社会労働委員会 第20号
- 発言数
- 98 件
- 登壇者
- 13 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1974/04/24
会議録
○野原委員長 これより会議を開きます。 雇用保険法案、雇用保険法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案、国有林労働者の雇用の安定に関する法律案並びに失業保険法及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。 本日は、ただいまの各案審査のため、参考人として次の方々に御出席をいただいております。 農林漁業金融公庫副総裁岩尾一君、日本福祉大学助教授大木一訓君、日本労働協会理事大宮五郎君、春闘共闘委員会雇用・失反対策委員会事務局次長谷正水君、以上四名の方々でございます。 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。 皆さまには御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。 御承知のとおり、雇用保険関係四案は、いずれもわが国の雇用失業情勢及び失業保険制度を含む雇用対策全般にわたる重要なる案件でありますので、当委員会といたしましては、今日まで慎重なる審議を続けてまいった次第であります。 したがいまして、この機会に広く各界からの御意見を聴取いたしまして、審議の参考にいたしたいと存ずるところであります。何とぞ、それぞれのお立場から率直な御意見をお述べいただきたく存じます。 なお、議事の都合上、最初に御意見を十五分程度に要約してお述べいただき、そのあと、委員からの質疑にもお答え願いたいと存じます。 また、念のため申し上げますが、規則により参考人の方々からの委員への質疑はできないことになっておりますので、御了承を願います。 それでは、まず岩尾参考人からお願いいたします。
○岩尾参考人 ただいま御指名をいただきました岩尾でございます。 私は、この雇用保険法案がつくられましたもとになります、失業保険制度研究会と申しまして、昨年の一月に雇用審議会の答申に基づいて労働省に設置をされました研究会でございますが、この研究会に参画をさせていただきまして、その答申というものが大体素案になりましてこの法案ができたわけでございます。したがいまして、現在のこの雇用保険関係法案は、現行の失業保険制度を全面的に改正するものでございますけれども、私はその方向なり内容なりというものにはすべて賛成でございまして、むしろ本年一月に社会保障制度審議会で答申がございましたように、この改正がおそきに失しておるというような感じがいたします。すみやかに御審議をいただきまして、改正が成立するように、こういうふうに期待をいたしております。 そこで、この法案の提案理由なりあるいは個々の内容につきましては、先生方もよく御承知でございますし、政府当局から御説明があったかと思いますので、私からは現行の失業保険制度をなぜこういうふうに全面的に改正をしなければならなかったかという、そういった改正のための背景となったものの考え方というものについて、最初にお話しをいたしたいと思います。 失業保険制度を今回全面的に改正をすることになったのでございますが、その背景となりました考え方は、一言にして申しますと、やはりわが国の社会経済におきます雇用情勢というものが、制度創設のときから時々刻々変わってきたわけでございますけれども、現在ではたいへん大きくさま変わりに変わってきておるということが言えるのではないかと思います。 これが一番基本的な問題でございますが、なおこういった背景というものをもう少し分けてお話しをいたしますと、第一に考えられますことは、この雇用情勢の変化の一番大きなものは、量的な雇用情勢が変わったということでございます。皆さんも御承知のように、昭和二十年代の求人倍率というのは大体〇・五くらいでございました。これがだんだんふえてまいりまして、四十年代には一になり、現在の四十八年度では非常に高くなりまして二・三という数字になっております。もちろんこういうふうに求人倍率がふえてまいりましたのは、一つには日本の経済というものが戦後急激に成長いたしまして、そのために企業の活動というものが非常に積極化いたしましたから、求人というものが非常に増加をしておるということが一つございます。 それからもう一つは、こういった経済成長と対応いたしまして、進学率が非常に上昇をいたしまして、特に中高卒の新規就職者というものは、全部進学をいたしますので、たいへん減ってまいりまして、求職者というのが非常に急減をしたわけでございます。ちょっと数字を申し上げますと、三十年から四十四年ころまでの大体の中高卒の新規求職者というのは、ほぼ百万くらいでございました。これが四十八年には六十三万というふうに非常に減ってきております。こういった求人の増加と求職の減、この二つがございまして、いま申し上げましたような求人倍率の大きな変化が出てきておるわけでございます。こういうふうなことは端的にいいますと、やはり制度ができましたころの労働力過剰の状態から非常に労働力不足の状態に入ってきておる、雇用状態が逼迫しておるということが言えるかと思います。もちろん先生方も御承知の現在の経済情勢でございますから、資源あるいは環境の非常な制約を受けております日本経済としては、今後においてもこういうような逼迫した状況が続くかどうかということはもちろん保証はできませんけれども、総体として若年労働力というものは非常に減ってきておるということは明らかであると思います。そこでこういうふうに若年労働力が減ってまいりますと、いわゆる離職の場合の任意退職者というものがたいへんにふえてまいりまして、古い統計でございますけれども四十六年の統計で、任意退職者は退職者の中の大体八二%というふうにいわれておりますけれども、失業保険金を受給しておられる方の中で任意退職者の数字をとりましても、昭和四十年度が三七・一%、四十七年度が五一・三%ということで、年々増加をしておるわけでございます。現行の失業保険制度は、御承知のように昭和二十二年、戦後の非常に荒廃かつ混乱した経済状態のときに設定されたものでございまして、そのときに想定をされる情勢というのは、非常に労働力は過剰である、それから退職をされる方は自己の意思に反して、任意でない退職であるということが大体の前提というふうになってこの制度ができておるわけでございます。ところが、いま申しましたように、非常に雇用情勢が変わってまいりまして、退職者の中の大半というのが任意退職者であるというような情勢になってまいりますと、現在の失業保険制度でとられております、たとえば給付率というのを一律に六割というふうにしてしまう、あるいは給付の日数というものを被保険者期間に応じて単純に上下をつけるというようなこと、これがちょっと現実にそぐわないという情勢になってきておると思うのでございます。むしろ現在のような労働力が不足しておる状態におきましては、実際の給付は低所得者の方に厚くするというような方向で行なうべきでありますし、それから給付日数にいたしましても、就職の難易というものに応じてこれを考えていくというふうに制度を切りかえていく必要があるというふうな状態になってきておると思うのでございます。問題になっております就職支度金のようなものも、就職が困難な人のためにつくられておるという制度が、実際にそういうふうに行なわれておるかということになりますと疑問なしとしないというような現状でございます。そういう意味からも、ほんとうの意味での就職を必要とする方にできるだけ就職をしやすくするように制度を変えていくということが必要になってまいったわけでございます。これが失業保険制度を変えていく第一の理由でございます。 それから二番目に雇用情勢全体の背景の中で、一番に量的な雇用情勢の変化ということをいま申し上げたわけでございますけれども、二番目には量的だけではございませんで、その内容である質的な雇用の態様というものが非常に変化をしてきておるわけでございます。もちろん量的に雇用情勢が変化いたしますと、いわば量的には完全雇用というような状態になったわけでございますけれども、実際に現在の完全雇用といわれておる状態を分析いたしますと、たとえば年齢別あるいは地域別あるいは産業別ということで、たいへん不均衡な状態になっておるわけでございます。年齢で申しますと、有効求人倍率が大体三十歳から四十五歳の方が二倍ということでたいへん不足をしておるわけでございますけれども、これが四十五歳から五十五歳の方になりますと一ということで、五十五歳をこえますと〇・三ということで非常に就職しにくいという状況になっておるわけです。それから地域的な不均衡ということを申し上げますと、皆さんも御承知のように九州、東北というのは大体新規の求人倍率が一を切っております。〇・七とか〇・六、一方関東、近畿、東海というところは二以上というような高い求人倍率であるというような不均衡が出ております。さらには皆さん方も御関係のあります社会福祉部門、たとえば看護婦さんあるいは保健所の保健婦さんといったような、社会にとって一番必要な部門にたいへんな労働力の不足ということが出てきておるわけでございます。こういうような質的な不均衡というものを放置しておくわけにはいかないわけでございまして、従来の失業保険制度といいますか、現行の失業保険制度では、先ほど申しましたような雇用情勢を前提としてものを考えておりますから、悪いことばで申しますと、手当たり次第に職場を提供すればいいというような考え方があるような気が私はするわけでございます。それではいけませんので、これからはその求職者の能力に応じ、かつ必要な職場に必要な人が雇用されるようなそういう雇用の促進、雇用の改善ということをやっていかねばならない。そういう意味でも現行の失業保険制度というものは全面的に変えなければいけないのではないかというふうに考えたわけでございます。たとえば今後の日本経済の状況によって起こります休業、操短というものに対しての手当てとか、あるいは定年延長とか、あるいは通年雇用とか、あるいは産業の地域の再配分であるとか、そういったもの、あるいは福祉施設に対して助成をしていくというようなこと、こういうようなことをどうしてもやる必要があるのではないかというふうに考えるわけでございます。 なお、この質的な雇用の変化について申し上げますと、これからの経済はどういうふうになるかというふうに考えますと、もう皆さんも御承知のように、資源的に、環境的に強い制約のもとに日本経済は置かれておるわけでございますから、したがってこれからの産業構造というのは、だんだん資源節約といいますか、省資源型あるいは技能集約あるいは知識集約といったような型に経済構造というものが変わっていかねばならない、また変わったほうがいいわけでございます。そうなりますと、こういった経済構造の変化に対応いたしまして労働力というものが必要な職場において十分その能力が発揮できるようなそういう体制、生涯職業訓練というようなことばが唱えられておりますけれども、雇用者の職業生活の全期間を通じて能力を開発していくというような、そういう能力の開発ということについても力を注いでゆかねばならない。そういうような体制に変わってきているわけでございます。もちろん現行制度におきましても、こういったことは福祉施設として実施をされておりますけれども、悪く言いますと、その内容はそのときそのときの情勢に応じてつけ加えられたものでございますから、多少思いつき的なものもございまして、必ずしもしっかりした目標を持ったものとは言いがたい。したがって、こういうことをもっと体系化して、しっかりした訓練体制というものを、あるいは雇用改善の体系というものをつくっていく必要がある、こういうふうに考えたわけでございます。 それから、三番目の問題は、雇用者社会というものが非常に進展をしておるというふうに考えるものでございます。ちょっと耳なれないことばでございますけれども。昭和二十八年ごろの日本の雇用者の就業者全体に占める割合というのは四二%でございます。これが現在外国、先進諸国は、アメリカが九〇%、英国が九二%、西ドイツが八二%、フランスが七八%ということで、外国は雇用者の就業者に占める比率がたいへん高いわけでございます。雇用者天国といわれておりますけれども。したがって、外国では政府の施策というのは、国民の大多数を占める雇用者を対象といたしましてあらゆる施策が展開されておるのでございますけれども、わが国は昭和二十八年ごろは四二%でございますから、雇用者に対する政府の施策というのはどうしてもなおざりにされてきておりましたし、その一番いい例は私は税法だと思っておりますけれども、所得税法とかあるいはその他の税法あるいは税務行政という面においてクロヨンとかあるいはトーゴーサンとかいわれておりますけれども、そういった問題に反映をしておると思うのでございますが、この雇用者の比率というものが最近上がってまいりまして、昭和四十七年度で六八%というふうに上昇をしてきております。もちろんこの上昇は、第一次産業いわば農業、水産業からだんだん第二次、第三次の産業へと労働力が移動してきたわけでございますけれども、こういうように雇用者の比率が高まりまして、この調子で、こういうテンポでふえてまいりますと、五十二年ごろには七四%ということでだんだん先進諸国に近づいてくる。こういう意味で、私は雇用者社会というものが日本にやってくるということを考えるものでございます。こういうふうに考えますと、現在就業者の方がわが国では五千百三十七万おられますけれども、そのうち雇用者が三千四百七十万でございます。この雇用者の三千四百七十万で失業保険が適用されておるのはわずかに二千二百四十万でございます。したがって、そういうことから申しますと、この失業保険制度というものを雇用者全体に対する制度として考えるならば、全産業に適用していくというような改善を行なわねばならない、こういうふうに考えたわけでございます。一方、そういった全産業に及ぼすとともに、その中身といたしましては、雇用者の生涯を通じて充実して豊かな生活が送れるような、そういう施策を展開すべきでございますけれども、現在の制度は、先ほども申しましたように、職業期間だけを通じましても、たとえば失業保険、労災保険、健康保険、厚生年金あるいは船員保険というふうに、たいへんばらばらにできておりまして、沿革的に体系がとれていないということが言えるかと思うのでございます。そこで私は、こういった体制をこの失業保険を改正する機会に改正をいたしまして、雇用者に対して全職業期間を通じて、失業の保障だけでなく、雇用に関連したあらゆる施策というものをその中へ取り込むような、そういう意味で雇用者に職業生活の安定を保障する、そういう制度をつくっていったらどうかというふうに考えたわけでございます。雇用者に対しまして、安定した雇用生活、豊かな職業生活を保障する施策ということになりますと、たとえば失業の保障だけを取り上げましても、一つのやり方は、失業の保障というのを、本人の責めに帰すべからざる失業については全部公的負担あるいは国の負担ということでまかなっていくというような、保険方式ではないやり方も考えられます。それから一方で、一つの保険方式でこういうものを全部取り込んでいこうという考え方、社会連帯の思想による考え方があるわけでございます。私らはその辺を議論いたしまして、従来のいまあります制度とのなじみということを考えますと、急激にこれを国庫負担だけでやるということは問題ではないか。特に国庫負担だけでやるというふうになりますと、対象となる給付というものをかなりしっかりしたものに圧縮をしていかなければならないということになりますから、かえって激変が起きますので、そういう意味からはむしろ現在の保険制度というものを続けていって、その中でいま申しましたような雇用者のあらゆる事故というものを取り込んでいくというような方向をとったほうがいいのではないかというふうに考えたわけでございます。 社会保険の方式をとるということになりますと、当然必要な給付に応じて保険料が取られねばならないし、過当なあるいは過重な保険料というものを雇用者から取るということは、これはよくないことになるわけでございますから取らないようにしなければいけない。一方、そういった意味で申しますと、現行の保険料率というものはむしろ引き下げるという方向でものを考えたほうがいいのじゃないか。また給付の内容につきましても、いま申しましたように、保険であれば必要な給付をまかなうだけの保険料でいいわけでございますから、その必要な給付というのは真に再就職の促進に役立つようなそういう給付になるべく限定をしていって、全雇用者の負担というものを軽減していくということを考えるべきではないかというふうに考えたわけでございます。 また、保険方式をとりますと、もちろん保険でございますから掛け捨てということもあるのでございますが、もう明瞭に最初から自分はこの保険の給付を受けることはないのだということがはっきりしておるような、そういう人に対してまで保険料を徴収していくというのは、雇用者の保険としてはやや行き過ぎではないかという気がいたしますので、そういうものについては掛け捨て感をなくすために保険料をある一定年齢以上はとらない、免除するという方向にしてもらいたいということで、大体そういうような考え方。 要約をいたしますと、失業保険制度ができましたころの雇用情勢というものは、いま私が申しました量的な変化あるいら質的な変化、あるいは雇用者社会への進展という面から大幅に変わってきておりますので、その変化に対応できるような制度をつくりたいということで、この失業保険制度の全面改正ということを考えたわけでございます。 非常にざっぱくでございましたが、以上をもって私の意見を終わります。(拍手)
○野原委員長 次に、大木参考人にお願いいたします。
○大木参考人 御紹介いただきました日本福祉大学の大木と申します。 日ごろ社会保障や雇用政策の充実にたいへん関心を持っております研究者の立場から一言御意見を申し上げたい、こういうふうに思います。 御案内の雇用保険法案そのものについて意見を申します前に、一言前置きを言わしていただきたいと思います。それは、国会にこの法案が提出されます過程でこの法案がどのように作成されてきたかということは、すでに岩尾参考人のほうから申されましたように、失業保険制度研究会という労働大臣の私的な諮問機関で具体的な作成過程を経てここに提起をされておるわけですけれども、このような経過を通じてこうした法案が国会に出てくるという、こういう過程について、私はあまり好ましいことではないのではないかというふうに考えます。とりわけこうした被保険者、広範な雇用者の利益にかかわる法案が、もちろん一応職安審議会その他を経過をしてきているわけでありますけれども、そうしたところで実質的な法案作成の作業が行なわれずに法案が提出されてくる、こういうことについては今後十分検討されてしかるべきではないか、こういうふうに考えております。 さて、この雇用保険法案そのものについてでありますが、御承知のように失業保険というこの制度は、資本主義社会のもとでのさまざまな多くの社会保障制度の中でも、とりわけその発達がおくれている分野の法制であります。特にわが国の場合には、戦前ついにこの法制度が日の目を見ることなく、戦後に至りましてようやく日の目を見、そして今日までたいへん劣悪だといわれますわが国の失業保障制度の中でも、曲がりなりにも一つの失業保障の中心的な制度としてその役割りを果たしてきた、こういうような経過をたどっております。 その失業保険制度が、今日名前も雇用保険法というふうに抜本的にその名前を改めて提出されているわけでありますけれども、その内容を全体として見ましたときに、私は一言で言いますと、第一に、失業保障制度としての失業保険制度というものが、もしこの法案が成立するというようなことになりますと、最終的に終わりを告げる、こういうことになってしまうのではないかと思われるのであります。 それから二番目には、このたびの雇用保険法の大きなねらいの一つは、一方で失業保障の拡充をうたい、同時に他方では雇用政策の一そうの拡充をうたっているわけでありますけれども、その雇用保障の拡充という面ではもちろんのこと、雇用政策の拡充という面でも、これは実際には拡充ということになっておりませんで、事実上勤労者の拠出で多くの低賃金労働者を大企業本位に雇用させていくことに事実上役立つ、こういう性格を持っているものではないか、こういうふうに考えます。 それから三番目に、今回のこの法案を拝見いたしますと、やはり失業保険財政というものを、これまでの制度の本来の趣旨から大きく逸脱いたしまして、実際には雇用者つまり企業主に対するさまざまな交付金の増額や、あるいは失業保障拡充の上での政府負担の軽減のために役立てる、こういうことになっているのではないかと思われますし、さらに従来から日本の社会保障の場合たいへん特徴的でありました行政当局による適用対象者に対するさまざまな官僚的統制の強化、こういうことも今度の法案についてはたいへん特徴的に見られるのではないかと考えております。 多少具体的に、限られた時間ではありますが、申してみますと、たとえば今度の法案で見ますと、その目的条項の中で、従来のそれと大きく異なりまして、生活安定それから就職促進、職業の安定という三つの大きな目的が並列的に取り上げられてきているわけです。これは社労の委員の皆さん方はおそらく思い出されますように、一九六九年にこの失業保険法の改正がこの国会で討議されましたときに、これらの目的をその目的条項の中に含めようという政府案が実は実際には実現しなかったという経緯がございます。そのときにもやはり問題になったのでありますけれども、私たちの目から見ますと、やはりこの目的条項を考えますときに、従来失業保険制度が実際どういう運用をされてきたのか、その問題を抜きにこの点を考えるわけにいかないと思っております。 それは、とりわけ第一には、失業保険のいわゆる給付の適正化という形で、実際には当然失業保険の受給の権利を持つ人々がその受給の締めつけを受け、そして十分な生活安定の機会を得ることができない、こういう事態が多く起きてきたわけであります。それと同時に、もちろんそれは季節労働者などの場合はとりわけそうした給付の切り下げ問題が大きく問題となってきたわけでありますし、さらには、この例の六九年の改定のときに、いわゆる福祉施設規定ということが盛り込まれましたけれども、こうしたものを拡大解釈をして、さまざまな制度本来の趣旨に沿わない形でいろいろな財源支出が行なわれてきているというようなこともございます。そうして従来の失業保険の労働力不足ということを前提にいたしました運用のもとで、実際に労働組合運動の面でしばしば大きく問題となってまいりましたように、不安定な低賃金労働者が非常に増大をしてくる。とりわけ高齢者や主婦、こういう部分を中心にいたしまして、パートや日雇いといったような形での低賃金労働者がたいへん増大するということが、この失業保険の運用とのかかわりで問題にされてきたということもございますし、それからさらには職業安定所そのものが、労働者にとって、雇用者にとって安定した職業機会を確保するという上で十分な機能を果たさない。むしろ職安を経由した入職者の割合というものが傾向的には低下するという現象さえ見られるようになってきております。こういうようなことを考えますと、やはり私たちはかなり慎重にこの点を考える必要があると思いますが、とりわけその点で私たち注目しておりますのは次のことであります。 それは例の失業給付という点であります。今回の法案でこれは求職者給付と就職促進給付という二つに大別して提案されておりますけれども、失業という名前はついておりますが、この給付の性格が従来の失業保険のそれとは抜本的に異なっているという点を私たち注目をしているわけであります。それは法案そのものに規定されておりますように、職安に求職の申し込みをするという条件のもとで初めてこれらの給付が支給をされるということになっておりまして、これはたとえば失業という場合に、確かに一定の求職の意思というものを前提としているわけでありますが、しかしそのことが、たとえば職安に求職の申し込みをしなければ求職の意思がないというふうに断定をする、あるいはまた一方的に政府当局が認定をしなければ求職の意思がないというふうに断定をする、こういうふうなぐあいにはいかないであろう。そういうことをもしするならば、それは実際の多くの求職者たちの間では、職業安定所の紹介する仕事というのは賃金、労働条件等からいいましても、普通の縁故その他民間でみずから求職開拓をいたします場合よりもはるかに劣悪な条件のものしか職安を通じては紹介されない、こういう事態もありますような現状でそうした規定を設け、求職を要件に初めて失業給付をするということになりますと、これはもはや本来の意味での失業保障というよりも、むしろ初めから失業を前提とせずに、いわば職案の指導のもとで一定の、事実上は低賃金雇用への就職を強要していくということにもなりかねない、そういう性格を持つものではないか、こういうふうに考えております。 さらに私たち注目しておりますのは、今回の法案の中身で失業給付が全体としては拡充をされているというのでありますが、その性格はさておいて、その個々の内容を見てみますと、たとえば今回設けられました年齢別所定給付日数の設定というものを見てみますと、これが青年やとりわけ婦人にとってはたいへん不利な規定となり、実際上失業給付水準の大幅な引き下げになるということも、同時に私たちは見ておかなければならないであろうというふうに思います。 それからまた就職支度金につきましても、不正常な利用がたいへんなされているということを岩尾参考人が申されたのでありますけれども、しかし就職支度金の支給は、従来給付日数に通算して計上しておりましたのを、それに通算せずに、福祉施設の費用のほうにこれを計上するというような事態に今日ではなっております関係もあって、一そうその不正常が見られるようになっているのでございまして、これはかなりそうした制度上の問題に由来するというふうにいわなければなりませんし、そして今回の法案で出されていますような通常雇用の就職支度金という、特別に就職困難な者に対してのみこの就職支度金を出すということになりますと、実際に従来雇用安定の上でかなり大きな役割りを果たしておりましたこの就職支度金の役割りというものが全面的に否定をされるということで、この面でも制度の後退ということをいわなければならないだろうというふうに思います。 さらに季節労働者の問題でございますが、今回の法案で皆さんにも御注意いただきたいのは、単に季節労働者というよりも一般に短期雇用者の場合について、一定の失業給付の切り下げということが提起をされているということでありまして、こうなりますと、この法案の趣旨に沿えばかなり手厚い対策をしているということでありますけれども、実際には最も失業の犠牲を受けている層についてその失業保障の機能が弱められてしまう、こういうことになのるであります。 さらに、たとえば上薄下厚というようなことで、たとえば年齢別のものにあわせてさらにこの給付水準を五割から七割というような範囲で移動させるということになっておるのでありますが、皆さんも御承知のように、わが国では年功的な賃金が支配しておりますし、そのもとでは、賃金日額の高いほうというのは、これは比較的高齢者層が多いのであります。その高齢者層がこの保険の給付率が五割近くまで引き下げられるということになりますと、これは実際に高齢者にとってたいへん手厚い対策をした、そういう法案であるというようなことについても、かなりこれは割り引いて考えないといけないのではないか、こういうふうにも考えております。 さらに、次に私たちが注目しておりますのは、この保険財政の問題であります。この保険財政を私たち考えますときに、雇用促進のためのさまざまな対策ということがなぜこの失業保障の問題と込みで行なわれなければならないのか。確かに、保険料のうちで一定の部分だけがいわゆる雇用安定のための三事業に使われるということになっているのでありますが、しかし、これは全然別会計でそれが設けられるということではありませんし、しかもこの失業給付そのものの性格が変わってきているという、こういう条件のもとでは、かなり私たちは問題として考えなければならない。その点で、とりわけこれは従来の審議の過程でも明らかになったというふうに思われますけれども、今回の法案に従えば、実際の失業給付に使われます額については、これは大幅な削減がなされることになる。事実上大体八百億円以上は削減されることになるという、そういう計算もすでに出されておりますわけですし、そうしてまた、この保険料の労働者負担分の割合が一定の割合で改善をされたということをいいましても、しかしその部分については、ほぼこれは失業保険財政からこの雇用対策のためのということで、雇用者のためのさまざまな給付の増大、こういう形でそれらの財源が使われていく、こういう性格も同時に持っているわけであります。 私たち、問題としなければならないというふうに私たち研究者の間で問題になっておりますのは、今回の法案では、たとえば定年延長奨励金でありますとか高齢者雇用促進交付金でありますとか地方雇用機会創出交付金でありますとか、いろいろな交付金が設けられ、まあ従来からあるものを整備されているわけでありますけれども、そうしたものはすべて雇用主に対して支給されるものであります。現在の雇用者の実際の雇用条件を改善していきます上で、そうした事業主に対する交付ということが、はたしてそういうことで今日の雇用状態の改善、雇用の安定をはかることができるかといえば、これはたいへん疑問だといわなければなりません。従来から、たとえばこれは中高年齢者等に対する特別の措置などの場合にも見られたことでありますが、これらの雇用促進のためのさまざまな交付金が事業主に払われるということのために、それらが悪用されて、実際には政府から一定のそれらの交付金を手に入れながら、きわめて劣悪な賃金、労働条件で勤労者を雇用する、こういうような事態もしばしば見られたところであります。そういうようなことから考えますと、この事業主そのものに対する一定の規制、それから勤労者そのものに対するその雇用安定のための一定の独自の支給制度の確立、こういうことなしに私たちは雇用安定というものが真にはかられるというふうには考えにくいのであります。 私は、ここにいま一九六九年の西ドイツの雇用促進法の法律条項を持っておりますけれども、たとえばこれなどを見ましても、西ドイツの場合、とりわけ急進的な雇用促進法を成立させたということではないのでありますが、そこでもたとえば失業者に対するその失業保障のための給付ということは、これは職業紹介あるいは職安に対する求職ということとはかかわりなしに、きちっと権利として、受給権としてこれは確立をしているわけでありますし、しかもその保険財政だけでなお十分でない、雇用促進のためにはなお失業保険のほかに一定の支出が必要であるという場合には、これは政府が負担をしまして、そうしてそのための給付を独自にまた支給をする、こういうことになっているのでありまして、この保険財政の中にそうした雇用安定や就職促進といったような、そうした異質のものを混入させて行なうというようなことは、行なっておりません。 こういうようなことを見ましても、私はやはり今回の法案について深く皆さん方が検討されることをお願いしたいというふうに思っております。とりわけ今回の法案が、労働組合その他のいわゆる被保険者の代表がこの制度の運営管理に参加をする、こうしたことを大前提とした内容になっておりませんことは、今後の制度の発展にとってもたいへん不幸なことだというふうにいわなければならないと思います。 以上であります。(拍手)
○野原委員長 次に、大宮参考人にお願いいたします。
○大宮参考人 御紹介いただきました大宮でござ います。 私はこの問題につきまして、大きく三つに分けて申し上げたいと思います。一つは、現行の失業保険制度を改正しなければならないということについての考え方、第二は、内閣提案の今次雇用保険法案に対する考え方、第三には、今後に残されておると思われる問題点、三つに分けて意見を述べてみたいと思います。 まず第一に、現行失業保険制度に対する考え方でございますが、これはまず第一に考えられますことは、雇用失業情勢がこの失業保険制度発足当時と根本的に変わってきておるということでござ います。 御承知のように、昭和二十二年に現在の失業保険制度が発足したわけでございますが、その当時はちまたには失業者があふれ、しかも就業の機会がない、こういう状況でございまして、何はともあれ失業状態にある人たちの生活救済ということが最大にして唯一の任務と言っていい状況であったわけでございます。しかしながら、一九六〇年代に入ってから逐次、経済の拡大に伴いまして雇用に対する需要がふえ、一方においてそのころから人口構造の変化によりまして、労働力の新しい供給というものが制約を受けてきた。したがいまして、そのころからいかにして労働力が持っておるその力を高め、そしてその高められた力を発揮していただくか、これが非常に大きな問題となって出てきたわけでございます。失業というのはもとより社会的には最も悪い欠陥である、経済的には最も非能率的な現象でありますので、そのような雇用失業情勢の変化に伴いまして失業の予防、そして失業しておる人あるいは就業はしておっても不完全な状態で就業しておる人たちに就職を促進し、そしてよりよい状態で雇用ができるようにということが、大きな任務として要請されるようになってきたわけでございます。したがって、そのような情勢の変化に伴って、当然失業保険制度というものもそれに即応した形の内容の改正が必要になってきておるわけでございます。 〔委員長退席、山下(徳)委員長代理着席〕 一方、そのような経済情勢、労働力の需給関係の変化に伴いまして、失業保険の中にもいろいろ問題が出てきたわけでございます。世間に最もしばしば問題とされましたのは、失業が予定されておるいわゆる季節的な出かせぎ労働者の失業保険金の給付の問題、それから女子の結婚による退職者の失業保険の受給の問題、さらには本来、就職の促進と同時に就職後の定着ということをねらいとしました就職支度金が、必ずしも定着というほうの問題と結びついておらない状況になってきておる、こういう問題が指摘されてきたわけであります。これにつきましては、中央職業安定審議会の失業保険部会でも、抜本改正ということで検討が進められておったわけでございますが、中央職業安定審議会は御承知のように三者構成の機関でございまして、利害が一致しない問題につきましては、意見がなかなかまとまりにくいという面を持つことは否定できないわけでございます。もちろん大所高所からお互いに話し合いをまとめて進めておる問題はたくさんございますが、しかしやはりそのような性格からして、まとまりにくい問題もまたあるということも否定できないわけでございます。 そこで、このような失業保険問題に内在してきた問題を、別途つくられました学識経験者による失業保険制度研究会が、その研究の結果としてそのような問題を大胆率直に指摘いたしまして、そのようなところでまとめられた意見が、これは政府の責任においてそれを参考とすべきところはし、大体において研究会の結論というものが原案になって政府の原案がまとめられたわけでございますが、これは三者構成でなく、学識経験者という立場の人たちが努力した結果ということに対して、私は研究会の努力はたいへん高くこれを評価する気持ちでおります。 〔山下(徳)委員長代理退席、委員長着席〕 そのようにして従来問題になっておりました点が浮き彫りにされて、政府に踏み切る機会を与えた。 一面、また失業保険の財政面から申しますと、失業情勢の好転に伴いまして、財政は確かによくなってきております。そこでそのような面を受けまして、この制度をより広い範囲に適用を拡大し、また給付を改善していく、こういう問題が出てきておるわけでございます。そのほか、先ほど申しましたような情勢の変化に伴いまして、単に失業中の生活保障ということだけでなくて、とにかく失業しないで済むように、そしてまた失業しないで働いておる間に、その労働者が持つ力を十二分に発揮できるような体制をつくり、それを通じて労働者の所得の向上、生活の安定向上が実現されるようにということで、能力の開発とか雇用構造の改善その他福祉面の改善を通じてのそのような目的の達成、こういうことが同時に失業保険全体を運営していく上で必要性を感ぜられるようになったわけでございます。そのような情勢を受けて今回の雇用保険法の構想ができ上がったというふうに私は理解いたしますので、できるだけ早くこの法案が通り実施されていくのが望ましいというふうに考えております。 そこで二番目に、この雇用保険法に対する考え方の問題でございます。 まず第一に、これには従来の失業保険制度の根幹をなしておりました失業保障の機能があるわけでございます。今回の構想の中には、先ほど申しましたように全産業にこれを拡大し、この制度が働く立場にある人全体に均てんする、こういう方向が出されておるわけでございます。一方、全体として労働力の需給関係は好転はしてきておりますが、全部の人が同じようによくなっておるわけではございませんで、やはり就職困難な立場の人だとか、あるいは低所得でまだ改善が十分でないといったような立場の人が残されておるわけでございます。こういう人たちに対する配慮もまたこの際行なわれておるというふうに理解いたします。したがいまして、そのような点で失業保障機能は現行の失業保険制度よりも一段と強化されておる面があるというふうに考えます。 それから先ほど問題になりました季節労働者あるいは女子の結婚退職者の問題あるいは就職支度金の問題、これも現行の失業保険制度の批判として出てきておる問題に対応しようとするあとが見えておるわけでございます。これはあとで申しますけれども、多少問題の残っておるところは否定できないのでございますが、しかし基本的にはこういう問題点として現行制度の中で出てきたものを処理しようとする対応の体制が、今回の雇用保険制度の中には出てきておる。 それからいわゆる三事業といわれる雇用改善事業、能力開発事業、雇用福祉事業というのが使用者側の保険料負担で今回は出てきておりますが、これも現在の失業保険制度では福祉施設ということで、労使の拠出に基づく保険料を使いまして、必ずしも労働者の負担でなくて、使用者の負担あるいは政府の負担でやるべき問題があるのではないかというふうに考えられる点があったわけでございますが、その点を今回は三事業として明らかに別立てにして打ち出した、しかも全体の運用は、失業給付事業とあわせて最近の雇用情勢の変化に対応した有機的な運営面が考えられておるという点につきまして、現在のこの雇用保険法の案に対しましては、全体といたしますとおおむね妥当な線であるというふうに考える次第でございます。 しかしながら、なお今回の政府案に対しては若干問題が残されておる面があると思います。これを最後に申し上げます。 まず給付率の問題でございますが、これは上薄下厚という線で一応改正が行なわれております。そしてまた上薄の薄くなったほうは、現在の給付区分の上に積み増しした分に対して料率が少し下げられたという形になっておりますけれども、しかし、これは今後のこの保険全体の財政的な動向も関係はあると思いますが、薄という方向のことはできるだけ避けたほうが望ましいわけでございまして、現在の給付率より著しく低下するような給付率については御検討いただく余地があるのではないかというふうに思っております。 それから二番目には給付日数の問題でございますが、これは年齢区分によりまして、今回特に三十歳未満のところの給付日数がだいぶ少なくなっております。考え方といたしましては、単に保険料納付の日数だけでなく、やはり失業の危険性そしてまた失業した場合の再就職の困難性、こういうことを考慮して給付日数をきめるという方向はけっこうだと思うのでありますけれども、こういう問題は現行の状況とあまりにも急激な変化ということは望ましくない面が出てくるわけでございまして、その辺のところも今後なお若干の御検討をいただく必要があるのではないかというふうに思っております。 それから三番目には季節労働者に対する特例措置の問題でございますが、これは中央職業安定審議会で検討した段階の政府原案から見ますと、保険料のほうは答申の線を尊重していただきまして、だいぶ緩和して現行料率に近づけていただいておりますけれども、給付の面におきましてもやはり、現在の制度とあまりにも著しい差が生じるということはできるだけ避けるという方向のこともなお御検討いただければ幸いだと思います。 次に日雇い労働者の段階制の問題でございますが、これは現在の二段階制から三段階制へ一段階ふえておりますが、これもほかの社会保険の状況と一律には議論できない面はありますけれども、できるだけ今後機会をとらえて段階を多くするという方向のことをお考えいただければ幸いだと思います。ただ、これは最後に申します定員増加の問題も含めまして、職安機構の問題との関係もございます。職安機構の拡充強化と並んで、そのような手数の若干かかるようなことをそれに応じてさばいていくという方向をお考えいただきたい。 それから、いわゆる三事業につきましては、先ほど申しましたようにこれは一応の前進である。従来失業保険の中に福祉施設という形で何となく入っておったものを明確に区分したということは前進であると評価したいと思いますが、その運用にあたりましては、特に中小企業等がこれを十分活用できるような運営面の配慮をしていくことが望ましいというふうに考えます。 そのほか、この三事業の中には職業訓練等に対する費用の問題もございますが、これらは、政府として負担すべき部分につきましては、この三事業ができたからということであまり消極的にならず、積極的にこの点は政府負担のことも将来さらに考えてやっていただきたい。それから女子労働者に対する配慮、これもこの三事業の運営面については、女子の結婚退職による給付の改正問題も一方においてあったわけでございますから、特段の配慮をもってやっていただきたいというふうに考えるわけでございます。 最後に、先ほども申しましたように、これらのことを完全に、効率よくやっていくためには、職業安定機構というものはまだまだ不十分な点が多々あるわけでございまして、それについては、政府の一段の財政面その他の積極的な配慮というものが望ましいというふうに考えております。 以上であります。(拍手)
○野原委員長 次に、谷参考人にお願いいたします。
○谷参考人 春闘共闘事務局の谷であります。 私は、春闘共闘委員会に結集するすべての労働組合と、全国出稼組合連合会や農村労連などに組織された農村労働者の総意を代表する立場から、この法案に対する意見を申し述べます。 法律制度としての雇用保障あるいは失業保障は、個々の労働者の利益に何がどう具体的に結びついていくのかということが、私ども労働組合が法律制度を見る場合の判断の基準であります。 今回の法案に限らず、わが国の雇用・失業保障に関する諸法制はきわめて繁雑であり、かつ難解であります。その理由は、戦後の混乱期は別としましても、とりわけ一九六〇年代を通しての高度成長期における国の雇用政策が、一貫して労働者の利益に立った雇用保障制度としてよりも、企業利益優先の、しかも安上がりの労働力政策を基調として、きわめて非体系的に推し進められたということに基因しているのではないかと考えられます。現行の雇用諸法制が繁雑で非体系的である、こういう現状の中で、今回の雇用保険法案が明らかにされるに至りまして、われわれ労働組合としては、ますます難解であるという度合いを深めているというのが実情であります。有沢研究会報告が何カ月の歳月を費やし、どのような方法で、関係組織のコンセンサスを得られてつくられたのか、きわめて疑問であるというぐあいに考えます。と同時に、関係審議会の答申によっても、多くの批判が寄せられているところでありますが、労働組合としての組織的な検討の時間的余裕も与えられなかったのであります。また、何よりも私どもの不満は、被保険者としての労働者や労働組合の不満や要求が法案の作成過程で十分に取り上げられるという保証が全くと言っていいほどなかったのであります。したがって、法律制度が、労働者の利益に何がどう具体化されるかという判断の基準の働く余地も全く少なくなってしまう。そういったことがこの法案をめぐっての私ども労働組合としての率直な気持ちであると同時に、下部組合員あるいは組織としての反応であります。 次に、法案の内容に関して、失業保険の原則から見た雇用保険法案に対する批判であります。 その第一は、失業保険制度の目的と機能についてであります。本来、「失業保険は、被保険者が失業した場合に、失業保険金を支給して、その生活の安定を図ることを目的とする。」ということは、現行法第一条の規定によって明確であります。法制度としての失業対策あるいは失業保障対策が失業中の生活を保障すると同時に、就職を促進し、あるいはまた、失業の予防を措置するところまで機能を拡大していくということを私どもは否定するものではありません。また情勢の変化に対応して、法制度が量的、質的な雇用対策へ対処する、そういうこともあり得ると考えます。これは国の責任において当然とらねばならない措置でもあります。しかし失業対策あるいは失業保障対策が広く機能すべきだからといって、失業保険制度本来の目的と原則をゆがめたり、軽視したり、あるいは変質させていいということでは決してありません。 失業という事故は、資本主義における必然の悪徳でありますけれども、労働者の職業生活においての最大の悲劇であると同時に、人生における不幸でもあります。したがって、失業という事故を取り巻く前後の処置は最大限に必要であると同時に、失業中の生活は十分に保障されなければならない、これが失業保険制度上の当然の措置であるというぐあいに考えます。この基本原則は、制度機能がどのように広範化し、改革されようとも守られるべき原則であると考えております。そのためには、保険給付は、賃金の八割を基準にすべきが至当であると考えます。先進国といわれる諸外国では、給付の基本給は六割水準であっても、家族手当加算によって六割水準を突破して、おおよそ八割水準に到達しているというのが制度の実情であります。たとえばイギリスでは、定額基本給付六・七五ポンドに対して成人扶養家族加算が四・一五ポンドであり、基本給付に占める扶養加算の割合は、実に六〇%強であります。これに所得比例給付が加わり、その最高限を賃金の八割五分としているのであります。したがって、法案が扶養手当を廃止しているのは、きわめて重大なことといわなければなりません。諸般の事情によって、基本給付は賃金の六割を堅持しなければならないということをかりに認めたとしましても、実質給付を八割水準に発展させていく条件としての扶養手当制度でありますから、現在たとえそれが少額であっても、残し、守っていかなければならない制度であり、同時に、失業保険制度の発展を期するというためには、どうしても廃止されるべきではないと考えます。このような主張に対して、往々にして諸外国との賃金事情の違いが議論になりますが、賃金事情に違いがあるとすれば、それは第一に、国際比較でわが国は低賃金であるということであります。第二に、生活給を基本にした年功体系が基本になっているということであります。失業保険給付が、総額賃金を算定の基礎としているのも、一時金を含めた生活給であり、しかも低賃金であるがためであるというぐあいに考えます。その意味からとらえますと、法案が給付を上薄下厚としていることは本旨に反するのであります。基本給付と扶養加算を合算した総給付水準は、生活実態から考えてむしろ上厚下薄とならなければ実効性が伴わないというぐあいに考えます。 第二に、所定給付日数に関してであります。 ここで目につくのは、現行制度と対比すると給付の大幅な削減となっていることであります。失業保険制度は、制定時に一律百八十日給付から始まって、三十年法改正で短期被保険者に対する特例として九十日給付が加わり、それ以来、被保険者期間で格差がつけられました。今回就職の難易度を根拠として、年齢区分による格差を設けていますが、現行制度を年齢に換算すると、かりに十八歳、高卒で雇用されたものとして、六カ月後に九十日、十カ月で百八十日、二十三歳で二百十日分、二十八歳で二百七十日分、三十八歳で三百日分となります。現行給付日数と対比すると、法案で示している年齢区分による所定給付日数は、明らかに大幅な削減であるといえます。労働者はきわめて即物的に既得権益が被害を受けることに対して敏感に反応しますから、いかなる理由に基づくものであっても現在より後退する、いわば利益がそこなわれるということに反対するのは当然の感情であります。とりわけ三十歳未満を一年未満も一年以上も一律に六十日としたことは、短期雇用特例給付一時金とともに、これは受給権の侵害といわなければなりません。この中で問題なのは、給付の適正化という名のもとに、実質的な給付日数の切り下げが行政的に行なわれているということであります。特に結婚、妊娠、出産、育児、こういったことで退職を余儀なくされた婦人労働者にそれが集中的に強化されているということであります。これら婦人労働者の多くは、就業の継続を望みながら退職を強要される、あるいは育児、通勤条件などのために退職をせざるを得なかったものであって、いわば社会的に強制された失業といわなければならないと思います。したがって、職業生活を続けるための条件があれば就業できるし、また就業できる労働の意思も能力も持った労働者であります。そういった婦人の職業生活を維持向上させるという社会的な条件を整備するということなしに、失業保険制度から締め出していくということは問題であります。 失業保険が掛け捨ての中期保険であるという本来のたてまえから、給付日数格差を設けることが結果的にたてまえをそこなうことになるのではないかという議論もあります。また給付にからんで、労働の意思及び能力をめぐる失業の認定が重要な要素となっています。制度本来の目的と原則に照らしてみて、就職の難易度を根拠にして給付を削減するか、失業の認定を厳格にして給付日数を実際に削減するか、いずれの道をとるかといった行政上の問題としてではなく、失業保険の本質にかかわる問題でありますから、短期間の検討で簡単に結論を出すべき筋合いのものではないと私どもは考えます。 しいて結論を言えば、現行制度を最低限認めて給付を改善した、社会党によって提案されている改正案でいくのか、または保険原則に最も近いと思われる一律給付に近づける改正とするか、いずれかの道をとるべきであると思います。 以上のように、給付水準において、所定日数において、また失業給付を求職者給付としたことを含めて、失業保険制度の重要な変化がこの法案にはあります。つまり変質を意味するものではないかという批判があげられるのは、そういう論拠によるところであります。 第三に、季節労働に対する短期雇用特例給付の制度化の問題であります。 季節的受給者の増大が、現行制度のもとでは給付と負担の著しい不均衡を引き起こしたことから新しい方策として生み出されたようでありますが、まず問題なのは、出かせぎ季節労働者の急激な増大というものは、高度経済成長政策の強行の中で、農民切り捨て、農業破壊政策推進の結果だということであります。しかも、一方で、建設業をはじめ多くの産業が季節労働者を低賃金、長時間の労働力として利用し、また景気変動に際しては雇用調整の安全弁としているのであります。本来、こうした結果を失業保険制度が負うべき問題なのかどうかであります。しかし、現実には、出かせぎ労働者の仕事と生活の保障、農業経営の安定策がとられないで、解決の見通しも立てられていないというのが実情でありますから、われわれ労働組合としては、保険制度の中で労働提携を果たすしかないのであります。すでに各方面からの意見や要求によって明らかなように、とりわけ出かせぎ地帯では農民の生活と農業経営の維持のために、出かせぎ労働による収入と保険給付は欠くことのできない生活基盤となっています。 現行制度のもとでは、給付実態はゼロから九十日の幅があり、平均受給日数は四十八日程度といわれていますが、三十日以上九十日を取得している労働者にとっては明らかに削減策であります。受給資格要件は農業経営との関連できわめて重要なものでありますから、四カ月二十二日を六カ月とみなす現行制度を守り、障害を起こさないように考えなければならないと思います。そして九十日分の受給権を保障する道は、何としても残すべきであると思います。季節給付が保険財政上問題であるとするならば、国庫負担の増や季節的短期雇用の事業主負担を増額して対処すべきであります。 次に、三事業と保険制度について意見を申し上げたいと思います。 失業保険制度と法案に示された三事業は、失業者の生活保障を直接の目的としたものでない事業であり、本来、保険制度に組み入れられる性質のものではないと考えます。関係審議会の答申でもそれは指摘されていますし、専門研究者の議論でも大半が、なじまないとしています。結局このように発想せざるを得なかったのは、失業保険の体系そのものの乱れからそれが助長された、そういうところにこの法案の発想点があるように考えます。 失業保険制度の主要な事業は、言うまでもなく、失業者の生活保障のための保険給付であり、その主要な事業に従属する副次的な事業として、失業の予防、就職促進、その他の福祉増進のために福祉施設が規定されているというのが体系であります。これが失業保険会計に占める福祉施設の割合が増大をし、保険財政上の均衡が阻害されている、そういう事実を通して四十四年当時、国会審議においても目的と運用の矛盾が追及されたのであります。こうした体系上の乱れが、今回の三事業として姿を変えて出てきたと見ないわけにはいかないのであります。 そこで法案での問題点であります。たとえば能力開発事業においては、職業訓練政策と体系をどのように確立すべきかが重要な課題であります。そのことを抜きにして、企業内訓練に交付金を拡充し、公共訓練を充実させるといってみても、労働者の利益に結びつく事業であるという保障はないのであります。職業訓練における今日の問題は、第一に、わが国の場合、労働者が教育訓練を受ける権利と社会的、制度的にどう保障するか、教育訓練の結果習得した技能や熟練をどのように社会的に評価し、労働条件の向上に反映させるかであります。そういう観点から考えますと、職業訓練は就業する準備、あるいは職業能力を高めるのが目的でありますから、明らかに労働権に属するものであり、したがって、教育訓練を受ける権利や職業訓練の内容や運営は、明らかに労使間の問題であります。 第二に、法案に示している教育有給休暇制度の導入と普及は何によって担保されるかというと、明らかにこれは労働基準法上の問題としてその取得する権利が保障されるべき性格のものであります。ILOの議論を見ても、このことは明らかであります。 第三に、職業訓練の社会化、公共化への発展ということは、先進資本主義諸国ではいまや常識的な議論であります。わが国のように労働市場の条件が変わり、就業構造に変化が著しいにもかかわらず、企業内閉鎖的なしかも労務管理の手段としての職業訓練は、本来あるべき姿ではないと思います。 したがって、能力開発事業と称せられているものは、労使間の問題の発展の上に制度化の新しい道が求められるべきであります。 雇用改善事業においても、本来雇用政策上の基本法である雇用対策法との関連のもとに措置されるべきであります。われわれはむろん現行雇用対策法がいわゆる積極的労働力政策を根幹としている限りこれを認めるものではありませんが、産業構造の変化に伴って起きている新たな課題に対応するために、労働者の雇用の安定と保障を基本とした法制度に転換させるべきであると考えます。したがって、その関連のもとに、雇用の二重構造といわれる不安定就業状態が拡大されている現状の中で、産業別あるいは地域別に雇用状態の改善と雇用安定をどのように措置すべきかということを制度上確立することが必要であります。その意味から、社会党から提案されている国有林労働者の雇用安定法案や、目下起草中の建設労働法案は、その基盤をつくり上げていくために必要な制度であります。このように産業別、業種別に不安定雇用構造にメスを入れ、安定策を制度化し、その総合的体系を雇用対策法で確立する、このことの展望なしには、真の雇用改善は望めないというのが労働者の立場であります。 雇用福祉事業に関していえば、事業内容から判断して、国の一般会計でまかなうべき性質のものではないかと考えます。 以上のように、三事業に関しては保険制度になじまない事業であるということを前提にして、一つは労使のレベルで対処することを保障した上で制度化すべき内容を持つものが多い。二つ目に、労働基準法で規定されるべきものがある。三つ目に、職業訓練法のもとで体系化される必要のあるものがある。四番目に、雇用対策法を転換させ、一元化をはかる必要のあるものがある。五番目に、失業保険制度と職安法の関係で、深く掘り下げて措置される必要がある課題がある。六つ目に、国の事業として行なうべき内容のものがある。以上概括的にながめても、六点にわたる問題を含んでおるのでありますから、議論が広範に及ぶのは当然のことであります。 また、われわれ労働組合として重視しているのは、雇用保障に関する企業の社会的責任ということであります。 このことにつきましては、具体的には雇用安定や雇用保障や能力開発、つまり職業訓練制度の確立の上にそれを担保する企業賦課金制度による基金制度が社会的に確立されてしかるべきだろうと思います。また、制度の管理運営に対する労働組合代表あるいは労使代表の参画を保障する、こういう体制がすでにヨーロッパの先進資本主義国では一九六〇年代から七〇年代にかけて制度化されてきているのが実情であります。 わが国の低賃金と長時間労働が国際的批判を浴びている事実、それは労働分配率の国際比較が示すように低位にあるわが国としては、むしろ率先して企業の社会的負担を増大させるべきであります。雇用、職業訓練のための基金を企業賦課金制度で確立すべきであるというぐあいに考えます。 最後に、本法案は、申し上げましたように、失業保険制度の上で労働者の利益に著しく反するという分野が非常に多いということ、三事業を合わせたことで問題をますます広範化しているということでありますし、そしてこの法案自体決して十分に国民的合意を得られたものではないということを私どもとしては主張せざるを得ないのであります。 以上であります。(拍手)
○野原委員長 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。 —————————————
○野原委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。住栄作君。
○住委員 ただいま参考人から、現在審議中の雇用保険法案についてたいへん貴重な御意見を拝聴したのでございますが、私の意見は別といたしまして、この法案は大体いいのじゃないか、こういう岩尾、大宮両参考人については別といたしまして、非常に批判的な意見を述べられました谷参考人、大木参考人にお伺いしたいわけでございます。 この雇用保険法案では、基本的にいままでの失業保険法と給付の性格が変わったのじゃないだろうか、こういうようなニュアンスの御意見がございました。私は、現在の政府提案の法案を見ましても、失業給付は失業という事故に対してどのような給付をするか、こういうことで、雇用保険法案の考え方も、それから現在の失業保険法の考え方もそう変わっていないと思うのでございます。とにかくいずれにいたしましても、失業という事故に対して給付をして、労働者の失業中の生活の安定をはかっていくのだ、その場合に失業というものを認定する必要があるわけでございますが、そういうような基本的な点について谷参考人、大木参考人の御意見を聞かしていただきたいと思います。
○大木参考人 今回の失業給付ということの性格が、失業という名称はついておりますけれども変わっているのではないか、私がこう申し上げたのは二つの大きな理由からであります。 一つは、従来、求職者であること、それから実際に求職活動を行なっていること、あるいは実際の労働能力がある、こういうような三つの条件のもとに初めて失業者として認定をされる、そして失業保険も受給できる、こういうことですでに制度の運用がはかられてきておるわけでありますけれども、その場合に、私たちが実態調査等を従来繰り返してやってきましたところからも、現実にはその三つの条件の認定をめぐって、しばしば職安その他当局と実際の求職者との間に多くの争いがあったということは、委員会の先生方も御存じのとおりであります。そしてそういう問題をめぐって、実際には私たちが見るところ、政府の出先当局が認定をして、それに従って失業としての認定が行なわれている、こういう事実がありまして、実際には長年にわたって失業保険をかけてきたんですが、いざ失業してみるとこの失業保険を受給できない、こういう事態がしばしば発生をして、そうして職安に行きましても、実際に従来ありました失業保険の窓口が求職者の窓口一本になっておるという、こういう事態もしばしば実際経験をしてきているところであります。こういう実際の運用の上で、現に給付の性格が変わってきていたということが一つ。そして、その延長線上に今回の法案も提出されておるということが一つであります。 もう一つは、たとえばこれは今回の法案の中で私特に先生方に御検討いただきたいのは、この失業給付、とりわけ求職者給付、これを受給できる場合は、たとえばこの法案の第十五条二項にございますように「公共職業安定所に出頭し、求職の申し込みをしなければならない。」こう規定しているわけです。しかし、これはもう住先生も長年の御経験で御存じのとおり、実際に職業安定所を利用して就職する求職者というのは、現在大体二割弱じゃないかと思います。三割台に一時なったこともございますが、だいぶ低下をしてきているというふうに私は承知しているのですが、そうしますと、たとえば職業安定所を経ないで、求職の意思はあり、それで自分の姻戚関係や友人関係その他を通じまして自主的な求職開拓をやっておる、こういう求職者の場合にも、それではその本人の意向いかんにかかわらず公共職業安定所に出頭して求職申し込みをする、そういうことを要件としなければこの失業の認定が行なわれない、あるいは失業保険金の受給もなされない、こういうことでは、これは全く本人の職業選択の自由そのものの大きな制約になりましょうし、ひいてはあらゆる求職者について、失業保険の失業給付を受けようと思った場合は、職安を通じての就職しか許されないということになるのでありまして、これは制度上もたいへん大きな問題であろうというふうに考えております。 さらに私つけ加えますれば、これはあとのほうの問題とも関連をするのではございますが、本来、今回の法案提出の際に政府の説明等にもございますけれども、とりわけ若年層を中心にいたしまして求人は超過であって、そして本人がその気になればこれは幾らでも就職は可能であるという、いわばそうした前提に立ってこの失業の認定ということが行なわれてくるということになりますと、いま言いましたような点がなおさら大きな問題となってこようかというふうに考えます。
○谷参考人 先生のお尋ねの点でありますが、私どもはこのように考えています。 法案によって変わったのではなくて、すでに以前から変わってきているものをここで合理化するという表現が求職者給付という名称変更になったというぐあいに判断をいたしております。いま大木参考人からも言われましたように、一九六〇年代の後半以降、とりわけ給付の適正化ということで職安窓口における締めつけ業務が非常にきびしくなってまいりました。そういう被害を数え上げると、たいへんだくさんございます。そういうことと、はたして労働の意思、能力というのが行政判断なり行政基準なりで推しはかれるものかどうかということが、かなり問題ではないか。私どもとしましては、労働の意思、能力というのは労働者個人に属する問題でありまして、そこをどう判断するかが機械にかけられたり、あるいは単に行政事務官の差配によって判断されるということを通じて行政事務が遂行されるということに関して、はたしてこれで正常な失業者対策上の職安機構であるといえるかどうかということに関して、たいへん大きな疑問を持っているということであります。
○住委員 よくわかりました。制度としての性格というものは、私は現在の失業保険法と雇用保険法案とは変わってないと思うのですが、実際上の取り扱いあるいは行政判断による問題、いろいろな問題点があるということは承知をしておるのでございます。そういうことで理解していいかどうか。 それから第二の問題といたしましていわゆる三事業、この点についてやはり批判的な見解が披瀝されたのでございますが、やはり失業状態が生じたときそれをどうやって保障してやるか、こういう問題を、やはり失業を起こさないようにする、そのためには、やはり失業保険なり雇用保険の中にそういう機能が当然あってしかるべき問題じゃないか。そういう意味で、従来の失業保険法というものはむしろそういう機能というものを考えていなかった。少しあったとすれば福祉という面で、福祉事業という面であったと思うのでございますが、そういう意味で今度の三事業が取り上げられた、その点についてはいろいろな外国の制度その他ございます。ドイツの例も出されましたが、ドイツは公社制度で運営しておるわけでございますので、だいぶこれからの問題としてはいろいろあると思うのでございますが、そういう失業の予防という観点からこの三事業制度、こういうものに対して評価に値するものであるかどうか、この点について、やはり谷先生と大木先生からお伺いしたいと思います。
○大木参考人 先ほどの御質問に関連をいたしまして住先生のほうから、これは制度の変更というふうに考えずに運用上の問題として処理できる問題というふうに考えていいのかどうかという御質問がございましたが、私は、確かに谷参考人の言われたしたように、すでに従来運用上で多年にわたって積み重ねられてきましたことの確認という面もございますけれども、しかし法制度そのものとして見ますと、たとえば従来の実態が法制度に即さないという面が多々あったわけでして、今回の場合、やはりこうした抜本的な失業保険法の改正ということが出されまして、この内容を拝見しますと、少なくとも制度としてはやはりたてまえとしてかなり根本的に変わっている。これはやはり本法案の目的条項そのものが大きく変わっているわけでございますから、それとの関連でやはり失業の認定、失業給付その他の規定も、それに沿ってこうした改正案が提出されているというふうに私は理解をしております。 それから三事業の運営の問題に関連をして、失業の予防の問題あるいは雇用安定の諸政策を拡充する必要があるのではないかという御質問でございますが、確かにそれはおっしゃっるとおりで、これは失業が実際に出ましたときに、それについていかにその失業者の生活保障をすればよいか、こういう範囲で問題を考えるだけでは不十分であるということは、おっしゃるとおりであるというふうに思います。 しかし、それではここに本法案の内容の中心的な柱の一つとして提出されております三事業といったものが、そうした失業の予防や勤労者の立場から見まして本来の雇用安定という、そういう目的に沿ったものになり得るかということになりますと、先ほど私申しましたように、多々これはまた問題があろうというふうに思うわけです。とりわけ、これはいま住先生も指摘されましたが、私は、一つはこうした事業を行ないますときには、それが一方で失業保障そのものの削減や否定というような、こういうことにつながらないような制度的な保障ということをきちっとさせておく必要があろうというふうに思うわけです。そういう点から見ますと、この制度のようにこれをなぜ、たとえば財源の上でも制度としても、一つの、一本のものとして運用しなければいけないのかということは私は十分には理解できないわけでございまして、たとえばこれは諸外国の例を見ましても、そうしたものに必要な財源というのは、これは失業保険金の徴収ということは別にしまして、これは特別のそうした事業主に対する賦課を行なっているという例も多々あるわけでございますから、そういうことを行なえばよろしい。 それからまた、私は、先ほど谷参考人も言っておられましたように、政府自身がそうした雇用安定のための施策をみずからの政策として拡充します上で、みずからの財源負担というものを十分行ないつつ、そうした諸政策の拡充につとめるということがあってしかるべきだというふうに考えますし、さらにはこうした、とりわけ勤労者の雇用、失業予防、雇用安定といったようなことにかかわる諸制度の運用については、これは失業保険そのものもそうでございますが、いま住先生から御指摘ありました公社というのも一つの例でございますけれども、一般に実際にそうした諸制度によって利益を得る人々がこの制度の運用そのものに参加をする、これは西ドイツの場合ですと、恒常的に日常的な運用まで含めて、そうした制度運用に労働組合代表その他が参加をするということになっておりますけれども、やはり少なくともその受給対象者、適用対象者の利益が十分に反映されるような日常的な制度運営の場を確立をしていくということがやはり大前提として必要ではなかろうか、こういうふうにも考えるわけであります。 そういったようなことからいいまして、今回の提案の内容ですと、やはり私としては本来の目的に、これは失業保障の面でも、また雇用安定、失業予防の面でもいずれも中途はんぱな、かえってその意に反するような結果に終わるのではないか、こういうふうに考えておる次第でございます。
○谷参考人 先生のおっしゃるように、就職の促進や失業の予防というところまで機能を及ぼしていくという制度、私たちはそのことを否定するものではないわけであります。ただ先生のおっしゃるような、あるいは私どももそう理解するような意味に三事業がはたしてとれるかどうかというところであります。私どもはどうもそうはとれない。もしかりにヨーロッパの先進国の制度をモデルにする、あるいはモデルにしたというぐあいに私ども聞き及んでいるわけでありますけれども、かりに雇用保険法案がそういうものをモデルにして日本の実情に合うように組み立てられたものとするならば、むしろ失業保険給付及び失業扶助手当、そういったものをきちんとする、こういったものを基本にして、それに必要な職業紹介や職業指導を充実させるとか、あるいは就職の促進のための再訓練の機会を奨励するとか、あるいはそれを受ける権利を保障するとか、あるいは職場から簡単に資本の恣意が働いたままで投げ出されるというような首切りが起こらないような職場の維持につとめるとか、あるいは新しく働く職場を創出するとかというものが一つのものに一元化されて、抜本的に改革されるということの意味で提起された法案であるとするならば、われわれはむしろもっと積極的に検討する余地がありますけれども、私どもは先ほど申し上げましたように、三事業というのはかなり性格の違うものである、それを保険制度のもとに一元化するということについて非常に大きな疑問を持つということと同時に、三事業は失業者対策、失業者のための保障政策の制度上の機能として意味を持っているものではないのではないかという観点が強いということであります。
○住委員 いろいろお聞きしたい点があるのでございますが、あまり時間がないのでございますが、私はもう一つ、これは大木参考人にお伺いしたいのです。 先ほど、従来の被保険者期間による給付日数に関連していろいろ御意見があったわけでございますが、私は、失業保険、これは保険制度でございますから、保険に貢献した期間、そういった要素というものは全然否定し去るわけにはいかぬと思うのでございますが、どうも全体の失業保険の進め方、これは他の社会保険でも同様でございますが、やはり失業保障とか社会保障というような性格をだんだん強めていくと思うのでございます。 〔委員長退席、斉藤(滋)委員長代理着席〕 その場合にやはり従来の被保険者期間による給付日数の長短ということじゃなくて、就職の難易度、まあ完全な保険からいえば、たとえば季節労働者に対する給付というものなんかも非常に理解できなくなるわけでございますが、それはまあ日数の問題は別としまして、やはりそういう意味で給付するということはそこに保障的な色彩が強くなっておる。あるいは上薄下厚というような問題も、そういう思想のあらわれだろうと思うのでございます。そういう意味で、就職の難易度という一つの給付日数をきめる場合の基準というものはそれなりに評価できないのであろうか、こういう意味でひとつ御意見を最後にお伺いしまして、私の質問を終わりたいと思います。
○大木参考人 おっしゃる御趣旨はたいへんよくわかります。つまり失業保険というものが、やはりこれは何といっても失業保障ということを目的としているのでございますから、失業の犠牲を最も多く負っている人たちに対して何よりも手厚くなければならない、こういう問題の立て方は私はたいへん賛成でございます。 ただその場合に、その原則をいかに具体化するかという点でいろいろ問題が出てくるわけですが、私はたとえば一つその点で申し上げておきたいのは、従来これは政府側の法案の提案説明の中などでよく出てくるのですが、たとえばこの保険の受給者が特定の階層だけに片寄りまして、そこで実際のアンバランスがこの受給の上でいろいろ起きているということが保険の運営そのものにとってたいへん好ましくないというようなことがいわれるわけですけれども、その辺は私はむしろいま住先生がおっしゃったような方向で考えるべきものであって、そうしたアンバランスというようなことで、実際に多くの失業保障の機能を現行制度が果たしているという事態を一がいに否定すべきではなかろう、こういうふうに考えておりますが、それはともかくとして、住先生の言われたような形で、実際に失業の犠牲を負っている人たちにそれではどういう手厚い保護をするかといった場合に、私は、これを失業保険制度そのものについて、これは一般的に現に失業が起きた、失業の犠牲を負っているという人を対象にして、平等なその保障機能を強化をしていくということが一方でなされ、それと同時に、それでもなおかつ不十分な部分については、これは従来から政府の施策の中でも部分的に形の上で出てきております失業手当制度ですね、これは保険財政とはっきり区別をして、政府自身が責任をもって行なう施策として、これはそれとともに併給していく、こういう形での制度というものをやはりどうしても拡充していくべきではなかろうかというふうに考えるわけであります。これを、失業手当的な性格を持ったものを、保険的な原理に立つ制度の中に無理やり一つの制度として体系化しようとしますと、これはいろいろな矛盾が出てきますし、実際その本来の意図がかりにそういったことでありましても、実際には逆の結果になるということになりかねないというふうに考える次第です。
○住委員 たいへんありがとうございました。
○斉藤(滋)委員長代理 田中覚君。
○田中(覚)委員 ただいま四人の参考人の方の御意見を伺いましたが、岩尾、大宮両参考人は、今度のこの雇用保険法案というものの提出の過程におきまして、研究会や審議会の委員として参画をされた経緯もございまして、その必要性を積極的に認めておられると同時に、改正の方向や内容についてもおおむね御賛成のように拝聴をいたしたわけであります。それに対しまして大木、谷両参考人は、今度の制度改革のこの法案の内容に対しましては多くの疑問を出されまして、むしろ本来の失業保険のねらいを逸脱し、あるいはその趣旨が歪曲されておるのではないか、したがって、もっと慎重に根本的な再検討をやる必要があるのではないかというふうな御意見であったように拝聴いたしました。そういう受けとめ方を前提にいたしまして、若干の具体的な問題を提起をいたしまして、参考人の皆さま方の御所見を伺いたいと思います。 まず最初に岩尾、大宮の両参考人に伺いたいのでございますが、先ほど大木、谷両参考人の御意見によりますと、この法案の作成の過程におきまして、労働組合などの意見を反映する機会もまた検討する時間も与えられなかったというお話でございまして、したがいまして、この法案のように広範に雇用者にかかわるような問題について、雇用者の参加なしに原案の作成が行なわれるということにつきまして大きな問題を提起されたわけであります。この点につきましては、岩尾さんも大宮さんもその過程において参画をされておるわけでありますが、一体どういうふうにその御意見に対して受けとめをされるか。端的に申しますと、原案作成の過程において雇用者あるいは労働組合の意見というものをどの程度、どういう形で集約されたとお考えになっておるのか、この点をまず伺いたいと思います。
○岩尾参考人 労働組合その他関係方面の意見を、私のほうで申しますと研究会でございますが、研究会でどういうふうにしんしゃくしたかということでございますが、率直に申しまして、昨年の六月ごろから審議を始めまして、その間もちろん直接労働組合の方とお会いすることはありませんでしたけれども、どういうふうなお考えであるかということは十分労働省当局あるいは関係の方に聞きまして、そういう意見を参考にしながら議論を進めてまいりました。そしていよいよ最後の段階になりまして、たしか十一月ごろでありましたか、労働組合の方全部御参集いただきまして、一日間つきっきりで御意見をお聞きしまして、そういう意見も参考にしてあの報告をつくったわけでございます。 それから、これは私のほうではございませんけれども、その後いろいろな委員会にかけてこの法案ができておりますから、その委員会は、中央職業訓練審議会も中央職業安定審議会も社会保障制度審議会も、そういった組合の方もおられることでございますから、私は先ほどの御意見と違いまして、皆さん方の御意見は十分しんしゃくしておる、こういうふうに考えております。
○大宮参考人 中央職業安定審議会関係について申し上げたいと思います。 先ほど意見開陳の際にも述べましたように、失業保険の抜本改正につきましては中職審の失業保険部会、これは三者構成でございます、そちらで長いことやっておったわけでございますが、問題を昨年十二月にこの法案のもとになる骨格ができてからあとについて申し上げますと、まず中職審全体といたしましては、回数は正確に覚えておりませんけれども十回近く、もとより三者権成の審議会でございますから三者構成のもとに審議を尽くしたわけでございます。十二月のたしか二十一日から二月の初めにかけてでございます。期間は確かに短かったのでございますが、これにつきましては私も審議会の一員としてもう少し早目に期間を十分とってかけていただいたほうがより審議が尽くせたと思います。しかし、回数につきましてはいま申し上げましたように十回近くやっておりますので、短い期間ではありましたけれども、審議は、三者構成のもとにかなり尽くしたというふうに考えております。 それから中職審の失業保険部会におきましても、失業給付事業を中心にいたしまして審議をいたしました。その際、中心点は失業給付事業に部会のほうはしぼりましたけれども、当然雇用保険法全体の体系から申しまして失業給付事業はいわゆる三事業と関連する面も多分にございますので、関連する限りにおいては、三事業についても検討するという条件のもとで部会のほうの検討が行なわれ、部会のほうから中職審のほうに、部会としての失業保険給付を中心にした部会長報告が出てまいりまして、それをさらに中職審全体の場で三者構成のもとに審議をしたわけでございます。結果的には、不幸なことでありましたのですが、労働側四委員は最終的に反対の意見をつけられましたけれども、残りの労働側委員及び使用者側委員さらには公益側委員は答申の取りまとめができたというような状況でございます。
○田中(覚)委員 私はまだ経験が浅いのですけれども、この労働関係の法律案などが出てまいりましたときに、よくいまのような御意見を労働関係の方から伺うものですから、たいへん遺憾に思っているわけです。いま伺いますと、ある程度意見等も聴取されたようでありますが、あるいは十分でなかったかもしれませんけれども、私は労働組合関係の方に実は希望しておきたいのですけれども、そういう機会があれば、あとでわれわれの意見が十分に聞かれなかったということのないように、ひとつその過程において意見を活発に展開されるように希望しておきたいと思います。 次に、岩尾参考人にひとつ伺いたいと思いますが、先ほどのあなたの御証言の中で、日本の社会もおくればせながらだんだんといわゆる雇用者社会に移行しつつある。そういう観点から、今度の雇用保険というものを全産業に適用しなければならぬというお話でございまして、その点については私も全く同感でございますが、ただその中で、従来から自家労働力を中心にした零細経営が圧倒的に多い日本の農業、農業基本法制定以来の経過を見ましても、耕種農業、土に結びついた農業というものは、圧倒的に零細な自家労働力の経営が残っておる。そういう日本の農業をこれからの雇用化社会の中で、日本の産業構造全体との関連において一体どういうふうに受けとめておられるのか。この法案のあとの問題に関連いたしますので、ひとつ基本的な点につきまして簡単に御所見を伺いたいと思います。
○岩尾参考人 これからの農業ということでございますけれども、いま御指摘になりましたように、日本の農業はたいへん生産性の低い農業でありましたために、先ほど来申し上げますように、特に施策ということがなくても、第一次産業から第二次産業、第三次産業に移動していくという形がとられておるわけでございます。将来これをどういうふうにやったらいいのかということになりますと、現在の日本の置かれております経済環境を考えますと、資源的に見ましても、あるいは環境面から見ましても、たいへん不安定な状態に日本はあるわけでございますから、せめて食糧、特に米についてはもっと生産をして、備蓄をして、そういうものが一つの戦略的な物資になって外国との交渉をやりやすくするという程度に農業の生産性を高める必要があると思います。そういたしますと、非常に小さな規模で、多くの人手をかけてやっておる農業という現在の状態から、もう少し規模を拡大して、少ない人手でコストのかからない農業を将来つくっていくということが必要だと思います。これには国全体として大きな政策のビジョンを立てまして、そのビジョンに応じて各地方ごとに、農林省でも農業振興地域ということでやっておりますけれども、もう少し思い切ってそういったことを展開していく必要がある、私はこういうふうに考えております。
○田中(覚)委員 結局、出かせぎ労働というものを構造的に不可避のものであるという受けとめ方をされておるのか、あるいは、いま季節労働者に払われている失業保険金を、かりに農業構造の改革に向けて投資をすれば、そういう事態がある程度是正をできるとお考えになっておられるか、その点はいかがですか。
○岩尾参考人 現在の季節労務の方でございますか、いわゆる出かせぎという問題、これはこのままであってはいけないと私らは考えておりまして、いま申しましたような産業構造の転換に伴って解消していくべき、また解消しなければならぬ問題だ、こういうふうに思っております。したがって、その手段といたしましては、現在農村地帯といわれておりますところにほとんど産業がないということもございます。したがって、就労の機会もない。そういうものをなるべくつくっていくようにいたしますし、それから今度は、いま雇用されておる建設業とかその他の産業において、短期雇用ということをしないで通年的な雇用をしていただくという形をとってもらう。そういうことによって不安定ないまの状態を解消していくことが必要ではないか。特に農業につきましては、今回農林水産業にも拡大をされるわけでございますが、拡大をされますと、地元の農業にも就労できる。従来のように、就労するということを言えば保険金がもらえないという状態から、正々堂々と一時金をいただいて就労していくことが可能になるわけでございますから、そういう意味でいいましても、この法案はそういった問題へのたいへんな前進である、私はこういうふうに考えております。
○田中(覚)委員 そういう御所見から、季節労働者に対する特例給付を一括して支給するということにつきましては、いろいろメリットがあるとわれわれも考えておりますが、しかし、従来少なくとも平均五十日になんなんとしておるものを三十日にしてしまったという原案の考え方、これをひとつお聞かせいただきたい。 もう一つは、受給資格を今度実質六カ月にされるわけですね。そういたしますと、現実の問題として農業労働から一部締め出しを食らう結果になってしまうのではないか。たとえば秋の取り入れ、春の田植え、この二つながら現在の制度ならやれてもらえたのが、どちらかは犠牲にしないと今度はもらえなくなるという問題にも発展をしてくると思うのでありますが、この点についてのお考えはどういうことでございましょうか。
○岩尾参考人 一時金支給ということで三十日にしたわけでございますが、その前に、いま申しましたような失業の認定ということで、二週間に一回そのたびに出ていって、そのつど若干の保険金をもらいながらという形でいくのと、一時金は、必要という認定を一回やれば、そのときに出てしまって、あとは地元で就労していただくという形に持っていくのであれば、その一時金はいままでもらっておられる額と同じというわけにはいかないので、むしろ若干低目というところに押えざるを得ない。それがまた、現在農林省やいろいろなところで考えております、そういった農村地帯への農業政策の展開ということを口火を切ってやっていく一つのきっかけにもなるのではないかと、私らは考えておるわけでございます。 それから就労日数のお話でございますけれども、季節労務の方は冬型夏型といわれておりますが、現在考えられておる就労日数の計算によりますと、おそらく夏型の方はほとんど変わりはないので、冬型の方に若干影響があるのではないかという気がいたします。その冬型についての影響はいろいろありますけれども、私は、実際の運用面においてできるだけ御配慮いただいたらいいのではないかと考えております。
○田中(覚)委員 もうちょっと掘り下げて伺いたいのですが、時間がないものですから、ほかの問題に移りたいと思います。 次に、先ほど大木さんでございましたか、給付率やあるいは給付日数についての今度の新しい案は、年齢の若い人や婦人の方々にとりまして非常に不利になっておるというお話もございました。それからまた、谷さんでございましたか、先ほどの御所見では、いわゆる上簿下厚というようなやり方は失業保険の本来の給付をむしろ破壊するものである、一律に八割ですかを支給すべきだというような御意見であったと実は拝聴いたしました。この点につきましては、実は私ども承知をしておるところでは、日本の場合はボーナスを含めた賃金を基礎にしておるために、給付率を六割にいたしましても実質的には八割になるというふうに聞いておるわけであります。そういう観点から申しますと、これを八割に高めるときには、今度は日額に直すと十割以上の給付にもなるというふうな結果にもなりまして、そうすると六カ月働けば、極端な言い方をすれば一生でも失業保険をもらえるというふうなことにもなってくるおそれもあるのではないかというふうな感じもいたしますが、この点についてのお考え方、あるいは、率直に申し上げて一体どうすればいいのだという御意見があるなら、ひとつお二人からお聞かせいただきたいと思います。
○大木参考人 ただいま田中先生から六割という現行給付率で実質八割になる、あるいはもし八割という給付率に引き上げた場合に、実質十割以上になるという御意見を私初めて聞いたのですが、これはたまたまそういう例があるということはあるかもしれませんけれども、一般平均的にいいまして、そうした事態が起きるというようなことはまずあり得ないのではないか。これはとりわけ失業保険の給付の対象になります方たちは、全体として何といっても不安定就業者を中心に多いわけです。したがって一般に全体として見れば、総体的には賃金水準の低い部分を中心に受給者が発生をする、こういう事態が現に従来の経験からしても明らかなわけでして、それが十割以上というようなことに実際なるんだということは、私としてはたいへん理解しかねるのですが、何かここでは私のほうから質問してはならないということになっておりますので、ちょっと質問するわけにまいりませんが、そういう資料がもし政府委員なり何なりのほうから出されているのであれば、これはぜひ拝見をしてみたいというふうに思います。私は現行の六割というのは、何といいましても日本の場合は、本来他の諸外国の場合ですと、諸外国も全部が全部いいことばかりではありませんけれども、しかしそこではかなり、たとえば基本的な公的扶助制度の拡充でありますとか、あるいは先ほど谷参考人も申されておりましたような扶養手当とか、とりわけ家族手当、こういったような社会保障制度の拡充というようなことの上にこういう失業保険制度というものも運用されておりますので、そういう同じ六割でもかなり実質が違うと思うのですけれども、しかし日本の場合はとりわけそういう事情も含めてこの水準の引き上げをすることが、全体としての実際に失業保険金として受け取っている受給日額がたいへん低いという現実からいいまして、これは当然の要求というふうにむしろ考えられるべきではなかろうかというふうに私は考えております。
○谷参考人 どうすればいいかというお尋ねでありますけれども、私は、先ほど意見の中でその点につきましてはかなり明確な態度で申し上げたつもりであります。ただ賃金の八割ということを考える場合に、おっしゃるように、そういう御意見もあるかと思いますが、私どもそうは考えません。一時金を含めて労働者が月々生活をしていくための給与になっておりますから、失業中の生活を保障するということでは、実質的に八割水準というものが確保されないと、低賃金の実情というものを勘案して考えましても、うそではないか。ですから私が先ほど申し上げましたように、かりに一歩譲って、基本給付が六割水準を堅持しなければならないということを認めたとしましても、扶養加算というものを合計して八割水準に到達するという措置を制度化すべきではないかというのが、私どもの結論でございます。 それからもう一つは、先ほど住先生もちょっと触れられました就職の難易度で推しはかるということでありますけれども、そういう方法もあるかと思いますが、むしろ私は失業保険の原則からいいまして、失業の危険性から推しはかって給付水準なり所定給付日数を定めるべきではないかというぐあいに考えます。
○田中(覚)委員 いま私が申し上げたのは、設例として計算いたしますとそういうことが可能というか、そういう場合があり得るわけでありますが、これはまたあとからひとつお示しします。 次に大木さんでしたか、就職支度金の問題に先ほど触れられて、これが常用就職支度金に切りかえられる場合には、既得権の侵害であることはもちろん、これは相当大きな問題だというふうな御意見がございましたが、現状においてこれが就職の促進じゃなくて、逆に離職の促進というような結果になっておる面のあることについては、いかようにお考えでございますか。
○大木参考人 利殖の手段としているということは、私よく理解しかねるのですが、利殖というのは普通ことばの意味で言いますと、何か元手がありまして、それを本人自身は特別の努力をせずにふやしていくということでございますけれども、おそらくおっしゃっておられるのは、保険受給者の中にその就職支度金を、何カ月かの被保険者期間を繰り返しながら、繰り返しそれを受給しているという例があるということであろうというふうに考えます。そうでありますと、これは一つの生活手段としてそうした就職支度金というものを考え利用しているという、そういう方たちが中におられるということではないかというふうに考えるのですが、私はそういった問題を考える場合に、これはいつの場合でもそうなんですけれども、制度というものを考えますときに、それは全体として平均的、大量的に傾向としてどういうことなのかということで問題を考える以外に基本的にはあり得ない。これはたまたま何らか、そうした制度本来の趣旨に反した部分が出たからといって、それを根拠にして制度本来の趣旨を変更するというわけにはまいらないだろうというふうに考えます。いま問題となっております就職支度金の問題は、私は全体としてはなおそうした部分的な現象として押えることができるのではないかということを一点申し上げたいことと、それからもう一つは、その就職支度金の制度というものがそもそもどういう経過で出てきたかということに関連をしまして、これはもともとは、その就職促進ということもございますが、やはり何といいましても、一つは全体としての平均受給日数を短縮したいという問題とかかわり、さらには実際失業保険の給付額としてこれを計上しないという形で国庫負担の割合を低下させる、こういうこととの関連で出てきている問題でありますから、私は本来これがそうした失業保険の通常の受給、こういうルートの中でもし処理されていきました場合にはかなり事態は違っていたのであろうというふうに考えるわけです。 それからもう一つ私、田中先生に申し上げたいのは、全体として見るならば、現行の就職支度金が就職の促進並びに一たん就職した場合の雇用の安定、こうしたものにたいへん大きな積極的な役割りを、もちろん一定の範囲ではありますけれども、演じている、この事実をやはり見失ってはならないのではないかというふうに考えております。
○田中(覚)委員 その点については実はわれわれも、実際に転職にきわめて容易な職種にあってはたびたび離退職を繰り返すことによって就職支度金が支給されるということから、これがむしろ離職の促進に役立っている場合があるのじゃないかという言い方をしたわけでございます。 時間もございませんので、最後に一つだけ。この三事業に対してはむしろ一般財政でやるべきことで、これを保険財政の中からやることは邪道であるという意味の御意見が大木さんあるいは谷さんから強く指摘されたように拝聴いたしたわけでありますが、岩尾参考人からは逆に、雇用者にかかわる問題はすべて保険でやるべきではないかというふうな御意見であったのではないかと思いますが、岩尾参考人の場合も一般財政対策というものを一体どういうふうに考えておられるのか、簡単でけっこうですから一言でちょっとお答えいただきたいと思います。
○岩尾参考人 三事業とそれから失業給付というものを一緒の保険の中でやろうということにつきましては、やはり研究会でもたいへん議論になりまして、国の負担で全部ばらばらにやるという、そういう方向も考えられる。しかし、いま考えられておりますいろいろな雇用改善だとか能力開発あるいは雇用福祉のいろいろな問題は、現に失業保険制度の中で福祉施設としてやられておるものも大半入っておるわけです。したがって、そういう現制度とのなじみということを考えますと、これを特に切り離してやるということはかえってなじまないのではないかという意見と、それから実際にこの三事業についての財政的な負担というのは事業主が負う。労働者は負わないわけです。そういたしますと、外国でやっておるような雇用税あるいは訓練税というようなものと実質的には同じようなことになりまして、特に事業主からだけ保険料を徴収するということは、事業主に雇用者に対して通年雇用なり、あるいは失業しないような雇用をさしていこうという気持ちを強くさす上で非常にプラスになるのではないかということを考えまして、全体をまとめて三つの仕事を一つの保険の中でやるということにしたわけであります。
○田中(覚)委員 中小企業者に対する対策としてはどうでしょうか。
○岩尾参考人 中小企業者に対しましては、先ほど谷参考人からも申されましたけれども、労使関係だけにまかしておけというようなことになりますと、どうしても大企業のほうへ片寄ってしまうということになりますので、いま申しましたような雇用改善、能力開発、雇用福祉というものを保険の体系の中へ取り入れて、その中で全体で中小企業に対しても配慮をしていくということをやれば、かえってプラスではないかというふうに考えております。
○田中(覚)委員 終わります。ありがとうございました。
○斉藤(滋)委員長代理 暫時休憩いたします。 午後三時四十五分休憩 ————◇————— 午後三時五十分開議
○斉藤(滋)委員長代理 再開いたします。 休憩前の質疑を続けます。川俣健二郎君。
○川俣委員 参考人の先生方にはたいへん長時間御苦労さんですが、私はこの雇用保険法案を最初に見て、これはひどいというかむちゃだという率直な感じを受けました。これは非常に研究会、審議会に研究していただいた問題で恐縮なんですけれども、しかし、私たち社会党は、いまの失業保険ではどうしても改正をすべきだという立場に立っておるわけです。このままじゃいかぬという立場です。したがって、たとえば先ほどの御意見にもありましたように、諸外国並みに八割給付という社会党の案がどうしてそんなにむちゃだろうかという一部改正を含めて提案し、あるいは国有林の雇用安定法案なども提案しておる立場から、いま少し、ちょっとくどいようですが、社会党に与えられた、関連質問も含めて、その中で質問をしたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。 まず岩尾参考人にお伺いしたいんですが、岩尾さんは研究会のメンバーで、非常にこの雇用保険法というものに手をつけてこられたわけですが、私は、労働大臣の私的諮問機関があってもいいと思います。ただ、それが一国の法案をつくる場合は、かなり関係者の審議を深めなければならないんじゃないか。こういう意味において、もう一度岩尾参考人に念を押すようですが、この失業保険制度というのは、政府の金でもなけなければ一般的な税金でもなくて、労働者の金を預かっているという勘定だと思います。この失業保険勘定を、たとえば一時金で払うというのは非常に前進的だとおっしゃるんですが、一時金というのは、失業をするかしないかを判断しないでくれる金です、あしたから仕事についてもくれる金ですから、いわゆる失業しない者にも金を与えるという制度ですから、やはりそういうことを国民的な合意を得るまでの時間的なある程度の余裕がなければいかぬのじゃないかと思います。したがって、審議会はなるほど毎日のように回数を多く重ねたことは私は知っていますが、ただ、下部大衆にそれが流れるまでには時間がかかるということを考えますと、やはり審議会にかかって国会に出すまでの時間が少し足りなかったのではないかということを私らは思うのですが、いかがなものでしょう。
○岩尾参考人 私らはさように思っておりませんで、十分各方面の御意見を頭に入れて議論をしたつもりでございます。先ほど申しましたように、六月から十一月までしょっちゅう開いておったわけでございますから、さような意味では、決して労働組合あるいは雇用者側の意見を全然聞かなかったということではないので、むしろ聞き過ぎるぐらい聞いたというふうに思っております。
○川俣委員 おそきに失したと言いますけれども、その審議会のメンバーの人はわかっても、やはりその人は代表の人でありますから、問題は、審議会のメンバーの金を使うのじゃなくて、やはり一般大衆から集めた金を使うという国民的な合意を得るということから——そこで、岩尾さんがおっしゃるのは、昭和二十二年にできたこの制度をもう根本的に質的に変えていいという理由に、世間的な背景が変わったんだ、それは量的に変わり質的に変わったという二点をあげられました。たとえば量的に変わった中で、進学率も示されました。そこで、任意退職者、いわゆる昭和二十二年の戦後の混乱期では、自分かってにやめるんじゃなくて首になったんだ、失業せざるを得なかったんだ、ところが、いまは自分かってにやめて自分で予定して失業する者がいるから、こういう者に失業保険をやるのはあまりなじまないということでありますが、私はそうじゃないと思いますよ。実際問題、失業した人方の状態を見てみますと、やはり失業せざるを得ないから失業しているんだと思うのです。たとえば農業の場合に、昔は冬型の季節労務者、いわゆる夏、農作業についている人方は冬場はどうしておったかといったら、なわをなって、わらじを編んで、俵を編んだ人方です。ところが、そういうのはいまは全部消費物資になって買ってくる暮らしになった、その農民が。そこで冬場の仕事をどうするかということを農林省がいろいろと考えた結果、ナメコを栽培しなさい、豚を飼いなさい、ブロイラーをやりなさいということで、酪農奨励などに手を出した。ところが、ナメコを栽培するにしても原木が十倍上がったということは、この間の予算委員会ではっきりした。えさ代がこのように上がったということも、酪農の皆さん方の陳情を見れば、デモを見ればわかると思います。したがって、どうしても農業から失業せざるを得ない農民をどのように考えるかということを考えますと、私は、決してあの人方は任意で失業しているんじゃなくて、やはり農業から失業させている農業政策の犠牲を失業保険で見ざるを得ないという全体の立場から見ると、そう量的には変わっていないんだと思いますが、この点……。 それからもう一つ、ついでですから……。 さて、それじゃ、質的に変わったんだというのは、いまは完全雇用の状態になったと、こう言うんです。そこで私らは、とてもとても完全雇用じゃないということが、この雇用保険法の質疑の中で出てきた。たとえば政府みずからが雇っておる公務員、これは一つの例を申し上げますと、全林野に一万七千人という底辺の労働者がいる。底辺というのは、所得も少ないけれども、むしろ末端の山場で木を守る労働者が一万七千人いる。その人方は冬場は仕事がないから三カ月首、九カ月つとめる。これはもう、これ以上予定された失業者はいないわけだ。これを政府みずからがやっている。こういう雇用の安定を全然やらないで失業保険をいきなりちょん切るということ、九十日を三十日にするということは、私はやはり雇用が安定したという、質的条件が変わったということは言えないんじゃないか。こういう量的、質的に私は疑問を持つので、あえて申し上げたいと思います。 特に経済変動と申しますけれども、大企業を見ればなるほど労働者一人でもほしいという状態ですが、地方に行って中小企業を見てみると、このインフレ物価高と物不足というつくられたもので、倒産件数がだんだんにふえていっているというこの状態は、これは岩尾さんも否定できないだろうと思うのです。中小企業が倒産するということはどういうことかというと、すぐに使われている労働者が失業をするということにつながるんでないか。こうやってみると、本会議でも各党から質問が出ましたが、いまこういう失業保険を根本的に変えるという時期ではないんでないかという論議がそこから生れてきたんだと思うのです。その辺は研究会なり審議会なりを経ての造詣の深い岩尾さんの御意見を伺いたい。
○岩尾参考人 私が冒頭に意見を申し上げました際に、どうして変えねばならないかという理由にあげましたのは、全体としては雇用情勢の変化というものが背景にあるということでございますけれども、この雇用情勢の変化ということは、一つは量的な変化、もう一つは質的な変化、それから三番目に雇用社会というものがどんどん進展をしておる、こう三つ申し上げたはずでございまして、いま先生のおっしゃいました、たとえば現在の経済変動に伴って失業が出てきているではないかというようなお話は、最初の量的な問題を申し上げましたときに、将来ともそういう状態は起こる可能性はあるということを前提にこの保険を検討しなければいかぬということで、そういう場合には一律的に給付を延長するようにというように答申にも書いてございます。 それから一般的に任意の離職者がふえておるからといって、やはり失業せざるを得ないという理由がほかにある者もふえておるんだという御意見でございますが、これは二番目に私が申しましたように、確かに完全雇用にはなりましたけれども、いま質的に見ますと、年齢とか地域とか、あるいは産業によりますと、いまおっしゃいました農業なんかについて非常に不均衡な状態にある。そういう状態を前提として、そういう状態を解消するような施設をこの保検法に盛り込んでいこうということで議論をしたわけでございます。 〔斉藤(滋)委員長代理退席、委員長着席〕
○川俣委員 わかりました。 それから次に大木参考人に一点だけ伺いますが、私の聞き違いだったかもしれませんけれども、どうも行政当局が官僚的強化をねらった云々というようなことを言われて、具体的な内容を少し示されました。それは福祉施設本来の制度に云々というようなことをおっしゃいましたが、その官僚的強化をねらったということについて、もしもう少し具体的なものをお持ちであればお聞かせ願いたいと思います。この法案にどのように反映されておるか、どの部分あたりがそういうことなのかということですね。
○大木参考人 これは今回提出されております法案全体の性格にかかわる問題だというふうに私は承知しておりますけれども、たとえば一つは、先ほども申しましたが、失業の認定にかかわる問題であります。この認定というものを公共職業安定所が、つまり実際には政策当局が行なうという問題にかかる点がその例でありますし、あるいはまたたとえば給付日数の延長という項が何項かにわたって提案をされておりますが、その延長をだれがきめるのか、どうした制度のもとでどういう手段を経てきめるのか、こういう点についてもそうした性格がたいへん端的に見られるのではないか、こういうふうに考えております。これはこの提案の趣旨説明にございましたように、石油危機以来の経済情勢の変動等もありまして、これから雇用情勢が悪化をするという危険性がかなりある。あるいは高齢者層を中心にかなり就職離、あるいは雇用の状態の悪化というものが進行する傾向にある、こういうようなことを見ましたときに、そうした点での具体的な措置というものがいろいろ必要になってくる局面が予想されるわけですけれども、そうした場合に、たとえばその点での具体的な決定や認定をだれがやるのかという問題についても、やはりたいへん大きな問題であろうというふうに私は考えております。さらにそのほか、たとえば女子の受給者に対する支給の問題やあるいはまた短期雇用者に対する認定の問題やあるいは常用就職支度金の問題でありますとか、ほとんどあらゆる面にわたってそうした問題が出ているというふうに考えております。
○川俣委員 それから大宮参考人に伺いますが、大宮さんはせっかく審議会のメンバーで御尽力願ったわけですが、この答申ですね、これを二つ、三つ伺いたいと思いますが、この第一番目に「近い将来の経済変動等により大幅な雇用調整の必要が生ずる等不測の事態が生じた場合には、施行期日の繰上げについて慎重な配慮が必要である。」こういうように書かれております。これは先ほど私が岩尾さんに伺ったことに関連するのですが、いま経済変動の時期ではないだろうかどうだろうか、どういうようにお考えですか。
○大宮参考人 この雇用保険法全体を考えますときに、まず前提としましては、今後の長期的傾向を見きわめた上に立ってそれぞれの問題を考えることになっております。これにつきましては、私も最初の意見開陳のところで述べましたように、労働力の需給関係は、失業保険施行当時から見ると根本的に変わってきておる。それは、一方においては需要の問題があると同時に、他方においては労働力の供給の問題があるわけでございます。 需要のほうにつきましては、まず今後経済成長率が、高度成長時代のような大幅な成長はもはやないであろう。しかしながら、日本の経済の成長は長期的にはまだ続く。したがって、長期的には労働力の需要はある、こういう考え方が需要に対する考え方でございます。一方、供給の面につきましては、これも先ほど申しましたように、これは日本の人口問題の動向から問題を考えておりまして、新しく若年層として労働市場に出てくる人の数というものは、日本の人口が戦後急速にふえてきたような状況、それも十五年後に労働市場に出てくる場合が多いわけでございますけれども、そういう点から見ますと、日本の大きな人口増加の傾向はとまってきておる。したがって、供給量については、中間的には進学率の問題なんかありましょうけれども、究極的には労働市場に出てくるわけですけれども、しかしこれは数においてかつてのような状況にはならない、こういう考え方の上にまず立っておるわけでございます。したがって、日本の労働力需給関係は、一時的なサイクルとしては緩和することがあるにしても、長期的にはかなり逼迫した情勢で進むであろう、こういうふうに考えて雇用保険法案の各種の問題をそこから引き出してきておるわけでございます。一方において、最近の情勢ということになるわけでございますが、これは御承知のように、昨年の石油危機以来、日本の経済は困離な局面、サイクルに入ってきておるわけでございますが、しかし何ぶんその前の労働力不足という状況が非常に強かったために、現在のところは不足の程度が緩和されてきておるということで、まだ余っておるという状況までは至っていない。しかしながら、最近確かに離職者がふえ、また求人のほうがそう伸びない状況に来ておるということも出てきております。これからの動向につきましては、政府のこれからのインフレに対する対策の動向にもかかってくることと思いますけれども、かりに総需要抑制策というものが引き続き強く行なわれていきますと、ある程度の離職者の増加ということも考えておかなければならない状況にあるんじゃないか。そういう当面の状況はやはりこの際、長期的な問題は問題として、そういう問題も考えておかなければならぬ。そのためには、今回の雇用保険法の雇用調整対策のところが役立つ部分でありますので、そういう情勢の推移によりましては、そのような面に対処できるようなところは、状況によっては早目に実施していただいたらどうか、こういう考え方でございます。
○川俣委員 さらにもう二つ先生に伺いますが、給付日数なんですが、いわば失業者からいうと支給される金額になるわけです。いままでは、きみはどのくらいつとめたかという勤続年数で給付日数がきまった。今度は、きみは幾つだという現在の年できまる。その一番あおりを食うのは、三十歳未満が何年つとめたって、いまの二百七十日を六十日にちょん切られる。そうすると、十八歳でたとえば女子高校生がつとめた場合、家庭に入って、当然妊娠、出産ということが起こる。そうするとどうにもならない。その場合は退職すべしという会社の契約がざらにある。やむを得ず退職する。そうすると、いままでのそういうケースは二百七十日もらえたものが、今度は六十日でちょん切る。勤続年数別を今度は年齢別にするぞという研究会のあれを参考にしたら、労働者はそれを正直にとり過ぎたのかどうか、二百七十日を六十日にするという。これに対して、こういうような急激な低下が生じないようにさらにくふうを加えろと審議会ではなさっておる。ところが、六十日では加えたことにならぬでしょう。この辺は答申の際にどういったところを裏づけとしてお話しされたのか。それからさらに、この雇用保険法を提案するときに政府は。上薄下厚だ、したがって、年齢的に弱い中高年を優遇するんだ、こういうことを盛んにPRしておる。だとすれば、扶養手当なんというのはむしろ中高年にあるんでないですか。子供がいる。もちろん妻がいる。子供の場合も第一子、第二子と分かれて、小刻みに段階があるにしても、扶養手当というプラスアルファがある。それをもぎ取って、中高年に厚くするということにはならないのじゃないか。ところがこの雇用保険全体の思想が、三十歳未満なんかつとめる場があるのだ、非常に気楽だ、つとめる困離度が少ないのだ、そういうものからもぎ取って中高年に与えるという考え方から失業保険勘定全体を管理するという考え方であれば、私は、この目的は何なんだ、全体の金額が減らないということの前提があるならば、私はそれを承服できる。ところが、本会議で所管大臣に労働省はこのように答弁させておる。この雇用保険が成立すれば、いまよりも八百億前後の金が多く残ることになるのだ。いま四千二百億ある。ところがその八百億多く残ることになるのは、職業訓練とか能力開発を会社にかわってやる例の千分の三という事業主から取ったものの金額ではなくて、いまの千分の五というもの、労働者、資本家から同じように、取っている金額が八百億ぐらい残るのだということを考えると、やっぱり目的は中高年対策という考え方じゃなくて、全体から失業給付金を残して、金を残して、三事業をやろうという以外にないのじゃないか、こういうふうに理解するしかないのですよ。この辺が答申の二と三をいま少し、もし審議会でそういうことを御理解の上で、一そう努力する必要がある、こういうようにおっしゃったのか、その辺をお聞かせ願いたい。
○大宮参考人 まず給付日数の問題でございますが、これは私最初の意見開陳のときにも申し上げたところでございますが、考え方といたしまして、就職が困離な人は失業期間が長くなる傾向がどうしても避けられないわけでございますから、そういった就職の困離度に応じた給付の姿を考える、これが基本でございます。ただその場合に、それを年齢でそういう考え方を表明したということにつきましては、従来の実績を労働省当局のほうでいろいろな資料をまとめていただきますと、若年者の就職の状況と、それから中高年、あるいは身体障害者等も入りますが、そういった状態、中高年という年齢の状況に応じての就職の困離さ、これが顕著に出てきておるわけでございます。したがいまして、まずこれを年齢の区分によって差をつける。しかし、先生御指摘のように、若年者でも場合によりましては就職が困離な場合も出てくると思います。必ずしも年齢だけでは区別がつけられないという面はあろうかと思います。そういう問題に対しましては、個別的に給付を延長する、あるいは世の中全体の情勢が悪くなりまして、若い人も中高年の人もみんなが就職がむずかしくなるというようなときには、全体としての給付の延長を考慮する、そういう手を同時にこの全体の構想の中に織り込むことによってこれをやっていく、こういう考え方に立っておるわけでございます。先ほども申しましたように、そうはいうものの三十歳未満の人について六十日にいきなり限定するということについては、人によりましては現在の状況とあまりにも急激な変化になるのではないか、そのような急激な変化は、ひとつ給付日数の法定の場合にはできるだけ御考慮いただきたいというのが趣旨でございます。 それから上薄下厚に関連いたしまして中高年の方の給付の問題が出てまいるわけでございますが、中高年の方は確かに家族を多くかかえて、その点では単身者よりも生活問題として苦しい面を持っておることは事実でございます。しかし日本の失業保険金の算定基礎になります賃金は、御承知のように年功給的な賃金構造になっておりますし、また家族手当のような生活給的なものが賃金の中にすでに入っておる、その賃金に対する一定割合ということでございますので、そのようにして算定された保険金はおのずからそういうことも反映した結果になるのではないか、こういう考え方でございます。
○川俣委員 ところが、そういうせっかくの審議会のとうとい御考慮がこの法案に反映してないところで困ったものなんですが、それで中高年の問題なんで関連して谷参考人にお伺いしたいのですが、一体この法案を見ますと、求職者給付は失業保険給付と本質的に異なる。全体として大幅な削減であると私らは思っている。このとおりだ。さっきのように全体で分けて八百億残すというのが目的だ。失業者の生活保障に効力を持たないということが問題だと思うのです。したがって、この中高年労働者の雇用保障対策という面からこの辺をどのようにお考えですか。
○谷参考人 先生おっしゃいますように、私どもも、五十五歳以上を優遇する措置をとったものであるというのが法案の特色とされているというわけでありますけれども、問題なのは、いわゆる四十代といいますか、四十五歳以上の中高年齢者、ここの雇用問題というのが非常に重要な問題であるという先生の御意見に同感であります。この問題は、給付で既得権が削減されるということばかりではなくて、問題はかなり広範なところに存在していると考えております。中高年齢労働者の雇用問題といいますのは、私たち労働組合にとって考えてみますと、欧米の諸国では中高年の雇用保障は法律やあるいは制度上あるいは諸政策あるいは協約あるいは労使慣行、そういったものによってかなり充実した雇用の安定が守られているというぐあいに聞いておりますし、その具体的な内容は、年金と退職年齢と雇用対策、この三つが実は柱になっているわけであります。この三つの柱が相互に関連し合ってセットになって、労働者が一定年齢に達した場合、つまり中高年齢に達した場合に、職業生活を続けていくか、あるいは退職して年金生活に入るかという選択の権利が保障されるというところが、かなりメリットといいますか、問題点の一つであります。この三つの柱が権利として保障されているというのでありますが、この柱のどれ一つ欠けても選択する権利は行使できないということであります。しかも、これは企業内においてではなくて社会的なレベルで保障されているというのが特色であります。振り返ってわが国の場合の実情、実態をながめてみますと、年金にしましてもきわめて不十分であるということは疑いもない事実でありますし、退職年齢にいたしましても定年の延長というのが労働者の要求になっている。しかし実際問題として定年の延長というのが退職年齢の延長になっているかというと、そうではなくて勤務条件の延長である、あるいは再雇用契約であるというような形で定年が延長されているというわけであります。 もう一つの雇用対策の面をとってみますと、一つの例でありますけれども、政府がこの雇用保険法案の作成に先立ってすでに先行的にどうもやられているのではないかと見受けられる幾つかの例があります。その一つは定年退職前職業講習、職業訓練というものであります。これは昨年度以降どうもこの雇用保険法案のねらいに合致して先行されているようでありますけれども、いまの定年退職前職業訓練の実態はたとえば昼間、定時制、通信という三コースで行なわれていますが、一日の訓練手当が三百十九円、これは東京都の場合でありますけれども、そして通信教育で月額三千七百二十五円という手当を支給して、講習期間を一年以内で実施している。これは職安の窓口を通じて行なわれているわけでありますけれども、東京都の場合でいきますと、四十八年度の実施状況はこの定年退職前職業講習、職業訓練は昼夜間とも希望者ゼロであります。通信教育があった三名であるというような実態があります。といいますのは、わずか三百十九円の手当で一日棒に振って行けるかということであります。しかも行く条件を企業レベルなり制度的に労働者に保障しているか、行きたくても行けないという状況、両面が相まって、実はこのようなていたらくであるというわけであります。先ほど住先生からの問題提起の中で三事業が失業の予防に役立つような制度であると思うがそれに対する批判、見解だという御指摘があったようでありますが、この事実一つを見ましても、定年退職前の職業訓練というものが実際上再就職に役立つ、あるいは失業の予防措置であるといえるかどうかというところが問題だと思います。 そこで、そういう状況になりましたわが国の雇用情勢の構造的な変化というものをどうとらまえるかというのが、私ども労働組合運動にとってもきわめて重要な課題になっている。一九五〇年代から六〇年代にかけまして、全体的な労働力過剰の状態の中では雇用問題はかなり個別企業内においていわゆる終身雇用制を機軸とした対応で処理されてきました。技能の転換やあるいは職業訓練も企業内でかなり消化されてきました。つまり生涯雇用が直接労働者にとっては雇用の安定を意味していたと言うことができると思います。しかし昨今では新規学卒労働力の供給が減少している、あるいは若年労働力の不足が基調になっている、中途採用が増大をする、労働移動が活発化するという現象によって、生涯雇用を保障していた前提としての相対的労働力過剰の状態がくずれていくに従いまして、企業内の生涯雇用もくずれていくという傾向が生まれているのであります。そう考えますと、雇用改善事業は労働者の雇用保障よりも、むしろこうした傾向を促進させる役割りを結果的には持つのではないかというぐあいにいわざるを得ませんし、中高年齢労働者の雇用不安というものを背景にしながらも、その下向移動を促進するという役割りを結果的に受け持たざるを得なくなるのではないか、そういうことに実はこの雇用改善事業というものはなっていく危険を私たちは感ずるのであります。 こういうぐあいに構造的な変化の中で、雇用に対する労働者の意識もかなり変化しています。それで労働者の職業選択の基準というものが、以前は企業の安定性がかなり大きな要素であったわけでありますけれども、最近では自分の適職だとかあるいは気持ちに即応した職業を選ぶというようなぐあいに、かなり職業選択の基準の要素に変化がきております。したがって、たとえば鉄綱業におきましては、大手の鉄綱業では五〇%の労働者が転職を希望しています。それから電機産業では三〇%しか定着していないのであります。全体としましては、新規学卒者は採用後三年間で五割、五年間で七割が移動してしまうというのが現代の雇用情勢なのであります。 こうした状況から労働力の再配置といいますか、流動化促進といいますか、そういう意味で中高年労働者の労働力問題というものが焦点になってござるを得ないというぐあいに考えております。したがって、制度上これをいかにするか。単に失業者対策、失業保障のための給付の削減ということの問題にとどまらず、かなり雇用対策としては重要な問題として提起されているのではないかというぐあいに考えております。
○川俣委員 もう一つ谷参考人に伺いますけれども、さっき春闘共闘という立場で自己紹介されて披瀝されましたけれども、そこで総評をはじめ労働四団体の今回の国民春闘を考えますと、一般的に総評なんというのは大企業や親方日の丸の官公労という考え方で位置づけられておったのが、ことしのようにたとえば車いすの生活者とか母子家庭とかそういったものを、ああいうふうに曲がりなりにも政府と渡り合って、国会内外を通じて私らは一応の成果を占めたと思っております。 ところが、農民ですね。そこで労働省が心配しておるのは、給付と負担が不均衡だということを非常に心配してくれておるわけです。たとえば総評の皆さん方は一生掛け捨てで、一生失業保険にあやかることなく定年になってしまう。ところが農民のほうは七%くらいしか納めてないで、三〇%というのは例の出かせぎ農民が持ち去っているんだ。こういうものに対する給付と負担というものを労働省が全体の立場から考えてあげている、こういうことなんです。したがって九十日を三十日にする、こういうことなんです。 ところが農民のほうからいわせれば、好きこのんで——妻子と別れて半年も都会で暮らすなんて、それはばかげたことなんだ、やはり農業から失業しているからやむを得ないじゃないか、こういうことなんです。むしろ農民の人方がもっと掛けろという考え方ならまだ相談になるが、九十日を三十日にされたらどうするのだ。 それからもう一つは、冬型の場合は四月十五日の種まききりきりまでがんばるというのは——それは失業があるから雇用が安定するというのだ、使うほうの土建屋からいわせると。ところが、失業保険をもぎ取られるのならおれは何も四月十五日までがんばらなくたっていいんだ、ビル工事途中にして、地下鉄工事途中にして、自動車の車を半分はめてさようならできるのだ、極端にいえばこういうことになる。だとすれば、むしろこれは雇用の不安定どころか、使うほうからいわせればもうめちゃくちゃになるのではないか。ところが一方、今度は農民のほうからいわせると、いまの中四カ月であと先十一日というやつが、まるまる百八十日東京にいなければならぬなら、いわゆる田畑を百八十日離れていなければならないのなら、稲刈りか田植えかどっちかあきらめなければならないのだ、したがって農業から離れるしかないんだ、こういう。そうしますと、いま農林委員会で審議される農業振興地域整備法というのはどういう法律かというと、減反奨励金はもう三月で切れますから、今度は四月一日から減反奨励金のない減反をやる、失業保険は三分の一になる、そうすると田畑を放さなければならない場合に一時預りという制度をつくってやるというのがこの整備法だという。いわゆる大規模農業の地主を突っかいをさせるという法案だ、こういう。 そうやって見た場合に、はたしてそれでは一体総評から見た場合に、農民は少し給付と負担の不均衡だから、こういうのはやはりやむを得ないのではないかというような、組織の全体の感情があるのだろうかどうかということをひとつ伺いたいと思います。 それから二つ目ですが、一体それでは、私ら社会党は失業保険の一部改正をどうしてもすべきだという提案をしているたてまえ上、この雇用保険法では歩み寄る場がないだろうか、こういうのが二つ目です。 それから三つ目は、それではよしんばこの雇用保険法はとても与野党の合意を得られないからもう成立はできなかった、こういった場合、廃案になった場合、例の五十一年二月一日から使う法律をたなからおろして使えば、むしろ一時金どころか、百八十日どうしても都会にいなければならないという法律をおろして使うということであれば、それでは一体農民はどうなるんだ。こういうような三つの感情が複雑にあるということ、その辺を特に組織の谷参考人にお伺いをいたしたいと思います。
○谷参考人 先ほど意見の開陳のときに申し上げましたように、私ども労働組合は、季節出かせぎ労働者の失業保険給付はまさに社会的、経済的要因による失業であるということから、失業保険のたてまえの中で労農提携をやっていこうという気持ちであります。したがって、保険は掛け捨てでありますから、その辺は割り切っていこうではないかという気持ちが、この法案反対闘争が推進される中で、かなりそういった意味の了解が厚みを増してきているのではないかというぐあいに考えております。 そこで問題なのは、先生がおっしゃいますように、私たちの理解といたしましては、現在の日本の農業というのが省力栽培と減反政策の両面から、とりわけ中堅農家といわれる規模において農業経営の収入率が七〇%になっている。そしてあとの三〇%はどうしても出かせぎで得た所得で全体の生活のサイクルが組み立てられている。しかも農業経営と出かせぎという一年間を通じてのライフサイクルが一定のパターンを持って、動かしがたいものになっているというような事実を、実は非常に短い時間でありましたけれども、この法案にどう対処するかという労働組合の立場から、東北の二、三の地域を歩いて農村労働者と話し合って、われわれ方針を固めたという経緯もございます。そういう面からいいまして、基本的な私たちの立場はただいま申し上げたとおりであります。 もう一つは、一方において季節労働者の生産現場での雇用労働条件の問題というものを、私たち労働組合としては抜きにして考えるわけにはいかないという面があります。これは産業、企業によりましてその条件はかなり千差万別でありますけれども、かなり特徴的にいえば、一つはたとえば機械金属産業などで特徴的にあらわれておりますように、ある程度熟練度を有した季節工が本工と一緒になって、同一の労働、同質の労働で生産ラインに組み込まれているというような今日の変化があります。 それからもう一つは、建設産業に代表されるように、言うまでもなく重層的な下請け構造の中に不安定就業をせざるを得ないという雇用条件、労働条件のもとで働かなければならぬ、このような特徴点を出かせぎ地域の農家の階層的な出かせぎ状況とからみ合わせて考えますと、かなりそこに産業別的に、業種別的に、先ほど意見の中で申し上げましたように、雇用保障制度の確立をするということがもう一面なければならないんじゃないか。失業者の失業給付という保険制度で問題にするということと同時に、そういう面の雇用制度を確立する、安定さしていくという面もわれわれは労働組合の要求として連携をしてやっていかなければならぬということを考えます。したがって、そういう意味からいいますと、この委員会で御審議になっております国有林労働者の安定法、こういったものは一つのモデルといいますか、そういったものとしてかなり重要ではないだろうか。私たちの要求から見ますとまだ不十分な点があるように考えられます。しかし、かりに不十分であっても、そういうことが制度化されるということがかなり今日の段階では重要である。制度化された中でより内容を充実さしていくということを含めて、われわれは運動上の重要な課題として考えていかなくてはならぬというぐあいに考えております。 それから、そういうことを含めまして、先生おっしゃいました四カ月二十二日、これを六カ月と見なして資格要件としていく、このことは私たちが見ました目から、あるいはその実態からいいましても、非常に重要な要素になってくるんではないか。したがって、附則三条で凍結されたこの状態を単に形式的にあるいは手続的に解除していくというようなことではなくて、できるだけ時間をかけてこの問題に対処する、あるいは十分な国民的合意を得るという方向で解決されるということが望ましいんじゃないか。そのために私たちは農村労働者の利益を擁護する立場でこれに対処していきたい、このように考えております。
○川俣委員 ありがとうございました。 終わります。
○野原委員長 田中美智子君。
○田中(美)委員 まず基本的な考え方の点について質問させていただきます。 初めに岩尾、大木参考人のお二人に伺いたいと思います。 先ほどからのお話、聞いておりますと、賛成の岩尾さんのお話の中にもありましたが、雇用がほぼ完全雇用になってきたということから、任意でやめていく人たちが出てきているのだ、この法案は、法案全体から見て任意でやめていく人たちというのは自己責任だというふうな感じが含まれていて、それをほかのほうに回すのだというふうに感じられるわけですけれども、その任意でやめるということはどうしても働けないそれぞれの事情があったのだというふうに思うわけです。たとえば健康保険のことを考えてみますと、非常に不摂生をして病気になった、はたの人が見た場合にこれは自殺的行為のような、自分のからだをくたくたにしているようなことをしてきた。それであったとしても、病気になったときにはやはり同じように治療を受けられるというふうに考えられると思うのです。そういうことと同じように私は考えているわけですけれども、この点についてまず岩尾さんからお答え願いたい。時間がありませんので、簡潔に答えていただきたいと思います。
○岩尾参考人 先ほど私が申しました任意の退職者の方がふえているということは、いまの失業保険制度が任意の退職者に対しては給付をしてはいけないということではないのでございまして、この制度ができましたときには任意の退職者についても保障をいたしますということで保険料も取るということになっておるわけですから、したがって当然予定をしておったわけであります。ただ、その当時の状況としては任意の退職というのはほとんどなくて、全体が不任意の、意にそまない離職ということになっておったという状況、そういう状況が変わったということを申し上げたわけでございます。したがって、実際に任意の退職者の方にも当然保険料は払うべきものだと思いますし、そういうことも考えて保険料を納めていただいている、こういうふうに考えております。
○大木参考人 まず完全雇用かどうかという問題ですが、私は、一つはこういう点をぜひ委員会の先生方に注意をしておいてほしいというふうに考えるわけであります。それはよく政府資料として提出されます求人求職倍率でありますとか、あるいは日雇い求職者の状況でありますとか、こうした労働市場関係の資料を見ますときに、これは大体職業安定所の窓口を見た数字であります。つまりそこでは、たとえばその統計のとり方を調べてみますと、実際にたいへん劣悪な、条件の悪い職業しか紹介してもらえないということになりますと、実際には職業安定所へ行って求職をする人が減るわけであります。そうしますと、相対的に職安の窓口で見る限りは求人のほうがオーバーして、求職者が相対的に少ない、こういうような関係になるのでありまして、とりわけ端的な例は日雇い労働市場の関係、これはよくブタ職場なんということばがありますけれども、きわめて条件の悪い求人の札が一つかかっている。そうするとそれを多くの求職者が職を求めに行きましてもそれが非常に条件が悪い、そんなところで働くくらいなら、寝て暮らしておったほうがましだ、こういうふうな場合はそれを求職しないで帰ってきてしまう、そうするとこれは最後まで求人が残ったという関係になるのでありまして、そういう関係で政府の統計というものを見る場合は大きな限定がそこにあるということを忘れてはならないというふうに私は考えております。 それから同時に、これはたとえば政府統計でいいます完全失業者というのが総理府のやっております労働力調査にありますけれども、この場合も調査期間中一週間にわたって収入のある仕事に一時間もつかなかった、こういうたいへん幸福な失業者だけが失業者として数えられる、こういう実態もあるわけでありまして、そういうことも含めて、私たちは統計というものを見なくてはいけない、そういうふうなことを念頭に置いて最近の雇用情勢ということを見てみますと、これは明らかに一つは雇用の伸びが最近は主として製造業中心にたいへん停帯をし、あるいは部分的には減少さえしている。多少伸びているのは、たいへん不安定的な就業の多いサービス産業その他を中心にしてであります。しかも、昨年来の石油危機その他最近の経済変調のもとで雇用情勢は一般に悪化をしてきておりますし、とりわけそのことは高齢者層あるいは婦人、従来の日雇い層を中心にたいへん悪化をしてきておる、こういう問題があります。この辺のところをひとつ確認をしておきたい。 それから二番目に任意かどうかという問題であります。私は失業保険制度の目的というのは本来、失業という事実があれば、理由のいかんを問わずその生活保障を行なうというのが国の責務であるというふうに考えます。したがって、任意であるかどうかということを、制度上のあれこれの改定の問題の際に持ち出す、任意であるかどうかによって受給の資格やあるいは支給期間等々について、これを変更しなければならない理由として持ち出すというのは、社会保険そのものの本性にたいへん反する考え方というふうに思うわけであります。
○田中(美)委員 どうもありがとうございます。 もう一つお二人にお聞きしたいわけですけれども、今度は失業保険とそれから雇用対策だとか能力開発とか雇用福祉というのは一緒になっているわけですね。これは先ほど大木参考人が言われましたように、勤労者の拠出によって大企業の雇用をさせてやるという結果になるんじゃないかというふうに、私もそれはそのように思うわけですけれども、なぜそういったものに労働者が金を出さなければならないのか。お金には色目がついていないわけですから、どこへ行くかわからない。そういうことについて、まず岩尾参考人に、勤労者が金を出してこうした能力開発や雇用福祉とかというような問題に、自分の意思に反したところで使われていく、なぜ出さなければならないか、その点について……。
○岩尾参考人 この法案では、三つの事業を失業給付の付帯的な事業としてやるということになっておりまして、そうして、その財政負担は、現在の保険料というのは千分の十三でございますね、そのうち千分の十を失業給付のほうへ充てまして、そうしてあとの三をこの三事業に充てる。しかも労使の負担を、千分の十のほうだけ労使折半で負担をしていくということにいたしまして、千分の三の三事業については、雇用者はもう払わなくてもいいという形になっておりますから、いまのような御懸念はないと思います。 それから、実際に三事業を行ないます場合には、先ほど私申しましたように、企業にまかしておくよりも、事業主からお金をとって、そうしてそのお金で中小企業だとかそういうところへ手厚くいくように、そういう配慮がこういう形をとってできるわけですから、非常にいいんではないかと私は考えております。
○大木参考人 いまの問題については、こういうふうに考える必要があろうかと思います。 一つは、たとえばこの法案説明の中でも出されておりますように、今回の法案が成立をいたしますと、労働省の試算でもこれはそうだったと思いますが、大体八百三十四億円ぐらいの給付額の大幅な削減があるということが試算として出ているわけですね。こうした一方での給付額の削減を予定するからこそ、実は三事業への一定の額の、事業へ使う金が出てくるわけでありまして、もしそういうことがなかったら、これは出てこないという話になるわけです。つまりそのことは、千分の三のほうはもっぱら三事業のほうに使ってということを一方で言っているんだけれども、しかし、なぜわざわざ財源としては一本化しなければいけないかということの端的な理由をそこで示している。つまり、それはやはりそうした相互の関連があるからこそ、そうした問題が出ているということであります。 それから二番目に、本来私たちは、失業保障の財源というものは、国と企業主が負担すべきであるという立場に立っております。こう言いますと、皆さん方の中では、何か学者先生のたわ言というふうに受け取られる方がおられるかもしれませんが、決してそうではない。これは実際に、失業保険制度が発展しました経緯を振り返ってみましても、そもそもその財源は労働者の相互扶助ということから始まっております。つまり、なぜ失業保険というものがそもそも基金として持たなければいけないか。これは失業した場合——失業という危険は、資本主義の経済のもとで絶えずあり得るわけですけれども、その危険に備えて労働者自身が日ごろからその賃金の一部を積み立てておく。こういうことができないという、たいへん困離であるという、そういう状況のもとで、その生活保障をやはりどこかから持ってこなければいけない。これは突き詰めていけば、要するに、それだけごく低い賃金しか企業主によって支払われてこない、支払われていないということから由来しているのでありまして、失業保険の財源として確保すべきものは、したがって私たち経済をやっております者は、これは本来は賃金の一部分である、こういうつかみ方をしております。そういうことからいっても、その財源は本来、企業主並びにこの失業という事態発生の責任を負う政府がその財源を拠出すべきである、こういう立場に立っているわけですから、そういう考え方で、そうして実は、それは単に労働組合その他の要求として主張されているというだけではなしに、諸外国の制度の中では、そうした考え方に沿って次第に労働者負担の低減がはかられ、そうして国や政府の負担部分というものは大幅にふえてきているという事実も現にあるわけであります。そういうことからいいますと、本委員会に付託されておりますようなこの財源の考え方というのは、かなり問題があるというふうにいわなければいけないだろう。 さらに第三に、先ほど岩尾参考人のおっしゃいました中で、この三事業というのはこの失業保険制度から切り離すことはなじまないというふうに言われました。私はそれはまさに逆であるというふうに思います。実はこれは本委員会でも使われておると思うのですけれども、「雇用保険法案関係資料」、この中には、たとえば最後の付属資料のところで、この「雇用保険法案参照条文」という資料の中に、中高年船者等雇用促進特別措置法が入っておりません。しかし、これは実はたいへん関係のある法律でありまして、そこのところを参照しないで審議がはたしてできるのかということを大いに疑うものであります。つまり、それは実際にはすでに、本法案の中で提起をされております雇用改善や能力開発や雇用福祉、こういったような面では——たとえば雇用改善のそのかなりの部分については、中高年齢者等雇用促進特別措置法の中で実際にかなり実施されてきているという面がありますし、それから、たとえば能力開発の面でいえば職業訓練法というりっぱな法律もあるわけですし、つまり従来からこれらの事業は、もともと失業保険法とは別の政策体系として、別の制度のワク組みの中で実際に行なわれてきたという経緯があります。そういうことからいえば、なじまないどころか、実際に失業保険法あるいは雇用保険法の中に三事業を一緒に混在させるということ、これ自体がかえって従来の制度の経緯の上になじまないというふうに言わなければいけない、こういうふうに考えます。
○田中(美)委員 次に、大木参考人にお尋ねいたします。 日雇い労働者などがこの失業保障の改善には問題外となっているというふうに思いますけれども、その点について御意見をお聞きしたいと思います。
○大木参考人 確かにおっしゃるように、この法案を拝見いたしますと、全体として上薄下厚というようなことがいわれまして、先ほど住委員のほうからもありましたように、考え方の上では、失業の犠牲を最も多く負っているそういう雇用者についてたいへん手厚い対策が行なわれているというようなことでございますけれども、しかし実際にその法案の内容にわたって見ますと、必ずしもそうなっていない。とりわけ、この日雇い労働者の部分については、たとえばその保険料率について見ましても、他の一般被保険者についてはかなりの、つまり五対八というような割合で企業主側の負担がある程度増大をするということになっておりますけれども、日雇い労働者の場合については依然として折半という原則が貫かれている、こういうことであります。しかも六十才以上の高齢者等について保険料を免除するというようなことも、この場合特別考えられていないというわけでありますし、しかもこうした内容を見てみますと、先ほど来出ております例の短期雇用者について、実際に失業という状態におちいっておりましても、その保険負担その他を増大させるとか、あるいは実際にその給付を切り下げるとかいうようなことが出てまいりましたように、実際に失業の犠牲をたいへん多くその肩に背負っておるような人々に対して、あまりにも十分な配慮をしな過ぎるのではないかという感じを逆に持つ次第であります。しかもこうしたことが、中高年措置を従来やりましたときに、失業対策事業を制度的に廃止いたしますこととの関連で、こうした高齢の、しかもきわめて日常的に不安定な就業者の人々、これの生活保障という問題は、特別の政府自身の手厚い対策をやるからという、そういう理由でたしか制度的な廃止に踏み切っていったというふうに私は承知しておりますけれども、そうした点での関連も何か十分には配慮されていないのではないか、こんなふうに考える次第です。
○田中(美)委員 では次に、大木、大宮参考人のお二人に伺いたいと思います。 先ほど大宮参考人のお話の中にも、三十歳未満の婦人が非常に変動があるということは、急激な変化があるということはやはり矛盾であるというような御意見があったわけですけれども、まず婦人の失業をどう考えるのか。結婚、妊娠、育児というふうなものが常に婦人だけにくっついて、これが失業保険の中でさまざまに不利なように考えられているというふうに私は思うわけです。この点。 もう一つは、同じ婦人ですけれども、給付期間、受給期間というものを今度三年間プラスして四年間にするというものがついているわけですけれども、これを改善であるという人と改善でないという人との意見がありますので、この点の御意見もお聞かせいただきたいと思います。 初めに大木参考人から御意見をお願いいたします。
○大木参考人 確かに本法案の中で、婦人に対してその受給期間を延長するというような形で出ておりまして、これは何か一見しますと、制度上、婦人の受給者に対する一定の制度上の改善であるというふうにもあるいは受け取られるかもしれませんが、私は、従来の経緯の上からしますと、これは女子の受給者の実際の権利を事実上剥奪をするということになるのではないかという点をたいへんおそれているわけであります。 実は、皆さんも御存じのように、従来、失業保険の受給者、これは特に結婚、妊娠その他、そういう場合にはとりわけそうでありますが、婦人の受結者に対するこの受給制限ということはたいへんきびしく行なわれてきました。そういう中で従来から婦人の場合になかなか、実際には退職をし、そして収入の減少によってその生活の不安が実際に起きているという状況でありましても、失業保険が、婦人であり、しかも結婚その他を契機としていたというような理由だけで支給制限になるというようなことが一般化してきたわけでありますが、そうしたことは今回の法案では制度的にもはっきりと確定をされよう、こういうことであります。四カ月というのは、実際、ではその間に、結婚だからあるいは妊娠だから等々という理由で退職をする。その退職した、そういう理由であるからといって、実際の収入の減少になっている、そしてその生活保障の必要があるという点は変わりないわけであります。私は、よく婦人の場合に、それは失業ではない、あるいは求職の意思をその場合には確認できないということに対して、実はたいへん大きな疑問があるのでして、婦人労働者の場合も引き続き職業につくことができるという条件があり、これは出産の間の休暇あるいは育児の問題あるいは保育、託児所その他の問題、こういったような問題がもし解決されますれば、これは当然引き続き働き、そうしてそれにふさわしい収入を得たいということを望んでいる。このことは労働省がおやりになっている調査などでも非常にはっきりしていることであります。 こういうことでありますから、婦人はできたら働き続けたいと思うのに、実際それができないというような社会的な条件のもとでやむなく職業につかないでという形をとっている。まあ実際の契機は自己の意思でというような形をとりましても、しかし失業状態であることに変わりはないというふうに、私はこの場合にも思うわけです。そうでありますと、その生活保障をやはりその間に行なう必要があるのでありますが、四カ月受給期間を延長するということは、その間は失業ではないということで延長するということであります。つまりその間は要するに失業を認めず、失業保険の受給、この場合で言いますと失業給付でありますが、これの受給権を認めない。じゃ、四か月たったら認めるのか、これは必ずしもそうじゃない。四カ月たてば今度は職安に出頭をして、そうして求職窓口へ行って求職の申し込みをしなければいけない。申し込みをして、そうして、いまは電算機でもって一ぺんに三つも職が紹介されるわけでありますから、そのどれかをとにかく選択しないということになりますれば、求職の意思がないというようなことになってくるのでありまして、これは事実上、婦人の失業給付の受給権、それから失業保険の受給権というのを公的に否定をする制度化だというふうに疑われてもしかたがないのではなかろうか、こういうふうに考えております。
○大宮参考人 婦人の労働者につきましては、男子と違ったいろいろむずかしい、また、したがいまして就業の場においてそれが不利に働くような面を持っておるわけでございます。したがいまして、婦人に対しては、男子に対するよりも一段と別途くふうをした対策を考えておく必要があるというふうに基本的には思っております。 一方、この失業給付というのは、大原則といたしまして、労働の意思と能力のある人で失業中の人に支給するというたてまえに立っておりますので、そこで従来、結婚退職による女子の問題が世間でいろいろいわれておったと思います。したがいまして、今回はまずその婦人で結婚しあるいは妊娠、出産し、できるだけ早く働きに再び出たいという御希望のある人には、そういうことができるように環境をできるだけ整備してあげる必要がある。これが三事業のほうの福祉事業等を中心にして特段の配慮をする必要があるんではないかという中職審の答申の付帯的意見として出たわけであります。 しかし、反面、結婚によりまして、御自分の意思で、十分育児等に専心した上で、安心できる態勢のときに再び就職したい、そういう人には、従来のようにそれが一年間の猶予期間でなくて、四年間見るということによって、そういう希望の人にはこの四年間というのがきくんではなかろうか。こういう両々相まった考え方でこの雇用保険法の内容ができておるというふうに考えますので、まあ中職審の一員としては、私は方向として賛成しておるわけであります。
○田中(美)委員 先ほど大木参考人が間違えられたと思いますけれども、四カ月というふうに言われたんです。四年の間違いだったと思いますけれども、もう一度はっきりとお答えいただきたいと思います。
○大木参考人 四カ月というふうに申したかと思いますが、四年の誤りであります。 この場合に、やはり婦人が四年という間延長しました場合に、たとえば出産というような場合について見ましても、とにかく一定の収入の減少、そしてそれに伴う生活保障の必要性というものが現に出てくる時期に失業給付が行なわれないということでありまして、そこのところの問題、ひとつ押えていただきたいというふうに思います。
○田中(美)委員 これで私の質問を終わります。 どうもありがとうございました。
○野原委員長 石母田達君。
○石母田委員 私、最初に大木参考人にお伺いいたしたいと思います。 それは先ほどのお話の中で、日本のいわゆる雇用保険法で扱う失業者の規定というものがきわめて制限的なものであって、職安でいわゆる労働の意思がある者、それから労働の能力のある者、それから就職活動をやっておる、こういう三つの条件の合った者が初めてこの資格を得る失業者である、こういうものについては国際的に見て、先ほど西ドイツの雇用促進法の中では失業者の規定がちょっとお話ありましたけれども、その西ドイツやその他に比べても、このような失業者の規定をしているところがあるのかどうかということが第一点。 それから今回の法改正で、いままでの失業者の生活の安定をはかるとともにということで、同じ並列として求職活動を容易にするなど、その就職を促進し、ということが新たに加わっているわけです。このことが先ほどの失業者の規定と相まって、これまできわめてきびしい受給制限が行なわれてきたわけであります。この受給制限が就職を促進するという中で一そうきびしく法制化される、しかもその求人の内容というのは、先ほど先生が言われたようにきわめて劣悪な条件のものが多いという場合に、そうしたところに強制就職をするというようなことが行なわれはしないか、そういう危険が非常に増大するのじゃないか、こういう点で私どもは今回のこの改正案の中で重大な改悪点としてこの部分をわれわれは見ているわけですけれども、その点に対する先生の御見解をお願いしたいと思います。
○大木参考人 世界じゅうに日本のようなところがあるかというふうに言われますと、まあ世界、たいへん国の数多いものですから、あるいは似たようなところがあるかもしれませんが、しかし私の知る限りでは、これはそうしたきびしい制限を、しかも政策当局の一方的な認定によって行なっているというのは日本だけであります。 御参考までに、たとえば西ドイツの場合の受給資格を見てみますというと、失業者であって職業紹介に応じ得ることというのはありますが、求職活動を実際やっていることとか、あるいはまた職安に求職の申し込みをすることとか、あるいはその労働能力等についても政策当局の認定を受けなければいかぬとかいったようなことはないわけであります。 あるいはまた、たとえばイギリスの場合について見ますと、この場合も失業していること、あるいは労働の意思と能力があることというようなことを一般的にきめ、そして職業紹介所に求職登録をしているというようなことはありますけれども、本法案のように必ず求職申し込みをして、職安を通じての一定の求職活動を必ずしなくてはいかぬというようなことはありません。 ともあれ全体として見まして、私の知る限りで、本法案のように、あるいは従来日本の政策当局がやってきましたような形できびしくその受給者を制限をする、受給資格を制限をする、しかもその資格そのものの認定についても、一方的に政策当局が認定をする、しかもその場合いろいろ不服がありましたときにも公的な救済制度というものがないというような、こうしたものは私は寡聞にして他に例を知らないというわけであります。これは救済機関として一応形のものが若干ありますけれども、これは形の上だけのことで、実際機能していないということを念のため申し上げておきます。
○石母田委員 もう一つ、先ほど失業保険の管理運営に労働者の代表が参加することが望ましいという御見解を出されました。そういう問題について、これまた国際的な比較、あるいはこういう点についての根拠についてもう少し大木参考人と谷参考人にお聞きしたいと思います。あと持ち時間が五分しかございませんので、簡潔にお答え願いたいと思います。
○大木参考人 これは例としましては、先ほど御紹介しました西ドイツの雇用促進法等でも、たとえば第百八十九条以降の規定でそうした被保険者代表の恒常的な機関運営への参加ということをきめております。そうして、これはフランスなどの場合その他多くの国で実際にむしろ被保険者代表、具体的には労働者代表その他でありますけれども、これが中心となって制度運営をしていくというのがむしろこの種の社会保険制度の原則であろうというふうに私は考えております。
○谷参考人 大木さんが言われましたように、西ドイツの場合は連邦雇用事業団法によりまして、労使代表が行政的な権限を持った委員会に参画が保障されておるということです。これは労使だけではなくて、公社や地方自治体の代表も含まれて三者構成になっているようであります。 それから、直接失業保険制度ではありませんけれども、先ほどちょっと意見の中で申し上げましたように、たとえばイギリスの産業訓練法におきましては、訓練委員会が労使代表によって構成されております。しかもそれが中央と産業別に、制度的に委員会として保障されている。フランスの場合も雇用基金制度がありまして、全国協定、あの一九六八年の大闘争によりましてフランスの労働組合運動がかちえました成果として、全国協定によって雇用安定のための協定が結ばれております。それが後に法律になりまして、法律で保障されているということであります。その制度の中には、労使同数の委員会が管理運営に当たるということが保障されております。
○石母田委員 最後にひとつ大木参考人にお伺いします。 先ほどのお話では、雇用情勢が今後非常に悪化する中で、こうした根本的な改定といわれるようなことがなぜ必要があるかということについて多くの批判もありますし、先生の御見解もそうしたものであろうというふうに思っております。 これは労働大臣やその他の国会答弁でも、現在の雇用情勢はそれほど悪化しない、あるいはまた完全雇用に近い状況という中でこの雇用保険法を提出されたというふうに出されておりますけれども、そうした先生の見解からいって、一体雇用情勢の現状あるいは見通しの先ほどの御見解の根拠についてと、それからそうした情勢の中における根本的な改定が一体必要なのかどうかということについて、簡潔にお答え願いたいと思います。
○大木参考人 たいへん大きい問題でありますので、なかなか簡潔ということにならないのですけれども、私は先ほど来申しましたように、現在の雇用失業情勢というのは六〇年代の高度成長の時期と異なりまして、根本的に悪化しつつあるというふうにむしろとらえるべきであろうというふうに考えております。そうしてそれは実は今回の政府提案の中にもそれが部分的に反映されているわけでありまして、高年齢者層を中心にして雇用失業情勢が悪化するであろうという問題、あるいは今後石油危機等を契機といたしまして、日本の経済成長が従来のような世界一の高度成長のテンポを維持し得るという見通しもないというようなこともございますし、実際、雇用構造そのものがたいへん停滞的な傾向を強めておるということもございます。そういうことから言いまして、むしろいまの時期では失業保障を一方での雇用対策とともにたいへん拡充しなければならないという時期であろうというふうに思います。そしてそういう方向で、とりわけ失業保障の面でいいますと、何といいましても一つは給付日数や受給期間というものを、とにかく保険制度として均等な大幅延長をやる、あるいは先ほど谷参考人が言われましたような給付率の引き上げをやる、あるいはまた実際の財源負担を当面労使三対七というふうな方向でやっていく、あるいはまた保険財政の運営管理に労働者の代表を参加させていく、こういったことなどを含めた失業保障制度の、従来の失業保険制度の抜本的な拡充ということがどうしても必要であろうと思います。 それから同時に、それと区別されながら、失業を多発させない、こういう点で、第一にはやはり時間短縮問題というのがたいへん大きいと思いますし、同時に多くの先進国ですでに実施されてきておりますような解雇の法的な規制、こういうものをどうしてもやらなければいけないだろうというふうに思いますし、さらには高齢者を中心に失業が増大してまいりましたときに政府が責任を持って雇用機会をつくり出し、同時にそれを通じて民間の雇用情勢について、あるいはその賃金、労働条件の低下、悪化について一定の歯どめをかけるというような、一定の事業、制度の拡充についても考るべきであろうというふうに思いますし、さらには職安行政全般の民主化をはかっていく、こういうような問題をやはり真剣にいまこそ取り組むべきではないか、こういうふうに考えております。
○石母田委員 発言を終わります。
○野原委員長 大橋敏雄君。
○大橋(敏)委員 参考人の皆さまにはたいへんお疲れと存じますが、重要な法案でございまして、皆さまの御意見がまた大事な審議の内容に影響していきますので、いましばらくでございますので、よろしくお願いいたします。 労働者にとりまして失業というものは最大の脅威でございます。しかしながら、何かの事情によりまして失業しなければならなくなったという場合、失業中におきましてまず第一にその生活が安定され、保障されるということが先決であろうと思います。また、失業した方々は直ちに再就職したいというのが本来の共通する心境であろうと思いますけれども、再就職にいたしましても、職業選択の自由の原則に立って十分時間的な余裕のもとに自分が希望する職業につく、こういう状態が第一条件ではないかと思うのであります。したがいまして、こうした法案の改正がなされる場合は、こういう条件が十分満たされるような内容に改善されていかねばならない、こう思うのであります。今回の雇用保険法は確かに改善部分は幾つか見られますものの、いま私が申し上げましたような立場から見た場合には、かなり不都合な場面もあるように感じます。 時間が非常に制約されておりますので、各参考人に、岩尾さんから順々にまず全部質問を出しますので、あとそれを三分半か四分程度でまとめて答えていただきたいのです。 まず岩尾さん。今回の法案で全産業への強制適用がうたわれております。農林水産業の労働者というものは毎年季節的な就業と不就業とを繰り返して、雇用関係、賃金支払い関係が不明確な場合が多く、失業保険になじまないということで、これまでは任意適用ということでありました。今回は強制適用ということになるわけでございますが、この点についてどう考えられているか。社会的公平の見地からはむしろ当然の措置ではありますけれども、実態的といいますか、実質的には非常に困難な問題であろうという考えを持っておりますので、この点よろしくお願いします。 二つ目には、農林水産業の労働者も季節労働者と同じ扱いになろうとしておるわけでございますが、この点について非常にマイナス点という立場からの出発になるような気がしてなりませんので、この点もあわせてお願いいたします。 もう一つ、季節労働者の問題がきわめて深刻な問題として議論されておりますけれども、都市労働者に対しましての質問になりますが、メリットある失業保険制度にしてほしいという気持ちがあるわけです。すなわち、都市労働者は長期間保険をかけてまいりますけれども、ほとんどかけ捨て状態で終わっていくわけでございますが、脱退一時金支給というようなものでこうした方々にも何らかメリットある制度にすべきではないかという考えを持っておることについて、先生は研究会のメンバーであったということを聞きましたので、こういうのが議論になったのかどうかという点ですね。 次に、大木参考人にお尋ねいたします。失業保険本来の社会保障制度を、単なる保険財政の原則に立って、いわゆる失業保障から就職促進へと変質させた内容である、このような御意見を述べていらっしゃったように思います。そうしてさらに、求職の意思の有無についての認定を職安が握っていて、認めた者についてのみ失業給付が行なわれている、ここに問題がある、現実的には職安の指導、いわゆる力のもとにむしろ低賃金労働への紹介がおもである、このような御意見がはかれていたように伺いましたけれども、先生はこの点はどのように改めるべきか、御意見をお伺いしたいということです。 それから雇用改善、能力開発、雇用福祉、この三事業について、私自身その趣旨には賛成できないでもないのでございますけれども、法案の示すその実態というものについては、先生も理解しがたい、こうおっしゃっておられました。さらにこの三事業について、一般会計で一元化して行なうということはよろしくない、失業保険特別会計でこれをやるというのは流用である、こう指摘されたように伺ったわけでございますが、もう一つこの三事業の内容が、大企業の利益が優先されて労働者は軽視された状態ではないか、また中小企業にはメリットがないというようなお話を伺ったと思うのですけれども、この点もう一度明確にお答え願いたいと思います。 次に、大宮参考人にお尋ねいたします。先刻、現行失業保険制度の改善の必要性が述べられたわけでございますけれども、理解できる部分もないではございません。しかし、今回の改正案なるものは、抜本改正の名のもとにあまりにも既得権を侵害している、こう私は思うのであります。いわゆる激変をさしてはならないとおっしゃったわけでございますが、事実上はかなり激変を来たしている内容になっているわけでございます。たとえば出かせぎ労働者の給付日数を現状の三分の一というように大幅に削減する、また特例一時金としていることなどは激変の最たるものだろうと私は思います。先ほどからもお話があっておりますように、出かせぎ労働者というものは好きこのんでこういう仕事についているわけではないのです。好きこのんで失業を繰り返しているわけではございません。しかも現実的には失業中の給付金が、皆さまの年間の家族生活の中に完全に組み込まれてしまっているという実態があるということでございます。そういう点について、いまの法案の内容についてどういうふうにお考えになっているのか、お尋ねいたします。 それからもう一つ。今回の法案は完全雇用を目ざしている、量の面では完全雇用だけれども質の面ではまだまだある、しかしながら、今回の法案は完全雇用の実現を目ざしているものだというふうなお話を伺ったのでございますが、私はこの点についてかなり疑問を持っておりますので、これも短い時間ではございますけれども、お願いしたいと思います。また、名称は変わっても失業保険制度の持つ失業保障機能を堅持、強化していくんだというような御意見もあったかに伺いましたので、これも含めてお答え願いたいと思います。 それから谷参考人にお伺いいたしますが、先ほど保険料率の問題に触れられておりました。現行千分の十三、事業主と被保険者がそれぞれ千分の六・五ということが、今回は被保険者は千分の五に引き下げられて、事業主が千分の八に引き上げられた。その千分の八の中の千分の三がこの三事業の経費に充てられることになって、政府が言うには、そうすることが企業の社会的責任を果たすことである、こう言っております。谷参考人は、失業保険制度の中でこの三事業を行なうことについては基本的に反対であるという立場をとっておられましたので、この点については非常に答えにくいとは思いますけれども、このような政府の考え方について御意見をお伺いしたいと思います。 もう一つ、完全雇用体制は労働者の望むところでございますが、先ほど申し上げましたように、量的には達成したといわれております。質の面では問題が多いということでございますけれども、特に中高年齢者の就職難は御承知のとおりと思います。政府が今回考えております所定給付日数は、年齢等による難易度に応じて定めた。特に五十五歳以上の高齢者は三百日分を支給するということになっておりますけれども、先ほど難易度というよりも危険度に応じてやるほうがよろしいというような御意見であったかに伺いましたので、この辺をもう少し御説明願いたいと思います。また、低所得者の給付の改善といたしまして、上薄下厚の給付率を採用しておるようでございますが、この政府の考え方についての御意見をお伺いしたいと思います。さらに、全国的に失業水準が悪化した場合には、所定給付日数を全国的に一律に延長するといういわゆる不況対策としての措置も盛り込まれているわけでございますが、この点についての御意見をお願い申し上げます。 以上です。
○岩尾参考人 御質問の雇用保険を全産業に適用することでありますが、冒頭にお話し申し上げましたように、雇用者社会というものに進展をしていきますならば、当然そうあるべきでございます。しかし、御承知のように農林水産業というのは家族従事者等を使って働く場合が多いわけでございますから、したがって、雇用者と言い得るかどうかということが非常に問題でございます。実際に賃金台帳をちゃんと備えて、そして雇用の条件を果たしておるというものがあるかどうかということで、そういった真に対象になり得るような者を段階的に選んで加入をしていただくという方向で処理をしたい、こう思っております。 それから二番目の、季節労務と農林水産業の関係でございますが、お話しのように、農林水産業というのはそもそも季節的な産業でございますから、今回農林水産業に、段階的ではございますが、適用していくということになりますと、この農林水産業へ、出かせぎをされて帰ってこられた方が、そのまま仕事についても保険金がもらえるという形になりますから、季節の問題と農林水産業の適用拡大の問題というのは非常にうまくフィットしていくというふうに私は考えます。 それから、最後にお話しになりました脱退一時金でございますが、先ほどから申し上げておりますように、この保険は雇用保険でございまして、いわば社会保険でございます。したがって、普通の私保険のように被保険者期間と申しますか、保険料の掛け高に応じて給付をもらうという性質のものではございませんで、一般の雇用者の方が失業された方の再就職を促進するために保険料を納めるという制度でございますから、そういう意味合いで、中途でやめたから脱退一時金というのはちょっとそぐわないというふうに、議論はいたしましたけれども、判断をしたわけでございます。
○大木参考人 低賃金というものをなくしていく、そしてそのことによってさまざまな失業保険制度上の諸問題を解決していくのには基本的にどうしたらいいかという趣旨の御質問だったかと思います。私は、その点では大幅賃上げその他実際ことしの春闘で戦われているような問題もあろうかと思いますけれども、制度上の問題で申しますと、一つは、最低賃金制度というものをやはり根本的に改善をする、これを従来から労働組合その他から要求が出ておりますような方向で抜本的に改善をしていくということがたいへん重要であろうかというふうに思います。 二番目には、それと同時に年金でありますとか家族手当でありますとか、あるいはまたさらに生活保護の問題でありますとか、こういった社会保障上の拡充に鋭意つとめまして、そして社会保障の劣悪なことから余儀なく低賃金でも、隠れてでも働かなければならない、こういったような状況を払拭していくという問題も同時に必要であろうというふうに思いますし、さらには、たとえば中小企業のさまざまな困難な経営状況に対する積極的な助成措置、保護政策といったようなことも同時に必要であろうかと思います。そうした問題を解決していくことによって初めていろいろな制度上の問題というようなことも解決するのでありまして、出てきた結果として、失業が多発するからそれを切り縮めようというようなことをしても、これは決して問題の解決にはならないだろうというふうに考えております。 次いで二番目の問題ですが、私が申しましたのは、一般会計というよりも保険財政としての一本化ということです。これはたいへん問題であるということですが、これは整理して申しますと、第一には、本来保険というものとは性格の異なる、手当制度でもって措置されるべきようなものを保険制度の中に混入させてくるという点、それから二番目には、職業訓練にいたしましても、あるいはさまざまな雇用安定のための雇用対策でありましても、あるいは社会福祉政策でありましても、そういった本来それぞれ独自の政策として拡充されなければならないそういった問題について、十分な政府の施策を拡充することなしに、これらの保険制度の中に混入させてくる、こういった点で問題の混乱が起きてきますし、本来の制度の目的が果たせないといったようなことになるのではないかというふうに考えるのであります。たとえば短期雇用者の問題でありましても、あるいはその他のいろいろな問題にしましても、出かせぎ労働者などの場合には、これを最も多く使用してそこから多くの利益を得ている企業主が、これらの出かせぎ労働者が実際に失業し、生活が困難におちいるといったようなときには、まずその一定の費用負担をして、その生活の安定のために尽くすというようなことが考えられてしかるべきであります。つまり企業主と政府の一定の負担による失業手当制度というものを拡充する、同時に他方では、先ほど来言いましたように、従来から行なわれております職業訓練政策あるいは雇用対策その他あるのでありますから、一般会計で、政府の責任でこれらの施策の充実をはかるということが基本的な方向でありまして、そうした政策の拡充、充実を失業保険制度そのものの拡充とあわせて行なうならば、やはり勤労者にとってたいへん好ましいことではなかろうか、こういうふうに考えております。
○大宮参考人 第一の既得権侵害の問題でございますが、これには、大きく分けますと二つの種類があるのではないかと思います。 一つは現行失業保険制度で、制度運営上、当然の結果として得ている権利ないしは利益というものと、それから現行の失業保険制度の本来の趣旨からすると、現在受けている利益がそれに合っているかどうか疑問であるというような利益と、二つあると思います。 問題を簡単に、時間を節約する意味で、先生のおあげになりました出かせぎの問題について申しますと、これはどちらかというと後者の例に入るので、いろいろ問題として議論があったというふうに私は理解しております。そこで、このような方々には、失業期間中に就職する機会があれば、できるだけスムーズに就職できるような体制を整えてあげる必要があるんではないか。 〔委員長退席、山下(徳)委員長代理着席〕 現在のような、失業保険金をもらっておりますと、就業をしたくても、就業するとそれを切られるというような反面も出てくるわけでございまして、そういった就業する機会があり、また就業したいと思っている人が、そのようなことのために就業できないということは、御本人のためにも不幸であり、経済全体としても非効率的なことでございますので、そういう点は避けるような方向にしたい。しかしその場合に、現実に従来もらっておる失業保険金の額というものを、実際の生活問題として考える場合に、そう一ぺんに整理するということは問題である。そういうことでもって、一時金という構想が出てきたものと解釈しておるわけです。 その場合に、じゃ、一時金の額が三十日分でいいかどうか。これにつきましては、三十日というのは、必ずしも科学的根拠がそうはっきりあるとも思えませんので、先ほど先生も引用されました激変を避けるというような趣旨で、この辺はさらに御検討していただく余地があるんではなかろうか、こう考える次第です。 それから二番目の問題は、完全雇用ということばは、私は申し上げたことはないのです。と申しますのは、完全雇用かどうかということは非常に判定の因難な問題でございまして、こういうことばを使うと、そういうわき道の議論でもってだいぶ時間を費やすことになります。ただ私は、失業保険発足当時と一九六〇年代以降とでは、労働力の需給関係が完全に違ってきておる。それによっていろいろな状況の変化が起こっておる、それに対応したものでなければならない。同時に、労働力の需要超過の状況にはなってきておるんですけれども、現実にはまだまだ雇用条件として、必ずしもみんなが望ましい状態まで来ているとは限らない。そういう場合に、特にまだ低所得の段階にとどまっておるような人、あるいは就職が、全体として労働力需要超過であるにもかかわらず困難な階層の人、そういう人には特別の失業保険を考えていかなければならないんじゃないか。それが上薄下厚とか、あるいは給付日数を年齢別に考えるとかいうことになってきておるので、方向としては、それはけっこうな方向ではないか。 〔山下(徳)委員長代理退席、委員長着席〕 ただ、先ほども申しましたように、それ自体に、現状との激変という問題もまだ残っておりますし、それから現在の雇用保険の構想の中にも、個別的給付延長とかあるいは全国的な給付延長とかいう構想もございますので、そういうものをあわせ運用してまいりますれば、従来の失業保険制度の失業保障機能を維持するばかりでなくて、改善される面が多々あるんではなかろうか、こういうふうに解釈しています。
○谷参考人 簡単にお答えいたしたいと思います。 第一番目の千分の三と三事業の関係であります。たとえば、この千分の三が制度化されたことによって、先生おっしゃるように、政府は企業の社会的責任を果たすことに実質的になっているし、その発展方向の一つであるというぐあいに言われているようであります。私たちは、それを全面的に否定するつもりはありません。確かにわが国の情勢の中では、そういう要素もあるいはあるかとも考えられます。しかし、満足すべき制度化ではないということだけは、はっきり言えると思います。この場合に、それはなぜかと言いますと、能力開発事業を一つ取り上げてみましても、国が行なっております雇用促進事業団の全国九十校の総合訓練校、ここで行なっている公共職業訓練の費用が総額幾らになっているだろうかということと、それから今度能力開発事業で事業内訓練に交付する金額が幾らであるかということ、千分の一は約三百七十億だといわれておりますけれども、それらの状況と、それからもう一つは、企業が労働者に対して教育訓練を行なっている、その投資額は一体どれぐらいになるだろうか。それらを対比してみますと、ちょっと変わった立場からそれを判断しますと、私たちは、交付金を、事業主交付金ばかりおろしてけしからぬという批判も一面では持ちますけれども、同時に企業の行なっている教育訓練に対する投資総額から比べると、これはもうお話にならないような金額だろうと思うんですね。そういう意味からいいますと、そういうことで職業訓練の公共性だとか社会化だとかいう筋道が立った方向で能力開発事業がはたして発展性があるだろうかということを考えざるを得ない。そういうことからいいますと、ヨーロッパ諸国でやっておりますように、職業訓練に関する費用にいたしましても、企業賦課金で少なくとも最低千分の十、イギリスの建設産業なんかでは千分の三十というものをプールしているわけです。それだけの費用を投じなければ、まともな職業訓練にはならないということが一つは言えると思います。そういう意味からいいまして、先ほど私の意見や大木参考人の意見にもありましたように、全く性格の異なる政策手段あるいは政策体系でありますから、そういうことも含めて別制度にすべきであるという主張であります。 それから中高年齢問題で、就職の難易度で給付日数を定めている、それの区分のために年齢階層を持ってきたということと関連して、中高年の雇用不安問題であります。このことに関しましては、私どもの組織内の議論におきましても、たとえば先ほど申し上げましたように、どの道をとるのが最も保険原理に近い道なのか、たとえば失業保険制度の変遷過程が一律百八十日給付から、被保険者期間による区分、それから今回の年齢区分ということでありまして、専門研究者の間でもなかなか結論がつかない問題のようであります。私どもは、就職の促進ということにかなりウエートがかかり過ぎるので、これはことばのあやですけれども、しゃくにさわるから、失業の危険性をもう少し重視しろというぐあいに言ったわけでありまして、むしろ制度本来のたてまえから、いずれの道をとるのが正しいか、この辺は検討の余地のある問題だろうと思います。 それから、上薄下厚の考え方については反対であります。これは下に厚いという分野が、五十年段階では、賃金実勢の反映で受給対象がおそらくいないだろうというぐあいに考えられます。それからもう一つは、生活給体系を考えますと、逆に上厚下薄が望ましいということを考えます。 最後に、全国的な失業の発生という不況対策に対する給付の延長というものがあるかどうか、この部分だけで問題が処理しきれるだろうか。当然こういう給付延長が行なわれるということは好ましいことでありますけれども、はたしてこの部分だけで法全体を評価することには至らないというのが、率直な意見であります。
○大橋(敏)委員 時間がオーバーしましたので、私はこれで終わります。
○野原委員長 和田耕作君。
○和田(耕)委員 ずいぶん時間もたちまして、私一番最後の御質問を申し上げるわけですけれども、いろいろ問題点につきまして、先生方から率直なお話をいただきまして、たいへん勉強になりました。私自身知らなかったような問題、ずいぶん考えさせられるような問題がたくさんあるということに気がついた点も多うございまして、ほんとうにありがたいと思います。 そこで、簡単に御質問申し上げますけれども、大宮参考人から、この法案ができるいきさつ、つまり、失業保険制度の研究会での有沢先生を中心とした専門家の熱心な討議によって出てきたこと、そしてまた、中央職業安定審議会での御審議の状況、そしてこの法案の持っている問題点というふうに整理をなさってお話しをいただいたんですけれども、また谷さんから、特にこの問題と関係の深い労働者としては、とにかく現在の労働者の生活にとってプラスであるかマイナスであるかということが、法案に対するわれわれの基本的な視点だというお話も承ったわけでございますけれども、やはり大づかみに見れば、この二つの問題が一番中心になるんじゃないかと思います。 現在の失業保険制度の中にある矛盾といいますか、問題点といいますか、季節労務者の問題でも、結婚前の女子の失業の問題でも、あるいは就職支度金の問題でも、事実たくさんの問題があると私も思います。そういうような問題を控えて、この研究会の方々が出した方向、この雇用保険法の柱になっておる考え方についても評価をしたいと思いますけれども、しかしやはり政治の問題としましては、一番関係のある方々がこれによってたいへんマイナスになるという面ですね。 この面に対して、何らかの方法でこれをカバーしていく必要があると私は思います。大宮参考人も最後に三点ほど、つまり、著しい状態の変化という問題に対して、問題があるということも指摘なさったんですけれども、岩尾さん、いまの問題ですね、現実の労働者諸君のマイナスを受ける人たちに対して、この法案で対処しようとしておる以上に、もう少しやはり考えてみなきゃいけないなというふうにお思いになるのか、あるいはこれでいいとお思いになるのか、その点についてひとつお伺いしたい。
○岩尾参考人 結論だけ申し上げますと、このままでいいと私は思っております。 その理由は、先生おっしゃいましたように、こういう改正が行なわれることによって、あるいは実際の給付が減る方もあると思うのでございますけれども、本来この雇用保険というのは、再就職を保障していこう、そのために失業保障ということばを使われておるわけでございますから、そういう意味で法案を組み立てていきますと、どうしても私の考えたようなこういうことになるわけでございます。ただ、その結果が現実の受給される方に激変になっては、これはやはりいけないと思います。これは答申にも書いておりますが、そういうことにならないように配慮をしようということで、実際に給付率なりあるいは季節労務の方の一時金につきましても、先ほど来いろいろ議論がございましたが、制度として、たとえば九十日が六十日になるとかあるいは三十日になるというふうに、そういう問題があるわけでございますけれども、それは制度のたてまえでございまして、実際にそれでは若年層の方が何日分もらっておられるか、あるいは季節労務の方が平均どれくらいの日数の保険金をもらっておられたかということを考えますと、まあ若年層の受給者につきましても大体六十三日というふうにいわれておりますし、特に男子は四十七日ぐらいでございますから、これを六十日というふうに若年の方について支給率を押えていったということは、私はそう激変を与えておるとは思いません。それから、季節労務の方につきましても、現在季節労務でもらっておるのは、制度上はいろいろ日数がありますけれども、平均いたしますと大体五十日ぐらいでございますから、したがって、先ほどもお話しいたしましたように、それが三十日の一時金になって、そうして就労の機会は正々堂々とふえていくということでございますから、これもそう激変にはならないと私は考えております。
○和田(耕)委員 私もこの法案はかなり大幅な修正が必要だと思っておるのですけれども、谷参考人にお伺いしたいのですが、先ほどから御説明になっている点は非常によく理解ができます。ただ、この法案が意図しておる、現在の失業保険制度の問題点といいますか、その問題点に対して何らかこれを是正していこうという意欲ですね、こういう問題については、ほとんど理解されない、問題にならないというふうにお考えになるんでしょうか、あるいは少しはいいところはあるんだというふうにお考えになるんでしょうか、その点いかがでしょう。
○谷参考人 率直に申し上げまして、失業保険制度上の問題点を是正しようとする、そういう方向は必要であろうと思うのです。必要であろうと思いますが、それが先ほど申し上げましたように、失業者の生活保障であるという原則をゆがめたり質的に変化させていくということに対しては、どうしても賛成しがたいという点が一つ。 それからもう一つは、じゃ、はたして今日の問題点というのは、失業保険制度がかかえている問題点というその範囲でとらまえて解決をするということで基本的な解決が得られるものだろうかという事柄が、あまりにも多くここには含まれているのではないだろうか。それは多くを申しませんが、先ほど来たとえて申し上げておりますように、雇用改善事業の中身、それが中高年労働者の雇用不安とどう対応しているのかというその実効性の問題とか、能力開発事業のあり方、つまり職業訓練制度の基本的なあり方をめぐる問題とか、そういった問題が全面的にかつ基本的に追求されるという方向で初めて失業保険制度問題がかかえている問題もあわせて並行的に解決するという立場に立たない限り、だめなんではないかという気持ちであります。
○和田(耕)委員 特に谷さんの先ほどからの御説明で、この法案のねらいの中心の一つである、つまり中高年齢層に対しての対処のしかた、これがはたして法案がねらっているような効果を得るかどうかということが非常に問題だと私も思います。それで、私も幾つか職業訓練の現在あるのを拝見したのですけれども、これはなかなか尋常なことでは効果のあがらぬものだということも実感として持っておるわけでございまして、こういう問題についても今後真剣に審議したいと思います。 最後に、この法案が現時点において果たす役割りというのですか、具体的に申し上げますけれども、季節労働者、出かせぎ労働者が、この法案が成立することによって数がどんどん減ってくるという効果があると思うのです。この季節労働者の数が減るということがはたして現在の日本の社会経済の状態から見ていいことと思われるのか、あるいは問題だとお思いになるのか。 もう一つ、結婚前の若い婦人の方々が職業戦線に入っていく。いろいろ問題があっても、婦人が職業につくという意欲はそれによってつちかわれるわけです。それにしてもいろいろ問題のあることですけれども、結婚前の婦人がごく一時的にしても、あるいはいろいろなそう職業をやるんだという意味でなしに仕事につくにしても、その意味は別な意味で大事な一つの傾向を物語る問題だとも思うのです。しかしこの法案が実施されれば、つまり、そういうふうな婦人の人たちが職業につくということがある程度チェックされる、あるいはまた、出かせぎ労働者がどんどん出てくるということもチェックされるということになるんじゃないかという判断が立つのですけれども、そういう問題をそれでいいんだというようにお考えになっておられるのか、その点いかがでしょう、岩尾さん。
○岩尾参考人 いま申されましたような季節労務の問題は、この法律によって減っていくと私は思います。減っていくことが非常にいいことだと私は思っております。 それから、女子の就職でございます。これは、この法案では離職をされた方についての保険金の支給を四年間にわたって出せるというふうに直しておるわけでございます。したがって、再就職はしやすくなっておるわけです。そういう意味で、まあふえるというとあれでございますけれども、再就職はしやすくなっておるというふうに私は解釈しております。全体を含めまして、いま申したような、たとえば季節労務にいたしましても、こういう対策を講ずることによって通年雇用あるいは地場産業への就職というような形にだんだん変わっていくことは、日本の農業にとってたいへんプラスになると私は考えておりますが、こういう法案の方向で御審議を願いたい、こういうふうに思っております。
○和田(耕)委員 季節労務の一つの形として、いまの国有林で働いている人たちは、いま組合の問題として一生懸命になって常用化という線を強く出しているわけです。一時的な労働者を常用労働者に変えていくという形でこれを解決しようとしているわけだと思うのですけれども、長い目で見て、農村からの出かせぎもそのような方向として解決することのほうがいいのじゃないだろうか。農業の生産力ということを考えましても、そういうふうな方向はチェックするのではなくて促進するほうがいいのではないか。先ほど谷さんのお話にもありましたとおり、出かせぎの方は現にいろいろな仕事をなさっておられます。毎年毎年常用とほとんど同じような形で、半あるいは熟練工になった形で企業の中に入っている人もたくさんおられるわけです。雇用社会への一つの発展する契機にもなっているわけです。そういうふうな形のものが将来望ましいという判断が立てば、現在いろいろな矛盾があります、ありますけれども、将来への展望としては、矛盾は矛盾として解決しながら、そういう方向をチェックしないで、そしてまともな常用の労働者に変わっていってもらうということのほうがいいように私は思うのです。もしそうであれば、この雇用保険法が意図しておる当面の矛盾を解決しようという方法も変わってくるわけだと私は思うのです。そういう問題は大宮先生、いかがでしょう。
○大宮参考人 私は、雇用保険法が現在かかえておる雇用問題、それに関連した社会的な問題を全面的に解決できるものとは思っておりません。やはりそういう問題は別途、雇用関係の法体系のほうでいえば雇用対策法とか、あるいは政府として衆知を集めた産業構造政策とか、そういうものによって大筋はやっていかなければならないものと思っております。しかし、そういった大筋をいろいろ考えてみましても、その基本に流れる長期的な労働力需給関係の動向という点からすれば、現在の雇用保険法案はそれらに寄与する面をたくさん持っておるんではないか、こういう評価をしております。
○和田(耕)委員 非常に中途はんぱな質問で終わりましたけれども、私の質問はこれで終わります。ありがとうございました。
○野原委員長 参考人の方々におかれましては、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、ありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。 次回は、明二十五日木曜日、午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。 午後六時九分散会