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75回国会衆議院1975/03/18

法務委員会 第13号

発言数
96
登壇者
3
会派数
2
開催日
1975/03/18

会議録

小宮山重四郎自由民主党

○小宮山委員長 これより会議を開きます。  内閣提出、刑事補償法の一部を改正する法律案並びに横山利秋君外六名提出、刑事補償法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。稲葉誠一君。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 現行の刑事補償法ができたときに、これは二十五条ですね、「免訴」と「公訴棄却」、これは政府原案にはなくて、何か参議院で修正になったのですか、その間の経過がよくわからないのですが、それと、その条文がちょっとわかりにくい条文なんで、その間の経過を説明願いたいと思うのです。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 私も詳細はつまびらかではございませんけれども、衆議院で、公訴棄却、免訴になった者でも、実質が無罪の裁判を受けるべきものであったとすれば気の毒ではないかという議論が行われまして、衆議院はそのまま政府案のままであったところ、参議院でその趣旨の修正がなされたというふうに聞いております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 そうすると、公訴棄却というのは具体的にはどういう場合に公訴棄却があるわけですか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 刑事訴訟法の三百三十八条の「判決」による公訴棄却の場合と、三百三十九条の「決定」による公訴棄却の場合、二つがあると理解しております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 それはそうなんですが、ただ現実にはどういうふうな場合に公訴棄却がいままで行われていますか。ほとんどないですか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 おおむね検察官が適正に公訴の提起をいたしておりますので事例としては少のうございますが、一つ、三百三十九条の四号でございますが、被告人が死亡したというような場合に公訴棄却が行われる場合が通例のように承知いたしております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 刑事補償は、死亡の場合は決定があってから死亡した場合ですか、あるいは死亡した後にも決定があるのですか。どっちでしたか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 公訴棄却そのものは死亡した後でございます。したがいまして、補償の問題もその後に起こる問題でございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 よくわからないのですが、刑訴法の三百三十九条一項二号による「公訴棄却の決定」について、「起訴状に記載された事実が真実であっても、何らの罪となるべき事実を包含していないとき。」こういうふうに規定しておるのですが、二十五条の場合には「公訴棄却の裁判」といって、制限してないのでしょう。そうするとそれとの関係はどういうふうになっているのですか。これはよくわからないのですがね。     〔委員長退席、保岡委員長代理着席〕

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 「公訴棄却の決定」による公訴棄却、いわゆる三百三十九条二号の場合でございますが、これは決定手続で行われるということは、学説あるいは通説も指摘しておりますように、実体的な審理を行わなくても一見して明白な場合に形式的審査で足りる場合が「決定」だということに相なっておりますので、この二号の場合も、起訴状を見ただけで実体の審理に入らなくても罪とならないということが明らかである場合ということであると理解をいたしております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 そうすると公訴棄却の場合は、公訴棄却になった理由にもよるのでしょうけれども、再起訴はできるわけですか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 当然、既判力がございませんので修正して再起訴をするということは可能でございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 それから準起訴の場合はどういうふうになっているのですか。——それではまず「準起訴」というのを説明してください。準起訴というのをまず説明してもらわないとわからないのですが……。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 どうも釈迦に説法のようですが……。刑事訴訟法の二百六十二条にその規定がございまして、刑法の百九十三条ないし百九十六条の職権濫用、または破壊活動防止法第四十五条の公安調査官の職権濫用の罪について告訴または告発をいたしました者は、検察官がその告訴、告発の捜査の結果公訴を提起しない処分をした場合にそれに不服があるときに、その告訴、告発をした者が、その不起訴処分を行いました検察官所属の検察庁の所在地を管轄いたします地方裁判所に事件を裁判所の審判に付することを請求することができるわけでございまして、この請求がありました場合に、その請求に理由があるかどうかということを刑事訴訟法の二百六十五条で裁判所が審理を行いまして、請求の理由があれば管轄地方裁判所の審判に付するという決定をいたしますし、請求に理由がない、あるいは請求の方式が法令に違反しておるあるいは請求権の消滅後なされたものであるということで請求に理由がないときには、請求を棄却する決定を裁判所が行うというのが「準起訴手続」でございまして、要するに、起訴、公訴権を原則として独占いたしております検察官の公訴提起権に対する一つの例外としてかような手続が認められているわけであります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 いまの「付審判」のときに請求棄却がありますね。そうするとそれに対しては既判力は生ずるわけですか。裁判所がやったんですからこれは生ずるのでしょうね。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 既判力は生じないものと承知しております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 生じないとなると、その場合に身柄は入ってない場合と入っている場合とありますね。普通入ってないですね。そうすると入っている場合には刑事補償の対象になるのですか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 現行の刑事補償法ではこれは補償の対象にはならないものでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 それはどういう理由からならないわけですか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 どういう理由からと言われましても、少なくとも現行法にはそういう規定がないわけでありますから、なぜそれを抜いたかという理由に相なるかと思いますけれども、本来、刑事補償法の二十五条のような場合は例外といたしまして、先ほど申し上げましたようにこの請求棄却の決定というものは既判力の生じない、したがって確定力のないものであるとともに、いわば犯罪における被疑者と同じような地位にあるものとして、その請求の棄却決定自体が確定力のない不確定なものであるということから、刑事補償法の原則はやはり無罪の裁判という確定力のある裁判を前提とした補償を行うというのがたてまえであるということから見ましてその制度になじまないということもあったと思いますし、またいま御指摘のように、こういう準起訴手続における請求の理由あるやなしやの審判の過程において勾引、勾留というようなことが、私ども承知しておる限りではなかったということでして、そういう必要性ということもまたなかったという実際的な面と、それから法理論的な面と、二つの面からかような制度が設けられなかったものではないかと推測いたしております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 だから、被疑者補償規程が、もちろん裁判じゃないから既判力がないし、それから検察官の起訴が後からひっくり返るかもわからぬからきわめて不確定だというのでしょう。それならば二十五条だって、いろいろ条文に制限はあるにしても、それで再起訴はできるわけでしょう。それから後からひっくり返ることも考えられるわけですね。まあ制限はありますよ。だから一貫しないんじゃないですか、そういう理論では。そこがおかしいんじゃないですかね。二十五条をくっつけたのはおかしいんだ、政府はそんなものはくっつけなかったんだ、それは議員が勝手にくっつけたんだから、自分の方としてはそれはおかしいと思っているんだけれどもしょうがないんだという理屈かもわかりませんがね。だから一貫してないんじゃないですか。もっとも答えとしては、だから二十五条はきわめて制限されてあるように条文自体がなっているんだというふうになるかもわかりませんが、一貫してないような感じがしますね。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 不確定な処分と申しますか、不確定なものを前提として補償を認めたという意味においては、補償法の二十五条というのはきわめて例外的なものであるというふうに理解せざるを得ませんし、御指摘のように、政府案としてはそういう意味においてかような制度を設けるべきではないという考えで一貫してきたわけであります。そういう意味でこのようなものは非常に例外である。その証拠には、公訴棄却の裁判があった者で二十五条の条件に当たる者が補償をなされた事例を顧みますると、単独で当該決定があった、公訴棄却の判決があったということで、当該判決を受けた者が、おれは本来は無罪であったんだということを主張して認められたということのために、決定手続において審理をしてそして無罪ということを明らかにするに当たりまして、実質的な審理をして行ったという場合は絶無と言っていいのでありまして、例といたしましては、メーデー事件の被告人で公訴棄却の判決を死亡のために受けた人が、共犯者の判決において無罪ということになった、そういう無罪の確定判決を前提にして請求をして認められたという事例が最近はわずかに認められるわけであります。  要するに、当該決定でこの要件に当たるかどうかということを実質的に審理をしたというよりは、他にある裁判あるいは既存の書類による形式的な審査によってこの裁判がなされておるわけでございまして、そういう意味で、この事例がないわけではありませんけれども、この制度自体が免訴あるいは公訴棄却の裁判の中身に入って、真っ白か灰色かというようなことを審理すること自体が——本来言えば、免訴あるいは公訴棄却の審判はそういうことに立ち入らないで済ませるところに特徴があるのに、その特徴をあえて抹殺してまで立ち入らなければ運用ができないということ自体、この制度自体がすでに現行法でございますから否定はいたしませんけれども、非常に無理のある規定であるというふうに考えておりまして、その無理にならって被疑者補償規程を立法化することの必要はないというのが私どもの結論でございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 そうすると、公訴棄却があって、補正して再起訴した、そして、前には勾留があるけれども再起訴後には勾留がないという場合はどうなんですか。これは久留米で判決があるから聞いているのです。大臣が来ないから勉強会をやっているところですがね。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 これにつきましては、もう稲葉委員御指摘のとおり、久留米の支部の判決で、最初の勾留をした事件について公訴棄却の裁判があり、それを補正して同じ罪について今度は不拘束で起訴したところ無罪になったという場合につきまして、当該事件の公訴棄却前の手続において勾留、いわゆる身柄の拘束がなされておるならば、それは一貫して考えるべきであるから刑事補償の対象になるという久留米支部の判決がございまして、これはそれなりに私どもとして正しい結論であるというふうに考えております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 その一貫して考えるべきだということは常識的な結論かもわかりませんけれども理論的に訴訟法的に言うとこれはどういうふうなことになるんですかね。そこのところはどういうふうに理解するんですか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 なかなかむずかしいお尋ねでございますが、訴訟法的には別の手続であるが、刑事補償という観点から考えて一貫して考えるのが正義、公平にかなうということであろうかと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 それは大体そういうことでしょうね。  刑事補償というのは、一つは故意、過失を問わない、一つは定型化だ、この二つの要件がありますね。その故意、過失を問わないという意味がどうもはっきりしないのですよ。故意、過失を問わないという意味は、故意、過失あるいは故意、過失以外のものも含む、その含むものについて恩恵的に与えるというか、憲法に規定があるけれども、そういうふうなことを言っておるのか、あるいは国として、刑事犯罪被害者補償法なんていま問題が出ていますね、あれと同じように、国が無実の者を罪に陥れてはいけないという一つの防止義務というか、そういうふうなものがあるので、それに違反したとか、いろいろな考え方があると思うのですが、無過失責任を認めておるというふうにとっていいのでしょうかね。そこがよくわからないのです。故意、過失を問わないという意味がどうもはっきりしないのですよ。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 刑事補償制度は憲法四十条から援用いたします国民の請求権を認めたものでございまして、決して簡単な恩恵というものではないと思います。いまお尋ねの故意、過失を問わないということの意味でございますが、刑事補償制度は定型化された補償、損害賠償ではあるが、故意過失を問わないという意味は、故意、過失のあると否とを問わないという意味でございますから、もっと平面的に申せば、故意、過失のある場合、故意、過失のない場合、どちらも入るということであると考えております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 それはそうなんですがね。一般的に言って無過失責任を認めたときにとっていいのですか。起訴して無罪になった、その場合には国は無過失責任を負うんだと見ていいのですか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 いま申し上げました反面といたしまして、無過失責任を認めた制度であるということになると思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 刑事補償をもらって、そのほかに国家賠償を請求している場合がありますね。これは並行しませんね。刑事補償が終わってからが多いと思います。松川であるとかメーデーだとか、その他たくさんあると思うのですが、そういうときに一体国はどういう答弁をしておるのですか。国賠について国はどういう答弁をしておるのですか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 国家賠償と刑事補償との関係は、稲葉先生御案内のとおり第五条に規定がございまして、第五条三項にありますように、国家賠償の場合におきましては、「他の法律によって損害賠償を受けるべき者が同一の原因についてこの法律によって補償を受けた場合には、その補償金の額を差し引いて損害賠償の額を定めなければならない。」ということになっておりますので、刑事補償の定型化された損害補償では足らないという場合に、現実には国家賠償請求が故意、過失を主張してなされるわけでございますが、国といたしましては、刑事補償がなされております場合には、いま担当者の説明によりますと、刑事補償を受けておるからその額を差し引くべきだということを主張しておるようでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 それはあたりまえな話で、充当の問題でしょう。そんなことを聞いているんじゃないですよ。そうじゃなくて、刑事補償をもらっているでしょう。それに基づいて国家賠償を請求するでしょう。そのときに、こっちの方は国に故意、過失があるということを原告の方で請求するわけでしょう。主張するわけでしょう。それに対して国の方では一体、自分の方には過失があるとかないとか、どういうふうな主張をするのか、こう聞いているのです。無過失責任を認めているならばその過失の点について争いが起きるわけないじゃないですか。それが、国家賠償が非常にむずかしくて長くかかるのがおかしいということになってくるのじゃないのですか。みんな過失を争っているのじゃないのですか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 まことに恐縮でございます。争っております。過失がないということを争っておるのが通例でございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 だってそれは無過失責任じゃないのですか。それとはまた違うのか。刑事補償の場合は無過失責任だというのですか。国家賠償になってくると無過失責任じゃないというのか。そこらのところがちょっと理解ができないな。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 それは稲葉先生、明快に御理解いただけると思いますが、憲法の十七条の国家賠償は公権力の行使に当たる者、公務員の故意、過失を前提とする賠償でございますから、いまの国家賠償事件はまさに故意、過失を主張して原告が請求するのに対しまして、応訴する国側としてはそれがないということを主張しており、刑事補償は無過失でございますから、それについては過失の有無を問わず補償がされることについては検察庁あるいは国としては文句がないということになるわけで、決して矛盾はいたさないというふうに思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 検察官が起訴して無罪になったということ自身で、そこで過失があったというふうに推定されるんじゃないのですか。それはされないのですか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 公訴提起制度というのは、明文はございませんけれども、有罪を得る可能性、見込みについての合理性があればいいということになっておりますとともに、証拠はその後においても収集され、反対の証拠が収集されるということもあるわけでございまして、たびたび申し上げますように、起訴処分というのは決して有罪を確定する処分ではございませんから、それは将来において変更のあり得る処分でございますので、その起訴当時における検察官の心証において有罪を得る見込みの合理性というものが一応その段階において判断されれば、それは過失があったということにはならないというのがわれわれの考え方でございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 それじゃ、検察官が起訴して無罪になって、国家賠償で検察官が過失がなかったというので原告が負けたというのがあることはあるのですか。それはどういう事件があるのですか。特別な場合、ないことはないと思いますが、どういうふうなのがありますか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 あることはあるどころじゃなくて、相当多数ございます。ちょっと件数は数えておりませんけれども、昭和三十七年から四十九年までの間に十七件の事例がございますが、そのうち国家賠償法上の過失がないというのが八件もございますから、過失がなかったという判断をされる場合が半数に近いということでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 その場合は刑事補償はちゃんと全部もらっているのですか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 裁判所当局からいただいた資料によりますと、刑事補償を請求して刑事補償がされ、そして国家賠償を、足らないからといって請求して過失なしになったものというものの実態調査が十分できておりませんが、この表を見ますると、刑事補償は受けたが過失なしになったものが二件ほどあることが事例でわかっておりますが、全体がもう一つ明確でない、つまり、刑事補償をしたかどうかという面からの調査でなくて、国家賠償としてどうであったかということの調査の事例でございますのでその点が正確ではございませんが、恐らく相当の部分について刑事補償はしたが、足らないので国家賠償を請求したところ、過失なしとされた事例が多いものと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 いまでなくていいのですけれども、刑事補償を受けて、同じ事件で国賠を請求したというのはどの程度あるのですか。なぜそれを聞くかというと、その原因とかなんとかというよりも、たとえば金額の差が出てきているでしょう。それがあるから聞きたいわけです。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 いま御指摘の資料はいま裁判所当局においておつくりをいただいておるようでございまして、それを提出することといたしたいと思いまするが、一般には、刑事補償は簡易な損害補償制度でありますが、やはり低額でございますので、不足分があるというような場合に国家賠償を請求するということが往々にしてあるのじゃないかと推測いたしております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 それで、きょう訟務部を呼んでないのは悪かったかもわかりませんけれども、問題になってくるのは、刑事補償の金額と、国賠で請求して認められた金額の中から刑事補償の金額を引くのですが、その金額との違いがどの程度あるかということです。  それと、国賠が非常に時間がかかるということです。時間がかかるということ自身がおかしいので、それは故意にというか、いま言ったように検事が起訴して無罪の裁判が確定しておるならば、当然それは過失があったというふうに推定されて、故意、過失の立証にそんなに長い時間をかけるのではなくて、たとえば逸失利益だとかそれから慰謝料の問題に早く入っていけばいいのに、そこのところで時間がかかって恐らく国賠が延びているのではないか、こういうふうに思うのです。だからそこのところに問題があるのではないか、こういうように思うのですが、それはいまここでなくてもいいのですが、後でわかる範囲で調べてもらいたい、こう思うのです。  それから、刑事補償というのは無罪の場合ですね。それで無罪の場合にどういう理由で無罪になったかということです。これはいろんな意味で、捜査の技術的な問題とかテクニックの問題とか、それから調書の任意性の問題とか人権の問題とかいろいろあるわけでしょう。そういうふうな問題なぜ無罪になったか。それはあなた方の方から言わせれば本当の無罪じゃないのだ、これは灰色なんだ、疑わしきは被告人の利益で無罪になったけれども、どうもあれは納得がいかぬというのもあると思うのですが、まず、その無罪はどの程度全体の中であるかということですね。あなた方の方じゃすぐ道交法の略式だとかなんとか入れますからね。これを入れるというと全体の中の割合が非常に少なくなるわけですから、略式はだめですよこれは抜いて答えてもらいたいんですがね。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 略式で無罪というよりも、略式請求をしたところ正式裁判を請求して無罪になったものを含めまして、したがって基本的には略式起訴も含めまして通常受理人員を四十八年に例をとりますならば、二百九十四万三千八十六人の通常受理をいたしまして、そのうち起訴をいたしたものが二百十八万七千三十二人でございまして、そのうち裁判の確定いたしましたものが二百十万九千五百四人で、そのうち第一審で無罪の言い渡しのあったものが四百九人、それから第一審でそのまま確定いたしましたものが三百三十二人というような統計になっております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 それで、これは道交法や何かが入っているから、通常受理の中の起訴率というものは九割くらいなのかな。どのくらいになるのかな。八割か、六割くらいか。幾らになるんですかね、これは。もとは起訴率というのは二割くらいだったんじゃないですか。このごろはほとんど起訴猶予というのはなくなってしまったんじゃないですか。もとはどうでした。もとと言ったって、もとという意味はいろいろあるけれども……。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 いわゆる道交法を除きますと、通常事件、その他の事件の起訴率は六〇%でございますので、不起訴処分率が四〇%ということと最近にはなっております。昔は起訴猶予の関係で不起訴率がもう少し高かったと思いますけれども、そう著しい違いはない。それほどに最近において検察方針が厳罰主義になっておるということはないと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 いただいた資料を見ますと、四十八年の無罪が四百九件で、一審で確定したのは三百三十二でしょう。ちょっと資料を見てください。そうすると差は七十七でしょう。七十七は検事控訴か何かしたんでしょう。ところが、四十八年のこの後の方の統計を見ると控訴人員が八十六になっている。これはどういうわけかな。ぼくの統計の見違いかな。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 いま御指摘の資料は、「無罪人員調」の表と、それから「無罪事件のうち検察官が控訴した被告事件人員調」というのとはいわゆる一連の統計ではございませんで、御指摘のように数字の違うのはそういうところから出ておるわけでございまして、いま御指摘の、検察官が控訴をした被告事件の人員数は、たとえば四十八年におきましては、これは決して検察官が控訴した人員ではなくて、逆に、無罪事件のうち検察官が控訴を四十八年中にいたしました事件で四十八年中に裁判の結果の出たものがかようあります。それの総計が八十六でございますという、いわば逆算した数字が八十六になっておりますような統計でございまして、そういう意味では、左から右に行かず右から左へ行く統計が「無罪事件のうち検察官が控訴した被告事件人事調」の表でございます。それから「無罪人員調」の表は左から右へでございますが、逆に今度は、無罪言い渡し人員の四百九人のうち一審で確定をいたしましたものが三百三十二人でございますが、それは四十八年中に確定したという意味でございますから、確定数が若干年末においてはふえているかもしれませんが、そういう意味で無罪人員調と控訴事件結果人員調の中には、一連の連絡をした統計ではないので数字に若干食い違いがあるのはひとつ御理解をいただきたい、かように考えます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 そこで無罪になったのは、実際検事控訴が随分立っていますね。全体の中で大体半分以上立っておるのですね。検事控訴の場合は普通の控訴と違って、特別に確実なやつでないと控訴しないことになっておるでしょうから、そうむやみやたらにしないからかもわかりませんが、いずれにいたしましても無罪が確定した者について、その理由はどういうところにあるのですか。私の聞きたいのは特に無罪の理由を聞きたいわけなんですよ。これではわからないと思いますがね。「証明なし」とか「違法阻却」「責任阻却」「その他」じゃ何だかわからぬな。説明の仕方がこれじゃわかりませんがね。どこからどういうふうに調べたのか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 同じ資料が稲葉委員のお手元に行っておるわけでございまして、現在のところ裁判所当局にお尋ねいたしましてもかような、「証明なし」いわゆる犯罪の証明がない。これは真っ白もあれば灰色もあるというふうに実際的には思われる証明なし。それから「違法阻却」「責任阻却」、これは下に注がございますように、違法阻却は三十五条、三十六条、三十七条のいわゆる正当行為等でございます。責任阻却はいわゆる責任無能力の場合でございまして、「その他」の中がいろいろあるようでございまして、裁判所御当局にお尋ねいたしますと、この中に、犯意がないとか、あるいは信頼の原則の適用のある場合、あるいは違法性といっても、違法ではあるけれども可罰的な違法性がないという最近の刑法理論の適用を受ける場合、それから刑事訴訟法にございます罪とならずというようなものが「その他」の中に入っておるという御説明を受けております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 どうもこの資料はよくわかりませんが、これ以上の資料をとると言ってもなかなか、実際には一件一件当たって内容を調べなければとれないものですから、実際問題としては大変なことだと思います。しかしこれはとれないこともないと思うし、それは別にしますが、私の聞きたいのは、調書が任意性がないといって、そしてそれが重要な理由になって、自白に任意性がないといって無罪になったというのが相当この中にあるんじゃないかと思うのですよ。「証明なし」という中には恐らくそれが多いんじゃないかと思うのですがね。はっきりとした数字はわからないとしても、その点はどういうふうなんでしょうか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 統計上は、いま申し上げた統計の中では「証明なし」の中に入るわけで、それは証拠にはなりませんから、したがって証明ができないということになるわけでございまして、御指摘のように、そのような事件がどれだけあるかという統計は一々事件を見ませんとわかりませんので急の間には合いませんけれども、最近におきます四十七年以降において無罪が確定したいわゆる著名事件というものを一応見てまいりますと、辰野事件につきましては東京高裁で自白の真実性に疑いがあるというようなことが無罪の主な理由でございますし、仁保事件につきましても自白の証拠能力と信用性に疑いがあるということでございます。それから最近におきましては、名古屋地裁の豊橋支部でございました豊橋の親子三人殺人放火事件につきましても、任意にはなされておるけれども自白の信用性に疑いがある。任意性に疑いはないが自白の内容の信用性に疑いがあるということで無罪になっておるのもございまするから、そういうものはある程度含まれておることは事実でございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 そこで私の聞きたいのはその自白の任意性の問題で、それは警察の場合もあるし検事の場合もある、こう思うのですが、そこで供述調書がとられますね。そこで一審が有罪になったり、一審が無罪になって検事控訴して無罪になったり、いろいろあると思うのです。それは特に戦後の新刑訴法ができたときのいわば混乱期の事件もありますからいろいろあると思いますけれども、その中で、警察官なり検事がそういうふうな捜査をやって、人権をじゅうりんしたということで責任をとらされたというふうなことが一体あるのかないのかということですよ。たとえば、被告人は長い間未決に入れられてとてもかなわぬ、ひどい目に遭っておるのにそれをやった方はさっぱりだということでは、国民感情からしても許されないということになってくると思うのですが、そこでたとえば豊橋の支部の例で、これは近藤君が総務部長をおろされて、左遷されたのか降格されたのか、何かありましたね。この間の経過は一体どういうことなんですか。これは近藤君自身の責任なのかな。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 近藤検事が名古屋地検の総務部長を何ゆえに解かれたかということは人事上の問題でございますので、個人の名誉もございますので詳しく述べることは御勘弁願いたいと思いますが、いま御指摘のように、無罪になったということ、そのことは、いわば主任検事がもとより自己の起訴が無罪という結果になったことについて道義的な責任感を感ずるということは、これはもう当然のことと思いまするけれども、本来、無罪になったということ、そのことは、検察同一体の原則から見まして決して近藤君だけの問題でなくて、まさに検察庁自体の問題でございます。したがいまして、近藤君が総務部長を解かれました理由も、無罪になったから総務部長を解かれたということではなくて、やはりその捜査の全体を見まして、その無罪になったような事件の捜査というものが全くこの総務部長の解任に無関係とは申せませんけれども、ただそのことのために総務部長を解かれたというのでなくて、総務部長という地位に置いておくのが不相当であるというような事情がそのほかにもあったということで総務部長の職を解かれたのでございまして、懲戒とかあるいは責任を問うという意味において総務部長の任を解いたということではございません。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 それはわかりますけれどもね。そうすると、検事同一体の原則はわかりますが、具体的に、総務部長を解いたということはどこでどういうふうにして決めたのですか。個人の名誉に関することだからぼくもその辺は細かく聞くのではなくて、そういうことについて一体法務省が人事にどの程度関与するの。そこですよ、問題は。関与しているのかしていないのかということですよ。それは名古屋高検だけでやったことなのか、最高検も関与してやったのか、あるいは法務省が関与したのかしないのか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 総務部長の任免は法務大臣の人事権の発動でございますから、本省が当然に関与いたしております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 総務部長あたりの任免までどうして法務大臣が関与しなければいけないの、そんなことまで。捜査の指揮権は、法務大臣は検事総長に対するだけですね。そのことから言って、それは捜査そのものじゃないにしても、そんなところの内部のことにまで法務大臣は関与しなければいけないの。それは政党出身の、政党政治というか、それはもうそういうふうな者が検察庁に対する支配関係というものを強烈に持つことになるんじゃないの。そんなのおかしいなあ。これは大臣が来てから後から聞きますけれども、そんなことはおかしいよ。そんなことは名古屋局検あたりに任せておけばいいことで、あるいは最高検に任せておけばいいことじゃないのかな。そんなのはおかしいなあ。ぼくが一番疑問に思いますのは、法務省が一体人事にどれだけいろいろな問題で関与するかということですよ。そんなのは筋が違うように思いますよ。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 先ほど申しましたように、無罪になったからということで総務部長の任を解いたことでないことは明らかでございますが、本件のような地検の総務部長の人事は、重要なポストではございますが、決して法務省が現地の意見を聞かずにやるのではなくて、これは現地高等検察庁検事長の上申に基づきまして法務大臣が認可するということで行われたものでございまして、一般にそういう姿勢でございます。したがって、実際の運用におきましても、検察の独立ということを常に配慮しながら法務大臣は人事権を運用されておるのでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 そこで刑事補償法に戻ります。余り横道に行くと……。  この刑事補償法の規定の中で、金額ですが、六百円以上を八百円以上とか、二千二百円を三千二百円とか、これは上限ですね。こうすることの具体的な根拠をまず聞くわけですが、私どもの方で出した案ではこれは失対賃金と比較してますね。そうすると法務省当局は、失対の賃金、これも地域によって違いますけれども、それから生活保護、これも場所によって違いますけれども、そこら辺をどういうふうにつかんでいるわけですか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 いわゆる補償の金額、日額の問題につきましては、この法律が旧刑事補償法から援用しておるその当時にさかのぼって、当時は一日五円以内ということであったのでございますが、それがなぜ決まったかということから遠因をたどって今日の姿を説明するほかはない問題でございます。なぜ一日五円ということになったかということを、さかのぼって当時の資料を見ますると、結局、刑事補償の日額でございまするから、的確にその当時右へならえするものがなかったようでございますが、一応当時のいわゆる司法関係の日当等を見ました場合に、五円というのは陪審裁判における陪審員の公判審理に出頭したときの日当であったということでございまして、そういう意味で大体証人の日当というようなものを横にながめながらスタートしたということが言えるのではないかと思うのでありますけれども、当時そういう五円でスタートいたしたものを、第六回国会で現行補償法ができますときに基準日額が一日二百円以上四百円以下というように定められました。それは、この五円を一応の基準としなから、現行法制定の第六回国会当時におきます賃金とか物価とか、刑事訴訟における証人日当の額を勘案して、この程度であれば一応補償されたと言い得るという常識的な判断に基づいたもののようでございまして、的確などの賃金に対応するということでなくて、一応そういうものを考えて、この程度ならば客観と申しますか、一応これで補償されたということになるのじゃないかということで、二百円以上四百円以下ということに現行法の制定当時になったようでございまして、それがその後、昭和三十九年、四十三年、四十八年と、物価と賃金との平均上昇率というものを考慮しながら、四十八年には二千二百円になりました。  そこで、昭和四十八年以後における、従来引き上げるときのパターンであります、改正をする当時の賃金や物価の平均上昇率というものを考慮いたしますと、四十八年を一〇〇とした場合における昭和五十年の推定指数は、賃金関係では全産業常用労働者の一日平均現金給与額が一四七・四であり、それから物価関係では全国消費者物価が一三九・二である。そしてこれらの数値を平均すると一四三・三となるというようなことで、二千二百円に一四三・三を掛けて数字を丸めますと三千二百円ということになったというのが、この三千二百円に引き上げようとする理由でございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 ぼくが聞いているのは、失対の賃金や生活保護基準というものと比較しないのかと聞いているのですよ。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 そういうものをにらんではおりますが、それに対応するということではなくて、先ほど申し上げたような経過でございますが、結果といたしましていわゆる最低生活保障水準、厚生省の白書によりますと標準四人世帯におきます一日の水準が三千百十七円となっておりますし、それから日雇い労働者の一日平均の額が三千五百四十八円という数字が出ておりますので、これらのものとそう大差はないということになろうかと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 それは外へ出ていて家庭生活をやっている場合の話でしょう。これは未決の中に入ってやられて、中で苦しんでいる場合の話でしょう。外へ出ているのが一〇〇で未決に入っているのが一二〇なら、それはそれでもいいと思うのです、それならやる必要はない。外へ出ているのを一〇〇と考えて未決に入っているのを一〇〇と考えれば、それはいいかもわからぬけれども、外へ出ているのを一〇〇と見たときに未決に入っているのが一〇とか二〇になれば、逆算してきて、外へ出ている場合の金額の五倍とか、あるいは三倍とか二倍とかいうように考えなければ意味ないじゃないですか。そういうのは、ただそういうふうな金額と比較しただけでは、中に入っているときの苦しみというか、そういうようなものに対する手当てというものは全然ないですもの。おかしいじゃないですか。それならこの金額は何ですか慰謝料なのか逸失利益なのか。全体を含んでいるとすればどの程度が慰謝料なのか。慰謝料中心なんですか、あるいは逸失利益も含まれているのですか。これは何なんですか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 先ほど陪審員の日当五円と横ににらみながらと申しましたが、証人等の日当はいわゆる慰謝料は入っておりませんで、いわば証人に出たための得べかりし利益の補てんというようなことが一応考えられておると思いますが、刑事補償法におきますところの補てんの対象となる損害というものは、いま御指摘のとおりもっと広うございまして、いわゆる得べかりし利益あるいは逸失利益、それから精神上の苦痛、あるいは身体上の損害、第四条の第二項の裁判所が額を定めるに当たって勘案すべき精神的、物質的損害が補てんの対象になるのでございまして、そういう意味においては広いものを含む三千二百円ということになるわけであります。しかしながら、先ほど来御議論いただきましたように、この制度はいわば定型化された補償であって、故意、過失の有無を問わない補償であるという意味において、それはいわばそういう意味におきまして必ずしも全額を補償するというたてまえにはない制度そのものから来て、ある程度、いわゆる実質の得べかりし利益あるいは喪失した利益そのものの損害が補償されなくてもやむを得ないものであるというふうに考えております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 第一、いまの五円というのが陪審というのは、いまは陪審制度がありませんからよくわかりませんけれども、これは一日出たわけではないでしょう。午前とか午後とか出て、評決に加わるのかな、意見を聞かれる程度でしょう。そういう程度であって、その日当ですね。それと比較するということ自身がこれは筋としてはおかしいですよね。それから二番目に、故意、過失を問わず、故意、過失を問わずと盛んに言うわけですよ。故意、過失を問わずというのは、いかにもやってやるのだという考え方が前提になっているように聞こえますよ。故意、過失を問わず、故意、過失を問わずと盛んに言っていることはね、そういうふうに僕には聞こえるのですがね。それから三つ目に、国賠法が簡単に行われるならばそれはいいのですが、国賠法になってくればあなたの方、国の方では、いやおれの方は過失がないのだと言って争って、過失があるかないかでごたごたごたごた三年も四年もかかるでしょう。とても国賠法で訴えるだけの資力というものが一般の国民には、それは訴訟救助やいろいろなものがあったとしたって実際できないわけですから、これはなかなか簡単にいかないですよ。  その三つの点を考えると、この金額というものはもっと大幅にアップしなければいけないのじゃないか、こういうふうに私どもは考えるということになろうかと思うのです。これは一たんこういうふうに政府が出しちゃったのだからどうにも決められない、これ以上どうこうできないのだということかもわかりませんけれどもね。だって、三千二百円が最高だと言ったって、三千二百円ぐらいいま皆取っているのじゃないですか。高校卒の十八歳だっていまは六万か七万ぐらいみんな取っているでしょう。これはどんどん上っていくんですもの。学校の先生だけ上がっているわけじゃなくて、公務員だって上がっているのだから、この金額では無理だ、私はこういうふうに思いますよ。  陪審員の日当の五円ということ、最初それで決まったからといってそれにこだわり過ぎるのじゃないかな。改めて考え直す必要があるのじゃないですか。一般の人の給与というか、報酬というか、日当というか、それにプラス、中に入っていて苦しんでいるということの、それに対する精神的な苦しみというものをどの程度の割合で見るかということを付加して考えていけば、こういう数字は出ない、私はこういうふうに思いますよ。あの中に入っていて、無罪になって一日二千円か三千円でやられて、後は国家賠償でやれ。国家賠償でやるのは大変な騒ぎだというのでは国民は納得しないのだ、こう私は思いますよ。どうも納得できませんよ。これは後で大臣に聞くようにしましょう。どうも、故意、過失を問わず、故意、過失を問わずと言うのは、何だかしゃべり方としておかしく聞こえますね。いかにもやってやるのだ、やってやるのだというふうに聞こえるのだな。そういうふうに僕にはとれるのですがね。  それから、後でまとめてお答え願ってもいいですが、もう一つ別なことで、被疑者補償規程の問題が出ていますね。いろいろな問題点がある。これはぼくもわかるのです。確かに不確定要素が強いわけですからね。わかるのですが、ドイツの場合には被疑者補償規程が法律になっているわけでしょう。ただドイツの場合は起訴便宜主義ではないから、起訴法定主義ですから法律的には違うと思うのですけれども、これ、実際はドイツの場合はどういうふうになっていて、どういうふうに運用されているわけですか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 ドイツの検察制度というのは、いま御指摘のように起訴便宜主義ではなくて起訴法定主義でございますから、証拠があれば起訴をしなければならない、そして不起訴にする場合には裁判所の同意を得なければならぬという意味で、しかも検事自体が裁判所の検事局というものに付置されているような形でございまして、裁判所の主宰のもとに検察が運営されているとも言えるわけであります。そういう意味において検事の不起訴処分には裁判所の審査が必要であるという制度になっており、かつ、聞くところによりますと、被害者は検事の手を経ないで裁判所に向かっていわゆる準起訴のような請求をすることができるということで、それが相当多い部分についていわゆる準起訴、検察官の手を経ない起訴が行われるという意味におきまして、それは裁判所の審査の上で、先ほど申しました準起訴と同じように、これは理由があるということになればそれは起訴されたこととなるというようなことで、大きく裁判所がいわばそういう意味においては捜査の中に入ってきておる制度であるということは、わが国と根本的に違うわけでございます。さように理解いたしておりますので、ドイツのそういう基本的に違う構造を前提にした被疑者補償の法律化を日本のような全然違う制度の中で取り入れるということには、根本的に大きな変革を伴う問題でございますので消極と解せざるを得ないというのがわれわれの考え方でございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 ドイツと立場が違うことはわかるのですが、ドイツでは被疑者補償は法律化されておるわけですか。法律化されて実際にはどういうふうに運用されておるのですか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 いま申し上げましたように、一九七一年の法律によりまして、いわゆる請求を裁判所にできるという意味において法律化されております。なお、運用についてはいまのところわかりません。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 日本の場合は訓令になっていますね。法務省からいただいた資料によると下に「検察官」と書いてある。訓令というのは大臣から検察官にするのだから、下に「検察官」と書くのですか。問題点のところは「規程」の下の方に小さく「検察官」と書いてある、そういう形をとるのですか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 訓令でございまして、訓令のあて名人が検察官でございますので「検察官」ということになっております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 私は初めて知ったのだけれども、「法務大臣」を上の方に書いて、訓令だから「検察官」を下の方に書くのですか。六法全書には「検察官」と書いていない。いまでもそんな書き方をしているのですか。それはどうでもいいけれども、やけに封建的だね。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 これは実務用のために例規集というものを法務省刑事局でつくっておりますので、印刷の便宜上こういう下に置きましたが、実際はもっと上の方にあるわけです。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 それは六法全書には載っていない。「検察官」と書いていない。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 六法全書は訓令をそのまま載っけていないというふうに理解するほかはないと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 どうでもいいですけれども、どうしてそんな形にするのだろうね。訓令だから下に書くのですか。そんな封建的な、どこでもそんなことをやっておるのですか。そういうことはどうでもいいけれども、そんなくだらないことをやっているんだな。いかにも官僚的な封建的なことをやっているのですね。初めてぼくも知った。  それはいいですけれども、問題は、この被疑者補償規程の中で、罪とならずと嫌疑なしだけですか、いままでどういうふうに運用されておるのですか。ここ四、五年でも三、四年でもいいけれども、幾らぐらい、どういう人に払っていますか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 いままで被疑者補償規程による補償を行いました場合における不起訴処分の理由の中身は、いわゆる罪とならないというのと嫌疑がないというのと、それから嫌疑がないに入りますところの人違いというようなものでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 だから、実際どのくらいあるかということです。実際どのくらいあって、どのくらいの金額が払われていますかということです。予算としてどのくらいあるのですか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 運用の状況はきわめて少のりございまして、昭和四十三年には二人に対しまして三十三日間の勾留に対しまして三万三千円、四十四年が二人に対しまして三万二千五百円、四十五年が一人に対しまして二千六百円、四十六年が、請求はありましたが、それぞれ犯罪の嫌疑がないというのではない、あるいは起訴猶予であるというようなことで、五人の請求に対して補償はいたしておらないのでございます。     〔保岡委員長代理退席、委員長着席〕 四十七年につきましては、合わせて四十四人に対しまして十一万九千円の補償がなされております。それから四十八年は二人に対しまして一万一千七百円、四十九年は一人請求がありましたが、それは補償を辞退いたしましたので、四十九年についてはございませんというようなことでございます。  したがって、予算は、かような運用の実績にかんがみまして、一応損害金として二十万円が計上されておりますが、大蔵当局との合意によりまして、これは補充費系統の予算ということでありますので、必要とあれば幾らでも補充をするということになっております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 予算はどこに入れるのですか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 予算の費目では刑事補償金という中に入っております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 刑事補償金——刑事補償というのは裁判所が払うのじゃないですか。法務省が払うのですか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 いささか法律的ではございませんが、予算上の名称といたしましては刑事補償金という項目に入っておるわけであります。それからついででございますが、刑事補償法による刑事補償金の予算は裁判所の予算でございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 そこで、いま全体として二十万円のようですけれども、その金額と刑事補償法の金額とは、上限、下限はいつも合うようになっておるのですか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 訓令を見ていただくとおわかりいただけると思いますが、上限は刑事補償の基準日額に常にスライドして合わせておりますが、下限の規定はございません。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 だけれども国民はこういうふうな規程があるということを全然知らないのではないですか、訓令だから。検察庁にもこんなものは張っていないですよ。  それから参考人に呼ばれたときには、参考人にちゃんと日当を払うでしょう。それも国民は全然知らないですよ。だって払えるわけです。だれも知らないから請求しないのだけれども。良心的な検事は、参考人として日当をもらえるのだけれども請求しますかと言う人はありますけれども、ほとんどみんな知らないです。それは実際はどういうふうになっておるのですか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 訓令は官報に載り、かつ六法全書にも載せていただいておりますので、知る機会は国民の皆さんにもあると思いますし、しばしば申しておりますように、活用を図る意味におきまして、今後ますます、そういう不起訴処分になった人のそういう補償について意を払うように、そういう制度の活用を図りたいと思っております。何分にもまだ十分のPRが足らぬということがありますが、しかし補償は、訓令でございますので検察官がその気になって活用を図るのが原則でございますので、その気になって活用を図るような措置をこれから講じていきたいと思っております。  それから参考人の旅費の支給につきましては、いま良心的な検察官はとおっしゃいますが、検事は皆良心的でございますので、必ず、そういうものを請求なさいますかということは申し上げておるはずでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 それは、参考人として旅費を請求できるということは権利じゃないのでしょう。旅費、日当を請求できる、それはどうなんですか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 すべて捜査に御協力をいただくという意味においてこちらから差し上げるべき性質の金でございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 差し上げるべき金なんだから、もらう方としては権利じゃないでしょう。だからあなたの方は言う必要はないということではないですか。だからちっとも言っていないじゃないですか。言っていないですよ。いままで参考人に旅費、日当か何か知らぬけれども、払った例というのはどのくらいあるのですか。一般の人は全然知らないですよ。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 参考人はあくまでも任意でお越しをいただくという任意の協力でございまして、義務づけておりませんので、証人のように日当を払うということにはなっておりませんけれども、要するに御協力をいただくことに対する一種の礼の心を込めて実費を差し上げるというたてまえになっておるわけであります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 いろいろ問題があるのですよ。一番問題になるのは在監者です、在監者を参考人として呼ぶ場合のことが問題なんですよ。判例があるでしょう。いずれにしてもいろいろ問題があるのです。  大臣が来たらいろいろ聞きたかったのですが、あまり長くやってもあれですからここら辺で質問を終わりますが、私はどうも、前から言っているように、刑事補償と国賠との関係で、国賠のやり方がむずかし過ぎるんじゃないか、こう思うのですよ。もっとどんどん国賠をやったらいいのに、国賠を請求するというと、刑事事件で無罪になっても、無罪になったことについて過失がないんだといってがんばるから、そのことで過失があるか過失がないか、記録を取り寄せなければならないでしょう。そうすること、あの膨大な記録を原告の方でリコピーしなければならないでしょう。大変な騒ぎですよ、金がかかって。とってもできるものじゃないですよ。だから推定しなければだめですよ。立証責任を転換するとかなんとか、どうなっているのかちょっとわかりませんけれども、そうでなければ国賠をとてもやれるものじゃないですよ。  それからこの金額についても非常に低いし、被疑者補償規程について、それは法律にする必要があるかないかは議論のあるところとしてももいろいろ問題があるのじゃないか、こう思うのです。  それから非拘禁者の補償の問題について、これはいろいろ後から出てくると思うのです。詳しいことはまた別の機会に聞くことになると思うのですが、これはことに問題となってくるのは再審の場合で、出ていて再審やって、そして補償の場合のことがちょっと問題になるでしょう。いわゆる再審補償、その場合には認めろという学説が大分出ていますね。横山晃一郎さんなんか大分そういう議論をしていますね。非拘禁者に対する補償のことについては、刑事訴訟法なり別の形の補償でやっているところはほかのところでもあるわけですか。ということは、刑事被害者の補償がどんどんこれから行われようとしているときに、技術的ないろいろな困難はあるとしても、非拘禁者に対する補償ということも立法化する必要は当然生まれてくるんじゃないか、こう思うのです。そうじゃないとおかしくなってくるのですよ、何か合わないような感じがするのです。そこら辺のところを考えてみると、非拘禁者に対する立法というものは、現在の段階で考えているとか考えていないとかいうことを聞くんじゃなくて、ほかの国でこういうことについて行われておるところがあるんだろうか、ないんだろうかということをいまの段階ではお聞きをしておいて、その問題についての質問は別な機会に譲ることにして質問を終わりたい、こういうふうに思っているところです。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 非拘禁補償の問題はかねがねの問題でございますので、まず外国の制度にならう、必ずしもならう必要はありませんが、外国ではどうかということを調べてみましたが、非拘禁補償に関する限り、われわれの調べた限りではそういうものをやっている国はないということでございます。ただ、後ほど問題になってまいります訴訟費用というような面からの問題で補償している、それを非拘禁補償というならば、その面における補償をやっている国は相当あるということでございます。

小宮山重四郎自由民主党

○小宮山委員長 次回は、来る二十五日火曜日、午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午前十一時三十五分散会

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