法務委員会 第21号
- 発言数
- 73 件
- 登壇者
- 10 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1975/05/23
会議録
○小宮山委員長 これより会議を開きます。 内閣提出、船舶の所有者等の責任の制限に関する法律案を議題とし、趣旨の説明を聴取いたします。稻葉法務大臣。 ————————————— 船舶の所有者等の責任の制限に関する法律案 〔本号末尾に掲載〕 —————————————
○稻葉国務大臣 船舶の所有者等の責任の制限に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。 現行商法は、船舶所有者が船舶による事故によって損害賠償の責任を負う場合等には、船舶及び運送賃等を債権者に委付して損害賠償の責任を免れることができる、いわゆる委付主義を採用しております。 このように船舶所有者の責任を一定の限度に制限する制度は、その方法にそれぞれ異なるところがあるとはいえ、世界各国に共通する制度でありますが、わが国の委付主義の制度は、委付の対象となる船舶の破損の程度等偶然の事情によって、損害のてん補される程度が著しく異なり、被害者保護の見地から合理的でないものとされ、現在わが国以外には、この委付主義をとる主要海運国はありません。 ところで、昭和三十二年に、船舶所有者の責任制限制度を国際的な金額主義に統一するための海上航行船舶の所有者の責任の制限に関する国際条約が成立し、昭和四十三年に発効しましたが、現在までに英、独、仏等二十六カ国がこの条約を批准しております。 そこで、この法律案は、この条約を批准することに伴い、船舶の所有者等の責任制限制度を金額主義に改め、これを実施するため、所要の立法措置を講じようとするものであります。 この法律案の要点を申し上げますと、第一に、船舶所有者、船舶賃借人及び傭船者は、故意または過失がないときに限り、事故について負うべき損害賠償の責任を、一事故ごとに、その船舶のトン数に応じた一定の金額に制限することができることといたしております。また、船長、海員その他船舶所有者等が使用する者も、故意がないときに限り、船舶所有者等と同様に、責任を制限することができることといたしております。 なお、船舶所有者等の使用する者の債権等、特に債権者を保護する必要のあるものについては、例外として、責任制限の効力が及ばないことといたしております。 第二に、責任の限度額は、責任を制限する債権が物の損害に関する債権のみである場合には、一金フランの千倍にその船舶のトン数を乗じた金額といたしておりますが、その他の場合には、一金フランの三千百倍にその船舶のトン数を乗じた金額とし、そのうち一金フランの二千百倍に船舶のトン数を乗じた金額は、人の損害に関する債権の弁済のみに充てられるものといたしております。 第三に、責任を制限される債権の弁済を確保するため、船舶所有者等が責任を制限するには、裁判所にその旨の申し立てをし、かつ、供託等によりその責任限度額に相当する基金を形成しなければならないこととし、また、責任制限手続が開始したときは、裁判上の手続によりその基金を各債権者に公平に分配することとし、これらの手続について詳細な規定を設けることにいたしております。 なお、最後に、タンカーによる油濁事故から発生した損害の賠償請求権については、別途今国会に提出しております油濁損害賠償保障法案によることとなりますので、本法案の規定は適用されないこととなります。 以上が船舶の所有者等の責任の制限に関する法律案の趣旨であります。上 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
○小宮山委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
○小宮山委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。大竹太郎君。
○大竹委員 ただいまの大臣の趣旨の説明でもはっきりしておりますように、この法律は、昭和三十二年にブラッセルで成立いたしました海上航行船舶の所有者の責任の制限に関する国際条約、この条約を日本が批准するということに見合いまして国内法としてこの法律を出したという、このいきさつでございまして、昭和三十二年にブラッセルで成立いたしました海上航行船舶の所有者の責任の制限に関する国際条約について、成立に至ったいきさつその他、きょうは外務省も見えておるようでありますから、その点についてまず御説明をいただきたい、こう考えるわけであります。
○村上説明員 船舶所有者の責任につきましては、各国とも伝統的にこれを制限しようという方式で対処してきたわけでございますが、その方式の内容につきましては、各国ともいろいろ違った制度をとっておりましたために、これを統一しようという機運がございました。一九二四年にブラッセルでこれを統一しようという条約ができまして、その条約の名前は、海上航行船舶の所有者の責任の制限に関するある規則を統一するための国際条約という名前でございますが、この条約が作成されたわけでございます。しかしながら、この一九二四年の条約も、その内容におきまして、たとえば船価主義と金額主義を両方採用しておりますとか、この条約の署名国がわずか十一カ国であるとかいうような問題がございまして、その後に至りましても、こういうたてまえを統一しようというような機運が依然あったわけでございます。そういたしまして、一九五七年、昭和三十二年でございますが、金額責任主義に基づく統一した条約をつくろうということになりまして、ブラッセルで先ほど御指摘があったような海上航行船舶の所有者の責任の制限に関する国際条約というものが作成されたわけでございます。これは金額責任主義に基づきまして責任を制限しようという趣旨のものでございます。この会議には三十二カ国が参加いたしまして、そのうち二十二カ国が賛成、九カ国が棄権したわけでございます。 以上、簡単でございますが、経過を御説明いたしました。
○大竹委員 大体わかりましたが、そこでお聞きしておきたいことは、三十二年に成立いたしまして、四十三年に発効しておる。そして日本がいよいよこれに批准をして入るのが五十年ということでありまして、成立してから発効するまで約十年、また発効してから今度は日本が批准をするまで、何年になりますか、十年近くになるということでありまして、私、条約その他のことは一向うといのでありますが、できてから発効するまでいかにも非常に期間があり、そしてまた、特に日本は申し上げるまでもなく海洋国家の世界における最たるものだと思うのでありますが、そういうようなことで、えらい期間があり過ぎるように思うのでありますが、それらのいきさつはどういうことになっておりますか。
○川島(一)政府委員 先生仰せのように、昭和三十二年にこの条約が成立いたしまして、そして約十年後の四十三年に発効いたしたわけでございまして、この発効が相当手間取りましたのは、この条約によりますと、少なくとも十カ国以上がこの条約を批准して、そして批准書を寄託してから六カ月たたないと発効しない、こういう規定になっておりまして、その十カ国の要件を満たすまでにそれだけの年数がかかったということでございます。この条約は金額責任主義というのをとっておりますが、そのために相当細かい手続規定を設ける必要がありまして、国によりましてはこの条約に適合した金額責任主義をとるために国内法の整備を必要とするということになりますので、そのためにいろいろな国内法の準備とか検討とか、そういうことに時間を要したわけでございます。 そういうことで四十三年に発効いたしたわけでありますが、日本といたしましては、この条約が成立いたしました当時、まだ戦後の打撃から完全に立ち直っておりませんで、関係業界といたしましてもまだこの金額責任主義をとるには時期が早いといった意見が強かったわけであります。その後、日本の経済が順調に発展いたしまして、四十年代になりましてから、日本もこの条約に加入すべきだという意見が強くなってまいりました。そこでそれから検討を始めたわけでございますが、日本の場合におきましても国内法を相当整備する必要があるということで、法制審議会で相当慎重な審議を重ねたわけでございます。御承知のように、法制審議会では、この関係の法律のほかに商法改正など、いろいろほかにも案件がございまして、昨年成立いたしました商法改正にかなりの時間をとられたということもありまして、この法律の整備はその後にするということで、時間的には若干のずれを生じたということでございます。法制審議会におきましては相当以前から検討はしておったわけでございますが、正式に要綱案ができて法務大臣に答申いたしましたのが四十八年の春であったと思います。四十八年の春に法制審議会の答申が出まして、それから鋭意法案の作成をいたしまして、そして今回ようやく提出の運びになった、こういうことでございます。
○大竹委員 外務省から見えておりますから、いま一つだけお聞きしておきたいと思いますが、この資料を読んでみますと、たしかイギリス、ドイツ、フランス等の先進国がこれにもう加盟しておるということが言われておりますが、アメリカという字は出ていないように思うのであります。アメリカは現に入っているんですか、入っていないのですか、外務省にお聞きしておきます。
○村上説明員 アメリカは現在のところ入っておりません。その理由といたしましては、アメリカの国内法上、船主の責任制限の制度に関しましてはなお船価主義と金額主義とを併用しているわけでございます。そのたてまえ上この条約に入っていないというように理解しております。
○大竹委員 それでは法務省の方にお聞きいたしたいと思いますが、先ほどの大臣の趣旨の御説明でもある程度わかっておりますが、この条約を批准し、法律を制定する必要性及び利害得失について、大臣からもう一度多少詳しく御説明をいただいて、細かい点は局長の方から御説明をいただきたいと思います。
○稻葉国務大臣 お答えいたします。 船舶事故による船舶所有者の責任については、海上企業の危険性及び損害額の膨大性等の理由から、各国においてこれを一定の限度に制限する方策がとられておりますが、その方法は御承知のとおり一様ではございません。 わが国ではいわゆる委付主義を採用しておりますが、この制度のもとにおいては、船舶の新旧、損害の程度等偶然の事情によって損害のてん補される程度が異なり、事故船が沈没したような場合には債権者は全く債権の満足を受けることができないこともあって、被害者の保護に十分ではありません。他面、所有者も営業の本体を失うことになりますので、委付によって責任を制限する所有者はきわめてまれであって、世界の主要海運国でこの制度を維持している国はわが国以外にはございません。 そこで、より合理的な制度を設ける必要がありますが、外国の多くは金額責任主義をとっており、この制度は、船舶所有者の責任限度が加害船舶の大きさに比例して決まるために、ある程度損害の大きさに対応できるとともに、船舶所有者はその責任を尽くせるようあらかじめ保険に加入することができますから、責任制限の方法としては最も合理的であると言われているので、これに移行することが望ましいと考えたからでございます。 また、海上企業には国際間の取引が多いために、責任制限の法制が各国によって異なることはやはり問題がございまして、このため古くから統一条約の成立への努力がされてまいりましたが、一九五七年、金額責任主義を採用した海上航行船舶の所有者の責任の制限に関する国際条約が成立し、一九六八年に発効し、現在まで英、独、仏等二十六カ国がこれに加盟しているのは以上の利点があるからと存じます。主要海運国であるわが国もこれに加入し、国際的関係の多い海上企業に関する法制として、諸外国との同一の規則を採用することが望ましいということは言うまでもございません。 このような観点から、右条約に定める金額責任制度を取り入れて国内法化しようとするのが本法案でございます。 なお、本法の制定により、船舶事故の被害者の債権は、船舶の大小に応じて決められる船舶所有者の責任限度額によって制限されることになりますが、従来の例によりますと、実損害がこの法律案で定める責任限度額を超えることは少ないと思われますし、また、本法では、条約違反とならない範囲で人的損害に対し特別の措置を講ずる等被害者の保護に配慮しておりますので、実際上もこの制度により妥当な結果が得られるものと考えましたために、こうした次第でございます。
○川島(一)政府委員 ただいま大臣が詳細にお答え申し上げましたので、私から特につけ加えることはございませんが、要するに、現在の委付主義というものが現在では不合理な制度となっておる、わが国以外にはほとんどこの主義を採用している国がないという実情から考えましても、この際、この条約を批准して、この法律を制定するのが相当である、こういうことになるわけです。 なお、一点つけ加えさしていただきますと、最近タンカーによる油濁事故というものが問題になっております。これにつきましては、別途油濁損害の補償制度というものが国際的につくられておりまして、そのための条約が二つできております。この条約に加入して、日本も条約を実施するための法制を整備することが望ましいわけでございますが、この油濁損害の補償制度というのも金額主義を前提にしておりまして、この二つの国際条約に加入するためにも、前提として日本の委付主義の制度を金額主義に改めておく必要がある、こういう事情もあるわけでございます。 あとは大臣が申し上げたとおりでございます。
○大竹委員 いままで商法で決められたいわゆる委付主義、たしか現在の商法の六百九十条だと思いますが、不合理な面があるということがわかりましたけれども、局長の方から、現在の商法でこれも一種の責任制限の方法なわけでありますが、現行商法の六百九十条についてちょっと説明しておいてください。
○川島(一)政府委員 現行商法は委付主義をとっております。その根拠がただいま御指摘になりました商法の六百九十条の規定でございます。この規定は要するに、船舶の事故が生じていろいろな損害が発生いたします。その損害については船舶所有者が賠償の責任を負うということが多いわけでございますが、その損害を船舶所有者がひとりで背負うということになりますと、大きな事故が発生いたしました場合には、それによってその企業が大きな打撃を受けて、場合によってはつぶれてしまうということも予想されるわけであります。そこで、船舶所有者の非常に大きな責任というものを一定の範囲に制限するということで設けられた規定でございますが、この六百九十条の委付主義というのはいわゆる航海主義というのをとっておりまして、船が一回の航海をして帰ってまいります。その間にいろいろな事故が起こって、そして損害賠償等の債務が生じた、それが船舶所有者にとって非常に過大であるという場合に、船舶所有者は自分の持っております海産、すなわちその船舶とか運送賃、それからあと若干のものが加わりますが、主として船舶と運送賃であります。これを債権者に全部取得させます。これを委付主義というわけでありますが、取得させて、そして自分の負っている損害賠償等の責任を免れる、こういう制度であります。これにつきましては、先ほどから問題になっておりますように、たとえば船舶が海難事故によって沈没したというような場合には、船舶所有者はその沈没した船舶を債権者に委付して、そして責任をすべて免れるということも認められるわけでありまして、その結果、債権者にとってはほとんど十分な補償が得られないというような不都合があるというふうに言われているわけでございます。
○大竹委員 そこでいま一つお聞きしておきたいのは、いわゆるこの責任制限制度という制度でありますが、これは委付主義にいたしましても、今度改正します、現金ですか、金額主義と申しますか、一定の金額を限度とするというのでもやはりこの責任制限制度であります。これがこの船舶所有者とかまた船長、この船に関してだけの制度であるように思われるわけでありますが、先ほどからいろいろお聞きしておりますと、非常に損害が大きくなる、それを所有者や船長に、無制限といいますか、無制限に責任を負わせるのでは気の毒だという趣旨から、船舶所有者、船長のこの責任制限制度というものが設けられたというふうに思われるわけであります。それが一番大きなこの責任制限制度ができた基本的な考え方だと思うんでありますが、そのほか何か、こういう船舶所有者、船長について責任制限の制度というものができてきた理由があるんでありますか、それらについてありましたらひとつ。
○川島(一)政府委員 確かに責任制限の制度というのは海商法に特有な制度であるというふうに言われております。沿革的に見ますと、昔は非常に航海は危険性が高かった、しかも船舶というものは大きな価値がある。したがって、海難事故が生じた場合に船舶だけで責任をしょい切れないということになりますと、船舶所有者としてはとてもそういう危険な企業には投資できない、こういったような事情があったわけであります。しかし、最近は保険制度も発達してまいりましたし、ある程度海難に対する危険というものも、それに対する対応策というものがいろいろ研究されてきたわけでありますけれども、しかしながら、そういった沿革的な事情と、やはり船舶というものが大きな財産であって、大きな事故が生じた場合に無制限に責任を負わせるということは、こういった海運の企業の維持発展の上に大きな妨げとなるということが言われておるわけでございまして、世界各国ともこの制度を維持しているというのは、それなりの理由があるというふうに思うわけであります。 それから、そのほかに考えられる理由といたしましては、これも船舶の場合に特殊な点であろうかと思いますが、船舶所有者はかなり強い責任を負わされているということが言えようかと思います。すなわち、船舶事故が発生いたしました場合に、普通であれば船舶所有者に故意、過失がない限りは責任を負うことがないというのが民法の一般的な考え方であります。ところが船舶事故につきましては従来から、規定には直接ございませんけれども、船舶所有者に過失がなくても、船長その他の海員に過失があって、それによって生じた事故で第三者に損害を加えた、こういう場合にはやはり船舶所有者がその責任を負うべきである、こういう考え方がございまして、これが判例、学説によって認められておるわけです。したがって、一方においてはそういう重い責任を負わしておる。それに対してやはり何らかの歯どめというものを考える必要があるということから、こういった有限責任というものが考えられてきたのではないかというふうにも思うわけでございます。 なお、船舶に特有な制度であるということを私最初に申し上げたわけですが、たとえば航空機の場合につきましては、これも国際条約がございまして、船舶とは制限の仕方が違うわけですけれども、やはり責任制限制度というものがあるわけでございます。乗客一人につき金額を決めまして、その限度まで責任を負う、それ以上は責任を負わない、こういう条約がございます。それも、やはり航空事業というものが非常に危険であるということと、それから航空事業というものが非常に金がかかる事業であるというところから、航空事業の発展のためにそれが必要であると考えられておるんだろうと思います。 そういったいろいろな事情がございまして、現在においてもなお、船舶所有者の責任制限制度というものは世界各国が共通してその必要性を認めて維持しておる、こういう現状であろうと思うわけでございます。
○大竹委員 きょうは運輸省の方から海運局の次長が見えておりますので、一つだけお聞きしておきたいのでありますが、この資料を拝見いたしますと細かい数字なんかも出ているようでありますけれども、記録にとどめておくという意味からも、最近における船舶事故の実情と、それから現行の委付主義に関連いたしまして、船舶を委付して済ませたという実績について簡単に説明をしていただきたいと思います。
○浜田政府委員 お答えを申し上げます。 私どもの海上保安庁の資料によりますと、いわゆる要救助海難と申しますが、海難の発生の推移を見ますと、昭和四十四年以来大体二千六百隻内外で推移いたしております。四十九年度におきましてはやや減りまして、合計二千四百八十九隻でございます。内訳といたしましては、一般の船舶が一千三百六十八隻、漁船が一千百二十一隻ということになっております。四十九年度の事故の内容の内訳はまだ調査中で、集計中でございますが、四十八年度でとりますと、四十八年度は隻数の合計が二千六百十五隻でございまして、その内容といたしましては衝突、乗り揚げ、機関故障、火災、浸水、転覆、推進器の障害というようなところが主なところでございます。 なお、委付の実例についての御質問でございますが、これはいわゆる委付登記というものがなされまして、法務局において受け付けておるわけでございますけれども、昭和三十五年以来おおむね年間一件ないし二件という、きわめて少ない実例と相なっております。
○大竹委員 それではこの条文について若干、余り時間もございませんが、質問させていただきたいと思います。 趣旨説明にもございますように、この責任制限を受けるためには、所有者においては故意、過失がないということ、それから船長においては故意がないことということになっておりますが、これを分けた理由その他について御説明をいただきたいと思うのでございます。 〔委員長退席、保岡委員長代理着席〕
○川島(一)政府委員 もともと、この責任制限の制度というのは船舶所有者を中心に考えたものでございます。したがって、船舶所有者としては非常に損害を負担する機会が多い、それについて責任制限を認めるということでできた制度でございますが、ただ、責任を制限するにつきましては、船舶所有者自身に故意や過失があるような場合にまで認めるということは、これは債権者の立場などを考えますと公平の理念に反するということで、船舶所有者の場合には、故意、過失のある場合には責任制限を認めない、こういうようにしたわけでございます。 これに対しまして船長の場合は、本来船舶所有者の使用人でございます。したがって、船長に余り重い責任を課するということは、一使用人にすぎない者に対して、たとえば船舶の積み荷であるとか乗客の損害であるとか、そういうものについてまで責任を認めるということは非常に問題がございます。しかしながら、これも世界各国の沿革的な事情もございますけれども、船長というものも本来重い責任を負うべきだということで、かなり重い責任を負わされてきたわけであります。しかしながら、最近の考え方からいたしますと、一使用人にすぎない船長に対して余り過酷な責任を負わせることは適当でない、少なくともこの責任制限の範囲は船舶所有者よりも緩く考えてやるべきだ、こういう考え方がございまして、これに基づいて、船長の場合には、故意がない限り、過失があっても自分の責任を制限することができるというふうにいたしたわけでございます。この点は国際条約でもそのようにはっきり決まっておりますので、国内法化いたします場合にもその制約を受けるわけでございまして、条約と同じたてまえにいたしたわけでございます。
○大竹委員 ちょっと前後するかもしれませんが、この責任制限のできる主体の中で、「船舶所有者、船舶賃借人及び傭(よう)船者」こうなっているのでありまして、この船舶賃借人と傭船者、これは一体どう違うのか。傭船者の法律的な地位というものをはっきり御説明していただきたいと思います。
○川島(一)政府委員 船舶賃借人及び傭船者につきましては現在の商法に規定があるわけでございますが、船舶賃借人というのは、船舶の賃貸借をしたその借り主を言うわけでありまして、船舶をみずから所有していないという点を除きましては船舶所有者とほとんど同じ地位にあると考えていいと思います。つまり、船舶所有者と同じように、船を利用して運送契約の主体となって活動するという者でございます。したがって、現在の商法におきましても、船舶賃借人につきましては船舶所有者に関する多くの規定が準用されているということでございまして、これはほぼ船舶所有者と同じ地位に立つ者と考えてよろしいかと思います。 それに対しまして傭船者はいろいろむずかしい問題があるわけでございますが、商法で規定しております傭船者というのは、船舶そのものを借りるのではなくして、船腹の全部または一部を借り受ける。船自体は船舶所有者が運航させるわけでありますが、傭船者はその船腹の全部または一部を借り切って、そしてそこに自分の荷物なり、あるいは再運送契約をして他人の荷物を積んで運送する、こういう立場にあるわけでございます。したがって、傭船者というのは、海上企業者としての立場から申しますと船舶賃借人よりも弱い立場にあるということが言えると思います。 ただ、傭船者の中にも、いわゆる傭船契約にいろいろございまして、定期傭船契約というのがございます。これにつきましては、傭船者という名前は使いますけれども、実際には船舶賃借人と同じような、それに近い地位を持っておるという者もございまして、いろいろ内容によって違うわけでございますが、商法のたてまえから申しますと、船舶賃借人は船舶所有者とほぼ同様の地位に立つ、それから傭船者の方は、船腹の一部を借り受けているという意味で、いわば船舶所有者とそれから荷主との中間的な立場に立つということが言えようかと思います。
○大竹委員 次に、この条文を見ますと三条と四条に規定しているようでありますが、いわゆる責任を制限することができる債権、四条には責任を制限することができない債権というものを載せておるわけでありますが、これを例を挙げて簡単に御説明願いたいと思います。
○川島(一)政府委員 まず、責任を制限できる債権でございますが、これは三条の一項に規定してあるわけでございます。例を申し上げますと、これは人に関する損害の場合と、物に関する損害の場合とございます。人に関する損害といたしましては、船舶事故によって乗客その他の者が死傷をする、その場合の損害賠償請求権というようなものが入るわけでございます。それから物に関する損害といたしましては、積んでおった貨物などが損傷を受ける、あるいは滅失する、これによってその荷主が受けた損害について認められる賠償請求権、こういうものが考えられるわけでございます。それから、たとえば船舶が衝突いたしましたような場合には、その当該船舶に乗っておった乗客あるいは積んでおった貨物のみならず、衝突されて沈んだ船であるとか損傷した船であるとか、あるいは衝突された船に乗っておった人間あるいは貨物に対する損害、こういうものもこの制限債権に該当するわけでございます。 次に、制限できない債権というものは、主として第四条に規定しておるわけでございまして、四条の第一号は、「海難の救助又は共同海損の分担に基づく債権」であります。これは、船舶が海難に遭いまして、そして救助される。この場合に、救助を受けた船舶の所有者は、救助をしてもらった船舶の所有者等に対しまして救助料を支払うという意味におきまして救助料の債権というのが問題になります。この救助料につきましては、これは特殊なものでございますし、こういうものにまで責任制限を認めるのは妥当でないということで除いたわけでございます。それから共同海損の場合、これは、たとえば船舶が共同の危難に遭って、その危難を脱出するために積み荷の一部を海中に投棄したといったような場合が考えられるわけでございますが、その場合に、その投棄された積み荷の所有者は、船舶の所有者その他に対しまして共同海損の分担の請求権を持つわけでございます。この共同海損分担請求権につきましても責任制限を認めることは公平の観念から見て適当でないということで除外いたしたわけでございます。 それから第四条の二号は、これは、船舶所有者と雇用契約にある者、たとえば船長とか海員が海難事故によって死亡したとかあるいは負傷したという場合の損害賠償請求権でありますが、これは主として雇用契約に基づいて発生するものでございますから、このようなものについてまで責任制限を認めることは、被用者の立場にある者の保護として十分でないということでこれは除外したわけでございます。この四条の二号のおしまいの方にございます「これらの者の生命又は身体が害されることによって生じた第三者の有する債権」というのがございます。これは、たとえば海員が海難事故によって死亡したという場合に、その死亡した海員の遺族が船舶所有者に対して慰謝料の請求権を持つことになるわけでありますが、こういうものについても同じく責任制限は認めない方が適当であるということで、そういうものを除く趣旨で規定いたしたわけでございます。
○大竹委員 次に三条の二項でありますが、いわゆる内航船の場合には、人の死亡及び傷害に基づく債権は責任制限の対象から外されているわけでありますが、この外されている理由はどういうところにあるのでありますか。
○川島(一)政府委員 これは内航船の乗客に対する被害に関する特則でございます。内航船の場合には比較的トン数が少なくて、しかも大ぜいの人を乗せて運送するという特殊性がございます。このような場合に、その船がひっくり返って大ぜいの人が死んだり負傷したりいたしますと、その賠償額というのは相当多額にわたるわけでございます。こういうものにつきまして一般的な責任制限を課しますと十分な賠償ができない、きわめて実際的でないような結果を生ずる場合も考えられますので、こういうものにつきましては責任制限の対象から除外したということでございます。この点につきましては、国際条約には特にこういう場合について除外例を認めた条項はございませんけれども、事は国際的な問題ではございませんで、もっぱら国内的な問題でございますので、この点につきましてはこういう特例を国内法に置きましても条約の抵触にはならない、こういう判断のもとにこのような規定を置いたということでございます。
○大竹委員 次に、この七条についてお伺いしておきたいと思うわけでありますが、一単位の日本円に換算するわけでありますが、これは一体いつの時期の相場で換算するのでありますか。これは、事故が起きたときとかあるいは現実に給付を受けるときとか、いろいろ考え方があると思うのですが……。
○川島(一)政府委員 換算する時期が問題になるわけでございますが、これは条約の解釈といたしましても、またこの法案のたてまえといたしましても、責任制限をするときというふうに考えております。現実には、この責任制限は、この法律によりますと、責任制限手続開始の申し立てをして、そして裁判所がこの申し立てを相当と認めて責任制限手続開始決定というものをするわけでございます。その開始決定をすることによって責任制限の効力が生じますので、その、裁判所が開始決定をする時期が換算の基準日になる、このように考えております。
○大竹委員 時間がありませんので先を急ぎたいと思いますが、八条ですか、船舶のトン数の算定について、百トン未満の木船は百トンとみなすことにしておりますが、一方においては三百トン未満のものは三百トンにするということにしておるようでありますが、これらの理由について簡単に説明をしていただきたいと思います。
○川島(一)政府委員 仰せのとおり、この法案の八条二項におきましては、責任限度額を計算する基準となる船舶のトン数が三百トンに満たないものについては三百トンとして計算する、ただし百トン未満の木船につきましては百トンとして計算する、このように二段階の特則を設けておるわけでございます。この点につきましては、国際条約の方では三百トン未満の船につきましては国内法で自由に決めていいということになっておるわけでございます。そこでわが国の場合には、いろいろ関係当局と御相談をいたしましてこのようにいたしたわけでございますが、趣旨は、余りトン数の少ないものにつきましては、その実際のトン数で計算いたしますと責任限度額が少なくなり過ぎるのではないかということがあったわけでございます。そこで三百トン未満のものはすべて三百トンとして計算するというのが一応の原則となったのでございます。ただし百トン未満の木船、主として漁船なんかに多いわけでございますが、こういうものは、船舶所有者も一杯船主でありまして余り経済力も強くない、そういうものに対しましてなおかつ三百トンとして計算するということにいたしますと、やや責任の負担が重くなるのではなかろうかという心配がございましたので、この辺もいろいろ関係当局間で協議をいたしました結果、百トンに満たない船舶については一応百トンとして計算をするということでよかろうということにいたしたわけでございます。なお、百トンに満たない木船というものが実際にどういう損害を引き起こすかということを考えますと、それほど重大な事故というものは実際に起こっていないわけでございまして、そういう意味から申しますと、このような特則を置きましてもそれほどの不都合というものは起きないのではないか、このように考えております。
○大竹委員 時間でございますが、最後に、油濁損害の賠償保障法、これは御承知のように運輸委員会にかかっているようであります。あれもなかなかめんどうな法律でございますが、しかし、商法の中へこの船舶所有者の責任制限に関する法律案を入れるのならばこれはあれでありますが、こうやって一つの法律とする以上は、油濁損害の賠償保障法案というものもこれと一本にしてもよかったのじゃないかというようなことも考えられるわけでありますが、この油濁損害賠償保障法案と本法案との関係について簡単に説明していただきたいと思います。
○川島(一)政府委員 仰せのとおり、油濁損害の賠償制度とこの法律における責任制限制度とはお互いに相補うような形になっております。その意味では同一の法律に規定した方がわかりやすいのではないかということも考えられないことはございません。しかしながら、これは条約もそうでございますが、油濁の損害につきましてはそれ自体別個独立の制度として別個の責任制限というものを規定しておるわけでございます。しかも、油濁の関係につきましては国際基金というものができまして、国際基金がある程度その損害賠償についてのカバーをするというような関係もございまして、法律の仕組みがかなり違ってくるわけでございます。そこで比較的わかりやすい形にいたしますためには、一応基本法として、商法の委付主義にかわる責任制限制度といたしまして所有者等責任制限に関する一般法というものをここでつくる、そして油濁につきましてはその特別法として油濁損害賠償保障法というのをつくりまして、それにあわせて国際基金の関係なども規定する、こういうことにした方が実際には使いやすいのではないか、こういう配慮から二本立てにいたしたわけでございます。 油濁損害賠償保障法とこの法律との関係でございますが、先ほど申し上げましたように、この法律によって責任の制限の対象となる債権はいろいろございます。形式的に申しますと、油濁損害の債権というものもこの法律によって責任制限ができる債権に入るように見えるわけでございます。しかしながら、これはあくまで一般法でございますので、特別法として油濁損害賠償保障法というのを別につくりまして、こちらで油濁損害賠償についてはこうするのだということを決めれば、当然に油濁関係は除かれて、この特別法によって処理されるというふうになりますので、そういうたてまえをとったわけでございます。
○大竹委員 実はこの法律は、責任制限事件をどういうように裁判所で取り扱うかということがむしろ主体になっているわけでありますが、時間もございませんので、この手続その他に関してはまた後日時間がありましたら御質問を許していただくことにいたしまして、私の質問はひとまずこれで終わることにいたします。
○保岡委員長代理 横山利秋君。
○横山委員 約二週間、稻葉法務大臣不信任問題で十分にいろんな質問ができませんでした。一応のめどがついたにいたしましても、いきなりすっと、この商法、いかがですかというのも何か落ち着かぬ感じがするわけでありますが、その意味で一つ二つあなたの心境を別な角度から、ちょっと済みませんが、打診をさしていただきます。 第一の打診は、きのうも沖繩特別委員会で議論がされました伊江島における、五月六日政府が第一次裁判権を放棄した、那覇地検が七日不起訴処分を発表したという事案であります。このことについて大臣に一言だけ伺いたいのでありますが、あなたもこれは事前に報告を受け、そして御了承なさったことでございますか。
○稻葉国務大臣 そのとおりであります。報告を受けました。
○横山委員 その次の質問は、きのうの読売新聞の社説であります。恐らくこれは大臣もごらんになったと思うのですが、「法務・検察当局に求めたい人権感覚」という表題をもちまして、私ども法務委員にとりましてもこれは大変ショックな感じでありますが、裁判中、また裁判が終わって服役をしておる、そして再審請求の出ておる具体的な事案を読売新聞社が、社説といえば社の主張でございましょう、きわめて具体的に、ある意味では挑戦だと私は思います。お読みになりましたか。
○稻葉国務大臣 実は読んでおりません。
○横山委員 きょうこれを議論しようとは思いませんが、問題提起だけいたしまして、できれば次の機会に議論をいたしたいと思います。 この社説によれば、滝淳之助事件でありますが、彼が犯しましたと言われる被疑事実のうちの一、二の問題について、「アリバイ証拠のある二つの強盗事件について、東京地裁に再審を請求した。その証拠は、捜査当局が作成していた彼の犯歴カードである。それらの強盗事件当日、彼は、別の窃盗事件で、警察や家庭裁判所に留置されていたことが記録されていたのだ。」そこまで社説に書いてあるのです。ところが、「検察官は、再審請求から一年以上たって、最近やっと意見書を、同地裁に提出した。しかし、驚くことに、そのアリバイさえ否定しているという。」こういう書き方なんです。「驚くことに、そのアリバイさえ否定しているという。」という書き方であることに注目を願いたいと思うのです。 それから第二番目に注目をしなければならないことは、「「再審をあきらめる」という、彼の手紙が日弁連に届いた。弁護士との面会によって、その動揺は、刑務所側の勧めによるものであることがわかった、と日弁連では言っている。」つまり、再審のあきらめは、あきらめろ、あきらめろと刑務所側が勧めたという話であるという言い方である。これは社説ですよ。 第三番目に問題になりますのは、「仮釈放の基準の一つに、「改しゅんの情が認められる」という条件があるが、えん罪の主張は、しばしばその条件に反すると解釈されるようである。」という書き方であります。つまり、その仮釈放を求めておるということは改悛の情が認められないということ、再審の主張をしておるということも改悛の情が認められないというふうに理解されるという書き方なのであります。 ほかにもありますが、社説をもって具体的事案を具体的に指摘してこうも書いてありますことは初めてではないか。私も法務委員の一人としてこれを見ましてきわめてショックを受けました。恐らくあなたの方も主張がそれぞれおありになると思うのでありますが、本件について、これは後を引きます、慎重な調査をしてもらいたい。つまり、ただ電話で聞いた、ああそうか、それならいいなということじゃなくて、慎重な調査をしてもらいたい。この社説について、まだ裁判が行われているのですから、いいとか悪いとか、なかなか言いづらいとは思いますが、ここまで出ておりますことについて一言も法務当局が触れないということもいかがかと思いますから、私の質問を通じてひとつ問題を明らかにしてもらいたい。この点の御調査をお願いします。それが緊急の問題であります。 それから本論に入りまして、この法案についてでありますが、この法案についても、前から私主張しておりますが、いつも本委員会で議論をいたします商法、民法、刑法——刑法は別でありますが、商法は特にそうでありますけれども、何ら法務省が実行を担保しないということなんであります。商法の運営、商法の実行について、その実行を担保する責任を正直なことを言って持っていない。その機能を持っていない。その実務を持っていない。いろいろな意味で持っていない。でありますから、私どもがここでいろいろ主張し、質問し、お答えを願ったことが、過般の商法改正では大蔵省が実行を担保する。今回の問題では運輸省が実行を担保するということなんであります。どうもその辺が、靴の裏から足をかいておるという感じがしてなりません。ここで何を言ったって、法務大臣や民事局長はそのことについて、具体的事案について実行を担保してくれないではないかという焦燥感といいますか、靴の裏から足をかくという気がいたします。私どものこういう感じについてどうお考えでございましょうか。
○川島(一)政府委員 先生の言われる点はまことにごもっともな感じであろうと思います。民法にいたしましても商法にいたしましても、国民の私生活あるいは営業活動の基準というものが定められておるわけでございまして、そういうものに立ち入って監督するとかいうようなことはあり得ない性質のものでございます。したがって、個々の問題が起きました場合に、それは裁判所において解決される。裁判所が判断をする場合の基準としての意味を持つわけでございますので、直ちに、法律ができたからといってその実行が担保されてないじゃないかという御批判はあろうかと思いますけれども、それは事柄の性質上そういうものであるということを十分御理解いただきたいと思いますし、問題があった場合には裁判所でその法律が判断の基準として使用されるということで、われわれは立法作業に携わっておるということでございます。
○横山委員 私が申し上げておることはおわかりだと思いますが、二つの側面があるわけですよ。 一つは、法律の改正をここでする、商法なり何なり改正する。しかしあなた方はその実行を担当する省ではない。担当はほかの省が皆やっておる。だからここで何ぼあなたとごたごたいろいろやり合っても、あなたはその言ったことについて責任を持ってくれないということなんですよ。 それからもう一つは、私どもがここでたとえば、後から例に出すのですが、附帯決議をする。附帯決議でも、法務省に関係したことでなければあなた方は責任を持ってくれない。気持ちの上では持ちますよと言うかもしれぬけれども、責任を持ってくれない。附帯決議を実行しなかった、実行できなかったという点について、法務大臣として、本委員会の附帯決議であるから、自分の所管ではないけれども、それはいかぬと言うてよその省に対して責任を持ってくれますか。
○稻葉国務大臣 ここでたとえばいまの御審議を願っている法律などにつきましても、その立法の理由、各条についてもその立法の趣旨等、委員と政府間でいろいろ質疑応答がなされますから、それらの立法趣旨を踏まえて運輸省なり通産省なり大蔵省がこれに準拠して運用をいたしますから、そういう点では実行を担保される契機には、モーティブには、動機には大変に役立つのではなかろうか、こういうふうに思うのでございますし、もう一つは附帯決議の問題でございますけれども、これはやはり法務委員会において決議をされたことは法務省は拘束を受けますし、法務省が拘束を受けることは内閣一体の原則として責任があるわけでありますから、関係担当大臣とよくその辺の協議をするなり要請をするなり、そういうことによって担保してまいりたい、こういうふうに存ずる次第であります。
○横山委員 法務省そのものずばりの問題がありますが、きょう大蔵省から来てもらったものですから、法務省は別に、この前民事局長にここで机をたたいて怒った問題だけもう一回言うておきますが、「商業帳簿等としてマイクロフィルムを一定の条件の下に認めること」この問題は、絶対あなた方は附帯決議なり院議を無視している、解釈が。これは指摘にとどめます。別の機会にいたします。 きょう大蔵省から来ていただいたのは、同じく商法改正のときの附帯決議の第四項目、「監査法人の育成・強化を図る反面、個人たる公認会計士の業務分野についても行政上適正な措置をすることとし、もって活動分野の調整をはかるものとすること」こういう附帯決議があるわけであります。この附帯決議の趣旨は、要するに商法を改正して被監査会社がかなりふえる。かなりふえるけれども、それについて個人の公認会計士の分野と監査法人の分野とを交通整理をなるべくしてやりなさい、活動分野の調整を図りなさい、こういう意味なんであります。これはもう素人が見たってすぐわかることなんであります。ところがあのときにも、私が去年の三月五日にこの附帯決議に触れてさらに念を押しておる。念を押したことについて田中説明員は、官房審議官でありますが、「大規模法人の監査につきましては組織的な監査ということが必要でございますので、監査法人が多くの公認会計士をもってこれに当たるのが適当ではないか、そして一人の手で負えるようなところには個人の公認会計士でいいのではないかというような大体の感じがございます」という、そのほかにも語っておりますけれども、大体この附帯決議の線でいくという趣旨を答弁なさっております。 ところが、ここしばらくの間に商法改正についてのさまざまな問題が発生してきておりますが、きょうは全部を言うわけにはまいりません。その問題だけをまず整理をしたいと思うのでございますが、それによりますと、あなた方自身がいろんなところへ行って、もう監査は個人はだめだから監査法人でやりなさいと言うて勧めて回っておるというのであります。私が聞くところによりますと、数日前の「日本経済」でありますか、新聞に、法人監査ないしは共同監査でやりなさいというあなた方の談話なり何かが出ておったようでありまして、これは私は見ていないのでありますけれども、そういう個人の公認会計士はだんだん仕事を取り上げられて、みんな監査法人方式をどんどん事実上推奨しておる。あなた方がそうすれば、無形の圧迫なり無形の大きな影響力を持っておることは当然なんでありますから、個人公認会計士から非常に悲鳴が上がってくることは当然なんであります。どうしてそういう国会の意思と全く背反なさることをなさるのですか、篤と説明を承りたいと思います。
○田辺政府委員 先生の御指摘になりました四十八年の附帯決議第四項の趣旨は十分理解をし、それを体して行政をやっておるつもりでございますが、一般的に申しますと、昨今、会社の粉飾であるとか、あるいはこれに関連しまして公認会計士の監査のあり方、能力なりそういうものがかなり反省すべき事件が起きております。われわれは、どうやったらこの公認会計士の監査事務というものが権威を持って正当に行われるかということに腐心をいたしておるわけでございますが、一般論といたしましては、大規模の、たとえば上場会社であるとか、帳簿の組織も複雑であり、いま非常に広範な事業を行っているというようなものにつきましては、これは単なる単独の一人の公認会計士の監査ではやはりなかなか困難が伴うということを感じておりまして、できるだけそういう会社の場合にはいわゆる組織的監査、監査法人による監査もあるでありましょうし、単なる一人ではなくて数人が一つの組織をつくりまして、その監査について綿密なる作戦を立てた後にいろいろチェックを行っていくというようなことがやはり望ましいのだと思っております。ただ、一切の日本国じゅうの会社の帳簿すべてそういうことでなければならない、こうは思っておりません。おっしゃるとおり、一人の公認会計士でありましても、非常に能力が優秀であって公正な監査を行っておられる方もあるわけでありまして、そういう方々の業務というものは、それはそれで十分に尊重すべきだ、こう考えております。
○横山委員 大蔵省の意思であるか、あるいはあなた方担当者の意思であるか、とにかく私の聞いておるのは、個人の公認会計士ではだめだから法人の方にかわりなさいというふうに推奨し、あるいは指導しておる事実はあるのか、ないのか。
○田辺政府委員 いまお答えいたしましたとおり、会社の規模によっておのずからそれは異なってくるのではないかと思います。一般論といたしますと、やはり上場会社等の大きな法人の場合には単独の会計監査は好ましくない、そういうことを言っておるわけでありまして、それはどの辺からかと言われましてもなかなかこれはむずかしい問題でございます。(横山委員「具体的な事実についてやっておるかどうか。おまえさんのところは個人じゃだめだから法人にかえろというふうな具体的な行為をしておるのかどうか」と呼ぶ)そういう具体的な行為はやっておりません。
○横山委員 これはあなた明白にお答えになったのですから、後で具体的な行為があったら承知しませんよ。気持ちの上では私、わからぬことはないと思うのだけれども、具体的に一つの会社なりあるいは一人の公認会計士をつかまえて、あなた、そんなところで一人でやっておってはいかぬとか、会社に対して、あの公認会計士一人にやってもらっているのはいかぬから監査法人にかえろというふうな、具体的な問題にまで役所がタッチすることは言語道断であると私は思っておるのですが、そのようなことはないでしょうね。
○田辺政府委員 正確にお答えしなければならないと思いますが、上場会社につきまして、東京、大阪、名古屋の証券取引所が各会社に対しまして、集団的な監査、それは監査法人による監査であるかあるいは少なくとも数名による監査が望ましいので、そのように御努力を願いたいということの依頼状を出しておりますが、それにつきましては私どもも全く同感である、こういう態度をとっております。また、おそらくいろいろな機会にそういうことを対外的に担当官が述べているということはあると思います。 ただ、何々会社に対しまして、あなたのところはこうしなさい、あるいはその当該公認会計士に対して、どうしなさいということをやっていると私は聞いたことがございません。また、恐らく役所の仕事としてそこまで言う権限といいますかもないことでありまして、ただ一つ先生の御理解を得たいのは、わりあいに規模の大きい会社でございまして一人の公認会計士がやっておられる、そのこと自体がどうこうというのじゃなくて、たとえば会社が計画的な粉飾を行うとか、ちょっと出来心でもって隠すとか、そういうようなことをやる場合に、公認会計士が全部見張ってそれをチェックしなければならないわけでありますが、その場合の証明のあり方として、公認会計士は、もし仮に虚偽の証明をいたしますと公認会計士法上の責任もございます。しかしそれ以上にいわゆる民事責任——それによって被害を受けました株主、債権者等に対しまして民事責任を負わなければならない、非常に大きな一種の危険を負担しているわけでありますから、その辺は十分お考えになっておやりになることが適当である。これは差し出がましいことでございますけれども、そういう気がしてならないわけであります。
○横山委員 そんなことは当然のことであって、だからといっておどしつけるような物の言い方はやめなさいよ。最近の東京時計にしたところで、いろいろな粉飾決算したところがございますけれども、その問題の処理と、法人がいいか個人がいいかということの問題について混淆してはいけませんよ。役所が個々の会社に、個々の公認会計士の仕事に、具体的にタッチをしたり影響を与えて、恫喝するようなことをしてはいけませんよと私は言っているのです。公認会計士が粉飾決算をしたというのならどんどん処分しなさい、断固として処分しなさい。適当なことはやめなさいよ。処分は厳正にやった方がいいというのが私の意見でありますから、その点は間違えないようにしてください。あなたが、処分ばかりでなくて民事責任があるからということは、そんなことはだれだって同じことなんであります。そんなことは監査法人であろうと個人であろうと承知の上で受けるわけでありますから。 そこで、もう一つ突っ込んでお聞きしたいのですが、あなたが言うところの、原則として大きなところは監査法人がいい、こうおっしゃる。私がこの附帯決議を同僚諸君とともに討議をした段階でも、ほかっておけばこれから大きな監査法人へどんどん仕事が集中していく。個人の公認会計士は、厳しい門をようやくくぐったにかかわらず何ら仕事がない。総体的に仕事はふえても下の方に仕事がなくなるという予測をしたから、これは国家的な損失だから、この附帯決議の四項も添え、政府の約束もいただいているわけでありますね。私に遠慮しいしい言っていらっしゃるけれども、結局あなたの論理も、大きなやつは信用がある、大きな監査法人になればなるほど信用がある、だからそこで監査してもらった方がいいと言わんばかりの話なんであります。大きなやつとは一体何だということなんであります。たくさんの公認会計士を擁しておる、巨大なビルにおる、それが一番信用がある、そう言わんばかりの話なんであります。 しかも、監査法人の認可基準について、私は去年の三月にもやはり問題を提起しました。監査法人をつくるについて、おまえは鉄砲を持っているけれども、ネギとカモも連れてこいという論理はいかぬと私は指摘したわけです。鉄砲というのは自分が公認会計士としての資格を持っておるということ。資格を持っておる者が三、四人来たが、カモとネギがないからだめだというのがあなたの方の意見であります。カモとネギというのは、お客さんを連れてこなければだめだ、ただ公認会計士が集まって監査法人をつくろうかと言っただけではだめだ、それぞれのお客さんがきちんといまなければだめだというふうに誘導、指導して、監査法人の認可基準を非常に厳しくしているのではないか、こう言ったのです。そうしたら、いやそういうことは法律にも規定にも決まっておりませんというあなたの方の返事でございました。しかし、実際問題として監査法人をつくるのに対して厳しい基準があるわけであります。かなり厳格な基準があるわけです。三、四人の公認会計士が集まって監査法人をつくろうと言ったって、そう簡単にあなたの方は認可しないのであります。そういうことをさせておいて、そして個人はいけない、大きなところは信用があるという誘導のあり方、そういう行政のあり方に私は何か暗いものを感ずるのであります。大きな監査法人とあなた方との関係に余り適切でない感じを私は受けるわけであります。ですから交通整理をしっかりしなさいと言っているわけです。 それから、いまあなたは、数人の者が共同して監査しろという問題を出されました。この数人の者が共同で監査するという方式、いま一部の説にあります監査団というもの、そういうものを設置したらどうかという意見があります。つまり、個人のよさ、個人としての公認会計士が人格、識見ともにりっぱで経験豊かな人であるならば、そのよさはよさできちんと認めて、その分野をまず考えてやることを考えなさいと私は第一に言っているのです。第二番目には、大きなものならいいという安易なやり方はやめなさい。監査法人を新しく設置するについても好意を持って、鉄砲を持っているならこれからネギとカモを撃ち抜けばいいのだから、鉄砲を持っているだけで監査法人を認めるようにしてやりなさい。また、それもだめだというならば、監査団なりあるいは合同して当たるという共同監査なり、そういう点についても道を開いてやりなさい。あなた方、いつも一番てっぺんの者にだけは好意を持つ、大きな監査法人にだけは好意を持っているけれども、こちらの、下へ行けば行くほどあいつは小さいで信用がならぬとか、あいつはどうかなとか、監査法人にやったらどうだ、こういうことをどうもやられておるような気がしてなりません。 私が推定しますところ、五千人くらいの資格者があるでしょう。その五千人の資格を持っている人の中で実際に公認会計士として監査をしている人は何人くらいです。私の推定するところ三千人くらいでしょう。間違ったら直してもらいたいのだが、当たらずとも遠からずでしょう。二千人の人が公認会計士の資格を持っていながら税務署の仕事をしているのです。ほかの仕事をしているのです。これは私はある意味では国家的な損失であると言ったことがございます。こちらの方、巨大な方、大きな方はどのくらいの収入でございましょうか。私も余り銭のことを言いたくないのですが、忙しくて忙しくてしようがないのですよ。去年の商法改正によって新しい被監査会社が千くらいふえているのじゃないですか。そのふえておるものが平均して公認会計士の仕事にならずに、あなた方の誘導を含めて、ずっと大きな監査法人の方へ流れてしまって、こっちは忙しくて忙しくてしようがない。そして臨時にひとつ手伝いに来てくれぬかというやり方で、看板はこちら、そして従業員として、公認会計士が補助者として利用されておる、そういうあり方がいいのかと私は言うのであります。もう少し公認会計士全般の平均化された仕事、それから個人の公認会計士の信用、力量、それから中小の監査法人、そういうものに均衡されたやり方をしたらどうか。余りあなた方がいまのやり方を続けると、何かてっぺんの大きなやつと、そのコンツェルンとあなた方との癒着が問題になってくる。きょうはこれ以上言いませんが、そういうことではいかぬ、こう言っている。いろいろ言いましたが、以上の点についてひとつ御意見を伺いたい。
○田辺政府委員 お答え申し上げます。 単に、監査体制といいますか、組織が大きければ大きいほどよろしい、何かビルに住んでいるから信用があるとか、そういう考えは私どもは毛頭持っておりません。ただ、それはおのずから監査の手順なり能力なり、あるいはチェックシステムの問題として必要なことが大きい法人を対象とする場合にはあるというだけでありまして、もちろん単に大きいだけで、その内容、質が伴わなければ何にもならないわけであります。それから、一番でっかい監査法人の方を向いてもっぱら行政をしておるのではないか。そういう考え方も毛頭ございません。公平に行政というものはやっているつもりでございます。この点、誤解のないようにひとつお願いをしたいと思います。
○横山委員 そんなことぐらいでは質問の答えになっておりませんよ。私の言う、個人の公認会計士の力量を生かす道を考えなさい。監査法人の設立認可について基準を緩和して、鉄砲だけ持っておっても認可するようにしたらどうか。あるいはまた監査団なり共同監査の道が具体的に開けるように、これも誘導したらどうか。そういう点についてどうお考えになりますか。
○田辺政府委員 まず、監査法人の設立認可基準の問題でございますが、監査法人の認可基準、設立要件というものは法律に明定してございます。五名以上の公認会計士たる資格を有する者の社員が構成するというのが中核でございますが、別にネギとカモをしょってこいとはどこにも書いてありませんで、その問題は私はもう一つこういうことを考えていかなければならないと思いますが、単に数人の法定限度以上の人たちが集まって法人をつくります、こういうことを言ってこられた場合に、その監査法人といえども収入を得て商売をするわけでありますから、法人としての経済的基礎がまるっきり将来性も見込みもないというようなものに対して認可を与えるというのはやはり問題ではないかと思います。そういう意味合いから、その辺の収支の予測というふうなものもやはり当事者から聞かなければならない、こういうことがおそらく先生の誤解を生んでいるのだろうと思います。
○横山委員 あなたの言う収入の予測が明白でなければいかぬというのは、いみじくもカモとネギの話じゃないですか。鉄砲を持っておる、つまり資格を持っている五人以上の人が来ただけではだめだ、その経済的な収支予想がなければだめだ。収入というのはお客さまですよ。つまりカモとネギなんだ。カモとネギがおるのかおらないのかということを、私が端的に言ったことをあなたはいみじくも言っているじゃありませんか。どうなんですか。
○田辺政府委員 いま収支の見込みと申しましたけれども、ちょっと正確に申し上げますと、「監査証明業務を主たる業務として運営されることが確実であること。」というのが私どもの内規といいますか、認可するに際しましての方針として一項目入れておるわけであります。
○横山委員 それだけですか。はっきり言ってください。それなら認可基準をもう一遍明確にここではっきりしてください。
○田辺政府委員 いまの点に関しまして言いますならば、「監査証明業務を主たる業務として運営されることが確実であること。」こういうことでございます。
○横山委員 監査証明業務を主たる業務として行うことが確実であればこれは認可する、カモやネギは問題でない、こう考えてよろしゅうございますね。
○田辺政府委員 ちょっとこの点はよく申し上げておかないといけないと思いますが、監査証明業務を主たる業務として行うことが確実であるということは、そういう証明業務は暇を見てやっているというか、あんまり主たる業務でなくて、もっぱら収入の源泉をほかの仕事に求める、そういうことになるのはやはりよろしくない、監査法人たる資格に欠ける、こういう考え方でございますから、そこにはおのずからやはり、その主たる業務として運営するにはそれ相当の監査によるところの収入もなければ……(横山委員「見込みでしょう」と呼ぶ)そういう見込みでございます。いま現実にそうならなければならぬということではございません。見込みでございます。
○横山委員 トラック会社をこれからやろうとする。認可申請する。「おまえのところ、お客さんあるのか」「これからお客さんを、お得意さんをつくろうと思います」「それならお得意さんの依頼状を持ってこい」というのが運輸省のいまやっているやり方ですね。これから監査法人会社をつくりたいと思いますと言ったときに、あなたは、ネギとカモがあるのか、こう言っていると私は言うのですよ。あなたは、そうじゃない、これからカモとネギが来る可能性があるかということを聞いているのだと言うのですね。そうですね。間違いないですね。——ありますとこちらは言うのですね。証拠を持ってこいと、あなたそういうときに言うですか。これからカモとネギが来る証拠を持ってこいと言いますか。そんなことをするとカモとネギ論になるのですよ。これから五人の者が一生懸命になって監査法人をつくろうと思う、私ども努力をしてお客さんを引っ張ってこようと思いますと言う、若い公認会計士が五、六人集まってね。そうするとあなたは、「お客さんは来ますか」「ええ、私ども努力してお客さんを探します」「じゃあお客さんの候補者を連れてきてちょうだい、お客さんが来る証拠を見せてちょうだい」そういうことを言うというのだ。現にいまお客さんがおりますか、それから将来お客さんが来る可能性があるなら証拠を見せてちょうだいというやり方で、事実上監査法人認可を拒否している、これが私の言い分だ。どうなんです。わかったでしょう、カモとネギ論がようやく。それはこすい。けしからぬ。だから結局、いま被監査会社を持っておる公認会計士が合同するのでなければ認可ができないという結果になると言うのですよ。私という公認会計士はお客さんを持っておる、この人も持っておる、この人も持っておる。それじゃ五人、一緒になろまいか。みんな持ち寄りで、わしはネギ持ってくる、おまえさんカモ持ってこいや、ということでなければ認可をしないというやり方ではないか。いま青雲の志を持って、いままでイソ公をやっておった人が五、六人かたまって、お客さんはないけれどもこれから一緒になってやろまいかと思うやつは認可しないというのだ。それがいけませんよと言うのだ。はっきりしてくださいよ、もう一遍。 それは私が理論的なことを言っているわけじゃないのです。理論的なことを言っているようだけれども、私の気持ちは先ほど言ったように、二千人の人が公認会計士の資格を取りながら何にも仕事をせず税務署通いをしていますよ。ほっておけば大きなところにみんな行ってしまいますよ。しかもあなたは行政指導して、個人はいけませんよという言い方をしていますよ。ところが国会の意思は明白ですよ、もう一回四項を読んでごらんなさいよ。あなた、国会の意思と違った方向のことをやっているからいけませんよ、こう言っているのですから。理論上の解釈の問題でなくて、この四項の趣旨を生かした行政をやってくださいよ、やらなければ承知しませんよ、こう言っているのですから、この方向でひとつ答えてください。
○田辺政府委員 現にお客を持っている人でなければ監査法人をつくれないというぐあいには考えておりません。その見込みが確実であるかどうか。先ほど申しましたような、主たる業務として行われることが確実であるかどうかということでございますから、それはやはり、いや大いに努力をしてこれからたくさん監査をやりますということを単におっしゃっただけでは、行政の担当としては、どれぐらいの見込みが確実性があるのだろうかということを聞かざるを得ないと思います。しかし、現にないからだめだ、こうは申しておりません。 それから、個人の公認会計士が一人でまだ監査証明事務を行ってないというものにつきましては、それはできるだけ監査の仕事をやられるようにという先生のお考え、全く私も同様でございます。ただ一般論として、大規模な会社の場合には組織的監査が望ましいのですよ、こう申しておるわけであります。
○横山委員 大変時間をとって恐縮ですが、まだひとつ釈然としませんことは、届け出でございますから、許可制度じゃないのですね。監査法人をつくるについて認可制度である。しかし、その認可を厳重にしなければ社会に対して害悪を与えますか。私の言いたいのはそこですよ。これからお客様を連れてくる可能性が確実でなければいかぬということは許可せぬということですわ、簡単に言えば。いやらしい気持ちをもっと担当者が持っておれば、「おまえはネギとカモをいま持っておるか」「持っておりません」「今後ネギとカモが来るか」「来ると思います」「証拠を持ってこい」ということなんでしょう、あなたの言うのは。証拠というのは一体何だ。たとえば三菱が私のお客さんになる予定でございます、と。あなた、三菱へ調べに行きますか。調べに行って、そんなことはないと言ったら、それでおまえはうそだと言って、だめですか。一つの会社がその好意をもって、おまえが監査法人になったらやってやろうと言ったところで、文書でそれを出すことはありませんわね。そこまでしなければ、そういうことを確認しなければ監査法人を認可ができないでしょうか。そういうことでなければ監査法人を認可したら社会に害毒を与えるでしょうか。なぜあなた方がお役人としてそんな権限を行使するのです。一定の会計監査人として、厳密な公認会計士としての門をくぐって社会的にもう活動している人ですよ、その人たちは。どろぼうや人殺しじゃないですよ。その人たちが集まって監査法人をつくるというのに、なぜあなたはそういうような厳密な主張をなさるのですか。そうしなければ監査法人ができて社会に害毒を与えますか。その監査法人がお客さんがなくて赤字でやっておるからといって社会に害毒を与えますか。私は、そういう理論もさることながら、国会の四項の趣旨にもっと沿えと言っておるのですが、あなたは釈然としませんね。私は監査法人の認可基準を緩和しろと言っておるのですよ。個人の公認会計士も、国家的な社会の経理の公正について十分利用させろと言っておるのですよ。ここまで言っておるのですが、あなたはわからないのですかね。
○田辺政府委員 まず第一点の、監査法人の設立認可基準の問題でございますが、特に私どもは非常に厳格にその設立をしぼっているということはないのであります。たとえば昭和四十七年末から最近までに監査法人の数は二十九社から三十九社に十ほどふえております。これはそれをどう評価されるかでしょうが、二十九のものがこの一年ちょっとの間に三十九になっておるということを見ても御理解願えるかと思います。 それから、これはできるだけ軽く、機械的にといいますか、設立を許しても社会に害悪はないじゃないか、こういう御質問でございますが、これは相対的な問題でありまして、銀行であるとか証券会社であるとか、免許制のものに比べてそんなに社会に害悪を与える危険性は少ないと思いますが、しかし先生も御案内のように、監査法人の社員は無限責任を負っております。合名会社の社員と同様の責任を負うように法律上定められておりますので、その面からもやはり、ただ将来あやふやな計画だけで認可するというわけにもいかない。その辺の兼ね合いの問題でございます。 それから附帯決議の個人の公認会計士の問題は、先ほど来御答弁申し上げておりますように、すべてのものを一切合財、個人の公認会計士の分野がなくなる、なくすように指導している、そういうものでは毛頭ございません。また、先生のおっしゃいますように、個人の公認会計士だけがやっている場合が適当な場合もありましょうし、相互に共同監査と申しますか、グループをつくっておやりになるという道もあるわけでございますので、その辺の業務分野の問題は慎重に配慮してまいりたいと思っております。
○横山委員 そういうふうに、監査法人の認可基準を緩和しろと言っている私に四の五の言っているあなたの方で、今度アーサー・アンダーセン監査法人を日本に設立をさせることになりそうだというのですね。そうですか。
○田辺政府委員 アーサー・アンダーセンという、現に国内で活動しております公認会計士の事務所がございますが、それらがわが国内法上の監査法人になりたいという希望をずっと数年来持っているということは存じております。ただ、近々これを認可するかどうかということはちょっとこういう場所では、具体的な問題でございますので答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
○横山委員 承知しませんね。アーサー・アンダーセンの名前は出しませんけれども、やはりこの問題も昨年の春、私が本委員会で商法改正の問題のときに取り上げたわけです。あのときに私どもが言ったことは、いま国内の公認会計士の業務分野でいろいろ議論をしておるときに、アーサー・アンダーセンという会社がなぜ国内でいま監査法人にならなければならないのか。もしもアメリカ人が日本へ来てやるというんなら別だ。しかし、認可しても結局は日本人の公認会計士がアーサー・アンダーセンという名前の中で働いているにすぎない、雇用されるにすぎないと私は思うのです。結局、公認会計士として働きながら、ピンはねされて、アンダーセン本社へ恐らく名義料を出すことに相なるのではあるまいか、こう私は思うわけであります。 本来、去年の答弁でもございますけれども、もう何年も何年も全然外国の公認会計士の監査法人は日本で設立をしない条件下になっておるのにかかわらず、いま伝えられるように、国内の監査法人についてはあなたは十ぐらいふえたと言っていばっているんだけれどもとんでもないですよ、公認会計士は五千人くらいおるのですからね、そうして国内ではずんずん縛っておいて、外国の名前を借りたアーサー・アンダーセンが監査法人をつくるのに対して唯々諾々と承認をなさったら承知しませんよ。もしも、このアダンーセン監査事務所に働く日本人の公認会計士の人たちが日本の、横山監査法人とかそういうものを設立されて認可申請をなされば私は文句は言わぬと言うのです。どうして外国の肩書きをつけたものを認可しようとするのか。日米安保条約の中の覚書でございましたか、自由職業人の相互主義というものがある。もしも、この日本でアンダーセンの監査法人をつくる、アメリカでも日本の公認会計士の法人をつくる、こちらがやった監査証明はアメリカでも尊重する、そのかわりアメリカでやった監査証明は日本でも通用するというような相互主義が徹底されておるならば私はそうも言いません。どういうつもりでアンダーセンの監査法人を認可するのです。去年、私どもが質問したときに慎重にやるというようなお話だった。一年たったらほとぼりがさめたからもういいだろうと甘く考えているのですか。これは具体的な事案だからちょっと答弁を差し控えるということは、要するに認可の可能性ありということなんですか。
○田辺政府委員 一般論としてお答えさしていただきます。 御承知のとおり、監査法人の設立につきましては、いろいろな基準に合格すれば認可をするという方針でございますので、特にアメリカ系の名前をつけているからどうとかということは、ちょっと実際に行政面では理由にはなしがたいと思います。いま外国系の会計事務所と称する集団が著名なものでも数事務所、たしか八つくらいあると思いますが、これらが日本の国内法に基づいた正式の監査法人になりたいというもし仮に意向があるとすれば、やはり現行の国内法の基準に従って処理をするということになるだろうと思います。 それで、わが国内の公認会計士の業務分野との調整の問題でございますが、現に日本の国内で、すでにわが国の公認会計士の資格を持ちました日本人及び若干の外人もおりますが、そういう公認会計士の資格を持ちました者が現に仕事をやっておるわけでありますから、それが法律制度上正式にと申しますか、監査法人としての体をなしてそして仕事をやりたいということは、直接私は業務分野の問題に大きな影響はほとんどないと思っております。そういうわけで、具体的に何をいつ認可するというようなことは申し上げられませんけれども、基本的な考え方としてはそういうような考え方で慎重に検討しておる、こういうことでございます。
○横山委員 資格がそろっておれば外国人であろうと日本人であろうと認可する、そういう遁辞はやめなさいよ。それなら、今日まで外国の公認会計士から日本で監査法人をやりたいといういろいろな意見があったときになぜ認可されていないのか。去年の田中さんの答弁は、「この制度は、公認会計士制度ができました際、その十六条の二として設けられたものでございますが、おっしゃいますとおり、四十六年四月以降一回もこの資格試験というのは行なわれておりません。当初はそういう外国公認会計士によって国内に刺激を与え、適正な監査に役立たせるという趣旨もございました。また、三十七年には公認会計士審査会というところの論議で、やはりまだこれはあってもいいじゃないかという結論だったのでございますが、そのときから十年以上経過しておりますし、最近四年一つも行なっていない」こういう趣旨の答弁をしていらっしゃるわけです。 要するに、国内の監査法人は私に言わせれば少ないと言うのだけれども、あなたに言わせれば十をも認可したといばっていらっしゃる。ところがその過程において外国の会計監査法人はずっと一つも認可していないのですね。それを、いまのあなたの答弁によれば、条件さえそろっておるなら国内だって国外だって当然じゃありませんか、と。ようそんなこと、ぬけぬけと言えたものだと思うのです。そういうことをぬけぬけと言うことは、アーサー・アンダーセンを認可する可能性があるということをあなたは裏返しに言っていらっしゃると思うのです。 あなたは、具体的に何もこれによって、国内の公認会計士を使うから関係ないとおっしゃっておられるかもしれませんが、私が承知しておるところによりますと、もうすでに、六月にはアンダーセンが認可されるから、あなた済まぬけれどもこうしてくれいと言われておる公認会計士がおるわけです。現に影響を受けている公認会計士がおるわけですね、心理的にも、会社からも、いろいろなところから。そういうことをどうお考えになりますか。あなたの話は違いますね、そういう点では。国内の公認会計士の仕事に影響ないということは話が違いますね。結局、国内の公認会計士がこのアンダーセンの監査法人に雇われて、使われて仕事することになるでしょう。それで何かかにか言いながら資本を投下して、そうして上がりをピンはねして本国へ持って帰るのでしょう。なぜそんなことが必要なのか。なぜそんなことをしなければならぬのか。もっと国内の公認会計士を外国にも起用さして、国際的な事案で活躍させる、そういうことを考えたらどうですか。それも相互主義で、アンダーセンを入れるけれども、ほかに日本もこういうふうに出ていくんだという意気込みがあるならまだ恕すべき点もありましょう。あなた方のやっていることは最近わからぬですよ。なぜそんなことに一生懸命にならなければならぬのか、その根本原因が私にはわからぬ。なぜこんなことを認可しなければならないのか、わからないですよ。何のために私どもが商法で附帯決議をいろいろつけているのかわからない。 法務大臣、お休み中、大変恐縮でありますが、あなたのお休み中にずいぶん議論をしたわけでございます。要するに、つまるところ、私は冒頭の話に返りますけれども、商法というものは、あなたも民事局長もお答え願ったのですが、実行を担保することについて法務省は不十分である。この附帯決議についても、おれのところの関係じゃない、これは大蔵省の関係だからおれの方は知らない、こうおっしゃるつもりはよもやないと思うのでありますが、法務省のやっていることは附帯決議の八項に違反している、附帯決議に矛盾している、こういうことなんであります。まあ八項の点についてはまた別の角度で議論をいたしますが、少なくとも四項について、これだけじゅんじゅんと私が話をしたわけでありますから、法務大臣としても大蔵大臣に、この商法改正の附帯決議、この第四項について適正な措置をとることを求めていただきたいと思いますが、いかがでしょう。
○稻葉国務大臣 横山さんと大蔵当局の質疑応答を聞いておりまして、ごもっともな点がございますから、まず事務当局にこの附帯決議四項といまやっている大蔵省の実行の担保のやり方と矛盾しないかどうかをよく調べさして、そうしてその暁においては大臣同士の話にいたしたい。御意思に沿いたいと思います。
○横山委員 大蔵省には大変いやなことも言いましたけれども、私の気持ちをもう少し素直にさらっとわかってもらいたいと思うのですよ。あなたの方もいままでの行きがかりだとかいろいろなことがあったと思うけれども、それを一遍ちょっと離れて——私は水かけ論をやっているわけじゃないのです。私にはこの国会の意思というものがあるのですから。あなたはこの意思に間違っていないとおっしゃるかもわかりませんが、意思に間違っていると私どもは主張するのです。ですからひとつ、いまも法務大臣からああいうお答えを願ったわけでありますが、謙虚に一遍考えてみてもらって、私の指摘するような交通整理、公認会計士みんながそれぞれの分野で仕事ができるというようなことになるように。そして、断っておきますが、紛飾決算があったら断固処分すればいいのですよ。私はそんなことは決してちゅうちょすることなく処分すればいいという立場ですから。そういうことをして、そうして日本における公認会計士の業務が適切に発展するようにしてもらいたい。そういう意味合いから、アーサー・アンダーセン監査法人を認可なさることに断固として私は反対でございます。これはアンダーセン自身の問題ではない。もっと根本的な考え方が違う。しかも、去年の国会におきましてもこういう、先ほど読み上げましたような御趣旨もございますから。おわかりになりましたか。——では私の質問はこれで終わります。
○沖本委員 関連質問ですが、横山先生のおっしゃったこと——これは大臣に申し上げたいわけですが、この附帯決議というのは、商法改正については非常な問題を起こして、衆参でさんざんもんだあげくに、この附帯決議をつけてやっと問題解決という事態がこの内容の中にあるわけですから、この附帯決議は重々御検討していただいて、附帯決議が十分生きるような方法をおとり願いたい、そう考えるわけです。
○稻葉国務大臣 いま附帯決議を取り寄せて拝見したわけでありますが、きわめて重要な、ことに四項について御指摘のとおりでございますから、附帯決議の四項の趣旨の実行を担保できるよう努力したいと存じます。
○保岡委員長代理 この際、暫時休憩いたします。 午後零時二十二分休憩 ————◇————— 〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕 ————◇—————