予算委員会第一分科会 第1号
- 発言数
- 207 件
- 登壇者
- 20 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1973/04/05
会議録
○長屋茂君 ただいまから予算委員会第一分科会を開会いたします。 本院規則第七十五条により、年長のゆえをもちまして私が主査及び副主査の選任につき、その議事を主宰いたします。 これより主査及び副主査の選任を行ないます。つきましては、選任の方法はいかがいたしましょうか。
○中村禎二君 主査及び副主査の選任は、投票の方法によらないで、主査に木村睦男君、副主査に長屋茂君を推選することの動議を提出いたします。
○長屋茂君 ただいまの中村禎二君の動議に御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○長屋茂君 異議ないものと認めます。 それでは、主査に木村睦男君、副主査に私、長屋茂が、それぞれ選任されました。 ————————————— 〔木村睦男君主査席に着く〕
○主査(木村睦男君) ただいま皆様方の御推挙によりまして、主査をつとめることになりました。何とぞ皆様方の御協力を切にお願い申し上げます。(拍手) 審査に入ります前に、議事の進め方についておはかりいたします。 本分科会は、昭和四十八年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣及び総理府のうち防衛庁、経済企画庁及び科学技術庁を除く部分、及び法務省各所管並びに他の分科会の所管外事項を審査することになっております。 九日の委員会において主査の報告を行なうことになっておりますので、議事を進める都合上、主査といたしましては、本五日は裁判所及び法務省、明六日は国会、皇室費及び会計検査院、明後七日は内閣及び総理府、来たる九日は環境庁という順序で進めていきたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○主査(木村睦男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 —————————————
○主査(木村睦男君) 昭和四十八年度予算中、裁判所及び法務省所管を一括議題といたします。 裁判所当局及び政府側からの説明は、これを省略し、本日の会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○主査(木村睦男君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。 それでは、これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言願います。
○工藤良平君 私は、法務省の所管にかかります予算の内容というよりも、むしろ、いま非常に買い占め等が起こっておりますので、それらの問題について法務省としてどのような見解を持っておられるか、法的な関係からいろいろとお聞きをいたしたいと思っているわけであります。 具体的に申し上げますと、先般来から問題になりました、食管法違反に基づきます一連の米の買い占めの問題についてであります。これは過般来から、すでに衆参両院の予算委員会なり委員会でもいろいろと論議をされてきておるところでありますけれども、これらについて、なぜそのような事態が起こるのか、私はこの際、その原因究明と同時に、法的な関係につきましてもぜひ明らかにしていただきたいと考えているわけであります。 先般、法務大臣が、今回のこの米の買い占めについては物統令による取り締まりも可能である、このようなことを発言をなさっておるようでございますが、その点についてもう一度具体的に御説明いただきたいと思います。
○国務大臣(田中伊三次君) まず、どういう原因でこういう事態が起こるのであろうかという先生のお尋ねでございますが、これは、そのこと自体私からお答え申し上げるのも所管はずれのように聞こえるのでありまするけれども、犯罪捜査という観点から一応ながめますと、やはり物資の不足が根本的には原因となってこの事態が起こるのではなかろうか、こう観測をされるのであります。 たとえて申しますと、羊毛なら羊毛という問題、わが国国内の羊毛は絶対量は不足をしていないという見通しと言えるのでございますが、原産地でありますオーストラリアで本年は減産の傾向にあるということがわが国に伝えられますと、現地が減産だ、さあたいへんだということで、わが国国内の商社、問屋筋、そういうものが若干の買い占めを行なう、若干の売り惜しみを行なうという傾向が、現地の品不足という傾向に影響されて、それが動き出す。全体として国内で品不足を生ずる結果になる。しかし、どこかに積み重ねられておるのでございます。たいへん敏感なものでございますから、現地の影響が直ちに国内に影響するという状態が実情ではなかろうか。やっぱり厳格に取り締まっていく必要がある。売り惜しみ、買い占めに対する厳正な態度が必要であろうということが、捜査の面からながめた見方でございます。 それから生糸なら生糸にいたしましても、本年、昨今の中国の生糸事情が減産の傾向にあるということが、これは事実そのようでございますが、これが伝えられますと同時に、国内の絶対量が不足をしておらないのにかかわらず、生糸の存在が片寄ってくる。これが品不足という結果を招来しておるというふうに考えられるのでありまして、この生糸などの点から考えましても、やはり取り締まりは厳正でなければならぬ。行き過ぎることもどうかと存じますけれども、厳格な取り締まりを断行しなければならぬものというふうに、取り締まりの面から、私の所管事項自体ではございませんが、品不足をそういうふうに観測をしておるのでございます。 それから、いま先生のおことばであります食管制度でございますが、食管制度をめぐりまして、食管法違反には食管法に罰則があるのは御承知のとおりでございますが、なおかつそれで十分でない場合、必要に応じまして、いま眠っておるように見える物統令の適用もやむを得ないのだと、こういうふうに私が発言をしておるのでございます。 食管法はどういう場合に、お尋ねに関連をして違反が起こるのか、食管法自体の罰則に抵触するのかと申しますと、第一は商社が生産者から直接米を買い取る場合、これは食管法違反が起こります。それからブローカーから商社が米を買いあさったという場合も食管法違反が明瞭でございます。それからお米の移動は、許可を受けず米の移動は許されないことが食管法上の大原則になっております。許可を受けないで買い占めた米を移動した、輸送したといったような、輸送の違反というものが起こってまいりますと、これまた食管法に抵触することになるのでございます。このブローカーから買い求めたり生産者から買い求める、こういうことのほかに、もう一つは横流しというものがございます。横流しというのでございますから、卸売り業者、小売り業者の持っております米を買い占める、この意味で横流しになるわけでございますが、これまた食管法の厳格な規定に違反する。こういう場合には違反それ自体、量のいかんにかかわらず食管法を適用してぴしゃり刑罰を受けることになるわけでございます。 それで十分でない場合というのはどういう場合であるかと申しますというと、買いあさるところまでは、さほど大きな違反また悪質の違反だということが言えないのでございますが、買い占めた結果いつまでもこれを放出しないで、世の米不足になりますことをねらいまして、そうして不当に高い価格をもって売却をいたしまして、それで不当な利益を受けるという場合が起こってまいりますというと、これは食管法自体で処断ができにくい。この場合は物統令に基づきましてやっていくわけでございますが、物統令は御承知のごとく、この場合には懲役十年、いまから昔にあたりますときにできました法律といたしましては、ちょっと驚くべき重い刑罰がついておるわけでございます。十年以下、罰金は十万円。当時の十万円というと大きな罰金でございますが、罰金は十万円以下、懲役は十年以下という規定がございます。それから、買い占めて不当に高い価格で売却して、巨額の利益をおさめた、まあ一口に暴利をむさぼったという場合には、そういうふうに懲役十年以下、十万円以下という重い罰金、重い刑罰があるわけでございますが、そこまでは至らなくとも、売り惜しみの程度、買い占めの程度というものが度を越えておる場合、この場合におきましては、やはり物統令に規定がございまして、懲役は五年以下、それから罰金五万円以下という規定が確かにあると記憶をしております。これをやはり適用する場合もなくはなかろう。しかし、刑罰のなにから申しますと、食管法の刑罰の程度と似ております。似ておりますが、食管法を適用しにくい事態が起こりましたときには物統令を適用してよいのではなかろうか。 ただ問題は、お前の言うておるこの物統令適用という問題は、古い法律で、もういまは消えてなくなっておる法律ではないかというふうに仰せになる方が間々ございますので、誤解を招くといけませんので申し上げておきますと、昭和二十一年ごろにできました勅令でございます。これはその後、たしか二十七年ごろに至りまして、法律八十八号をもって、物統令に対しましては勅令に法律としての効力を国会が与えております。したがって、物統令と称するのでございますが、今日は法律でございます。物統令と称する、形の変わった法律でございます。これが存在をしております以上は、これを適用して当然である。戦後これができましたときには、戦後の経済混乱を防止して物価の安定をはかるためにできたものではございますけれども、今日これを適用するには、もってこいと言うと妙なことばでございますが、たいへんに的中をする。今日こそこういう物統令という法律が要るのではないかと思われるほどに、まことに適用の条件も妥当なもので、今日のためにつくったのではなかろうかと思えるほど大事な要件が備えてございます。 そういうところから私は、食管法食管法と一方的に言うておるが、なに食管法じゃない、食管法適用で不十分な部分につきましては、事犯によるわけでございます、どれでもやるというわけでございませんけれども、物統令を適用してやるべきものである。価格統制は、この物統令の中の価格統制に関する部分はほとんど廃止同様でございます。現在残っておりますものは、おふろは残っております。ふろは物統令を適用しております。これだけでございます。ふろ以外のものは全部撤廃をしておりますので、世の中から物統令は消えたように見えるのでございますが、価格統制以外は、いま私が申し上げますように、売り惜しみ、買い占め、もっと悪質なものは暴利をむさぼった場合、こういう場合には完全に適用のできる内容を持っておる法律でございますので、この物統令と称する法律を適用してすべきものである、こういうふうに考えておるのでございます。 それで、おまえは一体この適用問題をどう考えておるかというおことばが先ほどございましたので、それについてちょっと一言、恐縮なお願いでございますが、お願いを申し上げたいと思いますことは、これをやりますにも、だれがどんな買い占めを行なって、だれがどんな売り惜しみをやっておるのかということが調査ができませんと、ことに検察庁の態度というものは、手錠をはめるというわけにいかぬわけです。それを調査をいたしますために、ためにというわけではございませんが、一つのきっかけとしてこれが得られると思うのでございますが、何としても過般政府から御審議をお願いしております生活関連物資緊急措置法、これは社会党さん、野党からもお出しになっておるわけでございますが、この両法律がたいへん、どちらがよいと私が言うのではございませんが、両法律はたいへん重要な意味を持っておる、こういうふうに考えますので、この法律ができますれば、現地に踏み込んで調査をする。踏み込んで調査をすることにじゃまをすれば懲役にやる。懲役一年。それから調査をして報告を命ずる。報告にがえんじないときにおいてはこれまた一年以下の監獄にやるという、非常に厳格な態度でございます。問題は、幾らか、勧告をいたしました場合に勧告に応じない場合はそのままという、いわゆる社会罰といったようなことで終わっておる点に問題があろうかと存じますけれども、問題は問題といたしまして御審査をいただきまして、それで、どうかすみやかにこの法律を衆参両院を通過せしめていただきまして、成立をお願いしたい。これさえできますれば、自信を持って、食管法の適用もすれば物統令の適用もする。一罰百戒の効果が生じますように、大都会における商社を中心といたしまして手入れができる。手入れをするためにこの法律をつくるのかといわれると、おしかりをいただくことになりますので、そうは言うのではございません。この法律ができます結果は、結果として手入れがしやすくなるのだ、こういうふうに考えてお願いをしておる次第でございまして、どうぞ、この法律の成立に御協力をいただきますようにお願い申し上げる次第でございます。
○主査(木村睦男君) ちょっと速記をとめて。 〔速記中止〕
○主査(木村睦男君) 速記を起こして。
○国務大臣(田中伊三次君) ちょっとお願いいたします。 私の先ほどの発言中、ちょっと付け加えさせていただきたいのでございますが、物統令で価格統制をいたしておりますのは、ふろだけだと申し上げました。ふろのほかに、いま注意があったのでありますが、アルコール専売がございます。付け加えさせていただきます。
○工藤良平君 いま御説明がありましたが、そうしますと、食管法に違反をした場合と、もちろんそれが買い占めあるいは売り惜しみ、あるいは暴利をむさぼる、こういうような事態が起こった場合には物統令も適用する、両方適用するということがあり得るということになるわけですね。そういうように理解してよろしいですか。
○国務大臣(田中伊三次君) はい。
○工藤良平君 それじゃ食糧庁にお伺いいたしますけれども、昨年の四十七年度から米を物統令の品目から除外する、こういうことになりましたですね。その中には、米の現在まで統制価格として行なわれてまいりました小売り販売業者の販売価格、あるいは卸売り販売業者の販売価格、それ以外の一般統制額の三種類が定められているけれども、このすべてを撤廃するんだ、こういうことで一応価格の問題については、米というものがこの物統令の品目から除外をされた、こういうことになるわけであります。 そうすると、いま大臣からお話がありました、一体、暴利をむさぼるというのはどういう程度のものなのかということが、一つの尺度の問題として出てくるわけでありますが、品目からははずされたから、価格の問題については一応物統令の除外ということになるわけです。そうしますと、一体暴利というのはどういうことなのか。たとえば大豆をとってみますと、トン当たり五万円しておりましたのが十六万円になった。これは暴利ではないのか。あるいはモチ米が一体どの程度上がれば、これを暴利と称してこの物統令の適用として罰則を科することができるのか。こういうことがちょっと疑問として出てくるのですけれども、その点についてはどのように判断をしたらよろしいのか。
○国務大臣(田中伊三次君) これは食糧庁の専門家がいらっしゃいますからお聞きを願いたいのでございますが、私の思っております点をそのまま申し上げますと、お米の価格統制は撤廃になっておりますが、およそ基準の価格というものはあるわけであります。その基準価格を著しく越えて不当な利益を得ておる、そういう場合に対象になり得るかと考えます。
○工藤良平君 そうすると、著しく越えているという判断はどこがするのか。それは法務省がやるわけですか。
○国務大臣(田中伊三次君) それは検挙をいたします検挙当局、警察、検察といったようなところに一応の見解は出るわけでございます。これを起訴をいたしまして裁判に持ち出しますと、最終的には裁判所が御判断になるわけでございます。
○政府委員(中野和仁君) いまのお米の、どの程度上がればそれが不当なものであるかということは、なかなか私は判定がむずかしいと思います。現在、政府が大部分の米を管理をしておりまして、それを売っております値段がございますし、また自主流通米についても、供給者側と需要者側とが相談をしてきめた値段がございます。その値段が一応基準となるかと思いますが、やはり物でございますから、需給関係にも支配されまして不足のときは若干上がるということもあろうかと思います。いまこの席で私から、幾らになればこれが不当なものであるということは、なかなか言いがたいと思います。
○工藤良平君 それでは具体的にお聞きをいたしますが、いま自由米の取引価格というのが毎日、新聞の市況欄に出ているわけでありますけれども、たとえばモチ米が、いま未検査品ということで大っぴらに売買されているようでありますけれども、一俵当たり一万四千五百円という価格で水稲モチの場合に取引がされている。これが政府の買い入れ予定価格というものと比較をした場合、どういう程度の開きになるか、かなり大きな開きになるわけであります。そうすると、現在一万四千五百円で六十キロのモチ米が売られているとする。もちろんこれは、相対で一万四千五百円でけっこうでございますということで買っておれば、これは暴利ということにはならないという解釈になるのか。そうすると一定の価格というのは、相対で買いさえすればそれはもう対象にはならないという理解が成り立つのでありますけれども、確かに判断はむずかしいわけですが、そうすると取り締まりの対象としようとしても、これは全く相対でやっているのだ、米がないから、やはりあられ業者が仕事を続けていくためには買わなければならぬ、相対で買ったのだから結局これは問題にならないじゃないかという議論も、また一方には出てくるのであります。大臣、この点はどうでしょう。非常に私はむずかしいと思うのですが。
○国務大臣(田中伊三次君) 先ほど申し上げましたように、米としてあるべき一定の基準というものが常識上考えられるわけでございます。この基準以上の売買は、売買の価格として妥当でないということが言えるでありましょうが、いま食糧庁の仰せのとおりに、需給関係で米が自然に高くなった、高く買うたということがあり得る。これを犯罪として取り扱いまして、行き過ぎに対して刑罰を科するという立場から申しますと、基準は基準でありますが、その上に大事なことは、幾らで買ったのかという、買い入れが幾らか、そして品不足につけ込んで売り値は幾らかという、買い値、売り値の差が著しい場合に、不当に高いからというふうに認定をして一向差しつかえがないのではなかろうか。買い値が高ければ売り値が高くていいのです。しかし買い値と売り値の、売りと買いの差が著しい場合、不当に高い価格で売ったという物統令の文言に当てはまるのではなかろうか、こういうふうに思います。
○工藤良平君 著しくということは、表現はわかるわけであります。ところが米の場合に、政府のいわゆる標準価格米という、たとえば東京都の場合に十キロ当たり千六百十円という一つの標準で、この値段でお米を消費者がほしいといえば、ありますよという基準があるのです。しかしそれに、その基準というものを中心にいたしまして上限・下限幾らかという規定は何もきめてないわけです。それが、たとえば上限三〇%をこえた場合には、これはいけませんよという規定があれば、それは当然一つの価格でもって、いわゆる暴利ということも判断ができましょうけれども、それがいまきめられていない。いわば相対で買った場合には、これは暴利とはいえないということになるのではないか。そうすると、それで取り締まろうとしても、それは全く基準のないものであって、現実としては不可能になってくる。著しいということばはわかるけれども、その尺度というものはきめられないということになると、実効をあげることはできないのではないかという私は気がするわけですね。 その点一体、たとえば警察庁でどういう判断を、これが暴利という判断をして取り締まることができるのかどうかということになってくると、私はそれは困難になってくる。そうすると、この物統令を適用してやるということは、価格の問題については全くできない。そうすると、じゃ売り惜しみや買い占めというそういう段階で物統令の適用をやるのかどうか。こういうことに私はならざるを得ないのではないかと思うのですが、その点は。
○国務大臣(田中伊三次君) お説のようなことも考えられまして、この物統令適用ということにはたいへんむずかしい法律問題がある。法律問題よりは認定問題ですね、これがたいへんむずかしいということは考えられるのでありますけれども、一体、自由価格の時代、自由経済時代、自由価格で売買をしてよろしいというこの時代に、相対で買って相対で売ったら事件が起こらぬというのであれば物統令はないのと一緒で、そうでなしに、相対で買って相対で売っておってもその間に巨額の暴利をむさぼっているという、売り値、買い値の間に差があります場合においては物統令の適用をする。しかし、先生仰せのように価格の規定というものがないわけでございまして、何が暴利だといわれると、暴利ではないかということが言えるだけのそこに暴利がなければならない、売り値と買い値との幅の差がなければならない、こういうふうになることは当然でございますから、たいへん適用はむずかしい。適用がむずかしいが、適用はできる。それを適用するために物統令があるんだ、こういうふうに考えます。
○工藤良平君 そういう議論になりますと、たとえば米は昨年、品目から落とされたわけですね。かつて大豆も物統令の適用の品目でありました。かつては一万品目に及んだわけでありますけれども、それは全部それぞれ品目が落とされていって、最後に残ったのがアルコールであり、ふろ代であり、米であったわけですけれども、その米も昨年はずれた。そうすると大豆が、さっき私が申し上げましたように一トン五万円しておりましたのが十六万円になったということになると、これはだれが考えてみても、三倍でありますから暴利といわざるを得ません。モチ米の場合にも、たとえば生産者から九千円で買った、その米が現実にいま一万四千五百円で東京市場で売られているとするならば、これは私は暴利といわざるを得ないと思うのですね。 ですから、これは価格の面での、いま大臣は著しくと、こう言いますけれども、一つの尺度というものがきめにくい。実際。それで網をかけて、犯罪として扱うということがきわめて困難になってくるのではないか。先般私は大臣の発言の新聞を見まして、非常に大きな不信を抱いたわけでありますけれども、現実に物統令があるかもわからないけれども、品目ははずした。きわめて抽象のものでとらえようとしても、それはとらえることができないではないかと思うのです、いまの刑法からいっても。そうすると、どこでとらえるのか。結局はやはり食糧管理法に違反をするということがこの問題に対するきめ手にならざるを得ない。 そこで、これから私、食管法の問題に入っていきたいと思うのですけれども、昨日の新聞ですか、茨城の米の四百三十三トンについては、これを警察庁は押収をする、こういうことをきめたということでございますが、その押収というのは、結局、米は長期にわたってそのまま置いておくわけにいかぬ、品質も落ちましょうから。押収をして買い取って、おそらくどういう形か知りませんけれども売却をして、その金額を結論が出るまで保管をするということではないかと、私は専門家ではありませんけれども、そう思うのですけれども、その場合に、それでは一体幾らでその押収した米を買うのか、その基準は何か。モチ米の場合にですね。その点をお聞きしたいと思う。幾らで買い取る。
○政府委員(中野和仁君) 押収をいたしまして、換価処分をするときに幾らの値段かということでございますが、まだ食糧庁といたしましては、警察当局から連絡を受けておりませんので何ともいえませんが、一応自主流通米の価格というのが、大部分流通をしておるわけでございますので、そういうことが基準になるのではないかと思いますけれども、これはちょっとまだ具体的な御相談もないわけでございますから、まだお答えする段階にはならないと思います。
○工藤良平君 ウルチ米の場合には、これは当然政府の買い入れ価格というものがありますから、私はそういう基準で買えばよろしいと思うのですね。ところが、いまおっしゃたように、モチ米の場合に政府の買い入れ価格というものは、従来はあったのですけれども、四十七年産米の場合にございますか。そうすれば、私はそれが一つの基準に、自主流通米ということではなくて、政府が買い入れるということが一つの基準にならざるを得ないと思うのですけれども、そういうことではいけないのですか。
○政府委員(中野和仁君) モチ米につきましても、私いま自主流通が基準になるだろうと言いましたのは、大部分そういう価格で流通しておるわけでございますけれども、政府といたしましても、余った場合に買うということがありますから、値段はきめてあります。政府の買い値がきめてありますが、警察当局からの御相談もありませんし、具体的にどうするかというのはわからないわけでございます。御質問の、政府の買い入れ価格がないわけではございません。
○工藤良平君 その場合に、それじゃ政府の買い入れ価格で買うということは不当なことなんですか。私は当然政府の買い入れ価格——もちろん生産者からは政府の買い入れ価格以下であるいは買っているかもわかりませんよ、生産者の売買は、自主流通米で売ろうと、政府は一応モチ米の場合は買い入れの見込みを持っておりませんから、全部自主流通米で売ってよろしいということになっているわけですから、もちろんそれでいいわけですけれども、しかし公的な機関が買うということになりますと、換価をするということになりますと、当然これは政府の買い入れ価格でもって買うということにならざるを得ないと思うのですが、そういうこともいまここではっきり言えないわけですか。
○政府委員(中野和仁君) 先ほど申し上げましたように、まだ具体的に御相談がないものですから、私といたしましては、政府の買い入れ価格にするのだ——これは警察当局がきめることでございますから、御相談があればいろいろ御相談をいたしたいと思っております。
○工藤良平君 それでは警察当局きていらっしゃいますか——。警察当局としてはどういう価格で買い上げるおつもりですか。押収をするということはきまっているわけでありますから、当然価格も、これこれで買うということはきまっているだろうと私は思いますが。
○政府委員(安原美穂君) 検察庁における換価処分の実情から申しますと、統制額のあるものは統制額、その他につきましてはやはりそのときにおける適正な価格ということに、抽象的に相なるわけでありまして、当然に食糧事務所とも相談しまして、適正価格は幾らであるかということできまることと思います。
○工藤良平君 そこが結局、食糧管理制度に対する政府の考え方の非常にあいまいさというものが私はあるのではないかという気がするわけです。大臣、ひとつ考えていただきたいと思うのですけれども、やはり国が一定の量を買うという、食糧管理法というものがあるわけですね。その基準はこれこれだということが、米価審議会まで開いて政府はきめるわけでありますから、当然公的な機関が売買する場合には、その一定のきまった価格でもって売買をするということは当然だ、こういうように私は思います。そうなら、ざるを得ないと思うのです。それ以外の価格でもしも公的な機関が買うということは、私は許されないような気がいたします。もちろん自主流通米というものを認めておりますから、価格は自由だということになっておりますから、それで取引してもいいかもわかりませんけれども、それは私は常識的には許されない問題ではないか、こういうように思うのですが、この点についてはぜひひとつ明らかにしていただきたいと思うのです。 それでは時間がだいぶ迫ってまいりますから、本題に逐次入っていきたいと思うのですけれども、そういたしますと、米の今回の一連の買い占めの問題については、食管法のどこを適用して、米を押収し、あるいはこれから正規の流通にのせ、そういうことが起こらないように措置していくのか、あるいはそれらを扱った業者に対してはどのような条項の適用というものが可能になるのか、まだこれは結論が出ておりませんから、いまここでこれということは言えないと思いますけれども、可能になるのか、その点を説明していただきたいと思います。これは法務省からやっていただけますか。
○政府委員(安原美穂君) 実は新聞でも御案内のとおり、いまだ警察当局において捜査中でございまして、どういう犯罪が、具体的にどういう法上の違反があるかということがまだ明確ではございませんので、いまそれを検察当局を担当いたします法務省として、どういう違反であるかということを申し上げかねるわけでありまするが、予想されるところは、先ほど大臣が申し上げましたように、商社が生産者から直接米を買い入れておるような場合には、食糧管理法の九条の違反であり、罰則は法の三十一条である、あるいは商社がブローカー等から買い受けておる場合には、やはり食糧管理法の三十一条の罰則であって、法の九条一項の違反であるというふうなことが当然予想せられるわけでありまして、伝え聞くところによりますと未検査米であるようでありまするから、もしその譲渡の相手方が明確になりますれば、おそらく食糧管理法の犯罪が成立するものと思われます。
○工藤良平君 食糧庁長官、その点はどうですか。食糧庁が摘発をした食管法違反という条項はどこか。
○政府委員(中野和仁君) ただいまお話がありましたように、食管法の法律で申し上げれば九条でございます。それによりまして、その九条からはいろいろ政・省会が出ておるわけでございます。それに基づきまして、たとえば未検査米を自由米業者が扱っておる、あるいは直接商社が扱っている場合、いずれもこれは正規の集荷業者ではありませんし、それからまた販売業者でもないわけでございます。そこにひっかかるというふうに考えております。
○工藤良平君 この第九条に基づくということは、ここにもありますように「公正且適正ナル配給ヲ確保シ其ノ他本法ノ目的ヲ遂行スル為特ニ必要アリト認ムルトキハ政令ノ定ムル所ニ依リ主要食糧ノ配給、加工、製造、譲渡其ノ他ノ処分、使用、消費、保管及移動ニ関シ必要ナル命令ヲ為スコトヲ得」と、こういうことだろうと思うのですが、その命令というものは一体何か、こういうことになるわけですね。そうすると、それは施行令によって、施行令の五条だと思うのですけれども、生産者はこれこれの条件でなければ米を売ってはいけない、集荷指定業者はこれこれの条件でなければ生産者から米を買うことができないということに当てはまるというように理解をしてよろしいわけですか。
○政府委員(中野和仁君) 大体お話のとおりでございまして、九条に基づきまして、まず政令の五条の五で、生産者が米を売る場合、これがありますし、それから政令の六条では生産者から買ってはいけないという規定、七条では販売業者等に対します命令の規定があります。それから八条では米の所有者の譲渡制限の規定があり、九条は政府に対して売れという命令でございまして、政令十一条で移動制限をやっておる。こういう規定が、それぞれの状態に応じて適用されるわけであります。
○工藤良平君 そうしますと、この今回の違反事件というものは、食管法の九条に基づいて、もちろん食糧管理法の施行令五条の一、五条の五、五条の六の2、それから五条の六の3、それから六条、こういった各条項に当てはまる、したがって食糧管理法違反だということになりますね。 そこで問題になりますのは、先般食糧庁長官が発表しておりますけれども、米の投機の対象として幾つかの業者が出されておりますけれども、これらの業者はこの食糧管理法九条並びに施行令の五条の各項に違反をしている、こういうように判断をいたしたわけですね。たとえば指定集荷業者は、その全国の業者の法人というもの以外には売ってはいけないというような規定があるようですけれども、そういう面からいいまして、たとえば他の業者がその指定集荷業者から買い取った場合には、もちろん食糧管理法違反になる、こういうことになりますね。
○政府委員(中野和仁君) お話のとおりでございます。
○工藤良平君 そこで私は、大切なことは、この九条並びに施行令の五条の各項、六条をずっと見てみますと、いま生産したお米いわゆる日本でできた米は、生産者が食べるもの、そして種子、それを除いては政府に売り渡すか、あるいは自主流通米としてその計画に基づいた売却以外には一切流通はまかりならぬと、このように、明らかに言えばそういうことになりますね。それは間違いございませんね。
○政府委員(中野和仁君) 大体はそれでよろしいわけでございますが、そのほかに五条の五では「農林大臣の指定する場合」というのがございます。現在は、余り米等は自主流通と同じルートに乗せるということで、それも指定をしておりますから、いま私が申し上げました、若干そのほかに例外はございますけれども、それを除きましてはいけないわけでございます。
○工藤良平君 法務省、それでよろしゅうございますね。
○政府委員(安原美穂君) 仰せのとおりと思います。
○工藤良平君 なぜ私は、にもかかわらずですよ、にもかかわらずこのようなことが行なわれるのかということです。これはもちろん、いまのこの商社の良識というものも非常に大きな問題になると思いますけれども、しかし私は、もっと大きな原因があるような気がいたします。最も大きな原因がある。施行令や規則の中では、これを詳細に読んでまいりますと、確かに一粒の米といえども農林大臣の命令のないものはすべて動かしてはいけないということになっている。売買した者は、動かした者はこれはいけませんよという規定にもちろんなっているのです。ところが、一番肝心の食糧管理法の第三条の解釈において、たいへん私は政府の見解に誤りがあるような気がいたします。 これは御承知のように、四十三年に自由米という問題が大蔵省から提起をされました。かんかんがくがく、私どもは数カ月この問題を議論をいたしました。政府の統一見解というものも出され、法制局長官も国会に出てまいりまして、その統一見解について議論をしたことを私は記憶しているわけであります。そのときにどういうことを言っているか。私どもが今日まで、食糧管理法が昭和十七年にできて以来一貫して、お米というものは、生産者が食べるお米と種子を除いては全部国に売り渡さなければならぬというように理解をしてきたけれども、それはそうではないんだ、国は必要な量を命令をもって売るという義務を与えることができるのであって、それ以外のものについては、そこまでの規制はしていないという解釈が当時出たわけであります。 私は、これが全体的に日本の米の需給の緩和というものに拍車をかけて、全体的にもう政府に売った以外は自由になってもよろしいんだという極端な解釈というものが一般化されてきた。食糧庁もあるいは法を取り締まるそれぞれの機関も、私は今日までそのような運営というものがなされてきたのではないか。特に近ごろこういう買い占めが起こる過程の中で再びこの食糧管理法が論議をされ、今回の私はこの法の適用ということになってきたのではないかと思いますけれども、しかし、こういう問題が起こるべくして起こったその原因というものは、私は数年前からあったというように理解をしているわけであります。この点について、法務大臣として、その三条の理解の問題について問題はなかったのかどうか。どうでしょう。
○国務大臣(田中伊三次君) 食管法の問題でございますから私がお答えを申し上げる筋ではないのでありますけれども、罰則という点は私の所管でございます。そういう点から申し上げますと、どうもこの食管法というものがだんだんゆるんでまいりまして、食管法の基礎となるべき根幹は維持するんだなどと政府は言うておるのでありますが、実際はその根幹もゆるんでおるのではないかと、国民から誤解をされるようなゆるみ方になっております。そういうときに食管法を適用して、たとえば生産者から米を買いました場合に、それは買うことはできぬことになるわけでありますから、その場合にどこがいけないのかといわれるというと、食管法九条一項に違反をするからいけない、また施行令の六条に違反をするからいけないのだというふうに、これは商社の側に対しては罰則があるわけでございます。それからまた今度は売り渡しました生産者から申しますと、食管法の九条、施行令の五条の五というものに違反をするということで、処罰を受けるということになるわけであります。そういう適条をそのままずばり食管法違反として適用していくことに、社会感情上無理があるのではないか、こういうふうに尋ねられると、無理はございません、断固やってよろしいと言うことも少し勇気が要るような心持ちがいたします。 そういうことでもありますので、私が先ほどもちょっと触れましたように、食管法の適用が適当でないと考えられる場合ということを申し上げたのであります。そういうぐあいに社会感情というものに力を入れて考えますときに、どうもゆるんでおる食管法というものの条文を、そのまま形式的に一つ一つ適用していくことに幾らかちゅうちょをするような考えが起こりました場合に、やはりこれは食管法の適用が適当でないと判断されるような事態もあろうかと思います。そういう場合には、行き過ぎたものについて物統令の適用ということを初めて私の口から言い出しておるのであります。 物統令の適用ということはむずかしいように先生もただいまお話がありましたが、私はそんなにむずかしいものでないと思う。買い値は幾らか、売り値は幾らかと、これで勝負はつくと思うのです。買い値自体を高いか安いかということを考え売り値だけを切り離して商いか安いかを考えない、買い値と売り値と両方を合わして見て、これは暴利ではないかという判断はできるのではなかろうか。そんなにむずかしい判断でないように思うので、物統令の適用によって処断はなし得ると、こういうふうに判断をするのであります。 もう一度申し上げますと、どうも食管法をそのままぴしゃりぴしゃり適用していくことに無理があるのではないかといわれるような事態が、ないとは言えない。こういう場合に、行き過ぎたものについて物統令の適用ということは文句はなかろうと、こう判断を腹の中でしておるわけでございます。
○工藤良平君 法務大臣の見解は私さっき聞いたのですけれども、なかなか物統令の適用が、具体的にはきわめてむずかしい。著しくといってみたところで、尺度がないものを著しくといってみたところでどうもならないわけです。網にかからないわけなんですよ。こんな小さな魚をこんな大きな網の目のものですくってみても、一匹もかからないというふうなことになるわけですよ。著しくということはきわめて抽象的であって、具体的に適用する段になると、それは何もないということにしかならないわけですから。 そうすると、その物統令の適用というのは困難だ。したがって食糧管理法で適用する以外ない。その食糧管理法の網には、いろいろ調べてみると、四十三年の三条の解釈というものは弾力的なようなかっこうにはなったけれども、しかしその施行令なり規則を見ると、やはり依然として米というものは一俵も、一粒の米といえども農林大臣の命令以外には動かしてはいけないという規定がきちんとあるわけでありますから、これは食糧管理法には完全にその網にかかるということになる。ただ、それをかけて罰則として適用するかどうかということにゆるみがあったということは言えるだろうと思うのですね。そういう意味でのゆるみというのはあったと思う。しかし法律を調べていってみると、これは一粒も動かしてはいけないということは厳然としてきた。そうすると、三条の解釈というものは弾力的な解釈ではあるけれども、しかし、それは動かしてはいけませんよという現実は厳然としてあるんだ。そうすると、今回のこの買い占めの問題についても、食糧管理法を的確に私は適用するということになるのではないか、こういうように私は理解をするわけですね。 そうすると、この買い占めを押えるためには何が一番大切なのか。罰金十万円や、未検査品の扱いで三万円の罰金じゃ、これは話にならないと思うのですね。そんなものは、何億も扱う業者に対して十万円の罰金とか三万円の罰金じゃ、これはもう話にならないわけです。そうすると何になるか。体刑をかけるか、あるいは食糧管理法の施行令の五条の適用で業者の指定を取り消す、これが私は決定的なやはり買い占めに対するきびしい食糧管理法の適用ではないかという気がするわけであります。もちろんこの業者の指定の取り消しは農林大臣の命令でありますけれども、食糧管理法違反が明確になった段階において、私はそのようなきびしい処断というものが必要になってくる。そういうものがちゃんと食糧管理法の中にあるわけでありますから、この適用によって、なおかつそれが漏れてきて物統令にひっかかるなんということは、おそらくあり得ないと思うのです。むしろ私は、この本法でいう食糧管理法に完全にかかる。これは現実にかかっているのですから。ただ、どのような適用をしてあげるかどうかということが、最後の判断だけだろうと思うのですね。 そこで私は、食糧庁長官、これは大臣の権限になるわけでありますが、その五条の適用、五条の第二項、そういうことがあり得るということも大臣も発言をいたしているわけでありますけれども、食糧管理法違反であるということが明確になれば当然そうならざるを得ないと思いますが、いかがでございますか。
○政府委員(中野和仁君) いまの五条の場合は、集荷業者の場合、これにつきましては、この二項にございますように、指定集荷業者が法令に違反したような場合、これは取り消しがあり得るということになっております。したがいまして、抽象的に申し上げれば、その食糧管理法違反の態様が非常に悪質であれば、こういうことはあり得るというふうに考えます。
○工藤良平君 時間がまいりましたから、約束をお守りをいたしたいと思いますけれども、先ほどから私議論をいたしてまいりましたように、一般的に五百八十万トンという政府の買い入れ数量が示されますと、それ以外はもう自由にしていいのだという感覚が非常に強く今日まで流れてきたのではないか。それぞれの法を守る立場の検察庁なりあるいは法務省等におきましても、そういうやはりゆるみというものがあったのではないか。いまここでそれを厳然と適用するということは、大臣おっしゃいましたように、きわめてむずかしい問題も一部にはあるのではないかと思いますけれども、しかし、いま全体的な買い占めを取り締まる一つの法律というものはなかなかないわけであります。そうすると、いま残っておるのは、この食糧管理法できちんと、それを国民の前に示してあげる、業界に対してもきびしい態度で臨んであげるということは、これから暴利取り締まりの法案が出てまいりましても、まずその前段としてこのようなことがきびしく行なわれなければ、法はつくってみても、ざる法になってしまうということになるのではないか。 せっかく冒頭に大臣からそういうお話がございましたけれども、法を守るという立場にある法務大臣として、私は当然この問題についてはきびしく臨んでいただきたい。それ以外に現在の暴利をむさぼる買い占め、売し惜しのみせしめをするということはきわめて不可能になってくるのではないか、このように思うわけでありまして、そういう点から、最後に大臣からひとつ、きびしい態度で臨むということを明らかにしていただきたい、このように思います。
○国務大臣(田中伊三次君) 厳格な態度で臨みたいと存じます。かねてより申し上げますとおり厳格な態度で臨む。食管法、形式的に違反をしておっても、この食管法違反、食管法の適用で厳罰にすることがいかがと考えられるような事態があります場合においては、物統令を適用する。 先生の御意見と私の意見と違います点は、物統令は簡単にはいかぬぞ、何が暴利だ、こういうふうに仰せになるのでありますが、くどく申し上げて恐縮でありますが、買い値は幾らか、それだけをとらえて高いとか安いとかという議論はできない。買い値は幾らか、同時に売り値が幾らか、幾らもうけたのかという、もうけの幅を見れば法律にいう暴利という認定はそんなにむずかしいものではない、こう考えますので、その信念に基づいて厳格にこれをやっていくことにいたします。
○工藤良平君 ぜひ私はそういうことでやっていただきたいと、期待をいたしたいと思います。 —————————————
○主査(木村睦男君) 分科担当委員の異動について御報告いたします。 本日、工藤良平君が委員を辞任され、その補欠として和田静夫君が選任されました。 —————————————
○和田静夫君 まず、各地で刑務所の移転問題が起こっているようでありますが、どういう状態ですか。
○説明員(平井清作君) 刑務所の移転問題につきましては、地方公共団体から移転の要請のあった施設は、北海道の帯広刑務所のほか二十六庁でございます。そのうち、富山刑務所ほか七庁につきましては、移転の作業が行なわれることになっております。その他の施設のうち、地方公共団体から移転先候補地の提示のあった鳥取刑務所ほか十庁につきましては、その移転先候補地が刑務所等の用地として適当であるかどうかという点につきまして、地元と折衝しながら検討中ということでございます。
○和田静夫君 あとはどうなっていますか。
○説明員(平井清作君) いま申し上げました二十六庁のほかは、刑務所等につきましては移転要請というようなものはございません。
○和田静夫君 いま言われたのでは、何カ所か足らないのじゃないですか。
○説明員(平井清作君) いま申し上げました帯広刑務所ほか二十六庁でございますので、全部で二十七庁ということでございます。
○和田静夫君 そこで、折衝中というのはどういう状態になっているのですか。
○説明員(平井清作君) 地元の地方公共団体等から移転先候補地が提示された場合に、その移転先候補地がどんな条件でもすべて刑務所等の用地として適当であるかどうかと申しますと、常にそうというわけにはまいりません。私どもも刑務所を建築して、そこで収容者を処遇して矯正の目的を達するわけでございますので、その移転先候補地が、それらの機能、目的を達するために適当であるかという点から検討させていただいております。 大きなものから申し上げますと、たとえば移転先候補地が水害のおそれがあるかどうかとか、あるいは地くずれとか山くずれなどがあったら困るというような見地からまず検討させていただきます。そういたしませんと、収容者の安全というようなことに支障があるからでございます。 それからさらに、あまりにも市街地から離れたところ、へんぴなところでは困るという問題もございます。そういたしませんと、収容されておる人たちの家族が面会に来るときにたいへん困るとか、弁護士さんが、収容されておる被疑者、被告人に面会に来る場合にたいへん不都合であるとか、あるいは矯正処遇に協力してくれる社会の人たちが施設まで来てくれるのにたいへん不便であるとか、それから刑務所では通常、収容者に作業というようなことをやらせています。つまり、ぶらぶら遊ばしておいては矯正教育になりませんので、工場で作業をやらせます。そういう場合の原料の運搬とかいうようなものにも、あまり遠いところでは困るというような問題がありますので、あまり市街地から離れたところでは、へんぴなところでは矯正教育の実が上がらないということがありますので、この点からも考慮させていただきます。 若干こまかい要素があと二、三ございます。と申しますのは、収容者が何百人あるいは場合によっては千人以上をこえる収容者をかかえますので、上水つまり飲ませる水というようなものが確保できるか、あるいは作業に使う用水が確保できるかというようなこと、逆に生活排水といいますか、作業排水と申しますか、そういう汚水をうまく処理できるような水路が確保できるかというような問題も検討させていただいております。 さらにもっと重要な問題になるかもしれませんが、移転先候補地の付近の住民の方が、刑務所がくることについてどういう意向でおられるか、これもたいへん重要な問題でございます。非常に少数の住民の方でも反対されますと、これは移転がたいへん困難になります。矯正施設というものは、大体地域社会の方の協力なしではなかなかうまくいかない、管理運営がうまくいかないという面がございますので、地域社会の住民の方の意向を尊重しなければならぬ、かようなことになると思います。 それから、これは職員のほうのことになりますが、刑務所が移転いたしますと、職員もそれについていくことになります。通常の官庁でございますと通勤ということで足りるかもしれませんが、刑務所のような場合でございますと、数百名あるいは千名をこえる収容者をかかえておりますので、逃走であるとか、場合によっては暴動というようなものがあるかもしれぬという配慮をいたさなければなりません。もちろん逃走事故などというものはたいへん数が少ないし、暴動というようなものは、アメリカなどに比べますとほとんど例を見ないということでございますが、万一起こった場合には、やはり地域社会の人たちにたいへん御迷惑をかけることになりますので、万一起こった場合にすぐ対処できるように、刑務所の周辺に数十戸、または百戸以上に及ぶ場合もありますが、宿舎をつくりまして、そこに職員を住まわせるということで、万一そういう緊急事態が起こった場合にはすぐ非常呼集といいますか、集めて、手が打てるようにしなければなりません。そういうふうに、職員を刑務所の周辺に住まわせるという手を打たなければならないわけでございます。 そういたしますと、職員には家族がつきます。したがいまして数百名あるいは千名をこえる、そこに家族が刑務所の周辺に住むということになりますので、その職員の生活環境といいますか、職員の子弟の生活環境も考えさせていただきます。そういたしませんと、通勤とか子弟の通学とかということにたいへん影響が出ますし、それがうまくまいりませんと職員の士気がたいへん低下いたします。そういうようなこともいろいろ考え合わせさせていただきます。 そうして、まあよかろうというというところで、話がぐっと回るということになるのじゃなかろうか、かように思うわけでございます。
○和田静夫君 どういう事情からこの移転問題というのは起こっていますか。
○説明員(平井清作君) 移転問題というのは、やはり刑務所が存在する土地の周辺が、最近の傾向にもよりましょうが著しく市街化してきておるというようなことから、その地域社会の市街化あるいは都市計画、道路計画というものから見てどうも支障になりがちになってくるとか、別の面から申しますと、あまりにその近くに大きなビルが建ったり高い建物が建ったりして見おろされるとか、あるいは繁華街になってあまり好ましくない刺激が刑務所にも及んでくる、そのために矯正教育の実施に支障が生じてくるというようなことから移転問題が起こってくる。そのきっかけは、多くの場合は地方公共団体から、もうちょっと田園地帯のほうへ行ってくれないかというようなきっかけが多いと思います。
○和田静夫君 幸いにして自治庁長官経験者ですからね、法務大臣は。したがってこの問題、あえて取り上げたのですが、費用負担ですね、これは原則として大臣、どういう指導をされます。
○国務大臣(田中伊三次君) 一口に申しますと、等価交換が一番問題も少なくてよくはなかろうか、こう思っておるのであります。等価交換のほかに、たとえて申しますと、その周辺の道路とか、あるいは上下の水道とか、特殊な電気工事とかというようなものにつきましては、等価交換のほかにそういうものをつけ加えていただくというようなことも避けがたい事情であろうかと存じます。
○和田静夫君 実は後段のほうで問題だと思うのですよね。逐次後段のほうに触れますが、少し原則的なことでお聞きをしておきます。 田中内閣総理大臣が日本列島改造論を公にされた。それは都市政策を政策の主軸にしていくという状態です。法務大臣はその閣僚の一員であります。今日、自治体の都市計画上の必要というのは、単に一自治体の要求として処理すべきことではない。二十五万都市づくりその他、日本列島改造論に盛り込まれている田中内閣の指針の一つとして、各省は対応すべきである。そうしますと、国として、そういう意味では自治体運営について法務省も積極的に協力をすべきだ、こう思いますが、それは異議ございませんか。
○国務大臣(田中伊三次君) おことばどおり、協力をしなければなるまいと存じます。
○和田静夫君 そこで私は、どうも御説明が先ほど来課長からあったのですが、自治体が都市計画上の必要から移転を要請してきた場合に、自治体の側には頼んだという弱味がありますね。そこで、それにつけ込んで、公共施設の整備費あるいはその他を自治体に持たせる。それをしなかったならば移転に応じないという理不尽さが法務省にあるのではないだろうか、そう思いますが。
○国務大臣(田中伊三次君) これはあえて理不尽を押しつけるという気持ちはないのでございますが、何ぶん町のまん中で設備の整うておったところから、へんぴなところへ移転をするということが筋になりますので、したがって、その建物の等価交換ということだけでなしに、やはり道路の面についても上下水道等の面についても、お考えを願わなければならぬことも間々あろうかと存じます。それを聞かなかったら聞かぬのだというようなことでなしに、これを御協力を願うというふうにしていかなければならないのではなかろうか。 と申しますのが、だんだん市街化が進んでまいりまして、昔はへんぴなところに刑務所、少年院があったのでありますが、それが町のどまん中になってしまったといったような事態から、これを移転してくれないか、あと地はこっちへもらいたいのだ、こう仰せになりますことはごもっともなことで、これに法務省が協力せないなどということは、態度は誤りでございます。ほんとうは法務省の腹の中を言いますと、やたらに移転をしたくないという気持ちはあろうかと思います。これもわからぬことはございませんけれども、そういう市街化をめぐって、都市計画上と一口に申します、それらの都市の御発展のためにこうしてもらいたい、いいところを探しましょうという態度に出てこられましたときに、それはいやだという態度をとらぬようにしたい、こういう方針でおりますので、勢い等価の交換ということになるわけでございます。その場合、しかし道路はこうしてくれ、上下水道もひとつこういうふうに協力してくれということを自治体に頼むことは、あながち無理な要求であるとも考えませんので、無理にならない限度でこれを頼んで、円満な話し合いをつけていきたい、そういう方針でやらしておるのでございます。
○和田静夫君 たとえば、これは法律論争をやって、あるいは具体的な事例をあげていろいろな話をすると、あとに問題があるいは尾を引くかもしれません。しかしながら、すでに私は北海道旅行中に、北海道の新聞で見た事態からこの問題をどうしても取り上げなければならぬと思ったから、すでに公になっておることですから固有名詞をあげますがね。そこで、いま大臣の答弁にありましたように、かなり常識的でなければならぬ。そうすると、等価交換が三億である。ところが、いま法務省が求めているものを全部受け入れると、あと二億かかる。これは常識的ですか。
○政府委員(住吉君彦君) いまの先生の御質問ですと、これはちょっと常識を逸脱しておると思いますが、先ほどの大臣のお答えに関連いたしまして事務当局から御説明申し上げますと、現在ございます刑務所等の収容施設用地、これが当該地域の都市計画上あるいは地域の開発上ぜひ必要なんだという場合に、その現在の用地の利用計画を御提示いただいております。これから先は大蔵省の所管になりますけれども、その利用計画に、公共用のたとえば道路用地として一部使う、あるいは緑地として一部使うというような計画が確立いたしますと、いまお話のように時価三億という国有地でございましても、その利用計画いかんによっては評価の面で考慮されます。それがあるいは二億五千万とか二億ということになる場合もあり得ると思います。そういう意味合いにおきまして、地域の都市計画といいますか、地域の開発のために御協力をさせていただくという姿勢は変わっておらないと思います。
○和田静夫君 私はここに法務省矯正局長並びに法務大臣官房会計課長から札幌矯正管区長、釧路刑務所長あてに出した法務省矯総第二三六号四十八年二月十三日付「釧路刑務所の移転について」という文書を持っておるのです。これは新しい刑務所の設置に伴って必要な公共施設に要する経費、それをすべて釧路市に負担させようとしておるわけです。自治省にお尋ねをしますが、これは地財法二条並びに地方財政再建特別措置法二十四条二項違反じゃありませんか。
○政府委員(森岡敞君) 地方財政再建促進特別措置法二十四条におきましては、当分の間、国、公社、公団等に対して地方公共団体が寄付金その他の支出をしてはならない、こういうふうに定めてあるわけでございます。国と地方との間の財政秩序を的確に保っていく、それが必要であるという趣旨に基づく規定でございます。ただ、たとえば地方公共団体の施設を国に移管します場合とか、あるいは先ほど来法務省のほうからお話がありました、等価交換という形で国有財産と地方公共団体の財産を交換いたします場合、そういう一定の場合にはいまの禁止規定を除外する、こういうことにいたしております。 いまの具体の事例につきまして、私ども怱々の間でございますので必ずしも実態を十分承知いたしておりませんが、等価交換という範囲内でありますれば、それはこの規定に違反するものではない、かように考えます。
○和田静夫君 地財法二条二項の関係は。
○政府委員(森岡敞君) 地方財政法の規定は、これはいわば国と地方団体との間の財政のあり方及び地方公共団体相互間の財政のあり方についての基本的な原則を定めておるものと、かように考えております。もちろん基本的な原則は最も重要な規定でございますが、具体のケースについて考えます場合には、やはり地方財政再建促進特別措置法二十四条の規定に照らして判断するべきものではないか、かように考えます。
○和田静夫君 この新しい刑務所というのが釧路市にできるのなら、いまの御説は少し考えてみていいと思います。ところが、この刑務所は隣接の釧路村にできるわけですね。釧路村という他の自治体にできるわけですから、しゃくし定木の解釈をすれば、釧路市として通常考えられる行政需要増ではないわけです。新しい刑務所ができるに伴って当然市民に施さなければならない行政サービスという範疇には入りません。その点どう考えたらいいのかというのが一つあります。また、法務省が要求している、先ほど大臣から答弁ありましたが、公共施設整備の中には、電力、電話線の引き込み工事、あるいはガス供給施設、本来これは自治体の仕事ではありません。こういう仕事でないものまで含まれている。これもまたどう考えたらいいのか。これは法務大臣は幸いにして自治大臣経験者ですから、この辺一ぺんすっきりしたほうがいいと思うのですが、大臣、どうですか。
○政府委員(森岡敞君) いまお話の釧路市から釧路村でございますか、移転するという件でございますが、これはお話でございますけれども、釧路村に移転する場合、釧路村に土地を求めて、それと現在釧路市にある資産と交換する、これは等価交換という範囲に私は入ってしかるべきものだと思います。 それからいまの関連施設でございますが、やや問題があると思います。と申しますのは、同じ釧路市の区域内でございますれば、釧路市の市政の一環といたしまして、公の施設、あるいは公の施設でありませんでも、いろいろな施設ができます場合に、道路だとかそういう関連施設をつくっていって市政全般の発展をはかっていく、こういうことは当然ある問題でございます。釧路村ということになりますと、その辺はどう考えるのか、怱々の間でございますので私ども必ずしも十分検討を尽くしておりません。やや問題があろうかと、かように考えます。
○和田静夫君 大臣、私もそう思うのです。大臣も、もう何べんも言うとおり経験者ですから御存じだと思います。 これはやっぱりたいへん問題があります。で、このために、私がきょうこの問題を取り上げたがために、釧路の刑務所移転なんというものにあなた方が手心を加えてもらっては困るので、これはやってもらわなければならないのだが、いわゆる自治という観点に立って考えた場合、これは非常に問題がありますよ、この措置は。したがって、原則の部分で述べたとおり、田中法務大臣の責任において、国の負担でこの作業というものは進めるべきだと思います。大臣、一ぺんこの辺でどうです、政治力のあるところを。
○国務大臣(田中伊三次君) 私もこれは深く実は考えてみたことがないのです、申しわけのないことですが。きょう御質問があるということで、どういう事情になっておるのかということを、大体のことをけさになって了承してここに参りました。こういう事情でございますので、重要なことでありまして、発言がたいへんやり方に影響をしてくるものと存じますので、慎重に考えてみますけれども、やはり関連施設につきましても自治体に押しつけるということが無理だと言われると、そうも思われるのでありますが、町の発展のために御要請に応じて移転をしていこうというのでありますから、できる限りひとつ関連施設についても御協力をいただきたい。法務省も貧乏で、なかなか予算的にも思うようにまいりません役所でございます。移転をする方針というものは、市街化の発展とともにその要請に応じていきたいという気持ちは原則的には徹底をしておるのでありますけれども、関連施設についてもできる限り御協力を願いたい。むずかしい理屈はありましょうけれども、むずかしい理屈の中をくぐれる限りはひとつくぐっていただいて、御配慮をいただきたいという気持ちでございます。
○和田静夫君 あなたは弁護士だから非常にうまいことを言うけれども、そうはなかなかいかないので、これはやはり厳格に考えなければいかぬ問題だと、こう思うのです。 実は私も、釧路市が移転を要請したという経緯もありますからね、また釧路村の負担能力ということもありますから、したがって、そうしゃくし定木に議論するつもりはありません。しかし、やはり法律との関係においてはどうも釈然としない点が、いま言った点はあるのです、自治体間にまたがっている場合。しかし、それにしても、さっき大臣にちょっとお尋ねしましたが、等価交換される刑務所の時価が約三億円です。で、さっき答弁がありましたが、法務省の要求どおりに公共施設を整備するとすれば、釧路市がそれに負担しなければならない費用というのが二億円なんです。これはどう考えてもひど過ぎるのじゃないか。この点は地方財政法の二条一項違反の疑いがあると私は思うのです。どうですか。
○政府委員(森岡敞君) 地方財政法の二条二項ではないかと思いますが、「国は、地方財政の自主的な且つ健全な運営を助長することに努め、いやしくもその自律性をそこない、又は地方公共団体に負担を転嫁するような施策を行ってはならない」。一項も国の財政と地方財政との間の、先ほど申しましたように基本的なあり方を定めておるものでございますが、どちらかと申せば二項に問題があると、かように考えます。 先ほども申しましたように、非常にこれは基本的な規定でございます。ある意味においては精神的な規定と言ってもよいと思うのでございます。御指摘のように、非常に個別の問題になってまいりますとむずかしい問題が出てまいりますが、基本的なたてまえといたしましてはいま読み上げましたように、国家が地方公共団体に負担を転嫁するというふうな施策は講じてはならないということは法律で明らかにされておりますので、それに反するような事態があってはならないと思います。 いまお話しの、交換物件が三億円で二億円かかるというふうなことになりますと、これはやはり、かなりこの二条の規定に照らして問題があろうかと私は考えます。
○和田静夫君 私もそうなんです。法務大臣、この辺十分に考えていただきたいと思う。 私が先ほど、自治体が都市計画上の必要から国の施設の移転を求める行為というのは、いまや一自治体の要求にとどまらない、特に田中総理大甲のいわゆる施策というものを忠実に——私は最近「反日本列島改造論」という書物を公にしたばかりですから、必ずしもあれがいいとは思ってないのですが、しかし忠実に読み返してみればみるほど、どうしてもいまや一自治体の要求にとどまらない、国として重視すべきだ、これは自治大臣先ほど肯定されました。 そこで法務省事務当局は、やっぱり釧路市の要請の裏には、地域住民の切実な要求があることを知らなければなりませんし、それはお答えのとおりだと思うのです。そこでもし知っているという立場で考えてみますと、この通達はちょっとぼくはひどいと思う。九番目で「釧路市は、この度の移転が不調となった場合は法務省が現在地改築することに対し全面的に協力する旨の誓約書を、提出する」。これは一体何ですか。これは大臣、何です。大臣、決裁されているのでしょう。これはたいへんなひどいものじゃないですか。それから八項にしても「反対運動が起こらないようにするとともに、もし起こった場合には、これを納得させるものとする」、市がですよ。あるいは五でいけば「将来にわたり刑務所等よりの排水によって生ずるすべての問題を解決する」、将来、未来永劫にわたって自治体がすべての問題を解決する、こういうことになる。あるいは「釧路市の責任と負担において、予定敷地附近のバス停留場の設置およびバス便の増発を行なう」、これは自治大臣をやられた方としてどう思います、十一番目。ここには市営の都市交通があるわけじゃありません。
○政府委員(住吉君彦君) これはたいへん失礼でございますけれども、実は大臣の決裁は受けておりません。矯正局長と私の名儀で現地の管区長、刑務所長に出した文書でございます。 いま御指摘の条項、これに限らず各条項すべて、少しあこぎではないかというおしかりであろうかとは思いますが、実は刑務所の移転につきまして、過去に十数庁すでに移転を実施しております。その過去の経験に徴しまして、とかくこういう施設移転につきましては、後日いろいろの紛議が出てまいります。そういうことをおもんばかりまして、移転のお話がある際に、悉皆、当方のお願いする筋合いを全部羅列して、これは必ずしも釧路市あるいは釧路村に妥当するかどうか、具体的な施設についてはいろいろのニュアンスがそこに出てまいろうと思いますが、ただ一応形式的に考えられる諸条件を列記して、それについて個別に協議をしていただくということでございまして、ここに書いてあります条件、いずれも同じ比重でもって、いかようでも守れない場合はこれはもう移転をしないのだと、そういうかたくなな態度で臨むつもりは毛頭ございませんので、その辺少し用語に問題があろうかと思いますが、趣旨はひとつ御了承をいただきたいと思います。
○和田静夫君 もう何べんもくどいようですが、自治ということについて、それを掌務されたことがある大臣がいま法務大臣ですから、そして私が指摘しましたように、法律上はやっぱり問題があるところもある。それからいまのいわゆる通達だって、読んで聞かれた範囲ではひどいと思われるでしょう。そういう観点に立って、あなたの機会に、過去の踏襲ではなくてひとつお直しになる、こういう考えはありませんか。
○国務大臣(田中伊三次君) 先生仰せのような、都市の過密化に伴うて刑務所の移転を要請される個所がだんだんふえてまいりました。私の考えは、列島改造の精神もくみまして、全面的に御協力いただける限りは移転をすべきものと、二十年たつとまたそこが町のまん中になるということはなくはないでしょうけれども、そのときはそのときとしてまたやるといたしまして、一応理想の地域を発見するならば、要件が整うならば移転さすようにしていきたい、こういうふうに思っております。 そこで、全国各地の刑務所において、先ほども事務から御報告申し上げましたとおり、多方面の移転が計画されておるという事態でございます。そういう場合に、将来の念書といいますか、将来の覚え書きといいますか、それを何というのですか、定型化する必要があるということで、釧路に限らずどの方面の刑務所移転問題に関しましても、いまお読み上げになりましたようなこの文章に似たような類型で判をいただいておる、こういう事情で、釧路についてもこれに要請をしたという事情のようでございます。必ずしも、いま事務の申しますように、一項目一項目これにこだわって、これがいやというならば移転はせぬのだというような腰つきの話をしているわけではございませんので、先生の仰せもごもっともと存じますので、ひとつ、とくと考えてみることにいたします。
○和田静夫君 これを最後にしますが、とにかく大臣、九項、最初に読み上げた部分、これはとにかく大体不調に終わったならばいまのところを増改築するぞ、それを釧路市は誓約しろと、こういうことになっているのですがね。この項は前からの踏襲だということで済まされない項ですから、大臣の時代にお直しになるように強く求めておきます。 そこで次の問題ですが、法務局が土地について新地番を設定するのはどういう場合がありますか。原則的な事例でいいです。
○政府委員(川島一郎君) ちょっと御質問の趣旨がくみ取れなかったのですが、新何でございますか。
○和田静夫君 新しい地番を設定するにはどういう場合がありますか。原則的なことでちょっと説明してください。
○政府委員(川島一郎君) 新地番を設定する場合の典型的な例は、新しく土地が生じた場合でございます。そのほか分筆などの場合にも、分筆によって分れた土地について地番を付する、こういうことがございます。
○和田静夫君 民有地について設定できるのか、また、できるとすればどういう場合なのか。
○政府委員(川島一郎君) ただいま私が申し上げたような場合でございます。
○和田静夫君 私は、これも関西旅行中に毎日新聞、読売新聞などを見て、たいへんなことだと思って少し調査をしたのです。足かけ三年間にわたって、法務省の事務当局とはこの問題についてずっといろいろ折衝をしてきました。しかしながら、どうも法務省のほうは、最終的には昨年ぎりぎりに期限を切って返答を求めたことに対して返答をお持ちにならなかったから、きょうのこの機会に平場に出す結果になったのですが、西宮市の甲陽園西山町百八十三番の一から百八十九番、同町四十八番の一から三十九まで、合計三万八千三百七十平方メートルをめぐって、財団法人大阪住宅建設協会というところと幸福相互銀行ほか七社との間で係争があります。 この係争地を含む一帯の土地は、ずっとこう関係書類を見てみましたが、兵庫県武庫郡大社村の三つの部落共有地であったものを、明治二十二年の七月ごろに勝部重右衛門という人が買い取って、そうして大字中字目神山一番地として土地台帳並びに登記簿に登録及び登記されている土地であります。これは閉鎖登記簿謄本を見ましたから明らかであります。法務省も認めています。これが昭和二十八年の名称改称の際に、登記官のミスで法務局備え付きの公図上空白のまま残された。そうして、この名称変更当時の地積が六十五町余でありますが、この空白の土地がどうも係争の対象物件になっているわけですね。 この結着は、裁判が行なわれていますから裁判がつけるべきでありますから、ここで私は多くを言おうとは思わないのですが、問題は、この空白地に西山町百八十三番の一ないし百八十九番、同町四十八番の一ないし三十九という新地番がつけられるに至った経緯というのはやっぱり問題なんです。そこで原則的なことを先ほどお尋ねしたのですが、この係争地は、所有者不明の土地でも、また地番のない土地でもなくて、明らかに旧大字中宇目神山一の一の土地である事実、これは三倉地所というのが、この係争地について新地番を設定する際に法務局に提出した上申書からも明らかであります。さらに、この法務局に提出した添付書面のうち、神戸営林署長が作成した書面をずっと見てみましたが、この係争地は明らかに目神山一の一の土地である、こう大阪営林局作成の図面も添付されています。 ところが、このような書面があるのに、そして、こういう事実を無視して、登記官吏がこの係争地に新地番設定の登記をした。これは先ほどの答弁からいって、この行為というのは正当な行為とは言えないと思うのであります。そしてすでにいままで足かけ三年、まる二年ぐらいの法務省との経過の中でいえば、もっと詳しく調べてみれば間違いがあることがわかったはずだというおたくのほうからの答弁もいただいている。こういう形になっている。普通ではできない。こういうことになっている土地であります。答弁は一括してもらいますが、これは正当な行為と言えないということを法務省はすでにお認めになっていることであります。 加うるに、この地番設定に対して付近の住民から強い反対運動があったのに、担当登記官はこれを無視して新地番設定の事実調査報告書、いわゆる実地調査書に次のような記載をしていますね。一つは、この係争地というのは目神山一の一の残地とも考えられるが、この土地の所有者に確かめたところ自分のものではないと言ったという記載がある。二番目には、係争地の周辺の所有者から境界について苦情がなかった旨の記載がある。それから三番目には、民法の時効の点から判断しても三倉地所の所有と考えられるという記載がある。 そこで、この三つの点について検討してみますと、この係争地が目神山一の一の残地と考えられると言いながら、その所有者全部に所有権の有無を調査していないのは一体どういうことなのか。そしてこの係争地が目神山一の一の残地であると認めたのであれば、あらためてこの土地について新地番の設定はすでにできなかったはずではないか。
○政府委員(川島一郎君) 御指摘の土地につきまして、いろいろ問題が起こっておることは私も承知しております。御指摘の実地調査書によりますと、登記官が、ただいまお話になったような判断をしたということが記載されておりますが、私この調査書から判断いたしますと、登記官としてはこれを脱落地というふうに考えたもののようでございます。もともと一番の一の土地の分筆によって生じたものが、どうして脱落地が生じたのかという点は、確かに疑ってみる価値のある問題だと思うわけでございますが、実際には、これは大正十年ごろから非常に多数の土地に分筆されておりまして、その問題の起こった当時におきましては、もうすでに六百筆から七百筆ぐらいの土地に分かれておった。しかも三つの町にまたがっておるというような状態でございましたので、おそらく登記官としては、近隣の所有者に異存がなければ脱落地として処理するほかないと、こういう判断に立ったものと思われます。 その判断が妥当であったかどうかにつきましては必ずしも問題はないわけではないと思いますけれども、現在訴訟が進行中でございますので、その結果を待って今後の処置を考えるほかないと、このように考えておるわけでございます。
○和田静夫君 私はしろうとでありますが、しかし目神山一の一の残地であったと、こういうようなことを登記官自身が認めながらここに新地番を打つということになれば、あなたが冒頭答弁されたように、打てないところに地番を打ったわけですよね。これは残地であったなどというような言いのがれをいまされますが、長い折衝の過程では当初法務省はそう言われていました。しかしながら、いろいろ話し合っているうちに、なるほどこれは十分に調べてみれば間違いであることはわかったはずだと。こうお答えになるのは、これは担当者が答えられることじゃなくて、あなた方と相談をされた答えだったと思うのですよ。この辺は明確にされたらどうですか。
○政府委員(川島一郎君) 先ほども申し上げましたように、非常に長い期間にわたり、しかも多数の分合筆がなされておりますので、これを詳細に調べるということは非常にむずかしいし、現在からではちょっと不可能ではないかというふうに思うわけでございます。いずれにいたしましても、こういう脱落地が生じた——生ずるはずがないということは理屈の上では言えるわけでございますが、実際問題といたしましては、分合筆が繰り返されました結果、どこのだれのものかわからぬというような土地が出てくるような実例も実際には起こっておるわけでございまして、理屈から申しますと確かにおかしい、しかし現実にだれの土地かわからぬ、登記もされていない、登録もされていない、そういう土地があることが事実としてございますので、この場合につきましても、登記官としてはそういう判断を実際的な見地から行なうということもあり得たのではないかというふうに思うわけでございます。
○和田静夫君 その過程で、いわゆる住民なり、あるいは所有権者と主張する方々なりから異議が申し立てられていなければ、いまの御説で通りますよ。しかし具体的には、この担当官なり神戸の所長なり、その間においては、住民から境界について苦情が出ているでしょう。苦情が出ています。この土地の付近の住民らが法務局に、この土地はたとえば三倉地所の所有地ではないと申し出ている事実は一ぱいあります。ここにある書類は全部読んでもらった書類なんですから、これを否定することにはなりません。これを無視して虚偽の事実を報告しているのは、明らかに違法な行為じゃないですか。
○政府委員(川島一郎君) この登記官が処分を行なう以前におきまして、異議が出たとかいうようなことは聞いておりません。その後訴訟になりましたのでもちろん異議が出てきたわけでございますけれども、この処分をいたしました際には、近隣の関係の所有者の承諾書と申しますか、そういうものは一通りそろえてある。判を押さないものが二、三あったという事実はあるようでございますけれども、その土地がこの人間の所有地であるということに対する異議というものは、別段なかったというふうに聞いております。
○和田静夫君 それはもう事実とえらい違う。何のために長い間かけてこれを読んでもらったかわからない。そういうあなたサゼッションを与えているようじゃ困るじゃないですか。事実関係として、私が言っているとおり、これは三倉地所の所有地ではないということを証言をしている諸君の書類まであるじゃないですか。それをあなた読みながら、いま耳打ちしたでしょう。そんなことに基づいて答弁されたんじゃたまったものじゃない。長い経過をかけてきていることです。しかもあなた方は誠意をもって私に答弁をしなかったから、きょうの問題になっている。事実はこれからも明らかにしますがね。局長、十分に知らずにそんなあやふやな答弁されてはたまったものじゃないですよ。
○政府委員(川島一郎君) この事件の経過につきましては、概要私もそのつど聞いておりましたけれども、さらにこまかいいろいろな、実地調査書であるとかあるいはその他の関係書類につきましては、御質問があるというのでいろいろ目を通したわけでございますが、その限度で承知している限りでは、先生のおっしゃるような異議の点については、異議があるというようなことは私としては承知していない、こういうことでございますので、もしいろいろ問題があるとすれば、さらにそういった点につきまして調査をいたしたいと思います。
○和田静夫君 じゃ、調査を進められる。そこで、私が言っていることが事実という結果が出る。出た場合には、これは明らかに違法な行為ですね。
○政府委員(川島一郎君) 違法であったか違法でなかったかということは、土地の登記の問題はかなり事実認定というのが微妙な問題でございまして、ことにこういう古い沿革を持っている土地につきましては、どの程度まで調査をするか、またそれが妥当であるかといったような問題を含めまして、事実関係と突き合わせて考えてみる、こういう必要があろうと思いますので、私といたしましても、その事実を調べた上でないと何ともお答えいたしかねるわけであります。
○和田静夫君 時間の関係がありますから、それじゃ、それは調査を約束すると。 そこで、民法の時効の判断というのは、これはどこが行なうのですか。
○政府委員(川島一郎君) 時効というのは事実でございまして、事実と申しますか、一定の事実関係に対する法律効果をさすわけでありますので、これが現実に争われるのは訴訟の場においてであろうと思います。
○和田静夫君 裁判所がいわゆる民法上の時効の判断を判決で示したのならばともかく、一登記官僚が、これはもうとにかく時効が来ているんだというような一方的な判断をもって、特定の者のために時効の判断を下す、こんなことは許せないでしょう。
○政府委員(川島一郎君) 時効が完成するような事実があったかなかったかということは、参考として調査することはあろうと思います。 それから、先ほどの実地調査書の中に時効のことが書いてございますが、私これを読みまして、これはいわば傍論として、こういうことも考えられるという程度の記載ではないかというふうに感じたわけでございます。
○和田静夫君 私は、幾つかの大きな新聞が取り上げていますから、ここに全部持っていますが、これらを読みながら考えたこと、さらに、ふしぎに思ったから現地にも行って調査をしてみましたが、そして、いかに否定をされようとも、その登記官が判断をして新地番を付することについて、それは所有権者ではないという異議の申し立てをした人たち、隣接している人たち、いつでも裏づけに立つという人たち、この人たちの言ったことなどをずっと総合しますと、先ほど来あげてきた関係が生まれてくるわけです。 登記官が、係争地が目神山一の一の土地と知っていた。これはもう明確です。それを知りながら、あえてこの土地に新地番を付したのですから、これは公正証書の原本に不実の記載をしたことになると考えられます。それから当該登記官については、虚偽公文書作成あるいはそれの行使の罪、こういうものが成立するというふうに考えられますが、これはあなたのほうから、もう一ぺん調査をしてというお答えにしかならぬような感じがしますけれども、いかがですか。
○政府委員(川島一郎君) そういうような犯罪が成立するかどうかは、私たいへん疑問に思います。実地調査書というのがどういう性質の文書であるか、また、登記官の判断すべき事項として、それが明らかに故意に曲げられたもので判断が記載されているかどうかというような点から考えまして、私は登記官が故意に事実を曲げてこういうものをつくったというふうには考えていませんので、その点は先生と意見を異にするわけでございます。
○和田静夫君 そうしましたらね、そういうことを言われるが、その隣接地域にいる人だけのところを回り、そして幾つかの部分の承諾書は得られずに、違うと言われた。そうして、別にあなたの権利やあなたの土地が捺印をしたからといって削られるわけじゃないじゃないですかというような登記官僚からの、いわゆる官吏からの話し合いがあって、そして、おれに関係のないことだ、しっかり知ったことじゃないけれども捺印してしまいました、あれは間違いでしたと言っている事実が、結果的にはいまわかってきているわけですが、そういうことで、あなたのほうには誤りがなかったということですか。
○政府委員(川島一郎君) 登記官が近隣の人に判を押せと言って回ったという事実があるような新聞記事が出たこともございます。私どもは、そういうことがあったとすれば、これはたいへんなことであると考えまして、事実を調査するように神戸の法務局に依頼いたしました。その結果の回答といたしましては、そういう事実はないということを言ってきております。私も、そういうことはあるまじきことであるし、当然なかったものであろうというふうに考えておるわけでございますが、その点は新聞の記事即事実であるというふうには思いませんので、先生と、その点も認識の違いがあろうかと思います。
○和田静夫君 登記官は当然調査するところの権能を持っているでしょう。新地番を付するにあたって、それじゃそういう現地調査をされなかったというの、あなた。
○政府委員(川島一郎君) 登記官は現地調査はいたします。いたしますけれども、これは登記の申請が出てからでございます。先ほどおっしゃいました隣地の所有者の判の押してある書面というものは、登記の申請にあたって出さなければならない書面であります。登記官は、そういう書面が出た後にその申請についての事実を調査するわけでありますから、時間的に、事実調査に登記官が行くときにはもうすでにそういう書面というものはつくられているはずでございます。ですから、そういう判をもらうために登記官が事実調査に行ったというようなことばあり得ないことだと私考えます。
○和田静夫君 つくられているはずですよ。正当な行為ならばそうですよ。問題は、そこでつくられなかったから一きょうはこれ以上そのかんでいる背景まではやりませんが、いずれ決算委員会の問題ですけれども、ともあれ、つくられなかったから、それにくみしながら、その立場を利用せざるを得なかった、したがって本人が回った、こういうことになるわけじゃないですか。正当なものなら問題にならないんですよ、あなた。
○政府委員(川島一郎君) 先ほど、登記官が事実調査に行かなかったかというふうに御質問になりましたので、事実調査には参りました、しかしそのときは、すでにそういう書面はつくられた後のことであるということを申し上げたわけでございます。
○和田静夫君 いわゆるその不備な部分を完成をするための行為というものが伴っている。そのことを、あなたは調査せずに言い切れますか。長い間かかっていることですから、もう調査し切った、こういうことですか、いまの答弁は。
○政府委員(川島一郎君) 私自身が調査したわけではございませんので、それは断定的に申し上げるのはあるいは行き過ぎかもしれませんけれども、実際問題として普通の手順で考えますと、申請があってから調査に行く。申請前につくられるべき書類を登記官がつくるというのは、これは時間的にもつじつまの合わない話であるということを申し上げておるわけでございます。 それからなお、その承諾書に判を押すということは、これは登記所の立場ですべきことではなくて、申請人のほうが準備すべきものであります。したがって、登記官がどういうわけでそういう判をとって回らなければならないのかということも、私としてははなはだ理解に苦しむわけでございます。
○和田静夫君 そういうことはわかっている。それはあなた、正当にはこうあるべきであった、それが正当でなかったから問題にしているんだということを言っているのですよ、私は。どういう調査されましたか、それじゃ。
○政府委員(川島一郎君) 神戸の地方法務局に照会をいたしまして、本人によくその事実関係を問いただしたところ、そういう判をとって回った事実はない、事実調査には行っておるけれども、承諾書に判を押せというようなことを言ったことも、させたこともない、こういう回答が参っております。
○和田静夫君 これは、それじゃ私は調査を要求します。本人じゃなくて、あなた自身が、すでに担当のほうにはこういうとり方ということで相手の固有名詞まであげてあるわけですから、それらの諸君に会って事実があったか、なかったか、調査してください。通じて本人だけに聞いたのでは、あなた、信憑性というものが全然出ないでしょう。
○政府委員(川島一郎君) 御要求でございますので、私自身がというわけにまいりませんけれども、さらにその事実を補強的に調べることにいたしたいと思います。
○和田静夫君 もう一つ、時間ばかり食いますからあれですが、神戸地方法務局西宮出張所備え付けのこの字限図のうちで、西山町の図面には西山町四十八番地という地番がある。ところが、西山町四十八番というのは、町名地番の変更の前は目神山一の五であった。これは西宮市作製の新旧地番対照表からも明白です。そうすると、目神山一の五というのは、昭和二十八年二月十八日付けの兵庫県の告示第六十二号によりますと、東山町に存在するものとされています。そこで疑問が出るのですが、町名地番の解消は県の告示によってなされるべきであるのに、この出張所では県告示に従わずに、西山町に目神山一の五番があるものとして、四十八番地なる地番を付している。これはどういう法的根拠ですか。
○政府委員(川島一郎君) この土地につきましてはいろいろ問題があるようでございます。昭和二十八年に町名の変更がございまして、そのときにつくられた図面と、それからその後つくられました地番の新旧対照表、これも西宮市でつくられたものかと思いますが、それがそごしておりまして、一方に、新旧対照表によりますと東山町になっておりますし、図面のほうは西山町になっておるということで、もう私も非常にこれを判断いたしかねる問題でございまして——失礼いたしました。告示のほうが東山町になっておりまして、新旧対照表と図面とが西山町ということになっておるようでございまして、ちょっとその辺いずれかに間違いがあることは明らかであろうと思いますけれども、どちらが間違いであるかは、ちょっと断定いたしかねるような事情でございます。
○主査(木村睦男君) 和田君、時間がきましたから。
○和田静夫君 はい、わかりました。 その辺、非常に長い間かかっても返答がないものだから問題にせざるを得なかったのですが、この字限図上、西山町四十八番地の隣接地がまだ空白状態。で、字限図上西山町四十八と記入されている土地が目神山一の一の残地であるという申し出が、何べんも何べんもいまの訴え者側のほうから出張所へなされている。そうすると、この出張所の登記官はこれを無視して、現在その空白地及び西山町四十八番地と記入された土地をかってに分筆をして、現在ではこの空白状態の土地までが全くなくなっているんですよ。さっき前段では、あなたは事実関係の調査を約束されたのですが、これは明白な事実なんですよ。なくなっている。あなたが疑問に思っておられるところ。 これは一人の登記官吏が、字限図上明らかに空白地である土地、そして西山町四十八番地なるこの土地というのは、字限図上西山町四十八番地と記入された場所には存在しないと主張している主張者がいるのを無視して、この空白地及び西山町四十八番地を同番の一ないし四、それから同番の七ないし八、同番の十一ないし三十、及び同番の三十四ないし三十九の土地にそれぞれ分割しているのは、これは明らかに違法じゃありませんか。
○政府委員(川島一郎君) これも、結果的に見ると非常におかしな形の処理がなされたことになるわけでございますが、おそらく、この土地の分筆の申請があったときに何を基本として考えたか、もちろん分筆図につきましては実測の図面が出てくるわけでございます。その実測の図面が、以前から出されておる図面との関係においてどういうふうにつながりを持っているかということが問題になるわけでございまして、その辺を登記官がどのように判断したかということが、この処理の適当であったか不当であったかということの分かれ道になるわけでございます。 ところが、この土地につきましてはやはり多少沿革がございまして、沿革的に図面が二種類くらいあった。そういうような点で、まあ一方を信用したために他方の図面には合わないというような結果が出てきたのではないかと思うわけでございまして、こういった点についてはもう少し慎重な処理が望ましかったという感じがいたしますけれども、詳細につきましてはちょっと私も事実をよく承知しておりませんので、この程度しかお答えできないわけでございます。
○和田静夫君 これはどうされますか。とにかく県の告示との関係においてはたいへん疑問があった。さっき前段で言われたとおり。そして所有権を主張する人もいた。それから、あなた方のやることは間違いだと言っているのに、それを無視して一方的に押し進んでいる。こういう形のことはやはり厳に慎むべきだろう。あなた自身もいま答弁がそれ以上できないように、この問題はたいへんな、われわれしろうとから見れば、もうわけのわからぬことです、こういうやり方というものは。そういうわけのわからないような分筆登記がなされているのに、その監督官である神戸地方法務局長は、そういう事実を全く調査せずに放置をしている。いま具体的に答弁できないように、調査がないから答弁ができない。しかも、この問題の提起は早くからやっている。こういう状態に法務大臣、あるんですよ。これはやっぱり早急に善処をされてしかるべきだと思います。
○国務大臣(田中伊三次君) 本件は、登記官吏に行き過ぎた不正があったということは言えないと存じますが、いまお話を承っておりまして、ありのままに判断をいたしますと、幾らか登記官の仕事をいたします上に慎重を欠く点があって、誤解を招いたのではなかろうかというふうに考えられますので、今後慎重な措置をいたしますように、また所有権をめぐりましては地方裁判所において裁判が係属しておりますので、その結果もよく拝見をいたしまして、善処をしていきたいと存じます。
○和田静夫君 この登記を申請したのは私の調査によれば三倉地所というところですが、実はこの問題の土地を買った幸和不動産というところと、そして親会社の幸福相互銀行もどうも一役果たしているような感じがいたします。これはおいおい明らかにいたしますが、したがって、まずきょうは前段の前提だけを確認しておきたいのですが、前からの地主は隣接証明書を出すのを拒否したのです。ところが、幸和不動産の専務をしている小池亮一さんという人が、係争地は三倉地所の所有地であるという隣接証明書を出している点であります。また、隣接証明書を出し渋っていた地主の土屋さんという人に対して、これはさっきから法務省の側は全部とぼけてこの辺のことを言わないのですが、幸和不動産の松川部長は、ほかの地主は全部判を押したというような虚言を用いて隣接証明を取っております。この土屋さんは、松川部長に証明書の返還をいま反省して求めているという状態になってきているわけです。 そこで、きょう問題にしたいところは、何よりも問題なのは、幸和不動産が係争中の土地を幸福銀行のローンをつけて売り出したことです。これは幸和不動産が新聞広告をしています。明らかです。現にこの広告に基づいて青井捨三氏らが、何も知らずにこの係争地を取得をした。しかし取得をしても、結果的に取得したあとにわかったものですから、何にもやれない。こういうことになって、いま家も建たない。住むこともできない。そこでお尋ねしたいのは、このように係争中の、しかも所有権抹消予告登記のついた土地を何も告知しないで売りつけるということは、建設省、これは宅建業法違反ですね。
○説明員(河野正三君) たいへん複雑な土地のようでございますが、もしもその事実が、そういうような所有権が売り主のものでない、あるいは係争中であることが明らかであるというような場合に、善良な消費者に対しましてその事実を告げないで取引をしたということが明らかになってまいりますというと、宅建業法上は、第四十七条の「重要な事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為」に該当するおそれも出てくるかと存じます。
○和田静夫君 これはもう明確に所有権抹消予告登記のついた土地を何も告知しないのですから、いま言われたとおり宅建業法違反である。 そこで私は最後に大蔵省に尋ねますが、こうした土地にローンをつけて、そしてあと押しした幸福相互銀行、これは最も信用を重んずべき、信用の上に成り立っているとさえ言われる銀行、この責任というのは重大だと思うのです。私は購入者に会いましたし、そういう方は結局は幸福相互銀行というもののローンがついているから誤りがないだろうと思って買ったと、こう言っているのです。これはどうです、大蔵省。
○説明員(貝塚敬次郎君) 係争中の物件を不動産会社が買いまして、それを一般に売り渡す。ただいま建設省のほうから御答弁がありましたように、若干宅建業法上も問題があるというようなことを、もしローンをつけた銀行が知っていたというならば、これはもってのほかだと思います。これは問題でございますので、私ども厳重に注意いたします。ただ、非常に申しわけないのですが、私どもただいまその事実を的確に把握しておりません。したがって、銀行がどういう判断でやったかどうか、あるいは先ほどから問題になっておりますように、非常に複雑な土地でございますので、さらに慎重の上にも慎重を期すべきではなかったか、こういう点で、知っていたかいないかの事実、慎重さに欠けるところがなかったかどうか、それについてたいへん申しわけないのですが、ただいまお答えする資料を持っておりませんので、後日調査して善処したい、こう思っております。
○主査(木村睦男君) 午後一時三十分再開することとし、休憩いたします。 午後零時二十五分休憩 —————・————— 午後一時三十七分開会
○主査(木村睦男君) 第一分科会を再開いたします。 昭和四十八年度予算中、裁判所及び法務省所管を一括議題として、休憩前に引き続き質疑を続行いたします。 質疑のある方は順次御発言願います。
○峯山昭範君 初めに法務大臣にお伺いしますが、最近の新聞報道等によりますと、 〔主査退席、副主査着席〕 特にアメリカの囚人を、ガンのいわゆる人体実験ですね、そういうことをやったというような記事が最近の新聞にも出ておりましたが、この人体実験という問題は私は非常に重要な問題だろうと思います。そういうふうな立場からきょうは二、三質問したいと思うのでありますが、初めに、法務大臣に、人体実験について、人権擁護というような立場から大臣の見解をお伺いしておきたいと思います。
○国務大臣(田中伊三次君) 人体実験というものが必ずしもいけないのだということは言えないのではなかろうか。人体実験によって医術が進歩をし、ひいて人々の福祉を増進することにもなるわけでありますから、これが必ずしも一がいにいけないと言うことはできないのではなかろうか。しかしながら、人体実験の結果いかんによりましては、おそるべき人権の侵害ということも予想されますので、いやしくも人体実験をいたします場合には、厳正な専門医師の管理のもとに、医学的に見て科学的に判断をしまして絶対にその人体実験を受ける人の身体に害がないということが確信されるに足る条件が備わらなければならない。それでなければ、人権擁護の立場から断じて許すべきものではないと、こういうふうに考えております。
○峯山昭範君 大臣、私は、大臣の議論は、いま大臣のお話を聞く限りでは、本末転倒していると思うのです。何でかといいますと、私はきょうこれから議論しようということは、人体実験はもういかなる人体実験もやめるようにしたほうがいいという考えをもって質問しているわけです。しかし、いま大臣はこうおっしゃいました。必ずしも人体実験はいけないとは言えない。その必ずしもいけないという必ずしもの中に、大臣は二つのことをおっしゃいました。一つは、専門医師の厳重な管理のもとに行なわれるならばということを一つ言いました。それからもう一つは、その人体実験が本人に害がなければいいのじゃないか、この二つのことを言いました。私は大臣とは全然違うのです。この二つのことは、本人には全然関係がないんですよ。 たとえば、これは私は質問を予告しておりましたから大臣も見ていただいたと思いますけれども、ヘルシンキ宣言とか世界医師協会のジュネーブ宣言等いろいろありますが、こういうふうな宣を見ましても、これはヘルシンキ宣言の内容です言が、「人の健康を保護するのは医師の使命である。その知識と良心はかかる使命実現の為にささげられなければならない。」と。しかも、これから一歩進んで、人体実験をある程度許容されるのじゃないかというニュールンベルグ綱領というのがあるのですが、その綱領の中に出てくる左記の要件が満たされるならばという、必ずしもというこの問題の一番先に出てくるのは、大臣、何かといいますと、実験対象者、実験をされる対象者の自発的な同意というのが絶対必要だと。必ずしもというこの必ずしものトップに来るのは、実験される側の同意というのが私は一番だと思うんですよ、大臣。これは違いますか。それからその次に出てくるのは、その当該者も、同意を与え得る法的能力を持っていないといけない。私は、大臣のいまおっしゃったことは、これはある程度必要な条件かもしれませんですよ、初めてだから。しかしながら、これより増して重要な問題は——医学の進歩とか、厳重な医者がおれば、それじゃ本人の同意がなくたって何でもいいなんということは大臣は言わないと思います。言わないと思いますが、必ずしもの一番の条件というのは、本人の同意であり、しかも、その本人の同意というのは、本人がやはり法的にもそういう判断ができる能力を持った個人でなくちゃいけない、こう思うのですが、大臣、どうですか。
○国務大臣(田中伊三次君) 私のことばが足らぬのですが、本人が同意をすることを必要とするということは、これは当然のことで、本人の同意がない場合においては囚人といえどもやれないわけです。ですから、それはもう先生の仰せのとおり、本人の同意は当然の前提である。その上、先ほど二つ申し上げたことが条件でなければならないと、こういうふうに考えております。
○峯山昭範君 大臣、まことにしつこく言うようで申しわけないですけれども、大臣の答弁を逆に言いますと、本人の同意がなければ人体実験というのはほんとうにやっちゃいけないと、私はこう思うのですが、大臣、どうですか。
○国務大臣(田中伊三次君) そのとおりです。
○峯山昭範君 そこで、大臣、この人体実験の問題は非常に重要な問題で、きょう大臣に質問するということで、その内容も通告をいたしておきましたのですが、先般から問題になっております三日の新聞で、東京都の都の施設で赤ちゃんをモルモットがわりに人体実験をやったというような新聞の報道がなされておりますですね。これは、赤ちゃんをモルモットがわりに、本人は加工乳離乳食ばかり半年間も人体実験をされたと、そういうような記事が新聞に出ておりました。しかも、その内容たるや、捨て子や私生子ばかりの不幸な赤ちゃんをそういうような実験にしたというようなことが新聞に報道されているわけでありますが、きょうは厚生省も来ておりますのですが、こういうような報道がなされておりますけれども、ここら辺のところはどうなんすか、事実は。
○政府委員(滝沢正君) この問題につきましては、東京都と私のほうの児童家庭局の担当官といろいろ調査に当たっております。概要を申し上げますと、先生おっしゃるとおり、四カ月から十一カ月程度の年齢の七人の乳児に対しまして、離乳していく一つの段階として、ただいま市販されておりますかん詰めの離乳食を主食スープ以外の副食として七カ月間、まあ人によって多少の変動はございますが、普通食がとれるまでの間これを与えたという事実でございまして、この点につきましては、学会等に発表しております文献によりますと、一応、結論としては、かん詰め食は時間的にも便利なものであり、また、市販されているものの離乳食としての利用は十分できるけれども、この研究そのものは、主食スープ以外の副食類を長期間固定的にきめられたものだけを与えた。結果としては、発育その他については成績の上で悪い結果は出ておりませんが、研究的に一つの固定した副食を長期間一定の乳児に与えたということは一般的には非常に極端な場合として考えられるということを論文の中でも表現いたしておりますので、そういう意味では、このかん詰め離乳食をどういうふうに使ったらいいかということの研究の意図は了とされるのでございますけれども、先生が先ほど来御主張なさっております親権者等の同意を得ていないという点については、施設側についても確認いたしておりますし、また、反省いたしておりまして、このケース全体を総括いたしますと、非常に不用意になされておるという点については、やはりいまの一般的な意味の医学の研究的な態度としては反省されるべきものを持っておるというふうに考えておる次第でございます。
○峯山昭範君 これは、大臣、いま答弁がありましたように、先ほどから大臣は要するに本人の同意がなければいけないということはもうごもっともだとおっしゃいましたですね。しかも、その中でも、いま話にもありましたように、親権者の同意なんて全然ないわけです。やっぱりこの新聞報道のとおりですわ、結局。多少オーバーなところがあるにしても、これは確かに研究のためにこういう人たちを使ってやったということはもう明らかなんです。こういうようなことは、人権擁護という立場からいいますと、いまちょっと話の中にも出てまいりましたけれども、少なくともこういう赤ん坊の場合はやっぱり親権者の同意がなければいけないと思うし、もしどうしても親権者がない場合は都道府県の知事なり市町村長なりの許可が私は要るのだろうと思うのです。ここら辺のルールがちゃんとでき上がっていない以上は、人権を無視したこういうような実験というのは、法務省としても真剣にこの問題に取り組んで考えていただきたいと私は思うのですが、いかがですか。
○国務大臣(田中伊三次君) この問題の人体実験でございますが、法務省は、人権擁護の見地から、これを徹底的に調査するという態度をきめております。徹底的に調査をいたします方向でございます。どの面を徹底的に調査をするということになるのかといいますと、いま先生お説のこういう児童、こういう赤ちゃんの親権者、中には親権者のいない赤ちゃんがおるのではなかろうか。重大事態でございます。親権者ではないけれども親権者に準ずる病院の医師がおったと言えぬことはないのでありましょうが、親権者の承諾のない児童に実験を施したものではなかろうかという、この点を究明するということが一点。それからもう一点は、新聞に出ておりますような環境にあると思われるそういう乳児を選んだということに人権擁護の見地から問題がある。なぜこういう赤ちゃんを選んだのかというその動機、事情に至ります点に重点を置いて徹底的に調査を命じております。あまり遠からず結論は出てくるものと思います。
○峯山昭範君 大臣から以上のような答弁がありましたので、これ以上追及はしませんけれども、まず、厚生省ですが、こういうふうな人体実験という問題は、最近非常に重要な問題になりつつあります。なりつつあるとはいいましても、厚生省自体は、前々からこういう問題が何回も言われながら、要するにそれをほったらかしにしておる、そういう傾向があるわけですね、現実の問題として。人権擁護委員会からも、または日弁連からも、こういうような問題がたびたび報告されております。あるいは広島大学やいろいろなところにおける人体実験の様子もこの日弁連の報告等にも出ておりますけれども、厚生省自体はこの問題にどう取り組んでおられますか。
○政府委員(滝沢正君) 確かに、御指摘のように、広島のガンの実験問題につきましても「医療と人権」シンポジウム等で取り上げられ、人権擁護の立場から本人に対する一つの説示処分というかがなされていることを聞いております。そして、その御提案の中に、第三者機関的なものをつくってこれらの対策に対応すべきであるという御提案もございますし、また、先ほど来問題になっております同意の原則とか、そういう基本的なものを踏まえてこれを取り上げるべきだということであるわけでございます。 お答えとしては、結論的に申しますと、このこと自体をいわゆる倫理綱領的な意味で取り上げた検討の具体的な事例は、厚生省としてただいままでは持っておりません。ただ、この問題は、医学会の問題とか医師会等との関連、先ほど先生が例に引かれました各国の世界医学会において綱領の宣言がございます。これは、死に関するもの、あるいは中絶等に関するもの、あるいは一般臨床研究に関するもの等、いろいろございます。このような事例を見ましても、国際医学会あるいは医師会総会という立場で取り上げておりますので、この問題については行政の立場だけでこれが取り上げられるものかどうか。その場を用意し、そのような方向に努力することは、私は行政の感覚としてはやらなければならない問題だと思っております。 ただ、これと直接つながりはございませんけれども、実は心臓移植問題が起こりまして以来、厚生省に臓器移植に関する懇談会を設けましてそこでいろいろ御検討があり、ただいま臓器移植に関しては角膜移植法というのが厚生省が持っておる法律がございます。このような事例もございますので、今後の医学の進展に伴います個々のそのような具体的な問題の法制化ということはございますが、その懇談会の結論の最後に、成文法いわゆる個々に法律の制定に至るまではなお種々の問題が生ずると思われるので、医学的適応性及び医術的正当性を確認する意味においても、まずその内容を倫理綱領等の形で徹底する必要があるだろうという御提案がなされております。 また戻ったような言い方で恐縮でございますが、要するに、世界医師会の動き、そういうようなものを考えても、わが国としてのこのような問題を世界的なレベルでの綱領等を踏まえてどのように定めていくかということの具体的な問題はございますが、その必要性というものに対して否定するものはだれもないと思うのでございまして、それを行政が一つの場を提供するような努力にするか、あるいは医学会あるいは医師会等の立場でこの問題が取り上げられるような機運を醸成していくか、この問題は政治的な問題も含めてあり得ると考えております。
○峯山昭範君 局長、あと二、三確認しておきたいのですが、今回のこの実験でこういうふうな赤ちゃんに与えた製品ですね、これは、私の聞くところでは、ある特定のメーカーの製品一つに限っておると、こういうことですが、これは事実ですか。
○政府委員(滝沢正君) この点に対しましては、私たちも調査の対象にしていろいろ調べたのでございますが、母子保健院側の考え方としては、十一カ月以後の離乳食という形のものを一つのメーカーは持っていなかった。一方のメーカーがその範囲を広く持っておった、製品として。したがって、こちらを使ったんだと。しかも、東京都の説明では、これは決して試供品として提供されたとか業者とのそういう関係がなく、乳児院としてきちんと購入した日常使っておる、他の子供たちにも与えておるかん詰め食品である。ただ、たまたま先ほど申し上げましたような与え方をもって一つの調査研究の対象にしたという点ではございますが、そのメーカーの関係は以上のような理由で私もこれは了としておるわけでございます。
○峯山昭範君 私は、局長の言っていることに反論しようなんで全然思いませんけれども、しかし、ある特定のメーカーの製品を特殊な期間そういうようなことをやるということは、これは疑いを持たれてもしようがないですよ。それは日常使っているやつで、もうそれしがなかったんだと、そう言われればそのままですけれども、しかし、おかしいじゃないかなんて言われれば、これはほんとうにおかしいということになってくる。これは、大臣、そう思いませんか。こういう問題になってくると、おかしいなということになってくる。これは具体的にそれしがなかったんだと、その理由は理由でわかりますよ。しかし、一般の社会に与える影響という点から考えると、私はそういう点は重要だと思うのですが、大臣、どうですか。
○国務大臣(田中伊三次君) 留意すべきものと存じます。 〔副主査退席、主査着席〕
○峯山昭範君 さらにもう一点だけ局長にお伺いしてこの問題は終わりたいと思うのですけれども、すでに先ほどから話がありましたように、こういう問題は、行政官庁がやるべき問題なのか、あるいは医師会なりそういうふうな全国的な組織でやるべき問題なのか、これはいろいろ問題はあろうとは思いますけれども、さらに日本の医師のいわゆる倫理というのが非常に問題だと私は思うのですね。そういうような意味からも、厚生省としても、そういうふうな行政指導というのはやっぱり何らかの点で必要だと私は思うのです。そういう点から考えましても、アメリカでもすでにお医者さんの研究あるいは計画を倫理面から審査する機関というようなものをつくってはどうかなんという話が出ているということを私も聞いたことがあるのですけれども、そういうふうな点も考えて、今後そういう点に対する指導というのはやっぱり強化していかなければいけないと思うのですが、どうですか。
○政府委員(滝沢正君) この問題につきましては、先ほども外国の例等にございますような第三者機関、いわゆる実験研究の計画そのものを確認していく第三者機関の必要性というものが外国では認められております。したがいまして、われわれがこの問題を行政の立場からどう意義づけしてその実を結ぶように持っていくか、いろいろの点はございますけれども、当然その内容として第三者機関的のものがチェックのシステムとしては必要になるであろうと、その事例がすでに外国にも機運としてございますし、これは当然そういうものを考慮しながら考える必要があると思います。 これと直接関係はございませんが、医療事故等の問題につきましても、私はきわめて重要な問題であると思いまして、この点につきましてはすでに厚生省で研究費等によりまして医療事故の処理の問題に対する形をどういうふうに持っていったがいいかというような問題も検討しておるわけでございますから、いずれにしましても、日本の医療をめぐる問題の中でこのような倫理的な背景を持った問題点というものが山積してまいっておりますので、これはやはりこういう社会的な要請と機運を十分背景にいたしましてわれわれはこの問題を急がなければならぬ、こういうふうに考えております。
○峯山昭範君 それでは、法務省関係はこのくらいにしまして、あと裁判所関係で二、三お尋ねしたいと思います。 まず、私は、裁判官のいわゆる姿勢についてちょっとお伺いしたいと思うのですが、初めに、日本の裁判官の人数及びそれぞれの裁判官が担当する——民事・刑事等いろいろあると思いますが、一人当たりの件数等も含めてお伺いしたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 最初に、現在の裁判官の人数を申し上げます。裁判官は幾つかの種類に分かれておるわけでございますが、最高裁裁判官それから高等裁判所長官、これが二十三名でございます。次に判事でございますが、全国千二百六十八名の定員でございます。判事補は五百六十八名でございます。そのほかに、簡易裁判所判事がおるわけで、七百六十九名でございます。トータルいたしまして二千六百二十八名というのが定員でございます。現在員は、それに欠員が八十九名ほどございますので、それを引いたものが現在員ということでございます。
○峯山昭範君 一人当たりの担当件数は、大体平均どのくらいですか。
○最高裁判所長官代理者(田宮重男君) 地方裁判所で申し上げますと、一人当たり——これはまあ全国平均でございますので、一人の裁判官が民事・刑事それぞれ担当しているという点もございますので、それを一括平均しますと、地方裁判所では一人当たり大体百五十件程度になります。
○峯山昭範君 これは、百五十件というのは、昭和何年のデータですか。
○最高裁判所長官代理者(田宮重男君) 昭和四十六年でございます。これはちょっとことばが足りませんで申しわけございませんが、ただいまのは訴訟事件だけについてでございます。御承知のように、訴訟事件のほかに、たとえば民事事件の場合には、執行関係とか競売関係といったような事件もございますし、また、督促事件のようなものもございます。それから刑事の場合でございますと、令状、略式命令等の事件もございますので、そういう事件をわれわれは雑事件と申しておりまするが、これらを全部合わせますと、昭和四十六年で一人当たり五百七十七件程度になっております。
○峯山昭範君 これは、大体、傾向として、ふえる傾向にあるんですか、減る傾向にあるんですか。それで、なお、これだけの事件を担当して、裁判官の負担する能力といいますか、そういう点からいいまして、件数が多過ぎて定員が足りないというのか、あるいはこの程度なら十分こなせるというのか、そこら辺のところはどうですか。
○最高裁判所長官代理者(田宮重男君) 事件の傾向といたしましては、現在事件が横ばいになっておりますので、一人当たりの負担件数としては若干減少の傾向にあるということでございます。これが一人当たりどのくらいが適当であるかという問題ともからむかと存じますが、御承知のように、裁判所は全国にございますので、いろいろ裁判所によって事件の多いところ少ないところといったようなところがございます。にもかかわらず、ある一定数の裁判官を配属しなければいけないという状況でございますので、場所によりましてかなり負担のアンバランスというものもあることは当然でございます。特に事件数の多い東京、大阪等においては、部によりまして——いろいろ裁判部がございますが、部によりましては若干負担が重いというふうな点も現象としてはあらわれておりますが、これを裁判官全体として見ますと、必ずしも負担はそう重くない。これはどういうふうに解決するかという問題もございまして、裁判官の適正配置その他の措置等によってこれをある程度解決できるのではないか、そういうふうに考えております。
○峯山昭範君 そうすると、裁判官の適正配置あるいはアンバランス、こういうふうな問題も含めて、裁判官の指導監督というのは、一体、最高裁はどこでやるのですか、最高裁の。まあ最高裁判所が全部やるのだろうと私は思うのですけれども、最高裁のどういうところが担当していらっしゃるのか、伺いたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(田宮重男君) 主として人事局で担当しております。
○峯山昭範君 そこで、本題に移りたいと思うのでありますが、これも最近の新聞報道によりますと、裁判官の姿勢というものが私は非常に問題であると、こういうぐあいに思うのですけれども、裁判の最中に居眠りをしたりいびきをかいたりしてけしからぬというようなことが最近の新聞等に載っておりました。こういうふうな記事が出るということ自体、私は遺憾であると思うのですが、こういうふうなことは事実なんですか。どうですか。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 最近の新聞にそういった記事が出まして、まことに恐縮でございますが、特定の裁判官が、昨年の二月でございますか、法廷で居眠りをされたということは、残念でございますが事実でございます。
○峯山昭範君 局長、私は、裁判官というのは、国民にとりましても、一般の人から見れば神様のような存在になると思うのです。そういう点からいきますと、こういうことでは裁判に対する不信を招くことになると思うのです。 私は、きょうは、もう少し具体的にいろいろ申し上げたいと思うのですが、この事例だけではなくて、私の調査によると、いろんな事例があるわけです。しかも、これから幾つか申し上げますが、私の手に入った資料なんというのはもう氷山の一角で、たとえばこれは東京の高等裁判所での話でありますが、裁判の最中に、最中と言ったらおかしいですが、裁判にいわゆる法衣を上から着てくるわけですけれども、下はステテコだと。それで、しかも、ステテコをはいて出てきて裁判をする。裁判されるほうは見ていてわかるわけですね、あの人はステテコしかはいていないと。ほんとにけしからぬということになるわけです。確かに、私は、その裁判がステテコによって左右はされないと思います。されないと思いますけれども、裁判されているほうはたいへんな思いをするわけですね。これは事実こういうふうな事例がある。 それからそれだけではない。これも具体的に裁判所の名前もみなわかっているわけでありますが、普通は、われわれ、国会で審理するにしたって、ネクタイを締めて来ていないと問題になるわけです。何回も何回もいつどこで何日と日にちもわかっているわけでありますが、いわゆるトックリセーターを着て出てきて現実に裁判をやっておる、そういうのがある。 しかも、今度は、ある裁判所では、これはまあ事実ではないという——これは私は現実に見たわけじゃありませんから、私の手元に入った資料によると、ある土地の事件の裁判が終わってから、被告人と裁判官と一緒に近くの温泉に行って泊って酒を飲んだ。 現実にこういうふうな資料が入ってくるわけです。そうしますと、一体、こういうふうな裁判官の監督というのはどうなっているのか。しかも、私が問題にする根源は、これはあるところでステテコの問題がずいぶん問題になった。ステテコをはいていたって要するに裁判そのものには影響ないんだというんです。そういうことはかねがねあることだというんです。それで、私は、そんなばかなことがあるかといってどなったのですけれども、いや事実そういうことはたびたびあるんだなんていうことになってくると、これはほんとうに裁判官の姿勢としてほうっておけないと私は思うのです。私は立法府ですから、決して裁判の内容とかそういうものに立ち入ろうとは思いません。裁判の内容そのものは神聖で、ほんとうにかちっとしたものでないといけないと私は思うのです。しかし、国民の立場からこれを見ると、非常に重要な問題だと思うのです。この問題については、私は、少なくとも、人事局長自身、指導監督の立場にあるわけですから、この問題について深刻に考えて指導してもらいたいと思いますし、また、あるいは、こういうような問題についてどうしようと思っていらっしゃるのか、そこら辺のところも含めてかちっとした答弁をお伺いしたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 裁判官が全国に多数おるわけでございますが、それは国民から出されました訴訟につきまして国家意思を代表いたしまして厳正な判断を下すという職責をになっておるものであるわけでございます。そういう職責から考えまして、ただいま峯山委員御指摘の裁判官の心がまえとして、厳正、公正、中正に、いやしくも国民から裁判の正しさ、公正さに疑惑を持たれるようなそぶりあるいは態度というようなものであってはいけないということは、これは日ごろからかたく戒めておるところでございます。裁判官のそういった意味の服務の問題といたしましては、その所属の裁判所のいわゆる裁判官会議が一次的にこれを持っております。所長がこれを統括いたしておるわけでございます。さらに、各地方裁判所、家庭裁判所の上にはブロックの高等裁判所がございまして、やはり高等裁判所の裁判官会議及びこれを総括いたします高等裁判所長官が第二次的な責任を持っておるわけでございます。そういたしまして、最終的には最高裁判所の十五人の裁判官会議の監督に服するわけでございますが、これを所管いたします事務総局といたしましては人事当局がこれを所管しておることは、御指摘のとおりでございます。私どもの日ごろの立場といたしましては、裁判官の会同あるいはいろいろの機会に事あるごとにいま申し上げましたような心がまえというものを持っていただきたいということを常日ごろお願いをいたしておりますし、今後もそういった態度で臨んでいくということには変わりはないわけでございます。 ただいま御指摘のステテコを着たままで法廷に臨んだということは、なるほど御指摘のように上に法服を着ておりますのでそれ自体かまわないというふうにあるいは思うということがあるかもしれません。しかし、それはやはり心がまえの問題といたしましては全く誤っておるわけでございまして、正しい服装というもの、その上に法服をまとうということによって身も心も引き締まる、そうすることが裁判を受ける国民に対してまず第一にこたえていくゆえんであるわけでございます。そうして、もちろん裁判の中身がより正しくなければいけないことは当然でございますが、そういった日常の心がまえというものこそ裁判官に最も要求されるところのものではなかろうか。まことに峯山委員から御指摘を受けまして非常に恥ずかしい思いをいたすわけでございますが、具体的に私どもそういったことが耳に入りますれば、あるいは直ちに調査いたしましてそれ相応の注意等を与えていただくわけでございますが、このステテコの問題というのは私は不敏にして承知をいたしておりませんでしたので、なお十分に帰りまして高等裁判所長官等に伺って事実が判明いたしますれば、それに対する適切なる措置をとりたいと考えております。 また、トックリセーターで裁判を行なうというようなことが御指摘でございましたが、そういうこともあるといたしますれば、これはまことに不心得な話でございまして、御指摘のように服装というものはその人の心をあらわすわけでございまして、正しい服装であるということは絶対に必要なことだと思いますので、今後そのようなことがないように十分の注意をいたしていきたいと考えております。 当事者と一緒に温泉に行くというようなことは、そのようなことまではないであろうというふうに私は思うわけでございますけれども、そういったことにつきましても、ただいま御指摘の点ともあわせまして、適当の機会を得まして十分に高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所、全国の裁判所に趣旨を徹底していきたい、こう思っております。
○峯山昭範君 いま人事局長から慎重に処理をするというお話がありましたので、これ以上深くやるつもりはありませんけれども、私の手元に入った資料なんというのは、ほんとうに永山の一角だと思うのです。私がいまここで申し上げた事案というのは具体的に表に出ていることだけで、私がどうもこれはあやしいと思ったのはのけたわけです。たとえば、裁判になりますと、裁判官の口つきとか顔つきとか、ちょっとほかの人と話をしたり、または被告のほうとちょっと話をしたり、ちょっとした動作一つで裁判を受けるほうは深刻に見ているわけですね。そういうふうなことがあったにしても、それをもう一つ上回るようないわゆる発言の内容というのはやっぱりあるわけですね。要するに、たとえば被告をばかにしたような発言、あるいはそういうようなのも、結局は、先ほど一番初めに出てまいりました居眠りという問題が出てくる。居眠りをしておると、実際問題として裁判があったときにどう言っていいか、わからないと思うのです、聞いていないわけですからね。こういうようなことがあってはいかぬと思いますし、裁判そのもののいわゆる権威を高めるためにも、こういうような事態が続くと、これは国民の裁判官に対する考え方というのは権威の失墜になるどころのさわぎじゃないと思うのです。そういうふうな点からも、これはたとえばことば上のあやというのもありますので、ことば上のいろいろな問題の事件は私はきょうは言いませんでしたけれども、そういうような問題も非常に多いわけです。最近とみに多い。そうしますと、裁判官はいかなる事態のときでも冷静でほんとうに事案を処理できるだけの能力がなければいけないと思うのです。たとえば被告がどんなにおころうが、どうしようが、裁判官は冷静に処理をしないといけないと思うのです。ところが、実際は、被告と同じようになっておこっている。同じようになってけんかをしている。そういうのが現実に幾つもあるわけですね。ということは、私は、そういう点では、いま局長がおっしゃいましたけれども、これは裁判そのものの権威を高めるためにも、今後非常に真剣に取り組んでいかなければいけない問題であると思いますし、こういうふうな事案、またこういうふうな問題について、私たちは、この問題を指摘したわけでありますので、その問題そのものを深刻に受け取って、そして最高裁長官等とも相談をして、今後裁判のいわゆる姿勢をただしていく、こういうふうな姿勢でいかなければいけないと思うのですけれども、その辺のところをもう一ぺんお伺いして終わりたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 裁判所に対しまする非常な御理解から出ておられます峯山委員の御発言の御趣旨は、まことにごもっともでございます。私ども、深くそういった点について反省をいたすべきものと考えております。本日の御発言の趣旨は、帰りましてさっそく長官にもお伝えいたしまして、御趣旨に沿うような信頼できる裁判をいたし得るよう、なお一そうの努力をいたしたいと思います。
○主査(木村睦男君) 速記をとめて。 〔午後二時二十分速記中止〕 〔午後二時四十四分速記開始〕
○主査(木村睦男君) 速記を起こして。 分科担当委員の異動について御報告いたします。 本日、佐々木静子君が委員を辞任され、その補欠として阿具根登君が選任されました。 —————————————
○阿具根登君 非常におそくなりまして申しわけございません。 法務大臣にお尋ねをいたします。本問題に対してはただいままで厚生大臣並びに恩給局長にも質問をいたしてまいりましたが、もともと法の問題でございますので法務大臣のお答えをいただかなければならぬと思って御質問申し上げる次第です。 まず、第一に、字句の問題でなくて、終戦後の極東裁判と終戦後の軍事裁判についてどういうようにお考えになっておるか。あるいはいろいろな考え方もございました。当時も、一方では、敗者を勝者がさばくということはけしからぬぞというような考えもございました。しかし、極東裁判で相当の方が処刑された。日本の陸海軍刑法でも相当の方々が処断されておる。これについてどういうふうにお考えか、お尋ねいたします。
○国務大臣(田中伊三次君) 大事な御質問でございますから、刑事局長から先にちょっとお答えさせます。
○政府委員(安原美穂君) 私は、事務当局といたしまして、極東軍事裁判と、それからいわゆる軍法会議の裁判との性質の違いということを申し上げさしていただきたいと思いますが、いわゆる極東軍事裁判は、一九四五年七月二十六日のポツダム宣言第十項に基づいて連合国軍最高司令官総司令部が一九四六年一月十九日に発しましたところの極東国際軍事裁判所設立に関する連合国軍最高司令官特別宣言、それから極東国際軍事裁判所条例によりまして設置されました極東国際軍事裁判所がなした裁判でございまして、これは、申すなれば、日本国の主権に基づく裁判ではございません。これに対しまして、いわゆる軍法会議は、日本国の法令により設置された特別裁判所でございまして、その判決は日本国の法令に従って言い渡された主権による裁判であるという点に根本的な違いがあるものと承知しております。
○阿具根登君 それは私も承知いたしておるんです。私がお伺いしておきたいと思っておりますのは、今日われわれが責任はなかったとかなんとか、そういうことで言っておるわけじゃないんです。しかし、あの大戦争を起こして、そして世界じゅうに御迷惑をかけて、そして日本が敗戦に導びかれた。とすると、その最高責任者は一体だれなのかと、こう考えるわけです。これはほとんど極東軍事裁判で裁判された方なんです。ところが、その部下が日本の刑法でさばかれた人は、その遺族は遺族扶助料ももらっておらない。極東裁判でさばかれた最も責任のある方々の遺族は、全部遺族扶助料をもらっておられる。私はそれが悪いということじゃないんです。またあとでどんどん質問していきますけれども、そういう観点から見る場合に、日本の刑法はそんなにきびしいのかと、こういうふうに思うのですが、そのものの考え方はどうでしょうか。
○政府委員(安原美穂君) 日本の刑法がきびしいということではございませんで、日本国の法令で規制しております事柄は、日本国の主権による裁判につきまして、それの刑の消滅とか、あるいは恩赦とか、そういうことを日本国の制度としては考えられるけれども、極東軍事裁判所については、いわば主権の範囲外であるということで、刑事司法の制度のワク内におきましては私らとしましては手の届かないところのものであるというふうに理解しておりまして、それを遺族扶助料とかそういうことでどう扱うか、恐縮でございますが、法務省事務当局としては関係のないことであるというふうに思います。道義的な問題ということになりますと、これはどうも事務当局である私の答えられること以上のことになるかと思います。
○国務大臣(田中伊三次君) 法務省所管外のことであるということはただいま刑事局長がお話を申し上げた所見のとおりではございますが、軍法会議という一つのわが国の主権の発動としての特別裁判所の裁判ということにも関係がございますので、私の所見を申し上げますと、ただいま局長が申しましたような意味の極東軍事裁判は、これは主権の発動ではございませんので、妙な結果でありますけれども、ここで裁判を受けたり処分を受けたりいたしました者も公務扶助料をいただいておる、亡くなりました場合においては御遺族の扶助料というものもちょうだいをしておる、こういう事情で公務扶助料ないし遺族扶助料をもらっている。ところが、主権の発動としての特別裁判所というべきいわゆるわが国の軍の軍法会議、これは陸軍軍法会議と海軍軍法会議があるわけでございますが、両軍法会議というもので処分を受けますと、遺族扶助料も公務扶助料もちょうだいができないようになっております。この点は、理屈を、主権の発動たる裁判所、そうでない裁判所、よって存じませんというように説明すると、わからぬことはありませんが、これはそういう説明では割り切れないものがあるものと存じます。これは何らかの形において是正をしていく必要があると、こういうふうに私は思っておる次第でございます。
○阿具根登君 大臣のお答えになりましたように、私も割り切れないものがあるから、こういう質問をしておるわけなんです。その法律が悪いとかいいとかいう前に、今日、日本はもう先進国だと、文化圏だといって言われておるのに、その刑法のためにまだ泣いておる人がおるんですね。そして、最も戦争の責任者であった方々は極刑には処せられたけれども、これは日本の刑法でなくてやられたのですけれども、しかし、遺族の方は国が保護しておる。ここに私は矛盾を感ずるところがあるわけなんです。 そこで、質問を続けてまいりますが、昨年の衆議院のこの種問題の質問におきまして、昭和二十年の八月十四日ポツダム宣言受諾と同時に日本の陸海軍は解消したものとみなされなければならぬ、そのために陸海軍の軍法会議でさばかれた者は無効となったというような見解が、あるいはちょっと違うかもしれませんが、こういう見解が陸幕から出されている。それに対して、当時の竹下官房長官も、いやそれは一応われわれもそういう考えに立たなければならぬであろうということを言っておられますが、これは一体どういうふうにお考えになりますか。
○政府委員(安原美穂君) お尋ねの点でございまするが、法律的にながめてまいりますと、陸海軍の軍法会議は、陸軍軍法会議法及び海軍軍法会議法により設けられた特別裁判所でございますが、いわゆる終戦後も、復員部隊の規律保持という観点から、内地の軍法会議が廃止されるようなことをはじめとして逐次廃止されながらも、新憲法施行の日の前日でございます昭和二十二年五月二日まではなお一定の範囲内で適法に存置し得ることとされており、また、存置していたのでありまして、法律的には新憲法の施行によりまして陸海軍刑法とともに全面的に廃止されたということになっておりますので、その間、廃止されるまでに行なわれた裁判は、わが国の国法上は適法な裁判機関による裁判であるというふうに考えるほかはないと考えております。
○阿具根登君 そこが私と意見の分かれるところでございまして、それは確かに過渡的な措置としてとられたその措置についてはやむを得なかったと思うのです。しかし、その後、憲法が変わると同時に、当然消滅しておったはずの軍隊であり、それに付属しておった軍法会議であるから、これは終戦と同時に解消しなければならぬ、私はこう思うのです。なぜかと申し上げますと、その当時、秩序を守るために陸軍の刑法によってこれを処理してきたとおっしゃいますけれども、それでは、そのころ、法律で定められたような軍法会議が行なわれておったかどうかということです。私はそのときの混乱の中にはそういうものはなかったと思う。だから、吉池軍曹の場合でも、なんにもなかった。証拠がないですね。敵前逃亡だから殺したんだと、こういうことで罪名を着せられておる。そのほかに、食糧調達に行って帰ってみたら部隊が移動しておって、部隊に追いつかなかった、敵前逃亡だと。そうして、武器を持っておったので、これは窃盗罪だと、こういうことでやられておるけれども、何も証拠がないわけなんです。そういうのがあくまでも正しいのだと、こういうふうにきめつけられるなら、これは法を乱用している以外の何ものでもない。当時やむを得なかったからそれをやったことはわかるけれども、しかし、そのあとで憲法が変わって新憲法になったら、それは全部無効にならなければならない。 たとえば、私がいまから質問いたします問題は、終戦当時、首都防衛の主力航空部隊であった厚木航空隊の司令海軍大佐小園安名氏、これは、降伏反対、抗戦だというビラを航空隊だから飛行機を使ってビラをまいたわけです。それだから、小園大佐外六十九名の部下が党与抗命罪で処罰されたと、こういうことになっておるわけです。だから、もしもそれが正しいのだとおっしゃるならば、その当時の軍法会議の状況をお知らせ願います。
○政府委員(安原美穂君) 御指摘の小園海軍大佐の事件は、昭和二十年の十月十六日、まさに終戦後でございますが、横須賀鎮守府臨時軍法会議におきまして党与抗命罪で無期禁錮に処せられておりますが、昭和二十一年の勅令五百十二号減刑令によりまして禁錮二十年に、それから昭和二十五年九月四日にはさらに禁錮十年に、それぞれ減刑されまして、十二月の五日に仮釈放になり、昭和二十七年、平和条約の発効のときでございますが、その政令百十七号の大赦令によって同年四月二十八日に赦免されておるというのが大体の経緯でございます。
○阿具根登君 そのときの軍法会議の模様をわかっておったらお知らせ願います。
○政府委員(安原美穂君) いまここに判決の原本の写しがございますが、昭和二十年十月十六日の横須賀鎮守府臨時軍法会議、裁判長判士海軍少将小柳冨次、裁判官法務官海軍法務大佐由布喜久雄、裁判官判士海軍大佐小野良二郎、この三名の裁判官で、検察官としては海軍法務少将小田垣常夫干与として、「被告人ヲ無期禁錮ニ処ス」という判決があることがこの原本によって明らかでございます。
○阿具根登君 弁護士の名前をお知らせ願います。
○政府委員(安原美穂君) それは、当時の軍法会議法によりまして、これは臨時軍法会議でございますので、いわゆる戦時事変に際し海軍部隊に特設された臨時軍法会議でございますので、法令によりまして弁護人がなくても裁判ができるということになっておる制度のもとにおける裁判でございます。
○阿具根登君 私の調査したところによりますと、佐官級以上には弁護士が二名づくようになっておったはずです。それを、弁護士もなくて、たった二日間で終身禁錮、こういう刑が科されておるわけなんです。当時の問題としては私はやむを得なかったものと思うのだけれども、いまの問題としてこういうのが許されますか。
○政府委員(安原美穂君) 先ほど来申し上げておりますように、戦時臨時、そういう情勢において法律に基づきまして弁護人をつけなくていいというようなこと、その他いわゆる応急の事態に対処するために簡易な手続による裁判がなされたことは事実でございますが、それはそのときとしては適法であったわけであり、適法な裁判所であったことは法律によって明らかでございます。しかしながら、戦後、敗戦という事態に対処いたしまして、そのような判決について、戦後の事態の変化に伴いまして、それを修正するという措置が国家としてはとられたのであります。それが、先ほど来申し述べました減刑であり、最終的には大赦という恩赦の実行であったということになるものと理解をいたしております。
○阿具根登君 それでは、その当時、台湾におい徹底抗戦を叫んで、そして、二十年の八月の十八日までですか、夜間訓練までやって戦闘機を飛ばしておった、その人たちに対する処分はどういうことになっていますか。
○政府委員(安原美穂君) その点につきましては、記録もございませんので、裁判が行なわれたかどうかはわかりません。
○阿具根登君 行なわれておらないわけなんです。これは事実それに参加した人が私のところに実情を訴えてきております。そうすると、この小園部隊というのは、わずか二日間か数千枚のビラをまいただけで終身禁錮になっておる。台湾では、内地が降服しても台湾は降服しない、最後まで戦うといって、終戦直後から十八日まで夜間訓練までやっておる。それからもう一つは、海軍の第五艦隊は出撃しているんです。天皇の終戦の放送を聞いたあとに第五艦隊は特攻で出撃しておるわけです。そういう人たちは何の処分も受けていないわけです。そうすると、何かおかしいとお思いになりませんか。その当時は、御承知のように、上官を殺したり、あるいは宮城になだれ込んだりした、そういう人たちもおりました。しかし、この部隊というのは、ただ降服はやっちゃならないんだというビラをまいただけなんです。たまたまアメリカの司令部が厚木に基地を置くと言ってきたから、アメリカに対する気がねからこういう裁判がなされたものだと私は思っておるわけなんです。そうじゃなくて、より以上やった連中は、何もさばきを受けていない。この人たちだけやられている。これは私はどうしてもうなずけないのですが、それはどういうふうにお考えになりますか。
○政府委員(安原美穂君) 口はばったいようでございますが、およそ犯罪が行なわれたときにすべてが検挙、処罰がなされておりますならば最も公平が期せられたわけでございますが、そういうことはなかなか言うべくして行なわれないことで、そういう意味において、小園さんだけがやられたということは、そういう意味での公平という観点から見ればまことにお気の毒であるということになるのではないかと思うのでございますが、まさに、国家は、そういうことも考え、あるいは敗戦という事態も考えまして、先ほど来たびたび申し上げますように、適法に行なわれた裁判を、恩赦、最終的には大赦ということで赦免したということによって国のそういう意味での気持ちをあらわしておるというふうに理解しておるのでございます。
○阿具根登君 そういうように、何かもう大赦、恩赦で出たから何でもないじゃないかと言うけれども、その人の履歴には一生つき回っておるわけですね。そして、恩赦、特赦で赦免になったというなら、それなら遺族に遺族扶助料でも復活しておるかというと、復活していないでしょう。これは法律によって二年以下の刑以外は復活することはできないのです。 それで、ここでお尋ねいたしますが、二十年の八月十五日以降、旧軍法会議における処刑者の罪名並びに刑期人員簿というのがございますが、全員で二千三百二十三名やられております。その中に、大赦令に該当しない罪というのがあります。これは別におきます。私は、そういう何もかも一切をパーにしろと言っているわけじゃないのです。たとえば同じ軍法会議であっても、御承知のように、一般刑法で処分されておる人たちもおるわけです。極端に言えば破廉恥行為その他のやつもあります。何もかもそうだということで言っておらない。ただ、純軍隊の問題について、たとえば抗命の罪というのがあります。これは九十名おる。そのうち二年以上の人が二十七名、このうちおそらく恩給あるいは扶助料をもらっておる人は一人もいないと思います。さらに暴行脅迫が二つに分かれておって、たちの悪いのは大赦令に該当しないといわれておるのが三十名おる。その他大赦令に該当して免罪になった人が二百五十九名おりますが、その中の七十四名は復活していない。さらに逃亡の罪、これは五百一名おります。そのうち四十名は、これは二年以上の刑だから、恩給もあるいは遺族扶助料も復活しておらない。罪名不明というのがある、百四十四名、どういう罪名かひとつお知らせ願いたいと思うのですが、そのうちの半分七十名は二年以上の刑で、この人たちも遺族扶助料も何ももらっておらないはずなんです。そうしますと、最初から言っておりますように、もう戦争が終わって二十八年、しかも、軍隊はもうないのだと。その昔の軍隊の裁判によって今日も何の恩典も浴されておらない。履歴には罪名が明らかに残っておる。これで、一体、いいのだろうか。局長は法できまっておるからしかたがないとおっしゃるなら、法を変えればいい。二十八年もたって、戦争はもう一切やりませんといって、文化国家だといわれておる。そうして、最高の位にあった方々は遺族扶助料をもらっておられる、二十八年間。その命令によってやった方々は、終戦後のどさくさでほんとうの裁判も受けられずに、たった一日か二日で弁護人もおらずにきまったそれで今日まで泣いておる姿がこの姿なんです。これは、大臣、何とかしょうとお思いになりませんか。法律が悪かったら、法律を変えようじゃありませんか。
○政府委員(安原美穂君) 阿具根先生のおっしゃることは、そのあたたかいお気持ちはよくわかります。しかしながら、この前からずっと検討いたしておるのでございますけれども、政府としてあるいは国の制度としてやり得る最大限のことは大赦ではないかというふうに思うのでございます。と申しますのは、最も根本的に裁判があったという事実を消すということは、これは神であってもできない、不能のことでございます。したがって、そういう裁判があったという事実は消せない。消せないですが、次にどういうことができるかと申しますと、そういう裁判は無効であったということをさかのぼって無効にするということであろうと、こう思うのであります。大赦というのは、御案内と思いますけれども、大赦をしたときから将来に向かってなかりしこととするわけです。もう一つは、裁判当時にそういう裁判は無効であったというふうにさかのぼって消してしまう、法律的にそれを消すということが考えられるわけで、それを真剣に考えたわけでありますけれども、そういうことは、国家に革命があったとか、あるいは日本国が外国に併合されたというような、いわゆる国家としての同一性を失ったというときにおきましては、すべての過去のものをなくしてしまうということが考えられるわけでありますけれども、敗戦という異常な事態はございました、新憲法というのはございましたけれども、私どもが考えますのに、日本国家としては同一性を維持しておるのじゃないか。同一性を維持しておるとすれば、その同一性を維持しておった戦時中あるいは戦争直後のことであったとしても、その同一性を維持しておった国家において適法に成立した裁判機関の裁判というものを、これをさかのぼってパーにするというか、無効にするということは、それはどうも行政や立法ではできない。司法の行なった事柄を全部無効にしてしまうということは、国家の同一性があるということを前提にする限りできないのではないかというように考えたのでございます。したがいまして、どうしてもその後における社会情勢の変化によってその裁判を修正するという道は、やはり、残念と申しますか、遺憾ながら、恩赦という制度以上には出ないのじゃないかというのが、一応事務当局の結論になっているわけです。あと、遺族扶助料とか年金というような問題は、むしろ、司法制度の問題ではなくて、立法政策として無責任で総理府に責任を転嫁することになるかもしれませんが、それはまだこれからどういうふうにするかということはとれますけれども、適法に成立した裁判をさかのぼって無効にするということは、どうしても国家としての同一性を維持している限りはできないというのが法務当局の事務当局の意見でございます。
○阿具根登君 法の番人としてそういうことを言われるのはわかりますけれども、巌窟王といわれたあれは五十年たって裁判をやり直したんですよ。あなたの意見であれば、そういうことはできないんです。まして、私が言っておるのは、戦前戦中のことを言っておるわけじゃないんです。戦後のやつは不公平があると、これは公平じゃないんだと、そのころはお互いの気持ちがそういう問題じゃなかったんだと、だから戦後のやつはいわゆる無効にしなさいと。一切がっさいを戦前からさかのぼってやれと私は言っておるわけじゃありません。明治憲法のもとで軍隊が認められて、そして軍法会議が認められてやってきている、その間の問題はこれは消すことはできないと私は思っております。しかし、戦後いわゆるもう陸軍の統制が乱れてしまったそのとき、ただ法務官だけが何人かがおって、そうして実情調査もやられたい。今日考えてみても、一日や二日で結論が出る裁判がありますか。何年とかかっておるじゃありませんか。それに弁護士もおらない。少佐以上は二名づくように大体なっていたんです。それを、弁護士もついておらなくて、たった二日間で、しかもそのすぐあとには大赦令まで出ているんです。そういうときにこういうのをやられたのが正しいと私は思わないんです。しかし、それは法が悪いんだとおっしゃるなら、法を変えねばならぬじゃないですかということを法務大臣に私は言っておるわけなんです。だから、私は、これは非常に片手落ちでもあるし、日本の恥部だと思うわけなんです。そういう裁判がいまも生きておる、それも二年以上のものはだめだという法律があるためにどうしてもできないんだとおっしゃるならば、私がいま指摘しておる百八十四名の中にもそれに該当しておらない人がおそらく四分の三ぐらいあると思うんです。四分の三ぐらいは年限から考えても若い兵隊さんでおそらく資格はなかったかもしれないけれども、資格のある方がいまでも泣いておられる。大体、今度の憲法の精神というものは、法の精神というのは、疑わしきは罰せずということが根幹になっておるはずです。公害でも、疑問のある人は、これは公害で弁償しなさいということを言われておるわけです。すると、こういう疑いのあるやつを、法務省だけはがんとしてだめですと、こういうことでいいだろうか。それができなかったなら、どの法律をどう変えなければならぬと。これは私たちの責任ですから。しかし、皆さんのほうでもこの修正を提案する権利はあるはずなんです。まして、大臣もおられる。どうしてこういうのを救ってやれないのですか。
○政府委員(安原美穂君) いま、阿具根先生のお話の中に、間違った裁判というお話があったように思うのですが、この軍法会議の裁判につきましても、個々に具体的にその事件の裁判が間違っておるという意味のことがわかる場合には、昭和二十七年の四月二十八日、すなわち平和条約発効の日まで、軍法会議の裁判につきまして、法令の適用の誤りがあれば非常上告の道、それから事実の認定に誤りがあるという証拠が見られれば再審の道というものが開かれておったわけであります。そういう制度、いわゆる具体的な事件の救済につきましては再審、非常上告の道が開かれておったわけでありまするが、幸か不幸か、一件も再審、非常上告の申し立てがなかったという事実がございます。
○阿具根登君 あなたは法律家としてそういうことをおっしゃるけれども、全部法律家じゃないんです、あの当時の軍人がですね。私も十年近く軍隊におったんです。軍隊から一ぺんそういう判決をされてから、たとえそのあとでまあ法律で裁判してもいいですよと言ってきても、それをやるだけの考え方はない。そこまで軍隊の規律というのはきびしかったんです。何ぼ自分に不利であっても、泣いてそれを受けてきたのが現実です。それに抗するなら、自分が腹を切る以外なかったんです。そういう状態も何もお考えなく、なぜそのときにやらなかったと、そういう状態も一片の考えもなくてそういうふうに冷たい解釈をされるのが、こういうのがいままでも残っておる証拠だと私は思うのです。そういう状態じゃなかったんです、御存じのように。駐留軍がおったんですよ。その中で、それなら、この人たちが駐留軍進駐反対を叫んだ人がやるだけの勇気があったと思いますか。政府はまたそれを受けて立つだけのかまえがありましたか。法務省にそれをさばくだけの力がありましたか。ないはずなんです。それをいまのような考えであなたそうおっしゃるけれども、そういうことは当時できっこない。いまだったらやるでしょう。しかし、そのころはまだ駐留軍がおって、日本人がこういうことでも言っておりましたか。言えなかった時代でしょうが。それを、あなた方は、法の一片のたてまえだけで、助けるということは一切考えておらない。どういうお考えでしょうかね。まだ昔のようなお考えですか、あなたは。
○政府委員(安原美穂君) 私は人間としては決して冷たい男だとは思わないのでございまするが、先ほど来るる申し上げますように、法律の制度の解釈としてはこうならざるを得ないという、冷酷な法律と申しますか、そういう実体を申し上げておるわけであります。国の反省といたしましては、制度としては、何べんも申し上げますように、同一性のある限りは、恩赦という制度が国がそういう反省を示す唯一最大の制度であるというふうに考えておりまして、そのことを国としてはすでに小園大佐に対して大赦ということでしたと。刑事司法の分野においてはそれ以上のことはできないんだということを申し上げておるのでありまして、遺族の方々に対しての救援の措置を伸べられないというようなことまで立ち入って申し上げておるわけではございません。
○阿具根登君 そうすると、大赦で確かに仮出獄はされておると。しかし、それから四、五年たって、二十七年ですか、お亡くなりになっておるわけですよ。そうして、その遺族は、鹿児島で反逆の罪を問われていまださびしく墓を守っているわけなんです。それなら、大赦でそこまでやるなら、なぜ遺族扶助料を復活してやらないかということです。せめてそれが情けじゃありませんか。時の元帥やら大将やらという人たちは、全部、遺族は遺族扶助料をもらっておるじゃありませんか。その部下である大佐が、その人たちが、日本には降伏はないんだと、日本は勝つか死ぬかだという教育をしてきておったんです。それならば、そのくらいの反抗をする人がおってあたりまえです。どこの国でもそうだと思うのです。そうすると、それなら、大赦がきまったなら、大赦のときに二年以上はだめだといって今日まで二十七年間も全然遺族扶助料も出さずにおって、それでいいかというんです。私の終戦直後からのやつはパーだというのは、あなたの感覚としては無理だとおっしゃるならば、平行線でいいです。しかし、大赦になったこの人たちに、なぜ遺族扶助料ぐらい復活してやらないのか、これを私は言っておるわけなんです。
○政府委員(平川幸藏君) この問題につきましては、実は先ほどからお伺いしておりますけれども、問題はいろいろあると思います。たとえば恩給法の改正をやること自体が一つの方法ではありましても、すべての方法ではないということも言えると思います。私、資料は持っておりませんけれども、六十九名だと思いましたが、厚木航空隊の人たちで、もし恩給法を改正いたしましても、救われるのは、厚木航空隊の司令であります小園大佐だけでありまして、ほかの方は在職年がございません。在職年のないときには恩給は給付されませんから、結局、そういうことで救われるのは一人だということになるわけです。 それでは、恩給法ではどういう考え方でそうやっておるのかと申しますと、先ほど先生が言われましたように、二年以下の刑に処せられた場合におきましては、これはいわば軽罪でございます。軽罪の者につきましては、終戦の前後を問わず、すべて恩赦になりました者につきましてはこれは恩給権を復活さしております。 いま先生の御指摘のように、では恩給で救う方法はどうかと言われますと、二年をこえる者につきまして恩赦を受けた場合におきましては恩給権を回復するというような法律改正をすれば可能ではあります。しかしながら、これは私の現在の時点における考え方でございますけれども、恩給という制度は、先生も御承知のように、昔の官吏制度のもとにおける判任官——雇員には適用されません。それから軍人、教育職員、こういったいわゆる、何と申しますか、国家に対して忠節を尽くしたという人たちに対する国家保障でございます。したがいまして、一面において相当過酷な規律を課しておるわけでございます。それが、いま申し上げましたように、恩給法九条におきまして、二年をこえる刑に処せられた場合においてはすべて無条件に支給をとめる、こういう規定になっておるわけであります。そういうことでございますから、たまたま二年以下の者につきまして実は五十一条におきまして在職年を失いまして恩給権を失う人が続出したわけであります。しかし、二年以下の人につきましては、これはいわば軽罪でございますから、この人たちにつきましては執行猶予というのもつくわけでございますから、こういう人たちに対しましては法律改正によりまして実は恩赦があった場合にのみ恩給権を復活させる、こういう措置をとってきたわけでございます。 したがいまして、恩給法のもとにおける平等という観念でいきますと、もしそういう改正をするということになりますと、単に終戦後の問題だけではなくて、終戦前の問題につきましても、先ほど申し上げましたように、二年以下の者につきましては終戦前のものにつきましてもやっておりますから、そういう問題に実は直面するわけでございます。そうしますと、極端なことを申し上げますと、非常に刑期の長い人につきましても、大正十年ころの方でありましても、恩赦があった場合におきましては、これはすべて恩給権を給付するという結論にならざるを得ない。そうしますと、恩給法としては基本的な問題に触れまして、実は、この問題につきまして、私、二年ほど前からよく聞いて知っておりまして、局内においても、総理府内におきましても、いろいろ検討はしておりますが、非常にむずかしい法律的な問題があるわけでございます。そういうことで、検討はしておりますが、われわれといたしましては、今後どう考えていくか、さらによく研究はいたしたい、このように考えておる次第でございます。
○阿具根登君 むずかしくなかったら、今日こんな問題が残るわけはないんですね。むずかしいから、だから、むずかしくないのまで一緒に引き延ばすというのは、仕事をやらない証拠なんです。やれるところだけやっていって、どんどんくずしていかねばならぬと私は思うのです。 それで、この厚木航空隊の問題でも、恩給がついているのは小園大佐だけだとおっしゃるけれども、ほかの人たちがもしも官公の職についた場合は、これは年限がつながるでしょう、引き継ぐでしょう。そうすると、その人たちも全員これは何らかの恩典に浴するわけなんですよ。ただ小園大佐だけじゃないんですよ。三年なら三年、五年なら五年勤務しておった人が、別の公職についた場合は、これはつながるでしょうが。だから、あなたの考えは、極端から極端へ行っておられるわけですよ。救うというのが前提に立っておるなら、そういう議論にはならないんで、恩給のついておらぬやつはほっておけ、何も得はないじゃないかと、そういうことをおっしゃると、知らない人はそうだと思うのです。幸い私が少し知っておったからこれでいいわけなんです。たった一人のために叫んでおるようになるわけなんです。そういう意味で言っておるわけじゃないんです。その人がそういうのを復活されたというだけで、その人の名誉がどこまで復活されるか。私はそれで完全とは思わないけれども、しかし、いまおそらく世の中で相当な地位で皆さんやっておられると思うのです、相当な年輩の方ですから。それにそのくらいの復活がどうしてできないのか。ほんとうにこれはやってやろうと思うなら、できないことじゃない。それが前提になっておらないから、さあ、大正時代にさかのぼらにゃいかぬとか、明治時代にさかのぼらにゃいかぬとか。そんな明治なんかは、巌窟王じゃないけれども、ほとんどおらないですよ、私が明治の最後の人間ですから。大正なんかだって何人おりますか。わずかなものですよ。やろうと思ってできないことじゃないと思う。やろうというのが先に走っておらないからできないんです。私はそう思うのですが、どうですか。
○政府委員(平川幸藏君) 私の表現がちょっとまずかったと思いますけれども、私が言いたかったのは、恩給がただ一つの方法ではないということをちょっと申し上げたかっただけなんです。もちろん、そういう措置をとりますと、再就職しているような人につきましては、したがって非常によくなるわけでございます。もちろん再就職していない人についてはこれは影響がございませんが、そういう点は先生もよく御承知のことだと思いまして、私もそういうつもりで申し上げたわけであります。 ただ、私の申し上げたかったのは、恩給法のもとにおける公平という考えからいきますと、問題といたしましては、そこまで恩給法本来の制度として内在しておる考え方がある程度くずれるのではないかという一つの考え方もあるわけでございます。そういうことについてどういう程度まで考えれば恩給法のワクをくずさずにやれるかどうか、これは十分検討さしていただきたい、こういうことでございます。
○阿具根登君 そこで、最初申し上げましたように、私はずっと戦前からさかのぼれと言っておるわけじゃないんです、最初から言っておるように。戦後の軍法会議というものは、皆さんだって、まあ法に間違いはないけれども、全然ミスがなかったということは言えないでしょう。そのころの環境を考えてみてください。まして、弁護士もおらない、たった一日か二日で終身禁錮なんて、そんなことがいまの刑法で考えられますか。いまやれますか、そんなことを。そんなことはできないでしょう。そういうことをやられておるんだから、戦後のやつを全部やっても百八十四名しかいないんです。百八十四名ですよ、全部やっても。戦後の裁判でやられた人二千三百二十三人のうちに百八十四人しかいないんですよ。これができないということは、やらぬということなんです。どこが障害になっておるか。障害になっておるなら、法務大臣もおられますから、それじゃその法律はひとつ改正しようということでやったらいいじゃありませんか。百八十四名ですよ。できないということはないと思うんです。やらないからできないんです。
○政府委員(平川幸藏君) 先ほどの答弁の繰り返しになるかと思いますけれども、私が申し上げましたのは、人数の問題よりも、むしろ、戦前戦後を通じてそういう方に対しての処遇をいかにすべきかという問題ではないか、そういうことについて実は苦慮しておるということで申し上げたわけであります。やはりこれは検討問題でございますが、終戦後のもののみについてやるということが恩給制度をくずさずにやれるかどうかということがまず第一に検討問題で、もしそういうことがやれるならば、やはり終戦前のものまでもやるべきではないかという考え方もありましょう。そこまで割り切っていくという考え方もあります。そこまでいきますと、先ほど申し上げましたように、じゃ、どの程度までやるのかという問題もありますし、思い切って恩給法ができました大正十二年までさかのぼるということにいたしましても、現在二年以下の者につきましては大正十二年までさかのぼっておりますから、二年以下の恩赦があった者につきましてはやはり大正十二年までさかのぼっております以上は、やるとしたらそこまでやらなければなるまいかとは思います。だから、そこら辺をどの程度までやっていくのが恩給法の精神に沿った処遇のしかたであるかどうか、実はこれは非常にむずかしい問題でございまして、私どもも、まあ日夜と言えば大げさでございますけれども、しょっちゅういろいろ相寄り相検討はしておる問題でございまして、先生がいま言われましたように、むずかしい問題だからこそ現在まで残っておるわけでございまして、今後とも恩給法のワクというものをやっぱり考えながらわれわれ仕事をしなければなりませんから、そういうことを頭に置きながらいろいろ検討してまいりたい、こういうことでございます。
○阿具根登君 これは少し事情は違いますけれども、じゃ、先般は、敵前逃亡だといって罪に問われた人たちが全部無罪になったじゃありませんか。敵前逃亡だと。これは少し事情は違います。しかし、それも裁判の誤りであったから、総理大臣からまで親書が行っているじゃないですか。お断わりの手紙が行っておるじゃありませんか。それなら、この小園大佐の問題でも、たった二日間でやられて、そして弁護士一人もつけてなかった。こういうやつが正しいんだ正しいんだと、こうおっしゃるけれども、それじゃ、敵前逃亡で今度は無罪になって総理大臣からお断わりの手紙まで行ったのは、一体、どういうことなんです。同じじゃありませんか。だから、やろうと思えばできるんでしょうが。やろうと思わないからできないんです。これはほんとうはあなた方は御存じと思っているのですけれども、これは敵前逃亡じゃないからこういうことになったんだけれども、敵前逃亡だったら、昔は死刑ですよ、ほとんど。上官の命に服しなかったのは死刑じゃないんですよ。そういうのも、これは法のミスだったと、間違いだったということになったら、きれいにあなた取り消したじゃありませんか。それなのに、どうしてこれだけそういうふうにだめなんですか。
○政府委員(平川幸藏君) ただいまの問題につきましては、これは先ほどから議論されておりますように、刑の言い渡しの効力を、根っこから、何と申しますか、無効にするかどうかという問題でございまして、これの問題につきましては、私としてはこれについて発言する地位にございませんので、私としては申し上げられないところでございます。恩給につきましては、先ほど申し上げましたように、恩給法のワク内の問題として検討はさせていただくと、こういうことでございます。
○阿具根登君 これでやめますが、まあ平行線ですが、ひとつとにかく考えていただきたいと思います。私たちは、これにつきましては、もっと深い考えを持っております。どうせ皆さんとうんと論争したいと思っておりますが、せめて私は、きょう、皆さんの考えの中から、この前は逃亡であったのも間違いであったからといって取り消しになったんだから、あるいは恩給ぐらい復活してやると、そうして残り少ない人生をさみしく墓守しておる奥さん方に喜んでいただけるような皆さんのあたたかい心があるかと思ったけれども、当局にはその考えばない。だから、大臣に私はお尋ねをするのですが、どうですか、どうしてもこれはできないですか、この種の問題が。基本的な問題は別ですよ。しかし、先ほどから申し上げておりますように、今日まで敵前逃亡だという罪名で泣いてきた人も、助かったじゃありませんか、法の不備だったということで。そうするなら、この種の問題は、何も逃亡したわけじゃない。武器を持っていったわけでもない。これはいつも言われておりますけれども、いま小野田さんの生死を確かめるために政府も国民も一生懸命やっておるじゃありませんか。横井さんが帰ってこられたときは、長い間ジャングルで御苦労さまでしたといって厚生大臣が飛行場まで出迎えに行ったじゃありませんか。昔だったらこれは処分ですよ。それを行なわれておるんですよ。いまはそうじやない。そうしちゃならない。横井さんをあたたかく迎えてくれたから、非常にみんな明るくなったんです。非常にみんなであたたかく迎えたのです。今後も見守ってやらにゃならぬのです。当時であったら罪人、二十八年たったら厚生大臣がお迎えに行って国民を代表して御苦労さまでしたといって迎えていただいた。これがどんなに国民に明るい気持ちを与えたか。そういうあたたかい気持ちがあるはずです。そうなからねばならぬはずなんです。それがどうしてこの問題についてがんとしてあなた方はお聞きにならないのか、どうしてもあなた方の心境がわからぬ。だから、これは法務大臣からほんとうにあなたの気持ちをお聞きして、私の質問は終わります。
○国務大臣(田中伊三次君) 陸軍刑法、海軍刑法によりまして、国の主権の発動としていたしました軍法会議の判決の効果というものにつきましては、ただいま私のほうの局長も申しましたように、どうもだんだんと恩赦を適用し、ついに赦免の措置を講じておりますので、これをこの経過以上の方法で刑の言い渡しがなかったものとする——したいのでありますけれども、それをする法律的な技術的な方便がないということが残念でありますが言えるのでございます。問題は、先生のお話を承っておって私も考えますのは、かりにそうであるとして、公務扶助料ぐらいは復活することができぬものか。それは復活をさそうという意図であるならば、お説のとおり復活の道がある。それはないとは言わさない。復活することが妥当であるかどうかという段階になってまいりますというと、たいへんむずかしい問題が起こってこようかと存じます。何で一体死んだのか、その死亡は公務に基因するものであるかどうかというような点が、第一、問題になりましょう。第二は、この人に恩給を渡すべきものとかりにいたしまして扶助料の計算をいたしますならば、何年間在職をしたものかというような在職年限というものも重要な要素になりましょう。ですから、先生仰せの人が全部恩給扶助料が適用されるものということはなかなか言えないのではないかと存じますが、何にしても、せめて扶助料ぐらいは出したいものだという気持ちに立ってこの問題を検討するということが、とにかく公平の原則から申しまして私は妥当なところではなかろうか、こう考えるのでございます。私は、しかし、法務大臣でありまして、刑罰法規、裁判事項に基づきます刑の執行ということ以外は遺憾ながら私に権限がございませんので、これを私が確定的に申し上げるわけにはいかぬのでありますが、私もしかし国務大臣の一員でございますので、国務大臣の一員としまして先生の仰せになることをよく胸に置きまして、これは厚生省にも関係があり、総理府恩給局にも関係のあることでございますので、その関係方面とひとつよく協議をしてみたい。何か道がなかろうか、あたたかい考え方でこの問題は解決しようではないかという気持ちにならねばできぬことでございます。気の毒な立場であるということは、きょうよくお話を承ってわかりました。検討をさせていただきます。
○阿具根登君 大臣、ちょっと誤解されておるようですが、全部に扶助料を復活せいと言っているわけじゃないんです。ちゃんと年限に達して恩給に達しておる人がたとえ病死しても、その半額は扶助料として家族に渡るようになっておるわけなんです。たとえば極東裁判の方々も、これは法律になっておると思うのですけれども、そういう人たちには扶助料をやるようになっている。それから刑二年以下の人には、恩給のついている人には扶助料をやるようになっておるわけなんです。だから、ごくわずかな人なんです。そんなむずかしいものじゃないと私は思うのです。やる気があったらやれる。他の人たちは、恩給のついていない人たちが大部分です。しかし、その人たちも、公職につけば、たとえば軍隊におった年限が通算されるという利点がございます。その人たちに恩給をやれと言っておるわけじゃないのです。恩給の資格のある方にやりなさいと。また、恩給の資格のある方が亡くなったら扶助料を渡しなさいと、こう言っておるのだから、私は無理を言っていると思わない。 厚生大臣ともお話しくださるとおっしゃいましたが、厚生大臣は、ここに来る前に私が質問してまいりまして、何とかしてやらにやならぬと。特に小園大佐の一件はあまりにひど過ぎる。他の者から比べてみて、法律的に物言えばまずいけれども、私は厚生大臣として何とかしてあげねばならぬと、こういうことを言っておられますので……
○国務大臣(田中伊三次君) いまの厚生委員会ですか。
○阿具根登君 はい、いまの厚生委員会でやってまいりました。これは恩給局長も御存じのとおりです。だから、ひとつ、お話し合いの上に、こういうふうで泣いておる方が、法の不備であったならば——私は法の不備だと思っております。ならば、救済の道を講じていただきたいとお願いして、私の質問を終わります。
○主査(木村睦男君) 他に御発言がなければ、裁判所及び法務省所管に関する質疑は終了したものと認めます。 本日はこれにて散会いたします。 午後三時四十分散会