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75回国会衆議院1975/02/12

法務委員会 第1号

発言数
170
登壇者
12
会派数
4
開催日
1975/02/12

会議録

小宮山重四郎自由民主党

○小宮山委員長 これより会議を開きます。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  このたび、はからずも法務委員長に選任され、まことに光栄に存じます。  本委員会には、法務関係に練達の委員各位がおそろいでございますので、皆様の格別の御理解と御協力を賜りまして、円満なる委員会の運営を図ってまいりたいと存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)      ————◇—————

小宮山重四郎自由民主党

○小宮山委員長 理事補欠選任の件についてお諮りいたします。  委員辞任に伴い、現在、理事が二名欠員になっております。その補欠選任につきましては、先例によりまして、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小宮山重四郎自由民主党

○小宮山委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長は、理事に       田中  覚君 及び 保岡 興治君 を指名いたします。      ————◇—————

小宮山重四郎自由民主党

○小宮山委員長 次に、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  すなわち、裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政の適正を期するため、本会期中、裁判所の司法行政に関する事項、法務行政及び検察行政に関する事項並びに国内治安及び人権擁護に関する事項につき、小委員会の設置、関係各方面からの説明聴取及び資料の要求等の方法により国政調査を行うため、議長に対し承認を求めることにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小宮山重四郎自由民主党

○小宮山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————

小宮山重四郎自由民主党

○小宮山委員長 次に、法務行政、検察行政、国内治安及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  この際、法務行政等の当面する諸問題について、稻葉法務大臣から説明を聴取いたします。稻葉法務大臣。

稻葉修自由民主党法務大臣

○稻葉国務大臣 委員の皆さんには、平素から法務行政の適切な運営につきまして、格別の御尽力をいただいておりますことを厚く御礼を申し上げたいと存じます。  この機会に法務行政に関する所信の一端を申し述べ、委員の皆さんの深い御理解と格別の御協力を賜りたいと存じます。  改めて申し上げるまでもなく、法務行政の使命とするところは、法秩序の維持と国民の権利の保全にあると考えております。ことに、内外の諸情勢が変動を続け、困難な諸問題が山積しているこの時期に際し、国家社会の平和と国民生活の安定を図るためには、その基盤とも言うべき法秩序が揺るぎなく維持され、国民の権利が正しくよく保全されていることがきわめて肝要であると存ずるのであります。  私は、法務大臣就任以来、常にこのことを念頭に置き、所管行政各般の諸問題に取り組んでまいりましたが、今後とも職責を全うするため、全力を傾けて、国民が期待する法務行政の推進に努めてまいりたいと存じます。  以下、私が考えております重点施策について申し上げます。  まず、第一は、法秩序の維持についてであります。  最近の犯罪情勢を見ますと、厳しい社会経済の変動を反映して、犯罪の態様は一段と複雑多様化の傾向を示しており、特に企業活動に伴う公害事犯、各種経済関係事犯など国民の社会生活に密接な関係を有する新たな形態の事犯が注目され、他面、治安情勢につきましては、累次にわたる爆発物使用の衝撃的事件あるいは過激派集団の内部抗争による内ゲバ暴力事件等国民を不安に陥れる事犯の続発が見られ、当面の治安情勢は警戒を要するものがあると考えられるのであります。  このような情勢に対処するため、私といたしましては、検察の執務態勢の整備、充実を図るなどして法秩序の維持に努めてまいる所存であります。また、不法事犯に対しましては、警察その他関係諸機関と密接な連携を保ちながら、厳正公平を旨として、適正かつ迅速な刑罰法令の適用に努めまして、犯罪の根絶を期してまいりたいと存ずる次第であります。  第二は、犯罪者及び少年非行者に対する矯正及び更生保護行政の充実についてであります。  犯罪者及び非行少年の改善更生につきましては、少年院、刑務所等における施設内処遇と実社会における社会内処遇を充実強化するとともに、これら相互間の連携を密接にし、その効果を高めてまいる所存であります。  そのためには、まず施設内処遇につきまして、個々の犯罪者等の特性に応じた処遇方法を講じ、さらに、社会復帰に役立つ職業訓練の充実などを図りますとともに、他方、社会内処遇につきましても、保護司等の民間篤志家との協働態勢のもとに、一層の保護観察機能の充実、向上に努め、これら犯罪者等の社会復帰を容易ならしめるよう格段の配慮をもって臨みたいと存じております。  第三は、民事行政事務の充実についてであります。  登記その他の民事行政事務につきましては、かねてからその事務量の増大に伴い、職員の増員を初め、関係法規の整備、組織、機構の合理化及び事務の機械化を図るなどして、その需要に対処してまいりましたが、今後とも引き続き所要の措置を講じましてその事務処理態勢の整備充実を期し、国民の権利保全と行政サービスの向上に努めてまいりたいと存じております。  なお、登記所の適正配置計画の実施につきましては、目下、鋭意その作業を進めているところでありますが、幸い、地元関係者等の御理解、御協力により相当数の整理統合を実施することができましたが、今後とも、整理統合対象庁につきましては、地元関係者などと十分折衝を重ねながら円滑な実施に努め、国民の利便にかなった登記行政のサービスの向上に努めてまいりたいと存じておりますので、特に委員の皆さんの御協力をこの際お願い申し上げる次第でございます。  また、戸籍制度につきましては、最近の社会情勢を反映して、戸籍の公開制限の要請等戸籍制度の基本にかかわる種々の問題が発生している実情にかんがみまして、現在、民事行政審議会に戸籍制度の改善について諮問いたしておりますが、いずれ答申をいただきました際には、これに十分な検討を加え、国民一般の要請にかなった戸籍制度の確立に努めてまいりたいと考えております。  さらに、人権擁護につきましては、昭和四十八年度から全国的に発足いたしました人権モデル地区をさらに推進いたしまして、人権擁護思想の一層の啓発活動を行い、広く人権を尊重する精神の高揚と普及を図ってまいる所存でございます。  第四に、出入国管理行政の充実についてであります。  今日の諸情勢に対応できる出入国管理行政の確立は、国際親善に寄与するという観点からも強く要請されるところであります。特に、逐年高まる国際交流の拡大は、わが国への出入国者をますます増加せしめ、出入国及び在留管理に関する事務をいよいよ複雑、困難にいたしております。ことに、外国人入国者の大部分を占める短期旅行者の入国手続の簡素化は国際的要請でもあり、また、在留管理につきましても合理化や改善を図るべき点が多々あるのであります。  このような状況から過去数回にわたり出入国法案を提出したのでありますが、遺憾ながら廃案のやむなきに至っている次第であります。しかし、新しい出入国法の制定はぜひとも必要でありますので、従来の経緯、その他諸般の情勢を勘案しつつ、根本的かつ総合的に再検討いたしたいと考えております。  したがいまして、当面は現行制度のもとで、できる限り業務の合理化、能率化を図るなどいたしまして、出入国手続及び在留管理事務の適正、迅速な処理に努めてまいる所存であります。  最後に、法務省施設の整備改善についてであります。  現在、法務省が所管しております施設のうちには、老朽、狭隘あるいは地方公共団体等からの借り入れのものが多数あり、早急に整備改善を図る必要が生じている実情であります。しかしながら、これら施設を一挙に整備するには国家財政の面からも不可能でありますので、法務省といたしましては、老朽、狭隘度のはなはだしい施設や地方公共団体等からの返還あるいは移転要請を受けている施設を重点的に取り上げ、逐次その整備改善に努めてまいる所存であります。  以上申し上げました諸施策のほか、法務行政全般の効率的運営を推進するため、組織、機構の合理化、関係法令の整備、職員の確保及び待遇改善等につきましても十分留意してまいりたいと考えております。  また、さきに法制審議会から答申を得ました刑法の全面的改正につきましては、目下、事務当局において政府案作成作業を進めているところでありますが、刑法は最も重要な基本法の一つでありますので、その改正につきましては、広く国民各階層の意見をも考慮しつつ、真に時代の要請に適応した新しい刑法典の実現に努力いたしたいと考えております。  以上、法務行政の当面の重点施策について所信の一端を申し述べましたが、その他の諸施策につきましても、委員各位の御協力、御支援を得まして、その解決に努力する所存でありますので、どうかよろしくお願いを申し上げる次第でございます。(拍手)

小宮山重四郎自由民主党

○小宮山委員長 なお、昭和五十年度法務省関係予算及び昭和五十年度裁判所関係予算の説明聴取につきましては、関係資料をお手元に配付してありますので、これをもって御了承を願います。      ————◇—————

小宮山重四郎自由民主党

○小宮山委員長 次に、内閣提出、犯罪者予防更生法の一部を改正する法律案及び裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の両案を議題とし、趣旨の説明を聴取いたします。稻葉法務大臣。     —————————————  犯罪者予防更生法の一部を改正する法律案  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————

稻葉修自由民主党法務大臣

○稻葉国務大臣 犯罪者予防更生法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由を御説明いたします。  犯罪者予防更生法に規定されております中央更生保護審査会は、法務大臣に対して恩赦の申し出をし、また、仮出獄の取り消し決定などについての不服申し立てに対する裁決をするなど、裁判所の有罪判決の効果を事後に変更し、あるいは地方更生保護委員会の決定を審査するなどの重大な権限を行使しているのであります。現在、中央更生保護審査会は、常勤の委員長及び非常勤の委員四人で組織されておりますが、近時、恩赦上申事件が逐年増加の傾向をたどっており、特に、無期刑による仮出獄者、死刑確定者、刑の執行停止中の者などについての事案の複雑な恩赦上申事件の増加傾向が著しいため、非常勤の委員では十分な調査及び審理が期待できがたく、このため、適正かつ迅速な審査に支障を来すおそれが生じているのであります。  このような実情にかんがみ、この法律案におきまして、委員のうち二人を常勤とし、調査及び審理の機能を強化しようとするものでありますが、さらに、二人の委員を常勤とすることに伴い、委員長に事故ある場合は、常勤の委員がその職務を代理することとし、また、常勤の委員の給与を定めるため特別職の職員の給与に関する法律の一部を改正しようとするものであります。  以上が犯罪者予防更生法の一部を改正する法律案の提案の理由であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いを申し上げる次第でございます。  次に、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  この法律案は、裁判所における事件の適正迅速な処理を図る等のため、裁判所の職員の員数を増加しようとするものでありまして、以下、簡単にその要点を申し上げます。  第一点は、裁判官の員数の増加であります。これは、簡易裁判所における道路交通法違反事件の適正迅速な処理を図るため、簡易裁判所判事の員数を三人増加しようとするものであります。  第二点は、裁判官以外の裁判所の職員の員数の増加であります。これは、地方裁判所における特殊損害賠償事件等、家庭裁判所における家事調停事件並びに簡易裁判所における民事調停事件及び道路交通法違反事件の適正迅速な処理を図る等のため、裁判所事務官について、事務の簡素化、能率化に伴う四十八人の減員を差し引いてなお二十三人、その員数を増加しようとするものであります。  以上が裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の趣旨であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。

小宮山重四郎自由民主党

○小宮山委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  両案に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————

小宮山重四郎自由民主党

○小宮山委員長 この際、最高裁判所長官指定代理者の出席説明の承認に関する件についてお諮りいたします。  本会期中、ただいま趣旨説明を聴取いたしました裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の審査に当たり、最高裁判所長官指定代理者から出席説明の要求がありました場合には、その承認につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小宮山重四郎自由民主党

○小宮山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。      ————◇—————

小宮山重四郎自由民主党

○小宮山委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 きょうは独禁法の改正に関連をしまして、企業分割なり課徴金等の問題で、法務委員会ですから、法務省の見解というか、そうした問題を中心にお聞きをしたい、こういうふうに思うわけですが、その前に公取の方に、独禁法の改正の試案の段階ですが、伝えられておる中で、いわゆる企業分割ということが言われておるわけですが、企業分割の中に、会社分割なり営業の譲渡なり、それから「等」という言葉で示されているのがありますね。この三つの公取側で考えておる概略のことをひとつ説明を願って、それから後で法務省の方に聞きたいと思います。

渡辺豊樹公正取引委員会事務局官房審議官

○渡辺(豊)政府委員 お答えいたします。  公正取引委員会が「試案の骨子」を出しましたときに「企業分割」という一つの項目を立てまして、企業分割を実施するための手段といたしまして、「会社の分割、営業の一部譲渡等」というふうに掲げてございます。この場合、企業分割というのはいわば制度的な概念でございまして、会社の分割、営業の一部譲渡というのは法律的あるいは手続的な概念というふうに御理解いただきたいと思います。ここで「等」とございますが、これは、企業分割という制度の趣旨を達成いたしますためにはいろいろな具体的な方法があろうかと思いますが、たとえば株式の処分とかあるいは単なる資産、施設の譲渡とか、いろいろなものがそのケース・バイ・ケースによって考えられようかと思います。「会社の分割、営業の一部譲渡等」というところで私どもが考えておりましたのは、大体以上御説明申し上げたとおりでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 法務大臣、先にまとめて聞いてしまいましょう。  法務省が昭和四十九年十月三十日に、独占禁止法改正試案についてというメモみたいなものを、公式にか非公式にか発表したのか、あるいは発表しないのに漏れたのかわかりませんが、あるいは意識的に漏らしたのかもわからないというふうにも考えられるのですが、新聞あるいは雑誌等にも出ているわけですが、まず、これは法務省の現在の考え方を明らかにしたものであるかどうかということが一つです。  それから、いま考えられておる独占禁止法改正試案なるものについて、法務省としては大ざっぱにどういうふうに考え、どういう点が問題であり、どういうふうに推進をサポートしたいとかあるいはしたくないとか、いろいろあると思うのですが、そういう点については概略はどうでしょうか。大臣に概略を聞いて、後は細かい点に入りますから。

稻葉修自由民主党法務大臣

○稻葉国務大臣 御指摘の昭和四十九年十月三十日の文書は法務省の正式見解かという意味のお尋ねでございますが、これは、公取の方からいろいろ御照会がございまして、意見を求められたことについて法務省の民事局が中心となって研究した結果、疑問点を羅列して御返答申し上げたという程度のものでございます。ことに法務省の関係としては、刑事罰の引き上げが第一点、それから会社の分割が第二点、第三点は課徴金でございまして、以上のことについて、二月四日付の新聞にいろいろ法務大臣の記者会見談話として報道されておることに関係をいたしますから、この機会に申し上げておきたいと思います。  あの新聞記事の中には、私の述べたところが比較的正確に要約されておりますが、一部には、私が課徴金制度につき憲法上疑義がある、そういう意味の発言をした旨の記事が見られますけれども、これは誤った記事でございます。私はこの新聞記者会見において、連座制の強化については、裁判を受ける権利を全く根本から奪ってしまうようなやり方は疑義があるんでしょうねと、こういう指摘をしたのは事実でありますが、課徴金については、そのような行政手続による利益剥奪は司法手続と密接な関係を有するので、慎重な検討を尽くす必要があることを申し述べたにとどまり、この制度を憲法上疑義があるなどと申したことはないわけです。  なお、その席上、企業分割の問題についても触れまして、商法の原理との関係で十分慎重に検討しなければならないことを指摘したのは事実でございます。どういう点について検討しなければならないか、詳細につきましては、あの文書を作成いたしました民事局長をして答弁させますが、よろしゅうございますか。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 民事局長の答弁はいまから聞くのですけれども、大臣、いま言われた商法の原理というのは、何が商法の原理だというふうにお考えなんでしょうか。

稻葉修自由民主党法務大臣

○稻葉国務大臣 会社の自主性、経営の自主性とか、それから株主権利の擁護とか、そういうことが原理になっている商法だ、会社法は。そういう点について、株主の意思のいかんにかかわらず分割をするということは、商法の原理との関係において慎重に検討しなければならない一つの問題点ではなかろうかというような考えがございますわけです。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 まあ、商法の原理が何であるかということは、これはわかり切ったことですね。これは民法と違うわけですから。現在の資本主義社会を支えるために商法というのはできているわけですから、それが原理なんです。それに背反するようなものを商法には持ち込みたくない、これはあなた方の考え方でしょう。そういうことじゃないのですか。

稻葉修自由民主党法務大臣

○稻葉国務大臣 その原理にもやはりいろいろなものがございまして、社会公共の福祉との関連で調和する、そういう点がなければならぬと思うのです。幾ら企業の自由性といいましても、その自由には社会的公共性との関係において限度がある、こういうことだろうと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 商法と福祉というのは、ちょっとよく合わないように思いますけれども、それはそれとして、それじゃ民事局長にお尋ねをしたいのですが、まず、法務省のこの見解によると、会社の分割についていろいろやり方がある。どういうふうなやり方があるというふうに考えられておるのか。これを見ると、公取の試案にいう会社の分割がいかなる内容のものであるか不明である、こう言われていますね。確かに私もまだ不明だと思うのですよ、これははっきりコンクリートしているわけじゃないから、不明は不明なんでしょうけれども、考えられる会社の分割というのは、まず現行の商法との関連において考えられるものは何と何というふうな内容になるのでしょうか。

川島一郎法務省民事局長

○川島(一)政府委員 仰せのように、会社の分割という制度が現在の商法にございませんので、現在の商法をもとにして考えるのか、あるいは商法を改正して新しく分割という制度をつくって考えるのかという問題はございます。ただ、どういうものが考えられるかと申しますと、現在俗に会社の分割と言われておりますもの、これは、ある会社が子会社をつくりまして、その子会社に自分の事業の一部を譲渡する、営業の譲渡といいますか、そういう形で実質的な分割を行うということがあるわけでございます。それ以外に、商法にはございませんけれども、考えられる会社の分割といたしましては、一つの会社を解散さして、そして新しく二つの会社をつくる、そしていままでやっていた営業をその二つの会社に分割して行わせる、こういう形に持っていくのが一応考えられる会社の分割ということになろうと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 そうすると、まずドラスチックな方からあれしますと、会社を二つに分けてしまうという行き方は商法に規定がない、こういうわけですね。そうすると、それをもしやる場合には、現行商法との関連ではどういう点、どういう点が問題になってくるわけですか。

川島一郎法務省民事局長

○川島(一)政府委員 二つに分ける、二つの会社をつくるということになりますと、商法を改正してそういう制度をつくらなければならないわけでございますが、その場合にどういう点が問題になるかと申しますと、これは分割をどういう形で行うかという基本的な考え方から固めていかないとならないわけです。たとえば、現在ある一つの会社を解散させる、その場合に、その会社の株主に対して残余財産の分配を認めるのか、認めないのか。認めないとすれば、それの代償として、新しくできる二つの会社の株式を従来の株主に与えるのか、こういうような問題が出てくるわけでございます。そういった点についての手当てが必要であろうと思いますし、細かい点になりますと、そういう分割をするについてのいろいろな手続の過程におきまして、債権者との関係をどうするか、債務者との関係をどうするか。それからいろいろな契約関係、たとえば下請会社とか卸売会社とかあるいは広告会社、いろいろそういうところとの継続的な契約関係がございます。そういった契約関係をどういうふうに引き継がせるのか。あるいは従業員との間の雇用契約、これをどういうふうに分けていくのかといったような問題があるわけでございます。そういった点が円滑にまいりませんと、会社の分割もスムーズに行われ得ない、こういうことになろうかと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 そうすると、その会社の分割にいまいろいろな問題がありますね。そうすると新たに、商法を改正するというのか、その規定というものを商法に設けるということでないというと、いま言われた会社の分割はできないということになるんでしょうか。あるいは、たとえば独禁法を改正して、その中に特則を設ける、そしてやっていくというような行き方でやれないことはないということにもなるんでしょうか。

川島一郎法務省民事局長

○川島(一)政府委員 私は一応商法の問題として申し上げたわけでございますが、御承知のように、商法の場合には、会社が自発的に任意に行うことをたてまえとして、これは合併の場合も同じでございますが、そういうことをたてまえにしておるわけでございます。ところが、独禁法で今度やろうという場合には、強制的に、会社の意思にかかわらずやらせるということになりますから、その点では多少特別な配慮が必要になってくると思うわけでございます。先ほど申し上げましたいろいろな株主、債権者、従業員あるいは契約関係にある者との間のいろいろな処理につきましては、会社が任意的に自分の意思に基づいてやろうとする場合には、それぞれ適当な話し合いをつけまして、その話し合いがつかなければできないということで一応調和がとれるわけでございますけれども、強制的にやらせるということになりますと、そういった点について必ず決着をつけなければならない、こういう前提があるわけでございますので、制度的にはやはり相当特殊なものを考えていかなければならない、こういうことになろうと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 そうすると、いま言われた企業分割というものが、憲法二十九条ですか、財産の不可侵権との関係において、やり方によってというか、場合によっては問題が生じてくることもあり得るわけですか。

川島一郎法務省民事局長

○川島(一)政府委員 そういう場合もあり得ようと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 あり得ようと思うというのは、どういう場合になるのですか、二つ三つ……。

川島一郎法務省民事局長

○川島(一)政府委員 たとえば、現在合併の場合を考えてみますと、合併の場合に、合併に反対の株主に対しては、合併の決議前の価額による株式の買い取り請求権というものを認めております。それから債権者に対しましては、公告とか催告をいたしまして、異議のある債権者に対しては弁済をするとかあるいは担保を提供するというような手続も規定しておるわけでございます。そういった配慮が会社分割の場合にもやはり必要になってくるのではないか。これは商法で会社分割の制度を設けるということにした場合のことでございますが、そういった手続が必要になってまいりますので、もしそういう手続を認めないといたしますと、会社分割によって株主の権利が非常に少なくなるとか、価値が減少するとか、あるいは債権者の債権が同じように価値が少なくなる、こういうようなことが出てまいりますと、これはやはり財産権を保護するという立場から問題があるのではなかろうか、こういうふうに思うわけです。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 法務大臣、いま民事局長が答えたでしょう。あなた得意の憲法論ですが、その点はどうでしょうか。

稻葉修自由民主党法務大臣

○稻葉国務大臣 独禁法の改正問題は現在総理府でいろいろ検討しているわけです。それで、法務大臣の立場からいろいろ御意見を申し上げるのは差し控えたい気持ちなんですけれども、せっかくあなたがそういうようにお尋ねになるものですからお答えせざるを得ぬのでありますが、先ほども申し上げましたとおり、私有財産制度にいたしましても営業の自由にいたしましても、企業活動の自由とかそういうことにいたしましても、一方、憲法第三章の規定は無制限にこれを許しているのではなくて、さっき公共の福祉と申し上げましたように、企業の社会的責任を自覚しつつ、そしてなるべく企業自体がそういうことをセーブすればいいのですけれども、現在の情勢を見ますと、そうもいかない社会問題がたくさん出てまいっておりますので、公取といたしましても恐らく、そういう点について強制力を持った措置が必要なんじゃなかろうかということで、分割論なども試案として出てきたものと思います。  ただ、民事局長が言いましたように、その内容が不明でありますけれども、事実上、実質的に集中排除措置をとることは営業譲渡等を行うことによってできないわけでもないが、もし、会社の分割という公取試案の意味が、一個の会社を二個の会社に分割することを意味するものであるならば、そのような分割は現行商法には存在しない制度である。その手続、効果等について規定を新たに設ける必要がある。しかし、このような分割の制度を設けるについては、債権債務の処理であるとか、株主の地位、従業員との雇用関係の措置等についてどの程度に強制力を持った解決をすべきか等、困難な問題が多いのでございます。そこで集中排除措置を命ぜられた会社の役員が直ちにこれをなし得るとするのは、いまの商法上困難でありますね。そこで株主総会の議決を必要といたしますね。それで役員が株主総会に分割を提案することはできるけれども、株主総会は、だめだと言うこともできるし、賛成することもできるわけですね。それをだめだと言った場合に、どうやってだれが集中排除措置を強制するのか。そういう点について商法の改正で、その場合はこの限りでないというような規定を設ける方法もありましょうし、先生おっしゃったような、独禁法を改正する方法もありましょうし、独禁法以外の第三の特別法をつくってやる方法もございましょうが、いろいろあるんでございますから、いま法務委員会でそのことをお聞きになって、法務大臣はその三者のうちのどれをとるんだみたいなことを話し合おうと言っても、いま総理府でやっている最中でございますからね。しかも、法務行政に重要な関係のある、あの公取試案のうちのさっき言った三つの点、課徴金、刑事罰の引き上げも含めまして、これらの点については、意見を求められれば、前に先生おっしゃったようなああいう意見を出してありますから、この意見でございます。こういうことを繰り返していく段階でございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 よくわかるのですけれども、法務省の見解というのは出ているわけでしょう。率直に言えば、これは意識的に漏らしたのじゃないんですか。意識的に漏らして、独禁法の改正というものはこういう点がむずかしいんだ、むずかしいんだと、むずかしいところばかり並べ立ててこれに水かけるために、意識的に——法務省がどこかから頼まれたとは言いませんよ。法務省は頼まれるわけないから、独自の判断でしょうけれども、流したのではないかという憶測が流れている、こういうことを私はこれから言うわけです。そうではないんですかと聞いているわけですよ。

稻葉修自由民主党法務大臣

○稻葉国務大臣 この内閣は、独禁法の改正、強化をする姿勢なんですね。これは総理がしばしば予算委員会、本会議で言うているのでございますから、どこかに頼まれてこれに水かける作業を法務大臣はやっているのじゃないかという憶測は、全くこれは私の真意には当たらないんです。頼まれたと言えば頼まれましたね。各政党の独禁法の検討をやっておられる政策審議会から、何か法務省に意見があるようだが、公取の方へは出しておいて、国民のこっち側へも出せや、くれや、こういうふうに頼まれましてね。そして公取へは一番先に差し上げましたし、頼まれましたから、それから各政党の審議会等にも回っている。意識的に水をかける意図があってやっているわけではございませんから、この点は御理解願いたいと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 独禁法強化が三木内閣の看板だというか、大きな政策であるということ、これはよく言われていますけれども、この法務省の見解を見ると、こういう点はむずかしいむずかしい、むずかしいと、むずかしいところばかり並べ立てているのですよ。それで、むしろ強化に水を差すような方法を立てているんじゃないかというふうに、これを見ると、ちょっととれるわけなんです。だからお聞きをしているわけなんですが、そういうつもりはないとおっしゃるのでしょうね。まさかそういうつもりがあると言えないから、それはないと言うのかもわかりませんけれどもね。

稻葉修自由民主党法務大臣

○稻葉国務大臣 そういうつもりがあると言えないからないと言っているのではございませんで、私どもが考えておりますのは、やはり法秩序の維持ということを本務といたしますから、現行法上解決する方法をいろいろ考えるというと、困難な点がこういうふうにありますと言っているので、それ以上、その困難な点について打開策をこうやればいいじゃないか、こうやればできますよと言うて、独禁法強化の法的措置の作業をこっちから申し上げるなどという、そういう出過ぎた不親切はしない。親切でなく不親切だ。それは公取がみずから、そういう困難はどう解決してやろうか、こう解決する、こう解決すれば商法との問題はないか、憲法との問題はないかというまた意見を求められれば申し上げる、こういうことでございまして、私どもの方から、公取という独立機関があるのに、求められない意見を申し上げるわけにはいかない。こういうむずかしい点はございますよということだけを申し上げているのであって、それがゆえに、むずかしいから法務省はそんなことをやられるのは反対だよなどということを申し上げたことはないですね。そういうことを御理解願って、水差すのか本心だけれども水差すんですなんて言えないから、水差すのではありませんと口では言うているが心とは違うのだろうとおっしゃるが、私は心と口と行いとは一致させるつもりでおりますのですから、どうぞよろしくお願いします。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 話はよくわかるのですが、独禁法の強化が三木内閣の一枚看板——一枚看板か三枚看板か知りませんが、看板ならば、法務省として、こういう点にこういう点が難点があると言うだけじゃなくて、こういう点、こういう点をさらに自分たちの知恵をかしてやればできるんだという方向に乗り越えていくのが筋ではないか、こう私は思うのですよ。  そうすると、いま公取の方から、問題はこういう点があるけれども、それを解決するために、より前進的な解決の方法はどうかということを聞かれれば、法務省としては積極的にアドバイスすることにやぶさかではない、こういうふうに理解してよろしいですか。

稻葉修自由民主党法務大臣

○稻葉国務大臣 公取から求められればそれでいいのです。それから、いま公取案は公取案としてございますわな。それから内閣の独禁法改正問題懇談会、ここでいろいろな意見を言うておりますね。総理府から法務省の見解はと言われれば、法務省から出ていってその懇談会で意見を申し上げる、解決策も申し上げるということにちゅうちょをしているとか、やぶさかであるとかということは断じてないわけであります。お説のとおりです。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 そこで、いま言った会社の分割でなくて、いわゆる一部譲渡ですね、商法の二百四十五条でしょう。これは重要なる一部譲渡が株主総会の特別決議ですわね。そうすると、この一部譲渡でやった場合には企業分割と同じような効果がそこで法律的にあるのですか。実際のことは別です、実際のメリットや何かはここで聞く筋合いのものではないから。法律的に見てそういうふうに考えられるのでしょうか。  それからまた、この重要なる一部の営業譲渡というのは、具体的によくわかりませんけれども、特別決議を必要とする限度のものはどの程度のものを指して言うのかということを一応お答え願ってから、また入りましょう。

川島一郎法務省民事局長

○川島(一)政府委員 第一に、営業の重要な一部の譲渡によって会社分割の実が上げられるのではないかという点でございますが、それはそのとおりだと思うわけですが、それから、何が重要な一部であるかという点につきましては、これはきわめて客観的な基準というものは示しにくい問題でございまして、裁判例などでも余りその点が問題になったものはございません。したがって、詳しい議論はこれまでされていないと思いますが、学者の論ずるところでは、会社全体の財産、営業の状態から見てそれが機能的に重要なものであるかどうかということで判断すべきだというふうに言われておりまして、実際にはそれだけではなかなか決めにくい場合があろうと思いますけれども、必ずしも財産の二分の一とか三分の一といったような、はっきりした量的な基準ではないようでございます。そういうふうに考えられておるというふうに聞いております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 一部の学者などに言わせると、たとえば、「事実上の二分割、三分割となるような五〇%以下などの営業譲渡の企業分割は必ずしも株主総会の特別決議が必要となるものではない。」こういうふうに言っている人もいるわけですが、ちょっとこれは私自身は疑問を持ちます。これでは株主総会というものは権限がなくなっちゃうことですから疑問を持つのですけれども、こういう点については法務省としてはどういうふうに理解しておるのですか。いま言われたのだと、単に数字だけで判断するわけにいかないけれども、いま言ったように、事実上二分割、三分割となるような五〇%以下などの営業譲渡、そういうようなものでも必ずしも株主総会の特別決議が必要でないという理解の仕方でいいのですか。

川島一郎法務省民事局長

○川島(一)政府委員 その点、私も余り深く研究したわけでございませんので、御満足が得られるようなお答えは申し上げかねると思いますが、やはり会社の本来の業務というものがどこにあるかということが一つの基準になろうかと思います。たとえば製造会社がいろいろ不動産を持っておって、製造に関連したほかの業務をやっておるという場合に、そのほかの業務を分割させるというようなことは、財産的価値が非常に大きいものでありましてもこれは重要な一部でないという議論も出てくると思います。しかし、その本来の業務につきましてその半分を譲渡してしまうというような場合には、その会社としては量的には五〇%に満たないけれども、しかし重要だという判断が下される場合もあり得るであろう。これは私の考えでございますが、そういうふうに思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 そうすると、営業の一部譲渡の場合に、いま独禁法の改正として仮にそれが考えられているとして、株主総会に取締役会が提案するわけでしょう。提案しなかったらこれはどうなんですか。提案しない場合でもそれは営業の一部譲渡ができるようにしようということになるのですか。そこら辺のところ、あるいは特別決議は、重要な一部の変更でないから要らないということでなくて、仮に重要な一部の変更であったとしても株主総会の特別決議は必要としないというふうな形に変えようということなのか、そこら辺はどうなのかな。公取でもいいけれども、どうなんです。

渡辺豊樹公正取引委員会事務局官房審議官

○渡辺(豊)政府委員 営業の重要な一部の譲渡という形で制度としての企業分割の実行を果たすためには、これはそれだけの理由があって命令するわけでございますから、私どもといたしましては、株主総会の決議によってこれが否決されてそれが実行できないということになりますと、独禁法の立場から言えば、その制度が設けられた場合には、目的が達成し得ないということになろうかと思っております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 だからどういうふうにしたいのですか。

渡辺豊樹公正取引委員会事務局官房審議官

○渡辺(豊)政府委員 したがいまして、重要な営業の一部の譲渡の場合、株主総会の特別決議に会社がかけられるか、かけられないかは別といたしましても、特別決議によって否決されたのでは命令が施行し得ないということにならないような措置を何らかの形で設ける必要がある、また設けていただきたい、こう思っているわけでございます。

川島一郎法務省民事局長

○川島(一)政府委員 商法で営業の重要な一部の譲渡について株主総会の特別決議が必要であるとしておりますのは、あくまでもこれは自由取引を前提としたものであろうと思います。強制的に営業の一部譲渡をしなければならないという場合について、この規定がどのように働くのかということは一つの問題であろうと思います。もしそういう制度をつくるといたしました場合には、やはりその点について何がしかの手当てというものが必要ではなかろうかというふうに思うわけです。商法では、営業の一部譲渡の場合に反対株主に株式の買い取り請求権を認めております。これだけの保護はしておるわけでございますから、強制譲渡の場合には特別決議が要らないというだけで済ませられる問題かどうかということは、やはり考えなければならないのではなかろうか。そうしますと、特別決議がないと営業譲渡ができないというのでは特別法の目的が達せられない。その場合に、それにかわるべき何らかの株主に対する配慮を別の面で加えておく必要があるのではなかろうか、こういうことが一つ問題になろうかと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 その問題に関連して、たとえば株主に対する特別の配慮というか救済というか、言葉はどうでもいいですが、それはいまの段階で詳しく研究されているかどうかは別として、抽象的でもいいですが、具体的にどういうふうな形になってあらわれてくるわけですか。どういうところにどういうふうにあらわれてくるわけでございますか。

川島一郎法務省民事局長

○川島(一)政府委員 それは非常にむずかしいので、私もいろいろ中でも検討はいたしております。いろいろな意見があるわけでございますけれども、ちょっとまだ自信を持ってここでお答えするほどの成果というものはございません。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 あなたは最後のほうがよく聞こえないのですが、それはそれとして、確かにぼくも、いま大臣が言ったように、商法の原理というのは——原理というのは説明しなかったけれども、商法というのは資本主義社会の一つの背骨だから——いいか悪いかは別ですよ。それから、法秩序というのを守ると言ったって、この商法上の法秩序というのは自由経済ということでしょうから、多少変化していくにしても、いろいろ問題のあることはわかりますよ。問題があることはわかる。きょうは自分の意見を言っているわけではなくて、あなた方のお話をお聞きしているだけですから誤解されてもらっては困るわけですが、それはそれなんですけれども、どうも法務省の考えは、むずかしい、むずかしい、こういう点がむずかしいということだけだな。むずかしいところばかり聞いているからそういう結論が出るのかもわからぬけれども、そればかり言っているような感じがして、何か積極的に問題を打開してやっていこうという気魄というか、そういうのが足りないように私には思えるのですが。  そこで、もうさっきちょっと出ました課徴金ですね。課徴金の法律的性格も明確でないということで、課徴金制度にも何か大臣は反対なんですか。反対とは言えぬけれども検討を要するということなんですか。ちょっとよくわかりませんが。

稻葉修自由民主党法務大臣

○稻葉国務大臣 課徴金は税法上の追徴金みたいなものに考えているのか、あるいは刑法上犯罪によって得たる利益として、没収というような制度としての課徴金を考えておられるのか、公取の意見がわかりませんので、もし没収というような制度としてのお考えであるならば、計算上は非常にむずかしい点があるようでございますけれども、現行刑法でもやり得ないわけではない。そういうような意見をいま持っておりますということを申し上げているのであって、刑法秩序を乱すから反対だなどという意見を申し上げているのでないことだけは、質問者にはっきりお答えしておきたいと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 そうすると、どういう言葉がいいのか、利得の剥奪ということならば、国が取るのか、消費者が返還を受けるものか。その受ける段階はいろいろあると思いますが、そういうふうなところをどういうふうに考えているのですか。ことに独禁法の二十五条に企業の被害者に対する損害賠償の規定がありますね。それとの関連で一体どういうふうになるのですか。

渡辺豊樹公正取引委員会事務局官房審議官

○渡辺(豊)政府委員 私どもが課徴金というものを考えましたのは、要するにカルテルが非常に多い、やり得になっている。それに対して有効なあるいは非常に実効的な措置を考えます場合に、カルテルによって得た利得というものを国が課徴金という形で徴収する。これは独禁法の目的である競争秩序の維持というものを効果的に果たしていくのに必要ではないかというふうな考え方で、一つの行政処分として考え出したわけでございます。利得を徴収するということでございますから、相手方にとってみればこれは非常に制裁的なことになる。したがって、制裁的効果が実際にはあるということは否定できないかもしれません。ただ、これは、そういうカルテルによってたとえば取引先や消費者に損害が生じたという場合には、損害賠償の請求を取引先なり消費者はし得るわけでございますが、これはいわば私人間の民事の問題でございまして、課徴金の対象となるそういうカルテルによって得た利得というものとは、必ずしも両立し得ないというものではないと私どもは考えております。しかし、学者等の御議論の中には、そういう課徴金によって国が徴収した後、そういうものは消費者に返済する、消費者が損害賠償に勝った場合、国がそれを何らかの形で消費者に戻していくということも考えられるではないかというような御意見があるようでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 大臣、あるいは専門的だから民事局長でもいいですよ。いまの公取の説明を聞いていると、ちっとも明確でないことはないんじゃないですか。明確なんじゃないですか。それに対して法務省が反論、と言うと語弊がある、否定的な見解と言うのも語弊があるかもわからぬけれども、別に反対することもないのじゃないですか。ただ、問題はあると思いますよ、私がいま言ったように。国が取っちゃった——取っちゃったという言葉は悪いけれども、それによって消費者の権利が消滅するのかどうか。あるいは国が取ったことが法律的にどういう性質なのか。消費者にかわって取っているのか、あるいは固有の権利として取っているのかとか、いろいろなむずかしい関係が出てくると思うのですよ。併存的な関係というか、どういう関係になるのか、むずかしい点はあると思うのですけれども、いまの話を聞いていると別にどうということはないのじゃないかと思うのですが、何がはっきりしないのでしょうか。

稻葉修自由民主党法務大臣

○稻葉国務大臣 稲葉さん、はっきりしないという意味は、課徴金、課徴金という言葉を使っているけれども、いま公取の御答弁を聞いていますと、刑事上の没収的な刑罰制度ではない、これははっきりしましたね。行政処分である。とすると、税務署がやる追徴金みたいな性質のやり方のようでございますね。少なくとも似ていますね。似ていませんか。(稲葉(誠)委員「ぼくはわからない」と呼ぶ)わからないですか。行政処分でやるというのですから、それはそれでわからないことはないですね。私もわからないことはない、こうなりました。そこで第二番目の、そのための制度として、現行独禁法には企業の被害者に対する損害賠償規定、二十五条というのがあるわけです。それが設けられておる。そのような損害賠償制度のほかに、さらに課徴金の制度を設けるには問題があるのではないかという疑問はなお残るわけでございます。どうでしょう。(稲葉(誠)委員「残らない」と呼ぶ)残らない——私は残るように思っておるのですけれども、もう少し理由を述べて、こういう理由があって明確ではないかというひとつ御詰問を願って、その上で御答弁します。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 大臣が申されましたように、私ども、公取から課徴金制度の説明を受けましたときに、いま御指摘のように、民事訴訟手続におきまして独禁法では特別の損害賠償の制度があるということでございますので、課徴金というのは価格カルテル行為によりますところの利益の剥奪なんだという御説明でございましたから、法律家といたしまして、利益の剥奪なら、公取法に特別の損害賠償の規定があって、本来、利益というものはそこへ返される制度になっておれば、その制度の活用を図れば利益の剥奪はできるのではないか。したがって、単なる利益の剥奪という説明では課徴金は説明できないのではないかということを一応問題といたしたわけであります。  しからば、それは制裁であるのかということになりますと、一種の広い意味での制裁だということになりますと、それはいわゆる利益の剥奪という経済的なものを超えた秩序罰のようなものとしての制裁ということになれば、税法上にも重加算税のような制度がありまして、あれは、税金は取りますが、ほかに一種の秩序罰としての重加算税を取るわけですから、ああいう性質のものであろうかというようなことをお尋ねしたわけでございます。  それから、別途、制裁であるということになりますと、刑法に、刑事法手続におきましては付加刑といたしましての没収という問題もある。したがって、しかもそれを取る経緯が、価格カルテルの違反という刑罰をもって臨む行為との関連において発生する一種の制裁的なものであるとすれば、それは刑事手続をとるということも考えられるのではなかろうか。それを行政手続をとるということとどちらがいいのであろうかというような問題が問題としてはあるということを申し上げたわけでございまして、いま意見を申し上げる段階ではございませんけれども、私どもは、これは単なる利益の剥奪ということでは説明し切れまい、一種の制裁であるが、それを行政手続で重加算税のように課するか、あるいは刑事手続におきまして没収のようにして取るかということは、立法政策としてはどちらもとり得るのではなかろうか、その辺は公取の御判断にまちたいということを申し上げておるわけでございまして、課徴金制度がそもそも憲法に違反するものであるとか、あるいは刑事手続でなければ取れないものだということを申し上げておるわけではございません。ただ、先ほど申し上げましたように、価格カルテル違反につきましては三年以下の懲役、たしか五十万円以下の罰金をもって臨む刑罰自体もあるわけでございますので、課徴金制度がスタートするならば、刑罰制裁との関係をどう理解していったらいいのかということは、運用上の問題としては重要な問題があるなということは御指摘申し上げておるのでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 実際に課徴金を取ると言ったって、大臣が前に言われたでしょう、計算が非常にむずかしいという話が出ましたよね。たとえば一円でも間違えば、課徴金の制裁規定というのかな、それは効力がなくなっちゃうということになると、実際問題としては、この課徴金の規定を設けても実際上に行われるのはきわめて異例になってきて、これがあるということによる一つの威嚇的な意味というか、あるいは予防的な意味というか、そういうふうなところに重点が置かれるというふうになってくるのではないのですか。

稻葉修自由民主党法務大臣

○稻葉国務大臣 これも公取からお答えするのが適当なんじゃないかとは思いますが、そしていま総理府で一生懸命やっているときにここで申し上げるのもなんですけれども、そういうところに一般警戒的な集中排除の効果が期待されるという程度のものになりはせぬかという気がいたします。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 そうなってくると、やはりいまの二十五条の問題がありますね。  そこで、消費者の被害の賠償の訴訟をやりやすくするようなための訴訟法の問題、これはクラスアクションの問題だとかあるいは損害賠償裁判の立証責任の転換の問題だとか、いろいろ出てくるでしょう。そういう点も当然今後考えられてこなくちゃいけないのじゃないでしょうか。これは民事局長でもいいですが、その点はどうでしょうか。

川島一郎法務省民事局長

○川島(一)政府委員 損害賠償を取る場合についての問題仰せのような問題、いろいろあると思います。一つはクラスアクション、これは先生からたびたび御質問いただいておりますのでよく御承知のことと思います。それから、そのほかには例のクレートン法のような三倍賠償という制度ですね、これも考えてみる余地はあろうと思います、現在問題にはなっておりませんけれども。しかし、こういった問題につきましても、損害賠償を取りやすくするという意味でやはり考える価値のある問題であるというふうに思っております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 考える価値があるからどうするのですか。考える価値がある問題だと思いますだけでは、あなた、子供の使いみたいなものだものね。だからどうするのだと言うのだ。これは大臣の答えですよ。だからこれから早急にしっかりやりますと言うならこれは大臣の答えだ。そうでしょう。

稻葉修自由民主党法務大臣

○稻葉国務大臣 さっきの十月三十日のああいうことが知られましてから、あれもわかったようなわからないような返答じゃないかと自分が思ったのです、だからもう少し詰めて勉強しておいて——不勉強のために混乱か起きて、そうしてついに独禁法の法案が出されないなんてことになってはえらいことになってしまう、こういうことを心配をして、いま精力的にそういう詰めの勉強をやってもらっているところでございますから、それにひとつ御期待くださって、御信頼いただきまして——私どもはうそをついているのじゃないのですから、一生懸命にやるという気構えなのですから、どうかひとつ御鞭撻をお願いします。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 それはあなた、稻葉という人はそんな、うそなんかつかないから大丈夫ですよ。それは大丈夫ですけれども、それはそれとして、誤解されると困るのですが、きょうはあなた方のお考えをお聞きしたという程度のことですから。私の考えを言ってませんからね。ぼくが質問したことが党の考え方だなんて言われると困ってしまうものだから、あとで怒られてしまうから、そういう意味じゃございません。  まだいろいろ聞きたいこともあるのですが、きょうはこの問題だけにしておきましょう。別のことについてちょっと聞きたい点もありますけれども、時間の関係もあるからきょうはこの程度で終わります。

小宮山重四郎自由民主党

○小宮山委員長 青柳君。

青柳盛雄日本共産党・革新共同

○青柳委員 私はきょうは、いわゆる大須事件と言われる騒擾事件についての重要な証人の所在の問題について、法務当局にお尋ねをいたしたいと思います。  御案内のとおり、大須事件というのは大変に古い刑事事件でございまして、発生いたしましたのは昭和二十七年の七月七日、現在からもう二十二年以上も前の出来事でございます。ずいぶん古いことをいま持ち出すわけでありますが、一審の判決は四十四年の十一月十一日に下りまして、ほとんど全員が有罪ということで、控訴になりました。現在、控訴審が審理を終わりまして、来る三月の二十七日に判決の言い渡しということに決まっております。したがって、まだこの事件は終わっているわけではない。しかも、判決を目の前にして、非常に新しい事態とも言うべき問題として、重要なる証人の所在というものがクローズアップされざるを得ないわけでございます。  その重要な証人というのは、名前は清水栄という方であります。この方は明治四十二年四月二十六日に、愛知県の、昔は八名郡というのですか、大野町というところで生まれた方であります。本籍は、その後名称が変わったと思いますが、その生まれたところと同じ場所のようでありまして、南設楽郡鳳来町ということになっております。その後、本人は名古屋市千種区赤坂町に転籍をいたしております。住所は、昭和二十八年の二月十七日に、昔の中区南外堀町から現在の北区猿投町二十三番地に転入をいたしております。経歴は、私どもの調査では余りはっきりいたしませんが、昭和六年中に愛知県の警察官に任命をされまして、自来警察畑で職を奉じ、昭和二十八年一月十二日に名古屋市警察の少年課長という地位、しかも階級は警視でございますを退職された方であります。  この方は、先ほど申しました大須事件といういわゆる騒擾事件におきまして、第一線で鎮圧、逮捕等に当たった総指揮官の副官を務めていた方であります。したがって、非常にこの事件については一方の当事者とも言うべき地位にある方であります。  この人は、この事件発生と同時に、報告書等を二通ほど作成をいたしております。いわゆる無届けデモを取り締まったということについてのてんまつ報告書、それから拳銃を五発、自分みずから発射をいたしておりますので、拳銃発射についての報告書というものをつくっております。それには非常に詳細にその場の出来事について述べている部分がございます。同時に、当時検察官に対して一定の供述をいたしております。さらに、公判が開始になりましてから前後六回にわたりまして、これはほとんど継続的でございまして、弁護人、被告側の反対尋問等が長引いたので、六回にわたりまして証人としての供述をいたしております。  この人が述べていることが、いろいろの関係資料から見まして矛盾撞着に満ちており、真実を述べていないと思われる状況が出てまいりましたので、被告弁護人側では昭和四十二年ごろに至りまして再尋問を申請いたしました。裁判所は、これは第一審でございますが、名古屋の地方裁判所でございますけれども、ここでは再尋問を許可して召喚をいたしたわけでありますが、家族から、つまり本人の長男正弥という人から、この清水栄という人は昭和三十九年ごろに行方不明になってしまって、いまだにその所在がわからないから出頭はできないという、そういう届けが裁判所に出ました。そこから問題は非常に複雑になってまいるわけでございまして、どうして行方不明になったのかということがまず問題になるわけでございます。  当時の状況について調べました関係を申しますと、本人はノイローゼぎみになって、後をよろしく頼むという書き置きをして行方不明になってしまった。それが昭和三十九年の十一月十四日のことであったというのであります。そこで、十日後の十一月の二十四日に妻のあきという方から捜索願を所轄の警察署に提出をいたしまして、その所轄の警察は北警察というのでありますが、約六千枚の顔写真入りのふれ書を愛知県及び長野県付近に配布し、その所在を突きとめるための手配をした。しかし、いまだに行方は不明のままである、こういう状況でございます。  蒸発をするというようなことが戦後は非常に頻発いたしておりますから、ただそういう市井の一事案として見れば別に不思議なことではないのでありますか、非常に重要な人物——この大須事件というのには約百五十名近くの被告が起訴されまして、有罪ということになればその人たちの人権は非常な影響を受けるわけでございます。彼らは全部無罪を確信をいたして抗争しているわけでありますから、しかもこの行方不明の証人の原審における証言あるいは警察へ出した書証、検察官への供述調書、そういったものが一切不利な認定資料に使われるということになれば大変なことになるわけでありますから、しかも一審はそれがそういう作用を行っておるわけでありますから、決して単にプライバシーの問題、行方不明になったということは一般の方が余り関心を持たなくともよろしい問題だというようなこととはまず性質が違うことは、御推察がつくと思います。  しかも、私どもが非常に重視いたしますのは、この大須事件というのは、昭和二十七年四月二十八日にサンフランシスコの講和条約が発効いたしまして、日本が独立したと言われた後、また当時、破壊活動防止法というのが必要であるということで立法化されようとして、これに対する反対の運動が非常に盛んであった時期でありまして、しかもメーデー事件というのがその年の五月一日に東京で起こりました。さらに六月の二十四日には大阪の吹田で吹田事件というのが起こりました。そしてこの大須事件が七月七日に起こったわけで、いわゆる三大騒擾事件と言われているわけでございます。で、周知のとおりでございますが、メーデー事件はその後、二十年六カ月という月日を経過いたしまして、一審は有罪、二審、昭和四十七年十一月二十一日に全員無罪の判決が出ております。それから吹田事件は、十九年八カ月の審理期間を経過いたしまして、一審は有罪、二審、三審と経過いたしまして、昭和四十七年に無罪が確定をいたしております。こういう中で、この大須事件だけは審理が非常に長引きまして、現在二十二年七カ月を経過しているわけでありますが、まだ控訴審の判決がようやく最近に出ようとしているという状況であります。  この物情騒然とも言うべき昭和二十七年、講和発効直後の状況の中で、たまたま二十七年六月二日の午前零時半ごろ、大分県の菅生という村でいわゆる菅生事件というのが発生いたしております。これは阿蘇山の火山灰地でございまして、そこには開拓農民等も入り込んで開拓に従事しておりましたが、農村問題、農民問題が非常に激化いたしておりました。たまたまそこに共産党員も開拓農民として活動いたしておりましたが、この六月の二日の零時三十分ごろに菅生村の駐在所がダイナマイトによって爆破され、その場で二人の共産党員が現行犯逮捕されるという事件が起こりました。この二人が駐在所を爆破したんだというのが現行犯逮捕の理由でございます。  ところが、この事件はその後いろいろ不思議なことがありまして、新聞記者の方々が非常に興味を持って調査に当たった結果わかりましたことは、この事件の起こる数カ月前に、どこの者とも知れない人物が、村の村会議長をやっておりました人の家に居候のような形で入り込みまして、そしてこの共産党員に接触を持った。この人の名前は市木春秋という壮年の男性でございました。この人物がその事件の日以来どこへ行ったかわからないという。一体あれは何者だということが興味の中心になりまして、調べ上げた結果、現職の警察官であるということが判明をいたしたわけであります。本名は戸高公徳という現職の警察官であるということが写真とかいろいろの調査によってわかったわけであります。たまたまこの人物、東京で、警察官をやめた形である出版社に勤めておりましたのを、共同通信の記者が新宿で取り押えたということから真相が非常にはっきりしてきたわけであります。  この問題につきましては、当法務委員会でも当時取り上げられたことがありまして、この戸高公徳という人物は警察官でありながら、一体菅生事件でどういう関係があるんだということが問題になったわけであります。結局、このダイナマイトで交番が爆破されるという犯行はどうもこの人物が行ったんではないかということであります。つまり、共産党員をうまくその現場におびき寄せておいて、みずから爆破をして、この罪を共産党員になすりつけるという謀略をやったんではないかということが明らかになりまして、一審は徴役十年という重い刑でございましたが、二審、福岡の高等裁判所で全員無罪という判決になり、これは確定をいたしておりります。  この間の事情というものは、日本のこういう事件史の中でも非常に珍しい事件でございますので、幾つかの著書があらわれております。関係者である清源敏孝という弁護人の書いた「消えた警察官」、あるいは被告本人である後藤秀生のあらわしました「謀略と秘密警察」というもののほかに、元警察の諜報関係をやっておったという宮川弘という方の「菅生スパイ事件」という本とか、あるいは小説家の牛島春子という方の「霧雨の夜の男−菅生事件−」というような本ですでに刊行されて、詳細が明らかになっております。  こういう、大須事件の同じ時分に謀略事件が起こっておりまして、この大須の清水栄氏の捜査報告書あるいは拳銃使用報告書といったようなものに書かれた内容が、その後のいろいろの書証、証言等と対比してみますと、どうも工作が行われたのではないか。この人物、つまり清水栄氏を中心としてある工作が行われ、騒擾事件というものがつくり上げられた、でっち上げられたのではないかという節が濃厚になってまいって、裁判でも弁護人側から相当具体的な弁論や立証が行われたというのが現状でございます。  私どもはいま、裁判の結果についてこの委員会でとやかく介入するつもりは毛頭ありませんが、少なくともこの人物が副官として、そして警察の広報車といいますか、放送車、いわゆる警告を発する、おまえらは無届けデモをやっているんだから即時解散をしなければならない、もし解散しなければ実力をもって鎮圧をするというような、そういう警告を発する任務を帯びて放送車に乗って、デモ隊が会場から出発をする——この会場というのは名古屋にある大須という野球場、ここで、社会党の帆足計あるいは宮腰喜助という代議士が当時ソ連、中国を訪問し、貿易についての一定の取り決めをして帰ってきた報告会を催され、何万という群衆がそれに参加し、そのうちの何名かがデモに出かけた。その会場から二百五十メートルあたりのところでもう騒擾事件が起こったということで、たちまち鎮圧をされ、たった五分間でおしまいになった騒擾事件というものは歴史的にも非常に珍しい騒擾事件であります。メーデーにしろ吹田にしろ、数時間という長い間トラブルが起こっておったわけでありますけれども、大須はたった五分間、こういう事件です。  その五分間で鎮圧されるに至った契機をつくったのは何かと言いますと、放送車が火炎びんによって襲撃を受けた。そこでこの清水栄という副官がまず車から飛びおりて五発の拳銃を発射した。その結果一名が即死をする。これはデモに参加した在日朝鮮人でありますけれども、即死する。その弾がまさに彼の持っている、使用したピストルから出たものであるということは、旋条痕の対比によって鑑定の結果明らかになっておるわけであります。そういうような重大な因果関係もある  火炎びんによって放送車が襲われたと言うのだけれども、たまたまその状況を、と言いますのは、デモの状況をつぶさに新聞社が写真撮影をいたしまして——警察も写真撮影をしたようてありますけれども、その写真はどういうわけか、余り捜査の中で証拠資料としてあらわれてまいりませんけれども、新聞社が撮った写真が幾つか捜査報告書、現場検証報告書等に添付されまして、公判廷に提出をされております。その写真をつぶさに検討いたしますというと、当然、外から投げられた火炎びんであるならば、ガラス窓が閉められているというわけでありますから、ガラス窓が破れていなければならない。にもかかわらず、ガラス窓は一つも破れていないという、まことに不思議な現象。つまり、端的に申しますというと、内部で何者かが火炎びんらしきものを発火させて、それを契機に、暴徒の襲撃である、たちまちこれは鎮圧をしなければいかぬというのでピストルの発射、検挙というようなことになっていったのではないか、こういうふうに思われるわけであります。つまり、菅生事件と形態は違いますけれども、まさに取り締まり当局が民衆運動を抑圧、弾圧するために仕組まれた謀略的なものではないかという疑いがあるわけであります。  したがって、このような重要なキーポイントを握っている、まあ唯一とは申しませんが、重要な立場にある、しかも原審において使われた証言はまさに彼の一方的なものであるというようなことから言うならば、公正な裁判をわれわれが期待するという場合には、こういう重要な人物の所在というものは徹底的に捜し出すということが重要ではないか。そこで、すでに公判廷におきましても立ち会いの検察官に対して、所在を明らかにするようにという要求も、弁護人、被告の方から出しておりますが、まだこれは何らの成果も上げておりません。また、愛知県議会におきまして、昭和四十八年十二月十四日に愛知県警に対し質問をいたしましたが、当時の県警本部長の関沢元弘という方の答弁によりますと、先ほど私が申し上げましたような、いわゆるふれ書を配ったという程度の答弁しかありません。  そこで私は質問に入るわけでありますが、このような状況のもとで、清水栄氏の所在を法務当局とすればどのような形でいままでに確かめようとしたか、また現状はどうであるかということでございます。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 結論から申し上げますと、遺憾ながらいまだ清水氏の所在を発見するには至っておらないのでございまして、その間におきます清水氏の動静につきましては、概況は青柳委員御指摘のとおりでございます。  すなわち、清水氏は、御指摘のとおり、当時の事件におきまして、その現場に赴きました警察官の指導的な立場にあった者でございますため、証人として詳細に取り調べを受けまして、昭和三十年の五月二十七日から三十二年の二月一日までの間、御指摘のとおり六回にわたりまして法廷で証人として証言をいたしましたが、さらに昭和四十二年の五月十一日の、第一審の第六十回の準備手続におきまして、弁護人側の申請に基づきまして証人採用の決定がなされまして、再度喚問をされたのでございますが、その当時、清水氏の夫人から、昭和三十九年十一月以来、家出して所在が不明であるという回答がございました。そこで、裁判所の依頼がございましたので、名古屋の地方検察庁におきましては警察を通じまして調査をいたしましたが、所在が確認できませんで、裁判所はやむを得ず証人の決定を取り消しておるのでございますが、その調査の結果によりますと、御指摘のとおり、昭和三十九年の十一月十四日に書き置きを残して家出をし、以来、所在不明でございまして、十一月の二十四日に夫人から家出人捜索願が出され、当時大々的に捜索がなされましたが、発見に至らなかったのでございます。  なお、御指摘のとおり、第二審におきましても、法廷の内外で弁護人からしばしば清水氏の所在につきまして照会を受けましたので、検察官はその都度、警察に依頼をいたしまして調査をいたしましたが、現在に至るまで確認に至っていないというのでございます。  なお、検察庁みずからにおきましても、昨年の二月七日に、名古屋の地検の検察事務官をして清水氏の留守宅を訪問させまして、夫人から所在の端緒を得べく努力いたしましたが、端緒が得られなかったのでございます。  以上の次第でございまして、機会のあるごとに所在の捜査を警察を通じあるいはみずからやっておりまするが、いまだにその成果を上げることができないのははなはだ遺憾でございます。

青柳盛雄日本共産党・革新共同

○青柳委員 概括的な御答弁でございまして、大体その程度のことは、先ほど申しました公判廷における質問、あるいは愛知県議会における質問、あるいは今度の質問をするに当たってあらかじめ係の方々からお聞きいたしましたことと余り変わりはありません。  そこで私は、もう少しく突っ込んで当局側が調べていただけるならば、もっとはっきりしたことがわかるのではないかというふうに思うわけであります。私どもは何分民間人でございますから、捜査能力といいますか、調査能力にも限界があります。もっとも新聞社等がこういう問題について一定の関心を示して独自の調査をされれば、もっとこの具体的なことがわかると思いますけれども、何よりも国の当局がこれに協力をしてくれることが重要だと思います。  そこでお尋ねしたいことは、この方はノイローゼぎみか、何か悩み事があって家出をしてしまったというので、それが、後はよろしく頼むと書き置きにあったというのであります。この書き置きを、一体、警察あるいは検察庁などでは、奥さんからあるいは家族から見せてもらったことがあるのかどうか。そしてその内容がどういうものであったのか。  この人の経歴は、先ほど簡単に申しましたが、昭和二十八年一月十二日に名古屋市警少年課長を退職して後の就職状況は、尾西市の渡玉毛織、渡辺春彦という人が社長をやっておりますが、この渡玉毛織の総務に勤務をされたそうであります。この渡辺春彦という方は、当時は県の公安委員長だったそうでありますが、そこをいつかやめまして、昭和三十七年に小牧自動車学校というところに校長として就職され、三十七年の七月十三日には法令教官資格を取得をしております。そして、これを翌年の九月六日に退職をし、さらに庄内自動車教習所というところに勤めたようであります。この庄内自動車教習所でどういう地位にあったのか、所長の地位にあったのかどうかは存じませんが、どういう悩み事がそこで起こったのか、この点の調査は行われているかどうかをお尋ねしたいと思う。  一つ一つお答えをいただくよりも、先にそういうふうに項目を申し述べまして、後で一括お答えをいただきたいと思います。  つまり、家出の理由というものについてどの程度の調査が行われているか。たとえば被告弁護人の側で奥さんにお会いして聞いたところでは、大須事件のことがどうも苦になっていたらしいというような話、自分の夫の発射した弾で死亡したというような話が聞かれるのだけれども、果たしてそういうことがはっきりするものだろうかどうだろうか。つまり、うちの夫は殺人を犯しているのかどうかということがはっきりするものかどうかということを、奥さん自身が苦にしておったというようなことがあります。したがって、悩み事の一つはそういうような大須事件に関係のあることであったのかどうか。  一つの状況といたしましては、三人の方がこのピストルの弾によって死亡または負傷いたしておるようであります。もちろんピストルは、清水栄氏が五発、それから応援に駆けつけた山口中隊の巡査数名から発射したものが六発、合計十一発発射されております。そこで、発射された弾丸が幾つ入手できたかといいますと、死亡した在日朝鮮人の方の体から発見したものと、もう一人の方のところと、少なくとも二発は、あるいは三発は弾丸が発見をされておりまして、したがって旋条痕の照合ということはできる状況にありますので、四十七年の七月十三日に松本弘之という方が鑑定をした結果によりますと、先ほど申しましたように、死亡した人の体内から出てきた弾は清水栄氏の発射した拳銃から出たものであるということが確認されるという状況が結果としてあらわれた。また、昭和二十八年の四月二十七日に、これは事件が起こって間もなくのころでありますが、大野竜男という人が、これはもちろん警察科学研究所の方でありますが、やはりそういう鑑定、同じではありませんがそういう鑑定が出ております。こういうふうに鑑定が出るということは、本人にとってみると余り愉快なことではないわけでありますから、自分の責任というようなものを感ずるということも一つの家出の原因ではないかというふうにも考えられます。     〔委員長退席、大竹委員長代理着席〕  それから、先ほど冒頭に申しましたように、清水栄氏のつくった無届けデモ取り締まり報告書とか、あるいは拳銃使用発生の報告書というようなものは、しばらく検察庁のほうでしまい込んでおかれて公判廷には出なかったのでありますけれども、三十七年の二月十六日にこれが公判廷に明らかになる。つまり、一審の証言は三十一年の八月ごろから始まっているわけですね。それよりまだおくれて、五、六年後になって、彼の書いた、公判廷の証言とも明らかに食い違う、いわゆるでっち上げ情報を提供する、そういう報告書が三十七年になって裁判所に明らかになってきて、弁護人の目にも入るという状況、つまりでっち上げをしたことが暴露される状況が出てきたということ、こうなりますと落ちついた気分にならないのは当然でございます。いろいろの意味で、家出の原因というものは非常に不可解であり、どうも真相をこのままやみに葬るといいますか、原審どおりのままで安定させようというためには、本人があらわれることは好ましくないという状況は、関係方面の人の関心の的でもあるというふうに私は思います。したがって、単に個人的な原因によって行方不明になったとばかりは言えないんじゃないかということから、この書き置きの内容とか原因について調べているかどうか。  それから二番目には、四十一年に一度戻った。で、十日くらい一緒に泊まって、また出かけていったという、奥さん、あきという方の供述をわれわれは得ているわけです。これはほんとうかどうか。四十一年といえば家出してから二年くらいたった後でありますけれども、六千枚の顔写真をつけたふれ書きを出して鋭意捜査に当たったと言う警察は、捜索願いを出した奥さんからのこういう話を聞いたのかどうなのか。聞いたことはないのか。あるけれどもそれはうそだったのか。これは捜索の端緒にならなかったのかどうなのか。  それから、先ほど申しましたように、現住所には昭和二十八年二月十七日に移っておるわけでありまして、そこに奥さんも住んでおられるわけでありますが、その土地家屋などはだれの所有のものになっているのか。つまり、もしこの所有が清水栄氏の名義であるならば、その処分というような問題についても当然法的に本人の意思表示というものが必要になってくるわけでありますが、その本人がいないということ、そういうことでいわゆる失綜宣告の申し立てがなされているかどうかを調べたことがあるのかどうか。  それから、二十年以上警察に勤務いたしておったわけでありますから、いわゆる恩給はついていたと思うわけでありますけれども、この恩給は本人あるいは家族に渡っているのかどうか。  そのほか、行方不明になった当時すでに五十四、五歳という方であり、しかも警察官を二十年以上勤めた。そして小牧自動車学校の校長として額をあげられているわけであります。ふれ書きに出された写真はどういう内容のものか私ども存じませんが、その学校の額にあげられた写真を私どもは複写する機会がありました。たまたま大須事件の被告がこの小牧自動車学校に練習に行きましたら、この清水氏に会ったということがあって、そして、こんなところへ来ておるのかというようなことで声をかけられたので非常に驚いた。それから間もなくここをやめたのかどうか存じませんが、いずれにしてもその額でこの写真が明らかになっておる。  そういうふうに、社会的な地位は相当高い方であり、こういう方は交友も広いと私どもは見るわけでありまして、聞き込みというようなことをやれば、どこかで会ったというようなのは当然あらわれてくるに違いないというふうに考えるわけであります。その聞き込みをやったことがあるのかないのか。  つまり、いま私が申しましたような具体的な捜索といいますか、調査といいますか、そういうことを全然やらないというのであれが、一体それはどういう理由なのか。いわゆる重要参考人、あるいは指名手配をしなければならないような犯罪の容疑者というのとは違うから、そんなにまでやらないのだ、もう全く一般の家出人並みにしか扱っていなかったのだというのであるのかどうか。そうだとするならば、それは果たして妥当な措置と考えるのかどうかですね。こういう点をお尋ねをいたしたいと思います。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 検察庁あるいは検察官といたしまして、公正な裁判の実現のために証人の確保ということに努めるべきは当然でございますので、検察庁なりに努力はいたしておりまするが、何分にも、御指摘のような聞き込み等になりますると、調査能力にも限界がございますので、本件につきましても警察当局に御依頼を申し上げて調査をしていただき、あるいはまた、警察本来の家出人の保護という立場からも警察に御努力をいただいております関係もございますので、幸い本日警察庁当局から御出席いただいておりますので、警察庁当局から御指摘の点についてのお答えをいただきたい、かように思います。

奥山昭彦警察庁警備局調査課長

○奥山説明員 御指摘のございました清水栄でございますが、お話のとおり三十九年の十一月十三日で家出をしておるわけでございます。その家出の原因でございますが、愛知県警の調査によりますと、当時、仕事のことなどでいろいろ悩んでいたというようなこと、家族、知人等の話を総合いたしますと、どうもそういうことでノイローゼぎみであったというふうなことでございますので、愛知県警といたしましても、おそらくそれが原因ではなかろうかというふうに推察しておるわけでございます。御指摘のように、本人は二十八年の退職後、数回職場を変えておるようでございます。したがいまして、職場を数回変えておるということによりまして、それぞれ自分の能力とか性格、そういうものに合わないということで何か悩んでいて、結果的にノイローゼぎみであったというふうなことで、愛知県警の調査の結果はそういうふうになっておる次第でございます。  それから書き置きの関係につきましては、当時家出人手配等を実際やったわけでございますけれども、これは現場の警察官はだれも見ていないわけでございまして、単に後をよろしく頼むという家族からの話だけを聞いて、当時家出人の手配をやっておるような状況でございます。  それから二番目の、四十一年に本人が帰ってきたというふうなただいまのお話がございましたが、愛知県警の調査によりますと、こういうことは全く承知しておりません。  それから失踪宣告の関係でございますが、愛知県警の調査によりますと、すでに失踪後といいますか、家出後十年近くたっているということ、そういうことで、子供たちもそれぞれ成人しましてそれぞれ自活しておるというふうなことで、この辺でひとつ身分整理をしたいということで、ごく最近になりまして、名古屋家庭裁判所の方に民法に基づく失踪宣告の請求をしたというふうに伺っております。  それから第五番目の恩給関係でございますが、当人は二十八年退職でございますので、当時の恩給法の適用によりまして恩給を受給しておるというふうに聞いております。  それから、家出人の捜索関係でございますけれども、御指摘のありましたとおり、三十九年の十一月十四日に本八は家出をしておるわけでございますが、十日後の十一月二十四日に、本人の妻から名古屋北警察署に捜索願いが提出されております。これに基づきまして、愛知県警におきましては、当時、家族の話によりますと、もしかすると自殺のおそれがあるということでございましたので、早速、即日に県下一斉に家出人の指名手配をして捜索を実施する。それからあわせまして、本人の写真入り家出人手配書六千枚を作成いたしまして、これを全国に配布いたしまして捜索依頼を行うというふうなことを実施するとともに、家族あるいは親戚、友人、警察に勤めていた当時の同僚等にそれぞれ当たりまして、予想立ち回り先とか、あるいはその音信の有無とか、あるいはその他関連情報がないか等々につきましていろいろ実施したわけでございますが、有力な端緒情報を得られなかったということで、引き続き、そういう関係者に対する情報依頼等につきましてはお願いすると同時に、警察で保管しております身元不明死体等の関係資料、これらのものを逐次照合するような作業を継続している次第でございますけれども、現在のところ、まだ所在確認に至っていないというのが現況でございます。

青柳盛雄日本共産党・革新共同

○青柳委員 私どもの方でも調べればわかるようなこと、ただいまの失踪宣告のことなどもわからぬわけではないと思いますが、いまのお話で、最近家庭裁判所に出されたということがはっきりいたしました。  いま私の質問の中でお答えの抜けていたのは、財産関係のことが一つ。それから、恩給を受けておると言うけれども、本人が行方不明であるのに受けようがないわけでありますが、これは事務的には、奥さんなり何なりが本人にかわって受け取るということを認めて奥さんに渡している、あるいは長男やその他の家族に渡しているという趣旨であるのかどうか。それから、本人が四十一年ごろに帰ってきて十日くらい泊まっておったということは、調べたがそういう事実はないと言うのですけれども、奥さんからそういうことについて情報を得たことは当時もなかったし、その後もない。つまり、私どもがそういうふうに奥さんから聞いたのは何か間違いではないのかというふうふうにもとれるわけでありますが、本当にそうなのかどうか、重ねてお尋ねをいたしたいと思います。

奥山昭彦警察庁警備局調査課長

○奥山説明員 四十一年に本人が帰宅したということにつきましては、愛知県警の調査によりますと、そういう事実は全く確認していないというふうなことでございます。  財産関係につきましては、ちょっとまだ調査不十分でございますので……。  それから恩給関係につきましては、一応家族の方が受領しているというふうに私どもの方は伺っております。

青柳盛雄日本共産党・革新共同

○青柳委員 どうも奥さんの話を私ども直接聞いたわけじゃありませんが、会ってお話を聞いたところでは、余り苦にはしていらっしゃらない。うちの主人は非常に生命力がたくましいので、どこでどんなことをやったって生き抜いているだろうというようなことで、楽観的なものであったというような話もあり、どうも、奇々怪々という言葉が当たるかどうか存じませんが、決して単純ではないというふうに思います。  最近失踪宣告をどういう事情で出すことになったか。先ほどのお話ですと、子供たちもみんな一人前になったから、そろそろ身辺整理ということで奥さんかだれかがその申し立てをしたのじゃないかと思いますが、これからこの方について官報の公告なども行われるわけでありますし、関係者からいろいろの情報も裁判所に出てくる可能性もあるわけでありますけれども、いずれにしても私は、この問題に対する警察の取り組みが非常に腑に落ちないというのに尽きるわけであります。いまの日本の警察力をもってすれば、もっともっと具体的な情報を手に入れて、それを総合判断して、もうこれはこの世にいないかもしれないという公算が非常に強いとか、まだまだどこかにいそうなものだというようなことはわかりそうなものではないか。つまり、これは余り真相を明らかにしたのではおもしろくないということが動機になって、こういう不明朗な状態が続いているのではないかというふうに私は思います。  したがって、この問題はこれ以上きょうは質問は続けませんけれども、今後の状況いかんでさらにこの問題についての質疑を行う場合もあるということを留保いたしまして、本日はこれで終わります。

大竹太郎自由民主党

○大竹委員長代理 諫山博君。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 兵庫県養父郡を中心とした、南但馬一帯における部落解放同盟朝田・丸尾派の集団リンチ問題について質問します。  この問題については、本国会でもわが党の議員が本会議、予算委員会等でいろいろの角度から質問しました。それに対して、政府当局は、捜査中だからということで詳細な説明を避けております。しかし、この委員会は、その捜査が適正妥当に行われているかどうか、これを審査する舞台です。また、事件発生以来二カ月あるいは三カ月たっておりますから、法律的に見ても、いわゆる証拠隠滅のおそれあるいは捜査に支障を来すというような状況はほとんどなくなっているのじゃないかと思います。そういう観点で、捜査中だからとか、あるいはまだ結論が出ていないからということで答弁を避けられるのではなくて、検察行政、警察行政が適正に行われているのかどうかという観点から幾つかの問題を質問したいと思います。  そこで、この事件では昨年九月から十一月にかけてさまざまな刑事事犯が起こって、告訴、告発事件が、私の手元に資料があるだけでも十五件に上っております。この告訴、告発が検察庁で何件受理されているのか。そして被疑者が、私たちの調査では氏名不詳者を含めて数百名ということになっておるのですが、何名ぐらいになっておるのか、御説明いただきたいと思います。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 八鹿高校事件につきまして、被害者から検察庁に告訴、告発のありました件数は十九件でございまして、概括的に申しますと、現在までに起訴された件数はそのうちの十一件でございます。そして、十一件で十三名が起訴されておりまして、ただいま調査中が八鹿高校関係では三名ということでございます。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 十九件の告発事件のうちに、捜査が終了して、検察庁としては事件処理を終わったものがあるのかどうか。あればどの事件なのか、御説明ください。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 いろいろな告訴事件がございまして、一々即刻にお答えができませんで恐縮でございますが、八鹿高校事件、いわゆる四十九年十一月二十二日発生の事件につきましては、現在受理いたしましたのが十二名でございますが、起訴九名でございまして、なお捜査中が三名でございます。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 八鹿高校事件というのは、南但馬一帯で起こった暴力事件の中では最大の事件です。しかし、そのほかにたくさんの事件が告訴、告発され、捜査が進んでいると思いますが、捜査完了した事件があるかどうかです。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 お尋ねの、捜査を完了したものはございません。  なお、八鹿高校事件以外に、南但馬地区一帯で発生した事件として起訴をいたしましたものといたしましては、生野駅の公民館の事件で起訴二名、それから大藪公民館の事件で起訴二名がございます。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 たくさんの告訴、告発事件で、警察も捜査していると思いますが、まだ警察の捜査中で送検されてないものがあるのかどうか。あるとすればどれなのか。

佐々淳行警察庁警備局警備課長

○佐々説明員 お答えいたします。  昨年九月以降現在まで、お尋ねの兵庫県南但馬地方において発生をいたしました事件は、警察が告訴、告発を受理いたしました件数十三件でございます。先ほどの法務省御答弁の件数と若干違いますが、これは重複をいたしたり、あるいは検察庁にのみ告訴、告発をしておる事犯がございます。十三件の告訴、告発事犯の内訳を申しますと、告訴告発事件五件、告発のみが一件、告訴七件でざいます。  兵庫県警では特別捜査本部を設置いたしまして、鋭意捜査を進めておりますけれども、捜査未着手の事件は現在までのところ一件もございませんが、現在まで送致をいたしました事件は、九月八日、朝来町におきまして発生をいたしました橋本哲朗教諭にかかわる事件、この事件を十一月十六日付で、被告訴人四名を、逮捕監禁、傷害容疑で神戸地検に送付済みでございます。  それから、十月二十日から同月二十六日までの間、朝来町におきまして発生をいたしました同じく橋本哲朗教諭自宅における事件、これにつきましては、一月二十二日、被告訴人一名外一名、計二名を、監禁、暴力行為等処罰ニ関スル法律違反容疑で通常逮捕いたしまして、事件を送致いたしております。  また、十月二十五日、国鉄生野駅及び生野町南真弓公民館において発生をいたしました事件については、一月二十二日、被疑者二名を、逮捕監禁致傷罪容疑で通常逮捕し、事件送致済みでございます。  さらに、十一月二十二日、八鹿町八鹿高校において発生をいたしました集団暴力事件につきましては、十一月二十三日付、被害申告及び告発が行われておりまして、この事件につきましては、十二月の二日に四名、十二月の十二日に七名、本年一月二十二日一名、合計十二名を、逮捕監禁致傷及び強要罪容疑で通常逮捕をいたし、事件を送致したほか、なお共犯関係等について捜査を続けておるところでございます。  以上のように、十三件の告訴、告発事件、これは警察が受理をいたしました事件でございますが、このうちの四件、二十名を検挙して、それぞれ送致、送付済みでございます。残余の事件については目下捜査中でございます。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 十三件の告訴、告発事件のうちの九件はまだ送検されていないようですが、いつごろ送検が終わる見通しか、御説明ください。

佐々淳行警察庁警備局警備課長

○佐々説明員 この事件処理の見通しでございますが、一連の事件、いずれも数人もしくは数十人によるところの集団不法行為であり、被害者もまた複数である、複数でないのもございますが、特に十一月二十二日の八鹿事件等は被害者も複数であるというようなところから、非常に複雑な事件でございました。現段階では捜査終結を、おおむね二月末を目途に鋭意捜査をいたしておるところでございます。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 警察としては、この事件の捜査のために何名ぐらいの警察官を充てているのか。また、兵庫県警だけでやっているのか、よそからの応援があるのか、いかがでしょう。

佐々淳行警察庁警備局警備課長

○佐々説明員 お答えいたします。  特別捜査本部の専従要員は六十七名でございます。なお、この数字は、所要の警備措置のために配備をしておる警察官等を含みません。専従の警察官でございます。  よその県からの応援というのは、管区機動隊等、警備実施に所要の部隊をその都度動員をいたす等の措置をいたしておりますけれども、捜査は兵庫県警において実施をいたしております。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 専従が六十七名だそうですか、専従でない警察官は何名ぐらいこの捜査に参加していますか。

佐々淳行警察庁警備局警備課長

○佐々説明員 ちょっと詳細な数字を持ち合わせておりませんけれども、当然八鹿警察署員あるいは和田山警察署員、これがそれぞれ四十数名でございますが、これらの要員に加えまして、本部の応援派遣要員を加えましておおむね百名程度が非専従的な捜査に従事しておるものと思われます。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 検察庁関係を質問します。  いま、警察に告訴された十三件について説明がありましたが、検察庁に告訴、告発された事件で処理がすべて済んだというのはあるのでしょうか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 結論から申しますと、ございません。検察庁にこの種の八鹿町事件等で直接告発のあったものは、和田山関係、八鹿町事件を含めて、合計で十九件ございますが、そのうち、完了はいたしておりませんが、一部起訴したものといたしまして、先ほど申し上げました生野駅、生野町の南の公民館の事件、それから大藪公民館の事件がございます。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 検察庁はこの事件の捜査のために、どのくらいの検察官あるいは検察事務官を充てているのか、御説明ください。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 この事件のために神戸地方検察庁といたしましては他庁から応援は受けておりませんが、神戸地検の公安部長以下十三名の検察官を投入いたして鋭意捜査に当たっておるわけでございまして、ちなみに、神戸地検は本庁のみで検事三十二名、併置の区検の副検事二十四名でございますが、そのうちの十三名の検察官を投入して捜査に当たっているというのが実情でございます。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 十三名というのは、この解同朝田・丸尾派問題に専念しているのですか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 そのとおり、専念をいたしております。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 警察は一応事件捜査の見通しを持っているようですが、検察庁としては、すでに告訴、告発された事件のすべてをいつごろまでに処理を終わるつもりか、見通しがありますか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 結論から申しますと、いつまでということは具体的に申し上げるわけにはまいらないのが実情でございまして、できるだけ速やかに処理を終わりたいという考えで鋭意努力をいたしております。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 警察の方に聞きます。  この一連の事件の中で、一番残虐で被害が大きかったのは十一月二十二日の八鹿高校事件です。この事件で送検するときに、被疑者は何名にしていましたか。

佐々淳行警察庁警備局警備課長

○佐々説明員 八鹿高校事件につきましては、被疑者数は、現在取り調べ中の者を含めまして恐らく数十名に上ると思われますが、現在まで事件送致をいたしましたのは、先ほど御報告をいたしましたように十二名でございます。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 数十名の被疑者のうち十二名だけを送検したというのは、残りは追って被疑者として送検する予定だということになりますか。

佐々淳行警察庁警備局警備課長

○佐々説明員 残余の者につきましては現在捜査中でございまして、そのうち被疑者が何名になるか、捜査結了を待たないとわからない状況でございますけれども、申し上げました十二名というのは、強制捜査によって身柄を逮捕して送致をした者でございまして、そのほか状況によっては任意送致事件も出ようかと思われます。残余の被疑者の数につきましては、捜査中の事件でございますので答弁を差し控えさしていただきます。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 私は、この事件の告訴、告発の代理人である弁護士からいろいろ事情を聞くし、起訴状も検討さしていただきました。そして疑問に思ったのは、八鹿高校事件などでは集団的な長時間にわたるリンチですから、暴力行為等処罰法あるいは不法監禁、そのほかさまざまな法律違反に、場合によっては暴力行為等処罰法の「数人共同シテ」こういう条文を適用する、あるいは刑法犯であれば共謀の規定を適用する、そして直接手を下していなくても、相当広範囲な人が刑事責任を負わなければならないという事件だったと思います。ところが、捜査の重点あるいは起訴のやり方を見ると、直接手を下した人だけに刑事責任が追及されているというふうに見えるのですが、そういう立場で警察は捜査を続けているのですか。

佐々淳行警察庁警備局警備課長

○佐々説明員 当面、捜査の第一重点は、実行行為者、加害行為者の捜査に向けられたわけでございまして、背後関係あるいは共犯関係、これの真相究明のための捜査を現在続けておるところでございます。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 そうすると、すでに送検した被疑者あるいは送検があるかもわからない数十名の被疑者というのは、単なる共犯関係は含まない、直接手を下した人という意味ですか。

佐々淳行警察庁警備局警備課長

○佐々説明員 強制捜査対象として最重点に選びましたものにつきましては、実行行為参加者を重点にいたしております。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 そのほかの数十名の被疑者はどうですか。

佐々淳行警察庁警備局警備課長

○佐々説明員 恐らくこの数十名の残りの者につきましても、実行行為に関与した者もあろうかと思われます。現在までのところでは、適用罪状は、先ほど申し上げましたように、不法逮捕監禁、不法逮捕監禁致傷、傷害、強要でございます。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 数十名というのは非常に幅のある表現ですが、これは三、四十名ですか、五、六十名ですか、あるいはもっと具体的に言えますか。

佐々淳行警察庁警備局警備課長

○佐々説明員 現在取り調べております関係者につきましては、情状により参考人に終わるものもあり、また任意の送致事件になるものもあろうかと思われますので、その数につきましては、捜査中の事件でございますので答弁を差し控えさせていただきます。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 そうするといずれにしても、数十名が具体的に何名になるかというのは別として、これは警察としては、直接手を下した被疑者というふうに目している数ですね。

佐々淳行警察庁警備局警備課長

○佐々説明員 直接実行行為に参加をした者に重点を指向いたしておりますけれども、それ以外の指揮、扇動その他の関係から共犯関係があるかどうか、この点についても捜査を進めております。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 いま警察がしぼっている数十名というのは、指揮者であるかあるいは実行行為者であるか、どちらかだということになりますか。そして共犯関係者はまだ被疑者としては挙げてないということでしょうか。     〔大竹委員長代理退席、委員長着席〕

佐々淳行警察庁警備局警備課長

○佐々説明員 ただいま申し上げました数字は、現在取り調べを行っておる対象の数を申し上げましたものでありまして、実行行為に参加した者もあるいは共犯の疑いのある者も含んでおります。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 この事件では現場の生々しい写真あるいはフィルムが押収されているはずですが、それを被害者に見せて面割りをするというような捜査はやられていますか。

佐々淳行警察庁警備局警備課長

○佐々説明員 いたしております。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 検察庁関係で質問します。  この事件は、いま私が指摘しましたように、直接暴力をふるった、あるいは脅迫的な言葉を吐いた、だから犯罪人になるというようなものではなくて、十数時間にわたって集団的な暴力リンチ行為が行われたわけです。こういう場合は、直接手を下した人だけではなくて、この集団的なリンチ行為に参加した人はすべて刑事責任が問われなければならない。もっとも、これを起訴するかどうかは別問題です。情状の問題は残ります。しかし、刑事責任は集団行為そのものに参加した人すべてに及ぶというのが常識的な法律解釈だと思いますが、検察庁はそういう立場で捜査を続けていますか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 今回御指摘の事件につきまして、どの範囲において捜査をし、どの範囲において起訴をすべきだということは私どもの口からは申すべきではないわけでございますので、この場においても申し上げるわけにはいきませんが、一般論といたしましては、御指摘のとおり事案の真相を究明するというのが検察本来の使命でございますので、それが集団的犯罪であれば、そこにおける共犯関係というものについても深く捜査の手を進めるというのが当然でございますから、単に実行行為者のみならず、いわゆる共謀に当たる者、あるいは教唆に当たる者、幇助に当たる者につきましても、真相の究明という立場からは究明さるべきものと考えております。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 私はこの事件で兵庫県警本部と折衝したことがあります。ところが、糾弾行為は罪にならないという判例もありますね、というような言葉が警察関係者から出ているのです。糾弾行為が罪になるかならないかということは具体的な事件で決まることであって、そういう議論そのものはナンセンスだと思うのです。  ところで、この八鹿高校の事件というのは、十数時間にわたって公然とこういう糾弾行為が行われたわけですから、少なくともこの糾弾行為に積極的に参加した人は、起訴されるかどうか、逮捕されるかどうかは別として、刑事責任の対象にはなるというふうに見るのが法律家の常識だと思いますが、警察はそういう立場で捜査を進めていますか。

佐々淳行警察庁警備局警備課長

○佐々説明員 糾弾行為を認めた判例がありますが、という話が警察関係者から出たという御指摘でございますけれども、私どもは、いかなる主義、信条あるいは理由のいかんを問わず、暴力行為その他を伴う違法行為に対しましては、これを断固取り締まる、これを看過しないという基本的な姿勢で警察を運営いたしており、また、ただいま御指摘のとおり、一般論といたしましては、刑事責任を実行行為者のみならず、共犯関係あるいは指揮、扇動を行った者、直接手は下さないけれども、指揮、扇動を行った者等にも及ぼす。真相をあくまで究明をしてこの事件の解明をする、こういう基本的な姿勢で捜査を続けておるところでございます。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 その一般的な原則は、八鹿高校事件の捜査にも当てはめて考えているというふうに聞いていいですか。

佐々淳行警察庁警備局警備課長

○佐々説明員 そのとおりでございます。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 八鹿高校事件で私たちは、解同朝田・丸尾派だけではなくて、教育委員会関係者、校長、教頭も告訴しています。そして現地ではすでにこういう人たちが検察庁の取り調べを受けていると聞いているのですか、これは参考人として調べているのか、被疑者として調べているのか、どちらでしょう。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 八鹿高校事件につきましては、御指摘のとおり兵庫県の教育委員会の関係者四名が告訴をされております。これにつきましては、申すまでもなく告訴事件といたしまして被疑者として取り調べをいたしております。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 その人たちは警察からも被疑者として送検があっていますか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 ございません。警察からは送致を受けておりません。直告発事件ということでございます。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 じゃこれは、警察は被疑者として扱わなかったというんじゃなくて、真っすぐ検察庁が捜査を始めたというケースになりますね。そうすると、教育委員会関係者、校長、教頭は、どういう被疑罪名で調べを受けているのですか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 逮捕監禁、傷害等の共犯ということであると理解しております。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 私たちの調査では、八鹿高校事件では数十名が負傷を受けた。そしてたくさんの人が入院しなければならなかったということになっていますが、この傷害の程度、数、何名負傷し、重いのはどのくらいだったというのがいまの時点で言えますか。

佐々淳行警察庁警備局警備課長

○佐々説明員 負傷者総数は五十八名と記憶いたしております。入院者の数につきましては、ちょっといま詳細に覚えておりませんが、十名前後、一番重いものが肋骨骨折等による二カ月の入院と記憶いたしております。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 何しろ昨年の暮れ、相当長期間に継続的に集団的なリンチ行為が行われた。そしていま捜査は進められているようですが、それにしても捜査のテンポが遅いのではないか、あるいは八鹿高校事件のような集団的な残虐なリンチ行為に対する処理の仕方としては手ぬる過ぎるんじゃないか。これで暴力排除ということを言っている立場が貫かれると言えるのかということに、私非常に疑問を持ちます。法務大臣、いかがでしょう、いまの取り調べの状況を聞いていただいて。私はもっと捜査を促進すべきだ、そして不当なやり方に対しては厳重に処理していくということが必要だと思うのですが。

稻葉修自由民主党法務大臣

○稻葉国務大臣 伺っておりまして、同感を表すべきような気がいたします。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 きのう兵庫県の八鹿町と養父町で、わが党の不破書記局長が参加して演説会を行いました。ちょうどここでは町長選挙が行われているわけです。そのための公式な演説会に対して、解同朝田・丸尾派が再び襲撃して演説会を妨害しております。  八鹿の町民会館では二百名から二百五十名の解同朝田・丸尾派が演説会を妨害する。そのために一時間十分演説会の開催がおくれる。そしてこの妨害には近所の人だけではなくて、たとえば大阪府の高槻市からバスを二台貸し切って彼らが参加している。またこの行為には中学生も参加しているというようなことがきのうありました。しかも、これはわが党の不破書記局長も参加した公式の選挙のための演説会です。  さらに、養父町の広谷小学校の体育館では、多数の解同朝田・丸尾派が演説会場の一角を占拠しまして、演説が始まると、やじ、怒号、そして演説を妨害する。この数は約二百名です。演説会の途中で主催者が退去を要求してようやく退去するというような事態があったようですが、それにしても、この第二会場の広谷小学校には、解同朝田・丸尾派と言われている、保釈中の丸尾が参加して指揮をするというような事態が起こりました。  もし、警察、検察庁がもっと機敏で適切な処理をすれば、こういうことは防がれたと思う。こういうことがいまなお起こるようなことは許されないというふうに考えているのですが、この点、警察庁はどういうふうに考えているのか、また、どういうふうに処理しようとしているのか、お聞きします。

佐々淳行警察庁警備局警備課長

○佐々説明員 まず、丸尾良昭についてでございますが、丸尾良昭は、八鹿高校事件につきまして昨年十二月二日、通常逮捕をし、十二月四日、身柄つきで神戸地検に送致をいたし、神戸地検では翌十二月五日、勾留請求を行い、さらに十二月十四日勾留延長の上、十二月二十四日、在監のまま逮捕監禁致傷、強要罪で起訴をいたしましたが、神戸地裁では十二月の二十七日、保釈金五十万円で保釈を認めました。  その後、警察では橋本氏宅事件で、本年一月二十二日、丸尾良昭を再逮捕いたしまして、一月二十三日、身柄つきで神戸地検に送致、神戸地検におきましては勾留請求を行いましたが、神戸地裁は同請求を却下いたしましたので、神戸地検はさらに直ちに準抗告を行い、勾留請求却下決定の取り消しを求めたものでありますけれども、一月二十七日、神戸地裁はこの準抗告を棄却いたしまして、丸尾良昭の身柄は釈放されて現在に至っておる。  昨年の十二月二十七日の保釈条件も、朝来町にございます自宅に居住をすること、一週間以上でございましたか、旅行する場合には事前に裁判官に書面で許可を求めることという通常の保釈条件のみでございまして、その他の条件がついておらない。したがいまして、警察といたしましては、再び暴力行為その他がないよう十分これを視察し、実際にそういう事案を起こした場合には、これに対する所要の警察措置をとるという姿勢で臨んでおるところでございます。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 きのうの演説会については、事前に彼らの暴力的な干渉が予想されましたから、わが党の林百郎代議士が自治大臣に電話で厳重な取り締まりを要求する、警察庁にも同じような申し入れをする、そういう万全の措置をとりながら演説会を迎えたわけですが、それでも演説会が事実上妨害されるというような事態が起こっているのです。こういうのはどうにもならないのですか。後で刑事事件として処理する以外に対策はないのでしょうか。

佐々淳行警察庁警備局警備課長

○佐々説明員 ただいま御指摘のとおり、二月九日、中央におきましても、また兵庫県の県警に対しましても、警備、警護要請等がなされまして、これに対しまして、兵庫県警では地元八鹿警察署に現地警備本部を設置し、警察官八百四十一名を編成いたしまして、このうち、八鹿町民会館周辺あるいは不破書記局長のパレードのコース、養父町における広谷小学校周辺等に四百八十九名の部隊を配備し、身辺警護につきましても、不破書記局長の身の安全については万全の措置を講じて臨んだわけであります。  昨日の演説会の会場に、解同の人たち二百名が参加をしたことは事実でございますが、これにつきましても、主催者側におきまして会場で二時ごろから入場規制を行い、参加者を一列にいたしまして、マイクロホンを持っていないか、あるいは何かそういう凶器を持っていないか、あるいは町民以外の選挙権のない人たちが参加をしないかどうか、こういうような入場規制を厳格に行い、これに対して所要の警備措置をとるよう要請がございましたので、現場における制服部隊は、違法行為が行われないよう十分な監視体制をとっておるところでございます。入場がこういうことでおくれた関係もございまして、演説会が若干おくれたようでございますが、会場の中における状況も、やじその他はございましたが、主催者側の警告によって、「ただいまから不破書記局長の演説が行われますので、いやな者は退場をしてもらいたい」こういうアナウンスが行われたのに対して、丸尾良昭以下二百名が、「あほらしい、出よう出よう」ということで退場をしたというようなことで、警告に従って行動しておる。また、現実にスクラムを組んで阻止をするとか、あるいは集団暴力をもってこの会場に押し入るとか、こういう事案は昨日は発生をいたしておらないという報告を受けております。  もちろん、昨日午後起こった問題であり、私どもも完全に調査をいたしておるわけではございませんので、後刻いろいろな刑事事件容疑の事案についての事実関係が明らかになれば、もちろん所要の警察措置をとる方針でございます。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 暴力はいかなるものであろうとも排撃さるべきだというのは当然ですが、選挙を妨害するような暴力というのは特別悪質なわけです。公職選挙法によりましても、演説を妨害し、選挙の自由を妨害した者は四年以下の懲役もしくは禁錮、あるいは公職選挙法の二百三十条では、選挙に関し、多衆集合して演説を妨害した者は、首魁が一年以上七年以下、指揮者が五年以下の懲役というような特別重い刑罰を要求しております。現地の弁護団では告訴するというふうに言っているようですから、いずれこの事件は詳細に調査してしかるべき措置をとることを要望いたします。  そこで、法務大臣にお聞きするんですが、さっきの所信表明の中で、爆弾事件を排撃する、トロツキストの内ゲバを排撃するということを言われました。私も全く同感です。しかし、暴力には、私たちが強調しているように、部落解放同盟朝田派の暴力というのが最近非常に問題になってきた。さらに政党幹部に対するテロという問題も出てきております。こういう観点から、南但馬一帯で起こっている暴力事件というのを、私たちは民主主義の根幹にかかわるものとして重視し、その徹底的な追及のために闘っているわけですが、いまの質疑応答を聞いていかがでしょう。

稻葉修自由民主党法務大臣

○稻葉国務大臣 諫山さんと刑事局長、警備課長の質疑応答を聞いておりまして、南但馬地区の解放同盟がだんだん暴力化していると言われる現状に対する予防、取り締まり、捜査等の進め方、まあ一生懸命にはやっているんでしょうけれども、国民に歯がゆい、なまぬるいというような感じを持たれるとすれば、これは重大なことでございます。したがって、先ほどもお答えしたように、そういうことのないように——こういったような暴力を許して一体法秩序の維持という法務大臣の役割りを果たせるのかどうか、非常に心痛をいたしております。今後ともなお一層督励して、一日も早くこういう暴力事件等がなくなりますように、根絶されるように庫身の努力を傾けたいと存じております。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 警察は一応捜査終了のめどを持っているようですが、検察庁はいつ終わるかわからないという状況のようです。そして、私が現地で話を聞きますと、とにかく八鹿高校事件が大きいし、橋本先生の家の事件も大きいし、なかなかほかの事件まで手が回らないということが実情のようです。したがって、たとえば逮捕してみても、もう調べが本格化したときには証拠隠滅のおそれが薄らいでいるというようなことで、身柄拘束も非常に困難になるというような状態のようですが、私はその意味では、必要とあらば、たとえば他の県から応援を出すなりして、もっと検察庁の捜査も促進していただくべきではなかろうかと思うのですが、どうでしょう。

稻葉修自由民主党法務大臣

○稻葉国務大臣 この辺の具体的事件の内容は、特に同和問題というもののむずかしさもまざまざと経験させられた事件でございまして、大いに督励してやったらどうか、暴力事件なんだから遠慮することはない、どんどん人数もふやしたり費用も増したり、やったらいいじゃないか、指揮したらいいじゃないかということでございますが、具体的な事案でございますので、法務大臣から、どんどんやれとか、いつ幾日までにやれとか言うべき事案じゃございませんので……。私の一般論としては、国民に歯がゆさを持たしては暴力事件を掃滅することができないという所信は持っております。そういう点で、いまの具体的事案については、刑事局長から先生の御質問に対する答弁をさせます。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 先ほど私が、いつ終わるかわからないという趣旨のことを申し上げたという御理解でございますが、大変な異常な決意をもって臨んでおり、一日も早く真相の究明をするというために異常な努力をしておりまするが、いつ終わるかを具体的に申し上げることはできないといった趣旨でございますので、もとより御理解いただいていると思いますが、そういう次第と同時に、先ほど来警察庁当局から御説明のとおり、まだ捜査中の事件もございますので、その送致事件の内容なり数に応じまして、検察庁全国一体でございますので、最寄りの検察庁その他から、足らぬときには検察官を投入いたしまして迅速な処理を図るという決意には変わりのないことを御理解いただきたい、かように思います。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 今度は問題を変えまして、刑事犯罪の被害者に対する補償法の問題について質問します。  刑事事件の被害者が非常に気の毒な立場にあるし、経済的にも窮迫しているということは、学者の調査なんかでも明らかにされているようです。また、刑事事件の被害者に国家が何らかの金銭的な補償をすべきだというのは、国際的な潮流でもあります。わが国の刑事法学者もこの立場を支持しているし、日本弁護士連合会も昭和三十五年の第三回人権擁護大会で、立法措置を要求するという決議をしました。そして政府も現在では前向きに検討するということを言っておられるようです。私たちも、これはきわめて当然なことだし、一日も早く立法化したいものだと考えているわけです。ただ、法律をつくるについて、幾つかの基本的な点は明らかにしなければならないと思いますから、質問します。  その第一は、従来、政府の答弁を聞いていますと、補償には損害賠償型、労災型、生活保護型、大体三つのタイプがあるのじゃないか、そして労災型を志向すべきではなかろうかというのが法務省の現在の到達点だと聞いているのです。  どういう方法を採用するかというのはなかなか議論のあるところですが、しかし、はっきりしておかなければならないのは、国が犯罪被害者の補償をするという場合に、国は犯罪を防止する義務があるのだ、責任があるのだ。この義務と責任が十分に果たされないところから犯罪が起こってきている。これを私はどの場合でも一つの思想的な前提にしなければ、この法律の正しい立法というのはできないだろうと思うのです。いわゆる損害賠償型の国家賠償をとらなくても、思想としてはこういう立場が政府に必要だというふうに考えるのですが、いかがでしょうか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 御指摘のように、犯罪が発生いたしました場合に、国に犯罪防止の義務があるから、それを果たさなかったという意味におきまして、国は広い意味においての不法行為責任があるのではないかという考え方というものがあることは承知いたしておりまするが、私ども事務当局で考え、あるいは世界のそういう刑事補償制度をとっておる国の考え方を見ましても、諫山先生御指摘のように、国に犯罪防止義務があり、それを怠った不法行為に対する損害賠償という意味で刑事補償をするのだという考えを一律にとっている国はないように思いますし、またそのように簡単に割り切るわけにはいかないのではないかというふうに考えております。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 私は何も損害賠償型でなければならないと画一的に言っているのじゃないのです。どういう立法体系をとろうとも、政府としてはその心構えだけは必要じゃないかという問題を提起したわけですが、法務大臣、いかがでしょう。

稻葉修自由民主党法務大臣

○稻葉国務大臣 お説のとおりの心情を持っております。法秩序の維持、権利の保全において努力は尽くすのでありますが、最大限努力は尽くしても、欠陥がある場合は、やはり国民に対してそういう職責を持っている法務大臣としては、申しわけないなという心情であることは間違いありません。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 法務大臣には私の提案を理解していただいたけれども、どうも刑事局長はちょっと考えが違ったのじゃないかと思うのですが、私、繰り返すと、何が何でも損害賠償型で処理しろと言っているのではないのです。どういう処理が正しいかというのは、なかなか複雑な議論があるわけですよ。しかし、たとえば生活保護型の立法というのがあるようですが、それも、犯罪の被害者はみんな貧しい生活をしている、気の毒だから生活を保障してやるんだというだけでは足りないということです。もちろんそれがあるけれども、同時に、犯罪の被害者というのは、何の落ち度もないのに、治安が確立しておればそういう惨めな目に遭わなくて済んだかもわからないのにこういう状態になっている、そこを踏まえながら立法すべきだということを言っているんですが、局長いかがでしょう。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 法律家の端くれでございますので、法律的に事柄を類型化いたしましてお答えを申し上げたのでございますが、心情といたしましては、犯罪の被害者が、犯人の資力がない、あるいは犯人が不明のために、生活困窮その他悲惨な状況に置かれており、かつ現在の社会保障制度の中で置き去りにされておるという事態は、そのまま放置しておいてはいけないという気持ちは十分に持っております。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 そこで、具体的な補償のやり方、これが最大の問題です。もう一つは補償の方法、具体的には補償額をどう決めるかという点です。従来の法務省の説明を聞いておりますと、バランスが大切だ、これは刑事局長の言葉です。そしてバランスとして例示されるのが自賠責法だ。死亡者に一千万円の補償です。  もう一つは、警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する法律、この遺族給付金が一つのバランスの対象になってくるんじゃないか。そして具体的には、この金額を上回るのはまずかろうというふうに言われているようです。しかし、この遺族給付金というのは現在たしか二百九十万円のようですが、この警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する補償、これを動かないものとして、これとのバランスという議論をすれば、二百九十万円を上回っちゃいけないということになるわけです。私も、この種の立法ですからバランスが必要だと思います。そのバランスの一つの目安として、現行法である警察官の職務に協力援助した者というのが引き合いに出されるのは当然だと思うのです。しかしその場合には、この遺族給付金が驚くほど安いのだ、この給付金自身を手直ししなければならない、そうでないとバランスの対象にしにくいのじゃなかろうかというふうに思うのですが、いかがでしょうか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 まだ確定的なことではございませんが、この場における私の考えといたしましては、バランスというのは、いま御指摘のような自賠法あるいは遺族給付等の補償制度とのバランスということを抽象的に申し上げたわけでございまして、現存のすでに発効しております補償制度の金額が、そのままで据え置かるべきだというようなことには議論をしておるわけではございませんで、常に、抽象的にそれらとの均衡をとった制度として発足させるべきだということを申し上げたにすぎないというふうに御理解をいただきたいと思います。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 私もバランス論そのものには反対しません。やはりバランスは必要だと思うのです。しかし、バランスの対象になる相手が余りにも金額が安ければ、このバランス論というのは補償金額を引き下げる役割りしか果たさない。大体、法務省関係のいろんな給付金というのは安過ぎるんですよ。たとえば裁判所に証人として出延する人の旅費、日当、だれでも赤字が出るような日当なんです。あるいは刑事補償、これは検討はされているようですが、この刑事補償なんかというのは根本的に洗い直す必要があります。弁護士に非常に関係のある国選弁護料だって、これは安いですよ。私たちは民主連合政府綱領提案というのをつくって、国選弁護料は引き上げるべきだという主張をしております。一般に法務省、裁判所関係のいろんな金というのは安いです。警察官の職務に協力した者、死亡者ですね、死んで二百九十万円しかもらえない。こんなばかな話、ないです。  そして、これがバランスの対象にされるとすれば、私は理論としてはバランス論に賛成せざるを得ないけれども、しかしバランス論はぐあいが悪いというふうに現実的には言わざるを得なくなるから、もしバランス論というのを法務省で非常に強調されるとすれば、この対象になる法律を洗い直す必要がある。警察官の仕事に協力して死んでも二百九十万円しかもらえないのだから、強盗に殺された場合はそれを上回っちゃいかぬというような議論は、余りにも実情を無視し過ぎていると思うのですが、いかがでしょう。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 重ねて申し上げますが、余りにも低いものとバランスをとる、心中をさせるというようなつもりは全然ございませんで、常に、その場において正しき、財政規模とのからみもございますけれども、あるべき姿の補償額を、他の同種制度とのバランスをとりながら決めていくべきであろう、かように思います。  なお、わが司法関係の補償金というようなものがすべて単価が低いという御指摘でございますが、財政規模との関係もございますし、なおまた司法制度に御協力を願うという意味において、ある程度の出費を国民に受忍しでいただくというような気持ちもないではございませんが、ほかの制度に比べて低いということはあるべきではございませんので、今後とも予算の獲得ということには努力をいたしたい、かように思います。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 低いことを御認識していただいたのはいいですが、ただ、法務省が、低くてもいいんだ国民が積極的に協力してくれるのが当然だという思想があったら、これは大変ですよ。国民は協力しなければなりません。しかし経済的な損失がないようにきちんとするのが政府の役割りであって、いまの答弁を聞いていると、何か国民は協力する義務があるのだからある程度がまんしてもらってもいいみたいに聞こえたが、大臣いかがでしょう。

稻葉修自由民主党法務大臣

○稻葉国務大臣 安原刑事局長が申し上げましたのはそういうことではないのでありまして、五十年度予算においてもその点で役所内部からも要望が非常に強かったのですが、大臣就任早々で、そういう点についてまだ改善されないことはまことに遺憾であります。官僚政治時代のやり方を踏襲して安くしているなんて思われたら大変でございますから、これは、治安の維持というか、法秩序の維持、国民の権利の擁護、たとえば保護司であるとか国選弁護人であるとか、そういうものの日当がこんなことでは、どうして法務行政の円滑なる運用について国民の皆さんからも御協力を仰ぐことができるか、こういう気持ちでいっぱいであります。過去においては、何か昔の司法省的な、上から国民に、当然協力すべきような思想があったのかないのか、何だかそういうおそれがあるような気が私にはいたすのであります。国民主権、民主政治の今日の法務行政のやり方としては、はなはだそういう点について不備がある、直さなければいかぬ、見直さなければいかぬ。総理大臣ではないけれども、見直さなければならぬ、総ざらいしなければいかぬ、こういうふうに思うものではあります。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 刑事局長にもう一つ聞きます。  法務省としてはいつまでにこの法律をつくるつもりかということが、いろいろいままで議論になったようですが、これはめどはないのですか。私は、ある程度めどを立てていると聞いたのですが、その点、いかがでしょうか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 結論から申しますと、そう簡単にできる見通しというものは立っておりません。これから私どもやる作業といたしましては、たとえば三菱重工の事件で被害者の方が労災保険の対象にもならないで置き去りにされておるとか、個々にいろいろな事例は聞きますけれども、やはり制度として発足させる以上は、このような殺人とか傷害とかいう被害者がどのような状態におられるかを全国的に調べまして、その被害者の置かれておる状況を把握するということをまずやらなければならぬ。それにはやはり一年ぐらいは実態調査にかかるのではないか。それから、外国にいろいろな制度がございますが、そういうものについての運用の状況も知りたいというようなこともございますので、いつまでとは申し上げかねますが、そう、きょうあすというわけにはなかなかいかない。調査をすべき事項が多々あるというふうに申し上げたいと思います。

諫山博日本共産党・革新共同

○諫山委員 私は、法務大臣と刑事局長に最後にお願いしておきます。  この法律はもう本当は日本でつくられていなければおかしいぐらいなんです。国際的な潮流から言っても、あるいは国民の要望から言っても、本当はいまなおこういう法律がつくられていないということ自体がおかしいので、共産党としても当然立法に積極的に努力したいと思います。しかし、法務省では作業が進んでおるようですから、やはりこれは進める必要があると思います。その場合にやはり思想的に大事なのは、私が一番最初に言ったように、かわいそうだから何とかするという思想ではなくて、犯罪の被害者というのはもともと責任はないのだ。われわれは税金を払って、警察官、検察官に活動してもらっている。そういう中で起こる犯罪だから、犯罪行為にはやはり政府が責任を負うという思想的な立場がないと、この問題はうまくいかないと思います。仮に法律がつくられても、かわいそうだから何とかしてあげますよでは、被害者の本当の悩みを理解したことになりません。このことを、どういう解決策をとるにしても、やはり一つの思想的な立場として踏まえることが大事です。  それから同時に、被害者の実態というのは、法務省でも調査が始まったそうですし、私はこれは必要だと思います。そして、大変経済的にも苦しい生活をしていることは、もう民間の調査で明らかになっております。つい先日も、この制度を促進する関東甲信越の大会が開かれて、実に悲痛な訴えがされて、私も本当に改めてこの法律の重要性を痛感してきたわけです。  ですから、国際的な潮流でもあるし、国民の要望でもあるし、本当に国民にこたえるような形でこれを処理するということを、私たちも努力するし、法務省にも強く要望して、私の質問を終わります。

稻葉修自由民主党法務大臣

○稻葉国務大臣 犯罪の被害者救済制度が今日わが国にできておりません。すでにできておってしかるべきものだというお考えには同感であります。文明国の名に恥じるという気持ちであります。かつ、れんみんよりは政府の道義的責任としてやるべきものだということも同感であります。特に国民の生命、自由、幸福追求の権利は、憲法上政府に課せられている、また立法府にも課せられている義務でありますから、犯罪被害者補償制度というものは急ぐべきことであるというふうに存じまして、鋭意法案の作成に努力中でございますから、各政党におかれましても、共産党におかれましても、また議員各位におかせられましても、衆知を集め、万機公論に決して、世界にも範となるようないい犯罪被害者救済法をつくりたいものだ。諫山さんの御希望と私の願望とは全く相一致するわけでございます。

小宮山重四郎自由民主党

○小宮山委員長 沖本君。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 私は、公害罪につきまして若干の御質問をしたいと考えます。  本日の大臣の所信表明の中にも、「最近の犯罪情勢を見ますと、厳しい社会経済の変動を反映して犯罪の態様は一段と複雑多様化の傾向を示しており、特に企業活動に伴う公害事犯、各種経済関係事犯等国民の社会生活に密接な関係を有する新たな形態の事犯が注目され、」と、こういうふうにお述べになっていらっしゃるわけです。  そこで、一番近いところでは、水島の三菱石油のタンクからC重油が漏れ、瀬戸内海が汚染されて死の海になってしまった、こういう関係が出ておりますし、あるいは浦賀水道における液体ガスを積んだタンカーの爆発事故等、いろいろなことがあり、最近は燃料備蓄用の基地に対しても非常な国民の批判が出てきまして、政府の方針として九十日分備蓄するという内容のものについても、ほとんどの予定地が反対してきているということであり、さらにその後、各石油基地のタンクの安全状態を調べるとほとんど不等沈下を起こしておるということにもなりますし、急激にこの問題のいろいろな問題点が指摘されてきておるということになるわけでございます。  そういう点から、法務省に係る、公害に対して持っていらっしゃる一つの法律でありますけれども、この公害罪法が、果たして現在のこういう社会情勢に見合ったものになっておるのであろうかどうかという点が、最近非常に気になり出してきたわけです。昭和四十五年の人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律、この目的は、人間の生命と健康を公害から守るという点にあったわけですけれども、果たして、こういう目的に対してこの公害罪法がその役割りを果たしておるかどうであろうか、大臣、どういうふうにお考えでしょうか。

稻葉修自由民主党法務大臣

○稻葉国務大臣 公害罪法が現に適用されて処罰されたという事犯があったかどうか、大変失礼ですが、私いま存じ上げません。これらは刑事局長から答弁させますが、私は所信表明に申し上げましたが、いまの公害罪法の運用いかんによっては、十分に国民の心配しておる公害事犯を予防し、また起きた場合には、これを一罰百戒、社会的警戒心を引き起こすだけの効果のある処置をとり得る法律だ。適正妥当な運用をどしどしやっていく、こういう考えでおる次第です。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 御指摘のいわゆる公害罪法につきましては、企業単位に申し上げまして、検察庁が受理いたしました事件が今日までに六件ございまして、五件が嫌疑なし等で不起訴でございますが、昨年の十二月二十六日に、四日市にございます日本アエロジル株式会社の公害事犯を起訴したというのが一件ございます。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 まあ、この法律をつくりますときには委員会で非常に議論が交わされて、いわゆる「おそれ」という字句を削除する、しないということで与野党の間で相当この問題が練られた結果、結局は多数で「おそれ」の字句を除いた。この除いたことによって、全く恐れておることが起きるんじゃないだろうかという危惧があったわけです。自後、たびたび当委員会でこの問題が出された経緯もあるわけです。  しかし、それ以上に、果たしてこの法律が、大臣はいま運用いかんによってはということで、十分効果のある法律であるというお答えでございますが、現実に水島の事故なり何なり、いままで起きているいろいろな公害の実態というものに合わせて、この法律の果たす役割りの中で、個人の責任しか問うてない、企業の責任が問えない、そういうふうにちょっと偏っている。そういうところに問題の詰めがなくて、この法律の目的であるところの国民の生命と健康なり何なりを守るに足るだけのものがあるだろうか。  あるいは、この法律ができたときの大臣の御説明ですと、この法律があることによって予防されるんだということなんですが、一般的に考えまして、この法律で果たして予防的な効果があるのだろうか、ないのだろうかということは、経済成長なり現在のいわゆる技術革新の中にあって、ほとんどその効果はない。起きるべきことがだんだんと起きてきておって、すべて役割りを果たしてないという感じが十分するわけなんです。  同時に、この運用につきましては、関係官庁と横の連絡を十分にとって、その中でやっていく、こういう刑事局長のお答えが以前にもあったわけで、それに対する担当の検察官も専門的知識を勉強なさって待機していらっしゃるということになるわけですけれども、そういうことも皆あわせて見ていきますと、全く私は、この法律だけつくって掲げてみたものの、法律的な効果なり、あるいはこの法律によって健康が守られたり公害が防除されていく大きな働きをここで果たしているというようには、具体的にとらえようがないわけなんです。  そういうものを考えていきますと、いわゆる公害に対して果たしている役割りというのは、案外環境庁が一生懸命になってこの問題をおとらえになっていらっしゃったり、と同時にほかの関係官庁が事態に対して一生懸命働いておるということになるわけですけれども、この法律の果たしている役割りというものが私は全然感じられないのです。国民から、法律をつくっていただいてありがたかった、このことによって大きな力を発揮してもらっている、あるいはこういうところで十分公害を防ぐだけの使命が果たされておるという具体的な問題が全然考えられないわけなんです。この点について刑事局長は最初にこの法律ができたときに、むしろ一罰百戒ということもこのとき出た言葉でもあるわけなんですけれども、それだけのものが、十分おっしゃっただけのことがないと、私、見ているのですがね。

稻葉修自由民主党法務大臣

○稻葉国務大臣 御説のような御心配があるといたしますと、私ども法務行政担当者の心持ちとしてははなはだ残念なわけです。  私は、憲法十三条の国民の幸福追求の権利ということを余り学界でも論じておりませんけれども、これは非常に重要な意味があって、一方行政は、生命、自由、国民の幸福追求の権利を最大限に保障する義務を負う。何が国民の幸福かということになりますと、いろいろ議論はあるでしょうけれども、やはり究極はいい水といい空気。そういうものを汚染する企業活動なんというものについては大いに社会的責任を感じてもらわなければいかぬ。そういう意味から公害罪法などという法律もできたのでございますね。ただ、「おそれある」ということになると余りに範囲が広がり過ぎるんじゃないかという議論がございまして、危険を生じた場合、こういう過去形にしたわけで、経緯は先生もよく御存じのとおりでございます。それだから沖本先生は、ぼやっとした、さっぱり適用にならないような、つくったばかりで、予防措置になってないような法律になってしまっているじゃないか、こういう御質問でございますけれども、私は、今日こういう社会情勢にあって、国民の公害意識も高揚し、政府の姿勢も非常に強いものに、三木内閣になって特に強く出てまいりましたから、私も法務大臣に就任して、省内の幹部の集まりのときに、これからの法秩序の維持の重点は三つある。暴力、これの取り締まりを厳重にせい。もう一つは経済事犯、買い占め売り惜しみみたいなことをして、国民の切望しておる物価を引き上げるようなやつは、これはもう厳重にやらなければいかぬ。もう一つは、公害で国民の健康を害す、これは幸福追求の権利を根底から揺るがすのだから容赦せぬ。こういうような訓示めいたことを申したのでございます。したがって、法務大臣のそういう法務行政担当の姿勢を守ってもらっている刑事局長としては、お聞きにならなくても同じようなことを言いますよ、それは。そうでなければおかしいもの。  そういう気構えでおりますものですから、特に所信表明の中には先生御指摘になったようなことを熱意を持って書いたつもりでございまして、水島の事件なんかにつきましても、やはりこの間も予算委員会で社会党の副委員長江田さんから御質問を受けましたが、具体的な事案でありますから、調べた結果、油をひしゃくで夜中も片づけたために、かぜ引いて死んだという人があるんだそうですな。かぜ引いて死んだところまでいくかどうか知らぬけれども、相当因果関係が立証されれば公害罪になり得る場合も出てくる。私はそんなふうに思っているわけでありますから、この法律の適正妥当な厳正な運用いかんによっては、先生御指摘のような、何にもならない、予防措置には三文の値打ちもない法律だとは私は考えておらないわけでございます。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 大臣、ずいぶん熱意を込めておっしゃったのですが、私は感触として、この法律は役割りを果たしてないと感じるわけなんですけれども、国民的な立場で申し上げているわけで、では国民的立場に立って、国民が納得できるような、法律の果たしている役割り、こういう役割りを十分果たし得ているという具体的な事例なり、あるいはそういう役割りの根拠的なものを具体的にお示しいただきたいと思います。

稻葉修自由民主党法務大臣

○稻葉国務大臣 先ほど、どういう適用があったか、具体的な事案を刑事局長が答えましたが、私は、従来この法律の厳正な、厳しい適用があったとは思っていないのです。その点ははなはだ遺憾である。公害に対する国民の意識も、企業の意識も、政府の意識も、法務当局の意識も、少したがが緩んでいたんではないかという心配を抱く点では、沖本先生と同感です。ただ、今後、こういうふうに世論も盛り上がってきましたし、内閣の姿勢もこれを重視するということでございますし、私はどちらかというと、こういう公害問題なんかにつきましては、河本君の方を押さえて小沢環境庁長官の方を応援する立場に回るよと、こんな冗談も閣僚が集まると言うておるような次第でございますから、今後のこの法律の運用、活用いかんによっては、先生の御心配になるような点を払拭して、名誉を回復する法律になるだろうというふうに感じていることを申し上げます。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 大臣おっしゃったわけなんですが、たとえば、この法律ができましたときに、いわゆる故意であるか過失であるかという点、無過失の責任を追及していくというような新しい考え方のもとにこの法律の発足があったわけなんです。それだけいろいろと法律根拠の枠をはずす、ということよりも広げて、だんだんと新しい事態に対処していくという考えに立ってこの法律ができたわけなんですけれども、そういう点からいくと、どうもやはりあいまいとしておるわけなんですね。ですから——お答えいただくのも刑事局長だけになったわけで、はなはだ残念なんですけれども、その辺で、答弁する側ということよりも、同じような立場に立って実際に現在の公害をなくしていくというために、十分この法律が働くか働かないか、その辺、刑事局長いかがなんでしょう。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 私どもの主管の公害罪法に対して非常な御期待をいただいておることはありがたいことでございますが、沖本先生御案内のとおり、この公害罪法第一条をごらんいただきますと、「この法律は、事業活動に伴って人の健康に係る公害を生じさせる行為等を処罰することにより、公害の防止に関する他の法令に基づく規制と相まって人の健康に係る公害の防止に資することを目的とする。」まさに、この公害罪法が万能薬ではなくて、おのずからそこに役割りがございまして、他の行政法規によります法令の規制と相まって、一緒になって公害を防止するということでございますので、公害罪法を適用すればおのずからぴしゃりと公害がとまるということが本来から期待されていないし、また期待するのは無理であったわけでございまして、公害罪法をつくるときにおきましても法務省の所管ということは、これはあくまでも、こういう段階、人の健康、生命、身体に危険を生じさせるというような状態になれば、それはもう今日的な考え方からは一種の自然犯、刑法犯と同じ考え方に立つべきだということでつくった法律でございますので、おのずから、余りにも行政法規の規制の対象になるようなところまで広がっていくことは本来抑制すべきであった宿命を持っておるわけでございまして、そういう意味におきまして、御期待いただき、そうしてそれに対して熱意を持って検察当局が当たっておることは申すまでもないので、先ほど例を申しましたように、不起訴の事例が多く、そうして起訴した事例が少ないために、いま大臣が申されましたように、検察当局はたるんでおったのではないかという御心配をかけたことはまことに恐縮に存じまするけれども、当局といたしましては、不起訴の理由はすべて、そういう健康、生命、身体に危険を生じたということは言えない段階だ、あるいは過失によるという、過失というものが認められないのだということで不起訴になっておるものでございまして、決して適用にちゅうちょしておったわけではございません。  なお、新しい時代に対応するためには無過失責任というようなことも考慮すべきではないかというお考え、まことに理論としてはごもっともでございますが、先ほど申し上げましたように、自然犯としての分野としての公害罪法ということになれば、故意、過失を問わないで、刑法の大例外として処罰をするということは、自然犯の分野としてはいまだ時期尚早ではないかというふうに考えておりますし、おそれ条項につきましては、たびたび沖本先生から、ああいうものを除くからだめになったのだという御指摘に対しましては、いつも繰り返すようでございますが、法案の提出段階に至りまして、いわゆる水質汚濁、海洋汚染防止法というような法律におきまして排出基準につきまして直接に罰する規定ができましたので、おそれのある状態というものは、そういう排出基準に関する規制が守られるならば生じないし、そういう基準に違反するものについてはそれぞれの直罰規定でやればおそれがある状態は防げるということで、おそれのある状態を除いて、刑法にございますように、ガス漏出罪とかあるいは往来危険罪が具体的な危険の発生をもって処罰の条件としておりますと同じような程度にこの公害罪法をとどめたのでございまして、この辺はひとつ御理解をいただきたいと思うのでございます。  なお、このいわゆる直罰規定を持つ水質汚濁とか大気汚染防止法というような規定の適用は活用がなされておりまして、全国で毎年受理事件が八千件に及ぶというくらいに活用されておる。そのことも、今日このような事態の起こらない原因になっておるものとわれわれは自負をいたしておるわけでございまして、仮にも今後、このような公害罪法につきまして、適用上、ここを直さないからこれはできないんだということがございます場合におきましては、不備がございましたならばそれを改めるにやぶさかではない考えでおるわけでございます。  なお、水島事故につきましては、先般、他の委員会で申し上げたわけでございまするが、公害罪法の規定の適用をするような、健康、人の生命、身体に危険を生じておるかどうかという認定ができますならば、これは公害罪法の適用を考えるべき問題ということに相なるわけでございますが、そのほかにも、水質汚濁防止法とかあるいは水産資源保護法の適用ということが考えられており、そのような規定を守られるならばやはりああいう事故も起こらなかったということが言える場合もあろうかと思いますし、あるいは消防法の規定とかいろいろな法規の適用関係を見まして、不備かどうかということの結論を出すべきものと考えております。  なお、刑罰法規というものは、やはり何と申しましても一つの道義的な責任を問うということでございますので、やはり故意、過失というようなことが前提にならないとなかなか適用のしにくい分野ではあろうと思います。したがいまして、刑罰法規で、刑罰では十分でないが、やはり法人の、企業の責任というものは問うべきだということも当然でございますが、それを必ずしも刑事責任で問わなければならぬということではない。刑罰というのは万能ではございませんで、あるいは業務停止その他行政法規におきます企業に対する責任の問い方というものもございますので、そういう法体系全体の中から公害防止の効果的な運営ということがなされるべきものと、かように考えておる次第でございます。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 いろいろとこう質問しておりますと、国民が一番考えられることは、究極的に法務省で国民の生命、財産なりなんなりを守ってもらえる、いわゆる法の番人的なお立場にあるような国民は感覚でおるわけですね。しかしこの法律だけは、何かほかの法律がいろいろ力を発揮していって、あわせてその中の一つとして力を発揮するのだという御説明でもあるのですが、それじゃどの辺にわれわれの力が発揮できるところがあるのか。いわば単純に言えば、つかまえどころがないような感じで何かいまやっておる。企業の看板が大きく出ておって、スローガンがあって、ただそれを見て感じているみたいな感じに受け取りやすいのですけれどもね。  そういう点から見ていきますと、この公害罪法の果たす役割りというのは限界があって、もういまの状態では、先ほどの刑事局長の話は、ほかの関係法規がそれぞれ発達するに従ってこれも役割りをうんと果たしていくような関係にあるのだというような御説明に受け取れたわけなんですよ。ですが、水島の問題にいたしましても、この問題を皆とらえたときにはいわゆる罰しようもない、責任の追及のしどころがない。ただ、損害賠償についての原因者負担によって、そこへ向かっての民事的な問題はどんどん進められていくけれども、そのほかのものは何にもよりどころがないのだというふうにも言われておりますし、それから、結局、水質汚濁防止法、海洋汚染防止法などの適用も検討されたけれども方法がないんだ、適用のしょうがないんだということも言われておって、そのために環境庁の方からは法務当局へも連絡してあるということで、大臣のお答えは、先ほどもお話があったとおり、これに関するはっきりした因果関係なり何なりがちゃんとしてくればやれるんだというふうなことになっておるのですけれども、実際の問題からいくと、事態そのものは、魚もだめになっていったし、あの辺の沿岸漁民というものはあそこからとれる水産物によって生活のなりわいを立てておるのでありますが、将来にわたって瀬戸内海が果たして使えるのか使えないのかということも全然不明であるというような事態が起きておるわけです。ですから、これは明らかにいわゆる人の生命なり健康なりに多大の影響を及ぼしてきている大きな事故と言えるということになるのです。  そういう観点からこの問題をとらえていきますと、何らかの形で刑事責任を問うような形になっでいかなければ、本当に将来にわたって防止的な、今後事件が起きないように、事故が起きないように、初めに決められた、大臣が先ほど言われた一罰百戒的な効果もこの法律からは得られないということにもなっていくんじゃないだろうかというふうに考えられるわけです。先ほど申し上げましたとおり、ほとんどの大きいタンクは不等沈下を起こしてきてしまっているということになると、たまたま水島がこの事故を起こしたということで、そのほかのところでも条件次第では同じような事故が起きるということも言えますし、すでに堺のゼネラル石油ではこういう、小さな事故程度であったのですけれども、大事故につながるようなものが企業の中で隠されておった。企業内の労働組合の人たちの内部告発から問題が明るみに出てきているというような点もあるわけです。  ですから、一つは、先ほどから申し上げている、この法律の追及する責任の範囲を個人にとめておるということよりも、むしろその企業責任を追及していく方により防止的な効果があるということも考えられるわけです。そういう点から考えますと、この法律をもう一度洗い直していただいて、もっと現代に合ったような法律に変えていただくことの方がより大きな効果が得られるんではないか、私はそんな気がするわけなんですけれども、その点について、局長、どういうふうにお考えでしょうか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 水島の事故に関しましては、まだ、法律の適用はできないという結論を出したわけではございませんで、従来にない事故でございますので、いま調査を継続中でございますから、その調査の結果を待たないと何とも申し上げかねる次第でございます。  なお、先ほどちょっと私申し上げましたのは、行政法規等による規制と公害罪法が相まって公害の防止に資するということでございますので、向こうの法律で十分に効果が上げられるなら公害罪法というものは引っ込む。たとえばプラス十とすれば、向こうが七の効果を発すればこちらは三でいいという、相まってでございますので、向こうが上がればこっちも上がるのじゃなしに、向こうが効果を発揮すればこちらは運用しなくてもいいというようなことで、相補足し合って公害の防止に資する法律であるということを申し上げたのでございます。  なお、沖本先生御指摘のとおりに、法律に不備があり、それが時代にマッチしないならばそれを改めるにやぶさかではないということは常に申し上げておるわけでございますが、現段階におきましては、まだ、公害罪法を改めなければ公害の防止には役に立たぬという認識には立ち至っていないというのが正直なところでございます。  なお、特に今回の事故が、結果が重大であるという認識においては、沖本先生と私、何ら違いはございませんが、結果が大だから直ちにその責任は刑事責任の追及という手段でもってやるべきだというところに若干意見の違いがございまして、それは事柄によってはそうでございますが、その場合に、やはり刑事罰というものは、結果の責任のみならず、その行為者の主観的な条件、いわゆる道義的責任という方からも刑事責任があるかどうか考えなければならぬ。単に結果だけで刑事責任があるかどうか考えなければならぬ、単に結果だけで責任を云々するのはやや性急に過ぎるのではないかと、実は私どもはかように考えておるものでございます。結果責任というのものには民事上の賠償責任もございますし、行政法上の業務停止その他の責任の問い方もございますので、そういう法規の活用を待って処理すべき段階ではないかというふうに考えておるということを申し上げたわけでございまして、重ねて申し上げますが、今後の運用の結果において不備があるということになれば、公害罪法といえども改正するにやぶさかではないということを申し上げておきたいと思います。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 現在のところ、ここが不備だと、はっきり事例を挙げて御指摘はできないわけですけれども、先ほどからも申し上げているとおり、たとえば、この法律の中で責任を負うとすれば個人の責任しか負えないという現状、それと、現実にある問題は、いわゆる企業内の個人だけ責任を負うような形であるために、企業が責任逃れをして、より大きな公害を発生していくという原因にもなっていく。企業が責任を負うた方がむしろ公害を防いでいくという、これはだれが考えても筋が通るような考え方であるわけです。それと法律との関係性というものにむずかしいところはあると思いますけれども、やっぱり国民が見て、この法律に十分効果を発揮してもらうということでなければ何にもならぬのじゃないか、こういうふうに私たちは考えるわけです。  ですから、この法律は掲げられておるだけであって——掲げておるところに力があるんだという御説明が以前にもあったわけですけれども、むしろこれは掲げておるだけであって、先ほど実例についても、内容を見てみなければわからないわけで、端的に申し上げられませんが、六件あって一つだけが公害罪が適用できたということになるわけで、果たしてその一つだけ事件として取り扱われて、それが一罰百戒的な効果を上げておるかどうかという点にも関係が出てくると思うのですけれども。この点はいまのところ変える必要は認められないということよりも、むしろ社会的に起きている問題についてもう少し考えを持っていただいて、国民の生命とか健康を守るために、もっと法律を変えたらいいんじゃないかと私たちは考えておるわけですけれども、その点もっと研究していただいて、現状に合ったような、国民の目から見て十分納得できるような形に改めていただきたいことを要望して、質問を終わります。

小宮山重四郎自由民主党

○小宮山委員長 次回は、来る十四日金曜日、午前十時理事会、午前十時十五分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時十三分散会      ————◇—————

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