外務委員会 第16号
- 発言数
- 190 件
- 登壇者
- 18 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1975/06/26
会議録
○委員長(二木謙吾君) ただいまから外務委員会を開会いたします。 まず、委員の異動について御報告いたします。 去る二十日、石本茂君が委員を辞任され、その補欠として亘四郎君が選任されました。 また、去る二十一日、沓脱タケ子君が委員を辞任され、その補欠として星野力君が選任されました。 —————————————
○委員長(二木謙吾君) 次に、対外経済協力計画の国会承認等に関する法律案を議題といたします。 前回に引き続き質疑を行います。質疑のある方は順次御発言を願います。
○塩出啓典君 それでは、対外経済協力計画の国会承認等に関する法律案を審議するにあたりまして、まず外務省当局にお尋ねしたいわけですが、この法案のいわゆる提案理由の説明の中には、わが国の海外援助、技術援助を含めて四十九年度は一般会計が約千六百六十億。日本輸出入銀行やあるいは海外経済協力基金等の財投資金の中から九千八百八十億円、こういう数字があるわけでございますが、五十年度は大体どれくらいになっておるのか。それから、それが国会の承認を受けているのはどういう形で受けているのか、これを簡単に説明願いたいと思うのですが。
○政府委員(鹿取泰衛君) 五十年度の経済協力関係の予算の点でございますが、これは総額で初め申し上げますと、千七百六十七億五百十二万九千円ということになっております。これが各省別の所管の予算に分かれているわけでございますが、まず外務省関係の予算は、合計いたしまして六百九十六億八千六百万円、端数は省かせていただきます。それから、大蔵省関係が九百二十三億五千二百万円、その他文部、厚生、農林、通産等と分かれておりまして、その合計が先ほど申しましたように、千七百六十七億円となっているわけでございます。 外務省の所管の内訳の大きなところを御説明申し上げますと、第一が国際協力事業団の交付金でございます。その内容は、海外の発展途上国からの研修生を受け入れる事業とか、あるいは海外に日本の専門家を派遣する事業とか、あるいは海外の開発調査を行う事業とか、あるいは医療協力を行う事業、農業協力を行う事業、さらに青年海外協力隊を派遣する事業、開発協力事業等でございますが、その国際協力事業団交付金が合計いたしまして二百十八億二千四百万円でございます。 それから、同じく国際協力事業団に関する予算でございますが、その国際協力事業団に出資する出資金がございます。それがまた二つに分かれておりまして、開発投融資資金が七十億円、その他この事業団のいろいろな研修施設等に用います出資金が三億九千二百万円、合計いたしまして七十三億九千二百万円でございます。これが国際協力事業団関係の予算でございます。 第二の外務省の予算の柱といたしまして、無償の経済協力の予算がございます。それを経済開発等援助費と呼んでおりますが、それが百五十七億六千二百万円でございます。 それから国際分担金拠出金という項目がございますが、これは国連その他の経済協力に関します国際機関に拠出するための費用でございまして、その総額が二百三十七億六千七百万円でございます。 以上が外務省の所管の主な点でございます。 次に、大蔵省所管の主な点を申し上げますと、海外経済協力基金の出資金、これが六百五十億円でございます。それから賠償等特殊債務処理特別会計への繰り入れ、賠償に準ずる——賠償に充てる金でございまして、これが九十二億四千万円、それからビルマ経済技術協力費が三十六億三百万円、韓国経済協力費が五十五億七千九百万円、対外食糧等特別援助費が四十七億一千三百万円、アジア開発銀行技術援助拠出金が六億一千六百万円、日本輸出入銀行への貸付金が三十六億円でございます。以上合計いたしまして、大蔵省所管が九百二十三億五千二百万円でございます。 その他文部、厚生、農林、通産関係の予算もございますが、省略さしていただきます。 これはそれぞれ私が申しましたように、各省の所管に分かれて計上されておりますので、大きな予算書を見ましても、経済協力の予算というものが分かれていて、非常に見にくいわけでございます。そこでその点につきまして、政府といたしましてはいろいろ工夫いたしました結果、国会に提出いたします昭和五十年度予算及び財政投融資計画の説明のところでは、経済協力費を各省を一本にまとめまして、私がいま申し上げたような額を書き入れますとともに、説明をしている次第でございます。
○塩出啓典君 そうしますと、これは予算案の中ではいま言ったような大まかな項目がこの予算書の中に書かれている。そしてそれが通った後、どの国に何ぼやるかと、そういうことは予算案が通った後検討するわけで、どこに幾らということは国会の承認は現在のところ得ていない、そう判断していいわけですか。
○政府委員(鹿取泰衛君) 原則としてそのとおりでございます。ただ、大蔵省折管の項で国が挙がった予算がございますが、これは賠償及び賠償に準ずる経済協力でございまして、これは条約によりまして国会の御承認をいただきました額でございますので、予算にも国名が、これはもう義務的な経費でございますので計上してございます。それ以外の技術協力、無償の協力、それから有償、すなわち借款等につきましては、予算書では国別の細目は出ておりません。したがいまして、いまお話がありましたように、政府といたしましては相手の国と予算の範囲内で交渉を進めまして、そして国別の額を決めていく、相手との話し合いで決めていくということにしております。
○塩出啓典君 それでは提案者の田議員にお尋ねいたしますが、あなたがこの国会承認に関する法律を提案をした趣旨は、いまのような現状のようですけれどもね。それをどういう理由でどの程度までやはり国会承認にした方がいいのか、そのあたり考え方をちょっと御説明願いたい。
○田英夫君 いま政府の方からお答えがありましたけれども、確かに、政府の予算提出のやり方には最近工夫の跡が見られまして、五十年度予算の説明という形で経済協力費を各省分まとめてわかるようにしてありますけれども、これは確かに進歩と思います。しかし、いま御説明の中にもありましたように、たとえば、外務省所管分という内訳は国際協力事業団交付金、そして内容は実は事業別という形にまとめてあるわけです。したがって、専門家を派遣する事業費というような形になっておりますから、どこの国に専門家が派遣されるというような問題については全く国会はつかみ得ない、こういうことだと思います。国際的な経済協力ということは、特に発展途上国に対して日本が果たす役割りということが注目をされているだけに、国民の皆さんの関心も大変高いわけでありますし、その中で、前回も申し上げましたけれども、現状では日本の国民の皆さんが拠出をされた税金というものが、日本国民に還元をされる形で使われるのではなくて、大変いい仕事でありますけれども、外国の皆さんのために使われるということである以上は、国民の皆さんの納得のいくように使われるべきだと、その点一般的な予算と性格が根本的に違うというふうに考えなければならないと思うわけです。したがって、国民の代表である国会の審議を経るべきだと、そして計画を提出して、その承認を求めるという形を経るべきだと、こういうふうに考えたわけであります。したがって、政府の工夫の跡は認めますけれども、現状では国民の税金が外国の人のために使われる使われ方について、やはり国会は内容を知り得ていないと、こう判断せざるを得ませんので、こうした法律を御提案申し上げたわけです。
○塩出啓典君 この法律案につきましては、ちょっと私も後で質問したいと思うんですけれども、第三条がちょっと非常に、いろいろ問題点ではないかと思うわけでありますが、それ以外の、国会の承認を求めるという点において、政府の立場から考えた場合に、まあたしか先般の委員会のときには、約束していて、それで国会で通らなかった場合に相手に不信になるではないかとか、それから国会で論議すると、援助を受ける国がよその国と比較しておれの国は少ないじゃないか、そういう点で非常に問題があるんじゃないかと、こういうような点について国会承認という形は好ましくないという、こういう政府の答弁であったと思うんですけれども、それで間違いないのかどうか、あるいはそれ以外に何か理由が、もしあるとすれば、それをお聞きしたいと思うんですけどね。
○政府委員(鹿取泰衛君) いま御質問の点につきまして二つの点に分けてお答えいたしたいと思います。 一つは、先ほど田先生から御指摘のあった点でございますが、予算の立て方が国別に明らかでないので、国会並びに国民は予算を見ても本当の経済協力の実態がわからぬではないかという御指摘でございます。その問題につきましては、私ども政府といたしましてはこう考えております。先ほど私から読み上げました予算のこの額というものは、いろいろな事業別に分かれて計上されて国会の承認を得るわけでございます。政府といたしましては、その範囲内で各国との交渉をしまして、各国別に額を交渉の上決めていくわけでございますが、実は、現在わが国に対します各国からの要求というものは、多くの国からいろいろな種類の要求が来ておりまして、その要請を全部総計いたしますと、ここに挙げました額をはるかに超える額になっているわけでございます。そこで、私どもといたしましては、各国とのきめの細かい交渉によりまして、相手の国を納得させながら、そしてまた相手の国を合理的な程度に抑えながら、予算の範囲内にすべて丸くおさまるように、そして相手の国が日本の援助を効果的であるというふうに評価してくれるような交渉を予算の範囲内でやりくりして決めていくわけでございます。したがいまして、そういう交渉をいたします前に、予算の中で国別の数字を挙げてしまうということは、これはできないわけでございまして、仮に、これは仮定の議論で恐縮でございますが、全部各国からの要求の総計をそのまま国会で御承認いただければ、あるいはその後で交渉が容易になることもあり得るかと思いますけれども、その場合でも、先ほど先生も御指摘になった点ではございますけれども、Aの国に比してBの国がどうして低いのかというようなことが明らかになりまして、やはり相手との交渉が混乱するのではないかと、したがいまして、私どもとしては、あくまで相手の国との国別の額とか態様、そういうものは交渉の上決めていく、しかし、総枠というものはもう国会の御承認の範囲内で縛られるということでやる以外にはないんではないかと考えております。 それから次に第二点でございますが、ある程度交渉をまとめた段階で国会にその交渉の結果を提出して、そうして承認を受けるべきではないかという御意見がございました。これに対しましては、私どもはこう考えております。第一、毎年各国とわが国が行います交渉は非常に多いわけでございまして、七三年の実績を見ましても、無償関係では二十四件の協定がございますし、有償関係では二十八件ございます。さらに技術協力関係では、いろいろな、政府間の協定というわけではございませんけれども、合意議事録という形でやはりそれに匹敵する、先ほど申し上げました無償、有償に匹敵するぐらいの交渉をやっているわけでございます。こういう交渉をまとめました上、それをファイナライズしないで国会の御承認を得るということでございますと、どうしても案件の処理が遅滞するんではないかと、したがいまして、せっかく内容的にいい経済協力でも、余りに遅延するとその効果が減退するわけでございまして、私どもとしては現在のこれだけ多い各国からの要請にこたえて交渉していくのには、やはり現在のやり方以外に方法はないんではないかと考えております。しかも最近、先進国と申しますか、日本を含めました先進工業国が発展途上国を援助するのは、いわば一種の国際的責務であるというような議論が国連とかUNCTAD等でございまして、また、援助手続も迅速化しろ、簡素化しろという要求がございますわけでございますので、まして私どもとしては従来より、現在やっているよりその援助をおくらせるというわけにはいかないと考えておる次第でございます。先ほど先生が御指摘になりましたように、交渉した結果を国会に提出いたしまして、仮にこれがいろいろ修正を受け、あるいは不承認になるということになりますと、これは相手の国との関係が悪くなるというのは、これは当然のことでございます。 以上のようなことでございますので、いま日本を含めましてどこの援助供与国も日本がやっているような方法によっているわけでございまして、国会からは大きな大枠をいただいて、その中で政府が外交交渉権の範囲内で交渉していく、外交権の中で交渉していくということをやっておるわけでございます。日本もやはり私どもとしてはその方法を続けていきたいと考えておる次第でございます。
○塩出啓典君 一つは、相手国が他国と比較すると言いますけれども、これが五十年、百年も前の外交であればそういうこっちの国の秘密をこっちの国へ秘密と、そういうことはできると思うのですね。いまのような情報化社会においては私はそういう考えは捨て去るべきじゃないかと思うのですよ。あくまでも限られた中で各国に援助を配分していくとすれば、当然全部の国に満足させることはできませんけれども、そこにわが国の姿勢としてやはり公開にしていくと。その方がむしろ日本の国に対する私は疑惑を生まないのじゃないか。そういう点で、援助の内容が国会で審議するとほかの国にわかって非常にまずい、そういう考えは私は古い考えじゃないか。これは政務次官からひとつ外務大臣を代表して、外務大臣十時半に来ると言ってまだ来ないので。それが第一点。 それからおくれるという問題ですね。これはいま日ソ漁業協定が、これはもうわれわれ野党も何も自民党の提案に反対するのではなしに、常に国益ということを考えて、この外務委員会もまことに超党派でやっているのじゃないかと思うのですがね、そういういいことに対してはですよ。だから、それはおくれるといっても何らかの審議の方法をやっていけばいいわけでありますし、私たち野党としても国益の立場において急ぐべきものは全力を上げて協力をしているわけです。そういう点で、おくれるということは余り理由にならないんじゃないかと思うのです。 それともう一つは、これは私は提案者にお尋ねしたいわけですけれども、一番最初局長が言われたように、最初から国の枠を決めるということはこれはちょっとむずかしいのじゃないかと思うのです。その枠内でいろいろ交渉して、そうしてそれが決まった段階においてそれで国会の承認を受ける。私たちもいままでいろいろ条約においても、ちょっと日韓大陸だな条約等は問題になっておりますけれども、普通にまじめに公明正大にやった条約については、われわれも前向きに審議をしているように、そういう国会の審議があるということは一つのチェック機能として、ある場合にはそれがやはり相手国を納得させる一つの手段にもなっていくんじゃないかと。そういう意味から、これは田議員の提案の趣旨も、最初から国別に分けるというのじゃなしに、決まった段階で国会の承認を受け、それによって国民の皆さんに公開にしていくと、そういう趣旨じゃないかと思うのですけれども、この点はちょっと両方に質問する形になるわけですけれども、その点どうでしょうかね。まず外務次官から、簡単にお願いします。
○政府委員(羽田野忠文君) 先生の、初めから手のうちを示さずしていろいろな話し合いをしていくという方法よりも、すべてオープンで初めから手のうちを出しておいて交渉していく方がいいじゃないかというまず御意見のようですが……。
○塩出啓典君 そうじゃないんだ、決まってから、最後にオープンに出してしまう。
○政府委員(羽田野忠文君) ああそうですか。これは実際の交渉の段階ではなかなか手のうちは出させられないということは先生も御承知のようでございますが、これは決まってからこれを国会に諮ってそして対外協力をするということをしたらどうかということでございますが、先ほども政府委員から御説明しましたように、決まってこれを国会に諮る、その結果、国会の方で万一これがお認めいただけなかったというようなことが起こってきますと、もう相手方の方で話をすっかり詰めてこうするという段階までいって、それで日本の国会でこれを認められなかったといいますと、これは国対国のいわゆる信頼関係、対外信用というものを非常に損なうおそれがございまして、非常なこれは私は危険なことだと思います。 それからもう一つ、国会にかけるといわゆる処理に時間がかかるということだが、それはやり方によって時間をかけなくていける方法があるんじゃないかという時間的な関係でございますか、この点も私はいまのように非常に国際情勢、経済情勢の急変動しているときに、経済協力というものはきわめて効率的にスピーディーにやることが要求される。私は処理の方法でそういう時間をかけない方法ということは、御協力いただくことは十分わかりながら、なお効果の面からして、これは国会にお諮りせなくて、スピーディーにやることの方がよりいいんじゃないか。そうすると国会無視かと言うと、私は予算の段階で大枠をすっかり審議していただき、そしてあと一つ一つの処理については政府の方におまかせいただいて、その、処理がよかったか悪かったかということは各委員会で御審議をいただき、また決算委員会でチェックをしていただく、こういう従来の方法で十分その目的を達しておりますし、いまからもやはりその方法をおとりいただくことが一番適切だというふうに考えております。
○田英夫君 いまの塩出委員のお尋ねの点ですけれども、いま政務次官言われたこととちょっと私は考え方が違うわけです。つまり私が提案をしております考え方は、当局側で、政府側で相手国と交渉を煮詰めて、その上である程度の枠の中におさまったその内容を国会にお示しをいただくということでありますから、交渉しないうちにまず示せということを要求しているわけではありません。また、もしそれを示して国会で承認を得られないときに対外的に信用の問題にかかわるということでありましたけれども、計画の内容が悪ければそれは承認されないということも起こり得るわけでありまして、問題はその内容だと思います。現に、こういう例を挙げては何かと思いますけれども、日韓大陸だな協定はすでに締結されましてから国会に二度提出されて審議が行われないままになっている裏には、この日韓大陸だな協定というものに問題があるということを国民世論が注目をして、そうした声を上げている中で起こっている現象ではないかと思います。このことは、実は協定をすでに締結をしているわけでありますから、対外経済協力と、ある意味ではそれ以上に二国間の一つの約束事としてでき上がっているものと言わざるを得ない。にもかかわらず、これが国会で批准されないという状態が起こっているわけです。ですから政府が計画をされた経済協力の内容についてそうした問題があれば、これは国会で承認をしないということが実は正しいので、対外的に信用を落とすから、一回約束した経済協力はやらなくちゃいけないというのは本末転倒になるんじゃないか、こう思います。 それから予算の大枠を国会で認めていけば、内容は政府にまかせていくべきだという御議論もありますけれども、たとえば今度のこの法案には輸出入銀行の経済協力も計画を示すようにというふうにしてありますが、輸銀の場合には輸銀法によって大蔵大臣に予算を示し、それを国会で承認するようになっておりますが、ところが実際には一番問題の輸銀の事業計画については、法律でむしろこれを示さないでよろしいという意味に規定をしております。これは輸銀法の中にはっきり出ているわけで、他の公団あるいは公庫、こうしたものについてははっきりと事業計画を示して、その予算の国会承認を求めるようにと規定しているにもかかわらず、輸銀については意識的にむしろ事業計画を示さなくてよろしいというふうにしているわけです。ですから、輸銀の予算を国会で承認をしたからといって、実は一番大事な事業予算は国会の承認を求める対象になっておりませんから、国会で予算の承認をしたからといって、特に輸銀に関してはこれは事業計画まで国会が承認したということにはならないわけです。輸銀の問題は対外経済協力については一つの大きな柱でありますから これが国会で承認されていないということになりますとやはり大きな欠落がある。予算の総枠が認められているからいいという議論にはこの点からもならない、こういうふうに思っているわけです。
○政府委員(鹿取泰衛君) いま田先生の御意見がございましたが、私ども政府といたしましての考えを述べさせていただきます。 第一点は、交渉を煮詰めた上で国会に提出して、仮にそれが国会で承認をいただくことができなくなって、その相手の国と交渉を詰めた案件が実施できなくなっても、その案件自体の性質が適当でないならばそれで差し支えないんではないかという御意見だったと思います。その点につきまして私どもの考えは、経済協力というものは先ほど申しましたように、国際連合とかあるいはUNCTAD等によりまして先進工業国が発展途上国にある程度の量の、ある程度の質の援助を与えるということがいわば決議されているわけでございまして、厳格な意味の国際義務ではありませんが、先進国としての国際的な一種の責務のようなことになっているわけでございます。その政府開発援助の量とか質等につきましては、国際機構の場でいろいろな勧告が出ておりまして、政府といたしましては、その範囲内でその趣旨に従ってやっているわけでございます。したがいまして、私どもとしては、経済協力に関する限りは、必ず相手の国の経済発展なりあるいは福祉の向上というものに役に立っているというふうに考えているわけでございます。しかし、経済協力でも、先ほど一番初めに言及いたしました賠償のようなものは、これはもう国際義務でございまして、これは条約という形できっちりお決めいただいて国会の御承認を得るということは当然でございますけれども、そのほかの一般の経済協力は、援助供与国がいわば国際的な責務の範囲内、勧告の範囲内で自主的に相手の国に供与していく性質のものでございますので、やはりこれは非常に国会条約というような重い手続きによらないで、やはり迅速に適宜適切にやっていくという方法が事案に適しているんではないかと考えている次第でございます。 第二の点の、特に輸銀についてその事業計画が国会に明らかになっていないのではないかという御指摘がございました。これは田先生御指摘のとおり、まさに輸銀法の問題でございますので所管は大蔵大臣でございますが、私ども経済協力をやっております役人といたしまして考えておりますことは、本来輸銀は輸出銀行、それから輸出入銀行になりましたわけで、輸出入の促進を本来の業務としてきたわけでございます。したがいまして、輸出なり輸入の民間の契約に伴いまして、それを支援する意味で財政資金が出ていくわけでございますので、これは一つ一つの契約は民間がイニシアチブをとって契約していく、それに輸銀が側面から支援するというようなファンクションをしているわけでございますので、あらかじめ業務内容を政府の方で一方的に決めてはこれは動かないわけでございます。確かに、輸銀も一部政府借款ということの業務をやってきたわけでございますし、今後も部分的にはやるわけでございますが、私どもとしては、政府借款は今後むしろ輸銀よりは海外経済協力基金の方に移していくという方針でございまして、今後は政府借款の方は大体海外経済協力基金の業務になるわけでございますので、先ほど先生の御指摘になりました輸銀法上いろいろな問題点があるということは、今後はそういう御懸念はないというふうに考えておるわけでございます。
○塩出啓典君 それでは田先生にお伺いいたしますが、私はこの法律はやはり国会の承認を求めるということ、これが一番主眼の法律じゃないかと思うんです。第三条は、これはやはり海外援助、経済協力のあり方に対する理念の問題だと思うんです。したがって、理念につきましては、これはいろいろ深く検討しなければならない問題もありますし、第三条に、「民主主義の原理に反する統治を行う国」ということにつきましては、先般の委員会でも非常に判定がむずかしいと。そういうような点から考えて、あくまでもこの法律は国会の承認に関する法律一本にしぼって、この経済協力の理念の問題については何らかやはり別な方法で抜本的に検討すべきじゃないかと。そういうわけで、この第三条は削除すべきではないかと、このように考えるわけでありますが、提案者としてはその点そういう余地があるのかどうかですね。
○田英夫君 確かに御指摘のとおり、この第三条はこの法案の中で一つ別の性格を持っているものであるかもしれません。私どもがこの法案をつくります段階で、先ほど申しましたように、国民の税金を外国の人のために使うんだということから、国会の承認を求めるべきだという大原則を一つの柱にして、同時に対外経済協力というものはいかにあるべきか。いま塩出委員が理念と言われましたが、そうしたものをもう一つの柱に考えるべきじゃないか。その後者の方を強調いたしますと、いわば対外経済協力基本法といったものになると思いますが、そうした性格を持たせるべきではないかという議論も実は重ねたわけであります。その結果として、やはり経済協力は国会の承認を求めるべきだという第一の柱の方に重点を置きましたけれども、ただ政府が経済協力計画を作成され、実行される一つの指針としてこういうものであるべきだというその理念が第三条に形として残っていると、こういうふうに言えるかもしれません。御指摘のとおり、確かに、対外経済協力は国会の承認を求めるという点にしぼって考えますと、これはある意味で性格の違うものでありますから、提案者といたしましては皆さんの御賛同を得られれば、あるいは御指示があれば、この点につきましては削除するという修正も考慮する余地があると思っております。
○立木洋君 提案者にお尋ねしたいと思うんですが、先ほど来問題になっておりました、つまり国会で対外経済協力を承認するという場合にいろいろな問題が起こり得る、あるいは運営上きわめて困難な点もあると、そういうお話も局長の方からあったわけですが、私としては、やはり基本的な考え方として、国会承認をするということが私たちの憲法の立場から考えて当然なのか、あるいは先般も問題になりましたけれども、行政権の侵害になるおそれもあるんではないかというふうな懸念も示されておったわけですが、この点、やはり国会で承認することが行政権の侵害になるかならないかという問題、このあたりの見解を提案者として少し説明していただきたいと思います。
○田英夫君 確かにそうした懸念をお持ちになる向きもあるかもしれませんけれども、憲法で規定をされている内閣の外交権というもの、この辺の考え方も日本国憲法というものの基本はやはり民主主義、つまり国民に主権があるという精神だと思いますから、外交権が行政府にあるといいましても、それはあくまでもやはり主権在民という考え方の上に立ってのことでなければならないと思いますから、つまりそれは平たく言えば、国民の皆さんの意向に従って進めるということになるわけで、特に先ほど申し上げたような意味で、国民の皆さんの税金を外国の人のために使うという対外経済協力という性格からすれば、これは国民の皆さんの意向を聞くということは決して行政府の外交権限を侵すものではない、こういうふうに考えているわけです。
○立木洋君 この点については外務大臣来られたときに、この質問は政府の方にお聞きしたいと思うんですけれども、もう一つの点は、私、先般松永委員も大分質問なさっておられましたけれども、いまのわが国の対外経済協力、これをやはり根本的に考え直す時期に来ているんではないかということ、国際的な情勢等々から考えて私はそういう考え方を持つわけですが、この点も提案者の御意見をお聞きしたいんですけれども、いろいろいままで問題になっておりました、一昨年来、石油の問題が大変な問題になりました。これは御承知のように、新興独立国、特に産油国、これは資源に対する恒久主権という主張がなされるようになりました。資源の不十分なわが国としては、これにどう対応していくかという問題も起こってきましたし、一時期は油欲しさに金や技術を提供するんではないかなんというようなことがいろいろ新聞で問題になったこともありますが、こういう問題が一つありますし、それからもう一つは、やはり先般問題になりましたけれども、わが国がいろいろな対外経済協力を行っておる東南アジアあるいはアフリカ等々、開発途上国に対しての援助を行ってくる過程の中で、いわゆる反日批判といいますか、日本のあり方に対する批判というのもそれに増してやっぱり厳しくなってきておるという状態が一方ではあるということも、先般政府側もお認めになった点だと思うんです。こういう問題もありますし、もう一つの点で言いますと、やはり援助を行っておる国々、どこが最も多いのかということを見ていきますと、どうしても私たちの考え方で言えばやはり反共的な国といいますか、アメリカとのかかわり合いが強い国に対する援助、これがやはり多くを占めておるというふうな問題もありますし、この点もいろいろ新聞紙上では出されておりますけれども、こういうふうな点から考えて、やはり対外経済協力というのはどうあるべきなのか、そういうことをもう一遍いまの時期で検討しなければならない時期に来ておるというふうな考え方を私は持つわけですが、そういう判断、提案者はそういうわが国がいままで行ってきた対外経済協力のあり方、問題点、それをやはり国会できちっと承認を求めるという、そういうチェック機能を強めることによってただしていく、そういうふうな点についてはどのようにお考えになっておられるのか。
○田英夫君 立木委員の御指摘のとおりでありまして、私どもがこういう法案をつくらなければならないと思ったその基本には、やはり従来の政府が行ってこられた対外経済協力に対する批判があったことは事実であります。 それは例としては適切でないかもしれません、これは国会の承認を得た形になっておるからでありますけれども、たとえば戦後の一連の賠償、その最後の形になりました、たとえばこの委員会でも私が取り上げましたが、ミクロネシア協定というふうなものも一種の賠償的な要素を含んでいると思いますか、そうしたものを見てまいりますと、そういうものを通じて経済協力をするように見えますけれども、結果的には日本の企業を利しているということが現地の人々に、せっかくの経済協力もむしろあだ花になって不信感をつのらしてきたということも過去にあったことは事実だと思います。 たとえばミクロネシア協定は、なぜか、アメリカは現金をミクロネシアに支払うというのに対して、日本は物資、役務で支払うという規定になっている点などは、私からすればそういう考え方がにじみ出ているんじゃないか。つまり、日本もなぜ現金で支払わないのか。結果的にはわずか十八億円——わずかとは言えませんかもしれませんが、全体のそうしたものの中では額が少ないわけですけれども——にしても、日本の企業がミクロネシアに進出するというきっかけにするためではないかと考えられても仕方がない。現にミクロネシアに行ってみますと、現地の人たちはそういう受け取り方をしております。 それ以外の、賠償以外の経済協力というものも、政府の有償無償の経済協力、そしてそれに続く民間の企業の進出という形の一種の経済協力、こういうものも現地の人人からすると、特に東南アジアあるいは韓国といったところに対する経済協力の実態は、事実として現地の人たちに不信感を与えてきたと言わざるを得ないと思います。だからこそ、先年、田中前総理が東南アジアを回られたときにああした不祥の事態が起きたのではないか。そういうことをこの際改めていただきたいという気持ちがあったことは事実でありまして、そこを、せっかくの国民の皆さんの税金を正しく使っていただきたいという願望を込めて、国会を一つのチェックポイントにするという方法をとったらどうかというふうに考えたわけであります。
○立木洋君 外務大臣大分お忙しいようで、午前中は大体何時ごろまで当委員会にはおいでになれそうですか。それによってちょっと質問がありますので。
○委員長(二木謙吾君) 速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(二木謙吾君) 速記を起こして。
○立木洋君 それで、大臣時間が余りありませんようですから、先に大臣にお聞きしたいことをまとめてお尋ねするという形で、それから塩出委員の方も大臣の御質問が残っているそうでありますから。 先ほど来問題になって、提案者の御趣旨は聞いたわけですけれども、つまり、対外経済協力を国会で承認するということが行政権の侵害になるんではないかということが、先般の委員会でもそういう御懸念を示された委員の方もおられるわけですが、それでまあこれは議員立法を審議の過程ですからということで、大臣も大分御遠慮なさったような発言をされておりましたけれども、やはり明確にしておいていただきたい点がちょっとありますので、構わない範囲内で御答弁いただきたいと思うのです。 確かに、憲法の七十三条では、内閣の権能と申しますか、これは「外交関係を処理する」ということが決められてあります。同時に、第七十三条の五号の中では、明確に「予算を作成して国会に提出すること。」という項もあるわけであります。さらに財政ですね、第七章財政のところにいきますと、ここでは、八十三条では、「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。」ということもあるわけです。さらには八十五条では、「国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。」という項もございますし、八十六条では、「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。」、九十一条では、「内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少くとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。」ということが規定されてあるわけです。この国の財政、国費の支出という点について言いますならば、これはもう言うまでもなく対外経済協力費も当然含まれるわけでありますし、この点をやはり明確に国会に承認を求めていくという点では、私は当然そういう姿にあるべきではないだろうか。まあこの財政について、憲法の根底にある理念といいますか考え方は、やはり財政については国会中心主義というふうな考え方があるだろうと思いますし、少なくとも可能な限りやはり国会での承認を求めて、民主的、公開的に行っていくということが私は本来のあり方だと思うのです。 また、一面で言いますと、行政に対しては国会の監督の権能といいますか、行政府が行っている内容について国会でもそれをやはりただしていく、そういう点も考えられなければならない。そうするならば、当然対外経済協力についても、その内容については、先ほど来問題になっておりました外国との交渉が一定の段階で、結末を見た段階でやはり国会にそれの承認を求めるということが、私は本来憲法のたてまえからいってもそういう姿でなければならないのではないかというふうに考えているわけです。いろいろ運営上の困難な点については、先ほど局長から、こういう点には困難がある、こういう点には若干問題があるのではないかというふうなことも二、三お話がありましたけれども、基本的な考え方とすれば、私はそうあるべきだと思うんですが、外務大臣のお考えを示していただきたいと思います。
○国務大臣(宮澤喜一君) 物の考え方といたしまして、この援助についてもう少し国会が直接的な関与をすべきではないかというお考えそのものは、私はごもっともなところがあると思うのでございます。率直に申しまして。かなり政府としては幅広い権限を与えられておりますから、国会のお立場から言えば、それについてもう少し具体的な関与といいますか、行政に与えておる裁量が広過ぎるではないかというお気持ちをお持ちになるだろうということは、私も一人の国会議員として考えますと、全く御無理なお話だという感じは私はしていないんでございます。していないんでございますが、さあそれを政府が、援助の相手国の立場を傷つけることなく、しかもある程度の満足感を相手国にも与え、他国との間で権衡論のようなものがやかましく余り議論されず、しかもある程度迅速に処理ができて、しかも、この最後の部分はなかなかむずかしいことを申し上げるようなことになるかもしれませんけれども、そういう交渉をぎりぎり詰めてまいりまして、もうお互いにここで手を打ちましょうというような話が、後で国会で御承認を得られなかったというようなことになった場合の処理等々の問題が、どういうふうにそういう問題を処理する、こたえられる形で方法が見出せるかというようなことに私はなると思うんでございます。つまり大上段に、外交権はこれは行政府の専権事項でございますから、援助そのものについても一々これは国会から、干渉という言葉は悪うございますけれども、関与を受けるべきものでないと、大上段にそう申して話が済むかといいますと、やはりそこに国会としてもう少し関与すべきではないというお気持ちには私には少し理解できるものがあるものですから、大上段の御返事だけではちょっと済まないので、何かいま申し上げたようないろんな幾つかの困難を克服できる方法がございましたら、それは私は、これは国会のなさることでございますけれども、やはり一つの問題を解決することにはなるであろうという感じはいたしておるんでございますが、具体的にいま申しましたような幾つかの問題を本当にうまく満足さしていただく方法があるかどうかということになりますと、私どももなかなかいい考えに当たりませんというのが、大変正直な話でございますが、私の感じておりますことでございます。
○立木洋君 そういう趣旨の御答弁をいただいてあれなんですが、運営上いろいろ困難な問題点があるということは、先般もお伺いしましたし、きょうも局長の方からお話もあって、確かにいままで一定のそういう慣例で行ってきた、それをこういう形で新しく変えるということになると、対外的な関係にしてもいろいろ問題が起こり得るということも、全然私たちも考えられないわけではありませんけれども、少なくとも基本としてはこういうものがこういう精神で出されたということは、やはり政府としても前向きに受けとめていただいて、これに基づいた方向で努力されるということを私は要望したいということで、もう一つの点お尋ねしたいんですけれども、これは先ほど提案者の田議員にもお尋ねしたんですが、早く言いますと、いままでわが国が対外経済協力をいろいろ行ってきた、これがやはりすべてうまくいっていたかというとそうではなかったという問題が幾つかの点やはりあったと思うんです。これは先般松永委員がお尋ねになって、大臣も幾つかの点お認めになったと思いますけれども、そのうちの一つの問題ですが、これはわが国としては資源がきわめて乏しい状態にあって、一昨年ですか、石油危機が起こっていろいろな影響を受けたという事態があったわけですが、あのときはわが国が中東の産油国に対していろいろと援助を行う、経済協力を行うということに積極的に踏み出していったわけですね。この点についてはDACの開発援助委員会ですか、あそこでも何か石油欲しさにやっているんではないかというふうなニュアンスのことが問題になったようなことも聞いておりますけれども、こういう新しく開発途上にある国々、特に産油国、その他の国にしてもそうですけれども、資源に対する恒久主権という主張が最近非常に高まってきておるという状態にあるわけですが、こういう主張に対して大臣としてはどういうふうにお考えになっておられるのか、また、わが国としてはどういうふうに対処していくというふうに考えておられるのかという問題点、もう一点お聞きしておきたいんです。
○国務大臣(宮澤喜一君) 資源に対するいわゆる主権ということは、事そのものとしてはそんなに実は不思議な話ではないと思っておりまして、ただ沿革的にいわゆる発展途上国が、植民地の時代はこれはともかくといたしまして、その後もやはり外国の資本が資源の開発に相当入ってきていると、なかなかその国民の自由にならないという、これはそういう意味では多国籍企業と関係をしている問題だと思いますが、そういうことからああいうことが急激に最近言われ始めておるわけでございます。ですから私は、そういう主張そのものは別段新しい、本来新しい主張でもないし、異とするに当たるようなものでもないと思うのでございますけれども、どうしても一つはっきりさしておかなければなりませんことは、そういう主権を主張いたします場合に、従来正規になされておるところの契約であるとか、法と秩序と言いますと少し言葉が広いかもしれませんけれども、そういうものの上にいままでの、今日までの歴史というのは進んできておるわけでございますから、いきなり主権の主張をして、現在あります正規になされた契約等々を一方的に破棄をするとか、あるいはそれ以外の力を持って事実上契約が破られた状態をもたらすとかいうようなことになりますと、これはやはり国際的に一つの秩序なり約束の上で事が進んでおりますときに、それはわれわれとして同意できるところではない。でございますから、いままでの状態が自国民の意思に反して進んできているということであれば、それはやはり秩序立った形で改善をしてもらいませんと、お互いのためにやはりならぬのではないだろうかという気持ちを持っておるわけです。
○立木洋君 大臣も御承知のように、かつては石油というのは発展した先進国ですか、ほとんど自由に値段も決め、やってきたというふうな経緯があった中で、やはり自国にある資源というのは自国自身で決めるべきだ、その値段にしても、その扱いにしても、こういう主張はやはり当然のことだということも大臣お認めになったわけですが、そういう状況の中で起こってきた、何回か大臣が言われた民族自決の流れという、そういう一つのやはり流れだというふうにも私は判断できると思うんですが、解決の方法にはいろいろ問題があるでしょうけれども、しかし大局的にはそういう問題を正しく受けとめて対等、平等、いわゆる先ほど出しましたDACなどでの批判的な見解を受けないような対応もこちらとしてはとらなければならないのではないだろうかというふうなことも感じるわけです。 それで、いままでの対外経済協力の点では、概して対外経済協力といえば何かの道具に使われるということが主張されておりましたし、国際協力事業団法ですか、が採択されたときにも、衆議院において、わが国の経済協力は従来ややもすれば輸出の振興、企業の海外進出の促進の手段とされる傾向にあったというふうな附帯決議がなされておりましたし、またその後、先ほど言いましたように、石油を得るために金や技術を出すのかという問題もあったというふうなこともありましたし、さらには開発途上国の経済の向上や民生の安定というふうな主張で行われる対外経済協力にしても、ややもすればやはり外交上の取引、言葉が悪いですけれども、あるいは駆け引きに使われたとかというふうな問題点等もやはり問題としてはあっただろうと思うんです。こういう点改めていくという点では、先ほどの問題に返るわけですが、やっぱり国会でのきちんとした審議を経てやっていくということがより私は妥当な道だろうと思うんです。 先ほど三つの点を出したわけですが、もう何回か質問されておりますので、一つの点だけお尋ねしたいんですけれども、わが国の経済援助協力が、特にまだベトナムがああいう事態になる前ですけれども、韓国、フィリピン、タイ、南ベトナム、カンボジア、インドネシアに集中している、それが大体九〇%以上に上っておるということが一九七二年の数字でも出されているわけですが、これらの国々に集中しているというのはどういう意味なのか、これらの国々と言いますと、ある意味で言えばアメリカの重要な拠点になっているといいますか、そういう国々ではないだろうか、あるいはアメリカときわめて深い関係にある国々ではないだろうか、そういうところにわが国の援助が集中しているというのは一体どういう意味なのか、ここの点をひとつお伺いしておきたいのですけれども。
○国務大臣(宮澤喜一君) いま立木委員からやや哲学的な問題を最初にお出しになったわけですけれども、援助というものは目的がないかと言えば、やはり私は特定の目的があると思うのでございます、国にとりまして。それは、一言で言えば日本の国益ということ、わが国の場合でございましたら日本の国益ということになると思いますが、その国益を非常に狭く考えるか広く考えるか、近い将来か遠い将来までを見て考えるかという、そういうことはございますけれども、やはり一言で言えば国益に沿ったということになると思います。その場合、わが国の援助に際しての国益というのは、私はやはり平和であるとか安全であるとかいうことであろうと思いますので、それはわが国民の平和安全ということには必ずしも限りませんで、わが国あるいはその周辺、広くは世界が平和で安全で幸せであってほしいということでございます。そういたしますと、勢いまずわが国の周辺が平和で安全であってほしいと考えるのは、私はこれを当然であると思います。何となれば、それが一番わが国の平和と安全に、近い地域の状況は一番影響が大きいということであろうと思いますので。ことにアジアの地域は、アフリカと比べてどうとまでは申しませんけれども、比較的ヨーロッパなんかに比べますれば後進性が高いわけでございますから、それだけやはりそこへ重点が過去においてかかってきたということは私は誤りではない、今後も恐らくそういう状態が続いていくであろうというふうに考えております。
○立木洋君 大臣時間があれですから、塩出さんの大臣への質問を先に。
○塩出啓典君 それでは二、三、先般の続きの質問を大臣にしたいと思うのでございます。 一つは、国会に承認を求めた場合に、非常にその手続だけ援助がおくれる、非常にそれでは困るという局長の答弁ですけれども、この法律の趣旨から言えば、災害等の人道的なものは除くわけですから、やはりこれらの海外協力というものは非常に大事である、ただ協力すればいい、援助すればいいというものではないわけで、むしろそのことが逆に反感を買う場合も過去にはあるわけですね。そういう意味で慎重に、しかも思いつきではなしに、やっぱり長い目で見ていくべきものであって、国会の審議のために時間がおくれる、それを一日でも早い方がいいんだと、私はそういう趣旨のものではないのではないか、そう思うのですけれども、この点はどうでしょうか、大臣の考えとしては。
○国務大臣(宮澤喜一君) 世界的な趨勢で申しますと、援助というのはむしろ何か特別な出来事ではなくて、一種の先進国にとってはルーチンの、日常的な仕事になりつつあるというふうに私は考えます。それは進歩であると思うのでございます。ですから、先ほど私が立木委員に全体の自分の気持ちを申し上げましたけれども、それにもかかわらず、だんだんルーチンになって、別に特別の出来事でないというふうに援助というものが進んでいくことが望ましい、したがって、できれば簡素化された形で援助が行われるということがお互いのために望ましいということは、私は近世の趨勢だと思います。国会に御審議をいただいて御意向を伺ってということになりますと、これは議論のないものなら非常に速やかに御審議をいただけますと思いますけれども、議論のあるものについては、勢いこれは当然国会としては必要なだけの時間をおとりになる、これは当然のことでございますから、やはりおくれがちになるであろう、これは行政をやりますものから申しますと、端的に申して不便でもあり、相手国にもよくない影響を与える。 それからもう一つ、私がさらに考えますのは、国会に御審議を願って否決をざれた場合にどうするかということでございます。というのは、現実に否決をされた事態よりは、交渉いたしますものが最後にここでもう手を打とうと、お互いにネゴシエーションをやって、そうしてもうここでやむを得ぬなあ、これでいいなあと言って手を打ちましたそのときに、打とうとするときに、ひょっとしたらこれ国会で否決されるかもしれないということを思いながら折衝しなければならぬといたしますと、これはなかなか思い切ってここでもうひとつ両方手を握りますかということは、これはなかなかやりにくうございます。言葉は悪うございますけれども、一種の団体交渉のようなことになってまいるわけで、当事者能力がつまりないという状況の団体交渉みたいなことになりましたら、これはなかなかやりにくいということがどうしてもあろうと思います。
○塩出啓典君 この問題は非常になかなかいろいろ論議のあることで、私たちはこの論議は余り深入りしないことにいたしますが、やはり交渉においてそこで話し合いがまとまって国会でだめになったら困るというけれども、最初からそれを習慣にしていけば私はそれでいいんじゃないかと思うのですよ。それで、これは答弁は必要ありませんけれども、やはり私はこれからは、この前申し上げましたように、外交というものも一部の人の外交ではなしに、やはり国民外交というか、国民の幅広い応援というものが必要じゃないかと思うのです。そういう意味におきまして、海外援助においても、その内容はあくまでも公開であり、この国に幾ら、この国に幾らと、この間をこっちとこっちを別々に切り離して、おまえのところにこれだけやったのだ、こっちより多いのだ、こっちにはこれだけで、こっちより多いんだぞ、そういうようなやり方じゃなしに、もう情報化時代ですから、あくまでもやはり交渉の過程は秘密であっても、結果については公開にいくのが私は新しい時代の外交ではないか、こう思うのですけれども、それについて簡単に一つお願いします。
○国務大臣(宮澤喜一君) それも御議論としては私決してわからないではないのでございますけれども、先ほど申しましたように、最後に折衝をぎりぎりいたしまして、これで決めましょうというときに、相手方は先方の政府でございます。向こうの政府としてはやむを得ないなあ、こう思います。塩出委員の言われるように、隣の国が幾らだというようなことは、だんだんにはそれは確かにわかってまいりますけれども、その場合の向こうの政府も、これも自国民に対してはもう少しいきたいと、しかし、日本政府の立場もあろうからというので、手を打ちますわけで、それが全くガラス張りに国民に全部、隣の国民はこれだけ受けたじゃないか、それなのにわれわれはということがこの瞬間に全部わかっておりましたのでは、なかなか相手国政府も、ここでうんと本当は言いたいのだが言えないということにやっぱりなってしまう。これは塩出委員の言われるような理想的な姿になればそれは本当によろしゅうございますけれども、実際やはり一つのネゴシエーションでございますので、どうしてもいまのような問題は現実の体験からすると出てまいるので、結果はどうなるかといいますと、でき上がるべきネゴシエーションができないでしまうということに大変になりやすいという心配を持っております。
○塩出啓典君 それでは、今後海外協力のあり方というものが非常に大事になってくると思うのです。先ほど申しましたように、いわゆる共産圏の国々もあればそうでない国々もある。そういう国々に対してどういう経済援助をしていくか、これは私は非常に大事な問題ではないかと思うのです。特に、いわゆる進出企業が、最近は台湾とか韓国に進出した企業が不況のためにどんどん現地の人を首を切る、そういうことが非常にその国々に対して反感を与えておる。あるいは日本の経済情勢の変動によってオーストラリアからの牛肉の輸入が非常に急にストップしたり、あるいはパキスタンからの綿花の輸入等が急にストップするとか、そういうようなことも、ある面から考えれば日本の企業もそういう好況不況があるのでやむを得ないじゃないか、こういうことも言えるわけですけれども、しかし、そういうものも含めて、対外的な問題についてはやはり国としても何らかの対策も考えていく必要があるのではないか、そういう問題について外務大臣としてはどう考えているのか。 もう一つは、先ほど田委員の方からも、やはり海外協力基本法のようなものをつくるべきではないか。海外協力の理念というものを、はっきりとした尺度を慎重に検討して決めるためにもこのような基本法をつくってはどうか。私はその趣旨に賛成なんですけれども、外務省としてはそういう考えはないのかどうか、これだけお聞きして終ります。
○国務大臣(宮澤喜一君) 私ども援助をいたしますときに、いろんな意味での判断は何かやはり持っております、価値判断がないということは恐らくあり得ないことでございますから。あの国に対してはわが国としてこういう一つの義理があるとか、義理という言葉はちょっといけませんので、こういう責務をわれわれは感じるとか、あるいはこのような批判を持つとか、いろいろそういう価値判断を絶対持ってないということは多分うそになるのでありまして、その上でどれが国益かということを考えるわけでございますから、そういうものを持っておりますけれども、ただそれが基本法のようなもので書けるものであるかどうかであろうか、これは私は提案者のお許しをあらかじめせんだっていただいておりますので、お許しを得て申し上げるわけですが、たとえばこの御提案になっております第三条あたりになりますと、私はこれは忌憚なく申せば、なかなか問題があるところだ。せんだって、この民主主義とは何かという御議論が委員の間で行われておりますのを私拝聴いたしておりました。この民主主義をどのように定義するにいたしましても、われわれにとってやはり民主主義というのは非常に大切な価値のあるものであると考えますがゆえに、あなたの国は民主主義でないというふうに言ったときに、やはりそれは一つの価値判断を私は含んでいると思うのであります。そういうふうに相手方を価値判断を現実のわれわれが外交でもって表に出すということになりますと、これはもうとても外交はやっていけないという感じがいたします。たとえば、仮に私が御質問をこの場で受けて、アジアの国を一つ一つ、これは民主主義と思うか、これはそうでないと思うかとお尋ねを受けて、それにお答えをしなきゃならぬといたしますと、あの国は民主主義でないと言われた国は、決してそれをほめられたとは思わぬというのが民主主義というもののわれわれの価値判断になっておりますから、とてもそれは外交はやれない。かといって、私は体制が違う国だから援助をしないというようなことを申し上げているのじゃございません。そういう意味じゃございませんが、自由が抑圧されている、こうこうである、あるいは不当な解雇が行われているといったようなことを一々われわれが価値判断を行動で示さなきゃならぬといたしますと、これはとても外交というものはやれない感じがいたします。
○塩出啓典君 結論は、基本法のようなものはつくれないと。尺度というものが外務省幹部の胸の中にあって、そういうものを公表しては非常に困るという、そういういまの答弁ですね。そこにやっぱりわれわれはどういう理念で援助が行われているのか。よく援助にまつわる黒い霧なんかがあって、そこに国民の疑惑があるわけで、そこにこういう田さんの法案も出てきたわけですよ。そういう意味で、それはむずかしいかもしれません、第三条の民主主義というのは私もあまりむずかしいので、田さんにこれはのけたらどうですかと言ったら、のけてもいいといま言っているわけですからね。だから、それじゃアなしに、民主主義というややこしいのじゃなしに、もっと理念的にわかるものを示せないようであれば、これは本当にわれわれは困ると思うのですよ。だから、もう絶対これは外務大臣、外務省で出さなければ、外務委員会は野党が多いですから、採決すれば。超党派でひとつそういう経済協力基本法をつくらざるを得ない、それで国民に信を問わざるを得ない。そういうことで外務省として前向きにこれは検討すべきじゃないかと思うのですが……。
○国務大臣(宮澤喜一君) この問題はいわゆる先進国の間、ことにアメリカではずいぶん議論に何度もなっておりまして、私はこういうことで実際は処理されているように思います。 たとえばこれは現実にある事態でございますから申し上げてかまわぬと思いますが、トルコならトルコ、これはキプロス問題におけるトルコの態度はよくない、したがって、これに対する援助あるいは武器援助、これはすべきでないというような議決なり何なりをアメリカの場合、議会がする。行政府は当然いろいろな配慮から、それは困りますとか、理由はこうでございますとか、いろいろ申し上げます。しかし、議会がそういう意思をはっきり表示されれば、これはわが国の場合、国会が表示されればそれは私どもそれを尊重しなければならないということになってまいります。抽象的に基本法で書くことは私は非常にむずかしいと思いますが、具体的にある時点においてある国に対するこういう行為、これは適当でないというようなふうな議会の御意思が、国会の御意思が出てくるということは、これは私は考え得ることだと思います。
○立木洋君 大臣何かお忙しいようですから、あと局長に一、二問お尋ねします。 対外経済協力で、これは民間企業の海外へのあれも入るわけですけれども、反日感情がきわめて厳しくなってきているという背景の一つに公害問題があると思うのですよ。これは、たとえばタイについては旭硝子が現地で合弁会社、つまりタイ・アサヒ・苛性ソーダという会社をつくった。これが同社の工場排水がメナム川流域の水田に流出して公害が引き起こされているという問題から、生産を落とすようにというタイ政府の要望が出てきたというふうな問題もありましたし、あるいはインドネシアでも日商岩井、丸善石油、大協石油などが計画しておる石油精製基地についても、これはもう一昨年になりますけれども、公害輸出については警戒しなければならないというふうな報道がなされたりしておりましたし、またアラスカでもアラスカパルプの廃液の処理が不十分であるというような州政府の改善命令が出された。この公害問題というのはきわめて重大な問題となって、いわゆる日本の対外経済協力、民間の企業の合弁会社の設立等々と結びついて大きな問題になっているわけですが、これについては外務省としてはどういうふうな措置をされ、どういうふうな対策をとられてきたのか、また今後なされる意向なのか、その点についてお尋ねしたいと思います。
○政府委員(鹿取泰衛君) いま先生の御指摘のような問題、過去に発生しておりますし、今後また発生する可能性もあるわけでございますので、私どもの方は、やはりこれはせっかくの経済協力がその効果を減殺するものであり、かえってその国との、場合によっては地域住民との関係を損うものであるというふうに、私どもも非常に重要な問題であると考えております。これに対する対策と申しますと、たとえばタイの場合におきましては、タイ政府からの要請もございまして、わが国の公害の専門家、特にこの場合は先生御指摘のように工場排水の処理の問題でございますけれども、その専門家をタイに送りまして、タイのわが国の合弁企業がいろいろ公害問題で問題を起こしているその問題の除去につきましてタイ政府に協力し、その除去に努めてきたわけでございます。こういうふうに、起こりましてから対策をするのでは遅いわけでございますので、私どもといたしましては経済団体などを通じまして、こういう問題を発生しないように自重を求めているわけでございますけれども、単に民間の企業に対しまして自重を求めるだけではその効果に限度があるわけでございますので、私どもはこういうふうに海外に民間企業が進出いたす場合に、その地域社会に与えるいろんな影響、特に公害問題を含めまして社会的な影響につきまして企業が配慮するように、そしてその企業が地域住民の福祉とか社会開発等、場合によっては公害問題も入るわけだと思いますけれども、そういうために特別な施設を行う場合には、その施設の分については長期低利の資金を融通しようということで、先生先ほど御指摘になりました国際協力事業団の中にそういう業務を加えたわけでございます。現に、国際協力事業団ではそういう方面の融資業務を開始して、その範囲内におきましては効果が上がっていると信じております。
○立木洋君 私も承知しておりますけれども、通産省が経済五団体と話し合いして海外における行動基準等等を決めたりしたこともありますし、また政府関係としても、海外に企業が進出する場合にチェックしていくというふうなことも行っているようでありますけれども、私はやはりもっと日本の企業が進出する場合の規制ですね、本当に公害を起こさないかどうか、この点についてのもっと厳格な措置をとるべきではないか、まあ事態が起こってからそれに手を打つというんでは遅過ぎるというお話もあるわけですし、そういう事態が起こったからといってその国に援助金を出すというふうなことも多少やはり後手ぎみだと思うのですよ。問題はそういうふうに起こらなくさせるということが基本になければならないわけですから、そうするとやはりそういう事態が起こらないような規制をもっと強めるということが基本にあるんではないかと思うのですけれども、これは通産省その他関係省庁とも話し合わなければならない点と思いますが、外務省の姿勢としてはもっと強くその点を打ち出していく、精神論ではなくて現実に規制できる、そういうものを実施していく必要があるんではないかと思うのですが、そういう点についてはいかがですか。
○政府委員(鹿取泰衛君) いま先生の御指摘になりました問題点は非常に重要ではございますけれども、そういう現実の規制になりますと、これは私どもとして日本の国内企業に対しまして法的な強制力を持っていろいろ対策を講ずるというようなことは実はなかなかむずかしいわけでございまして、と申しますのは、いろいろ公害などが発生するのは相手の国でございますので、いわば相手の国の法域と申しますか、法律の範囲内の問題でございますので、むしろ相手の国か公害規制等につきまして有効な法律をつくってくれればこれは一番効果的なわけでございます。しかし、それを待っておりますといろいろ実は問題がございますわけで、たとえば相手の国からいろいろな鉱石を日本が輸入しているという場合に、相手の国は経済的な点を考えて現地で製錬して、そしてそれを日本に製品を持っていったらどうだということを経済政策としては考えるわけでございます。しかしそれは、製錬に伴う公害が発生するというのは不可避でございます。そういう場合に、発展途上国の場合は公害問題よりもどうしても生産とか経済開発のことを重点とするわけでございますので、なかなかそういう公害を規制するような法律を相手の国がつくるということを期待しているんでは問題は解決しないわけでございます。したがいまして、私どもは勧告というようなことではございますけれども、関係官庁と協議いたしまして、できるだけ企業がそういう観点から海外進出を考えるように、短期的に成功しても長期的には失敗に終わるということを考えてもらうというようなことで指導しております。その場合、特に外務省といたしましては、相手の国のいろいろな事情、特にその地域住民の特殊な感情などを事前に進出企業に伝えまして、この地域ではこういう点を特に配慮する必要があるというようなことをあらかじめ進出企業に進出以前に通報して、注意をするように指導していきたいというふうに考えております。
○委員長(二木謙吾君) 本案についての質疑は本日はこの程度といたします。 これにて休憩いたします。 午後零時八分休憩 —————・————— 午後一時十分開会
○委員長(二木謙吾君) ただいまから外務委員会を再開いたします。 委員の異動について御報告いたします。 本日、黒柳明君及び田渕哲也君が委員を辞任され、その補欠として柏原ヤス君及び中沢伊登子君が選任されました。 —————————————
○委員長(二木謙吾君) 社会保障の最低基準に関する条約(第百二号)の締結について承認を求めるの件(衆議院送付)を議題といたします。 前回に引き続き質疑を行います。質疑のある方は順次御発言を願います。
○柏原ヤス君 第百二号条約の質問に入ります前に、基本的なことをお伺いしたいと思います。 わが国は、ILOにおいて主要産業国十カ国の一つとして常任理事国という立場におります。この国際社会に対する責任も非常に高まってきていると思いますが、わが国のILOに対する基本的態度、方針はどのようなものか、お伺いしておきたいと思います。
○国務大臣(宮澤喜一君) ILOの理事国といたしまして特にわが国は重い責任を負っておるわけでございますが、ILOは、憲章の前文及びフィラデルフィア宣言等に示されておりますように、労働者の労働条件の改善を図ることによって社会正義と世界平和を確立する、御承知のような目的でございます。そういう目的のために、特に常任理事国としてわが国の責任は重いと存じます。他方で、このILOが今日まで採択をいたしました条約あるいは勧告等々、わが国の履行状況は今日まで必ずしも満足とは申せません。これにはわが国が戦後急速に工業化いたしてまいった過程で必要な働く人たちへの施策、もろもろの社会福祉を初め、女性、母性についての施策等々十分整備されていないまま、非常に急速に工業化をしたという過去のいきさつが今日まで反映をしておるわけでございますから、われわれとしては、できるだけ国内の施策を充実することによって条約に定められている条件を充足し、そしてILOの採択いたしました条約をできるだけりっぱに数多く批准をし、加盟をしていかなければならないというふうに考えておるわけでございます。
○柏原ヤス君 非常に大臣のお答えに不満を感ずるわけでございますが、時間がございませんので次に進みます。 ところで、議題になっている百二号条約は一九五二年に決められたもので、もう二十三年もたっております。国際的社会保障の基準であるこの条約が非常におくれて批准しなければならないという現状、政府は、ILO条約の批准について積極的方針で臨むとおっしゃっているその言葉は素直に受け取れないわけです。今回の批准に際し取り残されている部門、医療、母性、廃疾、遺族、家族のこの各部門の達成に対してはいつごろまでに到達させるお考えか、お伺いしたいと思います。
○国務大臣(宮澤喜一君) この条約の批准は、むしろ国内のそれらの施策が充実をした結果として批准をするということになるわけでございますから、ただいまのお尋ねは、いつごろまでにこのような国内施策が条約批准に必要な程度に充足されるかということになるわけでございます。これらの施策がおくれておりますことは、先ほど申しましたような歴史的な沿革から残念でありますが、今日までのところ事実であります。政府としては、この特定一部門を含めます四部門を充足して批准を、御承認をお願いいたしておるわけですが、それをもって、もうこの百二号関係は済んだというようなことではもとよりありませんで、残りの部門についてできるだけ早く国内の施策を充実し、そして全部門を受諾できるような状況にいたさなければならないと考えておりまして、この点については、先日来本委員会において政府としてのそのような意思を、考え方を申し上げたところでございます。
○柏原ヤス君 いま国際的に婦人の問題が取り上げられている真っ最中に、またこの委員会でもそうしたことが取り上げられて今日まで審議されている。政府は積極的にと言っているんですから、もう少し大臣としては大体いつごろまでにというような、そうした具体的な御答弁かいただけたらと思ってお聞きしているわけですが、いまのお答えですと、何となくあいまいなお答えじゃないかなと思いますので、いつごろまでにという点を、もう少しお答えいただきたいと思います。
○国務大臣(宮澤喜一君) 実は私が申し上げますよりは、主として厚生省を中心とするところの問題でございますので、厚生省御当局からお答えをいただければと思いますが。
○説明員(綱島衛君) お答え申し上げます。 今回の条約批准につきましては、先生の御指摘なさいました取り残された部門、これにつきましての将来の見込みはと、こういうようなお尋ねと思います。これにつきましては五つのうち二つ、つまり母性給付の関係でございますが、これが第二部と第八部と両方同じ質のものでございますので、この辺を一括してまず御説明を申し上げますと、この母性給付の部門では妊娠、出産等にかかる給付につきまして一部負担が残りますので、これを解消しなければならないという問題がございます。これにつきましては、目下健康保険法の関係の審議会等におきまして現金給付の改善という項目で鋭意検討を進めておる段階でございまして、時期がいつであるかということはただいまのところははっきり申し上げられませんが、目下そういう方向で検討を鋭意続けておる、こういう段階でございます。 それから、もう一つの達しません部門が廃疾給付部門でございますが、これにつきましても厚生年金の関係、それから健康保険の関係、両方の部門でこれも鋭意検討中でございます。 それから、もう一つ残りました遺族給付でございますが、これは先生も御承知のように、昭和五十一年度、つまり明年度が年金関係の財政の再計算期でございますので、これは五十一年度を目途として改善をすると、こういう方向で研究を進めておる、こういうことでございます。
○柏原ヤス君 この遺族年金の給付水準の引き上げについては、この間の三月の予算委員会に取り上げまして、そのときの田中厚生大臣のお答えは、八割とまではいくかどうかわからないが、いまの五割というのをできるだけ上げたいと、こういうふうにはっきり答弁されております。来年の改正の目安として、少なくともこのILO百二号条約の水準は満たせると考えてよろしいでしょうか、どうでしょう。
○説明員(綱島衛君) 先般、先生御指摘のように、大臣からも先生仰せになった趣旨で御答弁をしておりますが、ただいま真剣にいわば来年度を目途として検討中ということでございまして、はっきりお約束できるかどうか、これはいまだ私の口からは申し上げられないということでございます。
○柏原ヤス君 そういう消極的なお考えでいたのでは非常に心配ですね。百二号条約というのは最低基準です。しかも、その最低基準も世界的から言えば最低じゃないんでしょうかね。それも満たされるかどうかわからないというようなそういう御答弁、じゃ一体予算委員会の田中厚生大臣の言葉は、予算委員会だから体裁のいい答えをしたと。そしてまだ国会が終わりもしないのに、あなたがそういうようなお考え、またお答えをしなければならないということは、私は受け取れません。もう一遍、努力するとか、もうちょっと百二号条約批准のときに、しかも非常にこの批准がおくれている中で、まだそんな御答弁をなすっているんじゃ、次の質問をしても何か張り合いがありませんですから、もう少し腰を据えた御答弁をお願いします。
○説明員(綱島衛君) 私の申し上げ方が消極的に響いたと、こういう仰せでございますが、決してそういうつもりではございません。ただいまお約束ができないというだけのことでございまして、大臣が申しましたように、むしろ積極的に取り組んでおると、こういうことでございます。
○柏原ヤス君 積極的にお願いしますね。それじゃその期待を持って次の質問に進みます。 厚生年金の加給年金の取り扱いについて、これは大幅に引き上げるという方向で検討が進んでいるんでしょうか。
○説明員(綱島衛君) 加給年金額の問題でございますが、これはただいま申し上げました遺族年金の給付改善に取り組んでおると申し上げました、しかし、それは年金の再計算期に際しまして、加給年金のことも含め、かつ、いわゆる妻の年金権と申しますか、こういう点の問題点の解明も含めてやっておりますので、先生の仰せになりました点につきましても、当然、その中の一環として取り上げられている、検討されているわけでございます。
○柏原ヤス君 もう一点お聞きいたします。遺族年金及び障害年金の通算措置ですが、これもぜひ必要な制度でございます。審議会や関係各省で実現するという方向で作業に入っていると聞いておりますが、これも間違いございませんね。
○説明員(綱島衛君) 先生おっしゃいますとおり、そういった関連の問題もすべて鋭意検討しております。
○柏原ヤス君 次に、今回ILO条約に一応達成されている部門になっております傷病給付の部門についてお尋ねいたしますが、国内制度の健康保険法の傷病手当金に当たるわけですが、この支給期間は結核を除いて六カ月間となっております。ところが、最近は長期療養者が非常に多くなっております。その主な病気と言えば、いわゆる成人病、高血圧症とか心臓疾患、肝臓疾患、胃の病気あるいは糖尿病、また難病と言われております腎臓疾患やべーチェット病、こういう長期の療養を要する病気が非常にふえているという点から、このような疾病についても支給期間を延長する必要がある、こう考えますが、この点はいかがでしょうか。
○政府委員(北川力夫君) 傷病手当金の支給期間につきましては、いまお話しのとおりでございまして、一般には六カ月、それから結核につきましては一年半でございます。これはそういう制度、仕組みができました当時の疾病の実情に照らしたものでございますが、その後の状況は、いま先生が御指摘になったような面が多分にあると思います。しかしながら、この問題についてどのような疾病を選んでどのような程度期間を延長するかということは、実は私ども、いまにわかになかなかその結論が出ない面があるわけでございます。それで、実はこういった問題も含めまして、現在、この次の健康保険制度の改正でどのような問題を取り上げてどのような処理をするかということを、私どもの専門の審議会でございます社会保険審議会においてかなりフリーな立場で討議をいたしてもらっておりまするので、その中で、いま御指摘のような問題につきましても、ひとつ十分に検討をお願いをして、その結果を見た上で措置をしてまいりたい、このように考えておりますのが率直な現状であります。
○柏原ヤス君 厚生省の方ではこういうことはもう御存じだと思いますけれども、疾病給付、つまり障害年金との関連もありますから、それを早急に検討しなければ、このILO百二号条約の中の受諾できない点は満たされないと思うんですね、その点はいかがでしょうか。
○政府委員(北川力夫君) いま、障害年金に係る障害認定の期間と傷病手当金の支給期間との兼ね合いの御議論がございましたが、障害年金部門につきましても、現在私どもの社会保険審議会の厚生年金部会で検討をいたしておりまして、どういう結論が出ますか、その結果を見なければならないと思います。ただ、いまのお話しのように、この両者の兼ね合いをどういうふうに考えるかという問題は、実はかねがね昔からの問題でもございますから、障害認定の実際の運用上の問題もいろいろあるわけでございますけれども、この機会に両方の審議会、部会等で十分に検討いたしまして、適切な方法が見出せるように努力をしてまいりたいと、このように考えておりますのが現状でございます。
○柏原ヤス君 この問題は、また社労委員会の中でいろいろとお聞きをしたいと思いますので、次に進みます。 ところで、先ほど申し上げましたが、今回のこの批准に際して、基準に合致しない、水準に達しないために残された部門、これがございますが、この各部門については早く国内法を改正する、そうして国際水準に到達するような具体的計画、年次計画をつくるべきであると思います。先ほどの御答弁ですと、何かそうした具体的計画、年次計画というものがないんじゃないかと、できるだけ努力します努力しますとかいう御答弁きりございませんので、この点はまた重ねてお聞きするんです。たとえば遺族給付は来年度に、医療、母性給付はいっとか、廃疾給付はいつまでとかいうような、そうした年次計画、具体的計画というものがなければならないと思うんです。いまメキシコで開かれております世界会議の議題の一つの中にも、十分な社会保障を確保すべきであるという項目もございます。しかも、この世界会議の行動計画というのは、十年間の行動計画でございます。そういう中で国内の問題をやっぱり年次計画、具体的計画でやっていかなければならないときが来ている。さらに私、この会議に出席して、ゆうべ帰ってきたばっかりですが、この行動計画案に対する審議をやっている第一委員会で、日本代表の森山婦人少年局長は、一九八五年に十年を振り返る会議をすべきだと提案すらしているわけです。提案した国の日本が、国内のそうした水準に達しない問題に対して、何ら具体的計画がない、年次計画がないと、十年という年月はすぐたってしまいます。そういう点で目標達成の実行計画が必要になると思うんです。その点いかがでしょうか。また、社会保障長期計画懇談会も長期計画を審議していることでもございますので、この残された部門の達成のために計画をつくるべきであると、こう強く主張するわけでございます。その点、もう少し積極的な見直しを感じられるような程度でも結構ですから、そういう漠然としたお答えでなく、もう一度御答弁をお願いいたします。
○説明員(綱島衛君) 先生のおっしゃいましたことはまことにごもっともでございまして、年次計画をもって最低基準の線に沿わなきゃならぬという問題意識は実は持っております。ただし、この百二号条約は非常に、御承知のように幅広く、総合的に線を決めているわけでございますが、片やわが国の社会保障の諸制度におきましては、それぞれの沿革的理由からいたしまして、一つのところに手をつけると、ほかに波及する点が多うございます。そういう点で慎重に進めていかなければならないと、こう申し上げているわけでございます。 なお、メキシコにおきまして今度の行動計画が、十年間というようなものが出てくるようでございますが、その結果等も十分これは反映するようにいたしたいと、こう思っております。
○柏原ヤス君 政務次官にこの問題をもう一度お尋ねいたします。
○政府委員(山下徳夫君) おっしゃることはよくわかりますけれども、各種の給付というものにつきましては、国家の負担能力というものも考えなければなりませんし、特に医療給付につきましては、これはやはり個人の負担能力ということとの関係もございます。しかしながら、いまの御指摘の点は、やはりILOの義務受諾をするためにも、ひとつ厚生省としては格段の前向きの努力を払いたいと思います。
○柏原ヤス君 そういう漠然としたお答えではなくて、批准に取り残されている部門が五つあるわけですね。そのうちのどれができるのか、順番としてはどれを先にしていくか、ただここで答えていればいいというだけじゃなくて……
○政府委員(山下徳夫君) 先ほど課長からも御答弁申し上げましたように、遺族給付はもうこれは最短距離にございまして、大体来年を目途にやっておりますが、他の面につきましては、それぞれやっぱりもっと検討しなければならない。分娩費の問題あるいは児童手当等につきましては、まだかなり煮詰めなければならないいろいろな要素が残っておりますので、いつまでということは申しかねますが、ただはっきり申し上げることができますのは、繰り返し申し上げるように遺族給付につきましては、来年度を目途にこれを実現させたいと思います。
○柏原ヤス君 その次はどれですか。
○政府委員(山下徳夫君) 一応申し上げられるのは、いまの遺族給付でございまして、その次は、二番目はどれかということにつきまして、実は私はまだ答弁できるだけの準備をいたしておりませんので……
○柏原ヤス君 次官ができないとしたら、その担当者の先ほどの方ですね、これだけしかできないというのでなくて、その次は何とか言えませんか。ILOの条約が決まったのもずいぶん古い話じゃないですか、二十三年もたっている。その間やっぱりその水準に達するように努力はしてきていらっしゃるのでしょう、政府としても。それで現状のいろいろな社会問題から考えて、特にこういう点とこれとは努力しているとか、やっていきたいとかいうような、そういうお答えはできないのでしょうか。
○説明員(綱島衛君) ただいま政務次官からお答え申し上げましたように、まず最短距離にあるのは遺族給付であろうかと存じます。その次にまいりますのが先生おっしゃいましたように、社会保障の全般的な向上につきまして、過去かなりの努力が払われ、かつ、改善がなされてきたわけでございますが、先ほども御答弁申し上げましたように、目下関係審議会等で真剣に検討している中に、廃疾給付と傷病給付とのすき間の問題これがございますので、これもかなりの改善を見るだろうということは予想されるわけでございます。ただ率直に申し上げますれば、児童手当の分でございますが、これは日本の賃金体系等との関連からまいりますと、どうしても早急には改善は無理ではなかろうかと、こういうふうな気持ちを持っております。
○柏原ヤス君 児童手当の問題がちょっとお言葉に出ましたけれども、この児童手当は一番おくれているのですね。この前の社会労働委員会でいろいろその点お伺いしましたけれども、何かこの児童手当は後退のさらに後退だと、しかも、それならばこの児童手当の考え方というものはこういう方向でいこうと思うというような、そうした希望のあるお答えがあるかと思ってお聞きしても、さっぱりそうしたお答えがない。低所得の低成長、いま不景気だから、なるべくお金のかからない社会保障をやっていくんだというように受け取れるような感じの御答弁であったわけなんです。これじゃ問題にならないじゃないかというので非常に失望しているわけなんです。けれどもILO条約の中には、はっきりと家族の問題も取り上げられているわけなんですから、その点いかがなんでしょうか。
○政府委員(上村一君) 御案内のように、ILO百二号条約に日本の児童手当の制度を照らし合わせてみますと、一番大きな問題点は給付の総額でございまして、これは四分の一程度になるわけでございます。そこで、先ほど国際課長からもお答えしましたように、相当義務受諾ができるまでには時間がかかるんじゃないか。ことに、日本のいろんな社会保険の仕組みの中で児童手当制度が発足をしたのは昭和四十七年でございます。昨年段階的な実施が完了したばかりでございますのでこれからどうするか、国民の生活水準なりあるいはほかの社会保障給付の動き、そういったものを考えながら総合的に検討を進めなくちゃならないわけでございますが、御案内のように、日本の社会福祉なり児童福祉の分野では、まだまだ立ちおくれておる分野がいろいろあるわけでございます。どうしても特に社会的に見て弱い立場にある人々の対策にウェートを置かざるを得ないわけでございますので、何と申しますか、後退をしておるんでございませんが、前進の速度が至って鈍いということにならざるを得ないんじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
○柏原ヤス君 とにかくやる気がないという以外に受け取れませんね。それじゃいつまでもILO条約の中の家族という部門は到達しないんじゃないか、こういうふうに意見としてつけ加えさしていただきます。 時間がございませんので次へ移りますが、残された部分の中の一つに出産関係がございます。これは非常に重要な部門、これは一日も早く改善していただきたいと思います。この出産関係の部門がわが国において受諾できない理由、これは何でしょうか。
○政府委員(北川力夫君) 現在の分娩関係の費用といたしましては、健康保険法上分娩費の支給があるわけでございます。これはもう御承知のとおりであります。被保険者本人の場合には、標準報酬月額の二分の一で、最低保障額が六万円でありますけれども、被扶養者の場合には定額六万円ということになっております。しかし、現在の実態から申しますと、この額は四十八年の改正によって相当大幅に引き上げられたわけでございますが、なお現状にはそぐわないものでございますので、残念ながらこの部門については受諾することができない、こういうことだろうと思います。
○柏原ヤス君 それでは受諾するにはどうすればいいのか、どういう方式にすればいいのかという御意見はお持ちでしょうね。
○政府委員(北川力夫君) 分娩関係の給付をどの程度どういうやり方で手厚いものにしていくかということは、実はしさいに検討してまいりますと、なかなかにむずかしい問題があるわけでございます。これはもうすでにいろいろと議論されておりますように、現物給付ができないかとか、あるいはまた現金給付にいたしましても、さらに現状にマッチしたようなものではできないかとか、そういったお話があります。私どもは、現在の健康保険制度の立て方がいろいろ議論がございますけれども、傷病について給付をするという立て方をとっておりまするので、いわば出産というふうな保険事故について現物給付をする場合に、それ自体これをほかのいろんな保険事故との関連上どう考えるか、たとえば予防給付一般的なものとの兼ね合いでどう考えるかというふうな問題もあろうかと思います。それから仮に現物的なものといたしましても、それを診療報酬の面で適切な評価が、現在の診療報酬のほかの部門との関連で国民の負担も考えながら直ちにできるかどうかというようなきわめてむずかしい問題もございまして、この問題は特に関係者の間で相当議論をして合意を得なきゃならない問題だと思います。したがいまして、現在私どもがどういうふうに考えているかと申しますと、少なくとも一昨年の改正で私どもは分娩費について従来よりも相当大幅な改善額である四万円というものを政府案として提案をしたわけでございます。それを当院の御修正によりまして六万円になったわけでありまして、四十八年十月当時といたしましては、この額でおおむね私どもは賄えると思っておったわけであります。しかし、その後の四十八年秋以降の非常に大きな経済社会変動を考えますと、この額がすでに実情に合っていない。したがって、さしあたり改善の方法といたしましては、こういう額をできるだけ現状に即して、現状が賄い得るようなそういうものにしていきたい、また、それと同時に、何分にも現金給付でございますから、改善をいたしましたあと、そのときどきの社会的な実情に合うような仕組みも何とか導入できないものかというふうなことも含めて現在考えておるような次第であります。 なおこの問題は、先ほども申し上げましたが、現在社会保険審議会の中でもやはり具体的な改善方法についてはいろいろ議論が出ておりまするので、そういったことも十分に聞きまして、次の改正で十分な、十分なと申しますか、できる限りの改善措置を講じてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
○柏原ヤス君 現金給付の額を上げていこうというような、こういうやり方ではいつまでも受諾することができないんじゃないかと思ってお聞きしました。どうもそういう感じに受け取れるわけですが、この条約の条件には自己負担を認めていないんですね。そうなれば、いまの政府の考え方ではいつまでたっても受諾できないようになっていくんじゃないか、もう少し考え方を変えていかなきゃだめだと、いわゆる現物給付、償還、これでやればできるということは厚生省としても考えていらっしゃるわけじゃないんですか。
○政府委員(北川力夫君) いまお話がありましたように、現金給付ということにして額を固定いたしますと、えてして実勢とかけ離れるというふうな面が出てまいることは御指摘のとおりだと思います。そういう意味合いで、私がいま申し上げましたのは、仮に現金給付としてこれを改善をしてまいります場合でも、できるだけ将来に向かって実勢と乖離しないような何らかの仕組みを加味をしていくというようなことができないものかということも含めて、この現金給付の改善という面では考えてまいりたい、こういう趣旨のことを申し上げたわけであります。しかし、現物給付について全くこれはできないということを、未来永効できないということは申し上げておりません。しかしながら、現物給付の場合には先ほども申し上げましたが、診療報酬面での評価ということについてなかなかにむずかしい問題が多々あることも先生御承知のとおりだと思いますので、もちろん並行して検討はしてまいりますけれども、現実的な処理といたしましては、どちらかと申しますと、いま申し上げました現金給付の改善ということと、それに何らかのものを加味をして条約の趣旨に沿うようなものに近いものにしていく、こういう方法もさしあたりは考えられるのではないかと、こういう趣旨のことを申し上げたつもりでございます。
○柏原ヤス君 現物給付を考えていないわけでもないと、その場合にはなかなかむずかしい点があるという御答弁ですね。それじゃどの部分の費用を点数化するのがむずかしいのか、その点をお聞きしておきたいと思います。
○政府委員(北川力夫君) どの部分の点数化ということになりますといろいろあるわけでございますけれども、現実は出産の費用がいわば一つの慣行料金として世上定着をいたしておると思うのです。もとよりこれには地域差もございますし、また病院によってそれに対するサービスの相違等いろいろな面で差はあると思います。そういった定着をした現実、慣行料金というものがまずある。それを現物給付としてやります場合には、現在のバランスのとれた、現行なりにバランスのとれた評価をいたしております各診療行為ごとの評価、そういう診療報酬の中に組み込んでいくという場合に、いわばほかの診療各科とのバランスという面で相当これは問題があると。現実に一つの料金があって、それを健康保険の診療報酬体系として組み入れる場合のむずかしさ、そういう点は全体的な問題として私は御理解願えると思うのでありますが、そういうことで現物給付ということはなかなかそういう点をよく詰めて、関係者の理解と合意を得て、しかも非常に大きな負担の問題にも絡んでくる問題でございますから、そういうところをどういうふうに調整をしていくか。そういった点をあれこれ考えますと、現在の段階で現物給付に踏み切ることは相当にこれはむずかしい問題である、そういうような考えでございます。
○柏原ヤス君 これはまた質問の続きを後の機会に延ばさしていただいて、もう一点。 こういう問題は、中央社会保険医療協議会というところがございますね、そこに諮問したことがあるかどうか、その点いかがですか。
○政府委員(北川力夫君) 先ほども申し上げましたが、分娩費というものについての制度的な問題といたしましては、すでに現在も社会保険審議会という制度を検討する審議会で制度改正のいろんなアイテムがございますけれども、その一環として議論をしてもらっているわけでございます。諮問となりますと、やはり分娩費のかさ上げということで四十八年の十月改正の際には法改正の要綱を関係審議会に諮問したことはございます。 なお、いまおっしゃいました審議会は、いわゆる中医協のことだろうと思うのでございますが、中医協は、これは適正な診療報酬の額を決めることについて審議決定をする機関でございまして、いままでのところ分娩費が要するに診療報酬がらみの現物給付でございませんので、中医協の場におきましてはこれを諮問したことはございません。
○柏原ヤス君 私は諮問すべきだと思うのですね。諮問してないということは結局やる気がないというふうに受け取って、ぜひこれはすべきである。また、する気がないのか、いかがですか。
○政府委員(北川力夫君) する気がないのかというお尋ねでございますが、まずこの問題は第一段階として、制度としてそれじゃ現在の一般傷病給付のように現物給付にするかどうかということがまずございまして、それが決まればそれをどう診療報酬面で評価するかという段階で初めて中医協というものに対する諮問という話が出てくるわけでございますから、その限りにおいては、まず制度上これをどういうふうにするかということが先行すると思います。そういう意味合いで、いますぐにこの問題を中医協にぶつけるということは事実上、何といいますか、法制上も諮問する以前のまだ段階であるとこのように考えております。
○柏原ヤス君 お答えの仕方が非常に理論的になさっておりますけれども、私は諮問すべきであると、こう申し上げているわけですね。何か諮問できない障害でもあるのかどうかと、そこまで勘ぐって言ってはあれですけれども、どうなんですかその点は。
○政府委員(北川力夫君) 私、別に含みがあって申し上げているわけでも何でもございませんので、この制度を保険事故とし、いわゆる傷病給付並みに現物給付にするということがまずあって、それからそれをどう評価するかということでありますから、評価の問題はいまの段階ではまだ制度の立て方というものを決めてないわけでございますので、現物給付にするということをやっていないわけでございますから、そういう意味合いでいまの段階では諮問はできないとか、する気持ちがないとか、しないんじゃないかとか言う以前の問題で、諮問以前の話じゃないか、こういうような趣旨でお答え申し上げたわけでございます。
○柏原ヤス君 納得いたしません。これはまた後の機会にお聞きしていきたいと思います。 ところで、私が最も強く主張しぜひ検討すべきであると思うのは、この出産関係の給付をもっと広い範囲で行うべきであることを主張するわけです。ところが政府は、分娩費としてお産だけにかかる費用を考えているような、これは非常に狭い考え方であり、狭い受け取り方である。なぜかと言えば、この条約の出産関係の条文にも、「妊娠、分べん及びこれらの結果」にかかる給付となっております。ですから妊娠から分娩、そして分娩後のある一定期間までの医療給付を自己負担なしとすることを言っているわけです。つまり十割給付すべきであると、こう思っていろいろ御質問申し上げたんですが、そういう考え方に対してはいかがですか。
○説明員(綱島衛君) 先生御指摘の給付の点につきましては、条約の条文の上におきましても先生御指摘のように、「妊娠、分べん及びこれらの結果について」という形で書いてございます。したがいまして、これら全部がいわば出産関係の給付と、こうなるわけでございます。この点は第八部でございますか、出産給付の点につきましても同じ条文でございます。そこで仮に、妊娠、分娩、つまりこれらの結果でございますから、仮に妊娠した結果異常な状態になってきた、つまり病気と認められるような状態になってきた場合には、これは当然その前にあります一般の疾病に対する給付、こういうところで見られるわけでございます。したがいまして、先生おっしゃいますように、妊娠、分娩、それに基づくいろいろな現象、こういうものは全部見なきゃならぬ、こういう規定になっているわけでございます。
○柏原ヤス君 ですから政府は、分娩費としてお産にかかる費用だけを考えていると、そうでしょう。それじゃ狭過ぎると、入院して一週間病院にいてそして家に帰ってくる。そのときの費用の計算です。そうじゃなくて妊娠したときから十カ月、そして分娩し、そしてその後の問題までも医療給付の対象として自己負担はしないと、こういうふうに考えていかなければ、このILOの考え方と一致しないんじゃないかと、そういうふうにお聞きしているんですけれども。
○説明員(綱島衛君) 先生のお述べになりましたように、この条約の求めておりますのは、「妊娠、分べん及びこれらの結果」については自己負担を認めていないと、こういうことでございます。
○柏原ヤス君 ですからILOで考えているような考え方で、今後出産の給付というものを広い意味で考えるような、そういう姿勢になっていただきたいし、ならなければならないと思うんですね。同感だとか、そういうふうにしていきますとかという、そういう御答弁ができないんですか。何かちょっとピント外れたようなお答えじゃないんでしょうかね。
○政府委員(北川力夫君) 先生のお尋ねの趣旨は私もよく私なりにわかっておるつもりでございます。ただ、国内法の体系と申しますか、仕組みと申しますか、そういう面から見まして、いま御指摘のような出産にかかる費用、その前後すべてについて自己負担の解消をするためにどのような方法をとるかということが、国内法としては問題だと思います。確かに健康保険なら健康保険ですべてをカバーしていくという方法もあるかもしれませんし、また、それ以外にもヘルスサービスの面でILOの精神に合うような措置を講ずることも考えられなくはないと思います。こういう問題は、いま申し上げました保険の問題あるいはヘルスの問題、そういったものの連携の上で今後検討していくべき重要な問題だと思っておりますので、よくこれは関係者とも協議の上で、どういう方法をとるかということについて検討を続けてまいりたいと思っております。
○柏原ヤス君 どういう方法でなどと言ってないで、いまの政府は分娩費としてお産だけにかかる費用を考えているわけです。そうじゃなくて、もっと広い範囲で考えていくべきが当然でしょう。そういう方向に向かって努力していくとか、世界の水準がそうしているのになぜ日本だけがそんな分娩費だけでよしとしているこの現状をもっと前向きに前進させていくと、考え方からしてきちっと世界のILOで言っている水準のその考え方でいかなければならないと思うんですね。どうしてその首振っているんですか。
○政府委員(山下徳夫君) これは私に対する御質問でないかもしれませんが、やや質問と答弁が繰り返しておられる状況ですから、私の意見を申し上げますと、これはやはり先生のおっしゃるような線に持っていくためには、基本的にやっぱり分娩に対する考え方を変えなきゃいけないんじゃないかと思うんです。つまり病気であるかどうかということでございますね。だから日本のいまの保険制度というものは、いわゆる病気の場合に医療として行われると、従来は極端に申し上げますと、これは人間のみならずあらゆる動物の分娩というものは一つの自然現象であるということから、やや軽く見られたきらいは私どももそれはもう認めております。したがって、これが慣行料金という形で従来決められてきたんでございますけれども、もしもこれが、ですからこれは分娩にしても、つわりにしても、たとえばつわりを取り上げてみましても、これが妊婦としての一般現象である場合には保険は適用できないが、あくまで異常になったつわりというものは、これは保険の適用になる。分娩においてもしかりであって、正常なものは医療の対象とならないというところに、私は基本的な問題があるのじゃないかと思うのです。ですから、基本的にはやっぱり私はそこにひっかかりがあると思うのです。
○柏原ヤス君 ですから出産というものは病気であるかないかが問題であると、そんなことは考える必要はありませんよ。出産というものは人類始まって以来ずっと行われておることなんです。それが一番大事じゃないですか。それを病気であるかどうかなんていうことで区別をして軽く見ていく、重要視しないなんていうことは、今後物笑いの種になりますよ。考え方を変えればいいんでしょう。それを変えたからと言ったって国民はおかしいと思いませんよ。そんなことを言っている方がおかしいと思って、それで私はこうやってくどくど言っているわけです。だからもっとすっきりと、前向きの人間尊重の新しい時代に即応した考え方でいってこそ社会保障の充実であり、推進じゃないんですか。
○政府委員(山下徳夫君) 先生のおっしゃるとおり、これは病気であるかどうかということよりも、実質的に九〇%以上が入院分娩になっている今日の実態をとらえると、やはり私どもも先生のおっしゃるような方向に近づけなきゃいけない、これはもう十分わかります。ただ現行制度としていわゆる医療ではない、医療類似行為と申しますか、いわゆる助産婦による取り上げと申しますか、普通の言葉で言いますと。そういう制度自体も今日残っておりますので、そこらあたりとの調整と申しますか、これはやっぱりなるたけ早く解決するような努力はいたさなけりゃいかぬと思っております。
○柏原ヤス君 政務次官のお答えですからもっと力強い、そして革新的なお一言があってもいいんですよ、いかがですか。
○政府委員(山下徳夫君) そういうことで国際婦人年でもありますし、あるいはILOの義務受諾をするためにも前向きで解決するために、これは社保審に現在審議をお願いしているのもそういう態度からでございますから、ひとつ誠意はお認めいただきたい。
○柏原ヤス君 そこでわが国の妊産婦の死亡率、これは先進国に比べて数倍も高い現状です。これはここでくどくど申し上げる必要もないんですけれども、昭和四十八年の数字で出生一万人に対して三・八、昭和四十五年の数字ではスウェーデンは一人、イギリスでは一・九人、カナダでは二人、フランスでは二・八人。ですから二倍から四倍の高率になっております。この母体が死亡するということは、母性保健上最悪の事態であると。あるお医者さんは、婦人年に日本が一番取り上げなきゃならないのはこの問題じゃないかなどと言って注意を受けたくらいですけれども、その原因は一体どこにあるんでしょうか。
○政府委員(上村一君) いまお話しになりましたように、諸外国に比べまして妊産婦の死亡率二ないし四倍でございます。ただ昭和二十五年に比べますと四分の一以下に下がった。そういう努力は重ねてきておるわけでございますが、こういった妊産婦死亡の大きな原因というものは、一つは妊娠中毒症でございますし、一つは産科の出血、もう一つは敗血症、そういったものが主なものでございます。そこでこれに対する対策ということがどうしても必要になってまいるというふうに考えるわけでございます。
○柏原ヤス君 そこで、いろいろと原因をお述べになりましたが、これを解決する問題の中でも、まずこれが早急になされなければならないと思われるのが、この救急医療体制の整備であると思います。交通事故などのときの救急体制と同じように、産科の救急医療を行えるような整備、妊産婦に一たん事が起こった場合には、直ちに救急処置に当たらせる、これは当然だと思いますが、この救急医療体制の整備はぜひ行うべきですね。そしてどんなふうにやるお考えでしょうか。
○政府委員(上村一君) いま御指摘になりましたように、従来、わが国では分娩というのは動物の自然現象のように軽く考えられてきたきらいがあるわけでございます。そういったことから考えてみますと、妊産婦の死亡率が諸外国に比べて高いと。それに対しては、御指摘のように、どうしても分娩の際の出血、そういった事柄あるいはそれ以外のいろんな異常、それに緊急に対処することが必要だというふうに考えておりまして、いま厚生省では、医療供給体制や要員の確保、そういった問題を考えながら目下検討しておる最中でございまして、いま、きょうの段階でこういう考え方であるということまで申し上げるような状況ではございません。
○柏原ヤス君 時間が参りましたので最後にまとめてお聞きしておきたいと思います。 その一つは、妊産婦の健康管理を制度化すべきであると。フランスでは家族手当の改善法を行って、産後手当制度というものも創設したということを聞いております。こういう点、ぜひ健康管理を制度化すべきである、これが一点です。 それから、現在妊産婦の健康検査、これは保健所で行われております。実績は八十二万人という数が出ておりますが、いかにも健康検査がよく行われているように数字の上では感じられるんですが、実はそうじゃないんですね。これは計算してみますと、非常に健康検査が行われておりません。そこで、病院や産科診療所、そういうところでお産をいまほとんどするんですけれども、その健康検査というものが非常にお金がかかっている。ですから、ぜひこれは保健所あるいは母子健康センター、そういうところで妊産婦の保健サービス、これが促進されなければならない。これに対する対策を持っていらっしゃるかどうか。 それから精密検査、これは現在は妊娠中毒、糖尿病、こういうものに医療費の援助がございますが、死亡の大きな原因は出血なんです。その出血の原因は貧血だと。また心臓疾患の場合も非常に多いと。これは医療費で見るべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。 以上で、あとは厚生大臣お見えになったときにお聞きするとして、以上でございます。
○政府委員(上村一君) 私ども妊産婦の対策を考えます場合にどうしても必要なことというのは、医療費の負担もさることながら、健康管理の体制をつくることが一番大事だというふうに考えております。そこで、健康管理体制がないかと言うとそうじゃございませんで、現在、母子保健法を中心に妊産婦の健康管理ということをやっておるわけでございます。一つは、妊娠をしました場合には必ず届け出てもらうと、届け出に基づいて保健指導をすると。それから健康診査につきましても、いま保健所だけで実施しておるわけじゃございませんで、妊婦につきましては一般の医療機関でも、何と申しますか、一般の健康診査とそれから精密検査というのを公費の負担でやらせることにしておるわけでございます。さらに保健所では、そういった個別的な指導のほかに、グループの指導、ことに妊娠中毒症なり高年初産のおそれのあるような妊産婦については訪問指導を行わせるようにしておるわけでございます。 妊産婦の死亡原因の中で大きなウェートを占める病気に対する対策でございますが、いま御指摘のように、妊娠中毒症とそれから糖尿病、それにつきましては公費で負担をすると。保険の自己負担分を療養費払いという形で肩がわりするわけでございますけれども、そういうことをやっておるわけでございます。出血等その他について、妊産婦に対する生命の危険の多いそういったものについて、これから積極的に考えていく必要があるんじゃないかと思うわけでございますが、事柄が医療保障全般に関係する問題でございますので、これをいま直ちに結論を出すわけにはまいらないというふうに考えております。
○中沢伊登子君 初めて外務委員会に出さしていただいたんですが、ちょうど幸い、いいチャンスを与えられたと喜んでおります。と申しますのは国際婦人年を記念して、ただいまメキシコシティーで開催されている世界婦人大会に出席をいたしまして昨晩八時半ごろに羽田着で第一陣として五名の議員が帰ってまいりました。外務省を初め関係者の方々のいろいろの御配慮に対しまして心から感謝を申し上げたいと思います。特にメキシコにおきましては、在留の大使館の皆さんや、外務省から派遣された皆さんにはいろいろお世話になりましたことを申し添えておきたいと思います。本当にありがとうございました。 そこで、今度のメキシコ大会のことにちょっと触れて、質問に先立って御報告やら御質問をしたいと思うわけですが、一言で申しますと、今度の会議で感じたことは、いわゆる先進国と開発途上国との格差の激しいことでございました。当初は政治色の非常に強い発言が多くって、開発途上国すなわち第三世界と先進国との対立すら感じられるくらい、開発途上国の人たちの意見は大変厳しょうございましたし、先進国の影は薄い感じで、むしろ、被告の場に立たされた感じさえいたしました。その上、背景としてあるものは、人口問題であり食糧問題であり、あるいは資源問題でありましたし、第三世界の中には、女性の問題どころではない、男も女も共同して、まず貧困、病気、無知の恐ろしさ、こういったものと闘わなければならないというような意見が大変強く主張されておりました。さらに、先進国は第三世界にもっともっと配慮が欲しいと、こういう意見は当然のこととして私は受けとめてまいったつもりでございます。日本では文盲率はゼロと言ってもいいくらいでございますが、まず文盲と闘わねばならない、子供は産んでも半数近く死ぬので一世帯十四、五人も産んでいるといったような国もございました。そしてまた、第三世界は、かつて先進国に植民地政策によって搾取をされてきたし、現在もなお搾取をされている、とにかく、経済発展、経済自立なしには世界平和も国際的な婦人の連帯も望めないというような激しい口調でございました。したがって、先進国の婦人の悩みと開発途上国の婦人の悩みとの間には大きな隔りがありましたし、この格差は今後ますます広がっていくでしょうと思われます。それは、とりもなおさず、先進国と第三世界とのいろいろなギャップにもなるだろうと思います。日本外交もアメリカ追随に明け暮れていてはならないと強く私は思った次第でございます。そこで、第三世界と先進国間とは別々な会議を持つべきであり、それも、アジア地域、アフリカ地域、南米地域のようなブロック別にしてはどうか、こういうような意見さえあったわけでございます。私は、実は、きょうの質問がありましたから、この一週間の留守中の新聞に目を通すどころではありませんでしたが、いずれ、みんなで報告会もしなければならないと考えておりますが、毎日の新聞報道などできっと大臣や政務次官も婦人会議のことは十分御承知のことと存じますが、ただいま申し上げましたようなわずかな私の印象を申し上げましたが、このことについてどのようにお考えになっておりますか、第一問としてお伺いをしたいと思います。感想をお聞かせいただきたいと思います。
○政府委員(羽田野忠文君) ただいま先生から、メキシコにおける世界婦人年の婦人会議の模様並びに先生がその会議において把握されたことのお話を承りまして非常に参考になり、非常に示唆を受けました。 いろんな条件が違い、あるいは考え方の違う人々が集まってそこに意見を出し合うということは、婦人の問題の解決だけでなくして、婦人の目から見た、いまからの世界をどうしていくか、世界の問題点は何であるか、それをどう解決していかなきゃならないか、こういう点に世界の婦人が集まって目を開いたということは、私は非常にすばらしいことであったと思いますし、外交の上にも非常に参考にさしていただく点が多うございます。 そこで、婦人の目からごらんになった、あるいは婦人が集まって討議された、このことは、今後のいろんな世界の共通の問題解決の方法として、また日本外交の面においても参考にさしていただいて、大いに活用さしていただきたい、こういうふうに考えております。
○中沢伊登子君 そのような世界会議の中で、まさに日本は先進国であると言ってもいいわけですけれども、いま申し上げましたようないろいろな話の中で、女性の地位も先進国並みとお考えでございますか、いかがですか。
○政府委員(羽田野忠文君) これはいろいろな見方があると思います。しかし、日本それ自体はやはり先進国の、しかも担当上位に位する国であると思いますし、日本における婦人の地位も、やはり世界のそれぞれの国に比べて、日本より婦人の地位がより高い国もありますけれども、やはり世界のレベルの中では、わが国の婦人の地位というものは高い位置にあるというふうに考えます。
○中沢伊登子君 実は昨晩帰って参りまして、早速の質問なので、十分準備はできておりませんけれども、私がこの間会議に参加してみまして、確かに経済的には日本は先進国である。世界の第二位とか第三位とかということをよく申しますが、確かにその点では世界の先進国と言っていいと思いますが、私は各国のいろいろな発言を聞いてみまして、内容的においては、特に婦人の問題や婦人の地位においては先進国と開発途上国との中間、あるいはそれ以下ではなかろうかという感じが実はしたわけです。ひどい人になりますと、途上国並みだと言う人もございます。勤労婦人の扱いや妻の座あるいは母性といった基本的な面で特にそうとしか思えないわけでございます。先ほども柏原委員から、ずいぶんしつこいくらいの御質問があったことでも御理解いただけたかと思いますが、今度のILO百二号の批准は、今国会で批准をする予定になってきたのは、長年にわたる懸案であったこの問題に対して、特に対外的には最低基準さえ満たし得ない経済大国というような言葉に代表される国際社会における日本の地位向上に対する国内制度貧弱のアンバランスが国際的な非難を浴びた、こういうことによるものだと私は思います。 そこでこの条約を見てみますと、まず批准をしている二十五カ国を見ますと、西ドイツ、ベルギーなど欧州各国はほとんど批准国でありますし、義務受諾部門の比率も相当高うございます。一方先進国でもあり、社会保障もすぐれていると言われるアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、また社会主義国はユーゴースラビアを除いて批准国となっておりません。政府はこのような現象をどう見ているのか、また、この条約の特徴というものをどうごらんになっておられるのか、お答えをいただきたいと思います。
○政府委員(羽田野忠文君) わが国のいわゆる先進国としてのいろんな条件、持に経済成長、その結果国民所得、こういう経済面で非常に世界のランクが上になっているのに比べて、いわゆる社会保障の面、これがおくれているということは、ILO百二号条約を今回批准するにしても、その九部門のうち四部門しか義務受諾ができないというようなことは、非常におくれてバランスを失しているのじゃないかというような御意見のように承りました。結果的に見て、私もそういう現象が必ずしもなきにしもあらずと思います。しかし、これは一つの私は経過的な現象だと思うのであります。日本が敗戦のあの悲劇の中から立ち上がって、急速に経済成長を遂げた。この経済成長が先に進んで、その経済力によってだんだん福祉部門、社会保障部門というものが充実していく。現在その経済成長の次に充実しなければならないものが充実していくその段階、そういう経過的措置の中から見ると、なるほど経済成長はしているけれども、福祉やあるいは社会保障という面がおくれているのじゃないかと言われる現象が出てきておりますが、これはどこの国でも、社会保障が非常に発達している国でも、やはり経済成長の方が先行をして、それにおくれて社会保障、福祉というものがついていくというような現象から見ると、わが国の方も現在社会保障制度も急速に充実しつつある。その経過的な状態だというふうに観察をいたしております。 〔委員長退席、理事寺本広作君着席〕
○中沢伊登子君 いまおっしゃられましたように、政府は条約のこのような特徴を十分認識され、分析された上で批准に踏み切ろうとされていると思いますが、わが国にはわが国なりの社会保障のパターンがあると思います。今回義務受諾できない五部門のそれぞれの理由については、すでにこの間の委員会で御説明があったようでございますので、それを省いて、条約に適合するためには、わが国の制度を基本的に改めなければならないのではないかと思いますが、その点はいかがでございますか。
○政府委員(山下徳夫君) この問題につきましては、もうかなり御質問に対してお答えをしたところでございますが、先ほども申し上げましたように ひとつなるたけ義務受諾できるものからということで努力をいたしておりますし、ただ、従来の日本の慣行と申しますか、それぞれの部門について、やはり必ずしもILOに義務受諾できないから非常におくれているとは一言に言えない。たとえば児童手当につきましても、日本の賃金の体系の中に家族手当というものがありまして、これを全部児童手当に一本化した場合には、大体義務受諾できるぐらいの総額になるかとも思います。そういうものの整備であるとか、あるいはまた、先ほどからこれも御説明申し上げました分娩に対する問題についても、従来の日本の一つの慣行として、やっぱり必ずしも直ちに切りかえ得るような制度ではなかったということでございますから、ひとつ先ほど申し上げましたように、この前申し上げたように、これを一つの機会として早く義務受諾できるように格段の努力は払わなければならぬと、このように思っております。
○中沢伊登子君 仰せのとおりだと思います。私は 日本は日本なりの社会保障のパターンがあると、こう申し上げたのはその点だと思います。 そこで、いまいろいろな児童手当や分娩の話が出ましたが、後ほどそれらについても触れていきたいと思いますが、まず母性医療給付の部門では、いままでの御答弁の中では、分娩費の取り扱いを現行の健康保険法による給付額六万円を実勢費用まで引き上げるということによって批准に合致させたいということを言っておられますが、五月の二十七日に私の方の社労の委員であります柄谷さんが一つ例をとって御質問申し上げております。 それは、二月二十五日に出産をされた人の資料によりますと、これは国立相模原病院でお産をされた方でございますが、その費用が全部で十六万二千四百三十円という計算が出ているわけです。これについても政務次官は御承知だと思いますけれども、通院料が七千七百七十円、これ十回分です。入院十一日分が十四万三千十円です。産後一カ月間の健診が千五百円、それから入院中のリース代千五百円、その他胎盤処理料等の雑費が約七千七百円、こういうことで合計をいたしますと十六万二千四百三十円ということになっているわけでございますから、いまの出産手当の六万円というのは本当に約三分の一だと言ってもいいくらいでございますが、この六万円というのは昭和四十八年に改正したもので、二年間で相当またアップをしてしまったと、こういうことになるわけでございますが、これからも、引き上げたとしても実情にそぐわなくなるのではないかということは当然のことだと言ってもいいと思います。すなわち、一時的には基準を満たせたとしてもすぐに基準に足りなくなる現象が起こってまいります。政府は、義務受諾後は毎年給付額を見直していくということにするのですか、どうですか、その点は。
○政府委員(山下徳夫君) 御承知のとおり、六万円というこの保障の問題につきましても、あくまで最低保障というたてまえでこの額が決められておるわけでございます。そうしますと、たとえば、先ほども申し上げましたように、助産婦扱いの場合は現在大体四万五千円前後ではないかと私は承知いたしております。しかしながら、これも先ほど申し上げましたように、すでに九〇%以上が入院分娩であれば、そのようにやっぱりわれわれとしても考え方を改める必要がある。その場合には一番安い国立病院でも正常分娩の場合でやはり七、八万円かかるんじゃないかということでございますから、社保審等にいろいろお願いして、いま検討願っているのもそういう趣旨からでございますし、そういうのを一つの柱として今後考え方を進めていかなきゃいかぬと、こう思っております。
○中沢伊登子君 いまおっしゃられましたように、政府は母性医療給付については分娩費の取り扱いのみを考えているようですが、条約では、「妊娠、分べん及びこれらの結果について」とうたっております。つまりもっと幅の広い母性保障という問題で考えるべきだと思いますが、わが国には本当の意味で女子の権利保障や女性保障の立場に立った立法措置はまだ行われておりません。 そこで、わが党は、この間私が趣旨説明をさせていただいたのですが、母性保障基本法の制定の提案をいたしました。ILO条約にはこの百二号より高度な母性保護に関する第百三号条約がありますが、この条約の批准の見通しも含めて、この際、母性の基本にかかわる単独の立法を考える必要があるのではないかと思いますが、その点についてはいかがお考えでございましょうか。
○政府委員(上村一君) 民社党の方から御提案になりました母性保障基本法案は私も拝見をしたわけでございます。それで、いまわが国の母性保障の具体的な施策、先ほどもお答えしたわけでございますが、母子保健法とか、あるいは児童福祉法とかいろいろございまして、そういった法律に基づいて妊産婦に対する保健指導をやり、健康診査をやり、それから母子栄養の強化事業をやり、それから母子健康センターというものを設置する、そういった健康管理体制というものを整備しておるわけでございますし、それから分娩費につきましては、いま話題になりましたけれども、社会保険の中で支給されておる。それから保育所の計画的な整備あるいは費用負担の問題等につきましては、これまた児童福祉法の中で措置されておりまして、私どもとしては、こういった法律はいろいろございますけれども、そういった法律を踏まえて、これからも施策の充実を図っていかなければならないというふうに思うわけでございます。したがって、それらを取りまとめた母性保障に関する総合的な立法について果たして必要かどうかにつきましては慎重に考えさしていただきたいというふうに思うわけでございます。
○中沢伊登子君 児童福祉法があって、勤労婦人福祉法があって、それから老人福祉法がありますね。ところが、総合的な母性に対する基本法というのはないわけです。農村の婦人とか家庭にいる奥さんとか、いろいろないわゆる母性に対する保障法というのはいままでまだありません、基本法がね。ですから、私はこの法律案を提案をしたわけですが、これはもうずいぶんお読みいただいたと思いますけれども、私はぜひともこの母性保障基本法というものができれば本当にすべての女性が網羅できる、こういうことを自信を持って今度御提案を申し上げたわけですけれども、これからもいろいろ検討をしていただかなければなりませんけれども、今度のこの母性保障基本法というのは、理念とともに母性にかかわる総合的な審議会制度がないものですから、ぜひともこの審議会をつくるようにということがこの主な提案になっているわけですけれども、いま日本では行政としては女性の問題も各省の所管に分かれておりますね。文部省あるいは厚生、労働、総理府と、いろいろなところに分かれているし、そしてまた各省内でも局に分かれておりますね。そうすると、そのために審議会も分散しているので母性保障に対する一貫性がありません。ばらばらでございます。これからの日本にとっては、メキシコにおける世界婦人大会でも二〇六項目の行動計画が恐らく全部採択されると思います。私が分科会の第一分科会に出てみましたときも、相当数の各国がこれに対する意見を申し述べておりましたが、ほとんどの国はこの行動計画に賛成でございますという賛意を発表しておりました。中に二、三、修正案を出したり、あるいはもっとこういうところにつけ加えてほしいという意見はありましたけれども、もしもこの二〇六項目が採択されますと、日本もこれからはこの中から母性に関する項目の選択や、あるいは優先順位を決めたり年次計画も立てなければならないと思いますが、そのようなときに、この審議会を一つきちんとしたものを持っていなければ、十年後の成果をもう一遍検討するということが今度の大会で約束をされておりますので、ぜひともこの総合的な審議会の制度をつくるべきだと思いますが、その点いかがでございますか。
○政府委員(上村一君) 民社党から御提案になりました基本法の中で、第七章でございますか、一定数以上の婦人代表を含めた審議会を設けて内閣総理大臣なり関係大臣の諮問に答える、必要に応じて意見を述べるというふうになっているわけでございます。それで内閣総理大臣に対して諮問に答え意見を具申するような審議会でございますので、どうも私自身からこれにつきましてどうこうするということはお答えにくいというふうに考えております。ただ、私ども所管の母子福祉なり、あるいは母子保健等につきましては、中央児童福祉審議会の中で総合的にいろいろ検討しておるということは御案内のとおりだと思います。
○中沢伊登子君 それでは三時から大臣がお見えになるようでございますから、この点は大臣にお尋ねをすることにいたします。 その次に、厚生年金のことについて伺いたいんですが、遺族給付について山下次官は十九日のこの委員会において、来年度において義務受諾できるように国内制度を改正すると述べられましたが、改正に際して百二十八号条約の批准をはかることも考えておられるかどうか、その点伺いたいと思います。
○政府委員(曾根田郁夫君) 先般御指摘のような御質問に対しまして、できるだけ来年度の制度見直しの際に、百二号条約の基準に合致するように検討いたしたいという旨お答えいたしましたけれども、さらにここで百二十八号まで来年度の改正で一気に改善できるかどうかにつきましては、まあ三〇%と三五%という、そういうあれもございますので、どうもここでその点まで確約するのはいかがなものであろうか、とりあえず、百二号の線を確保することを当面のやはり重点にいたしたいという考えでございます。
○中沢伊登子君 厚生年金における遺族年金の額の引き上げはもちろんのことですが、国民年金における母子年金、寡婦年金、遺児年金の額も同様に引き上げられるべきではないかと思いますが、その点はどうですか。
○政府委員(曾根田郁夫君) 来年度の厚生年金あるいは国民年金、これの見直しのやはり一つの主眼は年金額の見直しの問題でございますので、基本年金額の改定に伴いまして、当然母子、寡婦等の年金も相応の引き上げが当然行われるものと考えておりますけれども、具体的なレベルにつきましては、目下関係審議会で検討いたしておりますので、しばらくお待ちいただきたいと思います。
○中沢伊登子君 二つ以上の年金制度に加入していた人は、それぞれの加入期間を通算して老齢年金が支給されることになっていますね。いわゆる通算老齢年金ですが、その受給者が死亡した場合には、遺族年金が支給されないのはどうしても理解できないわけです。厚生年金と船員保険については相互に通算する措置が昭和二十九年にされて以来、遺族年金が支給されておりますね。この点はどういうことになるのですか、早急に改善してすべてに行われるようにすべきではないかと思いますが、その点お答えをいただきたい。
○政府委員(曾根田郁夫君) この点も来年度の改正のやはり一つの問題点とされておりまして、また事実その方面の要望も強いものですから、検討いたしたいと思っておりますが、これは厚生年金等の厚生省所管の年金制度だけの問題ではございませんで、各種公的年金に共通する問題でもございますので、現在各省間で、関係省庁間での連絡会議もございますので、そこでも十分論議を尽くしまして、できるだけ来年の改正に間に合うものなら間に合わしたいというふうに考えております。
○中沢伊登子君 柏原先生流に言いますと、この場限りの御答弁であってはならないと思います。本当に来年度、来年度とおっしゃっておられますけれども、本当にこれはきっちりと一遍見直しをしてもらいたいし、おっしゃったような御答弁に対して責任を持ってやっていただきたいと要望をしておきます。 その次に移りますが、わが党は福止年金等の改革について、拠出の多寡や有無とは関係なく、最低額を一人当たり国民所得の四〇%に当たる額をナショナルミニマムとして保障する制度を創設するように主張しておりますが、この提案についてはどうお考えでございましょうか。
○政府委員(曾根田郁夫君) 非常にむずかしい問題でございますが、将来の年金制度のあり方につきまして、これはいろいろの案が当然考えられると思いますけれども、その際にそのようなナショナルミニマム的な年金を各年金制度の共通の基盤として設定すると、一つの考えとして私は検討に値する御意見だろうと思っております。具体的にそれをどういう手順で、特に一番の問題は、やはりそのレベルをどの辺に考えるか、この費用負担をどういうふうに、これはまあいきなり一遍にその水準までということになりますと相当の負担だろうと思いますので、そういう費用負担をどうするか、非常にむずかしい問題だろうと思いますけれども、一つの検討に値する考えではないかというふうに考えております。
○中沢伊登子君 そうすると……、政務次官がいま何か衆議院の社労にお出かけになるということで、どうぞいらしてください。そのうちに大臣が見えると思います。 それで、いま年金の続きを質問さしていただくんですが、妻の年金権について、御承知のとおり厚生年金加入者の妻に対しては加給年金という形で夫の年金と一緒になって支給される額がございますね。これは月に二千四百円でありますけれども、厚生年金において妻の加給年金は大幅に引き上げるべきではないかと思います。この辺でもずいぶん妻の地位は低いと思う。妻の座は低いと思いますね。わずか二千四百円です。また年金は当然個人単位であるべきだと思いますが、その点はどうなんでしょう。
○政府委員(曾根田郁夫君) この妻の取り扱いに関連いたしまして、具体的に現在の厚生年金における加給年金額の指摘がございましたけれども、従来この加給年金は、御承知のように公務員の扶養手当、これをまあ一応参考に設定しておりますけれども、諸外国等の例を見ましても、これはたとえば基本年金額の一定割合とか、いろんな設定の仕方もございますし、これがまあ唯一絶対のものとは考えておりません。問題はその加給年金、要するに夫婦単位と、その単身の場合の結局まあ年金額の格差をどういうふうに考えるかという問題だろうと思うんですけれども、その場合に夫婦単位の方の比重をかなり重くする、これは一つの方向だろうと思うのですけれども、さりとて単身の者については、それじゃいまのレベルを現実問題として引き下げられるかどうか、そういう問題もございますから、全体としてはレベルアップをしていかなければならない。その中において加給金というものをどういうふうに評価し、夫婦単位の年金額の水準を単身との間においてどのように位置づけるか、十分検討いたしたいと思っておりますけれども、何分非常にむずかしい問題でございますので、来年の改正の際にどこまで具体的に結論が出せるか、ここではしかとどうも御返事できかねますけれども、研究してみたいと思っております。
○中沢伊登子君 恐らくこの問題は社労でもいろいろ議論があるところでしょうし、また社労でやるべき問題だと思いますので、まあ年金の問題はその程度にさしていただきます。 この百二号条約は船員には適用されないわけですね。百二号のみを批准するのは片手落ちではないかと思いますが、その点はどうなんでしょう。船員の社会保障に関する条約はまたどのようなものがあるのか、その批准についてはどう考えておるのかをあわせてお答えをいただきたいと思います。
○説明員(綱島衛君) この百二号条約は、先生おっしゃいましたように船員には適用しないと、こう書いてございます。それでは船員関係の社会保障条約はどうなっているかと申しますと、ただいまのところ、戦前でございますが、一つ五十六号がございまして、これは船員の疾病保険に関する条約でございます。それから昭和二十一年でございますが、このときに船員の社会保障条約というのがございます。さらに同じ年に船員年金条約というのがございます。これらについてはいまだ批准いたしておりませんが、船員関係の、広くその社会保障関係は船員法それから船員保険法でカバーしておるわけでございまして、この点につきましてもいろいろ検討を進めております。多少技術的な問題で、解釈等で——おおむね全体カバーできると思うんでございますけれども、多少まだ解明せねばならぬ点もございまして、それができまして、意見が熟しましたら批准をお願いしたいと、こういうふうな考え方で検討を進めております。
○中沢伊登子君 今後の見通しはどの程度ですか、その船員保険。
○説明員(綱島衛君) はっきりした日限と申しますか、これはただいまはまだお約束できませんのですが。——なぜかと申しますと、たとえば船員法でカバーしている部分、それから船員保険でカバーしている部分、その点につきまして、当時の——この条約の立法過程で、この辺のことを、何分古いものでございますから、参照せねばいけませんのと、それからやはり今回何と申しましてもまず初めての社会保障条約ということで、この膨大な百二号の方に取り組んでまいりましたので、なかなか思うようにいままでは進んできておりません。そういう事情でございます。
○中沢伊登子君 それでは、まだ時間が少しありますので、ちょうど大臣がお見えになりましたので、大臣を実はお待ちしていたわけですけれども、大臣にまず——先ほど御質問をしたんですけれども、大臣でなければなかなかお答えができないという問題がありましたから、それについて御質問を申し上げたいと思います。 それはまず、社会労働委員会において五月二十七日に、わが党の柄谷委員が御質問をした問題でございますが、その一つは出産給付の問題です。このILOでも最低基準として今度はいろいろ取り上げているわけですが、いま、昭和四十八年に出産給付が六万円になりましたね。その中で柄谷委員が取り上げたものは、国立の相模原病院での例をとられたことを思い出していただきたいんですけれども、それは、二月の二十五日に出産をしたある方の資料に基づきますと、国立病院であるのに十六万二千四百三十円という数字が出てきた。それは、通院料が七千七百七十円、これは十回分です。それから入院十一日分で十四万三千十円、産後一カ月間の健診が千五百円、それから入院中のリース代が千五百円、その他胎盤処理料等の雑費が約七千七百円と、こういうことで十六万二千四百三十円というのが出ておるようでございますが、この問題について、まあILOの問題は最低保障だと、こういう答弁があったわけですけれども、この分娩費を現金給付にして今後スライド制にさせるべきだと思いますが、そうでなければ毎年こう分娩給付を上げていかなきゃいけないわけですね。それですから、現金給付にして今後スライドにさせるべきだと思いますが、その点はどうなんですか。
○国務大臣(田中正巳君) ILO百二号条約における分娩給付、これは私の知る限りでは、本人に負担をさせるなということを規定しておると、本人に負担をさせるなと、こういうふうなことが最大の要請になっているということであります。したがって、必ずしも現物給付をせよということではなさそうでございます。わが国における諸制度は今日まで現金給付でやってきたわけでございますが、この現金給付について実勢からかなり実はただいまの状勢では乖離をしておるわけでございます。したがいまして、これについては実勢を離れないように今後給付の改善をいたさなければならぬ。しからばスライドをさせるべきであるという先生の御意見でございますが、必ずしもどうも出産に関する費用というものが定型的な動きをしておらないようでございますので、その場合いかなるスライドをさせていいのか、まあなかなか問題だと、むしろ実勢にできるだけ乖離をしないように逐次アプローチするという手法が一番よろしいのではなかろうか、かように考えておるところでございます。
○中沢伊登子君 柄谷委員の質問のときの御答弁は、できるだけ早い機会に現金給付で実勢から余り離れないように改善を加えなければいけない、とりあえずそういう方向でいきたい、こういうふうにやっぱりお答えをしていらっしゃるわけですね。まあぜひともその点で田中大臣の間にそういうふうな制度にしていただきたい、このように考えます。 それから、もう一つだけ大臣に私は御質問申し上げたいのは、いまも御質問申し上げたんですが、民社党が提案をいたしました母性保障基本法、この基本法に対して大臣はどのようにお考えになっていらっしゃいますか、それが一つ。それからもう一つは、その基本法に対する主な点は二つあるわけです。それは、母性保障というものの理念を一つうたっておりますが、もう一つは審議会をつくるべきだと、母性の問題に対して一つの総合的な審議会をつくるべきだと、こういうことを申し上げているわけですが、その審議会の問題でいまここで大分やりとりをしていたんですが、その審議会について、ぜひとも審議会をつくっていただかなければならない、こういうことをいま申し上げておったんですが、その点について大臣のお考えを伺いたいと思うわけです。 で、繰り返して申し上げますと、実はメキシコの世界婦人大会に私行って、ゆうべ帰ってまいりましてね、——どうもいろいろ皆さんから御配慮いただいてありがとうございました。 〔理事寺本広作君退席、委員長着席〕 そこで、この行動計画二〇六項目があるわけですけれども、私はきょうの質問があったものですから昨晩実は帰ってきてしまったわけですが、それについては第一委員会というのでこの行動計画をいろいろ審議をしておりましたが、大半の国はこの行動計画二〇六項目に賛意を表明しておりました。賛意を表明しておりましたから、これが採択されますと、この中から母性に関する項目をずいぶん引っ張り出して選択をしなければなりません。それから選択をした中でどれに優先順位を決めるか、年次計画をどうして立てていくかというような問題が次には起こってくると思います。それから、十年後にはまたこの世界大会の成果を検討しなければならないことになっておりますので、ぜひともこの母性保障の問題については審議会をつくって、この十年間に行動計画を完成させなければならないという責任があるわけです。ですから、いまの日本の行政においては女性の問題、母性の問題いろんなそういった問題については各省の所管が分かれておりますね。文部、厚生、労働、総理府、そうしてまたそれがその中でいろんな各局に分かれておりますので、母性の問題一つ取り上げても一貫性がなくて、みんな各省でばらばらでございますので、この世界大会を機会に、ぜひとも私どもの提案した母性保障基本法でうたっております審議会を早急につくってもらわなければならない大変いいチャンスだと思いますんでね、ひとつこの審議会を早急につくっていただけるかどうか、その点をお伺いをしたわけでございます。
○国務大臣(田中正巳君) まず第一に、民社党が御提出になった母性保障基本法、私もしさいに読ましていただきました。まあ読んでみますると、これには精神をうたった面と、施策についての基本的な考え方というものと、二つあるようでございました。施策の個々の問題については余り跳びはねたようなものはないようでございまして、きわめて無理のない御提案というふうに受け取ります。裏返しにして言えば、程度の差こそあれ、今日政府の方でそれぞれやっている施策をあそこへ書いたということのようでございました。そのような意味では私どもとしてはあの項目について余り、あれは困るとか、これはどうもやれないとかいうことはないと思いますが、問題は、私は、あのような法律の形で施策を推進するのがいいのか、そしてできるのか、——私は基本的に実は、基本法というものを一体どういう分野に立法いたすべきものであるかということについていろいろ意見を持っているわけでありまして、当省所管の個々の政策について基本法を設けるということは一体どういうものであろうかという基本的な立法技術上の私は疑問を持っているわけでございまして、したがいましてそういう点。それから、まあ大変俗なことでございますが、ただいま私衆議院の本会議から出てまいりましたけれども、農業白書をめぐっていろいろ長々と議論をしておりましたが、あの基本法に書いているように、講じようとする施策、そして講じた施策というものを本会議で質疑応答するというのがたくさん出てきたなら、これは国会運営上問題だという考えもありますが、こういうことは本質的な問題じゃございません。いずれにいたしましても、基本法をつくって施策を進めるべきか、あるいは個々のあの中に書いている施策、それはすなわちいま大なり小なり政府側でもって、各省庁でやっている施策を着実に伸ばしていくべきか、いろいろと検討をいたしておるところでございまして、いまだ私があの法案についてこれがぜひ成立をさすべきものであるとか、あるいはそうでないという結論を申し上げるには若干の検討をさせていただきたいというふうに思うわけであります。余り大仰に振りかぶってその結果がよくないというと、大分しかられた例も実はございますんで、その辺のことは考えなければなるまいというふうに思うわけでございます。 第二の審議会の問題でございますが、これはあの法律の中に実は書いてございますようでございますが、いま私が答弁をしようと思ったことを先生は実は先に申されてしまったわけでありまして、私としては、この審議会を——国際婦人年にちなむ世界会議の行動計画等が出そろったところで、これをどうやってわが国においてはアダプトしていくかといったようなことをやる場合に、こういったような審議会というのは私は一つのレーゾンデートルがあるんじゃないかというふうに思っておりますが、しかし、これについては先生御説のとおり、厚生省所管だけではございません、各省庁にまたがっておりますので、厚生大臣からいまあれこれそのことについて断定的なお答えをするのは私いささか越権かと思いますので、私自身の気持ちをそのように申し上げるわけでございます。
○中沢伊登子君 それじゃ私の質問を終わります。 —————————————
○委員長(二木謙吾君) この際、委員の異動について御報告いたします。 本日、星野力君が委員を辞任され、その補欠として沓脱タケ子君が選任されました。 —————————————
○田中寿美子君 厚生大臣、会期末の大変なところであっちこっち引っ張られていらっしゃると思うんですが、どうしても出てきていただきたいということを私どもが要求申し上げましておいでいただいて、ありがとうございます。 百二号条約の批准案件は外務委員会にかかっているわけですが、内容が社労に関係しておりますものでございまして、どうしても厚生大臣に詰めをしておかなければ私ども批准に賛成することができないということできょうはおいで願いましたわけですから、各党がそれぞれ詰めたいところを申し上げるということにしておりますので、ひとつ決意のあるところをちゃんと御答弁いただきたいと思います。 もう十九日の日に実は与党の石本茂さん、大鷹淑子さんも含め、私ども、共産党の沓脱さんも相当長い時間をかけて百二号条約に関連した問題はずいぶんお尋ねしたんですが、どうもぴしっとお答えしていただけない部分が多かったもんですから、それで大臣に来ていただいたわけでございます。 率直に言って、百二号条約をいま批准するということは、二十三年前のこの条約ですが、それでちっともメリットがない。何にもないのにただ批准だけして点数をかせがしてあげるような気がするわけなんです。それならばどうしても取りつけをしておかなきゃいけないということなんですね。百二号条約の内容である九部門のうちの四部門だけが受諾できる一しかも、その四部門のうちの一つ、業務災害給付というのは、その後の百二十一号条約を去年受諾しておりますね。ですから、もうほとんど余り意味のないものです。そうしますと、特に私どもが、今度婦人議員がみんな寄り寄り相談をしまして、母性に関する部分あるいは妻に関する部分、子供に関する部分が全部これは受諾できない、落第点なんですね。それですから、これに関しては年を追ってちゃんと何かを進めていくというような姿勢を出していただきたいという意味で念を押すわけでございます。 まず簡単なものから、いままですでに質疑しましたものの中で一番最短距離にあるというふうに政府委員も説明なすっていらっしゃいますところの遺族給付、これについても厚生大臣の御決意を伺いたいんですが、大体このILO百二号条約というのは非常に幅広くて、社会保障に関して総合的に珍しい条約なんでございますね。ところが、これを大きく分けますと医療保障と所得保障の分類ができる。その医療保障という部門は、後から私、母性給付と医療給付のことに触れたいと思うんですが、さっきから政務次官なんかのお答え、あるいは政府委員のお答えは余り前向いていない。つまり妊娠、分娩及びそれらの結果というもの、つまり母性に関するものを医療の対象と考えないで今日まで来たと、そして今後はもはや社会保障の概念は、病的状態というのが原文です、これはこちらの方の条約はそうなっていないんですね。疾病と負傷になっているんです。ところが病的状況、つまり医療給付の部分と出産給付、この二つに分けるべきものだろうと思います。ですから医療保障の中に出産給付という概念をもう入れるべきときだ、その姿勢を厚生省自身が変えていただかないと困るということを、ひとつこれは労働省にもそういうことを要望したいわけです。 そこでまず簡単な方から申し上げますが、遺族給付ですが、これは厚生大臣も予算委員会で何回か言っていらっしゃいますし、最近も新聞の報道によりますと、八〇%まではいかなくても三分の二くらいまで、つまり遺族年金が二分の一、亡くなった夫のもらっていた年金の二分の一というのは非常に少ない。だから三分の二くらいまでにはしたいというふうなことを厚生省当局が来年の年金の見直しのときに計算しつつあるというふうな報道がされておりますが、これを踏まえましてお尋ねするわけで、百二号条約は批准するけれども一つも進むことがないというんなら私ども賛成できないので、来年、五十一年度見直しのときには、少なくとも遺族給付だけは受諾できるところまで持っていくということについて、厚生大臣の御答弁をいただきたいと思います。
○国務大臣(田中正巳君) 年金における遺族給付の問題ですが、私は実は、百二号条約を批准、受諾するからこの問題を前進させるということよりも、むしろ社会保障プロパーを伸ばすという意味においてこのことをやりたいというふうに考えておるわけであります。わが国において遺族年金の給付水準というのは、御主人の二分の一というのはこれはもう昔からの通り相場で実はあったわけで、どなたも最近までは余り言わなかったんですが、やはりこのごろ非常に批判も多い。私自身も考えてみて、今日の御時世で二分の一というのは低きに失するというふうに思うようになりましたものですから、結論的に申しますれば、かねがね私が答弁しているとおり、年金の財政再計算上来年、昭和五十一年に二年繰り上げてやることにしておりますが、その節の重要な検討課題の一つとして取り上げていきたいということを申しておりますが、もう少しこれを端的に申しますれば、私は是が非でもこれをやろうということをお約束してよろしい、かように思います。ただ、これについては、一体どこまで上げるかというお尋ねがすぐはね返ってくるだろうと思いますが、御存じのとおり、ILOでは従前所得の三〇%、わが国ではいろいろ勘案すると二六%ぐらいにしかならないわけですが、三分の二ではちょっと危ないんじゃないかなと思ったりしておりまして、確実にILO条約の基準をオーバーするようにいたしたいものであるというふうに思っているわけであります。
○田中寿美子君 普通、よその西欧諸国では夫の年金をそのままというのが普通なんですよ、遺族のね。八〇%ぐらいまでというところもあるわけです。ですから、私ども三分の二というのは困りますと思っているのですが、いま厚生大臣も多少疑念を持っていらっしゃるようですから、それは本来なら私はそのままの金額をと言いたいところですけれども、できるだけ三分の二以上というところにしていただきたい、これはもう要望でお答えをおさせするのはちょっとひどいから、厚生大臣の立場に同情しながらぜひ実現していただきたいと思うのです。 それでその際、これは遺族年金の内容についていろいろ問題がまずあるのですね。たとえば夫の死んだ妻の老後の不安ということだけじゃなくて、問題は離婚した妻の場合なんですね。こういう場合に婚姻中の期間の計算なんということはひとつ問題になってくるわけです。これは要望だけにしておきますが、今度の国際婦人年の世界会議で出されております行動計画の中でも、家庭の婦人の家事労働に対する評価というものが問題になっているわけですね。それで婚姻中に尽くした、あるいは普通の離婚しなくても、夫が亡くならなくても、就職したりするようなときに家事労働の評価が十分ないから非常に家庭婦人が不利な立場にある。まして、いまの離婚したような妻の場合の年金給付についてはどういうふうにこれをつなげるかというようなことも、ぜひこれは考慮に入れておいていただきたい。これは要望として。余り時間をとると後のだめ押しができなくなります。 その次には、皆さんが言っております母性給付なのです。さっきも申し上げましたように、母性給付というのは出産給付というふうに言ってもいいかと思うのですが、医療という考えの中に、病気やけがの給付だけじゃなくて出産という、妊娠、分娩とその結果というもの、つまり母性に対して医療を給付するというアイデアが、いまの社会保障ではどんどん進んできて入っているわけですね。ですから、多くの国が現物給付などで出産を見たり、あるいは償還方式をとったりしているわけです。先ほどから柏原委員も言われましたし、ほかの方もみんな言い、私も前回非常にその点は強く主張したのですけれども、妊娠、分娩及びそれらの結果という、その母性給付の内容についての考え方、これは厚生省当局は分娩費に限って一生懸命に説明なさいます。さっきからの説明もそうだった。私はせめて分娩費だけでもそれは自己負担がないようにすべきだということを考えます。それは一点です。しかし、ILO百二号条約で言う母性給付というものの中身は、「妊娠、分べん及びこれらの結果」ですから、妊娠初期のつわりから始まって、出産、そしてその後というところまでも含めるべきだというその考え方について、厚生大臣は母性給付の内容、ILO百二号の内容をどうお考えになるかということ。それから医療の中に将来これは当然入っていくべきものだと、過去においては出産というのは、政務次官によるとこれは自然現象みたいな話だと、そうじやなくて、これは命を産むという種族保存の仕事ですね。ですからこれは社会性があるものですから、やっぱり医療の対象として含めていくという考え方を厚生大臣はどうお思いになるか、まずその二点をお伺いいたします。
○国務大臣(田中正巳君) 第一の御質問ですが、これは条約の第十条(b)項、これをどう読むかということだろうと思いますが、私はまさしく先生のおっしゃるように分娩そのものだけではなしに、妊娠及び分娩、そしてその後というふうに読むべきものだろうと思います。したがいまして、さっき私が答弁したのは分娩に関する質問だったものですから、そこまで敷衍をして御答弁は申し上げませんてしたが、そういうふうに——これ正直言いまするとその後勉強して覚えたわけでございまして、今後私はそういうふうに読まねばならぬというふうに実は思っておるわけであります。 それから第二の分娩を医療の対象にせよということでございますが、医療の対象ということは、結局は医療保険等々において疾病給付の対象にするということに具体的にはつながってくるだろうと思うのでありまして、そこでこれについてはわが国の健康保険制度というのは疾病治療ということが根幹になっておりまして、したがって、いままでこれは現物給付の外にあるわけでございます。しからば分娩を一体このようなふうに普通の疾病と同じように考えられるかどうかということですが、これは物の考え方だろうと私は思います。いまのところ異常分娩だけを疾病として扱っておるということでございますが、どうもこの点については私もまだ結論を得ません。ただいろいろこれは勉強してみますると、どうも欧米の方々と日本人との分娩に対する考え方が少し違うように思いますが、これについてはさらに検討させていただきたい。いまにわかにこれを医療そのものである、あるいは健康保険等における疾病給付の対象にすぐするということについては、私踏ん切れないでおるというところが実情でございます。
○田中寿美子君 厚生大臣、どんどん社会保障に関する考え方が進歩していきますので、日本のILO東京支局の前の専門委員でいらっしゃる高橋武さん、あの方の解説の中でも、社会保障に関する考え方は、ことに医療保障に関しては疾病給付と出産給付という二つにどんどん進みつつあるというふうに世界の流れが変わりつつあるわけですから、疾病と考えてくれというふうに私は申し上げておりませんので、命を生み出す、相当命をかけて命を生むのですから、ですから、それについては社会的な性格を認めて、そうして何らかの形で国が保障していく、私は健康保険が非常に複雑にできておりますから、いまそれをさわることは大変むずかしかろう、それならば別途方法があるんじゃないかということを申し上げているわけですから、これはいますぐにお答えとは申しませんので、ただILO百二号条約の母性給付というところを受諾しようと思ったら、これを何らかの形で保障しなければなりません。自己負担をなくしなければならない。無料出産にさせなくちゃいけない。だからそうするためにはどういうことをしなければならないかということなんですがね。困る点は、つまりここの母性給付が受諾できない点は、政府委員の説明では、分娩費の一部負担があるからということにいつも集中してしまう。それだけじゃないと私は思いますね。そのいまの分娩の結果として起こるもっと幅広く考える部分と、それから妻の部分がありますね。被保険者の妻にも全部これは自己負担があってはいけないという部分がありますでしょう。それから本人の場合は所得の保障がなくちゃなりません。それらの点はどういうところを直さなければこれは受諾できないか、そのことをちょっと御説明願いたいと存じます。
○国務大臣(田中正巳君) そこで、分娩を医療の対象にせよということですが、そういう考え方ならば、私は医療の対象が必ずしも現物給付でなければならないというわけでもあるまいと思いますから、したがって、現行の現金給付でもって自己負担をさせないということになれば、ある程度はやはり要件を満足させることができるだろう、しかし、残念ながら今日はこれの間に、実勢の料金と給付の間にかなりの差があるということが第一の問題と思います。 それから先生がいまおっしゃったような分娩の前、ことに妊娠中の問題ということになりますると、またいろいろと問題がたくさん出てくるわけでありまして、これについては、いまいろいろな形で厚生行政の中で見てはいますものの、これもやはり十分ではございません。たとえば妊娠中毒症あるいは妊娠による糖尿病等々について母性保健対策でやっておりますが、これについてもたとえば所得制限がかかっているとか等々のいろいろな理由があって、一〇〇%ということでないものですから、いまおっしゃったようなもう少し広い意味にこの問題を考えるということになると、さらに検討をし、穴を埋めなきゃアらぬ施策がいろいろあるということを考えておりますので、今後この方面の充実もわれわれとしては掘り下げていかねばなるまい、かように考えているわけです。
○田中寿美子君 それで、たとえば母子保健法もありますね、ああいうものももっと充実さしていくということで、このILO百二号条約が受諾できるような条件にしていくという方向をいろんな方面からやっていくということを考えてほしいわけです。 それから所得保障の方はどうですか、被保険者本人の産前産後休暇中、あるいは妊娠、分娩の結果として起こる所得の喪失に関して保障しなきゃならないですね。六〇%もらっているところはいいですよ、もらえない部分がありはしませんか。
○説明員(綱島衛君) 先生御指摘のように妊娠、分娩の期間中の所得の喪失に対しましては、現在の健康保険法では産前産後それぞれ六週間でございますが、標準報酬の六〇%、こういうことで給付しているわけでございます。したがって、この百二号条約の要求しているところにはその点では合致しているわけでございます。ただし、その健康保険法の適用範囲外の人たち、この点については確かに先生のおっしゃるように問題はございます。
○田中寿美子君 お話を聞いておりますと、遺族給付の方は至近距離にある、多分来年はもう大丈夫だろうと厚生大臣はお約束している。母性給付の方はちょっと道遠しの感じがするんですね。私どもはこの辺を非常に、ぜひ本気で取り組んでもらわないと困ると思っているわけです。手始めとして、これは何も私たちもILOの百二号条約を批准することが目的じゃなくて、厚生大臣もおっしゃいましたように、母性が守られることが先行しなきゃなりませんから、ですから最低限分娩費は実勢に合うようにしていくということが一点ですね。その場合に多少厚生省の方に計算してみてもらいましたら、現在仮に十万円平均として分娩費を計算いたしますと約千五百億ぐらいの金が要るだろうということなんでございます。まだそのほかにも要るかもしれないけれども、一応千五百億ぐらいと考えてみて、遺族給付の方を受諾できる程度にするのには四、五億はかかるだろう。そうすると、大体二千億ぐらいですが、そのくらいは厚生省のあの大きな予算の中で、国際婦人年に当たって少しぐらいプレゼントしてもいいと思うんですが、その辺どうですか。
○国務大臣(田中正巳君) 私も社会保障の充実はこいねがってやまないわけでございますが、折しも先生、どうも悪い時期に到達をいたしまして、来年の一般会計を一体どの程度増を見込めるか、大変どうも意欲はあるんですが、具体的に実際問題としてどこまで伸ばせるかということを非常に悩んでいるというのが私の最近の心境であります。しかし、いまおっしゃったようなものは、これは一般会計によらない、いわゆる特別会計ないしは保険料によるものでございますので、その点についてはいろいろとまた当事者の間で御理解を願いつつ、給付の改善をやりたいと思っておりますが、これも先生御案内のとおり、やはり保険料を増徴するということについては国会等で相当むずかしい問題でございますので、したがいまして、よく関係者の理解を得つつ給付の改善に努めてまいりたい、かように思っております。
○田中寿美子君 それで、母性給付に関しては国際婦人年の世界行動計画を今度ば勧告で受諾してくると思うんです。そうすると、国内行動計画をつくるわけなんですが、年次計画をぜひ立てていただいて、少なくとも分娩費に関しては自己負担をなくすのは今後何年計画だ、それからさらに母性全体を守っていくためには何年ぐらいかけるというふうな、これは社会保障の長期計画の中ではぜひ重要視していただきたいんですが、それはいかがですか。
○国務大臣(田中正巳君) 私どもは前々から申しているとおり、社会保障の中期計画のようなものを考えておりますから、したがって、その節にはまたメキシコの何がございますから、それとあわせまして、ひとつ重要な検討課題にいたしたいというふうに思っていますが、いま具体的に申し上げるだけの検討はいたしておりません。
○田中寿美子君 それぜひやってください、十年間騒ぎますから、婦人は。 時間があれですから、次に廃疾給付のことですが、その次に至近距離にあるとこの間は政府委員が言われた、先ほども柏原さんの御質問の中でその次はどれですかと言ったら、廃疾給付だというふうにお答えになった。これは障害年金の支給開始が最初の診療日から三年目。傷病手当金の支給期間が六カ月、その間にギャップができてくる人がずいぶんいる。その穴を埋める方法を考えていらっしゃるだろうと思うんですが、これは次の見直しの時期にというふうにおっしゃいましたが、そうしますと遺族年金は来年と、廃疾給付の方は来年というわけにいきませんか。
○国務大臣(田中正巳君) これは率直に申して、わが国のこの種の問題に対する考え方がちょっとやはりILOの基準と食い違っておったようでございます。つまり、現物給付である医療と年金とをどうやってくっつけていくかということをいままでわれわれの先輩は考えておったようですが、ILOではいわゆる現金給付である傷病手当金と年金とをどうくっつけるか、それが普通の場合ですと二年半空きができる、六カ月と三年ですか、それから結核の場合は一年半ですからそれより短いんですが、やっぱりある、これをどうするかということですが、まず第一に、年金の認定をつまり三年ということにしておりますが、これはできるだけひとつ早めるように改善をいたしたいと思いますが、症状が固定しなければなりませんから、したがって、余り早い時期にこれを認定してしまいますと、裁定してしまいますと、いろいろまたむずかしい問題も起こるし、必ずしも本人に有利ではございませんから、したがって、若干これを手前の方に持ってくることについては努力をいたしてみたいと思っております。しかし、現実にこの二年半という穴を埋めるほどに実はこれを前に持ってくることは、私は実際問題としてそう簡単にはいかないと、こう思っている。それじゃ今度は健康保険の傷病手当金をもう少し給付を長くするというやり方でございますが、これもやれると思い、やりたいと思いますが、現実にいま各種の保険の財政の問題等々と絡みまして、私がここでもって完全に穴を埋めてしまいますというふうに申し上げるということになりますると、やや食言めいてまいりますので、できるだけ両方からアプローチをしたいものであるというふうに思って、せっかく検討中だというふうに答えるのが正直だと思います。
○田中寿美子君 そうすると、まだ至近距離にはないわけですね。至近距離にあるということでしたからね、ですから来年は遺族年金、次は廃疾、そして母性給付はその次ぐらいまでにはでき上がるというふうに私たちの方も行動計画をつくりたいと思っているのですが。 それで、最後にだめ押しをしたいんですが、私ども国際婦人年のこの年に当たって、ILO百二号条約の批准を今回するわけでございますが、するのについては大変心重いということを最初に申し上げているわけですね、余りメリットがないから。そこで未来を期待しながら批准案に賛成しなければならない状況にあるわけなんです。しかし、婦人に関しまして百三号条約とか百十一号条約、ちょうどいまILOの総会が終わったところでしょう、昨日。そして日本からも婦人の代表が行っております。百号と百三号と百十一号というのは批准しようというふうな申し合わせになっているわけで、日本は百号は批准しているけれども、百三号の婦人労働者の母性保護に関する条約、これの批准——批准を進めるということは受諾できる条件をつくることですから、やっぱり進めてもらわなきゃならない、これは労働省に大いに関係があるわけなんです。それから百十一号というのも労働省ですね。その他、厚生省には百二号関係の受諾できなかった部分を受諾させると、そういう意味でぜひ決意をお示しいただきたいというのが一点です。 それから、批准をしたものの内容を、国内法が形だけはそれに合致していても、実際の運用で批准した効果が余り出ないというのがたくさんあるわけです。百号条約なんかそうですね、同一賃金の条約ですけれども、しかし、いま男女同一賃金が実施されていないところがいっぱいあるわけなんです。ですから、批准をしたらば、それに対応しているところの国内法や制度の運用を完璧にやってほしい、それが第二点です。これは労働と両方です。 それからもう一度念を押しますが、いままで申し上げました百二号に関しては、遺族給付、母性給付、これをその批准した条約の受諾ができるように、もう一度きちんとその態度を示していただきたい。この三点をだめ押しをして、労働、厚生両方にお願いしたいと思います。
○政府委員(中山正暉君) お答え申し上げます。 百三号と百十一号に関しましては、大いに前向きで検討してまいりたいと存じておりますし、そうして現在、いままで批准しましたものの内容に関しましては、何としても国内関係、行政指導を通じて、実態が合っていくようにしたいと、かように考えております。
○国務大臣(田中正巳君) 最前申したように、遺族給付、母性給付、それぞれ今回この百二号条約を批准していただくならば、これを契機にして、できるだけ早く、ひとつさらに改善をいたしたいと思っておりますが、もちろん、これについては行動計画等々にのっとってやらなければ日本も恥になりますかち、それについてはひとつおくれないようにいたしたいと、かように思っております。
○田中寿美子君 外務大臣どうですか、百二号条約の責任者ですから——この間、もうさんざんお聞きしましたが。
○国務大臣(宮澤喜一君) せんだっても申し上げましたように、この四部門を充足したといって、ともかく条約の批准をお願いしたいと思いますけれども、それでこの百二号は終わりということではもとよりありませんで、厚生大臣並びに労働政務次官からお話しのありましたように、あと残りの部門につきましても、やはり政府として早く充足するように努めなければならないというふうに 同じように考えております。
○柏原ヤス君 厚生大臣の御出席をお待ちしておりまして、特にお聞きしたい点を幾つか申し上げます。 まず、先進諸外国の出産保障制度、これを調べますと、出産というものが、単に、産前、分娩、産後の手当を含めて、医療給付によって保障されているだけでなく、さらに母性保護という観点から、出産休暇、出産休暇中の所得保障、妊娠、出産に伴う特別な費用の保障、こういうものが体系的に制度化されております。そして医療としての出産の出産準備の費用、こういうものが全女性に対して給付されていると、これがもう世界的な動向とも言えております。しかもその上に、出産休暇範囲内の新生児の保育についても、また、出産保障制度が家族手当の制度と結合していると、いわゆる子供の養育が一貫して社会的に保障された体制ができていると、こういうのが外国の状態である。これに比べて日本はどうかと言えば、出産というのは自然の原理だと、生理的なものだと、非常に簡単に考えられている。しかし、とうとい生命を生むという問題は、これは人類にとっても、また国にとっても、社会にとっても、非常に大事なことであって、これが健全に遂行されなければ、次の時代の人類の繁栄と幸福は期待できないという、こういう点は最近非常にわが国でも問題にされてきているわけです。そういう点、外国の考え方と日本のいわゆる政府の考え方というものに非常に差があると、そう私は思いますが、厚生大臣はどうお思いでしょうか。
○国務大臣(田中正巳君) 私、母性給付をめぐる諸外国の諸制度については、残念ながら今日つまびらかにいたしておりません。しかし、ILO条約、百二号条約等々と比較をして書いてあるところを見ますると、やはりわが国ではなお多くの改善すべきものを持っているものというふうに認識をいたしております。したがって、最前から御答弁申し上げたとおりでございまして、こうした点について、諸外国の諸制度等も、ひとつこれを機会によく勉強をし、できるだけそれに近づくように努力をいたしたいと、かように思います。
○柏原ヤス君 大変前向きな——大変でもありませんが、特に、今度の厚生大臣には期待をかけているわけですが、もう少し私具体的に言わしていただければ、妊娠中の健康診断、分娩費、それから分娩後の一定期間、これは母子保健法にある一年というふうに言ってもよいと思いますが、この一定期間の健康診断及び必要な検査を、回数を定めて、すべてこれらを保険の対象として十割給付すべきことを強く要求いたしますが、その点、大臣のお答えをお願いいたします。
○国務大臣(田中正巳君) いまおっしゃるように、女性の、母性のいわゆる出産妊娠をめぐる諸般の制度について、保険で十割ということをおっしゃいましたが、これはさっきから田中寿美子先生にお答え申し上げているとおり、やはりこれには保険の対象になるものと、さようでないものとがあるようですから、保険で十割というわけにはいくまいと、かように考えますが、なかんずく、出産給付あるいは妊娠中の諸般の疾病疾患等については、できるだけ給付内容を充実をいたしまして、百二号条約にあるように、本人の負担をかけないようにやっていきたいと、したがいまして、現金給付については、実勢にこれをできるだけ近づける、離れることのないようにいたしたいと。それから妊娠中のものについては、御承知のとおり、いま、母子保健対策でやっておるものもあるわけでありまして、妊娠中毒症とか、糖尿病等がありますが、これもまた妊娠性の心臓疾患、心疾患とか、あるいは貧血とかいったようなものに広げていくと、しかしこの場合でも、問題はまだいろいろあるわけでございまして、本人負担が所得制限等で出るというような問題もありますので、そうしたラグというものを埋めていくというように今後努力をいたしたいというふうに思っております。その他いろんな問題について今後逐次やっていきたいと思いますが、一遍にやれといわれても、私もなかなかそう簡単にはいくまいと思います。
○柏原ヤス君 それから医療保険制度間の格差是正の改善を要求したいと思っております。これは出産に対する給付についていろいろとお伺いして、今後努力していただきたいと思うのですが、当面健康保険、国民保険、日雇い保険、その中に格差がございます。これをどうしても一日も早く是正していただきたい。国保や日雇い健保の助産費が一万円や二万円というような、こういう状態を改めていただきたい。健康保険並みに引き上げるべきであると、思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(田中正巳君) できるだけ各種の医療保険の間の格差をなくすることは私どもとしてはやりたい、かように思っております。しかし、いま先生が設例の国保が一番問題なんでございまして、国保につきましては地方でいろいろとバラエティーがございますし、制度の立て方も違うようでございます。また、国保財政は非常に逼迫をいたしておりますんで、国保財政に対する立て直しというのをやらなければ私は望むべくもないという意味で、私は国保財政の立て直しについていろいろと努力をしておりますんで、その一環としてできればそういう方向に近づけたい、かように思っております。
○柏原ヤス君 最後に、今回世界婦人会議に出席させていただいたこと、まあこうした外務委員会に出させていただいて、女性、特に母性の問題についていろいろ質問させていただきましたことをお礼申し上げます。 そして外務大臣に、特にメキシコに行って感じてまいりましたこと申し上げますと、確かに日本は生活水準は先進国並みだ。しかし、女性べっ視という点ではもう第三勢力の国と同じだと。全くあそこに行っておりますと、日本が果たして先進国なのかしらんと錯覚を起こすような気持ちで帰ってまいりました。しかし、今後そうした点は国内の行動計画によってどんどん進んでいくことと期待を持って帰ってきたわけでございます。また、民間の会議も開かれておりまして、そこも出席してまいりましたけれども、非常に活発であり、熱があり、具体性に富んでいる。むしろそっちの方に私魅力を感じて帰ってきたわけですが、そうした民間の現実の声、そういうものを特に政府が取り上げていただいて、そうして日本のすばらしい行動計画を練り上げていただきたい。そして発展途上国の女性というのは非常に日本の女性に期待を持っている感じを受け取ってまいりました。そういう点で、大臣及びまた厚生大臣も、その他のおえらい方々がひとつねじりはち巻きでぜひ世界平和のために、また女性の能力というものが用いられてないと、非常なこれは私は損だと思うんです。ぜひその点認識していただいて、がんばっていただきたいということをお願い申し上げます。私たちも一生懸命いたしますので、よろしくお願いいたします。 きょうはありがとうございました。
○沓脱タケ子君 それでは私、ほんのわずかな時間でございますので、前回は実は本委員会の審議の中で外務大臣中心にお伺いをしたのですけれども、ILO条約を批准いたしましても、あと国内対策が十分にやられないというふうなことになりますと、条約は批准をしたけれども、りっぱにやっておりますと、国際的には言っておっても、国内対策がなおざりにされるというようなことになったのでは、これは国民の期待にこたえられないので、今回ILO百二号条約の批准に際しても、そういうことがないようにということで、前回大分申し上げたわけでございます。特に百号条約の批准を引例をいたしまして、私、実はお伺いをしていたんですけれども、これはまあ確かに労基法の第四条があるということで批准はされているのだけれども、百号条約というのは同一労働同一賃金の条約ですけれども、実際にこれはもう詳しく申し上げませんけれども、見ますと、ヨーロッパの先進諸国と比べますと、日本の婦人労働者の平均賃金というのはきわめて低い、五〇%そこそこだというふうな状況の中で、それでは労働省がどれほど有効な対策をしてきたかというと、必ずしもそうではなくて、いや研究会にいま御相談中でございまして、というような話です——いやいや、もうそれは済んだ話ですわ、そういうことであったので、今回百二号条約を批准するに当たりまして、その批准のしっ放しになったんでは大変だ、特に百二号条約というのは、さんざん言われておりますように二十三年も前の条約だと、しかも、批准するに当たって受諾できない項目というのは婦人に関する項目が圧倒的に多い、時あたかも国際婦人年のメキシコ大会の最中だと、こういう状況の中で、これは婦人に関する項目が受諾できないままで批准をされるというのはきわめて皮肉だということを先般も申し上げたわけでございます。 そういう点で、やはり百二号条約を批准するに当たって、最低基準さえ満たされない経済大国などというそしりを諸外国から受けないためにも、この批準のしっ放しにならないということをぜひとも政府御当局に対して、関係御当局に対して強く要求をしておきたいということで、若干の時間をちょうだいをしたわけでございます。 私は、社会労働委員会に籍を置いておったもんですから、細かい点についてはまたその時点で必要に応じてさらにお伺いをするつもりで、きょうは個々の問題、細かくは申し上げませんけれども、先ほどから、また先日来の審議の中で明らかになっておりますように、一番至近距離にあるといわれておる遺族給付、これはまあことしの当初以来、遺族給付は何とかという話になっておるんで、来年の年金見直しの段階でこれは何とかということで、先ほど大臣、ILOの基準を満たすという段階まで何としてもやりたいというお話でございますから、これはまあ至近距離にある。 それからもう一つは廃疾給付、これはILO条約の批準とかかわりなく、これはもう社会保障の観点から見ましても、疾病でしかも廃疾認定を受けなければならないというふうな障害者が、ある期間、一年なり二年なりが給付が切れるというふうなことを、これはILO百二号条約とは関係なく重大問題で、かねがね社会労働委員会では衆参両院で問題になっておるところでございますから、先ほどのお話ではどうも至近距離にはないというふうなお話でございますけれども、ちょっとお話の端に出ておったように、傷病手当金の期間を延長することと廃疾認定の期間を三年から二年なり一年半なり一年なりに短縮するというふうなことによってこれは解決ができるわけだし、解決が迫られている問題だというふうに思うのですが、これについては非常にあいまいな御答弁だったんですが、解決が迫られておる問題だというふうに私は理解しておったんですけれども、また遠のいたんですか、その点をひとつちょっと確かめておきたい。
○国務大臣(田中正巳君) 廃疾給付については、そう簡単にできるというふうに御答弁を申し上げた記憶は、実は私自身にはございません。問題意識は非常に持っておりまして、何とかこれについて穴を埋めたいと思っておりまして、両方、どっちからどういうふうにアプローチをしていいかということについて常日ごろ頭を悩ましているわけでございますが、最前申しましたとおり、年金についても、余り早く認定をいたしてしまうということについての問題点、それからいわゆる傷病手当金の支給期間というものをどこまで延ばせるか、とてもじゃないが、三年までなんか延ばせるはずがないのでございまして、そういう点で、どこへ中心点を置いて両方からアプローチしていいか。それにしても、今日私は、ことしだの来年できますなどということを申し上げることはできないので、できるだけの努力をいたしますが、いま少しく期日をかしていただきたいと申し上げます。
○沓脱タケ子君 まあしかし、解決をしなければならない問題だという点についての御認識はあるという段階で、時間がないのでとめておきますがね。 それから、もう一つ問題。これは、先般来の審議の中でも明らかにされたんですが、家族給付については、これはいろいろ御説明を伺った範囲では制度上も問題がある、予算の上でも三千億以上もかかるんでとてもだという、この制度上と予算上の問題で難色をお示しになったんですが、現状はどうですか、端的に。
○国務大臣(田中正巳君) 家族給付は、わが国においては児童手当がこれに該当するものと思いますが、児童手当については、私、先生にもいろいろ御答弁申し上げて、ここで繰り返しません。わが国においでは最もむずかしい、そしてわが国の土壌になかなかなじみにくい制度であるわけでございまして、われわれとしては、この給付をさらに向上させたいと思いつつも、諸般の施策の中においてこれのプライオリティーをどこに置くかということについては、いろいろと悩んでおるところであります。特に、先生、最近の財政状況を見ますると、とてもじゃないが、いま国会で御論議なさっているようなことを一遍に充足させるということには、とてもできないというような状況でございますので、まずステップ・バイ・ステップというかっこうにならざるを得ないんじゃないかというふうに思っております。
○沓脱タケ子君 家族給付については、ですから、制度の上でも困難だと、簡単じゃないと、財政上もきわめて困難だと、こういうことですね。 最後に、さっきの二人の委員の方々からも言われました母性給付の問題ですね。これはいろいろ言われましたから、私もあんまり繰り返そうとは思っていないんです。健康保険法あるいは国民健康保険法の中で処理しようということになると、これは大臣のように疾病の概念に入らない、それは当然ですよ。妊娠、分娩というのは生理現象です、明らかに。確かに疾病ではないんですけれども、それでは疾病ではないから勝手にほうっておいたらいいというふうなことかというと、これは基本的な点が、どうも長い間健康保険法ということで、疾病給付だけが対象になって、予防だとかあるいは出産だとかというのが、これは疾病でないんだということで除外をされてきたわが国の概念というのが、健康保険法の中での概念が非常に妙に定着をしているんですけれども、私は疾病どころではなしに、むしろ先ほど柏原委員もおっしゃいましたけれども、民族の将来を保障する重大な社会的な社会性を持ったことだと、当然これを個人個人に任しておいていいという性格のことではないわけですね。そういった基本的に社会的な責任を持たなければならない妊娠、出産、分娩、そういった問題を、いままで余りにも冷たく扱ってきたという日本の社会の考え方、これが制度の上にも大変根深く定着をし過ぎているというふうに思うんですよ。そういう点で、いまの日本の経済水準の中で、少なくとも民族の将来を保障していく重大な社会的な事業である出産、これはILO条約の項目にあろうがなかろうが、当然保障するべきだという立場をとるのかとらないのか、そこがやっぱりはっきりしてもらわなければならない基本点だと思うのですけれども、その点、厚生大臣どうですか。
○国務大臣(田中正巳君) 母性給付ないしは出産給付についての先生の歴史的な考察は私もわかるような気がいたします。しかし、現実の場において、これを政策で一体どのように実施していくかということになりますると、先生のおっしゃる中にあるように、いわゆる医療保険の系列とは別の一つのカテゴリーを立てて、その中で処理いたすべきだというようなふうにも聞こえましたが、一つの考え方かと思いますが、この費用について保険以外の財源をもって給付することについては、やはり今日の財政事情では私はなかなか容易なことではなかろう、こう思って、もしこれを速やかにあるべき姿に近づけるのには、国民連帯の精神をもって、やはりいわゆる相互扶助という意味で保険給付といったようなものでやった方が早いのではなかろうか、実際的ではなかろうかと思っておりますが、これは本質的な思想の問題、あるいはこの問題についての問題の解析とは違ってくるだろうと思いますが、便宜的には、私はやはりその方が問題解決には早かろうというふうに思っておりますが、さらに検討さしていただきたいというふうに思います。
○沓脱タケ子君 厚生大臣、早のみ込みで先に全部言うてしまった。そんなところは私いま聞いてない。民族の将来を保障するための不可欠な社会的な大事業の妊娠、出産というふうなことが、いまの日本の社会で、社会的な責任でこれを保障していかなければならない性格のものであるという立場に立つのか立たないのかということだけ聞いているんですよ。
○国務大臣(田中正巳君) 考え方としては、先生のお説のとおりに考えるべきものじゃないかと思います。
○沓脱タケ子君 厚生大臣、そういうお立場に立っていただくということになりますならば、それでは健康保険法に当てはめるということが無理があるのかどうか、あるいは健康保険、国民健康保険というふうな制度の違う医療保険制度の中で扱うことが、いろいろ隘路があるけれども、これで解決ができるのだろうか、あるいは母子保健法などを充実してこれで解決できないだろうか、あるいは入院助産制度というふうなのも一方にはある、こういった制度もあるわけだけれども、そういったわが国のいまの水準の中で、諸制度を勘案して、どういうふうなことをやっていけば解決ができるかというふうなことは、いまできない部分だけを言われるのではなくて、即断できないけれども、そういう基本的な立場を実現するために、そういった諸制度を勘案をして、方針を近く検討するならする、出すなら出すというふうにしてもらったらいいと思うのですよ。少なくとも健康保険法では疾病ではございませんので云々、そんなことを言うてたら、水かけ論議でございましてね、話にならぬわけです。何とかして基本的立場を実現させたい、これは国民の願いでもあるし、婦人だけの願いじゃないですよ、婦人が幸せになれば、同時に男性も幸せになるということは基本でございますからね。そうでしょう。そういう立場の問題として、基本的な理念を踏まえた上で、具体的な施策がいま言えなければ、具体的な検討をしていただく。できるだけ早くしていただくということが明らかにされれば結構ですよ、一つは。 それからもう一つは、せんだって来の論議の中で約千五百億かかると、この金はと、こうおっしゃっておられるんですよ。健康保険法、国民健康保険法の、医療保険法の範囲の中だけで考えておられて、あの財政は、この財政はと、こういうわけですね。それじゃ政府が一般会計から出すということになると、また歳入欠陥のいまの実情ではと、こうなってくるわけですけれども、それでは制度上に隘路があるのか、金の問題で隘路があるのかということになってくる。制度上の問題は、これは頭を働かしてもらったら片がつくという内容ですよ、はっきりしているのは。その点で頭を働かしてもらうかどうか、金の問題はどうかと、続けてあるわけですね。その二点なんですよ。その点簡潔にお答えを明らかにしておいていただきたい。これはどうしてもやってもらわなければならない性格の要求でございますから。
○国務大臣(田中正巳君) この問題についての考え方は、先生のおっしゃるとおりだろうと思います。したがいまして、制度的にいろいろと検討はいたしてみたいと思っております。ただ、制度を打ち立てただけではどうにもならぬわけでありまして、これに財政の裏づけがなければならぬわけですから、したがって、やはり政府の責任者としては、財政的裏づけについてもこれを忘れることができないということでございますんで、彼此勘案しながら制度の樹立に努力をいたし、まあ検討もいたしたい、かように思います。
○沓脱タケ子君 どうもおそうなってすみません、最後に一言申し上げて終わりますので。 ぜひお願いを申し上げたいのは、これ、たまたま昨晩の夕刊に報告をされておりましたけれども、メキシコの国際婦人年の世界会議に藤田日本政府代表から三木総理のメッセージが発表されております。そのメッセージには「日本政府は、この会議で最終的に決定される行動計画に照らして、婦人の地位向上のため努力し、実効をあげ得る施策を策定する所存で、会議の成果に非常に大きな期待をかけている。」というメッセージが世界会議で発表されておりますので、そういう立場に立っていまのお考えをできるだけ早く実現できるように、ひとつ御努力をいただきたい。決して、外務省でILO百二号条約が批准されて、後はまあとにかく、ほっとしたということにならないように心から要求を申し上げて、終わりたいと思います。 どうもありがとうございました。
○中沢伊登子君 一言だけ厚生大臣にお伺いします。 昨年、ルーマニアにおいて世界人口会議というのが開催されてから、子供二人が望ましいと、静止人口にしたい、こういう話が一般的にもうなってしまいましたね。こういう中で、日本の児童手当制度というのは第三子から、これとの絡み合いの中では私は相当矛盾があると、こういうふうに考えますが、厚生省は急にこれを第一子からというわけにはいかないでしょうと思いますけれども、しかし、この問題を厚生大臣としてはどうお考えになるか、それ一言伺います。
○国務大臣(田中正巳君) 児童手当と人口政策というのは、もともとあの制度を打ち立てたときには全然関係がないという考え方から出発をいたしております。たまたま第三子日から出ているというのは、それ以外の理由から出ているわけですが、これがまあいろいろと誤解をされまして、第三子奨励だなどと言われておりますが、私どもとしてはそういう考えは毛頭ございません。したがいまして、これとそれとはひとつセパレートとして考えていかねばなるまいというふうに思っておりまして、その点について誤解のないようにPRをいたしたいと思っております。
○中沢伊登子君 将来この矛盾はやっぱり直さなければいかぬと思うんですがね。 外務大臣に一言お伺いをいたします。 外務大臣、先ほど一番初めに、私がメキシコ大会から帰ってまいりまして、そしていろいろ私なりの感想を申し上げたのを、お聞きいただいていたのか、席をお外しになったのか、ちょっと私はわかりませんので……
○国務大臣(宮澤喜一君) 外しておりました。
○中沢伊登子君 外していらっしゃいました。それじゃあ、いまもう時間がありませんから、いま繰り返しては申し上げませんけれども、また議事録でもできましたらお読みをいただいて、私今度のメキシコ大会に行って感じたことは、いま日本の大使とか公使の中に女性はいらっしゃらないと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(宮澤喜一君) おりません。
○中沢伊登子君 おりませんね。ぜひともこれからはやっぱり大使なり公使なり領事なり、そういうところに女性を派遣をしていただく必要があると、こういうふうに私考えてまいりましたんで、将来はその方向でひとつ女性を登用していただきたいと、こういうふうに考えましたので、その点で大臣どうお考えになられますか。御答弁いただいて終わりたいと思います。
○国務大臣(宮澤喜一君) その点は、私も適当な方がいらっしゃいましたらぜひお願いしたいというふうに実は思っておるわけでございます。実は、女性も外交官、そもそも上級職に任用になった者が少ないといってよくおしかりをいただきまして、これも試験のときには応募者が何人か必ずあることが多いのでございますが、実際成績ということで入れない場合が全部でございまして、差別をしていることはございません。私ども女性の外交官の場合には、実は赴任をされますときに御家族というか、御主人でございますね、それが非常に実はどういうふうにしていただいたらいいのかという問題がございまして、問題がないわけではないのでございますが……つまり人権問題になりませんようにという意味でございますが、しかし、中沢委員の言われますことは、私本当にそう考えております。
○委員長(二木謙吾君) 他に発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。 本件についての討論、採決は後日に行うことといたします。 本日は、これにて散会いたします。 午後四時七分散会 —————・—————