法務委員会 第5号
- 発言数
- 105 件
- 登壇者
- 12 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1975/12/16
会議録
○委員長(多田省吾君) ただいまから法務委員会を開会いたします。 まず、委員の異動について御報告いたします。 佐多宗二君、前田佳都男君が委員を辞任され、その補欠として迫水久常君、遠藤要君が選任されました。 —————————————
○委員長(多田省吾君) 検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。 質疑のある方は順次御発言願います。
○佐々木静子君 それでは、まず矯正局に関する関係の分についてお伺いしたいと思います。 実は、局長さんがきのうおかわりになったということで、早々のことなので、いささかお気の毒に思うわけでございますけれども、そこのところはできるだけお調べいただいて御答弁いただきたいと思うわけでございます。 実は、これはまず大臣に伺いたいわけでございますが、刑務所における人権侵害の問題、これは以前よりいろんな問題がございまして、問題が後を絶たないわけでございますけれども、この刑務官の受刑者に対する人権侵害ということを防止する意味で、大臣はどういうことを日ごろからお考えになり、どういう行政上の指導をなさっておられるのか、まずお伺いしたいと思います。
○国務大臣(稻葉修君) 人権の尊重ば、憲法上わが法務省の職務の重要な部分を占めるものでありますから、特に刑務所内における刑務官の人権侵害等のことは絶無を期したい、その旨人権擁護局長及び矯正局長等を通じて、全国の刑務所長等にも厳重な通達を出していく、絶無を期してまいりたい。だんだんそういう方面の人権侵害が年次的に少なくはなりつつありますけれども、まだその後を絶たないのははなはだ遺憾に存じます。この機会に遺憾の意を表しておきます。
○佐々木静子君 先日、日弁連の人権大会で大阪刑務所における刑務官の人権侵害事件が問題として取り上げられた。そのことを当局は御存じでございますか。
○国務大臣(稻葉修君) 前の矯正局長から聞いておりますから知っております。
○佐々木静子君 いま大臣の方から刑務官における人権侵害などというものは絶無を期すために最大限努力しているというお話でございましたが、この大阪刑務所における人権侵害問題に対して、法務省とするとどのような調査をされ、またどのような結果をつかんでおられるのか、いままでの調査の結果などについてお伺いしたいと思うわけです。
○国務大臣(稻葉修君) 調査の結果につきましては、新矯正局長から御答弁を申し上げます。
○政府委員(石原一彦君) 先ほど佐々木委員から御質問中にお話ございましたが、昨日付で矯正局長を命ぜられました。法務委員会にはたびたびお世話になり、また御指導、御鞭撻をいただくことと思いますが、よろしくお願い申し上げます。 ただいまの御質問の点につきまして、長島前局長から、私矯正局長の内命を受けた当時に、事務引き継ぎの段階において、概略ではございまするが伺っております。それによりますと、この点につきましては大阪地方における新聞で報道されたということでございまして、矯正局におきましては直ちに大阪の矯正管区に命じまして事実の調査をさせております。しかしながら、この新聞記事からもわかりますように、具体的な事実関係がはっきりいたしておりませんので、仮に暴行があったとするならば、一体いつどこでだれがだれによってなされたかというような点を調べなければなりませんので、目下鋭意調査中でございます。先ほど大臣から御答弁ありましたように、人権侵害があってはこれはならないことでございまして、もとより矯正施設において規律を正しくするという点は、われわれの職責上これまたしなければならないことでございますが、さりとて人権侵害があってはなりませんので、この点については局長といたしましても今後十分注意していきたいと思っております。この事実につきましては、いましばらく調査をいたしました上で詳細御報告申し上げることができると存じますので、時をかしていただきたいと存じます。
○佐々木静子君 きのう御着任になったばかりでございますから、いますぐにということは私もちょっと時期的に非常に無理なのではないかというふうに思うわけでございますけれども、実はいまお話のございました新聞紙に報道されているのが十一月の十五日でございまして、すでに一カ月たっているわけでございます。それに対して大阪の刑務所長の話として、 〔委員長退席、理事白木義一郎君着席〕 新聞紙上によりましてもこの看守が服役者に暴行を加えたことなど全く聞いておらなくて初耳だ、あってはならないことなので、看守たちに厳しく禁じてあるということでした。「不幸にして事実だとすれば、何らかの形で部内で調査し、疑問を解明しなければならない。」ということを、すでに一月前に刑務所長が新聞紙上でも報道されるような話をしていられるわけでして、本当はこういうことがなくっても、刑務所長は常にそのことを把握しておらなければならないわけですけれども、特に新聞紙上においても報ぜられるように、言明をしておられるにもかかわらず、まだ調査中というのであっては、やはり私どもとするとこれは刑務所の中で起こっていることだけに、もっとこういうことは早急に調査していただかなければならないのじゃないかというふうに思うわけです。そして、実はこれはほかの場所における事柄であれば、いつだれがどこで何をしたというようなことが具体的にはっきりとするわけですけれども、また事実、いますでにはっきりしておるわけですけれども、これが受刑中の服役者から出ていることだけに、本人が大阪刑務所の中にいるために、そのことをいま明らかに公表しがたい状態にあるわけで、これは刑務所の側においてもっと早急に具体的事実を調べていただかないと困ると思うわけです。これは大阪弁護士会で御承知のとおりアンケートをとり、そうして服役者の人たちからもいろいろと事情を聴取して、そのアンケートの回答をもとにしてまた事情を聴取し、また担当している弁護士が面会に行った際に刑務所の中の人権侵害問題なども聞いてくるということで、これはいま大阪弁護士会でその事実を集約しているわけですけれども、大体この暴行を加えているという人間の名前もすでに何名か、多くの人間が言っているところの大体同じ人間に集中しておる。そういう事柄から見ると、これは刑務当局が本気になってお調べになれば、あるいはすでにもうわかっておられるのだと思いますけれども、やはりこの事柄はもうすでにはっきりしているのではないか。そういう事柄についてできるだけ積極的に、やはり刑務所内の問題として処断していただかないと、これは重大な人権侵害問題、このまま放置することができない状態に立ち至るということがはっきりしていると思うわけです。すでに、大阪弁護士会では調査の結果、十二月末ぐらいまでにこれはもう具体的な名前もわかってきているし、しかもその人権侵害事実というものもかなり明確につかめておるので告発に踏み切りたいということを、これは弁護士会の方からもはっきりと出しているわけでございますね。そういうふうなことでございますので、そう一人の受刑者の言ったことを真正面から真正直に取り上げて、 〔理事白木義一郎君退席、委員長着席〕 その問題を声を大きくして言っているというのじゃなくって、この人権侵害の事実はこのアンケート調査によると、回答をよこした者の一〇〇%が人権侵害事実があるという回答をよこしているわけなんです。こういうふうな事実をやはり御承知であれば、ひとつ、いま調査していらっしゃるという面容序でございますけれども、もっと早急に調査していただかないといけないのではないか。その事柄についてどのようにお考えになるか、これはまず大臣に伺いたいのですが、アンケートに対して回答をよこした人のうち一〇〇%が、刑務所内で看守に暴行を受けているという回答をよこしているわけなんです。一人の例外もなしに回答をよこした者は全員そのような事実があると言っておるわけなんですが、そのことを大臣は御存じなのか。あるいは御存じだとすれば、これは法務省としたらどのようにしていかないといけないとお考えになるか、具体的にお述べいただきたいと思います。
○国務大臣(稻葉修君) アンケートに対する回答の一〇〇%が、刑務所内で刑務官による囚人に対する——被収容者に対する暴力か行われているという回答がなされているということは、いま初めて伺いました。矯正局長からはそういう説明は聞いておりませんで、本当にそういう事実があるとすれば事はきわめて重大でございますから、私もどうもあなたの質問を聞いて、一カ月にもなるのに、アンケートの回答がもし一〇〇%暴力がふるわれているということがあるということなら、少し調査がなまぬるいんじゃないかという気がいたします。なまぬるくならないように、よく新矯正局長を通じ早急に事実を確かめます。確かめたいと思います。
○佐々木静子君 大臣から、これは重大な問題だから早急に事実を確かめたいという御答弁をいただいて、ぜひそのようにお願いしたいと思います。と言いますのは、入っている人間にとってはこれは日一日大変な問題でございますし、一日も早くこういう状態をなくするためにも、御当局とするとこの問題について進んで調査をしていただきたい。そしてこの暴行の結果、傷害を受けたかという事柄に対して、受 ないという回答をしてきた者はゼロでございました。そして受けたという回答、これは受刑者ですのではっきりした返事がしにくかった点もあろうと思うのですけれども、受けたと回答してきたのが十七人、受けないと回答してきた者はゼロでございました。そして、受けたうちで最もひどい暴行を受けたというのは一カ月に及ぶ傷害を受けたということを言っておるわけでございます。これは、いま申し上げたように何人もの者が言っているわけでございますので、ぜひともこの点を詳しく御調査いただきたい。そして、それではこの受刑中に告訴の手続きを、暴行あるいは傷害について告訴しようとしたことがあるかという問いに対して、あると答えた者が四五%ぐらいになっているわけなんです。ないと答えた者が五五%。そして、告訴の手続は許されましたかという問いに対して、許されたと答えた者はゼロで、全員許されないと答えているわけでございまして、告訴をしたい、あるいは告発をしたいということを看守に申し出たことによって、さらに懲罰を二十日間受けたという者もあるわけでございます。でございますので、私どもかなりその事実は、具体的に何という人であるか、これは一人じゃなしに数名いるわけですけれども、その一人は管理職についておられる方でございますけれども、そしてどのようなことがあったかということを把握してはいるわけですけれども、何しろ先ほど来申し上げたように、その情報を知っている者が刑務所の中で服役している関係から、いまここで直ちに名前を挙げるわけにいかないという点を非常に残念に思うわけですけれども、これは御当局の方で調べればすぐわかることだと思います。告訴をしたいと、そして告訴の手続を申し出たけれども、それが許されずに逆に懲罰に付せられたというようなことでございますから、その被告訴者がだれであるかというようなことは、調べるまでもなく刑務所の中でわかっているはずでございますので、早急に調査を進められて納得のいく回答を御報告をしていただきたいと思うわけです。 それから、この調査を弁護士会の人権擁護委員の人たちがやるについて出所者に面接を求める、朝、受刑者が刑務所から出所してくるのを待って話を聞くという調査方法がとられていたようでございますけれども、そのことは刑務所の方は御存じであったのかどうか、そうした事柄について刑務所の方はそれに協力しておったのか、協力をしないまでも、なすがままに任せておったのか、あるいはその事柄について非常な妨害行為を加えてきたのか、それは現地からどのような話を聞いておられますか。
○政府委員(石原一彦君) 私も詳しくはまだ話は聞いておりませんが、さような学生風の方が刑務所の外におられて、出所者と面接等をしているという事実は知っていたようでございます。それ以上は出ないのでございまして、いわんやそれを妨害するというようなことまではなかったというぐあいにわれわれは聞いております。
○佐々木静子君 これは現実にこの調査に当たった弁護士会の人権擁護委員の弁護士の人たちの話によりますと、これは何も受刑者が出てくるのを待って事情を聞くという方法が好ましい状態ではないけれども、実は私もここにおられる橋本委員などとともに、八海事件の真相を追及するために広島刑務所の前に何日も泊まり込んで、出てくる人から事情を聞いたという経験もございますけれども、まあ中の様子を聞くにはそれしかいまのところ方法がないから、この大阪弁護士会の人権擁護委員の人たちもその方法を選んだと思うわけなんでございますけれども、刑務所の方でそのことを感知するや、今度は出所者を刑務所の前で刑務所からじかに釈放しないで、バスでいろんな場所へ連れて行って、そしてわからないところで釈放するという方法を途中からずっととってきた。そういう事柄も弁護士会の方に報告が出されているわけなんでございますね。私は、このバスで別のところへ運ぶということがいいとか悪いとかという事柄じゃなしに、そのようにしてまで刑務所内の状況を真相を人に知らせまいとする刑務当局の姿勢というものが、非常におかしいんじゃないか。全く何を聞かれても困らないという状態であれば、どこの刑務所でもやっているように堂々と普通の時間に普通の場所で刑務所から釈放すればいいのであって、何もバスに乗せてあちこち逃げ回ったあげく、気のつかない場所で釈放するというふうな方法をとらないでもいいんじゃないか。そういう点で、どうもやはり刑務当局は後ろめたいところが当初からわかっていたのではないか。それゆえに真相を知られるということを大変に心配しておられたのではないかというふうに思うわけですね。そこら辺の事実の報告はどうなっておりますか。
○政府委員(石原一彦君) ただいま御指摘の点は承っておりません。しかしながら、私考えますのに、刑務所からの釈放といいますのは、倉庫から品物を蔵出しするというようなものではないのでございまして、矯正教育がある程度功を奏したということで、人間として社会復帰という面から出すのではないかと思います。その出ていく方にとりましては、まあ出てもすぐに家族にも会いたくないという方があるかもしれませんし、またしばらく身をひそめて世間で復帰の生活をしたいということもあるのではないかと思います。決して刑務所の中のことが外に出るのは困るというような、言うなればさもしい根性からやっているとだけは私は考えません。また、矯正教育といたしましては、とにかく出るその人の社会復帰ということ、改善、更生ということを考えまして、その者のためによかれという方法もとるのではないかと思います。もし御指摘のように刑務所内に悪いことがありまして、それを糊塗するためにやったということであれば、これは確かに批判されてしかるべきことであろうかと思いますが、必ずしもそういうことではないという点もあろうかと考えられますので、その点の事情も十分御了察願いたいと存じます。
○佐々木静子君 いまの御答弁のようなことが真相であれば、私も非常に結構だと思います。ですから、そのような誤解を受けないようにも、ひとつ警務当局の方で早く真相を御調査なすって、ともかく一〇〇%の人が暴行を受けたと言っている回答に対して、納得のいく説明をしていただくようにお願いしたいと思うわけです。 それから、いまなお、受刑者に対する人権侵害事実として、一番どういうことを除いてほしいかということに対しては、一番多数出てくるのは暴行を絶対になくしてほしいというのが第一の申し立て、受刑者たちからのアンケートによると。その次が生理現象を自由に許してほしい。これは作業中は許してもらえなくて、午前と午後と二回の休憩時間しか許してもらえないと。しかし、そのときの健康状態あるいはその人の体質によって、それだけではどうにもならないという場合がいろいろある。そういうことに対する苦情というものが大変にたくさん出ているようでございます。いまおっしゃったように、本人の改善ということが最も主な矯正の目的であろうと思いますし、そういうことだとすると、不当な人権侵害ということは害あって益ないのではないか。そこら辺のところも今後の行刑の上で十分に御配慮いただきたいと思うわけです。 それからもう一つ、やはり食事や用便も戒具つきで、戒具を解いてもらえずに何日もおる人間もいると。これもアンケートの中でほとんどの者が、自分がそのような目に遭ったというよりも、そういう事実を自分は知っている、あるいはそういう事実を見たという回答が、これはほとんどすべての者から寄せられているわけでございますね。これは戦前によく何日間も戒具をつけたままほったらかしにされて、犬よりひどい状態で食事をしないといけないとか、あるいは全くたれ流しで用便を済まさなければならないという話は、戦前には物の本で聞いたりしておるわけでございますが、現実に現在の憲法下、いま大阪刑務所の中でそういうことが行われておる。そして受刑者全員がそのような事実があると言っているという事柄に対しては、これはよほど考えていただかないと困るわけですね。この事柄について当の大阪刑務所長が全く初耳だということを言っておる。ということにすると、これは刑務所長の目の届かないところで相当われわれが考え及ばない人権じゅうりんの事実が行われているというふうに思わざるを得ない。また、現にそのような加害行為を行った人間の名前もはっきりしているわけなんでございますから、この際、御当局とすると徹底的にこの件は調査していただかないといけないと思うわけです。いま局長御自身が矯正の目的をおっしゃいましたけれども、その矯正の目的を実現していくためにも、このような不当な人権侵害に対しては徹底的な調査を行っていただかないといけないわけでございますので、その点大臣、局長に今後この問題についてどのように対処していくか、具体的に御答弁をいただきたいと思うわけです。
○国務大臣(稻葉修君) 驚き入ったる事実の御指摘でございますので、まことに事柄はゆゆしき問題であると感じます。徹底的に調査を命じます。
○政府委員(石原一彦君) 先ほど来御指摘の点が事実といたしますれば、これは自戒しかつ改善をしなければならないところでございまして、十分に注意したいと思います。とにもかくにも、昨日辞令をちょうだいいたしまして矯正局長になりました途端に、きょうきわめて厳しい御指摘がございまして、肝に銘ぜざるを得ないのでございますが、私も二万一千の職員の長といたしまして、看守すべてが悪いのだというばかりには申し上げるわけにはいかないのであります。非常につらい苦労の中に、勤務条件も悪いにもかかわらず、非常に処遇に困難な者を、少しでもこの人の足りない時代に生かそうとして努力している矯正職員もあるのでありまして、その善意も私は信じたいと思います。しかしながら、だからといいまして矯正の悪い点をあくまでも隠そうという点はないのでございまして、私、先ほど来佐々木委員のお話を承ってまず感じますことは、やはり職員の自覚を高めることが第一ではないかと存じます。現在、矯正の看守は待遇その他非常に苦労な点もございまして、気の毒だと私は思っております。そのために、ともすれば仕事の使命ということを忘れがちでございますが、やはり苦労ではあるけれども大事な仕事であるという自覚がまず大事であろうと思いまして、その点を高めたいと思います。 その次に、処遇技術の向上でございまして、こうした人と人とを相手にする仕事につきましては、とかく何か職人根性といいますか、技術的といいますか、そういう点が残りがちなものでございます。しかしながら、現在世界的にも矯正技術というものは十分に向上しなければならないところでございまして、それは本省で十分研究しなければいけないところだと思います。そういう点にこれから注意いたしまして、その結果を下部職員に徹底させる、教育研修を通じてその結果を教育させるというふうにいたしたいと思います。特に若手職員の指導監督については十分注意をしたいと思います。矯正の話も看守等の話を聞いてみますと、年をとってまいりますとそれぞれ人の対処の仕方もわかるわけでございますが、どうしても若いと感情に走るということもあろうかと思います。これは人である以上やむを得ないのでございますが、そこを科学的な処遇方法によりまして裏打ちされた、りっぱな人格を持った看守を育てていく、特に若い人を育てていくというぐあいに努力したいと思います。 一方、監督者につきましては、やはり巡回をし、看守との意思の疎通を図りつつ苦労話も聞いてやる。何かあったときにすぐに手を加えるということは、これは野蛮人のやることでございまして、矯正教育という名の示すように、やはり矯正施設において教育をしていくことが大事なのでございまして、そのために監督者の巡回その他適宜な処置をとらせたいと、かように考えております。それからなお、仮に暴行その他刑法犯になるような場合には、検察庁とも十分連絡をとりまして可及的速やかにそうした禍根を絶つというように努力したいと思っております。 いずれにいたしましても、非常に厳しいお話でございましたが、私といたしましてもできる限りの努力をいたすつもりでございますので、今後の御指導のほど及び御鞭撻のほどをお願い申し上げる次第でございます。
○佐々木静子君 大変に力強い御答弁なのでございますが、大臣も非常にこの問題は大変なことだと、積極的に取り組んでやるとおっしゃっておりますし、また新局長も初仕事としてひとつ大いにこの問題の解明に努力していただきたいと思うわけです。特に、大阪弁護士会で、すでにこれはできれば年内に告発に踏み切りたい、そして検察当局が法務職員のかばい合いというような卑劣な態度で出るならば、これは職権乱用罪によって準起訴手続に持っていってもいいというところまで、この問題はいま弁護士会内部では来ているような問題でございますが、これは人権擁護の府としての法務省の立場を鮮明にするためにも、ひとつこの問題についての御調査を早急にされて、そして明確な私どもの納得する調査結果というものをお知らせいただきたいと思うわけです。——これは局長さん、どのくらいの間に調査ができますか。大体何日ぐらいの間に調査が出て回答できるか、そのめどを御返答いただきたい。
○政府委員(石原一彦君) 少し長いとおしかりを受けるかもしれませんが、私もあらゆる矯正事務全般につきまして勉強をし、検討しなければならぬ時期でございまして、たまたま年末にもかかりますので、恐縮でございますが来年の一月末までというぐあいにひとつお許しを願いたいと存じます。
○佐々木静子君 ちょっと一月末というのは遅過ぎるんじゃないですか。現に入っている人間にすれば大変なことなんですから、やはり年内なら年内にひとつ報告をしていただきたい。中間報告でも結構です、ひとつそのようにお願いしたいと思います。いかがですか。
○政府委員(石原一彦君) できるだけ御趣旨に沿うようにいたしますが、事は刑事事件に関係することでございまして、看守の士気にも影響することであろうと私は思います。したがって、その事実の調査は確実を期したいという意味で来年一月末と申し上げたのでございますが、中間報告につきましては途中ある点がはっきりいたしましたときに、佐々木委員のところにでも御報告申し上げるというぐあいにしたいと存じます。
○佐々木静子君 それでは、いま大臣がおっしゃったように、早急に前向きな姿勢で取り組んでいただいてこの問題は解決していただくということを特にお願いして、矯正局に対する質問はこれで終わりたいと思います。 次は、民事局あるいは人権擁護局、そして家庭裁判所関係についてお尋ねいたします。 先日来、民法の一部改正につきまして婦人の地位の向上という意味で、男女同権の実現という立場から大臣も非常に積極的にお取り組みいただきまして、これは大変に好評を一般国民の間からも得ているわけでございます。そういう意味において、大変に私どもも心強く思っているわけでございますが、実はこの国際婦人年、これは男の方から言わせると、中には、やれやれもうあと半月で終わりだと喜んでいらっしゃる方も大分いらっしゃるというふうに承るわけでございますけれども、(「そんなことない」と呼ぶ者あり、笑声)ともかく、ここにいらっしゃる方はそういうことはないと皆さんおっしゃっていらっしゃる。私どもは世界行動計画というもののスタートの年として、これから先本当に男女同権を実現するために、いろいろと行政の面で取り組んでいただかなければならない問題がある中で、法務省の方が積極的にこの民法問題あるいはそれに関連する問題について取り組んでいただいたということで大変に心強く思っているわけです。特に国際婦人年の総括ということがいろんなマスコミにも取り上げられている昨今でございますけれども、これは一流と思われる総合雑誌の中にも、ことしの国際婦人年で日本の婦人は何をやったか、大してできなかったけれども、三つだけやったことがある。一つはエベレストに登ったことだ。一つは太平洋を一人で横断したことだ。その三として、民法を改正するということを法務大臣がおっしゃるところまで——これは法務省かおっしゃったということになるかもしれませんけれども、婦人団体の人権意識というものが盛り上がってきたのだと、その三つを取り上げて評価しているというふうな状態でもございますので、私も非常に法務省が積極的に取り組んでいただいたということはありがたく思っているわけでございますし、また、当然そうあらねばならないと思っているわけでございますが、一部で、ああは言ってもなかなかそうは法務省の方はできないのじゃないかというふうなうわさも出ているわけなんです。大臣が大変に積極的に前向きに取り組んでいただいているわけでございますけれども、前の法務委員会でもお約束していただきましたことが、鋭意その予定どおり目的に向かって進んでいるか、そしてどのような経過であるか、今後間違いなく大臣が御表明なすった御所信のように事は実現するのだということであろうと思いますので、その経過並びに今後の御所信についてちょっとお話しいただきたいと思うわけでございます。
○政府委員(香川保一君) 先般、当委員会におきまして法務大臣から民法の七百六十七条の離婚の場合の復氏の点と、人事訴訟手続法の離婚の専属裁判籍の点の改正が、この次の通常国会に提案するようにお話がございました。しかも、二月初旬を目途に提案したいと、かようなお話がございまして、これを受けまして、御承知のとおり、事柄が民法、人事訴訟法の改正でございますので、法制審議会の民法部会身分法小委員会におきまして、この二つの問題を他の審議日程から例外的にと申しますか、取り立てて早急に御審議願うということの御了承を得まして、十二月にすでに第一回の委員会が開催され御議論願いました。二月の初旬を目途にということでございますので、御用始め早々の一月六日に小委員会を開いて御審議願う段取りにいたしておりまして、私どもといたしましては審議会にも十分お願いして、大臣の御所信のとおり来年の二月初旬を目途にできるだけの努力をして御提案申し上げたいと、かように考えておるわけでございます。
○佐々木静子君 予定どおり着々と進めていただいているということを伺いまして、大変に心強く思っているわけでございます。これはいろいろと論議のあるところでございまして、また一部新聞などにも、これは一部の婦人運動家の中から、もうすでにその部分だけを改正するというのは妥協の策であって、かえって体制に奉仕することで望ましくないのではないかというふうな意見もあるわけでございますけれども、実はこれは東京における国際婦人年総括会議においても、このような意見は婦人の現在置かれている現状というものについての認識が希薄であるためこういう意見が出されるのであって、いまやれるところからやるというのが付より大事なことではないか。——これは私のおります大阪の国際婦人年大阪連絡会においても、直ちにそのことについての検討会を開いて、これは一部の評論家がそのようなことを言っても、いま置かれている婦人の地位の立場というものを考えた場合には、ともかくできることをやるというのが一番大事なことなのだということで、これはいろんな婦人団体で満場一致で、ともかくやれることをやるのだと、それが理想ではないけれども、とりあえずやれることをやると、また法務省がやろうと言えばともかく法務省がやって、やりやすいように一緒にやっていこうという事柄が確認されているわけでございますので、この一部の評論のための評論というようなことに、これ私の方が釈迦に説法のような言い方になるかもしれませんけれども、惑わされることなく、どうぞ多くの婦人の総意でございますので、大臣としても、あるいは民事当局にしても、思い切っていままでの方針を実現に移されるように御努力いただきたいと、特にお願い申し上げたいと思います。そして、これは私の知る限りにおいては、この一部改正、たとえば民法七百六十七条の問題よりも七百五十条の方が婦人の解放にとってははるかに重大なのだという意見が無論あることはあるわけですけれども、七百五十条云々などと言っておってもなかなか実現するものじゃないから、これは七百六十七条の改正で大いに結構なのではないか、ともかくそれを改正していただくことが急務なのではないかということで、これは大変にどこへ行っても好評を受けておるわけでございます。重ねて申しますけれども、ともかく国際婦人年に余り多くのことができなかったという批評の中に、このことだけでもできれば大変にありがたいという世論でございますので、ぜひともそのことをお願いしたいと、重ねて申し上げておきたいと思います。そして、東京における国際婦人年の総括集会などに、私も実は講師の一人として出席したわけなんですけれども、この七百六十七条をさかのぼって適用してくれないかという意見が圧倒的に多いわけなんですね。これは二月に提案されて、そして衆参両院を通って、それから後法律が公布されてから一定期間、特にこれは戸籍法上の手続でもあるので一定の事務的な手続も要するし、それから後施行期日というものが決まっていくのではないか。だから、このさかのぼるというのは大変に困難だと思うから、これは不可能ではないかというふうに説明をしているんですが、なかなかほかの一般の方々はそういうふうなことでは困るという意見が強いわけですが、これはさかのぼるというわけには無論いかないでしょうね。どうなんですか、そのあたり。そういう御要望が大変に多いものですから。
○政府委員(香川保一君) 佐々木委員御承知のとおり、実体法の改正でございますので、遡及適用ということは法律的には無理かと存じます。また、技術的に申しましても、離婚の際の婚姻中の氏を称するという手続の面におきまして、現在身分法の小委員会で考えておられる一つの案といたしまして、恐らくそれが妥当かと思いますが、協議離婚の場合に離婚届を出す際にあわせてその旨の意思表示をするというふうな手法になろうかと思うのであります。そういうふうにいたしますれば、とてもこれは手続的に過去にさかのぼるということは無理だと思うのであります。ただ、御承知のとおり、戸籍法の百七条の規定におきまして、やむを得ない場合の氏の変更の手続規定があるわけでございます。仮に民法の七百六十七条が離婚の際における復氏の原則にかえて、婚姻中の氏も称することができるというふうな実体法の改正がなされますと、その改正の趣旨は、まさに離婚した妻なら妻が婚姻中の氏で社会的に活動しておった場合の、復氏することによる不都合を是正するということでございますので、さような趣旨を受けて百七条の氏の変更の裁判所の許可の関係が、やはり実体法の改正の趣旨を踏まえて弾力的に運用されるということが十分期待できるのではないか。さように相なりますれば、いわば改正前に離婚した場合の、したがって復氏しておられる配偶者の婚姻中の氏への変更ということが現在よりは幅広くと申しますか、弾力的に運用されることが十分期待できる。それによって自主的に遡及的適用とまでは申しませんけれども、同様の効果が期待できるのではないか、かように考えておるわけでございます。
○佐々木静子君 これは私も法律の常識として大体そのように思うものですから、そういう議論のあるときには、ともかくこのように法律が変われば家庭裁判所での氏の変更というものがきわめて容易になるのではないか、そのように裁判所当局とも手続その他でもっと簡略化することができれば、そのような簡略化の方法もそのときに検討することができるんじゃないかということで、私もそのように考えているわけなんですけれども、これは私の方で勝手にそんなことを考えてみたところで、最高裁の方がどのような措置をとられるか、この法律が提案される、あるいは可決された時点において最高裁の家庭局とすると、このいま申し上げた、それから後の離婚の場合はこの法律の改正によって救済できるわけですけれども、それより以前の問題についてどのような措置をとっていこうとお思いになっておられるのか、お述べいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(裾分一立君) ただいまの佐々木委員の御質問でございますが、先ほど法務省の民事局長からお答えがありましたように、七百六十七条が改正になりますれば、当然それから後の家庭裁判所の氏の変更の事件のうちで、離婚して後に復氏した女性が、その離婚が改正法の施行前でありましても、家庭裁判所に対して氏の変更ということをもって事件を申し立てまして、氏の変更を望んだということになりますれば、当然家庭裁判所としては新しい状態、すなわち七百六十七条が改正になったんだという事情を踏まえて審判がなされるものと思われます。何分にも裁判のことでございますので、私どもはそれをどうしろこうしろということを第一線の家庭裁判所に言うわけにはまいりませんけれども、したがいまして私の申し上げるのは予想に過ぎませんが、そういうことになろうかと思うわけでございます。 それから、もう一つ御質問のございましたのは、それを手続的にどういうふうに家庭裁判所として進めていくのかという趣旨でございましたが、この点は私どもは恐らく現在のその戸籍法百七条の氏の変更の事件では、氏の変更ということが非常にむずかしいように条文が書いてございますので、したがいまして、そのうちで離婚後の婚姻中の氏への変更ということはかなり抑制されている面があるだろうと思います。ところが、七百六十七条が改正になりますと、自分もそういうことならば変更してもらいたいという申し立てが新たに出てくるのではなかろうか。したがいまして、百七条の氏の変更のうちで、離婚後の婚姻中の氏への変更を申し立てる事件の割合というものがふえてくるであろう。それに対して何とか対処しなければならないということを私は考えております。それで問題は、そういう場合に氏の変更を申し立てたり、離婚女性が家庭裁判所にせっかく申し立てたのにその調査審判のために何カ月もかかるということでは非常にお気の毒でございますので、なるべく速やかにそういう事件は家庭裁判所として対応するということを考えなければならないだろうと、こういうふうに思っておるわけでございます。
○佐々木静子君 これはぜひ対応する方法を、具体的に手続の簡略化と——これは裁判の内容までには無理だという御答弁もごもっともだと思いますが、少なくとも手続面における簡略化と、そしてスピーディーに事が運べるようにすべきだ。これは現に裁判所にもたくさん問い合わせが来ていることと思いますし、法務省にも問い合わせが来ていると思いますが、私どものところなどにも、実際のところもう離婚するんだけれども、法律はいつ変わるのだ、それの変わるのを待って離婚届を出したいというような人が実にたくさんあるわけでございまして、これは立法の問題ですが、それを待ってといっても、これは政府が出すことであり国会で決めることだから、そうは何月何日にというわけにはいかないから、ともかく話が決まったのであれば離婚をして、それから後、氏の変更をしてはどうかというような話になることが非常に多いわけなんですけれども、おっしゃるとおり大変に数がふえると思います、氏の変更についての手続が。ただ、それがいままでのように何カ月も延々とかかるとかいうようなことであれば、これはとてもいまの国民の要求していることに、家裁がそれの要望に応じている、要求を満たしているという関係に立たずに、むしろ家裁に対する不信とか不満ということをいたずらに助長する結果になるんじゃないか。そのことだけじゃなしに、それによって女の方たちは困らなければならないんじゃないかというふうに思いますので、これはもう少し手続をスピーディーにやる方法を具体的に考えていただくわけにいかないでしょうか。そして、いま裁判の内容については、これは裁判官が独立しているんですから、無論一々最高裁が指示をされるというようなことはもちろん許されないと思いますが、その手続を簡略化して、しかもそれを最高裁の通達とかいうかっこうで、その手続の簡略化を手続面において全国に普及徹底するようにひとつやってみようというようなことはできないんでございましょうか、いかがでございましょうか。
○最高裁判所長官代理者(裾分一立君) ただいま佐々木委員から手続の簡略化のお話が出たと思います。ということでございますが、家事裁判——これは家事審判の一種でございますが、家事審判自体が訴訟とは違いまして非常に手続を簡略化してあるわけでございますが、これ以上に簡略化するということが果たして可能かどうかは検討してみなければわかりませんが、その簡略化ということを御要望になる御趣旨のうちには、主として手続を早くやってもらうようにというような御趣旨も含まれておるやに伺いましたが、この早くということは私どももかねてからもう常にそれを念願しておるわけでございまして、離婚後の婚姻中の氏への変更許可申し立て事件というものが、現在どのくらいの日数を要して終結されるのかということは、実はそれだけを統計をとって資料を持っておるというわけでございませんので、一体どのくらいかかるものやらわかりませんけれども、審判事件一般に申しますると、大体一ヵ月余りぐらいで事件が終結しておるように統計ではなっております。御趣旨のとおり、氏の変更許可申し立て事件は、新しい民法の七百六十七条の変更後におきましては、それをもっと早くやるように持っていきたいと思いますが、恐らく早くといえば、形としては即決といいますか、即日処理するというふうな体制ができるかどうか、これは同じ変更申し立てでありましても、一応は申し立て事件の当事者、利害関係人というものを家庭裁判所として調査しないで審判するわけにまいりませんですから、その調査になるべく日数をかけないで早くするように、そういう趣旨を広く第一線の家庭裁判所の裁判官、調査官に念達いたしまして、御趣旨に沿うように誠意を持って努力したい、こういうふうに考えております。
○佐々木静子君 ぜひそのようにお願いしたいと思います。これ、裁判とはいえ、裁判には違いないですが、いわば行政的な処分にきわめて近い問題であろうと思いますので、その点はやはり国民の要望に沿うようにぜひともお願いしたいと思います。 これは実は私も意外に思ったんですが、今度の国際婦人年の会議で、私も全国あちこちの婦人団体の集まりに参加し、呼んでいただいたわけでございますけれども、家裁に対する不信感というものが予想以上に大きいわけでございますね。大変に家庭裁判所に対する不信感が多くて、これでは婦人の救済はできないと。私は、これは裁判所の肩を持つわけじゃないけれども、法務省よりもむしろ裁判所の方が婦人のために奉仕している官庁ではないかというふうに漠然と考えておったんですけれども、集まってきている人たちの中では、家庭裁判所が本当に困っている婦人のためにはほとんど役立っておらないと、そういう声が大変多うございまして、実は私も十年余り家裁の調停委員もやったことがあるが、そればかりではないと思うというようなことを言うと、かえってみんなが、よく調停委員などをやっていたものだというふうに言われるくらいに、家裁に対する要望というものが大変にきついというか、あるいは批判が厳しいというか、本当に家庭裁判所のできた趣旨などから考えますと、全くそういうものじゃなかったわけなんでございますけれども、これはいろいろなパンフレットなり資料なり——これは私が主宰しているんじゃなくて、私が呼んでいただいた会合で、むしろ、こちらがいろいろこういうこともあるけれども、こういうこともあるのだと説明をしなければならないようなくらいに、いろいろな批判が厳しく出ておりますので、終戦直後家事審判法ができて家裁が誕生した時点と、いまの国民の権利意識なり家裁に求めている物の考え方というものは、ここ二、三十年の間に非常に大きく変わってきているわけでございますから、裁判所が旧態依然とした発足当時と同じ姿勢でいた段においては、非常に国民との間にずれが出てきてしまうと思うわけなんです。ですから、ぜひともその点は最高裁当局とすると、国民の要望しているところにマッチしたような家庭裁判所のあり方ということについて、もっと考えていただきたいというふうに思うわけでございます。それと比べまして、こういう婦人の会合で意外と——意外と言うと大変失礼ですけれども、法務省は評判がいいわけなんでございますね。意外と言うのはまあ大変正直に申し上げたわけなんですけれども、特に人権擁護局にいろいろなことをやってほしい。これはやはり行政でやっていただかないと、裁判に頼む、もたれているというようなのんきなことではとても追っつかないということで、非常に行政に対する要望というものが多くて、私などもよく人権擁護局の仕事をここまで皆さんが調べていらっしゃるものだと思うくらいに、いろいろな人権擁護局の仕事というものを調べて、こういうふうにもやってほしい、ああいうふうにもやってほしいということを伺うわけで、恐らく人権擁護局にもいろいろな各種の婦人団体から要望が出ているんじゃないかと思うわけなんですけれども、そういうことで前回にも人権擁護委員の増員とかその他の事柄について、婦人の人権問題について積極的に取り組んでいただくというお話も伺ったわけですけれども、前回も申し上げました離婚の母の家という要望がどこへ行っても非常に強いわけなんで、私は実はこれは法務省の所管とはちょっと言いがたいんじゃないかというふうな感じもするんですけれども、さりとてそれじゃどこの省がやるのかということになってみると、これもよくわからないんですが、この問題については人権擁護局はどのようにお考えになっていらっしゃるわけですか。ただ、現実に起こっている人権審判事件を申告を受けてタッチし、そして何と申しますか、いわゆる観念論的に処理をするという仕事だけではとても追っつかない皆さん方の現実の生々しいケースを、どうして婦人の権利を守ってもらえるのだという要望があらゆる機会に出てくるわけなんでございますが、人権擁護局とするとどういうふうに考えておられるか。前の委員会でもこのことを申し上げたんだけれども、具体的な答弁をいただいておりませんので、ぜひ具体的なお考えを述べていただきたいと思うわけです。
○政府委員(村岡二郎君) 前回の本委員会でも御答弁いたしましたとおり、人権擁護局といたしましては、本来の職務の遂行上において婦人の地位の向上ということに一段と努力いたしたいというつもりでおります。で、私どもの人権擁護局の職務といたしましては、人権審判事件の調査、処理ということと自由人権思想の普及、高揚ということがございます。それに付帯いたしまして人権相談ということを広く行っております。それらを総合いたしまして、つまるところは人権擁護局の機能、活動というものは個別的並びに一般的な啓発活動ということに帰するというふうに考えているわけでございます。したがいまして、ただいま仰せのありました離婚しようとする婦人のための施設を設けるというような具体的な現実的な施策といたしましては、現在の法体制のもとにおきましては人権擁護局の所管というようなふうにはまいりませんので、そういう施設ができることはあるいは望ましいことかと思いますが、そういう既設のいろいろの施設、制度等の利用が十分にできるように、そういう情報等の普及を図る、広報活動を活発にする、そういう点にあくまでも重点を置いて進めていきたい、かように考えております。
○佐々木静子君 確かにいまお話にあったように、モラルプレッシャー的な役割りを人権擁護局が担っていらっしゃるというふうに現在では思うんですけれども、さしあたりそういうふうな要望が具体的ないろんな問題が国民の側から出てくると、これは人権擁護局にそれをやれと言っても、いまのような役割りを担っての範囲にとどまるとすればちょっと無理だと思う。ということになれば、さりとてそれじゃだれがやるのかという問題になって、これは人権擁護局の局長さんからお答えにくいかもしれませんですけれども、これは局長さんのお考えとすると、それじゃどこの省のどこの局がやるというふうにお考えになりますか。
○政府委員(村岡二郎君) この問題につきましては、まだ深く検討しておりませんので、ここで私の個人的な見解を申し上げることもむずかしいわけでございますが、一応民生向上のための施策ということになりますれば、地方公共団体あるいは厚生省と、こういった方面の問題かと思いますが、これは全くの思いつきでございまして、はっきりした御答弁はいたしかねます。
○佐々木静子君 これはやっぱり人権意識を盛り上げて、そこまで持っていこうということですから、結局所管はどこになるのかぐらいのことはやっぱり局長さん、要望がこれだけ出ているんですから、考えてやっていただかないと、人権擁護局自身がおやりになれないとすると、大臣、どんなものでございましょうか、閣議ででも、もし他の省だとすると、やはり大臣からも法務省としてもこうだけれども、ここの省もやってほしいというようなことを閣議でお出しになっていただかないと、これは担当する省も局もわからないというんじゃ陳情する方も困るし、陳情を受けた方も困るという状態でございますので、ひとつこれ、大臣、広い視野からちょっとお考えを述べていただきたいと思うわけなんですけれども。
○国務大臣(稻葉修君) そういう人権の擁護について政府に担当者がいないなんというはずはないんですから、厚生省の母子家庭に近いそういう所管になろうかとは思いますが、ただいま人権擁護局長も思いつきだと言うてそういうお答えをしたんですが、私もいま直ちにここで、それではその問題についてはどこでございますという確信あるお答えをすることができませんで、まことに恐縮千万です。ですが、わが人権擁護局を持っておる法務省——厚生大臣ともよく相談して、検討して御返答を申し上げたいと、こう存じますので、お許しいただきたいと思います。
○佐々木静子君 ぜひその問題は前向きに、関係すると思われるほかの省庁とお話しいただきたいと思うわけです。いまお話にあった厚生省では、たとえば母子家庭の概念には無論入らない、離婚してないんだから、まだ戸籍上はちゃんと夫がいるんだから、母子家庭の救済の対象にはならないからと、これは厚生省の所管じゃなくて、むしろ法務省の人権擁護局の所管だというふうなことで、たらい回しにされている状態でございますので、そこら辺、ひとつよく関係省庁とお話しいただきたいと思うわけでございます。 それからもう一つ、人権擁護局の方に非常に多方面にわたる要望が出ているわけでございますけれども、本年度の国際婦人年の男女同権を実現する、それこそモラルプレッシャー的な役割りの一つとして、公開討論会のようなものをいまお考えになっているということを私も伺いまして、非常に結構なことだと思っているわけなんでございますが、これが私もちょっとそういうことを会合などに出る機会に話をしますと、非常に一般の方に受けがいいというか、多くの期待を寄せているわけでございまして、実はそれは何月何日にあるのかとか、あるいは招待券をもらわない人でも聞きに行けるのかとか、早くその日取りを知らせてほしいとか、いろいろ私の方にまで問い合わせがあるわけでございまして、こちらは主催者じゃないから、そう細かいことはわからないんだということを申しておるわけでございますが、そういうことで大変に多くの婦人団体の人たち、あるいは個々的な婦人の方々は関心を持っておられますので、いま考えていらっしゃること、わかっている事柄はぜひとも早目に知らせていただきたいと思うんですが、ひとつどういう方針で、どのような企画を進めておられるのか、お述べをいただきたいと思います。
○政府委員(村岡二郎君) 本年の十二月十日を最終日といたします一週間の人権週間におきまして、これは婦人の地位の向上ということを週間の重点啓発目標の一つといたしまして、全国各地の地方法務局、それから人権擁護委員を通じて、各種の啓発活動をいたした次第でございます。この結果はまだ報告が集まっておりませんので、具体的に御報告申し上げることはできませんが、各種の活動が行われたわけでございます。 ただいまお話しの件でございますが、これは佐々木委員の御示唆もございまして、法務省といたしましては法務本省の主催ということで、婦人問題のパネルディスカッションというのを開催したいと考えまして、ただいま準備中でございます。その時期は五十一年、来年の二月中をめどにしておりまして、遅くとも三月の初めぐらいには実現したいと思っております。その形式といたしましては、講師の方を四、五名お願いいたしまして、その間でディスカッションをしていただく。それから聴衆につきましては、人権擁護委員とか、その他なるべくそういう問題に関心をお持ちの御婦人の方に来ていただくという趣旨で、各種婦人団体を通じてこの開催をお知らせして、参加していただきたいというふうに考えております。 それからなお、表題でございますが、婦人問題ということでは余りにも広うございまして、焦点がぼけるということになりますので、なるべくしぼって何か特定の問題を取り上げたいと思っております。法務省の所管でございますので、やはり婦人に関する法律問題を中心に考えていきたい。婦人に関する法律問題ということになりますと、やはり家庭関係、家族法の問題が中心になろうかと思いますが、そういう点で所管の民事局とも協議いたしましてしかるべきテーマを選び、それからしかるべき講師を選びましてお願いしたいと、かように考えております。
○佐々木静子君 ぜひとも皆さんが大きな期待を寄せているわけでございますから、法務省としてもこの際大ハッスルして、ひとつ国民の要望にこたえるような公開討論会を、やられる以上はやっていただきたい。これはもちろん一般の人々、広くだれでも聞きに行けるという会合でございますね。——そのとおりですね。そして、つい先日労働省主催でやった婦人問題の討論会などが、非常に官僚的発想であったということで、御承知のとおり大変に批判を受けているわけでございますね。正直なところ、やる以上は思い切った国民サイドの立場でやらなければ、何やってるかわからなくなると思うんです。実はこれは人権擁護局の、あるいはここにいらっしゃる方々なのかもしれませんが、私もこの間の人権週間の朝、タクシーに乗っておりましたら、人権擁護局のどなたかがラジオで人権擁護局の仕事ということを放送していらして、ちょうどまた途中で降りたものですから、だれがおっしゃっているかわからなかったんですが、言っていらっしゃる内容は非常にりっぱなんですけれども、大変にかた苦しくて、官僚——ここにもしおられたら大変失礼な言い方ですけれども、やはりそこら辺、そういう角度ではせっかくやられても、余り——別に漫談会じゃないから、そう特別砕ける必要はないとは思いますけれども、あれでばやはりちょっと国民からは余り喜ばれないんじゃないかというふうに思いますので、やはりそこら辺のところも十分に御検討いただいて、やるからには多くの婦人がこれだけせっかく期待を寄せていることですから、その実の上がるようにしていただきたいと思うわけです。 それから、民事局の方もいろいろと民法の改正、その他婦人に関連する法律について御検討いただいているんですけれども、たとえばこの法制審議会の中間報告なども、この婦人の集まりなどで民法に関心を持っている御婦人の方々に、これは婦人のために法制審議会のこの中間報告が特にあるわけじゃないとは思いますけれども、これをちょっと研究の話題にしようと思っても、たとえばこの別紙の第一ページにあいにくと非嫡出子の相続分についての中間報告があって、それが、無論法務省がそうだというよりも、いろんな法制審議会で分かれた意見を書いてあるわけですけれども、一番最初に「現行法を維持すべきであるとする意見」、この第一のところは、これはそういう考え方もあろうというのはもっともだと思うんですけれども、第二のところで「正妻の扶養についても嫡出子の相続分を多くすることが望ましい」と、こういうふうなことを見ると、まあ法律家の方々や法律学者はまじめに考えておられるんでしょうけれども、婦人の会合では、まずもうここでみんな噴き出してしまうわけです。これじゃ側室はだめだそうだというようなことで、もうこういう発想ではちょっと話にならぬじゃないかと。というのは、これは世界行動計画の中でもはっきりとうたわれておりますように、また現在の日本の婦人運動の一番大きな目標として、婦人の間における差別をなくそうというのがいま大きな一つの流れとなっているわけでございまして、その流れにまさに逆行するような、これは法律用語でもない言葉ですね、「正妻」などというような言葉は。そういうことを法律家の集まりである法制審議会などでこういう中間報告を、しかも第一ページにこのように出されていると、あと中身に書いてあることは非常にまじめな論議で大変いろいろと検討をしていけばいいと思うんですが、まずここでもうみんな噴き出してしまって、これじゃもうとてもこういう官僚的発想にはついて行けぬということで、もうここでとまっちゃうわけですね。 ですから、そこら辺でももう少し、これは中間報告書、各種団体にお出しになっている、婦人の団体などもこういうことに非常に関心を持っているのに、やはりそこら辺で思い切り発想の転換というものをしていただかないと、現在の婦人が抱えている要望、婦人の中でいろいろな人がいる、妻もあれば妻でない婦人も——これは妻である婦人が半分以上占めているわけじゃないので、むしろ婦人のうちでは妻でない婦人の方が数から言えば多いくらいいる。それから、私もこれは議員になるまで余り知らなかったんですが、妻の中でも後妻の会というような大きな団体があって、妻の中で先妻と後妻の差別をなくそうという運動が大変にたくさんある。もちろん、ほかに未亡人の集まりであって、夫と死別した人の集まり、あるいは離婚をした婦人の集まり、それから母子家庭の集まり、あるいはまた独身婦人の利益の擁護、いろいろな問題があるわけですから、ここであんまりこういうふうな法制審議会で、実際まあいろいろな考え方の方があっていろいろな意見を論ぜられると思うんですけれども、こういうふうな何といいますか一時代古いような、時代めいたような表現で中間報告書というものを各種団体にお出しになるということは、やはり検討を要する課題として、お出しになる以上は、もう少し現代的に焼き直していただいてお出しになっていただく必要があるんじゃないかと、私はそのように考えるわけです。これは、世界行動計画自身の中に流れておるものを見ましても、婦人の人権というもの、一部の婦人の人権を守るんじゃなくて、幅広く婦人の人権を守ろうという立場に立っておるのであって、たとえばこの嫡出子が正妻の扶養をしなければならないから相続分が多い方がいいという表現があって、それじゃ非嫡出子は産んでくれた母親の扶養をどう考えているのかというふうになると、そのことについては一言も書いてない、そういうふうな状態であれば、やはりそこら辺に非常に体制維持、もう法務省というものは単に体制維持の考え方だけであると、いまのせっかく民法改正についても、新しい方向で打ち出していただいておっても、これは法務省は単に体制維持に奉仕するためにこのようなことをやっているんだという批判を受けても仕方がないようなことになるんじゃないかと思うわけでございますので、その点について今後の取り組み方について、行政の面においてももう少し幅広い考え方でもって考えていただきたいということを、考えていただきたいというよりも、一般の婦人が幅広く要望しているということをもう少し幅広く受けとめてもらいたい、そのように考えるわけです。無論、法務省の仕事の一つとして秩序維持ということが大事な問題だと思うし、秩序維持を法務省側が放てきしてしまったのでは、ネズミをとるのをやめたネコみたいなことになってしまって、どうにもならないかもわからないですけれども、やはり行政として仕事をする意味においては、一部のことばかり考えていただいたのでは困るのであって、もう少しいまの婦人運動の流れというようなものも考えた上で、民法の今後の大改正というものに取り組んでいただきたいということを特に要望したいと思います。この点について担当の局長からも御意見を求めたいし、後で大臣に御所信を述べていただきたいと思います。
○政府委員(香川保一君) この中間報告は、法制審議会の民法部会身分法小委員会におきまして七月の十五日に中間報告されたものを、私どもの参事官室でそのまま一般に公表したものでございまして、特に法務省で作成した文書ではございませんのですが、言葉の点として「正妻」という言葉が適当でないというお話でございますが、まあその辺のところはできるだけいろいろの方にわかりやすく見ていただくという趣旨のものでございますので、誤解のないようにできるだけ配意したいと思います。 「正妻」という言葉をどういうふうに適当な言葉にするかということですが、いま私ちょっと不勉強でよくわかりませんが、これまた法律的に書きますと何を言っておるかわからぬようなことにもなることだと思うんでありますが、工夫は要るかと存じます。ただ、いまお言葉にありましたように、非嫡出子の相続分についてここに掲げております「正妻の扶養についても嫡出子の相続分を多くすることが望ましい」というのは、これは決して法務省の意見ではないんでございまして、小委員会で委員の方から出ました意見の中にこういう意見もあるということをそのまま御紹介しているだけのことでございますので、決して法務省が体制的にこういうことを考えているということはないことをひとつはっきり申し上げて御了察願いたいと思います。
○国務大臣(稻葉修君) どうお答えしたらいいかちょっとわかりませんのですが、私どもはどっちかというと体制を守る方ですね。しかし、体制に悪いところがあればこの民法の、抽出してこれだけはやれるから改正するとか、改正していくということにやぶさかではありませんけれども、まあ一夫一婦制というものをとっておる現在の体制は守るに値する根拠が私はあると思っています。そういう点からすると、先ほどの表現は工夫を要する点があり、またやや幅を持たせるという点については異論はございませんけれども、原則は守っていって、かつ現体制に非常に時代おくれな点はどんどん改めていかなきゃならぬ、婦人の地位を向上していかなきゃならぬ、こういう基本的な姿勢でありますことだけをお答え申し上げておきたいと思います。
○橋本敦君 私はきょうは二つの裁判につきまして質問をさしていただきたいと思っております。 その一つは、去る十二日、東京地裁で行われましたいわゆる田中金脈に関連をする新星企業事件の判決に関連しての問題です。この問題につきましては、これは国民の期待を担っていわゆる金権金脈の疑惑を解明をする、こういう立場で検察が正義の立場を貫くという、そのことで果たして国民の期待にこたえたかどうか、そういう立場で質問をしたいと思います。 もう一つの裁判の方は、その翌日十三日、韓国で行われました金大中事件の裁判です。これについてはわが国も国内はもちろん国際的にも当然責務を負っている人権擁護という立場、そして例の金大中事件に関連をする政府の政治姿勢に関連をしてこの裁判に関連をする幾つかの問題、これをお伺いしたい、こう思っているわけであります。 まず最初に、新星企業裁判に関連をしてお伺いをいたしますが、検察庁にまず伺いたいのは、この裁判の結果をいま検察庁としてはどう考えておられるか。そしてこれについて被告人の方は控訴をしないという意思を表明しております。検察庁は控訴の問題についてどういう方針をお決めになっておられるか。まずこの点からお伺いをさしていただきたいと思います。
○政府委員(安原美穂君) すでに御案内のとおり、お尋ねの新星企業の関係の事件につきましては、十二月の十二日に宅建業法違反と背任の関係におきまして、宅建業法につきましては新星企業株式会社及び竹沢脩に対しましていずれも罰金三十万円、それから同じ宅建業法違反と商法違反の被告人であります山田泰司に対しましては懲役一年六月及び罰金三十万円、ただし懲役刑については二年間執行猶予の判決の言い渡しがあったわけでございまして、判決の内容を詳細には報告を受けておりませんが、その内容要旨を伺いますと、認定された事実はすべて検察官の主張したとおりであり、量刑につきましても執行猶予はついておりまするが、すべて求刑どおりの判決でございまして、ほとんどその結果について満足すべきものがあるとは思いますが、まだ執行猶予という点がございますので控訴しないという決定には至っておりませんが、目下検討中でございまして、どう受け取っておるかということにつきましては、いま申し上げましたようにその主張はすべてほとんど認められたという意味においてほほ満足すべきものではないかと私は思っております。
○橋本敦君 いま控訴するかどうかは目下検討中であるということですが、いま安原局長がおっしゃったように裁判所は大体検察官の求刑どおりの判決を認める、控訴事実も認定をした、ただ山田氏について執行猶予つきだということだけであると。そうしますと通常の世間の常識、われわれの法律的な経験から申しますと、検察庁はこれはもう控訴しないということをお決めになる可能性、蓋然性がきわめて高いというように考えております。そこらあたりもう少し率直な御意見を賜りたい、こう思います。
○政府委員(安原美穂君) 先ほど申しましたように、橋本委員御指摘のとおり、ほとんどその主張が認められた以上は満足すべきものであろうと思いまするが、なお控訴期間が、上訴期間が十二月の二十六日までございますので、目下東京地検からの報告によりますと検討中であって、最終の決定はしておらないということが事実でございます。
○橋本敦君 最終の決定はまだだということはわかりますが、控訴をするという方向での検討ということは考えられますか、られませんか。問題はその点。控訴しない方向での検討が私は支配的だと率直に言ってよろしいという状況とつかんでおるのですが、そこらあたりの見通しについて積極的な御意見を賜りたい。
○政府委員(安原美穂君) これは私の推察でございますが、恐らくは控訴をしない方向に向かうものというふうに推察はいたしておりまするが、検察庁から具体的には聞いておりません。
○橋本敦君 そうなって、検察も控訴はしないということになりますと、まさにこの事件はこれで終わるということ、これは多くが予想しておるとおりであります。そういたしますと、この事件で国民が期待したものは何か。先ほど私が言ったように、まさに疑惑の核心に触れる金脈の流れの解明、こういうことであったというのが国民の期待であります。それがなされないままに終わってしまう、こういうことですから、局長も法務大臣も御存じのように、この裁判がなされたときに多くの新聞は「むなしい金脈裁判」であるとか、あるいはまた政治不信を増しあるいはそれを残したまま終結をする、田中金脈の疑惑は晴れないとか、いろいろな報道がなされているし、筋書きどおりの一件落着ではないかという批判もある。 そこで、法務大臣に伺いたいのは、あなたは田中金脈をめぐっての検察のあり方について私が尋ねた中で、しばしば正義とそして厳格な立場を貫いて職務を遂行すると言明をされた。この新星企業事件について最大の課題であるいわゆる金脈の解明ということに何ら触れないままで裁判が終わったという問題、この問題についてどう考えておられるであろうか。たとえば、法務大臣に一つ指摘をしたいのですが、決算委員会の警告決議が参議院本会議でも議決をされました。その参議院本会議でなされた警告決議によりましても、大臣御存じのように、真っ先に決算委員会の警告決議はこの金脈問題をとらえまして、当時は新星企業はまだ捜索を受けている段階でありましたが、こういうことも含めまして資産形成の過程において信濃川河川敷等、つまり新星企業事件も入ります——をめぐって、疑いを持たれているような行為については、各行政機関において遺漏のないよう、その事後処理に妥当な行政措置を講ずべきであるという警告決議がなされている。したがって、私は現に事件になっているこの事件を国民的な立場で解明をし追及をする政治責任が法務省なり検察庁にあると思う。法律的な刑事訴訟手続の枠内を無視することは許されないわけですが、それを最大限に生かしてやるということが必要である、私はこう考える。ところが、それがなされないで終わりました。ある新聞は、大臣、こう書いています。「国民の代理人として刑事訴追にあたった検察官すら、真実を追う義務を放棄したと言ってよい。」、ここまで言ってるんですね。「公判とは名ばかりで、実質は略式裁判と何ら変わりがなかった。」、こう言っています。そして、「この裁判で司法の信頼を失わせた当事者は、検察庁であるといってよいだろう。」、ここまで言っている意見が新聞にあるんですね。大臣、こういうことを踏まえてどうお考えになっておられるか、大臣の現在の御見解を伺いたいと思います。
○国務大臣(稻葉修君) 内閣がかわるほどの大きな政治不信事件でございましたから、それが遺憾なく解明されることが法務当局としてはそれを望むことは当然なことであります。それが解明されないまま裁判が終わったことについては、割り切れない気持ちでおるわけでございます。ただ、検察当局としては強制捜査に踏み切れなかったのはどうしたことかとか、いろいろ御批判はあって、それに対しては刑事局長からも委員会等でしばしば答弁がありました。そういう点につきましては検察当局が手心を加えたとは私は思っておりません。一生懸命にやったと思っております。今後の疑惑の解明、政治不信の解明につきましては総理大臣もしばしば答弁しておるように、田中氏自身が一番よく知っておることであります。そうしてあの当時、いずれきちんとした解明を自分自身がすると言うておられるわけですから、その解明をされる時期をお待ちするという私の心境でございます。
○橋本敦君 いま大臣がおっしゃったように、大臣自身もこういう国民的期待、政治不信の解消、疑惑の解明という立場から言えば割り切れない気持ちが残った裁判であるとおっしゃっておるわけですね。これはもう国民は割り切れないどころか、政治不信、検察不信にさえなりかねないという問題を起こしているということ。そこで安原刑事局長に伺いたいのですが、この問題で私が刑事局長に質問をしたときに、この金脈の流れ、この問題については、裁判の中で情状立証として検察庁が冒頭陳述で明らかにし立証することもあり得るということをあなたはおっしゃっておられた。私はそれをすべきだということを追及しておったのです。現にこの十七件起訴されたのを見てみますと、取引総額数十億に及びます。安原刑事局長がおっしゃったこの十七件の取引から得た利益だけでも四億二千万円に上るとあなたは答弁をされた。その時期が四十七年にほぼ集中している。その次に多いのが四十六年、四十五年、四十七年と言えば御存じのように新聞が札束乱舞と書いた総裁選挙が行われた年なんです。だから、私はこの利益が政治献金という形で越山会あるいはその他へ流れているとすれば、これは商法上の特別背任罪ということの罪を構成する可能性もあるではないか、こういう質問をした。安原刑事局長は、いろいろ前提があるだろうが理論的にはそういう罪が成立することもあり得ることもお認めになった。それではこれを追及すべきだ、これを解明すべきだと私は要求したのです。しかし、残念ながらそれが公判過程で一切なされずに終わってしまった。 そこで局長に伺いたいのですが、この大事な金脈の流れ、これに関連をして情状立証で、公判段階で明らかにすることもあり得るとこうおっしゃったそのことを私どもは期待をしたのですが、これがついになされなかったまま、裁判がいわゆる形式裁判、略式裁判とも思えるような過程で終結をしてしまったということについて、どういう事情があったのか、検察庁はどう対応したのか、これについて局長の御説明をいただきたいと思います。
○政府委員(安原美穂君) まずもって先ほど大臣が申されました事柄に関連いたしますわけでございますが、率直に申しまして、いわゆる田中金脈ケースというものにつきまして、これをすべて検察が解明する義務を持っておるという世間一般の期待というものは、検察が期待されることについては、これはまことに信頼されるものとしてありがたいとわれわれは受けとめてはおりまするが、橋本委員も十分に御案内のとおり、犯罪の嫌疑を生じたものについて厳正公平な立場から真相を究明し、何物も恐れず刑事訴追を行い、裁判所に法の正当の適否を求めるというのが検察の立場でございますので、世間でいかに期待をされましても、遺憾ながら犯罪の嫌疑を持たないものについては、たとえ元総理のいわゆる金脈というものであろうとも、それを解明するのは検察に期待される仕事ではないということを十分に御理解をいただきたいと思うのでございまして、新聞にはいろいろの批判もございますが、ある新聞は法的な処理としてはこれでよいのかもしれない、しかし法的な処理が終わったからこの問題は終わったのではないと言っておることが、私は正しい物の見方ではないかというふうに考えておるわけでございまして、大臣の申されましたのも、嫌疑があったとすれば当然に究明すべきものであるということをおっしゃったというふうに私どもは理解をいたしておるわけでございます。 そこで、そういう立場から検察は、このいわゆる田中金脈ケースにつきまして、宅建業法の違反につきましてその真相の究明に努めて、そして警視庁が送ってきた事件以上に宅建業法の無免許営業の事件の捜査を行い、また検察官の認知におきまして山田泰司についての新星企業に対する背任の事件を検事認知をして捜査し、これを公判請求したというのでございまして、検察としては本来の使命の達成のために十分の努力をしたというふうに私は考えておるものでございます。 そこで、具体的な問題につきまして、いわゆる宅建業法違反とそれから背任についての利得金の流れについて、公判廷ではどのような検察官の立証活動が行われたかということでございます。それにつきましては、結論から申しますと、宅建業法の違反につきましては、橋本委員御指摘のとおり、無免許営業犯でございますので、四億数千万円の無免許営業の結果、利益を得たということは当然立証はいたしております。しかしながら、あくまでも検察官の立証活動というものは、いわゆる橋本委員御案内の罪体と情状、それを含めて公訴事実というならば、罪体と情状に関する立証をするというのが、検察官の立証活動のあるべき姿でございまして、それ以外のことに立証活動が及ぶべきでないことはもう御理解をいただいておるところでございます。したがって、今回の事件については四億数千万円の利得を得たという立証は、これは罪体の立証としてもまた情状としても、どれだけもうけたかということは情状としても当然必要なことでございますので、どれだけもうけたかということは当然に立証いたしました。それからさらに進んで、その利得金をどのように処分したかということは、いわば情状にも直接関係のない、もうけたものをどう使ったかということは、いわば犯罪の罪体あるいは情状としては直接関係のないことであるという考え方から、検察庁ではもうけたことの立証はしたが、もうけたものをどう使ったかということの立証活動はいたしておらないのでございます。ただ、報告によりますると、自白調書を法廷に顕出いたしておりますが、自白調書の中身に金の使い道についての供述がありました。それによりますと、これらのもうけた金は会社の事業資金、土地の購入資金等に使ったという供述がなされておりまして、それは法廷に出ておることは事実でございます。 それから、背任の関係につきましては、なるほどこれは無免許営業とは違いまして、私の利益を図る目的であったという立証をいたさなければなりませんので、当然にこの東洋ゴーセーの株を売却した被告人山田らの利益が二億四千四百二十二万七千五十円であるということ、それを彼らの所得に帰属せしめたということの立証の必要上、当然それだけの供述だけではまいりませんので、それらの金を実際に山田らが個人の利益を図ったということの立証の必要上、その使途についても立証いたしております。その使途についての立証につきましては、これも公判廷で立証いたしておりまするが、被告人山田らが山田らの関係する別会社の設立資金、増資の資金等に充てたという供述がございまして、事実その裏づけもとられておりますので、これにつきましては、利益金の使途についての立証も以上の範囲において行ったということでございます。
○橋本敦君 ただいまの局長の答弁は、私は納得できないんですね。あなた自身が六月二十四日のこの法務委員会の中ではっきり述べられていることは、利益の使途についても情状立証として検察官が明らかにすることがあり得るということをおっしゃっているんです。だから、情状ということになりますと、無免許営業で宅建業法の取引をやって利益を得ようとしたその動機、それから得た利益の額、これをあなたはおっしゃいました。その利益を得た額は、動機、目的との関係でどのように使ったかということ、これはやっぱり情状立証としては明らかにする情状の一部に入る。これは私は常識だと思うのです。得た利益の金額の多寡だけが情状であるという考え方が、これが実は金脈を隠していくことにつながっている。これなんです、問題は。そして、私ははっきりあなたにしてほしいことは、この利益の使途については、被告人の自供調書の一部に記載があるといういまのお話であったけれども、この利益の使途については、検察庁は被告人の自白だけを全面信用して、裏づけあるいは追及捜査をしたのか、してないのか。利益の使途について解明をしているのかどうか。この点の事実を事実としておっしゃっていただけませんか。解明したかどうか。
○政府委員(安原美穂君) 冒頭申し上げましたように、事件の捜査をしておる過程で、犯罪の嫌疑を抱くということも十分にあり、真相の究明という観点からはいろいろ捜査もするはずでございまして、この利益金の処分につきましては幾らもうけたかが、少なくとも無免許営業犯の立証としては必要かつ最小限十分であるというふうに思っておりまするが、その点につきまして、さらに利益金の処分についても当然聞いておりますことは報告を受けておりまするが、しかしながら、その点については犯罪の嫌疑を抱かなかったということでございます。
○橋本敦君 犯罪の嫌疑を抱かなかったという結論に至る前に、真相究明のために捜査をした。また、捜査をすると言明されたわけですからなさったでしょう。それが、この利益の一部が何らかの政治資金に流れたという事実をつかんでおられるのか、おられないのか、その点をはっきりしてください。
○政府委員(安原美穂君) 先ほど申しましたように、検察官の使命というものは犯罪の捜査ということでございます。その過程でいろんなことを知るでありましょう。しかしながら、知ったことすべてを公判廷に顕出し、あるいは公にするということは控えるべきだと思います。そうしなければ、犯罪の捜査についての協力を得られなくなり、結局、捜査権の発動が十全でなくなるという、利益を失うおそれがありますので、捜査で知り得たことはすべて公にしなければならないということでなくて、犯罪の事実あるいは立証活動に必要な限度においてこれを公判廷に顕出し、また、橋本委員のお尋ねにもお答えをするというのがたてまえであるべきでありまして、捜査はいたしましたが嫌疑を抱かなかった事柄につきまして、なお詳細を申し上げることは御勘弁をいただきたいと、かように考えます。
○橋本敦君 あなたは、私の質問に答えを拒否される理由をおっしゃって拒否されたのですが、その理由も私は納得できないのですよ。あなたは、得た利得の金額の額、これの立証は必要かつ最小限であるとおっしゃった。そのとおり必要最小限でしょう。しかし、動機、目的との関連において、その使途がどういうところに使われているかということは、それ自体が犯罪の嫌疑と私は言うのではなくて、動機立証の必要最小限ではなくて、妥当な限度に属するという観点から聞いておるのです。政治資金に一部が流れた。あるいは流れていない。そのことを答えられないという検察の姿勢それ自体が、まさに先ほど言ったように疑惑にふたをするということになるという指摘を私はしている。それに対して局長は、捜査の密行性、秘密性、そういう観点からお答えにはならないのですが、しかし、いま新星企業裁判が法廷でも解明されずに終わり、法務委員会の私の質問についても、いまおっしゃった理由でお答えにならないままで終わったとするなら、三木総理が疑惑の解明はすべきであると、しばしば政治姿勢としておっしゃったそのこととも私は背離をすると思いますよ。あなたの立場があることは理解しながらも、私はこれは明らかにすべきであると思う。現に六月二十四日の法務委員会で安原局長がどうおっしゃっているか。それは会議録に明白に書いてありますけれども、この点についてあなたはこうおっしゃっています。この使途の解明、疑惑の解明についての答弁で、「それが先ほど冒頭申し上げましたように、利益の使途については捜査をしたが、いま橋本委員御指摘のとおり、場合によっては情状立証として公判廷で明らかにすることにつながる。」——そのとおりです。ところか検察庁はしなかった。その次の言葉が大事なんです。「したがって、その使途を明らかにすることについては、時期を見れば検察庁としてはその点について明らかにすることにやぶさかでは」ありません。いまの段階で当委員会のお尋ねに答えるのは勘弁願いたいと言っておるわけです。こうおっしゃってるわけです。いまの段階で答えるのは勘弁願いたいとこの時期におっしゃって私が了承したのは、まさに公判進行中であり、冒頭陳述で情状立証の一部でこれが行われる可能性があり得るという検察の主体的な訴訟追行、これに介入したくないから私は了解をしてこれ以上の追及をしなかったんです。ところが、一審判決があり、これがもうこの段階で終わろうとしている現在、あなたがここでおっしゃった、その金銭の使途については時期を見れば検察庁として明らかにすることはやぶさかではないとおっしゃっている。このことについて私は責任を負ってもらいたい。つまり、いつ明らかにされるか。時期を見て明らかにすることはやぶさかでないとおっしゃった、そのとおり、当委員会の私の質問について、いつの段階で明らかにされる御用意があるか。つまり、第一審判決があなたがおっしゃったような方向で控訴をしないで確定をしたその後か、あるいはどういう時期か、これについて局長の御答弁を願いたいと思います。
○政府委員(安原美穂君) 先ほども申しましたように、背任の関係につきましては使途を明らかにしておるわけであります。私いま橋本委員と見解を異にするのは、無免許営業についての利益金の処分の内容についてであります。それにつきましては検察当局では幾らもうけたかということを立証すれば情状の立証に十分であるという見解のもとに、それ以上のことをあえて立証活動をしなかったということでございますので、私は少なくとも食言をしたというつもりはございません。
○橋本敦君 食言ではありません。私は食言の責任を局長にお話をしているのでは毛頭ないのですよ。ただ、山田氏の特別背任だけの問題ではなくて、新星企業をめぐる宅建業法違反、山田氏の背任というこの問題について、総体的に金銭の使途を問題にして私は質問をしているんです。会議録をごらんになればわかります。だから山田氏の特別背任だけじゃなくて、宅建業法違反で起訴されたこの事実の中での金銭の使途について私は質問をし、あなたは時期が来れば明らかにすることもやぶさかでないとまでおっしゃったんですよ。なぜこれを明らかにすることを拒まれますか。国民の前で疑惑を解くと、そういう観点から、一部は政治資金に流れたなら流れた、流れてないなら流れてない、そのことで検察庁が事実を私の質問に対して明らかにする、これは私は法務当局の政治姿勢として、金脈の解明の疑惑を解くと、この三木総理の疑惑を解くことが望ましいといった政治姿勢としておやりになってよろしいことじゃありませんか。どうしてもおやりになりませんか。やっぱり時期が来れば明らかにするということで、私の質問に答えていただける時期が来るということですか。結論だけで結構です。もう一度お答え願えますか。
○政府委員(安原美穂君) 同じことを申し上げて恐縮でございますが、背任については明らかにしており、無免許営業につきましては、情状立証としては必要最小限度のことを立証したのでありまするから、それ以上のことについては明らかにするときは来ないというふうに思います。
○橋本敦君 それでは、そうお答えになればまさに食言に近いあなたの答弁ということにならざるを得ないことになる、私はそう思いますよ。いまあなたがどうしても明らかにしないとおっしゃっても、私は引き続き金脈の解明という立場で、国民の疑惑と政治不信を解明するという立場で、一審判決の成り行きなり、あるいは確定した後に確定記録を見せていただくということを通じてなり、引き続き私はこの点について質問をし、究明していくということはこれはいたします。いま局長のおとりになっている立場、それが検察の威信と信頼を失わせることにつながり、疑惑のふたをするということにつながるという、そういう私の考え、あるいは国民の立場の考え方があることを強く私は指摘しておきたいと思います。時間の制限がありますから、この問題ばかりをめぐっているわけにまいりません。まさにこのようなことで法務委員会でも法廷でも疑惑の核心が解明されないまま終わる、こういうことになりそうなんです。これは私は非常に残念だと思う。 そこで、これに関連をして建設省の方にもお伺いをしておきたいんですが、室町産業という新星企業と同じ幽霊会社があります。この室町産業が最近新潟県の越後交通、これは御存じのように信濃川河川敷買い占めで室町産業の手先として大いに働いた会社ですが、この越後交通の本社の中に室町産業が最近長岡営業所の看板を出して活動を始める状況にあります。これは建設省、この写真を見ていただきましても、「室町産業株式会社長岡営業所」という表札がかかっております。幽霊会社である室町産業、御存じのとおり佐藤昭氏がその自宅で設立をしていった会社です。これが新潟で動き出した背景に、地方中核都市建設のいわゆる長岡ニュータウン計画が、いよいよ政府の認可に基づいて地域振興整備公団が最初に手がける大工事として行われているということと私は無関係ではないように思います。ということは、つまり室町産業が長岡において——東京に本社を置く会社ですが、いよいよ活動を開始するという可能性を私は見ておるわけです。そうなりますと、新星企業と同じような幽霊会社である室町産業は、これは宅建業法の免許を持っていたけれども、これがもう失効しておるわけですが、この免許を持たないで新潟県で事務所を置いて活動することはできない、そう思いますが、建設省はどうお考えですか、土地取引について。
○説明員(中村博英君) 宅地建物取引業を営む場合には、宅地建物取引業法に基づきます免許が必要でございます。
○橋本敦君 その免許は、宅建業法によりますと、一地域じゃなくて都道府県にまたがって事務所を置いて営業する場合は、これは建設大臣の認可を得ることになっておりますが、間違いございませんか。
○説明員(中村博英君) 二都道府県にまたがりまして宅地建物取引業を営みます場合には建設大臣の免許が必要になっております。
○橋本敦君 そうなりますと、私の指摘したい問題は、室町産業が新潟でも宅建業法の仕事をしていく場合に、建設大臣に認可を求めてくるということが考えられる。現に求めてきておりますか、まだですか。
○説明員(中村博英君) そういった事実は聞いておりません。
○橋本敦君 私は現地に調査に行きまして、もうすでに申請をしたというように聞いたんですが、まだ御存じないとすれば、いずれ来る可能性がある。 そこで私は建設省にお伺いをしたいのですが、この第五条の「(免許の基準)」によりますと、法人が申請をする場合に、その役員が第五条の一号から五号までの不法行為、つまり無免許営業だとか、不誠実な行為だとか、あるいは著しく不当、不正な行為、これをやったという場合には、その法人に対しては認可を与えてはならないという規定が、第五条で免許の基準として示されてる。そこで私はお伺いをしたいのですが、いま、起訴をされたこの新星企業の役員には御存じのとおり入内島金一氏が取締役として入っております、新星企業が宅建業法で有罪になった事件。一方室町産業でもこの入内島金一氏が役員名簿によれば取締役として入っております。こういう関係になりますと、室町産業が宅建業法の認可の申請を建設大臣にしても、この第五条の免許基準の要件からして、新星企業事件有罪判決があって、今日の状態を見るならば、当然認可を与えてはならない会社に相当すると、私はこう考えておりますが、建設省のお考えはいかがですか。
○説明員(中村博英君) 御指摘のように、宅地建物取引業法では第五条におきまして免許を与えてはならない要件をいろいろ規定してございます。したがいまして、この要件に該当する場合には免許をしてはならないということになると思います。
○橋本敦君 だから、いまの場合どうですか、室町産業の場合。
○説明員(中村博英君) まだ、現在時点申請を受けておりませんので、申請がありました時点で検討いたしたいと思います。
○橋本敦君 申請があった時点で検討するということは当然です。あたりまえのことです。その場合の検討資料として、現に新星企業で一審有罪判決があった。その取締役に入内島氏が入っている、室町産業でも取締役が入内島氏が入っている、こういう関係の場合に、この基準に照らしてどうか、いまあなたはどう考えておられるか答えていただきたいと思うんです。認可するべき場合に該当する、この五条から言えば認可できない場合に相当する、どちらですかという質問です。
○説明員(中村博英君) 宅地建物取引業法の五条の一号から五号までにつきまして、その役員につきましての欠格要件がいろいろ規定してございます。あるいは法人につきまして各号についてまた要件がいろいろ適用になるわけでございますけれども、それぞれの要件を満たすかどうか、その申請内容に基づきましていろいろ判断するわけでございます。
○橋本敦君 はっきり答えてくださいよ。はっきりした事実だけでいいじゃないですか。新星企業が有罪判決を受けたんですよ、宅建業法違反で。そうでしょう。入内島氏が取締役だ、室町産業取締役だと、その他の要件を考慮して申請があったときに総合的に判断するのはそれはよろしいです。私が指摘をした事実だけについて、いまどうお考えになっているか、課長もう一度はっきり答えてください。私が指摘をした事実だけならば免許を認可してはならないということになりませんか。この事実について聞いているんですよ。
○説明員(中村博英君) 宅地建物取引業法の五条の三号に「禁錮以上の刑に処せられ、又はこの法律の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は刑の執行を受けることがなくなった日から三年を経過しない者」につきましては役員としての欠格条項でございますので、この要件に該当するということになりますと免許を与えられないということになると思います。
○橋本敦君 だから、いまの時点では該当するんではないかという質問です。
○説明員(中村博英君) それは個別の事情に基づきまして判断したいと考えております。
○橋本敦君 逃げる答弁する必要ないですよ。現にある事実について具体的な事実を指摘して聞いているんです。個別な判断じゃなくて、現に私が指摘をした事実関係ならば認可基準の要件には適合しない。その後申請の時点におけるその他の事情を考慮してもう一遍考え直す、これは構いません。そうしてください。だけど、いま私が指摘をした問題を現時点で判断すれば免許を与えてはならない基準に相当すると、これは法律読んだだけで明らかじゃありませんか。もう一遍答えてください。申請があった時点で再考慮するのは別に結構です。
○説明員(中村博英君) 三号に言いますところの「禁錮以上の刑に処せられ、」といいますのは、これは確定判決のことでございます。したがいまして、判決確定した時点におきましてこの要件に該当するということになりますれば、免許要件を満たさないということになるわけでございます。
○橋本敦君 罰金は。
○説明員(中村博英君) 罰金につきましても同様でございます。
○橋本敦君 だから、一応現在の時点では室町産業から宅建業法申請があっても欠格要件に該当するということは、一応現在時点では明らかになったと私は思うんです。いずれにしても、このように田中金脈の解明というのはまだまだなされなきゃならないが、どうしても私はいまの不動産業課長の答弁の姿勢から言っても、今日までの新星企業の裁判の経過から見ても厳格にこれを解明をし、かっこの問題について政府が姿勢を正して対処するという姿勢がどうしても政府全体として弱いという、そのことの批判を私はどうしても捨てることができない。 この問題については引き続き質問をし、きょうはこの問題についてはこれで留保さしていただいて、第二番目の金大中事件の問題に質問を移していきたいと思います。 わざわざ外務省からお越しいただいておりますので、時間もありませんので端的にお伺いをさしていただきますが、金大中氏に関する裁判が、金大中氏の人権問題、わが国の主権問題あらゆる観点からわが国の国民も注目をしておりまして、残念ながら禁錮一年という刑が下ったわけですが、まず最初に質問をしたいのは、心配をするのは、金大中氏の身体の自由の問題です。私ども日本の刑事訴訟法のたてまえを知っておりますから、日本の立場で言いますと不拘束、つまり勾留されないで起訴された場合は、一審で禁錮等の実刑判決がありましても控訴している以上収監されません。韓国も大体そうではないかと、こう思うんですが、一部新聞報道によれば、この判決の結果金大中氏が収監されて身体の自由を拘束されるという心配があるやの報道を私は見受けました。これらの点の見込み、見通しについて、外務省当局が得ている情報によればどうなりますか、その点まずお聞かせいただけますか。
○説明員(遠藤哲也君) 金大中氏に対しまして第一審で禁錮一年の刑ということが宣告されまして、金大中氏は直ちに控訴の手続をとったようでございまして、この期間は恐らく収監されないであろうと、こういうふうに私どもも見通しを持っております。
○橋本敦君 確認をしますと、控訴かつ上告、それがすべて終わって刑が確定するまで収監されないという見通しを持っておられる、こういうことですね。
○説明員(遠藤哲也君) そのような見通しでございますし、かつそのように私どもも希望をいたしております。
○橋本敦君 見通しと希望をおっしゃったわけですが、実際向こうの現状で収監される心配があるのではないかという報道に接したので、私は重ねてお聞きしておるんですが、いまおっしゃった見通しと期待、これは裏切られないで間違いないと言えるかどうか、この点が実は事実の問題として心配なんですが、何らかの心配な情報を外務省は得ておられませんか。
○説明員(遠藤哲也君) 何分にもこれ、韓国の刑事手続及び司法手続でございますので、私どもが第三者としましてこうだという確たる見通しを申し上げることはきわめて困難でございますけれども、まあそういったような情報を得ておりますし、先ほど申し上げましたようにそういうふうに私どもも希望しておるわけでございます。
○橋本敦君 この裁判は全く政治的裁判であった。一つは、政敵である金大中氏自身の政治生命を剥奪していくという朴大統領派のねらいがあった。もう一つは、わが国政府と韓国とのいわば了解事項という形でおさめられたいわゆる出国の自由、これについて出国をさせない形式上の理由をつくり上げるというねらいがあったとかいろいろ言われております。その真相はともかくとして、私はこの金大中氏事件の裁判の最後に着目をして言うならば、最終弁論、最終意見陳述の機会さえ許されないで結審をし判決をするというような裁判が、これが果たして裁判の名に値するか。近代民主社会において裁判手続としてあり得ることか。これは私は深刻な問題だと、韓国のことながら金大中氏自身の人権問題に関連して私は強い心配を持っているわけですね。 そこで伺いたいと思うのですが、この金大中氏自身の出国の自由、来日、これについて外務省は、いつごろそれが実現できるといままでの一連の政府交渉経過から見て期待をしておったのか。そして、このような来日を妨げる裁判が当然あり得ることを知った上であの政治交渉をやったのか。知らなかったとすればなぜ知らなかったのか。まずこの辺にさかのぼって外務省のこれまでの事実経過をお聞かせ願いたいと思います。
○説明員(遠藤哲也君) 橋本委員が御案内のとおり、一昨年四十八年の十一月二日に韓国の金鍾泌国務総理が参りまして、その当時の田中総理と会談の結果、いわゆる外交的な了解というものが成立したとおりでございます。この外交的了解の中で直接金大中氏の身柄に関係するものは御指摘のとおりの二点ございまして、一つは、出国を含めて一般韓国人と同様の自由が保障されるということ、それからもう一つは、日本及びアメリカに滞在中に行った言動について韓国政府は責任を問わない、この二点でございます。そこで、私ども日本政府といたしましては、金大中氏事件につきましての関心は、この外交的な了解が守られているかどうかということでございます。その当時も私どもは金大中氏に以前からの選挙裁判というものがあったということは承知いたしていたわけでございますけれども、外交的了解の重点というのは、一般韓国人同様の自由であるということでございまして、選挙裁判につきましても、その選挙裁判がきれいになれば一般の韓国人と同様に出国の自由が与えられるんだと、こういうふうに了解していたわけでございまして、いつそのいわゆる出国が実現し得るかということにつきましては、いついつというようなはっきりした見通しを持っていたわけではございません。
○橋本敦君 そうすると、田中総理と金鍾泌韓国首相との間の了解事項で、一応一般市民並みの自由と出国という問題が了解されたというのは、日本政府としてはこの選挙違反事件裁判があるのを知っていたものですから、すぐ実現されるということはとうていあり得ない。そしてこの裁判の結果、今日のような禁錮というような刑に処せられることになれば、その出国の機会はますます遠のく。彼自身は、今後大統領選挙は、確定すれば刑の執行を終わってから四年間被選挙権を剥奪される。そういったことを知っていて政府了解をやったとすれば、これはまさにいつの時期かわからない永遠の先に金大中氏の自由回復が延ばされてしまうということを知りながらあの了解をやったということにならざるを得ない。これはまさに一刻も早く金大中氏の自由を回復をする、そしてわれわれは主権侵害とこう言っておるのですが、わが国において白昼公然と行われた不法な逮捕連行ということに関して、原状回復をするということに沿った出国の自由という了解事項、これがいつ行われるやもわからぬというような、そんなあいまいな見通しのもとで了解をしたというのは、一体、政府の政治姿勢としてどうなのかという問題が残ります。 ところが三木総理は、本年の参議院の予算委員会においてどうおっしゃっているかといえば、わが党の星野委員の質問に対して、明らかに金大中氏の自由が回復をされ、人権問題に対するわれわれの懸念が解消されることを政府は願う、いまもそうおっしゃっている。片一方でいつのことかわからぬことを承知しながら、片一方で国会に対しては自由回復について政府も引き続き努力し、かつそれを願っているような答弁をする。これは総理がおられませんし外務大臣もおられませんからこれ以上の追及はしませんけれども、まさに日本政府の対韓外交姿勢というものはなっておらぬ、国民を欺瞞するものであると私は言わざるを得ないと思うんですよ。そういうことを私はここで強く指摘した上で、次の質問に移りたいんですが、そうすると、外務省としては金大中氏の来日、出国の自由という問題は、これはいまの結果から見ていつのことやらわからない、それでも了解事項は了解事項としてこれは生きておる。事実上了解事項が無意味にされてしまっているんですけど、この二つの関係についてどう今後お考えになり、どう対処されますか。
○説明員(遠藤哲也君) 橋本委員御案内のとおり、実は金大中氏は選挙違反裁判が係属中にも、病気療養ということでございましたけれども、日本及びアメリカに出国しておる事情があったわけでございます。一昨年の十一月二日の外交的了解の時点におきましては、もちろん私どもそのことを承知いたしておりまして、韓国政府が韓国人一般と同様の保障を与えるというか、待遇を与えるということに重点が置かれたのでありまして、先ほどお答え申し上げましたように、いついつそれじゃ出国できるんだということにつきましては確約はないのでございますけれども、要するにその裁判がきれいになり一般人と同様の出国が認められると、この点の確約を得たわけでございます。 なお、裁判の結果につきましては、これは私ども第三国の者が、これはまだ二審に上がりますし、あるいは恐らく三審にも上がるかと思いますけれども、最終審につきましていまの時点でいろいろコメントするのは必ずしも適切ではないと、こういうふうに考えております。ただし、政府といたしましても、まあ金大中氏の身柄自身につきましては非常に関心を持っておりますので、もしその金大中氏が出国を依然として希望されておるということであれば、韓国の国内法のもとでなるべく早い時期に出国が実現されることを非常に希望しております。
○橋本敦君 いまあなたがおっしゃったように、金大中氏の選挙違反の裁判が始まったのは一九六八年ですよね。彼が来日をしてそして不法に拉致された事件が起こったのは七三年、あなたが指摘されたとおりです。だから、選挙違反の裁判が係属中である段階で彼が出国の自由を与えられ、来日しておったんですよ。だから、現にこの選挙違反の公判が今後続こうとも、控訴、上告する限りは身柄が拘束されないという期待と信頼を持ち、そして了解事項に基づいて出国の自由ということを一般市民並みにやるとすれば、期待をするとすれば、あなたがおっしゃった裁判がきれいになればという条件はおかしいですよ。現に彼が来日したときに公判中であったんですよ。公判中でもその当時一市民として出国の自由が認められておったんですよ。ここのところを日本政府は強くいかなければだめじゃないですか。裁判がきれいになったらなんて言っていると、いつのことになるかわからない。人権侵害をそのまま手をかして放置することですよ。現に、公判中であったその段階で来日しておったときに起こった事件だから、彼が控訴をし上告をするその期間中でも、出国を妨げる基本的事由は何もないはずだ。了解事項に基づいて、金大中氏自身が出国を希望している事情が十分明らかですから、日本政府としては了解事項に基づいて、裁判がきれいになったらという向こうの主張に乗せられないで、現実を踏まえて出国の彼の希望を入れる、そして来日する希望がある限り来日させる日本政府として外交努力をする必要が私はあると思う。裁判の結果じゃありませんよ。きれいになるのを待つということではない。了解事項に基づく相手国に対する要求は私はできると思う。それをやる気があるのかないのか、外務省、どうなんですか。
○説明員(遠藤哲也君) 韓国の法律につきまして有権的な解釈を行うことは差し控えたいと存じますけれども、韓国の法律によりますと、刑事事件で起訴されておる場合につきましても出国をすることができるたてまえになっております。しかし、他方、刑事事件につきまして起訴されておる者につきましては、出国を拒否することができるともなっております。つまり、この点は全く韓国のいわゆる行政権の範囲に属することかと存じますが、現在金大中氏が出国の自由を拒否されておるということが仮に事実であるとしましても、これは韓国行政権の範囲内での措置であって、韓国一般人と同様の待遇を金大中氏は受けておる、こういうふうに考えざるを得ないと思われます。したがいまして、その外交的決着の第二点と申しますのは、繰り返しになりまして非常に恐縮でございますけれども、出国を含めて韓国人一般と同様の待遇ということでございますから、現在金大中氏に現実に出国の機会が与えられないとしましても、この点につきましては了解事項の違反あるいは背反ということにはならないと、こういうふうに考えておりまして、したがいまして現時点におきまして、韓国政府に対しましてこの了解云々の問題を取り上げるということは考えてないわけでございます。
○橋本敦君 あなたがおっしゃったように、刑事事件で訴追されてても出国することができるという法のたてまえと、一方拒否できるという法のたてまえと二つある、それはそのとおりですよ。原則に立ち戻って刑事事件の起訴公判中であっても出国を認められることはできるという、まさにそのことだから彼は来日しておったんですよ、そうでしょう。だから、いまあなたはその問題をとらえないで、韓国政府が拒否することができるということで、その問題にあなたは答弁の重点を移されたんだけれども、あの了解事項に基づいて韓国政府に出国を認めさせることが、まさに一般市民の自由としてあり得るんだと、現にあったんだという観点に立ち返って、金大中氏の出国の自由を要請するということは、了解事項に反しないじゃないですか。むしろ、了解事項を実のあるものとして積極的に進めるということになるじゃないですか。問題は、私はそういう質問をしているんですよ。それをやらないというなら、了解事項を何のためにやったのか。日本政府の政治姿勢は金大中氏がいたずらに政治的裁判で人権侵害され、そのことを顧みないまま放置するということになるという批判を受けても仕方がないではないか、こういうことになりませんか。
○説明員(遠藤哲也君) 韓国の法律につきまして、あれやこれやと私どもが解釈を下すことはできないんでございますけれども、ここにございます韓国旅券法を読みましても、次のような者につきましては旅券の発給を拒否することができるということで、むしろ一般の人々には旅券の発給は自由にできるんだけれども、これこれの者については拒否することができるということで、刑事事件で起訴されておる者につきましては拒否することができるということに、私は韓国の法体系は重点が置かれておるのではないかと、よその国の法律でございますけれども、こういうふうに判断するわけでございまして、こういうふうな法体系のもとで現在金大中氏に出国の自由が与えられないといたしましても、これは一般韓国人と同様の待遇ではないか、こういうふうに考え、したがいまして、その了解事項には違反していないと、ちょっと繰り返しになりますけれども、そういうふうに考える次第でございます。
○橋本敦君 旅券法で出国を拒否することができるというのは、それはできるんですよ。出国を認めないということを書いてるんじゃないんですよ。いいですか、政府の裁量行為なんですよ。原則は、出国の自由というのは国際的人権問題としてあるんですよ。その観点が外務省になくて、どうして国際的に人権感覚があふれた外交ができますか。現に公判中でも金大中氏は来日しておったじゃないですか。旅券発給を受けておったじゃないですか。一市民として受けたんですよ。前大統領候補という特別の政治的指示で受けたんじゃありませんよ。だから、私はいまでも出国の自由という問題、了解事項の線に沿って、拒否することができるとはあるけれども、拒否しなければならないという、裁量の余地を残さない規定じゃないから、外交交渉としてやるべきだ、こう言ってるんですよ。それがわからないようなら、これは日本の外務省の金大中事件に対する取り組みは全く朴政権追随だと言うほかありません。この問題はそれ以上私はあなたと議論しません。そういう観点で問題を見直してもらいたい、外務省当局の検討を深めてもらいたい、そういうことを要求しておきます。 そこで、いまあなたがおっしゃった出国の問題ですけれども、御存じのように、国際人権規約の問題に話を移していきたい。この国際人権規約は、言うまでもなく国際連合が十八年かかってつくり上げ、これが一九六六年の第二十一回国連総会で採択されました。この国際連合の国際人権規約は満場一致ですから、日本政府も反対なしに採択されたんです。 そこで、この国際人権規約は、まず第一にA規約として「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」がある。B規約として「市民的及び政治的権利に関する国際規約」、そして「議定書」、この三部からなっておりますね。これについて、この市民的及び政治的権利に関する国際規約の中におきまして、わが国の憲法が国民に人権を保障しているそのたてまえと同じような高い人権感覚がうたわれております。出国の自由という問題もあります。それからさらに、いま私が指摘をした十四条で、「公正な裁判を受ける権利」ということで、弁明、弁論の機会なしに判決を受けるようなことがないということも、これも国際的な通念としての人権感覚で書かれておりますね。しかも、この国際人権規約は、A規約については三十五カ国が批准を採択いたしまして、いよいよ来年発効しますが、B規約については残念ながら一国だけ足りなくて、もう一国がこれを批准すれば国際的に規約として発効するというところまでいっております。 そこで、この規約の問題について、私は外務当局の考え方も聞きたいんですが、一九六八年の国際人権会議でもこの批准を促進するという決議がなされておる。わが国も当然これを批准をし、この国際人権規約について一刻も早く発効するような努力をわが国もすることが憲法のたてまえに全く合致すると私は考えておりますが、わが国がいままでの規約を批准するという態度に出ない理由は何か事情があるのかどうか。この点、外務省の方で何か事情があればお話し願いたいし、この規約の批准に向けて努力をするお考えがあるならば、そのお考えどおり伺いたいし、いずれかお知らせ願いたいと思います。
○説明員(村上和夫君) この国際人権規約につきましては、この規約の中にわが国の憲法及び法令に抵触する部分がございまして、この規約を批准しても憲法、法令のたてまえ上実行しがたいという見地から、現在まだ批准してないわけでございますが、外務省といたしましては関係各省庁とも協議を進めておりまして、橋本委員御指摘のとおり、この規約の趣旨には日本政府としても賛成しているわけでございますので、関係各省との協議を進めて鋭意批准ができるようなふうに持っていきたいというふうに考えておるわけでございます。
○橋本敦君 その方向は結構ですが、憲法に反する部分があるということになれば、これはもう大問題です。どの点が反するというように外務省の方では問題にしておられますか。
○説明員(村上和夫君) たとえばこの規約のBでございますが、第二十条に、戦争宣伝等の禁止という規定がございます。これはわが国の国内法規にはございませんで、憲法には御案内のとおり、思想、信教、表現の自由が保障されているわけでございますので、たとえ戦争宣伝でございましても戦争宣伝を禁止するということは憲法のたてまえ上できないわけでございます。
○橋本敦君 つまり言論、表現の自由という観点から、この二十条の戦争宣伝の自由も認めざるを得ないというたてまえと、こういうことですね。 一方、この規約では別に「思想・良心及び宗教の自由」の保障、十八条にございますね。だから、これとの関係において合理的解釈ということをこの規約自身は要請しておるわけです。だから、そういう合理的解釈をするならば、もろに憲法違反ということにならないという解釈の余地も私はあるように考えておるのですね。だから、そういう解釈の余地があり得るという、憲法違反にならない解釈が規約自体の中の合理的解釈によってあり得るという、これは外務省としてもそういう考えはお認めになるでしょうね。
○説明員(村上和夫君) 橋本委員御指摘のとおり、この戦争宣伝が純粋法律的に憲法で保障されております信教、表現、思想等の自由とどういうふうになるかという点につきましては、いろいろの意見も政府部内でございまして、目下調整中ということでございます。
○橋本敦君 わが国は、世界にすぐれた第九条という戦争放棄という条文を持っておるわけですから、ましてや私は合理的な合憲解釈が可能だと見ているんです。そういう意味で今後の御検討を願いたい。 人権擁護局長の立場で御意見を伺いたいんですが、わが国もまた人権保障、擁護については重大な憲法上の責務を政府は負っているわけですが、この人権規約の批准促進というそのことは、人権擁護局長としては御要望になってしかるべき問題ではないかと思うんですが、お考えはいかがですか。
○政府委員(村岡二郎君) 人権擁護局長といたしましては、これらの国際人権規約にできるだけ早い機会に加入すべきものである、かように考えております。
○橋本敦君 そこで、法務大臣に伺いたいんですが、いま私が指摘したように、金大中裁判というのは言論の機会さえ剥奪したまま行われるという、近代民主社会では考えられない状況が起こっております。しかも、韓国とわが国はいわゆる政府了解、口上書等を通じて、私どもの立場で言えばきわめて不可解な追随的外交決着をつけたということから、この裁判における人権侵害という問題がさらにクローズアップされてきておる。こういう金大中事件をめぐっても、そしてまた国際連合中心の外交、政治をやるんだという三木総理の立場から言っても、まずわが国が積極的に人権擁護の先頭に立って奮闘するという国際社会におけるこういう立場はやっぱりはっきりすべきではないか。そのことを通じて金大中氏の人権回復という方向も一層日本の政治姿勢として明白になっていく。そういう意味ではこの人権規約の批准ですね、もう一国批准すれば国際的に発効するのですから、それに向けて、いま外務省がおっしゃったその方向へ向けての検討、人権擁護局長がおっしゃった批准を一刻も早くした方がよいという意見、これを踏まえて法務大臣としては外務省当局と十分打ち合わせをした上で、早期に批准に向けて日本政府の検討を開始するということを、人権擁護の責務を持っておられるあなた自身として私はやってほしいと思うんですが、御意見はいかがでしょう。
○国務大臣(稻葉修君) 橋本委員が御主張の点は正しいと思います。わが国として人権尊重の基本的な憲法の精神に従ってこれを推進する役割りを私は持っておると思います。
○橋本敦君 金大中氏をめぐるその他の問題についてはいろいろ聞きたいことがありますが、金東雲の関係その他、きょうは時間がありませんので、いずれ機会を改めましてお伺いすることといたしまして、きょうはこれで終わります。ありがとうございました。
○委員長(多田省吾君) 本日の調査はこの程度にとどめます。 本日はこれにて散会いたします。 午後零時四十三分散会 —————・—————