本会議 第6号
- 発言数
- 10 件
- 登壇者
- 5 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1974/01/21
会議録
○議長(河野謙三君) これより会議を開きます。 日程第一 国務大臣の演説に関する件 内閣総理大臣から施政方針に関し、外務大臣から外交に関し、大蔵大臣から財政に関し、内田国務大臣から経済に関し、それぞれ発言を求められております。これより順次発言を許します。田中内閣総理大臣。 〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
○国務大臣(田中角榮君) 戦後三十年、世界はいま新しい転換の時代を迎えております。 わが国は、戦後の廃墟から立ち上がって、復興経済、自立経済、国際経済へと三段飛びの発展をなし遂げ、いまや主要工業国の一員として、国際的にも確固たる地歩を占めるに至りました。資源と資本に乏しいこの狭い国土に驚異的な高度工業社会を築き上げたのは、わが日本国民の英知と努力のたまものであります。 しかしながら、わが国もまた世界の例外ではなく、先進工業国が直面しているのと同じように、数多くの矛盾と不均衡が尖鋭的にあらわれてきているのであります。物価、公害、エネルギーの諸問題こそがまさに当面する最大の課題であります。国民の不安と焦燥の原因がここにあることも、私はすなおに受けとめております。 国民のためにこそある政治は、いまこそ、これらの課題を最優先に解決するため、外に国際的な連帯と協力を、内に国民の理解と支持を得て懸命の努力をしていかなければなりません。そのために、私は、過去の行きがかりにこだわることなく、反省すべきは率直に反省し、改めるべきは謙虚に改めるなど、思い切った発想の転換と強力な政策を推進してまいります。(拍手) 物価問題の解決は、当面の政治の最重要課題であります。このため、政府は、昨年来財政金融政策を通じて総需要の抑制に全力をあげてまいりました。すなわち、財政面では公共事業の執行の繰り延べ、金融面では累次にわたる公定歩合の引き上げ等、引き締め措置を強化してきたところであります。また、民間設備投資における新規着工の停止などの措置をとるとともに、個別物資の需給調整のための対策を講じてまいりました。さらに、昭和四十九年度予算及び財政投融資計画の作成にあたっても、特に需要誘発効果の高い一般会計の公共事業関係費を今年度以下に押えるなど、極力財政規模を圧縮することといたしました。すでに決定せられた国有鉄道運賃及び米の政府売り渡し価格の値上げの実施時期を半年間延期することといたしましたのも、物価抑制を最優先の課題と考えたからでございます。その他の公共料金についても、極力抑制する方針であります。 石油の供給制限と輸入価格の大幅引き上げを契機として、物価情勢はきわめて憂慮すべき事態を迎えております。 政府は、正直者が馬鹿をみることのないよう、社会的公正を確保し、経済社会の混乱を未然に防止するため、国民生活安定緊急措置法、石油需給適正化法、生活関連物資等の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律の機動的な運用等により、物資の需給調整、価格の適正化、投機的行為の抑制をはかってまいります。 今日の事態は、自由と民主主義にとって大きな試練であります。政府は、この際、企業が目先の利益にとらわれて便乗値上げや投機的行為に出ないよう強く自制を要請するとともに、かりにこれらの不当な行為等によって過大な利益を得た者に対しては、法の厳正な運用をもって対処いたします。 石油自給度の高い米国においてもきびしいエネルギーの消費抑制措置がとられ、また、ヨーロッパ諸国においても産業用よりも民生用需要の抑制に重点を置いた消費規制が行なわれております。わが国においては、国民生活への直接的影響をできるだけ避けるため、民生用需要の充足を最優先に考えつつ石油、電力等の節減に取り組んでいるのであります。生活必需物資については、石油、電力の配分につき特段の配慮を行なってその必要量を確保し、また、正確な情報の迅速な提供につとめてまいります。当面している事態は、物資の絶対的不足に悩んだ戦中戦後の時代とは本質的に異なり、生産力は飛躍的に拡大しており、流通段階にも相当量の在庫が存在し、生活必需物資の需要には十分にこたえられる態勢にあります。国民各位も、このような現実を正しく理解し、良識ある行動をもって物価の安定に協力されるよう切に望むものであります。 これから春の賃金改定期を迎えます。賃金交渉は、労使の自主的な話し合いによって決定されるべきものでありますが、労使がその影響の重大さを十分自覚し、国民経済的視野に立って節度ある態度をとられるよう強く望むものであります。(拍手) 今後における資源・エネルギーをめぐる国際環境は、量の面でも価格の面でもきびしいものがあります。政府は、資源供給の安定化に引き続き努力を重ねる一方、石油偏重のエネルギー体系から脱却し、原子力の開発利用の促進をはじめ、水力、石炭など国内資源について新たな視点から開発の可能性を見直し、また、長期的視野に立って太陽エネルギーなど豊富で無公害の新エネルギーの利用技術の研究開発を強力に推進してまいります。なお、原子力発電の推進にあたりましては、安全性の確保について国民の理解が得られるよう努力を重ねるとともに、発電所の立地が地域住民の福祉向上につながるよう周到かつ強力な施策を講じてまいります。さらに、資源・エネルギーの回収、再生利用など資源利用の効率化と省資源型産業構造への転換もあわせて進めてまいります。 物価騰貴の最大の弊害は、国民生活の将来への不安を拡大し、所得及び資産の不公平な分配をもたらすことであります。政府は、緊縮財政を貫く中で福祉優先の政策を徹底することとし、社会保障を中心として福祉向上のための諸施策の推進に思い切った財源の投入をいたしました。老齢福祉年金を五〇%増額するとともに、厚生年金及び拠出制国民年金についても物価上昇にスライドして給付額を引き上げるほか、恩給等についても給付額の改善をはかることといたしております。また、生活保護世帯に対する生活扶助基準を大幅に引き上げるほか、寝たきり老人、身体障害者等に対する福祉対策の強化や、社会福祉施設入所者の処遇改善等の措置を講じてまいります。さらに、医師、看護婦等の医療従事者の養成確保など医療供給体制を整備するとともに、適切かつ公正な医療が行なわれるよう一そう力を注ぐ考えであります。 税制面におきましては、給与所得者を中心とする税負担の軽減、適正化をはかるため、所得税について給与所得控除の抜本的拡充等により初年度一兆四千五百億円にのぼる大幅減税を実施することといたしました。この結果、いわゆる標準世帯給与所得者の課税最低限は、平年分で現行の百十五万円から百七十万円に引き上げられることになり、年収二百万円で七五%、三百万円で五五%それぞれ所得税負担が軽減されるのであります。反面、法人税をはじめ、印紙税や自動車関係諸税について増税措置を行ない、国民負担の適正化と税体系の整備合理化を一そう推進することといたしております。 将来にわたって国民生活の安定と充実をはかるためには、財産づくりを進めることが大切であります。政府は、健全な貯蓄を奨励するため、預貯金金利の引き上げ、利子非課税限度の引き上げを行なうとともに、勤労者財産形成貯蓄に対する優遇措置を強化し、また、事業主の協力が得られるよう勤労者財産形成基金制度を創設することといたしました。 なお、今後、高齢者社会への移行や石油危機に伴う雇用問題に適切に対応するため、現行の失業保険制度を雇用保険制度に改め、総合的な雇用対策を推進することといたしました。 今日の異常事態において、中小企業をめぐる環境はきびしさを増しております。政府は、特に小規模零細企業の経営圧迫を防ぐため、無担保無保証の小企業経営改善資金貸し付けの資金量の増加、貸し付け限度額の二倍引き上げ、税負担の軽減など、金融、税制面での施策を画期的に拡充するとともに、経営指導事業の抜本的強化をはかってまいります。 食糧の確保も重要な課題であります。今後の世界の食糧需給の動向は、気象条件の不安定性、人口増加等の諸事情から見てきびしいものとなることが予想せられるのであります。このため、国民の主要食糧のうち国内生産が適当なものは極力国内でまかない、自給度の維持向上をはかることが必要であります。このような観点から、農林水産業の生産基盤の整備を進めますとともに、麦、大豆等の生産の奨励、畜産等の大規模生産基地の建設などを積極的に推進いたします。また、海外に依存せざるを得ない農産物についても、備蓄政策や国際協力の一環としての開発輸入政策などを進め、その安定的な供給を確保してまいります。 住宅の建設を助長するためには、土地問題を早急に解決し、宅地の円滑な供給を確保しなければなりません。政府は、宅地開発公団を創設するとともに、宅地の大量供給促進のための制度を整備し、大都市地域を中心として大規模宅地開発事業を推進してまいります。 土地問題を根本的に解決するためには、全国的に土地利用計画を確立し、これに即して公共優先の立場から土地の取引、利用にわたる規制、誘導を強化することが急務であります。土地は、いかなる資源にも増して有限であり、計画的かつ効果的な利用の推進が強く要請されるのであります。一億をこえる国民が長きにわたって豊かな生活を享受していくためには、たとえ現下のきびしい情勢のもとにあっても、長期的展望に立って国土利用の再編成をはかり、国土の均衡ある発展を進めることをないがしろにすることはできません。土地問題を解決し、総合的かつ計画的な国土の利用、開発及び保全をはかるため、国土総合開発法案及び関連法案のすみやかな成立を期待いたします。 環境保全対策の推進はいささかもなおざりにすることはできません。政府は、公害の防除、自然環境の保護について引き続き施策の拡充強化をはかっていくこととしておりますが、特に大気汚染については、いわゆる総量規制の導入をはかる等規制基準を強化してまいります。 沖繩については、県民福祉の向上のため、本土との間に格差の見られる医療体制、社会資本等の整備、充実を積極的に進めてまいります。また、開催期日を延期することとした沖繩国際海洋博覧会につきましては、その沖繩振興開発上の重要性や国際的意義にかんがみ、これを成功させるよう努力を重ねてまいります。 教育は、民族悠久の生命をはぐくみ、日本文化の伝統をつちかう最も重要な国家的課題であります。 激動と試練の二十世紀をこえて日本民族の歴史を創造するものは、青少年であります。心身ともにすこやかで、豊かな心情と創造力に富み、広い視野と強い責任感を持った青少年の育成は、国民共通の願いであります。私は、青少年諸君が、強靱な精神とたくましい身体を養うとともに、公共に奉仕する使命感に燃え、国際人としても信頼されるたくましい日本人として成長することを心から期待いたします。(拍手) 政府は、新たな決意をもって、教育の刷新、充実のための施策を積極的に進めてまいります。なかんずく、初等中等教育については、知・徳・体の調和のとれた人間形成の基本の確立を目ざして、教育内容を精選し、児童、生徒が責任を重んじ、みずから考え、みずから能力を切り開いていく態度を修得させるように配慮いたします。学校教育の成否は結局個々の教師の力にまつところが大きく、その責務は重大であります。教師に対する社会的信頼の確保こそ、重要な課題であります。教職によき人材を得て、その情熱を教育に傾け得るようにするため、引き続き教員給与の改善を推進してまいります。また、高等教育については、大学改革の推進をはかるほか、教育の機会拡大の要請にこたえ、無医大県の解消、新しい構想による高等教育機関の計画的な拡大など多彩な施策を進めてまいります。さらに、理想的な教育の条件と秩序ある学園環境の確立のために、たゆみない努力を傾ける考えであります。 なお、先般の国連総会において、国連大学本部の日本設置が決定を見たことは、国際社会における日本の役割りを果たす上でまことに意義深いものがあります。その受け入れに遺憾のないよう万全を期してまいります。 福祉国家の建設にとって、婦人の参加と活躍は、ますます不可欠の要請となりつつあります。わが国の婦人は、その高い能力をもって、女性固有のものとされている職域はもとより、従来男性の職能分野と見られていた専門的技術的分野にも活発に進出し、多くの実績をあげていることは、心強い限りであります。今日、看護をはじめ、社会福祉、教育など各種専門分野においても、婦人の進出にさらに大きな期待がかけられております。他方、女性には、家庭においても、母として、次代をになう児童を直接養育する重大な使命があります。いまや、婦人の就業やその家庭生活との関係等につき、新たな観点から、さらに抜本的に検討すべきときであります。政府は、専門技術者の養成、家庭婦人の就業促進とそのための社会的環境条件の整備等につき、真剣に努力を重ねてまいります。 私は、一昨年来の米国、欧亜大陸、東南アジアへの訪問外交を通じ、緊張緩和は、欧州におけると同様アジアにおいても現在の国際秩序を踏まえて、そのワク内で達成されつつあるとの確信を深めたのであります。わが国は自衛のための必要とされる最小限度内の防衛力を維持するとともに、引き続き日米安全保障体制を堅持してまいります。政府は、防衛問題に関し、国民の広い理解と支持を得るため一そうの努力を重ねてまいります。 自衛隊の施設及び在日米軍に提供中の施設区域の周辺地域における民生安定諸施策を抜本的に強化するため、新たに法律案を今国会に提出するほか、米軍が使用する施設区域の整理統合についても引き続き真剣に取り組んでまいります。 なお、昭和四十九年度における防衛費については、当面する内外の情勢を十分勘案し、総需要抑制の見地からも、必要最小限の経費計上にとどめました。 現下の国際情勢は一そう多様化の度を加え、世界は、政治的にも経済的にも新しい秩序を模索しつつあり、わが国を取り巻く内外の情勢は、戦後かつてないほどに複雑かつきびしいものとなっております。このようなときにあって、各国との相互理解と協力の増進はことのほか重要であります。私が、さきの米、中、西欧及びソ連の訪問に引き続き、このたび、アジア五カ国を歴訪しましたのも、世界的視野に立つわが国外交のあり方、国際社会に向けてわが国が果たすべき責任を見きわめるためでありました。 私は、かねてよりできるだけ早くアジア諸国をたずね、心の通った隣人としての友好を深めることにより、これら諸国のわが国との関係に新しい一ページを開きたいと念願してまいりました。私は、今回のアジア訪問を通じ、これら諸国との平和と繁栄を分かち合うよき隣人同士の関係をいかにして育成、強化することができるか探究することに可能な限りつとめました。わが国のアジア諸国との関係や、わが国企業の経済活動に対する不満や批判についてもつぶさに見聞をいたしました。私は、その中で、各国、各国民にとって相互理解と協力がきわめて大切であるにもかかわらず、それが言うはやすく実行はまことに困難な課題であることを痛感いたしました。 国際協調の意味するところを正確に把握し、これを国の施策と国民一人一人の行動と反映させることは、われわれが考えるほどには容易ではありません。一億の日本民族は、単一民族として島国の中で人種的対立もなく、宗教や言語の争いもなく、そのエネルギーをひたすら復興と建設に結集することができました。そのことは、一面で世界各国の中でもきわめて恵まれた点であると考えられますと同時に、他面、国際協調ないし外国との交際においては、いまだ大いに反省し、みずから学ぶ点の多々あるという結果をもたらしております。敗戦直後の荒廃の中で復興に努力する過程では看過され、ある程度正当化されたかもしれない閉鎖的な国益追求の姿勢は、もはや国際的に通用しないばかりか、災いの種ともなりかねません。この際、わが国に対する正当な批判にはすなおに耳を傾け、改めるべきところは改め、長期的展望に立つ互恵的な交流関係の維持増進をはからなければなりません。こうして、日本が自分のものさしだけで判断することなく、アジア諸国のよき友人となり、苦楽を共にしてこそ、はじめてアジアの永続的な平和の確立に貢献できるのであります。(拍手) 私は、かように人の面について見直しが必要であることを訴えるものでありますが、物の面では、歴訪諸国との首脳会談を通じ、アジア諸国とは相互補完の関係にあることを一そう感得いたしました。わが国は、アジア諸国の協力を必要とし、アジア諸国もまた、その国づくりのため、わが国の協力に多大の期待を寄せているのであります。わが国は、アジア諸国の期待にこたえるため、政府開発援助の質的改善を含む援助対策の一そうの転換をはからなければなりません。具体的には、関係国の一般大衆の福祉向上のため、農業、医療、教育、通信等の分野に対する援助を拡充し、政府借款の条件を緩和し、贈与の対象範囲を拡大してまいります。その一環として、政府は、国際協力推進のために国務大臣を新たに設けるほか、国際協力事業団を設立し、政府及び民間の協力体制を整えることにいたしました。 東南アジアを訪問して、今次石油危機がわが国や欧州諸国等に深刻な影響を与えている以上に、アジアの開発途上国が直接的な打撃をこうむっており、特にわが国の経済活動の停滞により、甚大な影響を受けている事実を痛感してまいりました、資源問題の根本的解決は、産出国と消費国との間に互恵互譲の精神に基づく調和ある関係がつくられて、はじめて可能であります。政府は、産油国と消費国との会合に言及した石油輸出国機構の声明を歓迎するとともに、国際的な解決をはかろうとする試みに参加し、世界経済の拡大と発展のために積極的に貢献してまいりたいと考えております。 政府は、資源確保にあたっては、内にはわが国経済の体質を資源供給の制約という新事態に対応すべく転換しつつ、外に向かっては、その安定供給の確保と供給先の多角化のための努力を鋭意積み重ねてまいりましたが、これらの努力も中東紛争を契機とする新事態に対応し得るほど十分のものではなかったのであります。わが国は、中東における公正かつ永続的な平和が早期に達成せられることを期待するものであり、そのためできる限りの寄与を行なってまいります。また、これら諸国との間に、長期的観点からその工業化の努力に対する具体的な経済技術協力のほか、人的、文化的交流等幅広い友好関係を増進するため、最大限の努力を傾ける必要があります。以上の政策を踏まえ、政府は、さきに中東問題に関する態度を明確にするとともに、三木副総理をはじめ政府、党首脳を中東諸国はじめ関係諸国に派遣したのであります。 資源の共同開発、新エネルギーの研究等に関する国際協力の促進の重要性はますます高まっております。これらの問題については、昨年の各国首脳との会談においても、すでに積極的、具体的な話し合いを行なった次第であります。 米国とのゆるぎない相互信頼関係は、わが国の多角的外交展開の基礎をなすものであります。そのため、政府は、米国との貿易収支の著しい不均衡を大幅に改善せしめたのみならず、広く世界経済全体の発展確保のため、拡大均衡を指向する両国間の互恵的な貿易経済関係の増進に格段の努力を傾けております。 欧州との間には伝統的な友好関係が存在しながらも、具体的な協力関係は必ずしも密接であったとは申せません。昨年の訪欧の結果、広範な分野にわたり、各国との対話は大いに促進強化されましたが、この成果を踏まえ、今後ともわが国外交基盤の一そうの拡大に資してまいります。ソ連との関係においても、北方領土問題が平和条約の締結によって処理されるべき戦後の未解決の問題であると確認されたことはきわめて意義あることであり、あわせて、これまでの両国関係の着実な発展を一そう増進する素地ができ上がったことは、わが国益に資するゆえんであると考えます。 日中間の国交正常化以来その成果は着実に定着しつつあり、わが国外交の幅広い展開は一そう容易になりました。政府としては当面する実務諸協定等の締結を促進し、日中関係の一そうの進展とアジアの平和と安定に寄与してまいる考えであります。 私は、わが国を取り巻く国際情勢のきびしさと、わが国が果たすべき責任の重さについては十分な理解をいたしております。一昨年来の首脳外交により、世界的視野に立つわが国外交を強力に展開する基盤は固まりつつあると確信しております。私は、今後とも、すでにもたらされている各国首脳の招請にもこたえつつ、多方面との幅広く、奥行きの深い外交努力を積み重ね、平和と繁栄を享受できる住みよい人類社会形成のため、着実な国際的貢献を行なってまいる考えであります。 われわれの前に横たわる数多くの難問は、先人が経験したことのない種類のものであります。これらの難問を解く処方せんを過去の教科書に見出すことは不可能なのであります。 しかし、戦後の窮乏の中にあって、われわれは、乏しきを分かち合いながら苦しい試練に耐え、復興への道を切り開いてまいりました。その同じ国民が、当時に比べはるかに物の豊かな今日、たとえそれがいかにきびしくとも、当面する困難を乗り切れないはずはありません。自分さえよければという気持ちで目先の利益を相争い、相互不信におちいるようなことがあれば、それは国民にとって大きな不幸であります。このような事態を回避して国民の不安を解消し、難局に対処していくのが政治の責任であります。 いまこそ、政治が本来の意義と機能を取り戻し、その力を余すことなく発揮すべきときであります。政治は、一政府、一政党のみにかかわるものではありません。国民一人一人の多様な願望と英知が相寄り、国の命運を決定づける力となるのであります。政府は、政策目標と個々の政策手段を選択して、これを広く明らかにし、国民の支持と理解を得ながら冷静な判断と俊敏果断な行動をもって対処し、その結果については責任をとってまいります。 転換期を乗り切るためには、大きな困難と苦痛が伴います。しかし、議会制民主主義の確固たる基盤に立って、政府と国民が相携えて力を尽くすならば、今日の試練を克服して、協調と連帯の新時代を切り開いていくことは必ずできるものと確信いたします。 国民各位の御理解と御協力を心からお願いいたします。(拍手) —————————————
○議長(河野謙三君) 大平外務大臣。 〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
○国務大臣(大平正芳君) 第七十二回国会の再開にあたり、一九七三年を回顧しながら、これからの国際社会に処すべきわが外交のあり方につきまして所信の一端を申し述べたいと思います。 過ぐる一九七三年は、ベトナムの和平をもって明け、石油危機のただ中に暮れました。その間、米ソ、米中関係を中心とする緊張緩和は促進されましたが、世界の国々はそれぞれの独自性を高め、新たな秩序を模索する動きを強めており、世界はますます多様化の様相を深めております。しかも、今日の世界におきましては、超大国といえども、その優越した軍事力だけをもってしては、多様化した国際社会に安定した秩序をもたらし得ない実情にあります。その他の国も、新たに手にしたより広い選択の可能性を歓迎しながらも、国際環境が不安定性を増し、将来の展望がいよいよ困難になってきたことに深い悩みと当惑を覚えている状況であります。 第四次中東戦争とエネルギー危機の顕在化は、今日の世界がいかに狭く、相互依存の関係がいかに深くなっているかを如実に示しました。そして、世界が当面する最大の危機は、このような高い相互依存関係によって諸国が結ばれているにもかかわらず、それについての認識や理解が必ずしも十分ではなく、それをささえる相互の信頼関係がむしろ脆弱となっていることであります。このようなときにこそ、われわれは、わが国の外交政策につき、その正しきものはこれを徹底し、足らざるものはこれを補なう心がまえがまず必要であると考えます。 わが国は、世界の平和と繁栄なくしてその安全と繁栄を確保することはできません。したがって、政治、経済、文化等のあらゆる分野で、国際間の協力と相互依存の関係を拡充強化し、相互の理解と信頼を深めてまいることをその外交の基本方針としてまいりました。このようなわが国外交の基本は、今後とも堅持すべきものであると信じます。 今日、わが国の経済活動は世界的規模に拡大いたしております。世界のいずれの地域におけるできごとも、大なり小なり、わが国の経済、国民生活に影響を及ぼしております。また、わが国の内外にわたる経済活動は、世界各国の政治と経済、民生と福祉に少なからざる影響力を持つに至っております。 もとより、いずれの国もみずから守らなければならない基本的な立場と利益があります。わが国の友好国といえども、その立場と利益が常にわが国のそれに合致するとは限りません。「世に処するには一歩を譲るを高しとなす。人を利するは実に己れを利する根基なり」との東洋のことわざがございます。わが国は、各国の立場と利害に対し、十分な理解と互恵の精神をもって、利害をひとしくする分野を確かめ合い、国際間の調和ある連帯関係をつくり出していく必要があると考えます。 今次石油危機は、わが国や欧州諸国に深刻な影響を与えたばかりではありません。開発途上国、特に石油を産出しない諸国につきましても、直接的な打撃に加うるに、先進諸国の経済活動の停滞、輸出入余力や経済援助力の低下を通ずる間接的な打撃も与えております。 こうした複雑な相互依存関係は、ひとり資源・エネルギー問題にとどまらず、開発途上国の貧困の問題、人間環境の保全問題、食糧、通貨、人口、海洋等の諸問題につきましても同様であります。各国は、相互依存の網目をよく認識し、自己の立場と利益にのみとらわれず、共通の利益を見出して問題を処理するワク組みをつくるよう協力する必要に迫られております。わが国は、このような国際協調の動きを率先推進すべき立場にあると信じます。 かかる見地に立ちまして、わが国は、資源・エネルギー問題につき、内におきましては資源の節約と効率的利用をはかりますとともに、外に向かっては、資源保有国と消費国との双方が協力して、各国に納得のいく新しい国際的ワク組みと秩序をつくり上げるよう、最大限の貢献をしてまいりたいと考えます。この観点から、政府は、産油国、消費国間の意見交換が有益であるとのOPECのコミュニケを歓迎するものであります。また、ニクソン米大統領の提案にかかる主要消費国外相レベルの会合が、産油国と消費国の調和ある関係樹立のための第一歩となることを期待するものであります。 石油危機により加速された世界経済の混迷は、各国における保護主義あるいは地域主義への動きを助長し、世界の貿易と経済の発展を阻害するおそれがあります。貿易立国を国是とするわが国といたしましては、このような時期においてこそ、世界の繁栄のために自由な貿易拡大の先達として努力しなければなりません。したがって、政府は、新国際ラウンド交渉推進のため、従来にも倍する努力を傾ける所存であります。 南北問題は、国際社会の安定と調和ある発展に立ちふさがる重大な課題であります。新しい国際協力は、南の開発途上国の声を十分反映した連帯関係を築き上げるものでなければなりません。 最近、開発途上国におきましては、わが国の対外経済活動のあり方について不満や批判の高まりが見られます。わが国は、正当な批判に対してはすなおに耳を傾け、正すべきは正さなければなりません。われわれの持つ閉鎖性や心にひそむ優劣意識、また相手国の伝統や習慣に対する認識の不足につきましては当然みずから戒めなければなりません。他面、対日批判の動きには、それぞれの国に内在する諸要因がからんでいる場合や、わが国に対する誤解が含まれていることもあり得ますので、わが国としては、そのよって来たるところを見きわめ、冷静に対応する必要があります。問題の根は深く、彼我双方が相協力して解決への道を忍耐強く探求していくことが必要であると考えます。 わが国としては、今後とも、貿易不均衡の是正に一そう努力するのみならず、民間投資、政府援助のあり方につきましても特にくふうを加えていく必要があります。経済技術援助につきましては、農業、医療、教育等、一般大衆の福祉向上に一そうその重点を置くようつとめなければなりません。また、贈与の拡充、借款についての一般的アンタイイングの推進及び条件の緩和等、政府開発援助の質的改善を進めてまいる必要があります。同時に、経済協力事業全体の渋滞を招いているもろもろの隘路を打開するため、政府は、無任所国務大臣を新たに設けるほか、国際協力事業団を設立し、民間の協力を得て、経済協力事業の実施を強化する方針であります。さらに、対日批判に処する道としても、基本的に大事なことは、経済の分野で互恵互譲の精神に徹するばかりでなく、相手国の歴史、文化、社会を含む国情、心情の全般について、理解を深めるとの心がまえであります。政府といたしましては、留学生、研修生の受け入れ、講師、専門家の派遣、学生、文化人の交流等を一段と拡充してまいる考えであります。国際交流基金の財政及び活動を拡充いたしますとともに、今回新たに東南アジア青年の船の計画を進めてまいりますのもその一環であります。 海外諸国との交流は、民族と文化の接触であり交流であります。したがって、政府のみならず、国民の各位及び企業が相携えて開発途上国との心の通った交流に取り組むべきものと考えます。それによってはじめて変転する国際環境にも長きにわたって耐え得る相互信頼の基礎が確立されるものと信じます。 私は、国際協調を推進する重要な場としての国際連合を、一そう積極的に強化し活用すべきであると考え、昨年九月、国連総会におきまして国連強化の必要を強調いたしました。国連大学の本部をわが国に設置することが加盟国の圧倒的多数の賛成により先般決定されました。これは、わが国の国連協力の実を象徴するものであり、世界の期待にこたえて名実ともにりっぱなものにつくり上げたいと考えます。 核兵器不拡散条約につきましては、その批准に備えて、まず、原子力の平和利用の分野における他の本条約加盟国との実質的平等性を確保するため、国際原子力機関との間に保障措置協定の締結交渉を開始すべく所要の準備を進めてまいる所存であります。 以上のような基本方針に基づきまして、わが国が世界各国、各地域との間に展開すべき外交施策について申し述べたいと思います。 身近な隣人でございまするアジア諸国との協力関係はひとしお大切であり、田中総理が東南アジア五カ国の訪問にあたって強調された、平和と繁栄を分かち合うよき隣人関係の育成、強化こそが、まさにわが国の対アジア外交の道標でございます。これを実行するため、さきに申し述べました国際協力に関するわが国の基本姿勢に徹し、アジア諸国の心をくんで節度ある態度を持し、広く深い連帯関係を長きにわたってつちかってまいりたいと考えます。また、わが国は、ASEANの活動に見られますような、自助、自立の精神に基づき新しい秩序を求める動きにつきましては、できる限りの支持を続けてまいる所存であります。 わが国は、朝鮮半島の自主的、平和的な統一と永続的な安定を心から希望するものであります。日韓関係のあり方につきましては、昨年発生いたしました金大中事件等を契機といたしまして種々の論議を呼びました。政府としては、韓国との間に、広く国民的基盤に立脚した公正な関係が各分野にわたって堅実に発展するよう、一そう努力を重ねてまいる所存であります。北朝鮮につきましては、今後とも、国際情勢の推移、南北対話の進展を勘案しつつ、経済、文化、人道、スポーツなどの分野で交流を広げてまいりたいと考えております。 インドシナは、全体として和平の定着に向かっていると見られますが、一部地域におきまして、いまだ戦火が絶えないのは残念なことであります。わが国は、昨年九月、ベトナム民主共和国との間に外交関係を樹立いたしました。政府としては、南北両ベトナムを含む全インドシナ地域の民生安定と戦後復興のため、今後とも引き続き応分の協力を行ない、もって同地域の真の平和と安定の達成に貢献してまいりたいと考えております。 インド亜大陸における諸国間の関係は正常化に向かって前進しております。わが国は、このような動きを歓迎し、この地域の安定と発展のためできる限りの努力をいたす所存であります。 中国との関係では、ここ一年余りの間、貿易をはじめ各種分野での交流の増大など、国交正常化の成果が着実に定着しつつあります。このような状況のもとで、私は、今般中国を訪問し、中国首脳と広範な意見の交換を行なってまいりました。その間、一月五日には日中貿易協定の調印を行ない、また、航空協定をはじめとする各種実務協定に関する今後の取り進め方につき話し合い、できるだけ早期に締結すべきことをあらためて確認し合いました。政府としては、日中両国の関係を正しく地固めしていくことが、両国関係の発展のみならず、アジアの平和に資するものであるとの認識のもとに、両国の実務的な諸問題の解決を促進し、日中間の対話の幅を広げることに一そう意を用いたいと考えております。 豪州、ニュージーランド及びカナダは、共通の政治的信条に立脚して、米国とともに、アジア太平洋地域の平和及び繁栄の達成という共通の目標を追求する重要なパートナーであります。また、わが国にとり安定した食糧や資源の供給先でもあります。政府としては、これら諸国との友好関係を一そう強化し、相携えてアジア太平洋地域の発展に貢献してまいる所存であります。 米国との関係は、戦後四半世紀余にわたり、各種の試練を克服して、着実に進展を続けてまいりました。そして今日では、ひとり両国間の案件処理にとどまらず、世界の中の日米関係として定着するに至り、広く国際的な政治、経済の諸問題について、両国がともに大きな役割りを果たし得る成熟した関係に発展してきております。相互協力及び安全保障条約によって具象される相互信頼関係は、間断なき対話と不断の協力を通じまして維持、増進されるべきであります。それがわが国外交を多角的に展開する際の基盤をなすものであり、アジア、ひいては世界の平和と安全の維持に寄与するゆえんであると信じます。かつての課題でありました両国間の貿易収支の著しい不均衡も、いまや大幅に改善されました。政府は、今後とも、世界経済全体の発展確保という広い視野に立ちまして、両国間貿易の拡大均衡を指向しつつ、互恵的な経済関係を一段と増進してまいりたいと思います。 欧州とわが国は、限られた資源と国土の中にありまして、高度の文化と経済を享受し、多くの共通の課題をかかえた古きパートナーであります。欧州は、昨年十二月の一体性宣言に見られますように、政治統合への動きを進めつつあり、国際社会における発言力を強化しつつあります。昨年秋、田中総理と西欧諸国の首脳との会談におきまして、日欧間の基本的協力関係の確立、資源・エネルギー、開発途上国に対する経済協力等について、広範かつ実質的な話し合いが行なわれ、日欧間の相互理解は著しく深まりました。政府は、今後とも、欧州との対話を強化し、具体的な協力関係を増進する考えであります。また、わが国と米国及び西欧との調和ある協力関係の発展に一そう意を用いてまいる所存であります。 日ソ関係は、近年、相互の理解が深まり、政治、経済、文化、人的交流等の幅広い分野におきまして着実な進展を見せております。特に、昨年十月行なわれた田中総理の訪ソに際し、最大の懸案である北方領土問題につき精力的な交渉が行なわれました。その結果、戦後未解決のこの問題を解決して平和条約を締結すべきことが確認され、本問題打開への端緒が開かれました。政府は、本年中に再開される平和条約交渉におきましても、総理訪ソの成果を踏まえ、国民各位の御支持を得て、本問題の解決のため一段と努力を傾ける所存であります。 シベリア天然資源の開発につきましては、日ソ首脳会談におきまして互恵平等の原則に基づいてこれを促進することにつき原則的合意を見ております。政府としては、シベリア開発につき、現在行なわれている両国当事者間の交渉が進捗し、早期に満足すべき合意に達することを期待しつつ、これを促進いたしたいと考えております。 わが国は、昨年ドイツ民主共和国との間に外交関係を樹立いたしましたが、東欧諸国との経済的、人的交流を今後とも拡大してまいる所存であります。 われわれは、つとに中東における公正かつ永続的な平和のすみやかな実現を強く切望してまいりました。去る十二月二十一日、中東和平に関するジュネーブ会議が開催の運びとなったことを心から歓迎し、この会議が和平の達成に大きく貢献することを期待いたしております。政府は、十一月二十二日、中東紛争解決のための基本的態度を明らかにいたしました。さらに、政府は、中東和平達成のためにわが国の貢献し得る道を探求し、将来にわたってのわが国と同地域各国との友好協力関係の増進に寄与するため、三木副総理を中近東諸国、次いで米国及び国連に派遣いたしました。引き続き、現在、小坂特派大使が関係諸国を歴訪中であります。政府は、今後とも中東和平達成のためにできる限りの寄与を行ない、特に中近東諸国との人的、文化的交流、貿易、経済技術協力の拡大等に一そうつとめてまいる所存であります。 アフリカ諸国は、経済自立達成のため各国の協力を必要としており、わが国に対する期待も高まりつつあります。わが国は、アフリカ開発基金に対する出資をはじめ各種の協力を進めておりますが、今後ともこれら諸国が真に必要としている分野についての経済技術協力等を進めてまいる考えであります。 中南米は、豊富な可能性と明るい未来を持った地域であります。中南米諸国とわが国とは伝統的な友好関係にあるばかりでなく、経済的にも相互補完関係にあります。わが国は、これら諸国との関係を一そう緊密化し、友好親善関係を一段と深めてまいりたいと考えております。 今日、われわれの生活の基盤は全世界に拡大し、相互依存関係は複雑化し、多様化しております。われわれは、日常生活のあらゆる分野にわたり国際情勢の変動による影響を受けざるを得ません。同時に、わが国の活動が他の国々の国民生活にも影響を与えていることに思いをいたさなければなりません。 この際、われわれは、謙虚な態度をもって国際社会におけるわが国の真の姿を冷静に見詰め、協調と連帯を基盤とする平和と安定の創造にわが国として何をなすべきか、何ができるかを考え、政府、国民相協力して、国際的な信頼と評価をかちとる道を進んでまいりたいと思います。 国民各位の御理解と御支持をお願いいたします。(拍手) —————————————
○議長(河野謙三君) 福田大蔵大臣。 〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕
○国務大臣(福田赳夫君) 昭和四十九年度予算の御審議をお願いするにあたりまして、その大要を御説明申し上げますとともに、当面の財政金融政策と今後における経済運営のあり方について、所信を申し述べます。 私は、新しいこの年は、日本国にとって試練の年であると、かように存じます。この試練を乗り越えて、落ちつきのあるそして公正な新しい社会へのとびらを開くこと、これこそが本年わが国の当面する最大の課題であると思うのであります。 申し上げるまでもなく、戦後二十九年の今日、われわれは当時夢にも思い得なかった豊かな生活ができるようになり、また、国際社会でのわが国の地位もとみに重きを加えてまいりました。これは戦後わが国経済がなし遂げた偉大な成長発展の成果そのものにほかなりません。 ところが、この偉大な経済発展とうらはらをなすかのように、物価の高騰、自然環境の汚染・破壊、過密・過疎、各種社会資本の立ちおくれなどの諸問題があたかも吹き出もののように吹き出し、一刻も早い果敢な解決をわれわれに迫っておるのであります。 あれを思い、これを見詰めるとき、いまや、われわれは、静かにかつ謙虚に過去の歩みを顧み、これからの新しい行く手を探し求めなければならぬと思います。 申すまでもなく、経済の成長発展は、それ自体が目的ではないのであります。われわれの目ざすところは、国民の安らかな暮しとそのための健全な環境をつくり上げることであり、経済の成長発展はそのための手段にしかすぎないのであります。 わが国は、恵まれた内外の環境のもとで、経済成長の成果の多くをさらに次の成長へと振り向けながら、急速な復興と発展をなし遂げ、大きな経済力をたくわえるに至ったのであります。いまや、わが国は、この偉大な成果を踏まえ、われわれの終局的に目ざすところ、すなわち、国民の安らかな暮し、そのための環境整備へと経済のかじのとり方を大きくかつ明確に転換すべきだと思います。 このような考え方に立つとき、今後の経済運営にはこれまでのような高い成長を期待することはできませんし、また、それは適当でもありません。しかしながら、国民の求めるものは着実に解決されていくのであります。国民の求めるもので解決できない問題は何一つないと思います。なぜならば、われわれは、これに対する手段、すなわち、問題を解決するに足る経済力、財政力を持つに至ったからであります。 国民のすべてが一体となってこの道を進むならば、わが国は、単に物質的豊かさだけでなく、心の落ちつきをあわせ持った誇るに足るべき日本社会を建設し得るものと思います。 ところが、この重要な転換への門出にあたりまして、わが国は憂慮すべき障害に直面しております。異常な物価高の火の手に包まれ、石油問題はこの火の手にさらに油を注いでおります。 異常な物価上昇は、家庭や企業の将来に対する設計を失わせ、経済活動の混乱を招くばかりでなく、社会的公正をそこなうのであります。物価の安定こそはわが国が当面する最大にして最優先の課題であります。 物価の安定を実現するためには、まず何をおきましても総需要の抑制をはかることが肝要であります。財政金融諸施策の運営にあたりましては、その眼目をこの一点にしぼって臨む所存であります。この施策は、先般成立を見ました国民生活安定緊急措置法、石油需給適正化法等の適正な運用とも相まって、現下の経済諸動向を鎮静化し、物価問題を解決するきめ手となるものと信じます。 もとより、この道はきびしいものであり、その過程におきましては若干の摩擦が生ずることも考えられます。政府としては、この摩擦が弱い立場の人々に片寄ることのないように特段の意を用いるとともに、今後の推移に応じて起こり得べきあらゆる事態に対処し、機動的、弾力的な施策を講じます。しかしながら、この道は、たとえどれほどきびしいものであろうとも、わが国が現下の緊急な事態を克服し、将来への展望の足がかりを築くために、避けて通ることのできない道であります。そのきびしさのゆえにたじろいでは断じてならないと思います。 昭和四十九年度予算の編成にあたりましては、以上申し述べました財政金融政策の基本的方向にのっとり、政府が率先して総需要の抑制につとめ、物価の異常事態を克服する決意を明らかにするとともに、その中にあっても国民福祉の向上に直結する施策等については、特にその充実をはかることにいたしております。 その特色は次の諸点でございます。 第一は、予算及び財政投融資計画を通じてその規模を厳に抑制するとともに、公債及び政府保証債の発行額を縮減したことであります。 すなわち、昭和四十九年度における一般会計予算の総額は十七兆九百九十四億円、財政投融資計画の規模は七兆九千二百三十四億円となっておりますが、その前年度当初予算額及び当初計画額に対する伸び率は、いずれも前年度におけるそれを大幅に下回ります。 また、公債及び政府保証債につきましても、それぞれ前年度当初発行予定額より千八百億円及び五百億円縮減することにいたしておりますが、これにより一般会計における公債依存度もまた大幅に低下することになります。 第二は、国民負担の軽減・適正化を推進する見地から、この際所得税について画期的な減税の実施に踏み切ったことであります。 今回の所得税減税は、特に給与所得者の負担軽減を中心とする趣旨から、給与所得控除の抜本的拡充に重点を置き、人的控除の引き上げと税率の緩和とをあわせ行なうことにいたしております。その結果、夫婦子二人の給与所得者について見ますと、平年分において課税最低限は現行百十五万円から百七十万円に引き上げられます。また、独身の給与所得者の課税最低限は四十五万円から七十七万円に引き上げられます。同時に、中堅以上の所得者につきましてもかなりの程度の軽減が行なわれ、全体としてバランスのとれた所得税負担の軽減がはかられるのであります。 これにより、昭和四十九年度における所得税の一般減税の総額は、約一兆四千五百億円と空前の規模のものになるのであります。 このほか、法人税及び法人住民税の税率の引き上げを行ない、また、間接税のうち印紙税及び自動車関係諸税について、税率調整を通じその負担の増加をはかるとともに、個人住民税、小規模住宅用地の固定資産税等地方税負担の軽減、租税特別措置の改廃合理化などを行なうことにより、税制全般にわたり負担の適正化を推進することといたしております。 第三は、公共投資につき特にその抑制をはかったことであります。 すなわち、一般会計の公共事業関係費を前年度当初予算額を下回る規模に圧縮するなど、公共投資についてはきびしい抑制方針をとっております。ただ、その中におきましても住宅対策費、下水道その他の生活環境施設整備費等につきましては、国民福祉の向上をはかる観点から特に配意しております。 第四は、公共料金を極力凍結するなど、物価の抑制に特段の配意をしたことであります。 すなわち、現下の物価の状況に顧み、国有鉄道運賃及び米の政府売り渡し価格の改定時期をそれぞれ六カ月延期するとともに、郵便料金につきま・しても、通常郵便物の料金引き上げを織り込まないことにいたしました。 また、国民生活安定緊急措置法及び石油需給適正化法の執行体制の整備をはかるとともに、国民の日常生活に関係の深い生鮮食料品の円滑な流通と価格の安定、消費生活改善のための情報提供の施策等について配慮いたしております。 第五は、財源の重点的かつ効率的な配分をはかるとともに、最近の諸情勢に即応した諸施策の充実につとめたことであります。 特に社会保障につきましては、福祉年金につき、その支給月額を老齢福祉年金において五千円から七千五百円に引き上げる等の改善を行なうとともに、厚生年金及び国民年金における物価スライド制による年金額の引き上げ、生活扶助基準の引き上げを行なうほか、老人福祉対策、身体障害者対策、母子福祉対策等、各般にわたりきめこまかい施策を一そう推進することにいたしました。 次に、中小企業対策につきましては、小金業経営改善資金融資制度の拡充・改善等、小規模事業対策について重点的に配慮するほか、商工組合中央金庫、中小企業信用保険公庫等に対する出資の増額、政府関係中小企業金融三機関の融資規模の拡大等を行なうこととし、施策の充実をはかっております。 また、文教及び科学技術の振興につきましては、教員給与及び教員定数の改善、私学助成の強化、原子力安全研究の充実等の諸施策の推進をはかっております。 以上のほか、公害の防止及び環境保全対策、海外経済協力、食糧の安定的供給、資源及びエネルギー対策等各般の施策を推進するとともに、現在解決を必要とする諸問題に即応した体制の整備をはかるため、宅地開発公団の新設、海外技術協力事業団等の統合による国際協力事業団の新設、電源開発促進税の創設とこれに伴う特別会計の設置等を行なうことといたしております。 第六は、現下の経済情勢に顧み、その推移に適切に対処するため、予算及び財政投融資計画の弾力的運用に配意していることであります。 最後に地方財政について申し述べます。 地方財政につきましては、国と同一の基調により、公共投資をはじめとし、歳出を極力抑制することといたしており、また、地方交付税交付金につき、昭和四十九年度の特例措置として国税三税の三二%相当額から千六百八十億円を減額調整することにいたしました。 なお、補助事業にかかわる超過負担の解消、地方債計画における政府資金比率の改善等については特に配意いたしておりますが、地方公共団体においても、地方財政の適切な運営を確保するため、財源の重点的かつ効率的な配分を行なうよう強く期待するものであります。 以上、昭和四十九年度予算の大要につき御説明いたしましたが、当面の金融政策につきましても、財政政策と同様の方針のもとにその運営を行なうべきことは当然であります。 すでに御承知のとおり、金融面におきましては、累次にわたる引き締め措置に加えて、先般さらに公定歩合の大幅引き上げ等の措置が講じられ、量的にはその効果もかなり浸透しつつあるのでありますが、その質的側面につきましても特段の意を用いてまいる所存であります。 これらの措置は、供給力の制約のもとで、国民生活及び国民経済の安定を確保しつつ、総需要抑制を短期間のうちに実効あらしめんとする強い政策意図にいずるものでありますが、資本市場における長期資金調達につきましても、産業界、証券界等の節度ある態度を期待するものであります。 なお、中小企業金融につきましては、その健全な発展をそこなうことのないよう十分配慮してまいる所存であります。 貯蓄を奨励し国民の堅実な消費生活の実現をはかることは、健全な経済発展を確保していくための重要な要件であると考えます。このような観点から、政府は、さきに預貯金金利引き上げ等の措置を講じたところでありますが、さらに、割り増し金付貯蓄の制度を導入するとともに、勤労者の財産形成を一そう促進するため格段の意を用いることといたしております。 次に国際収支の動向について申し上げます。 わが国の国際収支は昨年春以来、輸入の著しい増加によって貿易収支の黒字幅が縮小するとともに、長期資本が大幅な流出超過を続けた結果、全体としてはかなりの赤字傾向となり、これに伴って外貨準備高も減少してまいったのであります。さらに、石油問題の動向いかんによりましては、わが国の国際収支は少なからぬ影響を受けるおそれもあるのであります。 このような状況におきまして、私は、当面の経済運営にとって国際収支の改善は、物価問題と並び特に重要な課題の一つであると考えます。 もとより、現在進めている財政金融政策の効果が浸透し景気が鎮静化してまいりますれば、貿易収支面においてかなりの好ましい影響が生ずることが期待されます。しかしながら、同時に、資本収支等の面におきましてもかつての大幅な黒字基調時代に講じられた諸施策の転換をはかっていく必要もあると考えます。 政府は、今後とも国際収支の好ましい姿を実現するため、国内経済の運営及び対外経済政策に一層の努力を傾注してまいる所存であります。 最近の国際情勢を大観いたしますと、国際政治は緊張緩和へとその流れを変えてまいりましたが、経済面では、逆に不安と動揺が打ち続き、資源問題を契機としてこの様相はさらに複雑化しております。 資源に恵まれないわが国にとりまして、世界の平和と繁栄は、その生存と成長のための不可欠の前提であります。わが国は、国際経済社会の安定と発展のため、その地位にふさわしい協調の役割りを積極的に果たしてまいらなければならないと考えます。 このため、通貨・通商にわたる新たな国際経済秩序の確立に寄与し、また、真に開発途上国の立場に立った経済協力を強力に推進するなど、国際経済社会の安定と発展に一そう努力すべきことはもちろんであります。同時に、いまや世界的な広がりをもって問題化している物価、公害、資源等の諸問題の処理につきましては、国際的協調のもとに積極的な努力を重ねるとともに、国内経済の運営にあたっても世界の中の日本という立場に立って常に節度を失わず、また、国民の間に特に物を大事にする風潮を育成しなければならないと考えます。 以上、当面の財政金融政策の運営について申し述べましたが、最も重要なことは、現下の異常な事態を克服した後のわが国社会のあり方についてであります。 申すまでもなく、国民が多大の犠牲を払ってこの難局を脱しようとするのは、成長と繁栄に陶酔した昭和元禄調を復元するためであってはならないのであります。物さえあれば、金さえあれば、自分さえよければという物と金とエゴの支配する時代は、過去のものとしなければならないと思います。心のゆとりと落ちつきを取り戻し、金では買えないものの価値を再認識し、社会の公正と連帯の中で、みずからの生きる喜びを感ずるような、人間主義にあふれた新しい社会を建設することこそ大事であると考えるのであります。 私は、今後の経済政策の使命がこのような新たな社会建設の経済的基盤を整えることにあることを深く認識し、この目標達成のため、物価、国際収支、資源・環境の諸問題に十分配意しながら財政金融政策の運営に万全を期してまいる所存であります。 時代のいかんを問わず、一国の進歩と繁栄への道は、決してたんたんとしたものではないと思います。わが国の歩みを顧みますときに、その道程には数々の試練の歴史があったわけであります。しかし、わが国民はすぐれた力で今日までそれらを次々と克服してきたのであります。 直面する試練がいかに深刻なものであろうとも、われわれの先祖先輩の克服し得て、しかもわれわれに克服し得ないことはないはずであります。いまわれわれ一億国民は、各界各層ひとしく同じ船に乗り合わせているのであります。この船が激浪を乗り切ることができるように、勇気をもって立ち上がろうではありませんか。(拍手) 政府は立ち上がりました。私も最善を尽くします。 国民各位の御協力を切望してやまない次第であります。(拍手) —————————————
○議長(河野謙三君) 内田国務大臣。 〔国務大臣内田常雄君登壇、拍手〕
○国務大臣(内田常雄君) 第七十二回国会の再開にあたりまして、私は、物価の異常な上昇をはじめ激動する現下の経済情勢と、これに対処する基本的な考え方を明らかにし、国民の皆さま方の御理解と御協力を得たいと存じます。 いま、世界経済にとっても、日本経済にとっても、一つの時代が終わり、新しい時代が始まろうとしております。 国際的には、IMFを中心とする通貨体制が動揺するなど、戦後の繁栄をささえてきた世界経済の秩序は混迷の時期に逢着しております。 加えて、近年世界的に深刻化している公害等環境破壊の問題並びに石油をはじめとする天然資源の有限性に対する認識は、われわれが生産力の拡大に制約のあるグローバルな運命共同体の中に住んでいることを教えたのであります。 さらに、一九七二年以降激しさを加えてきた世界的物価上昇は、各国においていまなお燎原の火のごとく燃えさかっております。今日の世界的物価上昇の原因は、基本的には生産力の限界を越えた需要と所得の膨張によるものと考えられます。しかも、今日ほとんどの国が例外なくこのような現象をみせている結果、物価上昇が国境を越えて増幅している点に問題の複雑さがあります。 このような世界的な物価上昇は、国内経済に混乱を生じさせているだけではなく、世界貿易の発展をはじめ経済の国際的連携にも著しい障害を与える要因となっております。今日、各国政府が、いずれも物価の安定を最大の課題として努力を払っているゆえんであります。 戦後、世界経済が目ざましい発展を遂げた中で、わが国経済は特に高い成長を達成してまいりましたが、同時に現代社会が直面する困難が最も鋭い形であらわれることにもなりました。 わが国の物価は、戦後の一時期を除いて、長期にわたって比較的安定を保ってきましたが、昨年は卸売り物価、消費者物価ともに著しい上昇を示しました。特に昨年後半に発生した石油危機は、エネルギーの大半を海外の石油に依存するわが国の経済に大きな衝撃を与えることとなり、物価の高騰に加えて生活物資の一部に品不足感が生じ、国民生活の安定が脅かされるに至ったと考えます。 政府は、このような事態に対処して、各般の施策による総需要の抑制を一段と強化し、また、消費者米価、国鉄運賃等の引き上げを延期するとともに、昭和四十九年度の予算規模についてもこれを極力圧縮するなど、総合的な物価対策を実施しております。さらに、現在のきびしい需給状況のもとで、必要物資の安定した供給を確保するためには、個別物資対策としても最小限の法的措置が必要であるとの判断にもとづきまして、昨年末に石油需給適正化法並びに国民生活安定緊急措置法の制定をお願いいたしたところであります。 今後、これらの法律の機動的な運用によって生活必需物資等の価格の安定と供給の確保につとめるなど、国民の生活を守るためにあらゆる措置を講じてまいる所存であります。 しかしながら、今日の緊急事態に対処するためには、政府の努力はもとよりでありますが、これとともに国民各層の一致した協力が不可欠であると考えます。特に企業にあっては、その社会的責任の自覚に徹し、いやしくも便乗値上げや買い占め、売り惜しみ等により国民の不安を助長することのないよう強く自粛を求めるものであります。政府としても、過当な利益を得る者に対しては、きびしい姿勢で臨む所存であります。 また、当面のきびしい環境のもとにおいて、本年の経済の伸びは、これまでの年をかなり下回ることは明らかでありますので、実勢を無視した昔金上昇は、物価を刺激し、かえって実質所得水準の向上を妨げるおそれがあると考えられます。それゆえ、特に本年は、これに関連して、労使関係者が国民経済的視野に立つ節度ある態度をとるよう切に望むものであります。(拍手) 昭和四十九年度のわが国経済は、石油問題については、その供給削減に緩和のきざしが見えてきたものの、価格引き上げを含めて依然流動的であり、このことが物資の需給、物価、雇用等さまざまな面になお少なからぬ影響を及ぼすことが懸念されます。しかしながら、政府の機動的な政策運営と国民各層の協力と相まって当面の緊急事態を乗り切り、年度の後半には経済活動が順調な回復を示すことを期しております。これによって、四十九年度においては、少なくとも実質二・五%程度の経済成長は確保できるものと考えます。また、政府は物価の安定を最優先課題として経済運営に取り組む所存であり、四十九年度中の物価動向は、卸売り物価、消費者物価ともにかなりの落ちつきを取り戻すことを期しております。 昨年来の激しい物価上昇と中東戦争勃発を機に訪れた石油危機は、わが国経済にきびしい試練をもたらすものでありますが、同時にわれわれに幾つかの貴重な教訓を与えております。 すなわち、国際面については、現代の諸国家がお互いに深いかかわり合いを持っていること、特に主要な資源を海外に依存するわが国としては、あらゆる国との友好を保ちつつ経済交流を深めることなしには決して平和裏に生存することはできないものであることがあらためて明らかにされました。このような観点から、開発途上国に対しては相手国の立場に立った建設的な協力を一そう推進するほか、さらに国際通貨体制の再建等、新しい世界経済秩序の確立に対しても積極的な貢献を行なうべきものと考えます。 国内面についても、従来の考え方にとらわれない新しい理念に基づいての政策運営が必要となってきておると私は考えます。その一つは、今回の石油危機のような事態にも対応できる政策の理念と手法の確立であります。すなわち、不測の外部要因によって経済活動が撹乱される場合にも、そのショックを巧みに吸収し、弾力的に対応できる、いわば柔構造の経済をつくり上げなければなりません。そのためには、石油や食糧などの備蓄の確保、原子力の開発利用の推進をはじめとするエネルギー源の多様化等が望まれ、さらに変動に対して臨機に対応できるよう各種政策手段の整備をはかることが必要とされます。先般の国民生活安定緊急措置法等の制定もその一環でございますが、それらの法律の運用をはじめとして、自由な市場原理と政府による誘導政策の調和の問題が当面の具体的な課題として投げかけられておると考えます。 次には、今後の経済政策の基本的な考え方を、量的成長から質的成長へ、そればかりでなしに生産の論理から分配の倫理へ転換することが必要であると私は考えます。 年々増加する人口に充実した生活を保障するためには、適度な成長が必要であることは言うまでもありませんが、そのため、環境、資源などの制約の中で、国民福祉の向上に対応する産業構造、すなわち、省資源・無公害・知識集約型の産業構造をつくることが急務になっております。 また、完全雇用と豊かな社会をある程度達成した今回におきましては、パイを大きくすることを先決とする生産拡大第一主義から、社会各層間の分配の公正を政策の優先課題とする段階に来ていると私は考えます。物価の著しい高騰は分配の公正を傷つけるがゆえにも抑止されなければなりません。地価の抑制と宅地の安定供給も、土地を持つ者と持たざる者との公平を守るために実現しなければなりません。さらに、年金や各種社会保障の充実を思い切って行なう必要があります。 いま試されているのは、われわれの社会に対する連帯感なのであります。 自由経済がその活力を保持しつつ今後とも発展していくためには、いまこそ社会の連帯感を再構築し、新しい自由の秩序をつくり上げる必要があると信じます。 われわれは、国際的にも国内的にも、もろもろの原因の相乗作用による経済的なむずかしさの渦中に立たされております。その端的なあらわれが物価問題であり、資源の問題であります。この二つの問題は、いま、われわれに課されている解決すべき最大の政策課題であると考えます。政府は、あらゆる施策を集中してこの問題の解決に当たり、難関を克服して、国民の現在の生活と国の将来とにあらためて明るい見通しを打ち立てるために懸命の努力をいたす所存であります。 国民各位の御協力を心から切望するものであります。(拍手)
○議長(河野謙三君) ただいまの演説に対し、質疑の通告がございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(河野謙三君) 御異議ないと認めます。 本日はこれにて散会いたします。 午後四時四十一分散会 —————・————— 出席者は左のとおり。 議 長 河野 謙三君 副 議 長 森 八三一君 議 員 塩出 啓典君 喜屋武眞榮君 野末 和彦君 山田 勇君 栗林 卓司君 青島 幸男君 峯山 昭範君 沢田 実君 木島 則夫君 上林繁次郎君 矢追 秀彦君 三木 忠雄君 阿部 憲一君 高田 浩運君 黒柳 明君 田代富士男君 柏原 ヤス君 原田 立君 中沢伊登子君 中尾 辰義君 鈴木 一弘君 宮崎 正義君 中村 利次君 高山 恒雄君 熊谷太三郎君 川上 為治君 山田 徹一君 二宮 文造君 多田 省吾君 小平 芳平君 向井 長年君 小山邦太郎君 斎藤 十朗君 中西 一郎君 君 健男君 中村 登美君 松岡 克由君 細川 護煕君 橋本 繁蔵君 中村 禎二君 棚辺 四郎君 柴立 芳文君 久次米健太郎君 高橋 邦雄君 嶋崎 均君 桧垣徳太郎君 二木 謙吾君 丸茂 重貞君 橘 直治君 岡本 悟君 玉置 和郎君 高橋雄之助君 山内 一郎君 温水 三郎君 鹿島 俊雄君 大森 久司君 植木 光教君 植竹 春彦君 木内 四郎君 新谷寅三郎君 古池 信三君 杉原 荒太君 青木 一男君 高橋文五郎君 楠 正俊君 柳田桃太郎君 山本茂一郎君 石本 茂君 志村 愛子君 古賀雷四郎君 黒住 忠行君 河本嘉久蔵君 金井 元彦君 川野辺 静君 今泉 正二君 山崎 竜男君 世耕 政隆君 佐藤 隆君 竹内 藤男君 菅野 儀作君 藤田 正明君 木村 睦男君 西村 尚治君 岩動 道行君 土屋 義彦君 内藤誉三郎君 平泉 渉君 鍋島 直紹君 増原 恵吉君 米田 正文君 小笠 公韶君 柴田 栄君 大谷藤之助君 大竹平八郎君 江藤 智君 郡 祐一君 堀本 宜実君 塩見 俊二君 剱木 亨弘君 吉武 恵市君 迫水 久常君 前田佳都男君 長屋 茂君 若林 正武君 田 英夫君 片山 正英君 梶木 又三君 岩本 政一君 上田 哲君 工藤 良平君 初村瀧一郎君 星野 重次君 戸田 菊雄君 茜ヶ久保重光君 野々山一三君 田中寿美子君 宮崎 正雄君 久保田藤麿君 寺本 広作君 戸叶 武君 森中 守義君 鶴園 哲夫君 伊藤 五郎君 山本 利壽君 山下 春江君 森 元治郎君 森 勝治君 田口長治郎君 八木 一郎君 羽生 三七君 加藤シヅエ君 中村 波男君 松永 忠二君 片岡 勝治君 辻 一彦君 佐々木静子君 須原 昭二君 沓脱タケ子君 小谷 守君 神沢 浄君 宮之原貞光君 加藤 進君 松本 英一君 小笠原貞子君 大橋 和孝君 川村 清一君 鈴木 力君 小野 明君 山崎 昇君 塚田 大願君 星野 力君 林 虎雄君 松本 賢一君 小林 武君 瀬谷 英行君 矢山 有作君 須藤 五郎君 竹田 現照君 占部 秀男君 鈴木 強君 横川 正市君 大矢 正君 小柳 勇君 河田 賢治君 岩間 正男君 藤田 進君 沢田 政治君 村田 秀三君 足鹿 覺君 加瀬 完君 秋山 長造君 野坂 参三君 春日 正一君 国務大臣 内閣総理大臣 田中 角榮君 国 務 大 臣 三木 武夫君 (環境庁長官) 法 務 大 臣 中村 梅吉君 外 務 大 臣 大平 正芳君 大 蔵 大 臣 福田 赳夫君 文 部 大 臣 奥野 誠亮君 厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君 農 林 大 臣 倉石 忠雄君 通商産業大臣 中曽根康弘君 運 輸 大 臣 徳永 正利君 郵 政 大 臣 原田 憲君 労 働 大 臣 長谷川 峻君 建 設 大 臣 国 務 大 臣 (近畿圏整備長 官) (中部圏開発整 備長官) (首都圏整備委 員会委員長) 亀岡 高夫君 自 治 大 臣 国 務 大 臣 (国家公安委員 会委員長) (北海道開発庁 長官) 町村 金五君 国 務 大 臣 (内閣官房長 官) 二階堂 進君 国 務 大 臣 (総理府総務長 官) (沖繩開発庁長 官) 小坂徳三郎君 国 務 大 臣 (行政管理庁長 官) 保利 茂君 国務大臣 (防衛庁長官) 山中 貞則君 国 務 大 臣 (経済企画庁長 官) 内田 常雄君 国 務 大 臣 (科学技術庁長 官) 森山 欽司君 —————・—————