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71回国会参議院1973/06/28

法務委員会 第12号

発言数
103
登壇者
10
会派数
3
開催日
1973/06/28

会議録

原田立公明党

○委員長(原田立君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  刑事訴訟法及び刑事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、発議者から趣旨説明を聴取いたします。佐々木君。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 ただいま議題となりました刑事訴訟法及び刑事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  今日、わが国の刑事裁判は、国選弁護人の関与によって行なわれている部分の多い現状であります。刑事裁判における弁護人の地位は、憲法上の保障を受け、その職務の遂行は、弁護人の高度の教養と識見をもってしても、なお困難をきわめるものがあります。  このような重要かつ困難な任務の遂行に当たる国選弁護人に対しては、必要な費用と職務にふさわしい額の報酬が支払われるべきことは当然と考えられます。  しかるに、現在の国選弁護人に対する報酬額は十分とは言えず、その上、通常の弁護活動において欠くことのできない記録の謄写料の実費支弁についての法律上の規定もありません。かりに謄写料の全部または一部が支給されることがあっても、報酬の中に含まれて、報酬の名目で支給されている現状であります。  この法律案は、このような国選弁護人に対する報酬支給の実情にかんがみ、国選弁護人の弁護活動における必要最低限の実費弁償として、報酬とは別に、新たに記録の謄写料を支給しようとするものであります。  なお、これに伴いまして、検察官のみの上訴があった場合で、上訴棄却、上訴の取り下げのあったときの被告人であった者に対する補償に関しましても、国選弁護人と同様に記録の謄写料をその対象に含めることといたしました。  この謄写料は、いずれも裁判所が相当と定めるところによることとなっております。  以上がこの法律案の提案理由及び内容の概略でありますが、何とぞ、慎重に御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願いいたします。

原田立公明党

○委員長(原田立君) 以上で説明は終了いたしました。  本案に対する質疑は、後日に譲ることといたします。     —————————————

原田立公明党

○委員長(原田立君) 次に、検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 それでは、大臣の御都合などもあるようですから、先に矯正局長に御質問さしていただきます。  この間の刑事補償法の審議に関連いたしまして、社会党の各議員、その他の各委員の先生方から、刑務所における、刑務所の収容者の管理の問題などについていろいろと御質問があったわけなんですけれども、ちょうどまたこの六月二十一日のこれは各紙に報道されたわけですけれども、三重刑務所におきまして服役中の赤軍派の平田という青年が、独房でまたまた自殺をしたということが報ぜられたわけでございますが、これは記事によりますと、今月の十二日の朝自殺していたということで、これはまあ二十一日になって報道されたわけなんですけれども、この事実は間違いないわけでございますか、大体新聞に載っている事実で。

長島敦法務省矯正局長

○政府委員(長島敦君) ただいま仰せのとおりでございます。間違いございません。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 そうすると、先日のあの刑事補償法の法案審議のときに、もうすでにこの事実は矯正局長のほうではよくおわかりになっていらしったわけでございますね。

長島敦法務省矯正局長

○政府委員(長島敦君) 記憶がはっきりいたしておりませんが、当時手もとに、それまでに起こりました自殺事故の概要を所持しておりまして、そこの中には入っていたと思いますが。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 これはね、実はついこの間の、今月の十二日のことですね。まあそれくらいに、局長のほうで御記憶になれないくらい、刑務所の中での事故というものが多いわけでございますか。本年に入ってから服役中に自殺をしたという人、何人ぐらいおるわけでございますか。自殺に限らず、まず死亡した人が服役中に何人いるか。そのうち自殺と考えられる人が何人いるかということを述べていただきたい。ことしに入ってからと昨年一年分のことがわかりましたら数字をあげて説明していただきたいと思います。

長島敦法務省矯正局長

○政府委員(長島敦君) 御指摘のように、たいへん多数の事故が発生いたしまして、まことに申しわけないと思っておりますが、自殺事故につきましては、今年に入りましてからただいままで八件起こっております。八件でございます。で、昨年度が年間で十六件起こったわけでございます。で、そのほかに本年度は高知で職員が一名殉職いたしまして、昨年も大阪で殉職いたしておりますが、一名殉職事故がございました。それからもう一件は、甲府の刑務所の中で囚人同士がけんかをいたしまして、その結果片一方の受刑者が死亡いたした事故がございました。それからそのほかに事故死といたしまして、いままでに、本年度二件事故死が発生しておりますが、一つはおもちがのどに引っかかりましてなくなったという不幸な事故が正月にございました。もう一件は、運動場でソフトボールをやっておりました際に転倒いたしまして死亡した事故がございます。  以上申し上げましたように、総数にいたしまして、死亡いたしました事故、自殺、その他加えまして全部で十二名でございます。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 ことしになってから八件というのは、これ非常に数が多いんじゃないか。去年の十六件にしてもたいへんに多いと思いますけれども、一応どこの刑務所で何日にどういう事故があったかという資料をこの委員会に出していただきたいと思うわけです。

長島敦法務省矯正局長

○政府委員(長島敦君) はい、承知いたしました。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 このように去年十六件、ことしもうすでに半年で八件というふうな自殺者を出しており、そのほかまたけんかなどでなくなる、あるいは事故などでなくなるというようなことは、やはり本人の意に反して国が国家権力で収容しているわけですから、それはやっぱり国の責任において十分に安全を確保するということは当然のことじゃないかと思うんですけれども、そういう事柄について、先日も鈴木先生もいろいろと御質問なすったわけでございますけれども、そのやさき、あるいはそのさなかにこれは起こっているわけですけれども、何かこういうことに対して——これは数が多いからたいへんだということだけでは片づけられない、何か鈴木先生の御質問、あるいはこの平田被告の自殺とかいうようなことに関して、その後矯正局として新たに、少しでもいい方法を考えついて、こうやっているとか、何かそういうふうな特別なことをやっていられると思うんですけれども、またやってもらわなくちゃ困るのですけれども、どういう改善策をいまさしあたりやっていられるか、具体的に説明していただきたい。

長島敦法務省矯正局長

○政府委員(長島敦君) 一つ考えられますことは、こういった事故を起こしそうな者とか、あるいは自殺を起こしそうな者というものを事前にできるだけ把握いたしまして、これについて特別の注意を払うということでございまして、この点につきましては、すでに東拘の森被告の自殺事件がありました直後から、心理学、精神医学、それから保安のほうの専門家が入りまして検討を続けました結果、一応の試案でございますけれども、自殺要注意者判定表というものをつくりまして、解説とともに各庁に配りました。これに基づきまして、各庁におきましてはさらに具体的なチェックリストと申しますか、そういうものを使いまして、ただいまそのリストに基づいてやっております。で、東京拘置所等におきましては、実はそのチェックリストを使いまして、危険だというふうに判定しました者は一カ所に集中的に集めてまいりまして特別の警備をやっておりますが、そのせいでございますか、どうですか、最近東京拘置所におきましても自殺の企図が非常に例年になくふえておりまして、ことしの一月からただいままで実は十七件にすでに達しておりますが、自殺企図がございまして、それをこういう特別の注意をしておりました関係がございまして、十七件未遂の段階でとめております。で、実は大阪の拘置所でも同様でございまして、先日の状況では、ことしの年頭から五件未遂でとめた事件が出ております。まあそういうふうにいたしまして、まず第一の方法は、要注意者を的確に見つけ出す、それに対して特別に気をつけているということが一つの有効な方法だと思っております。  第二の方法といたしましては、これは物的な防護措置でございまして、自殺に使うようなひも類でございますとか、あるいはタオルでありますとか、あるいは房内に突起物等ございますと自殺に使われますし、それから鉄棒等を金網で張るとかというようなことも必要でございます。所持品、それから房内のいろいろな設備の改善ということが必要でございます。この点につきましては、これまた東京拘置所を実験場にいたしまして、幾度も房の試作をいたしました。で、ようやく五回にわたって試作を重ねました結果、ほぼ満足のできる房ができまして、つい先日大臣も自分で見に行かれて、さらにその場で一部御指摘がありました。一応私どもとしては理想的と考えられる房が試作できましたので、これに基づいて早急に各施設の、ことに要注意者を入れる房を優先的にしまして、そういう物理的な保護の手を加えたいというふうに考えております。で、東京拘置所につきましては、すでに予算をつけまして、あそこの中の五十カ房をそういう特別の房にするということを早急にこれはいたします。  第三には、こういう問題についての矯正職員全体の意識と申しますか責任感と申しますか、そういうことを変えることが必要だと思っております。実はそのために、ことしの三月に臨時に管区長の協議会というのを私は開きまして、管区長にこちらの、本省としてやること、それから管区長として、あるいは現地として気をつけてほしいことということで協議をいたしました。その後さらに管区の第一部長協議会の席で趣旨を徹底し、協議をいたしました。ただいま保安課長会議を開いております。この会議は西ブロックと東ブロックに分けまして、先般東ブロックの会議が終わりまして、ただいま西ブロックで、大阪で会議をやっておりますが、保安課長が出ております。議題は自殺事故その他刑務事故の防止についてということで、専門の保安課長が全部寄りまして協議をいたしております。まことにこういう事故が多発して申しわけないのでございますけれども、近くこの七月の五日、六日に刑務所長会同がございますので、その機会にさらにまた協議をいたしまして、何としてでも、これは少しでもとめていきたいというみな真剣に実は取り組んでおるのでございますけれども、結果的にかような事態になりまして、まことに申しわけないと思っております。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 いろいろと御努力なさっているということはよくわかりますけれども、いま伺いますと、東京拘置所で模範的なものをいま試作なすったということですが、その見取り図といいますか、図面などのようなものも委員会のほうに出していただきたいと思うわけです。

長島敦法務省矯正局長

○政府委員(長島敦君) 承知いたしました。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 それと、この自殺をするおそれのある者を分類してどうこうといういろいろ御説明があったですけれども、この新聞記事によりますと、この三重刑務所の件も、全くそのおそれのない部類に属していたというふうに報ぜられて、刑務所長もこの平田被告の自殺については全然考えておらなかったというふうな発言に新聞紙上ではなっておるわけですけれども、この分類というものがかなりに的確に行なわれているのかどうか。逆にまた見ますと、自殺をするようなおそれのない者でも、これはちょっとほかの者より自由を束縛してやろうというふうな看守の裁量とか主観によって、全然おそれのない者がそういうところに入れられるという、これはまた一種の人権侵害になると思いますし、非常にむずかしい問題ではあろうと思いますけれども、そういう基準を判定するような心理的あるいは精神医学的な専門家というようなものが、刑務所の中にはたして整っておられるのかどうかですね。  たとえば問題の三重刑務所などでは、そういう心理学的な専門家というようなものがどのくらいおられるのか、まあむろん行刑の専門家であるからそれで間違いないんだということかもしれませんが、現実にこういうふうに一〇〇%違う結論が出てくるというところを見ると、まだまだそちらのほうの研究というものが発達していないんじゃないか、そういうふうなことについて、そういう専門家を養成することができるのかどうか、またそういう人たちに刑務行政について協力してもらうことができるのかどうか、そういうことについての今後の方針といいますか、見込みというふうなことを局長からおっしゃっていただきたいわけです。

長島敦法務省矯正局長

○政府委員(長島敦君) 先生御指摘のように、精神医学とかあるいは心理学の専門家の方々を各施設に全部配置するということは、たいへん現状では困難でございまして、そういう人が得られない状況でございます。そこでひとつは、ただいまやっておりますのは、昨年から分類処遇規程というものを実施いたしまして、それに伴いまして、各矯正管区の中に一つ拘置所を、主として拘置所でございますけれども、これを分類センターに指定いたしております。そこに専門の心理学とか精神医学の人たちを集中しておりまして、まず刑が確定いたしますと、そこで十分に本人の素質とかいろんな問題点を調べまして、その報告をつけて刑務所のほうへ、服役する刑務所へ送る、その後におきましても、そこの分類センターの技官があと追いの調査と申しますか、そういう刑務所にたずねていく旅費を入れておりまして、ときどきたずねてまいりましてその後の状況等を見ておる、その機会に現地の刑務所の職員から、たとえば看守さんとか看守部長さんからいろいろ本人の動静を聞くとか、いろいろなことを聞いておりまして、その機会にそれについて専門的な立場から、それはいまどういう心情にあるとか、どういう反応じゃないか、それはこういうふうに扱ったらいいんじゃないかというような助言をしております。  これがたいへん実は現地の看守さん等にも好評でございまして、従来勘にたよってやっておったことがそういう科学的な目から見て解説してもらう、教えてもらうということで、私は将来、できますならば少なくとも各施設に一人ぐらいは心理の専門職を入れていきたいと思いますが、当面はこういうことで意識を変えてまいると申しますか、一般の看守さんが人間を見る目を、もう少し深く見る目というものを養成していきたいと、先ほど申しました自殺判定表も、しろうとがまだいま使っておりますので、非常に不確かでございますけれども、ただそういうものを通じまして、従来何となく見ておりました外形から心の中を少しでも見ようという、このきっかけにこれが実はなってくるわけだと私思っておりまして、ぜひこの方向は、今後の矯正処遇に非常に大事なことだというふうに考えて、推進したいと思っておる次第でございます。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 これは矯正局でどの程度やれるのだろうかということ、これは正直なところ、いまのお話のように、今後各刑務所に一人ずつぐらい心理学者を配置したいという局長の御意見でございます。実はあとで、次の今度の刑法改正の問題で、法制審議会で一応結論が採択されたという保安処分の問題とも関連するわけなんですけれども、専門の心理学者を将来刑務所の中に、矯正局とすると一人ずつぐらい配置したいといま努力しておられる段階ですね。精神医学者というようなものは、いま矯正局の中ではどのくらい確保しておられるのですか。

長島敦法務省矯正局長

○政府委員(長島敦君) 手元に詳細なあれが見つかりませんが、私の記憶では数名だという記憶でございますが。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 これは矯正局全部で、全国で数名……。

長島敦法務省矯正局長

○政府委員(長島敦君) はい、さようでございます。  なお、ちょっと申し上げさしていただきたいのでございますが、先ほど各施設に心理職のないところが多いと申したのでございますけれども、これは専任職員としてはそうでございますが、鑑別所が近くにあります刑務所の場合には、現在鑑別所の技官に、併任とか臨時応援とかいう形でずいぶん協力をしてもらっておるわけでございます。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 これは去年も、いまのお話にあった大阪拘置所で看守の方が収容者に殺害されたということが去年の夏ございまして、実はそのときの場合も、新聞で報道されたのが、事故が起こってからだいぶあとだったわけです。局長が前の局長の時代だったかと思うので、どの程度御承知か知りませんけれども、それで、私もそのとき新聞を見まして、すぐに大阪の拘置所へ行きまして、看守の方がそういう非業の最後を遂げられたということ、非常にお気の毒なのでお悔みに上がって、そうして、実はあれは理髪室で収容者に殺害されたわけですけれども、そういうふうなことで、刑務所で働いていられる刑務官の安全というようなことからも、どういうふうになっているのか、その場所を見せてほしいということで聞いてみますと、拘置所の中、各階に同じような設備になっているそうなので、別にそこじゃなくてもいいからどうなっているのか見せてほしいということでお尋ねしたのですけれども、二時間ほど待たされて、結局これはお見せするわけにいかぬということで、まあお引き取りくださいというようなことで、私まあ簡単にいえば追い返されたわけですけれども、どうもそこら辺で、法務省のこの矯正行政のやり方というものが非常に極端な秘密主義じゃないかと思うのですよ。  こちらはきわめて善意で、刑務官の方がそういうことでなくなった、お気の毒だということで伺っているわけですよね。そうしてできれば理髪室、まあはさみを使わないと理髪はできないだろうけれども、もっと安全な装置ができるなら、私どものほうにも考えさしてもらいたいということで、勉強のために、今後の対策のために伺っているような場合でも、いやもうそういうことは御心配いただかないでも、法務省のほうでちゃんとやりますということで結局見せないわけですよね。そこら辺に非常に法務省、特に法務省の中でも矯正局の中の極端な秘密主義というものがあると思うわけなんです。  その場合も非常に当時問題になっておりまして、そういう事故が起こって看守が殺された。だのに長い間所轄警察に届けがなかった。当時警察署のほうもそのことでたいへんにこぼしていたわけですよ、殺人事件なんですから。それを、ほかのところならともかく、法務省が、これは検事に言ったからということになっているのか知らぬですけれども、所轄警察に届けもないというようなことで、当時大阪府警としても非常にまあ釈然としないものがあったようですけれども、今度の三重刑務所の自殺の問題などにしても、これはずっと、この新聞に載って外部に知れたのが、日数が十日余り、十日ほどおくれておりますね。ここら辺にも、どういうわけでこれは十日ほどおくれているのか、新聞に載る場合と載らぬ場合とあると思いますけれども、これが全部各紙そろって同じ日に載っているということを見ますと、これは事故があった九日目ですね。九日間伏せてあったのじゃないかというふうに思わざるを得ない。そこら辺に矯正行政というものに対する非常な秘密主義、また外側から見れば国民から目を閉ざされた厚い壁の向こうにあることは、われわれ国民の監視の目の行き渡らないところで行なわれている。そこら辺に非常に何というのか、法務省一辺倒というか、国民の側から見たらたいへん不安な感じがするわけです。中で何が行なわれているかわからない。そこら辺で、この三重県の場合も、警察にはすぐに届けてあるんですか。どうなっているんですか、こういう件は。

長島敦法務省矯正局長

○政府委員(長島敦君) 事故が発生しました直後に、検察庁並びに警察に通報いたしておりまして、その日に検察庁から検察官が参りまして検視をいたしております。副検事でございますが、その日の、事故が発生いたしましたのが午前の六時五十五分でございますが、午前の九時三十五分に検察官が参りまして検視をいたしております。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 これは別に警察へ届けるとかいうことがいいとか悪いとかいうことじゃないけれども、結局法務省内だけでこういう事柄をすべて片づけてしまって、まあできれば一般の国民にはわからずに済ませておきたいということが、いままでの刑務所の中で起こった事柄について常にそういう問題があるわけなので、矯正局がいかにいろいろ服役者のために骨を折っている、また服役中の人の人権を守るために努力をしているとおっしゃっても、それは私どもにはぴんとこないわけですよ。この刑務所あるいは矯正局管内のところに収容されると、どういうことになるかわからないという不安がつきまとうわけで、これはあとから述べる、次に続いて質問さしていただく今度の刑法改正の保安処分というものについて、美辞麗句を幾ら並べていただいても、私どもいままでの矯正行政を見ていますと、いいことをいろいろ言うていただいても、おそらく多少とも法務省の矯正のあり方というものを直接間接知っている者は、にわかにそれはけっこうですとは言えないだけの土壌なり地盤なりがいままでの矯正局のあり方の中にもう抜きがたいものがあるわけなんですね。そういうあたりが、服役者の自殺の問題、あるいは自殺に派生的に見られるような服役中の者が死を選ばずにはおれないというふうな、これはいろいろ心情的なものがあると思いますけれども、少なくとも好ましい状態ではない。好ましい環境ではないからこういうことが起こるんだと思うんですけれども、そういうものと何となく陰惨な暗い面とそのまま結びついていると思うわけなんです。  そういうことで、ともかく一挙に解決する事柄ではないと思いますけれども、今度お考えになっていらっしゃるモデルの刑務所の設計を見せていただいて、また、できるだけこうした問題を防ぐために矯正局として努力なさっているそうした資料を、少なくとも法務委員会のほうへは公表していただいて、またそれなりに国会でも努力するという問題が、これは重大な国民の人権の問題ですので、努力できるように、そうした資料もできるだけオープンに提出していただきたい。そういうことを特にお願いしておくわけなんでございます。その討議されている資料などについても、委員会へ出していただけるようなものがありますか。

長島敦法務省矯正局長

○政府委員(長島敦君) たとえば、先ほど申し上げました自殺の要注意者判定表とかそれの解説等は、通達で流しておりますが、そういうものは喜んで提出いたしたいと思います。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 そうした資料をできるだけたくさん出していただきたいと思います。

長島敦法務省矯正局長

○政府委員(長島敦君) なお、あれでございますが、私も先生ただいま御指摘いただきました点を非常に痛感しておりまして、やはり矯正の内部で起こっていることを少なくとも国会の諸先生方に正直に申し上げて、いろいろお教えをいただいて一歩一歩直していきたいと、私ほんとうにそういうふうに思っておりますので、御了承いただきたいと思います。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 ぜひそのようにお願いいたします。  それでは、大臣来られませんが、次の問題に入りたいと思うんですが、これは六月二十三日の各新聞に報ぜられておりますが、二十二日に、法務省で刑法の全面改正草案を審議しているところの法制審議会の総会で、精神障害者やアルコール中毒患者などに対する保安処分の新設というようなことを採択されたということが報ぜられておりますが、そのとおり間違いないわけでございますか。

鈴木義男法務省刑事局参事官

○説明員(鈴木義男君) ただいま御指摘のとおりでございまして、六月二十二日の法制審議会の会議におきまして、保安処分を採択するのが適当であるという決定が行なわれております。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 これは私から申し上げるまでもなく、保安処分制度の新設というものが今度の刑法改正作業の重要なポイントの一つになっている。この法制審議会で採択されたというこの保安処分の内容をいまちょっと簡単に述べていただきたいと思うんです。前に法務省の刑事局から、昭和四十七年三月につくられた法制審議会刑事法特別部会改正刑法草案が私の手元にあるわけですけれども、この内容とほぼ同じですか。ほかの委員のほうにはまだ届いてないようでございますので、できれば簡単にちょっと説明していただきたいと思うわけです。

鈴木義男法務省刑事局参事官

○説明員(鈴木義男君) この法制審議会は、御承知のように法務大臣の諮問機関でございまして、法制審議会の総会と申しておりますけれども、その親会議と申しますか、そこには、刑法だけではなくて各法律いろんな分野の専門の方々が集まっておられるわけでございます。したがいまして、たとえば刑法の全面改正という問題を総会だけで議論するということはできませんので、それぞれの分野の専門家を集めた部会というものをつくっておるわけでございます。  この刑法の全面改正につきましては、刑事法特別部会という部会をつくりまして、そこで昭和三十八年以来全面改正案の審議が行なわれてきたわけでございますが、その結果が、ただいま佐々木先生からもお示しのございました法制審議会刑事法特別部会改正刑法草案というものでございます。先日六月二十二日の法制審議会の総会の会議で採択されました案は、この刑事法特別部会の改正刑法草案の案どおりのものが六月二十二日の総会で採択になったわけでございます。  内容を簡単に申し上げますと、保安処分と申しますのは刑罰とは違いまして、刑罰というのは、過去に悪いことをしたために、その悪いことをしたことに対して非難すると申しますか、あるいは、刑の目的はいろいろございますけれども、とにかく悪いことをしたということに対してそれを非難するという趣旨で刑が言い渡されるわけでございますが、これに対しまして保安処分というのは、悪いことをしたからこらしめる、処罰するということではございませんで、過去に犯罪となるような行為をした者がさらに将来同じような行為をするおそれがたいへん強いという場合に、そういうことがないようにという角度でいろんな手当てを考えていこう、こういうのが保安処分というものでございますが、この保安処分につきましては、大体従来は二通りの制度がございまして、一つは、改正刑法草案もそうでございますが、精神障害者であるとかあるいはアルコール、薬物の中毒者であるとかそういう人たちに対して主として医療的な処置を施すことによって、そういう人たちに医療的な処置を施しましてそういう精神障害あるいは中毒というものをなくすることによって、もうそういう人たちが再び犯罪を犯さないようにしようということを主としてねらったものと、それからもう一つは、これは外国では相当使われておりますけれども、何回も何回も罪を犯す普通の常習犯と申しますか、そういう人たちに対して、もう再びやらないようにある期間閉じ込めておくという——これはちょっと閉じ込めておくというとたいへんことばが悪いんですが、社会から隔離してそういう人たちが罪を犯さないような措置をとっていこうと、こういう二つの考え方があるわけでございますが、改正刑法草案では、そういう、正常な者でなおかつ犯罪を繰り返す者に対してただ社会から隔離しておくだけというような意味での保安処分は適当でないということで、精神障害者に対する治療処分、それからアルコール中毒あるいは麻薬その他の薬物中毒者に対する禁絶処分と、こういういずれも医療的な処置をとるという二つの処分だけを認めることになったわけでございます。  それぞれの内容を簡単に申しますと、まず、精神障害者の場合でございますが、精神障害でかつその程度が相当にひどく、刑法で申しますと心身喪失あるいは心身耗弱、責任無能力あるいは限定責任能力という程度でございますが、そういうような状態にまで達した者が犯罪となる行為をした場合において、将来またそういうことをするおそれがある、それから本人に治療あるいは看護を加えなければまたそういうことをしてたいへん世の中にとって危険であるというふうに判断された者に対しては、治療処分という保安処分の言い渡しをするようにしております。この治療処分の言い渡しを受けました者は、保安施設と呼んでおりますが、そういう特別の施設に収容して治療、看護の処置を施すわけでございますが、収容の期間は三年でございまして、もし三年の間に十分な成果があがらないという場合には、さらに二回だけ更新する、二年ずつ更新することになっておりますので、原則としては七年まで収容することが——原則と申しますか、それでなおらない場合には七年まで収容することが可能になっております。ただ、こういう精神障害者の中に非常に危険な人があって、たとえば殺人とか放火、強盗、強姦というように重大な犯罪を犯すことが非常にはっきり、そういう犯すおそれのあることが非常にはっきりしておる者もございますので、そういう者については、場合によってはそれ以上収容しておくということもできるようになっております。  ただ、三年とか七年とか申しましたけれども、これはいずれも最高限の期間でございまして、その期間が来る前でありましても、もし精神障害者の現在の状況から見て、これは施設の中で処遇するよりも施設の外で処遇したほうがいいというふうに判断されます場合には、いつでも、仮退所と申しまして施設から外へ出して、そのかわり今度は何と申しますか、現在行なわれております保護観察という制度が一般の犯罪者については定められておりますが、その保護観察を、医療的な意味での保護観察ということで療護観察ということにいたしまして、普通の保護司さんではなくて、精神医学に造詣のある人、特に精神科ソシアルワーカーというようなことばも使われておりますが、そういう人たち、そういう医療的な専門家を中心にしたアフターケアをやっていこうと、こういう考え方でございます。  それから、アルコール中毒あるいは薬物中毒におちいった者が犯罪を犯した場合につきましても、要件等は大体治療処分の場合と同じでございますが、この中毒者に対する禁絶処分は、期間が限られておりまして、原則として一年、場合によってはあと二回更新できる、すなわち三年までは収容できると、こういうことになっておりまして、期間が非常に制限されておりますけれども、その他の点においては大体治療処分と同じでございます。  それから、なおこの改正刑法草案等は、前の国会のときに、たしか衆議院、参議院のほか、委員会にはお届けしたと思いますけれども、委員の方方も、先生方もおかわりになったようでございますので、あらためてまた提出さしていただきたいと思います。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 いまお話がありましたように、この資料、これは委員会に正式に、最も新しい改正草案をお出しいただきたいと思うわけでございます。  それじゃ、大臣がまだお越しになりませんので、お越しになるまで、主として法律的な問題について伺いたいと思うのでございますが、鈴木さんはこの刑法改正について非常にお詳しいわけなんで、ちょうどこの機会にいろいろとこまかいことを伺ってみたいと思うんですが、いまお話しになったこの治療処分を受ける精神障害者というものの定義ですね。それはこの刑法改正草案の十六条に、責任能力についての規定がございますね。これは、「精神の障害により、行為の是非を弁別し又はその弁別に従つて行動する能力がない者の行為は、これを罰しない。」ということと、それから第二項に、「前項に規定する能力が著しく低い者の行為は、その刑を軽減する。」というふうな規定がありますけれども、いまの治療処分の対象となるのはこの刑法第十六条に該当する人を対象と考えておられるのか、あるいは精神衛生法第三条に、「この法律で「精神障害者」とは、精神病者、精神薄弱者及び精神病質者をいう。」というふうに規定してありますが、そのように広い範囲を考えておられるのか、どういうふうになっているんですか。

鈴木義男法務省刑事局参事官

○説明員(鈴木義男君) この刑法改正草案の第十六条とただいまの治療処分の対象になるものの範囲でございますけれども、治療処分の対象になるものは、草案の十六条にございます、この「精神の障害により、」云々ということで、責任無能力あるいは限定責任能力になるものよりもさらに範囲が狭いと、こういうふうに考えております。  と申しますのは、この第十六条で、「精神の障害」ということばが使ってございますが、この精神の障害は、一時的なもの、すなわち、たとえば何と申しますか、疲労のために頭が混乱したというようなものもこの十六条の「精神の障害」の中には入ってくるわけでございますが、治療処分の要件を規定しております百二条の「精神の障害」というのは、そういう一時的なものは別でございまして、将来もこういう精神障害があるということを前提としておりますので、かなり永続的な精神障害になるというふうに考えております。  それから、なお、精神衛生法の定義との関係でございますが、これは精神衛生法の定義がそのまま刑法の定義になるということはございませんで、精神の障害というものについては、これはいろんな医学の進歩もございまして、たとえば現在でも精神衛生法でいわゆる心因性の精神障害と申しますか、非常に何と申しますか、不安とか、おそれとか、そういうことで、本来なら正常な人が、相当長期間にわたって非常に何と申しますか、正常でないような行動をするという場合がございますが、そういう者を入れるか入れないかというような問題もございまして、刑法で精神の障害といっておりますのは、医学的に見て精神の障害と言われるようなものを考えておるわけでございまして、必ずしも精神衛生法にありますような三種類のものだけを考えておるわけではございませんが、現在の精神医学というものを前提にいたしますと、おそらくこの精神の障害というものの中には、いま精神衛生法に書いてありますような精神病、それから精神薄弱、精神病質等になるということになろうと思います。ただ、先ほども御指摘申しましたように、百二条をごらんいただきますと、「精神の障害により、第一六条第一項に規定する能力のない者又はその能力の著しく低い者」という限定がついておりますので、精神病者、薄弱者、あるいは病質者であるからといって、すぐ治療処分になるのではなくて、その程度が非常にひどくて十六条に定められておりますような場合に該当することになった場合に初めてこの治療処分も可能になると、こういうことでございます。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 これは、先ほどの矯正局長に対する質問を聞いていただいてもおわかりだと思うのですけれども、いまの法務省の矯正局のあり方というようなものに——心理学者も全国で数名しかおらない、あるいは精神医学についての専門家はほとんどおらない。これは、法改正をすればそういう人を確保するんだ、確保してもらわなくちゃ話にも何にもならぬわけですけれども、別に、普通の人であっても、いまも聞いていると、一年の間にたくさん自殺者がいる。しかも自殺未遂者というのが東京刑務所だけで十七人、大阪拘置所だけで何人ですか、いまお話がありましたね。私どもの知らない自殺未遂者というような数もずいぶん出ている。これが普通の状態の人でそうなんですからね。それを今度は保安処分によって、矯正局の所轄のところで治療処分をしようとおっしゃるわけですけれども、いまお話を伺っていますと、対象となる者は医学的に見て精神的に欠陥のある人ということになると思うのですが、まずこれで、治療、治療と言われるけれども、本気になってこれは治療ができるということをまじめに考えていられるのかどうかということですね。  いまの精神病院、普通に任意に入退院のできる精神病院でも、これは、精神病者に対する人権侵害とか、あるいは精神病者が安心して治療を受けられる、あるいは家族が安心して治療をまかせられる施設というようなものが、病院というものが非常にいま日本では問題が多くて、完全に安心してまかせられるというところがなかなかないわけですね。御承知のとおりですけれども。これをほんとうに本気になって、この治療処分ということばを使っているけれども、治療するつもりがあるのかどうかということですね。これはどういう発想で、どういう展望でそういうことを考えていられるのか。これ、鈴木さんよりも、大臣来られたらあとで伺いたいと思うのですけれども、現実にこれは、治療という名前がついていても、現実にはこれは社会から隔離する、社会防衛の意味のほうがウエートがずっと重いのじゃないかと思うのです。まずこれで、この治療というものができるというふうに鈴木さん個人としてでもお考えになって、この刑法改正というものと取り組んでおられるのかどうか。ちょっと、簡単でけっこうですから言ってください。

鈴木義男法務省刑事局参事官

○説明員(鈴木義男君) たいへんむずかしい問題の御指摘でございますけれども、最初にちょっと申し上げますと、この改正刑法草案あるいはこれについて審議をしております法制審議会というのは、法務大臣の諮問機関でございまして、まだ、その諮問機関で一定の結論が出たという段階でございますので、法務省あるいは政府としてどういうふうな考え方をとるのかということは、これから実は考えなければいけない問題でございます。ただ、さしあたって私どもで考えておりますし、それから、この法制審議会、特に刑事法特別部会におきまして従来この問題を議論されてまいりましたときにも、一体こういう施設をつくってその趣旨に合ったことができるのかどうかということが一つの大きな問題になってまいったわけでございまして、たとえば外国等で相当一生懸命やっていい効果をおさめておる国も非常にたくさんあるわけでございますけれども、国あるいはその一部の施設におきましては、いま御指摘のように、ただ入れておくだけで何もしないというような例も報ぜられておるわけでございまして、こういう点については、保安処分を制度化していこうというときには、りっぱな施設と、それからそれについて専門的な職員を十分に配置できて、そういう状況でこの執行ができるということを前提として考えるのであって、とにかくつくっておいて、あとは、そういう医療的な処遇ができるかどうかはやってみた上でできなければしょうがないというようなことではだめだということは、この保安処分の問題について審議をした人たちのほとんど一致した意見でございます。  すなわち、ちゃんとした医療目的に合するような処遇ができるということを前提にしておるわけでございますが、事実できるかできないかという点につきましては、これは一つの見通しの問題ではございますけれども、日本におきましては、たとえば刑務所関係では医療刑務所、それから少年院関係では医療少年院等の実績が相当にございます。おそらく完全ということになるとたいへんむずかしいわけでございますが、日本の医療刑務所なりあるいは医療少年院なりの実情を見てみますと、諸外国等に比べましても決して劣っているという——もちろん諸外国の制度は千差万別でございますので、いいのもあり悪いのもありますけれども、大体水準的に考えて決して劣っているということはないということが言われるわけでございまして、そういう現状を前提にいたしました上で、さらに医療ということを目的とした処分をつくり、そのためにやるということであれば、相当程度のことができるであろうという見通しが、この草案、保安処分について審議された人たちの一種の共通の認識というふうに申し上げていいと思うわけでございます。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 大臣のお時間がないようですので、先に大臣に対する質問をさしていただきます。  大臣御承知のとおり、この間法制審議会の刑法部会で、刑法改正草案の大きなポイントであるところの保安処分、これが採択されたということでございますけれども、そのことについていま質問をさしていただいているわけですが、大臣に特にお伺いしたいと思うことは、いまも伺っておりましても、いままでの刑法の体系から言いますと、これは過去に何かの犯罪を犯して、それに対して処罰をするというのが、これが日本の刑法のたてまえであって、いろいろ学説もございますけれども、すべてが、やはり責任のある者が処罰の対象になる、あるいは応報刑にしても——応報主義にしても、すでに過去においてなされた刑罰に対する制裁というものが対象になっているわけですが、今度の保安処分というものは、これはまだ何もやっていない者でも将来犯罪を犯すかわからぬという者がその対象になっている。  そこら辺で、日本の罪刑法定主義というものを根本からこれはくつがえされるのではないか。憲法の三十一条との関連においても、はたしてこれが刑というものなのか、保安処分が。保安処分が刑というものかどうかということ、あるいは刑というものでないとすれば、なぜ保安処分を刑法典の中に新たに織り込まなければならないのか。これは法制審議会の御意見で、大臣の御意見は必ずしもそうでないかもわかりませんが、これは大臣としての考えをひとつ率直にお述べいただきたいと思うわけです。

田中伊三次自由民主党法務大臣

○国務大臣(田中伊三次君) 先生仰せのように、この刑罰、刑ないし刑罰のたてまえは、仰せのとおりにかつて犯罪を犯したということが前提でございます。それに対する罰則でございます。そういうことでございますが、これはおことばにも、必ずしもそうと私は受け取っておるわけではございませんが、刑ではないので、刑ではないが、そんならどうして刑法の中に入れるのかと、こういうおしかりを受けるかもしれませんが、刑ではないが、心身の喪失、精神耗弱等の者が、その結果かつて罪を犯した、刑罰法規に触れる罪を犯した、将来犯すおそれがある、こういうことが、かつて犯したということが前提になって将来またやるかもしれぬおそれのあるということが、その要素がこれに加わっておりまして、保安施設に収容するということをやりたいと言っておるのでございます。  そういうことでございますので、罪も犯したこともない者を何事かというおしかりはいかがなものであろうか。そういうふうに受け取られておるとすると、こちらから説明しております説明が十全でございませんで、舌が短いのでそういう誤解を受けることになるのかと——かつて罪を犯したということを前提で将来またやるかもしれぬというおそれのある場合においてこれをやっていこう、これは刑じゃないという、言いわけのようでございますけれども、何だと、こういうことを言うてみますと、病院に近いものだ、こういうことだ。いまは、先生御承知のとおり収容しておりますのはこれは強制力がちっともない、しかし幾らか強制力はあるんです。病院と違う点は、たとえば逃走自由、逃げて出ること自由というような現在のような精神病者を入院させております措置入院とは違うんですね。いまは強制力がありません。逃げて出たから刑罪があるという逃走罪はないんです。ところが、これは逃げて出ると逃走罪という罪名が出てくる、こういうことになりますと、ちょっと刑務所にも似ておるのでございますが、どちらに似ておるかというと病院と似ておる。そこに重点を置いてやっていこうというのが今度採用しております保安処分でございますから、まだしかしそう詳しい条項ができておるわけではございませんので、私が詳しい御説明をいたしかねますけれども、そういうことでございます。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 いま時間の関係で、鈴木参事官の質問途中で大臣のほうにさせていただいておりますので、まだ鈴木参事官から十分伺ってないわけなんですが、ただいまの大臣が来られる前の御説明では、犯罪を犯した者というふうにいま大臣言われましたけれども、これはもう治療処分だけで刑を受けないというんじゃなくて、刑を受けてしかる後に治療処分を受けるというたてまえになっているというふうに聞いておりますし、また無罪の判決を受けた者についても治療処分を言い渡されることもある、あるいは極端な場合では、起訴されない場合、不起訴の場合でも治療処分を言い渡されることがある、そういうふうなわけでございますので、これはやはり私の言っていることは必ずしも間違いじゃない。何も有罪の判決を受けてなくても治療処分をやられる、ただ将来の危険ということで。あるいは有罪の判決を受けて懲役に服した場合でも、その期間服せば全くフリーな立場に立つのがこれはあたりまえのことですけれども、そのあとに治療処分ということが待っているということで、結局精神疾患のある人が普通の人よりも二重、三重の負担を負わされるというのが、これは改正草案がもし法案になればそれは現実じゃないかと思うんです。  いま治療、主として病院のようなものだとおっしゃいましたが、精神病になりたくてなる者はなくて、これは、胃やら肺が悪くなるのがたまたま脳とか神経系統が悪くなって精神病になっているわけですから、主としてそういう人たちが対象になる、こういうふうにいま参事官から伺っているわけですが、その不幸にして脳とか神経系統の病気におかされた人が、これは本来なら国が国の責任で健康なからだにしなくちゃならない。これは当然国に責任があることだと思うんですよ。それが、収容施設がどうだとか病院がどうだとか十分な治療がどうだとかいうようなことで、その責任を不幸にして病気になった個人に負わして、そしてその病人に普通の健康の人よりも二重、三重の拘束を与える、人権を削奪するというようなことは、これは全くどう考えてもおかしいじゃないか、大臣はその点どうお思いになりますか。

田中伊三次自由民主党法務大臣

○国務大臣(田中伊三次君) 先ほどの私のことばが足らなかったのでございますが、判決におきましても、精神に故障があります場合に、判決を罪は罪で言い渡す、それにあわせて保安処分を言い渡すという形になりますので、先生お説のとおりでございます。お説のとおりでございますが、少し違うと思います点は、心神に故障はあるのだけれども、裁判、取り調べをしてみた結果、同情はするけれども罪はある、本来刑務所に収容してよろしいということが前提になりますわけで、罪があるかないかわからぬが、将来犯すおそれがあるというだけでそれをやる、そういう、精神に故障のある者に対して二重、三重の苦痛を負わすことはおかしいではないかという仰せのようなお心持ちは、まことに人権擁護の趣旨から申しましてよくわかるのでございますけれども、精神の故障を原因としているが、罪の責任はある。その罪は軽いけれども責任はある。責任のある者を判決の趣旨にのっとって保安施設に収容するということになるのでありますから、これは加重ということにはならないのではなかろうか。一人前の人間と同じようにぶち込んで、それと別に保安処分をするのだというのじゃないのでありますから、よく裁判官がお調べになって、責任のある限度というものを判決なさって、その上で処分をなさるということでありますから、二重、三重の苦痛を負わすことになるのではないかというふうには私は思わぬのでございます。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 これは大臣のおことばですけれども、罪を犯して責任があるとおっしゃいますが、心神の喪失者は責任がないのじゃないですか。だから責任はあるというのは、大体そこが出発点が違うのじゃないか。  それから、責任があるというので保安処分の対象になる人は心神耗弱者だと思うのですけれども、心神耗弱者の場合は、その責任があるということになれば刑に服するわけですから、普通の人ならばそれで終わりなんですね。同情すべき点が、ほかの、精神の欠陥によらないことで、たとえばせっぱ詰まってやったとかいう場合は、情状酌量されて短い刑だけで釈放されるわけですけれども、そのあとに保安処分というのが待っているわけですね。ですからこれは実際たいへんな問題で、大臣も在野法曹としての御経験も長いから何なんですが、実際問題として精神に欠陥のある人の、私も法律家の端くれとして、さしあたって思うのですけれども、弁護を引き受けた場合に、これは精神がおかしいということを、精神病の人の弁護を頼まれても、精神がおかしいということを言うと、かえって本人は長いこと入らなければならないというふうな問題になるわけですよ、これでは。そこら辺で大臣は非常に矛盾をお考えになりませんか。これはだれが考えてもおかしいと思うのですよ。  また治療、治療とおっしゃるけれども、矯正局長にさっき伺いましたら、いまの法務省の矯正局では、全国で心理学の専門家は五人しかおらぬとおっしゃっているのです。むろんこういうことになればちゃんとするとおっしゃるかしらないけれども、いま全国的に精神医学者というものが非常に数が少ないんですよ。それがいま普通の、御承知のとおり、民間の精神病院にも精神病医がいなくて、特にまたその補助者がないのに、何を好んで矯正局へ精神病の専門医が来てくれるかどうかという見通しなども私はこれはほとんど立たないんじゃないか。  そういうときにこういうことをやってみても、これはただ囲いの中に入れておくということ以外の何ものもできないんじゃないか。これは大臣御承知のとおりと思いますけれども、先日の日本精神神経学会の総会ででも、この保安処分というものは、これは精神病者を治療することはできない、精神病というものはやはりこれはまず医療によって、医術によってなおさなければならないので、こういう保安処分を精神障害者に科するということはこれはとんでもないことだ、何よりも医療が先行すべきである、これは保安処分というのは治療という名前だけの、精神病者を社会から永遠に——永遠とまではいかなくても——隔離しようというものにほかならないという、専門の精神神経学会でもこれは皆さんがそうおっしゃってるわけなんですね。この点、大臣、精神病の方の治療というものは、大臣、直接なすったことがあるのかないか知りませんが、私、実は身近にも精神異常の子供さんがおりまして、精神異常を来たした人というものの治療というものがどんなにたいへんなものであるかということをつぶさに知っているわけなんです。これを刑務所の囲いの中に入れてなおすとか、これはまことに見当違いのことだと思うんですね。そこら辺のところを大臣はどういうふうに考えておられるのか、ちょっと御所信を述べていただきたいんです。

田中伊三次自由民主党法務大臣

○国務大臣(田中伊三次君) 先ほどの私のことばが十分でなかったのでございますが、先生おっしゃるとおりなんで、心神喪失者という場合は、裁判をいたしまして、結果は無罪でございます。喪失者であると無罪にきまるわけでございます。これは刑のほうはゼロで終わるわけでございます。保安処分だけは残るということになる。二重ということにはならない。それから、いま仰せになりました無理ではないかと仰せになりますと、そういう感じもするのでありますけれども、刑罰と保安処分は必ずしも二重にやるわけではない、一方でうまくいけば一方はやらないというたてまえにもなるわけでございます。その詳細は事務から説明をさせますが、私はそういうふうに受け取っておるのでございます。必ずしも重複して二重に苦しみをさすんじゃないというふうに考えています。  ただ、先生おっしゃるところ私は胸にはまりますのは、精神の喪失はもちろんこれは問題外でございます。耗弱の場合に、精神に故障があるからといって、これを刑務所に収容したり保安処分ということで、簡単に、収容しておくだけで処置をしているということでは目的は達しない。そんな簡単な治療でできるものでないというおことばは、私もそのとおりに思います。若干の精神病患者の事件を取り扱った経験もございます。それはお説のとおりであると存じますから、この保安処分をやりますについては、やがて立法をしていかなければならぬことになりますが、この立法に対しましては、いま仰せのような点を十分念頭に置きまして、慎重な態度で実効のある保安処分というものを考えていくようにつとめなければならぬと、こういうふうに反省をするわけでございます。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 もう大臣のお時間がないようですので、最後に一言伺います。  私のほうから述べさしていただきたいと思うのは、実は精神障害児を持っているおかあさんたちのグループというものがこれは全国にあるわけなんです。私も幾つかのグループのおかあさん方といつでもその苦しい事情を伺っているんですけれども、ほんとうにいまの——これは大臣に申し上げるより厚生省に申し上げないといけないんですが、精神病の治療というものが全く国の責任においてやっていただけない状態である。そしてそれを責任を転嫁して、もしこのような保安処分というようなものが万が一にも法律にでもなろうものなら——おかあさん方はみんなこれはほんとうに言っておられるんです——私たちはもう集団自決して、国に対して、法務大臣に対して集団自殺をして、国の無策な、そして自分の子供たちを国がなおしてくれないで、永遠におりの中にほうり込もうというふうないまの日本の政府に対して命を捨てて抗議したいということを、これはどのおかあさんも精神障害児を持っている母親たちはもう涙ながらに訴えているんです。  もう少しこの刑法改正というものを、いまも伺っていると、医療刑務所で実績があるなんて言われますけれども、日本の医療刑務所に心神喪失者は入っていないんですよ、刑法の対象になっていないんですから。今度はその人たちを矯正局が扱おうというんですよ。大臣は幸い法律の実務家でもいらっしゃいますので、この無責任な机の上の空論だけの刑法改正というものは、これは大臣の責任においても絶対にこれは十分に御配慮いただきたい、この席上とくとお願い申し上げます。最後に御所信を伺いたいと思います。

田中伊三次自由民主党法務大臣

○国務大臣(田中伊三次君) よくわかりました。お説ごもっともでございますので、この点は十分精神故障者の実情に沿いますように、ほんとうの治療ができますような保安処分というものについてひとつ真剣に検討をした上で御期待に沿いたいと考えます。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 それでは、続いていまの問題について伺いたいと思うんですが、大臣もおられないことですから、またこの問題はあとで機会をあらためて鈴木参事官にでもお出ましいただいて、もう少し時間をかけてゆっくりと検討していただきたいと思うわけです。いま日本精神神経学会のことを申し上げましたが、御承知のとおり、日本弁護士連合会ではこれはもう著しい人権侵害だということで強い反対をしているわけでございますし、また人権思想のある良心的な刑法学者、憲法学者をはじめ多くの良識のある方々がこれは強く反対している。また、特にいま申し上げました精神障害児をかかえた家族の方たちのこの刑法改正に対する関心といいますか、万一これができたらたいへんなことだというようなことのなまの声などを、これはおそらく法務省の中におられたら十分に御検討なすっていらっしゃる機会がないのじゃないか、こういうことも十分に検討していただきたいと思いますので、これは別の機会にまた質問をさしていただくことにして、きょうはこのあたりで本件についての質問を終わりたいと思います。

後藤義隆自由民主党

○後藤義隆君 関連して。  ちょっと参事官にお聞きしますが、いま佐々木先生から非常に詳しい御質問があったので、重ねてする必要はないのでありますが、この保安処分が法律に将来なって出るか、またいつそういうことになるか、ちょっと私は見当がつかないんですが、佐々木先生がさっきお話のようなふうに、心神喪失者の場合には処分はされない、心神耗弱者の場合には処分がされると、ことにまた心神喪失の場合には、裁判所まで持っていかなくて、検事の手でもって不起訴になるような場合もある。それで、保安処分にするかどうかということをだれがきめるのか。判事がきめるのか、だれがきめるのか、そういうようなふうな問題もある。それで、私は、裁判所が、精神医学者でもない判事がそういうようなふうなことをきめることがはたして適当であるのかどうかということに、非常にやはり疑問を持っております。それで、これは刑法と全然切り離して別個の委員会か何かをつくって、そういうようなふうな精神障害のある人たちに対して、何かの方法でもって医療、治療をするような方法のほうがいいのじゃないかとも思うから、あなた方のほうでもって法律の原案をおつくりになるときに、そういうような点も、この法制審議会のこれをそのまま受け入れずに、十分にそこをやはり検討してもらいたいと、こう思います。別に大した、私は質問でもないけれども、あなたにそういうことをお願いしておきます。

鈴木義男法務省刑事局参事官

○説明員(鈴木義男君) 現在の制度がたいへん行政的な方法でやることに、御承知のように精神衛生法というのでなっておるわけでございます。ところが、それの実際の状況という点が必ずしもうまくいっていないという面もございまして、それも保安処分制度を採用するかどうかという問題の一つの機縁になっておるわけでございます。そういう意味では、もちろん裁判所で保安処分を言い渡すかどうかをきめます場合には、精神医学者の意見を十分聞かなきゃいかぬわけでございますけれども、どうしても、これはやはり、ある意味では自由の制限を伴うわけでございますので、裁判所以外の行政機関で簡単にやっていいのかどうかという問題も一つございます。そういうことでございますけれども、ただいま御指摘の点、それから先ほど来佐々木委員のほうから御指摘の点についても、今後さらに十分検討してまいりたいと思っております。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 裁判所は……。裁判所、来ていませんか。

原田立公明党

○委員長(原田立君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕

原田立公明党

○委員長(原田立君) 速記を起こしてください。     —————————————

原田立公明党

○委員長(原田立君) この際、委員の異動について報告いたします。  本日、加瀬完君が委員を辞任され、その補欠として辻一彦君が選任されました。     —————————————

辻一彦日本社会党

○辻一彦君 私、きのう、福井県の県警が名古屋入管局の告発によって朝鮮総連の福井県本部外数ヵ所を強制捜索を行ないました、この問題について二、三質問いたしたいと思います。  まず、私、県警が直接捜査を行なっておりますので、事実関係を警察庁のほうから伺いたいと思います。

中島二郎警察庁警備局参事官

○説明員(中島二郎君) 本件は、入管の職員に対します朝鮮総連福井県本部の者による事件でございまして、五月十日午前十時ごろから、朝鮮総連福井県本部では出入国法案反対の自動車パレードを実施いたしたわけでございますが、この状況を見るために、渡辺という入国警備官が、朝鮮総連福井県本部前の歩道上でパレードに先立って朝鮮語による街頭演説が行なわれていたのを携帯録音機で収録をいたしておったわけでございます。そこへ朝鮮人らしい者三名が近寄ってきたので、その場を遠ざかろうとしたわけでございますが、つかまりまして、おまえはここで何をしているのかと詰問され、両腕を取り上げられ、録音機を奪取され、近くに駐車中のパレード用の車に押し込まれ、ドアをロックされて、所持品を出せ、住所氏名を書け、身体検査をするぞ、などと言われまして、その間、入国管理手帳を取り上げられております。  さらに十一時半ごろから、この入国警備官を朝鮮会館へ連行いたしまして、部屋に入れて、窓にかぎをかけ、カーテンを引き、監禁をいたしております。  この入国管理官は、謝罪文を書けと執拗に迫られましたために、このままではいつ帰れるかわからぬということで、やむなく、謝罪文を書きましたので、十二時三十五分ごろ釈放といいますか、解放されております。  なお、両腕を取られて乗用車及び朝鮮会館へ連れて行かれる際に、左肩捻挫で全治一週間の負傷をいたしております。  こういう事案でございます。

辻一彦日本社会党

○辻一彦君 その事実については、私が、いま緊急に電話でいろいろ調べ、それからけさ発行の福井新聞がいま入手されたので、いろいろ食い違う点もありますが、それはあとでまたお尋ねをしたいと思います。  それから捜査の経過ですね、本部並びに青年同盟の委員長宅外数ヵ所をやっておりますが、それも簡単に御報告いただきたい。

中島二郎警察庁警備局参事官

○説明員(中島二郎君) 福井県警察におきましては、そういう事案があったということを認知いたしましたので、被害者から被害状況を聞くなどいたしておったわけでございますが、五月の二十二日に法務省名古屋入国管理事務所長から告発状の提出もございまして、参考人の調べなどもできましたところで、五月二十七日の朝、朝鮮総連福井県本部事務所、それから鄭秀男、洪年男、孫槿方の計四カ所に対して捜索を実施いたしております。

辻一彦日本社会党

○辻一彦君 それからもう一つ、入管当局のほうから、こういう告発に至った背景といいますか、事実経過、これを入管局の立場から御報告いただきたい。

竹村照雄法務省入国管理局次長

○説明員(竹村照雄君) お答えいたします。  私どもこれは、事件は五月十日に発生しておりますけれども、即日、電話で報告がございました。もちろんこれに対して局としても、いかなる態度をとるべきかということにつきましては、われわれ自身も事実関係を十分把握しなければなりませんので、そういった意味で、現地と連絡をとりましていろんな事実関係の把握につとめました。で、そうした結果、やはり職員がその職務を執行する間において暴行を受け、逮捕、監禁を受けておる、それから傷害も負っておる、さらに、持っておったテープレコーダーも一たんは取り上げられました、あとで返されましたけれども、テープは返還されないままになっておる、こういう事態をこのまま放置しておくことはいけないということ、そういうふうに判断いたしまして、これは現地とも相談の上、告発するという手段に出たわけでございます。  これは、告発は、確か五月十六日に名古屋入管所長から福井地検の検事正並びに福井警察署長あてにやったと思われます。  以上でございます。

辻一彦日本社会党

○辻一彦君 まあ暴行であったかないか、いろんな事実の問題というのはここで論議をしてもなかなか私むずかしいものだと思います。しかし、いまいろいろ電話で聞き合わせた中では、こういう実態が出ておりますね。一つは、正当なカーパレードをやっているそのとき、三名の人がいて、写真をとり、それからテープを録音している、そのテープコーダーも大きな封筒の中に入れて隠して録音している——そういうことは初めは気がつかなかったが、時間の経過とともに気がついて、それに対して「何をやっているのか」ということで問いただしたところ、最初は身分、氏名を偽っておった、しかしいろいろ聞きただしてその身分を名乗った、こういうことをいま電話で聞きました。それで、道ばたでカメラを持っている人は、そういう話の中で、もう一人の人と一緒に逃げてしまった、結局、テープコーダーを持った人があとに残った、そこで、路上でいろいろ話し合っているのもたいへんだというので総連の会館、入口に宿直室がありますから、そこで話を聞き、しかも入管法の問題点ということについていろいろとかなり長い時間話し合った、その結果、合意によってテープだけを私どもは預かった、テープコーダーはそのまま返した、それから謝罪文が書かれた、こういうことで帰ってもらったと、こういうことでありますね。まあこれはなかなかどうしたかということはむずかしい問題であるし、ここで決着のつく問題ではないと思いますが、この点の食い違いがいろいろある。これはまあいろんな機会等を通してあとで明らかにされていくと思います。  そこで私の伺いたいのは、こういう正当なる集会、カーパレード、こういうものを——もちろんこれは入管法反対の集会ですね、それからまた許されている集会ですが、そういうところへカメラを持ち、テープコーダーを持ち込んでこういう行為をやるということは入管当局の正当なる業務であるかどうか、その点はいかがですか。

竹村照雄法務省入国管理局次長

○説明員(竹村照雄君) 御質問の中で、カメラで撮影しておったかどうかという点でございますが、これは私のほうの職員がやった行為ではございません。報告によって聞いたところによりますと、渡辺警守はテープレコーダーを持って現場に行ったということでございます。まず基本的に、私ども出入国管理行政の運営というものは、国内的にも国際的にもいろんな影響するところがございますし、出入国法案というものを提出しようとし、あるいは提出しておる段階において、これに対して全国的にいかなる反応があるかというものを的確につかんで、これをわれわれのいろんな行政あるいは法案作成あるいは審議に反映させるということは、私どもの基本的な当然の職務であると考えておるわけでございます。そういった意味で、二月二十六日に局長命で全国の入管事務所長、収容所長あてにそういった出入国法案をめぐるいろんな動向についての情報を集めるように指示いたしまして、それに基づきまして、本件渡辺警守も名古屋入管事務所長の命を受けてこういった方面の調査に当たったというわけでございます。もちろん公開の場で、当然適法な集会あるいはパレードが行なわれておりますそれ自体を違法視して、このような調査をしたのではございません。そういった運動の規模とか、そういった中で行なわれておる反対の趣旨とか、そういったものがどういうものであるかということをつかむということで、渡辺警守は現場に行ったわけでございます。そして、たまたま演説が朝鮮語でなされておったために、朝鮮語を解しない渡辺警守が録音にとっていたという経緯でございます。そういうふうな観点で、私どもは渡辺警守の行為は適法であると、このように考えております。

辻一彦日本社会党

○辻一彦君 まず第一に事実関係のほうで、一つは、カメラを持っておったのは職員でないというお話ですが、これは事実ですか。

竹村照雄法務省入国管理局次長

○説明員(竹村照雄君) はい。

辻一彦日本社会党

○辻一彦君 それじゃあ、三人いて、そしてこのカメラを持った人ともう一人の人がほかに逃げて、一人だけ、そのテープコーダーを持った渡辺さんが残ったと、こう私は聞いておりますし、新聞にもそういうふうに報道されておりますね。この事実はどうなんですか。

竹村照雄法務省入国管理局次長

○説明員(竹村照雄君) 入管の職員としては渡辺警守一人が他との連絡なしに現場に行っております。そういうふうに報告を聞いております。したがって、同時にあるいはカメラを持っておった人がおったかもしれませんけれども、渡辺警守と連携を持っておったというふうには理解しておりません。

辻一彦日本社会党

○辻一彦君 じゃあ、当日その場に居合わせたというか、行ったのは渡辺さん一人ですか。その点は間違いございませんか。

竹村照雄法務省入国管理局次長

○説明員(竹村照雄君) さようでございます。

辻一彦日本社会党

○辻一彦君 この局長通達によって、まあそれはいろんな動きを知るということは私は仕事柄必要なのかもわかりませんが、こういう形で、出入国法案というものをめぐっていろんな緊迫した状況があります。その中で、このテープコーダーを封筒の中に入れて秘匿して、そうして録音をするというこういうことは、あなたの御指示された範囲内における正当な行為ですか。

竹村照雄法務省入国管理局次長

○説明員(竹村照雄君) 現場の具体的な情報収集をいかに行なうかということは、それぞれ現場の具体的な状況に応じて各担当官にゆだねてあることでございます。したがって、これらの渡辺警守の具体的な行為につきまして、私どもは必ずしもこれが不当であるというふうには考えておりません。

辻一彦日本社会党

○辻一彦君 それじゃあ、名古屋の入国管理事務所敦賀出張所長の談話が出ておりますね、この新聞に。これによりますと、「県や県警などに着任あいさつに行くついでにパレードを見て来るよう指示した。」と、こういうわけでありますが、職員の人が着任しますと県や県警察本部にあいさつに行くのが慣例になっていますか。

竹村照雄法務省入国管理局次長

○説明員(竹村照雄君) 具体的に出先でどのような、そういった場合の慣例になっているか承知しておりませんけれども、まあしかし常識として、私ども関係機関に着任のあいさつをするということは当然あると思います。ただ、新聞の記事につきまして、着任のあいさつに行くついでにどうのこうのという点までは私どもは承知しておりません。私ども、こまかな現場の具体的な挙措動作についてまで承知しておりません。ただ、一貫して言えることは、先ほど言ったような職務行為であるということを評価しておるというわけでございます。

辻一彦日本社会党

○辻一彦君 いや、私がお尋ねしたいのは、そういう慣例が、それは現地、地域によって違うでしょう。しかし新聞にこう談話が出ておりますよ。読み上げますと、「千葉誠名古屋入国管理事務所敦賀港出張所長の話 県や県警などに着任あいさつに行くついでにパレードを見て来るよう指示した。県本部から多数が押しかけられると入国管理事務に支障をきたすため、前もって状況を視察しておきたかった。この視察は本来の業務ではない。」と言っていますね、本来の業務ではない。「テープレコーダーを使ったのは渡辺君の独自の判断だ。カーパレードは公開であり公道での録音だから許されるべきだと思う。」と、こう言っておりますが、「正当な行為かどうかは発言出来ない。」と、まあこう言っていますが、現場の所長は「この視察は本来の業務ではない。」と、こう言っておりますけれども、この点はどうですか。

竹村照雄法務省入国管理局次長

○説明員(竹村照雄君) 私ども新聞の記事に基づいて、それが確かに現場の出張所長がそのように申したという前提をとっていいか、ちょっと疑問に思わざるを得ないと思います。ただ、かりに考えまして「本来の業務ではない」という言い方をしたとすれば、入国警備官というものは違反調査その他、警備官自体に具体的に入管令上定められた職務というものはございます。しかしこの全体の調査活動というのは、またこれは法務省設置法、それから組織令、入国管理事務所組織規程等に基づく権限の行使のために当然できる職務があるわけでございます。そういった点をあるいは踏まえておったのかなとも思いますけれども、何せそういった前提関係が、私必ずしもそれを前提としてものを言うことがはたしていいのかどうか、疑問に思いますので、以上のような答弁をさせていただきます。

辻一彦日本社会党

○辻一彦君 この新聞が、行って速記をとってきてそのまま写しているわけじゃないし、私もその場に立ち会ったわけではない、そういう点はあります。しかしこれだけの大きな記事になり、新聞社はすぐいろんなことを調べて、いわゆる現場の責任者の談話については正確を期しておると私は思うのです。いいかげんなことは載せないと思いますよ、新聞である限り。そういう点で、ここに、着任のあいさつに行って、そのついでにパレードを見てこいと、こう指示したと。そういう着任あいさつに行くときにテープレコーダーなんかを持っていくことが慣例になっていますか、どうですか。

竹村照雄法務省入国管理局次長

○説明員(竹村照雄君) それは、これはもう推測の域を出ませんけれども、しかしパレードを見てこいと言われた場合に、パレードを見るために、その間必要を感じてテープレコーダーを持っていくということは当然だと思います。着任のためにテープレコーダーを持っていったかどうかは、これはまた非常に疑問に思います。

辻一彦日本社会党

○辻一彦君 着任のためじゃない、着任のあいさつのためにテープレコーダーを持っていくことはなかろうと。これは明らかにこの現場の所長は、この着任のあいさつに行ったのが筋で、そのついでにパレードを見てこいと、こう言ったと言っていますが、事実は、私は、これを調べに行くために指示をして、そしてそのためにテープレコーダーその他が用意されたと、こう私は考えざるを得ないのですが、まあ、これが事実であるとすれば、本来の業務でないと言い、それからまた着任あいさつに行ったのだ、まあパレード視察はついでだ、そしてそのときにわざわざテープレコーダーを持っていく、これは私は非常な、もしこの発言がそのままであるとすれば、たいへん矛盾した言い方だと思いますが、この点はいかがですか。

竹村照雄法務省入国管理局次長

○説明員(竹村照雄君) 私どもいろいろ現場の仕事のあり方というものを見ておりまして、あわせて先生の御質問もかみしめまして感じますけれども、個々の人間がいろいろの事態に遭遇して、具体的にこれに対処する場合の個々の挙措動作に必ずしも人間として適切を欠くという場合があるかもしれません。しかしながら、これを一つの一貫した職務という観点で見た場合には、先ほど言ったような観点で、法案反対の動向というものを的確に把握する、それを行政に反映させるという意味でこの調査が行なわれておる。そういう調査の過程において渡辺警守がテープレコーダーを持って現場に行ったということは、これは一貫して言えることでありますし、そういった意味で、部分的に、たとえば最初身分を偽ったとか何とかということについてあるいは御批判もあるかと思いますけれども、そういった意味では一貫した点を見ていただければ、私どもは適法な職務行為であると、このように理解をいたします。

辻一彦日本社会党

○辻一彦君 まあこれは局長の、本来の業務であり、テープレコーダーを持っていくのは一貫した行為であると、こういう御発言と、現場出先の所長が言っている、着任の、就任あいさつに行って、ついでにパレードを見てこい、本来の業務ではないと、こういうものとは——そしてしかもていねいに、テープレコーダーを持ったのは渡辺君独自の判断だとありますが、これはそういうことは指示も何もしていないと言っておりますが、本来の業務だ、それは当然だということでは、かなり私は現場と次長の答弁の中に食い違いがあると思いますが、これはひとつこの所長の御発言がこのとおりであるかどうか、すぐひとつ入管当局のほうで確認をして、どのような発言が正確になされたかどうか、確認をしていただきたいと思います。  そこで、総連のほうは、ちょうど福井県は中川知事を団長にして十一名が朝鮮民主主義人民共和国をたまたま訪問中であり、県内に非常に友好親善の日朝間の空気が盛り上がっている、こういうことで、当時テープを預ってよくなかったと、こういう謝罪文もあったから、この問題はそのままにしておいたのだが、こういう形で告発を受ければこれはまた正当に争わなければならない、こう言っておりますが、福井県全体にいま大きな日朝友好という空気が動いている。そういうような状況ということを入管当局は出先においても全然判断をしないのか。そういう状況についてどういうように当局のほうは状況報告を受けているか。この点どうです。

竹村照雄法務省入国管理局次長

○説明員(竹村照雄君) この事件が発生し、その後この経過というものを見守っておる私どもの中で、正直言いまして、先ほど先生御指摘のような点というものは私どもの胸中に深くあったことは事実でございます。先生も御承知のとおり、先生が福井県の総連の代表の人たちを連れて局にお見えになりました。私、この法案反対の陳情、そういったものをもう百人以上個別にお会いしたと思います。非常に激しい口調で抗議される方もありますけれども、そういった中で非常に印象的であったのは、この福井県の代表の人たちが先生がお連れになった場合と、そのほかにも二回ほどありましたけれども、非常に静かな態度で、自分たちの考えを訴え、私もそれに対して自分の考えておること、特に私どもが朝鮮の人たちに対していかなる気持ちを持ってこの法案に対処しておるか、また入管行政に対処しておるかということも、私るる説明を申し上げました。まあそれは意見は分かれましたにしても、ある種の共通の感情を持って別れたということも記憶に残っております。それから、先ほど先生のおっしゃいましたような、福井県知事以下が朝鮮民主主義人民共和国を訪れて、そういった間に非常な友好ムードというものを盛り上げようとしておられる、そういったこともありました。  そういう中でわれわれが告発をする、そういう中で福井の警察、それから検察庁というものが職務を、権限を行使しなきゃいけない、これは、ある意味では非常に困難なことをお願いすることになるということについて、私どもひそかに心を痛めたのでございますけれども、ただ私どもといたしましては、事は一つの、やはりこういう暴力的なことまで発展して、それがしかもテープは取り上げられたままである。そういったことで一体済ましてよいのかどうか、そういうことを、そういった点を十分考えまして、彼此勘案の上、やはりこれは法によって黒白を決すべきであるというふうな気持ちになったわけでございます。ちょうど、先生がお連れになった福井県の朝総連の代表の一人が、あの会見した席上で、こういった事件があったということも率直に言われたので、私もこれに対して自分自身の所信として、あれは入管の職員としては当然の行為であると考えておる、そこで発生した事態はまことに不幸であるけれども、私はやはり、しかしけじめはつけたいと思っておるということもあの際明言いたしました。そのときの気持ちも、先ほど来申し上げたような気持ちでございます。以上でございます。

辻一彦日本社会党

○辻一彦君 最高裁がお見えになって、時間を急いでおられるので、私早く打ち切りますが、この事実関係については、なおいま言った点はひとつ調べていただいて、資料で出していただきたい。それから、私のほうもなお調査をして次の機会にまた論議をしたいと思います。  そこで、入管法の中に行政調査権であるとかあるいは政治活動の禁止条項というようなことがいろいろ問題になっておりますが、見方によっては、そういう懸念されていることがすでに先に行使をされていると、こういうふうにも受け取れますが、この点については、入管法の中身というものがこういうものを強化するという懸念を私は裏書きすることにもなるのじゃないかと思いますが、この点、局長いかがですか。

竹村照雄法務省入国管理局次長

○説明員(竹村照雄君) この事件が発生して、告発して、捜査がいろいろ進められた場合の波紋の中で、先生が御指摘のような一つの懸念を表明されるということはあり得るだろうというふうに想像はしておりますけれども、私どもといたしましては、この行為は結局何らの、他の人たちを制約するような行為じゃなくて、公開の場で行なわれておるものを、適法な方法で、何らさしさわりのない、それらの行為者に支障を与えないような方法でやっておることでございまして、そういった面から言えばさしさわりがない。ただ、政治活動の規制とかあるいは行政調査権に基づく調査というものは、一定の、前者の政治活動の規制は、この政治活動が一体法律で許されているものであるかどうかということを見るという観点がはっきり規制という観点で出てくるものでございます。行政調査権のほうは、法務大臣がその裁量できる拒否の権限を行使するために必要な調査をするという意味で、直接、利益、不利益を与えることを目的とした行為でございますが、ここでやっておることは、渡辺警守がやっておったことは、そういったものでは全然ないという意味では、別に懸念されるようなことではないのではないかというふうに考えます。なお、中止命令制度にしても、行政調査権にしましても、それぞれ法律の規定にあるように、明確な限界というものを画して、しかも逸脱しないような配慮がなされておるということを付言させていただきます。

辻一彦日本社会党

○辻一彦君 まあ、時間の点がありますから、これ以上きょうは触れませんが、本来の業務で公にやることなら、封筒の中にそういうテープコーダーを入れてこそこそやらなくたって、大っぴらにやればいいことなんだし、いろんな私は問題点があると思います。それから、それが暴力的な行為であるかどうか、まあ見解もいろいろ分かれておりますが、これはひとつ具体的な資料の提出を待って、質疑をまた行ないたい、取り上げようと思います。ただ、全県をおおう日朝友好の空気が広範にいまみなぎっている中で、この行為は非常に日朝友好の空気に水をさす、私はかなり計画的な考え方でないかというようにも感じますが、この論議は別として、こういう全県にみなぎる非常にいい空気の中で、あれですか、告発されたのを撤回をされるような意思はないですか、どうですか。その点だけ伺って、終わりたいと思います。

竹村照雄法務省入国管理局次長

○説明員(竹村照雄君) 私どもすでに検察庁、警察にその判断をゆだねましたから、これを撤回する考えはございません。

辻一彦日本社会党

○辻一彦君 じゃ、きょうはこれで終わりますが、後日……。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 入管局長のほうへの、ちょっと追加さしていただくんですが、いまの話の、本件についての資料ですね、これ正式に委員会のほうへ御提出いただきたいと思いますので、その点お願いできますね。

竹村照雄法務省入国管理局次長

○説明員(竹村照雄君) ええ、けっこうです。

辻一彦日本社会党

○辻一彦君 それに追加して、資料をちょっと。いま口頭でいろいろお話がありましたが、資料によって事の事実経過を、報告を提出していただくようにお願いします。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 それでは、次に最高裁に伺たいいと思います。  これは総務局長よく御存じのことだと思うんでございますが、奈良地裁の五条支部ですね。これがことしの五月二日で裁判官がおらなくなった。これはあるいは人事局の御管轄になるのかもわかりませんけれども、この五条支部というのは明治十年に区裁判所として発足して、近畿における裁判所のうちでも特に由緒の深い、古くからの伝統のある裁判所で、しかも甲号支部である。この五条支部で突然裁判官が一人もおらなくなった。そういうことで、奈良県だけじゃない、奈良の周辺の訴訟当事者あるいは弁護士あるいは裁判所につとめている職員自身も非常に困っているようなありさまですが、そのことについて再三最高裁にも陳情があると思うのですが、その点については総務局長よく御存じですね。

田宮重男最高裁判所事務総局総務局長

○最高裁判所長官代理者(田宮重男君) ただいま御指摘のとおりでございまして、ただ、特に陳情等は最高裁のほうには参っておりませんで、地元の奈良の裁判所のほうには地元市町村会長等がいろいろと陳情に参っているということは聞いております。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 これは総務局長も御承知のように、去年の十一月の三十日に一億四千万円という国費をかけて裁判所の新庁舎を落成さした。そういうことで、裁判所としても相当な予算をつぎ込んでこの五条裁判所というものをりっぱなものに建て直された。また地元の五条市はじめ関係市町村も相当にこの裁判所をりっぱなものをつくるということで協力してきたのに、裁判所にりっぱな庁舎ができて法廷もりっぱになったと思ったとたんに裁判官が一人もおらなくなった。たいへんに困っているわけです。御承知のとおりこの五条支部は甲号支部で、奈良県の総面積の半分以上を管轄しているわけでございましてね。ところがそういうことで、係属している民事事件が、裁判官がおらないということで全部葛城支部に移管された。そういうことを裁判所がいろいろと一方的にやってらっしゃるわけですけれども、この葛城支部と五条支部というのは、これは奈良県は交通が非常に不便なところでございまして、五条だったら近いしということで訴訟を起こした人もいるし、また、そのつもりで訴訟を続けていたところが、急に葛城支部へ、裁判官がおらぬからということで訴訟が全部回ったということで、これは五条支部も困っているし、葛城支部も困っているわけです。いまお話のように、奈良の地方裁判所の、これは地元では大きく新聞にも報道されて、「宙に浮く係属事件」ということでいろいろと波紋を投げかけているわけですけれども、奈良の地方裁判所長の話では、何とか最高裁に、せっかく庁舎も一億四千万円もかけてりっぱなものができたんだから、せめていままでどおり裁判官を置いてほしいということで、最高裁に何度もお願いしているけれども、裁判官をよこしていただけないんだ、そういうことで、やむなくここで訴訟ができなくなったんだということなんですが、これは一体、最高裁の司法行政としたらあまりにもめちゃくちゃじゃないですか。どういう方針でそういうことをやっておられるんですか。

田宮重男最高裁判所事務総局総務局長

○最高裁判所長官代理者(田宮重男君) 御指摘のように、本年の四月から奈良の配置人員を一名減らしたわけでございます。従来は十一名でございましたが、判事が一名減りましたので十名になったわけでございます。配置人員をどのようにしてきめるかと申しますと、やはり裁判官は事件の処理ということになりますので、一応、事件数を基準にいたしますが、しかしそれのみでなく、その他の地理的事情等も十分参酌した上でいろいろきめておるわけでございますが、奈良の地裁全体の事件数を見ますと、昭和四十四年度を標準にしますと、昭和四十七年度におきましては約一三、四%事件が減っておるわけでございます。このようなぐあいでございますので、まあ、全国、裁判所がございますので、限られた人員を適正配置して裁判の適正、迅速をはかるという使命もございますので、そういった関係もありまして、奈良のほうとお話をいたしまして、定員を一名、今度減らすからということで、いろいろ協議しまして御了解を得たわけでございます。減らした結果、それでは五条支部がそのままなくなるかどうかという問題でございますが、そういうふうに私どものきめましたところの人員を奈良の裁判所で、本庁に何名、それから支部に何名配置するかというようなことにつきましては、やはり地裁の意見等も聞きました上で、最高裁のほうで勤務地を発令するということになっておるわけでございます。そうした観点から奈良の意向を聞きましたところ、五条支部の事件も著しく減っておりまして、昭和四十四年を基準といたしますと、民事で五六%、それから刑事で三五%と大幅に減っておりますので、奈良の裁判所のほうにおきましても、五条のほうは本庁勤務ということで、本庁のほうから五条のほうに填補することによって五条の事件はまかなえるのではなかろうか、こういう御意見でございましたので、したがって、奈良五条勤務の裁判官、こういうものを発令しなかったという経過でございます。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 そうすると、いま事件が減っていてたいへんさびしくなっているということだとすると、この豪華な庁舎というのはどういうことになるんですか。裁判所の予算というものは、私、そうたくさんあり余っているということも聞いておらぬのですけれども、これ、新聞でも「判事ゼロになる豪華庁舎」というようなことで各紙が報ぜられておりますけれども、そんなに事件がなくって、もうだんだん店じまいでもしようかという裁判所であるならば、どんどんと予算をつぎ込んで豪華庁舎をつくれば、裁判所がりっぱになることはけっこうだと思いますけれども、一面また国費の乱費ということにもなるし、また、ほんとうにそれじゃ事件急増しているところで、もっと法廷をつくらなくちゃならないところだって全国的に山のようにあるわけですね。あまりにもやられることが、どういう計画で進められているのか知らないけれども、ちぐはぐというか、行き当たりばったり過ぎるんじゃないですか。  いま、判事を填補にしてどうこうというお話がありましたが、実際は、民事事件の大半はもうここでやらずに、全部、葛城支部に移っているわけですね。刑事事件だけを填補してこられた裁判官がやっていられるし、民事事件のごくわずかな残った分をやっていられるというような実情ですが、これは奈良県の南部というのは非常に交通が不便で、この五条支部でも、管轄地域で遠いところでは和歌山県、あるいは三重県等の南のほうの境ですと、急行バスで四時間半ぐらいかかるわけですね、片道。ですから、裁判所に行くのに、いままで五条支部であっても、場合によると一泊しないと行けない。ところが、今度葛城支部ということになると、二泊しないと行けない人もかなり出てきているわけなんです。そこら辺の実情を地元の五条の人たちも全然相談を受けておらないし、協力だけさせられて裁判所が事実上なくなった、建物だけ残って中身がなくなった。また、奈良の弁護士会にしてもそういう相談は受けておらないということで、訴訟を担当している弁護士さん方も困っている。また、ここにつとめている書記官の方も、事件を葛城に移したからそちらに行けと言われて、それもいろんな点で非常に一方的なことで、労務過重になって苦しんでいる。そういうふうなことで、いろんなしわ寄せが国民の側に押し寄せているわけなんですけれども、最高裁は、春の予算の際にも、人員が足らないことは足らないけれども、そう足らぬというわけでもないというふうなお話だったですけれども、こんな、せっかく庁舎までつくって、しかもそういうことで明治十年以来続いている、しかも和歌山県の半分以上の面積を管轄しているんですから、そういうところへ裁判官を派遣するぐらいのことは、やはり主権在民のいまの日本において、最高裁は考えないといけないのじゃないか、その点どうですか、裁判官をここへ派遣するつもりはないんですか。

田宮重男最高裁判所事務総局総務局長

○最高裁判所長官代理者(田宮重男君) 先ほど御説明いたしましたように、事件数から申しまして本庁から填補でまかなえるというふうに考えておったわけでございます。当初はそういうような計画だったのでございますが、実は、これも私どもの人事異動の関係でございますが、ことしの四月に奈良の裁判所の管内で半分ぐらい異動がございまして、御承知のように、裁判官が異動しますと、その当初は、前の記録を読むというようなことで非常に多忙になりますので、そういう時期ですと、五条支部のほうに毎週一回なり填補に行くということになりますと、また、本庁のほうの仕事に支障を来たすというようなことがございますので、暫定的に四月に、五条支部のほうにありました百件ぐらいの事件を葛城のほうに回したわけでございますが、その後、本庁のほうの事務もようやく軌道に乗りましたので、去る六月九日の裁判官会議でさらに事務分配を改めまして、民事訴訟事件をやはり五条支部でやるということで、それについては本庁のほうから裁判官が填補で参るというふうに事務分配を改めたというふうに聞いております。  なお、五条支部の勤務状況でございますが、前に裁判官がおられたときと、それから六月九日以降、民事訴訟事件も五条支部でやる、填補でやるということになった場合とを比べますと、五条支部におけるところの開廷日数というのは、裁判官がそこに常駐された当時と、開廷回数においては大差がないという結果に現在なっておる次第でございます。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 五条支部でまた民事事件が再開できるということは非常にけっこうだと思います。いま、開廷日数のことがございましたが、これは仮処分事件のある場合で、あまり、週に一回ぐらいしか裁判官がいないというんじゃ話にならぬわけですので、開廷は、裁判官は何日こちらへ来られることになるわけなんですか。

田宮重男最高裁判所事務総局総務局長

○最高裁判所長官代理者(田宮重男君) 現在では合計月七回ぐらい填補に参るということになっております。それも裁判官それぞれ違いまして、民事雑事件等家事、それから刑事の単独事件をやられる場合、それから刑事合議事件、まあ刑事は同じでございますが、そのほか民事の訴訟事件を月二回填補に行かれると、こういう状況になっております。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 この民事の訴訟事件は月一回ですか、裁判官は。

田宮重男最高裁判所事務総局総務局長

○最高裁判所長官代理者(田宮重男君) 月二回です。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 月二回、それは話にならないじゃないですか、そんな月二回なんていうんじゃ。で、葛城の事件は全部返るわけですか。  それからいまの月七回というのも変な数字ですね。週のうち一日おきとか、せめて週のうち二日とかいうなら話はわかります。月七日じゃ、いつ行ったら裁判官がいるのかわからぬでしょう。それ、もうちょっとはっきり言ってくださいな。

田宮重男最高裁判所事務総局総務局長

○最高裁判所長官代理者(田宮重男君) 失礼しました。もう少し詳しく申し上げますと、毎週火曜日、隔週の火曜日に民事雑事件等家事事件に出ている。それから隔週の水曜日に刑事単独事件、それから第二週の月曜日、木曜日に刑事合議事件、それから民事事件が隔週に各一回ということになっております。  なお、御指摘のように、民事訴訟事件で月二開廷ということでは足りないのではないかという御指摘がございますが、先ほど申し上げましたように、一時暫定的に葛城支部のほうに事件が回付されておりまして、それにつきましてはすでに期日の指定のなされたものもございますので、今後、来月あたりからその弁論が開かれますので、弁論が開かれた場合に、当事者の意見等も十分参酌して、五条支部に再回付と申しますか、戻すべきものはそこで戻すということになっておりますので、その際の事件状況等を見まして、さらに民事の訴訟事件の填補回数をふやすということも当然地元としては考えておる、こういうことでございます。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 いまのお話を伺って、率直に言って非常に不十分だと思うわけです。ですが、そういうことでだんだん少しでも、五条支部でまた事件ができるというふうな状態になってきているとすれば、それは好ましいことだと思いますので、そういうことで、どういうことになったかということを、あとでまた書面なり何なりでこちらに御報告いただきたいと思うわけなんです。そして、あくまでこれは地元の市町村、住民の意向あるいは弁護士会の意向というものを十分に御相談の上で事を運んでいただきたいということを特にお願いするわけです。  それから、裁判官をもう一人ふやして常駐さすということは、最高裁としたらそれじゃもう考えておられないわけなんですか。どうなんですか。地元の所長あるいは大阪高裁の事務局では、必ずしもそういうんじゃなくて、やはり裁判官を何とか最高裁のほうへ一人よこしていただくようにお願いしているんだという話なんですけれども、その点について、最高裁、一人なら、もともと十一人なんですから、増員するようにお考えになれませんですか。

田宮重男最高裁判所事務総局総務局長

○最高裁判所長官代理者(田宮重男君) 地元からの御要望はいろいろあったのでございますが、先ほど申しました事件数その他、それから全国的な状況等につきましていろいろ話し合いをしました結果、現在のような状況になったわけでございます。もちろん、われわれのほうといたしましてもこのままずっとほうっておくということではございませんで、ほかで余裕が出てくるというようなこととか、また五条支部の事件並びに奈良地裁管内の事件の今後の推移等を見て、その場合にあらためて検討する、こういうことになろうかと思います。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 憲法で保障されているところの裁判を受ける権利というものを実質的に最高裁の御都合で奪うようなことがないように、ひとつぜひとも前向きでお取り組みいただきたいということ、そしてその後の推移について御報告いただきたいということをお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。

後藤義隆自由民主党

○後藤義隆君 これ当然だと思いますけれども、さっきお話がありました、週のうちに何回か刑事の期日があると刑事専門の判事が出張するとかというような話があったが、それはいわゆる民事の仮差し押えとか仮処分とかいうのも、その刑事の判事が当然やりますか。私は刑事だから民事の関係一切やりませんと言ってそれはやりませんか。どっちですか。いわゆる仮差し押え、仮処分、非常に急を要するものについての話でありますが、その点はどうですか。

田宮重男最高裁判所事務総局総務局長

○最高裁判所長官代理者(田宮重男君) 原則としては、先ほど申しました民事事件を担当する裁判官がおられる場合には当然やられることになりますが、しかし仮処分、仮差し押えというような場合で非常に急を要するというような事件の場合には、刑事担当の裁判官で填補された裁判官も当然やるということになろうかと思います。

原田立公明党

○委員長(原田立君) 本件に対する質疑は本日はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十六分散会      —————・—————

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