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72回国会衆議院1974/04/24

外務委員会 第20号

発言数
235
登壇者
15
会派数
4
開催日
1974/04/24

会議録

木村俊夫自由民主党

○木村委員長 これより会議を開きます。  民間航空の安全に対する不法な行為の防止に関する条約の締結について承認を求めるの件及び業務災害の場合における給付に関する条約(第百二十一号)の締結について承認を求めるの件、以上両件を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石井一君。

石井一自由民主党

○石井委員 きょうはモントリオール条約に関して、数点の質問をいたしたいと存じます。  ひんぱんにハイジャックが起こっておりますが、そのたびごとにモントリオール条約ということが話題になっておりますし、またそれに関連して、ヘーグ条約ということも話題になっておるわけでありますが、この二つの条約の関連並びに相違点、またその明確な意義ということについて、まず簡潔に政務次官からお答えいただきたいと思います。

鈴木文彦外務省国際連合局長

○鈴木(文)政府委員 モントリオール条約の前にできましたヘーグ条約の概要を申し上げますと、これはハイジャックそのものを取り上げまして、ハイジャックを国際犯罪ときめまして、これに対して重い刑罰を科するということを締約国に約束をさせます。次いで、この犯罪についての裁判権を広く関係国の間に設定するとともに、ハイジャックを犯罪人引き渡し条約または国内法上の引き渡し犯罪とすることによって、ハイジャックの犯人を処罰するための国際協力体制を確立するというのが、このヘーグ条約の目的でございます。  モントリオール条約は、ハイジャック以外の民間航空の安全に対する不法な妨害行為を抑制する目的のもとに、飛行中の航空機の安全をそこなう暴力行為、あるいは業務中の航空機の破壊ないしは飛行を不能にする行為、あるいは爆弾等の危険な装置もしくは物質を置く行為、あるいはハイジャック等の行為につきまして、ハイジャックの場合と同様に重い刑罰を科するようにいたしますとともに、裁判権を広く設定することによりまして、このような不法な妨害犯人を関係国の間で処罰する体制を確立しようということを目的としたものであります。一言に申しますと、モントリオール条約はヘーグ条約をさらに補強したというかっこうになると思います。

石井一自由民主党

○石井委員 それではこのモントリオール条約で、たとえば航空機の爆破等の不法事件を現実的に防止できるのか。何か前回、この関係の審議をいたしましたときも、私、かなり議論をしたわけでございますけれども、条文にいろいろの制約があって、当然これは参画しなければいかぬ条約であることはわかるわけですけれども、その辺の現実的な効果というものが必ずしも万全を期し得ないのではないかと思うのですが、このことによって、ハイジャックが完全に防止されるとお考えですか。

伊達宗起外務省条約局外務参事官

○伊達政府委員 お答えいたします。  ヘーグ条約、モントリオール条約両方相まちまして、航空機に対するハイジャックその他の不法行為を完全に防止できるかということでございますけれども、このヘーグ条約にいたしましてもモントリオール条約にいたしましても、これは国際的な協力によりまして、加盟国間でそのような犯罪が起こった場合に、これを厳重に処罰することを協力して実行しようということを内容とする条約でございますので、罰則による担保という点では遺漏ないものと思いますが、現実に起こるのを防止するということについては、万全であるというふうにお答えすることはできないと思います。

石井一自由民主党

○石井委員 そこで、これに加盟しておる国がどれだけかということが非常に問題になりますが、この両条約に加盟しておるいわゆる締約国、それぞれ何カ国になっておるのか。

伊達宗起外務省条約局外務参事官

○伊達政府委員 お答えいたします。  ヘーグ条約は、現在六十七カ国が当事国でございます。それから民間航空の安全に対する、この現在御審議願っておりますモントリオール条約は、つい最近、リビアが当事国となりました結果、合計五十一カ国になりました。

石井一自由民主党

○石井委員 六十七カ国と五十一カ国で十六カ国の差があるわけですが、ヘーグに入っておって東京条約に入ってないというおもな国、一々列挙しなくてもいいですが、一言で言うとどういう国なのか。  それから第二に、一番ハイジャックで問題になっておる中近東諸国、いまリビアとおっしゃいましたが、これも中近東諸国じゃないにしても私の質問したい一つの対象ではありますけれども、中近東諸国がどの程度この両条約に加わっておるのかどうか、この点はどうですか。

伊達宗起外務省条約局外務参事官

○伊達政府委員 まず第一に、先生いま東京条約とおっしゃいましたが、ヘーグ条約、モントリオール条約、二つの条約でございますね。——いずれにいたしましても、両条約に入っていない、片方に入っている国といたしましては、ほとんどの国が両条約に入っております。ごく例外的に数カ国ございますが、一例を申し上げますと、米州諸国では、メキシコがモントリオール条約には入っておりません。それからヨーロッパでは、フランスがまだモントリオール条約には入っておりません。スイスもまだでございます。ソ連、東欧圏では、ポーランド、ルーマニアが、モントリオール条約にはまだ未加入でございます。アジアの諸国では、わが国を除きまして、ベトナム共和国がまだモントリオール条約には入っておりません。中近東、北アフリカの諸国では、トルコとレバノンがモントリオール条約にはまだ未加入でございます。それからアフリカのサハラ以南の諸国では、ダオメーそれからウガンダが、ヘーグ条約には入っておりますがモントリオール条約には入っておりません。ただいまあげましたところが、片方、特に主としてモントリオール条約に入っていない国のほとんど全部の国でございます。

石井一自由民主党

○石井委員 もう一度確かめますが、中東諸国、特にパレスチナゲリラなどによるハイジャックが非常に多いわけですけれども、これらの周辺の諸国はトルコ、レバノンを除いて入っておる、こういう御答弁ですか。

伊達宗起外務省条約局外務参事官

○伊達政府委員 第二の御質問に対して、ちょっと御答弁申し上げるのを忘れて失礼いたしました。  中近東から北アフリカ、いわゆるアラブ諸国の中でヘーグ条約に入っております国は、キプロス、イラン、イラク、イスラエル、・イスラエルはアラブじゃございませんが中近東の国といたしまして、それからジョルダン、レバノン、トルコというところがヘーグ条約に入っておりまして、その中でモントリオール条約に入っていないのはただいま申し上げましたレバノンとトルコでございます。それから、なおかつリビアは先ほど申し上げましたように、モントリオール条約に最近入りましたが、ヘーグ条約にはまだ入っておりません。それくらいの国がいわゆるアラブ諸国の中で入っている国でございます。  入っていない国といたしましては、エチオピア、アルジェリア、クウェート、モロッコ、カタール、サウジアラビア、南イエメン、スーダン、シリア、チュニジア、エジプト、イエメン、その辺のところがまだ両条約とも入っておりません。

石井一自由民主党

○石井委員 いわゆるOAPECの諸国のほとんどが入っていないということが判明したわけですけれども、一番入ってほしい国々というのは、いま言われたような国じゃないかと私は思うのです。この点、これは日本政府の関与すべきことでないといわれるかもしれませんが、わが国としてはやはりそういうふうなことも考えつつ参加をきめたり、あるいはまた間接あるいは直接にそういうことを要請をしたり、あるいはまた国際機関を通じてそういうことを推進をしたり、この辺のことはどういうふうにやっておるのですか。

鈴木文彦外務省国際連合局長

○鈴木(文)政府委員 御指摘のとおり、中近東諸国の参加が必ずしも十分でないということはわれわれもよく承知いたしておりますが、まだ参加していない国につきましては、それぞれの事情が承ろうかと考えております。しかし、わが国といたしましては、従来からこれらの地域の国を含めまして、できるだけ多くの国が加入することによって、こういう国際協力体制が有効なものになるという観点から、昨年のICAO、国際民間航空機関の臨時総会の場で、他の二、三の西欧の国と決議案を出しまして、でぎるだけこれらの条約に多くの国が加入することをアピールするという決議案を出しまして、これは満場一致で採択された経緯がございます。わが国としては、そのことからもわかりますように、できるだけ多くの国がこれに参加するような努力を機会あるごとにいたしたい、今後とも続けたいと思っております。

石井一自由民主党

○石井委員 運輸当局のほうにお伺いしますが、このヘーグ条約に加えてモントリオール条約に加盟にするということは、これはわが国にとって非常にメリットが大きい、こういうふうにお考えですか。

後藤茂也運輸省航空局次長

○後藤(茂)政府委員 ただいままで外務省の方から御説明申し上げておりますように、ハイジャックあるいは航空機の爆破ということを完全に防遏するための完全な手段というものはなかなか見つからないものであろうかと存じますし、具体的には個々の飛行機の個々の乗客というものについて、物理的にそれを事前にチェックするというような手段が、このようないま御審議をいただいております条約とは別個に、いろいろと力を尽くさなければならないものと考えております。  しかしながら、このような条約の批准国がふえることにつきましては、それぞれの国の国内法がその条約の線に沿って整備されてまいりますということは、これらの航空機を爆破するとかあるいはハイジャックをするとかいう行為に対して、世界的な犯罪としてそれを糾弾する全世界的な雰囲気というものが実質的に盛り上がるという意味におきまして、ハイジャックあるいは航空機の爆破といったような行為を防止するためには効果があると考えております。

石井一自由民主党

○石井委員 警察庁の方お見えでございますか。——中近東諸国でのハイジャック事件があとを断たないわけでありますけれども、残念なことに、それにしばしば日本の青年が関与しておる。一体これはどうなっておるのか。これは出国に関する外務省の問題もだいぶ関連しておるのですが、それはさておきまして、まず基本的にこれらの連合赤軍その他日本でのこういう分子が、外国のこういう組織とどういうつながりを持っておって、どれぐらいの人間が出ておって、どういうふうになっておるのか、この実態をどの程度掌握されておるわけですか。

赤木泰二警察庁警備局参事官

○赤木説明員 ハイジャックに加わりました日本人は、いずれも赤軍という名前を使いまして、そのことが新聞等で報道されておりますけれども、いわゆる国内における共産同赤軍派に属している人間というのは、実は「よど号」を除きましてわりあいに少ないわけです。外地に出ますと、赤軍という名前がたいへん喧伝されておりますので、すべて赤軍というようなことを申しますけれども、国内にいる当時は、そういった組織に入っていない者のほうが実は多いのではなかろうかと考えております。したがって、そういう人々が外国に出てから過激派団体と何らかの機会で接触を持ち、そういう組織の中に入るというものが多うございまして、国内にいる間には、もちろん前歴等もございませんし、格別警察の対象になる人ではないというのが事実上多いものですから、その実態につきましては、実は私どももこれを全面的に把握することについてはたいへん苦心はいたしておりますけれども、現在まだどういうふうなものと明確なお答えを申し上げることは、残念ながらできない状況でございます。

石井一自由民主党

○石井委員 そういう未組織の連中だから非常に掌握しにくいということもわかるのですが、こうひんぱんに起こってまいりますと、いまの御答弁では何か非常にたよりないなという感じがするわけです。非常にラフな数字でもけっこうですが、自分たちは大体こういうふうなところまでは捜査を進めて、国際的なネットワークの中から未組織の連中であってもこういう情報をつかんでおるというふうなことが、もう少し具体的にわからないのか。  それから、これは総理大臣か文部大臣に答弁を求めてもいい質問だと思うのですけれども、あなたのお立場でお考えになって、一体なぜこういう青年が最近多く出てきておるのか、何かこれを未然に防ぐ方法というのが警察庁として打てないのか、この点はいかがですか。

赤木泰二警察庁警備局参事官

○赤木説明員 国内組織といたしましては、実はいわゆる赤軍のほかに、一口に最近黒ヘルグループと呼ばれておりますが、既成の過激派のどの派閥にも属さない、しかしたいへん過激な思想を抱いている連中、それからたいへん不穏なことを考えておる連中というのがかなりの数おりまして、これらにつきましては、常に私どもとしても注目して、その実態の調査に当たっておりますし、その大体の活動状況なり組織というものはつかんでおります。  ただ、先ほど申し上げましたように、実際にハイジャックに加わる連中の中には、国内においては何もやっていない、そういう組織にも入っていないという者もいるということを申し上げたわけでございます。  ただ、国内で赤軍派なりその他の過激な派閥なりあるいは黒ヘルグループなりに属しておって、もちろん、外国に出てそういった犯罪を行なうおそれがあるという者もおるわけでございますけれども、こういう者につきましては私どものほうで鋭意調査にあたり、またこれらの出国等にあたりましては関係機関と御連絡もいたしますし、それから緊密な連絡をはかりながらその動向を注目いたしておりますし、それからまたすでに外国に出ましても、外国に出てからの行動であってもたいへん危険性が強いというような者につきましては、それぞれの国の機関とも連携をとりながら十分視察をいたしております。

石井一自由民主党

○石井委員 そういう学生が最近多くなっている傾向、この理由はどういうふうに見られますか。

赤木泰二警察庁警備局参事官

○赤木説明員 数といたしましては、実は最近特に多くなったということではございません。むしろ数といたしましては最近横ばいか少し減りぎみでございます。  ただ、内容につきましては、例の連合赤軍の事件以後、たとえばたいへん過激な、銃器やら爆発物をもってする街頭での過激な行動につきましては減ってまいりましたけれども、これは一つには最近頻発しております彼らの派閥間の争い、内ゲバといわれておりますが、こういうもので一種の自壊作用を起こしているということもございますし、それから過去数年、毎年大学へ新入生等が入ってまいりますと、これらの過激なセクトがそれぞれ新入生の獲得のための、本年もやっておりますけれども、いろいろな集会なり何なりやっておりますが、これらに対しての最近の動向を見てみますと、新入生がこれらの派閥についていかないという傾向がたいへん強うございます。  しかし、そういうことで数はふえておりませんけれども、ただいわゆる軍事組織のようなものを非公然に組織いたしまして、現在やっている内ゲバなどでもお互いに殺し合うというようなたいへん激しい陰惨な内ゲバを繰り返しておりますが、これをいつの日か権力機関に向けて一つのテロに切りかえていくという意図、そういうより過激な方向への非行は強くなっております。したがって、私どもとしては動向は十分に今後も視察してまいりたいというふうに考えております。

石井一自由民主党

○石井委員 これまでこういう犯罪を起こしまして国際的に名をとどろかせた、こういう者に対する英雄視というような面もあるだろうと思うのですが、たとえば岡本、岡本はいいとしまして、この間私はトリポリへ行きましたら、例のベンガジで起こした丸岡などというのは直ちに釈放されておるだろう、こういうことを現地の人が非公式ですけれども言っておりました。こういう人間に対する追跡調査、一体どこで何をしているのか。それ以外に、アラブで中心になっておる女性なんかもありますが、マスコミが常にインタビューまでやっておるというような、週刊誌やテレビで日本に出てくる。こういう者に対しての追跡調査というのは警察庁はよくやっておられるのですか、いかがですか。

赤木泰二警察庁警備局参事官

○赤木説明員 お尋ねの日航機ハイジャック事件の犯人につきましては、ただいまお話のございました丸岡修であろうというのがリビア等からの連絡からしましてもほぼ確実であると思われます。この丸岡につきましては、実は殺人容疑での逮捕状も出ておりますので、その引き渡しについて折衝はいたしておりますけれども、まだ当事国から何らの回答がございません。それから、リビアの国軍に逮捕されたわけでございますが、その後の処遇についてどうなっておるかということは何らの情報もございませんので、私ども承知いたしておりません。しかし万が一にもこういう者が日本の国内に帰ってくるというような場合には、直ちにすでにとっておる令状によって措置するように準備をいたしております。

石井一自由民主党

○石井委員 もう一、二点だけ技術的な問題をお伺いしますが、モントリオール条約の批准に伴って整備された国内法、これは航空法の百三十八条から四十二条まで抜き出して一本の法律にしたような印象を受けますが、これはどういう理由ですか。

後藤茂也運輸省航空局次長

○後藤(茂)政府委員 お答えいたします。  このモントリオール条約を実施するための具体的な案件は、御指摘のようにただいまの航空法の一部に規定されている部分がございます。現在の航空法の中に規定されておるものは、航行中の航空機を破壊して運航を脅かすような行為あるいは保安施設を損壊して航行の安全を脅かすような行為、こういったようなことがすでに航空法の規定に規定されておるわけでございます。  ただ、この条約で規定されております行為は、航空法に現在盛られております行為とその範囲を若干異にしておりまして、具体的に申せば業務中の航空機を損壊する行為というものは現在の航空法ではカバーされておりません。さらにそれらの罪を、国外犯であってもそれに対して訴追を行なう、その条約の考え方がただいまの航空法では規定されでおりません。  現在御審議をいただいておりますこの条約を国内法にするに際しまして、従来いわば刑法の特別法的な規定として航空法の中にございました規定を取り出して、そしていま私が御説明いたしました新たに法律で定めなければならない部分をそれに加え、そして一本の特別な法律として御審議いただく、国会に御提出するということが最も妥当であるという判断でそのようにいたしたわけでございます。

石井一自由民主党

○石井委員 最後にもう一つ、多少マイナーな問題かもわかりませんが、この法律の中で新しい条文は、三条と五条の二項に罰金を十万円から二十万円に上げている、こういうところの違いが非常に鮮明で、あとはそんなに変わっていないというふうに思うのですけれども、ところが、この締約国同士の罰金の金額が違いますと犯人が逃げ込むというふうな危険性があるわけですが、私の質問は、五十カ国かそこらありましたこの締約国は、この条約の一条に規定する犯罪について、わが国と比較してどの程度の刑罰を科する国内法を持っておるのか、これはおわかりですか。この点はいかがですか。

伊達宗起外務省条約局外務参事官

○伊達政府委員 各国の罰則がどの程度であるかにつきましては、実は私どももどのようなものであるか概略しか存じておりません。一例を申し上げますと、第一条で規定されております(a)項から(e)項までの種々の犯罪が規定されておりますが、(a)項で機内の人に対する暴力行為についての刑罰といたしまして各国の状況を概略申し上げますと、イスラエルは二十年の刑、それからユーゴスラビアはわが国とほぼ同じに十年以下の重労働、ポルトガルは十六年以上二十年の懲役及び最高の罰金。その他、オランダは九年以下の拘禁、フィンランドは若干軽いようでございまして、二年以下の懲役もしくは罰金というようになっております。  このように、各国間で刑罰の軽重について若干の相違はあるわけでございますが、この条約上は、第三条にございますように、各締約国は、第一条での犯罪行為につきまして重い刑罰を科することができるようにすることを約束する。ただ、量刑はここできめてございませんで、単に刑罰ということでもって各国の判断にゆだねられているわけでございます。  したがいまして、条約上求められていますことは、それぞれ加盟各国におきましてその国の量刑上における重い罰を科していればよいということでございますので、必ずしも条約上量刑をこれこれにせよということではないので、各国間に若干のでこぼこがあるのはやむを得ないのではないか、そのように考えております。

石井一自由民主党

○石井委員 これはそんなに重視すべき問題じゃないと思いますが、法律がこういうふうにきまったということは、属人主義でなしに属地主義だ、こういうことになると思いますので、あなたも十分に、いま出された例証というのはごくマイナーな国を二つほどで、もっと重要な国がどうなっているか、こういうものをもあわせて、当然わが国の国内法その他というものも整備する必要があろうかと思います。この点御指摘しておきまして、私のきょうの質問を終えさしていただきます。

木村俊夫自由民主党

○木村委員長 堂森芳夫君。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 ただいま石井議員がお尋ねになっておった点について、もう少しく質問を続けたいと思うのですが、第三条は、これはハイジャックに対して加盟国は重い刑罰を科さなければいかぬ義務になっておる、こう考えるべきじゃないでしょうか。重い刑を科することができるというふうな弱いもの、そういう表現になっておりますが、そういう義務は、重い刑罰を科さなければいかぬという義務でないですか、いかがですか。

伊達宗起外務省条約局外務参事官

○伊達政府委員 お答えいたします。  これは「重い刑罰を科することができるようにすることを約束する。」でございまして、できるようにするというのは、重い刑罰の対象となり得るものであるようにするということを意味するだけでございまして、この第三条のいうことは、約束するということが非常に重い義務を課しておるわけでございますので、御指摘のように、重い刑罰を科する義務はあるわけでございます。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 ところが、いまも伊達参事官が答弁しておられましたが、少ない事例でしたが、国によって刑罰が、国内法で軽重があるというふうなこと。そこで、もし軽い刑罰を科しておる国と重い刑罰を科しておる国が現実にある、こうしますと、そういう重大な犯罪を犯したハイジャッカーは軽いところへ逃げていって、そしてこのハイジャックの予防ができなくなるという危険があると思うのでありますが、それぞれの加盟国の国々における国内法の扱いの相違の点等について、もう少し詳しく各国の状況を具体的に答弁願いたいと思います。

伊達宗起外務省条約局外務参事官

○伊達政府委員 各国の、このモントリオール条約に基づきます刑罰の対象とされる犯罪につきましての量刑を詳細にというお話でございますので、私どもの承知しております内容を御説明いたしたいと思います。  ユーゴスラビアは、第一条の(a)の機内の人に対する暴力行為につきましては十年以下の重労働、それから(b)項の航空機の破壊ということにつきまして十年以上死刑まで至る刑罰、それから危険な装置ですとか危険物質を機内に持ち込んで航行の安全を阻害したような罪につきましては十年以下の重労働、それから(d)項、(e)項につきましても同様に、十年以下の重労働ということでございます。  ポルトガルにつきましては、日本より若干軽いようでございまして、十六年以上二十年の懲役、それから最高の罰金刑を科するということで、これは(a)(b)(c)(d)(e)全部、第一条に定めてあります五つの犯罪について同様でございます。  スペインにつきましては、(a)(b)につきまして、飛行中の犯罪につきましては十二年から三十年の禁錮を科しております。飛行中であるものと業務中であるのとに若干差異がございまして、飛行中のほうが重く、地上業務中のものについては六年から十二年の禁錮、それからさらに人を殺したような結果をもたらした場合につきましてはより重くなっておりまして、二十年から三十年の禁錮または死刑にまで最高は至るようになっております。  チェコスロバキアにつきましては、第一条に定めます犯罪の(a)(b)(c)(d)四つにつきまして、三年から八年の懲役ということで、(e)項、最後の虚偽の通報による犯罪につきましては三年以下の懲役ということで、これは日本よりも若干軽いものであるかと思います。  豪州の例を申し上げますと、(a)項の機内の人に対する暴力行為、それから(b)項の航空機の破壊につきましては十四年以下の禁錮、それから残りの(c)(d)(e)の三つの犯罪につきましては七年以下の禁錮ということになっております。  イギリスにつきましては、最高終身懲役まで至る刑罰ということでございまして、その下の限度は、ちょっと私どもも承知しておりません。  アメリカでは、二十年以下の懲役または一万ドル以下の罰金ということで、この第一条に規定しています全部の犯罪について一様に量刑を科しております。  それからカナダは、英国と同じに、最高終身刑までに至る刑ということでございます。  イランは、この五種類の犯罪すべてにつきまして、無期または一年以上の懲役、または財産の没収ということになっております。  ニュージーランドは、同じくこの五つの犯罪につきまして、十四年以下の禁錮というような刑を科しております。  私どもがただいま調べましたところでは大体そのような各国の情勢でございます。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 第三条で、加盟国は重い刑罰を科することができるという義務規定になっている。そしていま説明になりましたように、加盟国の間にもそれぞれの刑罰についての差異がやはりあることは事実だと思うのであります。そしてあなたは、そういう点をいろいろな国について説明をしておられるのでありますが、こういうような相違点がある場合、どうしても軽いところに犯人が逃げ込んでいくというような事情も起きやすいと思うのであります。この条約では、各国におけるそういう刑罰の重さ等についてでき得る限り同じような刑罰に持っていくような話し合いをする、そういうことをやっていくという権限は付せられていないわけですが、その点はどういうふうなことになるのでしょうか。

伊達宗起外務省条約局外務参事官

○伊達政府委員 御指摘のように、加盟国間において量刑につきまして統一的な刑罰を科するという権限と申しますか、義務と申しますか、これは条約上規定がございません。したがいまして、この点につきましてはやはり各国の主権の範囲内におきまして、それぞれ独自にきめることが適当であるという判断のもとに、この条約が作成されているものと思います。いずれにしましても、各国での量刑の程度と申しますのは、それぞれ歴史的にも、また刑法の理論からいいましても一応の均斉と申しますか、均衡のとれた量刑ができ上がっているわけでございますので、それを無視して国際間で統一的な量刑をきめるということは、現在の国際社会の発展段階におきましてはいまだ無理なことではないかというように考えられます。  この条約の加盟国間で今後そういう話し合いをするかどうかという点につきましては、ただいま申し上げました点もございますので、はたしてどうなるか。私どもとしては、あまりそれを国際間で主張いたしましてもなかなか通らないことではないかというふうに考えております。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 質問の進め方を他に変えて二、三聞いてみたいのでありますが、東京条約、ヘーグ条約、それから今度のモントリオール条約、大体この三つの多数国間の条約によりまして、ハイジャックに関連する行為を防止するための体制は整うてきたのではないか、こういうことが言えると思うのでありますが、これらの三条約に加入しておっても、条約の要求しておる犯人の引き渡しであるとかあるいは犯人の処罰、乗客、乗員の旅行継続容認義務とかあるいは貨物、航空機の返還義務といったような締約国の義務を怠る国があると、こういたしますると、依然として犯人の逃げ道はあるわけでありますから、そこで犯行の再発を防止できないということになってくると思うのであります。  そこで、今日までこのような義務を怠った、あるいは義務の違反をやってきたというような事例がいままでにあったのでありましょうか、この点について答弁を願いたいと思います。

伊達宗起外務省条約局外務参事官

○伊達政府委員 この条約が発効いたしましてから、これらの加盟国におきましてこれらの義務を怠ったという事例は私どもは承知いたしておりません。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 そうしますと、あなたはないと言われますが、もしかりにそういうことが起こってきた場合は、そういう国に対して制裁措置というものはあるのですか、ないのですか。

伊達宗起外務省条約局外務参事官

○伊達政府委員 結論から先に申し上げますと、それらの協定義務を怠った国に対しての制裁の制度というものは現在存在いたしません。この条約の作成に参加いたしました諸国間では問題意識はございまして、昨年のローマでの会議におきまして制裁条約、つまりこの条約の規定の履行を怠った国を制裁する趣旨の条約をつくろうではないかということを、各国の加盟国が集まりまして話をしたわけでございますが、やはり国際社会の現発展段階におきましては、このような条約、国家を処罰する強制的な権限というものはなかなかつくりがたいという面もございまして、結局不発に終わっているという状況でございます。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 制裁措置はとれないというようなことでございますが、ハイジャックを防止するというためには、やはり乗客のチェックということが非常に重要な点ではなかろうか、こう思うのでありますが、各国の乗客のチェックについてはどのように行なわれておるかということを、これは運輸省からお願いしたいのであります。  どういうふうに各国は乗客のチェックをやっておるのか。もちろんそれは荷物等にも当然関連するわけであります。わが国の現在やっていることはあれでいいのかどうか、改善するべき余地はないのかどうかということ。またエチオピア等の国では、列車にピストルを持った何とかいう職員が乗っていますね、ああいうような形の武装した警備員等が乗っておるというような話がございますが、このような方法はどういうふうに思っておられますか。現在の乗客のチェックあるいは監視といいますか、そういう体制についてお答えを願いたい、こう存じます。

後藤茂也運輸省航空局次長

○後藤(茂)政府委員 お答え申し上げます。  諸外国において現在行なわれております空港における乗客あるいは荷物の安全チェックのやり方でございますが、一般的に申しましてこのことにつきましては、若干古うございますが、一九七〇年にICAOの場におきまして、専門家が集まってつくりましたそのためのマニュアルといったものがございます。しかし、実際に各国で行なわれているやり方は必ずしも一律ではございませんで、ヨーロッパ諸国におきましては、ほとんどの空港におきましては警察の手によりまして乗客の荷物の開披点検あるいは手荷物、からだのチェックといったようなことが行なわれておりまするけれども、多数の空港におきましては、この場合すべての航空機、すべての乗客を対象にしない。たとえばそのうちの三分の一についてやって、残りの三分の二はその日はやらない、そのようなやり方が行なわれている空港が多いようでございます。また米国では、これは主として航空会社がその費用でガードマンを雇いまして、かなり徹底した荷物の点検、あるいは乗客の身体検査と申しますか、チェックをいたしております。また東南アジア諸国でも、区々でございますけれども、やはり同様のやり方を航空会社の責任において行なっている例が多いようでございます。  これら全体を通じましてわが国の場合と比較してみますと、わが国はたび重なる日本人のあるいは日本の航空機が関係いたしましたハイジャック事件の教訓にかんがみまして、かなり徹底をし、かつ施設的に充実した空港における安全体制をしいておると考えております。わが国では、最近重要な空港十六につきましては、御承知の、現在すでに羽田にございまするけれども、エックス線によりますお客さんの荷物の透視装置、それとセットされました非常に性能のよろしい馬蹄型の金属探知機、お客さんと手荷物とを分離いたしまして、荷物のほうはエックス線の透視装置を通し、お客さんのほうは馬蹄型の門をくぐってもらう。あの馬蹄型の門には、出口のほう、内側を見ますとランプが八つございまして、これはつまりお客さんがどこかに金属類を持っておりますと、その位置を、右である、左である、上のほうである、足元であるということを示すようにランプがつくような構造になっておる。もちろん荷物のほうも、その中に何ものかがあればそれを透視をして映し出すというようなことになっております。そのような設備を完備して徹底してチェックをしておる例は、私ども承知する限り、若干アメリカにあるようでございますけれども、あまり例を見ておりません。  また、先生が御指摘の警官を航空機の中に警乗と申しますかさせることの可否につきましては、私どもは関係官庁との間で常にその可否について検討を進めてきておりますが、ただいまの段階では、まだ日本でそのような措置をとるべしという積極的な結論は出しておりません。これらに関しての一つの問題点は、もしその警乗者が武器を携行するといたしました場合に、かりにその武器を使用するといたしますと、御承知のように、航空機は高空におきましては、外の気圧に対しまして非常に高い気圧で飛んでおりますので、そのたまが機体に当たりまして、わずかでもそこに穴があきますと中の高い気圧と外の低い気圧との関係で、それ自体がたいへん大きな航空機事故の原因になるというおそれがございます。そのようなことも勘案しながら、武器を携行した特殊な警官のような人を乗務させることの可否については若干の難点がございまして、私どもが承知しておるところでは、米国では一時エアマーシャルとしてそのようなことを試みたようでございますが、現在ではすでにそれをおろしておるということも承知しております。積極的な結論はまだ出しておりません。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 いまの説明によりますと、わが国はそうした乗客、荷物のチェック等については万全を期しておる、こういうような確信をもってやっておられますか、いかがです。

後藤茂也運輸省航空局次長

○後藤(茂)政府委員 私はただいま十六の空港におきまして施設いたしております施設について詳しく御説明を申し上げましたが、その他の空港につきましては、それほどりっぱな機械を使っているわけではございませんし、もっぱら警官の御協力をいただきながら、飛行機会社の人がお客さんの同意を得て荷物を開披し、そしてポケットを外からさわっておるというやり方をしておるわけでございまして、また地方の小さな空港に参りますと、そこいらにつきましていま完全な体制が一〇〇%とれておるということを、私がこの段階で胸を張ってお答えするのには若干のちゅうちょをいたさざるを得ません。しかし、これらのことにつきましては今後ともいろいろと手段を尽くして、より完全なチェック体制というものを確立していくつもりでございます。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 多数のハイジャック事件が起きてきたのでありますが、国際民間航空機関、ICAO、この機関で航空機犯罪防止のための活動が国際的に行なわれておると思うのでありますが、その概要とわが国がそれらの活動にどのような協力をしておるのか、この点についての答弁を願っておきたい、こう思います。

鈴木文彦外務省国際連合局長

○鈴木(文)政府委員 民間航空の安全の面につきましてのICAOの活動につきましては、ただいまお話が出ましたような東京条約、ヘーグ条約あるいはモントリオール条約、さらには先ほどの御質問の中にありました、こういった条約で課せられておる義務の履行を確保するための手段として、いわば制裁条約という名前でいわれます条約をつくるための外交会議がローマで開かれましたが、民間航空の安全については、こういった一連の会議を通じまして、最近における事態、いろいろな事件の発生にかんがみまして、特に重点を置いてICAO加盟国が積極的に協力いたしておるわけでございます。  わが国といたしましても、わが国の航空機あるいは日本人がこれに関与、ある意味の犠牲者になっておる事件がだんだんふえてきております現状にかんがみまして、この面の作業あるいは協力については積極的な貢献をしてまいっておりますし、今後ともその所存でおります。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 そうしますと、ICAOに加盟しておる国は積極的にハイジャックの防止のために協力しておる、こういうことでございますか。

鈴木文彦外務省国際連合局長

○鈴木(文)政府委員 そのとおりでございますが、先ほどちょっと触れましたように、必ずしもまだこの条約に加盟していない国もございますので、できるだけ多数の国が加盟することによって条約の有効性も確保されるという見地から、機会をとらえて、わが国としても未加盟国に対してこの条約に早期に加入するように呼びかけるとかいろいろ働きかけをしたいというふうに考えております。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 私は、二、三仮定論の問題について聞いてみたいと思うのでありますが、ある国のtこれは仮定論ですが、ある国の軍隊が高射砲の射撃の訓練をしておる。これはもちろん故意ではなくして、たまたま偶然そういった高射砲の演習中に、砲弾が航行中の民間機に当たって事故を起こしたというような場合の責任問題などは、どのように処理をされることになるのでありますか、この点も伺っておきたい、こう思います。

伊達宗起外務省条約局外務参事官

○伊達政府委員 お答えいたします。  御設問のような場合に、民間航空機に損傷を与えた場合には、直接この条約が働くような状況ではございませんので、やはり一般国際法に基づきました国家責任の問題になってくると思います。  と申しますのは、つまり軍隊である以上、当然その国が責任を負うべき、つまり私人の行為とは全く別でございますので、国家機関の行為によった民間航空機に対する損害ということで、その国に対して国際法上の責任を問う。したがいまして、解決の方法といたしましては、物的損害に対する賠償でございますとか、それから人的な、人命の喪失に対する補償金というようなものの支払い、それからさらには精神的な陳謝というような形での解決がはかられるのではないか、そのように考えます。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 もう一つ、これは仮定のことですが、航空機がある国に着陸しておる、そういうときに内乱とか暴動とかがあって、暴徒、あるいはその国の兵隊でもいいですが、航空機の中に入ってきて破壊したとか、そうした危害を加えるというようなことの場合には、その措置はどうなるのでございますか。

伊達宗起外務省条約局外務参事官

○伊達政府委員 御設問のような場合でございますと、私の考えでは、この条約の対象となる犯罪ではないかと考えます。したがいまして、この条約に基づきまして、当該の暴動が起こって航空機に対する損害、被害を生じた国におきまして、これはもちろん条約の加盟国であればいいということでございますが、条約の義務として、当該国は非常に重い罰を科さなければならないということになると思います。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 警察庁来ておられますね。——先年起きました「よど号」に乗り組んでおった赤軍派でありますか、あの諸君、あの人たちの追跡調査と申しますか、それは現在どうなっておるのか、あるいはシンガポールのハイジャックの犯人のその後の状況について、警察庁から説明を求めたい、こう思います。

赤木泰二警察庁警備局参事官

○赤木説明員 「よど号」の犯人、九名でございましたが、これはいま朝鮮民主主義人民共和国でどういうふうに処遇されておるかということにつきましては、何らの情報もございませんので、私どもとしては承知いたしておりません。  ただ、この九人につきましては、そのうち五人につきましては国内犯で逮捕状が出ておりますし、あとの四人につきましては刑が確定して収監状が出ておりますので、もし万一日本へ帰ってくるというようなことがありますれば、これは令状の執行を直ちに行なうという態勢をとっております。  それから、シンガポール事件につきましては、日本人が二名入っておったということはほぼ間違いないようでございますけれども、そうしてそのうちの一名につきましては、新聞紙上等ではWとかあるいは和光とかいうような名前が出ておりましたけれども、一応状況証拠と申しますか直接の証拠でなくて状況上からは有力な容疑者一名が浮かんでおりますが、ただ、きめ手になるものがまだございません。現在、シンガポール当局にその捜査資料を要求しておりますが、まだ向こうから何も参っておりませんので、きめ手になるものはいまのところございませんので、確定とまでは申し上げるわけにはいかないわけでございます。あとの一名につきましては、これは状況証拠もございませんので、全くいまのところはっきりしないということでございますが、引き続き国内独自でできる捜査につきましては、目下捜査中でございます。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 終わりたいと思いますが、そうすると、警察庁の方、シンガポールの事件についてはわからぬ、そういう状況でありますね。——これで終わります。

木村俊夫自由民主党

○木村委員長 渡部一郎君。

渡部一郎公明党

○渡部(一)委員 民間航空の安全に対する不法な行為の防止に関する条約の締結にあたり、ハイジャック等民間航空の航空の安全に関する不法な行為に関して総体的に数々の条約案がつくられ、そうして航空の安全に対して御審議が行なわれていることはきわめて前向きなことであると評価したいと思うのでありますが、これは航空機の安全なのではなくて、航空機をめぐる政治的な紛争というものに着目されている条約であることを私たちは考えなければならぬと思うわけであります。  すなわち、航空機をめぐる犯罪は、その犯罪が単なる凶暴な、自分の一個の利益のために犯罪行為が行なわれている場合もこれはあるわけであり、当条約は明らかにそれに対しては有効な効力を持つものであると思いますが、これに政治性がからみ、あるいはその当該国の国内法規に対する賛否がからみ、あるいは亡命行為がからみ、あるいはその他の革命運動がからんだとしたら、この条約の持つ意味合いというのはどういうものであるかということを考慮しなければならぬ時期にきていると私は考えるわけであります。  つまり、日本は日本国の法律を審議しているのじゃなくて、これは国際的な法を審議しているのであり、国際的な問題を考える場合には、他の国国との間の内政不干渉の原則を明確に守るだけでなく、われわれとしては明らかにそうした行為のもたらす、こうした条約のもたらす結果というものを別の局面で配慮しなければならぬ、こう考えているわけであります。  まずその辺から、どういう認識を持っておるのか、こういう条約をすぱっとこのまま平気で出してこられるその背景について、私はお伺いしたい。

鈴木文彦外務省国際連合局長

○鈴木(文)政府委員 いろいろとこの条約をめぐる動機についてお話がございましたけれども、動機いかんにかかわらず、結果として起こります航空機の安全に対する破壊行為あるいは妨害行為あるいはそれに乗っております乗客なり搭乗員の安全をはかるということを主眼としてこの国際民間航空条約、東京条約以降幾つかの条約を手がけているわけでございます。

渡部一郎公明党

○渡部(一)委員 私、まことに恐縮なんですけれども、世界人権宣言が行なわれまして二十五年たっておるわけですね。その間に、国連において採択されました人権に関する諸条約というものは、きわめて多数あるわけであります。これに対し、わが国政府は調印あるいは批准ということが非常におくれておって、これまでの間に批准したものといいますと、婦人の政治的権利に関する条約と人身売買及び他人の売春からの搾取の禁止に関する条約のわずか二本だけであります。ほかのほうは全部批准をしない、調印もしない、意思表示もしない、こういうふうでやっておられるのは国連局長、どういう御意図でございますか。日本国においては国連で決議されているような人権問題に関しては、関心がないとお思いなのであるかどうか、その辺から伺いましょう。

鈴木文彦外務省国際連合局長

○鈴木(文)政府委員 わが国としまして、人権問題に関連する国連の宣言、その他の文書に関しまして、われわれとして関心がないということでは毛頭ございません。ただ、その宣言あるいは条約の形をとっております文書につきましては、その内容を国際的な義務として履行するために、国内法との関係もございましょうし、またその文書にあらわされている考え方自身が、はたして現在の日本にとってそのまま当てはまるかどうかというような観点から、必ずしもできました条約全部を批准していないということはございますけれども、これにつきましては、いろいろな外務省だけでなく関係省多くございまして、この中では検討はいたしておりますけれども、まだそういう時期に至っていないということでございます。

渡部一郎公明党

○渡部(一)委員 あなた、その辺非常に不勉強ですよ。国内法との関連を調べるといろいろ問題があるのもあるだろうしなどと言っておられますが、ここに私がコピーして持っておるのは「外務省調査月報」一九七〇年十一月、これの中に、ページ数も言っておくからあとで御検討いただきたいのですが、三七〇ページ、「国際人権規約の実質条項は、そのほとんどがそれに対応する規定、あるいは実施する規定を、日本国憲法およびその他の国内法規の中にもっている。実質条項に抵触する国内法規は存在しない。」と書いてあります。国内法規に抵触しないと外務省が言っているのですよ。  十分検討してとおっしゃるけれども、何年検討しているのですか。国連が始まって二十五年ですよね。この中のものはきわめて長い間、十年も二十年も検討しているのがある。国連局長は御就任になってから一体何年たつのですか。あなただけではないじゃないですか。この二十五年間、国連局はこうした問題を扱わない方針なんですか。これはちょっとばかりまずい問題ですよ。業務怠慢というしかないじゃないですか。日本の外務省は、国際人権規約を何でこんなにおそくずらしているのですか。そして犯罪人の取り締まりのときだけ張り切ってすぐ出す。見てごらんなさい、このやり方。相手がどろぼうのときだけ元気を出す。

鈴木文彦外務省国際連合局長

○鈴木(文)政府委員 いま先生御指摘の資料は、おそらく外務省の調査部が一般の関心のある方に配付するためにつくった資料だと思いますが、その資料は必ずしも外務省の意見を表明するものではないというただし書きがついているかと思います。(「それはおかしいよ、それはいかぬ」と呼ぶ者あり)

渡部一郎公明党

○渡部(一)委員 それじゃこれは外務省のあれじゃないんだな。

鈴木文彦外務省国際連合局長

○鈴木(文)政府委員 私の先ほどの答弁の繰り返しになるかと思いますが、未加入または未批准条約のほとんどが現行国内法の幅広い改正あるいは新しい立法を必要とするというために、せっかく検討は必要でございますが、同時に長期的にはできるだけこれに日本の法制を合わしていくという観点から、積極的に立法政策としてもこれに幅を縮めていくという必要があろうかと考えております。したがって加入する意義の重要なものから、できるものから着実に加入していくというかっこうで関係省で検討しておるわけです。特にこれらの条約のうち人種差別の撤廃条約につきましては、この意義も大きいということから、国内法改正の作業も現在進めている段階でございますが、この条約につきましてはできるだけ早く成案を得たいというふうに考えております。

渡部一郎公明党

○渡部(一)委員 あなた何をおっしゃっているのですか。この問題は、猪俣先生という代議士が会党におられた。私は面識がない。もう私が議員になる前の方ですよ。その方の前でちゃんちゃんばらばら議論が行なわれた。その当時の議事録を私きょう持ってきましたよ。そのときは検討する検討するとしか言っていなかった。あまりあきれましたので、私はまたその議論をこの間巻き返した。そうしたら現条約局長は前向きに検討する旨を述べられた。今日まで何にも検討なんかしていないじゃないですか。何にもやった気配すらないじゃないですか。  そしてこれが、外務省の「調査月報」という名前がついているものが外務省の意見でなかったら、何を信じたらいいのですか。「外務省調査月報」じゃないですか。外交問題調査月報じゃないのですよ。「外務省調査月報」じゃないですか。この意見が間違っているなら反論したらいいじゃないですか。外交問題に御関心のある方にまいたんだと言うのだったら、この「調査月報」は外交問題に関心のある皆さま方にまいたけれども、これは外務省の意見でありませんと言うのだったら、外務省なんという名前つけなさんなよ。そんなインチキなものにどうして金を出すのですか。調査するとか検討するとか言いのがれほうだい言いのがれておいて、人権問題をかくもインチキにしておいた責任はだれが一体背負うのですか。  さっきからの答弁は何ですか。関係国内法規の中には妨害する条項はない、この中に書いてあるじゃないですか。あなたは妨害する条項があるというのですか、それなら。私はこの議論は一歩も妥協しませんよ。こんないいかげんな、方針もきめないでおいて、平気で犯人の問題だけになるとこんなものを出してくる。民間航空の安全はぼくも大事だと思うのです。これを安全でないなんて言ってはいない。しかし、この不法な行為というのは問題になる場合がありますよ。政治犯罪だったら一体どうするのですか。亡命者だったらどうするのですか。亡命者保護の条約は検討していないじゃないか。難民条約はほったらかしじゃないか。そうしておいて犯罪人引き渡しだけなぜこんなにがんばるのですか。こういうものにサインしたらさらにめんどうなことに巻き込まれますよ。  亡命者の扱いがきまっていないじゃないか。いままでのように内規で扱って、亡命者に対する扱いは特別な法規をつくらないでやるというなら、そういう方針は方針で一貫する。しかし、犯罪人という形でこうした形の条約を結べば、犯罪人にするか亡命者にするか、日本国政府としての判断をする立場に変わらなければならない。そうしたら当然このモントリオール条約と一緒に別の条約を結ぶしかないじゃないですか。一体何やっているのですか。こんな片手落ちなのがいいのですか。こういう混乱が望ましいのですか。方針もきまっていないじゃないか。条約局長と相談したらどうですか、何もきまっていないのだから。話をした気配すらないじゃないか。もっともらしい答弁ができるならやりなさいよ。何にも言えやしないでしょう。委員会の中止をお願いして、省議を開いてきめてきなさい。いいかげんなことばかり言うものではない。  「調査月報」と意見が違うのだったら、外務省の見解は一体何なんだ。ふざけるんじゃないよ。人の人権なんか何とも思っていない。自分のところにほこりがかからなければいいと思っている、その外務省の体質がここにありありとあらわれているじゃないか。条約さえ通せばいい、議論なんかどうでもいい、犯人だけつかまえればいい、亡命者なんか知らぬ、ほこりをかぶらなければいい、そういう方針で一貫しているのがここにあらわれているじゃないか。  検討します、検討します、検討します、十年間検討して、いつまで検討するのだ。百年後まで検討するのですか。そんなのが検討になるか。業務怠慢じゃないか。局長どうするのですか。まともなことが答弁できるなら答弁しなさい。答弁できないなら保留しなさい。そしてすぐ外務省同士でどういう態度で望むか相談しなさい。答弁ができるなら言いなさい。できないなら相談してくると一言いなさいよ。

山田久就自由民主党外務政務次官

○山田(久)政府委員 ただいま渡部先生から大事なポイントを指摘されたようで、そういう点、つまり根本に突っ込んでいないような点、おしかりの点、まことに遺憾だと思います。それらの点を私自身もつまびらかにしておらないのはまことに申しわけありませんけれども、それもさっそく調べてお答えするようにしたいと思いますので、もしお差しつかえなかったら、その点はあらためてお答えすることにしまして、進めていただければ非常にしあわせだと思います。

渡部一郎公明党

○渡部(一)委員 ただいまのことで私は委員長に対してお願いをするわけでありますが、私がここに持ち合わせている資料は、「要望書」となっておりまして、一九七三年十二月十日、世界人権宣言二十五周年にあたり、日本の各種団体から人権に関する条約の批准につき推進を求めているものであります。これはアムネスティーインターナショナル日本支部、大学婦人協会、婦人国際平和自由連盟日本支部、汎太平洋東南アジア婦人協会日本委員会、自由人権協会、カトリック正義と平和委員会、国連NGO国内婦人委員会、日本婦人法律家協会、日本婦人有権者同盟、日本女医会、日本看護協会、日本基督教婦人矯風会、日本キリスト教女子青年会、日本キリスト教協議会、日本有職婦人クラブ全国連合会、世界連邦建設同盟、社会開発平和委員会が要望しているものであります。  また、この間に問題となっております国連の人権に関する諸条約でわが国の批准してないものを御参考に申し上げるわけでありますが、市民的及び政治的権利に関する国際規約、これは調印、批准、承認、なし。経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、これも調印、批准なし。あらゆる形態の人種差別撤廃に関する国際条約、これも調印、批准なし。結婚姻の同意、最低年齢及び登録に関する条約、これもなし。無国籍の消滅に関する条約、これもなし。既婚婦人の国籍に関する条約、これもなし。戦争犯罪及び人道に対する罪に対する時効不適用に関する条約、これもなし。集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約、これもなし。奴隷制度、奴隷取引並びに奴隷制度に類似する制度及び慣行の廃止に関する補足条約、これもなし。難民の地位に関する議定書、これもなし。亡命者の地位に関する最終議定書及び条約、これもなし。無国籍者の地位に関する条約、これもなし。奴隷条約(千九百二十六年)を改正する議定書、これもなしとなっております。  私が今回こうして取り上げますのは、このような犯罪人の引き渡しという問題に関して条約を結ぶとすれば、その一方で、こうした犯罪人の中に道理のある場合がある、そうした人々に対してたくさんの被害者をつくり出すことになりかねないという問題提起であります。いま政務次官には問題の重要性を認識していただきましたが、私は、外務省が法務省等と御相談の上、これに対する統一見解と対策を、検討するのでなく、当委員会に御報告されることを外務委員長から外務省に対して指示されるように望みたい、こう思うのですが、いかがでございましょうか。

山田久就自由民主党外務政務次官

○山田(久)政府委員 いまの御要望に沿うようにひとつ処置いたしたいと思います。

渡部一郎公明党

○渡部(一)委員 これについて正確な御返答をいつごろまでに賜わるかということに関し、委員長の御指示を仰ぎたいと思いますが、いかがでございましょうか。

山田久就自由民主党外務政務次官

○山田(久)政府委員 渡部先生のいまの御要望、できるだけ早く、少なくとも今週中、きょうじゅうにもできるようでしたらお答えするようにいたします。一応調べてみないとわかりませんから、その点御了承いただきたいと思います。

伊達宗起外務省条約局外務参事官

○伊達政府委員 ただいま渡部先生の御指摘のありました点につきまして、外務省といたしましてはいま政務次官がお答え申し上げたとおりでございます。  ただ一点、先生の御指摘になった点のごく一部の点につきましての私どもの考えと申しますか、条約のことについての解釈の問題にかかわるわけでございますが、犯罪人の引き渡しにつきましては、御承知のように第八条に犯罪人の引き渡しということを書いてあるわけでございますが、日本に適用がありますのはその第三項でございまして、「条約の存在を犯罪人引渡しの条件としない締約国」、日本は条約をもって犯罪人引き渡し条約をつくらなければ犯罪人を引き渡さないという原則は持っておりませんので、別に条約の存在を条件としておらない国になっております。したがいまして、「犯罪人引渡しの請求を受けた国の法令に定める条件に従い、」といいまして、日本国においての逃亡犯罪人引渡法というものにのっとりまして犯罪人を引き渡すか引き渡さないかを判断した上で、引き渡すなら引き渡すというふうなことになっているわけでございますが、たとえば政治犯罪人のような場合には、日本国の国内法におきましてはこれは引き渡し犯罪の対象ではないというふうに制限的に次のものを、ここに第九種類まで犯罪の種類がいろいろ書いてございますが、それに該当するようなものにつきましては引き渡さないというたてまえになっておりますので、かりに日本国の判断におきましてこれが政治犯罪であるという判断を下した場合にはこの条約の対象外となるというふうに申し上げることができるかと思います。非常にマイナーな、しかもごく一部の御答弁になって恐縮でございますが、ただいまのところそのようにいえるのではないかということでございます。

渡部一郎公明党

○渡部(一)委員 もう一つ申し上げておきますが、人種差別撤廃条約というのがございます。この人種差別撤廃条約に関しては国際連合第二十回総会千四百六回会議においてAの二一〇六として賛成百六、棄権一、反対なしで採択されたものでございます。これに対して、一九七二年末現在でありますが、批准した国、加入した国が六十九カ国で、日本は調印も批准もしておりません。  こうした行為それ自体が、日本の国際的な立場において人種差別を撤廃したくないという意思表示に受け取られているということをお考えをいただきたいと存じます。人種差別は撤廃したくない、そして政治犯罪については知らぬ顔する、そういういやらしい国だというふうに受け取られているわけであります。これでは幾ら国際友好あるいは国連協力などを口に唱えても、それはナンセンスな段階になると私は思います。そして日本が熱意を持つのは経済協力だけだ、経済進出だけだ、こういうふうな印象というものがどんな影響を与えているか、これを御判断いただきたい。  したがいまして、さっき申し上げました条約のほかにこうした条約もありますし、また私は外務省のやられたすべてのことに対しては不案内であります。ほんの一部しかわかっておりません。ですから同じような関連するものもあろうかと思いますし、この際総ざらいをしていただきまして、そしてこうしたものに対してひとつ御検討、御配慮をいただきたい、こう存じておるわけであります。私はそういう根本的な問題をいま申し上げたわけであります。  いま参事官が述べられましたのは部分的な部分について述べられた。御自分でもそうおっしゃいましたけれども、こういう本質的な議論のときにそういう議論は私は不穏当かと存じます。それは明らかに関係国外の一部にそれを援用したりあるいはそれを補完したりするテクニックでありまして、わが国の基本的姿勢が人権尊重ということに対して大事なんだという方向を出すか出さぬかの問題がいま問われているわけでありますから、そうした方向で前向きの前進をひとつ示していただかなければならぬと思います。  そうでないと、この民間航空の安全に対する不法な行為の防止に関する条約というものだけを取り上げた政治的意味が発生する、こっちだけを取り上げている意味が。これは何か、要するにアラブゲリラだけを締め出すためにこういうことをやったんだなとか、あるいはこういうことをやることによってある種の特定の政治行為を発揮するために日本の政府は動いたんだなという意味づけが行なわれる。そうしてそれは、これから周辺の利害対立する諸国家と同様の平和を樹立しようとする日本外交の基礎方針をくつがえすものにもなりかねないではないかと私は申し上げているわけであります。したがって、その辺十分御配慮いただきたい、こう存じておるわけであります。

山田久就自由民主党外務政務次官

○山田(久)政府委員 御趣旨によりまして十分ひとつ配慮するように措置いたしたいと思います。

渡部一郎公明党

○渡部(一)委員 それではまたちょっと妙なことを伺うわけでありますが、この条約の第四条の一項、「この条約は、軍隊、税関又は警察の役務に使用される航空機については適用しない。」となっております。日本ではこの項に該当する航空機はどことどことどこに属するものであるか御説明いただきたい。

伊達宗起外務省条約局外務参事官

○伊達政府委員 日本で公用機といたしましては、航空自衛隊の航空機、また税関、警察等の公用機のほかにあるかどうかちょっとつまびらかにしておりません。いずれにいたしましてもこの条約の規定は、条約の趣旨自体が民間航空というものの保護を目的としております関係上、第一項の趣旨は、私どもといたしましては公用の航空機というものについては適用しないという趣旨に読んで差しつかえないものだというふうに考えておりますので、日本の公用の航空機については適用しないということであると思います。

渡部一郎公明党

○渡部(一)委員 あなたにこれを伺うのはちょっと気の毒なんですけれども、軍隊と書いてある部分はあなたはいま自衛隊と読むと言われました。そうすると、日本の自衛隊は軍隊なんだと認めたことになりますよ。いいですね。

伊達宗起外務省条約局外務参事官

○伊達政府委員 私は自衛隊が軍隊であるということを申し上げたわけではございませんので、「軍隊、税関又は警察の役務に使用される航空機については適用しない。」この趣旨が、条約の趣旨からいたしまして民間航空の保護ということを目的としている以上、ここでの趣旨と申しますのは、要するに公用の航空機というものは排除されるのであるという趣旨と解して差しつかえない。したがって、日本の場合には自衛隊等公用の航空機というものが存在するわけでございますが、これはやはりこの条約の適用から排除されるものであるということになると思います。

渡部一郎公明党

○渡部(一)委員 いまいろいろおっしゃったのですけれども、軍隊ということばをあなたは自衛隊とこの条約の趣旨上みなしたわけですね。

伊達宗起外務省条約局外務参事官

○伊達政府委員 趣旨上そういうふうにみなしたわけでございます。

渡部一郎公明党

○渡部(一)委員 そうすると、あなたは自衛隊は軍隊とみなしたわけですね。

伊達宗起外務省条約局外務参事官

○伊達政府委員 日本の国内法におきましては、国内法上におきましては軍隊ではないということでございますが、たとえば諸外国がこれをどういうふうにとっているかということ、国際間におきまして自衛隊をいかに見ておるかということから見まして、たとえば自衛艦が遠洋航海に出る、そのような場合に、外国の港において先方から一国の軍隊、軍艦としての待遇を受けるということから見ましても、国際的に見ますればある程度これは日本の国内法の関係で、国内では軍隊ではないかもしれないが、外国において軍隊とみなされている場合もあり得るという事例はあるわけでございまして、との条約の趣旨から申しまして、私は日本国内では軍隊ではないということははっきりしているわけでございますが、民間航空の安全に関する不法な行為の防止ということがこの条約の趣旨でございまして、その一環として、「この条約は、軍隊、税関又は警察の役務に使用される航空機については適用しない。」したがって、民間の航空機ではない公用の航空機については適用がないのだというふうに解して一向に差しつかえない本のであるということから、自衛隊の航空機も公用機として排除される、そのように解釈している次第でございます。

渡部一郎公明党

○渡部(一)委員 そうすると、あなたはいま自衛隊は国内では軍隊でない、国外では軍隊である、こう言われたわけですね、結局。縮めて言うとそういうことになるのですね。

伊達宗起外務省条約局外務参事官

○伊達政府委員 たいへんむずかしい問題になりますけれども、国外で、外国から軍隊のような待遇を受けるということは、これは実際の事例からもあるわけでございます。ただし、私どもといたしましては、日本国の憲法上もこれは軍隊では、いわゆる何と申しますか、通念といたしましての軍ではないのだというふうに言えるのではないかと思います。

渡部一郎公明党

○渡部(一)委員 さっぱりわからないですけれども、国内では軍隊でないのですね。国外では軍隊である、こういうわけですね。そうすると、どこの境目の、公海の何度線から外になると軍隊なんですか。

伊達宗起外務省条約局外務参事官

○伊達政府委員 国内では軍隊でない、国外では軍隊であると申し上げているわけではございませんので、自衛隊というものは、私、日本のサイドから見ますれば、どこへ行こうと軍隊ではないわけでございます。ただ、諸外国のほうから見まして、自衛隊を軍隊と観念している国があって、それでそのような待遇を、たとえば自衛艦などに与えてくれるということがあることについてまで、日本サイドからとやかく言う問題ではないのではないか、そういうことを申し上げているわけでございまして、決して国外に出たらば直ちにそれが軍隊になるのだということを申し上げているわけではないわけでございます。

渡部一郎公明党

○渡部(一)委員 そうすると、日本政府側としては軍隊でないと見ているが、国外では軍隊と見られる、こういうことですね。

伊達宗起外務省条約局外務参事官

○伊達政府委員 必ずしも軍隊と見られているかどうかは相手方によるわけでございますので、そのような場合もあり得る、また、あった事例も、具体的に事例と申しますのは私はただいまお答えはできませんけれども、あった事例もあるやに聞いておりますので、そのように申し上げたわけでございます。

渡部一郎公明党

○渡部(一)委員 なぜこんなめんどうな話、あげ足とりに似た感じがして私はあまり好かないのですけれども、こういうことを言うのか。日本国憲法では第九条の有名な規定によって、軍隊を持たぬことになっていますよね。ですから、非常に外務省はこの条約を結ぶにあたって不用意でしたね、軍隊という文字を使った条約にぱっと加盟したということは。あなたは軍隊とみなしたわけだ、明らかに。この四条一項を見て何も感じなかった外務省の官僚というのは、日本国憲法についての研究というか、御理解ということがあまりなかったわけですね。だから軍隊という文字を見て別に異存を感じないでこのまま来てしまった。  そこであなたが非常にろうばいしてお答えをしなければならなくなってきた。それで軍隊という文字は自衛隊とみなしたわけですね。また逆にいえば、自衛隊は軍隊とみなしたわけだ、あなたの先ほどからの御答弁の趣旨からいえば。そういうみなし方をあなたは日本国官僚として、日本国政府の代表としてしなければならなくなったというこの事実ですね、これはまさに歴史的な御発言であったと私は思うのですね。  よろしいですか。いままで日本政府はいろんなことをやられたけれども、こういうことをみなしたのは初めてなのです。きょうは歴史的発言がさっきから行なわれているのです。いいですか。もう一回読みましょうか。へたしておわかりないといけませんから、日本国憲法第二章戦争の放棄、第九条、「日本國民は、正義と秩序を基調とする國際平和を誠實に希求し、國權の震動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、國際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。國の交戦権は、これを認めない。」いいですか、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」これは軍隊ですね。軍隊は保持しないと書いてある。いいですね。  そうすると、いま軍隊の役務に——軍隊でないならば、この条約については民間の問題になるわけですね。そうでしょう。あなたはいま公用航空機の中に自衛隊の航空機を入れたわけだ。公用と認めたわけです。だから軍隊という文字は自衛隊とみなしたわけだ。さっきあなたが深くうなずいておられた。そうして自衛隊のほうは逆に軍隊とみなしたわけだ。いいんですね、これで。ここをうんと言ったら、あなたの責任はそれで終わるのです。ほかは法務省や法制局や総理大臣と私は議論しなければいけない。いいですね。日本国の外務省は軍隊という文字を自衛隊とみなしました、公式発言はかくかくしかじかです、議事録にこのとおりとあなたが認められたということが歴史的な判定になるわけです。いいですね。

伊達宗起外務省条約局外務参事官

○伊達政府委員 私が先ほどから御説明申し上げておりましたのは、若干舌足らずであったかもしれませんけれども、この条約と申しますのは、民間航空の安全を保護する、それに対する不法行為というものを防止しようということが趣旨でございます。したがって、その趣旨の具現といたしまして、この条約は「軍隊、税関又は警察の役務に使用される航空機については適用しない。」といっているのでございまして、この条約の趣旨から判断いたしますれば、この第一項は字義どおりに、どれが、自衛隊が軍隊であるか、どれが税関であるか、警察であるかということを問わず、公用の少なくともその政府機関によって運営されている航空機については適用しないというふうに解して一向に差しつかえないものである。したがって、その限りにおいて自衛隊機というものはこの条約の適用から排除されるのだ、そういう趣旨を御答弁申し上げたつもりでございますが、若干そのように補足させていただきます。

渡部一郎公明党

○渡部(一)委員 そのいまの解釈も無理がありますね。この条項で「軍隊、税関又は警察」と書いてあるのを公用航空機全般にあなたが広げられたのは条約の拡張解釈です。ちょっとあわてないで、もうちょっと考えられたほうがいい。いま変な答弁をなさるともっと変なことになるですよ。いいですか。公用航空機全般に広げないで、「軍隊、税関又は警察」とびしゃっと言ずつ指定されているのですから、もしそういう解釈をしたいのならば、その条約交渉の最中にそういう意思表示をしなければいけませんです。  しかし、公用航空機という称号を与えたとしたら——ここには共産圏諸国がこれに判こを押しているわけでしょう。たとえば本条約の寄託をする場所としてソビエト政府の名があがっているところを見ると、こうした表示しかなかったのだろう。というのは、共産圏諸国では公用航空機というと全般に広がってしまう。全部が公用航空機ということになる。事実上われわれの考えるような民間航空機は存在しないだろうと私は思うのですね。そうすると、これは明らかにその辺もう少し詰めておかなければいけなかったですね。そこをあなたが認めるかどうかです。降参するかどうかです。降参しないで何かよけいなことを言うと、また広がるわけですね。どうです。

伊達宗起外務省条約局外務参事官

○伊達政府委員 日本国が参加します条約といたしましては、確かにこの点につきまして何らかの明確な規定を設けておくにこしたことはなかったという御指摘は、私もそのとおりであると思います。ただ、拡張解釈であると言われましたが、私どもといたしましては、条約文の解釈というのは、多数国間の条約というものは、恣意的ではなく合理的な範囲内においてそれぞれの国の実情というものに適した解釈をし、条約の目的とするところの実現を著しく無にするものでない限り、その解釈というものはかなりの幅が許されているものであるというふうに言って差しつかえないと思います。  この場合はまさにその場合に相当するわけでございまして、公用機と申して、さらにまたソ連の場合の航空機というのは全部所有者が国であるからということもございますので、公用機というこばだけを用いればさらに細分化の必要は生じるかもしれませんけれども、ソ連の場合には、やはりそれぞれその趣旨、目的によって、ある場合には、政府の公有の航空機であっても、たとえばアエロフロートのように民間航空に運用されているものけ公用とはみなされないというような解釈もし得ろでございましょうし、日本の場合には公用機というふうな概念でとらえても差しつかえないのではないか。この条約上そのような解釈をすることは、必ずしも条約の違反ではないというふうに考えて、幸いに国会の御承認を得れば、この条約を適用していきたいというふうに考えているわけでございます。

渡部一郎公明党

○渡部(一)委員 それは、そういうやり方でいきますと、今度そういう他国の恣意的な条約文章あるいはことばに対する解釈を許すことになるわけですね。だから、いまあなたが言ったことは、それはがんばらないほうがいいのじゃないかな。というのは、そういうことをおっしゃるなら、本委員会に提出されている法案の中で全く逆の解釈をあなたがしなければならぬ条約がありますよ。いいですか。そのときに私は、威嚇するようですけれども、あなたと反対の立場に立ってものを言わなければならぬ場合がある。そのときあなたがいまのような解釈を押し通そうとするなら、たとえばソ連政府との間の条約交渉などというものは不可能ですよ。あれほどかってに一つずつの単語を読みかえをする国家を相手にするとき、まず無理だろうと私は思うのですね。  だから、いまのような公用機全部という解釈はちょっと引っ込められたほうがいいのじゃないかな。明らかにこの文についてはわがほうとしてはこういう意思表示をした証拠を何らかの交渉の間からさがしてきて、そしてもう一回御答弁になったらどうですか。いまの御答弁は引っ込められたほうがいいのじゃないかな。だから、ちょっと交渉された舞台にいた人とそれはお打ち合わせなさることを私はおすすめしますよ。そうでないとこれはとんでもない解釈になっちゃう。  この委員会さえ突破すればいいというので、こうやって、ともかく何とか言いのがれようとする、そんな無理なことをする必要はないじゃないですか。ちょっと食事でもなすってゆっくりして、交渉した人ともちゃんと打ち合わせてもう一回やらなければ、じゃ私は、この「軍隊」とは何ですか、「税関」とは何ですか、「警察」とは何ですか、自衛隊はどこに属していますかというように次にそう聞きますよ。そうすると、わが国に軍隊に属するところはありません、自衛隊はどっちかというと警察ですなんてあなた言わなければならないですよ。その議論がだめなことは、もう内閣委員会でさんざんやった議論ですよ。そうすると、あなたは自衛隊のことを税関ですと答えなければならぬでしょう。自衛隊は税関だという歴史的な答弁をいましなければならぬですよ。いいですか。そんな議論は無理ですよ。  だからあなたは、こういう方向でいくことにつき各国については意思表示をした旨を担当官から引き出してきて、そして御説明なさるよう私はおすすめしますよ。そうでなかったら無理だよ、そんな解釈は。これを公用航空機というふうに大型に解釈するなんという解釈をするならば、この委員会の審査はむだになります。

伊達宗起外務省条約局外務参事官

○伊達政府委員 条約作成会議の段階におきまして、日本側から何らかのこの条項についての申し入れと申しますか、日本側の考え方の表示というものがあったかどうかという点につきましては、なおお昼の休憩時にでも確かめてからさらにお答え申し上げたいと思います。

渡部一郎公明党

○渡部(一)委員 私が答弁のほうまで心配しなければならぬような条約を提出されることにつき、私は深い疑義を感じているわけであります。  もう一つ何か言いましょうか。別な話にいたしましょう。——それじゃその御答弁は次にいただくことにして、いま自民党の理事からおすすめがございましたから、次の質問は質問だけしておくことにいたします。次がまためんどうなことを伺います。  ここに犯罪行為が幾つか述べられております。この犯罪行為について関係国内法ができているはずであります。できていないのだったらつくらなければならないし、今度の刑法改正案の中に盛り込まれなければならぬはずであります。この大要ができていますかと私は質問したいと思います。

伊達宗起外務省条約局外務参事官

○伊達政府委員 この条約を実施するに際しまして、国内法の整備が必要であることはそのとおりでございまして、運輸省におきまして、航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律案というものをただいま国会に提出中でございまして、それは国会での御審議もかなりの程度進んでいるというふうに承知いたしております。

渡部一郎公明党

○渡部(一)委員 じゃこの問題につきましては、お昼の後にもう少し詰めていきたいと存じます。  私の午前中の質問はこれまでにしたいと思います。

木村俊夫自由民主党

○木村委員長 午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時二十九分休憩      ————◇—————     午後一時三十九分開議

木村俊夫自由民主党

○木村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。石井一君。

石井一自由民主党

○石井委員 ILOの批准に関連いたしまして、まず労働大臣に基本的な政府の見解をお聞きしておきたいと思います。  わが国は、ILOでは常任理事国にもなっておりますし、活発にILOの批准を進めなければいけないのですけれども、その反面、非常な高度成長を遂げ、輸出が増大しておる。こういうふうなことで、いわゆる日本人の働き過ぎとでも申しますか、労働条件というふうな面で各国からある意味では警戒の目で見られるという一面もあろうかと思うのであります。そういう意味では、国際間の公正な競争というふうなことからも、今後さらに福祉国家としての条件というものをそろえていかなければいかぬと思うのでありますけれども、そういうことと関連いたしまして、まだ批准に至っていない案件もたくさんあるようでございますけれども、このILOの批准ということに対して基本的にどういうお考え、御見解を持っておられるのか、この点からひとつお伺いいたします。

長谷川峻自由民主党労働大臣

○長谷川国務大臣 まさにおっしゃるように、日本は高度経済成長しながらも、一方国内における労働者の地位向上、そしてそれが国際的に認識されるようにということからしましてILOの当初からの常任理事国となっておりまして、国内法を整備しつつ、そしてまた世界に恥ずかしくないという態度におきまして去年も条約一本批准を願ったわけでありますが、本年もそういうふうにしてやっていく、この姿勢をとりつつ、一方は、労働外交というものが大事でございますから、おもなる国にレーバーアタッシェを置いて日本の実情さらにまた諸外国の労働事情なども聴取しながら参考にしておるわけでございます。

石井一自由民主党

○石井委員 一体いまレーバーアタッシェというのはどの程度どのくらいの国に置いておられるのですか。

長谷川峻自由民主党労働大臣

○長谷川国務大臣 ジュネーブ、ボン、 ロンドン、パリ、バンコク、プラハ、ワシントン、それからことし韓国に置きます。そういうわけでして、向こうの実情を知りながら、また日本の労使慣行等々も向こうによくわかってもらう、こういうふうな手配をとってレーバー外交というのはいささか成功しているのじゃないか、こういうふうに思っております。

石井一自由民主党

○石井委員 国内的にもやはりそういう国際的な水準に合わすという意味での労働省における行政指導と申しますか、こういう面も重要な一面ではないかと思うのですが、大臣は非常に進歩的な方だというふうに私は伺っておるわけでございますが、この点についての大臣の御所見をひとつ伺いたいと思います。

長谷川峻自由民主党労働大臣

○長谷川国務大臣 おほめいただきましてありがとうございます。私はやっぱり近代工業国家というものは勤労者を大事にしなければいかぬと思うのです。今日組織労働者が千三百万、そして未組織を入れると三千六百万。でありますから、その家族を入れるとほんとうに一家のうちほとんど大部分が勤労者。それを法でお守りもし、けがをしないようにいろいろまた御注意申し上げる。ですから、災害の問題とか福祉の問題とか、そして労働者の福祉増進のためにほんとうに、戦後できた労働省でございますけれども、内務省の社会局以来の伝統がありますので、いまのような近代工業社会における勤労者というものをしっかり福祉向上をはかり法の中に守っていくということだけは懸命にやらなければならぬという感じ方を持って及ばずながら苦心しているところであります。

石井一自由民主党

○石井委員 そういう御感覚であるならば、これからもさらに御任期中に、一本やそこらでなく、どんどんともう少し国際水準に合った批准を進めなければいけないのではないか、こういう感じもいたすわけでございます。  ただいま議題となっております業務災害に関する給付に関する条約、第百二十一号条約でございますけれども、これに加盟するにあたって国内法制上の整備が必要であったのではないかと考えておりますけれども、労災保険の適用状況と申しますか、この点はどうであったのかということ、並びにこの条約が諸外国でどのような批准状態になっておるのか、この点をお答えいただきます。

北川俊夫労働大臣官房長

○北川(俊)政府委員 ILOの百二十一号条約の定めております労災給付の水準につきましては、昭和四十五年に労災法の一部改正をいたしまして、条約で定めます水準に日本の国内の労災の給付水準も到達をいたしております。ただ、その時点で批准ができませんでしたのは、通勤途上の災害につきましての規定が日本の場合にございませんでした。昨年再び労災保険法の改正をいたしまして通勤途上の災害につきましても業務災害に準じましての補償をいたすことにいたしましたので、ここで国内法上の整備が終わった、こういう考え方でこの条約の批准に政府としては決意をいたした次第でございます。  なお、現在労災保険法の適用の状況でございますが、労働者数の比率で言いますと大体九二、三%、実数で言いますと二千七百八十五万人の適用になっております。事業所数にいたしましても百三十八万事業所が適用をいたしております。  なお、お尋ねの現在諸外国でこれに対する批准の数でございますけれども、この条約は本年の一月一日現在で十三カ国が批准をいたしておりまして、その主要な国を申し上げますと、西ドイツ、フィンランド、ルクセンブルク、 オランダ、スウェーデン等でございます。

石井一自由民主党

○石井委員 過ぐる国会でILOの批准、百十五号と百十九号でございましたか、審議をいたしましたときに私が質問をいたしました。その節当時の労働大臣からお答えになった答弁では、この次にはいわゆるいま問題になっておるもの並びに百二号、これは社会保険最低基準条約でございますけれども、これを批准する方向で検討を進めておる、こういう答弁があったわけでありますけれども、今回の場合はこれのみに限られておる、こういうことでございますけれども、この百二号が批准に至っていない理由はどういうことなんですか。

北川俊夫労働大臣官房長

○北川(俊)政府委員 百二号条約は、先生御承知のように疾病あるいは老齢等社会保障全般に対しまして九部門につきまして基準を定めておりまして、そのうち三部門について基準が達しておれば批准ができる、こういう条約の内容になっております。日本の現在の社会保障の水準では、疾病、失業、それから老齢、業務災害、労働省で言いますと失業、業務災害の両方とも水準に達しておりますし、形式的に言いますと四部門の水準到達でございますのでこの条約の批准が可能なのでございますけれども、何ぶんにもこの条約が社会保障全般に関する基本を定めており、かつ非常に大部でございまして、社会保障保険関係の法技術的な問題に若干の疑点も残っております。その点で厚生省と昨年以来鋭意批准の方向で検討を進めてまいりましたけれども、今回は残念ながら間に合いませんでしたけれども、昨年の大臣答弁に引き続きまして明年度はぜひ批准の方向で厚生省と労働省の間で事務的に詰めたいと考えております。

石井一自由民主党

○石井委員 その法技術的問題というのについても説明を求めたいところでありますがこの際は割愛しまして、先ほどの大臣の趣旨の弁明と申しますか、そういう線にも沿いましてすみやかにそういう技術的な問題は解決をしていただきたい、こういう感じが強くいたします。  そこでもう一点、百五号条約でございますけれども、これも先国会に参考人の招聘をいたしましたときに、これは各参考人がこぞって批准を促進するべきであるという強い意見の開陳がございました。これは言わずと知れた強制労働廃止条約ということでありますが、これが批准がおくれておるのはどういう理由ですか。

北川俊夫労働大臣官房長

○北川(俊)政府委員 百五号条約はいま御指摘のように強制労働に関する条約でございますけれども、ここで強制労働といっておりますのは、政治的な圧制あるいは政治的見解を発表する、それへの制裁としての強制労働、あるいは労働規律の手段としての強制労働、あるいは同盟罷業への制裁に対する強制労働、これを禁止しておるわけでございます。  ただ、御承知のように、わが国の法制では、公務員関係では同盟罷業に対する教唆、扇動、あおり、そそのかしに対して懲役刑をかけておるわけでございます。この点につきまして、必要最小限の産業、重要産業につきまして争議権を禁止し、あるいはそれに対して制裁を加えることは、この条約で禁止をしておる条項には該当しないのではないかとわれわれは思っておりますけれども、その点につきましてまだ明確でございません。もしそういうものにつきましてもこの条約で禁止をしておるということでありますならば、われわれのいまの現行法制のもとでは、この条約は名称のいかんにかかわらず批准は困難である、こう考えております。

石井一自由民主党

○石井委員 そうすると、参考人の意見に反して政府としては当分この批准は考えておらない、こういうふうに受けとってもかまわぬわけですか。

北川俊夫労働大臣官房長

○北川(俊)政府委員 いま申しました問題点の解明が私たちの期待しておる方向でILOからなされない限り、この条約については批准は困難だ、こう考えております。

石井一自由民主党

○石井委員 昨年の審議などからも私はちょっとした感触を持っておるわけですが、わずかな技術的な問題、法解釈、大体大まかに言いますと大部分はその条件に当てはまっておるにかかわらず、その辺が日本の官僚の非常にまた優秀でいいところでもあるのですけれども、そういうことに非常にこだわり過ぎておるというような感じが私はいたしてならぬのでございますけれども、ILOの条約の精神というものを理解した上で、もう少し積極的に、ILOにおける後進国だというふうなそしりを受けないためにもそういう努力を望みたい、こう思うのでございますけれども、その点はいかがですか。

北川俊夫労働大臣官房長

○北川(俊)政府委員 大臣がおっしゃいましたように、現在日本は主要産業国としての地位を確立しておりますし、あるいはILO理事国といたしましてもILOで積極的な活動をいたしております立場から、先生のおっしゃるように日本の国際的地位あるいは信用を労働面において高める、そういう面から積極的にILO条約を批准してまいるという基本精神は、私たち全く同感でございます。おっしゃいますように、ささいな点につきましての法技術的な障害、そういうものは大方針のもとでそういうものにこだわらず批准の方向にこれからも努力をいたしたいと思います。ただ、御指摘の百五号条約につきましては、国の労働政策の基本に関する非常に重要な部門との関係がございますので、慎重に検討させていただきたいと思います。

石井一自由民主党

○石井委員 百五号につきましてももう少し突っ込んでお伺いしたい点がございますけれども、本日の議題ではございませんので、あとに譲ります。  一九七〇年の第五十四回のILO総会で採決された百三十二号条約、年次有給休暇の条約の採決の際に、政府代表も使用者代表も反対票を投じておる。使用者代表がその見解を示されたのは理解できるのですが、政府が反対票を投じた理由、これはなぜですか。

北川俊夫労働大臣官房長

○北川(俊)政府委員 百三十二号条約、年次有給休暇に関する条約につきましては、一年の年休を与える期間を三週間以上、現在日本の基準法では六日以上、こういうことになっておりますけれども、それとたいへん格差のある水準が示されておるという点が一点。もう一点は、日本の場合には七日の年次有給休暇を一日単位で分割請求ができることになっておりますけれども、この条約では二労働週、二週間以上の単位でとらなければいかぬ、それ以下に分割してはならない、こういう内容でございまして、特に後者につきましては、いまの日本の年次休暇の使用の状況、慣行等から見まして、いま直ちに、われわれとしましては非常に望ましい方向を示しておると考えておりますけれども、日本の労使関係あるいは産業の現状からこの水準について賛成することができないということで、先生御指摘のような態度表明をしたわけでございます。

石井一自由民主党

○石井委員 戦前には、政府が反対票を投じたという例が十幾つあるようでございます。戦後そういうケースというのは、いま御指摘したこの条約が一本あるのみである、こういうふうに私、伺っております。そこで、政府が反対したということは、全く批准をしないというふうに判断をしていいのか、それとも、やはり国内情勢その他というものも変わってきた場合に、それは当然政府が反対票を投じたものに対しても今度は積極的に批准をする、こういうふうなこともあり得るのか、この点はいかがですか。

北川俊夫労働大臣官房長

○北川(俊)政府委員 この条約が採択をされました七〇年の年次でそういう見解を持っておりましたけれども、先生御指摘のように、非常にその後の時代の変化というものが来ておりますし、労働条件も日増しに向上をいたしております。特に週休制度というものの関心は、労働組合のみならず経営者のほうも積極的に取り入れようという気風が日本の産業界にも出ておりますので、そういう日本の労働問題の変化の推移、あるいは労働条件の向上に対応いたしまして、ILO条約の批准の決定を定められておりますので、たとえ政府といたしまして採択の際に反対ないし棄権の意思表示をいたしましたものでも、可能な時点におきましてはなるべく前向きに取り組んでまいりたい、こう考えております。

石井一自由民主党

○石井委員 そこで、今国会のこの時点において、いわゆる政府、労働当局としては、少なくともこれとこれとはプライオリティーが一番高い、積極的に検討しておるのだ、そしてその次にはこういう問題をわが国としては推進するべきである、こういうふうなことに関しての御見解をひとつアップ・ツー・デートなものを伺っておきます。

北川俊夫労働大臣官房長

○北川(俊)政府委員 当面検討し、かつなるべく早い機会に批准をいたしたいと考えておりますのは、先ほども先生から御指摘をいただきました社会保障に関する条約、百二号条約につきましては早急に結論を出したい、こう考えております。それに引き続きまして、船員関係の労働条件に関する条約につきましては、現在労働省と運輸省との間で煮詰めをいたしておりますけれども、これにつきましてもかなり早い時期に可能になるのではないか、とう考えております。それからあと、安全衛生関係は前通常国会で御批准の承認をいただきましたけれども、これにつきまして、それ以外の安全衛生、たとえば事務所の衛生規則等につきましても、これは事務的な手直し、業界に対する説得が必要でございますけれども、そういうことを積極的に行なって、なるべく早い機会にやりたいと思っております。それから、全般的な方向としましては、やはり労働基準、労働条件を定めます条約がILOの中では一番中心でございますし、重要なものでございますので、これにつきましては、現在大臣から労働基準法研究会に種々御検討をいただいておりまして、それの結論が出ます際には、やはりILOの労働条件に関する諸条約が批准できるという内容のものにいたして、それとともに条約の批准を積極的に進めたい、こう考えております。

石井一自由民主党

○石井委員 いまお伺いしたところではまだそんなにたくさんないようでございますけれども、もう少し前向きに、積極的に検討をされることによってまだまだ可能性を秘めたものがたくさんある、こういう感じが私はいたしますので、その点も、与党でありますけれども、私は強く要望しておきたいと思います。そこで、条文に入りまして一、二点、小さい問題でございますけれども、二十七条には、外国人に対しても自国民と同等の待遇を与える、こういうふうに規定をされておりますが、わが国において外国人労働者というふうなものはあまりないということにもなるわけですが、この実情、この適用というのはどういう御見解ですか。

北川俊夫労働大臣官房長

○北川(俊)政府委員 二十七条に、外国人に対しても内国人と同様の待遇を確保という点がございますけれども、わが国の労災保険法につきましては、いわゆる国内におきます外国人につきましてはすべてこの労災法の適用排除をいたしておりませんので、この条項につきましては条件を満たしておる、こう考えております。

石井一自由民主党

○石井委員 それからもう一点、附属書の産業分類の中に、わなかけ業、狩猟業、こういうふうなものがありますが、わが国にこういう実例がありますか。

北川俊夫労働大臣官房長

○北川(俊)政府委員 農林水産の中で狩猟業というのがございますけれども、わなかけ業という本のが日本の場合に現存するかどうかちょっとつまびらかでございませんので、調査いたしまして後日御返事をいたします。

石井一自由民主党

○石井委員 最後に、大臣にお伺いいたしますが、去る四月の十一、十二日にたいへんなゼネストがございましたが、公労法十七条は憲法二十八条に違反しているかどうか、この点は政府としてどういうお考えですか。

長谷川峻自由民主党労働大臣

○長谷川国務大臣 これは私は合憲だと思っています。

石井一自由民主党

○石井委員 それから公務員のいわゆるスト、いわゆるスケジュール闘争、これに対してILOの見解というものが非常に多岐にわたっておる。あるときには労働者サイドに有利なような見解にも聞こえるし、あるときにはまた政府側にとって有利に感じられ得る、そういうふうな面もあります。この点に関してILOのいわゆる公務員のスケジュール闘争に対する見解というものを政府はどういうふうに解釈しておられますか。

長谷川峻自由民主党労働大臣

○長谷川国務大臣 たしかことしの二月二十七日にILOのほうから、スケジュール闘争、政治闘争は違法である、こういうふうに明確に出ておりますし、また前にドライヤー報告、二千百三十号にいわれたその中に、ドライヤー報告の中にも、政治ストに加え新たにスケジュールに従ってなされるストも結社の自由の原則を逸脱するものである、こういうふうに明確にいわれて、ことに二月の末のものは当時新聞にも大きく報道されたことであります。

木村俊夫自由民主党

○木村委員長 堂森芳夫君。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 まず、労働大臣にお尋ねをいたしますが、わが国は世界でも特に戦後の経済成長は目ざましいものがあるわけであります。いわばわが国は世界における先進工業国として自他ともに許されていると思うのであります。そして現在ILOに世界各地からおそらく百二十以上の国が加盟していると思うのであります。その中に先進国というのはそうたくさんはないと思うのでありますが、先進国の一つとしてのわが国が、ILOの国際機関でどのような役割りを果たすべきであるか、またどのような役割りを果たしていこうとしておられるか、当然労働大臣としての抱負があるわけでありまして、その辺の抱負経綸をていねいにひとつ開陳を願いたいと思います。

長谷川峻自由民主党労働大臣

○長谷川国務大臣 私はILOのいろんなものを拝見しながら、一部の貧困は全体の繁栄を阻害する、この宣言はすばらしいもの、そしてまた、当初から日本は原加盟国として参加をして、今日常任理事国になって活躍し、職員諸君もまたあの場所において国際的な問題に対して相協力しているわけであります。そして先生おっしゃったように、世界においてたしか百四十五カ国が加盟しておりますが、日本はその中において、昨年はこの国会において二本御可決を願って批准をいたしておりますし、その本数においても世界の平均にまで達している。今度はまたこういうふうにして御審議いただいているわけでありまして、その数そのものは私はそう多くないと思いますが、しかしそれはそれぞれの国の国情による。アメリカは世界先進工業国の最大なるものと私たちは思っておりますが、たしか七本ぐらいしか批准していない。最近はアフリカのような国々がたくさん入っておりまして、そういう国が出すようなものを全部日本が批准するという形でもないのでして、やはり国際的信用、国際慣行に国内も合わせていく。そういう中において、私は条約を守りもし、日本の信用というものを高めてもいく、そしてまた日本の勤労者諸君の地位の向上もはかっていく、こういう姿勢において将来ともに見守っていきたい、こう思っております。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 それでは大臣にお尋ねしますが、大体今回の批准を求めておる条約百二十一号が批准されたとして全体で三十二でございますか。加盟国の平均の批准数は三十一か二じゃございませんか。どうですか。

北川俊夫労働大臣官房長

○北川(俊)政府委員 ILOに加盟しております全体の国が百二十四ございます。条約全体としまして百三十八条約が採択をされております。現在までに主要産業国だけでなくて、全加盟国の批准をしております一国あたりの平均条約数は三十二でございます。したがいまして、大臣が申されましたように、今回この百二十一号条約を批准することによりまして日本もようやく三十二の平均に達する、こういうことでございます。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 いま官房長が御答弁になったように、ようやく平均に達した程度である。これは先進工業国としてのアメリカは少ないとかいろんな理屈はありますが、しかし私は、従来はテープレーバーの国であるとかいろんな批判が世界各国からあったわが国の不名誉な過去でありますが、そういうようなイメージをなくしていくという意味でも、やはりわが国のILO条約批准はもっと多くあっていい、こう思うのでありますが、それらの点について今後どういうふうにしていこうとされるか、その点も具体的に御答弁願いたいと思います。

長谷川峻自由民主党労働大臣

○長谷川国務大臣 まさにおっしゃるように、日本の賃金も高くなりまして、チープレーバーとはいわれません。また、私はもう一つ考えますと、それじゃよその国々を、日本の場合に輸出する国々に向かってチープレーバーだと非難したこともありません。これは私たちのほうは非難されておりましたけれども、日本は非難しない。そういう意味からしますと、いまから先もこういう国際条約というものを、ILOというものをよく見詰めながら、名実ともにすばらしいそういう条約を批准したからには、これは国際条約は、憲法にちゃんと書いてありますから、ちゃんと守らなければなりませんし、そういう体制でいまから先も前進していきたい、こう思っております。  なお、具体的ないま検討中のものについては、政府委員からお答えさせます。

北川俊夫労働大臣官房長

○北川(俊)政府委員 今回百二十一号条約の批准の御承認をお願いしておりますが、これが終わりまして、近々予定をいたしておりますのは、先ほど石井先生にも御答弁を申し上げましたけれども、まず百二号条約、これは社会政策全体との関連がございますので、厚生省との事務的な詰めを十分行ないまして、なるべく早い機会に批准にこぎつけたいと考えております。  それ以外に、先ほど申し上げました船員関係の労働条件につきましても、六十九号でございますが、これの批准を進めたい、こう考えております。  それからあと安全衛生関係で若干手直しをすることによって批准ができるものがあろうかと思いますので、こういうものの批准も進める考えでございます。  それから、大きな方向といたしましては、やはりILOの条約の中で、労働条件関係、労働基準を定めます条約というものが、数的にも多うございますし、占める位置もたいへん重要でございますので、その批准につきまして、現在労働大臣から労働基準法研究会に、基準法が二十数年を経まして、変化に応じて改正をすべき方向という点の御検討をいまお願いをいたしております。基準法の改正、大問題でございますけれども、改正をされる場合には、たとえば母性の保護の問題あるいは労働時間の問題等々の労働基準の主要な部門につきましては、批准のできるレベルに基準法の改正をぜひいたしたい、こう考えております。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 私はまた百二号について聞きたいことがあるのですが、厚生省来ておられますね。——あとでお聞きします。  この基本的な問題ですが、従来から、たとえば古く吉田内閣のころ、昭和二十八年でございますね、閣議決定がございます。当時の鉄則といいますか、まあ鉄則というようなきびしいものであるかどうか問題はありますが、閣議決定で、ILO条約批准の際にはまず国内法を整備して、そしてその後、その内容の整ったものについて批准をしていこう、こういう原則をたしかきめられたと思うのであります。ところが、ILO条約の批准は、批准をして、一年以内に国内法を変えたらよろしい、こうなっておるでしょう。そういう方法もあるのに、昭和二十八年以来そういうふうな吉田内閣の古い、もう二十年前のそういう原則がいまも多少守られているのじゃないか。そしてこれがいまだに三十一か二しか批准できない大きな理由ではないのか。  たとえば私は、この百二号についてはいろんな機会に、これで十ぺんか十五へんぐらい政府に聞いているつもりでありますが、従来からこの百二号条約を批准できなかった一番大きな原因は、おそらく労働省はそうじゃなかったのだろうけれども、厚生省がいつもこれに歯車を戻すようなことをやってきたというのは天下周知の事実です。ようやくいま官房長は厚生省と相談をしておると言っておるが、従来これが批准されなかったのは厚生省に原因があったのですよ。みんなそう思っていますよ。またそうだと思う。  そこで厚生省、どういうふうなスケジュールをもって今後百二号を批准していこうとしておられるのか、具体的に答弁を願いたい、こう思います。これはもう日本のILO批准の基本的な大きな問題として十年、もっと前から問題になってきた条約でありますから、どうですか。

綱島衞厚生大臣官房国際課長

○綱島説明員 ただいまの御質問に対してお答え申し上げます。  先生おっしゃいますように、百二号条約は昭和二十七年でございますから、もう古いわけでございまして、まあ、従来なかなか批准にまで至りませんでしたのは、やはり厚生省サイドで申し上げますれば、国内法の整備、健康保険あるいは年金でございますが、そのほうをいわば重点的に考えまして、まずそこを充実してそれからというような気持ちが実は多かったわけでございます。したがいまして、今後のスケジュールといたしまして、幸いに国会の御審議を得まして昨年秋に相当大幅な改正が、健康保険につきましても、年金につきましてもできまして、それで批准の方向に進んでおるわけであります。  それで実は昨年からでありますが、厚生省内でもこのILO関係の社会保障条約につきまして、プロジェクトチームをつくりまして、これで一応の中間的な結論を得ております。それによりまして十分百二号はできる、こういう見通しでおりますので、その後ILO本部なりあるいはまた当然労働省その他の関係官庁とも御相談を申し上げておりまして、ただ何ぶんにも非常に条数が多いこと、それからいわば条文の解釈につきまして技術的な点がございますけれども、もう少し詰めたいという点が残っておりますので今日に至ったような次第でございまして、おそらくはほんとうに遠からずその手続がとれるようになるだろう、こういう現在の進行状況でございます。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 百二号条約というのは、九部門のうち三つ条件を満たせばいい、こういうことですね。あと六つの問題は満たさなくてもやむを得ない。ところが、日本の場合は、いま説明があったように、五つの部門についてかなり水準が低い、これを改善していかなければいかぬ、こういうことなんですが、そうすると、将来いつごろ批准を求めるための国会提出になるという見通しであるのか、それもあわせて答弁いただいておきたいと思います。

綱島衞厚生大臣官房国際課長

○綱島説明員 現在の事情から申しますと、おそらくはこの次の国会には間に合わせたい、こういう目標でやっております。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 よくわかりました。  そこで、官房長にお尋ねしますが、さっきの吉田内閣の当時の閣議決定はやはり金科玉条なんですか、そうじゃないのですか。

北川俊夫労働大臣官房長

○北川(俊)政府委員 御指摘のように、昭和二十八年にILO条約の批准にあたりましては国内法の整備を行なって批准を行なう、こういう方針をきめまして、現在も政府といたしましてはその方針に従っております。  なぜそういう方針に固執しておるかという点でございますけれども、ILOの条約は、御承知のように先進国から最近の開発途上国というように非常に国情の異なる多くの加盟国対象としております。条約の中には、一般的なの、原則的なものを定めておるのもございますけれども、労働条件の国際的基準を定めるという観点から、非常に詳細、具体的な事項を定めておるものもございます。一方、労働法、労働関係の国内法令につきましては、御承知のようにたいへん技術的、細目的な規定が多く、かつその解釈につきましては労使で意見が分かれることが間々あるものでございます。  したがいまして、いま先生のように、大方向賛成であるから、まず条約を批准してそれから国内法ということになりますと、一年の間に——特に労働問題につきましては労使関係の利害の対立する点もございますので、非常に困難を来たすことが予想されるわけでございます。したがいまして、ILOの条約の批准につきましては、二十八年、かなり前に決定をいたしたものでございますけれども、まず国内法制の整備を行ないましてから、労使関係でももう異論のないという状態にいたしまして条約の批准を行なうというたてまえは、このあとも続けてまいりたいと私たちは考えております。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 そういうふうな古い閣議決定がやはり金科玉条のように守られてきておるところに、批准の数がふえていかない、また国内法の改善、改正がおくれている原因もあると思うのであります。私はまあ議論になりますから、たいへん残念ですがやめます。  そこで、労働大臣にちょっと方向を変えてお尋ねいたしますが、先般人事院が週休二日制について勧告いたしておりますね。労働大臣としては、公務員に対して週休二日制はどのような考えをお持ちでございましょうか。

長谷川峻自由民主党労働大臣

○長谷川国務大臣 週休二日制は労使で話し合って行なわれつつあり、そしてそれが非常に実績を示しております。そしてまた一方昭和五十年には公務員も入れまして、公務員も何かの具体的な考え方を持とうというふうな申し合わせといいますか、そういうふうな立場をとっておりまして、いまのところ民間がいろんな形においてたしか五〇%以上、大企業の場合にはもう七〇%以上、そういうふうに進みもし、中小企業についてはなかなかたいへんでございますから、労働省のほうといたしますれば、中小企業の場合にはそれを育成するところの補助金までことし出しましてやっているような次第であります。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 すると、公務員の週休二日制についてはまだ結論がないということですか、これはいかがですか。

北川俊夫労働大臣官房長

○北川(俊)政府委員 昨年の人事院の勧告によりますと、五十年までには民間の企業の半数近くがおそらく週休二日制が普及するのではないか、そういう状況をにらんで、五十年からそれに相応するように公務員の場合に何らかの週休二日制をとることについての検討を始めてはどうか、こういう勧告をいただいております。  ただ、いま大臣が御指摘のように、民間の進捗状況があるいは人事院が昨年推定をしたよりもかなり進捗しておるのではないか。と申しますのは、労働省が本年の年初に発表いたしました民間の週休二日の普及状況によりますと、企業数にしまして三十人以上の企業で三〇%、労働者数にして五四・七%の普及を示しております。この民間の実情を見て、おそらく本年の人事院勧告で、昨年の勧告に加えての何らかの勧告があるのではないか。  政府としましては、昨年の勧告をもとに、現在関係省庁で具体策を検討いたしておりますけれども、本年の人事院勧告を待ちまして、五十年といいますともう明年度でございますから、積極的に取り組んでまいりたい、こう思っております。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 かりました。  先刻から官房長がいろいろ答弁しておられる中で、労働基準法研究会というものがILOの批准には大きな役割りを果たしておる、こういう御答弁がたびたびなされております。そこでILO批准の促進のために政府と使用者それから労働者の三者が一つになったような促進のためのそうした機関というようなものをつくることも一つの促進の道に通ずるのではないか、私はこう思うのでありますが、こういうような構想は政府はないのでございましょうか。

長谷川峻自由民主党労働大臣

○長谷川国務大臣 わが国におきましては、政労使及びILO関係団体によって組織されましたILOの技術協力推進連絡会議というものを設けておりまして、そしてこのILOのいろいろな活動に協力する立場から御論議いただいております。今般の業務災害の場合における給付に対しましてのこの百二十一号条約の批准についても、この連絡会議において御検討いただいて御了解を得ておりまして、これからまた出す、こういうふうにして一つ一つ手をつけてやっておりますことを御理解いただきたいと思います。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 まあ大臣の御答弁でありますが、そういう機関はILO批准を促進するための専門的な機関ではない、こういうことでございましょう。たまたまそういうものあるからILO批准についてもいろいろと意見を聞く、こういうことじゃないですか、官房長。

北川俊夫労働大臣官房長

○北川(俊)政府委員 御指摘のとおりでございます。最近ILOの役割りが、労働基準について国際的スタンダードを示すことのほかに、後進国に対する技術援助、こういうものの重要性から技術援助についての分野が非常に広がってまいりました。それに対応いたしまして、大臣が先ほど申しましたように政労使による協議会を日本で持っておるわけでございますが、これは単にILOにおける技術協力の分野に限定されての活動でなくて、大臣が申されましたように、条約の批准の問題あるいはILOでの活躍の問題等、三者が一つの土俵の中で腹を、いろいろ忌憚なく意見を交換する場として活用をいたしておりますので、名称、目的その他につきましてやや限定的な表現でございますけれども、実質は大臣答弁のようにILOの諸事業、特に批准の問題につきましても積極的に御意見をいただいておるところでございます。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 ILO批准促進だけの目的ではないがそれも含んで、こういう意味ですね。私、そう申しますのは、もっと強い専門的なそういう機関をつくる意思はないか、こういうことをお尋ねしておるわけです。

北川俊夫労働大臣官房長

○北川(俊)政府委員 先生の御趣旨、私たちも十分わかるわけでございますけれども、いま行なっておりますこの機関の活用のしかたで先生の御趣旨に十分沿い得るのではないか、あるいは今後ともそういうことで努力をしてまいりたいと思いますので、御了承いただきたいと思います。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 先刻、石井議員から百五号条約、強制労働禁止に関する条約を、私聞いたけれどもよくわからなかったのですが、これの批准はする方向でございますか、しないのでございますか。

北川俊夫労働大臣官房長

○北川(俊)政府委員 率直に申し上げまして、百五号条約は非常に問題の多い条約と政府は考えております。その問題点につきまして先ほど簡単に申し上げましたのですが、この内容はまず第一点に、政治的な圧制等の手段としての、あるいは政治的な見解を抱くあるいは発表するその制裁としての強制労働、これは懲役刑を含む、こういうことになっております。それから第二点としましては労働規律の手段としての強制労働、それから第三点としましては同盟罷業に参加したことに対する制裁としての強制労働、こういう三点をおもな柱にいたしております。  わが国の場合には、先ほど申し上げましたように、労働規律の手段としての強制労働というような事項の関連としましては、たとえば郵便法に違反をして業務不取り扱いの場合に、郵便法に基づく懲役刑という条文がございます。あるいは先ほども申し上げましたけれども、国家公務員法、地方公務員法、それの同盟罷業についての教唆、扇動につきましても懲役刑の罰則がございます。  これにつきましては、先ほどの春闘の結末としまして、今後のスト権について閣僚協議会でいろいろ御検討になるわけでございますけれども、現行の法制ではわれわれとしては、法体系上この措置はやむを得ない、こう考えておりますので、その点はこの条約との関連で非常に問題がある。その点が解明されない限り、もしその点がこの条約に違反であるというようなことでありますならば、この条約の批准は現段階では不可能、こう考えております。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 あなたの説明では、かなり疑問があって目下のところはむずかしい、こういうことですね。  それから百十一号ですね、これについてはどうでございますか。批准をやはりする傾向ではないのですか、またそうできない理由もちょっと説明していただきたい。

北川俊夫労働大臣官房長

○北川(俊)政府委員 これは差別待遇禁止、いわゆる雇用とか職業の差別待遇禁止でございますけれども、差別をいたします原因としまして、人種それから性、政治的信条、宗教とか、その他いろいろございますが、わが国にそぐわない、たとえば皮膚の色とか、そういうものも差別待遇の一つの要件になっております。わが国では皮膚の色が云々で雇用上あるいは職業上の差別はいたしておりませんけれども、そういうものまでも法律に明記する必要があるのかどうか、この点について疑義がございますので、現在のところまだこれは検討中でございます。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 それから、ILOの総会で、政府も労働者側も使用者側も賛成した条約で、港湾労働者に関する条約がありますね。これはどうしようとしておられるのでございますか。

北川俊夫労働大臣官房長

○北川(俊)政府委員 この条約は、昨年のILOの総会で採択をされたものでございまして、この通常国会に御報告の手続を現在とりつつございます。そういう手続の終わりました段階で、批准につきまして関係省、特に運輸省とも御連絡をしながら態度を決定したいと思っておりますが、私たちは、いまの現行法でほぼ条件を満たしておるのではないか、そう思っておりますので、その詰めが終わりましたならば、先ほど言い忘れましたけれども、批准の分野の一つの条約としまして早急に取り上げたい、こう考えております。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 海事関係の条約は、二十幾つかあるのです。そしていままでに八本ですか批准しておる、こういうことですが、他の批准されていない海事関係の条約は、今後どのようにしていく意向でございますか。

北川俊夫労働大臣官房長

○北川(俊)政府委員 御指摘のように、船員関係、現在二十九本ございまして、わが国が現在批准をいたしましたのが、八本でございます。残っております未批准条約、そのうち改正あるいは未発効のものが八本ありますので、未批准で残っておるものが十三本ございますけれども、この十三本はすべて運輸省所管でございまして、先ほども申し上げましたように、運輸省と労働省の間で、次の通常国会でもしILOの批准を取り上げるものとしては、この船員関係のものをひとつ優先的に取り上げたいというような申し入れをいたしておりまして、運輸省でもこの点を了解していただきまして、現在船員中労委に問題点等の御諮問をいただいておるようでございますが、その点が整備が終わりますれば、できるだけ早い機会に批准の方向で努力をいたしたいと思います。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 運輸省来ておりますね。——この船員関係の条約の批准を今後どうしていくのか、ひとつその辺を少し詳しく説明してくださいませんか。

住田俊一運輸省船員局長

○住田(俊)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま労働省から船員関係の条約についての御説明がございました。基本的にはそのとおりでございます。私のほうから以下、補足的に御説明さしていただきたいと思います。  まず、先生がおっしゃいました海上労働に関する条約は三十ございまして、そのうち八つが批准されておりまして、そのほかのいろいろとダブっている点もございますので、現在未批准のものは二十ございます。  ところで、このILO条約の批准と申しますのは、先生御承知のように、昭和二十八年の十二月三日の閣議決定によりまして、いわゆる政府の方針といたしまして、国内法令を整備する、こういうことが前提になっております。したがいまして、運輸省といたしましても、いま労働省の官房長がおっしゃいまするように十分に連絡をとりまして、そうして国内法の整備を極力いま進めておるわけでございます。  特に私ども運輸省といたしまして、その中からできる限り早く批准していきたいというのは次のものでございます。それは先生御承知かと思いまするが、まずILO条約の六十九号、すなわち船舶料理人条約でございます。これは先生御承知のように、船舶料理人につきまして資格証明書を授与すべきこと、あるいは資格証明書の授与の場合の要件、これについて規定した条約でございます。これによりまして、いわゆる船内におきまする船員の関係者の食生活の向上なりあるいは司厨関係者の地位の向上をさせたいというのが、この条約の趣旨でございます。この条約につきましては、先生御承知のように、一九四六年に採択されまして、批准国数は二十カ国になっております。しからば、運輸省並びに日本政府でどういうふうにいままでやってきたか、またどうしてそういった批准がおくれているのかということになるわけでありまするが、それについて簡単に申し上げます。  いまお話ししましたように、この条約の内容は、この料理人の資格、そういうことをきめるものでございますので、いろいろとまず国内法令の整備が必要であるということが第一点であります。それから第二には、この条約がどういった船舶に適用されるか、いわゆる適用船舶の問題、たとえば漁船とかあるいは国内船、外航船いろいろとございますので、こういった適用船舶の問題、それから年齢の問題、それから海上勤務期間の問題、どのくらいのターム、期間にするかということ、それから一般の司厨関係者に対する実態調査をいろいろといまやっております。さらに労使との間にいろいろとこまかい取りきめもしなければなりません。そういうことで、いま鋭意作業を進めておる段階でございます。運輸省といたしましても、労働省はもとより関係機関と緊密な連絡をとりまして、極力早い機会にこの批准の実現ができるように努力していきたい、かように考えておる次第でございます。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 いまの説明でわかりましたが、六十九号の船舶料理人の条約ですか、これは次の国会には批准を求める、あるいはこの海事関係の二十九のうちの幾つくらいを次の国会でやる、少なくとも六十九号は来国会か、そこらをもう少し説明してください。

住田俊一運輸省船員局長

○住田(俊)政府委員 お答え申し上げます。  いま、先生御指摘のように海上国際労働の条約といたしましてまだ二十が未批准でございます。運輸省といたしましては、いまのお話のございましたように、まずもってこのILO条約の六十九号条約、これを最優先的に批准していきたい、かように考えておりますが、国内的には先ほど申し上げましたように、いろいろ関係方面と極力作業を進めておる段階でございますので、次の国会ということははっきりここで申し上げることはできないのでございますが、できる限り早い機会に批准したい、かように考えておる次第でございます。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 それから、官房長にお尋ねしますが、ILOの八十九号ですか、それから百三号、これはぜひとも批准すべき条約だと思うのですが、これは労働省としては現在どういう考え方でありますか、御答弁をお願いしたいと思います。

北川俊夫労働大臣官房長

○北川(俊)政府委員 八十九号、百三号ともに母性の保護に関する条約でございます。先ほども申し上げましたように、今後長期的なILO条約の批准の方向としましては、労働条件に関する部門、これがたいへん重要な部門でございますのでその批准に一つの精力を傾ける、こういう考えを申し上げました。そのために、労働基準法の改正ということをわれわれは現在検討中でございますけれども、先ほど申し上げました労働基準法研究会の結論が出ます際に、八十九号の夜業禁止の現行の規定あるいは百三号の産前産後に関する規定、これはいずれももう大部分基準法で要件を満たしておりますけれども、特に産前産後につきましては、わずか一週間の点の、任意に就業ができるかどうかの違いだけがおもな点でございますので、そういう点の手直しによってぜひ批准の方向に持っていきたいと思いますけれども、基準法全体の検討の問題ともからみますので、いつの時期にということは申し上げられません。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 やはり少しでも早く母性保護という立場からも批准の方向に進むように、要望しておきたいと思います。  そこで、このILOの条約には、加盟国の違反があったとしても何ら措置をする規定はないわけでございますね。そういう場合には、ILO憲章の二十二条に報告の義務がありますね。それから二十四条にもそれらしい規定があります。それから二十六条もありますが、こういうことで措置をされるということでございますか、御答弁をお願いいたします。

北川俊夫労働大臣官房長

○北川(俊)政府委員 先生の御指摘のとおりでございまして、加盟国が批准をいたしました条約に違反をしました場合には、憲章上二つの申し立ての手続が定められております。一つは二十四条による労使団体による申し立て、もう一つは他の当事国あるいは理事会または総会の代表による苦情申し立て、この二つでございます。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 二十二条がございますわね、年次報告をしなければいかぬという。これはやはり一つの措置規定みたいな形になるのじゃございませんか。

北川俊夫労働大臣官房長

○北川(俊)政府委員 失礼いたしました。二十二条に基づきまして、各国は総会に対しまして批准をいたしました条約の適用状況の報告をいたします。その報告書が参りますと、条約勧告適用委員会で審査をいたしまして、それに違反がありますと指摘を受ける、こういう内容でございますので、先生御指摘のように、直接に違反をしたものではございませんけれども、そういう趣旨において二十四条あるいは二十六条に合致する点がございます。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 そこで、あまり一人でしゃべっているわけにいきませんから、この条約の条文について二、三お聞きしたいのですが、第二条の、経済及び医療施設が発達していない国で批准に際して宣言を行なった国はどのような国があるのでございますか。

北川俊夫労働大臣官房長

○北川(俊)政府委員 第二条は、発展途上国等におきましてこの条約のとおりにやれない、たとえば年金をそのとおり払えずに一時金でやる、あるいは適用範囲について特別の定めをするという場合に宣言をするのでございますけれども、現在批准をしておる国でこの宣言をした国がどの程度あるかという点は、現存把握をいたしておりませんので、外務省からお答え願います。

伊達宗起外務省条約局外務参事官

○伊達政府委員 お答えいたします。  ただいまこの条約に加盟いたしております十三カ国のうちでこの条項を援用いたしまして宣言を行なった国はございません。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 そうですが。  それから三条で、船員と公務員はこの条約の適用から除外することができる、こうなっておりますが、それは法制上どのようになっておるから除外をされておるのでありますか、この点も承っておきたい。

北川俊夫労働大臣官房長

○北川(俊)政府委員 わが国の場合に、労災補償に関しましては大部分は労働者災害補償保険法によってカバーをされておるわけでございます。ここにあげてあります船員は船員保険法、それから公務員は国家公務員ないしは地方公務員の災害補償法というものでカバーをされておるわけでございます。この条項について申しますと、日本の場合はいずれも、船員保険法も公務員の補償法もこの条約の水準に達しておりますので適用除外の宣言はいたさない、こう考えております。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 宣言はいたさないのですね。  さらに第四条の二項の(d)ですね。ずっとあって、「被用者の総数の十パーセントを超えないもの」これが例外になる、こう書いてありますね。(d)に当たる人たちというのはどういう人たちでございますか。

北川俊夫労働大臣官房長

○北川(俊)政府委員 わが国の労災保険法によります適用は強制的に行なわれておりますのが大部分でございますけれども、任意適用ということで強制適用のワクからはずされておりますものが商業あるいはサービス業、これは五人未満の事業所、こういうものについて任意適用にいたしております。この数は総数で二百七十八万でございまして、全体で言いますと七・八%に当たるわけでございます。したがいまして、ここでいう一〇%をこえない状況になりますけれども、今後の労災保険法の適用に関しましては、昭和五十年から全面適用ということで、農林水産の五人未満を除きましては、商業、サービスにつきましても強制適用にいたしますので、(d)に該当する分野はきわめて限定された分野の労働者ということになろうかと思います。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 もう一、二点ですが、次は六条の(b)項「負傷又は疾病に起因し、かつ、所得の停止を伴う労働不能であって、国内の法令で定めるもの」これはどういうような法令でございますか。

北川俊夫労働大臣官房長

○北川(俊)政府委員 六条の(b)項でいいます国内法令と申しますのは、労災保険法、それから船員につきましては船員保険法、公務員につきましては公務員災害補償法でございまして、ここでいっておりますのは、疾病または負傷によりまして休業のために給与が得られない、そういう場合の休業補償を規定しておるものでございます。わが国の場合にはおおむね六割の休業補償を支給をしておるわけでございます。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 それから七条の一項ですね。「「労働に係る事故」の定義を法令で定め」るとなっておりますが、国内法令ではどのようなことになっておりますか。

北川俊夫労働大臣官房長

○北川(俊)政府委員 労災補償保険法の第七条で、労働者の業務上の負傷、疾病、障害または死亡、これに対して保険給付を行なうという規定がございまして、業務上の災害につきましてはすべて補償対象にしておるという規定がございますので、それがこの条項に該当すると考えております。

堂森芳夫日本社会党

○堂森委員 まだ一、二点聞きたいですが、時間がぼく一人でやるとなくなりますから、それくらいで終わりたいと思います。

木村俊夫自由民主党

○木村委員長 渡部一郎君。

渡部一郎公明党

○渡部(一)委員 いま堂森委員が御丁寧に御質問されましたので、まず総括的なことをお伺いしたいと存じます。  ILOの第四十八回総会におきまして本条約が採決された際の表決の結果はどういうことになっておったか、その辺からお伺いしたいと思うわけなんです。わが国の政府代表、労働者代表及び使用者代表の態度もあわせてお伺いしたいと存じます。

北川俊夫労働大臣官房長

○北川(俊)政府委員 百二十一号条約がいま御指摘のように四十八回のILOの総会で採択をされましたが、その場合の賛否は、賛成が二百三十九、反対が六、棄権が六十五、こういう結果で採択をされております。  なお、わが国の代表団の賛否の態度でございますけれども、政府及び労働者代表は賛成の意思を表明して、使用者代表は棄権をいたしております。

渡部一郎公明党

○渡部(一)委員 賛成のほうはともかくとしまして、使用者代表が棄権をなさった理由はどういう理由であったのでしょうか。

北川俊夫労働大臣官房長

○北川(俊)政府委員 その当時の事案につきまして調査が不十分でございまして、私、現在把握をいたしておりません。後刻調査をいたしまして、御報告をいたします。

渡部一郎公明党

○渡部(一)委員 ILO条約関係につきまして、政府の比較的うしろ向きな姿勢というのがいままでは顕著であったと思われるわけでありますが、現在この条約に関しましてはたいへん前向きな姿勢で取り組んでこられたことに関し、私はけっこうなことだと思っておるわけであります。  ただ、私は概括的に伺うのですが、昭和二十八年当時、当時の吉田内閣が、ILO条約批准については国内法の整備が済まなければいけないのだという原則をつくられたと伺っておるわけであります。そうすると、その後労働関係の法令というのは、労働省をはじめとする皆さま方の御努力によってほとんど整備された段階ではないか、こう考えておるわけであります。ところが、現在ILO条約に関しましていろいろなものがあるようでありますが、政府の御姿勢というものはいまどういうことになっておるのか、労働行政のお立場からこれに対してお答えいただきたい。また、どういうものが残っておるのか、そういったこともあわせて伺いたいと思います。

北川俊夫労働大臣官房長

○北川(俊)政府委員 わが国は、ILOの場におきましても主要産業国として、あるいは常任理事国として地位づけられております。あるいは最近の経済発展が目ざましく、世界の貿易あるいは産業活動の中でもトップレベルの活動をいたしておるわけでございます。したがいまして、そういう観点からILO条約につきましては積極的にこれを批准するという考え方でこのところ取り組んでおるわけでございます。  ただ、本条約、百二十一号条約の批准につきまして御承認をいただきましても、日本が批准をいたしますことになるILOの条約数は三十二でございまして、加盟国の平均と同じになるというのがいまの現状でございます。そういう点で、われわれはいまの日本の経済の力あるいは国勢からまだまだ不十分で、さらに積極的に批准をいたすべきだ、こう考えております。  その点、これからも努力をいたしますが、ただ、この数年におきましては、歴代労働大臣からILOの批准につきまして積極的な御指示がございまして、一昨々年に最賃関係を中心とする三条約、昨年は安全衛生二条約、本年は労災の百二十一号条約というふうに、近来になく、批准につきましてはまだ不十分という御批判はあろうかと思いますけれども、努力はしてまいっております。今後ともそういう点については何ぶんの努力を傾けたいと思います。  なお、今後残っております条約、未批准条約でございますけれども、やはり一番大きく未批准として残っておりますのは、労働基準関係の三十二本がございます。それからそれ以外には、先ほども運輸省から御答弁がございましたけれども、船員関係、運輸省は二十本とおっしゃいましたけれども、私たちは、その中にはすでに改正をされたもの等を引きますと十三件ではないかと考えております。それからその次には、社会保障関係の七件、こういうものが未批准のものの大きなものでございます。

渡部一郎公明党

○渡部(一)委員 率直に御答弁いただいたので、率直にさらに伺うのですが、いまお話しになりました未批准の分、合計しまして五十二本でございますね。これは日本の憲法あるいは他の国内法と矛盾あるいは相克するようなものがございますか。

北川俊夫労働大臣官房長

○北川(俊)政府委員 憲法に相反するというような条約は、私はないと考えております。ただ、国内法につきましては、労働関係の法令というものがきわめて具体的、詳細なものが多うございますので、大綱は国内法で条約の内容を満たしておりますけれども、細部につきましては食い違うというものがほとんどでございます。

渡部一郎公明党

○渡部(一)委員 憲法九十八条の条項に照らしましても、サインをした条約に関しては、国内法令を緊急に整備をして、これを順守すべきことを約束しているのが日本の戦後の外交の基本方針だ、こう私は理解をいたしておるわけでございまして、おそらく御同様のお考えであろうかと思います。  そうしますと、これはそろそろもうめどをつけて、この関係は片、つけるという方向へ向かって基本的な方向を定められなければならぬ時期が来ているのではないか、私はそう思っているわけでありまして、少しずつやっていけばというよりも、ここ一、二年なら一、二年で整備する、こういう方針こそ望ましいと思いますが、その辺はいかがでございますか。

長谷川峻自由民主党労働大臣

○長谷川国務大臣 憲法において国際条約というものは尊重すべし、また日本は国際条約をよく尊重してきた国でございます。それだけに国内法というものを整備して違反のないように、そしてまた、批准した限りにおいては信用を得るというところに努力をしなければいかぬ。そういうことからしますと、一つ一つ研究しながら、国内法を整備しつつ、そういう晴れの舞台に出していくためにこういうふうに御審議をお願いをしたい、こう思っております。

渡部一郎公明党

○渡部(一)委員 これは明らかに、いまお述べになりましたような方向を貫けばやがて批准されていくことは間違いないと思うのですけれども、もう少しスピードアップをすることができぬのか。この条約と一緒に質問が行なわれましたモントリオールのほうの件でも問題が起こったわけでありますが、日本政府としては、こうした条約関係を非常にスローにやるくせというものがあることを免れない。そして審議をすると、途中で外務委員会がごたごた言うから通らないのだなどというとんでもないことを言うやからがおるわけでありまして、私どもは怒っておるわけでありますが、残された五十二本については、早急かつ前向きに対処していただいて国会に御提出を願う旨御答弁いただきたい、こう思うのですが、いかがですか。

長谷川峻自由民主党労働大臣

○長谷川国務大臣 先ほどから御答弁申し上げているように、前向きの姿勢はとるつもりでございますけれども、たとえばきょう御審議願っております条約も十三カ国。ですから、百二十五カ国がILOに加盟しておりましても十二か十三の国しかまだ批准してないわけです。そういうふうですから、ただ条約の数が多いというだけじゃなかろう。やはり内容を整備しながら、そしてやった限りにおいては国際信用を得る、こういうふうな感じ方を持ち、一方においては、それぞれの国の事情はいろいろ違いますから、その事情に合わせて国際舞台に出ていくというところに国内法の整備というものがあるのじゃなかろうかと思っているわけです。

渡部一郎公明党

○渡部(一)委員 また例によって条約のつくり方が乱暴なので申し上げますけれども、どうしてこういうところが毎度抜けてくるのかということです。この条約の中に付表というのがついております。職業病という欄がございますね。この職業病という観点ですが、ばらばらと私がめくりましたところが、全部の病気と対応さしているわけではございませんが、だいぶ職業病としては抜けている部分があるのじゃないか、こう思いますが、いかがですか。

北川俊夫労働大臣官房長

○北川(俊)政府委員 この条約がつくられました段階では、これが最新の知識における職業病の分類であったろうと私たち考えます。ただその後、最近公害関係あるいは職場の衛生問題で、職業病問題というのがたいへんシリアスな問題になってきておりますし、新しい化学物質、たとえばPCBとかあるいはベンジジンというような問題が出てきておりますので、そういう問題については、先生御指摘のように、やや足りない点がある、こう考えております。

渡部一郎公明党

○渡部(一)委員 そうすると、足りないのはどういうふうに補正をなさるおつもりですか、そういう補正のシステムについて伺いたい。

北川俊夫労働大臣官房長

○北川(俊)政府委員 わが国の場合に職業病に関しましては、ほぼこれに似ておりますけれども、基準法の施行規則の三十五条で、新しい職業病も含めまして各号列記でいろいろ書いております。  ただ、常に法令を改正するいとまがないときには、包括的にこれが入り得る条項というものを一条入れております。それは基準法施行規則の三十五条の第三十七号に「前各号の外中央労働基準審議会の議を経て労働大臣の指定する疾病」あるいは三十八号で「その他業務に起因することの明かな疾病」という包括規定を入れておりまして、業務に起因することが明確になるものはすべて職業病といたしまして、補償あるいは保護の対象にするように、法令の仕組みとしてはいたしております。

渡部一郎公明党

○渡部(一)委員 ただいまのは国内法令に関するお話でございますが、私の伺ったのはこの条約に関してですね、この改正、修正に関してはどういう手続でするのかと伺ったわけです。ですから、おそらくはこの第三十七条あたりのことが問題になるのだろうと思いますから、具体的にお答えいただきたい。

伊達宗起外務省条約局外務参事官

○伊達政府委員 お答え申し上げます。  付表の改正につきましては第三十一条が適用されることになっておりまして、これはこの条約で申し上げますと、第三十七条及び第三十八条にこの条約の改正手続ときめられているものと異なった付表の改正の手続がきめられているわけでございます。  と申しますのは、この付表を条約改正のごとく第三十七条、第三十八条にきめられている重い手続と申しますか、繁雑な手続、時間のかかる手続というものを経ることなく、より簡単な手続でもってこの付表を改正できるようにしようというILO加盟国の意図がここにあらわれているわけでございまして、第三十一条で申し上げますと、この総会において三分の二以上の多数の議決でその改正案を採択いたしまして、そしてその加盟国はその改正を受諾することを国際労働事務局長に通告するときに、その加盟国について効力を生ずるというわけで、より簡単な手続になっておるわけでございます。

渡部一郎公明党

○渡部(一)委員 そうすると、現在、日本で研究されている職業病、これはおそらく世界各国の中でも職業病に関する研究というのは最も進んでいると思いますが、そうしたものについて早急にこの付表を改正するための提案等を、こうした国際会議の席上なさるおつもりがあるのかどうか伺います。

北川俊夫労働大臣官房長

○北川(俊)政府委員 まだこの条約の批准のための検討をやっと終えたばかりでございまして、批准後にこの条約の改正について、どの時点でどういう改正をするかの検討は、まだ専門家の御意見も聞いておりません。  ただ、先生御指摘のように、職業病そのものが非常に変わっておりますので、その必要性について私たちも同感でございます。関係者の意見を早急に聞いてみたいと思います。

渡部一郎公明党

○渡部(一)委員 この職業病のいまのお考えのなり方ですけれども、いまPCBとベンジジンというのをあげられました。いずれも職業病の発生が毒性ある物質による職業病という観点のものばかりが付表に掲載されております。わずかにそうでないものは、この十三番にある電離放射線による疾病と一項目にある粉じんによるものであります。  ところが事実上は、こうした職業病の中には機械的な障害によるものという大きな分野があります。たとえばコンピューターをたたく人々が腱鞘炎になる。手がひきつれてくる。あるいは大騒音の中で生きる人々が神経が痛んでくる。こうした大きな幾つかの分野がある。  私がなぜそういうのを心配しているかというと、こういうふうに片寄った職業病表の一覧ができるということは、交渉している相手もこちらもおそらくちょっとへんぱな専門家が集まってつくったものだと私は見るのです。要するに、労働災害に関する一般的な見解が樹立していない、最近の職業病について、よく知らない人同士がお互いにやったあとがありありとしているわけですね。だからこの表は簡単に直すことができるというなら、それはそれでけっこうですが、最近の環境保全に関するさまざまな研究成果のある日本で、こうした付表を通すというのは相当幼稚なしぐさじゃなかろうか、私はそう思うわけですね。  しかもこの条約はそう昔にサインされたものではない。この時点においてすら——この条約は一九六四年にサインされたことになっておりますが、六四年にサインされたときですら、そうした問題はすでに起こっていた。ですから、それを考えると、だいぶ問題があると私は思っているわけです。そこで付表の職業病の一覧につきましては、現実性のあるものにしていただきたいということを約束していただきたい。  なぜかというと、批准前にそういうことを言うのはおかしいのですけれども、これは日本の現下の職業病としてはあまりにも幼稚なわけですね。むしろ日本の国内法のほうがそろっているというべきだろうと思います。ですが、こういううしろへ下がった条約を結ぶと、よくこれを中心として国内措置が逆行する場合すらある。むしろ世界最大の公害国である日本としては、公害対策国といってもいいが、こういった点はもう少し前向きに御検討いただくために、そして前向きだけじゃなくて、国際会議において他の国々をそういった面でリードしていただくということをお約束していただかなければならぬと思うのですが、どうでしょうか。

伊達宗起外務省条約局外務参事官

○伊達政府委員 この付表についてでございますが、内容につきましては私も先生のおっしゃるとおりだと思いますし、さらにまた担当の労働省のほうからお答えもあると思いますが、条約上の付表の性格と申しますと、第八条に少なくとも付表Iに掲げる病気を含んだ一覧表を国内法で定めろということになっておりますので、この付表に掲げられているものが、確かにこの条約の批准ではございますけれども、これは後進国その他を含んでおります一般的な多数国間の条約として最低限の基準を示したものであるということでございまして、そういうわけでございます。

渡部一郎公明党

○渡部(一)委員 そんなよけいなことを言うと、また変になるよ。その答弁はむだだよ。

北川俊夫労働大臣官房長

○北川(俊)政府委員 先生御指摘のように、わが国のいまの職業病の場合には、たとえば頸腕症候群とかあるいは腰痛それから暑熱あるいは非常に寒冷におけるいろいろの職業病、さらには御指摘の粉じんの問題等々いろいろ新しい問題がございます。いま外務省条約参事官が御指摘のように、この条約の趣旨としては最低限のものを定めたものと思いますけれども、とりようによっては、それ以外の職業病について除外するとか、あるいは問題外のものに取り扱われるおそれがなしともしませんので、関係者といろいろ検討いたしまして、外務省のおっしゃるように、最低基準としてこれだけはどうしても入れたほうがいいというようなものにつきまして、専門家の意見も聞きまして、こちらとして結論が出ましたならば、適当な機会を得ましてなるべく早くこの条約の付表の改正についての日本の意見の表明というようなことをいたしたいと考えます。

渡部一郎公明党

○渡部(一)委員 いまの官房長の御説明はわかるのですが、その前の外務省の答弁はぼくはわからないのです。それはなぜかといったら、あなたこの表をよく見てください。この中には炭疽病なんて書いてあるのですよ。病気の中でもひど過ぎるわけです。こんなものが職業病に入っているのはおかしいくらいです。脱疽ですよ、これは。脱疽が起こり得る職業なんていうものは、日本だって特殊な特殊なところですね。そんなものを基準にされたのだったら、日本の職業病なんかほとんど入らないじゃないですか。私が言っている腱鞘炎などというものは機械的作業に基づくものですよ。そういった問題はこんなところにとっても入りませんよ、炭疽病なんかを基準にされたら。だから、第八条に基づいて、これを中心として議論をするならば、このようなほんとうにうわずった、職業病のごく一部しかカバーできないものを日本政府が守るということを言明したと同じことになるじゃないですか。あなたがたがそういう言い方をするなら、ぼくは幾らでも議論させてもらう。これは異常じゃありませんか。あなたは私の質問を聞いていなかったのだと思う。この付表にあがっているのは職業病の一部なんだ。現在あれから十年たっている。当時ですら問題があった。だからこの職業病の付表については今後は直すように努力したらどうですかと言っている。八条の解釈なんか私は聞いていないですよ。

伊達宗起外務省条約局外務参事官

○伊達政府委員 先生の御質問の趣旨をとり違えましてまことに申しわけございませんでした。訂正させていただきます。

渡部一郎公明党

○渡部(一)委員 それでは、私の質問は終わります。

木村俊夫自由民主党

○木村委員長 永末英一君。

永末英一民社党

○永末委員 労働大臣にお伺いいたします。  この案件がもし批准をされるといたしますと、ILO条約の日本の条約批准数は三十二にのぼると思うのです。加盟百二十四の国がございますけれども、批准した数の順番は何番目ぐらいですか。

長谷川峻自由民主党労働大臣

○長谷川国務大臣 五十四番目です。

永末英一民社党

○永末委員 だいぶ上がってまいりましたが、わが国は貿易国、すなわち労働行為を通じて世界経済に接触しているわけでございますから、よその国から見ますと先進工業国、こう見えますね。そうしますと、ILOで論議され、ILOの段階ではやろうじゃないかといったものについて五十四番目ということは誇るべきことと思われますか、それともそうではないと思われますか。

長谷川峻自由民主党労働大臣

○長谷川国務大臣 昨年は二条約を御批准願い、きょうはまた一条約を御審議願っておるわけでありまして、そういうそしりというものを是正しながら、ILOの原加盟国、常任理事国として、また職員があそこで活躍をしておりますし、そんなことで前向きの姿勢でやっていきたい、こう思っております。

永末英一民社党

○永末委員 ILOの常任理事国が批准しておる条約数の平均は四十六だと聞いておりますが、先ほど大臣が言われましたように三十二というのはこれにもまだ近づかない。先般原健三郎氏が労働大臣の時代に、政府、使用者、労働者の三者構成で批准促進の委員会をつくって、せめてILOの常任理事国の批准数ぐらいやろうではないか、こういうことを申された。また事務当局に対しましては、どうやったらできるのか、総点検をやれというような話を聞きましたが、それからだいぶ年月がたっておりますが、どうなっておりますか。

長谷川峻自由民主党労働大臣

○長谷川国務大臣 そういう話がありまして、労働省が中心になって各関係役所といろいろ研究会を開き、その結果、昨年二条約、きょう一条約、そしてまたいまILO条約の研究会でいろいろ御研究願っている段階でございます。いずれにいたしましても、日本は国際条約をよく守りますから、守るためにも国内法令をきちっとしておくことが必要じゃなかろうかという考え方で鋭意研究を進めております。

永末英一民社党

○永末委員 先般齋藤厚生大臣が、社会保障の最低基準に関する条約、すなわちILOの第百二号条約について、これは早く批准すべきものである、こういうことを国会で申されたのでございますけれども、労働大臣はどういう御感覚でございますか。

長谷川峻自由民主党労働大臣

○長谷川国務大臣 齋藤厚生大臣がそうした積極的な答弁をされたことは、私も承知しておりますけれども、しかし条約が何さま非常に大部なものであり、関係する問題が非常に多いということで、これは私のほうの所管ではございませんが、厚生省で御研究いただき、また私のほうもそれに御協力している、こういう形でございまして、細部については厚生省のほうからお聞き取りを願いたい、こう思っております。

永末英一民社党

○永末委員 社会保障の話でございますから、所管は厚生省でございましょうが、外務省は一体どういうつもりでこれを見ておるのですか。

山田久就自由民主党外務政務次官

○山田(久)政府委員 厚生大臣も、この問題では前向きということを言っておられます。関係省庁の間で詰めまして、ひとつできるだけこの問題は善処していきたい、こう考えております。

永末英一民社党

○永末委員 ILO条約に関しましては、百三号、すなわち婦人労働者保護に関する条約、これには国内法の改正が必要でございますが、特に百十一号、男女の性別による差別をなくする、そういう条約がございますが、わが国内の婦人労働者は多年これの批准を非常に強く要望いたしております。  さて来年、一九七五年という年は、国際婦人年というので、日本の女性は日本の政治の舞台で一体どう待遇されておるかということで、世界の女性が注目をいたしておる年でございますが、労働大臣、この国際婦人年に対して、これらの条約が批准せられるべきであるとお考えにはなりませんか。

長谷川峻自由民主党労働大臣

○長谷川国務大臣 一九七五年の国際婦人年は、男女の平等を促進して、社会開発と国際協力に婦人の参加を促すことを目的として、世界的に、また国内的にも集中的な活動をする、こういう趣旨と私は承っております。  私たちの国におきましてもこの趣旨に沿って各種の活動を実施し、あるいはその検討を始めておりますが、お尋ねの母性保護条約、百三号条約につきましては、労働基準法上、現行の国内法令の規定との相違がたくさんありますし、条約解釈上の疑義などもありますのでまだ批准しておりませんが、国内法制について現在私の役所にあります労働基準法研究会において御研究を願っておりまして、その結論を待って検討してまいりたい、こう思っております。

永末英一民社党

○永末委員 いままでのわが国政府のILO条約に関する態度は、あっち側で調印してきて、しかも賛成してくるわけですね。そして国内に帰ると、国内の法律がまだ適合するに至ってないからといって、それをぼちぼちやりまして、その暁においてお互いに全然矛盾がなくなった段階で批准を求める、こういうことなんです。それまでの間は日本政府は国際的にうそをついているということになりますよ、相手方から見ますと。したがって、特に百三号条約のごときものは母性保護でございますから——先ほど言い間違えたかもしれませんが母性保護でございますので、こういうものはぼちぼち国内法を改正するのではなくて、すでに日本政府自体がこれはいいと賛成票を投じてこられたものでございますから、さっそく来年の国際婦人年という年に焦点を合わして、そうして国内法の準備をされて批准を国会にお求めになるべき筋合いのものだと私は思いますが、いかがですか。

長谷川峻自由民主党労働大臣

○長谷川国務大臣 御意見として承ります。

永末英一民社党

○永末委員 御意見として承るのではなくてやってくださいよ。世界の婦人に日本の政府はおかしいぞと思われますよ。婦人を大事にせぬ政権はいけませんよ。  さて、ILO憲章第十九条におきましては、総会で採択された条約などはおそくとも一年以内に、または十八カ月以内に、それぞれの各国で同条約を権限のある機関に提出をして検討しようじゃないかということになっておると思うのです。ところがいま申し上げましたように、この百三号にいたしましても、百十一号にいたしましても、採択をせられたのはすでにずっと昔でございまして、それからいいますとこの憲章十九条はわが政府も賛成しておるからILOに入っておるのだと思いますが、これを守って何かやっておるのですか、どういうことになっておりますか。

北川俊夫労働大臣官房長

○北川(俊)政府委員 憲章十九条に基づきまして、わが国の場合は権限ある機関というのは国会でございますので、条約が批准されましたら、きめられました期間内に国会に御報告をいたしておるわけでございます。昨年のILOの総会で採択をされました港湾労働に関する条約あるいは就業の最低年齢に関する条約につきましても本国会に御報告の手続をとっておるところでございます。

永末英一民社党

○永末委員 以上をもって質問を終わります。

木村俊夫自由民主党

○木村委員長 この際、民間航空の安全に対する不法な行為の防止に関する条約の審査に関連して渡部一郎委員から発言のありました人権関係諸条約の加入促進方について、委員会を代表して委員長より政府に申し上げます。  人権関係条約は、未発効のものを含め十九条約がつくられておりますが、わが国がこれを批准あるいは加入しているものは人身売買及び売春搾取禁止条約及び婦人参政権に関する条約の二件のみであります。政府はこれらの未加入、未批准条約、なかんずく難民の地位、人種差別撤廃国際条約、難民の地位に関する議定書等の加入批准を積極的に進めることを要望いたします。  外務大臣の御答弁をお願いいたします。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 政府といたしましては、人権関係条約につきましては早急に検討を終え、その批准加入が望ましいと認められるものについて国内法の整備等準備を促進し、可能なものから積極的に批准加入する方針であり、まず人種差別撤廃条約について早急に締結のための準備を取り進めたいと考えております。

木村俊夫自由民主党

○木村委員長 これにて両件に対する質疑は終了いたしました。     —————————————

木村俊夫自由民主党

○木村委員長 これより両件について討論に入るのでありますが、別に討論の申し出がありませんので、順次採決いたします。  まず、民間航空の安全に対する不法な行為の防止に関する条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕

木村俊夫自由民主党

○木村委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  次に、業務災害の場合における給付に関する条約(第百二十一号)の締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕

木村俊夫自由民主党

○木村委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  おはかりいたします。ただいま議決いたしました両件に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

木村俊夫自由民主党

○木村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————

木村俊夫自由民主党

○木村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十三分散会

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