公害対策並びに環境保全特別委員会 第39号
- 発言数
- 253 件
- 登壇者
- 9 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1973/07/17
会議録
○佐野委員長 これより会議を開きます。 この際、去る七月十四日、富士地域環境保全整備特別措置法案の審査のため委員を派遣いたしましたので、派遣委員の報告を聴取いたします。菅波茂君。
○菅波委員 富士地域環境保全整備特別措置法案(内閣提出)審査のため、議長の承認を得て去る七月十四日、一日間、山梨県、静岡県に派遣されました派遣委員を代表して、その調査の概要を御報告申し上げます。 派遣委員は、委員長佐野憲治君、登坂重次郎君、林義郎君、島本虎三君、岩垂寿喜男君、木下元二君、岡本富夫君及び私の八名でありましたが、他に現地参加として、当委員会の理事小林信一君並びに地元選出議員木部佳昭君、金丸徳重君、高橋繁君の参加を得ました。 今回の調査は、去る五月八日当委員会に付託されました富士地域環境保全整備特別措置法案の審査のため富士山及びその山ろく周辺地帯の自然環境の保全及び利用環境の実態を中心に現地を調査いたしました。 まず、調査団は十四日午前山梨県に入り、山梨県企画調整局長から車中において、富士地域の概況について説明を聴取し、紅葉台におもむき、針葉樹を主にした広大な青木ケ原樹海及び周辺地域の実情を視察いたしました。その後、富士レイクホテルの会場におきまして、山梨県当局並びに富士地域環境保全整備促進協議会の代表者より要望及び陳情を受けました。続いて、スバルラインを視察しながら富士五合目の展望台より富士山の植生、風致景観及び利用の環境等を視察し、引き続き北富士演習場におもむき同演習場内において、北富士入会組合代表者より陳情を受け、続いて、自衛隊関係者より演習場内の使用の状況等の説明を聴取し、山梨県の視察調査を終了したのであります。 また、引き続き、静岡県におもむき、御殿場市役所の会議室において、静岡県当局より富士地域の概況を聴取し、静岡県当局並びに御殿場市長、裾野市長、富士市長及び富士宮市長よりそれぞれの意見を聴取し、懇談を行なった後、富士地域を視察してまいった次第でございます。 時間の都合もありますので、調査の結果の詳細につきましては、委員長のお手元に報告書を提出しておきますので、会議録に掲載されますようお取り計らい願います。 以上、御報告いたします。(拍手) —————————————
○佐野委員長 おはかりいたします。 ただいまの菅波茂君の御提案のとおり、調査報告は本日の会議録に参照掲載することに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○佐野委員長 御異議なしと認め、よって、さよう決定いたしました。 ————————————— 〔報告書は本号末尾に掲載〕 ————◇—————
○佐野委員長 次に、内閣提出の公害健康被害補償法案を議題とし、審査を進めます。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。阿部未喜男君。 〔委員長退席、菅波委員長代理着席〕
○阿部(未)委員 公害健康被害補償法案の問題ですが、まず長官にお伺いしたいのですけれども、この制度が基本的には民事責任の損害賠償保障制度として構成をされておる。そういうものが思想になっておるようですが、そうなれば当然これは民事責任上の損害賠償として物の被害、特に生業の被害について損害の賠償を規定するのが法のたてまえではないか。かなり議論されてきたようでございますけれども、これは無過失損害賠償法のときにも大石長官が、四十八年度には生業補償についても法案を提案したいということを会議録でも明らかにされておるわけですけれども、これができない、この法律と一緒に生業補償ができない理由はどこにあったのかをお伺いしたいと思います。
○三木国務大臣 私しばしば申し上げておりますように、健康被害の問題、この損害賠償保障制度を軌道に乗せて、そして昭和四十九年度から生業補償の問題に取り組むということを申し上げておるわけでございます。生業補償の問題ということになりますと、非常に経済的な損害というものの態様というものも複雑でありますし、因果関係というものも必ずしも明らかでない場合も多いわけでありますから、これは制度化するためにはいろんな方面から検討を必要といたしますので、一ぺんに健康のほうも生業のほうもということをいたしますことは、いま健康に関する損害補償の問題を軌道に一あんまり間口を広げていくことは健全にこういう制度を発達さす道でないと考えますので、順序を追うてその問題と取り組みたいということでございます。
○阿部(未)委員 長官のお考え、順序を追ってやっていくということが理解できないわけではありませんけれども、しかし常に公害の対策は後手後手に回って生業被害が続出しておるのが今日の状況で、特に漁民、農民の方々は生活の困窮を来たしておるというのが実態になっております。いまの長官のおことばですと、本法が大体来年の七月ごろから実施をされる。そうすると生業補償についてはおそらく昭和五十年くらいにしか実施に移されないのではないか、向こう二カ年間、四十八年、四十九年というものは生業補償についていまのような状態がずっと続いて、社会不安を醸成していくだろうということが明らかに想定をされます。それであるならば、もしこの法案がこの国会で成立をすれば、引き続いて予定をされる次の臨時国会くらいには生業補償の法律について取り組んでもらいたいと思うのですが、そういう熱急があるかどうか。
○三木国務大臣 この問題は、生業補償の問題というものが非常にやかましく社会的な課題として取り上げられてきておるわけでありますから、もう並行して、農林大臣にも、これは農林省の関係が多いわけです、農作物とかあるいはまた漁業の被害とか。そういうことでこの問題を制度化する必要がある、だから農林省においてもこの問題と真剣に取り組んで、できるだけこれを早い機会に実現さすように検討を加えてもらいたいということを、私が閣議の公の席上で申したわけでございます。農林大臣も、その必要がありますので、農林省といたしましてもこの制度化に対して真剣に取り組むということを答えておりましたですが。だからいろいろこれが軌道に乗ってというのではなくして、並行して検討は加えていくわけでございますから、いまいつまでにというお約束はできませんけれども、こういうものの制度化の必要は現にすでにあるわけでありますから、できるだけ早く実現を期したいという考えでございます。
○阿部(未)委員 次に、本法について、先ほど申し上げましたように、これが民事責任を基本に置いて考えておるとすれば、公害の被害者はいわば国民として損害の賠償を請求する権利を持つ立場になると思われます。したがって補償の内容等については、これは明らかに議論をして定めなければならない問題でありますけれども、ほとんどの給付の内容等は政令にゆだねられております。政令がどういう決定をするのかまだわかりません。そこで、こういう多数の権利にかかわる問題が政令にゆだねられるということについて、法のあり方として妥当であるとお考えかどうか、お伺いしたい。
○船後政府委員 本法案におきましては、御指摘のとおり具体的な給付の額につきましては政令にゆだねられておるわけでありますが、これは法律でもって一定の条件を示しまして、その条件に従って政令で具体的な細則を定めるという法形式をとっておりますのは、本法案のみならず、その他労災保険あるいは自賠責、こういったところには数多く例が見られるところでございます。 特に本法案におきましては、給付の中心をなす障害補償費等につきまして、やはり全国労働者の平均賃金というものを基礎に置いて算定する仕組みをとっております。これはやはり年々変動するものでございますから、どうしても法律で定額を定めるというわけにはまいらないものでございます。
○阿部(未)委員 そこで、私はある程度その理由がわからないわけではありません。したがって、政令にゆだねる内容については大体こういうものであるということがこの本法の審議と並行して検討されなければならないと思います。これは長官金曜日に手に入ったのですが、私の手元に届いたのはけさでございます。したがって、われわれとしては、本法を審議するにあたっては、政令にゆだねられる事項の内容が大体どういうものであるかということを承知しなければ、具体的にこの法律についての検討というものは至難であります。大体各省とも、政令にゆだねる事項の多い場合には、政令の内容について、法案と大体同じ時期か若干おくれてもわれわれ委員の手元まで届けてもらえるのですけれども、この健康被害の問題については、一番早く手に入った方が先週の金曜日だそうでございます。審議に入ってからしかこういう政令の内容、考え方が手に入っていないのですが、環境庁は本気になってこれを審議してもらうつもりがあったのかどうか、事務局のほうにちょっとお伺いしておきたいのです。
○船後政府委員 本法案はぜひとも今国会におきまして御審議の上御可決くださいますことをお願いしておるものでございますが、通常この種の法案は予算関連法案ということになりますので、通常の慣例によりますれば、予算上ある程度の積算をいたしまして、その予算と同時に法案の御審議をお願いする、このようになっておるのでございますが、本法案につきましては、作業を開始いたしましたのが昨年の秋でございまして、その後中公審で種々御検討を得まして、結局四十八年度予算には間に合わず、今国会の会期末近くになって提出のやむなきに至ったのはまことに申しわけない次第でございますが、そのような次第でございますので、予算時にある程度のめどがつくという従来の例に比較いたしますと、本法案におきましては具体的な数字の裏づけがないのでございますけれども、考え方といたしましては、お手元に配付いたしました政令案の考え方に従いまして、今後いろいろな補償給付の額の算定につきましては、中公審で慎重な御審議を願いましてきめてまいりたいと考えております。
○阿部(未)委員 この説明資料が非常におそかった。おそいから数字があがっておるわけではないのです。やはり考え方だけしかこれは載っていないのです。しからば、この考え方だけは本法と同時かあまりおくれない時期にわれわれの手元に届けていただいて、本法とあわせて検討してみたかった、このことを要望しておるわけです。 次に長官、どんなりっぱな法律ができても、特に本法のごとく指定地域の問題なり指定疾病の問題なりがすべて政令にゆだねられるという条件の中では、法律の運用というものは非常に大きいウエートを持ってくると思います。立法の趣旨に沿い得るのかあるいは曲げられて運用をされるのかということを非常に危惧をいたしますが、長官は七月二十日号の「アサヒグラフ」をお読みになったでしょうか。この「アサヒグラフ」によりますと、あの大牟田で水俣病ではないかという疑いを持たれた患者がありました。九大の診断の結果、これは水俣病ではないということが発表をされました。この問題について七月二十日号の「アサヒグラフ」は、九大と三井資本のなれ合いではないかという意味の疑惑を投げかけております。 その理由は、かつて三池のCO中毒患者の切り捨てを行なったのが九大であった。それからこの大牟田の水俣病の疑いのある患者の診断について、九大が公式の発表をする前に、これに参加をした一部の医師から大牟田の患者はシロであるということがオフレコでマスコミに公表をされた。それからもう一つは、大牟田の市が行なった大牟田の魚類の汚染について、六月三十日段階ですでにその結果が判明をしておったのに、九大が患者のシロであるという発表をするのを待って、大牟田市が魚類の汚染の濃度について発表を行なうという経緯があった。 そこで環境庁としてそういう問題についてどの程度承知をしておられるのか。特に大牟田市が魚類の汚染の状況について六月三十日段階で分析の結果を入手しておりながら、九大の発表を待って魚類の汚染度合いの公表を行なった、こういう経過について、ひとつ環境庁の承知しておる内容を承って、これからの公害対策の姿勢として明確にしておいてもらいたいと思うのです。
○船後政府委員 大牟田の水俣病に類似した患者の問題でございますが、私ども、当初新聞紙上でその報道を承知いたしまして、その後九大でその患者をさらに診察したところ、水俣病によるものではないという発表のあったのを、また続けて承知したわけで、現在福岡県から連絡を受けておりますのも新聞報道程度のことでございます。特にその患者さんの病気が何であるかにつきましては、これはまあ個人の秘密に属する問題でございますので、その点につきましては、私どもも承知いたしておりません。 ただ、九大でこのような結論に達するにつきましては、九大の各科の先生のみならず、熊大の原田助教授あるいは久留米大の山口教授などの方も御参加いただいて、これらのエキスパートの総合的な判断の結果として、大牟田で疑われておりました患者は水俣病ではないという結論に達した、かように承知しております。 なお、ただいま御指摘の六月三十日の魚類の汚染状況の問題につきましては、私ども承知いたしておりません。
○阿部(未)委員 われわれはそういう医療機関等について信頼をしたいと思っておりますし、それを信頼しなければ、行政もなかなか立ちいかないだろう、そう思います。思いますけれども、たとえ一部のマスコミにもせよ、余談になりますが、先般の福岡の歯科大学の問題のようなこともありまして、疑惑を持たれるということは、非常に公害対策にとっては問題のあるところだと私は思います。いま、まあ大牟田の問題については環境庁のほうでもまだ明確に把握をしていないようですけれども、こういう疑惑を持たれたりそういう報道がなされるということについて長官は一体どうお考えになりますか。
○三木国務大臣 水俣病は、これは非常に特殊なものでもありますし、したがって、大学の医学部の教授連中がこの問題と取り組んできておるわけですね。ことにまあ熊本とか九州の大学あるいは鹿児島大学、新潟大学もそうでございます。非常に熱心に取り組んできておるわけですから、そういう教授連中と大企業との癒着があるとは私は信じていないのです。やはり学者的な診断の結果に基づいて良心的な判断を下されたわけで、私もテレビで見ておりまして、熊本大学の原田助教授などもテレビでその結果を発表されておりましてね、私はよかったなと思ったんですよ。そういうふうな疑いが晴れて、水俣病というものでなかったということは非常によかったな、原田助教授のお話もテレビで聞いておりましたから、それは信頼をいたしておるわけでございます。そこをもう疑ってかかったんでは、これはなかなか、やはり水俣問題というものは根底からゆらぐわけでございます。
○阿部(未)委員 私もテレビの報道を見ながら、長官と同じように水俣病でなくてよかったという感じを持った一人です。しかし、少なくとも前の三池の事故によるCOの患者の切り捨ての際には、これは患者の間から相当な不満があったのを私は承知をしておった。したがって、今回そういう「アサヒグラフ」の発表を見まして、若干の疑念が残っておったものですから、まあ長官に伺ったわけですが、特に行政の府としては、十分こういう点について意を用いていただきたいし、こういう疑惑が持たれるような際に、確かに病名そのものについては、個人のプライバシーと申しますか、秘密に属する問題だとは思いますけれども、行政官庁としてその診断の資料、そういうようなものを見ると、立ち入って検査をするというようなことはできないものですか。
○船後政府委員 大牟田の問題は、環境庁といたしましては、特別措置法に基づくところの手続に従っての問題ではございませんで、全く個人の患者に対しまして医師が診断したという問題でございますから、行政権をもってその内容を知るということは不可能だと考えております。
○阿部(未)委員 少し法案の中に入りたいと思いますが、私はこの法律で一番中心になるのは、まず地域指定だというふうに考えます。第一種ないしは第二種の地域に指定をされるかどうか。これに指定をされなければ、どういう患者がおっても救済の対象にならない、こういうことになるわけでございますから、地域指定というものは、きわめて重要な意義を持つと思いますが、この地域指定の基準というふうなものを一体どうお考えになっておるのか、お知らせ願いたいと思います。
○橋本説明員 地域指定の基準でございますが、第一種の地域指定の場合には、これは大気汚染が著しくて、そうしてそれに影響されたその患者が多発しているということでございますので、基本的な考え方としましては、従来の公害健康被害救済特別措置法の経験を基礎にいたしまして、そこの汚染の程度ということと、もう一つは、最初に新発生の数をつかむわけにはどうしても技術的に不可能でございますので、患者の有症率の割合が異常に高いかどうかということを一番基本といたしまして、地域指定をしてまいります。なお、この際、受診率等も参考にはいたしますが、最も基本になるものは、汚染の水準と有症率、この二つになっております。 第二種の場合には、大気汚染、水質汚濁によって放出されました原因となる物質とその病気との関係が明らかなるもの、その地域に生じた環境汚染に暴露されて起こったものということでございますので、これは第一種の場合と患者認定の場合の要件がかなり異にしております。その患者さんがもとそこにいて暴露された、あるいはそこに何度もいて暴露されておったというような条件があればこれに入るわけでございますが、その場合に地域指定は、その事件の汚染がどの範囲に広がっておったかということを基本として、その事件の範囲をきめるということでございます。当然にその場所では、地元でございますから患者が多発しているということは当然でございますが、基本的にはその汚染がどの範囲に広がっておった事件であったかということで、第二種の地域指定をしよう、こういうことでございます。
○阿部(未)委員 実は第一種の場合でも、二種の場合でも、現行の法律で指定になっていない地域で地方自治体が独自にそれぞれ条例をもって救済の措置を講じているところが非常に多いようでございます。昨日の公聴会におきましても、そういう問題についてかなり多くの地域、たとえば富山、高岡、それから四日市の横の何とかいう町がありましたね。そういうところから、それぞれ地方自治体でそういう措置をとっているが、国の地域指定がないために非常に困っておる、こういう陳情みたいな、いわゆる公述が行なわれたわけでございますけれども、地方自治体でそういう地域指定の条例等をつくって救済をしておるものが、私は必ずしも全部入るとは思いませんが、新しい地域指定の中で十分考慮されるものであるかどうかについてお考えを聞きたい。
○船後政府委員 御指摘は、特に第一種の地域についての問題であろうかと思いますが、本法案における地域指定は、先ほど橋本審議官が申し上げましたように、専門の先生方に御審議を願いまして、客観的な大気の汚染度あるいは有症率といった基準を用いまして地域指定を考えてまいりますが、現在、地方公共団体が独自に大気汚染関係ということで救済制度をしいておりますところは、それだけに現実に問題があるわけでございますから、本制度の地域指定にあたりましては、有力なる候補といたしまして、それらの地域につきましては十分検討いたしたいと考えております。
○阿部(未)委員 同じく地域指定についてもう一点。 いま世論が非常にほうはいとして、公害対策、環境保全の問題が提起をされ、また皆さん方のたいへんな御努力によって、最近私は特に一種地域等における汚染物質の濃度は下がってきて環境が浄化されつつあると思います。むしろいま起こっておる公害病というものは過去の蓄積の中から発病してきておるものが非常に多いのではないか、そういうふうに考えられますので、この地域指定にあたっては、現時点における排出の濃度がどうであるとかいうようなことも一つの基準にはなりましょうけれども、過去どうであったかということが非常に大きい関係を持つというふうに考えますが、いわゆる過去にそれらの地域において汚染物質が排出されていたというふうなことについて、地域指定にあたってはどのような考慮が払われるのかお伺いしたいと思います。
○橋本説明員 いま先生の御指摘のございましたように、地域指定をするにあたっては現在の汚染だけではなく過去にさかのぼるべきではないかというような御意見でございます。この点につきましては参考人の公述のときにも、現在起こっている影響というものはいまの汚染そのものでは必ずしもない、昔のものもあるというような御意見もございました。私どもの特別措置法の地域指定に際しましても、できるだけもとのデータにさかのぼって現在見るようにいたしております。そういう意味でいまから三年ぐらいということだけになりますと、これはかなりよくなっている時期でございますが、過去にさかのぼって見るということはきわめて必要なことかと思いますが、データとしての実証を要するということもまたきわめて必要なことかと存じております。
○阿部(未)委員 その場合に一つは暴露要件があったかどうかということがいまおっしゃったデータのあれになると思うのですが、もう一つは、現実にそこに公害病の患者が多発しておる、これも私は一つのあれになるのではないか、そういう公害病の患者が多発しておる地域については、たとえばいまおっしゃったような暴露要件について必ずしも明確でなかろうともこれは指定地域に入れていくべきではないか、そういう気がするのですが、公害病患者多発地域についての考えはどうでしょうか。
○橋本説明員 いま御質問のございました公害病とは何かという問題に関係してくると思いますが、大気汚染系統の疾患におきましてきめております非特異性の呼吸器系の疾患といいますものはどこにでもある疾患でございます。そういう意味で、その病気であれば公害病ということには医学的には判定されません。医学的には不可能だということで、汚染と有症率、それによる地域指定ということと指定している疾病名と暴露要件、この三つをそろえて初めて公害病といい得るということでございますので、暴露の要件が明らかでなく、汚染の事実のないところでその患者が多いということで公害病ということにはこの法律では考えておりません。
○阿部(未)委員 その点私はことばが足らなかったのですけれども、必ずしも絶対的な暴露要件がなくてもそういう地域でいわゆる公害病の発生が起こり得る可能性のある地域、工場があるとかそういう地域で、公害病患者が多発しておる地域が必ずしも暴露要件が明確にならなくとも地域指定には入れるべきではないか、そういう意味で、全然暴露要件のないところも入れろ、そういうことではないのですが、暴露要件が必ずしも明確ではなくてもそういう因果関係が想定されるところについては公害病患者の多発地域は当然地域指定に入れるべきではないか、こう申し上げたのですが、どうですか。
○橋本説明員 いま先生のおっしゃいましたように、発生源が明らかに長い期間にそこに存在しておった、そして汚染しておる事実があったということがあれば当然に考慮に入れるべきことであろうというぐあいに思っております。
○阿部(未)委員 少し具体的になって恐縮ですが、まあ私は、全国各地の地方自治体が条例で定めておるところもそうだろうと思うのですが、先般来問題になっている私のほうの大分の新産都市地域の鶴崎における公害病、これはまだ地域指定もありませんし、公害病の認定もありません。しかし、県が委嘱をした大分県医師会の調査によれば、かなり多くの非特異性疾患の患者がおるということがいわれておるわけですが、いわゆるそういうものが対象になり得るかどうかという、かなり具体的な事例ですが、明確にするしないは別として、対象になり得るかどうかについてお伺いしたいのです。
○橋本説明員 いま御指摘のございました大分県のケースについてでございますが、大分におきましては地元の医師会が非常に積極的に公害の地域活動というのをやっておられまして、公害の予防あるいは影響調査に非常に協力を願っておるというぐあいに私ども存じております。大分県の医師会が独自の立場で調査をおやりになったということはきわめて貴重なものだということも私ども感じております。この場合にどういうふうな条件かという問題でございますが、全国的に指定地域にいたしますときには、汚染調査というものにつきましては、これはもうほとんど標準化されたと思って間違いないと思いますが、有症率の調査というような点になりますと、これは非常に一定して標準化してやると申しますか、そういうことがきわめて重要な要件になっております。そういう意味におきまして、国のほうで一定の水準で、イギリスの医学審議会のきめておる調査方式を日本語に訳して、若干日本で使いやすいように補正したものを国がそれに関与して行なって、その条件が合うか合わないかということによってこれを最終的に判断されるものだというぐあいに考えておりますので、現在のところ大分の医師会の方々のおやりになったデータとその汚染だけで私どもは判断するわけにはまいらないというように考えております。
○阿部(未)委員 もう一つ、たとえばいま環境庁が持っておる大気汚染の基準、SO2について、前は〇・〇五PPM、今度は非常に基準をきびしくして〇・〇二五か何かにしたようですけれども、〇・〇五という基準の際に基準以下の排出量であったからこれは該当しない、しかし今日SO2が〇・〇二五で、もし〇・〇五のときに汚染されたというふうなものがあった場合、これはどういうふうになりますか。
○橋本説明員 いまのお話は、私十分理解をしかねたところがありますのですが、現在は〇・〇四五の人が〇・〇五のときに暴露されておったらどうなるかということでございますが、これは基準を〇・〇五ということで指定地域をきめておるわけではございません。〇・〇五と申しますものは、前の環境基準の年平均値でございます。また、新環境基準は、健康上全く問題のないとされている、維持することが望ましいという条件でございまして、環境基準の条件そのものを使って汚染の水準ということにはいたしておりません。いま先生の前の質問で御指摘ありましたように、できるだけ以前にさかのぼって詳細にデータを見て判断をするということで対処すべきものと考えております。
○阿部(未)委員 いわゆる前の基準を基礎にして地域指定にならなかったところですね、早くいえば。前の基準がそのまま地域指定の基準にならないことば私も承知しておりますが、少なくともゆるい基準であったことは間違いないから、基準と有症率、そういうものを比較をして、いわゆる公害病の地域指定を受けなかったところが、実は前の基準がゆるかったので有症患者が出た、そういう場合は見直す、こう理解していいわけですね。
○橋本説明員 いまの御指摘のありました問題点は、基準を見直すということよりも、従来指定した地域の中に不均衡はなかったかということで、この法律の指定基準をきめる際に慎重に対処して、中央公害対策審議会の意見を聞いて最終的に定めるべきものだというように解しておるわけであります。
○阿部(未)委員 次に、指定疾病の範囲でございますけれども、いま考えられておる指定疾病の範囲はどういう範囲のものですか。
○橋本説明員 現在考えております指定疾病は、現行特別措置法によりまして指定しております疾病をまず引き継ぐということで考えております。
○阿部(未)委員 本法の施行までに、たとえば赤潮という発生源の今日まだ明らかでないようなものがあります。これがもし人の健康に被害を及ぼすことが明らかになったような場合は、そういうものも入れていくかどうか。光化学スモッグもあります。こういうものも本法の施行までに入れていく考えがあるのかどうか。さしむきは規行法上のものに限るというお考えかどうか承りたいと思います。
○橋本説明員 どういう条件がはまれば指定疾病とするかというところに一番基本の問題があるわけでございまして、いま先生の仮説的におっしゃいました赤潮によって健康被害があるということが、環境汚染によって生じた健康被害としての疾病であるという条件がはっきりそろってこれができるという、仮説的にそういうものがあるとするならば、審議会で御審議を願ってきめるということであろうかと思います。光化学スモッグも私ども非常に重要な問題と思っておりますので、審議会の検討事項として考えておるものでございます。
○阿部(未)委員 赤潮の健康被害についてはなお不明な点がたくさんあると思いますし、学者の説によると、赤潮の中には非常に有毒なものがあると聞いておりますが、これはまだ今日必ずしも明らかになっておりません。しかし光化学スモッグの場合は大体明確でございませんか。そういう明確なものについても、なお本法の施行までに対象にするという姿勢を明らかにしないわけでございますか。
○橋本説明員 光化学スモッグによって広範な刺激症状が出ておる。中に、非常に重篤な症状を呈する人があるということは、私どもも非常な関心を持っております。本件につきましては現在大気保全局におきまして影響調査をいたしておりますので、その結果を待ちましてわれわれはやりたいと思っております。光化学スモッグの場合の指定地域の要件等は、これまた現行のSO2だけの場合とは違うのではないかということもございますので、その両者をあわせて検討した上で中央公害対策審議会の御審議を得て決定すべきものと考えておるわけでございます。
○阿部(未)委員 そうすると、いま中央公害対策審議会の議を経なくて入れようとするのは現行法上のものだけ、その他のものについては全部これからあらためて中央公害対策審議会に諮問をする、そういうお考えですか。
○船後政府委員 指定疾病につきましては、これは政令で定めまして、その政令を定める場合には中央公害対策審議会の意見を聞くということになっております。そこで、いずれにいたしましても中央公害対策審議会に付議するわけでございますが、先般の中公審の答申によりますと、さしあたりは現在の特別措置法で指定疾病となっているものはそのまま引き継ぐ。さらにその他の疾病につきましては種々の検討を経た上で追加するという基本方針になっております。なお、現行特別措置法におきましても、たとえばことしの二月に慢性砒素中毒を追加いたしましたように、今後も被害の実態並びに医学的知見の進歩に応じまして、そのような追加を考えてまいりたいと思っております。
○阿部(未)委員 私は、先ほどから申し上げておりますように、公害対策はいつも後手後手に回っていく。これはその性格上ある程度やむを得ない点があるとは思いますけれども、光化学スモッグのごときは明らかに公害と認定をしてしかるべきものであると思うのです。したがって環境庁としては、むしろ積極的に中公審に対してこういうものも公害病として地域指定をしてもらう、あるいは疾病の指定をしてもらうということをおやりになるほうがいいのではないか。中公審の答申をいつまでも待っておるという姿勢では、積極性を欠くのではないかという気がしますが、どうですか。
○船後政府委員 公害行政はすべて先手をとってやるべきである、これは当然なことでございますが、ただ損害を補償するというのは、どうしても損害が発生した後の後手に回らざるを得ないという立場の救済法でございます。そこで光化学スモッグにつきましても、先ほど橋本審議官から申し上げておりますように、現在大気局を中心に健康被害もあわせて検討中でございますから、これらの調査検討を待ちまして、審議会の意見を聞いてきめてまいりたい、かように考えております。
○阿部(未)委員 次に第四条の関係ですけれども、第四条に「政令で定める期間」というのがございますね。この「政令で定める期間」というのは一体どのくらいのことを考えておるのか。現行の特別措置法の期間を大体標準に置いて考えておるのか。もう一ぺん見直しといいますか洗い直しをするお考えがあるのかどうか。
○橋本説明員 現行の特別措置法におきましては、非特異性の大気汚染系の疾患におきましては、居住歴がおとなの場合三年、乳児の場合六カ月という条件を置いておりまして、通勤の場合には五年という条件がございます。 この新しい法律におきましては、疾病の種類ごとに定めるということもございますので、種類ごとにその期間が適切であるかどうかという議論があろうかと思われます。昨日の公聴会の専門家の御意見にもございましたが、こういうものも十分参考に入れて検討すべきことだというように考えております。
○阿部(未)委員 私も実はきのうの公聴会でそれを聞いて、ちょっと心配になったわけですけれども、新しい法では、おっしゃるように疾病の種類ごとに、有効期間というのですか、それを定めるということになっておるようですが、それは一体どういう基準で定める予定になっておるわけですか。
○橋本説明員 疾病の種類ごとにということで、どういうことを考えておるかという御指摘でございますが、たとえば慢性気管支炎とかあるいは肺気腫というような場合には、これは数年の経緯がなければ起こらないものだと思います。しかしながら気管支ぜんそくというような場合には、これはもともとぜんそくの人が入ってきても悪い影響を受けるのではないかという議論も、当然に一方ではあり得るのではないかということもございます。そういう観点に立ちまして、疾病の種類によってある程度長いものと短いものとが生ずるであろうという考え方に立っておるわけでございます。
○阿部(未)委員 その趣旨はわかったのです。疾病の種類ごとにどのくらいの期間を考えておるのか。全部あげられなくても、その数はきまっておるのですから、そのうちで、これはどのくらい、これはどのくらいと大体考えておるのではないですか。
○橋本説明員 現在のところではまだ専門家のグループの中で意見が固まっておりません。いま申し上げたぜんそくにつきましては短くすべきではないかという御議論があるという段階でございますので、一つずつの疾病についてどれだけの年数というところにはまいりませんので、お許し願いたいと思います。
○阿部(未)委員 それからもう一つ暴露要件ですけれども、きのうの公聴会でも意見が出ましたが、汚染された地域によそから移ってくる。そのためにぜんそくになるという場合が考えられる。そうすると、現行の暴露期間、たとえば五年とか三年とかあるいは乳児の場合は六カ月とか、そういうものをもう少し変えなければ、居住歴だけで判断をするというのはそこに少し無理が生じてくるのではないですか。そういう点はどうお考えになっていますか。
○橋本説明員 いま御指摘の問題は、一つは、居住歴の通算問題をどう扱うか、あるいは通勤歴の通算問題をどう扱うかというところにも関係してまいることではないかというぐあいに私どもは考えております。その点につきましては、この四条一項の関係の政令において定めるということを本法案においては予定しております。
○阿部(未)委員 それから本法では大体居住歴というものを基礎に考えておるようですけれども、それぞれの個人の体質によって、たとえば非常に正常な環境のいいところに住んでおった方が非常に空気の悪い、大気汚染の激しいところ、例をあげれば、九州のいなかに住んでおった子供が高校を卒業して尼崎なら尼崎という地域に就職する。そして就職してから後の居住歴は短いが、ぜんそくにおかされる。こういう場合に居住歴だけをよりどころにするのでは無理があるのではなかろうか。その点です。
○橋本説明員 いまの先生の御質問は、おそらく個人個人の素因をどう扱うかという御議論であろうかと思いますが、現在のこの制度的な運用という中で個人個人の素因をどう扱うかというのは、医学そのものの中でもきわめてむずかしい問題だというぐあいにされておりますので、やはり医学関係の専門家の方々が疾病別にどう扱うかという場合に、そのようなことをどういうぐあいに最終的に割り切りをしてきめるのかということによってきめてまいりたい、そういうぐあいに考えております。
○阿部(未)委員 私はこの公害というものは、そのことなかりせばという基本に立ち、たとえばここに大気の汚染なかりせばぜんそくにはならなかったであろうという前提に立つとするならば、いまおっしゃったように専門医がきめるというようなことになって、居住歴だけにとらわれるのでなく、個人個人の体質というようなものについても配慮してやらなければならないのではないかという気がするのですけれども、本法による限りは、居住歴というものを非常に大きい要件にしておるようでございます。しかし、いま私が具体的に申し上げた例のように、個人個人にそれぞれの素因がある。しかもそのことなかりせばぜんそくにならなかっただろう、公害病におかされなかったであろうというような場合をどう考えるかというのです。
○橋本説明員 非特異性の疾患の場合には、そのことなかりせばという医学的な証明がきわめて困難であるという問題でございます。
○阿部(未)委員 困難だから、こういう法律をつくらなければならないのですよ。そもそも困難だからつくるのです。せっかくつくる以上は、いまおっしゃるように確かにぜんそくなどというものは全国の各地にある病気です。全国各地にある病気ではありますけれども、それまでは全然ぜんそくでも何でもなかった健康な人が、汚染された地域で就職をした。そしてぜんそくになったとするならば、その素因が従来のその人の健康状態に照らして、これはやはり大気汚染によるものというふうに理解がされるならば、個々の医師の診断によって、単に居住歴だけを基準にしなくて、認定ができないかというわけです。
○橋本説明員 いまの先生の御質問を伺いまして、一つの問題は、ぜんそくの問題に御意見を集中しておるわけでございまして、ぜんそくの場合にどの程度平均的に暴露期間を短くするかということでこの問題を処理しなければならないと思います。そういう意味で、暴露期間ということはどうしてもやはり避けることのできない一つの要件であるというふうに考えておるわけでございます。
○阿部(未)委員 次に、費用の負担についてお伺いしたいと思いますが、何条ですか、別に定めるところによって費用の負担をさすことになっておったようですが、これはたぶん自動車の排気ガス関係等を中心にしたものだと私は思うのですけれども、これは別に定めるだけで一向この内容がわからないのですが、どういうふうに別に定めるおつもりですか。
○船後政府委員 一種地域にかかわる疾病につきましては、大気汚染に対する寄与度に応じましてこの費用を負担をするということを原則といたしておるわけでございます。ところで大気汚染の寄与者といたしまして最大のものは、大気汚染防止法で定めておりますばい煙等発生施設の設置者、いわゆる固定発生源でございます。これらの固定発生源につきましては、かなり規模が大きいわけでございますし、それから大気汚染防止法上の種々の届け出という義務もございまして、その排出量を個別に把握することは可能でございます。したがいまして、これらにつきましてはそれぞれの事業者の排出量によりまして、汚染負荷量賦課金を徴収するという仕組みにいたしたのでございます。ところが大気汚染に寄与しておりますものは、このような大きな固定発生源以外に零細な固定発生源もございますし、あるいは自動車等の移動発生源もあるわけでございまして、これらを総計いたしますと、その影響は無視し得ない割合になるわけでございます。ところがこれらの零細な発生源にそれぞれ個別的に排出量を測定するということは、技術的にもあるいは経済的にも不可能に近い問題でございますから、何らかの汚染寄与度を推定するに足る一つの仕組みということが必要になってくるわけでございます。そこで中公審における審議過程におきましても、こういう汚染寄与度をはかる尺度といたしまして、一つには原料物質である燃料というものに着目いたしまして、その一定割合に応じて賦課金を取ればよいではないかという御意見、あるいは現在自動車重量税でやっておりますように、個々の自動車に着目いたしまして、一台当たり幾らという賦課金を取ればよいではないか、いろいろな意見が出たのでございますが、そのいずれをとるにいたしましても、やはり技術的にかなりむずかしい問題がございます。かつまたこれらの油にいたしましても自動車にいたしましても、現在種々の税制があるわけでございまして、基本的な解決は税制との関連において解決するほかはない。したがいまして、予算時期でない現段階でこれを詰め切ることは困難でございますので、四十九年度予算に関連いたしまして問題を解決することとし、この際は本法におきましては別に法律で定めるところによるということにいたした次第でございます。
○阿部(未)委員 固定発生源の場合は、おっしゃるように測定によって全部明らかになるから、これはいいと思うんですが、特に移動発生源の場合にちょっとお伺いしますが、この固定発生源による費用の負担とそれから移動発生源による費用の負担との割合はどのくらいとお考えになっておりますか。
○船後政府委員 健康被害に影響のある有害物質の代表的なものとしてSOxとNOxをとりますと、大体この制度で考えております固定発生源による汚染負荷量賦課金の占める部分は七割程度、したがいまして残りの約三割程度が自動車等の移動発生源あるいは、零細な固定発生源の寄与分だと考えております。
○阿部(未)委員 そうしますと、かりにこの第一種地域の費用が三百億必要であるとするならば、その七割ですから固定発生源から二百十億取る、移動発生源から九十億取る、こういう割合になってまいりますね。そうした場合に、自動車は全国の各地にあるわけでございまして、確かに総体的な寄与率からいうならばそういう割合が成り立つとしても、島本先生お見えになりますが、北海道のずっと北のほうあたりでほとんど公害に関係のない地域で自動車を動かしておる方々も、いまのお話によるとやはり寄与率ありとして幾らかの税金みたいなものを取られることになってきます。これは国民の義務となるわけでございますから、非常に重要な問題だと思うんですが、そして取られた十分の三に匹敵をする金額が、大都市における固定発生源の人たちの負担をすべき大気汚染による健康被害をカバーしていく。何ら公害には寄与していない自動車の持ち主が、大都市における固定発生源の所有者たちの起こした公害に負担をしていかなければならない、そういう結果にならないでしょうか。
○船後政府委員 御指摘の事情は、固定発生源から徴収する汚染負荷量賦課金につきましても言えるわけでございまして、非常に汚染が高く、かつ患者も多いという地域、もしくはその地域の周辺部分の固定発生源と、汚染度も低い、患者も少ないというような地域の固定発生源ということとの関係とほぼ同じと考えます。固定発生源の場合には、この汚染負荷量賦課金の料率を定めるにあたりましては、こういった地域差を十分考慮して定めることにいたしております。 そこで、その他の部分を取るにつきましては、どういう対象からどういう方法で取るかということがきまりますれば、考え方といたしましてはただいまの固定発生源と同じような考え方を導入する必要があるのではないかと考えております。
○阿部(未)委員 私はいま二点目にあなたのおっしゃった質問をしようと思ったのですが、固定発生源の場合にはそれぞれの地域によって賦課金の率を変えていく、こういうわけでしょう。ところが移動発生源の場合に、そういうことが一体可能であるかどうか。先ほどあなたがおっしゃった自動車重量税に賦課するとか、あるいは原燃料に賦課をするとか、そういう方法をとった場合に、その車がどこの地域を運転するか明らかでないのに、この地域で車を持っている人にはこの率でよろしい、この地域で車を持っている者にはこれだけの率とか、そういうような極端な例が——ここでガソリンを入れれば高く取られるが、この区域を出てそちらのほうでガソリンを入れれば安くなる、こういう理屈だって私は成り立つと思うのです。移動発生源に対する別に定める徴収の方法というのは、ある意味では国民の権利を侵害をしてたいへんな義務をかけることにならないだろうか。しかも、今日御承知のように、どんないなかでもほとんど自動車を持っておるわけなんですよ。大気汚染にほとんど寄与していない自動車の所有者が、大都市における固定発生源の、大きい発生源を持っておるところの公害被害の補償を負担をしていかなければならない、私はどうしてもそういう結果になるような気がしてならないのですが、それではどういう方法が、無理がないということでどういう方法が考えられるでしょうか。いまおっしゃっている固定発生源の場合には、非常に汚染度の高い地域と低い地域とに分けて料率を変えていけばそれでいいでしょう。しかし、移動発生源の場合はそうはいかないのではないですか。技術的にそういうことができますか。
○船後政府委員 第一種地域にかかわるこの制度は、いわば制度的な割り切りを前提としておるわけでございまして、ほんとうに当該被害の原因者がだれであるかということを民事責任の原則に従いまして徹底的に追及いたしますことはほぼ不可能に近いというところから、この制度を考えておるわけでございます。したがいまして、大気汚染に対する寄与者は、被害を発生させる危険性、可能性、蓋然性があるというところから費用負担を求めているわけでございます。しかし、そのような可能性、危険性というものは、地域によってかなりの差があるわけでございますから、これもある程度やはり割り切りまして、地域差を設けたいという考え方でございます。 そこで、移動発生源の場合にどのような対象に対してどのような方法で徴収するかということとこれは関連してくるわけでございます。これも全く仮定の話でございますが、たとえば個々の自動車に着目して何らかの負担金を課すということになりますれば、これは自動車の所在する場所によってその差をつける、もちろん北海道ナンバーの自動車も東京を走ることもあれば、東京ナンバーの車も北海道を走ることがあり得る、こうは思いますけれども、やはりそこは厳密に追及することは不可能に近いわけでございますから、そういった自動車の登録場所ということによって一つの制度的割り切りをするというのも一つの方法として考えられるわけでございますが、これらは、いずれにいたしましても、何を対象にして、何をものさしにして賦課を求めるかということとの関連において、できる限り、この制度の制約の範囲内ではございますが、できる限り合理的に制度を組み立てていきたいと考えております。
○阿部(未)委員 私は、運用上の実際問題として不可能だろうと思うのです。移動発生源の場合に、いまおっしゃったように、北海道ナンバーの車だって東京を走ることもあり得るし、東京ナンバーの車だって北海道を走ることもあり得る。しからば、かりにあなたのおっしゃるように百歩譲って、それぞれの車の登録をされておるところに取るとするならば、これはまあ基本的には重量税を基礎にしてかけざるを得ぬ。自動車重量税を基礎にすれば、登録されているところに大体いけることになると思うのです。しかし、自動車重量税を基礎にして登録されておるところにかけたとすれば、今度は寄与率からいうと非常に矛盾が出てきます。非常にたくさん走る車と走らない車が重量だけによって税金をかけるわけですから、寄与率から言うと、重量税を対象にしてこの負担をさせるということは非常に矛盾が起こってくる。それでは原燃料でいくか、原燃料でいくということになれば、非常に地方のほうでガソリンを入れるものを安くして、大都市の寄与率の高いところでガソリンを入れるものはガソリンを高くしなければならないという理屈になってくる。しかも地方だからといって、たとえば貨物輸送をやっておる会社などというのは、九州−東京間などという路線を持っておって、自動車は走り回って、これらは寄与率の最も高いものだということになるでしょう。たまたま会社が九州にあって、その登録されておるところが寄与率が低いから安いガソリンを買うことができるというふうな矛盾も起こってくる。まあある程度割り切らなければならぬというお話はわかりますけれども、少なくとも国民にそれだけの税金に似たような、まあ税金とほとんど同じですが、義務を課するわけでございますから、寄与率という点から考えて、私は移動発生源から費用の分担をさせるということについては、これはかなり煮詰めておかないと問題になる。たとえばこの民事訴訟が起こって、私の車はこの地域から出たことがございません、しかもこの公害の費用を負担させられております、私の車が走った範囲では公害は起こっておりませんというような裁判が民事上起こった場合、一体どういうことになるのか、非常に疑問があるところですが、どうでしょうか。
○船後政府委員 確かにそのような問題がございますので、現段階におきましては詰め切れなかったのでございます。しかし、いずれにいたしましても、この制度は原因者を確定してその者から補償の費用を取るということは、制度としては不可能に近いところから出発しておりますので、どうしても制度的な割り切りが必要でございまして、この賦課金はどちらかといえば税金的な色彩が非常に強いものになろうかと考えております。 いま税と申し上げましたが、現在、目的税ではございませんけれども揮発油税は道路財源に充てられる、自動車重量税は道路財源のほかあるいは交通標識とかそのような財源に充てられておるわけでございますが、これも実を申しますと、ガソリン税をたくさん出しておる地域に特に道路がつくられておるというわけの問題ではないわけでございまして、そういう財源の中から全国の道路というものを整備しておるという関係になっておるわけでございます。 そこで、先ほど来申しておりますように、理論的には零細発生源の寄与度というものは無視し得ないわけでございますから、やはりこれを寄与度に応じて負担させるというこの基本的な原則に従ってどう取るのが最も合理的であり、かつまた効率的であるかという判断から今後問題を詰めていきたいと考えております。
○阿部(未)委員 今後問題を詰めていくということはわかるのですけれども、しかし、どう考えても私は、たとえば固定発生源の場合には寄与度によってその地域差を設けるということが、おっしゃるように可能でありますね。移動発生源の場合には、私はそれさえ不可能だと思うのですよ。そして、ほとんど自動車を持っておる者は平等の負担をさせられる。その場合に、さっき申し上げたように、ほとんど大気汚染に寄与度のない車の所有者が、約三分の一という膨大な大気汚染の損害賠償に対する費用の支弁をしなければならない、費用の負担をしなければならない、そういう結果になってくる。しかも、余談ですけれども、さしむき光化学スモッグ等はこの公害健康被害の対象になっていない。そういうことをあわせて考えますと、何かこの移動発生源から取るという発想についてはわかるのですけれども、その負担の割合なり取り方というものについては、私はどうも固定発生源の大きいところの負担をこれによって軽減していく、そういう心配があるように思われますが、その負担の公平という意味から考えて一体どういうことになりましょうか。
○船後政府委員 自動車の排気ガスの健康被害との関係でございますが、炭化水素が光化学スモッグの一つの原因物質でございます。窒素酸化物も同様でございますが、しかし窒素酸化物は他方、やはり現在特別措置法の指定疾病になっております慢性呼吸器疾患の原因物質としても有力であるわけでございまして、したがいまして、このような自動車の排出物というものを、この制度における負担体系を考える場合には絶対無視し得ないわけでございます。 ところで、私、先ほど七割と申し上げましたが、これは原燃料の使用状況に一定の排出係数を乗じまして、マクロ的に考えました場合の率でございまして、あくまでも客観的に算出したいと考えております。かつまたこれは毎年度ある程度動き得るものでございます。したがいまして、決して大企業の負担分をほかへしわ寄せするというような考え方から出発したものではございません。あくまでも客観的に、大気の汚染に対するそれぞれの寄与度ということでもって分担比率は考えてまいりたいと思っております。
○阿部(未)委員 長官、時間がなかったので非常にはしょった質問で聞き苦しかったと思うのですが、いま事務当局のほうからはいわゆる移動発生源についていろいろお考えが述べられたのですけれども、私がるる申し上げましたように、寄与度という点それから負担の公平という点から考えて、移動発生源からの費用の徴収というのは非常に大きい問題が含まれておるように私は思います。ただ、割り切れ割り切れといっても、行政のほうでは割り切ればけっこうでしょうが、割り切られた国民の側はたまったものではないという問題が起こってくるだろうと思うのですけれども、これからの問題ですが、長官この点についてどうお考えでしょうか。
○三木国務大臣 いろいろいまの御発言にもありましたが、さりとて自動車を徴収から除くということも、これはまた公平の原則からいったら合わない。またそんなら自動車というものを対象にした場合に、いま御指摘のあったような不公平な問題が実際起こると思う。さりとてこれを除いてはいけないということになってくると、やはり制度としてある程度割り切らざるを得ない。そういう考えですけれども、なるべく公平というような観念からして、徴収は——割り切らなければいかぬですよ。いかないけれども、その間において、できるだけ公平というような見地から徴収方法を考えてまいりたいと思います。
○阿部(未)委員 終わります。
○菅波委員長代理 島本虎三君。
○島本委員 長官、具体的にこの問題に入って質問させてもらいますが、ほんとうに生業補償をこの中へ盛り込むという決意は変わらないですか、まずそれを伺っておきたい。
○三木国務大臣 生業補償を制度化したいという決意は変わらない。しかしこの法案の中に盛り込むことが適当か、別の新しい制度として考えることが目的を達成するためによりベターかということは十分検討をしたい。この法案の中に盛り込むことは、一本化されていいような点もありますけれども、しかしやはり生業補償というようなことになってくると、経済的な問題も含まれておるので、あるいはこの制度の中に盛り込まないで別の制度として一本つくったほうがよりよく目的を達成できるというような考えもございますので、これを制度化したいという決意は変わらぬけれども、法案のていさいについては十分検討させてもらいたいと思います。
○島本委員 それをもって二転、三転と言う。初めこの中に生業補償を入れる、そして名前も公害被害損害補償法という名前だった。それがいつの間にか公害健康被害補償法になり、いまこれを聞いてみたら、この中に入れないこともあり得る、こういうようにまた変わってきた。変わったんじゃなくて、初めからあなたは入れる意思がなかった。この第一条目的のところを見ても、もう官僚のほうでそういうようにつくってしまった。そうでないと言ったって、そうなっている。まず、この中には財産被害を入れたくないのです。公害対策基本法、この中に典型公害七つ。そしてその審議の際にも、御承知のように水の汚濁の中には当然温水によるところの被害を入れているのです。それから水質汚濁防止法の中に完全にこれが入っている。しかるにかかわらず、この第一条から除かれているのです。「(水底の底質が悪化することを含む。以下同じ。)」これが入っても、これは健康被害に限定して、温排水は生業に被害を及ぼす最大の元凶でありますから、そういうのを才蔵の一条の目的から除いているということは、当然これも法律によってやる意思はないものである。長官はわれわれをいままであざむいてきた、この責任はどういたしますか。
○三木国務大臣 あざむくかあざむかないかということは、これを制度化すというためにこの決意は変わらぬかというところに問題があるので、そういう人たちの生業被害の救済の目的をよりよく達成できるという法律のていさいのほうをとりたいと思っている。私も最初はこの中に入れたいと思ったのです。ところが健康被害と生業補償という問題を入れることが法のていさい上——それよりも生業補償は一本化したほうがいいんじゃないかという意見もあって、そういう目的を達成するためによりよいていさいをとりたいということでございまして、島本委員の御指摘のように豹変したという中にこういうことは入らぬ。これを制度化すという決意は変わらぬということが問題の本質でございますから、それまでの過程にいろいろ方法論としてはあるけれども、問題はこれを制度化したいという決意は変わらないということでございます。
○島本委員 一条目的を見る場合には、はしなくもそういうようなことがはっきりと載っておりますので、あえてこれを指摘したわけであります。しかし、これによって生業補償を入れるとすると、いよいよもってこの法律は初めから困難の様相を呈するような仕組みにつくられますから、これは別法によってでも早くこれを救済する方法を講じなければならない。しかしこの中に入れるかのような幻想をわれわれに与えてきたということに対しては、私どもは十分責任を感じてもらわなければならない。その責任を果たすゆえんのものは、別法でもいいから早く制度化すべきである、こういうようなことです。これはひとつ十分私から御注意申し上げたい、こういうように思います。 次には長官も聞いておられたと思いますが、この場所で参考人の意見並びに公聴会による正規の公述人としての意見、これらを聴取することができました。これもきのう一つ終わったわけです。その中で私どもも四十二条と四十三条に関連して重大な問題が一つあることをここに指摘しなければならないので、あえて当局にその考え方を問いただしたい。何回も言うように公害そのものは原因者、いわゆる加害者と被害者よりないのです。そうすると、これは被害者を十分救済するための立法であるとするならば、加害者を擁護するような立場に立つということになってはいけないわけであります。この四十二条、四十三条、この場合には補償給付を制限する条項が載っております。しかしながら被害者に罪を着せられるような、こういうようなものは何一つないのが公害の被害の一つの特徴なのです。もし被害者がそれをおおい隠さなければならない場合には、これをあらわす以上に苦しさがこの中にあるということを十分考えなければならないのです。なぜ隠さなければならないか。自分が水俣病であるならば、自分がイタイイタイ病患者であるならば、自分が四日市ぜんそくであるならば、自分の子供の嫁入りに影響するか、それを相手方の両親がきらうか、いろいろな事情がある場合は、これを隠す場合もあるではありませんか。それはもう、隠すことによってその被害は一そう本人を苦しめているのです。被害者の責めに帰すべき理由は公害の場合はないのです。そのないはずの理由を被害者のほうに持ってきて何か加害者に有利に展開しようとする、こういうような一つの動機というか、発作が見えるわけであります。この四十二条、重大な過失によって指定疾病にかかったりというようなこと、これは一体どういうような具体的なことを連想してお考えなのですか。これは事務当局のほうから伺います。
○船後政府委員 まず四十二条の補償給付の制限の趣旨でございますが、これは決して加害者を保護する趣旨のものではございません。これはあくまでもこの制度と受給権者である被認定者というものの関係でございまして、制度として一定要件のもとに給付を義務づけられております関係上、その給付を受ける側におきまして重過失があった場合には、その事情をしんしゃくいたしまして給付を制限するという規定は、これは本法のみならず、本法とほぼ同じような趣旨のもとに立法されております労災保険法におきましても、十九条で同様の規定が存するところであります。なお、実情につきましては先生の御指摘のように、水俣病等の場合には本人の責めに帰すべき事由というものは非常に少ない、あるいはあり得ないかとも私思います。したがいまして、そのような場合には本法は発動する余地がないのでございますが、やはり一種の地域等につきましては制度的に因果関係を割り切っておる制度でございますので、やはり被害者の重大な過失によって疾病になるあるいは疾病が増悪されるというようなケースが考えられるわけでございますから、そのような場合には本法の規定によりまして給付の制限をすることになるわけであります。
○島本委員 それならば、これはなおよくわからないわけですが、結局は、きのうもその点は十分指摘されましたが、いま言ったような意味であるとするならば、民法の四百十八条と七百二十二条、こういうふうなものによって簡単にしておけばいいじゃないかという公述人の意見がきのうは出されました。いま言ったようなことだけだったならば、結局それでいいのじゃありませんか。なぜこういうふうにしてきびしく被害者を取り締まるような規制を入れなければならないのですか。
○船後政府委員 ただいま御指摘の民法四百十八条、七百二十二条の規定でございますが、七百二十二条の第二項におきましては、いわゆる過失相殺規定「被害者二過失アリタルトキハ裁判所ハ損害賠償ノ額ヲ定ムルニ付キ之ヲ掛酌スルコトヲ得」という一般規定があるわけでございます。前の通常国会でいわゆる無過失法案が審議されました際には、この規定がありますので、特に民法の特例としての無過失法案にはあえて過失相殺規定の必要はないということで、国会において修正になり、いわゆる無過失法におきましては民法七百二十二条第二項の原則に従うことになったわけでございます。ところがこの制度は公法の体系に属するものでございまして、直ちに民法七百二十二条なりあるいは四百十八条がそのまま適用されないわけでございます。したがいまして、これと同様の考え方を持った第四十二条というものを創設したわけでございます。
○島本委員 その点につきましては、今後の問題として議論のあるところであります。きょうここではっきりただしておきたいことは、たとえばいろいろな参考人や前回からのいきさつを通じて、これは水俣病一つ見ても、隠れ水俣といわれるような潜在性のやつがまだまだ多い。そういうふうな場合には、子供のためを思ったりして親が故意に隠す場合なんかも当然人情としてあり得るわけです。したがって、病院に行けと言っても行かない。そしてまた、患者だと言っても私は患者でないと言っている。そういうふうに否定する。こういうような場合がもしわかってもこれは重大な過失によるものではない、こういうようなことをこの際明確にしておかなければならないと思うのでありまして、私はこれをきびしくすることによってチェックされることがこのとおりやられると、結局加害者と被害者しかないし、われわれが常に言っているように、公害の状態の中では被害者の責めに帰すべきような理由というものはあり得ないのである、こういうような一つの考え方からして、当然いまのようなことをこのまま生かしておいてこのままチェックするということになれば多大の不安も感じられますから、この点私どもはこのまま納得するわけにはまいりません。いまの民法の点とあわせて、これは今後の課題として私どもも検討しますから、皆さんのほうでも検討しておいていただきたい、こういうように思うわけです。 なおあわせて、いまのようなこういう場合には当然被害者の立場に立って法を運営すべきである、こういうように思います。それに差しつかえございませんか。
○船後政府委員 ただいま先生が一例としておっしゃった、水俣病の場合において過去のいろいろないきさつがございまして、親がこれを隠すということは、私はあり得るかと思います。しかし、それは指定疾病になる前の問題でございますから、全く四十二条とは関係がないわけでございまして、当然この規定の適用はないと思います。問題は、やはり指定疾病になるにつきましての重過失あるいは指定疾病になりまして以後、たとえば医者の注意も聞かずにいろいろな病気を増悪させるような行動をやるといったようなことで、非常に本人の責めに帰すべきことが多いといったような場合に本法の発動が考えられるわけでございますが、これにつきましては、当然私ども運営の方針といたしましては、本法制定の趣旨にかんがみまして慎重に適用するように指導してまいる考えであります。
○島本委員 念のため、本人の責めに帰すべきような場合はどういう場合ですか。もう一回聞かしてください。
○船後政府委員 たとえば大気系の呼吸器疾患で指定疾病になりまして、たとえばたばこ、喫煙というものが非常に害があるということもわかっております。したがいまして、医者といたしましては喫煙はやめろということを再三指示する、注意をする。にもかかわらず本人がそれに従わない。これは一回、二回あるいは三回というふうに問題はあろうかと思いますが、そのように医者の療養上の注意に本人がかってに従わない、それによって病状を増悪させるといったようなことが考えられるわけでございます。
○島本委員 たばこの場合には、専売公社が日本の財源としてこれをやっているのであって、それを吸うことは国に協力しておることになる。それを例にとってやったのは妥当じゃありませんから、たばこ以外の例をひとつ……。
○船後政府委員 最近はたばこが健康のために害がありますことは専売公社も認識いたしておりまして、健康のためには吸い過ぎないように注意しましょうという表示もいたしておるわけでございます。
○島本委員 それ以外の例を……。たばこの例は妥当じゃないから、それ以外の本人の責めに帰されるような例はどういうのがあるのかということを……。
○船後政府委員 しいて例をあげろとおっしゃいましたので、ただいま喫煙の問題をあげたのでございますが、まあやはりこういう制度的な給付でございますから、ただいま申し上げましたような例に類するようなことが出てまいった場合には、やはり均衡上給付の制限という根拠規定は必要であると考えております。
○島本委員 もうすでに具体的にないものを予想してこういうようなものをつくっておくと、結局これを適用して運営したくなるのです。刃物を持った子供はどうしてもあばれたくなるのです。まして気違いが刃物を持ったら被害がわれわれに及ぶことになるのです。もうほとんどそういうような例がないように例をあげてくれと言ったらたばこしかあげ得ないような、こういうようなものに対してこれはつくっておくなんて少し慎重過ぎませんか。過ぎたるは及ばざるがごとしというのはそれなんです。まして何もわからないでその辺でやじっている人は、全然わからぬ人です。ですから、そういうような場合にはこういうようなのは必要ない。あえてやるとするならば、やはり日弁連の皆さんが言ったその程度にしておいてこれはいいのじゃなかろうか、こういうように私ども思います。それにしてみてももっと具体的な例があって慎重に考えた結果かと思ったら、たばこしかそういうものはないという。吸い過ぎ、吸い過ぎでないとだれが認定するんですか。わかるのは本人だけかもしれない。まあ医者だ。医者だってこれに対してよくわからぬ。どうもそれも適切妥当じゃないということをまず申し上げておきたいと思います。 それともう一つ、これはどういうふうなことなんでしょうか。私もよくわからないのですけれども、遺族補償の問題です。遺族補償の問題、これは実情に合って目的にかなうような解釈は当然必要だと思うのですが、三十条はどういうような意味でつくっているのですか、これをひとつ立法者からちょっと説明してみてくださいませんか。
○船後政府委員 法案の三十条は、遺族補償を受けることができる遺族の範囲と順位を定めた規定でございまして、この制度による遺族補償は、被認定者の死亡によりまして残された遺族というものの生活の安定ということを考えておるわけでございますから、その死亡いたしました被認定者と生計維持関係にありました遺族というものにつきまして、一定の要件のもとにこれを遺族とすることにいたしたのであります。
○島本委員 公害はすでに専門家の皆さん知っているように、きょう急にこつ然として公害病になるわけはない。微量蓄積した魚を食べるか、長い間空気を吸ってその空気によって健康被害を受けるか、こういうようなことでしょう。徐々にからだが侵されていくわけでしょう。徐々に自分は働けなくなるでしょう。徐々に働けなくなって、そういうような場合には生計の主たる担当者はほかに移っているでしょう。働けなくなってしまえば生活の保護を受けるよりしようがないでしょう。そしてそれによってやっていた人、実際どうして本人の世話になった、こういうようなことになり得るでしょうか。私はその辺の考え方がどうももう公害の実態に合わないのじゃないか、こういうように思うわけなんです。「被認定者又は認定死亡者の死亡の当時その者によって生計を維持していたもの」、もうほとんどからだが動かなくなってどうにもできなくなっているような人の生計を維持しているような人、その以前にもうこれは解決されているじゃありませんか。これは一体どういうようなことなんですか。これは現実としてあり得ることなんですか。
○船後政府委員 御指摘のとおり、死亡当時の生計維持関係ということのみに着目いたしますと、これはまあ死に至るあたりでございますから、事実上生計維持関係がないということがあるわけでございます。したがいまして、この三十条におきましては、申請の当時の生計維持関係というものにも着目するということにいたしておるわけでございまして、この点は労災法の体系におきましては死亡当時の生計維持関係を基準といたしまして判断するのに対しまして、本法の体系におきましては生計維持関係の判断をいたしておるわけであります。
○島本委員 ずうずうしい官僚的答弁です。なぜ労災法とそれを一緒にしなければならないのですか。公害患者と企業者の間に、別に公害になってからの労災についての契約も何もないのですよ。加害者と被害者しかないのですよ。それなのに労災法を適用して、労災法がこうなっておるからこうしなければならないと、むりやりに「被認定者又は認定死亡者の死亡の当時その者によって生計を維持していたもの」、あり得ないじゃないですか、そんなもの、まして六十歳以上の夫、子供、これはどういうことなんですか。「被認定者又は認定死亡者の死亡の時に次に掲げる要件に該当した場合に限る」、それをまた夫、子供、孫、これは一体どういうことなんですか。大臣、いよいよもっておかしいよ、これは。
○船後政府委員 まず生計維持関係を判断するにあたりましては、やはり第一は死亡の当時の生計維持関係でございまして、これは利子所得者でございますれば生計維持関係が存在し得るわけでございます。しかしたいていの場合は、病気になっておりますれば、普通の勤労所得者でありますと別に生計維持関係は移っていると思います。したがいまして、その下にカッコで「死亡の当時その者によって生計を維持していたものがないときは、認定の申請の当時その者によって生計を維持していたもの」といたしておりまして、一般的には認定申請時の生計維持関係ということによって判断することになるわけであります。
○島本委員 じゃ、実際六十歳以下である場合と十八歳以上である場合、夫の場合は六十歳に満たない者、子や孫または兄弟姉妹については十八歳以上の人または六十歳以下の人、これはどうなるのですか。どういうわけでこれはそうしなければならないのですか。
○船後政府委員 遺族補償費を支給する目的は、被認定者の指定疾病に起因する死亡によって残された遺族の生活の安定というところにあるわけでございますから、まず夫あるいは父母等につきましても、また子や孫につきましても、いずれも通常みずから独立して生計を営み得るという年齢の層の者は除外しておるわけであります。
○島本委員 それに類似して、同じ家族であるならば、夫が、その生計の主たる者が公害の被害を受けていれば、その他の人、そのうちにいる人またはその辺にいる人はほとんど同じような状態になっておる人じゃありませんか。全然違う別種類の人がそこに住んで生計をその人に仰いでいるわけじゃなかろうと思うのです。みんな弱っているのです。それ以下の、いまの基準をきめたその基準以外の人も弱っているのです。当然その以外の人だって見てやってもいいのじゃなかろうか、こういうように思うわけです、年齢の制限の点で。それはどういうことになっていますか。
○船後政府委員 遺族補償費を受け得る遺族がいない場合は、遺族一時金を支給する仕組みになっております。
○島本委員 それでこの障害補償費、それと介護加算額と合算した額、これはどういうような基準で算定していますか。ちょっとこれもひとつ解明願いたい。
○船後政府委員 まず障害補償費は、全労働者の平均賃金を基礎にいたしまして、男女別、年齢階層別に算定するという額になるわけでございます。これに対しまして介護の状態にある特に重度の方でございますが、そういう方につきましては、定額でもって介護加算を上積みするという給付額の算定になっております。
○島本委員 これは、介護手当的な考え方はこの中に入っているのですか。
○船後政府委員 介護手当と申しますのは、現在の社会保障体系にとられておる制度でございまして、現行特別措置法におきましても介護手当の規定があるわけでございます。ところがこれにつきましては、現実に介護の事実があり、かつまた介護のために実費を支給したということに着目して支給されておりますので、支給範囲はおのずから狭まらざるを得ないのであります。これに対しまして本法におきましては、介護すべき状態にあるという状態に着目いたしまして、そういう状態にある重度の方ならば定額の介護加算を行なうということでございますから、社会保障体系においてとられております介護手当とは性格が違うものであります。
○島本委員 では、その介護加算額だけで十分その意を全うすることができますか。
○船後政府委員 介護加算をどの程度の額に定めるかは、今後中公審におきまして御検討を願わねばならぬのでありますが、前回の答申が出ました過程におきましては、重度の者に支給すべき介護手当といたしましては、おおよそ二万円程度のものが考えられておりました。
○島本委員 二万円でやって一日幾らになりますか。
○船後政府委員 これは介護を要する状態にある方に特に上積みとして介護加算をするのでございますから、実際の実費としてどの程度のものが支給されたかどうか、これは問題とはいたしておりません。
○島本委員 現在いろいろとこの介護手当の問題や、いろいろ水俣で十分争われて、これはわかっているはずなんです。一日七百円やその辺でいま来る人はないのです。これもやったという名目だけで、いま三千円から四千円も出さないと来てくれない、こういわれているのに、あまり少ない額をこうやってていさいだけ整えても、内容はまたこれは不満の爆発のもとになる、こういうようなことであってはならないと思うわけです。もしやるならばほんとうに必要な額、必要な看護婦でも派出婦でも、そういうふうなものをちゃんとつけられる、これだけのものをしてやらないといけないのじゃないですか。そういうような配慮があるのですか。現にもう出してやっても、それによって来手がないのが現在の状態なんです。いままでの状態なんです。今度新法としてこれをやる以上、そういうふうなことの繰り返しではだめだ。せっかく介護加算というようなことでこういうような制度をつくるならば、水俣の例によっても、介護手当というようなものは一万円出してもほとんどこんなものは何にもならない。二万円でも何にもならない。それを今度は加算ということでこれをただつけ足して、そのまねをしている。これではさっぱり前車を見習っておらない、こういうようなことになるわけです。この点等においても私どもはほんとうに理解できないところです。もっとこれは考えておいていただかなければなりません。 それと療養の給付のところですが、ベッドの点については、これは十九条ですが、十九条の療養の給付、こういうようなことになっておりますが、この場合には局長、これはもう一回ここを説明してくださいませんか。
○船後政府委員 十九条の規定は、医療給付の内容を書いておるわけでございまして、これは通常の健康保険でございますとかあるいは公費医療の体系における療養の給付の内容と全く同じでございます。
○島本委員 もしそうならば、これまた健康保険の審議の内容を十分これは取り入れておらない。もうそれならば、なおさらかわいそうな状態になるのが公害患者。国民健康保険、政府管掌の健康保険、これらを利用する人、これは本人の責めに帰すべき理由のある人なんです。公害の場合はそれがない。自分の責任に帰せられるような理由を持たない人、一方的に加害者によって被害を受けた人、これらの人たちが来る。その場合には、国民健康保険と同じような状態で大部屋に入れる、これを基準にしてここへ持ってきている。大部屋でも、部屋があればいいけれども、なければどうするか。差額ベッド、そっちのほうに入れられる、その場合の給付はどうなりますか。
○船後政府委員 この制度における診療方針及び診療報酬は、第二十二条の規定によりまして、環境庁長官が中公審の意見を聞いて定めることになっております。この際に、どのように定めるかというのが問題でございますが、やはり大気系の疾病につきましては、疾病にかかったことについてはもちろん事情は異にいたしますけれども、疾病そのものあるいは治療方法そのものといたしましては、別にほかに例がないという病気ではございません。したがいまして、この第二十二条による診療報酬を定めるにつきましては、公害病の特殊な治療方法というものも検討しなければなりませんが、おおむねといたしましては、現在の健保の診療報酬の体系に準ずることになろうかと考えております。
○島本委員 ベッドの加算料、これはどうなるのです。
○船後政府委員 差額ベッドの問題は、これは医療制度におきまして非常に重要な問題でございます。やはり一般的に必要とされる部屋に対しまして、特に個人的にもっと設備のいい部屋がほしいといったような事情から差額ベッド問題が発生しておるわけでございますが、この差額ベッド問題を私どもの制度だけで解決することはきわめて困難なのではないかと考えております。
○島本委員 したがって、ベッドの差額はどうするということになるのですか。
○船後政府委員 これは通常の医療保険あるいは公費医療制度と同様に、差額ベッドの問題につきましては、もちろん中公審の意見を聞かねばなりませんけれども、これらの制度における取り扱い方と同じ取り扱い以外の方法を考えることはきわめてむずかしいのではないかと考えております。
○島本委員 本人の責めに帰せられる理由がある、そういうようないままでの例、これを持ってきて、被害者の責めに帰すべき理由がないというこの公害病患者に対しても、大部屋に入りなさい、大部屋がなくてどうしても今度は一人部屋、またはその他の差額部屋、そっちのほうに行かなければならない者に対しても、その差額は本人持ちだ、その差額を本人に出させる、こういうようなことなんですか。これは私どもはそういうように理解したくないのですが、この精神はそういうようなことで運営するのですか。
○船後政府委員 いわゆる大部屋と個室との問題でございますが、これはやはり治療の観点から医療機関が判断をすべき問題でございまして、重症の患者で個室が要るという場合にはそのような扱いになろうかと思います。 なおまた、大気系の疾患につきましては、特に空調室の設備というようなものが必要でございます。これらは現在健康保険の診療報酬体系では考慮に入れられておりませんけれども、私どもは公害医療の特殊性といたしまして、この空調室等の問題は中公審で御審議を願いたいと考えております。
○島本委員 これはやはり大臣、そういうような公害の場合には、特にほとんど加害者あっての被害者なんですから、被害者の責めに帰せられる理由はないのですから、そういうような場合にはそこに入って当然というか、あたりまえなんです。入れないで、今度それより別な部屋に入れられて、その差額は本人持ちだ、こういうようなことがないようにベッドの加算、もしどうしても必要だとするならば、それに対しては何とか善処してやるべきである。そのまま、自分は悪くもないのに、日本の高度成長政策の犠牲になった患者持ちである。こういうのならば、明治大正のころの、けがと弁当労働者持ちという思想と同じじゃありませんか。これはもう大臣として、この点そういうような差額は何とでもして本人に帰せられない、こういうようなことで運営する以外にはないのでありますが、これはやはり副総理たるゆえんでありますから、この際そういうふうな残酷な扱いは一切しないだろうと思いますが、大臣、いたしますか。
○三木国務大臣 できるだけ患者の人たちが不便でないように、治療の目的を達成できるような処理はいたしますけれども、たてまえとしての差額の徴収はしないということは、医療全般の問題とも関連をしますから、それはここで申し上げるわけにはいきませんが、できるだけ本人の病状等に照らして、公害病患者であるという特殊性も考えて、できるだけ治療の目的を達成できるような配慮はいたします。
○島本委員 歯切れが悪い。どうもこれはやればやるほど、早急にこれはもう認むべきじゃない、こういう色が濃くなってきます。最後の重要な点等について大臣の所見を承り、ここでひとつピリオードと思えば、歯切れが悪い、加害者擁護的なにおいがしてくる。こういうような点ではまことに困るし、第一、何をやっても労災を基準とするとか、労働者の平均賃金を見るとか——給付のレベル、これは公害なんだ、これはもう本人の責任じゃないものを、契約ある労使の関係と同じように見て、平均賃金の八〇%を上限とする、こういうふうな考え方に立っておる。それをまた基礎にして、平均賃金自体が明確でないだけじゃなくて、八〇%で頭打ちにしている、労災の場合には六〇%、保険事業でない制度にですね。これは保険じゃないです。保険でもないこの制度と、性質が違うようなこういうような状態にあるものと、一緒にして考えている。これじゃほんとうに私どもとしては、いよいよもって困ったことだと思うのです。本制度は企業防衛の性格、こういうようなものを持たないということで、いままでわれわれもいろいろこの問題に対して追及してまいりましたし、ある程度了解してまいりました。しかし、これをいろいろ調べてみましても、原因者が不特定の非特異性の疾患についてはこれはまだしも、原因者が特定できるような特異性の疾患の場合にまで、なぜこれは被害者に八割でがまんしなければならない、こういうような点を押しつけなければならないのか。なぜこれを十二割にしないのか。これは公聴会でも公述人からも、参考人意見からもこの点は強く出されて、やはり一、二の点を見ましてもそういう思想が貫かれておるわけです。これはやはり給付のレベルという点から見ても、私はこれはそのままちょうだいするわけにはまいらないと思います。一体公聴会のこういうような意見についてどう思うのか。 〔管波委員長代理退席、佐野委員長着席〕 被害者、これはもう特異性患者の場合にははっきりしているのですが、それがなぜ被害者は八割まででがまんをしなければならないのか。この点については、こうやっておるからすぐ裁判に移りなさい、こういう裁判移行促進機関であるということからしてこういうようにしたのか。まあそういうようにも思えるわけですが、この点の見解を明らかにしておいてもらいたい。
○船後政府委員 特異的疾患にありましては、比較的原因物質、原因者というものが特定しやすいのでございますが、しかしやはり迅速に被害者を救済するということでございますから、民事的な解決を待つまでもなく、この制度といたしましては、原因者と目されるものから賦課金を徴収いたして被害者に給付を行なうことにいたしたのでございます。しかしこれは制度でございますから、どうしても定型的な給付にならざるを得ない。そこで原因者がはっきりいたしておりますれば、それぞれのケース、ケースに応じまして、やはり特殊な事情はあり得るわけでございますから、なおこの制度でもって十分とされない損害、特殊損害というものはあり得るわけでございますから、そういった問題は最終的には民事的な解決によらざるを得ないと考えております。
○島本委員 次にまた、ひとつ個々の条文は別にしておいて、条文の一つ一つを見る前に、慰謝料の問題、これはもう前からもいろいろ、参考人からも公述人からも言われ、いろいろな質問者もこの点に対しては全部触れている。しかしながら、給付内容から慰謝料が落ちておるということは、これはそれにかわる相当なものがなければ重大な問題ではないかと思います。なぜかというと、最近の公害訴訟、こういうようなものでは、公害被害者救済の見地から慰謝料の重要性が強調されているわけです。そして四大裁判、これなんかの中でもやはり、この点等については慰謝料一本の請求がされているわけです。そしてもう各階層の識者もこれを支持しているようであります。慰謝料を落としたということは、公害被害者の苦痛に対する配慮、こういうようなものがほとんど顧みられないのではないか、こういう配慮が欠けている証拠ではないか、こういうように批判されてもやむを得ないのではないかと思いますが、この点についてはひとつどういうことなのか、解明を願いたいのであります。
○船後政府委員 公害裁判におきましては、慰謝料一本による損害の賠償請求というものの例が多いのでございます。しかしこれは、この制度は制度的な給付でございまして、慰謝料のように本人の精神的な苦痛あるいは社会的な犠牲、家庭生活の破壊、場合によりましては加害者そのものに対する制裁といったような要素を織り込みました慰謝料というものは、制度的な給付には適さないわけでございますから、この制度といたしましては、種々の補償費、障害補償費でございますとか遺族補償費につきましては、逸失利益というものを中心にしてこれを算定し、慰謝料的な要素というものは制度全体の中にこれを生かしていくという方向で考えたのであります。 なおまた、裁判例によりましても、慰謝料につきましては算定の方法は明らかではございません。最近の水俣裁判あるいは阿賀野川の裁判におきましては、慰謝料ということで判決は出ておりますけれども、しさいに判決理由を検討いたしますと、やはり逸失利益の要素というものも加味して、慰謝料として一千万あるいは千八百万をはじいたというふうに裁判所は述べておるわけであります。慰謝料というものは算定方法というものがやはり明らかではございませんので、制度的な給付として独立的な給付項目を立てることは困難であると考えております。
○島本委員 いかにそう言いましても、この内容を見まして、療養の給付及び療養費、それから障害補償費、これは介護加算も含むということもわかりました。遺族補償費、遺族補償一時金、児童補償手当、これには介護加算も含む、それに療養手当、神祭料、これはどこを見て他の制度よりこれがもう慰謝料までも全部見た制度であり上積みだと言えるのですか、これで。加算を含むというからこれは上積みだ。しかし、介護料そのものの基準さえもはっきりしておらない。それだけではございません。労働者のようにほとんど契約もしてないような、加害者と被害者しかないような公害病患者、その被害者に対して無理やりに、契約をもってしている、それによって利益を受けているこの労災法並びにこの賃金の平均、こういうようなものの、あるいは十割といわないで八割として考えている。どこがこれが他よりすぐれていてこれに加算しているような制度的な一つの表現になるのですか。私は、そういうような点では、これはやはりこの程度ではまだまだうまくないのじゃないか。やはり官僚の作文にすぎない、こう言わざるを得ない。第一に、この八割というのは何ですか。十二割にしていいですよ。二割こそ加算なんです。それを、二割減らして加算だとは、こんなばかげた表現はありません。労働者の平均賃金を算定した、それを認めるならば、十二割にすべきです。労災保険との中間をとる、そして八割だ、こういうような論法は、かってな論法だと言わざるを得ません。なぜならば、公害の被害者は、何ら加害者の世話になっていないんですから、被害を受けるだけなんですから、慰謝料を含み、それを上積みしているというならば、十二割ですよ。それを二割上積みというのです。それを八割にするならば、それは収奪というのです。依然として公害立法は収奪を基礎としている、こういうようなことじゃいけないじゃありませんか。どうもこの考えはうまくない。 それと同時に、この補償法案の問題点がやはりあるのじゃございませんか。公害健康被害者の救済という観点、これから見れば、現行の特別措置法に比較して一歩も二歩も前進でなければならない、われわれはそれを信じたいのです。しかしその内容については相当まだまだ問題がある。日本列島の総汚染というような公害問題の深刻化がいま会々されているそのときに、ほんの微温的な一歩前進、そういうような解決でよろしいというような考え方自身に問題がある。これはもうりっぱな法律ですといいながらも、やはり平均賃金の二割収奪という基礎に立っている。上積みというものは、その上に積むことをもって上積みとする。それをもう二割減らしている。それをもってよしとしている、こういうような考え方自身がやはり私は微温的なものだと思うのです。この微温的なものでいまの日本列島総汚染のこの現状の救済にはほど遠いものがあってはいけないと思います。私はまだまだ、こういうような問題に甘んじてはいないと思いますが、問題の多いことを指摘しなければなりません。 きょうはもっともっとあるのであります。と申しますのは、この公害の公述人並びに参考人、それぞれの意見がありました。りっぱな意見です。その一つ一つ、できるかできないかを聞かなければならない。あの意見を無視してはだめです。それをこの次に残しておいて、これで終わったわけではありませんし、あの答弁自体にも私はまだまだ不満であります。まあ上積みであるとするならば、なぜ十割を十二割にできなかったか。八割をもって考え方の根拠にしたということについては、やはりこれはもう私は理解できません。ひとつこの次にはその八割という根拠からして、いままでの公害の被害者のいろいろな公術人並びに参考人の意見、こういうものを中心にして聞かせてもらいたいと思います。 予定の時間より珍しく五分前でありますが、私はたまにはこういう記録を残しまして、私の質問を終わりたいと思います。
○佐野委員長 この際、午後二時まで休憩いたします。 午後零時五十七分休憩 ————◇————— 午後二時四十九分開議
○佐野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑を続行いたします。岩垂寿喜男君。
○岩垂委員 環境庁長官に最初に二、三基本的な問題について伺っておきたいと思いますが、この補償制度というもの、法律のフレームについて最初に承っておきたいと思うのです。 言うまでもありませんが、これはいわゆる健康被害、とりわけ大気汚染ということに限られております。しかし問題が、前の質問者がいろいろな角度から御指摘をいただいたように、この法律案によってカバーされてないという、たとえば騒音とか振動とか土壌汚染とか食品とか薬品とかという問題があるわけでございますが、これらの被害をどういう形で今後補償していくべきかどうか、いわばこの法律のワク組みについて一つだけ承っておきたいと思うのであります。
○三木国務大臣 公害の被害者をできるだけ迅速に救済しようということが立法の目的ですから、そういう点からいえばカバーできる範囲は必ずしも広くないが、しかしその他の公害の項目の中にあげられておるものがいきなり健康被害という中に入れにくい点もありまして、やはり今後の研究の課題だと思うわけです。これで一応の軌道に乗せまして、とにかく公害という一つの被害を受けられた人からいえば、受けなければならぬ何らの関係はないわけですから、全く一方的に受けるわけですから、そういう点でこの法案を御可決を願いまして、これを軌道に乗せたその次の段階には、他の、この救済の中に入らない公害被害者というものをどうするかという、ことに生業補償の問題もございます。やはり次の研究課題だと考えます。
○岩垂委員 いま私が質問申し上げたのは、健康被害の問題、この問題について伺っているわけです。私は生業補償の問題というのは必ずしもこの法律の体系を見ればこの法律になじんだものだとは思いません。ことによれば別建ての法律案が必要かもしれません。また現実にそのことの用意が政府の段階でなされているようでありますが、それはまたあとで伺いますが、健康被害に限ってみても、この法律案を準備する過程の中で急がなければいけない。事態が深刻化している。だから拙速で、十分なものを網羅し得ないけれども、とりあえずこれで見切り発車をするんだ。しかし積み残した課題をどう救済していくかという考え方に立つならば、この法律に乗せていくのか、別建ての法律を立てる用意をなさっているのか、その辺について見解を承っておきたいと思います。
○船後政府委員 本法は大気汚染または水質汚濁の影響による健康被害としての疾病を対象としておるわけでございまして、救済を要する公害による被害はこれに限らないわけでございます。 ところで、まず生業被害の問題は別といたしまして、健康被害について申し上げますと、土壌の汚染による健康被害は、これは土壌汚染そのものが大気汚染または水質汚濁を通じて土壌汚染されるわけでございますので、いままで考えられる土壌汚染を通ずる健康被害としての疾病は本法の対象に含まれるのではないかと考えております。 それからまた、騒音、振動等による健康被害の問題につきましては、騒音そのものから睡眠不足になる、いらいらするといったようなことがありまして、これがひいては第二次的に機能的な障害を生ずるということもあろうかと思いますけれども、この問題につきましては、そもそも騒音による日常会話の不能でございますとか、そういった生活妨害と一体としてとらえて対策を講ずるべきである、特に睡眠不足になって、健康に被害がなければそれは何ともないんだというようなものではない、こう考えるわけでございまして、騒音、振動による被害につきましては、このような生活被害あるいは財産的な被害というものを一体としてとらえて対策を講じる必要がある。同時にまたこのような騒音につきましては、空港とか新幹線とかいうふうにいわゆる発生源が特定しておるわけでございますから、費用負担の問題につきましても本法案のような複雑なる体系をとる必要はないわけでございまして、私どもといたしましては、今後騒音もしくは振動の被害は被害全体を一体としてとらえて、そして対策を講ずるという法体系を早急に検討すべきではないかと思っております。 なお、いわゆる飛行機による被害にいたしましても、排気ガスから有害物質が排出されまして、その有害物質によって健康を害して病気になったという場合がございますれば、これはこの法案でカバーされるわけでございますから、今後そういったケースにつきましては専門的に検討してまいりたいと考えております。
○岩垂委員 これはあとで、また自動車の問題、いろいろ伺ってまいりたいと思いますが、今度は生業補償の問題に関連をして申しますと、長官御存じのとおりに、いま自民党の中で、あるいは政府で例の水銀やPCBなどの有害物質の問題に対する対策本部ができていて、そこで漁獲の禁止水域になった場所の魚について補償をしていくという考え方が生まれているようであります。しかもその法律案を準備する過程の中で汚染源がすっきりしない、はっきりしない、特に発生源が多数ある複合汚染について、汚染企業がこの法律と同じような形でプールした補償金を被害漁民に配分するという方式が考えられているように承っておりますが、その点は長官はどのようにお考えか、御意見を伺っておきたいと思います。
○船後政府委員 生業被害、特に漁業被害につきましては被害の態様がさまざまでございまして、加害と被害との関係からそれぞれ費用及び補償給付につきましては考える必要があるのではないかと思っております。たとえば漁業被害にいたしましても、重油によるノリ被害というような場合には原因物質が油であることは明らかでございまして、問題はその油を排出したものが特定の事業者もしくは船舶であるか、あるいは全く、ちょうど大気汚染のように不特定多数であるかということの差でございますから、これはそのような実情に即して一つの体系が立てられるのではないかと思います。しかし赤潮被害ということになってまいりますと、これは現在学問的にも因果関係その他につきまして定説はございません。一般的に非常に汚染負荷量の多いところで、特に燐、窒素等の栄養塩が過剰にある場合に発生するようでございますが、やはり天然現象の競合というものがある。こういった場合には、まず原因物質あるいは原因者として何をとらえるかということにつきましては、なお科学的な究明というものが必要であろうかと思います。 それからまた、最近起こっております水銀あるいはPCB汚染によるところの漁業被害の問題でございますが、これも食品の安全基準を越えるような魚というものが食品にはならない、商品とはならないからその経済損失を補償するということならば、比較的被害の範囲はつかみやすいのでありますが、しかし最近のように、一般的な不安感から全く汚染とはほとんど関係のない魚の魚価まで暴落するといったような問題は、これは経済的な損失ではございますけれども、なかなかその評価のしかたがむずかしいという問題がございまして、これらの経済損失を対象としてどのような範囲にするか、あるいは評価方法をどうするかという点につきましては現在農林省で検討しておるわけでございます。私どもも、この制度は健康被害の制度等とも非常に類似する制度でございますので、環境庁は環境庁といたしまして、法律的なワク組みとしてどのようなことが考えられるかということを検討を進めておるところであります。
○岩垂委員 これは実は自民党の水銀、PCB等対策本部の中で議論されている問題であり、特にその中で水産庁が中心になってこの魚の被害に対する補償、とりわけ漁業関係者の生業補償の問題について立法化の準備をしている、こういうことが伝えられているわけであります。つまりこのことは、生業補償というのは具体的にそういう形での立法措置を漁業なら漁業について考えておられるのか、この辺をもう一ぺん長官に承っておきたいと思います。
○三木国務大臣 私が午前中の御質問にも答えたように、生業補償の問題を制度化する必要があるという事態が起こっておるわけでございますので、この問題は農林省と非常に深い関係があるわけですから、そこで農林大臣にもこれの制度化について研究してもらいたい——環境庁でもむろんやりますけれども、これは主として農林省の所管する農林水産というものの被害でありますから、そういうことで農林省がいろいろ研究をしておるので、まだ結論に達しておると私は思わないのです。自民党のどういうところでそういうことを発言されたか知りませんが、一つの考え方としてそういう考え方もあるという紹介であって、政府としてこれを制度化するための結論はまだ得ていないというのが実情でございます。
○岩垂委員 重ねてお伺いをいたしますが、私ども、この法律案に生業補償を加えろという見解が強くあることを承知しております。しかし、準備されているいままで審議をされているこの法律の体系から見るならば、必ずしも生業補償がこの法律になじんでいるとは思いません、文字どおり健康被害ということになってしまっているわけですから。したがって、それとは別立てに生業補償の手だてというものを考える必要があるのではないか。その中でいま一番問題になっているのはやはり漁民、漁業の問題であります。そしてそれば目に見えている問題なのであります。したがって、汚染源がはっきりしているところは、それにPPPの原則を適用させながら負担させるということは明らかでありますけれども、赤潮その他、あるいは水銀もPCBもそうでしょうが、いわば原因者が具体的につかめないという被害に対して、この法律と同じような立場でその損害を、あるいは生業を補償をしていくというたてまえをおとりになる必要があるのではないか。この辺についてもう一ぺん、もうちょっとはっきりした見解を承っておきたいと思います。
○三木国務大臣 われわれとしても、生業被害というものに対して何らかの救済の制度が必要である、いま岩垂議員も御指摘のように、因果関係がはっきりしていないような場合にはことにこの必要があるわけでありますから、したがって、そういう生業の被害に対して何らかの補償をする制度を考えたいということで、最初はこの法律の中に将来そういうことも加えていけないかとも考えましたけれども、実際法律の体系としては多少の無理もあって、別制度として考えるほうが法律の体系としては好ましきものではないかというような考え方もあるものですから、いまそういうことも含めて検討の段階である。したがって、何らかの別の制度というものは必要であるという認識のもとに、その実現を目標に研究を加えておるわけでございます。
○岩垂委員 つまり、最初に申し上げたように、法律のフレームとして健康被害と生業補償という二つの法律の体系を準備しながら、なおかつ健康の中で積み残されているさまざまな問題をこれからさまざまな手だてを通して加えていくというふうに受けとめてよろしいわけですね。
○三木国務大臣 これは、いま健康被害に対しての補償ということも大きな問題でございますのでこういう法案を御審議願っておるわけですけれども、これにはいろいろ積み残しもあると思います。だから将来この法律を、健康被害という見地からできるだけカバーできるように検討を加えることは当然のことだと考えております。
○岩垂委員 魚介類に対する水銀やPCBなどの有害物質の汚染やあるいは赤潮などの被害、これによって漁民が生活に非常に困窮する事態に追い込まれているということから考えて、やはりすみやかにこれらの立法措置が必要である、このように考えますので、その点について強く要望をしておきたいと思います。 次に移らしてもらいますが、先ほど阿部委員の質問にお答えをいただいておりますが、この法案の財源総額は伝えられるところによると五百億円内外、そしてそのうち移動発生源つまり自動車負担分というのは約百億ですか、そんなふうに承っておりますが、その点はどういう金額になりますか。
○船後政府委員 本法が動きました場合に費用総額がどの程度になるかという見通しにつきましては、一方におきましては指定地域の範囲をどうするか、他方におきましては給付レベルをどのように決定するかという二つの不確定要素がございますので、現段階におきましては正確にはお答えしがたいのでございますが、ただ全体の費用につきましては、大気汚染系におきましては寄与度に応じて負担するという原則をとりたいと考えております。きょうの午前中も阿部先生に申し上げましたように、固定発生源とその他の負担割合というのは、最近におけるSO及びNOの排出状況から勘案いたしますと、およそ七対三という程度の割合になろうかと考えております。
○岩垂委員 いずれにせよ自動車の分担分が相当な比率を占めていることは指摘をするまでもないわけなんですが、問題になっている燃料賦課か重量税方式かという問題をめぐって、自動車業界と石油業界が対立をして調整がつかなかったというふうに実は承っております。そして、この法案が提案をされるまでの間にその業界の意見が調整できないままに見切り発車ということになっているわけですから、たいへんけしからぬ話だと思うのですが、この両方の業界の意見について、どんな意見をもってこの賦課に対して反対をなさったのか、石油業界や自動車業界の見解をもし環境庁のほうで把握をしておられるなら承っておきたいと思います。
○船後政府委員 固定発生源それも大規模な固定発生源でございますが、それ以外の発生源といたしましては自動車等の移動発生源のほかになお零細な固定発生源があるわけでございます。これらを合計いたしましておよそ三割程度と申し上げたわけでございます。中公審の審議過程におきましても、これらのものから費用負担を求める場合に、有力なる意見といたしましては、原因物質である燃料あるいは原料というものに着目いたしまして、それの使用量に応じて負担させるというのが技術的にも一番可能であるし、かつ徴収効率もいいという意見がありました一方、このように原因物質から取るといういわば間接税的な手法は、直接の原因者というものが明らかでないので、直接に原因物質を排出しておる——この場合はSOもしくはNOでございますが、そういう点に着目すれば個々の自動車から取ったほうがいい、また個々の内勤車から徴収するにつきましては、すでに自動車重量税というような先例があるではないか、したがって技術的にも不可能とはいえないという御意見もあったのでございます。しかし自動車に着目いたしますと、走行距離といったような要素がなかなか賦課基準に入れにくいわけでございまして、どうしても自動車の一応エンジンの容量でございますとか、せいぜい考慮するとすればその程度のことしか考慮しきれないから、こういった場合にはなかなか寄与度に応ずるということもむずかしいのではないかという御意見もあったわけでございまして、要するに大規模な固定発生源のように、個々の排出量をメーターを備えて把握し得るというもの以外につきましては、どうしても間接的な手法になって近似的な方法をとらざるを得ないわけでございます。ですから、これが最も汚染に対する寄与度を的確にあらわしておるんだというようなものさしは、およそ見つけるのは不可能である。したがって、徴収効率の問題でありますとか、そういった要素も勘案してこの問題は詰めねばならないと思っている次第であります。 なお、この法案提出の時期までにその問題の詰めができませんでしたのは、これらの燃料にいたしましても、自動車にいたしましても、現在種々の税があるわけでございまして、これらの税制との関連において問題を解決する必要がございますので、税制自体を問題とする予算編成期に問題解決を譲ったわけであります。
○岩垂委員 そうすると、この問題に対する決断の時期というのは、たとえば予算編成をしていく過程、九月とか十月とか、その辺のところで結論を出すというふうに理解をしてよろしゅうございますか。
○船後政府委員 この法案は、公布後実施に至るまで、指定地域の問題でございますとか症状等級の問題でございますとか、なお詰めねばならない問題がたくさんございまして、公布の日から一年以内に施行することにいたしております。したがいまして、四十九年度予算編成時に残されました移動発生源等の賦課方式を決定いたしますれば、この施行日までには間に合うわけでございますから、私どもといたしましては、そのようなスケジュールで今後の作業を進めてまいりたいと考えております。
○岩垂委員 環境庁としては、たとえばどっちの方式がいいかという形について、一定の見解をお持ちでございますか。やはり中公審まかせというふうに理解をせざるを得ないのですか。
○船後政府委員 現段階といたしましては、全く白紙に、別法に譲っておるのでございますから、いままで中公審で行なわれました種々の論議も踏まえまして早急に詰めたいと考えております。
○岩垂委員 自動車に対して負担をさせるという立場というのは、いま船後さんおっしゃったとおりに、亜硫酸ガスだけではなくて、いわゆるNOxを含めた排気ガス汚染に対する賦課であるというふうに理解をしてよろしゅうございますか。
○船後政府委員 自動車の場合にはガソリンが主たる燃料でございますので、この場合には亜硫酸ガスの発生はほとんどなく、主たる有害物質はNOでございます。
○岩垂委員 そうしますと、この中でたとえば光化学スモッグの問題や鉛中毒症の問題というような問題を指定疾病にするという考え方に立つべきだと思うのですけれども、その点はどうですか。
○船後政府委員 ガソリン中に含まれております四エチル鉛による健康被害というのは現在確認されてはおりませんけれども、しかし可能性はあるわけでございまして、そのような健康被害としての疾病が発生いたしますれば、たとえば大気汚染防止法にいう事故時の有害物質の排出による健康被害と同様でございますから、当然本法による指定疾病の対象となるべきものであると考えております。
○岩垂委員 これは環境庁長官に伺いたいのですけれども、この法律が運用される場合に、市民参加とでもいいましょうか、あるいは患者がこの運用に際して参加をしていくという保証がほしいわけです。つまり仏つくって魂を入れずということになるおそれがあるわけですのでその中で、患者をこの法律の運用の中で生かす手だてをどのようにお考えになっていらっしゃるか、この点について実は伺っておきたいのです。と申しますのは、患者がこの法律の運用にあたって発言をする場所として、いろいろなことが考えられるわけであります。しかし、この法律を運用していく場合のいろいろなランクの、たとえば認定審議会とかあるいはその他いろいろあるわけですけれども、将来予想されるのは、中公審の中に部会をつくって、そしてこれを運用していくというふうに、附則二十条の中で生きておるわけでありますが、これらの部会運営の中に患者代表を入れていく、あるいは自治体の代表を入れていく、こういうお考えをこの際はっきり示していただきたいと思います。
○船後政府委員 本制度を運営するにあたりましては、基準等の決定に際して中公審の果たす役割りはきわめて重要でございます。中公審の委員は、この方面につきまして専門的な学識経験をお持ちの方から選定いたしたいと考えておるわけでございまして、当然患者の立場というものにきわめて御理解があり、経験もあるという方も委員の中につけ加えたいと考えておりますが、いわゆる患者代表ということにいたしますればまた企業代表ということになるわけでございまして、この制度は労使関係のような二者関係でもって運営するような考えはございませんので、やはり学識経験者を中心とする中立的な委員というものによって中公審は運営してまいりたいと考えております。
○岩垂委員 それは労使のような、中労委や公労委のような形でないまでも、やはり被害者の健康それ自体についてその復帰を願い、それからまた健康の被害に対する補償をしていくというたてまえがあるわけでありますから、被害者の立場というものをできるだけ生かす手だてというものが、この法律の中で魂を入れていく考え方、立場だろうと思うのであります。 そこで、くどく伺いますが、この中公審の部会の中に自治体の代表あるいは患者の代表——患者の代表というのはなかなか代表しにくい要素があると思いますが、これはどうしても最低限この法律を有効に生かしていくために考えていただきたい。このことをもう一ぺん、きちんとしたあなたの見解を承っておきたいと思います。
○船後政府委員 現在の中公審の委員には、都道府県もしくは市町村の経験者という方を加えておりますけれども、本法が成立いたしまして、特に本制度を審議いただく部会の委員を増員することになっておりますが、増員いたします場合には、当然いわゆる公害病に関係のある地方団体の代表の方々あるいは公害病というものに日常接触しておられて患者の実情をよく御存じのお医者さんとか、こういった方々をそれぞれ委嘱するつもりでおります。
○岩垂委員 附則二十条で八十人を九十人、十人ふやすわけですね。私は、十人ふやすのですから、その中に、お医者さんということもさることでありますけれども、やはり具体的に悩んでいる患者を入れていくという保証をこの際とっておきたいのです。私のところの川崎にも、実はたくさんの公害病認定患者がいます。それらがこの運用の中でいろいろなことを申し上げたいという希望を持っています。だから、できるならば、九十人の中の、それは全部部会のメンバーになるわけじゃないのでしょうけれども、患者の代表をどういう形かで入れて、この法律ができるだけ患者の参加の中で運用されていく、こういう手だてを御考慮いただきたい。これは環境庁長官、ぜひその点について見解を承っておきたいと思います。
○船後政府委員 今回の法改正による増員は、(岩垂委員「長官に聞いているのだ」と呼ぶ)私からちょっと事務的にお答えを申し上げます。十名でございまして、特に指定基準でございますとか症状等級でございますとか、そういう専門的な事柄の御審議を願わなければなりませんから、専門的なお医者さんを中心とした増員になるかと思いますが、先ほど来申しておりますように、やはりこの制度には患者の声というのは反映させる必要がございますから、そのような実情にお詳しい方々というものはできるだけ念頭に置きまして、委員の選考をいたしたいと思います。 なお審議会といたしましては、患者の意見を取り入れますために、今回の答申にあたりましても患者の方々の意見をお聞きするというふうな会を催しておるわけでございまして、今後もそういった形では当然患者の声を取り入れていくつもりでございます。
○三木国務大臣 御指摘のことはよくわかります。ただ、しかし、十人ですからね。なかなかそれが各地方が、川崎を入れたらこちらも入れろということで、そういう点の配慮も要りますが、御指摘のことはよくわかりますから、患者の声ができるだけ反映をするような配慮をいたしてみます。
○岩垂委員 私がそういうことにどうして固執しますかといいますと、私は別に健康被害認定審査会に患者を入れろと言っているわけじゃないのです。せめてこの法律を運用していく部会運営の中に加えてほしいと言っている意味は、やはり、何か施していただいているという気持ちを患者の側も持つ人もおるだろうが、企業の側も施しだというふうに考えている節があるのです。それは実は川崎でこういう制度を先取りをいたしまして実施をしておりますので、それらの経過の中でかなり明らかなんですが、その意味では患者の最低のいわば叫びというものをせめて一カ所ぐらい窓口をあけて、やはりこの部会の中に患者を入れる、これは長官の英断で一かなりしつこく私これを食いついておきたいと思うのは、それは人数が多いから一人入れるのはしんどいということになるかもしれませんが、しかしこの法律の中に盛られている立場がシンボルとしてその中に見詰められると思いますので、この点についてぜひ英断を望みたい。この見解をもう一ぺん承っておきたい。
○三木国務大臣 人というものにも関連がありますね。全患者の、各地の代表を入れるわけにもいかないわけで、入れるとすれば代表ということでしょうが、適当な人があればそういうことは考えてみます。
○岩垂委員 それでは具体的に地域の指定あるいは疾病の指定について伺ってまいりたいと思います。 第二条にいう「著しい大気の汚染が生じ、その影響による疾病が多発している地域として政令で定める地域」というふうに書いてありますが、これは何を基準にしてお定めになるのか、これは承っておきたいと思いますのが一点、それから二点目は、現行の救済法によるところの指定地域は亜硫酸ガス濃度の環境基準の〇・〇五PPMを一つのものさしとしてきめられていることは午前中のやりとりの中でも明らかになりました。はたして〇・〇五PPMが妥当なのかどうか。たとえばそれ以下の地域ではこの大気汚染による気管支ぜんそくなどの患者は発生していないのかどうか。これらについて見解を承っておきたい。
○橋本説明員 第二条の指定地域で第一種の大気汚染にかかわる指定地域を何を基準にして指定をするかという御質問でございますが、まず第一はその汚染の程度ということでございます。先生の御指摘の硫黄酸化物が従来の地域指定の中で重きを占めてきたことは事実でございます。これは最もほかの地域と比べることができ、また測定も安定しており、疫学調査とも非常によく相関を持つものがあったというものでこれを採用しております。このほか粉じん等がございます。が、残念ながら測定の方法にいろいろな相違がございまして、それをどのような基準でこの中に入れるかということにつきましては、また私どもはしかとした考え方が固まっておりません。また窒素酸化物をどう入れるかということにつきましても、現在までの大都市の汚染地域では硫黄酸化物も窒素酸化物も両方非常によごれておりますので、これは硫黄酸化物で代表してきて問題がないと思われるのでございますが、硫黄酸化物はあまりよごれていないが、窒素酸化物のところだけのときはどうするかという問題があろうかと思いますが、この点につきましては現在窒素酸化物の測定、影響調査等はようやく体系立ち始めたところでございます。また大気汚染防止法の中でもやっと環境基準がきまりまして、これから規制が始まろうという段階でございますので、いましばらく年を経ますと、窒素酸化物につきましてのはっきりしたその踏み切りができるというように考えております。 それから年平均〇・〇五以下のところではどうかということでございますが、これは統計的に有意の差があるかという議論をした場合には、有意の差があるという議論が出る場所があろうかと思います、統計的な議論だけをいたしますと。個々の場合に、従来の地域指定をいたしてきておりますときに、その最初が四日市の磯津と川崎の大師と大阪の西淀、これに均衡をもちまして指定をしてまいりまして、それ以降、かなりそれに比べればもう少し汚染が低いところが入っておるではないかという御質問の点もこれは含んでおられるのかと思いますが、その点は従来の地域指定の範囲内での不均衡をどういうぐあいにしてなくすかという技術的な問題の検討としてわれわれは取り組むべきだというぐあいに思っております。年平均の〇・〇五PPMといいますのは、これは硫黄酸化物の古い環境基準の中の最も悪い条件の場合を出しておりましたものでございまして、これ以下のものをそれでははずすかどうかというようなことにつきまして、まだ私どもは一度も議論をしたことはございません。従来は大体これをこえているところが多いということは事実でございますが、汚染と有症率と全部をからみ合わせて総合的に判断をしておりますので、それ以下のところをこれからどうするかということにつきましては、まだ現在の段階では検討はしておらないということのお答えになるかと思います。
○岩垂委員 それではその次に伺いますが、四十八年度予算で公害保健課で健康被害救済地域指定等のいわば基礎調査六地域、これはどことどことどこか、ちょっと教えていただきたいと思います。 それからもう一つ、準備室で四十八年度予算で損害賠償保障制度基礎調査を行なっておられますが、これはダブっているのですか、それとも別々なのですか。その場所を特定していただきたい。
○橋本説明員 本年度の予算におきまして特別措置法での六地域と準備室のほうでの二千数百万の指定地域の調査がどこを予定しておるかということでございますが、現在のところ、どこを最終的に調査するかというまだ具体的な腹案は固まっておりません。おりませんが、一番問題になるところは、東京とか大阪の大都市を一体どのように扱うのかというところに私ども非常な関心を持っております。そういう意味で、そこで申しております六といいますのは、六つの都市というよりも、従来の調べましたところはかなり限局的なところでございますので、そういう広さの関係から見ると、いま言った六つというような数字になってくるというような観点でそのような数字が出ておるというぐあいにお考え願いたいと思います。再度申し出げますが、東京、大阪をどのように扱うのかということが両方の調査の中での一番大きなポイントとなってまいります。 また、両方がダブっておるかということでございますが、同じ地域を両方で調査をするという考え方はございません。
○岩垂委員 いま東京は三キロ・メッシュで六十カ所調査をするという環境庁の方針がございますね。それはこの六カ所というやつの中にどんなかかわりを持っているのですか、それが一つ。 それからもう一つは、いま問題にならなければならないのは、東京都内の地域指定の問題というのをやはり深刻に見詰めないといけないと思うのです。それはいわゆる都市型公害に対する考え方、とりわけ複合汚染に対する考え方の一つがどんな形でこれから出されてくるかということを端的に占う一つのかぎになろうと思っておりますので、その点を承っておきたい。
○橋本説明員 先生の冒頭のお話にございました東京都につきましては、私どもが承知しております範囲内では約一千九百万余の予算をとっておりまして、この秋から都内二十三区を対象に汚染と有症率の調査と受療率を一部やるというようなぐあいに私ども承知しております。この調査は公害保健課のほうとも十分いろいろ連絡をとってやろうということになっておりますが、まだ具体的に細目を打ち合わせておるというものではございません。
○岩垂委員 その調査の結果、たとえば東京都二十三区のワク組みの中で、それが一挙に地域指定になるという可能性も大阪も含めてある、そういうふうに考えてようございますか、調査の結果なんですが。
○橋本説明員 一挙になるかどうかということは私どもまだ見当はついておりませんで、東京の中でも非常によごれておりまして、前々から地元からの要望の非常に強いところがあるということも事実でございますが、そこだけではまた困るという議論も中にございますので、その辺は調査をいたしてそのデータを判断した結果と、またこれは必ず地元の意見を聞くという形をとりますので、そこらの結果をあわせて判断する、こういうことでございます。
○岩垂委員 これは非常に問題があるのです。片方の東京都としてはやはりばらばらでなくて一括して、これだけ都市公害が深刻になっているのだからまとめてという議論も片方にありますね。片方にそれがあるものだから、環境庁のほうも、地域指定をいままであまり熱心でなかったという感じがどうもするんです。その点については、そういうことのないようにその調査をすみやかにやって、公害その他を含めていろいろな複合汚染の問題が問題になっているわけですから、この制度の問題でイコールという議論にはならないのかもしれませんけれども、早急にその辺の議論を煮詰めてほしいんです。このように要望をしておきたいと思います。 それから、これは先ほど申し上げましたとおりに、国の指定地域を持っている自治体の中で、国の指定を受けられないで、その自治体が独自で、市が単独に指定をしている、たとえば私ども川崎の幸区というようなものがあるし、それからこちらの特別委員会の調査室の資料によっても全国にかなりたくさんあるわけです。これは自治体が認めた制度でありますから、それと今度の制度との間に差別待遇が起こるおそれというのがあるわけでありますが、それらをなくするように、ひとつぜひ努力をいただかないと、行政それ自体が不公平になるばかりではなくて、企業の側から見ても、二本立てでという議論になろうと思うのですが、この辺についてどんな詰め方をお考えになっているのか、ぜひ見解を承っておきたいと思います。
○船後政府委員 本法による地域指定は、中央公害対策、審議会に客観的な大気汚染度なり有症率の点からした一定の基準というものをお示しいただきまして、これをものさしとして地域の実情を加味しつつ指定してまいりたいと考えております。ただ、本法案の附則では、現行の特別措置法による認定患者はそのまま引き継ぎますので、したがいまして、現在の特別措置法による指定地域は、これは本法が施行になりました場合にはそのままこれもまた引き継ぐ考えでおります。しかし、現在の指定地域以外にそれでは指定しないのかということにはならないわけでございまして、当然本法案の趣旨に基づきまして、新たに地域指定という作業が始まるわけでございます。そういった場合に、現在地方公共団体で独自に実施しておられます指定地域というものは、そのままこの制度の指定地域にはならないのでございますけれども、やはり現在独自に実施しておられるということ自体がやはり地元に問題があるということになるわけでございますから、私どもは今後本法による指定をするにあたりましては、そういう地方独自の指定地域というものにつきましては、優先的に調査の対象として作業を進めてまいりたいと考えております。
○岩垂委員 地方独自が指定している地域の調査を優先的にやって、できるだけそのこぼれを少なくするように、救っていくように、こういうふうにいま船後さんから伺いました。 もう一ぺん伺いたいと思いますけれども、いま全国で自治体がやっている地域というのはそれほど多いわけじゃないのです。これは別にいわば地方自治体が趣味でやっているわけではございません。地域住民の要求があるし、現実にそういう悩みが市民の中に、住民の中にあるわけでありますから、これは絶対にこぼれないように、むしろそれを救っていく立場で御指導いただきたい、調査をいただきたい、取り組みをいただきたい、こういうふうに思いますが、その点についてもう一ぺん承っておきたいと思います。
○船後政府委員 現在の地方独自の指定地域につきましては、たとえば東京都のように十八歳未満のものを対象として、三宅島に至るまで全都下を対象にしておるというのは、これはちょっと優先的に調査の対象にしがたいと思います。なおまた行政区域としての市の区域は、たとえ山の中であろうと、一応形式的には指定地域としておるというのもまたちょっと問題があろうかと思いますけれども、しかし大部分の地域は、国の指定の地域の少し周辺部に取り込んでおるとかといったようなところが多いようでございますから、そういったところにつきましては、客観的な一つの大気汚染状況、これはもちろん現状のみならず過去の汚染状況というものも調査いたしまして、この制度の対象にするかいなか早急に詰めていきたいと考えております。
○岩垂委員 次に移りたいと思うのですけれども、いわゆる認定疾病の問題、これは何人か伺っておりますので、私からは希望だけ申し上げておきたいと思うのですが、気管支ぜんそく等四疾患とその続発症のみをとりあえずはお考えになっているようでありますが、急性症状のたとえば目だとか耳だとか鼻あるいは咽喉等の疾患も、大気の汚染によるところの影響が著しい疾患であるということはもうすでに明らかにされているところでありますので、この認定疾病の拡大について、とりわけ児童の健康の救済ということから考えてもこれらの問題について御努力いただきたいと思うのですが、その点はどのようにお考えになっているか、この点について伺っておきたいと思います。
○橋本説明員 指定疾病の種類でございますが、まず出発の当初は現行の特別措置法を踏襲していこうということでございますが、審議会の答申にもございますように、審議会で十分その範囲をまた検討してみるということになっております。先生の御指摘の目とかそのような急性の症状の問題でございますが、医療関係の専門家の議論の中におきましては、そのものをこの中に取り入れるのはまだ時期尚早であるという議論がございます。ただ一点の問題は、この合併症の中にそれを取り入れるかいなかという問題が、これは少し性質の違う問題として昨日参考人のお話の中にもあった問題でございまして、この点は合併症の範囲としてどう取り入れるかということとして審議会で検討いただくべき筋のものであろう、そういうぐあいに考えております。
○岩垂委員 次に第四条の問題について、認定の問題でありますが、現行の救済法から見ると、だいぶ改善をされているというふうに意見があるわけでありますけれども、そうは言いながら、いままで住んでいて公害脱出した人に対して認定が受けられないような仕組みになっていないかどうか。もしそうだとすればこれは文字どおり片手落ちでありまして、現行の救済法の施行された時点をとらえて、明らかに指定地域内に長い間住んでいたために大気汚染の暴露を得て公害病にかかったと思われる者については、一定の条件のもとでやはり指定をすべきではないかというふうに思いますが、その点はいかがでございますか。
○船後政府委員 先生の御指摘のありました指定地域におりました認定患者が外に出たときにどうなるかということでございますが、現行救済法では三年を限ってその人に対する給付が行なわれております。本法におきましては有効期間が定められておりますので、まずその有効期間は外に出ましても有効に続きます。それから有効期間がその外で終えて、なおかつ病気の場合にはこの法律は続くという形をとっております。そういう意味・で、一定の有効期間がたってからあともなおかつ御本人がなおっていないという場合には続くということが一点でございます。 それからもう一点は、指定地域から外に出まして、それからまた指定地域に入ってくるという場合の条件は、通算を政令できめるということになっておりますので、この二段において、この法案においてはもとの特別措置法とは変わって幅が広くなっておるということがいえると思います。
○岩垂委員 次に、十四条に関連をいたしまして、公害病認定患者で生活保護を受けている患者に対して、障害補償費や遺族補償費の支給は生保の収入認定とされるのかどうか、この点の見解を承っておきたいと思います。
○橋本説明員 十四条の他法との調整の関係で、生活保護法とどうなるかという御質問でございますが、この点につきましては、今後厚生省とこの法律が通った暁において調整を行なうということでございます。 御参考までに現行法の関係で申し上げますと、医療手当と介護手当は生活保護の認定からはずされておりますが、本法におきましては障害補償費というものが入ってきますので、従来とは性質を異にした給付調整問題があるというぐあいに私どもは考えております。
○岩垂委員 たとえば身体障害者と同じように生保の中に公害加算というようなものを設けて、そしてその障害補償費と同額のものを加算するという方法などを考える、そんな考え方というのは成り立たないかどうか。
○船後政府委員 法律的に厳格に申し上げますと、第十四条に規定しておりますのは、他の法令で本法と全く同一事由について補償給付に相当する給付というものを行なっている場合の調整規定でございます。これに対しまして、生活保護というのはいわば最終的な生活の保障でございまして、全体といたしましての被保護者の収入というものから勘案して、どの程度の生活保護費を支給すべきであるということを判断するわけでございます。 そこで、現在の生活保護の運営といたしましては、どの範囲までを収入認定とするか、これはそのときそのときの一定の生活水準なり社会通念に従って変わっておるようでございますが、本法による補償給付をどう扱うかというのは生活保護の体系上の一つの判断の問題でございまして、私ども今後厚生省と詰めたいとは考えておりますけれども、最終的には生活保護体系のほうでこれを収入認定するかしないかということを決することになるわけであります。
○岩垂委員 これは要望でありますが、法律の第一条の目的で規定しておるとおりに、「大気の汚染又は水質の汚濁の影響による健康被害に係る損害を填補するための補償」であるということをはっきり書いてあるわけですから、これを収入認定するというのはどうもおかしいと私どもは考えます。その点について御意見があれば、厚生省に詰めていく場合の姿勢の問題として環境庁の立場を承っておきたいと思います。
○船後政府委員 これは厚生省からお答えすべき問題であろうかと思いますが、現在、労災の給付にいたしましても自賠責の補償にいたしましても、あるいは裁判による慰謝料にいたしましても、生活保護の上におきましては、これを直ちに収入認定とはしないという扱いにはなっていないように聞いておるわけでございまして、本法による補償給付を例外的な扱いとするかどうかにつきましては、生活保護体系上かなり問題があるのではないか、かようにわれわれの立場としても考えておるところであります。
○岩垂委員 生活保護の体系のサイドから見るわけではなくて、この法律が持っている性格をまずきちんとさせた上で、損害をてん補するという立場があるわけですから、それは生活保護とは別建てで考えるべきだという立場で折衝していくべきだ、こういうふうに思います。これは私の要望でありますから、次に進みたいと思います。 十九条の療養の給付について申し上げますと、療養の給付は従来の健康保険分も負担するということで、医療機関にとってはかなり事務の簡素化になったし、また国民健康保険などの給付についてもその負担が軽減されるようになっておって、従来よりは改善されてはいると思いますけれども、この給付は指定疾病の治療費のみとなっているわけであります。この疾病にかかる患者は合併症を持っている患者が多いわけでありまして、この合併症といわば続発症との関係を医療機関が区別をするときに実はたいへん煩瑣な労力を要するわけであります。そして患者自身も治療費に追われてたいへんな負担になっているというケースが多いわけでありますけれども、合併症を続発症と同じような取り扱いにするという考え方はとりませんか。
○橋本説明員 先生の御質問の合併症というのはおそらく併存症のことを言っておるのではないかと思います。この中に併存症を同じように扱えという御質問については、これはなかなかむずかして問題点があるのではないかというぐあいに考えますが、続発症の範囲をどうとるかということの問題にあたりましては、これは医学的な合理性とそれからその治療を担当して請求の事務をされるお医者さんのほうの事務的な面からの判断と、その両方がどこで折り合えるかということの問題として検討すべき事項ではないかというぐあいな考え方もいわれておりますので、実際に医療を担当している方といろいろ話し合いをしてみる、その結果を中央公害対策審議会において御審議願って最終的に判断していきたい、そのように考えております。
○岩垂委員 時間がございませんから飛ばして、二十三条の診療報酬の審査及び支払いに関連して、従来は支払いを基金を通して行なっていたものが、いわば独自の支払い機関を設けて実施することになるわけでありますね。この場合に地方自治体にかなり負担がかかってくると思うのですが、この負担は特に人件費などの事務費の助成などについて含めてお考えになっていらっしゃるかどうか。これは地方自治体がたいへん心配している問題ですから承っておきたい。
○橋本説明員 いま先生の御指摘ございました審査の事務という点につきましては、現在の制度の中ではこれに類するものは労災保険の審査というのが一番一つの型になるのではないかというぐあいに私ども関心を持っております。しかしこの法案の中には労災保険のような保健指導委員会というものを設けて、専門家によってその診療報酬を審査をするという、行政が直接やる方法と、もう一つは、この法案の中で政令で定めるものに委任することができるということで適切なものがあればそれに委任することができるというものの考え方をこの中にとっておるわけでございます。しかしどういう形でこれができるかということにつきましては、地方のいろいろの事情がございますので、まだ何とも私どもはこれにつきまして現在こうこういう趨勢であるということを申し上げられる段階には来ておりません。 ただ事務的に審査のコストはどうなるのかという点の御質問でございます。この点は給付事務にかかわる経費といたしまして、私どもできるだけ地方が過剰な負担のない、適切な負担になるように算出をして予算要求をしていきたいというように考えておるわけでございます。
○岩垂委員 どうも詰めができなくてなんですが、時間がないものですから。 二十九条の遺族補償費の支給のところなんですけれども、二十九条で「被認定者が当該認定に係る指定疾病に起因して死亡したときは、」その遺族の請求に基づいて「遺族補償費を支給する。」というふうになっているわけでありますが、たとえば川崎なんかの場合には、実はそうではなくて、認定患者がなくなったときには、それが認定疾病を原因とするものでないとしても、その間に苦しんだ損害賠償あるいは家族みんなで受けてきた損害を補てんするという立場に立って補償費を支給するようにしているわけでありますけれども、これらの問題についていえば、この認定「疾病に起因して死亡したときは、」云々ということではなくて、なくなったときには、そういうことではない遺族補償費を支給するという立場に立つことはできないだろうか、これは見解を承っておきたいと思います。 それに関連して、これは埋葬料の問題も同様であります。埋葬料も川崎の場合はそういうことではなくて支給をしておりますので、それらの問題について二つ伺っておきたいと思います。
○橋本説明員 不幸にして患者さんがなくなった場合のケースでございますが、本法案におきましては、この法案の対象となる被害による損害をてん補するということでございますので、やはり「起因して」という要件は、はずすことのできない要件となるというように私どもはこれを考えております。そういうことで、この公害と何ら関係のないことでなくなられた方、たとえば患者さんが電車に乗っておられたら、不幸にしてその電車が衝突して患者さんがなくなったというような形の場合に、患者さんに本法からこの遺族補償費を出すということは想定をいたしておりません。同様なことは葬祭料についてもやはり起因して死亡するということが基調になっておりますので、そういう意味で、死亡診断書の中にございますように、イ、ロ、ハとこの三つございまして、イが死亡の直接原因、ロがそれの原疾患、ハがロの原疾患という形になりますが、その範囲内をいかにとるかということにつきましては、医療を担当しておられる方々、死亡統計の専門の方々とよく相談をして、合理的なように処理をいたしたい、そういうように考えております。
○岩垂委員 時間が参りましたが、最後に一つだけ、第八十九条のこの業務の一部の委託に関する規定があるわけでありますけれども、この協会が「政令で定めるものに委託することができる。」というこの「団体」というのは、たとえばどんな団体をお考えになっていらっしゃるか、これを承っておきたいと思います。
○船後政府委員 第八十九条の規定は、協会の行ないます賦課金の徴収事務の一部を委託するわけでございますが、これはやはり委託されて、その能力があるという団体になるわけでありまして、地域別の団体あるいは業種別の団体で、それぞれ適格性のあるものを選んでもらいたいと考えております。
○岩垂委員 もうちょっと具体的に、たとえば鉄鋼連盟とか、たとえば商工会議所とか……。
○船後政府委員 地域団体といたしましては、商工会議所系統の組織がございますし、業種別にはそれぞれ全国的な同一業者のいろいろな組織があるわけでございますから、そのような組織の中でどの程度の会員をカバーに持っておるかといったようなことも一つ判断しなければなりません。具体的に決定してまいりたいと考えております。
○岩垂委員 最後に要望をしておきたいと思うのです。まだ質問をしたいことは残されておりますが、それはそれとして、いま承りますと、金の切れ目が縁の切れ目ということばがありますけれども、財源が不十分だから財源が補償のワクをきめてしまうおそれがやはりあると思うのです、率直に申し上げて。だから、今度の法律案が問に合わなかったとはいいながら、大気と水質汚濁に限定をしてしまったのではないだろうか。それはむしろ資金の面からいわばかかったブレーキではないだろうかというふうに私どもは思いたくなるわけでありますが、そういうことのないようにぜひひとつ——やはり被害というものをとことん補償していくという立場がこの法律の中で生かされていくべきだと思うし、そういう立場を運用にあたって貫いていくべきだということも申し上げておきたいと思います。 それからもう一つは、政令事項に幾つかのことがゆだねられていることも、先ほどから御指摘のとおりであります。これのいわば実行にあたっては、とりわけ地方公共団体の意見あるいは公害患者の皆さんの御意見、そういうものをできるだけしんしゃくをする、あるいは公害認定地域のさまざまな経験、そういうものをできるだけ生かしていく立場を具体的に補償いただきたいと思うのです。それらについて見解を承りたいと思います。
○船後政府委員 この制度は金のファンドがこの程度だからその範囲内で給付をするというようなものの考え方は絶対にとっておりません。指定地域を指定し、それから給付水準をきめまして、そこから必要額というものをはじき出し、この必要額をそれぞれ固定発生源あるいはその他に割り振るという仕組みでございますから、必要な額は必ず確保するように運営につとめてまいりたいと考えております。 なお、政令事項は数多くございますけれども、運営にあたりましては、当然被害者の立場というものに重点を置きまして運営してまいる所存でございます。
○岩垂委員 ありがとうございました。
○佐野委員長 木下元二君。
○木下委員 まず指定疾病の問題でありますが、これは光化学スモッグなどについては直ちに指定疾病にするということではなくて、中公審の検討を待つというふうにお答えが前にあったように思いますが、これは私、光化学スモッグであるとかあるいは一酸化炭素中毒であるとか、鉛中毒であるとかいうふうな自動車の排気ガスが主原因になっておるような場合あるいは少なくとも大きな原因になっておると思われる場合、そういう疾病の場合ですね、これは自動車等の移動発生源に費用を負担させるということにしているわけでありますから、そのこととのかね合いからいいまして、これは当然指定疾病にするべきではないかと思います。移動発生源に費用を負担させないというなら、自動車の排気ガスに起因する疾病を指定疾病に含めないというならわかるのであります。そうではないわけでありますから、これは指定疾病に含めるべきだ。この移動発生源に費用を負担させるべきかどうか、あるいはまた光化学スモッグなどを指定疾病として本制度の対象にすべきかどうか、この問題については論議があることは承知いたしております。けれども、少なくともこの移動発生源から費用を徴収するということにしておる以上は、当然指定疾病に含めるべきだというふうに思うのですが、この点についての御見解をいただきたいと思います。
○船後政府委員 自動車につきまして、費用の負担を求めております理由は、ぜんそく等の現在の四つの指定疾病がございますが、これの原因物質といたしましては、SOxのほかにNOxがあるわけでございますから、そのNOxの排出源としての大気汚染の寄与者ということが無視し得ないという点に、主として着目しておるわけでございます。なお、自動車の排気ガスには、そのほかに当然光化学スモッグの原因となる炭化水素等もございますし、あるいは鉛というものの排出も考えられるわけでございます。これらにつきまして、健康被害としての疾病というものが確認されますれば、それは当然本法の救済の対象となるわけでありまして、いわゆる光化学スモッグによる健康被害というものの実態が何であるかという点につきましては、現在環境庁の大気保全局で、健康被害も含めて調査をいたしておるところでございますから、そのような調査結果を待ちました上、中公審で審議をいたしたい、かように考えております。
○木下委員 この点につきましては、日弁連の意見書も出ておることでありますから、そうしたものを十分尊重して、よく御検討をいただきたいと思います。 それから、これは前回も触れましたけれども、この損害賠償の基本といいますのは、被害以前の原状の回復であります。何よりもまず被害者が失った健康と生活の原状回復のための万全の措置が講じられるということが必要であります。金銭賠償による救済措置というのは、こうした原状回復のための方法に併用される、あるいは補完されるというものでなければならないと思います。公害被害の救済はこうした考え方に立つべきだと思うのでありますが、この点はいかがでしょうか。まず伺いたいと思います。
○船後政府委員 健康被害につきまして金銭補償するのは、これはやむを得ないから金銭補償をするわけでございまして、基本はあくまでも失われた健康を取り戻す、さらには今後そのような健康被害が起こらないように排出を規制するということであると考えております。したがいまして、本法の体系におきましても、給付といたしましては、障害補償等の金銭給付のほか、医療給付があり、さらに健康増進あるいは被害の予防という観点からの保健福祉事業を考えておるわけであります。
○木下委員 この法案によりますと、結局金銭による損害賠償制度を基本としながら、患者の健康回復の諸施設につきましては、わずか一カ条しか設けられておりません。このことは、昨日の日弁連の伊東公述人も指摘をしていたところであります。四十六条、この公害保健福祉事業というのは決して十分なものではないし、どうもこれは救済の考え方がさか立ちをしておるのではないかと思います。 そこで伺いたいのでありますが、この四十六条の公害保健福祉事業、これはどういう具体的内容を予定しておるのか、明らかにされたいと思うのです。あるいはそういう予定がないと言われるのならそれでけっこうでありますが、その点はどうでしょうか。
○船後政府委員 私どもは、健康を回復させ、被害を予防するための保健福祉事業は非常に重視いたしておるわけでございます。条文の数が少ないから重視していないというような御意見には私ども賛成いたしかねるわけでございまして、公害保健福祉事業の内容といたしましては、治療施設、リハビリテーション施設といったような、医療あるいは社会復帰施設はもとより、特に児童等の場合につきましては、グリーンスクール等の転地療養的なもの、そういったきめこまかな事業というものを、それぞれの地域の実情に即して都道府県知事が立案いたしまして、これを推進してまいりたいと考えております。 なお、この種の公害保健福祉事業は、いずれも内容が多彩にわたりますので、比較にはならないかもしれませんけれども、健康保険法その他の類似の制度におきましても、このような事業をなすことができるという旨の簡単な規定を伴っております。
○木下委員 治療施設であるとか、リハビリテーションであるとか、きめこまかにそうした制度をつくっていかれるということでありますが、そうしたことを、これは条文が一カ条しかないということを言っているのではなくて、そうしたきめこまかな内容を、それこそ法文の中につくるべきではないか、そのことを言っておるわけであります。この公害被害の救済措置としていろいろ行なうべき具体的な内容を法文で列挙すべきではないか、それを政令委任といたしましたのは、私は理解に苦しむところであります。いま二つばかり言われましたけれども、それでは、たとえば健康状況に関する定期的な精密検査、こうしたものも制度としてつくるべきではないか、あるいは児童生徒が被害者の場合が多いわけでありますが、第一種地域の場合、これはもう半数以上が児童生徒であるという実態が出ておるのでありますが、被害者の義務教育を受ける権利の実質的な保障というものをどう考えるのか、これは昨日の公述人の公述にも出ておりましたけれども、この被害者の子供たちは、その学校の中で実質的に教育を受ける権利が侵害されておる。公害病で苦しんで、ぜんそく等で苦しんで、うがいをする設備一つない、こういう状況であります。こうした被害者の義務教育を受ける権利の実質的保障、あるいはまた職業訓練施設の充実、これはリハビリテーションというふうなことになるかもわかりませんが、こうした問題、あるいは根本治療法確立のための研究施設の充実、こういうふうな制度ですね。私はやはりこの法律の中で制度として確立をすべきではないか、こう思うのですが、これはこの法案にはありませんけれども、一体、私がいま言いましたような具体的な内容をきめこまかくおつくりになるというお考えでしょうか。
○船後政府委員 私どもは、四十六条に掲げておりますような目的を達成する事業ならば、それぞれの地域の実情に応じまして、都道府県知事が立案すべきであろう、かように考えておるわけでございまして、法律に限定列挙する必要はない、ただし、どのような内容の事業をこの公害保健福祉事業として特殊な費用負担を行なうかということにつきましては、政令で定めてまいる予定でございまして、先生ただいまお示しになりましたような例につきましては、今後政令段階で十分検討したいと思っております。 なお、研究施設までこれに含めるかどうかという点につきましては、やはり基本的な病気原因の研究とか、あるいは治療方法の研究というのは、本来医療行政あるいは保健行政の一環といたしまして、国もしくは地方公共団体が行なうべき分野が多いのではないかと考えております。
○木下委員 それから、四十六条の法文の記載の形といたしましても、「必要な政令で定める公害保健福祉事業を行なうことができる。」、こうなっておるのです。これは参考人の意見陳述の中にもありましたけれども、このような行なってもよいし、行なわなくてもよいようなこういう規定ではなくて、行なわなければならないというそういう規定でなくてはならない。これはもう当然のことだと思うのですけれども、この点についてはどう考えていられますか。
○船後政府委員 四十六条では、都道府県知事は「行なうことができる。」といたしまして、次に費用のところで、そのような場合には費用負担を担保しておるわけでございますから、当然都道府県知事はこの規定に基づきまして一定の計画を立て、それに対して予算的な裏づけをいたしましてこれを実施に移すということになるわけでございますから、実質的には変わりはないと思うのでございます。
○木下委員 ですから、結局この四十六条というのは、この行なうべき公害保健福祉事業の内容というものを具体化せずに、ただごく抽象的に「健康を回復させ、その回復した健康を保持させ、」「福祉を増進し、」といったたいへん抽象的な書き方をして、そしてそれを「行なうことができる。」こういうふうな規定を置きましても、これは一体国民の立場から見ますと安心できない。保障がないわけですよ。少なくとも法律でこの公害健康被害補償法というものをつくる、そしてこのいまあなたも言われましたけれども、この賠償の基本というのは金銭ではなくて被害以前の原状回復である、健康と生活の原状回復である、そういうことでこの制度を設けるとすれば、やはり具体的な制度の中身、そしてそれを必ずこういうふうにやるんだというその保障、担保、こうしたことをつくるのが私は法律の中身だと思うのです。この点におきましてこの四十六条というのはきわめて不十分なものである、このことを私は指摘しておきたいと思います。
○船後政府委員 私どもはこの公害保健福祉事業の内容は地域の実情に即しまして選択されるべきものであると考えております。たとえばここに治療施設あるいは職業訓練施設というふうに列挙したといたしまして、そしてなおかつ行なわねばならないといたしたとしますと、もうすでに治療施設はその地域につきましてはほとんど充足されて、これ以上は要らない。しかし別の事業が要るというところに治療施設をさらにつくらねばならないというような問題も生じてくるわけでございまして、私どもはやはりいろいろなこういう健康回復、被害予防のためのいろいろな事業の中でその地域で何が一番必要なのか、何を優先すべきかということの選択は一番実情をよく知っております都道府県知事なり市長なりが選択いたしましてこれに対して計画を持ってくれば財政的な、予算的な裏づけをするということが最も実情に即した方法であると考えております。
○木下委員 次の問題でありますが、障害補償費の額の問題であります。これにつきましては法案でいきますと二十六条が規定をいたしております。これはすでにもう質問によって指摘をされておる問題でありますが、私もぜひこの問題はもう少し明らかにしてもらいたいと思いますので質問をするわけでありますが、結局のところ、全国の性別、年齢別による労働者の平均賃金、これが障害補償標準給付基礎月額になるんだ、平均賃金の八〇%が基礎月額になるということでありますが、そこで第一に伺いたいのはなぜ全国平均のこの平均賃金を基礎にしておるのか、これはやはり私は不合理な要素を含んでおると思うのです。つまりそれはそういう平均賃金でやるということになると、現実の収入より多かったりあるいは少なかったりする、これは当然そういうことがあるわけなんでありますが、そういう不合理さを含んでおる。そういう不合理さを含みながらもそのような平均賃金で割り切るということの理由、これを伺いたいと思います。
○船後政府委員 公害による被害者は広く一般住民でございますので、被害者の中には無職の方もございますし、主婦もあるわけであります。あるいは高額の所得を持っておられる方も、賃金労働者もおるわけでございます。こういった方々に補償する場合に、現実の逸失利益というものを考える場合に、現実の収入というものを基準に置いて考えていくということももちろん可能ではございます。しかしそういった場合には、無職の方でございますとかあるいは収入があってもそれが利子所得であったりあるいは不動産所得でありますために、病気になったことによって別に所得は減らないという方につきましての扱い方は非常にむずかしくなってくるわけであります。これが労災制度のように賃金労働者というものに対する制度でありますれば、すべて賃金というものを基準にして一つの制度を組み立ててなおかつ個人的な差というものにも合理的説明が可能になるわけでありますが、公害被害者につきましては、以上申し上げましたような特殊事情がありまして非常にむずかしい問題がございます。そこで四日市の裁判におきまして、逸失利益を算定するに際しまして、これを労働能力の喪失としてとらえ、かつ労働能力の喪失を見る尺度といたしましては、全労働者の男女別、年齢、階層別賃金を採用いたしたのでございまして、中公審におきましてもこの点につきましては種々議論のあったところでございますが、四日市裁判の判決の考え方を取り入れて構成することといたしたのでございます。したがいまして、これは一つのものさしでございますから、現実の収入の高い方は、実際の逸失利益がカバーされないということがあり得る反面、現実に収入の変動がなかったという方も補償されるというようなことになるのはやむを得ないと考えております。
○木下委員 私はこういう損害の賠償の制度をつくる場合に、ただ行政の便宜という観点だけからつくっていくということでは問題があると思うのです。だから、救済の完全な、十分な補償、それは完全にはできないかもわかりませんけれども、少なくともそれに近づけるということが大事だと思うのです。たとえば平均賃金よりも高い所得が証明される、高い収入がある、労働者の場合でも平均賃金よりも高い場合があるわけです。特にこれも指摘されておった問題でありますが、こういう公害病認定地域の場合には一般全国の平均よりも高いのが普通である。そういうことになりますと、これは平均賃金よりも高い所得、高い収入を得ておる労働者というのは多いわけです。そういう場合に、高い所得が証明される場合には、その所得を基礎にして処理をするということはこれはもう当然可能だし、そうすべきだと思うのです。その所得証明の手続がいろいろ複雑で時間がかかるというならこれはまた別ですけれども、そうではなくて、これはもう簡単にできる。決してそう複雑ではありません。これによって手続が遅延するということもありません。そうだとすれば、当然これはそういう証明によりまして、その高い所得によってそれを基礎として処理をするというそういう制度にするべきではないか、こう思うのです。いかがですか。
○船後政府委員 私どもは、行政上の手間がかかるから平均賃金によっておるわけではございません。収入を認定する制度といたしましては、税務署もございますし、生活保護のための社会福祉事務所もあるわけでございますから、技術的に不可能ではございません。しかし、この平均賃金よりも現実に収入の高い方はそれによるといたしますれば、権衡上、当然収入の低い方もそれによるということになるわけでございまして、結局は個別的に各人の現実所得を基準に置いて算定するほかはなくなるわけでございます。それで、私どもは四日市判決の考え方を取り入れたのでございますが、この四日市判決におきましては、やはり公害被害者が一方的に被害を受けたということをとらえまして、労働能力の喪失という点からものを考えるべきであり、現実に所得が幾らであるかということは問題とすべきでないというのが、あのときの原告側の主張でございまして、同時に、裁判所もそれを取り入れたわけでございます。したがいまして、中公審におきましても、この逸失利益の算定の根拠を何にするかは種々議論があったところではございますが、やはりそのような判決例に徴しまして、ただいま御審議をお願いしておりますような方法に結論を得たのであります。
○木下委員 その点は、十分納得いたしかねますが、さらにもう一つ、それに関連した問題を伺いますけれども、そういたしますと、平均賃金のさらに八〇%とする根拠ですね、これはどういうことなんでしょうか。つまり、これはすでに質問がありまして、お答えが出ておるのは知っておるのです。労災では六〇%にしておる、労災より高いのは、これは一方的に被害を受けるからだ、雇用関係のない地域住民が一方的に不法行為を受ける、だから労災よりも高いんだ、こういう趣旨の説明は聞いておりますが、労災より高い、それは当然でしょう。じゃ、なぜ一〇〇%にしないのか。この理由は何でしょうか。
○船後政府委員 八〇%というのは、きめたわけではございませんでして、中公審の答申におきましては、結論といたしまして、労災保険等社会保険制度における給付水準と裁判例に見られる水準と両者の中間に定めるのが妥当であろうという結論になっておるわけでございます。中公審の審議過程でこのような結論に達した理由を御説明申し上げますと、公害の被害につきましては、一方におきましては、先生御指摘のように、公害の被害者は、労災のような雇用関係にある者が被害をこうむったのではなくて、被害者が一方的に被害を受けたというような特殊性があるという反面、この制度におきましては、地域指定、指定疾病及び暴露要件という三つの要件を用いまして、制度的に因果関係を割り切りまして、いわば集団的な現象を個人に投影して因果関係ありとみなし、そこに被害者と認定して給付をするという性格のものでございますから、厳密なる裁判によってここに因果関係を確定して賠償責任を追及するものではございません。そのような制度の特殊性からいたしまして、給付水準は両者の中間が妥当であろうというのが、中公審の結論でございます。
○木下委員 ちょっと言われることが私にはよくわからないのですが、裁判と違って因果関係の認定がゆるやかであるから、こういう趣旨ですか、どういう意味ですか。
○船後政府委員 この制度におきましては、個々の被害者につきまして、加害者がだれであるのかということは特定いたしておりません。広く大気汚染の影響によって疾病があったとみなすという割り切り方をいたしております。
○木下委員 だから、因果関係がゆるやかに認められておる、こういうことでしょう。だから、という意味ですか。因果関係があるかないかはっきりしないけれども、補償するんだ、こういう意味ですか。そうでなくて、因果関係はあるんだ。あるという認定に立って補償をする。しかしその認定のしかたがゆるやかである、だから特別の扱いをするんだという意味ですか。
○船後政府委員 この制度におきましては、指定地域、暴露要件、指定疾病という三つの要件に該当いたします場合には因果関係ありと制度的に推定いたしております。しかし、個々の裁判におきましては、このような割り切り方はやはり無理でございまして、原因者がだれであるか、また本人が被害をこうむった経路は何であったかという点につきましては、これはやはり個々に立証していかねばならない。そういった意味におきましては、これは制度的にいわば機械的に三つの要件に該当いたしました場合に因果関係ありとみなしておりますから、裁判における因果関係よりはゆるやかであると言えると思います。
○木下委員 裁判におきましても、こういうふうな公害事案についての裁判では、因果関係の認定について特殊な扱いをしておるということは御存じでしょう。これは中公審の中間報告でもはっきり言っておりますね。「公害事案に係る法的因果関係については、このような諸科学分野のすべてにおいて因果関係が必要かつ十分に立証されなくとも、汚染のレベルと疾病の発現等との関係を疫学的手法を用いて確率論的に究明し、その因果関係について蓋然性があれば足りるという考え方が判例、学説において定着しつつある。本制度の因果関係においてもこのような法的因果関係の考え方を基礎として考えるべきである。」こう言っているんでしょう。つまり、裁判でのこの因果関係の認定は、このような確率論を用いて、この蓋然的な因果関係といいますか、蓋然性説と申しますか、そういう立場から因果関係を認めておる。もうそれがこういう公害事案の裁判において定着した方法論になっておるわけですよね。そしてその公害病の認定においてもこれと同じような方法でもって考えるんだということでしょう。だから、何も裁判の場合と私は違いはないと思うのですよ。公害事案の裁判の場合と何か特別の違った扱いをされるように言われますけれども、そうではないでしょう。この日弁連の意見書を見ましても、「因果関係で蓋然性説をとることを給付水準の点で考慮する。すなわちある程度水準を下げる」というこのような考え方は「到底許さるべき見解ではない。」はっきりこう言っているんですね。因果関係というのは、あるかないかなんですよ。そしてその因果関係の認定のしかたにおいて、公害事案の特殊性から、ある程度違った確率論的な考えから認定する。しかし一たん因果関係を認定した以上は、因果関係はあるのですからら、推定とは違いますよ、因果関係はあるのですよ。その因果関係があるのに、その因果関係の認定のしかた、方法論に幾らか特殊性があるからといって、給付水準の点で差別をする、これは私は理論的にも誤りであると思う。日弁連もそのことをはっきり言っているでしょう。いかがでしょうか。
○船後政府委員 この制度におきましても、当然制度としての因果関係は推定いたしておるわけでございまして、この制度で認定患者とされました者は、この制度としての因果関係を認めたことになるわけでございます。ところが、法的な因果関係につきましては、これは原因物質と病気との関係、さらに汚染物質の到達経路の問題、三番目には発生のメカニズムといったものにつきまして、それぞれ証明していくことが必要でございまして、その証明方法をとります場合に、たとえば疫学的手法のような蓋然性の理論に基づくのが最近の裁判例であるということを中公審の答申は指摘しておるまででございます。したがいまして、法的に因果関係ありということを民事上確立するためこま、とうていこの制度のような制度的な割り切りでは不十分でございまして、それぞれの原因者はだれであるか。これは単数であれ複数であれかまいませんけれども、少なくとも原因者はだれであるか、原因者の発生したその有害物質がいかなる経路をたどって被害者のところに達したか、かつそれが被害を起こしたかといったことにつきましては、これは個々に証明を要するわけであります。しかしこの制度におきましてはそのような証明を要することなく、三つの要件に該当する場合には制度的因果関係としてこれを認定するということにいたしておるわけでございます。
○木下委員 私は言われる趣旨がわかりにくいのですが、結局はその因果関係はあるというふうに認定をして、その取り扱いをするわけですね。この公害健康被害補償法に基づく認定というのは、因果関係を認定して、そして補償をするということでしょう。そうすると、その因果関係の認定のしかたがゆるやかであるということで八〇%にするということですか。簡単にお答えいただきたい。
○船後政府委員 ゆるやかだから八〇%にするというようなことではなくして、中公審の答申でも申しておりますように、これは制度として、一つの地域内にあって三つの要件に該当するものはすべて被害者として同一に扱うというような趣旨のものであって、その個人、個人の特殊事情というものは制度的給付としてはなじみにくいといった趣旨から、これは画一的給付になり、かつまた個々の裁判によって法的因果関係ありとされて、特定の原因者から補償を受ける水準よりはしたがって低位にあってしかるべきだ、こういう趣旨で中公審の答申は述べておると私どもは理解しております。
○木下委員 そうすると、裁判の場合は法的因果関係ありと認めて認定をする、この場合にはそうではないというんですか。
○船後政府委員 この制度は大気汚染による患者であるかないかということを認定するにつきまして、一つの地域ということと、その地域の中にある期間住んでおるということと、ある病気にかかっておるということ、この三つが立証されますれば、直ちに認定患者として認定するわけでございます。(木下委員「だから因果関係ですよ」と呼ぶ)ということはつまり、この制度といたしまして因果関係ありというふうに割り切っておるわけでございます。ただし、これはこの制度内だけで通ずる問題でございまして、この制度で認定患者とされたからということを理由といたしまして、裁判にいった場合に裁判所が直ちにそれを認めるかどうかはまた裁判所の問題ではございますけれども、いままでの裁判例によりますれば、先ほど申しましたように阿賀野川裁判のごとく、因果関係の立証につきましてはやはり三つの問題、疾病とその原因物質、さらに発生企業における発生のメカニズム、それから工場から排出された有毒物質がその被害者のもとに届いて被害を起こしたという汚染経路の証明、いずれもこれらを個々に立証しなければならない。ただし、その個々の立証のしかたが、厳密にいわゆる科学的な立証方法でなくとも、疫学的な手法を含めた蓋然性理論で足りるというのが最近の判例理論でございます。
○木下委員 その点はもう論議をやめますが、結局本件制度による公害病の認定というのも、いま言われましたような三つの要件に当たるかどうか、当たるということで因果関係ありとして救済をするということだと思うのです。ただ八〇%にするというその理由が、いまの説明を聞いておりましても私にはよく理解ができないわけであります。 それはともかくといたしまして、次の問題でありますが、これもほかの方から指摘をされたことでありますけれども、補償給付の制限の問題であります。 この四十二条、三条、四条の「重大な過失により、指定疾病にかかり、」という場合はこういう場合だということで御説明がありました。医者からたばこを吸ってはいけないと指示を受けておるのに吸うというような場合がこれに当たるという説明があったように思いますが、この「重大な過失」というのは、いろいろな場合に出てきますけれども、特別の重大な過失の場合であります。あの労災の場合の労働者の重大な過失というのも、これはもうごく例外的な特別の場合に扱われております。普通吸ってもよいたばこを吸ったというぐらいなことで、医者がいかに指示をしておっても、それを吸ったということでもって重大な過失があるというふうな認定になるということは、これは私は非常にきびし過ぎると思うのです。 そういうふうな認定がやれるということになりますと、私はますますこの問題をもっと突っ込んで聞いておかねばならないと思うのですけれども、そのたばこの場合以外にほかに一体どういうふうな例があるでしょう。
○船後政府委員 四十二条は私どももきわめて慎重に運営する必要があると考えておりまして、労災におきましても同種の規定がございますが、労災における取り扱い方等も参考にさせていただきたいと考えております。 また、たばこの問題がたまたま一つの例として出ましたけれども、もちろんこれもやはり程度の問題でございまして、一日に何十本あるいは数百本と吸うような方がいらっしゃいまして、医者から厳重に注意され、再三再四の注意にもかかわらず依然としてそれを続けざるを得ないといったような極端なケースというものが考えられるわけでございますが、いずれにいたしましても、これは被害者にとりまして補償給付の制限になりますから、運営にあたりましては慎重にいたしたいと考えております。
○木下委員 たばこの場合以外の例というのは、あなたのほうでもちょっと言いにくいと思うのですよ。それほどこれはそういう具体的なケースというのは見つかりにくい問題だと思うのです。 それからいま労災にあるかのように言われますが、労災に四十二条のような規定はありませんよ。「重大な過失により、指定疾病にかかり、」これに当たるのはあります。しかし「重大な過失により、」というのは、そのあとの「指定疾病による障害の程度を増進させ、指定疾病がなおるのを妨げ、又は指定疾病を悪化させて死亡したときは、」というところまでかかるんでしょう。違いますか。その点をまず聞きたい。そういうのは労災にはないのですが……。
○船後政府委員 まず「重大な過失により、」というのは、「悪化させて死亡したとき」までかかります。
○木下委員 だから、それは労災にあるんでしょうか。労災にないでしょう。
○船後政府委員 労災におきましては、これと同趣旨の規定が第十九条にございまして、第二項に「労働者が、故意の犯罪行為若しくは重大な過失により、又は正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、負傷、疾病、障害若しくは死亡若しくはこれらの原因となった事故を生じさせ、又は負傷、疾病若しくは障害の程度を増進させ、若しくはその回復を防げたときは、」云々ということになっておりますから、その規定のカバレージと同じであると思います。
○木下委員 私が聞いておりますのは、労働基準法の七十七条に規定がありますね。——いま言われたのはどの法律ですか。
○船後政府委員 私がただいま申し上げましたのは、労働基準法の規定を受けまして制度的に労災補償を行なっておるところの労働者災害補償保険法第十九条第二項の規定でございます。
○木下委員 労基法そのものにはそういうところまでの規定はないわけですけれども、そこで結局、過失相殺ということなんですが、これは昨日の日弁連の伊東公述人からも指摘がありましたけれども、民法にも規定がある。民法に規定があるのに、これを別につくることは必要ないのではないかという意見があったと思うのです。この点については、何か公法だからこれをつくるんだということを言われたように思うのですが、もう一ぺん確認しておきたいと思います。どういうことですか。
○船後政府委員 過失相殺規定は前国会で成立いたしましたいわゆる無過失賠償責任法におきましても問題となった点でございまして、政府原案におきましては過失相殺の規定を特例的に設けておりましたが、国会における御審議の経過を通じまして、民法第七百二十二条第二項に過失相殺の規定があるから特に民法の特例を設けなくともよろしいという結論になりましたので、いわゆる無過失法におきましては特例的な規定をしなかったのでございます。したがいまして、民事の問題としては、あくまでも民法第七百二十二条が適用されるわけでございます。ところがこの制度は、民法がそのまま適用あるいは準用されるものではございません。あくまでも行政法の体系でございまして、行政的に給付をするわけでございますから、この制度の給付をする者と給付を受ける者との関係におきますところの過失相殺規定は、民法第七百二十二条の趣旨を踏まえまして規定する必要があるわけでございます。
○木下委員 その考え方は少し混同しておるように私は思うのです。この制度そのものは公的制度であり、行政法上の問題だと思うのです。しかし、この制度が対象にしておる法律関係というのは民事問題でしょう。民事関係を対象にした問題ですね。だから、この制度は、よくいわれますように、民事上の損害を賠償させる、民事責任を踏まえた損害賠償であるというふうな説明を聞くのですが、つまり、企業あるいは公害発生源が行なうところの不法行為に対して民事上の損害を賠償させるという、そういう制度ですね。つまり、この公的制度、行政制度が対象にしておるものは民事関係なんですよ。だから、損害賠償についての問題というのは当然民法が適用になるのでしょう。そう思われませんか。
○船後政府委員 この制度は民事責任を踏まえた制度であるという説明はいたしておりますが、民事責任そのものを履行するという制度ではございません。民事責任そのものを前提といたしまして、その履行の担保あるいは履行を保障するというような制度の立て方も可能でございまして、そういう制度の前例といたしましては自動車賠償の制度がございます。この制度におきましては、まず民事上の賠償責任ということを確定いたしまして、その賠償責任を原因者が履行するについて、あるいは資力が不足であるとか、そのような不測の事態に備えるために、保険システムを利用してそこを保障しておるという立て方をとっているのでございます。 ところが二の制度は、基礎におきましては民事責任を踏まえてはおりますけれども、制度として、一定の要件を備えた場合には一定の給付を行なうという制度でございますから、あくまでも行政的な給付でございます。そういう意味におきまして、民法の規定はそのままこの制度には適用になりません。
○木下委員 新たにこの法案をつくって四十二条などをつくりますと、それは民法の規定が適用ないということになるのですけれども、この規定を置かなかった場合は民法が適用される、これは当然のことだと思いますよ。 そこで、では民法では一体こういう場合の問題はどうなっておるのかというと、七百二十二条というのがありますね。当然この七百二十二条が適用になるのに、四十二条というのをつくるわけです。ところが、この七百二十二条と四十二条を比べますと、これは重大な点で違いがあるのです。同じですか。私のほうからいいますと、七百二十二条というのは「被害者ニ過失アリタルトキハ裁判所ハ損害賠償ノ額ヲ定ムルニ付キ之ヲ掛酌スルコトヲ得」とあるのです。同じく民法の四百十八条というのがありますが、これは債権債務の関係の過失相殺ですね。これとまた違うのです。この四百十八条の過失の相殺というのは「損害賠償ノ責任及ヒ其金額ヲ定ムルニ付キ之ヲ魁酌ス」とある。つまり四百十八条のほうでいいますと、過失が大きい場合は損害賠償の責任そのものが否定される場合があるということなんですね。ところがこの七百二十二条の過失相殺というのは、損害賠償の額を定むるにつきしんしゃくする、つまり責任そのものは否定されないということなんです。不法行為を行なった加害者の責任そのものは否定されない、額だけがしんしゃくされる、こういうことなんです。つまり、ことばをかえていいますと、被害者は、額についてはともかく、必ず賠償を受け得るということなんです。これが債権債務の関係の過失相殺と不法行為の場合の過失相殺の違いであります。 ところが、この四十二条を見ますと、これは七百二十二条のようにはなっていないのです。「補償給付の全部又は一部を支給しないことができる。」つまり補償給付が全面的に否定される場合が起こる、こういうたてまえになっております。つまりこの四十二条でいくと、重大な過失があるというふうなことで補償が全く受けられない場合があるということなんですね。そうしますと、不法行為一般の場合の、七百二十二条の単に額だけについてしんしゃくされるという原則がくずされることになる。そうでしょう。この点はどういうふうにお考えでしょう。
○船後政府委員 民法の四百十八条と七百二十二条の差は、先生のおっしゃるとおりでございます。しかし先ほど来申しておりますように、行政法規でございますから、この法律には、四十二条の規定があろうがなかろうが、民法七百二十二条はそのままには適用にまずならないわけでございます。 ところで、七百二十二条の二項と四十二条とを比較いたしますと、七百二十二条の場合には「過失アリタルトキ」こうなっておりますし、四十二条におきましては重大なる過失がある場合というふうにいたしておりまして、制度上の給付といたしましては、重過失がある場合には給付を全部または一部制限するというたてまえをとることは差しつかえないと考えております。 なおまた、これは制度上の給付といたしまして、給付義務者である都道府県知事がそのように判断して給付制限をいたしましても、これは本人がもし不服がございますれば異議の申し立てなりあるいは不服審査の道が開けており、さらには最終的には裁判所でもってこれを御判断願う道も開かれておるわけでございますから、私どもは被害者の保護という点には欠ける点がないと考えております。
○木下委員 この七百二十二条の場合は「被害者二過失アリタルトキ」とありますが、これはその過失の程度は問うていないのですよ。通常の過失の場合も重過失も一切含めて「過失アリタルトキ」という解釈になっているんです。これは法文上の当然の解釈であります。どのような過失があったにせよ、その過失の大小にかかわらず単にしんしゃくされるということであって、加害者の側の損害賠償責任というものは否定されない、こういう趣旨なんですよ。この七百二十二条は、だからその点からいいますと、この四十二条というのは違った扱いになっておる、これは私ちょっと問題だと思うのですよ。これはいかに公的制度、行政制度と言われましても、対象とするのは民事関係のそういう加害企業の、あるいは公害発生源の不法行為の問題を対象にしておるわけなんです。その場合に、過失が大きいからといって損害賠償、補償を受ける権利が一切否定される場合が一あるというのは、私は制度として非常に問題であると思います。この点は指摘をしておくだけにとどめますが、こういうことでは私は納得できないということを申しておきます。 それから次の問題でありますが、ばい煙発生施設等設置者から徴収をする汚染負荷量賦課金の問題であります。これは五十二条にありますね。この賦課金を徴収いたしますのは、排出ガス量が政令で定める量以上である場合ということでありますが、それは地域によって異なるというたてまえのようであります。五十二条を見ますと、「最大排出ガス量が政令で定める地域の区分に応じて政令で定める量以上であるものを」対象にするように規定があります。つまり、これは同じ量を排出いたしましても、たとえばAの地域では徴収をする、Bの地域では徴収をしない、こういうことになるようですね。北海道では徴収をしないけれども東京では徴収をする、一体その基準はどういうことなのか。その構想を、これはちょっと私のほうにもわかりにくいのでお聞かせいただきたいのです。
○船後政府委員 この第一種地域にかかわる汚染負荷量賦課金は、汚染原因物質を排出しております企業を集団としてとらえまして、その集団責任という点から有害物質の排出量に応じて賦課金を取るという基本的な考え方をとっております。しかし地域によりましては、現実に高濃度の汚染があり、かつまた有症率も高くして指定地域に指定されておる、あるいはその周辺地域にあるというような企業もございますし、全く大気の客観的な汚染度も低く、有症率も低いために指定地域にされていないというような場所に立地しておる事業場もあるわけでございます。そこで、集団としての責任を問うわけでございますから、広く全国的に拠出を求めますけれども、現実の被害との関連からこのような地域差を反映させる必要があると考えます。したがいまして、まずいわゆる料率でございますが、単位発生量当たりの賦課金の単価というものにつきましても地域差を設ける考え方をとっておりまして、特に第一種地域に指定されました地域及びその周辺地域というものにつきましては料率が高くなり、そうでない地域につきましては料率が低くなるという仕組みをとりますのに対応いたしまして、いわゆるすそ切りの基準につきましても、汚染地域におきましてはごく少量の排出であっても、これは原因としてかなりの寄与度が認められるのに対しまして、非汚染地域等におきましてはそうでもないという事情を勘案して、具体的に定めていきたいと考えております。
○木下委員 私がいま聞いた以上のことをお答えになったのですが、私は徴収をされる地域とされない地域とについて聞いたのです。いま答えられたのは、さらにその上に徴収をする場合も料率の違う地域の問題について触れられたわけでありますが、それはけっこうですが、そういうふうにいろいろ違ってくるわけですね。同じ量を排出しておっても徴収されない地域がある。たとえば五百円徴収される地域がある、ところがさらに千円徴収される地域がある。こういうふうにいろいろ違いがあるわけでありますが、私が聞いておるのは、その基準とその具体的な構想、そういうものがつくられておるのかどうか。たとえば北海道ではどうだとか九州ではどうだとか裏日本はどうだとか、そういうふうな構想はあるのかどうかと伺っているのです。
○船後政府委員 地域の区分といたしましては、北海道だからどうだとか裏日本だからどうだとかいうような地域区分の考え方はとらないつもりでございます。やはり地域区分といたしましては、指定地域及びその周辺という被害の発生地域、これが一つのグループ、それから、かなり環境汚染が高くて被害の発生する可能性も認められるような汚染進行地域、それと、それ以外の地域といったような三つの区分にしてはどうかというのが、現在の検討過程で一つの案として考えられておりますが、なお具体的にこの地域区分をどうするかは、十分中公審でもって御検討願いたいと考えております。
○木下委員 それで、いまの賦課金の額が地域によって異なってくるということですけれども、これは五十四条に規定がありますね。これはどの程度ランクを設けるわけですか。
○船後政府委員 どの程度の差になりますかは、先ほど申しましたように、すそ切りの問題と、同時に料率の問題と、あわせ検討しなければなりませんが、現在までの検討過程におきましては、やはり被害発生地域におきましてかなりの費用を徴収するというシステムをとったほうが合理的ではないかという意見が有力であります。
○木下委員 そういたしますと、認定された第一種地域の場合は大体同じ額ということになるのでしょうか、あるいは認定地域によっても金額の違いがあるという考えですか。そこら、あるいは考えがまだ固まっていないということなのか、どういうことでしょう。
○船後政府委員 現在のところでは、少なくとも第一種地域に指定された地域とその周辺部分は一体としてとらえまして、地域によって差を設けるのは妥当でないと考えております。
○木下委員 私こういうふうに伺っておりますのは、たとえば大阪の西淀なんというところがあるのですが、ここは汚染の非常にひどいところで、認定地域であります。ところが、この地域は、この地域内に大きな工場があって汚染されておるというのではないのですね。幾らか工場はありますが、ほとんどみな中小企業の小さいところばかりなのです。なぜ汚染されておるのかというと、これは尼崎のほう、これが元凶なんですね。ここからどんどん大気汚染が流れてきまして西淀のほうが汚染をされる、こういうことなんですよ。だから、こういう場合も、考えてみますと、汚染された認定地域について高い料率をきめるのだ、そういう地域ごとの考え方というものに私は非常に問題があると思うのですが、そういう考えでいきましても、このように、その地域自体には問題はないので、ほかの地域から汚染されてくる、こういうところがあるわけなんですね。そういう場合については、どのようにお考えでしょうか。
○船後政府委員 先生が例としてあげられました西淀川区よりももっと極端なケースは、それに隣接しております豊中市でございまして、豊中市の場合は大体住宅地区がおもでございますから、発生源となるような大きな工場はございません。したがいまして、私先ほど来指定地域及びその周辺地域と申しておるわけでございまして、指定地域内だけで立地しております事業所を考えておるわけではございません。その地域指定に影響を及ぼしております隣接地域を一体としてとらえまして、これらのものにつきましてはすべて一つの料率でもって費用を負担させるのが妥当であると考えております。
○木下委員 賦課金を徴収するという考え方は、午前中にも指摘がありましたけれども、一つは、固定発生源と移動発生源の両方に分けて考えるということでありますが、この移動発生源からは、結局全国一律ということで徴収をするということになると——固定発生源の場合には地域差があって、高いところも低いところもある。あるいは徴収されないところもある、こういう状況であるのに、移動発生源の場合だけ全国一律というのは非常に不合理な感じがいたします。 それからまた地域ごとに、地域を単位として額をきめる、料率をきめるということでありますが、これもよく考えますと、大きな発生源と、それからほんとうに微弱な発生源とあるわけでありますから、そういうふうな違いというものをよくわきまえて処理をするということが必要ではないかと思うのです。この問題については累進賦課方式という考え方があったと思うのです。たくさんの汚染物質を排出した企業には加重をするという方式ですね。こういう方式をとることが私は合理的じゃないかと思うのですけれども、この累進賦課方式を採用されなかった理由をお話しいただきたいと思うのです。
○船後政府委員 まず第一種地域における汚染負荷量賦課金は、やはり汚染に対する寄与の程度に応じて取るという考え方でございますから、これを一番的確にあらわすものは、やはり排出いたしております有害物質の量に応じて取るという方法が妥当であると思っております。 なお先生が御指摘のような累進的な課徴金の取り方は、排出規制をするための課徴金といったような体系につきましては大いに検討に値する方法ではないかと考えております。
○木下委員 私は、時間が来ましたので終わりたいと思います。 昨日は公述人から非常に貴重な意見を承りました。特に、日弁連の伊東公述人が意見を述べられましたけれども、短い時間でありましたけれども、日弁連としての意見でそれはきのうの公述ばかりではなくて、この意見書というのが出ておるわけであります。ところがきのうの公述にもありましたけれども、ほとんどこれが採用されていないのであります。日弁連というのは、日本の法律家集団として最も権威のある団体であります。しかもその日弁連の中の公害問題を専門に扱っていられる公害対策委員会の貴重な意見というものが採用されていない、はなはだ遺憾に思います。しかもこれはただ日弁連が一方的に意見を発表したということではなくて、政府側、環境庁などにも折衝を持っておるというふうに伺っておるのです。この日弁連というのは法律家団体として最も権威があるばかりではありません。まさにこれは超党派的な立場を貫いて、社会正義と人権を擁護する立場から提案をされておるのであります。それをほとんど採用されていないということについては私はどうしても承服いたしがたいし、この点についてははなはだ遺憾に思うわけであります。 時間が来ましたので、きょうはこの程度にいたしますが、まだ私は幾らかの質問をいたしたいのであります。それを一応保留いたしまして質問を終わりたいと思います。
○佐野委員長 この際、暫時休憩いたします。 午後五時十一分休憩 ————◇————— 〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕 ————◇—————