P政策ポータルPOLICY PORTALウォッチ
71回国会衆議院1973/03/07

法務委員会 第8号

発言数
54
登壇者
5
会派数
2
開催日
1973/03/07

会議録

中垣國男自由民主党

○中垣委員長 これより会議を開きます。  法務行政に関する件及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。沖本泰幸君。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 私は、法務大臣の所信表明につきまして本日は御質問したいと存じます。なかんずく、所信表明の中にお述べになりました人権擁護の問題について御質問いたします。  まず、大臣は所信表明の中で国民の権利の擁護についてお述べになっていらっしゃいます。「その一は、人権擁護についてであります。あらためて申し上げるまでもなく、基本的人権の擁護は民主政治の基本でありまして、国民のそれぞれが互いに他人の人権を尊重し合いながら幸福を追求するという態度が必要であることはいうまでもないところであります。しかしながら、自己の利益を主張して他人の人権を顧みない風潮が依然として見られるのでありまして、今後ともあらゆる機会を通じまして人権尊重の啓発活動を行ない、一方、人権擁護委員をはじめ人権擁護関係機関の充実強化をはかり、もって、国民の間に近代的な人権思想の普及徹底をはかるよう努力」いたす所存であります。こういうふうにお述べになっていらっしゃるわけでございますが、まず法務省全体の職員の定数は五万から六万ぐらいであって、その中で人権擁護の職務に従事していらっしゃる職員の方々は大体二百人あまり、私が見ましたのはその程度になるわけでございますが、この法務省の定員から見ると、全体の法務省の定員の約一%ぐらいが人権擁護に従事していらっしゃる職員、こういうわずかな職員の方ではたして国民全体の人権擁護ができるかどうかという点にあるわけであります。公安調査庁の職員数あるいは刑務所の職員あるいは所管は違いますけれども警察官の総数、こういう侵犯事件の起こりやすい官庁の職員の方々を見ますと、総数は約二十万人以上、こういうことになるわけです。これらのいわゆる特別公務員等の人権侵犯事件は現在でもたくさんある、こういうことになるわけで、法務省の統計でもその点は出ておるわけでございます。公務員以外の私人による人権侵犯の件数も相当にのぼっておるわけです。したがいまして、最も新しい統計からいきますと、人権侵犯事実の認められたもので七千二百八十九、これ以外のこれに該当しない件数でも、相談事件などの件数を見ると、仕事の量は相当なものであって、その内容は国民の基本的人権の擁護という立場から最も大事な問題である、こういうことになってくるわけです。ですから、まずこの二百人余、こういうふうな法務省の職員の方の人数で、はたして人権擁護局の職員が完全に人権を擁護できるかどうか、全うし得るかどうか、こういう点に非常に疑問を持っているわけです。そういう点から、人員の増加ということはお考えにならないわけでしょうか、その点をお伺いしたいと思います。

田中伊三次自由民主党法務大臣

○田中(伊)国務大臣 人権擁護について格別の御配慮をいただきまして、たいへんありがたいと思っております。先生おことばのとおりに二百人余り、二百人ちょうどぐらいになっておる。そこでこれだけの人員をもってしては、人権擁護の重要性、多様性、複雑性にかんがみまして、とうてい数は足らぬのであります。年々歳々その増員に苦心をいたしておりますが、なかなか微力で思うとおりにまいりません。本年もごくわずかな増員ということでこれをまかなうことになったのでございます。しかし、そうきめられております以上は、これを十分にその能力を動員をいたしまして、最善を尽くして御期待に沿うようにやっていきたい。将来の問題としましては、おことばの御趣旨に従いまして、増員ということに対してはしっかり苦心をしていきたい、こう考えております。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 そこで、職員の数もそういうことになるわけですが、地方法務局の場合、人権擁護課は課長を含めてわずか四人か五人、こういうことになるわけです。ちょっと憎まれ口めいて感じますけれども、部屋も法務局の片すみで、端的にいうと登記所の一隅に人権擁護課がある、こういうふうな感じであります。法務局の主流はどうしても一番問題化されておりますから登記という問題にしぼられるわけで、そういう点からまいりますと法務省の法務局も同じですけれども、特に地方法務局の人権擁護課ということになると、まるでアクセサリー程度にしか見られない、こういうことになるわけです。こういうことでは実際面でほんとうに人権擁護業務ができるのかどうかということになるわけで、大臣の将来に向かっては十分やるというお答えになるわけですけれども、これだとまず第一に、ここにお述べになっている「基本的人権の擁護は民主政治の基本」だということにこれは反してくる。この数の実態、それから地方法務局の実態あるいは法務省の中のいわゆる人権擁護局の実態、そういうものは結局大臣がお述べになっている所信表明の趣旨とはおよそかけ離れた存在であるということになるわけであります。結局そういう点から見ると法務省の主流は刑事局であり民事局であって、人権擁護局はまるきりすみっこの——人員整理の場合もこの辺が一番攻められて少なくなったということも聞いております。職員がはたして国民の権利を守ることができるだけの、そういう気概が持てるか持てないか、こういうことになってくるわけであります。  そこでもう一つ突っ込んでお伺いをしますと、人権侵犯事件統計報告表を見ますと、事件の内容は警察官による人権侵犯事件あるいは教育職員による体罰とか、あるいは刑務職員によって起きている暴行とか不当処遇あるいは税務職員による侵犯あるいは公務員によって起こっておるところの侵犯事件、こういうふうに区分されてきておるわけです。それだけ述べても相当な内容ということになってまいります。また私人による人権侵犯事件では、述べるまでもありません、人身売買、売春、酷使、虐待、精神衛生法関係の人身の自由の侵犯から村八分、同和問題の差別待遇あるいは参政権の侵犯とか、労働権に対する侵犯、不当労働行為、労働基準法違反、民事の紛争、公害、こういうふうなきわめて多くの種類の重要な人権侵犯の内容が報告事件として出ているわけでもありますし、これは社会機構が複雑化するに従いまして、またいわゆる過疎過密、こういうふうな関係からも、事件数はだんだん増加していることは想像もできますし、実際にそうである、こう考えられるわけですけれども、こういう多種多様な人権侵犯に対して、職員がこの問題を解決していくためには高度な法律知識が必要であるということはこれはもう常識上でも考えられるわけです。そういう意味からいきますと、きのうまで登記事務をやっておった職員が、ですから戸籍や供託の問題、そういうことを取り扱っていたのが、きょうから異動によって人権擁護課に配置がえになった、こういうことは、もう常時あるわけです。私が聞いて回っても、人事異動ですぐそういうことになっていく。そうすると、この多種多様な事件に即して、重要な法律を駆使して、人権擁護の事件を全うできるかどうか、こういうところは疑問になってまいります。  それで、お伺いしたいのは、人権擁護の職務に従事する職員で、何かのそういうことについての基準があるのかどうかという点ですが、その点いかがでしょうか。

田中伊三次自由民主党法務大臣

○田中(伊)国務大臣 基準の問題は、人権擁護局長から御説明させますが、ちょっと一言その前に申し上げたいと思いますことは、なるほどおことばのように、人権擁護局、本省、それから法務局、地方法務局と、ここにおります者の総数はやっと二百名でございます。たいへん数は少ないのでありまして、おことばのようなうらみはございます。ございますが、民間にはたいへん有能な、厳選の人選で任命をいたしました人権擁護委員が一千名近くもおるわけでございます。これらの人々が、日ごろ感謝にたえないのでありますが、たいへんよく活動をしてくれておりまして、この民間の人権擁護委員が、高度の法律知識を備えております職員の諸君との間に近密な連絡をとって盛んに活躍しておること、御承知のとおりでございます。それから、相当程度の成果をこれによって得ているというように私は見ておるのでございます。  それから人事は、なるほど人事の異動によって、いままでの部署と違ったところから人権関係の職員に配置がえをされることもございますけれども、これはいずれもその学歴、いままでの経験等から観察をいたしまして、人権擁護委員の相談相手になって指導ができるという見通しのあります者を、何ぶん数が少ないことでありますので、常に厳選をするように心がけておりますが、この点も及ばずながら最善を尽くしておる、こういうつもりで大いに力を入れてやっておるわけでございます。  先ほどお尋ねの点につきましては、局長から答えさせます。

萩原直三法務省人権擁護局長

○萩原政府委員 特に基準というものは別にきまっておるわけでもありませんけれども、先ほど先生御指摘のように、戸籍事務等をやっている者が急に人権擁護事務を扱うということには、相当考慮する余地があるということは、われわれもよく考えておりまして、できるだけそういう方々も人権擁護事務を適確に扱うように、われわれといたしましては特に研修につとめております。特に人権相談及び侵犯について必要な技法を体得するように勉強してもらっております。それを具体的に申し上げますと、毎年、課長クラスに対しましては、中央で一週間程度の人権実務訓練、または三週間程度の専門研修を実施いたしております。さらに係長及びその他の一般職員に対しましては、各法務局、地方法務局におきまして、ただいま申し上げました中央で研修を受けた者が、その自己の受けた研修内容を浸透させるように、たとえば種々の実例を通しまして、実地に指導するようにつとめている次第でございます。先生が御心配になるような点をできるだけカバーするように、日ごろからつとめております。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 大臣なり局長の御答弁なんですけれども、具体的にその職員が刑法とか刑事訴訟法、警察官職務執行法、税法のうちで立ち入り質問検査権、こういうふうな規定とか、売春防止法とか、そういうふうな内容について深く知っていなければできないはずです。特に本省はもちろんのことですけれども、地方法務局の人権擁護課におきましても、その下に全国で現在約一万名近い人権擁護委員がいらっしゃるわけでありますし、それから大臣のお話ですと、その中で約千人ぐらいは専門知識を十分備えた有能な方が活躍していらっしゃる、こういうことになるわけですけれども、しかし、そういうふうな形は私はおかしいんじゃないか、こう考えるわけです。つまり法務省の人権擁護局なりあるいはその人権擁護に従事される係の方、職員の方が、人権擁護委員にいろいろな問題点を指摘しながら、また、人権擁護委員から持ち込まれるいろいろな事件についてそれを整理される、あるいは取り上げてもいき、あるいはアドバイスもやっていかなければならないのが実際の事務であるべきはずなんです。それが単に課長級で年に一週間程度の研修、あるいはいわゆる職場がかわった場合にそれに対してある程度の研修を終えて行かすというようなことで十分果たせるか果たせないかということは、もう論をまつまでもない、こういうことに私はなるんじゃないか、こう考えるわけでございます。  それで、きょうは、大臣が御退席になるまで時間がありませんから、一足飛びにどんどん進めていきまして、こまかい具体的な問題については、また時間を次にいただいてやっていきたい、こう考えますけれども、それと同時に、まず、全国の人権擁護委員が、定数が二万人であるべきなのに一万人しかいない、半数しか従事していらっしゃらない。法務省のほうでは、二万人を確保できるワクを持っていらっしゃるわけです。しかし実際には一万人しか出ていない。予算面からいきましても、一カ月に四百七十円がいわゆる費用弁償的な金額である、こういうことでもありますし、それから人権擁護委員の平均年齢が六十三歳、こういうことではたして複雑になってきている人権擁護問題がこなせるかどうか。昨年も私は九州方面を当委員会の視察として視察してきましたけれども、家庭裁判所の中にでもいわゆる身の上相談的な相談、人権擁護的な内容のものがどんどん持ち込まれて、そうして生活に関する問題でも何でも相談を受けて、それをいろいろやっていらっしゃるということになるわけですけれども、そういう現代の社会機構で変わっていっているいろいろな複雑な問題も一般的に取り上げられるような時勢になってきているわけです。その中で、その六十三歳が平均年齢であるいわゆる人権擁護委員が、はたしてその役割りを果たしておるのかどうか、こういうことに私は疑問を持つわけです。私が接している方々でも、いわゆる町の顔ききであり、あるいはそこに定着した生活なり社会において豊かな方がなっていらっしゃる。特に法務省からいただく人権擁護委員の任命の額を掲げて、むしろその人たちはそういう肩書きに名誉的なものを感じながら、極端なことをいえば、その方々は選挙運動を熱心にやっていらっしゃるような場面が非常に多く出ている。そうしてその一年間の相談件数についても具体的に十分あるわけではなくて、ただ単にそういう職務についていらっしゃるのじゃないか、こういうことがうかがわれるわけです。そういたしまして、その内容からいきましても、いまのこの制度からいきましても、これはもうずっと前からこの制度がきまったなりで、私から極端に言わせると、明治以来このままできているんじゃないかというふうに私は感じるわけなんです。その点についていかがでございますか。

田中伊三次自由民主党法務大臣

○田中(伊)国務大臣 ちょっとおわびを申し上げますが、先ほど一千名に及ぶと申し上げましたが、一万名、私の勘違いでございました。  それから、いま先生のおことばの中で、特に私もその感を強くいたしますのは、この一万名に及ぶ大事な人権擁護委員でございますが、この人権擁護委員が老齢化してきたという感がどうも深いわけでございます。この老齢化をどう取り扱うかということはたいへんむずかしい問題でございます。なに、若い者を任命すればいいじゃないかというふうに、簡単にいかないところもございます。何ぶん人権擁護の事案の内容というものが、先ほど申し上げますように、抽象的に、いわば複雑、多様な内容にだんだんと発展をしてきておるわけであります。そうすると、人生の経験を積んだ人でなければ人権擁護はなかなかむずかしい。これは何か国家権力をもってずばり起訴をするとか、罰則を適用するとかいうものでありますと、若い者でもやれるのであります。原則として人権擁護のやり方は強制力を持たぬというところが特色中の特色として、わざわざそういう制度になっております。強制力を持たないで、しかし自由人権思想をどこまでも高揚していくということが、人権擁護委員の任務となっております。そういう点から申しますと、人生に深い経験を有する人でなければ、この人権擁護委員というものはつとまらぬ。こうなってまいりますと、勢いお年を召された方で、ひまのある人で、生活に困らない人で、公共のために尽くせる人というような条件の人ということになりますと、その結果は、好まぬことでございますけれども、先生おことばのように、高齢化してくる、老齢化してくることを避けがたい。ここのところをどういうふうにすべきものか。高齢化という問題は、ただいま先生のおことばの中では一番重要なものとして私の胸の中におさまっておるわけでございます。何か名案はないかということをただいまも盛んに検討しておるところでございます。仰せのごときうらみがございます。それに対して、まあしかし現状のもとにおいてはいろいろな行政上の制約がございますので、その制約のもとに最善を尽くして、おつとめをしていきたい、こう考えるのでございます。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 大臣のお答えですけれども、人権擁護委員法の六条には、青年も予定されているということになっておるわけです。ですから、年寄りでなければならないということはないわけですけれども、結局平均年齢六十三歳、これはもうはっきり出ているわけです。そうなりますと、一般社会通念からいくと、社会生活活動期を終えて、そして定年退職していらっしゃるような方々になってくるわけです。  それで、年々複雑になっていく人権問題が——いわゆる経験豊かな方ということはおっしゃいますけれども、そういうことでできるかどうかということになるわけですね。  先ほど申し上げましたとおりに、いろいろな法律を駆使したものの中から考えていただいて、対処していただくということになりますと、わずらわしいから結局さわらないということにもなっていきますし、一カ月間で四百七十円前後のお金の支給の予算しかないということになれば、結局何ももらわないで、動いたら金は自分の持ち出しということになるわけです。はたして、そういう中で人権擁護委員が十分に調査とか何なりかんなりを出向いていってやれるかということにもなりますし、またそういうふうな状態の中にあって、いわゆる住民の中から、人権擁護委員のところへ問題を持ち込んでいって頼んで、この問題を解決してもらおうという考えが出てくるかどうか。あるいは地方法務局のほうへ行って人権擁護課をさがしてみても、すみのほうにしかなくて、はたしてここにたよって自分の人権を守ってもらえるような方向で取り扱ってもらえるだろうかどうか、むずかしい問題を持ち込んでいったら、法律関係で全然十分なことはわかってもらえない、こういうことになっていけば、勢い担当の職員の方でもむずかし過ぎるとなおざりにしてしまうということになってくるのではないか、こういうふうに私は心配するわけです。  ですから大臣のおっしゃっているところへ食い下がるわけではありませんけれども、人権擁護は民主主義政治の基本であるというふうにみずからお述べになっていらっしゃるわけですから、そういう観点からとらえていきますと、十分国民の基本的な人権が守られていくだけの役目を、人権擁護局なりあるいは職員なりあるいは人権擁護委員が果たさなければ、あるという存在だけがおかしいということになると私は考えるわけでございますが、大臣はその点についてどうお考えでございますか。

田中伊三次自由民主党法務大臣

○田中(伊)国務大臣 おことばの内容を心して、現制度のもとにおきましても最善を尽くしていきたいと思います。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 この点は十分お考えになっていただきまして、重大な御関心をお示しになって、充実していただかなければならないということになっていきます。そうでなければ所信表明に述べたことがうそにもなってまいりますし、また国民の重大な人権が侵されてしまっているということにもなってくるわけでございます。  それから、大臣あまり時間がおありでないので、今度は人権侵犯事件調査の根拠法についてお伺いしたいわけでございますが、この人権侵犯事件調査の根拠の法律は、法務省設置法十一条の一号がその根拠法だということになると思いますが、この点について、大臣、いかがでございますか。

萩原直三法務省人権擁護局長

○萩原政府委員 ただいま先生が御指摘のとおり、法務省設置法、さらに法務省組織令、それに基づきまして人権侵犯事件処理規程という訓令がございまして、これらに基づいて人権侵犯事件が取り扱われております。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 いま局長がお述べになりましたわけですけれども、それではいま人権侵犯事件の調査は大臣の訓令に基づいておやりだということですか。人権侵犯事件を調査する法律の根拠はどこにあるのでしょうか。

萩原直三法務省人権擁護局長

○萩原政府委員 ただいまの御質問は、人権擁護委員がやる場合のことでしょうか。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 ええ、そうです。

萩原直三法務省人権擁護局長

○萩原政府委員 それでは先ほどのお答えは訂正いたします。人権擁護委員法の十一条の三号によっております。そしてその執務規程といたしまして、人権擁護委員執務規程というのがございます。それによって行なうことになっております。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 この第三号の執務規程というのは、内部の部局を規定しておって、その所管事項を規定していることになるのじゃないですか。

萩原直三法務省人権擁護局長

○萩原政府委員 そのとおり、内部の者に対する一種の規律といったようなものでございます。ですから根拠法自体は人権擁護委員法の十一条でございます。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 結局人権擁護委員法だけが根拠法であって、人権擁護委員法というのは内容を規定しているだけであって、あとは、いわゆる職務内容を示す事項別を根拠におやりになるのじゃないですか。

萩原直三法務省人権擁護局長

○萩原政府委員 人権擁護委員の仕事自体はそのような仕組みになっておるものでございまして、具体的な事件を調べる場合におきましても、その事件を通じて人権意識を高揚普及するということにつとめてまいりまするし、または現実に人権侵犯事件があるということが調査の段階でわかりました場合も、関係機関への連絡とか、あるいは被害者がどういう救助を求めているかというふうなことについての助言をすることによって、現実的な事件の処理をお手伝いしているわけであります。ただいま大臣が御答弁になりましたように、あくまで法的効果はなく、しかも強制力もないわけでございます。そういう意味から、先ほど申し上げましたように執務規程という内部規律によってやっているわけでございまして、そのような行為を通じまして、あくまで人権意識の高揚をはかるということを第一義にしております。したがって法的効果を求める場合には裁判制度によっていただくということになるわけでございます。そういたしますと、全く効果がないのではなかろうかという反論があるかもしれませんけれども、われわれの執務の経験から申し上げますと、勧告その他事実上の処置が実際に相当の効果をあげておりまして、われわれといたしましては、その程度のもので、できるだけそれが効果があがるようにつとめていくべきだというふうに考えております。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 ただ根拠は、法務省設置法第十一条ということだけが根拠法になっているわけです。ほかの省では、これを受けたところの作用法が出ているわけで、こうこうこういうふうにするという、法律がですね。その作用していく法律が全然なくて、ただ法律的な根拠というのは法務省設置法であり、その中は、何々に関する事項と、こういうことをきめた内容だけで、そして実際に人を呼んで質問して、そして公務員の人権侵犯事件があれば、それによって勧告しているということになると、これはおかしいのではありませんか。

萩原直三法務省人権擁護局長

○萩原政府委員 国民と国家の間、あるいは国民同士の間で、権利、義務に直接影響を及ぼすようないわゆる法規を対象にするような場合は、そういう法律が必要になってまいりますけれども、私どものやっておりますことは、先ほど申し上げたような程度にとどまるものでございます。したがって、そのような根拠を法律に求める必要はありませんし、またわれわれの仕事の性質から申し上げまして、現在の程度によるべきであろうというふうに考えております。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 人権侵犯事件処理規程というものをつくって、その規程自体が大臣の訓令によってやっていらっしゃるわけでもありますし、そういうことによって人を告発したり、あるいは処分、勧告をしたり、他の行政官庁に、いろいろなことに及んでいるということになっていくと、結局内部規則規定にすぎないことが根拠になってやっているということになると、ほかの所管の各省で行政作用法をつくっておる事態は、いまの例からいくと必要がないということになるわけです。法務省と同じように設置法だけつくって、それを基準にして、そして何でもやっていいということになるわけじゃありませんか。法律があって、それを受けていく行政作用法がずっと並んできて、それに従ってどんどんやっていくということになっていくのじゃないですか。法務省だけがこういうことになる。私の勉強したところではそういうことになるわけなんです。その点について大臣いかがですか。何か行政作用法をつくらないとおかしいということになるのじゃないですか。ことに人権に関しての問題になるわけですから。

田中伊三次自由民主党法務大臣

○田中(伊)国務大臣 いま局長から説明を申し上げましたように、人権擁護委員法の十一条三号というものによりまして根拠をもってやっておるわけでございますが、本来申しますと、人権擁護を必要とする人権侵犯事件の大部分は、犯罪を構成するような場合が多うございます。犯罪を構成するような人権侵犯が行なわれました場合には、人権擁護委員が活躍をする余地はない。ずばり刑罰の適用によって、勾留をするなり逮捕するなり取り調べをするなりという行動が行なわれるわけでございます。そういうところにまでは及ばないけれども、しかし困ったことには人権侵犯があるんだ、罰則適用というところには及ばないのだけれども、人権侵犯があってまことに困るのだという、そういう範囲の事件を人権擁護委員がとらえていく。そしてそれを法務大臣にも報告をし、みずからも勧告をし、みずからもそれに対しては対処をしていくというやり方をしておりますために、あまりめんどうくさい指示規定を設けていないということが現状でございます。  いままでの経験から申しますと、一万人の委員が地方法務局の諸君と互いに密接な連絡をとってきております実情からいいますと、先生仰せのような詳細な規定をつくらずとも大体やっていけるのではないかという見通しでございます。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 しかし勧告を受けたりしたほかの行政官庁は、直ちにそれによって作用を起こしていっているわけです。波及していっているわけです。それほどのものではないのだということで、別につくっていないのだということになるのですけれども、その辺がおかしいんじゃないですか。ただ訓令だけを根拠にしてやっていっているということであれば、ではほかのほうもめんどうなそういうふうな行政作用法をつくらないでやっていけばいいということになるわけです。法務省の側のおっしゃるとおりの方法をとっていくのであれば、それではほかも何でもできていく、こういうことになるわけじゃないですか、逆に申し上げますと。むしろそういうことよりも、その法律を受けて作用を起こしていく行政法的な法律を、ぴしっと規定をつくって、それに当てはめてやっていくということでなければおかしいということになるわけです。私はそういう点疑問を持っておるのです。

田中伊三次自由民主党法務大臣

○田中(伊)国務大臣 いわゆる国民を、人権侵犯をいたしました者を、加害者を、みずから処分をするとかいうようなことはする余地のない事件を取り扱っておるわけであります。先ほどからくどく申し上げましたように、罰則適用に至らざるもので、人権侵犯で困るというものを取り扱っておるわけでございます。よほどの行き過ぎた者を発見いたしました場合に、警察、検察に連絡するということは全国でなくはない。しかし非常にこの問題は希有でございます。  そういうことでございますが、たまたまそういう連絡、申告をいたしました場合においては、その連絡、申告を受けた者は、それぞれの自分の立場の規定に基づきまして手続をとって善処をしておってくれるのであります。人権擁護委員の行ないます行動としては、あまりこまかい規定を設けないで自由な立場で、自由人権思想の高揚ということを頭に置いて、処罰を目的としないで人権の擁護をしていくというまことに微妙な仕事をさしておるわけでございます。そういうやり方から申しますと、こまかい規定を設けて、この規定で処理をさすということも一つの考え方でございますが、現在のところはそれなくしてやっておりまして差しつかえはない、こういうふうに見ております。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 大臣がおっしゃることは、そのままずばり憲法の定めるところの基本的人権を尊重をしていかなければならない。国民の人権を守らなければならない。そういう観点に立ってみると、先ほどからずっと申し上げておるように、人権擁護委員の働きが非常に鈍い。あるいはお年を召していらっしゃる。あるいはいろんなところから配置がえになった方々の働きも、しろうと目に見ても十分仕事はできないのじゃないかというふうなところに全部及んでいるんじゃないか。むしろそういうことを、国民の人権を守るために正しい行政的な法律をつくって、それをきちっと根拠にして、そしてさらに国民の人権を守る方向に向かっていくことが、この複雑な社会機構の中で複雑になっている人権問題を取り扱っていく、国民の人権を守るために必要ではないかということになるわけです。ですから、たとえば人権擁護調査法であるとか、あるいは人権侵犯事件調査法であるとかいうような法律をつくってこそ、そのワクにはめてどんどんやっていくこともできるし、またその調べている人の、調査をしている人の人権を侵す場合もあるわけでもありますし、あるいは実際に人権を侵されている問題についてもきちっとした調査ができていくということにもなり、それを根拠にしてほかの行政官庁に対するいろんなことにもなるし、十分な活躍がそこから生まれてくる。そういうことをなおざりにしていらっしゃるから結局はうやむやの人権擁護局になってしまって、そして法務省の片すみに、非常に悪口になりますが置かれてしまって、名だけの人権擁護局ということになり、実際に扱った件数はあるのはありますけれども、現在のこの機構の中で人権が守られているかいないかということになるわけです。その点について大臣、法律をつくるお考えはありませんですか。

田中伊三次自由民主党法務大臣

○田中(伊)国務大臣 先ほどから申し上げますように、法律をつくって線密な手続規定を設けまして、聞かない場合にはこうするぞといったようなことができると、たいへん人権擁護の仕事もすっきりするのであります。しかし本来わが国でとっております人権擁護制度というものはそうではないので、罰則を適用するような余地のある行き過ぎた人権侵犯が起こるときには、警察なり検察なりその他の役所がおりまして、ずばり処罰を目的にいたしまして取り調べを行なえる。そういう罰則適用の程度には至らない、至らないが人権上困ったものだという事案を取り扱うのが人権擁護局、人権擁護委員という仕事となっておりますので、先生からごらんをいただきますと幾らかずさんに見えるのでございますけれども、融通無碍に相談相手になって、自由人権思想の高揚というただ一つを目標にしてやっておりますこと、なかなか苦労な仕事でございます、強制力を持たないでやれというのですから。しかし強制力を持ってやるよりはもっと大事な仕事だから、強制力を持ってやる仕事はちゃんとほかに警察なり検察があるのじゃないか、強制力を持たないでやらされる仕事が人権擁護の仕事でございますので。しかし、いま先生の熱心なおことばを承りまして、感謝をしながら承ったのでありますが、この熱心なおことばを速記録をあらためてよく拝見をいたしまして、そして仰せのような制度を確立することのほうがよくはないかということも一つの御意見であると思います。制度をつくったから罰則を適用しなければならぬことはないのでございますから、罰則のない仕事であるけれども制度的に筋を通して手続規定を明白につくったらどうかという御意見に対しましては、えりを正して検討をいたします。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 これは大臣の所信表明の中に、「基本的人権の擁護は民主政治の基本」だということもあるわけですから、この点が尊重されなければこれは何にもならないということになるわけです。実際に、人権を顧みない風潮が依然としてふえていることもお述べになっていらっしゃるわけですから、その点についてはいまおっしゃったとおりに法律をおつくりになって、それは幅の広いものであり、いまおっしゃったような方向で十分活躍ができていって、実効があがっていくようにならなければ、実際にはその基本的な人権は守れない、こういうことになると思うのです。ですから、ぜひともその法律をつくる方向で御検討いただきたいと思います。その点いかがですか。

田中伊三次自由民主党法務大臣

○田中(伊)国務大臣 検討いたします。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 大臣に対しては、あとはこの次にまたあらためて御質問いたします。  では次に生活保護と人権擁護、こういう点についてお伺いしたいのですが、厚生省からお見えになっていますか。——これは具体的な問題としてお伺いしたいわけですけれども、私も選挙中痛感したことなんですが、非常にお年寄りがふえてきている。そして狭い路地の奥へ入っていくと身寄りのない、ほんとうに見離されたお年寄り、孤独になった方々がたくさんいらっしゃるわけです。実際に私はそういう目でものを見てまいりましたし、一々実例もたくさんあるわけですけれども、こういう方々で生活保護を受けられないという方ですね。たとえて言いますと生活保護規定からこぼれたというとちょっとおかしいわけですが、生活保護規定を当てはめてみると、生活保護規定にははまらないで少しはずれているということで、生活保護を受けられないという方で悲惨な事件がたくさんあるわけです。そういう数字はいまどれくらいありますか。

中野徹雄厚生省社会局保護課長

○中野説明員 お答え申し上げます。  最近わが国の人口の老齢化に伴いまして、生活保護を受けておられる方々の中に老齢者の方々が非常にふえてきておるということは事実でございます。その率を申し上げますと、たとえば七十歳以上の老齢者の方々千人のうち保護を受けておられる方々が三十九人、つまり百人に四人ほどの方々が七十歳以上の方々では保護を受けておられるということになっております。それに対しましてたとえば若い方々がおられない高齢者だけの世帯をとりますと一六・五%の世帯が保護を受けておられるという形になっております。  われわれが行政的に把握いたしておりますのは、生活保護の基準によりまして保護を受けておられる方々がどれくらいあるかという数字でございまして、その先生御質問のように、たとえば保護を申請したけれども生活保護法の立場から保護は受給できなかったというような老齢者の方々のケースがどれくらいあるかということにつきましては、残念ながら手元に資料がございません。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 たとえば、これは大阪の堺で実際にあった問題なんですけれども、七十二歳になるお年寄りがいて、奥さんが七十七歳ですか、まあこの年齢は正確ではないんですが、三十歳になるむすこさんがいたけれども、むすこさんは入院しっぱなし。七十七歳の奥さんが血圧がだんだん高くなって、病院通いを始めた。厚生年金を年間に十六万円もらっておった。そして生活保護を受けておったわけです。ところがまあ七十二歳になっても元気だから、じっとしておるのもおかしいというところで、動ける間は働こうということでマーケットの近くでキビだんごを売り出したわけです。原料も要りますし光熱費も要るわけですし、いろいろなものを差し引くと、一カ月一ぱい売れないわけですから、日数にして二十日くらいですので、収入はもともと入れても三千円くらいだというんですね。じっとしているよりは動いたほうがいい、こういうことで始めたのですけれども、たまたまそのお年寄りのことが朝日新聞に出たわけです。それを見た堺市の福祉事務所の担当の方が、働けるのなら生活保護は要らないでしょう、こういうふうに言って打ち切ったというのです。問題は、こういう実例なんですね。じゃ、おまえさん死ねというのか、すわっていて、じっと死んでいくのを待てというのかというのが、このお年寄りの言い分なんです。そのほかにも、鹿児島の方で、ネコの額ほどの土地を耕したところが、そのとれたところの野菜を金額に換算して生活保護費から引いた、あるいは子供が高校に行っているのをいきなりおろされてしまった、あるいは電気冷蔵庫は入らないから売れとか、テレビを売れとか、電話を売れとかいうことが、新聞紙上に枚挙にいとまがないわけです。そういうものを含めながら、厚生省が示している生活保護基準というのがあるわけです。そうすると、われわれの観点からいったら、そういうようなあり方というものは、はたして人間の人権というものを中心にして考えた生活保護基準であろうかということです。毎年のように生活保護費は幾らかずつ上げていってはおります、物価を反映さしてですね。そういう点から考えていきますと、現在の厚生省の生活保護基準がはたして人権を守るに足るだけの、生活権を守るに足るだけの保護基準であるかどうかという点について私は疑問を持つわけなんですけれども、その点いかがですか。

中野徹雄厚生省社会局保護課長

○中野説明員 先生御指摘の堺市の事件につきましては、手元に資料もございますが、その詳細は別といたしまして、保護基準につきましては、先生御指摘のとおりに毎年毎年、ここ数年、年率で一四%ほどずつ上げてまいっております。もちろん、現在の保護基準が完全にそれで十分なもの、満足なものと申し上げるわけではございませんが、御承知のように生活保護法の財源はすべて一般納税者の負担によってまかなわれているということもございまして、年々改善をしながら、現行の基準で一応御納得をいただくという考え方で基準を設定いたしておるわけでございます。もちろん、先生御指摘のように、法律上の規定がいろいろございまして、たとえば保有する資産の問題であるとか収入をいかに認定するかというふうなことにつきましては、われわれといたしましても非常に苦心をいたしまして、それらの方々の福祉の観点あるいは自立更生という観点から、できる限りの配慮はいたしてまいったつもりでございます。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 そういう点で持ち出したいのが朝日訴訟ということになるわけです。朝日訴訟の中で出ているのは、憲法で保障されるところの健康で文化的な生活、これが人権の基本になるわけですね。そういう点から考えていくと、最低限度の生活であるかどうかの認定判断は厚生省がやるんだということを裁判所側はいっておるわけです。憲法に違反するかどうかという問題あるいは違法の問題だけについて裁判所側が断定を下すのであって、生活保護をしておったことの内容そのもののいわゆる当、不当の問題に関しては、これは行政の問題であって、行政側の政府の責任だ、こういうふうに述べているわけです。ですから、生活保護法の趣旨とか目的とかという立場に立って考えるときに、その中には必ず、健康で文化的な生活を保障するという内容が含まれてこなければならないということになるわけですね。そういう点が十分加味された生活保護基準であるのかどうかという点はいかがなんですか。

中野徹雄厚生省社会局保護課長

○中野説明員 先生御指摘のとおりに、朝日訴訟の最高裁の判決におきましても、基準の高い低いの問題につきましては裁判所の違法審査の対象になり得ないという判決になっておるわけでございまして、したがいまして、その基準については厚生省側が全責任を持ちまして、憲法に保障する健康で文化的な水準というものを確保するという責任があるわけでございます。もちろん、先ほども申し上げましたように健康で文化的な最低限度の生活というものをいかなる程度のものとして設定するかということにつきましては、そのときどきの経済状況、国民生活の実態等に照らして判断をいたさなければならないわけでございまして、これが物理的に非常にはっきりした形で確定し得る性格のものではなく、非常に流動的な要素も多いわけでございます。  それで、各種の要素を勘案いたしまして厚生大臣としては保護基準を設定いたしておるわけでございまして、これにつきまして、先ほど申し述べましたとおりに、この現行の基準あるいは四月から一四%アップになるわけでございますけれども、それがもうこれで全く十分だというふうに考えているかと申しますれば、必ずしもそうではございませんが、先ほど申し述べましたとおりに、毎年毎年の改善を積み重ねながら、納税者の負担も考えて、一応この程度で御納得をいただきたいという姿勢で考えておるわけでございまして、今後もその基準の改善については最善の努力をいたしてまいるという立場に立っておるわけでございます。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 特に最近は福祉問題が一番大きな社会の問題になっていき、そういう観点からすべての方向がいま角度を変えていっている最中なんですね。ですからそういう点についても、厚生省のほうは、納税者の立場を考えてみてその生活の程度自体の最低限度なり、あるいはそういうものと見合ったところの生活保護を受ける人たちの最低限度というものをおきめになっているという御説明だと思うのですけれども、しかしそのほかに、先ほどから盛んに申し上げているとおりに、いわゆる憲法で定めるところの人権を守るだけの内容が含まれた厚生省の生活保護基準でなければ、結局厚生省のほうは人権を侵しているということになってくると思うのです。先ほど朝日訴訟を持ち出したのは、最高裁自体が結局その生活保護基準が当然であるか不当なものであるかというものは行政のワク内で考えるべき問題である、違法性があるかどうかという点については裁判所の裁量事項であるということが述べられておるわけです。そういう点について、将来に向かってそういうものをもっと内容を含めたものでやっていかなければ、この生活保護基準というものはむしろ人権を侵害したなりに行なわれておるということになるからいま言ったような問題が出てくる、具体的に出てきている、こういうことになるわけです。実際にそういうふうにやられた方々が訴えていくところがないわけです。訴訟を起こそうにも、訴訟費用なんかあるわけはないのです。そういう人たちの立場を考えたそこに基準を置いて、いわゆるあたたかい生活保護というものが行なわれてこなければ、この法律の趣旨に反すると私は考えるわけですけれどもね。その点については、厚生省の中ではそういう議論はないわけなんですか。

中野徹雄厚生省社会局保護課長

○中野説明員 もちろん、先生の仰せになりましたような、たとえば現行の生活保護基準というようなものは、憲法で定める、また生活保護法にも定めておりますところの健康で文化的な最低限度の生活を満たしていないという判断がされた場合には、当然にさような問題が生ずるわけでございますが、われわれの立場といたしましては、現在の国民生活の実態その他諸般の要素を勘案いたしまして最善の基準を作定し、これを実施しているという立場でございまして、もちろん、各種の社会条件の変化によりましてなお改善すべき事項というものが、そのときどきできわめて流動的に出てまいることは当然でございますから、これはそれなりに今後も積極的な姿勢で基準の改善に努力してまいりたい、こういう立場に立っておるわけでございます。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 最高裁のおっしゃっていることは、現実の生活条件を無視して著しく低い生活保護基準を設定する等憲法及び生活保護法の趣旨、目的に反して裁量権の優越、乱用があったときには違法で司法審査の対象となる、こういうふうに述べているわけです。こういう点が、ただ御当人もなくなった、判決もあったということだけで済まされる問題ではないと私は考えるわけです。またこの行政訴訟が起こされて、第一審では敗訴になっているのですね。ですから、そういう経緯というものもよくお考えになっていくと、最高裁のほうの判断の違法とされなかったというところに根拠を置いて、そして先ほども申したとおりに、最低生活というものの内容と比べてみたときに、いまあるところの生活保護基準というものが、非常にその違法性というものをはらんでいるというふうな意味合いになってくるわけです。そういう点をお考えになって、生存権の問題という点で、厚生省のほうは十分考えなければならない大きな問題だということになってまいります。ですから、これはあらためて生活保護基準というものについて、もっと真剣な態度で、国民の生活に立ったところの考えをもってやっていただかなければならないと思うのです。  そこで、いわゆる人権擁護局のほうでは、その当、不当の判断は裁判所のするところではないんだという答えが出ているわけです。そして、結局、行政府自体の専属守備範囲に属する判断事項だ、こういうふうな答えが出ているわけですね。それじゃ今度、行政官庁のやっているところの当、不当というものは、当然、厚生省で当然であるか不当であるかということを、厚生省みずからその問題を考えたときに、いや、私のほうはこれは不当なことでございましたという答えを出すことは、絶対にないということになるわけです。そうしたときに、一体どこがそれをチェックして、勧告するなりあるいは改めるかという問題になってくるわけです。これは局長さんのお答えになる範囲をまだもう一つ越えてしまっているかもしれませんが、重大問題として、これは局長さんお考えになっていただかなければならない大きな問題として、法務省としてこの問題をお考えいただきたいわけです。そういう当、不当について、いわゆる法務省のほうから、同じ政府部内にあるところの行政官庁に向かって、これは不当性があるではないかというような勧告が行なわれなければ、先ほどから基本的人権の擁護は民主政治の基本であるという政治の力というものは発揮できない。それで、日の当たらない、貧しい、人権を侵され、生存権を侵されているような人たちの最低の生活を守ってあげるだけの人権擁護にはなっていかない。こういうことになると、これは重大な問題になってくるわけですが、その点について局長さんの御見解はいかがですか。

萩原直三法務省人権擁護局長

○萩原政府委員 先ほど来お話しの老人の問題、われわれ実務を通しましても、非常にお気の毒な方々があることを知っておりまして、われわれの立場からも何らかお助けになることができればしたいと常々考えているところでございます。しかし、生活保護基準自体の問題は、やはり関係行政機関の間で配慮されるべきことであって、われわれは、それがいま保護課長が御答弁になりましたように、順次改善されていくことを希望するものでありますけれども、私たちの立場から直ちにその基準自体について勧告をするというふうなことは考えておりません。ただ、先ほど先生も御指摘のように、非常に困窮した老人が、訴訟もできない、どこへ訴えていいかわからないというふうな困った具体的なケースが生じましたときには、まさにわれわれ人権擁護委員その他人権擁護機関の担当すべきところでございまして、その方々の御相談に乗って、もし訴訟でやるべきであれば、訴訟援助というような方法もございますので、その面で許される適切な助言その他関係機関との連絡等をとるように取り計らいたいと思っております。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 私申し上げているのは、先ほど言ったとおりに、当、不当はその行政官庁がきめるんだというふうに裁判所が言っているわけです。きめるべきところの当該官庁は厚生省である。みずから出した生活保護基準が当、不当であるという答えをみずから出す場合には、絶対に不当であるということを言い得るわけはないわけです。妥当であるということを言うであろうと思うのです。きのうも係の方がおっしゃっておりました、私たちは絶対に自信を持っておりますと。それは、法律で定められたワク内では自信をお持ちなんだろうけれども、ワクからはずれた及ぼしていく行き方に対して自信なんか持てるはずはないわけです。そういうものはどこでチェックしてどこでどうしてあげるかということになれば、当然人権擁護局の担当すべき所管、内容になっていくんじゃないか。それができないというところに、そこに法律的な不備があるからできない。先ほどから申し上げていることはそこにあるわけなんです。そういう問題を全部見合いながら、人権擁護局のほうから調査をして勧告をするような方向に向かって法律を変えていくなり何なり前進的な措置がとれるような方向でなければ、国民のための政治であったり、国民のための政府であったり、国民のための人権擁護であるということは言えない、私はそういうふうに思うわけです。そういう観点から、なぜそういう点について前向きになってそういう問題と取っ組むということにならないか、こう私はふしぎでならないわけなんですが、この辺になってくると、大臣がお答えになるべきような内容になってくると思いますが、前向きで検討するとおっしゃっているわけですけれども、これはぜひとも人権擁護局のほうで、法律の成文化をはかっていただいて国会へ出していただいて、そういうふうな基準になる法律をおつくりいただきたい、私はそういうふうに考えるわけですが、その点どうですか。

萩原直三法務省人権擁護局長

○萩原政府委員 そのような立法化ということは現在のところ考えておりません。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 大臣が前向きに考えると、こうおっしゃっているのですよ。検討するとおっしゃっているのですから、あなたのほうでも、土台になるようなものについて検討して、大臣にも出して、いろいろと検討してというふうな姿勢がなければ、これは話にならないと思いますけれどもね。これはどうですか。

萩原直三法務省人権擁護局長

○萩原政府委員 先ほど来申し上げておりますように、われわれ人権擁護局の立場といたしましては、あくまで具体的なケースを通して人権意識の高揚をはかる、そうして個々の具体的な人たちの救済をはかるという点に主眼がございますので、その点はなお今後先生のお話もよく考えまして、私どもとしてもいろいろな点から検討してみたいとは存じております。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 それでは元へ戻りますけれども、法務省が持っておるところの人権擁護委員法の四条では、二万人まで人権擁護委員を置くことができるというふうになっているわけですけれども、それが現在数は九千七百五十六人、こういうふうな内容だと思いますけれども、なぜ半数にしか満たないのですか。

萩原直三法務省人権擁護局長

○萩原政府委員 擁護委員法の四条の第一項では、先ほどお話しのように、「二万人を越えないものとする。」というふうに規定されておりまして、第二項で、「各市町村ごとの人権擁護委員の定数は、その土地の人口、経済、文化その他の事情を考慮し、法務大臣が定める。」という規定がございまして、この規定に基づいて定数規程ができております。各町村ごとに定数を割り出しますと、約一万九千何名かになっていたかと思います。その点からも、やはりおっしゃるように人数が足りないわけでございますが、これは予算の関係もございまして、私どもとしてはできるだけ二万人に近づくようにつとめておるわけでございまして、その一歩と申しましょうか、四十八年度の予算では、百六十人ですかの増員が認められる予定になっておりまして、今後もなお努力を続けて、二万人の人員に近づくようにつとめていきたいと思っております。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 悪口のようなことを先ほど申し上げましたけれども、人権擁護局自体が、法務省の中でほんとうに片すみに追いやられて、仕事をしていらっしゃらない、できないではないかと思われるくらい冷遇されているわけですね。それから地方の法務局へ行って実態を見てみましても、登記をやっているところの片すみのほうに追いやられている。むしろ登記を手伝っているというにすぎないような実態です。それでは役割りは果たせないわけです。かてて加えて、先ほどから申し上げていますように、年間、一人頭五千五百円ですね、実費弁償の予算は。ですから一カ月で、これは四十七年度ですけれども、四百七十円前後、こういうことになるわけです。大臣に申し上げましたけれども、交通費も弁当代も込みで、一回一日のあれにも満たないわけです。ですから、人権擁護委員という肩書きしか自分の役に立っていない、こういうことになるわけです。それでありますから、労働団体に従事している方であるとか、あるいはいろいろな社会機構の中にいらっしゃる方の中に、こういうふうな社会問題を取り上げていらっしゃる非常に有能な方もたくさんいらっしゃるわけです。ですから、もっと若い方にまじっていただいて、そして前進的に人権擁護が果たせるような内容に持っていっていただかなければ何にもならないということになってまいります。また、現在のいろいろな複雑な社会生活の内容というものが、はたして平均年齢六十三歳以上の方々で十分に考えられるかどうかということになるわけです。人権問題は、お年寄りだけの問題ではないわけであって、若い人の中にも人権問題が出てきていますし、捨て子の問題も、いま非常な社会問題にもなってきておりますし、いろいろな社会世上の不安な問題も出てきておりますし、いろいろな複雑な事件が相前後して出てきておるわけです。ですから、現在のような人権擁護委員の内容では、頼む側のほうから、また問題を持ち込む側のほうから、十分持ち込むような気にもなれない、こういうことになるんじゃないか、こういうふうにも思いますし、幾ら人権擁護課の職員の方が実際に法律的なもの、法規的なものをいろいろ説明したり、あるいは研修してみたところで、それが徹底できるとは考えられないわけですね。そうすると、結局は、話は持ち込んだけれどもうやむやに済まされてしまうおそれのほうが多分にあるわけです。それでは役目を果たした、果たせるということにはならないと思うんですけれども、この点は真剣に考えて改革していただかなければ、たいへんな人権侵害が起きている、それがそのまま埋もれてしまっておる、こう思わざるを得ないわけです。そういう点について、もっと定員もふやすし、あるいは年代もかえていくというお考えはありませんですか。

萩原直三法務省人権擁護局長

○萩原政府委員 まさに人権擁護委員の質を向上するということは先生御指摘のように、われわれも常日ごろ希望しておるところでございまして、できるだけそれに沿うように、私どもの許される範囲内で努力を続けていきたいと存じております。  なお、先ほど百六十名増員と申し上げましたのは間違いで、百四十名でございましたので訂正させていただきます。  さらに実費弁償金は、四十七年度は一人年間五千五百円になっておりますが、四十八年度予算においては、一人年間六千円の計上が予定されております。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 人権擁護委員が扱った人権擁護相談数というのは、昨年度で約十二万件と出ておりました。そうすると、一カ月で一万件ということになります。そうすると、約一万人の人権擁護委員ですから一人一カ月一件、こういう平均になってくるわけです。で、狭いけれどもたくさん人が込み合っているこの日本で、この国土の中で、人権相談で委員一人頭平均一件というのは少ないんじゃないか、こういう感じがしますけれども、原因は何ですか。

萩原直三法務省人権擁護局長

○萩原政府委員 それは確か少ないと思います。もっとたくさんやっていただきたいと思っております。ただ実際におやりになっている例を見ておりますと、自宅で相談する、あずかる、そして相談表を所管の地方法務局なり法務局のほうに通知してこないという例もございますようで、これだけの数ではあるいはないのではないかという推測もいたしております。  いずれにせよ、これだけの方々がおられるのですから、先生御指摘のように、もっと大いに人権相談の面でも働いていただくように、われわれ常日ごろお願いしておりますし、今後もそのようにつとめたいと存じております。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 昨年六月に法務委員会で九州方面を回りましたときにも、先ほどお話したとおり、家庭裁判所でも法律相談を受けますという看板を出したところが一向に来なかった。身の上相談という看板を出したら続々来だした。そして、家の中の問題、夫婦間のいろいろな問題からどんどん相談件数がふえていった。そういうことで非常な活躍を家庭裁判所はいまやっている、こういう報告があったわけです。ですから、家庭裁判所の中へかけ込んでもその程度になってきているわけですから、全国にいらっしゃる一万人の、半数ですけれども、人権擁護委員の方が問題を扱われていないはずはないということになるわけですから、いわゆるその地域の住民の方に、人権擁護委員がここにおりますと目につかない。ただ人権擁護委員として委嘱しますとか、任命しますとか、法務省の証書自体がその人の家の中に麗々しく掲げられておる、あるいはその人の名刺の中に人権擁護委員という肩書きが刷り込まれている、あるいは家の門戸のところに人権相談についてはこういうような、あるいは人権擁護委員という札が張ってある、その程度ではないかと思うのです。一般社会の中に溶け込んでいって、その中から人権侵害に及ぶ問題を拾い上げていかなければ人権は守られないわけなのですね。それから起こしていって、今度は実際の人権侵害事件というものの内容を検討していただいて、そして取り上げていただく、あるいは裁判所へ行きなさい、あるいは裁判所へ行くような手続をとってあげよう、あるいは訴えを起こすときに、お金がないときにはこういう方法がある、こういうふうにもやっていきなさい、あるいは地方法務局の中でこの事件を事件として扱って、報告書をつくって、そうしてその人たちの人権を守る方向に向かってアドバイスするなり進めていくようなことになると思うのです。そういう点がいまの家庭裁判所のあり方というものと、先ほどからずっと申し上げている人権擁護局の内容、本省並びに地方の局の内容から比べていくと、これは大きなロスがありあるいは大きなミスがある、こういうふうにも考えざるを得ないわけなのです。その点について改めていって、もっとことし一年真剣に考えてこの問題を解決しようというような意欲的な局長さんのお考えありませんでしょうか。大臣に進言して、これは大事件だ、基本的人権にかかわる問題で重大問題だ、こういうふうにひとつ発奮して、この中の機構なり何なりを改革していくようなお考えはありませんですか。

萩原直三法務省人権擁護局長

○萩原政府委員 人権擁護委員が一万名もおりながら十分な活躍がされていないということは、先生御指摘のとおりではないかと私自身も考えております。それでわれわれとしては、できるだけ一般の国民の方々に人権擁護委員があるということを知っていただいて、大いに活用していただくようにいろいろの面でつとめておりますが、なお現在も御指摘のような状態でございますので、その一つの方法といたしましては、来年度からモデル地区というのを設けまして、重点的にその地区に啓蒙宣伝の活動につとめることになっております。その他われわれの許される範囲内でできるだけ人権擁護機関の内容を充実していきたいと存じております。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 大臣も時間がなくて御退席になりましたので、私はまだまだこの問題についてもっと掘り下げてみたいと考えておりますけれども、また日をかえて質問させていただきたいと思います。  これで終わります。

中垣國男自由民主党

○中垣委員長 次回は、来たる九日金曜日午前十時十五分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午前十一時五十四分散会

国会会議録検索システムで原文を見る ↗