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75回国会衆議院1975/09/09

公害対策並びに環境保全特別委員会 第21号

発言数
282
登壇者
23
会派数
4
開催日
1975/09/09

会議録

渡辺惣蔵日本社会党

○渡辺委員長 これより会議を開きます。  公害対策並びに環境保全に関する件、特に六価クロム汚染問題について調査を進めます。  まず、本件に関して、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本日、参考人として日本化学工業株式会社社長棚橋幹一君、日本電工株式会社社長松田信君、日本化学工業協会専務理事長澤榮一君、東京都副知事志賀美喜哉君、東京都公害局規制部長田尻宗昭君、北海道夕張郡栗山町長則武基雄君、関東学院大学教授武藤暢夫君、北海道大学助教授渡部真也君、三重大学教授吉田克巳君及び株式会社アグネ技術センター所、長長崎誠三君、以上の方々の御出席を求め、御意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

渡辺惣蔵日本社会党

○渡辺委員長 御異議なしと認め、よって、さよう決しました。  なお、本日は、議事の整理上、午前中は、棚橋参考人、松田参考人、長沢参考人、志賀参考人、田尻参考人及び則武参考人から、まず御意見を承り、続いて、以上の参考人に対して質疑を行うことにいたします。また、午後は、武藤参考人、渡部参考人、吉田参考人及び長崎参考人から御意見を承り、続いて、質疑を行います。     —————————————

渡辺惣蔵日本社会党

○渡辺委員長 参考人各位におかれましては、本日は、御多用中のところ、また遠路にもかかわらず本委員会の調査のために御出席いただき、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  御承知のとおり、六価クロム汚染問題は、いまや各地において大きな社会問題となっており、本問題は早急にその対策を迫られているところであります。当委員会といたしましても、本問題の対策樹立のため、本日は関係者の皆様に御出席をいただいた次第であります。  どうか参考人におかれましては、それぞれのお立場から御意見をお述べいただきますようお願いいたします。  なお、御意見の開陳は、おのおの十分以内に要約してお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えをいただくようお願いいたします。  それでは、棚橋参考人からお願いいたします。棚橋参考人。

棚橋幹一日本化学工業株式会社社長

○棚橋参考人 私が日本化学工業株式会社の社長の棚橋でございます。このたび六価クロムに関する問題で大変、世間の皆様をお騒がせいたしましたことに対しまして、まことに申しわけなく、心から、この席から深くおわびを申し上げる次第でございます。今回の問題につきまして、いろいろの報道がなされておりますけれども、できるだけ整理をいたしまして、私どもの存じておりますことを述べさしていただきたいと存じます。  六価クロムの問題は、そのポイントが二つにしぼられると考えます。一つは、工場従業員の職業病の問題であります。それから第二は、埋め立てられました鉱滓についての問題というふうに、三つに分かれると存じます。以上のうち、最初の職業病の問題でありますが、このようなことに立ち至りました原因は、もちろん、いろいろございますが、突き詰めていきますと、私どもの職場環境改善の努力が不足であったということでありまして、患者の方々あるいは御遺族の方々初め関係の皆様に対して、まことに申しわけなく、おわびの言葉もない次第でございます。  実は、クロム化合物製造現場における鼻炎とか鼻中隔せん孔の発生につきましては相当、以前からわかっていたことでありまして、昭和三十二年には国立公衆衛生院に依頼して、この点についての調査をいたしたことがございます。その結果、改善すべき点は相当に手を入れてきたのでありますが、当時、当社を含めて一般産業界の環境改善技術が未熟で水準が低かったために、思うように効果を上げることができず、時間が経過してまいったわけでございます。このような職場内の環境改善の努力が次第に実を結んでまいりましたのは、昭和四十年以降のことでありまして、職場環境も、このころから格段とよくなりまして、そのために鼻中隔せん孔についても発生が非常に少なくなってまいったわけでございます。  それでは、ここに至るまで会社が、どのようなことをしてきたかということを、かいつまんで御報告いたしたいと存じます。  当社のクロム塩製造工場は、江戸川区小松川に南北二つの工場がありますが、まず最も古い南工場につきまして、昭和二十年代より、いわゆるコットレルによる集じん装置があったものを、昭和三十年代には約三倍の能力を有するものに交換いたしております。そのほか各工程ごとに集じん機の設置あるいは自動遠心分離機の設置、ろ過工程の改善、密閉式コンベアの採用、浸出工程の自動化などでございます。次に北工場の方は、昭和三十八年に完成したのでありますが、いずれも当初から南工場よりは、すぐれた環境となるように努力してまいったわけでございます。また、一般的の事項として、構内の舗装による発じんの防止とか、あるいは防じんマスクなど保護具の使用あるいは医務室設置による鼻の洗浄の励行、浴室への中和剤の投入などの装置を併用してまいりましたこと、もちろんでございます。  現在、法律に定められております職場における許容濃上度は〇・一ミリグラム・パー立方メートルでありますが、昭和四十七年には約〇・〇八ミリグラム・パー立方メートル、さらに四十八年には〇・〇五ミワグラム・パー立方メートルという目標値に到達してきているわけでございます。なお、南工場の方は、昭和四十五年から四十七年にかけて操業を停止しており、北工場も昭和四十九年には主要部分を停止しております。  一方、東京都の亀戸、大島、小松川地区の市街地再開発計画、いわゆる防災計画の地域に、当社の小松川南北両工場が包含されましたために、都の計画に御協力申し上げるために、当社は山口県徳山市に新工場を建設いたしまして、昭和四十年よりクロム塩の製造を開始してまいったわけでございます。この間、いわゆるスクラップ・アンド・ビルドを繰り返しながら環境の改善に努めてまいったわけでございます。  このような状況でありましたところ、昭和四十五年より肺がんによる死亡者が出始めてまいりまして、昭和四十九年に至る五年間に八名を数えるに至りました。労働基準監督署に御相談申し上げましたところ、疫学的に相当因果関係がありということでございますので、これはもちろん、はなはだ申しわけないことであったわけでございますが、とりあえず労災保険法上の手続をとってまいってきたわけでございます。この八名の患者の方々は全部、相当、長期間工場に勤務されたいわゆる正規従業員でありますが、小松川工場には正規従業員のほかにも若干の臨時工及び下請の従業員がおりました。このような方々及びすでに退職されている方々につきましても、現在、鋭意その方面の健康に関する調査を実施中でございます。以上述べました諸手続及び健康診断につきましては、東京労働基準局及び江戸川労働基準監督署の御指導をいただいて実施しているわけでございます。  前に述べましたとおり、小松川工場はほとんど操業を停止しており、今後はこのような職業病が発生することは、もちろん、ないわけでございます。したがいまして、当社でクロムによる疾患の発生の可能性が残っているのは、現在の徳山工場のみでありますが、この工場は新鋭工場でありまして、職場環境も許容濃度の五分の一程度になっておりまして、このような職業病の新規の発生はないものと確信いたしておりますが、さらに、よりよい環境を実現すべく現在、努力を傾注しているわけでございます。  さらに、過去においてクロム職場で働かれた方々の健康管理も重要なことでありまして、調査の上、しっかりした名簿を作成し、労働関係行政機関の御指導のもとに永続的に、これらの方々の管理を続けていきたいというふうに考えております。  以上が職業病の問題でございますが、次に鉱滓についてでございますが、製造工程中で、できるだけクロム分を抽出するわけでございますが、鉱滓中に若干のクロム分が残るということは、現在の技術水準ではやむを得ないところでございます。しかし、この鉱滓中の六価クロムは、製品と比較いたしますときわめて低濃度であります。したがいまして、従業員の職業病と鉱滓埋立地域に居住される一般の方々との健康被害とは、また別の問題じゃないかというふうに、私どもは考えているわけでございます。  私どもは大正年間からクロム化合物の生産をいたしておりまして、鉱滓が発生しておりましたが、最初は工場内の埋め立てに使用し、さらに年々、沈下の激しい周辺の低地あるいは湿地の埋め立てにも使用してまいりました。この鉱滓は固まりが非常にいいということで、埋立用として相当、希望がございまして、相当量お分けしております。さらに江戸川区、市川市などの埋立地にも地主さんとの契約の上、お譲りをしたものでございます。  私どもといたしましては、昭和四十六年、産業廃棄物の六価クロムの規制の法規が出るまでは、次に述べます経験により、鉱滓は地域住民の被害がないものだというふうに考えていたわけでございます。  その経験の第一は、鉱津上に当社の社宅がありますし、また当社の従業員が多年生活しておりますが、それらの家族にも何らの健康上の問題が生じなかった。あるいは鉱滓埋立地付近の住民の方からも、鉱滓による因果関係があると推察される健康上の被害が発生してなかった。第三は、当社以外の鉱滓埋立地においても一般の方に被害がほとんどなかったということでございます。ことにこのことは、昭和四十八年に江東区大島地区において都で実施されました健康診断においても、異常者が一名もなかったという結果でも裏づけられるというふうに私どもは考えておるわけでございます。  最近、しかしながら、こういう問題になりまして、現在、鉱滓を埋め立てた付近の住民の方々の健康診断をやっておりますが、その結果につきましては、さらにはっきり判明していくものと考えられます。しかし、現実に鉱滓から浸出する水から、規制値以上の六価クロムが検出されるという状態は好ましくないというのは申すまでもないわけでございます。さらに、こういう問題になりまして、地域住民の方々の不安を一日も早くなくすという見地から、これらの埋め立てた土地につきましては、応急対策につきまして、当社の負担ですでに数十ヵ所について応急対策を実施いたしております。それから、さらにこの鉱滓埋立地の恒久的の処置につきましては、都を初めとする監督諸官庁と御相談の上、誠意をもって処置してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。  なお、住民の方々の健康診断の結果、私どもは鉱津による健康被害は出ないものというふうに考えておりますけれども、万が一にも出た場合には、これもまことに申しわけないことでございますので、被害者の方々につきましては、もちろん誠意をもって、それに対処さしていただきたいというふうに考えておる次第でございます。  以上、このたびの六価クロム問題につきまして当社といたしまして考えておりますことを述べさしていただきましたが、過去の職業病に関する問題とはいえ、人の健康並びに人命に関するような問題を引き起こしましたことに対しまして、まことに申しわけないことでございまして、重ねて深くおわびを申し上げまして、一応、私の御説明を終わりたいと思います。ありがとうございました。

渡辺惣蔵日本社会党

○渡辺委員長 ありがとうございました。  次に、松田参考人にお願いいたします。松田参考人。

松田信日本電工株式会社社長

○松田参考人 私は日本電工社長をいたしております松田信でございます。このたび六価クロムの問題につきまして、当社関係工場が存在いたしております地元の方々に不安をお与えし、また本日、ここに御列席をいただいております諸先生方を初め関係御当局の皆様方に大変な御心配をおかけいたしておりまして、まことに恐縮千万に存じておる次第でございます。  早速でございますが、この問題につきまして当社がこれまでとってまいりました措置等につきまして申し述べさしていただきまして、よろしく御指導を賜りますようお願いを申し上げたいと思います。  それでは、まず最初に、日本電工株式会社の概要かち御説明さしていただきたいと存じます。  当社の創立は昭和の初年にさかのぼるわけでございますが、昭和三十八年の十二月に、いずれもフェロアロイメーカーでございました日本電気治金株式会社と東邦電化株式会社とが合併をいたしまして、日本電工株式会社として発足をいたしたものでございます。さらに昭和四十六年の六月に、やはり同じフェロアロイメーカーでございます極東工業と合併をいたしまして、今日に至っております。営業品目といたしましては、主力のフェロアロイのほかに金属珪素と、今回、問題になりました工業薬品がございます。資本金は三十三億でございます。事業所は全国に五工場と三営業所を有しておりまして、従業員は約千三百名でございます。  次に工業薬品の概要について御説明申し上げます。  当社は北海道夕張郡栗山町におきまして、主として北海道産のクロム鉱石を利用いたしまして、昭和十二年から重クロム酸ソーダ等のクロム塩の製造を開始いたし、自来、内外の需要家各社に安定的に製品を供給いたしてまいった次第でございます。ところが戦後、次第にクロム鉱石を初め原料の大部分を海外に依存することになり、また主たる需要家が関東並びに関西地区に集中いたしております等、立地上の観点から、工場を移転することといたしたわけでございます。昭和四十四年に徳島県阿南市に新工場を建設し、クロム塩類の生産の主力を同工場に移すとともに、昭和四十六年七月に栗山工場の主工程を停止いたしまして、さらに昭和四十八年六月末をもちまして、粟山工場におけるクロム塩類の生産をすべて停止いたしました。したがいまして、昭和四十八年七月以降、当社のクロム塩類は、すべて徳島工場におきまして生産を行っております。  当社が製造いたしておりますクロム塩類は、重クロム酸ソーダを初めといたしまして、これから二次的に製造されます重クロム酸カリ、無水クロム酸、酸化クロム及び塩基性硫酸クロムの諸品種でございます。当社が昭和五十年七月までに生産してまいりました、これら各品種の数量は、旧栗山工場及び徳島工場を合わせまして、重クロム酸ソーダ換算で約二十六、万四千トンでございます。なお、栗山工場は、その後、当社の一〇〇%子会社であります電工興産に移管いたし、現在はポリエチレンの加工事業を行っております。  それでは当社に関係いたします六価クロム問題について御説明を申し上げます。まず今回、問題になりました鉱灘の問題について御説明いたします。  栗山工場におきましては、昭和十二年から昭和四十六年に至る三十五年間に、約二十四万四千トンの鉱津が発生いたしました。この鉱津は同工場の敷地内に埋め立てるとともに、他所からの要望もございまして、これを提供いたし、河川敷の埋め立て等に使用されました。  その後、昭和四十六年ごろから鉱滓に関する問題が提起され、これを処理する方法が、北海道庁及び当社によりまして検討されましたが、硫酸第一鉄による中和還元処理、またアスファルト舗装が適切であるとの見解に立ちまして、当社の敷地につきましては、これを採用し、その措置を実施いたしました。また、他の地域につきましては、昭和四十七年五月、北海道庁、環境庁、札幌通産局、北海道開発局などの諸機関及び地元の粟山町などから構成される栗山地区クロム汚染対策協議会が設置され、同協議会が埋立地の改善に関する諸施策を立案し、ただいま前述の二方法による処理を実施いたしており、また現在も続行いたしております。当社といたしましても、これに御協力をさせていただいておる次第でございます。  徳島工場におきましては、昭和四十四年七月にクロム塩類の生産を開始いたし、現在まで約十八万一千トンの鉱滓が発生いたしております。この鉱滓は、当初、関係法規の指定する海域へ投棄いたしておりましたが、廃棄物の処理及び清掃に関する法律の施行に伴い、昭和四十七年九月をもちまして、海洋投棄を中止いたしました。昭和四十七年十月以降は、鉱滓はすべてロータリーキルンによる還元焙焼処理を行い、無害化いたしました後に、同工場の敷地内に埋立処分を行っております。  次に、職業病等の問題につきまして御説明を申し上げます。  当社栗山工場においてクロム塩類の製造に従事した者の間に、同種の呼吸器系疾患が見られ、これが業務に起因するものではないかとの判断から、栗山町旧赤病院の医師から、北海道大学医学部を通じて北海道労働基準局へ調査の要請があり、同労働基準局は、これを受けて調査いたしました結果、労働省はクロム塩類製造に伴う肺がんを職業病として認定いたしました。当社におきましては、栗山工場従業員のうち、これまでに職業病として認定を受けております肺がん患者は十五名で、そのうち十名の方々が亡くなっておられます。これら十五名の方々は、すでに労災保険法の適用を受けております。  当社は、現在クロム塩類の製造に従事している者及びかって従事していた者につきまして、関係労働基準局の御指導並びに北海道大学及び徳島大学の御協力をいただきまして、定期的に特殊精密検査を実施いたしますなど、早期発見、早期治療に全力を傾注いたしまして、努めている次第でございます。  次に、鼻中隔孔症患者につきましては、昭和二十年以降、栗山工場及び徳島工場におきまして、直接クロム塩類の製造に従事いたしました八百十七名のうち、現在、百二十五名が確認されております。本罹患者につきましては、労働省の御指導並びに関係医療機関の御協力をいただきまして、健康管理には特に留意をいたして処置をいたしておる所存でございます。  以上のような職業病が発生いたしましたことは、まことに遺憾に存じておる次第でございますし、また、亡くなられた方はもとより、御遺族の方に対しましては、衷心より申しわけなく存じておる次第でございます。  従業員の健康管理は、先ほども申し上げましたとおり、きわめて重要なことでございます。当社は、社内における健康管理体制の強化を図るとともに、北海道大学並びに徳島大学に特段の御協力をいただき、患者の治療並びにこの種患者の発生の予防に万全を期する所存でございます。  また、鉱滓並びに六価クロムが、地方住民の健康にいかなる影響を与えるかにつきましては、現在、詳細な検査が北海道及び徳島県御当局の手で行われることとなっておりますので、この結果を待ちたいと存じておる次第でございます。  以上でございます。

渡辺惣蔵日本社会党

○渡辺委員長 ありがとうございました。  次に、長澤参考人にお願いいたします。長澤参考人。

長澤榮一日本化学工業協会専務理事

○長澤参考人 日本化学工業協会専務理事の長澤でございます。  初めに当協会の概要につきまして、簡単に触れさせていただきます。  日本化学工業協会は、わが国化学工業の健全な発展を図ることを目的といたしまして、昭和二十三年四月に設立されました化学工業の事業者団体であります。  現在、会員は、化学製品の製造業者または販売業者である会社が百六十六と化学製品の業種別、たとえばソーダとか無機薬品という業種別の事業者団体が五十四団体加入しておりまして、合計二百二十の会員より成っております。  協会の性格は、いわゆる任意団体でありまして、法人格は持っておりません。また、加入、退会も自由でございますが、化学工業に関連する主要な法人及び団体の多くは当協会に加入いたしております。  当協会の業務の内容といたしましては、化学業界に共通する横断的な諸問題、たとえば財政、金融、税制等の経済問題や労働に関する諸問題あるいは環境、安全、資源・エネルギー等の問題を取り上げ、委員会制度を設けまして調査、勉強をいたしております。現在、委員会は十五ほどございます。  協会を代表する者は会長でございます。現在の会長は住友化学社長の長谷川周重でありますが、本日、たまたま海外出張中でございます。私、専務理事は、会長の指揮を受けて事務局を総括する立場にございます。本日ここに出席されております日本化学工業及び日本電工の両社も当協会の会員でございまして、先ほど来お話しもございましたが、クロム化合物に関する諸問題で、多くの方々に御心配をおかけいたしておりますことは、協会といたしましても大変、申しわけないことであると考えております。  御承知のとおり、化学工業とは、一言で申し上げますと、石炭、石油、塩、鉱石等を原料といたしまして、肥料、医薬品、繊維、グラステックスのように、われわれの生活に必要とされる物を生産いたしております産業であります。  本日、問題となっておりますクロム化合物について申しますと、重クロム酸ソーダ、無水クロム酸、酸化クロム、重クロム酸カリがその主な製品でございまして、これらのものを合計いたしまして、年間三ないし四万トンが生産されております。  大まかに申しましてこのうち約八割程度が内需で、残りが輸出に向けられております。国内における主な需要先は、皮革のなめし、金属のメッキ及び顔料でございまして、これらの三者で内需のほぼ四分の三を占めております。  いずれの分野も私どもの生活に欠くべからざる分野でありますし、またこれらの需要業界は数多い小規模経営の業態でありますので、供給につきましては、御迷惑のかからないよう努力をいたさねばと考えております。とは申しましても、産業安全問題及び環境問題は、これと次元の違う問題でございまして、当業界といたしましても、生産に優先いたしまして、最も重要な事項として鋭意、努力を続けてきたところであります。  今回の事柄は、過去に原因する問題であったわけでありまして、当時の技術的知見や社会環境からして、今日のごとき状況に立ち至ることは予想できなかったことと存じます。しかしながら、今日のごとき状況に立ち至りましたことは、まことに遺憾なことと考えております。  現在、関係会社におきましては、その後、四十六年九月に施行されました廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づく諸規制及び四十七年九月から施行されました労働安全衛生法に基づく特定化学物質等障害予防規則の諸規制を厳重に遵守いたしておりまして、産業廃棄物の面でも、また労働安全の面につきましても、今後かかることのないよう努力をいたしております。  なお、日本化学工業協会といたしましても、近く開催される役員会におきまして有害物質についての産業廃棄物及び労働安全について、万一かかることのないように今後なお十分注意を払うべき旨の申し合わせを行い、会員各社にこの趣旨の徹底を図る所存でございます。  私どもは化学工業を、生活と福祉の向上を目指す産業として、その実現に努力をいたしておりますので、今後とも御指導、御援助を賜りますようお願い申し上げます。

渡辺惣蔵日本社会党

○渡辺委員長 ありがとうございました。  次に、志賀参考人にお願いいたします。志賀参考人。

志賀美喜哉東京都副知事

○志賀参考人 東京都副知事の志賀美喜哉でございます。  東京都におきます。日本化学工業株式会社が投棄したクロム鉱滓に関する経緯及びこれに対する措置、今後の対策につきまして、御説明申し上げたいと思います。  東京都は、昭和四十六年の十月から翌年の九月にかけまして、都営地下鉄十号線の車庫用地及び亀戸、大島、小松川地区市街地再開発事業用地といたしまして、日本化学工業株式会社から、グラウンド跡地、倉庫敷地等約二万七千平米の土地を買収いたしました。  昭和四十八年三月、都交通局が地下鉄工事に着手しようといたしましたところ、鉱滓が投棄されているという情報を得ましたので、早速ボーリング調査を実施いたしました。その結果、最高値二万六〇〇ppmの六価クロムを検出いたしました。  そこで、都といたしましては、とりあえず買収いたしました土地の周囲に防じんへいを設置いたし、粉じんの飛散を防止する措置を講じますと同時に、昭和四十八年五月から十月にかけまして、付近住民の健康診断、環境汚染の実態把握のための総合調査を実施いたしました。  健康調査は、住民百三十一名、江東区立大島第五小学校五年生百三名について、内科、耳鼻科、皮膚科、胸部間接撮影、尿検査を実施いたしましたが、そのときは六価クロムによると思われる特有所見を有する者はないという診断結果を得ております。  また、土壌調査では、グラウンド跡地で六価クロム最高値一万五六〇〇ppmを検出し、地表から地下三ないし四メートルまでの間が全般的に高い数値を示し、地下水調査では、グラウンド跡地が全般的に高く、最高一六六五ppmを検出しました。周辺の井戸、河川水質、大気中の粉じんでは六価クロムは検出されませんでしたが、ただ、付近民家の天井裏から一〇ppmと七ppmの六価クロムが検出されております。  しかしながら、有害な六価クロムにより汚染された土壌をいかに処理処分したらよいかにつきまして、その対策を、学識経験者三名から成る六価クロムによる土壌汚染に関する専門委員会を設置して検討し、汚染土は現地において無害化または完全な封じ込めをすべきであるという結論を得ました。  この結論に基づき、汚染地の周囲は三十一メートルのシートパイルを打設するなどにより他と遮断し、出入庫線構築物の底面を余分に堀り、最下部に遮断層を設け、この部分に汚染土を還元剤を混入して密封し、上部にも遮断層を設け、その上にさらに良質土による覆土層を設けることといたしました。本年五月、地下鉄工事と並行いたしましてこの対策を実施に移しております。  地下鉄工事部分以外につきましても、同じ工法をもって、汚染土を還元密封することといたしております。  また、都の買収地に隣接する日本化学工業株式会社所有地約四千五百平米の汚染土につきましても、同社が都の実施する対策に準じた汚染土の処理処分を、都の指示どおり行うことに同意いたしております。  なお、東京都は、この処理に要する経費総額十三億三千六百万円を同社が負担するよう請求いたしております。  江東区大島九丁目日本化学工業株式会社旧所有地の汚染判明後、間もなく、昭和四十八年五月、同社に立入調査したところ、江戸川区堀江町にクロム鉱滓約八万トンを投棄したこと、しかし具体的な投棄場所は不明であることが判明いたし、引き続き同月、堀江町の一住民から、敷地にクロム鉱滓が投棄されている旨の申し出がありました。東京都では直ちに調査し、江戸川区と共同して、同年六月会社の負担で汚染排出水の中和処理、同住民が設置している排水ポンプの修理、排水溝の改善等の応急措置を実施し、さらに汚染土の入れかえを会社に実施いたさせました。また、昭和四十九年度予算をもって堀江町一帯における投棄場所確認のための調査を実施したいと考えて、土地所有者である土地区画整理組合と折衝してまいりましたが、組合の同意が得られず、心ならずも四十九年度調査は、断念のやむなきに至りました。  本年七月に至り、堀江町の鉱滓投棄について住民の告発がございました。これを契機として、江東区、江戸川区を中心に投棄場所及び汚染地が広がっている疑いが濃厚になりましたので、東京都は、日本化学工業株式会社や運搬業者、さらには地域住民に対する聞き取り調査を積極的に進め、投棄場所及び投棄量の確認に努めてまいりました。  これらの調査から、同社における昭和十四年から、その生産停止をいたしました昭和四十八年十二月までの問の重クロム酸ソーダ生産量は四十三万二千トン、鉱滓発生量は五十七万三千トンと推定いたしております。  しかしながら、鉱滓の処分量及び処分先の究明には困難をきわめ、現在までに、昭和四十年以降については、その処分量は三十二万七千トンであり、同社工場敷地、江東区、江戸川区、都下羽村町、千葉県市川市、浦安町、横浜市緑区と、広範に陸上埋め立てしたほか、海洋投棄等により処分したことが判明しております。しかし、昭和三十九年以前につきましては、処分量、処分先とも、その明細は明らかになっておりません。したがって、東京都では、各方面からの調査に努めてまいりましたが、その結果、現在までに判明いたしました鉱滓投棄場所は、昭和四十年以降を含めて七十五ヵ所となっております。その内訳は、墨田区一ヵ所、江東区四十ヵ所、江戸川区三十四ヵ所となっております。この間におきまして、会社従業員中に鼻中隔せん孔、肺がん等の悲惨な障害を受けている方のあることも判明いたしました。  東京都といたしましては、これらの汚染地域に対して、何よりも住民の不安を解消するための対策を講ずべきでありますので、まず第一に、関係区の協力を得まして、住民の健康調査を行うほか、環境汚染調査、応急措置を行い、そして、できる限り早く恒久的対策を行うことといたしました。  健康調査につきましては、一次検診として、内科、耳鼻科、皮膚科、胸部間接撮影及び尿中クロム量検査を、精密検査として腎臓機能、肝臓機能検査及びエックス線断層撮影を実施することとし、一次検診は、八月二十一日からすでに千三百五十六人について実施しておりますが、引き続き、できる限り広く実施する予定であります。  環境調査につきましては、土壌、粉じん、河川水、底質、水たまり、側溝、井戸水、水道水、水道管、下水道流入水について八月上旬から調査に入っており、九月末までには完了するよう努力いたしております。  また、有害物質の飛散を防止するためには、鉱滓露出場所につきましては、アスファルト乳剤を散布し、拡散された汚染土は還元剤を散布して覆土または盛り土をし、家屋密集地ではコンクリートで舗装し、汚染水等は、集水して還元処理する等の応急措置を日本化学工業株式会社に実施させており、九月末日までには完了する予定でございます。  次に、恒久的な対策につきましては、まず第一に、汚染地区対策として、現在、実施中の大島地区は、これを推進する。その他の各地区については、地区ごとの汚染土壌の具体的処理処分について、学識経験者十名程度による専門委員会を設置して、汚染場所ごとの汚染土壌の範囲、処理処分の方法を決定していただき、都の指導のもとに日本化学工業株式会社に汚染土壌の処理処分を求めるつもりでございます。  第二として、六価クロム鉱滓の成分と、その毒性、浸出水の毒性及びこれらによる環境と人体に及ぼす影響については、いまだ確定的な定説がございませんので、この際、専門学者を中心とするプロジェクトチームを九月中に発足させ、科学的に検討してもらうつもりでございます。  今般の六価クロム問題を契機といたしまして、都としては、積極的に重金属等有害物質使用事業所の産業廃棄物の処理処分の規制指導を強化することといたしましたほか、中間処理施設の設置の推進や埋立処分地の確保に向けて努力したいと考えております。また住民の不安を払拭するためには、重金属による市街地の汚染状況について徹底的に調査いたしたいと思っております。  しかしながら、今般の六価クロム問題は、本質的には、わが国産業経済の構造的なゆがみのあらわれであり、ことに生産から生ずる廃棄物に対しまして、法制的にも実態的にも無関心に放置するに等しい従来のやり方に起因するものと考えております。地方自治体におきまして現場を預かっております私どもといたしましては、かねてから産業廃棄物の処理に関します総合的な体系が確立されるよう要請いたしてまいりましたが、ここにまた改めて強く産業廃棄物対策の整備強化についてお願い申し上げたいと思います。  具体的には、まず第一に、事業者が産業廃棄物の処理処分を第三者に委託した場合であっても、事業者に対して排出者としての最終責任を負わせることとし、その担保として記録管理制度を確立することでございます。  第二に、長期的、広域的な最終処分地の確保に関して、国の責任を明確にするとともに、自治体に対して必要な財政援助を行うことでございます。  第三に、産業廃棄物の処理処分の技術を一日も早く確立するとともに、資源保護の立場からも、再利用技術を開発することでございます。  また、過去多年にわたる廃棄物の投棄は、工場、事業所の密集しております大都市における市街地の土壌をいかほど汚染していたか、特に今回の六価クロム問題も、実は氷山の一角にすぎないのでありまして、このような土壌汚染に対する都民の不安は、はかり知れないものがございます。その対策として、何よりも公害対策基本法に基づく市街地土壌汚染に係る環境基準を速やかに設定するとともに、環境基準が確保されるよう民有地の立入調査権限あるいは原因者責任による原状回復、被害者救済措置等を内容とする法制度を確立されるようにお願いいたしたいと思います。  最後に、労働災害を受けられた労働者及びその遺族の実態を明らかにするとともに、その救済について特段の配慮を加えられるようお願いいたす次第でございます。  以上、東京都におきます六価クロム鉱滓による土壌汚染の実態と、その対策について申し述べましたが、今後とも住民の生命健康を守る立場から、皆様方の格別な御協力また御指導をお願い申し上げまして、私の説明を終わります。

渡辺惣蔵日本社会党

○渡辺委員長 ありがとうございました。  次に、田尻参考人にお願いいたします。田尻参考人。

田尻宗昭東京都公害局規制部長

○田尻参考人 東京都公害局の規制部長、田尻でございます。  まず、第一に、鉱滓投棄の実態について申し上げます。  昭和十四年から三十六年間、五十七万トンという鉱滓の大半を、下請運送会社である共立運保に投棄をさせていたのでありますが、会社では小松川工場の歴代事務長や事務課長が、これの管理に当たっておりました。ところが、会社の中には、この投棄を記録しておる記録はほとんどありません。わずかに十年間の運賃請求書なるものが下請の共立運保から出されておりますけれども、これもほとんど有力な手がかりにはなりません。やむなくこの事件発生以来、会社の調査のほか私どもが聞き込みをいたしましたり、あるいは元従業員等の協力を得まして、そうして、ようやく今日まで江東区や江戸川区を中心とする七十五ヵ所に及ぶ投棄場所が明らかになりました。その場所は大島町、堀江町、工場周辺を主として、学校、住宅団地や民家の敷地にまで及んでおり、まさに捨てほうだいという実態が明らかになっておるのであります。  四十六年からは、ようやく八百万円の還元処理装置を設けたのでありますが、この還元処理装置がわずか八百万円、これをもっと十年前、二十年前に会社が取りつけていたならば、今日のこの深刻な汚染がなかったものと、まことに残念であります。  第二番目に、工場内の実態であります。  クロム原鉱石とソーダ灰、消石灰を混合、いたしまして、ロータリーキルンでこれを焼きまして、その焼いた鉱滓を水で浸出いたします。その浸水工程で液体を抜き取りまして、これに硫酸を加え、濃縮結晶させるものでありますが、工場は北と南に分かれ、三十九年にできた北工場に比べて、南工場の古くからの設備は劣悪をきわめ、特にロータリーキルンで千二百度に焼いた熱鉱滓を、松淵組、共立運保などの下請臨時工がリヤカーで運搬し、浸出工程のバックに投入したときには、もうもうたる水蒸気とガス状のミストが立ち上り、キルンの粉じんとともに、建屋の中はまさに毒ガス工場とも言うべき工場であったのであります。また、そのバックの中に工員が入り、スコップでそのならし作業をやり、また、液を浸出させた後の鉱滓を取り出すため、その中に入り、スコップでリヤカーにほうり上げ、またそれをリヤカーでホッパーに運んでいたのであります。  昭和三十二年に国立公衆衛生院の鈴木武夫氏の調査では、本作業場においては、作業工程の機械配置の無計画さと、機械器具の保全の不完全さが環境汚染を引き起こしたものと考えられる。ほとんどすべての接合部は漏れ、かつ粉砕機等のカバーは、ほとんどその用をなしていない状況で、その補修を簡単にワックスの塗布で済ましているため、粉じん粒子の大きさは非常に微細なものであって、容易に空気中に長時間、浮遊し、作業者が容易に吸入するおそれのある状態にある、また各破損個所には多量の粉じんの堆積を起こし、この部の掃除のために作業者は狭い部分にもぐり込み、多量の粉じんを吸入していた。タンク内の掘り上げ作業は一種の高熱作業であり、半裸体で作業しているため、皮膚は常に汗で汚れ、そこにクロム酸は常に濃く付着したのである。CrO3としての恕限度を〇・一ミリグラム・パー立米とすると、当時の測定値は算術平均でも十・九三ミリグラムパー立米であり、恕限度の百九倍に当たる高い濃度であった、このように報告をされているのであります。  また、南工場が設備改善をしたという昭和三十二年以後でも、労働衛生基準の二十倍の濃度が検出をされております。またバック掘り等の作業は、その後もずっと続いておりまして、勤務も通し番は十六時間にも及んだという申し立てがあります。このため作業員に次々に被害があらわれ、三十二年当時は二百十七名中八十一名、実に三七%、四十二年には本工だけでも六十二名の鼻中隔せん孔が発生しておるのであります。また本年七月、八名の肺がんが確認され、これはその後、次第に大幅にふえていることが明らかになっております。  これは一つの実例であります。畑山文治さんという方が昭和二十五年に入社をされまして、昭和二十七年に鼻中隔せん孔にかかられました。この方は昭和四十八年に亡くなられました。この遺族である奥さんのお話しでありますけれども、うちに帰って鼻の中のあいた穴に詰まった粉じんをつまようじで掘り出して、大きな粉じんを取り出したら、ようやく、ああ、気持ちがいいと言って喜んでいたそうであります。また、両手に食い込んだクロムを取り出すために、軟こうを塗りつけて、ばんそうこうを張るのが、まず第一の仕事であったそうであります。この奥さんとともに、私は亡くなられた病院に参りました。その奥さんがこうおっしゃいました。私はテレビなんかに撮られたくない、会社に申しわけないのだ、こんなことを言いたくなかった、しかし、あのがんじょうな父ちゃんが小さい体になって死んだんだ、そうしてクロム、クロムと言いながら死んだ、父ちゃんがクロムであったということを割り出していただいて、あなたの言ったことは本当だったよということを教えてやれば、どんなにうちの父ちゃんの胸が晴れるだろう、私にはそれだけがただ一つの供養です。こうおっしゃいました。この奥さんとともにお墓をお参りしました。かんビールをかげながら、父ちゃん、きょうは公害のえらい部長さんが来てくれて、あなたは初めてうれしい思いをしたね、こう言ってお墓にお参りをなさったのであります。私は全身に衝撃的な思いを抑えることができなかったのであります。  このような状態にもかかわらず、鼻中隔せん孔は今日まで全く労災認定の申請もされず、認定もされず、わずか二年前から退職金に二十万から三十万の加給金が加えられることとなって、しかも下請の臨時工に至っては退職金も労災もなく、ほとんど打ち捨てられていたという申し出も相次いでいるのであります。  三番目に、鉱滓の有害性と会社の姿勢であります。社長は昭和四十六年以前は、鉱滓の有害性を知らなかった、このように申し立てております。しかしながら、昨日午前中、私どもの手に入りました文書を御紹介いたしたいと思います。これは江戸川区堀江町の東洋火熱という地所に昭和四十三年、日本化学が三万五千トンの鉱滓を投棄いたしました。この鉱滓投棄にあたって、昭和四十一年の春ごろから日本化学工業の田巻という事務課長が再三東洋火熱に足を運びまして、これを何とか投棄させてくれということを申し出たのであります。そのときに東洋火熱の秋山という総務部次長は、どうもいやな感じがした。住宅を建てたいので何か公害問題が起こるのじゃないか。大島町のグラウンド跡地を見ると、黄色い鉱滓が積んである、私はそれを見ていたから、どうも賛成できなかった。そして一年以上引き延ばしていた。ところが、余りにも会社が熱心に言ってくるので、それでは、子供が転んだりして、あの黄色い鉱滓の上でけがをして、鉱滓がはだについたらどうなるのですかと聞いたところが、一メートルぐらい覆土してもらわなければいかぬでしょう、こういう返事だった。それではということで、いろいろな質問状を作成して会社側に渡した。その質問状は、現在から見ると実に微に入り細にわたっておるのであります。たとえば井戸水は大丈夫なのか。当時、水道が引かれておりませんでした、したがって、井戸を掘らなければならないということで、井戸水は飲めるのか、あるいは洗たくはできるのか、あるいは、ああいうさびしい江戸川区の堀江町の海岸べたの土地でございますので、犬や家畜は飼えるのか、池を掘って金魚を飼いたいがどうか、そういうようなことを微細にわたって質問状を提起したのであります。  これに対して、昭和四十二年の七月五日に日本化学工業から正式の回答が参りました。その文書がこれであります。これによりますと、井戸水は発生カスにクロム化合物が一%前後含有されておるため、しばらくの間、これが溶解、浸透により汚染されますので、飲料、洗たく等はできません。それから動物に対する害が起こらないかということに対して、発生カスそのものより、これらの家畜が直接害を受けることはないが、クロムの溶解した薄黄色の水を飲んだり、その水で魚を養うことは害があります。埋立地に隣接する池等において魚が被害を受けた事例はあります。植物については、埋立地そのままでは植物は生育しがたい。新しい土を盛って六十センチ前後覆土した場合には、植物生育に支障はない。こういうようなことを回答しておるのであります。つまり、井戸水は飲めない、洗たくもできない、魚も飼えない、あるいは家畜に対しては害があるのだ、植物も生育しないということをはっきりと答えた文書であります。  その結果、東洋火熱では六十センチの覆土が行われたのであります。ところが、その隣の銭高組の現場では、全く今日に至るも覆土をされていない、むき出しであります。あるいは東亜オイルという会社の付近の投棄場所でも、これ全くむき出しであります。最近、二年前にこの東亜オイル付近で長谷川さんという社長さんが忽然と肺がんでお亡くなりになりました。当時はもうもうたる粉じんで、この付近は非常に風の強いところであったそうであります。現在、日本医科大学でこの解剖所見をまとめておられます。結果は必ずしも予断を許しませんが、そのようなことを考えても、このアンバランスが会社が有害性を知らなかったことに通ずるのか、私は重大なる疑問を感ずるのであります。  二番目に、昭和四十五年五月、徳山市に六価クロム鉱滓を還元処理いたしますということを約束しております。四十五年の十二月から第二工場の横で、六価クロムを還元処理する装置を取りつけておるのであります。四十六年の一月には、千葉の儀兵衛新田で鉱滓の被害苦情が出まして、これに対する土壌覆土を行っておるのであります。四十六年五月には、北工場の隣の建設用地で鉱滓を埋め立ててあるところから黄色い水が出るので、これを北工場に引っ張り込んで還元処理をしているのであります。これはいずれも法規制以前であります。鉱滓から出てくる黄色い水は、工場の技術者も、一〇ppm以上になると着色する、このように申しております。その一〇ppmでも、すでに還境基準の二百倍であります。現在堀江町ではたまり水から一〇〇ppmの水が検出されておる。文献では皮膚障害が起こる、あるいは専門家はこれを犬が飲むと、けいれんを起こすと言っておるのであります。社長は微量と言いますが、大島町の二万ppmという鉱滓の検出を何と考えるのかということを聞いたいのであります。  四番目に対策であります。徹底的な無害化対策を図らなければなりません。九月三十日をめどに、一応、一時抑えのアスファルト、水処理等の応急対策で大わらわであります。拡大専門委員会を設置いたしまして、この根本対策はどうであるのかということを徹底的に討議するつもりでおります。そして、これの恒久的な、根本的な無害化対策に懸命な努力を尽くしたいと思います。しかしながら、単にコンクリートとアスファルトだけが解決でないということを指摘しなければならないと思います。長い公害歴史の中で、後始末を繰り返してきた、対症療法を繰り返してきた公害行政の反省の上に立って、被害者救済ということを忘れてはならないと私は思います。四大公害裁判での原告の血の出るような苦労でも明らかであります。この長い歴史の中で、被害者がどんなに孤独な悲しい苦しみを味わってきたかを、われわれはこの際かみしめて、被害者救済に全力を挙げなければならぬと決意いたしております。  しかしながら、それ以上に忘れてならないことは、会社の責任を明らかにすることであります。責任のないところに、断じて解決はないということを申し上げたいのであります。まずその第一は、この責任を明らかにする最低のモラルは会社の、応急対策、恒久対策ともに、その全額負担であります。そして何よりも、この惨たんたる被害者に対して、企業が深くこうべをたれ、その救済に全力を挙げることであります。  五番目に、行政に対する反省であります。  今日の事件を東京の一画、江戸川区小松川地区における一事件に終わらせては、断じてならないと思うのであります。  第一は、労災という名のもとに職業病という名のもとに、いや、それも今日まで認定されず、濛々たる毒ガスの中で、このような悲惨な犠牲が放置されてきた事実であります。まさに、これは犯罪ではありませんか。どんなに管理ミスがあっても、なぜ企業という名のもとに人を傷つけ、殺してもいいのか、工場は無法地帯なのか。労務管理のずさんさは、早くから国立公衆衛生院の報告でも明らかにされているのであります。そのことが、いま全国で問い直されるべきだと私は思います。全国でこれだけの、どんな悲劇が放置されているのか、恐ろしいことであります。このようなことを根本的に解決しない限り、この国の法と行政は決して近代国日本の名に値しないと思うのであります。まず、労働行政が何ゆえに鼻中隔せん孔を今日まで認定しなかったか。これだけの危険が、まず工場の中できちんと解決されていたら、それが工場の外へこれだけ広がることもなかったのではないかということはまさに痛恨の思いであります。  第二は、産業廃棄物の法と行政であります。  水と大気に比べても、どんなにそれが決定的な立ちおくれを行ったか、目を覆うものがあります。法ができてからも、そのざる法は致命的でありました。もう処理法などというものから、せめて水や大気のような、名実ともに規制法というものに体系を改めるべきであります。原状回復の規定をきちっと定めるべきであります。運搬業者に依頼した途端に工場の責任がなくなる、そういうようなことを基本的に改めるべきであります。  まず、企業内の徹底的な処理を基本的に義務づけるべきであると考えます。そうして国や自治体の行政が、この技術開発、研究に積極的に乗り出すべきであります。現在、その処理技術はほとんどメーカーの手に握られているのであります。このようなていたらくでは、行政がその指導権を持って、産業廃棄物に乗り出すことは、とうてい不可能と思うからであります。たとえば外洋に出て大型船で焼却する、そうして焼却した後のかすはコンクリート固型化して、そして、その船が帰港したときには、もうコンクリート建材になっている、こういうような発想の大転換も必要ではありませんか。廃棄物Gメンをつくるべきであります。監督体制の整備、確立を図るべきであります。こういうことは従来の行政の発想から、はるかに超える転換を必要とするものではないかと思います。  第三は、土壌汚染であります。土壌汚染に対する基本的な体制を、取り組みを、そうして技術開発を、そうして環境基準を、被害者救済を定めるべきであります。  第四は、自治体行政における体質の転換と、そうして体制の強化であります。  今日、大鹿町におきましては、都有地であったために、公表もあるいは対策も速やかに行われた。しかしながら、江戸川区堀江町につきましては、それが民有地であったために、区画整理組合の地主さんから、荒涼たる五十万坪の土地を所有する地主さんから、調査させない、私たちの開発の目玉だ、地価が下がるのだと、どうしても調査の協力をしてもらえなかった。そういう事情はあるにせよ、事情は事情としてあるにせよ、しかしながら公開の原則に反して公表をおくらした、公表がおくれたということは、まさに痛恨の事実でありまして、重大な反省を迫られるものであります。東京都としては二度とこういうことを繰り返してはならない、こういうような公開の原則を厳重に守るべきだ、こういう立場から、この教訓と反省をしっかりかみしめて、現場でどろんこになって、この対策に取り組むことしか、その姿勢はないということを決意いたしております。  しかしながら、公害行政では、自治体行政では数々の隘路と矛盾がございます。まず公害行政を他の行政から切り離した独立組織にすることであります。そうして公害Gメンに司法権を与えるべきであります。名実ともに厳しい取り締まりを行える体制を整備すべきであります。  最後に、この事件の意味するものは何であるかということについて、一言だけ申し上げておきたいと思います。  足尾銅山以来、百年を経過した、この近代国、日本の中で、このような工場が、人体実験に近い毒ガス工場が、この東京のど真ん中に存在したということを、私たちは衝撃的な驚きとともに、深く痛恨を感じたいと思います。この近代国の近代化とは何であったのか、足尾銅山以来、百年の歴史とは何であったのかを、私たちは重大な反省とともに考えなければならないと思うのであります。なりふり構わぬたれ流しを許してきたわれわれの世代が、何十年もじっと耐えてきた、この被害者の悲しみと痛みを全身に感ずることによって、この事件を痛恨の思いとともに、今世紀、反公害の前途を決する踏み絵として、反公害の現場の闘いに生かしていきたいと心から念願しております。

渡辺惣蔵日本社会党

○渡辺委員長 ありがとうございました。  次に、則武参考人にお願いいたします。則武参考人。

則武基雄北海道夕張郡栗山町長

○則武参考人 北海道の栗山町の町長の則武でございます。  今回の六価クロム問題につきまして、参考人として参ったわけでございますが、先ほど社長のお話しもございましたように、本町に昭和十一年に、日本治金株式会社といたしまして進出をいたしたわけでございます。四十六年までクロムの仕事がなされておったわけでございます。御承知のように、昭和四十五年からですか、排水基準というものができまして、四十六年に、この工場並びに町の調査が行われたわけでございます。この工場から排出されました残滓が約二十四万四千トンと言われております。しかし、現実に栗山町に廃棄されておりますものは、想定でございますけれども、二十二万トン廃棄されているのではないか。主として旧河川の埋立地、さらには一般の中にも、現在調査の段階でございますけれども、投げられた場所が六十ヵ所程度あるというふうに考えております。個人で相当持っていっておりますので、個人がなかなか自分の関係から言わないというような部分もあるわけでございますが、いま申し上げましたような個所に大体、投げられておるということで、四十六年に河川の汚染の問題から端を発しまして、調査をいたした結果、相当数の六価クロムの基準以上のものが出てまいったという中で、北海道庁が主体になりまして、生活環境部長が栗山六価クロム対策協議会の主体を握りまして、環境庁さらには開発局、通産局、それから道の各研究機関、さらには土木を初めといたしました今後の対策をどうするかというような、あらゆる機関を網羅いたしまして、その中には当然、町も入っているわけでございますが、そういうことで、この協議会を主体といたしまして対策を研究いたしたわけでございます。  私も、こういうことにつきましては知識がなく、いまさら反省をいたしておるわけでございますけれども、住民自体も、このクロムに対する恐ろしさといいますか、そういうものが全然わからなかったというようなことから、それぞれ草が生えなくていいとか、蚊がわかなくていいとかというようなことで、埋め立てに使われたというのが現状でございます。  そういう中で、先ほど申し上げましたような四十六年から、クロムというもののこわさといいますか、そういう中で、この対策につきましては、いろいろ研究をしていただいているわけでございます。研究の主体は北海道の衛生研究所さらには工業試験場というふうなところでやったわけでございますけれども、なかなか、その決め手というものがございません。恐らく、どこまで土壌が汚染されているかというようなことも、はっきりなかなかつかみ得ないというような中で、当面それではどうするかということで、研究の結果、硫酸第一鉄の還元層をつくって、その上に約三、四十センチの覆土をしたらいいのじゃないか。私の町の小学校にも、これが投げられているわけでございますが、そういうことで、この還元層をつくりまして、昨年ようやくその結論を得まして、現在やったわけでございます。  これには昨年から今日まで、それぞれそのグラウンドの調査をいたしておりますけれども、上には六価クロムは出てまいってきておりません。しかし、先ほど申し上げましたように、非常に多くの個所に投げられておるというようなことから、この貧弱な、人口一万八千程度の、財政規模にいたしましても税金が三億五、六千万しか入らないような町で、なかなかこの対策はできない。何とか、企業を初めといたしまして、国なり道なり、さらには各関係者の中で財源措置というものも考えてもらいたい。  私の町では、何といっても、緊急対策と恒久対策とを考えてまいりましても、当面、住民の不安をいかにして排除するかということがやはり一番大事なことでございます。恒久ということを第二にいたしまして、緊急対策というものを当面、何とか考えていきたいということでございます。  そういう中で四十七年には住民の、抽出でございますけれども、アンケート調査、さらには死亡統計によりますところの肺がんの死亡率が、本町はどのように高いか。それから国保関係で、特に肺がん等についてのデータがどのようになっているかというような調査をいたしたわけでございますが、これにつきましては、先ほど社長が申されましたように、日本電工の工員を除きましては、そう他町村に比べて高い比率は出ておりません。しかし、本町におきましても、従業員で肺がんで死亡された者が九名、現在、入院加療中の者が三名いるわけでございます。そういう中で、これらの調査につきましても地下水の調査もいたしております。さらには農作物に被害がどのようになっているかという農作物の調査もいたしておりますし、いま申し上げましたような住民のアンケート的なものではございますけれども、やっております。さらには大気汚染の調査もやってまいってきております。いままでのこれらの結果につきましては、工場内以外のものにつきましては、特別なものは、いまのところは出ておりませんけれども、先ほども申し上げましたような住民不安を解消する上におきましては、何としても緊急対策をやらなければならぬということで、今年、一万八千人の人口のうち六歳未満の子供は、これは希望ということでございますけれども、それ以外の者につきましては間接撮影でございますけれども、撮影調査を現在やっておるわけでございます。これは道と町とが両方、主体になってやっているわけでございます。  そういう中で、何と申しましても、四十七年にこの問題が提起されましてから、私も数次にわたりまして環境庁にも陳情に参ってきております。会社にもいろいろ対策というものもお願いいたしております。そういう中で現在、本年も事業を進めるわけでございますが、非常にわずかな財源の中ではございますけれども、道から三分の一の助成をいただき、さらには町が三分の二ということでございましたけれども、とうてい負担はできないというようなことから、会社に申し入れをいたしまして、会社から三分の一の助成を出していただきまして、その三分の一ずつで現在まで仕事を進めてまいってきているわけでございます。  実は、この問題が今回、大きく新聞その他に出たわけでございますけれども、いまさら何事だというふうに私は感じているわけでございます。四十七年に私は数次にわたりまして国にも申し上げておりますし、いろいろな立場の人にも申し上げているわけでございます。たまたま東京都におきまして一人の肺がんの人が亡くなったということで大きく取り上げられたが、私の町で九人も死んだときはどうであったのか。田舎町の国民は九人も死んでいいのかというようなことに対しまして、私は国に対しましても、またあらゆる社会に対しまして非常に不満を持っているわけでございます。  そういう中で、何と申しましても、緊急対策を一日も早く、それぞれの専門機関で考えていただかなければ、このような私らの町に決して研究機関もあるわけではございません。公害担当係も一人か二人しかおりません。そういう貧弱な町の中で、これを根本的にやるということは、とうてい不可能だと思うわけでございます。そういう面から、国におきましても、さらにはそれぞれの関係研究機関におきましても、一日も早く恒久と緊急とを分けて対策を立てていただきたいということを、きょう、この機会に特にお願いを申し上げるわけでございます。  さらには財源的な問題もあるわけでございます。もちろん企業の責任もございましょうが、いままでの公害対策を見ましても、企業責任といって、十年も十五年も裁判をやって決定されるようなことでは、その間ほっといていいのかということでございます。決してそれでは解決できるものではない。その間は立てかえであろうが何であろうが、とにかくやってもらいたい、やるべきだ、私はこのように考えているわけでございます。  どうか、そういう面を十分、御理解いただきまして、当委員会におきましても結論を出していただきたい。特にお願いを申し上げまして、私の参考人としての申し述べをさせていただきます。

渡辺惣蔵日本社会党

○渡辺委員長 ありがとうございました。  以上で、午前中の参考人からの意見聴取は終わりました。     —————————————

渡辺惣蔵日本社会党

○渡辺委員長 引き続き参考人に対する質疑を行います。  なお、本日の質疑時間につきましては、理事会での申し合わせに御協力をお願いいたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林義郎君。

林義郎自由民主党

○林(義)委員 参考人各位には、お忙しいところ御出席をいただきまして、ありがとうございました。当委員会では、きょう参考人の方々の御意見を聞き、明日は政府に対し質疑をするということになっております。また、たくさん聞きたいことがありますが、時間の都合もありますから、全部を聞くわけにいかない。そこで、私は若干の問題につきまして、事実関係を中心にしてお話しを聞きたいと思います。判断の問題とか政策の問題は、きょうはやる時間がありませんから、次の機会に譲らせていただきたいと思います。  まず第一に、日本化学工業の社長、棚橋さんにお尋ねしますが、新聞を拝見いたしますと、八月十四日の記者会見では、「住民に被害は出ていない。したがって、鉱さいは無害であると考えている」こういう記事が出ております。続きまして、八月二十六日の東京都の公害首都整備委員会では、「「現時点では、六価クロム鉱さいは人体には危害を与えると痛感している」と沈痛な表情で語った」という記事が出ておるわけであります。一見いたしますと、非常に違った発言をしておられる。新聞を読みまして、私はどちらも違うのだと思うのです。少なくとも表現が適切でない、こう思います。もしも正確に言うならば、六価クロムは毒性が強い、こう言うべきだと思いますし、飲料水基準は現在は〇・〇五ppm以下、環境基準は〇・〇五ppm以下と定められておる。汚泥、鉱滓については一・五ミリグラム・パーリットルと定められているから、一応その範囲であるならば安全であるし、それを超えていたならば問題だろう、こういうのがたてまえだ、こういうことであるし、もう一つ言うならば、六価クロムにつきましては毒性が強いですが、三価クロムについては毒性が低いということではないかというふうに思うのです。どうも基本的な問題の認識において、何か一滴でも一かけでもあったら大変だというものではないし、多量に存在して、かつ長期的に影響を及ぼすところに、私は、この公害問題の本質があるだろうと思いますが、この辺につきまして棚橋さんは一体どういうふうにお考えをしておられるのか、まずお尋ねいたします。

棚橋幹一日本化学工業株式会社社長

○棚橋参考人 お答えいたします。  鉱滓の中の六価クロムにつきましては、昭和四十六年の九月から、陸上投棄の場合には一・五ppm以下という基準が定められたわけでございます。それ以前は、そういう規制がなかったわけなんです。しかし、それにしても大量に投棄した場合に、結局それが風雨にさらされて一部、水に流されて出た場合、あるいは表面に鉱滓が出ている場合には、それを直接飲むとか、あるいははだにさわるとかいうことになれば、ある程度の障害はあるのじゃないか。そこで現在、そういった個所については、できるだけ緊急処置によって、そういう表面にあらわれないような処置をとってきたということでございます。しかし、われわれといたしましては、工場の中あるいは外における、そういう鉱、津を埋めた地区における健康被害がなかったという長い間の経験から、一応そんなに有害なものじゃないのではないかというふうな考えでやってきている。また、埋め立てにおきましては、そういう地域の住民の要望もありまして、そういう要望にこたえて埋め立てに利用をしてきたというのが実情でございます。

林義郎自由民主党

○林(義)委員 私がお尋ねしたいのは、鉱滓は無害であるとか、それから鉱津は人体に危害を与えるとかいう表現は正確でないと思うのです。六価クロムが毒性が強いということだろうと思いますし、そういったことから、六価クロムについての基準が定められておるということを、正確におっしゃる必要があるのじゃないか。何か無害だと言うから、おかしいじゃないか、こういうふうな話になりますし、危害があると言うから、汚染されていれば、どこもかしこも、みんな大変だ、こういうことになりますけれども、環境問題というのは私はそういう問題ではないと思うのです。  そこで、こういった問題は、また、あした議論いたしますので、栗山町長の則武さんにお尋ねしますが、産業廃棄物処理の法律ができるまでは、クロム鉱滓は一般に人畜に無害である、これをまくと雑草が生えないという取り扱いがされておったという記事が、八月十九日の毎日新聞に出ています。それから「東札幌は〃クロム駅〃「除草に効く」と60トン埋立て」をしたという見出しも出ておる。それから建設省も、小名木川出張所で三十八年から四十一年の間に六千六百立米の鉱滓を埋め立てに使ったということである。これは同じころの読売、毎日に出ています。クロム鉱滓は、湿地帯では土地がよく締まるということで使われておったということが方々に言われておるのです。また週刊朝日によると、北海道栗山町は人口二万人足らずで二十四万トンの鉱滓がばらまかれ、町民はトラック一台三百円の運賃を工場に支払い、順番まで待ってクロム鉱滓をもらい受けていたという事実がある。こうしたことからしますと、鉱滓を埋め立てなどに使うには、埋め立て目的だけから考える。埋め立てということだけ考えまして、あと健康の問題は考えない。そうすると、土地が締まるということで非常にいいのだ。そうしたことから、私は四十六年の法律ができる以前は、これは使われたのは明治何年からクロム鉱を工場では使っておられたのでしょうから、会社ができてからクロム鉱の鉱滓というのは、そういうふうな使われ方をしてきたのが事実である、これが現実ではないか、こう思いますけれども、その辺はどうなんでしょう。

則武基雄北海道夕張郡栗山町長

○則武参考人 先ほども申し上げましたように、町を初めといたしまして、クロム鉱滓に対する無知といいますか、そういう関係から、非常にクロム鉱津が締まる、しかも草が生えない、さらに工場から出る温水があったわけでございます。冬季間この温水が流れることによって、住民は、北海道は特に雪の多いところでございますので、雪を解かすのに便利がいいというようなことで、自分たちの方へ排水を回してくれないかというような非常な無知、いま考えますと、私らを初めといたしまして非常な無知であったわけでございますけれども、そういう中で四十六年まで実際に投げられておったということで、規制がされて初めて目が覚めたといいますか、そういうような状態にあるわけでございます。

林義郎自由民主党

○林(義)委員 要するに、当時の認識としては大体それが事実であった、余り知らなかった、こういうことでありますね。  また別の、これは週刊新潮だと思いますが、太田薫合化労連委員長も、クロムで鼻に穴があくということは知っておりましたよ、こう言って、労組側からも知っていながら告発しなかったということはあったのではないか、こう思うのです。また、ほかのものには、鼻があかないぐらいでは一人前でないなどというような記事が出ております。  長澤さん、化学工業の方をやっておられますから伺いますけれども、化学工業というのはいろいろな有毒のものが出たり何かしますよね。だから、その辺で、太田さんの意見をそのまま、私はいいとか悪いとかという判断をするわけじゃないのですけれども、戦前、戦後の時代においては、やはりいろいろなそういった問題が、私はあったのではないかと思いますが、いかがなんでしょう。その辺は、その当時から、やはり鼻があいたら大変だとかなんとかいうような意識があったのか、そうでなかったのか。その当時の意識ですよ、いまは違いますよ。その当時としては、そういう意識があったのではないか。その辺はどうなんでしょう。

長澤榮一日本化学工業協会専務理事

○長澤参考人 化学工業は、先ほど来お話しが出ておりましたとおり、いろいろな諸原料から、われわれの生活に役立つものをつくるわけでございますが、当然その間には有害物質の取り扱いというものも工程にございました。それで、恐らく戦前であるとか、あるいは戦後の初期等におきましては、当時の技術水準であるとか、あるいは技術的な知見であるとか、あるいは社会環境であるとかいうような面から見ますと、恐らく、ただいま林先生がお話しになりましたようなところで、いまから考えますとそのようなことがあったのではないかと思います。

林義郎自由民主党

○林(義)委員 まあ、低賃金でやらなければならない。おとといでしたか、テレビを見ておりますと、日本テレビではなかったかと思いますが、一方が一円ぐらいもらうところを、そこのクロム工場に行って働くと一円七十五銭もらえるのだ、だから少々のことはがまんしても、こういうふうな話が、そこを退職された方々の意見として出ておりました。私は、そういったような時代では、これをその当時において告発をしたり、表にするということがなかなかできなかったのも、一つの事実だろうと思うのです。こういった問題がたくさんあったということだと思いますけれども。  そこで、都の副知事にお尋ねいたしますが、廃棄物処理法ができまして、いろいろな工場の産業廃棄物の問題が四十六年以来やかましく規制されてきたわけであります。そうしたときに、私は四十六年から法律施行後、今回の事件がありましてから、これは大変な騒ぎになりましたが、事件になる前、五十年の三月、ことしの三月までとりまして、クロム製造工場及びこれを使うところの工場がたくさんあります。一つは革なめし工場である。もう一つはクロムメッキ工場であります。こういったものにつきまして、一体どの程度の立入検査をされたり、あるいはどの程度の調査をされたり、またどれだけ告発をされたことがあるか、四十六年からことしの三月まで、その辺どのくらいあるのか、もし、いま資料がありましたら、お答えをいただきたいと思います。  特に、私が申し上げたいのは、産業廃棄物という観点でとらえるならば、クロムの鉱滓も、もちろん問題でありますが、同時にメッキ工場のスラッジは、これは大変な問題であると指摘せざるを得ないのであります。ところが、メッキ工場などというのは中小企業である、なかなか立ち入りもできない。また、革なめしなどということになりましたならば、これも別な社会的要因もあって、なかなか容易でないということが私は言えると思う。この辺につきまして、東京都はどの程度いままで監督をやってこられたか、また告発をされたような件数が何件ぐらいあるのか、この辺をお答えいただきたいと思います。

志賀美喜哉東京都副知事

○志賀参考人 お答えします。  産業廃棄物の処理につきまして、法律上のたてまえは、事業者に対して資料の提出あるいはまた、こちらからの案件の要求に対しての答えを求めることができるのであって、直接に法律に基づいた立入調査の権限はございません。ただ、現実のいまのお話しのようないろいろな種類につきましては、特に有害鉱物が出るものについて大体、三年に一遍、これはそれぞれ事情を聴取し、指導するというような態度でございます。  それから、先ほどのスラッジの問題につきましては、東京都では、やはり中小零細企業の方がお集まりになって共同処理場を設けられる、城南につくってありますが、そういうようなことで処理されておりますが、いま御指摘のように、決して満足な処置ではございません。この点につきまして、やはり先ほどもお願い申し上げたように、実際、定期にこれが調査できるよう、あるいはまた立入調査ができるように、この際、委員の皆さん方に特にお願いしておきたいと思いますのは、実は生産工程についての調査は何にもできなくなっています。こういう点についての調査並びに指導、それからさらに報告義務、これは任意形式じゃなくてというようなことを、ぜひお願いしたいと思います。現在の範囲内では、私どもとしては巡回指導をして、むしろ助長行政のようなやり方しかできなかったというようなことであります。

林義郎自由民主党

○林(義)委員 もう一つお尋ねしますが、先ほど田尻さんからお話しがありました、四十六年から四十七年に東京都交通局で地下鉄十号線のために土地を買われた、ところが東洋火熱さんは、大体、同じころに日本化学工業の方から、鉱滓を捨てるから土地を貸してくれないかという話があって、いろいろ調べたというような話がありましたね。東洋火熱さんの方では、自分の持っている社有地に、日本化工から話があって、鉱滓を捨てさせてくれないか、そのときに、いろいろな点について、草が生えないことになるのではないかとか、井戸水がどうであるとか云々ということを調べた、こういうふうな話がありました。東京都の方では、交通局ですか、日本化学工業との間で売買契約をして、土地の譲り受けをやったわけでありますけれども、そのときには、そういうふうなお問い合わせはされなかったのでありますか。単に普通の土地だからいいだろう、こういうことでお買い求めになったのでありますか。事実関係でありますから、そうであったかどうであったか、お答えいただければ結構であります。

志賀美喜哉東京都副知事

○志賀参考人 常態として、一流の会社と契約する場合に、その土地についての土質調査をするのは、従来の社会慣行からいってもございませんでした。したがって当時はいたしておりません。ただし、いまはやっております。  それから、ちょっと委員長、先ほどの御質問は廃棄物処理法に関しての御質問でしたので、お答えしたのですが、ちょっと失礼しまして、水質その他についての事業所の監査はいたしておりまして、改善命令その他については、すでに百件近いのがございますけれども、これは御質問がなかったのでお答えいたしませんでしたが、ちょっと補足させていただきます。

林義郎自由民主党

○林(義)委員 いや、私は水質のつもりで申し上げたのです。要するに水質汚濁防止法の関係で、やはり告発をされた件数は何件かありますか。

志賀美喜哉東京都副知事

○志賀参考人 そちらの方では四件でございます。

林義郎自由民主党

○林(義)委員 そこで、当時は慣習としてなかった、こういうお話しであります。いまになっては当然に参らなければならない、こういうことだと思いますが、現在やはり十号線の地下鉄工事というのはやっておられるのであろう、こう思うのですね。私は、先ほどの意識、四十六年以前の一般の意識は、こんな物を捨てたところで大したことない、そう問題ないと、よっぽど東洋火熱さんのように特別の人は気がついて、やっておられたかもしれないけれども、当時は慣習がなかったと副知事もおっしゃるし、まあ一般の人もなかった。そうしますと、どこそこへ捨てたなどということは、なかなかはっきりわからないだろうと思うのです。土地の締まりぐあいがいいからというので、どろを持ってきた業者が、あそこへちょっと埋めておいたらよろしいぞというような形で、あそこに埋めるというのを、こちらに持っていったり何かするということも、よくあったのだろうと思うのです。そうした意味で、現在、地下鉄工事が行われておりますが、その工事中のどろを現在、十五号埋め立てに捨てておられると思いますが、そのどろの処分というものについては、チェックはどうしておられるのか。その辺はチェックを、地下鉄工事をやっておられないならいいのですけれども、もしも、やっておるのだったら、そのどろについていろいろ検査をしておられると思いますが、田尻さんの方がお詳しいなら、田尻さんからでも結構ですよ、田尻さんからお答えをいただきたい。

田尻宗昭東京都公害局規制部長

○田尻参考人 お答えいたします。  地下鉄工事の現在、行われておりますところは、もと日本化学のグラウンド跡地でございました。これを首都整備局と交通局が両方で買ったわけであります。そして、地下鉄工事が先行いたしておりますその部分につきましては、まず応急対策といたしまして、アスファルトで覆いまして、そして出てくる水は水処理装置をつくりまして、そこで還元処理をしておるわけであります。しかし、この地下鉄工事で掘り上げますと、先ほども説明がありましたが、四メートルぐらい汚染土が埋まっております。したがいまして、それを掘り上げて、そして地上で硫酸第一鉄で還元処理をいたします。そして、還元処理をいたしました後、シートパイルをずっと汚染土の周辺に十メートル打ち込みます。これは地下水の汚染を防ぐためであります。そして、地上で還元処理をした土を、今度は上と下に一メートルずつ、きれいな土でサンドイッチ状に封じ込めるということで、横はシートパイル、上と下はきれいな土、そして真ん中に還元処理をした汚染土を封じ込める、こういうような方式をとるべく現在、作業を進行中であります。これは専門委員会から答申をされた方法で、現在、処理をいたしております。

林義郎自由民主党

○林(義)委員 地下鉄工事でどろが出るのでしょう。そのどろはどこへ捨てられたのですか。

田尻宗昭東京都公害局規制部長

○田尻参考人 お答えいたします。  現在は、まだ掘り上げた土を地上で、そういうぐあいに還元処理をしている最中でございます。

林義郎自由民主党

○林(義)委員 そうしますと、そこからどろはどこにも捨てておられない、こういうことでございます。

田尻宗昭東京都公害局規制部長

○田尻参考人 現在はほとんど捨てられておりません。

林義郎自由民主党

○林(義)委員 私がお尋ねしたいのは、いままで十号線の工事をやってきた中で、どろを一切どこにも捨てておられないということですかということです。

志賀美喜哉東京都副知事

○志賀参考人 ただいまのところ、工事現場については先ほど田尻参考人の申しましたように処置しております。そのほかに、さらに土壌汚染のないものについては、これは新聞紙上のお話しだと思いますが、これは十五号に埋めてあるものもございます。

林義郎自由民主党

○林(義)委員 私は、その十五号に埋めてある土は、十分な検査をして埋めておられたのではないかと思うのです。その当時、検査をしておられたというのなら、私はその検査の内容を出してもらいたいと思うのです。きょうでなくても結構ですから、出してもらいたい。そこは、やはり私も新聞しかデータがありませんから言いませんけれども、四十八年に地下鉄工事の下請会社に土壌汚染を教えてもらい初めて事実を知ったのである、公害防止を唱える都が、そんな高い買い物をしたと物笑いになったものだ、直ちに都の公害局以下が集まって抜本的対策を検討したという。そこで、四十八年の三月にわかって、私の手元にある資料によりますと、四十九年の十二月には「江東区大島九丁目地区における六価クロムによる土壌汚染対策について」というものを発表しておられますね。先ほどのお話しで、三人くらい学者も集めて、始めてから対策まで一年半くらいかかるわけであります。大変な問題になってきておる、いまのことから考えると、一年半もかかって対策要綱をつくられるというのも余りにも悠長なのではないか、四十八年の三月にわかったのならば、少なくともその年の六月か七月くらいには対策要綱というのは出てしかるべきではなかったかと思うのです。新聞なんかによりますと、いろいろなことを書いてありますよ、私はそんなことまで申し上げませんが、そこで、そこはなぜおくれたかというのが第一点。  それから第二点目は、その対策を見ますと、「公害の発生防止措置は、当該汚染源等の所有者、管理者又は占有者の責任において遂行することを原則とする。」こう書いてあるのです。ありますね。ところが、先ほど来の話では、これは会社に負担させるのだ、こういうふうな話ですけれども、四十九年の十二月のこの発表、それから、いっそういうふうな方針が変わって、あるいは方針に付加されたのかということであります。副知事からお答えいただきたいと思います。

志賀美喜哉東京都副知事

○志賀参考人 二点の質問でございます。  まず、時間がかかったがという点、これは先ほど栗山の町長も言っておられましたけれども、はっきり申し上げて、専門家でない者が、これが一体どれだけ被害があるかわかるわけはないと思うのです。そういう中で、この問題については実は工事の請負人から、あるということが出たわけです。そこで、それを処理したら、実際あった。被害が非常にあるのじゃないかというので、緊急に周りをやった。あわせて、一体どう処理したらいいのか、これについて専門家にお願いした。当時は、まさかこんなにあっちこっちにやっているとは思いませんし、これは東京都の一つの事業の中でございますから、したがって都としてこれを検討する。さらに処置をし、場合によっては求償するというような気持ちでやった。ですから非常に慎重にやりました。しかし現実にはそうでない。しかも最近になって労災関係のこれだけ大きな事業をやるとすれば、これはもっともっと大きく打ち上げて、いろいろ皆さん方の意見を聞くわけでしたが、当時としてはそういうようなことはない。専門家でない者でやるためには、どうしてもこうせざるを得ない。しかもこれは、こういうふうな調査をいたしましたのは本当に日本で初めてだと思います。  次に、占有者の問題ですが、これはちょうど堀江町の問題でありましたので、そのまま、いまの林委員のお答えになると思うのですが、まず、その六価クロムの問題で処置してくれということに対して、まず住民の方でやっていただきたいということを、おととしの例でございますが、言いました。あと、補償の問題はまた別にやる。たまたま大島の町でも、町の回答、そういうふうにしていますからと言いました。したがって、この問題について、まずとりあえず、ともかくそこでやれるものはやるべきではないか。しかも、現実の因果関係というのは、実はそのときにわからなかった。しかもまた、そういうような大きな災害が本当に起きているということがわからなかった事態から出たために、いまのような処置をとった。したがって、方向としては、そのときにも原因者に対する求償ということは申しております。ただ、いまの処置の仕方として、まず持ったのがやれ、こういうふうな言い方で言ったわけでございます。

林義郎自由民主党

○林(義)委員 わかりました。所有者なり管理者または占有者の責任が第一である。それに対しては、民有地がありますから、民有地に対しては求償する、こういうことだと思いますね。東京都でいろいろな仕事をおやりになって、そこでやる、あるいは、もしも民有地を持っておられたら、民有地の人がやりなさい、その土地所有者がおやりなさい、それから求償権を行使します。こういうふうな考え方ですか。

志賀美喜哉東京都副知事

○志賀参考人 お言葉に、そのままお答えするのが筋かもしれませんが、ちょっと違うと思いますので、御質問についてお答えしておきたいと思うのですが、当時の問題としては、どこで、だれがという原因がわかっておらぬわけです。たまたま、その大島ではわかっておりますけれども。そういう意味で、まずということを申し上げたのですが、はっきりした原因のある以上は、やはりそのままストレートに原因者に持っていくのが正しいのではないか。  なお、田尻参考人から補足させたいと思います。

林義郎自由民主党

○林(義)委員 いいです。それは要りません。  ところで、予算上は都地下鉄の鉱滓のための処理費六億六千万円を見込んでいるという記事があります。そうすると、その加害者にというか工場の方にやらせるのではなくて、東京がやることで予算を組んでおられるわけでしょう。六億六千万円の鉱滓のための処理費というのを組んでいるということがあります。それで都でやって、それについての求償をする、私はそれが筋だろうと思うのですね。会社にやれというのよりは、東京都でやって、あとは債権債務関係になりますから、民法の瑕疵担保責任を使ってやるかどうか、こういうことで、これは求償権の問題である、こう思うのです。そうでなかったならば六億六千万円の処理費を立てること自体がおかしいと思うのです。もしも逆に会社に対して求償するということでしたら、六億六千万円は、東京都の予算、私も詳しくありませんが、収入予算に組んであると思うのです。収入予算にはどういうふうに組んであるのか、これは後で資料で結構でございますから、御提出をいただきたいと思います。

志賀美喜哉東京都副知事

○志賀参考人 先ほど申しましたように、まず大島の問題と、それから今度、起きました各地区の問題とは、区別してお願いしたいと思うのです。  大島の問題は、先ほど申しましたように、東京都という主体ではございますが、あくまで民事的な問題で始まった問題でございます。しかも地下鉄の工事は急速にしなければならない。さらに、先ほど申しましたように、これは一体どうあるべきなのかというのを専門委員会にお願いしてあるという事態の中でございますから、これは当然ここで進めて求償する。ことしの三月二十七日に実は口頭で申し上げまして、会社に求償したのは初めてでございます。しかし、あとの分は全部、すべて出ております。しかも、これは行政的な問題であろうと思います。特にこの場合にお願いしたいことは、都として言えることは、環境汚染を防止していただくのは、これは会社のコストであるべきであって、したがって、その土地の補償の問題とは本来、違うべきである。たまたま一緒になったために、よく一緒になりますけれども、考えを違えていただきたい、こう思っております。

林義郎自由民主党

○林(義)委員 最後にもう一つ。板橋区の新河津処理場に野積みしてあった焼却灰は六千トン。この六価クロムの溶出試験は三・〇六ppmで、基準の一・五ppmの二倍あるという記事が八月二十九日に出ております。この焼却灰を六号埋め立てに使う、こういうことで江東区の方から問題が出て、志賀副知事のところへ行ったけれども、連絡せずに焼却灰を持ち込んだりしたのはまずかったと繰り返すだけであって、菅沼、三木局長は、これは一般廃棄物と同じように処理をする、こういうふうなことですが、これは一般廃棄物と同じように処理されてしまったら困るのじゃないかと思うのです。基準以上のものですから、当然に有害物質としての処理をされなければならない。恐らく私は、新河岸処理場は板橋の方ですね、それからもう一つは城西といいますか、大田区の方にも同じような問題があると思うのです。東京都では産業廃棄物処理法に基づいて計画をつくることになっておりますが、まだ私はつくられたという話を聞いておりませんけれども、そういったものを含めておつくりになる計画があるのかどうか、最後にお尋ねをしまして、同僚議員に譲りたいと思います。

志賀美喜哉東京都副知事

○志賀参考人 下水の処理場につきまして、新河岸の問題について、三回やった中に一回、基準値をオーバーしたのがあった。それが砂町にいっているのじゃないかというので江東のお話しがあったというのは、御指摘のとおりでございます。新河津あるいはまた小台あるいは芝浦、全部を通しまして、焼却残灰につきましての基準を超えているのは現在ございません。  それからまたさらに、実は下水道法に基づきました焼却の後につきましては、これは一応、法上は、そのまま覆土し、処理できるようになっておりまして、これは一般の廃棄物の処理扱いとは違っております。ただ、先ほど御指摘のものは、おととしまでは全部、下水道処理汚泥は一般廃棄物でございました。厚生省の解釈によりまして、一昨年度からは産業廃棄物と認められることになりました。それにつきまして産業廃棄物に合った処置法をやるようにいたしたいということで進めております。  それから、産業廃棄物処理計画につきましては、すでに一昨年の六月に、各県でやっていると同様な程度の産業廃棄物処理計画に対する骨子は、実は答申をいただいております。ただ、私どもとしては、それでなく、もう少し今度の問題を含めた、いわゆる有害物の処理ということを入れた計画をつくりたいということでやっておりまして、その点について、実態に合う計画がなかなかむずかしいので、これは厚生省にもいろいろお願いして、幸い今回の問題も含めまして厚生省でも前向きにこれは取り組んでいただきますので、そういう点についての実情に合った産業廃棄物処理計画をつくりたい。ただ、各県で言うようなのはすでにございます。答申を得てあるわけでございます。

渡辺惣蔵日本社会党

○渡辺委員長 田中覚君。

田中覚自由民主党

○田中(覚)委員 時間がございませんので、私もごく簡単に二、三の点についてお伺いをいたしたいと思います。  まず第一に、志賀参考人に伺いたいと思いますが、先ほど田尻参考人の御意見、大変厳しい御意見ではございましたが、将来の課題として大変、傾聴いたしました。しかし、この問題に対する東京都の当初の取り組み方は、いささか甘きに失したのではないか。何か問題が起きてから急に厳しい態度に出ておられるように見えるところがあるわけでありますが、この点について簡単に、まず御意見を伺いたいと思います。

志賀美喜哉東京都副知事

○志賀参考人 お話しのとおり、最初の出発には甘いことがあったと思います。もちろん、先ほど林委員にお答えしたとおり、現実に、まさか職業災害でこれほどのことがあるということは知らなかったのは事実でございますので、この点はよろしくお願いいたします。

田中覚自由民主党

○田中(覚)委員 次に、棚橋、松田両社長にお伺いをいたしたいと思いますが、先ほど来、御所見を伺っておりますと、いま起きておる問題は、法的な規制のなかった、ことに、この鉱滓の処理に関しまして、過去に法的な規制のなかった時代の後始末の問題であって、現在の生産工場に起きておる問題ではないというお話しがございましたが、そういう御説明の裏には、免れて恥なし、法的な規制さえなければ、それで済むのだというような企業の無責任な姿勢が、そこにあらわれておるのではないか。もちろん、その過去の後始末をpppの原則だけで処理をするということにつきましては、いろいろ問題があることを、われわれもよく承知をいたしておりますが、しかし、いずれにいたしましても、この問題が、通俗的な言葉で言いますと、やはり旧悪の露見といいますか、そういうふうな感じを持たざるを得ないのでありまして、そういう点から見ると、やはり企業の道義的な責任は免れないのではないかといふうな感じがいたします。  特にこの鉱滓の有毒性ですね、これは、四十六年の産廃法の制定されるまでは、有毒であることを知らなかったというような御説明がございましたけれども、先ほど田尻参考人の指摘された資料によれば、八年前に人畜に有害であることがわかっておったというようなこともございますので、やはり企業としては、残滓に若干でもクロム分が残留している限りは、昔から、これが有害だということは、知る知らぬの問題よりは、当然、考えておかなければならない問題ではなかったのかというふうに思うのであります。この点につきましては、一般国民がやはりそういう目で宛ておるというふうに私は思いますので、これについて明確な回答を望みたいと思います。

棚橋幹一日本化学工業株式会社社長

○棚橋参考人 田中委員の御質問に対してお答えいたします。  われわれは、長い間のクロム製造業におきまして、非常に多量の鉱滓というものが出てまいっておりまして、それが四十六年九月までの、産業廃棄物の規制以前は、そういうものには、いわゆる規制はなかったわけでありますけれども、しかしながら、そういう六価クロムというものが含まれている、しかも、それが水に溶けたり、いろいろな面で有害な面が出てくるという心配もありまして、埋め立ての場合にも、できるだけ覆土をするというのを原則にいたしてまいっているわけなのですけれども、しかし、実際問題としては、物の規制以前は、私どもは、社宅地あるいは工場の敷地内の埋め立てにおいて人間の健康の被害がなかったという長い間の経験から、人間の健康には害がないのじゃないかというふうに考えてきたわけなん です。しかしながら、現在において、もうすでに規制も出ておりますし、こういう 時代におきましては何とかこれをできるだけ早く応急対策をいたしまして、そして鉱滓が露出したり、あるいは溶けて黄色い水の出ているようなところは還元剤をまき、あるいはアスファルトで舗装するということで、一日も早くその地域の住民の不安を解消するということを主眼として、応急対策を現在、数十ヵ所にわたって実施中でございますし、また、その鉱滓の埋まっている地域の住民の健康診断につきましても、江戸川区あるいは江東区あるいは千葉におきましても、それぞれの行政の要請によりまして、できるだけ多くの方々の健康診断を実施していきたいというふうに考えておりますが、現在の時点では、まだクロムによる障害という、はっきりした健康上の害は出ていないというのが現状じゃないかというふうに考えているわけでございます。  以上、お答えいたします。

松田信日本電工株式会社社長

○松田参考人 お答え申し上げます。  ただいま先生から御指摘がございましたけれども、そういう印象をお与えいたしましたといたしますと、大変、私ども申しわけないことでございまして、過去のことだからというような、ふらちな考えは持っていないということを申し上げさせていただきたいと存じます。  先ほど栗山の町長さんのお話しもございましたけれども、私どもといたしましては、四十七年から栗山地区におきましては、汚染対策協議会の御指示によりまして、お話しにありましたような御協力をさせていただいておるというようなこととか、あるいは徳島におきまして、もちろん、栗山も同じでございますが、従業員あるいは下請の方、いわゆる協力会社の方でございますが、こういった方も全部含めまして、私どもでわかります範囲で、基準局の御協力もちょうだいいたしまして、北海道大学あるいは徳島大学で厳格な健診をやっておるということを申し上げさせていただきたいと思います。

田中覚自由民主党

○田中(覚)委員 時間がございませんので、次の問題に入りたいと思いますが、日本化工の徳山工場と日本電工の徳島工場は、日本のクロム製品を集中的に生産をしておられるわけでありますが、この両工場については、労災上も、そしてまた公害環境的見地から見ても、全然、問題のない工場である、こういうふうに受けとめてよろしゅうございますか。

棚橋幹一日本化学工業株式会社社長

○棚橋参考人 お答えいたします。  私どもの昭和四十六年から操業を開始いたしております徳山工場につきましては、職業上の問題、労災の問題につきましても、一名もそういう患者が出ておりませんし、また環境問題につきましても、鉱滓につきましては全部これを還元焙焼して三価のクロムに変えまして、そして工場内に現在、埋め立て、一部は骨材あるいは建材等に利用しておりますので、そういう鉱滓上の面からも、環境を汚染する問題はないと確信いたしております。

松田信日本電工株式会社社長

○松田参考人 私どもの徳島の工場につきましては、建設以来、当時から最新鋭の工場ということを目指しまして、現在に至っておるわけでございます。たとえば例を申し上げますと、六価クロム化合物の排出基準でございますが、工場の敷地境界線では、御承知のように〇・〇〇一五ミリグラム・パー立米ということになっておりますが、当社の境界線では不検出というのが現状でございまして、現在ただいまでは、非常に整備された工場であるというふうに確信をいたしております。

田中覚自由民主党

○田中(覚)委員 このクロム関係の職業病に対する対応の仕方が大変スローモーションであった。これは企業ばかりでなしに、労働省も一半の重大な責任があると思いますけれども、こういうようにクロムによる肺がんの認定がはなはだしくおくれたことと、それから婦中偏せん孔症がいまだに認定をされていないということは、これはある意味では人道的な問題ではないのかというふうな感じがいたします。ことに鼻中隔せん孔症にならなければ、一人前の労働者でないのだといったような風潮が、かつてあったというようなことは、全くこれは女工哀史的な、前時代的な考え方でありまして、民主主義下の現代では相入れない考え方であります。  そこで、お伺いをいたしたいのは、本当に鼻中隔せん孔症というのは、生理機能として何ら障害はないものかどうか、あるいは肺がんに至る前駆的な症状というふうに理解されないのかどうか。そういう意味で、先般、徳島工場も拝見いたしましたが、栗山工場で鼻中隔せん孔症になっておられる人々の相当多数が、まだクロム関係に従事しておられる。もし、この鼻中隔せん孔症が、そういう労災の認定に値する病気だということになりますと、配置転換等も当然、考えていかなければならない問題ではないかというふうに実は考えるのでございますが、これについての御所見を、両社長のどちらでも結構ですから、ひとつ伺いたいと思います。

松田信日本電工株式会社社長

○松田参考人 お答えを申し上げます。  いまの鼻中隔せん孔と肺がんの関連性につきましては、たとえば肺がんになれば必ず鼻中隔せん孔、鼻中隔せん孔になれば必ず肺がんになるという関係は、私、まことに申しわけございませんが、素人でございまして、その辺のことは的確にお答えいたしかねるわけでございます。  なお、栗山から参りました人間を、依然として徳島で使っておるのもあるという御指摘でございますが、そのとおりでございます。これに関しましては、先ほど申し上げましたように、私ども徳島の工場は完璧な工場であるというふうに信じておりましたので、現在、特に仕事場を変えるということをいたしてまいっておりませんでした。  それからもう一つには、いろいろございますけれども、やはり相当な年輩者になりますと、どうしてもこれを、おれはやりたいのだという、仕事に対する情熱といいますか、愛着というものもございまして、なかなか簡単にいたしかねるという面も、いまにして思いますと、ございましたけれども、今後につきましては、やはり完璧な設備を持っておるといいながらも、絶対ということはあり得ないものでございますので、そういった設備にあぐらをかくというような、まことに奇妙な表現になりましたけれども、そういうことは絶対に許されないわけでございまして、今後、私ども十分、現在のプラントの改善すべきところを摘発いたしまして、よりよいものにしていきたいと思いますし、それからまた、先ほどおっしゃいました配転というようなことも十分、検討さしていただきたいというふうに考えております。

田中覚自由民主党

○田中(覚)委員 長谷川労働大臣が日本化工の小松川工場を視察されましたときに、棚橋社長は、クロムの問題は労災であっても、環境汚染の問題ではないということを、繰り返し強調されておったように、新聞で拝見いたしておりますが、これはむしろ逆で、問題は企業内における労災対策が完璧になされておらないからこそ、こういう公害、環境問題が起きてきておるというふうに自覚をしていただくべきではないか。したがって、逆にこれからは、公害問題に発展しないように、労災段階で完璧な対策をやってもらうことが、企業のこれからの大きな責務ではないか、こう私は思うのであります。もし、これが労災対策の段階でできぬということになりますと、この特定化学物質等障害予防規則で指定されているような凡百の有害物質を取り扱っておる企業は、将来すべて、このような公害、環境問題を引き起こす懸念があるということを先駆的に示された、こういうふうに理解をしなければならないことになりまして、これはきわめて重大なことだと思うのであります。  そういう意味におきまして、私はまず労災対策に、おくればせではありますけれども、法律に定められておる対策の完璧をぜひ、ひとつ期していただきたい、このことを強く要望いたしまして、あと若干お伺いいたしたいのですが、時間がありませんので、また午後に質問をさせていただきます。

渡辺惣蔵日本社会党

○渡辺委員長 島本虎二君。

島本虎三日本社会党

○島本委員 時間の制約がございますから、答弁の方は簡単に率直に願いたいと思います。  まず私どもも、いろいろ日本電工の栗山並びに徳島を視察いたしました、調査もいたしました。なお日本化学工業のいろいろな視察もさしてもらいました。その中で、いま一、二ちょっと気になることがございますので、この際、お伺いしておきたいと思います。  まず棚橋参考人にお願いしますが、参考人は鉱滓の被害については、ただいま参考愚見の開陳の中で、ないものだと思っておるし、家族に健康上の被害があらわれていない、付近の住民に健康の被害もあらわれておらない、また一般の住民も健康被害がないのだ、聞き及んでおらない、こういうような御答弁があったように承っております。しかし、いまいろいろと他の参考人の意見を聴取してみますと、もう四十三年の四月三日に、そういうようなことがはっきりしているということが明らかにされました。井戸水の点でも飲料、洗たくにはできないのだ、同時に動植物についても、飲んだり、その水で養魚することもできないのだ、被害を受けた例はある。そういうことまで、はっきり成文にして、そして、もう調印までしておられる。これは江東区の、何ですか、東洋火熱、日本化工、共立運保、これらとはっきり調印までされておるので、この時点で、もうすでに知っているのじゃないか、こう言わざるを得ないのであります。誠心誠意これに当たっている社長の態度としては、これはもう日本電工の松田社長も、私、順次聞いて、それでないことをちょっと指摘したいと思うのですが、どうもわからない。六価クロムのたまり水、色がつくのは一〇ppmくらいだ、それで皮膚障害が起こるのだ、一〇〇ppmになったら潰瘍をつくる、犬がそれを飲んだらけいれんまで起こしているのだ、そして瞳孔を拡大する。微量といえどもこれはもう被害があるのだ。しかしながら、社長は微量だからと言うけれども、大島では二万ppmが検出されたという。これだったらほんのppmじゃなく、総量で見たならば、相当の被害が及ぶのだと考えないといけないのではないか。まして聞き及びますと、大島町の屋根裏には、クロムの粉滓が一〇ppm、こういうようなのが検出されている。働いている人、これは残滓の運搬の人が失明したり鼻に穴があいたりしている例も報道されているじゃありませんか。これでなおかつ鉱滓によるところの被害は見えないのだ、こういうようなことに対しては、これは本当に被害なしと考えるならば、これは管理上のミスであります。また本当にわからないと言うならば、これはもう被害を知っておらないということで、これまた社長としてはまことに不本意なんです。これは一体どうなんですか、本当に知らないのですか、知っていたのですか。この点、まず棚橋参考人の御意見を賜りたいと思います。

棚橋幹一日本化学工業株式会社社長

○棚橋参考人 お答えいたします。  ただいまの件につきましては、私ども最近までは、その事実を、そういう書類が出ていたということを存じておりませんでしたけれども、その後そういう書類が私どもの小松川工場長の名前で出たということを知ったわけでございますが、これはあくまでもその東洋火熱に売った土地につきましては、東洋火熱で社宅用地とするということで、それにはやはり草木も植えなければならないので、六十センチほどの覆土をしてくれというお話もございまして、そこで覆土をしなければ、やはり植物などには、なかなか生育によくないということは存じておりますし、また、長い間に水が流されてまいりますと、一部、相当濃縮される地点も出ますので、そういうことのないように、できるだけ六十センチ以上の覆土をしてやるということで、お約束したのじゃないかというふうに考えております。

島本虎三日本社会党

○島本委員 どうもはっきり私は理解できない。一回一回、答弁が変わるようでは、管理能力はどうもおかしいのじゃないかとさえ思うのです。これは管理上のミスですか。それともはっきり知っておったのですか。しかし、答弁を見ると一回一回、変わっている。東京都の方へ行ったときには、これは新聞によるわけでありますけれども、廃棄物の処理法が施行された四十六年までは無害と考え、埋め立てて、これを利用した。その以前にはこういうような被害はない、こういうふうにはっきり言っておった。一回一回、変わってきた。今度はこういうような協定書が出ると、それは知らなかった。しかしながら、それは要請によってやったのである、こういうようなことであります。これは全部知っているのじゃありませんか。知らないのに、こういうような調印をしたというならば、これはあなた自身、社長としての能力がおかしいですよ。四十三年四月三日、きちっとあなたの判も押しているでしょう。  それで次、北海道夕張郡の栗山町長にお伺いしますが、これは私も行って見ました。あそこには雨煙別川と錦川がございますが、あそこには黄色い水たまりが随所で見られましたし、盛り出した土の上にも黄色い水がたまっておったし、川へも黄色い水が流れ出ておったし、工場内でのこの黄色い水をくみ揚げて、以前にはお湯を沸かして、それに工員も家族の人も入っておったということを、当時の退職者や被害者の人から私ども承ってまいりました。災害が発生して、このたびはお見舞い申し上げますが、その後この状態に異常ございませんでしたか。

則武基雄北海道夕張郡栗山町長

○則武参考人 六号台風のときにおきましては相当の雨量があったわけでございます。あの錦川、先生ごらんになったと思いますけれども、雨煙別川の支流になるわけですけれども、錦川につきましては相当に黄色い水が、表現で言えば物すごいと言えると思いますけれども、出ました。それは雨煙別川の水量が多いために、本流に流れ出られないというようなことで、あそこにたまって相当、黄色い水が出たというわけでございます。

島本虎三日本社会党

○島本委員 普通の場合でも相当量、流れているし、今度の場合は第六号台風のいわば被害もあったわけでありますが、下に敷いた物が、不完全な堤防の敷設のために相当、流れ出たのじゃないか、こうさえ思われるのであります。  それで、今度は松田信日本電工社長の参考意見を伺いますが、栗山工場は四十七年に事実上一〇〇%出資の電工興産に移管され、すべて、この機能は徳島工場の方へ移り、百四名も一緒に移った、こうなっておるのですが、肺がんの発生は昭和三十七年から出ておりますが、四十七年まで十年間、当時からすでにこういうような肺がんの発生がありましたけれども、また鼻中隔せん孔も出ておりますけれども、こうわかったままに徳島の工場へ移転したのじゃございませんか。

松田信日本電工株式会社社長

○松田参考人 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のことでございますが、当時、私どもを含めまして、まことに申しわけないわけでございますが、クロムに対する危機感といいますか理解が、現在に比べまして非常に乏しゅうございました。したがいまして、栗山から徳島に移りましたのは、先ほど御説明申し上げましたような理由で移ったわけでございますけれども、あそこで栗山工場を閉鎖いたしますので、同じ業種の仕事をやります徳島に移動したということでございます。

島本虎三日本社会党

○島本委員 三十五年に、もう一人、肺がんで死亡していますね。御存じですね。それから続々と出て、四十七年までに五人死亡していますね。そういうような状態の中で設備の完備している徳島の方へ移った。しかしながら、やめた人に対しては何にもしないでいって、すでにそういうような人も、いま肺がんが発病していますね。そういうような状態です。

松田信日本電工株式会社社長

○松田参考人 お答えいたします。  時間的には、現在から見ますと非常におくれたということに対する問題は否めないところでございますけれども、四十八年におきまして、社員はもちろんでございますが、すでに退職された方、それから協力会社の方を含めまして、労働基準監督局の御指示をいただきますし、それから北海道大学、徳島大学の御協力をいただきまして、できるだけの詳しい検査はさしていただいておるわけでございます。

島本虎三日本社会党

○島本委員 できるだけ詳しい検査をしたと申しますけれども、会社の方では、私どもは退職者並びに遺族の話も聞いてまいりましたが、春と秋の二回、定期検査をやっておりますが、指定医が指定されてございますね。その指定医は穴のあいた、その人に対して、おまえの穴は春より大きくなっている、こう言われた人がもうやめております。なぜ、あかないうちにやってもらえなかったのかと悔やんでおるのです。そして鼻中隔せん孔を指摘したのは、指定医ではないほかの医者が指摘しているじゃありませんか。そうすると、指定医は鼻を洗うだけ、会社側はそういうふうに命令したのじゃありませんか。  それと同時に、もう一つですが、昭和二十二年と二十四年にサーカスが栗山にかかりましたね。そして残滓の投げ場、捨て場、それでクロム酸の製品が置いてあった場所、ここに二回にわたって公演いたしましたね。雨が降って、そこにつながれていた馬並びに象、その馬のつめもおかしくなり、象の足の裏も腐って、その後、死んだという報道を耳にしています。これも現地の人から聞いているのでありますが、もうすでに昭和二十二年、二十四年の段階で、そういうような事態が起こったということを知りながら、なぜ、それに対する対策を検討しなかったのですか。もう敷地内であり、鉱滓の捨て場、置き場、ここにサーカスをかけたときに動物が、これもまた象に馬、同時に被害を受けている。もうこの時点で、善良なる管理者は気がつくべきではございませんですか。私はそういうような点でちょっと遺憾なのでありますが、この二つ、きちっとしてください。簡単にしてくださいね。

松田信日本電工株式会社社長

○松田参考人 お答え申し上げます。  ただいまの最初の問題でございますが、私どもで嘱託をお願いいたしておりますお医者さんにつきまして、そういうことをお願いするとか指示するということは絶対ございませんでした。  それから、次のサーカスの問題でございますが、まことに申しわけないのでございますが、実は私も新聞で初めて知ったようなわけで、これは言いわけでもございませんし、怠慢の一つの例かもしれませんけれども、そういうことで私、存じませんで、まことに答弁にならないかもしれませんが、いずれにいたしましても十分、注意をさしていただきたいと思います。

島本虎三日本社会党

○島本委員 それは、こういうようになる以前に注意してもらわないといけないのです。  これは二十七日に徳島の阿南市の工場を、公害環境特別委員会渡辺委員長のもとに調査さしてもらいました。説明も承りました。この徳島工場の設備については、これは社長の方から出された資料ですけれども、これによりますと、世界的技術水準の設備を設置しており、作業環境についても十分な整備に努めております。さらに緑化、環境の改善等、地域社会等に云々と、ずっと書いておりますが、世界的な完全な十分なる設備、これを完備してある、こういうようになっているのであります。それを見て県からも意見を聴取いたしましたが、試験段階においても、すでに事故が発生しておりましたね。そうして事故が発生しただけじゃございません。これはもう四十四年の五月に試験操業中の事故がありまして、それにもかかわらず四十四年の六月に操業を開始した。まあ、設備が優秀だから、こういうようなことでございましょう。しかし、私はこれが問題だと思うのでありますけれども、いかがなものでしょうか。  工場側に対して徳島県側がいろいろ調べた結果、こういうように言っております。病気になったのは栗山から来た人で、公害防止をやらないときの人が来て、なったのだ、鼻中隔せん孔や肺がんになったのだ、近代的設備を持つ徳島工場では何もありません。これは県に対して皆さんがはっきりおっしゃったことであります。しかし、これで県側もはっきり怒っておるのは、北海道から参りました人たち、この人たちは六十五名鼻中隔せん孔になっておりますね。それから小池敏明という四十七年十二月一日に採用され徳島工場におる人が、これもまた鼻中隔せん孔になっておりますね。それから鼻炎症状を示しておる人が一人、それからまた、びらん症状を呈している者が一人。もうこれは徳島工場に採用された人もなっておりますね。世界的優秀な設備を持つものであり、そういうようなおそれは全然ないと言いながらも、この状態は、われわれをもさえ欺いているじゃありませんか。県さえも欺いているじゃありませんか。こういうようなことで企業家の態度としていいのですか。いかに思いますか。

松田信日本電工株式会社社長

○松田参考人 お答え申し上げます。  ただいまの問題につきましては、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、私どもといたしましては、きわめて完璧な設備だと思っていたわけでございますけれども、やはり何か完璧ということでなくて、私どもの気のつかないところ、あるいは作業上の不注意というものがあったのだろうと思いますが、いずれにいたしましても、徳島におきましては、そういったことはないと言っておきながらそういう患者が出たことは弁解の余地はございません。まことに申しわけない限りでございます。今後は十分、注意をいたしまして、二度と再び繰り返さないようにいたしたいと存じます。

島本虎三日本社会党

○島本委員 では、今度は田尻参考人にお伺いしますが、警察庁では、こういうような事件に対しては刑事罰の適用は無理である、これは摘発の根拠がない、こういうふうに言っておりまして、そのうちの一つには、従業員の死亡や傷害事故が、監督官庁の監督下に発生したものである以上、会社側の責任追及はむずかしい、こういうふうに言っております。監督官庁の監督下にあれば、これはもういかなる、こういうような事犯でも刑事罰に属さないということと、あなたが先ほど参考意見として出したものとは、どうも食い違いがある。私としては、やはり人を殺した以上は殺人の罪を免れない。故意でやったのじゃなくても、これはやはりそういうようなことになろうかと思うのであります。警察庁では別な見解を出しているようでありますが、この際、田尻参考人の御意見を伺いたいと思います。

田尻宗昭東京都公害局規制部長

○田尻参考人 本件につきましては、具体的な事実関係、証拠関係等、慎重な検討を要するところでありますが、まず一般的に、どうしても申し上げておかなければならぬことがございます。それは私、四日市で担当いたしました石原産業事件当時、通産省の工場排水規制法のもとにおける監督がなされておりました。しかしながら、硫酸二十万トンをたれ流したかどで現在、公害刑事裁判が審理中でございます。その点で監督行政の善良な行政が行われていたのか、そうでないのかということは、一つのポイントであると思いますけれども、しかしながら、人を傷つけ、殺した者が犯罪であることには変わりないと私は信じております。  私、海上保安庁におりましたときに、いろいろな事件を取り扱いました。たとえば船の船長が霧の中で一生懸命、見張りをしていたのに、船が衝突をして、乗組員が死んでしまった。私の同級生であります。彼はもうすでに、毎日毎日、死んだ乗組員が夢に出てきて船長、船長と叫ぶので、もう飯を食う気力もないのだ、生きる気力もないのだ、そのおれを刑務所に入れてどうなるのだ。悲痛な訴えを叫んでいる同級生に対しまして厳しい取り締まりをいたしました、捜査をいたしました。このようなときに船の船長はありとあらゆる過失を追及されるのであります。巡視船の船長が海難救助に向かう途中であっても、どしゃ降りの真っ暗な晩であっても、どんなに困難な状況下においても、衝突をして人を殺した場合は、非常に過酷な、人を殺したという業務上過失致死罪が科せられるのであります。私どもは、船の作業場におきましても、マストから落ちた乗組員等が死んだ場合に、本当に最大限の管理がなされていたのかどうかということを厳重に捜査をいたしました。防具をつけていたのか、合図をしたのか、ロープを体にまとっていたか、管理者はどういう注意をしていたか、そのようなものに一つでもミスがあれば、管理者の責任を追及し、業務上過失致死罪を問うたのであります。  私は、そういう職業に従事していて、本当に法律はこわいなあということを痛感をしてまいりました。そのような海上で命がけの仕事をしている者が犯したミスでさえ、厳重に処罰をされる今日、企業という名のもとに人を傷つけ、殺した者が、濛々たる毒ガスの中で人を傷つけ、殺した者が犯罪ではないとするならば、この国に犯罪はないのであります。四大公害裁判におきまして、多数の人が殺されました、しかしながら、ことごとく金であがなわれました。しかしながら、この国の中で、こういうことの刑事責任が、犯罪としての厳しい論理がきちっとされなければ、いつになっても反公害の論理は決して本物にはならないことを、私は現場の一人として痛感をいたしております。もちろん、これは一般論であります。厳しい事実関係、証拠関係、構成要件、いろいろ必要でございましょう。しかしながら、私は四日市において初めてこの事件に取り組みました。水産資源保護法がもう明治二十五年に、魚に有害なものを水面に捨ててはならないという規定をつくっていたのに、今日まで、私が四日市で事件に取り組むまで、ただの一度も、これに工場排水が適用されたことはなかったという事実を見ましても、何かが間違っている、この国の法は逆立ちしているということを身をもって感じたのであります。  そういう意味で、工場排水が油について一ppmという規制をしております。三菱石油が一万トンの油を流した、しかしながら、いまだにまだ刑事責任が明らかではございません。やはりこういう事件を契機として、公害が犯罪だということを、わが国において反公害の原点として、きちっとされる日が来なければ、決して公害が本質的に解決されることはないということを私は痛感をいたしております。

島本虎三日本社会党

○島本委員 棚橋参考人に伺いますが、いろいろ、いままで御意見並びにいろいろな他の参考意見の陳述もございました。その中で、前にはこの契約も知らなかった、こういうような御意見もございましたが、契約は四十三年四月三日に結んでありますが、そういうふうになった以上、やはり先ほどの陳述のように、被害者の救済に全力を挙げるべきだと思います。  それと同時に、具体的な措置、こういうようなものに対しても考えるべきだと思いますが、被害者から要求があれば、直ちに応ずる覚悟がございますか、それとも裁判で争うおつもりですか、率直にもう応じますか、ちょっと聞かしてもらいたいと思います。

棚橋幹一日本化学工業株式会社社長

○棚橋参考人 お答えいたします。  ただいまの被害者に対する問題でございますが、これは私どもは誠意をもって被害者の方々にできるだけの補償といいますか、お見舞いをしたいという考えを持っております。

島本虎三日本社会党

○島本委員 いま、やはり東京都並びに栗山町長等からいろいろ要請もございましたが、問題はやはり恒久対策が残るわけであります。早くやってもらわないとだめだという、切ない陳情でありますが、これはあくまでも、こういうふうにわかった以上、pppの原則が厳然として存在し、内閣もこれを認めております。そういたしますと、企業責任で全額、負担すべきは負担して、社会的な責任をとるべきじゃないかと思いますが、この決意を伺います。これは棚橋参考人です。

棚橋幹一日本化学工業株式会社社長

○棚橋参考人 ただいまの御質問でございますが、これは一番重要な問題でございますが、もちろん、これからいろいろな学識経験者その他の方々の意見によって恒久対策というものが打ち出されると思います。私どもはそれに従って処理していかなければならないということは考えておりますけれども、ただ、その費用につきましては、これは非常に膨大な費用になると思いますので、とうてい一企業では、ほとんどこれの費用の負担が不可能じゃないかというふうに考えられますので、現在のところは、できるだけ誠意をもって努力するということ以上は、ちょっとお答えできないのをお許しいただきたいと思います。

島本虎三日本社会党

○島本委員 十分なんですけれども、これはやはりpppの原則があり、他に被害を与えてまで企業だけがもうければいい、こういうような調和という概念は、四十五年十二月の公害対策基本法の改正の段階からもうないのです。ですから、あくまでも企業は自分の社会的責任というものを認識して、これに当たらなければならなくなっているのです。昔の、明治時代と同じような、こういう考え方ではなりません。  それと同時に、やはりこれはその決意で当たるならば、道は開けるはずじゃありませんか。他に責任を転嫁しようとするならば、社会的な問題になる可能性がありますが、なぜ会社がこの投棄の記録を残さなかったのか、それは疑問です。地元へ有毒性を知らせなかったのかどうか、下請さえもこれを知っていたのかどうか、下請の方へ渡せば、それでもういいということで、一切の書類を残さなかった、こういうようなことであるならば、管理はずさんだと言わざるを得ないと思うのです。それでなければ、狡知にたけたやり方だ。産業廃棄物の場合には、企業自体がこれを処理するというのが原則であります。そのほかに方法があって、適当な業者があるならばということで、これは下請が認められるのであります。しかしながら、下請にやってしまえば後は何やってもいい、こういうような考え方はまことにずさんであります。投棄の記録も残さなかったという、この関連会社ですが、こういうようなことが報告ございましたけれども、これは私としては本当に遺憾だと思うのであります。  それで最後に、これはもう時間の関係があるのですよ。本当はもっともっと聞きたいのですけれども、時間の関係で二つにまとめるのです。志賀副知事も見えておられますが、被害者の救済の重大なことは社長も認めましたが、自治体行政としても、これはもう会社の企業負担というようなもの、こういうようなものははっきりさせて当たらなければならないはずでありますが、安易な肩がわりや妥協、こういうようなことは将来に禍根を残すことになる、こういうふうに思います。したがいまして、これに対してどう思うか、副知事の御意見、並びに投棄の記録を残さなかったということに対して、棚橋参考人の御意見を伺います。

志賀美喜哉東京都副知事

○志賀参考人 御意見のとおりと思います。そのようにやりたいと思います。

棚橋幹一日本化学工業株式会社社長

○棚橋参考人 お答えいたします。  投棄の記録を残さなかったということに対しましては、私ども経営者として、はなはだ申しわけないと思いますが、当時は下請の運送業者に委託いたしまして、しかも、その運送業者が非常に零細な企業でございまして、現在もうその当時の社長が亡くなりまして二代目の社長になっております。そういうような関係で、投棄の記録が非常に不完全であったということに対しましては、はなはだ申しわけないと思って、深くおわびを申し上げる次第でございます。

島本虎三日本社会党

○島本委員 これで終わりますけれども、一つだけこれは念を押しておきたい。ただ言いっ放しですが。  これは、おたくさんの方では昭和四十八年十一月一日、それから六月三十日までの上期で、金額は些少です。百万円ですが、国民協会へ政治献金していなさいますね。その後は、これはやっていますか、やってませんか。これを一つだけ聞かしてください、やっているか、やっていないか。

棚橋幹一日本化学工業株式会社社長

○棚橋参考人 お答えいたします。  その後はいたしておりません。

島本虎三日本社会党

○島本委員 終わります。

渡辺惣蔵日本社会党

○渡辺委員長 土井たか子君。

土井たか子日本社会党

○土井委員 本日は、お忙しい中を参考人の皆様には大変、御苦労さまに存じます。  まず私は、日本化学工業株式会社の社長でいらっしゃる棚橋参考人にお伺いをしたいのですが、これは端的にお答え願いたいのです。社長は、当初、六価クロムを無害とおっしゃった。ところが、それが後になって、昭和四十六年以前は有害とは思っていなかったという趣旨の御発言に変わってきています。その理由はどの辺にございますか。

棚橋幹一日本化学工業株式会社社長

○棚橋参考人 お答えいたします。  特に理由と申し上げるものはないのですけれども、結局、実際問題として各地で鉱滓が露出して、それに風雨が浸透して黄色い水が出るというようなところがあらわれてまいりまして、そういうところでは実際に直接、手にさわるとか、あるいは、もちろん、けがなどあれば、そこにさわれば、それが手を荒らすとかいう被害が出てまいりましたので、そういうような見地からも、できるだけ早くこれは応急措置をして、そういう不安をなくそうというふうに変わってきたということでございます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 先ほどの御発言からすると、またこれは変わってきたような調子です。先ほどは、工場内については職業病ということをお認めになりながら、地域については余り大きな問題ではないがごとき御発言があったのです。いま、なぜ当初、無害と言われたことに対して、四十六年以前は余り有害とは考えていなかったという御発言に変わってきたのかということを聞いただすと、四十六年ごろから、ぼつぼつ鉱滓から起こってくる被害というものが目につき始めたという御発言じゃありませんか。そうですね。いまそれを確認いたしますよ。そうおっしゃいましたね。

棚橋幹一日本化学工業株式会社社長

○棚橋参考人 お答えいたします。  それは必ずしも四十六年の規制をあれしたということではないのです。要するに、各地のそういう埋め立てた土地で、中から露出したり、あるいは水が出てきたりというようなのがあらわれてきて、そこで、それは住民に対しても不安を与えるということになってきたというのが現状でございます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 社長、その廃棄物の処理に関する例の法律が四十六年から施行されたということを意識なさって、おっしゃった発言ではなかったのですか。いかがなんです。

棚橋幹一日本化学工業株式会社社長

○棚橋参考人 いや、必ずしも規制の時期とは関係なく、実際問題として付近の住民の方々には健康被害がなかったということは、その当時から申し上げているわけなんですけれども、現在においては、それが一つの大きな社会不安になってきておるので、何とかこれを健康診断もし、あるいは一部そういう露出しているようなところは被覆して、応急措置をやりたい、やるということで、やっているわけでございます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 質問に的確にお答えを願います。四十六年ということを大変、意識なさって、それ以前は余り有害であるということを考えていなかったというふうな御趣旨に変わってきたのはなぜですかということを、当初から私はお尋ねを申し上げています。四十六年から、ぼつぼつと被害が出てきたということを御存じならば、私は、これはまた新たな重大発言だと思います。  そこで、私は新聞紙上を通じまして、また、いろいろなところで見聞をしてみて、社長が四十六年ということを意識なさっているのは、恐らくは廃棄物の処理及び清掃に関する例の法律が施行されたということを御認識なさっているのじゃないかなということを考えたわけです。そこで、ただいまお尋ねをしているわけですけれども、そうではないわけですか。

棚橋幹一日本化学工業株式会社社長

○棚橋参考人 お答えいたします。  それはたびたび申し上げておりますように、必ずしも四十六年の規制ということを意識して申し上げているわけではないわけでございます。最近になりまして、このクロム問題が取り上げられまして、そして地域住民のいろいろな不安が出てきたということで、応急措置をやるということにいたしたわけでございます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 そうすると、四十六年ということで、それ以前は有害とは思っていなかったという御趣旨の御発言の理由はどの辺にあるのか、私は理解に苦しむのですがね。それ以前は、無害というふうにお考えになっていたという御発言があったのです。大変、高飛車な社長だなと思って、新聞での御発言を読んだわけですが、その後、四十六年以前は有害とは思っていなかったという御発言の趣旨に変わってきているのですね。そこで、きょうは、まず、そのことについてのお尋ねをしているわけですが、しかとしたお答えがまだ聞かされておりません。いかがです。

棚橋幹一日本化学工業株式会社社長

○棚橋参考人 どうも御質問のあれですけれども、私は、もちろん規制以前も、そういう有害だということをはっきり自分が認識しておれば、そういうものを各地の埋め立てに利用するということは、非常に危険なわけなので、私どもは、そういう鉱滓を埋め立てた地域においても、人間の健康の被害が出てないという長年の経験から、これは人間の健康には面接、関係ないのだ、しかし、それを埋め立てるにつきましては、いろいろな配慮をして、ある程度、覆土するとか、ただ、そこへ捨てておけば、長い年月には水で洗われれば、いろいろな害も出るということから考えて、最近は、いわゆる応急処置をやるということにいたしておるわけでございます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 これは聞いていても、余りしかとしたお答えが出そうにございませんので、日本化学工業協会の専務理事でいらっしゃる長澤参考人に、ひとつ確認をしておきたいのです。  きょうの御発言を承っておりますと、昭和四十六年に例の産業廃棄物法が施行される以前は、六価クロムについても安全というふうなお考えで対処をなすってきたという御趣旨の御発言がございましたが、そのように受けとめてようございますか。

長澤榮一日本化学工業協会専務理事

○長澤参考人 御質問の趣旨がわかりかねますので、もう一回、詳しく御質問をお聞きしたいと思います。

土井たか子日本社会党

○土井委員 産業廃棄物の取り扱いについて、御承知のとおり昭和四十六年に廃棄物の処理に関する法律が施行されておりますね。その昭和四十六年に法が施行される以前については、この六価クロムの問題についても一応、安全というふうな考えで臨んできたというふうな御趣旨の御発言があったやに私は承っておりますけれども、それを確認させていただいてようございますかと申し上げているのです。おわかりでございましょうか、いまの質問で。

長澤榮一日本化学工業協会専務理事

○長澤参考人 わかりました。ただ、私の初めの発言の中で、そのような発言をいたしておりません。

渡辺惣蔵日本社会党

○渡辺委員長 参考人、もう少しまじめに……。ここをどこだと思っているのだ、まじめに答弁しなさい。

長澤榮一日本化学工業協会専務理事

○長澤参考人 発言いたしておりません。

土井たか子日本社会党

○土井委員 しかし、その昭和四十六年の産業廃棄物法の施行に触れてお述べになった部分があったと私は思うのです。文書をお持ちになってお述べになったはずですから、ひとつ御確認を願えませんか。

長澤榮一日本化学工業協会専務理事

○長澤参考人 こういうことでございます。  過去からいままでクロム化合物が長い間つくられてきたわけでございますが、いまのような状態になっておりますのは過去からの蓄積でございます。当時の技術的な知見とか、あるいは社会的環境から見まして、恐らく当時は、いまのような事態になるということを予想していなかったと思うわけでございます。そういうことを申し上げております。  それからまた、法律の施行後においては両社とも厳重に遵守しておる、そしてこういうことはなかろう、こう考えているわけでございます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 御発言の趣旨が、先ほど参考人としてお述べになった御発言と大分、趣が違っているように私は思います。後で議事録でしっかり確かめますよ、ようございますね。その節、改めて問題にいたします。  さて、いま私が問題にしております廃棄物の処理及び清掃に関する法律というのは、御承知のとおりに昭和四十六年に施行されているわけですが、いま問題になっておりますのは六価クロムの有害性なんですね。有害な産業廃棄物についての判定基準は、別に総理府令で定められておりまして、昭和四十六年に決められてはいないのです。昭和四十六年じゃない。したがって、昭和四十六年という時を問題にしながら、それ以前は有害とは思っていなかったという社長御発言を、私は非常に重視しているのです。有害な産業廃棄物についての総理府令の指定はいつあったか、社長、御承知ですか。

棚橋幹一日本化学工業株式会社社長

○棚橋参考人 お答えいたします。  私、それを現在の時点では存じておりません。

土井たか子日本社会党

○土井委員 とんでもない話ですよ。六価クロムの化合物について有害だというふうに総理府令で指定をされて、初めてこれについての基準値について、安全か安全でないかということを判定していくということが決められたのです。こういうことを御存じなくて、いま有害であるか無害であるかということを問題にされること自身、私は非常に奇異な感を持つ。本当に社長、これが決められたのはいつか御存じないのですか。申し上げましょう。昭和四十八年です。四十八年の三月一日に施行されております。それ以後ですよ。したがって、六価クロムの有害性ということを問題にしながら、四十六年を非常に意識されてきたということは、私はおもしろいなと思って見ていたのです。いまのこういう問題に対する法規制の取り扱い方というのを十分、御承知の上で、社内についても、あるいはその付近の埋立地についても、安全だということを御確認なさっているのでしょうね。いかがでございます。

棚橋幹一日本化学工業株式会社社長

○棚橋参考人 お答えいたします。  現在の時点では、御質問のとおり健康被害はないというふうに私は確信いたしておりますし、また、いま各地で健康診断をいたしておりますので、その結果を見なければ正確なことは申し上げられませんけれども、私自身としては、ないのじゃないかというふうに考えておる次第でございます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 先ほど参考人として御発言なさった中に 昭和三十二年の国立公衆衛生院の方からの御提言についてお触れになった部分がございました。その昭和三十三年の国立公衆衛生病院の御提言については、昭和三十二年当初から御存じだったわけですね。そうしますと、それ以降について管理上のミスがあったということをお認めになりますか、いかがですか。また、国立公衆衛生院からの御提言の中身を見ると、われわれからすれば、明らかに会社側の管理上のミスというものがなくして、こういう状態になり得ないという事実に対しての認識をやはり持たざるを得ません。会社側とされては、昭和三十二年当初から国立公衆衛生院の御提言を御存じであるのなら、この管理上のミスというふうなことをお認めになるかどうなのかということは、大変、気にかかるところであります。いかがでございますか。

棚橋幹一日本化学工業株式会社社長

○棚橋参考人 お答えいたします。  国立公衆衛生院からの勧告については、もちろん私ども承知いたしておりまして、それに従いまして、いろいろな労働衛生上の処置を逐次とってはきております。しかし、それが完全に遂行されなかったために、相当な鼻中隔せん孔とか、そういった被害が出たということに対しましては、心からおわびを申し上げたいというふうにお答え申し上げておきたいと思います。

土井たか子日本社会党

○土井委員 おわびをなさるわけでありますから、やはりミスがあったということについては、一部お認めになるということでなければ、そういうことにはならないであろうと私も思うわけでありますが、一つここでどうしてもお聞きしたいのは、きょう、しばしば出てまいっております。日本化学工業株式会社さんにとっては下請であった共立運保でございます。また、日本電工株式会社さんにとっては、これは下請であるところの東海運の問題であります。それぞれ現場の労働者の中身を見てまいりますと、むしろ正式の社員よりも以上に、この下請の会社で働いている、また臨時雇い工として働いている方々に悲惨な事例があるようであります。労働災害、職業病とお考えになっている中身についても、ずいぶん具体的に悲惨な状況があるようであります。ただ、立場が臨時工であってみたり、あるいは下請の会社で働いている人であってみたりするわけでありますから、この問題はなかなか表に大きな声として出てこない、こういう実態が実はございますね。きょうも日本電工の方の社長さんが、御発言の中で社員の数をおっしゃいましたが、この中に、恐らく下請の方の会社の社員の数は含まれていないだろうと思う。こういう下請なり臨時工の方々について、後、健康上のいろいろな健診というものに対して追跡調査をなすっているかどうか。また、現になすっていなければ、それをなさる御用意があるかどうか、ひとつお答えいただきたいと思います。

棚橋幹一日本化学工業株式会社社長

○棚橋参考人 お答えいたします。  下請並びに臨時工の作業状況でございますが、これは下請につきましては、ある程度、つまり生産量の多い少ないによって、相当その仕事の量が違うわけですね。そこで、やはりそういう下請業者にそれを請負作業としてやっていただいた面が相当あるわけです。それで、そのために請負作業ということですから、つまり時間給ではなくて、こういうある一定の仕事を請け負った請負作業でやってきたという作業が実態でございます。しかし、現在、全部もちろん会社をやめた方も、それからこういう下請の方々についての健康調査その他を追跡いたしておりますので、これが追跡が完成すれば、やはりこういう下請の方々あるいは臨工の人についても、できるだけ誠意をもって補償していくということを考えておるわけでございます。

松田信日本電工株式会社社長

○松田参考人 お答え申し上げます。  私の方といたしましては、特にいわゆる協力会社でございますが、それの取り扱いを別にするということはしないよう努力をいたしておるわけでございまして、極力、追跡もさせていただきたいと思っております。  いま簡単に、ちょっと事例を申し上げますと、これは栗山の例で申し上げますが、四十八年には北大にお願いをいたしまして、四十八年七月でございますが、エックス線の検査をいたしておりますが、その翌年の四十九年には在職者、退職者、協力者も含めまして、特に厳密なエックス線の特殊検査、それから喀たん細胞の検査、気管支鏡の挿入検査ということもやらしていただいておりますので、今後も十分、配慮をいたして、やらしていただこうと思っております。

土井たか子日本社会党

○土井委員 確認をしておきたいこともありますけれども、あと一つだけ、ちょっと時間の都合がありますから先を急ぎます。  ここに私は一つパネルを持ってまいりました。日本化学工業の棚橋社長さんは、これをごらんになって、どの場所の、どの部分を撮ったかというのは、おわかりになろうかと思います。韓国の蔚山に工場をつくっていらっしゃいますね。現地の人たちは日本化学蔚山工場と呼んでおるようでありますが、蔚山無機化学株式会社、合弁会社ですね。韓国で予定どおりにいくと、もういまは操業が開始されているはずでありますが、現に操業はまだ始まっておりませんですね。  一つお尋ねをしたいのは、例の今回の六価クロムの問題は、これは六価クロムについて直接、関係が出てくる工場であります。日本においていろいろ規制を受ける。日本の法規制というのは日本の国内法であります。韓国にこういう会社を持っていかれて工場を建設をして、かの地において、これからどういうふうなお気持ちで、この工場についての取り扱いなり経営なりをなさるおつもりでいらっしゃるか、これを一つお尋ねしたいと思うのです。

棚橋幹一日本化学工業株式会社社長

○棚橋参考人 お答えいたします。  韓国の蔚山無機化学工業株式会社というのは、私どもの会社と韓国の建設化学株式会社という会社との五〇、五〇の合弁の会社で、クロム酸の製造を目的として昨年の初めから蔚山に建設を始めたわけでございますけれども、現在いろいろな状況から、建設も相当おくれておりますし、また、最終段階の製品をつくる設備、いわゆる第二期工事がかなりおくれておりまして、この操業開始は現在、少なくとも半年あるいは一年ぐらい延びるのじゃないかという見通しでございますけれども、この工場につきましては、先ほど来、申し上げましたように、当社の徳山工場で現在やっておりますような完全無害化の工場をやりたいということで計画いたしておりますけれども、いま、実際の操業は相当先に延びるのじゃないかというふうな予定になっておることを申し上げてお答えといたしたいと思います。

土井たか子日本社会党

○土井委員 それは操業が延びるという事実は、いまお聞かせいただいたわけですが、これは韓国でも付近の住民の方々は、日本の国内で、いま六価クロムの問題に対して、こういう不安が日本の国民の中にあるということをよく御存じであります。そうなってまいりますと、日本の国内法というものの規制を受けないというふうなことで、やはり韓国において、これからどういうことになっていくかというふうな問題に、非常に注目する向きが、この節あることは、社長も御承知のとおりなのですね。したがって、それについての御方針なりお気持ち、あるいはこれからの段取りについての御意見を、一つは聞かしていただきたいということで、私はただいま質問いたしました。その点はいかがです。それだけを聞いて私は終わります。

棚橋幹一日本化学工業株式会社社長

○棚橋参考人 お答えいたします。  それは先ほど来、申し上げましたように、現在、私どもの徳山の工場が、職場の環境あるいは鉱滓の問題につきましても完全な処理をして無害化の工場にするということを申し上げておりますが、それに準じまして、それ以上の設備をやらなければ、特にそういう韓国のような外地で新しい工場を始めるにつきましては、その点は万全の策をとってやりたいというふうに考えておりますが、現在のところは、いろいろな需給関係その他もありまして、相当、操業の開始は延びるというのが現状でございます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 終わります。

渡辺惣蔵日本社会党

○渡辺委員長 米原昶君。

米原昶日本共産党・革新共同

○米原委員 時間が非常に限られておるので、私、簡単に二、三問、質問します。  第一に、日本化学工業の棚橋社長に聞きます。  先日、私の方の調査団が本社の方に行きまして、そのときには社長はおられませんで、専務さんに会いました。そのときの回答でも、それから社長さんが、その他で発言された中でも、一貫しておったのは、鉱滓の毒性については知らなかった、こういう見解。これは社長だけの見解ではなくて、社の見解だというふうにそのときにも感じたわけです。  しかし、その後はっきりわかってきたのは、東京の都議会でも問題になりましたけれども、私も徳山まで行って、そこで徳山市と会って写しももらってきて、わかった。あの徳山工場を建てるに当たって、徳山市との間に結ばれた公害防止の確約、これは四十五年ですね。この中でも、明らかに会社側がすでに鉱滓に毒性があったことを認めている内容なんです。しかも、先ほど田尻参考人からも報告があった、昨日、明らかになった問題ですね。これでも、昭和四十二年、このときに東洋火熱から問い合わせがあったわけで、その時点で、すでに毒性があることを会社としては認めているわけですよ。そうしますと、知らなかったいうのは、あなたはうそを言っておられる、これをはっきりと認めるかどうか、答えてもらいたいのです。

棚橋幹一日本化学工業株式会社社長

○棚橋参考人 これはたびたびの御質問でございますが、私どもは、鉱滓を捨てる当時におきましては、これが直接、人間の健康に審があるというふうには考えてはおりませんでした。それが、もし健康に害があるのであれば、そういうものを埋め立てその他に利用するということは考えられないのじゃないか。害と思わなかったからこそ、やってきたということでございます。

米原昶日本共産党・革新共同

○米原委員 それは明らかに、この確約書で答えている内容を見ますと、たとえば井戸水は飲料にも洗たくにも適さないのだとはっきり認めていますよ。それを知らなかったと言えますか。会社としては知っているのだ。社長個人は知らなかったかもしれないけれども、会社としてははっきり確約しているのです。知らなかったなどと、どうして言えるのですか。いままでずっと、うそをついてきた、このことを認めなさい。

棚橋幹一日本化学工業株式会社社長

○棚橋参考人 お答えいたします。  そういういろいろな問題で出ておりますけれども、鉱滓を埋め立てる段階においては、その物自体では直接、人間の健康には害がないのだ、しかし、植物とかあるいは水に溶けたものについては、いろいろな害があるから、それを注意してもらいたいということを申し上げたのでありまして、人間の健康被害については、私は、直接それが害になるというふうには、その当時はもちろん考えておらなかったわけでございます。

米原昶日本共産党・革新共同

○米原委員 議論する必要ないです。知っていて、言われたから確約したのでしょう。隣の銭高組に対しては何もやってやしない。言われなければやらない、あるいは世間で問題にしなければ、やらないというだけのことで、知っているくせに世間をだましてきたんだということはもう明白です。  それから、続いて聞きます。  徳山工場ですが、この鉱滓を還元焙焼して人工骨材をつくる。それを商品として、もう販売しておられます。時間がありませんから、出されております「人造骨材について」というパンフレットを見ますと、六価クロムじゃありません、大量の三価クロムが含まれていることは、会社の発表された記事にも出ております。そうして徳山で聞きますと、徳山大学とか桜ケ丘高校などという教育施設でも使われておるし、それから徳山工場の構内でも、砂利のかわりに露出してこれが使われております。当然、三価クロムが粉じんとして人体に吸収される可能性があるわけでありますが、この三価クロムの毒性について、どのような見解を持っておられるかということを聞きたいのです。そうして、その根拠を明確にしてもらいたいのです。発がん性は三価クロムの方が六価クロムよりも強いという学説が存在しておるわけでありますから、すでにこれは承知のことと思います。これを否定されるなら、この学説を採用しない根拠を説明していただきたいのです。

棚橋幹一日本化学工業株式会社社長

○棚橋参考人 お答えいたします。  三価のクロムの毒性につきましては、私ども、そういう本当の医学的な問題につきましては、いろいろな学説があることは存じておりますけれども、現在の日本の公害といいますか、毒物の規制の中にも、三価のクロムというものは問題にされておりませんし、現在のところは三価のクロムの有害性というものは、いろいろな環境問題の中でも取り上げられておりませんし、私は実際にそれが医学的にどうかということにつきましては存じませんけれども、もちろん一部の学者で三価のクロムも肺がんの原因になる可能性があるのだという発表がされていることは承知いたしておりますけれども、これはまだ一般的に証明されたことではございませんし、現在の段階では一応、三価のクロムというものは無害であると言われているというふうに存じております。

米原昶日本共産党・革新共同

○米原委員 では、そういう点で、どうもまだ明確な根拠は持っておられない。当然、三価クロムが問題になった場合に、責任を負うということだと思いますので、次の質問に移ります。  日本電工の社長の松田参考人に聞きます。  粟山工場の鉱滓による公害対策費用について、栗山町の方は昭和四十六年以来すでに約五千四百万円程度を使用されておりますが、このうち日本電工が負担したのはわずか九百七十八万円程度であります。筋から言えば、私は当然pppの原則で日本電工が全額負担すべきものと思いますが、どうか。これを否定されるなら、その根拠を聞きたい、こういうことであります。

松田信日本電工株式会社社長

○松田参考人 お答えいたします。  先ほど町長さんもお話しがございましたように、クロム汚染対策委員会ができておりまして、そことのお話し合いで、いま先生のおっしゃった金額を御寄付といいますか、お手伝いをさせていただいておるわけでございますので、今後も十分、栗山町と誠意をもってお話しをさせていただきたいというふうに考えております。

米原昶日本共産党・革新共同

○米原委員 さらにもう一問、栗山町長さんに聞きます。  私たちが聞いたところによると、住民の不安は非常に強くて、すでにメロンが栗山町産ということで売れなくなっているとか、大変な話を聞いております。また企業に対しては、この問題が大きくなってから、企業がまだ一度も現地に来ていない、何よりも顔を出して謝罪すべきが当然じゃないかというのが町民の意見だということも聞きました。こういう点について、町長、実情はどうでありましよう。

則武基雄北海道夕張郡栗山町長

○則武参考人 メロンの問題でございますが、私の町は、北海道のメロンの特産地ということで、古くからやっているわけでございます。実際に鉱滓が投げられたところから、産地につきましては二十キロないし三十キロ離れているわけでございます。そういうことで、私たちは、メロンそのものには六価クロムがないのではないかという認識をいたしております。しかし、消費者並びに市場等におきましては、現実に函館等におきましては、出荷した物が市場には半分しかかからなかった。しかも相当の値段を、半分にもたたかれたというようなことで、農民は、この六価クロムという関係の中においての値下がり、また、これからバレイショ、さらにはタマネギ等の特産があるわけでございますが、これらの影響の問題を非常に心配をいたしているわけでございます。  さらに会社からの問題でございますけれども、会社の副社長は、この問題が出てから、私のところに参ってきております。

米原昶日本共産党・革新共同

○米原委員 時間もありませんから、次に譲ります。

渡辺惣蔵日本社会党

○渡辺委員長 小林政子君。

小林政子日本共産党・革新共同

○小林(政)委員 日本化学工業の棚橋参考人にお伺いをいたします。  時間がございませんので、端的にお答えをいただきたいと思いますけれども、日本化学工業小松川工場に関係するクロムの職業病は、八月二十三日に労働省が中間発表したのを見てみますと、肺がんで死亡した人十一名、鼻中隔せん孔五十七名となっています。その後も次々と発見されていますし、今後も発見されて、その数ももっと増加するものというふうに考えられますけれども、このような職業病が大量に発生をしたのは、一体なぜだろうとお考えでございましょうか。

棚橋幹一日本化学工業株式会社社長

○棚橋参考人 お答えいたします。  先ほど来申し上げておりますように、私どもの会社は大正年間からクロムの製造をいたしておりまして、戦中、戦後を通じまして非常に職場の環境の悪い時代も事実ありました。それを二十年代、三十年代と次々にある程度の改良を加えてやってきておるわけでございますけれども、その間にいわゆる公害防止設備の技術的水準が低かったというようなことで、粉じんの予防とか、あるいは水溶液の管理とかいうことで、なかなか所期の目的が達せられないような現場もありまして、そういう点から、かなりのそういう鼻中隔せん孔者、あるいはさらに進んで肺がんというような患者も出たということでございますので、これは現在あらゆる追跡調査を綿密にいたしまして、できるだけの方々を完全な名簿をつくって、そして退職者あるいは下請の方あるいは臨時工というような方々についても、追跡調査の上、誠意をもってやっていきたいという考えでおるわけでございます。

小林政子日本共産党・革新共同

○小林(政)委員 これもすでに先ほど来から、お話しも出ておりますけれども、昭和三十二年の国立公衆衛生院の報告を見ますと、いわゆる日本化学についても具体的な調査がされておりまして、クロム作業の環境の許容限度は〇・一ミリグラム・パー立方メートル、こうなっておりますけれども、日本化学の小松川工場の場合は非常に劣悪な作業環境、このような指摘がされておりますし、具体的には、これについての改善方ということについての提案も、いろいろと東京都などを通じて、衛生院としても行ってまいりましたけれども、今日このような事態が発生しているということは、やはり日本化学が必要な対策を磁極的に講じてこなかった、いわゆる作業環境を改善していくという姿勢が非常に不十分であった、これは私は会社側の落ち度ではないかというふうにすら思うのでございます。このような職業病が大量に発生したということは、むしろ会社の怠慢ではなかったか、私はこのように考えます。  先ほど社長さんは、この問題について、いろいろと改善のために努力をしてまいりましたけれども、技術水準等も低くて、結局は所期のような成果というところまでは持っていけなかったということをお述べになりましたけれども、私が調査いたしましたのでは、三十九年にいわゆる職場手当を減給しているのですね。しかもその理由は、いわゆる公傷の発生度というものが、労災の認定が減っている、汚染度が落ちている、障害の発生度というものについても若干、改善されている、こういうことで職場手当が減給されているのです。これはお帰りになって、もしあれだったら御調査されてみてください。私は現場の多くの人たちから聞いてきました。こういうことを考えますと、いまのような、これだけの肺がんだとか、あるいは鼻中隔せん孔の患者さんが出ている。しかもこういうことを改善して努力をしてきたと言われながら、職場手当を三十九年に減給している。一体これはどういうことなのか、お答えをいただきたいと思います。

棚橋幹一日本化学工業株式会社社長

○棚橋参考人 お答えいたします。  最初の職場手当を減給したということは私、わからないのですけれども、そういう事実があるかどうか、よく調べたいと思います。  それから公衆衛生院の調査なりによりまして、その後いろいろな改善をしてきたことは前にも申し上げましたけれども、なかなかそれが適切にいかなかったということをおわび申し上げると同時に、大体、三十九年ごろからは、いわゆる労働衛生センターその他の指導によりまして、相当、思い切った改良設備をいたしまして、四十年ごろからは、その効果が相当、発揮してきたというのが現状だと思います。

小林政子日本共産党・革新共同

○小林(政)委員 先ほど追跡調査を行っていくというお話しでございましたけれども、この場合には本工、下請工を問わず、退職者については徹底的な追跡調査を行うと同時に、やはり会社が補償していく、こういうことを行うべきだというふうに私は考えますけれども、いかがでしょうか。  時間の関係でもう一点、一緒にお伺いをさせてもらいますけれども、それと同時に、埋立地周辺住民の健康調査、この問題についても八月の二十一日、堀江町、小松川地域、あるいは大島の地域一応、実施をいたしてきておりますけれども、まだ最終結論は出てはおりませんけれども、しかし、この問題についても一回こっきり健康調査をやれば、その結果を見れば、もうこれで終わりということではないと私は思うのです。この問題については、一定期間、系統的な定期的な検査というものが必要ではないか。また地域についても、江戸川の堀江、小松川地域あるいは大島地域という限られた部分ではなく、相当これは、先ほどもお話しが出ておりますように、東亜オイルのあの地域だとか、あるいはまた小島町二丁目、の公団住宅のところにも堀江町から砂じんが飛んできて、高岡住宅で、入居してからまだ非常に期間は短いのに、何となく気管支その他の異常を感じる、こういうような訴えも出ておりますし、あるいはまた萬西の地域にも、至るところにやはりこの問題は、鉱滓の埋め立てとの関係でいろいろ出てきております。地域を拡大をされて、そしてその上で補償についても十分これを行っていく姿勢を持っているかどうか、あるいは健康調査を系統的に行っていかれる、こういうお気持ちをお持ちかどうか、見解をお伺いしておきたいと思います。

棚橋幹一日本化学工業株式会社社長

○棚橋参考人 お答えいたします。  最初の旧従業員並びに下請あるいは臨特工の方々に対する補償の問題ですが、これはいわゆる社会常識に従って、誠意をもってやっていくつもりでございます。  それから、地域住民の健康診断の問題でございますが、これは現在、江東、江戸川地区を通じまして相当、広範囲にやっておりますけれども、だんだん地区で問題になるようなところがあれば、これもやはり健康診断をやっていかなければならないと思いますし、また、一遍やればいいというものではないので、健康診断ということでありますから、適当な時期を見て、またさらに追跡調査ということも必要な時期が来るのじゃないかというふうにも考えておりますけれども、現在のところは、とりあえず一番、鉱滓の大量に埋まっている地域の方々の診断をまずやって、それでそれをだんだんに広げていくということじゃないかというふうに考えております。

小林政子日本共産党・革新共同

○小林(政)委員 いまの点は確認をいたしておきます。  時間がもうございませんので、最後に私は、先ほど田尻参考人からもお話しが出ておりましたけれども、日本化学が東洋火熱に提出をいたしました安全確認書、きょうの朝日新聞を見ますと、日本化学の今坂総務部長の、早速、調査いたしますという話も書かれておりましたけれども、会社側は責任を持って、これをひとつ提出をしていただきたいと思います。  それから、この中で記載され、あるいはまた先ほど御報告もありました井戸水が洗たくだとか飲み水としては使用できないとか、あるいはまた埋めてある場所の近くの池などには、魚などは育成できないとか、あるいは植物の害について、鉱滓のままでは生育しない、こういうことをおっしゃっている、その根拠は何なのかということが明らかになるような、そういう具体的な資料をひとつ、ぜひ一緒に提出をしていただきたい。  さらに、鉱滓を投棄いたしましたのは一体どこに幾ら、あるいはまた投棄年月日、これらの具体的な実態がわかりませんと、対策の立てようもないわけですね。先ほど、古いものはわからないというお話しでしたけれども、個人ですら、いろいろ努力をして相当の調査もやられている。まして下請その他いろいろなところに聞いて、これはもう全力を挙げて調査をすべきだというふうに思いますし、これの全資料を国会に提出していただきたい。  以上三点をお願いして、私の質問を終わりたいと思います。御答弁だけお願いします。

棚橋幹一日本化学工業株式会社社長

○棚橋参考人 お答えいたします。  例の堀江地区における問題につきましては、その当時の事情をよく調べまして御報告申し上げますし、それから鉱滓を埋めた地域の全貌につきましても、これはいま極力、会社、工場で総動員してやっておりますけれども、何分、相当古い地域がありますものですから、不明確な点が多々あると思いますが、できるだけ整備したものを調査して、御報告するようにいたしたいと思います。

渡辺惣蔵日本社会党

○渡辺委員長 岡本富夫君。

岡本富夫公明党

○岡本委員 非常に時間がなくなりましたから、質問に対して明確に簡単に答えてください。     〔委員長退席、登坂委員長代理着席〕  まず、日本化学工業協会の専務理事さんにお聞きしますが、四十四年秋の時点におきまして、日本化学の鉱洋を千葉県の南部地区に埋め立てをする場合におきまして、日本化学工業の下請会社でありますところの共立運保、ここが日本化学工業協会の鉱滓の無害証明書を持っていきまして、その当時の大地主さんの七人の農家を説得しておるわけです。この無害証明書を日本化学工業協会が発行しておるわけですが、これについてひとつ、はっきりした御答弁をいただきたい。

長澤榮一日本化学工業協会専務理事

○長澤参考人 ただいまの御質問は、日化協、日本化学工業協会の私の前任者の大島専務理事が、四十五年十二月十七日付で日本化準工業株式会社に出しました意見書だと思います。したがいまして、四十四年の時点のことにつきましては、私は存じておりません。  この意見書は、日本化学工業株式会社の依頼によりまして、同社提出の分析結果に基づいて大勘竹治氏が同社に提出したものでございます。名前は、協会専務理事大島竹治の名前で提出されております。本意見書は、当時、協会での環境問題を審議しております公害対策委員会と言っておりますが、こういうふうな委員会にも諮っておりませんし、また、当協会の意思決定機関である役員会の議を経たものではございません。資料も残っておりません。したがいまして、私どもも、当協会の意見ではなくて、大島竹治氏の専門象としての個人的意見であると考えております。

岡本富夫公明党

○岡本委員 そうすると、日本化学工業協会は、専務理事さんが勝手にそういった証明書を発行してよいようになっておるわけですか。少なくとも社団法人の認可を受けておるところの、相当、社会的にも信用のある、また責任のある協会が、協会の一専務理事の名前で、そういった無害証明を発行する資格があるのかどうか、そういう定款になっておるのか、ひとつお聞きしたい。

長澤榮一日本化学工業協会専務理事

○長澤参考人 当協会は、最初、私が申し上げましたとおり、任意団体でございまして、社団法人ではございません。専務理事は当協会を代表する権限は持っておりません。  この意見書でございますが、提出先は日本化学工業株式会社でございまして、いわば当協会の会員でございます。会員内部の意見ということで大島竹治氏はこの意見書を出したものと思っております。以降、これがどのように使われたかは、私、存じておりません。

岡本富夫公明党

○岡本委員 昭和四十六年三月十日、決算委員会におきまして、わが党の鳥居委員が、この当時のことを取り上げて質問しているわけですが、通産省の政府委員からの答弁によると、「日本化学工業協会は、日本の代表的な化学工業社をもって組織されております社団法人でございます。」これは政府委員がうそを言ったわけですね。通産省がうそを答えているわけですね。  あなたのいまの答弁によると、ただ大島さん個人がこれを出したのだ、こういうように答弁をされておるわけでありますけれども、これを日本化学工業さんがどういうふうに使ったか知りません。私ども調査いたしますと、日本化学工業協会でそういう分析ができるシステムも別にありませんし、これがどういうように使われるか私はわかりません、こういうお話しでありますけれども、少なくともこの日本化学工業協会というのは業界のトップクラスが集まった協会であります。その専務理事が発行したと言いますけれども、この日本化学工業協会の判を押してあるわけですから、これは相当権威があるものと、一般の農家の方は受け取るわけですよ。これに対してあなたの方は、私の方は全然責任ありません。前任者でございます。こういうことであるが、日本化学工業さんが当時、埋め立てについて無害証明をするためにこれを使用されておるわけですから、これはやはり化学工業協会全般の責任である、私はこういうふうに言わざるを得ないと思うのですが、その点いかがですか。

長澤榮一日本化学工業協会専務理事

○長澤参考人 この意見書は大島竹治氏の個人印と、それから先生御指摘のように、横の方に協会印が押してございます。ただいま大鵬前専務理事は脳軟化症で倒れておりますので、私も当時のいきさつを詳しく聞くことができませんけれども、恐らく当協会に勤務しておる専務理事の大島個人の意見であろうということで、両方の判を押したのではないかと思っております。また、当協会は任意団体でもございますし、大島竹治専務理事が当協会を代表する権限があるわけのものでもございませんし、通常の方が御判断されれば、これは学識経験者としての大島竹治氏の意見見である、こういうふうな判断をいたすかと思います。  ただ、先生御指摘のように、協会印が押してあったという点につきましては、私どもの協会というのは任意団体、いわゆる法人格なき社団でございますので、いわば会員の一つの集まり、グループでございます。したがいまして、協会印の効果というものは法的効果は全然ございませんのでありますが、大島さんのこの意見書が、何かもっともらしく見えるというような点はなきにしもあらずで、そういうふうな紛らわしかった点につきましては、当時の協会印の管理は適当ではなかったかと思っております。ただし、大島専務理事が協会印を管理しておりましたので、当協会といたしましても、この点は、大島竹治氏の当時の行為につきましては、判を押した、協会印が押してあるという行為につきましては、遺憾なことであると思っております。

岡本富夫公明党

○岡本委員 専務理事が、あなたもそうして勝手に協会の判を押しますか。そうじゃないでしょう。少なくとも協会の判を押すためには、やはり協会の皆さんの同意を得なければ、工業協会の判は押せないと私は思うのですよ。その工業協会は、三菱樹脂ですか三菱化学ですか、あるいはまた住友化学、こういう一流のそうそうたる日本の企業、化学工業の会社が集まった社団法人でしょう。任意団体としましても、これはまあもう一度、通産省に詰めなければいけませんけれども、一般的には日本化学工業協会というのは、そういうような責任が相当あると思うのですよ。しかもその判が押してある。それは大島さん個人がやったので、私は知りません、あなたも二代目の専務理事じゃないですか、その次の。それについては、やはり化学工業協会で判を押した限りは、ある程度、責任を持たなければならぬと私は思うのです。  こればかりやっているとあれですが、そこで、棚橋社長さんにお聞きしますけれども、あなたが四十六年以前に鉱滓についての無害であったという一つの根拠として、テレビを見ておりますと、この日本化学工業協会の無害証明書を出していらっしゃる。そこで、四十四年秋に千葉県の行徳南部土地区画整理組合の皆さんを説得するために、それを使用しているわけですね。その無害証明を使用するに当たって、工業協会の会長や、あるいは皆さんに、あなたも工業協会の一員なんですが、これを許可を得てやったのか、あるいは黙ってそれを使ったのか、その点をひとつお聞きしておきたい。

棚橋幹一日本化学工業株式会社社長

○棚橋参考人 ただいまの点についてお答えいたします。  日本化学工業協会の出した、そのいわゆる証明書というものは、これはその当時の大島専務の、つまり個人的な学識経験者としての意見として出したものでございまして、その件につきまして工業協会として全部の理事会なり会長なりの議を経ているものではございませんことを申し上げます。

岡本富夫公明党

○岡本委員 そうしますと、先ほど申しました千葉県の行徳南部の埋め立てについて、あなたの方の鉱滓を使うについて、あなたの会社だけでは無害証明——当時農家の方々は、その埋め立てに鉱滓を使うについて、非常に疑問を持っているわけですから、その証明をするために、この日本化学工業協会の判を押してあるそれを、あなたの方であえて使用された。ということは、翻って言えば、無害証明ができなかったのではないか。     〔登坂委員長代理退席、委員長着席〕 そのためにあなたの方から、工業協会の専務理事さんか知りませんが、大島さんに言うて、この無害証明をつくってもらって、そしてここを説縛しておるわけですね。ということは、なかなか当時の千葉県の埋め立てについてもこれは問題があったわけです。それなのに四十六年前は私は無害であったと信じております。その証明として、あなたが日本化学工業協会のそれを使用しているわけですか。そうしますと、あなたの方では絶対無害であるということの証明ができなかったのではないですか、いかがですか。だから、工業協会の専務理事にまで、そういう判を出させた。その点、棚橋さん、いかがですか。

棚橋幹一日本化学工業株式会社社長

○棚橋参考人 お答えいたします。  有害、無害の問題につきまして、たびたびお答え申し上げておるわけですけれども、その当時、私どもとしては、もちろん、これが直接、人体に影響を及ぼすような有害なものではないということは確信いたしておりましたけれども、しかし、何といっても、そういう新しい物を使うについては、何らかの一つの学識経験者としての意見があれば——会社だけで無害だ、無害だと言うよりは、そういういわゆる第三者といいますか、学識経験者の意見を入れた方がいいという考えから、当時の日本化学工業協会の専務理事の大鳥氏の証明書をつけて出したというのが実情でございます。

岡本富夫公明党

○岡本委員 その点がちょっと。あなた、新しくこういうものを使うについての証明だ、こういうようにおっしゃいますけれども、すでに昭和三十九年の十一月から四十三年の十月に至る間、江戸川区の工場敷地あるいは小学校の校庭の一部に、もうすでに使用しているわけですよ。新しく千葉県で鉱滓を使用するためじゃない。それは四十五年に使うやつだ。三十九年、東京都内ですでにあなたの方は出しているわけですね。ですから、新しくこれを証明するために、この日本化学工業協会の証明をとったのではなくして、当時、鳥居委員にも聞きますと、千葉県において、四十五年において、この埋め立てについては相当、抵抗があったのですよ。それにあなたの下請の共立運保さんがどうしても説得するためにということで、あなたの方でその工業協会の専務理事を利用しているわけじゃないですか。いまの答弁ずいぶん違いますよ。この点についてもう一度ひとつ明らかにしておいていただきたい。

棚橋幹一日本化学工業株式会社社長

○棚橋参考人 お答えいたします。  私どもといたしましては、もうその前から江戸川地区その他には埋め立てをしているわけですけれども、新しい地区でもありますので、特にそういうことの証明書があった方が通りがいいという判断から、やったことで、特にそのために私どもが化学工業協会を利用して、そういうことをやらしたという作為は全然ございません。もちろん、その当時、何らかのそういう書類があれば、埋め立てるについては埋め立てる地区の連中も非常に安心するのじゃないかという考えはありましたけれども、特にそのために私どもがつくらしたということではないというふうにお答え申し上げておきます。

岡本富夫公明党

○岡本委員 そこで、市川市で農民の方が、あなたの方の鉱滓の土地のサンプルを出して、日本分析化学研究所あるいは東大、こういうところで調べますと、東大では十三万八千ppmから四万ppm、日本分析研では六万八千から八万五千ppmというような高い六価クロムのあれが出ているわけですね。これは昭和四十六年の三月十日の決算委員会において鳥居委員が指摘しておるわけでありますが、その後、労働省あるいは通産省、その方から、あなたの方に、いろいろ連絡あるいは指導がありませんでしたか、東京都の方と両方お聞きしたいと思うのですが、いかがですか。

棚橋幹一日本化学工業株式会社社長

○棚橋参考人 お答えいたします。  その点につきましては、その当時は労働省からも通産省からも、その問題につきまして特に御指示なりあれはございませんでした。

志賀美喜哉東京都副知事

○志賀参考人 事実を調査いたしておりますが、恐らく所管外ということで来なかったのじゃないかと思います。

岡本富夫公明党

○岡本委員 わかりました。これは明日の委員会の政府に対する質問のためにお聞きしたわけであります。  そこで、次に日本電工さんにお聞きしますけれども、この間、徳島工場に参りましたときに、鼻の穴の鼻中隔せん孔ですか、この穴の大きさによって労災の認定を受けるようにしておるのだというような、あなたの係の方からのお話しがあって、皆失笑したわけですけれども、ということは、なるべく労災の認定をさせないように、なるべく出さないように、現場ではこういう会社の態度です。あなた、そんなことはないとおっしゃるけれども、私、現場に行って直接調べまして、そういう態度ですから、これはひとつ改めてもらいたい。これを要求して、後で御答弁いただきます。  次に、日本化学さんの徳山工場、これはもう絶対世界一のすばらしい工場だという話でありましたが、確かにいまはよくなっておりますけれども、あなたの方で四十七年以降この鉱津を黙って海洋投棄しておった、そしてそれが船が沈んで、その沈船の事故によって初めて、そのまま海洋投棄しておったということがわかって、徳山市議会においても相当な問題になったことがある。したがって私は、お二人ともこういう企業姿勢、わからなければ知らぬ顔をしてやってしまう、判明したらやらなければいかぬ、これを何とかするというような、この姿勢を何とかして改めてもらわなければならないと私は思うのです。この点について、後で御答弁いただきますが、それと、日本化学さんには両方ともでありますが、被害者の救済について、先ほど話を聞いておりますと、会社が支出できる範囲内においてしか救済ができないのだということのようですが、やはり皆さん方が被害を与えたわけですから、これは少し長くかかっても全部、救済をして、あるいは補償していくのだというこの姿勢がやはりなければならないと私は思うのです。この二点をお二方からお聞きしておきたい。  それから最後に、時間がありませんから、田尻参考人からお聞きしたいのですが、六価クロムは、これは三価クロムにすると無害なのだということを言われておりますけれども、東京都としては、あなたの方の考えとしては、三価クロムの方の規制、これはどういうふうに考えていらっしゃるのか、この点を続けてお聞きいたしまして終わりたいと思います。

棚橋幹一日本化学工業株式会社社長

○棚橋参考人 お答えいたします。  徳山工場における海洋投棄の問題と、それが不幸にして沈没いたしまして事件を起こしたことに対しましては、その当時いろいろ問題になりまして、その後、会社の姿勢を改めまして、絶対にそういう事故を起こさないようにということでやっておりますし、また将来とも事故が起きなければやらないというようなことでなく、工場の職場の環境にしましても公害問題にしましても、進んでやるように努めたいと思います。  なお、救済の方も、これは誠意をもって続けてやっていくつもりでございます。

松田信日本電工株式会社社長

○松田参考人 お答え申し上げます。  徳島に先生がおいでになりましたとき、そういう話が出たように私も聞いております。これは鼻の穴の大きさということで皆さん方が非常にお笑いになったということでございますけれども、私としては非常に申しわけないことを説明いたしたと思うのでございまして、鼻の穴の大きさでどうのこうのということでございませんで、やはり基準局で御指定になっておりますような等級に従いましての鼻そのものの障害に起因して、基準局で段階をおつけになり、御判定になるものだと私は了解しております。  それから救済の点につきましては、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、現在いる者はもちろんでございますし、やめました者も私どもの社員でございますし、それから協力会社の人間につきましても身体検査を一緒にやっておりますし、したがいまして、労災で認定された者につきましては、私どもが責任を持って対処していかなければいけないというふうに考えております。

田尻宗昭東京都公害局規制部長

○田尻参考人 私どもは三価クロムは無害とは決して思っておりません。学説によりますと、六価クロムと三価クロムは、あるいは三価の五十倍あるいは百倍というような六価の方の有害性を論ずる向きもございますけれども、それにしましても、三価クロムそのものは水溶性ではございませんので、逆に体内に蓄積される可能性も強い、したがって、発がんの危険は非常に心配をしなければならぬという説がございますし、これはやはり十分、注目をしなければならないと考えておりますので、近く拡大専門委員会をつくりまして、この専門委員会で衛生、医学あるいは化学等の先生を網羅いたしまして、ここでまず第一に、この三価クロムというものはどうなのか、三価クロムの有害性はどうか、果たして安心できるかどうか、私どもはその点で決して軽率な判断はしたくない、十分、専門家の慎重な検討をお願いしたい、このように考えております。

渡辺惣蔵日本社会党

○渡辺委員長 質問漏れがありましたので、一問のみに限りまして質疑を許します。土井委員。

土井たか子日本社会党

○土井委員 この節、委員長を通じまして特に確認をしておきたいことを一つだけ申し上げます。  本日、棚橋参考人は、今後工場内の労働安全管理また健康管理は言うまでもなく、関係住民の方々へも安全保障対策に万全を期したいという御発言でございました。  そこで、私、先ほど提示いたしましたパネル写真なんですが、このパネル写真によりますと、蔚山工場の既設部において、このようにたれ流しがございまして、しかも、このたれ流しの部分で作業している人がはっきり写っております。大変、気にかかる。このたれ流しの物質は一体何なのか、現在に至るも常にこのような状態なのかということを、ひとつ参考人を通じまして調査と報告をしていただきたい、このように思いますが、御了承いただけるかどうか、ひとつ委員長を通じまして御確認をお願いしたいと思います。

渡辺惣蔵日本社会党

○渡辺委員長 よろしゅうございます。

棚橋幹一日本化学工業株式会社社長

○棚橋参考人 お答えいたします。  そのパネル写真のたれ流しということですが、いまは建設中の工場なんですけれども、まだ作業はいたしておりません。     〔土井委員、写真を示す〕  それでは、またこれは調査しまして御報告いたすことにいたします。

渡辺惣蔵日本社会党

○渡辺委員長 調査して報告してください。  以上をもちまして、午前中の参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人におかれましては、御多用中のところ、本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  この際、暫時休憩いたします。     午後二時七分休憩      ————◇—————     午後二時二十一分開議

渡辺惣蔵日本社会党

○渡辺委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前に続いて六価クロム汚染問題について、参考人から御意見を聴取いたします。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ、また遠路にもかかわらず本委員会の調査のために御出席いただき、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  御承知のとおり、六価クロム汚染問題は、いまや各地において大きな社会問題となっており、本問題は早急にその対策を迫られているところであります。当委員会といたしましても、本問題の対策樹立のため、本日は皆様の御出席をいただいた次第であります。  どうか参考人におかれましては、それぞれのお立場から、忌憚のない御意見をお述べいただきたく、お願いいたします。  なお、議事の整理上、御意見の開陳は、おのおの十五分以内に要約してお述べいただきたく、お願いいたします。  それでは武藤参考人からお願いいたします。武藤参考人。

武藤暢夫関東学院大学教授

○武藤参考人 関東学院大学におります武藤暢夫でございます。  お手元に資料は差し上げてございますでしょうか。

渡辺惣蔵日本社会党

○渡辺委員長 配りました。

武藤暢夫関東学院大学教授

○武藤参考人 私の申し述べます立場は、一応、衛生工学という、ちょっと皆様方にはお耳になれない分野かと思いますが、要するに、その大きな一環といたしまして廃棄物処理問題があるわけでございます。そういった立場から、お話し申し上げるということでございます。  第二点は、私の立場といたしまして、昭和四十八年十月から東京都におきまして、千葉の方へ延びていきます都営十号線、これの工事に伴い、黄色い鉱滓らしきものが出てきた、これに対して対策というふうなことで、直接この問題にタッチしたということで、まあ今日この席に参考人として申し述べる立場になったのかとも思います。  次に第三番目に、若干の資料を差し上げてございますが、実は御連絡によりますと、とにかく今回の六価クロム問題に関連して、内容は制限しないから、おまえの知っていることを述べてもらえばよろしいということでございましたので、若干、十五分は非常に苦しいような項目の並べ方をいたしましたけれども、この中から大体かいつまみましてお話しを申し上げる。以上、三点をまずもってのお断りとして、お話しを申し上げたいと思います。  それで当面、私が体験いたしました問題の背景でございますが、ただいまも申し上げましたように、私ども前から六価クロム問題をやっているわけではございません。むしろ水の方が私の興味の対象であったわけでございますけれども、まあ、先ほど申しましたようなことから、まず昭和四十八年三月に初めて何か鉱滓らしきものが、東京都において地下鉄工事をしようと思って作業を始めたところが出てきた。それに対して約半年間の調査をなさった。その調査の方法というものが、一体これで、妥当であったのかどうかというのが第一の課題でございました。また、その調査結果というものをひとつ解析をしてくれというのが第二の課題でございます。第三の課題は、地下鉄工事をもし進行させるとするならば、具体的にどういうふうな対策を立てておくべきか、つまり工事のやり方でございます。第四番目が、もし今後、一般的にかような、まあ土壌汚染という表現を、東京都ではその当時、使っておられましたけれども、起きた場合において、どのような考え方で、どういうふうな対策を念頭に置きながら、進めていったらよいだろうかという、ごく一般的な問題について提言をしてくれ。以上の四点がその課題であったわけでございます。問題の背景まだございますけれども、時間の都合上、そういったような問題から入っていったということでございます。  そこで、すでに御承知のことかと思いますけれども、このクロム塩工業、それからクロム塩の利用という問題につきましては、すでにお話しもあったかと思いますけれども、まあ六価クロム、六価クロムと言っておりますけれども、クロム塩鉱滓と申しますのは、実はクロム鉱というものを石灰あるいは炭酸ソーダ、そういったようなものと一緒に焼成いたしまして、まず乾燥、粉砕等するわけでございますが、千二百度から千三百度で焼きます。そのようにいたしまして今度、温湯をぶっかけまして、そしていわゆるクロム酸ナトリウム、クロム酸ソーダというものを溶出する、溶け出さしてクロム酸塩というものを取り出すわけでございますが、その中にまだ含有して残っております。これが大体〇・二%から四%ぐらい、ですから二〇〇〇ppmから四万ppmぐらいの間のクロム酸塩として残ってまいります。これが今回、直接、対象となったものとみなすことができるわけでございますが、これが生活環境に放出される。一方、労働環境におきましては、その焼く工程あるいは溶出作業のときに、つまり、ごく端的に申しますと、水をぶっかけますときに粉じんが立ち上るといったような問題から、どうしても、はだ、あるいは一日、一万リッターの空気が通るという鼻の穴、ここら辺のところが、やはり当面、被害の対象になるものかと思われますけれども、そういったような問題で、実は労働環境におきますところの被害の問題と、それから、まだわかりませんけれども生活環境にどのような影響が出てくるか、こういったことの二つに、やはり分けて考える必要があろうかと思います。  いま申しましたように、クロム酸塩あるいは重クロム酸塩、こういつたようなものは、メッキあるいは腐食防止の目的で、ビル等の冷却水に腐食防止剤として使ったりいたします。それから革なめしに使うこと、あるいは写真あるいは顔料、特に顔料におきましては、黄色い物は、今日の状況をつかんでおりませんけれども、クロム酸鉛という形で、ペイント、黄色い顔料あるいは絵の具あるいは子供の使うクレヨンといったようなものにまで入っていた事実があるわけでございます。これは私、直接、分析はしておりませんけれども、物の本を見ますと顔料のところに、そういったような記載が出ております。まだ使っているということになりますと、これは考え直さなければならぬ問題だと思います。  クロムには、三価と六価というクロムがあるわけでございますが、それにちょっと書いておきましたけれども、三価のクロムというものは酸化されて六価のクロムになって、六価のクロムは、かなり化学的に強い反応を与えませんと三価にはなりません。現在の段階においては、自然環境では六価クロムは三価クロムには、きわめてなりにくいのではないかと思います。しかしながら、そこにいろいろの他の金属の触媒作用等によって、一回、三価になったものは六価のクロムに、また自然環境でもなり得ないということは断言できません。手前どもでも若干の研究をしておりますけれども、いまのところ自然環境では、また再び六価のクロムになるということはないように思われます。  このクロム塩というのは自然界に実際どのくらい存在するのかということを、物の本によって調べてみますと、多くの場合、六価クロムというよりも全クロム、恐らくこの中身は、ほとんど三価のクロムであろうと思いますけれども、そこに番いてあるような数字が一応、並べられております。一々、御説明は省略いたしますが、数字としてごらんいただきたいと思います。  それから「人体への影響と諸基準」ということで、項目だけはちょっと並べておきましたけれども、物の木によりますと、ドイツでは明治四十四年にすでに肺がん死というような形跡があるような報告があるらしい。大正八年には農商務省から金属中毒の予防注意書ということで、これは潰瘍だとか鼻中隔せん孔、せき、あるいは胸が痛くなるとか、気管支炎のもとになるのだといったようなことも、やはり書いてあるようでございます。しかし、私は人体への影響という面につきましては全くの素人でございますので、後ほどの先生方のお話しに譲りたいと思います。要するに私の感じといたしましては、六価クロムというのは、皮膚にいたしましても、あるいは粘膜等に対しましても、きわめて直接的な影響を与えるものであろう。私などにもよく聞かれますのは、三価のクロムというのは一体、毒性がどうなのか、そしてまた六価のクロムと三価のクロムとは、どのくらい毒性が違うのかというふうな御質問があるわけでございますけれども、同じ土俵の上で、この六価と三価とを並べて毒性を論ずるということはできないのじゃないだろうか、つまり、やけどというような障害、それからいわゆる肺がんの障害というふうなものを、同じ土俵の上で比べるということもできまいといったような、いわゆる毒性の有害性の出方に違いがあると思われるというふうに、プレス関係の方々にもお話しをしてまいりました。素人でございますので余り立ち入ったことは差し控えたいと思いますが、どうも猛毒という言い方は、私は少々、苦々しく思っておるわけでございます。まあ少し言い過ぎの感があるということでございます。猛毒というふうなことを聞きますと、その生活環境で、その上に住んでおられる方は、どういったように印象をお持ちになるかということも配慮しながら、やはりこの問題を処置してまいらなければならぬだろうということでございます。  あと「諸基準」につきましては一々、申し上げませんけれども、私の調べました範囲内で作業環境におきますもの、これはACGIHというのがございますけれども、そこに特にクロムというところで、金属不溶性塩類というもので人体に職業性肺がんを発生させることが認められたとして、一ミリグラム・パー・キューピックメートル・エア、一立方メートルの空気の中に一ミリグラムというふうな記載が一九七四年版のACGIHに載っております。あと飲料水中あるいは水域の環境基準、排出基準あるいは産業廃棄物といったところで、このような形の数字が出ております。  次に汚染土壌に対する対策の問題でございますけれども、これはまず第一にやはり「封じ込め」。これは私どもが東京都の専門委員会で使いましたのが、初めてとは申しませんけれども、われながらいい言葉であるなというふうに感じておりますけれども、いわゆる封じ込め、つまり第一義的には物理的にとにかくそっと寝かしてしまおう。地下水がある場合には、これはまた話が別になってまいりまして、特別な配慮が必要でございますけれども、そして還元だとか無害化だとか——無害化というのはちょっと言い過ぎでございますけれども、こういったような処置は、封じ込めの補強的に使うのであるというふうに御解釈をいただく。報道関係のものによりますと、まず鉄で還元するのだということが真っ先にどうも出てきておるようでございます。しかしながら、鉄で還元するというのは、乾いた物同士、つまり硫酸第一銭を使いまして、これは硫酸第一鉄の結晶とスラッグとをまぜても反応いたしません。さらに、これが酸性でいきますと非常に早く反応する。アルカリ性ではきわめて徐々に六価クロムが三価クロムに還元されていく。そして水にお互いに溶け合いませんと、これは反応をしないわけでございます。絶対しないとは申しませんけれども、有効な反応は期待できないわけであります。したがいまして、対策も一緒にお話ししてしまいますならば、汚染土壌がある。これは雨が降りますと、表面に出てまいりましたところの六価クロムつまり黄色い花は、溶けて下に沈んでまいります。溶け込んで下へ下がってまいります。しかしながら、また日照り等が続きまして上が乾燥いたしますと、毛管現象で、その水は六価クロム塩を含みながら上へ出てきて、また花が咲く。したがいまして、封じ込めた土壌の間には必ず遮断層を設ける、遮断層にいわゆる還元剤というものを敷こうじゃないか、こういうことでございます。ですから、現在のように、いろいろテレビ等で見ておりますと、また現地で私ども二、三見ましたけれども ただ還元剤を上方ら、ぱっぱか、ぱっぱか、たとえば硫酸第一鉄をまくというような問題は、ソリッド・ソリッド・フェイスでは反応は期待できない。水に溶かした場合には空気酸化の方がむしろ早いだろう。ですから水に溶かしてまいても、効果はむしろ、みんな空気中の酸素が硫酸第一鉄に食われてしまうという結果、つまり汚染土壌の上に積層して土壌をかぶせて、そして大体、一平米当たり二十リットルから三十リットルくらいの水をまく。そうするとその硫酸第一鉄と六価クロム塩汚染層とが、上のちょうど水で接したところで押さえられる。こういうふうなことのようでございます。それはいずれも有害性減殺処置というものを併用して封じ込めを行う。なお、封じ込めの中には、セメント固化というふうなものも、当然これは漏れ出ないようにする一つの封じ込めでございます。  「撤去移動処理・処分」。これがなかなか、撤去後、運び出す、あるいは積み込みのときに粉じんがやっぱり立つ、あるいは市民感情をかなり刺激するといったような問題等がございますでしょうし、最後にどこへ持っていくかという問題で、大変むずかしい問題があるわけでございます。  「いわゆる無害化」。六価クロム塩のみならず、これは一般に起きました場合に、金属の場合は大変むずかしゅうございますけれども、できるものならば無害化というふうなもので処置することも可能であるといったようなことでございます。  ちょっと、そこの表を見ていただきたいと思いますが、東京の大島九丁目のG地区という地区がございますが、そこでは大体、表層から一メートルから五・五メートルまでが瓦れき層でございます。この瓦れき層に、いわゆる建築廃材等と一緒にスラッグが捨てられたというふうにみなされます。ですから、ここが汚染層でございます。その下にシルト。いわゆるシルトと申しますと、小学校のとき、われわれが粘土細工で使った粘土、あれの層であるというふうにお考えいただける。これは水が横にも縦にも走りません。それから、その下に細砂層でございます。細砂層は、これは水はたまっておりますけれども、れき届のように地下水が走るという層ではございません。ですから、この中にもし、れき層というものがありますと、地下水の汚染にダイレクトにつながってくる。幸いにして二十メートルまではれき層がございませんでしたので、封じ込めということも、地下水汚染には、この場合そういう土層構成であるならば比較的、危険性も少ないのではないだろうかということで、その封じ込めというものを、ただいま御説明申し上げたような形で進言申し上げたわけでございます。  最後に「体験からの所見」でございますけれども、これはちょっと軽重は順不同でございますけれども、この順序で申し上げますならば、まず、われわれがテレビとか新聞とかを読みます場合に、ただ寝っ転がって、これは対岸の火事だと思っている場合には、猛毒あるいは鼻もとろけるというような表現も結構だろうと思います。しかし、それだけの注意を払わなければならぬだろうと思いますけれども、やはり余りひどい表現というふうなものは、そこの土地に住んでおられる方を、どのくらい刺激するか、非常に真剣な表情で訴えられております。ですから行き過ぎな情報提供というふうなものは、私は差し控えるべきではないかというふうに思います。  それから先ほど申しましたように、ただ上から散布する表面散布といったような形の応急的な処置、あるいは今後、恐らく封じ込めでは最後は、コンクリート等で表面粉じんが立たないような形で処置することが、一つの有力な方法だろうと思いますけれども、これにつきましても、かなり正しい、少なくとも理論的には矛盾のない方法でやらなければ、省資源、省力、省エネルギーに全く相反する対策をやっているということに相なるわけでございます。  そしてさらに、そういったような恒久的対策を、たとえしたにいたしましても、跡地は公共管理——これが、いつ、どこへ転売されるかわからない、そして掘り返されるかわからないといったような先を見まして、公共管理という手だてを組まなければならぬだろう。  それから「対象有害物質の特性についてのキメ細かい検索」。これはやはり土壌中の環元力がどうなんだ、あるいは三価クロムが六価クロムに、自然界において、また再び変化してくるのかどうなのか、あるいはコンクリート、アスファルトの浸透あるいは強度阻害、こういったような問題については、まだわかっておりません。したがいまして、こういったようなことも、われわれがむしろ強力に研究を進めていかなければならぬ問題だと思いますけれども、この問題があるだろう。  それから最後に「廃棄物対策の見直しと強化、縦割り行政の弱点に対する反省」という項目を並べておきました。偉そうにこういうことを申し上げるのは、やはり必要があってというふうに感じておるわけでございますが、自治体が、実際に産業廃棄物をどう扱っていいかということが、どうもお手伝いしながら観察してみますと、わからないのじゃないだろうか。つまり戸惑いを生じておる。このことは最終処分地の問題が、やはりどうしても最後には残る問題で、一体どこへ、どう持っていくのか、最終処分の方法と場所の問題でございます。これはぜひ先生方におかれましても真剣にお考えをいただきたい。この問題は、たとえば有害物質と言われて、市民がこれに対して非常に恐れをなす、あるいはこの道で運んではいかぬといったような問題も含まれてまいりますけれども、そういったことがむずかしいがゆえに、やはり最終処分地と同等程度にむずかしい問題でございまして、そこら辺のところに自治体が戸惑いをする、またなかなか対策が具体的に進まないといったような問題が出てくるだろう。このことは勢い最後には各自治体におかれましても消極的にならざるを得ない。それはひいては排出者の責任であるという形で何事も片づけられてしまう。悪い言葉で言うならば、公共関与というふうなものが、そこですっぽ抜けてしまうといったような形になってくる。そういたしますと、勝手に探して勝手にあれしろというふうな、少し暴言かもしれませんが、これが今回の問題につながってくるといったような問題が、廃棄物処理法の施行前でありましても、施行後でありましても、これは全く同じ条件下にあるものだと私は思うわけでございます。と同時に、先ほども申しましたように非常に危惧の念を市民に与えるというふうなことは、これはやることを完全にやれば、ある程度まで安全なんだというふうなことが、不信感の中に信用されなくなってしまうというふうなことが非常に恐ろしいわけで、そうなりますと、われわれは生活できなくなってくるということにもつながってまいろうかと思います。  二番目は「縦割り行政の弱点に対する反省」。大変、申しわけないような言い方でございますけれども、これは現実にあるわけで、今日の慣用語になっているかと思います。この中で、廃棄物処理法等をめぐっても、いろいろあろうかと思いますけれども、特に労働環境の被害というものと生活環境被害というふうなものが縦割りの中にあって、労働環境でいろいろ災害があっても、これが生活環境と直結して物が考えられなかったという点が、確かにあったのではないだろうか、これは私たち自身の反省でもあるわけでございます。しかしながら廃棄物問題を契機といたしまして、労働環境におけるこういった被害の問題は即、生活環境につながってくるものだという現実が、今旬日、出てきたというふうに解釈をせざるを得ない。その中にあって大気汚染の問題も大事、水質汚濁の問題も大事、しかしながら今回の経験を通じて見まして、廃棄物の問題は、濃厚な物がそのまま、かたまって生活環境にぽんとほうり出されるという、非常に特殊な問題を含んでいるところに、今後われわれは、われわれの言う危惧の念と対策に対して、より真剣味を持たなければならぬのだろうということでございます。  若干、時間がオーバーしたかもしれませんけれども、これで参考人としての私のお話しを、ひとまず終わりたいと思います。御清聴ありがとうございました。

渡辺惣蔵日本社会党

○渡辺委員長 ありがとうございました。  次に渡部参考人にお願いいたします。

渡部真也北海道大学助教授

○渡部参考人 北海道大学の渡部でございます。  私は労働衛生の立場から、このクロムの問題に関心を持ってまいりまして、昭和四十八年に、北海道の栗山町にあります日本電工栗山工場の従業員の間に、職業性の肺がんが多発しているということを突きとめまして、学会に発表したものでありますが、私は、このクロムの問題に直接、手を染めるようになってから、本当にまだ日が浅いのです。クロムの毒性等について詳しい勉強をしておりませんで、きょうの肺がんの問題についてだけ、私の調査の結果をお話し申し上げ、また、その過程で感じました幾つかの問題点をお話し申し上げたいと思います。  クロムによる肺がんの発生ということは、ずいぶん古くから感づかれておりまして、文献によりますと一九一一年、一二年ごろからドイツで、そういう事例が挙げられておりまして、大体、一九三〇年代にはドイツでは、クロムを取り扱う労働者の肺がんは職業病として認識されておったようであります。第二次大戦の後にアメリカで、クロム鉱石から重クロム酸塩を製造する工場で一連の肺がんの患者が出まして、その患者はクロムによったものではないかということが言われたために、その企業の経営者は非常に関心を持ちまして、自分の工場の職員を、過去に問題を出しておったドイツに調査にやり、ドイツの職業病の事例を細かく勉強させたり、あるいはドイツの工場の経営者や、クロムと肺がんの関連を勉強している学者の意見を聞かせたりして、一九四六年に調査をしております。それから、このアメリカの企業は、職業がんの関係の学者に委嘱をしまして、肺がん関係のドイツの文献をもう一回、精密に検討させるというような作業を行わせたり、あるいは関連企業がコミッティーを持ちまして、そこで、この問題に対する対応策を脅える、それから後にアメリカの公衆衛生局の局長を呼んで、自分たちの考えている問題点を出して、対策を上要求していくというようなプロセスを通りまして、アメリカの公衆衛生局では、恐らく一九五二年だと思いますけれども、アメリカの六つの重クロム酸塩製造工場の労働者の健康調査、特に肺がんを中心とした、かなり幅広い健康調査を実施させまして、その結果が一九五三年に政府刊行物として公表されております。  そういう諸外国の例があるにもかかわらず、わが国では当時まだ肺がんの症例が、このクロム工場からは見出されておりませんでした。私が粟山の工場に関心を持ったのは、教室の同僚が、この工場の環境調査を昭和三十四年に行っております。それで非常に環境が悪いという話を聞いておりました。それからもう一つは、その研究者が昭和三十六年ごろに北海道の都市における大気汚染と都市における肺がんの死亡状況に関する疫学的な研究を行っておりまして、その中で、この研究の対象地域に栗山町を含む由仁保健所管内が対象になっておったわけでありますが、そこで肺がん死亡例の生活歴調査をしている中で、この電工工場の従業員で肺がんで死んでいる一例があることを発見しまして、これはクロムのせいではないだろうかという疑いを非常に強く持ったわけであります。しかし彼は、昭和二十六年から三十五年までの、この由仁保健所管内の肺がん死亡例の中で、栗山の日本電工の工場の従業員の中で肺がんで死んでいるのは、たった一例しかない、しかも経験年数が九年ぐらいである、従業員の中では決して経験年数が長い方ではない、年齢も非常に若いというようなことで、この一例だけではクロムとの関連は断定できないということで、疑念を残したままになっておったわけであります。その後、この問題を私が注目をしておくようにということを言われまして、それ以来、関心を持っておったわけでありますけれども、調査を行うところまでいきませんでした。  昭和四十八年になりまして、北大の第一内科にこのクロム工場の従業員あるいは退職者の患者が二名入っているということがわかりまして、それから急いで、この工場の疫学的な調査を実施することになったわけであります。  別荘まで得られました成績を話しますと、昭和三十五年から昭和四十九年までの十五年間に十例の肺がん死亡者があります。ことしの夏出しました学会の報告では九例としてありますけれども、その後の研究で確実にクロムと関連があると思われるものが一例追加されまして、現在、十例でありますが、この十五年間に栗山工場で経験年数が九年以上の労働者、これは肺がんで死亡した者の経験年数が、その十例の中で一番、短いものが九年なんです。それで九年以上が一応、肺がんを起こすおそれがあるということで、九年以上という集団をとって観察をいたしました。この九年以上の経験を持つ集団の中から、日本人の同じ年齢層の男子の肺がん死亡率で、どれくらい肺がん死亡が出ることになるかという、これを期待死亡数と言いますが、そういう数を求めてみますと〇・三四人、三分の一人という数しか出てこない。実際には九例あるいは十例という数が出てくるわけでありまして、ですから、およそ三十倍ぐらいも、よけいに発生しているということになるわけであります。  この途中経過は逐次、労働省にも申し上げまして、その時点で対策をお願いしてきたわけでありますけれども、労働者のこういった健康管理の問題について感じておりますことは、一つは退職者を十分に追跡することが大変むずかしい。いま私たちは五年以上の経験のある者についてのフォローアップをやっておりますけれども、なかなか十分に追い切れない。特に細かい職歴を明確にすることが非常にむずかしいという点で、疫学的な研究に一つの壁を感じているわけでありますけれども、こういう行方のわからなくなった退職者の人たちに対して、どのように健康管理の手を差し伸べていくかという問題が残っていると思います。ことしから労働安全衛生法が改正されまして、こういうクロムを取り扱った労働者についての健康管理手帳が交付されることになりました。これは退職者の健康管理が必要であるということを私たちが要求してから、約二年ぐらいたってからの措置でありますけれども、一つはこういう健康管理手帳交付対象者が、経験年数五年以上というところに限られている点であります。五年未満ならば肺がんの発生のおそれがないかというと、決してそうではない。外国の例を見ますと、四年で発生しているとか、あるいは二年で発生したとかいうような例がありますから、五年でいいという根拠はどうも余りはっきりしておりません。こういった点は、もう少し細かい疫学的な研究を、日本の工場について行ってみなければ、何年にするかということは明確にはなかなか出しにくいと思いますけれども、こういった点は今後のまた研究課題でもあるし、また行政的な対応の上でも、柔軟に対応していただかなければならない点ではないかと思っております。  それから、こういう健康管理手帳を交付する場合に、だれがやっていくかといいますと、これは実際の行政の面では、企業に全部、任されているようであります。私たちが退職者をフォローアップしている中で、企業から求めました職歴と、実際に退職者から聴取した職歴が違っております。下請の期間、臨時工の期間などが、場合によっては企業から出された職歴の中には含まれてないことがあると思われます。そうしますと、企業では五年以下という経歴があっても、実際には下請あるいは臨時等の形で五年以上のキャリアを持つ者もいると思れます。こういった点のやはり完全を期するために、もう少し行政機関がきちんとした、こういったチェックをしていただく必要があるのではないかと思っております。  それからクロム工場の労働者とはいいましても、法の上ではクロム鉱石から軍クロム酸塩を製造する工場、その生産に携わっている労働者というような限定が付されておりますが、クロムによって発生してくる職業病、肺がんは、必ずしもクロム鉱石から重クロム酸塩を製造する職場だけに限っておりません。これは一九三〇年代のドイツの報告を見ましても、クロム色素を扱っている職場で肺がんの発生があるというようなことが記されておりまして、それに類した職場は恐らくクロム色素だけではなくて、ほかにもまだ、いろいろあるのではないかと思われます。そういう職場でも健康管理手帳が交付されることが必要ではないだろうか。わが国に、そういう職場で肺がんの発生事例がないからといって、それが明らかになるまで、こういった健康管理の手を差し伸べないでいるということは、また同じ過ちを繰り返すことになりやしないかというふうに考えます。  そのほか、少し話が前後いたしますけれども、行方のわからない、そういう退職者がいるということ、しかし法の上では、健康管理手帳の交付を受けられるのは、この公布されてから一年以内というふうに申請が限定されております。ですから、来年のたしか一月の十三日か四日だと思いますけれども、それまでの間に申請をしておかなければ、過去の退職者は健康管理手帳が交付されないということになるわけでありまして、かなり行方のわからないでいる人たちがいるこういう状況の中で、健康管理手帳の交付の申請を一年以内にせよというのは、少し酷ではないかということも考えます。  それから、こういう人たちに対する健康診断を行う病院、指定病院と雷っておりますけれども、これが北海道では北大の付属病院に限られておりますが、実際に労働者は、北海道の場合には栗山町に住んでおります。車で行きますと一時間半か二時間ぐらいで行けるのでありますけれども、実際に被災者たちを回ってみますと、仕事に追われて、北大病院まで出かけていくのはなかなか大変だ、おっくうだ、やはり地元にそういう健診がきちんとできる病院があってほしいというような要求が強いのでありまして、こういう人たちが効率的に、適確に健康診断が受けられるような条件をつくっていただくことも必要ではないかと思います。そうでなければ、こういったものによる早期発見という目的は達せられないと思います。  それから同時に、栗山町では公害としてのクロム問題が出ておるわけであります。鉱洋がやはり町内の各所に埋め立てられておるわけでありますが、栗山町におけるクロム公害というのは、私はこのクロム鉱滓によるものだけではないと思います。それは、かつて工場が繰業していた当時、工場の煙突から粉じんがかなり町内にまき散らされておったと思います。ここから出てくる粉じんというのは、先ほど武藤先生がおっしゃいました製造過程の中で、鉱石を焼いて、そして水に溶ける六価のクロムをつくっていく過程、ここで焙焼、つまりキルンでもって鉱石を焼くわけでありますけれども、このキルンを通った煙が排出されておった。このキルンで恐らく非常に発がん性の高い物質が副生されてくるであろうということは、アメリカの研究などで、疫学的な研究からは、かなり、そこに原因が求められておりますし、動物実験でも、そういうところで副生されると考えられろクロム化合物が、動物に非常に発がん性が高いという結果が出ておりました。そういう危険な粉じんが町内に煙突からまき散らされでおった時代の影響も考慮した上で、さらにこの鉱滓の影響を考えていかなければならないのではないかと思います。  時間が参りましたので、一応この辺でやめたいと思いますけれども、こういうクロム禍と言われている問題は、私は職業病の問題と公害という問題が、非常に密接に結びついてあらわれてきている問題だというふうに考えます。このような公害をなくしていく、予防していくためには、公害として問題になる以前に、こういう危険物、有害物を扱っている職場の総点検、そういう職場を早くに発見をして、そういう職場で労働者の職業病が発生しないような条件をきちんとつくっていくという対策が打たれなければ、この種の公害というものは、恐らくまた何度も何度も繰り返されてくるのではないかと思います。  また、このクロム肺がんのように日本に症例がないからといって、安閑としておったというような行政ではいけないと思うのであります。疑わしいものについては、やはり事前に十分な対応策をとっていく。問題が起こってから、過去にさかのぼって調べてみようと思っても、なかなか十分な研究ができない、事実を立証することがむずかしい、こういうことではいけないのであって、やはり疑わしいものに対しては予防対策をとると同時に、長い期間にわたる、そういう労働者への影響あるいは住民への影響といったものを追跡し、観測をしていく、そういう体制が、行政の中でも、あるいはいろいろな研究機関の中でも、可能になっていくような条件が必要ではないだろうか。疑わしいことだけでは規制できないということで、ほっておいて、大きな災いを引き起こしたという例は、過去にも幾つもあります。その典型的な例はサリドマイドの例であると思いますけれども、そういう過ちを二度と繰り返さないような、きちんとした対策が考えられる必要があるだろうと思います。  以上で一応、陳述を終わります。

渡辺惣蔵日本社会党

○渡辺委員長 ありがとうございました。  次に、吉田参考人にお願いいたします。

吉田克巳三重大学教授

○吉田参考人 私は、実は先ほどの渡辺先生と違いまして、必ずしもクロム問題の専門家ではございません。実は本日ここへ私が参考人として出頭することになりましたのは、私、現在は大学に勤めておりますが、前に、きょう、ここにお見えの田中知事のもとで二年間、公害センターの所長として、公害行政の責任者の一人として働いてきましたので、恐らくそういうような経験を入れて物を言えと、こういう御趣旨ではないかと思って参った次第でございます。  実際に公害行政の側から、今日のクロム問題というものを、いわばはたからながめると言うと非常に語弊がございますが、脅えてみますと、住民に公害の危険性がないように住民を守るという側から、公害現象というものを考えていった場合にでも、大きく分けて二つの種類といいますか、そういうものがあるのじゃないかと思います。  一つは、現在われわれが実際に公害行政をやっていく上で一生懸命やっている問題、たとえば硫黄酸化物であるとか窒素酸化物であるとか、ばいじんであるとか、こういうような問題がございます。こういう面については法律も逐次、改定されて、わが国においても数年前とは非常に大きく様子が変わってきております。こういう問題は、いずれも実は工場の従業員とは直接、関係がない問題でございます。いずれも大きな煙突から高い空へ向かって吹き上げられてくるものでございまして、したがって、いわば住民と工場という関係をいかに直していくか、これが公害行政の重要な役割りであるということになるわけです。  ところが、もう一つの問題というものがあるわけでして、それは今日のクロム問題にもございますように、工場の中で長く数十年前から有害物であるということが知られておって、そして、そういうものが使われておる、しかし、それが何らかの機会に外へ出てくる、こういう種類のものがございます。これはクロムだけではなくて、今日でも何百種というものが、現実にそういう危険をはらみながら運営されているということがあるわけです。  ところが、一たん公害行政というものに手をつけますと、最も困る問題がこの問題であるわけです。これに似た問題というのは、どこの府県でもあると思います。ところが、実際に府県の公審行政をやる側からいいますと、こういうものが、どこで何をしているのかということがわからないし、また、それを検査すべき権限もない、これが実態でございます。それは労働基準局が持っておるわけです。労働基準局というのは御承知のように、地方の行政とは別に、末端の監督署に至るまで国の一本の行政でやっておるわけでございまして、先ほど武藤先生からもお話しがございましたが、まさに縦割り行政の最たるものでして、外からうかがえないという要素がございます。  また、労働行政というのは、ほかの行政と非常に性格が違って、これは使用者と労働者との間の問題でして、いわば特定の当事者間の問題であるということがございます。労働法にも明らかなように、使用者は労働者に対して一定の責任を負うておるわけでして、これは逃げるわけにはいかないはずでございます。この点が一般の住民と工場という場合のような権利関係とは全く違っております。そういう点では、いわば当事者間の問題だというセンスが、外から見ますと非常に強いという感じがするわけです。  現実にわれわれ、どの工場でどういうことをやっておって、それがほっておくと危険であるというようなことに対して、手を打ったという例は幾つか経験がございます。たとえば、かつて水銀電解工場、これは現在、日本にもまだ幾つかございますが、この水銀電解工場で水銀の蒸気が出てくる。これを一番簡単に直すには、建屋の中に入っておった水銀電解工場の建屋の壁や何かをみんな取っ払ってしまう。こういうことをやれば労働者にとって非常に安全である、こういうことが一時行われたことがあります。ところが、そういうことは外からわからない。ところが、たまたま大学病院へ、この電解工場の従業員が病人としてやってきて、あそこで相当大規模なことをやっている。その構造や何かをよく患者に聞いてみると、これは近くに住んでいる人はどうなるのか、こういうような非常に偶然の機会でそういうことを見つける、そういう場合が多いわけでして、やはりそういうところに何らかの有機的な関係というものをつくらないと、似た問題というものは起こってくるのじゃないか、そういうことが私自身、一番最初に感じた点でございます。  一番最初に申しましたように、たとえば硫黄酸化物とか窒素酸化物、特に硫黄酸化物の問題につきましては、私自身、四日市ぜんそくという大きな問題を抱えて、これを抜本的に解決するためには、規制法自体を根本的に転換する必要がある、そういうことで三重県条例の公布をお願いして、総量規制を全国で初めて条例規制として出したわけですが、これが昨年、先生方の御尽力によって、現在の大気汚染防止法もそういうように改正されたということがございます。これによって、順調にいけば全国的にこの問題は、かつては非常にむずかしい問題であったが、解消されるのではないか、私はこういうように考えております。同じことは、窒素酸化物の問題についても、私はこういう方向が当然とられる、そして近いうちに解決の方向が出るであろう、こういうように考えておるわけです。また水質汚濁にしましても、やはり瀬戸内臨時措置法というものに見られますように、基本的にはそういう考え方のもとで、東京湾とか伊勢湾とか、こういうような問題も逐次、解決へ向かわせるべき時期に来ている、そしてまた、そういうことが可能である、こういうように考えておるわけです。  ただ、こういうような形で公害行政が進歩していく。確かに、ここ四、五年、私は過去とは、かなり変わった行政というものが出てきておると思うわけですが、そういうことが行われたとしても、やはり先ほど一番最初に申しましたように、今回のクロム問題、こういうようなものにございますように、いろいろな問題、何といいますか、こういう従来の公害行政の枠からは、こぼれていってしまう問題、こういうものが今後の公害行政の主体といいますか主力になってくる可能性が十分にあるのではないか、そういう気持ちがするわけでございます。  全国で見まして、この有害物、工場で扱われております有害物は恐らく数万に上ると思います。そこの中には、かなり有害性のはっきりしておる物も、たくさんあるわけです。現に産業医学会が出しておる勧告表、これだけでも百種ほど出ておりますし、米国のACGIHですか、こういうところが出しておるものは、さらにたくさんの物質について、どの程度の有害性があるか、そして、どの程度に規制しなければならないかということが出ております。  こういうように、かなりたくさんの物質について、いままでいろいろな学者によって、その有害性がはっきりしておる。そしてそこの中には、労働衛生行政で取り上げられて、特殊健康診断であるとか、あるいはそういうような作業をしておるところには、特別の主任者を置かなければいけないとか、あるいは一定の免許を持った人に計測させなければいけないとか、こういうように内部的には、非常に昔と違って行政的な進歩というものがあったと思うわけですが、しかし、それが外へ向かっての接点のところで非常に欠けておる、こういうことはやはり否定できないと思うわけです。  工場で、たくさんのそういう物が使われているということは、私たちも大学の学生のときから教育を受けております。クロムで肺がんが起こるということは、三十年前の医学教育の中にも、すでに知られておったことでございまして、こういうことは関係者の間では十分に認識されておるわけです。ところが、そういうことがどこで、どういう形で行われておるかということが、本来の公害行政の中へは十分に連携されていない。非常に偶然的な機会に依存しておる。それが今日のいわば実情ではないか。一部にはそうでない、非常に有機的にやられている地域もあると思いますが、大多数の場合には個人的な関係を伝わって、たとえば私ですと、基準局の相談も受ける、そして公害関係のこともあれする、そういうような情報のつなぎ合わせの上に乗っかって手を打つ、こういうようなことが現実にはかなりあるわけでございます。幸いにして私自身がやっておったときには、こういう問題は起きませんでしたが、率直に言って、ひやひや物であるというのが実態である、こういうことではないかと思うのです。  やはりこの点は、このクロム問題は幸いにして現在まで一般の住民の間に、はっきりした被害というもの、たとえば肺がんが起きた、あるいは鼻中隔せん孔があった、こういうようなことが大規模な形では出ておりませんし、そういう意味では、まさに不幸中の幸いであったかと思うのですが、しかしながら類似の可能性というものは、これは先ほど言いましたように、何百種、何千種という有害物が今日、工場で使われ、あるいは生産の過程でやられておる、そういう点からいきますと、今後そういう可能性が存在しておる、そう考えざるを得ないわけでございます。  今日、日本で職業病の認定を受ける人が、正確な数字は私も存じませんが、年間約六、七千名あると思います。これは、たとえば西ドイツなんかの状況に比べますと、これでも一けた以下でございます。日本では、職業病の認定というのは、これだけの工業国家でありながら事実は、表に出てくるのは十人に一人、二十人に一人であって、大半は実は表へ出てきていないというのが実態であるというのは、関係者、皆知っていることでございますが、こういう形ですと、ますますわからなくなってしまう、こういうことがあると思います。よほど、にっちもさっちもいかなくなるか、あるいは大学病院のようなオープンな病院にあらわれてきた患者がつかまって認定される、こういうケースがかなり多いわけでして、そうでないものはだれも知らない、こういうのが幾つかある、幾つかじゃなくて、むしろ、そちらの方が主体である、こういうことを、われわれは知っておるわけですが、そういう形の中で、これが外へほうり出されたときにどうなるか、こういうことはいつも、われわれの念頭に置かざるを得ない、こういうことになるわけです。  私、やはりここで一つ考えたいのは、今後の公害行政、これが順調にいけば、私は、基本的な大きな公害問題は日本で解決できない問題ではないし、解決されていく、そう考えるわけですが、     〔委員長退席、登坂委員長代理着席〕 しかしながら、先ほど言いましたように、こういう工場の内部で規制されておって、そこで規制されておるから外部とは関係がない、こういうように見られておる物が、今後の公害問題の大きな主体的な問題として出てくる可能性、これはやはりわれわれ考えていく必要があると思うのです。  そういう意味では、やはりこういう労働衛生行政と、それから地方自治体の環境行政、両君とも、これは環境行政であるわけですが、こういうものが何らかの形で連携がとれるような方策、これは単に通達を出しただけではだめだと思うのですが、そういうようなことをやはり恒久的に考える必要があるのじゃないか、こういうように考えるわけでございます。今後の行政の中で一番大きなポイントといえば、やはりそういうものがスムーズにお互いに流れ、そしてそれに対する手段を迅速に考えることができる、そういうようなことが今後のために重要ではないかと考えておるわけでございます。  非常に雑なあれで申しわけないのですが、時間もございませんので、これで終わりたいと思います。

登坂重次郎自由民主党

○登坂委員長代理 ありがとうございました。   次に、長崎参考人にお願いいたします。

長崎誠三株式会社アグネ技術センター所長

○長崎参考人 アグネ技術センターの長崎でございます。  私は、今度の六価クロム鉱滓の投棄現場について、幾つかの調査をいたしましたので、その調査の結果を中心に、こういう問題あるいは、ひいては産業廃棄物の問題さらに重金属汚染ということを、どういうふうに考えるかということについて、私の意見を申し述べたいと思います。  初めに、今度のクロム鉱滓のことについて、実際に現物がどういうものであるかということを余り御存じない方もおられるかと思いまして、けさ早朝、大島九丁目に参りまして、現物を拾ってまいりましたので、まず、それからお目にかけたいと思います。  これは、問題になっています第五大島小学校から百メートルぐらい離れたところにある倉庫のすぐそばの空き地に、まだ現在こういう形でたくさん放置されております。それをけさ拾ってまいりました。これは、私どもがこれまでに分析したところでは、まだ現在この物について総クロムの値は出しておりませんけれども、まあ一万ppmあるいは二万ppm、要するに一%ないし二%程度の総クロムが入っている物だと考えられます。  これから百グラムとりまして、蒸留水で何回か煮てやるわけです。煮なくても、雨が降れば黄色い水が流れるわけですが、時間を短縮するために十分間、煮てやって、その結果どういうものが得られるかということです。これも、やはりこういう問題は、現状がどういうことであるかということをはっきり認識しないと、それに対する対策というのは十分、立たないのではないかと思いまして、ちょっとお目にかけたいと思うのです。  これは、まず百グラムを二百五十ミリリッター、牛乳びん一杯ぐらいに入れて、それで十分間煮て、こしたものです。こういうきれいなレモン色の水が取れます。これを一回やる、さらにもう一回やってみる。二回やってもこういう状態。それからまたさらに二百五十ミリリッター入れて、三回やってもこういう状態。それから、私が出てきている間に四回目をやっておりますので、ここに参りましてから電話をかけて、どうなったと聞いたら、やはり同じ状態であるということです。ということは、こういうようなことを何回やっても、この黄色いものは六価クロムそのものの色ですけれども、やはり六価クロムが溶け出してくるということを示しているわけです。  この六価クロムの化合物は何であるかといいますと、これはいろいろなことが言われておりますけれども、これはクロム酸カルシウムという化合物です。クロームにカルシウムがついたクロム酸カルシウムという六価の化合物です。こういうものが現在でも溶け出す状態で放置されている。二、三ヵ所、けさ回ってみましたが、一週間前に比べて、応急的な処理をされているところもございますが、このように放置されているところもある。ここも、そこにいるおばさんに、どうなるのだと聞いたら、一週間ぐらいのうちに応急の処置をとるということに、区役所あるいは会社との話し合いでなったということを申しておりましたが、まあそれはともかくとして、現状、こういう状態であるということです。  そのクロムの化合物には、たとえば六価の化合物はさまざまございます。ここへちょっと例を持ってまいりましたが、このオレンジ色のが重クロム酸カリというものです。それからこの真ん中にある、ちょっとウグイス色をしておりますが、これがいまのクロム酸カルシウム、これの中からこれを蒸発してやれば、これより、もっときれいになりますが、幾分、緑色がかった化合物です。それから、さらに黄色いのはクロム酸カリというものです。こちらは重クロム酸カリというものです。ここにある緑色のは六価の化合物ではなく、三価の化合物で、酸化クロムと言われて、ペイントだとかあるいは研摩剤に使われているものです。  こういうもの以外に、われわれの身の回りにある六価のクロムの化合物、先ほど武藤先生は、現在、使われているかどうか余り御存じないということをおっしゃいましたけれども、たとえば駐車禁止であるとかということで、道路に黄色いペイントが塗ってあります。後でまた、ちょっとデータをお目にかけますが、それはわれわれが東京あるいは各地の塗ってあるものを調べた限りでは、これも、きょう行った大島九丁目のそばで拾ってきたものです。はげて、こういう状態になっておりますが、こういう黄色いペイントは、クロム酸鉛と言われている六価の化合物です。クロムイエロー、クロムイエローと言われているものです。これに幾らかのまぜ物をして、現在も塗料として盛んに使われております。これは同じ六価の化合物ですけれども、まず全くと言っていいほど水に溶けない。ところが、このクロム酸カリであるとか重クロム酸カリとか、こういう六価の化合物は非常によく水に溶ける。それに対して、いま問題になっている日本化学が投棄した鉱滓の中に含まれている六価の化合物であるこのクロム酸カルシウムは、たとえば化学の本を読むと書いてあるのでございますが、水に対して難溶である。だから、このクロム酸カリほどはよくは溶けないけれども、溶けることは溶けます。溶けるが、これが難溶であるということは、私が最初に申し上げたような実験をやってごらんになればわかるわけです。これで五回、六回、七回と繰り返せば、あるいは色が薄くなるかもしれませんが、こういう、かき氷にでもかければ、ちょうどおいしいような色をしているというわけです。こういうものが現在、放置された状態で存在しているということです。  この物自体は劇物として指定されている物です。ですから、たとえばこれを私どもが買おうとすれば、その薬種屋に私の身分を証明するものと判を持っていって押さなければ売ってくれない物です。もちろん十八歳未満では売ってくれないというしろものです。しかし、こういう劇物を含有した物であれば、いかようにまいてもいいということに、現状はなるのではないかと思います。こういう現状であるということです。  現在こういう状態であり、どういう程度の汚染であるかということは、いろいろな方の調査で、私どもも調査いたしましたが、全貌がはっきりわかっているかどうかはともかくとして、かなり明らかになっていると思います。  次の問題としては、それではそれをどうして処理をしたらいいのかということです。  一つは、先ほど武藤先生のお話しにもありましたけれども、たとえば硫酸第一鉄で還元をしてというような話がございます。しかし、これは武藤先生の話にもありましたように、非常に酸性であれば、それも液体と液体との反応であれば、これが三価になるということは起こりますけれども、あそこに硫酸第一鉄を溶かした水を、ただじゃぶじゃぶまいたのでは、反応はほとんど起こらないということです。起こらないで、しみていってしまうか、あるいは空気で酸化されて鉄のほかの酸化物になるのであって、そのクロム酸の六価のクロム塩は三価のものにならないということです。これは現物について実験されてみれば、はっきりわかることですし、現在たとえば六価クロムを含んだメッキ液の廃水処理ということで、もうさんざん経験され、やられていることですから、そのことは私がいまさら言うまでもないことです。ですから、たとえば硫酸第一鉄をまくというようなことは気休めにしかすぎないということです。  そうしますと、次はたとえば覆土をするとか、あるいは水等を遮断するというような問題はあります。しかし、このことについては、現在、私どもが知っている限りでは、たとえば実際どういう物があるのか、六価のクロム化合物というけれども、それはいま一部お見せしたように、さまざまあるわけです。ですから、どういう化合物があるのかということを十分、明らかにしていない。それから、それがまた、どういう状態で、どのくらいの量あるかということについても明らかにしていない。そういう明らかにしていないで、いたずらに覆土をする、あるいはアスファルトで覆うというようなことは、また将来に非常な禍根を残すことになりはしないかと思います。それをやらざるを得ない場面もあるかと思いますが、やはり徹底的にこれを処理する、たとえば、必要なところについては取り除くということをする以外にないかと思います。  この処理の問題については、市川市が四十六年の四月に市川市の儀兵衛新田、その辺の地区のクロム鉱津について処理をして、その結果どうであったか。ほとんど効果がないということを、当時は東大におられて、現在は茨城大学におられる浅見さんが詳細な研究、調査をされています。ですから、それをごらんになれば、はっきりすると思いますが、こういうようなことは効果がないと思います。ですから、やはりやるならば、まず、現在どういう状態で六価のクロムがあるかということを明らかにした上で、その個々に応じた対策を立てる必要があるということです。  それから六価の話から少し飛びまして、そういう産業廃棄物の問題、これはわれわれが出す物が、たとえば下水の処理場に行って、それがさらに汚泥になる。汚泥になった状態あるいはごみが焼却場で焼却をされた焼却灰、それからこういうような産業廃棄物、こういう物について、どういう処理をすべきかということについては、現在、企業の責任というようなことをよく言われますが、一企業であるとか、一自治体であるとか、いろいろな法人であるとか、そういうもので処理することが可能である段階を、すでにある物については通り過ぎているのではないかと思います。非常に広大な敷地を持ったところであれば、そこに処理の方法がわかるまで野積みをしておくようなことが可能かもしれませんが、日本の国土の中では、ほとんどのところは、そういうことは不可能なわけです。したがいまして、やはりこのことについては至急、国の行政として対策を立てる必要があるということです。  その場合に、くどいようですけれども、相手がどういう物であるかということを調べる。よく企業の秘密の壁があってわからないということを申しますが、そういうことはないはずだと私は思います。というのは、たとえば人間なり動物なりの排せつ物にいたしましても、そういう物をしさいに調査をすれば、何を何時間前に食べたかということがはっきりわかる時代です。同じように、企業が出す物につきましても、どういう物を企業が食べているか、また、どういう物をつくっているかということは大体わかっているわけです。そういう結果として出てくる廃棄物については、こういうppmに分解した調査をした限りでは、わからないかもしれませんが、もう少し実態としてとらえる調査をすることによって、それは明らかにし得るわけだと思います。そういうことを明らかにした上で、やはり対策を至急立てる必要があるというふうに考えます。  それから、その次の問題、これは六価クロムの問題ではございませんが、そういうことと絡んで重金属の汚染、特に数日前の新聞の見出しだと、微量汚染という言葉を使っておられますけれども、自然環境に存在する重金属量と、今度のように濃厚に、たとえば産業廃棄物などによって汚染された状態、これほどではないけれども、また自然環境に比べれば、それの数倍あるいは十倍という程度の重金属汚染というものが、現在われわれの住んでいる生活環境の中では進行しつつあるわけです。私どもはたとえばその一例として自動車による——これは自動車によるとわれわれは現在、考えているわけですが、自動車によって特にこういう緯線道路付近は非常に重金属によって汚染されている。たとえば、どういう重金属かと申し上げると、鉛であるとか亜鉛であるとかカドミウムであるとか銅であるとか、さまざまな重金属によって汚染されています。それは自動車から出るものもあるし、あるいは道路を構成するアスファルトであるとかセメントに含まれているものもある。それから、先ほど申し上げたようにペイント自身の中にあるものもあります。そういうものがわれわれの生活環境の中にまき散らされて、汚染が蓄積しつつあるということが、現在、私ども各種の調査をしておりますけれども、また、ほかの方の調査の結果からも明らかになってきております。  ちょっといま、一昨年の暮れから昨年の十月にかけて、東京あるいは仙台、滋賀県とか各種のところの主として幹線道路沿い、また、それを対照させる意味で、それに沿った幾らか離れたところを採取した結果をお配りいたしますから、ごらんいただきたいと思います。これは、上の方に私どものデータ、それから下の方には、東京都が四十九年度に汚染地域の土壌と対照させるために、各地の土壌を取りまして分析をしております。その結果については数日前の新聞に一部出ておりましたから御存じかと思いますが、それで非常に汚染されているということを書いておられます。東京都のやられたのは、幹線道路沿いということを、あえて限定されておりませんけれども、私どもは主として幹線道路沿いに取っているわけです。そういたしますと、鉛にしても亜鉛にしてもカドミニウムにしても銅にしても、非常な、自然環境の値の数倍から十倍、一けた上という状態が現在、現出しているということです。このことについては、最近の報道では、やはり幾つかの省が集まって、微量汚染の影響解明へということで、五つの省庁あるいは研究所が五年がかりで取り組む、初年度八千万円の予算を計上して、五ヵ年計画でスタートするというようなことが報道されておりますが、やはり五ヵ年計画というのは、現状を考えた場合に、余りに悠長な話ではないかと私は思います。至急こういう現状をどうであるかということを国の手で調べていただきたい。私どもが自動車の通るところをよけながら街路樹のわきの土を採取するというようなことをやるわけですが、そういうことでなくて、もっと全国的な規模で、どの程度、汚染が進行しているかということを早急に明らかにして、また、そういう汚染が、必ずや汚染の地域の近傍に住んでいる人たち、特に乳幼児とか、そういう者には影響があらわれているのだろうと思いますが、そういうことについても疫学的調査を至急することによって、こういう人類の将来を左右するような微量汚染というものに至急、取り組む必要があるだろうと私は考えております。

登坂重次郎自由民主党

○登坂委員長代理 どうもありがとうございました。  以上で、参考人からの意見聴取は終わりましたた。     —————————————

登坂重次郎自由民主党

○登坂委員長代理 引き続き参考人に対する質疑を行います。  なお、本日は、政府機関の説明員として国立衛生院次長鈴木武夫君及び労働衛生研究所労働生理部長坂部弘之君が出席しております。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林義郎君。

林義郎自由民主党

○林(義)委員 参考人各位には、大変お忙しいところ御出席いただきまして、ありがとうございました。いま大変、有益なお話しを聞かしていただきまして、若干の点、お尋ねをしたいと思います。  お尋ねする前に、ちょっと私、基本的なことでお尋ねをしておきたいのですが、武藤先生は衛生工学の御専門だと聞きました。渡部先生は公衆衛生学の御専門だと聞きましたし、吉田先生及び長崎先生は、御専門はどういうことであるのか、ちょっとお尋ねをしたいと思います。  それから長崎さん、株式会社アグネ技術センター所長と、こうしてございますが、アグネ技術センターというのは、どういうことをしておられるのか、不詳にして知りませんので、簡単な御説明をまず、いただきたいと思います。

吉田克巳三重大学教授

○吉田参考人 私の専門は、渡部先生と同じく公衆衛生学でございます。

長崎誠三株式会社アグネ技術センター所長

○長崎参考人 私の専門は、主としてやってまいりましたのは金属物理に関することです。それの実験物理であるとか、現在はそれに伴う測定あるいは分析ということを、かなりやっております。  それから、アグネ技術センターというものの仕事でございますが、これはよくお尋ねを受けるのですが、まずアグネというのは、最近アグネス・チャンという歌手がいるので、よくアグネスというふうに間違えられるのですが、これはアグネと言います。アグネというのはAGNEと書きまして、AというのはアリストテレスのAをとったものです。それからGはガリレオのGをとり、NはニュートンのNをとり、EはアインシュタインのEをとったのです。これは私がつけたのではなくて、金属方面の在野の啓蒙家として戸波親平というのがおりましたが、それが昭和六年に「金属」という雑誌を創刊して、現在でも続いておりますが、それを興すに当たって会社の名前としてつけたものです。私は大学をやめ、機器をつくっていた会社におりましたが、それを十年前にやめ、こういうアグネ技術センターという仕事を興すに当たって、その前に出版のことで、このアグネという会社と関係がございましたので、こういう名前をとってアグネ技術センターというものをつくったということです。  アグネ技術センターというものの、われわれの当初の仕事は、技術コンサルタント的な仕事を意図したわけですが、ちょっと会社の宣伝めいて恐縮ですが、最初は主としていろいろな物理測定機器をつくっておりまして、その部分は現存、分離いたしまして、その後は、測定とか分析、主として物理的な手段による測定ということに重点を置いた仕事をしております。それとあわせて、たとえば金属物理とか結晶とかいう方の学会の出版物を出版するというふうな仕事をしております。だから、たとえば今度のクロムの調査でいいますと、一般の方は、あれを酸で溶かしてクロムが何ppmある、何が何ppmあるというようなことをされるのが普通ですが、私どもは、いわゆる物理的な手段で、それがどういう状態で物理的にあるのか、元素の状態でなくて、物理的にどういう状態であるかということを明らかにして、物を考えようという立場で、仕事をしているということです。

林義郎自由民主党

○林(義)委員 長崎さん、そうしますと非常におもしろい研究をしておられますし、世界の学者の名前を全部とっている、こういうことですから大変なものだと思いますが、やはり株式会社ですから常利事業をしなくちゃならない、こう思うのです。奉仕でやるわけにはいかない。お仕事は、たとえば東京都公害局であるとか、そういったところからのいろいろな委託作業とかというような形になるわけでございますか。それとも民間の会社から、これこれをしてくれとか、あるいはいろいろな団体から測定をしてくれ、研究をしてくれ、そういうことで株式会社としての経営が成り立っておる、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。

長崎誠三株式会社アグネ技術センター所長

○長崎参考人 東京都のようなところから委託を受けるということは、まず、ございません。私どもの仕事は、たとえば企業とすれば、例として東芝であるとか日立であるとか、そういう大企業のいろいろな研究開発の中での物理測定部門で、そういうところが、たとえば外部に出したら、出した方がいろいろな点でメリットがあるというものがございます。そういうことについての仕事の方が多うございます。こういう分析とか、このクロム騒動が起きましたので、少し、こういう外部から依頼を受けて、自分のうちの庭の土だけれども、どうなのかというようなことで依頼を受けることはございますし、幾らかございますけれども、こういう調査は、先ほどのたとえば幹線道路沿いの土にいたしましても、それは全部、自主的な調査です。私たち自身が歩いて、たとえば私が仙台に出張した場合に取って歩く、あるいは関西に行って取って歩くということをやった、全部それは自主的なものです。

林義郎自由民主党

○林(義)委員 武藤参考人、大変おもしろいお話しを聞かしていただきましたけれども、お話しになりました中で、最終的な処分をいたします。今回の場合、日本化学工業というような会社が鉱滓を流します。そういったような物質というのは、私は現実問題としていろいろあると思います。クロム関係にいたしましても、午前中の参考人の質疑で私、申し上げたのですが、六価クロムを製造しているような会社だけではない。むしろ皮革なめしをやっているところの工場についても、その廃棄物の問題がある。それからクロムメッキの工場につきましてもスラッジの問題がある。こういうことで、どうするかという問題が一番大きな問題だろう、こういうことを申し上げたのですが、やはり体制としてはいろいろ考えられますけれども、やり方としては、クロムメッキなどというような工場は、非常に小さな工場ですから、やはりそこは集中して廃棄物を処理しなければならない。現実問題として言うならば、板橋地区で言うと板橋の公共のごみ処理場かなにかに持っていって処理をいたします。こういうことで公共関与というようなお話しありましたけれども、やはり公共的なことでやらなければ片づくものではない、まあこういうことでございました。私はそう理解をしたのですが、そういうふうに考えてよろしいのかどうかというのが第一点。  それから第二番目は、公共的に集めておいて、それを最終的な処理をどうするのかというのが、やはり問題になってくるだろうと思うのです。埋め立てをするとか、先ほどどなたでしたかお話しがありましたけれども、広大な土地がなければなかなかできないのだ。最終的な処理技術ということから考えると、具体的にはどういうふうなことを、いまわれわれは考えていったらいいのか。先ほどのお話しでは、いささか抽象的なお話しでございましたから、武藤先生の方で何か具体的に、こういうふうなことを考えたらというようなお話しがあれば、この機会にお伺いをしておきたいと思います。

武藤暢夫関東学院大学教授

○武藤参考人 第一点の公共関与等に関する問題でございますけれども、いま、お話しのございましたように、特にメッキ等は中小の、いわゆる小が非常に多いといったような問題、これにつきましては全部を、これは多少ながら税金を投入してというふうな原則的な考え方では、私はございません。まず第一番目は、あくまで小は小、大は大なりに自分のところで考えるということが第一義でございます。第二義的には、もう少し業界の集まりというものが自主的に、中間的に入れないものかどうか、そこら辺のところを少なくとも、かなり強調したいというふうに私は思います。そして、それでどうしてもだめだというふうな段階においては、これはやはり、いま現在の国及び自治体等で少なくともやらなければならないことは何か、そしてやれることは何かということは、やはり有害物質の管理であろうという観点から申し上げております。  したがいまして第一義的には、やはり排出者負担の原則というふうなものを踏まえておるわけでございます。ただ公共関与というふうなことに少し逃げ過ぎてはいないだろうか、現在の自治体がそういう傾向もありはしないだろうか。それは結局、いま第二点の御質疑のございました、一体いろいろな物が出てきた場合に、技術的に細部は必ずしもいろいろな条件で追い切れない、そして最終的に処分する処分の方法と場所というものは、どうしてもこれは見つからない。そこでかなり自治体等でも苦労なさっているのが実態ではないかということを、先ほど、お話しでも申し上げましたし、いま第二点として御指摘の最終処分の方法につながってまいるわけでございます。それで、きわめて端的に申し上げますならば、私はやはりこれは最終処分は、いままで使われてきました言葉を使わさせていただきますならば、地中へ埋没してしまう、いわゆる埋め立てということだろう。ただ埋め立てという印象は、少なくとも安易に投棄なのか埋め立てなのかというふうなところの限界がはっきりいたしませんから、はっきりこれは衛生的な埋め立てである。この埋め立てという言葉も使いたくないのでございますけれども、いわゆる安全化するのだ。そこら辺のところで封じ込めという言葉が、実は出てまいるわけでございますが、そういうことでございます。  これはあくまで御参考までに私の常々思っていることなのでございますが、たとえば東京におきますところの夢の島の問題あるいは新夢の鳥の問題、あの辺のところであるならば、もはやど真ん中であるならば有害物質を一応、前処理して、少なくとも現在の環境庁の告示に出ておりますような無害化したという形であるならば、私はあの辺のところに計画的に埋め立てをするということは許されてしかるべきだろうというふうに思っております。そうでないと、現実の問題として処置できない。たとえば、そういったような形で、その辺のところを毛ぎらいしてしまうと、これはやはり社会活動ができないであろう。きわめて具体的に申し上げますれば、いまの東京都等の臨海埋め立てというふうなものも、もう少し真剣に考えていいだろう。それにはまた、調査等も付随的に必要になってくるだろうというふうに考えております。  以上でございます。

林義郎自由民主党

○林(義)委員 それからもう一つは、武藤先生は東京都で江東区大島九丁目の埋立地の処分の専門委員をやっておられたのだと思いますが、あれが非常に時間がかかりました。わかったのが四十八年の三月で、東京都の交通局が、下請から、何かおかしなものがあるぞ、調べてみろと言われて、ボーリングをしてみたら、こうであった、こういうことから始まりまして、報告書の日付は四十九年の十二月、一年半以上たって出ているわけであります。すでにそのときには廃棄物処理法も大体できておったのですから、もう少し早目にできなかったものなのかどうか、どうして一年半もかけなければ報告書ができなかったかという点を、率直にお話しを聞かしていただければありがたいと思いますし、それから新聞なんか、いろいろな圧力がかかったとか、某議員がどうしたとか、どうだこうだ、いろいろ言っていますが、そんなことは抜きにしまして、技術的な問題が非常にむずかしかったのか、あるいは民有地でありますから、自分のところにそんなものがあったら補償しなければならないとかなんとかということで、できなかったのか。先ほどの副知事の話は、どうもその辺のことを言っておられましたけれども、一体どの辺ができなかったのか、具体的なお話しを聞かせていただきたいと思います。

武藤暢夫関東学院大学教授

○武藤参考人 四十八年の十月に委員会なるものが結成されまして、報告書を一応まとめてお出ししたのが四十九年四月でございます。ただし、いろいろこれは都の内部事情がおありになったのではないかというふうに思います。新聞等にもそのように出ておりますが、最終的に私どもが関係いたしました報告書が出ておりますのは九月でございます。そうして東京都がお出しになりましたのしは十二月でございます。その間において、私ども委員会なるものに圧力がかかったりということは一切ございません。全く平穏でございました。  以上でございます。

林義郎自由民主党

○林(義)委員 交通局がわかったのが四十八年の三月だと思うのです。その年の十月ということですから、わかってから、いよいよやるまで七ヵ月かかっている。それから四十九年の四月までですから、半年間で専門委員会の方は上げられた。また四十九年の四月に出てから、いよいよ最終決定になるのが十二月である。その勉強する期間は非常に短かったのだけれども、初めの方が長かったり後の方が長かったり、こういうふうな感じが私はぬぐえないのです。お話しだと東京都の中の内部事情だ、こういうふうなお話しがありますが、委員会の中ではそういうことはなかった、大体、考え方はこういうことでよろしゅうございますね。

武藤暢夫関東学院大学教授

○武藤参考人 そのとおりでございます。ただ念のため一言、申し添えますけれども、四十八年三月に地下鉄云々の問題が出まして、十月までは都自体で調査をなさったというのが、その期間でございます。調査が終わりましてから、委員会に、この調査方法と結果はどうかというふうに出てまいりましたから、その間は東京都も勉強しておられたわけでございます。

林義郎自由民主党

○林(義)委員 渡部先生にお尋ねしますが、先ほど栗山町のお話しがありました。先生の報告が四十九年三月五日というのがありますが、これによりますと、先ほどのお話しで外国では前から職業病として知られておった。「しかしわが国では土屋が」——この土屋というのは慶応の土屋先生だと思いますが、「土屋がニッケルあるいはクロムを取扱う産業での肺癌死亡が期待死亡数の約二倍であることをみているのみで、具体的な症例の報告はまだない。」ということが最初に書いてありますね。  お尋ねしたいのは、日本では、先生の御研究があります前の文献としては、この土屋さんの文献が一つで、約二倍ということが出ておる。先生の方は、先ほどのお話しで三十倍、こういうことでありますが、二倍というのは、相関性というか、六価クロムと肺がんとの関連の有意性を言うには、二倍くらいでは足りない、やはり相当高くなければならない、こういうことになるのでしょうか、どうでしょうか、この辺、お尋ねいたします。

渡部真也北海道大学助教授

○渡部参考人 お答えします。土屋先生の御研究は、昭和四十年に発表されていますけれども、データはたしか三十五年以前の三年間の死亡だったと思うのです。そのころは、いま日本化工の方の肺がんの症例がいろいろ出てきていますから、よくわかりませんけれども、栗山は三十五年に第一例が出て、それ以前は出ておりません。当時は重クロム酸塩製造工場では、そんなに多発はしていなかったのではないかとも思うのです。土屋先生の場合は、私もいまちょっと文献を持ってきていませんで、はっきりしませんけれども、ニッケルとクロムと両方扱っていた工場を一括していますので、これがクロムによって多いのか、ニッケルも発がん性が言われておりますので、ニッケルによっているのか、その辺もはっきりさせておられません。また二倍というくらいでは、十分に高いとはやはり言いにくいのじゃないかと思うのです。かなりサゼスティブだ、示唆的なものじゃないかというふうに私は考えております。土屋先生はどういうふうに考えているか、はっきりわかりませんけれども。

林義郎自由民主党

○林(義)委員 そこで先生の御研究があるのですが、疫学の調査でありますから、工場の状態、工場における暴露状態がこういうことであって、肺がんがあった。暴露状態というのは工場の中で何年間かありますから、そこで肺がんの死亡率がこれだけあります。一般の方は暴露状態は普通には考えられませんから、ないところはこうであるからという比較でしょうけれども、実はたばこですね、これも昔、肺がん、肺がんとずいぶん騒がれたものであります。私はこの問題で、渡部先生ともう一人、せっかく来ておられますから鈴木先生にお尋ねしますけれども、たばこの害の問題とクロムの害の問題と、そのどちらが高いのかという点について、両方、比較しましてお尋ねするのと、それからもう一つ、重合した場合ですね。重合した場合というのは、六価クロムの製造工場の中におきまして、たばこを吸う人と吸わない人があるだろうと思いますから、それの肺がん状況というのは、何かお調べになったものがあれば、教えていただきたいと思います。

渡部真也北海道大学助教授

○渡部参考人 私が発見しました栗山工場での十九例の肺がん、一例、喉頭がんですけれども、その十九例の症例の中には非喫煙者も入っております。それからパイプ、刻みですね、刻みを吸っている者が二名あります。それから、たばこを吸っている者も特に多いという数ではない。ですから、たばこが原因して多くなっておるということではないと思うのです。恐らく日本人の一般並みの喫煙集団であったというふうに考えます。  それから、たばことクロムとの両方の影響がどうかということですけれども、これについては疫学的には、まだ私たちは、そのクロム工場での非喫煙者での発がんと喫煙者での発がんとの率の比較をしておりませんので、この点については何とも申し上げられません。ただ動物実験では、アメリカで、たばこの中の発がん物質の一つと考えられているベンツピレンですね、三・四ベンツピレンとクロムとを合わせてやった場合と、それからクロム単独の場合とで比較した実験があったと思いますけれども、いまはっきり結果を覚えておりません。

鈴木武夫厚生省国立公衆衛生院次長

○鈴木説明員 がんの問題は大変むずかしゅうございまして、いま先生の御質問に明確にお答えすることは私はできないと思います。というのは、全住民がいまクロム工と同じ職場に働いておると考えられて、それでたばこの煙とクロムの影響との差をおっしゃっているのか。あるいは何しろ、がんを起こしますいろいろな物質は、私は数千種類あると思います。環境性因子といたしまして。そのうち何に注目して考えるのかというものの絡み合いでございますので、たばこの害とクロムとの比較を、片っ方が十で片っ方が一であるというのは、ちょっと、いま私としてはお答えできません。だけれども、クロムというものが現実に、いま渡部先生からお話しのありましたように、あれだけの労働者の中から、これだけの人数が出るといたしましたならば、先生はどういうふうにそれを解釈していただけるか。同じように何十人かの労働者がたばこをのんでいたと思います。それは多少、量が多かった人も含めまして。どっちに注目するかということは、もう疫学的判断に任せるのでございまして、ある物質とある物質と、どっちが高いかということは簡単には言えないと思います。

林義郎自由民主党

○林(義)委員 時間がないようですから、最後に長崎さんにお尋ねしますけれども、市川市浦安地区で処理をしたけれども、千葉大の浅見さんの調査では効果がない、こういうふうなお話しをされておった。それからクロムメッキは硫酸第一鉄をまくことは気休めにしかならない、こういうふうなお話しがありました。そうしますと現在の体制では、いろんなクロム関係のものが出てくる工場がありますから、これをやめない限りは、その処理をしなければならないと思いますし、その処理の仕方をどういうふうにしたらよろしいとお考えになりますか。この辺をもし長崎さん、こうしたらよろしいということがありましたら、ひとつ御説明いただきたいと思います。

長崎誠三株式会社アグネ技術センター所長

○長崎参考人 いまのお話しの問題、まず浅見さんのことから御紹介します。  浅見さんは現在、茨城大学におられると思いますが、四十五年の十一月三十日に浦安、正確にはこれは市川市行徳儀兵衛新田というのですか、そこのクロム鉱滓を捨ててあるところに行って、クロム鉱滓を採集なさいました。そのときは、まだ処理していない状態です。それで、じかに採集もされ、それから、その辺の方が採集したものをもらって、分析した結果は、一番高いのでは一三%に達するものもありますが、少ないので大体一、〇〇〇ppm程度のクロム、それからあとマンガンを多量に含んでいるものもございますが、こういうものであったわけです。それからその後、市川市がこういう処理をしているわけです。「中和剤として硫酸第一鉄を千トン使用し、上部二十センチほどの鉱滓と混合接触し、中和還元を図ること。毛管現象をなるべく起こさない土質(砂など)の土砂で一メートル以上覆土すること。側面は〇・三ミリ以上のポリエチレンシートで被覆し、側方への水の流れを遮断すること。」あと、井戸を使わないとかいうことがございますが、こういうようなことの処理を四十六年四月に行ったわけです。行ったと言われた四ヵ月後に、再び浅見さんが行かれて試料を採集され、それの分析をされたわけです。そうしたところ、七点ばかり取ってこられていますけれども、一点は出ないものがございましたけれども、やはり一番多いので二四五〇ppmの六価のクロムがあった。少ないもので八七六ppmのクロムがあったということです。浅見さんの御報告はこういうことで、これはたしか土壌肥料学雑誌に報告が載っております。  これはさっきメッキのお話しを申し上げましたけれども、メッキの場合でも、武藤先生もお話しがあったように、非常に酸性にしませんと反応いたしません。ですから、硫酸とかそういう酸を加えて廃液を酸性にいたしまして、そうして反応しますけれども、これは沈でんになっておりませんので、今度さらに沈でんをさせるためにアルカリ性にするわけです。八とか九のアルカリ性にしますと、今度は沈でんを起こしますから、そして初めて除去をするということをやるわけです。そうした状態では一応、三価になっているということになります。ですから、その三価にするという処理については、いまのメッキについてやられているような処理は、それなりにいいわけです。しかし、今度はクロム鉱滓を投棄してあるところで、酸性にするために、さらに酸をまくというようなことは、二次公害をさらに起こすことになりますから、そういうことはできないだろうということです。  それからもっと根本的には、先ほどから私くどいように申し上げますが、六価のクロムといっても、いろいろな化合物があるわけです。それがどういう化合物があるのかということ。その化合物でも、いろいろな形でまた周りにある物と結びついているわけですが、そういう物理的なことについて明らかにしないで、すなわち、やっつけようとする敵情を全くこれは明らかにしていないわけです。何人ぐらいいるかということは分析して知っているわけですが、それ以上の、敵はどれくらいの装備を持っているかということは明らかにしていないわけです。そうしておきながら、こういう、ちょっと言うと原始的な方法で処理をするということは気休めにしかすぎないということです。ですから、これはやはり抜本的にやろうとすれば、一つは、水が流通しないようにするということができれば、そういう処理をするか。もう一つは、現在も歩いてみますと、非常に人が住んでいるところは大抵アスファルトで舗装されていますが、もっと海岸に近い地帯は露出したままでございますが、そういうところについては可能な限り取り除いて、これはこれで、どこかで別に処理をするということだと思います。取り除いたものを、先ほどお目にかけたように水で何回かやれば、これはかなりのものが取り除かれると思います。そういうことをきちんとすべきだということです。やはりそういうことはきちんと科学的に、現物について、実態について究明しないで対策を立てるということは、いたずらにお金を使うことにしかならないというふうに思います。

登坂重次郎自由民主党

○登坂委員長代理 次に、田中覚君。     〔登坂委員長代理退席、委員長着席〕

田中覚自由民主党

○田中(覚)委員 まず第一番にお伺いをいたしたいのは、この六価クロムを無害化する有力な方法として、三価に変えるということが従来からのやり方のようでございます。そしてまた、先ほど武藤参考人からは、一たん三価に変えたものは、自然環境のもとでは、そう簡単に六価には戻らないという御所見をいただいたのでございますが、しかし午前中の質問にも出たのでございますけれども、三価といえどもやはりクロムである。必ずしも全然無害とは言えないという学説もございます。ことに三価の場合は、蓄積されて徐々に慢性的な被害をもたらすというふうなことが言われておるようでございますが、もし、それが事実であるとすれば、六価を三価に変えてからの状況いかんによりましては、かえって新たなる被害が生ずる心配もあるように思いますけれども、この点について武藤参考人の御所見を伺いたいと思います。

武藤暢夫関東学院大学教授

○武藤参考人 私も三価のクロム塩というものは、これは有害性が全くないとは思っておりません。これは私が自身で実験し、体験したことではなくて、既往の文献等に徴しまして申し上げていることでございます。ただ、非常に直接的に皮膚とか、そういったところに刺激を与え、そして直接的な障害を与える効果というものは、これは六価クロムほどではないというふうに承っておりますので、少なくとも有害性の減殺というふうなことは、やらないよりはやった方がいいだろうということは申し上げ得ると思います。  現に、いままでのいろいろな基準、これは絶対視するわけじゃございませんけれども、環境基準にいたしましても、あるいは排水の排出基準にいたしましても、あるいは飲料水の問題にいたしましても、六価クロムというふうなものを、かなり直接的な有害性の金属イオンとして取り上げておりますので、そういったような観点から申し上げたわけでございます。  なお有害性とか、あるいは発がん性とかいうふうな問題は、六価クロムの直接的な害よりも、肺がんといったような、むしろ粉じんとの共同効果みたいな形に、私としては印象づけられておりますので、この点につきましては、その道の専門家でございます渡部先生なり吉田先生なり、あるいは鈴木先生なりに伺っていただければ幸いだと思います。  以上でございます。

田中覚自由民主党

○田中(覚)委員 そうすると、いまの六価を三価に変えるという従来のやり方は、公審対策上やはり有効な方法である、こう考えていいわけでございますね。どなたに伺いますか、渡部先生でも吉田先生でも、ひとつ公衆衛生の立場から伺いたいと思います。

吉田克巳三重大学教授

○吉田参考人 こういう問題にぶつかった場合に、責任のある行政的措置として、どういうふうにやるかということは、そういう責任に当たれば、だれしも真剣に考えなければいけない問題だと思うのです。先ほど武藤先生の方からも、お話しで一部、触れられたのですが、三価に変えるということによって無害化した、そういうことは科学的には根拠はないと思うのです。三価が無害であるという証拠は、中毒学的にもどこも出されたことはないのであって、やはり根本的な問題は、こういう鉱滓は、武藤先生が先ほどちょっと触れられたのですが、封じ込める以外に手がないと思うのです。上から硫酸第一鉄をいかにばらまいても、最終的な解決法とは必ずしも言えない。実は、こういう物の処理は、われわれ必ずしも無経験ではないと思うのです。といいますのは、御承知のように、たとえば水銀の封じ込めということは、現にやっております。たとえば四日市での二百万トンのヘドロの埋め立て、あそこの中には水銀が大量に入っている。そういう場合に、われわれはどういうふうにして計画を立てるかと言えば、まず第一番に地盤を調べて、そして粘土層がないかどうか探すわけですね。なければ、持ってきてでも、それを下へ持ってくる。そうしておいて、その上へ今度シートを敷いて、そして今度は入っている金属がどういう形かということを調べる。多くの場合、硫化物なんかですと非常に安心できる。今度のクロムの場合、私よく知りませんが、恐らく水に対する溶解度というものが一つの問題になると思うのですが、溶解度を下げる方法があるなら、もしそういうことが可能なら、そういうことをやる。そしてシートを敷いて、それから側面に一面に矢板を打つ。かなりお金がかかります。二億、三億という金がかかると思いますが、矢板を連続して打って、そしてその上に、さらに二メートル前後の被覆をする、こういう形で現実にそういう工事はやられるわけです。そしてその周囲に井戸を抜きまして、最低十五年間、記録しなさい、そういう文書をつくるわけです。やはりそういうふうにきっちりした措置をとるのが一番必要なのではないか、そういうように思うわけですね。これはほかにも例があるので、そういうことを間違いなしに、きちっとやっていく、そういうことが一つのポイントではないか、そういうように思うのです。

田中覚自由民主党

○田中(覚)委員 午前中、東京都の志賀副知事は、これらの恒久対策については、学識経験者の意見を聞いて決めるのだというようなことを言っておられましたが、先刻来、伺っておりますと、結局この具体的な条件というものを十分に究明をしてからでないと、本当の恒久的対策というものは、やはり決まってこない、先ほど長崎参考人の御意見はそうであったように実は拝聴いたしたわけでありますが、そうすると、東京都の具体的に起きている問題というのは、いますぐに幾ら金がかかるとかいうことにはならないわけでございましょうか。やはり相当、何か時間をかけないと恒久的な対策は決まらない、そうであれば、応急的にいますぐ、どうするということについて、何かこうすべきだという適切な御意見があれば、伺いたいと思います。長崎参考人、ひとつお願いします。

長崎誠三株式会社アグネ技術センター所長

○長崎参考人 はなはだむずかしい質問をされて、ちょっと即答はいたしかねますが、やはりこれまでやっている対策というのは、私は先ほど申し上げましたように、相手が何であるかを明らかにしていないということです。それを、先ほど林先生から、ずいぶん時間がかかっているではないかというお話しがありましたが、たとえば江東、江戸川地区であれば、もっと短時間に、現状はどうであるかということの調査はできるはずです。その現状ということは、先ほど私が冒頭の陳述で申しましたけれども、やはり六価のどういう化合物であるか、そして、それが推定量どの程度あるかということを明らかにしない限りは、対策はまだ立たないということです。それが一つ。  それからそういうことを、することによって、たとえば実態を明らかにすると、住民の心配というものはかなり薄らぐと思うのです。というのは、先ほど林先生から、おまえのところは何をしているかというお話しがありましたが、一般的な企業からの分析というのは、実際のところ、われわれはそう多くは引き受けておりません。ところが、今度の問題で一般のいろいろな住民から、この物は怪しいのではないかということで、多くの試料を持って来られて、やってくれということでやった物がございます。そういたしますと、それは大抵入っていないのですね。色が赤いからとか、黄色いからとか、いろいろ心配されますけれども、それは入っていないわけです。それから事実、われわれが八月の中旬以降に江戸川、江東地区で、まず黄色い物というので、黄色い物を深して歩いたわけです。そういたしますと、黄色い物の中に、先ほどお見せしたような形で六価クロムの化合物を濃厚に含んでいる物もありますが、それ以外に黄色い物というのは数多くあるわけです。一つは、小松川地区にこの日本化学の鉄筋の住宅がございますが、そこの庭には、きれいに黄色い物がたくさん吹いているわけです。すわ、これこそクロムの化合物に違いないということで持ってきまして、実験して調べてみますとそれは全く入っていない。鉄の化合物なわけです。恐らく硫酸第一鉄の処理をしたために鉄の化合物が酸化されて、できているのだと思いますが、そういうものである。それからこれはどちらかの新聞では、たしかパーセントはppmの間違いであろうというのでppmと書かれましたけれども、黄色い化合物で一つの硫化物がたくさん捨ててある。それは真っ黄色な化合物です。そういうことを、やはりただ黄色ということでなくて確実に調べる。それから東京都は、たとえば試験紙というようなものを使って調査されておりますけれども、われわれもやってみましたけれども、それは非常に怪しいものであって、便宜的なものにしかすぎません。ですから現在、ロケットを宇宙空間に飛ばす世の中ですから、全力を挙げて調査をすれば、そういう実態を明らかにできるはずです。その上で対策を立てるべきだということです。  対策としては、やはり経験があるということは、ちょっとわれわれは言えないのではないかと思います。今度のような場合に、どうしたらいいのかというようなことを。やはり、今度の物について、一つは、先ほどお見せしたようにクロムの化合物を簡単に浸出できるわけですから、浸出して取り出してしまう。そして、残った物についてさらに処理をする、残った希薄な物について処理をするということが必要だと思います。先ほどお見せした物は、あれは買いに行きますと、五百グラム三千円するのですね。五百グラム三千円というのは、あの一かたまりの中に、もう数円入っているわけです。ですから、水でじゃぶじゃぶやれば、りっぱに商売になるような物なのです。恐らく会社は、かつてはそんな物を取ることは、経済的に引き合わなかったのだと思うのですが、現状では、それも十分成り立つような物です。

田中覚自由民主党

○田中(覚)委員 時間がございませんので、次の問題に入りたいと思いますが、鼻中隔せん孔症、これは体の生理機能に何の支障もないものかどうか。肺がんでさえ最近になって、ようやく労災に認定されたくらいでありますから、鼻中隔せん孔症というのは病気と考えておらぬ。これくらいのことにならなければ一人前の労働者でないのだというような考えすらあるということでございますので、したがって、企業にも従業員にも労働組合にも、あるいは労働省にも、そういう意味では認識が足りなかったのではなかろうかと実は思うわけでございますが、医学的に見て、この鼻中隔せん孔症というものは、一体どういうふうに判断をされるものか、伺いたいと思います。  これも会社で聞いた話でございますけれども、何か生来、鼻の悪い人は、かえって鼻中隔せん孔症にかからないというようなことも言われておりましたし、一体われわれの鼻というのは医学的にどういうものなのか。ことに、きょう午前中も問題になりましたけれども、会社の話では、鼻中隔のせん孔症の穴の大きさだとか、それから嗅覚に及ぼしている支障の程度だとか、そんなことを労災を認定する場合の基準にすべきじゃないかといったようなことを言っておるわけですけれども、医学的に見て一体どういうふうな、これについての御意見か、簡単にひとつ伺いたいと思います。渡部先生ひとつお願いします。

渡部真也北海道大学助教授

○渡部参考人 鼻中隔せん孔が起こる前に、やはり鼻の粘膜の炎症ですね、鼻炎が起こっております。ですから、そういう段階では確かに病気だと言えると思います。鼻中隔せん孔とか穴があいてしまった状態そのものは、特に生理機能には影響がないのではないかと思います。特に労働者からも、それについての苦痛は訴えられてきてないと思います。ただ、鼻くそが詰まって取るのに非常に苦労する、これはやはりそれなりの一つの障害かもしれない、確かに非常に不快なことではあろうと思います。これがなかなか取れないで苦しむ、そういったことはよく訴えられております。それから、そういう意味で治療の対象にはしていない。いままではされてこなかった。鼻にあいた穴をふさぐということは大変な手術であって、それだけの苦しい思いをしてまで治さなければならないものかというと、そういうものでもなさそうだということから、いままでは治療の対象にされてこなかったわけです。もし治療の対象になっていれば、それは当然、労災補償の適用になっておっただろうと思います。  穴があいた、それは身体の一部の欠損ですから、その欠損に対する補償というものは当然、考えられてもいいのかもしれませんけれども、労働省の労災保険の補償の考え方から言うと、そういうものは補償の対象にならないということのようです。ですから、機能障害として、鼻中隔せん孔とは関係なしに出てくる嗅覚障害あるいは鼻粘膜の知覚鈍麻、鼻水がたれてきても感じないという、そういうような神経障害が後遺症として残された場合に、これは機能障害として補償の対象になるというふうに考えられてきたと思います。

田中覚自由民主党

○田中(覚)委員 先ほど吉田参考人は、クロム以外の有毒物質について、今後クロム問題と同様な問題が起こる心配があるということを指摘されたわけですが、何か予想される物質あるいは問題というものが具体的にあれば、教えていただきたいと思います。  それから、こういう問題が、これからの公害問題の中心になるのじゃないかというような意味の御発言があったように思いますが、これはむしろ逆に、労災対策を完璧にやれば、公害問題に発展させずに済む問題ではないかというふうに私は思うのでありまして、そういう意味では、これが公害問題の中心になるようなことでは、労災対策が結局でたらめであるということになってしまうのではないかというふうに思いますが、いかがでございましょうか。

吉田克巳三重大学教授

○吉田参考人 先ほどもちょっと触れたわけでございますが、いまの御質問の後の方から申したいと思うのですが、私、確かにそのとおりだと思うのです。といいますのは、労災対策がしっかりしておって、そしてそれがオープンに解決される、そういうことがあれば、当然これは公害行政の側の方も対応を考えるわけです。そしてまた対応ができる、こういうことになると思います。  ただ、不幸にしてこの日本の場合には、労災が、先ほども申しましたようにごく一部しか表面へ出ていない。そして現実に日本で労災になる人が、はっきりした数字を覚えておりませんが、年間で三万人以上あると思うのですが、そのほとんどが外科的なけがである。そして職業病というのはごく一部しか出ていない。これが、この労災という問題は、使用者と労働者の間の当事者間の問題であるということで、ほとんど関心が外から払われてこなかった。当事者間で解決できておれば、それが若干、不合理であっても差し支えないのではないか、こういうことがずっと従来あったわけです。それがやはり一つの問題としてある。労災の方がはっきりしておって、そしてそれを都道府県がキャッチしておれば、これはいろいろなことが当然、問題が起こる前に先行して考えることはできるわけです。  たとえば、非常にわずかな経験であれですが、前に、食塩の電解工場、苛性ソーダ工場、これは日本じゅうにたくさんあって、水銀汚染問題で非常に騒ぎを起こした工場でございますが、これが水銀中毒の患者をたくさん出しておる。ところがこれを防ぐために、たとえば建屋を取っ払ってオープンにしてしまう、こういうようなことがかつて行われたことがあります。現在はそういうことはやっておりませんが。ところがそういうことを行政の方では知らない。たまたま、この町の中のばいじんを定期的に監視しておって、その分析をした人がのこのこやってきて、どうも水銀が意外に多い、人体に直ちに有害とは言えないが、の空気中の水銀濃度の十倍以上あると言うので、びっくり仰天して、おかしい、それじゃ、それはどこから出ているか、いまのうちからすぐ調べないといけない。結局それは、建屋の撤去、それをまたもとへ戻すということが終わってない時点での工場から外へ追っ払っておった、こういうことがわかったということがございます。すぐ、これは工場の方とかけ合って、外へ漏らすのではなくて、建屋をもとどおりにして、そしてちゃんとそれを除去した上で排気する、こういうことをやらせた経験がございます。これなんかは、たまたま偶然ひっかかってきたということなのですが、考えてみれば初めからわかっておることである。幸いにして、これは大事件にはならずに事前に処理をして全部、処置をつけた。  似たような問題で、町の中で有機溶剤を使っている工場がたくさんある。たとえば最近ですと、特にクリーニングの非常に大きいもので、ハロゲン系の炭化水素を使っておる。ところがたまたま病院の方から、実は患者が回ってきて、それで内科の方から、どうもこれは中毒患者と違うか、おかしいなんと言うので行ったところが、そういうところの従業員である。労災はどうなっておるのかというと、それは全然やっていない。町の中でやっているというので、すぐ調べに行ったところが、隣のアパートの上に歯医者さんが住んでおって、それが肝疾患で入院をしておるという話を聞いて、私あわてて調べて、排気を全部やり直させたことがございます。  こういうような例というのは、どこでも経験をしていると思うのです。経験をしているけれども、その当事者が必死になって解決している、こういうことで、その解決がおくれたものが大きな社会問題になっておる。それがある意味で実態の  一部ではないか、そういうように考えるわけです。そういう意味では、そういう物に対してできるだけ手を打てるような行政体制というものをやっていく必要があるし、それがあれば、めったやたらに埋めるべきでない場所へ埋めるということは起きなかったのではないか、そういうように思うわけです。

田中覚自由民主党

○田中(覚)委員 時間がございませんので、最後にもう一つ伺いますが、いま問題が起きておる会社、企業というのは非常に少数で限られておるわけでございますけれども、六価クロムを使っている工場というのは全国的に相当、数が多いわけであります。特に金属メッキだとか、あるいは皮革なめしだとか、あるいは顔料だとか、そういったどちらかと言えば中小企業的な工場における労災問題あるいは公害、環境上の問題について、これに関連してどのように対処したらいいか。

吉田克巳三重大学教授

○吉田参考人 メッキ工場は今後の公害行政上大事な問題だと思います。といいますのは、率直に言いまして、実際に行政をやると、メッキ工場の三割くらいは違反というのが、どこの都道府県でも実態だと思います。これが中小企業であるがために、いつまでたっても解決できないということで、どこも苦しんでおると思うのです。  私、基本的に考えて、これを何とかする方法とすれば、一つは共同化を真剣に国や府県が推進するということ。もう一つ大きい問題は、私お考えいただきたいと思いますのは、これはほとんど下請で、下請の発注者である親企業に対して、何らかの法的な責任を課す方法を考えてもらうべきではないか。たとえば現在、自動車事故などについて使用者の責任というのがございます。それと同じように、中小企業に対して発注者が、その公害について連帯責任を負うような手段が何か考えられないか。そうなると、この解決が現在より、かなり楽になるのではないか。非常に過酷な競争条件のもとでやっているということは事実でもあるわけですから、その点をひとつ御考慮願えないか、こういうように思います。

田中覚自由民主党

○田中(覚)委員 終わります。

渡辺惣蔵日本社会党

○渡辺委員長 島本虎三君。

島本虎三日本社会党

○島本委員 各参考人の皆さん、御苦労さんでございます。また、政府説明員としてお二方が来ていらっしゃいますが、本当に御苦労さんです。今回の場合は、特に六価クロムの問題に発しまして、いろいろ医学的な、また労働医学的な立場から、あるいは労災、職業病、公害または環境破壊、この面について聞きたい、こう思って皆さんを煩わしておる次第であります。これはいろいろと私自身の誤解もあると思いますから、遠慮なしにひとつ御指摘願いたいのであります。  まず武藤参考人にお伺いしますが、先ほどの、いろいろな対策の点から始めまして参考意見を聴取した中で、行き過ぎた情報があるようだけど、というような発言がありましたけれども、これは多分に困るというような意味を含めて言われたように思いました。また、有害物質と言われ、恐れをなして対策が消極的になる、こういうような意味にも、ちょっととられたのであります。それと排出者、これは企業でしょうけれど、それに責任があるということに片づけられる、この三つはどこにつながるのか、私自身もどうも疑問だったのであります。他の人の発言を聞いておりまして、公共管理と逃げる、こういうようなおそれがあるからというのはわかったのであります。しかし、いろいろないままでの公害情報並びに環境破壊あるいは、いま起こっているような労災関係の点を見ますと、行き過ぎた情報どころか、情報がわかっていても、それを隠しておったり、それを実施しなかったりする、行政も企業べったりのような、こういうようなありさまだったのであります。そうすると困るのは、これはだれなんだろうか。国民の方はさっぱり困らない。もっと早くこの事実を知った方がいい。サリドマイドのあの事実を見ても、もっと早く知り、対策を打った方がなおよかった。こういうような反省が残るのでありまして、だれが困るかというと経営者が困るのじゃないか、こういうふうに思うわけであります。したがって私自身も、いまの三つの点はどういうふうに解釈していいのかということと、廃棄物処理、これが完全にできない。そうして科学的な最高の技術をもってしても、これは処理できない。処理できるならそれをすべき。できないならば、その物の生産について制限または禁止する、こういうような構えが、環境を保全することになり、公害を防除することになるのじゃないか、こう思うわけでありますけれども、武藤参考人の御意見をひとつ賜りたいと思います。

武藤暢夫関東学院大学教授

○武藤参考人 私、いま三点、必ずしも完全にメモしておりませんので、また途中でお伺いするかもしれませんが、私が行き過ぎた情報というようなニュアンスで申し上げましたのは、きわめて小市民的な内容のものでございます。いろいろ新聞ばかりじゃございません、あるいは週刊誌等にいたしましても、現実的に中身として誤ったことをも含めまして、かなりどぎつく表現なさっているというふうなことは、必ずしも適切ではないという意味で申し上げたわけでございます。先ほどの言い方を繰り返しますれば、現にそこに住んでおられる方々等に、異常な刺激を与えるというふうな言い方は、やはり差し控えるべきではないだろうか、事実を正確にお伝えになる必要があるのではないかという意味で申し上げたわけでございます。決して、こういう大きな問題を隠しておったり、これは私とてもとても許せる問題ではございませんので、その点ひとつ誤解のないようにお願いを申し上げたいというふうに思います。  それから、自治体等の話を多く申し上げたわけでございますけれども、第二点、ちょっともう一度、恐れ入りますが……。

島本虎三日本社会党

○島本委員 これは行き過ぎた情報というようなことと一緒に、その後で、有害物質と言われ、恐れをなして消極的になる、こういうようなことでしたが、これは一体だれが消極的になるのか。

武藤暢夫関東学院大学教授

○武藤参考人 これはこういうことでございます。先ほど申しましたのを再度ちょっと繰り返しますが、いま現在、産業廃棄物を扱います自治体において、いろいろな物がどんどんたくさん、めまぐるしく出てくるということに、非常に戸惑いを感じておるという問題が現にあると私は思います。これは結局、最終処分地がどうしても確保されませんと、結果的に非常にむずかしい問題であるわけです。それに加えて、たとえ最終処分地がこうすれば安全であろうと思われつつも、そこにもし有害な物質である、これは猛毒であるというふうなことになりますと、たとえ、その物がいかなる形の物でございましても、運び込むことすら、これは許されなくなってくる状況が、やっぱり出てくるであろう。私は、行き過ぎた情報というようなことに関連いたしまして、最終処分地がたとえあっても、そこへそれを運び込んで最終処分をするということに対して、全くこれはにっちもさっちも動きがとれなくなってくるという意味で申し上げたわけでございます。ちょっと御理解いただけないようでございますけれども。これは有毒なんだというふうなことになりますと、たとえ毒性をある程度まで減殺いたしましても、あれは毒物なんだ、この道を通ることすらできないといったようなことは、やはり将来に禍根を残す問題ではないだろうかというふうな意味で、情報問題と結びつけて申し上げたということであろうかと思います。また私も、いまにして思えば、そのような少しあいまいな申し上げ方をしたかなというふうな感じはいたします。

島本虎三日本社会党

○島本委員 いや私、そういうようなことからして、最後に結論として、企業がそういうような物を廃棄する、また、してもいいというような考え方、これは科学的な最高の技術をもってしても危険であり、処理できないような廃棄物を出すような企業や、そういうようなものの企業活動は、奨励するより逆に停止させた方がいいのじゃないか、それが一番、公害防除にもなるし、環境保全にもなるのじゃないかと思うがどうか、これなんですがね。

武藤暢夫関東学院大学教授

○武藤参考人 これはどうも大変にむずかしい問題でございますが、明らかにこれは何の努力もせずに有害物質を出しておるということであるならば、私も全くおっしゃるとおりに考えます。ただ、現在の技術をもって、これはもう全く有害性というふうなものをわれわれの立場で出す、そしてそれを処理するということは、ちょっとむずかしいかと思いますけれども、少なくとも現在の技術において、これを無害に処理そして処分をするということは、これはわれわれのいままでの公害関係の技術屋の過去二十年間の一つの闘いであったと思うのです。ですから、やろうとして、ある程度まで金をかける、環境を金で買うという一つの態度、姿勢があるならば、私は最終的にこれは処理、処分というふうなものは可能であるというふうに考えております。それでもなおかつ膨大に、できないような質の悪い物を量をたくさんということであるならば、これはやはり完全にコントロールすべきであろうということは、基本線として私は持っておるわけでございます。

渡辺惣蔵日本社会党

○渡辺委員長 時間の関係もあるので、両方とも簡潔に質疑をしていただきたい。

島本虎三日本社会党

○島本委員 渡部参考人にちょっとお伺いしたいのです。先ほどの参考意見をいろいろ拝聴いたしまして、なるほどクロムによるところの肺がん、これは古い歴史があるようでありまして、先生の仰せによっても、一九一一年から一九一二年にかけてドイツで発生し、三〇年に労働者が肺がんになり、職業病として認められた。そうすると、いまからちょうど四十五年前ということになるのじゃないか。その後、今度アメリカでも、いろいろ調査を始めていたようでありますけれども、アメリカでは一九五二年に六つの重クロム酸について健康調査を実施した。そうして一九五三年にこれを公表なすった。すると、この段階で二十三年前に、これはわかっているというのは、日本でも当然これは情報としてわかっていたのじゃないか、こう思われるわけであります。そうすると、日本の対策というのが何かずいぶんおくれているような気がするわけですが、このおくれているという原因に対して、公衆衛生をおやりの先生で、また白ろう病を初め各種の職業病には造詣深い先生でありますが、御経験を通じ、この点を伺いたいのです。日本はようやく去年の六月に認定するようになったわけです。他の方では四十五年前にわかったり、二十三年前にわかったりして、もうやっているわけですが、余り遅きに過ぎないか。この点どのようにお考えでしょうか。

渡部真也北海道大学助教授

○渡部参考人 外国の情報は日本でもかなり早くから入っておりまして、職業病に関する一般的な日本の書物の中にも、大体昭和二十八、九年ごろから、クロム工場で肺がんが出るということが書いてあります。この重クロム酸塩製造工場についての労働衛生学的な調査というのは、文献に出ている限りでは、私が知っているのでは、昭和二十八年に大阪市立大学の堀内教授らが日本化工の大阪の工場のクロム酸塩製造工場で鼻中隔せん孔等の調査をおやりになっている。このときは肺がんのチェックはされておらないようです。それからそのすぐ後に、昭和三十四年に報告が出ておりますけれども、きょうお見えになっております鈴木武夫先生らが、日本化工の東京の工場での調査をおやりになっている。このときには肺がんの患者がいないかというチェックをなさっておられるわけですね。それには先ほど申し上げましたようなアメリカの文献がはっきり引用されておって、こういう種類の工場では肺がんが出るのだということが、やはり指摘されております。三十四年の栗山で行われた北大の調査とか岐阜大学の館教授らの調査報告書の中にも、そのアメリカなどの文献が引用されておりまして、こういう工場では肺がんが起こるおそれがあるのだということが指摘されているわけです。ですから、そういう報告書は当然企業にもいっておりますでしょうし、それから、そういう調査は労働基準局が関与して行われている調査ですから、恐らく労働省の方でも、そういった事実は当然お知りになっておったのではないかと思います。  なぜ、それが取り上げられてこなかったのか。これは大変、推測になってしまうわけですけれども、恐らく日本でそういう症例の報告がなかったからだ。鈴木先生がお調べになったときには疑わしい一例がある、経過観察の必要があるというふうにお書きになっておられますけれども、これが肺がんであった、あるいはあるということが確認されておらなかった。それから三十四年の北海道での調査のときには、症例はなかったということが報告されて、結局それ以後は、この重クロム酸塩製造工場での労働衛生学的な調査というものは、文献の上ではあらわれてきておりませんので、そういう意味で肺がんの症例が発見されなかったと思います。工場の中で、もしもそういう肺がんに関する健康管理が行われておれば、当然、発見されてきたものであった、もしも、そういうものが出てきたならば、恐らくそういう時点で労働省も対応したかもしれないと思うのですけれども、そういう情報がなかったために取り上げなかったのではないだろうかと思います。ただ労働省の労働基準局が監修して出しています「業務上外災害の認定の理論と実際」ですか、何かそういうような本の中には、肺がんが起こるということが言われているというようなことが書かれておりまして、どの時点からか、わかりませんけれども、そういうことも労働省では認識しておられた。ただ、それが企業に対する健康管理のチェックすべき項目として指示されておらなかったという欠陥があったと思います。やはり、こういう疑わしい段階で対応していくという姿勢が、クロムに限らず、いままでの労働衛生行政でも、あるいは公露に関する環境行政の中でも、わが国では、昭和三十年代、四十年代の前半、こういう時代には非常に欠けておった、そういうことの一つのあらわれが、このクロム問題ではないかというふうに考えます。

島本虎三日本社会党

○島本委員 次に、労働衛生研究所労働生理部長坂部弘之さんも来ておられると思いますが、いま渡部参考人もおっしゃいましたけれども、そうすると、昭和四十年のころでありますけれども、労働省自身、労働基準局の「業務上外災害の認定の理論と実際」という本が出ているようであります。「吸入によって呼吸道粘膜に腐食作用を及ぼす場合もある。クロムは職業性気管支がん、または肺がんの原因ともなると言われる。」こういうふうに、はっきり四十年に労働省基準局自身が、本を書いてあらわしながら、その対策を全然していないということは、どうも私ども自身は了解できないのであります。労働省の本です。いままでの文献によっても、きちっとそれが諸外国では行われてきている。それよりおくれているかと思ったら、労働省自身もこの本を書いておる。しかし対策はなかった。そうすると、これは労働衛生研究所の生理部長坂部弘之さんに聞きますが、こういうようなことを労働省がわかっていても、何かこれを行政化するための障害というものがあるのでしょうか。

坂部弘之労働省労働衛生研究所労働生理部長

○坂部説明員 私、研究所にいまして、行政の責任者ではございませんから、的確な御質問に対するお答えはできないと思います。ただ、われわれ研究者として言えますことは、いま皆さんからおっしゃいましたように、疫学の研究が非常に立ちおくれたということは一つ、事実あるわけです。それで、職業がんの発生は、暴露してから労働者が発病するまでに、長いときには三十年も四十年もかかる。ということになりますと、結局、労働者が職場を離れて、離職してから発生するケースが非常に多い。したがいまして、労働省が職業がんの重要性にかんがみて手帳制度を取り入れ、大規模に職業がん対策をやったのは数年前でございますが、それまでは手帳対策もとれなかった。結局、記録の保存が全然なかったわけなのです。ですから、離職して、もうどこへいったかわからない人々を追跡するのはなまやさしい努力でない。結局リタイヤした人、離職した人々をはっきりと調べれば、そこにある程度の集積性が出て、決断もできたでしょうが、在職者の中からは一例、二例ぽいぽいと出たのでは、なかなかこれがクロムによる肺がんかどうかというのも、労働省も決めかねたのじゃないか。ただ、ちょうど渡部先生がなさいましたように、一つの工場なり一つの暴露群において、はっきりと出てくれば、そこで問題になったと思います。  そのことは、私もずっと職業がんの問題に携わっていますが、たとえばコークス炉の問題にしましても、それから私の取り扱いました若干の化学物質による発がんにしましても、結局は、ある程度一つの事業体において、あるいは一つの職種において、一つの集積性があって、あっ、これは大変だということに気づくかどうかという問題だ、こう思いますが、それにしましても渡部さんが非常な努力をかけておやりになりましたが、疫学的に物を決めるということは、非常に大変な努力が必要であり、労働省も最近、強力な体制を敷きつつありますが、われわれ学者の側にいたしましても、日本において、そういうふうな職業病に関する疫学的研究が立ちおくれたということが一つの原因ではないかというふうに反省しています。

島本虎三日本社会党

○島本委員 これが労災ということ並びに職業病ということ、すべてこれは労働者の健康と命にかかわる問題で、これは行政も資本も当然これを守らなければならない義務がある。かかった場合には、その負担においてこれを救済をすることになるのでありますけれども、諸外国の文献に比べて日本には実例がないということで、認定はほんの去年の六月でしょう、肺がんは。全部死んだ人が認定されるという状態で、これは行政の方が遅過ぎる。ほかの方の国ではやっている。アメリカでも二十三年前にもうやっている。アメリカの情報なら直輸入されるのが日本じゃなかろうか。それに対しても、この点だけはなぜ遅かったのだろうかという疑問が残るわけなのです。したがって、いまのような状態をもう少し詰めて、これは行政が怠慢であるならば、これからは、そうでないようにしなければならないから、このことに対する一つの重大な今後の参考にしたい。と申しますのは、こういう例が、私自身の調査によってわかったからであります。  これは、いま現在、栗山にいる元の従業員です。名前は特にこれは本人のことですから言われませんけれども、現存しております。肺がんで、昭和四十九年の九月にそういう診断が下ったわけであります。しかしながら昭和四十九年の五月には健診によって全然、異常がないという。昭和四十九年の八月にはちょうど盆踊りの最中、声量豊かに音頭を取って歌っていた。それが九月の下旬の診断によって、もう手術ができないほど悪化しておった。高進しておった。クロムによる肺がんの進行速度というのは、こういうようにして、なったならば速い。それどころか今度は十一月に日赤病院の内科に入院した。本年の五月には神経科の方に入院した。これはもうけいれん、発作が起こって、その後、指南力、これは意識障害でしょうか、これが行動面は多動になる、こういうような症状でありまして、脳圧が高くて、脳腫瘍が起こってきておる。精神症状が起こってきている。それと同時に症状精神病と認定されて、肺がんが脳に転移している、こういうようなことであります。そうすると、わかるまでの間が遅いということは、これは発見されてからは急速度で病状が進行する、こういうようなことになるのじゃないかと思います。これは肺がんが転移した疑いが強い、こう言っているのであります。こういうような状態からすると、いかに労災であると、死んでから認定されても何にもなりませんので、その前に十分、手を打つべきじゃないか、こう思うのであります。  私自身、これをほうっておいたら、この原因がまた環境破壊と公害になりますから、そういうような点で心配なのでありますけれども、こういうような点において、ひとついままでの労災の認定の方法が、いかにも日本の場合はのろい。この場合はのろい。これがもう公害の方にまで、工場の外に飛び出していってしまった、こういうようなことであります。こういうようなことについては、どなたに説明してもらったらいいでしょうか。進んで説明したい人ございませんでしょうか。これはちょっと国立公衆衛生院次長の鈴木武夫さんにお願いしたいと思いますが、この点ひとつお教えください。

鈴木武夫厚生省国立公衆衛生院次長

○鈴木説明員 惨めな立場に立たされましたが、先生のおっしゃること、私は個人的には賛成いたします。学問というものはそのためにあるはずです。日本で症例があろうとなかろうと、どこで症例が起きようと、学問というものは国際的な財産であると思われます。それが行政に移るときに、どういう姿勢をとっているかというのは国の問題でございましょう。それは行政の問題であると同時に、先生方の問題でもあると私は思われます。それでなかったならば、法律も決められないはずでございます。ですから、その辺を私は……(局本委員「法律は決まっておる」と呼ぶ)いや、労災をどんなふうに入れていくか、ふやしていくかということは、行政当局だけでしょうか。国民全体の問題として私は考えておくべきであろうと思われます。  ただ、六価クロムを通じて、確かに御指摘のとおり私も、こんなに長い間ほうっておかれたのかという気持ちはぬぐえません。しかし、その間の行政のやり方というものに対して、こういう問題を通じて大きな反省を要求されているであろうと思われます。

島本虎三日本社会党

○島本委員 これはやはり余り惨めであり、こういうものが工場で発生した場合には、中の従業員が労災として認定される場合には、ほとんど死後である。また入院されてからであるということは惨めでありますが、こういう状態を放置すると、外には公害という現象が発生するわけでありますから、これは早く内部において、この点を処置しなければならないのであります。こういうような点を見ますと、次に移る前に、ひとつ渡部真也先生、これは現実に栗山の問題で、現在、入院中の患者でございますけれども、進行速度が早いわけであります。こういうようなものの認定を早くできなかったものでしょうか。これはちょっと酷な質問かもしれませんが、お教えください。

渡部真也北海道大学助教授

○渡部参考人 栗山では一応、健康診断が行われるようになりまして、健康管理手帳が交付される前にも、従業員の健康診断、これは四十八年に一遍やっておりますし、退職者については、たしか四十九年に基準局の要請で企業がやっておったと思いますが、いまお話しがありましたように、肺がんの進行というのは非常に速いのです。健康診断が年に一回ぐらいでは、発見したときはもう手おくれになるケースも出てくるわけです。現在、健康管理手帳では六ヵ月に一回ということで、年二回ぐらい行われておるようですけれども、それでも場合によっては手おくれになる者がある。これは、私はそちらの専門じゃありませんけれども、第一内科の大崎助教授がいま、この健康診断を担当しておりますけれども、彼の意見によりますと、やはり三ヵ月に一回は精密な健診をやらないと、本当に早期に発見ということにはならないだろうということであります。レントゲンを撮るだけでは、クロムによる肺がんの早期発見は非常にむずかしい。それはちょうど胸骨の陰で、肺の周辺の方にできないで、気管支からすぐ入ったあたりによくできる。そうすると、レントゲンでは非常に写りにくい。だから気管支鏡などを入れて調べると非常によくわかる位置にあるわけですけれども、そういう大変な健康診断をやらないといけないということで、それも三ヵ月に一回ぐらいは必要だろう、そうすれば、かなり早く発見できるのではないかということが言われているわけです。そうでもしなければ、本当に大変なことになってから認定ということになってしまうと思います。

島本虎三日本社会党

○島本委員 それで次に、長崎参考人にちょっとお伺いします。  先ほど、クロム鉱滓からいろいろと他の重金属汚染や廃棄物の点まで広く御研さんの結果を発表してくださいまして、本当にありがたいのであります。この六価クロムの鉱滓に硫酸第一鉄をまくのは気休めにすぎない、こういうようなことがございましたけれども、これはやはり気休めだということは何もならない、何もならないことをいま会社側がやっておる、こういうようなことになるのでしょうか。この点、お教え願いたいと思うのであります。

長崎誠三株式会社アグネ技術センター所長

○長崎参考人 率直に言って、やはり気休めだと思います。先ほどのように実際に現場からどろを採取してきて実験室の中で実験してみましても、あのように非常に簡単に水を通す、要するに砂みたいなものですから、それにかけても、反応が行われるいとまがなくて、どんどんその下にしみ通っていってしまうということだと思います。それから、反応がたとえ行われたとしても、それはごく表面であって中まで進行しないということからいって、処理できたとしても、それはごくわずかであるということ。それからメッキのことでお話し申し上げましたが、もっと酸性にして行わなければ一般的には反応しないということになっています。しかし、その酸性にするということは二次公害を招く問題があるだろうということです。よろしゅうございましょうか。

島本虎三日本社会党

○島本委員 気休めにすぎないという点はわかりました。  それと同時に、廃棄物の問題、重金属汚染の問題は、これまた実態の調査を明らかにして、対策を立てなければならないということでございまして、いつでもこの廃棄物の問題で、廃棄物が出ると安直なる処理しかしない。企業は下請に落とす、下請はまたその下請にやる、無免許でやる、こういうようなところは、どこへ流すかわからない。もうこりごりだ、こう言って新聞に投書までしておる人もあるようであります。そういうふうにしてみると、いまの実態の中では、調査を明らかにして対策を立てよと言っても、企業の姿勢がそういうようにしてやっているということになると、もっと法を締めなければならない。事実でありますけれども、いまの実態では本当に残念なんです。ただし、いまの実態の中で、もし同じ廃棄物の困難性を言うならば、原子力の放射能の廃棄物、これはまだ依然として、その処分方法や何か全部、見通しつきません。しかし日本は特にその点、島国のようなところで、この問題に手をやいているようであります。野積みであります。こういうようなものに対しては、やはり廃棄物としても、重金属汚染やその他の廃棄物のどれに比べても一番、深刻なのじゃないかと思いますが、先生はせっかく廃棄物の研究をしておられる立場から、これに対して高通なる御意見を拝聴したいと思うのであります。

長崎誠三株式会社アグネ技術センター所長

○長崎参考人 それではちょっと最初の問題について申し上げます。  確かに一中小企業の段階では、たとえばメッキの場合についても、それを三価にして汚泥にする、汚泥にしたものを廃棄物処理業者に渡す、その廃棄物処理業者はまた、それをどこかに捨てる、あるいは自治体側がそれをさらにしょい込むというようなこと、これは全くばば抜きにしかすぎない、みんな目をつぶって隣に隣にとやって、最後にばばを握るのは、多くはどうも自治体であるだろうと思います。しかし、この問題については、一つはやはりそういう汚泥にしてしまうのではなくて、たとえばクロムのメッキについて言えば、それを薬品として回収する、あるいは金属として完全にクロムを回収するということが、経済的にはかなりかかることですが、必要なことだと思います。そのことをやれるのは非常に大企業の段階であるか、あるいは中小のメッキについて言えば、やはり自治体が自治体の行政の中でそういうことをやる、個々にスラッジにするというような処理をしないで、たとえば一括処理をするというようなことが考えられていいのではないかと思います。  それから原子力の問題については、これはもうクロムよりはもっと人類の将来に影響を与えるものとして、やはり至急に真剣に考えなければいけない問題だと思います。そこで先ほどから再三申し上げていますけれども、やはり原子力なら原子力の場合、どういう廃棄物については、どういう実態の物であるかということについて、単なる化学的な調査ではなくて、やはり物理的な十分な調査の上で、処理の対策を立てるべきだというふうに思います。

島本虎三日本社会党

○島本委員 立てるべきだということはわかりましたが、現在のところではいかがですか。

長崎誠三株式会社アグネ技術センター所長

○長崎参考人 現在ということは、現在、野積みにしてある状態ではいかがかということでしょうか。(鳥本委員「その辺」と呼ぶ)それを私に質問されても、ちょっと私は原子力の長官ではないのでお答えしにくいのですが、やはりこれは百聞は一見にしかずで、今度のクロム鉱滓の問題についても現場をごらんになれば、この問題がいかに重大な問題かということは、もっと早い段階で御認識いただけたと思うのです。やはり原子力についても、私のような立場から申し上げられるのは、現在ドラムかんに詰めて野積みされているという状態、それが年々ふえていくという状態を十分、認識した上で、対策を立てるということを申し上げる以外、ちょっと私の立場としては申しようがありません。

島本虎三日本社会党

○島本委員 それで、いろいろと朝から関係者の間で問題になり、意見のちょっと違った問題が一つあるのであります。それは企業側では、クロムの鉱滓に対する被害は大したことはない、また、ほとんどない、こういうようなことであります。しかしながら、それで果たして、ないのかという疑問が当然、起こるわけであります。六価クロムのたまり水、これは現にわれわれも見てまいりましたし、いま長崎参考人からも、いろいろな色のついた現物を見せてもらいまして、よくわかりますが、現実に私の見たのは、それよりもっと色が濃かったようであります。しかし、色がつくというだけでも一〇ppm以上、一〇ppm以上というと、いわば環境基準の二百倍ということに、もうなっているわけであります。そうすると、これではもう皮膚障害が当然、起きるわけでございましょうし、一〇〇ppmでは潰瘍をつくる。それからこの一〇〇ppmの水では、犬が飲んだらけいれんを起こすのだと言われているのであります。同時に瞳孔も拡大する、こういうようなことも参考意見として聴取いたしました。微量だといっても、その物はほんの微量でも、それが積み重なると、総量になると、これはもう、たとえば東京都内の大島地区では二万ppmという数値も検出されたということになりますと、これは被害というものはないのだということよりも、ないのが不思議だということになるのじゃないかと思うのであります。当然これは有害であるということになるのじゃないか。そうなると、一たん沈めたからいいと思いましても、浸透上野ということもある。中に浸透して、またそれが上昇してくる。上昇してきたものは日に照らされると乾いて粉になる。粉じんになったらこれは風によって飛ぶ。そうだったら工場の中と同じ状態が工場の外に発生するのじゃないか。現在大島町の屋根裏にはクロム粉じんで一〇ppmのものも検出された。同時に問題のこの銭高組というところでは、渡辺という作業員の人が口が酸っぱくなると言っていた。腕のはだが痛いので夏でも長そでのワイシャツを着なければならない。軟こうくらい塗ってもどうにもならない。会社では軟こうを塗ればいいというだけの処置だったというのであります。そして鉱滓の運搬人でさえも失明さえしたり鼻に穴があいているという事例が現にあるわけであります。そういうようにしてみますと、これは鉱津による被害はないとか少ないということよりも、こういうようなことからすると必ずあるのじゃないか。それをわれわれ自身が、いまの時点において十分、認識してないというだけではないか、こう思うわけなのであります。この点、朝からのいろいろな質疑の中で出た所論でありますけれども、この有害、無害に対しての、これは一つの判定ということになりましょうか、これだけは私ぜひお伺いしておきたい、こう思うわけでありますが、この問題に対して会社側の方では大した被害がないと言っている。私どもの聞いたところでは、これは被害がある。もちろん住民側から。これに対してどういうふうにお考えでしょうか。これは武藤参考人と渡部参考人と吉田参考人と長崎参考人に一言ずつ伺いたいと思います。

武藤暢夫関東学院大学教授

○武藤参考人 簡単に申し上げます。  私ども調査を進めている間に、これは影響というものはなくはない、ある。しかし被害が起こっていないのは幸いであったという報告を実はしたわけでございます。その後に、やはりいま、おっしゃいましたような事実が出てまいったわけでございまして、これはやはり被害はあったとみなすべきじゃないかというふうに思います。ですから有害性は認めざるを得ない、こういうことであります。また認めなければならない。以上でございます。

渡部真也北海道大学助教授

○渡部参考人 私は、まだ公害という面での影響調査をやっておりませんけれども、実際に四十七年に道が栗山町でやりました健康調査の結果を見ますと、住民から訴えられている自覚症状等につきましては、鼻の症状、皮膚の症状の訴え率が、隣の町の同じような住民に比べて高いという結果が出ております。この粘膜の刺激症状あるいは傷が治りにくいといったような皮膚の症状、こういったものは当然クロムと関連があるものというふうに疑われます。さらに、高校生の尿中のクロム濃度を測定した結果が発表されておりましたが、これもやはり、この栗山町の高校生の尿中クロム量は、隣町の高校生よりも約三倍ぐらい高濃度であるということから、人体汚染は明らかにあると考えられます。ですから、その栗山町の住民はクロムと接触する量が多いという事実があり、そうして、さっきお話ししたような皮膚や粘膜の症状の訴え率が高いとすれば、これはやはりクロムの影響がある、鉱滓の影響があるというふうに考えるのが妥当ではないかと思います。道の結論は必ずしもそうではありませんけれども、私はそれだけデータが出ておれば、むしろ影響は非常に疑わしいものというふうに考えて対策すべきじゃないかというふうに思います。  さらに、現時点では恐らくつかまらないけれども、これから出てくる影響というものは当然、考えておかなければならないだろうと思います。それは特にクロムが長い年月、作用した場合の影響として出てくるものでありまして、一つは肺がんその他のがんの問題があります。クロムは人体に入った場合に肺に非常にたくさんだまりますが、肺ばかりじゃなしに、副腎とか膵臓とか甲状腺とかに、かなりたくさんだまっていく傾向があるようです。こういうところのがんについても、これからやはり考えていかなければならない問題ではないか、これは労働者の場合についてもそうですけれども、住民についても、そういうことを考えなければいけないと思います。  それから、クロムには催奇形性があるという報告が最近、出ております。日本でもそういう研究をやっている学者がおります。そういう事実が明らかにされていることから、そういった面での、これからの住民の影響も考えていく必要がある。現在の段階では、ですから決して無害とは言えない、むしろ積極的に有害であると考えた対策が必要であろうと思います。

吉田克巳三重大学教授

○吉田参考人 私は、今回の二つの会社の問題につきましては、直接、事実関係を承知しておりませんので、非常に答えにくいのですが、私、考えますのに、クロムに限らず、こういう廃棄物は全国で数千万トン、年間、処理されておるわけでして、その大半は、やはりこれは安全にうまく処理されておるわけでございますので、今回の処理について、こういう問題が起きたということは、やはり率直に言って、この会社がそういうものについて非常に問題があったのではないか、そういうことを感ずるわけです。といいますのは、この埋め立てというのは至るところで実際、産業廃棄物の処理に現在、使われている。そういうものについて普通の場合、行政官庁へいろいろ相談をし、そうして地質図も出し、そういうこともみんなやるわけです。普通ですと近所の井戸を、われわれでしたら、すぐ登録させる、それをちゃんと記録に残せというようなことをみんなやるわけですが、現実に今度の場合で、クロムをごく小規模ですが埋めておったところがあって、その場合に記録が全部残っておるのですが、全く影響がないという例がございます。これは恐らく日本じゅう探したらいっぱいあると思うのです。そういうように、埋め立てについて、一〇〇%とは言いませんが、かなりな程度までに、やり方の知識というのはあるわけですから、そういうものに従って、きっちりやられていないということが、やはり基本的な問題ではないか、そういうように思うわけです。  先ほどの御質問の第二点に、浸透して上昇してきて粉じん化する、これは私そのとおりになると思うのです。しかし、普通のやり方でしたら、少なくとも一メートルないし二メートルの覆土は当然でございます。その覆土にも必要な土質を確保する、これも当然なことです。そういうことが行われておれば、そういう御質問のようなことは起きないわけですが、今回の場合、どうも新聞なんかで見た限りでは、そういう措置もとられてなかった、そういうことがあるのじゃないかと思うわけです。

島本虎三日本社会党

○島本委員 ちょっと長崎参考人と言いましたが、これは国立公衆衛生院次長の鈴木武夫説明員でございまして、失礼いたしました。

鈴木武夫厚生省国立公衆衛生院次長

○鈴木説明員 環境汚染による健康被害がないというふうに会社側がおっしゃったといたしますと、それは報告がなかっただけでございます。ですから、したがいまして、こういう事件が起き、現地を拝見いたしました限りにおいて、あれだけの量の物が、あれだけの厚さに捨てられているとなりますと、いま渡部先生がおっしゃった意味において、正しい意味の計画を持った調査が行われるべきである、すなわち有害であるという前提において調査が行われるべきであろうと思います。

島本虎三日本社会党

○島本委員 では、これは先ほどから、いろいろ他の委員の方からも参考人に対して意見の開陳があったわけでありますが、私もこの点だけは、ひとつその関連性だけは聞いておきたいと思うのであります。  いわゆる私どもも調査し、あるいは、いろいろ中へ入ってその意見等も聞いてまいりました中で、鼻中隔せん孔になった人、これが多量にまた他の工場の方へ行ったりしている。そしてまた、その中から肺がんになったりして死んだ人もある。そうなると鼻中隔せん孔疾患と肺がんとの関係というものについては、先ほどから、いろいろ御意見がございましたけれども、また肺がんになった場合の進行速度が意外に速いという、この事情からして、全然、関係ないわけではないのじゃないかな、こう思われるわけであります。しかし、この肺がんあたりになる場合には、ことに六価クロムの場合には意外に進行が速いということ、その前に鼻中隔せん孔が行われるということ、そういう疾患があるということと合わして、これはもう全然、無関係ということにはならないのじゃないかと考えられるわけでございます。私ども、そう考えるのですが、専門的には違うようでありますが、この点ひとつ武藤参考人と渡部参考人、お二方の御意見を承りたいと思うのであります。

武藤暢夫関東学院大学教授

○武藤参考人 私は全く専門外の問題でございますので、ちょっとお答えいたしかねるのでございますが。

島本虎三日本社会党

○島本委員 では、よろしいです。

渡部真也北海道大学助教授

○渡部参考人 恐らく鼻中隔せん孔を起こすクロム化合物は、水によく溶ける六価クロムじゃないかと思います。肺がんを起こす方のは、先ほど長崎参考人から出ましたクロム酸カルシウムのように、水には溶けにくい。全然、溶けないのではなくて少し溶ける、そういう物質が発がん性が高いというふうに言われておりますので、この関連は、はっきりとは申せませんけれども、若干違うのではないかと思います。私が栗山で発見しました十九例の肺がん患者の中で、鼻中隔せん孔のあるのは大体、半分、鼻中隔せん孔のないのは半分、こういう現象から見ても、鼻中隔せん孔があるから肺がんになるということは言えないと思います。

島本虎三日本社会党

○島本委員 それで、国立公衆衛生院の次長の鈴木さん、この点はいかがでございましょうか。

鈴木武夫厚生省国立公衆衛生院次長

○鈴木説明員 いま渡部先生が御説明になったことに尽きると思うのです。病気というのは、すべて本に書いてある順序には起きてまいりません。いろいろなところに起きます。それと物質の構造によって違いがある場合がありますので、ただクロムという言い方だけでは、簡単には言えないと思います。それから、鼻中隔せん孔がクロムを取り扱っておる方々に多いということと、鼻中隔せん孔がなければ肺がんにならないということは全然、話が違うと思います。鼻中隔せん孔がなくても肺がんになる方が、私はあると思います。

島本虎三日本社会党

○島本委員 ありがとうございました。

渡辺惣蔵日本社会党

○渡辺委員長 中島武敏君。

中島武敏日本共産党・革新共同

○中島委員 端的にお尋ねしたいと思いますが、最初に渡部先生にお尋ねいたします。  北海道の日本電工の栗山工場についての疫学調査をおやりになったという、先ほど、お話しがございましたが、これは先生が自主的におやりになったものでしょうか、それとも労働省とか、どこかから依頼されて調査をされたものでございますか、まず最初に、ちょっとお伺いしたいのです。

渡部真也北海道大学助教授

○渡部参考人 さっきもお話ししましたように、私は昭和三十七年ごろから、この工場の肺がん発生の問題については関心を持ってまいりまして、何度か、この問題を突きとめてみたいということで計画をしたのですけれども、結局はアプローチできなかったのです。昭和四十七年ごろに栗山で公害問題が発生しまして、そういう社会的な状況の中ならば、何とか会社などの手をかりずに調査ができるのではないかということを考えまして、計画をしておるところに、ちょうど明けて四十八年に、北大の第一内科に肺がんの患者が入院しているという情報が入りまして、それで、これはもう多発は間違いないということで、調査を開始することにしました。それと同時に、退職者の名簿などがなかなか手に入らないものですから、しかし多発の事実は間違いなかろうということで、これは労働省に問題を持ち込みまして、労働省から会社にそういう資料の提供を命じてもらいまして、それをもとに疫学調査がかなり具体的に進んだという経緯でございます。

中島武敏日本共産党・革新共同

○中島委員 続けてお尋ねしたいのですが、その場合には、クロムと肺がんとの因果関係ですね、この点を明らかにすることを目的とされていたのだと思うのですが、そういうふうに先ほど伺ったと思いますが、間違いないかどうか。  そうして、そのときの調査の対象ですね、この調査の対象の範囲がどうなっていたか。つまり、現職で働いておられる労働者だけに限られたか、それとも退職された方を含められたか、あるいはまた、臨時工のような方をも対象に含められたかということ。それから、さらにもう一つは関連して配転などの関係で徳島の工場の方に移っておられる方もおられるわけですが、これも調査対象に含められたかどうか、この点、お伺いいたしたいのですが。

渡部真也北海道大学助教授

○渡部参考人 調査の目的は、栗山工場の従業員の中から肺がんが多発しているという疫学的事実を、数字でもってきちんと示す。それによってこれを労災職業病と認定さしていこうという目的で行いました。  対象は一応、栗山工場に在籍をしたことのある労働者すべて、退職者も含めまして、それから転職者、配転者、全部、含めまして対象として考えました。実際に数字として取り上げているのは、現在の段階では、その中の一部、経験年数の長いグループだけでありますけれども、一応、全員を対象に考えております。徳島も入っております。

中島武敏日本共産党・革新共同

○中島委員 いまの調査のことに関して、先ほどのお話しでは、労働省に報告をしたというお話しがございました。労働省に報告されただけではなくて、この調査結果について、たとえば学会の雑誌とか、そういうところに公表されましたかどうか、その点も、ちょっとあわせてお伺いしたいと思いますし、もし発表されていらっしゃるとすれば、どういうところに発表されていらっしゃるか、教えていただきたいと思います。

渡部真也北海道大学助教授

○渡部参考人 調査を大体、四十八年の四月から始めまして、六月に一応、中間的なまとめをしまして、その多発の事実を労働省に報告をしてあります。労働省では、その後さらに調査を完成してほしいというようなこともありまして、さらに私だけの調査ではなくて、第一内科それから地元の栗山の日赤病院、こういったところで症例を十分に検討するというような必要もありまして、そういう研究に対して労働省は、その年に若干の研究費を出しております。四十九年の三月に一応それをまとめまして、労働省には、研究費に対する報告として、報告が出してあります。  それから学会には、四十九年四月に日本産業衛生学会が名古屋で開かれましたけれども、その学会の席上で、その結果を発表してあります。それから五十年七月十七日に札幌で、やはり産業衛生学会が開かれました。その職業がんに関するシンポジウムの中で、さらに追加データを報告してあります。そういうものは学会の抄録に載っております。

中島武敏日本共産党・革新共同

○中島委員 同時に、あわせて、いまお話しの出ました学会でございますが、この日本産業衛生学会で、CrO3、六価クロムの職場環境中の許容濃度〇・一ミリグラム・パー立方メートルを一九六一年に勧告していらっしゃると思うのです。ところが、政府が労働安全衛生法でこれを決めましたのは、たしか昭和四十六年ではなかったかと思っております。勧告をされてから十年くらいあるわけですね。これは私、非常に重要な問題だと思うのです。一言で言えば行政が立ちおくれているということを示していると思いますが、このことについて渡部先生はどんなふうにお考えになっていらっしゃるものか、端的な御意見を聞かせていただきたいと思うのです。

渡部真也北海道大学助教授

○渡部参考人 産業衛生学会が許容濃度等委員会というのをつくりまして、わが国でそういう許容濃度の勧告を始めたのは大分、古いことだと思うのです。その点については、私よりも坂部先生か鈴木先生の方が的確な御回答ができると思いますけれども、そういうものが私の記憶では、労働者では必ずしも当初から行政に生かすという方向ではなかったと思います。労働省では許容濃度についてはアメリカの基準をいつも使っておりました。せっかく日本の学会がこういうことをやっているのだから、労働省から出す出版物には、日本の学会の勧告を載せたらどうだというような話が出たことがありますけれども、労働省と学会の、そういう勧告との関係については、むしろ坂部先生か鈴木先生にお聞き願いたいと思います。

中島武敏日本共産党・革新共同

○中島委員 せっかく、お名前の出たところですから、坂部先生と鈴木先生からお伺いをいたしたいと思います。

坂部弘之労働省労働衛生研究所労働生理部長

○坂部説明員 私、産業衛生学会の許容濃度等委員会の委員もいたしておりますが、日本の労働行政の動きが、ある時期から、こういう中毒性物質に対する対策が変わった時期があるわけでございます。前は、これほどたくさんな化学物質はなかったものですから、要するに作業列挙方式というものでやったわけですね。たとえば鉛であるとか有機水銀であるとかいうものに対しては、これこれの作業基準、これこれの環境基準、これこれの排気装置をつくっておやりなさいという具体的な指示でやってきたわけです。ところが、間もなくこういうふうに有害物質が非常にふえてきましたので、作業列挙方式では間に合わないというので、一つの労働政策の転機として、特化則という特定化学物質等障害予防規則をつくったわけでございます。そこで抑制濃度というのを取り上げたわけです。抑制濃度というのは、例の排気装置の排気するときの制御風速を規制するために決めたのであって、当然その排気装置の周辺の濃度は、その濃度以下でなければならない。ですから、うまくやれば、大抵の場合、作業場で働いておる労働者の濃度はそれ以下になるだろうというふうにして規制を進めておるだろうと思っています。  いま、ちょっと渡部先生からお話しがありましたが、私、労働省の肩を持つわけでもございませんが、産業医学会が勧告する許容濃度を、いままでは大体、労働省は抑制濃度としてきたと思っています。ただ、今度新しく、われわれは管理濃度というものを提案して、その方がいいのではないかということを申し上げてはいますが、現在、抑制濃度という概念で労働省はいっておる。そして、それは大体、日本産業医学会の勧告したものを中心にしておる。ところが、日本産業医学会の勧告する許容濃度を書き上げた物質は、そう多くないわけでございます。その点に関しましては、アメリカのACGIHが圧倒的に多くの物質を擁しておるので、あれに頼る場合が多いということだろうと思います。

鈴木武夫厚生省国立公衆衛生院次長

○鈴木説明員 大体、坂部先生の御説明で尽きると思いますが、ただ私の感じで申し上げますと、新しい抑制濃度その他ができるまでは、労働基準法の方にそういうものを決める条文がなかったわけです。したがいまして、産業医学会の方でこれを勧告する、それを守っていただけるという期待感を持って出しておりますし、現在もそうだと思います。ただ渡部先生がおっしゃったとおり、私も気になっておりましたことは、かつて労働省で出されたいろいろの書類の中には、産業医学会で出したものは、一切、引用されていなかった。これは残念に思ってずっと見ておりました。

中島武敏日本共産党・革新共同

○中島委員 もう一度、渡部先生にお尋ねしたいと思いますが、三価クロムの慢性毒性について先生の所見をお伺いたしたいと思います。

渡部真也北海道大学助教授

○渡部参考人 この点について私、何もやっておりませんし、文献を少し見ている程度ですので、余り自信のある御返事はできないと思います。むしろ、そういうことは坂部先生の方がずっとよく勉強されておられると思うのですけれども、肺がんの問題に関して言いますと、そういう原子価、三価とか六価とかいうことは余り問題にはならないで、水に対する溶解度あるいは体液に対する溶解性、これが発がん性の程度を決めていくのだということを、クロム化合物について、ずっと一連の発がん実験をやっておりますアメリカのヒューパーという実験発がん学者が、そういう論文を書いておりますので、私もそうではないかというふうには思っているのです。

中島武敏日本共産党・革新共同

○中島委員 現在の産業廃棄物処理法では、クロムに対する規制というのは六価クロムに対する規制があるだけでして、三価に対しては規制がないわけです。これを妥当なことだというふうにお考えになるかどうか。これは坂部先生あるいは渡部先生のお考えも伺いたいと思います。また大気汚染防止法におきましても、クロムについての環境基準は決められていないわけです。これも私は設ける必要があると思っているのですが、先生方のお考えはいかがか、お尋ねをしたいと思います。どちらからでも結構です。

坂部弘之労働省労働衛生研究所労働生理部長

○坂部説明員 渡部さんに逃げられてしまったのですが、一九七四年にアメリカの科学アカデミーがクロミウムに関する総説を書いたわけなのです。われわれとしましては、いろいろな人々がいろいろな意見を、皆さん、学者も言うわけなのですが、一つの科学的事実というものをもって社会的行動を起こそうということになれば、その科学的根拠が揺るぎないものでなければ困るということは事実だろうと思うのです。その点に関しまして、いま非常な、われわれのよりどころとなるのは、この本、これは科学アカデミーの多くの専門家が集まって、それぞれの科学的成果を評価して、つくったものでございます。それといま一つは、国際がん研究機構、IARCが一九七二年にリヨンで会議を開きましたときに、クロムによる肺がんを総まとめしておるわけなのです。  そういうふうないろいろな文献を参照してみますと、リヨンの会議においては、われわれが確実に害えることは、クロム酸塩製造工場においては明らかに肺がんのリスクが存在する、しかしながら、どのようなクロム化合物が肺がんを起こすか、その化合物は単数、複数であり、現在のところ、はっきりとわからないという結論を出しています。それから、それにつきましては、この本も大体、同じような見解を述べています。ただ、この本では、ドイツにおけるクロム色素製造工場における肺がんの問題に大分、触れていますが、残念なことにドイツにおける諸研究は記述的研究でございまして、確実な疫学的根拠を持っていないという難点を持っておるわけでございます。しかし、いま渡部さんおっしゃいましたように、非常に可能性のある問題であります。この問題に関しましては、最近ノルウェーから新たに文献が出ましたから、詳しい検討を進めてみようというふうに考えています。  この三価クロムに関しまして、ここに書いてございますことは、三価クロムは六価クロムのように皮膚とかあるいは鼻粘膜に対して潰瘍は起こさないであろう。それから、三価クロムが肺がんを起こすかどうかということに関しましては、非常にサゼスティブな、示唆的な論文を一つ挙げているわけでございますが、これはまだ完全に完成された報告ではないが、ドイツにおいて三価クロムを長いこと使用しておった工場において、十年間の統計であったか何であったか、ちょっといま読む暇がないのですが、たしか一例も出ていないという報告であったと思います。そういう報告を載せているということでございます。  それから、三価クロムに関しまして、一つの三価クロムではございますがクロマイト、クロム鉱石につきましては、クロム鉱石から、れんがをつくっておる工場で長年働いた労働者に、そういう例が起きてないというので、三価クロムに対しては、確実に三価クロムが肺がんを起こすというエビデンス、証拠はいまのところはっきりしておりません。しかしながら、彼らが言っておることは、もう少し三価クロムに対する疫学的研究を進める必要があるであろう、こういうことになっております。ただ、お考えになっていただきたいのは、六価クロムは体内に入ると三価クロムに還元されるというわけでございます。ただ、三価クロムはなかなか体の中に入りにくい。ですから、六価クロムは皮膚から入っても、三価クロムは皮膚から入れない。そのことと、一つ問題なのは、渡部先生もおっしゃいましたが、三価クロムの粉じんの問題があるわけでございます。ドイツの研究で、これもまたある人は肯定し、ある人は否定するわけでございますが、じん肺様の症状が見えたということを言っていますが、これもまだはっきりと確認されておりません。もし、じん肺様の症状が出るとすれば、それは三価クロムの粉じんによる可能性が考えられますが、まだ何とも申し上げられません。  それから、いま御質問のございました、三価クロムについて許容濃度をつくるべきではないか、抑制目標をつくるべきではないかということに関しましては、アメリカのACGIHは、それに対しまして、要するに〇・五ミリグラム・パー・キユービックメーターという数字を出しています。これはクロムとしてでございます。ですが、これも、このナショナル・アカデミー・サイエンスが言っていることは、十分な科学的検討を経ているとは考えられないというふうに言っています。要するに、そういうふうな許容濃度とか、あるいは抑制濃度について確実なものを出すには、量反応関係が必要である、これこれの量でどれだけ出るか、だから、がんで言えば、これだけの濃度のときに何人中何人発がんしたかという資料が必要になるわけであります。それがまだ十分にそろっていない。ですから、いま最も信頼が置けるのは、許容濃度の中で、このクロム酸によるところの鼻中隔せん孔に対して〇・一ということは、いま比較的、各国ともそれを利用しておりますが、アメリカの新しい流れとしては、それも検討の余地があるのではないかということを申しているということであります。

中島武敏日本共産党・革新共同

○中島委員 ありがとうございました。  長崎誠三先生にお伺いいたします。  自然的な条件のもとで、三価クロムが六価クロムに変わるということは、あり得るでしょうか。

長崎誠三株式会社アグネ技術センター所長

○長崎参考人 ちょっと私の専門でないので的確にはお答えしかねますが、最近クロムを含んだスラッジを廃棄する問題で、新聞なんかにその問題が書かれております。しかし学問的な裏づけがあるかどうかは存じておりません。しかし、こういうことはあるのだと思うのです。たとえば東京都の例が新聞なんかに報道されましたが、ごみの焼却場で焼却灰の中に、焼却したにもかかわらず、六価のクロムを多量に含んでいるという問題が、やはりあるわけであります。しかも、それは相当長い間、野積みになっていた、あるいは埋められていたというようなことがあるわけです。そういうことから、自然界で三価から六価に変わるのではないかということを言われているのだと思います。しかし、このことについては、たとえば六価のクロムを含んだスラッジを焼却するという処理をした場合に、十分に三価になるのかどうかということについては疑問があると思います。これは実験室の中で純粋な六価の化合物について加熱するというような実験をしてみますと、千度を超えても十分、三価の状態になりません。したがいまして、ごみの焼却というような大体、千度ぎりぎり、それより高くすると窒素酸化物が多量に発生するといようなことで、ぎりぎりのところで操業しておりますが、そういう条件下では十分、三価の状態になっていないのではないかというふうに思います。  それで、われわれが物理的に知っている限りでは、三価のクロムと言われているもの、代表的なものでは先ほどお見せした緑色の酸化クロム、これは非常に安定な化合物です。それから、いまお話しがありましたクロマイト、鉄とクロムと酸素の化合物ですね、これに準じたものは、最近クロミテープ、クロミテープと言って上等なテープレコーダーのテープに使われておりますが、こういうようなものは非常に安定な化合物です。ですから、これが自然状態で六価になるということは、ちょっと考えにくいのではないかと思います。

中島武敏日本共産党・革新共同

○中島委員 もう一つお尋ねしたいのですが、先ほど先生のお話しでは、浅見輝男先生のレポートによれば、土中のクロムが毛細管現象で地表にしみ出てくる、したがって覆土は安全とは言えない、やはり対象物が何であるかを十分研究して、よく見きわめて対策をとるべきである。いずれにしろ覆土は安全とは言えないというお話しでございました。それでは覆土ではなくてアスファルトの場合にはどうか、またコンクリートの場合にはどうかという問題について、お尋ねしたいと思うのです。  それからもう一つは、根本的な対策ということになれば、取り除く以外にない、こういうふうにおっしゃった。さて、取り除くのは結構ですが、取り除いたものを一体どこへ、どうすればよろしいかということについては、どんなふうにお考えになられるか、二つお尋ねいたしたいと思うのです。

長崎誠三株式会社アグネ技術センター所長

○長崎参考人 一番最初に私がお目にかけた、けさ採取してきたものを、しさいにごらんになるとわかりますが、大気に接しているところは、先ほどお話しがありましたが、黄色い粉を吹いたような状態になっているわけです。中の方は、セメントの色のような緑と黄色のまざった色になっているわけです。それから実際に江戸川区の堀江町の問題になっている現場に行きますと、部分的に非常に細かく黄色ににじみ出て変色しているという形をとっているわけです。そういうことから考えまして、相当程度、厚く覆土したとしても、やはり先ほど吉田参考人ですか、おっしゃっていましたが、数メートルということをすれば別ですが、数十センチという程度では十分、毛細管現象で上にしみ出してくる可能性を持っているというふうに思います。それで、現在アスファルトで舗装するということを申しておりますが、現場を実際に見てみますと、それはただアスファルトをかけただけであって、実際に都会地で行われているようなアスファルト舗装をするということは、やはり経済的にも引き合わないことだと思います。それから、現状のようなアスファルトで覆っただけでは、わりあい短い日時の間に、また亀裂が入って、そこからかえって濃厚な物がしみ出してくるというような危険性を含んでいると思います。  コンクリートについても同じことが言えます。コンクリートの場合には、もう一つ複雑な問題をはらむ可能性を持っています。というのは、市販に使われていますセメントの中には、クロムというのは物によっては数十ppmとかあるいは一〇〇ppm以上、含んでいるわけです。ですから、そういうものと現在、問題になっているクロム汚染とを混在させてしまうという危険があるということ、それから、やはりそれは経済的ではないだろうと思います。  それで、先ほど最終的には完全に取り除くことだと申し上げましたけれども、それは確かに経済的に言えば非常に大変なことですけれども、最低、現在、露出された状態で放置されているところについては、それから、もう一つ、数十センチメートル程度の覆土しか行われていないところについては、取り除くか、あるいは先ほど吉田参考人ですか申しておられましたけれども、さらに十分な覆土処置をするというようなことを、やはりやるべきだと思います。  それから、では取り除いた場合に、どこへ持っていって積んだらいいかという問題ですが、だから積む前にやるべきことがあると思うのです。それは、最初に申し上げたように、このクロムの六価の化合物は数多くありますけれども、比較的、水に溶けるものであるということですね。したがって、水でもって洗うという処置をすることによって、相当程度クロム含有量を減らすことができるということですね。そうした上で先ほど申し上げたように三価のクロムのしかも安定な形に——これはやはり焼却というような処理、加熱するというような処理をしないといけないと思いますが、そういうようなことをすることによって安定な形にするということだと思います。

中島武敏日本共産党・革新共同

○中島委員 もう時間もあれなので、最後にお尋ねしたいのですが、これはどなたが適当か、坂部先生が適当でしょうか。六価クロムを海洋投棄する場合、集中型投入をするときの無害か有害かの判定基準というのは〇・五ppm、それから埋め立ての場合には一・五ppm、こういうふうになっておりますね。これは暫定的なものと理解しなければならないのではないかと思うのですが、そうかどうか。そしてまた慢性毒性とか、あるいは生物濃縮の問題あるいはまた深海底に投棄された廃棄物から溶出するクロムがどういう影響を及ぼすかというようなことを厳密に考えていきますと、基準としては、もっと厳しくする必要があるのではないのかという問題、それからさらに、いま一つの問題は、判定基準の判定方法が現在、行われている方法で果たして適当であるのかどうかということですね。つまり、実際には実験室の中でやるようなやり方、決められたやり方ですが、規定の範囲内に調整されたPHを持っている水中に混合して、堂温、常圧のもとで六時間ですか、攪拌したりあるいは浸透したりして溶けて出る度合いをはかる。ところが、実際は埋め立てというようなことを考えてみましても、そういう状況ではないわけですね。そういう状況ではないにもかかわらず、そういう判定方法をとっておられる。こういう問題について、やはりこれに適当した判定方法をとるべきだろうと思うのですが、この辺の問題について最後に御所見をいただいて、質問を終わりたいと思うのです。

坂部弘之労働省労働衛生研究所労働生理部長

○坂部説明員 ちょっと私も記憶があれですが、確かに産業廃棄物の海洋投棄の問題のチェアマンをしたことは覚えておるのですが、その後、戸主省の方で、それをどのように運営しているかということを、あのとき限りで私、残念ながら知らないのですよ。あれも暫定的なものとして出したわけなのですが、それから後、どのようにあれが運営されておるかということに関しましては、残念ながら私ははっきりと存じません。もしあれでしたら、私はもう一遍、勉強し直さなければならないかと思っておりますが、しかし、もう厚生省の方が、いろいろお考えになっているのじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。

中島武敏日本共産党・革新共同

○中島委員 判定方法の問題について、同じでございますか。

坂部弘之労働省労働衛生研究所労働生理部長

○坂部説明員 ちょっといま、その問題につきましては、十分のお答え、しかねると思うのです。済みません、どうも。

中島武敏日本共産党・革新共同

○中島委員 それでは終わります。

渡辺惣蔵日本社会党

○渡辺委員長 有島重武君。

有島重武公明党

○有島委員 参考人には長時間お疲れのことであろうと思います。私で終わりであります。しかも、私がお聞きしたいと思っておりましたことは、大部分、同僚の委員からの御質問がありましたので、なるべく重ならないようにと思ってやります。  最初に、労働衛生研究所の坂部先生に、先ほどのお答えでございますと、こういうことがあったのです。昔からクロムの害というものが知られていたにもかかわらず、なかなかこれが行政措置に上ってこなかった。その主な理由はというのは、がんなどの場合には離職後に発病することが多かった。それで、そういった行政措置にまでなるということが遅かったのではないかというようなお答えであったと思いますけれども、私、今度の鼻中隔せん孔のような問題は、これは一八二六年にすでに最初の症例があったというふうに承知しているわけです。それで、そんなに昔から知られていた。しかも例があったことが、日本でどうして行政措置がおくれてきたかということについて、私も非常に解せないところがあるので、もう一歩、突っ込んで承りたいと思います。

坂部弘之労働省労働衛生研究所労働生理部長

○坂部説明員 私、何だか労働基準局長のかわりの答弁しておるような気がするのですけれども、まあ労働省の肩を持つわけじゃないですけれども、一つは、鼻中隔せん孔という問題につきましては、ひとつ、ざっくばらんに申し上げますと皆様方、御存じのように、健康のレベルというのが、社会、文化、文明の発展とともに逐次、上がってきておるわけなのですね。健康の定義が違ってきておるわけなのです。背は確かに、私も鈴木先生のところと一緒に労働衛生を昭和十四年から始めたわけですが、そんなこと言うと、必ずこれはマスコミから反撃食らうことは重々承知の上ですが、労働者諸君もそれを訴えなかったし、確かに鼻中隔せん孔は、そのために仕事を休まなければならないというほどでもないし、それから、それを医者に行かなければならないというほどでもなかったわけなのですね。いまにしてみれば、が欠けて、非常に悲惨だということをわれわれも感じますけれども、その当時は、それよりも、われわれにとってはるかに大きな問題がたくさんあったわけなんです。労働省にしてみても、われわれにしてみても、限られた人間で、やれニトログリコール中毒だ、やれ有機溶剤中毒だ、やれ水銀だと、数限りなく重要な、生命に関する問題が相次いで起きた時代なものですから、ついつい、そちらが多少、留守になったと言えば、言いわけになるかもしれませんですが、あったという点は否めなかったと思いますね。  それと、いま一つは、皆さんからお話しがありましたように、そのクロム酸を取り扱うメッキ工場というのが、非常に町工場が多いわけなのですね。いつでも、そこにいくと経営の問題と突き当たるわけなのですね。そんなに言ったら工場はつぶれてしまうのじゃないかというふうな訴えも出てきますし、技術も持ってないし、それで労働省もそれに対して、要するに答申に対する援護射撃もしたわけなんですけれども、融資制度もとったのですけれども、なかなかそこのところが進まなかった一つの原因じゃないかというふうに、裏は理解しているのです。よろしゅうございますでしょうか。

有島重武公明党

○有島委員 ありがとうございました。  それで率直に言うと、ちょっと言葉がこなれてないかもしれないけれども、日本の国は長い間ずっと生産第一主義、経済第一主義で来てしまったのだ。そういった流れの中で、働いている方も雇っている方も、みんなそれが自明のようになっていた。そんな常識の中でいたから、おくれたというようなことでございますね。そうすると、これからは大分そういった意識が変わってきた。変わってきた中にあって、いま学者には、かなり有害の可能性が知られておるけれども、いままで余りまだ摘発されていなかったというような、クロムに似たような、こういったケースが次々にまた起こってくるであろう。といたしますと、どこら辺あたりに、それが出そうであるかというようなことを、お教えいただければ……。

坂部弘之労働省労働衛生研究所労働生理部長

○坂部説明員 われわれは職業がんが、いま最も深刻な問題だと思うのでございますが、職業がんの歴史を見まして、世界の塩ビ工業が発足して三十五年間たって、やっと肝臓にがんができるということがわかっているわけなんですね。世界でアスベスト工業が発足して四十五年目になって、初めてわれわれは中皮腫、メゾテリオーマが起きるということに気づいたわけなんです。そのように産業発展とともに、いろいろな職業がんが出ているのですが、その発見までに非常に期間がかかっているわけです。潜伏期間は長いし、探さなければ、あれは見えない、出てこないのですね、ある意味において。それでなかなか見つかってない。しかし、われわれが戦後における日本の経済の非常な発展で、いわゆる例の技術革新という名のもとに多くの化学物質を導入しておるわけなんですが、そういうものによる職業がんの危険というものが、これから出てくるかもしれない。現に去年とことし、去年とおととしにわたって、新しいものを二つ、また見つけているわけなんです。報告しましたが。そのために何が起きてくるかわからないという気がするわけなんです。しかし、われわれとしては動物実験において発がんの可能性のある物を知っているわけですね、少なくとも、それについては十分な対策をしていこうじゃないか。ところが、いままで塩ビなんて、それもわからなかった。そういう物がこれから出てくる可能性がある。  そこで本当にざっくばらんに言いますと、全労働者に背番号をつけたいというのが私の気持ちなんです。というのは、背番号をつけて、どのような濃度に暴露して、そしていつ発病したかということがなければ、労働者が救えないわけなんですね。そうしなければ新しい職業病が確立しないということがあるわけです。ところがこれは絶対にできないだろう。プライバシーの問題と絡むだろうということに重要な問題が出てきたわけです。これは多くのわれわれの同僚からは支持されるだろうと思うのですが、何とかして労働者のプライバシーを侵害しないようにして、何らかの形で労働者のその暴露物質の記録を残すようにしていただきたい。それなしには疫学的研究が進まないわけなんです。渡部さんが苦労しましたように、われわれが苦労しましたように、必死になって探し回らなければいけないという事態が現在の事態です。これから先、考えていかなければならないのは、長い潜伏期の後に出てくる低濃度で暴露してきた職業がんに対して、われわれはどういう態度をとっていくかということが当面、大きな問題になるだろうというふうに考えております。

有島重武公明党

○有島委員 それでは、もう一つ伺います。  同じ労働条件の中にありながら、がんになる人、あるいは鼻中隔せん孔になる人、いろいろあるわけです。お医者さんは、それは体質であろうというようなことであるわけで、体質とは何ですかと言うと、まだ解明されていない部分が体質だということになるようですけれども、私たち素人考えでございますけれども、労働したときに汗が出る、排除作用には塩というものが非常に関係があるであろうと思うわけです。ところが塩が、昔、使っていた日本の塩と、いまの電解で非常に純純なNaClというものとは大分、違っているのではないかというようなことを、ある学者から私は耳学問で聞くわけであります。昔ならば、重金属が五十種類ぐらい微量ながら入っている、そういったような複合的なものである。ですから、非常に純粋な形でもっての塩、ほとんどそれしか知らないで育っている人たちも、たくさん、いまいるわけですけれども、そういうようなものの排除作用ということについて、背の日本人といまの、ないしは今後の日本人で、そういった差も出てくるのではないかというようなことを、私は聞いているわけなんだけれども、そういったことについて何かお考えがおありになりましたら、伺わしていただきたい。

坂部弘之労働省労働衛生研究所労働生理部長

○坂部説明員 最初に一番大切なことは、われわれが純系の動物、純系の動物というのは純粋な系の動物ですが、これを使いますと、動物実験の成績は非常にきれいな実験成績が出るわけです。ところが雑系を使いますと、値がばらついて出てくるわけなんです。人類はヘテロジーナスといって非常に雑系なわけです。雑系なものですから当然、値がばらついて出てくるわけですね。そのばらつきの中に肺がんになる人もあり、ならない人もあるし、鼻中隔せん孔を起こす人も起こさない人もあるというふうにお考えいただくのが一つ。  それから、いま先生の御質問は、現在われわれの食べ物が変わってきた、あるいは食塩がいまは、昔のようないろいろな雑物が入ったのでなしに、純粋なNaClになりつつある、そういうふうな食べ物の影響が、排せつ作用とか、いろいろな面において、われわれの中毒の発現なり職業がんの発明に対して関与するのではないかという御質問だろうと思うのでございますが、確かに、がんの場合に内部的因子というものは非常に重要なものであります。職業病にしましてもそうでございますが、しかし、いまのところ、そういうことは大体わかっており、そして動物実験では幾つかそういう実験があるわけであります。食餌を変えれば発がんが違うというふうな実験もございますが、いま塩の問題に限っては、私はまだ先生の御質問にお答えするだけの資料はちょっと持ち合わせてない。どこにもないのじゃないかと考えていますが、いずれにしましても、おっしゃるとおり、われわれの食べ物の影響とか個人差というものは当然、考慮に入れていかなければならないだろう、いろいろな産業中毒であるとか職業病とか公害にいたしましても、そうだろうというふうに考えています。どうも、お答えになりましたかどうかわかりませんが。

有島重武公明党

○有島委員 ありがとうございました。  武藤先生に伺いたいのですけれども、先ほど、汚染された土といいますか、あるいは鉱滓を捨てたところで表面が黄色くなっている、ここの表面に硫酸第一鉄をまくよりも、中間に第一鉄を置いて、その上に土を乗せて、それで水をまくようにすべきであるというようなお話しがございました。私は非常に傾聴に値することであると思うのですけれども、これは実験をなさった上のお話しでしょうか、であろうというお話しなんでしょうか、そこのところだけ承りたい。

武藤暢夫関東学院大学教授

○武藤参考人 これは実験はしておりません。しておりませんが、少なくとも先ほど申しましたように、硫酸第一鉄の結晶と鉱津とを粒のままで反応させても、これはだめでございます。これは反応いたしません。それから、その一緒にしましたものの中に水を入れますと、これは試験管内というか実験しておりますが、両方、粒と粒とで、つまり固形と固形とを一緒にしてまぜても、一向に硫酸第一鉄は酸化された形を示さない。これは肉眼的にわかりますが、全然、変化いたしませんけれども、その中に水を入れますと、これは反応し合います。したがって、少なくとも現在やっておる表面散布の方法では、これは先ほどから話が出ておりますように、これはまずやってみてもだめだということが言い得るわけでございます。実際に実験やってないということは、どろの中にそういうふうに積層して、そしてまたサンプルを取って、そして六価クロムが三価クロムになっているかどうかということの現地の実験はやってないという意味でございます。  なお、実はこういうことがあるわけでございます。私は、先ほどアルカリ性下においては硫酸第一鉄とスラグ、鉱滓とは、これはたとえ水に入れても、アルカリ性の場合には反応しないということを申し上げましたが、硫酸第一鉄なる物を少なくとも化学式の計算で理論値の四倍ぐらい入れますと、これはPH、酸、アルカリの強さをあらわす指数でございますけれども、御存じだと思います。PHが大体三・何がしのオーダーになってまいります。スラッグはもともとアルカリ性ではございますけれども、硫酸をばらまきませんでも、硫酸第一鉄とそのスラッグとをまぜて、少なくとも水で反応いたしますと大体、酸性になりますので、これは一遍にぱっと三価にはなりませんけれども、徐々に黄値い水が青く変わっていく、つまり三価になるという現象は、これは実験を済ませてございます。したがって、全くアルカリでは反応いたしませんけれども、やや酸性に近づくに従って還元力というものは、つまり還元される速度というものは速くなってくる。したがいまして、私は長崎参考人の意見とは少し違うわけでございます。全く無意味であるというのではなくて、使いようによっては、長い期間置けば、これはだんだん還元されていくというふうに私は理解しておりますもので、やらないよりはやった方がよろしいというふうに私は思っておるわけでございます。  なお、ちょっと参考までに、先ほどの点で大事な問題だと思いますので申し上げますけれども、一回、三価に還元されたものが、自然界において六価にまた酸化され直すといいますか、するかどうかという問題は、これは実験室内で純粋な、たとえばクロム酸ナトリウムそれから硫酸第一鉄とで反応させて、これを三価にしましてから、それをろ紙か何かにつけまして、そして青色のものを空中にぶら下げておいても、これはなかなか黄色く変わってまいりません。つまり、三価が六価にはなりません。しかしながら、物の木によりますと、たとえば二酸化マンガンのような、これはよく化学工業等で酸化の触媒に使うものでございますが、そういったような触媒的な作用をなす物が同時にある場合には、しかも、それに熱がかかります場合には、六価になるという、れっきとした化学反応式があるわけでございます。したがいまして、そこに複合的な物が、特に触媒的に働く物が入った場合には、これはまた六価にならないということは全く保証がないわけでございます。むしろ、なるのじゃないだろうかというふうな前提のもとに調査もし、研究もし、また、その結果によって対策をとらなければならぬだろう、このように思います。  ちょっとつけ足しましたけれども、以上でございます。

有島重武公明党

○有島委員 私は実は江東区に住んでおりまして、大島の近所におります。ですから、いまの硫酸第一鉄にいたしましても、やらないよりはましだというお話しか、やっても全然、気休めであるというのか、かなり重大な問題なわけなのです。それで、実際に私も見てまいりまして、実は私もかたまりを拾ってくればよかったのだけれども、上っ側は、硫酸第一鉄をかけましたところが、こんなかけらだと八ミリから、あるところでは十五ミリ、二十ミリくらいのところまでは茶褐色になっております。それから、その下がやはりコンクリートのような、ちょっと青くなっておりまして、それで、ところどころ黄色い粉なんか出ている。そういうような状況でございますけれども、茶褐色になった硫酸第一鉄をかけたところは、あの赤っ茶けているのは六価ではなくて三価に変わっておるのか、あるいは六価がちょっと色が変わっただけなのであるか、その辺は科学的にはどういうことになっておるのでございましょうか。

武藤暢夫関東学院大学教授

○武藤参考人 還元は進んでおります。そういうような状態で、今度はきわめて濃厚な硫酸をぼっとお入れになりますと、青い色がついているはずでございます。一応、黄色いクロム酸ソーダございますね。それに硫酸第一鉄のライトグリーンのやつをお入れになりますね。それで水をお入れになりますと、とたんに恐らく茶色になります。その段階で還元は進んでおります。ただし、その場合に、全くのアルカリ性ですと進行はいたしませんけれども、その中にさっと硫酸をお入れになると、さっと青い色がついてまいりますので、私は反応速度の問題として申し上げておるわけでございます。事実いまの御心配といいますのは、きわめて現実的な問題でございまして、たとえば硫酸第一鉄で還元されるという報告もまたあるわけでございます。先生のあれじゃなくて、クロム鉱滓、要するに六価クロムの還元処理試験で北海道生活環境部が栗山地区でおやりになった実験では、かなりの効果が認められるという、また報告もございます。  したがいまして、私、もう一度誤解のないように申し上げますが、硫酸第一鉄等を使って、それに限りませんが、還元をすること、これは必ずしも最終的に安全化できるというものではない。したがって、冒頭に申し上げましたように、まず汚染土壌があれば、それをふたをしてしまうのだ。アスファルトでする、コンクリートでする。あるいはその中から浸透、上昇して、それをも突き破ってくるかもしれないという懸念もございますけれども、カバーすることが、これが第一義的なものである。しかしながら、そのクロムで汚染された鉱滓あるいは土壌の上に硫酸第一鉄等の還元層をお入れになって、そして少なくとも下から上がってくるものを防ぐ、いわゆる補強材として還元剤をお使いいただくことが有効なのではないか。これは暫定的な処置の場合でも、少なくともばらばら散布する、あるいは、たとえサンドイッチにしても、固形と固形とを反応させるような、理論的あるいは実験的に正しくないような方法をとることは全くむだであるというふうな趣旨で、先ほど実は申し上げたわけでございます。ですから、サンドイッチにしてお使いになる、そうすれば上からたとえば水が浸透してきて横から入ってきたという場合に、少なくともその水で、クロム鉱津とはその接点においては、いま申し上げたような反応が起こるわけでございます。それが、硫酸第一鉄が非常にたくさんであるならば、これはPHが三・何がしになりますから、還元はかなりの程度に進行するということが言い得るわけでございます。  ちょっとくどいようでございますけれども、つけ足して御説明申し上げたわけでございます。

有島重武公明党

○有島委員 それで結構でございます。  ではアグネ技術センターの長崎先生にお願いいたします。  いま武藤先生の御意見がございました。先ほどの気休め論でございますけれども、いま現実的にすでにもうやっているわけです。それが本当につまらぬことであれば、やめさした方がいいのでありますけれども、江東区あるいは江戸川区では一生懸命それをやっているわけです。やって、その上にこれからアスファルトをかけよう、そういうことになっております。それについて何か積極的な御意見が本当におありになるなら、一言、言っていただきたい、これが一つです。  それからもう一つは、先ほど、これはもう大変、貴重なものであって五百グラム三千円になる、これは酸化クロムマグネシウムというのですか、そうなんだからというようなお話しがございました。会社の方では、いまのところ、これは鉱滓の中に一%ないしは二%くらいは入っているけれども、ここからまた取るということは採算上、絶対、無理であるというようなことを言っておるようでございます。それで、いまの長崎先生のお話しを承って、それは経済性のある話なのか、あるいは会社の言うとおり、とてもとても、そんなことはできないのだということなんですか。そこのあたり御意見を承っておきたいと思います。

長崎誠三株式会社アグネ技術センター所長

○長崎参考人 ちょっと後のことから申し上げます。  あれはクロム酸カルシウムというものです。一%にしろ二%にしろ、あるいはもう少し多いかと思いますが、そういう物を含んでいて、先ほど私がお見せしたように簡単に水で浸出、抽出することが可能なわけですから、その段階では経済的に引き合うことだと思います。それから、確かに五百グラム三千円というようなことで売られているわけですから、それから考えれば引き合うことです。しかし、あれは五十万トンと言われ、また六十万トンと言われていますが、それをそういう処理をした場合に出てくるクロム酸カルシウムの量と、それから、それの用途ということを考えれば、いま私が欲しいと言って一本、二本買うから、五百グラム三千円で買うわけですが、それだけの大量のクロム酸カルシウムが手をかけて出てきた場合に、それが今度、経済的な値段として幾らになってくるかということになると、会社の言う言い分は、そこだけをそろばん勘定すれば、出てくるかと思います。しかし、最初に申し上げましたように、あれは劇物として指定されているものなのです。それが数%にしろ含有されている物が、現在あの状態で放置されているということは、その処理をするということから、そういう単なる経済、そろばん勘定ではないかと思います。  それから、最初の方の問題は、武藤先生がおっしゃったように、確かに上の土を全部、取り除いてクロム鉱津を出して、そこに硫酸第一鉄をまいて層をつくって、また覆土するということを考えれば、それはそういうことをするならば、いっそクロム鉱滓を取り除いた方が経済的にも安いと思います。それから将来にわたって心配をしなくて済むわけですね。ということが一つ。それから、たとえばテレビでもって、あれにじゃあじゃあかけているシーンが映りましたけれども、そういうことをした場合に、いま有島先生もおっしゃったように、反応するのはごく表面であって、中の方は反応はしないで残っているだろうということです。それから、茶色く見える物は、黄色く見える物は、あれは鉄の酸化物とか、あるいは鉄の水酸化物、あるいは鉄の硫酸塩のまた違う形がございますが、そういう物であって、クロムの化合物そのものではないと思います。ですから、そういうことから言っても、やはりそういうことの十分な裏づけがあって、その処理をしているかどうかということについて私は疑問に感ずるわけです。気休めだと言うことは、現在そこに住んでおられる方あるいは実際に処置をしておられる方を前にして気休めだということを言うのは、少し表現としてオーバーかとは思いますけれども、やはり要する時間あるいはそれから後の将来にわたっての結果と影響ということを考えれば、抜本的な対策を立てるべきだと思うのです。その抜本的な対策を立てるための科学的な手段というのは、たとえば東京都にしてもあるいはそれの関連機関にしても十分持っておられるはずです。ですから、そういうものを動員されれば、それは比較的、短時日のうちに抜本的な対策というのは立てられると思うのです。私どもが実験室でもって試験管の中でやるようなことでなくて、実際にどうであるかということについて調査をされ、抜本的な対策を立てるべきだというのが私の言い分です。そういうことをしないで現状をああいうことで糊塗するのは気休めであるということです。

有島重武公明党

○有島委員 少し話が違いますけれども、長崎先生もお示しいただきました日本のいろいろなところの土壌の中に重金属が含まれている、この調査結果というもの、私は大変、興味深く見させていただいてきました。私は実は公害の発生源と同時に、公害をだれが吸収してくれるのだろう、それは植物ではないか、緑ではないか、そういうような発想から、こういった街路にある木がどのくらいの重金属を吸っておるか、表面にどのくらい吸着しているか、それから表面を洗って、葉っぱの中にどのくらい吸着しているか、オーダーで見ますと、大体、初めの鉛なんというのは三〇〇〇から七〇〇Oppmのオーダーでございました。鉄というものは万というppmでございました。というようなことで、恐らくここにある木の葉っぱをまた測定していただけると大変おもしろい結果が出る、おもしろいのみならず、われわれが吸わなければならない分を木が吸ってくれるということが大切にわれわれは思うわけです。それでそういうことと、ひとつカドミウムなんかの場合には、カドミウムが大変好きな植物があるわけでございまして、それがどんどん吸ってくれるわけです。クロムの場合には、私の見たところでは全く一木一草生えないが、クロムについても何かクロムの好きな植物があるのではないかと思うのだけれども、そういったようなことについては、そちらの研究所はタッチなさる御用意があるかないか、その辺のことを最後に聞いておきたい。

渡辺惣蔵日本社会党

○渡辺委員長 先生方の約束の時間が終わりましたので、ひとつこれで質疑を打ち切らしてください。

有島重武公明党

○有島委員 わかりました。

長崎誠三株式会社アグネ技術センター所長

○長崎参考人 このデータをお示ししたのは、いまおっしゃったように、われわれのかわりに木や何かが吸ってくれているわけです。しかし、現実にはこれほど進行しているのだ、いままでこういうデータをいろいろの方にお見せしても、なかなか信じていただけないわけですね。ところが最後につけましたように、東京都がやられたデータで、やはりかなり濃厚なところが出ていますので、信じていただけるかと思うのです。それから私は二月に、自動車のガソリンの鉛が規制になってから後、またどろをいろいろ集めてまして、そういう結果とあわせて調査をし、もう少し確実なものにしたいと思ってますから……。  それから樹木のことにつきましては、私どものところはそれほど人数もございませんし、国の農業技術研究所というのがございますが、そこでいろいろな調査をされていると思います。ですから、そういうところが都会地の樹木についても、土壌中の重金属との関連というようなことの調査を積極的にされれば、いまおっしゃった御質問のようなことが明らかになっていくのではないかと思います。

渡辺惣蔵日本社会党

○渡辺委員長 以上をもちまして、参考人等に対する質疑は終了いたしました。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  参考人各位には、御多用中のところ、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  次回は、明十日水曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十八分散会

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