商工委員会 第45号
- 発言数
- 34 件
- 登壇者
- 6 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1973/07/20
会議録
○浦野委員長 これより会議を開きます。 参議院から送付されました内閣提出、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律案を議題といたします。 本日は、参考人として東京都立大学助手磯野直秀君、東京歯科大学教授上田喜一君、以上二名の方に御出席を願っております。 この際、参考人に一言ごあいさつ申し上げます。 参考人には、御多用中のところ本委員会に御出席いただき、まことにありがとうございます。 本委員会におきましては、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律案について審査を行なっておりますが、本日は、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、今後の審査の参考にいたしたいと存じております。 なお、議事の順序でございますが、初めに磯野参考人から、次に上田参考人からそれぞれ二十分程度に御意見をお取りまとめお述べいただきたいと存じます。 まず、磯野参考人にお願いいたします。
○磯野参考人 都立大学の磯野でございます。 本日は、私、生物学者でございますので、生物学のほうから、この法案を読みましていろいろ感じたところを率直に述べさしていただきます。また、私、二年半ほど前からPCB問題にいささか関係しておりまして、それから考えましたこともいろいろございますので、照らし合わせながらお話をしたいと思います。 私の生物学者としての基本的立場と申しますのは、人間が使う物質にはいろいろございます。重金属とか人工化合物がございますが、その大半が基本的に生物には異質なものであって、したがいまして、人間にとりまして一〇〇%安全だと言い切れるものはないという立場でございます。しかし一方、人間に及ぼす危険というものを考えますと、その危険というのは、実は現在問題になっております汚染による健康障害もございますし、また火災や病気などの危険もいろいろございます。そういうものを総合的に判断してどういう物質をどこに使うかをきめていかなければならないのではないか。したがって、原則的には有害度の低いものを優先して用いるべきだと思いますが、しかし場合によっては、特定の目的の場合には危険度が幾らか高いものであっても厳重な管理のもとに使わなければならないこともあるかと思います。したがいまして、この種のような法律というものが今後必要になってくるということは私もよくわかります。しかし、読んでみますと、いささかあいまいな点がございまして、これはちょっと問題ではないかと思われるところも多いわけでございます。 本日は、まず物質のほうからこの法案を見た場合の感想と、それから法律案——私は非常に法律には暗いのでございますが、読んでここは疑問に感じたという点を幾つか申し上げます。ちょうどアメリカで同じような有害物質規制法というのがございまして、それを私は手に持っておりますので、それと対比しながら考えてまいりたいと思います。 現存する化学物質の数といいますのは、一九七一年にアメリカの学者が報告しておりますが、大体二百万ある。それで年に二十五万種類ずつふえていきまして、そのうちの少なくとも五百が工業化されていくという話でございます。またWHOの最近の出版物を見ますと、アメリカ政府が一九七〇年に出しましたリストでは、人間環境には約一万五千種類の有害物質が存在するそうですし、あるいはいまドイツ及びスイスで調査しておりますところでは、家庭環境にすでに存在し、またはそこに入り込む危険のある有害物質というのは総計四万種類にのぼるということが記載されております。 このような有害物質と申しますのは、いろいろなものがございまして、実はこの法律では、蓄積性のあるものにかなり焦点がしぼられておりますけれども、実は有害性のある物質というのは、必ずしも蓄積性の高いものに限りません。たとえば、発ガン物質とかあるいは有機燐化合物といいますのはかなりの程度分解性でございますが、有害でございますし、ことしの春食用油の中に混入して問題になりましたビフェニール、こういうものも繰り返し摂取し続けると有害になるという報告もございます。今回の法律では、すべての物質のうちの蓄積性の高いものに限って対象にしているようでございますが、この点では片手落ちでございまして、本来はもっと広い範囲を扱わなければならないのではないかと私は思っております。 アメリカの有害物質規制法と申しますのは、これは蓄積性、非蓄積性に限らず、広く有害物質を規制しようという法律でございまして、本来はそういう広い立場に立たなければ意味があまりないのではないかと思っております。 しかも、日本の今回上程されました法律を見ますと、蓄積しやすいとか、難分解性というふうなことばがいろいろ使われておりますけれども、実は定義というのがあまりはっきりしておりません。さらに、どのような試験手段をとりましてこれが蓄積性であるかということを判定するか、そういうことにつきまして記載がございません。また、われわれ化学の分野で定義できない場合には実例というものを示して考えていくわけでございますけれども、この法文はもちろんのこと、解説にもたとえばこういうものを対象にするという記載がほとんどございませんので、実はどういうものを難分解性といっているのか、そういうところがよくわからないわけでございます。 ただ、一応常識的に考えてまいりまして、どのようなものが該当するかということを見てまいりますと、まず第一に、第二条の二項の口でございますか、「継続的に摂取される場合には、人の健康をそこなうおそれがあるものであること。」と書いてありますが、この条項に相当するものを考えてまいりますと、PCBとかそれに類します有機塩素化合物、あるいはもっと広く有機ハロゲン化合物が該当するかと存じます。 また、それに続きまして二条の二項二号に「当該化学物質が自然的作用による化学的変化を生じやすいものである場合には、自然的作用による化学的変化により生成する化学物質が前号イ及び口に該当するものであること。」と書いてございます。これは簡単に申しますと、分解またはもっと広くは変化したものが蓄積性であるということに受け取れますが、そういたしますと、たとえば、いま問題になっております有機水銀の類、これは分解しますと水銀になりまして生物に蓄積するわけでございまして、こういうものをやはり対象にするのではないかというふうに考えられます。このようにPCBとか有機水銀、そういうものが対象になるということはわかりますが、いろいろ疑問点が出てまいります。たとえば、分解しやすいと普通いわれております有機燐化合物であるとか、界面活性剤のABS、あるいは可塑剤のフタル酸エステル、こういうものも場合によっては生物あるいは人体に蓄積するという報告がございます。こういうものがはたしてこの条文を適用されて特定化学物質に入るのかどうか、そこのところが非常にあいまいだと思います。あるいは分解したものが蓄積性でありますれば、そのもとのものが特定化学物質に指定される、そういう規定をいろいろ解釈いたしますと、おそらく分解して重金属をつくるもの、言いかえますと、重金属の化合物というのはこの規定に大半含まれるのではないかという気もいたすのであります。たとえば、有機カドミウムの化合物とか、有機鉛の化合物であるとか、そういうものもこの条文に入るのかどうか。あるいは銅の有機物もすべて入るのかどうか。こういうものは分解して銅になりまして、たとえばカキの中に蓄積して、それを人体が摂取した場合に有害になる、そういうことがわかっておりますけれども、こういうものまでも入るのか。そこら辺が、条文を読みました限り、あまりはっきりいたしません。 さらに、どうもこの法律を読みますと、人体への蓄積というのは、環境にいろいろなものが出まして、それが食物連鎖でだんだん人間に濃縮されてくるというふうな前提があるように思いますが、実は人体に蓄積するものはこのような食物連鎖を経るものに限りません。たとえば、PCBに非常によく似た化合物でPCTというものがございます。この物質は、いまのところ日本だけで研究されておりますけれども、人間の場合には、新潟、東京、愛媛その他で分析いたしまして一〇〇彩出てまいります。しかし、魚や野鳥のたぐいからはほとんど出てまいりません。したがいまして、どこだかわかりませんが、われわれの生活環境から直接人体に取り込まれているのではないかというふうに思います。今後こういうふうに日常の生活環境から直接人体を汚染する、そういう物質がふえてくると思うのですが、この場合がどういうことになるか、いささか不明確だと思います。さらに読んでまいりますと、いろいろ法律の中で定義が不明確な点も目につきます。先ほど蓄積ということばの不明確さを申し上げましたが、そのほかに、たとえば第二条第一項からあとにいろいろ化合物ということばを使っています。しかし、たとえばPCBと申しますのは実は二百九種類の違った化合物の混合物でございまして、一つの化合物群といったほうがいいものでございます。アメリカの法律の場合には、化合物及び化合物群とか、物質及び物質群というふうなことばが記載されておりますが、日本の場合にはそういうものがございません。したがいまして、たとえばかりにPCBがこの法律の適用を受けるといたしますとその二百九種類の一つ一つにつきましてこの法律を適用するのか、あるいは二百九種類のものを一まとめにして法律を適用するのか、かなり扱い方が違ってくると思います。二百九のものはそれぞれ性質が違います。たとえば塩素数の少ないものはかなり分解性がいいわけでございます。それに対して塩素数の多いものは非常に分解しにくくて人間のからだの中にたまりやすいわけでございます。これを区別していくのかどうか、ここら辺が私にはわかりません。 また、定義の中に、たとえば二条二項には「自然的作用」というふうなことばが使ってあります。しかし、この「自然的作用」というのがどういうものをさしているか、これもちょっとわかりにくいことばだと思います。生物の作用によって分解されるというのをさしますのか、あるいは太陽光線などによる変化まで含めて一切の変化を含めるのか、ここら辺も今後問題になるのではないか、もう少し明確にしなければならないのではないかと思います。 さらに、この法律は人間が中心になってできております。最終的に人体の健康をそこなうおそれがあるものを規制するということになっておりますが、実は人体に直接害をなすことがなくても野生生物に害をなすものは幾らでもございます。こういうものも本来は取り締まる必要があるのではないかと私は思っております。たとえば、金属類のようなものは非常に貝に蓄積しやすく、ある場合には貝が影響を受ける。それから、現在日本の各地で赤潮が起こっております。その結果、人体は、直接には健康の被害を受けませんが、御承知のとおり魚のたぐいが非常に大量に死んでいく、これも大きな問題でございます。こういうものを含めなくていいのかどうか、そういう点も私は疑問に感じます。 時間があまりありませんので、次は、法案を読みましてこの点がちょっと疑問ではないか、問題ではないかと思いました点を述べさしていただきます。 まず第一に、この法案では、厚生省と通産省が主体になっているように見受けられます。どちらかといいますと、環境庁は従の関係にある。厚生省、通産省が主で、環境庁が従の関係にあるように思います。しかし、実際の事件を見てまいりますと、ことしの春の食用油のビフェニール事件とかあるいはPCBの問題とか、そういう場合に水産庁、厚生省、通産省、環境庁、こういうものの権限が非常に不明確な点が多くて、実際にすみやかな処置というのがしばしば困難になっております。こういうことを考えますと、化学物質というのは非常に広い分野に使われるものでございますから、むしろ環境庁が主で、厚生省、通産省が従の形が本来の姿ではないかと私は考えます。アメリカの法律を読みましても、環境保護庁の長官がこのアメリカの法律の中心になっておりまして、その他の官庁というのは従の立場になっております。 次に、この新規化学物質に関して試験したデータにつきまして、公表の規定がどうもないようでございます。実はどういう理由である物質が蓄積性であるか蓄積性でないか、そういうことをほんとうは公開していただかなければいけないのではないか、むしろ試験データの公開を義務づける必要があるのではないかと思います。これもアメリカの法律で読みますと、アメリカの場合には試験手続及び試験結果を「フェデラルレジスター」ですか、それに発表しなければいけない、そういう記載がございます。 次に、実際の取り扱いに移りますが、私は先ほど申しましたように、かなり人体に危険度が高いものであっても、場合によっては使わざるを得ない場合があると思っております。ただしその場合には、その物質が必要であるという理由が明確に述べられなければいけない、そしてまた汚染を起こさないような管理が厳重に守られなければいけない、そう思いますが、そういう前提で考えまして、たとえば特定化学物質の使用を許す場合にはその理由を公開して、それからこれこれの用途に限って使ってよろしいという用途の指定が必要ではないかと思います。 たとえばPCBで申しますと、これは火災予防の点では実はPCBにかわる物質はないというのがアメリカ及びヨーロッパの学者及び政府関係の一致した見解のように思います。そのために、欧米諸国では、大型の電気機械の絶縁油とか、あるいはヨーロッパでは炭鉱の熱媒体、このように火災の危険があっては困る場所に限ってPCBの使用を認めております。現在の法案で特定化学物質の使用を認める場合にも、たとえばこのPCBでしたら、火災予防の点ではほかにかわるものがないという理由をはっきりと明示して、これこれの用途に限って使用を認める、そういうふうな規定がほんとうは必要ではないか。法案を読みますと、代替物がない場合とか、そういうふうなかなりあいまいな表現が目立ちますが、これはむしろそういうあいまいな表現でなくて、いま申しましたようなはっきりした理由が必要ではないかと思います。 さらに、それに関連いたしますが、実はそういう特定化学物質を取り扱う人がしばしばその機械に何が入っているか、この油に何が入っているかわからない場合が多いのです。こういう特定化学物質を使用する場合には、たとえばPCBならばPCBが入っているという掲示が必要でございますが、この場合、特定化学物質全般につきましてそのような内容物の明示ということが必要でないかと思います。 また、先に進みますが、十三条に製品の中に特定化学物質が使用されているものの輸入に関する規定がございます。ここもいささか気になるところであります。と申しますのは、どのような製品の中にどのような物質が入っているか、これは一種の企業秘密に属することでございまして、国内で生産したものであればおそらく通産省あたりでおわかりだと思いますが、輸入品の場合にはどこまでそれがわかるかということが気がかりでございます。 たとえば、PCBで申しますと、いろいろな潤滑油とか、あと、油圧器のオイルに使われておりました。これが相当量あるいは輸入されているかと思います。ことにこれは軍用関係で非常に多く使われておりましたので、アメリカ軍あたりで、輸入と申していいのかどうか知りませんが、持ち込んでいたのではないか。こういう場合には、なかなか規制しにくいのではないか。どこに入っているかわかりません。したがって規制しにくいのではないかと思います。 最後に、もうあと一、二点だけ申し上げますが一つは、この法律では、たとえば肥料取締法とか農薬取締法、食品衛生法、そういうところで取り扱われるものにつきましては除外されるようでございます。しかし、化学物質というのはいろいろな場所に用いられてきているのが現在の姿でございます。したがって、普通の場合にはそういういろいろな法律で取り締まってかまわないと思いますが、たとえば緊急事態が発生したような場合には、こういうふうなばらばらの取り扱いでははなはだ困ることが多いのではないか。したがいまして、少なくとも緊急事態が発生した場合には一元的に取り扱えるような規定がほんとうは望ましいのではないか。できれば通常状態ででも一元的に取り扱える、そういうものが必要ではないかと思います。 最後に、これは新規の化学物質についていろいろこういう検査を行なって許可をすると書かれておりますが、それでは現在存在する化学物質との関係はどうなるか。私は、法律の読み方というのは非常に暗いものですからあるいは誤解かもしれませんが、その点がはなはだ不明確のような気がいたします。 これは附則でございますが、附則の二条には、現在存在する化学物質の名前を連ねました既存化学物質名簿をつくるとございます。ところが、その次の三条を読みますと、「既存化学物質名簿に記載されている化学物質以外の化学物質の製造又は輸入の」云々とございます。そうしますと、どうやら現在製造されている、あるいは輸入されている化学物質の中で、このリストに名前が載るものと載らないものとあるような気がいたしますが、その場合のどれを載せてどれを落とすかという区別が、実は附則には書いてございません。どうやら特定化学物質に準ずるものは載せないのではないかと想像できますけれども、これはあくまで想像でございまして、ここはもっと明確な表現が必要ではないかと思います。たとえば、現在製造されておりましてかなり蓄積性だといわれております塩化パラフィンとかヘキサクロルベンゼンとかあるいは現在製造はされておりませんが、先ほど申しましたPCT、こういうものがどうなるかということをもっとはっきりさしていただきたいと思います。 結論にさしていただきますが、私はこの種の法律が必要だということは認めます。しかし、現在の法案を読みますとかなりあいまいな点が目につきまして、むしろこのままの形で通ってしまいますと、こういう法案ができて国民は守られる、そういうふうに一般市民は受け取ってしまうのではないか。もう少し足りないところがいろいろございますので、ほんとうの上策は、アメリカの法律のように蓄積性のものに限らずもっと広い化学物質を対象とした法案を至急つくるというのが上策だと思います。中策は、そういう広い化学物質を対象とする法案を至急つくるということを前提にいたしまして、現在提出されておりますこの法案の不備なところを補いまして、この法案を一応通しておく、これが中策かと思います。このままの形でこの法案が通るということは私はあまり賛成ではございません。 最後に、一言事務当局に要望したいことがございますが、実はこの法案が出てまいりましたもととなりましたものに、軽工業生産技術審議会の答申があるということを私きのう初めて知りました。「化学物質の安全確保対策のあり方」という表題だそうですが、こういうものを私参考人に呼ばれましたが、そのときにぜひ添えていただきたい。そうでないと、答申案の精神と法案の内容とが私には比較できません。この点を強く要望して、私の陳述を終わりたいと思います。
○浦野委員長 次に、上田参考人にお願いいたします。
○上田参考人 私は、軽工業生産技術審議会の委員として、またその分科会であります専門部会の化学物質分科会会長といたしまして、この法律の学問的あるいは技術的な裏づけのお世話をいたしました関係で、法律にあらわれておりませんその成立過程をざっくばらんに申し上げようと思います。 私の申し上げますことは必ずしも行政当局の考えと一致しないかもしれませんが、それは私どもは法律に非常にうとくて、こういう法律の書き方がいいのか悪いのかわかりませんから、純粋に学問的の意味で申し上げます。 こういう法律ができました動機というのは、日本でもアメリカでもPCBの環境汚染が原因でございます。しかし、PCBというとすぐライスオイル事件をお考えになりますけれども、われわれは、あれは環境汚染ではないと考えております。あれは過失による食中毒でございまして、別の法律、別の立場で、たとえば食品衛生法がコントロールすべき事件でありまして、いまこの法律が考えております環境汚染によって人の健康に害を与える、そういう問題ではないと委員一同考えておりますから、ああいう事件を防ぐことが直接の対象ではないことを御了解願います。 化学物質が環境に広く継続的に存在して、その結果、私どもの健康を脅かすに至ります過程を考えてみますと、三つの要素が考えられます。 第一は、自然界で分解しにくくて長く残留するということであります。いかなる毒性物質でも、こわれてしまえば環境汚染という意味ではたいした問題にはなりません。 第二は、生物がこれを薄い濃度の環境から濃縮しまして、私どもがそれを食品としてとる、こういうのがいままで起こったすべての環境汚染の第二の要素になっております。 第三は、その物質固有の毒性でございますけれども、この三つがそろわないと環境汚染による人畜の危害というのはなかなか起こらないということは、メチル水銀あるいはPCB、DDTの汚染が示しておるとおりでございます。 それで委員会では、このような点で化学物質に格づけをしよう、つまり環境汚染性の格づけをしようという考えを持ちました。第一の自然界における分解というのは、光や紫外線や空気中の酸素による酸化ももちろん含まれますけれども、最大のものは微生物による生分解でございます。それはたとえば農薬、パラチオンがたんぼの中でこわれます最大の主力は、あそこにいる微生物だということが証明できております。微生物もいろいろありまして、ある物質に対しては特定の微生物でなくてはこわせないということがございますけれども、試験方法としては、やはりいままで中性洗剤の分解性、非分解性が問題になりましたときに使われました下水処理に使います活性汚泥、これを一応標準微生物として、これによって分解するかどうかということをスクリーニングテストに使用しようということになりました。それで、試験すべき物質を培養基の中に溶かしまして都市下水の活性汚泥を入れて、一定時間たって非常に酸素を消費した場合、それはつまり酸化に使われたということで分解性が大きいという判定ができるわけでございます。これには多少の異議がある点がありますが、まず第一スクリーニングとしてはけっこうではないかと思います。それがために誤差が入りませんようにいま考えて、いずれ施行細則できめられますが、従来のような数時間とか五日とかいう短いのではありませんで、二、三週間の長い期間密閉しておきまして、酸素消費量は自動的にメーターで紙の上に書かす、そういう方法を採用する予定になっております。判定には、つまり活性汚泥が都市の下水でありますといろいろな化学物質になれを生じておりますが、いなかのほうの活性汚泥だと、初めての物質でそういうなれがなくて面くらう場合もございますから標準物質、非常にこわれにくいたとえばPCBのようなものと、非常にこわれやすい物質とを一緒に並行して載せまして、それらに対する活性汚泥の分解度と比較して被検物質の生分解の難易、そういうことを判定しよう、そういう方法でございます。もちろん分解してガスを生じます場合には、あたかも分解しないような成績が出ますから、これと並行して目的の化学物質自身の減少をガスクロマトグラフィーその他でやる、あるいは比色法で証明する、これももちろん並行して行なうことを義務づけたいと考えております。 第二に、生物の濃縮性あるいは蓄積性というものはいろんな生物が考えられる。たとえば、水田から稲に蓄積するという場合もあるかもしれませんし、たとえば、セレニウムは十字科の大根のような植物が二千倍、三千倍と濃縮するというような話がございますけれども、従来の成績を見ますと、最も濃縮率の高いのは水中でありまして、しかも、その魚がわれわれの食品として大きなたん白源でありますということを考えまして、今回は小さいコイを使って二週間、三週間一定濃度の液を上から水槽に入れて下に流してしまう。つまり一定濃度をずっと流下方法で保ちながら数週間後にそのコイを取り出して体内にたまった被検物質の濃度をはかる。それで流しておりました水の濃度に比べてこれが何倍であるかということを濃縮率としようというわけであります。神戸大学の喜田村教授は従来たくさんの物質についてこのような方法でテストをされておりますが、いま問題になっておりますメチル水銀、PCB、DDT、フタル酸エステルなどは大体千倍あるいはそれ以上の、つまり二、三週間でそれ以上の濃度に濃縮いたしますのに比べて、一般の物質ははるかに低くて、いまのところ、その間は断然たる断絶がございまして、蓄積するもの、しないものというのは大体間違いなく区別できる。これは実験に基づくあれであって、推測ではございません。 ただ、困りましたことは、無機のカドミウムその他の塩になりますと、たかだか二、三十倍しか濃縮いたしませんので、この場合はこういう方法は正しくないかもしれません。これは別な方法で考えようということになっております。溶けない物質はどうするか。これはえさとして食べさせようと考えております。 世の中の方で食物連鎖というものをこの方法では見ていないではないか、食物連鎖があれば十万倍にでもなっているという反対があるかもしれませんが、私どもは、こういうふうに数週間で千倍、二千倍たまる物質でありませんと、食物連鎖で数十万倍になるということは絶対ないと信じております。ですから、この短い期間のスクリーニングで食物連鎖による猛烈な濃縮も十分予知することができるという考えでございます。 これらの試験で疑わしい性質、つまり自然界で分解しにくい、それから魚に蓄積するというものがありましたときには毒性試験に移るというわけで、すべての物質に毒性試験をやっておらないことは確かにある意味の欠点ではございますが、初めにこれを主管しましたのが通産省であるものですから、どうしても環境汚染に主力を置いたわけであります。もし毒性試験で発ガン性その他までも考えましたら、とうてい多数の物質を引き受けてくれる施設はいまないので、不満足でありますけれども、第一回のスクリーニングとしてはまずまずかなりの役を果たすと考えておる次第でございます。発ガン物質でありましても、濃度が低い場合には化学発ガンというのは起こりにくいということはよくわかっております。ですから、濃縮されない限り、発ガン性がかりに証明されましても、実際問題としては大きな問題にはならないということは学問的に申していいと思います。 いまのようにいろいろな欠点がございますけれども、この法律の一番のメリットと申しますか、そのことは今後新しい物質をつくろうとする場合には、あるいは輸入しようとする場合は、企業化する前に当局にそれを届け出て事前審査を受けなくてはならない、こういう点でございます。つまり、政府は、常に新しい物質に対して化学構造、用途、生産数量、すべて握って、その環境汚染性に従って企業化する前からいろいろな規制をすることができるという意味であります。 アメリカの法律をよく見ますと、こういうことは憲法に違反であるという考えらしくて、物質名をリストしまして、その物質だけがこのような審査を受ければいいようになっております。日本のはすべての物質でございます。そういう意味で、私は法律としては企業の秘密性その他を打破して環境汚染を重んじたかなり前向きの姿勢であるというふうに考えておるわけでございます。 従来から存在する物質は約七千あるといわれております。これが抜けてしまったのは非常に残念で、初めは従来ある物質も同じワクに入れるつもりでございましたけれども、最後にこういうかっこうになりました。しかし、これはすべて企業から届け出させ、あるいは学会から聞いてリストアップしまして、政府はそのリストを公表しなくてはいけないということになっております。これにリストされない物質は、かりにいまつくっておりましても、それはすべて新規物質とみなされまして、前に申し上げましたテストのデータを添えなくてはいけない、あるいはテストを受けなくてはならないということになります。 既存物質の中から生産量の大きいもの、化学構造から疑わしい性質があるもの、そういうものについては国費をもって生分解性、魚類蓄積性、さらに疑わしいものは毒性、こういうのを、大体四百ぐらいあるだろうということですが、早急にやるという予定だそうであります。 不完全ではございますが、この法律の通過がおくれますと、いま申しました既存物質がどんどんふえます。そのことは、言いかえますと、新規物質としてのテストを受けない物質が年々出てしまうということになりますので、何とか早く成立するということを望んでおります。 この法律に私個人として不満な点は幾つかございますが、それはやはり毒性のテストが第二次試験に回ったということは非常に惜しい。機会があればこれは復活したいと考えております。それから、蓄積性だけが合格しました場合にも、今度はその物質を扱います労働者に対する直接の危害防止をはかることができません。つまり毒性を知らないで出ることがありますから、したがって、新規物質はすべて労働大臣に通告して、向こうが向こうの法律で考えられるということが必要だろうと思います。 それから特定化学物質という用語が、労働安全衛生法にも、それから運輸省の法律にも、方々で使われておりまして、これを受けるほうの側から申しますと、何法の特定化学物質であるか、これではほんとうに混乱すると文句を言っております。どうして法律家はこういうことばが好きなのかわかりませんが、ずばり環境汚染性物質とかなんとかとすればもっと誤解を避けたのではないかと思います。 最後に、磯野参考人も言われました生物相の撹乱、つまり富栄養とか温排水というような問題も、将来この法律が改正されるときは取り上げていただきたいということがいまの答申書には載っている次第でございます。 これをもって私の意見陳述を終わらせていただきます。
○浦野委員長 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。 —————————————
○浦野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。板川正吾君。
○板川委員 参考人に一、二お伺いをいたしたいと思います。 私ども、こういう化学物質の問題については知識は浅いのであります。したがって、質問が若干手続的なことになりますが、要するにこの法律は、化学物質による人類に対する危害といいますか、健康をそこねるような問題を防止しようというのが根本的な目的だと思います。ところで、この法律から見ますと、新規化学物質の安全性の検査というのをどういう機関でやるのかというのが明確ではございません。また、聞くところによりますと、財団法人ゴム化成品検査協会というものを名称を変えてここに検査をさせよう、こういうようなねらいがあるようであります。国が正式な検査機関を持たずにこういう法人にまかせるということは、はたしてその能力があるかどうかという点が心配されるのであります。両先生のうちでこの問題について御意見があれば承りたいと思います。 それからこの審査機関ばかりでなくて、実は審査の基準というのが明確ではございません。これは法律の四条四項に「必要な試験の項目その他の技術的な事項は、総理府令、厚生省令、通商産業省令で定める。」こういうふうに規定をされておりますが、実はこの内容がまだ明らかでないのでありまして、どうも審査の基準というのが十分明らかにされてないというのが私ども不満なんですが、この法案の答申に参画されたと思われる上田先生は、この点についてどういうふうなお考えを持っておられるか。 それから期間ですが、第四条でも、届け出を受理した日から三カ月以内に判定して結果を通知しろ、こういうふうに書かれておりますが、三カ月以内に、一号、二号、三号の該当しないものと、該当するものと、明らかでないものと三つに分けて判定しろということになります。しかし、こういう化学物質というのはそう簡単に三月やそこらで判定できるのかどうか、こういう点が私ども実は理解に苦しむところでありまして、そういう点について御意見を承りたいと思います。 それから附則の二条で、既存化学物質名簿をこれまた三カ月以内に作成して公示しなければならない。その二項で、何人も訂正する必要があると認めたときは公示の日から一カ月以内にその旨を通産大臣に申し出ろ、こういうふうに書かれておりますが、もちろんいまおっしゃられましたように、一カ月以内に区切ってあとは新規の物質となるということになるかもしれませんが、こういう一カ月とか三カ月とか非常に短期間に処理するような法体系になっておりますが、そういう点が技術的に安全性確保の面から十分な期間であろうかどうかという感じがいたします。そういった点について御意見を承りたいと思います。
○上田参考人 ただいまの御質問は、ほんとうは行政当局がお答えになったほうがいいかと思いますが、審査機関に関しては、私どもは、最初は、企業がどこかに依頼して出してもそれでいいではないか、アメリカの法律はそうなっている、つまり各企業の責任においてデータを出せとなっている、現に医薬品などはそうなっておるわけでございますが、審議会の席上、消費者の代表の方々から、企業のやることは信用できないというようなお話がありまして、国あるいは国の外郭団体ということになって、ただいま先生のおっしゃったような機関が通産の外郭団体であるもので、一応それになっております。それから、毒性試験は厚生省の外郭団体であります食品薬品安全センターを考えておられるようでございます。私個人としては、とてもそれでは間に合わなくなって、たぶん大学その他もよろしいということになるのではないかと思います。 第二の審査基準でございますけれども、これは実はまだすっぱりときまっていないのでございます。一般の方には、さっき私の申し上げたようなスクリーニングの方法さえもまだ公表されておりませんが、これは本法が出ましたら直ちに施行細則が出まして、そこには書かなくてはなりません。さっき申し上げましたように、たとえば二週間、三週間で八〇%くらいこわれるものはこわれやすいものである、三〇%以下はされないものである、その辺の値はやはり公表しなくてはいけないと思います。そうしませんと応募する方のほうが非常な不満を持つと思います。 それから蓄積性は、さっき申し上げましたように千倍とか、その辺が境になるのではないかと思います。 提出後三カ月と申しますのは、大体官庁というのは受け付けてだらだらと一年も二年もしないことが多うございますので、これを引いたのだと思いますが、さっき申し上げましたように、申し込みがたくさんたまっていない限り、試験そのものは三週間で終わるようになっておりますから、疑わしいものかだめなもの、安全らしいものという三つに分けることは、試験が始まれば一月でわかるからだいじょうぶと思いますが、混んできた場合どうかと存じます。それからあとの毒性試験はもちろんこの三カ月後には入っておりません。つまり格づけを終わることが三カ月と解釈すべきだと思います。 それから、第四の既存化学物質名簿というのも一カ月は非常に早過ぎるようにも思いますが、これは実はもう着々とできております。ただ問題は不満があった場合に提訴できるという提訴の権限というのはやはり企業にも与えてもよいのではないかと私は考えておりますが、詳細は行政当局からお聞きくだすったほうがよろしいかと思います。 訂正をいたしたいことがございます。ただいまの三カ月というのは、試験に回すかどうかをきめる期間だそうで、試験期間ではないという行政当局のおことばです。と申しますのは、試験に回さないでオーケーの品物もあるわけです。つまり、もうすでによくわかっているものと、類似構造である場合とございますね、それをきめるのが三カ月だそうでございます。
○板川委員 磯野先生に伺いますが、これは二十三条で「特定化学物質以外の化学物質について第二条第二項各号の一に該当すると疑うに足りる理由があると認めるときは、当該化学物質による環境の汚染の進行を防止するため必要な限度において、」「製造若しくは輸入の事業を営む者又は業として当該化学物質を使用する者に対し、」使用の制限等必要な勧告をする、こういうふうな規定がございます。化学物質の危険性というのは、実はなかなか経験がなければ、そういう実態が生まれなければわからないのですが、この疑うに足る理由があると認めたときに、使用制限という程度の勧告というのはどうも手ぬるい感じがいたします。疑いがあると認めた場合には、もちろん使用制限ばかりじゃなく使用停止もこの勧告の中にあったほうが妥当じゃないかという感じがいたしますが、この点、どうお考えになりますか。
○磯野参考人 確かに非常に極端な場合を考えますと、使用禁止をせざるを得ない場合もあると思いますが、いろいろな状況を考えますと、たとえばPCBの場合に非常に安易に使用禁止のほうがいいというふうなお考えも一面にはあるかと思います。これはかえって私、国民の健康を守るためにマイナスの面があるのではないかと思っておりまして、そういう意味からは、現在のここの規定でございますけれども、制限というのは全く使用しないことも制限のうちに入りますので、この規定で一応はいいのではないか、私個人としてはそう思っております。 ただ、むしろこういう勧告が非常に長引いては困りますので、一種の緊急事態の場合にはすみやかな処置がとれるような規定が必要ではないかと思っております。
○浦野委員長 近江巳記夫君。
○近江委員 今回のこの法案を見ておりますと、この審査制度の対象を新規化学物質のみに限定しておるわけですが、既存化学物質についての規定というものは名簿の作成だけにとどめておるわけです。実際に人体に有害で環境汚染を起こすおそれがあるのは、現に生産されて使用されておる既存化学物質のほうじゃないかと思うのですが、むしろこの点に重点を置いてこの審査制度というものを設けるべきじゃないか、このように思うのですが、両参考人から御意見をお伺いしたいと思います。
○磯野参考人 ただいま近江先生からおっしゃったように、既存化学物質がいろいろの問題を現実に引き起こしております。したがいまして、これが抜けるようなことがありましたら、私は法案をつくっても羊頭狗肉になるのではないかと思っております。つまり、既存科学物質を含めてこういう審査が必要だと思っております。
○上田参考人 先ほど申し上げましたように、私どもの最初の意図は既存物質も新物質も全部やりたいという考えでございましたが、法律ができますとこういうかっこうになってしまいました。しかし、既存物質のうちで一定の数量の高いもの、構造があぶないものは、国費をもって年々数百ずつをやるということにきまっております。そしてことに既存物質のいいことは、環境調査で何が汚染しているかを知ることができます。どれが被検すべき物質であるかを知ることができますので、何とかそれで補えると思います。新規物質は環境汚染をしてからでは困りますので、これはすべてを届け出にした、こういう精神だろうと思います。おっしゃるとおり、どうも法文にそれがよくあらわれていないようでございますけれども、実際はそういうふうに既存物質も同じ並行してやるようになっております。
○近江委員 本法で対象としておる化学物質というのは、きわめて狭い範囲に限定されておるように思います。この第二条の化学物質の定義から放射性物質、特定毒物等を除いて、さらに三十三条において食品あるいは洗剤、農薬等を適用除外をしておるわけですが、これについて磯野先生はどう思われますか。
○磯野参考人 先ほども申しましたが、私はできればそういうものも含めて取り扱える形が望ましいと思います。少なくとも緊急事態の場合には、そういうほかの法律で扱われているものも、この法律で取り扱えるような規定がほんとうは必要ではないかと思っております。
○近江委員 では上田先生から、同じ先ほどの問いに対してどう思われますか。
○上田参考人 私もいろんなことに参加していますと、実に法律というのは不便なもので、一つの法律が規定しておりますと、新しい法律はそれに手が出ないのだそうでございます。ただ、できますことは、農薬が船底塗料とか、それから電線の虫食いを防ぐとか、そういう目的に使われました場合は、たちまちこの法律が適用されるようになっております。それで、農薬に対しても、できましたらこの精神でお魚にたまるかどうかを農薬を許可するときにもテストに加えていただければいいなと思っております。というのは、農薬は、直接環境を汚染する用途として使われているものでございますから、そちらが抜けてしまっては困ります。どろの中の分解性は現に農林省は要求しておられますから、お魚の蓄積性を加えていただけばよいじゃないかと思っております。
○近江委員 私は、科学技術のほうもやっておるわけですが、この試験の実験方法に関する事項というものが本法においてはほとんど規定がないので、明らかでないわけです。この分解性、蓄積性及び慢性毒性についての試験法というものが、実際にわが国で確立されておるかどうかということなんです。私も、科学技術特別委員会でこの問題を何回も政府に聞いておるわけでありますが、たとえばPCB等も非常に大きな問題になって、そしてもう政府が非常にあわてて力を入れた。どうにか科学技術庁の特調費のほうからも金を出して総力をあげて分析法は確立できた。PCT等については分析すら全然出てこないというのですね。だから幾らつくっても試験方法も満足にできてないような状態で、はたして有効にいくのかということなんです。現在わが国におけるこういう実験方法等についてはどの程度確立されておるのか、これをひとつ両先生から忌憚のない御意見を承りたいと思うわけです。まず磯野先生からお願いしたいと思います。
○磯野参考人 私、この法案に関して審議過程では全然タッチしておりませんので詳しいことはわかりませんが、ある程度の蓄積性の実験あるいは分解性の実験というのはいろいろな文献から考えまして日本の中でもかなりできるとは思います。ただ、これは科学の問題でございますから一〇〇%確実だということはたぶんできないだろう、ある程度の目安をつけることはできる、まあその程度だろうと私は想像しております。 御指摘になりましたように、現在どういう試験方法をとるかということが全く書かれておりませんので、これはまあルールなくてスポーツをやれそういうふうな感じでございますので、非常にそこら辺が不明確なところに不安を覚えます。もう少しはっきりした形でないと実はほんとうにその方法がいいのかどうかそれもわかりません。
○上田参考人 生分解性のほうでは千葉大学の腐敗研究所の藤原教授及び通産省の微生物工業技術研究所の御園氏と、この問題では日本のナンバーワンの方々が十分テストをされましてPCBは悪く出る、よいものはよく出るというように、技術的にはいまのところ私の見るところでは満足すべき方法は確立されていると思います。 それから蓄積性のほうは、喜田村教授がやられましたように、悪いものといいものとは画然たる差で分かれる。これも私どももテストして同じだと思います。たとえば、フタル酸エステルは悪いほうに出ます。そういうわけで、これはすべてスクリーニングテストでございますからその目的は十分達せられると思います。ただ、その施行細則に載るべき方法が同時に出ておりませんので皆さま非常に不安がられるのだと思いまして、この点はまあ私どもの責任ではないのではないか、御了承を願いたいと思います。
○近江委員 それではこれで終わります。
○浦野委員長 八田貞義君。
○八田委員 磯野参考人にひとつお尋ね申し上げたいのですが、先ほどPCBにつきまして物質群という適切な名前をお授けくださったのですが、理論的にはPCBというのは二百九種類というお話がございましたが、中には二百十種類というふうなことを言う人もあるわけですね。実際に純粋にPCBとして取り出せるものは二百九種類の中で何種類ぐらいあるのでございましょうか。
○磯野参考人 二百九種類という数字の根拠は、アメリカ政府のPCB関係の委員会の報告書にございます。ほかの本に二百十種類というふうなことも書いてございますが、それは約二百十という意味だと思います。これはいろんな理論的根拠から二百九ということを推定していると思います。実際上はいろんな方法を用いまして単離することもできますが、非常にめんどうなものですから一つ一つのものを逆に合成しているというのが実情のようでございます。これは二百九とても全部はやっておりませんで、現在市販されているようなものを、あるいは実験的につくられているようなものをまとめましても、数は正確にはわかりませんが数十種類はつくられていると思います。
○八田委員 磯野さんにもう一つお伺いしたいのは、KCの数ですが、いわゆる塩素数の多い少ないをKCであらわしておりまして、二〇〇とか四〇〇が一番健康障害を起こしやすい、毒性が高いのだ、こういわれておりますが、KCからいった数字は一体どんなことでありますか。
○磯野参考人 KCと申しますのは実は鐘淵化学のカネクロールという商品名の省略記号でございます。二〇〇、三〇〇、四〇〇、五〇〇、六〇〇とございます。ほかに多少ございますけれども、二〇〇はたとえば二塩化物が主成分、三〇〇は三塩化物が主成分ということでございますが、この塩素が三つのものが主成分と申しましてもたかだか五〇%か六〇%あるいは場合によっても七〇%その程度のものでございます。ですから、カネクロール三〇〇の中には二塩化物も入っておりますし一塩化物もありますし、逆に四塩化物、五塩化物、六塩化物ぐらいまでまざっておるわけでございます。その三塩化物と申しましてもこれは単一の化合物ではございませんで、塩素のつく場所によりましていろいろ種類がございます。ですからちょっといま数字を思い出せませんが、三塩化物だけでやはり十何種類かの混合物でございます。 それで毒性の問題でございますが、これは塩素数が少ないほうが毒性が高い場合と、あるいは逆に塩素数が多いほうが毒性が強く出てくる場合と両方ございます。たとえば、私は魚の実験なんかやっておりますが、それで見ますと、カネクロール三〇〇というのが一番毒性は強いようでございます。これはまあ急性毒性でございます。逆に今度は鶏の卵の産まれ方などを調べますと、これは外国のものでございますが、日本のものに相当するものを考えますと、たしかカネクロール四〇〇あたり、三〇〇だったかもしれませんが、これがやはり一番強い。それから今度は肝臓の薬物分解酵素というものがございますが、それを活性を上げる、そういう作用を調べますと、カネクロールですと五〇〇ぐらいが一番強いというふうに、とても一律にはまいりません。これは何をはかるかによってすべて変わってくると考えたほうが正しいかと存じます。
○八田委員 それで、いま厚生省と科学技術庁でPCBの標準検査法というものを出したわけですが、あれはまざりものの検査でございまして、どれが毒性があったのかというようなことでは全然なしに、まざりものをPPMで出しておるんですね。しかもあとでパターン合わせというのをやっておりますが、非常に時間がかかっているのです。こういった検査方法に皆さんがなれるまでにはまだ相当な時間と熟練を要すると思うのです。何か現在の厚生省と科学技術庁でやっている検査方法にかわるものとして、こういう方法でやればもっと的確でしかも早く結果が出るのだというものの研究は進んでおりましょうか。
○磯野参考人 これはむしろ上田先生のほうがよく御存じかと思いますが、私は現在日本で開発されましたPCBの分析方法といいますのは世界でも最高の水準をいくものではないかと思います。はなはだ残念なことですが、これを簡単に検査する方法というのはおそらくないのではないかと思います。ただいまのこの法律に関係いたしまして分解性のテストなどいたしますときには、外からかなりの量のPCBとか、そういう物質を加えるわけでございまして、この場合にはかなりはかりやすいだろうと私は思います。ですから、短期間ではかれるだろうとさつき上田先生がおっしゃいましたが、私それは別に疑問は抱いておりません。 それから先ほどちょっと申しおくれましたけれども、蓄積性の問題に関しましては塩素の数の多いほうが蓄積率は高くなると思います。これはそう言い切ってかまわないかと思います。
○八田委員 上田先生にお伺いしますが、上田先生はまさか厚生省の魚献立表に御関係なすっておらなかったのだと思いますが、いかがでございますか。
○上田参考人 専門家委員会が終わりましたときに、記者会見であれが出されたそうでございまして、私は一度も本物を見たことがございません。電話で聞きますと、もうあれはあげられませんとのでございます。PCBはからだに入ると出ないとお思いの方が多うございますが、決してそんなことはありませんで、四塩化ビフェニールくらいまでですと肝臓でOH基が入りまして胆汁へ出ていくということを九州大学が証明されておりますし、いま申しましたように、カネミ患者のからだの中に、かつては脂肪組織に七〇PPMありましたのに、いまの方は数PPMあるいは検出せずという方もあるくらいに減っております。つまり必ず排せつされるものでございます。ただ、その場合に五塩化ビフェニールから上のものが非常に排せつしにくい。それでは五塩化ビフェニール以上のものだけを定量すればいいじゃないかという理論も立つのでございますけれども、三塩化、四塩化が絶対無害でもなくて、やはり肝臓には障害がございます。 さてお魚を分析してみますと、瀬戸内海の東のように汚染源のすぐそばを泳いだお魚はまだ三塩化、四塩化がかなりたくさんございます。大きくなって年をとったようなお魚は、やはり人間と同じように五塩化ビフェニールがだんだん多くなっております。ですから、将来二つの方向にいくと思いますが、一つは五塩化、六塩化を標準にしてそれだけはかるということでございますけれどもこのピークは非常に低うございまして分析誤差がかなりあります。それからもう一つは、いまあるピーク二十五、六を全部はかるというめんどうくさいことをよして、五つか六つの代表のピークの高さだけでやる。これをやった人がございますけれども、あまり大きな誤差でなくてやれるのですから、もしかしたら簡略化はこの道のほうが早いかもしれないと思います。
○八田委員 今度の魚献立表とか魚騒動、これは要するに第三水俣病という発表がございましたが、あとで第三水俣病というのは水俣病らしい病気というふうに訂正されました。またPCBの問題は、水産庁による各地の問題水域の調査結果の発表が一般の関心を集めたわけなんですが、上田先生も御承知のとおり、いままで発表されたものは低級のアルキル水銀による中毒で、慢性中毒なんです。しいて言うならば、亜急性の中毒ということで、現在はもうない。過去の患者の発生であります。またPCBのほうは、カネミ油事件で起こった急性の中毒なんですね。ところが世間で騒いでいるのは、PCBによる慢性中毒なんです。こういう基礎資料のない、実体のないところに個別規制をやった、したがって国民の不安に短絡思考を併発して大騒ぎを起こしたものというふうに考えておるのですが、PCBによる慢性中毒、職業病としてはクロールアクネなんかのあった時代もありましたが、最近は全くないのでございますね。そうしますと、魚の献立表とか魚の騒ぎというものは実体のないところに大きな騒ぎを起こした、結局は個別規制をやったところに国民不安に短絡思考を併発したのだ、こういうことになるわけなのでありますが、こういう問題は先生方に深く広くマスコミを通じて発表していただくと、わりあいにああいった短絡思考を押えることができるんじゃないかという気もいたすのでありますが、その点について先生のお考えをちょっとお漏らしいただきたいと思うのでございます。
○上田参考人 私考えますのに、今回のお魚の水銀の規制あるいは食品中のPCBの規制というものは、実は行政当局がある行政的行動を起こすための基準でございまして、消費者の一人一人が自分の献立を一喜一憂するような基準ではないということは、委員会の者はみな知っておるのでございますが、そういうような発表になったのは非常に遺憾と思います。その理由は、・たとえばお魚の中にメチル水銀が〇・三PPM、これはすべてのお魚に〇・三PPMあったら一日ちょうど何グラムまでは安全だという言い方は、言いかえますといまそろって〇・三PPMあるという水域は水俣以外にはないわけで、ことに東京のような各方面からお魚が来ますところでは、ちょうど宝くじが当たらないと同じように、悪い水銀に当たるチャンスというのは一%もないということでございまして、実際に主婦が買ってくるお魚を分析すれば、厚生省が安全範囲と見たものの三分の一か二分の一せいぜいぐらいにしか達しないわけでございまして、私ども専門委員会の者はだれ一人毎日の食事にそのことを心配する者はないということをいつも申し上げておるわけでございます。ちょうど八田先生がおっしゃいましたように、厚生省の発表の技術もへただったのでございますけれども、マスコミもまた、内容をよく読みますとたいへん正しく書いてありますが、見出しだけ読むと非常にショッキングに書いてある。いまの主婦は見出し読みの方が多いようでして、それが混乱を起こすもとだと思います。ですから、私の聞きましたところでは、それからまた体験したところでは、一流の新聞社では、ある一つの反省運動がある。つまり企業を追及することはよいが、一般消費者に不必要な混乱を起こさしたことはよくなかったということが起こっているようでございます。たいへんよい動きだと思います。やはり正しく、そして正しい批判をつけて発表していただくということと、企業の悪いのを摘発するということとは両立することだと思っております。 ただマグロ、カジキは安全である、こんなに私たちが食べていても安全だというような運動がございますが、私はそれは少し間違っているんじゃないかと思います。つまり一般の人がああいうものにコントロールを置かなかったのは、普通の人はそんなにあぶないほどマグロやカジキを食べていないわけですからよろしいのですが、それを毎日百五十グラム、三百グラム食べるような環境にある人は、やはり頭の髪の毛が六〇PPMとか四〇PPMという驚くべき値にならないように自省してくれたほうがかえってマグロは安全だという印象を与えるのじゃないかと思っております。
○浦野委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。 参考人には、御多用中のところ貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。 午後二時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。 午後零時十分休憩 ————◇————— 〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕