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72回国会衆議院1974/04/24

法務委員会 第26号

発言数
82
登壇者
10
会派数
3
開催日
1974/04/24

会議録

小平久雄自由民主党

○小平委員長 これより会議を開きます。  法務行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 刑事局長がまだお見えになっていないようですから、質問の順序をちょっと変えましょう。  矯正局の関係から先にやりましょう。  この前、去年の十月に名古屋関係を中心として、いろいろ法務委員会で調査に行ったわけですが、そのときに名古屋の矯正管区から提出資料が出ているわけです。いろいろ書いてありますが、運営方針の中に、三として保安警備の充実ということをあげておるわけですが、これは当然のことだと思いますが、この中で、職員については、新旧交代の時期にあたり、新採用職員と中高年齢層の職員との間に断層があって、双方から惹起する問題が交錯している、こういうことが書いてあるわけなんですね。この具体的な意味というか、内容はどういうことなのか、ひとつお聞かせを願いたい、こう思うわけですが。

長島敦法務省矯正局長

○長島政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘の内容は、実は私初めて承知いたしましたので、存じておりませんが、抽象的に私の推察いたしますところによりますと、そこに書いてございますように、高年齢層と申しますか長年矯正の職場におります職員につきましては、どういたしましても従来からやっておりました処遇の方針と申しますか、やり方ということになれておりますし、新しい思想と申しますか、処遇というものになかなかすみやかに順応しがたいというような点があろうかと思います。一方、若い職員は新しい勉強等もいろいろしておりますし、新しい処遇という理念も持って入ってまいります。したがいまして、そこの間に新旧の考え方の違いといいますか、順応していく速度の違いと申しますか、そういうような点からいろいろな考え方の違いが出てくるということが想像されるわけでございます。  そういう問題を解決いたしますために、現在各現場でやっておりますのは職務研究会というようなことを開きまして、新旧職員等が相互に見解を披瀝し合ってディスカッションをする、そういうことで日常の業務をどういうふうに直していくかという合意といいますか、コンセンサスを得るというような努力を続けてきておるわけでございます。  詳細名古屋管内でどういう問題があるのか、私存じませんが、一般的に考えましてさような問題であろうかというふうに考えております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 これは前にこういう資料があるからということを私は注意したように思うのですが、あなたのところまで行っていなかったのかもわかりませんし、質問の通告のときにここまであるいは言わなかったのかもわかりませんが、意識的にはずした意味じゃなくて、その点で私のほうが足らなかったのかもわからないのですが、これは新旧の職員の間でいろいろな考え方の違いがあるというのは、収容者に対する処遇の問題を中心として、そこでのいろいろな違い方があらわれてきておるのじゃないですか。そこのところのもう少し具体的な何か、どういうように違うのか、新しい職員、若い職員と、古い、刑務所の看守を長くやっていた人との間で収容者に対する考え方、処遇のやり方、現在の矯正、これの違いですね、どういうところに考え方が違っているのか、そこはどういうことなんでしょうか。

長島敦法務省矯正局長

○長島政府委員 これもたいへん一般的なお答えになって恐縮でございますけれども、おそらく私の想像いたしますところでは、どちらかといいますと、古い型の職員といいますのは伝統的に保安といいますか、事故が起こらないようにという点に非常に重点を置いておったと思います。新しい職員となりますと、研修所の新しい教育とかいろいろなものを受けておりますから、新しいいろいろな処遇の技術といいますか、方法等を学んできておりまして、そういうものを実現したいというような希望も大きいと思います。おそらく起こってまいります問題は、一気に新しいほうへ持っていくというわけにもまいりませんし、そうかといって古いままではいけないという、そこのバランスを徐々にとりながら新しい方向へ向かうという、そこのバランスのとり方について、やはり古い人と新しい人との間に違いが出てくるのじゃないか。そこら辺は所長がそれぞれの刑務所の実情を見まして、それに適したようにうまく処遇を改革していくということが必要だと思っておりますし、さような指導もしておるわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 その新しい人、いわゆる新しい考え方というのは具体的にはどういう理念に基づくというか、考え方で一いろいろな研修所みたいなものがあるわけでしょう。そこではどういうふうなことを中心にして教えているわけですか。ということは、古い刑務所の看守の人たちは、収容者というのですか、そういう人たちに対する考え方が、いわば対象的にものを見るというか、ところが新しい人はそういう面ももちろんなきにしもあらず、あるわけですけれども、むしろ人権を尊重していきたいというような考え方をとっておるわけでしょう。だから具体的に、新しい人、新しい考え方というものばどういう考え方で、それをどうやって実現をしていくのかということですね。新しいから何でもいいという意味じゃありませんけれども、そこら辺のところがどうも何だかはっきりしないのですよ。これが一つと、それから結局新しい職員と古い職員との間で、これは収容者に対する処遇の問題とは別ですけれども、保安関係では、勤務条件をめぐって非常に考え方の違いがあるといいますか、たとえば夜の勤務は非常に多いわけでしょう。いままでの場合はどういうふうになっておるのですか。場所によって非常に違いますね。三日間ぐらいやって一日夜の勤務がある場合もあるし、一日おきくらいのところもあるし、そこら辺のところで新しい人がこんなではかなわないとかいって、いろいろなことを言い出したり何かするのじゃないですか。これはいまの問題と少し違うかもしれませんけれども、それにからんで、ことに保安関係の職員の夜間勤務の問題、これをどういうふうにやっていくかということですね。

長島敦法務省矯正局長

○長島政府委員 最初に、第一点でございますけれども、この従来の古い職員も、多くの職員は対象者と申しますか、収容者に対して非常に愛情を持ってやってきたわけだと思います。ただ違いますのは、何と申しましても施設内の保安と申しますか、社会に迷惑をかけてはいけないという意味での保安に対する責任感というのは非常に強いと思います。新しい人たちは、それはそれといたしまして、もちろんそれは必要なことでございますけれども、その上にさらに新しい処遇を導入したいということだと思います。そこでこれを調和してまいります方法としてただいま指導しておりますのは、刑務所の分類というものをもっと徹底させることだ。たとえば暴力団のようなものとか非常に危険な収容者に対しましてはやはりある程度きびしい処遇が必要でございますけれども、一方初犯の受刑者等につきましてはもっと処遇中心のものに進めていいのじゃないかということで、分類に基づく処遇ということをもっと推進していけばそこの解決策が出てくるというふうに考えておるわけでございます。  第二点の勤務条件でございますが、確かに職員の勤務それ自体の問題が、やはり古い職員と新しい職員で受け方が違うと存じます。古い職員は何と申しましてもほんとうに一生懸命やると申しますか、そういうことを苦しくともがまんをしてやっていくという精神がございますけれども、やはり新しい職員になりますと合理的な待遇をしてもらいたいというのは当然のことだと存じます。  そこで先ほど御指摘の夜間勤務の問題でございますが、昨年保安関係の刑務所の勤務職員、保安職員の勤務時間が五十一時間から四十八時間に短縮になりました。その機会にこの夜間勤務の体制を全面的に再検討いたしまして、ただいまは三部制と称しておりますけれども、三組が交代で勤務につくことになっております。その結果といたしまして、昼夜勤と申しまして二十四時間勤務をやりますと、その翌日は休みになりまして、三日目に昼間だけ勤務するあるいは場合によりますと、土曜日に当たりますと半日だけ勤務いたします。場合によりますとそこに休暇を入れます。ということで三日目はやりまして、四日目にまた昼夜勤に入るということで、三日に一回昼夜勤が来るという体制に直したわけでございます。現状ではほとんどの庁がその三部制という制度に乗りかえてやっておるわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 それから刑務所のいわゆる格づけがありますね。部制があるでしょう。それは全面的に再検討して直したわけですか。たとえば千葉や浦和の場合、あれは六部ですか、部が多いのでしょう。それからほかのところでは部が非常に少ないというあれがありますね。それに伴って一番大きな影響を受けるのはお医者さんでしょう。それに伴ってお医者さんの数が変わってくるのじゃないですか。そこはどういうふうになっていますか。

長島敦法務省矯正局長

○長島政府委員 刑務所の組織、機構につきましては、まだただいま検討を進めておりまして、従来のをまだ変えておりません。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 それは従来の格づけがあるのに、収容者の数の変化があって、非常に近ごろふえてきたところと、格が上だけれども数が減ってきているところ、こうあるわけですね。そこら辺を再検討して部制をしいて、部の数が何か違うのじゃないですか。それに伴って一番大きな問題は、お医者さんの数が、医務課みたいな独立しているところと独立してないところがあるのじゃないですか。それでお医者さんの数が非常に足りないところがあるというわけですが、それはきょうの問題ではなくてまたこまかく別のときにやりたい、こう思うのです。  そこで待遇の問題で、大臣は、刑務所に入ってたとえば二十五年つとめているでしょう、幾らぐらい月給をもらっているというふうに思っておられますか。大体の想像でいいです。では矯正局長でいいです。

長島敦法務省矯正局長

○長島政府委員 そのくらいつとめておりますと、いま一番下の看守さんも主任看守ということに大体なっておりますので、六等級になってまいります。そういう意味で大体十万から十二万程度のところまでいっておると思います。月給十万円から十二、三万というところだと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 いまのは二十五年つとめて看守部長になった場合でしょう。

長島敦法務省矯正局長

○長島政府委員 主任看守と申しますか、看守のままでも、待遇が、主任看守という名称をもらいまして、そうなりますと六等級まで上がれるわけでございますので、そうなりますと六等級の一番高いところが十三万五千円でございますか、ということで、一番高ければそこら辺までいける。平均としては十万ないし十三万程度の間であろうというふうに思っております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 大臣、それはこまかいことかもしれませんけれども、大体看守を二十五年やって幾らぐらい給料をもらえるのか、ぼくもよくわからなかったのでいろいろ聞いてみたのです。  そこで問題になってくるのは、刑務所の看守の人のあれは、公安職になって、普通よりもよくなってはいるわけですか。よくなっているのだと思いますが、そこで問題はこういうことです。これはほかへ差しさわりがあるというのであまり数字を明らかにしていない、法務省も出さないし、最高裁判所も出さないのですが、こういうことでしょう。一般職をとるか公安職をとるかというときにいろいろ議論があったのだけれども、法務省関係では公安職のほうがいいだろうということで、全部が公安職ではありませんけれども公安職の給与表をとったわけでしょう。そうすると普通よりはちょっといいかもわからぬけれども、裁判所関係が一般職でありながら、今度は全部が全部ではありませんがそれに調整手当がうんとつくわけでしょう。二四つく場合が多いのですか、一八の場合もあるけれども、いろいろつきますね。それを計算していくと、現実には裁判所関係、ことに書記官と登記所の場合の法務事務官、あるいは刑務所の看守、これらの人の給与というものが出発点では同じだったのですよ。むしろ法務省関係がよかったのだけれども、だんだん進んでいくに従って、いまの段階では、片一方は調整があります、大きな調整があるし、管理職手当がつく関係もあるかもわかりませんが、そういう関係で差が出てきちゃっているということが現実にはあらわれているのではないのですか。ただ、そこら辺のところは数字を出すと恨まれるか何か知らぬけれども、そういうことで出さないらしいのだが、それはどうなんですか。

長島敦法務省矯正局長

○長島政府委員 御承知のように、刑務所の職員につきましては警察官と同じに公安職(一)という俸給表でございます。この場合は、一般職の俸給表に比べまして初任給の段階で一三%高くなっております。この額は、御指摘のように一般職のほうも次第に優遇されてきておりますので、差が縮まるというような現象も一時ございましたが、先般の人事院の勧告で非常にまた格差をつけていただいたということでございまして、一三%という格差になりますと、かなりの差があるというふうに考えております。少年院につきましては、公安職(二)俸給表で、比率が刑務所よりやや劣っておりますが、この場合も一般職に比べまして一一%程度高くなっておるということでございまして、矯正関係につきましてはただいま御指摘のように一般職並みということではなくて、やはり格差を相当見ていただいておるというふうに考えております。ほかの点につきましては、あるいは人事課長から申し上げることかと存じます。

前田宏法務大臣官房人事課長

○前田説明員 稲葉委員のいまの御質問の中で、裁判所書記官と検察事務官との差の問題をおそらく御指摘になったのだと思いますが、これはいま稲葉委員もおっしゃいましたように、なかなか比較がむずかしい点がございます。一例を申しますと、裁判所書記官は裁判所事務官を含めました裁判所の一般職員の中で、大体四〇・八%くらいを占めておるわけでございますが、公安(二)の俸給表の適用を受けます検察事務官のほうは、検察庁の一般職員の中で八二・二%くらいを占めておるというような問題がまずございます。それから、裁判所の書記官と検察事務官とでは、任用資格でありますとかあるいは権限等も、稲葉委員御存じのとおり相当異なる点もございますわけで、なかなか両者を同じレベルで比較することが困難なわけでございます。  一応一般的に申し上げますと、行(一)の俸給表を基礎にして比較いたしますと、裁判所書記官には御指摘のとおり調整額として二八%の加算がございますが、一方検察事務官につきましては、ただいまもお話が出ましたように、公安職(二)の俸給表の適用によりまして、行(一)の俸給表の適用職員よりも大体一一%程度の優位性があるわけでございます。さらにそのほかに、検察事務官につきましては検察事務官の事務取り扱いという制度がございますわけですが、その場合にはさらに公安職の(二)の俸給表による俸給の調整額といたしまして、四%が加算されるというようなことに相なるわけでございますので、そういう場合には行(一)の俸給表による俸給に一六%近い額が加算されるというような計算になるわけでございまして、そういう点を考えますと、おおむね同様ではないかというふうにも考えられるわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 比較はなかなかむずかしいわけですね。なぜむずかしいかといえば、裁判所でも書記官と事務官と待遇はずいぶん違いますし、そこに調整手当がつく。ことに、課長になった場合にそれにプラス管理職手当がつく。調整手当は減ってきても管理職手当がつくから、およそ二四%くらいになるのじゃないですか。そういうような関係もあるし、法務省の中でも、事務官の中でいろいろな種類がある。いま言ったようにいわゆる検取りというのがあるわけですから、いろいろなものがあって、一がいに平均的に比較はできないけれども、出発点では法務省関係は公安職のほうをとったほうがいいというふうに実際には判断したのじゃないですか。ところが、調整の関係その他が出てきたので、いまではむしろ一般職で調整をもらったほうがよかったのじゃないかというふうな議論が内部には出てきておるのじゃないですか。こまかいことになるかもわかりませんけれども……。  それから勤務なども、ことに法務局の関係だと、五時なら五時に終わって帰れないわけです。いまは三時ごろ終わってしまうのですか、実際はどうなっておるのかわからないが、三時か三時半に終わってしまって、新しく受け付けないわけでしょう。だれかが行って、五時まで勤務時間だから、それを受け付けなければいけないのだ、受け付けないのは公務員の職権乱用だといって、何か現行犯逮捕するとかなんとかいって騒いだことがあるでしょう。変わった司法書士か何かやったのがありましたけれども、それは別として、五時なら五時に終わったってあとの始末をしなければならない。そのあと始末をすることについては超過勤務はもらえない、こういう形になってきておって、いろいろ問題があるし、いま実態なかなか複雑ですから、平面的な調査ではいけないと思いますので、大臣、実態をよく調べていただいて、法務局関係あるいは矯正局関係の職員の待遇というようなことについて十分今後お骨折りをいただきたい、こういうわけです。これについてお答え願えれば……。

中村梅吉自由民主党法務大臣

○中村国務大臣 お説のとおりたいへん込み入っておるようでございますが、この点につきましては、専門的に担当しておる人事課を中心によく研究をさせたいと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 そこで、矯正関係で一つの大きな問題は監獄法の改正の問題です。私どもが聞いておったのは、監獄法の改正で基本の問題は、刑の一本化の問題です。懲役と禁錮の一本化、これが、刑法の改正ができないときまらないから監獄法の改正もそのあとなんだということも一時ちょっと言われたような記憶があるのですが、それはそれとして、今度は刑法の改正でも二本立てで行くわけでしょう。だから、それはそれとして、具体的な問題として、現在の監獄法が処遇の中で現実に憲法に違反しておるといって下級審でずいぶん判決が出ておりますね。いろいろな判決があります。最高裁にはまだ出てないかもわかりませんけれども、そういうこともあって、現実にたとえば文書をべたべたにわからないようにしてしまうとか新聞なども見えないようにしてしまうとか、それからラジオは、全部は聞かせないのですか、しかしこのごろ聞かせておりますね。いろいろなのがあります。ことに未決の場合は、有罪判決があるまでは無罪の推定を受けるといっておるわけですから、未決の場合を一体どういうふうな処遇をしていくのが正しいのかということが非常に大きな問題だと思いますね。いまは全く刑務所の収容者と違うけれども、そんなに違わないような待遇でしょう。そこで拘置所の収容者に対して、いままで憲法に違反するといっていろいろ判決が出たでしょう。これはこまかい点はいいのですが、大ざっぱに出たのがあるでしょう。そこまで通告してなかったからあれですけれども、その点、どういうふうなものが出ておって、それに伴って、監獄法は改正にならないけれども、実際の運用面でどういう点を解決していっておるのか、これをわかっている範囲でお聞かせ願いたい、こう思います。

長島敦法務省矯正局長

○長島政府委員 判例の点でございますが、最高裁に参りましたのはほとんどないと思いますが、高等裁判所あるいは地方裁判所ではかなり出ております。二、三ございますが、特に判例の中で国側が敗訴いたしました事案は、主として図書等の閲読の問題でございまして、一つの例は、たとえばうちの朝倉参事官が書きました監獄法の注釈の本が出ておりますが、これの購読及び閲読でございますが、それを願い出たのを不許可にしたというのに対しまして、裁判所の判断としまして、そういうのは不許可にしてはならぬ、違法だという判決が高裁で出ております。不許可処分にいたしました施設側の考え方は、当該本人が何と申しますか訴訟をしょっちゅう起こす、不服を申し立てるということが常習的な人であったものですから、そういう注釈書などを渡しますと、それを読んでいろいろ勉強をして、ますます訴訟を起こすであろうということが一つの理由で、どうも施設の管理上困るじゃないかということだったのでありますけれども、そういう理由ではいけない、そのことによって施設の運営が非常に困難になるという相当の蓋然性が認められる場合でなければならないというような趣旨の判決があったわけでございます。そういう趣旨にもかんがみまして、私どものほうで従来の通達を改正いたしまして、昨年でございましたか、その判決の趣旨と同じような趣旨の通達に直しております。  未決の信書の問題でございますけれども、これについてはまだ直接判決が出ておりません。現在、たしか大阪の地方裁判所か何かに一件そういうケースがかかって審理中だというふうに記憶しておりますが、基本的な考え方といたしましては、先生御指摘になりましたように、未決の場合はまだ刑がきまっておりませんので、できる限り一般の自由人と同じように権利を保障すべきだというふうに考えております。ただ未決の場合には、その未決勾留になっております理由と申しますか、罪証隠滅を防止するとかあるいは逃走を防止するとかいうことに伴います必要な規制はもちろんなければならないと思っております。逃走を防止するということに関連しまして、施設の規律を平穏に保っていく。施設内が非常に乱れてしまうというような、それこそ蓋然性が出てきたというような文書でありますと、そのものをとめるということもあるわけでございます。そのワクを越えなければ制限をしないという方針で指導しておるわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 中の人が別のところの人に出すでしょう。それをべたべたに墨を塗っちゃうわけですね。拘置所に行くと、よく看守の人が新聞に墨を塗っていますね。何で新聞に墨を塗るのですか。新聞にもいろいろあるけれどもね。

長島敦法務省矯正局長

○長島政府委員 具体的な内容は存じませんが、おそらくいま私が申し上げましたような基準によりまして、外部から入ってきます一般の日刊紙等ではほとんど問題ございませんけれども、たとえばある事件で拘置所に入っている当該本人に関する犯罪の記事が出ているというような場合に、本人に対する関係で削除するということがあるいはあろうかと思います。それから、一般の日刊紙でなくて特殊な新聞と申しますか、そういうものの中には、ときによりますと房内でハンストを起こせとかいうような、いろいろ具体的なことをいってくる場合がございまして、そういうのが入りましてハンストを起こされると困るものですから、そういう部分は削除する。それからよく削除をやっておりますのは、ただいま拘置所の中で収容者同士の間で発信することを許しておりますが、その間に収容者同士の中でお互いに一斉にハンストをやろうとかいうような打ち合わせといいますか扇動といいますか、そういうような内容がありますと、これはやはり削らざるを得ないということで削っておるというふうに考えております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 まあいろいろありますけれども、被告同士でいろいろ連絡があって、中からほかの拘置所に入っている人のところへ手紙を出す。速達を出しますね。速達がものすごくかかりますね。いま郵便がおくれているのかもわからぬけれども、ぼくのところに来たのがありますがね、名前は言いません。名前を言えばわかる人の手紙ですが、べたべたに黒く塗ってある。しかもそれが着くのが、速達を出して都内で一月半ぐらいかかるのですね。どこでどういうふうにとまっていたのかよくわかりませんけれども、これはやはり問題じゃないかと思います。これは現物もありますけれども、別の機会にしましょう。  そこでもう一つ、刑務所の看守の人に会っていろいろ聞きますと、一番心にかけているのは子供のことですよね。子供はどうしてもいい大学へ上げたいというわけだ。芥川のことばにあるでしょう。おれは失敗した、だけれども自分の子供だけはと、世の親は繰り返して言う。よけいなことですけれどもね。だから、子供だけは何とかいい大学に上げたいといって一生懸命になっているわけですよ。そうでしょう。それで無理して大学に上げているんだね。そういう人がずいぶん多いですよ。これはやはりそういう面を切実に味わっているわけですね。ところが、矯正関係の共済組合の寮があるでしょう、学生寮みたいなのが。それは何か途中で建築をやめちゃったんですか。だいぶ前の話だけれども。あれは杉並だっけ、中野だっけ、何か非常に小さいものだそうですね。ぼくは一ぺん見に行こうと思っているんですが、もっと大きく増築する予定だったのを、何かそこでけんかがあって、大工さんが殺されたとかなんとかいうことらしいのですが、それから縁起が悪いというので建築するのをやめちゃったとかいう話があるんでしょう。これはどうなんですかね。いまどの程度の規模なの。

長島敦法務省矯正局長

○長島政府委員 ただいま御指摘の点は、中野刑務所の構内に東京学生寮というのがございますが、そのお話だと存じます。建築中にさような事故があったというふうには報告を受けておりますが、それが理由で規模を縮小したかどうか、私はそこまでは存じません。現在の規模で申しますと、定員が八十名の施設と申しますか、あまりりっぱなほうじゃございませんのですが、男子が六十名、女子が二十名ということでございます。これに対しまして、実際にそこに住んでおります学生の数でございますけれども、四十七年は九八%、四十八年は九六%、ことしはただいまのところ九五%という在寮状況でございまして、ここのところ毎年実は一〇〇%になっておらないわけでございます。この理由は、大体募集いたしますのは、子弟が大学を受けましたときに、合格したら入れてくれというので募集をしております。募集時におきましては約二倍近く募集人員が出てまいりますが、終局的に合格しあるいはこの寮へぜひ入りたいという数が減ってまいりまして、ごらんのとおり、結局いま、希望して入りたいといっている者は全員はいれておる、数的にはそういう状況になっております。ただ問題は、男子と女子が同じ寮に入っておりますし、何と申しましてもあまりいい寮でございませんので、本年度さしあたり女子の浴場を増設するようにいたしまして、刑務共済から予算をつけて改築にかかりますが、そういうような状況でございまして、できればもう少しこれを充実したいというふうに希望しておるわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 私の聞いているのでは、入りたい人は一ぱいいるんだけれども、小さくて入れないというのと、それから敷地の関係で、もっと広げれば広げられるんだというのですね。ところがいま言った事故があったでしょう。事故があったから、縁起が悪いとかいって広げないんだという説があるのですがね。まあよく調べてください。  そこで、監獄法の改正は、いまどういうふうに進んで、今後どういうふうに進めるつもりなんですか。これはずいぶん前からの話じゃないですか。これは明治何年かの法律じゃないの。監獄というのは一体何かと聞かれたって、一般の人はよくわからないんじゃないですか、監獄と刑務所はどう違うのか。どういうふうに進んでいるのですか。朝倉さんの書いた「判例詳論」でしたっけ、何か薄い、問題点を指摘したやつがありましたがね。だから、すでに憲法に違反をしているか、あるいは憲法に違反すると考えられているのかたくさんあるんだし、それに伴って監獄法の改正というのはもっと早急に、刑法の改正とは別にやらなければいけないんじゃないですか。どういうふうになっていますかね。

長島敦法務省矯正局長

○長島政府委員 先生から御指摘を受けるまでもなく、監獄法という古い名前の法律があることはまことに不都合だと私も思っております。私、矯正局長になりました段階で、前局長から、従来矯正局内でやっておりました事業がございますが、その結果を引き継いだわけでございます。引き継ぎましてからさっそく法務省内の関係部局の関係官の方に集まっていただきまして、私座長のようなかっこうになりまして、その主要な問題点について意見をずっと交換してまいりました。大体昨年の終わりごろに大まかな意見の交換を終わりまして、いまそれに基づいてこまかい問題のずっと詰めに入っておる段階でございます。極力急ぎたいと思っておりまして、大体一方で刑法の審議も進んでまいっておりますので、作業をなお一そう促進いたしまして、おそくも年度内をめどにして私の手元の作業を終わりまして、あと省議その他の機会で十分に御検討いただいて、お許しを得て法制審議会にお願いしたいというふうに考えておるわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 本来憲法ができたときに、それに伴って当然発足して、これは相当な早さで進んでなければならなかったことじゃないのですかね。刑法の刑の一本化ということを待たなくたってできたのじゃないかと思いますが、これは別として、ぜひ早急にやっていただきたい、こういうふうに思います。  そこで刑法の改正は、これは現段階ではいろいろ新聞などに出ておるのですけれども、個別なこまかい点はきょうは抜きにいたしますが、どういうふうにいまなっておるわけですか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 新聞にも報道されておりますとおり、先般の法制審議会の総会におきまして、いわゆる刑法草案の各論の各章の規定の審査が終わりまして、次回におきましては若干総則の第一章の刑法の適用、特に刑法の適用の属人的、属地的効力の関係のところが各車の審査、検討を待たないと結論が出ないところもございますので、第一章の総則の刑法の適用の点についての審議を終わりますと、それで全体の刑事法特別部会の答申にかかる改正草案の検討を終わりますので、そこであらためてそういう全体をながめまして全面改正をなお必要とするかどうかということの検討をする審議会の審議が残っておりますが、目下の見込みでは大体五月あるいは七月ごろにはその要否について、そして要するとすればその内容についての法制審議会の答申が得られるという段階になってきておると見ております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 その法制審議会の答申が得られてその後の仕組み、これは刑法改正の必要があるかないかということの答申をしているのが最初に出てきているわけですけれども、それはだって途中でやったといっておりますけれども、あの進行状況を見れば、刑法全面改正の必要があるという前提でやっておるとしか考えられないのですが、その後はどういうふうな手続をとってどういうふうに進むのかということですね。これは大筋だけは局長からでもいいですよ。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 先ほど申しましたように、おそくとも七月ごろには法制審議会の答申が得られる見込みでございますが、その場合におきまして、同審議会から刑法の全面改正の必要があるという答申を受けました場合におきましては、もとより法制審議会のその答申を十分に尊重するつもりではございますけれども、刑法の全面改正が、申し上げるまでもなく、一国の刑制上に持つ重大な意味にかんがみまして、答申だけをそのまま政府案とするということではなく、広く国民各階層の意見をも十分に考慮した上で政府としての責任ある態度をきめるべきだというふうに考えておりますので、そういう意味におきまして、答申を得ましても、政府案の作成ということについてはなお慎重な検討を進めたいというふうに考えております。したがいましてすぐに政府案の作成と、それが政府案の内容になるというようなスピードでは作業は進まないのでございますが、なお具体的な問題といたしまして、刑法の全面改正に伴いまして、たとえば保安処分の新設ということに相なりますと、刑法の規定を受けまして保安施設をどうするか、あるいは保安処分の手続をどうするかというような問題、あるいは没収につきましては、御案内と思いますけれども、付加刑ではなくて一種の保安処分といたしまして、刑の言い渡しがなくても没収の言い渡しはできるというような制度をとっておりますので、その点の没収の手続、特に第三者との関係は憲法でも問題になりましたが、そういう意味での没収の手続というふうに、関連の刑事訴訟法の改正をしなければならないという問題もございますので、刑事訴訟法の改正とあわせて刑法の改正をやるというのは理論的には一貫しておるようではございますが、それはまた審議をしていただく国会との関係におきましても、それだけ大量のものを同時にということもどうかと思われますので、たとえば政府案の確定を、刑法は別にして提出するといたしましても、少なくとも刑訴の改正等につきましてどういう手続でやるかという、いま申し上げたような保安処分あるいは没収等についてどういう手続でやるかということについての、少なくとも政府当局としての考え方がきまらない以上は政府案を出すべきではないとも考えられておりますので、それらのことを考えますと、早くとも、政府案の作成ということが完了いたしますのはなお一年はかかるというふうに考えております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 大臣、こまかい点はいいですよ。この刑法の改正について、あるいは先ばしっておるかもわかりませんけれども、新聞やその他雑誌等でいろいろ反対の意見が出ておりますね。日弁連もその意見を出すでしょう。これはすべてが一〇〇%それがあるかどうかは別として、とにかくそういうふうないろんな意見がたくさんありますね。反対の意見が相当ある。そうすると、いま国民各層の意見を十分聞くというのだけれども、大臣としてはどういうふうな形で今後そういうふうな意見を聞く、あるいは取り入れるというふうなお考えなんでしょうか。

中村梅吉自由民主党法務大臣

○中村国務大臣 法制審議会の審議を見ておりますと、やはり専門家が中心の集まりでございますから、最高裁の判例にこういう判例があった、だからその部分はこう直すべきであるとか、判例にこうあるからもう今後それでいけばいいとか、いろいろそういう点を煮詰めてきておるようでございます。しかし一般的に見ると、一般人はそう判例を詳しく知っておるわけでもありませんから、法制審議会の答申は基本としては尊重するにしてもいろいろ手直しをすべき点があるのではないかというように考えております。そこで、特に弁護士会あたりの意見がありますが、これらはできるだけどういうふうに取り入れるか、刑事局を中心に十分検討をしてまいりたいと思いますが、ただ一般的に意見を聞くといいましても、法制審議会というものそれ自体が各界の人が入っておりますから、ここで集約されておるわけでございますけれども、今後なお検討する中心はやはり法制審議会における少数意見、多数できまってしまったけれども少数の意見があった、しかしそれが少数意見だが非常にもっとものものであるかないか、そういう点を中心にやはりこれから検討させるべきであろう、かように考えております。   〔委員長退席、大竹委員長代理着席〕 いずれにしましても、法制審議会の答申がありましてから、答申そのものは法案には盛り込めないと思いますから、やはり相当長期にわたって刑事局を中心にとくと検討をしてもらって、そして成案を得たい、かように考えております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 問題を変えて、これは大臣に最初聞きたいのは、未承認国からのいろんな入国の問題等がございますね。これは法務省の主とした管轄です。主としたというのはおかしいけれども……。そこでこの基本方針ということについて、どういうような基本方針をいままで持ってこられ、今後持っていかれるのかということを、大筋を大臣からお聞かせ願いたいと思います。

中村梅吉自由民主党法務大臣

○中村国務大臣 一口に未承認国と言いましても、いろいろの事情がそれぞれ違うように考えます。簡単に言えば、未承認国というのは、わが国の承認していない国ということでありますけれども、承認できない事情については、それぞれ違うようにも考えますし、特に台湾のように、未承認国にはなっておりますけれども、特殊の関係にあるところもありますし、いたしますから、これは簡単に言い切れない問題であろう。それぞれケース・バイ・ケースで、入国管理局を中心に検討して進めていかなければならないと思いますが、専門的な問題につきましては、入管のほうで外務省と緊密な連絡をとっておりますし、最近も外務省と連絡をとっておる問題もございますので、入管局長からお答えをさせるようにいたしたいと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 私の聞いたのは、そういう基本方針を聞いたつもりだったのですが、大臣のほうで台湾の問題を先に言われたのであれですが、私のわからないのは、未承認国というのがよくわからないのですよ。これは局長のほうでいいですが、通俗的に未承認国、未承認国と言っているのだけれども、正確に言うと、未承認国もあるだろうし、未承認政府もあるだろうし、いろいろあるのではないか、こう思うのです。そこら辺が包括されて、俗に未承認国というように言われておるようにとれるのですが、日本から見た場合の未承認国、いままで関係のあった中で未承認国あるいは未承認政府ですか、分けて考えたときに、どこがそれに当てはまることになるのでしょうか、これが一つですね。  それからもう一つは、いま言われた、中華民国というのですか、俗に言う台湾、これは未承認国というふうに見てよろしいのでしょうか。日中共同声明に関連して、これはどういうふうになるのでしょうか。そこら辺を含めて、これは局長からでけっこうですが、答弁を願いたいと思います。

中村梅吉自由民主党法務大臣

○中村国務大臣 台湾との関係は、ポツダム宣言との関係等もあり、いろいろ込み入っておるように私は思うのです。ですから、なるほど形の上から言えば、未承認国ということになるのかもしれませんけれども、どうも実態は、ポツダム宣言その他を考えてみますると、もう少し違った角度で考えるべきである。また中国のほうでは、中国は一つである、すべてわが国は一本なんだという主張をしておりますので、それらとの関係がありまして、なかなかむずかしいと思うのです。局長からお答えをさせますが、私どもも、その点は一般に、ただ未承認国というわけにはいかないというように考えております。

影井梅夫法務省入国管理局長

○影井政府委員 第一点の未承認国とはどういうものかという御質問でございます。これは、大臣から御答弁いただきましたとおりに、それぞれ事情が違いますので、一律に適用できる定義というものは、なかなか見つけがたいと思います。  そこで、ただいま先生から、日本が問題にしておる、いわゆる未承認国というものを具体的に列挙せよという御趣旨であったかと思いますけれども、御答弁申し上げるのに先立ちまして、まず、未承認国というこの表現でございますが、いろいろなニュアンスと申しますか、これを持っておると思います。文字どおりに、いまだ承認していないということは、将来承認するという意味であるか、場合によりましては、そういう場合もございましょうし、ただ単に承認をしていないというその状態が永久に続く場合もあり得ると思いますので、まず、未承認ないし未承認国という表現が一般に使われておりますけれども、概念的には、いろいろなものを含めた一種の俗語であるというように私ども考えております。  そこで、具体的にという御質問でございましたが、常識的に未承認国と申せますのは、私ども、日本の近辺におきまして、北鮮がその例ではあるまいかというふうに考えております。それから最近問題になりましたいわゆる南ベトナムの解放戦線、それからカンボジアにおけるやはり同じようなグループというものがございますが、これは北鮮の場合と比べまして、性質が違うであろう。すでに大臣からも再三御答弁いただいておりますとおりに、これは一つの地域の中におきまして日本が認めております政権がございます、その政権に対抗する政権といたしまして存在するという意味におきまして、北鮮と違うというふうに私ども考えております。ラオスにつきましては、最近、御承知のような動きがございますので、ラオスに関する問題は消滅するかというふうに考えております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 何か話が——そこで終わっちゃったの。そのあとが出てくるのだと思ったのだけれどもね。だから国家の承認と政府の承認とは違うわけでしょう。そうすると、いまあなたの言われた中で、いわゆる未承認国と俗に言うけれども、未承認国なのか、あるいは未承認政府なのかという問題があるところもあるのかどうかということですね。これは、こんなことは聞かないほうがいいと思うのですけれども、とにかくあなたがそう言っちゃったからですけれども……。  それからもう一つ、いま言った中華民国ですよ。これがどうなのかということですよ。これはあれでしょう、一たんは承認しておるわけでしょう。それがどうなったのですか。そこのところが問題だね。そこのところをわからないから聞いているので、わかったら聞かないのですけれども、そこら辺をもう少し聞きたい。ポツダム宣言がどうだとかかんだとかいう話が出たから、ぼくはポツダム宣言まで出るとは思わなかったのですが、そういう話が出てきましたから、聞くわけですが、そこら辺をもう少し筋道を立てて、中華民国の関係、問題は二つありますね。中華民国の場合を含めて説明を願いたい、こういうわけです。

影井梅夫法務省入国管理局長

○影井政府委員 いわゆる台湾に関しましては、御高承のとおりに、一昨年九月二十九日の日中共同声明の第三項に、まず、中華人民共和国政府側の主張といたしまして、「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。」、これに対しまして、  「日本国政府は、この中華人民民共国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」と述べておりますので、したがいまして、純粋法理論といたしまして、台湾をどういうふうに考えるかということでございましたら、これは日本が承認している国ではないというふうに申すべきかというふうに考えております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 そうすると、答えにくい点も確かにあると私は思うのです。それからぼくのほうでも質問しにくい点も確かにあると思う。だからぼくが言うのは、政府の承認と、国家の承認とは違うでしょうと言っておるわけですよ。まあこれ以上聞きませんがね。聞いていろいろなところで波紋を起こしてもまずいからここら辺にしておきますけれども、そうすると、問題になってくるのは、日本にいわゆる台湾人という人が一ぱいいるわけでしょう。どのくらいいるのか、いますね。こういう人たちは、そうするとポツダム宣言の受諾に伴ってどうなったのかということもありますが、共同声明によって一体どうなっちゃったのですか。国籍がどういうふうになったというふうにとるのですか。そこら辺のところはどうなんですか。これは国籍関係なら民事局長が専門かな、どっちでもいいですけれども、それはどうなんですか。それに伴ってどうなったのですか、いわゆる台湾人と称する人の国籍は。

影井梅夫法務省入国管理局長

○影井政府委員 一般論といたしまして、ある人の国籍の決定というのはその人の属する国が決定すべき事項でございまして、私どもといたしましては、それを受けまして何国人といたしまして、日本の国内でこれを取り扱うということが言えるかと思います。  いわゆる台湾人に関しましては、わが国の立場といたしましては、平和条約の発効と同時に台湾に関する日本の権利、権原その他一切を放棄するという約束をしておりますので、その機会にこれらの人を日本人としては扱わないということを約束いたしまして、それを実施したということでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 そうすると、日本人でないことはわかりますが、外国人登録の中ではどういうふうに登録をしているわけですか。ということは、朝鮮の場合は二つに分けていますね、韓国という国籍を、国籍かどうかは別として、韓国という表示をしている場合と、それを大韓民国というように本人の希望によって外国人登録の中で表示をしているものもあるように聞いておるのですがね。それと朝鮮と、こういうわけでしょう。台湾の場合はそれと対比してどういうふうに外国人登録の中の国籍欄を表示するのですか。

影井梅夫法務省入国管理局長

○影井政府委員 最初に、いわゆる台湾人についてでございますが、これは外国人登録上は台湾の出身者であると大陸の出身者であるとを問わず、一貫いたしまして中国ということで表示をしております。  それから第二点の朝鮮、それから韓国、大韓民国の件でございますが、私どもの調査いたしました限り、いわゆる朝鮮半島出身者の中で、わが国の外国人登録上、その国籍に大韓民国という表示をしたものはございません。御承知のとおりに、これは韓国あるいは北朝鮮、北鮮というこの二種類でございまして、大韓民国という表示をしたものはございません。  これは一九五〇年の朝鮮事変の始まる前の段階におきまして、いわゆる朝鮮半島が事実上二分される前の段階、また当時日本が占領下に置かれておりました段階におきまして、それまで国籍欄に朝鮮と書いてあるのを、もし本人が希望するならば、これを韓国あるいは大韓民国と書くことを考えてもよろしいということを考えた時代がございますけれども、これはあくまでも朝鮮事変前のこと、つまり朝鮮半島が二分されます前の段階のことでございまして、現在はこの問題はもう全くないということを申し上げられる次第でございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 朝鮮の場合は韓国と書いてあるのがあるわけでしょう。それば大韓民国をさしておるわけでしょう。そればそういうわけでしょう。  そうすると問題は二つに分かれますが、一つは朝鮮の場合には韓国あるいは朝鮮と分けますね。台湾の場合には分けないでしょう。分けないのはどういうわけかということですね。これが一つ。  それから二つ目は台湾の場合に外国人登録の国籍欄に中国と書きますね。その中国はどこの中国なんですか、中華人民共和国なのか、中華民国なのか、どっちなんですか。

影井梅夫法務省入国管理局長

○影井政府委員 中国につきましては、先生御承知のとおりに一昨年の九月に情勢が大きく変わったわけでございますが、日本といたしましては、先ほど大臣から御指摘がありましたとおり、台湾を含めます中国というものを非常に明確にするということからいろいろな問題が生ずるであろうということを当初からそういう点を考えまして、また外国人登録上の国籍欄における国籍の表示、これはわが国の外国人限りの便宜上のものでございますので、一番わかりやすいようにという意味におきまして、これは一貫して中国という表示を用いてきたという次第でございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 なかなか答えにくいのかよくわかりませんが、答えがだいぶ短いのですが、じゃ、便宜上のことなら、それなら韓国と書くのもおかしいじゃないかというのですよ。それなら朝鮮でいいじゃないですかというのですよ。韓国の場合だけ二つに分けて書いて、中国の場合はどうして分けないのですか。そこがおかしいじゃないかとぼくは聞くわけですよ。これはアメリカのサゼスチョンでしょう、ざっくばらんな話。アメリカが外国人登録の場合韓国と書けということを日本政府に命令したのでしょう。それならそれでかまいませんけれども、片っ方だけそういうふうに書いていて、片っ方はそうじゃないのはおかしいじゃないかということです。この点がどうもちょっとよくわからぬということをお聞きするわけです。だから韓国と書いてあるのも国籍欄ではあるけれども、ただ便宜上書くだけなんだ、国籍を表示するものじゃないのだこう言うならそれでいいですよ、一貫しているからね。そこはどうなんでしょうか。

影井梅夫法務省入国管理局長

○影井政府委員 非常に微妙な問題を含んでいる御質問かと考えます。常識的と申しますか、すなおに考えまして、中国は一つということが中国の側におきましても、また日本の側におきましてもそういう認識に基づいていろいろな問題が処理されております。それと朝鮮半島の場合には事情がやや違うということを踏まえましての処理ぶりであるというふうに御理解願いたいと考えております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 この辺にしておきましょう。  そこで、いまよくわからないのですが、いわゆる台湾人の人たちが中華民国の国籍を離脱して、それで日本にいるというのは、私の聞いた範囲では相当いるように聞いているのですが、四、五千人いるように聞いているのですが、あるいは一万人近いのか、よくわからないのですが、そこら辺はどういうふうになっていますか。

影井梅夫法務省入国管理局長

○影井政府委員 ただいま御指摘の、いわゆる台湾人で現在日本の国内に無国籍という状態で在留している人が約一万人くらいいるということでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 どうして無国籍なんですか、そこのところがまたよくわからないのだ。

影井梅夫法務省入国管理局長

○影井政府委員 外国人の国籍につきましては冒頭に申し上げましたとおり、まずその所属する国の規定というものが働くわけでございますけれども、あと、その国と申しますか、その政府と、それからその当該外国人本人との関係によっていろいろな現象が生ずるということで、これは日本といたしまして、とやかく申せない筋合いの問題だろうというふうに考えております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 いろいろ影響があるから、あまり聞きませんが、一つの国の国籍を離脱するというのは、新しい国の国籍をとらなければ離脱できないんじゃないんですか。離脱ということばは、ちょっと違うかもわかりません。あるいは消失というかな。離脱と消失とは違うかもわからぬけれども、どうなんですか民事局長、専門家だろうけれども。国籍の離脱と国籍の消失とは違うの。韓国なんか、新しい国籍とらないというと、前の国籍抜けないんじゃないんですか。どうして国籍の離脱ということが認められるんですかね。

川島一郎法務省民事局長

○川島(一)政府委員 離脱と喪失の違いはどうかというのが最初のお尋ねだと思いますが、喪失というのは失うというので、離脱も喪失の一種ではないかというふうに考えます。私どもは、離脱といっておりますのは、自分の意思によって国籍を離れるか国籍を喪失するということが、国籍の離脱であるというふうに考えておるわけです。  中国人の場合でございますが、先ほどお話に出ましたように、日中共同声明が一昨年九月にあったわけでございまして、その当時日中の国交が正常化されるというので、日本に大ぜいおりました中国人、特に台湾系の中国人でございますが、これらの方々が、当時の台湾政府に国籍の離脱を申請して、それが許可されている。こういうことがあるわけでございまして、そういう方がかなり多数にのぼっておるというふうに聞いております。   〔大竹委員長代理退席、委員長着席〕 中国の国籍法によりますと、当時の台湾政府のもとで行なわれておった国籍法でございますが、それによりますと、本人が申請をして国籍を離脱する、こういう手続が認められておったのでございます。それに基づいて、そういうことが行なわれたということでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 日本の国籍法では、国籍離脱と  いうのを認めておりますか。

川島一郎法務省民事局長

○川島(一)政府委員 日本の国籍では、単純に離脱するということが認められておりますのは、外国と二重国籍を持っている場合に限られております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 そうすると、いまの国籍離脱というのは、いわば一種のペンディングの状態なんてすか。そこのところがちょっとわかりませんけれども、それが一つ。  それからもう一つは、帰化の問題で、帰化を、きびしく条件をつけるあるいはゆるやかにする。いろいろ一国の政策の問題もあるし、それをここで論議するのもどうかと思うので、私はどうしろということを言っているつもりはないのですが、近ごろ、元日本人であって、自分の意思によらないで平和条約で日本人でなくなった、そういう人、いま言った台湾人を含めて、帰化の申請が相当出ておりますね。いろいろな事情があるのでしょうが出ている。帰化することが、いろいろな見方があって一がいに言えないのですけれども、日本の場合は非常にきびしいのですか。それから、これは非常に長くかかりますね。いろいろな条件があるのはわかりますが、その場合で旧日本人であった人の場合の帰化の申請と、それから全然違う外国人の場合の日本への帰化の申請とは、これはある程度そこに違いがあってもいいのではないか、こう思うのですが、あまり違いがあってもこれはまた問題だと思うし、なかなかむずかしい点が私はあると思うんです。  そこで、わかっておる範囲でいいのですが、帰化の申請がどの程度出ておって、どういうふうな点を審査しておるのかということですね。非常にこれ、長くかかりますね。それから、それに対する一つの方針、いま言った点を含めての方針、これに対してお答えを願いたいと思います。

川島一郎法務省民事局長

○川島(一)政府委員 まず、最近における帰化の事件がどの程度あるかという点でございますが、昭和四十七年の夏ごろから、日中国交正常化の問題が起こってまいりまして、そのころから中国関係の方の帰化の申請が急激に増加しておるという状況でございまして、帰化申請者の数をごく概略申し上げますと、昭和四十六年、このときは申請者の数が六百五人でございます。それに対しまして四十七年は七千五十人、四十八年は五千百人、こういうふうに四十七年が非常に多かったわけでございますが、中国関係の方の帰化の申請が非常にはね上がって多くなっておる、こういう状況でございます。  それから帰化の申請がありました場合に、これは法務局に申請があるわけでございますが、国籍法で定めております要件、すなわち居住関係でありますとか、あるいは素行関係特に前科とか納税のぐあい、その他いろいろな事情を調査するわけでございまして、大体以前は、この調査に一年以上かかるという例が多かったわけでございます。しかし、最近非常に事件が多くなりましたし、また中国関係の方々で早期に結論を出してもらいたいという希望が強くなっておりますので、最近は非常に早くなりまして、事件にもよりますけれども、早いものは数カ月というものもかなりございます。三カ月、四カ月というようなものもございますし、一年以上かかるというものはほとんど例外的な場合というふうになっております。  それから方針でございますが、帰化の申請をされる方は、多くは日本と何らかの関係のある方、血縁関係のある方が非常に多いわけでございまして、こういう方々につきましては、過去のそういった日本との血縁関係とか、いろいろな親族関係とか、そういう点を考慮いたしまして、なるべく帰化が認められるようにしたいという方針で処理いたしておりますけれども、これは個々の事件にもよることでございますので、一般的にはそういう方針で処理しているということでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 いまの人数の、各外国人別の内訳はわかりますか。いまわからなければあとでもいいですけれども、わかる範囲で。それとある、たとえば旧日本人であった、けれどもいまは日本人でない、その人たちの国に対して帰化を、ほかとある程度差別というか、何といいますか、条件をゆるやかにしてとかなんとか、そういうふうなことについての考え方は、あなたのほうとしては、そういうふうにしますともちょっと答弁しづらいところでしょうね。それは立場はわかりますよ。いろいろな影響があるから、そこまで聞きませんけれども、その内訳だけでもいまわかれば、わかった範囲でお答え願いたいと思うのです。

川島一郎法務省民事局長

○川島(一)政府委員 実は先ほどは申請者の数で申し上げましたが、ちょっと手元の資料では、現実に帰化が許可あるいは不許可になった者の国別の数しかわかりませんので、それを申し上げますと、四十八年度でございますが、帰化の許可を得ました者が、四十八年度一年間に約一万三千名程度でございます。そのうち中国関係者が七千三百名程度、そのほかに比較的多いのを申し上げますと、朝鮮関係の方が五千七百名程度、そのほかはごく少なくなっておりまして、たとえばブラジルとかアメリカ合衆国とかそういうようなところでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 時間も来ましたので、これで質問は一応終わります。いろいろ問題点もありますから、いずれまた別な機会に質問したいと思います。

小平久雄自由民主党

○小平委員長 横山利秋君。

横山利秋日本社会党

○横山委員 稲葉委員の御質問、興味深く聞いておったのですけれども、どうも政府側の答弁が、煮え切らぬといいますか、言いたくない、あるいは触れたくない、現状はこうしておるというように答弁が感じられるわけです。だけれども、現実問題として、いま日本におる台湾の人たち、これから台湾に商売上どうしても往復しなければならない人たち、それから台湾の人でこれから台湾から日本に来なければならない留学生その他の人たち、そういう人たちの不安というものはおおうべくもない。いまお話を聞いておりまして、ともかく共同声明があったときに大きな方針、方向というものは出たけれども、しかし、まあまあということでやってきた。今度日中の航空協定が成立して、日本政府側も、飛行機についておる台湾のあれは国の標識とは思わないというふうにはっきり言うたことによって、非常な、きちんとせざるを得ない条件下にあるわけであります。そうしますと、私がいま言ったように、日本におるたくさんの台湾の人たちや、これから商売上どうしても行かなければならない人たちゃ、向こうからこれから来なければならぬ人たちが、差し迫っていまどうするのか、どうあるのか、これからどうなるのかという点について、率直に法務大臣としてもやはり方針を明らかにする必要がどうしても事務的にある。検討中ということは済まされない。そういう点で、もう少しあなたのお考えをはっきりしてやってもらいたい。  たとえば、いま話が出たのだけれども、出入国の手続は相手国の承認がもう要らぬということになるのか、帰化についても、基本原則としては相手国の承認か要るのだけれども、もう要らぬというふうになるのか。それから、日本にたくさん国籍のない人があるのだけれども、それらの社会保障は一体どういうことにこれからなるのか。外国人登録はこれからどういうことになるのか。こういう点について、やはりもう少し、従来とも変わらないというふうにはっきりおっしゃるならおっしゃってもらいたいし、それから事実上法的に多少改善しなければならぬ、事務的にどうしても不可避であるという点については、はっきりうたってもらわぬといかぬ。この点ひとつ原則的なものの考え方と、今度ひとつ政治的に方向をきちんと示したことによって生ずる個々の行政上の変化、そういうものをもう少しはっきりしなければいかぬのじゃないですか。どうなんですか。大臣に基本的な考え方をまず聞いている。

中村梅吉自由民主党法務大臣

○中村国務大臣 台湾との関係につきましては、御承知のとおり、日中航空協定ができました関係で、台湾側は中華航空の就航を停止するということになりましたが、漁業とか、通信とか、郵便とかその他、そういう関係には一切台湾側も触れておりません。ただ、中華航空の就航を停止するということでございまして、停止をすれは、相互主義でございますから、日本の日航の乗り入れも認めない、こういうことでございますが、幸いといいますか、台湾と東京との間を飛んでおります飛行機は、ほかの国の飛行機が十数カ国ございますので、往復それ自体には不便はないわけでございます。ただ、しかし、台湾との長い間の関係及びその他各種の利害関係等ありますから、われわれとしましては、早く台湾側の就航停止をまた復活できるように努力をすべきものである、かように考えておる次第でございます。さしあたり、息がとまっちゃったというわけではないのでございますが、とにかく、いろいろな不便もありますしいたしますから、早くこの状態の回復をはかりたいというように考えております。

横山利秋日本社会党

○横山委員 質問にちっとも答えてない。私の聞いているのは、少なくとも法務省所管事項については従来とも一切変わりがないということなのかどうかということが大原則、第二番目には、変わりはないとしても、この法律上、規定上、通達上、若干の改正なりなんなりをせざるを得ない、事務的にせざるを得ない。また、そういうことがあり得るのか、全然ないのか。これはいまの中国を認めて台湾を国として認めていないというような基本原則らしいのでありますから、そういう点では実際、稲葉さんの質問のように、実務上ではおかしなことがあると思う。おかしなことではあるけれども継続をするということなのか、その基本原則をはっきりしてくれ、こう言っている。

中村梅吉自由民主党法務大臣

○中村国務大臣 日本側も、台湾側も、友好協会の事務局がありまして、友好協会を通して交流は続けておりますから、若干の不便はありましても、国交ではなく、ちょうど、かって中国と日本との間に友好協会があって交流をしてきたと同じように、台湾との間には交流協会がそれぞれございまして、このパイプを通して従来どおり交流は続けることができる、かようにわれわれ考えております。(横山委員「法務省がそうするのですか、法務省の立場として」と呼ぶ)はい。そういたしたいと思っております。

小平久雄自由民主党

○小平委員長 青柳盛雄君。

青柳盛雄日本共産党・革新共同

○青柳委員 私は、本日は刑事訴訟の中での再審の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  最初に一般的なことについてお尋ねをするわけでありますが、日本で刑事訴訟法が実施されてから再審制度というものが設けられたわけでありますが、その再審制度が設けられて以来今日までの間に再審請求が行なわれた件数ですね、これは同一の人物が何回も申し立てるということもありますので、件数でお尋ねをするわけです。それからその再審請求を受けて、再審開始の決定があった件数、それから再審の審判が行なわれた結果、確定判決が変更された件数、以上を旧刑訴時代と現行刑訴時代とに分けて説明していただきたいと思います。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 いまの青柳先生のお尋ねに正確に対応してお答えするだけの資料が実はございませんので、ややぴったりしないお答えになるのが恐縮でございますが、さしあたり私どものわかっている範囲で申し上げますと、旧刑訴時代における再審請求件数は平均いたしまして年間三十件から四十件程度でございまして、そのうち再審開始決定となりましたものが大体その一割の三、四件程度であったということがいえると思いますし、新刑訴になりましてからの件数は各年によりまして多少相違がございますが、大体におきましての数字といたしまして、たとえば昭和四十七年における再審請求件数は九十件ございまして、そのうち再審開始決定となったのが三十件程度であるということが一応いえると思うのであります。一応そういうことでございます。

青柳盛雄日本共産党・革新共同

○青柳委員 だいぶ率が高いような感じがするわけでありますが、この中にいわゆる身がわりの案件というようなものも相当含まれているのではなかろうかと思うので、現実に被告が無実を主張して再審を請求しているのに対して再審開始決定が行なわれたというような案件はどのくらいあるのでしょうか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 違う観点からの資料といたしまして、私どもが持っておる資料の中で、たとえば昭和二十七年から昭和四十七年までに再審開始決定のございました二百四十二件につきまして調べた結果によりますと、そのうちのほとんどがいわゆる刑訴の四百三十五条の第六号、すなわち「有罪の言渡を受けた者に対して無罪若しくは免訴を言い渡し、刑の言渡を受けた者に対して刑の免除を言い渡し、又は原判決において認めた罪より軽い罪を認めるべき明らかな証拠をあらたに発見したとき。」いわゆる包括的な新たな無罪等の明白な証拠の出た場合というのがほとんどでございまして、その二百四十二件のうち二百四十件がその第六号の該当事由、すなわち新証拠の発見ということでございまして、その二百四十件の中をさらに区分けいたしますと、一番多いのがいま御指摘の身がわり犯人であることがわかったというのが百三十八件、それから真犯人の出現というのが十五件、それから真犯人の氏名詐称が二十一件、それから外国人だと思っておったのが外国人でないということがわかったのが十二件あるいは刑事責任無能力者二件というようなことでございまして、アリバイの存在は二件というようなことで、ほとんどが身がわり犯人に対して判決をしておったのがわかったという案件でございます。

青柳盛雄日本共産党・革新共同

○青柳委員 いまの御説明でもわかりますように、真犯人とされていながら実際はそうではないということを主張する再審請求が四百三十五条六号の規定によって申し立てをした場合がほとんど棄却されてしまって開始決定にならない。非常に針の穴を象が通るほどの困難性を示している、こういう状況は非常な問題を起こしておるわけでありまして、これは刑事訴訟法の仕組みが再審制度に非常に厳格であって、確定判決というものは、先ほど説明のありましたように、真犯人があらわれるというようなこと以外にはほとんど通らない。先ほどアリバイが二件とかいうお話がありましたけれども、いずれにいたしましても確定判決は安易に破れないというのが現実でございます。この再審制度はよほど具体的な案件を通じて再検討を必要とするものと私ども考えておりますが、刑訴四百三十五条第六号の無罪を言い渡すべき「明らかな証拠をあらたに発見したとき。」という、こういう規定の「あらたに」とは一体どういうことなのか、確定前の手続で裁判所に検出され、証拠調べの行なわれたようなものはいかなる意味においても新証拠とはならないから「あらたに発見した」ということにはならないんだ、こういうふうな解釈が行なわれているんじゃないかと思うのですが、この点、政府としてはどのように解釈をされておられますか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 青柳先生御指摘のような解釈をとっております。

青柳盛雄日本共産党・革新共同

○青柳委員 どうもそこに私は解釈上非常に問題があると考えます。なぜならば、そのようなすでに調べられた証拠であっても、他の新しい証拠、つまり確定前の審理においては裁判所に出されて証拠として使われなかった、証拠調べが行なわれなかったものと総合的に証拠価値判断をすればこれは再審理由を裏づけるものとなる可能性がある、また新しい証拠と総合されなくとも、そのような証拠の中に隠れている要素、つまりすでに調べられた証拠の中に隠れている要素、これが確定前の審理過程では発見されなかったものが、再審段階において新たに発見できる。これは自然科学的な方法の進歩とかあるいはやり方によって発見される。それがまた決定的な役割りを演じるということがあり得るからであります。結論として、このような証拠も真実発見のため、無実の者を罰しないという裁判の使命を貫く上できわめて重要であると私は考えますが、いかがですか。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 「あらたに」ということの解釈につきましてはいろいろ微妙な問題があるのでございますが、本来再審制度というものはいわゆる確定判決を尊重するという面からの法的安定性と、無実の者を罰してはならないということからくる具体的妥当性の要請との調和の問題でございまして、どこにその調和点を求めるかが制度のあり方の基本として考えるべき問題なものですから、現段階におきましては少なくともすでに確定した判決の以前の段階におきまして審理の対象になった、検出された証拠の価値判断ということに関しての評価の違いということは、先ほど申しました確定判決の法的安定性ということから見ましてそこまでを「あらたに」というふうに解釈すべきではないという立場でおるわけでございますが、それ以上のものではない。一面におきまして、先ほどの具体的妥当性ということとのかね合いの問題もございますので、その限度以外の「あらたに」ということの解釈につきましては、それぞれ運用によって、いろいろとその内容が運用の妙によりまして変わっていくことの可能性もあるというふうに考えております。

青柳盛雄日本共産党・革新共同

○青柳委員 法的安定性ということに非常に力を入れておられるようでありますが、いやしくも情状がどうでこうでというような問題であれば、むやみとやり直しばかりして、重いのを軽くしてもらえばいいのだというようなことになって、乱訴というおそれもなきにしもあらずでございましょうけれども、私どもが問題にするのは、罪がないのに誤判によって有罪にされるというようなことは一件でもあってはいけないのではないか。有期懲役とか罰金刑などでは災難としてあきらめるというようなこともあり得るでしょうけれども、それも私はあきらめるべきでないと思いますが、まして死刑囚、無実の者が他の犯人のかわりに殺されてしまう、それが国の間違った判断によってそうなる、これほど残酷なことはない、非人道的なことはないと思うのです。だから、こういう場合には法的安定性などということはもう論外だと思うのですね。あくまでも人命を尊重するという立場を貫かれなければいけない。具体的妥当性といいますか、真実を貫かなければならぬと私は思うのです。  そこで、いま、ちょっと法律の解釈、運用の問題について政府と私の間に見解の相違が出てしまったのですが、具体的な案件について私はそのことを明らかにしたい、私の言うことが正しいということを言いたいと思うのです。  これは、本委員会でも昭和三十八年五月十七日に、当時衆議院議員であられた坂本泰良氏が質疑をやっております事件があるのです。それは免田栄という人についての殺人強盗事件についてであります。これを私どもは一般に免田事件と呼んでおりますけれども、被害者が白福という方でございますので白福事件などとも呼ばれているようであります。免田事件というほうが私どもには通りがいいものですから、免田事件といってこれから申し上げます。  この事件は、簡単に申しますと、昭和二十三年の十二月二十九日の午後十一時三十分ごろ、熊本県人吉市北泉町二百二十五番地の白福角蔵方において、家人の就寝中に戸締まりをこじあけて侵入したと思われる盗賊が、家人に誰何されるや突如凶暴化し、角蔵、当時七十六歳及びその妻トキエ、当時五十二歳並びに同人らの長女イツ子、当時十四歳、次女ムツ子、当時十二歳の各頭部を、なた様の重量のある刃物と推定される凶器でめった打ちに切りつけ、さらに角蔵の咽喉部をさしみぼうちょうで刺し、その結果角蔵を即死させ、トキエを翌三十日午前八時三十分ごろ同市内の山口外科病院において死亡させ、イツ子、ムツ子にそれぞれ重傷を負わせるという凶悪事件が発生した。この犯人に仕立て上げられたのが免田栄という人であります。  なぜそのような嫌疑を受けるに至ったかということについてここであまりくだくだと申し上げるのは、時間の関係上省略いたしますけれども、ここで私が問題にしようと思うのは、その凶器と目されているなたであります。このなたが証拠物として被告人、免田栄氏から押収をされ、そして判決で、取り調べの結果そのなたで頭をなぐって即死をさせ、あるいは傷害致死といいますか、結局死亡される、あるいは子供たちの頭もそれぞれ重傷を負わせた、こういうことでございます。さしみぼうちょうは被害者のうちにあったものだということになっております。どういう理由か存じませんが、この凶器が被告のものであるにもかかわらず没収の言い渡しが一審でなかった。  この一審の有罪判決に対しましては控訴、上告が行なわれましたけれども、これはいずれも棄却をされまして非常にすみやかに確定をしてしまったわけであります。事件発生が昭和二十三年の十二月二十九日で、一審判決は二十五年の三月二十三日。もっともこの被告側として免田氏が逮捕されたのは二十四年の一月中旬のことでありますから、わりに一審判決も短かった。それから二審は二十六年の三月十九日、最高裁の三審は二十六年の十二月二十五日でございます。  これに対しまして、免田氏は一回から六回までそれぞれの理由をもちまして再審の請求をいたしております。第一回目は二十七年、第二回目は二十八年、三回目が二十九年、それから四回目が三十六年、五回目が三十九年、六回目が四十八年のようであります。六回目はまだ審理中でございますが、いずれも五回までは結果的には開始決定は出されなかった。もっとも第三回目の二十九年のときには、三十一年八月十日に開始決定が福岡地方裁判所八代支部で出されたわけでありますが、検察官側の抗告によりまして、三十四年の四月十五日に取り消しになり、さらに最高裁判所に特別抗告を出しましたけれども三十四年の十二月六日に棄却されました。こういうふうにせっかく開始決定があったにもかかわらず取り消されてしまったのでありますが、問題はそのなたです。これは紛失するなどというような性格のものではない。刃渡りが六寸五分、柄の長さが一尺五寸、合計二尺一寸五分という大型のものでございます。これは免田氏が山へ入って材木を切るというような仕事をやるために持っていたものでございます。そういう特殊なものでございますが、それが昭和三十年ごろ、つまり先ほど申しました開始決定のあったころに紛失してしまったわけです。そのことは先ほど申しました三十八年五月十七日の法務委員会において坂本委員が一応政府に対して質疑を行なっておりますけれども、どうもふしぎな現象なんであります。免田氏としてみれば、押収されたなた、その他の衣服類がありますけれども、そういうものはいずれも没収になっておりませんので、還付請求をいたしました。その請求をしたのは三十年の三月三十日だそうでございますけれども、この願い書を出して一カ月ばかり後に、熊本地方検察庁の八代支部から福岡刑務所在所中の免田氏に対して、「押収中の物件は血痕附着の為腐蝕し物の用にたつとは思われないので本人にその旨を含めて若し不要ならば別紙所有権放棄書を徴して送付願います」という趣旨の刑務所あての文書が行っているわけです。本人が返してくれというのに使いものにならないから放棄書をとって送り返してくれないかという、まことに怪しげなことが行なわれているわけです。衣類については血痕があったかなかったか、いわゆる返り血があったかなかったかということが問題になりまして、一審でも鑑定が行なわれているのでありますが、どうもそれは血が全然ついていない。それは被告が洗ってしまったというからそうなんだ、こういうような話でありますのに、血がついておって腐ってしまったから使いものにならないというようなことをいって放棄書を出させようとしたというその辺のところからして私どもにはとても納得がいかないのでありますが、なたなどはもちろん腐食するというようなものではありません。そこで、このなたがあるいは衣類が証拠として残っているならば、たとえ確定した判決の裁判所で証拠調べがあったものであっても、もう一ぺん科学的に調べてみて、そしてはたして凶器としてそれが使われたものと判断することができるかどうか。それから返り血がある、洗ったということでなくなったというような単純なものであるかどうかというようなことは再審の理由を裏づけることに役立つ、こう考えられるわけでありますが、なくなってしまった。そこで免田氏は日本弁護士連合会の人権擁護委員会に訴えまして、人権擁護委員会では非常に奇怪な事件であるということでこれを取り上げて、国を相手に証拠物にされたなたとかあるいは衣類とかいうものの返還の請求を出したわけであります。そうしましたら、これはなくなってしまった、こういう答弁でございますので、損害賠償の訴えに切りかえたわけでございます。結局損害といいましても品物の価格だけでは問題にならないわけでありまして、それがあれば無罪になる可能性があるのに、それを国の行為によって滅失させられたことによる精神的な被害を賠償してもらわなければ困るのだという意味で一千万円の慰謝料のうちの内金として百万円とそれから品物に対しての損害として一千円、つまり百万一千円を支払えという請求を出したわけでありますが、結果は五百円だけ払えという判決がくだりました。一部勝訴でございますが、その一千万円請求する内金の百万円の慰謝料については一審判決は、これは東京地裁でございますけれども、こういっているのです。  その前に、そのなたがどんなに無罪の証拠になるかということについて原告免田氏の主張を申し上げないといけませんが、その主張はこういうふうになっております。確定した「第一審判決において、犯行の兇器に擬せられた鉈は、通常の家庭用鉈とは異なりその先端部に誤打による刃こぼれを防ぐための石突様突起部(いわゆる「とんびのくちばし」のようなもの)を有するものであり、したがってそれを用いて人間の頭蓋部に切りつけた場合」の傷あとというものは、まっすぐにはならないで、そのとんびのくちばしがぽつんと、頭なりに残るはずである。ところが、この一審で証拠調べをされたお医者さんの鑑定書によりますと、被害者たちの傷、たとえば角蔵及びトキエの各頭部に生じた十個及び七個の傷あとというものは、いずれも重量ある刃器を用い強力に打ち込むことにより生じたと思われる直線上状の正鋭な創縁創角を有する割創であって、そのいずれにもとんびのくちばしによってつけられたような痕跡というものは認められぬ、こうなりますと、これは非常に異例なことではありますけれども、とんびのくちばしは使わないで、その下のほうだけで頭を打った、こういう非常に希有な現象が起こるというわけでありまして、どうも凶器はこの特殊ななたではないということが疑われるわけであります。この点は一審も二審もそれから最高裁もこの凶器で殺したんだということで確定してしまったわけでありますけれども、これをさらに化学的にまた物理的に再検討するならば、凶器が違うんじゃないか。だから、ほんとうに被害者の頭部をなぐった凶器というのは、そういう特殊なものではない普通のものではなかろうかという疑いが濃厚なわけであります。しかるにもかかわらず、それをなくしてしまったというその責任は重いんだけれども、この民事の裁判のほうでは、そうかどうかということはその品物がもうなくなってしまっているんだから調べようがない、こういうのですね。こういうふうに書いてあります。そのなたの物件に対して、「原告主張の技術に基づく鑑定を施した場合に、原告主張の内容の鑑定結果を得られることについては、右の各物件は現存しないから、間接証拠によってこれを認定する外ないというべきところ、原告提出の全証拠を精査するも、ついに右事実を認めるに足りる証拠を見出すことができない。したがって、右の鑑定結果が前記明白かつ新規な証拠に該当することを前提とする原告の慰藉料請求の主張は、理由がない。」、こういう趣旨ですね。これはもうなくなってしまったということに決定的な致命傷がある。ですから、なくなしたということ自体が国の責任なんです。どうしてこんなことになったかということになりますと、熊本地検八代支部の証拠品係が、判決確定後裁判所から引き継ぎを受けたなたなど、これは凶器であるから、所有権放棄の有無にかかわらず、廃棄するのが相当と考えた。そもそも、その「証拠品は事件確定後すみやかに処理すべき建前上、時を移さず右両物件につき廃棄処分の手続をとったものである。」、こういうのですね。なたは凶器であるから、所有権放棄の有無にかかわらず廃棄を相当とするなら——確かに、なたてもさしみぼうちょうでも、使い方によっては凶器になるわけですけれども、そうだからといって、これをすみやかに廃棄処分をするということがあっていいものかどうか。ことに、そのときに再審が出されている、昭和二十七年から再審は出ており、そして三十年には、先ほど申しましたように開始決定が出ている。どうも、処分したのは三十年ごろだ。符節を合わすごとくに、これはまずいというので処分してしまったのではないか。故意があるのではないか。民事裁判のほうでは、故意とまでは認めないで、手落ちがある、過失があるということで、慰謝料はともかく、物の損害として五百円くらいの賠償はしなければならない、こういう判決になっているわけですね。  刑事訴訟法の規定によりますと、百二十一条の第二項に、「危険を生ずる虞がある押収物は、これを廃棄することができる。」というのがありますので、おそらくこれを援用して危険を生ずるというような認定をしたのではないかと思われるのでありますが、この刑事訴訟法の百二十一条の「危険を生ずる」というのは、ダイナマイトとかその他、非常な危険物、爆発物のようなものをさすのではなかろうかと思うのであって、刀にしろ、なたにしろ、ひとり歩きをして危険を生じさせるものではないのであって、だれかがそれを狂暴な犯行に使うときに初めて危険性がある。まして、これを所有者である本人の承諾もなしに処分してしまうなどということがあってはならないわけでございます。この点について政府はどう考えておられるか、それをお尋ねいたしたいと思います。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 押収物の処分につきましては、刑事訴訟法の規定に基づいて処分すべきことは申すまでもないところでございますが、遺憾ながら、本件の民事訴訟法の対象になりましたなたとそれからマフラーと上着の処分については、これを保管いたしております検察側に、故意はないにしても過失があったということは判決の指摘されるとおりであります。したがいまして、この点につきましては、国といたしましては控訴をせずに一審の判決を認容する態度に出ておるわけでございます。そういう意味におきましてははなはだ遺憾であったということでございます。  ただ、先ほど青柳先生がおっしゃっておりましたなたにつきましては、本件の判決におきましてもいわゆる滅失による損害賠償の対象になっておらないのは、なたは実は免田栄の所有ではなくて、父親の所有であったという意味において、免田栄に損害がないということで、なたは損害賠償の対象にならなかったわけでありますが、マフラーにつきましては、先ほど御指摘の百二十一条、四百九十九条の無価値物の廃棄という規定に該当しないにかかわらず、本人の承諾を得ないで処分した、廃棄したという点において、マフラーにつきましては遺憾な点があり、なたにつきましても、所有者は別といたしまして、本人の、所有者である父親の承諾を得ないで廃棄したという点において遺憾な点があったということは事実でございます。  なお、上着につきましては処分ではなくて、保管の過程において亡失した過失があったということでございまして、これもまた遺憾なことでございます。ただ、先走るようでございますが、なたもマフラーも、先ほどの新たな明白な証拠の関係でございますが、すでに原審の手続におきまして提出をされており、上着につきましては法廷には出ておりませんが、返り血の問題は、すでにそういうものに返り血はなかったということを前提にして原審の手続ば進められて判決があったということでございまして、先走るようでございますが、これはいずれも解釈上、新たな証拠ではないということに相なるものと考えております。

青柳盛雄日本共産党・革新共同

○青柳委員 結局、先ほどの見解、つまり新しい証拠というのは、全く裁判所がいまだかって見たこともないようなものだけなんだという、それを貫けばどんなに有力な無罪の証拠になるべきものであってもこれは役に立たない、こういう議論になってくるわけでありまして、先ほど私が申しましたことを繰り返すようになりますけれども、その証拠が他の証拠と合わさって無罪の証拠に転嫁するというようなこと、あるいはその証拠の自然科学的な検討によって犯罪と結びつかないというようなことが明らかになった場合、これは白鳥事件でもいわゆるにせ弾丸などといっておりますけれども、いずれにしても、すでに取り調べた証拠が実は無罪の証拠であるということがあり得るわけです。だから、これはどんなに処分してしまったところで問題にならないというような考え方が許されるとすると、再審などはもうほとんど一方的にその捜査機関のほうによってじゅうりんされてしまうということになるわけでございます。ここにこの解釈上の問題があると同時に、制度の上でも不備があるというふうに私は考えます。  そこで、私は、再審制度だけではありませんけれども、一般のまだ確定しない以前の手続においてもそうだと思いますが、特にこの再審の場合については、証拠物件の保存といいますか保管というものを厳重にしなければいけないんじゃないか。もちろん、この関係者に還付してしまったというんであればそれはやむを得ません。還付された人が滅失したということになれば、これは非常に残念なことでありますけれども、それを還付しないで捜査機関の手元に置いておきながら、これを適当に処分をしてしまうというようなことがあって、単なるそれは物質的な被害を被告人あるいは無実の者に負わせるというにとどまらず、そんなものではなくて、まさにこの有罪、無罪を決する重要な手段を一方的に自分の占有下にあることを奇貨として処置するということになるわけでありますから、私は、捜査機関がその領置している証拠物件はすべてその責任において管理をし、そしてかりそめにも滅失することのないような責任を負わなければならぬ。廃棄処分などというのはもうもってのほかだと思うのです。万一そのような義務に反して滅失したときには、これは不可抗力でない限り、まあ被疑者または被告人あるいは罪の確定した、判決によって有罪を言い渡された人たちの有利になる現象、つまりそういうものがあれば罪の有無もしくは情状についてよくなったであろうという推定ですか、そういうようなものがなければならない。こういうふうにしておかなければ、かってに処分をしてしまって、それでもう新証拠ではないからというような詭弁を弄して、そしてこの損害は払うけれども、その損害たるや物の価値だけであるというようなことで済まされてはならない。これはまさに不正行為に通ずるものだと私は思うのですが、この点、重ねてお尋ねをいたしたいと思います。

安原美穂法務省刑事局長

○安原政府委員 青柳先生御指摘のとおり、検察官は、無事の者が罰せられるようなことがあってはならないという意味において、そういうことをいたずらに人の刑事責任を追及するに急であってはならないということはもう申すまでもないところでございます。と同時に、証拠品の処分ということにつきましても、それが刑事事件に持つウエートからいいましても、きわめて慎重な扱いをしなければならないことも御指摘のとおりでございまして、この点、何ら異論はございません。  ただ、先ほどからのお話の新たな証拠の関係でございますが、たびたび申し上げますように、なたにいたしましても、マフラーにいたしましても、すでに原審の手続においてそれが審理の対象になっておるものであり、上着も返り血がないということで、原審ではすでにそれを前提にしてあの判決がなされておるわけでございまして、その評価が違っておるではないかということは、この再審制度の趣旨からいきましても新たな証拠にはならないと思いますけれども、先ほど——具体的にはどういうことになるかわかりませんけれども、その評価は評価といたしましても、青柳先生御指摘のように、別に何か新たな、そのなたと原審の審理の対象にならなかった何か新たな証拠がその後発見されたということで、あわせてすべての評価が変わってくるといろことであれば、それはその後に出た何ものかの証拠、それが新たな証拠ということであって、それは再審制度のこの四百三十五条の新たな証拠にはなるはずでございますし、ただ、その場合におきましては、もう一つ、明らかな証拠になるかどうかの判断がまた必要になってくるということでございまして、この再審制度における新規証拠、証拠の新規性ということは、これは制度の本質的な問題ではなかろうかと、こう思うのでございます。  たとえて申しますならば、大陸におきますドイツにおきましてもフランスにおきましても、証拠の新規性ということは常に要件になっておりますし、アメリカのいわゆる再審に当たると思われますニュートライアルという制度におきましても、証拠の新規性ということが要件になっておるのでございまして、その点は、わが国だけが特に厳格な制度を持っておることにはならないということにもひとつ御留意を願いたいと、かように思います。

青柳盛雄日本共産党・革新共同

○青柳委員 私の申し上げたことの一面のほうだけはまあ合理性があるように認められているようでありますけれども、もう一面のほうですね、鑑定技術などというものは日進月歩で非常に進むものなんです。だから、たとえばこの事件は昭和二十三年に起きまして、もうすでに二十五年もたっておりますけれども、この二十五年の間、四半世紀の間に鑑定方法などは画期的な進歩があると思うのです。したがって、その当時の一医師が鑑定的な意見を述べた、それだけにたよってしまって、実はこの凶器が違うのだということが新しい鑑定方法を講ずれば明確になる、明らかになるという場合があり得るわけです。したがって、その対象物件を滅失するなどということがあってはならない。それをやってしまったら、これは非常に不利な状況を既決囚に与えることになるわけです。この点私は「あらたに」ということばが新証拠というふうにすぐに読み直されているところに問題があると思うのです。「あらたに」というのは、やはり鑑定など自然科学的な技術のやり方で新しく検討された場合に明らかな無罪の証拠になるというようなことをも含むものだと私は思うのですが、それはあくまでも理論というか解釈の問題でありますけれども、私は紛失させるというところに非常に問題を感ずるわけです。これはもう問答無用にしてしまうわけですね。いまの「あらたに」というのをどういうふうに解釈し運用するのがいいのか。いわゆる証拠の新規性というものがどういう形であらわれてくるかというような議論以前の問題ですね。対象にし得るかけがえのない物件を一方の当事者、つまり国と無実を主張する者との間は平等対等でなければならないわけでありますが、その一方のほうが自分に不利と見たらかってに処分してしまう。こんなことが許されていいかどうか。正義に合ったものといえるかどうか。損害は払いますなどというそんな物質的な問題ではないと思うのですね。それ以前の問題です。だから、民事訴訟などでこれを争ったということはその不正をつく意味で窮余の一策でやったことでありましょうけれども、私は、制度として、そういうことをやった場合には被告あるいは有罪を言い渡された人に有利になるのだという、こういう法律的な擬制を設けるべきではないか。そうすることによって初めて、過失にせよ、また故意などということがあってはとうてい許せないのですが、保管が保たれるであろう、こういうふうに思うわけです。現実に再審事件ですでに取り調べられた証拠の再検討ということが各種の事件で問題になっているわけですが、それがなくなってしまった。被告である国のほうでなくしてしまった。再審の場合、刑事事件だってまさに被告的立場になるわけですね。こういうことはあってはならないから、再審問題についてはそういう制度的な保障を設けるべきではないか。私は再審だけでなく一般の手続でもそういうことがあっていいと思うのです。どうもいよいよ無罪の証拠が出てきそうになると、自分の手元にあるのをいい幸いに隠匿してしまうというような例はもういろいろの事件で暴露されておりますけれども、松川事件の諏訪メモなどもその中の一つであったと思いますが、いずれにしても、一方の当事者が隠してしまうというようなことは、これは民事でもアンフェアだと思いますけれども、刑事事件で、権力を握っている国の代表者がそういうことをやっていいのかどうか、この点ひとつ法務大臣の御見解も承りたいと思います。

中村梅吉自由民主党法務大臣

○中村法務大臣 ただいまお話がありましたような事件は私も特殊の事件だと思うのですが、確かに証拠物件にしたものは十年間なり二十年間なり的確に保管をすべきものであろう、かように思います。  ただ、再審制度につきましては、諸外国の立法例等を調べてみますと、日本の再審が特に狭いというのでなくて、大体世界的の水準であろうと思いますが、ただ、再審の幅をもっと広げたほうがいいのではないかという意見が世間にございますから、この点につきましては事務当局も真剣に研究はしておるようでございます。ただしかし、直ちに拡張するということはむずかしいいろいろな問題がありますので困難であろうと思いますが、今後とも世間の一部にそういう意見がある以上は十分に検討を続けてまいりたい、かように思っております。

青柳盛雄日本共産党・革新共同

○青柳委員 きょうは時間がありませんので、免田事件の特徴的なことを例証しながら私どもが考えておることを述べたわけであります。けれども、今後とも再審事件で問題になるいろいろのことがありますので制度的な検討を進めなければならない。政府に対してもそれを強く私は要望いたしまして、きょうは質問を終わります。

小平久雄自由民主党

○小平委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後零時三十七分散会

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