法務委員会 第42号
- 発言数
- 9 件
- 登壇者
- 3 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1973/07/13
会議録
○中垣委員長 これより会議を開きます。 青柳盛雄君外一名提出、刑法の一部を改正する法律案及び沖本泰幸君外一名提出、刑法の一部を改正する法律案の両案を議題とし、順次提案理由の説明を聴取いたします。青柳盛雄君。 ————————————— 刑法の一部を改正する法律案 (青柳盛雄君外一名提出) 刑法の一部を改正する法律 刑法(明治四十年法律第四十五号)の一部を次のように改正する。 第三条第六号中「、第二百条」を削る。 第二百条を次のように改める。第二百条 削除 第二百一条中「前二条」を「第百九十九条」に改める。 第二百三条中「、第二百条」を削る。 第二百五条第二項を削る。 第二百十八条第二項を削る。 第二百二十条第二項を削る。 附 則 この法律は、公布の日から施行する。 ………………………………… 理 由 刑法中尊属に対する罪に関する特別規定は、これを削除する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。 —————————————
○青柳議員 刑法の一部を改正する法律案の提案理由を申し上げます。 私たちはかねてより現行刑法のうち尊属に対する犯罪の刑罰を特別に重く定めている諸規定はすべて憲法に違反し無効であると考えておりましたが、最高裁判所大法廷は去る四月四日刑法第二百条についてそれが憲法第十四条一項に違反し無効である旨の判例を出しました。 これは刑法に憲法の民主主義原理を正しく貫徹しようとしたものであって、私たちはこれを歓迎し支持するものであります。 親を大切にするという風習は美しいものであって、国民たれもこれを否定しません。しかしそれは法律の範囲外の問題であります。 尊属に対する犯罪を一般犯罪よりも刑罰を重くするという刑法第二百条をはじめとする諸規定は旧憲法のもとで制定され実地され新憲法が制定されるまでは当然の規定とされていたのであります。それは、旧憲法のもとでは家父長制度が社会的にも道徳的にも最高のものとされていたからであります。 しかしながら、新憲法のもとにおいては、法律によって個人の尊厳は保障され、法の前においては親子でも平等に扱われるという基本的人権が確保されることになり、重大な事情の変更が生じています。 法定刑が「著しく不合理な差別的取扱い」にならなければ、尊属に対する犯罪という特殊の類型を温存することは何ら憲法の条規にそむくものではないという趣旨の議論は家父長制が絶対視されていた時代のなごりといわざるを得ません。 新憲法の出現により刑法中皇室に対する罪が全面的に削除され、また民法における「家」制度が廃止されたのは、このような制度が国民を主権者とする民主主義と相いれないし、平等の原則にそむくからであって、きわめて当然の措置であったといえます。 しかるに、新憲法実施後すでに二十六年余の歳月を経ているにもかかわらず、いまここにその廃止を提案している刑法の尊属に対する罪についての諸規定が依然として法文として残存しており、また最高裁判所も最近になってようやくその違憲性を確認するに至ったという事実は、わが国の民主主義がいまだいかに不徹底であるかを示しているものと考えざるを得ません。 よって早急にこれらの諸規定を全面的に削余し、あわせて関連条項を改正する必要があります。 以上が本法案提出の趣旨であります。 何とぞ委員各位の御賛同により、すみやかに可決されるよう期待いたします。(拍手)
○中垣委員長 次に、沖本泰幸君。
○沖本議員 刑法の一部を改正する法律案の提案理由の説明を申し上げます。 尊属殺に画期的な新判例が示されました。昭和四十八年四月四日、最高裁判所大法廷は、尊属殺人処罰規定である刑法二百条は、法のもとの平等を規定する憲法十四条一項に違反しており、無効であるとの新判例を示した。 これは、最高裁判所が三権分立と権力相互抑制の思想に基づき、憲法第八十一条に定められた違憲立法審査権を忠実に行使したものであって、高く評価すべき判決であります。 民主主義の憲法は国民の福利と基本的権利を守るために採用されたものであって、権力が国民の意に反して、その権利を乱用し国民に不幸をもたらすことのないように立法、司法、行政の三権を分立させ、さらにこれら機関の権力抑制機能として司法機関に与えられた憲法上の権限が違憲立法審査権なのであり、その機能を尊属殺に対して有効に行使されたのであります。 また、憲法は個人の尊厳と人格の平等を基本理念としています。いわゆる人間生命の尊厳を基盤とした平等が保障されたとき、初めて人間の基本的人権が守られることになります。しかし、それは憲法の精神に立脚して法をいかに運用するかということにかかっているのであります。 この憲法の精神に照らしてみると刑法二百条の尊属殺人重罰の思想は封建時代の遺制であり、法の真髄を著しくゆがめたものというべきであり、日本国憲法によって廃止された「家」の制度と深い関係を有しているのであります。換言すれば、刑法二百条が封建時代の遺制である「家」の制度を刑事法の立場から形をかえていまだに守っていたということであります。 民事法である民法において「家」の制度はすでに二十数年前の日本国憲法施行とともに廃止されているのであります。このように矛盾した理論によって尊属殺人に対して重罰を加えることは、暗に封建時代の「家」の思想を存続させることであり、憲法の精神である法のもとの平等に反するものであります。 日本国憲法はこのような「家」の思想を根本的に廃止し、民主主義の基本理念である個人の尊厳と人格の平等を希求していると考えるのであります。 憲法の原点に立ち返れば、殺した相手が尊属である、ただそれだけの理由で重罰という尊属殺特別規定を設けていることは、一種の身分制道徳の見地に立つものであって、差別なき人間生命の思想を基調とした、個人の尊厳と人格価値を平等とする民主主義の理念に合致するものではないのであります。 親と子の宿縁的な関係のきずなは重罰主義で強まるものでは決してないのであります。またそれのみによって道徳的なものが守られるということもあり得ないと思うのであります。 親子の関係は、生まれた時から相互に愛情と個人の人格を尊重し、理解するという平等な立場に立っての、持続と忍耐の過程において築かれるものであって、道徳はあくまで個人の主体的、能動的なものにまかせるものであり、法や権力によって人間を一つの型にはめ込むことは不可能であります。 以上のような理由から、尊属殺人と普通殺人に関する規定を区別、差別していることは、憲法の民主主義の基本理念に反するものであります。 ゆえに刑法二百条を削除するだけではなく、尊属に関する刑法上の特別規定、すなわち尊属傷害致死に関する刑法二百五条二項、尊属遺棄に関する刑法二百十八条二項、尊属逮捕監禁に関する刑法二百二十条二項の各規定は、被害者が直系尊属なるがゆえに特に加重規定を設け差別的取り扱いを認めたものとして、いずれも違憲無効と解されることになります。 よって、これらの各規定も削除するのが憲法に照らして正しい処置であります。 以上が本法案提出の趣旨とその内容であります。 委員各位におかれましても何とぞこの法律案の趣旨に御賛同賜わりすみやかに可決あらんことをお願いいたします。(拍手)
○中垣委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。
○中垣委員長 おはかりいたします。 ただいま提案理由の説明を聴取いたしました両案につきましては、現在設置されております刑法改正に関する小委員会におきましてあわせて審査を行ないたいと存じますが、御異議ありませんか。
○中垣委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
○中垣委員長 最高裁判書長官指定代理者の出席説明の承認に関する件についておはかりいたします。 最高裁判所長官指定代理者から、現在設置されております刑法改正に関する小委員会に出席説明の要求がありました場合、その承認につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
○中垣委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 次回は、来たる十八日午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午前十時二十七分散会