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75回国会衆議院1975/03/28

法務委員会 第16号

発言数
75
登壇者
6
会派数
2
開催日
1975/03/28

会議録

小宮山重四郎自由民主党

○小宮山委員長 これより会議を開きます。  内閣提出、刑事補償法の一部を改正する法律案並びに横山利秋君外六名提出、刑事補償法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  ただいま議題となっております両法律案審査のため、来る四月十五日午前十時から参考人の出頭を求め意見を聴取することといたし、その人選につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。      〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小宮山重四郎自由民主党

○小宮山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。

小宮山重四郎自由民主党

○小宮山委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。横山利秋君。

横山利秋日本社会党

○横山委員 この間の委員会の幕切れは、被疑者補償金を支出し得る法的な根拠を政府に提出を求め、同時に私の意見として、被疑者補償規程というものは法制化をすべきであるというところに終わっています。  私の手元へ三月二十五日付で、被疑者補償金を支出し得る根拠について、法務省から文書をもって提出されました。要するに、この文書を要約いたしますと、法務省設置法二条の規定において、法務省が責任を負う行政機関であり、法務大臣は国家行政組織法第十四条二項に基づく訓令として規程を制定をしたし、それから、被疑者補償金は歳出予算であって国会で審議、議決されておる、したがってその支出については、国会の議決も受けておるから違法ではない。要約を私なりにいたしますとそういうことだと感じられますが、そのとおりでございますか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 御理解のとおりでございます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 きょうは法制局がおりませんし、担当のあなたに聞くというのもいかがなことかとは思いますけれども、ひとつ率直に……。  こういうやり方によれば、国民の目から見てこういう批判があるのではないか、それを謙虚にお考えになるつもりはないかという点であります。それは、予算に頭が出ておればどう使おうと裁量は自由にゆだねられておる、そういう行政の自由の幅が大き過ぎるという批判が一つあり得るであろう。それから、この権限が与えられておるためにそれによって不公平が生じかねない、国民がそれに対して批判をし是正を求める余地はないという意味において、不公平の生ずるおそれがある、こういう批判が第二番目。それから第三番目に、これでなくてはならないのであろうか、もう少しその批判を除去し得るような方法があるならば、それはもっと適切な方法にゆだねるべきではないか、こういう批判があり得ると思うのであります。もう一回言いますと、いま私はこの被疑者補償規程だけを言っているのではありません。この論理について言っているわけですが、こういうやり方については行政の自由裁量が余りにも大き過ぎ、そして不公平の生ずるおそれがあり、そして改善の余地があるのではないか、改善すべきではないかという点についてどう御反省をされますか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 お尋ねの点は非常にむずかしい問題でございまして、今日のわが国憲法下におきまして、立法府の法律というものによる行政のコントロールということが基本的な前提として尊重されなければならないと考えておりますけれども、有力な学説にもありますように、法による行政というのは、必ずしもその行政行為というものの直接の根拠が明示されている法律がなければならないということではなくて、われわれの理解いたしますところでは、国民の権利を制限しあるいは国民に義務を課する、そういう問題については明文の根拠を必要とするけれども、その他については必ずしも直接明示する根拠がなくてもよろしい。ただ、それはあくまでもそのことができる根拠が、いわゆる行為規範としてではなくて、その行為が国家に帰属するという意味において組織規範のようなものがなければならない。それはつまり言うところの法務省設置法であり、各省設置法にそういうことが行政行為としてできる根拠がなければならないけれども、その行政行為が国民の権利を制限しあるいは義務を課するものでない限りは、そういう設置法等に組織規範としてそういうことができる根拠があるならば、必ずしも当該行為そのものを明示する根拠がなくてもいいというのがわれわれの考え方でございまして、そういう意味で、今日この被疑者補償規程を法務省設置法に基づきまして、そしてその支出の根拠につきましては検察費という項目の中で行うわけでありますが、乱用の危険のないようにさらに項の中に刑事補償金という目を掲げまして、それを参考として国会の御審議を願って御採決を得ておるわけでございますので、予算の乱用ということもないのではないかというふうに考えられるわけでございまして、そういう意味におきまして、法令上、法による行政という点についても欠けるところはないと思っておりますが、やはりそれの運用が適切でないことをどうやってチェックするかということにつきましては、検察費の施行はまさに法務大臣の行政分野でございますので、これは国権の最高機関である立法府の御批判をいただくということによって最終的にはチェックされ、現にこの刑事被疑者補償規程の運用の必ずしも活発でないことについて御批判をいただき、われわれといたしましては今後ともこの運用を活発にするための施策をいま考究中であるということによってチェックがなされておるというふうにも理解いたしておるわけでございます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 もう結論まで言われれば言うことはないのでありますが、要するに、共通点もありますが、私とあなたの意見の相違点はこういうことにあります。あなたは、法務省設置法なり国家行政組織法があれば、その枠内において、法律事項でなくても予算が頭を出しておるのであるから違法のおそれはない。しかし、指摘を受けておるように十分な活用がされてないところには何か欠陥がある、その点は反省をする、運用において改善をいたしたい、こういうことなんです。私は百歩譲って、そういう法律に仮に根拠があるとしても、あるいは予算に頭が出ているから違法でないにしても、その仕組みそれ自身に、不公平をもたらし、それから被害を受けた国民がその補償措置について争いを起こす余地がないという点に問題がある。それから運営上不行き届きの点がある。確かに、十分な運営がなされていないということは単に行政上の問題でない。本被疑者補償規程なり補償金を出すシステム、仕組みの中に本質的な問題があるのであって、それらは運営の改善によって本質的に救済し得る問題ではないのだということを私は言っているのであります。     〔委員長退席、保岡委員長代理着席〕 この点はあなたと私の理解の違いといいますか、意見の違いでございますから、一応その意見の相違はそのままにしておいて、具体的に先へ進みたいと思います。  この刑事補償法と被疑者補償規程とを少し対比をして一、二質問をしたいと思いますが、私の次の理解に間違いありませんか。被疑者補償規程は、検察官が補償するのであるけれども、いつまでに補償をしろ、いつまでに決定をしろという規定はない。刑事補償法の方は、たしか申し出、それによって処置をするという問題がございますが、その申し出についてもいつまでに申し出なければならないという規定はない。そう考えられますが、違いありませんか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 御指摘のとおり、被疑者補償規程の補償申し出あるいは補償するためのいわゆる時効期間のようなものはございません。しかし、刑事補償法では第七条に、補償の請求権を持つ者の請求は「無罪の裁判が確定した日から三年以内にしなければならない。」という期間の制限がございます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 この刑事補償法の方は、本人の、いわゆる無罪になった側の権利として、三年というかなり長期間その権利を保留し、保有させておる。ところが被疑者補償規程の方は、いわゆる被疑者の権利ではないのでありますから、結果として担当検察官が何にもせずにいつまでもほかっておける、そういうふうに理解してよろしいんですか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 横山先生御指摘のとおり、いつまでもほっておけると言えばほっておけるわけでありまするが、そのかわりいつでもやれるという意味においてはやれる期間の制限もないということであります。実際の問題として、検察官は迅速に、やるべきかやらないかを決定して、やるべきものについては補償しておるのでありまして、補償の裁定が少ないのでいつもおしかりを受けますけれども、やるものについては早くやっているというのが実情でございます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 迅速にやれとはどこに書いてありますか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 これはもう大臣訓令の趣旨からいってゆっくりやれということにはならない。できるだけ迅速に適正にということだというのが訓令の基本であろうと思います。

横山利秋日本社会党

○横山委員 あなたが勝手に考えるだけであって、あなた自身が先ほど認めたように、被疑者補償規程の運用は適切でない、十分な効果をおさめていないと自分で認めておりながら、迅速にやれと書いてある、それが規程の趣旨である、大臣訓令の趣旨である。趣旨であることは言い得ても実際はそうでない、実態がそうでないということを先ほどあなたはお認めになったばかりではありませんか。体裁のいい弁解をなさらずに、この被疑者補償規程のどこに欠陥があるかということについてはまじめに答弁なさらなければいけません。  つまり、私の言いたいのは、刑事補償法においては、本人の権利であるから三年間も補償要求の期間をとっておるにかかわりませず、補償規程については、この被疑者が補償申し出をし得る要件が生じても、請求ではないんだから、検察官が判断をしてやるんだから、少なくとも日にちを区切ってやれと書いてないんだから、迅速にやれとも書いてないんだから、悪い意味で言うわけではありませんが、迷いが生じて、どうしよう、どうしようと思って、ほかっておこうとすれば検察官はほかっておける条件になっているではないかという点について、率直にお認めにならなければだめです。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 私は、検察官の運用に欠陥があると断定をしたわけではございません。先ほど申し上げましたように、被疑者補償規程のケースが少ないということから、活用が図られていないのではないかという疑いを受けることについて反省をしなければならないということを申し上げたわけでございますが、いずれにいたしましてもそういう御批判を受けること自体反省をしなければならないことでございますので、いろいろとさらにそれが迅速に適正に行われる方策というものを考えて、近く刑事局依命通達を出すつもりでおります。

横山利秋日本社会党

○横山委員 先回りをしないで私の質問に答えてください。  第六条に、「補償に関する事件について裁定をするときは、補償裁定書を作成しなければならない。」とありますが、こにに言う「裁定」は、補償するかしないか、どちらにしても裁定をしろと言っておるのでありますか。「補償裁定書」というのは、補償をする場合に限る補償裁定書でございますか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 運用の実情は、補償の申し出があった場合には、するしないにかかわらず、申し出のあったことにつきましてするかしないかの裁定をするときに補償裁定書をつくっておるのが実情でございます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 補償の申し出があったときはとは、だれが、いつ、どういう条項に基づいて申し出をするのですか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 第六条の第二項をごらんいただきますと、「補償をする裁定をしたとき又は補償の申出があって補償をしない裁定をしたときは、補償金の交付を受けるべき者又は申出人に対し、裁定の要旨を通知しなければならない。」という規定がございますところから顧みて、補償の申し出を期待しておるということが御理解いただけるかと存じます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 おかしな答弁だな。第六条に「補償の申出があって」と書いてある以上は、顧みてだれかが補償するだろうと思いますとはどういう答弁ですか。私の質問は、「補償の申出があって」と忽然とここに出てくるから、それは一体だれだ、どういう条件の人が申し出するのか。そんなことはどこに書いてある。この補償規程を貫く精神というのは、申し出者がないと検察官が自発的に補償をするという精神で貫かれておるのにかかわらず、突如として第六条第二項に「補償の申出があって」というのは、だれが、いつ、どういうやり方をするのか、こう聞いているのです。しかも、実際問題として補償の申し出があった場合があり得るのか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 確かに、何びとが申し出をすることができるという規定はございませんけれども、いずれにいたしましても、これは実際の運用としては、「補償の申し出をしますか」ということを検察官が聞くことになっております。そういう意味において、補償の申し出をするものとして期待しておりますのは、被疑者として抑留、拘禁を受けた者で不起訴処分になった者、しかもその者が罪を犯さなかったと認めるに足りる十分な事由がある場合に被疑者が申し出をするということをこの訓令は期待をいたしておるわけでございますし、刑事補償法と違いまして、さらにその者が死亡したときにはその遺族というものも申し出の対象になり得るというふうに、広く弾力的に考えております。

横山利秋日本社会党

○横山委員 ここのどこにも書いてないことをさっきからあなたは答弁なさるけれども、検察官が被疑者に「補償の申し出をなさいますか」と聞くことになっておるかのごとき答弁をなさる。そんなことはどこにも書いてありませんよ。聞くことになっておる義務を検察官に課しておる条項もございませんよ。聞くことになっておるということが、もしもそれが補償規程の条項を貫く精神だとするならば、これはきわめて重大な検察官の義務である。その義務がどこにもうたわれていないのに、聞くことになっていると言って、行われてもいないことを、検察官の義務でもないことを、国会の答弁であなたがおっしゃるということはこれはいけませんよ。いまそういうことになっていないのです。なっていないのにかかわらず、またこの補償規程の弱点というものは、「補償の申出」ということが第六条第二項に忽然と出てくること、「補償の申出」ということはいかなる補償規程における基本的な精神であるか。申し出を認めておると、こう理解すべきなのか。申し出が認められておるとするならば、申し出の方式が補償規程の細目においてどこかで決められておるのか、何かの方式で決められておるのか、その点できわめてあいまいもこたる補償規程であります。いかがですか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 先ほど来御指摘のとおり、基本的に被疑者補償というのは請求する者の権利ではないというところから、補償規程自体が検察官の自発的な活用にまつという基本的な構造になっておるわけでございます。そういう意味において法律のように細かい規定はございませんけれども、この被疑者補償規程の第一条の第二項にございますように、「この規程は、人権尊重の趣旨に従い、具体的事情に応じて合理的に運用しなければならない。」という訓令の精神から、申し出をするようにしむけるような運用が期待されておるわけでございまして、「補償の要否及び補償金の額を定めるには、次にかかげる事項その他の事情を考慮しなければならない。」という第四条の第一項の第三号に「補償に関する本人の意向」を聞くということになっておりますとともに、訓令ではございませんけれども、刑事局長通達の中に、「補償の申し出は補償申出書によること」ということで、様式の第三号というもので様式まで定めて、補償の申し出について本人の意向を聞き、申し出をするときには書式まで決めておるわけでございまして、訓令、通達を通じまして本人の申し出を期待しておるのでございます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 私はいま、被疑者補償規程の具体的、総体的な弱点といいますか、体系になっておらないというところを指摘しておるのでありますが、この補償規程というものの体系を議論しておるのにかかわりませず、あなたはそれを実際の、まあそれはないよりはあった方がいいに違いないが、申出書が実際あるとか、あるいは通達でやっておるとかいうことでは、この被疑者補償規程が全体的に運用される場合においてその運用の方法を誤る、私はこういうことを指摘をしておきたいと思います。  整理をして申しますと、被疑者補償規程は、第一番に、第二条「その者が罪を犯さなかったと認めるに足りる十分な事由があるとき」この条項というのは実際運用するのにきわめて不適当な文句である。もっと整理がされなければ実効が期されない。それからこの第五条「公訴を提起しない処分をした検察官の所属する検察庁の検察官が行う。」という点につきましては、私は同じ穴のムジナだと思う。同じ穴のムジナ、同一人が補償をするということについては、別の角度で当然なさるべきではないか。第六条の「補償に関する事件について裁定をするときは、補償裁定書を作成しなければならない。」と書いてありますのは、あなたの答弁で若干わかるような気がするのであるけれども、それにしても、補償するか補償しないかを含めて補償についての裁定書をつくらせるべきであって、補償する場合に限るような文言はこれは間違いである。     〔保岡委員長代理退席、委員長着席〕 それからいまお話しのように「補償の申出があつて」と、忽然とここに出てくることについては、本人の権利、それから検察官の義務、そういう点がきわめてあいまいである。もしもいまの話のように、四条一項三号に該当するとおっしゃるならば、この六条二項の「補償の申出」というものはそれ以前の問題ではないか。これは同次元の問題ではない。補償の申し出というものが先行して、それについて内容的に検察官が本人に、幾らぐらいだとか、どういう要求があるのかということを聞くのであって、第二段階と第一段階をごっちゃにしておる答弁は成り立たない。それから、冒頭申しましたように、刑事補償法については三年以内、三年間の補償要求の権利を認めている。この補償規程は、検察官が何にもせずにおこうと思えばいつまでもほっておける。それは何も私は悪意で物を考えるわけではないのだけれども、善意で考えても、この補償規程の適用ということは検察官としてはちゅうちょをせざるを得ない、そういう条件下にあることは当然である。したがって、やらずにおけばほかっておけるという条件に被疑者補償規程の適用を置いておくことは根本的に誤りがある。  これらが被疑者補償規定そのものを見ますときの欠陥であって、そういう欠陥があるから、歴年私が指摘しておるように被疑者補償規程の運用はとても十分な効果を上げ得ない。どなたが大臣のときか知らぬけれども、国会対策としてこういう大臣訓令で適当に補償規程をつくられた大臣はよほど政治的にこすいか、あるいは国会対策のためにまあ適当にやっておけということになったと想像するよりほかはない。  整理をいたしましたが、稻葉さんの御意見をひとつ伺いたいと思います。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 いろいろ被疑者補償規程について御批判をいただきまして、確かに御指摘のようにわかりにくい点もございますので、この現状をわかりやすくするというようなことの意味におきまして補償規程自体を再検討することをお約束いたしたいと思います。と同時に、お尋ねがあれば詳しく申し上げたいと思いまするが、活用の方策につきましてもいろいろと、いま御批判のようなところも防止できるような活用策をいま検討して、近く通達をするつもりでおります。  ただ、いかにも御賛同いたしかねますことは、被疑者補償をする要件を、「その者が罪を犯さなかったと認めるに足りる十分な事由があるとき」に限るべきであるということで、これ以上、あるいは嫌疑があるが十分ではないというような場合にまで広げることについては賛成いたしかねるわけであります。要するに、被疑者が逮捕され勾留されるのは、罪を犯したと疑う理由があればそのこと自体は何ら違法でも何でもなかったわけでありまして、そういう場合にまで、被疑者補償をするということは公平の原則からいって行き過ぎである。やはりこれは少なくとも罪を犯さなかったと認めるに足る十分な事由がある、つまり、逮捕、勾留は適法であっても、起訴の段階においてシロであったということになって結果的に逮捕、勾留は間違っておったんだという段階においてのみ補償すべきだというこの線だけは、せっかくの横山先生の御意見でございますが賛同いたしかねます。その他の点についてはわかりやすく、あるいは活用しやすい方策ということについては、規程の改正を含めて検討することをお約束したいと思います。

横山利秋日本社会党

○横山委員 私はあなたとは意見が違う点はあくまで保留をいたしたいと思います。大臣に答弁を願ったわけでありますが、いまの刑事局長の答弁は、私が理解したところによると、この被疑者補償規程は再検討する、つまり大臣訓令の内容を一遍、指摘を受けた部面を含めて再検討するということが一つ。それから、この問いただきました「被疑者補償を立法化するについての問題点」に添付された「被疑者補償規程の活用を図る方策 次の内容の刑事局長通達を発することといたしたい。」この内容については私ども委員に正規に提起をされた、こういうふうに私は承知をいたしておるわけでありますが、ともあれその二つの提起がされておるわけであります。私はそのいずれにも反対しておるわけでありますが、いずれにしてもいま、やや大詰めに差しかかっておるこの問題について、政府側としては、被疑者補償規程の内容の再検討、それから刑事局長通達を出すという二つの問題を私どもの前に提起をされておるわけであります。私どもの問題提起は、この恩恵的なやり方では、本質的に同じ穴のムジナであるから、権利としてこれは法律化すべきであるという点についてあくまで私どもが主張しておるところも御存じのとおりであります。そういう点について法務大臣としての御意見を伺いたい。

稻葉修自由民主党法務大臣

○稻葉国務大臣 大臣訓令による被疑者補償規程の再検討、改定を急ぎたいと思うのでございます。横山さんおっしゃったような、この大臣訓令を出したのは、どの大臣だか知らないけれども、よほどずるいやつか、国会対策上のごまかしをやるやつかというようなお話は、そうではないと思うのですな。そんな悪意はないと思います。ただ要件その他で、おっしゃるとおり何だかあいまい、ずさんなように私も質疑応答を聞いておって感じますので、被疑者補償規程の再検討、改定を急がなければならぬなと思うのでございます。しかも、同じ穴のムジナというわけではないけれども、同一利害関係人でございますから、その辺のところで公正を欠くんじゃないか。「補償を請求なさいますか」なんて聞いたって、検事の前に出てびくびくしているときに、「補償を請求します」なんてぴしっと言うのは、被疑者の心理状態としてなかなかむずかしいかと思います。そういうような点、いろいろ問題があるようでございますから、これは検討して改定をする必要があるように私は思います。いま言ったような点について、恩恵的に、あるいは同一の利害関係人同士の間で、調べる、犯罪の容疑なしということになってきて、「補償を請求しますか」というようなやり方もどうかと思われますので、恩恵的でなく、権利としてきちんと整えよう、それがためには立法化せよという先生の御要望でございますから、立法化問題をも含めてひとつ検討さしていただきたい、こう思うのでございます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 次の論文に少し耳を傾けてもらいたいと思います。  「補償を検察官の自由裁量に委ねることが、これを国民の権利とすることに比べ、国民の利益と人権とを保障する上でいくらか劣ることは否定できないとしても、世界でもほとんど類例のない被疑者補償をあらたに制度化するにあたっては、これを権利とした場合に生ずるかも知れない捜査への悪影響を全く無視してしまうのは、必らずしも適当なことではなく、一応検察官の自由裁量に委ねた上、無実の者の利益の保護に十分でないことが明らかになれば、その段階で制度の改正を考慮してもよいと思われる。  なお、これに関連して、被疑者補償の法的根拠を被疑者補償規程という大臣訓令におくことにも問題がある。被疑者補償のように、国民の利害に重大な関係のある事項については、本来ならば、これを法律によって規律し、国家と国民との間の法律関係を明確にすることが望ましいからである。いうまでもなく、大臣訓令は、大臣がその監督下にある行政機関または職員に命令または示達するために発する行政機構内部の命令であり(国家行政組織法一四條二項)、これを受けた者を拘束するけれども、一般国民に対しては直接の効力を及ぼさない。検察官に対して発せられた被疑者補償規程も、検察官に補償をする権限と義務とを與えるのにすぎないから、不起訴処分を受けた者としては、その反射的効果によって、補償金の受領または補償の公示という利益を受けるにすぎない。」  まことに私は情理を尽くした名文だと思うのです。従来のいきさつからいってとにかく一遍やってみようじゃないか、やってみて十分でなければ制度の改正を考慮してもいいじゃないか。そしてさらに、この被疑者補償規程の法的根拠というものは、これはお役人は拘束するけれども国民は拘束しないよ、だからこれはだめなんだという論理、論文なんであります。これは、もうおおよそお気づきだと思いますが、法務省刑事局鈴木義男さんの論文であります。これは、最初被疑者補償規程ができた当時の論文ではあろうと思いますけれども、それにしても傾聴に値する論文であります。被疑者補償規程を立案し、つくった、いま法務省に現存してみえる、その人が立案のころに書いた論文だと私は思うのであります。  国会の私どもの質問だから、いろいろと刑事局長も御答弁なさるのだろうと思うけれども、法務省の内部でも、腹の中ではこの論文は間違っておると思っている人はないと私は思うのであります。ただ、この間もここでやり合ったわけでありますが、刑事局長は、「そんなけちな考え方はありません」という表現を使われましたけれども、やはり検事が被疑者を調べたところ犯人でなかった。「えらい悪かったな」と思って補償する。銭を出す。ところがその被疑者は、「何だ、これっぱかり、ばかなことはないじゃないか、もっとよこせ」と言う。どこへ行ったがいいかわからぬものだから、普通だったら裁判所へ行くのがあたりまえ。裁判所へ行くと検事が今度は被告になる。そんな体裁の悪いことはどうもならぬ、だから勘弁してくれ、士気に影響する、こういう理屈が一番わかりやすい理屈で、私は、「そうだろう、それが痛いんだろう」と言ったら、「そんなけちな考えはない」と刑事局長は言うたけれども、しかし私は一番わかりやすい理屈だと思う。だけれども、そのけちな気持ちでないにしても、国家賠償法は現にあり、刑事補償法は現にあり。現にそれぞれあるんだから、この不起訴の問題だけはいやだ、それはもう勘弁してくれと言うのは理屈が合わぬと私は言っている。検察官並びに警察が犯罪を捜査いたしますために、善意を持っていろいろ調査をし、権力を発動して、誤って人を、そうじゃないか、犯人じゃないかと思って逮捕することがあり得ること、それは認めざるを得ない場合があると私も思います。そういう権力の発動に対して国民はある程度受忍義務がある。どろぼうを調査するために、あるいは人殺しを調べるために、捜査するためにいろいろやらなければならぬことについて、国民は社会的にある程度受忍義務があることはお互いに認めましょう。認めるけれども、それによって受けた被害だけは後になって補償しろと言っているのでありますから。私がいま言っている論理というものは、そういう受忍義務というものが国民の中に、社会的、国家的にもあることを認めた上で、調べた後で、間違っておったら、受けた被害だけは補償しろ、そう言っておるのでありますから。決して、何かこれによって検事や警察官がとても仕事がやりづらくなるということを、私がそれによって防波堤を引こうなんて、それこそけちな考え方は私は持っていないのであります。  大臣、おわかりでしょうね。それは刑事局長はやはり立場もあるのだからある程度守らなければならぬけれども、あなたは庶民の立場も含んでおわかりだと思うのです。そして、このことは歴代の法務大臣がみんな法務委員会でいい答弁をしているんですよ。あなたも刑事局長の答弁とちょっと違っておったんですよ、お気づきになっているかどうかわかりませんが、刑事局長は法律改正ということに触れなかったんだ。あなたは法律改正を含んで検討するとおっしゃった。――そうなんですよ。いや、言ったですよ。速記録を調べてみましょうか。――いやいや、おっしゃったですよ。いや、あなたばかりじゃないんです。前の大臣もその前の大臣も、そういう意味の趣旨を検討するとおっしゃったのですから決してどうこう言うつもりはないのです。けれども常にそれが履行されてなかったから、私はもう腹を立てておるわけです。私の意見は、何としてもこの際、国家賠償法、刑事補償法、被疑者補償法、そういうラインにおいて処理をすべきであるという点なんです。どうですか。

稻葉修自由民主党法務大臣

○稻葉国務大臣 私が申し上げたことは、立法化問題をも含めて、被疑者補償規程の再検討を急がなければならぬという感じを持ちます、こういうことを申し上げたわけですから、そのとおりにひとつ……。  それから、先生のおっしゃることを聞いておりまして、同感の点があるのです。私にも選挙違反事件でそういう経験がありますからね。経験があって、ずいぶんひどいことをしやがるな、こういう経験があるものですから。全く事実でないやつが一週間も引っ張られて、全く無関係なんだ、そういうことがありますから、検察官や警察官はずいぶん間違ったこともあるんですね。しかし、それがために被疑者補償規程をぎすぎすとやられると、刑事局長として、警察陣営は今度萎縮して、爆弾事件などの捜査もうまくいかなくなるし、困るんじゃないかというふうな心配もあるんでしょうが、それとこれとは別だと思うのです、それとこれとはね。士気は大いに鼓舞してやったらいい。それは人員の面でも費用の面でもつぎ込んでやったらいい。どんどんやったらいいのです。そして、それが一生懸命にやったけれども、万一間違っていた場合はやはり補償すべきものだと私も思いますな。

横山利秋日本社会党

○横山委員 大臣の発言、綸言汗のごとし、刑事局長も刑事局の皆さんもひとつ承知してもらわなければいけませんな、これは。大臣の発言は綸言汗のごとし、最終的におっしゃったことでありますから、その点はひとつお含みおきを願わなければなりません。かたく申し上げておきます。――手を挙げる必要ないですよ。大臣が言ったことを取り消すつもりですか、あなたは。手を挙げる必要はない、答弁を求めていないのですから。次へ移ります。  最高裁から来ておみえになりますが、これは一体どこへ聞いていいかわかりませんが、刑事補償法の、私のはちょっと古いかもしれませんが、「補償の内容」という条項の中で二ヵ所にわたって金利を定めておるのですが、ちょっと私のは古いのかな。いま金利はどれだけになっていますか。これはどこへ、どなたが御答弁なさいますか。まだ五分かね。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 この利息に関する限りこのままでございます。これは民事の法定利息そのままでございます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 これは一体どういうふうに考えたらいいのでしょうか。五分と、こう決められた当時の経済情勢から言いますと、多少の公定歩合の上下がありましてもまあまあ五分が常識の時代がずっと続いておったわけでありますが、いま九分くらいですか、公定歩合。銀行で金を借りようものなら一割を超える。信金、相互銀行へ行こうものなら一割を完全に超えています。いまどき五分なんということはとうてい考えられないのでありますが、国民の権利、国民の損害を補償するという点については政府はきわめて憶病、善意でないという感じがいたします。いまの高金利状況もそうは長くは続かぬとは思います。まあ大蔵大臣のきのうのお話を承っても、ある程度ということでありますが、しかしもう五分へ回帰することは恐らくあり得ない。それは何としても五分へ回帰することはあり得ないと私は思うのでありまして、こういう日当、補償の金額については年々改善をされるわけでありますが、この金利についてなぜ常に検討をなされないのか。いま五分というものが実態に全くそぐわないのでありますが、なぜ検討なさらないのか、その点について御意見を……。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 民法の四百四条の法定利率をそのままここに持ってきておるわけでありまして、そういう意味においては、民法の変わらざる限り、刑事補償法のこれも変わらぬというたてまえでございますが、刑事補償法で追徴金につきましてこのような規定を設けたのは不当利得の返還という考え方でございまして、損害の補償ということでなくて、国が原因なくして取得したものをお返しするということでございまして、賠償という考え方ではないということにも関係があるのではないかと考えております。

横山利秋日本社会党

○横山委員 民法に書いてあるから刑事補償法も当然だという理屈は成り立たない。どこに根拠があってそうお考えになるのかわかりませんが、それは逃げ口上であって、刑事補償法で無実になった人たちの補償を十分にしてあげようという気持ちになるならば、そして年々金額が変わるなら、金利だって変わっても別に不思議はないのであります。民法との比較が優先するか、あるいは刑事補償法の精神を全うすることが優先するか、そんなことは素人でも子供でもわかることではありませんか。改善をなさるおつもりはないのですか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 いまのところ、年五分という法定利率と違う利率で利息を考えるということは考えておりません。

横山利秋日本社会党

○横山委員 その理由を聞いておるのに、「考えておりません」と何遍言われたって同じことです。それは誠意のないことでありますから、次に行きます。  最高裁判所にお伺いしますが、刑事補償法の「補償の内容」で、裁判所は補償の額を定めるに当たっていろいろなことを考慮しろと書いてあります。国家賠償法の場合は「故意又は過失によって」ということでありますから、どこに故意、過失があったかを調べなければなりません。被疑者補償規程を議論するに当たって、私が先ほど言いましたように、捜査の内容についてよかったか悪かったかといって調べられることを検察陣は本当にいやがっておるわけであります。そんなことはいやがったってしようがない。国家賠償法では調べなければならないのでありますから、いやがったってしようがないのでありますが、心理的にはいやがっておるわけであります。けれども、国家賠償法や刑事補償法を忠実に履行しようとするならば、いかなる捜査が行われたか、いかにそれが本人に迷惑なり、精神上、物質上の利益の損失を与えたかということを調査しなければ裁判所ではわからぬということですね。どうですか。

千葉和郎最高裁判所事務総局刑事局長

○千葉最高裁判所長官代理者 刑事補償法の申し立て手続は、第六条によりまして、「無罪の裁判をした裁判所に対して」行われることになっております。事務分配の実際では、直接裁判をした裁判所に申し立てが回されまして、審理をした裁判所が審理の経過に基づいて知り得た材料を使いまして、捜査機関の故意、過失ということについてもその点で判断するということになっております。決定の手続でございますから、口頭弁論を開いてそこで証拠を双方から出してということは行われていないわけでございます。すでに調べた書面を中心にしてそれを判定する、こういう手続になっております。

横山利秋日本社会党

○横山委員 国家賠償法の場合はどうですか。同じですか。

千葉和郎最高裁判所事務総局刑事局長

○千葉最高裁判所長官代理者 国家賠償法の場合は、口頭弁論を開いて、まさに当事者から証拠を申請してもらいまして、それで弁論に上程して詳細な証拠調べをする、そういうことになります。

横山利秋日本社会党

○横山委員 しかし、いずれにいたしましても、捜査の状況が、書面あるいは口頭にいたしましても、どういうふうに行われたか、どこで本人の利益が喪失されたか、精神上の苦痛を受けたか、そして拘置はどういうふうに行われたかということを調べなければ裁判官は判断ができないわけであります。その意味においては、被疑者なり、それを追及しておった検察陣が調べられる側になるということについては、私は当然、という言葉が適当かどうか知りませんけれども、それをいやがる、それを否定する、それを何とかして除去したい、そういうかっこうにならぬようにしたいという気持ちがあったのでは、国家賠償法も刑事補償法も、また被疑者補償規程も法制化するという立場、法制化しないでもいいという立場、いずれにしても無罪になった人たち、被疑者で不起訴になった人たちの真の利益、真の補償というのは守られ得ない、そういうことを私は感じますし、賠償法や補償法の精神は当然のことであるとしてそれは検察陣に対して受忍義務を負わせておるというふうに理解いたしますが、どうですか。

千葉和郎最高裁判所事務総局刑事局長

○千葉最高裁判所長官代理者 仰せのとおりでございまして、そのとおりやっているつもりでございます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 警察庁から森永さん来ていらっしゃるのですけれども、この間私は警察官の問題についてさまざまな事象を提示いたしました。きょうはちょっと持ってこなかったわけでありますが、これまた驚くべき警察官の非違行為というものがある。けれども、私が指摘をいたしましたのは警察官の中のごく一部である。ごく一部であって、大多数の警察官諸君はまじめにおやりになっておることではあるけれども、しかしごく一部だからといって看過することのできない問題であるという意味において問題を提起いたしたわけであります。そして、ごく一部の警察官がいたしました非違行為の中で、被疑者補償規程の適用ができないという条件下にある非違行為が現に存在しているということは、この間のいろいろな事例でお認めになったと思います。この間の御答弁では、現行の被疑者補償規程で適用ができないという問題については、地方自治体の問題であるから、地方自治体にどういうふうにさせるか、一遍検討してみるというお答えがあり、私もまた愛知県の例なりほかの例を引いて、たとえば愛知県においては県議会で議案として議決をして五十万円の補償金を支出したという事例を引いて、そういう警察官の行った行為について補償のシステムはないのだから、どうしたって議会の議決を経なければ支出ができないのだからよほど考えてもらわなければいかぬ。議会の議決を経なければ支出ができないという条件下では、とてもじゃないけれども警察官の非違行為に対する補償が円滑に行われるはずがない。えらい迷惑をかけたといって、県議会で恥をさらして支出をするという県があるもんでしょうか。愛知県では大変な政治問題化したからやむを得ずやったわけであります。  そこで、私の詰めた話は、私の方はそういうものを含めて法制化をしたいという立場なんであります。いま法務省は、大臣の先ほどの話で、法律にすることを含めて検討するというふうにおっしゃったのでありますが、警察庁から、要するに自治体が地方議会の議決を経ないで警察官の一部非違行為について補償をするという方法についての御検討の結果を伺いたいと思います。

森永正比古警察庁刑事局参事官

○森永説明員 現在いろいろの方法を検討中でございますけれどもまだ成案を得ておりませんので、公式の場で御答弁できる段階でございませんので御了承いただきたいと思います。

横山利秋日本社会党

○横山委員 しかしこれもあなたのお話は納得できません。この間はある程度問題を整理して見逃したんだ。だけれども、この問題はいまに始まったことではないのです。もう去年もおととしも、この法案が出るたびに、警察に対してもさまざまな現象、具体的事例をとらえましてこの検討をお願いして、そのたびに警察庁も、わかりました、検討いたしますと答えているんですから、これはいまあなたのおっしゃるだけでは私は納得できません。あなたはそれならば、この間私が事例を挙げましたのですが、現実にお認めになりますか。もう一遍誤解のないように言いますけれども、大多数のお巡りさんはまじめに職務を遂行していることに異存はない。ごく一部のお巡りさんに非違行為があることはお互いに認めるところ、そしてそのお巡りさんの非違行為について補償をすべき必要性があることもまた認めざるを得ないところ、そこまではどうなんですか。

森永正比古警察庁刑事局参事官

○森永説明員 先生御指摘の警察官の非行事犯、特に誤認逮捕等につきましては十分補償しなければならないというふうに考えております。

横山利秋日本社会党

○横山委員 補償しなければならぬと考えておる。それならば次の質問は、地方自治体の議会の議決を経なければ補償ができないような現在のシステムでは、補償が円滑にされるとは思えないという私の判断についてはどうなんですか。

森永正比古警察庁刑事局参事官

○森永説明員 できるだけ補償の万全を期するように努力はいたしておりますけれども、中には必ずしも十分でないという事例があると思います。

横山利秋日本社会党

○横山委員 答弁をそらしてはいけません。私の質問しているのは、いま地方自治体の警察に補償をするシテテムはないのですよ。予算もないのですよ。だから、やるときには議会を開いて、予備費だとかいろんなものから支出をしなければならないような状況では補償は行われ得ないと言っているのです。そんなことを、愛知県の特例を引いたって例になりません。ですから、議会の議決を経なくても補償が行われるようなシステムをつくらなければならないという点について、同意をなさるかなさらないかと言っているのです。

森永正比古警察庁刑事局参事官

○森永説明員 県によっていろいろ事情が違っておりまして、現在の補償につきましても、見舞い金等を支出いたしまして、一応示談等をいたしている例もあるわけでございますが、大方の府県は確かに先生御指摘のように議会の議決を経なければいけないというふうなシステムになっておるわけでございます。また、広い意味で言いますと、行政措置でやるにしてもいずれ予算の支出になりますので、そういう面で議会の議決を経なければいけないことになると思いますけれども、できるだけ簡便な方法で被疑者の補償ができないかどうかということを現在検討しているわけでございます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 いまの法務省の大臣訓令における被疑者補償規程というのは悪い例だと私は思います。インチキの例だと私は言っているわけであります。しかし、インチキの例ではあるけれども、不起訴になった人をこれでとにかく、私どもに対して、とにかくこれがありますと言えば言えないことはない、そういうことだと私は思います。警察の方はその意味において何にもしていないのですから、何にもやっていないのですから。あなたが言う見舞い金というのは、被疑者見舞い金という項目に予算が計上されておるとは私は思いません。何らかのほかの一般見舞い金だと思います。被疑者に対して――被疑者という言葉が適切かどうかわかりませんが、警察段階において、検事さんに本来移すべきものであっても、報告すべきものであっても、報告しないで適当にやっていく場合もあると私はにらんでいますけれども、そういうものも含んで、警察段階において何らかの方法でやろうと思えばできる。ただ警察庁と法務省とは若干違うんだ、自治体警察であるという論理があることは認めますが、いまの警察庁が、もう全く自治体警察でありますから私どもとてもそんなことはよう言いませんなんてことは私は言わさない。警察庁はそれだけの力があると思っているわけです。ですからこの機会に、あなたは遅くお見えになったわけでありますが、法務省としては、大臣の先ほどの言葉を含めて、被疑者補償規程の不十分な点もお認めになって、法制化を含めて再検討なさるとお約束なさった、これと間断ない形において警察庁も検討をして、すみやかに結果をいただきたいと思います。いかがです。

森永正比古警察庁刑事局参事官

○森永説明員 確かに御指摘のように、府県段階におきましては被疑者の補償につきまして制度化されているものはございません。したがいまして、行政措置あるいは制度化、条例化等、そういうものも含めまして十分に検討いたしたい、そして早急に結論を出したい、このように考えております。

横山利秋日本社会党

○横山委員 森永さん、本法案は来月の中旬以降に本委員会で審議が終わる予定なんです。それまでにこれからいろいろと与野党との話し合いで詰めるわけでありますが、警察庁に対する注文はそれなんであります。それを来月の中旬ごろまでに――完璧なものとは私は言いません。しかし、きょうはあなたはあなたの立場でいらっしゃったわけでありますから、やはり上司と御相談をなさる必要があろうかと思います。私もいいかげんなところでやめたくないのでありますから、一遍御相談なさいまして、来月の中旬に行われます本委員会には一つの結論を持っておいでいただきたいと思いますが、いかがですか。

森永正比古警察庁刑事局参事官

○森永説明員 できるだけそれまでに成案を得るようにいたしたいと思います。

横山利秋日本社会党

○横山委員 この機会に法務大臣に、ちょっと突然ではございますけれども、やはり刑事問題の一環でありますから御質問をいたします。  私の手元にありますのはきょうの読売でございますが、「日韓司法共助協定」という見出しで、「政府筋が二十七日明らかにしたところによると、政府は韓国側の申し出により「司法共助協定」の是非を検討している。同筋によると、日韓両国の司法機関が、刑事、民事の事件に関し、在日韓国人、在韓日本人に出頭命令や召喚状、訴状などを送達する場合は、相互に相手国内で直接司法権を行使する事態を避けるため、相手国の裁判所を通じて本人に伝達しようというのが骨子。」となっております。御在じでございますか。

稻葉修自由民主党法務大臣

○稻葉国務大臣 存じておりません。知らないです。

横山利秋日本社会党

○横山委員 局長も同じですか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 全然さようなことはございません。

横山利秋日本社会党

○横山委員 私も突然のこととてびっくりしたわけでありますが、しかしこれはかなり具体的でございまして、「この問題のきっかけになったのは、在日韓国人の裵東湖氏に対するKCIAからの召喚状が、直接本人に郵送されたこと」が問題でありまして、「当時、野党側は、韓国側の行為が「わが国における韓国司法権の直接行使であり、主権侵害である」と、政府を追及した。政府もこれを認め、韓国に対し「日本政府の了解なしに、召喚状を直送するのは遺憾である」として注意を喚起した。これは政府が同事件を韓国による主権侵害と認めたことを意味し、こうした“直接取引”を排除し、相手国の了解を得るか、あるいは相手国の機関を通じ本人に伝達すべきだとして考えられている」。この内容を見ますとかなり具体的で、法務大臣が全然知らないというふうには思えない内容の書き方でございますが、いかがですか。

稻葉修自由民主党法務大臣

○稻葉国務大臣 全然知らないのです。全く知らないのです。私はそんな、知っていることを隠すような男ではございません。

横山利秋日本社会党

○横山委員 わかりました。そう怒らないでもいいでしょう。大臣のおっしゃるとおりに御存じないとしましょう。御存じないとしましょうとしたら、ちょっと話がおかしいと思うのであります。この新聞がまことにありもしないことを、「政府筋が二十七日明らかにしたところによると、」と言いますと外務省かもしれません、政府筋が明らかにしたんですから。外務省が受けて、まだあなたの方に来ていないのかもしれません。そういう前提でそれじゃ二、三だけ伺います。  知らないことに対する突然の質問で御迷惑かもしれませんけれども、しかし、事は法務大臣の所管にかかわる、問題がきわめて大きゅうございますから質問をいたしますが、そういう司法共助協定というもので、この文句もどうも私はぴんとこないのでありますが、「韓国官憲から在日韓国人に召喚状がきた場合、日本の裁判所はそのまま本人に伝えるのが妥当かどうかの問題がある」と言っておりますが、裁判所が本人に伝えるということがあり得ることでしょうか。刑事局長、どう思いますか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 それがまさに主権の侵犯になる、韓国の日本国における主権の行使になるわけで、それが問題だということをかねがねわれわれも指摘しておるわけでございます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 そうしますと、たとえばあなたの意見、私見でもよいのですが、韓国政府が日本におる在日韓国人の、この人をつかまえたい、ある人をつかまえたい、それを日韓両国の司法機関が協定を結んで便宜を計らう、そういうことをこのいわゆる日韓共助協定は言うておるのではないかと思うのでありますが、そういう場合には、広範な意味の日本国内におる韓国人をつかまえたいから協力願いたいと言ってきたときの状況においてはどういうふうですか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 日本国が裁判権を持たないいわゆる刑事事件について、日本国の司法官憲が逮捕するということは当然にはできないわけでございます。きわめて例外の場合として、横山先生御案内と思いますけれども、いわゆる日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法、いわゆる刑特法の中に特別の規定といたしまして、「日本国の法令による罪に係る事件以外の刑事事件についての協力」というのが日本国の法律として決めてあるのがございますけれども、これはきわめて例外でございまして、そういうことは当然にはできないわけの相談でございますので、このときは例外でございますが、われわれはそのほかにそういうことを考えてもおりません。

横山利秋日本社会党

○横山委員 そうすると、韓国政府が、韓国政府の意思をもって日本国におります韓国人何々というものをつかまえたいから協力してくれと言うてきたときには、協力しないといいますか、そういう意味の協力はできませんということですか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 なおもう一つ、外国政府の請求に応じて、逃亡犯罪人引渡条約がある場合は逮捕措置は講じますけれども、それ以外については、そういうことを求められても、やる根拠が日本国憲法下にはございません。

横山利秋日本社会党

○横山委員 念のために伺いますが、日本の裁判所がそれを受けて本人に伝えるということについては全く、どうしてここへ裁判所が出てくるかと、私も素人ながらびっくりするわけでありますが、あなたの方もびっくりなさいますか。これは裁判所というのがどうしてこんなところに出てきますか。

千葉和郎最高裁判所事務総局刑事局長

○千葉最高裁判所長官代理者 民事の関係で書類の送達が相互主義の了解のもとで行われるということはありますが、刑事の関係でそういうことは考えられないことでございます。それは恐らく直接郵送で来たという問題ではないかと思いまして、裁判所を通ずるということはあり得ないことでございます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 私はよくわからないのですが、民事の場合にあり得ることをもう少し具体的に言ってみてください。たとえばいま話題になります司法共助協定の中で、日本の裁判所が協力する場合が現状においても将来においてもあり得るのか。

千葉和郎最高裁判所事務総局刑事局長

○千葉最高裁判所長官代理者 どうも私も余り詳しくありませんが、民事訴訟手続に関する条約等の実施に伴う民事訴訟手続の特例等に関する法律というのがございまして、その条約に加盟している国の間では、訴状の送達、それから証拠調べの関係の嘱託というようなことが可能でございます。それから民事の共助法によりまして、相互の共助の協定がある場合には、民事の書類の送達、それから証拠調べの嘱託というものについて応ずることは可能でございます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 もう一つ別の角度でありますが、「こうした協定は、日本と西ドイツとの間でも結ばれている。しかし、日本と韓国では、ほぼ共通の法令がある反面、反共法や国家保安法、さらに最近問題化している国家冒とく罪などのように、韓国にあっても日本には全くない法律も存在する。特に「政治犯」関係で韓国官憲から在日韓国人にで頭命令や召喚状がきた場合、日本の裁判所がそれを自動的に本人に伝達するのが妥当かどうか、などの問題が起きてくる。」どうもこれは一体どういう新聞記者が書いたか知りませんけれども、少しこの新聞記者も――まあそんなことを言うと記録になるといけないが、素人の私でも不思議ですが、いま日本と西ドイツとの間に何かあるのですか。

千葉和郎最高裁判所事務総局刑事局長

○千葉最高裁判所長官代理者 手元に資料がありませんのではっきりいたしませんが、協定ができている場合には可能であるということは言えるかと思います。ただ、西ドイツが含まれておったかどうかはいまちょっと記憶ございません。

横山利秋日本社会党

○横山委員 最後に大臣にお伺いをいたします。  いわゆる「政府筋が二十七日明らかにしたところによると、」と言うて出されておりますこの内容については、確かに未成熟あるいは真実の誤りあるいは途方もない誤解というものがどうもあるような気がしてなりません。しかし、いずれにしても「政府筋が二十七日明らかにしたところによると、」という冒頭のあれがついておりますから、この内容に若干の間違いはありましょうとも、事の事実はもうすでに外務省なりどこかへ来ておると私は信じます。そして最小限、いまの民事関係における共助協定なり、あるいはまた逃亡犯罪人引渡条約に類するような問題なり、あるいはもう最高限、まさにこの新聞のとおりのような、ある意味では途方もないかもしれませんけれども、それにまあ幅がありますけれども、何らかの申し入れが韓国側からあったことは事実だと思います。そこでその限りにおいて、法務大臣としては、本件について御存じなかったことではありますが、いまの質疑応答を通じてどんな御感想をお持ちでございましょうか。

稻葉修自由民主党法務大臣

○稻葉国務大臣 新聞を私が見ておりますれば、きょうは閣議の日でしたから、外務大臣にでもそんなことがあるのかというくらいのことを聞けたのですけれども、新聞記事を読んでなかったし、また、そういう新聞記事に基づいて閣議でそういうことを、きょうはいろいろな問題がたくさんあってここへおくれたくらいですから、新聞記事を見ておっても質問したかどうかわからぬけれども、また信憑性については大変に疑いがありますけれども、法務委員会でもせっかく横山先生のような人からこうやって質疑を受けたのでございますから、外務大臣に聞いてみたいという感じがします。一度聞いてみましょう。問い合わせてみます。それで次の委員会にでも、新聞の信憑性をも含めて御返事申し上げたいと思います。

横山利秋日本社会党

○横山委員 もうこれで私の質問を終わることにいたしたいと思うのであります。きょうは後の相談もございますので、いまの問題やら、警察庁にお渡しした仕事やら、あるいは法務省側から御答弁のありました問題の整理もございますので、若干の問題を保留して私の質問を終わることにいたします。

小宮山重四郎自由民主党

○小宮山委員長 次回は、来たる四月十五日火曜日、午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午前十一時三十五分散会

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