法務委員会 第8号
- 発言数
- 67 件
- 登壇者
- 6 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1976/05/11
会議録
○大竹委員長 これより会議を開きます。 お諮りいたします。 最高裁判所岡垣刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○大竹委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ————◇—————
○大竹委員長 刑事訴訟法の一部を改正する法律案を議題といたします。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
○稲葉(誠)委員 刑事訴訟法の一部を改正する法律案、これについては当然予算を伴うものと考えられますので、七千万円の予算が計上されているというのですが、どこにどういうふうに計上されておって、その内訳はどうなのかということを可能な限り御説明願いたいと思います。
○岡垣最高裁判所長官代理者 裁判費の中に刑事補償に関する費用が計上されてございますが、この費用補償は、裁判所としましては初めてできる制度でございます。それで四十九年度の事件につきましては、一々無罪の事件についてどれくらい出頭した日にちがあるのか、旅費はどれくらいかかっているのか、そういうことをみんな洗い上げまして、それを積算いたしますと大体年間一億ぐらいになるわけでございます。それを今度の場合は大体七月から以降になるという見込みでもって、予算は七月からの分を要求しております。 それは法案が成立した後、その執行までにはやはりいろいろな準備が必要でございますので、その準備の関係で七月以降。そうしますと、大体四分の三になるわけでございます。それで一審の無罪確定分としまして五千五百十二万七千円、それから一審無罪、控訴棄却分としまして百三十五万五千円、それから一審有罪、控訴無罪分としまして千二百八十八万四千円、それから上告審の破棄自判、無罪確定分としまして八十三万三千円、合計七千十九万九千円というものを要求しておるわけでございます。 以上でございます。
○稲葉(誠)委員 それは刑事補償という形で入っているのですか。これはどういうわけなんですか。刑事補償ではないのじゃないですか。
○岡垣最高裁判所長官代理者 おっしゃったとおりに、刑事補償と今度の費用補償と違うわけでございますけれども、まあ補償ということで同じ項目の中に入れておるというわけでございます。
○稲葉(誠)委員 そうすると、あと法務省に聞くのですが、これは本質的には刑事補償の一つの形態だというふうに見てよろしいわけですか。
○安原政府委員 刑事補償法による刑事補償ではないことは明らかでございますが、刑事に関する補償という意味においてその中に入っておるのではないかと思います。いずれにいたしましても、大蔵省が予算会計上の便宜からさようなところに一まとめにしておるものと思っております。
○稲葉(誠)委員 そうすると、刑事補償法の場合には、免訴または公訴棄却の裁判が確定した場合において、もし免訴または公訴棄却の裁判をすべき事由がなかったならば無罪の判決を受けるべきものと認められる十分な理由があるときも同様だ、これは二十五条でしたっけ、そういう条文があるわけですね。これはどういう経過からこの条文が入ったわけですか。これは聞くところによると、衆議院で修正の意見が出て修正案は出なかったけれども、参議院で修正されたというふうに聞いておるわけです。
○安原政府委員 大体の経過はいま稲葉委員御指摘のとおりでございまして、この法案が審議されました昭和二十四年当時の第六回国会におきましては、委員会の審議の過程で、衆議院の場合は、いま御指摘のような免訴、公訴棄却の場合も補償の対象とすべきであるという意見が出ましたが、政府原案のまま衆議院は可決されまして、参議院に参りましてから参議院の審査の過程で修正案が出まして、現行の二十五条どおりの修正案が参議院で修正可決されまして、そして衆議院に回付されて、衆議院で昭和二十四年の十二月三日に現行法どおりの修正案を可決したものでございます。 結局、いろいろの意見もございますが、要するに、刑事補償の対象となる無罪となった者の未決の拘禁または刑の執行に伴う補償としては、実質無罪であることが明らかであれば、免訴、公訴棄却の場合にも補償するのが公平の精神にかなうのではないかということであったように理解いたしております。
○稲葉(誠)委員 法令の精神にかなうのではないかではなくて、かなうからそうなったのでしょう、言葉じりはどうでもいいけれども。 そこで、免訴または公訴棄却というふうなことで、いままで刑事補償法の二十五条による補償、これが具体的になされたのはどの程度あるのですか。四、五件あるような話も聞くし、どうも全部のものを法務省の方としては出さないで、一部のものだけを何か例を出しておるのかもわかりませんが、どの程度ありますか。具体的にどんなことで、どの程度の金額が出されているわけですか。
○岡垣最高裁判所長官代理者 私どもの現在手元にございます資料で申し上げますと、免訴または公訴棄却の裁判を受けた者からの刑事補償が認容された例で、昭和三十八年以降五十年までのものでございますけれども、それで見ますと、件数では八件でございます。請求人員は二十六名ございます。 その内容を個々別々に申し上げましょうか。
○稲葉(誠)委員 ええ、簡単に……。
○岡垣最高裁判所長官代理者 そうしますと、最初は三十八年の十月二十九日に東京高裁で、いわゆる幸浦事件と言われる強盗殺人事件がございますが、これに対する補償がございます。それでこの補償の内容は、これは総額で百七十六万七千六百円となっています。それからその次は、昭和四十年六月十日に東京高裁の決定がございまして、これは殺人等の事件でございますが、これに対しては総額で二十三万八百円の補償がなされております。それからその次は、四十二年の四月二十四日に岐阜地裁の決定がございまして、これは破防法違反の事件でございますが、これで補償された額は総額一万二千四百円となっております。それから四番目は、四十三年の十月二十八日に東京地裁の八王子支部でございまして、いわゆる青梅事件でございますけれども、これについては補償額は、これは請求人が二人ございまして、その一人については二十八万五千円、それからもう一人については二十三万九千円の補償がございます。それから五番目は、四十四年の十二月六日に佐賀地裁でございまして、地方公務員法違反の事件でございますが、これは五千二百円の補償がなされております。それからその次は、四十七年の六月三日東京地裁、これも同じく地方公務員法違反でございますけれども、これについては、これは請求人が三名ございまして、そのうち二人については五千二百円、それからもう一人は六千五百円ということになっております。それからあとは、四十八年の一月十八日とそれから四十八年七月十二日に、東京高裁それから東京地裁でそれぞれメーデー事件に関連しました補償がなされておりますが、この補償は四十八年一月十八日の分は三十万四千二百円、それから四十八年七月十二日の分は、これは非常に人の数が多うございまして、十五名でございます。これは個々的にはあれがございますけれども、大体一人三、四十万円というところの補償がされております。 それでこの理由は、最初に申し上げた三十八年の十月の事件、これは共犯者の無罪が確定しておる事件でございます。それから二番目の事件は、これは一審無罪で、二審係属中に被告人が死亡したという事件でございます。それから三番目は被告人死亡、共犯者の無罪確定。それから四番目は公訴取り消し、共犯者の無罪確定。それから五番目と六番目は、これはいずれも公訴取り消しで、判例上罪とならないというものでございます。それから最後のメーデー事件の場合は、被告人死亡と公訴取り消しと両方ございますけれども、共犯者の無罪は確定しておる、こういう事件でございます。 以上でございます。
○稲葉(誠)委員 そうすると、刑事補償法の二十五条、これが院において修正になったということですが、それがなかったならば、政府原案どおりだったならば、いま言ったような案件についてはどうなるのですか。
○安原政府委員 そのままでは補償の対象にならないということでございます。
○稲葉(誠)委員 それはそのとおりですね、わかり切ったことを聞いているわけだから。 そこで、じゃなぜ刑事補償法の二十五条にいま言った免訴または公訴棄却の裁判の場合が入っていて、今度の政府提案に入らなかったのかということですね。それは法制審議会でいろいろ議論があったはずだと思うのですが、そこら辺のところがどうもよくわからないのです。これは法制審議会の審議の内容は非公開だということで議事録も出ないようですけれども、そこはどういう理由からやられたかということですね。私どもの聞いた範囲では、何かいろいろな議論があった、それで採決したのかどうかわかりませんが、一つは何か選挙違反の裁判のときのことも考えたり何かして、そのときにこういうふうな補償をするのはおかしいじゃないかということもあったという話も聞くのですが、これはあるいは聞き違いかもわかりませんが、そこら辺全体としてどうなっていますか。
○安原政府委員 法制審議会の議論の内容につきましては非公開でございますが、だれがどう言ったということでなければ別にそう非公開にすべき理由もございませんので、私の記憶しておる限りで申し上げますと、確かに議論はございました。 そして一番広い場合は、あらゆる一切の免訴、公訴棄却の場合にも補償すべきではないかというのが最も広い補償の議論でございますが、これは免訴にも、大赦になって免訴とか、行為当時は違法であったが刑罰法令が廃止になって免訴というようなものもございますから、免訴を一律に補償するのは、やはり国民の感情と申しますか、合理的ではないというようなことで、免訴一般という議論については、これを支持する者はほとんどなかったわけでございます。公訴棄却につきましても、被告人が逃亡しておって、被告人に訴状送達が、所在不明のためできなかったというようなことで公訴棄却になるとか、いろいろの場合がございますので、一概に公訴棄却すべてについて補償するというのも問題だということになりました。 そうなりますと、刑事補償法の二十五条の規定と同じように、無罪と認めるに足る十分な事由のある裁判としては免訴、公訴棄却の場合に限るべきではないかという議論、これがございました。これにつきましては、前回も御質問にお答えいたしておりますように、刑事補償のように、身柄の拘束とか刑の執行というような重大な損害を受けた者で無罪になった者に対する補償の場合と、単に応訴を余儀なくされて出した弁護士の報酬とか、あるいは弁護士ないしは本人の出頭に要した旅費、日当というような費用の損害というものは、損害の性質、程度において大いに違うから、こういう者については無罪の場合だけに補償するということだけで公平の精神にかなうのではないか。あるいは刑事補償の場合においては、補償するということは、一面において、身柄の拘束を受けたというようなことで公訴提起をされている者については、世間一般の評価が、あれは犯人に違いないという評価をするのであるから、仮に無罪であるとすればその名誉を回復するということが必要である。それについては免訴、公訴棄却の場合であっても、実質無罪であれば、拘束を受けた者については、名誉回復という意味において刑事補償をやるということは考えられるが、訴訟の費用についてはそこまでの名誉回復というような趣旨はないというような実質論のほかに、もう一つは、現実の二十五条の運用にかんがみましても、決定手続で免訴、公訴棄却にならなければ実質無罪であったという判断というのはそう簡単にできるものではない、そうすると、補償というのは迅速にやるという要請があるのに、特にこの訴訟費用のようなものは迅速にやる必要があるが、この決定手続で、実体において無罪であったということを認定するということは相当の長期間を要するのではないか、という意味において、この程度の費用の補償については、そういう長期間を要するような手続をもってしてまで補償する必要はないということがございました。 そこで、一般に、この刑事補償法の二十五条につきましては、いまの運用の実績で見ましても、結局、決定手続で実体の判断をして、これは本当は無罪であったんだという判断をしたのは一件もないので、要するに、決定手続で、確定記録によりまして、先ほど最高裁の岡垣刑事局長御案内のような、たとえば一審無罪であった者が検察官の控訴中に死亡したというようなことで、実体裁判によってすでに無罪の判決があるとか、あるいは本人は被告人である間に死にましたが、共犯者が別途の実体裁判で無罪の判決が確定したとか、要するに、決定手続で簡単に書類上わかるような場合しか刑事補償法二十五条が運用された実績がない、免訴については全然実績がないというようなことにかんがみまして、先ほどの一番広い案、それから刑事補償法と同じ案には認定手続の問題において必ずしも制度的になじまないものがあるということから、一つの議論としては、免訴、公訴棄却について無罪とするに足りる資料となるような別途の確定判決があった場合に補償するようにしてはどうかというような議論もございましたが、これにつきましては、偶然の事由によって補償するかしないかが決まるという、一つの正義、公平にかなわない不公平な場合も生ずるので、制度としてはどうであろうかというような議論がございまして、結果におきましては、部会の審議では結局、議論はされましたが、刑訴法を刑事補償法二十五条のように修正すべきであるという議論は出ずに、いまの原案のまま、つまりいまの政府提案のような形、二十五条のような規定を置かないということで部会の採決がございまして、それからいわゆる総会に行きまして、一部の委員から、稲葉委員御指摘のような、二十五条のような規定を置けという修正案が出ましたけれども、全くの少数で、原案どおり可決されたというのが審議会における議論の経緯、経過でございます。
○稲葉(誠)委員 免訴の場合というのは、刑事訴訟法が施行されてからほとんどないんじゃないですか。あったのは、戦後に選挙違反が大赦か何かであれになったときだけじゃないの。免訴というのはほとんどないんじゃないですか。
○安原政府委員 私、先ほど免訴がないと言ったのは、免訴ということの判決を受けた人で補償を受けた事例がないということでございまして、免訴そのものは、私の手元にあります資料によりますと、四十七年には総数で三十三件、それから四十八年は三十六件、四十九年は二十六件という免訴の判決がございます。
○稲葉(誠)委員 そうすると、刑事補償法の二十五条によって、まあいずれにしても八件くらいあるということですね。この刑事補償法の二十五条の修正があったからこそ、それだけの人が一応救済を受けられたわけですね。そうすると、今度の場合に、「免訴又は公訴棄却の」云々のこの修正を入れなかったということになると、結局、数は少ないかもしれませんが、救済を受けられる者が現実には救済を受けられないということも、どの程度かわかりませんけれども、理論としては考えられてくるんじゃないですか。
○安原政府委員 まさに理論としては考えられますが、法制審議会の審議の過程では、現段階においては、公平の精神からいっても、そこまでして補償するだけの必要性はないということであったと思います。
○稲葉(誠)委員 そうすると、これは私どもが長い間主張してきた非拘禁者に対する補償というか、それとの関連はどういうふうになってくるのですか。それの一部の先取り的なものであるというふうに理解してよろしいのですか、あるいは性質としては全然別だということになるのですか。非拘禁者に対して無罪や何かあった場合の補償との関係はどういうふうになるのですか。
○安原政府委員 広い意味では、非拘禁で無罪になった者についての補償の中に入りますが、非拘禁ということと必ずしも結びつかないので、拘禁されましても非拘禁でございましても、要するに応訴を余儀なくされて出した本人の出頭——まあ拘束されておれば出頭ということはございませんけれども、弁護人の報酬というようなもの、あるいは弁護人の出頭に要した旅費、日当というものでございますが、拘束、非拘束を問わないことでございますから、非拘禁補償とダブるかといいますと、非拘禁の補償ということの定義でございますけれども、無罪になった者で拘禁を受けなかったか、公訴を提起されたが非拘禁のままで無罪になった者の補償ということでございますから、その人たちがある意味で弁護人を雇って報酬を払っておれば、そういう意味では補償の対象になるわけでございますから、ちょっとダブるかどうかということはございますけれども、非拘禁補償の延長線上にあるかと言うと、必ずしもそうではないのではないかと思います。
○稲葉(誠)委員 拘束というか拘禁中で無罪になった場合の補償については、刑事補償法でいくわけでしょう。そうなってくると、そこに弁護人の報酬とか日当とか、いろいろなものを加えるのが本筋ではないの。その部分は刑事補償法の性格を持ってくるんじゃないですか。そこで保釈か何かになってきて、拘禁が解かれてきたということになってきた後のものはこれでいくかもわからぬけれども……。だから刑事補償法の規定がオーバーラップして適用になるというような性格も持ってきているとすれば、拘禁中の補償関係、これは刑事補償法で、弁護人の報酬とかなんとかも加えて一本にしてやっていくのが筋じゃないのですか。
○安原政府委員 これも法制審議会の審議の過程におきましては、今度の費用補償を刑事補償法の中に入れるべきではないかという議論もございました。しかし、それはそれとして一応理屈はあると思います。ただ、御案内のとおり、刑事補償というのは、無罪になった者で、未決の拘禁とか、あるいは刑の執行を受けたという拘束自体からくる精神上、財産上の損害に対する補償でございますが、今度の費用補償はそうではなくて、まさに応訴を余儀なくされたことによる出費の補償でございますから、現在の刑事補償法が予定しておる損害とは対象が違うわけでございます。しかしながら、広い意味で、要するに、無罪になった者に対する損害を補償するという意味においては、刑事補償の性質も持っておるわけでございますから、理屈としては、刑事補償法の中に入れてもいいという理屈も十分に成り立つとは思いますが、他面、現在上訴費用の補償ということで、刑事訴訟法にはすでに一部ながら費用の補償の制度が存在しておるということ、それと一連のものであり、それの趣旨の拡大であるということから考えると、刑事訴訟法に置いておいて決しておかしくはない。それと同時に、いわゆる訴訟費用の補償につきましては、刑事訴訟法に規定がありまして、訴訟費用についての負担をするかしないかということについて刑事訴訟法に規定がございます。 そういう意味において、刑事補償という意味においては刑事補償法の方にいきますが、逆に、すでに現に上訴費用については刑事訴訟法に規定があり、それからいわゆる訴訟費用の負担についても刑事訴訟法に規定があるから、訴訟に関する費用については、むしろ現在の刑事訴訟法の中に位置づける方がベターではないかということで、こういうことになったわけでございます。
○稲葉(誠)委員 これは最高裁の方にお聞きした方がいいのかとも思いますけれども、たとえば刑事裁判で証人を呼びますね、それで日当を払う。そうして有罪になる。そうすると、裁量によるのですが訴訟費用を被告人に負担させますね、全部負担さしているわけじゃありませんけれども。それはどこからそういう考え方が出てくるのですか。これは外国はみんなそうなんですか。ぼくは、何も有罪になったからといって訴訟費用を、証人に払った費用まで被告人に負担させなくてもいいのじゃないかと思うのですが、そこら辺のところ、どうなっているのですか。その根拠はどこから出てくるのですか。
○岡垣最高裁判所長官代理者 どうも勉強不足で外国のことはよくわかりませんですけれども、日本の場合であれば、やはり訴訟ということで両方の当事者、一応対等の当事者が一つのテーマについてどちらの主張が正しいかということを争う。それを国家が中立の立場でどちらかに判断するというたてまえをとっている以上、負けた者がその費用を払うというのはむしろ当然の理ではなかろうかと考えますけれども……。
○稲葉(誠)委員 ちょっと、そこら辺のところがよくわかりません。完全な当事者訴訟ならまたそれは別かと思うけれども、日本の刑事訴訟法の場合は完全な当事者訴訟ではないし、いろいろ議論が出てくるんだと思いますが、普通の場合は、貧困の場合とかなんとかを救済して、余り払わせないようにしてあるのが多いと思います。 そこで、この法案の提案理由の説明を読んでみると、たとえば刑事補償法でも救済を受けるし、それから検察官の故意または過失により不法に公訴を提起された場合にも国家賠償法で救済を受ける。そこで、これらの制度だけでは、無罪の判決を受けた者の救済方法としては必ずしも十分ではないと考えられるとか、あるいは公訴提起そのものが結果的に不当であった場合と区別する十分な根拠がないとか、法制度としての均衡を欠くというふうなことが出てくるとか、いろいろなことが書いてありますね。二ページのところに出てきますが、こういうふうなことなら、これは刑事訴訟法ができたときに当然この条文というものは入ってなければならないわけです。あるいは多少の時間がたったときに入ってなければならないし、あるいは刑事補償法の改正があったときにも入ってなければならないのです。どうしていままでこんなふうにおくれたのか。こんなにいい法律だと言うのなら、あなた、もっと早くやればよかったのじゃないの。どうしておくれたのか。これは社会党関係がやかましく言ったから、結局重い腰を上げてやっとこさ提案してきた、こういうことでしょう。そうじゃないの。これは実質はどうなんだ。いい法律ならもっと早く出すべきだったのじゃないのかね。
○安原政府委員 必ずしも社会党の御提案があったからということではございませんが、御提案の中にもっともなものがございましたので、いただいたということではございますが、いずれにいたしましても、結局こういう補償するかどうかというのは、ジャスティスといいますか公平の精神にかなうかどうかという問題、要するにこういうわが国の司法制度を支えていく以上、国民が何らかの形で負担をしなければならないことは当然であるが、個人に負担させることが受忍の限度を超すということはやはり公平の精神からいってよくないということでございましょう。そうなりますと、受忍の限度かどうかということは著しく相対的な概念でございますから、ここまでが受忍の範囲だ、ここまでが受忍の範囲を超えるということは、時代とともに変化していって構わない問題であろうと思います。現行法ができました段階においては、いまの費用補償まではしなくても受忍の範囲内にとどまるという判断が立法当時にはなされたのでございましょうが、時代の思想の移り変わりとともに、今日においては、それはやはり国家が負担する方がいい、そういう意味においては、受忍の範囲を超すというふうに観念すべきだというふうに社会の通念が変わってきたのを受けて提案をいたしましたということに相なろうかと思います。
○稲葉(誠)委員 いや、なぜおくれたかという理由の説明には十分なってないけれども、それはまあいいですよ。 だからぼくは、刑事補償法の二十五条が改正されたときに、そのときすぐ出せという意味じゃないけれども、その近い段階で当然出てなければならなかったと思うのです。もっとも出てなければならなかったということを言うのがおかしいんで、立法というのは議員が立法するのだから、政府が提出するというのは本筋じゃないんだから、こういう議論をすることもちょっとおかしいと思いますが、いずれにいたしましても、この法案に対する一つの問題は、よく外国の立法例がいろいろ出てくるわけです。国によって違いますから何とも言えませんけれども、たとえばスウェーデンなどを見ると、非拘禁の場合の補償と、それから普通の刑事補償と、被害者補償、これを一本にしているんですか、どうなっているんですか。国が違うから一概にそんなことを言うわけにいかないけれども、そこがどういうふうになっているかということが一つですね。
○安原政府委員 御指摘のとおり、スウェーデンで無罪の場合におきまして費用補償をしていることは明らかでございますが、そのほかに、いわゆるわが国の刑事補償に当たるものは別の法律があるようでございますし、非拘禁補償をやっている国はどこにもないというふうに理解しております。
○稲葉(誠)委員 それと話はちょっと違うのですけれども、刑事被害者の補償ですね。これは長い間国会でも問題になっているところなんですが、現在どういうふうに進行しているわけですか、これに関連するわけですけれども。これは大蔵省が盛んに難色を示しているという話も聞くのですけれどもね。
○安原政府委員 大蔵省が難色を示しているからおくれているのではなくて、この前にもお答えいたしましたように、いま、いわゆる犯罪の被害者の補償の要件、範囲というものを決めるためには、犯罪の被害者がどういう実情にあるかの実態調査をしておくことが立法の手前ぜひ必要だということで、全国の検察庁に実態調査を依頼して報告を求めたのが、この夏ごろにその結果がまとまりますので、その実態調査を踏まえて最終的な法案づくり、最終的な法務省としての案をつくって関係省庁と話をしたいということで、できれば、秋ごろには法制審議会にかけたいというのが法務省事務当局の考え方でございます。 なお、御指摘のとおり、法制審議会の過程におきましても、被害者補償の方を先行すべきではないかという議論をなさる委員もございましたが、私どもは、被害者補償が先行して、そして費用補償という被告人に対する補償を後回しにすべきだとも考えておりませんので、要するに用意の整い次第、順次しかるべき法案については提出をしていっていいのだと、順序は必ずしも決まっているべきであるとは思わないという考えでおります。
○稲葉(誠)委員 私どもとしては、いま言ったように非拘禁の補償の問題、それから被害者補償の問題、こういうふうな問題を含めて、できるだけ早い段階の中で進展を図ってもらいたいというふうに考えますし、心情的には、この刑事訴訟法の改正の中に、免許または公訴棄却の裁判が確定した場合のことも入れるべきだというふうに考えるのですが、形式的にはまた別の議論になってくると思うのですけれども、いずれにいたしましても、これは私どもが長い間主張してきたことの一部が実現をしたということで、全体がまだ実現したわけではありませんから、全体の実現のために今後とも私どもも骨を折りますし、政府当局としても骨を折ってもらいたいということだけを要望して、質問を終わります。
○大竹委員長 諫山博君。
○諫山委員 私たちの党は、この改正案に賛成です。しかし非常に不十分です。不十分だけではなくて、理論的に誤りを含んでいると思います。そういう立場から二、三質問します。 刑事補償法で、免訴または公訴棄却の裁判を受けて刑事補償を受けたという事例が紹介されましたが、メーデー事件、破防法違反事件、日教組事件、幸浦事件、青梅事件、こういうふうに並べますと、いわゆる公安労働事件あるいは著名な冤罪事件が中心だということがわかります。 そこで日教組事件についてですが、これは地公法違反で起訴され、控訴取り消しに基づいて公訴棄却がなされたと思うのですが、そういう経過になっていますか。
○岡垣最高裁判所長官代理者 そのとおりでございます。
○諫山委員 佐賀県教組の事件と思われる地公法違反事件で公訴棄却の裁判を受けた人に五千二百円の刑事補償がされたという説明です。この裁判は公訴棄却になるまで恐らく十数年を要しています。大変な大裁判だったわけです。石川達三が長い小説のテーマに選ぶというほど全国で問題になった事件です。もし免訴または公訴棄却になった人で、今度の改正案で当然無罪の判決を受けるはずであったということになれば、五千二百円程度の刑事補償ではなくて、相当多額のこの改正案に基づく補償がされていたはずだと思いますが、どうでしょうか。
○岡垣最高裁判所長官代理者 佐賀地裁の四十四年十二月六日決定の事件でございますけれども、これは四十二年の二月二十七日に起訴になったものでございます。それで、四十四年の四月二日に最高裁の大法廷の第一次都教組事件無罪の判決がございまして、それで検察官が四十四年の五月十五日に公訴を取り消したと、こういうことになっております。したがいまして、この補償に関しましては、日数は四日間、千三百円の四日分ということで、日にちの単位が非常に短かかったということ。ですから結局、これがもし拘束の期間というものが長かったりすれば、当然額は多くなるわけでございましょうけれども、期間が短かったということでございます。
○諫山委員 破防法事件にしても青梅事件にしても、恐らく十数年を要した後で公訴棄却になったのではないかと思います。もし免訴または公訴棄却になった人についても補償するとすれば、これも相当多額の補償がなされているはずです。ところが今度の改正案では、こういう問題について補償しないというのであれば、実際上きわめて不公平な結果が生まれてきます。また、免訴または公訴棄却で形式的な裁判をしているのに有罪か無罪か実質的な審判をしなければならないという反論が法務省の方からされていますが、実際刑事補償法でこの適用を受けたのは、ほとんど実体的な審理なしに形式的に決定されたんじゃないでしょうか、その点どうですか。
○岡垣最高裁判所長官代理者 これは先ほど申し上げましたとおりに、もう共犯者の無罪確定であるとか、それから最高裁の判決で、もうその事件は罪とならないということで公訴が取り消されたとかいうことで、いままで申し上げた事例につきましては、お説のとおり、全くその実体に突っ込まないで、記録上明白であるということで十分な理由があると認められたものでございます。ただ一件、一審で無罪の判決がありまして、それで控訴審の判決をする直前に死亡したという事件で控訴棄却になった事件がございますが、これはそれまでにずっと控訴審で調べた証拠を詳細に検討して、そして決定をしております。
○諫山委員 ジュリストに山本検事が解説を書いているのですが、この中に、簡明迅速に費用の補償をしようとするこの制度の趣旨から見て、免訴または公訴棄却の場合には補償しない方がいいと書かれているのですが、実際の運用を見ると、ほとんどめんどうな手続はされてない。きわめて形式的に刑事補償がされていますから、これはそのまま改正案のこの場合にも当てはまるわけで、その点から見て、私は実質的な審理を要するから大変だというのは余り実際的ではないと思うのです。 また、この請求をするかしないかというのは、被告人がみずからその手続をとるかとらないかの問題であって、被告人がみずからその手続をとる限り、仮に煩瑣な手続を要したとしても、これは自分が選んだ道ですから一つも本人の迷惑、不利益にはならないと思うのです。その点、法務省の見解はいかがでしょうか。
○安原政府委員 先ほども稲葉委員の御質問にお答えいたしましたように、法制審議会の議論の過程でも、ございましたが、要するに、いま諫山委員御指摘のように、簡単に書類上の調査によってわかる事件もございますけれども、先ほど申しましたように、毎年三十件前後の免訴がございます。その中の非常に少数のものが、幸いにして書類上の審査で無罪であることの十分な理由が発見できたわけでございますが、制度として考えます場合に、そういう偶然の事由で補償が受けられたり受けられなかったりする制度自体、制度としての一つの欠陥があるのではないかということも考えられます。 一般に無罪、免訴、公訴棄却の場合に、決定手続で実体の審理をしなければならぬということに一つの制度的な欠陥があるということに結びつくこの制度の、刑事補償法の二十五条を含めての欠陥でございますが、それは一つの欠陥で、決定的な理由ではないわけでございます。刑事補償法のように、身柄の拘束あるいは刑の執行というものを受けた者についての重大な損害に対する補償であり、かつそのような場合においては、犯罪人という社会的烙印を押されるような者については、実質無罪であれば、名誉回復という意味において、いかに審理に手続を要しても実体的な審理をして、そして無罪か有罪かを決めて補償するということに意味があるということが言えるわけであります。 訴訟の費用のようなものは、ある意味においては被告人の受忍の範囲に属するとも言えないわけではないが、今日の段階においては、応訴を余儀なくされて出した弁護士の費用と弁護士並びに本人の出頭に要した旅費、日当だけは、ほかの行政処分等との比較においても、特別の費用だからその限度では費用を補償するのが合理的だ、それが公平の精神に合するということで、それ以上に長期間を要して本来審理しなければならないような無罪、免訴、公訴棄却の場合における実体無罪かどうかというような場合にまで、審理をしてまで補償するだけの必要性はいまのところないというのが立法の理由でございます。その結果、そのことが絶対的に間違った考え方であるとは決して申しておりませんが、現在の段階においては、立法政策上その程度でとどめることによって十分に公平の精神にかなうんじゃないかというのが私の方の考え方でございます。
○諫山委員 この前からの法務省の説明を聞いていますと、刑事補償の場合には被告人の名誉回復という観点が取り入れられているけれども、今度の改正案の場合には損失の補償であって、名誉回復という立場は取り入れられてないというふうに承ったのですが、そのとおりか。——そのとおりだとすれば、なぜこの改正案では名誉回復ということを考慮しなくていいのか、御説明ください。
○安原政府委員 直接にはこの費用補償の制度は、直接現実の出損行為、損害行為を補償するということが主たる目的でございまして、その結果、名誉が回復されることを妨げるつもりは毛頭ないわけでありまするが、主たる目的は、直接の財産上の損害を補償するというのがこの費用補償の原案の考え方でございます。 なお刑事補償法は、それに比べまして、未決の拘禁とかあるいは実質無罪の者についてその刑の執行をやった、あるいは身柄を拘束したという重大な損害であるということ、そのことからまた同時に、それは社会的な評価としては非常に名誉を失墜させることになるという意味において、刑事補償のような拘禁補償の場合においては、名誉回復ということを強く意識して制度を考えるべきであったというふうにわれわれは理解しておるわけでございます。
○諫山委員 逮捕、拘留されて裁判を受けた人は名誉が著しく傷つけられるけれども、逮捕、拘留されずに裁判を受けた人は、どんなに複雑、長期の裁判を受けようとも余り名誉を損なわないのだというような思想があるとすれば、きわめて重大です。本件の場合、たとえば破防法違反あるいは青梅事件、被告は大変苦労しているはずです。そうして無罪の判決は受けることができなかったけれども、免訴または公訴棄却の裁判を受けている。この人たちの場合は拘留されていますから刑事補償があったわけですが、もし拘留されていないとすれば名誉回復の方法はないわけですね。検察庁の故意または過失ということがあれば別です。しかしそういう点から見ると、名誉回復というような点を見ても、どうして刑事補償法と違った取り扱いをするのかという点が理解できません。 また、いろいろ調査した結果、無罪に当たる場合にならなかった、この場合には、かえって請求人に不名誉ではないかという問題提起もされているようですが、しかしこれは本人が選んだ道ですから、それでいいと思います。本人があくまで無罪か有罪かの結着をつけてくれという立場で申し立てた以上、本人の意思に反して無罪ではなかったというふうになっても、これは制度上仕方がないと思うのですが、こういう点から考えると、実際上きわめて不合理だという気がしてなりません。その二つの点、いかがでしょう。
○安原政府委員 名誉の問題につきまして、結局それはおよそ被告人となったということで、ある種の名誉の低下があることは事実でございますから、名誉の低下が非拘禁の場合にはないということは申すべきではないし、さようには考えておりませんが、拘束の場合に比べて名誉の失墜の程度は著しく違うのではないかということは言えると思いますので、その範囲において刑事補償の場合の損害、名誉の低下と、それから単に非拘禁の場合の名誉の低下というものは著しく違うのではないか、そういうことでございます。 もう一つはどういうことでございますか。
○諫山委員 いいです。いまのは実際的な不合理ですが、理論的に考えても、国民に対する国家権力の、公訴提起というのは一つの攻撃ですね。この攻撃が間違っておった、本来なら無罪判決を受けるべきであった、ただ何かの理由で免訴または公訴棄却になって無罪の判決はなかったというような場合に、国家権力から攻撃を受けた国民が物質的にも精神的にもいかなる損害も受けるべきではないというのは、これは国民と国家との関係から見て原則だと思うのです。その立場で、憲法は刑事補償の制度を設けろとしているわけですが、今度の改正案は、国家権力が国民に対して間違った攻撃をしかけた、間違った公訴提起をした場合に、国民にいささかも物質的な損害を負わせないというようなたてまえがどうも貫かれていないのです。その点で、原理的、理論的にこれは非常に大きな誤りを含んでいる。とりわけ、刑事補償法でようやく採用された制度がこれによって逆戻りさせられようとしているということを恐れるわけです。 私たちはすでにこの改正案に対する修正提案をしているわけですが、この修正提案こそが理論的にも実際上も正しいということを指摘いたします。 それから、この請求期間をどうしてこんなに短くしたんですか。これは、刑事補償法と同じような請求期間になぜされなかったのか。その点、御説明ください。
○安原政府委員 これも、法制審議会の議論の過程で、刑事補償法と同じように三年にすべきではないかという議論もございましたけれども、刑事補償の請求のように、刑の執行とか未決による拘禁というような重大な侵害ではないから、民法の不法行為の請求期間である三年というほどにする必要もないということで、六カ月ということになったわけでありまして、現在上訴の費用補償につきまして二カ月ということで支障なくやっておりますので、裁判書きの作成期間を考えましても、六カ月で十分御迷惑はかからないんじゃないかというのが私どもの判断でございます。
○諫山委員 やはり、身柄を拘束されている被告人と、身柄を拘束されていない被告人をきわめて機械的に分けているように思うのです。 たとえば、刑事補償法の適用を受けた例として挙げられている破防法事件、日教組事件、これはいずれも身柄拘束の期間はそう長期間ではありません。しかし、裁判は十数年かかっているのですね。これで被告人が受けた経済的な損害というのは、はかり知れないものがあるわけですね。ですから、身柄を拘束された人については云々、そうでない人は特別だというような基本的な考え方が法務省の中にあって、そういう立場で差がつけられているとすれば、きわめて重大だと思いますが、いかがでしょう。
○安原政府委員 長い間被告人の立場に立たされて、無罪になった人の精神的な苦痛というものを、私どもは無視するわけではございません。その意味において、同情を禁じ得ないものがございますが、この補償制度というものは、特に極端な異例の場合を考えないで、平均的な補償をするという制度でございますので、平均的なケースというものを考えて、平均的に物を考えた場合に、拘束された者と非拘束の者の場合においては、精神的苦痛に平均的に差があるということも事実だという前提でございます。
○諫山委員 終わります。
○大竹委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。 —————————————
○大竹委員長 この際、本案に対し、諫山博君から修正案が提出されております。 提出者から修正案について趣旨の説明を求めます。諫山博君。 —————————————
○諫山委員 ただいま議題となっています刑事訴訟法の一部を改正する法律案に対する修正案の提案理由を御説明いたします。 第一は、改正案の第百八十八条の二の修正についてであります。 改正案は、提案理由説明でも明らかにされているように、憲法第四十条をもとにした刑事補償制度を基本にして、この制度だけでは無罪の判決を受けた者の救済方法としては必ずしも十分ではないことから提出されたものであります。その内容は、結果的には不当な公訴の提起を受けたことが確定した場合には、その者が応訴を余儀なくされたことによって生じた財産上の損害を国で補償する制度であります。 憲法第四十条は、無罪の裁判を受けた者に補償の請求権を与えているのでありますが、無罪の判決だけでなく、免訴または公訴棄却の裁判が確定した者でも、本来なら無罪の判決を言い渡さるべきものと認められるものについては、無罪の判決が確定した場合と同様に刑事補償をすることが正義に合致するという立場から、刑事補償法第二十五条の規定が設けられました。 その運用を見ますと、被告人が死亡して公訴棄却になっていたのに、同一事案で起訴されていた共犯者の無罪が確定したため、公訴棄却になっていた死亡者について刑事補償がなされた場合(例、メーデー事件)、起訴された事件が罪にならないことが判明して公訴が取り消され、公訴棄却の裁判が確定して刑事補償がなされた場合(例、日教組事件)などのように、きわめて重要な運用がなされています。 改正案が、現行の検事上訴の費用補償だけでなく、費用補償制度の一層の充実を目指すものであり、同時に、これが刑事補償の拡大につながるものである以上、刑事補償法第二十五条の趣旨と同様に、免訴または公訴棄却の裁判が確定した場合において、もし免訴または公訴棄却の裁判をすべき事由がなかったならば無罪の判決を受けるべきものと認められる十分な事由があるときには費用の補償をする旨の規定を設けることこそ、公平の精神に合致するものと考える次第です。 第二に、第百八十八条の二の修正についてであります。 改正案では、無罪の判決が確定した場合の補償の請求期間を六ヵ月以内としています。しかし、この期間は短過ぎます。刑事補償法ではこの期間を三年以内とし、民法の不法行為による損害賠償請求権の消滅時効と同じ期間を採用しています。この点については、刑事補償法と区別する必要はなく、同じ期間にしようというのが修正の理由であります。 以上が刑事訴訟法の一部を改正する法律案に対する修正案提出理由の趣旨であります。 何とぞ慎重審議の上、速やかに御可決いただきますようお願いします。 以上です。
○大竹委員長 これにて修正案の趣旨説明は終わりました。 —————————————
○大竹委員長 修正案について別段御発言もないようでありますので、これより原案及び修正案を一括して討論に入るのでありますが、討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。 まず、諫山博君提出の修正案について採決いたします。 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○大竹委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。 次いで、原案について採決いたします。 本法律案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○大竹委員長 起立総員。よって、本法律案は原案のとおり可決すべきものと決しました。 お諮りいたします。 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○大竹委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 —————————————
○大竹委員長 内閣提出、民法等の一部を改正する法律案、及び稲葉誠一君外二名提出、最高裁判所裁判官国民審査法の一部を改正する法律案の両案を議題とし、順次趣旨の説明を聴取いたします。稻葉法務大臣。 —————————————
○稻葉国務大臣 民法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。 民事法の分野における男女の平等及び人権の保障につきましては、理念上のみならず、実質的にも、また制度の上においても、確立されるべきものであることは申すまでもありませんが、わが国の婚姻に関する実情や人権に対する国民意識の推移等にかんがみますと、妻の法的地位及び戸籍制度については、なお改善すべき点があります。 そこで、この法律案は、妻の地位の実質的向上を図るため、離婚復氏の制度、婚姻事件に関する裁判管轄及び嫡出子出生の届け出をする者について改善を加えるとともに、国民のプライバシー保護の観点から戸籍公開の制度等を改善するため、民法、人事訴訟手続法及び戸籍法について所要の改正を行おうとするものであります。 この法律案の要点を申し上げますと、第一は、民法の改正であります。現行民法第七百六十七条は、婚姻によって氏を改めた夫または妻は、離婚により当然婚姻前の氏に復するものとしておりますが、このことによりまして復氏する者に社会生活上の不利益をもたらす可能性もありますし、離婚後母とその養育する子との氏が異なることによる不都合を生ずるおそれもあります。 そこで、離婚による復氏の原則を維持しながら、離婚後も引き続き婚姻中の氏を称しようとする者については、離婚後三月以内に戸籍法による届け出をすることにより婚姻中の氏を称することができることといたしております。 第二は、人事訴訟手続法の改正であります。現行人事訴訟手続法第一条は、離婚等の婚姻事件の訴えは、婚姻の際氏を称した者の現在の住所地の裁判所が専属的に管轄することとしておりますが、現在の婚姻の実情を見ますと、夫の氏を称する婚姻がほとんどでありますから、妻が離婚訴訟を遂行するには、多くの場合、夫の住所地に出向かなければならない不便があるのみならず、証拠収集等の点からも必ずしも合理的ではありません。 そこで、当事者の便宜及び証拠収集の容易さ等の観点から、裁判管轄を合理化するため、婚姻事件の訴えは、まず、夫婦の共通の住所地の裁判所、次には、夫婦の最後の共通の住所地の裁判所の管轄区域内に夫または妻が住所を有するときは、その住所地の裁判所、さらに、それ以外の場合には、夫または妻の住所地の裁判所の管轄に専属することといたしますとともに、具体的事案に応じた管轄の合理化を図るため、他の管轄裁判所へ移送する制度を設けることといたしております。 第三は、戸籍法の改正であります。現行戸籍法第十条及び第十二条は、何人でも手数料を納めれば、戸籍及び除籍の閲覧またはこれらの謄抄本の交付を請求することができるものとしておりますが、個人のプライバシーが不当に侵害されることを防止するため、申請件数が少なく、市町村の手数もかかる戸籍及び除籍の閲覧の制度を廃止するとともに、他人の戸籍の謄抄本の請求をするには、一定の場合を除き、その事由を明らかにすべきものとし、請求が不当の目的によることが明らかなときは、市町村長はその請求を拒むことができることとし、他人の除籍の謄抄本の請求は、一定の場合を除き、相続関係を証明する等の必要があるときに限りこれをすることができることといたしております。 また、現行戸籍法第五十二条は、嫡出子の出生届につき父を第一順位の届け出義務者としておりますが、これを改め、母も父と同順位において届け出ができることとするほか、死亡届及び裁判に基づく戸籍の届け出について、可及的速やかに届け出がされるよう、届け出人の範囲を拡大しております。 さらに、戸籍及び除籍の謄抄本の交付について前述のような改正をすることに伴い、不正の方法で戸籍等の謄抄本の交付を受けた者に対し過料を課するとともに、戸籍届け出の遅延に関する過料額を引き上げる等所要の罰則規定を整備しております。 以上が民法等の一部を改正する法律案の趣旨であります。 何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
○大竹委員長 次に稲葉誠一君。
○稲葉(誠)議員 ただいま議題となりました最高裁判所裁判官国民審査法の一部改正案について、提案者を代表して提案理由及びその内容を御説明申し上げます。 御承知のように、憲法第七十九条は最高裁判所の長官及びその他の裁判官について、国民に直接その適否を問う国民審査の制度を規定しております。これは、主権者である国民の監視によって、民主的で公正な裁判を保障する重要な制度であります。つまり憲法が内閣に最高裁判所長官の指名権及びその他の裁判官の任命権を認めながら、直接国民の審査に服さねばならぬとしたことは、最高裁判所が憲法と人権の守り手として非常に重要な役割りを担っていることから見ても当然のことであります。 ところが、公正中立であるべき最高裁判所が時の政府の党利党略的選任による裁判官で占められ、政治権力に追従、迎合する判決が近年目立っており、司法の反動化はいまや黙過できない状況に至っています。このような司法の危機を打開するためにも、不合理な投票方法をとっている現行の国民審査法を改め、主権者である国民の権利行使の一つであるこの制度を充実させることは焦眉の急であります。すでに、第七十一国会の本委員会におきまして「政府は、最高裁判所裁判官国民審査の方法等について検討すべきである。」との全会一致の附帯決議を採決しているのも、この制度の改善が国民の大きな要求となっているからであります。 以下、本改正案の内容について一括御説明申し上げます。 第一は、現行国民審査法は罷免を可とする裁判官に×印を記載することを認めているだけで、その他の白票はそれがたとえ棄権の意思を込めたものでもすべて罷免を可としない票とみなされるというきわめて不合理、非民主的な方法であります。そこで今回の改正案は、国民の意思を正しく反映させるために、罷免を可としない裁判官には〇印、罷免を可とする裁判官は×印を記入することとし、無記入投票は棄権とみなすことにより、棄権の自由を保障し得るものとしております。 第二は、点字投票について、現行では視力障害者の審査権が行使しにくい面があり、これを是正するため点字で印刷された用紙を準備し、通常の投票に準じて決められた記号を記入するだけで意思を表示し得るものとしております。 第三は投票方法の変更に伴って、罷免が成立する有効投票率を現行百分の一から、百分の十に引き上げることにより、棄権が大量に出た場合、小数の罷免票で罷免されることの弊害を除いております。 以上が最高裁判所裁判官国民審査法の一部改正案の提案理由と主なる内容であります。 何とぞ慎重な御審議の上、速やかに可決あらんことをお願いいたします。
○大竹委員長 これにて両案の趣旨説明は終わりました。 両案の質疑は後日に譲ります。 次回は、明十二日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午前十一時三十二分散会 ————◇—————