法務委員会 第10号
- 発言数
- 194 件
- 登壇者
- 20 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1973/06/14
会議録
○委員長(原田立君) ただいまから法務委員会を開会いたします。 検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。 これより質疑に入ります。 その前に、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。法務大臣。
○国務大臣(田中伊三次君) 去る七日、竹田現照先生から御質疑のありましたことに対して、私の答弁が、事務当局からの連絡が不十分のために間違っておりましたので、おわびをして訂正をいたします。 全逓委員長から法務大臣あての人権侵犯事件の申告書の中身を見ると、侵犯者も被害者も特定していなかったので、という私の答弁でございましたが、これは誤りでありまして、侵犯者はほほ特定をしております。被害者のほうが特定していなかったという意味に訂正をいたします。おわびを申し上げます。
○委員長(原田立君) これより質疑に入ります。 質疑のある方は順次御発言を願います。
○竹田現照君 前回に続いて、この人権侵犯問題についてお尋ねをいたしますが、きょうは郵政大臣も御出席ですが、五月十一日付日弁連会長から郵政大臣それから郵政省人事局長、経理局長その他四郵政局長に対して警告書が出ておりますけれども、これを受け取られたにあたって、どういうふうにこの警告書に対処をなさろうとしておるのか、最初にお尋ねいたします。
○国務大臣(久野忠治君) ただいま御指摘のとおり、日弁連からの警告書は、去る五月十一日付でいただいておりまして、内容についてはつぶさに拝見をさしていただきました。その警告書をいただきましたので、傾聴すべきものは謙虚に傾聴するという見地から、目下改善策につきましては、検討をいたしておる段階でございます。
○竹田現照君 この警告書が、郵政大臣だけではなくて人事局長、経理局長まで出ているのは、これは人事局長は労働問題の担当局長ということでしょうが、経理局長は、警告書の内容に経費の問題も若干出ておりますが、通常大臣なら大臣だけに警告で理解できるんでありますが、ここまで細分化されて警告書が出されたことについて、郵政省としてはどういうふうにお受けとめになっていらっしゃるのか、そのお考えをお聞きしたいと思います。
○政府委員(北雄一郎君) それは、日弁連にどういうわけでそういう個々の役職についてまで警告を出したかということは実は尋ねておりません。ただ人事局長というのは、ただいま先生おっしゃいましたように、労務担当という意味だと推察いたしております。それ以外の場合は、いわゆる侵犯者という意味合いではなかろうかというふうに考えております。
○竹田現照君 時間が限定されておりますから、端的にお伺いしますが、この警告書の内容できわめて重視しなければなりませんのは、ブラザー制度そのものについて、かなり手きびしい内容の警告になっています。郵政省側からいろいろとこの制度について御説明がいろいろな委員会等でなされていますが、日弁連はそういう郵政省側の説明はむしろ全面的に退けたと言ってもいいぐらいの内容でありまして、これは「人道的立場からもとうてい許されるものではない。まさに著るしい人権侵害である。」、そうなっているんですね。 ですから、法務大臣が、刑事補償法の質疑の中で、四月六日衆議院でもお答えになっていらっしゃいますけれども、わが国の憲法が人権擁護というものについてきわめてきびしい規定をしている、文明諸国の憲法にも前例を見ないほど最高度に人権の擁護ということを日本の憲法はきめている、こうお答えになっていらっしゃいますね。私はそのとおりだと思うんですけれども、その法務大臣のお答えとも関連し、日本国憲法に定められている人権を最高度に擁護しなければならないという前提の上に立って、この日弁連の警告というものは、私は、とるべきものはとるとか何とかいう郵政大臣のお答えではなく、これは重大な人権侵犯として反省をされて、こういった問題が、きのうも新聞によりますと、新宿郵便局の人権侵犯として何か裁判所に出されたようでありますが、枚挙にいとまがないほど郵政省の職場にはいま起きていますね。これはただいま単なる労使問題というよりは、こういうものを発生させた郵政省の労務政策と言いますか、何と言いますか、そういうものに大きな原因があるわけですね。ですから、警告を受けて今日までとってきた郵政省の職場におけるこの種の問題を根絶をさせるためにどういうお考えを持っていらっしゃるのか、もう少し明確に御説明をいただきたいと思います。
○政府委員(北雄一郎君) 残念ながら郵政労使間に従来からいろいろ不信のわだかまりというものがあったことは事実でございます。これに対しましては、先生も御承知かと思いますが、昭和四十五年の暮れに、労使の間でそういった不信感を一つ一つ取っていこう、そして新しい信頼関係を確立しようということで、そういう考え方のもとに、具体的にいろいろなことについての取りきめと申しますか、というものをいたしております。自来これを職場に定着させるように労使それぞれ努力をするということで進んできておりまして、それなりに改善の実はあがっておるというふうに私ども思います。 しかし、その間この徹底というものが完全に行なわれておるかどうかという点になりますと、若干疑問の点もございます。もともとこの取りきめ自体、そういった信頼関係の樹立というものは労使それぞれ責任があるという考え方でございまして、そういう中で今日なお若干のトラブルがあるということはたいへん残念に思いますが、この点につきましても一そうその定着をはかるように徹底的に努力をするというつもりでおります。 また具体的にこういった警告を受けたわけでございますが、これに対しましては、警告自体についても私どもいろいろ見解があるわけでございますが、しかし、それはそれといたしましても、先ほど大臣が申されましたように、この中で傾聴すべきものは傾聴して、そうして改善策も立てていきたい。なかんずく本件は職場リーダー制度というものについての批判が多うございますので、その点についても、ただいま申しましたように、聞くべきところは謙虚に聞いて改善策をとってもらいたいということで、検討いたしておる次第であります。
○竹田現照君 これは私は、労使問題のいろいろなことについて、あるいは社会労働委員会等で論議をされている問題については触れませんが、この警告は両院の法務委員会にも通知をされておる問題ですから、どうしても触れておかざるを得ないわけですが、四十五年にこの種の文言を発案をされたのは、いまの浅見経理局長が東京郵政局長時代ですね。ですから、私は浅見さんにお尋ねをしたいのですが、この日弁連調査結果でもはっきりされていますが、あなたが発案をされたことは、表面はどうであれ、労務政策上重要な位置づけとしてこれは日弁連もとらえられ、その結果が「職員の思想信条の自由、組合加入の自由を犯す事例が極めて多く、申立人組合の団結権を著るしく侵害する虞れが十分に認められる。」、こう書いてあるわけですね。私もまさしくそうだと思うのです。これはまあ経理局長が札幌郵政局長時代からいろんな施策をひとつとられ、それに基づいて郵政の職場においていま世上言われているような事件が頻発しているわけですね。頻発している。私はどこにほんとうの目的を置いてこの制度をとられたのか、日弁連指摘というものを率直にお認めになるのか、これにはいま人事局長もいろいろと意見があるというふうなことをおっしゃっていましたが、意見がおありとすれば、どういう反論をなさろうとするのか、この機会にひとつそのお考えを明確に説明をしていただきたいと思います。
○政府委員(北雄一郎君) いろいろ見解はございます。しかし、そういった警告が出まして、これに対して私どもいろいろ見解があるわけでございます。たとえばこの事実関係にいたしましても、当方から見れば申立人側の言い分だけ採用しておられまして、当方の言い分を全く採用しておられないというケースもございますし、それから、一定の事実は双方認めておりましても、この事実に対する評価、判断ということにつきまして全然違っておるような、当方としては異論を唱えざるを得ないようなケースもございます。たとえば作業能率の測定というようなもの、これにつきまして、能率を非常に低下して作業をしておるという場合、これに対して一回こっきりの、そういう異常事態に際しての一回こっきりの措置を、常時やっておるというふうに判断されるというようなこと。あるいは、このいわゆるブラザー制度に対しますところの見解のもとになりました証拠の事実とされますものが、昨年の二月からのいわゆる新制度下のものでなくて、それ以前の旧制度下に起こったと言われる事件が大部分である。ですから、逆に申し上げれば、そういった点を踏まえまして昨年の二月に現行制度に改めておる、そういう点を全然評価していただいておらない。あるいは、論理上の問題でありますが、いろいろ具体的な事実をあげておられますけれども、これがすべてこの職場リーダー制度あるいはブラザー制度の実施に原因があるとしておられますが、その間の論理的なつながりというものを特に認定されておらないわけでありますし、また私どもも、そのつながりがどうなっておるか、そういう次第でありますので全然わからない、まあ、こういうような諸点におきましていろいろふに落ちない点があるわけでございます。ありますけれども、先ほど大臣が申されましたように、私どもといたしましては、その中で傾聴すべきものは十分に謙虚にこれを傾聴しまして、改善点を改善するというつもりでおるわけであります。
○政府委員(浅見喜作君) 先生御承知のように、私、昭和四十一年から四十四年にわたりまして札幌郵政局長をいたしておりまして、その間、四十二年度、三年度、四年度と、いわゆる特研生——新規学卒者を特別に訓練いたします外務研修生を百名前後送り出しました。そういう状況を知りながら四十四年末に上京したわけでございますが、東京郵政局管内におきます郵便外務員の補充状況を見ますというと、四十年代に入りまして非常に近隣から人が得にくくなりまして、したがいまして、まず九州、北海道を手始めに、信越地方あるいは四国地方を加えたりいたしまして、遠隔の地から子弟を採用するように相なりました。その間、定着率が必ずしもよろしくないという状況がございました。察しますのに、新規学卒者数千人というものが親元を離れましてたいへん心細い心理状態のもとに社会人となる、しかも大都会というるつぼに投入されるというような環境からいたしまして、これはほうっておきますと、私生活の面におきましても、あるいは特定の新しい職場に入りましての職業人としての最初におきましてもたいへん心細いことであろうと。よってもって、不安動揺する青年期におきまして手を貸さない場合に定着率が上がらないのも無理はないというふうに考えました。したがいまして、これらの者には採用がきまったと同時に兄貴分をつけまして、公私両面にわたる社会人としての第一歩をリードせしめたいという考えに基づきましてこういう制度を発足せしめたわけでございまして、広い意味におきます人事管理の一部門には相なろうかと思いますが、労使関係を前提といたします狭い意味合いにおける労務政策という気持ちは全くなかったわけでございます。
○竹田現照君 そういうふうにお答えにならざるを得ないと思いますが、実際問題として、前任地——札幌あるいは東京郵政であなたがいろいろな制度をつくられて以来、労使間の険悪な対立、あるいは職場がたいへん暗くなる、いらいらして職員同士の対立が、感情問題を含めて非常に複雑になってきていて抜き差しならないいまの状態になっていることだけは事実なんですね。事実なんです。いま人事局長は去年の二月に現行制度を改めたと、こうおっしゃっていますが、たとえばトイレに行くのにストップウオッチを押すとかなんとかかんとかという、ここの警告にもいろいろ書いてありますことは、きのうも新宿の、新聞に出ておったようなことだって、事実問題として行なわれているんですね、いまなお。これは、わが党の衆議院の皆さんの新宿局調査の内容を聞きましてもやはりそうなんですね。とすると、やはり同じことが行なわれているんですね。この警告書は正式には五月の十一日付でそれぞれのところに発せられておりますけれども、四月に日弁連がこの調査結果をまとめられた段階で新聞にも大きく取り上げられたほどです。私は、その段階においても、こういう問題の改善というものをすみやかに積極果敢にやるべきだと思うんですけれども、ここにも書いてありますが、定着率はわずか約一%弱向上したと、こういうことが書かれていますね、その意図されたことは。しかし、それ以上に基本的人権の侵害というものがあまりにも大きいとも書いてある。 私はここが問題だと思うんですよ。一%弱向上させるために、言われているように重大な人権侵害というものが惹起をされるとすれば、これは、差し引きちょんどころじゃなく、たいへんなマイナスだと思うんです。ですから、人権侵害の問題というものは、そういう指摘をされているようなことが現にいま行なわれつつあるとすれば、直ちに郵政省はこれはやめるべきですよ。しかし、やめるべきにもかかわらず、やめられないで、いま全国各地でこういうことが行なわれている根本的な問題は、これは労使問題としてこの問題を考え出したところにほんとうは根本原因があると思うんです。そこを私は、皆さんは大胆に反省をして直さなければならぬと。これは両院のいろいろな委員会で皆さんに長年にわたっていろいろな角度から指摘をされている。人権問題としてこうまではっきり皆さんに警告されたのは今回が初めてですね。私は、そういう意味で、この警告というものは、人事局長は当方の言い分はさっぱり聞いていないと、こういうことをおっしゃいましたけれども、この調査の経過を見ますと、申し立て人から、それから皆さんのほうもそれぞれの担当の方に事情を現場において、あるいは郵政本省の担当の方々に大体平等にお聞きになっているのではないのですか、日弁連側としては、実際は。申し立て人の言うことを一方的に聞いたというふうに調査の経過にはなっていませんね。自分らの言うこと、さっぱり、都合の悪い警告が出たからということでは私は解決をしないのじゃないかと思うのです。ですから、それではどういうところを謙虚に受けとめようとなさっているのか。具体的にちょっと説明をしてください。警告をされている内容で、こういう点とこういう点は謙虚に受けとめて、直ちにどうするとかこうするとかという点、こういう点はいただけないという点をはっきりしてひとつ出してください。
○政府委員(北雄一郎君) 用便、トイレに行く場合にストップウォッチ、これも非常に極端な怠業状態が発生しているという場合の措置でございまして、そういったときには何もトイレの時間だけをはかるのじゃなくて、その人の勤務をはかっておる。その間その人がトイレへ行くこともあるでしょうし、休息をとることもある、こういう中での問題でございますので、何も、また新宿の場合でも、具体的には承知しておりませんが、おそらくそういうケースでありまして、常時トイレへ行く者をはかっておる、こういうことは全国どの局でもやっていないということは断言して差しつかえないと思っております。 それから、人権侵犯事犯と言われるものとこの職場リーダー制の結びつきにつきまして、さっき申し上げましたように、私どもとしてはいささか理解に苦しむ。たとえばトイレに行くということが、かりにトイレに行くのを制限するということがあって、それが人権侵犯事犯であるとした場合に、そのことと職場リーダー制とは私は何も関係がないというふうに思いますし、また警告の中でも、いかなる論理で関連があるということは何もお示しをいただいておらぬというふうに思うわけでございます。 それから、お尋ねの、しからばいかなる改善点を考えておるのかという仰せでございますが、先ほども申し上げましたように、いまだ検討中でございまして、結論を出したわけではございませんが、たとえばリーダーをかえてくれというようなことを言った場合にはかえるべきであるというふうにたしかございましたが、そういった点はそのように改善すべきだというふうに思いますし、その他改善という方向で検討すべき問題が若干あるように思いますのでありますが、いまだ結論を得ていない次第であります。
○竹田現照君 これは、いろいろなことをおっしゃいますけれども、この警告ばかりじゃなく、警告書に書かれておりませんけれども、郵政の労使間で、たとえば全逓なら全逓という組合を分裂をさせて別の組合をつくろうというところに大きなウエートがあったことだけは、これは隠れもない事実ですね。隠れもない事実ですね。その上で、この職場リーダー制というものもまあいろいろと理屈はつけますけれども、その一環として編み出されたことだけは確かです。 ストップウォッチその他だって、何も職場リーダー制でなくたって、北海道でなんか至るところでやられたおったじゃないですか。それで一分の賃金カット、二分の賃金カット、これは日常茶飯事だったのじゃないですか、浅見さんが札幌に在任中は。そうして、そういういろんな施策というものが出された最大のねらいというのはどこにあったのですか。私にだってはっきり言われたのじゃないですか。どうも管理者は組合のほうばかり向いて私のほうを向いていない、この考え方は直さなきゃいかぬ、いままで組合に根こそぎいろんなものを持っていかれたから、失地回復だとはっきり言われたじゃないですか。その上に立っていろんな施策というものが行なわれたということは、これはまぎれもない事実ですよ。私に言ったんですよ、浅見さんが。 そして、北海道の平和な山の中まで、二人か三人しかいない局にまで、言うことを聞かねばよそから人を持っていって、それに第二組合をつくらせて、そして職場における対立というものをいやが上にも高めていったということは、これは事実じゃないですか。この間私が決算委員会で指摘しましたように、内容は別にどうであろうと、当局側が第二組合にたくさん金を渡しているという現実はこれはのがれようのない事実じゃないですか。四十五年ですか、東京郵政に浅見さんが転勤をされたときに、私は、必ず今度は東京郵政で札幌と同じようなことが行なわれるだろうということは、当時郵政局に私はすでに指摘をしておりました。私の指摘どおりになったじゃないですか。やり方は全部同じですよ。全部やり方は同じです。ただ、やり方は同じなんだけれども、民間企業と同じようなこともやられているけれども、労使問題について、民間企業と残念ながら官庁機構との機構が違うものだから、なかなかうまくいかないでいろいろな問題が惹起してきているわけですよ。 ですから、そういう施策が重点的に取り上げられている郵政局管内が、こういう問題が同じケースとして、北から南まで同じ事態として起きていることは、これは一体何を物語っているんですか。ブラザー制度があるとかないとかじゃないんですね。去年の暮れあたりから山陰地方にまで波及していますね。去年私は鳥取、島根のほうをずっと行って参りましたが、あの辺、山陰地方にまで波及しているじゃないですか。同じ形ですよ、同じ形。私は、これは何と抗弁しようと絶対に納得がいかないんです。 この警告にもありますように、「労使が対立敵視しあうような職場環境の改善なしに、」云々というようなことが書かれています。私は、郵政省側の意見というものを日弁連が全く無視をされたんでなく、全然郵政省側の説明が日弁連を納得させることができなかったと思うのです、現実は。私は組合側の立場に立つとか立たないとかとは別に、公平に見てもやり方が人権侵害もはなはだしいですよ。いまここで指摘をされたのは東京のことです。しかし、このことを発案をされたのは浅見当時札幌郵政局長です。やられていることは札幌郵政局長時代に各職場で行なわれたことと同じことです。たまたま職場リーダー制度というものがここで前面に出ましたけれども、しかし、これは言うならつけ足しですよ。 そして、わずかに一%弱しか——目的としたことがたとえ善であれ、実効が結局あがらなかったということですよ、あがっていないということですね、定着率が一%しかないということは。こんな効果のないものを、人権侵害をここまで指摘をされながら郵政省側がやめようとしないのは、いま私が指摘をしているようなところに根本原因があるからですよ。少なくとも半分以上意図するところが実現をされたというんなら、私は百歩譲ってこの制度を認めたとしても、しかし、百分の一も効果があがっていない施策をなぜ強引に推進をなされようとするのか全然理解できません。 大臣も、いろんなところで、いろんなことで郵政の職場の状況について両院で指摘をされ、あるいは直接指摘をされてお聞きになっていらっしゃると思いますけれども、まさに異常なんですね、この職場の状態というものは。職場の状態というものは異常なんです。ですから、ただ単にブラザー制度というものだけを取り上げて、それとは直接関係がないがごときことでのがれることは絶対に許されない問題だと思うんです。 私が先ほど引用しましたように、法務大臣の憲法に対する人権擁護の問題についての御発言とも照らし合わせまして、私は、憲法で人権擁護を守るというこのものの考え方について、郵政省は、もう少し深刻な問題として、いまみずからの職場に起きているさまざまな事象をとらえて対処すべき時期に来ていると思うんです。これは労使問題以前の問題ですよ。労使間で大いにけんかをやるならやられてけっこうですよ。しかし、それが管理者の一方的な権限を行使することによって人権侵害まで犯しながらやるということは私は労使の正常なルールではないと思う。人権侵犯に類すると思われるものは直ちにやめるように、私は大臣の明確なお答えを求めたいと思うんです。
○国務大臣(久野忠治君) 御指摘の中にるる御意見が出たのでございますが、現行憲法の規定にもありますように、人権侵害に及ぶような行為、もちろんこれはあってならないことでございます。そのことは当然のことであると思うのでございます。 それから、組合の内部分裂を企図しておるのではないか、このような御意見の御開陳もございましたが、私たちは組合の内部に干渉しようなどというような考え方は毛頭ございません。これは自主的に労働組合に所属しておみえになりまする皆さん、あるいはこの職場の方たちの自由な意思によって決定されることでございまして、これに関与しようなどというような考え方は毛頭持っていない次第でございます。 それから、職場リーダー制、かつてのブラザー制度でございますが、これは先般来るる申し上げておりますように、若年労働者の定着性を向上したい、地方から出てまいります若い方たちの社会環境、生活環境、あるいは職場環境ががらりと変わるのでございますから、よき相談相手となって、その職場環境になれ、生活環境になれて、そしてりっぱな郵政業務を遂行していただきたい、こういうような考え方に立って、このような制度が設けられ、現にこれが実行されておるような次第でございまして、これでもって人権を侵害するなどというようなことを毛頭考えておりませんし、そのようなことがあるはずはないのでございます。あくまでも若年労働者の定着性を高めるためのよき相談相手としての制度である、かように考えておるような次第でございます。しかしその運用にあたりまして、いろいろ御指摘もございますし、また改善すべき点もあろうかと存じますので、今後とも十分皆さんの御意見を拝聴いたしまして、そうして検討いたしてまいりたいと、かように存ずるような次第でございます。
○竹田現照君 くどいようですけれども、大臣のそういうお答えが正しく郵政省側において実行に移されていれば、今日こんな警告というものは出てこないのです。日弁連の調査の中にも明らかなように、いま郵政省側がお答えになっておりますが、「ブラザー制度が、純粋な雇用政策ないし新入職員の定着確保施策で、その後の運用のなかで発生した、後述労使のトラブルは全く予期せざる事態であった旨の当局側の弁明は、少なくともその採用当初についてはなりたたない。」と書いてある。だから、その弁明は大体成り立たないと日弁連側はとっているんですね。 実際、現実問題というものを調査されてまいりますと、ここ数年、郵政省側の労務政策の犠牲になって自殺をされた方が何人いらっしゃいますか、郵政省には。通常では考えられぬですよ。その遺書の中にもはっきり書いてあるのですね。私は職場の中であちらこちらに自殺が次から次へと起きるというのはたいへんなことだと思うのですよ。その遺書が、どれもこれも同じように、郵政省側の労務政策をそれぞれの立場に受けとめられないで、そうしてがんじがらめになり、苦しめられ、ささいなことを逆に大きく針小棒大に持っていかれ、そうして自殺をしている。死んだ者について今度は全逓に、組合で葬式をしてもらうと退職金も出ないそうだなんというようなことを言って、これは現実の問題があるのです、名寄市でなくなった人の自殺後の中で。そういうのであればというので、本人のあれだけれども、退職金もあれだからというので、身内の方が集まって、それじゃ局長か課長に葬儀委員長をやっていただこうじゃないかということになっている。もうほんとうに考えられないような事態が次々に起きている。 そういうたくさんの自殺者を出しているという現実についてもひとつも反省をされないで、がむしゃらに労務政策を推進をされて、その結果が先ほどから言われ、この報告、警告書の中にも書いているように、職場そのものがたいへん険悪ですね。これはそれぞれの言い分はあったとしても、いま官公庁を歩いて、同じかまのめしを食ったと言われる電電公社に訪れるのと郵便局に訪れるのとでは天と地の差ですよ、中の空気は。そういう職場でなかったんですよ、なかったのです。私は、この現実というものは隠れもない事実なんだから、そうしてその結果が、指摘をされるような人権問題というものが次から次へ惹起するということは、これ以上私は容認できないと思うのです。 ですから、同じようなことを繰り返して御答弁になると思いますが、冒頭申し上げましたように、皆さんのほうに警告が出され、両院の社会労働委員会あるいは法務委員会その他、公共企業体労働委員会等々にこの問題が日弁連から御通知をいただいている立場に立って、これはもう何としても人権侵害問題というのは直ちに中止するように、強力な措置を郵政省がとるべきであるということを指摘しておきたいと思います。 それから、この間の質問で法務省側にもお尋ねをしたのですけれども、法務局でもこれを接受されて、昨年十一月十日ですか、調査を打ち切られたと言う。ただ単に電話で申し立て人に聞いてどうだとかこうだとか、それのあれがないからどうだとかこうだということでなく、法務局の段階で人権擁護の問題を扱われる人的要因が少ないのかどうだかわかりませんけれども、調査を打ち切られたということではなく、日弁連のこういうことがはっきり出ておられるわけですから、政府の立場において、大臣お答えのように、人権の擁護というものをもう文明国中最大に極端にまで規定をしている日本国憲法に照らしても私は調査を、電話だとかなんとかではなくて、実際に出向いて双方の意見もお聞きになり、あるいは現場のそういう実情というものを十分お尋ねになって、政府の立場においてもこの問題について具体的行動としてお取り上げになるべきだと思うんですけれども、もう打ち切られたから、これはわれ関せずというようなことでこのまま過ごされるおつもりなのか、今後この種の申し立てが再度出てきたときに、法務省としては、人権擁護局としてどういう態度をおとりになるのか、この際あらためてお聞きしておきたいと思うんです。
○国務大臣(田中伊三次君) この憲法の大精神に基づく人権擁護のやり方でございますが、昨年十 一月に本件問題を打ち切ったという前回の委員会で御説明申し上げた事情で、私は十二月に法務省に参りましたような事情もございまして、現実にこの問題はうとかったのでございますけれども、人権擁護に政府の人権擁護局が発動するというのは、何も申告は必要ない。申告があればけっこうでございます。あればたいへん便宜でありがたいのでありますが、申告がなくて、風聞でもいい、新聞記事でもいい、ラジオでもいい、投書でもいい、正式の申告などなくていい。これは何か人権侵犯がありそうだと考えられる場合においては発動すべきものである、こういうふうに私は考えるのでありまして、そういう点から申しますと、電話で聞いてみた、こうだった、ああだったという程度のことであったということでは、まことに申しわけのない人権擁護のやり方であったんではなかろうかと、前任大臣時代のできごとではありますけれども、そういうふうに考えるのでございます。で、今後のやり方でございますが、申告の有無にかかわらず、積極的に人権侵犯の事実ありやいなやということについては、これを調査をいたしまして、最善を尽くすように持っていきたい。法務省は、そういうふうに前回のたしか七日の日でございましたが、先生からおことばがありまして、直ちに関係者を集めまして、もっと積極的にやれということをしっかり訓辞をしておるような次第でございますから、その方針でやっていくことをお誓い申し上げます。
○竹田現照君 じゃあ終わりますが、いまの大臣のお答えのように、積極的にこの人権を擁護するために政府側も積極的に行動されることについて、私は全面的に賛成でありますが、この郵政省の人権侵犯に関連をして、昨日の新聞にも報ぜられている新宿郵便局等の問題について、これは裁判所だとかなんとかいうことは別にして、私は法務省の人権擁護局でも直ちにいまの答弁の御趣旨に従って行動をされて、調査をなさるようにお願いをしておきたいと思うんです。いまの法務大臣のお答えで、まあ政府側なんですが、郵政省側も、先ほど大臣がお答えになったように、再三この種の問題が国会で取り上げられるなどということはもう絶対にないように対処をされるように特に要望して、関連の御質問もあるようですから、大臣との約束の時間もありますから、私はきょうはこの問題を打ち切りたいと思います。
○原文兵衛君 関連して、郵政省のほうにお伺いいたしたいと思います。 私は豊島区の目白に住んでいるんですが、大体郵便物は日曜日を除いて毎日相当量配達されているんです。ところが先月の後半から郵便物が配達されない日がだんだんとふえてきました。どうしたんだろうとふしぎに思っていたんです。そうしたら先月の三十一日の朝日新聞でございますが、「全逓“順法”を中止「指導調書」廃止など合意」という見出しで、「郵政版マル生などに抗議して国鉄の順法闘争に相当する業務規制闘争を東京地本を中心に強化していた全逓労組は三十日、これまでの当局側との争点となっていた指導調書の全面廃止など二十項目の合意が成立したとして、東京地本に対し闘争の即時中止を指示した。残る青森、仙台、盛岡などの各地本についても、組合は一両日中に闘争を収拾する方針で、六月からは時間外労働にも協力することにしているため、東京の二百十万通をはじめ全国で三百万通近くにのぼるはがき、手紙の滞貨は一週間程度で解消するものと当局側ではみている。」こういう新聞を見まして、初めて、ああ、こういういわゆる順法闘争式なものが行なわれて、そのために私どもの家に来る郵便物も配達されない日が多かったのかなあということを知ったわけです。 しかし同時に、これで解決したので、これから郵便物もいままでどおり配達されるのだろうと期待しておりましたところが、六月に入ってもさっぱり配達されない。三日、四日配達されないで五日目くらいにごそっと、こんなに一かかえも配達されるというような状況が最近まで続いているのです。そうしたら今度六月の六日のやはり朝日新聞ですが、「ふえる都内の郵便物滞貨、過去十年で最大、全逓の“ヤマネコ闘争”で」という、こういう見出しで「全逓闘争のこじれから、東京都内の郵便物の滞貨は一向に減る様子がない。五日現在で二百三十五万通に達し、過去十年来、最大の規模にのぼった。郵政省と全逓労組本部の間では五月末、紛争がやっと解決したが、この収拾に反発して東京地本管内の過半数の地方支部が“ヤマネコ闘争”を続けているからだ。しかも当局への抗議だけでなく、執行部のやり方に対する不満や派閥間の対立などもからまっているため根は深く、当局もお手上げの状態である。こんどの闘争は、当局側の労務政策(いわゆる郵政マル生)に反対して四月末の春闘妥結後本格的に始められた。とくに組合側は当局の「指導調書」が人権侵害になるとして反発していたが、五月三十日、郵政省側がこの制度の廃止を約束するなど譲歩を示したため、全逓本部も同日付で闘争の中止を指令した。」これに対して船津東京郵政局長の談話みたいのが出ているのですが、「「郵政省と全逓本部との間でとっくに妥結ずみなのに、こんな闘争が続くのは違法なヤマネコストそのものだ。労使間の問題ではなく、組合内部の統制問題、いざこざだ」と、船津東京郵政局長は強調する。全逓本部でもこのような当局側の口ぶりに強く反発しながらも、下部の“ヤマネコ”の実態は認めざるをえず、これ以上本部の統制に従わないようなら統制処分もやむをえない、との態度だ。」これは朝日の報道でございます。 私は現実にその被害を受けているわけでございますが、このいわゆる朝日新聞ばヤマネコ闘争として報道したこういう事態は、公共企業体等労働関係法十七条に違反する。だれがどう見ても全くこの十七条違反の行為ではないかと私は思うのですが、これに対して郵政省は一体どういうふうに見、あるいはどういうふうに処理してきているのか、その点をお伺いしたいと思います。
○政府委員(北雄一郎君) ただいま先生おっしゃいましたような経緯でございます。それが正しいことかどうかということになりますれば、私どもは、いわゆるヤマネコでありましょうとなかろうと、いわゆるスト、怠業行為というものはやはり法で禁止されておるところである、したがってやってはならないことだということで考えておるわけであります。
○原文兵衛君 そのように考えているとして、これはどう見ても、新聞の報道もこういうふうに報道されているところを見ても、私は現実に、郵便物が四日か五日来ないで、そして四日目、五日目にごそっと来る、そういう事実を実際受けているわけです。これは明らかに公共企業体等労働関係法十七条違反なんだから、違反であれば、それに対する処分というものがなければならないんで、こう考えているだけじゃ私は、郵政省当局として、やっぱり法律に従ってそれをきちっと守らなければならぬのに、法律違反をしておることになるんじゃないかと思うんですが、その辺について、しっかりした態度でもってやっていただかなければならぬと思いますが、いかがでしょう。
○政府委員(北雄一郎君) こういった怠業に対しまして、私どもといたしましても、当然重大な関心をもって対処したいところであります。 まず、業務の面におきましては、そういったことでたいへん御迷惑をかけましたので、五月の下旬以来いろいろ、非常勤を入れますとか、あるいは管理者を応援させるとか、いろいろな手を使いまして、できるだけ郵便物の配送につとめました。また、非常に態様の悪い、職場秩序がもう乱れ切っておると思われるような局に対しましては、郵政局から、まあ四局ぐらいでありますが、四局ぐらいへ、職場秩序の乱れを直すための要員も派遣をいたしました。それから、むろん、組合に対しても、そういったことをやめるようにということは、再三働きかけております。それから、六月の九日でありますが、なおその規制闘争を継続しておる局がございましたので、そのうち特に態様の顕著でありました二局につきまして、百二十九名にのぼりますが、行政処分を行なうという措置もとっておる次第でございます。
○原文兵衛君 関連質問で時間もとってはいけませんので、これで終わりますが、私は、法秩序の維持というものは、これはやはり当局側もあるいはまた組合側もきちっと守っていかなければ、日本のこれは労働運動としても発展もしないんだし、また、国民の皆さんを対象とするこういう公共企業体等においては、当局側もその点はきちっとやらないと、だんだんだんだん乱れに乱れていっちゃう、とんでもないことになるんじゃないかと心配しているわけでございますが、答弁は要りませんが、その点について、当局側の姿勢もきちっと正すように要望して、質問を終わります。
○国務大臣(久野忠治君) 法治国家として、法令の定むるところに従って郵政事業が正常に運営されるということは当然のことであろうと私は思います。 春季闘争妥結後においても、都内の一部の郵便局におきまして、大量に及びます、二百数十万通に及びます滞留郵便物ができたということは、たいへん遺憾に存ずるような次第でございます。その実態について調査もし、また対応手段等も講じまして、でき得る限り国民の皆さんに御迷惑の及ばないように処置をいたしてきたのでございますが、最終的に、ただいま事務局長から御報告申し上げまいたように、二局につきましては、たいへん遺憾なことではございますが、処分ということにいたしたような次第でございます。 今後とも労使間の正常な運営のために微力を尽くしたいというのが私の考え方でございまして、就任以来、このことは皆さんにも申し上げ、私自身も努力をいたしておるような次第でございまして、今後ともこの趣旨にのっとって努力をいたしたいと、かように存ずるような次第でございます。
○佐々木静子君 それでは、私は、この六月四日、これは朝日、毎日、読売、産経など一流紙にこぞって報ぜられました国立伊東温泉病院の水銀事件についてお尋ねいたしたいと思います。 新聞を拝見しまして、私、正直なところ、非常に納得のいかない変な問題だなあという、すっきりしないものを感じたわけでございますが、実はあとでわかったところでは、これを読んだ人、これはお医者さんの人たちに当たりましても、非常にふしぎな感じがした、あるいは法律関係の人と話をしましても、非常に奇妙な感じを受けたというのが、これ異口同音に皆さんのおっしゃるところでございまして、そういう点で、これは全く納得のいかないケースだ。そしてそれが、翌五日の日に少し部分的に報ぜられたところがありますが、その後ぴったりと新聞からも姿を消した。そういうことで、たいへんにこの事件は奇妙な感じを一般の国民に与えているんじゃないかと思うのでございます。 その事柄につきまして、きょうは時間もございませんので、簡単にこの事件の経過を厚生省からまず伺いたいと思います。
○説明員(佐分利輝彦君) この事件の経過でございますが、まず、五月二十二日のお昼に病院が外来者のために出しました食事のみそ汁に薬品のようなものが入っておりまして、同病院の外科の医長と、外から応援に参っておりました若い医師二人、合計三人が、そのみそ汁を飲みまして吐きけを催したわけでございます。そのために、病院当局といたしましては、そのみそ汁を伊東警察のほうに提出いたしまして、その分析並びに調査をお願いいたしたところでございます。その結果は、翌二十三日、警察署のほうから、水銀が発見されたという御報告を受けております。 次いで、五月の二十八日でございますが、お昼ぐらいに、内科の医師でございますA医師が突然薬局の前で倒れまして、病院といたしましては、直ちに患者を外来に運びまして応急の措置をしたのでございますけれども、いろいろ手当てをしたかいがなく、三時過ぎにおなくなりになったわけでございます。なお、その際、同医師に酒気を帯びておるような形跡がございましたので、医局のほうを調べましたところが、医局にビールのあきびんとコップがございました。これも警察のほうに提出いたしまして調べていただきましたところ、コップの指紋は、死亡いたしました医師の指紋であり、コップの中にまた若干の薬品のようなものがあったようでございます。 そこで、遺族とも相談いたしまして、同医師の死体解剖をすることにいたしまして、翌二十九日の午後から横浜市立大の吉村教授をお招きいたしまして、また県警本部の係官の立ち会いも得まして死体解剖をしたところでございますが、その解剖の結果は、肺に欝血がある、心臓の不全がある、また脳の硬脳膜——硬い脳膜と書きますか、硬脳膜の腫瘍がある。また肝臓に脂肪肝の所見があると、こういうような状況でございました。そこで、一応病院当局といたしましては、その時点の所見に基づいて死亡届を市の戸籍係に提出していただきたわけでございます。 その後私どもが警察当局から受けております連絡によりますと、種々の情勢から判断いたしまして、五月二十八日の医師の死亡事件は、服毒による自殺とお聞きしております。また、五月二十二日のみそ汁事件につきましては、目下警察当局で捜査を続けていらっしゃる段階でございます。
○佐々木静子君 それでは、先に経過を承る意味で警察庁のほうに概略簡単に説明していただきたいと思います。
○説明員(小林朴君) ただいま厚生省のほうからお話がございましたように、二十二日のときに三名のお医者さんが昼食にとられましたみそ汁の中に薬物が入っておるというようなことで、大体警察のほうでは、その薬と申しますか、まあ毒薬になるのでしょうか、これはオキシシアン化水銀というようなものだという、そういう水銀性であるということがわかっておりますが、そういうものが入っておったというようなことで、先ほどもお話がございましたように、それを食事されましたお医者さん方のほうでは、吐きけ、それから軽い腹痛、下痢というような症状が出たというようなことで、一応毒物を、薬物を混入したそういう何と申しますか傷害事件ということで捜査をしておったわけでございます。 また、これと全然別個といえば別個でございますけれども、二十八日の日に医局の先生が、大体服毒自殺、先ほどもお話が出ましたように、服毒自殺ではないかという状況で死亡されたわけでございます。一応その内科というのは、医師がなくなられた状況は先ほども申されたとおりでございますけれども、そのポケットの中に遺書を入れておられた。これも筆跡鑑定をいたしました結果、御本人のものにまず間違いがない。それから、当時、ああいうふうに指紋を採取されました医局に残されたビールとそのコップでございますけれども、それは御本人がお飲みになったものにまず間違いがない。同時に、そういうことで、そのコップの飲み残しの中から、先ほど申しました水銀剤が一部検出されたというようなことで、大体服毒自殺ではないかというふうには見ておりますけれども、この事件、最初の事件につきましては、一応私どものほうとしては現在捜査中ということでございます。
○佐々木静子君 いま厚生省及び警察庁から事件の経過を簡単に伺ったわけでございますが、これは死人に口なしで、本人さんから詳しい事情を聞くことができないというのは非常に残念なわけなんでございますが、遺族並びに関係者の人から見ると、これは全く寝耳に水、これくらい驚かされることはない。元気でその日まで、五月二十八日病院へ出て、午前中はずいぶん患者さんもいろいろ見ておるようでございますけれども、そして突然に正午過ぎに急病でなくなった。そして、むろん死亡証明書、病死であるところの証明書もいただいて、そして病気でなくなったとばかり思いこんで葬式も済ませ、初七日というときに、いきなり、しかも病院からもあるいはそのほかのところからも正式なあいさつは全くなしに、だしぬけに、これはたぶん病院から発表されるか警察から発表されるかじゃないと、新聞社のほうはこぞってかってに推測をお書きになることはないと思うのですけれども、どちらからかこれは発表されたわけなんだろうと思うのでございますけれども、こういうふうに全く寝耳に水の、なくなったお医者さんが水銀のみそ汁を同僚の医師たちに飲ませたというようなぬれぎぬを着せられたということで、たいへんに驚きかつ憤慨しているわけなんでございますけれども、その事柄についてもう一つ法務省から経過を伺っておりませんが、人権擁護局のほうからもこのことについて遺族のほうにお問い合わせがあったように伺っておるわけでありますが、人権擁護局とすると、これに対してどのように臨まれ、また、どのような態度で処していこうとお考えになっていらっしゃるわけですか。
○政府委員(萩原直三君) お答え申し上げます。 ただいま先生がお話ございましたように、新聞報道に接しまして、この問題を管轄、所轄等をしております静岡地方法務局の人権擁護課の係員が、なくなられた方の奥さんの渡辺智恵子さんに問い合わせましたところが、ただいま先生がお話しくだすったような御意向のように承ったのでございます。で、われわれといたしましても、問題が重大でございまするし、ことに、なくなられた方及び御遺族にとってはきわめて大切な問題でございますので、私どもの立場としましては、まずなくなられた方及び御遺族の方の御意思を十分に尊重して、われわれの立場からできるだけの調査をいたしたい、このように考えておるのでございます。ただ、そのときの問い合わせによる奥さんの御返事によりますと、目下弁護士さんに調査を依頼している。法務局に調査を求めるかどうかははっきり申し上げかねると、こういう御返事がございましたので、なお御遺族の御意思を確かめた上で、調査する必要ありというふうに認められました場合は、われわれ独自の立場から、できるだけのことを調べていきたいと考えております。
○佐々木静子君 いろいろと人権擁護局でもお骨折りいただいているということはわかりました。いずれ人権擁護局のほうにもお願いさしていただく、あるいはいま遺族の方からもお話がございましたように、先ほど竹田先生の御質問にもありましたような日弁連の人権擁護委員会にもこの問題を提訴して、この死者及び遺族に対する人権侵害という問題でこの問題を取り上げていこうというふうなこともいま考えられているわけでございますが、ともかく、この経過についてさらに突っ込んで伺いたいと思うわけです。 先ほどお話にもございましたように、まずこの死体の解剖でございますが、これは遺族の方の話では、医者のことでもあり、少しでも医学に貢献したい、あるいは急な病気であるので死因を解明したいというふうな意味から、病理解剖を承諾した、お願いしたということなんでございますが、これはどういうわけで警察官をお立ち合わせになったんですか。遺族の承諾をとっておられますか、その点厚生省に聞きます。
○説明員(佐分利輝彦君) 二十九日に行ないました死体解剖については、執刀者も横浜市立大の病理の吉村教授でございますので、病理解剖ということになっております。警察当局に立ち会っていただきましたのは、これはやはりいろいろと諸般の情勢から不審な点もあるということで、警察と御相談をした上で、立ち会っていただいたものでございます。
○佐々木静子君 これが、実は私、吉村教授にも当たったんですが、当時警察官が立ち会っているというようなことは全然聞いておらなかった、純然たる医学上の解剖だと承知したので、そういうことでやったんである——これを警察官を立ち会わせた法的根拠を御説明いただきたい。
○説明員(佐分利輝彦君) その点につきましては、私、しろうとでございますのではっきりいたしませんけれども、病院当局といたしましても、二十八日おなくなりになったときに酒気を帯びていらっしゃって、ビールを飲んでいらっしゃった、あるいはポケットの中に遺書のようなものがあった、またその前のいろんな言動からして、どうも病気による急死というふうには考えられないと考えておりまして、警察当局ともいろいろ御相談をしておったわけでございますが、私は法的根拠はよく存じませんけれども、そういう場合には、警察当局にも御相談をして、また、病理解剖ではあるけれども、お立ち会いを願うというようなことは、病院としても、事実の正確を期する上からも、またいろんな事件に際しましては、また市民としての一つの義務といたしまして、適当なことではないかと考えております。
○佐々木静子君 これはね、死亡した人のからだというものは、遺族に、相続人に権利があるわけですね。これはあなたがいま、国民の義務とか何とかたいそうなことをおっしゃいましたけれども、それじゃ遺族は、死因の究明、医学に貢献したいという気持ちで、自分の最愛の夫なり、父親なりを病院の解剖に承諾しているんですよ。それに対して、あなたのほうでかってに警察官、あなたのほうというか、国立病院のほうでかってに警察官を立ち会わして、それで遺族の了解を求めないとか、かってにそういうことができるのはおかしいじゃないですか。実際、このケースを私調べまして、厚生省は警察の中の一部なのか、警察庁の厚生部というのがあるのかどうか、私はそういう感じを受けたんですよ。どういう権限で立ち会ってもらったのか、わからぬで、ただ来てくれということで立ち会わしたわけですか。それじゃ、これからそういうことで解剖するときに、これは病理解剖ということで、特に担当のこういう先生にお願いしたいということで、厳正な気持ちで——遺族の人は、自分の夫なり父親なりがなくなって、しかも病院で解剖していただくというようなことは、遺族としたらよっぽど思い切ったことですよ、しかも医学のためと思って。それに対して、一方では、そのなくなった人を犯人にでっち上げるための工作をこちらでやってですね。それじゃだまし討ちじゃないですか、あなた方のやっていることは。 警察庁に伺いますけれどもね。私はこれは実は国立病院の院長にも会って経過を聞いたんです。そうすると、この院長が、死ぬ前にもうすでに病院側から警察に出動要請があって、院長室に何人もの警官が張り込んでいたということですけれども、正式に警察は病院のだれから、どういうことで要請を受けて、一方が危篤で苦しんでいるときに、警察の方がたくさん張り込まれたわけなんですか、どういうことで出動されたわけなんですか、根拠を聞かしていただきたい。
○説明員(小林朴君) 警察のほうで、その法律的な根拠と言われましても、これは不審なもの、あるいは自殺、まあ変死と申しますか、そういうものについて一応話を受ければ、出かけていってそれに事情を聞くということは当然やるべきごとだと思いますけれども、話があったのは、二十八日の日に児玉という事務長から連絡がございまして、そういうことで、二時十五分ごろだったと思いますけれども、警察は出かけていったということのようでございます。
○佐々木静子君 これ、お医者さんが死んだのは三時五十分ですね。ですから、これは服毒自殺とか何とか言うけど、まだ自殺してない前のことですね、倒れた直後ですね。これね、病院の常識として、いきなり午前中まで一生懸命仕事をしていられたお医者さんがふらふらになって倒れたとなれば、まず全部が治療に一生懸命になるのがあたりまえじゃないですか。これ、倒れた直後ですよ、まだ死んでも何にもいないですよ、死んだのは三時五十分ですよ。それにもう服毒自殺したいうて警察を呼びにいっている。私はそこら辺も非常にふに落ちぬものを感ずるわけです。 それから、いまもう一度病理解剖の話に戻りますけれども、この解剖の結果ですね。一部新聞によると、胃の中から水銀が発見されたということが最初報ぜられておって、その後、胃の中からは水銀は全然検出されておらぬ、遺体からは出ておらぬということ、それから、水銀を飲んだような場合には胃とか食道とかがただれるけれども、そういう反応も全く見られないということが報ぜられているわけです。また、私の、これは吉村医師から直接聞いたわけじゃありませんが、吉村医師が遺族に報告された経過を詳しく速記したものを読ましてもらったんですが、水銀化合物は全然検出されておらない、また、水銀物を飲んだようなあとに見られる独特の胃のただれ、食道のただれというものも全く解剖所見では見られないと言っているわけなんですが、正式の解剖所見、厚生省のほうではどういうふうに報告を受けておられるか述べていただきたい。
○説明員(佐分利輝彦君) 胃のただれ、食道のただれは認めておりません。
○佐々木静子君 水銀物の検出です。
○説明員(佐分利輝彦君) 胃の内容物からの水銀物の検出については、まだ警察から御連絡を受けておりません。
○佐々木静子君 これはなぜ警察から連絡を受けるんですか。解剖所見は、病院が吉村医師に頼んだわけでしょう。吉村医師は医学上の解剖だと思ってこれを承知したということを言っているわけですよ。なぜ吉村医師が警察へ報告するんですか。当然病院へ報告しないといけないんじゃないですか。まず第一に思うことは、家族が解剖を依頼したわけですよ。それに対していまだ、口頭では解剖結果はありましたけれども、厚生省や警察へ報告するよりも、依頼した遺族に当然まず報告すべきじゃないですか、報告書というものを出すとすれば。一体、どうなってるんですか、これは。ちょうど人一人の死体を遺族からだまし討ちで持っていったようなことですよ。これは厚生省が人の人命を預かるような医療を担当しておりながら、まあ生きている人間も死んだ人間も十ぱ一からげにどうなってもいいというような、非常に人命軽視、もうそのものずばりじゃありませんか。一生懸命午前中まで勤務していたお医者さんが倒れた、倒れたと同時に、だれだってそれは——ここの病院は十人しかお医者さんいないんですよ。それだって、外来のお医者さんやら、いろいろ入院中の人がいるでしょうから、全部の人がそれにかかれない。そういうときに——家族への連絡も一時間おくれているんですよ、同じ伊東市に住んでいて。それへ連絡しないで、警察へ連絡して、警察官をたくさん張り込ませているというのは、これは一体何ですか、厚生省のやっていることは。人殺しのために病院を置いているんですか。 まあそこのところはどうでも、まずといたしまして、この解剖所見ですね。もう一度、その警察から報告を受けてないというと、なぜあなたのほうが調べないんですか。解剖を頼んだのは厚生省でしょう。
○説明員(佐分利輝彦君) いろいろこのような自殺とかあるいは他殺というような疑わしい事件の場合には、国立病院といたしましても、また担当した医師といたしましても、医師は医師法によって義務があるわけでございますが、警察当局に捜査をお願いすることになっておりまして、今回の場合も、二十九日に死体解剖しましたあと、胃腸の残留物とかあるいは治療した際の胃洗浄の液とかまた血液とか、そういうものを警察のほうに提出しておるわけでございます。で、そういった物質の検査につきましては、警察のほうの科学警察研究所で正確を期していただくという考え方で臨んでおるわけでございます。
○佐々木静子君 それでは、遺族は医学解剖のつもりで解剖に承知した。そうすると、その胃の内容物なり、胃の一部なり、遺体の一部を警察に立ち会わして持っていかした。そんなことが許されると思うんですか。警察は、これはどういうことで持っていかれたのですか。押収調書でもあればここに示していただきたいと思います。
○説明員(小林朴君) これは任意の提出ということで受けまして、現在科学研究所で鑑定中ということになっております。
○佐々木静子君 任意の提出とおっしゃいますけれども、これはだれが任意に提出したんですか。遺体というものは、これは相続人のものに所有権ははっきりしております。だれから提出を受けられたわけですか。
○説明員(小林朴君) 詳しいことはわかりませんが、私の聞いております範囲では、胃を洗浄した液を、その洗浄液を病院側から提出を受けたと、こういうことだと思います。
○佐々木静子君 それでは胃の洗浄液だけを押収してられるんですか、任意に提出を受けて領置していられるわけなんですか。領置調書は出しておられますか。
○説明員(小林朴君) 領置だと思います。
○佐々木静子君 領置調書を出しておられるなら、この件についての任意提出を受けた領置調書の一件全部を、一覧をこちらへ提出していただきたいと思います。と申しますのは、私はこの病院長にお会いしたときに、いろんなものを警察は持っていっているというのですよ。持っていっているというなら、これは押収令状に基づいて持っていっているのか、押収の権限に基づいて持っていっているのか、あるいは任意に提出したのか。これは、任意に提出したとすると、病院の所有物もあるでしょうし、あるいは遺族の所有物もある。所有者の了解なしにかってに持っていったとすれば問題だ。任意に提出したとすれば当然に領置調書を警察からもらっているはずだということを言いますと、そういうものは何ももらってない、何か知らないけれども警察がざっと持っていったというのですね。そういうずさんな捜査がどこにあるかということで、一体どういうことなんですか、これは。しかも県警がタッチしてやってられるというのに……。
○説明員(小林朴君) 詳しいことは私聞いておりませんけれども、これが犯罪捜査になるのかどうか、この点も問題でございますが、提出を任意に受けて、それからそれを受けるという形のものなのか、その辺のところは私ちょっとよく存じませんのですけれども、まあその死因をひとつ究明するという調査段階と申しますか、捜査以前の段階においての行為ということであるならば、その領置調書というような捜査の手続をあるいはとらなかったかとも思いますが、この辺のところはちょっと私、現在資料を持っておりませんので、何ともお答えできないわけでございます。
○佐々木静子君 これは資料持ってないとおっしゃるけれども、実は私、これは事故が起こったその晩に伊東病院へ調べに行って、そしてその翌日に通告しているんですよ。六月五日の日に警察庁にいっていると思うのです、国会でやることを。それがいろんな国会審議の関係で延びていまに至っているわけなのに、何も聞いていないじゃあまりにも怠慢じゃないですか。警察のほうも、ここへ国会で警察を代表して出る以上は、県警からもっとこまかい報告を聞いて、ちゃんと責任のある答弁ができるようにしてもらわないと困る。 ただ、あなたのほうは死因を究明とか言われるけれども、新聞記事によると、一応みんな犯人だとなっておりますよ。一番最初の日は。そうして被疑者であるところの医者が死んだので捜査はこれで打ち切るというふうなことが第一日目の記事に載っておりますけれども、そうすると、伊東病院のこの渡辺医師は、全然犯人だとは思ってないわけなんですね、被疑者じゃないわけなんですね。それを警察のほうではっきりしていただきたい。
○説明員(小林朴君) 関係者の一人には違いない。被疑者と断定したことも何にもないということでございます。
○佐々木静子君 関係者の一人というと、当然この病院の中には十人しかお医者さんはいないし、大きい病院といっても小さな——全体から見ると、病院の中の人間は知れている。その中で水銀入りのみそ汁を飲まされた。傷害事件があった。その中のたくさんいる関係者の一人という意味でございますね。被疑者というふうには全然警察では断定しておらぬということでございますね。
○説明員(小林朴君) 被疑者としては断定はいたしておりません。ただし、その捜査でございますから、当時食事の運ばれて、医局に運ばれてきた段階で出入りのあった人というようなことで調べの対象になるという人ではあろうかと思うわけでございます。
○佐々木静子君 また報告を受けておらぬでお逃げになるかもわからないけれども、これ、死体の解剖されたのは五月の二十九日ですね。胃の内容物について警察から報告を受けて、おらぬ、私、警察から報告を受けることも非常に突拍子もないことだと思うのですけれども、その吐き出したものとか、そういうものから水銀化合物があったかなかったかの検出というものはいまに至るもまだわからぬのですか。これは私、方々の医者に当たったのですよ。そんなものはすぐ検出できるとだれでも言うのですよ。もしそれがまだわからぬというなら、これは厚生省か、警察かどっちか知りませんがね、いずれにしろ両方ともが非常な怠慢だと思いますね、あるいは何かの意図があって、わざとわからぬと言っておられるか、私はその二つしかないと思います。どうなんですか、その点。
○説明員(佐分利輝彦君) 厚生省といたしましては、警察のほうに必要な資料を提出いたしまして、その結果をお待ちしておるわけでございますが、まだ結果の御回答をいただいておりません。
○佐々木静子君 私は、その新聞に出た六月四日の日に、院長に、これは一体もう病死だということで、こんなにももめていることは知らないから、遺族はみんな火葬にしてしまったわけですよ。これはこういうふうなことになっているなら、遺族にしたって、もっと自分のほうから、考えられる法医学者なり何なりに立ち合わせて、むしろ内臓物でも、内臓そのものでも遺族は火葬にしないで取っておきたかったというわけですよ。これを火葬にしたあと、証拠がなくなったのを待って犯人呼ばわりするというようなことで、非常に憤慨しているわけですが、このことで病死だと言っておきながら、いまになって自殺だ、気違いだというふうなことを言う。一体自殺だったら検視をしているはずだが、どうだったのかと言うと、院長は検視は一切しておりませんと言った。私は三回だめを押した。私ばかりじゃない、そこに居合わせた人は。どうなんですか。検視はしたのですか、しないのですか。これは厚生省でも警察でもけっこうです。
○説明員(佐分利輝彦君) 検視はいたしておりません。
○佐々木静子君 これは厚生省の方にお会いしたときも、院長のそういう報告だったし、新聞にも出ておりますが、二カ月前から気違いであったということなんですが、この気違いであったということを院長が知っておったとすれば、その人に医療に従事さしていたということはこれは非常な問題なわけですけれども、実はこれは死ぬとは、急な病気だったから、死ぬことは予測していなかった。なくなる前日、五月の二十七日までこれは医者が日記をつけているわけですよ。この日記を私遺族から預かってきたわけです。いろいろなことも書いてある。五月の二十二日のことも、みそ汁事件のことも、ちょっとこんなことがあったというふうなことを書いてございます。いろんなことが書いてございますが、実は私は精神医学者、これもまあ時間がなかったので五人ほどに読んでもらって、この日記を見て精神異常を来たしているかどうかということが考えられるかということ、これは遺族なり患者さんなり親しい人たちは、精神異常なんてとんでもないと言っているわけですよ。ですから、そういうことで鑑定してもらったわけです。これはまだ正式の鑑定書はできておりませんが。そういうことで、とうていこれは精神異常者というようなこともおかしい。そういうふうなことであれば、単純に人を気違いであったとか何とかいうようなことも、それも本人が生きていたらおそらく院長はそういうことを言わなかったと思う。死んだのを幸いに、気違い扱いしている。そこら辺にも大きな人権問題がある。死んだ人にはもちろん奥さんもあればかわいい子供さんもいるわけですし、これじゃほんとうに死人に対する冒涜と言うよりほかないと思うんですよ。 それから、時間がありませんのでなにしますが、私が病院で経過を聞いたときには、なぜ自殺かということで騒いだかというと、医局は薬局からずっと離れているわけですね。御存じだと思いますが、階も違うんですよ。その医局に指紋のついたコップがあって、その指紋が渡辺医師の指紋と一致したから、それで自殺だと思ってすぐに警察を要請したという話なんです。ところがもう一つ、それじゃ渡辺医師の指紋はどういう指紋か知っていたのかというて聞くと、指紋は全然知らない。なくなったあとで解剖のときに、遺族の方にはお話ししなかったけれども指紋をとりましたという話なんです。そうしたら、指紋が一致するも何もないでしょう。これは全く初動捜査のミスだと思いますよ。これは警察が勇み過ぎたのか、厚生省が勇み過ぎたのか。そして、そのためにこのなくなったお医者さんが非常に不名誉な結果に終わった。これは厚生省としてももうちょっと責任をはっきりして、ぬれぎぬならぬれぎぬで、犯人じゃないんなら犯人じゃないということをはっきりしないといけないと思うのです。あなた方、犯人だと思っているんですか。
○説明員(佐分利輝彦君) 私どもは犯人だとは思っておりませんし、またそのようなことを申した覚えもございません。また、本人が精神障害者ということも申していないはずでございまして、院長の表現を借りましても、精神状態が不安定であったという表現をいたしております。
○佐々木静子君 もう時間がないので、次にあと二、三伺いますが、これは、私、調べると、病院内部にもいろんな問題があるらしい。覚せい剤の原料エフェドリン一ケースが——かなり大量ですね、伊東国立病院からなくなったケースについては報告を受けておられますか。
○説明員(佐分利輝彦君) 報告を受けております。
○佐々木静子君 警察のほうへは届け出がありましたか。これはだいぶ前の話ですが。
○説明員(佐分利輝彦君) その点については確認いたしておりません。
○佐々木静子君 警察庁のほうは、その点は御存じありませんか。報告を受けているか。受けたとすれば、何年の何月何日にそういう報告を受けたか。
○説明員(小林朴君) 私は聞いておりません。調べてみないとわからないと思います。
○佐々木静子君 当時、職員の一部というよりも、看護婦さんの一部と暴力団とが何か結託しているような事情が判明して、そういうふうなことで、これはだいぶ前のことですけれども、病院の中でたいへんに人事の異動があった。まあこのことだけではありません。これはなくなった人が死ぬ前日まで日記をつけているものですから、この件も、私、日誌でも確認したんです。それからそのほかのこと、これも時間がないのでなにしますが、ずっと三年ほど前からの日記を読んで、いろんなうわさの裏づけをとっているわけですけれども、むろんそのために書いた日記じゃないので、載ってないこともありますけれども、やはり病院がくさいものにはふたをしろというようなやり方でいままでひた隠しにしておいて、そして幸い人が一人死んだ、じゃこれにぶっかけようというような気持ちが多少ともでもあったとすれば、これはたいへんな人権問題だと思います。 そういうことで、いまの御答弁で、厚生省も渡辺医師を犯人だと思っておらない、警察も同様である、関係者の一人だとは思っているが被疑者とはきめておらぬということ、そのことを伺いまして私も安堵いたしましたけれども、このこともその後の経過を見てまた重ねて私のほうもお尋ねさしていただくかと思いますが、きょうは時間の関係で、このあたりで本件についての質問は終わりたいと思います。 それでは次、もう一つ別の件でございますが、本年の六月五日の日に、これは大阪市の北区で起こった事件でございますけれども、大阪市北区堂島中二丁目の渡辺橋南詰の交差点で、全自交の組合の傘下であるところの金星タクシーの運転手が東から進入して右折しようとして、いま申し上げた渡辺橋南詰交差点の中央付近で停止した。そして右へ曲ろうとしているときに、天満警察の署員からうしろへ下がれと指示を受けた。ところが、私もここは毎度通るところで、大阪の人間ならたいてい、ここの交差点がうしろ一ぱいにつかえて車が渋滞していることはよく知っているわけですが、うしろへ下がれと言われてもうしろの後続車がずっと続いてるから下がれない。下がれと言われるなら誘導してくれと言っている間に信号が変わった。信号が変わって車がざっと動き出したから、これは交差点のまん中でとまっていたらうしろにある車は全部動けないし、たちどころに交通渋滞を来たすから、信号が変わったので右折した。ほかの車と一緒に進んだ。そうするとその警察官がまたついてきて、そして非常におこって、窓をあけてあったら窓から手を突っ込んでその運転手の腕をゆさぶって、運転手は右手を打撲した。一体何をするのだと思っているところに、しかし何ら道交法に触れるところがないからそのまま行きかかったところが、窓から手を突っ込んでキーを取り上げて、そうして運転手を警官がドアをあけて車から道路に引きずり出した。そして警察官がその運転手を——この警察官は柔道初段のようでございますけれども、背負い投げしてコンクリートで強く頭をたたきつけるようなかっこうで投げつけた。そのために運転手が軽い脳震盪を起こして気を失った。ところがそこをまた皮ぐつでからだやら顔面をけってそして傷を与えた。 そういう事件が起こったわけでございますが、この警官は天満署の交通課所属の巡査の内田という人ですけれども、その人にそのために非常に傷害を与えられて、いまも重体な状態で、岡野という運転手が入院中である。そういう事件でございますが、このことは警察庁とすると、天満警察並びに大阪の府警から報告を受けておられますか。
○説明員(加野久武男君) 大阪府警察本部から報告を受けております。ただし、その内容については、先生いま御指摘の点と違う点がございます。
○佐々木静子君 違う点というのを簡単に——時間がありませんから、十二時で終わりますから、二、三分でちょっと述べてください。
○説明員(加野久武男君) 時刻、当事者等についてはほぼそのとおりでございますが、状況といたしましては、その交差点は非常に渋滞の激しい所でございまして、その運転手がいきなり直進車を妨げて右折しそうな形勢となりましたので、バックするように命じたわけでございます。当時バックするには十分の余地があったわけでございますが、運転手はその指示に従わず交差点を抜けようとしましたので、窓ワクに手をかけながら制止いたしましたが、これを引きずるようにして運転手はなおも進んだというのです。これは道路交通法違反として告知しようと思ってなお追跡をいたしたわけでございますが、逃走を続けますので、やむなく逮捕行為に着手いたした、かようなことでございます。
○佐々木静子君 これは、いまの御報告でも私非常に矛盾していると思うんですけれども、これは、おっしゃるとおりに渡辺橋の南詰というのは大阪でも有名な渋滞するところですよ。そこで逃走を続けようとかなんとかいったって、私も毎日一日に何回も大阪にいるときは通るからわかっておりますけれども、人の歩くのよりも車のほうがはるかにおそいところなんですから、逃走を続けようというようなことはまず考えられないし、また警察官が「これは逃走を続けようと思った」と誤認したとすれば、これははなはだ非常識な認定のしかただと思うわけです。あすこは次々つかえているので、人間の歩くのより車のほうがおそいわけですから、逃走のしようがないわけですよ。ですから、そこら辺をまずあなた方は、報告書だけで「ああそうか」と思っていらっしゃるかもわからないけれども、あの実情を知っている人は、あすこで逃走しようったって逃走などできるものじゃない。 また、これはまあよくあることですけれども、交差点の中央で、しかも右折をしようと思って、出ているところが前へ出過ぎることがありますね。そういうときはじっととまっているのがあたりまえで——うしろからもどんどん来るわけですからね、あぶなくてうしろへは下がれないわけです。うしろへ下がればかえってうしろから来る車にぶつかるわけで、ですから「うしろへ下がらぬ」と言ったのじゃなくて「あぶないから誘導してくれ」と言っているわけですね。そういうふうなことからも、あなた方の——どういうところから聞いていられるのか知らないけれども、だいぶ認定が違うということですね。 この件でたいへんに、いま申し上げたように、警察官が運転手を車から引きずりおろして、そして柔道初段の腕前でコンクリートの道路にたたきつけて、そのために後頭部を打って脳震盪を起こして意識を失って、そこをまた皮ぐつで顔や胸を足げにし、これは一般の市民の人たちが非常にびっくりしたわけです。そして市民の人たちが「これは何ということだ」、市民の人たちがとめに入ったのですよ。いま、なかなか市民の人たちは、うっかりそういうトラブルに入ると、あとでまた、これは警察官同志じゃなくっても、普通の暴力ざたの中に入っていくとあとのたたりがあるから知らぬ顔しているというのがこのごろの風潮ですけれども、あまりにひどいことなのでみんなとめに入ったわけですね。そのときは、これは警察官というふうなこともわからなかったわけですね、初め。その中にもそういう人もいるわけです。ところがこれは警察官がやったということで非常に憤慨して、これは国民がこういうことでは安心してわれわれの治安を警察にまかすことができない、こんなおそろしい警察であればこれはたまったものじゃないということで、一般の市民の人たちがこれを問題として取り上げているわけなんです。 もちろんその当時の毎日新聞をはじめ一流紙にこの問題は大きく取り上げられておりますけれども、そしてその上、そういう状態で脳震盪をしばらく起こしてふらふらとして、血まみれになっている人間を、すぐに病院へ——市民の人が救急車を呼んだわけですよ、あまりにもひどいので。ところが、救急車を呼んだのに病院に連れて行かずに天満警察に連れていって、そうして先に血まみれの人間を取り調べ、調書をつくった。そうして運転手も苦しい息の下から、ともかく早く病院へやってくれと岡野さんも何回も言ったのに、これは病院へやらずに、そういう重症の人を無理やりに調べた、調書をとった。それからやっと、この事件が起こってから何時間もたった後に病院へ運んだ。病院では、これは重態だからと直ちに入院をさせたということが、これは各新聞にも報ぜられておるし、またそのときに立ち会った何人かの市民の人たちにおいても確認されておるわけです。いろいろと警察のほうで、いま多少行き違いがあるというようなお話があったですけれどもね、これはかりに百歩譲って、いきさつが警察の説明されたような経過であったとしても、脳震盪を起こして倒れている、しかもけがをしている、そうして頭を打って吐きけを催しているといったら、これはかなりひどいわけです。へたすると死ぬかもわからない。そういう人を市民の人たちが早く病院へ入れてやってくれと言っている、本人自身も何とか早く病院へ送ってくれと苦しい息の下から言っているのに、それをこばんで、手錠をかけて捜査を続けたということ。それは警察としてどういうふうにお思いになりますか。
○説明員(加野久武男君) さっきのお答えが少し簡単過ぎましたので、つけ加えさしていただきますけれども、逮捕行為に着手いたしました際、運転手のほうが先に、目撃者の証言によりますと、ボクシングの構えをして交通巡査の顔面を十数回たたき始めたわけであります。交通巡査は両手で防ぎながら車の後のほうまで下がったわけですけれども、その車の後方で、ついに制圧逮捕するもやむなしということで、腰投げを打ってこれを路上に倒したわけでございます。その後くつでけったり等はいたしておらないという報告を受けております。 なお、到着したパトカーによりまして天満署に連れて参ったわけでございますけれども、手続といたしまして、司法警察員のもとに引致するということになっておりまして、その後長時間ではなくて、私どもが受けた報告によりますと約三十分ないし三十五分間ぐらい署でいろいろ弁解などを聞いて、その間本人はそう大した苦痛も訴えていなかったけれども、シャツ等に鼻血のあと等がついておったので、病院に行って診察を受けさせたほうがよかろうという幹部の診断で、本格的な調べに入る前に病院に行って診断を受けさせたわけでございます。その病院の診断によりますと、レントゲンの結果等では別に異常は認められないけれども、一日、二日入院させて様子を見たほうがよかろうということで、人院を続けさせたということになっております。
○佐々木静子君 あなたが警察の上層部の方として、警察官の起こした問題についてかばおうとされるお気持ちはわかりますけれども、しかし、自分の部下のやったことであっても、やはり事柄は事柄としてはっきりと厳正中立にやってこそ警察が国民から信頼されるわけでありまして、それは背負い投げまでして脳震盪まで起こさせるような暴力警官に対しては、ある程度の抵抗はしないと——これはあたりまえのことですね。しかし、一般市民あるいはその場にい合わせた報道人の方々の言うことと警察の言うことがこんなに食い違うというのは、これはやはり警察が警察の肩を持っていると思われたってしかたがないんじゃないか。また現在、いまもかなりひどい重態で、面会謝絶で入院しているわけで、そうして吐きけを催して、へたをすると、一応生命の危険は脱したらしいけれども、失明するかもわからない、そういうふうなひどい状態であるのに、あなた方は、警察という密室の中ではまあ一応診察を受けたらよかろう、本人は苦痛を訴えておらぬというふうな、そういうことをかりに県警なり何なりから報告があっても、それをうのみにして思い込んでおられるとすれば、これは非常に甘いのじゃないか。 これじゃ、いまの警察に国民が相当不満を持っている、不信感を持っている、この不信感を除去することができないんじゃないか。警察というものがほんとうに国民のための警察という姿勢を示してこそ国民は信頼するわけですけれども、そういういまの御答弁のような態度では、これは国民はついていかないと思いますよ。そういう意味で、やはりこういう事件に対して、しかもこの問題の運転手を、内田さん自身はくつで脳震盪を起こしている人を一回けったということを認めているわけです。そういうふうな状態の中で、やはり警察が警察一家ということでかばっていたんじゃ、これは国民は信頼していかない。やはり十分によく調査して、そして何にもないのに大ぜいの国民がおこるはずはないわけです。ですから、やはりそれはもう少し徹底した人権思想で貫いて、幾ら警察官であっても不正は不正ということで、き然とした態度をとっていただきたいと思うわけなんです。 それから、これはこの件に限らず一般的な問題として、法務省のほうにちょっとお願いしておきたいのは、別にこの問題じゃなしに、一般的に警察官の職権乱用というような事件に対しまして、これはなかなか起訴されるケースが全国的に見て少ないのじゃないか。そして結局準起訴手続とか何とかいうようなことで争っていかなければならないケースが非常に多いわけなんです。そういう事柄に対して、法務省とすると警察官の職権乱用的な犯罪についてどういう姿勢で臨んでおられるのか、その所信をお聞かせいただいて、けっこうだと思います。
○政府委員(安原美穂君) 御指摘のとおり、ただいまお話の事件を離れまして、一般的に検察の姿勢は厳正公平でなければならないわけでありますが、特に警察とは密接な間柄でありますがゆえに、世間からへんぱな扱いをしたという誤解を受けないように、慎重の上にも慎重に、厳正公平な態度で臨むというのが検察の一貫した方針でございまして、職権乱用等におきまして、いわゆる準起訴手続にのる場合の請求が多いというのは、それはむしろへんぱな扱いというよりも、事柄が相当むずかしくて、検察としては警察官の不正行為を認めることができなかった事案であって、それがへんぱな扱いによる結果ではないということを御信頼いただきたいと、かように思います。
○佐々木静子君 それでは私の質問は終わります。
○鈴木強君 私は、甲府の刑務所の移転問題と、それから甲府の刑務所で起きております独房での首つり自殺の問題、この二つについてお尋ねしたいと思います。 最初に、甲府刑務所の移転問題でございますが、実は甲府市のほうでは、市の東部の地区の地域開発計画というのを策定いたしておりまして、いまその実現のために市当局は鋭意努力をいたしておるのでございますが、たまたまこの地域に法務省の甲府刑務所がございまして、これは約八万五千八百平米ぐらいの土地でございます。もしこの土地を法務省側が何とか刑務所を移転することによって開放していただけるならば、都市計画上非常に好都合でございまして、まことに一方的な言い分かもしれませんが、市長以下何とか、移転のことについては法務省御当局の御意向に沿って、土地交換——等価交換でございますか、そういうふうな方法も十分考慮しながら、法務省当局にしばらく前から陳情しておるのでございます。この問題につきまして、移転することでございますが、につきまして、法務省としては地元の意向に私はぜひ沿ってやっていただきたいのです。 甲府は御承知のように戦災を受けまして、山梨県全体としては唯一の県都でございまして、そこに若干の人口上も人がふえているというのでありまして、産業の誘致その他いろいろと県・市当局も努力しておるのでありまして、何とかひとつこの際法務大臣の最高の御配慮でこの問題を御解決していただき、市の開発計画に国が積極的に協力をしていただきたい、こういうふうに思いまして、実は御所見を承りたいのでありますが、どんなものでございましょうか。
○国務大臣(田中伊三次君) 戦災をこうむられた甲府市の計画の上から、ぜひ移転をしてもらいたいとの御希望が届いております。私は、これには当方の事情の許す限り御協力を申し上げたいという心持ちを持っております。すでに移転先につきましても大体の見当をつけております。ただ、甲府市と法務省との間になお調整しなければならぬ若干の問題が残っておりますが、それは枝葉末節のことである。甲府市のお立場を考えましてこれに協力をするという意味でも、ぜひ市街地から刑務所を予定地にはずしていきたい、こう考えておるのでございます。 そこで、具体的な進め方として、そういうことの方針をとるならば、予算的措置としまして調査費はどうするのかという問題でございます。これがきまりますと本格的に調査ができる。これは明年度——四十九会計年度の概算要求で要求をしたい、こういうふうに考えておるのであります。したがって、甲府市におかれても極力、若干の調査を必要とする問題につきましては御協力をいただくように希望しておる、こういう事情でございます。 あと詳細は事務からお答え申させます。
○説明員(水原敏博君) 営繕課所管の事項でございますので、私から補足いたしまして御説明させていただきます。 大臣から御答弁がございましたとおり、現在の甲府刑務所は、先生も御承知のとおり、施設の老朽化がたいへん著しいものがございます。戦災にあいました老朽した建物でもございますし、これを全面的に改築を必要とする時点に至っておったわけでございますけれども、たまたま数年前から、地元の甲府市から移転の御要請がございました。いろいろ事務レベルで検討させていただきまして、その結果、市の御提示になりました数カ所の候補地をいろいろ私ども法務省の立場から検討させていただきました結果、市の御要請をいれまして、甲府市の大津町の地区に、これを一応予定地として移転を計画いたしておるところでございます。大臣からの御答弁にありましたとおり、まだ若干市御当局との間に問題がないわけじゃございませんので、今後その問題につきまして鋭意解決に努力いたしておるところでございますし、これも時間の問題で解決ができるのではないかと考えております。それが解決つきましたならば、移転に要します経費につきましては、昭和四十九年度の予算におきまして、特定国有財産整備計画の要求を行なうことにいたしております。 以上御説明させていただきました。
○鈴木強君 たいへん大臣から御理解のある御答弁をいただきまして、心からお礼申し上げます。 あとからもお尋ねをするような事件が、やはりこの施設の老朽化と申しますか、そういう点も私は若干原因があるように思いまして、この際、法務省が勇断を持って移転をし、そのことがひいては地域の開発にプラスになる、そういう協力をしていただけるということは私は非常にいいことだと思います。それで、具体的には調査費を計上していただけるところまで——これは調査費というのですか、私はむずかしいことばはわかりませんが、通称調査費というのだと思いますが、そういうものを計上して具体的に御調査をいただける、調査費がつけば大体いいというのがこれは通念でございますから、私も非常に安心をいたしました。 実はけさも、市長が私の友人でございますから電話でちょっと連絡をとりましたが、地元地権者との間に若干の理解がまだ足りないような点もございまして、問題があるが、しかしこれは市長も、何とか市全体の開発のためでございますから、責任を持って納得をしていただけるように私はするということもおっしゃっておりました。ですから、いまお話しのように、時間の問題で解決ができると思いますが、いずれにしても、移転先の大津町の地権者の方々あるいはその地域の市民の方々に理解と納得をしていただくということがこれはもう大事なことでございますから、そういう点はまた法務省としても、まあこれはお互いに願ったりかなったりということでございましょうから、市当局とともに、ひとつ問題点がありましたらお骨折りをいただいて、何とかこれが市の当局の御要望どおりいけるようにさらに今後御努力をいただきたいと思います。 それで大臣、どうでございましょうか。調査費を組んでこれからいろいろなところを調査をいただくのですが、おおよそあれでしょうか、建物を建ててそれから移転するということになりますと、普通のものと違いまして、服役者等もおるわけですから、そういう方々をどうするか。いろいろとむずかしいわれわれにわからない問題点もあろうかと思いますけれども、大体何年くらいの計画でおやりになるか、そういうことはまだあれですか、計画そのものについては、お聞きしても無理でございますか。
○国務大臣(田中伊三次君) 移転先の新築計画、どれくらいが大体の予算で、何年ぐらいで完成して、いつごろから使えるようにしていくか、という具体的計画はまだやっておりません。これはたいへんずさんなようにお聞きになるかもしれませんが、方針がきまりましたら早急にこれを立てまして、遺憾なくやっていく考えでございます。御心配がないようにしたいと思います。
○鈴木強君 営繕課長さんあれですか、常識的に言って、あの程度の刑務所を、新しく本格的に移転し、近代的なものにしていただきたいと思うんですけれども、どのくらい大体おおよそかかるものでございましょうか。
○説明員(水原敏博君) この甲府刑務所の程度の施設でございますならば、通常の場合は調査費がつきますと、それで調査が一年かかります。本体工事、これに二年ないし三年程度かかるのが例でございますので、大体その程度の見通しで計画を進めたいと、こう考えておるわけでございます。
○鈴木強君 ありがとうございました。市の開発計画とのテンポの問題もありまして、参考になりますので、ありがとうございました。それでは、重ねて大臣にも御配慮を感謝し、今後さらに一段のひとつ力をかしていただけるようにお願いをいたしておきます。 それから次に、これは地元の山梨日日という新聞がございますが、これにも大きく報道されておるんでございますが、残念なことですけれども、五月九日に甲府の刑務所の独房室で、シーツを鉄格子にかけて、申しわけないというこういう遺書を残して未決拘置中の犯人が首つり自殺をした事件があるんでございます。甲府の刑務所は、ことしの三月にも服役者同士がなぐり合いをしまして、そして一人がなぐり殺されたのですよ。それからもう一人は非常に重傷を負ったという事件が起きた直後だけに、たいへん、国民の側から、市民、県民の側からすれば、一体、刑務所はどういうふうな管理体制になっているのか、そういう問題をどうして防ぐことができなかったんだろうかという、非常に司法に対する不信を実は持っておるんでございます。そこで、いろいろあとからお伺いしますが、今日まで法務省のほうで把握をしておりますこの事件の概要でございますね、原因がどこにあるのか、そして将来それをどういうふうに正して、再びこういう事件のないように厳重な管理をし、体制をとっていくかという、そういう問題まで触れて、ひとつ最初にお答えをいただきたいと思います。
○国務大臣(田中伊三次君) 人権尊重の立場から申しまして、十分注意しておったとはいいながら自殺者を出したということ、まことに申しわけないことで、私のほうの手落ちでございます。特にこういう手落ちがあったというわけではございませんが、とにかく自殺者を出したということは結果において申しわけない、こう考えております。 そこで、先生のお尋ねの、あちらこちらに刑務所内に自殺者が起こるということ、一体どうしてこれを防止するかという具体的な防止策でございます。これは申し上げるまでもないことでありますが、一番大事なことは、自殺をするおそれのある要注意者、この人物は自殺のおそれがあるかないかということについて注意を必要とする人物という、要注意者たることを発見するということが何か医学的にできますならば、精神医学その他心理学等から判断をいたしまして、そういうことができます場合は、これを特別の部屋に収容をいたしまして、特別の監視を怠らないようにするという方法が立つわけでございます。これに全力をあげるということが第一でございますが、これはなかなかまだ今日の段階におきましては、こいつは要注意者だというように判断をすることがなかなか容易でないという欠陥がございます。学問的にもまた実践的にもこれを発見することの容易でないということがございまして、しかし、極力その発見に努力をしていかねばならぬということが第一でございます。 そしてもう一つは、そういうふうに要注意者だということになります場合においては、これに対して監視を十全に尽くしていく。たとえば十分おきの監視というものを五分おきに監視をするとか、三分おきに監視をするとか、この監視に十分の力を尽くしていくということが一つでございます。 それから第三に大事なことは、収容しております部屋の中に、妙なことばでわかりにくいのでありますが、突出部分を——ちょっとひもをひっかけて首つると、こういうのでありますから、簡単な話が、絶対に首をつらさぬようにするという道は、理論的には、ちょっと突き出た突出部分のない部屋をつくるということなら絶対首つりというものはございません。そういうことでございますので、窓といわず入口の手すりといわず、その部屋の中全体を通じまして、首をつるひもあるいは毛布を、あるいは湯上がりをひもの形にいたしましてこれをひっかけて首をつるわけでございますが、ひっかける余地のないように、部屋の中の突出部分を全部削除をする、これを切り取っていく、そしてひものかけようがないようにしていきますことが大事でございます。 私も責任がありますので、現地を見る必要があるというので、申府までは行くことができませんでしたが、東京拘置所内においても有名な自殺者を出しておることでございますから、その自殺をいたしました現実の、どこにひもをかけてどうして死んだのかということを調べるために、現地に向かいまして、そして関係者の説明を聞きまして、自分でその場に腰をおろして距離もはかってまいりました。そういうことから申しますというと、この突出部分を全面的になくする、これは甲府だけでなしに、私の見ました東京拘置所だけでなしに、全刑務所についてこれをやるのには予算的措置はどれぐらいの金がかかるものか、かどっこをごしごし切ればいいことでございます。切れないところには何か適当なものを張りつけるということが必要であろうと存じますが、そういう努力をいたしまして、自殺の余地なからしめるという方法を講ずることが必要であろう、こういうふうに今日判断をいたしまして、そういう方面に全力を尽くして、今後これを根絶するように努力をしていきたいと、こう考えておるのでございます。 なお、詳細のことにつきましては事務当局から説明を申し上げます。
○政府委員(長島敦君) ただいま御質問のございました甲府におきます自殺事故の概要、経過等について申し上げます。 この本人は、先生御指摘のとおり破疑者でございまして、五月四日に警察から甲府刑務所へ入ってまいりまして、未決監に入っておったわけでございます。本人のその後の状況でございますが、五月七日には父とか兄とか弟と面会をしております。そのときは一般の家庭の関係の家事の連絡でございまして、その面会後に特に変わった様子もございませんでした。 先ほど大臣が申されましたのでありますけれども、東京拘置所の事件がありまして後、矯正部内の精神医学及び心理学の専門家、それから保安のほうの専門家が集まりまして鋭意検討いたしました結果、自殺要注意者判定表というものをつくりまして、この手引きとともに全国の拘置所、刑務所、少年院その他に配っていたわけでございます。これは一つのためしと申しますか、試行的なものでございまして、その結果について、ただいま矯正の特別研究というのがございますが、その研究員を指名いたしまして、これの有効性、なお改正を要する点等について研究を始めております。この自殺要注意者判定表というのによりますと、いろんなチェックリストがついておりまして、本人の犯しました犯罪、疑われております犯罪とか、あるいは家庭の状況と申しますような環境的な要因、それから本人の精神的な異常があるのかないかというそういう要因、それから心理的に非常にショックを受けているのじゃないかというような心理的な要因、大きく申しますと、三つに分けまして、チェックリストでチェックをしてまいりまして、一定数のチェックがつきますと、これは当然要注意者という判定になってまいるわけでございます。 そういった要注意者判定表というものをこの甲府刑務所でも現にこのときは使っておりまして、それによって本人に詳しく、この五月七日の日にいろいろな事情を聞いてチェックリストをつくったわけでございますけれども、その段階での判定の結果は、要注意者というところに実は入らなかったわけでございます。 で、五月九日になりまして兄にあてて手紙を出しておりますけれども、それには、冷静に裁判を待って、服役して罪の償いをしたいという普通の趣旨の手紙でございました。またその日に友人と面会しておりますが、この面会内容も、皆さんに心配をかけたが、犯罪についてはこういう理由があったというような程度の話でございまして、その日に昼食に差し入れ弁当がございましたが、これも全部食べておりまして、午後零時十分にその食べ終わった食器を舎房から出すために看守が房をあけたわけでございますけれども、そのときも落ち着いた様子で、別に何も変わった様子はございませんでした。 ところが、その後、そういう状況でございましたのでありますけれども、その後、午後零時二十五分でございます。ちょうど先ほど食器を取るために開房しましてから十五分後でございますが、看守が見回りに参りましたところ、その部屋の中で縊死をしているというのを発見いたしまして、すぐ人工呼吸その他、医者が参りまして強心剤の注射その他をやったのでございますけれども、三時十五分についに死亡したという、たいへん残念な結果になったわけでございます。 経過につきましては以上のとおりでございますが、本人がなくなりましてなら後に室内をいろいろ調べましたところ、室内に、各室に未決者の収容心得という小冊子が入っておりますが、その冊子の表紙の裏に、家族にあてまして、死んで罪の償いをしたいという簡単な遺書がございました。以上の状況から判断いたしますと、やはり自責の念にかられたと申しますか、そういうことで発作的に自殺する決意を生じて自殺したのではないかというような状況に見受けられます。 で、当時この拘置所に収容されておりました人員は約五十三名でございました。二名の看守がそこに張りついておりまして、交代で順次巡回をしておりました。巡回の間隔は十分ないし十五分間隔でずっと巡回をしておったのでございます。そのほかに当直の監督看守がおりまして、これは随時監督者としてやはり巡回をしておったという状況でございました。本件の場合は、食器を下げましてから十五分後に、巡回をしたときに首をつっておるのを発見したという状況でございます。 これらの自殺事故につきましては、大臣から仰せられましたように、私ども矯正に当たっております者としては、これはもう最も申しわけないことだというふうに考えておりまして、まああらゆるいま考え得る限りの努力をただいま尽くしておりますが、一つは、先ほど申しました自殺要注意者判定表をつくりまして、これを各地でいま使っておるということでございますが、このケースでもわかりますように、ややまだ判定力と申しますか、十全でない点もございますので、いままでの過去のケースにもさかのぼりまして、この判定表についてさらに精密な科学的な、いまこれから検討を加えていくということで、もっとこれを完全なものにしたいというふうに考えておるわけでございます。 そういう判定表によりまして自殺要注意者と判定されました者につきましては、特別の舎房をつくるということで、これまた東京拘置所におきまして数種の舎房を試作いたしました。試作いたしました理由は、先ほど大臣が仰せられましたように、突起物を全部取るということのほかに、現在居住の環境をなるべくいい、明るい環境でまあ未決の方を収容する、あるいは受刑者にいい生活を送ってもらうということで考えておりますので、ただ自殺防止ということで網を張ってしまうというようなことになりますと、居住性を害してまいりますので、居住性を害しないで、しかも自殺になる手がかりをみんな除くにはどうすればいいかということで、いろんな検討をいたしました。その結果、東京拘置所で、それほど感じを害しなくて、部屋も暗くならないで、しかもこういう自殺に使えるような、たとえば鉄棒とかそういうものを全部囲ってしまうという方法を、不完全ではございますけれども、見つけたわけでございまして、その方式に従いまして、今後こういった要注意者と判定されました者を入れます房には特別のそういう配慮をするということで、いまそれに着手しております。自殺の件数から申しますと、何と申しましても未決の場合が一番多いわけでございますので、さしあたって拘置所、未決監を重点にいたしまして、この全体の中の大体十分の一程度が要注意者であろうかと思いますので、その程度の房につきましては、こういう特別房をつくってまいりたい。 さらに、こういう房に入ります者につきましては、ふとんに敷きます敷布とか、えり布とか、そういうものを全部ふとんに縫いつけまして、これをたやすくはずして破って縊死に使うというようなことがないように縫いつける、あるいは、タオルとかくつ下等も自殺に利用されますので、こういうものは必要のつど本人に渡すということで、ふだんは引き揚げていくというような措置をとるわけでございます。なお、自殺を企図いたしました場合には、応急の措置といたしまして人工蘇生器とか、その他各種の救命用具がございます。これを各所に配付いたしております。 こういうようなあらゆる方法をやっておりまして、先ほどの甲府の例では、この判定表がうまくいかなかった例でございますけれども、その後各地の状況を見ておりますと、東京拘置所におきましては、本年に入りましてすでに十二件自殺企図がございましたが、それを全部未然に防止いたしております。大阪拘置所でも五件自殺を防止いたしました。その他各管区から聞いてみますと、数件ずつすでに防止をした事例がございまして、全国的には相当な数の自殺を防止しておりますが、これらのうちの相当部分が、実はこの判定表というものが非常に有効であったということが出てきておるわけでございます。なお各管区におきましては、管区長がこの問題について非常に真剣に私どもと協力しておりまして、自殺事故を防止いたしました職員に対しては管区表彰ということで激励をしておる次第でございます。 まだいろいろ不備の点がございますが、私どもといたしまして、ただいま全力をあげて今後少しでもこういう事故を防止したいということで努力をしておる次第でございます。
○鈴木強君 矯正局長のお話を伺いまして感ずることは、何と言うのですかね、まだ人為的に手段を尽くせば防ぎ得たのがたくさんあるように思うのですね。たとえば判定表の問題でもそうでございますけれども、この近代科学的な時代に、その一つの判定表だけに絶対的にたよるというのは、そういうふうなことだけでもちょっと私は足りないように思いますし、それから突起部分というか、突出部分ですね、こういったものがまだ鉄格子があって、そこに毛布を裂いて太いひもにして、それで首つれるようなそういう条件があったということは、どうしても納得できないですよ、私は。甲府には独房が十あるんですね。それから雑居房が十九。それで二十九からなっている、未決拘置所の場合。そういうふうになっている。ですから、大臣が最初におっしゃった点はこれは非常に重大なところだと思います。ですから、そういうことをなぜもっとやれないんでございましょうね。管理体制にこれはミスがあるんじゃないですかね。これは看守の人たちも少ない。 私もせんだって中野の刑務所に行ってみましたよ。いろいろ中を見せていただきましたけれども、何か識別用でいろいろやってみました。私が引いたのは、全く私とは違う性格のものが出ておったんですね。写真を見てどれがいいか、自分で選んで、それでその人の性格を判定するなんというのはおよそ神がかりみたいなもので、私は、いろいろデータを集めてやっているとは思うけど、少し非近代的なものだなという感じを受けましたけれどね。 ですから、これは明らかに管理体制にミスがあって起きた事件だと言わざるを得ないですよ。しかも、逮捕したのは小笠原という警察署なんです。その小笠原の警察署のほうでは、自殺など思わぬ事故が起きないようにというので、監視をかなり慎重にしておったということを私は聞いているわけですね。ですから、大臣のおっしゃるように、要注意者、要監視者ですね、そういうふうな形にしておきますれば、もっと厳重な監視もできたと思います。 問題は、この清水という人が三角関係のもつれから酒に酔って愛人を殺して、妻をくり小刀で刺して重傷を負わしたという。しかもこの人のおにいさんは社会的にも相当に地位のある方でして、私もよく知っておりますけれども、非常にそのおにいさんも責任を感じておられましたよ。ですから、そういった周囲の客観情勢から見ますと、自殺のおそれがないなどと判定したことが識別判定表だとすれば、大きなミスですよ、これは。取り調べをした地検の増井戸一郎という検事の談話がこの新聞にも載っておりますけれども、それを見ると、「午前中二時間ほど調べ、午後から調書作成に入った。短気な一面はみられたが、自殺するような気配は全くなかった。犯行を悔やんではいたが」という話をされておりまして、いまの局長がおっしゃったような一応判断も、私はもう絶対そんなことをしたのはけしからぬとは言いませんけれども、やはり念には念を入れるということ、そして人権尊重の時代に、やはり大臣のおっしゃるように、もう少し、人間は英知を持っているわけですから、科学的な時代に、絶対自殺などを根絶するように設備、環境というものを整備しておくべきじゃなかったですか。そういう点が欠けておったんじゃないでしょうか。ですから、そういう点は私はただ単に国会で言うだけでなく、人間これはベストを尽くしてもあやまちがあると思います。ですからそのあやまちは再び繰り返さないというのが大事なところでございますから、私はそういう意味で、自分が足りなかった点は謙虚に国民におわびして、そして予算的にどの程度の私は金が必要だったかわかりませんけれども、大臣もおっしゃるように、そんな突出した部分があるならば、これを全部取って少なくともやるとか、あるいは、敷布を置いてあるわけでしょう。あれはひもになりますよ、だれが考えたって。その敷布もいまから縫いつけておくなんて、そんな話を聞いても、われわれとしては納得できませんね。ですから、そんなものは敷布なんかなくったっていいんだから、あるならあるようにまた何か絶対取れないようにするとか、あるいはひもにできないようなものがあるでしょう、そういうものを考えるとか、少なくとも自殺をする、自殺に持っていくような条件を全部排除するという、そういう最高の配慮が足りなかったんじゃないですか、警備上。 これは人も少ないようです、確かに。ですからもっと——私も中野へ行ってみたときに、たいへん苦労されていますよね、看守の方々も。両方何十かの部屋を立って見ているんですね。外へ出てくるわけじゃないですから、ある一角でこうある程度見ておって、またずっと回るわけですわね。四本ぐらいありましたかね、その中央でこう立って見ていましたが、あれじゃあ各部屋でどういうことをされているのかよくわからぬわけですから、もう少し人が足りないならば人をふやして、しっかりした態勢をつくってほしいんです、私は。そういうことをはっきり聞かなければ、私は納得をできませんね、これは。
○政府委員(長島敦君) まことに御指摘のとおりでございまして、先ほどからるる申し上げたつもりでございますけれども、従来の不備、欠陥につきまして反省を加えまして、できるものからいま努力をしてきておるわけでございまして、この自殺要注意者判定表につきましても、鋭意さらにこの精度を高めるための研究を引き続いて続けておるわけでございまして、それから施設自体につきましても鋭意いま着々と改善にかかっておるわけでございます。抑せのとおり、私どもといたしましても、従来欠陥がありました点については深刻な反省をいたしておりまして、それに基づいてただいまのお教えのように着々と新しいそれに対する対策をいまとっておるところでございますので、御了承いただきたいと存じます。
○鈴木強君 そうすると、管理上のミスは認めるわけですね、はっきり。
○政府委員(長島敦君) これは、当時といたしましては、全職員、与えられた範囲内でできるだけの努力をしたわけでございますが、今後の注意といたしましては、もっと注意をするといいますか、もっといろんな施策を講じていきたいということでございます。
○鈴木強君 普通のお役人さんなら、私はまた当面を糊塗するような発言をして、そしてある程度済む場合もあると思いますけれども、事は人権の問題でございますし、局長、もっとあなた方の努力が足りなかったのじゃないですか。たとえばいま言ったように、大臣のおっしゃる突出部分を取ることについても、取ってないでしょう、これは。自殺した清水というのは、看守のすきを見て、シーツを巻いて太いひもをつくって、高さ二・四メートルある窓ワクについていた鉄格子に結びつけたのですよ、鉄格子に。そして、窓ワクの下のほうへ足をかけて、首に繩がかかったところで足を離して首つり自殺した。首つり自殺というのは、私もよくわかりませんけれども、気持ちよくいけるのだそうですね。だから、足を離すとすぐそのままいけるようなものだそうですよ。だから、少なくともこういう首つりができるような態勢があったのです、部屋の中に、しかも独房の中に。これはあなた、何と言ったって管理体制がなっておらぬじゃないですか。あなた方は自殺をしないという判断だからそこへ入れたのだということであれば、その判定自体がもっと科学的にやらなければいけませんよね。だから、万一あってはいかぬ、かりに判定で自殺をしないということであっても、それはやるかもしらぬ。現にあるでしょう。だからそういう首つりができないような部屋の装置にしなければだめですよ。そうでしょう。そこが欠けておったじゃないですか。それは認めますか。
○政府委員(長島敦君) その点だけにつきましては、仰せのとおりそういう金網とか何か張ってあれば防げたという点はい確かにこちらの落ち度とも見られるわけでございますけれども、先ほどから申し上げましたように、全部の房につきまして金網を全部張ってしまいますと、実はたいへん暗い陰惨な感じのする房になりまして、そこの点が私どもといたしましては、全部金網を張ってしまうということにちゅうちょするわけでございます。そこのところがたいへん苦しいと申しますか、一方では自殺の判定が、完全にまだ要注意者の判定ができない段階でございますから、そういう意味ではある程度広く張るということが必要だと思いますけれども、一方で申しますと、全部に張ってしまうということになりますと、完全にそういう危険性が全然ないという場合もございますので、そこがたいへん苦しいところでございます。 この甲府について申しますと、具体的にはこれは私どもの落ち度と言えば落ち度でございますけれども、そういう意味で、なるべく居住環境を害しないでそういう自殺のとっかかりをなくするという房の試作に実は傾倒しておりまして、東京拘置所で幾つもの房をつくってやっておった段階でございましたので、そこまで、まだ地方に手が及ばなかったという段階でございます。今後は、先ほど申しましたように、一応の基準といたしましては、優先的に、拘置所ないし拘置監が一番危険でございますから、それに対しまして、しかも大体そこへ入ります十分の一見当が危険者であろうということで、優先的にその十分の一見当の房についてあらゆる措置を講じまして、その手がかりをなくするようにというのをまず第一次優先としてやるということで、順次広げてまいりたい、かような計画でおるわけでございます。
○鈴木強君 局長、いまあれですか、日本中に刑務所がありますね、未決の被疑者の独房というのは幾つありますか。そこに突出した部分があるかないか、全部実態調査していますか、聞かせてください。
○説明員(岩崎隆弥君) ただいまお尋ねの、独房が全国で未決に幾つあるかという点につきましては、さっそく、いまこまかな資料を持っておりませんので、調べまして御報告いたします。 なお、この房に突出物があるかないかという御質問でございますが、ただいま局長からお答えいたしましたように、突出物を全くなくするという居房の試作を終わりまして、最終結論を得た段階でございます。今後これを各施設へつくっていこうという段階でございますので、完全に突出物のない房というものは現在のところございません。
○鈴木強君 まあ、もう少し本省の局長たる者はそういうことに思いをいたして対策を立てるべきじゃないでしょうかね。私はそう思いますね。それがお仕事でしよう、皆さんの。ですから、大臣がさっきおっしゃった自殺の余地なからしむることに努力するという、これが最高の私は方針でなければいかぬと思いますよ。ですから環境を、網を張れば暗くなって気分を害するとか——気分を害したって命を捨てるよりもいいですよ、これは。私に言わせれば、未決拘置中に、たとえ一週間たつか十日たつか知らない、あるいは二十日たつか知りませんけれども、暗いところにおったって死にませんよ。そんな自殺をするような要件を整えておくよりも、暗いところにおったほうがいいですよ。私はそう思いますね。だから、思い切ってそういう自殺の行為が行なわれるような、そういうふうなものは思い切ってなくしていくという、そういうことにしなければいけないんじゃないですか。 あなたは、何か既成観念だけにとらわれて、自分たちのやったことを正当化しようというそういう考え方がある。これは役人の一番悪いところです。もっと、一つの事件が起きたら、それを契機にして、それじゃ自殺するような余地が与えられる部屋のほうがいいのか、暗くてもがまんしているのがいいのかということになれば、私はやっぱり少し暗くてもそのほうが、自殺の余地を与えるような設備のないようにするのが私はベターだと思いますよ。だからそういうふうにお考えいただいて、これは大臣も最初に一番大事なところをおっしゃっておられるので、これは大臣、いま私ちょっと大臣に失礼でしたけれども、発言をちょっと延ばしてもらったのは、実態についてもう少し知りたかったわけですけれども、まだ、方針はきまっているが幾つ独房があるのかよくわからぬようですし、独房の中に突出部分があるのが幾つあってどうなっているのか実態がよくつかめておりませんから、これを大臣さっそく調べてくださいよ。そして、予算が幾らかかっても、大臣、来年の予算にはそれを全部計上して、大臣がおっしゃるように、自殺の余地なからしむるように、いまの独房なり雑居房なりについても、一切そういうものについては直していくという、これをひとつ政治家大臣、国務大臣としてぜひはっきりしていただきたい。そうすれば私は、まあ今回の事件は非常に残念ですけれども、再び少なくとも国の刑務所の中で自殺者が起きるなんということはなくなるんじゃないかと思います。それによって、人権を尊重するという憲法の基本精神にも沿えると思いますから、金ではないですよ、これは。ぜひそういうふうにしていただきたいと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(田中伊三次君) 鈴木先生、私現場を見てきたのでございますが、問題は突出部分をなくするということ、私の理想を申し上げておるので、突出部分をなくするということでたいへん大問題になりますのは窓でございます。この窓には、御想像がつきますように、鉄棒がはまっております。出られぬようになっております。その鉄棒に引っかけて死ぬやつが多いんです。そこで、鉄棒のはまっております外壁の、外部の手前に、もう一つ手前に網を張っちまえ。そこで、現物の網を古いものを持ってきて張ってみてそれをながめてみた。これ、先生もうとてもその部屋の中におれるものじゃないんですね。窓に網を張った。もうたいへん、電気が消えたほどには暗くはなりませんが、さあっと暗くなる。網を張っても暗くなる。光線の入るのが何分の一になっちまうわけでありますから、暗くなるということで、その薄暗い部屋の中に未決監が留置されるという、こういう姿はまあとてもたえられない姿だ。私らが一時的に行って、犯罪に関係のない人間がちらっと見ただけでも、わあ、これはとてもいかぬ、これはこのこと自体、そういう部屋に収容しておるということ自体が人権上大問題だと、こういうふうな感じが、まあありのままにいたしますと、大げさに言うのじゃありませんが、そういう感じがいたします。そこで、問題は現在未決監は、大体独房の数が七千前後日本全国にあるかと存じます。大ざっぱな数字で申しわけありませんが、大体七千前後と思います。そのうちの自殺のおそれのあると考えられる要注意者は、どんなに多く見積もりましても、大体一割であろう、こう考えられますので、その一割に相当する部屋ですね、一割に相当する部屋だけはすみやかに突出部分をなくする。ことに、窓の部分について、いやなやり方でございますけれども、人権尊重のためにはこのほうがとうといんだから、これをやることはやむを得ないという考え方に立って、その窓の部分の突出もはずそうと、こういうふうに考えまして、目下計画を立てさせておるわけでございます。 大臣の命というものは夏に鳴くセミのように短いものでございますが、もし私がこの予算の概算要求折衝の時期まで、この私が在職するようなことになります場合は、私が現地を視察をいたしました体験を大蔵大臣によく申し聞かしまして、これだけはぜひ通せという交渉を私がいたしまして、来年度はこの一割に相当いたします部分につきましては、とりあえず、私がしろうと目に見て突出部分をはぶけというこの理想の方向に向かって、この考え方を実現してみたい。これ、一生懸命にやってみたいと思うのでございます。これができますれば、毛布を縫いつけたりせぬでも、かけるところがないわけでございます。かけるところがなきゃ死にようがないわけで、かけるところがあるから死にようがあるわけでございますから、そういうふうにやっていきたい。こう考えるのでございます。なかなかタオル一本にいたしましても、渡しておくから首つるんだから、したがってタオルは渡さずにおいて、そしてふろに行くときにタオルを持たして、ふろから出たらそのタオルを取り上げる。これも理屈でございますが、管理をいたしますのに人間の頭数の不足をしておるこの現状のもとにおいて、何百人、何千人の収容者について一々タオルを必要に応じて差し出す。便所に行く、手を洗う、タオルをやる。それが済むとタオルを持ち帰る。番号を打ってタオルをおさめておくなんということは、なかなか容易なことじゃできることではございませんので、要は突出部分を切り取る、あるいは張りつける。こういう方法によって処置をすることが一番根本的に処置ができる。ただ、それは光線のぐあいから申しましても、別の意味の人権侵害ということにもなりますので、まあ自殺のおそれある者に限り、そういう部屋をつくりまして入れると、こういうやり方をとりあえずしてみてはどうかということが大体の結論でございます。そういう方向に向かって努力をしてみたいと思います。
○鈴木強君 大臣のお気持ちはよくわかりましたが、もう少し大臣ね、この部屋の取り方ですね、採光の取り方についても、金網、金網と金網ばっかりに固執しているんですね。それはおそらく既設の鉄棒の入っているところですからね、まあ金網ということになると思いますけれども、われわれ回ってみて、上のほうにちょこなんとあるような窓でございますね。大した、採光上はそこから入るから部屋の中が明るくなるというようなものでもないように思うですよ。ですから、割れないガラスもあるしですね、何とかもう少し私はこの鉄格子のこっちに、もう少し、光線をさえぎらないような近代的ないろいろな資材もあるわけですから、そういうものなんかも研究してみる必要があるんじゃないでしょうか。 それから、新しく今度は甲府も建ててもらえるんですからね。そういうところは近代的なそういう点を考慮してやっていただければいいと思うんですけれどもね。いずれにしても、既成概念だけにとらわれずにね、大臣、もう少し近代科学の粋を誇っている日本ですから、いろいろな面でいまの既設のものについても検討、研究をしていただいて、そして人権尊重のやっぱり司法行政というものをやっていただかなければいけないと思うのですよ。ですから、ぜひ、特別法等もお考えのようでございますから、そういう点についても配慮していただくと同時に再びこういうことのないように、この設備の点についてはやっていただきたい。 それから、もう一つね、向こうの所長さんも言っておられるのですけれども、責任を非常に感じておられるようです。決して責任がないと言ってないんですけれども、やっぱり一面、所長の立場からすると、この要員問題に頭を悩ましているんでございますね。これはおそらく甲府だけではないと思います。私、長野に行きましてもそう感じました。そこで、甲府の場合は具体的に保安職員ですね。看守さんと通称言うんですが、この保安職員は百四人おります。それで拘置場は昼間は二人で七十四人を受け持つ。一人が三十七人受け持つ。夜間は一人だけだ。刑務所の場合も、夜間は服役者五百二人に対しわずか四人が四交替で切り抜けており、看守一人に対する負担率はかなり多いのが実態だ。こういう点は国民も同情しているんですよ。ですから、いま大臣がおふろ場に行って手ぬぐいを使うことについておっしゃっていましたけれども、私は極端に言えば、やっぱり人権を尊重するならば、必要な要員を配置して、危険があるならば危険を除去するというのが、これは政治ではございませんでしょうかね。ですから、そういう意味において、やはり自殺をしたりあるいはけんかをして人を殺したり、刑務所の中でやるなんてことは、これははずかしくて世間には言えないことじゃないでしょうかね。ですから、そういうことを防ぐためには、まず設備の問題と、それからもう一つは管理体制といいますか監視体制といいますか、そういう面において万全を期することでしょう。 ところがその面においては、残念ながらわれわれが見ても、十分な監視ができないと思いますよ。ですから、まあ大臣、夏のセミみたいだなんてそんなことを言わないで、あなたは自由民主党の中の有力な立場にいらっしゃる方ですからね、かりに大臣を辞されても、またその面のあなたはエキスパートでございますからね、専門家でございますから、次の大臣に引き継ぐなり、あるいは、あなたもまた政治家としてあなたの御所信を実視できるように、私は大いにがんばってもらいたいと思うのですがね、そういうふうに要員措置についてもひとつぜひ、われわれもまた協力いたしますけれど、なかなか人がふえてないようですからね、その点もひとつ大臣として配慮していただきたい。その点に対するお答えを大臣から伺って、時間もだいぶ予定を過ぎましたから、これで終わりたいと思います。
○国務大臣(田中伊三次君) おことばのように最善を尽くしたいと存じます。
○委員長(原田立君) 本件に対する質疑は本日はこの程度として、午後二時まで休憩いたします。 午後一時休憩 —————・————— 午後二時十三分開会
○委員長(原田立君) ただいまから法務委員会を再開いたします。 この際、委員の異動について報告いたします。 本日、小枝一雄君、重宗雄三君、木島義夫君及び増原恵吉君が委員を辞任され、その補欠として、斎藤寿夫君、河本嘉久蔵君、安田隆明君及び柴立芳文君が選任されました。 —————————————
○委員長(原田立君) 刑事補償法の一部を改正する法律案を議題といたします。 前回に引き続き、これより質疑に入ります。 質疑のある方は順次御発言を願います。
○鈴木強君 最高裁の方はいらしておりますか……。前回の委員会で私の質問はほとんど尽きたのでありますが、ただ一つ、予算編成について裁判所側の御意見を伺う必要が出てまいりましたが、それは法務当局からのお答えが「そう思います」とかいうような答えでございますから、そういう御答弁ではちょっとわれわれとしては了解できませんので、きょうは裁判所側からもおいでをいただきまして、残された一つの点だけでございますから、この点だけ御質問をもう一回申し上げて、お答えをいただきたいと思います。それは五月八日に、同僚原委員からも実は御指摘のあった点でございます。 今回の刑事補償法の改正によって上限がアップされてまいります。そうしますと、まあ常識的に考えると、前年度予算に比べまして予算総額というものが若干なりともふえていくのが筋ではないだろうかということでございます。ただ、事件がどの程度になりますか、これは実態を見なければわかりませんが、それにいたしましても、四十八年度は、刑事補償の予算が千二百七十万三千円、ところが前年度の予算額は二千二万六千円と、こういうことになっておりまして、むしろ四十七年度よりも四十八年度のほうが総額において少なくなっておる。上限が引き上げられるわけでありますから、当然予算額はふえなければならない。こういう疑問が出たわけでありますが、何か法務当局のお答えを聞きますと、裁判所の予算の編成は二年前のデータに基づいて編成をされているということですから、裁判所というのはそんなに古いデータでなかったら予算の編成ができないのだろうかという疑問を持ちました。一般の官庁あるいは公企体等の予算は前年度、たしか六、七、八とか、ある基準月をとりまして、それによってやっておられるようですから、その点がどうなっておるか。それから、もし足りない場合に予算の流用が考えられるということをおっしゃいましたが、これは予算総則上、款項目節の移流用がどういうふうになっているのか、その辺もあわせてひとつお答えいただきたい、こう思います。
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 本年度の予算額が少ないという点のお尋ねでございますが、昭和四十八年会計年度の予算の編成は、昭和四十七年の八月末までに大蔵省に一応概算の見積もりを出すということになるわけでございます。したがいまして、四十七会計年度中の予算編成でございますので、四十七会計年度の資料を使うというのにはまだ日にちが経過いたしておりませんので、結局一番近いところの昭和四十六会計年度の資料を使うということにいたしたわけでございます。したがいまして、昭和四十六年の四月から昭和四十七年三月までの、いわゆる昭和四十六会計年度の実績を基礎にいたしまして、四十八会計年度の分を予算の積算をいたしましたということが、四十八会計年度と四十六会計年度の差で二年前というふうに御理解いただいたのかとも思いますけれども、予算編成の際には、前年度の、一番新しい会計年度の予算額、あるいは事件の実績というものを考えて編成したので、古い分を使ったという趣旨ではございません。その利用でき得る一番新しい資料を使ったということでございます。 それから、まあ八月に予算編成に入りますのに、できるだけ近いところというお話もございます。それはそのとおりかと存じます。ただ、刑事補償の実例と申しますのは非常に数が少のうございますので、それによって将来の正確な見積もりというのはなかなか立てにくいかと存じます。で、最小限一年間ぐらいの実績をとるということにならざるを得なかろうかと存じます。そういたしますと、ことに予算的に申しますと、法律的には千三百円以内ということがきまっておるわけでございますが、そのうちどの程度の金額が支払われるかということも必ずしも明らかではございません。そうしますと、事件数と、それの一件々々について支払われる金額というようなことを合わせて持っている資料といいますと、やはり予算の支出実績ということになろうかと存じます。それで、支出実績がとれるのは三月末、つまり八月の予算編成時期には、まだ六月、七月などの会計上の支出実績が出てまいっておらないというようなことがございまして、結局前年度の、昭和四十六会計年度の一年間の支出実績というものを基礎にして予算を積算いたしておるわけでございます。
○鈴木強君 わかりました、その点は。 四十八年度の場合は前年度よりもだいぶ金額が減っておるんでございますね。これは四十六年度の支出実績というものをはじいて、それから四十七年度どの程度になるか、あるいは四十八年度どの程度になるか、これは推定になると思いますけれども、四十八年度刑事補償法によって補償されると推定されたこの件数ですね、要するに算出の根拠ですね。それから、被疑者補償というのが一つございますね、被疑者補償、これもこの中に入るんでございますか。それは一体この予算との関係ではどうなるか、千三百円をおそらく二千二百円に上げられるんじゃないかと思いますが、そういう要するに四十八年度の刑事補償法によって補償されるこの千二百七十万円三千円というこの額の算出の根拠というのは一体どうなんですか。それを示していただきたいですけれども、その中に被疑者補償が入っているなら被疑者補償も入れて、別なら別と、こういうふうにしてその根拠を示していただきたい。
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) いまお尋ねのうち被疑者補償の点は、裁判所は関係ありませんので、法務省の所管になろうかと存じますので、いずれそちらのほうでお答えがあろうかと存じます。 裁判所のほうの関係についてだけ申し上げますと、昭和四十六年度の支出実績が大体八百八十六万円でございます。それに昭和四十八会計年度で事件がどの程度になるだろうかという数字をかけ合わせまして出しました数字が、九百四十三万八千円でございます。これがいわゆる金額を上げない元のままので事件が出てきた場合に幾ら出てくるだろうかという推計額でございます。それに、今回の刑事補償法の改正に伴いまして、日当額の値上げというのがございますので、その分を計算いたしましたのが三百二十六万五千円でございまして、それを合わせたのが、本年度予算額ということに相なっております。
○鈴木強君 私たちがむしろ非常に心配するのは、なるほど四十六年度はわかりました。その四十六年度の実績によってそのままはじいてそれにアップされる分だけをプラスしたんだという……、ところが、四十七年度は二千二万六千円でございますね、ですからむしろ四十七年度のほうが実績としては確実性があるわけですね、信憑性というか、実態に合っていますからね、信憑性というか、確実性というか、根拠にするのには四十六年度よりも四十七年度のほうが確実なしっかりした根拠のように思うんですけれども、それはその年度によって事件が多い少ないというのはあると思いますけれども、それが四十七年度がそれだけあったんですから、したがって、それよりも多くなると一応常識的には考えられるわけですけれども、その辺の事件のつかみ方というのは、これはどうなんですか、四十七年度はどういうふうになっていますか、四十七年度の実績は。
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 四十七年度は、その予算編成のときには支出実績は出ておりませんけれども、現在のところでは出ております分でいきますと、約四千六百万円でございます。これはいわゆるメーデー事件、辰野事件、仁保事件、その他本年度中に相当数の事件が出まして、それの刑事補償が支払われた関係で四千六百万円という非常に多い金額になっております。したがいまして、これで将来の分を予測するというのにはいささか臨時的な要素が多いのではなかろうか。特に一件一件の事件が非常に大量の被告人を含んでおったりあるいは拘禁日数が長かったりいたした事件が入っておりますので、これを基準にすることはやはり若干合理的ではないように存じますので、平年度的なものとして考えてまいりますと、特段に少ないという金額ではないように思っております。
○鈴木強君 メーデー事件の補償とかあるいは辰野事件の補償というのは、予算にきめられた——四十七年度予算というのは二千二万六千円が前年度の予算でございますね、四十七年度。ですから四千六百万円から足りない分は、これは予算総則上何か流用したと思いますけれど、それではメーデーと辰野と抜いてみたときの金額というのはどうなのか。二千二万でこれは間に合っていますか。予算と実績との関係ではどうなっていますか。
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 四十七会計年度に起こりました実績で考えてみますと、メーデー事件で二千九百十九万円支給されておるわけでございますので、これだけを除きましても一応予算額で間に合っておるということになりますが、そのほかに辰野事件で二百二十七万一千百円、仁保事件で六百六十九万三千七百円、それから吹田事件もございますが、二十万六千七百円ということで、約三千万をこえる分がこの事件で支給されておるわけでございますので、その他の分としては千万円をこえる程度でございますから、予算額の範囲内で十分まかない得たはずでございますが、いま申し上げましたような特殊な事件が出ましたために、四十七会計年度では予算額をオーバーいたしたということに相なっております。
○鈴木強君 そうしますと、あれですね、いまの例で、辰野、仁保、吹田、大体概括にいまお述べになった数字をあげてみると、約三千七百万ですね。三千七百万。そうしますと、四千六百万から三千七百万を引きますと千九百万という数字になりますよね。で、前年度は二千二万六千円計上しておったわけですから、大体この数字は合ってくると思うのですが、しかし、今度は額が引き上げられるわけでありますから、どうも千二百七十万というのは少し私は少ないのじゃないかという気がするわけです。ですから、まあこれは実績によってはじいてみた場合に、前年のができないわけですからね、残念ながら。編成当時とれなかったわけですから、その前年度にしたというお話ですから。まあそれはそうしますと——まあわかりました。そういうふうな、なかなかつかみがたい要素があったということで。 そうすると、この足りなくなったときですね。まあ四十七年度もだいぶ足りなかったんですが、その場合には目の流用といいますか、節の……目ですね。これは。これは予算総則上どこから持ってくるわけですか。それとも予備費から取るのかですね。その辺はどうなりますか、こういう場合は。
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 先ほどの数字で、若干御計算の誤りではないかと存じますが、特別の分を合算いたしますと約三千六百万円でございまして、支出実績が四千六百万円でございますから、約一千万円が通常の事件の支出額だというふうに大ざっぱに言えるのではなかろうかと存じます。 ところで、足りなくなりました分につきましては、裁判所の予算中余裕のございましたところから流用を求めるということで、大蔵省の承認を得て流用いたして支給するということになるわけでございますが、刑事補償金がまあ裁判費でございますので、主として裁判費のうち、その時点において余裕があると考えられますものから流用をして考えていくということになろうかと存じまして、特段にどの費目ということを前もってきめておるわけではございません。
○鈴木強君 まあ裁判費という、これは款になるのですか、裁判費というのは。
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) そのとおりだと存じます。
○鈴木強君 そうしますと、相当にこれは幅が広いわけですね。 ただ、予算というものはやっぱりある程度はっきりした算出根拠に基づいてはじいておくことが私は筋だと思うのですね。特別のこういうメーデー事件やなんかのあった場合は、これはやむを得ませんですけどね。ですから、もう少し予算編成についてくふうなさって、そしてこの場合、四十六年度ですか、のしかとれないというのですけど、たとえば四十七年度の四、五、六とか、予算編成の概算要求ぐらいまでの、一番何か一つの科学的に考えて平均トータルとしてはとり得るようなそういうものができないものでございましょうか。普通の会計ですとそれができるし、公社関係なんかの場合でも、収入が幾らになるかというふうな見積もりについては、大体年平均してみてこの月はどうだというようなことでとっているようでございますけどね。そういうふうなくふうをしても、前年度のと言うか、もう一年繰り上げて、もう少し近寄って事件を推測するというような、そういうことはできないものでしょうかね。
○政府委員(安原美穂君) お話、ごもっともだと存じます。できるだけそういうことに努力いたしたいと存じますが、何ぶんにも一般の訴訟事件数総数ということになりますと、通常第一審でまいりまして大体年間約八万件というような数字がございますので、これでまいりますと、ある程度推計をいたしましても、その誤差というものはそう大きくはないと言えるかと存じます。ところが、刑事補償の例を見てまいりますと、たとえば昭和四十三年から四十七年を見てまいりますと、大体五十件、六十件、七十件、八十件ということがあるわけでございますが、たまたま四十五年というときになりますと二百十四件というような形になります。これはまあメーデー事件と大須事件が入っていたためでございますが、そういうふうに非常に変動がひどいので、私どもとしてもなおくふうはいたしたいと存じますが、いままでのところは、こういう多少御指摘の受けるような形になっておるわけで、その点については十分検討いたしたいと思っております。
○鈴木強君 これで終わります。 ほんとうならば、無罪になるような事件を取り上げないことが一番いいのですよね。えらい苦労してみて、最後には無罪だというんじゃ、どうも裁判の権威を疑われるようなことになるし、しかし、そうは言ってもいろいろ情状酌量の点もありまして、いろんなケースがあるわけですから、補償しなければならぬ場合も出てくると思いますから、根本はそこにあるような気もします。しかし、これはあなたの担当の部門でないわけですから、予算編成上としては、いま刑事局長のおっしゃるように、もう少しくふうしてみるということですから、ぜひ御検討をしていただくことをお願いしたいと思います。 じゃ、これで私は終わります。
○白木義一郎君 きょうは午前中に人権擁護という問題を根本に、いろいろな質疑が行なわれたわけでありますが、本法案もいよいよ本日で賛否を明らかにするというようなことになりましたけれども、この法案が活用されてこなかったということが私の一番気になる問題で、すでに大臣もそれをお認めになっておるわけですが、それ以前に、衆議院で附帯決議がつけられ、また大臣も前向きに検討するという発言をされたにもかかわらず、再びこの改正案だけが出てきた。それについて、先日鈴木委員からの質問で、大臣はこの今回の任命について、大臣就任直後の問題であったのでという御答弁でありましたけれども、ほんとうに大臣が前回に検討すると言うそれから三年あるいは四年間の期間が置かれているわけですが、なぜ今回の提案について、提案の時期について、前回のいきさつをもとにして、不拘束者の補償もあわせてというようなことをできなかったかどうか、その点もう一度御説明を願いたいと思います。
○国務大臣(田中伊三次君) この問題は、刑事補償法の規定によりますと、身柄を拘束されていた刑事被告事件であって無罪の判決を受けたる者と、こういう規定になっておりますので、この規定を裏から解釈をいたしますと、身柄拘束を受けていなかった、非拘禁のまま公判に付せられた被告が無罪となった場合においては、刑事補償の必要はないというように表側からは一応判断ができるのでありまして、それは何もおかしい判断ではないのでありますが、同時に、一体憲法十七条に基づきまして国家補償制度というものがあるのにかかわらず、何ゆえに刑事補償を認めたのかとこう言えば、人権擁護という立場に立って、身柄を拘束されながら無罪になった者の場合、その場合に限りここに刑事補償として、故意、過失による不法行為の損害賠償たる性質を負わさないで、故意、過失、不法行為という立証を必要としないで、直ちに補償をするということを認めておるのでございます。この身柄を拘束されて、まことに気の毒な立場に立って無罪になったという場合に、人権擁護の立場に立ちまして、人権尊重のたてまえからこういう法律制度を設けたということになるならば、その精神をさらに拡張して、延長して考えるならば、身柄不拘束の場合といえども、不名誉な刑事裁判というものを受けたいということになるのでありますから、金額の上において差はできましても、非拘禁の場合において補償を行なうということを必ずしも人権擁護という立場から申しますと否定しておるものではない、こういうふうに私は昔から解釈をいたしまして、非拘禁の場合といえども国家補償をすべきものだ、ただし金額に差のあることはやむを得ぬのだという考え方を持ちまして、昭和四十二年在職中には、たしか委員会においてもそういう答弁を、これは衆議院であったと存じますが、申し上げた記憶がございます。 いまもその考えは変わりはないのでありますが、私が昨年の十二月末に押し迫りましてから法務省につとめることになりましたその時点では、すでにこの改正案というものはできて、用意ができておった。しかも、その用意はどこでできたのかと申しますと、法務省で用意をしたという形でございますけれども、事実は、その内容につきましては、この法律の実施官庁であります最高裁判所事務当局との間にすでに協議が整いまして、この法案の準備ができておった。本省に私が参りましても、私のツルの一声で、一量見だけではこの重要な非拘禁の問題を追加をすることができなかった。加うるに私の微力ということも手伝いまして、遺憾ながら、用意のできておるこの身柄拘束中に限るという国家補償、これの上限を引き上げるということ以上には実は及ばなかったということから、本件の提出をいたしましてお手数をわずらわしておるという事情でございます。
○白木義一郎君 事情はよくわかりますが、そうしますと、今度この刑事補償法の改正についても、大臣はいろいろ意見を述べられておりまして、前向きのお考えを披瀝されておりますが、このままいきますと、これは金額上限を高くしたというだけでさっぱり活用されない。人権擁護ということばを使っても、この法案が活用されなければ何にもならないように思うわけです。 先日もある会合で大ぜいの人に、こんなことをやっているんだというような話をしたところが、みんながゲラゲラゲラゲラ笑いだしてしまって、そんなことやっているのかということで終わったわけですが、このままこの法律が、改正案が成立しても何にもならないと、このように思うわけです。なぜ何にもならないかというと、適用を受ける人が非常に少ない。ということは、どこに根拠があるか。まあ金額が安いということ、と同時に非常にその手続が繁雑じゃないかと。で、法務省のほうの説明では、いとも簡単にこの補償請求ができるというようなことですが、実態はそうでなさそうだ。ゆえに、われわれが時間をかけて、そして慎重に審議をした法律がさっぱり国民に深い影響を及ぼしていかない。まことに残念なことだと思うのです。 そこで、この活用されないおもな原因は、手続が非常に繁雑である。したがって、弁護士さんも、無罪になった時点で、請求の金額とそれから費用を考えると、積極的にこの活用を進められないというような点が多いように思いますし、また学者等の意見もそれを強く述べております。したがいまして、どうしても大臣がはっきりした所信を述べられて、その所信が今後において具体的な施策となってあらわれないと、われわれが心配ったことが、また法務省もあるいは政府も配慮したことが、さっぱり国民の側に生かされていかないということがまた繰り返して行なわれるのじゃないかと思うのです。前に衆議院の委員会で大臣がそのように積極的な考えを披瀝されていながら、いまだにその問題に対して具体的な前進の回答が得られないというようなことですと、また先ほどのセミの命じゃありませんが、大臣かわってしまえばそれっきりだ、またいずれこの金額の改定をしなければならないというときになると、また同じようなことを蒸し返さなければならない。実にばかげた話だと言わざるを得ないわけです。 で、その点を、先ほど刑務所の件については大臣が非常に明快な決意を述べられたように、この法案成立についても必ず活用され得るように、大臣の措置を強く望まないではいられないわけです。その点ひとつ伺って、本法案に対する私の質問は終わりたいと思うのです。
○国務大臣(田中伊三次君) 先生、妙な説明のしかたでございますが、本来の国家補償というものは、憲法十七条にございますように、公務員において、国家の立場で申しまして故意か過失があって、そうして不法行為が成立をして、不法行為に基づく損害賠償を請求するということが国家賠償の筋でございます。これは、日本のみならず全世界どの国も文明国はそういう処置をとっておるという事情でございます。しかし、刑事事件において無罪の判決を受けた場合に限りそういう故意過失の立証などは必要がない。請求があれば、まあ金額は少ない幅ではございますけれども、金額は固定されておるけれども、定型化された範囲内において、一定の金額だけだけれども進んで払うんだと、こういう制度が刑事補償制度でございますところから見て、私がこれは思うのでございます。 私も長い間、弁護士としての経験を持っておるわけでございます。そこで被告の立場、被告を弁護する弁護人の立場から申しますというと、まあ無罪になってよかった、りっぱな判決をしていただいた、この上国家から賠償を要求するなどということはまあ遠慮しようという空気がわが国においては強いのではなかろうか。謙虚な態度を持つ人が多いのではなかろうかということが原因で、比較的に進んで請求しようという人の数が少ない。それで、一年を通じて四千万円とか四千七百万円とかいったような金額の予算にとどまっておるということになるのではなかろうかと思うのでございます。 これは、この言いわけをするのでございませんけれども、法律をつくりまするのは法務省の責任で、法務省が第一線に立って皆様にお願いを申し上げるという立場でございます。できあがりました法律を実施して、そして、請求があればそれに対して手続的に金額をきめて、定型化された範囲内の金額を、適当という金額をきめて、お支払いをいただきますのは裁判所のお仕事と、こういうことでございますので、一応この問題は先生仰せのことごもっともと存じます。法律をつくったって活用されておらなくちゃ何もならぬじゃないか、活用の幅が狭ければ意味はないじゃないかというおことばは、私もそのとおりだと存じますので、裁判所側とひとつよく連絡を、懇談を遂げまして、無罪になれば、請求すれば金額に限度があってもいただけるんだぞと。なお、その裁判所が決定する幅がきまっておりますので、そのわずかな金額で間に合わぬ、それ以上の損害があるではないか、国家側に故意過失の立証がりっぱにできるというお立場をおとりになる場合においては、この金額だけを差し引いて、残余のところは憲法十七条に基づく国家賠償制度で賠償を要求するんだ。それは当然のことで、遠慮すべきことではないんだということを、ひとつよく徹底する道を考えまして、法律の実現について徹底いたしますということ、何もおかしいことはございませんので、遠慮をせずに権利として請求をしていただくことができるようなムードをどうしたらつくれるかということについて、積極的な姿勢で、ひとつ最高裁のお立場とよく相談をいたしまして、最善を尽くしてみたい、こう考える次第でございます。
○白木義一郎君 後半の大臣のお話は当然であり、私も了承いたしますが、初めのほうですね。もうこの上国家に、国にいろいろ迷惑かける気はない、そういうのが大かたのものの考え方じゃないかというような考えで、そういう発想で進まれていったんでは、これはなかなか大臣のいまの決意が浸透しないんじゃないかと思う。おそらくそういう人は私はいないと思うんですが、さんざんいやな思いをして、その点はよくおわかりなんですから、取り調べ当局よりも大臣のほうが。もうさんざんいやな思いをした上で、何かそういう制度があっても手続が簡単にできない。それをやろうとすれば費用を弁護士さんに払わなくちゃならない、払えば何も残らないというようなところにこの法律が生かされない原因があるんじゃないかと思うんです。 そういう点をひとつよくおわかりなんですから、まあ過失、無過失というようなことに議論が進むと、だんだんぼやけてくる問題ですが、被疑者になった立場の心情を考えれば、とても金額その他で補償なんということはおこがましいわけですけれども、それもまあのみ込んだとしても、できるならば、いろいろ技術的な、法律的な問題もあるでしょうけれども、無罪の段階ですべてが少しでも気持ちよく解決をするという方向へ行かなければ、依然、官尊民卑の残滓のある法律を承知で、大臣はその席を汚してしまったと、非常に不名誉なことになるんじゃないか、あなたのためにも。そういうことで申し上げているわけですから、最後の御決意を伺って、大臣の善処を期待したいと思います。
○国務大臣(田中伊三次君) おことばのとおりであると存じます。ただ、私の考えは、遠慮をなさるであろうということを前提に置いて、金額をきめたり、法律を制定することをお願いしたりしておるという事情ではございません。しかしまあ、私がタッチをいたしました事件から申しましても、これは損害がとれるんだぞとこう言うてみるというと、いやいやもう世間ていに対しても、そういうものを国家から金をもらおうと思わぬ、もう先生、請求はしてくださるなと言う人が意外に多いですね。これは、わが国の憲法が、基本的人権尊重という大事な原則に立って憲法ができておるのにかかわらず、意外に今日国民の側がこそくな気持ちで、無罪になったからといって国家から金を請求するということは容易なことでない、できてもできぬでももうそんなことはやめてくれ、また新聞に載っては困るといったような考え方に立つ人が比較的に多い結果が、この法律をつくりましても請求される人の数が少ないということになるのではなかろうかというように私は思っておるのでございます。結果の見通し、観測を申し上げておるのでございますが、先生おことばのとおりでございますので、十分最高裁側と御相談を申し上げて、さあ請求をしなさいといっておすすめするというわけにもまいりますまいけれども、こそくな考え方でなしに、憲法、法律に基づく請求権があるんだ、それを請求することは自分たちの人権を守る上から正しいんだという明るい気持ちに立って、この法律の適用を求められる人が積極的に起こりますように考えてみたいと存じます。
○竹田現照君 いまの白木委員の質問に関連して、身柄不拘束の場合の問題についてお尋ねしますが、四十三年の改正の際も、参議院では附帯決議がこの問題について出ているわけですね。ちょうど五年たちますけれども、先ほど大臣、御就任前にこの改正案ができていると言っておりますけれども、五年間、政府なり最高裁当局は、この附帯決議の身柄不拘束の補償についての御検討はどういうふうになされたのか、ちょっとお伺いしたい。
○国務大臣(田中伊三次君) 私、不在中のことでございますので、間違ってもいけませんので、刑事局長から御報告を申し上げます。
○政府委員(安原美穂君) 竹田先生御指摘の点は、実はわれわれ最高裁との間の一つの長い懸案事項でございまして、ほうりっぱなしにしておったわけではございません。附帯決議の尊重をいたしまして、自来、刑事補償制度というものを不拘束の場合にも広げるべきかどうかということは、真剣な討議をしてまいったのでございます。そして、先ほど大臣も申されましたように、不拘束の場合に刑事補償をするということをそこまで広げることが、法理論あるいは憲法のもとにおいて間違っておるというようなことにはならなかった、それは立法政策として十分に考え得ることであるということは、そういう結論についてはみな異論はなかったのでございます。ただ私どもは、今日の段階において、他の制度との比較等から考えまして、まだそれを立法化することは相当ではないという一つの、理屈はともかくとして、現状においてはまだ相当ではないという結論を、少なくとも今日までは持っておるわけです。 その理由といたしまして、まず、先ほど大臣申されましたように、現在のわが国の法律制度の中におきましては、国家の公権力の行使によりますところの損害の補償というものは、その本質が損害賠償ということである以上は、本来その損害の発生につきまして、その公権力の行使にあたりましては公務員に故意過失がある場合に限って行なうというのが、憲法十七条にも出ておりますように、原則であるという制度をとっておるんだと、したがって、今日の刑事補償法のように無過失の場合にでも補償するということは、それは特別の理由がある場合でなければならないという制度のもとにあるんだと、そこで、この刑事補償法で現在無過失の場合でも補償しておるというのは、まさにこの現段階においては、身柄の拘束を受けたということが、そしてしかも無罪を言い渡されたという場合には、その者の受ける損害が著しく程度が高いということで、ほかの公権力の行使による損害よりも著しくその損害が重大であるということのゆえに、無過失でも補償をするという制度をとったのであると理解するほかはないという考えに立ったわけであります。 すでに御案内のとおり、刑事補償もそうでございますが、あらゆる公権力の行使という場合におきましては、その公権力の行使あるいは制度というものは、これは国民全体の利益のために認められておるものでございますが、その利益のためにある制度を行使いたします場合に、大なり小なりその制度の行使の対象になる者において損害が発生するということがあるわけであります。しかし、まあそれは大きな国民全体の利益のための制度であるという意味において、ある程度の損害は国民は受忍すべきではないか、その受忍の限度が普通の程度を越える場合に、それは公権力の行使が無過失でも、補償するということが公平の理念から必要とされてくる、そこに無過失補償の存在理由があるというふうに考えるべきだと、そこで、受忍の限度をどう考えるかということが、決して絶対的なものではなくて、相対的なものであろう、今日においては受忍されるが、将来においては受忍する限度を越すんだということがあり得るんじゃないかということが考えられる。 そこで、私ども考えました場合に、不拘束で刑事事件において起訴されました場合に、被告人が物質的、精神的な損害を含めて現実に種々の不利益を受けることがあることは、これは否定できないと思うんであります。しかしながら、身柄拘束を受けました場合は別といたしまして、その他の刑事事件によりますところのこうむる不利益というものは、およそ、先ほどちょっと申しました公権力の行使に伴って通常生ずべき不利益の範囲に属するもの、つまり私が先ほど申しました受忍の限度の範囲内に属するものであるというふうに考えるべきではないか。少なくとも今日ではそう考えるべきではないか。たとえば、国民の権利義務に重大な関係のございます海難審判とか、特許審判、あるいは許認可の取り消し処分等に誤りがありまして、その結果、国民に損害を与えるということがあるのでございますが、これらの場合について直ちに国がその損害を補償するという制度は、いまのところ設けておらない。当該公務員に故意過失がある場合に限って国家賠償法による賠償請求が認められているにすぎないということが現実の制度としてあるわけであります。そこで、検察官が十分な根拠に基づいて適法に公訴を提起した場合につきましては、裁判の結果が無罪となったという理由だけで、非拘禁者に対して当該公務員の故意過失の有無にかかわらず損害を補償するということは、いま申しましたような行政処分等の誤った場合との関係において均衡を失することになるのではないか、少なくとも現段階ではまだその限度は受忍の範囲内に入るのではないかというふうに一応考えたわけであります。 なおいろいろの理由はございますが、そのほかに、私ども法律制度を立法いたします場合には、やはり外国の制度というものも見てみる必要があるということで、外国の制度を詳しく精査いたしましたが、そもそも刑事補償というものが、国の無過失責任を認めた特別の制度でありまするところから、刑事補償制度ということを設けている国自体が世界でもさほど多くない。そして、特にいま御指摘の補償の範囲を身柄不拘束の場合にも及ぼしている国は、私どもの調べましたところでは見当たらないということで、外国にもそういう制度はないということも含めまして、少なくとも立法政策として取り得ることではあるし、理論的に憲法に違反することでもないが、現段階においてはまだ不拘束の場合による損害は国民の受忍の義務の範囲に属すると考えるべきではないかということで、最高裁との協議の上で、一応今回の補償改正法案には不拘束の場合の補償の制度は取り入れなかったということでございます。
○竹田現照君 これはものの考え方だと思うんですけれども、無罪の判決を受けるまでは、何といいますか犯人として、言うならば罪人としての扱いをしていないのだからという理由もあるでしょう。しかし、世上一般警察につかまったらすぐ犯人扱いに新聞でも何でもしますわね。この間の千葉医大の鈴木さんですか、あの方も、この間無罪になったとたん新聞は鈴木さんになりましたけれども、長い間まるきりあの人がチフスの犯人のようにずっと扱われてきたわけでしょう。そうすると、たとえ無罪になっても、不拘束であったとしても、その間本人はもちろん家族から親戚に至るまで、受ける精神的、経済的な負担というものは、損害というのはたいへんなものだと思うんですね。ですからそういう意味では、不拘束の場合でも補償をすべきだ。 この間、この法律に関連する朝日新聞の「今日の問題」ですかにも、社会党の私どもが出している案というものを、むしろ今回の改正に取り入れて、せっかくりっぱな法律があるんだから、それをよりりっぱなものにすべきではないかというような、新聞にも出ておりましたけれども、私はいままでの例でいくと、また五年ぐらいたたないと、この法律が、改正案が、いままで大体五年に一ぺんぐらいですかね、ということになりますと、せっかく附帯決議がなされて、その当時大臣は十分にこの点について検討を加えますと、決議の御趣旨に沿ってというようなことを型どおり言われるわけですけれども、型どおりのそういうことではなく、やはり補償してやるんだ、そのためにはどういう方法をとったらいいのかという前提で御検討になるべきではないかと、こう思うんですね。 外国にも、何かフランスには、身柄拘束を前提としないというような制度もあるということを聞きますけれども、諸外国にはそういう例はないんですか、あわせましてひとつ。
○政府委員(安原美穂君) 世界すべての国の刑事補償制度を調べるというわけにはまいりませんので、ないということは申し上げかねますが、先ほど申し上げましたように、私ども調べました範囲においては、そういう制度は見当たらなかった。ただ社会党の法案に一部出ております、裁判に要した費用でございますね、費用につきましての補償ということにつきましては、先般鈴木強先生御指摘のように、オーストラリアにおきまして、費用補償については、どうもまだ詳しく条文の一々当たっておりませんけれども、費用補償については、不拘束の場合に、これを補償しておるのではないかと推認される制度がございますが、いわゆる何と申しますか、無罪になったということで、いわゆる精神的、物質的損害という広い意味での補償制度としては、私ども調べた中では見当たらないというのが実情でございます。
○竹田現照君 同じ附帯決議の中に、被疑者の補償制度の整備等について検討すべきこと、そういうことがありますが、これについてお伺いしますが、事実問題として、被疑者として拘束されたけれども不起訴になったという数ですね。それから、その中で補償を受けたという数は、この二、三年でもけっこうですけれども、どれくらいあるものですか。
○政府委員(安原美穂君) 本法案を提出するにあたりまして調査いたしましたところ、昭和四十七年中の結果を御報告申し上げますと、昭和四十七年中に全国検察庁が受理いたしました、これは刑事補償——被疑者補償制度が身柄拘束をしておって不起訴になった場合のことでございますので、私ども調べましたのは、身柄を拘束しておって不起訴になった者が幾らあるかという調査でございますが、身柄を拘束して検察庁に送られてまいりました者が、昭和四十七年中に十四万九千七人ございました。このうち不起訴処分に付した者が二万八千五百二十七人でございます。つまり身柄を拘束されて検察庁で調べを受けて、そして不起訴になった者は二万八千五百二十七人でございます。つまり、パーセンテージにしますと一九・一%が不起訴になっております。そこで、不起訴処分というのは、御案内と思いまするが、いわゆる罪は認められるが、情状として、起訴して刑罰請求権を行使するまでのことはないという、いわゆる起訴猶予という者は、いま申し上げました二万八千五百二十七人のうちの二万三千三百人でございます。つまりパーセンテージにしますと八一・七%でございます。それから不起訴の中には、本人が罪を犯したのではないということが明らかな場合には、それを嫌疑なし、犯罪の嫌疑がないとするわけでありまするが、それから、やったことは罪だと言われているけれども、それは罪にはならないというようにする不起訴、これは、いま竹田先生御指摘の被疑者補償の適用を受けるべき不起訴処分の内容になるわけで、そういう嫌疑なし、罪とならずという者が、合わせまして百二十一人でございます。その他は嫌疑不十分と申しまして、嫌疑なしというほど、いわゆるまっ白ではない。白ではないが、相当疑いはあるけれども、起訴をして有罪を得る蓋然性が乏しいというのは検察官は起訴いたしません。そういうのを嫌疑不十分と申します。そういうのは三千三百二人。 そこで、被疑者補償の対象になり得る者は、私どもの関係では、被疑者補償規程にありますように、「その者が罪を犯さなかったと認めるに足りる十分な事由があるときは、」と、こうなっておりますので、「十分な事由があるとき」と目されるのは先ほど申しました二万八千五百二十七人のうち百二十一人であるということに相なるわけであります。合わせますと〇・四三%、不起訴処分を受けた者のうちの〇・四三%が、身柄拘束を受けて、そして不起訴になり、それは「罪を犯さなかったと認めるに足りる十分な事由がある」者ということになるわけでありまして、つまり昨年中では百二十人が一応この不起訴になり、かつ「罪を犯さなかったと認めるに足りる十分な事由があるとき」というものに該当する、一応形式的に当たるということになるわけで、そこで、そういうことでございますが、若干時期のズレはございますけれども、被疑者補償の運用の実際は、この前申し上げましたように非常に数が少ないのでございまして、昭和四十七年度におきましては、被疑者補償した者は四十四名、これはもう非常に多いのでございまして、四十七年には四十四名でございますが、さかのぼりますと四十六年は五人、四十五年は三人というふうに、非常に少ない、十人にも足らないというのが過去の実績でございます。そこで、そういうことで身柄を拘束して、そして不起訴にした。そしてそれが罪を犯さなかったと認めるに足る事由の者は、昨年中に百二十人あったが、被疑者補償した者は、多い年ではあったが、四十四人であったというようなことになるというのが昨年度の実績でございます。
○竹田現照君 その後、四十七年が飛躍的に多いんですね、約三分の一。その前のいまの御説明の詳しい数字がわかりませんけれども、きわめて少ないわけですね、五人以下、これ。これはどうなんですか。この補償規程の裁量というのは、検察官の判断にゆだねられているという面もあって、そういうような結果が出てくるんではないですか。ちょうど、全くしろうとで、素朴に疑問を感じますけれども。 それで、それと、この補償規程千三百円は下限がないわけですね。ですから、幾ら補償されているのか、ちょっと私にもわかりませんけれども、百円でも五十円でもいいわけです、極端に言えば。大体どれくらいの金額で補償、裁量されているのか、あわせてひとつお答えください。
○政府委員(安原美穂君) まず、非常に少ないことは事実でございまして、その原因につきましていろいろ、私ども、考察もし、反省もしておるわけでございますが、まず、何と申しましても、被疑者の拘束期間がそう長くはないということも一つの原因であろうと思いますし、もう一つは、やはり被疑者本人に、こういう制度があるということが必ずしも徹底したということを自信を持って言えないという検察当局の反省もございまして、かような結果になっておるものと思いますので、実はわれわれが改め得る部分、つまりこれをできるだけ被疑者に徹底するということにつきましては、大臣訓令の趣旨の徹底をはかるために、検事の集まりがありますたびに、この間も全国の検事正の集まりがございましたが、人権擁護徹底という意味から、ぜひこの制度の活用をはかるようにということを繰り返し繰り返し申しておりますし、また現に、どろなわ式という御批判があるかもしれませんが、この間、埼玉県で学校の若い先生が女の子にいたずらをしたということで誤認逮捕されたものにつきましては、さっそく被疑者補償する手続をとらせたというようなこともございまして、十分徹底するようにはかっておりますが、今後とも、まだ十分努力が足りませんので、大いに努力をしたいというふうに考えております。 なお、どの程度の補償かということになりますと、これは決して少なくはないので、ほとんど最高額で補償をいたしております。そして下限がないのは、この制度は刑事補償と違いまして、一種の国の側からする被疑者に対する自発的な一種の、請求権に基づくものではなくて、一種の自発的な金の支払いということになっておりますので、すべてこれは具体的には検察官の裁量ということになっておる。したがいまして、検察官の良識に期待するということで、下限は設けておりませんが、先ほど申し上げましたように、ほとんど最高額で交付しておるということでございます。
○竹田現照君 いまお答えのように、やはりみんながわかるようにしてこの補償なりあれを受けられるように法務当局がさらに一段と御努力をされることも、私は、この附帯決議の、整備等について検討すべきこと、に合致するんではないかと、こう思うので、さらに一そう努力をしていただきたいと思います。 それから、いまもちょっとお話がありましたけれども、誤認逮捕というようなものは、事実問題としてどれくらいあるんですか。いつか三億円事件でつかまった人がありますね、草野さんという若い人、あれも誤認逮捕なんでしょうけれども、ああいう人にはやはり補償はされているんですか。何か別件逮捕で三億円の容疑者としてつかまった……、何年になりますか、二、三年になりますか。
○政府委員(安原美穂君) この被疑者補償規程は、御承知のように、何も検察庁だけの問題でなくて、刑事手続において捜査の段階においてでございますから、警察が誤認逮捕した者も不起訴にした場合に、必ず警察が捜査いたしますと検察庁に送致してまいりますので、検察官のところで、誤認逮捕の場合は罪とならず、あるいは嫌疑なしということで落としますので、必ず被疑者補償の対象になるはずでございます。 ところで、誤認逮捕がどれぐらいあるかということは、実はそんなに統計をとるほどに多くはないということで、数は幾らかということはちょっと私、不敏にして存じませんが、そう多くはございません。 なお、三億円事件につきましては、いわゆるほかに事件がございまして、たしか暴行か脅迫ということで処理をして、罰金の判決が確定しておりますので、これはいわゆる罪を犯さなかったと認めるに足る十分な事由ということには当たらないということで、被疑者補償の対象にはなっておらないと思います。ただ、それが世上伝えられる別件逮捕というようなことになりますと、また別の問題が起こりますけれども、少なくともあの場合は、暴行あるいは脅迫ということで有罪になったわけでありますので、この問題は起こらないということになります。
○竹田現照君 しかし、世上あれは三億円犯人としてあれだけ騒がれたわけですから、まあ別の罪にかかったとしても、本人はたいへんなあれだったと思いますが、それでちょっとお聞きしたんです。 それから家宅捜索などによって——私は、まあ最近ちょっと家宅捜索を警察が乱用しているのではないかとすら思うことがあるんですけれども、別に、全然家宅捜索をしなければならぬというような理由も何もないんだけれども、何でもこのごろ家宅捜索しますけれども、その場合の押収をすべきものというものは、必ず、いま返されているものですか。返さなくても没収処分をするものもありましょうけれども、必ず返されているものでしょうか。これは私の経験からもちょっとお尋ねしておきたいのですけれども、昔はよく本だとか何とかいうものは押収していきますね。思想犯だとか何とかいう容疑でガサ入れをやりますと、返さないものがありますね。戦後、これが古本屋でたいへん高い値段で売られているというような時代もありましたけれども、ああいう、まあ戦争終わる前のことでたいへん恐縮ですけれども、そういうような事態というものは、いま、絶対にないというふうに理解してよろしいものですか。
○政府委員(安原美穂君) まず押収するものというのは、証拠物たるもの、あるいは没収すべきものというのが押収の対象になるわけでありまして、最終的には裁判所の判決によりまして没収ということになるか、そして証拠品としましては還付ということになるはずでございまして、法的な根拠なしに取り上げるというようなことはないはずでございます。ただ、たばこ専売品とか、わいせつ図画とかいうような、いわゆる所有法禁物につきましては返さないということがあり得ると思います。
○竹田現照君 これはガサ入れされると、どうしてもされたほうは精神的にもちょっと何か変な気持ちになるものだから、返されなくても黙っているというようなケースが——昔なら取りにいけばどなられたんですけれども、それで事実上公権力で押収されたものが返されていないという事態は、これは決して少なくなったと思います。ですから、新しい憲法下においてそういうようなことが万々一あるとすれば、これはまたたいへんなことだなあと、そういうような場合の補償についてもちょっとお尋ねしたかったんですけれども、一応、時間もありませんから先に進みます。 そこで、今回も、前回の改正と同じように、補償の金額、これは「最近における経済事情にかんがみ、」と、こういうふうに御説明になっているわけですけれども、この補償金額の構成要素の中で、経済的な損害要素というか、それと、精神的に受けるいわゆる慰謝料的要素、こういうものは、どういう割合で織り込まれているんですか、この金の中には。
○政府委員(安原美穂君) その点はまことに説明を申し上げることの困難な問題であることを率直に申し上げたいのでございますが、実は、どういう割合でということは、全く、フィフティー・フィフティーとかそういうことはないんでございまして、要するに刑事補償は、先般来るる申し上げておりますように、いわゆる国家賠償ではない。したがって、無罪になった者の精神的物質的損害というものをすべて洗いざらい明らかにしてそれを補償するという制度のものではなくて、故意過失はないが、無過失でも、受忍の義務の限度を越えるから、平均的な定型的な形において精神的物質的損害を補てんしよう、それによって、国民全体の負担によって、その個人の受けた損害を相当程度分担しようと。その分担したと言える額として相当なものはどれぐらいかということで、一応今日までは千三百円というのが最高の日額として相当であろうというふうに考えられてきたわけであります。 先般、鈴木先生の御質問にも申し上げましたが、当初は、旧刑事補償法時代からの金額を見ますると、当時の証人の日当とか、それから罰金刑に算入いたしました未決勾留の換算される金額の日額とかいうようなものをにらみながら、この程度で相当であろうというふうに見られたということでございまして、どの程度に精神的損害がありどの程度に物質的損害があるかということは明確ではございませんで、要するに、この程度の金額を払えば精神的物質的な損害の補てんとして、一応、こういう刑事補償としては相当であろうという金額が今日までは千三百円であったという以上には、まことにむずかしい御質問で、これ以上説明のしかたがないということで、何とぞ御理解をいただきたいと、かように思います。
○竹田現照君 改正の説明が、消費者物価指数、賃金指数の上昇ということだけの御説明ですから、そうすると、精神的な慰謝料的な要素というものは事実上含まれてないんじゃないか。大体、今度二千二百円に変えるにしても、指数の上昇の分だけ計算をしてはじき出されているわけでしょう。ですから、実際問題としては、精神的慰謝料要素というものは含まれてないと私は理解をしたいんですけれども、これはあわせてひとつお答えをいただきたいんですが、そこで、今度のいわゆる物価指数あるいは賃金上昇率を法務省なりの御計算がなされて、二千二百余円ですか、それで二千二百円というふうにはじき出されているんですけれども、最近のように、異常な物価指数の上昇、それに伴って賃金の上昇率も、きのう労働大臣が閣議で御報告になったことしの賃上げの結果も二〇・一%、きのう閣議で報告になったと、けさの新聞に出てますね。そういう状態というのは、この改正のときにはおそらく想定をされておらないと思うんです、これを立案されたときは。そうしますと、先ほどもちょっと触れましたけれども、さらに従前の例に従って、今後五年後にまた改正をされるというような手順を踏まれるとすれば、この法律を通すいまの段階で、もうすでに二千二百円という金額は適正でない。算出の根拠そのものがもうくずれているというふうに思うんですけれども、これは、やはり、特に最近は異常な物価上昇ですけれども、そういうようなことを加味しまして、機械的に、いままでも五年だから今後もまた五年後だなんというような、これをスライド制を入れるというわけにもいきませんでしょうけれども、そういうことには、どういうふうに対処なさろうとお考えになっていらっしゃるのか。あわせてひとつ。
○政府委員(安原美穂君) 五年に一ぺん定例的に引き上げるというようなプリンシプルをとっておるわけでございませんで、実はいままでの千三百円という最高額が天井、頭打ちというか、裁判所の運用の実態において千三百円ではまかなえない事態というものが切迫し、ある程度裁判の実務において無理が出てきたという実情がございましたので、これを変えるということにいたしたわけでございまして、何と申しますか、五年に一ぺん必ずやるという定例のものではございません。あくまでも現実に即して、その最高額がまかなえる限度としてはもう破産に瀕したというときに改正すべきものでございますので、場合によったら二年でも、一年でも、実情にそぐわないときは至急に改正すべきものと、かように考えております。
○竹田現照君 そこで、いままでの千三百円という基準も、三十九年の改正の際に御説明になった法務省の資料というのは、当時の経済統計資料で、三十八年の十月を基準としたものを、指数を用いられていますね。それから、四十三年の場合は、三十九年を一〇〇として昭和四十二年度の指数を用いられておられるんです。そういう御説明になっていますね、その当時は。ところが、ことしの御説明は、ことしの、四十八年度の上昇指数というものも見込まれて計算されているわけですね。前に二回の算出の根拠というものは、たとえば三十九年なら三十九年の上昇見込み、四十三年なら四十三年の上昇見込みというものを算定の基準には置かれてないんですよ。 そうすると、ことしの御説明に関する限り、算出の基準というものが違っています。そうすると、そのいまの千三百円というものは、ことしの改正の御説明からいけば、改正時点における上昇見込みというものをとってなかったとすれば、千三百円そのものがすでに低かったのである。その低かったものを基準に置いて、ことしは、御説明にあるように、ことしの上昇率まである程度推定をしてはじき出すというのは、ちょっとその意味でも金額が低きに失するんではないか、そういうことに理屈の上ではなるんではないかと私は思うんですけれども、いかがですか。
○政府委員(安原美穂君) 竹田先生のおことばでございますが、四十三年の改正のときにも、四十三年におきます物価、賃金の推定上昇率をはじいて計算したはずでございまして、その点はパターンとしては同じだと思いますが。
○竹田現照君 いや、私がいろいろと調べたりお聞きしている限り、そうでないように記憶したもんですから、あらためてお尋ねしたわけです。 それからもう一つ、今度は下限の六百円の改定がありませんね。これはいままでのあれでいくと、何というのか、この差というものはある程度定型化しておくというかっこうの御説明になっていたですね。それですから、六百円と千三百円、大体まあ半分、今度は六百と二千二百円ですから、もう大体四分の一くらいになっちまうわけですね、上限と下限は。その六百円を据え置いた理由をいろいろとこの間も御説明、鈴木先生の御質問にいろいろとお答えになっていましたけれども、たとえば、心神喪失者の無罪の場合に、はたして補償することが社会感情等からどうだとか、いろいろなことがありましたけれども、私は、そういう特殊な例というものは、別に——法律上、立法技術上できるかできないかは別として——考えられるべきであって、いままで上限下限の定型化ということを御説明になって今回だけは変えなかったという、このやり方を変えられたわけでしょうけれども、これはちょっと理解しがたいんですけれども、これはどんなものでしょうか。
○政府委員(安原美穂君) いま竹田先生の、特殊な場合には例外を設ければ、ということでございますが、実は補償法の第三条に「左の場合には、裁判所の健全な裁量により、補償の一部又は全部をしないことができる。」ということで、無罪になったものについてはできるだけ定型的に補償するたてまえをとりまして、いわゆる総体的ではございますが、「補償の一部又は全部をしないことができる」、つまり、補償金額をきめておいても、その定型化のワクの下のほうへきめるという場合は、きわめて厳格に今度の法律では限定しておりまして、ここにございますように、「捜査又は審判を誤まらせる目的で、虚偽の自白」をするとか、「有罪の証拠を作為することにより」、「有罪の裁判を受けるに至ったもの」とか、あるいは「一個の裁判によって併合罪の一部について無罪の裁判を受けても、他の部分について有罪の裁判を受けた場合」というふうに、全部はしない場合、あるいはやるにしても減らす場合というのは、この二つの場合しかないということをになっておりますので、あとその他の事情、いま申し上げました必ずしも国民の感情にマッチしない場合というようなものは、やはりいまの場合なら六百円と千三百円の中でまかなうということに相なるのだと思います。 そこで、国民の感情にマッチしない場合があるから六百円にとどめたというのも一部の理由ではございますが、要するに、先ほど申しましたように、金額の改定は、その定型化されたこの補償の金額の幅が裁判の実態においてもうもたなくなった、天井をついたというようなことである場合に、それを見越して改正をしていくというのが立法の態度だといたしますと、この六百円につきましては、実はこの間鈴木先生に申し上げたと同じでございますが、上については天井打ちになっておりまするけれども、下のほうにつきましては、たとえば、無罪になったが、その無罪の人が全然定職がなくて何にも収入がない人だった、あるいは心神喪失者で責任無能力で無罪になったという場合は、裁判の実例におきましても六百円ということでまかなっておるケースが相当あるということで、先ほども、原則として、六百円のほうはそういう場合もまかない得るものとして、まだいわゆる破産の状態になっておらぬということで、とめ置いても国民感情にも違反しないんじゃないかということでとめ置いたというのが理由でございまして、その前には何で直したのかと申されますならば、やはり先ほどの立法方針としての下が底をついたということで変えたんだということで、首尾は一貫するものとまあ考えておるのでございます。
○竹田現照君 ただ、いまいろいろと御説明になったのは、いままでだってあったわけですね。収入がなかったとか、心神喪失だとか、あるいは低額所得者、いままであったわけですね。あったけれども、その二百円が四百円、四百円が六百円、これはいろいろと物価上昇その他を加味してと、こういうことで改正をされてきて、上下の定型化が、補償の定型化があった。とすれば、今回もやっぱり、そういうものは従前もあったんだから、それはまあ立法上どういうものができるかどうかは別として、下限も従前三回改正になっておるのに準じて上げることが常識的でないかと、私はそういうふうに素朴に思うものですからお尋ねをしているわけです。もう一度この点についてお尋ねをして、質問を終わりたいと思います。
○政府委員(安原美穂君) 先ほども申しましたように、われわれも一応竹田先生の御指摘のとおりに、同じような幅のままでスライドするということを考えたわけでございますけれども、裁判の実例等におきまして、また前の衆議院の法務委員会の公明党議員の強い御主張もございましたように、責任無能力の場合というのは本来やらなくてもいいじゃないかというような御議論、また外国の立法ではそういうようなものがあるわけでございまして、責任無能力によって無罪の場合には補償しないという制度をとっている国がいわゆる先進国に相当ございますというようなことも含めて強い御主張がございましたこともやはり考慮のうちに入れまして、と同時に、裁判の実例で六百円でおさまっているケースがあるということも考えると、物価スライドということのほかに、裁判所もそれで妥当なんだという線がそこに出ておるということも含めまして、そういう意味におきましては今回は変える必要はないという判断に達したということでございまして、六百円というものの価値が、昭和四十三年に比べれば物価あるいは賃金関係において貨幣の価値の変動があるという意味においては、六百円というのは下げたということになるのかもしれませんけれども、そういう実情も加味して、とめおいたということでございます。
○竹田現照君 終わります。
○佐々木静子君 それでは、私からお尋ねさしていただきます。 いま竹田議員はじめ、先ほど来質問の諸先生から、この額が妥当でない、あまりにも低過ぎるというふうな事柄につきましていろいろと御質問があったわけで、私も全く同感、同じ立場で質問をさしていただきたいと思うんですが、まず、この刑事補償法を見まして、第四条の部分でちょっと解釈上問題があるんじゃないかと思う点でございますが、この第三項、死刑の執行による補償が現行では三百万円、これを五百万円以内に増額になるというのが今度の法案でございますが、このときにただし書きがございまして、「本人の死亡によって生じた財産上の損失額が証明された場合には、補償金の額は、その損失額に三百万円を加算した額の範囲内とする。」というふうになっておりますところから考えますと、これは現実に発生した損害さえ立証できましたら、それプラス三百万、今度は五百万、というようなことになるわけでございますね。その点は衆議院でも出ておったようでございますが、はっきりと確認していただきたいと思うわけなんですが。
○政府委員(安原美穂君) 佐々木先生御指摘のとおりでございます。
○佐々木静子君 そうすると、この第三項の考え方は慰謝料ということになるんですか。慰謝料はまた別に慰謝料として請求できるという考え方でございますか、故意過失がある場合は。
○政府委員(安原美穂君) 結論的にはこの三百万円、今度変えようとする五百万円は慰謝料ということに相なるわけでございまして、先ほど申し上げましたように、刑事補償は精神的物質的損害の補償、補てんということで、死刑の場合におきましては特に重く見まして、財産上の損害につきましては、本法制定当時国会の修正でこうなったようでございますけれども、財産上の損害については、証明された限りはいわゆる定型化しないで現実の損害というものを財産的な物質的損害として考える。あと慰謝料としては、ここにありますように、定型化した金額の範囲内できめるということでございます。
○佐々木静子君 それを伺ってよくわかったんですが、もう一度重ねて申し上げますと、別に故意過失があって慰謝料がこの額では足らぬという場合は、国家賠償で請求することもやぶさかじゃないというわけでございますね。
○政府委員(安原美穂君) 御指摘のとおりでございます。 〔委員長退席、理事原文兵衛君着席〕 ただ五条の関係で、現実の慰謝料を含めました四条三項の金額が現実の国家賠償における損害額を上回ることもあり得るわけです。そういうときは支払うことができません。理論的には、おっしゃるとおりでございます。
○佐々木静子君 ところが、この初めの二項の場合など、これは拘束による場合の補償ですが、これは「本人が受けた財産上の損失、得るはずであった利益の喪失、精神上の苦痛及び身体上の損傷並びに警察、検察及び裁判の各機関の故意過失の有無その他一切の事情を考慮しなければならない。」というふうにこの補償の内容定めについてきめてある。これは慰謝料じゃないと思うんですけれども、慰謝料じゃございませんね。
○政府委員(安原美穂君) いや、これは慰謝料、それから物質的損害を含めた補償がこの四条一項の日額六百円以上千三百円以下ということでございまして、ここにありまする「精神上の苦痛」というのは、これはまさに慰謝料のことをいっておるのだと思いますが……。
○佐々木静子君 おっしゃるとおり、慰謝料も入っていると思うんですが、慰謝料オンリーではございませんですね。
○政府委員(安原美穂君) 説明が不十分でございまして、オンリーではございません。
○佐々木静子君 それから、このあとの罰金の場合ですね。これ、同じ条の第五項ですけれども、これは、「すでに徴収した罰金又は科料の額に、これに対する徴収の日の翌日から補償の決定の日までの期間に応じ年五分の割合による金額を加算した額に等しい補償金を交付する。」となっているんですが、これは今度の改正案には全然出ておりませんが、年五分の割合のもので補償してもらって、この物価の値上がりですね、実際に返還されたところで、これは実際上は補償にならぬのじゃないか。ですからその点、これは法務省とすると、何な適当な方法をお考えにならなければ、実際かりに百万円を徴収されたとしても、罰金を払わしたとしても何年か後に五分つけて返してもらったのでは、実質上は、場合によると三分の二とか、そういうことになってしまうんじゃないか。そのことについて何か特別な方法をお考えじゃありませんか。
○政府委員(安原美穂君) 別の利率をきめることも理論的には可能かもしれません。これはいわゆる民法の法定利率をここに持ってきたという以外に何の理屈もないわけでございます。ただ、くどいようでございますが、刑事補償という性質からいって、必ずしも全損害の補償がなされなくてもいいという根本的なたてまえをとりますというと、必ずしもこれを変えなければならぬということもないんではないかというふうに考えた次第でございます。
○佐々木静子君 まあ、いわばこれは、罰金を取り立てたけれども、その後再審で無罪だということがわかった、それは返さにゃいかぬのは常識で考えてもあたりまえのことで、麗々しく補償などと言わないでも、これはだれが考えたって返さにゃいかぬと思うのはあたりまえだと思うんですが、今後何か大臣、この点について立法なり、何かいい解決方法ですね、お考えじゃございませんですが。
○国務大臣(田中伊三次君) いま刑事局長が申しましたように、そもそも刑事補償のたてまえというものが、全額の補償をしようというものではなしに、全額の一部であるけれども、定型化された、きめられた幅の範囲内においてとりあえず賠償をしようという趣旨に出ておるものでございます。全部か一部かと言われると、一部の補償というたてまえがたてまえでございます。そういうことから、法定の利息程度のものをつけ加えて賠償をしようというたてまえをとったものと存じます。特にこれに関しまして、将来どうしようというところまでは現在は考えておりません。
○佐々木静子君 これは、この間この法案を審議するにあたって刑務所の見学もさしていただいたんですが、矯正局長に伺いたいんですが、非常に刑務所における作業賞与金が低い。 〔理事原文兵衛君退席、委員長着席〕 この中で、未決の場合は労働はいたしませんけれども、再審などで無罪になった場合は、その間実際全く話にならない低額の作業賞与金で働いてきて、それも後日無罪になったらその間のお金は、普通働いた分は国がただ取りじゃ、私はこれはやっぱり公平の原則に反するんじゃないかというふうなことを思うんですが、いま作業賞与金一人当たり平均幾らになっておりますか。
○政府委員(長島敦君) 今年度予算におきまして、一人一カ月当たりの平均をとってまいってみますと、千三百二十四円でございまして、一日当たりの平均額で申しますと約五十三円見当でございます。
○佐々木静子君 この法案についての関係資料、法務省からお出しいただいているのでも、このいまの昭和四十八年の常用労働者の平均賃金が一日三千七百九十三円と推定していられるわけでございますね。刑務所で誤った裁判で服役させられて、その人が一日わずか五十三円で何年間か働かされて、そして後日再審で無罪になったという場合ですね。これはやはり、いかに補償は全額じゃなくて一部だといっても、一般の人間から考えると割り切れない感じがするわけですね。外へ出て働けば普通平均で三千七百九十三円、刑務所での労働が外の労働に比べて酷であるか酷でないか、その点は論外として、それを五十三円であるとなると、やはり無実な者がその間働かされて、そしてわずかな補償額で解決される、解決ということはないのですが、補償金しかもらえないというのはおかしいのじゃないか、もうちょっと上げなくちゃならない。そもそも作業賞与金というのはむちゃくちゃに少な過ぎるというのが根本的な問題でございますけれども、そこら辺のところも考えていかなくちゃいけないのじゃないかと思うのです。 それともう一つは、この法案の審議に先立って一番最初参考人の方々から御意見を伺ったわけですが、これは刑務所の中でただで食べさしてもらっているのだから、その食費分も差し引かなければならないからというふうなお話があったわけですが、平均して一日の食費というのは一体幾らになっているわけでございますか。
○政府委員(長島敦君) 今年度予算におきましては、平均いたしますと、おとなの場合が百三十五円でございます。少年の場合が百五十円でございます。なおこの分につきましては、実は私どももたいへん少ないと思っておりますが、大蔵の非常な理解を得まして、本年度は昨年に比べますと、比率で申しますと約三〇%近い実はアップをしてくれておりますが、もとが少のうございますので、いまでもたいへん少ない金額だと思います。もう一つは、御承知でございましょうけれども、刑務所、拘置所等で収容人員が非常に多い場合には、非常に安価に原材料が入りますので、大きな刑務所におきましては、実質はこれをかなり効率的に使っておりますので、そういう点もございまして、カロリーの点はもちろん充足しておりますが、全般的にそんなにひどい不服はいま受刑者からは起こっておらないという現状でございます。
○佐々木静子君 矯正当局が非常に食費の増額に御努力なさっていること、また少ない予算で御努力いただいているということについてはたいへんに御苦労のことだと思いますが、しかしこの、ただで食べさしてやっているからといったところで、国が負担しているのはいま伺うと一日百三十五円である。それから一日の労働に対する作業賞与金が五十三円、それだけの負担で、いわば二百円にも満たない負担で、収容されている人間をフルに一日働かせている、働かせているというとちょっと表現が妥当でないかもしれませんが、しかし一日作業に従事していることは間違いないわけで、それが再審で無罪になった、無実だということがわかった、それじゃ、これは補償というものは一部だとおっしゃいますけれども、これは私は小学校の生徒が考えても、その人が無実だったら、いままで働いた分についてやはり国が補償するのがあたりまえじゃないか。 これはやはりわずか六百円から今度改正して二千二百円の範囲内で補償するというんじゃ、これはやっぱり国によるピンはねじゃないか、俗なことばで言うと。そう思わざるを得ないわけなんですが、その点について、先ほど来いろいろとこの額について質問がありましたので、私は重ねて御答弁は求めませんが、ただ、これは実務の経験から申しましても非常に少ないということは、これは何回も私、引用さしていただいて恐縮なんですが、私も弁護士をしておりまして、刑事補償は四回ほど請求したことがあるわけでございます。これは世間に大きくアピールしました事件で、八海事件のことなどをちょっと例にあげさしていただきますと、これは八海事件で、この補償額が裁判所始まって以来の刑事補償額とその当時は騒がれたわけでございますが、これは四人の被告で千六百五十二万円をいただいたわけなんでございます。補償がされたわけなんです。ところが、これは私が実際にやっておったので一番よくわかっておるんですけれども、この八海事件につきましては、弁護人が二百五十名ついたわけです。二百五十名つく必要があるかないかという問題はあると思います。私も二百五十名がフルに動いたとは思わないんですが、現実に法廷にも出たり、法廷活動した弁護士が九十名おるわけなんでございます。長い人はやはり十何年間この事件に縛られているわけです。ほかの事件に手が回らずにこの事件に縛られている。これに専属の人は十人ぐらいでございますが、多かれ少なかれこれに法廷活動してきたという者が九十名ほどあるわけです。ところが、この訴訟記録の謄写代だけでも、弁護しようと思えば記録がなければ弁護はできませんけれども、これ一そろいそろえるのに、当時これはあらゆる一番安い方法を考えて、一通りが八十万円要るわけなんですね。ですから、十人の弁護士が持とうと思えば八百万円、九十人の弁護士が持とうと思えば、またその九倍要るというふうな状態で、実のところこの補償というものが弁護士の活動費用にも全然ならない。現実に法廷へ向かう旅費だけでも全弁護人の費用を補っておらないというぐあいでございます。もちろんこの刑事補償金は全部被告の人たちの再生のために、再出発のための費用に充てたわけでございますが、そういうふうに、当時非常に高い補償金だと新聞などで騒がれたこの千六百五十二万というお金は、これは実際のところ、ほんとうに補償という名に値しておらない。焼け石に水というどころか、その水にもならないというのが現実の状態でございますので、やはりこれはもうちょっと、せめて補償と名前がつく以上は考えていただかなくちゃいけない。 これは先日参考人の方にもちょっとお尋ねいたしましたが、松川事件の例によりましても、鈴木被告、これは死刑の判決を受けて最終に無罪になった人ですが、これが百四十二万八千円の刑事補償金をもらっている。ところが、あとで国家賠償法による請求をいたしますと、得べかりし利益が二百三十一万三千二百七十円、慰謝料が六百万円。そしてこの刑事補償額を差し引いた残りが六百八十八万五千七百二十円となっている。そのように全体の損害額、この判決の損害額というものをまず妥当と考えましても、非常に少ないわけでございます。佐藤一というやはり死刑判決を受けた人においては、もっと少ないわけで、刑事補償額はわずか四十万五千六百円。ところが国家賠償法では、得べかりし利益が二百二十七万五千三百八十七円、慰謝料が六百万円。ですから、この刑事補償額を差し引いても、その差額は七百八十六万九千七百八十七円というふうに非常に額が違ってくるわけでございまして、そういうことから考えましても、やはり刑事補償という以上はもう少しお考えいただきたい。 いまの刑事局長の御答弁によりましても、実情に合わないとなれば、これはもう一年後にでも改正するというお話でございましたが、これ、いま改正したのが法律になっても、私はもうすでに実情に合わなくなってきているのじゃないか。まあできましたら、実務に精通していらっしゃる法務大臣になるたけ長く法務大臣をやっていただいて、御在任中にもう一ぺん増額の改正をしていただきたいと私、思うわけなんでございます。 それから刑事裁判で無罪になった結果、国家賠償に移った請求事件というものがたいへんに少ないわけでございますね。刑事補償は、これは補償額の一部だから、あとは国家賠償でも請求できるのだというお話でございますが、それだったら、もっともっと大ぜいの人間が国家賠償を請求すると思うのです。ところが現実にこれは法務省と最高裁でお調べいただいたところによりましても、昭和三十五年以降わずか十四件ぐらいしかない、全国で。これはいかに国家賠償というものが困難な訴訟であるか、また経済的にもたいへんなものであるかということをはっきりと物語っていると思うのです。 実は先ほど申し上げました八海事件のときも国家賠償請求しようということで、一年間ほど会議を持ったわけです。いまも私、申し上げたように、九十人の弁護人がおりますから、その中で、だれかこれをやる弁護人、やってもらえる人がいないかということで、いろいろと検討したのですけれども、やはり国家賠償が非常に時間を要する、それから国家賠償請求訴訟を起こすとなると、たいへんな費用が要る。たとえば記録だけでも一そろえで八十万円。これをそのまま証拠として民事事件に出しても、正本と副本というわけでございますから、このことだけで直ちに二百四十万円のお金が要る。そのほかにもいろいろ要るわけでございますので、とても国家賠償というものが起こしにくくなる。そういう実情を考えますと、刑事補償というものが補償の一部だからということだけでは済まされないのじゃないか。やはり国家賠償を起こすということがいかに困難であるかということを考えると、国家賠償を起こすのが非常に限られていることから考えても、もうちょっと刑事補償が額を高くする必要がないか、こういうふうに痛感するわけです。 この国家賠償請求事件で訴訟救助の申し立てなどがなされた例があるか、またそれを認められた例があるかどうか、これは刑事局しかお越しじゃございませんですか、おわかりになりますか。
○説明員(貞家克己君) ただいま正確な資料を持ち合わせておりませんが、私の最近取り扱いました記憶に基づいて申し上げますと、最近の例では、かなり訴訟上の救助決定がなされているように記憶しております。
○佐々木静子君 それで、いま国家賠償、きわめてわずかな、全国で十四件しかない事案についてですが、これを拝見しますと、大体半分が国の敗訴ということになっているようでございますが、この国が一審で敗訴した場合、控訴しているのがほとんどのように思うのですけれども、控訴せずに確定させた件がありますか。
○説明員(貞家克己君) 実はお手元に差し上げました資料でございますが、これは国側が敗訴、つまり原告、すなわち刑事で有罪を受けた方でございますが、その請求が認容された事例だけを書かれたものでございます。 そこで最近の数字を申し上げますと、昭和二十八年以来、二十年間、これも完全な統計ではございませんが、最近調査いたしました結果によりますと、原告勝訴、つまり国が負けたケースでございますが、原告勝訴、これは一部勝訴も含みますが、それが三件ございます。昭和三十七年に一件、四十五年に一件、四十六年に一件、これはいずれも確定したものでございます。それから取り下げられたものが八件ございます。それから和解で解決いたしましたものが一件でございます。それから国側が勝訴、つまり原告の請求が棄却されましたものが十七件ございまして、二十年間で大体確定事件が三十件近く、約二十九件ということになっているわけでありまして、まあ勝訴の率は、これは一般の事件とほぼ同じでございますが、必ずしも多くはございません。なお、現在上訴中の事件が六件ばかりございます。一審で国側が敗訴いたしまして直ちに確定した事件があるかというお尋ねでございますが、最近の例では、ございません。しかしながら、控訴審におきまして再び同じ、同様の判断が下されました場合に上告はしないというケースは多々ございます。なお、一審で国側が敗訴いたしまして控訴審で和解をしたというようなケースも、一件でございますが、ございます。大体以上のような状態でございます。
○佐々木静子君 実はそうした資料を御提出いただけたらと思って、早くに資料請求しておいたんでございますけれども、国家賠償が認められた例ばかりが出ておりまして、そういう資料がおありなようでしたら、これはぜひ委員会に資料としてお出しいただきたいと思うわけでございます。それはお願いできますね。
○説明員(貞家克己君) 御要望に沿うように検討いたしたいと思います。
○佐々木静子君 そして、国が敗訴、すなわち国家賠償が認められたという件数、いまもお話がありましたが、これを見ますと、全部高裁以上で確定しているわけでございますね。それから地裁の分は係争中とか、そういうようなことで表現になっておりますが、これはやはり、個人と国という場合、一対一で争う場合ですね、やはり国の上訴というものは極力控えるべきじゃないか。これは、国は膨大な国民の税金を持って、お金に一つも不自由ないから、まあ幾らでも使ってやれということで上訴をされるんだと思いますけれども、これでは全く資力に限定された、いまも言っているように、訴訟救助をして戦わなければならないという個人と、それから非常な財力と権力にものを言わした国との戦いということになると、これは全く公平に戦うということはむずかしい、そういうふうなことから考えましても、ともかく国が間違えて無実の人を有罪としたケースなんでございますからね、やはり上訴などというようなことは極力差し控えるべきじゃないか、まあそういうふうに今後お考えいただきたいと思うわけです。 ただ、一般的に国相手に対する事件について思うことですが、国相手の事件で国が敗訴になれば、必ずといっていいくらい控訴する。まあそれは一般的に非常にまあ特色でございまして、そのケースもいただきたいと思って資料要求したんですが、そこまで詳しい資料がわからずに、どういう事件があって、という一覧表をいただき、昭和四十五年には国相手の訴訟千八百五十三件、昭和四十六年には二千二十三件、四十七年には千九百七件が確定したという御報告だけいただいているんですけれども、これをできましたら、国が一審で敗訴して控訴したケースがどれだけ、何%あるのかということも、これできたら一ぺんお調べいただきたいと思うわけです。といいますのは、このごろの公害訴訟などで、苦しい被害者などが、財閥、大企業を相手に訴訟した場合ですね、これは大企業のほうもお金がたくさんあるわけですから、控訴をするわけですね、それに対して国民の世論というものがたいへんにきびしくなってきているわけで、そういうことから控訴をしないで一審で確定させるというふうなケースが非常に多くなってきておりますけれども、やはり国も、幾ら権利があるんだからといって、これ国民の税金でまかなわれているわけでございますから、やはりこの乱上訴ということを十分に慎んでいただきたい。もちろん当然上訴しなければならないものは、当然権利ですから上訴をしていただいたらけっこうですけれども、いたずらに引き延ばすとか、資力のない、苦しんでいる国民を困らすような上訴ですね、そういうふうな点は十分にチェックしていただきたいと思うのですけれども、大臣はそういう点についてどういうふうにお考えでございますか。
○国務大臣(田中伊三次君) 御見解はまことにごもっともと存じますが、それぞれの具体的事案について考えるべき事柄ではなかろうか。ケース・バイ・ケースで考えるべきことではなかろうか。一般的にこれを言います場合には、国家が相手となっておるわけでございますから、やはり上訴をすべきときには上訴の道を踏まねばなるまい。これは上訴をしてみても上訴の効果がなかろうと見る場合には、上訴をせずに遠慮すべきものであろうと、こういうことになるのでありまして、一般にどうであろうかというお尋ねに対して、少しはっきりしたお答えを申し上げることにちゅうちょが要るのでございます。ケース・バイ・ケースでありますけれども、しかし、先生仰せのことは、私は、国民的立場、請求者の立場というものに立ちますときにはおことばごもっともと存じますので、できる限り、事情の許します限り、そういう方向に向かって善処をしたい。訟務部をもちまして、国家を代表して訴訟の任に私のほうは当たっておりますので、そういう方向にひとつ持っていきたいと考えるわけです。
○佐々木静子君 大臣の御所信を伺いまして非常に心強く思っておるわけでございますが、ともかく国対個人、一対一、私人同士のようなかっこうの民事訴訟でございましても、やはり一方は国というわけでございますから、単なる当事者に堕してしまったのではこれはどうにもならない。そこら辺のところを十分良識を持って乱用を慎んでいただきたいということを特にお願い申し上げるわけでございます。 それから、これは直接法案に関係ないのですが、きょう訟務部長お越しでございますので、ついでに、ついでというと失礼ですが、資料要求申し上げておきたいと思うのですが、実は六月十一日の一流紙に「千億円の山争い」という名目で、いま岩手県のほうで国相手に争われている事件があるわけでございますけれども、この記事を拝見しておりますと、林野庁の方の話として「列島改造は平地から山へ。山の経済価値が上がるにつれ、国有山林の境界線、入会権をめぐる国と民間の争いは増え、現在、四十五件。国有山林は全国で七百六十万ヘクタール。国土の二割に当たる。」云々というのがございますが、そういうことで、非常にいま、山林、山地の値段が、列島改造の線に沿って地価が暴騰している。そういうことで、国有山林との争いが多くなっている。四十五件あるということで、私もこういう風潮を聞きまして、いま憂慮しているわけでございますけれども、この四十五件はどこの地方で行なわれている訴訟なのか、係属裁判所、それを一覧表にして一度お出しいただきたいと思うわけでございます。これは法務省の法務行政ともかなり密接な関係があるのじゃないかと思う点もございますので、ひとつぜひともこの四十五件について一覧表にしてお出しいただきたい。これ訟務部長さんに特にお願い申し上げたいと思います。お願いできますね。
○説明員(貞家克己君) 山林の境界争いになっている事件、きわめて多数あることは仰せのとおりでございます。ただ、現在これは各地に散在いたしておりまして、必ずしも法務本省で実施しておりませんので、各法務局で担当しているもの、あるいは各地方法務局で担当いたしているものもございますので、若干時間がかかるかと思いますが、御要望に沿うように努力いたしたいと思います。
○佐々木静子君 時間がかかってもけっこうでございますから、ひとつぜひとも、お手数ですがよろしくお願い申し上げます。 それから、これは先日の委員会のときにちょっと関係いたしました委員の御発言に対する御答弁の中で伺ったことでございますが、このいまの死刑の判決を受けてまだ執行してない人たちがかなりいるということで、そのところで質問者の意図とちょっと誤解があっては困るんでございますけれども、私そのときにも関連質問で申し上げましたが、再審特例法を設けようということで提案されたが、しかし終戦直後の旧刑訴と新刑訴に変わるあたりの混乱した時代の事件については、特別に恩赦などについて十分に検討するから、この再審特例法は法律として日の目を見ないでも実際上は十分に配慮するからというふうな実は話で、事実、問題の七人の死刑囚の方のうち二人は恩赦で減刑していただいているということも聞いているわけでございます。この間の質問で、何も死刑の執行を早くしてくれと言っている意味では全然ないのだということを、誤解があってはいけませんので、重ねて申し上げますとともに、これは昨年にも法務大臣並びに当時の保護局長から御答弁いただいておりますが、再審特例法の対象になっている平沢貞通、免田栄、石井、西などの福岡事件の被告あるいは佐藤誠のような特別な人ですね、これは恩赦の道も十分に考えていただきたい。これは実はまた同じことを言いましてなんですが、先ほど例にあげました八海事件でも三回死刑の判決を受けているわけでございますね。それが最終的に無罪になったが、灰色の無罪じゃないわけで、実際にやった本人が、あれは全然関係なかったんだということを言うているわけです。よくこの三回死刑の判決を受けておったのが執行されなくて、確定しないでよかったということで、これはもうほっとするわけですけれども、そういうこともあるわけでございまして、非常に問題の多いこれらの事件について、これが再審の請求を出したりしておるのは、ただいたずらに執行を免れようというわけじゃなくて、これはいろんなほんとうの自分の真撃な訴えを申し上げておる。しかも日弁連の人権委員会でも、この問題にたいへんに真剣に取り組んでおるわけで、多くの法曹が取り組んでいるわけでございますので、やはりそういう点については十分に御配慮をいただきたいと思うわけでございます。で、これは平沢貞通の弁護人などからも再々陳情されていることですが、もう歯が悪くて、一本か二本しか歯が残っておらない、食物が食べられなくてだんだん衰弱してくる、何とか適当な処置を講じてやってほしいというようなこともお願いがいろいろあるわけでございますが、まあそういうお願いをあまりしつこく申し上げるのもどうかと思って控えているわけですけれども、矯正局長さんもおられますので、ぜひともそういうふうな点も十分御配慮いただきたいと思うわけです。 ついこの間の朝日新聞六月十日のに、先ほど申し上げた佐藤誠さんの歌集の原稿が刑務所で塗りつぶされておったというふうなことで、これは表現の自由を侵す、せっかく歌集として出版しようと思っていたこの編集者たちが非常に残念に思っているわけなんでございますが、新聞記事によりますと、この刑務所当局は、文書の場合、事実無根や事実を曲げたことが書かれ、社会に対し疑惑を招いたり、犯罪を蘇生するものであれば抹消するというふうになっているわけなんです。ところが抹消された文章、これ抹消をしたけれども読めるわけなので、この新聞記事によりますと、 執行を告げられ曳かれてゆく死囚ふるへて鳴らす両手の手錠 これが抹消されたけれども、すかしてみたら読めたということなんですが、この歌などを聞きますと、これは芸術的には非常に価値のあるもののようでございますが、このどれにも当たらないと思うわけですね。これを見て犯罪を蘇生さしたりするものでもなければ何でもないんじゃないか。そういうようなところで、もうちょっと矯正局としたら、こう何でもいい、新聞の写真も載っているように、片端から黒い墨で消すということであれば、これはやはり表現の自由に対する侵害じゃないか。もちろんどんな文章でも通せとは、私も非常識なことは申しておりませんが、そういうふうな点について十分に慎重に御検討いただきたい。その点について局長さんの御意見を伺いたいと思います。
○政府委員(長島敦君) まことに御指摘のとおりでございまして、憲法上の表現の自由といいますか、そういうものもからんでおるところでございますので、実は私どものほうで、ただいま従来の通達等につきましても慎重に再検討を加えておりまして、御趣旨に沿うように、一方どうしても刑務所の管理上の必要等もございますから、そのバランスにはいろいろ問題がございますけれども、憲法の趣旨に沿いまして、ただいま検討いたしておりますので、御趣旨のようにはかりたいと思います。
○佐々木静子君 いまの御趣旨のとおり、どうぞ十分に慎重に御指導をいただきたいと特にお願い申し上げるわけでございます。そうして、たいへん話がくどいようでございますが、この死刑囚の方などから出されている再審とかあるいは恩赦の申請などについて、これは法律の実務家である大臣でいらっしゃいますので、いろいろな事情でこういう犯罪の被告となり、また既決となっている人間も中にはあるということを御認識いただいておると思いますので、十分に慎重に御検討いただきたいということを特にお願いするわけでございますが、その件について簡単に御所信をお述べいただきたいと思うわけでございます。
○国務大臣(田中伊三次君) 現在の取り扱いのやり方でございますが、死刑の執行は法務大臣の命令による。判決が確定したら六カ月以内にやれ、ただし、という条文がございまして、非常上告とか再審とか、恩赦とかの願いが出た場合には、その願いの書類の審査が終了するまでの間は、右六カ月の中には算入せぬでよろしい、こういう規定がございまして、今日やっておる。で、一度執行すればもう取り返しのつかぬものになるということ、先生のお説のとおりです。そこでたいへん時間をかけまして、何とか非常上告の要因はなかろうか、何とかして再審の道はなかろうか、恩赦で許してやる道はなかろうか、近くどっか恩赦はなかろうかというようなことをたいへん入念に考えます結果、平均にいたしますと、死刑の判決確定したる後三年以上を経過、平均、もっと早いものもございますが、もっとおそいものもございまして、三年以上を経過しなければ死刑の執行に判をつかない。私の手元に書類が参りましても、すぐ私が判をついているように新聞は書いておりますけれども、それはそうではないので、実に入念に、山のような書類を持ってこさせまして、私も幾らかしろうとに比べますとものの判断ができますので、みずからその書類をめくって読みまして、いま言ったようなことの前後左右を判断いたしました結果、やむを得ないと認められるものについて、心は進まぬのでありますけれども、これに対してサインをしておるという事情でございますので、先生仰せのとおり、これらの法規、情状の許します限り、ことに平沢君の問題はたいへん気の毒に思いますところは、特に年齢が年齢でございます。老齢であるという点、刑の執行をいたしますには忍びない年齢でございます。こういう点をよく頭に置きまして、法規、取り扱い方針の許します限り、ひとつお説のような方向に向かって善処をして御期待に沿いたいと思うのでございます。
○佐々木静子君 どうも力強い御所信を伺いまして、ありがとうございました。 それから、時間もありませんので次の問題に進みますが、この刑事補償法で「免訴又は公訴棄却」、これは刑事補償法の二十五条でございますが、「刑事訴訟法の規定による免訴又は公訴棄却の裁判を受けた者は、もし免訴又は公訴棄却の裁判をすべき事由がなかったならば無罪の裁判を受けるべきものと認められる充分な事由があるときは、国に対して」請求できるということになっておりますが、こうした事例はいままで何件くらいありましたのか、ちょっと教えていただきたい。
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 刑事補償法が施行後昭和四十七年まで、免訴または公訴棄却を理由とする補償請求人員、補償決定のあった人員等について調べますと、請求人員が百九人でございますが、そのうち補償請求のあった人員というのは三十二名でございまして、率にいたしますと二九・四%というような数に相なっております。
○佐々木静子君 それから、いまの刑事補償が——これ裁判所にやはり伺いたいんでごさいますが、刑事補償の請求をして、現実に決定が出る、それからあと現実にお金がおりるまでの間がどのくらいかかっているか。これは実は先ほど申しました八海事件のときなども、十一月に判決がございまして、それですぐに確定をして、すぐに請求して、年末、被告の人たちがたいへんに生活に困っておったものですので、何とか年内に補償金をいただきたいということで、これは裁判所にも非常に御尽力いただいたわけなんでございますが、理屈からいうと、何も請求する者が裁判所に何回もお願いがあがらないと現実に受け取れないというのも妙な筋合いですし、また、裁判所自身が非常に御努力なさらないとその予算が大蔵省から出ないというのもこれまた妙な話じゃないかと私思うんですが、現実にそうすぐにお金が出ないわけなんでございますが、どうなっているわけでございますか。平均して、決定が出てからどのくらいの期間でお金が出ているのか、その点も教えていただきたいわけです。
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 補償請求が各裁判所に参るわけでございますが、それから予算は最高裁判所のほうで保持しておりますので、その裁判所から予算額の上申がございまして、それに対して予算を配賦する、それに基づいて所属長が支出決定をするということでございますので、日にちはそうかかりませんので、大体一週間から十日ぐらいのところで決定があった上の支払いということはできているようでございます。ただ、補償請求がございまして、補償の決定がかかるものが若干あろうかとは思います。
○佐々木静子君 できるだけ早く困窮している元被告の人たちに手に入るようにぜひともお願い申し上げたいと思います。 それから、もう時間がありませんので、最後に、先ほど来諸先生方からも不拘束の場合についての補償のお話もございました。ぜひその問題を、こういう実務家としてもベテランでいらっしゃる大臣の時代に何とかこれを実現していただきたい。そのためには、できるだけこうした法案が提出できるように大臣もお骨折りをいただきたいと思うわけですが、こういうふうな事件も現実にございまして、これは和歌山県の美浜町の町長さんの方ですけれども、昭和四十一年十一月十二日に任期が切れるという七カ月前に二十万円収賄したという容疑で警察で調べられた、そして、そのまま処分保留で釈放になった。そして次にその再選期に立候補すべくすっかり準備を整えていると、その告示が、十月十八日が告示のところ、いきなり十月十六日に起訴された。そして、二日前に起訴されたので、これはしかたないから立候補を取りやめた。そしてその間裁判が続いて、そしてその結果、もちろん全然、収賄といっても金銭の授受自体が全然ないので無罪になった。検事はもちろんこの件は控訴はしない。ただ、そのためにこの町長さんは政治家としての信用はもう失墜してしまった。そのほかの、対立の人に町長の座も奪われて、もうどうにもならぬ。この方は拘留されたのは二十三日間だけれども、政治家としても社会人としても葬られたような状態になったというようなケースもあるわけでございますので、この不拘束の場合の補償ということもやはりお考えになっていただきたいと同時に、まあこういうふうにほんの権力のちょっとしたミスというようなことが人の社会的生命を一生棒に振らすような結果に終わるということなどからも、十分に慎重に、申し上げることもないことですけれども、捜査権の乱用というようなことは十分にお慎みいただいて、この刑事補償の問題というものが起こらないような検察行政というものを実現していただけたらたいへんに——まあこれは検察ばかりじゃございません、警察のほうもでごさいますが——ありがたいと思うわけでございます。 これで私、質問を終わりたいと思いますが、最後に、この問題について今後どういうふうに取り組んでいただけるのか、人権擁護の面でもう少し積極的に、もっと積極的に前向きの姿勢で大臣お取り組みいただけると思うのでございますが、その御所信を伺って、質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(田中伊三次君) この本案を国会に提出させていただきまして、衆参両院を通じてずいぶん御熱心に御審議をいただきました。基本的人権の尊重の上からどう思うかというおことばに対して、私はこの審議に出席をいたしまして感じたことが三つ本件についてございます。それは、ただいま先生のおことばの、不拘束の場合にも無罪の判決あらば何とかこの法律を適用するわけにいくまいかということが一つでございます。 それからもう一つは、何といってもその金額が低過ぎる。低いのはまあ理屈はあるわけでございます。全部を賠償してこれでよいとは言うていない。一部だけれども、そのかわりに金額に限界があって、無罪の判決を受けた場合に限り、身柄の拘束の場合に限り、わずかだけれどもこれを補償するのだという立場をとっておるので、まあずばっと言えば一部補償で、一部補償というたてまえでございます。だから、足らぬところは国家補償で取れということはあたりまえのことでございますけれども、わが国の憲法は世界に冠たる最高度の人権保障をしておる国の憲法でございます。その憲法のもとにおいては不拘束の場合にも払うべきものだ。 それからいま一つ、同じ金額をきめて、定型的に金額の上下の幅をきめて、これを支払おうということであるならば、もう少し理想の金額にするわけにはいくまいか。同じこの制度を設けるならば、最高度の人権保障の上から言えばあたりまえのことじゃないかと、こういうふうに——まあ自分が出しておいて自分がそう言っておるとたいへんおしかりを受けることにもなろうかと存じますけれども、私は審議に列席をして、御意見を伺ってそういうふうに思うのです。 それからもう一つ思うことは、請求せないとくれぬのですね。そこで、また新聞に出るだろう、国家に対してまたあつかましいという感じで、日本人の一種独特の気質でございますが、請求をしない人が多い。したがって、わずかな人しかこの金は当たらない、こういうことになっておりますので、請求をせぬでも当該裁判をなさった裁判官が判決のついでに判決すりゃいいのでありますから、そうむずかしいことじゃないのだから、そのいわば無罪になった人が請求をせぬでも、裁判所が職権をもって金額をきめて支払うようにするわけにいかぬだろうか。最高度の基本的人権を保障する立場から言えば、それはあたりまえのことじゃないか。ただ、そのたてまえは、国家補償のたてまえというものは、請求を待って、請求するものが立証をして、故意過失を立証して、不法行為を証明して金の補償請求を起こせということがたてまえでございます。請求がたてまえではございますけれども、最高度の人権保障をしておるたてまえから申しますと、請求はなくとも払ったらどうか。現に法務大臣の訓令に基づく被疑者の補償は、微細ではございますけれども、請求なくして進んで支払っておるじゃないか。そういう制度を裁判所もなさったらどんなものであろうか、こういうふうに私は第三に思うのでございます。 思うことを、要らぬことを言う癖のある男でございますけれども、基本的人権尊重の立場からどう思うかというおことばがございますので、以上三つを身にひしひし感ずるように私は感じた。その感じました事柄を将来に向かってひとつ微力ながら努力をしてみたい。大臣はいつまでやっておるかわかりませんが、在職三十年にわたりまして一貫して法務委員をつとめておりますので、将来もこの程度のことはやれるものと存じますので、力を入れてこの方向に向かってやってみたいと、こう考えます。
○佐々木静子君 どうもありがとうございました。ぜひともいまの御所信どおりの御尽力をお願いしたいと思います。 私の質問を終わります。 —————————————
○委員長(原田立君) この際、委員の異動について報告いたします。 本日、瀬谷英行君が委員を辞任され、その補欠として鶴園哲夫君が選任されました。 —————————————
○委員長(原田立君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(原田立君) 御異議ないと認めます。 それでは、これより討論に入ります。 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
○佐々木静子君 私は、日本社会党を代表いたしまして、本案に反対の意見を述べるものでございます。 この法案は、基本的には現行の法律を改正する——まあ多少ながらも前進するという意味では、根本的に反対というわけでございませんけれども、私どもが前のこの同法の改正の際にも強く主張いたしましたように、また先ほど来大臣の御意見の中にもございましたように、もっと大幅な増額——大幅な増額というよりも、実情に即した増額というものをやはり実現していただきたい。また、先ほど来申し上げているように、不拘束の場合の補償というようなことも、もっと対象の幅を広げた、これも実情に即した刑事補償を実現していただきたいということを強く望んでおりまして、その線に沿っての改正でございましたならば、もろ手をあげて賛成なのでございますけれども、遺憾ながら、この法律の、今度法務省が政府案で出されている法律案では、われわれの考えているところが十分に生かされておらない。そういう点で、社会党といたしますと、反対の意見を述べるものでございます。 先ほど来、社会党の各委員の質問、あるいは大臣をはじめ政府委員の御発言にもありましたように、この法案が現実に近い、刑事補償の名に値するところの法案にまで前進することができますように、ひとつ政府当局にも強く要望いたしまして、私は反対の討論といたしたいと思います。
○白木義一郎君 私は、公明党を代表いたしまして、この法律案に反対をいたします。 このたびの政府案が最近の経済事情にかんがみて補償金の算定基準を引き上げた内容であることに関しては、評価するにやぶさかではありません。 しかし、私たちがあえてこの政府案に異議を唱える理由は、一つには、刑事補償を請求する資格がありながら、これをしない者が、実際に請求した者に比較して非常に多いという事実であります。現行法が真に国民の権利を救済する制度となっていない点について、政府もその不備を認め、善処を約束しながら、今日まで抜本的な検討がなされず、単なる金額の改定のみにとどまっていることは、まことに残念なことであります。 次に、今回の改定額をもってしても、その実質的価値が、昭和六年に旧刑事補償法が制定されたときにおける五円にも及ばないのは、国民の生命、自由等に対し「立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」とうたい、かつ、刑事補償の条項を新たに設けた現行憲法の精神からいっても、多くの問題が残ります。 以上述べました理由と、前回の改正のとき身柄の不拘束の場合の補償等について附帯決議を付したいきさつから見ても、今回の政府案が、国民の立場を考慮した、真にりっぱな制度に改めていくという熱意と姿勢に欠けていたということを強く感じている次第であります。 よって、今日の段階では、賛成するわけにまいりませんし、将来の課題として、反対の意を表明いたします。
○委員長(原田立君) 他に御発言もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(原田立君) 御異議ないと認めます。 それでは、これより採決に入ります。 刑事補償法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(原田立君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(原田立君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後四時三十八分散会 —————・—————