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72回国会参議院1973/12/01

本会議 第1号

発言数
27
登壇者
6
会派数
3
開催日
1973/12/01

会議録

河野謙三各派に属しない議員議長

○議長(河野謙三君) これより会議を開きます。  日程第一 議席の指定  議長は、本院規則第十四条により、諸君の議席をただいまの仮議席のとおりに指定いたします。      —————・—————

河野謙三各派に属しない議員議長

○議長(河野謙三君) 議員伊部真君は、去る十月九日逝去せられました。まことに痛惜哀悼の至りにたえません。  同君に対しましては、すでに弔詞を贈呈いたしました。  ここにその弔詞を朗読いたします。    〔総員起立〕  参議院は議員正五位勲三等伊部真君の長逝に対しましてつつしんで哀悼の意を表しうやうやしく弔詞をささげます      —————・—————

河野謙三各派に属しない議員議長

○議長(河野謙三君) 長田裕二君から発言を求められております。この際、発言を許します。長田裕二君。    〔長田裕二君登壇、拍手〕

長田裕二自由民主党

○長田裕二君 私は、同僚各位のお許しを得まして、本院を代表し、去る十月九日逝去されました議員伊部真君に対し、つつしんで追悼の辞をささげたいと存じます。  伊部真君は、大正十年一月福井県丹生郡織田町に生まれられ、その後、御両親並びに弟妹と大阪で成長されたのであります。  昭和十年に大阪市上福島尋常高等小学校を卒業されると直ちに大阪合同運送株式会社に入社され、昼間勤務の後、夜の余暇に此花商業学校第二本科に通い、昭和十四年に卒業されました。  昭和十四年当時は、すでに日華事変が拡大の一途をたどり、世をあげて戦時体制への転換が行なわれているときで、通運事業界におきましても集約合同が進み、大阪合同運送会社も日本通運株式会社に統合されることとなったのであります。このため、伊部君も昭和十六年に統合引き継ぎということで日本通運株式会社に入社され、梅田支店に勤務されております。  日本通運株式会社に入社後、一時、本土防衛のため宮崎県小林市の部隊に入隊されました。  復員後、戦禍によるわが国の荒廃した惨状を目前に見て、心の底から平和国家の建設と働く者の生活の向上を深く念願されたのでありましょう。昭和二十一年に全日通労働組合が結成されるや、直ちに労働運動に身を投じ、全日通労働組合梅田支部青年部副部長、続いて青年部長、さらに関西地区青年部長に就任され、その後、一生を労働運動に挺身されたのであります。  昭和二十二年には全日通労働組合中央本部青年部副部長、二十三年には関西地区執行委員及び中央執行委員となられ、二十四年には梅田支部書記長、二十五年、二十九歳にして関西地区副執行委員長となられ、引き続き二十六年にも再選され、二十七年から三十二年までの六年間は大阪支部の書記長をつとめられるかたわら、三十年から三十二年までの三年間、大阪地方労働委員会労働者側委員をもつとめておられます。  三十三年、三十四年の二年間は中央副執行委員長となられ、三十五年以降四十六年までの十二年間の長きにわたり中央執行委員長をつとめられ、その間、四十一年から四十三年までの三年間は中央労働委員会労働者側委員を、三十五年から四十三年までは全国通運労働組合協議会議長を、また、四十三年から四十八年なくなられる日まで全日本運輸産業労働組合連合会委員長を六期、いずれも連続おつとめになっております。  このことから見ましても、いかに伊部君が同僚に信頼され尊敬されていた方であるかがうかがわれるのであります。  伊部君の人となりは、一言に申せば、責任感の強い、まじめ過ぎるほどまじめな人柄であったと申せましょう。かつて組合で一緒に仕事をした人々も、まじめ一徹で思いやり深い、信頼できるいい指導者だったと、伊部君に対する思い出を絶賛のことばをもって述べております。  また、会社当局の伊部委員長の人格に対する信任は特に厚く、幹部の人々も、組合を愛し会社を愛した人、ほんとうに信頼できる人だった、正義感が強く、正邪をはっきりさせなければやまなかった伊部委員長との交渉では、ときには苦しい場合もあったが、多くの難問題が建設的に解決されていったことは、全く伊部委員長の円満な人格とすぐれた指導力、政治的手腕に負うところが多く、ほんとうに惜しい人をなくしたと嘆いておられます。全く伊部君の高潔な人柄、高邁な識見とすぐれた指導力が、この長期にわたり会社と組合間の問題を円満に解決するとともに、組合及び連合会を微動だにさせず、労働運動を真にそのあるべき方向に導き、組合員のしあわせをつちかってきたものと信ずるものであります。  また、伊部君がいかに思いやり深い人であったかということを示す一つのエピソードとして、伊部君と一緒に中央本部の役員として大阪から東京に単身赴任した友人の留守宅を大阪に出張するたびに訪問、カナリアを入れた鳥かごを贈って家族の人々のさびしさを慰めておられたという話もございます。  こうした伊部君の人となりが、昭和四十六年の参議院議員の選挙に際し、もう三百代言的政治の時代は過ぎた、誠実で清潔な人柄、すぐれた指導力と豊かな説得力を持ち、出たい人より出したい人として推薦され、期待どおり参議院議員の栄冠をかちとられたのであります。  伊部君は、国会においては、運輸委員会、交通安全対策特別委員会の委員として、そして、その間、物価等対策特別委員会委員あるいは公害対策及び環境保全特別委員会理事として活躍なさいました。特に、運輸委員会は伊部君が最も重点を置き活躍された舞台でありまして、長い間に吸収されました知識と経験、それに加えて時間の許す限り各地を歩き、自分の目と耳と足をもって収集されました貴重な資料をもとに、たんねんに掘り下げて問題の所在をきわめるまで勉強を重ねられた上で、伊部君独特の、ときには教えるように、あるいは迫るように質問を続けられました。そのありしの日の姿が、いま眼前にほうふつとして浮かんでまいります。  ほんとうに伊部君の質問には教えられること多く、委員会審議に参加している者をして深く傾聴させ、時のたつのも忘れさせるほど充実した、聞きごたえのあるものでありました。  第七十一回国会の重要法案の一つでありました国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部改正案の審議におきましては、野党質問者のトップに立たれ、七時間余にわたり、さとすがごとく、また迫るがごとく質問を続けられました。委員会終了後、きょうは一日立ったりすわったりしていたせいか少しからだの調子がおかしいと申されましたが、このとき初めて病気の症状を自覚なさったのではないかと思います。  しかし、かようなことがあったにもかかわらず、八月の暑いころ、寸暇を惜しんで地方の実情調査あるいは各地区へのあいさつに出かけておいでになる姿をしばしばお見受けいたしました。  八月の終わりごろ、突然御病気との知らせを受け、日通病院から引き続いて帝京病院にお移りになられたと聞き、驚くと同時に直ちにお見舞いもし、ひたすら御全快の一日も早からんことを祈ったのでありますが、ついに病魔に勝てず長逝されたのであります。  振り返ってみまするに、伊部君は、ほんとうに参議院に最もふさわしい識見と人格をあわせ持った貴重な議員でありました。国会生活わずかに二年余、前途有為の君のごとき人を、この国事多難な重大な時期に失ったことは、参議院のため、ひいては国家のためまことに痛恨のきわみであります。  ここに君の生前の数々の功績をたたえ、君の人となりをしのび、同僚各位とともに衷心から御冥福を祈り、追悼の辞といたします。(拍手)      —————・—————

河野謙三各派に属しない議員議長

○議長(河野謙三君) この際、常任委員長の辞任についておはかりいたします。     内閣委員長      高田 浩運君     地方行政委員長   久次米健太郎君     外務委員長      平島 敏夫君     大蔵委員長      藤田 正明君     文教委員長      永野 鎮雄君     農林水産委員長    亀井 善彰君     商工委員長      佐田 一郎君     運輸委員長      長田 裕二君     予算委員長      大竹平八郎君から、それぞれ常任委員長を辞任いたしたいとの申し出がございました。  いずれも許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河野謙三各派に属しない議員議長

○議長(河野謙三君) 御異議ないと認めます。よって、いずれも許可することに決しました。      —————・—————

河野謙三各派に属しない議員議長

○議長(河野謙三君) つきましては、この際、日程に追加して、  常任委員長の選挙を行ないたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河野謙三各派に属しない議員議長

○議長(河野謙三君) 御異議ないと認めます。

桧垣徳太郎自由民主党

○桧垣徳太郎君 常任委員長の選挙は、その手続を省略し、いずれも議長において指名することの動機を提出いたします。

竹田現照日本社会党

○竹田現照君 私は、ただいまの桧垣君の動議に賛成いたします。

河野謙三各派に属しない議員議長

○議長(河野謙三君) 桧垣君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河野謙三各派に属しない議員議長

○議長(河野謙三君) 御異議ないと認めます。よって、議長は、内閣委員長に寺本広作君を指名いたします。    〔拍手〕  地方行政委員長に久保田藤麿君を指名いたします。    〔拍手〕  外務委員長に伊藤五郎君を指名いたします。    〔拍手〕  大蔵委員長に土屋義彦君を指名いたします。    〔拍手〕  文教委員長に世耕政隆君を指名いたします。    〔拍手〕  農林水産委員長に初村瀧一郎君を指名いたします。    〔拍手〕  商工委員長に剱木亨弘君を指名いたします。    〔拍手〕  運輸委員長に宮崎正雄君を指名いたします。    〔拍手〕  予算委員長に鹿島俊雄君を指名いたします。    〔拍手〕      —————・—————

河野謙三各派に属しない議員議長

○議長(河野謙三君) この際、特別委員会の設置につき、おはかりいたします。  沖繩及び北方問題に関する対策樹立に資するため、委員二十名からなる沖繩及び北方問題に関する特別委員会を、  災害に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため、委員二十名からなる災害対策特別委員会を、  公害及び環境保全に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため、委員二十名からなる公害対策及び環境保全特別委員会を、  交通安全に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため、委員二十名からなる交通安全対策特別委員会を、  当面の物価等に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため、委員二十名からなる物価等対策特別委員会を、  公職選挙法改正に関する調査のため、委員二十名からなる公職選挙法改正に関する特別委員会を、  また、科学技術振興に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため、委員二十名からなる科学技術振興対策特別委員会を、それぞれ設置いたしたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河野謙三各派に属しない議員議長

○議長(河野謙三君) 御異議ないと認めます。  よって、沖繩及び北方問題に関する特別委員会外六特別委員会を設置することに決しました。  本院規則第三十条により、議長は、議席に配付いたしました氏名表のとおり特別委員を指名いたします。    議席に配付した氏名表は左のとおり ○沖縄及び北方問題に関する特別委員会(二十名)       岩動 道行君    稲嶺 一郎君       今泉 正二君    岩本 政一君       金井 元彦君    河口 陽一君       黒住 忠行君    柴立 芳文君       高橋雄之助君    長谷川 仁君       星野 重次君    小野  明君       佐々木静子君    鈴木美枝子君       田  英夫君    松永 忠二君       藤原 房雄君    三木 忠雄君       松下 正寿君    春日 正一君 ○災害対策特別委員(二十名)       伊藤 五郎君    梶木 又三君       久保田藤麿君    古賀雷四郎君       佐藤  隆君    柴立 芳文君       高橋雄之助君    寺元 広作君       濱田 幸雄君    八木 一郎君         山本敬三郎君    秋山 長造君       田中  一君    中村 英男君       松本 英一君    宮之原貞光君       上林繁次郎君    宮崎 正義君       藤井 恒男君    星野  力君 ○公害対策及び環境保全特別委員(二十名)       青木 一男君    金井 元彦君       君  健男君    斎藤 寿夫君       菅野 儀作君    田口長治郎君       寺本 広作君    林田悠紀夫君       原 文兵衛君    安井  謙君       渡辺一太郎君    加藤シヅエ君       沢田 政治君    杉原 一雄君       藤田  進君    森中 守義君       内田 善利君    小平 芳平君       高山 恒雄君    沓脱タケ子君 ○交通安全対策特別委員(二十名)       岩本 政一君    岡本  悟君       鬼丸 勝之君    黒住 忠行君       橘  直治君    中村 禎二君       中村 登美君    橋本 繁蔵君       二木 謙吾君    矢野  登君       山崎 竜男君    神沢  浄君       西村 関一君    野々山一三君       森  勝治君    吉田忠三郎君       阿部 憲一君    原田  立君       田渕 哲也君    小笠原貞子君 ○物価等対策特別委員(二十名)       上原 正吉君    小笠 公韶君       亀井 善彰君    川野辺 静君       佐田 一郎君    志村 愛子君       嶋崎  均君    玉置 猛夫君       塚田十一郎君    西村 尚治君       山下 春江君    小柳  勇君       竹田 四郎君    中村 波男君       村田 秀三君    和田 静夫君       柏原 ヤス君    田代富士男君       中沢伊登子君    須藤 五郎君 ○公職選挙法改正に関する特別委員(二十名)       植竹 春彦君    大竹平八郎君       木内 四郎君    熊谷太三郎君       小林 国司君    後藤 義隆君       佐藤 一郎君    橘  直治君       永野 鎮雄君    宮崎 正雄君       渡辺一太郎君   茜ケ久保重光君       占部 秀男君    戸田 菊雄君       林  虎雄君    松本 賢一君       多田 省吾君    中尾 辰義君       村尾 重雄君    岩間 正男君 ○科学技術振興対策特別委員(二十名)       江藤  智君    大谷藤之助君       大森 久司君    剱木 亨弘君       源田  実君    斎藤 十朗君       中山 太郎君    永野 鎮雄君       鍋島 直紹君    西田 信一君       船田  譲君    上田  哲君       大橋 和孝君    辻  一彦君       成瀬 幡治君    森 元治郎君       渋谷 邦彦君    矢追 秀彦君       中村 利次君    加藤  進君      —————・—————

河野謙三各派に属しない議員議長

○議長(河野謙三君) これにて休憩いたします。    午前十時二十分休憩      —————・—————    午後二時四十九分開議

河野謙三各派に属しない議員議長

○議長(河野謙三君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。  この際、国家公務員等の任命に関する件についておはかりいたします。  内閣から、検査官に知野虎雄君を、  原子力委員会委員に稲葉秀三君を、  公正取引委員会委員に橋本徳男君を、  国家公安委員会委員に田實渉君を、  社会保険審査会委員に岩城榮一君を、  運輸審議会委員に山田明吉君を、  地方財政審議会委員に岡本茂君、高橋長太郎君、降矢敬義君、堀部清君、吉岡惠一君を任命したことについて、それぞれ本院の承認または同意を求めてまいりました。  まず、検査官の任命について採決をいたします。  内閣申し出のとおり、これを承認することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕

河野謙三各派に属しない議員議長

○議長(河野謙三君) 総員起立と認めます。よって、全会一致をもってこれを承認することに決しました。      —————・—————

河野謙三各派に属しない議員議長

○議長(河野謙三君) 次に、原子力委員会委員、国家公安委員会委員、運輸審議会委員及び地方財政審議会委員のうち、岡本茂君、吉岡惠一君の任命について採決をいたします。  内閣申し出のとおり、いずれも承認または同意することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕

河野謙三各派に属しない議員議長

○議長(河野謙三君) 過半数と認めます。よって、いずれも承認または同意することに決しました。      —————・—————

河野謙三各派に属しない議員議長

○議長(河野謙三君) 次に、公正取引委員会委員、社会保険審査会委員及び地方財政審議会委員のうち、高橋長太郎君、降矢敬義君、堀部清君の任命について採決をいたします。  内閣申し出のとおり、いずれも承認または同意することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕

河野謙三各派に属しない議員議長

○議長(河野謙三君) 総員起立と認めます。よって、全会一致をもっていずれも承認または同意することに決しました。      —————・—————

河野謙三各派に属しない議員議長

○議長(河野謙三君)日程第二 国務大臣の演説に関する件  内閣総理大臣から所信に関し、大蔵大臣から昭和四十八年度補正予算等に関し、それぞれ発言を求められております。これより順次発言を許します。田中内閣総理大臣。    〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕

田中角榮自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(田中角榮君) 第七十二回国会が開かれるにあたり、当面緊急を要する請問題について所信の一端を申し述べます。  中東戦争を契機とする石油の生産と供給の制限は、世界各国に対して大きな影響を与えております。なかんずく、エネルギーの大半を海外の石油に依存しておるわが国産業経済に与える影響は大きく、国民生活の安定向上を妨げることのないよう緊急な施策を必要とする事態を迎えておるのであります。  政府は、この事態に対応するため、十一月十六日、内閣に緊急石油対策推進本部を設置し、石油緊急措置を取りまとめ、率先して石油、電力等の消費節約につとめるとともに、産業に対してもその節減を要請し、強力な行政指導を実施しております。また、広く一般国民に対しても、不要不急のエネルギー消費に対する自粛を求めておるのであります。  石油消費の抑制により、諸製品が減産を余儀なくされ、その結果、供給不足を招き、物価は必然的に上昇するという推論が一部でなされております。そして、それがまた物価値上がりの誘因ともなっております。しかし、生活必需品については、生産段階にも、流通経路にも相当量の在庫が存在しており、一部商品については、すでに在庫の放出を行なってまいりました。また、総需要の抑制をはかる一方、国民生活の安定に必要な部門については電力等のエネルギーを優先的に供給いたしますので、買い占め、売り惜しみのごとき風潮を生まない限り、需給の安定は十分確保できると考えております。わが国は、現在、国民総生産の約一〇%を輸出しており、供給力にも余裕があります。しかも、石油事情について長期的見通しを立て得るまでの暫定期間について、生活必需品の緊急輸入等を行なうのに必要な外貨も十分保有しておるのであります。  しかしながら、たとえどのような事態が生じても、国民経済の混乱を未然に防止し、必要物資の安定的供給を確保するためには、最小限の法的措置が必要であります。このため、物資の需給、価格の調整等に関する緊急措置を規定した国民生活安定緊急措置法案を今国会に提出いたします。また、事態の推移に応じて、石油の消費節減及び配分の適正化を機動的かつ効果的に実施できるよう、緊急時における指導、規制措置を定めた石油需給適正化法案も今国会に提出いたします。これらの運用にあたつては、特に分配や負担の公正を期するとともに、異常な価格の上昇、買いだめ、売り惜しみ等による不当利得を得る者が生じないよう万全を期してまいりたいと考えます。  世界のすべての国にとって、有限な資源を福祉の向上と繁栄のためにいかに有効に開発し、利用するかは、次第に深刻な問題となってきております。資源を海外に大きく依存しておるわが国の実情にかんがみ、私は、かねてからその安定的供給の確保と供給先の多元化の必要性を痛感し、これまでも資源保有諸国からの供給確保に努力を重ねてまいりました。私は、内閣を組織して以来、欧米、ソ連各国首脳との会談を通じて、資源の共同開発、安定供給について積極的に話し合いを行なってまいりました。資源問題は、わが国外交の重要な一つの要素であります。外交は、もとよりわが国益に立脚すべきものでありますが、同時に、関係国の立場を十分理解する互恵の精神と世界の平和と繁栄に貢献する精神に基づいて行なわなければなりません。かかる精神を基調として、先般、豪州首脳と資源開発につき会談をいたしました。また、来春早々の東南アジア諸国訪問にあたっても、これら諸国との長期にわたる友好親善を深め、各国の国づくりに貢献しつつ、資源の共同開発や備蓄を行なうことなどについても、各国首脳と会談し相互の理解を深めたいと考えておるのであります。  中東問題に関して、政府は十一月二十二日にその態度を明らかにいたしましたが、これは、中東の恒久的平和の確保が世界の平和と繁栄にとり重要であるとの基本認識に立って、この平和の実現に寄与しようとの意図に出たものであります。また、中東諸国との関係を一そう緊密化するため、近く政府の特使を派遣する等、着実な外交努力の積み重ねをはかってまいります。  物価の安定は、当面する最重要課題であります。比較的安定的に推移してきた卸売り物価は昨年秋以降高騰し、また、消費者物価も本年初めから上昇を続けております。これは、第一に、ドル不安に端を発した国際物価の値上がり、輸入原材料価格の高騰に加え、ここ二、三年来の世界的な不作により農産品の価格が高騰したこと。第二に、外貨準備の急増に伴う外国為替資金特別会計の大幅払い超に加え、国際収支の不均衡是正のため、輸出から内需への転換をはかる観点から金融緩和策がとられ、これらの結果として企業に過剰流動性が生じたこと。第三に、本年度五十兆円をこえる賃金給与所得によって消費購買力が充実し、個人消費が拡大したこと、などの要因が複合して生じたものであります。その上、今次の原油の供給制限と輸入価格の上昇が、物価問題の解決を一そう困難なものにしようとしております。政府は、これらの要因を総合的に把握、分析し、有効適切な物価対策に総力を結集いたします。  物価騰貴を抑制するためには、総需要の抑制をはかることが基本であります。これまで累次にわたる物価安定対策を講じ、財政執行の繰り延べ、金融引き締めの強化等を行なうとともに、民間設備投資及び大規模な民間建築の抑制、消費者信用の調整等の措置を実施してまいりました。これらの措置は、その効果が末端まで浸透し、物価動向に好影響を与えるまで堅持することはもとより、石油情勢の進展など今後の事態の推移に応じて、さらに強化する考えであります。来年度予算の編成にあたっても、景気や物価の動向に十分配慮し、慎重に対処してまいります。また、個人貯蓄の増強をはかるため、利子非課税制度の拡大を含む貯蓄優遇策を実施する考えであります。  総需要の抑制と並んで、個別物資の需給関係の調整もきわめて重要であります。政府は、需給逼迫の著しい建設資材、品薄となった生活必需物資について、関係業界に緊急増産や出荷指導を実施するなど機動的な調整措置を講じております。また、生活関連物資の買い占め及び売り惜しみに対する緊急措置に関する法律に基づき、灯油、ガソリン、紙など、国民生活に関係の深い物資を特定物資として指定し、投機的取引の防止につとめておりますが、この際、同法を改正し、特定物資の範囲の拡大、売り渡し命令の創設等規制措置の強化をはかる考えであります。  物価騰貴の最大の弊害は、所得及び資産の不公平な分配をもたらすことであります。政府は、先般、厚生年金、国民年金等の給付水準の実質価値を維持するため、物価スライド制を導入するとともに、物価動向等を勘案して生活保護の基準及び社会福祉施設に入所している老人、児童等の生活費の引き上げなどの措置を講じました。今後とも、経済的に弱い立場にある人々のために社会保障給付の改善など、きめこまかい施策を講じてまいります。  土地問題の解決も緊急の課題であります。政府は、すでに法人の土地譲渡益に対する課税の強化、特別土地保有税の新設、三大都市圏の市街化区域内農地の宅地並み課税の実施等を行なうとともに、土地取得に関する金融の抑制、都市緑地保全法の制定等による土地利用規制の強化など土地問題の解決に鋭意取り組んでおります。しかしながら、現下の地価上昇の原因は基本的には宅地需給の不均衡にあり、供給の増大なしには、地価の抑制は不可能なのであります。将来における国土利用の全体的な展望のもとに全国的に土地利用計画を確立し、これに即して公共優先の立場から土地の所有、利用の両面にわたって規制、誘導を強化し、投機と乱開発を排除しつつ、国土の総合的な開発、利用を進めるとき、宅地の確保と地価抑制は可能となるのであります。国土総合開発法案は、このような観点から提案したものであり、地価凍結を含む土地対策の基本法的性格を有するものであります。  政府は、人事院勧告に基づく公務員給与の改善、生産者米価の引き上げに伴う食糧管理特別会計繰り入れ等、当面財政措置を必要とする諸案件につき、所要の補正予算及び法律案を今国会に提出いたします。  わが国は、これまで、豊富で安価な石油エネルギーを使えるという利点を最大限に生かして、生産の増強と雇用の拡大を達成してまいりました。しかし、今日の事態は、資源の制約の中で新しい豊かさを追求するといういまだかつて経験したことのない試練に当面しておるのであります。これは、経済的にも社会的にも、わが国にとって一つの歴史的転換期とも言えるのであります。  この際、創造力と適応力に富む国民の総力を結集して、産業活動においては省資源、省エネルギーへの構造的対応をなし遂げ、国民生活においては生活感覚を転換させて、資源の浪費を排し、「節約は美徳」の価値観を定着させていかなければなりません。さらに、原子力の開発、水力発電の見直し、石炭その他国内資源の活用、太陽エネルギー、水素エネルギー等の無公害の新エネルギーの開発を推進し、エネルギー源の多様化につとめることが必要であり、かつ、それをなし遂げ得ると信じます。  政府は、全力をあげて国民経済の混乱を未然に防ぎ、国民生活の安定を確保するため、内政、外交のあらゆる面にわたり、冷静な判断と敏速果断な行動をもって対応し、この転換期を乗り切る決意であります。  しかし、いかなる政策も、国民の理解と支持がなければその効果をあげることはできません。国民各位も、当面する事態を冷静に受けとめ、高次の社会連帯感のもとに一人一人が慎重に対処し、福祉社会の実現という共通の目標に向かって協力されるよう期待してやみません。(拍手)     —————————————

河野謙三各派に属しない議員議長

○議長(河野謙三君) 福田大蔵大臣。    〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕

福田赳夫自由民主党大蔵大臣

○国務大臣(福田赳夫君) ここに、昭和四十八年度補正予算を提出するにあたりまして、わが国当面の経済勢情と財政金融政策について所信の一端を申し述べますとともに、補正予算の大綱を御説明いたします。  これまでのわが国経済は、国民のたゆまざる努力によりまして、世界に例を見ないほどの高い成長を達成し、その過程におきまして国民の生活水準も格段に向上し、国際社会におけるわが国の地位もとみに重要性を加えてまいりました。  しかしながら、近年、国際経済社会において無視することができなくなってきておりますのは資源不足の問題であり、これは資源の海外依存度がきわめて高いわが国経済にとって特に重要な意味を持つものと存じます。すなわち、国内供給力を拡大する上でも、また、諸外国との協調を維持する上でも、従来のような高い成長の持続を困難とする新しい局面を迎えておると存ずるのであります。  今後の経済政策の運営にあたりましては、物価の安定、国際収支の均衡維持に加え、資源及び環境面からの制約に十分配慮しつつ、適正な成長を維持していくという基本的姿勢が肝要であると存じます。  私は、現下の経済情勢に照らし、いまや、物価問題の解決こそは、すべてに優先して取り上げられるべき政策課題であり、これに全力を傾注してまいらなければならないと存じます。物価の安定は、経済的にも精神的にも安定した国民生活の基盤となるものであり、豊かな福祉社会実現のための不可欠の前提であります。御承知のとおり、わが国の物価は、昨年秋以降、強い騰勢を続けてまいりました。このたびの物価上昇は、海外における物価高騰の影響など多くの要因に基づくものでありますが、何よりも国内需要の急速な拡大によるものと考えられます。このような物価動向に対処するため、政府は、年初来、財政金融政策をはじめとする各般の施策を講じてきたところであり、これら諸施策の効果は漸次浸透しつつありますが、物価の上昇基調にはなお根強いものがあるのであります。  このような情勢のもとにおきまして、今般、アラブ産油国による石油の生産及び供給制限の問題が生じたのであります。この新たな事態の発生は、国民経済及び国民生活に大きな影響を及ぼすことが予想され、諸般の緊急施策をも必要とするに至っておるのであります。  私は、わが国の経済が供給力の制約という新たな事態に直面している現状におきまして、需給の均衡を確保するためには、総需要の抑制をはかることが最も肝要であると考えております。このような観点から、財政金融政策につきましては、一そう抑制的な運営につとめてまいらなければならないと存じます。また、国民各位が、堅実な消費態度を保ち、将来の生活設計を立てることができますよう、政府といたしましても貯蓄の推進に一段と配意してまいりたいと存じます。  次に、今回提出にかかる昭和四十八年度補正予算(第一号、特第一号及び機第一号)の大綱につき、御説明いたします。  以上申し述べましたようなわが国経済の現状に顧み、今回の補正予算は、歳出に追加する経費を特に緊要にしてやむを得ない事項にしぼるとともに、その内容におきましても経済に対する影響を最小限にとどめるよう配意し、さらに、租税及び印紙収入の増加のうち、財源に充当した残額はあげて公債発行の減額に充てるなど、節度ある財政運営に徹することを基本として編成いたしました。  すなわち、一般会計歳出予算におきましては、国家公務員の給与改善、米の政府買い入れ価格の引き上げ等に伴う食糧管理特別会計への繰り入れの追加、生活保護基準等の引き上げ、所得税等の増収に伴う地方交付税交付金の追加等に要する経費を計上することにいたしました。  これらの歳出の追加に要する財源といたしましては、既定経費の節減、予備費の減額を行なうとともに、歳入予算におきましては、租税及び印紙収入の増加等を計上したほか、公債発行額につきましては五千三百億円の減額を行なうことといたしておるのであります。  以上の結果、昭和四十八年度一般会計予算の総額は、歳入歳出とも九千八百八十六億円増加し、十五兆二千七百二十六億円となります。  また、特別会計及び政府関係機関につきまして所要の予算補正を行なうとともに、財政投融資につきましても追加措置を講ずることといたしております。  以上、わが国当面の経済情勢及び財政金融政策について申し述べ、補正予算の大綱について御説明いたしました。  わが国は、国民の創意と活力によりまして、これまで幾多の困難を克服し、偉大な経済の発展をなし遂げてまいったのであります。この偉大な経済力をもっていたしますれば、公害、過密・過疎、住宅、社会保障など、現在わが国が直面しておる諸問題を解決し、誇るべき福祉社会を建設することは、十分可能であると信じます。わが国の将来に対しましては、明るい展望を持つことができると信じておるのであります。  しかしながら、当面最も緊急に対処すべき問題は、物価の上昇と石油問題であります。わが国経済の将来への展望の足がかりを築くためには、何よりも、まずこの二つの問題を解決することが必要であり、国民の政府に対する期待もまさにこの点にあるものと存じます。  この期待にこたえることこそ政府に課せられた責任であります。この責任を果たすため、政府は率先して有効適切な施策を果敢に実行してまいります。私は、最善を尽くし、もってこの難局を乗り切る決意であります。  国民各位の深い御理解と御協力を切望してやみません。(拍手)

河野謙三各派に属しない議員議長

○議長(河野謙三君) ただいまの演説に対し質疑の通告がございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河野謙三各派に属しない議員議長

○議長(河野謙三君) 御異議ないと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時十六分散会

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