商工委員会 第25号
- 発言数
- 203 件
- 登壇者
- 27 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1975/06/18
会議録
○山村委員長 これより会議を開きます。 内閣提出、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案、多賀谷真稔君外十九名提出、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案、荒木宏君外二名提出、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案並びに予備審査のため本委員会に付託されております参議院議員桑名義治君外一名提出の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案、以上四案を一括して議題といたします。 本日は、参考人として北海道大学法学部教授實方謙二君、慶應義塾大学産業研究所教授正田彬君、経済団体連合会産業政策委員会委員長鈴木治雄君、東京大学法学部教授竹内昭夫君、全国地域婦人団体連絡協議会事務局長田中里子君、全国消費者団体連絡会幹事中村紀伊君、上智大学法学部教授松下満雄君、以上七名の方々に御出席を願っております。 この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。 参考人各位には御多忙中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございました。 本委員会におきましては、目下私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案四案について審査を行っておりますが、参考人各位におかれましては、各案に対しそれぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、今後の審査の参考にいたしたいと存じております。 なお、議事の順序でございますが、最初に御意見をそれぞれ二十分以内に取りまとめてお述べいただき、次に委員の質疑に対してお答えをいただきたいと思います。 なお、念のために申し上げますが、発言の際は委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。 それでは、松下参考人にお願いいたします。
○松下参考人 松下でございます。 独禁法改正問題についての私の見解を申し上げることにいたします。 今回の独禁法改正は、個々の部分につきましては問題があると思いますが、全体としては支持されるべきものであるというふうに考えます。 独禁法は自由主義経済を守るためのものでございまして、わが国が基本路線といたしまして、私企業体制を存続させる、そして産業の国有化なり経済の統制を行わないといたしますと、長期的には独禁法の強化を図っていかざるを得ないと思うのであります。今回の独禁法改正は、単に一時的な現象ではなくて、自由主義経済を健全な形で維持していく、この長期計画の一環として位置づけるべきものであると思うのであります。 このような意味で、独禁法改正は全体としては支持されるべきであると思いますが、以下に述べる問題点があると思いますので、この点を修正の上成立させるのが望ましいと思う次第でございます。なお、時間の関係上、この法案のうち問題があると思う点についてのみ触れることにいたしまして、その残りの部分については賛成という形で考えたいと思います。まず第一点が、営業の一部譲渡という問題でございますが、営業の一部譲渡は独占状態についての規制であります。独禁法が市場競争を維持するという目的を持っている以上は、やはり単に行為規制のみならず、独占状態についての規制は必要であると考えます。この意味でこの営業の一部譲渡に関する改正案には賛成いたします。営業の一部譲渡についての規制ということにつきましては、企業努力の結果大きくなったものを分割するのは不合理である、こういう反対論もございます。私はこの反対論には十分な理由があると思いますが、しかしながら逆に考えますと、企業努力の結果であれば独占になっても構わないと言えるかといいますと、そうはやはり言えないであろう、こう思うのであります。どのようなプロセスにいたしましても、ともかく独占が成立いたしますと、独占による力の乱用というものが生じてまいりますし、また市場の競争はなくなるということは現実でございます。このような意味から、独禁法の究極的手段としてやはり構造規制が必要であろうと思うのであります。 しかしながら、現在国会に提出されております営業の一部譲渡に関する改正案につきましては、若干問題があろうかと思うのであります。 その第一点は、営業譲渡を命ずるに当たって、公正取引委員会は審判開始前及び審決前に主務大臣と協議をしなければならない、こういうことになっているわけであります。公正取引委員会は独立の行政機関でございまして、この独立性というのは独禁法の施行には必要なのではなかろうか、こう思うのであります。すなわち、この独立性というものは独禁法の施行に政治的な影響が入らないということのために必要であると考えます。したがって、この協議規定には問題ありということではなかろうか、こう思う次第であります。もし仮に協議規定を残すといたしましても、やはり公正取引委員会が審決前に主務大臣と協議をする、この規定を削除するのが望ましいのではなかろうか、こう思うのであります。この協議規定は、恐らくは独禁政策と産業政策の抵触の回避あるいは公正取引委員会の暴走の防止、こういうことのために設けられておると思うのでございますが、この点についてのチェックは独禁法の実体規定によって行うべきものではなかろうか、こう思うのであります。つまり実体規定によって公正取引委員会がなし得ることに歯どめをかける、この方法で公正取引委員会の力が余りにも強くなり過ぎるのを防止するということはできると思うのであります。こういうことでございまして、この営業譲渡に関する法律案の問題点としましては、やはりこの協議事項というところが一点挙げられるのではなかろうかと思います。公取委に対するチェックは政治的な形で行うべきではなく、むしろ司法的な形で行うべきである、つまり裁判所の司法審査によって行うべきである、基本線としてはそのように考えることができるのではなかろうか、これが第一点でございます。 それから次に第二点、これは課徴金でありますが、課徴金はカルテルのやり得をなくすという意味から言っても必要なものでありまして、この意味で今回の改正案に課徴金の規定が設けられているということは高く評価することができると思います。この意味でこの課徴金の新設には賛成いたします。しかしながら、以下に述べる幾つかの欠点があると思いますので、この点をやはり修正する必要があるのではなかろうかと思うのであります。 この法案における課徴金というものは、事業者がカルテル行為によって取得した超過利益とは直接に関係がないものになっていると思うのであります。課徴金というものは、本来はカルテルのやり得をなくす、そしてカルテルをやっても得にならないということをはっきりさせる、これが目的でございますから、やはり超過利益を剥奪するという形のものにすべきであろうと思うのであります。この点で公正取引委員会の試案にありました課徴金の考え方の方がベターではなかろうか、こう思います。もちろん公取試案の考え方をとった場合に、計算の仕方等の技術的な問題はあるかもしれませんが、この点につきましてどのくらい技術的な詰めができるか検討すべきであるのではなかろうか、こう思うのであります。 それから、この法案における課徴金は事業者の売り上げに一定の率を掛けたものの二分の一を徴収する、このようなことになっているわけでございます。この率で徴収したといたしましても、通常のカルテルによる超過利益に見合うだけのものが徴収できるかどうか必ずしも保証の限りではない、こういう問題点があるのではなかろうかと思うのであります。 それからさらに、利益の低い事業者に対しては課徴金の額が少なくなる、このような形になっているように思われますが、これもまた理由がないことである、こう思います。 それからもう一つは、事業者団体が対価に影響を与える行為を行った場合に、構成事業者から課徴金を一律に徴収する、こういうことでございますが、この点につきましてもまた改善が必要だと思います。この点につきましては、このような対価に影響を与える行為を行った事業者団体の構成員のうち、実質上この決定に参与したもの、あるいは実質上この決定のプロセスで主導的な役割りを果たしたもの、これに課徴金をかけるべきであると、こう思うのであります。独禁法を実際に施行するという点についての容易さから見ますと、たとえばその事業者団体の役員である構成事業者から課徴金を徴収する、このようなことも一つの方法かと思うのであります。 この課徴金についてのもう一つの論点は、事業者あるいは事業者団体が対価に影響を与える行為を行った場合に、公正取引委員会は課徴金を徴収しなければならないと、こういう規定になっております。これは、ならないという規定になっている、この辺が問題点ではなかろうかと思います。この辺につきましては、公正取引委員会は課徴金を徴収することができると、このような形にいたしまして公取委の裁量を若干認めるという方が望ましいのではなかろうか、このように考えるのであります。 それから次に、不当な取引制限についての排除措置に関することでございますが、この法案には、不当な取引制限等があった場合、公正取引委員会は排除措置の実施後において、当該違反行為の影響を除去するためにとることとなる具体的措置の内容の届け出及び当該具体的措置の実施状況の報告に関する措置を命ずることができるという趣旨の規定が置かれております。しかし、この法案の規定というのは現行法の排除措置に関する規定によっても十分に可能な事柄を規定しているにすぎないのではなかろうか、こう思うのであります。現行法におきましても不当な取引制限等の競争制限に対しましては、協定の破棄や、破棄したという旨の周知徹底はもとよりでございますが、それぞれ個別的に取引先別に販売価格を速やかに交渉の上決めるということまで命じたケースもあるようでございますし、現行法における違反の排除のために必要な措置を命ずるというこの規定によってもこの程度のことはできるのではなかろうか。この点から見ますと、この法案のこの部分というのは、現行法の排除措置の規定を確認しているだけであるということでございまして、あえて置く必要があるかどうか問題があるのではなかろうか、こう思います。 最後に、価格の同調的引き上げに関する報告の徴収、この点について意見を述べさしていただきたいと思いますが、この法案では高度寡占の業種において価格が同調的に引き上げられた場合には、主要事業者に対して価格引き上げの理由について報告をさせるということになっているわけであります。この点につきましては、結論といたしましてはこの法案からこの規定を削除すべきであるというふうに考えます。 その理由を以下に申し上げますが、このような価格の同調的引き上げに関する報告というのは、一つにはこれによって競争を促進するという要素がない、この点が挙げられると思うのであります。やはりこのような同調的引き上げに関する報告の徴収といったような規定は、独禁法と並行して寡占規制法という法律を制定し、その中に含ませるべきであるというふうに考えるのであります。 寡占における価格の同調的引き上げ、あるいは管理価格の規制、こういうことにつきましては、大きく分けまして二つの規制方式が考えられると思うのであります。 その第一は、市場競争を維持することによって同調的値上げを抑制するという方式であります。現行独禁法はこの方式を採用しているわけでございまして、今回の改正案も全体としてはこのような市場経済あるいは市場競争維持の理念に基づくものである、こう言えると思うのであります。 第二の方式は、競争原理以外の一種の企業に対するコントロールを導入する、こういうことでございまして、寡占企業規制を別な形で行っていく、こういうやり方が一つあると思うのであります。すなわち寡占企業に対しまして直接に価格引き上げの抑制を命ずるとか、あるいは値上げが行われた場合には値下げ命令を出すという方式などが考えられる。このような方式にありましては市場競争の維持によって寡占企業の経済力乱用に対処するというのではなくて、もっと直接的な企業活動に対する公的コントロールを導入するということでございます。これはいわゆる弊害規制主義に基づく立法ということになるのではなかろうか、こう思うのであります。寡占企業の価格引き上げの理由を報告させることそれ自体には必ずしも不賛成ではありませんが、これを現行独禁法に入れるというのは問題ではなかろうか、こう思います。前にも申し上げましたように、この点につきましては寡占規制法を制定する、この中に価格の引き下げ命令、価格についての報告命令、寡占価格の場合によっては事前届け出制、あるいは原価公開制、このようなものを広く規定すべきであろうと思います。このような立法というのは、オーソドックスな競争原理に基づく独禁政策がもはや機能し得ないという限界に突き当たった場合に適用されるべきものであると思うのであります。この意味で独禁法と並行的に置かれるべきものでありますが、しかしながらこれを補完する役割りを担うべきものである、こう思います。 このような次第でございますので、この法案の中にこの報告義務を入れるかどうかという点につきましては、やはり削除する方が望ましいのではなかろうか、このように考えるわけであります。 以上をもちまして私の意見を申し上げさせていただきました。
○山村委員長 次に、實方参考人にお願いいたします。
○實方参考人 實方でございます。 まず最初に、独禁法改正の全体の意義ということでございますが、松下参考人もおっしゃったように、独禁法強化のための改正、そういう大きな点からは、もちろんこれは進められるべきものであると思います。というのは、独禁法を改正強化いたしまして、競争制限行為に対する規制を有効なものにしていくということは、これは別の見地から見ますと、そういう競争制限規制を有効にすることによって競争の維持が図られていなければ、個別的な経済事象について非常に裁量に基づいた政策的な直接規制が必要になる、そういうことであります。それはやはり民主主義の原則からいってもできるだけ少なくした方がいいわけでありまして、そういう点から、国家の経済に対する直接介入をできるだけ少なくしていく、裁量的な介入をできるだけ少なくしていくという点、それから経済体制の中での民主的な決定機構というものを維持していくという、そういう点から見れば、独禁法を改正強化する、強化のために改正するということは、基本的には望ましいことであります。 しかし、今回提出されております政府改正案を見ますと、強化のための改正という点での実効性がかなり疑わしいという点があるばかりでなく、かえって現行法の解釈、これに枠をはめるようなおそれのある改正案の内容となっているわけでありまして、したがってその本来の改正の趣旨というものを生かすためには、政府案に含まれております問題点を最小限度修正して、その実効性がさらに強化されればもちろん大変結構なのですが、そこまでは望み得ないとしても、最低限度、現行法に枠をはめるようなおそれのあるところは削除した上で修正が成立することが望ましい、こう思うわけであります。そのような点から、政府の提案を中心といたしまして、問題点を多少指摘させていただきたいと思います。 まず、課徴金でありますが、この課徴金制度は、これは現行法になかった制度が設けられるわけでありますから、この制度が新設されるという意味においては前進であるということは評価できるわけであります。しかし、この制度が設けられた趣旨を考えて、実効性のあるような課徴金である方がそれは望ましいわけであります。この課徴金制度は、結局、カルテル、競争制限行為による超過利得、不当な利得を事業者の手元にとどめておかない、行政措置によってそれを剥奪すると申しますか、こういうことを通じてカルテルが再び行われることを防ぐ、このような間接強制手段としての意味があるわけです。広い意味では、制裁としての効果を持っていることは否定できないことであります。制裁という効果を持っているのであれば、しからば憲法によって保障された二重処罰、二重の危険に触れるのではないかということでありますが、これはやはり行政上の措置であって、刑事手続による、少なくとも人身に対する拘束を伴うような措置ではないので、これはやはり区別できる。制裁的な効果といいますか、間接強制としての効果というのはある程度重視してもいいのではないかと思います。そういうことになりますと、やはり二つの要素があるわけで、違法行為によって、それから第二には不当な利得を得た、こういう二つの要素がともに成立する場合に課徴金をかける、こう考えた方がいいのではないかと思います。 その点について、第二の点でございますが、課徴金の算定基準につきましては、やはり競争制限行為によって得た不当利得というのをまず基準にすべきである。ただ、その算定について非常に技術的に困難がある場合には、立法によって一定のフィクション、擬制をとることはやむを得ないと思われます。具体的に申しますと、政府改正案で一律に販売業——卸売業、小売業以外については、実行期間中の売上高の一・五%、こういうことになっておりますが、これはカルテルによる不当利得を算定することの技術的な困難性、すべてのカルテルについてそれを明確な基準で算定することの困難性ということからとられた一つの立法による擬制だと思います。しかし、これだけで済ますというのはやはり理屈に合わない話でありまして、カルテルによる超過利得というのは競争制限によってもたらされた超過利得、こういうことであります。したがって、その競争制限の効果というのはやはり価格水準というものに端的にあらわれているわけであります。したがって、理論的に詰めますと、現在競争制限があった、実行期間中あった、そのときの価格と、それからカルテルがなかったならば考えられるであろう価格ですね、ウッドビーですから、そういう仮定的に考えられる価格との差というものを基準にするのが、理論的には一番望ましいわけであります。しかし、競争的水準の価格というのを明確に決めるというのはなかなかむずかしいわけであります。したがって、方法としては、特に値上げカルテル等の場合はカルテルによる値上げというのが明確に客観的に起こっているわけでありますから、そのカルテルによってもたらされた価格差というものをまず基準とするという方法が、これは第一義的にはとられるべきではないかと思います。多少はそこでは擬制はあるわけです。 そうしますと、特に市場における価格の水準に明確な影響、目に見えるような影響を与えていないという場合には、認定する際に非常に困難が伴う。しかし、一方では値上げカルテルだけではなくて、価格維持カルテルとか、それから生産制限による価格維持カルテル等も適用の対象としなければ均衡を欠くということでございますから、そういうことであれば、その価格差を基準とできないようなカルテルについては、一定の立法による擬制を用いまして、売上高に一定の率を掛けるという方法もこれは可能ではないか。そうしますと、やはり一番望ましい方法というのは、カルテルによって引き上げられた価格の差を基準として売上高に掛けるという基準と、それが明確に認定できない場合には、いま提案されておりますような一定率を掛ける、これを両方置きまして、いずれか高い方をとるという方法をとる。まず第一に、価格差が認定できる場合にはそれによる、それができない場合には一定率を掛ける、そうするのが、課徴金制度の趣旨を生かすという点から見れば一番望ましい解決ではないかと思います。 そういう点から考えますと、政府改正案に出ております過去三年間の経常利益率を基準として減額修正をするという考え方は、これは全く理論的には根拠がないことでありまして、そういう調整措置、特に改正案の内容ではそれが強制される、その基準によらなければならないということになっております。これは課徴金の算定に裁量が入っていいかどうかというのは法律制度論上むずかしい問題でありますが、この減額調整というのは、結局課徴金の支払いを命じられる事業者の支払い能力等を勘案して、いわば一種の量刑的なものを法律ではっきり基準を決めちゃって、義務づけちゃった、こういうようなことになるわけなんですが、そのような考え方が入るのであれば、むしろその裁量を認めて、限度として、その範囲内で支払い能力をある程度勘案するということにした方が、これは筋が通るのではないかと思います。しかし、それもやはりおかしいといえばおかしいわけで、このような減額修正をするというのは競争制限による不当利得とは全く関係のないわけで、これを改めて法律の条文に書くということは、過去が赤字の企業についてはカルテルを公認するという効果にもなる。もちろん排除措置はかかりますが、その不当利得については、不当とは法律で認めない、こういうことになる。過去が赤字であっても、現在カルテルによって利得を得ている場合ももちろんあるわけでありますから、これでは赤字企業はカルテルは公認という結果を招くわけです。したがって、減額修正条項は、これは最低限度削除さるべきものである、こう思います。 それから次に、細かい点に入りますが、事業者団体、これは政府改正案の八条の三でございますが、事業者団体の違法行為があった場合、競争制限行為があった場合、現行の八条で規制されておる行為があった場合には、構成事業者に直ちに課徴金の納付を命じる、こういうことになっておるわけでございますが、これはいま申しました課徴金の二つの要素、違法行為をやることによって第一、第二にそれによって超過利得を得たという二つの構成要素のうち、第一のほうを満たしていない者に対して直接課徴金の支払いを命じるという、こういう結果を招くわけであります。事業者団体に対する現行法八条による規制はどういう意味を持っているかと言いますと、これは事業者団体という一つの組織を利用した組織活動による競争制限の強化というものを規制するために八条による規制というのがあるわけです。形の上で事業者団体の活動という形をとっておりましても、構成事業者の間の共同行為による競争制限行為、こう考えられる場合には、これは不当な取引制限として、三条後段によって規制するのが当然のことでありますし、最近の公正取引委員会の運用でもそのように変わってきておるわけであります。したがって、八条の規制領域というのは、団体の組織活動によって競争制限がもたらされるのを防ぐ、こういうことであります。したがって、団体の組織活動を実効あらしめるためには、主要な事業者がその裏づけをなしているということは言えるわけなんですけれども、構成員の全部が競争制限行為に積極的に参与した、こういうことは直ちには言えないわけであります。事業者団体のメンバーになっているからといってすぐにその共謀の責任を問われる、こういうことがあるのはおかしいということであります。したがって、事業者団体による競争制限行為があれば、それによって価格が上がるのだから、価格が上がった分は不当な利得であるから、不当な利得は構成員全体にあるのだから直ちに課徴金を取らなければいけないというのはかなり論理の飛躍がある、こう言えるわけであります。したがって、八条の三というのは、直ちにこれを設けるというのはやはり疑問があるわけであります。そして、主要な事業者がその事業者団体の制限活動の裏づけをなしている場合には、これはやはり不当な取引制限が成立すると考えて、それに対する課徴金という方で解決した方が望ましい。ただ、主要な事業者が中心になりますが、それプラス事業者団体の組織活動があって、排除措置としては八条もかけた方が望ましいという場合がある。その場合には、ちょっと話が細かくなりますが、八条に対して全然課徴金がかけられないということでは、これは実質的に考えますと、いわば政策的に考えますと、少し規制の空白が生ずる場合がある。したがって、そこら辺で一つの擬制を用いることができれば、事業者団体の場合についても、その事業者団体の組織的な競争制限活動の裏づけとなったものに対して、これはそれを選択する基準、それを判定する基準を明確に詰めるということがかなり困難でありますが、そういうことが必要であるということもありますから、そこら辺について、一定の政策的な選択が可能であるということであれば、事業者団体の違法行為についても一定限度範囲をしぼって課徴金をかけるということも可能ではないかと思います。しかし、理論的に直ちにそこに一本道で行くというものではないということをここで指摘しておきたいと思います。 次に、独占的状態でございますが、これは二度にわたる協議があるという点については、公取委の独立性と対立する面があるということは松下参考人も述べられたとおりであります。 実体構成要件の方で多少おかしいと思われる点を二、三指摘しておきますと、まず第一には、適用除外基準と申しますか、これは大ざっぱに言って、規模の経済性、それから経理の健全性、国際競争力の点、これは改正案の八条の四、一項ただし書きに書いてありますが、これを損なうと認められる場合には、構造的排除措置が命じられないとなっております。これを損なわないように考慮してきめるというものではないのですね。これは規定の発動ができないということになります。しかし、これは余りにも広過ぎるわけでありまして、経理の健全性というのも非常にあいまいである。このような事項はやはり無視はできないと思います。しかし、これはどういう意味で考慮されるべきかと申しますと、その構造的規制措置を命じるのが当該企業にとって非常に酷であるからそこをしんしゃくするというのではなく、たとえば重要な営業の一部譲渡によって企業分割をする、企業分割をしてできた二つの企業がございます場合に、そのあとの企業がちゃんと競争単位として有効に機能するかどうか、こういう点についてやはり考えなければいけない。やってみたけれども、みんな弱くなっちゃって全然競争ができないということでは困る。そこで、企業としての強さを判定する基準としてその規模の経済性というのが入ってくるわけであります。したがって、そのような範囲においてのみ考慮されてしかるべきだ。そういうことになれば、これはどういう関連で考慮さるべきかと言いますと、現在の競争制限がどの程度強固なものであるかということは、その企業分割等がどの程度必要なものであるかということの判断、これは超過利潤の長期間の存在とかいろいろな実体規定があるわけですが、そこら辺の判断の明確さと、それからもう一つは、いま申しました競争企業としての独立性が保てるかという点の、そこら辺の総合的な判断ということになるわけです。現在の提案されている内容では、その必要性のところが非常に厳格な具体的な細かい認定基準が法定されておりますから、この改正案の必要性の基準を満たす程度のものであれば、これは逆の方のもう一つのいま申しました考慮要素の方はそれほどしんしゃくする必要はないということであります。したがって、これは、伝えられております政府素案にありましたように、これらの事項を著しく損なうことが明らかである場合に限るべきであって、単に認められる場合には発動ができない、こうするのは余りにも広過ぎるのではないかと思います。 それからさらに、これは公取の独立性と関連する問題でありますが、独占状況の実体的な構成要件につきまして政令委任事項があるというのは、多少これは問題点ではないか。これは、独占的状態の定義であります二条七項三号のイのところの超過利潤の算定のところでありますが、超過利潤を算定するその母体となる業種の範囲は政令で定める、それからどういう種類の利益について判断するかという、たとえば売上高をとるとか、いろいろな利益の種類がございますが、これは政令でかっちり決めちゃうということになっているわけです。これは個別的な事例ごとの事実認定に関する問題である、こういうことでありますから、これを政令委任事項にするのはおかしいのではないかと思います。 それから第二に、協議でございますが、これは皆さん御指摘になると思いますので簡単に申しますが、これは法による適用の問題、独占的状態についても、これは競争制限行為を除去するための法律の基準によるその法の適用という問題でございますから、これは主務大臣との間の政策的な調整が必要であるという趣旨のものではない。ただ、その判断の基礎となる事実について、インフォメーションですね、事実情報を各専門家から提供してもらうという点では意味がありますが、それが必要であれば、やはり六十条とか六十一条によって意見聴取とか、それからもちろん判断の面を反映したいということであれば、公取の審判手続に当事者参加をいたしまして、そこで述べる。そうして、当事者参加をいたしますれば、結局審判に対して司法審査、取り消しの訴えも起こせるということになりますから、その内容のチェックにつきましては、松下参考人も述べられたように、司法審査の方法によるのが適当ではないか。としますと、協議というのはその方式も全然決められておりません。協議の内容については記録もとられないということになります。そうすると、どういう内容の協議がやられてその一定の結果が出たかについてその関係人が全くそれを防禦する余地もありませんし、それから裁判所が、取り消しの訴えが出た場合に、それは記録に全然載りませんから、司法審査の余地もない。協議のところだけ非常に空白がある。ところで、協議については十分尊重しなければいけないというのが協議を法定することの意味ですから、やはりここは政策的な問題というよりは準司法手続という法的性格からいってやはり協議にはなじまないのではないか。もっとオープンな形での調整機構というのをつくる必要がある。それは現行でも六十条、六十一条等があるのでそれを活用する。どうしても必要ということであればもっとオープンなものを考える必要があるのではないかと、こう思うわけであります。 それから、七条についての括弧書きの点でありますが、これはもう時間もなくなりましたので細かく申しませんけれども、これは現行法に枠をはめるものではない、現行法でできることを制限するものではないという御説明がなされておるようですが、非常に細かい点を申しますと、そういう説明をなさる立法担当者の現行法でできるという解釈、これが明確にされていないわけで、現行法でできるという頭の中には、現行法でできるのは非常に狭い意味での違法行為の排除、カルテルの場合は協定の破棄に限るというのが暗黙のうちに前提にあって、そうして違法行為の影響を排除するための具体的な措置というのは、これは公取が積極的に命ずることはできない。これは括弧内の方法によって事業者にきめさせてそれを届け出させる。実際問題として指導のような形で内容を変えさせるということはあるいは可能かもしれませんが、それは法律的に強制する手段がないように、これは素直に読めば読める、こういうことであります。したがって、結局ここで統一解釈等で、現行の解釈は違法行為による競争制限的影響を排除するための必要な措置はかなり広くとれるということを確認した上で、さらにそのうちの一部分として当事者、被審人に届け出させるという方法も可能であるという、そういう方法、非常にこそくな方法ですが、それは一つの方法としては考えられますけれども、やはりそのような現行法の解釈に枠をはめる危険性のあるもの、そしてこれは松下参考人もおっしゃったように、特に新たなものをつけ加えるということではない、そういうことであれば、これはむしろ削除した方がすっきりするのではないか、こう思うわけであります。 そうして、政府改正案の四十条の二の報告義務につきましても、これは時間がございませんので詳しく申しませんが、現行の四十条による一般調査権限について枠をはめる機能を果たす役割りが非常に強い。これは立法担当者の当委員会での御説明等を漏れ伺っておりますと、結局これは四十条の一般調査権というのは違法行為を前提としなければできないという解釈をとっておられるようであります。そうすれば、同調的値上げの場合は違法行為がないにもかかわらず調査ができるので前進であるという論理は出てきますが、その前提となる現行法の解釈についての立場というのがおかしいわけであります。これは四十条の二を改めて設けることによって、逆に現行法の解釈をその下がったところにきめたという役割りを果たしているわけであります。したがって、これはむしろそういう危険性がある。それからさらに、いまの制度では余り実益もないということであれば、むしろ削除した方がいいのでありますが、前向きに考えれば、現行法の四十条と改正案の四十条の二の内容をパラレルにしまして、四十条の二の改正案の内容を四十条でできることと同じ程度に強化する、これができれば一番望ましいわけでありますが、それができないということであれば、むしろ削除した方がこれはすっきりするということではないかと思います。 もう時間もございませんので、大体こういうことで終わらせていただきたいと思います。
○山村委員長 次に、正田参考人にお願いいたします。
○正田参考人 正田でございます。 政府の提出されました独占禁止法の改正案を中心にいたしまして、二、三の点を申し上げたいと思います。 この独占禁止法改正案が問題になりました特徴は、申し上げるまでもなく独占禁止法を強化するということとの関係で出てきているわけでありまして、私ども独占禁止法を勉強いたします者といたしましても、従来のこの問題の展開に非常に重大な関心を持ってきたわけであります。政府の最終的に法律案として提案されたものについてもいろいろと検討を進めてみたわけであります。基本が独占禁止法改正強化という方向である、少なくともそういう方向でなければならないという前提に立ちますと、この政府提案の改正法案が独禁法制の強化であると考えられるためには、少なくとも一定の修正が必要であろうというふうに考えているわけであります。個々の問題点につきましては、細かく検討し意見を申し上げている時間的な余裕もございませんので、基本的な問題点に限定して、以下申し上げることにしたいと思います。 この独占禁止法改正問題の一つの焦点が、カルテル対策あるいはカルテルに対する規制の強化ということであることは申し上げるまでもないわけでありまして、この法案の提案理由の御説明を拝見いたしましても、そういう趣旨が明白に出ていると言っていいと思います。このカルテル対策の中心に置かれておりますのが課徴金の制度でありますが、この課徴金につきましては、もうすでに松下、實方両参考人がお話しになりましたように、課徴金制度を導入してカルテルによって企業が得た不当な利得を国庫に納入させるという制度自体については、私も全面的に賛成でございますが、この不当利得と課徴金の結びつきが必ずしも明確でないという点について、この法案の修正が必要であろうと思います。 一応の問題点として指摘しておかなければなりませんことは、不当利得という形でとらえられるものと、課徴金の計算方式として定められておりますものとの間に明確なつながりを見出すことができないという点であります。カルテルの行われる前とカルテルの行われた後との差というところがカルテルによる不当利得の焦点になるはずでありまして、公正取引委員会の試案においてはカルテル前後の価格差、あるいは過日公表されました政府素案という、骨子のようなものだと思いますが、それにおきましてはカルテル前後の利益差というものが挙げられていたわけでありますが、この前後の差という点が今回の改正法案から落ちてしまって、カルテルを実行している期間の売上高に一定比率を掛けるという形になっております。この点がカルテルによる不当利得という点と課徴金制度をきわめて結びつきにくいものにしているわけでありますが、一方から考えますと、課徴金を算定するということは技術的にも非常に多くの困難さを伴うということもございます。したがって、何らかの方式に従ってそれを不当利得としてみなすという、こういう法的な技術もあるいは必要になってくるであろう。この技術として、現在提案されておりますものが最良とは思いませんけれども、一応みなすということが可能であるということを前提にいたしますと、理論的に成り立つ余地がないということは言えない、少なくともある一定の限度で、カルテル関係商品の利益の一定率という考え方も成り立ち得る、あとは量の問題というふうに考えることもできるように思います。しかしながら、この不当利得と課徴金を結びつける考え方が、この改正法案において破綻を示しておりますのが、過去において赤字ないしは利益率の低かった企業に対する減額措置であります。この減額措置を導入することによって、不当利得と課徴金との結びつきというのが完全に切断されるということになるわけでありまして、同じカルテル構成員で、同じカルテル行動に参加した者相互の間で、過去の当該商品ではなく、企業の収益全体がよかったか悪かったかということによって、課徴金が十分の一、逆に言いますと十倍の違いがあるということになりますと、明白にカルテルによる不当利得ということとは離れた性格のものになってしまいます。そういう意味で課徴金を、カルテルによる不当利得の国庫に対する納入を求める措置という前提に立つと、利益の少ない企業、赤字企業に対する減額措置というのは、全く論理性を失うという非論理的なものになり、課徴金の性格を変質させるものだということになってくると思います。この意味で、この課徴金についての減額措置はまず削除されないと、課徴金の性格は非常におかしなものになるということを申し上げておきたいと思います。 この課徴金につきまして、第二点は、前のお二方の参考人の方もお触れになった点でありますが、事業者団体の違反行為に対して、構成事業者に課徴金をかけるという問題であります。この違反行為者が事業者団体であっても、同時に構成事業者がカルテルとしての違法行為を行っていると認められる場合は当然ございます。事業者団体の決議という形をとって、実質は事業者間の共同行為であるということが明らかにされる場合には、これは共同行為、カルテルの参加者に対する、法律で申しますと不当な取引制限を行った者に対する課徴金という形で処理し得るわけでありまして、事業者団体の構成員であるという側面は特に取り立てて問題にする必要はございません。となりますと、不当な取引制限という実態が明らかにならないそういう事業者団体の決議が行われた、あるいは決定が行われたという場合に、その決定等の通知を受けた構成事業者から課徴金を徴収するということになるわけでありますが、この場合の構成事業者は、法律上の違法行為者ではございません。違法行為者は事業者団体でありまして、したがって個々の構成事業者に対しては、一定の法律違反を理由とした排除措置が命じられるわけではないのでありまして、そういう意味では構成事業者に、事業者団体の違反行為を根拠に、直ちに課徴金を課するということは、妥当性を欠くと言わなければならないと思います。事業者団体自体は不当利得がないのが通例でありますので、事業者団体に対する課徴金制度を設定するということにも問題はあるわけですから、事業者団体に対しては課徴金というのは必ずしも規制の方法として合理性を持ちにくいのではなかろうかと思います。事業者団体の役員に対する罰則の適用、さらに事業者団体に対する解散命令等事業者団体固有の措置が講じられる必要があると思います。 先ほどの参考人の方々が、事業者団体の役員あるいは事業者団体の決定参加者に対して課徴金という御意見を述べられましたけれども、役員あるいは決定参加者に対する制裁として、一定の措置を課するということになり、課徴金を制裁という形で明白に性格づけるのであれば、そういう考え方も成り立ち得るだろうと思います。しかしながら、競争制限による不当利得の国庫への納入という課徴金の性格を、そのまま貫いていくということを前提にいたしますと、事業者団体の役員に何らかの不利益な措置を講じて抑止効果をねらいたいというこの趣旨、政策意図というものは十分理解できるのでありますけれども、課徴金を課するということの合理的な根拠を見出すことはきわめて困難だというふうに申し上げざるを得ないのであります。 課徴金につきましては、現在の私の考え方では、先ほど申し上げました減額措置及び事業者団体の違反行為を理由とした構成員に対する課徴金、この二つの部分が除去されて、不当利得との関係がより合理的に調整されることが望ましいと思いますが、前二者は、この法律が論理的に合理性を持つための二つの要件というふうに考えていいのではなかろうかと思います。 次に、カルテルの規制に関して、排除措置命令の問題が出てきております。 この点につきましては、申し上げるまでもなく、価格の原状回復命令という問題から出発した制度でございますけれども、括弧書きで一定の事項を挿入する、しかもその挿入した事項が事業者の自主的な決定届け出ということを求めるということに限定されている点、先ほどの参考人の方もお話しになりましたように、問題があると言わなければならないと思います。価格の原状回復命令を前提にする場合には、この括弧書きの中に、それが行い得るか否かについて議論のあります価格の原状回復命令を含むというようなことが恐らく予定されていたわけでありますが、現在の括弧書きの中には、従来公正取引委員会が直接事業者に対して命じてきたものを、事業者の自主決定にゆだねるという内容を含んでいるものと考えざるを得ないわけであります。違法行為の排除と影響の除去という二つの概念に分離してありますが、この両者が従来は違法行為の排除という枠の中で、論理的な統一性を保ちながら運用されてきているというのが実態だろうと思います。そういう意味で、従来の公正取引委員会の排除措置命令が現行法の適正な運用であるという前提に立ち、また、それを制限しないということを前提にするならば、この括弧書きの内容はやはり削除される必要があるというふうに考えております。もし、何らかの形で、一定の追加ないしは修正ということを考えることができるとすれば、現行法上それを行うことができるかできないかという点について、解釈論上疑義のある問題をここに含ましめるというのが、立法の当然の方向ではなかろうかと考えております。 カルテル対策について、以上申し上げたわけでありますが、あといわゆる独占状態についての規制、営業の一部譲渡について簡単に申し上げていきたいと思います。 この独占状態の要件等につきましては、これは先ほどお二方からすでにお話があったことでありますけれども、この営業の一部譲渡を命ずる手続の中で、二度主務大臣との協議が義務づけられているという点に限って一言触れさせていただきたいと思います。 この協議が、特にこれは審決の前、審判手続の最終段階で行われるということが問題になってくると思われるわけであります。最初の審判手続の前の協議につきましても、審判手続を行うか否かの公取の自主的な判断に、政策的な配慮が影響を与えるという意味で問題があるわけでありますが、特に問題が大きいのは、審決の前の協議の問題であるということになると思います。申し上げるまでもなく、公正取引委員会の判断は、これは法的な判断でありまして、事実に対して法の適用が行われるのが公正取引委員会の審決による判断であります。この場合には、そのときの政策的な配慮というものは、事実を明らかにしていく上で必要な側面も出てまいりますけれども、判断に関しては、あくまでも法的な判断であるということが言えるわけでありまして、協議という形が主務大臣との間でとられますと、法的な判断と政策的な判断とが協議して一致点を見出すということになってくるわけであります。つまり政策的な判断が行われるべきでない法的な判断の場に、政策的判断との調整で一致点を見出すということを通して、この公正取引委員会の判断の性格が変化してくるという問題が最も重要な問題であろうと思います。具体的にどう運用されるかということは、これはそのときどきの公正取引委員会によって違ってくるかもしれませんけれども、制度としてそういう形で事実と法の適用の組み合わせを変質させていいのかという点が問題になろうかと思います。先ほど實方参考人がおっしゃった点もいまの問題とおそらく関連して出てくることになろうと思いますので、この協議、特に二度目の協議は、これは削除されるべきであるというふうに考えております。 時間がございませんので、最後に、私どもが問題にしてまいりました第四番目の点、高度寡占の問題について一言だけ補足的に申し上げておきたいと思います。 この独禁法四十条に基づく調査権の範囲ということと、先ほども関連した御発言が貴方さんからあったわけでありますが、四十条の二を設けることによって、四十条は限定的に解釈せざるを得なくなるということが最も大きな問題であろうと思います。高度寡占業種以外の業種について、四十条の二に掲げるような報告を求めることができるのかできないのかという点を含めて、公正取引委員会の四十条に基づく調査が、独占禁止法を公正かつ適正に運用していくための調査権であるということを前提に考えてみますと、これはどうしても重複する、しかも高度寡占について一定の限定を付するということにならざるを得ないという意味で、現在の改正案は大きな問題を持っていると言わなければならないと思います。しかしながら、他方では、こういう高度寡占業種が競争秩序との関係で特殊な問題を持っており、しかも競争回復可能であるという一応の前提に立って独禁法が対応するわけでありますから、したがって、この高度寡占業種について、その価格行動に関しては、価格行動を行った後で公正取引委員会にその旨とその理由を届け出るといういわゆる事後届け出という制度を導入することが妥当なのではなかろうかと思います。一定の高度寡占業種は、これはもう競争回復不可能である、したがって、一定の統制あるいは公益事業的規制に服せしめるべきであるということになれば、これはまた別個の立法が必要でありましょうが、少なくとも一定の競争の回復の可能性ということを前提にする独禁法の立場からの措置として、それがどのような形で競争制限的な価格行動としてあらわれてきているかを明白にチェックするために届け出義務を課するという形も、一つの方法ではなかろうかと思っているわけであります。いずれにいたしましても、現在の改正法案の内容については疑問を抱かざるを得ない。修正あるいはこれが削除されることが必要ではなかろうかと思っているわけであります。 以上で終わらせていただきます。
○山村委員長 次に、鈴木参考人にお願いいたします。
○鈴木参考人 鈴木治雄でございます。 独禁法につきましては、経団連の中に産業政策委員会というものがございまして、そこで従来検討してまいりましたので、本日はその立場でこれから意見を申し述べたいと思います。 最初に、経団連の改正問題に対する基本的態度を若干お話し申し上げまして、次に具体的な問題点というような点について意見を述べさしていただきます。 私どもは、わが国においては自由主義経済というものが、経済体制として最も効率的かつ民主的な経済システムであるという信念に立っております。そういう前提の中で、独禁法は、その自由主義経済の運営の基本をなす公正なる競争についてのルールを定めたものとして、重要な存在意義があるものだというふうに認識しております。そして、情勢の変化によって改正があり得るということを決して否定するものではありません。ただ、筋の通った改正であってほしいということであります。 御承知のように、オイルショック以来、わが国の経済情勢は非常に困難かつ深刻な事態を迎えておるわけでありまして、一方におきましては、世界的に資源ナショナリズムというものがあって、われわれが買う原材料というものはどんどん上がってくる、そういう中で高度成長から安定成長へ移行しなければいけない、福祉充実と国際協調が重要だ、そういうのが基本線で、そういう転換期にあるわけで、そういう非常にむずかしい中で、私ども経済人としては万難を排して以上のような変化に対応する経営努力をしていきたい、こういうふうに考えているわけですが、こういう時期に改正案が登場したわけでございます。 先ほど申しましたように、情勢変化に対して独禁法を見直す、再検討を加えるという意義については十分評価するものでありますし、決して否定するわけではありません。しかし、今回の改正論議というものを客観的に振り返ってみますと、一昨年末の石油危機及びそれに引き続く経済的混乱の中で物価問題というものが非常に大きく登場したわけであります。そうして、独禁法を改正することこそが、唯一と言わないまでも非常に大きな解決策であるというようなムードが盛り上がったように思われるわけであります。しかし、御承知のように独禁法は公正競争の維持のためのものであって、その結果としてもちろん物価にも影響があるにいたしましても、直接の物価対策として改正独禁法あるいは改正案に過大な期待を寄せるべきものではないというふうに考えるわけであります。私どもが心から念願いたしますのは、こういうむずかしい時期に、日本経済の一番の特色とも言うべきバイタリティー、活力を失わせないようにするということ、それからもう一つは、経済運営を健全に発展させるためには独禁政策の強化は十分必要でありますが、同時に経済政策というものが並行して非常に重要である、両者の間に十分の相互補完、整合性、協力関係というものがぜひあってほしいと思います。特に独禁法の第一条の目的のところを読みますと、先ほど活力ということを申しましたが、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにするのが目的だという文章がございます。したがって、今回の改正案が行き過ぎて経済界に不安感を与えて、この第一条の目的の事業活動を盛んにするということが萎縮に通じないように、ぜひ御処置願いたいと思います。 こういう立場で考えますと、競争ないし寡占の実態というものについてぜひ十分に分析をしていただいて、実情を無視しない、理論に走らない改正であってほしいと思います。 時間の関係がございますので政府案について特に問題と考える項目について、重点的に率直に意見を申し述べたいと思います。 まず第一に、同調的値上げの場合の報告についてでありますが、私どもの承知しているところでは公取試案の中に原価公表という項目がございまして、これについて各界から相当論議があったわけでございますが、私の承知している範囲では、経済学者の相当の方々から原価公表に対しては否定的な強い批判があったわけであります。しかし、今回のこの修正案を見ますと、それが形を変えて同調的値上げの報告という形で盛り込まれたように思いますが、原価公表について論議された場合のデメリットと申しますか、適当でない性質、そういうものが、この報告に同様にそういう効果があるんじゃないかと思いますので、不適当であると思います。したがって、この項目は削除をしていただきたいというふうに希望をいたします。 以下、理由を申し述べますが、元来、製品につきましては人件費、原材料費など共通の値上げ要因が存在する場合、ある程度同じ時期に値上げが集中して実現するというのは、自由かつ公正な競争の当然の結果でありまして、いわば市場原理とも言うべきものであると思います。同じ商品について、よく言われます一物一価の原則というものがありまして、価格が上がるときもそうですが、下がる場合にもそうでありまして、価格の上下動というものが同時期に起こるというのはきわめて当然の現象でございます。これは基礎物資のような製品差別のないものにつきましては特にそういうことが言えるわけであります。しかも、今回の改正案におきましては、対象は三社七〇%ということで、相当広範囲になっているわけでございます。 もちろんこの改正案の趣旨は、当局が御説明になっているように、同調的値上げの現象を直ちに悪いことであるとか禁止しているのではない、値上げの理由の報告を求めるだけだという理由が言われておりますが、企業者といたしましては何ら違反もなく、当然の自然な行為をしているのに一一報告をとられるということは納得できないという心理があります。そういう際に、好ましくない憶測を生ぜしめるとか、あるいは不必要な混乱もあるのじゃないかというふうに考えるわけでございます。 この改正案は同調的値上げというものを問題にしているわけですが、当然、現象としては同調的値下げといいますか、競争者が価格を下げれば当然対抗上価格を引き下げなければ物が売れないわけでありますが、そういう値下げの場合というような問題は考えていないわけですが、値上げの場合だけを問題にするということは、どうもやはり私は冒頭に申しましたように物価対策、つまり正当な値上げに対しても抑制効果が働くのではないかという心配を持つものでございます。 以上の理由によりまして、この同調的値上げの報告というものについては、四十条との関係もございますが、私の前に陳述された参考人の方と理由は異なりますけれども、削除した方がいいのじゃないかというふうに考えます。 それから、営業譲渡命令でございますが、これは最初に企業分割ということで産業界が一番反対したといいますか、非常に問題のあったことでございます。これが構造規制である、行為規制でないという点について非常に反発があるわけでございます。現在の実際の企業間の競争というものを見ますと、技術開発、合理化努力などを中心に、どうしたら創造的、革新的な活動を展開できるかということで争われておりまして、この創造的、革新的な企業活力というものが経済進歩の一番原動力になっているということは隠れもないことでございます。 しかし、こういう競争で一番優秀な成績をおさめて自分のシェアを拡大してきた企業に対して、営業譲渡が、いろいろな条件があるにしても構造規制というような角度から命ぜられるという可能性があるということになりますと、これらの優秀企業がこれ以上努力してシェア拡大をしてもしようがないとか、合理化努力をしても危険であるとかいうような現象が出てまいる心配がございます。事実すでにいろいろ新聞、雑誌等の報道を見ますと、一部の優秀企業におきましては新規設備投資を控えるとか、シェア拡大の抑制を図る動きというようなものも出ております。こういうように、よくやっている企業に不安を与えるということは、産業の萎縮現象を招くのではないか。したがって、行為規制というものは十分わかりますけれども構造規制に対しては、基本的に考え方として問題があるのではないかと思います。しかし、改正案にはいろいろ御検討の上、営業譲渡という項目が出ておりますし、法律は国民的立場からできるわけでございますので、営業譲渡というものを、修正案の中にあるようなことについて現実的に考えますと、営業譲渡という現象は、経済的にメリット、デメリットの評価をいろいろな角度から総合的にしなければいけない性質のものであって、独禁政策だけでなく、経済政策全般にかかわる問題であるのじゃないか。そういうことから考えますと、どうも公正取引委員会の独立性ということを非常に主張されておりますけれども、確かに独禁法で処理すべき項目の中で、公正取引委員会が独立性を厳然と守って処理すべき事項と、営業譲渡のような性質のものは、経済政策とのかかわり合いが非常にあるわけでありまして、これはいわば境界線にある問題処理という性質があるので、内閣の責任においてすべきじゃないかというのが経団連の主張であります。これは決して内閣から政治的なチェックをしようというのじゃなくて、事の性質の判断基準というものが、独禁政策と産業政策の両方にまたがっているいわば多面的な判断を必要とするという実態からこういうことを申し上げておりますので、誤解がないようにお願いいたしたいと思います。 それから、課徴金の問題でございますが、違法カルテルがあればこれを厳重に取り締まる方向に改正されるという一環で課徴金の項目が設置されるということについて、特別に異議はございません。しかし、現行の独占禁止法で、不況カルテルというものは認められておるわけであります。しかし、不況カルテルに準ずるような準不況カルテル的な状況下において、相当多くのカルテルが過去においてあったと思うのでありますが、そういう場合には、仮にカルテルをやりましても、依然としてその成立した価格は赤字であって、全然利益がないというような場合に、今度の改正案のような課徴金のかけ方というものは実情にそぐわないのじゃないか。しかも、責任罰、刑事罰というものが今回の改正案によっては併科されることになっておりますから、そういう点で防止効果は十分あるのじゃないかと思います。それからなお、課徴金を取る場合に、やはり基準は明確にして、自由裁量でかげんするという余地がないようにするということが望ましいのじゃないかと思います。 その他にもいろいろ意見もございますけれども、時間の関係がございますので、これで終わりたいと思います。
○山村委員長 次に、竹内参考人にお願いいたします。
○竹内参考人 竹内昭夫でございます。 私は、総理府の独禁法改正懇談会にも参加いたしましたので、重複するところがあるかと思いますけれども、政府案の若干の点について意見を述べることといたします。 まず戦後の独禁法の歴史はその弱体化の歴史であったと言われる中で、今回はとにかくその強化を目指して改正案がつくられたということは、大いに評価していいことだと思います。しかし、私は、公取試案が発表されましたときからそれに不満でありました。その発表直後に消費者団体等が、これが最低限であるという条件つきにせよ、試案を全面的に支持するという態度を表明されたことに対しましても、私は意外の感を持ちましたし、またがっかりもいたしたわけであります。そこで、独禁法の懇談会の席上でも私が不満とする点を繰り返し述べましたが、今回の政府案にもその点は全く取り入れられておりません。したがって、私は、政府案についても試案に対するのと同様に不満でございます。 私が不満に思いますのは次の点でございます。 すなわち試案も政府案も、公正取引委員会だけが独禁法を運用するという考え方をきわめて露骨に打ち出しているというふうな点でございます。私ば、独占を禁止する法律の運用を公取委が独占するというような考え方は、正当でもないし妥当でもないというふうに考えておるわけでございます。 第一に、事業者の独禁法違反、たとえばカルテルによって被害をこうむるのは消費者でありますし、また違反事業者と競争関係、取引関係にある事業者でございます。そうだとすれば、これら被害を受ける消費者や事業者の救済を全うするということが、独禁法にとって最も重要な課題の一つではないかというふうに考えます。ところが、わが国の独禁法は、御承知のように二十六条におきまして、公取委の審決が確定するまでは被害者は裁判上賠償を請求できないという、まことに奇妙な規定を置いております。したがって、公取委が事件を不問に付しますと、被害者は賠償を請求できなくなってしまいます。なぜ公取委には被害者の救済を求める権利を妨害する権利が認められなければならないのか、私はまことに不思議に思います。これは余りにも不合理だというので、その場合でも被害者は民法七百九条によって損害賠償を求め得るという解釈が、学説上主張されております。しかし、この場合には、加害者の故意、過失を立証しなくてはなりません。なぜ公取委は、被害者に加害者の故意、過失の立証を要求させるという形でいやがらせをする権利があるのか、これまた私にはわからないところでございます。この二十六条の規定は、現行独禁法が被害救済にきわめて冷淡な態度をとっているということを象徴的に示しているもののように思います。 このことを、被害の救済という面だけではなしに、独禁法の効果的な実施、運用という面から考えてみますと、やみカルテルのような独禁法違反行為は、最もスマートなかつ最も悪質な経済犯罪でございます。同時に、きわめて多数の者から継続的に静かに財産を奪い取っていき、果ては自由にして公正な国民経済秩序を破壊するに至るという意味で、空き巣ねらいなどとは比べものにもならない悪質な犯罪でございます。このような犯罪を効果的に抑止するには、一方においてそれに対抗し得るだけの強力な法律的武器を準備するとともに、他方においてこれらの武器が効果的に作動できるようなシステムをつくらなければならないはずでございます。たとえば戦艦大和に四十サンチ砲を備えるとすれば、それに耐え得るような艦体をつくらなければならない。精密なレーダーも必要でしょう。強力なエンジンをつけるのも必要でしょう。さらに、航空母艦や駆逐艦等とともに出動するというのがあたりまえのことではあるまいか。戦艦大和に焼き玉エンジンをくっつけようなどということを考える人は一人もいないはずであります。法律についても事は同じでありまして、敵が悪質強力であればあるほど、武器を強化するだけではなしに、その武器がどういうエネルギーで有効に作動するのかということを考えなければならないというふうに考えるものであります。 ところで、アメリカでは、御承知のように独禁法違反行為に対しましては被害額の三倍の賠償と合理的な弁護士報酬を取れるということにいたしました。それから、政府機関による民事、刑事の手続において被告が独禁法に違反したという確定的な判決または命令が出たときには、賠償を求める私人は——これは消費者も事業者も含まれます、これを一応の証拠として援用できるというふうに定めまして、損害賠償請求訴訟を容易にしております。さらに、訴訟手続につきましてはこれは独禁法に限りませんけれども、御承知のようにクラスアクションの制度を用意して、被害者の代表が同じ被害を受けた者全部の賠償をまとめて取れるようにしておりますし、さらにまた行政庁は、私人の賠償請求訴訟におきまして裁判所に意見書を提出してそれを援助するというようなことも広く行われております。これはまさに私人の賠償請求に、一方においては被害の救済としての役割りを果たさせるとともに、他方におきましては加害者に対する最も効果的な制裁としての機能を果たさせようとしているわけでございます。つまり行政機関のエネルギーだけではなかなか効果的に抑止できるような敵ではないという認識に基づきまして、被害者の賠償請求というエネルギーを活用して独禁法の実効性のある運用を図ろうとしているのであります。 これに対しましてわが国では、アメリカの独禁法を継受しながら三倍賠償の規定は落としてしまっておりますし、弁護士報酬を求め得るという規定すら置いておりません。のみならず、二十六条のような逆の方向の規定をわざわざ置いておるのでありまして、法律を能率的に動かすためにいろいろなシステムを連動させ、社会のエネルギーを巧みに活用しようという発想が全く欠けているというふうに私は考えるのであります。そうして、公取委だけが独禁法を動かすなどという考え方は、一方においては余りにも自負心過剰、あるいは独善的であるだけでなしに、他面おいて余りにも知恵がなさ過ぎるというような感じがするのでございます。 その意味で、まず第一に、二十六条を削除いたしまして、第二に、賠償額をできれば三倍にする。なお、この点で参考になりますのは、現在のわが国の労働基準法でも附加金は二倍取れるということになっておるということが御参考になろうかと思います。少なくとも弁護士報酬は敗訴被告の負担とすべきである。第三に、公取の確定審決や独禁法違反についての有罪の確定判決には一応の証拠としての効力、推定力を認める規定を置きまして訴訟を容易にすべきであろうと思いますし、第四に、損害賠償を求める訴訟におきまして、公取委は裁判所に意見書を提出し得るという旨を定めるのが妥当ではないか。第五に、賠償請求訴訟は東京高裁の専属管轄と定めておりますところの八十五条の二号は削除するのが妥当ではないかというふうに考えるのでございます。同様の考え方は損害賠償に限らずとるべきでございまして、したがって第六に、公取委の処分については何人も不服を申し立て得る旨を明らかにするのが当然のことであろうと思いますし、第七に、九十六条の公取委の専属告発に関する規定を修正いたしまして、公取委が審判手続を経て告発したときは東京高裁の専属管轄権を認めてよいと思いますけれども、それを経ずに告発したとき及び公取委以外の者が告発したときには、被告人の審級の利益を保障するために一審は地方裁判所とするということが妥当ではないかというふうに考えます。 私は、独禁法はあくまで公正自由な競争経済秩序を維持する法律であるというふうに考えておりますので、以上のことは何も消費者保護施策を独禁法に盛り込もうとするものではございません。しかし、四十八年十月の第六回の消費者保護会議、これは多数の閣僚が加わっておられるものと思いますが、この消費者保護会議におきましては、消費者の被害を効果的に救済し、ひいては消費者保護のための規制の徹底を図るため、総合的な消費者救済制度につき調査検討を進めるという旨を決定しております。総合的な消費者救済制度の必要性を認めているのなら、独禁法の分野でも消費者、それから競争事業者、要するに被害を受けた者の救済を万全ならしめるということを考えるのが当然ではないか。消費者としても、武器をわれらにという声を上げるのが当然でありまして、それが実現されない限り、消費者保護はいつまでたっても行政によるおんぶ抱っこの消費者保護行政というものを脱却できないのではないかというふうに考えるのであります。そういうようなことでは、消費者保護基本法第五条におきまして、消費者は「自主的かつ合理的に行動するように努めることによって、消費生活の安定及び向上に積極的な役割を果たすものとする。」ということを定めておりますけれども、この規定も空念仏に終わるであろうというふうに考えます。取られたものを取り返すというのはまさに合理的な行動以外の何物でもない。それを自主的にしようとする場合に多くの障害を残したような独禁法というものを残しておいて、消費者保護基本法のこの規定の精神が生きてくるとは思えないのでございます。 次に、課徴金に関する規定について一言申しますと、以上のような考え方からいたしますと、私はこの課徴金という制度そのものが何とも中途半端なものであるというふうに考えております。私は、公取試案が出たときから、この制度は成績をつければ良ではあっても優の点はつけられないということを申してまいりました。それは石油パニックのときに便乗値上げに対しましてきわめて厳しい批判が加えられましたが、便乗値上げはけしからぬというのならば、やみカルテルをこれ幸いと国が課徴金を取ってもうけるというのは何事かという感じがするからでございます。もちろんこの制度のねらいは、国がもうけようというものではございません。そのことは私もよくわかっております。不当な利得の確保を許さないというのがこの制度のねらいであるということは私もよくわかっておりますし、その範囲内ではこれは行った方がいいという積極的な面を持つわけでございますけれども、しかし被害を受けた消費者や事業者としましては、少なくとも違法に取られたものはきちんと自分のところへ取り戻して初めて損得なしの状態になるのでありまして、国がもうけたからといっておもしろくもおかしくもない感じがいたします。その意味で、国が不当な利得を課徴金の形で取るというのならば、それを被害者に返すべきであろうと思います。このことは国が賠償請求をかわって行うということですけれども、こういうことはアメリカでは別に珍しいことではないのでありまして、それが筋として本筋ではないかというふうに考えるわけでありますが、それだけでなしに違法に取った分をすべて取るという発想がなくなっておりますために、できるだけ簡単な算式で課徴金の額を決めようという考え方が出てまいります。予算も人手も知識も権限もある、十分ではないかもしれませんけれどもそういうものを全部持っている公取委が課徴金を取るにも簡単な計算式が要るというならば、それらを何一つ持たない消費者に対して自己の損害額を立証して賠償を取れというのは、赤ん坊に象と素手でけんかしてみろと言うようなものではないかという感じがいたします。課徴金制度の導入に当たってその簡単な計算方法が問題になったということは、これまた被害者の賠償請求がいかに軽視されてきたかということを端的に示すものではあるまいかというふうに感ずるわけでございます。 次に、政府案の計算方法について一言申しますと、その数字的な根拠が何であるかはわかりませんけれども、過去三年間の経常利益を考慮に入れるというのは、先ほど来いろいろ御意見が出ておりますが、私にもはなはだ理解しがたいのでございます。同じどろぼうでも貧乏人のどろぼうは多少しんしゃくするというのならばまだ多少わからぬではありませんけれども、いかに過去に積立金がたっぷりあっても、過去三年間はもうからなかったという金持ちの企業がやる場合、これをしんしゃくするというのは一体どういうことなのか、私にはこの政府案の説明が、まだ詳しくは伺っておりませんのでどうもよくわからないのでございます。それから、特に多角経営企業の場合にはどうか。あるカルテルをやった、ほかのところで三年損していたという場合でも同じことになるのだろうか。その意味で、経常利益による減額規定というのは私にははなはだわかりにくいというふうに思います。政府素案では、カルテルの前と後との利益の差に販売数量を乗じた額ということになっておりましたからまだわかりやすかったのでございますけれども、経常利益をしんしゃくするということになりますと、はなはだわかりにくくなってくる。こういうことになりますのも、課徴金といういわば中途半端な制度から出発しているからでございまして、国が取るのだから、そうまるまる取らなくても、苦しいところからは勘弁してやっていいじゃないかという発想法が生まれてくる。ところが、取られた方の立場から考えますと、全部取り戻すのはあたりまえであって、苦しいからちょっとまけてくれというのはおかしいのではないかという感じがするわけでございます。 それから、事業者団体の構成員から課徴金を取るということが先ほど来問題になっております。この点について一言だけ申し上げますと、正田さん、松下さん、實方さんと私は考えている内容においてはそんなに違わないのかもしれませんけれども、しかし形式的には私はこの事業者団体の構成員からも取るという規定を残すのが妥当ではないかというふうに考えております。結論的にはその意味で反対でございます。そして、その場合には、現在の政府案の八条の三、たとえば八条第一項第一号というのの次に括弧書きを加えて、これは不当な取引制限に当たる場合に限るというふうなことを明らかにする、そうすれば二号の方にはそう入っているわけでございますから、いずれにしても事業者団体が不当な取引制限に当たることをやった場合には構成員から課徴金を取るぞということが明らかになるわけでございます。それは正田さんなんかのおっしゃっていることと内容的にはそう違わないかもしれませんけれども、形は違ってくるのではないか。なぜそういうことを申すかと申しますと、もし事業者団体でやればいいのだということになれば、これからはやみカルテルをやるときには事業者団体をつくってからやれということになるわけでございまして、だれかが憎まれ者になって通知を流す、それでほかの人間はイノセントな第三者ということになればよろしいわけでございます。事業者団体などというのは、もちろん何万人のものもありましょうけれども、三十人でつくってはいかぬというわけではない。カルテルは事業者団体をつくってやれというような知恵が回るようなことになっては大変ではないか。もちろん正田さんなんかはそういうふうなことをおっしゃっているわけではございませんけれども、私はその意味で、いま申しましたような趣旨、正田さんなんかの意見を盛り込んで八条の三を残すということの方がむしろ妥当ではないかと考えるわけでございます。 なお、ほかに申し上げたい点もございますし、申し上げない点は全部私が納得しているというわけではございませんし、私自身独禁法の専攻者でもございませんので十分勉強しているというわけでもございませんが、私としましてはいま申し上げたような点、それからほかの参考人が述べられたような点がしんしゃくされて、修正された上この法案が国会を通過するということを期待するものでございます。
○山村委員長 次に、田中参考人にお願いいたします。
○田中参考人 私は、今回の独禁法改正で大変現実的な考え方を持っておりますので、竹内先生、いろいろと消費者の立場に立ってむしろ非常に強硬な、強化のことを御発言いただきましてありがたいのですが、私は、むしろ現実問題に返ってみたときに独禁法改正というのをどういうふうにとらえていったらいいかということで考えているわけでございます。 私どもの団体は大体六百万人の家庭の主婦を中心とした組織メンバーがおります。その主婦たちの中で「独禁法」という言葉が自然に使われるようになったというのは、本当にこの改正の問題が出てきた大体石油パニックのあたり、そのころから私たちの間で独禁法ということが改めてわかりかけてきたというような状態でございます。それで、私自身も東京のほかにも神戸や石川県や長崎県や鳥取県の方にも学習会に出かけまして、そこでいろいろ主婦の人たちと話し合ってみますとすぐに質問に出ますことは、価格の原状回復命令はどうしたのだろうか、原価の公表はどうしたのだろうか、そういう発言がよく出てきております。ついこの間、六月の十二日には埼玉県婦連から二、三十人の主婦たちが上京してまいりまして、埼玉県選出の議員さんたちにぜひ強化改正、通してほしいという陳情を行っている、その人たちは改正の一つずつの細かい点について理解するというところまでには確かになかなか行っていないと思います。私はそうした状況の中で、国民の非常に多くの者がこの独禁法の改正を見守っているということを皆さん方はもう百も承知だと思いますけれども、改めてもう一度胸に刻み込んでいただきたいと思います。 私は、ちょうどこの独禁法改正の政府案が提案されました本会議を傍聴いたしました。そのときに政府からの趣旨説明を植木総務長官がなさっていらっしゃいますときに、自民党の席を傍聴席から見ておりますと、拍手がばらばらといった程度でございました。その後自民党の議員さんが代表質問をなさいましたときに、その方の拍手がむしろ多かったのではないかというふうに私は思いました。その議員さんが、むしろこの改正は必要じゃないのじゃないだろうかというようなニュアンスも含めて、非常に問題点があるということを指摘なさったときの拍手の方が大変大きかったということがいまも印象に強く残っております。ですから、商工委員会の自民党の先生方、いろいろ勉強なさり、非常に前向きに検討していただいていると思いますが、自民党自体の内部的なことを考えますと、私、第三者ですけれども、大変心配でたまらなくなってくるわけでございます。福田副総理も商工委員会で、確かに修正に応じるとはっきり言わないまでも、そのニュアンスを含めたことを発言なさいましたし、三木総理も修正に応じるとおっしゃいました。でも、どうも自民党の中では、本日の新聞を見ますと、衆議院の商工委員会、何しろ衆議院は原案のまま、政府案のままで通して、参議院で廃案になるということ、これは確かに憶測記事だと思いますけれども、そういうことが書かれております。そういう現実のときに、私は大変恐れますのは、ここまで国民が一生懸命に、独禁法というものがわかりかけ、私たちの側に立った強化改正だと思って一生懸命に支持し、やってきたことが、それがすっかりなくなってしまうときの政治不信につながる恐ろしさというもの、これは各党の皆さん、議員さんであれば非常に大きく感じられるのではないかと思います。 今度の改正、非常にいろいろ御指摘がございましたように、改正案自体問題点が少なくないということは確かでございます。そういう意味で、私どももこの独禁法の改正の審議を見ておりますときに、非常に残念に思いますのは、私はやはり法律というものは国民生活にプラスするというところにあるのではないかと思いますし、それがやはり優先するものであって、それに伴って技術論が行われるというのでいいのではないかと思うのですが、どうも今回の独禁法改正では技術論というものが先行して、私たちの願いというものがどうも影が薄れてきたという主客転倒の姿が強くあらわれてきたことを大変悲しんでいるわけです。ですから、政府案作成の過程で本当に生活実感から、カルテルで価格が上がったものが破棄勧告を受けても価格は下がらないこととか、大企業がカルテルの実証がないままに同調的な値上げを行ったり、寡占企業の問題として、寡占対策の中でせめて原価の公表くらいはというような意見が出ていたものが、これは影が薄くなったというよりも、改正案の中では全くなくなってきたというそういう実情、その中にはやはり価格介入ということが独禁法の中では大変問題だという指摘が、特に独改懇の中で経済学者から大きく出されたと思います。確かに私はそういう理論はあると思いますが、私たちの願いというものを経済学的にもそれから法律学的にも補完しながら、独禁法の改正というものをつくり上げていただきたいと非常に思っていたわけでございます。現実的にはなかなかそういうふうにいかなかったということで、私はぜひこの改正案を通していただきたい。それは、今国会で通らなかったときに一体どうなるか、まあ継続審議という方法もあり、いろいろあると思いますけれども、これだけ問題が起きていてなお通らなかったということを考えましたときに、次期国会で果たして通るものか通らないものかということは、今国会以上にむずかしくなるという、私政治家でもありませんけれども、そういうふうにしか思えないわけでございます。そういう意味で、私も私どもの団体も、最低限の修正ということ、決して満足ではないけれども最低限の修正ということをぜひおやりいただきまして、今国会で成立させていただきたいというふうに考えます。 第一番目は、確かに原状回復命令というのは消費者の非常な希望でしたが、これにかわるものとしてカルテルに対する排除措置が入ってまいりました。この問題で、先ほどから法律学者の先生方からいろんな御意見が出ておりますけれども、結局、現状、公取がどこまで一体七条の排除措置で従来やっていたかということを考えますと、価格の再交渉をせよということばやっていたと委員長もおっしゃっていらっしゃいますし、生産数量や販売数量、販売価格を向こう一ヵ年とか半年、公取に報告させるというような、そういうことも従来の排除措置の中でやっていらしたと思います。ですから、これ以上に改正案の中の括弧内という表現を使っておられますが、この括弧内がプラスするものならば私は結構だと思いますけれども、どうもそれはプラスするものとは受け取れないと専門家の先生方がごらんになる以上、私どもはこの括弧内で協定破棄後にどのような措置をとるかを届け出させ、その後の報告をさせるというのに排除措置が限られるとしたらば大変な問題だと思いますので、そういう意味では七条がむしろ価格の原状回復命令に近い効果を上げられるようにこれは削除する方が適当なら削除、修正できるものなら修正、とにかく現行法よりプラスになる面がなければ問題だという意味でございます。 それから二番目に、課徴金の問題は、これは先生方もおっしゃっていらっしゃいましたように私どもから言わせれば、カルテルのやり得を防ぐ効果があってこそ初めて課徴金としての役割りが果たせるんじゃないか、不当利得の没収だというふうに私どもは考えておりました。独改懇の中でも、経済界のここにおられる鈴木さんも含めて課徴金にはほとんど異議がなかったと思うのです。課徴金は不当利得の没収や、やり得を防ぐというところに独改懇の中でも意見の一致が見られたように思ったのが、どうして課徴金の性格までも全部変わるような改正案になったのか非常に不思議なんです。ですが、これを云々いたしていても、私どもの願います改正案の成立には非常にむずかしい点があるかと思いますが、とにかく抑止力にはなってほしいと思います。カルテルの抑止力を働かせるということは必要だと思いますので、徴収率を上げるとか何かの方法で——千分の十五というのでは、八百円のものを千円に上げても十五円というのでは、どうも私ども消費者にはなかなか納得ができないわけで、納得ができないばかりならいいですけれども、公認されたようなつもりで課徴金だけ払ってカルテルが行われるようになっては大変だ、一大事だと思うわけでございます。公取の事務の繁雑さの問題もいろいろ出ておりますが、私どもはとにかくきちっとできればいいのですけれども、いまの公取の人員で実際に事業者団体の構成メンバーにまで課徴金をかける作業をして、公取の職員が封筒書きに追われたりするようなことでは、私たちが実際に望んでいる大企業のカルテルを監視したり摘発したり、それから私ども消費者の中にも申告が大変ふえてまいりました、そういう訴えを処理していくだけの、公取に人員なり措置ができないとしたらば大問題だと思うわけでございます。 それから三番目に、原価の公表ということにかわるものとして登場してきたものが、高度寡占業種の同調的値上げに対する報告命令、四十条の二でございますが、確かにこのごろはもうカルテルの実証がつかめないままに寡占であれば値上げができるという事例も幾つか出てきております。そういうときに効果的な対策がどこにあるだろうか。そこで、次善の策としての原価の公表というものが公取試案に出てきたと思います。四十条の二の報告聴取権というものが、商工委員会でもずいぶん詳しく質問をおやりになっていらっしゃいますが、たとえば四十条の調査のための強制権限や四十三条の必要な事項の公表を制限するものであるとしたらば、私は一大事だと思います。委員会の質問でもその点は明らかにされたようですが、どうもまた法制局と公取の見解が違うとかいうようなことになってくると、これもまた一つ心配の種でございます。法律の読み取り方というのは私ども素人にとって大変むずかしいものだなとしみじみ思いました。 四十条というのは、管理価格調査を初めとして私たちカラーテレビの買い控え運動で一生懸命やっておりましたときに、二重価格の問題で家電製品についての実態調査を四十条でやったということを聞きましたとき、大変うれしいと思いました。それから、再販価格の実態調査や最近の商社の調査など、これは四十条を適切に働かせてやっているということがもし侵されるとすると、いろいろ問題があるのではないか。必要な事項の公表ということも、私どもにとっては、消費者から見れば、私ども消費者ばかりでなく——必要な事項の公表というところには、確かに「事業者の秘密を除いて、」という文句も四十三条の中にはございますけれども、最近は私たちばかりでなく経済学者の中でも原価の公表が必ずしも企業秘密とは言えないという指摘があることも事実でございます。そういう意味で、今後四十三条の活用というのは私ども消費者にとっては大変希望的な条項でございます。それが制限されるということがあれ、ば一大事だということでございます。ですから、四十条の二の新設でこれに加えてもっときめ細かく報告を求めることができ、値上げの理由を報告する中でも、高橋委員長も言っておられますように、文句だけで値上げ理由を言われましてもさっぱりわかりません。やはりひとつ数字を中に入れながら値上げ理由の報告がされるということが必要ではないだろうかと思います。また、公表のところでも、年次報告で公表するのでは、これはもう次年度に繰り越すようなものですから、値上げ理由というものを公表することにはどうも当たらないようにしか思えません。いろいろな意味で、とにかく四十条と四十三条、ひとつ私どもの願いでございます。これはますます有効に活用していきたいということでございます。 第四番目に、先ほどから幾つも出ております主務大臣との協議、営業の一部譲渡のところで主務大臣との協議が入るというのは大変問題があると思います。特に審決前に協議を行うというのは、確かにこれは時の産業政策なりが審決前の協議の中で相当強く言われるときに、果たして一体公取の独立性というものが保てるかどうかということは問題ですし、委員会でも確認されていますように、もしも公取が最終的には決断を下すんだというのが正しかったとしても、正しかったならばなおさら協議の必要はないんじゃないだろうか、素人考えにはそういうふうに考えます。 そういうような意味で、私どもこの修正四点、法律学者の先生方もいろいろな観点から指摘されておりますこと、専門家の先生方の意見をひとつ議員の先生方もよく検討をなさいまして、超党派で修正を入れた改正案というものを通す努力をしていただきたいと思います。私たち国民としては独禁法改正という問題を、先ほども触れましたように全国の津々浦々で見守っているということでございます。私どもの願いというものをやはり国会が反映して通すということが国会の役目でもあると思います。私ども十分ではないと思いますけれども、第一次のこの改正案が通過しました後、また第二次、第三次の改正案によって、独禁法そのものが本当に国民の支持も受けられるものになってほしいと心から願うものでございます。いま私は、企業の皆さん方の論理も、消費者のわれわれの論理も、政治家の皆さん方の論理も、全部一緒のものだというふうに考えておりますので、皆さん方のこれからの御検討をひとつお願いして、ぜひ修正の上、改正案を通していただきたいと思うものでございます。
○山村委員長 次に、中村参考人にお願いいたします。
○中村参考人 主婦連合会の中村でございます。 きょうは日本生活協同組合連合会、それから主婦連とか総評、二十の消費者団体で構成しております全国消費者団体連絡会を代表いたしまして意見を申し上げます。 私たちは、いま、前に意見を申されました田中さんの所属していらっしゃいます地婦連とか有権者同盟など消費者六団体とも一緒に、消団連と日本全国にたくさんあります消費者団体が一緒になって五回目、五回目ということはことしで五年目ということでございますが、独禁法強化改正の運動月間を持って全国的に運動を展開しております。石油ショックのときに見せつけられ、苦しめられた企業の横暴にたまりかねて盛り上がった国民世論の中で出されたこの独禁法の強化改正案、私たちは非常に大きな期待をかけて、先ほど田中さんが言われましたように、日本じゅうの消費者が一項目一項目に強い関心を持って、国会がそれをどうしてくださるかということを大変な期待を持って見守っているわけでございます。けれども、私たち消費者団体では、独禁法の強化に寄せる運動というのは、石油ショックのときから始まったというわけではございません。昭和二十八年の独禁法の緩和改正の際には、再販制度などの導入に反対いたしまして、私ども主婦連の代表が国会で反対意見を述べております。また、消団連が結成されましたのは昭和三十一年でございますが、これも中小企業団体組織法、環衛法などのアウトサイダー規制命令を含むカルテル立法に反対するための消費者の力を結集する、そういう目的でできたのが消団連でございます。それから、引き続きまして三十三年の独禁法の大幅改正、このときには農民や中小企業の団体の方とも一緒になって反対しました。これは世論が盛り上がり、成立しませんでしたが、その後、雪印とクローバー、それから富士、八幡の大型合併、こうしたものにはその都度反対を表明してまいりました。また、その後の数々の独禁法の適用除外立法や、行政指導による独禁法の弱体化に反対をしてきたわけでございます。昭和四十年代に入ってからは、カルテルとわかっていてもどうすることもできない新聞の一斉値上げ、それから板ガラス、ビールなどの管理価格問題、商社や大企業の投機や買い占め、カルテル列島と言われるようなやみカルテルの横行などが私たちの暮らしをひどく圧迫いたしました。そして、その一つ一つの実感の中から、独禁法の強化改正を願う国民世論が盛り上がってきて、石油ショックがまたそれに拍車をかけたというのが現在の状態だと思います。 私たちは、消費者の利益を守って大企業の横暴を抑えるためには、まずその仕組みを改めていかなければいけないんだ、そういう意味で独禁法の強化改正、これはごまかしでなくて本物の強化改正をしていただきたい、それがいまの全国の消費者の願いでございます。 昨年の九月に公取試案が発表されました後で、私ども消費者団体が一致して指摘して、独禁法改正に寄せて消費者はこういうことを要望しているのだということを出しておりますので、それを項目だけ申し上げさせていただきます。 一、カルテルのやり得を防ぐための措置の整備。公取委は原状回復命令を出すべきであること、カルテルに対し高額の課徴金を課すること、刑事罰の強化、既往の違反行為に対する排除措置、証拠を残さないやみ協定を情況証拠によってカルテルと推定して規制すること。 二は、大企業の寡占化とその弊害の防止のための排除措置。株式の保有制限、独占寡占状態にある企業の分割・営業の一部譲渡等、不当に価格をつり上げている企業に原価公表命令・価格引き下げ命令を行うこと。 三には、消費者の利益保護のための必要な措置。 四は、公取委の機構の拡充強化。 五、独禁法の適用除外の全面的見直し。これが私どもの要求でございました。そして、それ以後繰り返し繰り返し私どもは先生方にも要望しましたし、全国で署名を集めたりいろいろな運動を続けてまいりました。しかし、今国会に上程された政府の改正案では、私たちが切望していたこの数々の事項が無視されたりあるいは巧みにすりかえられて、皮はあるけれども中身がないというようなものになっていたと思います。私たちが最低線として要求した公取試案、その公取試案の柱となっていた原状回復命令、原価の公表の各項目は全く姿を消しました。そして、各項目をよく読めば読むほど、全く一つ一つ何か逆な方向に向いているのではないかというような改悪事項、そうしたものがあるように思われます。 以下、中身に入って、少し意見を申し上げさせていただきます。 私どもは、カルテルのやり得を防ぐための措置には、次の四つの点を考えております。 まず、カルテルをした企業からは過去の不当利得を吐き出させる、全部吐き出させるのだ、たくさんの課徴金を取って全部吐き出させるのだということです。二番目は、刑事罰の強化、三番目は、消費者の利益回復のためには、価格はもとの値段に戻させるのだということ、そして四番目は、消費者は損害賠償請求で奪われたものを取り返す、この四つが相まってカルテルのやり得が防げるのだというふうに考えております。 まず、一の課徴金でございますが、これは先ほどから皆さんが申されましたので省きますが、全く性格が変わってしまったということ。私たちは、七百円のものを千円にするカルテルがあったら三百円は没収するのだというふうに考えておりましたが、改正案では、それが十五円とか、赤字であれば一円五十銭しか取らないというのでは、全くそれは不当表示だということだと思います。そして、先ほどからお話が出ておりましたけれども、決まった課徴金以外は不当利得ではないのかということにもなるし、違法な行為をしても赤字であればこれは許されるのだということにもつながると思います。それから、課徴金の徴収が非常に繁雑であって、公取委の機能を麻痺させてしまうのだという点も指摘されておりますが、その点も問題点として指摘したいと思います。そして、そのために公取委が本当に仕事ができないということは、私ども消費者の権利を侵害することになるのではないかというふうに考えております。 刑事罰の強化は、五十万円が五百万円までになった、そして法人の代表者に罰金となっております。しかし、大企業が悪質違反をして最高五百万円というのはちっともこたえないのではないか。アメリカでは、最近百万ドルになったということですが、そのくらいしなければ抑止効果にはならないのではないかと思います。しかも、これは告発しなければ刑事罰にならない。ところが、公取は、この間の石油のやみカルテルの告発がやみカルテルとしては初めての告発だ。そうすると、委員長があのときに一罰百戒ということを言っていらっしゃいましたが、当分出てこないということは、これは絵にかいたモチになってしまうのではないか。そういう意味では、今後公取がこれを十分に活用していくのかどうかということを監視していかなければならないのではないかと思います。 それから、価格の原状回復については、消費者団体が強く要望したりしました。この問題も先ほどから出ておりますけれども、価格が下がらなければ違法な行為がずっと続いているということで、消費者としては、課徴金で過去の不当利得を政府が取っても、消費者には何もメリットがない。先ほど竹内先生が言われましたように、もともと消費者や被害者に損害を補償するというのは、価格をもとに戻すとか、それから損害額が消費者に戻ってこなければ、私どもにとっては消費者の権利は守られないというふうに考えます。そして、これがもとの値段に戻るというのは、どうしても価格介入だからだめなのだということが、私どもには納得がいきません。これは違うのだと、この間国会でも論議が出ておりましたけれども、スーパーの牛乳の安売りに公取が勧告を出して、原価までは上げろという。それから、中部読売新聞には八百十二円という原価がちゃんと出ていて、安売りのときは価格に介入してもいいけれども、カルテルの違法行為の排除には介入してはいけない。これとこれとは違うのだというお話がありましたけれども、消費者としてはどうしてもそれが違うということが納得できません。それがなくなってしまって、政府案の中で排除措置の七条の括弧書きの問題は、諸先生がおっしゃったことと同じように、一見カルテル規制が強化されるように見せて、そして実はこれは逆だった、不当表示もはなはだしいということを感じます。こうして見てまいりますと、カルテルのやり得を防ぎますという政府の約束が全く空約束だったというふうに考えてしまいます。 それから二番目に、大企業の寡占化とその弊害の防止のための排除措置ですが、第一に株式の保有制限、これは例外規定が九つもある。そして、金融会社の場合もあわせて、十年間の経過措置があって、その上に十年目に初めて手をつければいいというふうになっている。これは本当にやる気なんだろうかというふうに私どもは非常に疑いを持ちます。また、保険会社に特例を設けたということも不可解でございます。 次に、独占的状態を前提としての営業の一部譲渡。先ほどから協議の問題が出ておりましたけれども、私どももこれは全くおかしいと思います。それから、歯どめが幾重にもあって、これは公取試案のときにも、論議の中で、これだけ歯どめがあったらまず実際には発動できないのじゃないか、経済界の代表の方も、よく話を聞いてみたらなかなか出るものではないから安心したという御発言を私は聞いたのですけれども、それにさらに歯どめがかかった。これでは私どもは、本当にこれが動くのかどうか、その方がまず心配でございます。 そして次に、協議の問題。きのうの国会で、たしか公取の独立性を侵さない、しかし、いい影響があるとか悪い影響があるとか、そういう論議があったように伺いましたけれども、私は、主務官庁というのはカルテルを指導している産業官庁だと思います。その官庁が協議に入るということは、いい影響があるなどということは全く考えられないと思います。国民の側に立ってそういうことがあるとは思えないし、いいとか悪いとかいう論議の前に、審決に影響を与えるということ自体が問題なのだと思います。この論議を聞いておりますと、これは大変素朴な消費者の意見なんですけれども、日本経済の根幹を脅かすものだから協議がどうしても要るんだ、初めと終わりに二度も丁寧に協議しなければいけないのだということになると、今度はこれをもし控訴して裁判所に上がったときも、日本経済の根幹にかかわるのだから裁判所も最後の判決を下す前に協議をしろなんという論議が出てくるのじゃないか、国民としては非常にそんな心配をするくらい、この問題が入ってくるということは、消費者の権利を侵すという意味でも非常に問題だと思います。 それから、高度寡占業種の同調的値上げの際の原価公表がなくなってしまったということは、非常にがっかりしております。そして、私たちは、原価の公表だけでなくて、西ドイツのように市場支配的地位の乱用、大幅値上げなどしたときには規制して値下げ命令ができたり、行為の差しとめ命令ができるようにしてほしい、むしろそこまで要求しておりましたのに、全く形が変わってしまった。そして、四十条、四十三条の権限を制限するのではないか、この点も先生方と全く同じ意見でございます。最近高度寡占がふえて、暗黙の協調とか、証拠なきカルテルがどんどんふえていくのだ、ここをつかまえなければいけないのだということはいつも論議されますけれども、その点がこれでは全く野放しにされてしまうのではないか、そしてカルテル規制が幾らかでも厳しくなると、いままではカルテル規制などというものはほとんどなかったので安心して証拠あるカルテルをしていた業界が、証拠を隠してしまうのではないか、地下にもぐってしまう状態がたくさん出てくるとすると、情況証拠によるカルテルの認定とか、この部分の強い規制がなければ非常に不公平だと思います。小さいものはつかまって、大きいものには甘いというのは非常に不公平だと思います。 このように見てまいりますと、私は、この独禁法の改正の中へいままで申し上げたことは全部入れていただきたいと思います。しかし、それがだめだとしても、先ほどから四つの問題が諸先生や田中さんからも出ておりましたけれども、この点に関しては最低、修正または削除がなければ、強化改正ではなくて全く後ろ向きだというふうに評価しなければならないと思います。 それから、最後に消費者の参加について申し上げさせていただきたいと思います。 独禁法を論じますときに最も重要なのは、法の運用の姿勢の問題だと思います。現行の独禁法のもとでも、運用の姿勢のいかんではもっといろいろなことができたんじゃないか。そして、それが後ろ向きの姿勢であれば死文化してしまうということは、いままでの公取の歴史を見てきますと明らかであると思います。独禁法の第一条に、先ほど鈴木さんは違うところを読まれましたけれども、私どもは、事業活動の公正自由な競争を促進し、「以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。」と明確に一般消費者の利益確保というのがうたわれているということをはっきりここで確認していただきたいと思います。いままでの公取委は、ともすれば独禁法の目的は公正競争の促進が第一で、消費者の利益確保は後回し、消費者は業者が公正な競争を行うことによって間接的におこぼれの利益を受けられるのだというような考えに立って法を運用してきたのではないかと思われます。私たちは、先ほど竹内先生も言われましたけれども、消費者の手によって独占禁止法の運用に活を入れるために、消費者の参加についていろいろな要求を出してまいりました。しかし、改正案の中には違反事実の申告者に対する公取委の通知義務というのが入っている。それは消費者対策だというような御説明がありましたけれども、私どもはこれは消費者の参加とは直接関係するものではない、私たちが言っているのはそういうことではないんだということを申し上げたいのです。私たちは、独禁法違反の疑いがあった場合に、消費者の調査請求に対する公取委の処分について不服申し立て権を持ちたい、そして消費者も告発権を持ちたい、それから消費者の損害賠償請求をやりやすくすることを入れてほしい、そのようなことを繰り返して要望してまいりました。消費者対策は入れるんだと、たしか三木総理もそれから植木長官もずいぶん繰り返し言っていられたと思うのですけれども、それがどこへ行ってしまったのか。私どもは、この点が入れられなければ消費者対策というものはこの法律案の中にはないんだと、非常に失望しているわけでございます。この点についても先生方に十分留意してこの法案の審議を行っていただきたいということをお願いして、私の意見開陳を終わらせていただきます。 ありがとうございました。
○山村委員長 以上で、参考人の意見開陳は終わりました。 午後二時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。 午後零時五十三分休憩 ————◇————— 午後二時三分開議
○山村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 これより参考人に対する質疑を行います。なお、質疑の際はまず参考人の氏名をお示し願いたいと存じます。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐野進君。
○佐野(進)委員 参考人の皆様には御苦労さまです。私ども社会党としては三名質問することになっておりますので、私が一番先ということで、時間が大変短いので内容について詳しくお聞きをすることができないのは大変残念でございます。また、審議につきましては、私も今月の三日、四日と二日間にわたりまして本法案の内容を審議いたして、その矛盾点についてそれぞれ政府側の所見をただしておるわけでございます。そういう意味において、時間もございませんので、端的にお聞きをいたしたいと思うのであります。 御承知のとおり参考人各位の先ほど来の御発言の大部分の内容は、今日の社会的、経済的情勢の中で、独禁法の改正が強化という方向の中で行われることについではおおむね賛成である、しかしながら内容を見ると、その内容が強化よりもむしろ後退をしているのではないか、その後退という形の中で一つ一つその内容をさらに分析すると、むしろ危険な内容すらはらんでおるのではないかというような御指摘がそれぞれのお立場においてなされたわけであります。そこで、私どもそういう点を大変心配いたしまして、結果的にこの法案は修正をする、その修正をする中で本法案を前向きのいわゆる強化という方向の中で処理していかなければならぬということで、その修正という形の中における取り扱いをどうするかということを目下それぞれ検討をいたしておるわけでございます。各参考人の方々にお話しになった内容等についてお聞きをすればよろしいわけでございますが、時間がございませんので、大変恐縮でございますが、各参考人に対して、もし修正するとすればこの点とこの点は絶対必要だ、もしこれらの修正がなければこの法案はむしろない方がいいんだという御指摘が幾つかの点でございましたけれども、この際それらの点について改めてお聞きをしておきたいと思うわけでございます。 まず、實方参考人にその点についての御見解をお示し願いたいと思います。
○實方参考人 最小限度の修正点ということでございますが、まず改正案の七条についてでございます。 これは基本的には、具体的な取引条件について、競争制限の影響を除去できるようなさらに具体的な措置を公正取引委員会が直接命じるということができるように確認すれば、これは最も望ましい強化のための改正となると思います。しかし、最低限度は、そのような改正案の修正がなされなければ、むしろ七条に関する括弧書きを入れるという改正はなくなった方が後退の危険性はなくなるということでございます。 それから、改正案の四十条の二でございますが、これは四十条につきましても、競争制限行為を除去するという独禁法の政策目的を実施するという観点から、広く競争制限状態を調査することができる、こう思います。その関連で同調的値上げの場合についても、四十条と同等の内容、すなわち出頭を求めたり資料の提出を求めたり、そのような同等の内容の調査権が確認されるという意味であれば、実効性という点から言えば最も望ましいということでございます。そのような修正が伴わない限り、これは四十条の二を新設するという改正案はむしろ削除した方がいい、こういうことでございます。 それから、課徴金につきましては、最低限度としましては減額修正条項をなくす、こういうことでございます。 それから、事業者団体については、もっとすっきりした形に直すということでございます。 それから、協議につきましては、これは本来は一回目と二回目の協議がすべてルートに乗った明確な形に最低限度なった方がよろしいわけですが、最も望ましいのは両方ともこれがなくなる、少なくとも二回目の協議は政策論的なレベルではなく、法律の準司法手続の性格という論理的なレベルの問題として全然矛盾したものである、最低限度第二回目の協議というのは削除さるべきである、こう思います。 もっとほかの点でいろいろニュアンスがございますが、結論だけまず申し上げます。
○佐野(進)委員 實方参考人の御意見はわかりましたが、同じような意味におきまして正田参考人の御意見を伺いたいと思います。
○正田参考人 簡単に個条的に申し上げます。 カルテルにつきましては、課徴金に関しては減額条項の削除及び事業者団体に対する課徴金制度の削除の二点であります。 それから、七条につきましては、七条の括弧書きの内容を現行法でできるかできないかわからないと言われているようなものに改正する、典型的には価格の原状回復ということを含むということになるわけでありますが、そういう修正がきわめて困難であるということであれば、括弧書きの中身を落とすということであります。 独占状態につきましては、営業の一部譲渡にかかわる主務大臣との協議を両者とも削除する。最低の場合でも審決前の協議が削除されるべきだということであります。 四十条につきましては、現在の報告聴取に関する制度を、高度寡占業種の価格行動に関する事後届け出義務という形に改めて、公正取引委員会の調査権の問題と切り離すということが望ましいと考えております。 以上でございます。
○佐野(進)委員 竹内参考人は、先ほどお話をお聞きいたしておりますると、大変ユニークと申し上げましょうか、変わった形の中で御見解の表明があったわけでありまするが、しかし本法案を強化し、さらにこれを通すという形の中で修正する必要点等においても強調された面がございますので、参考人のその点についての御見解を聞かしていただきたいと思います。
○竹内参考人 全部ではございませんが、まず七条の第一項の括弧書きを削除すべきでないかという御意見がございます。削除するのも一つの方法かとは思いますけれども、場合によっては括弧書きの中にさらにつけ加えまして、このことは本文の一般的適用をいかなる意味でも制限するものではないという旨を明らかにする、これも一つの方法ではないかと思います。アメリカなどでは、これは次の条文の一般的適用をいかなる意味でも排除するものではないが、しかしこれこれこれこれの場合にはこうだというふうな規定の仕方をする場合が少なくございませんので、もしその中に入っていること自体に反対する、その結果はね返りがこわいという御意見であれば、そういうようなやり方も一つではないかと思います。 次に、八条の三でございますが、事業者団体云云、これは私が先ほど申しましたようにむしろ生かすべきではないか。そして、八条の三、「第一項第一号」の次に括弧書きをつけまして、その不当な取引制限に該当する事項を内容とする場合に限るというふうな形にしておけば、結果としては、条文の形は正田さんなんかのおっしゃっているのとは非常に違いますけれども、考えていることはほぼ同じことになるだろう。ただ、事業者団体の構成員に対しても、それが不当な取引制限に当たるようなことをやる場合には、自分は通知を受けただけだというふうなことで言い逃れは許さない。そうしないと、カルテルをやる場合に事業者団体をつくってからやるということになっては大変だというのが私の懸念でございます。 二十六条は削除すべきであろうと思います。その関係におきまして、二十五条の損害賠償に関する規定の中に、少なくとも弁護士報酬というものは入れた方がよくはないか。この段階になって三倍の賠償をというふうなことを申しましてもこれは余り現実的ではないかもしれませんので、せめてそれくらいのことは必要ではないか。 課徴金につきましては、私も減額規定というものはどうも納得しかねるという感じを持っております。 最小限それぐらいのことはやっていただきたいというふうに思います。
○佐野(進)委員 田中参考人と中村参考人からは、婦人団体、消費者団体という立場で先ほど来それぞれお話があったわけでありますが、すでに新聞その他の報道を通じて御承知のとおり、当委員会における審議はまさに白熱的な段階を迎えておるわけであります。したがいまして、この審議を通じて、独禁法の改正問題についてはわれわれとしては、最後の決断と言っては言い過ぎになるかもしれませんが、一定の段階におけるところの見解をまとめなければならぬ。そういう形の中で法文の条項その他についてそれぞれ具体的な検討をいたしておるわけでありますが、先ほど来のお話を聞きますと、お二方とも相当強い不満を表明されておるわけでございます。しかし、一定の段階の中で、法案を通すのか、そのために通さないのかという選択を迫られる時期がやはり来るような気がいたします。私どもはその主張を強くしておるわけでございますが、先ほど来強い御主張等がありますので、その辺におけるところの判断というものはお二方はどのようにお考えでありますか。 まず、最初に田中参考人からお伺いをしてみたいと思います。
○田中参考人 私は先ほど来から、通すことでできるだけ現実的にというふうに申しておりますので、私はやはり専門学者として法律学者の先生方の意見で最低のところを押さえていただければそれでやむを得ない、大変結構というわけにはいきませんが、やむを得ないと思います。 繰り返して申しますと、一つは営業の一部譲渡の場合の主務大臣との協議ですが、協議の方は削除してほしいのですが、やむを得ないときは、審決前を削除して一回とするということになると思います。 それから、課徴金の場合ですが、課徴金は、私どもから言えば性格が変わってしまったのですが、ともかくカルテルのやり得をなくすという、やるのがいやだという気持ちにするようにしたいわけですが、それには現在の改正案の中で徴収率が高められればもう少し違うのではないか。それともう一つ、過去三年間にわたって経常利益がないからといって減額するというのはおかしいというふうに考えます。 それから次に、カルテルに対する排除措置の七条のところですが、これは私など素人が考えましても、括弧内がありますことが後退させるというふうに考えますので、括弧内は削除してもらった方がいいと思います。 それから、四十条の二ですが、四十条の二は、私は先ほど繰り返しましたように、四十条と四十三条を制限するものであっては絶対これは問題だと思いますので、制限しないということの歯どめがつけば、私は生かしていただいて結構なんですが、法律学的に言うとなかなかそうもいかないようですから、もうやむを得ない場合は削除するか、正田参考人のおっしゃいましたように事後届け出制とか、変わるものでしたらそういう形でやるとか、何か方法があればですが、後退させるということがどうもはっきりしそうな場合は、やむを得ない、大変残念ですけれども、四十条、四十三条を有効に使うということで削除してやむを得ないと思います。
○中村参考人 消団連として出しました声明文にもそのように書いてございますが、基本的にはいまの田中さんの発言とほとんど同じでございます。四つの件について最低これは修正なり、削除してほしいということでございます。 たとえば課徴金については利得の差ということででぎることが一番望ましいと思います。しかし、減額条項をはずすとか、その他の条項で課徴金がまず取られるということが最低線だというふうに考えております。 それから、公取の機能を無視したいろいろなむずかしい問題があるということは、逆に、公取がやれるように二倍、三倍の定員増その他の措置をしていただけるならばその方がいいと思いますけれども、それが不可能であるならばやはりこの点はお考えいただかないと困るのではないかと思います。 それから、七条の括弧書きは削除ということでございます。 それから、四十条の二の問題は、やはりいま田中さんが言われたのと同じように、四十条、四十三条の制限でないことがはっきりされるということが条件でございます。 それから、事前協議の問題でございますが、これは二回とも取っていただきたい、そのように考えております。
○佐野(進)委員 時間が参りましたので、最後に鈴木参考人にお伺いしたいわけでございますが、鈴木参考人、先ほどからそれぞれお話がありまして、同調的値上げ、営業の譲渡あるいは課徴金制度等々、御見解の御表明がありました。このいわゆる改正に対しては財界方面がきわめて消極的であり、むしろ修正されるならば、これは原案のままにしておいた方がいい、こういうような見解等がありますが、世論の大方の動向は修正してでもこれを通して、強化の方向ですべきだというようでございますが、この間に立って先ほどの見解との関連もございますので、現在の心境としてどのように判断しておられるか、考えておられるか、この際ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
○鈴木参考人 ただいまの御質問でございますが、独禁法の改正という問題は国政ベースで決められるべきものでございますので、私どもが絶対反対とか、そういう性質のものではないと思います。ただ、経済を担当している者といたしまして、改正によって改正法案が思わぬ方向に作用して、経済の企業マインドが萎縮して、それがまた消費者にもはね返る、国民経済にもマイナスになるという観点から心配な点を申し上げて御検討をお願いしたわけであります。 具体的に申しますと、午前中申し上げましたように、要約しますと三点、いろいろな点がございますけれども……(佐野(進)委員「結論だけで結構です」と呼ぶ)結論だけ申し上げます。 一つは、価格の同調的値上げの問題ですが、これは削除論が先生方からも出ておりますが、私どもとしても削除した方がいいのではないかと思います。その理由は、午前中申し上げましたように、これは原価公表が反対されたと同じような意味合いにおいてやはり価格介入的な性質がある。四十条との解釈、運用の問題もありますので、これは削除していただきたい。 それから、第二点の営業譲渡の問題については、協議が二回を一回にしろとか、主務大臣との関係がどうとかという論議がありましたが、私は午前中申し上げましたように、内閣の責任においてやってもらいたい。その意味は、内閣に政治的にチェックしろと言うのではなくて、事柄の性質が両面にまたがるから、この問題については公取の独立性の侵犯という問題ではなくて、そういうふうに考えていただきたいということであります。 それから、第三の課徴金の問題については、不況カルテルの結成というのは今後非常に厳格に運用されるように思っております。しかし、不況カルテルの場合にはカルテルが認められるわけなんで、それに準ずるような準不況カルテルのような場合には、実際にカルテルが行われても大きな赤字があるという場合には、きょう開陳されたような諸先生の重くしろというような点は、こういう場合には実情に即さないのではないか、それだけを申し上げておきます。
○佐野(進)委員 時間が来ましたので、質問を終わります。
○山村委員長 板川正吾君。
○板川委員 正田先生、實方先生、松下先生の御三人に、八条の三の事業者団体の問題でお伺いいたします。 それぞれ三人の先生の考え方に多少ニュアンスの差があるような感じがいたしますが、実は私どもこの法律を審議する段階で、実態論というのがどうしても頭にこびりついております。そうしますと、この原案のように事業者団体、八条の三で読みかえて、構成員全員にかけるというのは、たとえば十一万名、十二万名という多くの構成員を持っておる事業者団体が全国的組織で行った場合に、公取ではそれは課徴金をかけることは実態上不可能だろう。しかも、課徴金をかけなければ刑事責任も問えない、こういう法体系になっておるわけでありますから、どうもこの辺が、実態論と法理論というのを考えて、法理論上筋は通っても実態上効果がなくては困るなという感じもいたすものですから、この点について、もう一度御三人の先生から御意見を承りたいと思います。
○實方参考人 ただいまの事業者団体の構成員に対する課徴金の賦課のところでございますが、問題は、理論上団体の構成員にすべて不当な利得が存在するので、課徴金という制度をとる以上はすべて取らないとおかしいということではなくて、競争制限行為が事業者団体の行為を通じて行われる。そうして、その価格に対する競争制限行為の影響というのが現実にあらわれている。それを課徴金の納付を命ずるという形で、そういう不当利得を存在させないようにする必要があるということと、それからもう一つは、そういう事業者団体の違法行為に対する抑止効果でございますね、間接強制としての効果を持たせるためには、やはり八条違反について全く課徴金がないということでは困るという、そんなような、実態上といいますか、制度の趣旨を生かすための実質的な考慮というのが入りまして、その八条の三というのがあるのだと思います。 そうしますと、問題は必ず構成員全体から取らなければいけないというものではなくて、やはりそこでそういう制度の趣旨を勘案しまして、その抑止効果を生かすという目的が生かされる範囲で、そういう目的が達成される範囲で課徴金が取れる、なおかつ不当利得を取るという制度の趣旨とも矛盾しないような形で取れるということができれば、そういう、いま申しました実質的な考慮というのは満たされるということになると思います。しかし、先ほど言いましたように、構成員であるということだけで事業者団体の組織的行為についての責任を問われるということであっては、少し理論の飛躍があるのではないかと思います。 そこで、ちょっと話がごちゃごちゃいたしますが、事業者団体の行為が競争制限効果を持ってくるということの裏づけのところを考えまして、その裏づけに関連する範囲で課徴金を取ればいいということになるわけです。事業者団体が競争制限行為をやって、それが競争制限をもたらすというのは、結局その事業者とは全然離れた団体というのが全然別のところにあって、それで事業者に対して強制を加えて競争制限行為をさせるという、この手では必ずしもないわけで、やはりその事業者団体の中核となる事業者、形から言えば役員になっている場合もありましょうし、なっていない場合もありましょうが、そういうところが決定に参与し、なおかつ中心になってそれを実施している。したがって、非常に零細なメンバーもそれに追随するという形で競争制限効果が非常に広く及ぶということになるわけです。そうすれば、これは理論的には詰まりませんが、一つの案としては事業者団体の競争制限効果に実質を与えたといいますか、それに積極的に参与し、そして競争制限効果が発生するのに対して実施の面でも非常に中心的な役割りを果たしている、そういう一つの基準をとることは考えられないわけではないと思います。ただ、ここは多少理論的に飛躍がありますし、一つのアイデアとして申し上げますが、それはかなり政策的な選択の問題になるのではないかと思います。
○正田参考人 先ほど事業者団体の違反行為に対して、構成事業者から課徴金を取ることには合理性を欠く面があるということを申し上げたわけでありますが、その根拠は、事業者団体の違法行為に対して、構成事業者は直接法律上は違法行為者としてあらわれてきておりません。 〔委員長退席、塩川委員長代理着席〕 したがって、構成事業者に対して違法行為を根拠とした課徴金を課するためには、事業者団体の違法行為だけでは不十分であるというふうに考えざるを得ないということであります。そして、事業者団体の構成員が、いま實方さんおっしゃいましたように、たとえばあるグループだけで決定し、そしてそれを実行して実効性を持つという場合には、事業者団体の違反行為であると同時に、事業者間の共同行為であるという実体を持っているわけでありますから、不当な取引制限を行っている事業者に対して課徴金を課することができるということになろうかと思います。 なお、いまも主たる実行行為者あるいは役員という御意見が出ているわけでありますが、課徴金の制度を制裁規定という形で明確に性格づけるとすれば、これはまた全く別個の論理を構成することができると思います。たとえば過料でありますとか科料であるとか、そういうような形であれば、責任追及という形で問題を処理することが可能であろうと思いますが、少なくとも違法行為による不当利得の徴収という形で考えていく場合には、役員であるということを理由にして役員だけを引き出して、そして違法行為による、つまり競争制限による不当利得の徴収措置をとるということも、やはり合理性を欠くということにならざるを得ないと思います。事業者団体が何をしてもいいかということでは全くございませんので、事業者団体がカルテルとしての実体を持っていれば、あるいは先ほども申し上げましたが、事業者団体の役員に対する刑事制裁あるいは事業者団体の解散その他の事業者団体に対して特有、固有な措置というものも当然とり得るわけでありまして、そういう意味では、制裁という形で刑事罰がある上に制裁規定がもう一つ加わるという点に関する問題を含んでいるということで、一定の役員に対する責任追及的な性格を持つ課徴金というのは、法理論的には必ずしも合理性を持ちにくいのではないかというふうに考えております。
○松下参考人 先ほど申し上げましたことの補足という形でお答えいたしたいと思いますが、事業者団体の行為に対して事業者に課徴金を課する、こういう前提に立つ限りにおきましては、やはり構成員全員から課徴金を取るというのは飛躍ではなかろうか、これは先ほど申し上げたところでございます。そこで、それの中心になったものという形で役員、これは役員にこだわるわけではございませんが、中心になった者というのに課する方が、課徴金を取るという前提に立った限りにおいては合理的だと思います。しかしながら、先ほど正田参考人もおっしゃいましたように、事業者団体が違反行為を行った、事業者自体は違反を必ずしも行っていない、こういうことでございますね。したがいまして、純法理論という立場から見ますと、やはりそこに若干の問題があるということは認めざるを得ないと思うわけでございます。やはり事業者団体の行為に対して事業者に課徴金を課する前提に立った場合には先ほど申し上げたようなこと、しかしながら、より根本的な法理論という点からは私も若干疑問がある。この辺については、実は私自身まだ決心がつきかねておる、こういうのが現状でございます。
○板川委員 どうもありがとうございました。私自身も実は決心がつきかねておるのですが、三時までが私の与えられた時間ですから、先に進まざるを得ません。 昨日の私どもの独禁法の審議の際に、四十条の二の問題で実はこういうことが起こって審議が一時停滞したのでございますが、公取委員長は、現在まで四十条を適用して管理価格の調査であるとか、あるいは再販価格の実態調査とか、原油の小売価格とかたくさんの調査をいたしてまいりました。ところが、四十条の二ということで、二の解釈をとりますと、じゃいままでやっておった四十条というのが違法になるのじゃないだろうか、こういう実は質問をしましたら、法制局は見解を表明しないのです。いつも適当に言うのですが、そのときは意見を言わない。この言わない意図というのは、結局四十条の二を設けることによって、現在の四十条の調査の権限の範囲というのを狭めることが明らかではないかと実は思っておるのです。御意見もありましたが、もう一遍その点について簡単に明快にお答えを願いたいと思います。 これは正田先生、實方先生、松下先生、竹内先生、一言ずつお願いいたします。
○正田参考人 先ほど申し上げましたように、四十条の調査権が職務を遂行するため必要な調査権という形でありまして、違法行為と直接関係した調査権ではないということは、私どもが前提にしておるところであります。この調査権を発動いたしますと、四十条の二に新設されております報告聴取というのは当然その中に含まれることになるわけであります。四十条の二を新設いたしまして、そうして四十条の二との関係で四十条を説明しようとすれば、四十条の調査権の範囲というものをきわめて厳格に制限した形で解釈する以外に四十条の二の合理性が説明できないということになる、こういう危険があるということを申し上げたわけであります。 そういう意味で、いまの御質問と関係いたしますと、四十条の調査権というものと四十条の二に新設される報告聴取というものは、四十条のごく一部を取り立てて四十条の二という形で規定した、それによって特則に対する原則という形で、原則が制限的に解釈されざるを得ないという危険性があるということではなかろうかと思います。
○實方参考人 まず、四十条でできる範囲でございますが、午前中の意見陳述で申しましたように、四十六条の場合は、違法な行為との具体的な関連がある範囲で立入検査等を伴った強制調査権限があるということを定めておるわけですが、これとは別個に四十条というのが定められているということは、具体的な違法行為との牽連関係、関連関係がない場合であっても、すなわち違法行為を前提としない場合であっても、法の目的を達成する場合には、四十条に書いてある範囲の強制調査はできるということでございますね。四十条でも、調査の方法は、出頭とか報告聴取とか、資料提出等が書いてあるわけでございます。したがって、この独禁法の目的である競争制限的な要素の除去という点から考えますれば、現実の市場において競争制限的要素がどれだけ存在するかということは、法の全体の執行を行うという点から常に調査をして心得ておかなければいけない事実でありますし、それから、それと関連しまして、四十三条で、事業者の秘密にわたらない限りこれを随時公表して国民の自覚を待つという点も、広く言えば、法の執行に当たる公正取引委員会の職務権限に入る、こう考えられるわけであります。アメリカのFTC等でも個別産業の調査等も常にやっておりますし、それから一般的な産業集中度の調査等もやっておる、こういうことであります。したがって、この問題になっております同調的な値上げというのは、これは競争制限的な要素が非常に定型的に、特に調査しなければいけないことが明らかになっている場合である、こう考えられるわけであります。そして、改正案の具体的な内容を別にしまして、四十条の二というのを改めて設けるということの趣旨は、私の考えでは、そのように定型的な競争制限的な要素が市場にあらわれている場合には、これは強制調査ができるということをはっきりさせる、そういう意味を持てば現行法に対する進歩である、少なくとも強化のための改正ととらえることができる。しかし、そのためには、四十条の二の新設に対して、四十条の二は、現行法でできないことを改めて四十条の二を新設することによってできるようにするのだ、こういう説明が立法者の意図として明らかにされるのでは、これは全く困るわけでありまして、少なくとも四十条でこれまでできたことを、その要件をはっきりさせて、少なくともこれこれのようなことがあれば、個別的な必要性の判断を待たないでも強制調査ができるということを一般に明らかにするという効果を持てば、それは意味があると思います。そして、この同調的値上げというのが、これは理論的に言えば全く競争制限が伴わないで、現行法ではどうしようもないのだけれども調査だけはする、こういうぐあいに言われておりますが、そうではないわけでして、特に明確な競争制限行為というのは具体的に特定することがかなり困難であるけれども、その非常に競争制限的な要素というのがそこに集中的にいろいろあらわれている、その同調的値上げを支えるいろいろな要素がある。中には、その調査の結果、流通支配というのがその裏づけになっているとか、そういうことも考えられるわけであります。 したがって、話をもとに戻しますと、結局四十条の二は四十条に対する確認である。その要件を明確にするという効果を持てば意味がある。そのためには、四十条と四十条の二が、その内容において四十条の二の方で後退したものであっては困る。これまでできないととを改めてするのだから、限定した範囲で調査権を認めるということでは困るわけですね。したがって、少なくとも単に報告聴取権だけではなくて、出頭を命じるとか、資料の提出を命じる、そのような調査権限は、四十条と内容を合わせることが望ましい、こういうことであります。そうして、その競争制限的要素が明確であるという点を勘案いたしまして、この改正案でも罰則の方が四十条一般はたしか二十万でございますか、それで四十条の二については二百万ということになっておりますから、そういうことであればいいわけですが、結論を申しますと、これは調査権限が四十条と同じでなければ困る。そうでないと確認にはならない。狭まるのでは、むしろ削除した方がいい、こういう趣旨でございます。
○松下参考人 私は、現在の四十条の調査権というのは、かなり広範な権限を認めていると思うわけであります。しかしながら、結論的には四十条の二には反対、こういうことでございます。 その理由を申しますと、この四十条の二というのは、高度寡占で一斉に値上げがあった、この場合に報告を求める、こういうことでございますね。この場合に、なぜ一斉値上げが行われるかと申しますと、恐らくは競争の欠如というところから出てくるのではなかろうか。すなわち、市場が寡占化しているというところから出てくるのではなかろうかと思うのであります。この場合に、独禁法のオーソドックスな考え方といたしましては、やはり構造規制をするなり合併の規制をするなり、そういう形で対処するのが本筋であろうと思うのであります。とは申しましても、実際上構造規制というのはきわめてむずかしい場合もあると思うのであります。そこで、現実論といたしましては、このような場合に企業に対して何らかのコントロールを加えることが必要になってくると思うのであります。 そういうことでございまして、私の意見は、このような規定を設けるに際しては、独禁法と切り離して、国民的な価格監視機構なり、あるいは寡占の規制の法律なり、こういうものを制定して、その中でもっと整備した形のものを置くべきである、こう思うわけであります。こういう理由で、この四十条の二はこの法案からは削除するのが望ましい、こう思います。
○竹内参考人 結論的に申しますと、私は、四十条の二のような規定が設けられたからといって、これが新設された後で、私が解釈する場合には、四十条の一般的職務が制限されたものではないという解釈をするつもりでおりますけれども、私がそんなことを申したところで何の力もないわけでございまして、したがって裁判所その他がこれによって制限されたというふうに解釈するおそれがあるということであれば、それはそういうおそれのないような書き方にする方が適当であろう。したがって、これだけの条文ができておるわけですから、全面的に削ってしまえというのも余り愛想のない話だということであれば、四十条の後に、この報告にはこれこれこれこれの場合にこれこれの報告を求めることも含まれるというふうな形にしておけば、いま申しましたようなおそれをなくすることはできるであろうというふうに思います。
○板川委員 これも一つ問題点ですが、この四十条の政府の方の解釈は、特に法制局はそうですが、「その職務を行うために必要がある」という、その職務というのを非常に狭めて解釈をして、違反のおそれがあることを前提として——それなら四十六条を使ってもいいと言うのですが、そういう違反のおそれがあるという場合に四十条は働くのだ、そういう意味のことを法制局は言うわけであります。私は、四十条の二は、いわば四十条の中に入っていて、ただ公取の内部で、四十条の二の場合には内部の手続が簡単に済んで、そうして調査報告を求めることができる、四十条の調査の場合には、これは委員会の議決を経て、決定を経て調査をする、こういうことになるのじゃないかなと思って素人流に実は考えておるのですが、罰則が違うものですから、そういう扱い方が実はどうなるかという点で疑点を持っているわけです。 時間がありませんから先へ進みますが、先ほど参考人の、田中さんや中村さんを含めまして、七条の括弧書きあるいは四十条の二は危険だから削除した方がいいだろうという空気があるわけですが、これは簡単に削除する、どうもこっちも捨て切れない、置いた方が芽として残っているような感じもしますし、しかし本当に悪いなら切ってしまうほかはない、こういう気持ちがするわけですが、正田先生、實方先生、どっちでしょう。
○實方参考人 いま御指摘になりましたように、高度寡占産業における同調的値上げというのは、非常に定型的に競争制限的な要素というのが明確に出ている、そういう現象である。したがって、それに対してやはり何らかの措置を設けることは、そもそもの原価公表等が提案された経緯等も考えまして、何らかの積極的な措置をとれるようにした方が、それを明らかにした方が望ましいとは思います。それが制度の趣旨を生かす道ではあると思います。しかし、そういう点で、単に結論だけを聞かれますと、最初の御質問にありましたように、結論だけということになりますと削除した方が危険がないということになるのですけれども、むしろ制度の趣旨を生かすように持っていきたいというのが強い希望であります。しかし、それがどうしても不可能ということであれば、むしろ削った方がすっきりする、こういうことでございます。したがって、結局四十条の二は四十条の確認である。そして、競争制限要素が非常にはっきりしているので罰則も強化したというように解釈する。それが少なくとも立法者の趣旨として審議の過程で明確にされ、今後の裁判等で問題になった場合に、それが立法者の趣旨として解釈の基準となるということがはっきりされれば、それは制度の趣旨を生かすということから言えば残した方がいいのですけれども、そこら辺が非常にあいまいであるということであれば削った方がいい、これが結論でございます。
○正田参考人 先ほど私が申し上げましたこの四十条の二につきましては、一定の高度寡占状態あるいは高度寡占業種について価格行動が行われる際の事後届け出制度という形に、この報告聴取の制度を改正することが最も望ましいことだと考えております。これは先ほど實方さんおっしゃいましたように、高度寡占業種というのは、いわばその業種の性格からいって、競争的要素が非常に薄れてきているという側面を持っているものでありますから、そもそもの出発点になりました原価の公表という形まではとれないにしても、価格の変動をもたらす場合に、事後に届け出るという形が望ましいと考えております。四十条の調査権との重複ということも、届け出義務という形をとることによって全く避けることができると思われます。そういう形で積極的に一歩進める、進める実態は同じだと思います。届け出義務と報告聴取というのは実質はそう変わるものではないと思いますが、そういう形で修正することが不可能である、このままでどう思うかということでございますと、先ほど来御議論の出ておりますような解釈が行われる可能性がきわめて大きいという趣旨で、四十条の二は削除すべきではなかろうかと思います。
○板川委員 竹内先生に伺いますが、竹内先生、きょうは消費者保護の立場から非常に強調されたのですが、実は二十六条を削除して、八十五条の二も削除して、そして無過失賠償制度を地裁に被害者が請求できるようにしよう。といっても、しかしなかなか七百九条でそれが解決を見ることは実際上不可能ですが、審決が確定したならば、その審決を証拠として地裁で請求できるようにしよう。正田先生はどうもこの点余り賛成じゃないようですが、そういう制度は実は社会党案の中に取り入れられておるのでありますが、その際クラスアクションの制度を取り入れたいといっても、実は独禁法の中にクラスアクションというのは無理だという法制上のたてまえがありまして、将来の問題として考えたいのですが、アメリカにおけるクラスアクション制度というものを、時間がございませんが、簡単に御説明を願いたいと思います。
○竹内参考人 現在のわが国の民事訴訟法では、原告が一人一人出て行って訴えろというたてまえをとっております。ただし、選定当事者という制度がございまして、原告がその中のだれかを代表者に選ぶ、書面で選べばその者が代表者になって訴えることができるということになっております。ところが、やみカルテルのような場合には、たとえば新聞代のやみ値上げというような場合を例にとりますと、だれが犠牲者であるかというのがわかっていない。そのときに、まず被害者が全部名のりを上げて、それから仲間内で相談して代表者を選べといったって無理な話じゃないか。そこで、まずだれかがチャンピオンになって、私が代表者になりましょうといって訴えを起こす。そして、私は代表されるのはいやだという人間は申し出てのけてもらうけれども、そうでない者は当然原告としての利益を受けるというのがアメリカにおけるクラスアクションの制度の基本的な考え方でございます。したがって、少額の被害を非常に多数の者が同じ原因で受けたような場合に、だれかがチャンピオンになって被害額を取ってそれをみんなに分けるという考え方でございます。これが骨子でございます。
○板川委員 あと時間が三分しかありませんが、鈴木参考人に伺います。 鈴木さんは経団連の代表ということで御出席願ったのだろうと思うのですが、意外と反対ではないというので、実は意外に考えておるのです。いま少し勇ましく反対してくれるのかと思ったら、意外と反対しないところを見ると、これは問題点はカプセルに詰めて地下三千尺に埋めてあるから大丈夫だろう、こう考えているのではないかと思うのですが、先ほどの意見の中で筋の通った改正案ならいい、こうおっしゃっておりますが、今度の改正案は財界として大体においてがまんできる、容認できる程度において筋が通ったものとお考えでしょうか。
○鈴木参考人 財界というところはいろいろな人がおられますので、各人各様の考え方をしておりますので、財界がどう考えているかという統一的な意見はむずかしいのですけれども、経団連という団体で、私が産業政策委員会を預かっている限りの意見としては、午前中申し上げたようなことが改正案に対する根本問題としてあって、それでミニマムといいますか、要するに改正案の中で三点についてはぜひひとつ再考をお願いしたい、こういうことでございます。
○板川委員 あと一問です。財界の中ではカルテルについて、カルテルは悪いことだという観念が実は薄いように感ずるわけです。先ほどの言葉の節にも、だから不況カルテルもみんな緩和してほしいという意味のことがありましたが、カルテルは、とにかく独禁法というたてまえから言えば経済犯罪行為であるという考え方をもっと強く持っていただきたいと思います。これは要望だけにいたします。時間がありません。 最後ですが、これは鈴木さんと自民党の方にも聞いてもらいたいわけですが、どうも社会党が独禁法を強化するのはおかしいじゃないか、社会党は計画経済をやって統制経済である、その社会党が独禁法改正を叫ぶのはおかしい、こう言われます。自由経済を叫ぶ自民党の方が実は反対が強いのだから、おかしいと言えば向こうもおかしいのですが、しかし社会党はこういう思想ですから、誤解のないようにお願い申し上げたいのです。 社会党の国民連合政府綱領というのがございまして、その中では「独占支配の制限 私的独占禁止法を強化して、とくに大企業の合併、カルテル行為、株式保有による系列企業支配を規制し、親企業と下請企業との関係の民主化をすすめる。独占価格、管理価格を規制するため、主要商品についての原価調査、公表を義務づけ、流通関係をふくめて不公正な取引を規制する。」ということを実は数年前にわれわれの方針として決定しておりますし、また重要な産業の民主的管理ということを考えておりますけれども、それはあらゆる産業を計画経済のもとにおいて統制するという考えじゃありません。それば、われわれの綱領的規定の中にある「国民経済の安定、国民生活の向上のため、国の経済全体に支配的な影響力を持つ産業に属する企業について、国の民主的規制を行い、とくに必要なものについては、国の管理の下におき、あるいは国の所有に移すなどの措置をとるものとする。この政策はあくまで物価の抑制、過剰投資・二重投資の制限、資源エネルギーの確保と浪費の防止、農産物自給度の改善、公害・事故の防止など経済の安定と国民の生活福祉の向上のため、当面必要な限度において実行せられる。」こういう考え方でありまして、そして次に「産業の民主的規制と管理の方式は、業種によりまたは規制の目的により、多様な方法で行われるが、」——必ずしも国家管理だなんという、そういう式で行われるんじゃないんだ。業種によって多様な方法によって行われるが、「その原則は前述の経済民主化の基本原則を定める「経済民主化基本法」、私的独占禁止法、エネルギー基本法その他単独の産業事業法によって規定される。」こういう考え方でおりますということだけ御理解をいただきたいと思います。 以上でございます。
○塩川委員長代理 多賀谷真稔君。
○多賀谷委員 まず、鈴木参考人にお尋ねしたいのですけれども、先ほどのお話を承りましても、一体日本の財界は自由経済を信奉しておるのかどうか、ちょっと私は疑問になるわけです。すなわち、競争を促進する独禁法に対してその強化をするのに反対というのがどうもわからない、私はこう思うのですがね。一体いまの日本の財界は、公正なる競争というものを信奉しておるんですか。
○鈴木参考人 もちろん公正な競争というものを重要視していますし、それが自由経済の基本だというふうに思っております。
○多賀谷委員 私は、私企業体制を擁護するということは、確かにそれは信奉されておるけれども、一体いままでの高度成長の過程を見ますると、果たして自由競争であったのかどうか。すぐ役所に駆け込むわけですよ。そうして役所が勧告操短をする。不況カルテルがあるけれども、その不況カルテルには乗らない、行政指導で行う、設備の調整をやる。まさに役所はゴーストップをかける、そのことを財界は依頼をしている。私は率直に言いますと、いま言われておるように、なるほど私企業体制の維持強化ということは考えられておりますけれども、本当の競争原理に立ってやろうとされておるのかどうか、これは非常に疑問です。たとえば、さっきお話しになったときに、創意工夫でやってだんだん企業が強大化する、そういう場合には当然、たとえ独占化してもそれを営業の譲渡とかあるいは分割をすることは創意工夫すなわち活力を失うことである、こういうふうにお話しになっている。そうすると、その創意工夫の努力は私どもは買いますけれども、できた状態というのは市場の支配力を持つわけです。そういたしますと、新規加入も困難である。そこには独占価格が形成される。そうすると、あなたの議論から言うと、よい経済支配力と悪い経済支配力ができてくるわけです。一体それをお認めになるのですか、どうですか。
○鈴木参考人 最初の問題は、過去における日本経済の動きの中で、企業がどういう挙動をしたかという問題と関連があると思うのですけれども、皆様御存じのように、高度成長でございますね。したがって、企業は競争といっても、諸外国に見られないような激しい過当競争をしているというのが現状だと思うのです。したがって、競争を軽視するどころか、要するに外国では考えられないような価格競争、設備競争、そういう状態、それは一面弊害の面もありますけれども、日本の経済がここまで発達した大きな原因でもあると思います。そういう中で政府に対して行政指導を要望するという事態もあったと思うのですけれども、これはどちらかと言えば公正な自由競争をどうのこうのというのじゃなくて、行き過ぎた過当競争の弊害除去という意味で行政指導というものがそれなりに意義があったと思います。 それから第二の、先生の御指摘の高度寡占になる、あるいは独占になった場合に、いいものと悪いものがあった、それについてどう考えるかというふうな御質問ですけれども、私は現在の日本の独占あるいは高度寡占になっている企業というものは、その業界において非常に努力をして、合理化努力を積み重ねて大きくなったんだと思います。したがって、今度はプロセスにおいてそういう形でよくなったにしろ、大きくなったというそのこと自身が問題があるというような発想法に立った構造規制というのは、どうしてもそういう優秀企業群から言うと納得がいかないという欲求不満の感じがございます。したがって、構造規制じゃなく、そういう高度寡占企業あるいは独占企業が行動の点で弊害があったときに処置してもらいたい。そういうことで行為規制的な角度から独占あるいは高度寡占企業に対して規制をしてもらいたいということで、現在の企業分割に連なる営業譲渡について午前中申し上げたようなことを意見として申し上げさしていただいたわけであります。
○多賀谷委員 日本の場合は産業構造政策が先行しまして、そして効率は追求したわけですけれども、残念ながら公正という面は非常に欠けておる。ですから、産業秩序政策というものはほとんどなかったに等しいということが言えるのです。実は参考人と議論してもなんですけれども、そこで今度の独占的状態の規制、これは単に大きくなったというだけでなくて、価格が、経済の状態あるいは需給関係あるいは供給の費用の変動にもかかわらず、それが独占的状態を続けておったというのが一項大きく入っておるわけですよ。今度の市場構造の規制というのはただ大きくなったからいかぬというのじゃなくて、そこには何らかの行為というものが入っておるわけです。こういう行為があった場合、価格が動かなかった場合、このときに初めて、要するに分割あるいは営業の一部譲渡というようなものが入るんだという点、単なる構造規制だけじゃないと私は思うんですがね、この政府の出された案は。これはどういうように御理解ですか。
○鈴木参考人 確かにいま御指摘のように、今度の改正案の中身を見ますと、構造規制ということを学者の方々は非常におっしゃいますけれども、内容的にはいま御指摘のような行為規制的な側面といいますか、そういう条件が書いてあると思います。私は、これは非常に進歩というか、実情にある程度即した法の内容になっているのではないかと思うのです。 それに関連して、非常にくどいのですけれどももう一度申し上げますと、この領域の問題というのは、独禁法からアプローチすべき領域であるし、また、いま御指摘のありましたような産業市場であるとか、産業構造であるとか、企業構造という経済政策的な側面というものを同時に持っているのではないか。そこで、やはり両方の政策にまたがっているという意味で共管的な性格の項目なんではないかと思うのです。したがって、盛んに公正取引委員会の独立性の問題が云々されますけれども、この条文の適用については、内閣が責任を持って処理するというのが筋が通るのではないかという意見を申し上げたわけです。
○多賀谷委員 そうすると、独占的状態の場合の規制については、条件とかというものは賛成だけれども、最終的な判断と処置は内閣が行うべきである、こういう御意見ですね。
○鈴木参考人 いまの御質問ですけれども、先生の先ほどの分析によりますと、この規定は行為規制的な内容を持った構造規制だという解釈であれば、それは非常に妥当な解釈だと思うのですが、一般には構造規制なんだという割り切り方をしているので、そうだとすると、私、冒頭に申しましたように、優秀企業群の経営者たちというのは非常にやる気をなくすというマイナスの側面がありますので、構造だけではないのだ、大きいことが悪いのではなくて、行為規制的な、弊害を伴う幾つかの条件というものが充足されたときに営業譲渡というのは行われるのだ、ぜひそういう思想といいますか、発想にしていただきたい、かように考えます。
○多賀谷委員 学者の先生方にお尋ねしたいのですが、日本の場合は独禁法改正の議論が起こりますと、すぐ、物価に介入してはならぬという、一口にそういう議論が別の方面から起こるわけです。しかし、外国の例を見ると、御存じのようにイギリスの公取にいたしましても、あるいはドイツの実際行っておるやり方にいたしましても、北欧はもちろんですけれども、結局、現実問題として価格引き下げをやらしているわけですね。ですから、価格引き下げ命令を出させておる、あるいは幾らにせよということは直接公正取引委員会は言わないけれども、価格を下げなさいと言う。産業庁は価格を幾ら下げろ、こう言っているのです。しかし、日本の現状は、構造規制の方へ行くと、いや構造規制はいかぬと言う。価格の方へ行くと、価格の方もいかぬと言う。結局、今度出された法案は、率直に言いますと、どちらもこちらも縛りつけて動かない法案になってしまった。そこで、価格規制というものについてもう少し入ってもいいのではないか、なぜ日本の場合は公取が価格規制に入ってはならないのか。ですから、構造規制というものがなかなか困難であるならば、弊害規制というものを独禁法の中に入れてもおかしいのかどうかです。私は余り名前にこだわる必要はないと思うのですけれども、そういう点をどういうようにお考えですか。 これは松下先生、正田先生、實方先生にお伺いいたしたい。
○松下参考人 いま御質問のありました点は、私どものように経済法という分野を専攻している者にとっては最も根本的な問題だと思います。この問題につきまして私もいろいろ考えておるわけでございますが、それをかいつまんで申し上げます。 物価が上がるという現象は確かにあるわけでございまして、これに対処しなければならないという現実問題はあると思います。そこで、独禁法的な価格の規制方式と、それから弊害規制主義的な価格の規制方式とあるのではなかろうかと思います。つまり独禁法の本来の考え方でございますと、市場の競争を維持して競争をせしめる、その競争によって不当な値上げが抑えられる、こういう結果になると思うわけでございます。これはこれで大いに推進すべきことだろうと思います。私の考えは、それと同時に弊害規制主義を導入すべきであると思います。名前のことでございますが、私、先ほど寡占規制法ということを申し上げましたが、寡占規制法という名前でも独禁法という名前でも、これは本質的な問題ではないと思います。いずれにしましても二つの原則が同時に働いてくる、こういう状況が将来考え得ると思います。 ただ、その場合に、おのおのの二つの原則の間の関係というのを明らかにしておく必要があるだろうと思います。私の考えでは、まずとりあえず競争政策的な規制を中心に考えてみたらどうか、これがどこまでできるかということをやってみたらどうかと思います。それがいろいろな事情で機能し得ないという限界に突き当たった場合に、その弊害規制立法が働き出す、この関係を明確化しておくということが必要だと思います。 そういう形で、やはり結論的には、独禁法の中に二つ置く、その場合もその両者の関係を明らかにする、あるいは独禁法ともう一つ別な法律を置き、この両者の関係を明らかにする、どちらでも本質的には結構だと思いますが、そういうことが必要だと思います。
○正田参考人 価格それ自体のコントロールが独禁法の目的ではないということは、これはそのとおりであります。 しかしながら、価格に介入することが一切できないかということについて、価格への介入に恐らく二つの型があると思います。 いま松下さんがおっしゃったことと若干重複するかもしれませんが、一つの方法は、価格に介入するという——形式的に価格に介入するということになろうかと思いますが、カルテルによる価格引き上げの場合に、価格の原状回復を命ずるというのは、これは価格介入に見えて価格介入ではないというふうに考えていい問題だろうと思います。競争制限行為によって価格が引き上げられる、その引き上げられた価格を、競争制限行為を除去した状態に戻すということでありますから、価格自体が適正か適正でないかという判断はそこでは加わっておりません。むしろ競争回復のための価格に対するコントロールという性格を持つと言ってよろしいと思います。 もう一つの価格に介入する型が原価公表という形で考えられていた面でありまして、これは場合によっては、今度は価格引き下げ命令という形で問題になり得るものであろうと思います。 寡占状態その他市場支配力が形成されている場合に、競争の回復が全く不可能であるということになってまいりますと、これに対して競争秩序維持あるいは競争を通しての支配力のチェック、こういう考え方は妥当してまいりません。しかしながら、競争が再び回復する可能性があるという範囲においては、競争が行われた場合に想定される価格という形で価格自体を一時的にチェックすることも行われ得ることになるはずであろうと思います。前者がカルテルの価格原状回復命令の問題、後者は市場支配的な企業に対する価格の引き下げ命令、こういう二つの型を独禁法の枠の中で当然考えられるというふうに存じております。そういう意味では、価格と独禁法あるいは独禁法によるチェックが直接絡むということは私は当然あり得るというふうに考えております。
○實方参考人 独禁法による規制とそれから個別的な価格介入がなじむかどうかということでございますが、私は最初に大ざっぱなことを申しますと、個別的な価格に対して適正水準というのを判断して、それでその一定水準を守らせる、それを守らせること自体を目的とするような価格介入というのはできるだけ避ける方が望ましい、これが独禁法の基本理念であると思います。 ただ、除去すべき競争制限的要素が存在するかどうかの認定の材料として価格を参考にするということと、それから人為的に競争制限がもたらされて、なれ合いによって価格の硬直状態が存在している場合に、競争を復活させる手段として、一定範囲で価格にある程度かかわりのある規制手段を用意するということは、いま申しました価格統制的な価格介入とは違うわけでありまして、すなわち一般的に価格水準の適正であるかどうかということ自体を政府が、国家が判断して介入するということと、それから競争制限を除去する、そういう目的の範囲内で価格に多少かかわりを持っているということは、やはり区別しなければいけないことだと思います。 そして、非常に大ざっぱなことを申しますと、独禁政策の目的というのは、そのような個別的な裁量的な国家による経済過程に対する介入というのが要らないような経済体制を用意しておくことというところにあるわけでありまして、すなわち個別的な介入をしないでも、自動的に適正価格水準が保たれるようなシステムを経済社会の中につくっておく、それが必要であるわけです。これは非常に夢物語のようにもとられるわけでありますが、しかし、だからといってその努力を怠りますと、結局それならば、現実に国民経済に非常に悪影響を及ぼす高価格水準が長期間あるということになれば、国有化なり非常に裁量の余地のある直接統制的なものが必要になるわけであります。したがって、物価問題にとらわれた非常に狭い視野で改正問題が考えられたのではないか、こういう批判もあったわけでございますが、これはちょっと見方が違うわけでありまして、物価を下げさせるために、それが目的で独禁法改正を主張しているわけではない。物価が非常に高騰したということは、一つは日本経済の中に競争制限的な要素が非常に蔓延している、そのことのはっきりした症状、症候としまして、物価問題というのが出てきたわけであります。したがって、単に物価対策としてやるのではなくて、それの根幹にある競争制限的要素を除去して、そして直接統制の要らないようなシステムをつくるために独禁法を強化する、こういうことに基本的な発想が考えられると思います。したがって、構造規制の方でありますが、やはりこれはだれにでも納得してもらえる構造規制を行うということで、長期間の著しい超過利潤の存在とか、それから同調的値上げ行動があるということを基準にしているわけで、いま申しましたところからもおわかりのように、この構造規制というのはできるだけ有効に働くようにしておくことが、直接統制を避けるための必要な手段である。ただ、だからといってそれが万能であるわけではないので、やはり必要な場合は、競争制限的要素が背景になって非常に高価格水準があるという場合には、場合によっては限定した範囲で価格に直接介入することも、やむを得ない次善の策として考えてもいいのではないかと思います。 それから、競争を回復するための手段としてということでありますが、これは七条でカルテルに対して命じることのできる排除措置の内容として、価格に関係のある排除措置を命ずることができるのではないかという点と関連するわけでありますが、結局カルテルというのは、細かいところは除きますが、当事者の意思の合致によるなれ合い状態がそこでつくり出されておる、こういうことであります。したがって、適正価格水準を公取が決めて、長期間それを守れ、それ自体を目的として価格引き下げという形で命令するということは、かなり理念と対立するということが考えられるかもしれませんが、そういうなれ合い状態を壊すために、非常に限定された範囲で、少なくとも現在の価格水準は競争的水準ではないので、これは競争的水準にまで下げろという形の具体的な取引条件にかかわりのある影響排除策を公取が命じるということは、独禁法の理念とは一向に矛盾するものではない、こう思うわけであります。
○多賀谷委員 イギリスのように、弊害規制主義からさらに合併規制へというように入った国もありますし、私は、先生方がおっしゃるように、この二つの構造規制と弊害規制と、こう法律に入れてもおかしくないのじゃないかという問題、こういうものを立法者として考えてみたいのですが、私どもも遠慮いたしまして、原状回復命令ができるというのは實方先生あるいは正田先生が解釈論として主張されておるわけですが、私どもそれについていろいろ解釈がございましたから、今度法律改正として、一応原状に回復しなさい、しかし上げたければ、六ヵ月以内に上げる場合には届け出て公表しなさい。ですから、幾らにしなさいとか、そういう事情のしんしゃくをして公取が決めるということは一切言ってないのです。一応もとに返しなさい、そうして上げる必要があるほど経済事情が変動しておれば、その旨を届け出て公表しなさい、こういうことを主張しておる。大体先生方と余り違わないと思います。 そこで、竹内先生せっかく見えておられますので、先生の論文等読みまして、例の株式の相互持ち合い、先生の論文では、イタリアの民法だとかあるいはフランスの商事法とかいろいろの参考文献も挙げていただいておるのですが、私どもが今度の独禁法の中に、ちょっと唐突でしたけれども、現実に企業集団に対してメスを入れるという、企業集団そのものの靱帯がどこにあるかといったら株式の持ち合いだ。そこで、この相互持ち合いの規制を一般的な総量以外に条文に入れたのですが、先生はどういうようにお考えであるのかお聞かせ願いたい。 時間もありませんから、全部続いて質問いたしますが、私ども法案に対してこれを通過さすかどうかという判断は、若干前進をしておったらいつでも通過さすとは必ずしも言えないのです。というのは、そのときの政治情勢、経済情勢が、それを否決して流しても、さらにそういう空気が助長されてくれば次にはよりよきものが出る、そういう期待のある場合には、われわれは否決をして流す場合もある。ところが、この法律をいまつぶしてしまうと芽が出てこない、こういうような場合には、これは何とかして通過をさせなければならぬという場合もある。 そこで、私は消費者の方々にお聞きするのですが、これがもし継続審議か何かにしてうまく修正できなかったとすれば、あなた方はまだまだ燃え上がって次のよりよき改善のために努力する空気が一体できるかどうか、それから公取の諸君がどれだけ勇気づけられてやるかどうかという、これが法律論以外に一番大きな要因だと私は思うのです。 そこで、これは内幕の話ですが、これは立法論者としてはそう考えざるを得ないわけです。いままで経済法学者の方々がいち早く声明を出していただいて、問題点を指摘していただきましたので、うっかり読むと大変なことであったのがわかりました。それから、公取委員長独自の解釈であるならば前進なんです。ところが、公取委員長の解釈が果たして通用するかどうか。これは塩崎さんも、あなたの理論はこれで読めますかなんて聞いておりましたけれども、これもやっぱりポイント、われわれも長い間立法に携わってきましたが、こんなに判断に苦しむ立法は初めてですよ。 ですから、時間もありませんが、いろいろ教えていただいたもんですから、後から修正についていろいろな点で参考になったと思いますが、消費者の方二人、あなた方は今後の独禁法問題について意欲を持って今後とも取っ組んでいただけるかどうか、ひとつそれをお聞かせ願いたい。
○塩川委員長代理 参考人に申し上げます。時間が非常に逼迫いたしておりますので、簡明にそれぞれお答え願いたいと思います。
○竹内参考人 私が株式の相互持ち合いに関する論文を書いたとおっしゃったんですけれども、ちょっと記憶がございません。あるいはほかの方のものではないかと思いますが、どこかでそんなことに私触れたのかもしれません。いずれにいたしましても、その株式の相互保有、これがわが国の経済社会全体の中で非常に重要な問題であるという御指摘は私はそのとおりであろうと思います。恐らくこのことについては御異論がある方はまずないのじゃないか。ただ、それをどういう形で抑えたらうまく抑え切れるのかということが問題でございまして、AとBと二人が持ち合っているという単純な形だけならこれはまあまあ抑えられるのですけれども、A、B、C、Dというふうに順繰りに回って持っているという、循環的保有というのがございます。こういうことになりますと、どこの国でも頭を抱えておるという状態でございます。社会党案、失礼ですけれども、詳しくはまだ私検討させていただいておりませんが、そういう循環的持ち合いの場合も全部含めてうまくぴしゃっと抑えられようなものになっておるんなら、それは大変結構なことではないか。ただ、しかしながらそこまでいくのはなかなかむずかしいことであり、それは関係のない業種の事業が間に入ったりいろんなものが入ってまいります。そこで、意思をお互いに通じながら実は形式的には全く離れたところへ株がずっと回るというふうなこともございますので、私どもとしては問題の重要性を十分認識しながら、しかしながら非常にむずかしい、答案がなかなか書き切れないという問題だと考えております。
○田中参考人 私どもは、一生懸命ここまでやりましたことですから、たとえ次でも、その次でも前向きに私どもの主張する独禁法の改正になるまでは一生懸命やりますし、世論も盛り上げてまいります。ただし、これはやはり国会がお決めになることでございますから、先ほど初めのときに申し上げましたように、自民党の内部情勢ということを考えますと、いまこれを見送ってしまった後のことが非常に心配だというのが偽らない気持ちでございます。 以上です。
○中村参考人 大体同じでございますが、私どもは先ほど申し上げましたように、二十年来この問題に取り組んでおりますので、これからもしつこく、しつこく、私どもの要求が一部分しか入っていない、もちろん入っていない部分の方がずっと多いんだということで、これからしつこく、しつこくいたします。ですから、全国的にこの盛り上がった機運が流れるということは決してないと思います。しかし、やはりこれは先生方の情勢判断で国民の意図するところをどれだけくみ上げてやってくださるか、それは国会の先生方がお決めになることだし、それによって私どもも今後考えさせていただく、そういうことでございます。
○多賀谷委員 失礼いたしました。竹内参考人の著書の「会社法」の下巻の方の最後のところで、各国の相互持ち合いの規制の条文が全部ありましたのでわれわれ参考にいたしました。問題提起は大隅教授がいち早く提起をされておったわけであります。私どももやはりトータルでつかまえたわけです。ですから、自分の株のうちで、自分と同数の株を相手方が持っている総トータルで規制をする、非常に立法的にむずかしかったわけでありますけれども、ことに企業集団のこれがかなめだということでやってみたわけですが、これはまた後から御議論をいただきたい、かように思います。 どうもありがとうございました。
○塩川委員長代理 荒木宏君。
○荒木委員 参考人の皆さんには御苦労さまでございます。 先ほども論議がございまして、この法案の取り扱いについてのいろいろ御希望といいますか、御意見を伺ったのでありますが、最低限これを削除し、これを追加して修正成立というふうな御意見が多かったように思います。内容については各参考人それぞれございましたけれども、そういったことを踏まえまして、私はまず初めにお尋ねをいたしたいのは、特に研究者の立場から御出席をいただきました参考人に順次伺いたいのですが、先ほど来の最低限これだけはという御意見のとおりで、修正成立をいたしました場合に、現行法と比べて主要なメリットはどういう点にあるか。現行法は御案内のような内容があり、それを踏まえて公正取引委員会の運用があり、また運用の経過を踏まえて今後目指されておる方向がございます。それらと比べて、最低限とおっしゃったその修正成立の主要なメリットはどういう点にあるか、この辺について特に学者の参考人の皆さんから順次御意見を伺いたいと思います。
○實方参考人 主要なメリットでありますが、特に前進の意味での大きなメリットというのは、正直申しまして余りないと思いますけれども、課徴金制度はこれまでなかった制度をつくるわけでありまして、もちろん算定基準等につきましては、もっともっと超過利潤をぴたりつかまえられるような基準にした方がよろしいわけでございますが、最低限度赤字企業のカルテルを公認するというような効果を持たない課徴金制度が設けられるということであれば、その限りにおいては前進であると思います。 それから、主要なメリットとして一つ考えられますことは、構造規制、非常に抽象的に申しますと、特に特定の違法行為、現行法の私的独占で要件になっておりますような排除支配行為がなくても構造的な規制措置が命じられるということは、これはそれ自体はなかなか命じることが困難でありましても、そういうことが理論上可能になるということであれば、明白なこれまでの私的独占が立証できる場合には、当然のことながらそれを予防するとか排除支配行為によって形成された結合体を解体するとか、そのような意味でこれまでの七条の解釈がある程度強まる可能性が出てくる。しかし、その可能性を現実のものにするためには、公正取引委員会の職権行使の独立性というものを損なうおそれのあるような制度は、これが入るとその可能性も現実化しない。したがって、構造的規制措置が非常に重要であるので縛りをかける、特に協議、準司法手続となじまないような協議までかけるということであれば、翻って私的独占についても構造的規制などという大それたことは当然できないのだという解釈が出てくるおそれがありますから、その点の絡みで協議というのをはずせば、現行法の排除措置も多少は広がる可能性がある、そこが一応考えられるメリットでございます。したがって、少なくとも後退ではなければ、課徴金の範囲においては前進、そして私的独占の排除措置について解釈の可能性を開くという意味で、おぼろげながら前進と、こういうことでございます。
○正田参考人 私は、いまの御質問の点、二点はメリットがあると考えております。 一つは、罰則で責任罰の制度が加えられたという点は、これは一つの前進で、独禁法の強化に連なる問題だというふうに思っております。 もう一つは、先ほど申し上げたような修正が前提になりました上で、課徴金の制度は、さまざまの問題をまだ残してはおりますけれども、少なくともそういった形での不当利得の徴収という論理が独禁法の中に組み込まれるという意味で、これは前進だというふうに考えております。 前進か前進でないかという点に関して非常に微妙な感じがいたしますのは、協議が入っておりましたらこれは後退というふうに判断せざるを得ないのでありますが、協議が落ちて独占状態の規制というのが果たしてこれで前進なのか前進でないのかという点は、私的独占の排除措置との不整合性というような問題がまだ残されておりますので、これは具体的な運用ないしは解釈適用というものとの関係で判断せざるを得ないと思いますけれども、その判断、解釈適用、いわゆる運用が当を得れば、この独占状態に対する規制もプラスという評価をすることができるように思います。 以上でございます。
○竹内参考人 相当幾つかの点でメリットが出てくるのではないかというふうに思います。 一つは、公取試案とは大分形が変わりましたけれども、しかしながら構造規制が入っておる。それから、私が申しましたような形で損害賠償をいわば困難ならしめるような規定が削除されれば、そういう意味で被害者が損害を取り戻すということを少なくとも困難にはしないという程度にはなるだろう。さらに、弁護士報酬というような形になれば、それを多少なりとも容易にするという意味があろうかと思います。さらに、株式保有の問題、それから責任罰の問題、それから罰金の金額にしましても、たとえば法人に対して五百万円というのは全く形ばかりのものではありますけれども、しかし五十万円よりはましだということになるわけでございまして、メリットが全然ないかといえば、それは全然ないことはない。 さらに、こういう改正が行われることによりまして、もう少し形に見えない意味での大きなメリットというのは、独禁法全体が洗い直されて、公取委内部でもいままで使われないままにさびついておった規定が今後活用されるようになるということは、恐らく隠れたメリットではあるまいかというふうに考えております。
○松下参考人 いままでの御意見で大体私が申し上げることも尽きておると思いますが、結論的にはやはり前進であると思います。 その理由の一つは、この改正を契機にいたしまして独禁政策が日本の経済風土に定着する、こういうことにあるいはなるのではなかろうか、全体的にはそこがメリットだ、こう思います。 細かい点につきましては、一つは営業の一部譲渡でございますが、これには先ほど来いろいろ問題点が指摘されている。しかしながら、やはり構造規制、独占状態の規制という規定がともかく入ることにはなる。これはやはり大きなメリットではなかろうかと思います。 それから、課徴金制度、これも新しくできるものでございますし、これによりカルテルをやることによって企業側が金を払わなければならない、こういうことがはっきりする。これも抑止効果という点でいいのではないか。 それから、あと若干二、三点申し上げますと、一つは先ほど御指摘がありましたが、責任罰の問題、これも前進だと思います。五十万円を五百万円、これも先ほどのお話のように五百万円の方がいい、こういった点です。 それからもう一つ、私はわりあいと重要だと思いますのは、公取に対する申し立てをする、この場合に公取の方として取り上げない場合にはそれをはっきりさせる、こういうことになるわけですが、この辺のところは現実にはわりあいと重要な意味を持つのではなかろうか、こういう気がいたします。したがって、全体としては前進という評価をしてよろしいのではないかと思います。
○荒木委員 いま伺いました御意見に照らして私は国民の立場から考えてみました場合に、やはり先ほども参考人の中から御意見がありましたけれども、日常生活また国民の期待という点から言いますと、価格の引き下げ命令というのは非常に大きな関心の一つの事項であったろうと思います。 そういう意味合いからこれは正田参考人にお尋ね申し上げたいのですけれども、この価格の引き下げ命令ということについて本委員会でも論議が種々続けられております。特に研究者のお立場から、引き下げ命令が独禁政策上また独禁法上可能であり必要であるというような点についての理論的な根拠にかかわる御意見がございましたら、ぜひお尋ね申し上げたい。 あわせて、現在までの審議の中で言われております意見は、引き下げ命令については、たとえばカルテル協定時から時間の経過によってコストの変動あるいは需給関係の変動などもある、こういったことがございますし、また買い占め、売り惜しみのおそれ、あるいはまた元売りを下げても小売りに至る間の波及効果の疑問だとか、その間での価格介入の問題点、こういった点が指摘をされまして、前者につきましては、緊急命令を適切にやることによってそういったその後の状態変動を制止することは十分可能であり、また後者につきましても、石油パニックのときの国会論議を見ましても、行政指導、行政措置によってそれをセーブすることも可能だという答弁があったではないか、こういったことで私どもは論議を交わしておるのですが、もし参考人の方で御意見がございましたら、その論議にも触れて理論的根拠についての御意見を伺えれば幸いだと思います。
○正田参考人 ただいま価格の引き下げ命令というお話でございました。先ほど申し上げましたように、私は価格の引き下げ命令と価格の原状回復命令という二つを区別しておりまして、カルテル規制との関係で問題になるのは価格の原状回復命令、支配的地位あるいは市場支配的企業の行為規制という形で問題になるのが価格の引き下げ命令というふうに考えておりますので、いまの御質問の御趣旨は価格の原状回復というカルテルとの関係での御質問というふうに了解してよろしゅうございましょうか。——これは価格を引き上げる協定というものの特殊性とも関連する問題だと思います。価格を引き上げる協定というのが一般のカルテルの場合と性格を異にするのではなかろうかという点を考えて前提にしているわけであります。つまり共同行為の中には、相互の拘束が非常に強い形で初めて行い得る生産制限協定というようなカルテルもあれば、きわめて軽い意思の合致によってそれを具体化し、しかもそれを維持することができる価格の引き上げ協定というようなものも含まれているわけであります。価格を引き上げる協定というのは、きわめて安易に各業者の意思が暗黙のうちにも合致し得るということであろうと思います。価格引き上げ協定につきましては、一方では価格を引き上げるという暗黙ないしは明示の合意があると同時に、他方におきましてはその引き上げた価格で売り続けるという暗黙の合意、この二つが組み合わさって価格引き上げ協定が具体化しているというふうに考えるわけであります。価格引き上げ協定を破棄したのみでは、引き上げた価格で売り続けるという暗黙の合意による競争制限的な行為が続くことを阻止することはできないわけであります。一遍上がった価格は、その価格で売り続けるという合意によって維持される。そうなりますと、その価格というのはまさに競争制限が繰り返し繰り返し行われながら一定の価格で販売が進められるということでありますから、その価格が一定の共同行為の実行行為という形でとらえられることになると思います。独占禁止法では、共同行為の一つの形態として、共同して事業活動を遂行するということを禁止しております。そういう点と関係いたしまして、共同して事業活動を遂行している、この共同行為を除去するためには、共同行為、これを排除しなければならないということになるわけであります。 そこで、それをどういう形で排除するかと申しますと、価格を引き上げる協定をするということによって一定の業者間のつながりができ上がってくるわけでありまして、しかもこのつながりが個個の価格行動と非常に密着した形で推し進められているわけでありますから、このつながりを解き放つためには、このつながりが成立する以前の状態を再現するというのが最も合理的かつ妥当なものであるというふうに考えられるわけであります。そういう意味で、価格の原状回復と申しますのは幾らにせよということではございませんで、価格引き上げ協定が行われる前の価格に戻せ、これが原状回復であります。したがって、この場合にはその価格が原価構成等々によって妥当なものである、こういう判断は一切加えられておりません。そして、物価の上昇ということが問題になるということを先ほど御指摘になったわけでありますが、物価の上昇に伴って、たとえば価格協定を行います前の一〇〇という価格が、引き上げ後価格の原状回復を命じます時点において一〇五であるということが合理的に立証できる、これは物価指数等々を使って合理的に立証できるということであれば、一〇五が原状として戻さるべき価格というふうに考えることができると思います。もちろん、そういった物価の変動というものがもたらされる前に、先ほど御指摘のありましたような緊急命令あるいは緊急停止——いまは緊急停止命令でありますが、そういう制度によって一定の措置をできるだけ早く講じるということが必要であります。したがって、価格の原状回復を命ずるためには、価格引き上げが行われた後速やかに、しかも引き下げた価格を据え置く期間はできるだけ短くという形で進められるべきであるというふうに考えます。 また、買い占め等あるいは売り惜しみ等が生じるということでございますが、この点につきまして、私も経済界の動きについて必ずしも明るいわけではございませんのでいろいろな方面に問い合わせ、聞いてみたのでありますが、供給制限をするというカルテルがなければ、ここで売り惜しみというような形があらわれることはおそらく考えられないのではないかというのが、そういう企業の関係の現場の人たちの意見でもあったのでありまして、供給制限の協定という合意がなければ一応競争が回復している状態ということになりますから、この価格でもって当然シェアの拡大等を図った競争は推し進められるはずであるということが言えるように思います。また、現実に価格引き下げを行いました西ドイツの例を見ましても、七ヵ月後に七ヵ月前の価格に戻すという命令を出しておりますが、それによって商品が出なくなったというようなケースも起こっていないようであります。また、御指摘のような指導等も考えられるのかもしれないと思います。 以上であります。
○荒木委員 従来から指摘をされてきました大きな関心の項目の一つは、独占、寡占の構造支配の問題でございます。この点は實方参考人に御意見を伺いたいと思いますが、行為による弊害ということ、これは各方面で認められますが、寡占構造による構造弊害あるいは寡占なるがゆえの危険、平たく言いますと、あるいは保護観察の必要と言いますか、そういった問題については理論的にどのようにお考えでございましょうか。 また、それに関連をいたしまして、私どもは審議の中で、さればこそ原価公開が必要ではないかということを申しておるわけでありますが、国際競争力の問題あるいは企業秘密の問題などが絡みまして、これはそれぞれの場所でそれぞれの論議が交わされておりますけれども、国際競争力の問題にしましても、いま安定成長に変わったという時期に、従来と同じ競争原理でもって進めることはいかがなものか。むしろ協調であるとかあるいは世界企業にまでなった結果弊害が論議されておる。そういった点の問題も取り上げなければならぬと思います。 また、企業秘密の点では、御案内のようにすでに諸外国の事例でありますとか、あるいはいまの財界の首脳部の方々のそれについての御発言だとか、また国民の立場から見ますと、農民は米の生産費あるいは勤労者は勤労所得、下請企業は生産コストというふうに、それぞれオープンになっておる面もあるということも含めて論議を進めておるのですが、いまのような点につきまして御意見の要点をお聞かせいただければありがたいと思います。 なお、時間が制約されておりますので、大変恐縮でございますが、なるべく要点を簡略にお聞かせいただきたいと思います。
○實方参考人 特に寡占状態に対する、寡占状態からもたらされる弊害を除去するための有効な方法は何かということでございますが、純理論的に申し上げますと、そのような弊害がもたらされないような構造を確保するということ、それはできるだけ努力すべき目標ということにはなります。しかし、寡占の場合は独占的状態の場合と違いまして、その弊害と市場構造の関係が非常に明確に立証できるというものではない。したがって、その構造規制というのは、理論的には望ましいけれども限界があるということを前提に置いて、有効な規制手段を考えざるを得ない、それは確かにそうです。したがって、その場合に私の見解では、できるだけ国家の個別的な裁量の入らないような形、そしてなおかつ行政機関による法の運営の独占ということではなくて、それによって被害を受ける国民一般がいろいろな形で参加していくような形で、その有効な規制手段を設けるということが必要ではないかと思います。そういう趣旨で、原価公開というのは何でもかんでもさらけ出すということではなくて、ある程度制限された形で必要な限りにおいて原価の公開を命ずるということは、そのような意味で規制手段としてはソフトであり、なおかつ国民の参加を求めるという点で意味があると思ったわけでありますが、そういうことでそういう趣旨を生かすとすれば、同調的値上げに対する報告徴求制度を実効性をもたらすように前向きに制定する方が、これは理想的に言えば非常に望ましい、こう思います。簡単に言えばそういうことであります。
○荒木委員 消費者の立場から御指摘いただいております参考人にお尋ね申し上げたいのですが、実際にこの法律を運用いたします公正取引委員会の機構の拡充強化ということについて御意見がありました。それで、私たちもこの法案の政府案にあわせまして、公正取引委員会の民主的強化ということを改正案の中に盛り込んで提出をしておるわけでありますが、先ほど中村参考人からお話のございました公正取引委員会の拡充強化ということの具体的な内容について御意見をお聞かせいただければありがたいと思います。なお、田中参考人の方にも、その点について特にお聞かせいただけることがございましたら、ぜひお伺いしたいと思います。
○中村参考人 お答え申し上げます。 まず、公取委の人員が、先ほど申しました課徴金の問題を外しましても、非常に少ない。私どもはいままで二十年運動しておりまして、景表法をつくりますときにも、一生懸命私どももつくってほしいと言って運動した一人で、国会にも参りましたけれども、それ以来公取の増員というのは年中行事のようになされておりますけれども、一人とか二人とか、まずけたの違う人員の増で続いてきております。ことしは、この独禁法が通ればまた十人ほどふえるんだというお話を伺いましたけれども、それが通っても本局と地方合わせて三百九十二人しかいない。いまのようないろいろなむずかしい問題があるときに、公正取引委員会がこれで仕事ができるかどうかというのは非常に疑わしい。われわれいままでいろいろ持ち込んでも、してもらえないことがいっぱいあって非常に不満があるわけです。そういう意味で、独禁法の強化というのは法律だけが強くなっても、先ほど申し上げましたように、それを運用できる体制がなければ飾り物になってしまうのではないか。ですから、それは別段のごしんしゃくをお願いしたいと思います。 それから、予算も年間十五億、たしかいつか安定法の予算が三十億、臨時でも三十億の予算がついたというふうに記憶しておりますけれども、そのときに公取の年間予算、これは人件費も入ってだそうです、それが十五億というので、びっくりしたことがございます。これでは仕事はできないのではないか。 それから、公取の委員の任命ということで、何か伺うところによりますと、各省からお出になる。前の方がおやめになると、その省から出てくるというようなことを伺いましたけれども、公取は合議で決まるということであれば、法律は法律として、やはり委員の任命というところに、私どもの理想的な委員が任命できるシステムというものを考えていただきたいというふうに考えております。
○田中参考人 時間の点がございますから、中村さんともう全部同じでございますので、特に予算と人員の点については、私どもの団体でも毎年陳情をするということを重ねておりますけれども、一向に予算もふくらまないし、人員も伸びないという現状を今後先生方もひとつ御一考いただきたいと思います。
○荒木委員 最後に、鈴木参考人にお伺いをしたいと思いますが、先ほど伺いました御意見の中で、独禁法の改正論議というものが石油パニックの中で物価問題として提起をされてきたムードがある、それに続く御意見はもとより伺ったわけでございますけれども、しかしムードとして国民世論の中に、とりわけこの石油パニックを一つの契機といたしまして、物価の問題、それを通して独禁法にかける期待が大きいということは御承知いただいておることだと思います。そういう意味合いからそれとの関連で、御出席をいただきました機会に伺いたいのですが、いまの物価問題について政府の首脳と財界の首脳の皆さんといろいろ御相談、意見交換があり、物価値上げについての自粛ムードを受けて、財界としても傘下各企業に対して自粛を要望するというふうな態度をおとりになっているように伺っております。一方、経済企画庁の調査によりますと、御案内のように、向こう一年間大企業の中で約七割の企業が製品価格が上昇するという期待を持っている。裏返して言いますと、七割の大企業が値上げをするという構えになっておる。現にいままで値上げをした企業もありますし、またいま交渉中の企業もあります。 そこで、私は、この論議と関連をいたしまして、財界の皆さんがおっしゃっておる自粛要望なるものが果たしてどの程度の効果があるか、また、いま所属していらっしゃる経済団体連合会の役員のお立場として、どの程度の効果があるというふうにごらんになっているか、これをお尋ねしたいわけでございます。 特に、具体的な数字で出ておりますが、七割の大企業が値上げ期待を持っている、それに対する自粛要望の結果、値上げをする企業は何割ぐらいになるだろうか、皆さんの自粛要望の御努力の結果値上げ幅はどれくらいにおさまるだろうか。もちろん各企業のそれぞれの自主的な動きはございますから、団体連合会の性格上、こういった点についての拘束性だとかあるいは覊絆的な意味をお尋ねしているのではございませんが、直接その衝に当たっていらっしゃるお立場のお一人として、いまなさっていらっしゃる措置がどの程度の効果を持つか、そして政府が約束をしております来年春九・九%ということについて、財界としても責任をわかっていらっしゃるのかどうか、こういう点について御意見を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
○鈴木参考人 ただいまの御質問にお答え申し上げたいと思います。 現在、御承知のように、物価問題を非常に重視して政府が総需要抑制政策を厳しくとっております。 〔塩川委員長代理退席、前田(治)委員長代理着席〕 その結果、大体、製造工業では、能力に対して平均三割くらいの操短の状態だと思います。 そのことは、結果としてどういう現象が起きているかといいますと、一つは雇用の問題で非常に人が余るという問題で、これに対しては一時帰休とかその他の問題がありますし、来年の新卒の採用というようなものにいずれ影響があるのではないかと思います。 それから、御指摘の物価、価格との問題について言えば、三割平均の操短ということになりますと、比例費は別として、償却とか金利とか人件費というような固定費関係は、いずれも非常に単価として上がっているわけで、大部分の企業が赤字になりつつある。赤字になりつつあると言うより、もう現に大きな赤字を出しているというのが現状であります。そういう形が続きますと、企業としては再生産が困難になるので、このままではやれない。先ほど御指摘のアンケートによると値上げを要望しているというのは、そういう事態の背景のもとでの要求だと思います。 それを物価との関連において少ないようにどう調整するかという問題は、土光経団連会長がこの国会の物価の委員会で昨日発言されたというふうにけさの新聞で承知しておりますが、もう少し景気を回復させて製造工業の操業率を上げるならばコストが下がる、それによって企業の維持というものは相当図られることになるので、値上げをするにしても僅少の幅で済むのではないか。もう一つは、日本の企業が非常な借入金を抱えておりますので、金利負担というものがコストの中で大きな要因を占めているので、金利を下げてもらいたい。操業率の向上と金利の引き下げによって、できるだけコストの上がりというものを価格の値上げに転嫁する部分を少なくしたいということを要望しているわけであります。 来年の一けたの問題についてどうかという最後のお尋ねでございますが、私どももやはり消費者物価あるいは物価に対して国民として非常に関心を持っておりますので、副総理が言われておるように、一けたの目標で進むということについては財界もできるだけ協力したいということでありますが、同時に経済が円滑に運営されるためには、やはり適正な操業度が維持されるということと、利益がないまでも、コストがやはりカバーされるという前提が貫かれなければいけないということで、先ほどの景気回復の問題と金利の問題というのが重要な要素であるということでございます。最近の動きを見ますと、卸売物価は非常に鎮静している。問題は、物価問題ということで、消費者物価、卸売物価が一元的に論ぜられておりますけれども、むしろ消費者物価というものが非常に上がることが気になるわけでありまして、それに対しては流通問題であるとか卸売物価と関連しない相当の部分の問題があるわけで、それに対してひとつぜひ国会におかれましても分析して、適切な処置をしていただきたい、かように考えます。
○荒木委員 時間が参りました。私ども共産党もいま審議になっておりますこの政府案と一括して党の改正案を提出しておりますので、御出席の参考人の先生方にもぜひ私どもの改正案についてもいろいろ後刻御意見をお聞かせいただけましたらありがたいと思います。そのことを申し上げて、私の質問を終わります。
○前田(治)委員長代理 以上で、荒木宏君の御質問は終わりました。 続いて、松尾信人君を指名いたします。
○松尾委員 最初に竹内先生にお伺いしたいと思います。 この独占禁止法を消費者参加のもとに適切な運用を行うべきである、こういう主張でありましたが、私はこれは非常によくわかるのであります。消費者の参加、そういうことを非常にわれわれも考えておるわけでありますけれども、今回の改正案では、消費者が違反事実等について申し入れをする、それに対して公取は通知義務が課せられた、こうなっておるわけでありますけれども、私どもは、単に結果だけではなく、そこまで行った理由、そういうものをきちっとつけなさい、このように主張しておるわけでありますけれども、これは政府の方は機能的に大変だ、それはできがたいというようなことを答弁しておるわけでありますけれども、先生はこのような点をどのように考えていらっしゃるか、まずその考え方を聞いておきたいと思います。
○竹内参考人 もちろん理由とともにそれが通知されるということの方が望ましいことは確かでございますけれども、理由をつけろという規定を入れたら、それが必ず消費者が満足するような形で実現されるか、これはまた別問題でございまして、一言で書いても理由は理由だということで、果たして実効性が上がるかという問題もございましょう。したがって、そういう意味でねらいをうまく法律上実現するということは、これは法律だけの規定というよりは、むしろ公正取引委員会の行政姿勢というものを含めて考えるべき問題であろうというふうに思います。法律に書けば必ずそのとおりになるというふうには私は必ずしも思いませんけれども、しかし基本的には理由とともに通知がされるということの方が望ましいというふうに私も思います。
○松尾委員 公取の実際のやり方ということになるわけでありましょうが、そこは本当に非常に問題があると思います。 なお、わが公明党では、直接今回の独占禁止法の中には法案としては入れませんでしたけれども、集団代表訴訟法、クラスアクションに関する法律案を出しました。これは欠陥商品なりまたはカルテルの被害、または公害等に関しまして、その損害賠償の問題を解決しよう、非常に手広いものでございますので、これは今回の独占禁止法の中だけに盛るというわけにまいりませんので、このような大きな法案として出したわけでございます。それは何としても消費者というものがあらゆる問題にやはりはっきりしたことを言う、そうして政府の姿勢を正すという面においては、私は非常に大事であろうと思うのでありまして、この独禁法の中でもこのようなクラスアクションのような制度を速急に導入する必要がある、このように考えるのでありますが、いかがでしょう。
○竹内参考人 お説のとおりだと私は思います。アメリカでもこのクラスアクションというものが最も広く利用されるというのは、独禁法違反の関係とか、それから証券取引法違反の証券詐欺のような問題であるというふうに一般に言われております。したがいまして、こういうクラスアクション制度のような考え方、アメリカのものをそのまま持ってくるかどうかは別といたしまして、そういうアイデアをもって、多数の同じような被害者が出た場合にそれをどうやって効果的に救済するかという角度から裁判のあり方について検討するということが、独禁法にとってもきわめて大切なことであり、またそれ以外の法分野にとってもきわめて大切なことであるというふうに考えております。
○松尾委員 さらに、竹内先生にお尋ねするわけでありますけれども、私たちは、公正取引委員会に公正取引調査会を設置していきなさい、そしてそこには消費者を必ず含めるようにしなさい、そしてそのような声をちゃんと聞いて適切な処理をしていったらいいんじゃないか、このような考え方で法案をつくったわけでありますけれども、この点に対する竹内先生の御意見を聞いておきたいと思います。
○竹内参考人 これは非常にむずかしい判断にかかるというふうに私は考えております。これは直ちにそれでいいとは私には言い切れない感じがいたしますのは、先ほど消費者の参加ということをおっしゃったわけですけれども、私が申しておりますのは、消費者はあくまで独禁行政の責任を負わされることなく、しかしながら権利として自分の失ったものを守るような、そういうシステムを独禁法の中に取り入れるべきだ、あるいは不服申し立てという形で公正取引委員会のあり方を是正する権限を与えられるべきだということを申しておるわけでございます。 そういった権利なり権限なりというふうな形で意見を聞いてもらえるチャンスをつくるだけでそのおっしゃるような調査会が機能すれば、それはそれなりに意味があることだと思いますけれども、これを裏返して考えますと、下手をすると、消費者なり何なりが公正取引委員会の組織の中に引きずり込まれてしまって、そしてそこで必ずしもある問題の裏の裏まで十分読み切れないうちに、少なくとも心理的には責任を分担させられるような結果になってはまずいのではないか。その意味で、私は、こういう参加というふうなことを考える場合に、行政機関の中にずるずるっとのめり込んでしまうということは、場合によってはきわめて危険を伴う。その意味で、むしろ組織の外にいて意見をはっきり言う、そしてそれを聞き届けてもらうという方が、場合によっては安全な場合もあり得る。したがって、この問題は、現在の消費者の能力あるいは消費者団体の手がどこまで回るかという問題とも絡む、これは非常に問題ではないかというふうに考えております。
○松尾委員 そうなりますと、田中、中村両参考人の御意見を一言聞いておきたいようになるのでありますが、どちらでもいいですから——じゃ、田中さん、いまの問題に関連して一言お答えください。
○田中参考人 公明党のお出しになりました案の中に公正取引調査会ですか、入っておりますのを随分前に拝見いたしましたときには、こういう方法で公取の機構そのものをチェックしながら私どもの発言も入れていくということも一つの方法ではないかと確かに思ったのですが、いろいろ最近の情勢やら私どもが出ております懇談会、審議会等々を見ますと、私どもがその中に入っておりまして、非常に勉強不足も確かに私どもの方にございますので、発言をしておりますのの突っ込み方が足りなかったり、それから実際の情報なり資料なりがやはり不足をしております点などもありまして、いま竹内先生のおっしゃいましたように、ついその中に巻き込まれがちな例がないとは決して言われませんし、最近はやや多くなりつつあるということも確かかと思いますので、そういう点を考えますと、やはり調査会自体がどのくらいの権限を持ってどうなのかということは、私よく存じ上げませんけれども、そういう意味では、やはり現状のわれわれの方法としては、外にあって発言をしていくという方がいいのではないか、過渡期の現象もあると思いますが、そう考えます。
○松尾委員 企業分割に関する問題でございますけれども、そこで商法との関連をお伺いしたいのであります。 今回の改正によりますと、企業分割というものは営業の一部譲渡に限定されてしまったのでありますけれども、この営業の一部譲渡の場合でも、それが重要な部分である場合でも、この公正取引委員会の命令というものは株主総会の特別決議を拘束すべきだ、このように考えるわけであります。株主総会で否決されたとかなんとかいうことになりますと、これは非常にゆゆしい問題になってまいりますので、このような点に関する諸先生方の御意見はどうであろうか。また、公取の営業の一部譲渡に対する命令というものを実行させるためにはどのようにしたらいいのかという点もあわせて、實方先生、正田先生、松下先生にそれぞれお答え願いたいと思います。
○實方参考人 まず、企業分割を命ずる方法のところでありますが、いわゆる商法上の術語としての合併の逆の現象である会社の分割というのは、これは商法でそういう制度がないのでとれないということは確かであります。 それから、大ざっぱに申しますと、公取が命じます行政上の下命ですね、行政処分としての命令というのは、現実化する段階では司法上の行為として行われるということでして、その場合、司法上のいろいろな要件を満たさなければいけないということはやむを得ないというわけです。そういうことで、現在可能なのは営業の一部譲渡ということで、譲渡先は新会社の場合もありますし、それから既存の事業者の場合もあるわけであります。その場合に、営業の重要な一部の譲渡ということでありましたら、商法の二百四十五条でありましたか、株主総会の特別決議が要るということでありますが、もしそこで公取の命令が出たにもかかわらず、それが否決された場合どうなるかという具体的な問題なのでありますけれども、一つの問題点は、商法の二百四十五条の立法趣旨というのが取締役会の専断を防ぐためにその慎重な手続を定めてある。これは会社の自発的な行為として営業の重要な一部の譲渡を行う場合に、そのような手続に服する、こういう趣旨であります。したがって、重要なというのは商法上の特殊な概念でありまして、これは全部の処分に準ずるような場合ということであります。したがって、通常、これは程度問題、数字ではっきり決められる問題ではないのですけれども、三分の一の部分をたとえば譲渡するというのが直ちに二百四十五条でいう重要な一部の譲渡に当たる、したがって実質企業分割になるような場合は常に二百四十五条の対象となるとは必ずしも言えないわけです。これはまた商法上の別の観念から判断されるべき問題であります。したがって、これは取締役会の判断で重要な一部の譲渡と思われるから、株主総会にかけて否決されたから、それは実行できないという言い逃れは成立しない、こう思うわけであります。 それからさらに、もっと大きく言いますと、これは特別決議というのは会社の内部的意思決定の問題であります。したがって、会社の場合に、特別決議が成立しない場合に、成立しなければ事実上公取の譲渡命令を実行しなくてもいいということになれば、個人商人の場合と非常に大きい不均衡も生じるということであります。大ざっぱに言いますと、これは会社が自発的に営業の譲渡を行うという場合ではないわけです。そういうことなので、公取の命令があった場合には商法二百四十五条の手続が要らないと解釈することも可能である。そして、従来の七条で営業の一部譲渡が定められておりますが、それについて何ら手当てがないということは、前向きに解釈しますれば、二百四十五条の手続を省いても、そこで成立しなくても、会社の取締役にその営業譲渡を前に進めていく義務が残る。そして、不遵守の場合には、最終的には九十条三項でございますね、命令不遵守の場合の罰則で担保できる。ただ、技術的に申しますと、慣行として営業譲渡の場合はすべて二百四十五条の手続にかけていた。それを経ていたということであれば、取締役個人が命令を守らないという積極的な行為というのが証明できないということになりまして、そこで実際に罰則を適用する場合に多少困難な問題は出てくるわけでありますが、法人自体の公取の命令を実行する義務というのは残っておるわけでありまして、これを担保する有効な手段というのは、また別の側面から考えられてしかるべき問題だと思います。
○正田参考人 ただいまの御質問の点につきましては、商法の規定に基づく株主総会の決議がないからということで公取の命令を実行しないことができるかというような形で議論がされているようであります。しかしながら、いま實方参考人もお話しになりましたように、これは企業が命令を受けるのでありまして、それ以降の問題は企業の内部問題であるというふうに私は考えております。したがって、公正取引委員会のカルテル破棄命令に企業が従わないという場合と、公正取引委員会の営業譲渡命令に企業が従わない場合との間で区別されるべき要素はないというのが原則ではなかろうかと思います。そういう意味で、企業に対して営業譲渡が命じられて、それを株主総会が否決して実行できないというような状態が起こり、取締役は手をこまねいている、そういうことであるということになれば、やはり審決に違反したということについての責任が追及されるということになろうかと思います。 ただ、この企業に対する営業の一部譲渡の命令に関しましては、原則としてと言いますか、恐らく具体的な運用の場においては、現在の手続でございますと、同意審決と申しますか、そういう形での企業側の対応というものとの組み合わせがなければなかなか具体的に実行できない、したがって少なくとも、先ほど来お話に出ておりますように、五年に一度、十年に一度そういうケースが出てくるであろうかと言われるような、企業がそういう問題に遭遇したときに、あくまでも争って、審決が出てもそれに従わないというような意思決定をするということは、ある意味ではその企業の社会的な意味での自殺行為であるというふうに考えざるを得ないように思います。したがって、具体的な運用に関しましては、現在の手続ですと、当然、同意審決というような形で、企業の計画、そしてそれを公取が適正と認めて、それに従った審決が行われる、こういう方法がとられるものと考えてよろしいのではなかろうかというふうに存じております。
○松下参考人 商法と独禁法の関係の問題でございますが、商法サイドの問題につきましては、私も必ずしも専門家でございませんので、ほかの参考人の御意見にお任せするということにいたしたいと思います。 そこで、一般論を一言だけ申し上げてお答えするということにしたいと思いますが、やはり独禁法の基本的性格というのは、私法的な秩序に修正を加えるということだと思うわけであります。この点から見ますと、商法の規定を前提にしないと独禁法が動かないということになりますと、独禁法の規定というのは動かないということになってしまうのではなかろうかと思います。このような意味で、技術的にどういうふうに解決するかという問題は別といたしまして、基本的にはやはり私法秩序に対する修正ということで独禁法の規定が優先する、このように考えていいのではなかろうかと思います。 ただし、その場合に株主といたしましては、あるいは自己の意に反して営業譲渡が行われるということもあり得るかと思いますので、この救済なりそれについての手当てというのは、別途、別問題としてあり得るかと思います。 以上でございます。
○松尾委員 各方面から、これは必ず今回の改正に入れるべきであるという意見の中で一番多いのが原状回復命令でございます。これは要するに公取の価格介入の問題、そういう点に触れまして、ついに今回、改正案にも入らなかったのでございますけれども、諸先生方の御意見を承りまして非常に意を強くするものでございます。もともとが、そのような大きな企業が不当に価格に介入してきたのがやみカルテルでございます。ですから、公正なる競争、価格に介入するならば問題はございましょうけれども、もともとが不当な価格の介入ということをもとに戻すということについては、諸先生方の御意見がきちっときょう述べられたわけでありますが、この点について鈴木参考人はいまどのようにお考えになっておるか、これはひとつ簡単にそれから明瞭にお答え願いたいのであります。
○鈴木参考人 価格の原状回復については、実はいろいろな角度から学者の先生方にも御議論がございまして、大体経済関係の学者の先生方はやはり非常に否定的でございます。私どもは、原状に回復するということは、いまのように日々刻々いろいろな条件が変わる中で、単純に原状回復ということはあり得ないのじゃないか、あらゆる限界要素が変わり、需給状況が変わるという中で、もしも原状回復ということを単純にやるならば、いろいろな経済原則に反する問題が起こってきて、それはやがて価格介入ということにも通ずるし、公正取引委員会が一番いけないと言っている行政指導的な内容の価格介入になるのじゃないかということでありますので、私どもとしては、原状回復については反対であるという立場をとっております。
○松尾委員 さらに、鈴木さんにお伺いするわけでありますけれども、創意工夫で企業がだんだん大きくなる、そのような大きくなったということについて、われわれはとやかく言っておるのじゃありません。大きくなって、そうして大きくなったその力を悪いところにあらわす、そうして消費者なり利用者というものから不当に利益をとる、大きくなったことが悪いと言うのじゃありませんで、大きくなったその力で不当に価格等の操作をやって消費者を苦しめる、この点をわれわれは大きくいま問題にするのでありまして、それがやれ構造規制だとかなんとかというようなことを言われますけれども、そうでありません。もともとが、大きくなってそうしていいことをすればいいのでありますけれども、大きな力を悪い方面に使っていく、それがだめだ、こう言っておるのでありまして、いまの価格の原状回復の点につきましても私、納得はできがたいのでありますけれども、それはそれとしまして、このように大きくなっていく、そうしておいて産業界のカルテルが横行している、それが具体的にたくさんの事実がある、いまのこのような点についてどのように反省をされて、そうして今後産業界、経済界としてどのように是正していこうというお考えがあるのか、念のために聞いておきたいと思います。
○鈴木参考人 ただいまお話がございましたように、競争の結果大きくなったことが悪いということじゃない、その大きくなった企業が行動が悪いときに問題なんだという御意見、私どもも全く同感でございまして、私どもは企業運営の際に、過去において間々見られましたようなカルテルというものについては今後一切起こらないような努力をしなければいけない。したがって、どういうふうな形で改正法ができるかわかりませんけれども、法律が、罰則が厳しくなろうとなるまいと、要するにカルテルというものは結ばない、そういう自粛自戒の態度で今後臨みたいと思います。 過去においてあったという背景は、これは弁解としてお聞き取り願うといけないのですけれども、過当競争が非常に激しくて、それに対する一つのやむにやまれないような形でのカルテルも幾つかございました。また、そういう際に行政指導を仰ぐというような場合もありましたけれども、しかし今後の企業経営のあり方というのは、そういうことを口実としないで、自分の責任において国民から指弾を受けないような価格形成をやり、公正な競争をし、そうして福祉経済、安定成長、国際協調というような理念に合致するような経営態度でやっていきたいというふうに思います。
○松尾委員 以上で終わります。
○前田(治)委員長代理 以上で、松尾君の御質問は終わりました。 次に、宮田早苗君を指名いたします。
○宮田委員 時間の関係がございますので、三点ばかりお伺いをいたします。 まず最初に、田中さんと松下先生にお尋ねをいたします。 政府案が国会に上程されるまでの経過につきましては、参考人の皆さん御承知のとおりでございます。また、今日においての国会審議の内容についてもしさいに検討されていると思うのでございます。私ども、政府、公取の答弁に相当な開きがあることが浮き彫りにされたというふうに思っておるわけでございますが、かねて高橋公取委員長の答弁、あるいは記者会見での発言を新聞等で見る限り、私どもの主張と同じく政府案に対する不満がありありとうかがえるような次第でございまして、経済の憲法とも言える独禁法の改定作業のあり方、これでいいのかという疑問を国民は大変多く抱いておるのじゃないかと思っておるわけでございますので、大変抽象的な御質問ですが、この点についてどのようなお考えをお持ちであるか、まずお伺いをする次第であります。
○田中参考人 十分にお答えできるかどうかわからないのですが、確かに高橋委員長は公取試案というものを発表なさいましたという事実がございますので、公取の責任でああいう試案を出しました以上、その試案をつくりました経過等を踏まえながら委員会でも答弁をなさっていらっしゃる向きもあると思います。 私どもは、公取試案が発表になりましたときに、確かに私ども消費者がかねてから要望していたものの幾つか重要な点が、はっきり五本の柱の中に織り込まれているという認識を持ちましたので、その試案に対して、ともかく最低限試案の線で独禁法改正を行ってほしいということを消費者団体として非常に広い範囲で表明したということも事実でございます。そういう過程がございますので、審議の過程でだんだんに——審議の過程といいますか、むしろ三木内閣になりまして独禁法改正案というものが出ました経過も、昨年の十二月の末に独改懇というのが開かれまして各方面の意見を聞き、三月五日に政府素案が出て、それから政府の要綱案なども出されました過程で、次々に、確かに私どもの主張しておりますところが落ちていったということは明らかでございますので、その点について多くの消費者の中にはその審議過程等、経過につきましては不信感というものを持っている者も相当あると思います。 ただ、私が申し上げたいのは、やはり一つずつの細かい点につきまして多くの消費者が全般にわたって理解をするというには、独禁法は非常にむずかしい点があるということは確かでございます。ですから、改正案自体がどこまで後退しているのかという説明ということは、また非常にむずかしい点があるということもありまして、目下のところ強化改正されるという大きな望みを持ちながら見守っているという状態かと思います。 十分なお答えにならないかと思いますが、失礼いたします。
○松下参考人 どのような点からお答えしたらよろしいか、現在ちょっと迷っておりますのですが、私は気質的に妥協論者、調和論者でございまして、いろいろ意見の対立があることは承知しておりますが、何とか折り合いをつけて調和的に解決できないか、一般的にはそう思うわけであります。 そこで、もう少し細かい点になりますと、たとえば公取試案が公表されましてから各方面で議論が行われまして現在の法案までに至ったわけでありますが、これを比較してみますと、公取試案の方がベターな点もあり、現在の法案の方がすっきりしている点もあると私は思います。たとえば課徴金の点などは、私は公取試案のアイデアの方がどうもよかったのではなかろうか、こんな感じもしておりますし、これが現在のような形になったのは若干残念だ、こういう気がいたします。それから、営業の一部譲渡、これは先ほどのと重複いたしますから余り申し上げませんが、協議事項というのは若干問題をはらむのではなかろうか、こんな点がございます。この反面、私の考えですと、原価公表の問題、それから価格の原状回復の問題、この二点につきましては、これは先ほどの弊害規制主義という立法に基づいて行うべきだと思っているわけでございます。したがいまして、今回の独禁法改正案は、この協議とかあるいは事業者団体の課徴金の問題とか、いろいろ問題点はございますが、やはり基本性格としてはどっちかというと競争原理の方に統一してできているような感じもするわけでございます。こんな点で、やはりこの法案が全くだめだとは私は思わない。問題点はあるにせよある程度の評価はできるのではなかろうか、こんな気がしております。 そこで最後に、非常に理念的なことになりますが、自由主義経済の維持というのと独禁法の強化というのは不可分の関係にある、こう思うわけであります。そこで、先ほどいろいろ御議論に出ましたように、企業分割の問題になりますと、たとえば企業努力の結果大きくなったものを分割するのは問題だ、こういう御指摘もあるいはあり得るのではなかろうかと思います。しかし、この辺のところはやはり結局調和的に解決する以外にない、つまり企業が大きくなる過程で努力をする、これ自体を評価するということは、これはだれでも認めるところだと思います。しかしながら、大きくなった後でその力を乱用しないという保証もない、そこでそれについてやはり規制が必要になる、こういうことだと思うのでございます。 そこで、高度寡占の状態あるいは独占状態ということになってまいりまして弊害が著しい、こういう場合にはやはり規制をせざるを得ないということになるのではなかろうか、この意味で独禁法というのはある意味では資本主義の問題点を一番明確に出している法律である、こんな気がいたします。 お答えになっているかどうかわかりませんが、そんな印象を申し上げてお答えのかわりにしたいと思います。
○宮田委員 同調的値上げ規定に関連をいたしまして正田先生と鈴木さんに質問をいたします。 この規定は、と言いますのは同調的値上げの規定でございますが、削除すべきだという意見もあるわけですが、重要基礎物資の製品関係は原材料の輸入依存度が大変高いわけであります。国際価格に従いまして左右される、あるいは賃金も同じ条件で上がっていくというように、原価アップの条件は各企業ともほぼ同じことから、同じ時期に変更せざるを得ないことが大変多いのじゃないか、こう思います。このようなものは他の規制を考える方が適切で、独禁法で取り締まることにむずかしい点があるように思うわけでございますが、この点についてはどのようにお考えでございますか、お聞かせ願いたいと思います。
○正田参考人 いま御指摘になりました点、確かにいろいろとむずかしい問題がある産業もあろうかと思います。しかしながら、少なくともその当該産業につきまして競争を中心としたルールが行われるということが前提になる限りにおいては、競争の回復——一時的に競争が存在しないような状況が出てくることもあり得るといたしましても、競争が回復し企業間の相互チェックが行われるという可能性がある場合には、必ずしも安易にかかる産業に対して一般公益事業的な規制に移行するということが妥当であるとも言えないように思います。もちろん産業の性格によりましては、これは独占的状態の場合も同様でありますけれども、一定の競争秩序の維持ということが、産業の性格、特に技術が生産規模を規定し、それが一定の企業規模を規定するというような場合には、競争の回復が不可能であると考えられる場合も当然あり得るわけであります。これに関しては別の形での規制が考えられるという余地は、前提にしているわけであります。そういう産業として性格づけ得ないものについては、先ほど来問題になっておりますような高度寡占に対して、たとえば価格行動について事後の届け出義務を課するというようなチェックも必要であろうというふうに考えます。
○鈴木参考人 お答えをしたいと思いますが、いまの御質問は二つ問題がありまして、一つは価格の同調的値上げを独禁法との関係においてどう考えるかという問題、もう一つは、それと切り離して、重要物資の価格について統制ないしはその他の規制を加える要があるかどうか、そういうふうに了解いたしましてお答え申し上げたいと思います。 それで、第一の問題は、経済界では常識化しておるのでございますが、同じような製品について同時に一つの価格が実現する、これは上がる場合もそうですが、下がる場合もそうでありまして、企業というものはいつも競争者の価格に対して非常に注意をしているわけであります。もしも競争者が下げれば、自分の方も下げなければ売れないというような問題、それから原価、需給関係等から上げなければいけないけれども、しかし競争関係にありますので上げかねる、しかし競争者が上げた場合には上げても競争に負けないという考え方で同時的に値上がり現象というのは起きるわけであります。したがって、そういう一物一価といいますか、同時期に同じ幅の価格の上下動がある、特に個性のない市況産業の物資についてはそういうことが顕著であります。そういうものに対して、意識的平行行為というようなことを学者の方が表現されているような目で見ていくということは、原価公開思想に通ずるもので、経済の市場原理のメカニズムから言うと好ましくないというのが私どもの考え方でございます。したがって、同調的値上げに関する部分は削除していただきたいという希望を申し述べたわけであります。 それに対して第二段の問題は、だとすると、国民的関心のある重要物資の価格というようなものについて、別途違う角度から価格介入あるいは価格統制あるいは価格干渉することについてはどう考えるかというお尋ねでございますが、現在においても、たとえば化学肥料のようなものは農家に非常に重要な影響がありますので、法律で原価を監督官庁に出しまして、そうして消費者団体にもその原価をよく公開いたしまして、そのもとに交渉を行って決めるというような方式がとられております。これはまた商品は違いますけれども、電力料のごときは、相当細かい原価を出して公聴会を開いて値上げをするというような形になっておりまして、肥料であるとか電力なりに準ずるような物資が、はたして現段階にあるのか、あるいは将来にあるのかという問題の実質的な判断と絡んでくる問題でありまして、もしも現在行われているような化学肥料であるとかあるいは電力料金であるとかあるいは一部の石油化学製品等に対するような行政的な介入というようなものは必要であるということが、実質的に国民的なコンセンサスのもとであった場合には、そういう物資に対して御質問のような処置がとられることがあり得るというふうに思います。
○宮田委員 最後ですが、消費者保護という観点から、中村さん、松下先生に質問いたします。 この改正案を見ますと、非常に不備だと痛感しておるわけでございますが、やみカルテルを摘発して課徴金を取り立てましても、これは国庫に入るわけで、やみカルテルの直接の被害者である大衆には極端に言いますと何ら意味がないわけでございまして、独禁法とともにもっと他の有効な物価監視の方法があってよいと思うわけでございますが、何か参考になる御意見がありましたら聞かしていただきたいと思います。
○中村参考人 お答え申し上げます。 とっさにちょっと名案が出てまいりませんので、また消団連の仲間と相談いたしまして、何かございましたら御返事申し上げます。むしろ学者の先生方にお聞きいただいた方がよろしいのじゃないでしょうか。
○松下参考人 私も名案はないのでございますが、とっさに思いついたことを一つ申し上げたいと思います。 この点はあるいは竹内先生にお答えいただくのが適切な問題かもしれませんが、私は、現在の法案における課徴金制度は、これはこれとしてある程度評価できると思いますが、課徴金が国庫に全部入るという形でない方が本来は望ましいのではないか、つまり課徴金というものを一種の代表訴訟のような形で考えることは不可能であろうか、こんな点をちょっと考えております。そこで、国がある意味では被害を受けた者にかわって取り立てる、これを何らかの形で被害を受けた方に還元をする、こういうメカニズムを考えていくことができないものだろうか。これは現在のところ、とっさですからはなはだ漠としたものでございますが、そんなことをちょっと考えたということでございます。
○宮田委員 終わります。
○前田(治)委員長代理 宮田早苗君の御質問はこれで終わりました。 次に、塩崎潤君を御指名申し上げます。
○塩崎委員 大変お疲れのところを申しわけございませんが、あと三十分間ぐらい自民党にもいろいろお教えをいただきたいと思うのでございます。きょうはたくさん参考人の方が来ておられますけれども、ひとつ法律学者を代表いたしまして實方先生にお教えをいただきたいと思いますので、どうかひとつ御意見を承らしていただきたいと思います。 ただいままで大変長らく独禁法の改正についてお教えをいただいたわけでございます。しかし、皆さん方大分言われました中で、どうも今回の改正はむしろ改悪ではないか、こういう御意見を非常に強く承ったような気が私はいたすわけでございます。しかも、消費者団体の女性の方々まで含めまして異口同音に現行法よりも後退あるいは、というような感じの御意見が承れた感じがしたわけでございます。いろいろと理由はございましょうが、確かにそういった疑問を持たれる要素もあろうかと思うのでございます。そこでひとつ、これは法律的にこの問題を取り上げましてお尋ねしたいのですけれども、いま申しました後退あるいは改悪ということの内容は、現行法よりも後退ということでございます。したがって、改正によって公取の権限が縮小される、あるいは現行規定が制限される、こういう意味だろうと思うのですね。これが一つの合い言葉になっておったような感じがするわけでございます。私はこんなことがあったら大変だと思うのでございます。そこで、四十条の二あるいは四十条、さらにまた七条と七条の今度の改正の括弧書き、こんなような問題もすでにここで質問をいたしまして、総理府総務長官から答弁があり、さらにまたきのうは、私もそのときに聞いておりましたが、法制局の味村部長からも答弁がございました。そのお二方の答弁から感じられますことは、そういった気配は全くない、むしろ新しい規定の創設である、したがっていままでの権限を制約するものでは全くないという答弁であったわけでございます。いままでの私の貧しい法律知識なんですけれども、総務長官並びに法制局部長の見解の方が私は信ずべき筋があるような気がしてならないので、先生方が「公正取引」という雑誌の中に、法律学者有志の形で出されました意見書、これが私にはどうしてもわからない、この点についてお伺いいたしたいわけでございます。そこで、私は、このような法律の解釈について、あるいは法律に対する私どもの態度について、このように見解が分かれますのはそもそも何かという問題を考えてみて、ひとつ實方先生にお教えをいただきたいと思うのでございます。 七条にいたしましても四十条にいたしましても、現行法をひもときますと——この独禁法というのは御承知のようにアメリカから渡来した法律でございます。したがって、シャーマン法は御承知のように四条ぐらいしかないきわめて抽象的な規範的な法律、その中から法律を事実に適用して物事を解決するような態度ではなくして、アメリカ式に事実から法律をつくり上げる判例法的な態度であるから私は四条でいいと思う。独占禁止法はその影響を受けてきておりますから、四十条にいたしましても七条にいたしましても権限が非常に広いように見える。しかし、それはアメリカの精神を受け継いだだけで、日本には向いてないのじゃないかということをこれまで言ってきたんです。 〔前田(治)委員長代理退席、委員長着席〕 御承知のように、日本は大陸法の頭になれてきておる。つまり法律を厳密に書いて、そして事実に適用する。そして、日本は裁判ざたといって裁判をするのをきらって、判例で一つの規範をつくり上げるのをいやがる大変権利意識の少ない国民でございますから、法律というものは非常に厳密に書いていかなければ運用もできない国民性があることはもう先生御承知のとおりだと思います。私は昭和二十二年、実はドクター・ウエルチュという司令部のアンチカルテルの課長でございましたが、独禁法の専担者にいろいろ教えを受けた。私はこんなような法律規定は運用できないと言ったら、おまえらの頭ではそうであろう、こう言われました。大陸法の頭になれて、非常に厳密に書かれなければ動かせないような頭ではこの独禁法なんてわからないのだ、独禁法というのは経済という生き物を相手にするのだから抽象的に書いておいて、それを適用してみて初めてその判例法によって一つの規範ができてくるんだ、そういうことになれろということ、しかしそれでも私どもは非常に不安があるものですから、日本の独禁法はアメリカに比べれば非常に詳細なんだ、ドイツに行ったらはるかに詳細でしょう。 そういうふうに私は考えてみると、どうなんでしょうか先生、いままでの運用の態度を見まして、七条のその他の排除措置あるいは四十条の運用を見ても、これは高橋委員長が来て初めて急に活発になって運用される。それまでは余り切れ過ぎる村正であるから余り運用されてないんで、どんなことが行われているかわからない程度の運用であった。けだし独禁法は骨抜きのみならず運用において眠っておった。こんなような動かない法律であったのですが、今度の改正は、そこで自民党ははたと気がつきまして、政府も感じたが、動かせるような法律、本当に適用できる法律、日本人のような法律を厳密に適用したら初めてそれに従う、その国民性にならったために新しく規定していったと思う。そういった観点から見ると、やはり一つの進歩の方向だと思いますし、日本人はアメリカのシャーマン法的な考え方よりもこういった法律の規定の方を選択するんじゃないでしょうか。そして、その方が運用がしやすいんじゃないでしょうか。ちょっと教えていただきたい。
○實方参考人 ただいまの御質問は、端的に言いますと七条及び四十条についての改正は、これまであいまいであったことをはっきりと条文化することによって運用の手がかりができる、そういう意味で前進である、四十条の二と七条の括弧書きに関連して申しますればそういうことかと思います。 まず最初に、後退であるということが非常に主張されているということなんですが、客観的に分析しますと後退になるおそれがきわめて大きい部分があるということでありまして、私どもの趣旨はそのような危険性のある部分は、いまおっしゃいましたように非常に前進的な面もないわけではないのですが、そういう後退の危険性、これは逆に申しまして、いまおっしゃった公取の態度とも関連するのですけれども、後退の危険性のある部分はいずれにせよはずした方が問題は残さないのではないかということを言っているわけであります。私どもの趣旨はそのような後退の危険性がなくなった形で、少しでも前進した形でぜひとも今国会で成立することを強く希望する。その声明に私も署名しておりますが、一番最後のところに、国民生活を守るような、そういう国民の要望にこたえた強化としてとらえられるような独禁法改正が実現することを強く希望する、こう書いてありまして、そこが私どもの本当の願いであります。 それから、おっしゃいましたように、日本の場合は法律の条文にかなりはっきりした手がかりがなければ運用がしにくいということはあるわけであります。そして、それがまたこれまで公取の態度がかなり消極的であったことの根拠であります。端的に申しますと、七条の排除措置のところで、違法行為を排除するために必要であるというところでございますが、私どもの見解であれば、具体的な取引条件に影響を及ぼすような措置、今回の改正で事業者の自主的な決定に任せる、こういう限定がつけられている措置は七条の読み方によっても本来できるものだと考えておりましたが、条文で行為の排除ということが書いてあるので、なかなか踏み切れない、こういうことであります。したがって、おっしゃいますように、日本の運用の仕方はある程度条文にはっきり書いてなければやりにくいということがありますので、そういう趣旨で公取が前向きに独禁法を強化できるように持っていきたい、こういうことであれば、先ほど申しましたように、確認的な意味というものをはっきりさせるような改正になる方が一番望ましいことである、こう思うわけであります。結局、日本の独禁法がそういうぐあいに要件をかなり明確に書いてしまったので、どうしてもその要件の中の一番狭いところにとどまらざるを得なかった、こういうところが実態としてはあったのではないかと思います。そういうことがありますので、逆に解釈の幅はいろいろございますですね。一番前向きに読めば、七条の括弧書きにつきましても四十条の二につきましても、これまでできたことを確認するもので、後退ではないということでありますが、逆に言えば、解釈の可能性としては現行法のわれわれの解釈を狭める可能性もある。そうすると、いまおっしゃったように条文がなければできないということになりますと、一番控え目なところで実際問題としては落ちつかざるを得ない。そういうことになれば、独禁法の施行というのがかなり後退になるのではないか、こういうことであります。 それからもう一つ、四十条の二の新設及び七条の括弧書きを入れることが現行法より後退ではないということでございますが、その論理は、現行法でできることより後退でない、こう説明されておるわけですが、午前中も申しましたように、現行法でできることということの意味が問題で、現在の政府案の改正案を説明するために現行法でできるという解釈を狭めて、そこから出発して前進であるという説明をされますと、本来できると考えられたものが今回の改正を説明するためにかえって狭い解釈をとらざるを得ないということになると、こればきわめて遺憾ではないか、こう思って申しました次第です。
○塩崎委員 現行法の四十条の解釈の問題に少し入られましたが、それはこれから御質問しようと思ったところでございます。 ともかくも、私は正田先生のコメンタールも見せていただきましたし、それから独禁法の今村先生の本も見させていただきました。とにかく独禁法は、これだけ経済憲法といわれながらまだ研究が率直に言って不十分と申しますか、材料も乏しいし、法律の解釈論を読んでみましても、どうも自分の主観的な解釈のような気がいたしまして、本当の判例はこうあった、そして国民はこう訴えたからこういうあれが出てきたということはきわめて少ない。アメリカは御承知のようにケースメソッドですから、そこを読めば、こういうことをしたら危ない、こういうことをすれば助かるというようなことがそこからおのずから出てくるのです。私は、實方先生や正田先生のようなりっぱな方々がおられるのですから、これから独禁法を現法以上に発展させていただきたい。それでなかったら、経済憲法といわれながらこんなようなことでは、私は解釈は確定しておらぬと思うのです。 そこで、これから四十条に移らしていただいてもう少し御意見を賜りたいのです。 いま、現行法を狭く解釈してというお話がありました。四十条のことだろうと思います。正田先生の本は、非常に多くの場合が含まれるであろう——あるとは書いてない、あろうというふうに書いておられるので私はそんなことだろうと思う。しかし、これはどこの法といいますか、私は実は長らく税法をやらされた男でございますが、税法にも質問検査権限といたしましてある。これはしかし憲法上大変な問題があるのです。御承知のように憲法では自白の強制はできない。したがって、こういうことを質問したときに答えなかったときに処罰するということは、今度二十万円の罰金がありますね。これは憲法違反であるかという議論が絶えずあるのです。そして、ここではこの行政権限、質問検査権限を広く解釈すると皆さん方言われますが、私は、民主商工会などの税法に関する本を見ると、質問検査権限はきわめて狭く解釈すべきだ、そして私は国税通則法を制定した昭和三十七年の議論を聞いておりますが、この税法にあるような四十条と同じような規定は狭く解釈すべきであるということが盛んに言われてきたことをいま思い出します。 きのう、味村部長は「職務を行うため」とはやはり私的独占行為、不当取引制限、公正取引上という、独禁法違反のおそれがある場合に初めて発動できるので、平穏無事に暮らしておるやつにいきなり調査を命じて、質問に答えなかったら二十万円の罰金なんというような、こんなことできるはずがないと私は思いますので、味村部長の解釈は正しいと思う。ところが、今度の四十条の二は、概計で十分の七以上のシェアを持つ企業がこういうことをしたら、もう違法の疑いがあろうがなかろうが、そんなこと必要なくして、いきなり報告を求めるという権限を公取に与えた、私は創設的規定だと考える。明らかにしたものではない、そういうふうな御説明が法制局——非常に法律上の知識があります法制局の部長が言うから、私はこれは当然正しいと思う。また自由民権を尊重する新憲法のもとではその方が当然だと思う。公取といえどもむやみやたらに権限を振り回して、平穏無事に暮らしておるところに、おまえこういうことを質問しろなんて言われたらたまったものじゃないと思うのです。したがって、私はこれは創設的だという考え方でおるのです。高橋委員長はこれは宣言的だという、いま先生のおっしゃるように明らかにしたのだというお話がありましたが、罰則が二百万と二十万との差があるということ、いまのように条件が全く違っておる、そしてこれだけ議論してきた、そしていままでそんなようなことは余りやったことない。高橋委員長はいろいろこんなことがあったと言っておられますけれども、これは高橋委員長になってからやったことかもしれない。これまではそんな名刀はよう使わなかったのですから、日本人は。税法でもこの規定はありますけれどもなかなか私らもよう使わなかった経験があるのです。そうしますと、やっぱり法律ではっきりと書いて初めて権限が与えられる、こういうふうに読むべきであって、これは先生方の御意見では、権限を制限する特則としての性格を持つことになるおそれがきわめて大きく、削除することが必要であると四十条の二について御託宣を賜っておるのですが、これは私は法制局の部長の方が正しいような気がするのですが、どうでしょうか。これは第二点として御意見を、余り論争する気持ちはありませんので簡単にお願いいたします。
○實方参考人 四十条の解釈の点でありますが、四十条は非常に一般的な調査権限を条文の体裁上定めているので、これは国家権力の発動であるからやはり人権尊重の趣旨で狭く解釈するのが解釈の一般原則として妥当ではないか、こういう趣旨でございますが、これはまず解釈の手がかりとしましては、その条文上の明確な根拠というのがあるわけで、これは先ほども申しましたが違法行為が前提となっている。具体的な違法行為との具体的な牽連性、個別的な牽連性と申しますか、それがある場合には、嫌疑がある場合にはということですが、これは四十六条で調査権限が明確にしてあるわけでございます。そちらの方は立入検査等もちゃんと含まれてかなり強力である。もっとも立入検査に背いた場合はどうなるかというのは少しまだ問題は残っておりますが、これとは別個にまた同じ法律の中で四十条の一般的調査権限が規定してある。ということは、これは単に違法行為の存在というのを前提としない場合でも強制調査権限があるということを別個に規定したことによってそれを明らかにしている、現行法でございますよ、そう考える条文上の根拠があるのじゃないか。したがって、おっしゃいましたようにそういう強制調査権限を与える場合にはかなり明確な条文上の根拠がなければいけないという点につきましては、具体的な事件の調査権限とは別に一般的な調査権限があるということが根拠になるのではないかと思うわけであります。 それから、一般調査権の必要性の点でありますが、これは独禁法の運用が純粋の検事それから裁判所という本来の司法手続でやるのではなくて、公正取引委員会という行政委員会にゆだねられているということの意味を考えなければいけないわけで、おっしゃるように違法行為の類型というのはかなり明確に日本法では書いてございますが、それは経済実体に即応しまして個別的な、かなり専門的な判断というのも必要になる。それを有効に働かすためにはやはり前提としまして、産業一般、市場における競争制限的要素がどのような状態にあるかということを心得ておく必要がある。したがって、狭い意味での違法行為の摘発という意味との関連におきましても、それを有効に働かすためには行政権限としてかなり広範な調査権を認める必要がある。そしてまた、ちょっとここは大ざっぱになりますが、競争制限を除去して、そして健全かつ民主的な経済の発展を図り、なおかつ事業者の創意も図り、それから消費者の利益にもなるという、非常に国民生活を守り、それからなおかつ私的企業体制における民主的決定機構というのを確保して、そしてそれは私的企業体制を守ることにも通じるわけで、そのような非常に重要な政策目的を達成するということもあるわけで、そういう点から言えば、いま言いましたように経済的な実体に対する把握が狭い意味での自由市場的機能を発揮するために必要であるということから考えましても、やはりその四十条の調査権限というのは弾力的に読んでもいいのではないか、私はこう思います。
○塩崎委員 それは私は大変な問題じゃないかと思うのですね。四十条は、先ほど申し上げましたように憲法違反の疑いすらある。そこで、行政上私は非常に慎重にやっておるのですよ。それを事独禁法になったら広く解釈する。警察でこれを適用されたら大変でしょう。警察はいろいろ必要のために、犯罪調査のために、こんな規定を適用されたら大変なことになる。それは昔の警察国家になる。税務でも、資料があっても、申告が済んで初めて、これは脱税になっているかどうかというようなときじゃないと呼び出しをかけないくらいの慎重さを持ってやってもらわなければならぬという解釈なんです。これは私は学者が大事にしてもらわなければならぬ大変な規定だと思うのに、事独禁法になりますと野党の方々と一緒にえらい広く解釈する。ほかの方へ行ったら急に狭く解釈する、こんなことは私はあり得ないと思うのですね。(発言する者あり)
○山村委員長 御静粛に願います。
○塩崎委員 そこで、ひとつ最後に、いろいろと私は考えてみますが、いま私どもは総務長官、さらにまた味村法制局部長の意見が正しいと思う。しかし、先生方はそういった解釈をする。それで、先生にこの削除でお聞きしたいのは、先生は削除すべきである、こういうふうになっておるわけですね。そして、板川先生なんかは非常に悩まれて、削除すべきか残すべきかというような御質問までされている。しかし先生、これは削除したらどんなことになりましょうか。私はまたその後始末が大変なことだと思うのですね。こういった解釈がある、こういった解釈がある、そこで削除した。そして、いまの四十条の二の同調的値上げに対する報告が当然求められるかどうかは、これはやはりよほど議論して削除しないと始末がつかない、動きがつかないのじゃないでしょうか。いや、それはもうやらなくていいというのならまたそうなんですが、そんな点で削除されるというのなら、先生方の解釈が正しいということを確定してから削除しなければならぬのですが、これは法律の解釈は裁判所まで行かなければわからないものでしょうね。したがって、最高裁判所の判断にゆだねるしかないと私は見るのですけれども、しかしこれはやはり立法者の合理的な意思を探求するのが私は法解釈の問題である、最高裁判所というよりも立法者の合理的な意思を探求する、そういう考え方に立てば、これはよほど議論しておかなければならぬと思うのですが、削除したらどういう効果がありましょうか。法制局の有権的な解釈、立法者でありますところの総務長官の解釈も同じことなんです。創設的な権限付与規定である。こういったときに削除したら、果たして四十条でこういった規定ができるかどうか、ちょっと法律的にお答え願いたい。
○實方参考人 いまの点でございますが、削除した場合に立法者の意図が尊重されるということですが、これは多少三百代言的になりますが、この立法者の意図は改正案についての立法者の意図で、現行法についての立法者の意図ではないということで、それによってその改正案が流れたことによって現行法の解釈が左右されるということには、これは解釈のテクニックとしてはそうならないのではないかと思います。 それから、いまの改正案についての総理府それから法制局の見解が、現行法についても有権的解釈ということになれば、それはまさにその改正をすることによって、実際にこれまで公取が行ってきたような権限、管理価格調査とか、先ほど御紹介になった二重価格調査、これが違法であるということを立法によって確認するということにもなるわけでございます。おっしゃいますように、一般的調査権限でございます。それで要件は「その職務を行うため」と非常に緩やかな一般条項的に書いてございますから、もちろん実際の適用の場合に当たっては慎重にしなければいけない、それはおっしゃるとおりでございます。だから、簡単に発動できるものではない。したがって、同調的値上げの場合のように要件を確定しまして、この際は職務を行うにつき必要であるか否かの点についての判断をしないでも、少なくとも報告は聴取できる。その限りでは前進とは言えないことはないですけれども、しかしそういう四十条の二をつくるために、それを説明するために、まさに立法者の意図として、これまで行われたようなことが違法であるということをここで確認するということになれば、これはこれまでの公正取引委員会の行ってきた独禁法の施行の強化に向けての努力をここで覆すことにもなるわけでございます。もちろん、おっしゃるように四十条の適用、発動、すなわち個別的な事例についてそれが職務を行うために必要であるかどうかの判断は慎重にしなければいけないのは当然でありますが、かなり広く解釈できるのではないかというのは、先ほど申し上げました根拠からとれるのではないかと思います。
○塩崎委員 ありがとうございました。
○山村委員長 武藤嘉文君。
○武藤(嘉)委員 参考人の皆さん、どうも大変お疲れさんでございます。私が最後でございまして、短時間で終わりますので、もう少し御しんぼうをお願いしたいと思います。 そこで、まず細かい問題、先ほど来承っておったことで少し詰めさせていただきたい問題点を申し上げさせていただきます。 まず、竹内先生にお願いしたいのでございますが、先ほどいわゆる構造規制、営業の一部譲渡で、主務大臣との協議が調わなかった場合、また主務大臣との協議の問題と関連いたしまして、公取が審決をした場合に、それを今度は商法二百四十五条との関係でございますが、商法における株主総会の特別決議との関連において、たしか實方先生は、必ずしもそれに余りとらわれなくてもいいというような御意見がちょっとあったんじゃないか。それから、正田先生は、これは企業の内部の問題であろう、だから社会的に制裁を受けるんじゃないかというようなお話でございましたし、松下先生は、場合によっては公法が私法に優先するということもあり得るんだからというような表現がちょっとあったんではないかというふうに私聞いておったのですが、竹内先生は商法の専門だと承っておりますので、その辺、商法の二百四十五条との整合性、片っ方で審決——先ほどの正田先生のお話で同意審決の場合はいいのでございますけれども、そうでない場合、それに審決がなされても片っ方において株主総会で否決をした場合一体これはどうなるか、その辺について竹内先生にお話を承りたいと思います。
○竹内参考人 営業の一部譲渡の審決がありまして、そのあとで株主総会の特別決議が本来要る場合に、これをやらなくてよいというような議論は成り立たないというふうに思います。と申しますのは、営業は譲渡するにいたしましても、一体幾らで譲渡するのかというようなことは、これは株主の最も基本的なことでございますから、当然株主総会の決議にかけなければならない。 それから、株主総会の決議にかけるべき営業の重要な一部の譲渡というのは何であるか、これは先ほど営業全部の譲渡に準ずるというようなお話がございました。その準ずるというのも幅がございますから、どこまでが準じているのか、これは詰めて考えなければなりませんけれども、ごく一般的に申しまして、たとえば営業の三分の一のウエートを占める、あるいは五分の一のウエートを占めると、私は二百四十五条の重要な一部の譲渡であるという解釈がなされる可能性がきわめて大きいというふうに思っております。これも先ほどの塩崎さんの御質問とも関連するわけですけれども、事を決めますのは裁判所でございまして、私がそういうふうなことを申したからといって何の値打ちもあるものではないということは先ほど申したとおりでございます。しかしながら、私はそういうふうな裁判所の判断がなされる可能性は大きいであろうというふうに予測しております。 そして、のみならず取締役としてはそれが後から裁判所によって、株主総会の特別決議を経るべき場合であったということが明らかになった場合には、当然法令違反行為をしたものとして会社に対して二百六十六条による責任を負うことになります。したがって、取締役としてはそういう審決が出た場合には安全を見込んで株主総会の特別決議を得ておこう、三人の弁護士に聞いたけれども、一人がちょっと首をひねったというような場合にはやはり特別決議を得ておこうと考えるのは、これは当然のことであり、しかもそれは株主総会を尊重するというたてまえから言って、それ自体非難すべきことではちっともないというふうに考えるわけでございます。 そこで、問題になりますのは、その次に株主総会の決議によってそれが否決されてしまった、そうすると、それが公取委の審決がどうなるか、これは正田さんのおっしゃるように、公取委の審決を無視したら会社としては社会的な自殺行為だということは、これは確かにそのとおりかもしれません。しかしながら、社会的に自殺行為であるから、法律的に自殺させなくてもいいという理屈はないわけでございまして、法律はあくまでも社会的な制裁とは別に制裁を加えなければならない。その制裁の手段としてどのような方法があるかということでございますけれども、私は基本的にはこの場合取締役としては議案を株主総会にかけて、そうして公取委の審決をいただきました、したがって株主総会で御承認願います、値段も合理的であると思いますと言って説明して、最大限の努力をしたのに、株主がいやだと言った。これはもう代表取締役としてはなすべきことをすべて尽くしているわけでございます。したがって、その場合に代表取締役の個人責任を追及するというのはいかにも不合理ではないかという感じがするわけでございます。それじゃ、どうするか、結局企業それ自体に対して法的な責任を問うしかないのではないか。その意味では正田さんのおっしゃいましたように、企業自身に対する命令であり、したがって企業の内部手続であるという点は私も全く同感でございます。ただ、それを社会的な制裁という段にとどめないで、法的な制裁を加える必要があろう。そのための法的な制裁というのは、結局その一件当たり五百万円というふうな罰金では、こんなの罰金払って無視しましょうかというふうに考えるのはあたりまえのことでございまして、そういうことをさせないためには無視した方が損だというだけの罰金をかけなければならない。そのための手段としては、その公取委の審決を無視したら一日についてたとえば一千万円というふうな罰金をかけるのが妥当ではないかということを私は前にどこかに、新聞でしたかに書いたことがございます。そういう考え方は何も私が突如として申しておるわけではございませんで、すでに労働組合法でございますかには、そういう規定がございます。労働委員会の命令無視でございますか、そのときには一日につき十万円というふうな規定があるわけでございまして、一日幾らというふうな形でかけていくということにすれば、法律的に履行を担保するということは可能であろうというふうに思います。 ただ、そのためには、審決が出たからと言って、大会社の営業譲渡なんというのは簡単にできるわけではございません。第一、譲り受け人が出てくるかという問題だってあるわけでございまして、その公取委の審決を受けて社会的に指弾されているような大企業を、おれが譲り受けてやろうなんて申し出るのは、まさに首つりの足を引っ張るみたいな行為でございまして、その命令を受けている企業、それから関連企業、融資先、従業員、労働組合も含めて、これからは憎まれ者になるのは目に見えているわけでございます。したがって、そういう者が簡単に出てくるとは思えませんだけに、相当の期間を用意して、その間に準備しなさい、その期間については私は十分な余裕を見るのが妥当であろう。しかしながら、その期間がたってもなおやらぬ、そしてそれは合理的な期間を無視してサボっておるんだというふうにしか見れない場合にはもう仕方がない、一日につき幾らという形の罰金を企業自体に課してでも実効性を担保するという以外に方法はないのではないかというふうに思っております。
○武藤(嘉)委員 そういたしますと、この改正案でも罰金五百万が最高ですが、いま先生のおっしゃるように罰金をかけるより仕方がないということであって、いまのようにどうしても株主総会では否決される、幾ら努力しても否決される、だからその命令は実行できないんだという場合には、営業の一部譲渡そのものは、これは実行できない、こういうことになるわけですね。それはそれでよろしゅうございますか。
○竹内参考人 ですから、営業の一部譲渡そのものができないような形で、つまり株主総会が否決しさえすれば五百万円払って、はい、さようならというようなことが独禁法における営業の一部譲渡の内容ですということで、国民をだましたことにならないのかという問題は当然あるわけでございまして、営業の一部譲渡という規定を置いたのなら、あくまでそれを法律的に守らせるための、いま申しましたような制裁規定を置いて、ともかくつぶれるまで罰金払う覚悟でじゃあ抵抗せいというだけの度胸を決めた規定を置かなければ、営業の一部譲渡の規定を盛ったことにならないのではないかというのが私の申し上げたいことでございます。
○武藤(嘉)委員 次に、松下先生に承りたいのでございますが、同調的値上げの問題に関連して、これは先ほど来議論のなされておる四十条の二でございますが、これを削除しちゃって、そうして寡占規制法でございましたか、寡占規制法というような法律でやったらどうかというようなお話がありましたが、私は寡占規制法というのは、将来これはつくるつくらないは別といたしまして、もしそういうような考え方であるならば、寡占規制法というものをつくるとするならば、構造規制である営業の一部譲渡も当然寡占の状態のときに起きる問題でございますから、私は同調的値上げだけじゃなくて、構造的規制である営業の一部譲渡もこれは寡占規制法の中へ含めるのが法体系としていいのじゃないか、こう思うのですけれども、その点いかがでございましょう。
○松下参考人 いま御質問の点でございますが、イギリスの法制はいま先生がおっしゃったようになっていると私は思います。そういうことなんですが、私はやはりこれは一応別に分けた方がいいのではなかろうかという気がしております。と申しますのは、やはり市場経済を維持するという競争原理に基づくものと、それから市場経済が限界に突き当たって市場のメカニズムが働かなくなった、こういうことを前提にする法律とはおのずから規制の仕方が違ってくるのではなかろうか、こう思うわけであります。 そこで、同調的値上げの報告ということでございますが、本来もし競争が機能し得るのであれば、競争メカニズムによって同調的値上げが抑制される、こういうことだと思うわけですね。そこで、それに対処する競争政策手段というのは、やはり構造規制ということになるのではなかろうか。これが現在の法案における営業の一部譲渡、こういうところがそれに該当するところだと思うわけですが、これはこれでやはりやった上で、しかしながら現実問題として構造規制が非常にむずかしいという場合を現実論としてはやはり考えざるを得ないと思うわけですね。この場合に備えてその後に来るものとしてやはり経済力乱用規制あるいは弊害規制という考え方に基づく規制をする、この方が私は体系としてすっきりしているのではなかろうか、こういうふうに思うわけです。 ただ、先ほども申しましたように、イギリスなどの法制を見ますと、どっちもできるようになっていて、実際は弊害規制だけやっている、こういうふうなことになるわけでございますね。そこで、やはりこの点では体系上の矛盾というのはあるのではなかろうか、こんな気もするわけです。つまり原理という点で体系上の矛盾があるのじゃなかろうかという点で、独禁法の中に置くか、寡占規制法というのをつくって置くか、これは別としまして、とにかく二つの異なったプリンシプルがある。異なったプリンシプルの規制があり、それの相互の関係を整備する、こういう意味から一応私は別の方がいいのではなかろうか、こんな感じがしております。
○武藤(嘉)委員 最後に、正田先生に承りたいのでございますが、この法律とは関係ございませんけれども、正田先生は非常にドイツを研究しておられますが、私どももドイツに行きまして経済省とカルテル庁との関係が非常にスムーズにいっているという感じを受けたわけでございます。それと比べると、どうも日本の経済官庁と公取委員会というのは余りにもどうも何かおかしな感じになっておる、お互いに不信感を持っておる。今日の経済政策の中でいま独禁法がいろいろこう議論されておりますけれども、私はこの議論されている中で何かそういう不信感的なものがあって、それがよけい大きな何か問題にもなっておるのじゃなかろうかという感じがするわけでございます。そこで、一体西ドイツの経済省とカルテル庁との関係、日本の経済官庁と公取との関係、率直に言ってどちらがいいと正田先生が思っておられるか、ちょっとそれを私は承りたいと思います。
○正田参考人 どちらがいいというお答えだけ申し上げる前に、少し説明をさせていただきたいと思いますが、西ドイツの場合にはカルテル庁の判断はカルテル庁の各部が独立して、これは長官のコントロールも効かないような形で各部が独立した判断をしております。しかしながら、一方においてカルテル庁と経済省の関係は非常にスムーズにいっております。 その理由はどこにあるかということを申し上げますと、経済省を含めまして競争秩序の維持、さらに支配力のチェックということに関して経済省が全体としてそれを基礎に置いた政策を進めているということが言えるわけであります。経済省が全体として経済体制の基礎に競争秩序の維持あるいは支配力のチェック、こういうことを前提にして政策を進めておりますから、場合によりましては経済省の方がカルテル庁よりもより競争秩序維持的であるということでありまして、そういう点で一定の基本的な前提を踏まえたという形で両者が結びついているということが言えると思います。形式的にはカルテル庁は経済省の外局でございますけれども、外局とはいえ、そのそれぞれの判断は独立しているという点は非常にはっきり独立しているということを申し上げておきたいと思います。 日本の場合に果たして西ドイツの場合のように産業官庁、たとえば通産省が、競争秩序の維持と支配力のチェックということについての共通の意識ないしは共通の基盤を持った上で産業政策を進めておられるかという点になると、必ずしもそうとは言えない面があるやに伺っております、あるいはそう感じております。そういう意味で、一つの経済法制なり経済政策の基調に、さっき申し上げました競争秩序の維持あるいは支配力のチェックということを共通に持てば、これは競争秩序維持政策が基調になり、その上に産業政策が具体化して展開していくという西ドイツ式の姿が具体化してくるのであろうと思います。 どちらがいいかと申しますと、現状においては、私は、競争秩序維持ということを基調に置いた上で、カルテル庁あるいは経済省が共通の基盤に立っているという点が見られるという面で、西ドイツのような形が望ましいのではないかと考えております。
○山村委員長 以上で、参考人に対する質疑は終了いたしました。 参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。 参考人各位には御退席いただいて結構でございます。(拍手) —————————————
○山村委員長 引き続き、政府に対する質疑を行います。 質疑の申し出がありますので、これを許します。林義郎君。
○林(義)委員 ここに一つのおもちゃがあるんです。ごらんになっていただきたいと思いますが、これは昨年の夏、自民党の独占禁止法の調査団でアメリカに参りましたときに、私子供に頼まれました、アメリカでゲームを買ってきてくれと。ニューヨークのおもちゃ屋に行きまして、いま一番売れているおもちゃは何だろうか、一番売れているゲームは何だろうか、こういうふうなことを売り子に聞いたんです。そうしましたら、持ってきましたのがこのアンチモノポリーというおもちゃです。昨年来日本でも大変独占禁止法の改正の風潮が強くなってまいりました。また、これはアメリカでも同じことだと私は思うのです。これは具体的にアメリカの国内で大企業の支配に対するところの庶民の違和感、反発というものが出てきた具体的なあらわれではないかと私は思うのです。むしろこれは世界的な私は潮流だと思います。アメリカでも昨年独占禁止法の改正、罰則の強化というのが行われまして、五万ドルを百万ドルにしました。西独でも四十八年の八月に競争制限法の一部の改正が行われました。いま日本でもこの問題に取り組んでいるところであります。また、これはぜひやらなければならない大問題だと私は思います。 ところが、私は一つあえてこの際お伺いしたいのでありますけれども、この問題は大変むずかしい問題を含んでいる、また世界に類例のないような規定も随所に見受けられるのであります。福田副総理がいみじくも答弁されましたように、世論の最大公約数的なものであるということであります。独占禁止法は、自由主義経済のための経済憲法とも言われるような法律でありますから、自由主義国家群の共通の法的規範になっていくことというものは考えていかなければならない問題であります。少なくともそのためには、この法律は理論的にもまた実際的にも十分説明のつくようなものでなければならない、こう私は思うのであります。特に日本は日本国憲法というきわめて自由主義的にして民主主義的な憲法を持っております。そのもとで独占禁止法をどうするかということも私たちは謙虚に考えていかなければならない問題だと思うのであります。私は実は、いろいろと言われておりますけれども、別に私の出身である通産省であるとかなんとかいうことを言っているんじゃないんです。また、属しているグループがどうだとかこうだとかいうことじゃないんです。謙虚に私は一政治家として、三木さんが本会議で答弁されましたように、自由経済を守り抜こうとしている私としては、この際自由経済に公正な基本的ルールを整備していくことが自由経済の基本、基盤を強化することであるという基本認識を全く同じにするものでありますから、そういった立場で御質問をいたしたいと思うのであります。 この質問をするに当たりまして、先ほど来野党の諸君からも御質問がいろいろとありました。昨日もありましたけれども、昨日も最後の質問は途中で終わったようなことであります。野党の諸君からもお話がありましたように、これは非常にむずかしい問題です。いままでかつて商工委員会でやったことのないような解釈のむずかしい法案であるということであります。そういった意味におきまして、私は十分なる審議はやはり尽くしてもらいたい、こう思うのであります。ひとつ委員長にこの辺をぜひお願いをしておきたい、よろしゅうございますか、委員長、お答えいただきたいと思います。
○山村委員長 十分慎重に審議をいたします。
○林(義)委員 ありがとうございました。 それから、昨日の質問を私はずっと聞いておりました。私聞いておりますと、政府の方で法案についての一致した努力というものがどうも私は感じられないのであります。それは何かと申しますと、昨日の答弁なんかでも出てまいりました。私が見ておりましても、公正に言って意見がどうもはっきり食い違っているところがある。やはり法案を政府として出された以上は、政府の諸君はやはり一致してその努力をしてもらわなければならない。私は当然のことだと思う。それがどうもその努力が認められない。御答弁の中にも、何かどちらでもいいような、また改正をすべきでないか、修正をすべきでないかというような御意見が随所に見られるのであります。私は、一体これはどういうことになっているのかということをきわめて疑問に感ずるのであります。 そこで、私まず一つお尋ねしたいのです。公取の委員長というものは、委員もそうでありますが、独立した職権を行うと法二十八条には規定しております。これはその独占禁止法の解釈につきまして、委員長及び委員は政府の公的解釈、すなわち内閣法制局の解釈から独立した解釈権を持ち得るものと解すべきだと思うけれども、一体どうなんでしょう。法制局どうですか。
○味村政府委員 公正取引委員会は独占禁止法の運用を行う機関でございます。運用を行うに当たりましては、独占禁止法の各規定の解釈をしなければなりません。したがいまして、解釈をするということは運用の前提ということになるわけでございますが、公正取引委員会は独立してその権限を行うということになっておりますので、独占禁止法の解釈につきましても、公正取引委員会は独立してその解釈権を行使するというように考えます。
○林(義)委員 そうしますと、内閣の法律解釈というのは最終的には内閣法制局が持っておられる、こう思うのです。それと違った解釈というものが、独立してこの職権を行うのですから、公正取引委員会にあると、こう解してよろしゅうございますか。
○味村政府委員 そのとおりでございます。
○林(義)委員 そこで、解釈は違ってよろしい。ところが、法案を提出するに当たりまして、改正案でございますからいままでの法律につきましてのある程度の解釈の統一がなければ、一つの条文を書いて、この条文をどう解釈してくるかというようなことにつきましては非常に問題が出てくるのであります。昨日来大変問題になっておりました四十条と四十条の二の規定、その規定の問題につきましては、やはり非常に解釈が分かれておる。きょうの参考人の質疑におきましても、私は、解釈がはっきりと分かれていることが明らかになってきたのではないか、こう思うのであります。それで、そういった意味におきまして、どうも昨日来聞いておりますと、公正取引委員会の委員長は、四十条の二は本来四十条の中に含まれる事項を宣言的にもう一遍念のために繰り返して書いたんだと、その程度の話であると、大体言いますとこういうふうな解釈。ところが、内閣法制局の方はそうではなくて、四十条はその職務に関していろんな調査をすることができると、こう書いてある。その職務というのは独占禁止法に基づくところのいろんな事件、違反事実であるとかなんとかというようなものについて行うのである。これはいわば創設的な規定、新しいものを一つつけ加えるという考え方であります。四十条の二は新しいものをつけ加えるという考え方であります。これは明らかに解釈の違いで、この解釈の仕方によりましてどちらの解釈をとるかによりまして、四十条の二の規定が必要になるか、またその効果を持つかという点があると私は思うのであります。そういった点につきまして総務長官は本会議でも答弁されました、明らかに創設的な規定である、こういうふうにおっしゃいました。やはり法案を出していただくときには、公取委員長も一緒になって立案の作業をされたんだと思いますし、緊密な連絡をとられたということでございますから、その辺の解釈は一致をしてなければならない問題だと思いますが、総務長官それはいかがでございましょうか。
○植木国務大臣 仰せのとおり、法案作成に当たりましては各省庁と協議を重ねまして、またこの法案を国会に提案するに当たりましては、公正取引委員会の事務局で起案をいたしまして、公正取引委員の決裁を経た上総務長官の手元に参りまして、これを内閣総理大臣が閣議請議したという手続を踏んでいるわけでございます。したがいまして、この法案作成の過程におきまして事務的にも立法の趣旨について十分の協議が行われてまいっております。 四十条の規定と四十条の二の規定という問題でございますけれども、これにつきましては、単に同調的値上げの形をとっているという事実をもっては直ちに独占禁止法上問題とするということは四十条では困難でございますので、したがって改正法四十条の二によりまして、四十条の権限を縮小させないで規定の新設を行いまして、同調的値上げの要件を満たしている場合直ちに値上げ理由の報告を徴し、かつ国会への年次報告を通じてその概要を示すということにしたわけであります。
○林(義)委員 この問題は後でやりたいと思いますが、私はもう一つ申し上げたいのは課徴金の問題である。昨日の御答弁では、公正取引委員会の委員長の方は、こんなことではとても事務的にだめである、不可能であると、こういうふうに言わんばかりの御発言でございました。私は、その辺は総理府の方とも事前には十分お打ち合わせの上で、そういったことはできるからこれでやるんだと、できないようなものを法案を出してくれてもらっては困る、こう思うのです。そういう意味で、一体公正取引委員会の委員長はどういう立場でいろいろとやっていられるわけですか。政府の法案の提出につきましてはやっぱりサインはしておられるだろうと思うのです。公正取引委員会の委員長がサインをされないでこの改正案が出てきたんじゃないんだろうと私は思うのです。「内閣総理大臣の所轄に属する。」と、こう書いてある。政府の一員であることは間違いない。政府の一員として、政府が出した法案についてけちをつけられるんだったら、出す前にひとつけちをつけてもらわなければならぬ。この辺はいかがなんでしょう。公取委員長どうです。
○高橋(俊)政府委員 たとえて言えば課徴金の問題につきまして、私どもは協議はしておりますけれども、十分これでやれるんだという自信を持っておったわけではありません。しかし、法案を国会に提出するに当たって、私どもは、いわば本当の意味では提案の最後の決定には参画できないわけです。これは閣議で決定するわけでございます。私どもただ、当然関係者として、公取としてそれに対して、その前提として判を押すということはしているわけです。しかし、だからそれは全部賛成であるということに必ずしもならないと思うのですね。それは、そうしておったら国会にも出ないわけです。私どもがあくまでこれはだめだ、だめだと言っているだけでは、国会に提案されることもない、日の目を見ないというわけでございます。そういう事情もございますから、たとえ多少不本意な点がありましても、私はそれはサインをするものだと、こう考えております。全部自分の思ったとおりにならなければ押さないというふうなものじゃなくて、多少不満があって問題点があっても、それはやはり私は法案として国会審議にゆだねるということが必要ではないか、大切なことではないかと考えました。そういう意味でございますから、それはなるほど政府の一員である以上、出したものに対して何か不満があるというふうなことを述べることはけしからぬじゃないかと言われればそのとおりでございます。が、私どもとしては、たとえば事務的にできないようなところは、あくまでこれはできないと申し上げるよりほかないということでありまして、そういう資料は本日提出済みのはずでございます。
○林(義)委員 それは少しおかしいですね。事務的にできないようなものを、それでは政府の方はお出しになったのですか。
○植木国務大臣 事務的にできるかできないかということにつきましては、法案を作成いたします過程の中では、まだどれだけの数のものを何日間で何人の者がこなすのかということは、十分に把握をされない状況でございました。ただ、私どもといたしましては、たとえば課徴金でありますけれども、公正取引委員会にさらに負担をかけることになるという認識は持ってはおりましたけれども、できるだけ簡明にすることによりまして、これで公正取引委員会は運用はでき得るという考え方で提案をしたのであります。
○林(義)委員 総務長官の御答弁と公正取引委員会の委員長の答弁と明らかに食い違うのです。 副総理、お尋ねしますけれども、やはり内閣というのは一体性を持って行政事務を執行してもらわなければならないだろう、公正取引委員会もやはり内閣総理大臣の所轄に属するわけでありますから、やはりそれは一体となってやってもらわなければならない。それを公正取引委員会の方が、内閣というのじゃしょうがない、判を押すわと、こう押しておいて、後になって出てきて、いやこれはどうだ、こうだというようなことでは、これは内閣の中の意見不統一だと言われてもしようがないのじゃないかと思いますが、いかがでしょう。
○福田(赳)国務大臣 これは政府が責任を持って御提案を申し上げておるわけなのです。その間におきましては、広く各界の人の意見も聞く。また、もとより公取委員長の御意見も聞いて、これが最善であると、こういうふうに考えて御提案をし、御審議を願っておるわけでありまして、その間、経過的にいろいろ御意見などの違う点も、それはもうあったでしょうが、提案をされた以上は一体となって、これが成立を期し、またこれが実行に当たる、こういうことでなければならぬ、こういうふうに存じ、またそのようにいたしたいと存じます。
○林(義)委員 まさに副総理のおっしゃるとおりだと私は思うのです。内閣として一遍提案した以上は、内閣として統一した見解で国会に当たってもらわなければ、とてもこんな審議はできないと私は思う。あっちへ行ったら、いやこれは十分事務的にできますと、こう言う。一方に行ったら、いやそれは事務的にはなかなか大変で事務量が増加されましてどうだとか、こんなこと言われたら、われわれとてもこんな審議はできませんよ。党で私もずいぶん長い間かかって審議しました。はっきり申します。審議しましたよ。そのときの考え方とまた違っていることがあるのです。いろいろな考え方がくるくるくるくると変わってこられたのでは、審議のしようがないではないですか。基本的な考え方をどうするかということを、まずはっきりしてやってもらわなければならないだろうと私は思うのです。 副総理、お急ぎのようでございますから、副総理に対する質問だけ先——私、いまの問題はずっと後でまたやりたいと思いますから、副総理に対する御質問を先にいたします。 自由主義経済を守る、こういうことでありますけれども、アダム・スミスの言を言うまでもありませんけれども、売り手間の競争と買い手間の競争で、その間に何らの制約がなくて、神の見えざる手によって取引がされて、需要と供給によって物の価格が定まる。その結果、資源の最適配分が確保されるということが、これが典型的な自由主義経済のイデアールティープスというか、典型だと私は思いますが、この考え方は、副総理いかがでございましょう。御同感ですか。
○福田(赳)国務大臣 アダム・スミス流の自由経済主義、これは私は前提があると思うのです。つまり人間が神様のような純粋な人であるということだろうと思うのです。ところが、現実の人間社会というものはそうでもない。自由というものは、本当は他人にも自由があるのだ。民主主義というものは、他人の立場、これも認められるというそういうことだ、自由民主主義というものは、これはもうエゴであってはならないのです。やっぱり他人を意識し、他人の立場、他人の権利、他人の自由、これが尊重されるというところに初めてみずからの主張、みずからの立場、みずからの自由、みずからの権利というものが許されるのだ。それは私は人間の倫理だと思うのですよ。その倫理というか道義というか、それが置き去りにされて、エゴのみが先行するというような形で、この自由経済というものが運営されるということになれば、これは非常に間違ったことになる。ですから、アダム・スミス流の自由というものをもう少し厳格に私は考えたいのです。自由にして公正なる取引、これが自由主義経済の基本である、こういうふうに思います。
○林(義)委員 私は、今回の改正案で一つ基本的な考え方、そこからお尋ねしておきたいのです。 単に企業の規模が大きいから、そのこと自体が悪だという考え方ではないと私は思うのです。いま公正とおっしゃいましたけれども、要するにいろいろ人に対して悪影響、公正を害する、人に対する悪影響を及ぼすから悪だ、こういうふうに考えていいんじゃないか、私はこう思うのです。これはやはり基本的な考え方でありますから、大きいこと自体が悪だ、こういう考え方は、私はないと思いますが、いかがでしょう。
○福田(赳)国務大臣 私もその点は全く同感ですね。企業がある程度その規模を持たなければ、これは能率のある活動というものはできません。生産性の上昇というものは小さい規模からはそうやすやすとは生まれてこない。ことにわが国なんかの立場になりますと、潜在的経済力というものが非常に弱いです。その弱い日本が世界経済の中で活躍をするということになれば、やはり企業の規模というものは拡大して、そうして能率を高めるということをしなければならぬような立場にある。私は、企業が大きいがゆえにそれは悪だという考え方はとらないのです。つまり先ほど申し上げました公正な活動、これが問題なのであって、大きなものが不公正な行動をとるということになれば、その与える害悪は非常に大きいです。そういう角度から、私は企業の規模というものは着目せらるべきである、こういう考えでございます。
○林(義)委員 石油危機以来、大変な日本経済の変革の時代に入ってきていると私は思うのであります。低成長時代というか、安定成長時代を迎えようとしているということは、だれも否定しない事実だと思います。かつての高度成長の時代に経済白書でいろいろとこう書いておりましたけれども、寡占問題を書いておった、そのときに協調的寡占、それから競争的寡占というものを分けまして、競争的な寡占であるならば相当大きな企業で技術革新とかいろいろありますから、これはいいんだ、協調的、ビッグビジネスが、お互い同士が相談し合ったり、いろいろ裏で暗黙の話し合いをしたりなんかするというようなことがむしろいかぬのだ、こういう考え方でエコノミストは分析しておられるのですね。私は、いまの段階でやはりこういつた協調的な話し合いをするとか、話し合いをしないとかいうことにかかわらず、そういったものについてやはりメスを入れなければならないのではないか、こう思いますが、この辺は経済企画庁長官としていかがでございましょう。
○福田(赳)国務大臣 まあ人間の世の中にはやはり競争ということがなければ成果も生まれないし文化の花も咲かない、こういうふうに思うのです。やはり競争ということは非常に大事だ。それが逆に徒党を組んで、そして競争を怠るというようなことになると、これは憂うべき状態になる、こういうふうに思うのです。私が先ほど公正なる競争ということを申し上げましたが、やはり公正なる競争ということは、この自由なる社会を支える大きな柱である、基本的な柱である、そういうふうに考えます。
○林(義)委員 もう一つお尋ねしまして終わりますが、労働問題の認識でございますけれども、日本は世界に珍しい終身雇用制という形をとっている国であります。いままで日本経済が成長してきましたのは、経営者、労働者というのが一体となって働いてきたということを言われておるのです。特に熟練労働者につきましては企業への帰属意識が強いということを言われておりますが、アメリカ、ヨーロッパなんかでは企業への帰属意識というものは余り労働者の中にはないのであります。この問題につきまして、一体副総理は、日本はこれからアメリカ型の労働者はどこへでも行ってよろしいというかっこうでいくというふうにお考えになりますか、またこの方が望ましいとお考えになりますか、あるいはやはり日本のいままでの終身雇用型というものが続いていくだろうというふうにお考えになりますか。どういうふうにお考えになりますか。
○福田(赳)国務大臣 私は終身雇用制の体制下の経済社会に生きている者で、別にそれでそう支障を感じないものですから、余りその是非について考えたことはありませんけれども、アメリカのようなああいう企業というものの意識のない経済社会、余りこれは感心しないように思うのですがね。私もなお考えてみます。考えてみますが、いまこの瞬間、私はわが国の終身雇用制という体制に余り悪い点がある、こういうふうには感じませんです。
○林(義)委員 副総理、何かお忙しいようでございますから、どうぞ御退席いただいて結構でございます。 四十条の問題に移りたいと思います。副総理帰られるというから、先に前置きだけちょっと聞いておきましたけれども、後でその問題は続けて質問いたします。 この四十条の二の改正規定でありますが、これは自民党の独占禁止法調査会で長い時間をかけて検討した一つの条文でありまして、当初、公正取引委員会の試案が出ました。昨年の九月じゃなかったかと思いますが、高橋私案というのが出た。そのときには寡占業種の同調的引き上げについては原価の公表を求めるという規定がありました。この場合には、全国紙等の単品についてはさておき、複数の商品を製造しておる場合に一つの企業がなかなか原価を決めることがむずかしいんだという技術的な困難がある、こういうふうな理由でなかなかむずかしいんではないかということが言われておったわけであります。かわって独占禁止法の改正政府素案が出まして、その辺から総務長官いろいろとおやりになったんだろうと思いますが、最初には、価格等の引き上げの理由の報告を公取委は求めることができることとし、さらに国会への年次報告で値上げの理由の概要及びそれについての公取委の見解を説明することができることとする、こういうふうな案だったと思うのです。 そこで、いろいろ議論がありましたけれども、公取委の見解を示すことは公取委が値上げの理由を詳細に調べることに陥りやすいし、企業への介入の度を深める根拠を与える、そういった意味で削除すべきであるという意見がありましたし、また、いろいろ最後に議論されましたときには、値上げの理由は、たとえば新聞がときどき値上げを発表します。この前も千二百円から千七百円に発表しました。諸資材が高騰しました、人件費が上がりました、販売店の何が上がりました、こういうふうな理屈が書いてあるだけで、別に中は何も書いてない。あの程度で足りる。それ以上の介入を行わないという大体了解で、この条文ができ上がったというふうに私は了解をしておるのです。ちなみに、ここで言っていますところの「基準として用いる価格」というのがあります。これは建て値があった場合には建て値を言う、それがなかったらそれに類するようなものを言って、決して実際の取引価格とかリベートとかマージンとか引いてやったような価格には触れないという話で私は了解をしておるのですが、この了解、総務長官間違いございませんか。
○植木国務大臣 それで結構でございます。
○林(義)委員 実はこれはこんなことでは実際余り意味がないじゃないかという議論もあったんです。私は、余り意味ないといっても議論をした覚えがあるのですが、こういった公取に価格報告を命じられるだけで、公取から何か言われたということでその企業は社会的批判を受けるだろう、そういった社会的批判ということで心理的圧迫を企業に加えるという点で意味があるんだ、こういったことで大体この規定は置くことになったわけであります。ところが、どうも国会へ出てまいりますと、さっきの話じゃないけれども、もう全然違った御答弁がなされている。いや、この規定を使えば、単品原価の問題につきましては、前の原価公表と同じようなこともできるんだ、こういうふうな話であります。これは私は非常におかしなことだと思うのですけれども、そういう御答弁をされた方はどういうふうな形で——いまの私の了解と全く違うことを御答弁されておりますけれども、政府の見解はどういうことになっておるんでしょうか、御答弁をください。
○高橋(俊)政府委員 私は、四十条の二を使えば単品原価の徴求ですね、調査もできるし、その年次報告もできるというふうな話をしたことはございません。四十条によって、すでにあった四十条によって調査してきた中には、単品原価の調査も行っています。しかし、それをそのまま発表したことはありませんということです。いわばいままで管理価格の調査をしている場合には、単品原価まで調査しておりますが、それを公表するに当たっては全部平均いたしまして、平均で出しているという、構成を出していることはありますけれども、個々の会社別にはそういうものは出しておりません、こう申し上げているだけです。何かその四十条の二と四十条とを、何かその辺が多少食い違ってお聞き取りになったのかと思いますが、私は四十条の二でそういうことをやるつもりだということは言ったことは一回もございません。
○林(義)委員 それでは、六月四日の佐野(進)委員に対する高橋(俊)政府委員の御答弁の中に「私は、この同調的値上げに関する四十条の二の条項は、私どもの当初持ち出した単品原価の公表というものと比べて、使い方によってはほとんど変わらない結果になる。というのは、単品原価というものは確かに企業秘密とされております。厳格な意味で秘密であるかどうかは、もはや論議の問題になると思いますけれども、」云々、こう書いてありまして、「その理由のとり方は、私先ほど申しましたように、単に抽象的な文言で理由を書いてもらうのではないのですから、その辺はある程度私ども考えながら決めますが、」云々と、こういうふうなことが書いてありますね。これは明らかに、四十条の二の条項は、当初持ち出した単品原価の理由公表と比べて変わらないものだ、こういう変わらないものだという一方では御答弁です。総務長官の方は、もう全然そんなものと違うんだと、こういうふうなことです。どうされるんですか。
○高橋(俊)政府委員 値上げの理由というものを求める場合に、単に抽象的な理由を求めるのではおよそ意味がないわけです。何が上がりました、これが上がりましたではいけない。ですから、いわばその部門の、たとえば例をとりますと、ピアノならピアノという例をとりますと、いままで管理価格の調査の場合には、ある定型のものをとらえて、単品原価の追及までやっておりますが、そういうことはやらない。しかし、全体として、マクロ的に、どういう部分がどれだけ上がって、どういう部分がどれだけ下がったのか、そういうことを明らかにするだけの理由でなければ、抽象的では意味をなさないであろう。でありますから、その総合的な収支を調査し、そのうちの概要を公表するということであって、単品原価の公表と余り違わない効果と言ったのは、それは私は少し言い過ぎだったと思います。しかし、値上げの理由が第三者からある程度わかるという程度のものを裏づけをもってとった上でその概要を公表するということであると御了解願います。
○林(義)委員 そうすると、先ほどの御答弁の「単品原価の公表というものと比べて、使い方によってはほとんど変わらない結果になる。」という点は御訂正になるわけですね。
○高橋(俊)政府委員 いま私が申した限度において訂正いたします。
○林(義)委員 それでは、佐野進先生はその問題を全く同じことになるからということを前提にしていろいろと議論を進めておられるわけであります。この前提が狂いますと、私は非常にまた困るんじゃないかと思うのです。 委員長、こういうことは一体どうなるのですか、前言を訂正するというようなことは。ほかの委員に対して質問によってAと言った。今度私の質問に対してはBと言った。AとBと違うんだ。BはAを修正するんだ、こういうことになりましたら、こんなことを各自に、私がやる、だれがやる、こうやるということでやっておりまして、次から次へと変わっておったんでは、法律案の審議はできないと私は思うのです。
○山村委員長 理事会において協議をいたしまして、適切な措置をとらしていただきます。
○林(義)委員 私は委員長に申し上げたいのですけれども、なかなか審議時間も日程が詰まっているというような話でありますが、私はこの問題はもう一遍やらしてもらわないと困る。こんな審議を、こちらの言ったときにはこう答弁し、こちらではこう答弁し、全然違う答弁をされたんじゃ、どの先生だって私はこんがらかるだろうと思うのです。どの先生だって困られると思うのです。ですから、私はそういったことでやられたんでは非常に委員会の審議というものが正確を欠く審議になるだろうと思います。この辺はひとつ政府の方におきましても十分注意して、いやしくも前の答弁をひっくり返さない、あるいは前の答弁はかくかくでございましてここは誤りでございましたということで言ってもらわないと、簡単にひっくり返されていいというものじゃないと私は思うのです。総務長官どう考えられますか。
○植木国務大臣 この四十条及び四十条の二につきましては、先ほど私が申し上げたとおりでございまして、その点については公正取引委員会との事務的な立法作業の中で十分法制局も含めまして協議がなされたものでございます。いま公正取引委員長が、前に申されましたことについて一部訂正をなさいました。確かに審議上こういうことは困るではないかということは私も十分理解できることでございますが、委員長としては、私どもも間間あることでございますけれども、時として勘違いをして御答弁を申し上げて御訂正をするというようなこともあるわけでございますから、ただいまの公正取引委員長の答弁をもって正式の答弁というふうに理解をしていただければ幸いであると存じます。
○林(義)委員 公取委員長の答弁と総務長官の答弁、まだ食い違いがありますよ。たとえば私が先ほど申しましたところでは、値上げの理由などというものは労賃の上昇とか諸資材の高騰とか云云、こういうことで足りるんだ、こういうような話であります。私はそういうふうに了解しておるし、総務長官もそう了解しておられると思う。ところが、いまの話では、いやその理由づけは相当いろいろ調べて納得できるような理由づけである、こういうふうな話である。私はここの問題は「基準として用いる価格」と書いてあるところと密接な関係があると思うのです。本当の実際の販売価格、リベートなんかを差し引いた価格でやるのでしたら、私はそれは調べられると思うのです。建て値と実際の経営がどうなっているかというのは大分乖離がある、こう思うのです。それはたとえば新聞を例にとってみましょう。朝刊夕刊千七百円、これは私は「基準として用いる価格」だと思うのです。そうじゃないのですか。長官どうでしょう。
○植木国務大臣 千七百円というのは小売の価格でございまして、新聞社からその販売店に出しますものは、これは別のものでございます。
○林(義)委員 そうしますと、販売の基準として用いる価格がいまで言いますと千七百円、大体九百五十円とか八百五十円とかいろいろ売っていますよね。それを一々お調べになって八百五十円と、今度その新聞販売店の中で直営店みたいなところがありますよ。そういったところと、みんな全部お調べになるということですか。あるいはその新聞社の中のいま申し上げました九百五十円なら九百五十円か八百五十円の中の、まあ記者諸君もおりますけれども、記者諸君のいろいろな給料とかなんとかかんとか皆調べて、それでどこがどう上がったからどうだ、こういうふうにやられるおつもりですか。
○植木国務大臣 個々にいろいろな場合があるわけでございまして、一般的な取引として行われているものというふうに私どもは認識をしております。
○林(義)委員 一般的な取引、だけれども「基準として用いる」という価格というのと違うんでしょう。一般的な取引が行われる、その取引が行われたときの「基準として用いる価格」というものをこれは言うんだろうと思うんですね。そういったことでなければ——総務長官お願いします。
○植木国務大臣 一般的な取引の基準として用いられている価格でございます。 さらに詳細につきましては、政府委員から答弁させます。
○原政府委員 「基準として用いる価格」ということにいたしましたのは、個々の取引を全部調べないとできないということではこれは困りますので、やはり建て値とか標準価格とかそういうものを見て、それが上がっていればそれで上がったというふうに判断する、そういうことでございます。
○林(義)委員 ちょっと具体的な例を引きましょう。最近ビールの値上げがありましたね。あれは麒麟麦酒がこういった独禁法問題があるからということで上げてなかった。ほかの方は上げたんですね。ああいったときには一体どの価格でやられるんですか。麒麟麦酒は値上げをしておりませんと、こう言っている。しかし、あのビールというのは、流通段階でみんなリベートを出したり何かしてやっているわけですよ。麒麟麦酒は、たまたまいま値段を上げていません、ほかの朝日とかサッポロとか上げちゃった、こういうふうな話であります。この辺はどういうふうにされるおつもりですか。 もう一つ例を言いましょうか。フィルムも値上げしたんですね。コダックを輸入しておる長瀬産業というのが上げましょうと言ったところが、後コダックに追随してみんな上げちゃったんです。コダックが上げましたらその次に富士が上げた、その次に小西六が上げた、こういうことであります。それは値段はたしか五百五十円か何かが小売価格です。その小売価格が上がったということをメルクマールにしておやりになるわけですか。それとも長瀬産業が各卸なり何なりへ売っている値段を全部お調べになって、それでおやりになるのですか、どちらでしょう。
○植木国務大臣 ビールにいたしましてもフィルムにいたしましても、その流通段階におきます取引の実際の状況については、私は承知をいたしておりませんので、この点についてはお答えを控えさせていただきたいと存じます。
○林(義)委員 私は、それならもう少し簡単に申しましよう、抽象的に申しますが、フィルムの小売の値段が五百五十円なら五百五十円、こういうふうな形でいったのが一般に基準として用いる価格というふうに私は了解しているのです。それで、後メーカーが問屋さんを通じ、また直接に自分の販売店を通じ、いろいろな形でやった場合に、小売価格を上げたというところにメルクマールがあるだろう。小売価格が上がったのにそれでは何も調べないという場合だってあり得るわけですね、ビールの場合なんか。それは一体どういうふうにするのですか。ここで考えているのは基準として用いる価格ということで、社会通念あるいはその業界の中で取引の通常の基準として用いる値段というものがあるだろうと思うのです。その辺はどういうことなんでしょうか。
○高橋(俊)政府委員 運用の実際を担当する私どもといたしましてこの点はお答えしなければなりませんが、いまお挙げになったものは、つまり物によりまして常にメーカーの出荷価格を基準に定めているもの、これは建て値販売でございますが、そういうものと、逆に末端価格を——これは希望価格です。新聞の場合は違います。新聞は再販を許されておるものでございますから、堂々と末端価格を決められるわけですね。会社が決めて、しかもこれは動かしてはならぬという方法です。これは特殊なものでございます。ですから、その場合は今度は逆算で、どのような価格で販売店にやるかという問題はそれぞれ社によって違います。必ずしも同じでありません。結局何のことはない、販売価格の総額から販売店にどれだけやるかという問題があるわけでございます。販売店に幾らやるか、しかし新聞の場合は同調的値上げの対象は末端価格でございます。 それから、ほかの場合で、ビールの場合は二様に考えられると思うのです。原則的には末端価格がそろわなければああいう業界は非常にいびつな形になるというので、末端価格をたとえば二十円上げるとしますと皆同じように二十円上げようとする。しかし、これは同時であるかどうかは別としまして、その場合逆算して——逆算というよりは、二十円の中身をメーカーの取り分が十二円、それから二円五十銭が卸、五円五十銭が小売、こういうふうに引き上げ分をあらかじめ決めておるのですね。こういうものは実は末端価格が決まると同時に、これは希望価格なんです。再販商品でありませんから本当は競争しなければいけないのですけれども、事実上は行われてないのですね。ただし、大口の需要に対して割り引いたりすることはありますよ。だから、それはメーカーの段階も逆算で大体決まってくるわけです。つまりみんな会社によって違った値で卸したり何かすることが余りない。余りにも同調的過ぎると思いますが、この場合は末端価格を決めたことによって逆算してメーカーの——逆算してということはありますけれども、逆算ではなくて同時にメーカーの出荷価格が決まってしまうという例が多い。ところが、いまは乱れておりましてそうなっておりません。末端価格がばらばらでございます。 そういうことでございますから、要するに一口にまとめて申しますと、商品によりまして、いわゆるメーカーの建て値を基準に実勢が動く場合と、それから末端の標準価格を決めてそれにある率を乗じたものをメーカーの出荷価格とするというふうな商慣習をとっているところ、あるいは両方の標準価格を同時に決めておくというふうなことがございます。しかし、いずれにしても、再販商品以外は本当は末端価格まで決めてはいかぬのです。そういうことであります。
○林(義)委員 そうしますと、また答弁が狂ってしまったのですが、先ほどの総務長官の御答弁では、新聞は千七百円ということではない、新聞社が販売店に売る値段である、こういうふうなお話であります。いまの公取委員長の話を聞くと、いやそれは基準として用いる価格は千七百円である。これは再販だという特別の問題があるからしょうがないかもしれませんけれども、後でお話しになったんだと思いますけれども、フィルムのような場合とかなんとかというときにはメーカーの卸価格を言われるわけですね。フィルムなんというのは、われわれが普通に買うときには一本五百五十円とかいうふうなかっこうで買っています。その値段を上げたからどうだこうだと問題になるんじゃないかと思うのです。その値段はおいでおいで、メーカーが卸なり直販店に卸す値段が上がったときにこれを問題にする、こういうことですか。
○植木国務大臣 小売価格が直ちに基準価格ではありませんが、しかし通常小売価格が引き上げられましたときに生産者が卸業者に渡す価格も引き上げられることが考えられます。小売価格の引き上げの際に生産者が卸に渡す基準価格を調査することがほとんどの場合であろうと思うのであります。
○林(義)委員 この四十条の二の規定は、違反したり虚偽の報告をしたりしますと二百万円の罰金がかかることになっているわけですね。解釈がはっきりしないで、どういうふうにしてやったら——一般の報告をしなければならないところは、私は報告しました、いやおまえのところはそうじゃない、別の価格を報告せい、こういうふうな話を相当にはっきりしておいてもらわないと罰則の適用におきましても、二百万円という罰則ですから、大きな罰則ですよ、これは。この辺は少しはっきりしておいてもらわぬと困るのですがね。 私が最初に申し上げましたように、そこでいろいろ問題がありますのは、値上げの理由についていろいろ入っていって、この値段がどうだ、あの値段がどうだ、この原価はどうだこうだ、こういうことをやるということになれば、私はそういうことは大変なことになるだろうと思うのです。そういったときにまた、いや、その数が違っておりましたとかなんとかということになります。だから、値上げの理由というのは、基準として用いる価格ということですから、基準として用いる価格とその原価というのは必ずしもぴったりとした一体性はないと思うのですね。たとえば先ほどのフィルムで言いますと、五百五十円なら五百五十円というものがある。その五百五十円の中で原価は、労務費はどうなりましたとか一般管理費はどうなりました、販売費はどうなりました云々、こういうふうなことは言えないんだろうと思うのです。そうしますと、ある程度ノミナルな価格、先ほども委員長、話がありましたようにリベートで、大量に売るときにはディスカウントするような場合だってあり得るでしょう。そういったようなことと関連が、理由づけをいろいろやろうと思ったところでなかなかできないだろう。そうしますと、ここの条文をすらっと見て、基準として用いる価格というのが、私が先ほど申し上げましたように新聞であれば千七百円、フィルムであれば五百五十円というような価格であって、それでそれがどうして上がったかと言えば、せいぜい言えるのは労賃の上昇であるとか諸資材の高騰ぐらいしか言えないんじゃないか、私はこういうふうに党では了解しておりましたし、この中にも党の独占禁止法委員会でずいぶん議論していただいた先生方もおられますから、いまのようなお話だと、もしも私のような解釈をしなければ自民党の中での了解とずいぶん食い違いがあると言わざるを得ないと思うのですが、委員長、どうでしょう。
○高橋(俊)政府委員 ぜひ御理解願いたいのは価格の体系、基準となる価格が一体どういうふうになっているのかという現状ですね。これがその業界ごとに、業種ごとに大変違っておるということです。だから、一律ではない。いま御質問のありましたうちで写真のフィルムを例にとりますと、これは一般用のフィルムでございますが、どういう決め方になっているか、標準価格でありますけれども、これは生産者の販売価格もあり、卸売の価格もあり、小売価格もあり、この三種類について標準価格が決まっておるのです。ですから、三本立ての標準価格であるという場合もある。それから、自動車のような場合ですと、これは車種別にメーカーの出荷価格もありますし、それから飛んで、今度は小売価格なんです。小売の標準価格になっている。それから、ほかの場合には、メーカーの出荷価格と小売価格——ビールはメーカーの出荷価格と小売価格を標準価格として定めている、こういうようになっています。それから、ピアノは逆に標準の小売価格をまず先に決めまして、これに一定の比率を乗じたものがメーカーの出荷価格等を定める。だから、まず末端価格を先に標準価格を決めまして、それにある率を掛ける、それが出荷価格になる、こういう制度をとっておる。だから、もう業種別に皆違っておりますが、板ガラスの場合ですと、これは規格品ごとに価格表を作成しております。そういうやり方をやっている。だから、これは実際の価格というのはいろいろ問題ありますが、ベアリングのような場合ですと、これはやはり掛け率を出します。つまり標準小売価格に一定の率を乗じたものがメーカーから特約店への出荷価格である。これが基準になっております。タイヤの場合ですと、メーカーが設定する小売標準価格に対しまして、割引率によってメーカー仕切り価格、卸売価格が決められる慣行になっている。 このように、われわれがこれを高度寡占の部類に入っておるものを調べましても、皆それぞれバラエティーがある。しかし、この商慣行は大体一貫して行われておりますから、その都度その都度変わっておりませんので、大体これでもって、基準価格とは何ぞやということは、この品物についてはこれが基準価格であるということは把握できるものと思っております。
○林(義)委員 公正取引委員会の方では把握ができる、こういうことですけれども、私は、業界のそれがその商慣行と合ってなければならないと思うのです。まあ公正取引委員会、いろいろやっておられますから、私はその辺はお抜かりないと思いますが……。 そこで、先ほど来ずいぶん参考人でも議論がありました四十条と四十条の二の解釈でありますが、総務長官は、明らかにこの四十条の二の規定は、いままで四十条ではできなかったものを今度新しく四十条の二を規定してやるということだと、こういうふうに御答弁しておられると思いますが、そのとおりでございましょうね。
○植木国務大臣 そのとおりでございまして、四十条の調査のための強制権限と申しますのは、公取の職務を行うために必要があるときに行使されるものでありまして、「職務を行うため」とは、独占禁止法の規定の具体的運用に関する職務をいうと解されるのでございます。単に同調的な値上げの形をとっているという事実をもって、直ちに独占禁止法上問題とするということは困難である、こういう考え方に立ちまして私どもは四十条の二の規定の新設をいたしたのでございまして、このことによりまして、企業が価格決定に当たりまして慎重になりましたり、公正かつ自由な競争の促進に資することができる、このように考えております。
○林(義)委員 そうしますと、きょうの参考人で学者の方々に大変いろいろな質問がありました。四十条と四十条の二の規定のところはもう大議論がありました。学者の方々の御意見は、いまの総務長官の御答弁になったよりもはるかに広い解釈をしておられる。公正取引委員会の委員長もいままで広い解釈を四十条についてはとっておられただろうと私は思うのです。やはりこの際は、ひとつその辺は政府見解を統一していただかなければならない。やはり総務長官の御答弁でいいのかどうか、そのことだけ高橋委員長からお答えいただきたいと思います。
○高橋(俊)政府委員 私の見解というよりも公取が長年とってきた解釈でございます。それは、いまの御答弁に比べれば広いと言わざるを得ません。一般に独禁法学者と称される方々がおりますが、これらの方々の御意見も全く同様でございまして、職務のために必要なということは、具体的に何か事件らしきものが起こって、そのためにしか使えないというものではない。つまり基礎的な調査を含めて——しかし独禁法の問題と何らの関係のないようなものは、これはだめでございます。やはり独禁法の目的と関連を持っているといいうものについては、これはアメリカのFTCの例でございますが、特定企業に対しては四半期に一回ずつ経理内容を全部報告しろ、こういうことも同じような規定に基づいてやっておるのですね。ですから、一体何のためにやっておるかということになるのですが、つまり監視のため、どういう動向であるかをまず把握する、独禁法の運営には御承知のように非常に幅が広いですから、非常に幅が広いものについてやはり特定の場合には強制権限に基づいても調査を行っておかなければならない、そういうことが積み重なって、いろいろな政策といいますか、運用上も十分に参考にし得るものである、こう考えますので、四十条の解釈はその必要度の程度においてはやや広い見解を持っていると申し上げざるを得ません。
○林(義)委員 広い解釈をするか狭い解釈をするか、職務に関しという権限のところの問題だろうと私は思うのです。公正取引委員会の考えは、職務権限というのは、たとえば三十五条の四にいろいろなことが公正取引委員会の所掌事務として書いてある、その範囲、それも一つの職務であるから、その職務に関して四十条の調査ができる、こういうふうな御解釈ですか。
○高橋(俊)政府委員 たとえば、非常に広く経済活動というものを取り上げて調査する、これは私は、そういう観点から経済活動と書いてあるからこれで何でもできるのだ、こういうふうには解したくありません、また解しておりません。それは広過ぎる。そうでなくて、一般的な経済活動の調査というのは他の資料によってもかなり調査し得るのですよ。だから、そういうものは何ら使わない。だから、具体的に、たとえば管理価格の調査というものは、これははっきり違反行為とは直接つながっておらないけれども、それは四十条で調査できる、こういうふうに考えているわけでありまして、経済活動ならば何でもできるのかとおっしゃれば、余り直接関連のないもの、それから他の資料によって十分調査し得るものは除かれる、こういうふうに思います。
○林(義)委員 そういたしますと、その辺はきわめて不明確だ、こういうことですね。どの範囲だということがはっきりわからない。私は、そういったような場合にはやはり狭く解さなければならないと思う。特に、この調査に対して拒否したり虚偽の陳述をしたら二十万円の罰金を科するというのは人権問題があるわけですね。先ほども塩崎委員からお話がありましたような問題が私はあると思うのです。何でもかんでも公正取引委員会がこういういろいろな形で調査をする。調査をもしも拒否したら二十万円だ、こういうふうな話になりますと、私はこれは大変なことになるだろうと思う。もしも公正取引委員会が仕事をやっていくときにそういったことでやらなければならないという宿命を持っているならば、私はこれは独禁法の一つの基本問題だろう、こう申し上げざるを得ないのであります。その辺はっきり政府の方で意見の食い違いがあります。きのうも逆の立場において意見の食い違いがあるから政府の統一見解を求めると理事会でおやりになったことを委員長は覚えておられると思う。私は逆の立場で、やはり政府の見解というのは食い違いがあるということをはっきり言わざるを得ない、こう思うのです。ですから、その辺はいまのを理事会で政府の統一見解を出された上で、私はもう一遍やらしていただきます。 そこで、この問題で余り時間をとってもしようがありませんが、通産大臣、ちょっとお尋ねをいたしますが、独占的状態の問題で改正案の第二条七項には第二号として「他の事業者が当該事業分野に属する事業を新たに営むことを著しく困難にする事情があること。」といういわゆる新規参入の規定が入っています。私は、通常この場合には独占的状態でありますから、その寡占状態に新規参入するというのは大変な努力が要るのだろう、こう思うのです。やはり資金力とか販売力とか技術とかいうものがなければできません。たとえ新規参入しても、やはり最初はその新参会社は赤字を覚悟して、かつ既存の会社の価格より安い価格で売るとかなんとかということでやらなければ、実際問題としては競争はできない。ビッグビジネスの間におけるところの競争というのは私はそういうことじゃないかと思うのですが、経営者としての経験が非常に豊かな大臣でございますから、そういった点から通産大臣どういうふうにお考えになりますか。
○河本国務大臣 私も、この新規参入の場合は非常に豊富な資金力あるいは卓抜した技術力、それからすぐれた販売力、総合的な経営能力というものがありまして、しかも忍耐強く相当長期間にわたって赤字覚悟ということでないとそれはやれない、こう思います。
○林(義)委員 そこで、私は、公正取引委員会の一つの考え方、やはりこれは問題だと思いますけれども、最近有名な事件があります。中部読売新聞という事件がありまして、これは緊急停止命令がかかったわけであります。事件は、ここに本を持ってきていますけれども、「諸君!」という雑誌にたくさん詳しく出ています。読売新聞が中部読売株式会社と業務提携して、中京地区で一ヵ月五百円の販売を始めたわけであります。公取委の申し立てで東京高裁は一ヵ月八百十二円を下回る価格で販売してはならないという決定を下したのが事件で、現在最高裁に上告をしてある、こういうことになっております。一般消費者から見ますと、五百円で見られるものを何ゆえに八百十二円で買わなければならないかというのも私は疑問が生じますが、この高裁の決定を見ますと、不公正な取引方法で、いうところの不当廉売に該当するものであるというふうにしてあります。その不当廉価というのは、単に市場価格を下回るというのではなくて、その原価を下回る価格と解すべきである、こういうふうに書いてある。中部読売側はその主張を、この雑誌を見ますと、編集費とか取材費とか人件費とかというのは東京読売社が持つのだ、それから公取側ではそうでないとか、とにかくいろいろな争点のようでありますけれども、それはさておきまして、事実関係は、問題になっているところの中部地区では中日が約百五十四万、朝日四十四万、毎日が三十四万というような形になっております。読売の発行部数は非常に少なくて二千何ぼということだそうですね。そこで、ここで中部読売という別会社が新しい販売をしていこう——これはおそらく私は読売の系列と考えていいのだろう、こう思いますけれども、すると、新規販売をするためにはある程度の販売上の犠牲というのはやむを得ないのだろうと思うのです。それは通産大臣も先ほど経営者としての感触からお話しになったとおりでありますが、ここで別に判決を批評したりなんかするつもりは少しもありませんけれども、特に最高裁にかかっていますから、やはり最高裁の判断をもってやらなければならない。非常に寡占化が進んだときに、特に独占的状態の中で新規参入をいたしましょう、こういうときには、余り不当廉売というのを厳しく取り締まっては困るのではないか、やはり大企業対大企業の間というものは、いわゆる不当廉売で単に原価を下回るとかなんとかということではいけないのだろうと私は思います。もう少し大企業同士というのは競争させてもいいのだろうと思います。むしろいかぬのは、大きな資本力を導入して中小の商売人をいじめるとかなんとかというところに私は問題があるだろう、こう思うのです。そういった原価を単純に計算できると、こういうふうなことで考えておられるようでありますけれども、私は、その新規参入をする、そういうときには必ず不当廉売という問題が出てくる、不当廉売の問題のときには原価に関すること、こういうふうなスケジュールになってくるだろうと思いますけれども、やはりそこはもう少し考えてみなければいけないのではないか。大企業が大企業に対してどうする、あるいは大企業がやっているところの独占的状態に対して入ってくる、その場合の不当廉売の問題と、大きなものが小さなところへ入ってくるときの不当廉売の問題というものはおのずから差があるのではないか、こう思うのです。こういうふうなものがやはり経済の公正さを保つ一つの原則だろうと私は思います。先ほど副総理も公正さを保つ、こういうふうにおっしゃいましたけれども、総務長官、一体どういうふうにこの辺はお考えになりますか。余り御専門でないからということかもしれませんが、総務長官、普通のことでお考えになって、この点どういうふうにお考えになりますか。
○植木国務大臣 個別の問題でございますから、私からお答えするのは差し控えさせていただきたいと思います。
○高橋(俊)政府委員 ただいまのお話は、この独占状態に対する新規参入の問題とは全く別個の問題と私は受け取って、それは問題の性質が違うわけであります。新規参入する場合に、この中部読売の場合は、あの地区に確かに読売がなかった、その場合は五百円であろうが何であろうが、不当廉売でも、新規参入するのにはそういうことをしなければできないのだということになりますと、つまり一方における不公正な取引というものを公認することになります。これは実は他の会社からすれば、いま大きな新聞社を挙げられましたが、中部読売それ自身は非常に小さな会社なんです。ところが、提携という名前ではありますけれども、一方的な援助でございます。内容的に申せばこれはおわかりだと思いますが、それによって一方的な援助で、自力でやったのではないので、一方的な援助によって、他社がとうてい対抗できない価格、つまり朝刊だけの場合、普通、統合版と言っておりますが、これは千三百円でどこの県でもやっております。それで、同じ会社が売る場合にはどこででも差をつけてはならぬということになっております。差をつければ、千三百円以外の価格でやれば——もし東京読売が愛知県でそれを発行したという場合には千三百円でなければならないわけです。ところが、別会社にしましたから、そこで名目的には別会社でございますから、どんな値段でもいいのだろうか、こう言いますと、そうはいかない。たとえば近辺の岐阜県や三重県には小さいながらも地方紙がございます。これらはやはり弱者でございますね。そういうところにも入り込むわけでございますから、そこで不当廉売として問題になるわけだし、またすでに新聞協会全体が、もちろん読売を除きまして、これは不当廉売というよりは差別対価ではないかというふうなこと、あるいは不当廉売ではないかということで訴えを出してきた問題でありますから、これは不公正取引方法として私どもは問題にしておるわけでございます。新規参入のときはいかなる値段をもってすることもかまわないのだというふうには独禁法はなっていないのです。
○林(義)委員 いまのお話ですと、差別対価と不当廉売、こういうふうに二つの不公正取引方法がありますね。やはり新規参入するというときに、私は中部地区、そんなに詳しく知りませんけれども、伊勢新聞とか岐阜日日新聞とかいろいろあるのでしょう。そんな地方紙とやはり大新聞の販売というのはおのずからシェア、分野というのは違うだろうと思うのですね。やはり問題は、中日、朝日、毎日、読売、こういうような形のところが一つの事業分野というか競争分野ではないか、こう思うのですよ。そうしたときに、いま私が問題にしたいのは、むしろ原価を調べて、その原価を下回って云々、こういうような考え方を出されるということがどうだろうか、こう言うのです。その考え方がまた新規参入のときも同じような考え方になりますと、新規参入というのは非常にむずかしくなると私は思うのです。その辺を、新規参入というのに続きまして、そういった考え方はどういうふうにするのか、これはまたそのときそのときでケース・バイ・ケースだというお話かもしれませんけれども、新規参入というものをできるだけ認めていこうという方向でいろいろ運用をしてもらわなければ私は困る、むしろいろいろな形でもって新規参入を抑えるような形のものを、障壁を独占禁止法がつくっている、こう言わざるを得ないんじゃないかと思うのですけれども、どうなんでしょうか、委員長。
○高橋(俊)政府委員 いまのお話とは別に、たとえば独占的状態になりそうなところに新規参入をやるというときには、これはもちろん原価を非常に安くするような仕組みを考えて、そしてやること——あるいは当初はどこでも実は赤字なんです。それはもう最初は売れ行き額がまるで小さいのですから、そこからどんどん伸びていって、あるところへいったら採算がとれるというのが普通です。ただし、その価格が明らかにダンピングであるという場合は、やはり新規参入であっても、それは許されないことになっているわけです。新規参入だからどんな価格でもいいということには依然としてならない。ただし、いまの原価という点では、たとえば当初非常にわずかのシェアしかない場合には、当然それは高くなることはあたりまえですね。ただし、その価格は必ずしもべらぼうに安いわけじゃないんだ、いずれこの辺のところへいけば、採算点に達すれば、もっと安く売れる、それはコストの上でもできるんだ、こういうふうなことが望ましいわけですから、それを可能ならしめるような、たとえば政府資金の融資とかいうふうなことでバックアップするということは、私は結構なことだと思いますけれども、それはいいと思いますけれども、価格の面で明らかにダンピングだと思われるようなことは、新規参入でもやはりこれはちょっと認めがたい。他の業者から言えば迷惑千万ということになりますね。だから、それが強い業者だけに対抗するのならいいのですけれども、ほかに弱い業者が入っている場合にそういうことをやられると、大資本を持っていってやると、小さいのが逆につぶれてしまうわけです。そういうことがありますから、この辺のかね合いというものは、価格の面でも、実際にコストの安い方法を開発してやるなら大変結構だが、そうでないと、むちゃくちゃな値段でやることはやはり抑制されなければならぬ、こういうふうに考えます。
○林(義)委員 この問題は、またダンピングという新しい概念が出てきましたから、議論しているとまたこれだけでずいぶんかかりますから、私はその新規参入の問題につきましても相当に問題があるということだけ指摘して、これを終わります。 ここで、この前の越智委員に対する答弁の中で、公正取引委員会の委員長は、越智委員が、営業の一部譲渡のときに譲り先がないときにはどうするか、これに対して、ないときには新会社をつくらせます、こういうふうなお話がありました。新会社をつくらせるというのは、どうも営業の一部譲渡ということでお読みになるんだろう、こう私は思いますが、法務省の方おられますか。——新会社をつくるなどということになりましたらまた新しい手続が要る、営業の一部譲渡を命じて、株主総会の決議がどうだこうだというのと同じような議論が生ずるのではないかと私は思いますが、営業の一部譲渡の中で、いきなり新会社をつくってそこでやれということは、すぐにできるのですか、命令としてできますか。
○枇杷田説明員 新会社をつくって営業譲渡をするという場合に二通りのやり方があろうかと思います。一つは、子会社を設立いたしましてそこに営業を譲渡するという方式と、それからこれは厳密な意味では営業譲渡にならないかもしれませんが、新会社を設立するのに、現物出資の目的として営業を譲渡するという方法があろうかと思います。そのいずれの方法につきましても、特に親会社についての株主総会の特別決議が要るということはないと思います。ただし、現物出資の方式による場合には、その現物出資の評価が正しく行われるかどうかということを検査をいたしますために、裁判所の選任による検査役の検査という手続が加わってまいることになります。
○林(義)委員 そうしますと、一部譲渡命令を出せば新会社の設立をして——いまの法律の規定では、新会社をつくって営業の一部譲渡をすることができる、こういうことですね。
○枇杷田説明員 それは排除措置としての審決の内容いがんだろうと思いますけれども、単純に営業譲渡ということになりますと、いまおっしゃいましたように既存の会社に営業譲渡をするほかに、子会社をつくって営業譲渡をするのも含まれるだろうと思います。ただ、現物出資という形でやる場合には、これが正しい意味での営業譲渡になるかについては問題があろうかと思いますが、ただ審決でそういう単純に営業譲渡という言葉を使う主文になるかどうか、そこの点は私にはちょっとわかりかねる点でございます。
○林(義)委員 そうしますと、もう一つ私聞きますが、そういったときに、新しい会社をつくる。営業の一部譲渡をどこか会社あたりでやる。具体例で言いますと、麒麟麦酒の仙台工場というのが現実にあります。麒麟麦酒は独占的な状態で大変問題だろう、こういうことでありますが、その仙台工場をサッポロビールに譲渡する場合に、いままで労働者としては、麒麟麦酒のために一生懸命働いておった、それで自分たちも相当にいいレベルの給料をもらっておった。それで、今度はサッポロビールに一部譲渡をして、向こうへ行けと、こういうふうな話、そうすると、この工場の一部譲渡だけでは足りないと私は思うのです。やはり労働者も皆行って働いてもらわなければ、工場だけ行ってやったのでは、熟練労働者もいなければだれもできないということだろうと思いますから、労働者も行けというような話をしなければならない。そうしますと、行けという命令は、実際問題としてなかなか出せないだろう。一部譲渡するのですから、私はどうしても麒麟麦酒に残りたいのです、こう言えば、やめるよりしようがないのではないか。そういったことについて労働組合からも相当の反対が出てくるということは私は考えられると思うのです。 そこで、これは労働省来ておられると思いますから聞きますけれども、そういった命令でもって営業の一部譲渡をいたします。いたしますと、そのときの労働者の権利というものは、やめるか新しい会社へ行くかしか実際問題としてはないわけですけれども、それでもって労働契約上著しく不利になるようなことがないのかどうかという点、その辺の救済措置が十分に講ぜられるかどうか。これは公正取引委員会は別に労働大臣に相談するわけでも何でもないのですから、労働省の方は知らない、こういうことかもしれません。それからまた、やめなさい、しかしサッポロビールに行きなさい、こう言わないと、実際に営業譲渡の目的は達成できないと私は思うのです。麒麟麦酒からサッポロビールへ行って働いてください、こう言わないと、できないと私は思いますが、それはいやだという、職業の選択の自由との関係で、そういったことまで命令が入るのかどうか、この二つの点、労働省はどういうふうにお考えになりますか。
○細野政府委員 お答えいたします。 ただいま御指摘のように、今回の独禁法の改正法案の中で、独占的な状態が生じた場合の競争回復のための最後の手段として、いま御指摘のような営業の一部譲渡命令が出せる、こういう規定があるわけでございますが、この措置を命ずるに当たりましては、明文で改正案の中に入っているわけでございますけれども、委員会御自身で、当該事業に雇用されている人々の生活の安定について配慮する、こういう配慮事項がございまして、当然こういう点についても御配慮の上審決が行われるのじゃなかろうか、こういうふうに考えているわけでございます。しかし、最終的に営業の一部譲渡命令の審決が確定したというときに、御指摘のような労働者の配置転換等をめぐる問題というのは確かに生じ得ることもあり得るというふうに私どもも考えておるわけでございます。 この問題は、独禁法の問題だけではなくて一般の営業譲渡の場合でも同様の問題があるわけでございますが、基本的には、これは関係の労使が相談をしてその上で決めていただくという形が一番妥当なやり方でございます。この場合に、関係労使間で話し合いが円満に行われないというふうな事情がございます場合には、労働省としましても、話し合いが円満に行われるよう相談に乗ったりあるいは行政指導を行う、そういう考え方でいるわけでございます。
○林(義)委員 私は非常に悪い場合を聞いているので、いい場合は、それは万事うまく、めでたしめでたし、こういくのだろうと思うのです。労働問題というのは労使間でいろいろ話し合いをして解決するというのがたてまえです。ところが、今度は、労使間で話し合いをするたてまえではなくて、別のところからぱあっと命令が出てくるということを前提にしてこの議論をしてもらわなければ困るのですね。やはり審決で命令をする、同意審決をするか、あるいは一般の審決をするかということがありますけれども、同意審決の場合には会社もそれでやりましょう、こう言う。そうでなくて、会社がそうでないと思っているけれども命令が出される、こういうことがあります。そのときに、労働組合から反対だという声が相当出てくるだろうと思うのですね。これは常識的に考えられる。実際、私のところにもこの問題で労働組合の方々から御陳情を受けたのですよ。一体これはどうしてくれるのだという話なんです。私も困ってしまいましてね。なかなか強制的な命令でやるということになじまない問題が労使関係の問題ではないか。先ほど、十分に労働者の権利を考慮する——考慮するだけで何も保障はないわけです。この辺を一体これで大丈夫か、こう思うのですけれども、この辺は、これはもう一般の問題とはちょっと私は違った問題がある、こう思いますが、いかがでしょう。
○細野政府委員 お答えいたします。 一般の営業譲渡の場合でも、労働組合が必ずしも相談に乗っていないという場合には同様の結果が生ずる場合が出るわけでございますが、しかしおっしゃいましたように、一般の場合に比べますと、第三者からの命令で営業の分割が行われる、営業の一部譲渡が行われるという場合には、問題が起きやすい面も確かにあるように思われます。ただ、この問題は先ほど申しましたように、結局当然に、そういう権利義務関係が、雇用関係についての承継があるかどうかという点については、判例等につきましても全く対立している点でございます。したがいまして、先ほど申しましたように、なかなかむずかしい面もございますけれども、関係労使が話し合っていただいて、そこははっきり取り決めるということが一番問題を残さないやり方でございまして、先ほど申しましたように、そういう点でなかなかやりにくい事情があるという場合には、私どもも相談に乗っていく、あるいは指導していくという形で円満に片づくようにしてまいりたい、こういうふうに考えているわけでございます。
○林(義)委員 私は、円満に解決してもらいたいのは当然のことなんです。しかし、今回のような場合には、審決という形で意に反してやるという場合を考えておりまして、円満に解決するんでしたら同意審決という場合で足りるわけであります。それをさらに進んで同意審決でないところまでいこうというところに私は一つの問題があるだろうと思います。 なかなか時間がいただけないので、私もまだたくさんやりたいことがあるのですよ。国際競争力をどうするかという問題にいたしましても、それから先ほどお話がありました商法の株主権の保護の問題、それから一体新しい会社をつくるときにパテントはどうするかという問題とか、たくさんまだまだ問題があります。きょうは、申しわけないけれども、なかなか詰まらないのです。たくさんの問題が詰まらないのです。 私は最後に申し上げておきますけれども、一体どういうふうにこの問題を考えていったらいいかということだろうと思います。日本の憲法では、やはり裁判所において裁判を受ける権利というのは奪われないということがある。三十七条には「刑事被告人は、すべての證人に對して審問する機會を充分に與へられ、又、公費で自己のために強制的手續により證人を求める権利を有する。」として、国民の刑事事件に対するところの保障というのはきわめて厚くやっているのであります。ところが、独禁法の事件となりますと、先ほどいろいろ話がありました、またけさほど来いろいろ話があったようなことになって、国民の権利を保障する、業者の権利を保障するという点に、私はきわめて欠けているのじゃないかと考える。特に、公正取引委員会が法四十六条の規定で審査官を指定して審訊をしたり、物件の提出、留置をして帳簿等の検査を行うことができて、それに基づいて公取は審判を開始決定し、審判官を命じて審判手続を行わせる。公取の審判に不服のある者は東京高裁に訴えることができるけれども、公取の認定事実につきましては東京高裁も覆し得ない、こういうことになっている。かつ、特定の場合しか新証拠の申し立てはできないことになっておりますが、通常の裁判におきましては、裁判官と検事とが異なるが、公取の審判、すなわち一審では裁判官と検事とは同じ公取内で選ばれておりまして、余り独立性というのはないのです。そうして、一遍公取で決められたものはほとんどひっくり返せないというのが現状だと思うのです。特に弁護士さんにはそういう声が非常に強いのです。公取が一度決めたものを容易に覆せないという、そういった手続規定自体というものが私は一つ考えていかなければならない問題だと思うのです。 同時に、公取委員は内閣総理大臣が両議院の同意を得て任期五年として任命する。任命したら、一般公務員に比してきわめて高い身分保障を受けておって、独立して職権を行使する。先ほど話がありましたように、法律解釈は内閣の法制局といえども覆すことのできないような法律解釈をできるという非常に強い職権を行使することができるのです。ところで、内閣総理大臣といえども公正取引委員長を指揮したり、おまえやめろということを言えないのですね。現在の日本の政治機構の中で、国会議員は——われわれですよ、われわれは常に国民の審判を受けなければならない。解散があり、選挙によってこの可否を問われるのです。われわれはそれをやられるのです。内閣は、不信任案によって、また選挙によってその可否を問われるわけであります。最高裁の判事といっても、国民投票によってその可否を問われる。裁判官については国会における裁判官弾劾裁判所というのがありまして、一応全部可否を問うようなものというのはつくってある。ところが、公正取引委員会は五年間というものは何らそういったものがないのです。だれにも制肘を受けないで決めたことがやれる、こういうことになっている。しかも、そのことは容易に覆すことができないというのが私は現在の公正取引委員会の立場だと思うのです。しかも、今回のような改正で非常にあいまいな規定が入ってくる、裁量の余地が非常に多い規定というものが入ってくるというのは、私は非常に疑問に思うのです。特にあいまいな規定を残すことだけは、私は非常に困ることになると思うのです。 昔、軍縮問題というのがあった。昭和五年に憲法解釈論争がありまして、憲法十一条に「天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス」と書いてある。この統帥というのは、用兵、作戦について天皇が直接軍を指揮されるということであります。ところが、十二条には「天皇ハ陸海軍ノ編制及常備兵額ヲ定ム」という規定が置いてある。この編制権までが統帥権の中に入るかどうかということが争われた問題であります。浜口内閣のときでありますけれども、そのときに浜口内閣は、統帥権は内閣総理大臣は介入はできないが、陸海軍の編制及び常備兵力を定めることについては内閣総理大臣が輔弼をする、こういうふうな形になっているのです。ところが、軍縮問題に端を発してとうとうたる世論のもとに、だんだんそれが変えられていった。いわゆる軍縮問題論争、統帥権論争であります。そういったものの中で、私は昭和の歴史というものが始まったと思うのです。法律の解釈というのは決してないがしろにできない問題だと思うのです。そういった形で軍の統帥権の名のもとに行われたことは、最後には私は陸軍刑法にまで発達したと思うのです。陸軍刑法といって、最後にはとにかくもう何ら弁明の機会を与えられず銃殺されるというようなことができたと思うのです。 私はそういったような端緒にこの法律をしてもらいたくないのであります。やはり日本国憲法のもとでお互いが守るべきところの基本的人権というものがある。それはやはり守っていかなければならない。私は、最初に述べましたように、自由社会を守るために独占の弊害を規制しなければならないということは非常によくわかるのです。何とかこれをやらなければならない。しかし、いまのような、この法律のようなやり方では、なかなか十分な配慮がされてない。先ほど来いろいろな話をしました。そのした話の中でもいろいろとまだ詰めなければならない。十分にうまくやってくれるでしょうというような話しか出てこないのです。それでは私はやはり法律としては余り上できな法律ではないだろう、こう思うのであります。そういった意味で、私は、この前もお話がありました、板川委員からもありまして、ひとつ公正取引裁判所みたいなものをつくったらどうだ、特別裁判所みたいなものをつくったらどうだという構想がありました。私は公正取引委員会がこういうふうな問題がありますのは、一つの独立した官庁として準司法的な機能を持ち、行政機能を持ち、あるいはまた若干の立法機能を持つぐらいまでの非常に強大な権限になっているから、こういった問題があるのだろうと思うのであります。きょうの協議の問題を聞きましても、私は問題の点は、協議をするというのは、どちらの権限が強いかというところにもう少し問題の焦点を当てて考えていかなければならない問題だと思うのです。そういった意味で、私は今回の改正、これはなかなかむずかしいというような話がありまして、なかなか皆さん方も、はっきり言って余りおいでになっておられませんが、私はそういった問題をぜひ一緒に考えて、本当にいい独占禁止政策が進むということを心から期待をしておるものであります。(発言する者あり)やめろという声が大分かかっておりますから、私はきょうはこれでやめますけれども、まだまだたくさん質問が残っておりますから、その質問は留保させていただきまして、本日は質問を留保という形で終わりたいと思います。
○山村委員長 次回は、来る二十日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分より委員会を開会することといたします。 なお、明十九日午前十時より法務委員会、大蔵委員会及び物価問題等に関する特別委員会との連合審査会を第一委員室において開会いたします。 本日は、これにて散会いたします。 午後七時二十一分散会