本会議 第58号
- 発言数
- 65 件
- 登壇者
- 18 名
- 会派数
- 6
- 開催日
- 1973/09/07
会議録
○議長(前尾繁三郎君) これより会議を開きます。 ――――◇――――― 議員請暇の件
○議長(前尾繁三郎君) 議員請暇の件につきおはかりいたします。 坂本恭一君から、海外旅行のため、九月十六日から二十七日まで十二日間、請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。 ――――◇――――― 日程第一 屋外広告物法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
○議長(前尾繁三郎君) 日程第一、屋外広告物法の一部を改正する法律案を議題といたします。 屋外広告物法の一部を改正する法律案 ――――――――――――― 〔本号(二)に掲載〕 ―――――――――――――
○議長(前尾繁三郎君) 委員長の報告を求めます。建設委員長服部安司君。 ――――――――――――― 〔報告書は本号(二)に掲載〕 ――――――――――――― 〔服部安司君登壇〕
○服部安司君 ただいま議題となりました屋外広告物法の一部を改正する法律案につきまして、建設委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。 本案は、屋外広告物に対する規制の現状にかんがみ、違反の事実が明らかなはり札または立看板の除却措置の簡素化、屋外広告業を営もうとする者の都道府県知事に対する届け出制度の創設、屋外広告業について営業所ごとに講習会修了者の設置義務、都道府県知事の屋外広告業者に対する指導、助言及び勧告等について所要の規定を整備しようとするものであります。 本案は、参議院先議に係るもので、去る五月九日同院において、本案を修正議決し、本院に送付されたものでありますが、その修正内容は、講習会修了者と同等以上の知識を有する者は、講習会修了者と同一に扱うこととしていることであります。 当委員会におきましては、同月十一日提案理由の説明を聴取し、自来、慎重に審査を行ない、八月二十九日質疑を終了しましたところ、自由民主党を代表して天野光晴君から修正案が提出されましたが、その要旨は、新たに、適用上の注意として、国民の基本的人権を不当に侵害しないように留意すべき旨の規定を設けようとするものであります。 次いで、討論、採決の結果、修正案及び修正部分を除く原案は多数をもって可決され、よって、参議院送付案は修正議決すべきものと決しました。 以上、御報告申し上げます。(拍手)
○議長(前尾繁三郎君) 採決いたします。 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○議長(前尾繁三郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。 ――――◇――――― 日程第二 千九百六十一年の麻薬に関する単一条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(参議院送付) 日程第三 千九百七十二年の国際ココア協定の締結について承認を求めるの件(参議院送付)
○議長(前尾繁三郎君) 日程第二、千九百六十一年の麻薬に関する単一条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件、日程第三、千九百七十二年の国際ココア協定の締結について承認を求めるの件、右両件を一括して議題といたします。 ――――――――――――― 千九百六十一年の麻薬に関する単一条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件千九百七十二年の国際ココア協定の締結について承認を求めるの件 〔本号(二)に掲載〕 ―――――――――――――
○議長(前尾繁三郎君) 委員長の報告を求めます。外務委員会理事西銘順治君。 ――――――――――――― 〔報告書は本号(二)に掲載〕 ――――――――――――― 〔西銘順治君登壇〕
○西銘順治君 ただいま議題となりました二件につきまして、外務委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。 まず、麻薬条約を改正する議定書について申し上げます。 麻薬の国際統制に関する基本的な条約といたしましては、千九百六十一年の麻薬に関する単一条約がございますが、近年麻薬の乱用が世界的な社会問題となっている実情にかんがみ、一九七二年三月ジュネーブで開催された国際連合主催の全権会議において、本議定書が採択されたのであります。 この議定書のおもな改正点は、国際麻薬統制委員会の機能及び統制権限の強化、同委員会の資料収集源の拡大、麻薬犯罪を引き渡し犯罪とみなす規定の新設、麻薬の乱用に対する措置の強化等であります。 次に、国際ココア協定について申し上げます。 本協定は、一九七二年十月ジュネーブで開催された国際連合ココア会議において採択された新たな国際商品協定でありまして、ココア生産国がすべて開発途上国であり、かつ、短期的に価格変動の激しいカカオ豆の価格を生産国及び消費国の協力によって安定せしめ、もって、生産国の経済発展に寄与することを目的とするものであります。 以上二件は、参議院において全会一致をもって承認された後、麻薬条約を改正する議定書は四月六日に、また、国際ココア協定は四月二十五日に本委員会に付託されましたので、政府から提案理由の説明を聞き、質疑を行ないましたが、詳細は会議録により御了承を願います。 かくて、右二件につき質疑を終了いたしましたので、八月二十九日採決を行ないましたところ、いずれも全会一致をもって承認すべきものと議決いたしました。 以上、御報告申し上げます。(拍手) ―――――――――――――
○議長(前尾繁三郎君) 両件を一括して採決いたします。 両件は委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、両件とも委員長報告のとおり承認するに決しました。 ――――◇――――― 日程第四 有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律案(内閣提出)
○議長(前尾繁三郎君) 日程第四、有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律案を議題といたします。 ――――――――――――― 有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律案 〔本号(二)に掲載〕 ―――――――――――――
○議長(前尾繁三郎君) 委員長の報告を求めます。社会労働委員会理事伊東正義君。 ――――――――――――― 〔報告書は本号(二)に掲載〕 ――――――――――――― 〔伊東正義君登壇〕
○伊東正義君 ただいま議題となりました有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律案について、社会労働委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。 本案は、国民の健康の保護に資するため、有害物質を含有する家庭用品全般について必要な規制を行なおうとするもので、そのおもな内容は、 第一に、家庭用品について有害物質の含有量等に関し、必要な基準を定め、その基準に適合しない家庭用品の販売等を禁止するとともに、すでに販売された家庭用品の回収その他の措置を講ずること。 第二に、国及び地方公共団体に家庭用品衛生監視員を置き、立ち入り検査等の業務を行なわせること及び必要な罰則等を定めるほか、家庭用品の製造または輸入の事業者の責務を明らかにすること。等であります。 本案は、去る三月二十九日本委員会に付託となり、七月十九日の委員会において質疑を終了し、八月三十日採決の結果、原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。 以上、御報告申し上げます。(拍手) ―――――――――――――
○議長(前尾繁三郎君) 採決いたします。 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。 ――――◇――――― 日程第五 災害弔慰金の支給及び災害援護資金の貸付けに関する法律案(参議院提出)
○議長(前尾繁三郎君) 日程第五、災害弔慰金の支給及び災害援護資金の貸付けに関する法律案を議題といたします。 ――――――――――――― 災害弔慰金の支給及び災害援護資金の貸付けに関する法律案 〔本号(二)に掲載〕 ―――――――――――――
○議長(前尾繁三郎君) 委員長の報告を求めます。災害対策特別委員長大原亨君。 ――――――――――――― 〔報告書は本号(二)に掲載〕 ――――――――――――― 〔大原亨君登壇〕
○大原亨君 ただいま議題となりました災害弔慰金の支給及び災害援護資金の貸付けに関する法律案につきまして、災害対策特別委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。 本案は、災害により死亡した者の遺族に対して、弔慰のため市町村が災害弔慰金を支給し、また、災害により世帯主が重傷を負い、または、住居家財に相当程度の損害を受けた世帯の世帯主に対して、生活の立て直しに資するため、災害援護資金を貸し付けることができる制度を講じようとするもので、おもな内容は次のとおりであります。 まず第一は、この法律における「災害」についてであります。 災害とは、暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波その他の異常な自然現象により被害が生ずることをいうこととしております。 第二は、災害弔慰金の支給についてであります。 市町村は、条例によって、政令で定める災害により死亡した住民の遺族に対し五十万円以内の災害弔慰金の支給を行なうことができることといたしております。 その費用の負担割合は、市町村と都道府県がそれぞれ四分の一、国が二分の一といたしております。 第三は、災害援護資金の貸し付けについてであります。 市町村は、その区域内に災害救助法が発動される災害その他の災害により世帯主が療養一カ月程度以上の負傷をし、あるいは住居家財に相当程度の損害を受けた世帯の世帯主に対し、生活の立て直しに資するため、条例により、五十万円を限度として災害援護資金を貸し付けることができることといたしております。 災害援護資金の償還期間は、据え置き期間を含み、十年をこえない範囲内とし、金利につきましては、据え置き期間中は無利子とし、据え置き期間経過後は年三%といたしております。 なお、災害援護資金の原資につきましては、都道府県は市町村に対してその全額を、国は都道府県に対して負担分の三分の二を、それぞれ無利子で貸し付けるものといたしております。 本法律の施行期日は、政令で定める昭和四十九年四月一日以前の日としておりますが、昭和四十八年七月十六日以後に生じた災害から遡及して適用できることといたしております。 本案は、去る八月二十四日参議院より送付、本委員会に付託され、同月三十日提出者参議院災害対策特別委員長から提案理由の説明を聴取し、直ちに採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。 以上、御報告申し上げます。(拍手) ―――――――――――――
○議長(前尾繁三郎君) 採決いたします。 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。 ――――◇――――― 日程第六 外務省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
○議長(前尾繁三郎君) 日程第六、外務省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。 ――――――――――――― 外務省設置法の一部を改正する法律案 〔本号(二)に掲載〕 ―――――――――――――
○議長(前尾繁三郎君) 委員長の報告を求めます。内閣委員長三原朝雄君。 ――――――――――――― 〔報告書は本号(二)に掲載〕 ――――――――――――― 〔三原朝雄君登壇〕
○三原朝雄君 ただいま議題となりました外務省設置法の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。 本案の内容は、わが国の積極的な対アジア外交の推進により事務量の増大しているアジア局に次長一人を置こうとするものであります。 本案は、二月二日本委員会に付託、二月二十二日政府より提案理由の説明を聴取し、慎重審議を行ない、八月三十一日質疑を終了いたしましたところ、加藤委員より、昭和四十八年四月一日としている施行期日を公布の日に改める旨の修正案が提出され、趣旨説明の後、討論もなく、採決の結果、全会一致をもって修正案のとおり修正議決すべきものと決しました。 以上、御報告申し上げます。(拍手)
○議長(前尾繁三郎君) 採決いたします。 本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。 ――――◇――――― 金大中事件に関する緊急質問(谷川和穗君提出) 金大中事件に関する緊急質問(米田東吾君提出) 金大中事件に関する緊急質問(米原昶君提出) 金大中事件に関する緊急質問(沖本泰幸君提出) 金大中事件に関する緊急質問(渡辺武三君提出)
○中山正暉君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。 すなわち、この際、谷川和穗君提出、金大中事件に関する緊急質問、米田東吾君提出、金大中事件に関する緊急質問、米原昶君提出、金大中事件に関する緊急質問、沖本泰幸君提出、金大中事件に関する緊急質問及び渡辺武三君提出、金大中事件に関する緊急質問、以上を順次許可されんことを望みます。
○議長(前尾繁三郎君) 中山正暉君の動議に御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。 まず、谷川和穗君提出、金大中事件に関する緊急質問を許可いたします。谷川和穗君。 〔谷川和穗君登壇〕
○谷川和穗君 私は、自由民主党を代表いたしまして、現在危機的事態に直面いたしておりまする日韓関係について、日韓友好関係を維持することは絶対に必要という立場から、事件の解明を急ぐこと、主権侵犯問題について政府の見解をただすこと、韓国との基本的姿勢などについて、田中総理はじめ関係閣僚にお伺いいたしたいと存じます。 まず最初に、主権侵犯の問題につきお伺いいたします。 去る五日、政府が事件の容疑者として、在日韓国大使館員の任意出頭を求めてから、情勢は大きく変化いたしました。私は率直に、わが国の警察当局の捜査の努力を高く評価いたします。これによって、事件の真相究明に大きく一歩前進したと思うからであります。事件発生以来一カ月、ようやく事件解明の端緒についたという感じがいたします。 しかし、このことを契機に、韓国側が外交特権をたてに、任意出頭の要請を拒否したことは、まことに遺憾なことであります。 韓国政府は、事件発生以来、しばしば捜査に協力することをわが国政府に対して約束し続けてまいったのであります。韓国側のこの姿勢の変化があれば、あるいは事件の真相を明らかにすることは、はなはだむずかしくなるはずであります。この時点で韓国側がにわかに態度を変えたのは、わが国政府の真意がよく伝わっていなかったからではないかと疑うのであります。両国の将来の友好のためにも、この事件は徹底的に究明されねばなりません。そのためにも、協力すべきは協力し合うという、両国の基本的姿勢が絶対に必要かと存じます。努力し続けたのだが、韓国側の態度が変化したということであれば、韓国政府との間に、大所高所から立った意思の疎通を欠いていたのではなかったか。あるいは日本側は、日韓両国の関係にひびを入れさせないことを原則としているのに、韓国側に態度の変化を見た。このことを政府はどうお考えになっておられるのか、お伺いいたしたいのであります。 私は、日韓のこの事態を、ただに事務的レベルのみにまかさず、高い立場から、両国の将来について率直に話し合うため、韓国に対して急ぎ特使を派遣すべき時期に来ていると思うが、どうお考えであるか、お伺いいたしたいと存じます。そして、不幸な両国の間のこの種の事件を将来二度と再び起こさせないためにも、韓国側は、わが国に対し、力強い保証を与えるべきときであると信ずるのであります。 次に、主権侵犯の問題についてお伺いいたします。 政府は、国会において、すでにたびたび主権侵犯について法的解釈に触れてこられました。しかしながら、率直に申しまして、主権侵犯の問題は、素朴な国民感情としてまことに解せない問題と映ると思うのであります。白昼、わが国の首都で事件が発生し、外国の要人が国外に連れ去られる。しかも日本政府の調べでは、大使館の者が事件の有力な容疑者であるという事態となれば、政府が主権侵犯の事例について説明することは、どうもむずかしくてよくわからないというのが率直な国民感情であろうかと存じます。大使館員を容疑者として任意出頭を求めたということは、まさにこの意味で新事態が発生したと言えるのであります。 政府は、この際、次に韓国に対してどう対処していこうとしておられるのかということを明確にされて、国民のこの感情についてこたえなければなりません。さもないと、この問題は、両国国民の間にかえって大きなみぞをつくる問題へと発展するおそれがあると思うのであります。政府のき然たる態度を期待いたします。 事件が発生いたしまして五日、金大中氏がソウルの自宅に姿をあらわして直後、韓国の首相から、田中総理並びに大平外務大臣にあてて親書が届いておると伺います。私は、八月十七日のこの時点における韓国首相の親書は、日韓両国の間のただいまの状況を打開するのにまことに重要な意味を持つものと存じます。 そして、わが国の平和と安全、さらにアジアの将来の繁栄のためにも、朝鮮半島の平和は維持されねばなりません。南北の話し合いが始まろうとしていることは、その意味からもまさに歓迎さるべきことだと信じます。 と同時に、日本と韓国の友好関係も維持さるべきであります。その点で、韓国に対する経済援助も当然進められていくべきことだと存じます。 今回のこの事件を契機に、災いを転じて福となす将来の日韓関係のあり方について、両国の健全な基礎を築くために、さらに新たに再出発の決意をもって取り組む一つの絶好の機会かと存じます。この点につき、大平外務大臣にお尋ねいたしたいと存ずるのであります。 最後に、両国の関係の基本的姿勢について田中総理にお尋ねいたします。 地理的あるいは地政学的、また歴史的、さらに国際環境の中にあって、日韓両国は切っても切れない関係にある隣国であります。この関係は未来永劫に続くのでありまして、この事実を認識すれば、両国の間には、いかに小さな誤解の種でも、あるいはいかに細い相互不信の根でも残すべきではなく、誤解や不信の芽は、両国の政府、両国の国民の努力で常に早期につみ取らねばならないと存じます。 九月十八日から国連総会が始まり、二十五日には、総会議場において大平外務大臣の演説も予定されていると伺っております。当然、この秋の国連総会最大の懸案たる朝鮮半島問題にも触れられることとなると思うのでありますが、日韓両国の間のこの不幸なできごとがどう解決されているか、多くの国々が期待と関心を寄せているところかと存じます。 「よど号」事件が起こったおり、金浦飛行場から再び飛び立って北へ向かうことに絶対反対ということでわきにわいた韓国内世論に対し、人命尊重が第一義、日本政府の責任において行なうということであれば、韓国国土から北朝鮮へ向かうことを許可するという裁断を下した当時の韓国側の努力、日韓両国の間の事件につきましては、私は、日韓両国の間で努力し、日韓両国の責任において解決することが最も望ましいことと存じますが、この点につきまして田中総理の御所信を伺いまして、私の質問を終わります。(拍手) 〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
○内閣総理大臣(田中角榮君) 谷川和穗君にお答えをいたします。 今事件に対する政府の基本姿勢、今回のような問題にもかかわらず、日韓両国は歴史的に見ても非常に深い関係にある、今後の日韓関係のあり方についての基本姿勢はどうかという意味の御質問にまずお答えを申し上げたいと存じます。 今回の事件は、日韓両国にとりまして非常に不幸な事件であり、両国の国民もひとしく憂慮している事件であり、何としても両国民の納得のいく公正な解決をはかりたいと考えておるのであります。 また、今回の事件によりまして、日韓の友好関係をそこなわないようにしたいというのが両国民共通の願望でもあると考えておるのであります。 この両国民の願望にこたえて、本件の公正な解決をはかるためには、まず何よりも事件の真相を解明し、それを踏まえての解決策を探求してまいりたいというのが政府の一貫した方針であります。 ところが、この事件は日本で起きた事件でありますが、日韓両国にまたがる国際的な事件であり、真相解明のためには、どうしても韓国側の協力を必要といたしますので、政府は、これまでも韓国側の協力を求めてまいりましたが、今後も引き続いて求めてまいる所存であります。 本件の真相解明にあたって、これまで韓国側から提供された資料は、まだ十分とは申せません。また、わが国の捜査当局の捜査線上に出てまいりました人物が、本件に関与しておったかどうかについても、残念ながら、両国捜査当局の判断は食い違っておるのが現況であります。しかし、真実は一つしかないと考えます。政府としましては、今後も韓国側の協力を得てその解明にあたり、公正な解決に努力をしてまいるつもりであります。 また、本件について、筋の通った解決をはかりたいと政府が決意をしておりますのは、これらの日韓関係を、対等、平等の独立国間の公正な関係にすることが、日韓の真の友好関係を維持、発展させる基礎だと考えており、この点につきましては、韓国側にも異存はあるまいと考えておるからであります。 われわれは、決して日韓間に存在した過去を忘れておるわけではありません。忘れていないからこそ、今後の両国関係を公正なものにしようと努力をしておるのであります。御了承の上、御協力を願いたいのであります。 日韓両国が歴史的に見ましても非常に深い関係にありましたことは、また、ありますことは御指摘のとおりであります。韓国は、その急速な経済成長において、世界各国の注目の的となっているほか、最近、韓国政府が打ち出した新外交政策は、高く評価をされておるのであります。日韓関係も、このような現状に即応して、一そうの発展を遂げることを心から希望しておるのであります。 なお、御指摘のとおり、日韓両国は長きにわたり友好親善を続けてまいらなければなりません。そのためには、両国の間にいささかのわだかまりもあることは許されませんので、政府は、細心、周到な配慮をしてまいるつもりでございます。 なお、本件に関し、特使を韓国に派遣すべきではないかという御発言でございますが、政府としては、あくまでも真相の究明につとめることを基本としておりますし、御指摘の点につきましては、将来の状況に応じ、慎重に検討することにいたしたいと考えておるのであります。 残余の具体的問題については、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手) 〔国務大臣大平正芳君登壇〕
○国務大臣(大平正芳君) 谷川さんの第一の御質問は、韓国側の協力体制に変化が見られたのではないか、それをどう見るかという意味の御質問でございました。 確かにただい庫真相究明にあたりまして、いま総理が御指摘になりましたように、両国の捜査当局の判断も帰一しておりませんし、今日までもたらされました協力による資料提供、必ずしも十分とは申しかねます。そして、いま真相の究明に大きな壁にぶつかっておることを否定いたしませんけれども、われわれは、韓国の協力体制がこれで大きな変化を見たとは考えていないのでありまして、今後一そうの協力をしんぼう強く求めてまいるつもりであります。 第二に、主権侵犯に触れての御質問がございました。 一般的に申しまして、主権の侵犯と申しますのは、私どもの理解では、一国の法域の中で、他国の公権力がその国の承諾なしに行使される状態を主権の侵犯と申すものと理解いたしております。 今回、この具体的な事件が主権の侵犯になるかどうかということにつきましては、まだ十分な材料を持っていないのでございまして、今日の段階におきまして、直ちにこれが主権の侵犯であるという断案を下すわけにはまいりません。 第三に、この事件に関連いたしまして、わが国の対韓政策、とりわけ経済協力政策あるいは国連における朝鮮問題の討議等をどう考えるかという御質問でございました。 本件は、事態を鋭意究明中でございます。捜査の過程でもあるわけでございまして、この段階におきまして、対韓政策、姿勢を変えるという考えは政府は持っておりません。 第四に、日韓間の問題であるから、あくまでも日韓間の信頼と信義によって解決すべきであるという御提言でございます。 仰せのとおりでございまして、そういう趣旨に沿って鋭意努力してまいるつもりであります。(拍手) ―――――――――――――
○議長(前尾繁三郎君) 次に、米田東吾君提出、金大中事件に関する緊急質問を許可いたします。米田東吾君。 〔米田東吾君登壇〕
○米田東吾君 私は、日本社会党を代表いたしまして、いわゆる金大中氏事件に関しまして、総理大臣、外務大臣に緊急質問をいたします。 本事件発生以来すでに一カ月、総理は、この間、国会への報告も怠り、わが党の要求してまいりました緊急質問を引き延ばしてきました。これは、国会軽視というにはあまりにもひど過ぎます。責任ある政府・与党の態度としては許せません。 あなたは、一方において、自民党の多数をよいことにして国会をほしいままにしてきました。単独採決、強行採決で国民を犠牲にする悪法を通し、会期の再々延長もあえて恥じないあなたが、一方において、これほど国家の主権に関する大事件が、しかも、日本の民主主義と人道が問われている重大な事件が発生しているのに、国民には説明も報告もない、国会は機能しない、これは一体どういうことでありますか。私は、総理に強く抗議するとともに、朴政権をかばい続け、主権と国家をないがしろにしてきた理由をはっきり示されるよう求めるものであります。(拍手) このような一連の政府の態度が、今日、朴政権を増長させているのではありませんか。 韓国政府機関は高姿勢に、事件に関係なしとそらぞらしい声明を繰り返すのみで、事件の究明を行なっておりません。依然として金大中氏の来日を拒否し、被疑者の名のもとに監禁を続け、数度にわたる原状回復と捜査協力の正当な要求を断わり通しているのであります。少なくとも、今日までの朴政権の態度は一片の誠意もなく、全く一方的に国際法、国際慣習を無視して、日本の主権を犯しているのであります。 それは、さきの二度にわたるわが国会審議に対する干渉にもあらわれております。国会が、その権限と責任に基づいて、事件究明と解決に協力するのは当然であります。これを外国政府が批判し、特定の議員、閣僚の名をあげて干渉するとは何ごとですか。(拍手)政府は、直ちにこれを拒否し、厳重抗議すべきであります。政府は、国会の侮辱と内政干渉を許してはなりません。総理の責任ある答弁を求めるものであります。(拍手) さて、私は、まず、本事件が日本の主権侵犯事件であると断ずるものでありますが、総理の見解をお聞きいたします。 すなわち、この事件は、去る八月八日、朴大統領の唯一の政敵である金大中氏を、日本の主権と国内法を犯して、白昼堂々東京のどまん中から韓国のCIAが拉致、誘拐し、暴行迫害を加えて、荷物同様にソウルの自宅に運び込んだおそるべき政治的陰謀事件であります。主権侵犯の事実は、もはや、日本の警察当局の捜査と金大中氏自身のソウルでの記者会見によって明らかにされております。 このような韓国国家機関による直接の主権侵犯事件に、総理はまだ一度も、韓国朴政権に抗議すらいたしておりません。一体あなたは、今日なお、韓国国家機関による主権侵犯を認めようとしないのでありますか。あなたは、朴政権がまず認めなければ日本政府も断定することができないとおっしゃるのでありますか。いまさら公権力云々を持ち出して、これを理由にして右顧左べんすることは許されません。明確なるお答えを求めるものであります。(拍手) 私は、かつて、一九六七年、西独における韓国留学生蒸発事件を想起するものであります。あの事件も、今回と同じく韓国CIAの行なった西独主権侵犯の事件でありました。そして、あのときも韓国政府はがんとして、韓国国家機関が介入していないと否定し続けました。しかし、西独政府のき然たる外交交渉と、経済断交、国交断絶をも辞さない不転退の決意が、ついに、韓国CIAによってなされた真実を明らかにし、全員の原状復帰と西ドイツの主権を守り通して解決を見たのであります。 私は、日本の総理大臣にしてその気概と不転退の決意ありやを聞きたいのであります。重ねて総理の明確なる回答を求める次第であります。(拍手) 次に、私は、総理に、わが国の主権とは何かについて見解を聞きたいと思います。 一体、わが国の主権とは何でありましょうか。また、それはだれに帰結するのでありましょうか。 今日、わが国の主権は、明治憲法時代の天皇主権ではありません。現憲法に明らかなように、国民の主権であります。それは、すなわち、国民の基本的人権を基調とし、国民に帰結するものであります。国民主権のもとでは、日本に滞在する外国人の生活の安全の保障、これは現憲法を守る政府の最小限の義務であります。 明治憲法における天皇主権は侵すことのできない絶対のものとして、時の政府は、あるいは軍閥は、一貫して帝国主義的海外侵略を行なってまいりました。しかし、戦後の平和憲法は、国民主権の憲法に生まれ変わったのであります。 問題は、歴代の自民党政府は、この国民主権を軽んじておるのであります。すなわち、国民の人権と民主主義を侵してきたのであります。日米安保条約とアメリカの基地、これを許しております。沖繩など、数知れない米軍人の犯罪事件がそれであります。そして、今回の金大中事件がそれに続くのであります。 この際、国民主権とは何か、いかにして主権を守るか、総理の基本的な見解を明らかにするよう求める次第であります。(拍手) さて、私は、この事件がなぜ日本に起きたか、総理の認識をお聞きしたいのであります。 今日の日韓両国の甘い蜜月といわれる政治と軍事の一体化、膨大な経済援助とその黒い実態、まさに政経一体の癒着と腐敗にその深い原因があると思うのでありますが、いかがでありますか。 まず第一に、今日の日韓の政治的、軍事的実態はどうなっているのでありましょうか。 一九六五年、わが党と国民の反対にもかかわらず、自民党政府は、朴政権との間に日韓条約を結締いたしました。朝鮮民主主義人民共和国を敵視して、朴政権を朝鮮半島における唯一の合法的政権と認め、以来、日米安保条約と韓国条項の発動、日米韓運命共同体論を展開し、アジアにおける反共防衛の直接のにない手としてあらゆる援助協力を行なってきているのであります。 田中内閣成立以来、この傾向は一そう強まりました。朴軍事政権を強化することが日本の防衛であるとして、去る八月二日の田中・ニクソン会談においては、韓国の平和と安定に進んで協力することが確認され、軍事援助と経済援助をアメリカに肩がわりして飛躍的に高めることも約束されておるのであります。 こうした両国政治の、そして政府間の癒着に事件発生の第一の原因があると思うのでありますが、総理はいかがでございましょうか、答弁を求めます。(拍手) 第二の問題は、経済援助の腐敗であります。 日韓条約以来、有償・無償五億ドルの対韓援助からスタートした日本の経済援助は、政治、軍事の一体化と並行して、全く無原則的に拡大しております。日韓定期閣僚会議はこの無秩序な対韓援助を合法化する道具となり、政府、民間を問わず常軌を逸した援助は、当然利権の疑いを生むのであります。複雑、多様化して、実態をつかむことすらできなくなっておるのであります。 今日、援助総額は十五億八千万ドルといわれ、田中内閣成立以来、これが一挙に急増しているのであります。いまや日本の援助額は世界第一位で、外国援助総額の五八%が日本からの投資であります。本年一月から六月まですでに約三億五百万ドル、これは前年までの約二倍であります。本年度外国資本投資の実に九九%を占めているのであります。 さらに、政府は、九月予定されておりました第七回日韓定期閣僚会議において、総額四億ドルに近い膨大な援助を朴政権強化のために承諾する腹がまえであったともいわれておるのであります。加えて、朴政権の目玉商品、十年間総額五百億ドルを投入するという重化学工業開発十カ年計画に対しても、日本からの援助予定額約百億ドルについて原則的なる了承を与え、日本独占資本の本格的な対韓進出をはかろうといたしておるのであります。 このように、わが国の資本の対韓進出は目に余るものがあるのでありますが、問題は、資金をもっぱら日本に依存して経済成長をやり遂げようとする朴政権の政策が、必然的にこの資金の流れに密着する特権階級を生み出し、激しい内部抗争を巻き起こし、国民の貧困をよそに私欲を満たそうとする暗闘が絶えないことであります。韓国の詩人、金芝河の「五賊」の詩をまつまでもありません。このような朴政権特権階級の抗争と腐敗は、今日、日本の政治経済をも毒していることに、私は注意を喚起しなければならぬと思うのであります。(拍手) すでに周知のように、日本からの韓国投資の何割かは、日本の韓国ロビーといわれる政界、財界にリベートされているとうわさされておるのであります。最近のマスコミはこの間の事情を詳しく報道しております。自民党AA研を除いた各派閥や新しい韓国ロビーといわれるものに多額のリベートが、財界の一部を通して流れているという報道があるのであります。このおそるべき対韓援助の腐敗した実体を粛清することなしにこの事件の真の解決をはかることはなし得ないと思うのであります。 この際、総理に、この事件がなぜ日本に起きたのか、私が指摘した二つの要因について総理の明確なる答弁を求めるものであります。(拍手) さて、この事件はまことに不幸な事態を引き起こしましたが、しかし、この事件解決を契機にいたし新しい日韓関係が展望できるとすれば、日韓両国民にとって不幸中の幸いと申さねばなりません。私は、総理がいまこそ、この事件の教訓に学び、不正常な朴政権を特定した国交のあり方を改め、新しい国民的善隣友好の関係を打ち立てるべきだと思うのであります。 かつて、総理は、朝鮮半島の平和的自主的統一を歓迎すると言われましたが、この際さらに進めてこれを支持し、主権の相互尊重と内政不干渉、平等互恵の正しい国際的原則にのっとり、五千万朝鮮人民の真の平和と繁栄に協力するという大方針を確立すべきと思うのでありますが、総理の御見解を伺いたいのであります。 私は、いまこそ日韓条約を破棄して、日米安保条約の韓国条項を取りやめて、日韓定期閣僚会議を打ち切り、対韓経済援助を断ち切って、南北統一と国民の生活安定に役立つ真の国交関係樹立に転換すべきであると思うのでありますが、あわせて総理の見解をお聞きする次第でございます。(拍手) なお、当面している国連総会に対しては……
○議長(前尾繁三郎君) 米田君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単にお願いします。
○米田東吾君(続) 朴政権一辺倒の政策をやめて、二つの朝鮮固定化に反対し、南北朝鮮民族が熱願している平和的自主的統一を助ける方向に転換すべきであります。少なくとも、わが国主権の侵犯事件を未解決にして、世界のもの笑いになるような、韓国朴政権の国連加盟を支持することはやめなければなりません。この際、総理の見解をお聞きいたします。 ここで、私は、この五日捜査当局が在日韓国大使館金東雲一等書記官の任意出頭を求めたことについて聞きたいのであります。 すでにわが党は、韓国大使館の金在権公使、金東雲書記官、李泰薫書記官並びに神戸領事館の安潤璟館員などが本件に関係ありと見て、政府に強く捜査を進めるよう要求してきたところでありまり。しかるに、相当の捜査の進展があったと聞いているにもかかわらず、内容が明らかにされておりません。
○議長(前尾繁三郎君) 米田君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。
○米田東吾君(続) 今回政府は、ようやく金東雲書記官だけの出頭要求に踏み切ったが、この事件究明に重大なる態度の変更があったのかどうか、理由は何か、お伺いいたします。 私は、政府が引き続き他の三名についても、主権侵犯の容疑を堂々と公開し、出頭要求すべきであると思うのでありますが、どうですか。 さらに、韓国政府は、今日なお、不当にも外交特権を理由にこれを拒否しております。これは当然予想されたことだと思うのでありますけれども、これを打開することなくして主権の回復はあり得ません。この際、外務大臣は、朴政権と直接交渉すべきであります。さらに、外交特権の剥奪、身柄拘束の断固たる措置をとるべきであると思うのでありますが、外務大臣の答弁を求める次第であります。 最後に、この事件の原状回復についてお聞きいたします。 すなわち、金大中氏をすみやかに日本に連れ戻すことについて、あらゆる対策が緊急に必要だと思うのであります。政府は、後宮駐韓大使を召喚し、政府の強い姿勢を示し、金大中氏の来日と筋の通った解決を要求されていると聞いております。しかし、私はすでに指摘したように……
○議長(前尾繁三郎君) 米田君、申し合わせの時間を守ってください。
○米田東吾君(続) 政府が外交の断絶もあり得るというき然たる姿勢が固まらない限り、朴政権によって理解されることはないと思うのであります。一金大中氏は、依然として自由が保障されておりません。被疑者として監禁されております。韓国では、国家保安法、刑訴法等が改正されまして、うそ、うわさ、でっち上げでも起訴ができます。裁判ができるのです。かりに、金大中氏が再来日できるとしても、伝えられているような条件づきでは全くナンセンスであります。これは原状回復ではありません。したがって、金大中氏の来日はあくまで、いかなる条件もなく、自由は保障されなければならぬと思うのであります。来日後の金大中氏の行動もまた本人の自由意思できめられるべきで、日本政府として、国際法の原則、国内法の正しい適用によって保障させねばなりません。 以上、原状回復について基本的な考えを質問いたしましたが、外務大臣の明確な答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手) 〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
○内閣総理大臣(田中角榮君) 米田東吾君にお答えをいたします。 まず第一は、本件発生以来、国会への報告を怠り、韓国政府への気がね外交に終始をしてきた、韓国政府の内政干渉を許してきたという趣旨の御発言でございますが、政府は、あくまでも真相究明を旨とし、内外に納得のいく公正な解決をはかることを基本として、この問題に対処をしてきたのであります。九月五日金東雲一等書記官の任意出頭を要請したのも、かかる方針に沿ったのであります。また、韓国政府によるわが国に対する内政干渉は考えられないことであります。 次は、今度の事件はわが主権の侵犯であり、対韓政策の誤りに原因があるのではないかというような趣旨の御発言でございますし、対韓経済援助も有効に利用されておらない旨の発言でございますが、現在捜査中の段階でありますので、現時点では主権侵害があったと断定することはできません。本事件の真相を究明し、公正な解決をはからなければなりませんが、同時に、韓国はわが国の隣国であり、友好な関係の維持増進につとめなければなりません。わが国の対韓援助は、民生の向上と国民経済の均衡ある発展に貢献しようとするものでありまして、一部の者が利益を得ているようなことはありません。 わが国の主権とは何かという意味の御発言でございますが、国家が主権を有する結果として、他国は、その国の同意なくして、その領域内においてみずからの公権力の行使を行なうことは認められないことは申すまでもありません。もしかかる公権力の行使が現実に行なわれれば、これは主権の侵害であると考えられるものであります。 問題は、今後の新しい日韓関係をどうするか、日韓関係及び対韓経済援助の打ち切りのような問題に対しての御発言がございましたが、政府は、事件の真相を究明し、内外に納得のいく解決をはかることを基本方針といたしておることは、間々申し上げておるとおりであります。政府は、韓国との友好関係の維持を不可欠と考えており、対韓基本政策を変更する考えはありません。わが国の対韓経済援助は、韓国の民生の安定のために行なっておるものでございまして、特定の政権の擁護のために行なっておるものではありません。(拍手) 国連は平和的手段により、朝鮮の統一と同地域における国際の平和と安全の完全回復をはかることを目的として活動しておることは御承知のとおりでございます。本年の国連総会における朝鮮問題に対しても、かかる観点より各国と協議しつつ検討してまいりたいと思います。 残余の質問は、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手) 〔国務大臣大平正芳君登壇〕
○国務大臣(大平正芳君) 私に対する御質問は、この段階でわが国のとるべき外交的措置はどうかという趣旨の御質問であったと思います。 本件の処理は、総理が申し上げましたとおり事態の解明を通じて公正な解決をはかるということでございまして、そのことのためにいま鋭意努力中であるわけでございます。外交的処理は、事態の解明を踏まえた上でやらないといけないと私は考えておるわけでございます。私は、事態の解明が進みまして、わが国が国際的立場におきまして当然なすべき外交的措置はとるべきものと思いますけれども、これは解明を待った上で行ないたいと考えております。 問題は、その解明の程度がどういう程度に達したときに行なうかということに現実にはなろうかと思いますけれども、いまの段階でこれを展望することはたいへんむずかしいわけでございまして、しばらく事態の推移、捜査状況、捜査の発展を見守りたいと考えております。(拍手) ―――――――――――――
○議長(前尾繁三郎君) 次に、米原昶君提出、金大中事件に関する緊急質問を許可いたします。米原昶君。 〔議長退席、副議長着席〕 〔米原昶君登壇〕
○米原昶君 私は、日本共産党・革新共同を代表して、金大中事件と政府の朝鮮政策について質問いたします。 韓国元大統領候補金大中氏の暴力的拉致事件が、朴政権の悪名高い謀略機関KCIAの犯行であることは、国際的にも公然の秘密であります。そして、このことを裏づける事実は枚挙にいとまがありません。 金大中氏の拉致の目的が、氏の海外での独裁政治反対の政治活動封殺にあったと見られること、氏が朴政権によって自由を奪われ、被疑者として扱われていること、日本からの密出国や戒厳令下の韓国への入国が容易に行なわれたこと、特に韓国内で特別の活動の便宜を持った大規模な謀略組織の関与なしには実行できない犯罪であること、さらにKCIAが西ドイツその他で同じような犯罪を犯していること、そのKCIA機関員が事件前後にあわただしく来日していること及び駐日韓国大使館員が事件に直接関与している事実が明白になっていること、これらの事実は、この事件が韓国国家機関であるKCIAによる組織的、計画的拉致事件であり、わが国の主権を侵害するものであることを明白に証明しております。(拍手) 外務大臣は、先ほども、韓国大使館員の事件関与が主権侵害になるかどうかは、公権力の行使として行なわれたかどうかによるとの見解を明らかにしました。しかし、事件が公権力の行使としてしか実行できないものであることは、犯行の規模、態様、関係者が、金東雲のみならず、広く韓国の国家機関の中に広がっていることなど、数々の情況証拠によっていまや明らかであるといわねばなりません。(拍手) 外務大臣の発言は、この冷厳な事実に故意に目をつぶるものであります。それは韓国政府による主権侵害行為を免罪するための議論であり、国民を欺瞞するもはなはだしいものであるといわなければなりません。(拍手) このような立場に立つならば、主権侵害になるかどうかは、主として韓国側が認めるかどうかにかかるということになり、金大中氏の再来日を強力に要求することもできないし、事件迷宮入りの道をつくることになります。 しかも、韓国側は、金東雲を事件に関係がないと言うなど、挑戦的な態度をとっております。日本政府のこれまでのような態度では、わが国の主権を守ることができないのは明白であります。この点について、総理並びに外務大臣の明確な見解を求めます。 さらに、私は、本件の真相を究明するために、政府がこれまでの態度を改め、主権侵害の立場を明確にし、原状回復のため、金大中氏の無条件再来日を断固として要求すべきである、また、金東雲ら事件関係者の出頭を求めるために、強力な外交措置をとるべきであると考えますが、総理並びに外務大臣、これをどのように実現させるつもりか、その所信を伺います。 次に、私は、KCIAに対する政府の態度について質問します。 もともとKCIAは、韓国の中央情報部に関する法律によれば、所在地、定員、予算、決算などを非公開にすることが定められ、国会への資料提出、証言、答弁を拒否することができます。さらに、国家保安法、反共法に規定する反政府的な言動を犯罪として捜査する警察権をも有し、自国内だけではなく、国外においても活動することが規定されております。KCIAは単なる情報機関ではなく、強制捜査権を持っており、日本国内においても主権侵害行為を平然とやってのける謀略諜報機関であります。 このような機関の活動は、日本国憲法により外国人にも保障されている思想、言論などの自由を侵すものであり、決して許されるものではありません。 私は、総理に対し、今日なおわが国におけるKCIAの実態を調査せず、国会に報告もしていないことについての責任を追及し、KCIAのわが国における活動の全内容を明らかにするよう要求するものであります。(拍手) 同時に、KCIAの日本国内における活動を一切禁止することを韓国政府に要求し、外交特権を持つ者を含めてすべてのKCIA部員の国外退去を命ずべきであると考えますが、総理並びに関係大臣の明確な答弁を求めます。(拍手) また、この際、朴政権の暗黒支配をささえるKCIAと車の両輪のごとく活動を続けている国際勝共連合について質問します。 国際勝共連合は、日本名を西川勝と名のる元特務機関員崔翔翼によって韓国より日本へ輸入されたものであります。その活動は、反共デマ宣伝から謀略テロ行為にまで及んでおります。これは合法的な政治活動とは無縁であり、憲法の根幹をなす民主主義の原理と両立し得ないものであります。 勝共連合は、わが日本共産党、宮本委員長が熊本で襲撃された前夜、公然とテロをそそのかす演説会を開催しておりました。これらの活動は、田中法務大臣が法務委員会で認めたように、まさに目に余るものであります。政府は、このような日韓を結ぶ国際的な謀略組織の不法な活動をきびしく規制する考えはないのか、総理並びに関係大臣の答弁を求めます。(拍手) 次に、私は、金大中事件と関連して日本政府の朝鮮政策の誤りをきびしく指摘し、その根本的転換について質問します。 第一に、金大中事件は、軍事クーデターによって成立した朴政権がその権力を維持するために、戦前の日本の治安維持法をも上回る弾圧死刑立法である反共法や国家保安法などで南朝鮮人民の民主主義と自由を圧殺した暗黒政治、軍事独裁政権であるという実態を、だれの目にも明らかにしているのであります。 田中総理、あなたは今国会冒頭の施政方針演説で、わが国と同じ自由と民主主義を奉ずる諸国との友好関係の維持を強調しましたが、韓国の今日の実態がこれでも自由と民主主義を奉ずる諸国の中に入ると考えていられるのかどうか、明確に答弁されることを求めます。(拍手) 第二に、政府は、クーデターによって成立した朴政権を朝鮮半島における唯一合法的政府と規定し、朝鮮民主主義人民共和国を否認し、この虚構の上に日韓条約を結びました。さらに一九六九年の佐藤・ニクソン共同声明で、韓国の安全を日本の安全と同一視し、さらにことしの田中・ニクソン共同声明でも、この韓国条項の立場を貫いております。これは朴独裁政権を守るためのものであることは明らかであります。したがって、日韓条約や日米共同声明の韓国条項は当然廃棄すべきであると考えますが、総理の所信を伺います。 第三は、日本政府の韓国に対するいわゆる経済援助の問題についてであります。日韓条約締結以後だけをとってみましても、有償、無償合わせて約三億八千七百万ドルの経済援助を、朴軍事独裁政権のてこ入れのためにつぎ込んできました。こうした日本の援助は、低賃金労働者と公害規制のない、そういう土地を求める日本独占資本の経済侵略の先導をしているものであり、朝鮮両国人民の友好をはばむものであるといわなければなりません。 政府は、この際、経済援助を即刻打ち切るべきだと考えますが、総理並びに関係大臣の答弁を求めます。 第四は、朝鮮民主主義人民共和国との経済的及び人的な交流への一切の不当な制限や、国籍を理由にした在日朝鮮人への不当な差別を直ちに撤廃し、平和五原則に基づく国交樹立を目ざして朝鮮民主主義人民共和国との国交交渉を直ちに開始すべきであると考えますが、総理にその考えがあるかどうか、答弁を求めます。(拍手) 最後に、この秋の国連総会での朝鮮問題に臨む政府の態度について伺いたい。 政府は、これまでの米軍の駐留、韓国軍の強化を前提に、南北朝鮮の分断固定化をはかるアメリカ政府や朴政権の各種の策略にくみしてきました。もし、真に南北朝鮮の自主的、平和的統一を願うというならば、その最大の障害となっている米軍の南朝鮮からの撤退こそ実現すべきであります。(拍手) 政府は、来たるべき国連総会において、在韓国連軍の即時撤退を主張する意思があるかどうか、総理の明確な答弁を求めます。 以上、私は、金大中事件の真相究明を徹底的に行なうこと、日本の主権の擁護にはいかなる妥協も許されないこと、政府の朝鮮政策は根本的に転換しなければならないことをあらためて強調して、質問を終わります。(拍手) 〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
○内閣総理大臣(田中角榮君) 米原昶君にお答えをいたします。 第一は、主権侵害の問題でございますが、先ほども申し述べましたとおり、現在捜査中の段階でありますので、現時点で主権の侵害があったと断定することはできません。 第二は、真相究明の問題でございますが、政府としては、従来より表明いたしておりますとおり、事件の真相を究明し、公正に筋の通った解決をはかるとの基本方針に変わりはありません。 第三は、KCIA部員、勝共連合について申し上げますが、現在の段階において、本事件にKCIAが組織的な犯行として関係をしておるかどうかということは、全くわからないのであります。金東雲一等書記官がKCIAのメンバーであるという事実をも確認をしていないのでございます。そういう意味で、KCIA部員を国外に追放せよというような問題については考えておりません。 国際勝共連合につきましても、他の団体におけると同様、破壊活動防止法の適用を受ける場合以外は、団体の主義、主張のゆえをもってこれを規制することは、憲法上許されないものと考えておるのであります。 第四は、韓国は自由と民主主義を奉ずる諸国の中に入るかどうかという問題でございますが、韓国は自由と民主主義を基本目標とした国であると認識をいたしておるのであります。 それから次は、日韓条約についてでございますが、政府としては、韓国との友好関係の維持、発展を基本としており、日韓条約を廃棄するというようなことは全く考えておりません。韓国条項と本事件は関係のないことであります。 経済援助につきましては、三千三百万韓国民の福祉と繁栄を目ざすために協力をすべきでないとの御意見には遺憾ながらくみし得ません。 北朝鮮との交流は、漸次拡大の方向で対処をしておるのであります。 在日朝鮮人の処遇につきましては、何ら不当な差別はいたしておりません。 最後に、国連の問題について申し上げますと、政府としては、韓国、北朝鮮両国民の願望である朝鮮統一が一日も早く平和的に達成をされ、国連の目的である国際の平和と安全が確保されることを希望いたしておりまして、国連における朝鮮問題にはこのような考え方で対処をしてまいりたいと考えます。(拍手) 〔国務大臣田中伊三次君登壇〕
○国務大臣(田中伊三次君) 私に対するお尋ねは、朝鮮民主主義共和国を大韓民国と比べて差別をしておるではないかというお尋ねであります。 これは申し上げるまでもありませんが、韓国はわが国との関係は承認の関係で、北鮮の関係は非承認の関係でございます。非承認の国を承認の国と全く区別をせずに扱えよというお説自体に無理がある。しかしながら、朝鮮民主主義人民共和国といえども、わが国の利益に反せざる限りは、総理の仰せのごとくに極力これを迎えるという態度をとってきておること、御承知のとおりでありまして、過去の数個の例によりましてなるほどということはおわかりをいただくはずでございます。今後もこの方針をとっていく考えでございます。(拍手) 〔国務大臣大平正芳君登壇〕
○国務大臣(大平正芳君) 総理大臣から大部分御答弁がございました。 ただ一点、今度の国連総会におきまして、朝鮮政策に関連して在韓米軍の撤退を求める意思があるかというお尋ねでございましたが、そういう意思はございません。(拍手) 〔国務大臣中曽根康弘君登壇〕
○国務大臣(中曽根康弘君) 韓国と友好親善を維持し、隣国の民生と福祉の向上に協力したいというのは、日本国民の念願であります。これは現在といえども変わっていないと思います。また、独立国家としての日本の尊厳を維持するということは、われわれ政府当局の国民に対する大きな責任であると思います。 問題は、主権侵害の事実があったかどうかということがまず第一であります。しかし、主権侵害の事実の有無がいまだ明瞭に解明されない今日、援助打ち切り云々ということは適当でないと考えます。(拍手) 〔国務大臣江崎真澄君登壇〕
○国務大臣(江崎真澄君) 今回の事犯がいわゆるKCIAの組織的な犯行であるかどうか、この究明は今後の問題であります。また、金東雲の所属しかりでありまして、今後、鋭意真相究明に努力してまいる決意であります。 政府は、外国のいかなる団体、いかなる組織といえども、日本国内で違法行為を行なうものは断じて許さないというき然たる態度で、今後も厳正公平に取り締まりを行なってまいる考えであります。 御指摘のありました国際勝共連合は、主として反共政治活動を行なっておる団体であります。しかし、今日までのところ、これが暴力的破壊活動を行なう団体とは認められません。そこで、集会、結社、表現の自由を保障しておりまする憲法の精神からいたしましても、その活動を規制することは適当でないというふうに考えております。(拍手) ―――――――――――――
○副議長(秋田大助君) 次に、沖本泰幸君提出、金大中事件に関する緊急質問を許可いたします。沖本泰幸君。 〔沖本泰幸君登壇〕
○沖本泰幸君 私は、公明党を代表いたしまして、金大中事件に関し、田中総理並びに関係閣僚に質問を行ないます。 今回の金大中氏事件について、過日在日大使館員である金東雲一等書記官が事件に直接関係していた事実が警察当局から明らかにされ、このことによって、全く新しい局面を迎えるとともに、きわめて重大な事態を迎えたのであります。 さらに、金東雲一等書記官以外にも韓国大使館関係者が関係していることも同時に明らかにされたのでありますが、このことは、明らかにわが国の主権が韓国政府によって侵害されたものとしなければならないと存ずるものであります。 今回の事件は、決してあいまいにされたり、日韓両国政府間において安易な、妥協的解決がなされてはならないことは言うまでもありません。私は、国民が納得できる解決をはかることが何よりも必要であり、そのことこそが政府の重大な責任であると思うのであります。 まず第一に、田中総理は、今回の事件をどう認識しておられるのか、基本的なわが国の態度を明らかにしていただきたいのであります。特に、総理はじめ政府がわが国の主権が侵害されたという立場と認識を明確にして対処することを基本としなければならないと思うのでありますが、総理の認識を示していただきたいのであります。 また、これまでの報道等によりますと、日本側としての捜査がある程度進展し、今回の金東雲書記官が関係していた事実も明らかにされたのでありますが、警察庁はじめ捜査当局より、今日までの捜査に基づき、今回の事件の全貌と今後の見通しをお伺いしたいと思うのであります。 事件発生以来、わが国政府のこの事件に取り組む姿勢は、きわめて多くの疑惑が持たれてきているにもかかわらず、ただひたすら日韓関係をそこなわないということが先に立ち、事件の重要性に対する認識が欠けていたことは明らかであるといわなければなりません。(拍手) すでにこの事件は、韓国政府関係者が関与しており、韓国のわが国に対する主権侵害であることは明らかな事実でありますが、こうした事態となった今日、政府のとるべき外交措置は何か、具体的に示していただきたいのであります。 すでに本院における外務委員会でも、外務省条約局長が、たとえ国家機関の職員が個人の資格で犯罪を犯しても、国家としての責任は免れない旨を明らかにし、法務大臣も同趣旨の答弁をしておられますが、ここで再び確認の意味で、総理よりこの点について答弁を伺っておきたいと思うのであります。(拍手)当然、この見解に立つ限り、在日韓国大使館員が関係していることからすれば、韓国政府が、国家として日本に対して責任を負うことは明らかであります。 事件発生以来の経過をたどっても、韓国政府のとってきた態度は何一つとして誠意ある答えを示していないことはきわめて遺憾であるといわなければなりません。 昨日の金東雲一等書記官の引き渡し要求に対して、事件に関係していないと一方的に拒否をしてきた韓国政府の態度は、今後の事件の解決に対して応ずることのない強い姿勢を示すもので、看過することのできない重大な問題であります。 この重大事態にあるとき、わが国政府は重大決意のもとに韓国の国家責任を追求すべきであると思うのであります。 今回の事件の動向は、日韓両国関係にとどまらず、わが国外交の主体性、さらには国際的影響など、きわめて大きな影響を及ぼすものであります。 私は、次の諸点について総理並びに関係大臣の的確な所信を承りたいのであります。 その第一は、今回の事件について八月八日、すなわち事件当日以前の状態に戻すべきこと、特に金大中氏の無条件来日をあくまで実現すべきであります。この原状回復について政府はいかなる処置をとるか。 第二に、事件に関係したことが明らかになった金東雲一等書記官の国外追放、外交官としての受け入れ拒否の措置を直ちにとるべきであります。たとえ在日していなくても、これは手続上とるのが当然であります。政府はその用意があるかどうか。 第三には、韓国に対して、主権侵害行為という重大問題について厳重な抗議を行なうとともに、公式の陳謝を要求すべきであると思うが、その決意はあるかどうか。 昨日の参議院外務委員会において、わが党の黒柳議員の質問に対して、外務大臣は、公権力が働いたかどうかわからないから、主権侵害の断定はしにくいと答えておられましたが、韓国政府の、金東雲一等書記官は事件に関係していないと拒否をしてきた事実に対して、金東雲一等書記官をわが国の警察権では取り調べられない事態となった現段階においては、現在つかんでおる確証に従って、公権力が働いたと断定する以外に、事件解決の前進は得られないではありませんか。この点について納得のいく答えを承りたい。 第四に、今回の事件の犯人が韓国におる場合、すなわち、金東雲一等書記官以外の犯人が判明した場合も含めて、犯人の引き渡し要求を行なうかどうか。 第五に、日韓閣僚会議の無期延期をこの際明らかにすべきと思うが、そのつもりはあるのかどうか。また、この問題が解決されるまで、韓国に対するすべての経済援助停止を明らかにすることが必要ではないか。 第六に、国連における朝鮮問題討議に対して、日本が参加しないことを明確にすべきではないか。 以上の諸点について明確な答弁を承りたいのであります。 今日の朴政権の実情を見るときに、その体質は、さきのアメリカ調査団が上院外交委員会委員長フルブライト氏にあてた調査報告にも示されておりますように、きわめて反民主的な政権であるといわれております。韓国とわが国が友好という名前の無原則な関係を続けていくことは、必ずしも将来における日韓関係あるいはアジアの平和に寄与するものとはいえないのであります。わが国が真に平和主義を貫き、近隣友好関係を確保することを国是とするならば、このような韓国に事実上てこ入れしているような無原則、無制限な経済援助をはじめとする日韓関係は、根本的に改めなければなりません。政府はその考えがあるかどうか、明確にしていただきたい。 政府・自民党の今日までの朝鮮政策は、一貫して韓国一辺倒、朝鮮民主主義人民共和国敵視姿勢をとり続けてきたことは事実であります。 国連における不当な決議を唯一の根拠として日韓条約を締結し、さらに佐藤・ニクソン共同声明でいわゆる韓国条項を盛り込むなど、あらためてここで指摘するまでもありません。 今回の事件に関連して、政府は、事件は事件、日韓関係は変わらないということを盛んに述べておられるが、こうした政府の朝鮮政策は、朝鮮半島の緊張をかえって高め、さらに朝鮮民族の積年の悲願である平和的統一を妨害するものであることは言うまでもありません。 政府は、日朝国交正常化の早期実現についても、現に二つの政権が存在することを率直に認め、差別政策を改め、双方と等距離政策をとるような、根本的な政策転換をすべきであることを強く要求いたします。 先ほどからの総理の御答弁を伺っておりますと、あとになるほどだんだんと御答弁が粗略になり、わかりにくいようなお答えが多いと思います。はっきりとしたお答えを承りたい、このことを要求いたしまして、質問を終わります。(拍手) 〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
○内閣総理大臣(田中角榮君) 沖本泰幸君にお答えをいたします。 第一は、今回の事件に対する認識と基本的なわが国の態度についてでございますが、先ほども申し述べましたように、政府としましては、あくまでも真相の究明を旨とし、内外に納得のいく公正な解決をはかることを基本としてこの問題に対処いたしておるのであります。今後とも韓国側の協力を得てさらに真相究明の努力を続けますが、日韓両国の友好関係を基本的にこわすことのないよう配慮することも必要である、こう考えております。 また、金大中氏の来日の問題については、政府は真相究明のために来日を要請しておりますことは、御承知のとおりでございます。 また、主権侵害についてという御発言でございますが、事件は現在捜査中でございまして、いまの段階では主権侵害があったということを前提にして抗議をし、陳謝を要求することは考えられないのでございます。 犯人が韓国にいる場合にはどうするのかということでございますが、政府として引き渡しの要求を行なうかどうかは、今後事件の真相を見きわめた上で検討したいと考えております。 それから次は、政府は韓国政府に対する無原則、無制限の政策を改めるべきであるというような御発言でございましたが、日韓両国は一衣帯水の地にあり、両国間の友好関係は、朝鮮半島、ひいてはアジアの平和のために緊要であります。わが国の対韓援助は、韓国の民生安定と国民経済の均衡ある発展に貢献することを目的としております。わが国の対韓援助は、無原則に行なわれているものではありません。また、特定の政権のてこ入れを目ざしておるものでもないことは、申すまでもないことでございます。 残余の問題に対しては、関係大臣から答弁をいたします。(拍手) 〔国務大臣田中伊三次君登壇〕
○国務大臣(田中伊三次君) 国家の公権力がわが国内で作用した、この場合に責任があるということが問題でございますが、国家機関である場合は、それが上層部であろうが末端部であろうが区別はない、いやしくも国家機関が介在しております以上は国家にその責任がある。また、もう一つは、国家権力それ自体が介在をしておらぬけれども、一般論でありますが、そうではないけれども、国家権力が個人を手先に使って行動をとりました場合も、手先に使ったその国家に責任がある、こういう解釈を委員会において詳しく説明をしておるところでございます。(拍手) 〔国務大臣大平正芳君登壇〕
○国務大臣(大平正芳君) 原状回復も含めましての外交的措置についての御質問がございました。 原状回復論は、申すまでもなく主権の侵犯とのかかわり合いを持っておるわけでございまして、それとの関連において出てくる問題であると承知いたしておるわけでございます。すでに御説明申し上げておりますように、主権侵犯の事実がまだ解明されていない現状でございますので、また、こういう外交的措置についていま論及するのはその段階でないと私は考えております。 主権にかかわる案件であるかどうかという解明につきましては、御案内のように、現状は大きな壁にぶつかっておりまして、むずかしい局面になっております。これはむずかしい局面ではございますけれども、いま総理が仰せになりましたように、あくまでもその打開につとめてまいるのが今日の時点における私どもの責任であると考えております。 したがいまして、そういう段階におきまして、閣僚会議の無期延期でございますとか、援助政策の再検討であるとか、あるいは国連に対する態度について再検討するということは考えていないわけでございます。 北鮮との国交正常化の問題でございますけれども、わが国といたしましては、漸次接触の拡大をいたしておることは事実でございますけれども、北鮮との間に国交を結ぶということにつきましては、目下のところ考えておりません。(拍手) 〔国務大臣江崎真澄君登壇〕
○国務大臣(江崎真澄君) お答えを申し上げます。 事件の全貌について示せということでありまするが、これはまだ残念ながら全貌は明らかになっておりません。経過については御承知のとおりであります。 警察といたしましては、今後もじみちに着実に基本捜査を続けてまいる決意であります。被害者である金大中氏の身柄がない、また、その目撃者であった梁一東、金敬仁氏がやはり身柄がないというようなことで、非常に捜査は難航をしておりまするが、きわめて容疑濃厚であるいわゆる金東雲一等書記官の任意出頭、これを求めておるわけであります。 したがって、私どもは既定方針どおり、この四者を何とかして身柄を日本にもらうということによって、その背後関係や真相究明をねばり強く精力的に続けてまいりたいと考えております。(拍手) ―――――――――――――
○副議長(秋田大助君) 次に、渡辺武三君提出、金大中事件に関する緊急質問を許可いたします。渡辺武三君。 〔渡辺武三君登壇〕
○渡辺武三君 私は、去る八月二十日から三日間、わが党春日委員長を団長とする韓国調査団の一員として、事件発生後の韓国を訪問し、朴大統領をはじめ、金国務総理、政府の要人並びに各界の韓国国民の方々と、金大中氏事件について率直に話し合ってまいりました。この際、これらの経緯を踏まえて、総理並びに関係閣僚に対し、民社党を代表して緊急質問を行なわんとするものであります。(拍手) 今回の金大中氏強制連行が、わが国の首都東京のまん中で白昼公然と行なわれ、世界で最も優秀といわれておる日本警察の追及をしり目に、何者かの手によってゆうゆうと国外に連れ去られ、ソウル市内の自宅に連れ戻された事件は、思想、信条、行動の自由を保障する民主主義社会に対する重大な挑戦であり、言語道断の暴挙といわざるを得ません。(拍手) しかも、この事件が韓国人によって引き起こされ、政府機関は関与していないとの韓国政府の再三の言明にもかかわらず、駐日韓国大使館員金東雲一等書記官が犯行に直接関与していた疑いが濃厚となったことは、これまでの韓国政府筋の言明をくつがえす新事実の発生であり、このことは明らかにわが国の主権侵害を立証するものと思われるが、この点に対する総理の御見解をまずお伺いを申し上げます。(拍手) そこで、金東雲氏の問題について、具体的に政府の今後の措置についてただしたいと存じます。 その第一は、政府が金東雲氏に対し任意出頭を要求した根拠についてであります。新聞報道等では金氏を直接犯行の当事者と報じておりますが、それを裏づける根拠を政府としてお示しをいただきたい。 その第二は、韓国側は、この日本政府の要求に対し、李大使の回答という形でこれを拒否いたしました。そして、伝えられるところによれば、金氏はすでにソウルにいるといわれております。もし金氏が直接犯行の当事者であるとするならば、今回の事件の被害者も加害者も、ともに韓国に脱出し、日本の捜査はこの点で完全に壁にぶつかったと申さねばなりません。この金東雲氏の出頭について、今後具体的にどのような措置をとられる方針か、また、出頭に応じない場合、国外退去を命ずる等、外交官として認めない措置をとる考えがあるか、明らかにされたいのであります。 その第三は、大平外務大臣の記者会見談話によれば、事件関係者は他に数人あると述べられておりますが、これまでの政府の調査において、金東雲氏以外に韓国政府関係者がいるとみなされているのかいなか、この際、その事実関係を明らかにしていただきたいのであります。 言うまでもなく、金東雲氏が本事件に明確にかかわり合いを持つ場合には、わが国の主権侵害は明白なものとなります。したがって、政府としては、国家の威信にかけて何らかの措置をとる必要が生ずるが、この段階で韓国政府に対する抗議声明ないしは謝罪要求等の措置をとる考えはないか。 以上の諸点について政府の具体的見解を承りたい。 なお、私が訪韓中、韓国国民の一部の見解には、事件発生直後の日本政府の優柔不断な態度に疑問を持ち、白昼公然と起きた金大中強制連行事件が、日本警察の厳重なる追及の手をのがれて、一回の職務質問を受けることなく、相当な長距離を走行し、無事に国外に脱出したことに対する多大の疑問を抱いておりました。そして、日本の警察がそれほど無力であるとはどうしても信じがたいと強調をし、さらには、事件の直接の目撃者であり最重要参考人である梁一東氏を、たとえ国際法上の問題はあるにせよ、あまりにも安易に帰国させてしまったことに対する強い疑いを持ち、本事件の捜査に対する日本警察の行動に対してさまざまな批判を加えておりました。この点、総理並びに国家公安委員長はどのように説明をなされるのでありましょうか。 最近、韓国CIAの諸外国における不当な活動は、国際的にも問題視されていることは周知のとおりであります。 六年前の夏、西ドイツで起きた留学生の不法連行事件、さらには、去る六月米国で起きた在米韓国公報館長の亡命事件等、いずれもKCIAの関与していたことが判明しており、西ドイツもアメリカも、民主主義国家として、それぞれみずからの国家主権と政治的自由を守る上でき然たる態度と行動をとったことは御存じのとおりであります。 そこで、いま世界の国々が注目をいたしておりますのは、今回の金大中事件について、わが国政府がどのような態度を貫くかということであります。 それは、わが国にとってまさに民主主義制度と国家主権のあり方を問われる試金石であると言っても過言ではないでしょう。したがって、今回の事件を万が一にもうやむやな形で片づけるということになれば、わが国が国家としての威信を傷つけ、将来に大きな禍根を残すことは明らかであります。 わが党は、以上の基本的な見地に立って、春日委員長より朴大統領並びに金総理に対し直接要請をいたしてまいりました。 その内容は、この事件が日本の国内、しかも首都で発生をした事件であること、この事件に関する捜査権は当然日本側にあること、それは日本の国家主権の本質にかかわる問題であること、事件の取り扱いを誤るならば、今後の日韓関係に重大な障害をもたらす危険があること等を力説し、金大中氏をすみやかに再来日させ、日本側の捜査に協力するよう強く求めてまいりました。 このわれわれの要求に対しまして、韓国側は、直ちに緊急閣議を開いて検討したようでありますが、結果的には目下捜査中であるということを主たる理由として拒否回答をいたしてまいりました。 われわれがこの折衝を通じまして感じましたことは、わが国と韓国では、この事件に対する基本的な認識の違いがあまりにも大き過ぎるということであります。 そこでお伺いをいたしますが、政府は、金大中氏の再来日について、韓国政府が事実上拒否の状態を続けておる現状において、今後これをどのようにして実現するつもりか、この際、そのめどをお示し願いたい。さらには、韓国と日本との認識のギャップを埋めるために具体的な方策をお考えであれば、お示しを願いたい。 なお、政府がさきに延期を決定した日韓定期閣僚会議は、この際、無期延期にすべきであると考えるが、政府の考えをお聞かせ願いたい。 さらに、金氏等の再来日が万一実現しない場合、わが国としていかなる態度をおとりになるのか、あわせてお伺いをいたします。 次に、お伺いをいたしたいのは、わが党春日委員長の要求に対する韓国側の中間報告についてであります。 われわれは、韓国において金大中氏の再来日を強く求めるとともに、この際、日本国民が納得のできる事件の中間発表を早急に行なうよう求めてまいりました。しかるに、韓国側が、民社党春日委員長にお約束をした事件の中間報告と称して日本大使館に手渡された報告は、われわれが要求していた中間報告とは大きな開きがあり、今日なお事件の全貌が明らかにされていないことはきわめて遺憾であります。 政府は、この際、あらためて韓国政府に対し、さきの十項目を中心に、今回の事件の全貌報告と容疑者の出頭を強く要求すべきであると考えますが、総理の御所見を承りたい。 次の質問は、わが国の主権侵害が明確になった場合のわが国のとるべき態度についてであります。 そこで、問題点の一つは、国家主権の侵害とは具体的にどのようなケースをさすのかということであります。さきの本院における委員会質疑で田中法務大臣は、一般論としては、国家機関が金を出し、命令して一定の機関にやらせたとしたら、機関の上層部、末端部分を問わず主権の侵害だと述べておられますが、これがいまの政府の統一見解であるかいなか、まずこの点から明らかにしていただきたいと思います。 次に問題となるのは、それではこのような主権の侵害があった場合、わが国としてどのような態度をとるかであります。 さきに述べた西ドイツにおける韓国人留学生の蒸発事件に対し、当時の西ドイツ政府は、国家主権の尊厳を守るために、筋の通った、しかも強硬な態度をとったことは周知のとおりであります。すなわち、KCIA部員と見られた韓国大使館員三名が国外退去を命ぜられ、大使は辞任し、西ドイツが韓国に対して行なっていた経済援助が中止され、さらにワシントンで開かれた世界銀行の対韓援助グループ会議を西ドイツがボイコットするなど、一連の強硬措置がとられたのであります。 西ドイツと韓国の関係と、わが国と韓国の関係は、歴史的、地理的に大きな違いがありますが、国家主権の尊厳を守るという点では、いささかも変わるものではありません。(拍手)日韓両国の友好親善を守るという美名に隠れて、国家主権の尊厳がそこなわれることのないよう、西ドイツがとったような断固たる措置が必要だと考えますが、総理の御見解を承りたいのであります。 次にお伺いをしたいのは、今後の日韓関係についてであります。 われわれは、隣国である韓国との友好関係の維持増進を心から念ずるものであります。したがって、この事件を契機に、これまでの日韓両国の友好関係をも断ち切れとする議論には断固として反対をいたします。 しかし、真の友好関係は、お互いが対等な立場に立って論議を尽くし合い、そうした中で相互理解を深めていくものであると確信をいたします。 しかるに、わが国の場合、ともすれば、友好関係とは、ある国に対する迎合であったり、無原則、無批判な関係であったことを深く反省すべきであります。 私は、韓国との真の友好関係を増進するためにも、今後の日韓関係、特に経済協力等について、根本的な再検討が必要と考えるが、どうか。 なお、この際、韓国のみならず、発展途上国に対する経済援助は、その原資が、われわれ国民のとうとき汗とあぶらによる血税であることにかんがみ、その結果が、その国の経済発展と国民福祉にどのように役立っているか、政府は、これらの諸点についても十分なる調査を行なう必要があると考えるが、総理並びに通産大臣の御見解を承りたい。 最後にお伺いをしたいのは、今秋の国連総会における南北朝鮮の国連加盟問題についてであります。 われわれは、南北朝鮮の国連同時加盟を期待するものでありますが、今回の事件の決着いかんによっては、この問題もあらためて再検討をせざるを得ないと考えますが、政府として、この問題に対し、どのような方針で臨まれるお考えか。 以上の諸点に対し、明確なる回答を期待して、私の緊急質問を終わります。(拍手) 〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
○内閣総理大臣(田中角榮君) 渡辺武三君にお答えいたします。 政府の主権侵害に対する見解はどうかということでございますが、先ほどから申し上げておりますとおり、主権とは、独立権、領土権等の意味で用いられているように、多義的なことばでございますが、国家が主権を有する結果として、他国はその国の同意なくして、その領域内において、みずからの公権力の行使を行なうことは認められておらないわけであります。もし、かかる公権力の行使が現実に行なわれれば、これは主権の侵害となるわけでございます。 今度の事件が主権の侵害になっておるのかどうかということでございますが、これも先ほどからるる申し述べておりますとおり、事件は捜査中でございまして、主権が侵害されたと断定せられる状況にないことを御理解いただきたいと思います。 第三点は、春日委員長が韓国首脳と約束をした中間報告の問題でございますが、いわゆる中間報告に関しましては、わがほうは、すでに八月の二十七日、後宮大使より金外務部長官に対して要求をした十項目は、御承知のとおりでございます。 この十項目に対しましては、二十八日に資料として回答があったわけでございますが、二十九日にあらためて回答を求めたわけでございます。韓国側は、さきに差し上げました資料の中身を中間報告と思っていただきたいということでございましたが、この回答には日本政府は満足をしておらないということは、先ほど申し上げたとおりでございます。 事件の真相究明が真の日韓友好であるというお考えに対しては、私もそう考えておりますし、また、日韓の間の友好を続けなければならないというお考えに対しても敬意を払っております。 政府としましては、あくまでも真相の究明を旨とし、内外に納得のいく公正な解決をはかることを基本として、この問題に対処をしてまいります。かかる態度を貫くことこそ、真の日韓友好に資するゆえんであると考えられることは、全く御指摘のとおりでございます。 また、各開発途上国に対する経済援助の成果等につきましては、常に調査を行ないまして、効率的に援助が行なわれるよう注意をしてまいりたいと考えます。 残余の問題に対しては、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手) 〔国務大臣田中伊三次君登壇〕
○国務大臣(田中伊三次君) 主権の侵害の問題、公権力の問題、もう一つは、この公権力を使う国家機関との三者の関係につきましては、田中内閣総理大臣御所見のとおりであります。(拍手) 〔国務大臣大平正芳君登壇〕
○国務大臣(大平正芳君) 金東雲氏のほか数名の関係者がおるということを私が記者会見で申したということについての御質問でございます。 私は、本件が複数の方によって行なわれた犯行であるという印象を持っております。ただし、そのうちで一名が本件に関連して嫌疑が濃厚だということで、捜査当局から連絡を受けたわけでございまして、その他の方についてはまだ特定が進んでおるとは聞いておりません。 それから、もし国内におきまして不法行為があった者、本件に関連して不法行為を犯した者の国外退去、あるいは韓国政府に対する抗議、あるいは謝罪の要求、そういう一連の外交措置についての御質問でございます。 本件は、先ほどからも御答弁申し上げましたとおり、事態の究明中でございますので、その進展に伴いまして検討すべきであると考えておりまして、目下のところ具体的に考えておりません。 それから、閣僚会議の無期延期は、ただいまのところ考えておりません。 それから、金大中氏等の再来日が不能の場合どうするかということでございますが、まだ絶望いたしておりません。 それから、ドイツの場合はたいへんりっぱな態度であって、わが国の政府の態度はそのように見られないという御批判でございますが、韓国とドイツとの間の主権関係も、わが国と韓国との間の主権関係も差異はないと心得ております。ただ、ドイツの場合におきましては、韓国側がドイツの主権を侵したということを公に認めておるわけでございます。わが国の場合は、まだ問題の人物さえ、本件に関係しておるかどうかについても認めていない段階でございまして、そういう、捜査の進行中であるわけでございまして、われわれはこの究明に当たっておるわけでございます。それが判明した上、わが国として妥当な措置を講ずべきものと考えておるわけでございます。 国連において、南北朝鮮国連同時加盟を推進する意図があるかどうかというお尋ねでございます。 私ども、朝鮮半島の平和と安定をこいねがう意味におきまして、南北両当局におかれまして、同時に国連に加盟するというような雰囲気が出てまいりますことは、歓迎すべきことと考えております。しかしながら、国連に加盟すべきかどうかということは、当事国が考えられることでございまして、私どもはそういう希望を持っておるということでございまして、国連におきまして、こういう希望をどのように表明すべきかという具体的な道筋につきましては、目下鋭意検討中でございます。(拍手) 〔国務大臣中曽根康弘君登壇〕
○国務大臣(中曽根康弘君) 韓国や東南アジアに対する経済援助は、無原則で行なっているものではございません。それは平和の維持、民生、福祉の向上等を目的にして、相手の財政能力やプロジェクトの適否等をよく勘案して実行しているものでございます。 韓国との現在の問題について、援助打ち切り云々ということばがございますが、先ほど申し上げましたように、主権侵害の事実が解明されてない今日、打ち切りや変更云々ということは適当でないと考えております。(拍手) 〔国務大臣江崎真澄君登壇〕
○国務大臣(江崎真澄君) 金東雲書記官の容疑を裏づけるものは、具体的に一体何だ。 これは新聞で御承知のとおりでありまするが、私どものほうからあらためて申し上げますると、決定的な一つの証拠になりましたのは、金大中氏が連れ込まれたホテルグランドパレス二二一〇号室に残されましたいわゆる遺留指紋と、金東雲一等書記官の指紋とが一致したこと。 第二は、事件発生の時間ごろ、同じホテルのエレベーターの中で、強制連行されつつあった金大中氏とおぼしき者が「助けてくれ、人殺し」と叫んだとき、金東雲一等書記官がその犯人グループの中にいるのを目撃した者があらわれたということ。 三番目は、現場に遺留されておりましたリュックサック、これは神田の登山用具店「さかいや」で買ったのでありまするが、その二人連れと応対した少年店員が、十数枚の写真の中から何らためらうことなく、この人がおりましたというふうに、この二人連れを指摘した等々であります。 第二点は、梁一東氏は八月十一日に日本から出ております。金敬仁氏は八月十五日に帰国いたしました。なぜもっととめ置かないのか、こういう御質問でありました。 一時延期をしてもらうことは、もうしばしば、御本人はもとより、外務省を通じまして、韓国大使の協力も得て、しきりに説得をいたしたのであります。韓国大使も同じように説得に当たってくれましたが、梁一東氏は、少し詳しく申し上げますると、「韓国大使館からも協力するように言われております。しかし、私は八月十五日、記念行事にどうしても出席しなければならない。したがって帰らなければならないんです。明日、すなわち八月十一日に帰りますが、できれば八月十六日にはまたやってまいります。金敬仁君は残しておきますからどうぞ。」こう言って約束をして帰られたわけでありまするが、その後十六日になっても来日を見ることはできなかった。一方、金敬仁氏には八月十五日まで捜査に協力をいただいたわけであります。 御承知のように、外国人というのは入国の規制はできましても、特別逮捕の理由がありません限り、出国はこれはどうも制限することができません。法律上自由のたてまえになっております。したがって、警察側としてはあらゆる手を尽くして説得をする、共鳴を求める、この方法しかないわけでありまして、できるだけそういう手段、方法に訴えて懇請をしたのが実情であります。結局、両氏の出国をとめることができなかったということは残念でありまするが、法律上そういうことになっておる、御了承を願いたいと思います。(拍手) ――――◇―――――
○副議長(秋田大助君) 本日は、これにて散会いたします。 午後四時四十五分散会 ――――◇――――― 出席国務大臣 内閣総理大臣 田中 角榮君 法 務 大 臣 田中伊三次君 外 務 大 臣 大平 正芳君 厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君 通商産業大臣 中曽根康弘君 建 設 大 臣 金丸 信君 国 務 大 臣 江崎 真澄君 出席政府委員 内閣法制局長官 吉國 一郎君 外務省アジア局 長 高島 益郎君 外務省条約局長 松永 信雄君 ――――◇―――――