懲罰委員会 第8号
- 発言数
- 20 件
- 登壇者
- 8 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1973/06/23
会議録
○早稻田委員長 これより会議を開きます。 議員小林政子君懲罰事犯の件を議題といたします。 本件についての質疑は前回の委員会において終了いたしております。 この際、議員小林政子君に対し、懲罰事犯として懲罰を科すべきかどうか及び、懲罰を科することとすれば、国会法第百二十二条に規定するいずれの懲罰を科すべきかについて、御意見を求めます。 稲村利幸君。
○稲村(利)委員 本件は、これを懲罰事犯として、国会法第百二十二条第三号により、二十日間の登院停止を命すべしとの動議を提出いたします。 その理由は、去る四月二十六日の物価問題等に関する特別委員会における総理大臣に対する小林君の発言は、一国の総理大臣に対して礼を失した無礼の言であって、国会法第百十九条の規定に反するばかりでなく、議院の品位尊重に関する衆議院規則第二百十一条の規定に反して議院の尊厳を傷つけたものであって、議院の秩序を著しく乱したものと考えられるからであります。 以上が本動議提出の理由であります。
○早稻田委員長 田邊誠君。
○田邊委員 私は、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党を代表いたしまして、本件は懲罰事犯と認められないので、懲罰事犯にあらずと決すべしとの動議を提出いたします。 議員小林政子君の本年四月二十六日、物価問題等に関する特別委員会における発言は、議員の当然の権利としての発言権に基づくものでありまして、何ら懲罰の対象となるものではありません。すなわち小林君の発言は、第一に、物価政策に対する政府の無策を追及し、この基本に関連をして田中総理の政治姿勢をただしたものであります。 特に、田中総理の日本列島改造論が打ち出されて以来、土地の高騰は著しいものがありまして、この政治責任を追及することは当然なことであり、これが小林君の質問の本旨であります。 そして、この日本列島改造計画の中心である一日行動圏としての新幹線、高速道路の通過地域の土地の買占めは目に余るものがあります。この中には、その通過を事前に情報として知り、あらかじめ土地の買いあさりをしているといううわさが流布されておるのも確かであります。 その一例として、上越新幹線の通過地点における疑惑を解明しようとしたのもまた当然のことでありまして、われわれとしてもうかがい知れるところであります。したがって、このような列島改造計画を持ち出し、その推進に当たってきた田中総理と親友の間柄にある人が、その前後に新幹線ルート付近に土地を買っているというこの事実と総理との関係があるのではないかという疑問に対して問いただすことも、また必要なことであろうと思います。したがって小林君の発言は、その本質におき、その趣旨においても、現在国会に課せられておる物価問題に対する政府の施策に対して国民を代弁する立場で行なわれた発言であります。われわれは小林君の発言は当然の権利として認めらるべきものと思うのであります。 自民党から出されておりますところの懲罰動議の中に、小林君の発言中にいろいろな不穏当な字句がある、こういうことがいわれておりますけれども、議員の発言中幾らかの不十分な点あるいは若干の前後の事情の不明な点がありましても、これは当然その間の事情を解明をすれば事足りるのであります。当日の委員会におけるところの質問時間等の制約の中から、小林君の発言の中におけるこれら不十分な点は、当然質問技術上の問題として許容さるべきものであり、物価特別委員長のとった措置においても明らかなとおり、これは当該委員会において処理され得るものでありまして、これを懲罰にかけるごときは断じて許すべきでないと思うのであります。私は、このような懲罰動議が出されまするならば、今後における国会における発言の制約として重大なものがあると考えておるわけでありまして、われわれはあくまでも自由な立場に立って国会の審議に参加し、そして与野党を通じ政府の施策の改善を求める立場から、われわれはこれを認めていかなければならぬと考えておる次第であります。 今回の懲罰動議を出したことに対して、われわれはこれを断じて許すことはできません。したがって、小林君の発言は前後の事情を照らし、その内容をつまびらかにいたしましても、懲罰事犯にあらずとわれわれは考えておるわけでございますから、この意味から本件に対しては、懲罰事犯にあらずと決すべしとの動議を提出する次第であります。
○早稻田委員長 ただいま自由民主党の稲村利幸君から、本件はこれを懲罰事犯として、国会法第百二十二条第三号により二十日間の登院停止を命ずべしとの動議、また、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党を代表して田邊誠君から、本件は懲罰事犯として認められないので、懲罰事犯にあらずと決すべしとの動議がそれぞれ提出をされました。 —————————————
○早稻田委員長 これより、これら動議を一括して討論に付します。羽田野忠文君。
○羽田野委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、稲村利幸君提出の懲罰事犯として、国会法第百二十二条第三号により二十日間の登院停止を命ずべしとの動議に賛成し、田邊誠君提出の懲罰事犯にあらずと決すべしとの動議に反対するものであります。 以下その理由を申し述べます。 去る四月二十六日、議員小林政子君は物価問題等に関する特別委員会におきまして、田中内閣総理大臣に対する質問のうちにこういうことを述べております。 新幹線や高速道路または地域開発計画に起因し、周辺地域の地価急騰の問題を取り上げまして、かような「計画が発表される以前に情報をいち早くキャッチして、その地域を資金を持っている者が買い占めていく」行動に対して規制すべきではないだろうかという問題を提起したその後に、具体的な事実といたしまして「上越新幹線の上毛高原駅が発表になった昭和四十六年の十月以前に土地が相当あの近辺で買われているという事実が、私の調査によっても明らかになっております。その土地は上毛高原駅からわずか一・五キロメートル以内の山林、原野、ここが具体的に昭和四十三年から四十四年にかけて、群馬県利根郡のいわゆる月夜野町の字石倉地区という地域が相当土地を買われているわけでございます。しかも、買い主は株式会社」上牧荘であると具体的な事実を摘示をしております。次いで、田中総理はかつて上牧荘の取締役をされておられ、現在上牧荘の取締役八内島さんとたいへん古くから知り合いで親しい間柄といわれておったと田中総理と上牧荘の関係を述べた後、さらに、田中総理は「上越新幹線を含めた全国のいわゆる新幹線網あるいは新全国総合開発計画などの具体的な日本列島改造を進めていく、こういう計画、構想、こういうものに非常に密接にタッチ」していたという、いわゆる情報を知り得る立場にあったということを述べて、そのあと結論的な判断として、「たまたま新幹線計画が発表された時点の中で、そのすぐ近くに駅ができるというようなことはいろいろと——しかもその近辺の土地が、山林、原野が相当買われているというような事実について」一国の総理大臣がみずからの政治的地位を利用して「このようなことがやられたんじゃないか、」「私は非常に大きな疑問を」持っておりますという疑問を提起し、なお引き続き、二国の総理大臣が、この点についてほんとうに政治姿勢を改めると同時に、そのようなことをやっていたのでは、いまの不当な商社のこの買い占め、本気になってこれを取り締まり、やめさせていく」ことができるだろうかという結論を述べておるわけであります。 この一連の質問は、筋をたどってみますと、結局、田中総理大臣が上越新幹線計画をその発表前に知り得る立場にあり、その知り得た情報を親友の入内島氏に提供して上毛高原駅付近の土地を買収させたというような一般的印象のとれる質問をしておるのでありまして、これは一国の総理大臣の政治姿勢を問う重大な発言であります。 しこうして、それでは一国の総理大臣の政治姿勢が疑われるような具体的な事実があるのかどうかという点について、その後当委員会で調査をいたしました。ところがその結果によりますと、こういうことになっております。 小林議員が指摘しておられる昭和四十三年から昭和四十四年にかけて石倉地区で上牧荘が買い受けた土地というものはどれだけのものがあるのか、これは地続きのがけ地千六百二十九平方メートル、坪数にして四百九十三坪、これがあるだけのものであります。相当の土地が買われておるという指摘を受けたのは、この四百九十三坪の土地のみであります。 なお、それでは、昭和四十六年以前にということを言っているから、四十六年以前に取得したものがその石倉地区やあるいはその周辺にも上牧荘のものがありゃせぬか、ここまで厳密に調べ上げたその集計でも、山林、原野あるいは一部の畑が加わって合計して六千三百二十三平方メートル、坪数にして千九百十四坪弱、これだけのものを上牧荘が買い受けて登記をしておるという事実があります。およそ計画発表前に情報を取得して資金のある者が買占めるという大前提に立った、しかも、一国の総理大臣の政治姿勢を追及するというような問題として取り上ぐべき問題でありましょうか。山間の山林、原野が坪数にして二千坪弱、これだけのものを買い受けたということはきわめて疑惑であるということ、それ自体が常識として納得できない。 それでは、その土地というものはどういうととろにあるのか、新幹線の上毛高原駅予定地のすぐ周辺にあるのかどうかというような点についても、当委員会で調べたところによりますと、小林議員は、この買い受けた土地は「上毛高原駅からわずか一・五キロメートル以内の山林、原野」であるというふうに述べております。この「わずか一・五キロ」というのも、駅に近いあるいは駅周辺ということについては相当疑問があります。しかし、これは人の見方、見方でありますが、これを「わずか」ということで表現をしておる。ところがその後当委員会の調査によりますと、この石倉地域その他、買い受けた土地は、上毛高原駅予定地から六キロメートル以上離れた地域であるということが明らかになっております。この点につきましては、小林議員もその後、この「一・五キロメートル」と言ったのは、一・五里の言い違いであったという訂正をされております。 ここで問題は、およそ上毛高原駅予定地から六キロ以上も離れた山間の山林、原野を、そこで旅館を営業しておる株式会社上牧荘が地続きの土地、あるいはその付近の土地として二回、三回に分けて、二千坪に足りないような土地を買ったからといって、しかも買った人がかつて総理が取締役をしていた法人であった、あるいは現在、その法人の取締役が親友である、こういう、これだけのつながりで総理の政治姿勢に結びつけて、総理が事前に知り得た情報を漏らして、それをもとにして買ったというふうな結びつけをすることが、社会一般通念として妥当であるかどうか、客観的妥当性があるかどうか。これはだれが考えても、少なくとも一国の総理大臣の政治姿勢を問うにはあまりにもかけ離れた、飛躍した私は質問である。こういうことで一国の総理大臣の政治姿勢に疑惑を抱かせるというような質問は、それ自体が総理に対する無礼のことばにもなりますし、議院の品位も傷つける質問だということで、私は、この質問者小林議員は、国会の自律権に従って責任をとらなければならない問題であると確信をいたします。 なお、この具体的事実についても一言申し述べたいと思いますが、小林議員は、総理大臣の、さような事実はないはずだ、私は知らないという答弁にもかかわらず、これは具体的な調査に基づくものだということで事実を申し述べておりますが、この表現そのものを見ますと、「その土地は上毛高原駅からわずか一・五キロメートル」、非常に近いという印象を出そうという表現。それから広さについては具体的な面積は示さずして、「相当土地を買われている」、非常にあいまいかつ不正確な表現をしております。これだけのことを聞きますと、いわゆる国会並びに国会の発言が社会に知られた場合に、さも上毛高原駅、いわゆる新幹線の駅予定地の近いところに広い土地が買われたというような、誤った印象を与えるような表現、これは私は、そういう印象を与えるためにことさらそういうことばを使ったというのではないかと思いますが、少なくともそのことば自体は軽率で、そのために非常に誤った印象を与え、人に迷惑をかけた。具体的には、質問を受けられた田中内閣総理大臣の政治姿勢を疑わせ、また具体的に名前を示された株式会社上牧荘と、その代表取締役である入内島さんそのものに、信用上あるいは営業上の迷惑をかけるような軽率な発言である。先ほど田遇議員が動議の中で、片言隻句をとらえ、これはやはり質問の中には適切でないことばなどもある、しかしこれは容認さるべきものも相当あるし、容認さるべきであるということばがありましたが、私も、その一言一句そのものというものをそう追及する考えはございませんが、少なくとも事総理なりあるいは特定の個人の名誉なり信用なり、政治姿勢に関係のあるようなものについては、よほど正確に、かつ慎重に、それらの人に不当な迷惑や疑惑を及ぼさせないような配慮をすることが、質問者の当然の義務であります。その点では、私は、この質問者は責任を負わなければならないと思います。国会議員は院内における発言について責任を問われないという免責特権がございますが、これは何を言ってもよろしいというのではございません。少なくとも議員がそれだけの特権がある以上、発言することについては正確と品位を守るという責任があるはずであります。その責任にたがったこの質問者は、ただいま提案者が述べられたような二十日間の登院停止という責めは当然負うべきであり、こういうきびしい態度で望みませんと、公の場所である国会において免責特権があるということのために、疑惑を招くような、ことさら疑惑を起こすような質問がなされる、あるいは個人の名誉、信用、政治姿勢が棄損されるような質問がなされるということになれば、ひいては国会の権威を失墜し、信頼を落とす結果ともなります。 この際、本件懲罰事犯については厳たる態度をもって望むべきであると思いますし、したがって稲村利幸君の動議に賛成をし、各委員もこれに賛成していただくように御要望して討論を終わります。(拍手)
○早稻田委員長 中村茂君。
○中村(茂)委員 私は日本社会党を代表して、田邊誠委員提出の小林政子君の懲罰事犯は、懲罰のどの条項にも該当しない旨の動議について全面的に賛成し、懲罰に反対するものであります。 四月二十六日の物価問題等に関する特別委員会は、そのときに議題となっていた国民の非常に関心の深い生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律案について、田中内閣総理大臣に直接出席を求めて徹底した審議を行ない、討論を終了する委員会でありました。小林政子委員も、列島改造論と地価急騰、新幹線や高速道路また地域開発というような問題がその周辺の地価を急騰させているが、これらを規制する方法がないのかどうか、物価問題を中心とする質疑を行なったのであります。そのあと最後に、懲罰事犯になっている内容の質問を行ないました。それを要約すると次のようになっております。 上越新幹線の上毛高原駅決定のその時期に、株式会社上牧荘が相当土地を買っている。この上牧荘の代表取締役である入内島氏と田中総理は親しい間柄だといわれている。田中総理は事前にここに新幹線をというような情報を知る立場にいた。その地位を利用されて、このようなことがやられたんじゃないか、こういう問題等について私は非常に大きな疑問を持たざるを得ないのでございます。一国の総理大臣が、この点についてほんとうに政治姿勢を改めると同時に、そのようなことをやっていたのでは、ほんとうに商社の買占めを本気になって取り締まり、やめさせることができるかどうか、明確な答弁を要求いたしますと質問したのであります。この質問のどこに懲罰動議の事犯に該当する問題があるのか、実にふしぎに思うのであります。 大村襄治委員の懲罰動議の趣旨弁明によれば、小林政子君の田中総理大臣に対する質問のうち、「推測に基づき事実に反する発言によって、個人の名誉をはなはだしく傷つけ、院の品位を失墜させる部分があった」としています。そこで問題は、推測に基づいて質問したのか、疑義を正そうとしたのかということであります。 国会議員が国会の論議の場を通じて政治的な疑惑があるとすれば、その疑惑をただし、政治姿勢をただしていくことは当然すぎるほど当然なことであります。疑惑というものはその条件が整っているかどうかということが問題であります。私は今回の事犯について疑惑の条件が整っていたと思うのであります。 まずその第一は、株式会社上牧荘が、現地調査でも明らかなように、登記簿上岩竹日影地区の山林と原野が合計四千六百九十四平米、石倉地区に上牧荘の敷地を含めて所有地が一万七千三百十九平米あることが明らかになりました。 次に、この土地と上越新幹線及び上毛高原駅の決定と時期的に関連があるのかどうかということであります。四十四年五月三十日に新全国総合開発計画が決定され、四十六年十月十四日に工事実施計画が認可になって、上毛高原駅がきまりました。この時期に上牧荘が取得した土地は、石倉地区と岩竹日影地区で相当な面積となっています。そして購入土地が「相当土地を買われている」という表現に当たるのかどうかということでありますが、不動産会社でもない旅館経営者が、業務内容を広げていこうとする立場から相当土地を買った、これは常識の表現ではないかと思うのであります。 二番目に問題になりますのは、上毛高原駅の予定地と土地購入地域が距離的に駅の利用圏であるかという点であります。温泉や観光、保養の地域では、六キロや七キロは当然利用圏であります。 三番目には、上牧荘の代表取締役の入内島氏と田中総理は新しい間柄であったことは、総理自身「刎頸の友」であると言明しているのですから、深い間柄であったことは事実であります。その田中総理が新幹線や駅の決定について、知ろうと思えば知り得る立場にあったことは明白であります。 以上の諸点について総合的に判断した場合、上牧荘の土地購入が、上毛高原駅の決定と田中総理と入内島氏との関係からして、疑惑を抱いてもふしぎではないと思うのであります。推測ではありません。 次に、どうしても解明しておかなければならないことは、小林議員の発言の幾つかが田中総理に対する無礼な言に当たり、個人の名誉をはなはだしく傷つけ、院の品位を失墜させたといっている点であります。国会は言うまでもなく言論の府であります。議論を通じて意見の相違をただすことは当然であります。その意味で、論議の中から出てきた一つ一つの発言を懲罰の条項に適用する場合は、的確でなければならないと思うのであります。 言論は保障されなければなりません。国会法第百十九条、「各議院において、無礼の言を用い、又は他人の私生活にわたる言論をしてはならない。」第百二十条の「侮辱を被った議員は、これを議院に訴えて処分を求めることができる。」この条項は「第十四章 紀律及び警察」の中の条項であり、衆議院規則第二百十一条「議員は、議院の品位を重んじなければならない。」これは「第二節 秩序」の条項であり、紀律、秩序の法意からして、言論を大幅に保障した条項であります。 裁判の鉄則は、疑わしきは罰せずだといわれています。法の適用は公正でなければなりません。 私は最後にどうしても言及しておかなければならないことは、当時の田中総理の答弁に対する態度の問題であります。答弁の冒頭から、不愉快であるとして感情が高ぶっており、心を乱した態度は、一国の総理のとるべき態度ではないと思うのであります。実に遺憾なことであります。 私は、今回の事犯について、あらゆる角度から慎重に検討した結果、懲罰に値しないことを明らかにして、終わりといたします。(拍手)
○早稻田委員長 東中光雄君。
○東中委員 私は日本共産党・革新共同を代表して、稲村利幸君提出の、議員小林政子君を懲罰に付すべしとの動議に断固反対し、田邊誠君提出の、懲罰事犯にあらずとの動議に賛成するものであります。 私は、まず最初に次のことを指摘したいと思います。およそ議員に対する懲罰は慎重の上にも慎重でなければならないのであります。言うまでもなく議員は国民の代表であります。議員に対する誤った懲罰は、これを選出した有権者の意思をじゅうりんし、国民に対する重大な挑戦となるものであります。 さらに、より根本的には、国会は国権の最高機関であり、国政に対して重大な権能を有しており、国会における言論の自由を保障することは、国会の使命達成にとって不可欠のものであります。誤った懲罰により、いやしくも議員の言論の自由を抑圧するようなことがあれば、ゆゆしき事態であり、言論の府としての国会の自殺行為といわなければなりません。 もとより国会議員といえども、どんな無責任な言辞を弄してもよいとか、あるいはどんなことをしても国会議員だからよいということではないことは明らかであります。無礼の言、侮辱のたぐいは許されないことはまた言うをまちません。この意味で、懲罰規定も必要であることは当然であります。しかし、これに籍口して、多数党が数にものをいわせて、政党間の政策上の違いから生まれる言論内容や評価の違いを理由とし、あるいは為政者、政府・与党にとって不利益であることを理由にして、議員の発言を懲罰をもって規制するがごときことは断じて許されません。それは国会の上に党利を置き、懲罰権を私物化するものであるからであります。 ところで、一体、四月二十六日の物価問題特別委員会における小林議員の質問のどこが懲罰に値するというのでしょうか。小林質問は、大商社の反社会的買占め行為を規制するため、政府の政治姿勢について、具体的な問題で事実に基づき総理に疑惑をただしたものであります。すなわち、上越新幹線上毛高原駅の決定並びに同駅予定地周辺の土地買収をめぐって起きている疑惑を取り上げ、総理の政治姿勢を国民の前に明らかにされることを求めたものであります。 このことは、大商社などの反社会的な買占め行為に対する国民の強い非難の声が高まっていた時期であり、まさに国政上の重大な焦点の一つとなっていた問題であります。小林議員が指摘した疑惑は、地域の人たちが現に持っている疑惑であり、その内容は、もちもろの関係から見て当然生まれる客観性のある疑惑であり、このような疑惑があるとき、主権者である国民にかわってこれをただすのは国会議員としてきわめて当然のことであり、当然の権利でもあります。 このような正当な質問に対して自民党の諸君は、小林発言は個人の名誉を傷つけ、院の品位を失墜させるものだと言っておりますが、これらは全くのこじつけにしかすぎないことは、この懲罰委員会の審議を通じて明白になったのであります。 懲罰動議を提出した自民党の諸君は、動議提出の理由として、第一に、「小林議員は、株式会社上牧荘が、上越新幹線上毛高原駅予定地から一・五キロメートル以内に土地を購入した事実があると繰り返し指摘されていますが、そのような事実は全くありません。」とし、「同駅から一・五キロメートル以内で大規模の土地を買いあさっているがごとき小林君の発言は、事実に反するものと断定せざるを得ない」こう言っております。小林議員の質問があたかも事実無根の質問であるかのごとく述べておるのであります。しかしながら、小林質問は、駅予定地から一・五キロメートル以内の土地買占めなどという主張をしたものでないことは、物価問題特別委員会の速記録によって明白であります。自民党の諸君も、みずからの主張を小林質問の中で具体的に的確に指摘することができなかったのであります。 小林議員の質問は、新幹線上毛高原駅の近くにおいて、石倉地区という地域における上牧荘の土地買収の事実を、登記簿等により確認した事実に基づいて指摘したものであることはきわめて明らかであります。上牧荘の買収土地は、群馬県当局の発表した新幹線上毛高原駅周辺地域開発構想から見ても、また駅発表前後の大規模な不動産業者の土地買占め地域と比べてみても、駅に近い中心的な地域にあることは明白であります。駅周辺開発地域の広大さから見て、同駅から約一・五里離れた本件土地を一・五キロと誤って説明したとしても、そのことは、動議提出者の言うような上牧荘の土地買収の事実そのものがなかったという根拠にならないことは明白であります。いわんや、この誤りは、すでに小林議員より当該委員会において訂正されていることであって、本件の懲罰動議提出者が動議提出の法的根拠を言い違えた誤りと本質的に何ら異なるものではなく、懲罰の理由たり得ないことは明々白々のことであります。 小林議員が発言していないことを、あたかも発言したかのごとくつくり上げて、これを非難し、懲罰動議の理由とすることは、まさにでっち上げと言っても過言ではありません。言論を論理のトリックで抑圧する悪質きわまりないものだと言わざるを得ないのであります。 第二に、動議提出者は、小林質問が上牧荘は相当の土地を買収したと言うが、それは事実に反すると主張しております。しかしながら、買収土地は、実測では二千数百坪に及ぶものであり、新幹線駅予定地の決定によって、この周辺地域においても地価は著しく急騰し、現に坪十万をこえる高値がつけられている今日であります。二千坪もの土地を相当の地域と表現することが事実に反する歪曲であるなどというのは、何の根拠もないものであるばかりか、逆に、主張者自身大土地買い占めを当然視するみずからの感覚を暴露したものにすぎないのであります。相当の土地買収を取り上げた小林質問に、もし見解の違いがあり、異議があるのであるならば、その見解は答弁において明らかにすればよいことであって、評価が違うことをもって懲罰をもって抑圧するがごときことは許されないこと、きわめて明らかではありませんか。 第三に、上越新幹線計画、駅予定地決定の時期から見て、田中総理と上牧荘の土地買収とは何の関係もないものだという動議提出者の主張について、述べる必要があります。動議提出者は、上越新幹線構想が始まったのは昭和四十四年五月新全国総合開発計画の決定に始まる、こう述べ、駅決定は昭和四十六年十月十四日であり、昭和四十三、四年に行なわれた本件の土地買収とは関係がないというのであります。しかしながら、上越新幹線構想が最初に国鉄当局により発表されたのは、昭和四十二年八月末であります。すなわち、田中角榮氏を会長とする自民党都市政策調査会の求めによって、国鉄当局は、上越新幹線構想を含む全国新幹線網構想をまとめて同調査会に報告したのは、昭和四十二年八月三十一日であり、田中総理を中心とする都市政策調査会が、「都市政策大綱」なる文書、これは百数十ページに及ぶ本になっておりますが、これを決定したのは昭和四十三年五月二十二日であります。上越新幹線構想が右調査会会長田中角榮氏によってまとめられた時期、まさにその時期である昭和四十二年五月一日に、上牧荘は本件岩竹日影の土地買収の仮登記をしておるのであります。また、その構想が閣議決定された昭和四十四年五月二十九日の直前である四月十二日にこの土地の買収が完了し、所有権移転登記が行なわれておることは、登記上明白であります。時期はまさに符合しておるのであります。 荒舩清十郎氏が上越新幹線について、どこを通し、どこにとめるかは田中角榮、福田赳夫の両氏と荒舩氏がきめたと発言しましたが、この発言が単なる放言であるといえないことは、右の事実経過に照らしても、明らかであります。 自民党内の要職にあり、新幹線構想決定に重大な関係があり、鉄道建設審議会委員でもあった田中総理と、上牧荘のこの土地買収と無関係であったと断定できないのはもちろんのこと、逆に、その時期が完全に符合しておることから、疑惑があることは客観的に明らかになっております。 特に、上牧荘の土地買収時期は、この地域で土地買収、土地移動がほとんどなく、それ自体が異常に感ぜられるときであり、しかも、上牧荘が事業を拡大し、何ら不動産の移動のないこの時期のこの地域で、土地売買、あっせんを事業目的に追加し、また、ビルなど全くないこの地域で、ビル管理を事業目的に追加したことは、世にもふしぎな物語であったわけであります。 しかしながら、この地域に地元大方の予想に反して上毛高原駅が決定され、これが発表されるに及んで、上牧荘のこれらの行為が、営業活動として、その事情を知っておる者にとっては、あり得ることだということが明白になったのであります。上牧荘のこれらの行動は、上越新幹線構想についてあらかじめ知っていてこそ、初めてなし得るものといわざるを得ないのであります。少なくともこの点について疑惑を持つのは当然のことではないでしょうか。 小林質問は、この疑惑をただし、総理の政治姿勢を問うたものであります。この国民の疑惑をただす質問が、どうして非難されるのでありましょうか。 自民党の懲罰動議提出者こそ、事実の歪曲と不当な推測、仮定とこじつけに基づいてこの動議を提出したものといわざるを得ないのであります。 懲罰動議の不当な性格は歴然としております。小林議員の質問は、どこから見ても懲罰に値するところはないのであり、懲罰事犯に当たらないことは明白であります。 自民党の諸君は、事あるごとに、国会の品位を傷つけるとか、議員の名誉を傷つけるなどと口ばしっておりますが、そのような事例は、ほかならぬ一部自民党の諸君にこそ当てはまると断じてはばからないのであります。 このことは、先日の運輸委員会における口ぎたないやじなどを見れば、歴然であります。本委員会においても、特定議員を名ざしで、————————————————————— などという発言をされたことであります。これこそ無礼の言であり、個人の名誉を傷つける最たるものであります。これこそ院の品位を傷つけるものではないでしょうか。こういう者にこそ懲罰権は向けられてしかるべきものではないでしょうか。 ところが、事もあろうに、自民党は、懲罰規定をかってにねじまげて、国会議員としての当然の質問に対し、しばしば懲罰をもって臨んできたのであります。これは歴史的に見て明らかであります。 懲罰の歴史は、まさに自民党による言論抑圧の歴史であり、川上貫一氏に対する懲罰事件を典型として、先年の穗積七郎議員に対する懲罰など、枚挙にいとまがないのであります。 今回の懲罰もそれと軌を一にするもので、自民党の言論抑圧の暴挙に新しい歴史を刻むものと断ぜざるを得ないのであります。 いまや、田中内閣と自民党の大資本中心の悪政のもとで、国民の苦しみはその極に達しており、小林議員の質問は、この国民の立場に立って、国民が聞きたいと思うことを率直に聞いたにすぎないのであります。小林議員に対する懲罰はまさに国民への挑戦であります。田中首相と自民党のこのような姿勢こそ、国民の批判を高めていることを知るべきであります。 わが党は、以上のような見地に立って、稲村利幸君の議員小林政子君を懲罰に付すべしとの動議に対し、強く反対するものであります。 以上で、討論を終わります。(拍手)
○早稻田委員長 ただいまの東中君の御発言中不穏な点がありましたので、追って御本人と御相談の上、善処いたします。 次は、坂井弘一君。
○坂井委員 私は、公明党を代表いたしまして、議員小林政子君を懲罰に付すべしという稲村利幸君の動議に反対し、これを懲罰事犯として取り上げるべきでないという社会、共産、公明、民社、四党代表の田邊誠君の動議に賛成するものであります。 申すまでもなく、国会における議員の言論の自由は、これは保障されなければなりません。このことは憲法五十一条の趣旨に沿って、議員の発言はその信条、思想のいかんにかかわらず、自由にこれができると解されているのであります。 しこうして、三権分立のわが国において、国会は国権の最高機関であり、国会において初めて主権者たる国民から、総理も議員もともにその権限を与えられているのであります。 今回の小林政子君の発言は、国政に関して国民が抱いているさまざまな疑問や疑惑を取り上げ、それらを解明して国民の前に明らかにしようとしたものであります。 もとより小林君の質問は単なる風評や推測、憶測によるものではなく、たとえ数字の言い違いはあったとしましても、少なくとも登記簿謄本をもって具体的事実をあげて発言したのでありまして、その意図するところは、最近における目に余る土地買占めという反社会的行為を背景として、総理の政治姿勢を問いたださんとしたことは質疑の内容において明らかなところであります。 一方、自律の規制を順守することは、これまた議員に課せられた当然の責務であります。議員が国会においてその責務を感じ、職責を果たす場合、その発言の内容いかんによってはしばしば個人の名誉、国会の品位との関係においてその是非が議論されるのでありますが、それは議員は感情にとらわれることなく客観的な認識に基づいて、政治的な立場は異なれ、その考え方や信条、所信に違いはあっても、正々として率直にただすべきものはただすことが、言論の府たる国政審議の場に臨む議員のあるべき姿であり、即、議院の品位を保つゆえんであると信じます。 このゆえに、みだりに懲罰権をもって議員の政治的発言を抑圧することがあってはなりません。懲罰権が恣意的に行使される危険を厳に戒めなければなりません。これらの言論を抑圧すれば、議員の本来的な活動を不当に抑圧することになることは明らかであるからであります。 以上をもちまして、田邊君の動議に賛成し、稲村君の動議に反対する理由とさしていただきます。(拍手)
○早稻田委員長 玉置一徳君。
○玉置委員 私は、民社党を代表いたしまして、田邊誠君の動議に賛成をし、稲村利幸君の動議に反対の討論を行ないます。 国会が言論の府であり、議員の自由な発言が保障されてこそ初めて成り立つものであることは御承知のとおりでありますが、そのことはまた少数党の意見の尊重につながるものだと思います。 そこで、もちろん、その裏には議員の自制というものは当然求められることでございますけれども、私はこの際考えなければならないことは、まず第一に、いろんな物価の高騰その他につきまして、土地の問題を含めまして、現下非常に反社会的な行動あるいは社会的に望ましくない事犯が非常にたくさんあるということについて、私たちはそのことを率直に認め、そして小林君の発言のような背景があることを率直に認めなければならないと思います。 と同時に、私たちは荒舩さんがということばにありましたように、政治家に自制をすべき点がまた存在することも頂門の一針として深く肝に命じなければならないと思うのであります。 と同時に、たとえ多少の行き過ぎがありましても懲罰というものには非常に慎重でなければならない。これはかつて大東亜戦争その他の際に西尾先輩その他の諸先輩が時の軍部の横暴をいさめて発言したことに対して、除名をもって懲罰に付したことがございますが、いまから振り返って考えてみれば、そのことの誤りをお互いに深く反省するものであります。 かような意味におきまして、よほどのことがない限り稲村さんのような懲罰を科することは、深くわれわれは戒めなければならないと思います。そのことはあるいはまた国会の秩序の、少数党の言論の抑圧にそのままつながるのではないか、こういう感じがいたします。 かような意味におきましても、ただいま案件になっております本事案につきましては、稲村利幸君の動議に反対をし、田邊誠君の動議に賛成をするものであります。 終わります。(拍手)
○早稻田委員長 これにて討論は終了いたしました。 これより採決に入ります。 本件につきましては、これを懲罰事犯として懲罰を科すべしとの意見と、懲罰事犯と認められないので懲罰事犯にあらずと決すべしとの意見があります。 まず、この点につきまして採決いたします。 本件は懲罰事犯として懲罰を科すべきものと決するに賛成の諸君の御起立を願います。 〔賛成者起立〕
○早稻田委員長 起立多数。よって、まず本件は懲罰を科すべきものと決しました。 次に、本件は国会法第百二十二条第三号により二十日間の登院停止を命ずべしとの稲村利幸君の動議について採決いたします。 この動議に賛成の諸君の御起立を願います。 〔賛成者起立〕
○早稻田委員長 起立多数。よって、本件については国会法第百二十二条第三号により二十日間の登院停止を命ずべきものと決しました。 なお、本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○早稻田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
○早稻田委員長 この際、一言ごあいさつ申し上げます。 本日、議了の運びとなりましたが、長期間にわたる委員各位の御協力に対し、厚く御礼を申し上げる次第であります。 本日は、これにて散会いたします。 午前十一時十九分散会