法務委員会 第9号
- 発言数
- 273 件
- 登壇者
- 10 名
- 会派数
- 6
- 開催日
- 1975/05/15
会議録
○委員長(多田省吾君) ただいまから法務委員会を開会いたします。 検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。 質疑者は、理事会決定の持ち時間を厳守願います。 三木総理大臣並びに稻葉法務大臣の御答弁は、質疑時間がきわめて短時間でございますので、簡潔、明確にお願いしたいと存じます。 関連質問は、質疑者の了解を得て、持ち時間内でお願いしたいと思います。 質疑のある方は順次御発言願います。
○佐々木静子君 それでは総理に伺います。時間がありませんので、簡単に答えていただきたいと思います。 一昨日の当委員会の審議において、総理は重ねて、現行憲法を変更するつもりは全くない、憲法を守る気持ちが非常に強いということをお述べになりました。それに関してわが党の矢田部議員の質問に対して、この憲法を形の上で守る、その形であらわすには憲法記念日をさらにもっと復活しなければならない、まあ前向きの姿勢で取り組むという御答弁をいただいておりますけれども、具体的にどのように——憲法記念日を国の行事として大きく復活していくということはお考えになりましたね。イエスかノーかで答えてください。
○国務大臣(三木武夫君) 憲法の記念日に何らの行事もしないということが憲法を軽視しておるかのような印象を与えることはよくないので、何らかの形で憲法の行事を行うようなことをいたしたいと考えております。
○佐々木静子君 昭和二十二年以来、憲法記念日に国が行事をしてこられました。毎年行事がなされておったところが、七回目の憲法記念日を最後に国家的行事がなくなってきたわけです。憲法記念日を従来のとおり復活されるということをここで約束できますか。
○国務大臣(三木武夫君) 従来のとおりにするかしないかは別として、何らかの行事を行うようにしたいと考えております。
○佐々木静子君 何らかでは不明瞭です。はっきりしたかっこうで、どういう行事を復活していくか。政府として憲法記念日の行事、祝賀会といいますか、記念祭といいますか、そういう国の行事を政府の責任で施行するということをここで約束できますか。
○国務大臣(三木武夫君) どういう行事かということは、いろんな工夫があっていいと思いますが、国の行事としていたすような方向で考えてみたいと思います。
○佐々木静子君 内閣の責任において総理主催で憲法の記念式典というものをおやりになるということは、むろんお考えになっていらっしゃるでしょうね。
○国務大臣(三木武夫君) 国の行事としてするわけでありますから、内閣が主催することは当然でございます。
○佐々木静子君 それでは、次回の憲法記念日から三木内閣の責任で総理がそれを実施されるということをここで明確にお約束できますね。
○国務大臣(三木武夫君) しばしば繰り返して申すように、何らかの行事を私は政府が主催してするように考えましょうとお答えをしておるわけです。
○佐々木静子君 何らかというのは、政府主催の憲法を普及徹底するという行事ですね
○国務大臣(三木武夫君) そのとおりです。私はしばしばそのようにお答えをしておるわけです。
○佐々木静子君 それでは従来の憲法記念日、これは衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣あるいは最高裁長官というような方々、これはほかの方々についてはあなたに伺うことはできませんが、行政の長である内閣総理大臣がこういう式典に参加されて記念行事を行われるということを、次の憲法記念日から実施されるということを総理自身がお約束されたということを私は確認させていただきます。御異議ございませんね。
○国務大臣(三木武夫君) 何遍も言っておるように、何らかの憲法の祝賀の行事をやるということを言っておるわけです。
○佐々木静子君 それでは確かにお約束いただいたものと承りまして、別の質疑に移ります。 昨日、当委員会にいわゆる統一見解というものがさらに出されたわけでございますけれども、この第二項が従来の第二項と変更されている。しかし、欠陥憲法という法務大臣の国会における発言については何ら触れられておらない。この点については何ゆえに触れておられないのか、その内容、この欠陥憲法についての事柄が脱落しているが、その点について総理はどのように考えておられるのか、その点を簡潔にお答えいただきたい。
○国務大臣(三木武夫君) 佐々木さんもお聞きのとおり、稻葉法務大臣が適当でなかったので取り消しの手続をとりたいと、こう言っておるのですから、そういうことで御理解を願いたい。
○佐々木静子君 繰り返すようですが、そうすると、なぜここに欠陥憲法についての見解というものを御記載にならなかったのか、その点が釈然としないわけですが、どういうわけでこのことについての統一見解を示されなかったのか、簡潔に重ねてお伺いしたい。
○国務大臣(三木武夫君) 本人が適当でなかったので取り消したいと言うのに、この政府の見解の中に入れる必要はないと私は考えております。
○佐々木静子君 本人と言いますけれども、内閣は全部の責任ですよ。法務大臣一人の責任じゃないですよ。内閣が国会に対して責任を負わなければならないことですよ。そういうふうな無責任なことばかりを言っていられる。昨日の衆議院の質問を見ておりましても、非常に無責任な答弁をしておられる。私どもはこの件についてさらに追及しても、そういうことばかり言っておられるようでは話にならないと思うわけです。そういう意味で、これは私の質疑時間はまだかなり残っておりますけれども、このような決まり切った通り一遍の答弁では私どもはとうてい納得できない。一応私の総理に対する質問は保留させていただきます。
○白木義一郎君 総理大臣にお伺いします。政府見解についてまずお伺いしたいと思います。 まず、さきの官房長官名になっている政府見解の第二項、すなわち稲葉法務大臣は「法務大臣としての立場ではなく、同氏個人の資格においてであるが」云々の第二項は取り消されるのであるかどうか、あるいは全文を取り消し訂正するのではなく、むしろその補足説明として、一昨日の本院法務委員会での総理答弁を集約した結果、後の政府統一見解の第二項となったのか、総理の答弁をお願いしたい。
○国務大臣(三木武夫君) 白木君も御承知のように、こういう問題が起こりましたそのもとは、稻葉法務大臣が個人の資格と閣僚の資格とを使い分けができるという判断のもとにあの会合に出席をしたわけです。しかし、閣僚という地位の重さから見て、使い分けができない、いかにも憲法を改正しないという三木内閣の閣僚として世間に誤解を与えるようなおそれがあるので、この問題がそういう誤解を与えて、誤解を与えるおそれでなしに、誤解を与えてこういう問題が紛糾して一週間にもわたって審議が中断する結果になったわけでございますから、再び閣僚がそういう誤解を起こすようなことのないように、今後は憲法改正を推進するような会議には三木内閣の閣僚である限り出席させない、こういうことを申し上げておくことが、この問題紛糾の原因からして当然のことであるとしてこの政府の見解の中に申し述べた次第でございます。
○白木義一郎君 私がお伺いしているのは、二回統一見解が出ているわけです。それを、前のを取り消して新しいのを出したのか、それとも前のを補足して出されたのか、その点だけをお聞きしているわけです。いまみたいな答弁だと前と同じで、これは紛糾しないとも限りませんから、はっきりした御答弁をお願いしたいと思います。
○国務大臣(三木武夫君) 前に統一見解を出してほしいという御要求がこの法務委員会でございまして……
○白木義一郎君 どっちかにしてください、どっちかに。
○国務大臣(三木武夫君) そういう点で、前の統一見解に、さらにこの問題が起こってきた原因なども頭に入れて補足発展させたのが今度の統一見解でございます。
○白木義一郎君 それでは、二つの政府見解がそのまま有効である、こういうことになります。それでは大変おかしいと思います、二つとも有効ならば。ともに第一項は同文です。第一項は前も今度も同じです。権威ある政府の見解が重複するということは、これは全く体裁がおかしい。二つ合わせて一つの政府見解にすべきではないか、このように思います。その点いかがでしょうか。
○国務大臣(三木武夫君) このいまお出ししたのが政府の見解としてお出しいたしたわけでございますから、前と一緒——前は官房長官としてこの見解をお示しをしたわけでございまして、したがって、今度はいろいろ問題の紛糾した原因なども踏まえて、そうしてこういう統一見解を出したので、この統一見解は現在の政府の考え方、これを端的にあらわしたものであると御承知を願いたいのでございます。
○白木義一郎君 それでは、大変不体裁な政府見解を出した、こういうことをお認めになった、そのように承っておきます。 次は、先日来焦点になったのは、法務大臣として出席した稲葉法務大臣の行動、それが問題になっているわけです。このような紛糾した事態になったことを考えれば、政府統一見解の表現はまことにおかしいと言わざるを得ません。その点いかがでしょうか。
○国務大臣(三木武夫君) いろいろ御評価があると思いますけれども、政府としては現在の見解を端的に述べたものでございます。
○白木義一郎君 そうであるならば、五月三日の法務大臣の行動を総理はどのようにお考えになって国民に説明をなさろうとするのか、お伺いします。
○国務大臣(三木武夫君) もうしばしば繰り返して、ここで稻葉法務大臣自身も、自分の行動というものが軽率であった、再びそういうことを繰り返さないように今後は十分戒めていきたいという稻葉法務大臣の現在の心境を御開陳になったことは御承知のとおり。私としても、この終盤国会に当たって一週間にもわたってこの問題が紛糾を続けるということについて、国政に対して責任をもっておる総理大臣がどういう心境であるかということは白木さんお察しのつくとおりでございます。私もはなはだ遺憾であると考えておる次第でございます。
○白木義一郎君 さらにお尋ねしますが、五月四日付の朝日新聞は、「憲法改正論者である私が、そのための一番大きな会議に出るのはあたりまえだ。肩書が法相であろうと、仮に首相になろうと、私は出席する」とありますが、どう受け取られますか。「法相であろうと、仮に首相になろうと、私は出席する」という言葉は、当委員会であなたが個人の立場として細心の注意を払ったという答弁と大変矛盾します。むしろ、法務大臣として出席して何が悪いんだという姿勢ではないでしょうか。その点いかがですか。
○国務大臣(三木武夫君) 政治家というものは、主観的な考えいかんにかかわらず、その行動が客観的にどう映るかということに対して十分な配慮をする必要がございます。だから、稻葉法務大臣が現在の心境として、自分のとった行動というものが思慮を欠いた、今後は注意するということで、現在の稻葉法務大臣の心境はこの委員会で述べられた心境であると考えております。
○白木義一郎君 いまは三日の問題についてお伺いしているわけで、今後今後と繰り返されておりますが、はなはだ満足できません。 さらに同じく五月四日付の毎日新聞にも、「たとえ首相の身分になっていても出る。」とあります。稻葉さんの真意は、当日の行動はまさに法務大臣であったと見るほかはない。これは常識であります。 さらにもう一点、同じ毎日新聞に法務大臣の記者会見の談話として、「現行憲法が全く日本語になっていないのは事実で、言葉の乱れは世の乱れだ。」と出ております。これが法の番人たる現職法務大臣の現行憲法に対する理解であります。まさに軽視であり、侮辱であります。岸元総理が議長としてよこしたメッセージの、この諸悪の根源である現憲法は云々の文言と符節がまことに合っておるわけであります。総理はこのことを承知しておいでになったはずでありますが、現職の法務大臣の言動をどのように説明されますか。現在のではございません。当日の法務大臣の言動をどのように説明されます。もはや辞任を説得するか、あるいは総理大臣として罷免するか、そのいずれしかないと、このようにわれわれは判断をしてお伺いをしているわけであります。的確にひとつ当日の法務大臣の言動と、それに対する総理大臣のはっきりとした見解、この問題について紛糾を起こした責任について明確な御答弁をお願いを申し上げます。
○国務大臣(三木武夫君) 稻葉法務大臣がどういうことを新聞に語っておるかということは、私はそれを承知はしておりません。けれども、稻葉法務大臣が、本国会の席上において稻葉法務大臣としての現在の心境を率直に語っておられますが、それを私は信ずるものでございます。また、稻葉法務大臣は三木内閣の閣僚として憲法の条章を守って職務の執行に当たるという、その国務大臣としての職務執行に対して、それに背いたことはございません。また、今後も憲法の条章に従って職務を執行する、三木内閣の方針に背くことはないということを誓約をしておるわけでございますから、私が稻葉法務大臣をやめさす考えは持っておりません。
○白木義一郎君 そういうような、非常に私ども伺っていて、ふまじめな誠意のない御答弁が繰り返されたために、ますますこの委員会が紛糾をした。挙げて総理大臣の責任と言わざるを得ない。全く私どもがまじめに真剣に伺っていることに対して、いささかでもそれに触れた御答弁があるならばやむを得ないということもありますけれども、全然御答弁になってない。ひとつ総理大臣として、はっきりと最高責任者としての決意を改めてお述べになっていただきます。
○国務大臣(三木武夫君) 新聞の記事をいろいろお取り上げになって、そういうことを私にお問い合わせになりましても、私実際その場面を知っておるわけでございませんので、これに対して私が一々どういう場面であったかも承知しませんから、これに対していろいろ私が申し上げることは適当でないと思いますが、私が信じますのは、国権の最高機関であるこの国会の場において稻葉法務大臣が述べておる一つのその言葉というもの、また、私自身に対していままで稻葉法務大臣がとってきた閣僚としての職務の執行に当たってのその態度、また彼の私に対して、いままでやったことに対して配慮が足りなかった、今後は十分注意するからというような釈明、こういうものが、この稻葉法務大臣というものについて私の考える物の考え方の根拠になるということを御承知願いたいのでございます。 —————————————
○委員長(多田省吾君) 質疑の途中でございますが、委員の異動について御報告いたします。 山崎竜男君、斎藤十朗君及び町村金五君が委員を辞任され、その補欠として、戸塚進也君、井上吉夫君及び最上進君が選任されました。 —————————————
○橋本敦君 総理に対して三点お伺いしたいと思います。 まず第一点は、先日の法務委員会で私が明らかにしたように、稻葉法務大臣は明らかにファッショ的な改憲推進運動に法務大臣として紹介されて参加をした。客観的にはこの集会に激励するという影響を与えている。これは明らかに三木内閣の政治方針に反する行動だ。これはもう明白だと思います。ところが、総理も稲葉法務大臣も、これについて反省をしている、軽率であった、あるいは遺憾であったという趣旨のことを述べられてはいるけれども、この問題について憲法を守る義務があるという観点からどう責任を明らかにするか、全然その責任を一言も明らかにされていない。いま国民が聞きたいのは、これについて総理がどのように責任を明らかにするかということではないか。この点について総理の御意見を伺います。
○国務大臣(三木武夫君) 稻葉法務大臣もしばしばこの国会の席上においても申し上げておるように、本人は一生懸命個人と法務大臣との区別をして出席をするという配慮はしたわけでございますが、いま御指摘のように、紹介をされたときにそれは法務大臣で出席したのではないというような、そういう周到な用意もあってしかるべきだと思いますが、普通、会議としてそういうことをすることが念が届いたやり方でしょうが、しなかった点、いろんな点で世間に、いかにも法務大臣として憲法改正を促進するような立場に立っているような、そういう誤解を与えたことはまことに相済まぬ、今後はこれを十分にみずから戒めていきたいということを繰り返して述べておるわけです。私もその誓約を信じて、言動を通じていやしくも今後は誤解を生ずることのないように、これは稻葉法務大臣が国務大臣としてこれから責任を遂行していくものである、その将来に期待を寄せて、今回の場合は私は稻葉法務大臣に対して内閣として責任を追及するということはいたさないということを申しておるわけでございます。
○橋本敦君 総理は誤解を与えたことを認めておられるんですよ。客観的に誤解じゃなくて、まさにそのとおりなんですよ。だから、それについて稻葉法務大臣は反省すると言われている。やっぱり是認できないから反省すると言われている。いやしくも総理及び閣僚が、事憲法に関して国民に、われわれから言えば誤解ではない、全くそのとおりの事実を与え、あなたの言葉で言えば誤解を与えた。少なくともそうであれば、その責任を明らかにするのがまさに総理の責任、閣僚の責任ではありませんか。謝って済む問題ではない。これが問題の本質ですよ。いかがですか。
○国務大臣(三木武夫君) これもしばしば申しておりますように、稻葉法務大臣は、憲法を改正しないということはこれはもう内閣の非常な基本的な方針でありますから、この内閣の方針を承諾して入閣をしたわけです。そしてまた、入閣後の稻葉君もやはりこの憲法遵守の義務を体して、そして国務大臣としての職務をいままで執行してまいりましたし、将来も執行することは間違いの余地はないわけです。国会議員といえども憲法というものを遵守しなきゃならぬ。ましてや国務大臣というものが憲法の条章というものを遵守しないで今日国務大臣が一日においても務まるわけはないのでありますから、今後においても、これは憲法を遵守しながら国務大臣としての職務を行うということに私は疑いを持っていないのですよ。 そういう点で、入閣して以来、彼の行動が憲法を遵守するという閣僚の一つの立場に背くようなことがあったら、私はやめてもらいますよ、これは。内閣として許すわけにはいかない。そういうことはないわけです。あの大会に出たということを個人と閣僚とを使い分けようとしたところに問題の混同が起こった。そこで、そのことについては自分もやはり主観的にはどうあろうとも、客観的には世間にそういう誤解を与えたことはまことに自分も軽率であった、これからは十分注意をしたいと、こう言って、私としては今後の言動を通じてその誓約が実行されることを期待しておる、こういうことでございます。
○橋本敦君 総理、政治家、閣僚の責任というのは、客観的事実、結果について生じたことについて負うものですよね。主観的に、自分が個人的に出席したんだからという、それでは責任をとうていとることになりません。事柄の本質はここですよ。そういう客観的事実についてまだ責任をとらない。これは私は許しがたい行為だと思うんですよ。私が要求して統一見解をお出しになった。その統一見解の中身を見ても、稻葉法務大臣があの集会に参加をしたということについてこの国会では、誤解を与えた。いまもおっしゃる。あるいは遺憾であった、反省するという言葉が聞かれます。しかし、少なくともそれは三木内閣として稻葉法相のあの集会の参加が是認できないからこそ、今後は閣僚を出席させないという統一見解になってきている。これは明らかでしょう。そうだとすれば、政府としてこれだけ問題になった問題について国民に対し統一見解を出すに当たって、あの五月三日の集会に参加した稲葉法相の行為が是認できないなら是認できないと、なぜはっきりこの統一見解の中で述べないのか、その理由をごく簡単に言ってください。なぜ述べないのか。
○国務大臣(三木武夫君) 私は問題にするのは、三木内閣の国務大臣として三木内閣の方針に背いておるかどうかということが一番重大な問題であります。憲法を改正しないというのですから、厳格に現在の憲法を遵守する非常に強い責任を持っているわけですから、そういう点は国務大臣として、法務大臣としていままでありませんでしたと……
○橋本敦君 五月三日の問題。
○国務大臣(三木武夫君) 五月三日というものに対しては、いま言ったように憲法を守るということに背くというような行動ではなくして、いままでも憲法の調査会長として従来出ておったのだから、従来の会合と同じようなものであると考えて、しかも自動車まで自分の自動車を使って、個人と閣僚とを使い分けができると考えたところに客観的に与える判断というものに対しての配慮が足らなかったことは事実である。しかし本人は、憲法を遵守するという、それに背いて出席したというような、こういう考えは本人になかったことは私は信じておるわけです。そういう意味で、その行動が思慮の足りなかった点はここで本人も深く反省をしておりますし、私自身に対しても二度と再びこういうことは繰り返さないことを誓約をしておるのでありますから、今回の場合で私は彼に責任をとってもらうという考えはないわけでございます。
○橋本敦君 答弁になっていません。とうてい了解できません。あなたは、稻葉大臣があなたの内閣の中で、事このような憲法問題が論ぜられる場合に最も重大な責任を負う法務大臣である、その地位にある、そして法務大臣としてあの集会に紹介された、この事実をもっと真剣に受けとめるべきではありませんか。 たとえば、あなた御存じのように、倉石さんの問題が佐藤内閣の時代に起こりました。あのとき総理、あなたも閣僚であった。倉石問題と今度の稻葉問題を比べてみまして、私は稲葉問題の方がはるかに罪二等も三等も重いと思っているんですよ。なぜかと言いますと、第一として、稻葉法務大臣の今度の言動について、欠陥が多い憲法だと言ったのは公式の国会での発言です。倉石さんの場合は記者会見における座談的発言にすぎなかった。これが一つ大きな違いですよ。第二の違いとしては、いま私が指摘したこのような集会に参加をしたという現実の行動の裏づけがあるんですよ。倉石さんは雑談的に発言したということではあったが、稻葉さんはこの行動に参加をしておるという具体的行動の裏づけがあるんですよ。三つ目には、いま私が言ったように、あなたの閣内において、あなたがおっしゃる改憲しないという三木内閣の方針に最も忠実に責任をとらねばならぬ法務大臣という地位にあるんですよ。法の番人ですよ。だから倉石問題と比べて大きな違いですよ。あの倉石問題でも、佐藤総理は護憲は変わらないとおっしゃった。変わらないとおっしゃったけれども、あのような辞任の問題にまで発展をした。あなたは閣僚であったからよく御存じですよ。今度の問題の方がはるかに問題は深刻で重い。それを軽々に、倉石問題とは筋が違う、こういつたことを言うことは許されません。 あなたは総理としての責任において、この稲葉法相の今度の問題について明確に責任を明らかにして、直ちに罷免すべきである、重ねてこのことを要求して総理の御見解を伺います。
○国務大臣(三木武夫君) 稻葉法務大臣は、この国会の席上においても、現行憲法を改正すべきではないということを繰り返して言っておるわけです。そういうことで、私は稻葉法務大臣が現在の時点で憲法を改正という意見を持っていないということを信じております。だから五月三日の会合に出たのも、何かこう現行憲法に挑戦しようというような、そういうふうな意図ではないのですよ、彼自身は。そういう意味で、彼自身がただ個人の資格ということで出たのだけれども、しかし、そのことがいま御質問を国会で受けねばならぬような誤解を与えたことは軽率であったので、今後はみずから戒めていくというのであって、稻葉法務大臣が、現在の憲法を改正しない、こういう方針に背いての行動とは、そういうふうには私はとらない。行動の軽率さは責めらるべきでしょう。しかし、彼の本心から国務大臣としての憲法遵守の義務に違反するような意図のもとに出席したものではない。彼の行動の軽率さというものは彼自身がやはり反省をしておるわけでございますから、今後再びそういうことを繰り返さないというこの誓約を信じて、言動を通じてその誓約が守られることを期待しておるというのが総理大臣としてのいまの考え方でございます。
○橋本敦君 とうてい納得ができません。これが本当に憲法を改正しないとたびたび言明する三木内閣の政治責任を明らかにする答弁とは、私はとうてい思えない。稻葉法務大臣の本心、こうおっしゃるが、本心が那辺にあるか、聞いても答えませんよ。答弁拒否しますよ。こういう実態の中でこれ以上審議を続けることはできませんし、総理大臣に、重ねてあなた自身が総理の責任で罷免という重大な措置をとることを要求して、質問を終わります。
○国務大臣(三木武夫君) 重ねて申しますが、私は私の内閣の方針に反する閣僚はやめてもらいますよ、これはね。反してはいないのですよ。いまの憲法はこれは改正する必要はない、憲法を守るということを、忠実に国務大臣としての職務をいままでやってきたんですよ。一点も私はそういう点に彼の国務大臣としての職責を果たした意味において疑いを差しはさんでいないのですよ。に憲法の条章に従って国務大臣の職責を果たしてきたのですから、そういう点で、その五月三日の会合で、それが直ちに彼が憲法を守るという意思を持ってないというふうに、そういうふうに私は飛躍しては考えないのです。その行動の配慮の足りなかった点は責められるべきであっても、彼が現在の憲法、この憲法を改正せずという私の方針に賛成をして、しかも国務大臣としてその職務を誠実に守ってきたということに対して私は疑いを持ってないのでありますから、私は今後の言動に対して注意を与えて、今回の問題に対してそれ以上の責任を追及する考えはないということでございます。
○委員長(多田省吾君) この際、お諮りいたします。 委員外議員和田春生君及び野末陳平君から発言を求められておりますので、これを許可することに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(多田省吾君) 御異議ないと認めます。和田春生君。
○委員以外の議員(和田春生君) この前の委員会で三木総理に御質問いたしました。その際、私の了解したところによりますと、単に三木内閣の方針として憲法を改正しないということだけではなく、三木総裁のもとにおける自民党の方針として憲法を改正しない、こういうふうに総理はおっしゃったと心得ているわけでございます。ところが、その三木総理が、その審議の後におきまして、稻葉法務大臣の言動等についてこの方針と背馳しないということをしばしば言明をしておられるわけです。そこで私は、そういう三木内閣並びに自民党の方針として三木総理・総裁が表明されたことの意味が、私たちが理解していることと同じかどうかという形について端的に確かめてみたいと思うわけです。 そこで、憲法を改正しないということは、前回にも質問いたしましたから省略をいたしますが、したくてもできないからしないというのか、あるいは憲法を改正する状態にあったとしても自分としてはしないという、また自民党としては改正する方針ではないと、こういうことなのか。その点をひとつ端的にお伺いをしたいと思います。
○国務大臣(三木武夫君) 御承知のように、自民党の中には憲法調査会もあるわけですね。そして憲法に対して検討を加えておることは事実です。そういうことで、私はこういうことを申しておるわけです、私の内閣の方針として憲法改正しない、また私が自民党の総裁である限り憲法改定のリーダーシップを私はとらない、こう言っているのでありますから、党として総裁がリーダーシップをとらないわけでございますから、それはそういうことには相ならぬということでございます。 したがって、憲法改正というものを、それならなぜそういうふうに方針を決めたかということは、一つには、これもしばしば申し上げておるごとく、私は現行のこの憲法というものが民主主義、平和主義、人権尊重主義、この大原則を掲げたりっぱな憲法だ、この精神は。したがって、この憲法の中に盛られておる理想、精神というものを曲げるべきではないという強い私は信念でございます。これが一つ。憲法がりっぱなものである。
○委員以外の議員(和田春生君) できるだけ簡単にしてください、時間がありませんから。
○国務大臣(三木武夫君) もう一つは、主権在民でありますから、だれ人といえども永久に憲法を改正いたしませんという約束は主権在民の原則に反すると思います。憲法を決めるものは国民なんですから、国民の多数の者が憲法を変えてほしいという要請があったならば、政治はそれにこたえなければならぬわけでありますから、常に憲法の改正には、その憲法自身に対する判断、評価が必要であると同時に、一方においては世論の動向というものを見なければできない……
○委員以外の議員(和田春生君) そんなこと聞いていませんよ、あなたの考えを聞いているんです。
○国務大臣(三木武夫君) だから、私は一つには憲法はりっぱなものである。そういう点においてこの憲法を尊重していきたい。もう一つは、しかし世論というものが、主権在民でありますから、国民の中で憲法をほうはいとして改正すべしという意見が起これば、政治はそれに対して耳を傾けなければならない。そういう世論の盛り上がりもない。こういう点から私は憲法改正のリーダーシップをとらないんだということを申しておるのでございます。
○委員以外の議員(和田春生君) 問題をすりかえてもらっては困ると思うんです。
○国務大臣(三木武夫君) すりかえていないですよ。
○委員以外の議員(和田春生君) すりかえておりますよ。あなたの方針を伺っているのです。国民の世論がどうこうということは言っておらないのですよ。 それでは私は端的にまたお伺いをいたしますけれども、たとえば例を挙げれば、いま免許証を持っていない、車を運転する技術も十分でないという者が車を運転しないと言うのはうそなんです。運転できないということなんです。現状においては、憲法の改正の手続から言ってもこれは改正しようと思ってもできないわけであります。そういう状態において改正をしないと言うのと、みずからの積極的な意思として現行の憲法を改正しない、守っていくと言うこととは意味が違うはずであります。 そこで私はこの内閣の統一見解について、憲法九十九条の憲法の尊重・擁護義務と憲法改正を論ずることと、この政府の見解については私は同じ見解を持っている。そういう立場に立ってあなたにお伺いをしているわけなんですよ。いいですか。ですから、あなたが自民党の方針として、内閣の方針として憲法を守ると言うのは、法律を守るということと同じ意味で、いま法律があるからその法律に従う、こういう意味と、この法律はいいものだから、遠い将来のことは別にして、積極的にこの法律を守って、法律の改正をしようという場合にはそれに反対をする、こういう意味で守ると言うのとは言葉の意味が違うんですよ。そこを私はあなたに聞いている。できないから改正しない、こうおっしゃっているのか、積極的な三木内閣並びに自民党の方針として、この憲法を守るというのはこの憲法を改正するということに対しても反対である、そういう意味での守るという意味か、この点をお伺いしているわけですから、与えられた時間があなたの御都合で短いわけですから、端的にお答えを願いたいと思う。
○国務大臣(三木武夫君) 現行憲法に対しての、この憲法を改正するかどうかというようなことはいろいろ意見があることは当然だと思います。しかし私の、三木総理大臣自身としての考え方は、この憲法というものによって日本が非常に明るくなった。また、市民社会の基盤というものはこの憲法によって非常に確立された。憲法に負うところが非常に多いと、高い評価を憲法に与えておるわけです、私自身はね。そういう点でこの憲法を尊重して支持していきたいというのが私の考え方であります。しかし、いろいろ憲法について改憲論を持つことは自由でありますから、そういう人があってよろしいわけでございますが、私自身の見解はそうである。しかし一方において、世論というものを考慮の外に——それは当然ですよ、主権在民ですから、やはり総理大臣の判断の中には世論の動向というものも考えなければならぬということは、つけ加えなければならぬ点だと思います。私の主観にかかわらず、国民のほうはいとしてそういう声が起こったときには、私自身としてもその時点において判断をしなければならぬと、こういうことでございます。
○委員以外の議員(和田春生君) それでは具体的な問題でお伺いしたいと思うのですが、そのあなたのお考えが自民党の方針であるという前提に立ってお伺いいたします。元総理大臣で非常に重要な地位にある人が、現在の憲法は諸悪の根源である、これを改正しなくてはならぬ、こういうことを強く主張している。現職の自民党所属の議員であります。これは三木総裁のもとにおける自民党の方針に反するのか、反しないのか。その点をお伺いしたい。
○国務大臣(三木武夫君) 御承知のように、自民党は憲法調査会という会を持っておって……
○委員以外の議員(和田春生君) 調査会じゃないんです。
○国務大臣(三木武夫君) いや、そういうものがあって、従来から憲法の、自主憲法制定というもとにおける調査研究の会を持っているわけですから。自民党の中に改憲論者がおることは事実ですよ、御承知のように。だから、いろんな意見があっても私はそれは当然であって、改憲論を持っていかぬというようなことは、一つの思想の自由を持っておるんですから、そのことば私がここで非難すべきことではないわけで、ただ私が自民党の総理・総裁である間、内閣は憲法改正のための提案は行わない。また三木総裁がみずからリーダーシップを発揮して憲法改正をいたすようなことは、リーダーシップを発揮しないということを申しておるわけでございます。党員の中にいろいろな考え方があるということに対して、私がそれを束縛することはできません。 また、もう一つは、諸悪の根源とは思っていないということであります。三木……
○委員以外の議員(和田春生君) あなたが思っていると言って聞いているのじゃないです。調査研究するのではなくて、諸悪の根源であるからこれを断固改正しなくてはならぬ、こういう積極的な行動が現にある。言動がある。それは三木総裁のもとにおける自民党の、現行憲法を改正しない、守るということがあなたの本心であるならば、総裁としてそれを認めるか、認めないのか。そういう行動に対して反対なのか、それを容認されるのか、その点を聞いているわけです。時間がございませんから、その点についてのはっきりしたお考えを伺っておきたい。そのことの是非は国民が判断するでしょう。
○国務大臣(三木武夫君) それは皆政治家が思想の自由を持ち、行動の自由を持つことは事実です。しかし、自民党の総裁として私がリーダーシップを発揮してそういうことはしない。そういうことは私の意見に違ってはおりますけれども、皆各自が、それは和田さん自身の党においてもそうでしょう、いろいろ考え方がある。私が思想統制をすることはできませんよ。いろんな考え方を持つことば自由ですよ。しかし、自民党として総裁が憲法改正のリーダーシップを発揮することはしないということは、これは大変なお約束だと思うのでございます。
○委員長(多田省吾君) 野末陳平君。
○委員以外の議員(野末陳平君) いまの総理のお答えで、憲法改正を考えていない、その理由の一つが、非常にりっぱな憲法で、その理想を曲げるべきではないというお答えでした。私もそう思っているのです。そこで質問なんですが、そうなりますと、総理のお考えは、現在の憲法というものは全然欠陥がないのであるということで判断してよろしいでしょうか。欠陥があるのか、ないのか、現行憲法に。
○国務大臣(三木武夫君) 私は憲法を永久不変のものだとは思ってないんですよ、これはね。どこの国でも憲法改正というものはそのときの情勢に応じてしておりますが、この憲法に掲げられた理想を曲げるべきではない。これは政治家として私の不動の信念である。憲法に掲げられた理想というものを曲げてはいけないというのは不動の信念である。個々の問題について実情に合わぬような場合には改正する場合があるでしょう。しかし、その理想を曲げてはいけないのだ。これはやっぱりこの方針のもとに日本は、日本自身が将来みずからの発展を図るとともに、世界に対してもそういう角度から貢献をしていくべきである、これは私の不動の信念でございます。
○委員以外の議員(野末陳平君) そうしますと、実情に合わなくなっている部分が現在の憲法にはあるとお考えでしょうか。部分的にどの部分が実情に合わなくなっているか、まあ欠陥という言葉はあえて使いませんけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(三木武夫君) 私はこの現行憲法でいいと思っておるんですよ、現行憲法で。ただしかし、なるべくベターな憲法をつくりたいと政治家が考えることは事実でしょう。実情に合わぬようなところは変えたいと思うことは、やはり政治家というものは常に実情に合ったよい憲法をつくりたいと考えることは、これは政治家として当然のことですが、私はいま憲法改正をやらぬという考え方ですから、具体的にそういう個々の問題について準備をしておるわけではないんですよ。いまの憲法で私の三木内閣の時代はいく。また、党においても私がリーダーシップをとらないわけですから、そういうことですから、どの個所がどうだということを私はいま具体的には考えておりませんが、しかし、一つの論理としては、そういう個所があったらそれは改正されてしかるべきではないか。しかし、曲げてはならぬのは憲法の大理想である。これは曲げてはいかぬ。
○委員以外の議員(野末陳平君) そうしますと、実情に合わなくなっている部分があるとは、総理はいまお考えになっていないわけですね。
○国務大臣(三木武夫君) はい。
○委員以外の議員(野末陳平君) ところが、これを欠陥という言葉で、言うならば法務大臣は、実情に合わなくなっているんだ、これが欠陥であるというお考えなわけです。そうしますと、憲法の基本的な受け取り方が、総理は欠陥なしと見ている。法務大臣は欠陥ありと見ている。そうなりますと、そういう人を法務大臣に起用するということは非常に総理の考え方がいいかげんじゃないかというふうに思えるんですね。どうなんでしょうか。やはり欠陥がないと思っている以上は、欠陥がないという考えの人を法務大臣に起用するのがあたりまえで、考え方が正反対である、しかし三木内閣にいる間はそういう考え出さないで守ってくれよというような起用の仕方というのはちょっと、総理大臣としてはかなりいいかげんである、ふまじめである、そういうふうに考えますが、その点について、基本的な問題なんですが、どうでしょうか。
○国務大臣(三木武夫君) 私は頼んだわけでないんですよ。三木内閣におる間は憲法を守ってくれと、そういうことで閣僚を任命するようなことはいたしません。そんな不見識なことを、三木内閣にある間は憲法を守ってくれ、そんな閣僚なら私は入閣はさせない。憲法は、いま稻葉法務大臣も憲法を改正はする必要はないと。だから、学究でありますからいろいろ研究はされておるけれども、三木内閣というものの閣僚としてそのことを承諾して、いまの時点で憲法を改正するということの意思を持ってないわけです。いまの時点で三木内閣におって憲法を改正しようという考えならば、私は内閣に入ってもらうようなことはいたしません。本人も三木内閣の憲法改正せぬというこのことを承諾をして入閣をしておるわけでございますから、いろいろ学究として御研究になることは事実でしょうけれども、国務大臣としてそういう考え方はいま持ってないということで入閣をしてもらったわけでございます。だから、食い違いはないということでございます。
○委員以外の議員(野末陳平君) しかし、ずいぶん常識的に考えてもおかしいと思うんですけれども、時間がありませんから、その食い違いあるなしでもって議論するのはやめますが、それならば、そういう考え方は構わぬということで、稻葉法務大臣がわれわれに追及されても、総理大臣、別に改めて統一見解がどうとか、あるいは稻葉法務大臣に閣僚である限りはこういう集会に出席しないことを改めて要請することもないでしょう。初めにこういうことは当然わかっていたことでしょう。稻葉さんは法務大臣になる前も出席なさっているわけですから、それがわかっているのだったら、やはり非常にいまの三木総理大臣のお答えは矛盾してくると思うのですが、どんなものでしょうか。欠陥があるという考え方と、それからいまの総理がそういう考え方を持つのは自由である、だから法務大臣に起用したとおっしゃいますが、どう考えても、そんな簡単に分けて考えることができるほど政治とか大臣の起用なんていうのはイージーなものとは思えないんですがね。
○国務大臣(三木武夫君) 人間の行動というものは主観的な判断と客観的な判断との食い違いがあるわけです。そこに人間が過ちも起こしたり軽率なことも起こるんですから、主観的にはこう考えておっても、客観的にはそう受け取られない場合があるわけです。今度の場合もそうですよ。彼としては個人と国務大臣というものを使い分けができると考えたところにいわゆる配慮の足りなかったところがある。国務大臣という地位は重いのですよ、それだけ。だから、個人と国務大臣というものの使い分けはできないと考えて、国務大臣は国務大臣在任中は言動を慎重にしなければならぬわけでありますが、使い分けができると思ったところに今度の問題の一つの混同があったわけです。その点は彼は深くみずから戒めていきたいと言っておるのですから。 そういうことはありますよ、人間の場合に。いままででもそんな例はたくさんあるんですね、政治家が個人と。そういうことで、そういう個人と使い分けしようとしてもできない。だから、これからは個人と国務大臣との使い分けはできないんだという判断で国務大臣は職務に当たってもらうことの方が、やっぱり政治家の態度としては慎重である。今度は本人はそう何も憲法を真向こうから侮辱したり軽視したりするためにここへ出たのではないんですよ。従来からその会に出ておるしするから、個人と使い分けしようと思って自動車まで自分でタクシーを雇ってしたのです。しかし、そういうことをしたのだけれども、客観的にはそうは受け取られない。そこにやっぱり軽率ということが起こったのですから、今後は注意をいたしますということを言っておるんですから、いろいろ世間のことをあなたもよく御存じですから、そういうことは御理解が願えるのではないかと思うのでございます。
○委員長(多田省吾君) 最後の質問にしてください。
○委員以外の議員(野末陳平君) 使い分けのできないことが軽率であるとするならば、そういう使い分けのできない人を大臣に起用したのもまた非常に軽率じゃないかというふうにへ理屈も言いたくなりますが、いままでのことで一つわかったことは、総理は現行憲法は欠陥がないと思われている、法務大臣は欠陥が大ありだと思われているということなんですが、こういう席で、この国会でいままでのお答えを聞いていると、欠陥がどこにあるか、具体的な憲法論争というものをなるべく総理は避けて通られているような気がしてならないんですよ。実情に合わないところが出るかもしれないからいずれは変えるかも知れないとか、具体的なことをなるべく避けて通られているようですが、実はここでこそもっと具体的に、欠陥がどこにあってどうだということを言ってもよかったのじゃないかと、こういうふうに考えているんですが、いかがでしょうか。最後に、やはり総理大臣、憲法に対してもう少し具体的な意見を総理もお述べになる必要があった、それから稻葉法務大臣に対しても、余まり言わせないようにするよりも、やはり言って、オープンにして、議論がもっと進むようにした方がよかったのじゃないかと、そういうふうに思うんですが、後で法務大臣とは質問時間がありますから、とりあえず総理。
○委員長(多田省吾君) 簡潔にお願いします。
○国務大臣(三木武夫君) 私はこういう考えなんですよ。憲法の理想と現実との間には開きがあることは事実です。たとえば憲法の中の国民は文化的生活をする権利があるというようなことも、必ずしもまだその域までに達していない。人類の恒久平和を祈念しといっても、まだそこまでいっていない。しかし、私はこういうふうに解釈する。その理想と現実の開きは、日本の政治家にそれを埋めるだけの使命を課されているものだと私は思うんですよ、これは。掲げてある理想というものはりっぱな理想である。現実との間にギャップがあるとするならば、そのギャップを日本の政治が埋めることの一つの使命を日本の政治家に課されておると考えて、政治家がそれを、政治がその開きを埋めていくことが日本政治の課題ではないかと私は考えておるわけですから、私はいまの憲法を改正しようということで具体的に研究してないので、なぜ言わぬのだ、ここでこそ論議の場だと言うのですが、いまそういうふうに考えているんですよ、理想と現実との開きをね。そういうふうに考えておりますから、改正をしようと考えていないのですから、具体的にこの点をどうしようということは何にも私自身が考えていない、こう申しておるわけでございます。 ただ、私自身が独断して、この憲法を永久に変えるべきじゃないと言うことは独断にすぎません。それは主権在民という日本の国の基本をなす問題からして、そういうことを言うことはきわめて独断であり僭越であるということから、私はそうは申し上げられないと申しておるのでございます。
○佐々木静子君 先ほどの統一見解に欠陥憲法の記載がないのは、法務大臣が取り消しの意思を表明したからもうそれでいいようなことをぬけぬけといま総理は言われた。先ほどから話を聞いていると、全く独善的国民不在のこの無責任の姿勢というものに対して、国民は大きな怒りを持っていま三木内閣に対して強い不満の意を表明しているわけです。このような状態、そして欠陥憲法という法務大臣の国会における発言というものが国会をここまで混乱させ、国民の政治に対する不信というものを非常に増大さしたことに対して、いま総理は取り消したからとぬけぬけと言っている。いまこのような大きな政治責任を惹起したことに対して総理はどのような責任をとるつもりなのか、はっきりと簡明に答えていただきたい。
○国務大臣(三木武夫君) 私は、私の閣僚が、本人の主観的意思にかかわらず、いろんな世間に誤解を与えるようなことをしたことを遺憾に考えて、御承知のように、この参議院の法務委員会も、私がここに参りました時間は十時から十一時半までおったんです。総理大臣として異例のことである。私は国務を持っておるわけです。それがやはりこういうふうなことで生じた参議院の誤解を解きたいと思って——そういうことはないのですよ、議会の中で。私自身にはいろんな約束があるわけです。しかしこのことは、国権の最高機関でいろんな疑問をお持ちになっておることに総理大臣として疑問に答えなければならぬということを感じて、私はそれまで自分の宿舎にも帰らず、控え室で皆さんが再開される時間を待っておったわけです。私は誠意を尽くしておるつもりで、総理大臣としての責任を果たそうという考え方で、そうして皆さんの御審議の進行状態というものを見守ったということも、私がそう無責任にこの問題を考えていないという一つの証拠ではないかというふうに御理解を願いたいのでございます。
○佐々木静子君 前例がないといっても、これくらい不統一な内閣というのも前例がない。また、これほど無責任な内閣というのも前例がないわけです。そして、これに対する責任のとり方というものは、これはもう明らかにこの内閣の不統一を来したところの稻葉法務大臣に対する、あなたの解任権の速やかなる行使以外に何物もない。また、そうしたところでそれで責任が果たせたわけではないことははっきりしているわけです。このように、私ども国民が、そして野党が全部共通した意見として速やかにいま稻葉法務大臣を解任せよということを要求している。そのことに対してあなたの政治姿勢というものをはっきりと国民の前に示すということは、すなわち三木内閣が正直な内閣であるか、大うそつきの内閣であるかということを国民の前に示すということにほかならないわけです。このことをあなたははっきりと肝に銘じて、いまここで自分の政治責任、内閣の姿勢というものを表明していただくとともに、これだけの重大な罪を国民に対して犯したところの責任の万分の一にも報いるために、あなたはいま総理の立場として、次の憲法記念日までに間に合うように、憲法記念の行事を復活するための準備を各省に直ちに指令するように、ここでかたくお約束していただきたいということを私は重ねて申し上げます。答弁を求めます。
○国務大臣(三木武夫君) 佐々木さんの御質問はまことに厳しいので、私は国民に対して責任を負うておるわけですから、きわめて誠実な態度で国会にも臨んでおるわけでございます。少し佐々木さんの御発言は私には厳しい御発言だと受け取ります。 私は国民に対して申しておることは、三木内閣が憲法改正の提案をするようなことはない、自民党総裁としても憲法改正のリーダーシップはとらないのだと、これだけ繰り返しておったことに対して国民も理解を願っていられるに違いない。また三木内閣の閣僚が、この私の方針に反するような、そういう閣僚というものは私の内閣におれるわけではない。私もやめてもらわなきゃならぬ。そういうことはないんだ。稻葉法務大臣は私のこの方針に背いたようなことはないんだ。五月三日のことはいま言ったような点はございますけれども、これは自分が、憲法を守るという、憲法改正せず、憲法を遵守していくんだという三木内閣の方針に違反する意図を持って出席したものではないんだということで、この問題について、私はこれは今後の稻葉氏の行動というものを慎重にしてもらいたいということで、私はそういうことでこの問題に対してそれ以上の責任は追及しないという考えでございますが、もし内閣の方針に反するようなことがあったら、私はそれはやはり私自身として佐々木さんの言われるような措置をとることは当然でございますが、いままでそういうことはないのですよ。いままではこの方針に沿って、そして忠実に憲法遵守の義務を履行してきたわけでございますから、その点に対して疑いを差しはさむことは、ひとつその疑いは解いてもらいたいと思うのでございます。
○佐々木静子君 最後に。 いまの総理の御答弁ではわれわれは非常に不満を持っております。こういうことでは国民に対して私は全く無責任内閣であるということを強く申し述べておきたい。そして、この審議における総理の態度というものは何ら誠意が見られなかったということ、大いな不満をここに表明いたしまして、私の質問は終わりたいと思います。
○委員長(多田省吾君) 三木内閣総理大臣、退席されて結構でございます。 質疑を続けます。
○佐々木静子君 稻葉法務大臣に伺います。 あなたが改憲論者であるということは、これは従来からも明らかなことであったわけですが、先日来の委員会の審議において、あなた御自身が自分は改憲論者であるということを表明しておられるわけで、これはもう争いのないところでございます。しかしながら、三木内閣の閣僚である限りにおいては三木内閣の方針に従うということも、これは再三言明されておるとおりでございますね。この三木内閣、憲法を尊重していくということを約束しておられるわけですけれども、あなたも現行憲法を法務大臣のポストにおられる間、どのくらいまだあるのか私は知りませんが、いまはとりあえず法務大臣である。その大臣としておられる間、この憲法を尊重していこうということを行政の上でどのようにあらわしていかれるおつもりか、具体的にお述べいただきたい。
○国務大臣(稻葉修君) 私は三木内閣の閣僚として、三木内閣の憲法は改正しないという方針に積極的に賛成なんでございますから、閣僚をやめて国会議員として、自由民主党の党員として憲法調査会にまた戻っていろいろ調査研究の事業には携わりますけれども、三木内閣の憲法を改正しないという方針には閣僚を離れましても賛成である。そういうことで、現行憲法の存する限り現行憲法を遵守することはもう当然でございますから、そういう立場で具体的に法務省の主管とする国民の権利擁護、それから法秩序の維持ということについて懸命に誠意を持って職務を執行してまいりたいと、こう考えております。
○佐々木静子君 いま内閣総理大臣が憲法記念日の復活ということを前向きに検討していこうという意思を表明されたことは、あなたも隣におられて御承知のとおりでございますね。これは憲法記念日には、毎年五月の三日、従来は法務省が主催して、憲法を普及するための憲法記念日の記念講演会その他の行事をやっておったわけです。これをあなたは来年の五月三日から、あなたがもし法務大臣のポストにまだおられるとすれば、憲法記念日に法務省が主催して講演会なり何なりの記念行事を具体的にやろうという意思がありますか、どうですか。あなたが言っていらっしゃることが政治の上で、行政の上で合致するかどうか、どのようにしてあなたが今後憲法を守るという姿勢を行政の上にあらわしていかれるおつもりかということに関連して、私は憲法記念日の行事に際して具体的に法務省はどう取り組むかという御答弁を求めるわけです。
○国務大臣(稻葉修君) 憲法は国の根本法であり、非常に大事なものでございますから、憲法施行の記念日に国が主催して行事を行うということについては総理も明言されました。そうして憲法擁護の最終的な機関は最高裁判所ではないかと思うのでございますけれども、そういう法曹全体の関連において、いま十月三日を法の記念日ということにして法遵守の思想を普及するとかいう事業をやっておりますが、今度は五月三日の憲法記念日の祝祭をどうするか、これにつきましては先ほど総理大臣がお答えになりましたように、これから検討して、どこが主務官庁となってやるかとか、そういうことについて一生懸命に協力してまいりたいと、こう思います。
○佐々木静子君 これは従来まではこの憲法記念行事のあったときには、法務省が主催の講演会というものを、私はずっと毎年のを調べてみたのですけれども、憲法を普及徹底させるための記念講演会というのをまず五月三日には必ず行っておられたわけです。これをあなたは来年の五月三日から復活させますか。
○国務大臣(稻葉修君) その最高の方針は総理大臣がもうお述べになりましたから、それはやるんです。それにつきまして、最高裁、日本弁護士会、法務省、いわゆる法曹三者協議会、これもようやく復活を見たようでございますから、そういう方々とも相談をいたしまして検討してまいりたいと存じます。
○佐々木静子君 いまあなたは最高裁と言われましたが、現在最高裁が憲法記念日にどのようなことをやっておられるのか、お答えいただきたい。
○国務大臣(稻葉修君) 最高裁判所が単独に憲法記念日、すなわち五月三日にどういう祝祭の行事をやっておられるかは、まことに恐縮ですが、いま存じておりません。
○佐々木静子君 あなたは非常に、憲法の問題に生涯のライフワークとして取り組んでいる憲法学者である、憲法の学究であるということを先日来強調されました。現在、最高裁で憲法記念日にどういう行事をやっておるかということを、あなたは法務大臣で最高裁ではないけれども、一番関係の深い役所の長である。それにもかかわらず、最高裁で憲法記念日にどういう行事をやっているかということをあなたは知らないのですか。何という無責任な話ですか。何と憲法に対する関心が薄いんですか。知っていたら答えてください。
○国務大臣(稻葉修君) まことに知識が不十分で、恐縮千万です。
○佐々木静子君 あなたは最高裁ときわめて関係の深い法務省の長として、改憲集会にはのこのことお出かけになるが、しかし、最高裁で憲法記念日にどのようなことが行われているかということについては全く無関心である。そのことについて、あなたは法務大臣として恥ずかしいとお思いになりませんか。
○国務大臣(稻葉修君) 最高裁判所は関係が深いけれども、私、十月三日に法の記念日として法曹三者が行事をやっていることは佐々木先生も御承知のとおりですが、それ以外に憲法記念日に最高裁判所がどういう行事をやっているかは存じ上げません。
○佐々木静子君 あなたが、このきわめて右翼的と申しますか、私どもの目から見ると大変反動的だと思われる改憲集会には毎年出席されている。しかるに、あなたは最高裁で憲法記念日に何が行われておるかということすら調べておられない。それでいて、これから憲法を三木内閣の閣僚の一人として守っていこう、最高裁とも相談をしてと言われる。本当に守る気持ちがあれば、このあなたの欠陥憲法あるいは憲法記念日出席の問題が起こってからも、もうすでに何日たっているんですか。あなたの周辺の人たちはそのことにかかり切っています。私はそのことだけでも国民に申しわけないと思っているんですよ。ところが、そのかかり切っておりながら、これからこういう問題を取り組んでいくとすると最高裁はいままでどうやっているだろうかということについて、あなたはいまあたりをきょろきょろ見回したけれども、だれもどうなっているかということをあなたに知らせなかった。それくらいあなたの周辺の人たちは憲法に対して無責任であるか、あるいはあなたに冷淡であるわけです。そういう状態で、法務省のトップとしてあなたはこれから法務行政をやっていく自信があるんですかどうなんですか、その点。
○国務大臣(稻葉修君) 自信があるかないかと言われますと、断然自信があるなんていうふうにはなかなか言いませんが、自信がないなんてことは毛頭思っておりません。
○佐々木静子君 言えないんでしょう。自信はないけれども、自信はございませんと言ったら、いまはお帰りになったけれども、総理が困る。あなたもやめなければならない。だから、ないのにあるような顔をしなければならないあなたのおつらさというものも私はよくわかります。その点においてはお気の毒だと思っておりますよ。 いま申し上げておきましょう。ことしの四月の最高裁判所「裁判所時報」にもちゃんと五月三日の最高裁の憲法記念日の行事は載っているわけです。知らないと言われるけれども、「裁判所時報」は法務省にだってちゃんと届いているわけですよ。あなたが口先で言う千分の一でも憲法に関心を持っていたならば、この書いてあるものに目がとまるはずですよ、関心を持っておったならば。そういう点で、あなたは恥ずかしいとははっきりは言えないか知らないけれども、良心が残っていらっしゃるならば、やはり心の中では恥ずかしいとお思いになっていると思います。だから、そういうふうなお気持ちを私は非常にお察しいたしまして、しかも私は、非常に竹を割ったような性格である稲葉法務大臣、まあ非常に私はイデオロギーは別としていい方だと思っておりました。いい方だと思っておったところのこの法務大臣が、このように心と口と違うことを言わなければならない。私は大変に同情している。あなたはこのような言行不一致な、心と口とが全然別のところにいるという状態を今後やはり長く続けていきたいと本当にお思いになっているんですか、どうですか。
○国務大臣(稻葉修君) この私の言動につきまして慎重を欠いて遺憾であった、そういう点で恥ずかしいと思うかどうか、おまえは羞恥心があるかと言えば、私、羞恥心ございますからね、それから良心も持っているつもりでございますから、そういう点でははなはだ遺憾であったと、こういうことを申し上げております。
○佐々木静子君 それでは話はもう一度もとに戻ります。 あなたは次の五月三日の憲法記念日に、裁判所などと相談をして憲法を普及徹底させる意味の憲法の記念行事を行うように考えてみるといまおっしゃいました。具体的に言うと、法務省主催で記念講演会、これはいままで記念行事がある間は行ってきていたのですが、来年は行われたらどうですか。
○国務大臣(稻葉修君) 先ほどあなたの質問に対しまして、総理大臣が何らか具体的な政府の行事を行うと、こう申しているのでありますから、政府主催の行事でございますからね、恐らく法務省がその行事の具体的な内容だとかいろんなことについて意見を問われると思うのでございます。そういう際には積極的に御協力を申し上げたいと思っております。
○佐々木静子君 なぜ私は法務省が記念講演会ということを言うかと申しますと、これは毎年の例に、ほかの省のことは載っておらないのですが、この憲法記念日にいままで憲法施行の二周年、三周年という行事がどういうことが行われたかというのを私さかのぼって調べてみますと、法務省主催の講演会、裁判所主催の講演会。裁判所は行政とは別でございますから、いまここで論ずるわけにはいかない。そして文部省主催の講演会、法務省と文部省主催の講演会というものがいままで行われておったわけです。まあ文部省のことまでは、あなたは文部大臣もされたけれども、いまは法務大臣の職におられるから、だから、法務省主催の講演会を実施される準備に取りかかられるかどうかということを具体的に伺っているわけです。
○国務大臣(稻葉修君) いまの御質問につきましては、総理大臣もきっぱりした答弁をして帰られたわけでありますから、よく相談をして御意向に沿うように努力してまいりたいと、こう思っております。
○佐々木静子君 ぜひ、総理も言われたことでもありますし、いまも言われたように、あなたは内閣の方針に従うということを確約していられるのですから、まず行動で、とりあえずこの記念講演会というものを具体的に実施をするように進めていただきたい。強く要望いたします。 また、それと同時に、このいまお示しいたしました「裁判所時報」、これを見ますと、最高裁判所では憲法を普及徹底させるための文書をつくって関係している人に配布している。また、これは相当数部数が出ているようでございます。法務省としてもいろんな書面をおつくりになることが多いと思いますけれども、これは法務省としても、憲法というものは法律よりも上位のものである。この憲法を国民に普及徹底させるための文書というものをつくられて、憲法記念日でなくても憲法というものは普及させないといけないけれども、この記念日を期して関係方面に配布されるというふうなことは具体的にお考えになりませんか。
○国務大臣(稻葉修君) 各省個別にやるのか、政府が統一して大きく国民の祝祭日として憲法記念日を祝うのか、どういう行事をやるのかにつきましては、総理が答えておられますから、法務省として独自にこういうことをやるんだ、ほかの省のことは知らないということにはならないと思います。総理が確約して帰られたわけですからね、よく相談して、御意思に沿うように努力をいたします。
○佐々木静子君 それでは、あなたがいまやられた事柄について、非常に国民に対して大きな不信を抱かせた、政治を混乱させた、そういう事柄に対する、これは謝ったからといって、口先で悪かったとか反省したからと言ってみても、行動で政治の上で示さなければどうにもならないものです。私どもは、いま言っているように法務大臣の辞任というものを強く要求している。良心があるならば、そしてあなたが学者としての良心を貫かれようと思っているならば、これは直ちに辞表を出すべきだ、どうして稻葉さんともあろう者が辞表を出さないのであろうかと、私は権力の座に執着する人間の醜い姿をここにまざまざとここ数日間見せつけられているわけなんです。あなたが直ちにおやめになるということを私どもは日本の国民のためにも、あなた自身のためにも正しいことであるというふうに思っておるわけですけれども、しかし、きょうあす急になにということでないとすれば、私どもはあなたが法務大臣としてとどまられることについては全然肯定はしておらぬわけですけれども、せめてもの罪の償いとして後任者に引き継いでいただきたい、具体的な罪滅ぼしの計画をあなたからお伝えいただきたいということでいまこの質問をしているわけです。 それから、ことしは国際婦人年、婦人の地位を高めるということにいま内閣は努力している。あなたも閣僚の一人として男女同権ということの普及徹底のために努力しておられると思うのです。あなたは言行が不一致ということは政治家として大変恥ずかしいことであろうと思います。しかし、これは私は私憤で言うのじゃないけれども、この問題が起こって私が最初に質問を大臣にして、委員会室から——この委員会じゃありませんよ、退室されるときに、あなたは何というせりふを残されましたか。これは大ぜいの人が聞いておりますよ。女子供に首をとられたくないと言われましたね。どうですか、その点は。聞いている人がたくさんいるんですよ。
○国務大臣(稻葉修君) 私、そういう不謹慎なことを申したことは絶対にありません。そして、そう思っていないのですから、思っていないことを、そんなことありませんから信用していただきたいと存じます。これは本当に頼みますよ。そんなことを言ったなんということになったら大変だから、思っていないことを言うはずがないのですから、どうぞよろしくお願いします。
○佐々木静子君 これは実は私が聞いたわけじゃないんです。しかし、方々の人からそう言って捨てぜりふを残して退室されたという話は私の耳に入っている。というのは、あなたが本当にそういうことを言われない人であるならば、だれも聞き間違いはしないわけです。しかし何人もの人が、本当にあなたが言わなかったとすれば、聞き間違えたとすれば、これはやはりあなたの思想というもの、日ごろの言動というものがそこにあらわれているのじゃないか。私はそれが真実だとすれば、またそのようなことを言う人が法務大臣になっているんだというふうに人々が認識しているということを私は大変に悲しく思うわけです。人権を守らなければならない一番の役所ですよ、法務省は。ところが、あなたがそういうふうに今度の自分の起こした不始末に対してそのような態度をとっていられるということに対して、これは日本の国民の半分を占める婦人の立場において非常に残念に思いますね。 どうですか。あなたは言わぬとおっしゃるけれども、多くの人はそのように聞いたと言うんです。まあ、言わないものがもし聞こえるとすれば聞き間違い。しかしながら、多くの人がそろって聞き間違えるというのは、やはりそこら辺に、あなた自身の持っている姿勢というところに問題があるのではないか。いかがですか。
○国務大臣(稻葉修君) 私はそういうことを言うはずがないんです、非常に婦人を尊敬しておりますしね。それから子供は大事にする方なんです。たとえ子供の言うことでも、それが真理であればそれに従う。たとえ三歳の童子といえどもその言われより一歩だに進むものがあれば、これはわが導師なりというふうに思っておるわけでございますから、そういうことを申し上げるはずがないのであります。
○佐々木静子君 それでは、そういうことは全く違うのだ、あなたは大臣としても日本の行政の責任者としても、婦人に対して尊敬をしている、その人権を守ることにも一生懸命になっているということを形の上で示してください。具体的にどのように考えられますか。いま婦人の地位は、これはもう総理府の発表によってもはっきりしているように、日本においても、また憲法で決められている男女の平等というものが現実には行われておらないわけです。これは何も法務省だけの責任じゃなくて、各省においてその向上のために、権利を守るためにがんばっていただかなくちゃならないわけですけれども、あなたの担当の、あなたのいまできる、私どもは容認しておりませんけれども、あなたのいま許された立場でできる仕事として具体的に形の上であらわしていただきたい。どのように考えられますか、具体的に述べていただきたい。
○国務大臣(稻葉修君) 法務省として国際婦人年に当たりいかなる具体的事業を考えているかという点につきましては、いまここでこういう具体的な事業を進めるつもりですという案を持ち合わせておりません。ときどき婦人の方々の社団法人とか財団法人とかから、ことしは国際婦人年だから、おまえかつて文部省におったこともあるんだから、こういうことを局長に電話してくれとか、たびたびおいでになりまして、そういうお手伝いは申し上げておりますけれども、国際婦人年に当たり法務省として具体的にどういう事業をどういうふうに進めて計画しているかということについては、省内では事務的にやっていると思います、私のところにまだ案が進達されておりませんけれども。そういう段階でございます。
○佐々木静子君 これは非常に遺憾なことでございますが、あなたの所属している自由民主党の議員さんの中にも、おなごのくせにとかいう発言がこの委員会の理事会でもございました。そういうふうな状態が、この国民から選ばれた選良といわれている国会議員の中でも、いまなお憲法が普及施行されてからこれだけの年月がたっていても、あなたの所属している政党の議員さんの中ではそういう発言をする人がいるというのが、これが現実です。そういう意味から考えると、あなたはやはり、人権擁護をあなたの省でやっているわけでしょう、もう少しそういうことを徹底させないとだめじゃないですか。いかがですか。具体的に。
○国務大臣(稻葉修君) 男女平等ということは現憲法の貴重な基本原則でございますから、そういう点でこの憲法の実効がまだ上がっていないで男女不平等のようなことがありますれば、それははなはだ法務省として人権擁護の立場からおもしろくないことであります。また、労働条件の同一制というようなことについては労働省の所管でございますが、これらにつきましても、その憲法の精神が伸びていくように、人権擁護の担当省として一生懸命に努力して御期待に沿いたいと、こう考えております。
○佐々木静子君 先ほど来あなたの憲法に対する姿勢というものが問題になっている。あなたが前の決算委員会でも憲法に対する御見解を私に述べてくださいました。それが、今度国会の審議が始まってから、にわかにその後、貝のように口を閉ざしてしまわれた。あなたはそうすると、国会で憲法論争をすることが間違っていると思っていられるのか、間違っていないと思っていられるのか、いかがですか。
○国務大臣(稻葉修君) 私は間違っていないと思っております。
○佐々木静子君 あなたは閣議において憲法の論争をされたことがありますか。
○国務大臣(稻葉修君) ございますね。
○佐々木静子君 何回ぐらい、どういう条文が問題になって論争されましたか。
○国務大臣(稻葉修君) 何回くらいと言われるとあれですが、私の記憶しておりますところでは二回ばかりございます。それから、どういう条文についてと申されますが、それは選挙法の改正案がまとまりつつあるときに、連座規定の強化ということで自動的に失格するという点は、憲法三十一条か三十二条あたりに触れてくるおそれがございますねといったような議論をいたしました。
○佐々木静子君 あなたはこの二月四日の閣議で憲法九条の問題について論争されたのではありませんか。
○国務大臣(稻葉修君) 二月四日に憲法九条の論議を閣議でしたことは覚えておりません。憲法九条の問題を閣議などで持ち出すことは私は余り適当じゃないと、こういうように考えております。
○佐々木静子君 一流紙の報ずるところによると、閣議であなたは憲法九条に対してかなり強い意見を出され、その後でこれは絶対にオフレコという約束になったということが書かれておりますね。じゃ、それは誤報だというわけですか。
○国務大臣(稻葉修君) 私の記憶ではそういうことはございません。
○佐々木静子君 そうすると、あなたは憲法九条、閣議では論ぜられないけれども、いまはどのように考えていられるんですか。
○国務大臣(稻葉修君) 国務大臣として国会の場で、いま九条についてどういうふうに考えているか、そういうことを、自分のつたない学問的研究ではございますけれども、これをまた申し上げますと、これは国務大臣として、憲法は改正しないと言っている三木内閣の政治姿勢にまたひびが入る、そういうことになりますと、まことにまた不謹慎に不謹慎を重ねることになりますので、慎重に対処させていただきたいと存じます。したがって、答弁は差し控えさせていただきたいのでございます。
○佐々木静子君 そうすると、あなたは国会で憲法論争をするのは正しいと思うといまおっしゃいましたね。それとこれとはどういう話になるんですか。
○国務大臣(稻葉修君) 私がかつて研究してきたことについていろんな考えを持っていることは、あなたもよくおわかりいただけると思うんです。持っていないとは申し上げません。しかし、そういうことはいま差し迫った問題ではありませんし、政治日程に上っている問題ではないんですし、こういう会期末の空気の中でまた申し上げますことは、この際差し控えさせていただきたいと、こう申し上げているのです。
○佐々木静子君 いま外野席からも発言がありましたが、国会の場で混乱を起こすから物が言えない、これはやはりおかしいのじゃないですか。国会の場は言論の府なんですよ。しかも、憲法というのは日本の最高の法規なんですよ。そのことについて閣僚が物が言えないというのは、あなたはおかしいことだとお思いになりませんか。
○国務大臣(稻葉修君) 私の所属しておった自由民主党の憲法調査会ですね、これは自由民主党立党のときの政綱に基づいて設置された政調会の一調査会、自由民主党政務調査会の中の憲法調査会、その委員としていろいろ論じたこともございますし、話し合ったこともございますが、まだ個人的な見解を出ずに、全体の討議にもなっておらないきわめて未成熟なもの、学力不十分な私どもの考えたこと、そういうことをここで公の場で佐々木先生のごとき専門家とやり合うだけのまだ機が熟していないように思っております。 先般、先生の御質問に対していろいろ決算委員会でお答えいたしました。これは自主憲法制定国民会議に出席したおまえはと、そしてあの自主憲法制定国民会議というものはこういう激しい、激烈なことだと言われるから、いや私はそれと同じにされちゃ困るというので、先生方がお尋ねになりましたから、私はそんな考えではないということをお訴えするいい機会だと思いまして個人的な見解を申し上げたような次第ですが、それがまたこの憲法には欠陥があるなどという失言をいたしたりしたことになりまして、はなはだ私恐縮に思っております。そういうわけでございますので、きょうこの場で九条についてどう考えているかという佐々木先生の御質問に対し、答弁は差し控えさせていただきたいと思うのでございます。
○佐々木静子君 いま九条についてと特定したわけじゃありません。憲法論争を言論の府である国会の場で——いま直ちに憲法を改正せよという論争とは限りませんよ、憲法論争ですから。これがあなたはいまできないとおっしゃる。あなたはやることは正しいとおっしゃった。正しいとおっしゃったにもかかわらず、現在は適当でないと言う。これはどうもおかしいとお思いになりませんか。国会で、国の最高法規である憲法について話ができないというのは、あなたはおかしいとお思いにならないですか。
○国務大臣(稻葉修君) 一般論として、国会は国民の代表機関でございますから、国民の中には、変えたらいかぬというのと、変えた方がいいという、そういうのがありますから、そういうことを国民の代表として静かに応答する、意見を述べ合う、そしてコンセンサスを得ていくということは非常に有意義なことだと私は思っているのです。けれども、物にはみな時所位がありますから。時と所と置かれた立場。私はいま憲法改正しないという三木内閣の閣僚、法務大臣ですから、その法務大臣が個人的な意見をこういう公の場で述べますということは、それがどうも三木内閣の中には、三木内閣の改正しないという中に、国務大臣として改正するというやつが一人いるよというようなことになりましてはなはだ不謹慎になりますので、どうぞこの点は、そういう意味でございます。物にはすべて一般論と時所位を得なければならぬということがございますので、ここでこの際、私の置かれた位置、法務大臣としての答弁は差し控えさせていただきたいと、こういうことを申し上げているのです。
○佐々木静子君 私はいま改正についてここで論ぜよと言っているのじゃないですよ。憲法を論ずる、憲法の解釈、あなたのいま言われた現実に法律と憲法との関連なんて当然ここで論じなければ話にならぬわけですよ。それが、あなたが憲法を論ずることをいま口をチャックをしてふさがれている。物が言えない。これはやはり異常な状態だとお思いになりませんか。
○国務大臣(稻葉修君) すべて行政をやるには法令の根拠に基づいてやるわけであり、法務大臣も法務行政について法令の根拠に基づかずして行政をやるわけじゃありませんですね。その場合、その法令につきまして解釈を自分で持っていなければ行動のしょうがないわけです。憲法についても同様でございますね。したがって憲法について、この条文についてはどう解釈しておまえは法務行政をやっているかという点について御質問があれば、それには答えなければいかぬ性質のものだろうと思います。ただ、そういう点についてのいろいろな説のあることは、あらゆる条文について勉強しておりませんから、そういうことについて政府を代表をして解釈論を返答申し上げるのは、内閣の組織上、法制局長官ということでございます。
○佐々木静子君 法律を立案するのは行政ですけれども、法律をつくるのは、やはり政府案にしてもここで審議しなくちゃならないわけです。法務省提案の法案は、ここでそれがどういう法律であるか、憲法との関連はどうなっているのかということを、これは常時やらなければならないわけですね。あなたが大臣でとどまっておられる限り、法務省代表として出てこられなくちゃならない。当然これは憲法の話をここでしちゃいかぬというのであれば、これから法務省から出てくる法案について憲法との関連について議員は審査をすることができないということになってしまいますね。どうなんですか、そのあたり。あなたは非常におかしなことを要請されているとお思いになりませんか、いま総理から。
○国務大臣(稻葉修君) 総理からえらい箝口令をしかれておる、しかもそれはおかしな箝口令であるという御趣旨の御質問でございますが、憲法を論ずることについて、しかも「勿論、憲法改正を論ずることと、現行の憲法を尊重し擁護することとは別の問題であるが、」と、こう言って統一見解が出されておるわけでございますから、そういう意味において、提案した法律が憲法のこの部分と矛盾しないかとか、もう少し憲法の精神を生かしていくためにはもっと政府原案を改正したらどうかとか、こういう論議は憲法に関連して当然行われてしかるべきものと考えますし、私も今後はそういう点につきましてはお答え申し上げていかなければならぬと、こう思っております。
○佐々木静子君 私どもはいま強くあなたの解任を、辞任されることを野党は望んでいるわけですけれども、あなたがいまこうして職におられるという段階においては、国会で憲法の解釈について話ができなければ、現実の問題として次から出されてくる法案、あるいはこちらから議員立法のものもありますよ、当然どれもこれも憲法との関連ということがこの法務委員会では常時問題になるわけですよ。その憲法との関連においてあなたが物が言えぬというのじゃ、これはもうとうてい話にならない。法務大臣としての職責を果たすことができない。また逆にわれわれから言えば、法案の審査というものがあなたを対象には一切できなくなってしまう。あなたは憲法論争について、いま総理から内閣の方針として何ら口どめはされていないわけですね。そして、憲法論争するのに時期が適しているかどうかというのは、あなたの方から発言するのではなくて、われわれがいま必要だからこそあなたに答弁を求めているわけなんですね。今後もそういうことが起こるでしょう。そのときは当然答弁する義務があなたにあるでしょう、どうですか。
○国務大臣(稻葉修君) それは当然なことと思っております。当然でございます。
○佐々木静子君 それでは、あなたが当然だと言い、また、そのことでこの間のように、全く人が変わったように貝がらの中に入ってしまって物も言えぬ、物を言っても何を言っているか日本語になっておらぬというようなことになったのでは、そういう人であれば、私どもはあなたが残ると言っても、これは法務大臣としての立場を認めるわけにはいかないわけです。 あなたのいまの答弁を一応伺っておきまして、私は時間がありませんから質問を他の委員にかわってもらいますが、いまの憲法についての論争ということは、これは当委員会で今後も取り上げるべきものであり、取り上げられたら法務省の代表として、あなたが職におられる限りは答えなければならないということをあなたも御表明なさったということをここで確認して、私の質問は一時終わりたいと思います。
○矢田部理君 法務大臣は、前回からの質問に答えて、三木内閣の憲法改正をしないという方針に従うという態度を何度か繰り返し述べられました。その態度は、従来一貫して述べてこられた改憲論の立場まで放棄をされたのかどうか、その点をまず第一に伺いたい。
○国務大臣(稻葉修君) その立場を放棄したことにはなりません。
○矢田部理君 もう一つ確認的に伺っておきたいと思いますが、御承知のように、自民党はすでに憲法改正、改憲の立場を党の方針として明らかにしております。もちろん、党是と言われているほど重要な方針だと思うわけでありますけれども、あなたは三木内閣の閣僚であると同時に、党員であり、かつ、今日まで党の中心で憲法改正作業を進めてこられた。しかも、その運動化のためにも努力をされてきた。この党員としての立場、従来とられてきたやり方といまの立場はどういうふうに統一をされるのか、その矛盾をどういうふうに解決をされようとしているのか、その点を明らかにしていただきたい。
○国務大臣(稻葉修君) 私が、ただいま矢田部さんが指摘されました自由民主党の政綱に基づいて設置された自民党憲法調査会長を引き受けたり、内閣の憲法調査会にも委員として入ったり、そうして私の意見も申し述べている中に改正の意見もございます。そのことと、三木内閣が憲法を改正しないというこの方針に積極的に賛成だと申し上げることと、矛盾はいたしませんように私は考えているのです。
○矢田部理君 きわめて重大な矛盾ではありませんか。党は基本的な方針として憲法改正をする。そしてあなたは、先般指摘をした月曜会のレポートの中でも、やるべきことはやるという決意だと、非常に強い態度を示しておられるわけですよ。三木総理の態度にも私は重大な矛盾が含まれていると思うわけでありますが、とりわけ、あなたはその中心になって憲法改正作業を進め、運動にも参加されてこられた。その立場と、今度は憲法改正をしないという三木内閣の方針そのものに食い違いがある。この二つの食い違いの中にあって、あなた自身、率直に言えば大変苦しんでいられると思うのですけれども、どう見たって明瞭な矛盾ですよ。先ほどのレポートの中でもこういうことが書いてあるわけですね。「池田内閣の一九五九年の一月大会で、中曽根氏が運動方針委員長で、それが憲法改正をちゃんとうたっている。党にはうたっていながら政府がそれを否定するというのはおかしい。」という文書まであなたのレポートには実は載っているわけですよ、おかしいと思いませんか。
○国務大臣(稻葉修君) 憲法改正を党は決めております、自主憲法を制定するとなっているのですから。それには、いつやるのか、どういう内容のところを改正するのか、そういう点についてやっぱり国民的合意を得る前に、まずそういうことを掲げている自民党自体が決めなければいかぬのですから、それを研究して、ああでもない、こうでもないと言って一生懸命に検討をするわけです。まだその段階でございまして、そういう段階にあるうちに、一つの内閣が、まだ案も決まらない、国民の皆さんにも発表しておらないという段階で、幾ら自民党の政綱にあるからといって三木内閣が憲法を改正すると言うことは不謹慎であり、私はそういうことは憲法の重要性にかんがみて軽率なことだと思いますので、三木内閣は憲法は改正しないということが当然だろうと思ってこれに賛成しておる、こういうふうに御理解いただきたいと思うのですね。
○矢田部理君 繰り返しになりますけれども、あなたのパンフレットの中にそう書いてあって、あなた自身もそれに対して理論どおりにはいきませんよと、こう言っている。ちゃんとその矛盾をあなた自身が認めておられる。統一的な説明になっていないのじゃありませんか。とりわけあなたの立場としてはおかしいし、少なくとも閣僚にとどまるために党是の立場を捨てるということになりませんか。単なる学徒として憲法を検討するとか研究するとかということではないんですよ。党の運動方針としてそれに忠実に生きようと思えば三木内閣の態度はおかしくなるのです。三木内閣の態度に従おうとすれば、党是は少なくとも変更するか凍結するしかないのです。そうでしょう。方針とまるっきり違うことをやっているわけでしょう。どっちかを改めなければ統一的に理解できないのが筋じゃありませんか。あなた自身がそのことをちゃんと、理論どおりに政治は動かないんだと。その次も読んでみれば、いろいろおもしろいくだりが出てくるわけであります。しかし私は理論どおりには動かないけれどもやるべきことはやるという決意だということで、大変強い決意までここで述べておられる。 そこまで言っておられる方が、そしてまた、私から理解をすれば、あなたの信念に従ってあの改憲集会には出席したんだと思うのですよ。先ほど白木委員からも指摘がありましたけれども、その後、この改憲集会出席の件が問題になってから後も、法務大臣であろうと総理大臣であろうと、それになっても私は出ますということを胸を張って言い切ったあなたが、どうしてそう豹変をされたのか。先ほどの矛盾をどう解決しようとしているのか。二つの顔を持ったということについて私はきわめて残念に思うわけでありますが、もう一回改めて答弁を求めたいと思います。
○国務大臣(稻葉修君) 三木内閣が憲法を改正しないという方針と自由民主党の自主憲法を制定するという政綱と矛盾する、したがって、党是と称せられるそのことに忠実ならば三木内閣にはいられないのじゃないか、こういう論理の展開でございますが、私、そういうふうにきめつけていただかない方が正しいと思いますね。それは、三木総理大臣も朝の質問に答えて、党是があるから自由民主党内に憲法調査会があっていろいろ検討をしているのだ、よりよき憲法についての検討をしているのだ、それはまだ熟していないし、また、憲法をこうやって直した方がいいという国民のほうはいたる機運も高まっていない、そういう国民の状態の中で三木内閣が憲法を改正するんだなどと言うことは正しくない、政治判断として間違っておるという点については、私も同様いままで申し上げてきたのです、その点はね。憲法調査会長時代も、まだ早いんですよ、まだなかなか先の話です、容易なことじゃありません、やればやるほどむずかしい問題ですと言うてきたのですから、そういう立場で入閣しておるんですから、三木内閣の憲法改正しないという立場に反対なのではなし、渋々従っているのではなし、積極的に賛成だと、それを支持しておる、鼓舞しておるという立場でございますから、矛盾はいたさないと思うのでございます。 それから先ほど白木さんからも指摘されました点、ただいま矢田部先生から指摘されました点、記者会見で法務大臣であろうと総理大臣であろうとというような点がございましたが、記者会見のときにいきなり、あなた法務大臣で憲法記念日に、憲法九十九条を守るのは国務大臣の大責任じゃないかというようなことでありましたから、いや改正論議をすることと現行憲法を守ることとは別だと、この統一見解のこういうくだりを強調するが余り、いま身分は法務大臣でありますが個人としての出席は差し支えないんだというふうに当時の気持ちでは思っておったものですから、それを強調したいがため、その余り適当でない言葉を使い、不謹慎であったことを認めます。記者会見のそのくだりはね。したがって、ここに謹んで遺憾の意をあなたにも表しておきたいと思います。
○矢田部理君 いまの後段の問題、何度かあなたの立場を強調されてきた。それはそれなりに信念に生きてきたんだと私は思うんですよ。それを今度は遺憾です、取り消します、変更しますということを繰り返されてきている。このことがまさに問題なんですよ、一つは。 それからもう一つ、本論に戻りますけれども、そうすると、憲法改正を党是としてうたっている自民党の方針、これは時宜に適していないというふうにはお考えなんでしょうか。そこはどう考えられますか。
○国務大臣(稻葉修君) 国の根本法である憲法も、総理大臣も言うていかれたように、永遠のものではないわけですから、歴史の移り変わりに応じて憲法にも変化があり得るわけでございますから、そうして自由民主党立党のときには、そういうふうに世の移り変わりに適応した自主憲法を制定するということを是なりとして党の政綱に掲げたわけでございます。それはいつまでやるとか、どの内閣でやるとか、仕上げるとか、そういうせっかちなことを現実の政治課題として掲げているのではなくて、党の将来のずっと続く方針としてこういう方針でいくのだというわけでございますから、いま三木内閣は憲法を改正しないということが、この将来の理想を持っておるこのことに直ちに違反しているというふうには私は考えませんのです。
○矢田部理君 将来の変化があり得るという前提に立って、自民党は立党の際にそういう基本方針を出したのだというふうには私は理解できないのです。そういう一般論ではないでしょう。具体的な、基本的な方針として自民党は出した。自民党の立場に立つならば、それを忠実に推進する責任を負うのが自民党員でしょう、政党としては。その立場と、憲法問題には一切触れない、改正をしない、それを盛んに、しかもこの度に及んで強調をする立場とは、やっぱり統一的には理解できないのではありませんかと言っているのです。この質問をそう繰り返すつもりはありませんけれども。 そこで、あなたにもう一度確認をしておきたいのは、仮に憲法改正をしないという三木内閣の方針に従う理由ですね。三木内閣は最初からそういうことを言っておりました。あなたも従わないとは言葉では言わなかった。言動にはいろいろ問題がありますけれども。三木さんとあなたとの間に食い違いがあるのじゃないかという感じがしてならないのです。 あなたは、先ほども述べられたように有名な改憲論者ですよ。改憲論の前提としては、欠陥憲法だという認識に立たなければ改憲論は出てきませんとも述べた大臣ですよ。したがって、いまの憲法には多くの欠陥があるという前提、憲法に対する認識の上に立って言葉の問題は別として、改憲論を主張されているのだと考えるわけですね。だから、あなたが憲法改正を行わないという三木内閣の方針に従うという意味は、いまやろうと思ったってできない、数も足りなければ時期も尚早だ、そういう立場であなたは従うかのような、あるいは従うという態度をとっておられるように理解をされる。ところが、総理の話を聞いてみると、総理自身は、私は一度も改正を主張したことがないと述べておる。いまの憲法はすぐれた憲法だとも評価をされている。単純に時期尚早だから守ると言っているのではないというようなニュアンスにも実は受け取られるわけであります。この辺の食い違いはないのですか。あるいは、いまの憲法についてどういう評価、どういう理解に立って三木内閣の改正しないという方針に従おうとしているのか、その点を伺いたいと思います。
○国務大臣(稻葉修君) いま矢田部さんが、改正の意向を持ちながら実際はできないからと、つまり数も足りないし、何だからということで、心にもないことを言うて改正しないという三木内閣の方針に従っているのではないかというような御質問でございますが、私そうでありませんで、改正するにはやっぱりよく内容を検討して、いいものにしたいという気持ちなんですね。 そういうことで、鳩山内閣から石橋内閣、岸内閣に移ったときに、その自由民主党の政綱による自主憲法の制定をするということに従って、国会で調査会を設けようということで憲法調査会法を成立せしめていただきました。その法律に基づいて内閣憲法調査会というものができて、三十二年から三十九年、七年二、三カ月かかったと思いますが、そういう慎重な検討をして、その報告書を内閣と、内閣を通じて国会に提出されておりますね。そういうものをもよく踏まえて、そうして間違わないように慎重にやっていかなければならぬということで、ずっと自由民主党の憲法調査会ではこれを基礎にしてやってまいったわけですが、まだ改正の内容について党員全体のコンセンサスを得るような案もできていないのに、そういう段階で三木内閣が不用意に憲法改正をやると言うことは慎重を欠く。もっと慎重にやらなければいかぬ。したがって、三木内閣は憲法を改正しないということには、私も責任ある憲法調査会の会長としてそういうことも感じておりましたし、仮に法務大臣でなくとも、党員としてもいまはやるべきでないという考えでございますから、そういう点で矛盾はないように私は思っておるのであります。
○矢田部理君 私が質問をしているのは、いまのこともあります。要するに準備も不足だ、時期も熟していない、だから改正しないという方針に従うのだということなのか、もう一つ、いまの憲法がすぐれているという観点で改正しないという立場に立つのか、いまの憲法は欠陥が多い、しかし時期がまだ来ていないから改正しないという立場に立つのかによって、憲法を擁護する、尊重するという考え方におのずと違いが出てくるだろう、結論は同じであっても。そのどちらの立場に立つのですかと、こう聞いている。現在の憲法をその前提としてどう評価されておるのかと聞いておる。
○国務大臣(稻葉修君) 私は、現憲法に非常な長所が多い、明治憲法に比較してはるかに世の中の移り変わりに適応した、人権の尊重とか言論の自由とか集会の自由とか、そういう点について自由の範囲が非常に拡大されたという点については非常にすぐれた憲法だと思っている。だから、憲法調査会長の時代も、それから選挙に打ち出す政策の中にも、現憲法はこれは遵守する、そうして国民の世論の動向とも相まってこれに対処するという慎重な表現になっているわけでございまして、この前も言い、またここで繰り返しますが、現憲法の基調とする平和主義、民主主義、人権尊重主義という原則は動かしちゃいかぬということは、私の憲法調査会長時代から一貫した方針であります。そうして、そういうことは私のこの改正論を述べる前提としてたびたび書物にも、それからパンフレットでも訴えているところでございます。ただ、いろいろ研究してまいりますと、理論的に、現行憲法に理論的に検討すべき点がなしとはしないと、こういうふうに考えますことは私の心の中にまだあります。
○矢田部理君 理論的に検討……。何ですか、もう一回正確に。
○国務大臣(稻葉修君) 先生、その私の前の言葉の、欠陥憲法という言葉を使われましたが……
○矢田部理君 簡単に言ってください。理論的に検討しなければ……。
○国務大臣(稻葉修君) 理論的に検討してしかるべき点があるということについては、従来の考えに変わりはございません。
○矢田部理君 改憲論をとっているわけでしょう。基本的には正しい、しかし幾らか検討すべき点があるというようなニュアンスでは、党の方針として出し、あなたが改憲論を一貫して主張した前提としての憲法の理解としては弱いんじゃないですか。
○国務大臣(稻葉修君) 私は憲法調査会長として提案し、いろいろ私の意見をもとにして憲法調査会で決定された憲法改正大綱草案がございます。そこに盛られた点は、現行憲法についてこういう点が不十分だという立場に立っての点でございますから、そういう意味で、この憲法には長所は多い、その原則は揺るがしちゃいかぬけれども、こういう点はこっちの方が合理的じゃないか、あるいはこっちの方がもっと国民のためになるんじゃないかというようなことでああいう案を出しているわけでございますから、検討すべき点が大分ある、こういうふうにいまでも考えておるわけでございます。ただそれはまだ完全に熟して、ああこれでいいと私も思っていないのですから、そういう段階で、三木内閣の閣僚になっておって、そうして憲法はいま改正しないという三木内閣の閣僚としてこれに積極的に賛成なんですから、閣僚としてでなくても、憲法調査会長としても賛成なんですから、そういう点は異なる問題で、理論的には区別のできることのように私は考えております。
○矢田部理君 そうすると、あの憲法調査会で出された草案ですね。まだ十分に熟していないけれども、しかしあなたが責任でまとめられたものでありますだけに、あの考え方にはいまでも変わりがないわけですね、現状では。差し控えないで、ぴしっと言ってください。
○国務大臣(稻葉修君) あれは私の試案をもとにしたのですが、ずいぶん直されているんです。ですから、おまえはあのとおりに考えるか、どうだ、こう言われると、そうでございますと直ちに言うだけの心持ちではないですね。いまもあのとおりみんな考えていると、こう言うのは私の心と違いますから、そういう点は御承知願いたい。まだ未熟で、これから論議をしてどう直すべきか、チャンスはあるんですから、その場合には私の本心ももう少し入れてもらわなければいかぬような点もあるわけですから、あのとおりかと言われると、そのとおりでございますと言うことは差し控えます。
○矢田部理君 わかりました。まだ未熟であるということと、それから全部が全部あなたの考えが盛り込まれたものではない、部分的には違う点もあるということのようでありますが、基本的には、しかも現段階ではあの考え方の立場に立っておられるということは、そのとおりでしょうか。
○国務大臣(稻葉修君) それは、憲法調査会長として皆さんの御意見をまとめたものでございますから、そうしてこれが憲法調査会の決定になっているわけですから、これに従わぬというのではございません。
○矢田部理君 したがって、あそこに出された草案の中心的な内容にはあなたも賛成しておられるでしょう。そういう考え方である、こういうことですね。
○国務大臣(稻葉修君) そういうことでございますね。
○矢田部理君 とすれば、あの考え方の前提として出てきたのは、現行憲法の中心的な部分に相当の欠陥があるということを認識の前提としてあの改正案を出されたのじゃありませんか。たとえば九条二項を削るとか、天皇制についても元首としての地位を明確にするとか、緊急事態に対応する措置をつくるとか、現行憲法の根幹に触れるような内容があそこに盛り込まれているのじゃありませんか。そうは考えませんか。 それからもう一つ質問しておきたいのは、そういう考え方を持った閣僚が法務大臣としての地位にいるということが問題です。三木内閣は、確かに条文上の憲法改正はしない——できないというふうにすら私たちは考えていますけれども、問題は、憲法のどういう基本をどういう立場に立って守るのかが問われるわけですね。だから、欠陥が多い、いろんな検討すべき課題があるという立場に立って憲法を読むならば、解釈の上で、運用の上で非常に拡大をして、自分たちに都合のいい方向で憲法を運用し、解釈する危険を持っているわけだ。そこが私は、少なくとも条文上の憲法改正をしないという言葉だけではなしに、そこがきわめて重要だと思う。それについてどういう見解、どういう考え方に立っておられるのか、お伺いをしたいと思います。
○国務大臣(稻葉修君) 厳として存在している現憲法の条章を忠実に解釈し、正しく解釈し、これを運用してまいりたいと、こう存じます。
○委員長(多田省吾君) 時間が参りましたので、最後の質問にしてください。
○矢田部理君 あなたは、たとえば憲法改正論議の中でも、自民党は天皇を元首として明確にすべきだという議論が出されているときに、御承知のように、いまの憲法でも元首という解釈ができるんだという態度をとられましたね。そうでしょう。うなずいておられる。そういう立場に立つ人が、しかも法務大臣という、法に一番かかわりのある閣僚としているということが私は非常に問題だ。そこへ、あの激烈な集会に出席をされた。前科一犯です、これは。その後、決算委員会の席上で欠陥憲法の発言をされた。前科二犯を重ねているんですよ。そして記者会見の席で、先ほど述べたように、総理大臣になろうが法務大臣になろうが、ああいう集会に出席してなぜ悪いとまで言われた。ここで単に三木内閣の方針に従いますとか遺憾でありましたということだけで済まされる問題ではないのじゃないでしょうか。その点で私は、法相としての政治責任をまず第一に感ずる必要があるだろうと思いますし、同時に、これまでとってこられた憲法改正に対する政治家としての姿勢、信念を貫くならば、三木内閣にとどまることはあなたの政治信条にそぐわないとすら考えておる。 そういう意味で、率直に私は、先輩でもあるわけでありますが、先輩としても申し上げたいわけでありますけれども、この際おやめになるのがあなたの政治生活を全うするゆえんでもあり、今日の三木内閣の方針にかなうやり方でもあるというふうに考えるわけであります。その政治責任をもう一度改めて深く考えられて、きれいにおやめになった方がいいだろうということで辞任を求めて、私の質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(稻葉修君) いまあなたが、私のことを先輩としてりっぱな行動をとれ、余り地位に恋恋としたらみっともないぞ、それが君のためだという御指摘で、辞任したらどうかということはあなたの立場としてよく私わかります。わかりますが、しかし、それは親切な忠告としては承りますけれども、私は三木内閣の方針に反していると思っていないんです。それから改正論をやった人間だということが法務大臣としては九十九条違反だから不適任だと、こういう論理に従うことはできないんです。
○矢田部理君 違反だからとは言っていません。政治責任です。
○国務大臣(稻葉修君) そういうことで、いろいろな政治責任については反省をいたしておりますが、この機会、ここで辞意の表明をいたしません。辞任いたしません。
○白木義一郎君 最初に、ただいま憲法をめぐる法務大臣の行動から、国会を中心として日本じゅうが疑惑と混乱に陥っていると思います。問題の五月三日をめぐりまして、まじめな若い男女が日本の安全、幸福、世界の平和と人類の共通した大きな課題の上から現行憲法についてこのような考えを発表しておりますので、法務大臣にお聞かせ申し上げたい。できれば御感想を伺いたいと思います。 憲法をとりまく最近の情勢を注視していくと、憲法の理念に対する反動的な動きが、ひそかに、しかも根強く進行しているのを見逃す事はできません。その中でも、とりわけ防衛と人権の問題は危険な状態にあります。米・中・ソの超大国を別にすれば、すでに五指に数えられる程の大きなものになっている日本の自衛隊が、違憲であるとする立場は、法学者の間でも大勢を占めております。それにもかかわらず、現実の自衛隊は、法によって認められた「合法的」なものとして、厳然として存在している。法的原則からみれば、本来、憲法改正を経て行なわれるべき再軍備が〃合憲〃の名のもとに法律によって実現されてしまっているのです。人権の問題にしても、戦後三十年の歴史を通し、社会秩序という視点から種々の自由権を制約しようとする動きが、ますます強まっております。昨年答申された「改正刑法草案」においても、こうした姿勢が反映され、法の名によって人権が脅かされつつあることは、周知の通りであります。更には、信教の自由と平和への重大な挑戦である「靖国神社法案」、国民主権の基盤を根底からくつがえそうとする小選挙区制実施への野望等等、いずれも憲法の精神には真っ向から対立するものでありながら、たくみな表現で〃違憲〃の本質を隠し、堂々と日本国憲法下の法律として、登場しようとしているのであります。 以上申し上げたとおり、まじめな青年たちがこのように現況を判断し心配をしている、その表現の一部であります。法務大臣の感想をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(稻葉修君) その中の憲法的な見解につきましては、私そのとおりだと申し上げるわけにはまいりませんが、気分としての、そういう現状を憂えて将来いい国にしたいという意思の表明は、非常に正しくて純真で賛成でありますね。
○白木義一郎君 それでは最初に、二転三転する心配がありますので、法制局長官に伺っておきたいと思いますが、内閣の国民に対しての責任のとり方、あるいは政治姿勢から起きた問題について内閣あるいは閣僚の責任のとり方にはどういうことがあるか、最初にそれだけお尋ねしておきたいと思います。
○政府委員(吉國一郎君) 大分政治面にわたるような御質問でございますけれども、憲法論から申し上げます限りは、憲法第六十六条におきまして、内閣は行政権の行使について連帯してその責任を負うということに相なっております。
○白木義一郎君 閣僚の場合はどうですか。
○政府委員(吉國一郎君) 閣僚も国務大臣の一員として行動しているわけでございまするので、国務大臣の行動につきましても、内閣ば一体として責任を国会に対して、したがってまた全国民に対して負うわけでございます。
○白木義一郎君 その責任のとり方の具体的な問題をお聞きしているわけです。
○政府委員(吉國一郎君) これにつきましては、国会は内閣に対してこれを信任するかあるいは信任しないかという態度を表明されることが憲法上規定をされておりまして、内閣はこの制度を通じて国会に対して責任を負うということに相なっております。
○白木義一郎君 それでは結構です。ありがとうございました。 そこで、法務大臣にお伺いいたします。先ほど三木総理大臣にお伺いしましたが、あなたもお隣で静かにその質疑討論についてお聞きいただいたと思いますが、要領を得ませんので改めてお伺いをいたします。五月三日の集会、問題になっております集会におけるあなたの記者会見の中でおっしゃっていることにつきまして、事実であるか、お伺いをしておきたいと思います。 朝日新聞には、「稻葉氏は会場の明治神宮参集殿で記者団に対し「憲法改正論者である私が、そのための一番大きな会議に出るのはあたりまえだ。肩書が法相であろうと、仮に首相になろうと、私は出席する」」。また、毎日新聞には、稻葉法務大臣自身は、「私は改正論者であり、最大の改憲団体の会合に出るのは当然。たとえ首相の身分になっていても出る。ただ改正論者であっても、現行憲法が存する限り、それを擁護する気持であるから、九九条には関係ない。現行憲法が全く日本語になっていないのは事実で、言葉の乱れは世の乱れだ。国民会議は、私の改正試案を承認しており、旧憲法の復活などという方向にはいかないはずだ」と記者会見で大臣がおっしゃったことは事実であるかどうか、お尋ねします。
○国務大臣(稻葉修君) お読みになったとおりではありませんけれども、そういうことを申しました。
○白木義一郎君 そうしますと、この席上で読み上げられた元総理大臣の岸信介君のメッセージの中の「諸悪の根源」という表現と、それから「言葉の乱れは世の乱れだ」、この表現は全く同じ意味であって、憲法にずっと表現されている文章、言葉は世の乱れだ、この憲法は諸悪の根源である、この憲法がわが国をこのように混乱に陥れているんだ、世の乱れだ、こういうことなんですが、その点いかがでしょうか。 先般来の委員会における法務大臣の御答弁の仕方、この間も申し上げたかと思いますが、ふだんの委員会での様子と全く違うわけです。先ほどから私考えておりましたのですが、これは部屋が広過ぎていけないのじゃないか。いつもの部屋ならば法務大臣らしい態度と雰囲気が出て、非常に有意義な当委員会が繰り返される。ところが、部屋が変わって、あるいは決算委員会、あるいはこういうふだんの会場を変えて始めると、ふだんのあなたじゃない。考えてみると、両わきに強力なガードといいますか、あるいは防波堤があって、鉄のマスクのような状況が何となく感じられる。しかし、いまはこっち側にそれがなくなりましたから、いささかふだんのあなたに戻りつつあるんですね。まだ片方に非常に忠臣といいますか、諫臣ならいいんですけれども、そういうことで……。長官、もうお帰りになっていいんです、私がお呼びしたんですから。——こっちへおいでいただいて、中心に大臣お移りになったらいかがでしょうか。それでいつものとおりの法務委員会のように、まじめに真剣にいわゆる対話と協調をやりたいと、そういう気分でおりますが、残念ながらいままでは、まあクリーン内閣という表現があるならば、どうも反省大臣あるいは遺憾大臣と質疑を繰り返さなきゃならないような気がするわけです。 いずれにいたしましても、記者会見で、先ほど私が読み上げた記事そのままじゃないけれども、大意はそのとおりだということをお認めになった。これはあなたのおっしゃったことは、表現は違うけれども、諸悪の根源である、その考え方にほとんど同調したということになりますが、その点いかがですか。
○国務大臣(稻葉修君) 国民会議の途中で事務の人が、記者が会見したいと言っておられるというので会合の途中を割いて参りましたところ、法務大臣、九十九条にこういうことを書いてあるが、法務大臣としてこういうところへ出られるのは後で問題になりますよというような出だしだったものですから、それは法務大臣の職務に関連して出ていったということになると問題でしょうけれども、きょうは個人の資格でありますのでということを強調したかったのですね。しかし、幾ら強調してもそれは使い分けは困難だからもう今後はやめる、それは私もやめます、こう言っているのですから、今後はそういうことはないのですけれども、当時の気持ちを言いますと、個人の資格で来たのですから御宥恕願いたいという意味をも含めまして、それを強調するの余り、いま申し上げましたようなことを言ったのであります。言葉が適当ではなくて不謹慎であったことを認めます。しかも、そういう個人と公人の使い分けはむずかしい、紛らわしいから、李下に冠を正さずという、閣僚の重みにこたえる行動をこれからやっていかなけりゃいかぬと、こういうふうに、謹んで遺憾の意を申し上げておきたいと思います。 それから、「言葉の乱れは世の乱れ」ということはこの憲法は諸悪の根源だということに等しいじゃないかと、こういうことでございますが、それとは違うのじゃないでしょうか。もう少し、この憲法を読んで、大体の国民の水準に、新聞を読むような程度の平易な文章にした方がいいという気持ちがあるものですから、それも私少しオーバーなそういう表現を使いましたが、そういう点についてもまことに恐縮いたしております。
○白木義一郎君 まことに法務大臣がおっしゃったとおり、私は言葉の乱れが世の乱れだと思うのです。この言葉は憲法に結びつけるかどうかは別としまして、あなたも、あなたという重大な三木内閣の法務大臣の言葉の乱れはこのように重大な問題を起こしてしまったのです。そこで、この間も申し上げたのですが、いまだにあなたは思言行一致の信仰の持ち主である、こうはっきり思ってらっしゃいますか。
○国務大臣(稻葉修君) まあそれは非常に至らぬ者でございますから……
○白木義一郎君 思っているのですか、いないのですか。もうそれも訂正したのですか。
○国務大臣(稻葉修君) いや、思っていることと、口に出して言うことと、これを実行することと、こう一致したいものだなあという念願を持っておる者だ。ただ、まだ人間としての修練が足りませんから、未熟でございますから、なかなか実行できないで残念には思いますけれども、心がけてはおるということだけを申し上げておきたいと思います。
○白木義一郎君 ますます二転三転大臣。私どもあなたの御答弁を伺っておりますと、まだ私は見たことないのですが、カメレオンというのがある。あるいは子供時代に見た中では七面鳥という鳥があるわけです。 それはそれとしまして、先日も申し上げたとおり、まあ政治的判断とか、あるいは政治的配慮とか、いろいろむずかしい行動なり表現なりがあることもだんだん覚えてしまいました。そこで法務大臣は先日、いつものわれわれの正常な委員会でこういう御発言をされているわけです。人間は悪性と善性を持っているのだから、悪性はあくまでも強制的に押さえつけていかなければならない、こう議事録に出ております。要するに、善心と悪心兼ね備えている、これは私も同感であります。ところが、あなたはその人間の悪心を徹底的、強制的に弾圧していくんだ、強制的に押さえつけていかなければならない、こういうおっしゃり方をしているわけです。とすると、先ほど佐々木委員がおっしゃった、あの参議院決算委員会が終わってから出しなに、女と若僧の思うようになってたまるかというような捨てぜりふを吐いたというようなことがつながってくるわけです。 そこで、やはりここで衣の下のよろいという表現が使われましたときに、総理大臣は私の知る限りではかつてないほど激怒の態度を示されましたから、私は、あなたもそうなるといままでのことが水のあわになりますから、その表現じゃなくて、子供のお話の赤ずきんちゃん、オオカミが羊の皮をかぶって赤ずきんちゃんと仲よくしよう、そばへ寄ってきたら赤ずきんちゃんを食べちゃおうというお話にかえて、どうもそういうあれが節節に感ぜられるわけです。 そこで私は、これは政治家としては、三木内閣の法務大臣としては、いろいろ伺っているところでは相当なガードだ、特訓を受けている、最前でも両わきからいろいろと法務大臣の、人間稻葉修君に対しての圧力がかかっているように思う。そこで学者としての良心の上から、こういう大問題を引き起こして、しかもあなたの持論である強烈な改憲論に対して盛んにそうじゃないんだ、そうじゃないんだと言い続けているわけです。その問題について、もしそのまま続けられるならば、私は学者としてのあなたをきょう限りはっきりとおやめになるのがいいのじゃないか、しかるべきだ。その上で自民党の政治家とし、あるいは三木内閣の閣僚としてどういう態度をおとりになるか、これはまたあなたの自由ですけれども、教育という問題は政治家の最も忘れてはならない点であります。その学者の良心をお捨てになったことになってしまうんです、このままいけば、あなたが何と言おうと。あくまでもあなたの真摯な学究徒としての生涯を貫くならば、ここで潔く法務大臣をおやめになって、長年の理論、つまりあなたが勉強された日本の幸せと世界の平和のためにかくあるべきだと主張してこられたその学説を、二十年あるいは五十年と健康を維持されてお続けになる、これが私は一番いいんじゃないか。そして、いつものあなたらしく、言いたいほうだい、振る舞いたいほうだいお暮らしになった方が、あなたの人生は非常にすがすがしい、それこそクリーン稻葉になるんじゃないか、こう思って先日申し上げましたら、二転三転になってしまった。それでもう一度お尋ねをするわけです。どちらになさるか。
○国務大臣(稻葉修君) いろいろなことを長くおっしゃいましたから……。しかし、最後はやめるかやめないかという意思表示をはっきりせいということに帰着するんだろうと思いますが……
○白木義一郎君 二者択一。
○国務大臣(稻葉修君) それで、やめないんです、私。やめる意思を持ちません。しかし、そのことがいままでの学説を堅持する立場を捨てたということには私ならないと判断しているんです。
○白木義一郎君 まことにまじめな学者がこの論議、この法務委員会の質疑応答を聞いておられれば非常に憤慨し、あるいは慨嘆されると思います。私はそういう学者が日本に一人もいないことを切望します。政治家になると、学者がしばしば学者らしくない態度を示している例が間々あります。法務大臣という、閣僚という、最高権威の中の最高の権力の内閣の大番頭として、学者稻葉修君がそういう立場になると学者として認めがたい態度をおとりになるということは、これはわが国の教育という問題について将来非常に影響が出てくる。いまは政治家としての立場から全国的に非常な影響を与えておりますけれども、そういう心配を申し上げておきます。 そこで、この今度の委員会で総理大臣とお二人で使われた言葉の中に大変多く使われた言葉が、反省という言葉と遺憾という言葉。そこで簡単な辞典を開いてみましたら、反省というのは、一、自分の過去について誤りがないかどうか考える、二、自分の精神生活に対して注意を向け観察すること、これが反省だと字引に出ている。もう一つ遺憾という言葉は、一つは残念、もう一つは気の毒だという意味。この字引から言いますと、いままでの遺憾だ遺憾だと言っていることは、自分を反省し、国民は気の毒だ、国民は気の毒だ気の毒だ、こうおっしゃったことになるわけです。まだ学者はやめないとおっしゃっているのですから、まあ個人と公人、政治家と学者、なかなか使い分けはむずかしいでしょうけれども、あなたの遺憾だとおっしゃったことは、気の毒だという意味が字引に出ているので、学者であり法務大臣にお尋ねしたい。その遺憾だとおっしゃる気持ちをもう少しはっきりと——もう私は気になってしょうがないです、国会に来てから何かというと遺憾だ遺憾だで済んでしまうわけです。そこで、遺憾というのは字引を引きますと気の毒。あなたがまことに遺憾だと言うのは、おまえたちが遺憾なんだ、気の毒なんだ、こういうことになるのですが。
○国務大臣(稻葉修君) まことに、辞典を引かれての御質問でございますから、そして私は言語学者や何かでもなし、また皆さん、いまの私を白木さんも学者だ学者だと言いますけれども、いま学者じゃないのですね。もう学者という立場にある人間じゃない、勉強しないのですから、余り。
○白木義一郎君 法学博士じゃないのですか。それをお返しになったらどうですか、勉強しない博士なんというのじゃ困るから。私が勉強しなくてもまだ許される。博士が勉強しない。大学の教授ですから……。
○国務大臣(稻葉修君) そこで、反省は自分の行いを省みて悪かったかどうかその評価を考える、評価する、こういうことであり、遺憾とは残念、人に対しては気の毒だと、こういうことなんですが、そういう意味のほかに、反省していると言う以上は、悪かったな、申しわけないという意味だと思いますね。
○白木義一郎君 そこで、あなたは申しわけないと、こうおっしゃったのですから、私はその点は納得します。 それでは、最初の記者会見の模様をお伝えしたように、それについてもあなたは遺憾であるとおっしゃったのですから、申しわけないと、こういうことになるわけです。よろしいですね。あのときは申しわけなかったということは、まだ国民にはあなたははっきりと申しわけなかったとはお述べになっていないわけです。その点、ここでひとつはっきりしていただきたい。
○国務大臣(稻葉修君) 使い分けのむずかしい点を使い分けられるかのごとく行動したことについて、まことに申しわけないと思っております。
○白木義一郎君 ただいまおっしゃったことは、国民に対していろいろ論議されたあなたの立場としてまことに申しわけない、まあこういうように謝罪をされている。とすれば、これは当然行動としてあらわされなければならないと思います。最初はまことに遺憾であった、残念であった、お気の毒だと言っているうちに、いまあなたはいわゆる善性が出てきたわけです、人間の善玉の一端が。そこで、そうおっしゃった以上はこれを何らか具体的に申しわけなかったということを、思言行一致の人を、信仰しているとはおっしゃらなかったけれども目指しているようなあなたであるならば、その座右銘といいますか、信念に基づいて思言行一致の人になられるようにここで努力をされる意味で、どういう責任を行動にあらわしていくか。行動というのは先ほどからいろいろと各野党の方から述べられているように、二つに一つです。私が申し上げることは、大臣を潔くおやめになって真摯な学究の徒に戻る。それでなければ一切の学者としての肩書きを潔くお捨てになって、あなたの政治家としての信念、あなたとしての信念を晩年を貫いていくべきだ。こういう考え方で、いま国民の皆さんに申しわけないというまじめなお言葉として私は素直に伺って、それをどのように行動にあらわすかという点をはっきりとお尋ねをしたいと思います。
○国務大臣(稻葉修君) 今回のこういう大きな問題を引き起こしました私のきわめて慎重を欠いた不用意な言動につきましては申しわけない。その申しわけないという意思表明、国民に対する意思表明をどうするかといいますと、私はこの統一見解の第二にありますように、三木内閣が憲法を改正しないと言っているのですから、閣僚が憲法改正を推進する会合に出ない。それから三木内閣の閣僚である限り誤解を生ずるおそれがあるような言動はしない。これが私の申しわけないということに対する今後の行動としての実践、したがいまして、白木さんの御忠告はありがたくちょうだいしますが、閣僚をやめるという意思は持っておりませんです。
○委員長(多田省吾君) 簡潔にお願いします。
○白木義一郎君 どちらもはっきりとした御返事をいただけなかった。今後は生涯、思言行一致を目指すということはおっしゃらない方がおためだろうと思います。 そこで最後に、今後国民会議の集会、ああいうところに閣僚である以上は出ないのですから、それまでメンバーをおやめになるべきだと思いますけれども、その点だけ最後に伺って私の質問を終わります。
○国務大臣(稻葉修君) 自由民主党の憲法調査会の会員、いま委員ではありませんし、それから別に自由民主党の議員で組織しておる自主憲法期成議員同盟というのがありますが、これを脱会するかどうかにつきましては、もう少し考えさせていただきます。 —————————————
○委員長(多田省吾君) 委員の異動について御報告いたします。 中西一郎君が委員を辞任され、その補欠として中村登美君が選任されました。 —————————————
○橋本敦君 法務大臣、三木総理はきょうこの委員会の席上でも閣僚と個人を使い分けすることはよくないと言明をされた。それにあなたは従う、これを認めるというので閣内にとどめる、こう言明をされたのですから、あなたは閣僚と個人を使い分けをすることはよくない、してはならぬと認めますか。はっきり答えてください。
○国務大臣(稻葉修君) それは所によりけりじゃないでしょうか。閣僚として酒飲みに行くというようなことはないわけです。それは個人としてあれで、閣僚だからそれは使い分けているとは言えないのじゃないでしょうかね。あらゆることが使い分けはできないとは思いません。それから、あらゆることが使い分けることはいけないと総理がおっしゃったとも思っていません。
○橋本敦君 重大な問題ですよ。総理は閣僚と個人を使い分けすることはよくないとはっきり言明されたのです。あなたは時と場合によってはそれは使い分けすることもできるといま言っているのですよ。これは重大な問題です。休憩して総理の速記録を調べてください。意見の食い違いがあれば総理に来てもらわなければならぬです。委員長、調べてください。
○国務大臣(稻葉修君) 公の席へ、たとえば三木先生のおっしゃるのは、三木内閣の閣僚が憲法改正を推進する会合に出席することは、改正しないという三木内閣の方針について誤解を生ずるおそれがあるので、閣僚である限りは使い分けはできないから、使い分けすることは悪いから出ちゃいかぬ、これはそのとおりだと思います。
○橋本敦君 法務大臣、まじめに質問の本質に答えてくださいよ。あなたがいま国民から、国会から問われている本質について答えてください。 そうすると、五月三日の集会に出たことは、あなたは個人と閣僚との使い分けができると、こう思っておったけれども使い分けはできなかったのだ、このことを認めますか。もう一つは、使い分けしようとする行為さえしなかった。具体的にその集会の場で法務大臣と紹介されることを断らなかった。この事実ははっきりしています。いかがですか、使い分けができなかった事実を認めますか。
○国務大臣(稻葉修君) いろいろな行動で使い分けようと努力したことは認めていただけると思うんです。努力が不十分であり、あなたからごらんになるというと、紹介されて否定しなかったり、いろいろの点で不行き届きな点は多々ありましたけれども、私自身は使い分けをしようとした主観は持っておった。しかし、客観的にはそんなことはなかなかむずかしい。だから、李下に冠を正さずという意味で、そういうところへ閣僚である間は出ちゃいかぬということはごもっともだと思いますから、これに従います、今後は従いますと、こう申し上げているのです。
○橋本敦君 反省が不十分ですよ。結果として、あなたの意思がどうであれ閣僚と個人の使い分けはできなかったという結果、こういう結果が生じている事実を認めますかという質問です。あなたの意思を聞いていませんよ。結果としてどうなんです。客観的に見て使い分けができたと思っているのですか、いま。できなかったことを認めるのですか、はっきり答えてください。
○国務大臣(稻葉修君) 大きな誤解を生じたと思います。
○橋本敦君 できなかったのでしょう。できなかったらできなかったで、重大な責任をとらねばならぬじゃないですか。いかがですか、その責任をどうとりますか、できなかった結果を生じたことについて。
○国務大臣(稻葉修君) 幾ら努力してもできない相談であるというふうに思いますので、今後はそういう紛らわしいところに使い分けるつもりで出ちゃいかぬ、こういうふうに思って、今後は出ませんという責任をとるわけです。
○橋本敦君 そんなものは責任にならぬですよ。自分が行って、結果を生じた事実についてどう責任をとるか。今後は出ない、そういうことでは責任をとったことになっていませんよ。五月三日の行為の結果について責任をどうとるかという質問に答えていませんよ、その答えは。もう一遍答えてください。再答弁を求めます。将来の問題を聞いていません。五月三日についてどう責任をとるか。
○国務大臣(稻葉修君) 責任ということの意味は、私は自分の言動について他の批判を受け、その結果を負担するということではないかと思いますが、法律なんかの刑事責任とか民事責任とか。そういうことでございますから、その点につきましては深く反省し、申しわけないと思って、今後はそういう紛らわしいところへは一切出ません。結果を負担しているわけです。
○橋本敦君 結論は責任をとらぬということですよ。そういう無責任なことは許されますか。 あなたが決算委員会に、自分の考えがよくわかるから読んでもらいたいと佐々木決算委員の要請にこたえてお出しになった「憲法改正問題と自民党国民政治研究会」、これはまさに公の集会の一つですよ、ここで講演されたレポートがありますが、この中に「一九七〇年代の終わりころまで国民的な合意を得られるような運動をしてみたい、こう思っているわけです。」こう述べた事実がありますが、こう述べた事実は間違いありませんね。確認だけ。
○国務大臣(稻葉修君) 事実はそのとおりです。
○橋本敦君 あなたは改憲論者であることは改めないと、こう言いました。それはあなたの思想であり、学説であり、それはよろしい。しかし、ここで書いていることは、改憲運動を一九七〇年代の終わりごろまでにやりたい、そういう改憲の運動をやりたい、はっきり言明しているのですよ。いいですか。これはどうなんですか。
○国務大臣(稻葉修君) その私の言う改憲の運動というのは、いろいろな研究をして、それを発表したり、人にしゃべったり、意思表示をしたり、そういうことをやりたいと、こう申したのであります、その当時は。しかしいまは、閣僚である間はそういう三木内閣の政治姿勢を疑われるようなことは一切いたさないつもりです。
○橋本敦君 弁解はしないでください。はっきり書いていますよ。「一九七〇年代の終わりころまで国民的な合意を得られるような運動をしてみたい」、はっきりある。「運動をしてみたい」、研究や調査と違いますよ、「運動をしてみたい」、いまでもそう思っているのですか。
○国務大臣(稻葉修君) 政府統一見解の第二にありますように、三木内閣の閣僚である限りそういう運動は慎むと。
○橋本敦君 閣僚である限り運動は慎むということであって、この考え方が根本的に変わったとはあなたは言っていませんね。そういう考え方をいまも持っておる。これで三木内閣の方針に従う。いいですか、閣僚と個人の使い分けがむずかしい、それと同じように改憲運動をしたいという考え、そういう思いを持っていることと閣僚との使い分け、このむずかしいことがあなたはできるという意味ですか、自信がありますか。
○国務大臣(稻葉修君) その「運動」ということをきちんと決めなければ、これからあなた、私がこの憲法の研究を続けたり、それからお互いに同僚の学者仲間と討論し合ったり、そういうことがすべて運動ではないのでございまして、そういうことはそこに書いてある運動ではないのですね。そこに書いてあるのは、会合に出て演説をしたり、そういうことなんでしょう、それから街頭に進出して。そういうことは三木内閣の閣僚である限りはしない。
○橋本敦君 閣僚である限りはしないが、ここにこう書いた考え方は改めないことははっきりわかりました。まだまだ問題が残りますけれども、次の質問に移ります。 この同じ講演の中であなたはこう言っていますね、「やはり自衛のためには軍隊を持つのだというふうに、はっきりしたらいいというのが、私の意見です。若い人をいつまでもだましてるなんていうふうに国政自体が誤解されては、ろくなことはないと思います。」、「ろくなことはないと思います。」と書いていますよ。そうしてこの自衛隊について、「ゼニは出します。防衛分担金だけ出す。それで兵隊を出すことは免除されている。そんな状態を続ければ、国際場裡における発言権はどうしても弱いですよと、松平大使がかつていって、問題を起こしたんですが、実際はそうだと思いますね。」「ですから国際協力義務からする海外派兵というものは有り得る。」と、こう述べた事実、これも事実は間違いないですね。
○国務大臣(稻葉修君) そのときそう述べた事実は間違いありません。
○橋本敦君 かつて四十三年に問題になった倉石発言、あなたもよく御存じですが、倉石さんはどういうことを言われたか、御記憶が正確でないと思いますが、覚えておられますか。覚えておられなければ、ないで結構です。
○国務大臣(稻葉修君) 正確には覚えておりません。
○橋本敦君 言いましょう。倉石さんは、軍艦や大砲を背景に持たねばだめだ、他国の誠意と信義に信頼している憲法は他力本願だと、こう言っています。あなたが言ったことと同じ趣旨ですよ。あなたは、銭だけ出して国際協力義務が果たせるものじゃないと、こういう趣旨で海外派兵もあり得る、こう言った。 もう一つ聞きます。あなたはこの同じレポートの中で「予算委員会で憲法改正の問題を質問されたとき総理は、余計なことをいうなというようなムードでしたね。」という質問の次にこう答えています。「そんな不正直なことをやっていたら、青年がついて来ませんよ。本心は憲法を改正したいのではないですか。」、こう言っています。これも事実ですね。倉石さんはどう言っているか御存じですか。佐藤首相も平和憲法を口にしているが、腹の中ではくすぐったいだろうと倉石さんはおっしゃった。全くよく似ているでしょう。 もう一つ問題がありますよ。倉石さんは、いま憲法は、こんなばかばかしい憲法を持っている日本は日陰者、めかけみたいなものだと、こう言って問題になった。あなたは取り消されたけれども、欠陥の多い憲法と言われている。全くよく似ている発言だということがわかるでしょう。 倉石さんは辞任をされた。あなたは法を守る法務大臣としてそれ以上の責任があるという立場で、全く同じような問題で倉石さんは辞任されたが、あなたはどうしますか。もう一遍聞きます。直ちに辞任するべきだと思いますが、どうですか。
○国務大臣(稻葉修君) 結論だけを言えといえば先ほどからお答えしたとおりになりますが、あなたは私の前の発言の印刷になったものをお読みになりますけれども、あなたのお読みになった部分だけを聞いておられると、いかにもこう軍国主義みたいなことに聞こえるので……
○橋本敦君 客観的に似ているでしょう。そっくりでしょう。
○国務大臣(稻葉修君) しかし、それについての歯どめの規定をいろいろ設けなければならぬとかいう点につきましても御紹介を願って、全体として稻葉の言うことはそんなひどいことを言っているのじゃないのだぞというふうに御同情もいただきたいと、こういうふうに思います。
○橋本敦君 同情なんて私はできません。あなたが言ったことを、この決算委員会に出した資料をいろいろと説明したいということなら改めて時間をとってやりましょう。あなたは審議をそういう意味でこれからも続けることを同意されますか。私はやりますよ、きょうとは言いませんが。聞いてほしいのでしょう。
○国務大臣(稻葉修君) それは、国会でいまあなたのおっしゃったようなことに対して、私も責任があるんだから、それに答えて審議すべきだとは思うんですよ。思うけれども、そういうことをやりますと、憲法を改正しないという厳然たる政治姿勢をとっておる三木内閣の閣僚であるうちは、どうも三木内閣の政治姿勢を疑われるようなことになりますから慎しませていただきたい、差し控えさせていただきたいと、こういうことでございます。
○橋本敦君 過去の言動と、現在慎しむということとの関係では、まだ解明されていませんよ。あなたは言いたいことがあるようです。それはやりましょうよ。 ところで、あなたは欠陥の多い憲法だと、こう言ったことを二度にわたって取り消されまして、理論的には検討すべき点もなしとはしないというように訂正したいということを言われたことは間違いない。どういう点を理論的には検討すべき点があるというようにおっしゃったのか、その内容について言ってくれませんか。
○国務大臣(稻葉修君) 個人と閣僚とを使い分けることがむずかしいという点はそこなんです。個人的に述べたことをここにいま言いますと、法務大臣がこう言ったと、こうなってまた非常にあれになりますから、そういうことに対するひとつ私の答弁は、この際差し控えさせていただきたいと存じます。
○橋本敦君 これはあなたが個人的に述べたことじゃなくて、法務大臣として法務委員会のこの席で、わが憲法には理論的には検討すべき点もあると、こういうように訂正された答弁そのものなんですよ。このどこが検討すべき点もあるか、あなたの国会での公式の答弁だから、これを聞くのは当然じゃないですか。答えないのですか。 委員長、答弁を求めてください。これは公式の委員会での発言なんですから、個人的に私はほかの発言をとらえ、あるいはこのレポートの趣旨、中身を聞いているのじゃないですよ。この委員会で発言された、憲法には理論的に検討すべき点もなしとはしないというあなたの公式の発言、その中身を聞いている。当然じゃないですか。委員長、答弁を求めてください。
○国務大臣(稻葉修君) そう申し上げたことはそのとおりです。ですからそのとおりを申し上げて、内容に立ち至りますと、やはり何と言いますか、改憲はしないという三木内閣の政治姿勢を疑われるということになりますので、閣僚としてある限り、そういう内容の一々の点について質疑応答をここでやるということは、この際差し控えさせていただきたいと、こう申し上げているのです。
○橋本敦君 正当な理由とは思えません。明らかな答弁拒否じゃないですか。公式の委員会で発言したそのことについて問われている。それで答弁しないというのですから、これは答弁拒否じゃないですか。自分の都合で答弁しないということにすぎませんよ。こんなことを答弁しないで審議できますか。 稻葉法務大臣、あなたは憲法をよく御存じでしょう。憲法六十三条にどう書いていますか。「内閣総理大臣その他の国務大臣は、」「答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。」、あなたは出席しておられる。この「出席しなければならない。」という意味は、あなたもよく御存じのとおり、私が説明するまでもありませんが、有斐閣の法律学全集の「憲法」のコンメンタールを見てもはっきり書いています。「およそ大臣たる者はすべて、衆・参いずれの議院にも出席して発言する権利があり、また、議院から要求されたときはこれに応ずる義務がある。」「ただ出席するだけでなく、」「「答弁又は説明のため」に認められるのであるから、出席権は発言権を含み、出席義務は、答弁・説明義務を含むと解してよい。」と。おわかりでしょう、これは通説ですよ。 いまあなたが答弁しないということはどういうことか。国会侮辱ですよ、議会制民主主義の破壊ですよ、私の質問したことについて答えないということは。現にいま答弁拒否しているというその事実は、まさに憲法六十三条違反をあなたがそこでやっているということですよ、答弁拒否は。あなたの答弁しない行為それ自体が、憲法を守るべきあなたが憲法六十三条を守っていないということですよ。 委員長、私はこういう答弁拒否は、ここでの新たな憲法違反の事実だと思います。私は政府に、これが憲法違反であるかないのか、答弁すべき必要があるかないか、政府の見解を求めます。それまで残りの質問時間を留保して、その見解が出て質問する機会を委員長に要求します。
○委員長(多田省吾君) 稻葉法務大臣、もう一度答弁してください。
○国務大臣(稻葉修君) 全然答弁してないわけではなくて、あなたはそういう正式な委員会で理論的には検討すべき点があると言ったかどうかと言うから、申しましたと。それはそのとおり検討すべき点がある。しかし、どことどこだと、こういうふうに入ってくるというと、また憲法改正論議をやったということになりましては困りますから、それでこの際はその点の一々の答弁は差し控えさせていただきたいと、こういうことを申し上げているんです。
○委員長(多田省吾君) 橋本君、時間が参っておりますので最後の質問にしてください。
○橋本敦君 納得できませんから、この答弁拒否が許されるかどうか、政府の見解を求めます。
○委員長(多田省吾君) 和田春生君。
○委員以外の議員(和田春生君) この種の問題は、少なくとも一時間ぐらい議論を積み重ねないと、なかなか本質はわからないわけですから、議論はやめます。私の場合、十分ずつの細切れでありますから、意識的に入り口論だけやってきたわけです。その中でも幾つかの問題が出ているので、法務大臣にお尋ねをしたいと思います。 これまでの質疑の中で法務大臣はしばしば、三木内閣の方針に違反していない、三木さんの憲法の改正をしない、そういう考え方には三木内閣の閣僚として自分も同じ考えだ、こういう趣旨の答弁を繰り返してこられました。そこでお伺いしたいのですが、このある行為をしないという場合に、したいができない、あるいはそれをすることはぐあいが悪いからしない、こういう意味のしないという場合と、それはすべきでないからしない、こういう場合のしないというのは意味が違うと思うのです。三木総理の憲法を改正しないというお考えは、いま私が言った二つのうちのどちらに属するというふうにあなた自身は御理解になって、三木総理の方針と違わないとおっしゃっているのですか、その点を確かめたい。
○国務大臣(稻葉修君) 三木総理の御発言、憲法は改正しないという御発言を私なりに理解いたしますと、すべきでないという方のしないというふうに理解いたします。
○委員以外の議員(和田春生君) そういうふうに理解をして三木内閣の閣僚として三木さんの方針と同じである、こういうふうにおっしゃったとすると、この委員会で法務大臣、あなた自身が、いまの憲法には理論的に検討すべき点がなしとしない、また、そのとおりメモしたのですが、検討してしかるべき点があると、こう思うとおっしゃったわけなのです。そうすると、あなた自身の立場は、いまの憲法には問題点があるのだ、そういうお考えをお持ちなのですね。三木さんの方針と一緒なのでしょうか、違うのでしょうか、その点をあなたにお伺いしたい。
○国務大臣(稻葉修君) 検討すべき問題点がなしとしないと思っていながら、すべきでないという三木総理と同じことを言うのはおかしいではないかというお尋ねでございますが、私は、理論的には検討すべき点はなしとしない、しかし、まだどういう点を理論的に検討した結果こうするとかああするとかいうことの討議も経てない今日の段階、国民の世論もない今日の段階、そういう段階で、私もまた憲法の改正は政府の事業としてといいますか、内閣の行為として乗り出すべきものではない、すべきではない、こういう考えでございます。
○委員以外の議員(和田春生君) 実は私の三木総理に対する質問について、いま総理はここにいらっしゃらないのですけれども、どうも三木さんはレトリックで本質論をはぐらかしてきている、そういう印象を非常に強く持つわけです。なぜかと言えば、三木さんはたとえば、私はいまだかつて一度も憲法を改正しようと考えたことはない、あるいはいまの憲法というものは非常にすぐれた憲法であるから改正すべきではない、こういう趣旨のことをおっしゃったわけです。しかし、一昨日の質問で申し上げましたように、自民党の総裁になって三木さんは内閣総理大臣になった。その自民党が党是で自主憲法制定ということを決めている。いまその時期であるかどうかは別なんですね。それは、いまの憲法には不都合な面がある、また憲法の成立自体に不都合な点があるから憲法を変えようということが自民党の党是であるというふうに、私たちは公のそういう発表を通じて理解をしているわけです。ですから、私から言わせると、三木さんの方が不正直だと思うんです、自民党の総裁として。私は稻葉さんとは憲法についての考え方は違う。私は、積極的な意味で現行の憲法を守らなくてはならないという考え方に立っておりますから、あなたと立場は違うけれども、自民党三木内閣の閣僚という立場からいけば、自民党の党是に稻葉法務大臣、あなたの方がはるかに忠実であるというふうに私は理解しているのです。 そういうような前提で、しかも私は、改正の論議をすることは憲法違反だとは考えていない。改正したいという人間が出れば、私たちは改正すべきでないという立場に立って、言論を通じ、運動を通じてそれと闘っていきたいと考えているわけです。だから、改正したいという人が改正の意思を出されることは差し支えないと考えているんですよ。そういう私の立場に立って質問しているわけですから、ひとつ法務大臣も正直にお答えを願いたいと思うのです。 すぐれた憲法であるから改正すべきではない、そして一度も憲法の改正を考えたことがない、その三木内閣総理大臣の考え方についてあなたは違反をしないという形になれば、現在の憲法に問題点がある、理論的に検討すべき点がある、現在はその時期ではないかもしらぬが、やがて国民の世論を喚起すれば改正をした方がいいというあなたの考え方、主張と、ここで答弁されたことというのは矛盾していると私は思うんですが、あなたは全然矛盾しないとお考えでしょうか。
○国務大臣(稻葉修君) なかなか鋭い、きわめて際どい質問をなさいますがね。私は党是に従って置かれた憲法調査会の仕事をずっとやってきた立場、三木先生はもっと大きな党の全体の幹事長だとか、そういうことをやってきたお立場で、この憲法はすぐれておるという表現をなすった。私も、この憲法の中にはすぐれた点が非常に多い、ただ、理論的に検討すべき点があるというニュアンスの違いはありましても、いまこういう国情において、こういう党情において、三木内閣が憲法を改正しない、したいけれどもやれないのだという意味ではなくて、すべきでない、こういう立場は決して三木先生と私の間に食い違いはないのでございます。正直なところ、正直にそう思っております。
○委員以外の議員(和田春生君) 私は、どうも法務大臣のお顔を見ておって、正直にそういうふうに思っているようには思えないのです。 もう一つ別の問題をお伺いしたいと思うのですね、角度を変えて。それは、三木総理は私の質問に対してこうおっしゃったのです。未来永劫に憲法を変えないというものではないが、それは国民の中でそういう世論が沸いてきたら変えるというのが主権在民の立場で本当だと、こう言うのですね。しかし、いまの政治的な分野では、自民党以外の野党は、中には改憲論者がいらっしゃるかもわからないけれども、ともかく憲法改正に反対という立場をとっているのです。そして現在の内閣の三木総理が、この憲法はすぐれた憲法だから改正すべきではないのだ、私は一度も憲法を改正しようとすることを考えたことがないのだ、こういう形でずうっとやっておれば、少なくとも国権の最高機関である国会を構成している与野党の間には意見の不一致がないわけなんですから、国民の世論が沸き上がってきたら改正しようというのは、うそになるのじゃないですか。あなたのおっしゃるように、やはり問題となる点がある、理論的に検討していけば問題がある、だからそれを研究することによって発表していく、国民の皆さんどうだという形で世論を起こして改正をするという方が、私は自民党内閣としては正直であり正しいと思うのですよ、私の意見とは違うのだけれども。その三木さんのおっしゃることとあなたの言っていることが違わないとすれば、法務大臣、私は大変正直な方だといって前々から尊敬しているのですが、変節をされたという形に感ぜざるを得なくなるわけです。いかがでしょうか。
○国務大臣(稻葉修君) まことに際どいことをお聞きになりますがね。私は先ほども申し上げましたとおり、総理・総裁たる三木武夫さんも、この憲法といえども永遠不変のものではない、そして主権在民なんだから、やっぱり永遠にあくまでも改正しないんだということを総理として言うのはそれは不遜である、そういう機運があればこれに従うのは当然であると、こう言っておられるのですから、ただ、いまはそういう情勢にないからすべきでない、したくもない、しない、こういうのと、私も、検討すべき問題点はあるけれども、それをもっと研究して国民も納得するような内容にならなければそれはとうていできないことですから、いまの段階ですべきでない、したくない、しない、こういう点で一致していると私は思っておるんです。
○委員長(多田省吾君) 時間が参っておりますので、最後の質問にしてください。
○委員以外の議員(和田春生君) そこで、最後に一つだけお伺いをいたしたいと思うのですが、いままでの法務大臣の御答弁をお伺いいたしておりますと、三木さんのおっしゃっていることは自民党の党是から言うとおかしい点があるが、三木内閣の閣僚であるという現在の限定された立場の便法として方針は同じであるとおっしゃっているわけであって、閣僚の座を去った場合には、本来の立場に立って自主憲法制定について研究をし、調査をし、大いに進めていくんだと、そういうふうにあなたの御本心は私の方で受け取らせていただく、こう考えてよろしいでしょうか。
○国務大臣(稻葉修君) この内閣の統一見解にも示されてあるとおり、これが総理大臣の真意であろうと思うのです。憲法を尊重することは九十九条の明定するところである。しかし、もちろん憲法改正を論ずることと現行憲法を尊重し擁護することとは別の問題だと、こうなっているんですから。そして、三木さんもたびたび答弁されたように、それだから党是に基づいて憲法調査会をつくって大いに論議しているんだから、それと自分が改正しないということは矛盾しない、こういうふうにおっしゃっているんですし、私もそのとおりだと思っております。
○委員以外の議員(和田春生君) 納得はいたしません。
○委員長(多田省吾君) 野末陳平君。
○委員以外の議員(野末陳平君) おとといのこの委員会で、決算委員会でさきに発言なさった内容を取り消す意思があるということを法務大臣はお答えになりましたけれども、取り消す部分というのはどんなことだったのでしょうか。まさか全部を取り消すということじゃないと思いますが、どの部分を取り消すべきだとお考えになっておられるか。それを簡単にお願いします。
○国務大臣(稻葉修君) 少なくとも九十九条に「尊重し擁護する」とある以上は、尊重してないような表現、軽視し、べっ視し、強く言えば罵倒するような、この憲法を欠陥の多い憲法だと言った点、これはやっぱり尊重するということとべっ視するということとは両立しませんから、これは直さなきゃいかぬ。取り消さなきゃいかぬ。それからあとどういう部分を取り消すかにつきましては、委員長、それから理事、そういう方々の御意見もございましょうし、決算委員会の御意見に従って善処してまいりたいと、こう思っております。
○委員以外の議員(野末陳平君) そうしますと、欠陥憲法だと言ったのは失言で、これは当然取り消す、そこまではわかったのですけれども、しかし、それは言葉の表現の問題でして、じゃ欠陥というのは何だというふうに考えますと、先ほどの理論的に検討すべき点がというようなことも欠陥の中身になると思うんです。ぼくもいまの憲法は理論的に検討すべき点がないとは言えないと思っているんです。たとえば土地のことなどを考えますと、やはり非常にいまの憲法とどういうふうに土地政策を今後考えるか、微妙な点が出てくるわけです。ですから、そういう点を国会で言うことはちっとも構わない、そういうふうに考えているんです。 そこで、改めて先ほどからの議論でどう考えても腑に落ちないのは、大臣が理論的に検討すべき内容のことは言えないんだ、それは言うと三木内閣にひびが入るから言えないというふうに簡単におっしゃいますがね、しかし、それはおかしいと思うんですよ。こういう場でこそ言わなければ明らかにするチャンスが出てこないと思うんです。なぜならば、一体どういう点で憲法のどの部分が問題になってこんなに国会が紛糾したのか、これをもうちょっと詳しく国民に知らすことも大事だし、ぼく自身もわからないところがあるわけですよ。それを大臣が余りはっきり言わずに、ひびが入るという内閣の都合だけで答えを逃げるというのは非常にフェアじゃないと思うのです。そういう点で、どうなんでしょうか、ひびが入るという都合だけで押し通して、国民に対してもあるいは国会に対しても、それで大臣としては責務が果たせているんだと、そういうお考えなんでしょうか。その辺をもうちょっと聞かせてください。
○国務大臣(稻葉修君) この問題が起きていろいろ総理大臣と話しているうちに、論議をすることはいかぬとは言うてないんだ、そして憲法がずっとこれでいいかというとそうも思ってない、将来日本の国民がこの憲法のもとにずっといくということについては、国民の間に現在でも改正すべきだという意見もある、してはならないという意見もあるんだから、その国民の代表である国会において、改正すべきであるとか、すべきでないとかいう意見が全然論議されないという、そういうことはおかしいし、むしろ大いに論議があってしかるべきものだという点については一致しているんです。そういう点については。けれども、いまこの際、三木内閣は憲法を改正すべきでない、しない、したくない、こういう方針を明らかにしているんだから、三木内閣の国務大臣である限りにおいて、一々の具体的な内容に入って大いに論議を闘わすということについては、ひとつこの際しばらく差し控えさせていただきたいと、こういうことなんでございます。永劫に国会で論議するな、そんなことであれば言論の府でなくなるという点については、意見があなたと私も三木総理大臣も同じだと思います。
○委員以外の議員(野末陳平君) そうしますと、三木内閣の大臣である限りは、要するに発言はしたいけれども、いまできないということになりますね。そうですね。しかし、ぼくはそれではおかしいと思うんですよ。憲法に関してどんな意見を持っているか、それもわからずに法務大臣と憲法の話もすることはできないわけですから。そうすると稻葉法務大臣ば、ここに書いてあるように三木内閣の閣僚である限りは出席しない、行動の面ではこういうふうにきちっと自分の考えと違う三木内閣の方針に従った行動をとるということになっています。しかし、あなたが自分の考え方や信念を変えることはもちろんできないわけですが、少なくも大臣である間は表には出さずに抑えている。方針と食い違ったら自分の考えを曲げてでも方針に従うんだ、そういう意味の使い分けをこれからするんだ、それを現にやっていらっしゃると、こういうことになるんですか。そこがはっきりしないんですよ。行動だけ使い分けて——考え方を使い分ける、そんなことはできないと思うんですね。特定の、あるいははっきりした考え方を持っているから法務大臣になっているわけですから。しかし、この申し合わせを見る限りは、どうも考え方を曲げてでも行動は閣僚として三木内閣の姿勢に合わせなきゃいかぬということに受け取れる。現に内閣にひびが入ることを心配して自分の言いたいこともおっしゃらない。それじゃとても法務大臣として憲法の話をするわけにいかないとぼくは思っているんですが、どんなものですか。
○国務大臣(稻葉修君) 私は、三木内閣の法務大臣として、憲法を改正したくない、すべきじゃない、しない、というふうに私自身も積極的に思っているのです。ただ、憲法を理論的には検討すべき点があると、これも思っているのです。しかし、そういう機が熟していない。それからどういう点についてどう改正するか、その内容が重大ですから、なかなかそれはむずかしい問題で、ずいぶん長く研究してきたけれども、とてもこれは私らのような学力でそんな簡単なことをやれるわけはない。けれども、やっぱり現在は現在なりの意見は持たなければいかぬことは当然でございますから、それらの点について本来ならば自由に討議されてしかるべき場だと思うんです、国会は。ただ、こういう際に閣僚としてそういう意見を申し上げますと、世間は、どうなんでしょう、改憲論者——何といいますか、三木内閣の改正しないという考えと全く違っている考えを持っている閣僚と、こういうふうに誤解されるおそれがありますので、そういう際にはそういう論議をしばらく慎みたい、こういう考えであります。
○委員以外の議員(野末陳平君) まあ世間は誤解するかもしれませんけれども、ぼくは別に誤解しませんよ。堂々とここで議論していいと思うんです。だって、改正すべきでないという点では、三木さんも、それからぼくもそう思っているんですから。理想は生かしてということもいいんですよ。しかし、検討の話をぼくはいま法務大臣としたいわけですよ。それで、ぼくは土地の問題なんかで非常にひっかかるところがあると言っているわけです。だから大臣も検討の部分についてぼくに対して御意見をおっしゃることはあたりまえだ、それがフェアじゃないかとぼくは思うんです。どんなものでしょうか。
○国務大臣(稻葉修君) あなたと私と、こういう国務大臣という立場を離れて個人稻葉修と野末さんとの間に、こういう国会の場というところを離れれば幾らでも応答して、あなたの御意見も承りたいのです。広く人々の意見を聞きたいんです、私は。けれども、先ほど言いましたように、三木内閣は憲法を改正しない、私も法務大臣として三木内閣の閣僚として憲法を改正したくない、すべきじゃない、先ほど言った判断から、そういうことですわな。それだのに国会の場で国務大臣として、そうして参議院議員野末陳平さんという立場でこういうところでやるということについては慎ませていただきたい、こういうことだけを申し上げるんです。フェアじゃないとおっしゃられればまことに私も困るのでありますけれども。困るという意味は、いま言ったような正確な意味では、フェアなやつじゃない、不正直なやつだ、ひきょうなやつだ、こう言われることはたいへんに私の意に沿わないことで、御批判は受けますけれども、あなたの御批判はありがたく受けますけれども、そういう気持ちはございませんのです。
○委員以外の議員(野末陳平君) じゃ最後に。 個人的にだったらいつでもできますよ。しかし、それでは余り意味がないんです。国会だからこそ、いわゆるこういう場を通じて国民に広く国会で憲法についてこういうふうな点が論議されているということを知らすために必要なんで、それをあえて避けておられるから、それがフェアじゃない、しいて言うなら国会と国民に対してフェアでないと申し上げたわけなんです。まあしかし、結局は内閣にひびが入るというそちらの方ばかりを心配をして、国民に対して明らかに自分の考えをお述べにならなかった点で非常にぼくの方は残念だと思うんです。決算委員会でお取り消しになるということですから、改めてそのときにまた別の角度からお話ししたいと思います。
○委員長(多田省吾君) 本日の調査はこの程度にとどめます。 本日はこれにて散会いたします。 午後二時四分散会