法務委員会 第5号
- 発言数
- 329 件
- 登壇者
- 19 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1975/11/19
会議録
○小宮山委員長 これより会議を開きます。 法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。沖本泰幸君。
○沖本委員 まず、密入国問題からお伺いしたいと思います。 最近多量に密入国を検挙したという記事がここしばらくよく出ているわけで、特に冷凍車に乗せてそういうことを請け負っておったというのもありますし、船に乗せて運んでおったということもあります。検挙をした時点とそれからいままでに密入国した人たちがどういう形で日本の国内におるか、とりあえず検挙の実態と最近の動向について、警察庁の方からお話しいただきたいと思います。
○大高説明員 それでは警察が取り扱いました不法入国について御説明申し上げます。 過去五年間におきまして、不法入国は全部で千二百十一名、年間平均約二百四十名になっております。昨年は二百四十六名でございまして、前年比で百六十人の減少となったわけでございます。このうち密入国はほとんどが韓国からというような状況になっております。 去る十一月十一日に大阪府警において検挙をいたしました集団密航事案でございますけれども、大阪府警におきましては、かねてから組織的な密航ブローカーが存在するという情報をつかみまして捜査をいたしておりましたところ、十一月十日の昼ごろ大阪市淀川区内のマンションで密航者を運送したと思われます保温冷凍車を発見いたしまして、検挙態勢を整えた後、同日の夜に検挙に着手いたしまして、十六日までの間にマンションに潜伏しておりました密航者四十名を含めまして密航ブローカーあるいは引き受け人といったような者全部で四十七名を検挙いたしました。 これにつきましては、現在なお取り調べ中でございますが、この密航ブローカーの主犯は実は日本人でございまして、韓国におります密航ブローカーと連絡をとりまして、十一月八日に共犯二人とともに福岡県下の苅田港から十二トンくらいの船で対馬の沖合いに出まして、ここで韓国の小型船とドッキングをいたしまして、密航者四十六名を受け取った後苅田港に引き返してまいったわけでございます。それから用意されておりました保温冷凍車によりまして大阪まで運んだ、しかる後に検挙されたということでございまして、この密航ブローカー六名の中には韓国人二名を含んでおるわけでございます。 現在なお私どもの方で鋭意その背後関係あるいは動機、目的等について詳細取り調べ中でございますが、現在までに四十九年の九月から前後九回にわたりまして韓国人約三百六十人を密入国させたということが判明いたしております。
○沖本委員 密航は韓国からの密航が主だということになりますけれども、最初は、終戦直後法律の不備による問題もありましたし、それから二十五年ころまでに日本にいた人が向こうへ行って来たりしたことで、外国人としての資格なり何なり永住権に関係のある諸問題が出てきておるわけで、その辺の事情と最近の事情とはずいぶん違ってきているのじゃないかと思われるわけです。経済的な理由がその主たる理由だとは思いますけれども、中には観光ビザで集団就職的なことも問題になったことがあるわけです。これは正規のルートで入ってくるわけですけれども、こういう形はふえてきておるのかあるいは減ってきておるのか、こういう問題はいまどういう状態に置かれておるのか、そういう点について入管から御説明いただきたいと思うのです。
○影井政府委員 ただいま沖本先生御指摘のとおりに、最近の韓国からの密入国者の密入国の動機、家族関係、年齢構成等この四、五年非常な変化を示しておるということが言えるかと思います。 先生御指摘のとおりに、終戦後それから朝鮮動乱等の時期におきましては、日本におります親戚縁者のところに逃れてくると申しますかそういう形態が比較的に多かったのでございますが、最近顕著な現象といたしましては、これは大まかな数字でございますけれども、八割くらいあるいは八割を超すくらいの密航者はその目的が出かせぎである、またそれを反映いたしまして、年齢構成もその大部分は二十歳代ないし三十歳代というあたりが多いということが示しておりますように、働き盛りの者が日本に出かせぎに来たいという形態が最近非常に顕著になっているということが申し上げられるかと思います。
○沖本委員 いまのような御説明があったわけですけれども、当然こういう動向なりいろんな点については外務省を通じて韓国側との折衝がいろいろあると思いますけれども、こういう問題に対する韓国側の政府の態度はどういうものなんでしょうか。
○影井政府委員 韓国からの密入国者の趨勢と申しますか、これにつきましては、外務省を通じまして随時韓国側に知らせております。それからそのほかに、こういった状況に対応して韓国側でもひとついろいろな措置を考えてもらいたいということ、これも私の方から申し入れをしております。 最近におきましては、韓国側からも、日本への密航者の大部分が済州島である、済州島からの出国につきまして何らかの措置をとるべきではないかという韓国側の意向も非公式ではございますけれども見え始めております。今後とも韓国側とも連携を密にいたしまして、日本への密入国者の防止のための具体策を逐次協議してまいりたい、このように考えております。
○沖本委員 警察庁が検挙なさった、各警察が外人登録証なり何なりの提示を求めたりしながらその実態をいろいろとお調べになったり、不携帯であったり、そういうところから密入国がわかったり、あるいはいわゆる密告によって存在がわかって検挙したりという実態がいろいろ出ているわけです。ここで大きな四十名からの集団密航を取り締まったというわけですけれども、いろいろ聞いてみると、小さな小型船にすし詰めになって密航してきて、そして陸地に接岸してクモの子を散らすように散らばっていくという実態があるわけです。それがいろいろな形でわかって検挙されるということになるわけで、絶えずもっと大きな数の人たちの出入りがあるんじゃないかというふうに考えられるわけですけれども、そういう点について、先ほど年間二百四十名程度の人たちが密入国しておる、いままでで千二百十一名の人たちがわかったということなんですが、それはいわゆる警察の方にわかった数だけであって、わからない数というのは推定できますですか。
○大高説明員 先生御指摘のとおり、先ほど私が申し上げましたのは、主として韓国から密航いたしまして、警察へ検挙された者の数字でございまして、その暗数がどれくらいかということは、ちょっと推定が困難であるというふうに思います。 警察のたてまえといたしましては、もともとわが国が周囲海に囲まれまして長大な海岸線を持っておる、これを密入国といったような事象につきましては、できるならば海岸線で押さえるということが最も望ましいわけでございますけれども、御承知のように警察力は限られておるということから完全防遏ということはなかなか困難な実情にございます。したがいまして、警察としてはやはり港湾なりあるいは船舶なりあるいはまた落ちつき先なり、いろんなところでいろんな情報をいただくことにいたしまして、また、警察官につきましてもいろんな係の警察官がそれぞれの仕事をやります以外にそういうものを発見するチャンスがあるということで、いろいろ教養をやりつつ、できるだけこういう密入国者を水際で検挙する、あるいはまた、落ちつき先におきましても情報活動を強化して検挙をするという形で臨んでおるわけでございます。 なお、こういう取り締まりにつきましては入国管理局あるいはまた海上保安庁との協力が大切でございまして、私ども日ごろから定期的に会合を行うと同時に、各種の情報を交換し、あるいはそれぞれの府県レベルにおきまして合同の取り締まりも行うというような形で万全を期しておる次第でございますが、今後さらに取り締まりの結果、あるいはまた各種の事件の取り調べ結果等を捜査面に生かしつつ努力をいたしてまいりたいと、かように存じておる次第でございます。
○沖本委員 先ほど入管局長が御説明になったとおり、大体出かせぎ的な人たちの密航が主になってきている、いわゆる韓国内の経済事情というものがそういう事態を巻き起こしてくる、日本より韓国の方が経済事情がよければ密航者がふえるということはあり得ないわけで、日本の方が経済事情がいいという点に魅力があって日本へ出かせぎに来ているということになるわけですね。 ですから、こういうつかまった人たちは悪人ではないと思うんですね。非常に素朴な善良な人たちが多く犯罪者として、もちろん密入国するわけですからそういう取り扱いになるわけですけれども、事態はいろいろ違うわけですね。在来からおる人の中でいろいろ問題が起きてくるというような点から考えていきますと、特に永住権をとっておる人たちの中にいろいろ問題を起こす人たちが多い。いわゆる法律で守られておる、犯罪を犯しても本国に送還されることはよほどの大きな犯罪を重ねないとそういうふうにならないということから、むしろ韓国系の若い人たちが暴力団なり何なりというふうな悪質な事件にかかわっておることが多いということが見受けられるわけですね。そうすると、こういう内容を見ていきますと、むしろその善良な人たちは何とか職を与えてあげて生活の道を立てられるような、まあ外国人であるわけですけれども同情してみたくなってくるし、さりとて日本で特権を持って悪いことをする人たちはむしろ本国へ帰っていただきたい、こういう気持ちに私たちはなるわけですけれども、こういう点について、現在の永住権そのものなり、あるいはそういう特権を持っている人たちの悪質な事件に関係する人たちに対して、何らかの法的な考え方なりあるいは措置なりをお考えになっていらっしゃらないかという点についてお答え願います。
○影井政府委員 まず、在日の韓国人で日韓間の協定に基づきましていわゆる協定永住権を持っている人たち、この人たちの中の犯罪者の処遇につきましては、協定に明白な規定がございますので、この規定の精神によりまして処理してまいらなければならないかと考えております。 御承知のとおりに、七年を超える刑という場合に国外退去を命じ得るというのが基本にございまして、これは日韓の協定でもございますので、その精神と申しますか、これに従って処理していかなければいけないかと考えております。 それから、済州島その他からの密入国者、この人たちは本来は善良な人ではないかという御指摘で、まさしくそのとおりであろうかと思いますけれども、しかしながら、済州島から日本に入国するにつきましては、これは正規の手続があるわけでございますので、その手続を経ないで密入国をしてきた人たちは、私どもといたしましては、そういった裏口と申しますか不法に入国した人々、これは、その人々は善良でありましても、手続を経ないで入国した人々であるから、もとの土地と申しますか、そこに帰すというのがたてまえであろうということで、これを基本の考え方として処理をしているわけでございます。
○沖本委員 もちろんその正規の手続で入国する場合には、ビザとの関係で、求める職業なり何なりとのあれが食い違ってくるとたちまちそれは違法であって帰されていくというようなこともありますし、そういう正規の手続を経て入国するには非常な苦労があって、なかなかそういうものは取れないというような事情も出てきてそういうことになっていると思うのですね。ですから、実際にビザを取得する費用よりもむしろ密入国をする場合の費用の方が高くついているのが実態らしいので、それは十分御承知だと思います。行くときは一人頭四、五十万から二百万ぐらいのお金を積まないと日本に行く船に乗せてもらえない、それもダンブルの底の船底で水につかって暗やみの中で立ったままで連れてこられる、それで三日も四日もかかって入ってくるというのが実態なんですね。 そういうふうな内容を考えてみますと、もう少しそういうものを検討していただく余地があるんじゃないだろうか。もっとも、日本のいまの労働事情というのは、失業者がだんだん出てきていますから、経済成長を遂げておったときとは事情が違ってくるわけですけれども、人として扱う場合に何らかの考えが必要ではないだろうか。先ほど七年を超える刑の判決を受けた者は向こうへ帰せると言いましたけれども、実際はそういう悪質な人は韓国自体が受け取らぬというような事情も私は聞いているわけなんですが、そういうふうな点についてもう少し、永住権そのものの内容なり、そういう権利を持っている外国人の実態なりというものを、日本に即したような、善良な人が日本に永住できていくということにしてもらわないと、日本人自体が迷惑するということもあるわけです。 そういう点を十分検討していただきたいと思うわけですけれども、そういう点については警察庁の方は単に取り締まる、あるいは違法者があれば検挙するという点にとどまっておるのでしょうか、何らかの形で実態をお調べになっていらっしゃるんでしょうか。
○大高説明員 御承知のように、警察といたしましては、出入国管理令に基づきまして各種の法違反は取り締まりをするというのが当然のたてまえでございます。 なお、この間におきまして、私どもの方も、入管と同様、こういった密入国の特徴その他のものはいろいろ把握しておるという状況でございますけれども、保護につきましては、あくまでも違法なものについては違法として取り締まりをやっていくというのが基本的な方針でございます。
○沖本委員 これをやりとりしておると堂々めぐりをやり出しますので、この辺で締めくくっておきたいと思うのですが、これは本当に永住権の内容を検討していただいて、もう少し韓国側と折衝していただいて、内容をもっとすっきりしたものにしていただきたい、こういうふうに考えるわけですけれども、法務大臣、この辺どうお考えでございますか。
○稻葉国務大臣 あなたと警察及び入国管理局長との質疑応答を聞いておりまして、改善、検討を要する点もあるように思います。よく相談いたします。
○沖本委員 それでは警察庁の方、結構です。ありがとうございました。 法務省の刑事局長にお伺いします。 先日、毎日新聞に出ました法務省の犯罪被害者補償法要綱というものについて御質問したいわけですけれども、前国会で私、法務大臣にお伺いしましたところ、これはぜひとも必要なんだということで、法務省でも検討することはするけれども、法律を早く成立させようと思えば議員立法の方が早いのじゃないかというふうなお話を大臣なさったことを記憶しておるわけでございますが、とりあえず法務省からも要綱が出てきた。これからわれわれ野党からもいろいろな案をお示しして議論をしながら煮詰めていくようなことになっていくとは思いますけれども、一応この要綱が法制審議会にかけられて、そして正式に法務大臣に答申されて、大臣の方から法案として国会に提出されるというふうなことになるわけですが、やはりそのめどをお立てになっていると思うのですけれども、どの辺にございますでしょうか。
○安原政府委員 お尋ねの点につきましては、先般法務委員会でも申し上げたところでございまして、これからの作業の予定といたしましては、まだ本日もお尋ねがあるようでございますが、補償の要件を故意犯に限るか過失の場合も含むかというような問題あるいはその傷害の程度というようなものをどの程度に考えるかというような問題とか、あるいは補償の方式につきまして、いわゆる自賠法のような一時金方式でいくか、証人の被害の関係のような被害の程度によって、あるいは遺族の稼働能力の有無等によって、一時金方式プラス年金方式を併用するかどうかというような方式の問題とか、それから公明党からも出ております裁定機関をどうするかというような問題、あるいはこの認定と刑事裁判との関係をどう考えていくかというような問題等、まだ検討を尽くさなければならないいろいろな問題がございますことと、それから何よりもどのようなスケールでやるかということにつきましては、現に殺人、傷害致死等、いわゆるそういう事犯で被害を受けた方がどういう生活の状態にあるかというようなことの実態を把握いたしませんと、立法としては現実性を欠くことにもなりますので、この調査をいま鋭意やっておりまするが、これが終わりまして一応の結果がまとまりますのは来年の三月というようなことになっております。それが技術的というか事務的な問題でございます。 なお、そのほかに、何よりも法務省が案を確定いたします前には、何と申しましてもこれは広い意味での社会福祉政策の一環としての制度でございますので、厚生省を初めとするその種社会福祉制度を扱っております所管省と、案の内容につきましてもバランスのとれたものであるかどうかという点について協議を遂げなければなりませんし、なお簡単な試算の結果によりましても、一応六十億くらいの財政規模になりはせぬかというふうにも思われますというと、これは財政にも大きな負担でありますので、財政当局とも合意を得なければならぬという問題もございますので、事務的な技術的な検討並びに関係省庁との協議というようなことを経ませんと、法制審議会にかけるという段取りには政府提案としてはならないというふうに考えますので、一応そういうことをわれわれは前向きで検討しながら、関係各省との意見の調整も終わるとすれば、先ほどの技術的な検討も含めて、一番早くとも来年の秋ぐらいまではかかるのではなかろうか。仮に秋ぐらいまでかかって一応の事務的な検討を終わって法制審議会へかけるといたしまして、法制審議会ではなおやはり一年ぐらいの審議を要するほどに重要な問題のように思われますので、そういうことで、来年の秋ごろ法制審議会にかけて、一年ほどの審議の経過を経て御答申を得て、法案をつくるというようなことに目下のところでは見込んでおるわけであります。その間にいろいろといま申し上げたような困難なあるいはむずかしいと申しますか、経なければならない手続のあることを御理解いただきたいと思います。
○沖本委員 そうすると来年の秋ぐらい、再来年、それ以降――まあ大臣がこの前おっしゃっていた、相当時間かかるということでございますから、日の目を見てくるという時点には相当まだ日時を要するということになるわけです。 私たちが各党別に委員会の方へいろいろ要綱を御提案してみました。委員長もそれをいろいろ取り上げていただいて、前向きに御検討していただいておるわけでございますけれども、そういたしますと、われわれの出しているものなり何なりもいろいろとごしんしゃくいただいて、そういうものの中からよりよきものを生み出していく、こういう形でお進めいただけるんでしょうか。あるいは、単に法務省案をつくったのでそれに基づいて一本調子で最終的な法案を得て、その段階でいろいろ野党との議論をしてみるということになるのでしょうか。その点はどうでございましょうか。
○安原政府委員 当然、公明党初め各党からお出しをいただいておる案を参考にさしていただきながら、日本の国に最も適した案をつくりたいというふうに考えておりますし、現に公明党案の特徴と考えられますどの程度までこれをさかのぼって補償するかというような問題、あるいは過失を含めるかというような問題、あるいは裁定機関をどういう形でつくるかというような問題は、われわれとして非常に大きな関心事でございます。
○沖本委員 そこで、一応要綱をお出しになったわけで、要綱の中身についてはいろいろな御構想があって要綱にまとめられるということになるわけですから、その辺のところについてお考えをちょっと伺ってみたいと思うのです。 先ほど刑事局長からいろいろな点を指摘されておりますけれども、最初に、いわゆる故意犯だけを対象にして過失犯が対象になっていないという点があるわけですけれども、これはいろいろ問題があると思うのですが、一応要綱の中で故意犯にしぼったという点についてのお考えは、どういう点にあるのでしょうか。
○安原政府委員 これも、前の委員会で横山委員、諫山委員から御指摘があってお答えいたしましたように、毎日新聞に登載されましたいわゆる法務省の試案というものは、あくまでも、その事務を担当しておる一担当者の試みの案であり、強いて言うならば私の案でもある程度のことでございまして、この内容が法務省としての方針を決めた要綱ではないということを前提として御理解いただきたいと思います。そういう意味におきまして、法務省はなお過失犯を含まないで故意に限るという方針を決定したわけではないわけでございます。 ただし、確かに、先ほども申し上げましたように、その点は重要な問題でございますので、現に検討はいたしておりますが、その検討の過程における一つの考え方として試みに申し上げてみまするならば、諸外国のこの種の被害者補償制度を見ましても、過失犯を除外するものが絶対多数とは申しませんが、過失犯を除外している場合が少なくないようでございます。これを案じまするに、過失犯の場合は、そのほとんどが自動車の事故とかあるいは労働災害でございまして、すでに保険による補償制度があったり、またそれら以外の過失による場合におきましても、加害者に賠償能力のあるのが通常と思われるからではなかろうかと思われるわけでございます。しかしまた、他面、御指摘もございましたように、被害者の立場から考えますならば、故意犯による場合も過失犯による場合も、被害者にとっては同じでございまして、過失犯もしたがって補償することとして、自賠法とか労災法による補償を受けた場合はこれを除外するというような立法も十分に考えられるところでございますので、その辺の点を目下検討中であって、結論は得ていないというのが実態でございます。
○沖本委員 その補償の対象なんですけれども、国内に限られておる点があるわけですけれども、まあ最近のハイジャックの点でありますとか、あるいは松生丸の問題が発生しておって二人亡くなっております、こういう問題であるとか、現在六人がフィリピンでゲリラ、海賊につかまって、バシラン島のマグロ漁船の船員の生命の安全が危ぶまれているというような事態がありますし、今後もこういうことがないとは限らないという点が考えられるわけですけれども、これは新しい角度でこういう問題を検討していただいて、国外におけるこういう面についての補償も検討していただかなければならないのじゃないかと考えますけれども、との点はいかがですか。
○安原政府委員 その点もまた重要な問題でございまして、諸外国の立法ではやはり自分の国の主権の及ぶ範囲におけるいわゆる属地主義的な補償制度というのが通例のようでございますが、国民を保護するという保護主義に徹底いたしますならば、その犯罪の被害がどこで起ころうとも補償すべきではないかという議論も起こり得るわけでございまして、いわゆる毎日新聞に報道されました試案では、その点は国内に限るようになっているようでございますが、これは法務省としては決めたわけでもございません。ただ、国外における犯罪の被害で補償するという場合には、認定の手続とか立証の方法とかいうようなことでなかなかむずかしい問題もあろうかと思われます。そういう問題もございますが、御指摘のように、なお国際的な犯罪につきましても今後とも十分に検討いたしたい、かように考えております。
○沖本委員 それから「重大な傷害」、第二条の中の②にある「加療一カ月以上を要する傷害または別表に定める後遺障害の存する傷害」、こういうふうに出ておったわけですが、この期間を十五日以上にすべきだと考えますけれども、こういう点はいかがですか。
○安原政府委員 要するに補償の対象とする犯罪を特に故意の暴力事犯に限るとしても、傷害の程度がどの範囲までの者を補償するかということは、これは理論的には十五日としてはいけないということもございませんので、やはりどの程度の傷害の者について補償する必要があるかどうかということを、実態の調査の結果を含めて慎重に検討すべき問題でございまして、最初は財政負担等のこともありますので、できるだけしぼってスタートするとすれば、後遺症の残るような傷害に限るべきだというような議論も出てくるかと思いますが、これはあくまでもまだ流動的でございます。
○沖本委員 補償の金額の点ですけれども、あれには三百万か六百万ぐらいというようなことが載っておったと思うのですけれども、そういうふうになさった基礎的な考え方というのはどの辺にあるのでしょうか。
○安原政府委員 たびたび申して恐縮でございますが、まだ決めたわけではございませんが、たとえば一時金で考えますと、自賠法では、今度死亡の場合は千五百万円ということになっておりますが、自賠法の場合は、実は保険によってある程度負担をし合って、出し合ってというような形で補償ができるという意味において、原資になる資金の支出がすでになされておるということから、金額をそういうふうに積みやすいのではないかというふうに考えますが、今度の犯罪の被害者補償については保険ということは考えられませんので、完全に国民の税金によって負担していかなければならぬとすると、財政的に見てやはり金額の最高限度は自賠法ほどにはいかぬという問題があるのではないかというふうに一応思われること。それから、なお証人の被害の場合における補償問題等とのバランスということも考えなければならぬというふうに抽象的には考えております。 そういう意味において、金額は、一時金に限って考えるならば、自賠法は超えない、あるいは証人の被害給付に関する一時金の補償の額というものを一応のめどにすべきではないかというふうに現在は考えております。
○沖本委員 この問題は、学者やいろいろな方に来ていただいて、参考人としていろい意見を述べていただいたこともあるわけですけれども、われわれ日本国内にある場合には、自分の身の安全を図ることは、国の機関にまって生命、財産を守っていただく以外にない。それがそういうことにならないままに犯罪者によって損害を受けたということになれば、当然その辺は考えていかなければならない問題であるわけでして、ただ与えてやるとかいう物の考え方の基本に触れる問題になってきて、それが結局金額という形にあらわれてくるということになるわけです。ただ、自賠法が千五百万円に上げられたということは、最近のいろいろな物の基準としてこれが非常に使われておるということになるわけですから、きのう法律の上がりました刑事補償につきましても同じことが言えるわけで、同じような観点から金額は考えてあげるべきではないかというふうに私たちは考えますけれども、これは後の議論によるということにしたいわけです。 最後にお伺いしたいのは、いわゆる遡及についての問題なんです。一部にはそういう問題はおかしいのだという御意見もないことはない。それを考えると際限がないのだという点も出てくるわけですね。刑事局長が、大体年間六十億ぐらい要るのじゃないかということで、一年さかのぼれば、ことしの分と前年度の分で百二十億ということになるわけですけれども、この運動を起こした人たちは、被害を受けて運動を起こして、そしてその考えの中にあるものは、同じ目に遭って泣いておる人たちということで、過去にすでに被害を受けた人たちの立場からこの問題が考えられていき、そしてその運動も起こってきておる。また、私たちがこの法律をぜひともつくらなければならないというふうに考えたのも、やはり三菱の爆破事件とかそういうことが発想の一つの原因になってきているということになっていきますと、ただそれを全然さかのぼらないという考え方は、こういう人たちを切り捨ててしまうということになり、発想の原因を切ってしまって、法律をつくる以上はこれから向こうに向かってということになるわけですけれども、やはりさかのぼった点を考えて、その人たちの救済も考えなければならない。その法律の中に入らないということであれば、別途の救済方法を十分に考えた法律をつくっていかなければならない、こういうふうに私は考えるわけですけれども、その点についてはいかがでございますか。
○安原政府委員 いまの点は、先ほども申しましたように、検討を要する重要な課題でございまして、制度の運用の結果の公平を得るというためには、極力さかのぼることが公平を期するゆえんであろうかと思いますけれども、これは端的に申しまして、どこまでさかのぼるかということについては、事実認定の方法の問題というような技術的な問題のほかに、何よりも国の財政負担との関係において、どういうスケールでさしあたりスタートするかという問題もございますが、御指摘のことは、制度の公平という点から言って重要な問題でございますので、今後真剣に検討いたしたいと考えております。
○沖本委員 先ほど刑事局長がおっしゃっておられたとおり、いま実態を調査しているのだということでございますから、政府の方としての調査の実態がはっきりしてくれば、さかのぼったとして、どの程度さかのぼらなければならないかという点も明らかになってくるのじゃないかというふうに考えられます。そういう点で、そういうものはもう全然やらないのだ、こういうお考えでなくて、十分その問題を含めた今後の検討をお願いしたいと思います。私たちも極力そういう点について勉強しまして、われわれの考えもお示しして、よりよい法律をつくっていきたいと考えております。 以上で終わります。
○小宮山委員長 八百板正君。
○八百板委員 法務大臣もおいでですが、法務大臣にお伺いするまでもなく、民事局長さんにいろいろ伺ってと思って希望を申し述べたのでありますが、主として身元引き受けですか、身元保証に関する問題についてお尋ねしたいと思うのです。 結果的に言って、私がこの問題について、これは大変な問題だなと思ったのは、実は足利銀行の問題で、具体的に起こりました保証人の責任に関する問題が大変気になりましたものですから、それがきっかけになってこの問題に取り組む、と言ってはなんですが、これは大変な問題だ、こういうふうに考えたわけであります。 そういう経過がございますので、まず、大蔵省関係の銀行課長さんお見えですな。大蔵省関係の方からちょっとお尋ねして、本論といいますか、その方に話を進めていきたいと思います。 よく銀行で歩積み両建てという問題が大変問題になって久しいのでありますが、余りよくなったという話も聞かないのですが、これは一般的にはどんなやり方が代表的なやり方なんでしょうか、ちょっと御説明願いたい。
○小宮山委員長 ちょっと速記をとめて。
○小宮山委員長 速記を始めて。
○八百板委員 大蔵省にお伺いします。 銀行を監督するというか、そういう任務を幾分持っております、幾分どころじゃない、かなり持っております大蔵省として、銀行で常に前々から問題になって、いまなお絶えず問題になっておりまする歩積み両建てという銀行の不正行為ですね、これは一般的にはどういうことを指しておるのか、これをちょっと御説明願いたいと思います。
○宮本説明員 歩積み両建て預金につきましては、非常に批判等も多いものでございまして、われわれといたしましても前々から何度か通達を発しましてやっておるわけでございます。主としてわれわれがねらっておりますのは、過当な歩積み両建てということでございまして、取引関係から生ずる自然のものは、これはやむを得ないと思うのでございますけれども、どうも金融機関によりましては、貸し出しをしましてすぐに預金を要求するとか、要するに一般的常識から考えまして非常に厳しいことを要求しているような点もございますので、そういうものをとらえまして特に報告をするように求めますし、かつ、検査等におきましてもそれを十分審査いたしておるというふうな状況でございます。 そういうことでございまして、五月、十一月には特に過当な歩積み両建て預金につきまして報告を求めまして、それに対しましてわれわれとしてもチェックをいたす。特に報告が、検査に行きましたときにその報告と間違っているような、若干虚偽報告のようなものが仮に見つかった場合には、特に担当の役員というものをあらかじめわれわれの方に申告させておきまして、役員以下、たとえば支店長など、それぞれ責任を特に厳重に追及したいということでわれわれとしても対処しておる。特に去年の四月に出しました強い通達によりまして厳しく指導いたしておるところでございまして、また国会でしばしば御指摘もございますので、ことしの八月にはまた改めて特別の通達を出したということでございます。
○八百板委員 いまのお話、言葉じりをとらえるわけじゃありませんが、貸し出しをするとすぐに預金の要求をする、こういうお話がありましたが、それはちょっと専門家の実情認識としては逆じゃないですか。貸し出しする前に預金するということを決めておいて、それから貸し出すんじゃないですか。そこのところはちょっと大蔵省の認識が甘いんじゃないんですか、われわれ素人の見解だけれども。
○宮本説明員 その点につきましては、いろいろのケースがあろうかと思います。確かに全然預金取引のないお客さんに対しまして貸すかどうかという点がございまして、まず預金をしてもらわないと貸し出しはしないというふうなことを言う金融機関もあるようでございますけれども、しかし一般的には、私どもが言っておりますのはそういう点も含めてはいるのでございますけれども、主として貸し出しをいたしますときにとにかく預金を要求するというところが一応ケースとして多いものでございますから、その辺をとらえて指導いたしておるという次第でございます。
○八百板委員 常識として、たとえば一千万円借りてもすぐに一千万円使わないという場合があるわけですから、一千万円借りても七百万円はひとつ預けておいて次に必要なときにというようなことはあるんでしょうけれども、しかし、大体において、これは私素人だからわかりませんが、いわゆる定期預金にさせて、そしてそれを担保にして貸す、こういうふうな形をとるんじゃないですか。これはどうです。
○宮本説明員 貸し出しをいたしますときには実は担保をとるのが普通でございまして、預金を担保にとることもございます。それから不動産を担保にとることもございます。あるいは保証人を要求することもございますけれども、いずれにいたしましても、従来普通にあります、預金を担保にとりますような場合には、それが過当なものでない限りあるいはこれはやむを得ないかもしれません。しかし、その場合に、いま申し上げましたように、非常に過当に担保を要求したりあるいは貸し出しと同時にそういうようなことをやる点につきましては、われわれとしては、これは非常に不当な行為であるということで実は追及いたしておる次第でございます。
○八百板委員 それで、いけないという通達は結構なんですが、通達されたら守るぐらいの良識ある運営がされておるなら、こんな問題はもうすぐになくなっちゃうんだと思うのです。ですから通達じゃだめなんで、やはりしっかりした事実を押さえるような、そういう努力が必要だと思うのですね。これは、さっき足利銀行の話をちょっと申し上げましたが、不正行為ですね、銀行自身の不正行為あるいは行員の不正行為、そういうふうなものは日常専門的にやっておればわかると思うのですがね。だから、ちょっと気をつければ行内でもわかるし、同時に、大蔵省銀行局というのは専門的に全国の銀行にしょっちゅう一々あれこれ言っておるのですから、勘でわかるぐらいにわかるんじゃないかと思うのです。ですからそういう意味で、ただ通達だけじゃなくてもっと的確な指導、監督の方法があるはずだと思うし、やっていると思うのですが、それはどういうふうにやっていますか。
○宮本説明員 確かに最近といいますか、これは金融機関の前からの行動の癖なんでございますけれども、要するに業容の拡大という点が第一番の目標になっておる点が、私どもとしては歩積み両建てがなかなかなくならない理由でもあるし、かつ、不祥事件もなかなか絶えないという理由ではなかろうかと思っておりまして、こういう業容拡大の競争的なものにつきましては、特に厳しく指導なりあるいは検査、監督をしなければいけない、こう思っております。 ただ、それは一般論として別にいたしまして、もう少し具体的に歩積み両建てを退治しろというふうな御指示かと思いますけれども、その点につきましては、ずいぶん前から何度も申し上げておりますように、やっておるわけでございますが、最近も特に定期預金だけじゃなくて一般の要求払い預金であっても、たとえばそれをおろしに行こうといたしますと、にらんでおってなかなかおろさせないとかいろいろ不当な行為もあるようでございまして、近々全銀協の方に指示いたしまして、もう少し大々的にキャンペーンみたいなものをさせたらどうかということで、店頭に表示をいたしまして、たとえば現在拘束いたしております預金につきましては通知を申し上げておるわけでございますけれども、拘束いたしておるという通知をしている以外の預金は自由におろせます、もしも窓口でおろしてはいけないというふうなことを言われた場合には、こうこうこういうところに申し出てくださいというようなことを店頭に掲示させたらどうかというようなことも考えているわけでございます。まあ具体的にいろいろと実は案を考えつつあるわけでございます。
○八百板委員 業務の内容がわかりませんから見当外れかもしれませんけれども、最近銀行のいろんな事務なんかかなりコンピューターでもって操作されておりますね、オンラインなんというので。したがって、相当正確に、時間を置かずに的確にあらわれてくるんじゃないかと思うのですね。であるとすれば、そういう、私、作業の工程がわからないから言いにくいんだけれども、やはり流れとか傾向とかいうようようなものは専門家の勘でわかると思うのですね。お医者さんが脈をとってわかるように、あるいは心臓の心電図を見ればわかるように、やはり一つの流れというものがわかると思うのですよ。だから、これはこの辺がちょっと異常だなということはすぐわかると思うのです。いまちょっとお話の中に拘束というお話がございましたが、拘束率というふうなものがあって、異常の一つの方向がつかめるのでしょう。そういうふうな点はどうですか。
○宮本説明員 実はわれわれがとります報告におきましては、マクロ的には数字が非常に改善されておる数字に実はなっておるわけでございます。ところが、これだけ申し上げてもまた先生からおしかりを受けると思いますけれども、数字的にはいいのでございますが、拘束をしていないと言っておきながら実は事実上拘束されておるようなものもあるのでございまして、この辺が具体的に検査に行ったりあるいはいろいろなそういうふうに不当な目に遭ったお客さんからの何か苦情の申し入れというふうなものがございませんと、なかなかつかめないのが実態なんでございまして、われわれといたしましてもその辺は単なるマクロ的な数字で満足していることなく、個々具体的なケースについて指導するような姿勢で仕事をいたしているつもりなのでございます。
○八百板委員 そこで、検査をされているというお話もございましたが、そうして役員の責任追及なんかもしているというお話がございましたが、これはどの程度の役員に対する責任追及をしておるのか。ひとつ過去の事例について、こういう事実についてこの程度の役員の責任追及をしたというふうな事例を、いまはちょっと無理でしょうから整理して教えてください。お願いします。その辺がちょと私は甘いんじゃないかという感じを持っておることからの資料の要求であります。 それから足利銀行のあの場合も、ちょっと私の調べた範囲では、やはり定期預金を架空というか偽造して、それを担保に金を借りた、こういう形の事件ですね。したがって、現場で定期預金の拘束率をずっと表でもって見ていって、たとえば一年ものがどのくらいあるとかいって、こう対比していったところが、そのあるべきはずのものがなかったというところで発見の動機になったというふうにぼくは聞いているのですが、銀行局でも聞いているでしょう。
○宮本説明員 確かに足利銀行につきましては検査もいたしておったわけでございますが、たまたまその栃木支店の検査自体が行われていなかったことで、われわれの検査の中では発見できなかったというようなことがございます。それから、銀行の中で本店で検査をやっておるわけでございますけれども、これも若干検査に手抜かりがあったということで発見できなかった。結局、発見できたのは、いま御指摘のように、特にあの栃木支店の預金担保、要するに定期預金を担保にして貸し出す比率が異常にふくらんでおるということで、拘束預金を役所側からいろいろ言われるというような点もございますかもしれませんが、本店の方で拘束預金の検査に入ったところが、特に栃木支店自体がちょっと異常な数字だったものでございますから、そこで不正が発見できたというようなことでございまして、御指摘のとおりでございます。
○八百板委員 銀行検査をやっているというお話ですが、栃木支店の場合はやらなかったというのですが、大蔵省の責任において、あるいは地方財務局の責任において、どのくらいの程度にやっていますか。
○宮本説明員 検査につきましては、大体二年ないし三年に一回定例検査というのを行います。別途、たとえば土地融資のときとかあるいは歩積み両建て等の問題につきまして、特別に臨時に検査を行うこともございますが、定例的には大体二年ないし三年に一回ということでございます。
○八百板委員 定例の検査は抜き打ちですか、予告ですか。
○宮本説明員 抜き打ちでございます。
○八百板委員 抜き打ちといっても、どの程度の早わざで抜くのかわからないけれども、二年か三年に一回ということになると、これは回り切れませんね。どのくらいの対象があるかわかりませんが、何人ぐらいの検査官が出動するのですか。そして何日間くらい。
○宮本説明員 銀行の検査につきましては、銀行の規模によっても違いますけれども、五人ぐらいの検査官が一つのチームを組みまして、足利銀行クラスになりますと二十日間くらいが大体の例でございます。
○八百板委員 五人かその程度の規模の専門家が二十日くらい行って調べればかなり調べがつくんじゃないかとも思うのですが、しかし、二、三年に一回というのじゃ、検査を受けるところもまた少ないということになるのじゃないかと思うのです。たとえばわかりやすく言うと、大蔵省で監督する銀行が幾つある、直接に監督する銀行が幾つある、その幾つのうち一年に何カ所の抜き打ち検査をする、こういうふうなわかりやすい数字になるとどんなふうになります。
○宮本説明員 ちょっといま具体的な数字は持っておりませんけれども、たとえば、現在、本省で監督いたしておりますのは都市銀行と地方銀行の一部でございます。あと財務局に監督をゆだねているところもございます。これは相互銀行、信用金庫まで含めまして非常に大きな数になるものでございますから、一概にはちょっといまここでどうだということを申し上げられませんが……。
○八百板委員 これはひとつある程度調べて教えてください。
○宮本説明員 はい。
○八百板委員 銀行の監督責任だけを追及するという問題ではなくて、この問題にしたって銀行自身の監督責任が大いにあるわけですが、これもまた私ども素人の常識からいって、調べてみますと、何と二年足らずの間に六十三回同じようなことをやっているんですね、この足利銀行の問題は。ですから、これは気がつかないのがちょっとおかしいと私は思うのです。同じ筆跡でもっていろいろな文書を書いて、同じことを繰り返しているのですから、どんなにうまくやっておったって、どこかで気がつくものだと思うのです。われわれ国会議員、いろいろと陳情を受けたり、文書の陳情なんか受けますけれども、事務職員がいいかげんな名前を書いて、ぱらぱらとたくさん書く陳情書と、それから本当に本人が心を込めて書いた陳情書は、これはわれわれちょっと見た勘でわかりますね。また同時に、これはここまでは同じ人が書いたんだなということもわかりますね。恐らく警察の人だって宿屋のだんなさんだって、いまはそんなことはないかもしれぬが、宿帳を見たら、これは本名か偽名のアベックかぐらいは勘でもってわかるのじゃないかと思うのです。銀行なんというのは、本人の自筆でなければいかぬとかなんとか言って一般に対しては要求している業務の中で、内部でそういうことがわからないというのは、私にはちょっ理解できないのです。現にわからなかったようなんですがね。 今度は、そういう際の受けた損害を保証人に要求する、こういうふうなケースが出てくるわけです。こういうふうなケースについて、実は私、保証責任についての資料をちょっと大蔵省に尋ねたところ、こういうものをもらっておるのです。あなたは御存じですか。私にくれたこの「衆議院八百板正議員要求資料」というもの、御存じですか。
○宮本説明員 はい、存じております。
○八百板委員 持っていますか。
○宮本説明員 身元保証に関してでございますか。
○八百板委員 「金融機関別の職員の不祥事件についての概況」です。
○宮本説明員 それは持っております。
○八百板委員 「不祥事件における保証人の保証責任についての指導等」。
○宮本説明員 はい、持っております。十一月七日でございますね。
○八百板委員 そうです。これを要求してもらったんだけれども、これを見ると、「保証人の保証責任については、各金融機関の良識的判断により処理されるべきものであると考えている。」というふうなことがあって、そしてその具体的な中身は、項目の中に「なお、保証人の保証責任の履行につき、問題となった案件は、現在のところ報告を受けていない。」こうあるのですが、受けていないのですか、本当に。
○宮本説明員 正式の報告を受けておる件は実は一件もないわけでございますが、足利銀行が事件発生後に身元保証人について過当な賠償責任を要求したという事実を新聞記事では見ましたけれども、その後、その点につきましては地元でいち早く身元保証人との間で良識的な話し合いに達したということで問題はおさまりましたという報告を受けておったわけであります。
○八百板委員 そういうことになると、「問題となった案件は、現在のところ報告を受けていない。」というこの資料、これはうそですな。実際は報告を受けているのですね。
○宮本説明員 その「報告を受けていない。」というふうに書きましたのは、要するに、こういう問題が生じて現在こうなっておるというふうな正式な報告は受けていないということで、事実上本件に関して耳にしたことはございます。
○八百板委員 その大蔵省からいただいた資料を見てもそう感じるのですけれども、何か、なるだけ資料はわからないように出す、こういう方針ではないんですか。はっきり答えてください。
○宮本説明員 いや、そういうことはございません。国会の先生からの御要求に対しましては、誠心御回答申し上げています。
○八百板委員 いまわれわれのところに来ている官庁の統計は整理し切れないほどあるのですよ。われわれは整理とは捨てることだと考えています。それほど過剰な統計資料がどんどんわれわれの部屋に入ってきます。そういう中で、大蔵省に対して私の責任において改まって要求した場合に、こんなピラピラ二、三枚で、何の報告も受けていない、こういう報告を出すということ、これはまさに、なるだけ教えないようにという方針のもとに書かれた報告書であることは明らかですよ。そう思いませんか、常識として。課長に聞いても無理かもしれぬけれども……。
○宮本説明員 確かに、保証人の保証責任の履行の問題につきまして、正式に報告を受けたことは実はないわけでございまして、その点を「受けていない。」とお書きしたわけでございますが、足利銀行について事実上そういう問題があったということは、後刻話としては聞いたことがございますが、いわゆる行政上の問題として報告を受けた、受けないという問題ではなかったものでございますから、そういう御回答をいたしたのです。
○八百板委員 それでは、ここに最近における「職員の不祥事件についての概況」という四十七年、四十八年、四十九年の数字が示されておりますが、数字だけで五十八とか三十七とか六十三とかいうことではわかりませんから、これはひとつ、どこの機関、企業でどんなことが起こったということを教えていただきたい。できますね。
○宮本説明員 これは個別の問題でございまして、そういう個別の問題につきましては一般に役所から外部にはお話し申し上げないというのがたてまえになっておりますので、ちょっとその点はここで御回答申し上げるということは差し控えさせていただきたいと思います。
○八百板委員 そうすると、この不祥事件というものが何か検察機関の摘発でも受けるとかいうことになって、新聞にでも出るとかいうふうなことにならない限りはだれも知らないということですか。これは。
○宮本説明員 少なくとも、役所からそういうことをお出しするわけにはまいりません。
○八百板委員 何か、こういうところでこういう不祥事件が起こったということは言えないという規則がありますか。
○宮本説明員 個別の私企業の問題でございまして、そういう点につきましては、行政府としてお話し申し上げることはできないということでございます。
○八百板委員 その点は保留しておきまして、さらにまた明らかにしていただきたい点を要求したいと思います。 知らないとおっしゃるから一例だけ申し上げます。銀行の名前言わない方がいいというんだったら言わない方がいいかもしれませんが、新聞にも出たことですから申し上げますと、大東相互銀行で預金証書を行員が盗んで、その預金証書によって預金を取った。そしてその取られた人に対しては利息を払いに歩き回っているというふうなことをやって、約五年ほど前に三千二百六十万円の横領をいたしました。これには本人のお父さん並びに保証人が二人ついておりまして、銀行側は早速本人のお父さんと保証人に対して払ってくれという請求をいたしまして、いわゆる三名を相手に、ほとんど発覚すると即時に請求訴訟を起こしております。これは五年がかりで裁判になりまして、その不始末を犯した人のお父さんは家屋敷を約七百万円見当に値踏みして、これを銀行に提供しております。それからあと二人の保証人に対しては、請求訴訟の中でだんだんやっておるうちに、銀行側で不正をやっていることに気づいた時期があったというようなことが明らかになってきたものですから、それ以後の分を請求するということはちょっと問題があるというふうに反省したのでしょうか、だんだん話が詰まってまいりまして、最終的には二人の保証人が二百六十五万二千百十七円を負担して示談いたしております。しかし、その間に二人弁護士を委託しておりまして五年間争っておりますから、私が見ました資料だけでもこんなにあるんですよと言って、一抱えの書類を私に示して、この被害者は女医さんですが、嘆いておられました。そして示談になったので二人の弁護士に百万円ずつ二百万円支払っているのです。ですから五年間にかかった費用と、まあ弁護士に払った費用を計算するのは筋違いかもしれませんが、被害はやはり同じでありまして、そういうわけで営業の上で五年間の犠牲も大変なものだと思うのです。 こんなふうな形で、いとも簡単に身元保証の責任が追及されておるという例があるわけであります。この保証人が、管理にミスがあっても全部取るのですか、こう聞いたところが、身元保証人からは契約書に書いてあるとおりに全部いただくのです、約束のとおりです、こういうことを言いながら、ある場面では、身元保証人が医者で金がある人でよかったわいというようなことを言っておったという、これは傍受した話でありますが、そんな話も耳にいたしておるわけであります。そして、その保証人は、私は善意と親切をもって、しかも会社に対して協力するような気持ちで身元保証を引き受けたのに、こんな形で自分の上にかかってくるとはあんまりひどいじゃありませんかというようなことを言って、どうかそういうような法律を改めてください、もう私だけでたくさんですと、こういうふうなことを述懐せられておりましたが、こういう例はたくさんあるのではないかと思います。 こういうふうな点について、事銀行だけではございませんから、後で法務省の見解も伺いたいと思うのでありまするが、少なくとも銀行の身元保証にかかわるそういう案件についてどういうふうな見解を大蔵省として持っておるか、この際ひとつ示していただきたい。
○宮本説明員 銀行が職員を採用するに当たりまして、身元保証人を立てさせまして、その銀行に損害を与えたときは弁償するというふうなことを契約するのは、一般的になっておるわけでございます。ただ、その被保証人の不法行為によりまして保証人に多額の保証責任を負わせて、一般常識から考えまして余りひどいじゃないかというふうな点も多々あるわけでございまして、その点につきましては、私ども勉強したところによりますと、身元保証ニ関スル法律等におきましても、その責任は合理的な範囲に限定しようとしておるようでもございますし、また、その保証人の賠償金額の算定に当たりましては、雇った側の監督の不行き届きというふうな点などもよく考えて、損害額全般を補償させるなんというふうなことは非常におかしな話じゃないかというふうな精神もこの法律で盛られておるようでございます。私どもといたしましても、身元保証契約によりまして保証人に保証責任が生ずるにいたしましても、具体的な賠償金額は諸般の事情を考慮した上で決定さるべきでございまして、その点は銀行側の常識ある判断を待ちたい、こういうふうに思っておるわけでございます。
○八百板委員 銀行側の良識と言っても、大蔵省に監督するという立場があるとすれば、やはり一つの方向をもって指導するという考えがあってよいのではないかと私は思うのです。足利銀行の場合、初めは多額の金額を保証人に要求したが、世論の批判などもあり、いろいろな面を調べた結果、この身元保証の不合理性などにもだんだん気づいて、そして最終的には、こういう身元保証というような前時代的な制度は採用すべきでなく、今後は信用保険制度というふうなものに移すべきものだというふうな方向に考えが進んだように私は承知いたしておりまするが、経過的に見ますと、二億一千百九十万円ですか、というふうな損害をそのまま、しかも保証人なり本人のお父さんなどがあっても、負担能力のあるところに向けて一番先に請求されると、こういうふうな形でその経過としては進んでおるわけでありまして、その間、非常に善意をもって身元を保証し、ある意味合いにおいては銀行に協力するぐらいの気持ちで行員を送り、また身元保証を喜んで引き受けたというふうなのが、結果においてお先真っ暗というふうな悲惨な状態にうっかりすると追い込まれるのではないかというところまで立ち入ったのであります。 そういうふうな経過をとりながら、いま申し上げましたように、身元保証の制度は保険の制度に改めらるべきものだという見解が、これらの犠牲と問題にぶつかったことの結果、ある意味では学んだものだと思うのでありますが、そういうふうな点を大蔵省はやはり十分に検討して、銀行の行員の身元保証制度に対しては新しい一つの見解をもって指導するというこういう態度を私は打ち出すべきものだ、こういうふうに思うのですが、こういうふうな点についてひとつ課長見解というようなわけではちょっと困難でしょうから、大蔵省としてひとつ検討の課題として十分に検討してもらいたい、こういうふうにこれは希望します。
○宮本説明員 先生御提案のお話、非常によくわかりますので、特に事例をもう少し調査をさせていただきまして、前向きに検討させていただきたいと思います。
○八百板委員 この問題は大蔵省だけの問題ではなくて、広く全企業に関係する問題だと思うのですが、金銭上の問題でとかくそういうことの起こしがちな点については、大蔵省は銀行あるいは証券、保険その他お金を動かす方面に関係が一番多いのですから、そういう意味で率先して一つの方向を検討してもらいたい、これはひとつ強く要望しておきます。 一般的な問題として、身元保証の問題についてひとつこれは法務省にお尋ねをしておきたいと思うのでありますが、私はこの問題をちょっと調べましたところ、余りにも問題が深く、問題が多過ぎて、私自身一体どういうふうに処理すべきものかというふうな点について簡単な結論なり方向を見出せない大変むずかしい重要な問題だというふうに感じたのであります。もともと身元保証と言いますけれども、法律的にもそうだと思うのですが、一般的にわれわれ常識としても、一体何を保証するのかということがはっきりしないのであります。これはわれわれもうっかり、ほんの好意をもって身元保証みたいなものにぽんぽん判をついているかっこうが現にあるのでありますが、中には、かくかくかようの損害を与えた場合には身元保証人においてその責めを負いますというようなことを書いたものもあるわけでありまするが、しかし、実際上、そういうものを自分が弁済するようになるだろうというようなことは実際問題として考えないで、ぽんぽん身元保証しておるというのが通例であります。しかし、事改まって問題が起こりますと、これは過酷なる追及を受ける法律的基礎があるんだと、こういう主張をされますると、これは大変なことになるわけであります。先ほど触れました足利銀行の場合でも、最初に二億何千万円の賠償責任があるんだというようなことを言われた段階では、その御本人は本当に荘然自失、四百年かからなければ私は払えない、こういうふうに考えながら、本当にどうしていいかわからないという心境であったと私は承知をいたしております。で、身元保証と言っても、これは人間の保証ですから、まあ犬とか馬とかいうんだったら、これは身元保証――保証ということになれば血統保証とかなんとかいうことになって、血統書つきとかいうことになって、大体性向がわかる。これはどういう方面に強くてどういう方面が弱いとかいうふうなことが血統書でわかると思うのです。人間の場合だったら、これは当然に、どこに生まれて、だれを親として、そこに何番目にできた子供だというふうなことがはっきりすれば、それ以上明らかにするということは実際上、これはできないんじゃないかと思うのです。その程度でありまするならば、これは当然に戸籍謄本でも取ればそれで十分なわけでありまして、不確定な、わけのわからない、範囲のわからない形でその人間を保証させるというふうなことを条件にして雇用契約を結ぶというふうなことは、これは非常に前時代的なものであって、今日、労働三法によって労働の基本権が定められ、またいろいろの近代的な人間の独立が尊重される観念の中で、一人の人間を雇用関係の中で全然関係のないと言ってはおかしいけれども、全然別個の第三者が保証をする、そうしなければ採用されないというふうなことは大変不合理な点が多いのではないかと思います。 いろいろ聞き当たってみましたところ、公務員については今日そういう保証を取っておらないということであります。しかし、事のついでに足元の国会はどうだ、こう思って国会の方をちょっと聞いてみましたところ、国会職員は取っておるのであります。取るといっても、国会の場合はそういう厳しいものじゃないが、またそれだけに非常に漠然とした、どこまで責任があるかわからないというようなものにもなるのじゃないかと思います。 参考までに、国家公務員は取っておりません。それから地方公務員の場合は取っておらないとは言い切れないのでありまして、地方公務員法に違反しない限り、条例や規則で定めることはできるというふうな、問い合わせに対する回答であります。そして昭和三十年代ころに、任用の条件にしないことで取ってもよい、こういう通達を出したが、その後現金扱いが少ないので、しかも五年でもって効力がなくなって自然消滅するというようなことになるから、自然と取らないようになったところが多い、こういう実情があります。 三公社五現業の場合は、国鉄は損害補償責任を求めるという趣旨ではないが、紹介人というふうな趣旨で取っておるようであります。 〔委員長退席、保岡委員長代理着席〕 それから電電公社の場合は、国家公務員に準じて本社では取っていないが、地方でも特に指導はしていないが、機密にタッチするような部門について若干そういうことをやっておるということのようであります。地方は地方通信局長の裁量でやっておる。保証書を取る場合には生活指導的なものとして扱っておるというふうなあれであります。 国会の場合は、身元保証書として、「在職中の身上については一切をお引き受けします。もし本人に不都合の行為のあった場合は私が責任を負います。」これが国会の身元保証書であります。これは私どもの国会の例を全然知らないじゃ、ほかの方のことを言ってもと思って……。 たとえばこの例を見た場合でも、本人に不都合の行為のあった場合私が責任を負います、というのですから、これはまことに何が不都合だかということはわかりませんで、非常に漠然とした幅の広いものだというふうにも考えられる。しかしまた、運用のしようによっては、取っても取らないでも同じだという言い逃れもできる、こういうものだろうと思うのでありまするから、それだけに、要らないものなら取らないような方向で持っていくべきだ、こういう意見が出るわけであります。 この問題について、法務大臣にお尋ねしようとは思わなかったのだが、法務大臣おいでですから、ひとつ法務大臣の見解をまずお聞きしたいと思います。
○香川政府委員 身元保証二関スル法律は、この法律がないといたしますと、契約自由ということでいろいろ問題がある身元保証契約がされるわけであります。雇用契約が勢い長くなっておりますから長い期間保証しなければならぬとか、あるいは損害がいかほど生ずるかなかなか予見しがたいために、全く考えもしない莫大な損害賠償の責任を負わされるというふうないろいろ不都合があるわけでございます。昔から金受けはしても人受けはするなというふうに言われているのはまさにそういうことを物語っておるわけでありまして、そのような保証人の過酷な負担が強いられるという点を何とか保護をしなければならない。さればといって、身元保証契約自身を全く法律上無効にすると申しますか、あるいは禁止するというふうなことになりますと、雇用関係にも影響いたしまして、保証人を立てないために雇用されないというふうなことも考えられるわけであります。そういうふうなことから身元保証人の過酷な負担を何とか調整しなければならない、さような趣旨で、身元保証二関スル法律が制定されておるわけでございます。 期間の点について申しますと、雇用契約が長くなれば、本来ならば雇用契約の通じている期間全部保証しなければならないということに相なりますのを、この法律では原則的には期間の定めがなければ三年、それも契約で決める場合でも五年以上は決めてはならぬというふうに身元保証人の責任を負う期間を制限いたしておるわけでありますし、また、途中での事情変更もございますので、そういうときに使用者からの通知義務を課しまして、その通知によって身元保証人が身元保証契約を解約できるというふうなこともいたしておるわけであります。さらに具体的に賠償責任が問題になりましたときに、損害が生じましたときに、全部の損害を身元保証人が責任を負わなくちゃならぬということはきわめて過酷でございますので、裁判所におきまして一切の事情をしんしゃくして適切、妥当な賠償額にとどめるというふうなことも配慮しておるわけであります。 さような意味から、この身元保証契約が存在する以上は、身元保証人の過酷な責任を免れさせるというふうな趣旨からこの法律は必要だろう、かように考える次第でございます。
○八百板委員 たまたまお話の中で、雇用にも影響があるのでというお話がございましたが、やはりこれは雇用とは別個の問題だという認識が少なくとも専門家の間では判断されてしかるべきものではないかと思うのです。あなたは玄人だし、私は素人なんだが、法律の門外漢なんだが、常識として私は申し上げておるのです。この雇用契約によって当事者でもって雇用関係ができるのに対して、それに全然別個の第三者が何か起こった場合の損害なり何なりの担保みたいなもの、保証をする、こういうものでありますから、そういう意味で基本的に労働の基本権とか人権とかというような点からも問題になる考え方ではないかと思うのですが、その辺のところはどんなふうにお考えですか。
○香川政府委員 本来ならば、雇われている者がその行為によって使用者に損害を生ぜしめたということに相なりますと、原則的にはその雇われている者がその損害の賠償をしなければならぬ、かようなことになるわけであります。ところが、使用者の方から見ますと、被用者の損害賠償義務だけでは損害が発生した場合に十分償われないという不安があるのは当然のことでございまして、さような意味から大事をとってと申しますか、どうしてもそういう損害が万一発生した場合の担保的な意味で身元保証人をつけさせるということは、実際問題として防ぎようがないことではないだろうか。それがけしからぬ、こういうお説のようでございますけれども、しかし、使用者のこうむる損害の担保ということもやはり考えざるを得ないわけでありまして、そういう損害が生じた場合に、被用者から全然賠償が取れなくてもそれは使用者が甘受すべきことだというところまではとうてい言い切れない問題だと思うのでありまして、さような意味から、物的担保にかえるとかあるいはいまお説のような保険の制度を設けるということも一つの方法かと思いますけれども、これらすべてを法律でもって強制するということが妥当かどうかは慎重に検討しなければならないわけでありまして、やはり人的保証的な身元保証というものの必要性はなお今日において全くないと言い切ることはできないのではなかろうか、かように考えるわけでございます。
○八百板委員 お話の中にもありましたように、昔からの、伝統的な徳川時代からの封建的な主従関係を残したものだと思うのです。不勉強でよくわかりませんが、外国には余り例がないというふうに伺っております。外国の例など御存じでしたらひとつ教えていただきたいと思うのであります。日本の場合は、連帯とか共同とかというような考え方については特殊と申しましょうか、かなりいい面の発達がある国だと私は理解しております。 それは、私は農業の方面にずっと関係が深いものですか、日本の農業の持っておる特質から農村なり人間社会にどういうふうなものを形づくっておるかということに当然目を向けるわけでありますが、水田農業は御承知のように水というものによらざるを得ませんから、したがって、水というものは一人で幾ら力んでもどうにもならないのでありまして、当然に部落の共同とか地域の共同とかいうふうなそういう連帯と共同の観念をおのずからつくっていく、地域社会にそういうものを育てていく条件を持っておる、そういう水田産業の中に今日をつくった日本のいわゆる良俗と申しましょうか、いろいろのいい面があると思うのであります。そういう面の悪いところ――悪いところというかそういういい面を逆用して、利益を中心にして損害が起こったら関係のない者に負担させる、しかも保証人は、頼まれればちょっと引き受けないわけにはいかない。一般的な常識として、身元保証人なんというものは拒むのが非常識であって、引き受けるのが常識的だ、こういうふうな一般通念に最近はなっております。最近というかそういうふうに来ていると思うのであります。でありますから、本当にそんなことが起こるとは全然考えず、そんな損害が自分のところにやがてかかってくるなどということは考えずに、本当の善意でもって、まあひとつおいで、喜んで判をつきますというような形で判をつくわけでありまして、それが結果においてははからざる災害となって、むしろ逆に公序良俗を破壊するような欠陥が起こってくるわけでありますから、そういうふうな点から考えましても、現にたくさんそういう習慣がありますけれども、その習慣の中でいいものと悪いものはやはり振り分けるくらいの感覚が必要だと思うのです。そういう意味で、現にあるからといって、これを肯定して発展させるというふうな考え方ではなくて、現にあってもよくないものはこれをためていく。それが現に公務員の中で身元保証の制度がとられておらないということは、明らかにそういうようなことの反省といいますか、古い習慣を振り切った一つの結果ではないかと思うのです。 そういう意味で、必要だと思うというふうな考え方でなく、この点には問題があり、もっとよくする必要がある、そういうふうな感覚の必要性を私は求めたいのでありますが、見解はいかがでございましょうか。
○香川政府委員 おことばを返すようでございますが、先ほども申し上げましたように、まさに義理人情から、大して考えもしないで身元保証をするという事実、事態がある以上は、そういうことで身元保証人が思わざる責任を負わされるという事態は、やはり身元保証人の保護という面から何らかの法律的な規制は要ると思うのでありまして、さような必要性からこの身元保証人の責任を軽減するという形でこの法律ができておるわけでございます。もちろん、いろいろ問題点がないわけではございませんので、さらに実態を踏まえてこの法律の改正が必要かどうかということは検討しなければなりませんけれども、身元保証それ自体があることを前提にいたしますれば、この法律はやはり身元保証人の保護という意味でなお必要だ、かように考えるわけでございます。
○八百板委員 民法ができまして保証責任というふうな問題が規定されました段階で、そういう一般的な民法の規定では無限に保証責任を追及するということは過酷だ、実情に合わない、こういうふうなことのために、それに対する一つのチェックと申しましょうか、少し明らかにするという意味で昭和八年の身元保証二関スル法律というものができ上がったものだと思うのでありますが、しかし、これは考えようによりますと、どの程度近代的なものかよくわかりませんが、とにかく民法の新しい近代法規によって、これは古い話ですが、いわゆる徳川時代の貞永式目百カ条程度の法律から近代法律になった。そういう中でも依然として身元引き受け、身元保証というふうな封建性が残って現存しておる。それがいろいろの弊害を起こしておるという事実を取り上げて、そしてこの六カ条の法律をつくったものだというふうに私は考えるのであります。 そういうふうな面から考えますと、法律そのものが、新しい民法と同時に古い封建性は払拭されて、権利、義務等の関係が当然に明確にされていくべきにもかかわらず、残っておっていろいろ弊害を起こしておるからというので、それを引き出してこれを明らかに示す一つの法律の形につくり上げた、こういうのがある意味合いにおいては昭和八年の法律ではないかと思うのです。この法律ができたから、あるから身元保証ということは正しいんだといいますか、こういうふうな法律によって明らかにされておるのであるから当然必要であり、また同時に、現在世間にも横行しておるんだからこれでいいんだ、こういうふうな考え方に持っていくのは、歴史の経過をずっと見ながら思うとやはりちょっと前向きの考え方ではないんじゃないかというふうに思うのですが、いまの御答弁で、さらに改正する必要があるとか、検討すべき問題は検討したいというふうな意向がちょっぴりございました。この問題は、最初にも申し上げましたように、新しい憲法のもとで、あるいは労働三法ができ、基本的人権が新しい角度から考えられる今日の時代に、三十年も四十年も前に、しかも古いもの、残っておるもので弊害があるからと言ってこれを取り上げて六カ条の条文にした法律でありますから、ある意味では保証責任の限度を決めて保護するとは言いながらある面においては古いものをもう一遍、いわば寝た子を起こすといいますかそのような形で持ち出してこれを適法の舞台に乗せたという面もあるんじゃないかと思いまして、そういう意味で今日の段階では新しい角度から再検討せらるべき時期に来ておるのではないかというふうな見解もあるわけであります。 これらの点について、民事局長の御意見がございましたが、同時にまた、法務大臣からも一言御意見を伺っておきたいと思います。
○稻葉国務大臣 私にも身元保証の経験があって、少し損害を払ったこともあります。額が少のうございましたからうまく払いましたが……。 それで、やはり法治国家ですから、こういう法律があることを踏まえて保証はなさるべきものだ、自分も保証すべきものだ。それ以来非常に慎重になりまして、必ず一年に一回はおれのところに来い、ことに銀行などに保証する場合は。そして、保証人自体もこの法律を活用して損害を受けないようにきちんとやったらいいんじゃないかとは思いますが、しかし、問題がいろいろあるとおっしゃいますから、あなたの御意見もごもっともな点もあるし、御指摘でもありますから、この法律の改正を要する、たとえば期間の短縮であるとか、私いま考えておりますことは、そういう点について検討するにやぶさかではありません。
○八百板委員 たくさん尋ねたいことはあるのですが、時間もたちましたから、本日は私がこの問題について問題を提起するという程度にいたしまして、今後も引き続いて研究して改善の方向を私は打ち出したい。また同時に、法務当局も、いろいろ関係の方々もそういう方向で御協力をいただきたい。専門家や世論もこの問題についてはまだ余り掘り下げたものがないようでありますから、各方面の御協力によって問題をさらに深めてよい方向に持っていきたい、こういう意味で問題を出しまして、今後またさらにこの問題に法務当局初め皆さんの御協力をいただきたい、こういう気持ちでございますので、その角度で御協力をいただきたいという希望を述べながらきょうのところはこの程度にとどめます。どうもありがとう。
○保岡委員長代理 横山利秋君。
○横山委員 昨日、八百板さんのお話を聞きまして、私も大変興味のある問題と思いまして、私なりに若干の勉強をいたしまして、いまの質疑応答を聞きましてちょっと感じたことを含めて聞きたいと思います。 香川さん、あなた学者だから、一体身元というのは何だということなんです。身元を保証する。養老院に入ったおじいさん、おばあさんに対して身元保証をするということは、老後もうどうにもならなくなったら引き取るあるいは死んだら引き取るという意味も含んでおると思います。それから一般の身元保証の場合においては、本人が悪いことをした場合に、あなた監督者なのに何しておるといったときに、おれは知らぬと言えない抗弁権を放棄するという意味もありましょう。それからいまのお話のように、悪いことをやったら弁償するという債務保証の感覚もあると思うのであります。それから本人がまじめにやっておるかという、いま法務大臣がおっしゃったような監督責任、そういう身元保証もあると思う。そう考えてみますと、先ほど国会の職員の諸君の一切の責任を負われておる、そういう一切という意味において身元という言葉が感じられると思うのですが、民事局長はどうお考えですか。
○香川政府委員 余り勉強しておりませんので、身元という言葉の由来はよく存じませんが、少なくとも現在法律用語として身元保証と言われておりますのは、いろいろの類型はございますけれども、被用者の行為によって使用者が損害を受けた場合、その損害を補償する、損害の賠償責任を負う、こういう趣旨のものが身元保証というような意味合い、だと思います。
○横山委員 私の聞いておるのは、身元保証ニ関スル法律の身元ではないので、身元ということはどういうことか、身元を保証するということはどういうことかといえば、養老院で死んだおばあさんを、養老院が自分で処置をしなければならぬので、おまえさん持っていってくれというふうな意味も含むのでありますか。それを損害と言えるかどうか。実に広範な意味があると思います。この広範な意味を受けて、法律は身元保証ニ関スル法律ということになっておるのですが、なるほど民事局長のおっしゃるように、これは民法の四百四十六条以下の制限規定、民法にそういう保証債務のあるべきことを示しているけれども、余りそれはえらいから身元保証についてはこれだけに制限をする、限界をする、保証人を守るという意味がある、こういうふうに先ほどお答えになりましたが、そうですが。
○香川政府委員 そのとおりでございます。
○横山委員 それが昭和八年ですね。昭和八年の時代といまの近代感覚、人権を守るということと、私はずいぶん感覚的に違っておる、時代の相違があると思いますよ。 先ほど八百板さんに対して、銀行課長の宮本さんは答弁が不十分だと私は思う。あの銀行は二億一千百五十万円を五十五回にわたって悪いことをしているわけですね。その五十五回にわたって悪いことをしておることを保証人がどうしてわかる。わかる可能性があるとすれば銀行がわかる。銀行が初めてそれを摘出できる。保証人がどうやってそれを調べることができる。大臣がおっしゃったように、おまえ何やつておると一月に一回来いと言ったくらいで、そんなことわかりはせぬのだ。そうでしょう。銀行こそがそれをわかる。その銀行を監督する銀行局もわかる立場にある。ところが、さっき八百板さんが言うように、銀行を監督する銀行局の検査官がかえって悪いことをしている。だから私は、銀行を検査する検査官を検査する検査官をつくれと言ったことがある。だから、直接責任は悪いことをやった――五十五回も悪いことをやっておってわからなんだということがおかしい。調べる立場にいつもある人間がわからなんだ、それをさらに調べる、上の調べる人間がそれもわからなんだ。その責任をたな上げにしておいて、それで保証人おまえ全部払え、そんなあほうな話がこの際通用しますか。どうですか、民事局長。そんなばかな話が通用すると思いますかね。
○香川政府委員 先ほどの足利銀行の具体的な事件はどういうふうに結末がついたか、まあ示談ということでございますけれども、この法律に即して申し上げますと、五条におきまして、裁判所が身元保証人の損害賠償責任の有無、それからあるとすれば、その額を決めるに当たりまして、いまお説の銀行の方の行員に対する監督上の過失の有無ということは当然しんしゃくされまして、使用者の方がはなはだ監督不行き届きであったということに相なりますと責任もゼロというふうな判断も裁判所はできるようになっておるわけでございます。その辺のところで調整されておると私ども考えております。
○横山委員 聞きもせぬことをあなた答える必要はない。 人事院が来て見えますけれども、人事院は国家公務員に対して身元保証書を採用のときに請求していませんね。
○小野政府委員 一般職の国家公務員の採用に当たりましては、その要件として身元保証を要するというようなことにはなっておりません。
○横山委員 それは昔、国家公務員でも身元保証をとっておったと思いますが、それをいま採用の基準を決める人事院がとらないという理由は何ですか。
○小野政府委員 これは国家公務員法にも明文の規定がございますが、任免の根本基準といたしまして成績主義の原則、つまり能力の実証に基づいて任免が行われなければならないというように定められておりまして、その趣旨に従って運用しているわけでございます。
○横山委員 なぜ身元保証書が必要でないと判断するかということを聞いているのですよ。
○小野政府委員 申し上げましたように、能力の実証としてそのものは必要でないということでございます。
○横山委員 わかりました。 法務省官房長、おいでになりますが、法務省は身元保証書をとってお見えになりますか。
○藤島政府委員 ちょっと突然でございましたので、正確ではございませんが、とっていないと思います。
○横山委員 法務省もとっておらぬと言うのに、民事局長がとるべきだと言わんばかりの話をしておるのは大変奇異な話なんですよ。どうもこの勝負はあなたの負けですよ。あなたのところ、自分自身がやる必要がないという立場の人間が、そこへ座るととらなければいかぬような顔をしているというのはおかしいじゃないか。どうなんです。
○香川政府委員 私は身元保証を常にとるべきだと申し上げたつもりじゃないのでございまして、世の中でそういうことが行われるということを禁止することは無理ではなかろうかということを申し上げたわけでございます。
○横山委員 そこで、私がさっき言ったように、昭和八年の法律はその当時においては――昭和八年といいますと、大分戦争前ですね。その当時の社会情勢、社会常識、感覚からいうとそれは必要であった。私も認めましょう。しかし、いま昭和五十年ですよ。四十二年たっているのですよ。その間に一回大きな戦争があって、新憲法ができて、人権が尊重されて、いまの銀行の二億一千百五十万、五十五回の例をもって示されるように、そんなことを保証人に言うことが無理ではないかという点については、あなたもある程度おわかりになると思う。 そこで、それならどうしたらいいかということなんであります。私、きのうからいろいろの人の意見を聞いて考えた。二つの方式を私は個人的に提示したいと思うのです。 一つは、この身元保証ニ関スル法律、六条ありますが、大体「身元保証」という言葉が私には気に食わぬ。だから、「雇用契約に伴う損害賠償の保証に関する法律」、つまり、この法律は使用者と被用者の問題なんだ、銀行で銭を借りた貸さぬという問題じゃないのですね。使用者が使用者たるの優越した立場を利用して、被用者に対してやらなくてもいいことを強制しておるということだと思うのです。やる必要もない、いまでは人権無視になるからやってはいかぬというようなことをあえてやっておるという問題だと思うのです。ですから、それならそうで、「雇用契約に伴う損害賠償の保証に関する法律」というふうに考えを明白にさせたらどうだ。身元保証なんておかしなことは雇用契約の中で必要ない。 私の案は、まあ労働省も聞いていらっしゃると思うから、二つの案を提示します。そうして、大体三年ですね、長く期間があったら五年で区切る、五年たったらまた延ばすと、こういうわけですね。私の知っているある放送会社が保証人を年限が来たから更新すると言い出した。労働組合は一斉に反対して、応じないと言って大騒動したことがある。応じないから首切るかと言ったら切れなかったわけです、その放送会社が。保証人を更新期に出さないから、これは言いつけに従わないということで首切ることもできなかったわけですね。大体、新規採用して二年や三年ならいざ知らず、十年も二十年もたって、その保証人よりよく知っておる会社が新たに保証人の更新をする必要は全くない。 〔保岡委員長代理退席、田中(覚)委員長 代理着席〕 だから、第二条第二項を次のように改めて、「前項の保証契約は之を更新することを得ず。」更新が不可能にしてしまう。これが第二。 第三番目は、あなた裁判官がうまいことをやると言ったけれども、裁判官が言ったって、私は法律的に暗いけれども、この裁判は弁護士同士がやり合ってそれを裁判官が判定するだけでしょう。その保証人の弁護士が、会社があのときああやればよかった、このときこうやればよかったということを挙証をすることが不可能です。そうでしょう。私の言うことがわかるでしょう。うんと言いなさいよ。わかるでしょう。そうだとすれば、裁判官が証拠調べを必要によって職権でやらせるようにしなければだめだ。わかるでしょう。「裁判所は、前項の一切の事情を斟酌するため、必要があると認めるときは、職権で証拠調をすることができる。」この項目を入れなければだめだ。少なくともこの法律で、身元保証は現実にあるんだから、それはあるものをどうしろと言ったって無理だというなら、少なくともこの三点は改正をする必要がある。 その次は、これはあなたの案だ。あなたが言うような立場に立った案だ。その次は、後ろから言葉が出てますように、もうやめる。労働基準法の中に次の禁止規定を設ける。「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者の行為に因り使用者の受けた損害につき、労働者に対して保証人を立てさせてはならない。」と労働基準法に明白に書く。これを書いてどういう弊害があると思うか。基準法は賃金を払うときに天引きしてはいかぬとかいろいろな規定がありますね。それと同じように、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者の行為に因り使用者の受けた損害につき、労働者に対して保証人を立てさせてはならない。」雇用関係を締結するときに保証人を立てさせてはならない。これは保証人を立てさせてはならぬというだけであって、使用者がその被用者に対して損害賠償を請求する権利を損なうものではないですね。つまり、保証人制度はやめなさい。その立場は違うのです。採用されるときの立場は対等じゃないんだからやめなさい、こう言うておるわけです。この点について、まず労働省からおいでになりましたが、労働省はどうお考えでございますか。
○倉橋説明員 ただいま先生のお話のございました第一点につきましては、直接労働省所管でございませんのでお答えを控えさせていただきますが、第二番目にございました、労働基準法の中にこのような禁止規定を設けたらどうかという点でございます。 身元保証契約を行わせるかどうかという問題の立法問題につきましては、必ずしも労働省の所管ではございませんものですから、私の方からお答えする筋合いではないと思いますが、これを労働基準法に規定することの可否でございますが、仮に保証を禁止するような立法政策をとるというような場合におきましても、御承知のように労働基準法というのは労働者の最低基準等を保護する労働者保護の規定でございます。そういう観点で、類似の関係規定といたしましては、基準法十六条に、労働契約の締結に際して使用者は債務の不履行をあらかじめ違約金をもって定めてはいかぬとか、損害賠償の額を予定をしてはいかぬという規定はございますが、それの立法趣旨というのは、労働者が労働関係に不当に拘束されることによりまして、昔よくありました雇用関係から離脱できないというようなことを防止するための規定でございます。 本件の場合、身元保証契約を行わないというような規定を仮に置くとした場合に、その法の保護法益を考えてみますと、これは保証人の保護でございまして、直接労働者の保護とは関係がないと申しますか面接的な関係はないわけでございまして、労働基準法の中にこのような規定を置くことにつきましては問題があろうか、そう考えております。
○横山委員 厳密に解釈すれば、あなたの言うように私の案は労働者保護でないかもしれない。しかし、この保証契約、いまあらゆるところでいろいろなケースがあるのですが、身元保証に関する証書、身元保証書の内容はいろいろな角度でニュアンスが違うのであります。たとえば国税を幾ら納めておる、損害賠償に応じ得る資産を持っておる人でなければいかぬというのが民法の規定のどこかにありますね。それと同じように、ネコでもしゃくしでも保証人を立てればいいということじゃない。そうすると、その内容いかんによってはかなりな税金を納めておる人とか財産のある人でなければいかぬ場合がある。労働者はそういう人がない場合があるということなんですよ。ネコでもしゃくしでも生きておれば保証人になるという筋合いの問題じゃないんです。いわんや採用のときに、採用を決定する直前に保証人にだれを立てますかということを聞かれる場合があるんです。それを書いて出して、その保証人の名前を見ながら採否を決定する場合が往々にしてあるわけです。そのことを考えますと、これが労働者と縁もゆかりもない問題であるとは言いがたい。採否を決定する要因ともなるということも考えますと、使用者が使用者たる優越的な立場を利用して、弱者たる労働者に対して雇用をする際に過酷な条件を強いて、いざという場合に自分の損害を不当に軽んじしめる方法である、こういうことが私どもが言いたい点でありますから、厳密に解釈をせずに、もう少しマクロ的に考えてもらわなければ困ると思うのです。
○倉橋説明員 身元保証制度そのものが雇用障害になるということから、広い労働者の保護という立場から規定も考えられるじゃないかという御意見かと思います。 私も、いまのポストではございませんが、大分前に府県に参りましたときに、戦争の遺児の方々が就職の時期を迎える、なかなか保証人がないということで当時社会問題になりまして、府県の制度といたしまして知事の身元保証制度を立案したことがございます。そういうときに感じましたけれども、確かに身元保証人がないことが雇用障害になっているという面も見受けられたわけでございます。それから時代も変遷いたしまして、労働力が最近の不況のもとにおいては若干の緩和はございますが、一般的には使用者がその保証人の有無ということにつきまして雇い入れの採否の決定上の重大な要素にしているかどうかにつきましても、大分時代の変遷もあろうかと思います。 そういう点もございますが、いずれにしましてもこの問題は労働者の保護という形だけではなく、むしろ直接的には保証人の予期せぬ損失補償といいますか、保護という点にあろうかと思いますので、立法政策上は労働者保護規定の中よりも、規定をする場合におきましてももう少し別の観点を着目した立法規定の中で規定するのが適当ではないかと思うわけでございます。
○横山委員 まあ意見はありますけれども、次に法務省にその二案についての意見を伺います。
○香川政府委員 身元保証に関する法律についての改正の御意見の第一点の、法律の名前が悪いという点でございますが、これはお説のとおりだと思います。実質どおりに法律名をつけた方がいいと思います。 それから更新の禁止の問題でございますが、まことにこの法律では長期にわたる身元保証にはどうしても無理がある、予見しがたい事情がいろいろあるわけでございますので、したがって原則三年、契約で決める場合には五年という制限を課しておるわけでございますが、理屈を言えば更新するかどうかはこれは自由で、そのときに保証人が拒否すれば事足りる理屈でございますけれども、あるいはお説のように本人と申しますか、雇われている者のことを考えれば拒否しがたいというふうなことで、更新を余儀なくされるというふうなことがあるといたしますと、長期にわたるわけでございますから、身元保証人の責任がそれだけ加重されるという面から再検討を要する点であろうと思いますけれども、しかし、もともと三年ないし五年ということに限っておるのは、その程度なら予見できると言ってはちょっと言い過ぎでございますけれども、見通しはある程度立つ。したがって、更新の際に、やはり保証人の方でその辺のところをみずからの責任を回避する必要があるなら更新を拒否するということで、その時点から将来五年間についての予見はできるという理屈も一方では立つわけでございます。したがって、一概に更新を禁止するということでいいかどうか、若干この法律を維持する限りはいいかどうかという問題は残ると思います。しかし、それは一つの考え方だと思います。 それから、三番目の裁判所が職権で調査するということにしてはどうか。これは、理屈の上から申しますと、必ずしも民事事件であっても職権調査を取り入れてはならぬというアプリオリ的なものはないと思います。しかし、事柄は損害賠償請求の訴訟でございますので、身元保証についてだけ保証人の責任を軽減する観点から裁判所の職権調査ということを取り入れるといたしますと、一般的に不法行為あるいは債務不履行による損害賠償にはどういう関連、影響があるかということも考えなければならぬわけでございます。さような意味から、理屈は決してとり得ないことではございませんけれども、他との関連はやはり検討しなければならない問題だというふうに思います。 それから、法律は、どこへ書くかは別といたしまして、雇用契約を締結する際には、身元保証人を立てさせてはならぬという禁止規定を設けるという御説でございますが、率直に申し上げますと、そこまでいけることなら、一切の将来の損害担保のための手段を講じてはならぬというところまでいかないと、立法趣旨は十分生かされないのじゃないか。身元保証人を立てるなというだけの禁止にとどまりますと、それならば物的担保をよこせというふうなことになってはこれまたはなはだ困るわけでございまして、さらにまた、ほかの方法としまして、そういう将来の損害担保のために、たとえば賃金の一定割合を積み立てておくというふうなことになってもこれまた問題があるわけでございます。だから、一体その契約自由の原則が雇用関係について社会法的にどこまで強行法規的にいろいろの制限を課することができるかという一般論もあるわけでございますから、その辺のところでいろいろ検討しなければ、容易に禁止規定を設けるというわけにはいかぬのではないか。やはり慎重に検討しなければならぬ問題ではなかろうかというふうに思います。
○横山委員 時間がございませんので、お二人の意見に対して言い合うのはやめますけれども、私はこの論に対しては自信を持っていますよ。ですから、初めて私の意見を言ったから、一応ああそうですかというわけにもいかぬような気持ちらしいんだけれども、ぜひ検討を願いたい。 銀行課長にお願いをしたいのは、聞かれたように、厳然たる事実は、国家公務員には身元保証者はないということなんですね。国家公務員には厳然として身元保証制度はないということなんです。それは、国家公務員だからそんなものはとらぬでもいいということじゃないはずですよ。税務署だってお巡りさんだつて何だってかんだって要らぬということになっておるのですから。政府はみずからの雇用者に対してはとらぬのに、民間はおまえらの勝手だという考え方はちょっとおかしくないかと私は思いますよ。 それから第二番目に、本件が表に出てきたのは、足利銀行の二億一千百五十万、五十五回、それからです。ですからこの際、銀行局としてもえらい済まなかった、私の方も検査不十分だったと言うて、先ほどの八百板さんに対する答弁のように、そのことについて何の調査も報告もございませんでしたというような人ごとみたいなことを言わずに、この機会に銀行の検査について厳重に監視をして、同時に、身元保証人の制度があるから、いざというときにはあいつから取ったらいいという、そういう考えに浸らせぬためには、この際、身元保証人制度をやめたらどうか。やめることによって内部牽制制度が一層引き締まり、銀行局の検査も一層緊張するわけですから、そのたがをはずせ、こういうふうに指導なさったらどうですか、いかがです。
○宮本説明員 銀行が身元保証をとりますのは、多分預金者の大切なお金を預かっておるというふうなことに対して、特に万全を期したいという点からそういうことをやっておるのかと思います。ただ、そういう点につきまして、大蔵省といたしましても雇用契約の内容にまで立ち入って私ども指導することはできませんけれども、しかし、その後のいろいろな処置につきまして、今回あったようなケースは非常に問題かとも思いますので、その点につきましては金融機関側の良識ある処置に待つようにしたいと思いますし、その点につきましての注意はわれわれとしても喚起はしていきたい、こう思っております。
○横山委員 大臣、どうですか。どの人もどの人も気に食わぬ答弁ばっかりなんですよ。もう少し歯切れのいい、わかりましたということを一人は言いそうなもんだが、どいつもこいつも本当に歯切れの悪い話ばっかりですね。気持ちはわかっておると思うのです、私の言うことは。どうですか、法務大臣、あなたのひとつ快刀乱麻を断つごとき答弁をいただいて質問を終わりたいと思うのですが、どういうお考えですか。
○稻葉国務大臣 いままでの御所論のような段階で快刀乱麻というわけにはいかないと私は思います。検討はさしていただきます。
○横山委員 検討はするということをあなたはしばしばおっしゃるけれども、きょう八百板さんが提起されたこの問題は、かなり説得力のある問題だということはおわかりでしょうな。普通のように、やるかやらぬか一遍相談しようぐらいなことじゃないですよ。八百板さんが提起されたことはかなり説得力のある問題だ。具体的に社会党の方から試案ではあるけれども対案が出ておる問題ですよ。それを検討するぐらいではちょっといかぬな。
○稻葉国務大臣 あなたのお気に入るようなことを言って、やれないということは非常に信用に関しますからね。大信は約せずと言うて余り軽率な約束はできない。ただ、おっしゃることに私、気持ちの動く点もございますね。しかし、身元保証制度を全廃しろ、快刀乱麻の返答せよと言われても、全廃します、断言します、そんなことは言えるもんじゃないです。そんな無理なことを要求したって私はだめだと思いますね。ですから、検討さしていただきます、こういうことです。
○横山委員 終わります。
○田中(覚)委員長代理 諫山博君。
○諫山委員 いま、日本全国でさまざまな暴力が横行しています。私たち共産党は、いかなる暴力であれ、あらゆる暴力を絶滅すべきだというふうに考えております。ことしの一月一日、わが党の宮本委員長は新春インタビューの中で特にこの問題を取り上げ、当面緊急に解決しなければならない四つの暴力を指摘して、その絶滅を訴えております。第一は、部落解放同盟朝田派による暴力です。第二は、大学の内外で革マル、中核などが行っているいわゆる内ゲバ暴力であります。第三は爆弾事件、第四が政党の幹部などに対する右翼テロであります。私たちはこういう四つの暴力に代表されるあらゆる暴力を絶滅したいと考えていますが、そういう観点からきょうの質問を行います。 そこで、私自身もことしの法務委員会で幾つもの暴力問題を取り上げ、その根絶を呼びかけたわけですが、きょうは四つの暴力の中の一つであるトロツキスト暴力集団による内ゲバ問題を中心に質問したいと思っております。 私は、きょうの質問を準備するに当たって、法務省、公安調査庁、警察庁、そういうところにあらかじめ幾つかの問題について調査していただきたい、調査ができたら質問の前に資料を提供してもらいたい、そうしてなるべく委員会での質問を短時間に効率的に行いたいということを要望したわけですが、ほとんど協力していただけませんでした。週刊誌にいろいろ報道されている程度の資料も提供されないというのが実情であります。ただ、委員会で質問されたら答えますという態度表明がされておりますから、ぜひきょうは率直にすでにわかっている事実を御説明いただきたいと思います。さらに、私の質問は非常に多面的にわたると思いますから、答弁は短時間に、私が求めている質問に対する答えだけをしていただきたいと思います。 まず、警察庁に質問します。 トロツキストの内ゲバ暴力事件というのはいつごろから始まったのか、現在までに何件くらい発生しているのか、死亡者及び負傷者の数はどのくらいになっているのか、年度別の数字と現在までの総計を警察庁から御説明ください。
○福井説明員 お答えいたします。 内ゲバ死亡事件が発生いたしましたのは昭和四十四年からでございますが、ことしの十月末までに三十六件の死亡事件が発生しております。その結果四十三人の人が亡くなっておる、こういう結果でございます。
○諫山委員 私の質問は負傷者についても聞いているし、年度ごとの内訳も聞いております。
○福井説明員 お答えいたします。 死亡事件でございますが、四十四年には二件発生しております。四十五年が二件でございます。四十六年が四件、四十七年が二件でございます。四十八年は一件、四十九年は十件、本年が十五件でございます。 負傷者でございますが……。
○諫山委員 ついでに、年度ごとの死亡者も説明してください。
○福井説明員 いまのが死亡者の件数でございます。
○諫山委員 件数ではなくて死んだ人の数です。これは件数と一致しないでしょう。
○福井説明員 お答えいたします。 四十四年が二人でございます。四十五年が二人、四十六年が五人、四十七年が二人、四十八年が二人、四十九年が十一人、五十年が十九人でございます。
○諫山委員 ことしは十九人ですか。
○福井説明員 さようでございます。
○諫山委員 では、いまのような要領で負傷者の説明をしてください。事件及び負傷者、これを年度別に。
○福井説明員 発生件数でございますが、負傷者だけでよろしゅうございますか。
○諫山委員 はい。
○福井説明員 四十四年は千百四十三人でございます。四十五年は五百二十五人、四十六年は四百二十人、四十七年三百三十八人、四十八年五百七十三人、四十九年六百七人、本年は五百十七人でございます。
○諫山委員 年度別の負傷者の数はわかりましたが、発生件数はどうなりますか。
○福井説明員 お答えいたします。 四十四年は三百八件でございます。四十五年百七十五件、四十六年二百七十二件、四十七年百八十三件、四十八年二百三十八件、四十九年二百八十六件、五十年は十月末でございますが二百十五件でございます。(「そんなのは整理してプリントにして提出したらどうだ」と呼ぶ者あり)
○諫山委員 いま整理してプリントで提出したらどうかという発言がありましたが、まさに私はこのことを要求したのです。これを事前に資料としていただいておれば、このとおりですかという質問で済むから、そういう進行をしようじゃないかということを求めたわけですが、どうしても資料を提供してくれずに、聞かれたら答えましょうという態度でしたから、時間が長くなるかもしれませんが、これを繰り返します。 そこで死亡事件、それから死亡には至らなかった負傷事件の数と被害者の数が明らかになりましたが、この中で被疑者と目されている人の数はわかりますか。
○福井説明員 残念ながら、これについてはつまびらかにしておりません。
○諫山委員 それは、つまびらかにしようと思えばできることですか、それとも不可能なことですか。何人ぐらいの被疑者がおったのかということを私は年度別に知りたいわけです。
○福井説明員 残念ながら、未検挙の事件もかなりございますし、被疑者側はもちろん、被害者側の協力も十分ではない状況でございますので、被疑者の数についてはつかみ得ない、これが実情でございます。
○諫山委員 これは、私が要望したけれども怠慢で調べなかったというのではなくして、現在では何名の被疑者がいるのか、つかみようにもつかみようがないという意味ですか。
○福井説明員 いわゆる検挙、解決に至っている事件についてはつかんでおりますし、捜査が進展しておりまして、そういう状況についてもかなりつかんでおる事件はもちろんございますが、総数ということになりますと、未検挙事件を含んでおりますので、つかみ得ないというのが実情でございます。
○諫山委員 どうも、調べようにも真相がつかみにくいという説明のようですが、それでは何名検挙されたのか、これはわかりますか。年度ごとに説明してください。
○福井説明員 お答えいたします。 四十四年度は九百八十七人を検挙しております。四十五年度は五百八十四人を検挙しております。四十六年度は二百十六人を検挙しております。四十七年度は百六十四人を検挙しております。四十八年度は三百六十一人を検挙しております。四十九年度は四百二十八人を検挙しております。五十年度でございますが、十月末現在で五百六十一人を検挙しております。
○諫山委員 いまのは、死亡事件、負傷事件合計した数ですか。
○福井説明員 さようでございます。
○諫山委員 犯罪白書などではしばしば検挙率というのが問題になるわけですが、死亡事件、傷害事件の検挙率はどうなっているのか、年度別に説明してください。
○福井説明員 お答えいたします。 殺人事件の検挙率でございますが、昭和四十八年、四十九年の二年間とも九六%台でございます。傷害致死事件の検挙率でございますが、四十八年が九四%、四十九年が九一%という状況でございます。
○諫山委員 その場合の検挙率というのは、どういう数字になっているんですか。検挙率の内容です。
○福井説明員 これは警察庁刑事局の調査統計を担当しておる部局でやっておることでございますが、検挙件数を認知件数で割って百を乗じたものでございます。
○諫山委員 法務省に質問します。 いま死亡事件、負傷事件の発生件数、被害者数、検挙数が説明されましたが、この中で公訴提起をされた人が何名いるのか、公訴提起をされた事件が何件あるのか、説明してください。
○安原政府委員 先ほど来の警察御当局のお答えは、発生の件数を基準にして行われておりますが、警察と私どもとは統計のとり方が違いまして、私どもは、件数よりも、どれだけの人間を刑事訴訟法上内ゲバ死亡事件の被疑者として受理し、それをどのように処理したかということになりますので、勢い、結論は人員数によって申し上げることになりますが、その点を御理解いただきましてお答え申し上げますと……。
○諫山委員 そうしたら、警察から送致を受けて受理した人数と起訴した人数がわかりますね。それを四十四年から年度別に説明してください。
○安原政府委員 昭和四十四年は内ゲバ死亡事件、したがって罪名は殺人、傷害致死等になりますが、昭和四十四年は受理人員が三名で、すべて起訴して起訴三名、それから四十五年は受理人員が八名で起訴八名、四十六年は受理一名で、所在不明ということで中止処分になっております。 〔田中(覚)委員長代理退席、委員長着席〕 四十七年は二十一名受理いたしまして、起訴十九名、不起訴二名、四十八年は受理六名、起訴五名、それでいまだ処分留保一名、それから四十九年は受理三十八名、起訴三十四名、不起訴一名、少年のため家裁送致二名、処分留保一名、五十年は十月末でございますが、二十二名の受理をいたしまして、起訴が十八名、処分保留が四名、以上でございます。
○諫山委員 負傷した事件について同様のことを説明してください。
○安原政府委員 これは内ゲバ事件全体の数を申し上げればいいかと思いますが、昭和四十五年から以降について申し上げますと、四十五年は受理人員四百二十六名、起訴百五十二名、不起訴二百十名、家裁送致六十四名、四十六年は受理三百三十四名、起訴百十六名、不起訴百八十五名、家裁送致三十名……(「委員長、資料として提出させろよ」と呼ぶ者あり)これは差し上げてあるのです。――その他三名、これは中止処分等所在不明のためのものであります。それから四十七年は受理二百三十三名で、起訴七十五名、不起訴百十七名、家裁送致二十八名、その他の処分一名、四十八年は受理五百二名、起訴百六十三名、不起訴二百九十九名、家裁送致三十一名、その他八名、四十九年は受理五百四十九名、起訴二百五十四名、不起訴二百五十五名、家裁送致十八名、その他三名、今年は六月末の統計でございますが、受理百三十七名、起訴八十一名、不起訴二十六名、家裁送致二名、その他五名、以上でございます。
○諫山委員 全般的な数字がわかりましたから、少し特定の事件について質問します。 まず、本年発生した死亡事件について質問しますが、本年の一番古い死亡者はだれですか。警察でわかりますか。
○福井説明員 これは三月の六日に警視庁管内で発生した事件でございますが、都内の日通航空新宿支店で荷物の発送中……。
○諫山委員 死亡者の名前だけ言ってください。
○福井説明員 堀内利昭でございます。
○諫山委員 これは六日ですか、七日じゃないのですか。
○福井説明員 六日でございます。
○諫山委員 堀内利昭が死亡した事件では、被疑者は何名いるのか、何名逮捕されたのか、何名起訴されたのか、説明してください。
○福井説明員 これは都内の日通航空の新宿支店で被害者が荷物の発送作業中に、これを自動車で追尾してきたと思われます中核派と見られる数人に襲撃をされて、鉄パイプで殴打されて、被害者と、ほかにもいたようでございますが、ほかの者はうまく現場から離脱したわけでございますけれども、被害者が死亡したという事件でございますけれども、現在、特別捜査本部を設けまして、関係先を捜索するなど捜査中でございます。数人の者についてしぼり込むところまできておりますが、残念ながら検挙にまでは至ってない、そういう状況でございます。
○諫山委員 これはいまの説明にもありましたように、渋谷区の路上で、衆人環視の中で起こっているはずです。私がこの事件を報道した朝日新聞の一部を読み上げます。「六日夕、東京都渋谷区の路上で革マル派幹部が、七、八人の中核派に襲われ、鉄パイプなどでめった打ちにされ、病院に収容されたが同夜九時半すぎ、頭部打撲と出血多量で死亡した。警視庁公安部は内ゲバ殺人事件として、代々木署に捜査本部を置き、捜査を始めた。」これは朝日新聞の三月七日付。大体こういう状況ですか。
○福井説明員 それではそのときの状況を報告いたします。
○諫山委員 詳しくはいいが、大体いま読んだような状況でしたか。
○福井説明員 ちょっと御説明したいと思いますが……。
○諫山委員 じゃ、簡単に説明してください、たくさんの事件を聞きますから。
○福井説明員 本件は、発生をいたしましたのが三月六日の十七時十三分ごろでございますが、発生とほとんど同時に一一〇番が入っております。それによって警視庁としては事件の発生を認知したわけでございますが、それと間髪を入れずに、十四分にはすでに緊急配備を発令をいたしまして、機動隊員二個中及び所轄署員が現場に参ったわけでございますけれども、現在までのところ、被疑者を特定するだけの、いわゆる確たる目撃をした目撃証人を得ることができない等により検挙に至ってない、こういう状況でございます。
○諫山委員 いまの事件をもう少し朝日新聞に基づいて読み上げますと、「同日午後五時十分ごろ、渋谷区本町三丁目の駐車場内で七、八人の若い男が一人の男を取り囲み、鉄パイプでめった打ちにしていると、通行人から一一〇番があった。代々木署員がかけつけたところ、襲ったグループは全員逃げたあとで、路上に男が血まみれになって、意識不明で倒れていた。」中略「目撃者の話では、襲撃グループはいずれもサラリーマン風で、堀内さんをめった打ちにするとき「もっと打て、もっと打て」とかけ声をかけ合っていたという。襲撃後、全員が二台の車に分乗して、走り去ったが、このうち一台は目撃者がナンバーを覚えていて、同署は都内全域に手配、間もなく世田谷区松原一丁目の路上に乗り捨てられているのが見つかった。同公安部は現場に残された六本の鉄パイプの特徴などから襲ったグループは中核派とみている。」 これが事件の翌日の朝日新聞に報道されていますが、警察は、襲撃したのが中核派だと見ているのですか。
○福井説明員 諫山委員のただいまの御説明にもこざいましたが、確かにセクトを特定する場合に、鉄パイプの特徴というのは一つの着眼でございます。 そのほかに、本件につきましては、被疑者側は二台の自動車を使用しておるようでございますが、一台は現場から約五百メートルぐらい離れたところにあった品川ナンバーの車でございます。それと、彼らがそれを使って逃走した車でございますが、これも現場に先着しました制服員が追尾をしておりまして、ナンバーだけは控えておりますので判明しておるわけでございますが、そういう点を含めてるる捜査を進めまして、襲撃したのは中核派である。 もう一つ中核派と見ておりますのは、三月七日の革マル派の会見と三月八日の中核派の会見でこの事件に触れた部分があるわけでございますけれども、そういう部分を含めまして、襲ったのは中核派というふうに見ております。
○諫山委員 内ゲバというのは、やくざのかたき討ちのように、あるセクトの幹部がやられると、それに対して復讐が宣言される。そして実際に復讐が行われる。今度は逆に相手側からそれに対する復讐をする。次から次に復讐合戦が繰り返されるわけですが、この鎖の一つの重要なかなめを占めているのがこの堀内利昭です。 堀内の所属している組織の出している「解放」という新聞にそのときの模様が次のように報道されております。「解放」のことしの三月十七日ですが、公安調査庁持ってきていますか。「三月六日午後五時一〇分、解放社事務局員・「解放」発行名義人であり、反戦青年委指導にあたってきた同志難波力(本名、堀内利昭)は、二人の同志とともに日通航空新宿営業所において印刷物を地方諸組織へ発送する任務を遂行中、八人の襲撃者によって惨殺された。それは、ほんの一瞬の出来事であった。八人がかりで全身をメッタ打ちされた同志難波は、救急車が来た時にはすでに瞳孔が開き、呼吸困難に陥っており、」中略「九時三五分、死亡したのである。」 これは、殺された堀内が所属している組織の「解放」に載っている記事です。 加害者の所属している組織の「前進」には、これを一つの戦果として次のように報道しております。法務大臣よく聞いてください。「カクマル政治局員・「解放」発行責任者難波力を完全せん滅」難波というのが、死んだ堀内のペンネームのようです。そして次のようにせん滅の模様を報道しております。「午後五時十五分、わが革命的部隊は、難波が「異常なし」と奥に消えたあと、満を持して断固たる攻撃を開始した。謀略論の破産の中で、こともあろうにニセ「前進号外」を偽造するなどというCIAやナチスまがいの反革命的行為をどうして許しておくことができるというのか。わが部隊は正面玄関から同支店内作業場へ一気呵成に突入、このニセ「号外」策動の張本人難波力めがけて突撃した。二名の防衛隊残存JACは、わが部隊の姿を見ただけで戦意喪失、「ギャアー」という悲鳴をあげ、われ先にと逃げだしたのである。わが部隊は、追い求めてきた難波をどんなことがあっても逃がさないという決意も固く猛然と目にも止まらぬ速さで難波にくらいつきガッチリと捕捉した。二名の防衛隊は事務所の中に命からがら逃げこみ、「一一〇番だ、警察を呼んでくれ」とわめく。だが、誰ひとりとしてこの醜悪な反革命分子に見向きもしない。わが部隊は、めざす難波をついに計量器の前でひっとらえた。」中略「難波はニセ「号外」発行という天人ともに許すことのできない反革命的罪状にふさわしく、みずからのドス黒い血の海に沈んだのである。わが部隊は、権力の非常戒厳体制をつき破り全員生還した。」 警察庁にもう一遍質問します。これだけの事件でだれ一人つかまえていないのですか。だれ一人検挙していないのですか。もう一遍答えてください。
○福井説明員 先ほどもちょっと御説明いたしましたように、いわゆる犯人をしっかと特定するだけの目撃者が得られないというむずかしい事情があるわけであります。革マルも触れておりますように、犯行が一瞬のできことであるということで、いわゆるこれが犯人であるということをはっきり指摘できるだけの参考人が得られないという事情があるわけでございますが、たださっきも申し上げましたように、遺留自動車、それから逃走しました自動車のナンバーその他、この犯人を特定するまでには至りませんが、若干でも目撃している人等からの事情聴取等を進めまして、幾人かの者についてしぼり込みを行っておる、こういう段階でございます。
○諫山委員 事件が起こったのはことしの三月六日です。そして、これを見た通行人が一一〇番に電話しております。加害者の中核派ではおれたちがやったんだということを宣言しているわけです。これだけの事件でいまなお捜査の端緒もつかめないということは、私にはとうてい納得できません。現在何名捜査に当たっておりますか。
○福井説明員 本件につきましては、警視庁の公安部長を長といたしまする特別捜査本部を設けまして、四十二人の体制で捜査に当たっております。
○諫山委員 今度は次の事件に移ります。 その次に起こった事件は、本多延嘉殺しですか。警察どうですか。
○福井説明員 いわゆる殺害事件といたしましては、御指摘の三月十四日に発生いたしました本多延嘉殺人事件でございます。
○諫山委員 三月六日に殺された堀内というのは革マル派の幹部で、この殺害事件に対して革マル派が復讐を宣言する、そして実際に復讐を行った。この復讐の最初の被害者が本多だったという経過だと思いますが、その点はどうですか。
○福井説明員 御指摘の点でございますが、三月十四日の解放社での記者会見の内容ということで、私たちはまた聞きでございますけれども、そこでは、われわれが本日本多をやったのは同志である堀内らに対する階級的報復である云々ということを触れたというのを聞いております。 それから三月二十四日付の「解放」でございますが、「同志難波を」これは堀内のことでございますけれども、「失った悲しみを越え決意も固く新たな闘いに決起した。三月十四日午前三時二二分、わが全学連の戦士たちは、川口市戸塚のアパートで、現代版黒百人組の殺戮の最高責任者本多延嘉をしっかと捕捉し、」云々という記述がございますので、御指摘のようなことになろうかというふうに一応判断をしております。
○諫山委員 この本多事件では、被疑者が何名で逮捕者が何名で起訴者が何名おりますか。
○福井説明員 本件でございますが、本件は発生した三月十四日同日に百八人の体制からなる所轄署長を長とする捜査本部を設けまして捜査に当たっております。関係先を捜索する等目下捜査中でございますが、場所が田んぼの中に孤立しておる住宅である。しかも深夜に襲撃する際には電話線等あらかじめ切断をいたしまして、いわゆる犯行の発見、認知がおくれる手だてを講じて襲撃しております。事実、通報を受けるまでに三時間程度たっておるわけでございますが、それと被害者の家族を含めまして被害者側からの協力がほとんど得られないという非常にむずかしい条件の中でございますが、現在鋭意捜査中、こういう段階でございます。
○諫山委員 この事件では犯人と思われる連中が警視庁の記者クラブに電話をしているはずです。その電話の内容は、「今朝三時二十二分、東川口のアパートで中核派の本多を撃沈した。われわれの同志難波力が撃沈されたことへの報復であり、権力とゆ着している中核へのみせしめだ」これは三月十四日の朝日新聞の記事です。こういう電話が警視庁記者クラブに入っているかどうか、確かめておりますか。
○福井説明員 その件については承知しておりません。
○諫山委員 調べてみましたか。それとも調べようともしなかったのですか。事件の翌日の新聞です。
○福井説明員 その時点では一応の調査をいたしましたが、その件についてははっきり掌握できない、こういう状況でございます。
○諫山委員 犯人と思われる男から警視庁記者クラブに、自分たちの犯罪の成果を誇る電話がかかった、これを調べたけれども真相がわからない、そんなべらぼうなことがありますか。本当に調べたんですか。答えてください。
○福井説明員 一応の調査はやっております。
○諫山委員 調査した結果は、電話がありましたか、ありませんか。
○福井説明員 それについては残念ながら確たる回答が得られていない、こういう状況であります。
○諫山委員 法務大臣には後でまとめて質問しますからよく聞いておいてくださいね。 中核派の書記長であった本多が殺された。そのために中核派の機関紙「前進」では復讐を宣言します。機関紙によりますと、「本多書記長虐殺に全国で怒り爆発 反革命本隊に復讐の巨弾」これが見出しです。そして次から次に復讐と称する人殺しが行われているはずです。そういう経過になっていることを知っていますか。警察はどうですか。
○福井説明員 お答えいたします。 中核派が三月十六日に記者会見をしておりますが、その際に北小路政治局員がいわゆる革マル派の最高幹部らに対する、一応名前を挙げまして、同セクトとしては革マルに対する党派闘争を続けるんだという趣旨のことを言ったということを聞いております。
○諫山委員 本多書記長に対する復讐と称して次々に相手方に人殺しを加えるわけですが、その最初の犠牲者になったのが岡本良治と中島章ではありませんか。
○福井説明員 いわゆる本多書記長殺害事件と本件との続きぐあいとなりますともう一つつまびらかでございませんが、期日的には先生御指摘のように、三月二十日に岡本良治及び中島章に対する事件が発生しておるということを承知しております。
○諫山委員 岡本良治、中島章殺害事件では、被疑者は何名か、逮補者は何名か、起訴者は何名か、説明してください。
○福井説明員 御説明いたします。 本件は、三月二十日に被害者らが、この死亡しました二人にもう一人いるわけでございますけれども、三人で荒川区内のマンションに在室しておりました際に、鉄製の三段式のはしごをかけまして中核派と見られる十数人が侵入をして、いわゆる襲撃をした。鉄パイプで殴打をされて、岡本、中島の両名が死亡して、他の一名が重傷を負ったという事件でございます。 警視庁としては同日、公安部長を長といたしまする六十一名の体制からなる特別捜査本部を設けまして、関係先を捜索する等捜査を続けておるところでございます。本件も非常にむずかしい条件の中で鋭意捜査を進めまして、ある程度容疑者をしぼり込む段階には来ておりますが、もう一つ被疑者と断定するまでに必要な捜査を続けておる、こういう段階でございます。
○諫山委員 事件が起こったのは三月二十日ですよ。われわれの常識からいったらこれは迷宮入りじゃないですか。 この事件について新聞がどういう報道をしているか読み上げます。事件が起こったのは三月二十日の午前零時過ぎです。その日の朝日新聞夕刊は次のように報道しています。「目撃者などの話から、襲撃グループは六人組らしく、ホロつきの二トントラックで乗りつけ、トラックをマンションから百五十メートル離れた路上に止め、高さ五メートルの鉄ばしごを外からかけて、被害者のいた二〇七号室のベランダに登り、バールやスコップでガラス戸を割って、中にはいり込んだらしい。襲撃グループのリーダー格は、白っぽいコートを着た身長一七〇センチぐらいの体格のいい男で「頭をねらえ」と声をかけて指揮していたという。室内には血のついたふとんやこわれた家具、割れた窓ガラスなどが散乱し、部屋の内外には電動カッターや、まさかり、バール、鉄パイプ、ヘルメットなどが残されていた。捜査本部は、鉄パイプの特徴などから、襲ったのは中核派とみている。」 これは捜査権を持たない新聞記者の調査ですよ。事件が起こったその日の夕刊ですよ。 大体の状況はこの記事と違いますか。
○福井説明員 さっき御説明申し上げましたが、本件につきましては、いわゆる被害者宅のごく近くに住んでおった人の通報が最初でございますけれども、同人は電話線を切断されて使用できない等の状況がございましたので、数百メートル離れた下谷署の鷲谷派出所まで参りまして、そこで警察官に通報したという状況がございます。したがいまして、認知が若干おくれたという悪条件があったわけでございますが、零時十分の発生で現場に約三十分後に到着しているわけでございますけれども、鉄パイプ、バール、エンジンカッター、それから折りたたみ式の鉄製はしご、そういうものが現場に遺留されておったことは事実でございます。
○諫山委員 襲撃グループのリーダー格が白っぽいコートを着た身長百七十センチぐらいの体格のいい男だったという点はどうですか。
○福井説明員 目撃者は四十人程度を確保いたしまして、そういう点を含めまして捜査を進めておりますが、いわゆるこの人物であるというふうに特定できるだけの目撃者は、この件についても得られておらない、これが実態でございます。
○諫山委員 この事件について、襲撃側である中核派の機関紙「前進」は次のように戦果を誇示しております。ことしの三月二十四日付の「前進」、関連の部分だけ読み上げます。 「本多書記長虐殺に復讐の巨弾 全逓カクマル東京東部アジト爆砕 岡本、中島を完全せん滅」以上が見出し。「三月二十日午前零時すぎ、わが革命的部隊は、全党・全軍、全人民の先頭にたち、本多書記長虐殺にたいする復讐の第一弾を放つべく、荒川区東日暮里今村マンション二階二〇七号室にある全逓カクマル東部アジトに攻撃を開始した。」中略「断末魔のあがきとはよく言ったものである。正しくも「完全せん滅される!」と直観した岡本は、往生際悪く部屋中を逃げまわり、しまいには隣りの六帖間にころげこみ、ぶざまにもフトンの中に頭をつっこんで何とか助かろうとしたのである。わが部隊は、このごにおよんで醜悪な岡本を有無を言わせずフトンの中からひきずりだし、その頭上に大上段にかまえたバールを渾身の力を込めてふりおろした。完全せん滅の決意も固くうちおろされたこの一撃で岡本ははやくもいっさいの抵抗をやめた。だが、わが部隊の怒りはとどまるところを知らない。こいつが、このカクマルが、本多書記長を殺したんだ!こいつが万一反革命として再生したら本多書記長に顔むけができない!完全せん滅し新しい完全赤色テロの時代をひらくんだ!わが部隊は、休むことなく、岡本の脳天にバールを連続的にうちおろし地獄の底の底までつきおとしてやったのである。あたり一帯は文字どおり岡本の血の海となった。」 こういう文章が延々と続いております。公安調査庁、この「前進」はあなたのところにあるはずですが、こういう記事が載っておりますか。
○渡邊政府委員 そのとおり記事が載っております。
○諫山委員 法務大臣にちょっと聞きます。 あなたは、わが国の治安に責任を負う立場にあると思います。私はことし起こった内ゲバ事件の三つについて質問しました。みんな半ば公然と事件が起こり、事件が起こるとその戦果を機関紙で誇示する。中には事件直後に警視庁の記者クラブに電話して、いまやっつけたんだというようなことまで言っている。ところが、いまの説明で明らかなように、犯人の目星さえついていない。逮捕されていないどころか、だれが犯人かさえわからない、こういう状態です。しかし、その犯人がどのような組織に所属している男だということは、もう彼ら自身がちゃんと説明しております。こういう事実を見て、どう思いますか。
○稻葉国務大臣 治安当局のこけんにかかわる重大な問題で、一網打尽にぎゅっとやっつけてやりたいという気持ちです、気持ちだけは。
○諫山委員 そう言われますけれども、たとえば三億円事件で非常に力を入れて捜査しております。もしあの捜査の十分の一の力でも入れたらこの程度のことはつかまらぬはずはないじゃないですか。三億円事件の場合は一億国民の中から犯人を捜しているわけですよ。いま私が問題にしている事件は、少数の革マル、中核の中に犯人がいる。この中に犯人がいることは彼ら自身が明言しているわけです。 そこで私は、公安調査庁の次長に質問します。いま革マルというのは何名ぐらいの組織人員がいるのですか。中核はどうですか。
○渡邊政府委員 お答えいたします。 両派の実勢力、構成員数につきましては、目下鋭意調査中でございますが、いわゆる構成員とそれから同調勢力とがいつも混在しておりまして、なかなかはっきりした区別ができないというような状況で調査には若干難渋をしておりますものの、現在のところ構成員及び緊密な同調勢力を合すると、両派とも二千数百名と見ております。
○諫山委員 犯人がどちらかの組織に所属しているということは明らかなんですが、その場合に、こういう事件を起こしかねないというようなグループは何名ぐらいだと公安調査庁は見ていますか。同調者とかそういうのは一応除外して、こういう復讐劇に積極的に参加しかねない連中というのはどのくらいいるのですか。
○渡邊政府委員 お答えいたします。 その点も一応推定になりますが、両派とも実行部隊、実力部隊と言っている者は大体二、三百ぐらいだと思います。
○諫山委員 警察庁に質問します。 私がいま列挙した三つの事件が、この二つの組織のいわば中心的なメンバーによって行われたということは、警察庁としてはっかんでいますか。それとも違うところに犯人はいると見ているのですか。
○福井説明員 お答えいたします。 実は先生事前にお見えになった際に、内ゲバ事件についてはいわゆる検挙人員という形でとらえておって検挙件数を押さえておりませんと申し上げましたことと絡まるわけでございますが、一般の殺人事件の場合には、四十九年、四十八年とってみましても、さっき御説明したとおりの数字でございますけれども、検挙人員を検挙件数で割りますと一・〇とか一・一という数字でございます。要するに、一人検挙いたしますとそれで解決と申しますか、検挙率が即解決率という形でございますけれども、内ゲバの場合には、四十四年からの平均をとってみましても、一件について検挙した者が大体十三、四人になっております。そういうことで、最近はいわゆる遭遇戦ではなしに、細かい事前の調査をやって襲撃するという形をとっておりますので、これは中核、革マルのいわゆる実行部隊と申しますか専門的な部隊がやっておる。したがいまして、そういう者は非常に残念ではございますけれども検挙して隔離する形が最も抑止につながるということで、人員という形で押さえておる。一件について一人検挙しましても内ゲバの場合にはとうていその事件解決ということにはまいらないということで、人員でとらえている、こういうことでございます。 したがいまして、御質問のこれらのいわゆる実行部隊がやっておるのかという御指摘でございますが、非常につまびらかなものは持っておりませんけれども、判断としてはやはり実行部隊がやったであろう、こういうふうに見ております。
○諫山委員 実行部隊というのは、公安調査庁の次長の説明によればそれぞれ二、三百名じゃないか。この中から犯人が捜せないというべらぼうなことがありましょうか。 そこで、私は、次の事件に移ります。 その次に起こった死亡事件というのは、西田はるみ殺害事件ですか。それはどうですか。
○福井説明員 御指摘の三月二十七日に発生いたしました西田はるみ殺害事件でございます。
○諫山委員 この事件も本多書記長が殺されたことに対する復讐として行われております。西田はるみというのは女性で、川崎市役所に働いている自治労の組合員です。この事件では被疑者は何名か、逮捕者は何名か、起訴者は何名か、説明してください。
○福井説明員 本件は、諫山委員御指摘のように、三月二十七日に被害者が勤め先であります川崎市役所から退庁しようとしまして裏門から路上に出たところを、中核派と見られる数人に襲撃をされて、鉄パイプで殴打され死亡したという事件でございますが、その際たまたま自動車で通りかかった一般人がこれを追跡いたしまして、常人逮捕をしております。 神奈川県警としましては、同日所轄署長を長とします八十人の体制から成る捜査本部を設けまして、関係先等を捜査しておる段階でございます。逮捕した犯人は全くの完黙状態でございましたが、三月二十九日に殺人罪で送致をしております。 以上でございます。
○諫山委員 そうすると、警察としてはこの事件で逮捕したのは一人、検察庁に送ったのは一人、こういうことになりますか。
○福井説明員 さようでございます。
○諫山委員 法務省に質問します。 この事件で起訴した人は何名ですか。
○安原政府委員 ただいま御説明の送致を受けました一名をそのころ殺人罪で公判請求をいたしております。
○諫山委員 この事件は珍しく犯人の一人が逮捕され、起訴されているのです。ところが、この事件の犯人は三人いたはずです。そして、この逮捕というのは警察がつかまえたのではなくて、通りかかった人がつかまえているはずです。どうなんですか。
○福井説明員 さっき御説明いたしましたように、常人逮捕でございます。
○諫山委員 法律用語を使われましたが、わかりやすく言えば、警察がつかまえたんじゃなくて通行人がつかまえたんだということですか。
○福井説明員 そのとおりでございます。
○諫山委員 当日の朝日新聞はどういう報道をしているかというと、「襲われたのは、川崎市役所広報課職員、西田はるみさん(二六)で、同日午後四時四十分ごろ、川崎市川崎区宮本町の川崎市役所裏で、鉄パイプを持った三人組の男に頭をなぐられ、近くの病院に運ばれたが、頭の骨が折れていてすでに死んでいた。犯人の一人は通りがかった市職員らがつかまえて、川崎署に突き出した。」中略「西田さんは市役所駐車場内で三人の男と話し合っていたが、口論となり、西田さんが駐車場から飛び出したところを、三人組が頭をメッタ打ちにした。三人組はそのまま国鉄川崎駅方面に逃げようとし、一人がつかまった。現場には長さ六十センチ前後の鉄パイプ三本が残され、鉄パイプの空洞は鉛のようなもので埋めてあった。」中略「逃げた二人のうち、一人は身長約一六〇センチで、カーキ色のコートを着、サングラスをかけていた。残る一人は二十二、三歳でグレーのコートを着ていたという。」 この最後の指摘は、警察の調査に合いますか。警察、どうですか。
○福井説明員 本件の捜査状況でございますが……(諫山委員「結論だけでいいです、たくさん聞きますから」と呼ぶ)まず、捜査でございますから、逮捕した被疑者の取り調べについて特に力を入れるわけでございますけれども、本人は全くの完黙状態で氏名がわからずに、ビラを五万枚印刷して配付いたしまして、それを見た一般人がこのビラであれば非常に似た人がいるということで協力をしてくれまして、それが実は本人の実兄だったわけでございます。それでどうにか名前が割れたというような状況でございまして、大変苦労しておる状況でございます。 ただいま御指摘の点も含めて捜査をしておりますが、この逮捕した人物以外についてはいまのところ具体的な形で名前が浮かんでおらない、こういう状況でございます。
○諫山委員 事件直後の朝日新聞は、逃げた二人の服装、身体の特徴まで報道しているのですよ。そして、この犯人は一億国民の中にまぎれ込んだのじゃなくて、二、三百人の活動家の中に潜入しているわけですよ。この事件を報道した加害者側の「前進」という機関紙は三月三十一日付で次のように言っております。「反革命白色テロ分子を完全せん滅 教育大カクマル出身、白色襲撃態勢基幹部と直結する札つきの反革命 川崎市職潜入分子西田に復讐の階級的鉄槌」 これはおれたちが仕返しのために西田を殺したんだということを自慢しているんです。これだけの事実があって、日本の捜査機関というのは犯人を逮捕することができないのですか。なるほど一人はつかまりました。起訴されました。これは警察がつかまえたのじゃなくて通行人がつかまえておる。事件が起こったのは川崎市役所の裏口です。昼間です。法務大臣、どう思いますか。
○稻葉国務大臣 どうも警察の能力というか意気込みというか、少し間が抜けているように思いますがね、私は警察を指揮する責任者でないものですから、私のことをにらみつけて文句を言われても困るわけです。
○福井説明員 能力、意気込みという御指摘でございましたけれども、いわゆる犯人検挙がはかばかしく進んでいない点については御指摘のとおりでございますが、実は意気込みの点では決して力を抜いているわけでございませんで、さっき御指摘の三億円事件の捜査体制は現在八十数名でやっておりますが、内ゲバ殺人事件につきましては、さっき申し上げましたように、小さいものでも数十人、大きいものについては百人、二百人の捜査体制で取り組んでおるわけでございます。四十四年からの事件につきましても、四十四年、五年、六年、七年、八年までの分は、四十六年十二月の三重大学の分を除きましてすべて解決しております。いわゆる一人、二人検挙ということでなしに、全貌を解明して解決しております。 〔委員長退席、小島委員長代理着席〕 ただ、発生から解決までの時日を、内ゲバ事件の場合、一年あるいはそれ以上を要することが多うございまして、昨年発生、ことし発生の分について遺憾ながら未解決事件を抱えておる、こういう実態であることをひとつ御理解いただきたいと思います。決して力を抜いておるわけではございません。
○諫山委員 私はとても納得できません。 その次の死亡事件というのは、被害者が船崎新という人ですか。
○福井説明員 四月一日に発生いたしました船崎新殺人事件でございます。
○諫山委員 この被害者は革マルの千葉県委員長ですが、この事件で被疑者は何名か、逮捕者は何名か、起訴者は何名か、説明してください。数字だけで結構です。
○福井説明員 これは四月一日に都内の喫茶店で……(諫山委員「数字だけで結構です、まだたくさん聞きますから」と呼ぶ)これについては瞬間的な犯行でございまして、いわゆる犯人を特定するに足る目撃者が現在のところ得られていないということで、むずかしい条件の中で捜査を続けておるところでございます。 犯人については数名と、こういうふうに見ております。
○諫山委員 犯人数名ということはわかるけれども、名前はわからない、一人も逮捕していない、もちろん一人も起訴していないということのようですが、この事件が起こったのは東京都墨田区の喫茶店です。 〔小島委員長代理退席、委員長着席〕 喫茶店の中で鉄パイプで襲撃されているのですよ。そして、この事件についても加害者側の機関紙が戦果を誇示しております。そういう記事があることを公安調査庁は知っていますか。
○渡邊政府委員 知っております。
○諫山委員 加害者側の機関紙は次のように報道しています。「白色襲撃態勢に壊滅的打撃」「前川、清水撃沈に続く大戦果」、中身は「この日夜十時すぎ、わが革命的部隊は、東京墨田区向島の喫茶店「ナイル」で、白色襲撃のための活動を統括・指揮しているまっさい中の船崎をがっちり捕捉した。」中略「カモフラージュのためビールを飲みつつ自分で人目をはばかりながら某所に電話をしたり、その直後「イワタ」というコールネームで再三電話口に立ってヒソヒソ小声で会話をしたり、白色襲撃隊との連絡をたえずとっていたのである。わが革命的部隊は一気に突入し、本多書記長虐殺という未曽有の反革命的悪業をはたらいた下手人の一人である船崎に渾身の怒りを込めた鉄槌をうちおろし、せん滅したのである。わが部隊は、権力の厳戒体制を破り、全員生還した。」 こんなふざけたことがありましょうか。午後十時ごろ喫茶店の中で起こったのですよ。数名がやったということは警察も認めております。当然、喫茶店の人はそばにいたはずなんです。そして、犯行の模様を加害者側が詳細に報道する。これは大戦果だと言っているのです。どうしてこんな事件をつかまえませんか。警察に責任がないと言われるだろうと思って、私は公安委員長の出席を要求しました。ところが、公安委員長は出てきません。法務大臣としてはどう考えますか。
○稻葉国務大臣 こういう事件、しかも堂々とそういう機関紙を出して自分たちの行動を世間に誇示しているようなやり方に対しては、まあ法務省も治安当局者ですから、治安当局はなめられているような気がしてしようがないのです。断じてこれは放置すべきものではない。公安委員長に強くもっとしっかりやってもらわなければ困る。送検してきたら法務省としてもこれは厳正にやるんだ、そういうふうに申し上げるよりしようがありません。今度公安委員長を呼んでいまのようなことをよく聞かせてやってください。
○諫山委員 次に移ります。 その次の殺害事件というのは、四月二十六日に起こった服部多々夫と鈴木和弘の事件ですか。
○福井説明員 四月二十六日に発生いたしました服部多々夫と鈴木和弘に対する襲撃殺害事件でございます。
○諫山委員 この事件では被疑者は何名いるのか、逮捕者は何名なのか、起訴者は何名なのか、説明してください。
○福井説明員 本件も、都内の渋谷区内の喫茶店で被害者両名が飲食中に中核派と見られる数人に襲撃されて両名が死亡したという事件でございますが、これにつきましては、鋭意捜査を進めまして、現在容疑者数人についてしぼり込みを行って裏づけ捜査をやっておる段階でございます。
○諫山委員 これは二人殺されているのです。そして、やはり本多書記長に対する復讐だということになっているのです。 事件の起こった翌日の朝日新聞は次のように報道しています。「同日午後二時三十五分ごろ、東京都渋谷区代々木二丁目、増田ビル一階の喫茶店「ダフネ」に鉄パイプを持った七、八人の男が乱入し、店内の別々の席にいた二人の客をめった打ちにした。さらに騒ぎに驚いて表に飛び出そうとした客の日大生杉山茂さんをもなぐり、新宿駅方向に逃げた。」中略「目撃者などの話によると、襲撃グループは、入り口近くの席で一人で地図を広げていた服部さんに「この野郎」と襲いかかり、三、四十回もなぐりつけた。さらに数人が奥の席にいた鈴木さんにもなぐりかかった。当時店内には、被害者のほかにアベックなど約十人の客と六人の従業員がいたが、突然の惨劇にぼう然、止める間もなかったという。」中略「最高指導者の本多延嘉書記長を革マル派によって殺された中核派による報復の内ゲバは、とどまるところを知らない。二十六日、また革マル派幹部一人が死亡した。本多書記長が殺されたさる三月十四日以降、革マル派とみられる犠牲者は五人になった。」中略「実際、中核派による革マル派に対する攻撃は次々と発生している。もっとも、革マル派も全く手をこまねいているわけではなく、さる十一日、東京都内で元中核派全学連幹部が襲撃されたように「防衛のための反撃」はするといっており、「内ゲバ戦争」は終わりそうにない。」 これが朝日新聞です。 次に、加害者側が出している「前進」はどのように報道しているかといいますと、「3・14反革命虐殺の首謀者、下手人 カクマル政治局員服部、白色テロ隊長鈴木完全殱滅」これが表題です。中身を読みますと、「四月二十六日昼すぎ、わが革命的部隊は、新宿駅西口前の喫茶店で、真昼間から白色襲撃の謀議をしていたカクマル政治局員、「解放社」責任者であり、なによりも憎むべき三・一四虐殺首謀者の一人である服部多々夫と三・一四下手人であり、JAC白色殺人テロ隊長である早大社会科学部四年鈴木和弘を捕捉し、本多書記長暗殺への煮えたぎる怒りの制裁を加え完全せん滅した。このたたかいは三・二〇反革命武装アジト爆砕・全逓潜入カクマル岡本、中島完全せん滅、三・二七川崎市職潜入の札つき白色テロリスト西田完全せん滅、四・一虐殺下手人船崎完全せん滅につづく三・一四反革命突破=四月全面大攻勢の白眉をなす決定的な大戦果である。」 人殺しを大戦果であると自慢しているのです。 さらに犯行の模様を詳細に報道しております。「二時二十分、服部と鈴木が連れだって「ダフネ」に入る。服部が入口近くの席に坐り鈴木はしばらく服部と話してから奥へ、さらにもう一人の反革命分子が入ってきて服部と話して奥に行く。かわるがわる地図を広げた服部の席に訪れ、頭をつき合わせてヒソヒソと小声で白色襲撃のための謀議と指令を行う。鈴木らは、白色テロ隊長として服部から指令をうけまさに出撃せんとしていたところなのだ。その何よりのあかしとして、鈴木は、ふところに六十センチのつなぎの鉄パイプをひそませていたのである。わが革命的部隊は、一気にこの「ダフネ」に突入、真一文字に狙い定めた服部と鈴木へと殺到し、怒りの鉄槌を全身の力をこめてうちおろした。本多書記長虐殺へのにえたぎる怒りをこめて、うちのめし、せん減したのである。わが部隊は、権力の非常戒厳体制をうち破り全員堂々帰還したのである。」 全く言語道断な事件じゃありませんか。白昼公然と行われているのです。たくさんのお客さんがいるのです。一回で一突きしたというんじゃなくて、何十回とめった打ちにしているのです。これで犯人がつかまらない。私は、幾ら警察が一生懸命やっていると言ってみたところで信用することができません。いつごろまでにつかまえるつもりですか、警察、答えてください。
○福井説明員 お答えします。 本件につきましては、犯行の翌日の二十七日に革マルが記者会見をやっております。その内容を伝え聞いたわけでございますけれども、革マル派としては中核派を殺人罪で告発する、被害者の家族は殺人罪で告訴をするということを言ったそうでございます。ところが、記者からの質問に対して、告訴、告発するというのは警察の捜査に協力をするということかという質問に対して、権力の態度に問題があるので協力はできないというのが革マルの記者会見の内容ということで伝わってきております。いわゆる被害者側の協力が全く得られない。しかも犯行の状況が時間的には非常に瞬間的と申しますか、短時間に敢行をされておる状況でございまして、確かに数十名の目撃者から事情を聴取して調書化することはいたしておりますが、さればこの人物が間違いなく犯人であるということはどの目撃者からも得られないという状況でございます。そういう中で、現場の遺留品等を含めて、鋭意捜査を進めておるという段階でございます。
○諫山委員 法務省の刑事局長に質問します。 警察は、何とかかんとか弁解します。その弁解の中心になっているのは、みんなが黙否するからだ、被害者が協力しないからだと、こういう言い方をしているのです。被害者が協力しない、関係者がしゃべらない、こういうことが犯人を逮捕しない口実になりましょうか。現在の刑事訴訟ではそういうたてまえはとっていないはずです。まだこれは検察庁に送ってきてないから検察庁の分野ではないかもしれませんが、こういう問題に対してどう考えますか。
○安原政府委員 内ゲバ事件の検挙が、先ほど来警察御当局の苦心にもかかわらず、いわゆるはかばかしくないということにつきましては、検察といたしましても重大な関心を抱いておるところでございまして、いわゆる公安労働係検事の集まり等におきまして、内ゲバ事件の検挙の困難性について検察なりに検討を重ねておるところでございます。 結局、検挙が結果的にはかばかしくない原因といたしましては、先ほど警察御当局から御説明のようなことが原因でございまして、何と申しましても、この種の問題につきましては、先ほど公安調査庁御当局の御説明のように、どうもいわゆる特別の組織、実行部隊のようなものによって行われておるようでありますが、彼らの計画がきわめて隠密であり、査察、内偵を徹底して、しかも瞬時に犯行を計画的に行うという意味において、事柄が瞬間の出来事であるがために非常に目撃証人の正確な認識を得ることができないということと、それから瞬時にして風のごとく去るということで、いわゆる警察部隊が出動する間もなく逃走するというようなことが現場検挙を非常に困難にしておる原因ではないか。つまり、犯行が隠密に計画され、きわめて緻密に、組織的に、機動的に行われることが検挙の困難性の大きな原因ではないかということが言われておるのでございます。 それから第二の問題としては、諫山先生の御指摘の、およそこういう犯罪につきましては、被害者が被害を申告してくれるということが捜査を容易にする基本の前提でございますが、先ほどの革マル派の新聞にも出ておりますように、自分らは権力の厄介になって、そして犯人を検挙してもらうのじゃなくて、法に対しては、自分みずからが反抗するのだという、権力のお世話にならないという前提でございますから、およそ被害の申告というようなこともいたしませんし、犯罪の捜査に協力をしないというのが実態でございますので、これが法律上の強制される義務ではないことはわかっておりますが、やはり犯罪捜査というものは被害者の協力を前提としてそれが円滑に行われ、法律的に行われるのが実態でございますので、これもやはり一つの非常にむずかしい問題でございます。 なお、協力をしてもらいましても、その組織同士では余り知らない、面識のない場合でございますので、犯人の特定が非常にむずかしいということもございますし、なお、科学的な捜査に対するさらにカウンターメジャーといいますか、対抗措置といたしまして、手袋をつけて指紋の検出を免れるというような意味において、鑑定上もなかなかむずかしい問題があるというようなこと、あるいは非常に組織の把握がむずかしゅうございますので、そういう事件が行われて押収捜索をやるにしても居宅が不分明であるというようなことが原因になっておるというふうに検察当局としても見ておりまして、警察当局のあながち熱意の不足というふうには私どもも考えておらない次第でございます。
○諫山委員 どうしてそんなに一生懸命弁解しなければならないのですか。瞬時にしてと言いますが、この事件は、三十数回めった打ちしているんですよ。場所は喫茶店ですよ。何十人という見物人がいるんですよ。幾ら弁解してみたところで、これを犯人をつかまえないということの弁解になりますか。 たくさん事件がありますから、次の質問をします。 その次に殺されたのは竹原寿です。五月七日。
○福井説明員 五月七日に鹿児島県で発生いたしました内ゲバ事件でございます。
○諫山委員 この事件では、被疑者は何名、者は何名、起訴者は何名ですか。結論だけ答えてください、数字で。
○福井説明員 これは五月七日のまさに早朝に被害者ら四人がアパートにおりましたところを、中核派と見られる数人に襲撃をされて、その中の一人が死亡したという事件でございますが……
○諫山委員 数字だけ答えてください。
○福井説明員 これもいわゆる本多書記長殺害事件と非常に似ておりまして、侵入する際に電話線等を切断をして侵入をする。しかも被害者側の協力がこれも全く得られない事案でございます。そういう苦しい状況の中で鋭意捜査を続けておるという段階でございます。
○諫山委員 結局だれがやったのか見当もつかない、逮捕も、起訴もしてない、こういうことですか。
○福井説明員 現在のところ逮捕者を確保するには至ってない、こういう段階でございます。
○諫山委員 公安調査庁に質問します。 この事件についてことしの五月十二日付の「前進」に戦果を誇示する報道がされていることを知っていますか。
○渡邊政府委員 お答えいたします。 「前進」に記事が載っております。
○諫山委員 どういう形で戦果を誇示しているかと言いますと、「五月七日午前四時、わが革命的部隊は、鹿児島市冷水町にある鹿児島カクマル幹部の本拠アジトに突入、中にいた県委員長梯、竹原ら最高幹部四名を全員せん滅した。岩谷アパート一階二号室のアジトは、梯らが五月になってからつかいだしたばかりで、われわれに知られていないと信じて疑わず安心してぐっすりとねこんでいたというわけである。わが部隊は、一挙せん滅のチャンス到来に意気あがり、正面から堂々と突入、怒りの革命的鉄槌をうちおろしたのである。」中略「わが部隊は全員無事帰還した」 全くばかにした記事じゃないですか。これだけの事件をなぜつかまえませんか。また同じような弁解ですか。
○福井説明員 実はこの事件につきましては前段がございまして、この事件の被害者四人のうち三人が同じ鹿児島県下でことしの二月と四月に発生いたしました事件の被害者でございます。そこで、警察としては彼らの身辺を守ることを念頭に置きまして、三度から五度それぞれの人物について申し入れをしたわけでございますが、その都度拒否されております。そうして、このアパートを借りる際には、全くの偽名でことしの一月に借りたわけでございますけれども、借りて、しかも一月くらいはそのまま放置して使用した。それも三日に一度ぐらいそこに来て泊まるという状況でございまして、要するにアジトを転々として隠しておったという状況でございます。そういうむずかしい状況の中で捜査を続けているわけでございますが、いまのところ残念ながら検挙者を得るに至っていない、こういう状況でございます。
○諫山委員 次に起こった事件は、岡山大学の大沢真という人の殺害事件ですか。
○福井説明員 五月二十五日に発生いたしました大沢真殺人事件でございます。
○諫山委員 この事件では犯人が起訴されているようですから、私は次の事件を質問します。 その次は六月四日に起こった碓井規義、藤井陽一、米田真重三名を殺した事件ですか。
○福井説明員 六月四日に発生いたしました碓井規義、藤井陽一、米田真章殺害事件でございます。
○諫山委員 この事件では被疑者は何名か、逮捕者、起訴者は何名か、数字だけ答えてください。説明は結構です。
○福井説明員 本件につきましては、殺人未遂、兇準等で四人を検挙し、送致しております。これはいわゆる大阪市立大構内における集団的なゲバでございますので……。
○諫山委員 わかりました。四人を送致したわけでありますね。
○福井説明員 さようでございます。
○諫山委員 被疑者の数は何人ぐらいだと目しておりますか。
○福井説明員 数十人というふうに見ております。
○諫山委員 この四人については検察庁はどのような処分をしましたか。
○安原政府委員 御指摘のように四名を受理いたしまして、そのうちの二名につきましては殺人罪等で公判を請求し、あとの二名につきまして、いまだ犯人であるという特定に至らないということで捜査中でございます。
○諫山委員 起訴されていない二名は釈放されていますか。
○安原政府委員 そのとおりでございます。
○諫山委員 これは大阪市立大の非常に大規模な内ゲバ事件です。三名が死亡するという大変な事件で、被疑者の数は数十名だという見通しのようですが、結局起訴されているのは二名だけ、残りの数十名については今後どうするつもりですか。
○福井説明員 この事件につきましても内ゲバ事件のむずかしさが出ておるわけでございまして、今回起訴になりました人物についてもほとんど供述が得られないわけでございますが、周辺から固めてやっとこの人物については立件することができたという状況でございますけれども、この事件につきましては目撃者もあるところでございますし、さらに全貌を解明すべく捜査中でございます。
○諫山委員 この事件で逮捕したというのは、警察が一生懸命捜査をして逮捕したというのじゃないのです。犯罪現場でその場でつかまえたのです。そしてそれ以後は一人もつかまえてないのです。違いますか。
○福井説明員 若干私たちがつかんでおります事実を申し上げますと、いわゆる委員御指摘の犯行後、犯行の翌日に検挙したのが一人ございます。それから三カ月以上経過しました九月二十日になって二人、九月二十二日に一人検挙しております。
○諫山委員 この事件について加害者側の「前進」はどう言っているかというと、「正規戦で関西戦闘主力全滅 大阪市大で襲撃部隊三十五名掃討 碓井、米田ら三名完全殱滅」、三名殺したことを自慢しているのですよ。そしてそのときの犯行の模様というのはもう実に微に入り細にわたって報道されております。数十名の加害者がいることを承知しながらいまなおこれが解決していないというのはもう驚くべきことです。 この事件の起こったのは大阪市立大学の教養部正門前、時間は午前八時ごろです。たくさんの人がいたところなんです。 その次の事件というのは藤盛廣之の殺害事件ですか、六月十九日。
○福井説明員 六月十九日に品川区内で発生いたしました藤盛廣之死亡事件でございます。
○諫山委員 これは全逓の革マルの人ですが、何名被疑者がいて、何名逮捕して、何名起訴したか説明してください、数字だけでいいです。
○福井説明員 これは本人が自宅から出勤しようとした際に襲撃された事件でございますが、数人の中核派と見られる者に襲撃されたということでございます。捜査を進めまして、これまでに殺人、兇器準備集合で一人を検挙し送致しております。
○諫山委員 これは犯人は三名以上だったと思いますが、いかがですか。
○福井説明員 検挙しておる人物からもそこまでの供述は得られておりませんし、数人ということで特定するには至っておりません。
○諫山委員 事件が起こったのは十九日の午後八時四十五分、品川区のにぎやかなところで多数の目撃者がいたはずですが、そうですが、その結論だけ。
○福井説明員 通勤のために駐車中の自己所有のオートバイに近づいたところをやられたわけでありまして、いわゆる出勤時間中でございますので若干の目撃者はあったようでございます。いや多数と申しますか、いわゆる若干の人が往来をしておった、こういう状況でございます。
○諫山委員 この事件についてその日の朝日新聞の夕刊は次のように報道しています。「近くの私立中延学園高校の女生徒たちは、窓から「やめて、やめて」と悲痛な叫び声を上げた。目撃者の話では、すぐわきの公園にいた子供たちは恐ろしさのあまり泣き出したという。現場を目撃した主婦(六八)は「大きな叫び声がした。外に飛び出してみると、背広を着た三人の男が一人の男をなぐりつけていた。男がころんでも、まだなぐるのをやめない。人間をたたいているようではなかった」と話していた。」 これは記事の一部ですが、この事件で犯人の一人が検察庁に送られたそうですが、検察庁どうしましたか。
○安原政府委員 去る十四日に送致を受けまして目下勾留、取り調べ中でございます。
○諫山委員 いつごろ送致を受けたのですか。
○安原政府委員 ただいま申しましたように、今月の十四日でございます。
○諫山委員 とにかく見物人がいるところ、高等学校の女生徒がやめてやめてと叫び声を出している、そして奥さんたちも見ているというようなところで事件が起こって、ようやく一人逮捕したというのではもうとうてい私たちは納得できません。 そこで、時間の関係ではしょります。警察にもう少し聞きますよ。 六月二十四日に石井真作というのが殺されましたね。この事件で被疑者は何名か逮捕者は何名か、起訴者は何名か、数字だけ答えてください。
○福井説明員 本件は静岡県伊東市の……。
○諫山委員 内容は結構ですから。委員長、私、少なくともことしの事件は全部聞きたいと思うのです。ですから、結論だけ答えさせてください。 被疑者は何名で、逮捕者は何名で、起訴者は何名か。
○福井説明員 いわゆる被疑者は十数人と見ております。逮捕者につきましては、さっき申し上げましたような状況で、電話線を切断し……(諫山委員「あるかないか答えてください」と呼ぶ)逮捕者を得るには至っておりません。
○諫山委員 これもやはり本多書記長に対する復讐戦だということは彼らの機関紙を見ればよくわかります。 七月十七日に甲斐栄一郎という人が殺されております。これは新聞で大変問題になった加藤登紀子さんの別荘での事件です。襲ったのは二十人くらいだと報道されております。被疑者は何名か、逮捕者は何名か、起訴者は何名か答えてください。
○福井説明員 七月十七日の事犯でございますが、これにつきましては三百二十四人を逮捕しております。
○諫山委員 それは甲斐栄一郎の事件ですか。
○福井説明員 はい、甲斐栄一都の事件でございます。
○諫山委員 いまの加藤登紀子さんの事件というのは間違いですから、これは訂正します。 これはいわゆる新橋事件ですね。この事件では何名起訴されましたか。
○安原政府委員 いま警察がお話しのように、三百二十四名の送致を中核、革マル両派から受けまして、多くは革マルでございますが、求公判といたしまして三十六名、中核十三名、革マル二十三名。暴力行為、傷害、威力業務妨害。あと家裁送致が七名、起訴猶予二百八十一名でございます。
○諫山委員 この事件では死亡者がいたはずですが、殺人事件では起訴していませんか。
○安原政府委員 検挙されました犯人の中でこの殺人に加功したという者の発見には至っておりませんので、傷害致死、あるいは殺人で起訴はいたしておりません。
○諫山委員 警察はずいぶんたくさん逮捕したようですが、殺人犯人はついにわからないままですか。
○福井説明員 警察といたしましては、殺人、傷害等で送致をしたわけでございますが、検察段階での御処置については、刑事局長御答弁のとおりということでございます。
○諫山委員 その次に起こったのは十月二十七日の梅田順彦という殺人事件ですか。
○福井説明員 十月二十七日に東京大学教養学部構内で発生いたしました梅田順彦殺人事件でございます。
○諫山委員 これは被害者は東京大学の学生だったのですが、被疑者は何名か、逮捕者は何名か、起訴者は何名か、それだけ言ってください。
○福井説明員 本件は、被疑者は数名ないし十数名と見ておりますが、発生して、現在目撃者を確保して犯人を割り出すべく鋭意捜査中の段階でございます。
○諫山委員 結局一人もつかまえていない、一人も裁判には送っていないということですね。これもやはり復讐事件の一つですか、どうですか。警察はどう見ていますか。
○福井説明員 これは一つの判断でございますが、六月二十四日のさきの静岡県伊東市での事犯がございましたけれども、これ以降いわゆる反帝学評系が革マル系に対する党派闘争を強めておることは事実でございます。十月六日にも立正大学の構内で同大学の革マル派糸の活動家が反帝学評系と見られる者に襲撃されて死亡しておりますが、その後十月二十七日に本件が起こったということでございます。それ以上のものは持っておりませんけれども、判断としては、六月二十四日の事件が一つの端緒となったと申しますか、それによって強められた両派の党派闘争の一環として起こった事件であろう、こういうふうに見ております。
○諫山委員 とにかくこれだけの事件がいまなお処理されていないというのは大変なことです。 その次の事件は、国学院大学の学生である田中玲彦が殺された事件ですか、どうですか。
○福井説明員 九月十二日に埼玉県で発生いたしました田中玲彦殺害事件でございます。
○諫山委員 この事件では被疑者は何名で、逮捕者は何名で、起訴者は何名ですか。
○福井説明員 これは被害者が帰宅途中に中核派と見られる数人に襲われた事件でございます。警察では現在鋭意捜査中の段階でございます。
○諫山委員 「前進」ではこの事件について「断末魔のカクマルに容赦なき猛攻撃 国学院田中を完全殱滅」、こういう表題のもとに赫々たる戦果を誇っておるのです。余りいやらしい記事が続きますから私はここらあたりで打ち切りますが、そのほかにもう死亡事件はことしはないですか。
○福井説明員 さきに少し触れさせていただきました十月四日に立正大学の構内で起こりました事件がございます。
○諫山委員 その事件では被疑者何名、逮捕者何名、起訴者何名ですか。
○福井説明員 本件につきましては、革マル系の活動家と見られる被害者が反帝学評系と見られる数人に襲撃をされたという事件でございます。被疑者の点については鋭意捜査中でございます。 失礼いたしました。十月八日でございます。
○諫山委員 だれかつかまりましたか。
○福井説明員 現在捜査中の段階でございます。
○諫山委員 私はことし起こった殺人事件だけを拾い上げたわけですが、この中で完全解決した事件はありませんね。ありますか。
○福井説明員 まず申し上げますと、五月二十五日に岡山大学構内で起こりました事犯がございます。これは……(諫山委員「結構です、それはもう完全に解決したわけですね」と呼ぶ)これは二十一人を検挙いたしまして十一名を手配しておりますが、これによって一応全貌を解明しておる、こういうふうに見ております。
○諫山委員 岡山大学事件以外に完全解決した事件がありますか。岡山大学事件は私も知っていましたから聞かなかったんですが。――答えがないからもう私が言いますが、完全解決の事件はないでしょう。完全解決どころかほとんど解決していない。殺人罪で起訴されている事件はあるけれども、これは警察がつかまえたんじゃなくて通行人がつかまえたんだ、こういう状態です。私たち共産党が、トロツキスト暴力集団を政府は泳がしているという表現を使っていることは、警察も公安調査庁も法務省も法務大臣も御存じだと思います。私たちは根拠なしに、トロツキストを泳がしているというようなことを言っているんじゃありません。これだけの事件が起こった。事件が起こって、公然と自分の戦果を誇示している。しかも、機関紙を見ればわかるんですが、だれそれをやるんだと名指しでずっと名前が出てくるんです。そして、ことしの十数件の事件でどうにか完全解決したと警察が言っているのは岡山大学事件だけだ。これを私たちは泳がせ政策だと言っているわけです。 結論として、法務大臣、いまの事実に基づいてどのように対策を立てるつもりか。私はこの問題は系統的に追及しますから、最後に法務大臣の決意だけを説明してください。
○稻葉国務大臣 法務大臣の方は直接……
○諫山委員 そんなことを言って済みますか、警察はおれが指揮するんじゃないというような言い方じゃ通りませんよ。
○稻葉国務大臣 とにかくしゃくにさわる事件だとは思っております。それから、これは検察を通じ、警察と密接な連絡をとって徹底的に挙げてやらなければならぬ。あなたは私に質問しておいて聞かなければだめだよ。 まことに残念なんで、しかも共産党から、トロツキスト集団を泳がしているという酷評を受けるに至ってはざんきにたえない。われわれは何も、こういう者を泳がして何の利益がありますか。不名誉至極じゃないですか、治安当局としては。泳がしているというようなことは断じてありません。これから一生懸命に御期待に沿うようにやります。
○諫山委員 私たちはたくさんの証拠を持って、泳がしていると言っているんです。たとえば四・二八の沖繩デーの起こったときに中曾根さんはこう言っています。佐藤内閣を支えているのは反代々木系学生だという見方もある、彼らの暴走が反射的に市民を反対に回し自民党の支持につながる作用を果たしている。中曾根さんが言っているんです。うそだと思ったら中曾根さんに聞いてみなさい。例の東大事件が起こったときに坂田道太さんはこう言っています。三派系全学連よりも一層警戒すべきは日共系民青の動きだ、東大などでも妥協を急ぎ過ぎてはいけない。坂田さんがこういうことを言わなかったかどうか、坂田さんに聞いてきなさい。 私は、大分長くなりましたから結論だけ申し上げます。恐らく法務大臣もこれだけの事実があるんだということは御存じなかったんじゃないかと思います。委員長、知っていましたか。これだけ深刻な事態があるんだ。そして全く解決の道はいまのところ見出されていない。このことを警察も法務省も十分念頭に置きながら、また次の機会に私、質問しますから、そのときはこれだけ処分いたしましたということを堂々と言えるように捜査してください。 以上で終わります。
○福井説明員 諫山委員から御指摘があったわけでございますが、実は内ゲバ捜査のむずかしさということをるる申し上げたわけでございますけれども、先ほどちょっと触れましたように、四十四年から四十八年までに発生した分は、四十六年十二月の三重大で起こりました事件を除きまして、全部解決しているわけでございます。昨年発生した事件につきましても、昨年の一月二十四日に警視庁の北沢署管内で起こりました、これは革マル派の東大生二名が友人の引っ越しの手伝いをしておって、中核と見られる者に襲撃された事件でございます。これは一年かかって、ことしの一月に二名、さらに三カ月後の四月に二名検挙して解明をしております。それから昨年の二月の八日に琉球大で起こりました、これは中核派が一般学生を革マルの幹部と誤認して襲撃して死亡させた事件でございますが、これも十カ月後の十二月に解決しているわけでございます。 被害者側の協力が得られない、それから夜中の一軒家でしかも電話線を切断して瞬時にして襲うというむずかしい状況の中でございますので、捜査期間が経過するのは残念ながらやむを得ない事情でございます。未解決事件も、いま申し上げましたように去年とことしに発生の分がすべてでございますので、鋭意努力をして、今後も解決に努めてまいりたい、このように考えております。
○小宮山委員長 小島徹三君。
○小島委員 私は、いまの諫山君と当局との話を聞いておったのですけれども、私の郷里の兵庫県の八鹿町というところでいわゆる八鹿高等学校事件というのが起きました。その際における犯人の検挙の様子を私は見ておりました。いかに被害者が協力しないか、また目撃者が協力しないかということで困難さがあるかということ、並びに私の郷里は田舎の町ですからして、警察力が弱い。そういう面におきまして、私は先ほど来の話を聞いておって、警察当局の苦心はよくわかるつもりです。それは今日の刑事訴訟法のもとで、そしてこの警察力で、しかも予算なんてものはアメリカあたりから比べたら十分の一程度の予算しかないというような状態の中において、これだけ努力されていることは、私はそう侮辱すべきものではない、かように考えております。 ただしかし、私はここで一つ警察当局にお願いしておきたいと思いますことは、目撃者の協力が得られないということは一体何を意味するかということであります。私は八鹿の事件を見ておりまして、目撃者が協力しないということは、後難を恐れるからであります。自分がもしも協力した場合において、後でいわゆるお礼参りとかなんとかされやしないかということを非常に恐れておるということであります。 でありますからして、私は今日この内ゲバ事件、先ほど来数々聞きました。私も新聞を見るときに注意しながら見ておりますけれども、結局八鹿高校事件で起訴されたというのは、指導者というか、集団暴力の中の指導しておったという連中か、あるいは特にはっきりわかった連中だけであって、ほんのわずかであって、私は全部が暴力を振ったとは言いませんけれども、起訴されたのはほんの数名にすぎない。私はそういう意味から申しまして、この内ゲバ事件を徹底的に一つでも解決するということでなければ、目撃者が今後ともますます協力しなくなってしまうおそれが多分にある、こういうように思いますので、私はとにかく一つでもいい、はっきりと検挙してしまうということを示すことが、今後目撃者をして協力せしめる上において非常に大事なことではないか、かように思いますので、その点を一つ警察当局に申し上げておきたい、かように思うわけであります。 もちろん、私は何年か前に、ここにおられる法務大臣も御承知だと思いますけれども、憲法調査会でアメリカに参りましたときにある憲法学者が申しましたことは、アメリカで一番困っておることは黙秘権という問題なんだ、黙秘権があるために調査が実に困るんだということを申しておりました。私はここでこれを取り消してしまおうなんしてそんな考え方は持っておりませんけれども、警察当局の苦しさというものは私は八鹿高等学校事件を見て感じましたから、その点をひとつ警察当局に申し上げて、一つでもとにかく解決することが必要なんだ、どれもこれも一遍にしようとしたら無理なんだ、しかし、一つはっきりやることによって、私はその後の内ゲバ事件というものを減らすことができるのじゃないか、かように思いますので、その点を一つ申し上げておきたい。 それからいま一つは、先ほど申しましたとおりに、八鹿高校事件でも、とにもかくにも起訴できたのはその現場の指導者であったということであります。それも一週間以上かかって、そして六十数名の刑事が特別に派遣されて、そしてうわさからうわさ、目撃者を訪ねて、そしてようやくしぼってそういう者が何人か起訴されたということであります。 私はこの内ゲバ事件を、先ほど来諫山君の読んでおったのを見ておったときに、恐らく幹部ははっきりと承知しておったのじゃないか。承知しておらなければこんな記事が出るはずがないと思うのです。そうなると、そういう団体の幹部というものについて一体どういうふうな捜査をされておるのか。これがわかっておるのだとすれば、かたき討ちをしてやるんだということならば、かたき討ちを指揮したとか共謀したとかいうことが出てこなければならない。現実の犯人をとっつかまえるということはなかなかむずかしい。多数でやったとかなんとかということになるとむずかしいものですから、私はそういうものには首謀者というものがなければならぬ。その場合に一体この団体というものはどのようなものか。破防法をやってみたところでしようがないと思います。破防法なんか適用してみたって、恐らくまた次の団体をつくるだけだろうと思いますけれども、しかし、こんな記事が次から次に出ていくということは、現実に共謀したとか指揮したということがなかったら私はあり得ないことだろうと思う。幾ら実行団体がおるにしても、その実行団体が思いつきで勝手に三人くらいで相談してやるということではなくて、その背後にもっとあるのじゃないかと思うので、その点等について一体警察当局はどうお考えになっておるのかということをお聞きしたいと思います。
○福井説明員 委員御指摘の点についてお答えいたします。 まず最初の、目撃者が後難を恐れておる状況を切り抜けるには、とにかく一件でも徹底解決することであるという御指摘でございますが、まさにそのとおりであるというふうに思っております。決して私たちも内ゲバに手をこまねいているどころか、全力を挙げているわけでございまして、去年とそれからことしの九月末までで、極左関係の取り締まりで三百三十三名の警察官が実は負傷しております。その中には、さっき御指摘の五月の七日に鹿児島で起こりました事件でございますが、これは現場にたまたま出勤途中の鹿児島県警の本部員が出会わせまして、素手で鉄パイプを持っている犯人に立ち向かって、胸を強打されて二カ月の重傷を負っております。それから七月十七日の例の新橋駅での中核、革マルの遭遇戦でも、真っ先にかけつけました愛宕署員は検挙活動で六名負傷しておりますが、重い者は三週間、軽い者でも一週間の負傷をしております。これまでにもう殉職者を出したり、警察の最高幹部が家族を彼らに殺害される等の状況を経ながら全力を挙げて取り組んでいるわけでございまして、その警察の取り組みぶりはひとつ御理解いただきたいと思います。 それから二点目の御指摘の、いわゆる彼らが発表しておるということは幹部が加功をしておるのではないかという御指摘でございますが、実態はまさにそのようであろうと思います。ただ、記者会見の場に警察官が入っていけない、それから記者会見の模様を聞く際にもソースの秘匿ということがございまして、具体的に聞けないというむずかしさがございます。それと、実行行為者がつかりませんと、たとえば殺人の教唆で捕えようといたしましても、いわゆる教唆と教唆された者の実行行為との因果関係を立証できないという問題がございますので、まず実行行為者をつかまえまして、その際には記者会見等の関連がございますと、それについても必ず捜査をする、こういう態度でこれまでもやっておりますし、今後とも努めてまいりたい、かように考えております。
○小宮山委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。 午後二時五十五分散会