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75回国会参議院1975/06/17

外務委員会 第14号

発言数
268
登壇者
20
会派数
5
開催日
1975/06/17

会議録

二木謙吾自由民主党

○委員長(二木謙吾君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員の異動について御報告いたします。  去る十一日、宮之原貞光君が委員を辞任され、その補欠として松永忠二君が選任されました。また昨十六日、松永忠二君が委員を辞任され、その補欠として粕谷照美君が選任されました。また本日、野坂参三君が委員を辞任され、その補欠として星野力君が選任され、また木内四郎君が委員を辞任され、その補欠として寺本広作君がそれぞれ委員に選任されました。     —————————————

二木謙吾自由民主党

○委員長(二木謙吾君) 次に、理事の選任についてお諮りいたします。  木内君の委員辞任による理事の補欠選任につきましては、先例により委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

二木謙吾自由民主党

○委員長(二木謙吾君) 御異議ないと認め、それでは理事に寺本広作君を指名いたします。     —————————————

二木謙吾自由民主党

○委員長(二木謙吾君) 次に、船舶料理士の資格証明に関する条約の締結について承認を求めるの件  社会保障の最低基準に関する条約の締結について承認を求めるの件(いずれも衆議院送付)  以上二件を便宜一括して議題といたします。  政府から順次趣旨説明を聴取いたします。宮澤外務大臣。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) ただいま議題となりました船舶料理士の資格証明に関する条約(第六十九号)の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明申し上げます。  この条約は、一九四六年に国際労働機関の第二十八回総会で採択されたもので、船舶乗組員に対する衛生的かつ栄養に富んだ食事の供給を確保することを目的としており、船舶料理士資格証明書を有していない者を船舶料理人として従事させてはならないこと、試験の実施及び資格証明書の付与のための一定の要件等について規定したものであります。  わが国におきましては、船員法及びこれに基づく省令により、条約の趣旨は充足されているところでありますが、この条約を締結することは、わが国における船舶乗組員の健康の維持及び増進並びに船内司厨部員の地位の向上を図る上からも、また、労働問題の分野における国際協力の上からも有意義であると考えられます。  よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。  次に、社会保障の最低基準に関する条約(第百二号)の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、一九五二年に国際労働機関の第三十五回総会で採択されたもので、その内容は、医療、傷病給付、失業給付、老齢給付、業務災害給付、家族給付、母性給付、廃疾給付及び遺族給付の九部門の社会保障給付について、給付事由、保護対象者の範囲、給付内容、資格期間、支給期間等について最低基準を規定したもので、この条約を批准する加盟国は、失業給付、老齢給付、業務災害給付、廃疾給付及び遺族給付のうち少なくとも一部門を含む三部門について義務を受諾することとなっておりまして、わが国は、この条約の批准に当たり、傷病給付、失業給付、老齢給付及び業務災害給付の四部門について義務を受諾することといたしたく、これらの部の規定の趣旨は、わが国におきましては、主として健康保険法、雇用保険法、厚生年金保険法、労働者災害補償保険法及びこれらに基づく政省令により充足されているところでありますが、この条約を締結することは、わが国における社会保障制度の発展及び社会保障の分野における国際協力のため、有意義と考えられます。  なお、当面義務を受諾しないその他の部につきましては、諸条件の成熟を待って受諾することが適当であると認められる時期が参りましたならば、随時、条約第四条1の規定に基づき政府において当該部の義務を受諾する通告を行うことといたしたい考えであります。  よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第あります。  以上二件につき、何とか御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。

二木謙吾自由民主党

○委員長(二木謙吾君) 続いて、順次補足説明を聴取いたします。伊達条約局参事官。

伊達宗起外務省条約局外務参事官

○政府委員(伊達宗起君) ただいま提案理由の説明のございました二件につき、若干補足説明させていただきます。  まず六十九号の船舶料理士の資格証明に関する条約でございますが、これは、ILOのいわゆる船員関係条約の一つでございまして、船内における食事の調理を一定の資格を有する者に行わせることによりまして、船舶乗組員の健康の維持、増進、船内生活の快適性の増進等を図ることを目的としたものでございまして、昭和二十八年に効力を生じ、現在までのところ二十カ国が批准しております。  この条約の批准につきましては、政府は従来から検討を続けてまいりましたが、船内司厨部組織の充実及び船舶料理士となることができる必要な人員の確保等、国内の受け入れ体制が現在に至りまして整ったと考えられるに至りましたので、今般、本条約の締結について御承認をお願いすることとなった次第でございます。  次に、第百二号、社会保障の最低基準に関する条約でございますが、この条約は、社会保障に関する総合的な条約として、ILOの重要な条約の一つでございまして、昭和三十年に効力を生じ、現在までのところ二十五カ国が批准しております。  この条約の批准につきましては、かねてから各方面からその要請が多く、政府といたしましても、早期批准ということを目指しまして検討を進めてきたわけでございますが、この条約に関連するわが国の社会保障のもろもろの制度は、今日までに創設され、また改正等を経まして、近年それぞれの制度とも相当な水準に達し、特に今回義務を受諾する部門について将来ともILO基準を確保することについて見通しが得られまして、批准について機が熟したものと判断されましたので、今回、締結について御承認をお願いすることとなった次第でございます。  ちなみに、これら二つの条約を締結、批准することによりまして、わが国のILO条約批准数は、合計三十四となる次第でございます。  以上でございます。

二木謙吾自由民主党

○委員長(二木謙吾君) 以上をもって両件の説明は終わりました。  両件のうち社会保障の最低基準に関する条約の質疑は後日に譲ることとし、これより船舶料理士の資格証明に関する条約について質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。

田英夫日本社会党

○田英夫君 最初に、船員に関するILOの条約というのはたしか二十八あると思いますが、わが国が批准をしているものが八つということで、まだ二十未批准のものが残っているわけですけれども、これ一つ一つ御説明いただくのは大変だと思いますから、典型的なといいますか、なぜ批准に至っていないのかという点をまず伺いたい。

伊達宗起外務省条約局外務参事官

○政府委員(伊達宗起君) お答え申し上げます。  ILOの船員関係条約といたしましては、先生おっしゃいましたように、ILOで採択されました条約が数多くあります。先生ただいま若干……二十とおっしゃいましたですか、ちょっと……。

田英夫日本社会党

○田英夫君 未批准が二十じゃないですか……。

伊達宗起外務省条約局外務参事官

○政府委員(伊達宗起君) 未批准が二十、そういうことでございます。全体として三十四条約が採択されておりまして、このうち先生も御指摘になりましたように、わが国が批准しているのは八条約でございます。ただ単純計算でまいりますと、したがいましてわが国が批准していないILO船員関係条約は二十六ということになるんでございますが、そのうちの六つは、これはその後の改正条約によりまして取りかわられていますので、したがいまして、ただいま御指摘のありましたように二十の条約でございます。  その中で、これはそれぞれわが国の国内法が、これらの条約に定めます基準ないしは要件というものを満たしていないというところが、残念ながらわが国がこの条約を批准するに至らない理由と全般的に申し上げることができると思いますが、なお詳しくは担当の部局の方から御説明申し上げたいと思います。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) 未批准のILO船員関係の条約につきましては、たとえば有給休暇とか労働時間等に関しまして、わが国の現在の船員法の規定の内容が異なるということとか、あるいはILO条約の規定の一部とわが国の入国管理法令直接私どもは担当しておりませんが、わが国の入国管理法令の規定との間に若干の食い違いがあること、あるいは船員の設備に関しましてのILO条約の基準を一般的に受け入れ得るような実態に必ずしもないこと等が実体的な事由でございまして、なお、これを国内法において仮に実現する場合には、手続といたしまして、船員法の改正あるいは船員法に基づく省令の制定が必要になります。これにつきましては、船員法の百十条の規定に基づきまして船員中央労働委員会の答申を得て、それに従って措置することが法律的に義務づけられております。この船員中央労働委員会は御承知のように公労使三者構成でございます。この三者の合意が大前提になっておりますので、そのような実体的な事由と、それが熟した場合に手続がとれるということが必要不可欠な条件になっておりますので、これが残念ながら現段階までにはまだ残る二十条約——もっともこの中には本件の六十九号条約が入っておりますが、これが現在のところ批准されないままにあるわけでございます。  私どもといたしましては、たとえば本件六十九号条約のように、可能なものから国内法令の整備を図りながら、できるだけ多く批准に努めるという積極的な態度で取り組んでまいりたいと存じております。

田英夫日本社会党

○田英夫君 いまの御説明にもありましたけれども、結局は国内法との関係で批准に至っていないということになるわけですが、船員法を初めとして関係国内法、いまの出入国の問題も含めて、たとえば二十の中の幾つかのものをずっと見ていくと、海員の疾病、負傷または死亡の場合の舶船所有者の責任に関する条約とか、あるいは船員の有給休暇に関する条約とか——これ改正条約ですね、そういう形のものは、私の推測ですけれども、日本の国内法が条約の要求を満たしていないということではないかと思いますが、それだけ日本の国内法が国際水準が求めているものに対してまだ低いレベルにあると、こう考えざるを得ないんですが、いかがですか。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) ただいま御指摘の海員の疾病、負傷または死亡の場合の舶船所有者の責任に関する条約、五十五号条約でございますが、これにつきましては、具体的な問題点といたしましては、航海中に下船した疾病船員の送還に関する内容でございます。これにつきましては、条約は、船舶所有者は一切の傷病船員の送還の費用を支払う義務を負うように条約の六条でなっております。これに対しまして現在の船員法では職務外の負傷または疾病については、船員に故意または重大な過失のあったときは船舶所有者は送還の義務がない、したがいまして、費用を負担する義務もないということに一応なっておりますので、その間、条約上の食い違いがあるということでございます。  なお、御参考までに申し上げますと、まだ批准してない国につきましては西ドイツとか英国がございますが、私どもといたしましては、先ほど御答弁申し上げましたように、こういう事柄につきましても前向きに取り組んでまいりたいと存じます。

田英夫日本社会党

○田英夫君 日本が未批准の二十の条約について、すでに批准をしている国の表というのを見てみますと、たとえばリベリアという国はしばしば海運関係で問題になる国なんですね。それはリベリア船籍にしておけば非常に安く運航できるというところに目をつけて、海運業者が日本でもリベリア船籍にされている。これは名前を挙げては失礼ですけれども、河本通産大臣の三光汽船の場合もその例が非常に多い。しかも、それがしばしば事故を起こしているということで、当院の予算委員会で、三月の予算委員会でも問題になったところでありますけれども、リベリア船籍にすると有利だというのは、この批准状況を見てもリベリアは余り批准してないと思いますが、そういう関係があるのじゃないかと思いますが、いかがですか。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) リベリアにつきまして未批准のものが具体的にどれだけあるかということは、私の方としてはつまびらかでございませんが、現在大きなタンカーの事故に関連いたしまして問題になっておりますリベリア船籍の便宜置籍船につきましては、特に問題意識は、その乗務員、乗組員の質の問題でございます。これにつきましては現在各国統一的な基準を制定した条約がございません。そこで各国の主権にその規制はゆだねられております。たとえばわが国におきましては、船舶職員法によりまして船員が特定の資格を海技免状で取って、それで乗り組ませる義務がございます。ところが、各国まちまちに主権に基づいてそういう規制をしておりますので、そこで、このような事故の経緯にかんがみまして、国際的な統一的な基準づくりが必要ではないかということで、一九七二年ごろからIMCOにおきましてこの統一基準つくりの小委員会を設置し、現在まで六回その小委員会の審議を行っております。最近では、この六月の初めに私どもの担当の課長を代表として出しまして、ロンドンでその会議が行われました。このような審議につきましては、リベリア等の便宜置籍国も積極的に参加をしております。そこで、わが国といたしましても、このIMCOの統一的な基準づくりの小委員会にかわる条約積極的に参加をし、早くその統一的な基準にかが制定されるように、今後ともこの小委員会の審議に積極的に参加をしてまいりたいと思います。

田英夫日本社会党

○田英夫君 私が調べたんですが、リベリアが批准しているのは、日本が批准してない二十のうち、たしか四つ批准していると思います。さっき言いました商船に乗組む船長及職員に対する職務上の資格の最低要件に関する条約、五十三号ですね。それから五十五号の海員の疾病、さっき言った。それから百十二号の漁船員の雇い入れ最低年齢に関する条約。百十三号の漁船員の健康検査に関する条約。どういう理由でリベリアがこれだけやっているか、それは私どももわかりませんけれども、一番しばしば問題になるリベリアでさえもこれだけ批准しているということが言えるかもしれません。問題は、韓国がどういう状況になっているかわかりませんか。この未批准のものについては韓国の名前は一つも出てこないんです。——わからなければ、韓国はそういう状況、大まかな状況で結構です。幾つ批准しているとか、していないとかいう細かいことでなくて。

伊達宗起外務省条約局外務参事官

○政府委員(伊達宗起君) ただいま田先生の韓国についての御質問でございますが、韓国はILO——国際労働機関の加盟国てこざいませんので、したがって条約に名前が出てこないということになっているのだと思います。

田英夫日本社会党

○田英夫君 私が心配しますのは、日本の海運業者がしばしばリベリア船籍にしたり、あるいは韓国の船員を雇い入れるというような形で、いわゆるチープレーバーをねらって、営利を目的にしているという形です。いま、リベリアの場合は、やや批准は日本よりもしているにもかかわらず、結局ねらいは、やはり安いからということだと思うんです。韓国の場合もそうだろうと思います。あるいは、東南アジアの国々の人たちを船員として雇い入れているというような形もしばしば見られるわけで、せっかく批准をし、ILO条約に参加をするという形で態勢を整え、国内法も整えていっても、実はこの海運事業というのは非常に国際的にまたがるものですから、そういう外国人を使う、あるいは外国船籍にしてしまうというような形で営利を得ることができるという抜け道がある。この辺のところを政府としてはどういうふうに考えておられるか、そこのところを一番実は伺いたいんです。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) 日本船籍のいわゆる日本船につきましては、日本人の船員以外は乗り組んでおりません。これは閣議了解等もございますが、それよりも労使間の話し合いで、労働協約でそのようになっております。なお、日本の船社が支配する便宜置籍船については、ちょっとその性質上つまびらかでございません。

田英夫日本社会党

○田英夫君 そこのつまびらかでないというところが問題なんで、政府としては実態はわかっておられるはずですね。これはむしろ、日本の海運業者がそういう形で外国船籍の船をどのくらい持っていて、どういうふうに運航しているかという実態をつかめないでいるとすれば、これは非常に問題なんじゃないだろうかと思いますが、実際はつかめないでいるわけですか。その点はどうですか。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) 船員局の直接の所管ではございませんが、私どもが承知しておりますのは、大体世界の全船腹量の二割程度が各国の便宜置籍船であると、こう言われております。わが国の場合には、正確な資料はないようでございますが、それよりも相当に下回った保有しかないというように聞いております。

田英夫日本社会党

○田英夫君 いかに国内法を整備して、海員組合の皆さんがいろいろ声を大にして要求をされていても、そういう形の日本の海運業全体の中では、船員の待遇というような問題についてもしり抜けになってしまうということに実態はなっていると思うんですよ。  一体政府が船舶運営に関する産業、つまり海運業あるいは造船、こういうものをどういうふうにすべての産業、事業の中で位置づけておられるかということ、これは運輸大臣に伺うべきことかもしれませんけれども、つまり私が言いたいのは、率直に言って非常に先進国だから海運事業が盛ん、重要視しているということではむしろないんじゃないかと思います。リベリアは非常に特殊な法律を持っているようですから別ですけれども、たとえばノルウェーとかギリシャとか、必ずしも非常な先進国イコール海運事業の盛んな国ということにはならない。日本の政府としては、これを日本の全産業の中でどういうふうに位置づけるつもりなのか。非常に重要だと位置づけるならば、もっともっと積極的にこの船員に関する待遇の問題などは改善をする方途を講ずべきではないか、この辺の関係をどういうふうに考えておられるのか、基本的なところでそれを伺いたいんです。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) まず、先の御指摘の、せっかく船舶料理士の資格ができ上がっても、便宜置籍でもって逃げてしまうということについての御懸念でございますが、先ほども触れさせていただきましたように、このような規制は各国の主権でそれぞれの船籍国がやることになっております。したがいまして、この条約を、ILO六十九号条約を批准している国は、その船籍を持っている船、その船籍の船に乗ってる乗組員に対して同じような規制をしているわけでございます。  後の御指摘のわが国の海運産業の位置づけといいますか、につきましては、これも私、船員局長で、直接担当しておりませんので、不適当かと存じますが、私が知ってる限りにおきまして、簡単に答えさしていただきます。  まず、外航海運についてでございますが、外航海運につきましては、わが国が、いまさら申し上げるまでもなく、貿易立国でございまして、主要な資源の九〇%以上は海外からの輸入にまっております。たとえば、石油がそうです、あるいは鉄鉱石がそうです、というようなことであります。また、それを加工し、輸出しているわけでございますので、この輸入、輸出ともに外航海運に頼る以外に手がないわけでございます。したがいまして、日本は世界有数の荷主国であるとともに、世界有数の海運国になっておるわけでございます。数字で申し上げますと、日本はいま、内航船を含めまして、一九七三年の資料でございますが、三千六百万総トン船を持っております。これはリベリアに次ぎまして世界第二位でございます。したがいまして、実質的には世界第一位かと存じますが、そのような現在地位になっております。それで、わが国の国民経済的な見地から見ましても、外航海運、これにわが国の経済が頼る度合いが強いものでございますので、それの積み取り比率の向上に政府といたしましては鋭意政策的な配慮をしております。たとえば計画造船制度による財政資金の投入等がこれでございます。なお、外航関係の中で定期船というのがございます。これにつきましては、最近いわゆる南北問題の一環といたしまして、発展途上国側から自国船による輸送を心がけてくる傾向がございまして、国連のUNCTADにおきましても定期船同盟憲章の条約をすでに採択されておりまして、今後各国がどのようにこれを批准していくかという段階でございます。したがいまして、今後とも外航海運については、わが国の地理的条件あるいは経済の条件からいいまして、最小限度の自国船による積み取り比率、これの確保ないしは向上を図っていくという方向だと思います。  それから、内航海運につきましては、これは鉄道とかあるいは航空等とともにわが国の総合交通体系の一環として内航海運をどのように位置づけていくかということが問題かと思います。現段階におきましては、内航海運は大量の運賃負担力の少ないような貨物の輸送を担当するということでございます。  関連して申しますと造船業がございます。これにつきましては、世界の総造船量の五割以上を日本の造船業が担当しております。むろん世界一位でございます。この造船業につきましては、いわゆる造船関連工業といいまして、関連する分野が非常に多くございます。そういったことで、国内的にも国内経済にいろいろ影響がございますし、また重要な輸出産業の一環を担っておりますので、そういう意味におきまして、技術面の向上、それから日本海運の振興に支障を来たさないような造船、これをやらすように政策的な配慮をいたしております。  なお、最近の動向といたしまして、特に国際海運、外航海運の市況が非常に悪くなっております。そこで、一部にタンカー等の係船の事態も出ておるようでございますということで、この外航海運を主体に、またその中でも木材等を運んでおります近海船、これを中心に船員の雇用問題が大きくクローズアンプされてきております。私どもといたしましては、特にこの船員の雇用の安定対策に留意をし、今後きめ細かな配慮をしてまいりたいと存じております。

田英夫日本社会党

○田英夫君 いまのお話にもにじみ出ていると思うのですけれども、日本のいわゆるエコノミックアニマル的な経済体制ということですね。それだけ事実上世界一の海運国であり、そして世界一の造船国であるというその日本が、ILOの条約批准状況というのがすべての物差しになるとは思いませんけれども、その批准状況から見てもきわめて低いレベルにある。いまずっとながめ回してみても、これを詳細に検討したら非常におもしろい数字が出ると思いますが、たとえばノルウェーとかフランスとかイタリアとか、日本が批准してない二十の条約に対して批准している国というのは、大体国の顔ぶれが決まっていると思います。非常に高いレベルで批准をしている国というのは大体決まっている。そういうレベルに対して日本は世界一だと言いながら、実は批准が非常に少ないということは、裏を返して言えば、船員の待遇というような問題に対して非常に低い国内法しかまだ持っていない、こういうことが言えるのじゃないかと思うので、そのところを私は非常に注目をしたいと思うわけです。  具体的な問題についてひとつ伺いたいのは、この船舶の料理士というのは、外航船の場合で結構ですけれども、現状では、船員からそういう料理士の資格を取っている人が多いのか、むしろ料理の専門家がなっているのか、これは次の質問にちょっと関連するので、大まかなところでいいですけれども。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) 海運の態様によって若干傾向が違うかと存じます。たとえば外航海運につきましては、いわゆる固有の船員からなるということがほとんどだと思います。ところが、内航の中の旅客船につきましては、むしろ調理系統に従事している者からの就任といいますか、それが多いのではないかと思います。

田英夫日本社会党

○田英夫君 実際のこの船舶料理士の試験というのは、条約が求めているのは、当然のことながら、実技とか食品の価値判断とか、栄養学的な意味でしょう、献立の作成とかあるいは船内での食品の取り扱い、貯蔵、こういうものの技術だとか知識だとか、そういうことを義務づけているようですけれども、日本において実際に試験する場合には具体的にどういう科目をやっているのか、これは前の質問と関連して。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) まず座学につきましては衛生法規、公衆衛生学、食品衛生学、栄養学、食品学、船内食品貯蔵、それから船内調理理論について座学の試験を行います。それから実技でございます。特に船舶調理士の場合には船内の食品の貯蔵、これが最大の問題かと存じます。

田英夫日本社会党

○田英夫君 これは、私は長い間船に乗った経験はありませんけれども、八カ月くらい南極へ行くので船に乗ったことがありますけれども、そういうわずかな体験からしても、なぜこういう条約が、わざわざ条約という形にまでなっているかということを考えると、条約にもうたってありますけれども、結局長い間船の中で生活をする人たちの健康、栄養の問題ということになると思うのですね。ですから、この点の試験というのは非常に重要なものになるのだろうと思います。それでいま科目を伺ったわけなんですけれども、実態として試験をしている以上、それは政府は大丈夫だ、こうおっしゃるでしょうけれども、一般の船員の経験が、この条約で規定された一定数の年齢があり、三年以上ですか、海上生活の経験ということになってくると、実態としては船員である人がちょこちょこと勉強をして、まあ料理がうまいからお前やれというようなことでやっているのではないか。そうだとすれば大変問題だと思うのですが、その実態をどの程度把握していますか、政府は。試験をやるだけですか。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) 御指摘のとおり、私どもが考えております資格要件といたしましては、すでに省令を制定しておりますが、年齢が二十歳以上であること、それから船舶に乗り組んで三年以上調理に関する業務に従事した経験を有すること、それから運輸大臣の指定する者の行う試験に合格したこと、この三要件を要求しております。なおこの要件は、たとえば三年以上の経験というのは条約は二年以上の経験でございますので、条約よりもやや基準を上げております。なお、この実態といたしましては、特に外航あたりは海員学校、これは全国に十三校ございますが、その中で司厨科というのがございます。その司厨科の卒業生が相当に多い、このように承知しております。

田英夫日本社会党

○田英夫君 終わります。

塩出啓典公明党

○塩出啓典君 まず、この条約が採択されたのは一九四六年と申しますと昭和二十一年でございます。それで、ようやくわが国が批准をするようになったわけで、この間、実に三十年の長きにわたっておるわけであります。先ほどの御答弁では、体制が整ってなかった、これは具体的にはどういう点がおくれておったためにこういう批准がおくれたのでございましょうか。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) この六十九号条約につきましては、具体的な実態の問題といたしましては、船内の司厨部組織の充実の問題、それから船舶料理士となり得る必要な人員の確保の問題、この二つが国内の受け入れ体制の障害になっておったようでございます。御指摘のとおり相当長い時間かかりましたが、最近に至りましてその実態が整ってきたということでございまして、手続的にも船員法に基づく船員中央労働委員会、公労使三者構成のこの委員会で合意を得られましたので、そこでおくればせながら国内法令の整備をしたという経緯でございます。

塩出啓典公明党

○塩出啓典君 ただいまの説明ではよくわからないわけですけれども、それではちょっと見方を変えて質問いたしますが、二十の条約がまだ未批准ですね。こういうものに対して働く労働者の立場、いわゆる日本においては海員組合というのがあると思うのですけれども、そういう人たちはこれを早く批准をしろ、批准できるような体制に持っていけ、こういう声が多いんじゃないかと思うのですけれども、この点、この二十の中ですべてが船員の皆さんが批准を早急にやれるような体制に持っていくように望んでおるのか、あるいは望んでないのもあるのか、その点はどうなんでしょうか。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) 一般的には、海員組合の立場としては、残った未批准のものについてできるだけ早く批准してもらいたいという態度のようでございます。特にその中では、海員組合の立場としてはILO百二号条約の海上版といいますか、船員版といわれております七十号条約及び七十一号条約についてできるだけ早く批准してもらいたい、こういう要望を強く出しております。  それから、先ほども触れさせていただきましたが、ILO条約関係の国内法令の整備につきましては、船員法に基づく法的措置が必要になりますが、これにつきましては船員法自体、その百十条の規定によりまして、船員労働委員会の答申を得て措置するということになっておりますが、これが公労使の三者構成でございまして、この船員労働委員会ではいろんな機会にこのILOの未批准の条約を早く批准する方向でいこうじゃないかというようなことが話題にはなっております。

塩出啓典公明党

○塩出啓典君 ともかくこれを見ますと、一九二六年に採択された条約もまだ未批准で、われわれが生まれる前の条約でありますが、そういうものがいまだにわが国も加盟をしていない。しかも、先ほどお話のありました船員のための社会保障に関する条約なんというものは七カ国しか批准をしていないで、まだ未発効である。これも一九四六年に採択されておるわけですから、実際はもうかなりの年月がたっておるわけですね。  そうしますと、こういう条約が採択をされても、こういうふうに長年たってもなかなか加盟する国も少ないということではあまり意味がないのじゃないか。わが国としても何十年たっても入れないような条約であるならば、やっぱりそういう条約の内容を改めて、もっと国が入れるような条約の内容にするとか、わが国が何十年たっても入れないようなものであるならば、内容がよろしくないのであれば。そういうような気もするのですけれども、その点はどうなんですか。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) 御指摘のとおり、未批准のものがたくさんあるということはまことに遺憾に存じますが、その理由の一つには、国内法的には先ほど来再三申し上げておりますが、船員中央労働委員会という三者構成の機関、これらの合意が要るということですが、同時に、ILO自体、これが御承知のように官労使と三者で代表をそれぞれ送っております。したがいまして、日本もそうでございますが、各国とも採決はしたものの、その批准について相当に手間取るということが実態のようでございます。

塩出啓典公明党

○塩出啓典君 それでは、いわゆるILO百二号条約ですね、これは、船関係以外は明後日の委員会で審議するようになっておるようでございますが、船員関係の社会保障に関する条約、それから海員の為の疾病保険に関する条約、五十六号、それから、漁船員の健康検査に関する条約、百十三号ですね。それからまた百九号の賃金、船内労働時間及び定員に関する条約、こういうようなもののは非常に船員の健康あるいは人権の立場からも、これは早急にやはり実現に努めなければならぬ条約じゃないかと。私は、内容はよく知らぬのですけれども、項目だけ見て、ですね。いまの四つについて、日本の国としてはどういう点に問題があるのか。また、大体いつごろをめどにこれを批准できる体制の方向でいっているのか。いま話がありましたように、船員中央労働委員会において、労働者側、使用者側、あるいは政府側の三者の会議で決まるというても、リーダーシップをとるのは政府じゃないかと思うんですね。やはり政府がこういう船の使用者側に対してもよく指導をして、それが一刻も早く実現をしていくように、責任はやはり私は政府にあるんじゃないか、このように思うんですけれども、いまの四つについて簡単に御説明をいただきたいと思います。

綱島衛厚生大臣官房国際課長

○説明員(綱島衛君) 先生御指摘の社会保障関係の船員の条約でございますが、ごく簡単に申し上げます。  最初に御指摘になりました五十六号でございますが、これは一九三六年、大分前でございますが、このときにできております。要点は、船員の病気の場合に社会保険で強制の保険制度で救いなさいと。医療に関する給付でございますね。それから休業した場合には、その間の賃金保障と申しますか、いわゆる傷病手当金という制度がございますが、これで保障しなさい。あるいはそういう権利の保護のために船員にアピールをする権利を与えなさい、そういうような意味の規定がございます。  ただ、この疾病の条約につきましては、その後にできております、これも先生御指摘の七十号条約、つまり船員の社会保障に関する条約、これで包括的に同様な趣旨が入っておるわけでございます。  もう一つ御指摘になりました七十一号条約、つまり船員年金条約でございますが、これは年金部門に関しまして船員に対する保障をしっかりやれ、こういう意味での条約でございます。  日本の国内法におきましてこの船員関係の社会保障関係を規定しておりますのは、厚生省所管の船員保険法でございます。そこで五十六号との対比におきましては、これはおおむねこの要件は十分に満たしておるというふうに考えられるわけでございます。  なお、次の七十号、七十一号、社会保障あるいは年金関係でございますが、これにつきましても、ほぼ全面的に基準に到達していると考えておりますが、多少技術的な点におきましてまだ疑問があるわけでございます。したがいまして、目下七十号あるいは七十一号につきまして関係の省庁と連絡をとりながら検討を始めている段階でございます。したがいまして、時期が熟しました節には批准のために御審議をお願いするという運びになろうかと存じております。  以上でございます。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) ILO条約の百十三号条約について申し上げます。  この条約は、健康証明書を持たない者を漁船の船員として雇い入れることを禁止することを定めたものでございます。これにつきましては、条約ではその漁船の適用範囲といたしまして、通常三日以内の航海を行う漁船を適用除外しております。これに対しまして船員法では十総トン未満の漁船を適用除外にいたしております。近くこれは五総トン未満ということになりますが、このように適用の除外の線の決め方が若干相違しておりますが、実態はほとんど変わりがないということでございますので、本件につきましても今後検討さしていただきたいと思います。  百九号条約は、船員の最低賃金、労働時間、定員について一定の額等、基準を定めたものでございます。この条約の趣旨は、わが国におきましてもおおむね実現されておりますけれども、船内の労働時間につきまして一部この条約の基準と食い違いがございます。それから時間外労働に関する規制の内容につきましても若干異なっております、等の理由がございますので、先ほど申し上げました公労使で構成する船員中央労働委員会のコンセンサスをそういう点について極力早い機会に得て検討を進めてまいりたいと存じます。

塩出啓典公明党

○塩出啓典君 いまお話では、おおむねその線をいっておるけれども、わずかの点において違いがある、そういうことで批准が延び延びになっておるようでありますが、ILOの趣旨から言えば、各国がそのレベルまで速やかに努力をする、こういう義務があると思うんです。ただ国内法がだんだん熟して、そのうちそのレベルまでいけば、ともかく鳴くまで待とうホトトギスみたいな、そういうのんびりしたことではILO条約の本来の趣旨とは私は反するんじゃないかと思うんですけれども、政府といたしましてもこれらの諸条件については一刻も早く実現をしていくように努力をすべきだ、そういうことがやはり世界の国々の日本に対する評価というものを高め、そういう姿勢をとることがやはり日本の発展のためにも非常に望ましいんではないか、私はそう思うんですけれども、その点どうですか。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) 先生のおっしゃる方向で私も努力してまいりたいと存じます。

塩出啓典公明党

○塩出啓典君 この船舶料理士の資格証明に関する条約が批准をされたにいたしましても、これは料理をする人の資格の問題でございまして、その料理をする材料がよくなかったらやっぱりいかぬと思うんですね。長い航海に出発しますと、品物が非常によくないからといって買うわけにはいかぬわけで、そういう船内に積み込む品物の検査とか、特に私の記憶では船に積み込んでおるいわゆる飲料水ですね、飲料水を検査したところが非常に大腸菌が多くてよくない、こういうようなことがたしかいつかの委員会で問題になっておったと思うんですが、こういう点をもう改善されたのか、その点はどうなっていますか。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) ただいまの御指摘は、もうまことにもっともでございまして、現在私どもといたしましては、船員法に基づく船員労働安全衛生規則の三十七条の規定で、船舶所有者に対しまして、「食料の貯蔵については、食料の種類に応じた保存方法を講ずるとともに貯蔵設備を清潔に保たなければならない。」という義務づけをいたしております。それから同じく同規則の三十八条で、船舶所有者に対しまして、「清水を積み込む場合は清浄なものを積み込まなければならず、かつ、これを衛生的に積み込み、及び保つために」、これから申し上げるような措置を講じなければならないといたしまして、たとえば「清水の積み込み前には、元せん及びホースを洗浄すること。」、その「ホースは専用のものとすること。」等、きめ細かく規定をいたしております。私どもといたしましては、この規定に基づいて従来も強く指導してまいりましたが、今後ともこの船舶料理士制度の確立を機会に、さらに指導監督を強化してまいりたいと存じます。

塩出啓典公明党

○塩出啓典君 ただいま非常に細かい点まで法律が決まっておるわけですけれども、問題はそのとおりやっておるかどうかということが問題じゃないかと思うのです。さっき私が申しました船に積み込んでおる水に非常に大腸菌が多いというような件があったと思うのでもけれども、たとえば船の水の立ち入り検査とか、そういうようなのはこれはどこが担当してちゃんとやっているのですか。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) 水等の指導監督につきましては、全国に船員労務官を配置をいたしまして、これが年間一万数千回、各船、事業所等に立ち入り検査をいたしております。その際に、飲料水についてもチェックをいたしております。

塩出啓典公明党

○塩出啓典君 そういう点はひとつ厳重にやってもらいたいと思います。  特に最近、船内における食中毒とか、長期航海をするわけですけれども、航海の途上においてそういうようなよろしくない料理のために病気になったとか、こういうような場合は必ず報告が来るようになっておると思うのですけれども、そういうようなデータはどうなんですか。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) そのような疾病等の事故があった場合には報告が参りますが、最近そのような事例はございません。

塩出啓典公明党

○塩出啓典君 それから、今回は千総トン以上の船舶についていわゆる船舶料理士の乗船を決めると、当面は三千総トン以上ということですが、これはなぜ当面は三千総トンにしたのか、それからまた、大体いつごろに千トン以上にするのか、これはどうなっていますか。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) 先生おっしゃるように、当面は三千総トン以上の遠洋及び近海船でございます。なお、千総トン以上に適用いたしますのは三年後でございます。当面三千総トンといたしましたのは、沿海を航行する船舶、すなわち主として内航でございますが、内航船につきましては現在司厨部の組織というようなものが小規模のためにないものが多い実態でございますので、そこらの実情を配慮して、それで遠洋区域と近海区域、これを当面適用するということにいたしたものでございます。これにつきましても、先ほど来の船員中央労働委員会で公労使でいろいろな角度から検討していただきまして、その結果の結論でございます。

塩出啓典公明党

○塩出啓典君 この条約は世界で二十の国がすでに批准をしておるわけてありますが、わが国は千総トン以上の船舶に適用するようになっておるわけですが、ほかの国々は大体どの程度なのか、千総トン以上ということで大体国際レベルに近いのか、その点はどうなんですか。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) 千総トン以上というのは、おおむね国際的な水準だと思います。たとえばイギリス、あるいはオランダ等がその適例でございます。

塩出啓典公明党

○塩出啓典君 それから、「船舶の乗組員のための食事の調理について直接に責任を負う者をいう。」と、このようにあるわけですが、料理に従事する人が複数の場合は、その中に一人この資格を持った者がおればいいと、このように理解していいわけなんですか。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) 先生のおっしゃるとおりでございます。

塩出啓典公明党

○塩出啓典君 それから、営利の目的の海上航行船舶に限ると、こういうことでございますが、営利の目的でない船、たとえば海上保安庁とか、あるいは海上自衛隊の船とか、こういう場合は、どういうことになるんですか。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) この条約の適用の対象船舶といたしましては、先生御指摘のとおり、「公有であると私有であるとを問わず、営利のために貨物又は旅客の運送に従事」する海上航行船舶となっておりますので、御指摘の海上保安庁の船舶とかあるいは自衛隊の船舶には適用されません。

塩出啓典公明党

○塩出啓典君 そういう船の場合は、これは法律の適用外なのか、それとも現実には、そういう海上保安庁の船とか、あるいは海上自衛隊の船等においてはこの条約のレベルよりは上にあると、そのように判断していいわけですか。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) たとえば、海上保安庁の船については適用はございませんので、したがいまして、この条約を国内的に実施をするための船員法に基づく船舶料理士に関する省令の適用はございません。それで、海上保安庁の船艇の乗組員につきましては、国家公務員法に基づきまして船員法の適用除外になっております。したがいまして、違う法体系で律せられているということだと存じます。

塩出啓典公明党

○塩出啓典君 この第一条に、「条約の適用を受ける領域において登録されている海上航行船舶」と、この「適用を受ける領域」というのはどの領域になるんですか。これは外務省の方に。

伊達宗起外務省条約局外務参事官

○政府委員(伊達宗起君) 「この条約の適用を受ける領域」と申しますと、この条約に加盟している国というふうに申し上げてもよろしいかと思います。

塩出啓典公明党

○塩出啓典君 そうすると、加盟している国といない国があるわけですね。

伊達宗起外務省条約局外務参事官

○政府委員(伊達宗起君) はい。

塩出啓典公明党

○塩出啓典君 そうすると、加盟をしていない国の方に航海する場合は、この条約を守らぬでもいいと、こういうことになるんですか。

伊達宗起外務省条約局外務参事官

○政府委員(伊達宗起君) これは船の船籍登録のことを規定しているものでございまして、したがいまして、たとえば日本の船でございますと、日本に登録されている船は世界のどこへ行こうとも適用があるというふうに理解しております。

塩出啓典公明党

○塩出啓典君 わかりました。  それでは、先ほど申しましたように、わが国未批准のILO船員関係の条約を、政府といたしましても速やかに批准ができるように、国内体制の整備に特に力を入れていただきたい、このことを要望して、質問を終わります。

立木洋日本共産党

○立木洋君 先ほども出ておりましたけれども、ILO六十九号の国会提出がおくれたという理由について二つ挙げられたと思うんですね。人員確保の問題と、もう一つは司厨部、料理士の組織化の問題、二点を挙げられたと思うんです。確かにそういう要因も私はあっただろうと思いますけれども、海員学校の司厨部本科の設置が昭和四十四年に設置されておりますし、以上挙げられた二点については、大体二、三年前にはほぼ整備されておったというふうに考えることも私はできるだろうと思う。ですから、問題は、この提出がおくれたというのは、一つは、やはり船主の反対があった。これは船舶料理士に、資格を持たなければならないとすると、御都合主義で採用するわけにはいかなくなるわけですから、そういう面からのやっぱり船主の反対があった。もう一つは、運輸省が、そういう状況に気を使いながら、厳しい言葉で言えば怠慢だ、そうまで言わなくても、やはり消極的ではなかったかこの問題をやっぱり積極的に出していく、そういう点について私はお尋ねしたいと思うんです。そういう理由がやはりあったんじゃないでしょうか。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) いま御指摘のとおりな実態というものがございました。そういった実態を踏まえて、船員中央労働委員会の論議が行われましたけれども、その中ではやはり主として使用者側から、まだそういった実態であるから機が熟してないというような意見が強かったと、こう聞いております。なお、私どもといたしましては、船員中央労働委員会が実質的には独立の機能を発揮していただくことがその制度の趣旨から好ましいわけでございますので、この審議に関与することは適当でないかと存じますが、できるだけこのILO条約の批准については、できるものから、一つでもいいから実現してまいりたいということで、今後とも努力してまいりたいと思います。

立木洋日本共産党

○立木洋君 先ほど来、出されておりますこの海員関係のILOの条約ですね、今後そういうふうに消極的にならないように、よく国内の整備もするということも急いでやっていただきたいということで、本条約を批准するために今回運輸省としては省令を出されているわけですけれども、その点について若干お尋ねしたいんです。  一般の調理師の場合とこの船舶料理士という場合には、私はやはり大きな違いがある。内容的に見まして。これはもうあなた方、十分御承知だろうと思いますけれども。念のために言いますと、一つは、やはり仕入れの問題ですね。これは新鮮なものを過不足なく、やっぱり計画的に船に仕入れするという能力がないといけませんし、途中でこれが足らないからといって入れるわけにはいかないわけですから、こういう仕入れの問題というのもやはり計画的に行う能力というものを十分に持たなければいけない。二点は、貯蔵の問題だと思う。新鮮なものを積み込んでも、十分にその鮮度を落とすことなく長期間それらの船内食料を保っていく、こういう貯蔵の問題もきわめて重要であるということは、あなた先ほど言われたとおりだと思いますね。それから第三点は、やはり調理の問題、これは船員の方々が船内で食事をされる。その場合に、これはうまくないからといってほかのところへ行って飯を食うわけにはいかないわけですから、回りは全部海ですから。そうすると、やはり船員の方々が十分に満足して食べることができるような、そういう意味での調理というのは、一般の陸上にある食堂と違って、ここの議員食堂の飯がうまくないからといって、外に食べに行くというわけにはいかない。そうすると、やはり船員全体が満足されるような調理をしなければいけない。そういう点からいえば、そういう船員の方々の一定期間にわたる健康管理、衛生問題等々、十分に栄養の面からもやれるような能力を持った人々がこの責任者となって、この船内調理、食料というのはやっていかなければいけないということになると思うんですが、こういう点では一般の調理師と今回出されたこの船舶料理士とは、やはり能力だとか技能なんかの面で違いがあるという、そういう点はお認めになっておるわけですか。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) 御指摘のとおり、海上環境の特殊性から、船舶料理士につきましては一般の調理師に比較をいたしまして共通の部門もございますが異なる部門もあると、このように承知しております。

立木洋日本共産党

○立木洋君 異なる部門というのは、より異なった部門での能力を持ってないとならないという私は意味だと解釈するわけですが、そうしますと、今度の省令で出されている点から見てみますと、これは第二条の三項ですか、「運輸大臣の指定する者の行う船舶料理士試験」に合格することということになっていますね、「運輸大臣の指定する者の行う」、これはたとえば栄養士法によりますと、栄養士の資格を取るのには「厚生大臣の行う栄養士試験に合格した者」というのが栄養士法の第二条の第二項に掲げられておりますね。さらには調理師法によりますと第三条の三項では、「厚生大臣の定める基準により、都道府県知事の行う調理、栄養及び衛生に関する知識及び技能についての試験に合格」することというふうになっているわけですが、この船舶料理士の場合には特にそういう異なった面での能力が要求されているにもかかわらず——ここで栄養士の場合には厚生大臣が行う。調理師の場合には厚生大臣の定める基準により都道府県知事が行う。ところが船舶料理士は運輸大臣の指定する者の行う試験、これは試験の質から見て一段低くなっているのじゃないでしょうか。運輸大臣が基準を決めて、その基準に基づいてやるのか、指定した者がある程度勝手に問題を設定をしてやることができるのか。そういう点から見ると、試験の質の点については保障されるのかどうなのか、その点はどうですか。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) この六十九号条約の第四条第四項の規定によりますと、「所定の試験及び資格証明書は、権限のある機関が直接に、又は認められた料理人訓練学校その他の団体が権限のある機関の規制の下に、実施し及び与えることができる。」と、こういうことになっておりますので、わが国の場合には、この条約の規定に基づきまして、行政簡素化の趣旨にも資するために、運輸大臣の監督のもとに、運輸大臣の指定する機関に試験を実施させたいということでございます。

立木洋日本共産党

○立木洋君 その監督というのは、そういう試験の内容だとか基準、科目等々についても、すべて運輸大臣の認める内容になっていなければならない、そういう意味ですか。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) そのとおりでございます。なお、指定する場合に指定の基準といたしましても、運輸大臣の監督下にある公益法人であることとか、あるいはこの試験の執行が適正にできるという能力を持っているかどうか、そこら辺のことを厳重に審査した上、この試験機関の指定を行いたい。指定を受けた機関に対しましても、日常の業務に対しまして、試験はもとよりでございますが、厳重な監督をしていくつもりでございます。

立木洋日本共産党

○立木洋君 しかし、この第二条でやはり「運輸大臣の指定する者」ということだけになりますと、その人物だけの指定でありまして、本来そういう正確を期するならば、運輸大臣の指定する者が運輸大臣の示した基準に基づいてというふうなことにならないと明確にならないんじゃないでしょうかね。やはり指定した者が一定の範囲内で自由に行うという裁量が与えられるような項目として解釈されても仕方がないのじゃないですか。この点はやはり訂正する必要があるのじゃないでしょうか。どうでしょう。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) どういう機関を指定するかということにつきましては、近く通達でもってその指定基準等を明確にいたしたいと存じます。私どもといたしましては、その機関を指定する際に指定の条件としていろいろな監督規定を置いてまいりたい、こう考えております。

立木洋日本共産党

○立木洋君 その指定基準をされる場合には、そういう不備のないように十分な内容をやっていただきたいということを要望しておきます。  それから次に、「講習を修了したもの」ということになっておりますけれども、いままでやはりこういう講習所がありましたですね。いままであった講習所はどれぐらいの期間講習が行われたのか、今後「運輸大臣の指定する者の行う講習」というのはどれぐらいの期間になる予定なのか、その点はどうでしょう。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) 従来やっておりました講習は、財団法人の日本船員福利協会の船舶調理講習所におきましては二カ月、それから海員学校の司厨科におきましては一カ年でございます。

立木洋日本共産党

○立木洋君 いや今後はこの講習をするというのはどれぐらいの期間になる予定でしょうか。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) 今後の講習は六日間の三十五時間を予定しております。

立木洋日本共産党

○立木洋君 それは期間が私はきわめて短いんじゃないかと思うんですよ。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) ただいま私がお答えいたしましたのは、「経過措置」の講習についてお答え申し上げましたが、本則のこれからの講習は二カ月でございます。

立木洋日本共産党

○立木洋君 この間ちょっと話を聞いたんですけれども、昭和郵船の方で田川さんという方の話がありましたけれども、やはりこの方が三年間事実上海上勤務で船舶に乗ってコックさんをされた。それから出てきて二カ月間講習を受けた。直ちに今度いわゆる司厨責任者として船に乗り組むということになったけれども非常に困難だった、大変努力をしなければできない。いわゆる先ほど言いました仕入れの問題一つにしても貯蔵技術にしましてもあるいは調理にしても、本当に船員の栄養や健康管理という問題、衛生問題等々、長期間にわたって一カ月から二カ月間にわたる航海中全責任を負う、こういう重要な責務をやる上では、やはりもっと十分な講習、しっかりした先生の配備等々もなければ困難であるというふうな意見が述べられておりますけれども、そういう意見はやはり積極的に吸収して、十分に問題が起こらないような資格を与える場合でも私はやる必要があると思うのです。そういう点では、講習の期間をもっと検討していただくことはできないんでしょうかね。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) これからやる講習につきましては二カ月を予定しておりますが、その内容の充実につきましても、今後その経緯を見てさらに留意してまいりたいと存じます。  なお、この調理師につきましては、先生も御承知のとおり、省令の二条の二号で「船舶に乗り組んで三年以上調理に関する業務に従事した経験を有すること。」ということで、三年以上のやはり業務経験ということを重視しております。

立木洋日本共産党

○立木洋君 その昭和郵船の方は三年間経験をした人なんです。その人が三年間たって二カ月間講習を受けて、なおかつ、責任者になる場合には困難があった、非常に大変だったということを言われているわけですから、そういう意見をやっぱり積極的にくみ上げて講習内容の充実、しかるべきいい先生を配置してやるというふうな点は徹底していただかないと、御本人が困難だと言っているので、これだけやったらお前はもう大丈夫だなんというようなことは言うべきではないことでありますから、そういう点をよくやはり意見を聞いて本当に責任を持てる人を養成していくという立場で私はやっていただきたいと思うのですが。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) 今後とも、この講習の実施につきましても労使の意見を十二分に聞いて、それで改善に努めてまいりたいと存じます。

立木洋日本共産党

○立木洋君 養成施設が、いまやはり、この間の衆議院の永末先生が質問されて、関西の方にないという問題点も出されておりましたが、あれは設置する見通しだとかというのは、どういうふうになっていますか。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) 当面は、関西方面につきましては設置を考えておりませんが、ただいま問題になりました講習の対象人員、これを増強いたしますので、今後具体的な志望の場所等をよく見さしていただきまして、それで必要である場合には、具体的な措置をとってまいりたいと思います。  なお、海技大学校という要望が海員組合の方から出ておりますが、これにつきましては、現在海技大学校は、甲板部、機関部の通常の一般的な船員の再教育をやっておりますので、直ちにこれに船舶料理士関係の講習をやらせることについてはいろいろ問題がございますので、今後さらに研究させていただきたいと存じます。

立木洋日本共産党

○立木洋君 その点もよく検討していただきたいと思います。  次に「経過措置」の点で、第四項ですか、ここには「同日までの間に船舶料理士として必要な知識及び技能を有していると運輸大臣が認めるものについては、」「料理士としての要件を備える者とみなす。」という規定がありますね。一方では、三年間従事して、経験のある者には講習をし、それからそういう能力があるというふうに認める者は、講習もなしに資格を有するとみなすということになっているわけですが、講習を修了する人と、それから講習を受けない人と、つまり講習を義務づけていない面があるわけですが、これはどういうことになるわけですか。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) 御指摘の、講習を受けないでも船舶料理士としての要件を備える者とみなされる者といたしましては、たとえば現に司厨長でありまして、調理業務に十年以上経験をしているというような方を想定しておりますが、本件につきましては、船員中央労働委員会の審議の過程におきましても、やはりできるだけ短期の講習でもいいから、講習を受けさせるように行政指導すべきであるという御要望もありますので、私どもといたしましては、その線に沿って行政指導をしてまいりたいと存じます。

立木洋日本共産党

○立木洋君 やはりいま局長が述べられたように、明確に、たとえば司厨長として十年以上の経験を有する者については資格がある者とみなすということにすれば明確なんですよ。ただ、ここでは、「必要な知識及び技能を有していると運輸大臣が認めるもの」となると、これは漠然としているわけですよ。漠然としていますし、ここには実際には資格がなくても、いろいろな手づるで資格をもらえるというふうな可能性まであり得ると。規定というのは明確にしておかないと、一番最初に申し上げましたように、やはり船舶料理士というのは異なった面での能力を持たなければならないわけですし、高度の技術、能力がなければ十分な健康をあずかる、そういう責任ある重要な地位に立つ人の資格の問題ですから、こういうあいまいな規定というのはやはり行うべきではない。少なくとも、必要な知識及び技能を有していると認めても、やはり短期間でも講習を行い、きちっと整備し、みなすという場合には、やはり一定の粋をはめて、いわゆる船員の方々でも当然その人の場合には資格を認めることができるという点に限定すべきである。この点は検討していただきたいわけですが、いいですか。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) いまの御指摘の点につきましては、私は先ほど御答弁申し上げましたように、現に司厨長をやっている方で長年の経験を積んでおられるような方に対して考えておりますが、先ほども御答弁してるように、行政指導で短期の講習、いま考えておりますのは二日間で十二時間程度でございますが、これを行政指導で受けさせたい、こう考えておりまして、その点の通達をすでに用意しておりまして、近々のうちに実行いたします。

立木洋日本共産党

○立木洋君 やはり任意ではなくて義務づけるということ、そこまで考えてやっていただきたいと思うんです。それからもう一つは、これは運輸省が直接やられるわけではないわけですけれども、行政指導として強めていただきたいわけですが、さっき出されました船内食料の貯蔵の問題ですね。この貯蔵の点については、衆議院での審議の中ではマイナス十五度以下で貯蔵できるような設備が整備されている、実体的に言ったならばそういう状況だといわれていますけれども、船員法に基づく船員労働安全衛生規則の第三十七条では、やはり貯蔵の規定があるわけですね。マイナス十五度で十分に一カ月ないし二カ月の貯蔵が可能であるかどうか、鮮魚だとか肉など可能であるかどうかという点はどういうふうに考えられていますか。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) このマイナス十五度C以下という基準につきましては、専門の厚生省でやっておられます食品衛生法に基づく冷凍食品の保存基準、これを援用しております。ただし、船の場合には法律的にはこの適用はございません。

立木洋日本共産党

○立木洋君 厚生省でやっている場合には、一般的にいえば陸上の問題ですね。そして日本というこういう気候温暖の地帯である。船の場合には一カ所でなくいろいろ回りますし、いわゆる熱帯地方にも行きますし、いろいろな条件があって、十五度ではきわめて不備である。ですから一応冷蔵設備ができておるけれども、冷凍設備を完備させる。肉なんかの問題についていいますと、マイナス二十八度Cより温度が上がれば十日間、二十日間たつうちに鮮度が落ちていくというふうなことも事実上船員の方々、いままで料理を担当された方々の意見でもそういう意見がありますし、もちろんこれは運輸省として法令ができていないわけですから、そういう義務づけはできないでしょうけれども、少なくとも今後新しく船をつくる場合だとか、あるいはドックに入れて改修する場合だとかという点には、そういう冷凍設備をやはり完備さして、そういう新鮮な魚や肉なんかの冷凍設備に関しても十分にやっていただくように指導していただきたいと思いますが、どうでしょうか。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) 御指摘のように、さらに低温で貯蔵できるような設備を整備する必要があるかどうかにつきましては、専門でおられる厚生省等ともよく協議をいたしまして、必要があれば行政指導をしてまいりたいと存じます。

立木洋日本共産党

○立木洋君 これは直接あれとは問題が別になりますけれども、いま海洋法の経済水域二百海里の問題が問題になってきておりますが、漁民の方々や船員の方々の中でも、遠洋漁業労働者の中では、これがもし決まったならば七万人の人々が職を失うのではないかというふうないろいろ心配が出されております。この現状をどのように考えておられるのか、それについてどういうふうな対策を検討されておられるのか。これはもちろん運輸省だけの問題ではございませんけれども、運輸省の局長の方の御意見はどういうふうに対策を考えておられるのか、その点述べていただきたいと思います。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) 御指摘の海洋法会議におきます二百海里の経済水域の設定問題につきましては、関連する漁船員の雇用問題について、私ども運輸省といたしましてもきわめて深刻に受けとめております。万一そのような事態が生じた場合には、縮小される職場の範囲とか、船員への影響の度合いとか、当該漁船員の転職の希望等、その実態の把握に努めまして、運輸省といたしまして措置し得る、たとえば船員職業安定機能の活用、全国に船員職業安定所が五十数カ所ございますが、それを活用する。あるいは職業補導の強化、これは海技大学校その他の職業補導機関を活用いたしましてやります等によりまして、関係漁船員の保護を図ってまいりたいと存じます。しかしながら、先生も先ほど御指摘のとおり、この漁船員の雇用問題につきましては、何分水産庁初め他の省庁の施策にまつところが非常に多くございます。この点、各省にたくさんまたがっているから適切な手が打てないということではいけませんので、私どもといたしましては労働省の職業安定局の雇用政策課長、水産庁の漁政部の企画課長、社会保険庁の船員保険課長、私どもの船員局の労政課長、この関係する課長四者でもって横の連絡会議をつとにつくらしておりまして、緊密な連絡制をしいております。

立木洋日本共産党

○立木洋君 この問題もひとつ後手にならないように、十分に準備をしていただきたいと思います。  先ほど来、幾つかの点要望をいたしましたけれども、この点も十分に実現できるように検討して努力をしていただきたいということを最後に要望して終わります。

田渕哲也民社党

○田渕哲也君 ILOの六十九号の関係で質問したいと思いますが、すでに衆議院の外務委員会並びに先ほどの各委員の質問がありまして、若干関連し、重複する部分もあるかと思いますけれども、当局の考え方を確かめさしていただきたいと思います。  まず、船舶料理士の試験についてでありますけれども、この試験は本来国が行うべきものでありますが、運輸大臣の指定する者に行わせることになっております。この試験のやり方について、受験者の便宜というものをできるだけ考えていただきたい。現在この試験はどういうやり方で、どういう場所で行われるのか、この点についてまずお伺いをしたいと思います。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) 指定機関による試験は、京浜地区と阪神地区におきまして、その受験者の数に応じ必要な回数、たとえば私どもといたしましては経過措置がいろいろございますので、平年度において年二回程度予定しております。

田渕哲也民社党

○田渕哲也君 それからもう一つは、指定養成施設の設置の問題でありますけれども、これの場所並びに数について、現在どのように考えられておられますか。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) 現在船舶料理士となるべき者を養成してきております機関といたしましては、国の海員学校の司厨科、これは三カ所ございます。それから、民間では財団法人日本船員福利協会の船舶調理講習所、これは横浜にございます。これが養成をいたしておりますが、この新しい制度の発足に伴いまして、これらの施設によるほかに、さらに財団法人日本船舶職員養成協会にこの養成課程を、塩釜と長崎及び那覇に設けて、年間三百六十名程度の船舶料理士の有資格者を養成したい、こう考えております。

田渕哲也民社党

○田渕哲也君 そうすると、現在は四カ所ということですね。海員学校を除きまして塩釜、横浜、長崎、那覇、これは地理的な分布で見ますと、どうしても阪神地方だけちょっと空白になっておるような気がするわけです。先ほどの質問にもございましたけれども、阪神地方に設けられない理由というのをお伺いしたいと思います。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) 阪神地区につきましては、一応海技大学校における講習を要望されておりますけれども、この海技大学校におきましては、施設面につきまして制約がございますので、今後具体的な希望の実態に即応して、必要があれば前向きに検討してまいりたいと思います。

田渕哲也民社党

○田渕哲也君 具体的な希望というのはどういう意味ですか。もうすでに全日本海員組合の方からは阪神地区に設けてほしい、特に海技大学校の中にそういうものを設けろという要望が出ておるわけです。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) 海員組合の方からそのような要望が出ておることは承知しております。ただ、その御要望の中でも、具体的にどれだけの員数の志望者がどういう場所で、阪神地区の中のどういう場所で希望されるかということについては、組合の方でもまだ的確には把握されていないようでございますので、今後それがわかり次第、前向きに検討してまいりたいと存じます。

田渕哲也民社党

○田渕哲也君 もし具体的にそういう要望が出た場合、たとえば海技大学校の場合もことしの予算ではもうないわけですね。来年度予算で学校の拡張とかそういうことを考えないといかぬと思いますけれども、来年度の予算でそれを実現されるというお考えはあるわけですか。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) 御指摘の海技大学校につきましては、敷地が非常に狭くございまして、そこにいま甲板、機関部の基礎的な再教育のための施設がいっぱい建っております。したがって、この場所でもってできるかどうかという疑問はございますが、関西地区で具体的に多数の希望者がおられるということが判明いたしましたら、何かそれをも含めて前向きな検討をいたしたい、そう存じます。

田渕哲也民社党

○田渕哲也君 それから先ほど質問のありましたこの省令の経過措置の中の、たとえば十年以上の司厨長の経験のある者、こういう者は講習を除外するというようになっておりますけれども、行政指導でできるだけ講習を受けさせるように努力するという御答弁がありました。しかし、これは義務づけないとなかなか徹底しないと思うのです。具体的に行政指導で全員に講習を受けさせるということが可能なのかどうか。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) ただいまの御指摘の、行政指導で講習を受けさせることにつきましてはすでに通達を用意しておりまして、近々のうちに実施をさせようと思っておりますが、これの履行については、私どもといたしましては一〇〇%可能であろう、このように確信を持っております。

田渕哲也民社党

○田渕哲也君 一〇〇%可能と言いましてもこれは義務づけられでなければ、こういう人たちは資格証明書がもうぐ交付されるわけでしょう。交付された後で講習を受けさせるといっても現実にはなかなかむずかしいような気がしますが、これはどういう手段をとられますか。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) 近々のうちに通達をいたす内容の中で、行政指導のやり方といたしまして、資格証明書の交付後に、五十三年の六月末日までにこの講習を受けさせるように指導することといたしまして、その旨を船員手帳の官庁記事欄に記載をしておきたい、こう考えております。

田渕哲也民社党

○田渕哲也君 それから、この指定養成施設の講習の講師ですね。この講師の中に海上実務の経験者を加えるべきではないか、こういう要望がやは海員組合の方から出ておりますけれども、この点についてはどう考えられますか。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) 御指摘のように、海上実務経験を有する講師による指導がきわめて大事だと思います。そこで、これは前向きにこのような経験者を含めるよう指導してまいりたいと思います。

田渕哲也民社党

○田渕哲也君 それからこの船舶料理士の資格取得ですね、これはもちろん個人の資格になるわけですから、個人が負担すべきだという考え方もあるかもわかりませんけれども、しかし、これはやはり船主の責任で行わしめるというふうにすべきではないかと思うのです。この点はどうですか。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) 船舶所有者につきましては、船舶料理士に船内における調理を管理させなければならないことになっております。したがいまして、必要な数の船舶料理士の確保については、船舶所有者の責任において行うべきことは当然でございます。

田渕哲也民社党

○田渕哲也君 たとえば、この受講に要する費用とかその間の休暇の問題、有給休暇扱いとか、そういうことについてもこれは船主負担で行うべきだと思いますが、この点はいかがですか。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) 受講料等の経済的な負担につきましては、本来労使間の協議でもって決すべき問題だと存じます。ただ、参考までに申し上げますと、たとえば現在の外航二船主団体と海員組合との間の労働協約におきましては、研修員の賃金の中で、受講手当とか、その場合の交通費、宿泊費、教材費等を船主が負担する規定がございます。ただこれは、新しいこの船舶料理士に関する受講については直ちに適用することはないと思います。今後労使間の話し合いで決すべき事柄だと思います。

田渕哲也民社党

○田渕哲也君 それから、船舶料理士と船員法八十二条の二で決められておる衛生管理者の責務との関連ですね、たとえば衛生管理者の職務の中にも、食事並びに水に対する衛生管理という項目があるわけですけれども、この衛生管理者の責任と船舶料理士の責任、この関係はどうなっておるのか、お伺いをしたいと思います。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) 衛生管理者は船内全体の衛生管理に責任を有するものでありまして、その職務は船員の健康管理、船内の作業、居住環境衛生の保持、食料、用水の衛生の保持、医薬品の整備、船内の衛生管理に関する記録の作成等広範にわたっております。これに対しまして船舶料理士は、司厨部における調理の管理に責任を有するものでございます。したがいまして、いま申し上げました食料とか用水の衛生の保持につきましては、衛生管理者と船舶料理士の両者の責任が調理に関しましては重なり得ますが、衛生管理者の責任も、船舶調理士が責任を負うけれども、一般的にはなお責任は存在すると、このように解釈いたしております。

田渕哲也民社党

○田渕哲也君 たとえば、食中毒の問題等が起こった場合は、食品の管理に問題があった、この場合には船舶料理士の方に第一義的な責任があるという解釈ですか。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) 御指摘のとおりでござ  います。

田渕哲也民社党

○田渕哲也君 それから、先ほど立木委員から質問のありました食料の保存の問題です。これは確かに、冷凍設備ですね、厚生省の食品衛生法に基づく冷凍食品の保存基準、これはマイナス十五度Cということになっておりますけれども、少なくともこのマイナス十五度Cの冷凍ができる設備、この設備の義務づけがいまのところされていないと思うのです。確かに船員労働安全衛生規則その他がありますけれども、これははっきりしたマイナス十五度C以下の設備というような規定はされておりません。したがって私は、これも単なる行政指導ではなくて、本来はやはり船舶安全法の船舶設備規程の中で義務づけるべき問題だと思いますが、この点はいかがですか。

山上孝史運輸省船員局長

○政府委員(山上孝史君) 御指摘のとおり、船員法の系統では船員労働安全衛生規則の三十七条の規定に基づく行政指導でしておりますが、いまおっしゃるような船舶安全法系統から適当な法規制が必要かどうかにつきましては、今後検討させていただきたいと存じます。

田渕哲也民社党

○田渕哲也君 それからILO七十号、七十一号条約について、これも全日本海員組合から運輸、厚生、労働各大臣に五月十九日に早期批准についての要望が出されております。これが批准できないというのは、船員保険の関係で、陸上の失業保険その他との差異がある、こういう点だと思いますけれども、今後この七十号、七十一号条約の批准について、どういう手続、あるいはどういう措置が必要になるのか、こういう点についてお伺いをしたいと思います。

綱島衛厚生大臣官房国際課長

○説明員(綱島衛君) 先生御指摘の七十号、七十一号条約、これにつきましてまだ多少の問題点があるということで批准の段階に至っておりませんのですが、具体的に申し上げますと、一つは、条約の規定しております文章の解釈あるいは中身の問題でございますが、原因のいかんを問わず外国で船員が病気になった、その場合に、本国に送還されるまで、あるいはその他協約等で決めた期間内で十二週間以内は一〇〇%の賃金の保障をしこういう規定が一つでございます。そこで船員保険の方におきましては、職務上業務災害の上での場合には協約の決める一〇〇%ということはなされておりますのですが、職務外の場合には本国に帰ってくるまででも六〇%ということになっております。その辺が船員関係のほかの法令での規定におきましてどこまで補てんされているのか、この辺の問題が一つございます。  もう一つ申し上げますと、失業保険の関係でございますけれども、船員保険では失業保険も扱っておりますが、その場合に、陸上の労働者に対します失業保険、つまり雇用保険法に基づく給付、そこで高年齢者のためには支給期間の延長という措置がございます。七十号条約、社会保障一般について言っております条約では、陸上労働者に対する給付を下回れないという制約がございます。ところがいまの失業保険で申しますと、船員の場合には期間が一律ではございませんけれども、高年齢者層に対する期間延長の場合に、片方別の給付であります退職年金、つまり老齢年金でございますが、これの支給期間が早いという点がございまして、失業保険の方で支給期間を延ばして満足さすべきか、あるいは老齢年金は五十五歳ですでに受給資格がございますので、その方で十分な保障をされているというふうに解されるべきか、この辺で条約の規定しております内容あるいは解釈というものに対する問題点があるわけでございます。したがいまして、全般的に申し上げまして、ほぼ水準には達しておるものではございますけれども、そのような点で、もう少し検討を加えなきゃならぬということでございます。  そこで、もしそういうことが明らかになり、かつ条約の求める基準というものに合致したと、こういうことがはっきりいたしますれば、関係省庁とも連絡をとりまして批准という方向に持っていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。

田渕哲也民社党

○田渕哲也君 大体問題点はわかりましたけれども、今後これを早期批准の方向で検討されると思うのです。これは衆議院の委員会でもそういう答弁がされていると思います。その場合に、たとえば国内的にどういう折衝が必要になるのか、あるいはどういう措置が必要になるのか、どういう点が問題になっていてまだ批准できないのか、食い違いがあることはよくわかったのですが、この食い違いをなくすために何か障害があるのかどうか、この点はいかがですか。

綱島衛厚生大臣官房国際課長

○説明員(綱島衛君) お答え申し上げます。  ただいま申し上げました問題点、これが解明されないということは、その問題点のありかのいかんによりまして、あるいは国内の法律改正ということが必要になるかと思います。もしそれがそこまで必要でないということになりますれば、関係各省との連絡ももちろんでございますが、いわば行政的な手順で準備が整うと、こういうふうに考えております。

田渕哲也民社党

○田渕哲也君 これは検討だけではいつまでたっても批准できないわけで、具体的に、たとえば来国会ぐらいで批准できるようにそういう作業を進められるのかどうか、そのつもりがあるのかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。

綱島衛厚生大臣官房国際課長

○説明員(綱島衛君) お答え申し上げます。  必ず来国会ということのお約束は現在の時点ではできませんですが、率直に申し上げまして、今国会に御審議をお願いしております百二号条約、つまり陸上労働者に対する条約の点にいわば努力を集中してまいったような次第でございまして、船員関係の条約に関する検討というものはややおくれておったということは率直に申し上げられると思います。したがいまして、これをできるだけ早く検討を進めて、積極的な態度で臨みたいと、こういうふうに思っておる次第でございます。

田渕哲也民社党

○田渕哲也君 質問終わります。

二木謙吾自由民主党

○委員長(二木謙吾君) 他に御発言もないようですから、以上をもって質疑は終局したものと認めます。  本件の討論採決は後日行うことといたします。  これにて休憩いたします。    午後零時十二分休憩      —————・—————    午後一時十二分開会

二木謙吾自由民主党

○委員長(二木謙吾君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  委員の異動について御報告いたします。  本日、粕谷照美君が委員を辞任され、その補欠として松永忠二君が選任されました。     —————————————

二木謙吾自由民主党

○委員長(二木謙吾君) 対外経済協力計画の国会承認等に関する法律案を議題といたします。  本件につきましては、すでに趣旨説明を聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。

亘四郎自由民主党

○亘四郎君 配付されました対外経済協力計画の国会承認等に関する法律案について、一通り私も読ましていただいたわけでございますが、その結果、この案がもし施行されるようになれば、相当の困難あるいはまた混乱が予想される、ひいてはこの事業の効率が低下するのではないか、そういうように考えさせられたわけでございます。そういう意味におきまして二、三提案者にお尋ねいたしたいと思います。  まず第一点が、第三条の第一項の「民主主義の原理に反する統治を行う国に対しては、対外経済協力を行ってはならない。」、この点でございます。そこで、一体だれが、どのような基準によって、その国の統治が民主主義の原理に沿っておるか、あるいは反しておるかを判断するのか、こういう点がまず第一でありまして、これに対して提案者のお考えを承りたいと思います。

田英夫日本社会党

○田英夫君 お尋ねの第三条の点ですが、それに関連してまず申し上げたいのは、私どもがこの法案を御提案申し上げたそもそもの考え方は、民主主義の社会である日本において、いわゆる議会制民主主義の制度をとっている日本において、国民から集まった税金を日本国民のために還元をするという形で使うのではなくて、これは大変いいことですけれども、外国の方々のために使うという場合に、果たしてこれを行政府にすべてをお任せしていいかどうかという点ですね。そこで、やはりこれは国会という国民の代表の審議に待ってその判断をすべきじゃないだろうか、こういうことから御提案を申し上げたんで、この第三条に言います「民主主義」というのは、これは御指摘のとおり、相手側の問題になりますから、日本の物差しで、日本が民主主義国家であり、議会制民主主義をとっている国だからといって、そのままの物差しを当てはめようということではありません。民主主義という言葉の定義も実は歴史的にもずいぶん変遷をしておりますし、また、現在でも大変多様な解釈ができると思います。たとえば、これは人民に主権がある、主権在民であるということ、あるいは人権を尊重する精神が守られているということ、これが少なくとも最低限の民主主義の要因であるという解釈もありますし、あるいは、これは実は私自身が三月の予算委員会の質問で、三木総理大臣に対して、民主主義をどうお考えかということを質問いたしましたときに、三木さんのお答えは、国民の意思が反映される政治形態である、簡単に言うとそういう答えをされておりますし、さらに、永井文部大臣がこれにつけ加えられまして、自由と平等が守られていなければならないという解釈をされているわけですね。しかも、永井文部大臣は、国によってはそれが自由の方に重点を置かれたり、平等の方に重点を置かれるという違いはおのずからあるだろうと、こういう文部大臣の解釈もあったわけでありまして、民主主義ということについての定義はなかなかこれは一律にはいかないと思います。  そこで、提案者としてこの第三条にある「民主主義の原理」というのは、したがって非常に広い意味に理解をしていただきたいと思っています。つまり、政治形態、社会体制というものが日本とは違っていても、たとえば社会主義国家も民主主義国家とはっきり私は思っておりますし、あるいは開発途上国の国々でまだ議会制民主主義が確立していない国であっても、これはやはり広い意味の民主主義の原則が守られている限りは民主主義の原理にかなっていると、こういうふうに理解をしていただきたいと思います。  で、判断をだれがするかという御質問でございますが、これははっきり行政府が判断をなさると、こういうふうに私は理解をしていただきたいと思っております。

亘四郎自由民主党

○亘四郎君 提案者の解釈を伺って私よくわかりましたが、そもそも贈与であれ、あるいは借款であれ、経済協力、援助は、日本としては、基本的には開発途上国で民族資本がきわめて貧弱で、その民族資本を十分に持たない国々の国民の福祉の向上と民生の安定を目ざし、かつ、それらの国々と一層友好を深めることが目的でございますから、相手国の統治が民主主義の原理に反するとか反しないとかといった判断をするのに、客観的な妥当性と申しましょうか、そういう形の基準があればよいのでございますが、そうした判断の基準というものがきわめてまだ広義な解釈であいまいになっておる。そういう意味からいたしまして、一方的にわが国の意思で援助先を決めることは、そういう民主主義の国であるとかないとかという決め方をすることが非常にめんどうな現在の段階において当を得ていないんじゃないかと、かように私は考えるわけなんでございます。そういう点について、さらにいま一度、あなたの先ほどの御説明である程度私も御意思はわかりましたが、やはり何かしらまだ解釈の上でぱきっと、しかも短時間でだれしもわかるというような形のものがちょっと考えられないから、いま一度お尋ねいたします。

田英夫日本社会党

○田英夫君 民主主義の定義につきましては先ほど申し上げましたけれども、それではこの第三条の一項を適用するという段階で、その国が民主主義の原理に反しているのかいないのか、これは仰せのとおりまことに判断の基準は非常に広いと思います。政府が判断をされるというふうに申し上げましたけれども、だからこそ、政府が判断をされて経済協力計画をなさった場合に、今度は国会でこの法律によって審議をするということを通じて、その政府の御判断が正しいかどうか、そうした民主主義の原理に適合しているかどうかということを国民の代表という形で審議をするということが必要なんじゃないか。非常に民主主義というものが広いだけに、広い意味を持っているだけに、そういう手順を踏みませんと、これはまあ場合によっては非常に、だれが見ても誤った援助、協力をしてしまうということになるおそれがある。現在世界を見回しましたときに、私はあえてどこの国が民主主義の原理に反した統治を行っているということを申し上げたくはありませんけれども、たとえば国連の場において、人種の差別をしているということを理由に非難を受けている国もあるわけでありまして、こうしたものは人権の尊重、そして平等という、先ほど申し上げた民主主義の原理に照らした場合にやはり疑問を生ずるんじゃないかと、そういう意味で申し上げているわけです。

亘四郎自由民主党

○亘四郎君 それでは次に、同じく第三条の第二項の「軍事目的」に関する条項についてでありますが、福祉の向上と民生安定を目指して援助しておるわけでございまして、私が承知しております現在の解釈では、軍事目的に転用されることがない、そういうように相手国と緊密な協議を行って、外務省や通産省は細心の注意を払っておると、かように承知しておるわけでございます。また同時に、日本国憲法の精神に基づいて考えましても、軍事援助に向けられるというような経済協力は行う余地がない、かように考えておるわけでございます。そういう意味におきまして、いまこの案文にございますような条項は必要がないんじゃないかと、かように考えられますが、提案者のお考えを承ります。

田英夫日本社会党

○田英夫君 確かに仰せのとおり、日本国憲法の前文の精神、あるいは全体を貫く平和主義、国際協調主義という精神からしますと、日本国政府が軍事目的のための援助をやるということはあり得ないはずでありますから、仰せのような考え方もあるかもしれません。しかしやはり、ここにこういうことを入れましたのは、民主主義の場合も同様でありますけれども、国会で審議をするということを非常に重要な前提にしておりますから、そのことを踏んまえた上で政府もこのことをぜひ守っていただきたいと、こういうことでございます。  そして、何が軍事目的かということにつきましては、これまた判断が大変実はむずかしいかもしれません。たとえば、先日の政府とベトナム民主共和国、いわゆる北ベトナムとの経済協力の話し合いの中で、トラックを向こうは供与をしてほしいという申し出がありましたのに対して、一部では、これは政府全体のお考えかどうかはしりませんが、これがホンゲイ炭を輸送するためということのようでありますが、軍事目的に利用されるおそれがあるという判断をされたというふうに聞き及んでおりますが、この点の真偽のほどは政府の方からお答えいただいていいと思いますが、そういう問題も生ずる可能性があるわけでありますから、そうしたことは政府だけの御判断でなくて、やはり国会審議を通じて、計画が示された段階で、これは軍事目的なのかどうかということを国会で審議すると、こういうことも必要ではないか。やはり民主主義とそれから平和ということが日本国憲法の基本でありますので、それをこの第三条で「民主主義の原理」とそれから「軍事目的」と、こういう二つの言葉で表現をしたつもりでございます。

亘四郎自由民主党

○亘四郎君 そこで私、ちょっと経済協力局長さんにお尋ねしたいんでございますが、いままで経済協力局としてこうした問題について、援助あるいは贈与の形とか、あるいは借款の形とか、いろんな形でなされてまいったわけでございますが、私承知しておりますものは、そうした贈与や援助が軍事目的に利用される、あるいは使用されるというようなことがないように細心の注意をお払いになっておったと、かように承知いたしておるのでございますが、局長さんの立場でお考えになって、顧みて何かお考えがございましたらひとつこの席で気持ちを説明していただきたいと思います。

鹿取泰衛外務省経済協力局長

○政府委員(鹿取泰衛君) 従来日本が行っておりました対外経済協力のうち、相手国の軍事目的に使用されることのないように、その援助のプロジェクトなり商品なりが相手の軍事目的に使用されることのないように、これはもう細心の注意を払っておりますし、私ども承知する限りその目的に使用された事実はないと確信しております。  で、細心の注意をどうして払うかということを若干御説明いたしますと、まず、プロジェクトの場合には、これが軍事目的になるかならないか比較的明瞭に判断できるわけでございまして、平和目的、民生安定とかあるいは産業の開発のためということのプロジェクトを選べばいいわけでございますけれども、援助の種類の中にいわゆる商品借款なり無償の商品援助がございます。その場合の商品は、先ほども田先生の方からのお話もありましたような問題があり得るわけでございます。その場合に、われわれとして軍事目的に使用されないようにチェックする方法を二つやっております。一つは品目の能力、キャパシティーを制限するということでございまして、軍事目的に使われるような大型のものあるいは動力の強いものはこれを除くという配慮をいたします。それからさらに、そういう場合には、その使用につきまして、これは最終的には相手国の政府を信頼するほかはないわけでございますけれども、何らかの形で相手の国と文書を取り交わしまして、これは軍事目的に使用しないということの一札を相手国からとるわけでございます。このようにいたしまして私どもは従来やってきて、援助におきまして、軍事目的に援助が使用されないよう細心の注意を払っておりますし、今後ともその方針で進むつもりでございます。

亘四郎自由民主党

○亘四郎君 次に私お尋ね申し上げたいことは、第四条の、計画の作成と国会の承認に関する条項についてでございますが、計画を国会に提出することは、申すまでもなく事前にその内容が公開されると、こういうことになるわけでございます。そうすると、その場合まあこちら側の手のうちと申しましょうか、これが相手国にすっかりあからさまになってしまう。そうなりますというと、外交交渉という形において、大げさな表現をもってするならば外交の妙味といいますか、そういうものがもう何にもなくなっちまうんじゃないかというようにも考えられますし、またその内容がわかりますれば、今度援助を受ける相手の国の方から、いや多いとか少ないとか、もっとふやせとか、いろいろな苦情や抗議が当然私は出ると予想されるわけです。そうなりますと、むしろ混乱だけ残ってしまって収拾のつかないような形になるんじゃないかと、こういうおそれを抱くわけでございまして、そういう意味におきまして、事前の国会の承認ということは、一つの理想としては私もわからぬわけではありませんけれども、何かしら余りプラクティカルでなさすぎるのじゃないかという気持ちがするのでございますが、いかがでございましょう。

田英夫日本社会党

○田英夫君 これは実態は、従来行われてきた経済協力の実態も実は事前にかなり相手国、当該国と事務当局の間の話が進んできていて、その上である時点で公になってくるということではないかと思います。たとえば、これがいい例かどうかわかりませんけれども、おととしの石油ショックの折に現総理大臣の三木さんが政府特使として中近東を回られまして、その折に、たとえばエジプトで経済協力という形でかなりはっきりと金額的な約束までしておられます。三百八十億円という借款の供与を約束をしてこられた。これは実際には三木特使が約束をしてこられて、その後で政府の本当の契約になるはずでありますけれども、そういう事態もあります。あるいは韓国との間では、しばしば日韓定期閣僚会議という形で、従来、最終的に約束が取り交わされる以前に内々の話は進んでいるという形で最後の取り決めをするという、これはいろいろな文書で残っているものを見ましてもその経過は明らかではないかと思います。先ほど申し上げた三木特使が行かれた段階では中曽根通産大臣、田中総理自身がその後東南アジアへ行かれておりますし、さらに小坂特使もモロッコとかヨルダン、スーダンというところを回られた。その辺の一連の動きを見ましても、全部それぞれ現地で約束を取り交わされてきて、以後、政府の正式の経済協力になってくると、こういう例もあると思います。確かに仰せのように、ある段階で公になってしまうと、相手国はそれならもっとふやせとか、よそより少ないじゃないかとかいうことが出るかもしれませんが、この法律ができました段階で政府に計画を提示していただくのは、事前に政府間である程度話し合いをまとめ、プロジェクトを決めていただいて提示をしていただくということが前提であります。大まかにどこどこの国にこれだけの経済協力をするということではなくて、具体的なプロジェクトを決めていただいて、それに対する金額も提示をしていただくという形で国会で審議をすべきだ、こう考えているわけでありますから、当然プロジェクトや金額が決まる段階では相手国との間に交渉が煮詰まっていなければ計画は提示できないはずでありますから、国会に提出される段階では相手国ともう相当計画が煮詰まっていると、これが前提だと思います。もちろん場合によっては、ある程度煮詰まりかけた段階で、最終的な詰めがないまま予算年度を迎えるということでそこに組み込まなければならないということもあるかもしれませんが、少なくとも予算の中に組む以上は、政府としては相手側との間の話し合いはある程度煮詰めておられるに違いありませんから、そういう段階で国会に示していただければいいわけであります。したがって私は、仰せのような心配はまずないと、こう判断をしているわけです。

亘四郎自由民主党

○亘四郎君 提案者の説明、私の立場としてよくわかりました。御説明よくわかりました。ただ何と申しますか、そうした特殊なケースはあるわけです。なるほどだれだれがエジプトへ行ってどうするというようなこともございますが、私は自分では、由来こうした利害関係のある外交というものは、両方の相手国と、両方の国が相当そのプロジェクトの根回しをしてそしてある程度成案ができた、合意に達したというところで公表するということが一つの外交上の儀礼でもないかと、かように考えておったわけでございまして、よく言われるように、ガラス張りの外交、ガラス張りの外交という言葉が言われました。ですけれども、ガラス張りの外交などということは、そうした利害の非常に大きな問題に対してガラス張りでなんという外交は、相手国のある以上はそれは両方ともできない。由来そういう意味からいけば外交はある段階までは秘密だと、こう具体的に考えておったわけでございますが、そういう意味からいきまして、国会の承認を求める前にそうした事前の話し合いをある段階まで煮詰めて合意に達したときに国会の承認を求めると、こういう御意思であることはわかりました。

秦野章自由民主党

○秦野章君 ちょっと関連。いまの亘さんのお話しの経済外交の取引の関係でね、いろいろ煮詰めていって国会に持ってきたら最後にぺけになったというと非常に信用にもかかわる。信用にもかわるけれども、その経済協力というものは大変だめなものだという判断をするということもあり得るんだけれども、しかし、そういう内閣はやはりつぶさなければいかぬので、そういうことで煮詰めるべきじゃないか。というのはなぜかと言いますとね、やはり憲法の規定からいくと、国会は最高機関ではあったとしても、三権分立で、やっぱり行政権は内閣に属するということが憲法六十五条にあるし、七十三条の二号には、政府は「外交関係を処理すること。」とはっきり憲法上書いてあるわけです。そうすると、その「外交関係を処理する」という中には、まさに日本のような国では軍事外交というのはありませんから、経済外交なんか外交の大きな柱ですから、そうすると相手方の経済情勢とか政治情勢とかにらみ合わし、あるいはまた、金利がどうとかいろいろな情勢をにらみ合わせながら、あるいは、また、資源外交とも一致する場合もあるでしょう。いまの日本の状況を見たらこれから大変ですよ。そういう外交の中の経済外交は非常にむずかしい外交であるということを考えますと、私は三権分立の思想からいくと、どうもこれはちょっと立法権の行き過ぎになりはせぬか、憲法違反の疑いがちょっとこの七十三条の二号の関係が一つ気になるわけです。  それで田さんのこの法案の趣旨の背後の背後の趣旨というものは私はよくわかるんです。よくわかるんだけれども、たてまえ論からいきますとそういう感じがするのと、それからいま一つは、民主主義の原理に反する統治をしているかしていないかということをだれが判断するかというと、どうしても政府が判断しなければいかぬ。国民に議論があろうがどこに議論があろうが、判断するのは政府だということになると、必ず内政干渉だということがありますね。これが二点目。  それから、条約は大体事後の批准、事前、事後ということで国会がチェックしている。法律はもちろん国会がやる。そうすると、行政権の中で外交というのは特に政府の、何といいますかね、これからの日本じゃ重い荷物だと思うんですよ。そういう行政の中でも外交というものが非常に私はこれからの日本じゃウェートを置いていくということになると、こっちが縛っちゃうとやっぱり国の生存そのものがうまくいかないんじゃないかという感じがするんですよ。これだけちょっと疑問があるんでね。

田英夫日本社会党

○田英夫君 大変大切な点を御指摘になったと思います。私どももこの法案をつくります段階で、いま御指摘になった憲法の外交権の問題との関係は非常に討議をし、考慮をしたつもりでございます。ただ憲法の、政府は外交を処理するということで権限はあるわけですけれども、それはおのずから、やはりこの憲法の精神からすれば主権在民ということで、国民が主人公だという精神は大前提としてあると思いますので、先ほど冒頭に亘先生に申し上げたように、やはり国民の税金を国民に還元するのでなくて、外国の人のために、もちろん大変いいことに使うわけでありますけれども、それだけに、果たして、外交の権限だからお任せしていいかどうかというところに問題があるんじゃないだろうか。  政府を信用しないわけじゃありませんけれども、たとえば、いまの二番目の御質問の内政干渉のおそれがあるんじゃないかということに関連をして申し上げれば、先ほど申し上げたように、人種の差別をして国連で非難を受けているというような国に対しては、やはりこれは世界的な通念として、これに対して積極的に経済協力を進めるべきでないということは、国民の皆さんの御意見としてあるんじゃないだろうか。したがって、先ほどの第三条の御質問もありましたけれども、その「民主主義の原理」とか「軍事目的」とかということを含めまして、対外経済協力というのはおのずから世界的な常識の中で、通念の中で行われるべきでありますから、それを政府が厳正に守っていただけると信じますけれども、やはり主権在民という精神をここでしっかりと踏んまえておく必要があるんじゃないか。この法律があることによって政府の対外経済協力もむしろ非常に厳正に行われているということを、日本の国民の皆さんにはもちろん、対外的にもそのことが明示されるんじゃないだろうか、あえてそのくらいに思っているわけでございます。

秦野章自由民主党

○秦野章君 ちょっといま一つだけ。まあ経済協力という問題が日本の場合は外交上の大きな柱というか、大事な——文化交流その他にも関連しますが、大きな問題となってくると思うので、言うならば政府の大きな仕事だと。これができないような政府はやっぱりだめなんだ、選び直さなければいかぬという問題に帰ってきてしまうような気がするんですよ。  そこで、それはそれで、私は意見が多少違うかもしれませんけれども、私は、政府の方も、きょうは外務大臣にもちょっとその所見を伺いたいのだけれども、経済協力という問題について、田法案の意図の後ろの後ろにある意図というものが十分わかるような気もするので、いままでの経済協力というものの中に、やはり前向きに打開していくような問題があるのではないのかということで、実は、この間、日韓問題のときに世界銀行のパターンなんかを大いに活用して、入札なんかも国際入札にするとか、あるいはお金を貸したらそれがフォローされて、うまく使われているのかといったようなことを十分に見ていくような、そういう姿勢というものをやっぱり出さないと国民も納得しない。確かに、税金が国内で使われるのじゃなくて国外で使われるんですから、だれも見てないですから、そういうものを格別に見ていくというような姿勢というものが私は必要だと思う。そういう点について、この間も、外務大臣余りいい返事はなかったですが、どうですか。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) この間、秦野委員のお尋ねの意味はよく私はわかっておりましたので、お答えの仕方は少し控え目だったかもしれませんけれども、御趣旨は実はよくわかっておるつもりでございます。  つまり、経済協力の場合、一番——一番と言うわけにもまいりませんが、一ついい姿というのは、なるべくいわゆるマルチな、多角的な経済援助に加わって、そこへ必要な援助を支出いたしまして、そして多数国の、となりますと比較的公平なということになると思いますが、余り政治的なひものついていない形で援助をするということが、受ける方も受けやすいし、する方も影響力というものをそれだけ薄めることになりますから、それが一ついい形である。たとえば、アジア開発銀行といったようなものはその一例になると思うんでございますが、そういう形が一つ望ましい形である。しかしそうかといって、そればかりでは現実にはなかなかいきませんで、いわゆる相対の、バイラテラルの援助になるということも、これも現実には除去できないわけであります。そういう場合にも、なるべく援助を受ける側の自由と言いますか、政治的な余りひもをつけない形が望ましい。つまり、この間お話になりましたのは、いわゆるタイドエードと言いますのは、一番援助をします側の意思がくっついていくわけでありますから、なるべく援助の使い方については先方の意思を尊重した方がいい、純粋には私はそういうことであろうと思うのでございます。そのことは、国民の税金を使うから援助する側の意思が最後までくっついていかなきゃならぬということは、必ずしもそうではないので、援助が有効に使われればそれでいいんだという広い立場というものは、国民の税金であっても政府としてはとり得るのでありますから、理想的には私はそういう形であると思います。  この前申し上げましたのは、わが国が今日まで、敗戦後、だんだんに援助を受ける側からする側に変わってまいりましたが、やはり、その段階では、まだまだ援助というものが、援助と言いながらわが国自身の比較的期近な目的に奉仕してきた、あるいは左右されてきたということは、これは偽らない事実でございますから、だんだんそういうところからやはり純度の高い援助に移っていくべきである。そういう問題は確かにわが国の援助政策にございまして、政府としてもその辺はよほど考えていかなきゃならない段階に来ておるということは、実は、先般、秦野委員の言われましたことに私は基本的には同感であったわけでございます。どうも、あのときに多少申し上げ方が不十分であったのかもしれません。

亘四郎自由民主党

○亘四郎君 私の許されました質疑の時間がもう経過いたしましたので、まだ質疑を申し上げたいことが少しございますけれども、後日に譲って、きょうはこれでひとつ終わりにさせていただきます。

松永忠二日本社会党

○松永忠二君 提案者にお聞きいたしますが、この法律は、対外経済協力計画について国会の承認等について定めて、「もって適正かつ効果的な対外経済協力の実施に資する」目的でつくったと。これは私自身もそう考えておるんですが、適正かつ効果的でない対外経済協力の事実があるというところに提案の一つの理由もあると思うんですが、そういう点で、どういう点についてそういうことをお感じになっておるのか。

田英夫日本社会党

○田英夫君 いままでの政府の経済協力の実績を見てまいりますと、中には、協定という形で国会の承認を求められた事例も、たとえば、賠償的な戦後処理の問題などを含めまして幾つか例があるわけでありますけれども、ほとんど、むしろ最近の大部分のものは国会とは関係なしに行政府の責任において行われているので、実は、詳細な内容については私ども国会の中の者は知る由もないと言っていいんじゃないかと思います。しかし、私どもに知り得る限りの経済協力の実績、これは外務省からお答えいただいた方が内容は一番詳しいはずでありますが、外務省の方から出されている資料によって判断をいたしましても、たとえば、インドネシアに対する経済協力などは大変予想外に多いわけですね。これは債権国会議などを通じていろいろ話し合いが行われているようでありますし、しかし、それも実態よくわかりません。そして、インドネシアがいま経済協力を必要としているということはもちろん大変よく理解できるわけでありますから、同じアジアの一員として、日本政府がここに力を入れておられることに対しては理解をできるわけでありますから、これは適正という範囲の中に入るかもしれませんが、実は、その細かい内容については私どもは判断の材料さえ持ち合わせないということではないかと。一番明快に国民世論の批判を浴びているのは、言うまでもなく韓国に対する経済協力の問題ではないだろうか。この実態についても国会でしばしば取り上げられ、私自身も取り上げてきた問題もありますけれども、実は、それとても詳細な実態はつかみ得ていないわけであります。ただ、私が知り得る限りでは、日韓定期閣僚会議で従来最終的に話をまとめていたものが、一昨年、金大中事件が起きまして以後、事務レベルの会議で最終的に韓国に対する経済協力は決定をして実施をしているようになりました。その経緯は、私の聞き及ぶところによると、双方の与党の間でかなり政治的な話し合いが行われ、それが事務レベルで進んでいる話にかぶさってくるというようなことの中で経済協力にかなりの混乱が起こっていたものを、事務レベルの話によって煮詰めることにした方が非常にすっきりしたと、こういうことも聞き及んでいるわけでありまして、その辺に一つの疑問を持たざるを得ないのであります。つまり、適正ということは、私の気持ちとしては、もっとガラス張りで、国民の目の前に示された形で経済協力が行われるようになれば、それだけで私は大きな前進である。適正であるということを判断できるという材料を示すことだけでも大きな前進である、こう思うわけで、その意味で、ガラス張りとは、つまり国会の場に出していただくことだ、こういう判断をしたわけであります。したがって、御質問のような内容については、実は、はっきり申し上げて、適切な資料さえ持ち合わせないと、こういうお答えをせざるを得ないと思います。

松永忠二日本社会党

○松永忠二君 資料問題については後ほどまたお聞きしますが、適正かつ効果的に対外経済協力が行われているとは私は思わない。お話しのように一つ偏りがあるのじゃないかという点で、日韓、特に韓国の経済協力は十五億五千万ドルという非常な膨大なもので、これは、外交の政策はあるとしても、南北統一ということを考えてみても余りに偏っておるものじゃないか。  実は韓国で、この前、日韓緊張状態のときに、経済企画院とKDIが共同分析して、日本の財政借款が全面的に中断されて商業借款が大きく減ってくれば、貿易量の一〇%が減れば韓国の経済成長は半分になると。財政借款と主要な商業借款が中絶して貿易量が二〇%減少すれば韓国の経済成長はゼロになると、こう言っているぐらいですからね。私たちは、南北統一という立場に立てば、そういう偏った韓国への経済協力をすることが、一体統一への助けになるだろうかといった点についても問題がある。  それから、経済協力基金が非常にアジアに偏重して、しかも、これは特に韓国、インドネシア、台湾地域が八四%も入っているというような事実、ここの経済協力は狭い意味で言っていますけれども、海外投資についても非常にアジア偏重になっている。偏っているという点に問題があるように私たちは思うわけです。その上に、事実上資金を出す機関である日本輸出入銀行、海外経済協力基金、今度は、技術を援助する機関である国際協力事業団との関連は果たして十分調整ができてやっているのかどうか、効果的なのかどうかという点について問題がある。それからまた、そのプロジェクトの推進に当たって、いまや、単に工場を建設しただけじゃなくて、問題は、それを運営する技術者を養成したり、職能教育をやるという社会基盤整備という点についても非常に経済協力の手ぬかりがあるのじゃないか。また、事実上過当競争で、むしろ日本の不況を外国へ持ち込んでみたり、必要なもの以外なものに投資がいっているというような、これは民間のものとはやや違う投資としてそういう状況がある。  そこで外務大臣に聞くんですけれども、外務大臣は、いまの対外経済協力が「適正かつ効果的」に行われると御判断なさっているのか。これは適正かつ効果的にやるには、いまのままではなく、やはり検討を少し要するのじゃないかというふうな点についてどういう御判断を持っておられるのか、聞かしていただきたい。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) わが国の国力もここまで参りましたので、過去十数年、その発端は、先ほどもお話しのように賠償から出発したわけでございましたが、やってまいりました経済協力というものを、やはり、ひとつここで新しく考え直してみる必要があるということは政府も思っておるわけでございます。近いうちにその問題についての閣僚協議会を閣議決定によってつくりまして、基本的な見直しをしようではないかというふうに考えております。それは幾つかの点がおそらく検討の対象になるものと思われますが、たとえば、国内の経済協力に関する幾つかの関係の機関がございます。これが、かなり仕事が重なっておるところもございますし、お互いの連携というようなものについても、これはやはり従来からいろいろ問題のあるところであって、私ども問題があるということは知りながら、なかなか整理がむずかしいというような問題が一つございます。関係官庁にいたしましても、非常に関係が多いということも御承知のとおりでございます。  それから、国内のたとえば公共事業関係に例をとりますと、やや長期計画というものがあるわけでございますけれども、援助についてはそのようなものは、予算が単年度主義をとっておりますから、非常に厳格な意味で申すのではありませんけれども、長期的な性格を持っている計画みたいなものはないというような問題もございます。  それから、ごらんになる立場によっては、多少出たとこ勝負的な性格があるという点もあるいは御批判の一部にあろうかと思います。そういったようないろんな問題を政府としても考え直してみる時期になっておる。経済協力の持ちます重要性そのものは、これはますます高まっていくということは、これはもうはっきりしておりますが、むしろそれだけに、この際、いろいろ従来あります問題を再検討してみてはどうかというふうに考えておるわけでございます。

松永忠二日本社会党

○松永忠二君 私は、次に質問しようと思うことについて大臣から御答弁があったんですが、私は経済協力計画というものを持ってやらなきゃだめだと思うんです。だから、そういう意味でも私はこれは賛成なんです。日本のいままでの経済協力というのは何か計画があってやったんじゃない。その場勝負というんじゃないけど、その都度その問題、そのことについてやったのです。まあ大臣自身もそうおっしゃったように、私は長期的に何か計画があってやっているのじゃない、その点はいまおっしゃった。  そこで、自民党の対外経済協力特別委員会などでも、いまお話のあったように、基本計画をまず立てる、それから中期計画を立てる、それから地域別、国別開発戦略というようなもの、それと主要分野別計画というものをやっぱりつくらなければだめだということを特別委員会などでも言っているわけですね。  それから、大臣が統一をやや欠く点があるのじゃないかというのは、例の首相の諮問機関である対外経済協力審議会がそういうことを言っているわけなんですね。そこで例の対外経済協力閣僚協議会をつくってくれということを言っているわけです。いま大臣が言ったと同じようなことだと思うんですよ。私はそういう意味で計画を持っていて、そうして展望の上に立って経済協力が常時展開されていくということは非常に重要なことだ、それがいままでなかったというところに問題があるのじゃないか。  そこで、提案者に聞くわけでありますが、この計画は、提案されている対外経済協力計画というのは単年度のものと考えるんですが、やはり私は長期経済協力計画というものがあって、それに基づいて単年度のが出てくるということが必要だと思うんですが、そういう点については提案者はどういうようにお考えになっていらっしゃいますか。

田英夫日本社会党

○田英夫君 おっしゃるとおり、実はいま外務大臣もお答えになりましたように、予算が単年度になっているわけですから、この法律によって政府からお示しいただく計画というのは、形の上では単年度ということになろうかと思いますが、しかし、何年かにわたる経済協力というものもむしろ多くあるべきだと思いますので、その多年にわたる、何年かにわたる経済協力の場合には、最初にこれは何カ年にわたるものであるという全体の計画を示して、その初年度の分を計画として具体的にお示しいただく。次年度からは、最初の年に示した全体計画の中のそれぞれの二年度、三年度という形で計画の中に組み込まれてくる、こういうことになるべきではないかと思います。したがって、何年かにわたる長期の対外経済協力計画においては、全体の計画を初年度にまず示していただくと、こういうことにすべきだと思っております。

松永忠二日本社会党

○松永忠二君 その次に、これも外務大臣に聞くのですが、もうすでに提案者の方から説明があったのですが、提案説明の中でも先ほど主張をされたように、これだけの膨大な金が出されておるのに、一体「いかなる国のいかなる部門についてどのくらいの規模において支出されるのかが、従来、国家における予算の承認の段階においては必ずしも十分に把握し得ない状況にあった」というようなことを言っておりますね。さっき、その効率的、適正であるという判断をする材料すらないというようなことをおっしゃった、提案者が。それからこの提案理由にもそういうことは言ってある。  経済協力についてはお話のように間口がさまざまである。もう技術協力についてだけ考えたって、一体外務省に、技術協力をどのくらいやっているのだ、じゃ政府機関でどうだ、民間でどうだといってその資料を出してくれと言ったって出せないのですよ。そんなものはない。  それで、事実、現代総合研究集団というのがありますね、松前さんかなんかがやっておられる。これが一九七四年の一月に「開発途上国向け進出に対する提言」という中でこういうことを言っておられるのですよ。海外協力基金、輸出入銀行、海外技術協力事業団など政府関係機関の経済協力名儀で行われる資金の流れの実態について詳細な報告書を定期的に国会へ提出し、日本企業の海外進出の実態とその影響について網羅的な調査を行うことがまず先決だというようなことを言っているわけですね。われわれも少し熱心にいろいろ調べて見ていくと、率直に言って、どこへどのくらい金が使われてどうなっているのだろう、事実上、そういうことについてやはり非常につかみにくい。そういう意味で、ここでは要するに資金の流れの実態について詳細な報告書を定期的に国会に提出して、いわゆる日本企業の海外進出の実態とその影響を、単なる、ここで言う狭い経済協力だけじゃなしに、海外経済協力の実態を国会に明らかにしてもらう、その中で批判と前進を図るという必要があるというふうに外部でも提言をしているし、事実提案説明の中でもそういう点は非常に強調されているわけですけれども、この点について外務大臣はどんなふうにお考えになっているのでしょうか、どういう認識を持たれるのでしょうか。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) わが国とある援助を受けている国との関連で、国別にあるいは地域別にどのような経済援助が一年のうちに行われたかといったようなことは、これは確かに政府としても的確に知っておく必要がございますし、国会でもそれについて関心を持たれることは私は当然であろうと思います。何かそういうことを、比較的、余り資料を議員各位が御苦労をなさってお集めになりませんでも、政府がそういう資料をつくりましてお目にかけられるような努力というのは、これはやっぱり私どもしなければならぬと考えております。ただ、その次の段階で、その援助が相手国でどのような企業に与えられ、それがどのように目下生かされておるかというような点、あるいはその援助をわが国の側でどのような企業がどのような形でそれに参画をして実行に移しているかというような点になりますと、場合によりまして、個々の私企業の、企業自身の持っておるいわば本来の機密というようなことに関係をしてくる場合がございます。これはもとより、そこに不正なことがあるという意味合いではなくて、企業自身が機密を主張し得るわけでございますから、そういう問題がわが国についても起こり得ますし、いわんや他国について起こるということになりますと、これは外国として当然知らせたくない事柄等々についてある程度のことは申し上げなきゃならぬというような、そういう問題に関係をしてくる場合がございますので、この点は、やはりあるところで線を引いて、国会としては大づかみな形でごらんになれる、そういうことを何か考えなければいけないのではないか、しかし、それでは満足でないという御主張もあるわけでございますが、私企業には私企業のやはり当然外部に対して発表しない、あるいはすることを欲しない企業としての内部の問題がございますから、その点も尊重しなければならないという問題が出てくる場合がある。ですから、どういう形で国会にお目にかけるのがいいかというのには一つの私は限定はあると思いますけれども、いまの場合には、いかにもごらんいただくのに全く大変に御苦労をして資料を集めていただいても、なお実態の把握がむずかしいというふうにおっしゃいます、御無理でない点があるように思いますので、私どもで改善をしなければならない余地が相当あるように思っております。

松永忠二日本社会党

○松永忠二君 これは言葉だけでなしにやはり考えていただきたい。  通産省は「経済協力の現状と問題点」というものを出しておりますね。それからまた、先ごろ外務省で、ほんのちょっとした小さい「国際経済協力」というような冊子を出しましたね。それから事業団は、まだ事業団のそういうものを出さないで、技術協力についての年報を出しておられるんですね。  そこで、少なくも政府関係機関によって行われているものについて、もっと一つのまとまったものとして出していくというようなことはどうしてもやっぱり考えていかなければならないものじゃないかと思うんです。要するに、そういう点についてそれぞればらばらなものがあるわけです。それを一つの資金の流れとして、どういう金がどういうふうに入ってどういうふうな仕事が行われているかというようなことを、やはり報告書のようなものをつくって国会に出していくことが必要だということを提言しているのは、私たちも実際どうも調べてみてもそういう点が必要なので、これはひとつぜひ、国会でただ答弁をし合うということじゃなしに、具体的にひとつ検討して善処をしてもらいたいと思います。  それから次に提案者に聞きますが、この三条、例の「民主主義の原理」とか「軍事目的」とかいうようなことで御質問がありましたけれども、現実的にこういうことが行われているということについて、諸外国あたりでもこれに触れて問題になっているような事例もあると私は思うんですが、そういう点で、海外での事実について、日本のじゃなしに、外国で、すでにもう民主主義の原理に反するようなことについては海外経済協力とめようじゃないか、経済協力基金は少なくしようじゃないかというようなことを現実にアメリカあたりでさえやっているわけですね。  それから、軍事目的に充てられている対外経済協力というのは、率直に言って、私たちは至るところに見えているように思うんで、よほどやはりそういう点について、具体的な事実もあってこういう必要を痛感されていられると思うんですが、この点について提案者の方からちょっと聞かせてください。

田英夫日本社会党

○田英夫君 いま御指摘のアメリカの例は、一番韓国に対して明白に出ているわけでありまして、アメリカの議会で、昨年夏に急速に対韓経済援助について批判が高まって、実は私も傍聴をしてまいりましたが、下院の外交委員会の小委員会で公聴会を開いておりましたが、その論調は、現在の韓国政府は民主主義に反するのではないかということで、この問題について多くの参考人を呼んで意見を聞いているという状況でありました。そして結論として、大変民主主義が踏みにじられているという判断をせざるを得ないということで、アメリカの場合は軍事援助もやるわけでありますから、そのことを含めて対韓援助を削減をする——当初は非常に強い削減案が出ましたけれども、途中でいろいろ意見も出たようでありまして、実際の削減率はそれほど高くはありませんでしたけれども、結果としては削減をされた事実があります。これなどがやはり民主主義の原理に照らして経済協力という問題を考えるという一つの最も典型的な例ではないかと思います。  それから、先ほどからしばしば申し上げている南アフリカ共和国あるいはローデシアといった人種差別の問題について、国連の場を含めて、これはむしろそこと取引をしてはならないという規制を国際的にやっているというような形も出ているわけでありますから、民主主義の原理に照らして対外経済協力を、場合によっては、それに反すればとめると、こういう事例は国際的にもむしろ通念となって存在しているんじゃないかという気がいたします。それから、軍事目的のために使わないということにつきましては、これは残念ながら世界的な問題ではないと思います。これは、日本が平和国家であり、平和憲法を持っているからこそ非常に重要なテーマになりますけれども、現在欧米の先進国におきましては、残念ながら武器を輸出をするという形のものさえ非常に盛んに行われておりまして、特に最近では、いわゆる発展途上国に対して武器を売りつけるという形の武器の商人が非常に多い。アメリカはもちろんですが、フランスなどは非常にその点多くなってきているという傾向があるわけで、その結果として、発展途上国の武力が非常に高くなってしまっているという結果さえ招いているわけでありますから、むしろ日本がこうした法律をつくることを通じて、世界的にお互いに武器を供与し合うとか、軍事的に使われるような経済協力はやめようとかいう空気を高める役割りを果たすべきじゃないだろうか、これが日本としてのむしろ外交の基本精神にしていいんじゃないだろうか、こういうことさえ感じているわけです。

松永忠二日本社会党

○松永忠二君 そこで大臣にお聞きしますが、この前私は予算委員会等でもお聞きをしたり、また、前回ちょっとここで御説明になったんですが、南ベトナムについて四十九年度九十億の無償援助を三月二十八日の閣議で決定をしている。これは現在どんなふうに進行をしているのか。  それからそのときに、北ベトナムについて四十九年度五十億円の無償援助については予算措置はもうされている、品目協議の段階に入っているんだというようなお話もあり、向こうでは建設資材とか各種機械援助を希望しているということである。ところが、このベトナムの情勢があんなふうになってきたから、援助実施は戦争に肩入れをするのだということになるというので、この北ベトナムの問題は、向こうの使節団が来ていたけれどもこれはだめだということになった。これは一体どうなってるのか。  それからまた、北ベトナムに対して大使館はもうすぐあれですということのお話しあったけれども、一体これはどうなっているのか、どうなるのか。この三つの点について大臣の方から実情を聞かしていただくと一緒に、これからどうするつもりでいられるのか、これをひとつお聞かせいただきたい。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) ただいまのお尋ねでございますけれども、南ベトナムにつきましては、いわゆる円借款の供与ということで交換公文を決定をしたわけでございますけれども、私どもとしては、年度末にもなりましたし、ちょうど交渉の経緯がこの辺でまとまりましたので、書簡の交換についての閣議決定をいたしたわけでございます。しかし、現実にはインドシナ半島の情勢が非常に急転回をする気配がもうこのときにかなり出ておりまして、果たしてこの円借款の供与、この援助が有効に使われ得るであろうかどうかということに疑いが日とともに実は高くなりつつございまして、しばらく事態を見た方がいいのではないかというふうに考えておりますうちに、四月の末にチュー政権が崩壊をいたしました。したがって、この援助をただいま有効に受け入れ、これは商品協定でございますが、有効に実行し得る状態ではないということに現実になっておりまして、したがってこの交換公文、書簡の交換は閣議決定いたしましたものの、実行されないまま今日に及んでおります。  他方で、ハノイ政府との間の五十億円、これは無償供与、無償援助てございますけれども、品目の選定について、ハノイ側から専門家が何人か東京に参りまして、外務省と品目の選定を急いでおりました。話は事実上ほぼ最終段階に近かったわけでございますが、これも同じようなインドシナ半島の急変という事態に遭いましたので、私どもとしましてあの段階で、これは北に対して、と申しますか、いずれの側に対しても、日本が何かの特段の援助をするということはしばらく差し控えた方がいいという情勢がなかったわけじゃありません。なかったわけではございませんが、他方で品目が最終的に詰まらなかったということもありまして、近い将来に交渉を再開しようということで、これは私自身が、実は先方から参りました、どちらかといえば品目選定のための技術的な知識を持った人たちでありましたけれども、その人々に対して、この援助はすでに基本的には日本政府が約束したことなので、決して約束をほごにするつもりはない。近い将来にこの交渉を再開をして品目の選定を終わりましょうということで、一応滞日期限も過ぎましてその人たちは帰国をいたしたわけであります。その後、インドシナ半島の情勢もこうやって展開をして新しい情勢を迎えるに至りました。日本政府として南とか北とかどちらに肩入れするというような問題はすでに消滅をしておりますので、そういうこともあり、また、事態が平静になりつつありますから、交渉を再開をするということで、ただいま交渉が再開されたところでございます。ラオスのビエンチャンにおいて当方の大使とハノイ政府の代表者とが交渉を再開をいたしました。  なお、これと直接に関係はございませんけれども、事実上牽連をしている問題として、日本の大使館をハノイに設置をする、あるいはハノイが東京に大使館を設置をするという問題がございます。これはただいまの話と並行して、話そのもの、交渉そのものは基本的には両方とも異議がないということで、具体的にいつ、どのようにして開くかという問題が、ただいまの問題と並行をして現在両国代表によってビエンチャンで検討されておる、大体そういう段階でございます。

松永忠二日本社会党

○松永忠二君 大使館設置の問題もラオスのビエンチャンを通じてやられていたというし、まあいまも言われるとおりなんですが、この二つの問題についてはおよそどのくらいなめどで一体その問題片づけようとしているのか、ただ話し合いをしているというだけでなしにですね。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) 当初ビエンチャンでこの交渉が——今回の前の一年余り続きました交渉でありますが、その最終段階では四月にでもハノイの大使館をわが国が開き得るような、そういう——具体的に日をはっきりしたわけてこざいませんけれども、目途で両国で交渉をしておったことは確かでございます。しかし、インドシナ半島でああいう問題がありまして、その間実際空白期間が生まれまして、このたびの交渉を再開いたしましたのはつい数日前でございます。  実は、先ほど松永委員が御指摘になりました五十億円でございますけれども、これは両国間の最終的な金額ではございませんで、最終的な金額を明確に確定しないまま、ともかく第一回のと申しますか、その一部としての五十億円ということであったわけでございますけれども、そして残額についてはいずれ続いて協議をしようということであったわけでございますが、このように事態が展開してまいりますと、先方としてはこの際総額についても話をしたいと、いずれにしてもこれはしなければならなかった種類の話でございますが、そういうようなことを考えてくるのではないかとも思われます。それにつきましてわが方がどういうふうに対処いたしますか、まだはっきり方針をきめておりませんけれども、場合によりましてはそういう方に話が進んでいくということはあり得るかと思っておりまして、いま交渉が始まりましてまだ二、三日のところでございます。いずれにしても、近いうちにはっきりめどを立てたいと思っております。

松永忠二日本社会党

○松永忠二君 そこで、この提案は、対外経済協力計画というのは政府のいわゆる開発経済協力の問題を問題にしているわけですけれども、広い意味の経済協力というのは民間企業の投資の問題になっているわけですね。そこで、民間企業の開発途上国向けの進出に対して一つの投資の指針というようなものをつくる必要があるのじゃないか。さっき申しました現代総合研究集団というのでは、現地の国民経済形成に貢献することを主目的として、現地に五一%以上の資本のシェアを与えて二十年間を最高限度とする段階的移譲方式を認めるような民間投資憲章制定の必要があるということを提言をしているわけです。  一方、発展途上国への投資指針というのを経済五団体がつくっているわけです。経団連、日本商工会議所、経済同友会、日経連、日本貿易会、こういうものを見ると非常にあいまいになっているわけです。特に、経済ナショナリズムというものが非常に重要視されているときであるのにかかわらず、この経済五団体の経済指針というのは長期的な観点に立って企業の発展と受け入れ国の開発発展とが両立する方向、それで受け入れ国に歓迎される投資、受け入れ国の社会に溶け込むような経済社会との協調融和ということが書いてあるだけであって、一体現段階として出資比率に関して一つも触れてはいない。それから合弁企業の推進というような項目も全然入ってない。発展途上国の国家経済計画にどう協力するかというようなことも全然入ってない。いま経済的ナショナリズムというような風潮が強く出てきて、企業についてのいわゆる資本の構成の問題、あるいは人的な、人の使い方の問題等についても具体的にもうすでに強い要求が出ている。こういうようなものをもっとしっかり取り入れて民間の企業の開発途上国に対する投資の指針というものをやっぱりはっきりする必要があるのじゃないか。それだけの責任があるのじゃないかということを考えているわけですが、これは直接的に私は通産大臣の責任だと思うのです。しかし、経済協力というような面で、広く経済協力の中に海外投資というものは相当重要な部面を占めているし、実はその海外投資の多いところに問題が多いわけですから、そこについての規制をしていくということを考えてもらわなければいけないので、こういう投資指針というようなものがいわゆる民間企業の中でもつくられて、それが守られて、しかもそれはいまの経済的な自立、自主的な経済自立というような面について、できるだけ資源を自分の国で所有して、それを自国の発展に活用していこうじゃないか、資本についても自分の国の出資の率を過半以上にしていこうじゃないか、あるいはまた、その中の工場の構成の重要な面は自分の国で占めていきたい、そういういろんな具体的要求がある。その国その国で経済計画を立てているわけです。これとどうマッチしながら民間企業が進出をしていくのか、こういう点について、現代総合研究集団も提言をしているように、いまあるような経済五団体の発展途上国への投資指針というのじゃまことに不十分だと思うのです。こういう点について、もっとやっぱり経済団体も自主的に検討して、こうした問題の要望にこたえるような投資指針をつくっていくべきだと私は思うのですが、外務大臣の意見をひとつ聞かしていただきたい。

鹿取泰衛外務省経済協力局長

○政府委員(鹿取泰衛君) 先生御指摘の点につきましては、経済五団体のお話がございましたけれども、日本の業界の各位とも非常に関心を持って検討しているところでございますし、先ほど先生御指摘の現代総合研究集団等、民間の諸団体からもいろいろな意見が出ているわけでございます。  政府との関係におきましては、第一に国内におきまして、先生先ほど御引用になりました経済協力の審議会、現在運営されております経済協力審議会におきましても、政府開発援助ばかりでなく、民間の、特に投資の問題というのは非常に重要であるということで、審議会でも取り上げられて、いろいろ民間の意見あるいは業界の意見ばかりでなく、審議会としての意見、審議会の中には財界の人ばかりでなく、学界の方もおるわけでございまして、そういう広い意味の意見を徴しているわけでございます。この審議会がいずれ答申を出されると思いますけれども、この審議会の答申は今度できます、先ほど大臣から御説明のありました経済協力の協議会に恐らく上がることになると思われますので、われわれ関係各省事務当局におきましても、将来できます協議会においての民間の対外協力の問題をどうするかということを内々事務的に協議しているところでございます。  それから在外におきましても、従来在外公館その他の活動ぶりもやや民間の自主的な事業の問題、運営の問題につきましては、やや指導が消極的に過ぎたきらいがございますが、先生先ほど御指摘のような諸問題を解決するために、在外公館においても民間の企業と協力して、相手国の経済計画にマッチするような投資はどうするかとか、あるいは先ほど申されました資本の配分の問題とか、あるいは現地人の登用の問題とかについて、現地でも協議をして、われわれの経済協力が相手国の経済開発に役立つように指導しているわけでございます。  ただ、最後に指摘しておきたいと思いますのは、もちろん最終的にはそこにある国、開発途上国にあります国の法律の規制を受けるわけでございますので、私どもといたしましての指導にも一応の限界があるということは御了承いただきたいと思います。

松永忠二日本社会党

○松永忠二君 政府側とかそういうところの話はわかりましたが、経済五団体自身がこのことについてやはり不備であるということを感じて検討を進めている事実があるのでしょうかね。

鹿取泰衛外務省経済協力局長

○政府委員(鹿取泰衛君) 経済五団体におきましても検討をさらに続けておりますし、それから経済五団体が主な提案者になりまして、在外企業の、先生言われたような活動をいわば善導するような、そういう協会ができておりまして、この協会を通じてさらに日本の民間の投資活動を適正なものにするというふうな運動がございます。

田渕哲也民社党

○田渕哲也君 すでに各委員からいろいろ質問されておりますので、なるたけ補足的に二、三の点についてお伺いをしたいと思います。  まず、第三条に規定してあります「民主主義の原理に反する統治」、これの先ほどの御答弁によりますと、この判断は行政府が行うと。私はこれは非常に問題があると思うんです。というのは、この「民主主義の原理」というのは、先ほどの御答弁の中にもありましたように、きわめて幅の広い解釈ができる。それから、その人の政治的立場によって非常に違った解釈もできる。しかも、その判断が行政府に任せられるとなると、これはどのように判断されるかわからない。だから、これは法律的に規制する条項としてはきわめてばく然としておりまして、幅広く解釈するならば、こういう規定は全く意味をなさないのではないかと思います。また、厳密に解釈するならば、実際の対外援助が行えなくなるのではなかろうか、そういう意味で非常に問題ではないかと思うわけです。したがって、先ほどの御答弁の中にあった具体的な人種差別とか、あるいは韓国の事例等が挙げられておりますけれども、そういう目的を持つならば、もっと具体的な規制をすべきではなかろうか。アメリカの対外援助法の中では、三十二条に規定されておりますけれども、当該国の市民を政治的目的で拘留、監禁する者に対し、というふうな、非常に具体的な項目が掲げられておるわけです。そういう書き方でないと私は目的を達せられないのではなかろうか、これが第一の疑問です。  それから第二の疑問は、「民主主義の原理に反する」ということは、対外援助を制約する唯一の条件としての必然性を持っておるのであろうかということです。たとえば、日本は民主主義と同時に平和主義ということも掲げておりますけれども、そういう原則に基づくならば、民主主義ということだけではなくて、いわゆる侵略国家、武力侵略を行うような国に対しては行わぬ、対外援助はしないという規定も同時に考えられるのではないか。さらに、核防条約の批准ということも、見通しとして大体明らかになりつつあるようでありますけれども、そういう観点から立つならば、核武装する国に対しては行わないとか、あるいは核実験をやる国に対しては行わないとか、そういう規定の仕方も私は考えられるのではないか。だから、「民主主義の原理に反する統治」が、制約の唯一の条件としての必然性を持っておるのだろうか、以上の二点の疑問があるわけですけれども、この点についてお答えいただきたいと思います。

田英夫日本社会党

○田英夫君 田渕さんおっしゃるとおり、確かにこの「民主主義」という解釈が、先ほど申し上げたように非常に広い意味ですから、広く解釈をするとこれは逆に無原則になってしまうだろうと、こういう御指摘はあり得ると思います。同時に、非常に厳密にやれば、一つの立場かその民主主義だけを押しつけるという形になって現実に沿わないということがあることは事実だろうと思います。ただ、私が先ほどから申し上げているように、日本の憲法の精神というのは主権在民ということ、そして人権の尊重ということを基本にした民主主義だと思いますので、これが一つの大きな柱である。もう一つは、平和主義ということで、絶対に軍事的に使われるような経済協力をしてはならない、こういうことを第三条に二つ並べて規定したわけで、率直に申し上げて、実は、この法案を作成いたします過程の中で、こうした国会の承認という点に重点を置いて、ただ第三条で、その経済協力のあり方について一つの精神的なと言っていい規制を設けるというやり方がいいか、あるいは、もっと違った立場から、対外経済協力基本法というような意味から、対外経済協力はかくあるべきであるという精神で立法をすべきかという議論も実はいたしたのであります。そういう中で、結局は、先ほどから繰り返して申し上げているように、主権在民という精神からして、国民の税金を外国の人のために使うということからすれば、当然、これは国民の代表である国会の審議を必要とする、これがむしろ三権分立の議会制民主主義の日本の現状にふさわしいのではないか、それならば、今回の立法はその線を前面に出してそれをはっきりと規定をする法律にすべきだ、こういう考え方に立ちまして、第三条にやや精神規定的な意味の条文を残した——残したと言っていいかもしれませんが、残したつもりでございます。

田渕哲也民社党

○田渕哲也君 御趣旨はよくわかりますが、もしこれ、精神規定という意味で解釈されるんならば、私はもう少し精神規定的な文章にした方がいいと思います。対外援助の目的は、民主主義、平和主義とかあるいは人道主義とか、そういうようなことを書いて、制約の条件として、「民主主義の原理に反する統治を行う」という書き方はちょっとどうかという気かいたします。これは意見ですけれども……。  それから、この法案が提出される背景として、特に韓国の問題がアメリカでも問題になっておりますし、また日本の世論の中でも問題になっております。それから、この法案の成否をめぐって、特に朝鮮の人、北と南ともに非常に関心を持っておることは事実だと思います。したがって、どうしてもこの法案と韓国あるいは対朝鮮という結びつきが非常に濃厚な感じがするわけです。私は、この韓国に対する経済援助の問題については、これはむしろ外交姿勢の問題として論議すべきではないかと思います。確かに、韓国の現在の朴政権のやり方というのは好ましくないと思います。ただ、好ましくないから経済援助をすべきでないという論理だけでこれは論じられない問題がある。なぜならば、韓国の存在というものと日本の安全保障の関係、これについて政治的立場でいろいろ考え方の相違がありますけれども、そういう考え方の相違に立って現在の経済政策に対する批判なりあるいは論議が行われておると思います。だからこれは、むしろ外交方針、外交姿勢の問題としてまず取り上げるべきではなかろうかという気がいたします。そういう面で、この法案と韓国の問題は非常に密接な結びつきがあるような気がいたしますけれども、その点はいかがでしょうか。

田英夫日本社会党

○田英夫君 これは卒直に申し上げて、いまの韓国に対する経済協力というものが、適正かつ効果的という意味からいっていいかどうかと言うと、やはり非常に私は疑問があるし、そのことを国民の皆さんが感じ取っておられるからこそ世論も問題にされているんだと思いますが、しかし、この法律案が韓国のその問題を目指してつくられたということになりますと、いささか違うと思います。先ほどからの例で申し上げているように、あくまでも、これは国民の皆さんの金を外国の皆さんのために使うんだということの中から、国会で審議をするというところに重点を置くべきであって——置くべきだというよりも置いたのであって、ただ、だからこそ、なおさら、日本の国民の皆さんの貴重なお金をそれにふさわしいところに、有効に生かさなければいけないという意味で、国会で審議をする場合には、これは、あえて規定がなくても、当然、国会議員の責任においてそれにふさわしい使われ方をするように一つの尺度を持って審議をするはずでございますから、実を言うと、この法律の国会審議ということこそが柱であって、韓国の問題は、田渕さん言われるとおり、外交姿勢の問題、これをもっと正すことによっておのずから改まる、こういうことだと思いますし、国際的にもまたそういう尺度で行われているのではないかと思います。

田渕哲也民社党

○田渕哲也君 対外経済協力の問題を国会で審議するということは、私は基本的には賛成なんです。国民の税金を使うわけですから、これは国内で使う場合でも予算審議というかっこうで行われます。特にそれを外国へ持っていく場合には、より厳密な意味での国会の審議が必要ではないか。これは同感でありますけれども、ただ、先ほど問題になりました政府の外交交渉権との関係ですね、こういう国会で審議をすることによって政府の外交交渉の手足を縛ることになると、これは逆に国益に反することになるおそれがある。したがって、ここは政府の外交交渉権と国会の審議権、国会の議決権、そういうものとの兼ね合いを考える必要があると思うんです。先ほどの田先生の御答弁の中に、大体交渉を煮詰めて、煮詰めた段階で国会にかけると。そのようにすればそれほど支障はないということも考えられます。したがって、私は外務大臣にお伺いしたいんですが、先ほど田先生が答弁されたようなそういうやり方で国会の審議にかけるということにするならば、外務大臣としてはそれはどうお考えになりますか。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) 委員各位におかれて御自由な討論の中で議員立法を御審議になっておられますので、政府が御審議の途中であれこれ申し上げますことは、場合によりましてやや非礼になるおそれがございますので、私はそういう意味で申し上げるつもりではないのですが、その点についてあらかじめ御提案者の御了解を得て——よろしゅうございますか。

田英夫日本社会党

○田英夫君 どうぞ。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) 御了解があるようでございますので、ただいまの点は、やはり事実問題として、経済協力というのは、協力を受ける側からわが国にいろいろお話のある場合がもうほとんど全部と申していいぐらいでございます。現状におきまして。当分また今後もそうであろうと思います。そういたしますと、わが国の援助の能力が限られておりますので、どうしても広い意味ではわが国の国益により適したところへ、より適した方法で、またより適しただけのことをやりたいということをどうしても政府は考えざるを得ないということになります。そういたしますと、この経済援助というのはどうしても中に交渉の部分を含んでくる。先方として見れば、これは当然のことですが、できるだけ有利な条件で、できるだけ入り用な金額だけ、これは当然のことでございますが、わが国がそのような全部の御注文に応じ得ないために、それをある程度こちらの事情でもう少し厳しい条件で、もう少し少なくと——そういう方向とばかりは限りませんが、大体がどうしてもそういう交渉をたどることになります。そういたしますと、非常に詳細に国会のお許しを得なければということでありますと、先ほど皆さんが御議論になっておられましたように、こちらのふところぐあいというものがあらかじめ先方にわかってしまうという問題がありまして、交渉の立場は実は非常にやりにくい、弱い立場から交渉をすることになるという問題が現実にはすぐ考えられるわけでございます。  それから、どうしても援助を受ける側は、他の援助を受ける国とのお互いの比較というようなことを、これも現実にはしばしばやるわけでございまして、あの国にこういうつもりであるのに、わが国に対してはなぜこうであるかというようなことから、そのこと自身が非友好的な扱いであるというふうに受け取られる場合がしばしばございます。こういう場合も、交渉をやります立場は実は非常にやりにくい。私どもはその援助をしまして、何も大変に恩にきてもらおうとは思いませんけれども、その結果、まあ親善関係が進んでいくということをやはり大事な目的と考えますので、ただいまのような状況でやってまいりますと、必ずしもそれが親善関係に結実しない、逆の効果に終わる場合が相当にありそうであるというような懸念を、正直を申しますと、持っております。  その他、法案につきましていろいろ私としての感じは持っておりますけれども、先ほど申しましたようなこともございますので、お尋ねの点だけ、とりあえず気がついていることを申し上げます。

田渕哲也民社党

○田渕哲也君 いま大臣のおっしゃった相手側との関係のことは確かにあると思いますが、それはやっぱり交渉過程の問題じゃないでしょうか。ある程度交渉の金額まで煮詰まってくると、それは公表されるということでそんなマイナスがあるでしょうか。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) そのこと自身は、多くの場合公表される、あるいは事実上周知の事案となるということでございますので、そのこと自身がそんなに大きな問題であるとは思いませんけれども、交渉の過程でそういう問題が入ってまいりますと、どうもこちらが適正なバランスだと思われるところへ話がいきませんで、わが国の価値判断からいたしましたときに、いい結果で大体終わったということにどうしてもなりにくいということがあろうと思います。

田渕哲也民社党

○田渕哲也君 しかし、いずれその援助の額が決定した場合は、これは何らかのかっこうで公表されておりますね。だから、その前に国会の承認を受けることは、事実上そんなに支障があると思えないわけです。ただ、しいて考えますと、交渉が煮詰って、額が決定してから国会がすぐ承認されればいいけれども、期間がある、時間的なズレが起こるぐらいのことではないかと思いますけれども、そうじゃないんでしょうか。

鹿取泰衛外務省経済協力局長

○政府委員(鹿取泰衛君) これは経済協力ばかりでございませんで、一般の外交案件すべてでございますけれども、国会との関係におきまして行政取り決めというものがございます。田先生も先ほど御指摘のように、いま私どもがやっております借款にいたしましても、無償にいたしましても、行政取り決めをやっております。それは国会で御承認をいただきました予算の範囲内で取り決めを結ぶということでございまして、この取り決めによって行われます案件が一年に数十に上っているわけでございます。予算の範囲内で機動的に外交案件を進めていきます場合には、やはり私どもの従来やっております行政取り決めが適当であり、かつ、それで十分であるというふうに私ども考えております。

田英夫日本社会党

○田英夫君 いまの御質問に関連をして一言申し上げておきたいのは、確かに予算の審議を通じてその年度予算の中には対外経済協力費が各省にまたがって入っているわけでありますから、予算を国会で承認をしたという段階でそれは認められたというふうな解釈ができるかもしれませんけれども、実際問題として予算の、たとえば五十年度予算及び財政投融資計画の「説明」という形で国会に、予算委員会に出てまいります文書の中には、外務省関係は非常に大きな、たとえば国際協力事業団交付金幾ら幾らという形でしか出てこないのであって、私どもは国会の中ではプロジェクトあるいは国別さえ全くこれは把握できないということが一つございます。ですから、予算を承認したから対外経済協力の問題はあわせて承認をされたということにはいささかなりかねるんだろうと思います。  それから、たとえば実際問題として対外経済協力が行われます場合には、輸銀、経済協力基金、それに国際協力事業団という三つの団体が主体になるわけでありますけれども、たとえばその中で非常に重要な役割を果たす輸銀の場合、これは法律的に輸銀が輸銀法によって国会で承認を求める必要があるのは、これは大蔵大臣が提出するわけでありますけれども、一番肝心な事業費は実は国会に提出する必要がないことになっています。にもかかかわらず、実に不思議なことに、たとえば五十年度政府関係機関予算という中に輸出入銀行の事業計画というのが一枚だけ入っておりますけれども、これは法律的に言うと必要のないことをやっているのじゃないかと私は思うのです。したがって、たとえばほかの、住宅金融公庫とか、そういうものの場合には、明らかに事業計画を予算の中に組み込まなければならないことになっておりますけれども、輸銀の場合にはむしろその必要はないと、こうはっきり規定をしていて、実はその裏づけとして、現在国土庁の次官になっておられる橋口收さんが、この法律ができた昭和二十五年の段階で書かれた解説論文の中に、むしろ意識的に積極的にこの輸銀法の中には事業費を組み込まない、報告の義務をつけないという規定を設けたのだという解説までついているわけで、したがって、対外経済協力の重要な役割りを果たす輸銀の事業費の内容というのは全く国会に報告される必要のないものだとされているあたりは、国会で審議をしたからといって対外経済協力が国会で承認をされたということにはならないと、こう私は理解をしているのです。

鹿取泰衛外務省経済協力局長

○政府委員(鹿取泰衛君) いま田先生御指摘になりました二つの問題について、私のほうから技術的な点だけお答え申し上げます。  第一は予算の問題でございますけれども、確かに経済協力の予算の編成の仕方は、従来はややわかりにくかったわけでございますし、いろいろなところに散らばっていたわけでございますが、昨年度から、田先生がいま御指摘になりましたような説明書におきましては、経済協力費一本ということで計上しておりまして、従来に比すと格段とわかりやすくなっているわけであります。しかし、これにつきましても、いま田先生御指摘のように、内容が細目にわたってないという点が確かに問題がございますけれども、これはちょうど先ほど田先生御提案の経済協力に関する法律の中で、国別あるいは事業別、金額別の細目を示せという個条があるわけでございますが、それに対しまして、外務大臣を初めほかの先生方からも御指摘になりましたような、外交交渉の前に相手のうちに細目をわからせるという問題がございますので、経済協力の中身につきましても、予算におきましても、やはり一方的にわが国が金額なり国別のブレークダウンなりを示すのは適当でないという判断がございます。  第二の輸銀の問題でございますけれども、これは輸銀の所管官庁が大蔵省でございます関係もあり、私からは決定的なことを申し上げる立場にはございませんけれども、輸銀は、その資金は、法律でもって書いてございますように、自己の資金とそれから年々の予算において認められました、場合によって政府の出資金とかあるいは投融資の資金を使って運用している、簡単に申せば一つのバンクでございまして、輸銀法では各プロジェクトにつきまして、回収確実な場合にのみ融資ができるという法律の規定がございますわけで、そうういう法律の規定に基づいて輸銀は運用しているわけでございます。しかし、政府借款の場合におきましては、先ほど申しましたように、国と国との行政取り決めの枠の中において輸銀が活動しているわけでございまして、政策的にもあるいは法律的にも、現在の輸銀の活動で私どもは適正であるというふうに考えておるわけてす。

田渕哲也民社党

○田渕哲也君 終わります。

二木謙吾自由民主党

○委員長(二木謙吾君) 本案についての質疑は本日はこの程度といたします。     —————————————

二木謙吾自由民主党

○委員長(二木謙吾君) 次に、国際情勢等に関する調査を議題といたします。  これより質疑を行います。質疑のある方は順次御発言を願います。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 インドシナからアメリカ軍が撤退してから、アメリカの極東における外交政策及び戦略が大きく変わったのは事実でありますが、アメリカの撤退後、フィリピン、タイ等の中国接近において見られるように、アジア諸国においても新しい動きが目立ってまいったのであります。しかし、その間において、ベトナムの後においては朝鮮に危機が来ているのじゃないかというのが世界の注目の的となっていると思うのであります。宮澤外務大臣が、韓国と北朝鮮との間に不可侵協定を結ばせることが望ましいとか、あるいは南北における両国を同時に国連に加入せしめたらどうかというようなことを国会で答弁しておるように承っておりますが、その御意見は——一つの不可侵協定の問題から入りますが、何らかの具体的な腹案なり、日本が進んでそういうことにあっせんに乗り出すというような決意を持った上での発言ですか、どうですか。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) ただいまのお話は、実は過日の予算委員会等におきまして、韓国におります国連軍が、今年国連総会等々の場においてその解体問題についての決議が成立した場合に、政府としてはどう対処すべきかというようなことについての御質問をめぐって交わされた議論でございましたが、私が申し上げましたのは、国連軍司令官が一九五三年の休戦協定の当事者であるということから、当事者が消滅をしてしまうということになりますと、法律的には朝鮮半島の平和の基礎になっております枠組みが消滅をすることになるおそれがある。あるいはまた事実問題として、休戦違反がありましたときに、今日までそれを平穏裏に処理してまいりましたのは休戦委員会でございますけれども、その存立の根拠もしたがって消滅するといったような、その点についての処置を考えておくことが必要ではないかと存じますということを申し上げまして、それに対しまして、それについては具体的にどういうことが考えられるか。たとえば、ただいまお話のように、南北で新しい条約を結んで現在の平和維持の枠組みのかわりにする、あるいは、南北が国連に加盟をすることによってそのような実体を維持するといったような、それらのことが考えられるというような御議論につきまして、私自身、そういったようなことも一つの可能性であろうと存じますと、実はまだそのような事態までに相当日数もあることであり、いずれにしてもわが国単独で決定的な行動ができるわけではございませんので、関係国と実はいろいろな可能性についてこれから御相談を本格的にしなければならない。すでにそのようなことは私どもから問題は指摘は実はいたしておるわけでございますけれども、これからしばらく関係国の間でいろいろその辺の検討をいたさなければならないと考えておりますと、そのように申し上げたわけでございます。  と申しますのは、そのような協議の必要が現実にあるということのほかに、ただいま戸叶委員が御紹介になりましたような考え得る方策については、いずれにしても当事者——南北両方がともかく反対でないということでございませんと実現の可能性はないわけでございますが、ただいまの段階で両者がそのような方式に合意をしそうだという確率は、実ははっきり私どもはつかんでおらないわけでありまして、したがって、その辺のことはやはり関係者がみんな相談をして何かの合意を見なければならないことであろうと思いますと、こういう意味合いで申し上げたわけでございます。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 三木首相も、いま宮澤さんが言われつたようなことをアメリカの雑誌のタイムに発表   〔委員長退席、理事稲嶺一郎君着席〕 しておりますが、そういう模索なりそういう意見をやはり大胆に発表していくということは、一つの前向きの姿勢であると私は思うのであります。日本の外交が陰性から陽性に少しずつ変わりつつあるということは私は歓迎するのでありますが、しかし、問題は南北朝鮮におけるこの危機の受けとめ方でありますが、この朝鮮の現状に対してシュレジンジャー米国防長官のごときは、北朝鮮が南進すれば心臓部に反撃するというような非常に厳しい警告を発しておりますが、何かその言葉の裏には深刻な危機が内在しているという認識の上に立っての発言と見られるかどうか、承りたいのであります。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) 私が受け取っております限りでは、シュレジンジャー国防長官がそのようなことを申しました時点は、アメリカのインドシナ半島からの撤退によって、米韓条約に基づくアメリカの義務の履行について韓国側にかなりの疑いを生じた、あるいはショックから来る現象とも言えるかもしれませんけれども、疑いを生じたこと、及び同様な考えから、北側が米国の約束について読み違いを、誤算をして、それに基づいて行動をするのではないかという心配が米国に生じたこと。そういうことはしかし、事は誤解から起こり得ることがありますので、米国としてはそのような読み違いがあってはならないという意図を持ちまして、かなり強目に、ただいま戸叶委員の言われましたようなことを意識して申したらしい形跡がございます。私はそういう印象を受けております。したがいまして、事態が幸いにしてそのような読み違いということは今日まで起こりませんし、韓国側においてもアメリカの米韓条約上の義務履行についての疑いはだんだんに鎮静をしておるようでございますので、いまの時点においてそのシュレジンジャー氏の言明を、言葉そのまま解釈をする必要はないのではなかろうか、あの時点において一つのただいま申し上げましたような意図を持って述べたのではないかというふうに私は解釈をしております。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 アメリカの新聞は、韓国の朴大統領の、米国は核のかさをはずしたら独自な形において核を開発するという発言を取り上げておりますが、これは韓国が国連軍の撤退を抑えようとしている発言か、それともこれにかわるべき何らかの保障の取りつけを求めている発言か、またアメリカだけでなく、日本にこういう趣旨のもとにおける何らかの一つの意見を打ち出してきているかどうか、その点を承りたいと思います。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) ただいまの韓国大統領の発言は、私ども確認が実はできていないのでございますけれども、もしそのとおりであったといたしますと、私といたしましての解釈は、アメリカのいわゆる核のかさ、あるいは米韓条約に基づく韓国に対する約束というものは、韓国にとってはまさに国の生死にかかわることであると、軽々しくこれを引っ込める、あるいは疑うというようなことはあってはならないのだということを、ただいまのような表現をもって強調されたのではないだろうか。それは国内及び外両方に対して言われたことではないかというふうに解釈をしております。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 朴大統領の国の内外に対しての呼びかけに関連して、やはり核防条約の批准をめぐっていろいろな動きが日本の国内にも起きているのは、アメリカの核のかさのもとにおける日本の立場、それが国会の審議を通じて、衆議院の予算委員会で三木首相の核兵器は持ち込まないと、いかなる場合もノーだという明快な回答を出し、非核三原則は堅持するというふうに言明し、宮澤外務大臣も、当初は多少不明朗な点があったが最近はこれに同調した御見解を出しているようでありますが、そういう一連の動きの中に、政府に対するいま不信感というものがまだ消えないで、衆議院段階においても大変燃えているようですが、どういうところに不信感の原因があるというふうに宮澤さんは考えておられますか。   〔理事稲嶺一郎君退席、委員長着席〕

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) ただいまのお尋ねは韓国のことではなく、わが国の内部における不信感というお尋ねでございましょうか。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 そうです。国の中で、特に国会において。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) この点は、三木総理大臣が最近の両院の予算委員会におかれまして非常に明確にその点については述べておられますので、しかも、これは一内閣に限ることではないのであろうなというお尋ねに対してすらも、自分としては一内閣に限るものではないと思うというところまで答弁をしておられますので、まずその点についての不信感は解消しておるのではないかというふうに政府としては考えております。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 政府としては考えているようだし、個人としては三木さんのいじらしい信念の吐露に対して私たちは満腔の敬意といかないまでも、同情を禁じ得ないのですが、問題は政府のいままでの姿勢です。政治姿勢、主体性ですが、アメリカの核の下で雨やどりしていたのだから仕方がないと言えばそれまでですが、日本の国は核の被害を受けた一つの国です。洗礼を受けたというのじゃありませんが、大きな犠牲を国民が負うているのであって、日本の国民を代表する政府は、もっと国連の軍縮会議の場なりその他の核問題を取り扱っての国際会議なり、あらゆるところで積極的に具体的に、たとえば核を持っている巨人国としてのアメリカ、ソ連に対しても核軍縮にもっと積極的であり、核の武器を使わないようにしようというような提案をどのようにいままでしたか、その点を外務大臣がわからなければ国連関係の人でもだれでも、具体的にやはり示してもらいたいと思うのです。

村上和夫外務省国際連合局外務参事官

○説明員(村上和夫君) 軍縮に関係いたしまして、日本政府はいろいろの場で積極的に、超大国を含めまして核軍縮について提案をしてきたわけでございますが、若干その例を申し上げます。  最初に、核実験の禁止に関します部分核停条約の推進、これは一九六三年でございますが、六二年の第十七回国連総会以来日本は一貫してこの条約に前向きの働きかけをしてきたわけでございます。同様に、軍縮委員会におきましても、いろいろの形で、たとえば核実験の即時停止あるいはマグニチュード四・七五以上の実験停止というような技術的な面に立ち入りましても、わが国は積極的に実験停止の方向に向かって働きかけてまいりました。その他、技術面におきましても、たとえば日本、カナダ、スウェーデンの三国の地震専門家会議も東京で開催いたしましたし、この面におきましては一貫してわが国は積極的に動いてきたわけでございます。  第二に、化学兵器の禁止条約案につきまして、昨年の四月に軍縮委員会においてわが国は単独で、正式には化学兵器の開発、生産及び貯蔵の禁止並びにこれらの兵器の廃棄に関する条約案を提出いたしまして、軍縮に関係しております非常に重要な部分というふうに認識しております化学兵器の分野で働きかけてきたわけでございます。  第三に、核兵器の不拡散条約の面におきましても、わが国は一貫して積極的に軍縮面を強調して働きかけてきたわけでございます。これらがNPT条約ができる段階におきまして、例の米英ソの三国宣言あるいは安保理の決議という形で反映されたというふうに認識しておるわけでございます。  その後、最近の再検討会議に至りましても、わが国は非核兵器国の安全保障という面におきまして、いろいろの場で積極的な主張をいたしまして、これが最終的な宣言の中に盛り込まれているわけでございます。  以上、簡単でございますが御答弁いたします。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 そのように、外務省としてもなかなかやっているじゃありませんか。やっている割合に、それが国際的な大きな揺すぶりとならないのは、外務省の役人だけが国際会議に出て細々とそういう主張をしているという程度だからやはり運動にはならない。また、日本の国内においては、原水禁運動なり何なりが外国の人を招いて広島や長崎や全国を示威行進等をやっているが、国内を揺すぶっているが国際的にはそれほどの影響を与えない。この政府の意のあるところと国民の熱意というものが結びついたときに、初めて世界を揺すぶる国民的な運動となるのでありますが、やはりキリスト教の伝播を見ても、武器を持ってオクタビアンの軍隊がエルサレムを占領したときに、反骨のあるやつはそれに抵抗したが殺されてしまい、せん滅され、後では占領軍に迎合する貢ぎ物取りという税金集めの請負人とパンパンガールが続出したというときに、とにかく理想の王国をつくろうという青年たちが、ペテロを初めローマにまで赤手空拳で進軍している。このごろは武器を持って——どうもヨーロッパに赤軍が輸出されていますが、もっと、武器がなくて国内の国民の中からも、広島と長崎のこの大会だけでなく世界にアピールする。特に、前に一回ぐらいモスクワであったようですが、アメリカででもソ連にでもあの超大国に対して赤手空拳でやはり訴えていくようなことを、政府ができなければ国民も奨励するようにして、今度は赤軍よりももっと魂で訴えるんだ、こういうようなものが出てこないと、青年たちの陰にこもった暗い抵抗が出てくるんじゃないか。政府は相当の金かけても、何か密室でもってしょぼしょぼと話をしている、青年たちは世界じゅうに迷惑をかけながら暴れ回っている。何かこの点をもう少しこの辺で結びつけていったらいいんじゃないかと思いますが、ことしはちょうど原爆が広島、長崎に投下されてから三十年です、これはアメリカの建国二百年以上に私は日本民族としては非常に記念すべき年を迎えるので、もっと陽性に、もっと濶達に、政府も国民ももう原爆によってはこれは人類が破滅するという危機感の上に立って世界に対する一つの揺すぶりかけをしていってもらいたいと思うのですが、どうです外務大臣、あなたおとなしい人だけれども、しんがしっかりしているようだから、こういうふうな積極外交、どうも核拡散防止条約の批准のどうのこうのと陰にこもっちゃっては、国民が何かうっとうしい感じで袋路に入ってしまうような形だが、積極的に建設的に物を提案するというような意気込みを示してくれたらどうでしょうか。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) それは確かに戸叶委員の言われますとおり、いままで外交努力はしておりながらも、その点が必ずしも国内の盛り上がる運動につながってこなかったという点は、いろいろ考え直してみなければならないところがあると思います。私はそれについて考え直さなきゃならないと思っておりますし、戸叶委員の御指摘になったことは事実であろうと思いますけれども、何がしかの理由がなかったわけではないとも思っております。  それはつまり、わが国は核軍縮というものはわれわれ自身の体験からしてぜひとも推進をし、最後には核兵器の廃棄にまで至らしめたいと考えまして、それが先ほど核実験の禁止等々に関するわが国の提案としてあらわれてきたわけで、説明員から申し上げたとおりでありますが、他方で今日の核大国のありさま、あるいは世界の情勢からして、わが国自身が米国の核のかさに頼らざるを得ない、本当を言えばこういうものは全部なくなってしまうことが理想でありながら、現実的にはそれが必要であるという一つの現実が政府の判断としてはあるわけでございます。そういたしますと、われわれはどこの国の核実験にも反対だという立場ははっきりしておりますが、一方の国だけが核兵器を全部廃棄してしまえばそれで事は片づくのだという立場もこれなかなかとり得ない、つ  まり、米ソ両国がバランスされた形で核軍縮を進めてくれるということでなければ、現実の世界としては非常に危ない問題が起こるという判断が片っ方でございますために、とにかく核と聞けば何でもやめてしまえばいいというような比較的わかりやすい立場がいままでとりにくかったという問題があるのであろうと思います。それにもかかわらず、われわれの外交努力は、常にとにかく両者においてバランスされた形で核軍縮をしてもらいたいという主張をしてまいり、そこのところにやはりもうひとつすっきりしないという問題があったのではないか、これはまあ多少弁解のために申し上げるのではなくて、事実の問題としてそういう要素が一つ入っておったのではないかということは申し上げられると思います。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 手っ取り早いところから始めるのには、今後軍縮会議でもこの種の国際会議には、政府だけではどうもへっぴり腰で弱いから、国民を代表している国会からも代表を送る、あるいは代表という形でなければオブザーバーという形ででも、政府の鞭撻役として国民を代表して政府に圧力をかけるというぐらいの意気込みをもってやらなけりゃ世界にアピールする力は私はないと思うんです。  そういう意味において、どうも外交がいままでは十八、九世紀以来の伝統でもって、宮廷外交的な外交官という特殊な技術者の手に握られていたが、今後の激動変革の時代には、やはり国民外交的な根をおろさないと本当の揺すぶりにはならないと思いますんで、これは国会で陰にこもった論議ばかりやっていると梅雨どきと同じくカビがはえてしまうので、もう少し建設的な意欲で、日本国民は真剣に、核なんか持つよりも、戦争なんかに引きずられることよりも、命がけで世界に訴えるんだという根性を発揮すると、世界の平和勢力全部が日本を支持してくれると思うんですが、外務大臣、あなたのときからそのことをどこかでひとつ実験的に試みた方が、三木さんもあなたもせっかく前向きの姿勢を出しているんだが、線が少し細いようだから、太い線をひとつ出してもらいたいということをお願いします。  それはお願いとして、後からお答えを願いますが、現在どのくらい原爆が持たれているか、そのことが私たちは心配でならないんですが、イギリスのミリタリーバランス研究所のデータによると、米ソ両国は現在おのおの一万三千メガトンの核を持ち、それは広島に投下された原爆の六十五万発分とのことだと言いますが、これは推定でしょうが、そのような大量の核がいま貯蔵されておるんでしょうか。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) 六十数万発という推定から百万発を超えるという推定まであるようでございますけれども、一応やはり六十数万発ということを言われる方が多いように聞いております。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 私は、いまから十三年前の昭和三十七年の十月二十二日、ちょうどブラジルに催された列国議会同盟に参加するためにニューヨークの国連本部を訪ねたときに、その午さん会で欧米旅行の途中の佐藤榮作さんとも会ってそこでスピーチさせられたことがありますが、あのときにも佐藤さんに——佐藤さんは失意のときだったろうが、私は、総理大臣になったらまず第一に日中平和条約を締結させなさい、促進させなさい、その次には日ソ平和条約と取り組みなさいということを言ったのは、もうアメリカがダレス以来の封じ込め政策は破綻したし、私はやがてこのベトナムの干渉も失敗するし、その上に立って、好むと好まざるとを問わず東西貿易は拡大されていく、ニクソンの訪中よりはるかに前ですが、そう思ってそのことを進言したのでありますが、佐藤さんは受けの政治家で、七年間長く総理大臣をやりましたが、戦争は起こさないのでノーベル平和賞はもらいましたが、積極的な世界平和に対する貢献はなかったとも思うんです。でも、受け身でもノーベル賞をもらったということですから、もっと積極的な姿勢で日本の政府は真剣だ、政府だけじゃ国民が満足しない、国会の代表も乗り込んだという形になると、これは日本人というのは死にもの狂いでやると何やるかわからないというので、幾らかそのくらいの大きなショックを与えなけりゃ、アメリカやソ連という怪物はなかなか自分のこと中心に考えて、私はこの十三年間見ても、キューバ危機から今日に来るまで、あのときにケネディとフルシチョフとの合意が成り立って何とかモスクワのクレムリンとワシントンのホワイトハウスにはパイプが通じたというけれども、細いパイプでさらにわれわれには見えない。本当に積極的な形で核軍縮なり核兵器をなくさせようという実績はなくて、このように核の累績があって、ちょっとボタンを押すと間違いが起きる、精神異常のような——大統領なんという重荷、総理大臣でも相当重荷ですが、佐藤さんだって気の毒に死んでしまったんですが、やはり間違いが起きたとき、取り返しがつかない。これをどうやって食いとめるか。いまのアメリカにおける大統領制、日本における総理大臣の制度、権限は大きいけれども指導性と責任感がない。国民の憂いがそこにくみ取られていない。そこに大きな欠陥があるもので、ギリシャ以来のオルガニティとデモクラシーの問題、権術政治と民主政治の問題の調整がいまこそこの核の問題を中心として実りあるものにされなくちゃならないと思うんで、これは三木さんなりあなたなりは当然、佐藤さんですらもらったんですから、あの平和賞必ずしもとれないことはないと思うんで、それをもらうもらわないは別問題として、いまのような姿勢でいっていたんじゃ、これは三木内閣は半年寿命が持ちません。のたれ死にします。やはりどうせ人生一度しかないんだから、のたれ死にするんなら、日本のもののふというのは前向きで死ねということを言われているんで、そういう意味において私は今回のこのうっとうしい国会における陰にこもった拡散防止条約の批准に真剣に取り組めば取り組むほど、何か虚脱感に襲われてたまらないんです。これでわれわれが国会議員を勤めておいていいんだろうか、こんな政府の姿勢で国民に対して、人類に対して、ちょっと間違いが起きれば破滅に導かれるような累卵の危うきにありながら、それに対する政治的な回答が出せないでいいんだろうかということでせき立てられているんですが、これはひとつ、私の意見よりも宮澤さんの御決意のほどを、何か具体的な積極的な提起——どうやって挙げ足を取られないように逃げようかなんてへっぴり腰でやらないで、政府はこういう考え方で前進するんだから、この批准に対しても、単なる批准じゃなくて、応じてくれとか何とか言うんなら……、ただ、また国会でも国民も、うまいことを言う、対話の名人三木さんにうまくだまされたという印象ではいけないと思うんで、あなたはだまされたと思われるようなことは余りないようですが、ひとつ、これに対しては明快な具体的な建設的な回答を——そうすれば、さすがに宮澤が言ったことに三木も従ったということになるから、これ一言、その回答を私は求める次第でございます。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) 御指摘のありました核拡散防止条約は、この条約自身は実はある限られた役割しか持っていないわけであります。すなわち、この条約が主として述べておりますことは、いかにして核兵器保有国をこれ以上ふやさないか、一九六七年の段階からふやさないかということについて、核保有国及び非核保有国の義務について定めておるわけでございます。したがって、この条約自身は、もっと大きな問題でありますところの核軍縮の推進でありますとか、あるいは非核保有国の安全といったようなものについて直接に触れていることはきわめて乏しいのであります。しかし、それはこの条約が不備だという意味ではありませんで、核軍縮は、先ほども御説明を申し上げましたが、従来から国連であるとかあるいは軍縮委員会であるとかその他幾多の国民運動を通じて推進をされてまいりましたし、推進をされるべきものであります。また、非核保有国の安全保障は、先ほどちょっと説明員から申し上げました安保理事会の決議であるとか、あるいは核保有国の宣言であるとか、そういうものを通じて確保されるべきもので、そういう大きな運動の中の一つの部分として、これ以上核保有国をふやさないことの方がそれらの大きな運動に奉仕をする、役立つと、そういう意味でこの条約が締結をせられたわけであります。  したがって、この条約を見ても別に軍縮について書いてない、あるいは非保有国の安全について書いてないという世の中の一部の批判は、これはこの条約が当然持っておる位置づけ、この条約が持っておる特定の役割りというものについての理解の不足からくるわけでありまして、実はこの条約そのものは、わが国がこれに加盟することによって日本の姿勢を各国に約束をした立場から、軍縮問題、核軍縮問題、あるいは非保有国の安全というものを世界に向かって叫ぶということで初めてこの条約に加盟した意味がある、私どもはそういうふうに考えておるわけでございます。したがって、今回、ただいま衆議院において御審議をお願いしておりますのも、そういう日本の立場を海外に宣明をして、その上でさらに大きな国民運動としての、あるいは世界に呼びかける運動としての軍縮、核軍縮、あるいは非核保有国の安全保障ということを提唱いたしたい、こういう大きなコンテクストにおいて、そういう大きなもののごく一つの役割りとしてこの条約を私ども御承認を願いたいと、こう思っておるのでありまして、それは、とりもなおさず、その上に立ってわれわれが核軍縮を世界各国に呼びかけたい、そのための自分の姿勢をはっきりさせたい、国際的にも日本の姿勢を約束したい、こういう意図でございますので、政府が御承認をお願いしておりますのは、まさに、われわれの民族の体験からして、核軍縮、最終的には核兵器の廃棄でありますが、それにつながる一連の運動を、これによってわが国の立場を宣明して先頭に立ちたい、こういう意図からでございます。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 先般行われた再検討会議の最終宣言等を見ても、よく読むとなかなか苦心のほどがにじみ出ておりますが、政府は、あの内容をどの程度に評価するんですか。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) この再検討会議におきましては、すでに、西ドイツ、イタリー等の国が会議に間に合うように加盟をいたしたこともありまして、韓国も加盟をいたしたわけですが、いわゆる問題の国として残りましたのは日本だけということになった、そういう状況において開かれたわけであります。したがって、わが国は加盟国としてではなく、単なる署名国として、いわば最終決定には法律的には加われないという立場で参加をしたのでありますが、それにもかかわらず、核軍縮の問題、あるいは非核保有国の安全保障の問題、あるいは、この条約のもとで——不平等だといわれる条約であるけれども、実際には核保有国も 非保有国と同じだけの責任と義務を持つものであるというそういう主張、これらが、あるいはこれに加盟しておりませんところのフランス、中国等に対する呼びかけ等々、ほとんどがわが国の出しました案、わが国の主張というものが最終宣言に事実上取り入れられた形になりました。中には、わが国の加盟を呼びかける発言も幾つかあったわけでありまして、あたかもわが国がこの条約に加盟しやすいと申しますか、そういうことを期待するという雰囲気の中でこの最終宣言ができ上がりました。したがいまして、この最終宣言は、現在の与えられた環境において、ともかく最大限の主張をしたものと考えられますし、また、わが国の主張が十分にこの中に生かされたものというふうに私どもは評価をいたしております。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 問題の国として残ったのはわが国であると。これが名誉ある孤立か不名誉な孤立か、その判断をあなたにさせるというのは、これは無理ですけれども、国民の多くの人が心配している点は、これを批准してしまったら、以後二十年間手を縛られちゃ大変だという不安感があるし、核拡散防止と言いながらもソ連とアメリカは核の保有の競争をやっているし、現実において核が、拡散防止じゃなくって、ずいぶん核が方々へ広がっていくというこの矛盾の中に日本民族も立ちどまって、間違ってはいけないという一つの苦慮をしているんだと私は思いますが、政府は前向きに割り切ったようですが、それでもなかなか、自民党の中にがんこな人がおるので説得には骨が折れたようですけれども、大体、国民的合意を得られるという信念を持っておりますか。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) いわゆる、この条約によってわが国の手を縛る、あるいはフリーハンドをなくするという御議論については、恐らく見通し得る将来においてわが国が核実験をし、核兵器を持ち、しかもただ持っただけでは余り意味がありませんで、米ソと比肩し得るほどのものを持たなければならないでありましょうが、そういうことはわが国の状況から考えまして決して望ましいことではない。仮に可能であるといたしましても——私はなかなか可能であると考えませんが、可能であるとしても望ましいことではないというふうにもともと考えておりますので、したがってフリーハンドを失うということのフリーハンドの意味は、実際は裏づけのないものであるというふうに政府は考えております。むしろ、はっきりわが国の立場を国際的に約束をすることによって核軍縮を呼びかける、確かにこの条約は保有国と非保有国を分けたという意味で不平等ではないかという御批判に対しては、それは私は率直に申してそうだと思いますけれども、そのような不平等状態は、われわれが米ソと同じくなることによって、米ソの道を追うことによって解消すべきものではなくて、米ソがむしろわれわれの立場に年を追って近づいてくる、そういうことによって不平等を解消すべきものである。政府はそのように考えておりますので、この立場は、私はこの問題についていやしくも思いをいたしておられる国民であれば必ず同調してくれる立場である、国民的な支持を得られる立場であるというふうに考えておるわけでございます。

塩出啓典公明党

○塩出啓典君 それでは最初に、先ほどのいろいろ経済協力に関する質疑に関連をして外務大臣にお伺いをしておきますが、対外経済協力閣僚協議会が結成をされた。その協議会がどういう点を検討するか、そういう点につきまして、国内の機関が非常に重複をしているとか、長期計画がない、こういうような点のお話がございましたけれども、私はもっと大事なことは、やはりインドシナ戦争の後、東南アジアの国々が米国から離れようとしている。一方においては、日本に対してもかなり経済援助を求める気持ちは非常に強い。しかし、一方においては日本の経済侵略というものに非常な警戒心を持っておる。そしてまた、今日まで日本の経済援助というものは必ずしも東南アジアの国々においては喜ばれていない。こういう現実を踏まえて、やはりこれからの経済援助のあり方というものは、国内の体制もさることながら、その経済援助に対する理念と申しますか、質的なあり方、また一方においては余りにも物中心の経済援助ではなしに、文化的な交流、人の交流、そういうものをもっと重要視していかなければならないのじゃないか、そういう点の検討の方がより大事なものではないかと思います。私はそう思うのですけれども、先ほどのお話ではそういうものは入っていなかったわけですけれども、そういう点はどうなんですか。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) それはもうまさに仰せられるとおりだと思います。先ほどもちょっと私申し上げましたが、戦後、賠償に始まったところの経済援助というものと、ここまでまいりましたわが国の現在の姿、また、いま塩出委員が言われました最近の東南アジアにおける変わった情勢等々から考えまして、いままで惰性的に考えてまいりました経済援助なりあるいは企業の海外に対する進出なり等といったようなもの、それはいろいろ一つのやはり反省期にきておるのでございますから、そうしてそのことは、経済援助というのも、しょせんお互いに平和に繁栄していくという一つの方法でございますから、そのことは文化活動であるとか、あるいは学問、人的な交流であるとかということと切り離して存在していいものではないというような問題意識、それらのことは、すべてやはり基本的に新しい対外経済閣僚協議会で検討せらるべき基本問題だと思います。

塩出啓典公明党

○塩出啓典君 三木総理の訪米の日程も正式に決まったようでございますが、今回の訪米におきましては東南アジア等の諸問題が非常に重要な課題になる、このように予算委員会等の答弁で聞いておるわけでございますが、その点はどうなうか。一応この訪米の一番大きな目的と申しますか、そういうものを簡単にひとつ御答弁願いたいと思います。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) たまたまこの訪米を両国首脳が考えるに至りました直接の動機は、三木氏並びにフォード氏が、お互いに個人的に知り合う機会がいままでほとんどないということが一番直接の動機であったわけですが、そのことを別といたしますと、議論せられるべき問題は大体やはり三つに分かれるであろうと思います。  一つは現在の世界情勢についての考え方、この中に、わが国にとりましてもアメリカにとりましても、東南アジアの情勢はきわめて大きな変化を最近遂げましたから、何と言ってもウエートが大きい問題でございます。それとあとは中東がそうであろうかと思います。  それから次に日米間に存在いたします問題、これはまあここ数年のように、たとえば繊維問題でありますとか貿易のアンバランスの問題でありまとかというような、余り厄介な問題はただいまのところ幸いにしてございませんが、日米間のお互いの間の問題。 それから第三は、日米が協力をし、連携しなら処理しなければならないところの世界各国間の共通の問題、通貨でございますとか、エネルギーでございますとか、一次産品であるとか、発展途上国に対する考え方であるとか、そういう三つに私は大体分かれるであろうと思っております。

塩出啓典公明党

○塩出啓典君 当然この東南アジア情勢等の問題については、やはり経済協力のあり方等も考えなければなりませんし、そういう点においては、わが国もかなり米国に対してもリーダーシップと申しますか、いろいろわが国としても主張もすべきじゃないかと思うのですね。そういう点におきまして、この対外経済協力閣僚協議会においても、首相の訪米までに何らかのそういう新しい方針、結論を出してそして臨むのである、このように理解をしておるわけでございますが、大体それで間違いはないのかどうか。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) 実は、その協議会を設置しようということが閣議で了解されましたまでの段階でございまして、まだ協議会そのものを、メンバーを選んで設置するというところに実は至っておりません。ちょっと時間がかかっておりますので、ただいま塩出委員の言われましたことは大事なことではございますけれども、総理の訪米に間に合わせるようにということは、あるいは困難であるかもしれません。しかし、おっしゃいましたことは非常に重大な問題でございますから、そういう場でなくとも、当然総理大臣としては一定の方針、考え方を持って訪米せられるべきことは私は必要なことであろうと思います。

塩出啓典公明党

○塩出啓典君 それに関連をいたしまして、カンボジアあるいは南ベトナムのいままでの政権が崩壊をした後、日本におるいわゆる留学生ですね、そういう国々からの留学生が本国からの送金もなくて、非常に困っている。この問題につきましては、先般の委員会においても問題にいたしましても、アジア局長の方から、外務省としてできることがあればやると、こういう御答弁だったと思うんですけれども、いろいろ最近話によりますと、アルバイトをしたり、しかし、けがをしても補償がないと、こういうようなことを私たちも聞いておるわけでございますが、外務省としては、この問題についてはどのような処置をとっておられるのか、これをひとつ簡単に御答弁願いたいと思います。

堀新助外務省情報文化局文化事業部長

○説明員(堀新助君) ベトナムからの留学生につきましては、その本国の政権のいかんにかかわらず、日本へ学問習得に来た青年でございますので、外務省といたしましても、彼らの学業習得にできるだけ支障がないように措置をしたいと考えております。  彼らが学業を継続するにつきまして、問題点は大きく分けて二つあるかと存じますが、一つは、日本に滞在をして学業を継続する、その滞在の資格が得られるかどうかということ。もう一つは、これは国費留学生については関係ない問題でございますが、本国からの送金がとだえたために生活費に困ると、大きく分けてその二つになるかと存じます。  滞在資格につきましては、これは入国管理庁の所管でございますが、すでに五月の六日付で文部省から各大学に通達を出しておりますが、その通達の中には、入国管理庁ではベトナムからの留学生について、学業継続に支障ないよう滞在資格を認めるという方針決定を知らしております。  第二の、生活費の困るという点でございますが、これは各大学におきまして授業料の減免あるいは延納を認めるとか、また学生係の先生方が身の上相談に応じて、できるだけアルバイトなどのあっせんもしてあげるということでございます。また、そのアルバイトにつきまして、入国管理庁は本来の学業継続という目的に大きくそれない程度に、アルバイトをすることをできるだけ大目に見ると申しますか、ゆるやかに解釈をするということになっておりまして、これはそれぞれ入国管理庁、文部省の措置でございますが、外務省といたしましても、そういう措置に協力をしておるわけでございます。

塩出啓典公明党

○塩出啓典君 これは生活費に非常に困っている問題につきましては、授業料の免除だけで、それ以外の処置は考えてないのかどうか、これは文部省も来ていただいておると思うのですが、どうでしょうか、簡単にひとつ。

五十嵐耕一文部省学術国際局ユネスコ国際部留学生課長

○説明員(五十嵐耕一君) ベトナム、カンボジアから参っております留学生が学業が継続できるように努力するということは、私ども文部省としての務めでございますので、先ほども堀文化事業部長から御説明申し上げましたような授業料の減免、猶予、それからアルバイトのあっせんを進めると同時に、民間の方に呼びかけておりまして、奨学金を出していただくということもお願いしておりまして、具体的に申し上げますと、ロータリー米山記念奨学会というものがございます。そこではベトナムの留学生に対しまして六十一人奨学金を出しております。そのほか東急不動産の奨学金とか、岩谷国際奨学金ということで七十人、そのほかに各大学におきまして民間の有志等にお願いをいたしまして、いろいろの援助措置を講じておる段階でございます。

塩出啓典公明党

○塩出啓典君 外務大臣、私はいま話がありましたように、民間に呼びかけて奨学金を出していると、こういうのにもやはり限度かあると思うのですね。恐らくそういう国々から日本へ来ている人たちは、将来においてはその国のやはりあらゆる面において中心になる人物ですから、そうしてまた、人間というのは、やはり困ったときに温かい援助をしてあげれば、それがまた日本に対する生涯の思い出にもなっていくわけで、これは本当にこういうときに国の予備費なりを使って十分な配慮をしていくということは、私は大事じゃないかと思うのです。そういう点で、ただいまのような民間に呼びかけることは、当然それも必要ですけれども、もう少し外務省か大蔵省なり文部省に呼びかけて、やはり実態も調査をし、必要ならば予算も組むと、予備費からそれを使うと、それはそれほど大きな金額で私はないと思うのですけれども、これを早急にやはり検討すべきではないかと思うのですが、その点どうでしょう。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) これはたまたま五月の下旬に、ちょうど私OECDの会議に出席のため不在であったのでございますけれども、閣議で実は塩出委員の言われるようなことは問題になりまして、文部大臣が中心になられまして、文部大臣自身が自分で話の先頭に立たれまして、外務省、大蔵省、法務省等々をまとめるためにいま奔走をしておられます。場合によって、一部公費をどこかで負担しなければいけないのではないかということで、いま、ことに財政当局と折衝をしておられるように承知をしておりまして、閣議としてもそういう努力をただいまいたしておりますので、いずれ具体的に結実をいたすことを期待をいたしております。

塩出啓典公明党

○塩出啓典君 それでは次に、日中条約の覇権の問題でございますが、先般藤山さんが帰国をされまして、その話によりますと、三木総理からの中国への伝言に対して、外務省は正式な回答がないというのに、向うは回答をしていると、こういうようなことで、われわれといたしましてもどうもそのあたりがはっきりしないわけです。けれども、外務省としては、これはどう受けとめておるのか、このあたりを簡単に御説明願いたいと思います。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) この問題は、昨年の暮れからことに本年に入りまして、東郷外務次官と陳楚駐日大使との間で長いこと何回か交渉が持たれたわけでございますが、その間、十分に双方の意思の合意を見ませんでした。  そこで三木総理大臣から、そう一遍中国側に呼びかけをされるということになりまして、小川大使を通じまして総理大臣の意中を中国の首脳に伝えることになったわけでございます。同時に、その段階で、過去半年間の東京における交渉が、いろいろな意味で報道をされまして、わが国は言論自由の国でございますから、私どもそういうことが至極むしろ当然であると、そういう世界に生きていることがむしろ普通の世界であると考えておりますけれども、中国は必ずしもそのような雰囲気でない社会のようでございますから、そのことからいろいろな支障が起こったようでございます。これはこちらに問題があったわけでもない、わが国の報道に問題があったわけでもない、国柄の違いということであったと思いますので。  そこで、三木総理大臣が自分の意思を伝えられましたときに、今後の交渉については、しばらくの間ひとつ公表をしないという形で交渉しようではないかという提言をあわせてしておられるわけでございます。これはまあ過去半年間の経験にかんがみ、あるいは両国の国情の違いということにかんがみて、交渉を成功裏に妥結をさせたいという熱意からそのような提言を総理大臣がしておられるわけであります。  そういうこともございまして、わが国といたしまして、その後どういうことになっておるかということにつきましては、総理大臣のそのような提言にかんがみまして、余り詳しく外部に説明をしないという方針をとってまいっております。そういうことが多少いろいろな意味で両国の説明の仕方のそごになってあらわれてきておるのではないであろうかと、こう考えております。が、わが国としても、この交渉を早急に妥結に導くという熱意を持っておりますし、中国側もさようでございますので、ただいまのそのようなことから若干のそごを生じたと思われますが、もともとの意図はそのような意図で、このことは中国側も恐らく了解をしてもらえる意図と考えておりますから、やがて交渉が本筋に戻ってまいるであろうということを期待をしておるところでございます。

塩出啓典公明党

○塩出啓典君 新聞報道では、三木総理が四項目にわたる伝言を伝えたと。この四項目というのは一体どういう内容であるのか。それで、そういうものは文書ではなしに口頭で伝えたものなのか、この点はどうなんですか。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) この四項目は、当時わが国の新聞にもそのまま正確に報道されておりまして、すなわち、わが国としては交渉をもちろん中継というようなことでなく、早期に妥結したい熱意を持っておるということ、そして日中共同声明は両国の今後のあり方を規定している最高の文書であるということ、したがって、その原則にわれわれは忠実であるということ、今後交渉の中断とか後退とかいう、その声明からの後退というようなことはあってよいことでないといったようなこと等々当時報道されたことがそのままでございますが、これは口頭で、周総理大臣への伝言として小川大使から先方の政府に伝えられたところでございます。

塩出啓典公明党

○塩出啓典君 この内容は、これはたとえば閣議で決定をした内容なのか、あるいは外務大臣と三木さんとの間にいろいろ相談をして決めたことなのか、そのあたりはどうなんですか。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) これは、ちょうど一時事務打ち合わせのため帰国をいたしておりました小川大使が帰任に際しまして、総理大臣から周国務総理への伝言として伝えられたものでございます。

塩出啓典公明党

○塩出啓典君 この問題については、やはり当然外務大臣としてもいろいろ総理から相談があったことなんですか。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) 私としても御相談にあずかっております。

塩出啓典公明党

○塩出啓典君 先般、フィリピンと中国がやはり条約を結んで、また、タイとも中国の間の国交は回復されようとしておる。そういうのでは、全部覇権問題が中国の言うとおり何か入っているようなんですね。そういたしますと、どうもそのあたりに、フィリピンやタイのこの覇権問題に対する認識と、あるいは中国との認識、それと日本政府の認識との間にはかなり差があるんじゃないかと、こういうことが私は今後の東南アジアの国々と日本の関係の上おいても非常に好ましくないんではないか、こういうような気がするんですけれども、そういう点はどう考えておられるでしょうか、外務省としては。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) この点は、報道等を通じて知った範囲で申し上げることでございますけれども、フィリピンにいたしましても、タイはまだこれからのことでございますが、いま報道されておりますことは、国交正常化するに際して出されました声明といったような中に覇権というものに触れられておる。そのことは、あたかもわが国が国交が正常化した際に、共同声明においてそれに触れたというのと同じ性格を持つものであると思っております。したがって、わが国は、先ほども三木総理大臣の言葉として申し上げましたように、共同声明に述べられておること、これは最高の今後の両国の関係を律する文書であるということを、わが国は今日もそのように考えておりますので、同じことが恐らくフィリピンとの間であり、あるいはタイとの間であろうとしておるのではなかろうか。  今回われわれが問題にしておりますのは、新しい条約を結ぼうということでございますので、この条約そのものは国交回復のための条約ではございません。国交はすでに共同声明によって開かれたわけでございます。そういう条約の段階においてこれがいま中国とタイあるいはフィリピンとの間で問題になっておるのではない共同声明という形で述べられておるというふうに理解をしておるわけでございます。

塩出啓典公明党

○塩出啓典君 それで藤山さんといたしましては、この局面を打開するために、やはり大使を通じての交渉ではなしに、日本政府から代表を派遣すべきであると、こういうことを言っておるわけでありますが、私も、物事は一対一で直接話し合うということが非常に大事じゃないかと思うんですが、今後のこの問題打開のために政府はどういう処置を考えておるのかですね。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) わが国として、先ほども申し上げましたように、しばらく交渉の経緯、曲折を部外に公表せずに交渉を続けようではないかということを総理大臣から先方にお伝えをしたわけでございますが、このことが必ずしも十分に徹底をしていなかったという点があったのかと存じます。これはしかし、時間がたちますとお互いにわかり合う種類のことでございますので、そうなりましたら、再び本筋でどういうふうに条約を結んでいくかという話し合いになるのではないだろうか。ちょっとのその間そごがございましたことはまことに残念なことであったと存じております。私はそう思っておりますけれども、しかし、藤山氏が総理大臣に、実は本日ということがそうならなかったように聞いておりますので、直接に御意見の御開陳があって、その上で総理大臣が御決定をなさることではなかろうかと思います。

塩出啓典公明党

○塩出啓典君 じゃ、時間が参りましたので、ちょっとまとめて最後に質問いたします。  いま宮澤外務大臣言われたように、外交交渉というものは秘密でやっていくと、これはやっぱり私どもある程度やむを得ないのじゃないかと思うんですね。しかし、たとえば先般成田さんが中国へ行かれたわけですね。で、ああいう共同声明を出した。また、今回藤山さんが行って、そうして向うでああいう記者会見をして、帰ってきてこういう会見をしたと。しかし、やはり少なくともこういう問題については国益という立場で考えれば、成田さんの考えにしても藤山さんの考えにしてもわれわれの考えにしても、また三木さん、宮澤さんの考えでもそう大きな違いはないと思うんです。そういう点、非常に何か外交というのは外務官僚だけがやっていくんだと、ほかの野党の党首が行くにしても、また藤山さんが行くにしてもそれは勝手に行けと、これではいかぬわけであって、先般の日中国交回復のときには、私も聞いている話では、かなり野党も時の政府の意図を受けて国益という立場でやはり協力をしていったわけです。そういう点が今回の日中条約の締結においては何となくばらばらで、秘密というのは、それは一般の新聞報道とかそういう点においては秘密でやったにしても、やはり国を代表して中国へ行く人たちについては、ある程度、ある程度じゃない、やはり本当の真意を話をして、そして日本の立場というものを向こうに理解をさせていく。私は、中国も日本もそんなに意見の食い違いないわけでございまして、または覇権という言葉の内容がどうなのか、あるいは日本の条約と共同声明との考え方による違いというものが理解されていない。そういうような点があるわけでございまして、そういう点で先ほど戸叶先生もおっしゃってましたけれども、これからの外交においては、あらゆる日本から各国へ行く人に対しては、もっともっと外務省がそういう人たちに接触をして、やはり日本から行く場合には国益という立場で、そこで同じような日本の主張を先方に伝えていけるような、こういう態勢を組んでもらいたい。きょうの新聞では、民社党も各国へ今度は派遣をすると、こういうような場合でも、政府としては日本の国益を代表する立場でもっと話し合いをしていかなくちゃいけないんじゃないか、このことを要望したいんです。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) わが国の強さ、よさというのは、国民が国の内外、ことに国内で起こっておりますことについては隠されることなく正確な報道によってそれを知るということが、これがわが国の持っておる国のあり方であり、それがわが国のいい意味での強さだというふうに私は考えておりますから、外交もそのように国民のものでなければならないというふうに思っております。  ただ、この交渉のように、譲った譲らないというふうなことがどうしても交渉にはございますので、体制の違う国と交渉いたしますときに、多少その点について配慮をいたすべき点があったのではないか、いたさなければならぬことがあるのかもしれないということが先ほど申したようなことでございますが、わが国としては基本的にやはり塩出委員の言われるように、国民の理解と知識の上にすべてのことが行われるということが私は基本の姿であろうと考えております。

星野力日本共産党

○星野力君 外務大臣にお聞きしますが、大臣はいま外交上の問題については国民が正確に知るのがいいのだと、こうおっしゃった。そのことを踏まえてお聞きしたいんですが、例の金大中事件が起きましてからもうやがて二周年になろうといたしております。この委員会でも幾たびかこれは問題になった事件でありますが、これを一体どう処理なさろうとしておるのか、金大中事件は解決したのか解決しないのか。解決していないと思うのでありますが、それならばどこが解決しておらないのか、お聞かせ願いたいと思います。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) 金大中氏が韓国の人々一般に与えられておるところの政治的自由、これは差別されずに与えられるべきではないかというふうにわが国は考えておる、そのことは韓国政府にも伝えてあるわけですが、その点については、その後の金大中氏の政治的活動を報道等によって、あるいはわが国のソウル駐在の大使館からの報告によって判断いたしますと、まず韓国人一般に与えられておる政治活動の自由、それと同じ程度の自由というものは認められておるのではないかというふうに私は考えております。ただ、出国につきまして、外国へ出かけることにつきましては、選挙違反事件というようなものが未結審であるということでそれが一時とめられておるというふうに私どもは理解しております。その点が一つ、これは別の事情によることとは申しながら、われわれのそうあってほしいという事態になっていないということは事実であろうと思いますが、しかしまた、選挙違反事件で裁判があり、裁判官忌避が成立をしたというようなこともまた事実のようでございますので、その点はしばらく韓国側の、これはもともと韓国政府と韓国民の問題でございますので、私どもの希望は希望として、韓国側の御処置にこれは基本的にはお任せしなければならないのではないだろうか、ただそこに、一般韓国民とのゆえなき差別といったようなものは、これはないようにお願いをしたいというのがわが国の立場でございます。  他方で、事件に関係したと伝えられております金東雲氏の問題については、昨年の八月十四日に韓国側が、いろいろ調査をしたけれども、十分に起訴をするに足る、公訴を維持するに足る犯罪事実を確定し得なかったという、したがって、一応調査を打ち切るということについては、わが国として、わが国捜査当局の所見とそれは必ずしも一致しないと、したがって、韓国のそのような決定に対してはわれわれは納得がいたしかねるということを韓国に伝えまして、これはその後何回か伝えておりまして、今年に入りましてからでも、一月の末並びに、韓国の首脳が見えましたときにも、私からもそのことをお伝えをしてありまして、この点について韓国がどのように答えてこられますか、ただいまのところそういう状態にございます。

星野力日本共産党

○星野力君 最近ある新聞に、日韓の政府間で金大中事件の政治的妥協について話がまとまったということが報道されました。ごらんになっておられると思いますが、それによりますと、いま申されました金東雲の事件については本人は否認しておる。また犯罪を立証するだけの証拠はない、こういうようなものを踏まえておるが、そういう状態のまま金大中事件の政治的な妥協を図るということになると、こういう報道でありますが、果たして本当でありましょうか。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) その報道は私も読みました。存じておりますが、これはもともと韓国側の処理の問題であるのでございますけれども、私どもに対しては、ああいうことは何ら通報も情報も持っておりません。

星野力日本共産党

○星野力君 いまお答えちょっとよく理解できなかったんですが、日韓の政府間で金大中事件の政治的妥協について話がまとまって、その上で近い将来において日韓定期閣僚会議が開かれる、こういう報道があったがそれは事実でしょうか、どうでしょうか、こういう質問でございます。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) わが国に何らかの通報があった、あるいはわが国との間で何らかの協議が行われたかということであれば、それは事実でございません。

星野力日本共産党

○星野力君 金大中氏の問題についても大臣からお話がありました。国内における身柄の処遇については普通の人間とほぼ同じようになってきておるが、選挙違反事件があったために出国などはできかねておる、こういうお話のようであります。韓国側に本当にこの事件を、金大中氏の身柄についても問題の解決を図るという考えがあるならば、もともと選挙違反事件というのは一つの政治的な問題なんでありますし、裁判が進行中であったってこれは処置できる問題だと思うんです。そういう意味では、選挙違反事件というのは金大中氏の問題を解決させないための韓国政府の口実にすぎないと、こう受け取っていいものじゃないかと思います。金大中氏の身柄についての原状回復も行わず、また、金東雲の犯罪についても不明というままでこの問題の解決が図られるわけはないとわれわれは理解しておりますが、大臣、その点は間違いございませんですね。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) 金大中氏の選挙違反の問題は、よその国の法制の問題でございますので私どもつまびらかでありませんし、また、かれこれ申すべきことでもなかろうと存じますが、韓国側の説明によりますと、三権分立の立場から言って、司法権には関与をすることができないという説明を聞いております。  次に、閣僚会議でございますけれども、これはやはり毎度申し上げておりますように、この一、二年両国間に不幸なことがございましたので、ここでひとつ将来に向かってもう一遍友好に再出発しようではないかという意味合いを持ったものとして開くことに意味があると、こう考えておりますので、そのためにはもう少し両国互いに環境の改善を図る必要があるというふうに、せんだっても韓国の総理大臣に申し上げたような次第でありまして、開催に至りますまでには、なお、お互いに両国間の努力が必要であるというふうに考えております。

星野力日本共産党

○星野力君 この事件の解決というからには、韓国の国家機関であるところの韓国中央情報部の関係した犯罪であることをはっきりさせて、それに伴うしかるべき措置、言うなれば主権侵害の犯罪に対応する措置がとられなければならないと思うのでありますが、どうでしょうか。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) 実は、その点につきまして韓国捜査当局の捜査はそのような事実を確認するに至らなかったというのが昨年の八月の韓国側の所見でございました。

星野力日本共産党

○星野力君 昨年八月からやがて一年になろうとしておるんでありますが、それだけの時日を経過しても依然として同じ回答でございますか。

高島益郎外務省アジア局長

○政府委員(高島益郎君) 先ほど大臣からお答えがありましたとおり、金東雲の捜査結果につきましては昨年八月十四日に正式に通報がございまして、その通報の中で、大臣がお述べになりましたように、いろいろ捜査したけれども証拠は得られなかった。したがって、とりあえず捜査は打ち切るけれども、新しい事実が出ればまたそれに基づいて捜査を続行するつもりであるということでございました。  これを受けまして、わが方警察当局とも御相談した結果、こういう回答ではわが方からいろいろ提供した証拠等にかんがみて納得できないということで、これについての十分納得できる説明が欲しいということで、昨年十月二十五日でしたか、先方にそういう公式の文書を提出いたしまして照会しているわけでございます。これに対しましてまだ正式の回答を得ておりません。したがって、これに対して随時催促をしているというのが現状でございます。

星野力日本共産党

○星野力君 全くこれはけしからぬ態度だと思うんですが、そういう事情の中で日韓定期閣僚会議の開催が問題になっておるというのも、われわれ国民としては納得できないわけであります。  警察の方、おいでになると思いますからお聞きしますが、金東雲はあの事件の犯人なのですかどうですか。

大高時男警察庁警備局外事課長

○説明員(大高時男君) 金東雲一等書記官につきましては、事件発生直後警察で捜査を重ねました結果、現場におきまして数人の目撃者の証言を得ておる。さらには、現場に遺留されました指紋が本人の指紋と一致した、こういうことから、われわれとしては同書記官がこの犯行に加担した容疑はきわめて濃厚であるというふうに見ております。

星野力日本共産党

○星野力君 指紋が一致した上に数人の目撃者もある、目撃者の氏名ももちろんはっきりしておるわけでありますが、そうなれば容疑が濃いということじゃなしに、これは日本人の犯人なら日本の警察はもう犯人と断定して裁判にかけておるに違いないと思うんでありますが、そういうような事件でありますね。金東雲が犯人であるということがはっきりしておるなら事件の全貌は明らかにできるはずです、個人の犯行ではないんであるから。それを全然わからないということにしておる。本人が否認しておる、証拠もない、こう言っておる。これは国際的な儀礼というだけじゃない、国際的な信義——実際国交を持って、しかも人並みならず深い関係のある国と国との間として許されることでありますか、大臣。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) 警察としては、そのような疑いが濃いとわが国の捜査当局は言っておりますし、したがって、そのような資料、所見は私ども韓国にそれを伝えたわけでございますが、韓国の捜査当局は、少なくともそれを確認するような所見に至らなかったという状態で、両者の間に見解の相違が今日なお存しておるということでございます。

星野力日本共産党

○星野力君 このような韓国政府の誠意のない態度のまま閣僚会議を再開するということはあり得ないと私は理解しますが、そう理解してよろしいかどうか。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) それは先刻私が、今後開かれるべき閣僚会議はこのようなものであってほしい、そのためには、なお両国ともしばらくお互いに環境の改善に努力する必要があると考えると申し上げましたことから御推察をいただきたいと思います。

星野力日本共産党

○星野力君 日本政府の韓国に対する大変甘い態度の一方、朝鮮民主主義人民共和国、北に対する日本政府の態度というものは、特に最近は友好的とは言えないと思うのであります。あれこれの例を挙げるまでもないと思いますが、いかがですか。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) 私どもは北鮮とは現在まだ国交を持つに至っておりませんが、経済あるいは人的な、文化的な交流については、これを決してとめておるわけではございませんで、交流が行われております。要は、朝鮮半島におきます力の均衡というものが、ことにインドシナ問題以来常に微妙でございますので、私どもが、何と言っても朝鮮半島に対してはわれわれもいろいろ影響を受けますけれども、わが国の影響力も際立って大きいことでございますから、そのバランスを破ることによって平和の状態に差しさわりがあってはいけないということから、ことさらに慎重にこの問題を扱っておるわけでございます。決してそれは非友好的なといったような態度でございませんことは、御了解をいただけるのではないかと思います。

星野力日本共産党

○星野力君 北と南、それぞれ外交関係を持っておる国、承認した国は、確か両方とも五十五と同数になったと聞いております。日本の政府が朝鮮半島の平和を願うということであるならば、一方に非友好的、片方に過度に友好的でこの政権を激励するようなそういうやり方ではいけないと思うんでありますが、その点ではどうでございますか。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) 確かに両国を承認しておる国、あるいは北鮮を承認をしておる国は相当ございますけれども、たとえばこの朝鮮半島のきわめて周辺にあるところのしかも相当影響力を持っておると客観的に考えられます国——わが国もその一つでございますが、それらはいずれもこの朝鮮半島の微妙なバランスを不用意にくずしてはならないという配慮をしておるように存ぜられまして、わが国もそのような実は配慮をいたしておるわけでありまして、決して片方に対して非友好的だという立場をとっておるわけではございません。

星野力日本共産党

○星野力君 金大中事件というものがこういう状態のままで閣僚会議の再開をしたり、それから、これは先ほどお答えございましたが、またさらに経済援助を進めておいでになるのですか。韓国に対する経済援助を進めていかれるのかどうか。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) これは韓国の人々の民生の安定向上というものに役立つということであれば、われわれのそういう余力のあります限りやはり何かの形でのお役に立ちたい、支援をしていくべきであると考えております。

星野力日本共産党

○星野力君 対韓援助というものがどういうものであるかということ、どういう結果をもたらしておるかということはこれはしばしば論議にもなりました。朴政権を支える、強化するそのてこの役割りにしかならぬ、一方では国民抑圧の役割りをしておるというようなことも論議されてきたことでありますが、その論議はきょうはさておきまして、たとえば浦項製鉄の第二次拡張計画、そのための二億五千万ドルの経済協力というものが要請されてきておると伝えられておりますし、それから数日前に開かれました日韓民間合同経済委員会では韓国の重化学工業開発計画への日本の積極的参加が日本側の代表から表明されております。これだって、政府のバックアップがなければできないことでありますが、こういう相談にはこれから乗って話を進めていくということでありますか。

高島益郎外務省アジア局長

○政府委員(高島益郎君) 現在、経済協力の関係で先方と話をしておりますのは、そういう案件ではなくて、一部港湾の建設あるいは農業開発に対する協力、こういった案件につきまして事務レベルの話し合いを続けてきておりまして、そういったことが経済協力の当面の日韓間の主要な案件でございます。

星野力日本共産党

○星野力君 この問題つめてお聞きしますと大分時間が必要でございますから、きょうは問題だけ出しておきまして先へ進みます。  もう一つぜひ大臣にお聞きしておきたいことは、一九六九年の日米共同声明の中の韓国条項についてでございます。あの条項をどのように認識なさっておられるか、と申しますのは、最近この韓国条項が国の内外において大きな注目を払われてきておる。日本政府の態度、宮澤外務大臣の国会内外における韓国条項再確認の発言が非常に注目されておる。ソウルやワシントンでは大臣のその再確認が大きな評価を受けておると、こういうことから、たび重なる質問のようでございますけれども、韓国条項、韓国の安全が日本の安全にとっても緊要であるというあの問題、これをどのように認識なさっておられるか。たとえば四月十一日、大臣がワシントンでの記者会見で再確認の発言をなさった、これが大きな反響を呼んでおりますですね。たびたびの質問でございましょうが、もう一度お伺いしておきたい。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) この問題につきまして、何か一度消滅したものを私がもう一遍掘り起こしたというようなふうにときどき御理解の向きがあるわけですけれども、私は、この一九六九年のいわゆる韓国についての佐藤総理大臣の認識、韓国の安全はわが国の安全にとって緊要であるということは今日といえども変わらないところである、その後そうでなかったときというのはないと思っておりまして、もとより韓国の安定あるいは朝鮮半島の安定というのは、その後六年間に、照る日もあり曇る日もありいろいろでございましたけれども、韓国の安全ということはとりもなおさず朝鮮半島の安定ということでございますけれども、そのことがわが国の安全にとって緊要であるという事実は、私はその間別に変わったことはない。私は四月にそういうことを、いまでもそのとおり思っておると申しましたのですが、別段私は何かを創設した、一度消えたことをもう一偏私が新しく言い始めたというふうには考えておらないわけでございます。

星野力日本共産党

○星野力君 大臣そうおっしゃいますけれども、この問題については、御承知のようにいろいろ認識の変化というものがあったはずです。大臣と前大臣の間でもその間の違いはあった、これは御承知だろうと思います。大臣も三木総理自身もそうですが、韓国は日本と最も近い国である、あるいはそれに朝鮮を加えて韓国、朝鮮は最も近い国であるから、そこの安全は日本の安全にとって重大な関係があるのはあたりまえじゃないかと、こういうようなこともおっしゃった。子供だましのような話でありますが、とにかく大臣、三木内閣は韓国条項を再確認されておられます。  御承知のように、韓国条項は日米共同声明の第四項、極東、東南アジアに言及した部分の冒頭にあるわけでございます。この共同声明で、あの際日本にとって最も重要なのは、言うまでもなく沖繩返還に関する部分だと思いますが、それは六項から十一項まで書かれておる。いわば、この韓国条項というのは沖繩返還の前提の重要部分とも言い得る、そういう構成だと思うんです。単に近い隣だから大いに関係があるというのではなしに、両国の最高首脳によって話し合いが行なわれ、合意された重要な内容がそこには集約して表現されておる、こういう性質の外交文書だろうと思います。ニクソン大統領からこの話は提出されて佐藤総理が同意したものというふうに一般に言われておりますが、文脈からしてもそれはそうだろうと思います。そして、内容については、朝鮮で戦争が起きた場合に、在日米軍、あるいは在日米軍基地からの戦闘作戦行動への出撃を日本政府が積極的に認めるというのが一般の説というか、権威ある説として今日までなされてきておる。そういうものとして韓国条項を再確認なされておるから重要である、世界が注目しておる、こういう問題ではないでしょうか。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) どうも、なぜあれだけ話題になったのかと思っておりましたが、あるいはそういう御解釈のゆえであるとおっしゃれば、ははあと思いますが、その点はしかし、総理大臣がこの後に国会で何度か、ただいま星野委員の御設定になりましたようなときに、いわゆる事前協議について特段の配慮をするという意味ではない、これは国益に照らして、日本の安全に照らして、ノーと言う場合もイエスと言う場合もあるということは、その後に沖繩返還協定特別委員会等において佐藤総理自身が述べておられますので、私はそういうふうには考えておりません。

星野力日本共産党

○星野力君 まあ大臣ぐらいの方は万事御承知でああいうことを言っておられる。だから私冒頭で、あなたの先ほど申された名言、外交上の問題については国民が正確に知っておくのがいいんだとあなたが言われたことを引いたわけでありまして、御承知のように、当時の佐藤総理があの共同声明の発表をされた日にワシントンのナショナルプレスクラブで行われた発言、それに先立ってなされたアメリカ側高官、ジョンソン国務次官補でございましたかの背景説明、そういうことによってこれは裏づけられておる問題であり、その後、沖繩国会において佐藤総理が若干の言い直しを行われた。私はあれは問題の本質にかかわりはない。アメリカと日本の政府が話し合った問題、両方はそのようにちゃんと受け取っておる。アメリカは受け取っておる。それを日本の国会において、前向きだ、どうのこうのとちょっと言い直したぐらいで本質が変わるものではこれはないはずであります。  また、大臣は先ほど、あの当時の認識と今日の認識と——認識といいますか、あの韓国条項というものは、あの当時と今日と別に意味が変わるものではないと、こうおっしゃいましたけれども、あの日米共同声明、あの部分では、韓国条項というのは朝鮮半島における緊張状態の存在、これを前提としておるわけでございますね。大臣は、当時の緊張状態というものが今日もなお存在すると認識しておられるかどうか、それが一点。  もう一点だけ。韓国条項に含まれる約束というものは、私は無効にさるべきものだと思うのです。それをワシントンで再確認してこられたあなたの責任、三木内閣の責任というものはきわめて重大ではないか。こう思って、まただねてきょう質問申し上げておるわけでありますが、その二点について御答弁願いたいと思います。

宮澤喜一自由民主党外務大臣

○国務大臣(宮澤喜一君) まず、緊張の状態につきましては、たしかこの一九六九年の声明は、プエブロ事件などの後であったと思うのでございますが、緊張がかなりあった時代でございます。しかし、その後、一九七二年に両国、南北間で対話の道が開けた。お互いに平和的に統一しようというようなことまでいきましたので、われわれとしては、ようやく長年の緊張が本格的に緩和をするのではないかと考えたような段階もございます。その後しかし、国境の海域で小さな衡突がありましたり、あるいは伝えられるところでは、非武装地帯、三十八度線の周辺にトンネルが堀られたというようなことがあったりしておりまして、どうも七二年にわれわれが期待したような方向になかなか動いていかない。そうして、米軍のインドシナ半島からの撤退があり、金日成主席の外国訪問というようなことがありまして、この一、二カ月、やや残念なことながら、緊張状態が再来をしておる。これも時間の経過とともに平静に戻ることを祈っておりますし、そうではないかと思っていますが、やはり一進一退ありというふうに考えております。  それきら、この共同声明そのものを無効であるとすべきであると言われますけれども、それはそういうふうに私は考えておりませんで、むしろ、星野委員の言われますように、この共同声明がいわゆるわが国の基地から朝鮮半島に米軍が直接発進する際に必要とされるところの事前協議の適用について、非常にルースな、寛大な扱いを約束したものであるという意味での御解釈であれば、そのこと自身は佐藤総理大臣自身がその後に訂正をされているところであり、また、三木総理大臣自身もこの国会で同様のことを言っておられますので、その点は、私はそういう事実はないと申し上げるべきだと思います。

星野力日本共産党

○星野力君 じゃ、またお聞きします。

二木謙吾自由民主党

○委員長(二木謙吾君) 本件の質疑は、本日はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十八分散会      —————・—————

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