文教委員会 第13号
- 発言数
- 65 件
- 登壇者
- 12 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1975/06/10
会議録
○委員長(内藤誉三郎君) ただいまから文教委員会を開会いたします。 文化財保護法の一部を改正する法律案を議題といたします。 本日、お招きいたしました参考人は、日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員長櫻井清彦君、全国都道府県教育委員長・教育長協議会第二部会主査宗知信君、全国史跡整備市町村協議会会長菊屋嘉十郎君、文化財保存全国協議会事務局長甘粕健君、以上四名の方々でございます。 この際、参考人の方に一言ごあいさつを申し上げます。 本日は、御多忙中のところ、また遠路にもかかわらず、本委員会に御出席をいただきましてまことにありがとうございました。本日は、文化財保護法の一部を改正する法律案について、参考人の皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の本法律案審査の参考にしたいと存じております。 それでは、議事の進め方について申し上げます。御意見をお述べ願う時間は、お一人十分程度といたしておりますが、多少これは延びても結構でございます。櫻井参考人、宗参考人、菊屋参考人、甘粕参考人の順序で御意見を承り、その後で各委員から質疑がございますので、お答えをいただきたいと存じます。 それでは、まず櫻井参考人にお願いいたします。
○参考人(櫻井清彦君) それでは、皮切りに意見を申し述べさしていただきます。 まず、私は日本考古学協会の埋蔵文化財特別委員会の委員長を現在しております。その立場でこれから申し上げたいと存じます。 まず、文化財保護法改正に当たりまして、あるいは当たられつつある皆さんにまず敬意を表したいと存じます。 きょうは、ここで三ないし四点について意見を発表さしていただきます。 実は、私出てくる前に東京のある新聞を見ましたところが、偶然それに埋蔵文化財保護法改正のことが出ておりました。それにほとんど盛られてしまっておりましたので、何か出鼻をくじかれたような気がいたしました。 まず、第一点は、これは許可制のことでございます。今回のこの一部改正に関しましては、許可制のことは結局出てまいりませんでしたけれども、かつてよりわれわれ研究者及び地元の研究団体、あるいは教育委員会の現場の方々は強くこの許可制のことを要望しておられたわけであります。それはそれなりの理由がございますが、結局この許可制というものは、結果的には強力な埋蔵文化財の破壊へのチェック——歯どめになるということは、これは実に明らかなことでありまして、恐らく文化庁長官もこの点はよく認識しておられることと思います。しかるに、これが実際に表面に出てこないということには、やはりそれだけの理由があります。たとえば、遺跡の台帳の整備というものが非常にこれは困難である、あるいは不可能に近い、そういうようなこと、あるいはその台帳をつくるに当たっての遺跡の確認というもの、これもやはり土中にありますから、どこからどこまでがその範囲であるか、これが非常に確認しにくいというような点、また、さらに、それに大きな問題といたしまして、私権というものが絡まってきております。こういうようなその土台と申しますか、許可制における土台、これが非常にできにくい、あるいは不可能である、この点から許可制というものが今日表面に出てこないのだろうと私どもは推察しております。では果たして、これが不可能であるかどうか、許可制にするために一体どういうネックがあるか、いま申しましたのは確かにネックでありますけれども、もっとほかにネックがあるかどうか、あるいは、いまのネックはどういうふうな事務的な処理によってより解決できるのか、こういう点をもっとわれわれは煮詰めていただきたいと存じていたわけでございます。 一方、こういうふうに範囲の非常に不明確な遺跡というものが、考古学の宿命としてございますけれども、確実な遺跡も同時に存在しております。たとえば、外見観察で十分に認知できる高塚古墳あるいは寺院址、これらを初めとしてさらに幾つかの外面観察によって確定できるものがございます。また、土器の散布の状態からその地域の範囲というものを、これは研究者ならばそのほとんどが推定、確認をすることができると存じます。したがって、こういうような条件を持つ遺跡というものから、まず許可制というものを施行していってはいかがかと、このあたりから出発したらどうであろうかと思うわけであります。結局、許可制ができない理由、それをもっともっと出していって、それを検討し許可制へ向かってこの文化財保護法というものをよりよく改正していただきたいと存ずる次第であります。 それから第二点でありますが、これは不時発見の場合、つまり工事その他で遺跡が出る、その場合、この保護法の改正では三カ月ないしは六カ月というような期限つきの調査というものがそこにうたわれております。しかし現実の問題として、果たして、これだけの期間でどのような調査ができるか、これは大変問題であります。よほどの強力な組織というものがその背後にない限り、この三カ月あるいは六カ月というような調査では、これは十分なものはできないと存じます。つまり、ここに時間的な制約というものが余りにも大きく位置を占めている。この点は、われわれといたしましては非常に重大なこととして考えざるを得ないと存じます。一体、この三カ月あるいは六カ月という背後にどのような組織というものがあるのか。われわれのたとえば大学で例をとりました場合には、とうていこの期間で一つの遺跡というものを掘り上げるということはできません。もちろんその場合、一つの条件といたしましては、その範囲というものがあります。十平方メートルのものに六カ月かかるということではないわけであります。 それから第三番目でありますが、これはやはり私どもが早くから要望しておりました文化財あるいは埋蔵文化財にかかわるところの一つの理念の問題であります。 この理念の問題は、恐らくいままでの小委員会内の討論の中にも出てきていたと思われまして、特に、本年二月の衆議院の小委員会の案の中には、その冒頭のところに地域開発施策の策定などにおける配慮及び事業者の責務というようなことが明瞭にうたってあります。これも同じく非常に重要なことでありまして、これがそこに記されたことによりましてわれわれも非常に満足を感じた次第であります。しかし、このたび出てまいりました改正法律案を拝見いたしますと、どういうものかこれがなくなっております。この点やはり理念というもの、運用論におきましてもこの理念というものが非常に重要な位置あるいは価値を占めると存じます。したがいまして、こういうような理念というものはぜひその中に盛り込んでいただきたい、こういうふうに考えるわけであります。 それから第四番目でありますが、これは事前協議の問題であります。事前調査のために協議をする、これはそのとおりでありますけれども、協議に終わってしまう懸念が非常に強いわけであります。われわれといたしましては、それが協議に終わらずに協議からさらに保存という線への路線というものが何らかの明確な形でこの中に盛り込まれることを同じく強く要望いたしたいと存じます。 かなり総花的になりましたけれども、以上四点について、私どもの特に埋蔵文化財に関係するものとしての御意見を申し上げました。 なお最後に、もう一つつけ加えさしていただきたいんでありますが、それは今度の改正の法律案の中には盛り込まれていなかったようでありますが、あるいは私の勉強不足かもしれませんが、現在の文化財保護法の五十九条、六十条、そこに埋蔵文化財に関する遺失物法の第十三条の適用というものがあります。これは非常に今日、空文化しているように見受けられます。たとえば、われわれが発掘する。それを警察に届ける。そのとき所定の書式というものが警察でつくられるべきなんでありますけれども、警察では全くこれを御存じない。したがって、われわれが代行してこれをつくって警察署長へ持っていく。ところが、その署員がわからないので、そのまま警察に眠ってしまうというようなことが度々ありますし、私もかなりそれを経験しております。今後の改正に当たられましては、こういうような点においても、ひとつ御検討をいただきたいと存じます。 以上であります。
○委員長(内藤誉三郎君) どうもありがとうございました。 次に、宗参考人にお願いいたします。
○参考人(宗知信君) 私は、都道府県教育長協議会第二部会の主査をやっております静岡教育委員会教育長の宗知信でございます。 私ども地方におきまして文化財保護行政に携わっているものといたしまして、今回の文化財保護法の一部を改正する法律案につきまして所感の一端を述べさしていただきたいと思うわけでございます。 最近の経済発展に伴います地域開発等によりまして、わが国における文化財保護の現状は必ずしも楽観できない状態でございます。最近の静岡県の実情を見ましても、特にこの急激な変化によりまして、史跡、名勝、天然記念物、埋蔵文化財、建造物など、直接土地に結びついた文化財や民俗資料など国民生活の推移を物語る文化財の現状はまことに憂慮されるべき状態に置かれているわけでございますが、このことは単に本県の特殊な現象ではなくて、全国的に共通した問題であると思われるわけでございます。このような情勢から文化財の保護体制をより強化することの必要さが痛感されて、その立場から、ここ数年来文化財保護法の改正の問題が各分野で取り上げられてきたのであります。私ども都道府県教育長協議会第二部会におきましても、そのような立場からこの問題につきましてたびたび研究、協議を続けまして、去る昭和四十七年の六月十四日には文化財保護法改正につきましての要望書を提出した次第でございます。このたび、この問題が国会において取り上げられまして文化財保護法の一部を改正する法律案として御審議いただいておりますことに対しまして、国会を初め関係諸機関に対しまして衷心より厚くお礼を申し上げたいと思います。 今回の改正案を拝見いたしますと、最も注目されます埋蔵文化財の取り扱いにつきましては、一般の工事に伴う届け出が現行法では工事着手前三十日となっておりますのを六十日に期間延長となっておりますが、このことは文化財の保護と工事計画との事前調整をより徹底させる方策として歓迎すべきものと思うわけでございます。 次に、国や地方公共団体等の行う工事は通常広域にわたるものが多いんでございますが、これらの取り扱いは、従来特定の機関——日本道路公団等でございますが、これらとの間でのみ覚書を交換する形で調整がとられてきたわけでございますが、今回新たに広く公共事業に対して事前協議することが制度化されたことは、工事計画の変更をも可能にし、埋蔵文化財の保護措置をより強化させるものとして高く評価するものでございます。 さらに、遺跡を発見した場合に、従来の届け出制のほかに新たに停止命令等の行使を可能にしたことも強化策の一つでございます。その上、地方公共団体における埋蔵文化財の調査規定を新たに設け、その調査についての補助制度が考慮されましたことは、いままで余り明確でなかった地方公共団体の権限と任務を明らかにするとともに、財政的措置を裏づけるものとして注目すべき事項でございます。 また、現行法では民俗資料の名称で取り扱われているものが、今回の改正案では民俗文化財と改め、いままでの民俗芸能をこの中に位置づけたことや、さらに、無形の民俗文化財の指定を加えて、民俗文化財としての整備を図ったことは、時代の推移により消滅の危機にさらされておりますこの種の文化財を保護する方策として、まことに当を得たものと考えております。今回の法案では、価値の高い伝統的建造物群の保存地区と、文化財の保存のため欠くことのできない伝統的な技術、または、技能で価値あるものも保護の対象に加えられましたが、これは建造物の広域保存と文化財に関する特殊技術者の養成確保にも関連する施策として、意義あるものと考えるものでございます。 また、本法案には、都道府県教育委員会に文化財保護審議会を置くことのできる規定と、文化財の巡回調査のため文化財保護指導委員の設置について記されております。文化財の保護指導委員の制度は、静岡県でも数年前より設けておりまして、文化財行政の協力体制として効果を上げてきておりますが、今回これが制度化されることにより、より一層行政効果が高められるものと確信をいたしております。 このほか、本法案の中には幾つか改正されている事項がございますが、これらはいずれも従来より都道府県教育長協議会第二部会において強く要望してきた事項でございまして、これが本国会で取り上げられておりますことはまことに喜ばしいことでございます。時代の要請に応じて現行法の不備が認められ、この法案が成立した場合には、私どもの地方の文化財保護行政も一層充実できるものと考えております。 以上のように、本法における改正点はまことに当を得た内容のものでありますが、しかし都道府県教育長協議会第二部会といたしましては、地方公共団体における文化財専門職員の設置等要望したい事項がございますが、これらは今後の課題として御検討をお願いしたいと思うわけでございます。 最後に、本法案の成立を願うとともに、地方における文化財保護行政の強化のため、その裏づけとなる国の大幅な財政面の御援助をお願いして、都道府県教育長協議会第二部会主査としての意見にかえさせていただくわけでございます。
○委員長(内藤誉三郎君) どうもありがとうございました。 次に、菊屋参考人にお願いいたします。
○参考人(菊屋嘉十郎君) 山口県萩市長の菊屋でございます。あわせて全国史跡整備市町村協議会の会長を務めさせていただいております。 全国史跡整備市町村協議会と申しますのは、全国で史跡に関係の深い市町村二百四が集まりまして、会長私、副会長福岡市長、和歌山市長、その他役員がリードいたしまして、お互いの史跡関係の平素、勉強、研修をいたしますと同時に、いろいろ政府に対する意見具申なども、年一遍は大会を持って、そこでまとめた意見を申し上げるというようなことで、ここ十年、逐次会員もふえつつ今日にきている団体でございます。文化財保護、整備については非常に平素から関心を持っておりますので、今回の法改正は非常に歓迎しておる次第でございます。その中の二、三についてちょっと私見を申し上げてみたいと存じます。 今回の改正におきまして、伝統的建造物群保存地区制度、いわゆる町並み、集落の保存が重要な改正の眼目の一つに取り上げられたことは、大変時期的にもちょうどいい、もうおくれてはならぬという時期であったというふうに思って、喜ばしく思っております。 申し上げるまでもなく、古くからの宿場町とか城下町などの町並みや、農村、漁村の家の集落は、わが国における歴史的生活環境の変遷の実態を知る上で貴重な資料であるばかりでなく、周囲の環境と一体をなして、大変美しい歴史的な風致を形成し、景観的にも価値あるものであります。その保存が強く要望されてきておるのは御承知のとおりでございます。こうした集落、町並みを文化財として位置づけて、その歴史的景観の保存を図ることは、これはもはや日本だけでなくて世界各国の趨勢であるやに聞いております。ユーゴ、ポーランドを初め自由諸国、社会主義諸国、いずれもこれに力を入れてきておる現状でございます。ユネスコにおきましても、一九七二年に採択されました勧告、すなわち「文化遺産及び自然遺産の国内的保護に関する勧告」というものの中におきましても、伝統的な建造物群を文化遺産の一つとしてとらえて、その保護を図るべきであるということを各国に訴えておる次第であります。しかるに、近年における生活様式の急激なわが国における変化や、開発事業の進展によって、年々その町並みの姿が変貌を来しておる、かっての景観をとどめるものがだんだん少なくなっておるということは大変残念でありまして、こういう事態に対処するために、すぐれた歴史的景観を保っておる集落、町並みを持っております市町村においては、みずから市の条例を定めてその保存を図っておるところでありますが、その数はすでに全国で十一カ市町村に上っております。また、現在条例を制定していない市町村におきましても、こうした動きが全国的に起こって、そういう機運が起こっておるということでございます。 文化庁におかれても、こういう動きに対処して、昭和四十七年からいろいろな調査を全国的にされております。四十八年度では、重点的な地区として、岐阜県の高山、それから岡山県の倉敷、山口県の萩、この三市を選定されて調査を実施されております。それからまた四十九年度からは、こうした市町村に対して、保存状況の調査、それから保存計画の策定の事業に要する経費についての国庫補助というようなことをスタートされたことは喜びにたえません。 こういうことでございますが、御参考にちょっとわが萩市における町並み保存の市の状況を簡単に申し上げてみたいと思いますが、私たちの萩市には、城下の武家屋敷、町家の町並みですぐれた歴史的景観を保存しておるところが少なくございません。特に萩市の場合は、武家屋敷の跡の土塀、石垣、門、生垣等の美しさにございますから、これらを含めてその地域の保存を図ろう、景観の保存を図ろうということで、萩市歴史的景観保存条例というような名前をつけて、単独の市費でそういう土塀の修繕とかあるいは門の修復、生垣の補修というようなことについて、その地域住民に補助をしている、整備するということを続けてきております。そしてまた市がその保存の対象として、景観地区と保存家屋という二本にしまして、それぞれにその保存の規制をしております。いろいろ形状の変更だとか色彩の変更、あるいは土塀を取り除いてブロックにしようというようなときには、一々市長へその地区は届け出をしてもらうことにしております。そして、届け出を受けた場合には、保存のために必要な助言、指導、勧告を行うことができることにしておりまして、その勧告に従って損失があった場合には、その損失補償をする、また、必要な市が勧告したことによる費用の増大については、市がめんどうを見るというようなことにして努力しておる状況でございます。 いろいろ考えてみますのに、どうしても、こういうことがうまくいきますかどうかということは、その地区民が自分の地区について誇りを持ち、そして愛着を持ち、そういう制度についての理解というものを持つということが第一の問題であります。そういう精神的なことをわれわれがやると同時に、もうこのごろは、やはり精神ばかりじゃいけませんで、それを保存することによって何かその所有者に対してメリットがなければ、私は完全な遂行はむずかしいように思うわけであります。したがいまして、その保存なんかに要する経費も補助を十分にしてあげる、制限によって起こる拘束性とか不自由さというものをカバーする以上の何かメリットを、補助をたくさん差し上げるということが必要じゃないかというふうに最近つくづく思っております。精神的な面と実質的なメリットと、両方でこれを整備していくべきだというふうに思うのです。そうなりますと、市がそういう補助を十分しますためには、やはり貧弱な市町村財政では追いつけない場合がありますから、それとカバーするために、国の補助とかあるいは自治省あたりの特別交付税の中にそういうものをルール化して入れてもらうとか、起債の方法とか、いろんなそういう財政的な国、県のバックアップが欲しいものだということを痛感するわけでございます。それが今度の法の実施面、運用面についての問題点になってくるだろうと思いますが、その点をひとつ強くお願いを申し上げたいと思います。 それから、もう一つちょっと意見を申しますと、八十三条の四を拝見しますと、「(重要伝統的建造物群保存地区の選定)」とございます。選定という言葉はここで初めて出てくるわけで、いままでの保護法を見ますと、二十七条を見ましても、二十七条というのは、有形文化財のうちの重要なものを重要文化財に指定するという項目であります。それから、たとえて言うなら五十六条は、重要無形文化財の文部大臣の指定ということで、そこでは必ず指定という字が使ってある。ところが、重要伝統的建造物群の保存地区については特に「選定」という字が使ってあるのでございます。指定と選定とはどこがどう違うのだろうかという ことをちょっと疑問に私は見て思ったわけです。善意に解釈しまして、指定というと非常に強い感じを与えて、その地区に建造物以外のいろんなものがあって、商家もある、町家もあるということで、それに対する規制が非常にむずかしいから、指定というよりもやわらかい言葉で選定という言葉を使われたかなとも考えたわけですけれども、ほかのところですべて指定とあります以上、ここも選定じゃなくて指定とはっきりした方が国の姿勢がはっきり出てくるのじゃないか。何か選定と言われてみますと、この重要建造物群については、それほど他の文化財ほど力を入れないのだ、一応はやっていくのだというようなふうに理解されなくもないように思うわけでございまして、その点、私ちょっと感づきましたので、申し上げてみたいと思うのです。もちろん、重要建造物群保存地区には経費の一部を補助するということが書いてありますから、余り軽くは考えておられないと思いますが、私は、他のものと同様、重要なお取り扱いを願いたいと思います。 そのほか、全史協の会長といたしまして、史跡とか埋蔵文化財等についても意見がないことはございませんが、先ほど来お二人が申されておりますので、あえてつけ加えません。 最後に申し上げたいことは、さっき申しましたように、いわゆる保護法は、精神的な、訓示的なものだけじゃとてもじゃないやっていけない、必要な規制はすべきだ、規制はし、そして所有者を拘束することもやむを得ませんが、拘束する半面にはそれに誇りを持つようにしむけ、そして、その物質的なまた精神的な拘束性を少しでも軽くするように公でもってカバーしてあげるという姿勢を今後貫いていただきたい。そしてまた、すべての法律の、これは体裁でございますが、この法律においても市町村がやる仕事についての経費の一部を補助することができるという文句でございますが、大きな橋をつくったり鉄道をつけたりという公共土木事業も大切でございますが、余り大きなお金を要しないこの文化財の保護については、十分な国の財政的配慮を望みたい。これは時期の問題がありまして、鉄道をつけたり船をつくったりというのはタイミングをずらせばよろしいのですが、この文化財の保護というのはタイミングが余りずれますと壊れてなくなってしまう。ある時点では相当強力な多額な補助をすでに必要としているのじゃないかというようなことをつくづくと思うわけでございます。その辺も十分予算面で今後の運用について、特に大蔵省、自治省あたりと十分な御協議の上、進めていただきたいということを最後に申し上げまして、私の意見を終わりたいと思います。
○委員長(内藤誉三郎君) どうもありがとうございました。 次に甘粕参考人にお願いいたします。
○参考人(甘粕健君) 文化財保存全国協議会事務局長の甘粕でございます。 私は六二年の平城宮の保存運動以来全国の考古学研究者あるいは市民の方々とたびたび国会請願等々を通じて、国民の共有財産である文化財、とりわけ専攻の関係もありまして、埋蔵文化財の保護ということに努力してまいりました。今回、国会でその文化財保護の基盤、かなめになる保護法の改正の問題を積極的に取り組んでいただくということに非常に感謝しているわけであります。私は、そのほか、学術会議の文化的環境保護と育成の小委員会というふうなことをも通じまして、今回の改正に当たっても在京の八団体——歴史関係、考古学関係、文化財保存団体、こういうものと一緒に改正の過程でもいろいろと要望してまいりました。そして最終的に、現在案が衆議院を通過してここで御審議になっているわけでありますが、この中で、特に埋蔵文化財の問題に関して、この点に関してはぜひここで再検討していただきたいという問題にしぼってお話ししたいと思います。 それは櫻井先生からも御指摘がありましたけれども、五十七条の五でございますね。埋蔵文化財、これが土木工事の過程で発見された場合の措置でございます。これについては幾つかの問題があるわけですけれども、第一に、これはこの法律では発見の届け出があってから一カ月以内に、停止、中止の命令を発動するということなんです。この中止、停止命令権というのは、非常に強い、いわば伝家の宝刀的な意味を持っているわけで、われわれ非常に重視するわけでありますが、これがしかし発見があってから一カ月以内に発動しなければ時間切れになってしまうというところが非常に問題があるわけです。現実に各地で問題が起こっている状況を見ますと、何しろ工事のさなかに発見されるわけですから、それが地域住民や地域の研究者の通報によって辛うじてその実態がつかまれる。それから市なり県なりに通報される。それがさらに文化庁に通報される、そういう段階をとるわけですね。その場合、文化庁長官は、地元の地方自治体とも相談して、非常に強い、その遺跡が非常に重要な遺跡であり、保護上調査が必要である、そういう非常に重要な判断を下さなければならないわけですから、その間一カ月というのはいかにも非現実的である。せっかくいい法律をつくってもこれは抜けない宝刀ではないかということを深く憂慮するわけであります。これはこういう伝家の宝刀を非常に強く期待していればこそこの点はどうにも納得できないという点が第一点であります。 それから第二点は、たびたび問題になっていますけれども、当面九カ月、五年後には六カ月という停止期間の限界でございますね。これがこの法律では非常に厳しく、とにかく届け出があってから通算六カ月あるいは通算九カ月ということですから、いろいろごたごたがあって、ぎりぎり一カ月以内に発動されたとしても、まず最初の三カ月、それでどうしても片がつかない場合には、さらに三カ月ということで段階的になっているわけですけれども、これは現在埋蔵文化財の破壊というものが年々大規模化してきている。それから学会や住民の遺跡に対する認識というものもだんだん深まってきている中で、調査を要する範囲というものはますます広がってきている。それからまた、調査の内容というものも充実していかなければならないということで、ここ数年来の調査の実態を見ましても、やはり年を越すという場合が非常に多くなってきているという実態をぜひ踏まえて、この問題を再検討をしていただきたいと思うわけです。 そういう点で、具体例でここ数年問題になった幾つかの遺跡の例を挙げてみますと、たとえば姫方遺跡の問題、参議院でも問題にしていただきましたけれども、これは四十六年二月に造成が開始されたわけですけれども、しょっぱなの段階ではそこの三基の古墳の調査ということから始まったわけですけれども、そしてこれは一応調査は終わったと、教育委員会ももうあと何もないからやってよろしいといった段階になって、今度はブルドーザーが入った段階で下からかめ棺が続々出てくるということですね。ですから、これに対して対応するまで非常にやはり時間がかかるわけです、現実の問題として。そしてここでは、かめ棺、最終的には四百基のかめ棺が出たということでございますけれども、現実にはもうブルドーザーに追われながら調査が進んで、最終的にはほとんど全滅してしまったというケースですけれども、この場合なんか最もそういう停止命令権を出してもらいたい、そういうケースだと思います。それでは四百基のかめ棺を調査するのにどのくらいかかるだろうか。これはちょっと経験もない大きな調査で、なかなかあれはしにくいと思うんですけれども、たとえば九州大学が福岡県の有名な須玖遺跡、この大かめ棺墓地を調査したという例があります。この場合は十六日間かけて十九基を調査しておられます。これは非常に優秀な調査団だったと思いますけれども、ですから、結局一日に一・二個の割合で上げているということになりますけれども、非常に強力な調査団でこうなわけです。ですから、この四百個のかめ棺をそれで割ってみますと、姫方の場合はやっぱり約一年間当然かかるわけです。しかもこういう調査は長引けば長引くほど逓減するといいますか、だんだん能率は落ちていくわけですから、こういうことを考えますと、非常にやはりこの六カ月ないし九カ月という制限というものは問題であると思います。 それから、同じ九州の塚原古墳群の場合も、これは九州縦貫道路の通る御承知の遺跡でございますけれども、これも最初はここは通してもいいだろう、遺跡はほとんど重要な古墳がある部分はこれで避けられるというところで問題が始まったわけですけれども、結局幅五十メートル、五百メートルにわたってべた一面に地下に方形周溝墓だとか古墳の跡であるとかあるいは前方後円墳の堀であるとか、そういうものが出てきて、合計九十八基の遺跡がここから出てきて、足かけ三年かかって調査をしたというのが実態だと思います。こういう場合は、決してこれからは例外的な例ではないと思います。特に、日本のこの集落遺跡あるいは墓地の遺跡というようなものは、まさに埋蔵文化財でありまして、表面の土器の散布などであらかじめわかる場合はありますけれども、特に道路建設なんかの場合に突然発見される。その場合も、前のここの委員会でも問題になっていた大阪の池上遺跡などの場合も、塚原とそういう意味ではよく似ていて、延長五百メートルの道路敷全体が大きな弥生の大集落の中心部に当たっているということですから、池上遺跡の調査の場合もすでに二年半という年月を費やして調査が行れています。 また、浜松の伊場遺跡の場合は、いま第七次調査が昨年終わって、調査自体は一段落したという状態だと思いますけれども、これは一九六九年の十二月から始まっているわけですから、五年間の日時をかけているわけでございます。こういうことで、さらに、もっと具体例はいろいろさらに詳しくお話しできればと思いますけれども、こういう状態で一端を御理解いただきたいと思うわけです。 次に、もう一つの問題としては、では調査体制を整えればいいのではないかという問題があると思います。しかし、いま申しましたように、学会の、学問の要求、それから国民自身の文化財に対する要望というものが高まって、文化財自身の価値が高まるという状況の中で、一方では、調査の技術水準が上がるということは確かに合理化されてスピードアップする面もあるけれども、しかし、新しくいろいろ手を打たなければならない問題というものもふえてくるわけで、決してこの問題は、技術が進み、そういう技術開発が進めばスピードアップできるという性質のものでは本来ないということであります。 それから、しかもこの法律は、今回制定議決されれば三ヵ月以内に施行されるわけでありますから、現在、国を含めて確かに事前調査の体制というものは強化されてくる。この政府の資料を見ましても、そういう調査のための各都道府県の技官、そういう専門職員が四百人を超えたわけでありますけれども、しかしこれは、ここ数年間に五倍ぐらいの伸び率を示したわけですけれども、一方破壊の方は、いま年間二千件という実態になっているわけですから、これはこの十年間にほぼ二十倍近い伸びになっているわけです。残念なことに、この伸びというものは足踏みすることなく続いているということでございます。ですから、これは単にその調査体制を強化するということでは解決がつかない問題であろうというふうに考えます。 この点に関して言えば、これは伝家の宝刀として用意されているもので、一般には従来どおり協議、指示的な条項で指導するということだと思います。ですから、そういう点では、理論的には特に期間の制限ということが一般的な場合にはないということが言えるわけでありますけれども、この点が非常に私どもは重要だと思うんですけれども、現在、当然のことながら、各地の開発は何とかしてこの調査の期間というものを切り詰めて早く着工させてほしいということで全国でしのぎを削っているわけであります。そういうときに、たとえば、この六カ月ないし九カ月というものがあれば、体制を整えれば調査ができるのだということがいわば法律的に裏づけられるということはいかにもまずいということであります。現に、各都道府県の努力によりまして、実質的には一般の大規模開発の事前協議に近い状態になっている面はあるわけですね。建築申請とからめて文化財関係の問題が解決しないと許可がおりないということで、実は各地で大規模開発がメジロ押しにその条件が満たされるのを待ってくれているという状態があるわけですよ。これは、これまでの保存運動やいろいろな経過を経て開発側も考古学の調査、埋蔵文化財の調査というものは非常に暇がかかる大変なものなんだということを不本意ながらも認めざるを得なくなってくるわけですね。そういう点で、最初のうちは時間切れだというので強行突破を、ブルドーザーを入れるということを繰り返してきたわけですけれども、やはりそれは得策でないということになって、場合によっては一年でも二年でも待つということになっているわけです。ですから、いまここでこういう期限条項というものができることによって、そういうたとえば悪質な業者が強行突破した場合も、約束の期間に調査が済まなかった、調査団のが悪い、教育委員会のが悪いということになりかねない。従来でしたら協議ということで、特に期限がない場合は、いわば道義的にそういう強行突破をしても強行突破をした業者を批判することができた。ですから、二回、三回と繰り返すことはできないということだったわけであります。もちろん、ですからいままでの法律でもそういう強行突破をとめる、それだけの法律的な裏づけがなかったわけですけれども、しかし、実態として、そうなってきているのだということをぜひしっかりと踏まえてこの問題を検討していただきたいと存じます。 それで、ではわれわれどういうことを積極的に望んでいるのかといいますと、もちろん、この停止命令権というものは非常に有効なものである、もしこれがそういう実際には発動しにくいというふうな状況でなければですね。ですから、その点では決して伝家の宝刀に終わらせずに、どしどしこれは必要なときに打っていただいて結構です。その場合は、一カ月の前の方の期限、それから後の方の六カ月の期限というものはあっても、抜きたくても抜けない。抜く場合もたまにはあるかと思うけれども、それは、その限りは、その間でおさまっても、実際一番抜いてもらいたい非常に大きな遺跡のときに、これでは抜けないじゃないかということをわれわれは考えるわけです。ですから、これは素人考えですけれども、やはりただ期限と範囲を定めて、とにかく調査が終わるまでは待たせるという趣旨で私は当然だと思うわけです。その点ぜひ検討していただきたいということであります。 そして、いまこれは決して小さな問題ではなくて、今回の改正が主としてやはり埋蔵文化財というものが全国で三十万カ所あると言われているわけですが、これは非常に多いわけですけれども、これは、とりもなおさずそれぞれの地域地域に大事な埋蔵文化財があるということなんです、国民の住んでいるどこにでも。だからそれをどう守っていくか、いままでの史跡指定という制度が一番強い制度だったわけですけれども、これを指定主義とわれわれ言っておりますけれども、これは非常に限界があるわけです。いまのところ三十万カ所ある埋蔵文化財のうちに、恐らく埋蔵関係の指定遺跡は一千件足らずだと思います。現在のスピードで指定をどんどん強化してもらいたいんですけれども、これはやっぱり目に見えているわけです、いまの法律の枠内では。三十万カ所の遺跡のうち、まず六千カ所は何とかということを文化庁も考えておられるようですけれども、これでも、これが完全に指定にされても、まだまだ非常に重要で、学会も地域住民もぜひ残したいというものを指定によって守るということは困難なわけです。ですから、指定の制度を強化すると同時に、たとえば五十七条の二項というものを強化して許可制にする、あるいは不時の発見のときだけではなくて、一般の土木工事の周知の埋蔵文化財包蔵地における土木工事の届け出に対しても中止、停止の命令ができるということにして、この届け出を出せば、そうして調査をすれば、しばらく待てば工事ができるんだということではなくして、やはり重要な遺跡は最大限残していくと、そういう方向で改定していただかないと、幾ら調査体制を強化しても、それは根本的な解決にならない。 それについては、そういう点でますます総則関係の第一章ですか、地域計画策定時において国が埋蔵文化財の保存というものを配慮しなければならないという最初の自民党案にもあったこの条項ですね。それから企業にも国の施策に協力して、文化財保護に積極的に協力する義務があるということを盛り込んだ条項だとか、それから国、地方自治体自身が積極的な文化財保護の策定の義務があるとか、そういう総則関係の改定というものが非常にやはり実際的な意味があるんだというふうに考えます。 それから事前協議が今度は法制化された、実質的には法制化されたということは確かに大きな改善です、そういう意味では。ですから、これはぜひ緊急調査、事前調査のための事前協議にならないように、最大限大きな開発の中で国等の開発は積極的に遺跡を残していく、そのための事前協議にしていただきたい。そうしなければ、ますます緊急調査がふえる一方で、これは決して抜本的な対策にはつながらないのだということを強調したいと思います。 それにつけても、この五十七条の三でございますか、新しい官庁同士の文化庁と開発側の省庁との話し合いというものには、ぜひ文化財保存団体あるいは学会、そういう生の声が反映できるような、そういう何らかの裏づけというものをぜひつけていただきたい。もしいままでの一般的な届け出の書面審査から、全体二千件のうちの七割に及ぶ国等の開発が全部事前協議になるとすれば非常に結構ですけれども、それにはその事前協議をこなす膨大な中央に機構がなければ、文化庁としてはやっぱり当然こなし切れないだろうと思う。そうでなければ、向こう側が出してきた計画に盲判を押すということになりかねないわけです。ぜひこの点も十分考えて、特にそういった国民の世論というものを反映して、事前協議条項が本当に生きるように、このように切望するわけであります。
○委員長(内藤誉三郎君) ありがとうございました。以上で参考人各位の御意見の陳述を終わりました。 それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。 質疑のある方は、順次御発言を願います。
○有田一寿君 質問申し上げる時間がわずか十分程度でございますので、いろいろ申し上げたいこと、お尋ねしたいこともありますが、それは差し控えさしていただきまして、いま四人の先生方からお聞きして、いろいろ参考にさしていただく点があったように思います。その点、厚くお礼を申し上げます。したがいまして、個々のことについては触れませずに、今後の御協力と御理解をむしろお願いを申し上げたいということでございます。御了承いただきたいと思います。 御承知のように、わが国は、歴史も古い、宗教もいろいろなものが入っておる、また、国土が狭小であるということの上に、基本的なものは、やはり農耕型の縦社会であった、祖先崇拝の伝統が定着していたということが文化財の数を大変多くしていると私どもは理解しているわけでございます。少し文化財という言葉を拡大解釈するならば、ほとんどあらゆる場所に文化財があるということは言ってもよいと思います。三十万カ所ということでございますけれども、これは未調査の分をさらに類推していけば、私はその倍以上あると言ってもいいかと思うわけでございます。したがいまして、先ほど御意見がございました私権の問題、これはもう大変重要なことでございまして、この案を衆議院の小委員会の委員長としてまとめました河野洋平小委員長が意見を申し述べたいところだと思いますが、発言の機会を持っておられませんので、私からその点について申し述べさしていただきますけれども、この許可制の問題、届け出制と許可制の問題は、届け出制よりも許可制の方がはるかに確実に文化財が保存されるということはもうだれが考えても当然のことでございます。ただ、許可制にしたということに仮にしまして、いろいろ及ぼすところを考えてみますと、現在、終戦後、この私権の問題は憲法を背景として大変国民の間に深く浸透しておりまして、これを乗り越え排除する道は、文化財、文化全般に対して国民がこれを深く、高く価値評価をしていくと、そして私権が制限されても、あるいは多少剥奪されても、快くこの国民の共同の文化遺産に対して理解する、譲るんだという気持ちになれば、私は許可制にして結構だと思うんですけれども、現在のところは、まだ私どもはそこまでは行っていない。そのときに、法律をもって、強権をもって臨むということになった場合、果たして国民が快くこれに同意するかどうかという点がこれは提案者としても苦心のあったところであります。この法案は、御承知のように、各党合意して委員長提案としてこれは出されておるわけでございます。したがいまして、いろいろ諸先生方の御指摘の点、もう本当にごもっともでございまして、この点は、この改正案をもって終わりとせず、これは委員長が申しておりますように、今後その再改正に向かって努力を続けていくということでございます。その間に時代も変わりましょう、逐次国民の文化財に対する認識も私は深まっていくということを期待しているわけでございまして、その次の改正のときに、いま諸先生方からいろいろお述べくださったようなものをある程度入れられるというような私どもは考えを持っておるわけでございます。 それから、この期間の問題、六カ月、五年以内は九カ月となっておりますが、これについても確かに決して広い地域を調査するのに十分な期間ではございません。あるいは一年あってもあるいは十分でないかもわかりませんが、先ほど申し上げました許可制、届け出制の問題と同じにこの問題もまた六カ月というものをもって一応、あるいは五年以内は九カ月をもって建設工事を始めるということの許可を与えるということ、これも現在の時点ではやむを得ないと、しかし、決して理想ではない、不十分であるということはよくよくわかりながら、なおかつ国政のバランスを考えた場合に、ここから出発しなければならなかったという苦心のところを何とか御理解を願いたいと思うわけでございます。 それから、今度の法案に理念が入っていないということも、私どもも諸先生方と同様に、これは不十分であったと思います。ですから、いま御指摘くださいましたように、やはり文化財保護法というようなこういう法律は他の経済的な法律と異なってこの理念がまことに大事である。そして、その理念を敷衍していくことによって、国民の間に逐次文化、文化財に対する認識を深めてもらうことができるという考えを実は持っておりまして、その点から言えば御指摘の点、まことに賛成でございます。 それから一に、これは私どもは運用によると思っております。不十分ではあるかもしれませんが、この法案を少しでも効果を大にし、次の改正するときの踏み台にするためには運用によると、指導員制度、いま御指摘がございましたように、効果を上げているというお話でございました。まことに結構なことでございます。 それから文化庁というよりも、これは特に大蔵省関係の理解が必要でございまして、予算をつけなければ、幾らりっぱな法案をつくってみても絵にかいたもちでございます。特に文化財関係についてはわかりにくいという面があって、財政当局としては憶病になる傾向がございますので、その点も運用によって、いわばわれわれみんなが文化財を守り抜くという決意を持つことによって、それが可能になっていくのではないかと思うわけでございます。なおかつ、後継者の養成のことも、これはもう幾ら予算をつけましても、実際にそれを修理、保存していく後継者が育たなければ絵にかいたもちでございますので、こういうことも考え合わして、やはりいい意味で完全に文化財を保存していきたいということを考えておる次第でございます。どうかいま御意見を四人の先生方から賜りました。もう一々ごもっともでございまして、御指摘のこと、決して私どもは間違っているとか、反論したいというような面は一つもございません。それと平素真剣にこのじみな仕事に取り組んでいらっしゃる、きょう代表でおいでくださいましたけれども、その背後にいらっしゃる多くの諸先生方にむしろ感謝を申し上げたいような気持ちでございまして、私は以上それだけを申し上げまして、質疑としては申し上げません。平素のお礼と今後何とか御理解と御協力を賜りたいものだということを申し述べさしていただいて、私の質問にかえさしていただきたいと思います。まことにありがとうございました。終わります。
○秋山長造君 二、三点具体的なことを伺わせていただきます。 教育長協議会の宗さんに、先ほどの御発言については私、別にどうこう言うつもりはございません。ちょっと、お触れにならなかったか、あるいは簡単にお触れになったかもしれませんが、いま中心の問題になっておる五十七条の関係ですね。発掘調査あるいは土木工事等に当たっての届出制か許可制か、この問題は学者の皆さんにも非常に痛切な問題だと思いますが、また立場をかえますと、あなた方のような県段階で具体的な問題にタッチされておるお立場としては、また別な面で非常にこれ痛切な問題じゃないかと思うんですが、この点についてはどういうお考えを持っておられるんでしょうか。
○参考人(宗知信君) 静岡県の場合でございましても、大体県下に六千カ所ぐらい埋蔵文化財あると大体調査では出ているわけでございますが、その土木工事等で、許可制が採用されましたら、それは非常に本当にこの上もない前進だというふうに、私ども教育長協議会の要望書の中にも許可制については実はお願いはしてございますが、ただ、やはりいろいろ慎重に考えました場合に、やはり私有権との関係での問題があるんではないかと、特に遺跡はほかの文化財と異なりまして、やはり調査をしないとその範囲を明確にし得ないという問題がございます。あるいはその範囲を明確にするためには、調査体制が十分ではなくって、まあそれ自体に非常に問題もあるんだと、あるいはその範囲のかかっているものは、場合によるとほんの一部の遺跡であるという場合が多うございますので、無理に線引きをいたしますとその部分に重点が置かれまして、線外の遺跡が軽視されるといったような問題もあるんじゃないか、あるいは土地所有者との問題もあると、そこでかえって文化財の保護上支障の問題もあるんじゃないかということでございまして、いまの段階では届け出制、今回こういった措置で法改正されますれば、私どもはそれでもやむを得ないじゃないかという感じがするわけでございます。むしろ届出期間の延長と、あるいは遺跡発見の場合の停止、禁止命令の措置が織り込まれてもおりますので、そういったような形で今回はむしろそういう面を評価をいたしたいというのが私どもの気持ちでございます。実際県下で六千カ所もございますし、そういった意味で非常になかなか具体的に範囲を明確にする、あるいは調査体制どうするかと、先ほどいろいろお話出ておりますが、そういったような点、私権の問題等踏まえまして、私どもとしては、今回のこの法案の考え方でよろしいんではないかというふうに実は感じるわけでございます。
○秋山長造君 私どもの手元に配られております資料の中に「全国都道府県教育委員長協議会・都道府県教育長協議会要望書」文化財保護法改正についてということで、昭和四十七年出てますね。これはあなたが中心になっておやりになったんではないかと思うんですが、そのときにいまのような第二部会の主査というようなお仕事しておられたかどうか、いずれにしても、これ非常に御関係になっておるんじゃないかと思うんですがね、この中の3の「埋蔵文化財について」という項目がありまして、相当多岐にわたってかなり徹底した要望が書いてありますが、その中に、やはり届出制では不徹底を免れない、特に現在の開発ブームに押しまくられて、とてもこれは対抗できないと、ぜひもっと明確な許可制にしてもらいたいということ書いてありますが、この文章から考えますと、いまのあなたの御発言、ちょっと大分御遠慮、まあ後退した感じとは申し上げません、それはあなたの言外におっしゃっていることは十分わかりますからそこまでは申し上げませんけれども、まあそれにしてもちょっと御遠慮され過ぎた発言のようにも思うんですがね。特に静岡県なんか六千カ所から埋蔵文化財を抱えておられるということで、しかも静岡県もなかなか開発は盛んな県のようですが、ずいぶんあなた実際問題としては困っておられるんじゃないですか、その現在の微温的な制度のために。そこら、こういう席ですからかまわずに、ひとつわれわれよりいいものをつくろうという熱意、ただそれだけでこういう審議をやっているわけですから、別に他意あるわけじゃないですから、ひとつ率直な御発言をもう一度お聞かせいただきたいと思います。
○参考人(宗知信君) 実は、私はこの四月から教育長になりましたので、ちょっと昔のことよく存じ上げていないのでございますが、実は教育長協議会の改正の要望書というのは、昭和四十五と六年に研究をされまして、そして四十七年に要望書をお出しになったようでございます。実は、教育長協議会として予算等の問題につきましては毎年いろいろ変わった形で出ているわけでございますが、この要望書は、この時点でこのままになっておりまして、多少時代的なニュアンスの違いもあるんじゃないかという感じがいたしております。ただ、いま私、遠慮申し上げたというお話でございますが、別に遠慮を申し上げたわけでもございませんで、私どもとしては率直に申し上げて、まあ事前協議制の問題もございますし、仮指定の方法もございます。そういったようなことも含めまして、確かに要望書には許可制をお願いをしてございますけれども、内容的に改正案の中で届け出期間の延長とか、あるいは遺跡発見の場合の停止、禁止の措置が織り込まれておりますので、そういった意味で、今回はこれを評価したいというのが私どもの気持ちでございます。
○秋山長造君 櫻井さんにお尋ねしますが、先ほどの御発言の中の一項目として、やはり文化財保護法の改正をやる場合、基本理念を確立、明示することが非常に重要だということを強調されたと思うんですが、この基本理念を盛り込むとすれば、法律、文化財保護法の総則に盛り込まなきゃならないわけですが、あなた方その総則に基本理念として盛り込まれる場合、大体どういうことを具体的に盛り込んでもらいたいという案がありますれば、参考に聞かしていただきたい。
○参考人(櫻井清彦君) これは、先ほども申し上げましたように、本年の二月の衆議院文化財保護小委員会の自民党から出ました案でございますが、そこに「総則関係」としまして、第三、第四、そういうような項目が挙がっております。大体、これに集約されているというふうに考えております。つまり、国及び事業者の責任の所在、それを明確にするということ、この理念が一番重要な問題であります。その表現に関しましては、いろいろのことがあると思いますが、内容的にはこの第三、第四と、これを大体考えております。
○秋山長造君 甘粕さんにお尋ねしますが、やはりいまの基本理念の問題について先ほどあなたもお触れになったですが、その基本理念の具体的な内容については大体項目に分けてこれとこれとこれはぜひ盛り込んでもらいたい、ということがございましたら念のため承りたいと思います。
○参考人(甘粕健君) これは、一つは、この一九六〇年以来の高度成長の中で一番問題になってきたことは、文化財というのは単に県としての文化財でなくって、国民の歴史的な環境なんだと、かけがえない環境だと、こういう観点がその他の自然保護の問題などとも絡らんで、かなりの国民的な合意というところまできていると思います。単に一般的に国民共有財産だというんじゃなくして、そういう明らかに日本人が住んでいるそれぞれの場所場所で正しい歴史教育を受け、豊かな環境の中で生活していく、そして将来に向かって文化を発展さしていく、地域地域の住民がですね、それの基礎が実はいまの環境の中の中核をなす歴史的な環境として、埋蔵文化財を中心としたそういうものなんだ、こういうことが出てきたと思うんです。ですから、この点がはっきりすれば、届けを出して記録だけ取って壊せばいいんだという従来の考え方というものはかなり克服できるんではないかということです。ですから、そういうものですから、学術会議の勧告に盛られている基本理念というようなものを骨子にしていただいて、目的の方なりあるいは特に総則を設けるなり、これをぜひ——あるいは可及的すみやかな将来の課題と言ってもいいですが、しかし少なくとも、自民党案にもあった「国及び地方公共団体の任務」と「総則関係」の第二に掲げておられます、従来つまり保護法の「趣旨の徹底に務めなければならない。」という一般的な規定だったわけですけれども、今度は「適切な保存のための施策の策定」ということが義務づけられた、つまり自民党案で、これは復活していただくことが非常にありがたいというふうに思います。 それから第三のもう一つの点は、やはり同じ案に出ておりますけれども、この「地域開発の策定時における配慮」ですね、地域開発というものは文化財を積極的に残していくということが真の開発なんだということだと思います。それをやはりその責任があるのは、国や地方公共団体が一番責任があるんだということを、この自民党案の第三項でうたっておられます。この点ですね。それから、文化財は国民一般に保存する義務がありますけれども、しかし六〇年以降の現実の事態の進行の中で非常に明確なのは、やっぱり大規模開発、そういう企業の活動というものがやはり大きな破壊の要因になっているということも、国民的合意に達したと思うわけです。この点、国民一般に義務を求める、保存の義務を課するということとともに、やはり具体的にこの自民党案の第四にもあった「事業者の責務」ですね、この事業者は事業活動に当たって文化財が保存できるように意識的に考えてやらなければいけない。また、地方公共団体の、これは特に地方教育長会議等々地方自治体の担当者はこの辺を強く望んでおられると思いますけれども、つまり企業が文化財保護のための施策に協力しなければならない、国や自治体にですね、このことをやはり明文化してあるわけですから、自民党案には。ぜひこれだけはやっていただきたいということで、多くを望んでおるわけではございません。
○秋山長造君 文化財の問題は、これはもう何といいましても国民全般の理解あるいはコンセンサス、そういうものを背景にして進めなければ、これは効果が上がらぬことは当然ですが、それはもう当然の前提として、あなた方はやっぱり学者、専門家と、それから文化庁なりあるいは都道府、県市町村なり、こういう行政当局とが緊密な協力をしていってもらわなければ、これは実効が上がらぬことはもうこれは当然ですが、特にこの埋蔵文化財の発掘等については、考古学者の皆さんと行政当局との協力関係が最も緊密でなきゃならぬことはこれは当然だと思うんですが、そういう点について、今日までの実態はどうなっておるのかということを、あなた方のお立場からの御発言をいただきたいと思うんです。 それから、さらに、いま三カ月、六カ月という期限の問題が非常に問題になっているわけですが、それと関連して、こういう埋蔵文化財の発掘、調査なんかの実態はどうなっておるのか。これは私らの想像では、大学の考古学の先生が、夏休みなんかに学生の協力のもとに断続的にやっていかれるというようなことにならざるを得ないんじゃないかという気もします。だから、そういう面から考えても、このちょっと期限の問題が当然あなた方の問題になるだろうという気がするんですが。そこら辺について、簡単でよろしいからお伺いしたい。
○参考人(甘粕健君) 第一点でありますけれども、これはやはりしばしば考古学協会、あるいは文化財保存全国協議会というようなところが、個別の遺跡の保存を要望する要望運動というものをやっております。また、やっぱりこれを通じて、文化庁としては全国に目が及ばない面もあるわけですから、そこで緊密な連携が実現して保存に成功したという例は幾つもあげることができます。ただ、たとえば、御存じの伊場遺跡の場合のように、学会としての要望、あるいは保存団体としての要望ですね。これはぜひ、伊場遺跡の場合は県の指定史跡を解除するどころか国の指定史跡にして積極的に守っていただきたいと、こういうのが大多数の要望であるわけです。これは実際に学会単位にいっても、全部一斉にそういう要望を出したわけです。しかし、その点、やっぱり最後まで文化庁との間に評価が食い違った。現実の面では、専門審議委員の先生の一部が実際に伊場の調査に関係されて、そういう先生方とまた第一線の多数の学者の意見とも評価がてんで食い違う。現実には、こういうことがしばしばあるわけですね。これは、やはりそういった場合は決して少なくないわけでして、これはやはりいまの専門審議会制度とか、そういうものにも問題がやっぱりあるんじゃないかと思っております。先ほどの事前協議の際にも申しましたけれども、やはり何かたとえば、日本考古学協会とか、われわれの文化財保存全国協議会だとか、そういういわば埋蔵文化財というのはだれが代表するということはないわけですね。代弁してくれる人がいないわけですよ。ですから、いまの伊場の裁判でも、一体そういうものを学者やなんかが伊場の行政処分に対して異議を申し立てる権利があるのかないのかということがいま裁判で問題になっているわけですね。だけど、実際は、諸外国の例なんかを見ましても、いわば代表権といいますか、その文化財の保存ということに専念しているそういうきちっとした団体、学会、そういうものが当然正式にものを申す、そういう権利ですね。国民の文化的環境権というものを代表して、あるいは学問の自由という立場から言っても、そういうものを代表して物を申す、つまり政府、国なり地方自治体なりが指名して審議委員を任意的に選んで、その意見のみによって行政を行っていくというところに、やはり絶えず問題が残るんじゃないか、この辺のことをぜひお考えいただきたいということでございます。 それから、第二点の調査の実態でございます。これは一九六〇年の半ばごろまでは、主要な緊急調査も含めて、やはり大学単位で請け負って調査をするという状態でした。ですから、たとえば、これは最終的には保存に決定した横浜の三殿台遺跡などの場合は、三千坪ばかりの丘の上に、二百五十点の竪穴住居が出てきたわけですけれども、この場合は、東京の日本考古学協会が中心になって、和島誠一先生が指導して、当時、毎日五十人の考古学専攻の学生が、朝から晩まで調査をして、四十日間ぶつ続けに、もうぶっ倒れるまで調査をして、とにかく掘り上げたと、ですから、これは非常なスピードですね、四十日間で大遺跡を掘り上げたということがあります。そういうことが六〇年の半ばぐらいまでにはありました。しかし、そうなってきますと、今度はそういう遺跡があっちにもこっちにもあるわけですよ。六〇年の初めごろは、東京首都圏で一カ所か二カ所だったからそういう形でできますよね。だけど、首都圏にそういうのが何カ所もこう出てくるわけです。そうすると、当然その年に出てきたやらなければならない調査も、来年、再来年に回さなきゃならない。しかもそういう場合には、必ずやはり夏休みとか春休みとか、そういうときに集中的にやるという状態だったと思います。 ところが、六〇年度の後半から、文化庁の方も考えられまして、各都道府県に専門の調査員、まあ技師とか、嘱託とか、いろいろな形ですけれども、まあ若手の研究者を組織しまして、それが現在では全国で四百人を超えるという体制になって、漸次調査の主体は、大学単位のものからそういう行政調査に移行しているわけであります。この場合は、ですから通年調査ができるという点が大きく性格が変わってきたわけであります。しかし、じゃ通年になったらトータルでいままでのやり方よりも能率が上がるかというと、これは必ずしもそうではないです。年二千件という調査を四百人の人がたとえばやっているわけでしょう。だから、一遺跡に二人とか、一人半というところで張りついているわけです。それに人夫を使ってやるわけでしょう。ですから、大学が中心になって、五十人なり百人の組織された専攻生にやってもらって、大学院クラスの幹部がいて、助手がいて、講師、助教授がいるという体制でもう、勢いをつけてぶつ倒れるまで四十日かかってやり通すというわけにはいかないわけですよね。その技官にも生活があるわけですからね。しかし、それも日曜、祭日もなしに現にやっているわけですね。ですから、これはいまの体制では、その事前調査自身を減らす方に持っていかなければ、もうどうにもならない状況になっているだろうと、つまり、通年やれるからといって、いままでより能率が上がっているわけではないと思います。そこら辺のところをぜひお考えいただきたいというふうに、それに、まして二千カ所散らばりますと、考古学にも、医者の外科と内科と神経科とかいろいろあるように、実際には専攻、専攻があるわけですね。ですから、その専攻にかかわりなく、たまたまある調査を引き受けなければならない、行政的にですね、そういう現場の研究者たちはですね。そういう矛盾も出てきているわけですから、こういう矛盾を全体としてどう解決するかということは、非常に日本のこれからの学問の問題にも、また文化財保護の問題からも、深刻な問題なわけですから、そういうようなところをぜひ今度の国会でも十分に検討していただきたいというふうに思います。
○松永忠二君 先にひとつ、いま、少し私たちのお聞きをする態度でありますけども、私は、実は今回の改正は非常に大幅な改正であるし、それからまた、相当抜本的な性格も持っている。そう再々、法律というのは改正はできないので、この改正の機会にできるだけ要望に応ずるような点をひとつ加えていかなければいけないものだという、こういう考え方を私たちは持っているわけであります。そういうふうな意味で、私はぜひいいものを加えたいというようなことを考えているわけなんです。 まず最初に、櫻井先生と宗さんにお伺いしますが、櫻井先生、いま秋山委員からお聞きいただきましたように、理念的な問題について一つの問題点があるというお話であります。それを除いて、もしこのいまの案に何かを加えるなり、改めるとすれば、何が一番あなた方の御要望の点なのかということが一点であります。 それからもう一点は、これは宗さんと櫻井さんと両方にお聞きをするわけでありますが、衆議院の段階で参考人として考古学会と全国の都道府県の教育長協議会の方が呼ばれたようでありますが、それを除いて、この案をつくるに当たって、皆さんの御意見を徴せられた事実があるのかないのか、これ事実をただお答えをいただきたい、そう思います。
○参考人(櫻井清彦君) 私たちの一番望みますのは許可制のことでございます。しかし、この許可制は現時点では不可能であると、したがって、これをこの新しい改正案の中に入れることはまず時間的にもできないことです。 それから、次の不時発見の場合の期間の問題、これも先ほど来のお話を伺いますと、現在はそれでしかもぎりぎりの線であるというような御説明がございました。したがいまして、私個人といたしましても、これをさらに一年あるいは二年というような、そういうふうに訂正するというような、あるいは加えるということは現段階では申し上げられない。ただ、事前協議の中身の問題で、ただ協議に終わらずに、先ほど申しましたように保存への路線が敷ける会談、もしできましたらこういう点がその中に盛り込まれますように、それをお願いいたします。 それから、第二点の協議のことですが、これちょっと理解できないんですが、どういうことでしょう。
○松永忠二君 宗さんにも同じことですが、つまり、考古学会というのは改正についてずいぶん前にいろいろなものを出されておるわけですね。もう昭和四十八年ころから出しておる。そこで、今度改正するに当たって最終段階で参考人を呼ばれているのは、これはもう事実でありますが、それ以外にそれ前なり、あるいはその後に当たって、特にあなたの方を呼んで考古学会の意見を聴取をするような機会があったのかなかったのか、その事実だけをお聞きをしているんです。
○参考人(櫻井清彦君) いま衆議院の場合、江上先生の場合を除くと先ほどおっしゃいました。それを除きますと、われわれに直接意見を求められたことはなかったように記憶しております。
○松永忠二君 宗さんいかがですか。
○参考人(宗知信君) 実は教育長協議会は四月に一度会合がございまして、新潟で第二部会があったわけでございます。そのときに文化庁の方からおいでになりまして、大体法案について、こういつたような形で現在進んでいるんだという御報告はお話伺いました。四月以後はそれだけでございます。
○松永忠二君 甘粕さんにお尋ねをいたしますが、遺跡の発見をした場合において、停止命令、禁止命令を出すというこの問題ですけれども、文化庁側の方の説明によりますと、もし非常に重要な場合には指定してしまうと、つまり国の指定にするというような方法もあるというようなことを言われているわけですが、私は国の指定というのは非常に数が少ないし、また、国の指定をしようとするときに、そう軽はずみの判断をすることはできない。やはり価値判断を正しくしなければできないということになると、そう簡単にこの期間の中にどうもぐあい悪いから、越しそうだから指定してしまうというのは、ちょっとそれは不可能じゃないかというふうに思うんですが、この点を一点。調査体制については、あなたのおっしゃった御説明でわかりましたので、片方は不十分だと言うし、片方は何とかなると言うし、これ意見の違いが私はあると思う。いまの点が一点です。 二点目としては、国の機関が発掘に関して特に協議をするという問題でありますが、これについては、あなた方が保存をされている中で、相当紛争を起こしておるものが、先ほどお話がありましたように、国とか、そういうものの公共の機関がやっているものだと、こういうことになると、これについて、事前に協議をしていくということになると、よほどやはりチェックをする必要があるのではないか、この点をあなたからは学会とか、いろいろな保護団体の事前的な意見を聞くようにというお話もあったけれども、私は一つの方法としては、明確にやはりそういう場合には理由を付して公開をするという必要がある。これは公開をして理由を付せれば、その理由について学問的に批判を受けるわけでありますから、やはりそういうような意味の歯どめというものも必要なんではないかと思うが、こういう点についてお聞きをしたい。 三点目としては、いま少し秋山委員から御説明がありましたけれども、現在、こういう紛争に伴って、いわゆる行政訴訟法の問題で争いが出ている。この点について、いま言うとおり、公害の問題にしても、単に直接の被害者だけでない他の者から、訴訟ができ得るようにいろいろな法律ができているわけです。たとえば、古都保存法などにも「国民がひとしくその恵沢を享受し」というようなことを言っているし、自然環境保全法も「広く国民がその恵沢を享受するとともに」というようなことを出しているわけでありますが、どういう点が特にそういう点で不備なのか、つまりお話のように文化財を守るという立場から、国民的立場からこれを守る運動をしていく上において、特にそういう点でどういうふうなことが入れられることが必要であるのかという点が三点目であります。 なお、四点目にもう一つお聞きをしたいのは、届出制を許可制にするということについては非常に困難だというふうな説明であります。しかし、同時に法律を見ると、今度新たに加えられたものは、遺跡を周知するために標示をするということが出ているわけです。そういう標示をするということをしながら、事実上そういうことは許可制にすれば、そういう点を明確にしなければできないので、非常に困難だと言っているわけでありますが、諸外国の例から考えてみても何か方法がないのかどうか、そういう点についての意見をお聞きをしたい。四点御説明をいただきたいと思います。
○参考人(甘粕健君) 正確を期するために四点、もう一度先生恐れ入りますけれども、項目だけ指摘していただきたいと思います。
○松永忠二君 まとめて申しましたので、要約して、要するに遺跡の発見に関する届け出の停止命令などについて、いわゆる史跡指定をすることによってそれを防いでいくということを説明をされているようだが、非常に困難だと考えるがどうか。 それからその次に、国の機関等が行う発掘に関する特例、事前協議の問題について、有効なチェックの方法、このことで紛争が起きて、あなた方はそのことで非常に努力をされているわけなんですけれども、そういう点について、もっとひとつ有効な方法はないのか、理由を付して出させるというようなことも一つの方法ではないかと思うわけです。 第三点としては、行政訴訟法によって訴訟が行われている。そういう点から考えるならば、この文化財保護法のどこに根本的な欠陥があるのか、あるいは特に挿入しなきゃできないと考えるものは何なのかということがその第三点。 それからその次に、届出制を許可制にする困難をいろいろ説明をされているけれども、これについてはあなた方はどういうふうにお考えになるか、こういうことです。
○参考人(甘粕健君) 一般の埋蔵文化財が危機にさらされた場合に、仮指定なり何なりの措置によってチェックをかけるということは非常に望ましいことだと思います。これは恐らく本来、史跡指定の条項ができた段階は、これは史跡、名勝、天然記念物保護法以来のことだと思いますけれども、そういう破壊される遺跡を守るために史跡指定をかけるという考え方はなかったと思います。しかし、これは実際の平城宮跡の保存運動以来、具体的に学会や住民から保存の要求が起きる中で、それに対する国の責任ある対応としてできるものは史跡指定を打って守っていくということで保存運動と行政とは協力してきたと思います。ですから、この点はむしろもっと財政的な裏づけをつけ、てどしどし仮指定なり本指定なり打っていただきたいということであります。しかし、この五十七条の五が発動された場合、時間切れになったと、それをカバーするために史跡指定を打つということは現実の問題としてはずいぶん困難ではないか。やはりそれは非常に開発側とももめにもめている状況の中で時間切れになる場合が多いと思うわけです。そうして、その場合、必ずしも従来の国の指定の基準から言えばちょっとむずかしいという現実の場合が非常に多いんです。ここで史跡指定打ってくれれば本当に助かるという場合でも、すでにかなり壊されてしまっているとか、あるいは全国的に見て基準にちょっと無理だとか、そういうことを絶えず言われてきた。しかし、少なくとも、その遺跡は十分調査しなければならない非常に重要なものだと、史跡には指定はできないけれども十分調査すべきだという点では、必ずそれは文化庁とわれわれと意見が一致するわけです。だけど、そういう場合、やはりこの中止命令権に時間のリミットがあるとやはりそれはできないんじゃないか。つまり合法的に時間切れだよということで壊されてしまうこともあるんではないかという点で、やはり最初の私どもの出していた疑問というものは史跡指定の問題でもこれは解けないということでございます。 それから事前協議の問題でございますけれども、これは確かに先生のおっしゃるとおり、理由を明示していただくということは、一歩前進になるんではないかと、住民の立場から言っても、学会の立場から言っても、あるいは開発の側にとっても。要するに、その地域計画を民主的に進めていくという観点で重要な文化財保存のための施策というものを単に学者だけではなくて地域住民にも知らせて協力を求めていくと、こういう考え方は非常に必要だと思います。従来もこれは非常にこそくなことではありますけれども、行政調査の過程で、いろんな段階で現地説明会というものを現場の行政官の努力で開いていただいています。これが開かれないで、むしろ、保存運動がうるさいからということで穏密裏に調査をされると、報道管制がされるという場合と、それから実際に担当者の努力でむしろ公開して市民に広く現地説明会ということをやるというこの二つのあり方が実際に現実にはあります。ですから、むしろ、そういう行政府の立場としては重要な遺跡を掘っている場合は、定期的に広く学会や住民にその内容を現地説明会という形で公開するというようなことも当然むしろ義務づけていただくと、これは法律で義務づけるのかどうかわかりませんけれども、こういうことが非常に大事なことではないか。そのまた発掘の現場で学会の人たちと、あるいは住民と、それからそういう調査をしている担当者とがフリーな学術的な討論をするということがまことに望ましいことである。そういう中で、住民自身もこれはしかしやっぱりここらで保存する方がいいんじゃないかということをみんな考えていった形で、住民の責任でその後の処理が好転するという場合が実際しばしばあるわけです。こういうことをぜひ裏づけていただきたいということです。 それから、第二の国民の権利のことでありますけれども、これは今度の法改正の間でも、私どもの常識と、それから恐らく法制局で考えられている法律の常識との間にずいぶんずれがあるといることをつくづく感じたわけでありますけれども、しかし、天下の大勢は、そういう環境権として学会や住民の側にも文化財を守らせ、その恵みを受ける、そういう権利があるんだということが国際的に言ってもだんだん固められてきて、それが具体的な判例あるいは外国でも法改正の中でそういう理念が次第に盛られてきているということだと思います。そういう点の議論が衆議院段階でなされたのかどうかという点で、恐らくなされてないと思うわけですけれども、これは法律を新しい時代に即していくという場合、非常に重要な点だと思います。特にいままでは直接経済的な利害を持った地権者などが異議申し立てをしたりあるいは訴訟を起こしたりする、そういう道は開かれているわけですけれども、一体それでは、保護の立場を代表する団体がそういう公聴会を要求したり、異議申し立てをしたり、あるいは裁判に訴える声の代表権というものを設定するという方向で、むしろ法律の学者の意見なども十分に聞かれて、そういう新しい改正の方向というものを引き続き追求していただきたいというふうに思います。 それから最後に、許可制の前提のことでございますけれども、これはもう私どももいま直ちに許可制に移行するには非常にいろいろ、特にやはり埋蔵文化財の包蔵地の確認という点で問題があるだろうと思います。ここにいまこういう例も持ってきておりますけれども、これは一番最近の東京都の遺跡地図帳でありますけれども、これは一万分の一ですけれども、とにかく遺跡の範囲を現在わかる範囲で埋蔵文化財の場合も線引きをするという努力は各自治体でやられてます。これがさらに三千分の一、あるいは地籍図にも対応するぐらいに細かなものに、そこまでいかなければ許可制になれないのか。あるいは一万分の一ぐらいのものでも現に相当効果は発揮しているわけですね。実際、こういう二万五千分の一でも私どもがゼロックス屋さんに行くと、よく土建屋さんがこれを持って来て自分の開発するところのゼロックスをとっています。ですから、やっぱりもう開発者自身がこれを知っていなければ開発できないということを知っているわけです。ですから、そういうことを文化庁自身もぜひ自分のお仕事を尊重していただいて、これをさらに強化していく。それについてはやっぱりちゃんとした大きな委員会でもつくって、法律の人、それから学会、それから地権者とか、本当に国民的合意に基づいてどうすれば許可制にできるのかということをもっと真剣に科学的に考えていただきたいわけです。そういうことに対しては保存団体も学会も全面的に協力すると思うわけです。ぜひそういうふうにしていただきたい。
○内田善利君 それでは、端的に時間の関係で御質問しますが、現段階では許可制はむずかしいと、櫻井先生並びに甘粕先生はそういうことだと思いますが、それでは現在では許可制はなかなかとれないけれども、将来は許可制をとるべきだと、こういうことのようでございますが、そうでございますか。
○参考人(櫻井清彦君) そのとおりでございます。
○参考人(甘粕健君) 埋蔵文化財の問題は非常に緊急を要するわけです。だから将来はというよう一漠然としたことじゃなくて、やはり国会としても、法改正やる以上、あと何カ年計画ぐらいでそちらの方向に一歩進めるのだとか、あるいはそのための前提の予算措置を組むとか、それでなければいまはできないからいいやということでは絶対ありません。 それから、しかし、許可制に一足飛びにいかなくても、五十七条の二の周知の埋蔵文化財の届け出に対して、せめて学術調査にはある中止停止命令権を一般土木工事についても何かの形で設定するとか、その場合も期限なんかはつけるんじゃなくて、もっと有効に規制できる形で中止、停止命令権をなぜ設定できないんだろうか、ぜひしてほしいというのが、非常に切実な現段階でのむしろ学会や保存団体の要望になっております。
○内田善利君 それと、運用面に入りますけれども、いままでたくさん保存状態を見まして、まず、Aランク、Bランク、Cランクと文化庁の方で現場の方に行政指導があっているわけですが、このランクづけをするのは一体だれなのか、だれが責任を持つのかということです。私はやっぱりこれは発掘調査をやった後すべきじゃないかと、このように思うんですけれども、もう開発側では、ああここはCランクだからもういいんだというようなことで、最近は開発側もABCのランクづけをよく知った上でやっておるようだし、この点、問題が一つあると思うんです。 それと、永久全面保存か記録保存かと、これならわかりますけれども、部分保存というのがあるわけですね。この部分保存がだんだん小さくなっていって見る影もなくなってしまったというのが、姫方遺跡の一番いい例なんですが、この部分保存ということのあり方、この辺どのようにお考えになっているのかお聞きしたいと思うんです。櫻井先生と甘粕先生に伺います。
○参考人(櫻井清彦君) このランクづけの問題と部分保存の問題は、私ども現在、非常に熱心に討論をしている最中でございます。この問題は最近始まったことではなくて、かなり以前から特にランクづけの問題が表面に出てきておりまして、いまおっしゃいますように、C級というようなことを言いますと業者が喜ぶ、A級と言いますと顔をしかめる、それだけでもうその業者の態度が変わってくる。したがいまして、このランクづけというものは非常に影響するところ大と存じます。ところで、その本質論と申しますか、そういうことでは、元来は遺跡、遺物に対してランクづけをするということが誤っているのではないか、遺跡、遺物、一片の土器たりとも、それはそこにA級、B級ということをつけるのは誤りである、そういうような考え方で推し進めていく場合と、それからきわめて現実的に、これはどうしても残さなきゃならぬ、これは徹底的に調査してその上に何らかを建てると、この現実派とそういうふうに理念派、この二つがあります。この二つの間をどういうふうに取り持つかなどというのがいろいろ苦しい立場になってまいりますけれども、元来はやはり遺跡そのものはランクをつけてはいけないんだろう、それが一つ。それから、いまおっしゃいましたように、そのランクづけというのは調査した後にそういうものが出てくるであろう。しかも、埋蔵文化財というのはまさに埋蔵されております。したがいまして、これはどんな人が見ても、それがAであるとかBであるとかいうことは、これは現実問題としてもランクづけはできないんじゃないだろうか。したがいまして、ランクづけということがもし行われるならば、やはりその前に徹底的な調査というものがまず前提としてなければいけないと思います。それから、その規定には、元来遺跡、遺物に対してはランクづけをしてはいけないんだと、この二点でございます。 それから部分保存の場合ですけれども、部分保存というのは少なくとも私個人としては絶対反対であります。やはり広域の保存、少しでも多くの保存。たとえば古墳なら古墳があります。その古墳だけではなくて、その周辺のあわせての保存ということが最も望ましいと考えます。 以上でございます。
○参考人(甘粕健君) このランクづけというのは、開発側が非常に強く要望してるということですね、現場でもよくそういう意見に接します。現に、県段階ではある程度ランクづけの作業が進んでいるということも聞いております。しかしこれは、やはりあくまで遺跡はランクづけはすべきではないという点は、文化庁長官などの答弁から見ても、その点では保護の立場からはもう一致してると思います。ただ、当面守らなきゃならない重要な遺跡を次々に指定していくということは、これは決してそういう破壊の順序を決めていくためのランクづけではないわけですから、そういう意味ではむしろ積極的にいまわかってる範囲でそれぞれの遺跡が持っている重要性というものを明らかにしていって、そしてあらかじめ保存の措置というものを講じてもらう、そのことが必要だと思います。それとあと、やっぱりこれは徹底させなきゃいけないことは、実際、遺跡は掘ってみなければわからないということはもう数多くの実例があるわけですから、そのことをはっきり前提にした行政、それでなければ結局開発側に対しても間違った観念を与えることになるわけですから、そういう意味で、ランクづけという考え方は厳に戒めていかなきゃならないというふうに存じます。
○内田善利君 それと、同じ埋蔵文化財の問題ですけれども、原因者負担の問題ですね、開発側が——発掘調査費を原因者が負担して出すと。いま福岡県で竹並遺跡が発掘されておりますが、これも仮収蔵庫さえも業者側が負担してつくってると、こういう状況のようですけれども、開発側がお金を出して調査費を出すということは、どうも私には保存という観点から納得ができませんですが、諸外国も大体そういう状況でありますし、これは文化庁のまあ財政上の問題、予算の問題がかかってくると思いますけれども、もし文化庁に、まあ国にそういう財源があるならば原因者負担はなくした方がいいのかどうか、この辺はどうなんでしょう。
○参考人(櫻井清彦君) 私も、その原因者負担であるがために、その調査の終わってからの保存の問題等々、いろいろな問題が後に残ると思います。したがって、こういうような調査が国の財源によって行われればこれは理想的な形になっていくのではないかと思います。ただし、これが現実論となりました場合、いつもそこで引っ込まざるを得ない。よく文化庁の皆さんともこの件については話し合いますけれども、その話はわかるけれども、現実としては不可能である、こういうことでございます。
○参考人(甘粕健君) これは櫻井先生のおっしゃったとおり、この問題で非常に保護の立場というものが現実には弱められてくるということがあります。ただし、まあ大きな企業がそこで利潤を得るために開発をして遺跡を壊すなり現状を変えるという場合、これは当然企業の責任として、国民共有財産を守るために措置を積極的にとるという、そういう原則ですね、これを一方でやはり確立しながら、やはり原因者におっかぶさって、この調査費を出したということが、その遺跡を破壊する免罪符というものにならないように、そのためには、やはり国が相当の自由になる緊急調査費というものを持って、そして保存運動や学会とタイアップしてそういうものを有効に使って、特にその遺跡の範囲をいち早く確認するとか、そして次の手を打つと、そういうようなことをどしどしやっていただきたいということです。ただ、これが何から何まで国や自治体が文化財保存のめんどうを見るんだということになると、いまの開発の状況から見ると、これは必ずしも得策でない。ですから、そういう意味から言っても、総則関係で事業者の責務というものをやはり明確にうたいながら、国の調査費というようなものを、特に保存のための調査費というものを大幅にふやして、そのための体制も強めるというふうにお願いしたいというふうに思います。
○内田善利君 それと、調査期間の問題ですが、これは先ほども出ておりましたが、実際、広域な埋蔵文化財がある場合、先ほど何カ所か例を挙げられたわけですけれども、広さあるいは土質といいますか、地質といいますか、そういうもの、あるいは雨期にかかったような場合とか、いろいろ原因があって、そういう期間が出てくると思いますけれども、実際、大体平均して、たとえば幅一メートルなら一メートルで、深さ一メートルぐらい掘るのに、具体例——これでなくても結構ですが、どれくらいかかるものなのか、調査の実態、もし、これ、おわかりでしたら御答弁いただきたいと思いますが。 それと、時間の関係で、第二点は、組織のことも先ほどの答弁でわかりましたが、現在の大学の考古学教室数、それと学生定員数で、現状はいいのかどうか、大学に籍を置いておられる両先生にお聞きしたいと思います。 それから最後に、外国もどんどん届出制から許可制に移行しておるということですが、先ほどもこの届出制、現状のままでといいますか、やむを得ないということでしたけれども、この届出制であるがゆえに届け出ないままに大きな重要な文化財が破壊されたという例があるならば、これを二、三お聞かせ願いたいと思います。 以上三点、お伺いしたいと思います。
○参考人(櫻井清彦君) まず、第一点の広域地域における調査の期間、大体どのぐらいの面積がどのぐらいの期間で発掘できるかというような御質問だったと思います。これも先ほど申しました埋蔵文化財でありまして、掘ってみなきゃわからない。何にも出ないときは、それこそもうえらいスピードでこれを掘り上げることができます。ただし、そこにえたいの知れない遺構が出る、あるいは非常に複雑な内容を持つ遺構が出る。こうなりますと、それこそ一メートル四方掘るのに、一日、二日、三日、しかも、それを測量しながら調査いたします。あるいは実測をしながら、あるいは撮影をしながら、あるいは後で自然科学的な処置をするために、具体的には花粉分析であるとか、あるいはラジオカーボンの測定、あるいは弗素の含有量の測定、その試料を取る、あるいは地磁気の測定、こういうものがそこに介在してまいりますと、一平方メートル掘るだけでも大変なそこに時間と労力が必要になってまいります。したがいまして、いま私の手元では、一平米あるいは百平米、どのぐらいの平均的な時間がかかるかということは、ちょっと計算ができない状態であります。 それから、第二点の大学の考古学の組織でございます。これは旧帝国大学、ここに考古学の専門分野がありますし、そのほか、私立大学あるいは地方の国立大学にも考古学の講座あるいは研究室、資料室というふうなものがあります。絶対数としては、これは非常に少ないわけです。そこから年々出ていきます学生諸君は、必ずしも十分な数とは言い切れません。 それからもう一つは、特に私立大学でありますが、ある私立大学では、たしか一学年六十名近い考古学の学生諸君がおられると思います。しかし、その方々が六十名卒業されて、その方全部がこういうような埋蔵文化財にかかわられるかというと、決してそうではない。そこにかかわられる方は数%にすぎないというふうにいわれております。そこにはやはり考古学ではなかなか飯が食えないというような問題もあると思います。いろいろ複雑な問題があると思いますけれども、ですから現在の大学の機構及び数等ではいろいろまだまだ問題が多い。 それからもう一つ、ちょっとこれは問題が違ってくるかもしれませんが、各大学ではそれぞれの大学としての研究テーマを持っております。そういう中に、たとえば、いま問題になっているどこどこが開発されるから調査しろ、そういう問題が飛び込んでくるわけです。したがいまして、ある意味では、緊急を要するときは、自分たちのテーマというものをおいでおいで、そしてその緊急性のある調査に踏み込まなければならないということも出てきます。したがいまして、その大学のプロジェクトの中でそれを立てますから、かなり変則的な調査しかできない。たとえば夏休みの半分しかできない、あるいは冬休みの半分というので、一つの大学が一つの調査を請負った場合には非常に長い時間がそこにかかる。つまり、調査しない時間もそこに入ってくる。したがいまして、具体的には、先ほどの三カ月とか六カ月とかという線は非常に無理がある。したがって、その背後に強力な組織がどこかにそういうものがあるのだろうかというような疑問が出てくるわけであります。 それから、外国の問題でありますが、最近、私どもエジプトの調査をやらしていただいておりますけれども、エジプトなどもかなり強力な許可制をしいております。しかし、これは日本との国情が全然違うわけで、しかもエジプトの場合は日本の考古学のキャリアよりも倍も三倍も四倍も古いキャリアを持っております。その中で煮詰められたものが、今日いろいろな文化財保護法としてエジプトには存在するわけです。したがって、エジプトでは許可制をやっておりますけれども、日本の許可制と直ちにそれを結びつける、あるいは直ちにそれを組み入れるということはちょっとできないのではないか。これは英国においても同じようなことが言えると思います。日本の場合は、とにかく、こういうような保護法自体非常に新しい法律というふうに感ぜられます。それから、それにかかわる研究者も、それから行政担当者もみんな歴史が浅い。そういうところにもやはりいろいろな問題がある。一気に何かが爆発して出てきた、そういうところをやはりわれわれははっきり認識しながら許可制、届出制等の問題にも対処していかなければならないと思います。それだけに、先ほど松永さんの方から、何かつけ加えることがないかというようなことがありましたんで、私、そのとき言い落としたんですが、やはり理念的なもの、総則的なものをこの新しく出される改正の中に入れていただきたい。たとえば、国及び地方公共団体の任務であるとか、あるいは事業者の責務、そういうものをぜひ盛り込んでいただきたい。そういう面で、いまの広域調査の問題、組織などの面もかなり運用の面においてこれが使われるのではないかというふうに感じます。 以上でございます。
○加藤進君 すでに私以外の委員からいろいろ貴重な質疑が交わされたわけでございますから、私は時間の許す限り重複しない範囲で若干の質疑を申し上げたいと思います。 まず最初に、櫻井参考人にお尋ねしたいわけでございますけれども、この法案が参議院に送付されてまいりましたのはまだ六月に入ってからでございまして、参議院文教委員会における質疑の時間は決して十分とは言いがたいものがあると思います。私たちの会館の部屋に再三学会あるいは保護団体の皆さんの来訪をいただきまして、それぞれ貴重な御意見を拝聴しておるわけでございますけれども、そのほとんどすべては、この法改正におけるさまざまな前進面は認めるけれども、しかし、この法案には非常な大きな不備があるという点で一致しておるようでございます。私たち国会で審議に当たる者にとりましては、そういう貴重な皆さんの現場における御苦労をいわばあらわされたような御意見、これを十分に法案に反映さしていかなくてはならぬと、こういう役目を持っておると考えておるわけでございますけれども、この法案のいわば素案と申しますか、あるいは原案と申しますか、そのような法案準備に努力された文化庁の側から皆さんの組織されておる、あるいは考古学会とかあるいは文化財保護全国協議会等々の団体に対して、このような法改正を行いたいけれどもどうかというような意見の聴取、あるいは皆さんの御要望についての懇談——諮問とは申しませんけれども、そのような機会が文化庁の方から申し出られたことがあったかどうか、こういう点について簡単にお答えいただきたいと思います。
○参考人(櫻井清彦君) たとえば、文化庁の方から積極的に日本考古学協会へこの件に関して働きかけられたことは多分ないと思います。ただし、われわれ日本考古学協会の中には、たくさんの文化庁関係の方が入っておられます。したがいまして、個人的な意見の交換等々はかなり行われております。それからもう一つ、この文化財保護法の改正そのものではございませんけれども、やはりこれに多少つながりがあるかと思います、たとえば三年ぐらい前になりますか、これは学会等に依頼されたのではなくて、個人的に文化庁の方から依頼がございまして、三回ないし四回ほどこの文化財の分析等を行いました。その時点で埋蔵文化財センターなどの問題も最終的にそれが表面化いたしました。したがいまして、学会等に公の、オフィシャルな形ではそういう相談はありませんでしたけれども、個人的に、個人的な意味でオフィシャルには積極的な働きかけがございました。
○加藤進君 申すまでもなく、この法改正は議員立法でございますから、その意味では文化庁が矢面に立たれることはないと思いますけれど、しかし、基本的には、文化庁がそれなりの従来の行政の立場から見てこの法案の不備について積極的な意見を持っておられればこそ、このような法改正がまず発議されたのではないかと私考えておるわけでございますが、そういう点でいまの御答弁を聞きまして実情がわかったわけでございますが、なお、三月以降今日まですでに衆議院段階では相当の論議が進められておるわけでございますが、その間に当たって諸先生たちの意見を衆議院段階での論議の中で聴取されたということは、参考人をお呼びいただくという機会以外にあったかどうか、その点だけもう一度確かめたいと思いますが、甘粕先生いかがでございましょうか。
○参考人(甘粕健君) 最初の自己紹介のときも申しましたけれども、学術会議の中の特別委員会を初め考古学協会の埋蔵文化財特別委員会等八団体で国会の審議の過程でいろいろと意見具申を個別的にやる努力をやったわけであります。また、正式に小委員長に対しても学会と懇談を持ってほしいと、それから最終的な結論を出す前に、そういう学会との懇談を前置してほしいという趣旨の申し入れば再々いたしましたし、陳述の席でも、学術会議の林先生からもそういうことが発言ありましたけれども、残念ながら衆議院段階ではそういった小委員会として衆議院の文化財保護対策小委員会と、そして学会代表との話し合いというものを持つ機会はございませんでした。それから文化庁に対しては、たとえば考古学協会などから要望書を出して、それの説明にこちらから出向くということが二度あったわけですね。最終的には、超党派の案が出た段階に考古学協会のちょうど総会がありましたので、そこで非常に問題の点があるという趣旨を織り込んだ決議をして、そして文化庁長官もお訪ねしたということがあります。要するに、積極的に文化庁の方から学会に対して意見を求めるということはありませんで、むしろ、できたものに対してわれわれが最終的にそういった意見を述べたのに対して文化庁の方が説得されるというような姿勢でございました。
○加藤進君 今度の改正は学術団体や保護団体の方たちの要望をすべてかなえていく方向での抜本改正ではない、こういう性格づけを持っている法案だと考えています。したがって、この法改正の内容としては、開発の振興に伴って危機に瀕する文化財そのものを何とかして食いとめ、守っていきたい、こういう点では、緊急の措置的性格を持つ法案だと、こういうふうに私たちは見ておるわけでございますが、であればこそ、実はこの改正に当たって当然保護さるべき文化財の保護に重大な欠陥がある、あるいは不備があるということになるならば、一体、法改正は何のためにやるのかと反問せざるを得ないような問題が出てくるのではないかと考えています。その点で先ほども問題になりましたような不時発見の場合でございますけれども、埋蔵文化財の不時発見に当たって六カ月の停止命令の期間の制限がある、こういう問題でございますけれども、この点について、先ほど甘粕参考人から、たとえば姫方遺跡だとか、あるいは池上、また伊場遺跡等々の実例が出されまして、六カ月ではとうていできないんだと、こういうふうな御説明があったと思いますけれども、文化庁の方の御説明によりますと、いや大丈夫、六カ月でできますと、こういう御意向のようでございまして、それがまさにこのような六カ月ということで法案化されておると考えておりますけれども、もし文化庁の言われるように、六カ月でやれます、やってみせますと、こうおっしゃった場合に、今日のような状況のもとで一体どうなのか。文化遺跡はどうなるのかという不安と懸念を私は感ずるわけでございますけれども、その点につきまして、甘粕先生どういうような御見解をお持ちになるでございましょうか。大丈夫でございましょうか。
○参考人(甘粕健君) これは確かに六カ月以内でできるという場合も多いと思いますね。しかし、その場合も、実際にそういう具体的な調査に入るまでに、いままでの例から見ても相当体制を整えても時間がかかるわけですね。それも未決通算六カ月ということに非常に大きな問題を感じるわけでございます。そしてまた、現実に当然六カ月以上かかる遺跡に発動してもらいたい場合がしばしば出てくると思います。そのとき発動した、しかし、この規定があるために恐らく行政としてはこの六カ月以内に調査を上げたと、そういうたてまえにせざるを得ないと思いますね。そうするとどうなるか、実際そこに派遣される技師たちは自分の良心を曲げても荒い調査をし、しかも、まだ下層にはたくさん残っている、しかし涙をのんで終わったという宣言をせざるを得ないではないか、これはまことに学問から言っても、あるいは住民に対しても申しわけのないことで、非常に欺瞞的なことになるのじゃないか、ここを非常に恐れるわけです。実際に非常に筋のいい遺跡がぼんと出まして、高松塚のようにだれが見てもこれは非常に問題だというようなことで直ちに伝家の宝刀がふるえる場合もあると思いますね。その場合、たとえば奈良の国立文化財研究所で平城宮跡調査の調査に従事している人たちを引っこ抜いて、すぐ飛行機かなんかに乗せてそこへ行ってもらうということ、これは一回や二回はできると思いますね。だけど、そのことのむしろ副作用が恐ろしいと、つまり、やろうと思えば九カ月以内にできるじゃないかということを内外に宣言して、そうして各地の調査にハッパをかけると、できもしないことをとにかくできたという形で終わらざるを得ないようなそういう状況がもしできたら非常に困る。しかし、これは決して杞憂ではないと思います。ですから、中止命令権を出されたということはもう実にありがたいわけですから、ですから、せっかくのこれが反作用を起こさないで、しかも、有効に使えるようにぜひ手直しをしていただきたい。これらについて、これはもう衆議院で十分かなり詰められて、もうこの段階ではこう確かに緊急措置であると、引き続き改正を重ねるということを言明しておられるのを私どもも存じておりますし、ですから、そうどこもかしこも変えろとかそういうことを言っているわけじゃないんで、少なくとも、この部分はマイナスになるんだというふうに私は思うわけですから、また学会もそういうことを非常に恐れているわけですから、どこもここもということではないけれども、ここだけはぜひ検討していただきたい、こういうことです。
○加藤進君 もう一つお尋ねしたいのは、届け出から一カ月以内に停止命令を行うと、こういうやはりここにも制限が、期間があるわけでございますけれども、一カ月では困るという意見でございますならば、これをどの程度延ばすとか、二カ月あるいは三カ月ならばまあまあいいというような具体的な御意見がございましたら、この機会にお聞きしたいということと、先ほどの六カ月以内で困るという意見につきましても、これをたとえば八カ月にするとか、いやそれよりも一年ほしいとかというような具体的な意見がありましたら、その点の期間上の御意見もお聞きしたいと思います。
○参考人(甘粕健君) この一カ月ではいかにも実情に合わないだろうということはもう本当にそうなんです。じゃ、二カ月にしたらどうかという問題確かにあると思います。つまり、五十七条の二の一般の場合も三十日から六十日にこれを延ばしていただいたわけですからね。だから、たとえば実際、不時発見の場合は、実情はもうすでに周知の遺跡の五十七条の二の届け出というものはもう事前協議的になっているわけですね。ちゃんとした企業はかなり早くから相談してくるわけでございます。ですから、そういう点では十分六十日もあればやっぱりかなりこう有効な手が打てるということはありますね。ところが、何しろ不時発見ですから、逆に開発の方から言えば確かに不時発見だからこそ早く処理してほしいというのも、これもわかります。だけど、保護の立場から言えば、不時発見だからこそ十分そこを間をとってくれないと有効な手が打てないということです。ですから、そういう意味では二カ月にたとえ延ばしたところで条件から言えば周知の遺跡の場合より条件悪いですから、二カ月になっても非常に不満であると、危険があるというふうに考えます。ですから、一番望ましいのはいつ抜くかわからないというところに伝家の宝刀の意味があるわけですから、必要に応じて打つんだと。実際、そうなんです。現場で、最初通常の指示に従うかのごとく企業の側は出発する場合が多いんですよ。実際これやっている間に向こうもがまんし切れなくなるわけですね。で、実際に最初に約束したより延びるということはむしろあるわけですね。それは下から、下から下から出てくるということはよくあるわけです。ですから、そういうことで開発側もこれは困ったということになるわけですけれども、しかし、その場合もう時間切れだということでもうがまんができないと、少々非難をこうむってもここで強行突破しようというときに、いままでもずいぶんそういうときに文化庁の技官にも飛んで来てもらってもっと待ってくれという指示を出してもらったこともあります。だけど、指示では聞かない。実際ブルドーザーが入ったという例が幾つもあるのです。そういうときに発動してもらうとすれば、やはりむしろ六カ月の期限が終わったころになって、そういうものが必要になってくるということなんですから、そういう意味では可及的速やかにこの条項は発動するのだけれども、しかし、特に発動する期限は切れないと、いつまでに発動しなければいけないということはやはり無理があるのではないか。ですからそういう意味ではこのただし書きは除いていただければいいということです。一般的に中止、停止を命ずることができるということが望ましいというふうに存じます。 それから、じゃ二年か三年にしたらどうかということなんですけれども、これもそういう点で言えば非常にむずかしい問題だと思います。さっき挙げた例でも、姫方だったらまあ一年半ぐらいかかるだろうとか、今にして思えば。塚原だったら足かけ二年で、まあ二十二カ月ぐらいでできたけれども、まあそんなとこかなというふうに私も思いますし、それから池上遺跡は二年半かかったと、これもあれは大変りっぱな体制で、とにかく、事前調査としての一億円の大台を超えたのが最初なんですね、一九六九年。大いに注目された調査です。それがやはり関西の総力を挙げて、文化庁もずいぶんてこ入れをされて二年半かかったとか、そういうことですから、そういう点をもし期限を設けるのだったら、まあ改めてもっと客観的な、学会も納得するような期限になるように、まあ至急そういう委員会でも持っていただくということがまあもっといいんじゃないか。しかし、むしろこれは期限と範囲を区切って、停止を命令することができると、そして理由を明示するのだと、その都度期限を定めるのだと、そういつまでも延ばすようなことは特にしないのだということを明示されて、しかも途中でまた、その間でおさまらなくなる場合が間々あるわけですから、それはいまもある、それでも終わらなかった場合は一回に限りという、たとえば三カ月延ばすことができるといういまの条項にもあるわけですから、それを上乗せしていただくとか、幾らもやり方はあるんじゃないかというふうに存じます。
○加藤進君 宗参考人にお尋ねします。 文化庁は許可制はきわめて困難だと、その理由として、第一、遺跡の確認ができないのだと、こういうことを一番理由に挙げておられるわけでございますけれども、都道府県の現地でいろいろ御苦労しておられる教育長でもあられますからお尋ねしますけれども、遺跡の確認というのはそんなにむずかしいものかどうか。できないものかどうか。こういう点で、現場の御経験を簡単にお聞かせ願いたいと思います。
○参考人(宗知信君) まあ遺跡の確認が非常にむずかしいかどうかということでございますが、やはり、表にあらわれております場合にはこれはまあ問題ございませんけれども、そうでない場合には、そういう場合を含みましてもやはりこの程度までは必ずあるかということを考えましたときに、やはり具体的には調査をして中へ入ってみないと完全には確認はできないという場合もいろいろあるのじゃないかと思われます。たとえば、伊場遺跡の問題なんかにいたしましても、やはり大溝の流れを見てまいりまして、どの程度まで本当にあるのかという点も多分に問題があるわけでございまして、そういう点、非常に確認しにくいということもあるのではないかという感じがいたします。やはりそういう場合とそれからやはり何と申しますか、面積が非常に広いような場合、公共事業等ではわりあいわかりやすい場合もございますけれども、狭い範囲の場合についてはやはり何らかの形の調査があってまあ初めてわかるという場合も当然考えられるのじゃないかというふうに思うわけでございます。
○加藤進君 最後に、菊屋参考人に一点だけお尋ねしますけれども、町並み保存のために大変御苦労しておられることはお聞きいたしました。まあ条例をつくって、しかも市財政の苦しい中で保存をされておるという点では非常な御努力だと思いますが、とりわけ、町並みの保存ということになりますと、そこに住民が生活し、居住しておるわけでございますから、その関係住民の納得と理解を得なければ、町並みをたとえ指定してみてもなかなか実現はむずかしい、こういうような事情が起こってくるのではなかろうかと考えておりますけれども、その点で地域住民の意向をどのように反映しながら町並みの保存を実際効果的に進めていくか、こういう点の御所見がございましたらお聞きしたいと思います。
○参考人(菊屋嘉十郎君) おっしゃるとおり、この問題は考えるよりも実際は非常にむずかしいと思います。地域住民の納得と理解を得ると、これは説明会をやらなきゃなりませんから、私の経験上住民にはいろんな型の人がありまして、郷土の、自分の地区の誇り、愛着というもので御賛成くださる人と、そうじゃなくて非常に経済的開発、自分の土地を将来そういう制度地区にすると地価も下がっていくんだというような将来に対する懸念というようなこともございますし、いろんなことがあっておっしゃるとおりむずかしいと思うんです。したがいまして、私さっき申したように、それをきれいにした場合に生活環境が非常に美しくよくなって自分たちの日常生活に潤いが出てくるんだというようなことの説明、それからまた、その修繕とか復元の場合にはいろんな公立の補助を出すんだという物質的なメリット、それから固定資産税の免除、この固定資産税免除は市町村長が特に理由があるときはできますから、その免除なども一つのメリットとして示さなきゃならぬと思います。それからまた、家並みの保存のために外部は保存しますけれども内部は自由な改造を許すやり方をしなきゃならぬと思います。いわゆるフォアサイドといいますか、ずっと前面の付近だけを保存して内部の改造を自由に許すとかいうような弾力性を帯びた保存を考えざるを得ぬだろうと思っております。とにかく、市の指定のところに公の補助を出しますと、市はそれに対する国か県のカバーをぜひ欲しいと思うということをさっき申し上げた。そのことをひとつお考えいただきたい。これは、その地域に住んでいる人たちの幸福ばかりじゃなくて、ほかの外部の人たちのそういうものを保存するということはプラスになるわけですから、どうしてもほかの面でそこの地区だけに犠牲をこうむらせるということはいけないことであって、他の面でカバーしてあげるという温かい配慮があって初めて住民の協力が得られるだろうと、こういうふうに思います。 それからもう一つ、御質問ございませんけれども、市の指定地区と、それで国が重要地区として選定すると書いてありますが、選定するところとの区別が私非常にむずかしいだろうと思います。国が指定しないようなものを市が指定してもらっちゃ困る、おれたちの地区がそれだけ大事なんなら市長さんついでに国の指定にしてもらってくれ、こういうふうに言ってくるだろう。だから私は、国の選定地区と市の指定地区というのはそう違わないで、市が指定するようなものはすぐ国の選定になるようなものでなきゃいけないと、こういうふうに思っています。それでないと、市の指定地区だけだったらば崩れていくだろうという気がしてなりません。
○中沢伊登子君 私も、いませっかく菊屋参考人にそういうことをお尋ねをしようと思っていたところです。いまのお話のように、もしも市がここは町並み保存だということで指定をされますと勢いそこにまた観光客なんかがたくさん押し寄せてきまして、いままでの静かな生活を乱されるということも相当あろうかと思います。せっかく、萩市の方では歴史的景観保存条例というのをおつくりになられたわけですが、一体この条例はいつおつくりになられたのか。そしてまた、いまのお話にありましたように、固定資産税の免除とか、いろんなことをして相当の費用を使っていらっしゃると思いますが、大体いままでどのくらいの費用をお使いになられたか、おわかりでございましたらお答えをいただきたいと思います。
○参考人(菊屋嘉十郎君) 昭和四十七年の十月に保存条例を制定いたしております。ちょっと内容を申しますと、さっき申したんですが、土塀、石垣、門などの復元、補修に要する経費は五分の四以内補助して差し上げましょう。それから、保存家屋の補修に要する経費は二分の一以内補助して差し上げましょう。それから、生垣の植栽管理に関する経費は三分の一以内の額を補助して差し上げましょう。こういうようなことをいたしております。そうして、実際には四十八年からやったと思いますが、毎年初めのうちは市費を三百万円ぐらい出しております。昨年あたりはそれに要する人件費を合わせまして八百万円ぐらい一年間に出しておる、かように考えております。
○中沢伊登子君 大変、地方自治体がいま財政難のときにこれほどの補助をしなければならないということであれば、どうしてもこれから市が指定をされますとそれは国からもぜひとも指定をしていただいて、国の方の今度補助が出るわけでございますから、二百四の市町村の協議会の会長さんでいらっしゃいますから、全国にいろいろたくさんございますでしょうから、また、そういった面で力を合わせて国の補助をいただくような運動もぜひともされたらよかろう、こう思います。 それからもう一つ、最後にお伺いしたいのは、宗参考人にお伺いをいたしますが、静岡県では六千カ所も埋蔵文化財のところがあるわけですね。そういたしますと、先ほど来いろいろお話がありましたけれども、文化財保護指導委員制度、今度これができたのも大変今度の改正の中でよいことだと私ども感じているわけですけれども、そのような中で何人ぐらいでどの程度パトロールをしていらっしゃるのか、その辺をお伺します。
○参考人(宗知信君) 実は、初めのごあいさつの御説明のときにもちょっと申し上げたんですが、実はこの保護指導委員という制度が二つ静岡ではございまして、本県独自では文化財の巡回調査員という、パトロール要員でございますが、七十五名実は委嘱してございます。一応各市町村に一名という数字になるわけでございますが、 〔委員長退席、理事久保田藤麿君着席〕 それにわずかでございますが手当を与えて、活動費は市町村持ちという形にしているわけでございます。そういう形の中でお願いしております。そのほかにまた、文化財の調査指導員の方も二十名ほど別に、これは国の方の補助もいただきましていろいろより専門的な意味での助言等をいただいているわけでございます。
○中沢伊登子君 それはどれくらいの費用を差し上げていらっしゃるんですか。
○参考人(宗知信君) 実は、文化財巡回調査員は年間三千円の報償金でございます。
○中沢伊登子君 よく国の制度としては通産省の消費者モニターだの、あるいは経企庁のモニターだの、そういうのも大体年間手当が三千円ぐらいなんですね。そういうことで皆さんは意気を感じながらやっていらっしゃるわけですけれども、六千カ所もそういう程度で十分にやれるものかどうか、その点はいかがでございますか。
○参考人(宗知信君) 確かにこの指導員の人たち大変なんでございますけれども、一応任期は一年ということでお願いを実はいたしております。保存管理状況の把握ということで巡回調査をお願いして、その御報告をいただくというわけでございますが、巡回対象といたしましては、県の指定文化財三百八十八件でございますとか、市町村の指定文化財六百二十六件、それと合わせて埋蔵文化財約六千件というのを一応対象としてお願いをしているわけでございます。私ども十分だとは思っておりませんけれども、一様に意欲に燃えて非常に御協力をいただいております。なお、その活動費等につきましては市町村の方で応分な御負担をお願いするという形をとっているわけでございます。
○中沢伊登子君 最後に、そういうパトロールをしてくださるような技術者といいますか、そういう方は、一年交代だとすればわりあいにそういう人は得やすいものでございますか、交代をするときに。
○参考人(宗知信君) いろんな場合ございますが、一年交代と申しますか、実際はほとんど再任再任という形でお願いをしている方が多いようでございます。
○中沢伊登子君 結構です。
○理事(久保田藤麿君) 他に御発言もなければ、参考人に対する質疑は終了することといたします。 この際、参考人の方にごあいさつ申し上げます。 参考人の方々には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございます。厚く御礼を申し上げます。 次回の委員会は、六月十七日午前十時開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後零時五十一分散会 —————・—————