民の知る権利をこれは当然保障しなければいけない問題になっていくわけです。 そういう観点を受けて見ても、ある程度のことは——それは法律根拠に基づいて純粋に捜査をお進めになり、当然その刑事責任を追及していくということばいささかも揺るぎないわけですけれども、法律的根拠に基づき、法律的な内容から厳正、公平を期して捜査をおやりになればなるほど、結果は国民を裏切るような結果が起こってくるという事態が憂慮されるわけです。それは先ほどから警察当局にも御質問になっていろいろ言われた、時効がだんだん迫ってくる、ほとんど時効で外されてしまう、あるいは実際には、そうだったんだけれども結局刑事責任を追及されないような事態になるんではないか、その部分を、いわゆるすべての動きについて知りたいという点にあるわけなんですが、その点はどうなんですか。
○稻葉国務大臣 国会の皆さんも国民の代表者として、国民がこの問題についてなるべく早く知りたいと言うのは当然だろうと思います。知りたいから知らしてくれ、いまどんなところまで行っている、だれを呼んだというような、知る権利に応じて捜査の手口まで明らかになるようでは、結局われわれの責任を果たせないということにもなるので、その辺のところは、だから、議長裁定にも、事態の推移を見て、そうして刑事訴訟法の立法の趣旨を踏まえて、国会の場は政治的、道義的責任を追及する場として、その追及に対しては御協力を申し上げますと、こういうことを言うているのでありますから、協力しないというようなことはしていないのですからね。そして、刑事責任だけが責任の全部ではないということもあれなんですし。 それから私は、時効にかけるほど捜査当局として恥なことはないと思っています。自分で能力がなかったということを自白するようなものですから、そういうことはゆめゆめ抜かりなく。 まあ一般的に、犯罪捜査というものは密行主義じゃないでしょうか。鳥でも魚でもつかまえるときにわんわんいうやり方もありますな。イノシシを追い出すなんというのはだんだかだんだかやるけれども、それでは犯罪捜査ばいかないのじゃないかというふうに思っておるものですから、つい私のようなことになるのですが、それがうやむやにする意思でないかというふうに疑われても、私はやむを得ない、甘んじてそれを受けて、最後にぱかっとつかまえてみせる、こういう気持ちでおるわけです。
○沖本委員 なかなか勇ましいことをおっしゃるのですが、「最後に」というところにみんな心配しているわけなんで、最後にぱかっといかなくなって、網に穴があいていたということがあるわけですから。 そこでこれも一つの厳しい考え方として申し上げたいわけですが、 国民が主権者となるためには、他のどんな条件にもまして「知る権利」を保障することが、論理的にも実際的にも大前提となる。さし当たり当面のロッキード汚職についても、政府が入手できる基本資料はすべて、主権者たる国民の前に公表されるべきである。情報の公開をこばむことは、——その正当な理由がないのみならず——主権者の判断をふさぎ、腐敗の構造を支えて、汚い手の政治家たちに専権をまかせることにほかならない。 情報公開の原則は、汚職事件などに限らず、主権原理を具体化するために、もっと早くから確立されるべきものであった。 西ドイツやスウェーデンが、基本法の中で「知る権利」または公共機関の情報公開の原則を謳っているのと比べても、また特別の情報公開法によって、個人にも政府情報を入手できる権利を具体化したアメリカと比べても、わが国の法制ははなはだ立ち遅れている。情報化社会と呼ばれる今日、国家の収集・保管する情報量が圧倒的に膨大であるだけに、それらが「国家秘密」等の名目で国の機関の手に独占されていては、民主政治は成り立たないのである。ロッキード汚職を契機に、“情報を公開せよ”という国民世論がたかまったのは、当然の成り行きであり、「禍を転じて福に」する唯一の道は、この声に応えてここで公開原則を確立することにある。という点で国民の権利というものを主張しているわけです。けれども、またそこで、 傷つきやすいプライバシーの価値は、国法上も最高度の配慮を要する法益である。誰しもが持つ“他人に知られたくない”私事を、低劣なノゾキ見趣味から守る必要は、今日の情報化時代では高まっていく一方である。ただ、この私事防護の原則の大きな例外として、公共人とりわけ権力にかかわる政治家(および高級官僚)のそれは、公開原則の前に大幅に限定されなければならない。国民の委託を受けて、国民生活にかかわる政策の決定や価値配分を行う為政者は、その公的任務の特殊性のゆえに、ガラス張りの中に身を置いて仕事をすべきである。職業としての政治家の道を選んだときから、人はそのプライバシーの権利の相当部分を自ら放棄する社会契約を結んだと考えてもよい。少なくも汚職の重大な疑いをかけられた政治家が、プライバシーの権利を盾にとって、その陰に逃げこむことは許されない。 「国家秘密」もプライバシーの権利も、汚職者たちを守る防護壁にはならないし、国民の側ではそうした名目の中に隠れようとする“被疑者”については、クロらしさを疑ってその政治責任を問いただす権利を保有するといってもいいであろう。こういうことが述べられておるわけですけれども、この点について、大臣どういうふうにお考えですか。
○稻葉国務大臣 それはそれ自体として間違っているわけはないですね。だからこそ政府は、事態の推移を見て、国会の国政調査権——政治的、道義的責任追及の国政調査権に最善の協力を申し上げますということを、五党党首会談で自由民主党党首兼総理大臣もきちんと約束している次第ですから、それはそれ自体として非常に結構な話だというふうに思います。
○沖本委員 それでは、国会決議に従ってお出しになった三木親書について、大臣はどういうふうにお考えになっているのですか。
○稻葉国務大臣 三木さんは、去年の八月六日にフォード大統領と日米首脳会談を熱心にやられたわけです。そして、日米の将来についての揺るぎない友好関係を樹立して帰られて自信がおありなものですから、国会決議がこういうふうにあった、ついては、日米の将来の友好関係からいっても事態は究明すべきものだ、うやむやにしちゃいかぬ、うやむやにすることは日米の将来にとっても悪いし、わが国の民主政治の破壊になる、こういう信念でやられたわけです。ですから、向こうの法制上非常に問題はあるけれども、あそこまで協力して実務協定の取り決めまでいったものだ、こういうふうに思って、この国会決議があり三木親書があったればこそ、相当な協力をわが国に与えているものと高くこれを評価しているというのが私の心境です。
○沖本委員 アメリカ側は高く評価したのですが、わが稻葉法務大臣はやはり高く評価していらっしゃる、その趣旨にお沿いになっているかどうかという点です。
○稻葉国務大臣 そういう協力について日本の総理大臣が向こうの政治の頂点にあるフォード大統領にそこまで熱心にやるということは、いかに事態の解明がわが国の政治の信頼の回復と民主政治の将来の発展に大事なことかという非常に熱心な証左であって、私はそうあるべきものだ、決してうやむやにするような意思は毛頭ないということの証左にもなっている。国民もこれを評価してもらいたいというのが私の気持ちです。
○沖本委員 そういう趣旨に受け取って、これからいろいろ申し上げます。 そこでもう一つ、国会の問題として法務大臣に御意見を伺いたいわけですが、 国会の憲法的意義は、それが「国民主権」にもとづく「国権の最高機関」たる位置から出発する。国会の第一次機能は「立法」にあるのではない。それば、首相選出権を中軸とした、情報公開、争点提起、国政調査にもとづく政府監督にある。これが、憲法四一条で、国会について、「国の唯一の立法機関」という規定よりも前に、「国権の最高機関」と規定する理由である。 国会の位置設定をめぐって、今日も国会=立法、内閣=執行、裁判所“司法という憲法機構論が生きのこっている。法案の立案のほとんどが政府によっておこなわれている現在、国会をたんに立法機関とみなすことは、国会を政府の立案した法律の「登録機関」とみなすという結果になる。それゆえこのような権力分立論を転換させて、まず国会を憲法前文ならびに一条の国民主権の規定にふさわしく、「国権の最高機関」と位置づける発想の成熟、ついで憲法理論の展開が必要なのである。 事実、憲法は、最高機関たる国会の情報公開、争点提起、国政調査それに政府監督という課題に対応して、六七条首相指名、六九条内閣不信任だけでなく、五〇条議員の不逮捕特権、五七条会議・議事録の原則的公開、六二条国政調査、六三条国務大臣の議院出席の権利・義務などの規定をもっている。このような憲法的位置にあるからこそ、国会は、国の政治の準則を制定する「立法機関」たりうるのである。こういう意見に対して法務大臣はどういうふうにお考えですか。
○稻葉国務大臣 憲法全体の性格についての学問的な判断の一つを示されたわけですが、細かい点はともかくとして、大まかの点はそのとおりだと思いますね。ただ、旧憲法時代の立法、司法、行政全部が天皇に集中しておったというような形の最高機関だと国会を位置づけているのでは日本国憲法はないと私は思うのです。やはり、裁判権はきちっと独立に裁判所にはっきりしてありますから、国権の機能たる立法、それから司法、行政の一番混淆した場合の最終的な決定権は国会にあるのだという形の最高機関ではないというふうに私は思います。
○沖本委員 もう一回いまのことで重ねてお伺いしますが、いわゆる国権の最高機関、国政調査に基づく政府監督にある、これが憲法四十一条で、国の唯一の立法機関という規定よりも前に、国権の最高機関であるという規定がされているという点についてはいかがですか。
○稻葉国務大臣 その点については争う余地はないのじゃないでしょうかと思いますね。
○沖本委員 それで、しばしば国政調査権という問題の軽重が問われるということになるわけでございまして、今後もやはりそういうお考えのもとに国政調査権というものをおくみ取りいただきたいし、お考えいただきたい、こういうふうに考えるわけでございます。 そこで、三木総理大臣も稻葉法務大臣もこの事件の当初に、アメリカからの資料が来るときに、私はその資料は見ないのだ、一切見ませんということをしばしばあらゆるところで御発言になっているわけですけれども、それはいかがですか。
○稻葉国務大臣 そういう方針を私が決めて総理に申し上げ、総理もそれがよかろうということになった思想的な根底は、一つは、過去において指揮権などを発動した悪い実績もあるし、それから本来犯罪捜査というものは将来の裁判につながる密接な、しかも自主性、独立性を尊重すべき国家権能であるから、一般行政権がこれに不当に関与する、干渉するという印象を払拭する。 もう一つは、私も法務大臣であり、検察庁法十四条に基づく指揮権の保有者ではありますけれども、政党人でございますから、こういう事件は、ことにただ単なる窃盗とか殺人だとかいう事件ではなく、政治的に非常に不偏不党、偏せず党せずということが最も尊重さるべき事件でありますから、政党人たる法務大臣がこの捜査資料の内容を見て手かげんでもするのではないかというような印象を国民に与えることは、この際よろしくない。国民から寄せられる検察の信頼にもひびが入るという念慮からそういうことをしたのであって、しかし検事総長にそういうことを伝える場合には責任は私が負うのですよ、しかし、いま言ったようなことで見ないでお渡ししますから、しっかりやってください、こういうことです。
○沖本委員 それは司法当局に、安心して、行政監督者たる法務大臣がしっかりやってくれ、こういう立場でのことであって、それは向こう向きですね。 今度は、国会なり国民に向かっての場合ですね。いわゆる大臣訓令三長官報告事件の規定に基づきますと、ある一定の段階が来ると、結局、当該検察官から法務大臣は報告を受けるということが規定をされておるわけで、報告しなければ当該検察官はその義務を怠っていることになるし、報告を受けなければ法務大臣はその責任を放棄しているということが考えられるわけであり、その行政監督権の立場からいきますと、法務大臣が報告を受けた場合には、内閣総理大臣にその旨を報告しなければならないことであり、報告を受けた総理大臣並びに法務大臣はそのことが重大である場合には、国会が開会されておるときには国会にそれを報告しなければならない、こういうことに当たるわけですが、これはどうですか。
○稻葉国務大臣 こちらからどうなっているのかという問い合わせばいたしませんけれども、当然に捜査の一定の段階において、検事総長を通じて法務大臣に報告がなさるべきものだ、するに決まっている、いままだ報告は受けていませんけれども、段階が来れば、必ず報告はあるもの、こう思います、こちらから催促したりはいたしませんけれども。
○沖本委員 ですから、これは生資料に関することになるわけですけれども、生資料の公開を、国会は総理並びに大臣に迫ったわけですね。これは国会決議でもそうされているわけですから、公表並びに再交渉ということが原則であるわけですから、そういう点からいきますと、その持ち込み資料は一切見ないと、こういうふうな表現ですね。先ほどの、当局に向かってはそれは激励になるという意味になるかわかりませんが、国会に向かっては、結局は公表できませんという一つの言いわけということが考えられるわけですけれども、その場合に国会に連帯の責任を負っている行政府の立場からこのことを考えていきますと、総理並びに法務大臣は責任を回避していらっしゃるという理屈が成り立つということになるわけですけれども、その点についていかがですか。
○稻葉国務大臣 私は検察側に対しても国会側に対しても責任を回避するなどという卑怯な心持ちは毛頭ないです。だからこそ刑事訴訟法の立法の趣旨をも踏まえて国会の国政調査権には協力申し上げる。まだそういう段階になっていない。段階になれば、事態の推移にかんがみて当然そういう場合があり得ますし、そういう場合は喜んで責任を果たしたい、進んで責任を果たしたい、こう思っておりますので、そういうふうに見られるのは私の不徳かもしれませんけれども、せっかくいい御質問をいただきましたから、私は、責任を回避するような気持ちは毛頭ない、非常な責任を持っておる、重大である、こういうふうに考えて、夜も眠られないくらいでございます。
○沖本委員 その方は刑事局長の方が比重は大だと思うのですけれども、大変お疲れになっているところを申しわけないとは思っておりますけれども、しかし理屈の上からいくと、大臣の気持ちは責任回避するような気持ちは毛頭ない、こういうことかもしれませんけれども、おっしゃった言葉なりそういうものは理屈の上から判断していくと責任回避に当たりますよということになるわけなんです。 ですから、その辺をやはりもっと親切に、具体的に国民を納得させる方向で、こういうふうな三長官の訓令もあって当然報告を受けるようになっているんだ、なっているからいつかの段階に報告が来るでしょう、詳しい報告を私聞くことになる、その場合私が報告を取捨選択して、公表していいか悪いかというのを最高責任者として判断しなければいけない、その発表の時期も、その段階というものは司法当局といろいろ相談してやるけれども、だから必ずそういう段階から私は報告しなければならない大臣としての義務があるんだ、報告を受けるから国会に報告しなければならない、それができない場合には、閉会中のような場合にはあるいは総理を通してか、あるいは官房長官を通してか、あるいは法務大臣自身のお口からか、何らかの形で発表はちゃんとしていきます、それで国民の納得するようなものに持っていきます、こういうふうな御説明があらかじめあって、それがだんだんと国民に理解されていくような形で物事が進んでいけば、国民の疑いは少しずつ晴れていくということになりますし、そういう点がむずかしい中からよく詰められていけば、それだけやはりわれわれ議会に携わる者もある程度の責任を少しずつ果たしながら事件の解明に向かって進んでいる、こういうことが言えるわけなんですけれども、最初にいきなり、私は資料は見ません、公表はしません、こうなったのでは、むしろ一切ベールに包んでしまって、こうやってしまうというふうに受け取られても仕方がありませんよ、こういうふうになるわけです。
○稻葉国務大臣 私のはそれと全く逆で、仮にその中にいわゆる政府高官名があったりして、それを私が見た上で渡したということになると、法務大臣はああいう人とは非常に交際も親しい間柄だから困ったなあなんて困惑させますから、そうすると事態の究明に濶達自在、何の遠慮もなく、捜査当局が活動するにブレーキが——そんなことはないだろうと思うけれども、検察当局はしっかりしていますからないだろうとは思うけれども、そういう疑念をむしろ国民にも抱かせちゃぐあいが悪いな、こういう意味なんでございます。しかし、先生のおっしゃる意味も非常に貴重な意味で、私どもの思いもよらざることをきょう伺いました。よく気をつけなければならぬものだなとありがたく御忠告として気をつけます、伺っておきます。
○沖本委員 それだけで終わったのでは困るわけなんで、ですから最初から申し上げているとおりに、しばしば私たちが口にすることなり、当委員会なり予算委員会等、あるいはこれから先特別委員会なりでいろいろ議論を進めていくことについて、それが種々捜査の過程でいろいろな面で捜査の妨害になっていくという点がそれはあるかもわかりません、あるでしょう、あるけれどもやはりわれわれ国民の前にその責任を果たすために最善の努力を払っているわけであって、捜査当局もそういう観点からすればいろいろな障害なり何なりができてくるけれども、その中をやはり十分捜査の密行性を発揮しながら捜査を進めていただくということが大事ではないか、こういうふうに考えるわけですし、そういう立場から質問を進めているということになるわけです。 そこで、先ほどの御質問にいろいろと触れるようなことになりますけれども、質問が重複するかわかりませんが、これは言わずもがなのことになり、不可能な御答弁しか返ってきませんけれども、いままでの、たとえ総理や法務大臣から報告があったとしてもわれわれの立場から満足できないということになれば、国会がそのアメリカの資料を入手できる方法はいまのところないわけですけれども、そういうあらゆる方法をとりながら賄賂高官の政治的責任あるいは道義的責任を究明することは当然しなければならない、こういうことになるわけです。 ですから、先ほど議論されておったいわゆる資料の提示なり公開なりというものをアメリカに、よしんば当局側の方が困るようなことがあるにしても、やはりわれわれとしては公開してほしい、あるいはこれからも再交渉をやっていくという線は、これは国会決議の上からもやらなければなりませんし、それは一つもそういうことをしないでいまいろいろなこういうほかの可能性の問題を御質問しているという点ではないわけなんです。先ほどの質問のやりとりの中に出ていましたとおり、やはり再交渉の余地はあるという点も考えられるわけですから、斎藤特使は別にして、これから派遣される議員団がどういう交渉をなさるかわかりませんけれども、そういう交渉の中にもそういう余地は十分ある、そういうことも考えなければならぬということは言えるわけです。ですから、われわれの立場としては、やはりいままで主張してきた線は絶対崩さないという考えはこれからも堅持していきたいと考えております。 こういう場合、まず先ほどからお触れになっている百四条に基づいて検察当局に資料を要求した場合、証言法に基づいて当該の検察官に資料の提供を求めるということになりますし、この要求を受けた検察官は国家公務員法の百条によってこれを断る場合に、その旨を申し立てるために検察庁の承認を求めるということになりますが、その求める先というのはどなたとどなたの方に属することになるでしょうか。
○安原政府委員 議院の証言法によりまして出頭を求められた公務員が秘密に属するということを申し立てて供述をお断りした場合におきまして、当該委員会から証言等をさせる必要があるということで、なお必要があると認めるときには、監督官庁に対して当該公務員が証言することを承認するように要求するということになっておりますが、仮に検察官の場合におきましては、この監督官庁は法務大臣でございます。
○沖本委員 法務大臣とその可否について論ずることになりますけれども、その場合、やはり大臣がおっしゃっている十四条という問題が絡んでくるということになるのではありませんですか。
○安原政府委員 承認をしないで断るべきであるという法務大臣の御判断の際におきましては、事柄が訴訟に関する記録の内容を開示することを求められておるとすれば、当然に刑事訴訟法四十七条の趣旨にかんがみ、それを踏んまえて法務大臣が判断するということになるものと思います。
○沖本委員 その可否を論ずる場合、四十七条ただし書きの「公益上の必要その他の事由があって、相当と認められる場合は、この限りでない。」というところの「公益」の判断については、結局当該検察官と法務大臣との間で意見が異なる場合には、やはり十四条ということになりますでしょうか。
○安原政府委員 その場合に、法務大臣と意見が異なる検察官に対して法務大臣が証言をしろと言うことはまさに不起訴記録の内容を公にしろということでございまして、これは証言法による拒絶理由を法務大臣が認めないことの結果具体的な事件の処分に関する指揮を法務大臣がするという結果に相なるわけでございまして、そういう意味においては検察庁法十四条の指揮に連なる問題でございます。
○沖本委員 その場合、四十七条の本文とただし書きの指揮の仕方が違ってくるということも聞いておるわけですけれども、その指揮の仕方というのは、ただし書きの方は検事総長が回答するというような話もありますが、その点はいかがですか。
○安原政府委員 いま申し上げましたように、検察庁法には一般的な指揮監督と、ただし書きの具体的な事件の取り調べ、処分に関する指揮監督とございまして、いまのお尋ねの場合は、具体的な事件の取り調べないし処分に関する指揮ということになって、検事総長を通じてのみ指揮ができるケースでございます。
○沖本委員 これからは大臣がすべて否定なさると想定しての御質問になるわけですけれども、これはあくまで可能性というものをいろいろ探り出すための議論である、こうお受け取りいただきたいわけです。そのために委員会なり何なりからの求めに大臣自体が応じない、承認しないという事態が起こった場合には、議院証言法第五条で内閣声明を出さなければならない、こういうふうになるわけです。これは先ほどの議論にありましたけれども、造船疑獄のときには非常に抽象的であったということになるわけで、内閣声明にわたるような場合には、相当具体的な内容を伴った内閣声明にならなければならない、こういうことになりますので、そういうことに至れば至るだけ国民の目に映るものはぎくしゃくしたものに変わっていってしまうということになりますから、結局はそこまで行かないで、そういうふうになれば委員会を構成する議席数によっていろいろな議論が分かれてくるわけですけれども、それで委員会が一致したということになって、そのことは一切公表できませんということで法務大臣が拒否する場合には、結局議院証言法によって内閣声明を求めるという事態に至るわけで、これは具体的なものになっていかなければならない。 そうなってきますと、これから出てきた場合にどうなるかということになっていくことになるわけです。そこに至るまでの段階までにやはり国民の目にそれが十分映っていく、わかっていく、こういう過程でわれわれがそれを知ることができるんだということが国民の目によく映っていき、納得させていくことができるという形でなければならないということになりますから、やはり問題は最初に戻って、ある段階か来れば、——ある段階というのはこちらが決められるものではありませんけれども、またそれがずいぶん向こうの方に行ってしまってはならないわけで、そういうふうなものの決定あるいはその時期というものは十分お考えになっていただかなければならないということになりますから、先ほどの読売新聞で取り上げておった内容のことが想像されていくということになれば、一応はやはりあそこは新聞がマスコミの方である程度憶測してお書きになったんだ、われわれは関知するところではないんだ、こういうことでなくて、恐らくこういう段階を経て、国民は全貌が明らかにされないまでも、ある程度納得できるだけの内容のものはだんだんと判明していくのではないかというようなことをあらかじめ知らしめるべきではないかと私は考えるわけですけれども、その点についてはいかがでございますか。
○稻葉国務大臣 いま私どもの努力の目いっぱいは国会の道義的、政治的責任の追及の協力を求められる場面を予想するところまでいきませんで、刑事責任をきちっと追及することにいっぱいなんです。刑事責任を追及される人間がぴしっと皆押さえられてしまえば、道義的、政治的責任は一遍にみんな追及されるわけでございますから、その追及に目いっぱいの努力をしている。そうして、捜査がどんどん進んで、ある段階に来て、刑事的責任の追及に漏れた者があって、国会から政治的、道義的責任追及に対する協力を正式に求められた場合どうするかということをいま否定もしませんけれども、研究しているとかしてないとか、否定も肯定もしないというふうにひとつ御賢察願いたいと思っております。 読売新聞に出ているようなことについては、研究したかとかしないかとかいうことについて、研究しましたとか全然しておりませんとか、そういう御返事をいましたくありませんのですから、よろしく。
○沖本委員 それでは、おざなりの質問みたいになりますが、警察当局の現在までの捜査段階について、われわれに発表できる範囲内の内容のものをお聞かせいただきたいと思います
○柳館説明員 お尋ねの趣旨は丸紅関係の捜査であろうかと存じますけれども、ロッキード問題に関します丸紅関係の捜査につきましては、新聞等で御承知のとおり、二月二十四日に丸紅東京支社と関係九カ所について捜索を実施しまして、さらにその後三月十一日に丸紅東京支社について再捜索を行っております。また、これと並行いたしまして関係者から事情を聴取するなどいたしまして、いま全力を挙げて警視庁において捜査を続けておるということでございます。まだ送致するという段階に至っておりませんけれども、なお一層全力を挙げて捜査をしてまいりたいと存じております。
○沖本委員 刑事局長か大臣かどちらかになりますけれども、さっきの新聞にこだわるわけではありませんが、在来の事件からいきますと、重要な事件が起こった場合、しばしば当該の検察庁の検事正なり何なりが記者会見をして事件概要を述べているが、その中には、起訴に至らなかったものの内容も、やはり新聞紙上にある程度概要が発表されておったような場合には、記者会見で内容を明らかにしていることの事例はしばしばあるわけなんです。国会が開かれておれば、国家の重大事態に関する問題である場合には、総理が国会に報告なさるなり、法務大臣が国会に報告なさるといういままでの慣例があるわけですね。そういうことによって概要がわかるわけで、当然国会議員、政治家が関係しているということになるわけですから、国会に報告しなければならない事態でもあるわけですが、これはいまの捜査の進展ということは、内容はわれわれはわかりませんけれども、いまの国会の進行、そういうものから考えていきますと、閉会中になる場合もあるでしょうし、そういうことは十分予測されるということになってきますから、そうなってくると、やはり一つの段階としてある程度のものの山が来た場合には、これは当然記者会見するなり何なりで発表なさっていく、こういうふうな在来おやりになったことは、十分われわれは考えていいわけでしょうか、どうでしょうか。
○安原政府委員 御指摘のとおり、捜査の結果につきまして、検察庁の幹部が新聞記者会見で公表しているということは前例があるわけでありますが、あくまでも、たびたび申し上げますように、その場合におきましても、特に不起訴の場合におきましては、その内容を申し上げるときには、四十七条の精神というものを踏まえて、公にすることの利益が大であるということを比較考量の上で慎重な配慮のもとにやっておるわけでありまして、あくまでも人権の保障ということと捜査、裁判に支障がないかという配慮をしながら公表の利益を踏んまえて発表しておるというのが、あらゆる場合を通ずる基本的な原則でございまして、今度の場合におきましても、発表と申しますれば、先般も児玉譽士夫の外為法違反につきましては公表いたしておるわけでありまして、先ほど来しばしばおっしゃいますように、検察当局といえども、国民の知る権利というものに敬意は表するわけでありますが、知る権利がすべてを超越する利益ではないわけでございまして、あくまでも捜査当局といたしましては、捜査、裁判、司法の厳正公正な運営ということを第一義に考えて判断するほかはないわけであります。 ここに重ねて申し上げますが、あくまでも検察当局の責任は、刑事責任の存否でございまして、政治的、道義的責任の存否ということは検察の職域にもございませんので、あくまでも存否を明らかにするというたてまえで努力をしておるということについても御理解をいただきたいと思います。
○沖本委員 それで、これは大臣も報告を、ある時期が来れば必ず受けるということをおっしゃっておって、これは結局、官吏服務紀律第四条によって、それからいくと当然、法務大臣や総理大臣に報告しなければならないということであり、国会を構成しておるわけですから、総理大臣は国会に報告しなければならない、こういうふうなことになるわけですから、その点も十分お考えになっていただいておやりになっていただきたいということで、できるだけ国民の知る権利を十分保障する立場でこの問題の解明に当たっていただきたいということで、今後またこの問題に関していろいろな角度から当委員会なり他の委員会でも議論したいと考えます。 以上で終わります。
○大竹委員長 正森成二君。
○正森委員 私は、民社党の春日委員長が本会議で取り上げましたことによって問題になりました、わが党の宮本委員長の釈放、復権に関連する問題について、これから質問させていただきたいと思います。 そこで、大臣には遅くなって御苦労さまでございますけれども、最高裁に特においでいただきましたので、最高裁に対する質問を先にさしていただきたい、そう思いますので、御了承願いたいと思います。 そこで、最高裁判所に伺いたいと思いますが、この問題が始まりましてから最高裁は、司法権の独立に関連して御発言の機会がございませんでした。そこできょうは、法務委員会においでいただいてお伺いをするわけですが、司法機関以外の国家機関、たとえば国会で、確定判決の当否を論じ、一定の事実が実在したのか、また実在しなかったのかとか、真実は一つのものでしかないから、国権の最高機関である国会がその事実関係を究明し、正確に調査することが、国会に課せられた崇高な使命であるとかということを論じ、あるいはその考え方に基づいて国政調査を行おうとすることは、司法権の独立、三権分立との関係で許されるとお考えかどうか、お答え願いたいと思います。
○寺田最高裁判所長官代理者 問題がきわめて重要かつデリケートな問題でございますので、私、意見を申し上げるにつきましては、単にここで事務当局限りの意見を述べることは適当でないと考えるわけでございます。 この問題に関連いたしましては、古いことではございますが、最高裁判所の裁判官会議で議決をしたことがございまして、これはいま正森委員が問題にしておられます論点と正確に符合しておるケースに当たるかどうかはわかりませんけれども、もしお差し支えなければ、そのときにどういう意思決定をしたかということを御説明させていただきたいと思います。いかがでございましょうか。
○正森委員 結構です。まずその説明から始めてください。
○寺田最高裁判所長官代理者 それではごく簡単に申し上げたいと思いますが、御承知の浦和充子というケースでございます。 これは、三十歳の母親、浦和充子が親子心中をしましたところが、子供だけが亡くなってお母さんが助かった。殺人に問われて、浦和の裁判所で懲役三年、執行猶予三年という刑に処せられた事件で、検察官が上訴権を放棄いたしまして、確定したケースでございます。 これにつきまして、当時のと申しますか、昭和二十三年当時でございますが、参議院の法務委員会が調査をしておる。当時の規定によりまして、議長の許可を得て調査を開始されたわけでございますが、その目的は、一応司法の運営につき不当なものがあるとすれば、立法的な処置を講ずる必要があり、あるいは司法部に対して何らかの勧告をする必要があるかどうかという目的になっておりますが、その調査の方法として、判決書や刑事記録を取り寄せて内容を検討いたしましただけではなしに、調査員を派遣して、担当の裁判官等につき事情を聴取し、さらには当該被告人ほか六名の証人尋問をも国会でされたケースでございます。 詳細は省略いたしますが、その間いろいろ裁判所と当時の法務委員会との間に折衝がございましたが、結果において、法務委員会は、その調査を最後までおやりになりまして、そしてその調査報告を議長に出しておられるわけでございます。その報告によりますと、まず判決の事実認定につきまして、判決では生活苦という動機を挙げておるけれどもこの事実認定には疑問がある、それから、殺害の方法についての認定についてもやや疑問がないではない、さらには、執行猶予にした量刑が妥当を欠いておる、かような結論を出して、報告をいたしておるわけでございます。 そこで、かような経過を前提といたしまして、当時最高裁判所におきましては、裁判官会議において議決をいたしまして、参議院議長に対して申し入れをしておるわけでございます。それを読んでみますと、「従来裁判所に係属中の及び確定の刑事事件」——いま申し上げましたのは確定の事件でございますが、その前に係属中の事件についても若干の調査が行われたわけでございます。そこで、かように申しておるわけでございます。「確定の刑事事件につき調査を行い、裁判の当否を論じ、」さらには、「判決の事実認定及び刑の量定の当不当を云為するに至った。しかしながら、司法権は、憲法上裁判所に専属するものであり、他の国家機関がその行使につき容喙干渉するが如きは、憲法上絶対に許さるべきではない。この意味において、」参議院の法務委員会が、「個々の具体的裁判について、事実認定若しくは量刑等の当否を審査批判し、又は司法部に対し指摘勧告する等の目的をもつて、」先ほど来申し上げましたような「行動に及んだことは、司法権の独立を侵害し、まさに憲法上国会に許された国政に関する調査権の範囲を逸脱する措置と謂わなければならない。」、かような意見を出して、参議院議長に申し入れておる次第でございます。
○正森委員 いま最高裁当局は、浦和充子事件において最高裁の裁判官会議が下された結論を御説明になったわけですが、そういうお考えというのは、当然のことながら、それを変更する最高裁判所の裁判官会議の決定がない限り、現在も生きておると承知してよろしいですか。
○寺田最高裁判所長官代理者 仰せのとおりでございます。
○正森委員 そういたしますと、現在問題になっております宮本顕治氏の問題について、民社党の議員諸君は、私がいままさに質問の中で提起したようなことをそのとおりの言葉で言っております。私がいま引用をいたしましたのは藤井議員の発言でございますが、その前に、一月二十七日に春日一幸議員が、 時の日本共産党中央委員小畑達夫氏の査問に当たった宮本顕治氏らにリンチ行為があったのか、それともそのような暴力行為は全然なかったのか。また、小畑達夫氏はそこで死亡したが、それば、医学博士古畑種基氏の死因鑑定に示されたような、リンチによる外傷性ショック死であったのか、それとも小畑達夫氏は査問やリンチに関係なく、異常体質のために忽然と死んでしまったのか、問題はこの二点に集約されるのであります。途中略しておりますが、 したがって、国はこの際、ここに論争の焦点となっているあのリンチ共産党事件なるものの事実関係を、改めて国民の前に明らかにする必要があると思うが、政府の見解はいかがでありますか。こういうふうに明白に事実の存否を聞こうというようなかっこうになっております。また塚本議員の質問も、 特にわが党は、このような残虐無類の行為が行われたものか、それとも事実無根のことなのか。これはわが国議会制民主主義の根幹に触れる重大な問題であるのであります。その真実を究明せねばならないと考えて御質問をいたすわけでございます。こういうように議論をされております。 ほかに引用すれば、各議員が言っておられますが、こういうような立場で国政調査を行う、あるいは行政当局に答弁をさせるというようなことになりますと、浦和事件のときに、これは私手元に資料を持っておりますが、刑事裁判資料第三十号、昭和二十四年六月「司法権の独立と議院の国政調査権」最高裁判所事務総局刑事局、この文書の中にいま最高裁の言われたことは逐一載っておると思うのですが、それを詳細に拝見いたしますと、結局、確定の刑事事件について調査を行い、裁判の当否を論じ、さらに判決の事実認定、つまり事実があったかなかったか、あるいは事実の認定の仕方が妥当であったかどうかというようなことまで論じて、その結果として、また量刑の当不当というようなところまでいくというようなことは、これは司法権の侵害になる、こういう最高裁の、あってはならないこととされる範疇の中にこれは含まれる範囲内の問題であるというように思いますが、いかがですか。
○寺田最高裁判所長官代理者 ただいま仰せの、戦前の判決につきまして国会でいろいろな方がいろいろな立場から発言をしておられますことは承知いたしておりますが、これにつきまして私どもが裁判所として意思表示すべき時期であるとは、ただいま考えておらない次第であります。
○正森委員 非常に慎重なお立場ですが、それでは、浦和充子事件の問題の継続として聞きますが、判決の当否を判断するには、事実の存否をその前提として確定しなければならない。事実の存否を確定しなければ、判決が当であったか否であったかということも言えない。だから、判決の当否を判断するには、事実の存否をその前提として確定しなければならぬことに必然的になってくる、そういうように思いますが、いかがですか。
○寺田最高裁判所長官代理者 私どもとしては、確定判決で認定された事実を前提として論議がされることを希望しておるわけでございます。
○正森委員 確定された判決の事実があったかなかったかということを真相究明するということになれば、結局、当否を判断する前に事実の存否というものを調べていくということになるのではありませんか。
○寺田最高裁判所長官代理者 事は、国会と裁判所との関係になることでございますので、国会がどういう方向で御審議になるかというようなことを十分見きわめませんことには、いまの段階で私どもとして意思表示すべきものではない、かように考えておるわけでございます。
○正森委員 私は意思表示を求めているのではなしに、浦和充子事件について最高裁の裁判官会議の議決を経たものをお述べになりましたから、そのお考えというのはこういうことになるのではないかと、こう聞いておるのです。私が途中で、現在国会で問題になっていることを出しましたけれども、それについては意思表示ができないとおっしゃったから、浦和充子事件についてのお考えのその論理的な内容あるいは発展ということを聞いておるのです。だから、余り気を使わないで答えてください。
○寺田最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたとおり、浦和充子事件については、法務委員会において調査員をして担当裁判官に事情聴取をさせたり、あるいは被告人等の証人尋問をいたしたわけでございまして、さような事実を前提として、先ほどの裁判官会議の議決があったわけでございます。
○正森委員 私はそんなことは聞いていないので、判決の当否を論じようと思えば、その前提として、事実の存否というようなことを判断するというようなことまでいくようになるのではないかと聞いているのです。
○寺田最高裁判所長官代理者 論理的にはさようなことになろうかと思います。
○正森委員 そこまでいくとなりますと、それは裁判機関以外の国会や行政当局ができることでしょうか、あるいはしていいことでしょうか。
○寺田最高裁判所長官代理者 先ほど来申し上げたことで尽きておると存じます。
○正森委員 それは結局国政に関する調査権の範囲を逸脱すると、こういうことですね。
○寺田最高裁判所長官代理者 具体的裁判の内容の当否を調査するために、いろいろな審理その他をやるということは行き過ぎておる、かようなことになろうと思います。
○正森委員 最高裁が認定した事実というのは絶対的、客観的な、いわば神のみぞ知る事実ということになるわけですか。そうではなしに、一定の訴訟過程において訴訟手続的に形成された真実というものであって、それが客観的、絶対的な事実に合致するかどうかは人間の力ではわからないけれども、しかし訴訟法的にはそれを事実として扱うより仕方がないという意味での事実なのか、その点をお答え願いたい。
○寺田最高裁判所長官代理者 神のみぞ知る事実という表現が大変比喩的な表現でございますので、そういうものがあるかどうかということがさらにまた問題になろうかと思いますが、いま正森委員おっしゃった御趣旨を体して私なりに答えますれば、たとえば民事事件においては、当事者双方に争いがなければそれが事実として、その前提で裁判をするわけでございますから、判決において確定した事実というものがいまおっしゃったような意味での神のみぞ知る事実ということになるかどうか、それは特に民事事件の場合はそうでございます。 刑事事件の場合は、実体的真実を追求するのがたてまえでございますが、しかし証拠に限界がございますから、それに達しない場合もあり得るということになろうかと思います。
○正森委員 結局、裁判所といえども訴訟手続の中で努力した結果、実体的真実に接近した、時には合致しておるかもしれませんが、そういう事実としての判示事実であって、それが客観的な、絶対的な事実に必ず合致しておるということまでは裁判所当局としても言えない場合があるのじゃないのですか。
○寺田最高裁判所長官代理者 民事事件の場合は、いま申し上げましたとおりでございまして、刑事事件においては、われわれとしては、できる限り実体真実に近づくことを志しておるわけではございますが、絶対にそうかとおっしゃられれば、あるいはそれはそうでない場合も絶無ではないということに論理的にはなろうかと思います。
○正森委員 そこで、これも浦和充子事件に関連して申し上げるわけですが、浦和充子事件に関連して、宮沢教授などの日本国憲法のコンメンタールがございますけれども、その中で触れておりますことは、これは国会で国政調査だということで、事件関係者、たとえば刑事被告人だった者を証人として呼び出して、裁判所におけると同じような取り調べを行うことも、その者に対する不当な人権の侵害であるばかりでなく、裁判所における取り調べを再審するような実際的効果を持つことにおいて、やはり司法権の独立に反するおそれがあるという見解を述べておられることは御承知のとおりであります。このようなおそれがあるということを最高裁判所はお考えになっておられますか。
○寺田最高裁判所長官代理者 再審の手続になるようなことが国会において行われることは、妥当ではないと考えております。
○正森委員 私の前段で伺ったことはいかがでしょうか。事件の関係者、刑事被告人だった者を証人として呼び出して、裁判所におけると同じような取り調べを行うというようなことが、その者に対する人権侵害になる場合があるということはいかがです。
○寺田最高裁判所長官代理者 一般的に申し上げますれば、確定判決で認定された事実の当否を確かめるために証人尋問を行うというようなことは適当でないと考えております。
○正森委員 結構です。あとは法務省当局に伺いますから、御退席ください。 法制局に伺いたいと思いますが、昭和二十七年に第十三回国会で破壊活動防止法が制定されたことは御承知のとおりであります。私たちは、この破壊活動防止法を民主主義に反する悪法であると考えておりますが、それはさておきまして、しかしこの法律制定に際しても、戦前の治安維持法の苦いわだちを踏まないために種々努力がされたというように伺っております。 そこで、この破壊活動防止法と戦前の治安維持法とどこが違うのでしょうか。一番中心的な点について述べてください。
○真田政府委員 御承知のとおり、破壊活動防止法は、暴力主義的破壊活動という概念を中心といたしまして、そういう破壊活動つまり、暴力を伴う破壊活動をやったり、予備行為をしたり、教唆をしたり、扇動したりすることを罰する。また、団体の活動として繰り返しそういうようなことが行われた場合に、必要最小限度の団体規制を行うということが骨子になっております。 これに対しまして戦前の治安維持法は、特定の主義、主張、思想を持った団体を結成することそれ自体を罰するというような構えになっておりました点が一番違う点じゃなかろうかと、こういうふうに思います。
○正森委員 あなたは法制意見参事官のときに「破壊活動防止法の解説」という本を書いておられますね。
○真田政府委員 私の個人の資格で書いたものでございます。
○正森委員 しかし、この本を見てみますと、「法制意見参事官 真田秀夫著」と肩書きも入っておりますし、また当時の法務府法制意見第一局長高辻正己さん、いま最高裁の裁判官でありますが、その方の非常にほめたたえた序文もついておるから、法制局のほぼ有権的な解釈であろうというふうに思われるのですね。 〔委員長退席、小平(久)委員長代理着席〕 かつてこの本を学習した私にはそう思われるのですね、肩書きがちゃんと書いてありますから。 そこで、その本の二十五ページを見ますと、あなたが治安立法の沿革について書いておられますが、こう言うておるのですね。 この法律案は、治安警察法が、特定の思想を直接の対象としていなかつたのに反し、国体変革又は私有財産制度否認を目的とする結社を禁止し、特定の思想それ自身に対して槍先をむけたことに注目しなければならない。こう言うて、いまあなたがほぼ御説明なさったように、破壊活動防止法は、暴力主義的な行為を主として外形的事実としてとらえるのだが、治安維持法というのは特定の思想それ自身に対してやり先を向けている、これが非常に注目すべき点だ、こういうぐあいに書いておられるのですが、この御見解はいまも堅持しておられるでしょうね。
○真田政府委員 いまお読みになった点ですね。実は、申しわけないですが、もう二十余年も前のことで的確な記憶はございませんが、恐らくお読みになったのですから、そのとおり書いてあるのだろうと思います。それの釈明みたいなことは、実はこういう公式の場で政府委員としていたすのはいかがかと思いますけれども、考え方としては、私個人としてはいまでもそのように思っております。
○正森委員 当時、破壊活動防止法に関係して、この問題を取り扱ったのは特審局と言われております。この特審局次長の関氏が「破壊活動防止法の解説」という本を書いておられます。これは法務総裁の木村篤太郎さんが序文を書き、非常に推薦しておられます。また同氏は、「破壊活動防止法の解釈」という本をそのころ書いておられます。これは特別審査局次長の関さんと成蹊大学教授の佐藤功さんの対論でありまして、問いを佐藤さんが行って、答えを関さんが行っているものであります。この「破壊活動防止法の解説」という本を見ますと、十四ページにこう書いてあります。 治安維持法は、国体の変革又は私有財産制度の否認を目的として結社を組織することを犯罪としていた。「この目的として」との要件は、明らかに内心の思想に関連しているものである。この規定と、当時の各種の法制的社会的条件が相関連し、今日において省みれば、誠に極端な思想の統制にまで発展したのである。こう書いているのですね。「これに反し、」ということで破壊活動防止法は違うんだ、違うんだ、こう言っておられるわけです。 また、同趣旨のことを「破壊活動防止法の解釈」でも言っておられます。これはまさに破防法の直接の取り締まりの当事者であった特審局の次長——普通、次長と言えば実力者がなるものでありますが、そういう人が書いておられるのですから、治安維持法が特定の思想、内心の思想、そういうものを取り締まるものであったのだというのは、これはほぼ通説的な見解ではないでしょうか。法制局でも刑事局長でも結構です。
○安原政府委員 目的としたことそのことを罪とするならば、まさに、場合によったら内心の思想を犯罪とすることでありますが、目的として結社を組織するとかいう行為を伴っておりますから、単に思想だけを罰したものとも言えないのではないかと思います。 〔小平(久)委員長代理退席、委員長着席〕
○正森委員 思想だけを罰すると言いましても、思想だけあって何もしないという場合には処罰も何もしようがないので、それが結社をつくるというようなことになって、初めてその思想が出てくるわけですからね。だから、何か思想だけがあって、それをあらわすような構成要件が全くなしで処罰するというように思ってもらっては困るのですね。しかし、結社をつくっただけで処罰するんでしょう。結社をつくってどんな悪いことをしたというんじゃなしに、結社をつくっただけで処罰するんでしょう、治安維持法というのは。結社をつくることを準備して、結社をつくっただけでこれがまた死刑でしょう。ですから、法制局次長の真田さんが勉強をなさって、法制意見参事官のときにお書きになった見解、そして特審局次長の関さんが治安維持法のわだちを踏んではならないとお考えになって、ここへあらわしておられる御見解というのは、当たっておるんじゃないですか。 それで足りなければ、「破壊活動防止法の解釈」の十一ページにはこう書いてあるんですね この規定は、一つは思想を中心とした結社罪と、結社の目的遂行という二つの犯罪様式を設定したことになるわけです。それは結局、立法の目的を法的に表わすために、国体を変革し、私有財産制度を否認することを目的とするものというのですから、そういう考えを持つているという思想の処罰というところまで発展していつたわけです。同時に、それらの結社は、暴力を手段としようと、通常の民主主義的な方法で行こうと、一切合財いかぬことになつてしまうわけです。また今のその結社の目的遂行のためにする行為というものは、これは団体の構成員であろうと、あるいは役職員であろうと、そんなことは問わない。誰でも団体の存在を意識し、その団体のためになることを意識してそのためにやれば、その方法が暴力によろうと、あるいは普通の議会主義の方法によろうと、何でもかでもいけないことになつてしまう。そういうふうになつて、それがぶくぶくにふくれて来てしまつたわけです。これは特審局の次長が述べておられる、なかなかりっぱな見解であります。 そこで、私はもう一遍、今度は法制局の次長に聞きたいと思いますが、こういう見解を述べられておるということは無理がない、治安維持法はそういう法律であったんじゃないですか。
○真田政府委員 治安維持法は、御承知のとおり、国体変革とか私有財産制度の否認でしたか、条文そのとおりのことははっきり覚えておりませんけれども、そういう目的をもってする団体の結成、その団体の結成の準備をする行為とか、そういうことを処罰しておったものでございまして、いまの、現行法の破壊活動防止法とは非常に観点が違っておったということは、そのとおりでございます。
○正森委員 答えるようでなかなか答えないのですけれども、率直にお答えになったらどうですか。 刑事局長、先ほど私に対して、思想だけじゃない、結社をつくったとかなんとかというようなことを言われましたけれども、もう少し率直に答えてください。
○安原政府委員 私は、治安維持法の第一条の立法の正当性を論じているつもりは全然ないのでございまして、思想を罰するかとおっしゃいますから、目的を持ったこと自体だけを罰するのではなくて、あたかも公文書偽造罪において行使の目的をもって公文書を偽造したと同じように、目的だけを罰するのではなくて、団体を組織したということも加わらないと処罰になりませんということを、正森委員には失礼なことではございますが、まあ、いわば構成要件をただそのまま読み上げただけのことでございまして、他意はございません。
○正森委員 そのことが、特審局の次長やあるいは真田次長が法制意見参事官であったときに書いたように、結局内心の思想あるいは特定の思想を処罰するということにつながったのだ。私が言っているんじゃないのですよ。政府当局側の、しかも特審局の次長なんというのは、まさに取り締まる人ですからね、その人が言っているという見解も無理からぬ点があったんじゃないですかと、こう聞いているのです。
○安原政府委員 無理からぬ点があったと思います。
○正森委員 ここから次に法務大臣に聞くところですが、法務大臣がおられませんから、休憩させてください。
○大竹委員長 ちょっと速記をやめて。 〔速記中止〕
○大竹委員長 速記を始めて。 正森君。
○正森委員 それでは質問を続けたいと思いますが、実際は、大臣に先ほど来私が質問していたことを聞いておいていただいて、そこで大臣はどうお考えになりますか、こういうぐあいに聞くのが物の調子というものだったのですけれどもそうでございませんので、速記録を見れば重複いたしますけれども、ごく簡単に要約をいたします。そうでないとお答えができないでしょうから、それをお許し願いたいと思います。 そこで、復習のつもりでもう一度刑事局長、恐れ入りますがお答えいただくことになると思いますけれども、いま私が申しましたのは、治安維持法というのは、一々申しませんが、真田法制局次長が昔法制意見参事官だったときにあらわしました著書、あるいは関という特審局の次長が破壊活動防止法の解説についてあらわしましたものを見ましても全部、たとえば、 治安維持法は、国体の変革又は私有財産制度の否認を目的として結社を組織することを犯罪としていた。この「目的として」との要件は、明らかに内心の思想に関連しているものである。この規定と、当時の各種の法制的社会的条件が相関連し、今日において省みれば、誠に極端な思想の統制にまで発展したのである。というところ、ほぼ同じ見解でありますが、そういう点とか、あるいは、 暴力を手段としようと、通常の民主主義的な方法で行こうと、一切合財いかぬことになってしまうわけです。というふうに述べておられるのを引用して、結局治安維持法というのは、思想を対象として処罰にまで至る思想統制を行うということになるのではないかということを質問いたしまして、おおむねそれに対する肯定的な答えがあったわけであります。 そこで刑事局長は、結社をつくるという外形的な行為がなければ、思想だけでは処罰されないとおっしゃいました。それが構成要件上当然でありますが、当時、結社をつくることを全部禁止していたわけではないですね、あるいは物を書くということが全部いかぬというわけではないですね。しかし結社を行いましたその結社の目的、内容、あるいは物を書いた、本を書いた、その本の内容というものが治安維持法に触れるかどうかということになるわけですから、結局はその思想が処罰の対象になるということになりますから、いま私が読み上げたような書物の見解が出てきた、こういうぐあいに思うのですが、いかがですか。
○安原政府委員 結局、目的とすることの中身が国体の変革とか私有財産の否定ということと、結社を組織するということの二つを結び合わせて、刑罰を科するに値する行為だと当時は考えて、立法したということになるわけでございまして、おっしゃるとおり、そういう意味において思想につながる犯罪であったということは申すまでもないと思います。
○正森委員 そこで法務大臣に伺います。 法務大臣は、衆議院でのわが党の不破議員の質問に対しまして、 治安維持法、治安維持法と言いますけれども、あなた、当時の日共というものは暴力で革命をやり、政府を転覆しようとしておつた事実があるわけです。それに対して政府がいろいろ防衛手段を講ずることは当然じゃないですか。これは速記録をそのまま読み上げましたが、そういうぐあいに、治安維持法を当然のものじゃないですかというように言っておられます。 その後四月二十七日に、参議院でわが党の上田耕一郎議員がこの問題について質問をいたしました。そこで大臣は、 改正された今日においては、治安維持法などというものはあってはならないということは、法制局長官も総理大臣も言っているとおり、私もそのとおりだと思う。というように、最終的には認められました。しかしその過程では、「皇室をひっくり返すとか、そういうことになれば、それは暴力でもってひっくり返されちゃかなわぬなと、こういうふうに、当時の根本法治下においては当然じゃないですか。」、こういうことで「当然じゃないですか。」ということを言うておられますし、同じ日に、「やっぱりそういう対抗手段を講ずることもあり得ると、こういうことで治安維持法が当然だと、こう言っているわけです。」二度にわたって言っておられるわけですね。 そこで明確にしたいと思うのですけれども、まず第一に、今日の新憲法のもとにおいて、治安維持法のように、究極において思想を対象とするというように政府の特審局の次長やあるいは法制意見局の参事官も言わざるを得なかったような、そういう内容を治安維持法は持っておったので、これは現在の新憲法の体系下では許されない法律である、これは間違いないでしょうね。
○稻葉国務大臣 大日本帝国憲法時代と日本国憲法時代の法秩序は異なるわけですから、今日の日本国憲法治下において、治安維持法みたいなものがあってならぬことは当然であります。
○正森委員 何かわかりませんが……
○稻葉国務大臣 新日本国憲法のもとにおいて、思想を統制するような法律があってはならないということは当然です。
○正森委員 そこで私は伺いたいのですが、いまの御答弁の中には、治安維持法というものは思想を統制するということに至るような内容を遺憾ながら持っておったということをお認めになっているというように判断いたしますが、そういう私の判断でよろしいですか。
○稻葉国務大臣 よろしいです。
○正森委員 そうだといたしますと、これはただに現在の憲法のもとでよろしくないだけでなしに、たとえば新憲法の前文には、リンカーンの国民の国民による国民のための政治というのとほぼ同じ、国政は国民の厳粛な信託に基づくものであり云々という規定があります。そして「これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。」というように宣言しております。それで、大臣はもちろん政治家でありますが、大学の教授でもあられて御造詣が深いと思いますのでお伺いいたしますが、結局、国民の国民による国民のための国政というのは、これは単に現憲法で決めておるだけでなしに、一つの自然法であって、「排除する。」というのは、従来の日本のもとにあった憲法以下の成文法だけでなしに、将来成立するものも含めて、人類普遍の原理に反する限りは認めないという意味だ。人類普遍の原理であると言うからには、これは旧憲法下においても思想を対象として処罰するということにつながるような、そういう法律は、あってはならないものであったというように現在の憲法は見ることを、ある意味ではわれわれ国民に課しておるというように思うのですが、いかがでしょう。
○稻葉国務大臣 そういうふうになりましたのは、日本国憲法施行後のことでございまして、日本国憲法施行前においては、大日本帝国憲法というものが基本法として国家秩序を支えておった、こういうことになります。
○正森委員 大日本帝国憲法が日本国の秩序を支えておったという客観的事実ですね。しかし、現在の憲法が制定され、憲法前文でそういうように宣言しておるというたてまえから見るならば、治安維持法が現在の世の中においてあってはならないものであるというだけにとどまらず、現憲法は治安維持法が旧憲法のもとにあってもこれは許されないものであるというように考えていると思うのですね。そう解釈しなければ、これは憲法九十九条によって憲法の尊重、擁護義務があるという公務員や大臣としては首尾一貫しない、こういうように思うのですが、いかがです。
○稻葉国務大臣 私の方が首尾一貫するのです。それは先ほど述べられた日本国憲法前文にあるような主権在民の思想というものは、旧憲法時代はなかった。天皇主権あるいはせいぜい国家主権、主権は国家にあると、美濃部さんのような、そういう学説が支配的であって、旧憲法の治下においては、いまの憲法治下におけるような主権在民という秩序ではなかったというふうに理解するのです。それが歴史的な事実であると私は思います。
○正森委員 これは非常に大事なことを承るのですが、いま大臣は、私の質問の中で、治安維持法というのは単に暴力的な行為だけでなしに、思想を対象として処罰するということに至るものであったということを認められました。私は何も、いまここで戦前に天皇が存在したことがよかったか悪かったかというようなことを論じているのではないのです。思想を対象として処罰に至るような治安維持法が、単に共産党に対する防衛的手段であったというようなことで合理化されていいものかと、こう聞いているのです。
○稻葉国務大臣 旧憲法の何条だったか知りませんが、あのもとにおいては、法律の範囲内において言論、思想の自由を有するということですから、法律によってはそういうこともあり得る。しかし、この治安維持法が帝国議会にかかったときには、清瀬さんであるとかああいう自由主義の学者は、これはいかぬという反対の討論をしておられますことはよく承知しております。ただ、結局はしかし国会の多数決で決まった、法律になったものですから、あの憲法のもとにおいては、治安維持法も憲法違反の法律と言うわけにはいかなかったのじゃないかということだけを申し上げている。
○正森委員 私はそういうことを聞いているのではないので、法律の範囲内でという法律の留保というのは、旧憲法下ではすべての権利についておりました。だから法律で決めれば、あるいは法律でなく、治安維持法の死刑法への改悪というのは緊急勅令でやられたのですが、その後議会で承認されたという経過を持っておりますけれども、法律でさえあればどんな制限でもできる。男を女にし、女を男にする以外は何でもできるというようなものではないということは、これは私たちは憲法学の第一歩で習っているのです。そうでしょう。そうでなければ、基本的人権の尊重とかそういうようなものは自然法、アプリオリとして認めていかなければ、これは近代民主主義というのはあり得ない。君主制即非民主制とは限らぬわけですからね。そうだとすると、あなたが言われる法律の留保のもとであったのだ、治安維持法は法律だ、だからそれはいいのだというような三段論法は、これは通用しないと思うのです。 それからまた、私が言っておりますのは、旧憲法時代の司法大臣としてどう思うかと言っているのではなしに、新憲法の時代の法務大臣としては、現在の新憲法の時代にあってはならない、これはあたりまえのことであります。しかし新憲法で宣言された人類普遍の原理から見るならば、旧憲法時代においてもあってはならない法律であった。あるいはあることは好ましくない法律であったというように判断しなければならないと、こう思うのですが、いかがです。
○稻葉国務大臣 憲法にいたしましても、その他の法令全般、法秩序というものは時代によって変遷をいたしますから、昭和二十一年五月三日以降の新憲法のもとにおける国家秩序と旧帝国憲法時代の、大日本帝国時代の法秩序とは、おのおの変遷があってしかるべきであって、あの当時の歴史的事実としてはそういうものであったと、こういうことを申し上げているのです。いまの新憲法下において治安維持法があってもいいのだということは申し上げてないのです。あってはならないものだということははっきりしているのです。
○正森委員 そうすると、五月三日までは旧憲法がすべて生きておったという御見解でしょうか。新憲法がわざわざ憲法前文に、これは人類普遍の原理である、われわれはこれに反するような憲法や詔勅やあるいは法律は一切排除するというように言っておるのは、過去、現在、未来を問わずそういうものを排除するものである、その有効性を認めないものであると宣言したものだと私は思うのです。 そうだとすれば、現在の法務大臣としては、あるいは現在の国会議員としては、現新憲法下でこのような法律を制定することは許されないというにとどまらず、過去においてもそういうものはあってはならないものであったのだという立場を旗幟鮮明にするということは、憲法上の当然の要請ではないですか。
○稻葉国務大臣 憲法上の当然の要請とは思いません、それは大日本帝国憲法といまの日本国憲法とは全く性格が違いますから。大日本帝国憲法は、「大日本帝國ハ萬世一系の天皇之ヲ統治ス」「天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」、天皇ば「統治権ヲ總攬シ此ノ憲法ノ條規ニ依リ之ヲ行フ」ということで、これを旧憲法上の国体法というようなことを言っていましたな。政体的規定と国体的な規定と、そういうものを覆すことはいけない。そういうことを転覆するのは困る。私有財産制度をやめろというやつは困る。こういうことは当時の憲法治下において立法措置を講ぜられることもあり得る。いまこの憲法下においてそんなことをやっちゃだめですよ。歴史的な変遷があるのですから、旧憲法治下においていまの憲法と同じことをやれ、それが正しいのだということにはならぬと思いますな。旧憲法の時代においては、旧憲法にのっとって国民生活は行われるべきものであり、日本国憲法治下においては、日本国憲法のもとにおいて国民生活、法秩序は維持されるべきものだ、これが歴史的変遷で、私の歴史観が間違っておりましょうか。
○正森委員 そうすると、旧憲法治下において、天皇が「天佑ヲ保有シ萬世一系ノ皇祚ヲ踐メル大日本帝國天皇ハ昭ニ忠誠勇武ナル汝有衆ニ示ス朕茲ニ米國及英國ニ對シテ戰ヲ宣ス」、こう言うていったああいう行為は全部よかった、こういうことですね。
○稻葉国務大臣 よかったとか悪かったとかいうことはどういうことでありますかね。これは後世歴史家の判断にまたなければならぬことでしょうと思います。
○正森委員 歴史的事実だとおっしゃるならそれについての反省はしなくていいんですか。
○稻葉国務大臣 天皇を初めわが国民は大いに反省しているんじゃないですか。信然としているんじゃないんじゃないですか。
○正森委員 反省とおっしゃるなら、それは現在の憲法のもとで戦争をしてはいけないというにとどまらず、あの当時もそういうことをしてはよくなかったんだということでしょうが。 たとえば天皇はこの間フォード大統領のところに行った、そうすると、私は深くディプロアーする、遺憾だと思う、英語では謝罪するという意味ですよ。そういうことを言っているのですよ。フォードのところへ行って、これからはしませんよなんて言っていないのですよ。かつて宣戦布告をしたあのことを深く、「ディープリー・ディプロアー」と言っているのです。それではあなたの憲法観から言えば、憲法の条項に基づいて宣戦布告をした、そんなものはどこが悪かったのだ、しかしこれからはしないぞ、それでいいということになるじゃありませんか。違うのですか。
○稻葉国務大臣 だからさっき言ったように、天皇を初め国民はあの戦争について反省しているということをわしは言ったんじゃないですか。あなたと違わぬじゃないですか。私が言うていることをあなたが事実を挙げて大統領のところでこう言っている、天皇も反省しておられるということをあなたは証明してくれただけで、意見は違わないのですね。
○正森委員 意見が違わないということになればよけい結構ですが、その点については意見が違わない、これから戦争しないぞと言うだけでなしに、前に戦争したことも悪かったぞ、ディプロアーだ、こういうことは認めながら、治安維持法については、これからはこんな法律はつくらないけれども昔はよかったのだ、やむを得なかったんだということをなぜがんばらなければいけないのですか。それについても、その時分についても安原刑事局長や法制局次長が認めたように、思想を結局対象とするようなそういうものだったのだ。いいですか、民主主義国家というのは君主制のもとでも民主主義国家はあるんです。民主主義国家というのは、言論、思想、表現の自由を認めて、結社の自由を認めて、そしていかなければいけないのじゃないですか。ところが治安維持法というのは、暴力行為的にいろいろやった者だけを処罰するのではないのです。暴力的であろうと、議会民主主義的であろうと、ともかくそういう思想を持って結社を結成する、その準備をするということは全部いかぬ、場合によったら死刑だ、こういうことですから、そういうものは現在あってはならないだけでなしに、過去においてもそういうものは好ましくなかったんだ。そういう立場で、もし戦争をこれからしないというだけではなしに、前に宣戦布告したのも深く遺憾とする、あるいはおわびをするというのに近い言葉を使われ、そしてそれがそのとおりだと言われるなら、やはり、治安維持法についてもこれからつくらないというだけでなしに、過去においてそういうことがあったということも、憲法の考え方からすれば好ましくなかったということになるんじゃないですか、当然。
○稻葉国務大臣 旧憲法の何条か忘れましたけれども、天皇の大権という項目がたくさんあって、「天皇ハ戰ヲ宣シ和ヲ講シ及諸般ノ條約ヲ締結ス」、この条規に基づいて宣戦を布告された。しかし、あの宣戦布告の詔書にもあるように、「洵ニ已ムヲ得サルモノアリ」避けられなかった、まことにやむを得ざるものありとこうおっしゃっておって、そしていまから考えて大いに反省することを要する、反省しておられる、こういうことなんでしょうな。ですから、そういう戦争したことと治安維持法があったことと同列に置いて論ずることはどういうものでしょう。
○正森委員 私は、完全に同列に置いて言っているんではないのです。しかし、あなたは旧憲法下のいろいろなことについては、これは旧憲法の秩序に基づいてやったんだ、こうおっしゃるでしょう。戦争だって、旧憲法の大権と憲法上の条項と秩序に基づいて行ったのですからね。だからそういう戦争について、あるいは宣戦布告について、これからやらないと言うだけでなしに、過去のことについても深く遺憾とする、やらないということでしょう、あるいは過去にやったのが悪かったということでしょう。そういう態度をとるのなら、その遂行のためにいろいろ役立った治安維持法についても、現在の法体系のもとにおいては、これは制定するというようなことをしないと言うだけでなしに、過去においてもそういうことはあってはならないことであったというように考えるのが、私は法務大臣にとっては当然のことであるというように思います。 しかし、あなたはなかなかそういうようにお認めにもならないようですけれども、あるいは認めかけているのかもしれませんけれども、そこであなたは、昭和二十一年五月までは大日本帝国憲法の体系が通用したと、こういうぐあいにおっしゃいましたね。そういう御見解ですね。そこだけをはっきり聞いておきます。
○稻葉国務大臣 私は、法形式的にそういうことを言っているわけです。新憲法ができましたのは、法形式的には旧憲法七十三条の改正手続によったという点に重きを置いて言っておりますが、その前に、天皇の大権であるとか、そういう地位は連合国司令官のもとにあるというポツダム宣言を受諾しておりますからね。そういう意味ではその間にギャップがあることは認めます。
○正森委員 それならば結構です。治安維持法というのは、少なくとも大臣は、現在の憲法下においてはあってならない法律であるということは明白に認められました。 そこで伺いたいのですが、刑事事件について、ある種の犯罪についてのみ控訴権を奪うということは、公正、民主的な裁判と言えましょうか。控訴権というのは二審の控訴権です。
○安原政府委員 できるだけ平等なアピールの権限を与えることが望ましいことと現在においては思いますけれでも、そういうことの必要であった時代においてそれが妥当性があったかどうかということは、大臣のおっしゃるように後世史家の批判にまつべき問題のようにも思います。
○正森委員 現在の憲法のもとにおいて、ある種の犯罪についてだけ二審の控訴権を奪うというのは、公正、民主的な裁判制度だと言えますか。
○安原政府委員 やはり現行の憲法秩序下において、そのことを制限することの合理性が憲法的に理由づけられる場合においては、許されることだと思います。たとえば独占禁止法の場合におきましては二審制でございますが、ああいう特殊例外の場合に、例外を認める理由があればいいわけでありますが、原則としてはやはり三審制でございますから、しかし、特殊例外の場合にこれを全然認めてはならないということにはなっていないように思います。
○正森委員 ある種の犯罪についてのみ弁護人を司法大臣のあらかじめ指定した弁護士の中からのみ選任させるというのは、これは公正、民主的な裁判制度ですか。
○安原政府委員 お尋ねは、現行憲法秩序下における制度としての是非をお尋ねだと思いまするがそうとすれば、原則としてそういうものは公正ではないように思います。
○正森委員 ある種の犯罪についてのみ弁護人を被告人一人につき二人以下に制限することは公正、民主的な裁判制度ですか。
○安原政府委員 これも例外がないわけではございません。原則としてはやはり制限をすべきではないと思いますけれども、被疑者の段階にある弁護人の数について、たしか刑事訴訟規則で三人以下というような制限があったこともありますので、絶対かどうかということになるとそうでもないと思いますが、原則としては、そういう制限をすることは好ましくないと思います。
○正森委員 被疑者の段階での三名というのは、これはある種の犯罪だけじゃないでしょう。すべて平等でしょう。ですから、あなたのいまのその留保というのは正しくないんじゃないですか。
○安原政府委員 おっしゃるとおりでありまして、問題は制限することの可否ということをいま申し上げたわけですが、特定の犯罪について制限する制度はいまのところありませんし、また、もしそういうことをするとすれば、よほど憲法秩序下における理由がなければならないだろうと思います。
○正森委員 ある種の犯罪についてのみ刑の執行を終わっても釈放せず、再犯のおそれあることを顕著と裁判官が認定をしてあらかじめ拘禁するということは、これは基本的人権を尊重する公正、民主的な裁判制度と言えますか。
○安原政府委員 御指摘は治安維持法下の予防拘禁のことであろうかと思いまするが、今日の憲法秩序下では、原則としてとても考え得ない問題のように思います。
○正森委員 ある種の犯罪についてのみ予防拘禁を無限に更新し、しかも予防拘禁の刑期満了後更新の決定があっても、その決定は満了のとき行われたものとみなすというようなことを制度として定めることは、公正、民主的な司法制度ですか。
○安原政府委員 先ほどもお答えしたと同じように、やはり現行憲法秩序下ではとても考えられない制度のように思います。
○正森委員 いま安原刑事局長が、現行憲法下ではとても考えられないような制度である、これは言葉を変えて言えば、公正、民主的な裁判制度ではないということを認められたものだと思いますが、以上はいずれも治安維持法の規定に明記されている制度であります。 そこで、私は法務大臣に伺いたいと思います。とういうように公正、民主的な裁判制度でないということになりますと、そのような裁判をもし暗黒裁判と言うとすれば、これは暗黒裁判という言い方も一つの妥当性を持っておるというように思いますが、いかがですか。
○稻葉国務大臣 いまの裁判よりは暗黒、徳川時代の裁判よりは明朗ということです。
○正森委員 何かちょっとぶっきらぼうなお答えでしたが、徳川時代の裁判よりは明朗であって、いまの裁判制度よりは暗黒だと、こうですね。そうですね。(稻葉国務大臣「そうです」と呼ぶ)徳川時代の裁判と御比較なさるおつもりですか。封建時代の、ちょんまげで刀を二本差して、士農工商で、大名や侍が歩くときには途中で土下座する、切り捨て御免であるというような時代よりはやや明朗な裁判制度だと、こう承ってよろしいですね。
○稻葉国務大臣 近代的な憲法というものがなかった時代と、明治になって曲がりなりにも——いまよりは話にならぬが、曲がりなりにも、天皇はこの憲法の条規に従って統治権を総擁する、条規以外のことはやらない、こういう近代憲法が制定された後の裁判とでは比較にならない。しかし、旧憲法と日本のいまの憲法とでは、民主性において格段の相違があることは当然じゃありませんか。
○正森委員 したがって、思わずお答えになりましたように、民主的な憲法から見れば、比べれば暗黒裁判と言える、それから、奉行が裁いて、検察官と裁判官の区別もなかったような、ちょんまげを結っていた、そういう時分から見ればやや明朗であると言えると、こういうように承っていいですね。だから、比較し得るとすれば、民主的な憲法以前の封建的な徳川時代くらいとしか比較できない。そこと比較すればやや明朗と言える、そういう明治憲法だったのだと。したがって、その時代のことを現在の人々が暗黒裁判と言うのも、これは無理がないと、こういうように承っておきます。 そこで、裁判官が刑の量定を行うときに、共犯関係者の量定について検事と協議して統一するということは、裁判のあり方として公正ですか。
○安原政府委員 裁判官は独立でございますから、あくまでも独立を疑わせるようなことによって裁判をすることは、好ましくないはずでございます。
○正森委員 裁判官が、訴訟記録以外に検事の話を聞いて、調書に出ていない事情を判明させたり、刑務官や警察官の話を大いに参考にして裁判することは公正ですか。
○安原政府委員 いまおっしゃる限度においては、公正ではございません。
○正森委員 裁判官が裁判所でわからないときは、検事の意見に従う方がむしろ正しいとすることは公正ですか。
○安原政府委員 裁判官の自由な判断で検事の言うことがおおむね正しいと思われるなら、それは仕方がないし、それは独立を侵害したことにならないと思いますが、どうしてもそういうように聞かなければならぬような拘束を与えるならば、それは公正ではございません。
○正森委員 現在の裁判の原則というのは、疑わしきは被告人の利益であります。リーズナブルダウトがある場合には、これは被告人の利益に、無罪を推定しなければなりません。ところが裁判所でわからないときば検事の意見に従うというのは、疑わしきは有罪にという考え方であります。そういうような考え方は、民主的な裁判のあり方だと言えますか。
○安原政府委員 疑わしきは罰せずということは、恐らく新憲法以前、旧憲法時代からずっとわが国の司法制度が発足して以来の鉄則でございますから、そういうことはなかったはずでございます。
○正森委員 なかったかどうかは後で申し上げます。 裁判官が、検事から詳細なる御指導を受けて、まことにありがたく存じております、裁判上注意すべき点としてもやはり何々検事より御注意を与えていただいたで尽くされておりますと、こういうように考えて裁判をするということは、公正な裁判ですか。
○安原政府委員 きわめて、ある事柄の一部分を摘出してお尋ねでございますけれども、そういうことで裁判官が検察官から法廷外において影響を受けて裁判をするというようなことは、あってはならないはずでございます。
○正森委員 私は、刑事局長がそういうことはないはずでありますというように言われたのが、実はないはずではなしに明白にあったんだ、公文書に残っておるのだということを遺憾ながら申し上げたいと思うのです。 私がここに引用しますのは、昭和九年十一月の思想事務会同議事録であります。これは明白に残っております。これはその日時に行われまして、いろいろ問題を設問して、そしてやりとりがあったわけでありますが、その中で、「従来の経験に徴し、治安維持法違反事件の刑の量定、執行猶予、保釈又は責付に付考慮すべき点如何。」という問題について論議されたときに、京都地方裁判所の松野という予審判事がこう言っております。 仮令被告人が転向したりとするも過去の行為に付重大なる責任ありその点も考慮して相当の刑を科す必要あり。共産党被告事件は概して刑が軽いと思ふ東京は特に軽いと思ふ。殊に党幹部と一緒に起訴せられし者は軽く取扱はれる傾向あり、共犯関係ある者の刑の量定に付ては検事とも協議してなるべく統一を採るを相当とす。 こう言っております。 また齊藤という予審判事は同じ会議の中で、証拠調べに付例ば或る被告人が党機関紙赤旗を十数人に配布したる場合如何なる範囲に証拠調を為す可きやの問題なり自分は斯の如く十数名の関係者ある場合は検事と協議して主要なる者三名位の取調べに止む、 こう明白に言っております。 次は、同じ会議でありますけれども、札幌地方裁判所の高田部長判事は、 個々の事件に付具体的に観察し被告人の心境を仔細に観察し、又、将来の見透しをつけることが大切なり、之れに関しては検事の話を聞くと調書に出てみない事情が判明す、又、刑務官、警察官の話も大に参考に為るやうに思はれる。 こういうように明白に言っております。 次は、昭和十年十一月の思想実務家会同議事速記録、これに明記されている問題であります。 これについては、「国際共産党第七回大会に於て決議せられたる運動方針に鑑み検察竝に裁判上注意すべき点如何」、こういう点について論議をされまして、その点について吉江という東京の検事が、第七回党大会というのは、コミンテルンというのは統一戦線の立場をとっておる、統一戦線というのは天皇制反対というようなことを表に出さないで、戦争反対とか労働者の権利擁護とか社会民主主義の政党とも連携してやっていくとか非常に具体的ないい考えをとっておる、しかしそれを警察側、裁判側から見ると、いままでのように単純なものでないから、これを治安維持法違反として処罰する場合には、なかなかいろいろな点を考えて、被告人の現在の表面的理由だけでなしに、その前歴や背景やらいろいろなものを考えなければならぬということをるる述べた点について述べられている点であります。 この点について杉本判事、これは松山地方裁判所の判事でありますが、こう言っております。 先程東京の吉江検事から詳細なる御指導を受けて誠に有難く存じて居ります。それに付きまして、裁判上注意すべき点としても矢張り吉江検事より御注意を与へて戴いたで尽されて居るとは思ひますが、今後此種の事件が公判に参りました時には、唯外形的の構成事実のみならず被告人の思想の系統及び共産主義思想に関する認識の程度竝に被告人の従来の闘争の経歴、闘争の実質的内容、殊に其背景、闘争の結果と云ふやうなものに付きまして、表面に現れた事実のみに捉はれずして、又合法運動を装うて居ります其仮面に惑はされないやうに留意して、適当に之を審判して行かんければならぬと思って居るのであります。 これは杉本という判事が明言していることであります。 次に、潮という東京の部長判事がおります。この部長判事がこう言っております。 裁判所と致しましては一審、二審、三審。司法部全体と致しましては検事局裁判所に於て此思想犯人に付てば特に国家的な或る最高の目的と云ふやうなものに於て、(言葉が甚だ悪いので、妥協と云ふやうな風に採られては甚だ迷惑するのでありますが、さう云ふ意味ではなくして)見る所が一点に帰すると云ふ趣旨の確乎たる或る動かない方針の下に処理せられると云ふことが誠に必要ではないかと思ふのであります。私は公判に来てまだ経験のない時分には露骨に検事局に対して、固より裁判所独自の考があるが、出来るだけ公判廷に於て率直に此思想犯人に対する量定科刑に付ては少しも掛引のないことを言って呉れるやうに、執行猶予にして宜いか悪いかと云ふことまでも検事の意見を述べて貰ひたい、言葉が甚だ悪いのでありますが、裁判所で分らない時は検事の意見に従ふ方が寧ろ正しいと思ふから十分有の儘を述べて貰ひたい。 こういうように言っているわけであります。これは明白に、こういうように刊行された文書の中に載っております。ですから、私がいま挙げましたのは、決して架空のことではなしに、昭和十年、十一年の時代の、わが国の旧憲法下の治安維持法下の裁判官がどういう裁判をしておったか、どういうように検事との関係があったかということを如実に示していると思います。 昭和十年、十一年と言えば、あるいは九年と言えば、まだ中国に対する日支全面戦争というのは起こっていなかった。アメリカとの戦争も起こっていなかった。それから昭和十六年にアメリカとの戦争が起こり、昭和十二年に盧溝橋事件が起こった。宮本裁判が行われたのは、その後の昭和十八年、十九年の時代であります。 そこで、私は伺いたいと思います。 私がいま申し述べたことは、すべて思想実務家会同議事録に明白に記載されていることでありますが、いま申しました、究極的には思想を対象とせざるを得ないような治安維持法の裁判において、しかも、その裁判を行う裁判官がいま言ったようなことを公然と言っておるというような時代に、被告人の人権を守って公正な裁判が行われたでしょうか。それは徳川時代よりは明朗な裁判は行われたかもしれません。しかし、被告人の人権を守るという点から見れば、きわめて遺憾なそういう裁判が行われるような環境があったというように見るのは、これは無理からぬ点があるのじゃないでしょうか。法務大臣、いかがです。
○稻葉国務大臣 基本的人権の擁護を強く要求する日本国憲法治下と、それば比較にはならないでしょう。
○正森委員 簡潔にお答えになりましたが、法務大臣のその御精神とするところは、これは現在の憲法から見れば暗黒裁判であり、まあ強いて弁護するとすれば、徳川幕府の時代の裁判から見れば明朗である、やはりそういうような裁判と言わざるを得ない、こういうことですね。
○稻葉国務大臣 それは歴史的な事実だと思いますね。現在の人権思想の発達した時代から見れば、人権擁護において欠くるところがあったということは当然じゃないですか。比較の問題です。
○正森委員 そうだとすると、その時代の裁判について暗黒裁判、こういうように言う人が現在おったとしても、それは歴史的な経過として理解できないことではない、こういう御見解だと承ってよろしいか。
○稻葉国務大臣 現在よりは暗黒だと言えば、そのとおりでありますという意味で申し上げました。
○正森委員 そこで、私は釈放、復権の問題について伺いたいと思います。 宮本顕治氏が十月九日に釈放されましたが、それはどのような根拠に基づいてでありますか。
○安原政府委員 当時の刑事訴訟法の刑の執行停止という理由であります。
○正森委員 当時、政治犯とされていた人は全員、刑事訴訟法五百四十六条の刑の執行停止で出ていると思いますが、いかがですか。
○安原政府委員 十月四日の司令部のメモランダムに基づく政治犯の釈放につきましては、釈放の形式はすべて刑の執行停止でございます。
○正森委員 その刑の執行停止という方法で行うということは、十月五日の号外通牒によって、一律にそういうように刑の執行停止で行う、保釈では行わないというように決まっているのではありませんか。
○安原政府委員 十月五日の通牒で刑の執行停止の方法によるべしということでございました。 なお、先ほどの質問に対する関係でぜひひとつ御理解をいただきたいと思うことがございます。先ほど来、正森委員が裁判の独立公正を害する言動としての検察官との協議その他のことを申されましたが、私は、あの場合において公正で独立に疑いを持つということを申したのは、具体的な事件の裁判について検察官と相談をしたり不当な影響を受けることが裁判の独立を害するということを申し上げたつもりでございまして、戦時中におきまして、司法大臣のもとに司法行政上は監督下にあった裁判官と検察官が一般的な裁判の運営につきまして研究をし合う、意見を交換し合う会同というものは決して裁判の独立を害するものでなかったというふうに思いますので、その点は、具体的な事件と一般的な裁判の運営の仕方についての意見の交換の会同とはどうか一緒になさらないようにお願いしたいと思います。
○正森委員 私は、運営についての意見の交換の会同そのものを悪いと言っているのではありません。会同の中で開陳されている意見が、まさに具体的事件について、証人をこういうぐあいに協議して制限するとか、裁判所にわからないときは検事の言う方が量刑でも正しいとかいうことを言っおられるから、そういうことは裁判所として公正な裁判ではないんではないか、こういうぐあいに言っているので、あなたのいまの御弁解と必ずしも矛盾するものではない、こういうように思います。 そこで私は、十月五日の司法省刑事局長の号外通牒に、執行停止によるというようになっておったのだということを伺いました。そうすると、宮本委員長は、他の政治犯で釈放された人と、執行停止という点について言えば異なる扱いを受けたのではありませんね。
○安原政府委員 その辺がなお調査を必要とする点でございますが、政治犯として釈放された方は刑の執行停止ということで、刑事訴訟法の何条の何号に当たるということが書いてない。ところが宮本委員長に関する限りは、病気による刑の執行停止ということが書いてある点が一般の政治犯の釈放とは違うのでございます。
○正森委員 五百四十六条を見てみますと、一から七まであります。たとえばその中の二は「七十歳以上ナルトキ」、三は「受胎後百五十日以上ナルトキ」、四は「分娩後六十日ヲ經過セサルトキ」、こういうようになっておるんですね。こういうような二、三、四でないということは、これは一見明白であります、男性が受胎してみたり、あるいは分娩後六十日を経るということはあり得ないわけですから。そうすると、具体的に当たるような条項というのは、七号のうちの一の「刑ノ執行ニ因リ著シク健康ヲ害スルトキ又ハ生命ヲ保ツコト能ハサル虞アルトキ」に当たるか、あるいは五の「刑ノ執行ニ因リ回復スヘカラサル不利益ヲ生スル虞アルトキ」に当たるか、七の「其ノ他重大ナル事由アルトキ」に当たるか、考えられることとしては大体三つしか一般的な規定としてはありません。 そこで伺いたいのですが、政治犯として釈放された人は、この刑事訴訟法の、いま私が読み上げましたいずれの条文も、何号であるということも付せられなかったわけですか。それは全員について確認しているのですか。
○安原政府委員 担当者の話によりますと、五百四十六条による刑の執行停止ということを書いて何号に当たるかを書かなかったもの、あるいは七号の「其ノ他重大ナル事由アルトキ」と書いてあるものがございますが、一号の「健康ヲ害スルトキ」というようなことで政治犯を釈放したことはないというふうに聞いております。
○正森委員 数百名にわたる政治犯でありますが、仮にその調査が正しいとして、しかし宮本委員長の釈放の仕方も、十月五日の号外通牒の、保釈の方法によらず執行停止の方法によらなければならないという通牒のあり方には合致しているのじゃないですか。
○安原政府委員 執行停止ということによって出たという点は、いわゆる一般の政治犯と同じ執行停止でございますが、十月五日の通達を見ますると、明らかに宮本委員長は外患罪以外の刑法犯を伴うものとして、通達の上では政治犯として釈放の対象にはなっておられないのでございます。
○正森委員 私の言ったことにまともに答えておりませんが、そういう方向に議論が発展するのなら、それについて応答させていただきたいと思います。 そこで私ば伺いたいのですが、あなた方は、宮本委員長が「刑ノ執行ニ因リ著シク健康ヲ害スルトキ又ハ生命ヲ保ツコト能ハサル虞アルトキ」ということで出た、だから病気なんだということを固執なさるおつもりですか。 私どもはそこの問題を論ずるために伺いたいと思いますが、国領伍一郎氏、これは大阪の堺の刑務所に入っておったと思いますが、いつごろ亡くなり、その理由はいかなるものでしたか。国領伍一郎氏は釈放されましたか。執行停止になりましたか。
○石原政府委員 昨日夕方、正森委員から国領伍一郎氏の点につきお尋ねがございまして、私どもが受け取りましたのは、ゴ一郎のゴがにんべんに和数字の五でございますが、私どもの残っている記録を見ましたところがにんべんがございませんで、和数字でございました。恐らく同じ方であろうと思いますが、国領五一郎氏は、治安維持法違反の罪で懲役刑に処せられまして、刑の執行中、昭和十八年三月十九日、胃潰瘍で大阪刑務所において死亡したというぐあいに聞いております。
○正森委員 市川正一氏はいかがですか。これは宮城刑務所で死亡したと聞いております。
○石原政府委員 市川正一氏は、治安維持法違反の罪によりまして懲役刑に処せられ、刑の執行中、昭和二十年三月十五日、肺浸潤のため宮城刑務所において死亡されたと聞いております。
○正森委員 三木清氏はいかがですか。
○石原政府委員 三木清氏は、治安維持法違反刑事被告人といたしまして東京拘置所に収容中——現在の東京拘置所は小菅にございますが、当時、豊多摩であるか巣鴨であるか、ちょっとはっきりいたしません。私どもの記録と照合いたしますと、現在の中野刑務所、当時豊多摩刑務所と言われていたのが東京拘置所ではないかと思いますが、そこに収容中、昭和二十年の九月二十六日、腎臓炎のために死亡したということでございます。
○正森委員 私はほんの三例ほど挙げましたが、法務大臣もよく聞いておいてください。いずれも治安維持法で、市川、国領両氏については刑の執行中——病重かったに違いないのです、死んでいるのですからね。しかし、刑の執行停止になることなく、刑務所の中で獄死しているのです。哲学者であった三木清氏については、戦争に敗れて九月二十六日、一カ月半もたっているのに、しかも未決であるのに、なおかつ刑の執行停止じゃなしに、この場合は勾留の執行停止でしょうけれども、それを受けることもなく死んでいるのです。これが旧憲法下での扱いだったのです。それだのに、無期懲役という刑を受けておった宮本顕治氏が、歩いて帰れるぐらいぴんぴんしておるのに病気であるといって、そして執行停止を受けるということは、普通の、旧憲法下の時代なら、ないのですね。そして、私はあえて引用しませんが、時間がありませんから。塚本三郎氏の予算委員会における質問によれば、大体病気で出るというような場合には、まず作業をやめて病監へ入れられて、病人食をもらってというようなことがあるはずなのに、それがなくてぴんぴんと動いておって、健康食の四等食になっておる、そう言っているのです。私は身分帳を見ておりませんから、塚本議員の問題提起が真実であるかどうかはわかりません。しかし、釈放されてから元気に党活動に参加され、昭和二十一年の一月二日には、「われらは抗議す」という政治的な文書も書いて、健在であるということを天下に公にしておるということは事実であります。 そこで、私は伺いたいのですが、安原刑事局長、このような旧憲法下、治安維持法下の扱い方があったときに、なぜ突然変異的に、ぴんぴんしている者がそんな執行停止で出るのでしょうか。また、政治犯が五百四十六条のどの号に該当するかも明らかでなしに何百人とかたまって出たのでしょうか。私がこれを言いますのは、十月の三日に時の山崎内相談があります。これは、ロイター通信の東京特派員のローバート・リュペン氏と会談をして、アメリカの機関紙の「スターズ・アンド・ストライプス」に報じたものであります。共産党員である者は拘禁を続けると断言、内相は、政府形態の変革、特に天皇制廃止を主張する者はすべて共産主義者と考え、治安維持法によって逮捕されると語った。岩田法相談、これは同日中国の中央通信社特派員の宋徳和氏に語ったものであります。いいですか、昭和二十年の十月の三日ですよ。司法当局としては、現在のところ政治犯人の釈放のごときは考慮していない、かかる犯罪人を刑期より前に釈放することは裁判を無効にすることであり、われわれにはかかる権限は与えられていない、予防拘禁者について大臣の権限をもって釈放できる、しかし現在の事態のもとでは、彼らを依然拘置所にとどめておく必要ありと考え、したがってこれまた釈放のごときは考えていない。昭和二十年の十月三日に至ってなおかつ、治安維持法違反で収容されている者は釈放しない、刑期を満了して予防拘禁をしている者でも出さない、こう内相や法相が言っておるのです。それがなぜ十月の九日やあるいは十八日や十九日に刑事訴訟法五百四十六条のどの号に該当するかも明示されないで、あるいは死ぬまでの病気であっても出されないというのが、私、三、四人の例を挙げてもそういう扱いであったときに、出たんでしょうか。それは十月四日に政治的自由の回復について覚書が出たから、その覚書というものがポツダム宣言に基づき、降伏文書に基づき、そして対日基本政策に基づいて連合国司令官のそういう考え方、指示というものが日本国憲法に優先するから、それが一〇・四覚書というのは国内法としての効力をも持っておるから、だからそれを根拠法として刑事訴訟法という手続を適用してそういうようになったと考えるより仕方がないじゃないですか、いかがですか、大臣。
○安原政府委員 あの釈放は、正森委員御指摘のとおり、連合国最高司令官の超憲法的な指示に基づく行為でございますから、したがって、恐らく刑事訴訟法の何号に当たるということも——予想されていなかった事態として釈放が行われたために、何号に当たるかも書けなかったものと思います。
○正森委員 お答えになっているようでなっていないのですが、何号に当たらないというものもあれば、七号に当たるというものもある、こういうように言われました。七号もやはり連合国司令官の命令であるからということと解するより仕方がないと思うのですね。そして一号の病気ということになった人も——いままで病気では死んでも出されなかったんだから、それが考え方が変わって病気だということを理由にして出されるということは、その前提として十月四日の国内法としての効力をも持つ一〇・四メモランダム、それを実体法として刑事手続法が適用されたというように考えるより仕方がないんじゃないですか。
○安原政府委員 それが十月四日のメモランダムを受けて、その解釈を司令部と相談をしてその意図を聞いて出した刑事局長通達によれば、宮本委員長はそれに当たらないということになっておりまするから、いま御指摘のように、宮本委員長が病気ではなかったということになればいかなる事情であったかということになるわけでございまして、その点、お説のように、ぴんぴんしておられたという説もございますので、いかなる事情であるかは、これからさらに関係者を通じて調べなければならぬというふうに思っております。
○正森委員 とんでもないことを言うものですね。病気で——私は元気だったと言うのは、塚本三郎議員のあれが正しいとすればと言っているのですよ。それを調べてどうするんです。病気でなかったということになれば、収監するつもりなんですか。
○安原政府委員 そういう大それたことは考えておりませんので、この間すでに有効に復権をしておられるわけでありますから、前提として残刑の余地はないということでありますから、収監などということは考えておりません。問題は、かように御議論がございますので、本当の事情はどうであったかを調べる必要があるということを申しておるわけであります。
○正森委員 十月五日の刑事局長号外通牒によれば、治安維持法などに当たる者を執行停止の方法で出すということを言うた中に「但し、以上はいずれも一般刑法及び経済統制法に該当する事件を除く」という文言が入っていたかのように言われておりますし、われわれの調査でもそのように類推できる点があります。そういう文言があったのですか。
○安原政府委員 ございました。だから、宮本委員長がなぜ釈放されたのかが病気でないとすれば不思議になるということでございます。
○正森委員 この「一般刑法及び経済統制法に該当する事件を除く」というその文言の解釈というものは、これをどういうぐあいに治安維持法違反者について解釈していくかというその解釈権というのは、事の性質上ポツダム宣言を実行しようとする連合国占領軍司令官にあったんじゃないですか。
○安原政府委員 メモランダムから来る通達でございますから、メモランダムの解釈は司令部にあったわけです。したがって、司令部にその解釈を聞いて通達を出したということでございます。
○正森委員 私の言うておるのは、その通達の文言の解釈についても、これまた連合軍司令官が解釈をするということになるのではないかと聞いているのです。
○安原政府委員 おっしゃるとおりでありまして、いまも宮本委員長が当たらないことについて、具体的に司令部の意向を聞いて、当たらないという回答を得ていることが関係記録で明らかでございます。
○正森委員 当たらないというのはどういう意味ですか。その関係記録で明らかであると言っておりますが、そのような関係記録というのは、現在までのところあなた方も申されたことがありません。そうじゃないですか。 そこで私は申し上げたいのですけれども、一九四五年十月の十日にあなた方が連合軍司令官にいろいろおっしゃったんでしょう。「自由の制限除去に関する連合軍最高司令官の一九四五年十月四日付覚書についての要領」というのがあります。その要領というのは、あなた方はお持ちでしょうか。
○安原政府委員 御指摘の覚書についての要領というものは私どもも存じております。
○正森委員 その要領の第九号を見ますと、「日本政府は、刑事犯および政治犯の両方で拘留されている個々人すべての事件の完全な詳細について、十月二〇日までに本司令部に報告すること。本司令部の決定まで、個々人を拘留しておいてもよい。」、こういう規定があるようにわれわの調査ではなっておりますが、いかがでしょうか。
○安原政府委員 そのとおりでございます。
○正森委員 したがって、一〇・四メモランダムの解釈にいろいろわからない点があったから日本政府が問い合わして、それに対して十月十日に連合軍から回答があり、「刑事犯および政治犯の両方で拘留されている個々人すべての事件の完全な詳細について、十月二〇日までに本司令部に報告すること。本司令部の決定まで、個々人を拘留しておいてもよい。」ということになったので、これは裏返せば、本司令部の決定があれば釈放しなければならない、こういうことになると思うのですね。 そこで、そういうような回答もあって、たとえば袴田里見氏は十月の十九日に釈放されております。また十月九日に宮本委員長は釈放されておる。釈放されましたが、十月十日に刑事犯にもまたがるような者は「本司令部の決定まで、個々人を拘留しておいてもよい。」というのが出ておるわけですから、もしこれが政治犯でないと思えば再度拘禁することもできたでしょうし、何も釈放を継続する必要はなかった。それがその後、こういう回答が出ておるのに、再度逮捕もされず、収監もされず、釈放のまま続いたということは、結局、日本政府が一〇・四メモランダムを実体法とし、刑事訴訟法五百四十六条を手続法として釈放した措置、つまり政治犯として釈放した措置、こういうものが、その後一〇・五号外通牒の段階では、宮本顕治氏が当たったか当たらなかったかいろいろ論議はあったかもしれないけれども、十月十日のこの要領が出、それに基づいて連合国との間にいろいろ話し合いが行われ、そして連合軍が「本司令部の決定まで、個々人を拘留しておいてもよい。」という、その拘留しておいてもよいことに当たらなかった、そういうことになるんではないですか。
○安原政府委員 そういう御推測も一つの御推測ではありましょうけれども、実際は違います。
○正森委員 しかし、実際には違うと言われますけれども、その後あなた方が逮捕も拘留もされなかった。そして勅令七百三十号に基づいて「将来ニ向テ其ノ刑ノ言渡ヲ受ケザリシモノト看倣ス」ということになさった。もちろん勅令七百三十号にはただし書きがあります。ただし書きには、あなた方の十月五日の号外通牒と同じような規定、それをもう少し詳細にしたものがあります。しかし、それがあるにもかかわらず、連合軍司令官が七百三十号に基づいて「将来ニ向テ共ノ刑ノ言渡ヲ受ケザリシモノト看做ス」という扱いをしろと、こういうように言ったことは、連合軍司令官が、一〇・四メモランダムに基づいて釈放されたすべての政治犯人について資格回復をしろ、こういう十二月十九日の資格回復についてのメモランダムを受けたものが十二月二十九日の勅令七百三十号でありますから、解釈権を持っておる、法的な効力を持ったポツダム宣言に基づいて天皇の統治の大権が一部分従属せざるを行なかった、その時代におけるわが国の法体系として、そういう解釈が法律解釈としてとられた。少なくとも七百三十号の勅令、それを適用して五月二十九日に「将来二向テ共ノ刑ノ言渡ヲ受ケザリシモノト看做ス」ということにした段階では、連合軍司令官の解釈というものは、私が言ったように一義的に定まった、そして日本政府は心からか渋々からかはわからないけれども、それに法律的に従ったというように見ざるを得ないんじゃないですか。法務大臣いかがでしょう。
○安原政府委員 それはそうではないんでございまして、要するに仮に一〇・四のメモランダムに言う政治犯に宮本委員長が当たっているとすれば、いま正森委員御指摘の七百三十号の十二月二十九日の勅令で、少なくともその段階で復権の対象になっていなければならなかったわけでございますが、宮本委員長のようなケースは除くということが明文で明らかになっておるわけでございまするから、したがって、一〇・四のメモランダムに言う政治犯の中に宮本委員長のケースは入らなかったと解釈せざるを得ないわけでありますし、それに合致する関係者の供述もございます。 したがいまして、結局、先ほど正森委員御指摘のとおり一〇・四、それに基づく一〇・五の通達に基づいて釈放すべきでなかったものを釈放したということになるのに収監をしなかったわけはどういうわけか、そこに問題があるじゃないかと言われれば、まさに問題があるわけでございまして、それがどういう事情かは、今後調べてみなければならない問題ではないかというように考えておるわけでございます。
○正森委員 私は一〇・五によって釈放されてはならないものであるのに釈放したというようなことは言っておりません。速記録をよく調べてみてください。一〇・五のその刑事犯や経済犯を除くというのについても連合軍司令官に解釈権があり、一時的にあなた方はそういう解釈をとっておったとしても、最終的な連合軍司令官の解釈によれば一〇・四メモランダムによる政治犯の釈放であり、その釈放された者はすべて勅令七百三十号によって資格回復をさせなければならない、そういう解釈に基づいて宮本委員長の資格回復を行ったものではないか、そういうように私は言っておるわけでございます。だから、私が十月五日のそれで釈放してはならないものであったというようなことを言っておるかのような刑事局長の発言というのは、明白に違うということを私としては申し上げておかなければならない、こう思うのです。
○安原政府委員 まさにそのとおりで、要するに一〇・四、一〇・五の覚書に該当しないとすればという御前提でおっしゃったことでございますから、該当しないのにと言われたということは私の言い違いでございます。ただ私どもとしては、該当しないことが明白でございますから、それにもかかわらず釈放され、そしてその後収監されなかった事情については、それが病気でないとすればさらに調査を進めなければならない疑問点であるというふうに考えておる次第でございます。
○正森委員 時間が参りまして事務局から紙が参りましたから、大臣は遅くも四時半には御用があるようですから、議論を詰めたい点があると思いますが後日に残しますが、ただ一言申し上げたいのは、まじめに議論しているわけですからその意図は認めていただきたいと思いますが、恐らく五月の中旬段階で勅令七百三十号を適用すべしということになったのでしょう。だからこそ五月二十九日に証明が出たと思うのですね。 そこで、そうだとすると、もう一つ胸襟を開いて語り合いたい、論議したいと思う点があるのですが、時間がないから申し上げませんが、安原刑事局長は、七百三十号の勅令の適用があった、それは連合軍司令官の解釈に基づく指示であり、それに従ったものであるということも否定するのですか。
○安原政府委員 解釈というよりも、七百三十号というのは、十二月十九日の政治犯の資格回復に関する件というメモランダムに基づく勅令でございます。それには明文上宮本委員長は該当しないわけでございまして、したがって昭和二十二年の五月の司令部の指示も、それは解釈するというのではなくて、それに当たるものと同じように扱えという特別の指示であったと私どもは理解しておるわけでございます。
○正森委員 そうすると、あなたの立論が正しいとすれば、その段階で連合軍司令官がある種のメモランダム的な立法行為的な指令を行ったものであるというように見ていいのですか。
○安原政府委員 立法行為というよりもこれまたいわゆる復権の超憲法的な指示が司令官からあったというように考えておるわけであります。
○正森委員 それでは時間がございませんので一言聞いておきますが、議論は残したいと思います。 私は、ここに「国家学会雑誌」第六十三巻第一、二、三号の連合したものを持っております。そこで東京大学教授の田中二郎氏が「実定法秩序の構造」、こういうものを書いておられます。この論文を読みますと、この中で連合軍司令官のメモランダムあるいは指令、レター、こういうものの法的性格について論じておられます。これを見ますと、わが国においては間接管理が大筋としてとられたけれども、しかし降伏文書によっても対日占領の方針によっても、連合軍司令官というのは直接管理の権能を排除したものではない、したがって間接管理も行うが、直接管理も連合軍司令官のポツダム宣言に基づく、ポツダム宣言を実施するための権能として持っておるのだということが田中二郎教授においても主張されているわけですね。ですから、法務大臣としては、わが国の占領が終わるまでの一定の時期において、ポツダム宣言を受諾したことに伴って、ただ政府にだけこうしなさいよという間接管理だけでなしに、連合軍司令官がポツダム宣言の実施のために直接管理的な権能も持っており、そういう覚書あるいはメモというものを出す権能も持っておったということはお認めになりますか。
○稻葉国務大臣 認めます。
○正森委員 きょうは時間が参りましたので、議論はそこまでにしておきます。
○大竹委員長 次回は、明十三日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後四時二十分散会