法務委員会 第26号
- 発言数
- 66 件
- 登壇者
- 8 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1973/05/11
会議録
○中垣委員長 これより会議を開きます。 内閣提出、商法の一部を改正する法律案、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律案及び商法の一部を改正する法律等の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案、以上三法案を一括議題といたします。 質疑の申し出がありますので、これを許します。田中武夫君。
○田中(武)委員 大臣、去る三月三十日の暫定予算総括質問の際にお約束いたしましたように、あらためて法務委員会へ参りました。そしていまから商法の一部改正法案外二件について御質問を申し上げます。 その前にいろいろと質問の関係上用語と申しますか、概念をとらえておかないといろいろと話がちぐはぐになってもいけないので、まず質問中に使うところの用語あるいはそれに対する概念をはっきりしておきたいと思います。 そこで、まず企業と会社、ここで私は会社というよりか法人ということでいきたいと思います。まず企業について、あるいは会社、法人等との関係において、企業をどのように把握しておられるか、企業の定義と申しますか、どのように把握しておられるか、それからお伺いいたします。
○田中(伊)国務大臣 たいへん先生のお尋ねは具体的でむずかしい御質問でございますけれども、専門家がおりますから民事局長から先に……。
○川島政府委員 企業と一般に言っておりますものは企業体をさすものであろうと思います。企業の主体ですね。企業というのは事業、主として営業を行なう主体、それを企業と一般に言っております。ただわれわれが言います場合には、先ほど仰せになりましたように会社であるとかあるいは広く法人であるとか、そういうものが事業主体としてとらえられる場合にそれを企業というふうに言っております。
○田中(武)委員 そのように把握しておられるならその上に立って御質問しますが、私は企業と会社といいますか、この概念においては企業のほうが幅が広い。なぜならば個人企業といったようなことばがあります。あるいは営業という点を離れて公営企業ということばもあります。しかし、われわれは普通会社とか法人というよりか、むしろ企業企業と言っておりますので、質問の中で企業ということばを使いますが、それは本法におきましては会社、ことにこれは株式会社に関連しますから、そのように理解していただきたいと思います。 そこでまずお伺いをいたしたいのですが、それでは法人とか何か、法人も一つの団体である、したがって団体と法人との相違点はどこにあるのか、ひとつこういう点をお伺いしておきたいと思います。
○川島政府委員 団体と申します場合には人の結合体、一定の目的に従って結合している人々の集団、これを団体と呼んでおります。法人というのは自然人、個人ではなくして権利の主体として法律によって認められているものが法人でございます。団体と法人との関係でございますが、団体は法人格を認められておる場合もございますし、認められていない場合もございます。したがいまして法人よりも団体のほうが範囲が広いということになろうかと思います。
○田中(武)委員 したがってここでは企業、こういうことばを私使いたいと思いますが、この法律に関する点においては会社、ことに株式会社というように理解していただきたい。そして団体と法人との関係ですが、これはおっしゃるように法人も団体の一つである、しかし、といってもその中で法人には社団だけでなしに財団がありますね。これを団体というのかどうか、いかがでしょうか、それも含めて。ともかく民法の規定によって権利の主体となるものだ。そこで、それでは自然人でないいわゆる法人を法律上権利義務の主体としてみなすということについては、これはいろいろな学説がございますね。いまさら私は、擬制説、実在説、否認説等々について論議をここでやろうとは思っておりませんが、しかし、必要に応じてそういうことが出てくることを、あらかじめお含み願いたいと思います。 その前にひとつ、どうでしょう、大臣、法人についていろいろ学説がございますが、大臣はどういう学説にお立ちになって御答弁せられますか。それによって私の質問も方向を変えなくてはならぬ。擬制説でおいでになるんだったら実在説で尋ねていく、実在説でおいでになるなら擬制説ないし否認説で尋ねていく、こういうことになるのですが、どういうようにまず大臣はお考えになっておりますか。
○田中(伊)国務大臣 擬制説は、御承知のとおりに、自然人だけが権利の主体となれるんだ、したがって、法人は権利の主体となるためには擬制によって権利の主体となし得るんだというようなこの考え方ですね。その考え方には私は賛成せないほうでございます。法人といえども権利主体として実在するものという考え方に立ちまして、実在説をとるほうでございます。
○田中(武)委員 日本は、これは言うまでもなく、そちらさんのほうが御専門ですが、日本の法体系、ことに民法は、大陸系の法体系だと思うのです。したがって、実在説の上に立っておる。大体英米系が擬制説だと思います。またあとでそういう議論もいたしたいと思いますが、最近また擬制説ということについても相当な有力な学者も出てきておるようです。そういう点はおりに触れ申し上げたいと思います。 そこで、民法の規定によりまして、いわゆる法人は法令及び定款の定むるところによってのみ存在するというか、行為能力を持つ、こういうことになりますと、この理論を推し進めていくならば、これは擬制説ですよ。法令は別として、定款に定められた範囲だけで存在するんである。行為能力を有するんである。しかし一方、民法においては、いわゆる法人の不法行為及びその理事者の責任について規定がありますね。一々条文を読み上げませんけれども、あります。そういたしますと、この点においては実在説のようにも思います。しかし、法令に従い、定款の定むるところにおいてのみということになると、擬制説も考えられる。それはともかくとして、したがって、まあいろいろと議論が起こりますが、いわゆる法人の行為能力、ことに不法行為能力については、どのようにお考えになっておりますか。日本の民法は、法人には不法行為能力はないという上に立っておると思います。したがって、判例も見当たらないと思うのですが、そのような点について、法人の行為能力、不法行為能力について、どのように把握しておられますか。
○川島政府委員 民法は、法人の行為能力につきましては四十三条、不法行為能力についてはたしか四十四条だったと思いますが、それぞれ規定いたしております。それも、擬制説の立場に立って解釈するか、実在説の立場に立って解釈するかというので考え方は違うようでございますけれども、いずれにいたしましても、法人そのものが権利の主体として、つまり権利義務の帰属者としてなされる行為があるということは認めておるわけでございまして、そういった法人が社会的にいろいろ活動してまいります場合に、目的の範囲内で法律行為をなし得るし、また外観上法人の行為と認められるような行為であれば、それが他人に損害を及ぼしたような場合には不法行為として評価される、こういうたてまえをとっておるわけでございまして、擬制説をとろうと実在説をとろうといずれにしても、明文の規定があるわけでございます。これを根拠として法人の行為能力なり不法行為能力なりというものは認められるということになろうと思います。
○田中(武)委員 おっしゃるように、四十三条、そして四十四条に不法行為の問題があります。不法行為能力を民法は認めていますか。ただそのことについて法人にも責任があるということですよ。認めていないですよ、あなた。やりますか、論争を。ただ、擬制説をとった場合は、その理事者というか、それがやった行為が法人に帰納することについて代理の観念で説明する。実在説をとった場合には、いわゆる機関の概念で説明するというだけの違いであって、不法行為については民法は認めていないと私は思うのですが、認めていますか。そういう判例もありますか、お示し願います。
○川島政府委員 法人の不法行為能力というものをどういうふうに法律的に理解するかという問題はあるわけでございます。おっしゃるとおり、擬制説に従った場合には、法人の実体というものはないのであるから、代理人が行なうのであって、代理人の不法行為はあるけれども、法人の不法行為はないということになるわけで、したがって、法人の不法行為による責任というものを認めた規定というものは、法人自体の不法行為を認めたことではなくして、法人のいわば政策的な配慮によってそれと同じような効果を与えるということになろうと思います。それから実在説によりました場合には、法人というものが実体があり、それは機関を通して行動するのであるから、したがって、不法行為をなし得るという解釈も成り立つのではないかというふうに思うわけでございますが、しかしそれは先ほど仰せられました目的との関係とかいろいろ問題もございますので、むずかしい問題かと思います。
○田中(武)委員 あなたはもうちょっと考えなくちゃならぬですよ、民事局長という重責にあるならば。いいですか、法人は法令に従い、定款にのみ行動範囲を持つのです、定められた範囲において。そうでしょう。不当あるいは不法行為ということについては、そんなことを定める定款はないですわね。したがって、ただ法律によって、その理事者が行なった行為が不法行為であった場合に、その責任を法人が負うということですよ。それは先ほど来あなたも言っておるし、私も言っているように、擬制説の場合には代理の観念でこれを説明する。実在説の場合は、これは有機体としての法人を認め、そうしてその法人の機関としての行動として把握するわけです。そうでしょう。したがって、いずれにいたしましても、私は民法上も、法律によってそうは責任があるとしておるけれども、法人それ自体は不法行為能力はない。判例もしたがってそのようなことはないはずなんです。 なぜこれを言うかと申しますと、これから順次議論を展開してまいりますが、監査制度を改めて云々ということなんですね。ところが私はそれ以前に、理事者たる、株式会社でいうなら取締役というかあるいは取締役会というか、この執行機関の行動なり判断が問題である。そういうところで、いま不法行為能力を法人が持つのか持たないのか、まずはっきりしておこうと思うのです。私はないと断言します。しかし、法律によって、民法四十四条によりて、これはいずれの学説をとろうとも、不法行為能力はないんだが責任はありますよというのがい四十四条の趣旨だろうと思うのです。違いますか、どうですか、教えてください。おまえはこの点が間違っておるというなら、ひとつ教えていただきたいと思います。
○川島政府委員 仰せのように考える考え方が普通であろうかと思います。ただ、法人の不法行為能力あるいは権利能力との関係において学説はいろいろございまして、したがって、法人の実在説から出発いたしまして法人の不法行為を認めるというような考え方もないとはいえないようでございます。私、ここでどういう考え方をとるかということを申し上げる立場にはございませんが、先生のようなお考え方が比較的支配的であろうと思いますけれども、学説の中にはそうでないものもあるということを申し上げておきたいと思います。
○田中(武)委員 ここでこの論争をしてもいいのですが、またどこかでやることもあろうと存じますから、次にいきます。 いま、法人たる株式会社である商社等々が、買い占めあるいはドル投機というか、あるいは売り惜しみ等々が大きな社会問題を起こしておる。こういう場合に、これは一体会社、いわゆる法人なのか、そういうことをやらしめた、あるいはそういうことをやろうときめた理事者、この場合は取締役会といいますか、あるいは社長なりそれぞれの担当者といいますか、そういうものの責任というか、そういうことになりますね。なぜそういうことを言っておるかというと、こういう買い占めとかいろんな問題を次々出してまいりますが、これはどのように把握しておられますか。 と同時に、ついでにこの際伺っておきますが、商法でいうところの支配人、使用人、ふつう社員とか工場長とかいろいろあるでしょう。あるいは商社の場合には支店長とかなんとかあるでしょう。そういうのがかってにやった場合、そういうようなことによる不法行為、これは一体だれが責任を持つのか。それは、一つ一つの具体的事実がなければ、あるいは因果関係がはっきりしなければ云々とお答えになると思います。しかし法務委員会ですから、法律的にいきましょう。支配人、使用人の行動に対して法人は、いかなる責任を持つか、お伺いします。 〔委員長退席、大竹委員長代理着席〕
○川島政府委員 業務の執行機関というのは、いまの場合で申しますと取締役会で、具体的な代表権というのは代表取締役が持っておりますけれども、支配人も一定の限度においてはその法人の業務をまかされておるものでありますし、それが法人を代表する立場でもって一定の行為をした、その行為の責任というのは、これは民事的な責任という関係から申しますと、やはり法人に帰属することになろうと思います。ただ、不法行為の関係でございますと、これは民法にもございますように、理事者の責任というものがかぶってくるかどうかということによって判断されることになろうと思います。
○田中(武)委員 使用人の場合は同じことですか。使用人と支配人とは同じように解していいですか。いかがです。
○川島政府委員 支配人も使用人でございますから、やはり同じ立場にあると思います。
○田中(武)委員 たしか商法には支配人、使用人ということばを使って、明確にその権限なり区別していますね。同じように解してよろしいですか。しかも、いま支配人というのはほとんど使っていないと思います。工場長とか支社長とか、これが取締役である場合もあろうし、ない場合もある。そうかと思うと、バーのマネージャー、俗に支配人。だから、これは一がいにいえないと思うのです。しかしいずれにせよ、それらの人のやった行為は法人に帰納する、このことだけは確認いたしておきますが、そうでいいんでしょうね。
○川島政府委員 そのとおりでございます。
○田中(武)委員 そこで、法人論というか、このことはまだ近代法律学において一大論争の種ですね。それはなぜかというと、ローマ法学の中で法人理論が十分熟していなかったというか形成せられていなかった。ところが一方、社会情勢というか経済情勢に応じて、いわゆる法人、会社等々が経済あるいは社会活動における大きなにない手としてどんどん発達してきた。そこで、はっきりとした理論が形成せられないうちに、一歩実際活動が先行していったというところに、いまだに近代法学における一大論争の種になっておることは御承知のとおりであります。 たとえば、いろんな団体が契約をする。先ほどの話の場合は、法人格を持たない場合は、その団体代表者の、あるいは役員若干名の共有というようなかっこうで権利の主体になる、あるいは連帯保証というようなかっこうで義務の主体になるというような方法がとられておると思うのですが、ところが、そういうようにして、一方の法律的な法人論というものがはっきりしないうちに、社会活動、経済活動の面においてどんどん手を広げ、契約をやる。権利の主体あるいは義務の主体となって発展してきた。そこで、そのつどつど、それを合理的に裏づけるために、時には擬制説を使い、時には実在説を使う、あるいは否認説を使うというようなことによって、その場限りでやってきたと思うのです。 そうじゃないですか。それが今日の、ローマ法からゲルマン法、今日に至って、まだ法人の人格ということについて、もっというなら法人の基本的な議論が十分に定着していないところにあると思うのですが、実情どう思われますか。そのつど、そのつど適当に、この場合は実在説で説明したほうがいい、この場合は擬制説だというようなことでやってきた。判例だってそういうことになっておると私は思うのです。たとえば不法行為に対して理事者が責任を持つ場合、理事者一人が、その行為をやった者が持つ、あるいはこれが取締役会の決定に従った場合は全体が連帯責任を負う。しかしそれが取締役会等の意思決定に基づかなかった場合でも、これは連帯して責任を持たねばならぬという判例も出ていますね。その説明を、そのときの判事さんというか、学者というか、それぞれ適当な理由づけをしてきたところに原因があると思うのです。いまここで、いかに大もの法務大臣といえども、これに対してぴしゃりとした定説は下せないと思いますが、あればお聞かせ願いたいのと同時に、私はそういうところに、いまだに法人論というものが定着していないと思うのですが、その点いかがでしょう。
○川島政府委員 たいへん深いお考えでございまして、私もおっしゃる御趣旨はまことにそのとおりであろうと思います。 〔大竹委員長代理退席、委員長着席〕 確かに法人をめぐる法律関係というものは一つの理論だけで解決するには非常に複雑な問題が多過ぎるというふうに思います。法人擬制説で説明する場合、実在説で説明する場合、それぞれの長所と短所がございますので、学者の中にも擬制説、実在説それぞれに一面の真理があるということを述べておるような人もおったと思いますが、先生のおっしゃいます御趣旨もそれと同様であろうかと思います。そういう意味で先生のお説には、私たいへん同感でございます。
○田中(武)委員 政府自体も混同がある。まだ大蔵省、あとでいいというので来ておりませんが、大蔵省あたりで法人税等の税金の問題では擬制説をとっているのですね。これは間違いないと思うのです。あとでまた大蔵省が来たときにその議論をやりますが。しかしいま、これはもちろん御承知と思いますが、大臣もおっしゃったが、実在説をとっておられる。ところが、今日英米法の法人理論、いわゆる擬制説が近代法の法人格の説明あるいは法人の技術的性質の側面が強調せられて、むしろ取引を単純というか、取引関係等に重点を置いて、擬制説のほうが強くなってきたというか、これは特にアメリカあたりなんですが、そういうことも見のがすことができないと思うのです。ここで何も法人の理論を定着せしめる必要はないと思うのですが、そういった有力な擬制説もまた見捨てることができないということだけはお認めになると思うのです。 そうした場合、民法の七百十五条ですか、いわゆる使用人の行為が法人の責任に帰納するということについてのこの規定は、私は近代社会というか、現在においてはもう間に合わないというか、手ぬるいというか、と思うのですよ。したがって民法の七百十五条を改正ということではなく——まあ、してもいいと思うのです。少なくとも商法においては、民法七百十五条よりかもっと私は幅の広い規定を置くべきではないか。そうでなかったら、民法七百十五条、なんでしたらちょっと借りてお互いに論議してもよろしいですが、見てもらったら、御承知のように、いまの現代に七百十五条で説明がつくか。そんなことでは間に合いませんよ。たとえば選任に瑕疵がなかったらいいのだとかいったようなことであるならば、今日のような、ことに商社等の問題あるいは公害等の、会社というか企業責任追及の場合において間に合わぬ。いかがでしょう。民法七百十五条では説明がつかない。時代おくれである。したがってこれを改正するか、少なくとも商法においてこれの特例を設けるというか、商行為というか、会社、企業活動において云々の場合、もっと近代化した、そういうように改正する必要があると思うのです。それがむしろいま提案せられておる商法の改正よりかより急務ではないか。粉飾決算云々といわれておる。なるほど私否定するものではありません。がしかし、いま問題なのは公害であり、買い占めであり、投機である。それを行なっておるのは被用者である、使用人である、社員である。これを命令しておるのは、出どころは取締役会かもしれませんが、具体的に命令しておるのは課長であり、部長であるという、それがいま言ったような民法七百十五条で救えるかどうか。救えないでしょう。ならば、現代に合ったように改正するのはいまのこの改正よりか、そういうところを改正するのが急務じゃないかと思うのですが、いかがですか。
○川島政府委員 非常に深く御研究になっておられるお話でございまして、私も傾聴して伺ったわけでございますが、御承知のように、民法七百十五条、使用者責任の規定でございますが、これは会社と使用人の場合だけでなく個人の使用人の場合も含むわけでございます。それで、この規定の適用につきましてはいろいろの場合に応じて使用者に責任を認めたほうがいいと思われる場合もふえてきておるわけでございまして、実際の判例におきましても、使用者が免責を受ける場合、これは選任、監督について重大過失がなかったということがあげられておりますけれども、御承知のように判例ではこれを非常に厳格に解釈いたしまして、特に被用者が違法行為をやったような場合には原則として使用者には監督上の責任があるのだというような解釈のもとに運用しておりますので、現在の規定によってもそういう判例の立場でまいりますと、かなり実情に即した解決が得られていくということになろうかと思います。もちろん、法人その他特殊な場合につきましてさらに責任を強化するような規定をつくるということも考えられないではございませんけれども、しかし現在の七百十五条自体もかなり使用者に対して重い責任を課しておりますので、この規定によってそれほど大きな不都合というものは生じていないのではないかと考えております。
○田中(武)委員 ところが生じておるのですよ。生じてくるのですよ。ご承知のように、これは大気と水だけですが、公害については無過失責任、これは完全なものではないが、法律ができていますね。これは民法の七百十五条はそれでいいとしても、商行為によって生じる場合、いわゆる営業というか、あなたが最初企業と言ったその活動によって生じる場合、ことに公害等々についてはこれでは救えないのですね。したがって私は、民法の改正はともかくとしても、商法においてはなおこれに従った改正のほうが、今日提案せられておるよりかより社会的に重要ではないかというのが私の主張なんです。 そこで、解釈論でありますが、大臣にお伺いします。 大臣、いかがでしょうかね。なるほど過失責任ということの上に立っている日本の民法です。しかし、もうそれでは世の中はやっていけない。ことに公害等につきましてはもう別の法律で無過失ということが出ておる。私は去年公害のほうの委員長をやっておりまして、この無過失法といいますか、実は大気汚染と水質汚濁のほうの改正だったわけですが、そのときの質疑を聞いておりましたら、判例が出ておるからということを、その当時法務省から来ておった何とか参事官がよく申しました。法務省とか裁判所あたりは、判例ということをよくいいます。しかし、英米法系ではとにかくとして、大陸法系をとっておる日本においては、判例が幾ら出ても、それは慣習法にはならないのです。法源とはなり得るが、慣習法として定着はしないわけなんです。したがって、やはり明文が必要だと思うのです。立法論として、商法において民法七百十五条から過失ということをはずすような方向の改正をする必要があることを私は重ねて強調したいのですが、法務大臣、いかがでしょうか。
○田中(伊)国務大臣 これを省きますこと、なかなか容易な技術ではむずかしい問題と私は考えます。民事局長から一応私にかわって答弁をさせます。
○川島政府委員 問題が実は二つあって、混同するといけませんので、区別してお答えいたしたいと思います。第一は、法人の理事者、つまり会社で申しますと取締役が不法な行為をやった場合。それから第二は、そういった機関ではなくして、その機関の使用人である支配人その他使用人が不法行為をやった場合。(田中(武)委員「私の聞いておるのは後者ですよ」と呼ぶ)後者でございますか。後者につきましては、民法の七百十五条は、御承知のように、一応は無過失責任というたてまえをとっております。ただし書きがございまして、「相当ノ注意ヲ為スモ損害カ生スヘカリシトキハ此限ニ在ラス」、この限度で過失責任というものを取り入れているわけでございまして、これは、単純な過失を要件として認める場合に比べますと、かなり責任が重くなっているわけでございます。したがって、これ以上さらに責任を重くすることが妥当であるかどうかという点につきましては、場合にもよるかと思いますけれども、相当慎重な考慮が必要ではないかというふうに思うわけでございます。
○田中(武)委員 役所の中でもことに法務省は、やはり体制維持という上に立つので、体制内答弁をせられるのは当然だと思う。しかし、ただし書きで、「相当ノ注意」云々については「此限ニ在ラス」ということはあくまでも例外なんです。選任において過失がなければ責任を免れるということが原則なんですね。ただ「但」で、無過失論をとっておるとまではいかぬと思うのですが、無過失ともとれる規定がある。しかし、一方、公害においてはそういう方向に行っておるし、また判例もそういう方向に行っておるのですよ。だから、判例があるからということをよくいわれますが、私が言わんとするのは、判例が幾ら出ても、それは法ではないですね。下級裁判所等々を縛るかもしれぬ。ところが最高裁、上へ行くとまだ古い感覚が残っておるのです。いまそれを私は云々しませんが、その原因は、言うまでもなく、終戦後、財閥、軍閥等々を解体した。ところが、さすがにアメリカというか、司法だけには手をつけなかったのですね。だから、天皇の名において裁判を行なうという頭の裁判官がまだ上のほうにずらりおるわけです。したがって、下級審において相当進歩的な判断が出ても、上級審においてくつがえされる。 そういうことは余談ですが、体制内としてあなたはそうおっしゃるけれども、商法では少なくとも民法七百十五条をもっと上回る無過失の規定を置くべきではないか。そうでなかったら、今日、公害その他企業活動が国民生活に大きな危機感を与え、ことによったら人命にまでかかわるような時代においてはもう間に合わぬのじゃないか。私が主張するのは、先ほども言ったように、今日、この改正よりかむしろそういった方面、さらに論議を進める中において、監査制度を強化するということよりか取締役会あるいは理事者にもっと重い責任を持たすということのほうがより大事である。こういうことをあとの質問で逐次展開していきますが、大臣どうです、これは解釈論じゃないのですから。私はそのような必要があることを強調しておるのですが、大臣どうですか。大もの大臣として、ひとつ御意見を伺いたいのです。この条文では、現在の企業活動というか法人活動については間に合わない。ことに公害の問題等を例にとった場合は明らかであります。いかがでしょう。
○田中(伊)国務大臣 たいへん熱心、広範囲に御研究になっておる御意見でございますが、この問題はなかなかむずかしい問題であると考えます。一応の見解を民事局長から答えさせてください。
○田中(武)委員 立法論だから。解釈論ならいい。
○川島政府委員 私、立法論は差し控えさしていただきまして……。 理事者の責任といたしましては、株式会社の場合には二百六十六条ノ三という規定がございます。「取締役が其ノ職務ヲ行フニ付悪意又ハ重大ナル過失アリタルトキハ」これこれ。その後段に、特定の事項については——これは解釈上無過失責任であるという解釈がなされておるわけでございますけれども、特定の書類に虚偽の記載をしたとか虚偽の登記または公告をしたというような場合については、さらに重い責任が課せられる。こういうことでありまして、そういう趣旨の若干の特則が設けられておるわけでございますので、責任の問題につきましては、そのほかにいろいろ御指摘のような問題があろうかと思いますけれども、その点につきまして、商法の改正は法務省としては法制審議会の商法部会の御検討をいただいておりますので、いずれ取締役その他の問題につきましても法制審議会でもって検討が加えられることになろうと思います。取締役の問題その他につきましては、今回の改正の後にさらに法制審議会の商法部会におきまして検討が加えられることになろうと思いますので、その際に責任の問題につきましても十分な検討が行なわれるというふうに期待しておる次第でございます。
○田中(伊)国務大臣 今回出しております法案のほかに、取締役会の構成、運営をめぐる問題、もう一つ大事なことは、株主総会の機構、運営に関する問題、これらの問題はあわせまして抜本的な大改正というものを私の諮問機関である法制審議会に実は諮問をして、先ほど申しますように商法部会を設けまして、検討しております。 そこで、妙なものの言い方になって恐縮でございますが、ただいま先生の御所見を承りましたが、この問題も、検討をしてもらわねばならぬ問題の重要な課題と私は思うわけでございます。そこで、この問題について大臣はなぜものを言わぬのかということを盛んに仰せをいただくのでありますけれども、どうも法制審議会に諮問をしておきながら、別個に、おれはこう改正すべきだと考えておる、改正まことにごもっともでありますという話をしたいのでありますが、これをいたしますことがいかがなものかという遠慮もありまして、申し上げぬのでございますが、重要課題としてぜひ検討をしてもらいたい、こう考えております。
○田中(武)委員 取締役ないし取締役会の構成とか問題についてはもっと質問の先に入っていく予定なので、いま法制審議会うんぬんと言われておるが、ちょっと結論が出て、——そんなに早く出ないのじゃないですか。私が言わんとするのは、これは結論になるのですが、基本六法の一つである商法なんというのをこういう改正でなくて、これはもう別な立場、証取法等でやってしまって、商法の改正はもっとがっちりと、それもしかも早くやりなさい。たとえば刑法の改正はどうなんです。刑法改正草案なんというものは、もう三十五、六年前のわれわれ学生時代から出ておったわけですよ。もちろん、戦争という時期があって停滞しておったのだろうと思うのですが、いまだに出ないじゃないですか。と同じように、商法の抜本的改正を諮問をやったって、そう簡単に出ませんよ。もちろん、商法はその後かなり、手形、小切手については大改正がなされたことも承知しております。だが、相当根本的、広範囲な改正を私は望みたい。これは各論に入ってから触れるつもりでおりますが、今日のこの改正よりかもっと重要なことをやってやるべき問題がたくさんあるのではないかということを、逐次私の質問の中で明らかにしていきたい、このように思いますので、これはそのときにもう一ぺん議論をいたします。次へまいります。 そこで、法人格の問題の中でひとつ税法で議論をし、またお考えを伺っておきたい問題に、法人格の乱用という問題があります。今日あらゆる面において権利の乱用ということが問題になっておりますことは御承知のとおりです。ところが、この法人格を乱用するのが、この場合は会社、株式会社と理解していただいていいと思うのですが、いろいろある。 まずその第一は、設立に際してこの人格を乱用する場合。たとえばそれは個人の事業税と法人税との関係あるいは譲渡所得税をのがれるための現物——不動産を売った金で出せばそこに譲渡所得税等の税金がかかる。そこで現物出資という方法が講ぜられる。このことは常に行なわれておる。これは法人設立、会社設立に対しての法人格の乱用の一つだと思うが、大臣、どうお考えになりますか。同時に、大蔵省、見えていますか。主税局長、どのようにお考えになりますか。これは法人格を乱用して、税金対策と私は見るのですが、どうですか。
○高木(文)政府委員 現在、税法上株式の譲渡所得について非課税ということになっておりますことの関連上、御指摘のように土地を譲渡すれば課税になる。そこで出資をして、そしてその株の譲渡の形式をとるということがこれまでも行なわれてきたわけでございました。それは一つには、ただいま御指摘のように法人の設立がきわめて自由であるということから出てくる問題であり、つまりある意味においてはおっしゃるように法人制度の乱用の問題というふうに理解されると思います。同時に、それは税法上の問題でもあるわけでございまして、税法の面でもこの問題については一部手当は行なわれてまいりましたが、なお十分でないという現状でございます。その現象は、御指摘のように法人制度の乱用であると同時に、税制の一部の不備といいますか、その間を縫ったものということができるだろうと思います。
○田中(武)委員 法務省はどうですか、そういうことの乱用については。
○川島政府委員 先生の仰せになるような実情があるということは、私も話には聞いておるわけでございますが、現在の商法の株式会社の制度、これが税制その他との関係でいろいろ乱用と申しますか、利用と申しますか、用いられておる。このような形が必ずしも好ましいものではないということも事実であろうと思います。それにつきましては商法の株式会社の制度自体にも問題がないとは言えない。たとえば現在の株式会社法はきわめて簡単に株式会社を設立することができるようになっております。外国を見ますと資本の額に制限がございまして、少なくとも一千万円程度のものでなければ会社として設立できないといったような制限が設けられておるわけでございますが、わが国の場合には、少ない場合には、よくいわれますように三千五百円の資本金で株式会社を設立することができるといったような実情でございます。そのために、株式会社が非常に安易に多数設立されるという実情でございますので、こういった点につきましても何とか考えていかなければならない問題があろうと思います。しかし、現実に株式会社の数は百万をこえておりまして、この現在ある株式会社をどうするかという問題になりますとさらにいろいろ制度的にもむずかしい問題が出てまいりますので、こういった点につきましても将来法制審議会で十分検討していかなければならない、かように考えております。
○田中(武)委員 この乱用が、いま言ったのは設立に際してです。今度は経営に対してもたくさんあります。たとえば商号を貸す。これをよく名義料とか看板料とかいって取っておる。これもすなわち商号の使用料を取るというような一つの法人格の乱用です。ことに経理面においてはこれがたくさん出てまいります。この改正の一つの問題である粉飾決算等々も見方、考え方によれば法人格の乱用です。さらに問題なのは、新株発行やあるいは自己株の保有。きのうの新聞でも出ておりましたが、あえて同僚のことを私はやり玉にあげようとは考えておりませんが幽霊会社をつくる。子会社の手等々によって、商法が禁止しておるところの、あるいは証券取引法上の脱法行為が、法人格利用によってというか乱用によって堂々と行なわれておる。そういう点はたくさんございます。そういう点についてもこれは法人格の乱用という点でどう考えられますか。
○川島政府委員 いろいろな面で乱用の問題を御指摘になったわけでございますが、この問題につきましてはそれぞれの事柄に応じた配慮なり対策というものを立てていくのが必要ではなかろうか、こういうふうに思うわけでございます。たとえば商号権の問題につきましては、今回休眠会社の整理ということを考えております。これも一つの商号権の問題に対する解決の方法となろうかと思うわけでございます。 それから粉飾決算の防止につきましては、監査役の監査機能の強化といったようなものを考えておるわけでございますし、自己株保有の問題その他、これは商法自体で現行法の規定以上に整備を要するものがあるかどうか問題でございますけれども、法制審議会でもときどきこの問題については議論がされております。そういうふうに、それぞれの問題につきまして個々的に対処していくことが必要であるというふうに考えております。
○田中(武)委員 ときどき論議をせられておるというのですが、これはすべてがそうだとは言わないけれども、やはり自己株の保有ということをいわゆる従業員持ち株制度というようなことを利用して行なっておる。私はすべてがそうだとは言わぬが、あり得ると思います。これも法人格の乱用です。そういう点はどうなんです。あり得ると思いますか。
○田邊説明員 御指摘のように従業員持ち株制度というものが発足しましたときに、先生の御指摘になる問題を法務省としては一番問題にしたわけでございます。幸いにしてその後の運用はおっしゃるような実質的な自己株取得になるような形式のものは出てまいっておりません。しかし、従業員の福祉を目的としてあの制度が発展してまいりますと、将来には非常に大規模なものになりますれば、おっしゃるような弊害が出てくる、私どもはそう考えております。 その他、先ほどの新株発行の問題も、最近の時価発行の隆盛に伴って、おっしゃるような弊害、つまり株主にそういうものを還元するというたてまえでの時価発行というものでなくて、企業が安易に資金調達をするという方向だけでこれが隆盛になるということは問題がある。 それから、お尋ねの自己株の保有そのものの問題ですが、法制審議会にも実は今回の商法改正の機会に、実際界からは現行の自己株保有禁止を緩和しろという強い要請が出たわけでございます。しかし、法制審議会の審議は、現行法でもその歯どめが十分でないのではないかという点でむしろ改正に消極的であったわけでございます。そういう実情でございますので、事務的な御報告をいたします。
○田中(武)委員 私はいわゆる経営民主化ということで、従業員が株主になるということはいいことだと思います。だが、常にいいことを乱用する、悪用するというのが世の中です。そういうものに対する歯どめは考える、あるいは監督、指導を考えていくのが政治である。あるいはこの場合には法務上の行政であろうと思う。まだ、法人格の乱用に、今度は総会の場においてそれがあります。これは国会でもそうですが、総会において多数決の乱用です。しかも今回の改正では、累積投票の廃止等々を含めて少数株主の権利を剥奪しようとしておる。これは法人格の乱用に対するむしろ逆行ではないかとも考えるのですが、この点いかがですか。
○田邊説明員 累積投票の改正につきましては、前回にも……。
○田中(武)委員 またそれは別にやるけれども、少数株主の権利の剥奪……。
○田邊説明員 御指摘の点は、先ほど大臣が答弁いたしました株主総会の実は問題でございます。世上問題になる一株株主の問題も含めて、いわゆる少数株主の処遇というものが現在の株主総会の実情ではたして現行法は十分か、こういう問題であります。それらをひっくるめて、大臣の答えましたような商法の全面改正というものがすでに計画されておるわけでございまして、その段階で、先生の御指摘のような問題点というのは十分審議されることと考えております。
○田中(武)委員 その点については、各論でまたやりましょう。だが、法人格の乱用がまだまだあるわけですよ。それは、解散に際していわゆる擬装解散というか、これは債務を免れるために、ことに、約束手形等々の決済を免れるために、あるいは労働問題において、労働者を一応解雇する、こういうような悪用せられている例がたくさんある。さらに破産法あるいは会社更生法等々の悪用による法人格の乱用がございます。それに対しては、おそらく、破産法とかあるいは会社更生法では、たとえば破産法は三百六十七条でしたか詐欺破産罪がある。あるいは会社更生法二百九十条、二百九十一条等には詐欺更生罪等もあると、こうお答えになると思うのですが、こういった法人格の乱用が、労働問題、あるいは債務を免れる、ことに、長期の約手等を発行し、その決済を免れるために乱用せられている事実がございますが、それについてどう考え、どのようにチェックしていったらいいのか、破産法あるいは更正法における詐欺これこれ罪は別として、いかがです。
○田邊説明員 いま御指摘の一点、労働法上の問題でございますね、これは、最近非常に問題とされていることでございます。労働法学上も、商法の解散規定をめぐって一つの大きな問題として議論をなすっておりますことは、十分承知しております。将来の先ほど申しました商法自体の改正として議論されるでございましょうし、それから、更正法、破産法というものも、昭和四十年の改正当時にその問題が出て議論されたところでございます。こういう経済事情の変転に伴って、重ねてそういう問題点を事務当局としては十分検討したい、こう考えております。
○田中(武)委員 こういう点を、私は今回の改正よりかより重要ではないか、こう申し上げたいのですよ。と同時に、いま解散を利用して云々と申しましたことには、いささかちょっとかみ合わぬのですが、それ以外のといいますか、いろいろなこういう乱用あるいは公益に反するようなときには、これは商法五十八条によって、これは裁判所の手によって解散を命ずる、法務大臣等々がこれを申請する。この五十八条とあわせて、いま申しました法人格の乱用等々は、根本的に検討の必要があるんじゃないか。そのことはいまのこの改正よりかより重要である。あとでまた申し上げますが、これはあえて商法改正の形をとらなくても目的を達することはできるのです。まだまだ商法上改正されなくちゃならぬ点を山ほどこれだけ用意しているので、一々申し上げますが、どうですか、そのほうが大事じゃないですか。一つの法人格の乱用という問題についても、これよりは重要ですよ。いかがです。五十八条の運用とあわせて検討する。これはあなた五十八条の申し立て権は大臣ですよ。
○田中(伊)国務大臣 お説のとおりと思います。そこで今回、それをなぜやらぬのかということでございますが、今回は、何回か申し上げましたように、監査制度を中心とする監査人の権限の拡大強化というものを中心としまして、監査制度を中心としての改正をお願いをしております。先ほど申し上げましたようなその他の重要問題については、まずこの改正のお願いができました上で、引き続き検討して、用意のでき次第国会にお願いをしたい、こういう考えでございます。
○田中(武)委員 そこで、私は逐次、まあせっかく提出しておられるのですが、商法の改正というならば、もっと先に、社会的、経済的要請あるいは公益上なされねばならぬものがたくさんある、まだこれからも提案してまいりますが、そういうように考えておるわけです。 そこで、その一つとして、今度は、会社——株式会社にしぼっていきたいと思うのですが、商法五十二条一項、これは「会社」ということになっております。「商行為ヲ為スヲ業トスル目的ヲ以テ設立シタル社団」である、こういうような規定になっておりますね。しかしはたして今日、この規定でいいんだろうか。この条文を解釈するならば、いわば会社、ことに株式会社は利潤追求の器であるということなんですね。そういう考え方が今日、膨大な公害を起こし、あるいは買い占め、ドル投機、国民生活に大きな影響というか、危機をもたらしておる。私はいまここで強調したいことは、企業——株式会社、まあ会社と言ってもよろしい、これは、利潤追求の器であってはならない。商法は、これはまあ明治何年にできた法律ですから、資本主義発展過程において果たした役割りは大きかったと思います。今日もうこれでは間に合わない。合わないというよりか、もう時代おくれです。企業は社会的公器だという観念を明確にしない限り、今日いろいろな社会問題、公害問題、物価問題等々の原因がそこにある。したがって、私は商法五十二条一項を改正して、会社の、企業の社会的に果たすべき役割りを明確にする、単に利潤追求の器であるという考え方は変えていく、払拭していく、そのことがより大事だと思いますが、いかがです。
○川島政府委員 会社は利潤追求の器であってはならないとおっしゃいましたが、まことにそのとおりであろうと思います。ただ、同時にまた会社が営利法人であるということも、会社の本質をなすものであろうと思います。したがいまして、会社がその営利事業を行なうにあたって、社会的な責任を問われるような行為をするということは、もちろん許されないわけでありまして、法律の認められた範囲内においてその事業を行ない、そして出資者のために利益をあげるとともに、また社会全体にも貢献していくということが望ましい姿であります。仰せになりました点はまことにごもっともでございますけれども、商法自体は、これは無色の会社の組織法ということを基本としておりますので、倫理的な規定というものは含まれていないわけでございます。そこで五十二条のような規定ができておりまして、この規定の読み方を間違いますと、おっしゃるような弊害におちいることもあろうと思いますけれども、その点は最近の社会情勢その他で企業もかなり反省をしておる点もございますし、そういったことによって、会社の事業が適正に行なわれていくということが期待されるわけでございます。 なお、今回の改正におきまして、監査制度を強化するということは、会社が違法な行為あるいは定款に反するような行為、そういう行為をすることをみずから戒めるという趣旨があるわけでございまして、今回の改正によって、精神的な規定はございませんけれども、会社自体の組織が改善されることによって、企業の事業執行の面においても相当の効果が期待できるのではないか、このように思うわけでございます。
○田中(武)委員 大臣、御意見ないですか。
○田中(伊)国務大臣 会社の公共性というようなことがなければならぬという先生の御主張でございますが、私は、ことばは違いますが、営利会社といえども社会的責任を自覚して、その限界内で会社の商行為を行なってもらいたい。これは、そんなことは当然なことだ。国の、憲法、法律によって認められた会社である以上は、条項があろうがなかろうが当然のことである。こう考えるのでありますが、しかし、法制的な判断から申しますと、先ほど局長の申しておりますように、法令、定款の定められた範囲内の行動であるならば、利潤の追求は許される。一向差しつかえがない。こういうふうにやはり考えなければ、営利法人、会社としての目的は達し得ないのではなかろうか。限界はそこに置いてやりたい、こういうふうに考えます。
○田中(武)委員 最初法人の不法行為能力等々を言いましたのはこういう点にもあるわけでありますが、五十二条の一項の会社の定義をそのままにしておいても、他の場所であるいはそれについての二、三、四というようなところで、いわゆる会社の果たすべき社会的機能、社会的責任について定める必要がある。いま大臣がおっしゃいましたのは、これはそのままで受け取ります。当然である。権利の乱用はこれを許さず、そのとおりです。監査制度を強化する、これは二十五年に弱くしておいて、もとに戻すのですね。あるいは定款の話も出ました。そういう点については各論のほうでまいります。私はいま総論をやっています。それは定款の問題にも問題があるあるいは監査制度の問題にもいろいろと問題を提起したいと思う。要は人なんです。人を得るかどうかという問題です。しかし法律上当然のことであるというなら、人を殺してはいけないことはだれも知っておるのですよ。何で刑法百九十九条以下の条文があるのですか、そういうことになるのです。法律上あるいは社会理念上、道徳上当然だということならば、刑法の規定なんかもっと簡単でいいのです。そうでしょう。というような議論にもなるので、その点については各論のところでもっと申し上げます。監査制度を強化したからといってはたして法のというか、いまあなた方が腹からそう考えていないと思うのです。おっしゃっているようなことにならないということも申し上げたいと思う。要は監査役に人を得るかどうかにもなると思うのです。そういうことは各論で申し上げます。 そこで、私は、若干の提案を含めて質問に入りたいと思うのです。 先ほど申しました商法の五十八条ですか、これも一つの司法的な措置なんです。そこで行政的な措置として、たとえば相互銀行法二十一条で銀行法二十三条を準用しておる、これは銀行に限っておるのですが、法令または大臣命令に違反して公益を害するような場合は役員の改任等を主務大臣がやれるというような規定があります。そういうような問題を含めて、司法的な一つの監督規定としての五十八条、と同時に行政的な措置として、銀行法二十三条のような規定を、銀行だけでなくて——今日銀行にこういう規定があるのは預金者保護だ等々言っています。銀行が預金者に対する責任というか、預金者保護ということよりか、商社あるいは大企業の公害のほうがより不特定多数の国民生活に脅威を与える、人命あるいは健康に害を与える、これははっきりしておるのですよ。したがってこういう観念を商法の上に取り入れることが必要でないのか、こう思うのです。今日段階において、そのほうが、この法律の改正よりか急務である、いかがでしょう。
○川島政府委員 仰せのように銀行法の二十三条、銀行が公益に反するような行為をした場合に、主務大臣が解散を命ずるという規定がございます。これは銀行のように公益性の強い企業について特に設けられた規定であろうと思います。同じような規定は、公益性の非常に強い特別法の規制を受けている会社についてはほかにもあるようでございますが、ところで商法の五十八条の規定でございますが、これは一般の会社を対象としたものでございまして、特定の行政官庁の監督を受けていない会社が含まれるわけでございますので、規定のしかたとしてはこういう形になっており、利用される回数もそれほど多くはないようでございますが、仰せのように公害のような問題につきましては、こういう規定を適用することも当然考えられると思います。たとえば五十八条の第一項三号には、「会社ノ業務ヲ執行スル社員又ハ取締役ガ法務大臣ヨリ書面ニ依ル警告ヲ受ケタルニ拘ラズ法令若ハ定款ニ定ムル会社ノ権限ヲ踰越シ若ハ濫用スル行為又ハ刑罰法令ニ違反スル行為ヲ継続又ハ反覆シタルトキ」とございまして、公害罪に相当するような行為を警告してもきかないというような場合には、この規定で解散命令を出すことができるわけでございまして、こういった規定の運用につきましては仰せのとおり今後十分考えていかなければならないものと考えております。
○田中(武)委員 五十八条は、先ほど来言っているように司法的措置です。銀行法等の規定は行政的措置なんです。先ほども言ったように銀行法あるいは相銀法にそのような規定があるということの理由は預金者保護だという。ところが、いま日本人は勤勉で、自分の生活を犠牲にしても、物価が上がれば預金はだんだんと減っていくという事実の前にあっても、なお社会保障制度が確立していない、あるいは政府の政策の誤りのためのインフレが進んでおるという中でも、営営として貯金しておる。しかし、それはまた特定の人なんです。しかし公害とか、商社の買い占めとか売り惜しみ等々は、国民生活により大きな関係を持つ。したがって、そのような規定は、特定な監督を受ける法人というか会社にはあるけれども、そうでないのにはないわけなんです。しかし私のいま言っておるところからいうならば、商法等にもそのような概念を取り入れることが、今日のこの改正より、より重要ではないかと言っているのです。いまあなたが言っている五十八条は、いま私が言っているように司法的措置なんです。行政的措置においてもそういった権限を持ち、チェックする措置が、今日段階においてはより重要である、こう思っているのですが、大臣、立法論としていかがです。
○田中(伊)国務大臣 大臣を交代したらいいほどにたいへん詳しく御研究になっている。 そこで私の見解を申し上げますと、この五十八条によって、法務大臣が文書によって裁判所に申し立てができるならば、裁判所は解散を命ずることができる。むろん条件は書いてある。こういうものを行政的にやる。一般の会社は五十八条によっておる、その場合にどうかということでございますが、やはり民間営利会社に対する処置でございますから、これは行政的処置というよりはやはり株式会社のそれぞれの機関あるいは株主総会というようなものが、自主的、自発的にこれを請求することができるということのほうが合理的ではなかろうか。法務大臣という名前が五十八条にも入っておることごらんのとおりでございますが、いわゆる法務大臣に対して請求をなさしめて、法務大臣が必要と認めたときは裁判所に対してこれを請求できるといったように、これをだんだんと持ってまいりまして銀行に使えるような方向にこれを持っていくことはいかがなものであろうか。民間営利会社の処置は、やはりこの商法五十八条の規定の態度でよくはなかろうかというふうに考えますが、これは信念をもって申し上げるというよりは、いま先生のお話を承って、なるほどと感じた感じを申し上げるわけで、責任の持てることではないわけでございますけれども、一応そういうふうに思います。
○田中(武)委員 大臣、私の質問は一つ一つ分かれておるのじゃない。ずっと続いておるのです。その前に営利法人、なるほどそのとおりです。だが、企業の社会的責任をひとつ商法で明確にうたったらどうかということからつながってくるわけですね。いまのあなたの答弁は感じたということですが、私は五十八条とあわせて検討するに十分ではないか、そのように思うわけです。しかもそれがこの改正よりか今日段階においてはより急務である。商社の買い占めとか公害に対する怨嗟の声は全国津々浦々に起こっておるわけです。 そこでもう一つ私は提案をしたいのですが、こういう発想はどうですか。これはものわかりのいい田中さんなら私が言うのですからわかっていただけると思うのですが、こういうことなんです。それは会社すべてというわけにはいかぬ。いわゆる大企業ということにしましょう。大資本ということにしましょう。それはたとえば資本金五十億以上としてもいいと思いますが、それは検討することにして、その資本金たとえば五十億円以上の会社で、資本金及び借り入れ金を含めて百億以上の資金を運用しているような大きな会社、政府の財政投融資が投入せられておる株式会社、租税特別措置法により特別の減税措置の恩恵を受けており、その額が年間たとえば二十億といったような会社に対して、単に私的資本により運営されている会社ということはできないと思うのです。そうでしょう。言うならば国民大衆の資金が直接間接に投入せられておる。銀行から借りた金も大衆の金、財政投融資はさらにそうである。あるいは租税特別措置法による減免措置を受けておるものはなおさらそうである。こういった国民的なというか、国民が持っておるといっても私は過言ではないと思うのです。これは大衆株主等も含めて言ってもいいと思うのですが、こういうのに対しましては、会社の資金の構成から見ても、いま言ったように国民の金が十分に使われており、それが運用資金になっておる、この会社が、国民経済、国民生活に及ぼす影響の強さから見ましても、社会公共性を強く帯びた企業であるということは否定できないと思います。 このような会社に対しては、これは商法、会社法というか、において特別の規定を設ける、そして経済の民主化と企業の社会的責任を果たさせるための制度として、かりに経営委員会というような規定を設ける——いいですか、これはかりにですよ。そしてその構成は、国民代表的性格を持つ消費者代表、労働者階級を代表する者、金融、企業経営あるいは国民経済等についての学識経験者、公害、環境保全等の国民生活に関する部門の学識経験者、会社の事業活動の主たる地域、いわゆる立地地域の住民代表等を——これは必ずしも公害を出さない企業に公害のというわけではないですが、そういう構成を考えて、そしてその経営委員会、仮称ですが、には次のような任務を持たす。 会社の経営の重要な事項に——これは社会的に大きな影響を及ぼすような、ということになろうと思いますが、重要な事項について、取締役会の諮問を受けて検討しその意見を提出する。その意見書には少数意見の付記を認める。取締役会において経営委員会(仮称)の意見が採択せられなかった場合には、経営委員会はこれを公表する。役員または従業員がその職務の執行としてなした行為で、その効果ないし責任の帰属が会社が負うべき性質のものである場合において、それが公害、環境破壊その他国民の社会生活に悪影響を及ぼすような反社会的性格の高いときには、経営委員会は代表権を持つ取締役の解任をどこかへ求めるというか、あるいは解任権を持たすというところまでいくのはどうかと思うが、解任をできるような道を開く。あるいは、住民は一定数以上——これはいわゆる公害のような場合になると思うのですが、これはリコールではございませんが、住民のその公害の及ぼす範囲、これにもいろいろ問題があろうと思いますが、一定数以上の賛成を得て代表権を持つ取締役の解任請求を、これも法務大臣だかどこか知らぬが、監督官庁のなにに対してといったような、まだまだありますが、そういったような、経営を側面から監視する、これは国民の名において行なうというような、経営委員会といったものを設ける、それを商法の中に規定していく、取り入れていくということについて、ひとついかがでしょう。私のこの提案、田中大臣ならば気持ちがわかるという顔をしておる。私は八卦見ではないですが、そう思っておる。しかしいまここで、そうしますとは言えないかもわかりませんが、いかがでしょう、こういう発想につきましては。
○田中(伊)国務大臣 最近の企業のあり方をめぐって、経営委員会と称するたいへん具体的、建設的な御意見をいただいて恐縮でございます。 私、お考えになっておる御意図は賛成でございす。ただ、一つ先生に御理解をいただきたいのは、こういう御心配を達成するために、こういう経営委員会と称する御提案の仕事をやらすために、実は今回の改正で監査制度を充実したいということを考えて……(笑声)(発言する者あり)いや、笑わずに、ちょっと私の話を聞いていただきたい。具体的に、一口に申しますと、会計監査だけでなしに業務監査もやらすんだ、工場の製造工程から、でき上がった商品の販売から、材料の購入に至るまで。そういう業務監査を同時に行なわしめるということをたてまえといたしまして、取締役会にいままで出席できなかった監査役が出席をして所見を述べる、同時に、先生ただいま仰せになったような事態があると認めまする場合においては、差しとめ請求をすることができる。聞かなかったら裁判に持ち込む、仮処分もするんだ、こういうことができる状態にこの監査役制度というものを内部でしっかり権限を持たせまして、これをやってみたい。これはよいかげんな話じゃないんです。内容が、ごらんのとおり、そういう意図をもってこの内容をきめて、これをぜひ国会にお願いをしたいと言うておるのでございます。 そういう意図でございますので、経営委員会の制度というもの、たいへん建設的な御意見であると存じますので、これは将来の問題としてしかと検討いたします。検討いたしますが、どうかこういうものが実現をいたします段階までに、今回お願いをしております監査制度の権限の拡張強化というこのことをねらっておりますこの商法改正には、ひとつ御理解と御支援をいただきますようにお願い申し上げる次第でございます。
○田中(武)委員 監査制度の改革、これについては私何回も申し上げておるように、各論で申し上げる。まだこれは総論です。これが、いま私のこの提案したようなことを、そのときにまた論議をいたしたいと思います。 理事からの連絡で、十二時半に一応私の質問は中止して、提案説明ということのようであります。次に入りますならば、まだまだたくさんある。ただ、委員長に申し上げておきますが、これだけ用意しておりますので、十分な時間をいただくようにお願いをいたしまして、理事からの連絡の時間でございますので、私の委員会における質問は留保いたしまして、あとにひとつ御期待をこうということで引き下がりたいと思います。(拍手) ————◇—————
○中垣委員長 では次に、横山利秋君外五名提出、刑法の一部を改正する法律案を議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。横山利秋君。
○横山議員 刑法の一部を改正する法律案の提案理由をただいまより申し上げます。 最高裁判所はさる四月四日、昭和二十五年の旧判例を変更して、尊属殺人に特に重罪を科している刑法第二百条は違憲無効であり、尊属殺人についても普通殺人罪の規定である同法第百九十九条を適用するほかはないことを示しました。 最高裁が、憲法第八十一条に定められた「違憲立法審査権」に基づいて、現行法の規定を「違憲無効」とした最初の判例であります。 日本国憲法第十三条は、「すべて國民は、個人として尊重される。」べきことを規定していますが、これは個人の尊厳を尊重し、すべての個人について人格価値の平等を保障することが民主主義の根本理念であるという基本的な考え方を示したものであり、法のもとの平等を定めた憲法十四条一項も、右の基本的な考え方に立ち、これと同一の趣旨を示したものであります。 近代国家の憲法がひとしく右の意味での法のもとでの平等を尊重、確保すべきものとしたのは、封建時代の権威と隷従の関係を打破し、人間の個人としての尊厳と平等を回復し、個人がそれぞれ個人の尊厳の自覚のもとに平等の立場において相協力して、平和な社会、国家を形成すべきことを期待したものにほかなりません。日本国憲法の精神もまたここにあるものと解すべきであります。 刑法第二百条の尊属殺人に関する規定が設けられるに至った思想的背景には、封建時代の尊属殺人重罰の思想があるものと解され、同条が、配偶者の直系尊属を殺す場合までも刑を加重するのは、旧憲法下の「家」の観念を存続させるものであります。 ところが、日本国憲法は、封建制度の遺制を排除し、家族生活における個人の尊厳と両性の本質的平等を確立することを根本のたてまえとしてこの見地に立って民法の改正を行ったのであります。 この憲法の趣旨に徴すれば、尊属がただ尊属なるがゆえに特別の保護を受けるべきであるとか、本人のほか配偶者を含めて卑属の尊属殺人はその背徳性が著しく、特に強い道義的非難に値するとかの理由によって、尊属殺人に関する特別の規定を設けることは、一種の身分制道徳の見地に立つものというべきであり、前叙の旧家族制度的倫理観に立脚するものであって、個人の尊厳と人格価値の平等を基本的な立脚点とする民主主義の理念と抵触するものといえます。 諸外国の立法例において、尊属殺人重罰の規定を廃止する傾向にあるのも、右の民主主義の根本理念が浸透してきたからであります。一昨年の改正刑法草案においてさえも、尊属殺人の規定を削除しているのは、歴史の流れに沿ったものであります。 親子の情は美しく、自然であります。だが、それは個人の尊厳と人格価値の平等の原理の上に立って、個人の自覚に基づき自発的に守られるべき道徳であって、法によって強制すべきではありません。強制の上に成立する制度がいかにもろいかは歴史が示しています。 普通殺人と区別して尊属殺人に関する規定を設け、尊属殺人なるがゆえに差別的取扱いを認めること自体が民主主義の根本理念に抵触し、直接には憲法第十四条第一項に違反するものであります。刑法二百条だけではなく、尊属傷害致死に関する刑法二百五条二項、尊属遺棄に関する刑法二百十八条及び尊属の逮捕監禁に関する刑法二百二十条二項の各規定も、被害者が直系尊属なるがゆえに特に加重規定を設け、差別的取り扱いを認めたものとして、いずれも違憲無効の規定であります。 よって早急にこれらを全面削除し、関連条項を改正する必要があります。 以上が本法案提出の趣旨とその内容であります。 議員各位におかれましては何とぞこの法律案の趣旨に御賛同賜わり、すみやかに可決あらんことを望みます。(拍手) ————◇—————
○中垣委員長 次に内閣提出、出入国法案を議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。田中法務大臣。
○田中(伊)国務大臣 出入国法案につきましては、数々の御配慮をいただきましてたいへん恐縮に存じます。 提案理由の説明を申し上げます。 現行の出入国管理令は、昭和二十六年にいわゆるポツダム政令として制定されたものでありますが、最近におけるわが国の国際的地位の目ざましい向上、国際交流ないし国際旅行の急激な活発化及び航空機の大型化、高速化等に伴い、出入国者が飛躍的に増加しており、かつ、その大半を占める短期の外国人旅行者についての上陸手続の繁雑に対する国際的非難が高まっており、その手続の早急な簡易化に関する国際的要請がきわめて強くなっておるのみならず、在留資格ないし在留活動の拡大または合理化についての内外の要望も強くなっており、他面在留外国人についての在留管理に多くの改善すべき点があるので、これらの要請ないし必要性にこたえるため、現行法制を緊急に改める必要があると存じます。 この法律案は、このような観点から、現行の出入国管理令を廃止し、今日の諸情勢に対応できるわが国にふさわしい出入国制度を確立しようとするものであります。 次に、この法律案による改正のおもな点について、その概要を御説明申し上げます。 第一は、わが国を訪れる外国人の大部分が、九十日以内の短期の滞在を目的とし、しかも観光以外の用務によるものが著しくふえてきておるにもかかわらず、現行の出入国管理令では、短期滞在者の在留資格が観光客に限られておるために、観光以外の用務による短期滞在者の入国手続がきわめて煩瑣であるので、これを改めるために、観光客のほか、スポーツ、親族訪問、見学、業務連絡などの目的で短期間訪日する外国人の在留資格を新たに設けることといたしました。これらの者の出入国手続を簡素化して、いわゆる航空機時代に即応した迅速な手続をとり得るようにいたしたことであります。 第二は、査証を必要としない一時上陸の制度、すなわち、来日する外国人が臨時観光その他の一時的用務のため上陸を希望する場合に船長または運送業者の申請に基づきまして一時的な上陸を許可する制度でございますが、この現行の出入国管理令では、全般的に船舶中心のたてまえである上、わが国に入国をいたしましたときと同一の船舶等によりまして出国する場合に限定をしている不便不都合を改めまして、航空機の乗員・乗客にも同一の考慮を払うとともに、航空機等を乗りかえて出国しようとする場合にも許可ができることとして、その対象範囲を大幅に広げ、かつ、上陸を許可する期間を長くしまして、国際旅行の途中短時日の日本観光等を希望する外国人の入出国を容易にいたしました点でございます。 第三は、在留資格を一定の身分または活動によって定めることを明らかにするとともに、在留資格制度が活発化する経済活動や国際交流に対応できるように活動の範囲を拡大することとし、他面国民の職域等に影響を及ぼす外国人の在留活動に適切に対処できるよう調整をはかったことでございます。 第四に、現行の出入国管理令では、限られた在留資格についてのみ、その変更が認められておるのを改めまして、在留資格を有する者すべてについて、その変更を認めることができるようにいたしましたほか、在留の延長の許可ができない場合でも出国準備のために六十日間までの在留はこれを認め、出国猶予期間の制度、これを無国籍者等の旅券を取得できない特別の事情のある外国人に対して旅券にかわり得る在留外国人身分証明書を発給する制度などを設けて、在留外国人の利便をはかるようにいたしました。 第五は再入国許可制度を改めまして、数次有効の再入国の許可ができますようにするとともに、外国において再入国の許可の有効期間を延長することができるようにして、再入国の許可を受けて出国した者の外国における長期滞在を可能にいたしたのでございます。 第六は、日本国の機関が決定をいたしました政策の実施に反対をする公開の集会等を主催するなど、外国人として当然慎むべき一定の政治活動をした者に対しても、まず中止を命じまして是正をはかることができるように配慮をいたしました。この程度の規制は、主権国として当然の措置というべきであると信じます。 第七は、重要な犯罪について訴追されているなどの外国人について、関係機関から通知があったときは、一定時間出国確認の手続を留保しましてその国外逃亡を防ぎ、刑事手続等が適正に実行できるようにすることにいたしたのでございます。 第八は、退去強制事由に該当した外国人に対しまして法務大臣が与える特別在留許可の制度でございますが、これは現行の出入国管理令のもとでは、必ず退去強制手続を進め、異議の申し出がなされた上で法務大臣が裁決する場合でなければできないことになっておるのでございますが、煩瑣でありますのみならず、不合理でありますので、これを改めて、違反調査の前でありましても、また退去強制令書の発給後でありましても、どのような段階でも、特別在留許可を与え得るようにするとともに、地方入国管理官署の長は法務大臣に特別在留の許可を上申することができるようにして、退去強制該当者の行政救済面の充実拡大をはかったことでございます。 第九は、現行の出入国管理令では、退去強制手続を進める場合には容疑者を必ず収容しなければならない、身柄を収容しなければならないことにしておることを改めまして、退去強制事由が明らかで逃亡のおそれがある場合に限りまして容疑者を収容することとするとともに、収容できる期間も短縮しまして、より一そう人権尊重をはかったことでございます。 第十は、退去強制令書が発付された者について、現行の出入国管理令では、その者の本国に向け直ちに強制送還すべきたてまえとなっておるのを改めまして、退去強制令書発付後十五日間は、入国警備官による送還を差し控え、退去を強制される者が自費でみずからの希望する地域に向けて退去することができるいわゆる任意退去を優先させることとしまして、また、入国警備官による強制送還の場合、本国以外の国への送還は、現行の管理令では、本国に送還することができないときにのみ限られておるのを、さらに本国へ送還することが適当でないと認められる事情があるときでも、本国以外の国に送還することができるようにいたしまして、その送還先の決定についても、本人の希望する国を優先させることといたしました。現行制度の硬直性を改めることにいたしたのであります。 第十一は、戦前から引き続きわが国に居住する朝鮮人、台湾人及びこれらの子につきましては、長年わが国に在留してわが国社会に定着している特殊性を考慮いたしまして、永住者と同様に、精神障害者、麻薬中毒者、らい病患者または公共の負担になっている者であることを理由としてこれらの者の退去強制をしないことを明文で規定をいたしましたほか、中止命令の対象となる政治活動の規制条項を適用しないこととするなど種々の特例を設けまして、一般外国人に比べて優遇措置を講ずることといたしたのであります。 なお、この法律案は、諸外国における立法例、内外における出入国行政の運用例等、広範囲にわたる検討の上成案を得たのでありますが、今回は、さらにこれまで三回にわたって国会に提出をいたしました法律に関し、各界から寄せられた御意見について十分検討いたしました結果に基づいて修正を加えまして種々の改善をはかりました上で、あらためてここに国会に提出いたしました次第でございます。 以上が、この法律案の提案の理由であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決をいただきますようお願い申し上げる次第でございます。 ありがとうございました。
○中垣委員長 引き続き本案について補足説明を聴取いたします。法務省吉岡入国管理局長。
○吉岡政府委員 大臣の説明を補足いたしまして、出入国法案につきまして、その概要を御説明申し上げます。 附則を含めますと百条余りにのぼる法案でございまして、また手続的な規定を多く含んでおりますので、現行の出入国管理令と比較いたしまして、改正したおもな事項に重点を置いて説明をさせていただきたいと存じます。 なお事務局から、なるべく簡潔にという御注意がございましたので、お手元に差し上げました資料に基づきながらも、多少省略させていただきますことをあらかじめ御了承願いたいと存じます。 まず第一の柱は、外国人の出入国手続の簡易化でございます。 その一つは、短期滞在者の出入国手続の簡素化でございます。わが国を訪れる外国人の大部分が、九十日以内の短期の滞在を目的とし、しかも観光以外の用務によるものが著しく増加しておるにもかかわらず、現行の出入国管理令では、短期滞在者の在留資格が観光客に限られておるため、観光以外の用務による短期滞在者の入国手続がきわめて煩瑣でございますので、現行令第四条第一項第四号の観光客にかえまして、第三条第一項第十三号において、観光のほか、保養、スポーツ、親族の訪問、見学、講習もしくは会合への参加または業務連絡の目的その他これらに類似する目的で短期間本邦に滞在する者の在留資格を設けまして、いわゆる短期滞在者というものの範囲を拡大しまして、その上陸手続の簡素化をはかることといたしました。この短期滞在者の在留期間は現行の六十日にかえまして、政令で九十日間を予定しておる次第でございます。 その二は、査証を必要としない一時上陸の許可を受け得る対象者の範囲の拡大でございますが、第十六条は、査証を必要としない「一時上陸」について規定しておるものでございまして、現行令第四条第一項第三号及び第十四条から第十八条までの規定を整理したものでございますが、この法律案では、現行令が全般的に船舶の乗客、乗員の上陸を中心としているほか、わが国に入国したときと同一の船舶等により出国する場合に限定して一時上陸を許可することとしておる不都合を改めまして、航空機の乗員・乗客にも同一の取り扱いをするとともに、航空機等を乗りかえて出国しようとする場合にも許可できることといたしまして、一時上陸を許可できる場合を大幅に拡大し、かつ、上陸を許可する期間を長くいたしまして、国際旅行の途中短時日の観光等を希望する外国人の一時上陸を容易にすることによりまして、出入国手続の簡易化の国際的要請に応ずることといたしました。すなわち、同条第一項におきましては、現行令がその第十四条から第十六条まで、及び第四条第三号に規定をしておりました「寄港地上陸」、「観光のための通過上陸」、「転船上陸」及び「査証を必要とする通過客」を一つにまとめまして、入国審査官は、乗員または通過者が、船舶もしくは航空機を乗りかえるため、または臨時観光その他の一時的用務のために、出入国港の周辺に上陸する場合にあっては七日、他の出入国港におもむく場合にあっては十五日をこえない範囲内で、船舶もしくは航空機の長または運送業者の申請に基づいて一時上陸を許可することができることといたしました。 第二の柱といたしましては、外国人の在留制度の改善でございます。 その一つは、時代の要請にこたえる在留資格制度の確立でございます。第三条は、在留資格及び在留期間について規定しておりますが、同条第一項においては、在留資格、すなわち外国人が、特定の身分を有する者または特定の活動をすることができる者として本邦に在留することができる資格について規定しておりまして、現行令第四条第一項に相当いたしますが、在留資格制度を、広く経済、文化、スポーツ等の各分野における国際交流に対応することができるようにするとともに、国民の職域等に悪影響を及ぼさないように配慮し得るように改めまして、わが国において在留を認める外国人の身分または活動を列挙いたしまして、外国人に入国、在留を認める場合には、その身分によって、または一もしくは二以上の活動をもって在留資格を決定することといたしまして、同条第二項におきましては、外交官等及び永住者以外の在留期間は、三年の範囲内で政令で定めることといたしました。 その二は、在留資格の変更について改めたことでございます。第二十二条は、「在留資格の変更」について規定したものでございまして、現行令第二十条に相当しますが、現行令では、在留資格の変更が認められますのは、商用活動者など一定の在留資格を有する外国人に限られておるのを改めまして、いかなる在留資格を有する外国人も、相当の理由があるときは、すべて、他の在留資格への変更ができることといたしました。 その三は、出国猶予期間の新設でございます。第二十五条は、在留の延長が認められない場合でございましても、出国準備のため六十日の範囲内で出国猶予期間を定めまして在留を許可できることとし、やむを得ない不法残留の生じないようにしたものでございます。 その四は、在留外国人身分証明書発給制度の新設でございます。第二十八条は、「在留外国人身分証明書」につきましての新設規定でございますが、無国籍者等旅券を取得できない特別の事情のある外国人に対しまして、本法の適用上旅券にかわり得る在留外国人身分証明書を発給し得る制度を設けました。 その五は、再入国許可制度の改善でございます。第三十一条は、「再入国の許可」について規定したものでございますが、必要があると認めるときは、その許可を数次再入国の許可とすることができることといたしました。それから第三項及び第四項は、新設の規定でございますが、再入国の許可を受けて出国中の人が、その有効期間内に再入国できない相当の理由があるときは、一年をこえない範囲で有効期間の延長を許可することができることといたしまして、その事務を日本国領事官等に委任することといたしました。 その六は、政治活動に対する規制の法制化でございますが、第二十条に、「中止命令」についての規定を新設いたしまして、外国人として在留国においては当然慎んでもらわなければならない一定の政治活動をした者に対しまして、まずその行為の中止または反復禁止の命令を発しましてその是正を求め、これに従わないときに処罰または退去強制の手続を進めることといたしました。 第一項においては、地方入国管理官署の長は、日本国の機関、すなわち国会、内閣及びその統轄下にある各省等において決定いたしました政策の実施に反対する公開の集会もしくは集団示威運動を主催または指導をした外国人、あるいは、公衆に対しまして、日本国の機関において決定した政策の実施に反対することを扇動する演説、文書図画の頒布等を行なった外国人に対しまして、書面をもって、その行為の中止または同種行為を反復しないことを命ずることができることといたしました。ただし、永住者はその地位にかんがみましてこの中止命令等の規制の対象外といたしました。 第二項におきましては、地方入国管理官署の長が右の政治活動をした外国人に対し中止命令等を発する場合には、手続を慎重にするために法務大臣の承認を要することといたしました。 第三の柱は、退去強制手続の合理化でございます。 その一つは、収容の手続を改めたことであります。第四十八条は、「収容令書による収容」について規定したものでございますが、現行令第三十九条ないし第四十三条並びに第四十七条第一項、第四十八条第六項及び第四十九条第四項の規定に相当いたしますが、現行令では、退去強制手続を進めるには、必ず容疑者を収容しなければならないとしているのを改めまして、外国人の人権尊重により一そうの配慮をする趣旨から、容疑者が退去強制事由に明らかに該当し、かつ、逃亡し、または逃亡のおそれがあるときに限って収容することができることといたしますとともに、収容期間も現行令の六十日以内を四十日以内に短縮いたしまして、かつ、収容の事実を被収容者の指定する在留者に通知しなければならないことといたしました。 その二は、特別在留許可制度を改めまして、退去強制事由該当者の行政救済面の充実拡大をはかったことでございます。第二十七条は、法務大臣の「特別在留許可」について規定したものでございますが、現行令においては、法務大臣による特別在留許可の認められますのは、退去強制の手続が行なわれ、異議の申し出をした場合に限っておるのを改めまして、特別に在留を許可すべき事情があるときは、いつでも与えることができることといたしました。すなわち、法務大臣は、退去強制事由に該当する外国人であっても、その者が、日本人の親族でその扶養を受けているものであるとき、本邦に本籍を有したことがあるとき、永住の許可を受けていた者であるとき、その他特別に在留の許可を受けるべき事情があるときは、いつでも特別在留許可をすることができることといたしまして、さらに本人の救済をはかるため、地方入国管理官署の長も特別在留許可の上申をすることができることといたしました。 なお、退去強制手続が進められました場合でも、法務大臣が異議の申出を理由がないと裁決いたしました場合には、特別在留許可をするかどうかの判断をしなければならないことを明らかにいたしております。 その三は、任意退去を優先させる制度の採用でございます。第四十六条は、「退去強制令書の執行」について規定したものでございますが、任意退去にはすべて許可を必要とする現行令第五十二条の制度は、外国人の人権尊重の精神から、これを改め、退去強制令書の執行当初において、十五日以内は、本人が希望する国へ向けみずから国外退去をすることについて許可を要しないことといたしまして、その間、入国警備官による送還を行なわないことといたしました。なお、十五日を経過した後におきましても、地方入国管理官署の長は、任意退去を許可することができることとなっております。 その四は、退去強制者の送還先について特別の配慮をしたことでございます。第四十五条は、「送還先」について規定したものでございますが、外国人の人権尊重の精神から、現行令の規定しております本国送還の原則を緩和いたしました。すなわち、強制送還先は、まず、退去強制される者の国籍または市民権の属する国といたしますが、本国に送還することが不可能な場合に限らず、本国に送還することが適当でない相当の事情がある場合にも、本国以外の国に送還できることといたしまして、その場合、本人の希望する国を送還先に指定しなければならないこと、その者が希望する国を申し出ないとき、または希望する国に送還できないときは、本人の意思をできる限り尊重して、親族が居住しておる国その他の国を送還先とすることができることといたしまして、さらに、地域を特定いたしまして送還することが相当であるときは、その地域を送還先とすることができることといたしまして、これらの規定によりまして、いわゆる政治的亡命者についても妥当な取り扱いがなされ得るように配慮いたしました。 第四の柱は、出入国管理行政事務の改善でございます。 その一つは、船舶または航空機の乗員に対する配慮をしたことでございます。 その二は、日本人の出帰国手続の迅速化をはかり得るようにしたことであります。第五十九条は、本邦外の地域におもむく意図をもって出国しようとする日本人は、有効な旅券を所持し、出入国港において入国審査官から出国の確認を受けなければならないことといたしまして、第六十条は、本邦外の地域から本邦に帰国する日本人は、有効な旅券を所持し、出入国港において、入国審査官から帰国の確認を受けなければならないことといたしましたが、現行令第六十条及び第六十一条で出国の証印または帰国の証印としておるのを出国の確認または帰国の確認といたしましたのは、手続の簡素化を考慮に入れたものでございます。 その三は、重要犯罪人の国外逃亡防止をはかり得ることとしたことであります。第三十条は、諸外国の例にならいまして、外国人の「出国確認の留保」について新設したものでございますが、重要犯罪を犯した疑いのある外国人の国外逃亡を防止するため、死刑、無期もしくは長期三年以上の懲役、禁錮にあたる罪につき訴追されておる者等につきまして関係機関から通知を受けておるときは、二十四時間を限りまして、その者について出国の確認を留保することができることといたしまして、出国の確認を留保したときは、通知をした機関にその旨を通報しなければならないことといたしまして、この二十四時間の期間内に司法機関等が刑事手続等を適正に実行し得るようにいたしました。 その四は、被収容者の処遇について配慮したことでございます。第七十条は、収容令書または退去強制令書により収容されております者の処遇に関する規定でございまして、現行令第六十一条の七に相当しますが、新たに、被収容者の本国政府の外交官もしくは領事官または代理人もしくは弁護人である弁護士と被収容者との間の面会または通信については制限等をしないこと、及び被収容者から処遇に関して不服の申し出があった場合には処理結果を申し出人に告知することを明文化いたしました。 最後に第五の柱は、戦前から引き続きわが国に居住する朝鮮人、台湾人及びこれらの子につきまして、その在留の経緯、特殊性を十分考慮いたしまして、種々の特例を設け、一般外国人に比べ優遇措置を講じたことでございます。 附則第十四条は、昭和二十七年法律第百二十六号の一部改正について規定いたしましたが、同法第二条第六項に該当する者、すなわち戦前から引き続きわが国に在留する朝鮮人及び台湾人とそれらの者の子で平和条約発効の日までに出生した者、これらの者は以下法一二六−二−六該当者と申し上げますが、この法一二六−二−六該当者は、同条約発効の日にみずからの意思にかかわりなく日本国籍を喪失した特殊性にかんがみまして、同条項により、在留資格を有することなく本邦に在留することができることとされてきたのでありますが、これらの人々は、この法律の施行後も引き続き在留資格を有することなく本邦に在留することができることといたしております。 附則第十六条は、法一二六−二−六該当者及びその子についての優遇措置等を規定したものでございます。 第一項におきましては、法一二六−二−六該当者は、政治活動の中止命令等、再入国及び退去強制に関しては、永住者と同様に扱うこと、すなわち、中止命令等の規定は適用せず、また、らい患者、精神障害者、覚せい剤の慢性中毒者もしくは麻薬中毒者または貧困者等公共の負担となるおそれのあるものであることを、退去強制事由とせず、また再入国に際しましての上陸拒否事由としないことといたしまして、第二項及び第三項におきましては、法一二六−二−六該当者が永住資格その他の在留資格の取得を希望いたしますときは、永住その他の在留資格を取得できる道を開きました。 第四項及び第五項におきましては、法一二六−二−六該当者の子として出生した者につきまして、その範囲を明確にするとともに、これらの人々は、終始出生時の身分を維持することができるほか、この法律の適用上永住者の家族とみなし、したがって資格外活動の規制を受けないことを明らかにいたしまして、また、その親と同じく、政治活動の中止命令等の適用を除外いたしまして、退去強制事由及び再入国に際しての上陸拒否事由につきましても、その一部の適用を除外することといたしましたほか、在留の延長申請の手数料を免除することと規定いたしました。 第六項及び第七項におきましては、右の者の子として出生した者につきましては、終始出生時の身分を維持することができるほか、この法律の適用上永住者の家族とみなし、したがって資格外活動の規制を受けないこととするとともに、在留の延長申請の手数料を免除することといたしました。 第八項におきましては、法一二六−二−六該当者及びその子の配遇者は、いずれもこの法律の適用上、永住者の家族とみなすことを規定いたしまして、したがって資格外活動の規制を受けないことを明らかにしております。 附則第十七条は、出入国管理特別法の規定によりまして永住の許可を受けている者、すなわち日韓協定による永住者に対するこの法律の適用について規定いたしまして、政治活動の中止命令等の適用除外、再入国の際の上陸拒否事由の一部適用除外及びその家族の取り扱いを、法一二六−二−六該当者と同様に規定しました。 以上でございますので、本法案につきましてすみやかな御審議をいただきまして、本法案の成立をお願いいたしたい次第でございます。 以上をもって説明を終わります。
○中垣委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。 両案に対する質疑は後日に譲ることといたします。 次回は、来たる十五日火曜日午前十時理事会、午前十時十五分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後一時十一分散会