法務委員会 第15号
- 発言数
- 81 件
- 登壇者
- 13 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1975/03/26
会議録
○小宮山委員長 これより会議を開きます。 法務行政、検察行政、人権擁護及び裁判所の司法行政に関する件について調査を進めます。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。諫山博君。
○諫山委員 警察庁関係に質問します。 私は、この委員会で何回か、警察官の職権乱用、たとえば誤認逮捕とか自白強要あるいは不当勾留というような問題を追及いたしました。しかし、こういう問題が次から次に起こっているというのは、個々の警察官だけの責任ではないと私たちは考えております。この問題が起こってくる背景には、現在の警察機構あるいは劣悪な労働条件、とりわけ警察官に民主主義的な権利が保障されていない、こういう問題と決して無関係ではありません。そういう観点から二、三の問題に触れたいと思います。 初めにはっきりしておきたいのは、私の所属している日本共産党は決して警察官を敵視しているものではないということです。たとえば一九六八年の六月、前々回の参議院選挙を前に「警察官のみなさんへ」という「赤旗」号外を大量に頒布いたしました。この中には「警察官のみなさん わたしたちは、あなたたち個々の警察官にたいして、とくに敵意をもつものではありません。」ということを書いております。昨年の参議院選挙の前に大量に配った「警察官と家族のみなさんへ」と題する「赤旗」号外の中でも、警察官が非常に厳しい労働条件の中で大変苦労していることに共感の意を表明しております。たとえば、皆さん方は「ひとしれぬ苦労をはらっています。これをささえる家族のみなさんの苦労もたいへんです。」と、私たちの党は警察官及び警察官の家族にこういう呼びかけをしているのです。ですから、デモのときなんかに警察官が出てきて、「税金どろぼう」というような発言をする人がいますが、これは、わが党にはそういうことはないということをまずはっきりした上で質問いたします。 第一に、私たちが一貫した警察政策の中で強調しておるのは、いまの警察機構が、特権的な官僚だけがどんどん出世する、一般警察官は幾ら苦労してもなかなか出世できない、そこから自分の仕事に明るい希望が持てないというような点があるのではないかということを指摘しています。たとえば「警察官のみなさんへ」と題する「赤旗」号外の中では、 「日本の警察には、大学を出ていったん高級警察官試験に合格しさえすればすぐ警部補に任命され、うなぎのぼりに出世する「特権」的な官僚制度がのこっています。これは、他国に例のない不合理きわまる制度です。大部分の警察官は、ときには生命をまとにしてきびしい勤務をしいられ、三十年つとめてやっと「巡査長」、巡査部長かせいぜい警部補程度で退官させられ、しかも前途に何のみとおしもなく社会にほうり出されます。ところが、ひとにぎりの「特権」官僚は、二十代で警部・警視となり、警察署長のイスにちょっとすわって、あとは本庁や管区本部の幹部になります。」 こういう指摘をしているのですが、さらにこの問題を実証的に、警視という地位に座るためにどのくらいの期間を要するのかということを、昨年十二月二十二日の「赤旗」日刊紙で図表で示しています。これによると、普通の警察官が採用されて警察学校に行く。それから巡査になり、巡査部長、そして警部補、警部、警視という道をたどるためには大体三十年ぐらいかかる。ところが、いわゆる有資格者、高級公務員試験を合格した人は三年余りで警視になる。こういう事実が図表で示されていますが、この事実は間違いないでしょうか。
○福田説明員 ちょっと事実関係につきまして御説明申し上げますけれども、国家公務員の上級職試験を通りまして警察庁採用になりました者は、仰せのように、三カ月間警察大学に入れまして、しかる後、警部補、警部と進むわけでございますが、三年六カ月で警視になっております。 それから一般警察官、各都道府県で採用いたします者につきまして、大学卒の者と高校卒の者とのこの昇任の年限というものが大分違ってございます。一般の大学卒業者については、最短の規定で定められております昇任試験を受ける期間というものを合わせますと非常に短くなるのでございますが、比較的優秀な者の実例といたしましては、大学卒の者については十五年六カ月かかる。それから高校卒の者につきましては、採用から二十年後に警視になる、こういう状況でございます。
○諫山委員 大学卒業で一番昇進の早い人で十五年六カ月、ところが高級公務員試験を通った人は三年六カ月、これは大変な差です。そして十五年六カ月というのは最短コースです。しかし大部分の警察官というのはそうじゃなくて、高等学校を卒業し、警察学校で学んで、現場でさんざん苦労して、どうにか出世していくというコースをたどるわけですが、大体警視になるのに普通三十年を要する。しかし三十年たって警視になる人の数はきわめて少ない、これが実態ではなかろうかと思いますが、どうでしょう。
○福田説明員 最短コースというお言葉が先ほどございましたけれども、比較的優秀な者が大学卒で十五年六カ月、それから高校卒で二十年、比較的優秀な者の実例として申し上げているわけでございますのでよろしくお願いしたいと思います。 もちろん、仰せのように警視になるというのは非常にむずかしい。巡査からそれぞれの昇任試験を受けて警視までにたどりつくという者は数%にすぎないというのが実情でございます。しかし、上級職試験を通った者がこういうふうに優遇されるのはどうしてかということでございますけれども、これはやはり警察組織の場合におきましても、他の省庁と同じように優秀な人材を集めたい、こういう観点から上級職試験を通った者の中から警察の幹部として採用するわけでございます。それに対する待遇の問題でございますが、これはほぼ各省庁が上級職試験を通りまして採用いたしました幹部に対しましてとっておる待遇措置というようなものをにらみ合わせまして、このような措置をとっておるというのが実情でございます。
○諫山委員 私は、警察で行われている試験制度そのものがけしからぬとは言っていないのです。私たちの党大会で決定した民主連合政府綱領提案というのがあります。私たちの目指している政府、自民党政府ではない民主連合政府になったら警察官をどういうふうにしたいという青写真です。この中には「警察人事を公平にし、公正な試験制度により、だれでも能力におうじて高級幹部に昇進できるようにする。」と書いてあります。試験制度を廃止するというたてまえではなくて、公正な試験制度、警察人事を公平にする、そしてだれでも能力に応じて高級幹部になれるような制度をつくりたいけれども、いまの警察の機構はそうなっていないということを私たちは問題にしているのです。 たとえば、ことしの三月三十一日付で平塚八兵衛という人が退職するということが新聞に非常に大きく報道されました。この人は三億円事件の捜査班のキャップをしていた人で、昭和十四年に巡査拝命、現在まで三十五年九カ月警察官生活をした。その間、警察功績章一回、警察功労章一回、警視総監賞九十七回。そして、東京新聞の評価によれば「最高の栄誉に輝く名刑事」毎日新聞によれば「表彰制度の多い警察の中でもけたはずれに多かった」のが平塚八兵衛さんだ。ところがこの人は退職する時点ではまだ警視ではなかった。もちろん試験を受けなかったということも書いてあります。サンケイ新聞によれば「試験なしで警視に上り詰めたのは警視庁百年の歴史でも平塚さんが初めて」と書かれていますが、これはそのとおりでしょうか。
○福田説明員 平塚八兵衛氏の例をおとりいただいたわけでございますけれども、平塚八兵衛氏はやめる前にすでに警視に昇任いたしております。そのことを申し上げたいと思います。 それから、諫山委員のおっしゃられますいわゆる試験制度そのもの、それからそういった昇任制度を含めました機構の問題についてお触れになっているわけでございます。その中で、巡査から最高幹部に上がることについては非常にむずかしいというようなお話もございましたけれども、巡査から最高幹部、警視監まで昇任いたしておる、そういう例も、もちろんまれでございますけれども、ございます。ただ、警察の人事におきましては、そういった巡査から警視をさらに越えまして警視正になり、警視長になって県警本部長になる、あるいは管区局長になる、あるいは本庁の課長の上に参事官というのがございますけれども、参事官になる、あるいは部長になるというような方々につきましては、やはりそれまでの御苦労というものを察しまして、また年齢等そういった制限もございますので、警視正から警視長に昇任させるという場合におきましては、むしろ、上級職試験を通った者が警視正から警視長になるのには七年ないし八年かかるものを、巡査から上がってこられた方々につきましては大体五年以内、早い人の例でございますけれども三年弱というような例もあるわけでございます。そういうことで、やはり巡査から拝命されまして最高の幹部になられるような素質を持った方は、できるだけ先へ行って優遇するというような措置もとっておるわけでございます。 もちろん、私どもがやっておりますこういった一連の昇任そのものをめぐるいろいろの不合理な点等につきまして、また試験制度等につきましても、年々改善を図らなければならないということは常に念頭に置きながら、そういったものの改善は逐次図っているというのが実情でございます。
○諫山委員 私、平塚八兵衛さんのことを質問したのですが、新聞によれば、三月五日に平塚八兵衛さんは警視になった。それから、名刑事の名をうたわれていたけれどもこんなに警視になれないというのはおかしいじゃないかというのが新聞の論調なんですよ。その点はどうなんですか。あなたはこういう人もおると言って何十万人の中の一人を挙げられますけれども、私が問題にしているのは、私たちの身の回りにおる何十万の下級警察官のことなんです。平塚さんもその中の一人だったと思うのですが、こういうのが普通の下級警察官の実態ではなかろうかということを聞いているのです。
○福田説明員 平塚八兵衛氏の場合は、いわゆる刑事の専門家でございます。しかも平塚氏の場合は被疑者の取り調べをするという点において——刑事にもいろいろ特徴がございまして、地取りをするとかいろいろございますけれども、平塚氏の場合は取り調べに非常にすぐれた専門家であった、こういうことでございます。専門家につきましてはやはりそういった専門の仕事をしてもらうということが、もちろん御本人の希望でもございますし、また御本人を生かして使うということにもなるわけでございます。したがいまして、専門家としては最も優遇するという措置はとった、かように考えておるわけでございます。 もちろん、そういった専門家が組織のマネジメントをやっていただくということは、場合によっては本人を殺すことにもなりますし、あるいは、そういった組織というものを管理していく場合に、やはり組織管理と同時に専門家というものを抱えまして、専門家をして本当に能率の上がる、しかもりっぱな仕事をしてもらうということを考えた場合、やはりそういうマネジメントというような方向にこういう専門家をお使いすることはあれでございまして、専門家を抱えながらマネジメントもできるというようなものを幹部にしていく以外に、現在の警察の管理の仕方というものはないのではないかというふうに考えられるわけでございます。
○諫山委員 平塚八兵衛さんのことが各新聞に大きく報道されたことは人事課長も御承知だと思います。なぜこれが問題になったかというと、どの程度の名刑事か知りませんが、新聞では大変な名刑事と書かれております。そして九十七回も警視総監賞を受けたというんですから恐らく名刑事でしょう。この人が、エリートコースで三年半でなれるような警視にやめるまでなれなかったというのはおかしいじゃないかというのが国民一般の批評ということを、やはり警察庁は率直に受けとめないといけないと思うのです。 〔委員長退席、田中(覚)委員長代理着席〕 一方、エリートコースがどのくらい出世しているのか、私調べてみました。そうしたら、昭和四十六年に採用された人で四十九年十月現在で、滋賀県警察本部の警備課長、奈良県警察本部警備課長、大分県警察本部警備課長あるいは態本県警察本部第二捜査課長、大体三年半でこういう地位に座っているようです。それから昭和四十二年採用の野田健さんという人は、四十九年十月現在で警視庁目黒警察署長、この人は採用以来七年半です。エリートコースというのは大体こういう調子で上に上っていくのですか。
○福田説明員 そのとおりでございます。ただ、これは上級職試験を通りまして各省庁に入りました者も、それぞれやはり人事院でいろいろそういった出先機関等につきまして給与の格づけであるとか等級格づけ等をやっておるわけでございますけれども、それと大体にらみ合わせまして、昇任の速度というものは大体均衡がとれるような、そういう形になってございます。
○諫山委員 「赤旗」がしばしば警察官の問題を特集し、こういう特権的な官僚制度を批判しますから、第一線の警察官から「赤旗」に続々投書が来ているのです。あるいは共産党の機関に電話でいろいろ情報を知らせてくれるというような例もあります。その中で、二十代の署長さんとか何とか課長さんが、十五年、二十年、三十年、第一線で働いてきた生え抜きの警察官をあごの先で使う。そして警察署には何か非常にややこしい特別な礼式があるそうですね。「自分の子供くらいの人に対してもう本当に恐れ入った敬礼をしているのを見るとむなしい気持ちがいっぱいだ」というような投書も来ているのですよ。これを見ると恐らくそうだろうと私も思うのです。どこの官庁でも特権的な官僚制度はあります。そして私たちはそれを批判しております。しかし警察の場合は非常に極端なような気がしてしようがないのですが、そういう点について反省はありませんか。
○福田説明員 上級職試験を通りまして警察庁に入庁いたしまして、さらにこれが第一線に行きまして所属長になるというような者に対しましては、やはり諸君たちはそれなりの道を進んでおりますがゆえに、むしろ部下に数倍する苦労というものをみずからしなければならないということで、人事的にもまた教育的にも私どもが彼らに対する大変な注文を出しているわけでございます。もちろん、上級職試験を通っている者の中にも、率直に言いましてできが悪いと申しますか、仰せのようにただ部下にいばり散らすなんというような極端な例外も皆無とは申せません。そういう者につきましては、私どもも常に人事的な管理の面で目を光らせておりまして、そういう者はそれなりに遇していく。上級職試験を通って入ってまいりましても本部長になれないというような例もございます。したがいまして、そういった点については十分気をつけなければならないのでございますけれども、これは他の一般官庁ももちろんでございますけれども、民間の会社等におきましても、そういった組織というものを支える一員として、部分として、そういう大学卒の優秀な者をやはり採用しなければ、そういった組織というものを保つ上においていろいろ支障を来すというような面も現実にあるのが実情ではないかと私は思います。そういう意味においてこういう者を採用するのではございますけれども、決して甘やかしてはならないのだ、こういう観点で、人事管理の面では非常に厳しい締めつけをしているというのが現実でございます。
○諫山委員 私たちの党は、選挙の時に「警察官の皆さんへ」あるいは「警察官と家族の皆さんへ」というようなビラを何回も出しました。そして警察官に対するいろいろな発言をしているわけです。ところがそれに対していろいろ妨害行為があるというのが報告されております。現にその旨の投書も共産党に来ております。例を挙げますと、去年の参議院選挙の時ですが、こういう手紙が来ております。「もう一度配ってほしい。若い警察官のなかで、反響をよんでいる。あの内容が実現すれば、本当にいい」これは一つの手紙です。「署側は大あわてで、次長が訓示までして反共宣伝をやっている。派出所には受けとるなという指示がきた」そのほか警察の上級の方で共産党のビラなんかもらうなという指示がされているというという情報が幾つか集まってきているのですが、そういうことをしているのかどうか、今後とも続けるつもりかどうか、御説明ください。
○福田説明員 この問題につきまして、特に「赤旗」等のビラにつきまして、また「赤旗」そのものあるいは日曜版等について、これは読む読まないは本人の自由でございます。したがいまして、警察としては読めとも読むなとも、そういう指導はしておりません。ただ「赤旗」の内容につきまして、率直に言いまして、たとえば先ほど諫山委員がおっしゃられましたような警察官の昇任の期間の問題等につきましては、「赤旗」の表が若干私どもの持っております実例とは違っております。そういうものについては実情がこうなんだというようなことを、部内の一般の教養の機会等をとらえましてそういうことをみんなに言う。あの点についてはこういう点がそうですよというような教養はいたすことはございますけれども、「赤旗」を読む読まないというのは全くこれは本人の御自由でございますので、その辺については何ら特別な指導はいたしておりません。
○諫山委員 ビラをまくたびにこの紛争が出てくるのですが、こういうビラ頒布に干渉してはいけないということは恐らく警察庁も異論ないと思います。しかし現にこういう投書が来るし、現地で紛争が生じているとするなちば、そういうことが起こらないような何らかの指導をしていただきたい。現在選挙が行われているし、今度の統一地方選挙でも恐らく共産党は警察官に訴えることになると思う。その場合に、こういうのは妨害してはいけないのだという何らかの措置をとっていただくことはできませんか。
○福田説明員 選挙等におきまして、警察官がいろいろ善意で行った行為等が大変誤解を受けるというようなこともございますので、言動に慎めと言うようなこともございます。そういったことにつきましては一般的な注意をそれぞれの機会をとらえてやっているのが実情でございます。 ただ、ビラを配ることについて妨害をするとかしないとかという問題、これは警察といたしましても、また警察官といたしましても、これはよく知悉していることでございます。ただ、それが法律的に問題のあるビラであるとか、あるいは頒布の仕方がいろいろ問題になるというようなことになりますれば、それはビラを読むとか読まぬとか、あるいは新聞を読むとか読まぬとか、あるいは雑誌を読むとか読まぬとかという、個人の自由の問題とはまた別にいろいろの問題等があるというようなこともございます。したがいまして、その辺につきましてはわれわれは一般的な注意を事あるごとにいたしておりますし、それぞれの都道府県等においてもそういったことをやっていることは私どもも承知いたしておるわけでございますので、とりたててやるということ自体がむしろ、私の感じといたしましては、何か異様な感を与えるということにもなりかねませんし、また何か特別悪いことを従来やっていたのではないかというような、何もやっていないような県等におきましてはそういう印象等も受けるのではないかという心配もありますし、それにつきましてはちょっと慎重を期して考えさしていただかなければならないのではないか、かように思う次第でございます。
○諫山委員 政務次官に質問します。 ビラの内容に違った見解があるとか間違いがあったというときには、これは反論すればいいわけですね。つまり言論と言論で解決していくというのが正しい民主主義的なやり方です。ただ、ビラが配布されることをいろいろ妨害するということはいけないわけです。いままで警察官あるいは警察官の家族あてに配ったビラで問題になるようなビラはなかったはずです。ですから、こういうビラというのは一国民である警察官に配ることは自由だし、それを警察は妨害してはいけないのだということを人事課長から説明がありましたが、警察行政についても責任を負っている法務省としてはいかがでしょうか。これは警察官の人権という点から見ても当然その点ははっきりさせなければならないと思いますが……。
○松永(光)政府委員 警察行政につきましては私関係をいたしておりませんので、お答えする立場にないので御理解願いたいと思います。
○諫山委員 警察官も国民の一人なんですね。基本的人権が保障されているわけですよ。だから、警察行政というような狭い意味でなくても、たとえば警察官の人権とかあるいは言論活動のあり方というような点で法務省から見解を聞ければと思ったのですが、できなければ、いまの人事課長の発言を公式の警察庁の見解としてお聞きしておきたいと思います。——ではもう、これは自治大臣が発言したと同じような意味があるというふうに、人事課長、聞いていいですか。——いいですね。——では、現地でいやしくも警察の上級がビラ配りを妨害するようなことがあれば、これは警察庁の方針に反するのだ、いけないことだということをここで公式に確認していただいたということでいいですか。
○福田説明員 個人の住宅であるとかあるいは個人が街頭を歩いているとか、そういうような場合等、あるいはまた官公署の中に執務中にそういった物を配るというような場合、いろいろございます。私が申し上げているのは、いろいろ役所の、そういった官公署の中で配るとかなんとかという場合には、やはり仕事をやっている、執務中であるというようなことから、もちろん庁舎管理の責任者であるところの署長なり次長なり、そういった者の許可を求めてやっていただくとか、いろいろそういった手続をしかるべくして、その責任者からの了解を得るとか、あるいはその他いろいろの制約があり、無制限に配ってもいいというものではないと思います。もちろんお配りになるのは自由でございますし、受け取るのも自由でございますけれども、やはり、申し上げたように、官公署の中であるというような場合には一定の制限というものもあり得ると思うのでございます。そういった制限というものをお守りいただいておやりいただくのであれば一向差し支えないというのが私どもの考え方でございます。
○諫山委員 警察官にビラを配るのに警察署の中にまで押しかけていくというようなことは私たちやっていないと思うのですが、そういう特別なことをいま聞いているのじゃないのです。一般的なビラ配りのことを聞いているので、そういう例外的なことを持ってこなくてもいいですよ。 そこで問題を変えますが、昨年の参議院選挙のころ配った「警察官と家族の皆さんへ」という文書の中で、「警察官にも団結権を いま、おもな資本主義国で、警察官に団結権すらみとめていない国は、日本だけです。」こういう書き方でされています。一九六八年の「警察官の皆さんへ」というビラでは「植民地をのぞけば、日本のように警察官の団結権、団体行動権を禁止している国は、世界中でもまれです。」と書いてあります。これはどの労働法の本を読んでも同じようなことが書かれているし、当然警察庁も、研究、調査されていると思いますが、異論ないでしょうか。
○福田説明員 私どもの調べが必ずしも一〇〇%正確であるということは申しかねるのでございますが、でき得る限りの正確さを期して調べました結果でございます。申し上げますと、団結権が認められておりません中で、イタリア、アルゼンチンあるいはギリシャというようなそういう国、それからアラブ連合、そういうような国があるというふうに承知をいたしております。
○諫山委員 いま団結権が認められていない例を挙げられました。私はその引用に異論があります。しかし、むしろ問題は、団結権を法律で禁止しているかどうかが問題なのです。たとえば日本の民間労働者を見ても、団結権は保障されているけれども労働組合をつくっていない労働者というのはたくさんいるわけです。問題は、労働組合をつくることが法律で禁止されているかどうか、この点からはどうでしょう。
○福田説明員 たとえばアメリカの例でございますけれども、連邦警察でございますところのFBIについては、団結権を認めないということで法律で決まっておるようでございますし、また、イタリアの例を申し上げたのでございますけれども、どうもイタリアの法制局はイタリア憲法九十八条の解釈をめぐりまして——憲法と申しますのは警察官の政党に加入する権利に対して法律により制限を定めることができるという一連の条文でございますが、この憲法の条文に関連いたしましてイタリアの法制局は本条を、労働組合を結成すること及びこれらの労働組合と全国的な規模の労働組合との関係樹立にまで適用いたしまして警察職員の団結権を否定している。これは明文ではございませんが、イタリアの法制局の解釈としてそういうことになっておるということを私ども承知しておる次第でございます。なおその他につきましていろいろあるのでございますけれども、細かい点、必ずしも調べかねておるわけでございますが、御了承いただきたいと思います。
○諫山委員 アメリカでFBIとかシークレットサービスで団結権が禁止されていることは知っています。これはきわめて例外的な分野です。この点について、総理府の石田参事官、お見えになっておると思いますが、いまの警察庁の説明と総理府の理解は同じですか。たとえばイタリアの警察官について。
○石田説明員 大体同様と承知いたしております。
○諫山委員 一九六九年の憲法裁判所で、イタリアですが、警察官のストライキで、経済的なストライキである限り合法だという判決が出ているという記載があるのですが、どうなんですか。
○福田説明員 その例であるかどうかは必ずしもはっきりいたさないのでございますが、市警察職員は団体権はむろんのこと争議権も持っておらない、こういう解釈になっておるわけでございますが、現にイタリアの市の警察職員がストをやったという例はございます。また、最近ローマで市の警察職員がストライキをやったという例があるわけでございますが、これに対しまして内務省は組合の責任者を違法として検挙、送致しておる。事件は審理されたわけでございますが、結果がちょっと私どもの方では調べがついておらない、こういう状況でございます。
○諫山委員 ここは労働法を論ずる場ではありませんからこれ以上深入りすることはないと思います。しかし、私がさっき読み上げたビラの中には、もう一遍読み上げるとこう書いてあるのです。「植民地をのぞけば、日本のように警察官の団結権、団体行動権を禁止している国は、世界中でもまれです。」これは今の警察庁の説明をもってしても否定できないと思うのですが、とにかく公務員労働者の団結権、団体行動権を保障していこうというのはもう国際的な傾向、そしてその中で日本がきわめて例外的な立場に置かれていることも御承知のとおりです。そこでいま私が問題にしているのは、狭い意味の団結権あるいは団体交渉権、こういうのが保障されてないというのは発達した資本主義の国ではきわめて例外的な措置だというふうに言わざるを得ないと思うのですが、これは警察庁はどう考えていますか。
○福田説明員 団結権または団体交渉権、これを発達した資本主義国であるところの日本において認めることの可否についての御質問かと思うのでございますが……
○諫山委員 可否についての質問ではありません。それは実態としてきわめて例外的な状態ではないかと聞いておるのです。
○福田説明員 実態ということになりますと非常にむずかしいのでございますが、先ほどアメリカの例なんか申し上げたのでございまして、FBIは禁止されておるのでございますが、州警察の場合も五十州のうち二十六州には警察官の組合はない。さらに、ない二十六州のうち十二州は警察官の組合結成を禁止しておるという州法がございます。そういうような状況もございますし、いろいろ国によって、また国の内部の、州警察であるとか市警察というようなことでもって取り扱いがいろいろ違っておるというのが実情でございます。したがいまして、にわかにそうでございますということは申し上げかねるのではないかというのがむしろ逆に実情ではないかというように私ども思っておるのでございますが……。
○諫山委員 私の質問は、いいか悪いかの評価を含まない、世界の全体の趨勢の中で日本がどういう地位を占めておるかという質問だったのです。 そうすると警察庁としては、日本の警察官に団結権が禁止されておるのは発達した資本主義の国の中では例外的な状態だという認識は持たないのですか。これはもう、少なくとも行政法とか労働法を勉強しておる人にとってみれば常識だと思うのです。警察の認識がこの国際的な常識といっていい実態に合ってないということになれば、そのこと自体大変な問題だと思うのです。日本の警察官が置かれておる実態をそんなに知らないのかということになるわけですが、そういう点から見ても、警察庁としては公式に、日本が例外的な国だとは思っていないということになるのですか。
○福田説明員 例外と言えば、例外じゃないとは言えないと思います。と申しますのは、アメリカの警察におきましても、またフランスの警察におきましても、一部団結権を認めておりますけれども、これはやはり警察職務を他に代替させてやる機関というものがあるということ、これを前提として考えますならばやはり団結権の問題というものもやや考え方が変わってくるのではないかというのが私どもの考えでございますけれども。日本の場合は、警察の職務、すなわち直接国民の生命、身体、財産を守って公共の秩序を維持する、そういう公的性格が強い治安機関というものは警察一本になっておるわけでございます。すなわち代替機関がない。そういうことから団結権というものはやはり現在の段階では認めがたいのだ、こういうことになろうかと思います。それが、ただ結果的に団結権を認めないのだ、この一点だけに議論をしぼって、その前提となる実情というものを踏まえないでその結果だけを言うということになりますれば、あるいは例外ということも言えるかと思うのでございますけれども、その辺の、他に代替させる機関というものが警察の場合はない、日本の場合はないということ、これを前提として考えるならば、団結権すら認めることがちょっと問題ではないか、こういうふうに考えているということでございます。
○諫山委員 私は実態についての警察庁の正確な認識を知りたかったのです。あなたは実態についての正確な認識を恐らくことさらはずされたのだと思いますが、なぜわが国で団結権を認めないのかという方向に論点をそらされました。しかしそれはそれで問題なんです。そうすると、代替性云々というのは、警察官に団結権を認めればすぐストライキでもして、どろぼうをつかまえなくなるじゃないかというような心配をしておるのですか。
○福田説明員 その点でございますけれども、警察の組織というものは非常に厳格な規律が必要であるということは申し上げるまでもないことでございますけれども、一方団結権を認める、すなわち組合結成を認めるということになりましょうか、もちろん争議権等は別という御趣旨だと思いますけれども、団結権を認めた場合に、団結権に基づきまして組合の統一性保持というようなことから、やはりそれとの兼ね合いで職務遂行に支障を来す心配はないかという問題が当然出てくるわけでございます。と申しますのは、警察組織というものは、その職務執行に当たってはやはり何よりも不偏不党かつ公平中正を保持することが要求されるわけでございますが、職務上の団結のほかに他の団結権を認めるということは、その職務の遂行に際して一部の者に奉仕する等の誤解を招いてしまう。そしてまたそれがひいては国民の信頼にこたえかねるというような結果を来すのではないかという心配が非常に多い、こういうことでございます。
○諫山委員 いま幾つかの非常に重大な発言がありました。 私は総理府に見解を聞きたいと思います。団結権を保障することは厳格な規律と矛盾するというふうに総理府は考えているのですか。団結権を保障することは職務遂行に支障を及ぼすおそれがあると考えているのですか。警察庁はそういうことのようですが、総理府としてはその点いかがですか。
○石田説明員 ただいまの御質問でございますが、ただいまの警察職員の団結権の問題につきましては、御承知の公務員制度審議会におきましても非常に長い時間をかけて議論をされた問題の一つでございます。その結果でも、いろいろ意見が対立をいたしまして、結果的には、警察職員の団結権につきましては公制審の答申では何ら触れておりません。したがって、現段階におきましては、私ども現行法制で対処すべきものであるというふうに考えておる次第でございます。
○諫山委員 私もその経過は知っているのですが、ただ問題は、いま人事課長が言っているような観点で団結権を考えているとすれば、余りにも一般警察官をばかにし過ぎている、余りにも一般警察官を信頼しなさ過ぎるというふうに言わざるを得ないと思うのです。団結権を保障したら厳格な規律が乱れる、団結権を保障したら職務遂行に支障が出てくる、本気でそういうことを考えているんだとすれば、これは前近代的もはなはだしいと思うのですが、そういう考え方自体はどうなんですか、総理府は。
○石田説明員 ただいまの点につきましてはいろいろと御議論のあるところだと存じます。その辺につきまして公制審で御議論をいただきましても結論が出なかった問題でございますから、私どもはやむを得ないというふうに考えております。
○諫山委員 私たちは民主連合政府綱領提案の中で、「警察官の労働基本権を保障し、待遇と労働条件を改善する。」ということをうたっています。警察官の労働条件と団結権、これが不可分の関係にあるということは一般労働者の場合と共通ですが、同時に、警察官に世界的な常識である団結権さえ保障されていないということが、警察官が民主主義的な常識、古い封建的な考え方ではなくて、人権思想に根づいた常識を持つかどうかということと関係があると思います。また、団結権が禁止されているのか保障されているのかということが、労働組合運動に対する警察権の介入という問題とも当然関係が出てくるわけです。そういう点で、警察官の団結権が世界の趨勢に反してそのままに放置されておるということはきわめて重大な問題だし、私が特にこのことを強調するのは、このことと、私が何回かこの委員会で論議した警察官の人権無視と関係があるのじゃないかということを考えておるからです。 そこで、早稲田大学の中山和久教授が三年前にフランスから帰られて、こういうことを言われております。「中山教授がパリで自動車を運転していたところが、警察官が車の窓からビラを渡してくれた。交通法規が変わったのだろうかと思って見たところが、警察官の賃金引き上げを要求するビラだった。これを見て、日本とフランスの違いの大きさに驚いた」こういう記事です。さらに「赤旗」にはフランスの警察官の労働組合の実態というのが何回か紹介されております。そしてそこでは、たとえば「賃上げを要求すると同時に、自分たちは余り労働組合運動なんかに干渉したくないのだ、むしろフランス国民の自由と財産と権利を守るために仕事をしたいのだ」というようなことを訴えているビラを盛んに配っておるというような記事が出ておるのですが、こういうことを日本の警察官がしたら警察庁としては困るという考えに立っておるのですか。
○福田説明員 ビラを配るということ自体、職務中にそういうことが行なわれるということは許されないというのが現状だと思います。 その問題に関連いたしまして、警察官の組合がないというようなことで、警察職員の処遇の改善というような問題に関連いたしましては、職員の要望、不満というものも常に吸収する。またそれに対する改善をするというようなことを組織的に努力しておるわけでございまして、他の公務員と比較いたしまして、団結権がないということだけで待遇が悪いというようなことも決してないというふうに私どもは考えております。
○諫山委員 私は、勤務時間中にビラを配ることがいいか悪いかというような質問をしておるわけじゃないのです。勤務時間中のビラ配りというのは、団結権が保障されておる民間の労働者の中でもいろいろ議論されておるわけで、そんなことを言っておるのじゃないのです。ごく一般的な警察官のあり方として質問したつもりですが、真っ正面からの回答がありませんでした。それから、自分たちの方で待遇をよくしてやるから労働組合なんか要らぬのだと言うのは十八世紀の思想なんです。いまどきそんなことを言っても、実際に労働者が納得するはずはありません。 私は、警察制度の民主化、あるいは一般の警察官にもっと人間らしい取り扱いをする、人間らしい権利を保障するという観点から幾つかの問題を提起したわけですが、これはきわめて重大な問題だと思っておりますから、警察庁としては、十九世紀的な思想ではなくて、新しい国際情勢の中で本当に日本も立ちおくれないというような観点も踏まえながら、積極的に前向きに検討していただくことを強く要望して、質問を終わります。
○田中(覚)委員長代理 お諮りいたします。 本日、最高裁判所千葉刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○田中(覚)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
○田中(覚)委員長代理 沖本泰幸君。
○沖本委員 順番は青柳先生なんですが、お許しをいただいて、委員会の都合で先に質問させていただきたいと思います。 私は、千日デパートの火災で犯人と目される人物が不起訴処分になった。そのことによって、亡くなった人の遺族の方が納得できないということで検察審査会に申し立てをしたわけですが、亡くなった人以外には権利がないということでそれが却下になったということについてお伺いするわけであります。その人たちの趣旨としては、全く理解に苦しむので、そういう請求ができる権利を有するように検察審査会法を変えてもらいたいという請願をしたいという趣旨でお話を私は承ったわけでございますが、それにつきまして検察庁並びに最高裁の方に御質問したいわけです。 御承知のとおり、昭和四十七年五月十三日午後十時二十五分ごろ、大阪市南区の千日デパートビルの三階で夜間電気工事中、工事請負人の火の不始末で出火して、二階、三階、四階が全焼し、七階のキャバレープレイタウン内に一酸化炭素を含む有毒の煙が入って、お客、ホステス、その他従業員百十八名が死亡した。墜落死した人が二十二名、店内での死亡九十六名、重軽傷四十七名。重軽傷を受けた人はいまでも後遺症に苦しんでおるということでございます。 そこで、三階で仕事をしておった関係者は六人であった。大阪府警の捜査一課の調べによりますと、「三階でたばこをふかしながら歩いているうちに、」これは被疑者と目される人物ですが、「パイプのたばこをふかしたまま捨てた」という自白が、後になって「火のついたマッチの軸を捨てた」というふうに変わっていき、その捨てたという場所が出火場所と一致しておった点、出火十分前にこの被疑者と思われる人物が出火場所である東側の方へ歩いていくのを他の従業員が目撃しておる。ある証人からの調書もあり、自白の裏づけは十分証拠がとれたと考えられる。ところが、その被疑者と思われる人物はその後自白を「自分が放火した」と変更しておる。この取り調べに当たっては、十分本人の自白に基づいて、ほかからの圧力が加わったとかなんとかという点がないために、結局供述内容が一貫性を欠いて、その場の客観的状況にも合わない点があるので、いわゆる灰色の不起訴にしたということでありますが、まずお伺いしたいのは、その不起訴処分の理由はどういうことでしょうかという点でございます。
○安原政府委員 御案内と思いますが、この事件につきましては、千日デパートの管理部の次長、それから千日デパートの管理課長、それから千土地観光の代表取締役、それからキャバレープレイタウン支配人の四名が業務上過失致死傷罪ですでに公判請求をされておりまして、いま御指摘の被疑者のほかに、ニチイ千日前店の店長と千日デパートの管理部の保安係長が重過失出火ないしは業務上過失致死傷の嫌疑で取り調べを受けて不起訴になったという案件でございます。 いまお尋ねの被疑者の不起訴理由につきましては、概略はいま沖本委員御指摘のようなことでございますが、やや詳しく申し上げますと、結論は、被疑者の自供以外に被疑者を犯人と断定するに足る証拠が非常に乏しく、その自供自体が信用性に欠けるものであったので、公訴を維持する、合理的な有罪を得る見込みが乏しいということで不起訴になったわけでございますが、まず、その被疑者の自供自体が、いまも御指摘のように、最初は取り調べに対しまして「自分がマッチで放火をした」という自供をしておりましたところ、その後は「火のついたたばこを捨てたんだ」というふうに変ってまいりまして、つまり故意ではなくて、火のついたたばこをそのまま捨てたというように、失火のような、過失のような自供に変わりまして、さらに追及の結果、吸っておったたばこを捨てたんじゃなくて、「たばこを吸うときにつけたマッチの火が消えているのを確認しないで捨てたんだ」というふうに、自供が転々として、放火から失火に当たるような供述に変化をしていったということでございまして、自供自体きわめて信用するには薄弱であるというようなことがありましたほかに、仮に火の消えないマッチを捨てただけであのような火事が起こるであろうかというようなことについての客観的な科学的な実験によりますと、火の消えていないマッチを捨てた場合にああいう火事が起こる可能性といたしましては、一メートルの高さの布団の積み重ねの上に火のついたマッチを捨てるとあのような火事が起こる可能性はあるという実験の結果でありましたが、そういう火の消えていないマッチをわざわざ一メートルも積み重ねてある布団の上に捨てるということが常識的にあり得るだろうかというようなことから、自供がやはり信用性に乏しいということもあったようでございます。 さらに付随の事情といたしましては、容疑者といたしましてはそのほかにも、たとえば、この事件は五月十三日の夜の火事でございますが、それを去る二週間ほど前の四月三十日の夜に、このデパートの四階の売り場、婦人服の売り場のようでございますが、しその売り場に何物か侵入した者があって、婦人服にいたずら書きをしていったことがあったというようなことで、商品にいたずらをするわけでありますから、何かこのデパートに恨みを持つ者がおったのではないか。それとこの被疑者とは同一性がないわけでございますが、そういうことでほかに犯人と目される者があったのではないかという疑いが一つ。もう一つは、この日の閉店前には三階の防火シャッターが閉められておったということがはっきりしておるのに、火事が起こったときには開いておったというようなことがありますので、放火をして逃げていった者があるのじゃないかというようなことで、そのほかにも容疑者と目される者があるという客観的な事情もあったというようなことを双方考覈いたしまして、自供自体の信用性の問題を含めて、どうも御指摘の被疑者が犯人であるということを認定するだけの証拠に乏しかったというのが不起訴の理由というふうに報告を受けております。
○沖本委員 普通、こういう事件が起きますと、こういう刑事事件に対しての告発なり告訴なりが遺族からなされるということがあるわけですけれども、しかしあの事件当時、恐らく警察なり検察の方は十分真相を究明してくれるだろうという期待のもとに告訴とか告発とかという問題は起きなかったわけで、関係者並びに遺族あるいは国民大半がじっと見守っておるという状況であったわけです。そういう状況のもとで、結論的にはいわゆる出火原因も十分わからない、あるいはこれだけの大事に至ったのに全然原因が究明されないということから、幽霊出火というような形で、いまだに疑問を抱いておるというようなかっこうになってきたので、結局遺族の方が検察審査会の方に、いわゆる「犯罪により害を被った者」として、配偶者、直系の親族、または兄弟姉妹という立場から審査申し立てをした。ところが、先ほど申し述べましたとおり、この問題に関しては権利がないということで却下されたということになるわけです。 そこで、遺族の方々が非常に疑問に思うという点は、検察審査会の制度そのものの中にあるんじゃないだろうかということで、ちなみにこの内容を、当委員会でもしばしば問題になるわけでありますけれども、この検察審査会の事の起こりから考えていきますと、この検察審査会制度は戦後の司法の民主化政策によって生まれたものと考えられておる。わが国の検察制度が占領当時のGHQにとっては驚異に映ったというところから、検察官公選制あるいは大陪審制度をとるべきであるという要求があったが、検察官公選制の要求は退けて、大陪審の制度を、手続、構成などをまねて、形を変えてでき上がったのであり、わが国の場合は大陪審を参考として構想されたものであって、その精神、すなわち検察に民意を反映させるという精神だけを取り入れたものだ、こういうふうに考える向きもあるわけですが、もう一度詳しくその辺のことを教えていただきたいと思うのです。
○千葉最高裁判所長官代理者 検察審査会法は、ただいま沖本委員御指摘のように、昭和二十四年の一月二十九日に法律が施行されまして、それ以来引き続いて行われている制度でございますが、先ほどお話出ましたように、大陪審制度を参考にして、検察官の公訴権の実行に関して、特に不起訴処分を批判するという、不起訴処分の当否を判断するという点につきまして、有権者の中からくじで選定した十一人の審査員が申し立てに基づいて不起訴処分の当否を審査する、こういう制度でございます。もちろんそのほかに検察事務の改善について建議をするという権限がございますが、そういう制度でございまして、私どもとしましては、大変ユニークな制度だ、外国の人たちからも非常に国際的に評価を受けている制度だ、かように考えております。
○沖本委員 しかしながら、この制度そのものに欠陥があるんじゃないだろうかという点も考えられるわけです。それはどういう点にあるかというと、証拠の収集能力がない。それから議決の効力は勧告的で強制力がないという点にあるのじゃないかという点でありますけれども、第一条にある「公訴権の実行に関し民意を反映せしめてその適正を図る」という点を考えていきますと、「民意を反映せしめてその適正を図る」という点についてはどういう面が考えられるわけなんでしょうか。
○千葉最高裁判所長官代理者 御案内のように、日本の制度では、検察権の行使につきましては起訴独占主義という制度がございまして、起訴するのは検察官の専権になっておる。それからまたもう一つ起訴便宜主義という制度がございまして、検察官の判断で起訴、不起訴を決定する権限がある。この二つの制度は日本独特のものであろうと考えますが、その検察官の非常に独占的な権限について検察審査会でその当否を論ずる、そういう点で民意が反映される、かように考えるわけでございます。
○沖本委員 検察審査会法の三十条の「犯罪により害を被った者」についての裁判所の判例がありましたなら、その御見解を承りたいのです。
○千葉最高裁判所長官代理者 これに関しましては広島高裁の松江支部で昭和三十一年五月十四日に判決がございまして、この検察審査会法三十条による「害を被った者」というのは、犯罪行為によって自己の生命、身体、自由、財産等に直接に被害を受けた者だ、こういうふうに判断してございます。それが一件だけのようでございますが、この点につきましては刑事訴訟法二百三十条の「告訴権者」の解釈と同じでございまして、それについては学説上異論を見ていない、つまり判例と同じ見解でございます。
○沖本委員 死亡した人の遺族や近親者は除かれているわけですね。被害者が死んで、いない、亡くなった、こういう場合に遺族の人がかわりに申し立てができないのかという点に今回の疑問があるわけなんですが、その点についての解釈はどういうことになりますでしょうか。
○千葉最高裁判所長官代理者 先ほど申しましたように、刑事訴訟法の「告訴権者」と、この三十条の「犯罪により害を被った者」とは統一的に解釈されておりますので、直接被害を受けた者という意味におきましては、その配偶者、直系の親族ないし兄弟姉妹というのは除かれるということになるわけでございます。それは、「告訴権者」の中には別の条文で、被害者が死亡した場合にはその親族が告訴権者になり得るという規定があるという点からも除外されるという解釈でございます。
○沖本委員 先ほどお触れになりましたけれども、これは昨日の当委員会でも話が出たわけでありますが、公訴権を検察官が独占行使するという点についてですけれども、これが公益の代表者であるという場合に、死亡した遺族も国民であり、その人たちのための公訴権を代表しなければならないというふうにも考えられるわけで、検察審査会法の目的である「公訴権の実行に関し民意を反映せしめてその適正を図る」という点から見ても、申立権者の権利を奪ってはならない、こういうふうに考えられるわけですけれども、この点はどうなんでしょうか。
○千葉最高裁判所長官代理者 検察審査会法で申立権者を「告訴若しくは告発した者、請求を待って受理すべき事件についての請求をした者又は犯罪により害を被った者」というふうにいわば限定しておるわけでございますが、ただ「告訴若しくは告発をした者」というもののその前提としては「告訴権者」というものがありまして、死亡した被害者の親族も告訴権者でありますので、本来はそちらの方でまず告訴をして、その裁定を待って、その通知及び不起訴の理由を告げられた上で、その判断がなお不服であるということで検察審査会が申し立てを受ける、こういうふうなかっこうになっているのだろうと思います。ただ、告訴権者は、被害者が告訴権者になりますが、それが法の三十条で直接申し立てができるようになっておりますのは、被害者の場合には、捜査機関の事情聴取というようなこと、あるいは直接害を受けたという意味において被疑事実の内容がわかるであろうし、また事実上不起訴処分の内容というものについても知る機会が多いであろう。そういう意味で、直接申し立てをするという場合にも、申し立ての範囲あるいはその理由というものは特定される、明確になる。こういう意味で被害者は直接請求できるように規定してあるのだと思いますが、それ以上の親族になりますとやはり間接的になるという意味におきまして、手続が不確実になるということもあったのではないか、かように考えております。
○沖本委員 その辺が少しぼけてくるわけですね。そこに問題があるのだと思いますけれども、法務省の方としてはこの辺の点についてどういうふうにお考えになっていらっしゃるでしょうか。
○安原政府委員 この申立権者を特に直接犯罪の被害者だけにしぼっておる理由は、いま千葉局長が言われたとおりであると思います。要するに、三十条に規定がございますように、告訴権者あるいは請求者、請求を待って受理すべき事件についての請求をした者というふうに、いわば検察に対して刑罰権の発動を国に対して求めた、意思表示をした者について、この検察官の不起訴処分に不服があるというところを中心に請求権者を認めるというのがこの審査会法のたてまえであったのであって、いわば被害者というものは告訴権者にもなるわけですけれども、それが告訴をしなかった場合においても、被害者の場合は、いま千葉局長が言われたように事案の内容を知っており、恐らく常に捜査の対象として取り調べを受けるというようなことで事案内容を正確に知っておるというようなことから、この被害者には、不服を申し立てて、それについては必ず審理を開始するということを義務づける理由があるということで、これは例外として認められたもので、原則としてやはり処罰を求める意思を表示した者について請求権を認めるというのがこの法の趣旨であったのではないかと思うわけでございます。 〔田中(覚)委員長代理退席、委員長着席〕
○沖本委員 いまの素朴な立場から、この千日デパートビルの事件に関して被害を受けた方の遺族という立場から考えてみますと、火が出てたくさん死んだわけですね。その原因なり、はっきりしたものが全然究明されないまま、うやむやで終わっているという点はどうにも納得できないわけなんですね。はっきりしてもらうことが亡くなった人の霊を弔うことにもなるのだ。うやむやのうちに死んだ人の葬式を出してしまった。いわゆる損害に対しての請求なり何なりというのはいろいろな形であるわけですけれども、形状から考えられる原因が究明されないままに、不明で置かれるということはどう考えても納得できないということがこの人たちの考え方であり、私たちもそれを聞いてみて全くそうだという感じにとらえられるわけですね。 結局は、検査官の実際に担当しておやりになった事件そのものが納得できないときには、検察審査会へ申し立てすることができるという大まかな概念があるわけですね。そういうことによって検察審査会に請求してみたところが、あなたは権利がないのだ、こういうことで却下されたということはどこまでいっても納得できないというのがその趣旨であるわけなんです。亡くなった人に、私たちは一生懸命に努力して跡始末をやってみた、ところがこういうふうに明らかになってきたという結論が出てこない限りはいつまでたっても納得できない、こういうことがこの根本になっておるわけなんです。その点について、いまおっしゃった、裁判所の方へ告訴をしてその上でという方法もあるでしょうけれども、それでは何か検察審査会の制度そのものが概念的にわかりにくくなって、ぼけてしまうということになるわけですね。その辺に疑問があるわけなんで、それはこの事件を扱った代理人である弁護士さん自体が疑問を持っているわけなんですね。その辺についてもう少しわかるような、納得さしてあげられるような、またこれを見守っておる国民にもよくわかるような説明の仕方ないしはそれに類するものがないのかということになるわけですが……。
○千葉最高裁判所長官代理者 検察審査会関係の方でございますので私から先にお答え申し上げますが、この事件につきましては、実は被害者の夫の方あるいは父親の方三名から申し立てがありましたのが昭和五十年一月十四日のようでございます。ところがそれに先立ちまして、昭和四十九年七月九日に日本ドリーム観光株式会社の代表取締役の方から、弁護士の方を代理人としてすでに審査申し立てがございました。先ほどお話に出ました被疑者に対する不起訴処分が不当であるということについての申し立てがございます。そこでそちらの方の関係につきまして、十二月五日から十二月九日まで連続して六回の審査会議を開いておりまして、すでに議決するに熟していたその段階に被害者の親族の方から申し立てがあった、こういう形になっております。そこで審査会の方では、親族の方からの申し立ては適式でないので申し立ては却下するけれども、職権でそれを取り上げて、前に申し立てのあった審査事件に併合しまして、それで一緒に一月十六日に議決をしている、こういう形になっております。そしてその議決につきましては、親族の方に申し立ては手続上却下になるけれども、職権で取り上げて、その結論は「本件不起訴処分は相当である」ということになっているようでありますが、その通知をしているようでございます。 確かに、沖本委員の御指摘のように、被害者の方の遺族の方で同じようなお気持ちの方がおられるのではないかと思いまして、しばしばそういうことは起こっているようでございますが、その場合には職権でそれを取り上げる手続に付しましてそれで実際には審理をやりまして、申し立ては却下するけれども、職権でやった議決は次のとおりだという通知をやっているのが運用の実際でございます。
○沖本委員 そのことに関してはここにもいろいろ述べていらっしゃるわけなんですけれども、その却下の理由の中に、「大阪一検第二三号 昭和五十年一月二十四日 大阪第一検察審査会 申立代理人弁護士山崎薫殿」という形で通知が来ておるわけです。「本件申立は、申立権なき者からの申立に帰するので、本件申立を却下する。」ということであり、先ほどお話があったとおり、「本件を職権により慎重に審査したところ、不起訴処分の裁定をくつがえすに足る証拠が発見できないので、本件不起訴処分は相当であると議決されましたので、申し添えます。」これだけの説明がついているわけなんですね。それでこの申し立てた方は、先ほどお話があったとおりに一月十四日に申し立てを受理されて、十五日が休日なんですね、それで十六日に今度の決定があったということで、そのみずからの請求に対して慎重に審査したということには当たらないということをおっしゃっているわけなんです。 ですから、その間にドリーム観光からの問題を取り上げて、あわせて職権で調べたんだということは、ドリーム観光の方の申し立ては、いわば設備が十分でなくて、あとで消防庁なり何なりでこれは大きな問題になって、その後ビル火災のいわゆる欠陥として大きく問題が取り上げられて、国民全般の知るようなところになったところであり、ドリーム観光からの検察審査会に対する申し立てそのものはみずからの利益を守るためにこういうことをおやりになったんだ、この人たちはそう理解しているわけなんです。そういう立場の方向に向かって幾ら審査をおやりになったところで、結果的にいわゆる起訴に足るだけの証拠が発見できなかったということをおっしゃってみても、自分の方からの申し立ての方向に対する説明が全然ないということになるわけなんですね。ですから無視されているということであり、その三日の間に慎重にそういうものを審査できるはずはないということであり、その間の疑問をいろいろと申し立てられていらっしゃるわけなんですね。その辺に、この人たちの疑問を解くだけの説明なり何なりというものが審査会の方から欠けておったということになるわけですね。 それは一人一人いろいろ審査会で扱う事件は内容的に違うでしょうけれども、しかし、大阪市内に在住する方で審査員を担当していらっしゃる方があるわけですね、その一人の方に聞いてみたところ、慎重に審査したと言うけれども、その審査に私は全然立ち会っていなかったということも答えを聞いていらっしゃるわけです。それから、この決定する、通知を出す時期が、この審査をする審査員の方の交代時期だったというようなことですね。そういうふうな問題も中にはらんできておるわけで、結局は職員だけがこういう問題を取り扱って、実際に審査したのであるかどうかというのは疑問だということも述べていらっしゃるわけです。 そういう点で審査会の扱い方というものは全く信頼できないというところにあって、その辺に疑問をますます深めておるということになるわけなんです。その辺はいかがなんですか。
○千葉最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたように、この審査会議は六回にわたって、連続した期日を指定されまして、慎重に審議されているようでございます。その対象は、御承知のように、先ほどお話に出ていました被疑者に対する不起訴処分についての当否の審査でございますから、日本ドリーム観光の方から申し立てられたものも、それから、手続は適法ではなかったとしても、被害者の方々の遺族から申し立てられた申し立てによっての対象事項も同じでございます。 それで、中身は要するにこの被疑者について起訴するだけの資料があるかどうかということだったろうと思いますが、先ほど法務省の刑事局長が不起訴裁定の理由として申し述べられたような事項がまさに対象になっておりまして、それに付記して、この議決書によりますと次の点もあわせ考慮していると言っております。申し上げますと、「被疑者の供述に一貫性がなく、タバコに火をつけた場所やマッチを捨てた場所が不明確であるうえ出火場所付近へ行った証拠もなく、また、たとえ無意識であったにせよ炎の残っているマッチを約一メートルの高さに積まれていた布団の上に投げ捨てる行動自体に不自然な点がある。」第二点として「火災当日の閉店後、閉鎖されていたことが確認された三階北西部階段の防火シャッターが、火災発見時に開放されていた事実から、何者かが火を放ったうえ逃走したのではないかとの疑点を払拭できない。」こういう理由も付加して、先ほどのような本件不起訴は相当であるという結論に達しているようでございますから、審査の中身は同じもので、しかも慎重にしておるということが言えるのではないかと思います。ただ、確かに説明が不十分であったという点があるかもしれませんが、それは運用上今後十分気をつけていくようにしたいと思っております。
○沖本委員 おっしゃっておる点には、検察審査会の職員の方が、いまおっしゃったとおり「七月九日付でドリーム観光代理人前堀政幸弁護士外一名から申立があり、その担当審査員の半数の任期の関係で一月一八日決議する予定であったことは、」この代理人である「山崎弁護士に対して全然言わなかったので、同弁護士は知らなかった。そして「いまからでも間に合うか」と尋ねたところ「間に合う」こういう答えだった」というわけです。そういう点から、何の調査もせずにそういう決議文を出しておられる、こういうふうにとっていらっしゃるわけです。 もう時間がなくなりましたので、もう少し詳しく内容を検討してまた当委員会で御質問したいとは思いますけれども、疑問に思って一番主張していらっしゃる点は、職員の方が、「申立資格者として被害者代理人としておったのを、「被害者は死んでいるから被害者はいない。したがって、被害者を消して無資格者の申し立てにするように。職権によって申し立て受理という方法がある」と述べられた。」ところが、「被害者が生きておれば申立権があるけれども、死んだら申立権者がないというのは、検察審査会制度を設けた趣旨に反する不当な解釈である。告訴、告発は、黙っていては捜査官がやってくれない場合にするのであって、被害者が死んだ場合に、あらかじめ告訴、告発をしておかないと申立権がないというのではおかしいのだ」という点と、「少なくとも配偶者や直系の家族、兄弟姉妹などの告訴権者は審査申立権があると解釈すべきである」こういう点にあるわけです。結局、結論的には、無資格者の申し立てということをやったということになるわけなんで、この辺をもっと検討を加えていただいて、そして審査会法を改正してもらいたいということをおっしゃっておられるわけなんです。 いまお話がありましたとおりに、この取り扱いについて不備があった、十分でなかったという点をお認めになっていらっしゃるわけですけれども、その点なお細かく言えば、捜査当時の内容をずっと詳しく述べていらっしゃいますし、また、申し立てするために、申し立て理由を正当化していくためのいろいろな資料集めをやったけれども、その資料も出してもらえなかった、見せてもらなかったという点など、いろいろ疑問があるわけですけれども、次の機会にこれは譲りたいと思います。 以上でございます。
○小宮山委員長 青柳盛雄君。
○青柳委員 私は、ある株式会社の中で行われておる人権問題についてお尋ねをしたいと思います。 その会社は、本社が東京都品川区大崎にございますヒロセ電機株式会社。社長は酒井秀樹という人だそうでありますが、この会社は昭和二十三年ごろに創立されたもので、現在資本金は五億円、そして扱っている商品は電機器具の部品でございまして、電話器用のコネクターというものの製造販売、その市場専有率は日本第一位というものだそうでございます。現在東京証券取引所の二部に上場している、大体中堅の企業と言われております。従業員は、報道によりますと六百人前後。 この会社がことしの二月に全社員に対して、「進退伺」というものを出させた。そして会社の方でその「進退伺」を受け取ると同時に、それを承認するという形で約百二十名くらいの人の解雇を行ったという、非常に水際立った人員整理であったものですから、しかも形が「進退伺」という、何か失態を犯してそしてその責任を問われる、だから身柄を使用主の方にお任せするという、そういう形態をとったところに一般の人たちの耳目を集めたわけであります。したがって、当時マスコミの方でもこれには非常に関心を持ちまして、たとえば毎日新聞、朝日新聞あるいは週刊サンケイ、あるいはテレビの方では「奈良和モーニングショー」といったようなもの、いずれも取材をいたしましてそれぞれ報道いたしております。特に週刊サンケイなどは非常に詳細にその経緯が書かれておりまして、興味を引くわけでございます。 なぜこのような解雇が行われたかということについては、後からいろいろとお尋ねをする過程でおわかりになると思いますが、けさもNHKのテレビで人員整理の問題について一定の取材報道がありました。希望退職というのを募るのだけれども、なかなか応じてくれない面もありそうな状況が映し出されておりました。そして、希望退職というけれども、結局は会社の希望を押しつけられるようなものだということを言って、いまのような時世では、首になってしまえば職業安定所へ行ってもなかなかいい職にありつけるとは言えないから、そういう希望退職の募集があっても応じられないという声が幾つも放映されておりました。 まさに戦後最大の不況とも言われているような現在の状況のもとで、大幅な人員整理が各企業から行われようとしているこの際に、「進退伺」というような形で事実上の退職願を全員から受け取って、そして適当な人間に対してはこれを承認してあげるという形で首を切る、こういうことがすべて通るものならばどこの会社でもやってみたいという欲望に駆られるのは当然でございまして、やはりこのやり方が非常に模範的である、スマートであるということで、業界でも、つまり通信交換機器工業協同組合の人なども、「ヒロセさんは、社長の酒井さんも常務の宇都さんも合理的な人ですからねえ。ほんとにうまくやりました」という池田専務理事の談話なども週刊サンケイの四月三日号には載っております。 余りにもスマートなやり方だということでございますけれども、首を切られた労働者にしてみるとちょっとこれはいただけないわけで、何かペテンにかかったのだという印象が非常に強いようであります。したがって、そんなつもりじゃなかった、というのはどういうわけだというと、会社の社長が従業員を集めて、そうして、「会社はいま非常に売れ行きがとまって苦しいのだ、だから協力してもらいたい」というようなことを訴えておる。大変に、声涙ともに下るような調子で名演技を演じたらしくて、またそれと呼応するように職制の人がたちまち躍り出て、社長の手を握り、「体を任せる、あなたにお任せします」というので、早速「進退伺」というものを出したようでございます。その見本として週刊サンケイが載せておりますのは「進退伺書 私の身柄については、全て酒井社長殿に一任いたします。今後どのような処置をとられようとも異議申立を行いません。」というような形で、「社長殿」ということで自分の名前を書いて出す、こういうようなもの。あるいはそれほど露骨ではありませんけれども「会社の不況に際し、ここに進退伺を提出致します。」というようなもの。大体これはだれかが模範的な文書をつくって先に署名し、提出をするという形で、俗に言うと、大道商人のところでサクラがその品物を真っ先に買って、「これはいい」と言うと見物人もそれにつられて買うといったようなやり方を、職制が真っ先に模範を示して、そしてもう並みいる従業員の人たちがそれにつられて、書かなければ何か異端者であるかのごとき雰囲気のもとで次々となされたのでございます。善意の人たちは、会社が大変苦しいというのだから多少帰休というようなこともあるだろう、あるいは少しくらいの賃金カットとかというようなものはあるのかもしれない、とにかく悪いようにはしてくれないだろう、「進退伺」を出したからといってすぐこれが依願退職願といったようなものになるとは思わなかったということで、みんなにつられてやったと言う。だからペテンにかかった気がするというのは、その翌日すぐこれを承認するということで、先ほど申しましたような首切りが行われたわけであります。 このことについて労働省関係では、つまり職業安定所に届け出があったわけでありますから、どういうふうに理解したのかどうか。新聞記事によりますと、これを扱った五反田の職業安定所などでも、余りにも大ぜいの人が一斉に自己の都合ということで退職しているので不思議だということで、その真相を確かめようとしたといったようなことがあります。事実そういうことがあったのかどうか、お答えをいただきたいと思います。
○関説明員 ただいまお尋ねの件につきましては、二月の二十日に五反田の公共職業安定所に九十五名分の離職票の交付請求が会社の方からございました。それでただいまお話にありましたように、同日付で九十五名の者が任意退職をするというふうなことは余り常識的に考えられないような事態でございますので、安定所の方では、これは会社の都合による解雇ではなかろうかということで会社側に問い合わせをいたしましたところ、本人の方から「進退伺」が出ているので、本人の都合による任意退職である、こういう事情の説明があったようでございます。それで安定所といたしましてはそれ以上、会社都合であるか、あるいは本人の都合による退職であるか、その辺の判断はつきかねますので、一応離職票の離職事由は自己都合による任意退職ということで離職票を交付いたしております。 ただ、失業保険の取り扱いにおきましては、会社の都合によります解雇の場合と、それから本人の自己都合によります任意退職との場合で扱いが異なる場合がございます。会社の都合による解雇の場合には一週間の待機期間を経ますと失業保険金が支給されるというような手続になってまいりますが、正当な理由がないにもかかわらず任意退職をした、こういう場合には一カ月間の期間、給付が制限されるというふうに扱いが変わってまいります。ただ給付日数は変更はございません。そういう扱いになっております。ただその場合に、従来からの取り扱いといたしまして、離職票に記載された離職事由のみで形式的に判断はいたしておりませんで、先生のお話の間にもございましたけれども、不況期に際しまして会社が雇用調整をいたします場合に、まずは帰休等いろいろな手段を講ずるわけでございますが、その次によく行われますのが希望退職の募集というような形で人員整理をいたす場合がございます。そういう場合にも希望退職でございますが、これは通常状態におきます本当の自己都合による退職ではなくて、不況期におきます希望退職の募集というような場合には、これは正当理由のあるものとして、給付制限を行っておりません。そういう意味で、本件につきましても実際に失業保険の受給に参ります場合に、労働者側からよく事情を聞いた上で離職理由を判断するようにということで、五反田の職業安定所から関係の安定所に連絡して、そのように処置しているところでございます。
○青柳委員 いまのお答えにもありましたように、会社の都合ということが実質的な原因であって、決して労働者側の都合でみずから退職願を出したというような性格のものではなく、まさにだれになるかわからない、皆から出されているわけですから、まことに不安定な状態です。ですから残った人もいつまた「進退伺」つまりこれを退職願というふうに理解をして、有効に会社の手元にある限りは、「何日付の進退伺を受理する、これを承認いたします」こういう形になってくるかわからぬわけですね。現にこの「進退伺」というのは二月の五日にみんなから一斉に受け取って、そしてその翌日の二月六日に「通知書」という形で「貴殿の昭和五十年二月五日付進退伺を受理し、これを承認いたします。よって二月二十日付をもって退職といたします。右ご通知申しあげます。」こういうふうになっておるわけでありますから、いずれにしてもいつまた首になるかわからないという非常な不安な状態にある。 ただ、こういう「進退伺」をみんなが一斉に出したのではなくて、やはり疑問を持って出さなかった人もあるのですけれども、そういう人に対してはその場でも職制の人たちが「どうしておまえは出さないんだ」というので詰問をする。あくまでもその場にいて書かせるようにしむけた。それでもなおかつその場で書かなかった人に対しては、今度は会議室に呼びつけたり、あるいは当日欠席していた者は自宅まで押しかけて取り上げるというようにして、ほとんど全員から「進退伺」を取り上げた。ただ数名の者は出さなかった。これは非常に不思議のように思いますけれども、実はここには労働組合があるのです。ところがたった三名しかいない労働組合なんです。珍しい組合と言わなければならない。その三名の組合員は出さなかった。もう一人かが組合員ではないけれども出さなかったという状況。 なぜ、たった三名しかいないような労働組合などというものがあるのかという、そこにわれわれは重大な関心を持つわけであります。このヒロセ電機という会社は労働組合がないということで長い間続いてきた企業ですが、全然組合がつくられもしなかったかというと、実は過去においてもそういう動きは従業員の間であったようであります。しかしその都度会社側から、当社には労働組合というのは要らぬのだ、だからそういうものをつくるのはやめろという干渉が入りまして、双葉のうちに摘み取られてしまって、二度、三度とそういう企画はあったのだけれども成功しなかった。昭和四十八年に初めて、いま残っている三名の人たちが中心になりましてひそかに——公然とつくるとすぐやられてしまうから、ひそかに労働組合の結成のために協力をしまして、約百数十名の人たちがこれに参加をした。で、いつまでも非公然のままでいるのはよくない、これだけの人たちが労働組合に結集してきたんだから公然化しようということで、いよいよ公然化することになったのが昭和四十八年の十一月の初旬のことであります。結成大会と言いますか、もう結成はされておりますから公然化大会と言いますか、そういうものをやろうという計画を立てておりましたやさき、十一月三日付あるいは四日付をもちまして、大多数の人が脱退届というものを組合の分会長あてに書留配達証明で出してきた。しかも、これは受け付け番号などを見ますとみんな続き番号になっておりまして、郵便局も同じというようにして、決して偶然に脱退届を出したのではなくて、みんな申し合わせたように一斉に出した。しかもその文章も、本人が書いたのが主でありますけれども、中身がほとんど一致しているわけですよ。「脱退届私は組合の方針に反対なので脱退いたします。なお、私の脱退の意思は固いので慰留の説得はお断りいたします。本日以降組合の指示には一切従いません。昭和四十八年十一月三日 ヒロセ電機株式会社 何某」とあって、判こを押したり拇印を押したりして、「全国金属労働組合品川地域支部ヒロセ分会殿」そしてあて名には奥山志郎という分会長の名前で書留配達証明が来ている。こうしてほとんどの人が脱退をしたわけです。これは偶然ではないのであって、この人たちがいかに会社の方から脱退を迫られたかということをはっきり事実が証明しているわけです。 いままで、会社に組合は要らぬということを言って、そして組合をつくることに対してはいつも妨害をし、これをつぶしてきたということが今回も行われたわけですね。このことは四月三日付の週刊サンケイにも、さっき言いました宇都勝美常務取締役が述べたこととして載っておりますが、「ウチの会社の特殊性を理解できない人には、判らんでしょうなあ。私は共産党が嫌いです。だから常々そういっている。組合も必要ないと思っている。でもね、私は組合を潰せなんていったこともないし、従業員の差別をしようとも思っていない。私の日ごろの意見を聞いて、会社の下の者が共鳴して、組合から脱退しろ、と働きかけたりしたことはあったでしょうが、私は誰が組合員かなんて知らんですよ。」こういうようなことを言っているんですね。まさに、問うに落ちず語るに落ちたと言いますか、組合は要らないんだということをこういう雑誌の記者にもちゃんと公言しているような会社なんですね。それで「下の者が共鳴して」などと言いますけれども、そんななまやさしいものではなくて、下の人たちがいかに強烈に組合つぶしに奔走したかということは、具体的な事実、つまり、暴力行為までが行われるということによって証明されていると思います。 それで、暴力行為以前には、まずいやがらせというものが頻繁に行われたようであります。結局は三、四名しか残っていない組合員を何とかして、やめさせる、そうすれば組合は完全につぶれてもう存在しなくなるということで、まずこの組合員に対しては他の従業員と隔離して、個室、あるいはロッカーなどで間仕切りをした場所に入れて、事実上一日じゅう軟禁状態、仕事もろくに与えない。これは俗に言う職場の村八分みたいなものだ。そして使用のできない机とかいすを与えておく。もちろん暖房施設はない。ほかのところはちゃんと暖房があるんだけれども、そこはない。そして螢光灯を全部はずして暗くしてしまっている。こういうふうにして刑務所か何かに入れられたような状態にしている。いやならもうやめてくれと言わんばかりにするわけですね。それをがまんしておりますと、今度はそれと並行して、運動会とか旅行とか忘年会といった行事にも一切参加させない。他の従業員には、ああいうのと会ってあいさつなどをすると大変だというのであいさつもさせないようにするし、灰ざらも使わせないし、お茶も飲ませない。そして就業規則に決められている出産の祝いなどももちろん支給しないし、最も露骨なのは、労働基準法で決められている有給休暇や慶弔のための休暇も与えぬ。まさに労働基準法違反を幾つも幾つも繰り返していやがらせをやっている。 そこで、このことについて、労働基準監督署の方では本人たちからの苦情などは聞いて調べをするというようなことがあったのかどうかですね。これもお尋ねしたいと思います。
○岸説明員 ただいまお尋ねの件でございますが、ヒロセ電機のこの「進退伺」を出すように言われたという事件につきましては、三月十日に組合の方々とそれから全金の品川支部の方が監督署にお見えになりまして、「これは解雇と思われるがどうか」というような御相談がございました。これにつきましては、先ほど来先生がお話しになっておるように、「進退伺」というものが発せられて、そしてそれにそれぞれ本人が書いて出しておる。しかもその明くる日になりましてそれをもとにして解職をされておりますので、ちょっとむずかしい問題がある。法律の解釈はその際に御説明をしたようでございます。それから、その前でございますけれども、二月の六日に一部の従業員の方が、これは名前はおっしゃらず、「またこういうような形で解職されているのだがどうなんだ」というようなことの相談があったようです。ただ、こういう御相談を受けまして私ども監督署の職員が法律の解釈の問題は説明をしたようでありますけれども、ただいま御指摘になったような、従前から会社の中にいろいろな差別がある、あるいは年休を与えておらない、あるいは忌引きの扱いについて差別があるということについては、監督署の方には申告がなかったようでございます。
○青柳委員 監督署の方にそれがなかったから気がつかなかったと言われればやむを得ないわけでありますが、昨年の四月ころに五反田かどこか、労働基準監督署へ訴えて、そして有給休暇の問題について勧告書が出されたけれども、会社の方では十分これに応じない。当局の方では「会社が呼び出しに応じないので手の打ちようがない」というようなことを言って、さじを投げた状態になっておるというようなことを聞いておるのですが、この点はお調べになってはおりませんか。
○岸説明員 ただいまの事件はヒロセ電機に関連する問題でございましょうか。
○青柳委員 そうです。
○岸説明員 これは私どもちょっと承知をいたしておりませんが、一般的に申し上げますと、有給休暇の三十九条の違反がございまして、その事実がはっきりいたしますれば、当然これは法律の規定に従いまして処置をするということになるわけでございます。ただ、いかなる事案についても全部これは司法処置をするということではございませんで、事前にこれを是正するような勧告措置を講ずる。どうしてもそれに従わない場合には、当然これは法律の規定に従って処置をするということに相なるわけでございます。
○青柳委員 こういう法律違反をやるのはお茶の子さいさいなんでしょうと思いますから、当然その行き着く先は、最後には暴力行為にまでなるのだろうと思います。本来、法務委員会で一番重視しなければならないのは露骨な違法な行為ですね。解釈上何とか理屈が立つというようなものではなくて、暴力をふるって相手を傷つける、相手に自分の言うことを聞かせるというようなやり方は絶対に民主主義社会では許せないわけでありますけれども、実はこれが頻繁に行われたわけであります。 時期は大体昨年の五月から九月ごろまでの間でございますが、取締役を先頭に、その他課長とか係長とかいうようないわゆる役職の人たちが組合員に対して、何かいろいろの口実を設けて、やめろということを強要するわけですね。結局は、言うことを聞かないから暴行、監禁をやる、あるいは脅迫をする、こういうことで東京地検へ五月中に告訴も出しました。それから六月中には大崎警察署にも告訴を出しました。それから八月にも九月にも、それぞれ大崎警察署に告訴あるいは被害届を出しております。同時に人権擁護局の方にも暴行について訴えをいたしてまります。 そこで、このような告訴を受理して警察から送ってきたのもあるのでしょうけれども、東京地検としてはどのような措置をとられたのか、お調べになっておりましたらお答え願いたいと思います。
○安原政府委員 いま御指摘のヒロセ電機の労使間におきます暴力事件に関しましては、東京地検が受理した事件は全部で三十六件、百六十名でございまして、そのうち会社関係者側から告訴のありました事件が九件で三十九名が告発をされており、それから組合員側からの告訴事件が合計で二十七件で百二十一名が告発をされておるのであります。いま御指摘のように警察から送付を受けましたもの、あるいは検察庁が直接告訴を受理いたしましたもの、合わせまして以上の件数でございます。 事件の内容は、いわゆる組合活動をめぐって生じました労使間の紛争に関する暴力事件があったということでいま申した双方から告訴がなされたものでございまして、組合側からの告訴の内容は、いま青柳委員御指摘のように、会社関係者が組合員に対して暴力をふるったりあるいは監禁をして退職を強要したという告訴の内容でありますし、会社側関係者からの告訴によりますと、その内容は、組合員が会社内などで会社関係者に暴力をふるったという内容のものでございます。これにつきましては東京地検で関係者につきまして鋭意捜査をいたしましたが、結局におきまして、昨年の十二月二十七日に、これらの事件すべてにつきまして犯罪の嫌疑が十分でないということで不起訴処分にしております。
○青柳委員 私の方でも、会社側から組合員に対して告訴を出したという事実があるということは、事実として調べてあります。そしてまた法務省の方からの一定の報告も受けておりますが、つまりこれは相打ちという形、けんか両成敗という形になって処理されたという疑いが非常に濃厚なんであります。会社側の告訴の内容は一々私どもの方で詳しくはわかりませんけれども、問題が起こったといって訴えている会社側の告訴内容を見ますと、それはこちらの方でけがをさせられたり暴行を受けたりした日と大体同じ日なんですね。つまり、こちらの組合員がたまりかねてその場を逃れ出ようとする、それを阻止する、そうすると体と体がぶつかり合うというようなことも絶無ではないと思うのです。そういうときに暴行を加えた、けがをした、こういうふうな形で、自分たちのやったことをいわば合理化するというか、攻撃は最大の防御であるといったような考え方で、こちらが告訴すれば向こうも同じ事柄を逆告訴する。そこで検察庁あたりでも、どっちがどっちかわからないというふうなことで、両方証拠不十分というふうなことになるわけでございます。 こういうことでは人権は絶対に守れないわけでありまして、私どもは、このようにしつこく組合員を三名にするまでやってしまい、残っている、会社から見ればがんこな者に対しては暴力をふるって、あるいは非常な差別をして、そして結局は組合をつぶしてしまうというふうなことがあってはならない、こういうことは民主主義社会では絶対に許されないと思うわけでありますが、せっかくきょう人権擁護関係の方も見えているわけでありますので、こういう問題については何か提訴を受けて何らかの調べをしたことがあるのかどうか、お答え願いたいと思う。
○萩原政府委員 先ほど御指摘のありました、告訴状が出されました翌日、と申しますと昨年の五月二十一日でございますが、ヒロセ分会の分会長の奥山志郎ほか七名の方々が東京法務局の人権擁護部においでになられまして、その告訴状の写しを提出され、「ヒロセ電機株式会社ではこの組合員に対して暴行、監禁等の行為を数多く行っている。そこでこれを調査の上、会社及び下級職制に対し、このような行為をしないような勧告その他必要な措置をとってもらいたい」という申し立てがなされました。 そこで東京法務局人権擁護部ではこの告訴状の内容を検討いたしました結果、告訴状記載事実のうちで、不当労働行為に関連すると考えられます会社役員及び職制による組合からの脱退の強要、暴行、退職の強要等の事実というものに限りまして、この事実を中心に調査を開始することにいたしました。調査に当たりましては、被害者と申される方々の供述は告訴状の写しに陳述書が添付してありましたので、この陳述書を検討いたしました。その上でまず会社側の調査に着手したわけでございます。 まず最初にいたしましたのは、昨年の五月二十四日に会社の人事課長の竹沢吉造、総務課長の中村忠男というお二人の方から事情聴取いたしましたが、「不当労働行為に当たるような事実はない」という全面的な否認の供述がございました。 その後なお調査を進めてまいりましたが、会社側はその後は調査に協力することを拒むようになりました。そこで東京法務局人権擁護部では五月三十日付で人権擁護部長名義で会社の社長にあてまして書面を出しまして、調査に協力するようにという要請をいたしました。この申し入れを会社側も受け入れるようなことになりまして、その後、われわれが不当労働行為の疑いがあるのではないかという三つの点、と申しますのは、第一が四十八年の十一月十五日に下丸子工場主任の本田勝寿らが組合員の眼目昇二に対して組合脱退を強要したという事実、それから取締役の君塚政和が五月十三日に鈴木正行という組合員に対して傷害を与えたという事実、第三に会社の営業部第一係長青野稔らが組合員の西隆信に対して退職を強要したという事実、この三点にしぼりまして、まずその相手方とされています本田勝寿に事情を聴取いたしました。次いで青野稔、さらに君塚政和、以上三名の事情を聴取いたしましたが、いずれも「そのような申し立て事実はない」という趣旨の答えになりまして、その後は調査協力の態度を捨てて、われわれの呼び出しにも応じなくなったのでございます。やむを得ず、地労委の委員会の関係者にも事情を聴取いたしましたり、情報を収集することに努めてまいりましたが、御承知のように、何分にもわれわれの方には強制権限がございませんので、ただいまのところは事実関係を明らかにすることに障害を感じておりまして、進展を見ておりません。ただ、先ほどお話のございましたように、会社側からも労働組合員約十名を相手方とする人権侵犯事件の申し立てがされているということもございまして、引き続き会社側を説得して、その協力を求め、調査した上で、不当労働行為の事実が認められるかどうか、その点の調査を今後も続けてまいりたい、かように存じております。
○青柳委員 なかなか、相手方の人権も尊重しながら調べをするというわけでありますから、非協力である場合に、強権発動ですぐにこれを強制的に連れてきて尋問するというわけにもいかないと思いますけれども、しかし、いかにもそういう法律の弱点といいますか、弱みにつけ込んで非協力の態度をとる、あるいはあくまでもしらを切って否認をするというようなことがいつまでも続くようでは、これは本当に私どもは暗い気持ちにならざるを得ないわけです。民主主義の国でありながら、労使関係の中で、使用者側、資本家側の方が暴力をふるって労働者を押さえつける。しかも、当然憲法で保障されている団結権や団体行動権をじゅうりんするというようなことが暴力によって行われるということがあってはならないと思うわけですね。この数名の組合員でございますけれども、よくがんばっているものだと思って、私どもも第三者として非常にその立場を理解し評価しているわけでありますが、しかしおのずから限界があります。こういう暴行が続いてくる、差別待遇が続いてくるということになりますと、この方々にしても最後には耐え切れないということにもなるし、またこの人たちが長い間苦労して組合を結成し、大ぜいの人たちをこれに結集して、そして労働者の権利を守ることに対して、先ほど冒頭に申し上げましたような「進退伺」などというような形で一方的に首を切って、そして事なきを期するといったような、いまの時世に事実上組員というものの存在を否認するというような使用者、資本家があっていいものかどうか。これはまさに憲法違反であろうと思うわけでありますけれども、したがって、私は今後もこういう資本家側の人権じゅうりんはもう絶対に見逃すことはできないと思いますので、これからも引き続きいろいろの機会に質問をしたいと思いますが、政府としては、法務省もそれから労働省もこういう一連の事柄については常に重大な関心を払い、本人の方から訴えがある場合には正しくこれを受けとめていくことが大事だと思います。 ことに、私はここで最後に申し上げたいのは、けんか両成敗みたいに、両方から問題が出てきたときには相打ちにしてしまって不問に付する、こういうことになりますと、でっち上げによって片方が消されてしまう。つまり、こちら側の方では暴行なんかふるわないにもかかわらずふるったんだ、こういうことは、かつてはよく労働争議などの場合に団体交渉が行われまして、そして多少エキサイトした組合員が大きな声を張り上げるとかあるいは机をたたくというようなことがあり、そしていつまでも長引くもんですから、席を立って団交を一方的に「打ち切りにする」と言って会社側の人が立ち去ろうとする。「ちょっと待ってくれ」と言って体にさわった。そうするともう暴行、傷害を加えたといったようなことで警察へ告訴、被害届を出すというようなことがあったわけです。その場合、まさにこれは挑発でさえもないんですね。多少挑発と言っももいいのかもしれませんけれども、要するに、話の途中で立ち去ろうとするから「待ってください」と言うぐらいなことはあたりまえなんだけれども、何かわざと怒らせるようにして、そして体にさわったからもう暴行だと言う。いわばこれもでっち上げの部類でありますけれども、これはどうも私の調べるところでは、むしろ会社側が積極的に組合員に対して脱退あるいは退社を求める、そしてたまりかねてその場を去ろうとする、それで体がさわった。これを暴行だと言う。そういうふうにしてでっち上げていく。大体、三名や四名の組合員、それをゴボウ抜きにして、まとめて暴行を加えるのではなくて個別に暴行を加える、脅迫を加える。相手は多勢でこちらは少ない、一人という状態の中で、こちらが向こうに暴行を加えるなどということは考えられないことなんでありますけれども、そういうことで帳消しにしてしまうというようなことが考えられているのではないか。私は、不起訴処分にされたということは非常に遺憾なことだと思いますが、具体的ケースでございますから、それに対してどういう措置をとるかということは今後当事者がやることだろうと思いますが、いずれにしても一般的な問題として、法務省あたりの扱い方、労働関係についての扱い方は公正厳正にやることを私は希望いたしまして、本日の質問は終わるごとにいたします。
○小宮山委員長 次回は、来る二十八日金曜日、午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後一時五分散会