商工委員会 第17号
- 発言数
- 198 件
- 登壇者
- 12 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1975/05/27
会議録
○山村委員長 これより会議を開きます。 参議院から送付されました内閣提出、特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。 これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上坂昇君。
○上坂委員 特許法等の一部を改正する法律案について御質問をいたしたいと思いますが、大臣が参議院の都合で退席をされるということなので、初めに大臣にお聞きをいたしたいと思います。 今度の改正の趣旨は三項目になっているというふうに思いますが、一つは特許制度の国際化の問題であろうというふうに思います。それから、もう一つは商標制度の出願が非常に多くなっている、その未処理案件が累増しているのでこれを早急に改善をして処理を早めるということであるというふうに思います。 それに基づいていろいろな制度が新しく採用されることになるわけでありますが、この特許制度の国際化の問題から見て、いま問題になっておりますわが国の独禁政策と特許法の改正との関係について大臣の見解を求めたいというふうに思います。 独占資本の場合、特許製品の生産集中というのが独占的な高価格を支持する方策の一つであるというふうに見ることができるのではないかというふうに思います。特許を受けた発明は、独特の財産あるいは流動資産となるわけでありまして、特許実施権の引き渡しあるいは売却といった商取引の独自の対象となっているというふうに思います。そこで、国際的には目に見えない貿易の主要項目の一つであるとまで言われているわけでありますが、特許が特に化学物質あるいは医薬の面をその対象とするような時代になりますと、ますますこの面が強くなってくるのではないかというふうに考えるわけであります。そういう点で、現在わが国の独禁政策の上から特許というものをどういうふうに位置づけていくのかということについて大臣の見解を承りたいというふうに思います。
○河本国務大臣 特許権につきましては、独禁法二十三条で適用除外規定がございますが、しかしこれが乱用されるということのないように十分配慮していかなければならぬと思います。この点さえ気をつければ、今回の改正によってこれまでの独禁法との関係が変わるわけではない、かように考えております。
○上坂委員 適用除外の施策があるから大丈夫だというふうに言われるわけでありますが、特許独占の危険というのは既存の特許を無効にするような技術的な解法が出た場合に、独占にとっては危険になってくる、侵されるという状態が出てくるというふうに思います。したがって、これを防止するためには、その研究の成果を独占するという形が起きてくるのではないかというふうに思うわけであります。 そこで、特許のやり方と言いますか、手法と言いますか、研究の成果というものを独占して一手にこれを集中してしまう、特許をとることによって競争相手の活動を抑える、あるいは価格を操作する、それから工業技術上の新しい発明の普及を制限するといった弊害が出てくるのではないかというふうに思うわけであります。この点よく考えますと、特許におけるところのカルテル形態というものが出てくる、こういうふうに考えるわけでありますが、そういう危険性はないのかどうか、この点について御説明をいただきたいというふうに思います。
○齋藤(英)政府委員 お答えいたします。 いま大臣が御答弁申し上げましたように、独禁法に適用除外の規定がございますが、特許法におきましては、特許権と申しますものは、言うまでもなくこれを一定期間後に公開をいたしまして、広く一般の方々にその技術の内容を知っていただく、したがって一般的に技術水準が向上するという効果と、それの代償というわけではございませんが、その出願者に対しまして要件が整えばこれに権利を与えまして一定期間これを独占させる、こういう制度になっております。しかしながら、そういう特許権自身がいわゆる公共の利益上非常に問題がある、こういうふうな事態が起こりました場合には、これは特許法九十三条に規定がございまして、九十三条でもし実施しようと思う者がございますれば、これは通商産業大臣の裁定ということによりまして強制的にその人がその技術内容と申しますか、特許権につきまして実施権を得られる、こういう制度もございます。それからなお自分自身が独占をいたしまして少しも使用しないという場合にも、やはり特許法の八十三条という規定がございますが、不使用の場合の強制実施という規定もございまして、そういうことによりまして公共の福祉に反して過度に権利が強くなるということはそこで一応防止をしておる、こういうふうに考えております。
○上坂委員 いまの御説明による九十三条の発動の問題でありますが、従来裁定を行ってそうした弊害を除去してきた具体的な例をひとつ挙げていただきたいと思います。
○齋藤(英)政府委員 裁定の問題につきましては九十三条の規定があることはいま申し上げたとおりでございまして、その前にそれぞれ出願者、権利者とそれからその実施権を得ようとする者との間で協議をいたしまして、その協議が調わなかった場合に裁定ということになるわけでございます。したがいまして、その裁定は、実際は申請がありました件数もわりあい少のうございますし、かつ実際に裁定がおりました件、これは九十三条関係はほとんどないと思います。なぜかと申しますと、結局これは最終的には通商産業大臣において裁定をされるという、いわゆるセーフガード的な、そういう規定の意味が非常に強うございまして、したがいましてその前の段階で、あるいは和解でございますとか取り下げでございますとか、そういうことによりまして実際上は解決をしておる、こういうのが現状でございます。
○上坂委員 実際に裁定をされるケースというものは非常に少ない、あるいはいままではほとんどないと言ってもいいくらいだということであります。また、争いが起きた当事者間の協議が行われて、そこで裁定まで持っていかない前に大体解決をしているというような状態でありますが、私が危惧しているのは、そうしたお互いに競合関係にあって、それが第三者が申請をしたり、あるいは協議に持っていく前に、もうすでに暗黙的にカルテル的にお互いの中に協議が行われていて、それが独占体同士の中で競争に乗っかってこない状態をつくり出されてしまう。そうした場合に、一体独禁政策の上から言って政府としてはどういうふうな態度をとるのか、あるいはそれを制限し、除去するところの政策を実行するのか、ここのところを聞きたいわけであります。
○齋藤(英)政府委員 お答え申し上げます。 特許権の実施権を与える場合の内容の問題になろうかと思います。実施権を与えます場合には、当然その対価としての実施料を払わなければいけません。かつ、どの程度実施していいかということの権利、その実施させる権利の内容についても規定をさせなければいけません。しかしながら、もしそれがその範囲を逸脱いたしまして、非常にそれについて販売価格なりそのほかいろいろな問題につきまして制限を与えるような、そういうふうな契約がありました場合には、独禁法二十三条から見てやや問題が起こるんではあるまいかという気がいたします。
○上坂委員 その問題が起きるような懸念がある、問題が起きた場合にはどういうふうな形になりますか。——質問の意味がちょっとわからないかもしれませんが、一つの特許があって、それについてまた一つの申請が出てきて、それによるいろいろな問題が起きてきて、そこで申請が行われて協議なり何なりに入るわけですね。そうしたことを抜きにして、要するに独占体の間で暗黙のうちに特許権を了解をして、その技術なり研究なりの成果というものを踏まえて、それをお互いに暗黙で許し合ってしまう、そうしてほかのものにはもはやそれについては参入をさせないような状況にしてしまう。そういう中で価格を維持する、あるいはいわゆる技術的なものも全部抑えてしまう、発展も抑えてしまう。そういうようなやり方が、いまのこうした寡占状態あるいは独占状態の中では起こってくるのではないかというふうに思います。それが化学物質なりあるいは医薬なり食料品なりというものが今度の特許の対象になるという形になりますと、その面が非常に強くなってくるのではないか、こういうふうに私は危惧するわけであります。そうしたことが起こる可能性がある、それについてどういうふうな対策を講ぜられるか、こういうことです。
○齋藤(英)政府委員 独禁法上の問題があると申し上げましたが、これは実は通産省としては正面からは一切お答えをする権限のない問題でございますので、その辺は御勘弁を願いたいと思いますが、独禁法の条文によりましてこれは排除されるべきものになるのではあるまいかという気が私どもはいたします。 それから、もう一つでございますが、いまの裁定制度に関係いたしまして、仮にそういうふうになった場合に、いま先生がおっしゃいました者以外の者から実施しようというふうな申し出がありました場合には、やはり当然協議をして裁定制度というものが働きますから、したがいまして通商産業大臣が公共の利益の上で必要があるというふうに思いますれば、それ以外の者に対しても強制的に実施権を与えなければいけない、こういうことになるわけでございまして、特許法の面からはそういうことでございますが、独禁法の方の正確なるお答えは私どもの範囲内でございませんので御勘弁を願いたいと思います。
○上坂委員 いま申し上げたような弊害が起きた場合には、通産省としてはこれは十分独占禁止法等によってきちっと取り締まっていく、こういう方針であるのかどうか、大臣にお聞きいたします。
○河本国務大臣 先ほども申し上げましたように除外規定はありますけれども、しかしこれが乱用されるという場合には当然これは排除しなければならぬということを申し上げたわけでございます。
○上坂委員 それでは、内容にちょっと入ってまいりますが、初めに多項制導入の問題であります。 この法律で発明とは、これは二条の一項で「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」と、こうあります。そして、三項で発明の実施というものについて「物の発明」「方法の発明」「物を生産する方法の発明」と、こう三項に分けて定義づけをいたしております。ところが、新しく出てきましたこの実施態様というのには、その定義づけがありません。一体この実施態様というのはどういうことを指すのか、これをお聞かせいただきたいと思います。齋藤(英)政府委員 お答えいたします。 今回の新しい改正法案の中にございます実施態様という言葉でございますが、これは三十六条の五項に「発明の構成に欠くことができない事項のみを記載しなければならない。」というふうにあります本文に対しまして、ただし書きで「ただし、その発明の実施態様を併せて記載することを妨げない。」、そこで実施態様という言葉が出てくるわけでございます。 それで、これは多少前にさかのぼって申し上げますと、大正十年法の施行規則三十八条の五項であったと思いますが、それに同じようにその発明の「実施ノ態様」という言葉がございまして、それを実施態様ということで新しい改正案に引いてあるという歴史的な経緯がございます。したがいまして、実施態様というものにつきましては、特許関係の方につきましては一応ある程度御認識があると思います。しかしながら、歴史的な経緯はありますけれども新しく出てきた言葉でございます。 内容を申し上げますと、その「発明の構成に欠くことができない事項」といいますのは、発明の構成、要するに技術的手段、発明の特徴というものが全部そこに一応あらわれておりますが、その技術的特徴が全部あらわれておりますその技術的特徴を全部含みまして、その構成の要件のある部分に限定を付しましたり、あるいは場合を限りましたりいたしまして、それを具体的にあらわしました発明の態様でございます。したがいまして、「発明の構成に欠くことができない事項」をより具体的に表現をしました発明の態様であるというふうに、一口に言えばそういうことであろうかと思います。
○上坂委員 そうすると、この実施態様というのは、「発明の構成に欠くことができない事項」のなお詳細な説明であると、こういうふうに解釈するわけですか。
○齋藤(英)政府委員 実施態様と申しますのは、「発明の構成に欠くことができない事項」を一応全部書きますが、それと区分をいたしまして実施態様を書くわけでございまして、その発明の構成だけでは、現在非常に技術が進歩しておりますために、非常に複雑な構成になりましたり、あるいは非常に広い範囲の構成を書く場合がございます。その場合には、その内容につきましてその境界が非常に不分明な場合もございますし、あるいはその内容につきまして、ここだけはより確かに主張したい、権利として主張したいというふうな事項もございます。そういう場合には、それを実施態様として記載をするということでございまして、発明のいわば態様といいますか、実施をいたします具体化をした態様であるというふうに御了解をいただきたいと思います。
○上坂委員 クレームが幾つかありまして、第一のクレームのところには請求の範囲を書くことになるわけですが、その場合、何項目かの中にこれは実施態様と認められないというものがあった場合は、これについてはどうするのですか。
○齋藤(英)政府委員 もし実施態様という範囲のものでない、たとえば第一項に発明の構成に欠くことができない事項を記載いたしまして、第二項目に実施態様が書いてありまして、第二項の実施態様が第一項の発明の構成に欠くことができない事項よりはみ出しておるというふうな場合は、これは実施態様とは言えないわけでございます。したがいまして、これにつきましては、審査官がそう判断いたしました場合には、それを補正をさせるか、あるいは拒絶をするかということになろうかと思います。
○上坂委員 その実施態様が、いま長官が説明された、欠くことのできないものからはみ出しているという御説明があったわけでありますが、その場合全項目がそうしたものであった場合には、これはその発明自体が全部拒否されるということになるわけですか。
○齋藤(英)政府委員 実施態様がはみ出しておりました場合には、その出願に対して拒絶理由通知を出しまして、その拒絶理由通知にもし応じない場合には拒絶査定になると、こういうことに相なります。 別の場合を考えますと、拒絶理由通知を出しまして、拒絶理由通知でございますから、その中に理由が書いてございます。その理由に従いまして第二項以下の実施態様を、補正といいますか、補充、訂正、修正をいたしました場合には、審査官が訂正した結果のものが本当の実施態様であるというふうに認めれば、判断が違ってくる、こういうふうになるわけでございます。
○上坂委員 もう一つ、大正十年法にありました「実施ノ態様」という、これには「ノ」というのが入っているわけですが、この「実施ノ態様」ということと今回採用になる「実施態様」ということは、これはどう違うんですか。
○齋藤(英)政府委員 大正十年法の施行規則の三十八条五項で言っております「実施ノ態様」といいますものと今回法律の改正案で言っております「実施態様」というものにつきましては、概念的にはほとんど同じでございます。しかしながら、その法律的な意味は非常に違うというふうに私どもは考えております。 一言説明をさしていただきますと、大正十年法の「発明実施ノ態様」と申しますのは、これは「附記」ということになっておりまして、特許請求の範囲外であるということが施行規則に書かれておりまして、その辺は判例上も明確になっておりますが、今回の「実施態様」と申しますのは、先ほど申し上げました三十六条の五項の本文にあわせてその発明の実施態様を記載するということでございますから、当然特許請求の範囲内の記載ということになるわけでございまして、これは特許法の七十条によりまして特許権の範囲内になるということでございます。その辺が法律的意味が非常に違うと申し上げたゆえんでございます。
○上坂委員 実施態様については、「併せて記載することを妨げない。」ということになっておりますから、これは記載をしなくてもいい、こういうことになると思います。 そこで、もしこの実施態様が書いてなくて、特許請求の範囲の記載事項だけが書いてあって、なおそれで足りないという判断を審査官がした場合、この場合にはどういうふうになりますか。
○齋藤(英)政府委員 審査官の判断といたしましては、現在と同じように、いわゆる主請求項と申しますか、発明の構成に欠くことができない事項だけが書いてあって、その発明の実施態様が書いてない、その主請求項だけを見た場合に、その発明の内容がたとえば把握できない、あるいは発明としてどうも条件が不十分であるというふうな場合には、拒絶査定ということにならざるを得ないと思います。
○上坂委員 ことしの三月二十日の参議院の商工委員会の会議録がここにありますが、この商工委員会に参考人として出席をされました弁護士の松本重敏氏がこういうことを言っているわけですね。「審議会の委員として答申作成に至るまで直接関与いたしました」こう言っているわけでありますが、実は、ごらんのように、「実施態様」という用語が突然第三十六条ただし書きに顔を出してきている、「実施態様」という用語は、用語自体としてはあいまいである、こういうふうに書いてあるわけであります。あなたの方から出ました、多項制庁内委員会というものがつくりました「多項制及び併合出願制度に関する運用要綱試案」というものがあります。これは四十九年の八月に作成をされているものでありますから、かなり前からもうこうした要綱案ができているというふうに思うのです。ここに多項制の意味なりいろいろ説明が行われているわけでありますが、こうした要綱試案というものは、これは全くそうした審議会の委員のような、いわゆる特許法の権威者といいますか、そうした人には全然見せないし、諮らないので、庁内だけでこういうものがつくられている、こういうふうに解釈をしていいのかどうか、その点お聞きいたしたいと思います。
○齋藤(英)政府委員 多項制及び物質特許につきましての運用要綱というものは、私ども法律案、条文になります前からいろいろな方面で検討をいたしておりまして、いまお話のございましたのは庁内で検討した案であろうかと思います。したがいまして、まだ条文的にも完成をしていない前ではなかろうかと思います。その段階におきまして、そういう要綱自身、これは私どもとして心得るべきことあるいは問題点をいろいろ摘出する、あるいはそれを分析して解決しなければいかぬというふうなことをいろいろ考えまして、細かく詰めた要綱を第何次案もいろいろつくっております。その段階におきましては、お話しのとおり、庁内だけで検討したものでございます。しかしながら、もし条文が確定をいたしまして、これを外に出してもいいということになりました場合には、要綱といたしましても、その要綱案を内外各方面に広く説明をいたしまして皆様の御納得を得ると同時に、もし足らざるところがあればそれを修正するということも考えております。
○上坂委員 参議院の審議の場合、そうしたいわゆる細部にわたる運用要綱といいますか、将来省令になるようないろいろな事項、基準、そういうものがきちんとしない時点ではこれを審議することができないというような意見もあったように思います。したがって、こうしたものはやはり一緒に出していただくようにしませんと、特許法は非常にむずかしい条文でありますのでなかなか理解がしにくい、こういうふうに思うのです。その点については、まだできていないのであって、この法律の改正が可決された時点でそれから取りかかる、こういうふうな形になるのかどうかお伺いをいたします。
○齋藤(英)政府委員 いま申し上げましたのは、この法律案が確定をいたしませんと、正式の省令というものは、もちろん実施省令でありあるいは委任省令でございますからこれは出せないわけでございますけれども、私どもといたしましてはやはりその前に、いまお話もございましたように、要綱なり省令案というのは実は検討いたしておりまして、ある程度の、たとえば省令につきましては要綱案のようなものを私どもは考えております。 それで、現在三十六条の六項では、特許請求の範囲の記載につきましては省令に委任をすることになっておりますが、どういうものを委任するか、省令に記載するかということにつきましては、私どもといたしましての一定の案を実は持っておる次第でございます。
○上坂委員 「実施」については先ほど申し上げましたように法文にきちんと定義づけされているわけであります。今回出てまいりました「実施態様」という言葉の意味ですね。これについても私は条文の中で定義をする必要があるのではないか、こういうふうに思っておりますが、その点はいかがですか。
○齋藤(英)政府委員 「発明の実施態様」と申しますのは、先ほど、いわゆる主請求項に書かれました発明の構成に欠くことのできない事項のその技術的特徴を全部含み、かつその発明の構成の中の要件に限定を付して、あるいは場合を限りましてこれを具体的にするものであるということを申し上げたのでございますが、その定義と申しますか、その概念を規制するということ自身、正確に法文をあらわすことにつきまして、内閣法制局におきましてもいろいろ御苦心をされました。しかしながら、「実施態様」という言葉は、いま申し上げましたように「実施ノ態様」という言葉ではございます。大正十年法にもありますし、あるいは学術論文などにもしばしば用いられておる言葉でございますし、諸外国でも、これはもちろん英語なりあるいはドイツ語でございますが、それと同じような概念で規制をしております制度が、先進諸国ではかなりございます。そういうことで「実施態様」という言葉自身は広く関係者には一応認識されておるのではあるまいか、そういう積極、消極の両方面で考えまして、一応定義というものはしてない、こういうことでございます。
○上坂委員 言葉が理解をされているという認識なので、その辺のところは私もちょっとわかりませんが、いわゆる今回のクレームの記載形式あるいは内容、そういうものはこれから通産省令にゆだねるという形になっておるわけでありますが、この記載につきましては、出願者の方も審査官の側も、新しい制度であって、これに十分習熟をしていかなければならないであろう、その意味で早急に基準というものが確立をされて、そしてそれらが広く——特に特許は出願者のいわゆる利権を守るものでありますから、そういう意味では特に出願者の方にそうした理解というものが、深く習熟をするような形に持っていかなければならない、こう思うわけであります。 そうなりますと、仕事の量というものは、特許庁自身にとって非常に多くなってくるのではないかということも危惧されるわけであります。というのは、いままでの書き方とそれからこれからの書き方が非常に違う、いわゆる記載がむずかしい。したがって、先ほどから質問をしておりますように、何回も補正をしたりあるいは出し直しをしなければならない、そういうおそれすら出てくるというふうに思うわけであります。したがって、その記載の最初に相談を受ける、そうした窓口というようなものも特許庁の中に必要になってくるのではないか、私はこういうふうに考えておるわけであります。こうしたことに対しての対策についてお伺いをいたしたいと思います。
○齋藤(英)政府委員 多項制の採用に当たりましては、先生お話しのように新しい制度でありますだけに、これは各方面に、庁の内外を問わず広く周知徹底をさせることが非常に必要であることはお話しのとおりでございます。私どももそれを非常に努めるつもりでございますが、もし本法案が確定をいたしました場合には、私どもは、庁の内外はもちろん各地に説明会を開催をいたしまして、それからなお特許庁の中には特許相談所という窓口が現在でもございますが、そこでも広く皆様方、出願をしようとされる方々の要望に応じまして、親切にこれを教え、かつ適確に出願ができるようにするようにいたしたいと思います。そういたしませんと審査官の方も大変でございますので、私どもの方も、先生お話しのとおり十分気をつけてやりたいと考えております。
○上坂委員 多項制ということについてお伺いしますが、どうも何回読んでも余りよくわからないのですが、今回多項制採用というふうにはなっておりますけれども、原則としてはやはり単項制というものではないか、こういうふうな感じが私はするわけであります。その点はどうでしょう。
○齋藤(英)政府委員 先ほども御質問の中にございましたように、多項制と申しますのは、主請求項と申しますか、第一項に発明の構成に欠くことができない事項、これは是非とも記載しなければいけないわけであります。そうしませんと発明の内容がわからないということでございますから、これは是非とも記載をしなければいけないことでございますが、その実施態様につきましては、先ほど申し上げましたようにその主請求項の記載自身によりまして、たとえばこれが非常に抽象的である、あるいは非常に広いためにその境界についてどの範囲までであるかということについて不分明であるというふうなことを出願人が感じました場合に、もちろん同一発明の範囲内でございますけれども、出願人のみずからの意思によりまして実施態様を書くのでございます。したがいまして、これは出願人の任意と申しますか、出願人の意思によりまして必要があれば書く、必要がなければ書かない、こういう性格のものでございまして、これはいわゆる国際条約あるいは先進諸国はほとんど全部多項制でございますが、各国がとっております多項制の制度は全くそういう制度でございます。
○上坂委員 多項制の採用によって発明の保護が適正に行われる、あるいはまた第三者の便宜が図られる、こういうふうに言われておるわけであります。この具体的な例をひとつ示していただきたいと思います。
○齋藤(英)政府委員 発明の保護が図られると申しますのは、先ほど申し上げましたように実施態様を書くことによりまして発明の範囲がより明確になります。で、出願人としましてはこの点は是非落とさないで主張したいという点がございます。そういう点は、特に実施態様として具体的にそれを記載するということによりまして非常に明確になろうということが一つございます。 それから、同じことでございますが、二番目に、これは出願公告ということで公告されます。公報に出ます。第三者がそれを見ました場合には、第一項の主請求項だけよりも、それを具体化した実施態様が書いてありますればより明確にその内容が把握できるわけでございます。したがいまして、たとえば第三者、出願人以外の人がある物を製造する場合に、それが特許権に触れるのか触れないのかということが、実施態様が書いてあるのとないのと比べますと、実施態様が書いてありますと、それはまさにどんぴしゃり、それに触れるということが非常に明瞭になります。そういう点もございまして、権利者の保護と同時に、第三者に対しましても無用な係争は起こさないで済む、こういう利点もあるわけでございまして、そういうことをまとめましていまのように申し上げておる次第でございます。
○上坂委員 多項制の採用によって一発明の概念というものが変わってくるのかどうか、ここのところをお聞きしたいと思います。 それからもう一つは、外国では一出願に対して複数の発明が入っているのが普通であるというふうに聞いておるわけでありますが、外国の例はどういうふうになっておるのかお聞かせをいただきたいというふうに思います。
○齋藤(英)政府委員 工業所有権審議会の多項制小委員会におきまして、この問題は非常に議論になった問題でございます。それで、結論は、一発明の概念は多項制になっても変えないというのが結論でございます。 それで、日本の発明の単位と申しますか一発明の範囲と申しますか、これは諸外国に比べますと非常に明瞭であると同時に、その範囲がやや狭いということが言われております。外国の言葉でこれをカテゴリーと俗称しておりますが、ワンカテゴリーが一つの発明であるというふうに考えられているわけでございます。しかしながら、日本の制度は、一出願で出願をし得る発明の範囲といいますと、通常の場合には三十六条によりまして、いまのようにワンカテゴリーについてワンインペンション、一つの発明で、それが一出願の範囲内でございますが、三十八条という規定がございまして、併合出願という制度がございます。これは一定の関係にあります二以上の発明につきまして一出願ができるという規定がございます。したがいまして、日本の制度によりましても複数の発明が場合によりましては一つの出願でできるという制度がございます。 外国の制度でございますが、諸外国の制度は、それぞれ国によりまして多少ずつ、場合によりましては相当違うのでございまして、たとえばスイスの制度、スイスの発明の考え方は日本の発明の考え方とほとんど同じでございまして、発明の範囲は日本と同じように狭いのでございます。ところが、それ以外のドイツあるいはアメリカにつきましては、発明の範囲というものは法文上はっきりいたしておりません。それで、これはそのときのケース・バイ・ケースによりまして一出願の範囲、認める範囲を決めております。ただ、原則は一発明一出願ということでございます。これを逆に言いますと、一発明という範囲が、ある場合にはかなり広く、ある場合にはかなり狭い、こういうことでございまして、たとえば物の発明とその用途の発明というものは別々に出願もできますし、あるいは一緒に出願もできるということになりまして、発明の範囲がやや不明確——不明確といいますか、はっきりしていないということでございまして、これは判例その他によりまして次第にいろいろ確定をする場合もございますけれども、概括的に言いまして、したがいまして諸外国の発明というものは日本より範囲が広い。一つの一般的な発明思想で包含されているものは通常一発明と見るというふうな、そういう考え方が諸外国では多うございます。その点の違いがございます。
○上坂委員 いま御説明をいただいたような状態で考えた場合、国際的なものに近づけていくということが今度の法改正の目的である。今度のいま言った一出願一発明の概念、こうなりますと、それで国際的な関係の上においては何ら支障がない、こういうふうに解釈をしていいのかどうかお伺いをいたします。
○齋藤(英)政府委員 一出願で出願をし得る範囲でございますが、これはいま申し上げましたように特許法の三十八条の規定によりまして併合出願制度というのが日本でもございます。これは一定の関係のある二以上の発明につきまして一出願ができるという制度になっております。したがいまして、諸外国と比べましていままで日本の特許制度が違っていた点と申しますと、一発明について主請求項以外のいわゆる実施態様的なものですが、それが書けなかったという点が国際的に見ると非常に大きく違っておった点でございます。したがいまして、今回その一発明につきましても実施態様を書かせて、多項で書けるということにいたしました結果、私どもは、国際的に見てもあるいは将来入りますPCTの条約上から見ましても何ら支障はない、こういうふうに考えております。
○上坂委員 多項制の導入に伴いまして、いわゆる特許に必要な文献あるいは内容の多様化と申しますか、あるいは外国の特許資料の整備、調査制度の改善、そういうものが必要であろうというふうに思いますが、この間見学した限りにおきましては、現体制が非常に不備であるというふうに感ぜざるを得ません。これは文献、出願書類等もしょっちゅう移動されていて、保管体制も非常にずさんな形になりそうな感じがします。こうした点を早急に改めないと、こうした新しい制度の導入ということについて内部的に対応することができなくなってしまうのではないか、こういうふうな感じがするわけであります。こうした点について、将来どういうふうにされるのか、いろいろ施策があると思いますが、いわゆる周辺条件の整備と申しますか、そういうことについてお伺いをいたしたいというふうに思います。
○齋藤(英)政府委員 多項制の採用に伴いまして、いままで俗に言う主請求項だけでございましたのをいわゆる実施態様項があわせて書かれるという場合が非常に多くなるということでございますので、当然審査官としましては、それが本当の実施態様であるのかどうか、あるいは実施態様の記載が省令記載のような要件を満たしておるのかどうか等、各方面についていろいろなチェックをすることが非常にふえてまいります。したがいまして、審査官の業務は、定量的な問題は別にいたしまして、定性的には増加をしてくるということに考えざるを得ないと思います。しかしながら、その実施態様項は、一発明の範囲内、それを具体的に記載をした態様でありますために、主として主請求項によってこれを把握することは、これもまた問違いないことであろうかと思います。したがいまして、多項制を採用することによりまして、サーチする文献の範囲が非常に広くなるというふうなことはないのではあるまいかと思います。 ただ、現状におきましてそれでは書類の整備あるいは審査文献の整備その他が完全であるかどうか、あるいは文書が出願から審査に行き、公報に行き、あるいは登録に行きというふうな、そういうものが完全であるかどうかということと、もう一つ書類の保管方法自身が完全であるかどうかということにつきましては、私どもはその辺につきましては、まことに改善する点が多いと思います。これは現在PCTに入りますにつきましても、五カ年計画、四カ年計画をつくって整備しつつありますけれども、なお一層この点については私どもはぜひ努力をいたしたいというふうに考えております。
○上坂委員 大臣にお伺いしますが、いま長官がおっしゃったように、非常に内部体制が整っていないという感じがします。特に庁舎が二つに分かれておりまして、非常に不便を来しておる。しかも、出願の書類というのは、これは国民の権利でありますから、非常に大切にしなければならないというふうに思うのです。それを車に乗っけて毎日のようにあっちへ運び、こっちへ運びしているようでは、こうした交通頻繁の事故の多い時期においては、これは非常に危険であるし、いわゆる国民の権利あるいは財産保護という面から非常に問題があると思うのです。こうした点について早急に改善する必要がある、庁舎の建物の問題を含めましてそういうふうに考えます。その点について大臣としてどういう方針を持っておられるかお伺いをいたします。
○河本国務大臣 特許庁は、現在特許庁の本庁舎とそれから通産省の本館と二つに分かれておるわけでございます。事務処理等いろいろな面から好ましい状態ではない、こう思います。そういう認識の上に立ちまして、できるだけ早い時期に改善をしたい、こういうふうに考えまして、関係方面に対しまして働きかけておるわけでございますが、一刻も早く統合できますように万全の努力をしたい、かように考えております。
○上坂委員 その点は私からも強く要請をいたしておきたいというように思います。 次に、物質特許制度の導入についてお伺いいたしますが、この物質特許につきましても要綱試案というものが出ておるわけであります。先ほどの多項制の運用要綱試案と同じようなものが出ておりますが、これについても先ほど御説明をいただいたような形で解釈をしてよろしいのかどうか。 それから、この要綱試案というのは、一応広く各方面に意見を求めていくときの一つのたたき台となるのかどうか、この点をお伺いをいたしたいというふうに思います。 それからもう一つ、庁内に産業別の審査基準室というものが設置されているというふうに聞いておるわけですが、この産業別の審査基準室というのはどういう役割りを持っているのか。また、現在までどういうふうに活用されてきておるのか。そして、今度の運用要綱作成についてはどういうふうに参加をしてきたのか、この点についてお伺いいたします。
○齋藤(英)政府委員 物質特許につきましての運用要綱の取り扱いの御質問がございました。 これはお話しいたしますと、多項制と全く同様に、これが確定をいたしました場合、あるいはその前におきましても広く内外の御意見を聞き、あるいは各地にわたって説明会もいたしまして、広く徹底させると同時に、かつ足らざるところがあればやはり御意見をお聞きいたしまして直すということについてやぶさかではないつもりでございます。したがいまして、たたき台というふうにお考えいただきまして結構でございます。 それから、第二番目に審査基準室の話がございました。これは現在は産業別の審査基準等をつくっております審査基準室が一つございます。その中で産業別の審査基準というものをいろいろ作成いたしておるわけでございますが、これは多項制であると物質特許であるとを問わず、運用要綱のさらに詳細なものが、審査官が審査をする基準として要るわけでありまして、各審査官によりましてそれぞれの判断がいろいろ違うということも問題がございますので、これは一定のケースについてはなるべく一定の判断を下せるような審査基準をつくるというのが特許庁としては当然の役目であろうかと思いまして、いまの要綱作成につきましても当然参加をして一緒に議論いたしておるというのが現状でございます。
○上坂委員 この物質特許の字句、これもまた非常にむずかしいわけでありますが、「化学方法により製造されるべき物質」こういうふうにあるわけですが、「化学方法」というのはどういうことを一体指すのか御説明いただきたい。
○齋藤(英)政府委員 これは非常に細かい技術的なことになろうかと思いますが、普通、物を製造する場合に、いわゆる物理的な方法によって製造するもの、それから化学的な方法によって、いわゆる化学変化を起こさせてこれによって製造するもの、大別すればそういうことになろうかと思います。したがいまして、ここに書いておりますのはその後者の方を言っておるというふうに考えております。
○上坂委員 「製造されるべき物質」というふうになっておりますが、この「されるべき」という意味は、化学的な方法で製造されなかった場合もあり得る、こういう意味になるわけですか。 それから、その場合具体的な例を挙げればどんなものを挙げることができるかお答えをいただきたいというふうに思います。 それからもう一つは、製法のいかんを問わず、化学物質といわゆる同一物質という形になれば、それは特許の対象になる、こういうふうな意味に解釈してよろしいかどうか。
○大谷政府委員 お答え申し上げます。 化学方法により製造される物質と申しますのは、ただいま先生がおっしゃいましたように、実際に製造されたものでなくても、それが化学方法によって製造することができるという物質を含みます。 それから、具体例でございますけれども、たとえばこの化学物質というのはポリエチレンとか塩化ビニールとか、そういったものでございます。 それから、三番目の御質問でございますが、化学物質につきましては、要するに製法は問わず、物質で特許が与えられますと、製造方法のいかんを問わず保護されるということになります。現在の法律でございますと、製造方法しか特許が与えられませんので、その製造方法それからその製造方法によってつくられた物質、それだけが保護されるということになるわけでございます。先ほど申し上げましたように、現行法の改正ということで今回御提案申し上げている改正法案におきましては、製造方法のいかんを問わず、その物質が特許になればそれが保護される、そういうことでございます。
○上坂委員 化学方法というのですか、化学方法でなくてもいわゆる化学物質とみなされるものといいますか、化学物質と同じ物質といいますか、そういうものができたという場合には、それでも特許の対象になるか、こういうことなんですが。
○大谷政府委員 お答え申し上げます。 天然物そのものは化学物質の対象にはなりません。ただし、天然物から単離されたもの、これは化学物質ということで特許の対象になり得るわけでございます。
○上坂委員 要綱によりますと、化学物質発明の本質は、有用なる化学物質の創製にあり、有用な化学物質を提供することが発明の目的であり、化学物質自体が発明の構成である、こういうふうに言っているわけです。 そこで、有用であるということは人間生活に役立つことができるという意味であろうというふうに思います。そうしますと、その化学物質の用途といいますか、これをどう使うか、何に使われるかということが一番大切になるのではないかというふうに私は思っておるわけです。ところが、特許請求の範囲には化学物質の用途の記載を必須の条件としない、こういうふうに答申でも言っておるわけでありますが、この辺が私は非常に疑問であります。ほかの化学物質以外のものの発明では、これは用途が明示されているというふうに思います。飲食物にしても嗜好品にしても医薬の場合でも用途というものが明示されているのではないかと思うのですが、化学物質の場合だけ用途の記載は必要としない、こういうふうに言われている点について、これはどういうために、こうしたいわゆる目的、構成ですね、そういう面からこういう形のものが出てくるのか、ここのところを説明いただきたい。
○大谷政府委員 ただいま先生おっしゃいましたように、有用であるということは人間生活に役に立つということとわれわれも解釈いたします。化学物質発明はその本質が有用な化学物質の創製にある、新しい化学物質を提供することというように考えております。 その化学物質が有用であるということでございますが、この有用と申しますのは、先ほど申し上げましたように人間生活において意義のあること、これは先生おっしゃったとおりであります。したがって、人間生活において利用することができるものであるということを意味する概念と考えております。人間生活において何ら意義のない化学物質を提供したいといたしましても、これは技術的思想の創作と言うことができないと考えます。化学物質発明におきましても有用性を欠くことができないものでございます。明細書の中で用途を開示するということがしたがって必要になってくるわけでございますが、明細書の中における用途の開示というものはその化学物質がどの分野で役に立つかということの裏づけとなるものでございまして、これが明らかでない場合には発明は成立しないということになるわけでございます。
○上坂委員 そうしますと、用途を書かなくてもいい。書いてない場合には何に使われるかわからないわけであります。ところが、その化学物質そのものは人間の役に立つ、生活の役に立つ、こういう判断をするということになると、審査官は一体どこでそういう判断をするのですか。
○大谷政府委員 先ほどちょっと説明が不足いたしまして大変失礼いたしました。請求の範囲に用途を記載しなくていいかどうかという問題であろうと思います。 化学物質発明は、その化学物質を特定するのに最低必要な要件というものは、その化学物質を規定する事項でございまして、これは化学構造でございます。この化学構造によりましてその化学物質が他の化学物質と区別できるということでございます。したがって、請求の範囲は、この化学構造を記載するということでございます。 このように化学構造によりましてその物質は特定されるものでございますけれども、このように特定された物質は通常多くの属性、すなわち性質と申しますか、これを持っているものでございます。この属性はその物質の発明時に顕在しているものもございますし、潜在しているものもございます。潜在しているものが多いというケースが多々あると思いますけれども、これらの、少なくとも一つの属性に基づいてその物質が有用であるということが明細書により認識されまして、またその物質の製造方法は記載しなければいけないわけでございますけれども、そういうものが明細書に明らかにされていた場合には、有用な化学物質を創製したものであるということで、その化学物質の発明は成立するものでございます。化学物質の一つの属性に基づいて用途を請求の範囲に限定する必要はないというふうに考えるものでございます。 用途発明というのは別途ございますけれども、これは化学物質の属性、化学物質を初め発明をいたしまして、その後その属性を発見すると申しますか、認識をいたしまして、それに基づいて新しい用途を開発したという場合が用途発明になるわけでございます。 審議会での検討段階におきましてもこの点がいろいろと議論されたわけでございますけれども、このような点のほかに、用途限定を付した保護ということでは、物質自体に保護を与えるという物質特許の基本的な趣旨に反するということ、それから諸外国でもほとんどの国が特許請求の範囲に用途の記載を必要としないというような実情にかんがみまして答申のような結果とされたものでございます。 先ほど申しましたように化学物質の属性は、その化学物質の構造により導き出されるものでございますけれども、多様でございまして、すべての属性をその物質の発明時に認識することは困難なことと考えます。これも繰り返しになりますが、したがってその化学物質の属性を後から認識し、それに基づいてなされた発明は、別途用途発明として特許を受けることができるわけでございます。
○上坂委員 非常に込み入った説明ですが、結局は用途の限定記載が全くなくてもいい、用途というのは潜在的にも顕在的にもこれは必ずある、そういう判断、ができる場合特に記載しなくてもよい、こういうふうに答えておられるのですか。
○齋藤(英)政府委員 いま先生の御質問で、特許請求の範囲に書くのか書かないのかという、そういうことでございますが、いま大谷技監がお答え申し上げましたように、それは新しい物質の創製であるから書かなくてもよろしい。しからば、それではその有用であるかどうかについては何で判断するんだ、こういうことに相なるわけでございますが、それは明細書の中に発明の詳細な説明という欄がございまして、発明の詳細な説明欄にはもちろん一般の人が実施できる程度に記載しなければいけないという規定がございますと同時に、そこには当然それが一体産業上利用できるものであるのかどうか、これは特許法二十九条の要件がございますが、そういうものが書いてなければいけません。それから、技術というものはそもそも有用でなければいけない、こういう解釈もあります。したがいまして、当然一つ以上の用途が詳細な説明の中には記載してなければ、有用であるかどうかという判断ができません。したがいまして、特許請求の範囲には書く必要がないわけでございますけれども、詳細な説明には書かなければこれは審査官が判断ができない、こういうことでございます。
○上坂委員 化学物質というのは、二つ以上の用途を持つことがあり得るというふうに思います。そこで、別な用途向けに第三者といいますか、ほかの者によってこの同じ物質が製造をされた場合は特許権はどういうことになるのか御説明をいただきたい。
○齋藤(英)政府委員 ただいまの御質問の趣旨は、あるXという物質がありまして、その製造方法が、たとえばAという製造方法でXという物質を発明いたしました、こういう場合に、それではBという製造方法をもって同じくXという物質をつくった場合に、そのBという製造方法というものは特許になるのかならないのか、こういう御質問の趣旨のように思いますが、Bの製造方法は、これはもちろん他の特許要件を備えていなければいけませんが、他の特許要件を備えている限りこれは特許権の対象になり得るわけでございますが、ただそれはいまのXという物質特許権者から実施許諾を受けない限りは実施ができないという、そういう関係はございます。
○上坂委員 この要綱試案に化学的類似方法の説明がありまして、この化学的類似方法がいままで長い間特許の対象とされてきたわけでありますが、このことは新規性よりも進歩性があると認められてきたからではないかというふうに私は思います。ところが、今回の改正では、化学的類似方法についてはこれを認めない、こういうふうに言っているわけでありますが、この点について御説明をいただきたい。
○大谷政府委員 化学的類似方法につきましては従来許していたということでございますが、おっしゃるとおりでございまして、これは、日本もそうでございますけれども、西ドイツにおきましても同様のプラクティスをとっているようでございます。というのは、従来、現在もそうでございますが、物質特許が許されないために製造方法の形でそれを出願するということになるわけでございまして、これは理論的に申しますと本来物質特許でとるべきものでございますけれども、それができないということでそういった形で出してくるわけでございます。 〔委員長退席、前田(治)委員長代理着席〕 こういったものは従来、物質特許がないということで方法の形で許してまいったわけでございますけれども、ただ今回の改正法案が成立いたしますれば物質特許が採用されるわけでございますので、現在のところ、化学的類似方法については今後はこれは許さないという方向で検討を進めております。
○上坂委員 そうしますと、従来は化学的物質の特許制度がなかったからやむを得ず製造法の発明としてこの化学的類似方法が特許の対象になってきたということになると思いますが、そうなりますと、いわゆる本来の発明というものに該当するものではなかったというふうになってくると解釈せざるを得ないのです。そうしますと、いままでずっと認めてきた、いわゆる発明の対象となってきたものは、もうこれからは発明の対象にならなくなってしまう。その点について非常に矛盾を感ずるわけですが、従来のものについての扱いはどうするのか、その辺のところの御説明をいただきたい。
○大谷政府委員 ただいま申し上げましたように、従来は化学物質自体を特許しないということでございますので、化学的類似方法というようなものを認めてまいったわけでございますけれども、今後は化学物質を認めるということでまいりますので、従来の化学的類似方法で出願されたようなものにつきましては化学物質自体で出願すればよろしいということになるかと思います。
○上坂委員 すると、従来のいわゆる認められてきた、特許を受けてきた製造方法、この点についてはどういうふうに扱うのですか。
○大谷政府委員 従来から認められてまいりました化学物質の製造方法でございますけれども、これはただいま申し上げました化学的類似方法とはまた別に、一般的な製造方法というように解釈して申し上げたいと思いますけれども、これらにつきましては従来どおり、従来許されていた製造方法は今後も許される。それに加えて、新しい化学物質、これが物質自体として許されるということになります。したがいまして、従来許されてまいりました製造方法、これは許されるわけでございます。
○上坂委員 従来から認めてきたからいまさら取り消すわけにいかないので認めるということになってしまうのだろうと思うのですが、元来、この進歩性というのは既成の物や方法に対する関係であろうというふうに私は思います。したがって、その発明とすでに知られている事物との関係で生じてくるものだというふうに思うわけでありますが、これがなぜ物質特許に関係をしてくるのか、ここのところがどうも解せないわけであります。言ってみれば進歩性一つではもはや特許の対象とはしない、こういうことを決めた、こういうふうに解釈していいんですか。
○大谷政府委員 特許になるための要件といたしましては、いろいろございますけれども、大きく申しますと三つの要件がございます。 一つは、産業上利用できる発明でなければならないという問題、それからもう一つは、新規性がなければいけないという問題、それからさらに、進歩性がなければいけない、これが三つの大きな要件でございます。そのほかに、明細書の記載等の問題もございますけれども、実体的な要件といたしましては、以上申し上げましたような三つの要件がございまして、進歩性だけというわけではございません。産業上の利用性、それからもちろん進歩性があるものは新規性があるということになると思いますけれども、産業上の利用性、それから新規性、進歩性、これが三つの大きな要件でございます。
○上坂委員 次に、医薬について御質問いたしたいと思いますが、すべての特許出願は出願の一年六ヵ月後に特許法の第六十五条の二で全文が公開されることになっております。その公開に際しては、特許庁長官は公の秩序または善良の風俗を害するおそれがあるかどうかを審査し、それに合格したものだけを公開するというふうになっております。この場合、出願者が後発メーカーを念頭に置いて、虚偽というよりも虚構的な製法や構成事項を記載して出願をした場合、その発明の構成に必要な事項の信憑性を判断できないか、または判断をしないで公開することもあり得るだろう、こういうふうに思います。そうしますと、これは薬事法の第六十六条の一項の誇大広告の禁止規定、そこにあります「虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。」ということに触れるのではないか、こういうふうに思うわけであります。 そうしますと、その出願した公開の公文というものは薬事法違反の文書として、これが五年間もずっと生きている、こういうかっこうになって、しかもそれが公開をされている、こういうことになりますと、これは非常に大きな問題になるだろう、こういうふうに思うのです。そのことによって後願の発明者に非常に大きな迷惑や損害を与えることもあり得る、こういうふうに思うわけですが、こういう点について特許庁としてはどんなふうにお考えになっておられるか。 また、これを未然に防止していくことが必要であるというふうに思うわけでありますが、そうなりますと、厚生省関係の法律、食品の場合でありましたら食品衛生法あるいは毒物及び劇物取締法あるいはさきの薬事法、そうした審査基準あるいは施行細則、そうしたものと抵触をするようなことになっては大変なので、この辺を調整していかなくちゃならぬ、こんなふうに考えるわけですが、これらについてお答えをいただきたい。
○齋藤(英)政府委員 特許法は、言うまでもなく一定の期間たちましたならば、その内容を公開いたしまして、その特許要件を備えておるものにつきましては特許権を与える、こういう制度でございます。したがいまして、薬事法で言っております諸種の制限がございます。あるいはその目的がございます。その目的とするところと特許法の目的とするところと一応違っております。したがいまして、その辺は必ずしも整合性がないということは、各種の法令間において行われることでございます。 それからなお、公開の場合にはこれは未審査のものでございますからして、分類のときに一応簡単には見ますけれども、その内容がどういうものであるかという精査はいたしておりません。したがいまして、審査官の段階においては判断ができないということでございます。
○上坂委員 審査官の段階で判断ができなくて一応それを公開していく、こういう形になってきたときに、それが後願者に非常に不利益をこうむらせるものになるのじゃないか、こういうことが起きないということは必ずしも言えないと思うのです。そうしたものについてどういうふうにお考えになっておるかということです。
○齋藤(英)政府委員 特許法におきましては、いまの公開というものは当然審査がしてないものでございます。したがいまして、第三者がいました場合には、それが特許になるものであるかならないものであるか、どういうものであるかということはまだわからない段階で一応公開されておる、こういうことでございますので、第三者は公開公報をごらんいただく場合にはそういう見方でごらんをいただきたいと思うわけでございます。したがいまして、この内容によりまして、公開されたならば必ず特許になって、ほかの後願者は特許にならないのじゃないかというふうなことにはならないのでございます。
○上坂委員 私が言っておるのは、一つは、いま言ったように薬事法では明らかに違反をしていると考えられているところの文書がそのまま記載をされて、それがずっと残っているということです。そのこと自体、薬事法から見れば違反の文書になるのではないか、医薬の場合。こういうふうに考えるわけです。このことが第一点であります。 それともう一つは、そうした虚構的な出願あるいは記載、またそれが誤っている場合の構成事項の記載、そうしたものが生きている、それが特許にはならないけれども、出願から七年の間は生きておる、世の中に存在しておるということになりますと、これは長官は、公の秩序または善良の風俗を害するおそれがある、こういうふうに判断をせざるを得なくなるのじゃないか。そうなった場合どうするか、こういうことをお聞きしておるわけです。
○齋藤(英)政府委員 薬事法との関係につきましては、私の方は薬事法の専門家でございませんので明確に答弁はできませんけれども、たとえば医薬品なりあるいは医薬部外品ですか、そういうものと、特許法で言う医薬というものの範囲が必ずしも一緒ではございませんというふうに、それぞれ法律の目的によりまして範囲も違っております。したがいまして、薬事法上もしそれが差し支えがあることであれば、厚生省でそれは当然取り締まるということに相なろうかと思います。 それから、二番目の公序良俗違反でございますが、いまの虚構なことと申しますことでございますけれども、公序良俗と申しますのは、私どもの方ではより具体的に、たとえば妙な話でございますが、その中にわいせつのような表現があるとか、そういうふうな問題につきまして私どもの方は公序良俗違反というふうに考えておりまして、公開されておりますことが、それが本当に特許になるべきものであるかどうかということで、特許にならないものであるというふうなことが公開された場合に、それだけで公序良俗違反であるというふうには私どもは解釈いたしておらないわけでございます。
○上坂委員 厚生省の人来ておりますね。——いまの問題なんですが、厚生省の方から見た場合には、私がいままで話したことをどんなふうにお考えになりますか。
○森説明員 医薬品につきましては、製造承認の際に認められました効能、効果以外の効能、効果につきまして、添付文書等に記載することは禁止されておりますし、また効能、効果に関しまして虚偽または誇大な記事を広告するということも禁止されております。これは先生おっしゃったとおりでございます。したがいまして、製造承認の際に認められていなかったような効能、効果につきまして宣伝することは薬事法違反ということになるわけでございますが、この特許法に基づきまして、特許公報により適正に出願を公開するあるいは公告するということは、この薬事法の六十六条で想定しておりますような虚偽広告には該当しないのではないかというふうな判断をいたしております。したがいまして、たとえ製造承認で認められていない用途につきまして特許公報に記載するということがその結果として出てまいりましても、それは差し支えないのではないかというふうに、これは私ども薬事法を所管しておる立場で考えておる次第でございます。
○上坂委員 薬事法上からは問題はない、こういうふうなお答えでありますが、いろいろなことを考えた場合に、予想されないことが起きてくるし、世の中の人は非常に利口でありますから、特に発明をする人などというのは何を考え出すかわからないぐらいの頭脳を持っておるわけでありますから、私たちが予想のできない状態が出てくるだろう、こう想定されるわけであります。したがって、いわゆる特許法におけるところの審査の基準あるいは細則といいますか、そうしたものと、それからほかの厚生省関係のいろいろな審査の基準なり許可の基準なりというようなものとはできるだけ整合さしていくということが必要であるし、そういう努力が必要ではないか、こういうふうに考えるわけであります。そういう意味で、この基準というのは早くつくって、そしてこれを周知徹底をさせる、そういうことが同時にまた必要になってくる、こういうふうに考えていまの質問をしたわけであります。その件について一応お答えをいただきたいというふうに思います。
○齋藤(英)政府委員 特許法におきましては、出願が出ましたものにつきまして特許を与えるか与えないかということを判断する第一義的な責任を持っておるのは審査官であります。したがいまして、審査官が、これを特許すべきかどうかということを、各種の特許要件を判断する第一義的な責任者でございます。審査基準の問題につきましては、そういう必要がございますれば、個々のケースよりましては、審査官の判断によりまして相談をすることもございましょう。それから、審査基準につきましては、これは必要がある場合には、審査基準室というようなお話が先ほど出ましたけれども、そこで作成をした上、関係方面と相談をするということは十分あり得るというふうに考えております。
○上坂委員 いま審査官が第一義的な責任を持つ、こういうふうになっております。したがって、審査官としては、外国の特許の例やらあるいはいままでの判例やらいろいろなものを参考にして判断の基準にするというふうに思います。その場合、やはり厚生省関係の法律あるいはいままでのいろいろな慣習、そうしたものについても、やはり判断の基準にならなくてはならないのじゃないか、なるだろう、こういうふうに私は思います。そういう意味で、両方の基準をつくる場合におけるところのお互いの詰めといいますか、突き合わせといいますか、そういうものを正確にやっていく必要がある、こういうことを申し上げたいわけであります。 もう一つ、次に物質特許の運用要綱によりますと、医薬特許についての明細書の記載要領のうちの薬理効果の確認手段の説明があります。「その手段は、薬理試験の結果であり、これは原則として人体臨床治験の結果であるが、発明の内容によっては、人体臨床治験の結果に代えて、動物実験や試験管内実験の結果を、薬理効果確認の手段とすることができる。」こういうふうに説明をしておるわけであります。ここに書いてある「発明の内容によっては」ということは、一体どういうことを意味するのか御説明をいただきたい。
○大谷政府委員 ただいま先生おっしゃいましたような薬理効果につきましては、原則として臨床治験の結果によって判断をする、それから発明の内容によっては、人体臨床治験の結果にかえて、動物実験あるいは試験管実験の結果でもよろしいということを現在運用要綱で検討中でございます。ただいまの内容につきましてはおっしゃるとおりでございます。 「発明の内容によっては」という御質問でございますが、これはたとえば殺菌剤に関するものであるとかあるいは鎮静剤、それから下剤あるいは制酸剤、こういったものにつきましては、従来の経験から人体臨床治験の結果と動物実験あるいは試験管内実験、そういったものの結果が相当に似ているということで、そういうものにつきましては、人体臨床治験の結果にかえて、動物実験あるいは試験管内実験の結果によって裏づけてもよろしい、そういうことでございます。
○上坂委員 この「発明の内容によっては」ということは、殺菌剤であるとか下剤であるとかいうような、従来の経験に基づいて判断をするのだということでありますが、こういう判断は一体できるものかどうか。これは審査官のいわゆる知識の問題だと思いますが、私には非常に疑問であります。最近特に医薬品の安全性というものが問題になっておりまして、いろいろな新薬開発のプロセスから見ても、これが大変重要な問題になっております。特に安全性の確認で、学術的には一番先に試験管内試験、それから生体内の試験、その一つである動物実験、それから生体内試験のもう一つの面である臨床実験、こういうふうになっておりますが、人体に障害を起こすけれども動物には障害は起こらない、こういうものもあるだろうというふうに思うわけであります。そうした安全性の面からいって非常に重要な問題を含んでいるのに、三つの生体内実験にかえて試験管内実験あるいは動物実験で問に合わせる、こういうもので一体いいのかどうか、ここが非常に疑問になるところであります。これは大丈夫だ、こういうふうに確実にお答えになれるのかどうか、お答えをいただきたいと思うのです。
○大谷政府委員 ただいま私お答えいたしましたようなことで、発明の内容によりましては、人体臨床治験にかえて動物実験あるいは試験管内実験の結果によって裏づけることができるということを申し上げたわけでございますけれども、確実にそうできるかどうかという、大変これはむずかしい問題でございますが、私どもといたしましてはいま申し上げましたような方向で、現在、医薬の運用要綱というものを詰めているわけでございまして、これにつきましては今後ともに検討して、外部の方々の意見ももちろん十分に徴してまいりたいと思います。 また、先ほどの薬事法との関係になるわけでございますけれども、特許法の目的、薬事法の目的、これは相違するものでございますが、実際にその薬を市販する、製造するというような場合には、薬事法による厳重なチェックがあるわけでございますので、私どもといたしましても、もちろんその辺の障害があるかどうかという問題については十分詰めてまいりたいと思いますが、実際問題といたしましては、実際に製造、販売の場合には薬事法が働くものと考えております。
○上坂委員 何かよくびたっとくる説明でないのでわかりにくいわけです。 それじゃ、もう一つお伺いしますが、医薬特許には用途発明の一般原則が適用される、こういうことになっております。発明を実施する手段が同じであって、その薬理効果が異なっている場合は一体どうなるのか。 それからもう一つ、公知の化学物質が医薬として薬理効果があるというふうになってその用途発明をした、こういうふうに出願が出た場合には、これは発明の対象になるのかどうか、ここのところを説明いただきたい。
○大谷政府委員 第一番目の御質問でございますが、医薬の発明で、実施する手段が同一であるけれども薬理効果が異なる場合はどうかという御質問でございますが、この場合は発明としては異なるものと考えます。 それから第二番目の、公知の化学物質につきまして薬理効果が発見された場合、これは特許になり得るかどうかという問題でございますが、これは公知の化学物質の医薬としての新しい用途を発見したわけでございますので、これは特許になり得ると考えております。
○上坂委員 この特許法についてはまだまだ非常にたくさんあるわけです。説明を聞いてもなかなか明快にできない点があります。 それからもう一つは、要綱試案がたくさん出ておるわけでありますが、これらについても、どうも聞いておりますと最終的に固まったものではない。固まったものでないものを説明されている、こんなふうに思うわけであります。そういう点が私にとっては非常に疑問であると同時に、いささか不満であります。 そこで、まだまだありますが、大体与党の皆さんが先ほどの約束を守らないで余りいないようでありますし、時間も非常に長くなった関係もあります。御飯も食べなくちゃなりませんから、一応この辺で質問を保留して、後でまた質問の機会を与えていただきたい、こういうように思います。 委員長、取り計らってくださるようにお願いいたします。
○前田(治)委員長代理 この際、暫時休憩いたします。 午後二時三十分から委員会を再開いたします。 午後零時三十六分休憩 ————◇————— 午後二時三十七分開議
○山村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 質議を続行いたします。渡辺三郎君。
○渡辺(三)委員 それでは、私の方からは今度の法律改正に伴う特許庁の体制の問題について最初に御質問申し上げたいと思います。 資料にも出ておりますとおり、四十五年当時は八十数万件、これだけ滞貨しておったわけでありますけれども、現在では相当減少して五十数万件程度になっておる、こういうふうに調べではなっておるわけですが、今後の審査請求率の動向いかんでは再び六十万件あるいは七、八十万件になる、こういうふうな危険性もあると思うわけです。政府としてはこれは今後どのような施策を具体的に行いながら問題になっております滞貨を処理していく、このように考えておられるのか、まず最初、その辺からお伺いをしたいと思います。
○齋藤(英)政府委員 お答えいたします。 ただいまお話がございましたとおり、特許、実用新案合わせまして昭和四十五年当時でございますと年度末の未処理案件が八十三万二千件くらいございまして、四十九年度末ではおおむね五十三万件になっておりますことはお話しのとおりでございます。その間、昭和四十六年一月一日から審査請求制度がとられました結果、審査請求がありましたものだけを審査すればいいわけでございますからして、したがいまして未処理案件が次第に減ってまいったわけでございますが、私どもはその間におきましてもやはり審査官の増員にかなり努めております。たとえば四十五年当時七百七十五名でございました特・実の審査官は、現在は定員で八百七十名になっておるというふうに審査官の数がふえております。それ以外に、特許、実用新案の審査と申しましても、その前後に出願なりあるいは公報に出すなりあるいは特許査定を最後に登録するなり、いろいろ事務的な仕事があるわけでございまして、そういう関係の人員もあわせてふやしております。そういうこと等によりまして、年度末の未処理案件がずっと減っておるわけでございます。今後もこの点に関しましては、私どもも審査官の増員でございますとか事務職員の増員でございますとか、これに努めるつもりでございますが、それに合わせまして、公開をされます件数が次第にふえてまいります。それから、外国の見なければいけない文献もだんだんふえております。そういうふうな点、いろいろ考えまして、いわゆる文書あるいは書類の分類、整理、こういうこともしっかりやらなければいけないと思っております。そういう各般の施策を通じまして、今後さらに——現在、大体平均の要処理期間、これは必ずしも正確な数ではありません。と申しますのは、これは年度末の未処理件数を分子にいたしまして処理件数を分母にいたしまして割った要処理期間と普通呼んでおるものがありますが、それは現在二年十ヵ月でございます。しかしながら、これを、今後数年間後に私どもはいわゆる特許協力条約というものに加入しようと考えておりますが、そのときまでには、この要処理期間というのを大体二年前後にしたいという目標で、いま申し上げましたような諸般の施策を進めたい、こういうふうに考えております。
○渡辺(三)委員 いま審査官の定数の問題を言われたわけですが、これはいまの答弁の中にも一部ございましたけれども、単に審査官の定数だけではなくして、このいわば事務処理といいますか、そういう面でも相当充実した体制をとっていかないとまたもとに戻る危険性がないわけではない、このように考えるわけでありまして、答弁の中ではその面も含めて考えておるというふうなことがありましたけれども、ひとつ人数を正確にお答え願えないでしょうか。四十五年当時、それから現在、それから今後の計画があれば、それも含めて。
○齋藤(英)政府委員 お答え申し上げます。 いま申し上げましたのは、特許、実用新案の定員の数を申し上げたのでございますが、増員で申し上げますと、いわゆる事務系の職員といっておりますものは、昭和四十六年には四十名の増員をいたしまして、以下、四十七年、四十八年、四十九年、逐次おおむね二、三十名ずつ増員をいたしておりまして、昭和五十年の数字を申し上げますと、定員削減等その他を引きましたネットの増員が三十名でございます。
○渡辺(三)委員 先ほど、午前中の質疑応答を聞いておりまして、この新規性の調査請求制度、これはやはりどうしても必要になってくるのではないか、こういう点を強く感じました。それで、語弊がありますけれども、むだな出願といいますか、あるいはむだな審査請求、これを抑えるためには、どうしてもこの新規性調査請求制度というものをやはりきちんと持つ必要があるのではないか、こういうふうな感じを強くしたわけでありますけれども、たとえばドイツで採用されているような一つの制度、必ずしもそれだけを指して言うわけではありませんけれども、そういう点についてはどのようにお考えでしょうか。
○齋藤(英)政府委員 新規性の調査機関につきましては、いまお話がございましたように、これを事前に、出願の内容が果たしてどの程度のものであるかということ、前の技術との関係がどういうものであるかということをあらかじめ審査をするような機関がもしございますれば、これはお話がございましたように、多少語弊がありますが、いわゆるむだな出願というものがなくなるということはお話のとおりでございまして、私どもはその方向で努めたいと思っておりますが、たとえば現在、意匠におきましては一部そういう問題につきまして、あらかじめ出願人の希望によりまして資料を整えておるところのレファレンスをつけましたもので出願審査をするというふうなことを逐次行っておりますが、特許、実用新案に関しましては、外部機関でそのように新規性の調査をするほど整った機関が現在まだ未整備でございます。これは、そういうものを一応見ますためには、やはり相当程度の資料の蓄積が必要でございまして、その資料の蓄積と、かつそれを分類、整理をする能力のある人がいない限り、そういうことはなかなかできないわけでございます。現在、日本特許情報センターでは、逐次、公開をされましたもの、あるいは公告をされましたものをフィルムに撮りまして、これを整理いたしまして、民間の求めにも応じて、いわゆるわれわれが書誌的事項と申しておりますものにつきましてはサービスをいたしておりますが、これは発足をいたしましたのは昭和四十六年だったと思いますが、期間が短いものでございますから、蓄積する資料の分量もまだ十分ではございません。したがいまして、現在、その機関をもって直ちに新規性調査機関と言うには、まだ少し足りないかと思います。今後御趣旨に沿いまして、そういうものをさらに育成するような方向で私どもは考えていきたい、かように考えております。
○渡辺(三)委員 昭和四十五年の法改正のときに、参議院の商工委員会で附帯決議がなされておりますが、この中で、特にいま申し上げました「新規性調査機関を速やかに設立してその実用化を図ること。」このように出ておるわけであります。それに基づいていま御答弁のありましたように、四十六年に日本特許情報センターというものが生まれたのだと思いますけれども、しかし今度の法改正で、やはり同じく参議院の商工委員会で附帯決議が行われておりますが、それによりますと、「日本特許情報センターは、新規性調査機関として必らずしも十分な機能を果たし得る状況にない」、したがってその強化を図ること、こういうふうなことになっておりまして、いま長官が答弁なさったように、資料の蓄積がまず十分でない、あるいはまた人的な整備といいますか、そういう点でもまだ不十分な面がある、こういうことを肯定されておるわけですけれども、今度の法改正案が提案をされて、そしてその中でいま言った新規性の問題というものは非常に重要な条件になってきていると私は思うのですけれども、その段階で、前回あるいは今回もこの附帯決議が同じような形で出されておる。これはやはり早急にこの体制を整備しなければいかぬと思うのですけれども、それについて具体的な段取りなりあるいは構想、いま一部ちょっとお話はありましたけれども、もう少し具体的にこの点についてのお考えがあれば出していただきたいと思うのです。
○三枝政府委員 お答え申し上げます。 ただいま先生から御指摘がございましたし、また長官から先生の御質問に対しお答えを申し上げましたとおり、特許情報センターにつきましては、確かに四十五年の法改正の際の附帯決議で設立されまして、現在に至るまで鋭意その陣容の整備と業務の拡充に当たってきたわけでございますが、遺憾ながらまだデータの蓄積等進行段階でございまして、いわば投資過程にあるということでございまして、したがいまして利用者に対する完全なるサービスということにまではまだいってないのが現状でございます。これを今後いかに進めていくかということでございますが、財政面では、ただいま申し上げましたようにこの種の事業はまず膨大なデータをインプットするということが先行して、かなり長期にわたってやらなければならないという事情がございまして、国庫補助金及び自転車振興会の補助金合わせて約三十億近いものをつぎ込んで鋭意当たっておるわけでございますが、この蓄積がさらに進む過程におきまして、逐次利用も上がり、かつ今度はそれが事業収入ということにはね返ってまいりますと、事業収入によって相当財政面の改善も加えられるということになろうかと存じます。ちなみに、四十九年度あたりで見ますと、かつて十数%にすぎなかった事業収入が四八%ぐらいまで上がってきております。恐らく来年度は半分以上に上がりまして、事業収入の面での経営基盤の安定ということはかなり進むかと存じます。こういう面におきまして、さらに従来以上に強い助成措置を今後いかにとるべきか、これは十分に検討さしていただきたいというふうに考えております。
○渡辺(三)委員 いまの説明は先ほど長官からいただいた答弁と大体同じだと思うのですけれども、この新規性の調査請求制度というものを明確に導入をする、そういうことによって制度的にこの機関を拡充していくというふうな必要があるのではないかと私は思う。いまある情報センターというものを少しずつ財政の裏づけをやりながら、あるいは資料の蓄積を先行させながらやっていくということは一つの方法としては理解できます。ですけれども、私は制度をこの際きちんと確立をするということがどうしても必要なのではないか、そうすることによっていま言われておるような問題点についても速やかに解決をしていく方向にいくのではないか、こういうふうに思うのです。特に今度の問題は午前中いろいろ議論されましたように、国際性というふうな問題、こういう情勢の中で法の改正が提案をされておるわけですけれども、PCTが発効した場合、日本はもちろん国際サーチ機関になるわけですね。その場合に、PCT出願が新規性の調査をされる、こういうふうなかっこうになっていくことになれば、これとのバランス上からも当然通常の出願に対しても新規性の調査というものが行われるような、こういう制度というものがどうしても必要なのではないか、こういうふうに考えるのです。その点はどうなんでしょう。
○三枝政府委員 お答え申し上げます。 御指摘のように、今後国際化がさらに進展いたしまして、PCT条約の発効という時期が参る、また日本もその体制に入るということになりますと、国際出願の場合に、日本人の国際出願は、日本の特許庁が国際機関になった場合にはそこにおきまして調査レポートをつくりまして、これをつけて国際機関の方に送るということになるわけでございます。したがいまして、その辺の体制をいかにすべきか、これは現在庁内でも専任者を決め、体制づくりにこれから着手するということで各種の検討をすでに開始してございますが、その際にたとえばジャパティックのような新規性の調査機関の活用をいかに組み込み得るか、これも一つの大きな検討課題になってまいると存じます。この新規性の調査制度というものをオランダあるいは西独のように特許法の体系の中に組み入れるかどうかということは非常に重大な問題でございまして、いわば特許の審査というのは調査そのものである、サーチそのものであるという意見も実はございます。したがいまして、そういう形に外部機関を使って踏み切るということをもし考えますと、これは現行の特許庁の体制にも相当大きな変更を考える。これは人的な面、予算的な面、あらゆる面でそう考え、かつ法的な措置もあるいは必要かというふうに考えられるわけでございますが、現行法におきましても百九十四条の二項に特定の大学、学術研究機関あるいは民間団体に対しまして調査を依頼することができるという規定がございます。したがいまして、そういう規定を活用いたしまして、シャパティック等——必ずしもジャパティックだけに限定されておりませんで、それ以外の大学機関その他もございますけれども、そこで非常にむずかしい性質の種類の出願等に関しましての新規性調査について参考意見を広く調査してもらうというような形で着手するというのも、現行法の体系の中で直ちにでき得るシステムでございまして、現に若干の予算及び実績というものも上げてございます。したがいまして、これを相当広範に制度的に取り入れるというのも一つの案であろうかと存じます。
○渡辺(三)委員 出願についての新規性の調査だけでなく、民間のサービス拡充といいますか、こういう必要もあると思うのです。その場合には当然相当の人数が必要になってくるわけでありますし、長官先ほど言われたように、単に人の数だけではなくして、その内面といいますか、質といいますか、そういう点が非常に必要になってくるわけでありますから、特許庁の専門家といいますか、そういう人々の交流、それがどうしてもやはり質的に向上させていくためには必要になる、こういうことが当然考えられるわけでありまして、その場合に日本特許情報センター、これを特殊法人なら特殊法人という形にして、交流ができるような内容にしながらこの仕事を遂行する能力というものを高めていく、こういうふうなことも一つの方法としては考えられるであろう、こういうふうに思うわけなんですけれども、そういうふうな点についてはお考えになったことはございませんか。
○齋藤(英)政府委員 ジャパティックと俗称しております日本特許情報センターでございますが、これが現在短期日の間に相当多量の資料を蓄積しつつあることはいま御説明申し上げているとおりでありますが、なお不足であることもまた御説明申し上げているとおりであります。そして、これを分類、整理し、あるいは民間の調査に応じるために相当程度のいわゆる学識経験者が必要であることもまたお話のとおりでございます。 それで、これを今後どういうふうにするかということは私どもの非常に大きな課題でございまして、現在でも特許庁に少数ではございますけれどもいろいろお手伝いをしておる人間も実はいるわけでございます。しかしながら、お話のようにこれは身分的な問題とか、いろいろそういう問題が実はございます。特許庁の人間は言うまでもなく国家公務員でございまして、ジャパティックの職員は言うまでもなく民間の方でございます。そういうふうなことがございまして、その点だけから考えますと両方交流するのについての問題点があることは確かでございます。しかしながら、今後われわれがPCTに入ります場合あるいは入る直前に、その辺について特許庁としての資料整備、ジャパティックとしての資料整備、それに対する人間というものをどういうふうに構想していくかということについて現在構想ができ上がりつつありますけれども、その辺特殊法人というところまで現在はまだ踏み切るところに至っておりません。今後その問題につきましては、いま御質問がございました趣旨等も頭の中に含みながら私どもは検討いたしたいと考えております。
○渡辺(三)委員 じゃ、少し内容に入りますけれども、これも午前中議論がありましたが、第三十六条第六項の省令案の要綱、これはいただいておるわけです。この中で最後の項六、「発明の構成に欠くことができない事項の記載には、他の発明の構成に欠くことができない事項又は発明の実施態様をそれらに付された番号によって引用してはならず、」こういうふうにあるわけです。これはPCTの規則との関係で御質問を申し上げたいわけですけれども、規則の六の四の(a)、これによりますと「一つまたは二以上の他の請求の範囲のすべての技術的特徴事項を含む請求範囲は可能なかぎり文頭に他の請求の範囲を引用し、」こういうふうになっているわけです。この点は、今度の改正案とそれからいわゆる国際条約とのかかわりの中で矛盾がないのですか。これはどうなんです。
○齋藤(英)政府委員 ただいまお話がございましたように、特許法の改正後の三十六条六項の省令案の要綱の中では「発明の構成に欠くことができない事項の記載」これは第一項の記載ですが、それには「他の発明の構成に欠くことができない事項又は発明の実施態様をそれらに付された番号によって引用してはならず、」要するに同じ発明でありまして、その独立項は他の独立項または他の従属項を引用してはいけない、こういうふうになっております。 それで、いまお話がありましたPCTのルールでございますが、六の四のところに「すべての技術的特徴事項を含む請求範囲」いわゆる従属項ですが、これは「可能なかぎり文頭に他の請求の範囲を引用し、かつ次に請求されるべき技術的特徴事項を付加して」記載するというふうなことがございます。これは従属請求の範囲については、従属請求の範囲というものはどういうものかというものの一端が実はここに書いてあるわけでございます。それと同時に、PCTルールの十三の四というところに、それでは具体的にどういうものかということが書いてあります。それで十三の四のところによりますと、簡単に申し上げますと、従属項に書くべきことは、発明の特別な形態をクレームするところの従属項というふうに規定をいたしております。したがいまして、その従属項に書かれる事項というのはいま申し上げますいわゆるスペシフィックフォームという実施態様であるということでございまして、その実施態様は当然すべての技術的特徴を含む請求範囲、それにプラスしてそれを限定し、かつそれの特別な形のものを書くことになっております。 そういうふうな関係を両方読みますと、私どもの方がいま六で書いておりますこのこと、要するに一発明の範囲内におきましては主請求項は他の独立項または他の従属項の番号を引用してはいけない、こういうことは、いまの六の四と十三の四合わせまして考えた場合には矛盾していないというふうに私どもは考えております。
○渡辺(三)委員 規則の六の四、それからそれと関係をして規則の十三の四、これをあわせ考えると今度のいわゆる省令案要綱の「引用してはならず、」ということと矛盾しない、こういう御答弁なんです。しかし、先ほど私規則の六の四は読み上げましたし、いまここに十三の四も持っております。これをあわせ読むと「引用してはならず、」という省令案要綱と矛盾をしない、このような答弁でしょう。矛盾しませんか。十三の四を読み上げてもよろしいのですけれども、どうも解釈はそこがはっきりしない。もう少し具体的に説明していただけませんか。
○齋藤(英)政府委員 PCTのルールの方で申し上げますと、一つ以上のクレームのすべての特徴を含むところのクレーム、これを従属項と言っておりますが、それはレファレンス、要するに引用することによってそういうふうにしなさいというふうに書いてあります。ということは要するに、すべてのほかのクレームの技術的特徴を含むようなクレーム、デペンデントクレームですが、それはレファー、引用することによってそういうふうなことにはっきりしなさいというふうに書いてあります。すべての技術的特徴を含むようなもので、それは引用しなさいと書いてあるわけです。それで、十三の四のところに行きますと、その同じ国際出願におきまして、その独立項の中でクレームをされておるところの発明の特別な形、スペシフィックフォームズと書いてありますが、それをクレームする。そういうクレームするというのがデペンデントクレームですが、それの適当な数を一つの出願の中に包含するということが書いてあります。 それで要するに、デペンデントクレームというのはどういうものかと言いますと、この二つから私どもが考えますのは、まず、ワンオァモァァザークレームのすべての特徴を含んでおるもので、それは引用をする。シャルドゥソーバイレファレンスと書いてありますから、レファーすることによってそれを記載するということであります。それと同時に、その中身はと言いますと、十三の四のところにクレーミングスペシフィックアォームズオブジインベンションクレームドインアンインデペンデントクレームとあります。要するに独立項の中でクレームされている発明の特別な形、すなわち実施態様ですけれども、実施態様をクレームする、それがいわゆる従属項ですが、従属項の合理的な数を同じような国際出願の中に含むことが許されるべきである、こういうことでございます。 結局従属項は何かと言いますと、引用することによって、その前に含んでおるあらゆる一つ以上の項の技術的特徴を全部含んでいることと、その独立項に示され、クレームされておる発明の特別な形をクレームしているものだ、こういう二つのことから従属項ということが出てくるわけでございます。したがいまして、逆に言いますとインデペンデントクレームといいますのは独立項ですが、われわれで言う発明の構成に欠くべからざる事項を書いた項ですけれども、その項はこのスペシフィックフォームズオブジインベンションではございません。したがいまして、従属項ではないと私の方は考えております。 そういうことからいたしまして私どもの方は、独立項につきましては他の独立項または他の実施態様を書く従属項、それを引用してはいけない、こういうふうに解釈すべきであると考えております。 〔委員長退席、萩原委員長代理着席〕
○渡辺(三)委員 非常に専門的な内容でして、私どもも理解が不十分な点があるかと思います。ですけれども、先ほども私申し上げましたように、今度の省令案要綱、それからいま説明がありましたが、PCTの関係条項を見ますと、どうも矛盾しておるのではないか、こういうふうな考えを強く持ちますので、御質問申し上げたわけです。 次に、これは今度の参議院の商工委員会の附帯決議の中にあるわけですが、附帯決議の八項の中で、ソフトウエアの法的な保護の問題が出ております。この考え方を少しお聞きしておきたいわけです。 ソフトウエアの法的な保護、権利擁護、こういう問題については参議院ではこういう附帯決議がなされておるわけでありますけれども、具体的にこの法律でもって明確にこの権利を保護していくというふうなことについてどういう形態でそれを保護できるのか、あるいは保護しようとするのか、こういう考え方に少しまとまったものがあれば、特許庁の考え方をお聞かせいただきたいと思うのです。
○齋藤(英)政府委員 コンピュータープログラムの問題につきましては数年前から実はいろいろ問題がございまして、私ども通商産業省内におきましては、ソフトウエアの法的保護調査委員会を設けて検討を行いまして、一応中間的な報告も出しております。 現在通産省の機械情報局におきましてソフトウエアの一部を登録いたし、公開をして、利用者があればこれに譲り渡すというふうなかっこうで流通を図っております。これは御質問の御趣旨でございます保護という問題とはいささか違うと思いますけれども、そういうふうに一部流通といいますか、ソフトウエアの流通というのが行われておるのでございます。 ソフトウエア自身につきましては、ハードウエアと関連をする部分につきましてはソフトウエアもともに特許権の対象になっております。ただ、ソフトウエアだけの問題につきましては、これはたとえば単なる数学的な思考であるとかあるいは暗号表のようなものであるとかそういうようなことで必ずしも発明という概念の中に入らないのではあるまいかということで、私どもの方では正面からこれは特許権の対象にはいたしておりません。この問題につきましては、実は国際的にもいろいろ問題がございまして、世界知的所有権機関というものがジュネーブにございます。WIPOというのでございますが、ここで毎年数回にわたりまして実は小委員会が設けられておりまして、そこで、特許庁の職員も出張いたしまして議論をいたしております最中でございます。 国際的にもこれをどういうふうに保護したらいいのかということは非常に問題がございまして、一部にはこれは著作権で保護するのがいいのではあるまいかという意見もございます。それから、いや特別の立法を講じた方がいいのではないかという意見もあります。あるいは特許法の内部で多少これを法律的にでも条文を改めて保護したらいいんじゃないか、そういう意見もございます。いろいろ意見がございまして、現在、いま申し上げましたように国際的にも皆が集まって検討しておる最中でございますので、現在具体的にこういう方向になるというところまでの段階にはまだなっていないというのが現状でございます。
○渡辺(三)委員 これは附帯決議では「すみやかに検討すること。」こういうことでありますから、いま長官がおっしゃるようにいろいろな角度から検討はしておるけれども、国際的にもまだしっかりした方向性というものは出ていない、こういう答弁になっていると思うのです。たとえばハードと一体になったソフト、この場合には特許権の適用になるのだというふうなお話ですが、私が聞いておるのは、長官も認識なさっておるようにあくまでもソフトの問題だけでありまして、たとえばIBMの特許部では、一つの提案といいますか、登録制度についての考え方が打ち出されておる。そして、ソフトについての完全な法的な保護ではありませんけれども、ソフトに一番見合った保護の仕方としてはこういうあり方がいいのではないかという一つの考え方が相当具体的に示されていると思うのです。こういう面については、ソフトの法的な保護に関連をして、日本でといいますか、あるいは特許庁内部でいろいろな角度で検討されたことがあるのでしょうか。
○齋藤(英)政府委員 IBMで考えられておるいわゆる登録制度というものにつきましては、私どもも承知をいたしております。国際的にもこれはいろいろ議論をされております。しかしながら、ソフトウエアの中にもいろいろ種類がございますし、かつ保護の期間等について、これはあるいはわりあい足の速いものかもしれませんので、その辺の問題点もございます。 それから、公表される場合に——特許になりますと、当然これは公開なり公告なりで公表されるわけですけれども、公告された後でそれがたとえば一企業の中で実施されている場合、外部ではなかなかそれがわからないというふうな問題もあります。 いま私思いつくままにいろいろ問題点を申し上げましたが、そういう問題点がありますので、現在のそういう案につきましてにわかにこれをそのまま採用していいかどうかという点につきましては、いろいろ疑問点があるわけでございます。この点もあわせて先ほど申し上げましたようなWIPOという機関で検討が続けられておるというのが現状でございます。
○渡辺(三)委員 次に、特に発展途上国に対する技術移転、この問題について質問をしたいと思いますが、この問題については特許庁ではこれまでの間にどのような検討あるいは施策を講じてこられたのか、その概要を報告していただきたいと思います。
○齋藤(英)政府委員 発展途上国への技術移転の問題につきましては、かなり前、一九六一年の国連総会において取り上げられた問題でございます。それで、その国連総会におきましては、開発途上国への技術移転に関する特許の役割りということでブラジル側の提案がございまして、これから議論が始まったわけでございます。以降、国連機関におきましては、経済社会理事会でございますとかあるいはUNCTADでございますとか、そういうところで検討をされてきておりまして、政府間の技術移転委員会というふうなものも設けられております。それで、そういう機関におきまして、特にUNCTADにおきましては非常に熱心に議論がされておりましてコード・オブ・コンダクトといういわば行動の基準とでも称すべきものでございましょうか、そういうものを制定しろ、あるいは特許制度の役割りについて専門家の委員会を制定したらどうだというふうなことで議論が進んできております。一方、いま申し上げましたWIPOという機関におきましても、発展途上国への技術移転の特許の役割りにつきまして検討が進められておりまして、いずれのそういう国際的な検討の場所におきましても、通産省あるいは特許庁の職員がこれに参加いたしまして意見を述べ、あるいはわれわれとの間でコンタクトをいたしまして検討しておるわけでございます。 なお、この問題は、今後の工業所有権に関しますパリ条約の改定の問題にまで発展をしてきておるわけでございます。パリ条約の改正の問題は、本年の二月に実は改正会議が開かれましたが、特許庁からも職員を派遣いたしましてこれにつきましての日本としての意見を述べておる、こういうことでございます。
○渡辺(三)委員 新聞報道によりますと、いまのこの技術移転の問題について政府専門家の会議がこの五日からジュネーブで行われた。そして、十六日までこの会議が持たれた。その中では具体的な技術移転の行動規範といいますか、そういうふうなもののアウトラインづくりをこの機関で協議をしたんだ、こういうふうに出ておるわけです。この中で、特に発展途上国から共通して出された問題といいますか、そういうものはどういう内容のものであるか、またそれに対して当然わが国もこの会議には参加をしたと思うわけでして、それをどのように受けとめ、どう対処しようとなさっておるのか、こういう点があれば少し具体的に内容に入って報告を願いたいと思うのです。
○齋藤(英)政府委員 いまお話がございましたように、技術移転の問題に関しまして政府専門家会議でいろいろ議論がされておりまして、コード・オブ・コンダクト、いわゆる行動規範と申すものにつきまして検討が行われているように聞いております。私どもの方にまだ正式に公電が入っておりませんので正確なことはわかりませんですが、従来言われておりますことは、技術移転に関しまして、その技術移転に関する取引に関して国内法をどういうふうに考えたらいいのか、あるいはそれに関していろいろ制限的な商慣行があるのをどういうふうに考えたらいいのか。あるいは発展途上国に対しまして何か特恵的な特別に恩恵を与えるような措置は考えられないだろうか。国際紛争が起こった場合にはその解決方法は、どういう機関を通じて解決をすべきなのか。特別の機関を設けるのか設けないのかというふうな問題等、そういうふうな問題が従来からコード・オブ・コンダクトでは問題になっております。したがいまして、今回の政府専門家会議におきましても発展途上国側からそういうふうな問題につきましていろいろ要望が出されたのではあるまいかと私どもは考えております。
○渡辺(三)委員 それじゃ、少し具体的にお聞きしますが、この政府専門家会議には日本からどういう方が出席なさったのですか。
○齋藤(英)政府委員 お答え申し上げます。 最初に特許庁のことを申し上げて恐縮でございますが、特許庁からは岩崎という審判官がこれに参加をいたしております。それ以外にジュネーブの代表部からは三宅さんなり、おおむね十名ばかりの方がこれに参加をされております。
○渡辺(三)委員 内容が内容でありますからこれは慎重にまとめて対策を練られるんだと思いますけれども、いまおっしゃったように特許庁からももちろんこの会議には出席しておるわけです。したがって、もうすでにこの会議は終わっているのでしょう。そうしますと、発展途上国の側から見た場合に、この技術移転の問題についてはいろんな要望が、いま始まったことじゃなくて長年にわたって出ておるわけですから、今度の専門家会議でどういう意見が主としてここに出されたか。それは唐突に出てきたものではなくしていままでもずいぶん問題になっておったものだろうと思うのです。これに日本としてはどう対応するのかという考え方は当然大まかに決められておる、あるいはこの点は特に検討しなければならないという問題点が煮詰まっておる、こういうふうに私は常識的に思うわけです。そういう点どうなんですか。
○齋藤(英)政府委員 これはまだ正式に私どもの方も公電で聞いておらない段階でございますが、発展途上国の主張といいますのは、大要を申し上げますと、発展途上国が工業所有権制度を整備しましても、大体特許権その他のものはこれを出願をし権利を取得するのは先進諸国の人々である。したがって、先進諸国の人々が発展途上国においてそういう権利を取得されます、しかしながらその当該国、当該国といいますのは発展途上国ですが、発展途上国においてその特許権を実施するという場合はわりあい少のうございまして、権利を得ただけで実は出願人の本国と申しますか、本国でそれを製造し販売をして発展途上国に輸入をしてくる、こういうふうな例がかなりある。あるいは商標の場合でも同様であろうかと思いますが、そういうふうな点につきまして非常に発展途上国は不満を持っておるというふうに聞いております。また、そういう特許、商標などの権利のいわゆる実施許諾と申しますか、使ってよろしい、こういうことを言います場合には、たとえば原材料の購入につきましてはこれは特許権者に限定するというふうな、そういう制限をつける。先ほど制限的商慣行と申し上げましたけれども、そういうものの一種でございますが、そういうふうな事例がありますし、いろいろ発展途上国側からはそういう点で不満の念が表されておるということでございます。今後こういうふうな制限的行為につきましては、これはそういうことをしないようなことをコード・オブ・コンダクトで決めてもらえないだろうかというふうな議論もあったようでございます。 それからなお、特許制度自身の問題につきましては、本来はこのコード・オブ・コンダクトの専門委員会の議題と申しますか、いわゆる委任された内容、マンデートの内容ではないわけでございますけれども、聞くところによりますと、この問題についても多少議論があったように聞いております。
○渡辺(三)委員 特許協力条約には発展途上国の援助を含む技術サービス、これについての規定があるわけですね。で、特許情報のサービス、これはその場合の重要な一つの分野だと思う。国際事務局あるいは国際査察機関、これが行わなければならないというふうになっていると思うのですが、日本がその査察機関になる、こういうふうになればこれに対する協力の計画というものをもっと積極的に構想して、そして具体的に進めていかなければならない、当然こういう立場になってくると私は思うのです。したがって、私は今月に行われましたこのジュネーブの専門家会議というものも相当やはりわが国としては重要視しながらこれに対応する体制を立てる必要があるのじゃないか、こういう立場で御質問をしたわけです。このいままでの経過を見ますと、この技術移転の問題というのは率直に申し上げますが、日本の場合にはこの問題では余りまだ積極的な対応をした、こういうふうに言えないのじゃないかというふうに思うわけです。 先ほど長官が、このブラジル提案の問題やあるいはその後のパリ同盟条約、この事務局がモデル特許法というものを発展途上国に提示をしたといいますか、そういうふうな一連の経過の話があったわけでありますけれども、このモデルの問題にしましても、単なるモデル法に終わっているのじゃないか。これが実際有効に活用されて技術移転の問題がスムーズに解決されつつあるというふうには私は必ずしも認識できないわけであります。いままで日本がやってきた内容をずっと見ますと、JAPATICが公開公報の英文化抄録を若干発展途上国に送付をした、あるいはまたブラジルに特許庁から国連を通して審査官一人を派遣した、こういうふうな程度であって、それ以上に積極的な、今日非常に重要な課題になっておるこの問題に対する対応というものが行われていないんじゃないか、こういうふうに私は認識をするわけです。したがって、発展途上国が現在どのような特許情報を必要としているのか、あるいはまたどういう形でそれを送り、利用されるようにしているのか、そしてまたどういう形のものを発展途上国が望んでいるのか、こういうふうな問題がわが国でも正確に把握をされて、それに見合うような対応をすることは、特に多国籍企業の問題などがいま非常に問題になっている状況であるだけに必要なんじゃないか、私はこういうふうに思うわけなんです。その点、もう少し考え方のはっきりしているものがあれば聞かしてもらいたいと思うのです。
○齋藤(英)政府委員 発展途上国に対します技術移転が円滑に行われるべきであるということにつきましては、私どもまことに同じような基本的な認識を持っております。かつ、わが国は明治の初めにおきましては現在の発展途上国にありますような先進国との間の技術格差が実はあったわけでございますが、当時のパリ条約に一八九九年だったと思いますが加入をいたしまして、以後工業所有権を通じて先進国からの技術の移転もありましたし、あるいは国内の技術開発もありまして、現在のようなある程度の技術水準の国になったわけでございますから、日本としましても発展途上国問題につきまして、昔はそういうふうな経験を持っておったのでございます。そういうふうな経験を私どもは開発途上国にもいろいろ機会があるたびごとにお話をしておりまして、発展途上国につきましても工業所有権制度を確立して工業所有権の保護を図った方がよろしいのではあるまいかというふうに私どもは考えております。しかしながら、これはその技術格差が非常にありました場合には、先ほどいろいろ申し上げましたような問題点もまた当然あるわけでありますので、その辺につきましては通常の方法でいいのかどうか、通常の工業所有権の形態でいいのかどうか、もう一遍検討すべき問題があろうかと存じております。それで、現在特許なり実用新案なり、意匠、商標を持っておりますのは、いずれも大部分のものがこれは国家ではございませんで私企業なり私個人でございます。したがいまして、その技術というものは受け入れ国の制度が完備していればしているほど移転しやすいものでございます。そういう点からいたしまして、私どもは発展途上国側と一緒になりましてそういう点もあわせて考え、円滑に技術移転が行われるような方策を今後考えていきたいと思っておりますし、現在でもそういうことを考えております。 なお、蛇足でございますけれども、私どもはそれだけではございませんで、先進国同士につきましても、工業所有権制度がきわめて国際的な存在でありますので、先ほど申し上げましたWIPOなりあるいはドイツに派遣員を実は出しておりまして、そういうふうな情勢の把握に努めておる、こういう次第でございます。
○渡辺(三)委員 せっかくいま最後にお話がありましたから、それについてさらに申し上げたいと思うのですが、やはり今後の問題としては、たとえば単に外務省の出先機関、こういうところの人々が、こういう問題にタッチをするというだけでは、私は問題の動向をつかむなりあるいは国際的な監視体制をとるなり、そういう点は非常にむずかしいのじゃないかと思うのです。きわめて専門的な立場からの知識を必要とするわけでございますから、そういう面で考えますと、いま特許庁には約千人ぐらいのきわめてすぐれた専門官がおるわけでありまして、こういう方々が主要な海外の場所に派遣をされる、あるいは駐在をする、このような体制にまで進まなければ、この国際化に向かっての法改正というふうなことが今後行われても、片手落ちになるのじゃないかという気がするわけです。いままでの駐在員制度といいますか派遣といいますか、それを見ておりますと、皆無と言ってもいいぐらいの非常に弱体な体制にあったわけでございます。しかし、今度の法改正の趣旨を見ましても、そのことがうんと大事なんじゃないか、こういうふうに思うわけです。もちろん、これは人的な体制なりあるいは裏づけになる予算の問題というのは当然大きいわけですけれども、私はそういう体制をつくらなければ、今回せっかく法改正をやっても実りのある中身は持てないと思うのですよ。どうですか長官、この点については、これは財政の問題ですから、他の大蔵なら大蔵との折衝ということになるかもしれません、あるいは本省とのかかわりになるかもしれませんけれども、長官としての考え方はどうですか。
○齋藤(英)政府委員 現在WIPOと称します機関に一名派遣員を出しておるということと、それからいま申し上げましたジュッセルドルフに工業所有権の調査員として出しておる、駐在をいたしておりますのはその二名だけでございます。私どもの特許関係というものは、情報の速度が速まるにつれ、その量がふえるにつれ、あるいは商標の問題にしましたら、これは貿易でございますが、貿易の量がふえるにつれて、そういう問題というのはすぐれて国際的な存在にますますなりつつあるということでございます。したがいまして、いま二名出ておりますが、その二名の出方もまたお話しのとおり、必ずしも安定的な制度であるとは申せないと思います。したがいまして、今後われわれといたしましては、そういうふうな、安定的でないというのは言い過ぎかもしれませんけれども、必ずしも安定的でない出し方をもっと安定的な出し方に変えるとともに、なお世界のそういうことに非常にすぐれておる諸国につきましては派遣員の数をさらにふやして、日本の特許庁として恥ずかしくないような形にわれわれは持っていくべきであるというふうに考えております。今後その方向で努力をするつもりでございます。
○渡辺(三)委員 さらに海外——海外といいますか、この技術移転の問題に関連をして若干の資料を私もここに持っておりますけれども、技術移転がなかなか発展途上国にしにくい、この条件はたくさんあると思います。一々ここで挙げようとは思いませんけれども、たくさんあると思う。その中の一つに、発展途上国が技術移転に伴って支払わなければならない外貨、この問題でやはり非常に大きな問題を抱えているのじゃないかという認識を私はするわけです。 この点について、いまここに一つの資料がありますけれども、これは国連貿易開発会議の試算であります。一九六八年ですから大分前でありますけれども、この技術移転のために発展途上国が支払った直接の外貨費用、これは十五億ドル、こういうふうに言われております。しかも、これは発展途上国の同じ一九六八年の輸出による所得合計の五%である、国内の総生産の合計の〇・五%に当たる、こういうふうに言われておるわけでございまして、この数字をずっと見ただけでも、外貨支出の問題で発展途上国が技術移転を受け入れにくいというふうな条件が相当あるんじゃないか。さっき長官は、民間の場合が非常に多いんでというお話がありまして、それなりに他の理由といいますか、それはあると思います。たくさんあると思いますが、この費用の問題も相当の問題になっておるんではないか。これは特許庁だけで解決できる問題ではありませんし、わが国だけで解決できる問題ではないということは理解できるのですけれども、その点はどのようにこの国際会議などでは議論なされておるのでしょうか、直接議論の対象になったことはないのですか、こういう問題は。
○齋藤(英)政府委員 ただいまお話がありましたような点につきまして、国際会議でこれをどういうふうにすべきかということにつきましていろいろ議論がされたというふうな話は私ども耳にしておりませんが、ただ技術の対価の支払いというものは、確かにこれは非常に重要なファクターであります。かつまた、その支払いの方法というものも非常に重要な要素でございます。したがいまして、今後そういう問題がもし開発途上国側からいろいろ出ました場合には、これは先進国側が寄っていろいろ協議をし検討すべき問題の一つになろうかと思います。
○渡辺(三)委員 何回も繰り返すようですけれども、PCTの中で日本が今後果たしていく役割りというものが今度の法改正で非常に急速に高まっていく、責任を感じなければならぬ、こういうふうな状況下にありますだけに、こういう問題についての日本としての対応、これはやはりしっかり立てておかないと、せっかく国際化というふうなことが強調されても中身が伴わない。特にこの特許の問題だけじゃありませんが、他の産業経済政策全般にわたって、日本のいままでの経済政策といいますか、対外的な経済協力の問題が非常にやかましく議論されておる、そして中身によっては新しい植民地主義的な進出じゃないか、こういうふうなことを、たとえば東南アジアの諸国からも指摘を受けるような、そういう非常に国際的に重要な問題を抱えながら日本が今後政策を進めていかなければならない、そういう一環としてやはりこういう特許の問題も視野を広くして考えていく必要があるように私は思うのです。したがって、今度の法改正によってこの国際的な条約にかかわっての日本の役割りというものが大事になっていけば、いま言ったような問題も当然考えていかなければいかぬのじゃないか、こういうふうに思うわけなんです。長官の話によれば、この費用の問題なども今後は考えるべき対象の一つになるというふうなお話ですけれども、こういう問題では、そうすると専門的に国内で詰めた意見といいますか、あるいはこうすべきじゃないかというふうな考え方、こういうものはまだ出しておられないわけですか。
○齋藤(英)政府委員 開発途上国のいまの技術移転に伴う対価の外貨支払いの問題に関しましては、私どもの方の庁内で具体的に検討したという事実はございません。わが国の技術輸出入と申しますか、そういう点に関しましても、われわれは非常にいろいろ関心を持っておりますが、開発途上国の問題に関しましてもまだ具体的には議論がされていない段階でございます。
○渡辺(三)委員 今度の法律改正の中身に入りますと、先ほど午前中条文の解釈などをめぐってずいぶん議論されましたし、無数に問題があるわけですけれども、先ほど来御質問申し上げました新規性照査の精度の問題、これは今後十分に真剣に検討しなければいかぬ、こういうふうなことでありますし、それからいまの技術移転の問題について、これに関連をしながら駐在員制度の問題についても考えていかなければならないし、あるいは発展途上国に対する技術移転の問題についてはいま二、三の点だけを指摘したにとどめましたけれども、いろいろな問題がある、こういう認識の上に立ってこれも前向きに検討する、こういうふうな、総括的に申し上げますと、御答弁であったと思いますが、ひとつそれを確認してきょうの私の質問は終わりたいと思いますが、その答弁いかんによっては再度質問させていただきたい。
○齋藤(英)政府委員 いま先生から取りまとめて御質問と申しますか、御意見がありましたとおりでありまして、私どももその方向で努力いたしたいと思います。
○萩原委員長代理 米原委員。
○米原委員 私は商標法の改正案について質問します。 今回の改正の目的が出願の迅速な処理にあるということは、審議会の答申もそうですし、提案理由もそうですし、また参議院での審議を通じても明らかだと思うわけでありますが、目的は出願の迅速な処理にある、こういうふうに理解していいですか、第一にその点……。
○齋藤(英)政府委員 商標の問題につきましては、いまお話がありましたとおり、相当未処理案件がたまっております。五十万件ぐらいたまっております。したがいまして、これを迅速に処理をするということが本改正の最大の眼目でございます。ただし、改正をいたします場合には、当然商標法の本来の性格と申しますか、目的と申しますか、これを強く意識しながらその問題を処理していく、こういうふうな態度でございます。
○米原委員 齋藤長官は、参議院商工委員会における共産党の安武議員の質問に答えて、商標制度の役割りについて、製造業者や販売業者にとっては、自分の商品についての信用を商標によってシンボライズすると同時に、利用者や消費者にとっては、その商品がだれのものであるか明らかになるので、安心して取引ができるという重要な働きを持っている、こう答弁されておりますが、もし商標がそのとおりに使われているのならば、出願が多いということは消費者の側から見れば安心して買える品物が多くなるということですから、歓迎すべきことであることは言うまでもありません。そうであるとすると、処理の促進ということは、本来の商標制度の問題というよりも、これを処理していく体制上の問題だと思うのです。その点では、つまり審査官、審判官あるいはこれを支える事務職員、この人員をふやして処理を促進すればいいのではないか、これがむしろ一番肝心じゃないか、こう考えるわけでありますが、この点どうでしょうか。
○齋藤(英)政府委員 出願が多いということにつきまして、確かに出願をするのは、出願人の方は出願をする必要があるから出願をするのだということでございまして、その点だけから見ますと、確かに出願が多いのを何も問題にする必要はないではないか、あるいはその出願をされた商標が自他商品の識別性と申しますか、商品の識別ができるのならそれでいいじゃないか、こういうお話になるわけでございますが、実は出願をされました商標につきまして、それを審査をし、登録をいたしました結果、登録商標が一体どのくらい使われているかということを、私どもはヒヤリングなりあるいはアンケートなり、数回にわたりまして調査をいたしました結果、現在登録されております商標のうちのおおむね三割、少なく見れば二割五分と申し上げてもいいと思いますが、大体三割前後のものが使用されておりまして、残りのものは使用されておらないわけでございます。これはいろんな原因があると思いますが。そういうことでございますからして、使われていない商標と申しますのは、これは自他商品の識別性も効能も何も発揮していない商標でございます。したがいまして、私どもが考えましたのは、もちろん審査体制そのものもいろいろ考えることは当然でございますが、それと一緒に、何と申しますか、そういうふうな商標本来の機能を果たしていない商標が存在するということに関しましては、それを何とか改善する方法はないだろうかというふうに考えまして今回考えましたのが、使用義務の強化という方向でそれが何とかできないだろうかというふうに考えたゆえんであるわけでございます。 それからなお、審査官、審判官の増員の問題についてお話がございました。これは現実に私どもの方も過去数年間増員を相当程度いたしておるつもりでございますし、今後につきましても、その処理体制と見合いながら私どもの方は増員を図っていくつもりでございます。 それから、処理の問題につきましては、蛇足でございますが、コンピューターを導入する機械化処理等の問題によりまして、出願審査あるいは登録等の事務をやっておられる職員の皆さんの負担を軽減するということも考えておる次第でございます。
○米原委員 実際に使用していないという問題については後でもう少し質問しますが、使用義務を強化するというその一環として、出願時に出願人の業務を記載させると言っておりますが、それを書かせる法的な根拠はどこにあるか、伺いたいのであります。
○齋藤(英)政府委員 商標法の三条の一項に、「自己の業務に係る商品について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。」という商標登録の要件の規定がございます。そこで、「自己の業務に係る商品について使用をする商標については」という規定になっております。私どもは、この登録要件のうちで、従来、自己の業務に係る商品について使用する商標を登録するのだと言っておりながら、実は自己の業務につきまして完全なエビデンスと申しますか、証憑書類をとっておりませんし、かつその業務の記載もさせておりません。ただ、一部の明らかにわかるものにつきましては、この条文をもとにして拒絶査定をいたしております。たとえば、銀行業あるいは証券業も多分そうだと思いますが、そういうふうなものにつきましては、銀行は商品を取り扱うことが銀行法上禁ぜられておりますからして、そういうことはできないわけでございます。自己の業務に係る商品というのはないわけでございますから。したがいまして、そういうものはこの条文に基づいて実は拒絶査定をいたしております。 それで、それは非常に極端な例でございますが、今回「自己の業務に係る商品について」というこの規定どおりの、やはりこういう規定が当然これは使用義務の一つとしてあるわけでございますので、私どもも「自己の業務」という点についてのチェックが従来は少し不十分であったのではあるまいかという気がいたしまして、この点をもう少し願書に記載をさせて明瞭にさせたい、これがその趣旨でございます。
○米原委員 いまおっしゃいました、つまり商標法の第三条の「自己の業務に係る商品について使用をする商標」ということの解釈ですけれども、参議院における三月二十五日の長官の答弁でも明らかなように、出願人がその商標を使用する意思があればよい、こういう従来の考え方で間違いありませんか。
○齋藤(英)政府委員 いまお話がございましたのは、「自己の業務に係る商品について使用をする商標」という「使用をする商標」というのはどういう意味であるかということであろうかと思うのでございます。「使用をする商標」という現在形で書いてございますからして、したがいましてここのところは私ども従来の解釈あるいは判例によりますと、使用をする意思がある商標であればよろしいということであります。しかしながら、これは使用をするというのは何についてということが当然その頭にありまして、その頭にありますのは「自己の業務に係る商品について」使用するわけでございます。したがいまして、自己の業務に係る商品でないものについて使用をする場合には、これは商標登録の要件に外れているというふうに私どもは考えざるを得ないわけでございます。
○米原委員 それでは、どうやって出願時に業務チェックをするのか伺いたいのであります。
○齋藤(英)政府委員 具体的に申し上げますと、出願人が出しますその願書の中に業務を書く欄を設けまして、現在要綱で検討中でございますが、産業分類のある分類のところをとりまして、大体小分類ぐらいのところがよかろうかと思いますが、これはいま検討している最中でございますけれども、ある分類に従いましてその業務を記載させ、要するに自己の業務がその業務であるという記載をさせまして、それで判断をするというふうに考えております。
○米原委員 それでは、三月二十七日の参議院の審議の際に土谷審査第一部長は、記載された業務はそのまままるのみにする、まるのみで信用すると安武議員の質問に答弁されています。ということは、実際に業務を行うかどうかの判断まではしないということになります。これでは、業務を書かせたからといって実際に使用されるかどうかのチェックポイントにならないと思いますが、どうでしょうか。
○齋藤(英)政府委員 ただいまお話がありましたとおり、これはチェックをする精度と申しますか、精密さと申しますか、その問題であろうかと思います。先ほど御質問がございましたように、今回の改正の趣旨は未処理案件を少なくし、かつ処理期間を短縮するということが非常に大きなねらいでございます。したがいまして、非常に多数出ております出願につきまして本当の真実、本当の自己の業務が何であるかということを、極端な例で申し上げますと、出願があったらそこの住所のところまで行って屋号まで調べるということはとてもできないわけでございまして、それはある程度のところで私どもは出願人の善意、これを信用せざるを得ない、こういうことでございます。私どもは、ほかのところでもございますが、全般的に工業所有権法は書面審査でございます。したがいまして、その書面審査の方針に従いまして、願書に書いてあるものは、他に反証がない限り、一応これは真正なものであるというふうに私どもは受け取りまして、その方針で審査を進めるのが、先ほど申し上げました方針に一番沿うものではあるまいかと考えまして、御答弁申し上げた次第でございます。
○米原委員 いまいろいろ説明されましたが、業務を書かせたからといって、それが実際に使用されるかどうかのチェックポイントにならないことは明らかであります。 ところで出願人の業務をどう書くかが、今度の場合商標権として認められるかどうかの重要な判断要素になっています。この業務の記載を法律に明定しないのはなぜでしょうか。
○齋藤(英)政府委員 先ほど御答弁をいたしましたように、三条の条文自身すでに「自己の業務に係る商品について」と、一応そういう表現で、自己の業務を表示すべき旨が実は規定いたしてございます。それを先ほど申し上げましたように、私どもそのチェックが必ずしも十分でなかったということを実は申し上げざるを得なかったわけでございますけれども、それを今回そのチェックをさらに従来よりも精密にしようということでございますので、したがいまして現行法の三条あるいは願書の記載のところにございますが、五条に商標登録出願のことが書いてありますけれども、その他必要な説明書を添附して特許庁長官に出せということが書いてあります。そういうふうな条文もございますので、現行法でカバーできるものではあるまいかと考えて、改正をいたさなかった次第でございます。
○米原委員 第五条のことを言われました。第五条の第一項第二号には「提出の年月日」を書けということがはっきり書いてあるわけです。これは実際、特許庁で受けた日付の判を押せば確認できる程度の問題です。こういうものさえ五条には書かれているのに、商標権の商標に関連する業務について明定せず、省令で運用するのは少しおかしいじゃないですか。法律を軽視していることになるのじゃないですか。行政府の越権行為のそしりさえ起こってくるのじゃないか、こういうふうに思いますが、見解を伺いたい。
○齋藤(英)政府委員 五条にいろいろ言葉が書いてございますが、その中に「提出の年月日」というのがお話のようにございます。これは商標というものはいわゆる先後願関係というものが非常に重要なものでございまして、非常に大きなポイントでございます。したがいまして、そういうふうに法律的に非常に意味のあるものがここにずっと掲げてあるわけでございますが、なおそれでは逆に言いまして、現行法ではどうしても読めないだろうか、こういうふうに考えました場合には、いま五条でちょっと申し上げたような点あるいは三条の柱書きの点、これで私どもの方はカバーができる。改正をしなくてもカバーができるというふうに考えておりますので、その辺は改正をいたさなかった次第でございます。
○米原委員 使用義務の強化の二番目の対策として、更新登録時に使用しているかどうかチェックすると言っておりますが、その目的は何ですか。
○土谷政府委員 お答えいたします。 ただいま先生がお話ございましたように、今回の法改正の主なポイントが使用義務の強化でございまして、十年の期間を経過後の更新に際しまして、さかのぼって三年間に使ったかどうか、これをチェックするわけでございますが、これは先ほども長官からお話ございましたように、これまで使われてない商標が非常に多い。極端な場合、大きな企業でたくさん登録を持っておりますところになりますと、大体一割程度しか使ってないものが数多く見受けられるわけでございまして、こういうものを十年たりてもなおかつ依然としてその登録を認めておくということは、これは公正の原則に反する。つまり実際に使いたい人がたくさんいるのにこの人たちがその商標を使うのを妨げているというふうに考えられますので、更新の際に使用状況についてチェックをし、使っていないものについては取り消すというふうにいたすことにしたわけでございます。
○米原委員 それでは、先ほどからおっしゃっている実際に使用してないという問題ですが、ことし一月に特許庁が出しました「商標制度の改正に関する答申について」によっても、不使用登録商標が七割もある、さっきはもっとあるような話でありましたが、この調査はどのような方法で調査されたのか、伺いたいのです。たとえば登録商標のそっくりそのままのものが七割も使われていないのか、それとも昨年十二月に出された答申でも、実際に使用されている商標と登録商標とが全く同一の場合は少ない、こう言っておられますが、そういうことだとすると、そういう実態、つまり取引上実際に行われているような使用状況を考慮した上でもなおかつ七割以上の不使用商標があるということですか。この点実はこの問題の出発点になっていると思うので、明確に伺っておきたいのです。
○土谷政府委員 お答え申し上げます。 ただいま御質問の点でございますが、昨年十月に行いました調査は、私どもの方で四十八年の一月から十二月までに商標権の設定の登録を受けた商標権者の中から商標登録番号によりまして無作為に抽出しました千九百二十五名の方に調査票を出した次第でございまして、その五〇%強の九百六十五の方々から回収いたしております。で、ただいまお話の保有しております商標を使っているかどうかという点につきましては、これはいま申し上げました商標権者と申しますか、回答してきた人たちが、それぞれの判断におきまして出してまいっておりますものですから、はっきりと登録商標そのままのものを使っているか、あるいは社会通念上許されている範囲のものを使っているか、その点につきましては明らかでございません。
○米原委員 そうしますと、いまお答えのとおりだとすると、不使用登録商標といっても、不使用といわれる登録商標がどんなものであるかが必ずしも明らかではない。その点で調査としてはずさんではありませんか。もしアンケートの回答者が登録商標そのものを考えているとすれば、あるいはそういうものが混在しているとすれば、取引上実際に行われているような使用状況に基づいた調査をしたとすれば、不使用登録商標の比率がもっと減ってくるのではないか。不使用登録商標を整理するという今回の制度改正の目的が失われることになりかねないのじゃないか、こういうことを感ずるわけです。このあたり、むしろもっと厳密な調査をやるべきではなかったかという気がしますが、どうでしょうか。
○土谷政府委員 お答え申し上げます。 ただいまの点につきまして、私どもこのアンケート調査のほかに関係の大手の企業と申しますか、出願の件数の多い企業、これを呼びましてヒヤリングもやったわけでございます。そのときにもそれぞれの会社の商標担当者からいまお話しのような点について特に疑問等が出されていないわけでございますが、この登録商標の使用という問題は、これまで御承知のとおり私どもの方でもそれほど扱っておりませんでしたし、また実際に登録権者としましてもそれほど関心を持っていなかったというふうに思われます。したがって、登録商標の使用であるかどうかということは、これは最終的には審査官の判断にまたなければならないわけでございますが、この点につきまして今回法改正の前に行われました審議会の商標小委員会、さらに審議会で出されました答申の中にも、登録商標の使用に関しては弾力的に判断すべきであるというふうにうたわれている次第でございまして、こういったことでこの使用であるかどうかという点につきましては、これから先実際のチェックをしていく場合に、努めて取引社会の通念に照らしてこれを判断していくべきだと思いますけれども、現在のところ画一的にこのようなものがそうであるというふうなことを先ほどのアンケート調査の際におきましても具体的にこちらから指示できるような状態ではございませんでした。
○米原委員 ことし二月十五日付で出ている雑誌「ジュリスト」に青木審議室長が書かれた論文によりますと、登録商標のうちで未使用のものの内訳は、防衛のため保有しているものが三三・七%、当面使用予定はないが将来の使用のためというものが五二・三%、合わせて八六%にもなりますが、これらのものは現在の制度や運用の実態から見てやむを得ないものという見方ができるわけだと思うのです。したがって、このようなものに対する保護措置を別途講じないままで、不使用登録商標ということで取り消すのはおかしいし、場合によっては権利侵害の原因にもなりかねないと思いますが、どうされますか。
○土谷政府委員 お答え申し上げます。 この「ジュリスト」に載っていますのは私どもの方のアンケート調査をした結果と思いますが、私どもといたしましては、たとえば防衛のための保有という点につきまして、これは先ほど申し上げました審議会の答申にも書かれているわけでございますが、私どもの方の審査に際しての類似範囲の判断に際しまして、厳しくと申しますか、ある意味では甘く判断しているために、それぞれの企業が防衛的に出願せざるを得ないという意見も多く出されており、また答申の中でも、そういったことからこれから運用に当たってその点も考慮するように、特に答申の中にはこれを検討するための、これまでの審査基準を再検討するための委員会をつくって、協議会をつくって、そしてこの点を再検討するように答申がなされているわけでございまして、この防衛のための保有というのはそういったことでいままでよりも減少するものと思っております。 また、当面使用する予定はないが将来の使用のため、これは先ほども申し上げましたように、十年間使ってないものは問題外でございますし、またそうでなくても、使ってないものをそのまま放置しておくことは、これは先ほど申し上げましたように、公正の点から非常に問題がございますので、私どもとしてはそういったことからできるだけ将来の使用のために保有するという必要がないように、つまり現在この法改正をお願いし、また運用改善をいたしまして、できるだけ審査の期間も短くしよう、そういうことから必ずしもいつもたくさん抱えている必要がない、ストック商標を持っている必要がないというふうな状態に持っていきたいわけでございまして、今度の制度改正は運用も含めまして全体としてお話しのような点も十分考慮していると私は思います。
○米原委員 いろいろ申されますが、実際にいまのような状態で不使用登録商標として整理していくとすると、商標権者は自分を守るために新たな出願に逃げ道を求めることになりますし、新しく出願することが危険であると考えた場合には、連合商標としてあらかじめ出願しておくことによって更新チェックによる取り消しを逃れるということも十分考えられます。さらに、使用状況を示す写真によるチェックも、参議院の審議で明らかになったように、出願人の記載事項を信用するということですから、これまたフリーパスということにならざるを得ません。したがって、更新チェックの制度は、出願抑制、処理促進効果よりも、むしろ出願増をもたらす危険性があるものではないかと思いますが、この点どう考えますか。
○土谷政府委員 お答え申し上げます。 更新チェックを行った結果、更新できなかった商標が再び新願となって出されるのではないかということでございますが、もちろん私どももそのようなものが中にはあろうかと思っております。ただ、今回の更新チェックは更新時までのさかのぼって三年間に使っていなかった登録商標を整理するものでありますから、したがいまして、十年間とは申さないまでも、過ぎた三年間の間に一度も使ってないような商標は、再び出願をする値打ちは必ずしもないんじゃなかろうかと思われます。 この点につきましては、いま一つ、これまでの安い出願料、一件二千円というきわめて安い出願料であったわけでございますが、こういう出願料の場合には、またそれもかなり助長されたかと思いますが、今回改正をお願いしておりますように、ある程度出願料も引き上げることによりまして、そういったむだとは申しませんが、必ずしも必要のないものを改めて出願することは防げるんじゃなかろうかというふうに私どもは考えております。 それで、更新チェックを行うにつきまして、先ほどお話のございましたように、使用証明書をとる、使用状況の説明書をとる。そして、それに写真を添付したものを提出していただきまして、これを審査官がチェックするわけでございますが、実際に使っているものにつきましてはその商品が取引されている状態の写真を出す、これは非常に容易なことであろうと思います。しかし逆に、実際に使ってないものがそういうものを提出するということは必ずしも容易でありませんし、またもし詐欺の行為によりましてあえてそういう更新をいたしましたような場合には罰則ということも法律上規定されておりますので、私どもとしましては更新チェックは十分効果を上げるものと、そういうふうに信じております。
○米原委員 次に、不使用取り消し審判制度における挙証責任の転換について伺います。 この考え方に立って不使用取り消しが容易にできたとしても、結果的には新しい登録商標が生まれることですから、このこと自体よいことでありますが、不使用の商標を減らすことによってサーチ量を減らして出願の迅速な処理を目指す今回の改正の目的には直接にこたえられないと思いますが、どうでしょうか。
○土谷政府委員 お答え申し上げます。 不使用取り消し審判について今回のように挙証責任を転換しまして、実際に使われてない登録商標の取り消しが進むものと思うわけでございますが、実際に不使用取り消し審判を起こします請求人はその商標を使いたいという考え方からこの審判の請求をするものでありますから、取り消された登録商標は、すべてとは申しませんが、多く登録商標となることは間違いないと思います。ただ、今回挙証責任を転換して、これまであまり働いておりませんでした不使用取り消し審判が活発に行われるように、これが十分利用されるようにというふうに私どもが考えておりますのは、使わない、いつ使うかわからないような商標をあわててとる、しかも十年間もじっと持っているということで、他人がその商標を使うのを妨げるようなことはないようにいたしたいと考えているわけでございます。したがって、この取り消し審判が十分活用されるようになれば、そういったいつ使うか十分当てのない商標を出願するというふうなことば当然減ってまいると思いますので、この点から私どもは出願の減少に効果があるというふうに考えておる次第でございます。
○米原委員 いままでより不使用取り消し審判がやりやすくなることは間違いありませんが、そのことによって請求件数が増加することが予想されますが、どの程度の増加を見込んでおられますか。
○土谷政府委員 お答え申し上げます。 不使用取り消し審判が容易になりました結果、どの程度審判請求が行われるかということは非常に予測しがたいわけでございますが、特に最初のうちは相当程度出てくるのではなかろうかというふうに私自身は考えております。つまりこれまで非常に自分たちが使いたい、しかも相手が使ってないということがわかっていながら、こういう審判の制度を十分利用できなかった方々は、この制度がいつから行われるかというふうなことを私どものところに聞きに参っておるくらいでございますので、実際にそういう方々はこの制度発足と同時と申しますか、当初かなり審判請求をなさることと思います。しかし、この審判請求は、これまでのケースから見まして、この見方もいろいろあろうかと思いますが、私どもの方としましてはこれまで包袋調査、私どもの方の出願書類の調査をいたしました結果、譲渡待ちと申しますか、いま譲渡交渉中なので当方での審査をしばらく待ってもらいたいというふうな意見が出されることがございまして、そういう件数がおよそ三百件ほどございますので、私どもとしては仮に先ほど申し上げました一時的なことは別にいたしまして、これから先およそ三百件前後審判請求があるのではなかろうか、そういうふうに考えている次第でございます。
○米原委員 おっしゃるように仮に年三百件程度であれば、数十万件に及ぶ不使用商標を取り消すのにはあまり効果がない、こう言えると思うのです。さらに、全類指定が一般化している現状のもとでは、その指定商品の一部については使用されているという登録商標であっても、他の指定商品についてはその登録商標が不使用になることはかなり多いわけです。したがって、そのようなケースの対象になる指定商品の数の大きさの上に、特許庁のアンケート調査で不使用が七割もあることもあわせて考えると、登録商標をきわめて高い確率で取り消し得ることになるわけですから、それを見込んで途方もない多数の不使用取り消し審判請求を生み出す素地をつくったことになると思いますが、この点どう考えておりますか。
○土谷政府委員 お答え申し上げます。 先ほども申し上げましたとおり、一時的にはある程度の審判請求が出されると思います。そしてまた、こういうふうに挙証責任が転換されますことによって不使用取り消し審判が容易になれば、多くの方がこれを活用しようというふうにお考えになるかと思います。ただ、現実問題といたしましては、こういう不使用取り消し審判が容易に行えるということを前提にいたしまして、不使用の登録商標を持っている人と話し合う、そしてその商標の譲渡を受けるというふうなことも十分考えられます。したがいまして、すべてが審判請求に出てくるのではなかろうというふうに思っている次第でございます。
○米原委員 さらに問題になるのは、いわゆる商標ブローカーなどが実際には使用しないのではないかと思われるものまで出願しておりますが、先ほどの論議で、チェックができないばかりか、自分の出願と抵触する他人の登録商標について取り消し審判を請求し、その登録を取り消すことによって自分の登録商標を取得していくというような、商標制度本来の趣旨からも逸脱する結果をつくり出す危険性が生まれるのではないかと思いますが、どう考えるか伺いたいのであります。
○土谷政府委員 お答え申し上げます。 商標ブローカーの件はまことに困ったことでございまして、これまでも私ども中でも非常に問題にいたしておりますし、また実際に商標を取得しようとされるまじめな方々がいろいろ不平、不満をお待ちであることも存じております。これにつきましては、先ほどもお話がございました出願時の業種をチェックするということによりましてそういう人たちの出願を事前に防ごうということが、出願人の業務を記載させる当初の出願時の業務チェックの趣旨でございまして、そういったことで私どもはできるだけ商標ブローカーを排除していこうとしておるわけでございます。この不使用取り消し審判をブローカーが利用して、そして他人の登録商標を取り上げてしまうというふうなことが実際にあるかどうか、これはこれから先のことではっきりは申し上げかねますけれども、しかし不使用取り消し審判を請求するにはかなりの費用もかかりますし、時間も要することでございます。商標ブローカーはそもそも自分の利益になるように、自分が何らかの金になることを考えてやるわけでございます。また、不使用取り消し審判は利害関係のある人でなければ請求ができないことになっております。したがいまして、商標ブローカーがただわけもなしに不使用取り消し審判で他人のものをとってこよう、そういうことは恐らく余り行われないのじゃないかというふうに考えております。
○米原委員 いままで私質問しまして、どうもすっきりした答弁が伺えないのです。いまのようなことでは法改正の目的が達成できないのじゃないかと実は不安になってきました。それどころか、新たな混乱を持ち込む危険性がある。そういう点で現行制度を含めた商標制度の抜本的な再検討を行って、改めて改正案を出された方がいいのじゃないか、こういう感じがいたします。長官、どうでしょうか。
○齋藤(英)政府委員 いま土谷部長からいろいろ御答弁申し上げました。それから、私も答弁いたしましたが、現在の商標の出願の状況あるいは未処理案件のふえていく状況等を考えました場合には、まず商標制度の基本的な問題につきまして私どももいろいろ考えるところが実はございます。ございますが、この問題をまず解決をいたしませんと、それ以外の問題を解決する手だてと申しますか準備と申しますか、それができない段階でございます。物のたとえでございますが、要するに重き荷を負うて遠き道を行くがごとしという感じがいたします。したがいまして、一刻も早く私どもの方はこの重き荷を軽くいたしまして、軽くなったところで各種の問題——これは時代が変遷するにつれまして商標のみならず、他の法律につきましてもいろいろ問題が生ずることは当然でございます。したがいまして、まず未処理案件を少なくし、審査期間を短くする、先行き国際条約にも私ども入ろうと思っておりますが、国際条約で決められております審査期間と言いますのは、非常に大ざっぱに言いまして十五カ月でございます。現在の未処理案件を処理します年数と言いますのは、先ほど非常に大ざっぱにと申し上げましたが、未処理案件と当該年度の処理件数との割合で考えますと、大体四年近くかかるということになります。これは必ずしも処理をする期間を正確にあらわしたものではございませんけれども、一つのメルクマールとしてそういう数字もございます。十五カ月と四年弱というのは、余りにもかけ離れております。したがいまして、私どもは非常に重い荷が商標制度にかかっているというふうに考えざるを得ないわけでございまして、一刻も早くこれをまず解決をさせていただきまして、その上で商標制度につきまして、また問題になっているいろいろな点につきましては、これを検討することはやぶさかではございません。
○米原委員 そういう重荷を取りのけたいという気持ちはよくわかるのですが、改正されようとして実際はそうならないというか、新たな混乱が起こってくるのではないかということで心配して私は質問しているわけです。この点もう一度よく考えていただきたいのです。 もう一つ、料金の問題について聞きます。 さっきの御答弁の中には、料金の値上げが出願の抑制につながるような、そういうような御答弁がはっきりありました。商標法の制度的な欠陥から出願が大量になっているのに、料金で抑制効果をねらうのは邪道ではないか。出願を大量に出して商標制度を混乱させているのは、主として、何としても大企業であります。中小企業はみずからの商品につけるためのごく少数の商標権を取得して、実際に使用しているのであります。先日来私たちのところにも中小業者の方から多数手紙が来ておりまして、今度の改正で料金が一万円になるが、私たちにとっては弁理士さんへの支払いもあり、二、三万円の金はすぐかかりてしまいます、何とか値上げを抑えてほしいと言ってきておりますが、この点についてひとつ大臣のお考えを聞いておきたいのです。余りにも一気にこういう値上げで抑制するというより、もうちょっと工夫しなければいけないのじゃないか。安易に料金の値上げでこれを抑制するというのは明らかに邪道であります。この点について考えを聞きたい。
○齋藤(英)政府委員 事実問題が入っておりますので、大臣にかわりまして先にちょっと答弁させていただきたいと存じます。 現在の商標の出願手数料は二千円でございます。それで登録料は、現行一万二千円でございます。これにつきまして、私どもはアンケートその他ヒアリング、いろいろいたしましたところ、十年間いわば独占する権利が与えられるということに関して、いまの時期で出願手数料が二千円であるというのは余りにも安過ぎるのではないか、したがって簡単に言いますれば、十分な顧慮なくして出願ができるという状態にあるのではなかろうかという意見が、商標の小委員会ではかなり実は出ておりました。実際の企業にとってみますと、商標を出願します場合に、これが既登録のものであるかどうかということを本来なら自分で調べて、その上でこれは大体自信があるというものを出願されるのが私どもとしては望ましい形だと思っておりますが、実はほかのところに依頼するよりも特許庁に頼んだ方が一番安上がりだ、これが現状でございます。したがいまして、その点につきましてはアンケート調査等によりますと、与えられる権利の大きさなり強さに対して余りにも出願手数料と登録料が安過ぎるのではないか、こういう意見がかなり強く出ておることは事実でございます。したがいまして、一部長がそれを逆にとりまして、あらゆる場合に逆は必ずしも真ならずという言葉がございますが、いまのような御答弁を申し上げたのだと思います。 それからなお、一言つけ加えさせていただきますと、昭和四十五年に特許法改正がございました。そのときに審査請求制度というのを特許と実用新案についてはとったわけでございますが、審査請求手数料は八千円、これはそのとき新設をされました。出願手数料は二千円でございます。したがいまして、出願手数料と審査請求の手数料を合わせますと一万円でございます。それが現行法でございます。その前には特許も商標もいずれも二千円でございました。四十五年法以後は一方が一万円で商標は二千円の据え置きのままでございました。非常に格差がございます。言うまでもなく商標というものは出願をされましたものは全部審査をいたしますから、いわば全部審査請求があったと同じ状態でございます。出願がありまして審査をいたします、そういう状況が全く同じものに対しまして、特許につきましては一万円取られる、商標では二千円である、余りにも格差が大きい。こういうことで、その辺につきましての均衡論も実は問題になったわけでございまして、そういうことをいろいろ考えました末、商標と意匠は実は昭和三十五年法改正以来改正をいたしておりません。三十五年法の改正のときの基礎になりました出願手数料は多分三十三年当時の物価水準を基礎にして計算をしたと記憶しておりますが、それから現在までの物価水準の上がり方等を考えまして意匠の方につきましては約三倍にいたしまして、特許は先ほど申し上げましたように今回、これも四十五年以来の物価水準を考えまして一万円を倍の二万円にするように御審議をいただいておりますが、商標につきましては、実はその均衡をとれば二万円という数字が出てくるわけでございますが、私どもの方でこれは余りにも倍率が高過ぎるということ等も考えまして、その半分の一万円、現行の特許と同じような数字ということに一応とどめたという経緯がございます。 そういうふうな次第でございますので、もちろん出願手数料自身は法律が最高限でございまして、政令で実際の額を決めるようになっておりますので、その点についていろいろ配慮すべき点もあるいはあろうかと思いますけれども、言うまでもなく工業所有権法の改正は場合によりましては十年に一遍、通常は五年に一遍ぐらいの改正でございますので、そういうこと等も考えまして私どもの方は今回料金を改定することをお願い申し上げておる、こういう次第でございます。
○米原委員 それでは、もう一つ別の面から、特許庁の定員の問題について伺います。 商標だけの問題ではありませんが、出願の迅速な処理を効果あるものにするためにはもちろん法改正は重要な方法だとは思います。同時に、実務に携わる審査官、審判官、またこれらの人々の仕事を支えていく事務職員の増員が非常に大切じゃないかと思う。特許庁の資料によりますと、出願や処理の増大に伴って人員が若干は増加しておりますが、これは決して十分とは言えない。ことに事務職員の増員が足りないということを感じます。衆議院の商工委員会調査室の資料によりますと、わが国の場合審査官一人当たりの出願件数は四百七十七件、アメリカ、イギリス、西ドイツなど欧米諸国と比較して最高の出願量になっております。ロードが一番かかっていると言えます。さらに、審査官一人当たりの事務職員の数はわが国の場合が〇・七人になっていますが、その他の国と比較して最低であります。こうした状態を見ると、事態を解決するためには審査官、審判官の増員とともに事務職員の大幅な増員が不可欠であると考えます。法改正だけではなくてこの問題を考える必要がやはりあるのじゃないか、この点について大臣の見解を伺いたいのです。
○河本国務大臣 いまいろいろお話がございましたが、年々増加する傾向にございます出願、審判の請求に対処いたしまして、迅速でしかも適確にこの権利を付与する、こういうことのために特許庁におきまして審査、審判それから事務系統の職員の増員を初めといたしまして、審査、審判処理及び事務処理体制の強化をずっとやってきたわけでございますが、この結果審査と審判の処理期間は短縮されつつございます。さらに、審査、審判処理の効率化を増員だけに頼ってやっていくということには問題がありますので、人員の適正な配置それから現行事務処理体制の改善、審査及び事務処理の機械化それから研修制度の充実等によりまして職員の資質の向上等もあわせて行いながら、必要な人員の確保につきましても長期的な視野に立って今後その実現に努めてまいりたいと考えております。
○米原委員 もう一つの問題は作業環境を改善する問題です。特許庁の資料から算出して審査官一人当たりの事務所のスペースを国際的に比較しますと、日本は五・四六平方メートルになっておりまして、これは欧米諸国の三分の一から五分の一以下となっております。わが国の場合これに加えて現実に庁舎が二分割されていてさらに能率が悪くならざるを得ないという状態に置かれております。今回の改正案の審議でも、また前回の改正案の審議の際にもこの点の改善を当時の大臣、長官も強調されましたが、依然として事態が解決されておりません。この点でいままでどんな対策をとられてきたか、これからこの問題をどう解決しようとしておられるか、この点もどうしても考えていただきたい。いまの状態では法改正だけではいかぬのじゃないか、こういうことを痛感するのでありますが、長官と大臣の見解を聞きたいのです。
○齋藤(英)政府委員 ただいま環境整備の問題について御質問がございました。私どもも、これは四十五年法の改正のときにもいろいろ御注意がございまして、その後鋭意その環境整備に努めてまいりまして、細かいことがいろいろございますけれども、実はそれぞれ整備に努めてまいりましたけれども、なお十分でないことはお説のとおりでございます。予算関係を見ましても、四十五年当時に比べますと環境関係の予算はおおむね三倍ぐらいにふえております。ふえておりますが、なおそれでも不十分であることは、私どももそういうふうに考えております。したがいまして、今後その点につきましてはさらに力を入れるつもりでございます。 それと同時に、もう一つ庁舎の分割と申しますか、現在離れておるという問題がございました。これは予算を要する問題でございますので、四十八年あるいは四十九年、五十年いろいろ予算折衝をいたしたわけでございまして、これは建設省に計上される予算でございますが、その当時の経済状態からくる予算上の制約ということがございまして、もう少し端的に申し上げますと、四十八年、四十九年いずれも国民経済全体としての需要が強過ぎるということで総需要に関してのコントロールということが強く言われておった時代でもございますので、その辺につきまして実はこれは大臣以下非常に御努力いただいたのでございますが、残念ながらその成果を見ておらないのが現状でございます。 今後この問題につきましては、きょう午前中の御質問にも実は強くございましたが、私どもはもちろん真剣に考えている問題でございますので、御趣旨に沿いまして一刻も早く庁舎が統合できるように私の方も努力いたしたい、かように考えております。
○米原委員 特許庁の仕事の性質からいって、庁舎の問題はむしろ非常に重要じゃないかということを感ずるわけであります。 さて、この問題の解決はいままでの延長線上にあるような解決策じゃなくて、抜本的な解決を考えるべきだと思うのです。たとえば、現在の特許庁の本館を取り壊して新しい高層の建物をつくって、特許庁を全部入れるとともに、現在十分な働きをしていないJAPATICも新規性調査機関としての役割りを果たさせるようにして一緒に入れるなどして、特許の総合ビルにするなどの方法を考えたらいいのじゃないか、こう思うわけでありますが、通産大臣のお考えを伺っておきたいのでございます。
○河本国務大臣 事務処理の迅速化を図るということのためにはいろいろな対策があると思いますが、一つは法の改正、一つは人員の増強、それから第三の大きな問題がいま御指摘の庁舎の問題だと思います。先ほど長官が答弁をいたしましたように、庁舎が二分されておりまして、しかもスペースが非常に狭い、そういうことが事務処理が渋滞をする一つの大きな理由になっております。でありますから、庁舎の統合、そして十分な容積をとりまして、事務処理が円滑に進みますように、今後とも十分配慮かつ努力していきたいと思います。
○米原委員 終わります。
○萩原委員長代理 上坂昇君。
○上坂委員 午前中の残りました質問を続けさせてもらいたいと思いますが、商標制度について質問をいたします。 現在、商標につきましては年間の出願数が二十万件、未処理が四十八万件というふうに言われておりますが、現行商標法施行以後の出願件数が激増した要因は何であったかということをお答えいただきたい。 もう一つは、四十八年の秋以降出願件数が漸減の傾向にあるというふうに思われますが、これは何によるものであるか、これをお答えいただきたい。
○齋藤(英)政府委員 お答えいたします。 最近数年間商標の出願が激増しておる原因は何か、こういう御質問でございます。 まず、一番考えられますのは、その当時から数年の間におきまして日本の経済活動が非常に盛んであり、そのために多種多様の商品が出回っておる、あるいは多種多様の新製品が製造されておる、こういう状態でございましたために、それに伴います商標というものは出願を多くしてこれに使おう、こういう意欲が出てくることは当然かと思います。それが基本的な大きな原因ではなかろうかと私どもは思っております。 それから二番目に、それの媒体をいたしますいわゆるメディアと申しますか、マスメディア、テレビでございますとかあるいは新聞、週刊誌その他、いわゆる商標を宣伝として使う、広告として使うというメディアが非常にふえました。国民所得の増大に伴いまして当然商品が多種多様になったということはいま申し上げましたけれども、そういうものにつきましても非常に盛んになりました。そういう関係上マスメディアを使っていろいろ商品の有用性を宣伝する、広告する、こういうことも非常に行われた。これも一つの原因ではなかろうかと存じております。 それからなお、それ以外に制度的にもこれはいろいろ問題があるのではないかと思います。先ほど使用義務の強化の話が出ました。使用義務を強化していないので不使用商標がたくさんあるではないか、こういう御質問がございましたし、御意見もございました。これは先ほど御議論がございましたので詳細に申し上げることは省略させていただきますが、不使用商標がたくさんあった、あらかじめ使用する予定のない出願もかなりあったのではあるまいかという推定がされるという点も一つの問題かと思います。 それからなお、制度的に考えますと、二番目には商標につきまして小委員会で意見が出ておりましたのは、判断をする場合の類似の範囲というものについて類似の範囲が狭いのじゃないかという意見が出ておりました。類似の範囲が狭いとどういうことになるかといいますと、商標権者は当然、A商標に似ていると思うB商標が登録になるという事態が生じるのじゃないか、それじゃ先にB商標というのを出願して取っておけ、あるいは類似商標につきましては連合商標という制度がございますが、連合商標を取っておけ、こういうことになりまして、それがやはり出願増の一つの要因になっているのじゃないか、そういう意見もございます。 それからなお、これは悪循環になるわけでございますが、そういうことに伴いまして審査期間が長くなります。審査期間が長くなりますと、当然先行きのものにつきましてもこれは商標を出願して取っておかないと、先行き使う場合になかなか権利化しないで間に合わないということもございます。いわゆるストック商標と言われておりますが、そういうものもあるいは出願増の原因になっておるのではあるまいか、こういうことも言われております。 それからなお、先ほども御意見がございました料金の問題でございますが、料金の問題につきましてもこれは問題があるのじゃないかということも言われておりました。 そういういろいろな原因がございまして現在まで商標がふえております。 しからば、ここ一、二年の間商標出願がやや減る傾向にあるということはどういう理由によるのであろうか、こういう御質問でございますが、商標というものはいま第一に申し上げましたいわゆる経済動向というものにかなり大きく左右される性格を持っております。従来の傾向を考えてみますと、景気動向と相関をさせて考えました場合には、実質GNPにかなり近い相関度を持っておることが判明をいたしております。したがいまして、私ども考えますと、去年あるいは本年の——ことしはまだ五月まででございますが、実質GNPの伸びというものはむしろマイナスであるということでございますので、そういう点がかなり大きく商標出願には影響しておるのではあるまいかと考えております。 それと同時に、今回使用義務の強化を中心といたします商標法の改正を私どもは御審議をお願い申し上げておるわけでございますが、そういうことに関連をいたしまして関連の業界の方から商標の登録出願を自粛すべきではないか、もう少し、出願をする場合にその内容を考え、先行き使用するかどうかということも考えて出願をすべきではないか、そういうふうな空気がかなり強く起こりまして、具体的に申しますと、各産業界を連合して特許部門あるいは商標部門、工業所有権部門をまとめております特許協会という協会がございますけれども、特許協会ではそれぞれ商標関係の方が集まりまして商標の出願を今後自粛しようじゃないかというふうな決議もしておられます。そういうふうなこともやはりかなり影響度を持って、これが商標出願減、実質的な減少の原因の一つになっておるのではあるまいかと考えております。
○上坂委員 そこで、経済動向に非常に大きく左右されるということになりますと、これからの出願件数の動向というものがそこから予想されてくるように思います。そこで、今度の改正の趣旨であるこの出願件数の抑制あるいは処理の促進という点で、出願件数を適正規模へ抑制するというふうに言っておられるわけでありますが、具体的にはどの程度を目標としているのか、こういうことであります。 それからもう一つは、特許の場合の審査請求制度のような特効薬にはなかなかならないような気が私はいたします。そこで、この商標の出願件数の抑制あるいは出願の処理の促進ということを図るためには、やはり特許庁自体としての一つの計画というものを持っているのではないか、また持つべきであろうというふうに思います。そこでそうしたものを図るためにどんな計画を持っておられるか、これを発表いただきたいと思います。
○齋藤(英)政府委員 いま御意見がございましたように、これからの経済成長がどのくらいになるかということ、これは非常にむずかしい見通しでございますが、少なくとも従来のような二けた台の実質GNPの伸びはないのではあるまいかという予測が一般的でございます。したがいまして、私どもの方も、従来ある場合におきましては、商標の登録出願というのは二割ないしは、ある年は二割を超えたこともございますけれども、そういうふうな事態にはとてもならないであろうというふうに考えております。したがいまして、具体的にこれをいろいろ考えますと、昭和四十五年からいままでおおむね五年間でございますけれども、大体平均をいたしますと、この出願が六、七%ぐらいの伸びになります。それで、そういうことを一応基礎にいたしまして、今後数年間の処理の見通しを一応つけております。ただ、これにはアンノウンファクターが非常にたくさんございます。と申しますのは、実は出願件数もこれは一応の想定でございますと同時に、先ほどから皆様から御意見がありますように、実は審査官の増員ということも私どもは考えております。ところが、これは私どもの一存でいくことではもちろんございません。それから二番目に、これは人員をふやすことだけが私どもの唯一の方法ではないとも考えておりまして、実はコンピューターを使いまして商標の機械検索ということも考えております。この効果がどのくらい出るかということを一応の推定はいたしておりますけれども、これもまたアンノウンファクターの一つでございます。そういうふうな各種のアンノウンファクターを一応入れました上で、今後私どもは昭和五十三年あるいは五十四年——五十四年ぐらいになると思いますが、五十四年ぐらいは大体TRTで言っております十五カ月、一年三カ月でございますが、あるいはそれよりもっと短い期間に実はいたしたい、こういうふうな希望で、そういうふうな見通しを立てるべく諸般の施策を進める、こういう心構えでございます。
○上坂委員 更新登録の要件として登録商標の使用を加えたわけでありますが、これが使用されているかいないかということをどうして証明、審査をするのかということについてお聞きをいたしたいと思います。 それから、使用しているという場合はその証明をどんなふうにするのか、それから使用しているというのは一体どの範囲を指して使用しているというふうに見るのか、いわゆる一つの商行為の範囲になるかと思いますが、ここらをひとつ明確にしていただきたいと思います。
○土谷政府委員 お答え申し上げます。 この更新時における登録商標の使用状況の審査でございますが、これにつきましては私どもの方で運用要綱試案の中に——現在まだ試案の段階でございますが、この中に、一応現在のところ私どもでは使用チェックをこのように進めていくという考え方を示してございますので、それに従いまして御説明申し上げたいと存じます。 それで、使用状況証明書を更新出願の際にお出しいただくわけでございますが、この使用状況証明書、使用状況の説明書には、その商品をどのように使っているか、つまり生産をしているか、確保しているかあるいは販売しているかというふうな、そういう使用の態様及び使用の年月日を書いていただくことになっております。それで、同時に、これには登録商標が指定商品に使用されている状態の写真を撮ってつけていただくことになっております。この登録商標を使用しているかどうかというのを判断しますのに、もちろん商品そのものを提出していただければ判断は一番間違いなくできるわけでございますが、ただ商品の種類によりましては非常に大きなものもあり小さなものもあり、各種雑多でございます。そういうものを数万件更新をされる方からお出しいただくと、私どもの方としまして整理にも非常に大変でございます。したがいまして、いま申し上げましたように、指定商品に使用されている状態の写真を添付していただくことになっておるわけでございます。この写真をいつ写したか、またこれをだれが写したか、どこで写したかということをその写真説明として添付していただくことになっております。これは更新時の使用チェックが更新出願からさかのぼって三年の間に使っていなければならないわけでございますので、これをチェックする意味で、先ほど申し上げました使用の態様、使用の年月日とともに、写真につきましても撮影年月日等を書いていただくことになるわけでございます。 それで、これにつきましてもし更新の出願をする方が写真を添付していないような場合、あるいは使用の態様について書いていないような場合には、私どもの方としてはその追加のための書面を受理しないことにしております。また、提出した使用状況証明書の補正は認めない、私どもの方では使用状況の審査というのは出されました書類だけに基づいてやることになっております。 先ほど御質問のございました登録商標を使用しているかどうかということですが、その登録商標を使用していると出された商標が果たして使用に値するかどうか、登録商標と同一であるかどうかという点であろうかと存じますが、これは先ほども出たところでございますけれども、私ども、さきの工業所有権審議会の答申によりますと、この点につきましては取引社会の通念に従ってこの範囲を考えるべきであるということで、登録商標と全く同一、そういう形で使っているものはそもそもほとんどあり得ないわけでございますが、これを取引社会の通念に従って商標の使用と認めるかどうか、そういう判断をするようになると思います。
○上坂委員 結局のところ、書類を出してもらって、それに写真をくっつけて、そして書類だけの審査でこれを決める、こういうことを言っておられるんだろうというふうに思いますが、そうなりますと、被請求人の偽証行為というものがもしあるとした場合に、そういうものをどうやって排除していくことができるのか、これは非常に疑問になってくるというふうに思うのです。その場合、審査官の責任というものは非常に重大になってまいりまして、仕事の負担の問題についても大きな増大につながる、こういうふうに考えられるわけであります。この点についてはどうでしょうか。
○土谷政府委員 お答え申し上げます。 このチェックは書類の審査でいたすことは仰せのとおりでございます。 それで、更新出願をした方がもし偽って何らかの証明書をお出しになったような場合、これは確かに非常に問題であろうと思います。これにつきましては、本来書類で審査をいたすものですから、しかも大量に処理しなければならないということで、必ずしも一つ一つについて絶対に疑いのないところまで調べるということは恐らく不可能であろうかと思います。ただ、現行法七十九条で、詐欺の行為によって更新を行ったような場合にこれは罰せられることになっております。したがって、私どもはそういうふうな詐欺の行為というのは行われないものというふうに考えております。
○上坂委員 非常に希望的な観測によるところのやり方になるというふうに私は思うわけでありますが、いずれにしましても書類審査だけで、特にいままで第三者が証明をしていたものを、挙証責任を本人に転換をしていくということが今度の改正の骨子になっておるわけでありますが、現行ですと、一地域におけるところの不使用の推定というもの、これは一地域で使っていればいい、あるいは使っていなければだめだ。特にその商標権者の居住地を限って使っていればいい、こういう決めがあったというふうに聞いておりますが、この規定を削除した理由はどういうところから出てきているのか、お答えをいただきたい。
○土谷政府委員 ただいまの御質問は、今回行われます改正法案に改正点として出ております商標法五十条の不使用取り消し審判に関するものであろうかと存じます。これにつきまして、これまでこの五十条の規定がせっかく設けられていたにもかかわらず、これは実際にほとんど活用されていなかった。つまり不使用取り消し審判の請求件数も少ないし、また実際に不使用取り消しの審決もほとんどなかったわけでございます。それは相手方が使ってないということを立証するのは非常に困難である、それがたとえ限られた地域であっても、過去三年の間に一度も使ったことがないということを立証するのは、請求人の側にとって非常に困難なことでございます。一方、登録商標を持っております商標権者の側にいたしますと、自分が使ったか使わないか、これを証明するのは非常に容易でございます。したがって、今回の制度改正の趣旨でございます使用義務の強化という観点から、この五十条の不使用取り消し審判につきましても、これができるだけより活用されるように挙証責任の転換を行う、こういうことにいたしておるわけでございます。
○上坂委員 第三者が、使用してないという証拠を挙げるということは非常に困難である。同時にまた、自分が使っているんだということをどんなにでも証拠づけるということは非常にやさしいのじゃないかと私は思います。 そこで、問題なのは、出願時に使用意思の前提となる出願人の業務を記載させる、それにより業務を行う蓋然性を審査する、こういう形になっておるわけですが、更新時には登録商標の使用の事実を審査する、これが出願時とそれから更新時の決めになるわけでありますが、特許庁内にある商標懇談会というのが、今回アンケートをとりました。会員は百二十名おりまして、ほとんどの審査官、審判官が入っているようであります。百九名を調査対象として行ったわけですが、そこで業務の記載で使用の蓋然性を審査することは適当であるというふうに思いますかどうですか、という質問に対して、これは適当でないという答えが七十五名で六八・八%あったわけです。それから、適当であるとする人が十七名で一五・五九%になっておるわけであります。さらに、いま説明がありました使用状況の説明書の程度のもので使用事実を判断できるかどうか、こういうアンケートに対しましては、判断できないという答えをしている人が八十一名で、実に七四・三一%に達している。できると答えている人は十六名、一四・六七%しかない。こういうことを考えますと、せっかく改正をして、使用条項というものを入れても、これは実際には役に立たない、かえって繁雑になるばかりであるというような結果になるのではないか。しかも、これは実際に毎日審査に携わっている専門家の人たちが、こうしたアンケートに対する答えを出しているということになりますと、今回の改正というのはやはり非常に問題がある、こういうふうに言わざるを得ません。この点について、どういうふうにお考えでしょうか。
○土谷政府委員 お答え申し上げます。 ただいま先生からお話のございました商標懇談会の方のアンケート調査につきまして、私ども拝見いたしましたが、詳しくは記憶いたしておりませんが、いま御指摘の点、二点あろうかと存じます。 それで、出願時の業務の記載、これによって使用の蓋然性が審査できるかどうかという点でございますが、これは業務を記載さして、その業務を行っているかどうか、またもし行っていなければ、これから先その業務を行う蓋然性と申しますか、行う可能性があるかどうかということをチェックいたすわけでございまして、実際に出願したその商標を使用するかどうかという点まではチェックのしようがない。これは外国の場合でございますと、使用に関する宣誓書を出させまして、出願人から宣誓書をとりまして、その宣誓書を信ずるという形式をとっているところもございますが、わが国の場合、そういう宣誓書という形式はとれませんので、また必ずしも適当でございませんので、従来から、先ほど長官からもお話のございましたように、三条の柱書きによりまして「自己の業務に係る商品」に使用する、「自己の業務」ということがまず大前提になっております。 で、出願時の願書に自己の業務を書かせることによって、その業務のない人には、果たして業務を今後されるのですかどうですかということをお尋ねするわけでございます。そういったことで、先ほどの業務を記載させ、そしてそれによるチェックで使用の蓋然性が審査できるかどうか、これは適当でないんじゃないかということ、これは私も質問書をよく拝見いたしませんと、正確にはお答えできませんけれども、その点での質問と答えとの関係があろうかと私は存じます。 で、更新の方につきまして、現在の運用要綱に書かれておりますような程度の書類では使用の事実が判断しにくいということは、これはあるいはあろうかと私は存じます。もちろん現在の要綱試案で不十分な点があれば、これは実際に行うまで、つまりこの更新チェックの方は法律が公布されましてから三年先に初めて実際には更新チェックが行われるわけでございます。その段階までにというのは、これはもちろん問題でございますけれども、十分この運用の仕方については検討をすべきではないかと思います。 ただ、使用のチェックと申しますのは、使用主義をとっておりますアメリカでは、これは出願時、それから出願してから六年目、さらに更新時という、それぞれのときに使用の事実をチェックいたしております。長年やっておりますアメリカでもいろいろ使用のチェックについて具体的に問題はあるように聞いております。また、西独も異議申し立てのあった場合に、その商標権者がその使用を立証しなければならないということになっております。その関係でも、西独も、これは最近の改正で実際に現在行われているわけでございますが、やはり使用という点についてはなかなかむずかしい問題のようでございます。 こういったことで、この法律が通りました暁には、わが国でもこの法の意図するところを公正に実施しますためにできるだけベテランの審査官をお願いし、そしてその数名の方でこの使用のチェックを行うということで、国民の、つまり更新の出願をされる方々に不安のないように注意してまいりたいと存じております。
○上坂委員 長いこと説明を受けるわけですが、私が言っているのは、内部でこうした改正について問題があるということを指摘しているという状態、これはやはり内部での詰めが甘いのではないか、むしろやっていないんじゃないかというような感じがするから申し上げているわけであります。 運用要綱試案、五月の二日に出ましたこれについて、もう一つのアンケートがあります。法案及び要綱案が実施された場合、適法かつ公正な審査ができると思うかどうか、こういう質問に対して、できないと思うという人が実に九十人、八二・五六%に達しているわけなんです。できると思う人は二名しかいないのです。一・八三%であります。これが審査官、審判官の回答なんです。 それから、出願処理の促進になると思うか、こういうアンケートでありますが、思わない人がやはり九十名いる。思う人は六名しかいない。こうなりますと、実際にこれは長官も先ほどからお答えしているように、審査官が第一義的な責任を持つんだ、こう言っている。その第一義的に審査の責任を持つ、そういう人たちが法案を改正したって、要綱案を実施したって、これは出願処理の促進にもならないし、適正な審査もできない、こういうふうに言っているということは一体どういうことなのか、ここのところが聞きたいわけなんです。これはどうでしょう。
○土谷政府委員 お答え申し上げます。 先ほどのアンケート調査がどういうことを前提にして、またどういうふうな形で行われたか、私はよく存じない次第でございますけれども、ただいま先生の御指摘のように、審査官の方でいろいろ問題点を指摘しているということは、これは申すまでもなく私どもとしても十分心しなければならないことと存じております。 今回の商標の制度改正につきましては、先ほどもちょっと触れました工業所有権審議会が昨年の初めから十数回商標評議会を開き、また二回審議会を開きまして学識経験者の方々が集まって検討した結果をもとに今回の改正を考えている次第でございます。 これにつきましては、その後も私自身もあるいは長官も審査官の方々と直接に、また組合交渉という形で再三接触をし、御意見も聞いてまいっております。したがいまして、先ほどのアンケート調査の結果というのにつきまして、私どもとしては、たとえば公正な審査がこのような形ではできないということであれば、むしろそれを積極的に、したがってこういうふうなものを更新チェックの際に提出せしめるべきじゃないかといったような、あるいはこういう形で審査を今後進めていくべきじゃないかという運用要綱についての建設的な意見を私どもは期待してまいっているわけでございますが、私の存じます限りでは、これまでのところさほどそういった意味で建設的なというふうな意見が出されておりません。この点につきましては、私自身の不明のところでございます。これからもできるだけ、この法律が通りました暁には運用について万全を期するように審査官各位とよく話をし、そして進めてまいりたいというふうに考えております。 それから、いま一点の出願処理の促進になるかどうかという点でございますが、これは私どもの方はいろいろなアンケート調査あるいはヒヤリングといったようなことをもとにして出しておりますので、私どもとしては十分出願の処理促進になるという確信を持っております。 ただ、先生も御指摘のように、あくまでも審査官の心構え一つでございます。これは私が大阪の方の説明会に参ったときに、外部から現在の審査官一人当たりの処理件数は余りに少ないじゃないか、もっと綱紀粛正してやれば倍くらいはできるはずだ、こういう指摘さえ受けました。私は非常に数多くの未処理案件のある現在、簡単に土曜日をつぶすとか、あるいは残業してそういう問題は片づくことではないと考えております。したがって、今回のようないろいろな手だてを講じまして、できるだけ審査官の負担が現在よりも多くならないように、そうして出願が処理されるように、こういうふうにいろいろな手だてを考えている次第でございます。しかし、実際にもし審査官がやる気がなければ、これは一人当たりの件数が現在の半分にでもあるいはそれ以下にでも下がることもあり得るわけでございます。そういったことを考えますと、私といたしましては直接審査官の方々ともっとよく話し合いを進め、そして疑問の点を解決するように、そして公正な審査ができ、しかも出願の迅速な処理ができるように努力してまいるつもりでございます。
○上坂委員 いまの問題は余り立ち入って質問しない方がいいような感じもしますから、この辺でとめておきますが、どうもよく考えると、どうしてもやはり内部的な詰めというものが不足をしている感じが強いのです。単なる交渉でいろいろな話をするというだけのことではなくて、本当に法改正をやりたいということなら、先ほどの質問にもありましたが、便宜的なものではなくて、やはり根本的にこの未処理案件を少なくして、そして国民の期待にこたえていく、こういう立場に立って進めるという形で今後とも十分内部的な調整を図っていただきたいというふうに思います。 次に、商標法の改正と国際法の問題についてちょっと触れたいと思いますが、外国の商標登録制度のうち、使用を条件としている国というのはたくさんあるのかどうか。私の聞く範囲では、使用以外の条件を付している国というものもあるというふうに聞いておりますが、この点についてもひとつお答えをいただきたいと思います。
○土谷政府委員 お答え申し上げます。 諸外国の中でアメリカだけは、登録をするとき、出願時にすでに商標を使用していなければならないということで、出願の第一の条件になっているわけでございますが、そのほかの国につきましてはそういったような登録時の使用というものを条件にはいたしていないように存じております。ただ、イギリスのように出願の際に使用するという意思を表明する、先ほどちょっと私触れましたが、使用に関する宣誓書を出すという国もございます。また、ドイツの場合は、今回私どもが採用いたそうとしておりますように、出願の際にその出願人の業務を調べまして、そして業務に関係のない商品について商標を使うというふうな形で出願をされております場合には、これを認めないというふうな形をとっております。
○上坂委員 使用を条件としている国というのは余りないというふうにお答えをいただいたようであります。したがって、その使用以外の条件を付しているところもない。要するに料金だけ払えばよい、こういうことになってしまうのではないかと思うのです。 今回の改正がこの商標登録条約といいますか、国際的な条約に対する加盟を一つの目的としているということであるならば、これに合わせた方がいいのではないか、こういう意見も出てまいります。使用条項を入れるということによって、むしろ事務が繁雑になる、あるいは審査が困難になる、それから仕事がよけいになる、こうした弊害を伴っているならば、これは入れない方がいい、こういうふうに思います。こうした点が今度の改正にはたくさんあるような気がします。したがって、この国際的な条約に合わせるということであるならば、この際こうした小さなところを改めていくというのではなしに、この商標法それ自体を抜本的に改正をする、時間をかけて改正をするということの方がもっと大切なのではないか、こういう気がいたします。これらについて御意見をいただきたいと思います。
○土谷政府委員 お答え申し上げます。 ただいま先生のお話しございました国際条約、いわゆるTRTといわれているものでございますが、これが一昨年の六月に締結されまして、その規定によりますと、アメリカのような使用主義、つまり登録時に使用を条件とすることは認められておりません。条文によりますと、国際登録を出願して三年間は使用を強制することができないようになっております。しかし、先ほどちょっと申し上げましたアメリカの六年目のチェックあるいは更新チェックのように、それ以外の時期における使用のチェックということは、別にTRTの条文上認められております。また、出願時の事務チェックという点につきましては、TRTは直接は触れておりませんけれども、これはドイツが行っており、またWIPOと称するTRTを実行する機関、国際機関へ問い合わせたところでも、これは問題がないということで、TRTに加盟する上での問題は特にないと存じております。 ただ、そのTRTに入る前に御指摘のようにもっと抜本的な改正が必要ではないかという点につきましては、先ほども長官が御答弁になったところでございます。私どもとしては非常に多くの未処理案件を抱えたままでそういう抜本的改正をするというのはむしろ問題があるというふうに考え、これは今回のとりあえずのいわばびほう策かもしれませんけれども、応急処置をした上で必要なところはさらに検討し、改善を加えていくというふうな考え方でございます。
○上坂委員 もう二点だけお聞きしますが、サービスマークについてであります。サービスマークを商標登録制度に組み込んでいない理由はどういうことですか。
○土谷政府委員 お答え申し上げます。 先ほどの国際条約、TRTでございますが、このTRTでは、商品及びサービスの両方について国際登録を受けられるようになっております。ただ、加盟します国々、つまり締約国につきましてはサービスマークを強制するようなことはいたしておりませんので、わが国としてはさしあたってサービスマークの登録を認めていなくても、TRTに入ることには支障はございません。
○上坂委員 国際条約に入るのには支障がないということですが、このサービスマークを将来登録制度に組み入れる、こういう考え方はございますか。
○齋藤(英)政府委員 いま土谷部長がお答えを申し上げましたのが国際条約との関係でございます。 先行きの問題につきましては、私どもは現在の重い荷が軽くなるというふうな状況が明らかに看取されましたような状況になりました場合には、この問題については相当重要な関心を払わざるを得ない。ことに現在、御説明するまでもありませんが、第二次産業、第三次産業というものの比率というものにつきましては、いろいろ見方がございますけれども、十年前、二十年前に比べましたならば、第三次産業の割合というのは非常に大きくなっております。そういう観点から考えましても、サービスマークというものの重要性というのはますます増しているのではあるまいかというふうに考えます。したがいまして、これにつきましての法的保護の方法、これは非常にむずかしい問題がいろいろありますが、それらを検討いたしまして、そういういま私が申し上げました時期になりました場合には、これについては十分な配慮を払って進めていくべきではあるまいかというふうに考えております。
○上坂委員 商標については質問を終わります。 最後に、総括的にちょっと申し上げたいのですが、それは特許庁自体の問題として、特許法から商標法まで含めまして問題になるのは、やはり審査体制を整備するということ、先ほど問題が出ていたことだと思います。 それからもう一つは、特許法の場合には、公開特許公報等の扱いとその改善の問題があるというふうに思うのです。年間三十万件の公報、それからその他の資料の発行あるいは副分類というものを加えますと、実に七十万件に上るというふうに言われております。これらのものを全文公開をするということが一体いいのかどうか、抄録にした方がいいのかどうか、こうした問題もあるのではないかというふうに思います。これらについては、特に抄録の場合には、図面によるところの要部印刷あるいはマイクロフィルムの活用、こうした問題が出てくるというふうに思います。これらの問題は、公報の保管のスペース、こうした問題から考えても、こうした点をとっていく必要があるのではないか、こういうふうに私は思うわけであります。 それからもう一つは、審査関連業務でありますが、これは先ほどの米原委員の質問にも業務のシステム、事務の処理、ここのところを充実するということが非常に大切になってきている、こういう質問がございまして、長官の方から機械化、コンピューター等の活用によるところのそうした促進を図りたい、こういうお答えがありました。ところが、実際にはコンピューターはかなり長い間のいわゆる準備期間というものがないと、これを使っても余り役に立たないような状況が出てくる、十分こなし切れないような状況が出てくるというところに問題があるだろうというふうに思いますので、ここのところも非常に大切なものとして詰めていただかなければならないというふうに思います。 それからもう一つは、審査の中心の業務であります。これらについても先ほど質問がございましたから省きたいというふうに思いますが、こうした問題を解決するために、分庁舎の問題やらあるいは事務処理の問題、それから内部の機構の問題、システムの問題、たくさんやらなければならないことがあります。 ところが、それをやるのに一番問題なのは、それに取り組むところのトップマネージメントの問題だろうというふうに私は考えるわけであります。ここに資料がございますが、これを見ますと、いままでの長官の任期というのはたかだか一年か二年、もうそれでやめちゃう。これではいつまでたっても抜本的な取り組みなんというのはできるはずがない。ここにやっぱり根本的な問題がある。よく考えると、これはやる気がないのじゃないか、こういうふうに思ってしまう。任命する大臣の方が悪いのか、その辺はよくわかりませんけれども、ここのところは非常に大切であると思うのです。したがって、先ほどから問題になっている、大臣も認識されているような、そうした現在の機構なり分庁舎の問題、庁舎の問題等考えた場合に、これは長期的に取り組む体制というものをつくる必要がある。そういう意味では、長官の任期というものも、出てきたら一年もたたないうちにやめてしまう、こういうような形ではとてもではないがだめだ、こういうふうに思います。 それからもう一つは、長官だっていつまでも仕事にずっとついているわけにもいかないので、いつかはやっぱりやめなければならぬ。やめる場合には、その後を引き受ける人がいなければならない。それを補佐する者として技監制度というものを設けたのだとは思いますけれども、もっと充実した機構というものを確立する必要があるというふうに私は思います。 そういうことについて大臣の見解を承って、質問を終わりたいと思います。
○河本国務大臣 当面する問題点をいろいろ御指摘になりました。特に形だけ整えても中身が伴わないといかぬと思います。 人事の問題等につきましては、十分注意をいたしまして、今後運営をしていきたいと思います。
○上坂委員 これは長官にも申し上げておきたいのですが、重き荷を負うて遠き道を行くがごとしなどという形で逃げられていたのでは困るのであって、本当にこれはその重き荷物をしょって、これを抜本的に解決する、こういう心構えでこの特許の問題、こうした国民の権利を守る問題には取り組んでいただくことを要望いたしまして、私の質問を終わります。
○萩原委員長代理 次回は、明二十八日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後五時四十五分散会