外務委員会 第33号
- 発言数
- 165 件
- 登壇者
- 14 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1973/08/29
会議録
○藤井委員長 これより会議を開きます。 千九百六十一年の麻薬に関する単一条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件を議題とし、議事を進めます。 本件につきましては、去る二十四日質疑を終了いたしております。 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○藤井委員長 起立総員。よって本件は承認すべきものと決しました。 ————◇—————
○藤井委員長 次に、千九百七十二年の国際ココア協定の締結について承認を求めるの件を議題とし、審査を進めます。 この際、委員長として一言申し上げます。 当外務委員会における条約の審議に際し、政府に手続上不行き届きの点があり、委員会運営に支障を生じたことが少なからずあったことはまことに遺憾でありました。よって、政府は、国会の条約審議権尊重の見地から、今後かかる不手ぎわを再び繰り返さないよう十分配慮されることを重ねて要望いたします。 なお、今回の国際ココア協定のごとき国際商品協定にかかわる暫定的適用措置に関しては、政府はすみやかに当委員会に報告を行なうよう要望いたします。この点に関し、外務大臣の御所見を伺いたいと存じます。
○大平国務大臣 国際商品協定を暫定的に適用した場合の報告の点を含めまして、当外務委員会における条約の審議に際して不行き届きの点がありましたことにつきましては、私どもといたしまして深く反省しておるところであります。ただいまの委員長の御発言の趣旨を体し今後遺漏なきを期してまいりたいと存じます。このため、国際商品協定についてその締結につき国会の御承認をお願いする際の協定の発効期限等についても十分連絡して国会の御審議に資することといたし、国会の御承認前のやむを得ざる事情による暫定的適用措置に関してはすみやかに当委員会に対し御報告いたす所存であります。
○藤井委員長 これにて質疑は終了いたしました。 —————————————
○藤井委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○藤井委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。 —————————————
○藤井委員長 おはかりいたします。 ただいま議決いたしました各件に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○藤井委員長 異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ————————————— 〔報告書は附録に掲載〕 ————◇—————
○藤井委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。 この際、海外子女教育等に関する件について、海外子女教育等に関する小委員長より報告を聴取いたします。西銘順治君。
○西銘委員 委員長の御指名により本件についての海外子女教育等に関する小委員会における調査の経過並びに結果について御報告申し上げます。 本小委員会は去る六月二十二日の本委員会においてその設置が決定され、同日、委員長より小委員長及び小委員が指名されました。 本小委員会は七月十一日、十三日及び十七日の三日間にわたり政府に対し質疑を行なう等、本件に関し調査をいたしました。 その調査の過程を通じて問題になりましたおもな事項といたしましては、 一、海外子女教育の実情並びにその教育のあり方 二、帰国子女の本邦学校への受け入れ 三、教員の確保及びその待遇 四、海外子女教育事業担当機関の職務分担 等でありますが、特に海外子女教育について予算を増額する等、本件に関し政府として積極的な姿勢を示すことが強く要望されましたことを申し添えます。 かくして、本小委員会は七月十七日結論として次のとおり決定いたしましたので御報告申し上げます。 まず、本小委員会の結論の案文を朗読いたします。 海外子女教育等に関する件 わが国の国際的発展に伴い、海外に長期滞在する在外邦人は増加の趨勢をたどつているが、これら在外邦人にとり同伴子女の教育問題は当面における切実な問題の一つとなつている。 特に異質な社会環境にある在外勤務者は、同伴子女の教育に関し大きな不安を抱いていることにかんがみ、この不安を解消し、これら有為の在留邦人が国際的諸活動に専念し得るような措置をとることは、国の当然の責務である。 また、在留邦人子女に対し、日本国憲法及び教育基本法の趣旨にかんがみ、本邦の歴史的文化的伝統を正しく伝える教育の機会を与えることは、特に重要であり、海外諸国との交流面に有益であると考えられる。 よつて、政府は、海外子女教育の重要性にかんがみ、国の施策として左記事項につき有効適切な助成措置をとるべきである。 記 一 在留邦人子女に対して組織的に教育の機会を与えるため、予算の大幅増額をはかることにより、当該国との相互理解に立脚し、必要に応じて補習授業校並びに全日制日本人学校の教育施設の整備拡充、教育水準の向上に努めること。 一 教員の増員及び待遇改善などにより、質的水準の確保をはかるとともに、教育専門家及び文化人の積極的海外派遣措置を講ずることにより、海外子女教育内容の向上をはかること。 一 学習能率の向上及び教育効果の促進をはかるため、各教科目に適合する教材整備等の措置を講ずること。 一 帰国子女の本邦学校への受入れの円滑化を推進するため、各地域に適応教育実施を含む適正なシステムの策定をはかること。 一 わが国と諸外国との間の相互理解を促進するため、わが国と諸外国の大学との間における単位互換を拡大する等、学生の交流を活溌化するため有効適切な措置を検討実施すること。 一 海外子女教育の重要性にかんがみ、本件についての関係諸機関は、密接に相互協力を行ない、万全を期するため最善の努力をはかること。 以上でありますが、小委員会の本結論を当委員会の決議とされるよう提案をいたします。
○藤井委員長 以上で報告は終わりました。 おはかりいたします。ただいま小委員長から提案のありました案文のとおり決議することに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○藤井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ただいまの決議に対し、政府の所信を求めます。外務大臣大平正芳君。
○大平国務大臣 海外子女の教育は重要な問題でありますので、本件御決議の御趣旨を体し最善の努力をいたす所存であります。
○藤井委員長 文部政務次官河野洋平君。
○河野政府委員 ただいまの御決議の趣旨を体しつつ、現地の実情に応じて日本人学校あるいは補習授業等、在外子女教育の拡大、拡充をはかるとともに、帰国子女の教育の充実に十分つとめる所存でございます。
○藤井委員長 なお、ただいまの決議の関係当局への参考送付等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○藤井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ————◇—————
○藤井委員長 質疑の申し出がありますのでこれを許します。堂森芳夫君。
○堂森委員 外相にまずお尋ねいたしますが、ソウルの在韓日本大使館に対しまして外務省の訓令に基づいて韓国政府に対し金大中氏の供述内容、具体的な内容等について、至急返答を申し入れたと報告されているのであります。また新聞等その他の報道によりまして、二十七日に返答があった、そしてわが大使館は、捜査当局との詳細な打ち合わせ等もあって、そうした所要の手続を終わって二十九日にはこれを発表する、こういうような報道がなされておるのでありますが、その返答の内容等につきまして、事務当局でよろしゅうございますが、一応まず答弁を承りたい、こう思います。
○中江説明員 お答えいたします。 ただいま先生からお話がありましたように、金大中事件が起こりましてから、日本政府は一貫して、日本の捜査活動に貢献していただくために、韓国政府から韓国の捜査当局が行なっている捜査の状況について逐一報告を受けたいという希望を再三再四申し入れてきたわけでございます。それで断片的な捜査の報告はそのつど受けておりましたけれども、まとまったものがなかなか手に入らなかった次第でございますが、昨二十八日の午後八時過ぎに、ソウルにおいて大韓民国の外務部から八月二十七日までの捜査状況をまとめたものを、原文は韓国語で書かれておりますが、これを受け取ったわけでございます。その内容は直ちに電報で東京に報告がございましたが、その成文そのものはただいまこちらに向かって空送されているという段階でございます。この電報で受けました文章に基づいてまとめました内容は本日の十一時三十分に発表いたしましたが、その要旨をかいつまんで申し上げますとこのようになっております。 「金大中拉致事件捜査状況」というタイトルになっておりますが、これは八月二十七日現在の状況といたしまして、大きく分けまして四つの項目にわたっております。第一が車両捜査、第二が押収物についての鑑定、第三が船舶捜査、第四が上陸後の犯人行跡捜査。 この第一点の車両捜査につきましては、金大中氏が自宅に戻るまでに韓国領内で使われたという乗用車について、目撃者を何とか見つけてその車の車種、ナンバーその他をきわめようとしたけれども、現在まで目撃者が発見できないので引き続き捜査中である。 また自動車のサービス工場とか、自動車を洗う場所だとか、そういうところを方々さがして容疑車両の有無について引き続き探査をしている。結局、車両捜査につきましては、金大中氏が自宅まで戻るにあたって使われた車両はまだ発見できない状態であるというのが第一点でございます。 第二は押収物についての鑑定。押収物といたしましては、第一番目は帰宅したときに目隠しをしておりました包帯とか眼帯、それから左側の手首の傷についていた包帯、ばんそうこう、それから当時着用しておられたワイシャツ、下着、こういったものについて血液のあとがあるかないか。また包帯、眼帯、ばんそうこうの製造会社はどういうところだろうか、あるいはそういうものから癒着した油などが検出されないかどうか、また化学反応をいろいろの角度から調べ、その他本件参考になると思われる事項がないかというような点を鑑定したところ、現在までのところ鑑定ができないままである。 第三番目は船舶捜査、これは金大中氏の陳述によりますと、拉致されたときに使用された船舶があるはずでございますので、これを八月八日の十三時から九日の二十四時まで、日本とその付近から出港して韓国に入ってきた韓国国籍船舶をすべて、合計十一隻だそうですが、これを対象にして船長、船員五十余名、これを捜査し、また同時に検疫所、税関、出入国管理事務所等の関係員三十余名、それからそういった関係者の供述に基づくいろいろの調査をいたしましたけれども、金大中氏を拉致したと疑わしい痕跡が発見できないで、引き続き継続捜査中である。 それから、その拉致事件直後に日本を出港し国内に入ってきた外国籍を含めまして全船舶についても引き続き捜査をしている。この捜査船舶につきましては別表というのがついておりまして、各船舶について詳しいデータがございます。 第四番目に、上陸後の犯人の行跡捜査につきましては、金大中氏の陳述に基づきまして、犯行時使用されたと思われる家屋、いなかの家とか二階建ての洋館とかいろいろ出ておりますが、そういったもの、それからその洋館で金大中氏を治療したという医師、あるいは犯人、そういった者の捜査を継続しておる。けれども、きめ手はまだ発見できていない。 これが昨日受け取った捜査状況報告の概要であります。
○堂森委員 参事官、もう少しあなたから答弁をもらいたいと思います。後ほど大臣にお尋ねします。 それでは、外務省から出先の大使館に対して訓令を発した、韓国政府側に求めた返答の内容を、項目でいいですが、どういうことを訓令したのか、これをまず承っておきたいと思います。
○中江説明員 最終的にまとめて現地で韓国側に強く提出方を要求いたしました捜査内容といいますものは、第一番目に、これまでの捜査内容はどうなっているか。第二番目に、いわゆる中間発表といわれておりますものは一体いつごろ発表できるのかという見通し。第三番目に、本件に関係があると思われております金大中氏、梁一東氏、金敬仁氏、この三人の供述内容はどういうものであるか。第四番目に、船舶調査の見通しはどうか。第五番目に、今後一般的に捜査の見通しはどういうふうに見ているか。第六番目に、金大中氏、梁一東氏の再来日、再び日本に来ていただきたいというわがほうの要請に対する見通しはどうであるのか。第七番目に、伝えられるところによると、金大中氏を単なる被害者としての立場でない角度面も出ているというふうにいわれているけれども、何らかの容疑の事実があるのかどうか。第八番目に、本件の事件に関係した者の氏名がわかっておればそれも知りたい。第九番目に、証拠物品をもし鑑定したのであれば、その鑑定の結果も承知したい。最後に梁一東氏の血液型がわかれば知らせてもらいたい。 大体この十点を例示的に示しながら、一般的にわがほうに対する捜査結果の情報をいただくという、日本の捜査活動への協力を一そう強く進めていただきたい、こういう申し入れをしたわけでございます。 これに対してどういうふうに回答が来たかという点では、いまの順番で申しますと、これまでの捜査内容というのは、ただいま申し上げました部分に関しては、これまでの捜査内容は入っておりますけれども、第二点の中間発表の見通しというものはまだ触れられておりません。金大中氏、梁一東氏、金敬仁氏三人の供述内容は直接にはその中には入っておりません。船舶調査の結果は入っております。しかしそれは完結したものでなくて、引き続き捜査中ということになっております。今後の捜査の見通しについてはまだ触れられておりません。金大中氏、梁一東氏の再来日の見通しについても入っておりません。金大中氏を容疑者として取り扱うようなことがあるのかどうかという点についても触れられておりません。事件関係者の氏名も、いま申し上げました三人を除いては入っておりません。証拠物品の鑑定結果、これは押収物品についての鑑定結果は出ております。梁一東氏の血液型については、これは近くお渡しできることになっているという口頭の返事がございまして、これはもうすぐにわがほうに連絡があるものと思われます。
○堂森委員 あなたのいまの答弁によって明らかなように、大体いまあなたが答弁されましたように、十の項目にあらまし整理ができる。これに対して四項目の回答があった。しかし、重要なものは——まあ重要でないというものを要求したわけではないが、核心に触れるようなものはほとんど答弁が何もない。回答があったものでも、一体これでは何の回答なのか、われわれしろうとでも——後ほど警察の人にも聞きたいと思いますが、これは回答なんでしょうか。私はどうも——まあいまあなたに詰め寄ってもしょうがないのですが……。 それから、金氏の容疑の内容ということについて、きょう私ラジオか何かでちょっと聞いておったのですが、外務省の担当の課長の話とかなんとか、これは間違いかもしれませんよ。防共法の容疑や国家保安法の違反の容疑はないようであるというようなことが、たしかラジオで私聞いておったように思うのですが、間違いですか。そういう返答は何もないのですか。外務省は確かめていないのですか。これもちょっとついでに承っておきます。
○中江説明員 そういった反共法なり国家保安法なりの適用で金大中氏を別件起訴といいますか、そういったことをしないということがはっきり韓国側から示されたという事実は何ら聞いておりません。
○堂森委員 そこで外務大臣にお尋ねいたしますが、外務省が出先の大使館に訓令を発して、大体整理すると十ぐらいの項目にわたって韓国政府の公式の回答を求めたのに対して、きょう示された、いまの答弁にもありましたような回答を、外務大臣は一体どのようにお考えでございましょうか。これは国民が非常に関心を持っておる問題でありまして、しかも、国民の世論の中には、もっとき然とした態度で日本の政府は臨むべきであるという声が強いということを外務大臣はよくお知りだと思うのでありますが、この国会の答弁において、きのう示されたこの回答に対して外務大臣はどのようなお考えをお持ちでございますか、詳しく具体的に御答弁願えるならばありがたい、こう思うのです。
○大平国務大臣 この不幸な事件はわが国の法域の中で起こった事件でございますので、この実相を解明いたしまして公正な解決をはからなければならぬわけでございます。そのためには、真相の解明につきまして十分な調査が行なわれなければならぬわけでございまして、わが国の捜査当局といたしましてもベストを尽くしておられると思いますが、捜査の必要上韓国側に協力を要請しなければならぬことは、御案内のように、ただいままでも韓国側の協力を求めてまいったわけでございまして、そのうちの一部と目されるものが、いま政府委員から御答弁申し上げたように、昨日あったのでございまして、私は捜査の専門家でございませんけれども、今回の資料だけでは真相究明のため格段の進展があったというようには思えないのでありまして、こういった資料をとりあえずよこしていただきましたことに対して、韓国側の協力に対してそれなりに評価するものでありますけれども、これでは十分でございませんので、今後韓国側において捜査が促進すると並行いたしまして、わがほうの要請に対し韓国側から随時情報提供が行なわれることを期待いたしておるわけでございまして、そういう趣旨で今後とも資料の要請は続けてまいる所存でございます。
○堂森委員 外務大臣はもちろん捜査当局の専門家でないことはこれは明らかで、あたりまえでありますが、常識で考えまして、日本の主権の厳として存在するこのわが国土内、しかも首都である東京のホテルで白昼堂々と行なわれた、この個人の自由を一つの、何といいますか、無法な方法で拉致されたこの事件についての韓国側の誠意ある回答であるというふうに大臣はお考えでございますか。私、そんないまのような答弁では、大臣としての答弁じゃないと思うのです。日本の主権というものを守っていかなければならないあなたは、外交の責任者として韓国に向かってき然たる態度で臨まねばならぬ重大な責任を持っておられる方であります。したがっていまのような答弁で向こうの誠意はどうとか、そんな、あなた、ぬるま湯みたいな答弁じゃ私はだめだと思うのです。もっとき然たる態度で、私は何もけんかせよとかあるいはどうとかいう意味じゃないんです。やはり日本の外務大臣としてもっとき然たる態度で私は臨んでもらいたいと思うのであります。 まあ質問を続けたいと思います。そこで警察当局、来ておられますね。この返答を、あなた、専門家としてどうお考えですか。
○中島説明員 この韓国側の資料は、ただいまお話のありましたとおりでございまして、車両の捜査、押収物についての鑑定、上陸後の犯人の足取りの捜査の点につきましては、結果が出ていない、なお捜査中であるということでありまして、したがいまして、私どもの捜査には参考にはなりません。今後の韓国側の捜査の進展を期待いたしたいと思います。 なお、船舶の捜査につきましては、大阪及び神戸港とその付近から八日、九日にかけて出港した船の捜査の状況について本件との関係はこれまで出ていないけれどもということで、かなり詳しい状況が別表としてついております。この点は私どもの捜査上いろいろと参考になる点がございます。
○堂森委員 それではあなた警察当局の答弁者として私の質問に答えてもらいたいと思うのですが、十項目がわが政府から大使館を通じて回答を求めておる。しからばその中にたとえば金氏らの供述内容、これは何かあると思うのですよ。それから今後の捜査見通し、それから金氏再来日の見通しだとか金氏の容疑の内容、被疑者とまではいかないが容疑があるようなことばを民社党の春日委員長に金総理が言っておる、これは新聞の報道でありますが、容疑のようなその疑いがあるとかいうことばでありますが、そういうことについてとかいろいろなこと、それから梁一東氏の血液型、こんなものはすぐとれるわけだ、それもまだ来ないというようなことについて、あなたは向こうに誠意があるといふうに考えますか。いかがですか。あなた方こんなことばかりしているほうだろうが、どう思いますか。
○中江説明員 警察当局の御答弁の前に一つ補足いたしますのは、いま先生の言及されました梁一東氏の血液型は、きょう韓国の在韓日本大使館に連絡がございまして血液型はA型であるという連絡がございました点を、先ほど冒頭の説明に補足してここではっきりさせておきたいと思います。
○堂森委員 警察当局はどういうふうに、私が聞いたことについて、この回答書をどう思うかということについてもう少しあなたに意見を聞いている。
○中島説明員 私どもといたしましては、十項目について回答を要求いたしているわけでございまして、今回の回答であと回答がないということではないと思います。引き続き回答が寄せられることを期待いたしております。
○堂森委員 そんな答弁じゃだめですよ、あなた。何ですか、その答弁。子供扱いみたいな答弁をして。どう考えるかということを言っているのじゃないですか。考えを言ってごらんなさい。この回答をどう考えるか、もう一ぺん答弁してください。
○中島説明員 私どもといたしましては、韓国側が引き続き未回答の部分について早い時期に回答を寄せることを期待いたしておるわけでございますが、外務省を通じてその回答を促進するように要請をいたしたいと思います。
○堂森委員 私はあなたに聞いておるのは、十項目にわたって具体的に政府が訓令を発して、大使館から韓国の当局に回答を求めたのに対して、このガリ版で刷られたこんなものをわれわれに示されたが、そういう回答は、一国の政府として責任ある、誠意ある回答と思うかどうかと、こう聞いておるのですよ。将来の返答を待っておるとかそんなことを何もあなた、答弁を求めておるのじゃないのです。答弁できないのですか。
○大平国務大臣 先ほど、このもたらされた情報の提供をどう評価するかというお尋ねがございまして、私は捜査の専門家でないけれども、体験いたした限りにおきまして、韓国捜査当局におきましてこの事件の捜査に格別の進展があったようには考えられないというように感ずるということを申し上げたわけでございます。しかし私どもといたしましては前段に申し上げましたように、本件の真相はあくまでも解明しなければならぬわけでございまして、それに必要な資料の提供は執拗に韓国当局に求めてまいり、また日本の捜査当局といたしましても、わが国で起こった犯罪事件でございますから解明を急がなければならぬわけでございまして、そういう努力は今後も続けてまいらなければならぬと考えております。 なお警察庁側からも御答弁がありましたように、これはとりあえずの連絡でございまして、その他の事項につきましても、またいま寄せられた項目の中でなお今後判明いたしたことにつきましても、韓国側は今後こんりんざいもう返答いたしませんとは言うていないわけでございまして、私どもは先方から誠意ある情報の提供がもたらされることを期待いたしておりまするし、今後もその提供方を執拗に求めてまいるということを御答弁申し上げておりますので、御了承をいただきたいと思います。
○堂森委員 時間がだんだん経過しますから、先に質問を進めたいと思います。 大臣が訓令を発せられまして、後宮大使が金大中氏に面会をしておる。昨晩でございますか、この金大中氏との面会を訓令されたということは、どのような意図で、どういうような意図で会えということをしておられたのでありますか、外務省としての考え方は。
○中江説明員 金大中事件が起きましてから、いろいろの面で韓国政府のわがほうの捜査に対する協力を要請しておりましたわけでございまして、その中には一つの懸念といたしまして、被害者である金大中氏の身体の自由と安全がはたして守られているかどうかということについては、おりに触れてわがほうの懸念を表明しておったわけでございます。で、一応韓国の官憲、政府当局を通じましては、金大中氏は元気である、あるいは自宅で家族とともに生活しているというような返事はあったわけですけれども、なお一そうこれを自分の目で確かめるということがよりこの場合望ましいという判断から、後宮大使は韓国政府の捜査に対する全面的協力を強く要請する際に、その一環として、もし金大中氏に自分が直接会ってその身体の自由と安全が確認できればいいがということを申し入れられたところが、韓国政府で直ちにそれに対してそれではお会いいただきましょうということで実現したのが今回の会見である、こういうふうに連絡を受けております。
○堂森委員 そうすると、後宮大使が金大中氏に会ったのは、安否を尋ねるというような意味が主たるものであって、金大中氏が直接大使に、日本に来たい、再来日を希望しておるというような意思を確認しようとか、そういうような考え方は大使にはなかったのですか。
○中江説明員 金大中氏に日本に来ていただきやいという希望は、これはわがほうの捜査を有効かつ迅速に進めるために不可欠の条件であるという捜査当局の強い希望もありますので、日本政府としては再三申し入れておりましたわけですが、それに対する韓国政府側の責任ある回答としていただいておりますのは、いま金大中氏は韓国における捜査の対象——対象といいますか、被害者として捜査を受けているので、韓国政府当局が捜査を継続している間は遺憾ながら日本にすぐに行っていただくわけにいかない、こういう回答をいただいておったわけでございます。現地の後宮大使といたしましては、そういう事情は事情としてわからないではないので、それじゃ韓国政府の捜査の模様を詳しく知らせてもらいたい、そしてその捜査が早く進捗して真相が究明されることがまず本件の一番の眼目であるという立場で捜査結果の報告を催促しておられたわけですが、それと同時に、いますぐできることは、とりあえず金大中氏が引き続き自由かつ安全に生活しておられるということを確かめなければならないということでございまして、今回の申し入れでは、いまの時点では先生がおっしゃいますように金大中氏の身体の自由と安全を自分の目で確認するというところのほうに主眼があった、こういうふうに聞いております。
○堂森委員 その後宮大使との会見の際は、金大中氏はみずから日本に行きたい、再来日を早くしたいというような意思表示はなかったのですか。その点わかっておったら……。
○中江説明員 この点は非常に重要な点になりますので後宮大使にはっきり確認いたしまして、どういう話であったかということの報告をとりましたところ、こういうふうになっております。 まず後宮大使から健康状態を確認されたあとで、本事件のすみやかな解決を願う日本政府及び国民の気持ちをまず伝えて、日韓関係の維持についての考えを述べたところ、金大中氏は、不幸な事件のために日本の皆さまに心配をかけたことは申しわけない、事件の真相が解明されて、いままで築き上げてきた日韓間の友好関係がそこなわれないよう希望する、こう述べられ、また捜査に協力するために日本に来られる件については、行けるようになれば昔からの友人にも会えてけっこうなのだがと、こういうふうに述べられたにとどまった、こういう報告でございます。
○堂森委員 それは非常に控え目な表現ではありますが、、私は、金大中氏はやはり日本に来たいという非常に強い意思表示をしておられるものだというふうに理解できると思うのであります。そういう意味で私は外務大臣に、くどいようでありますが、重ねてお尋ねをしておきたいと思うのです。 従来から私は日本の外務省の態度は何かき然たるところがないというふうに思うのであります。あなたはそうでないと言われるかもしれませんが、そういう印象を持つのであります。今回後宮大使が金大中氏と会ったということは、私これはやはり非常に大きな一つの前進になるきっかけにもなると思うのでありますが、そういう意味で、これからこの真相を究明する意味でも、金大中氏が一日も早く日本に来れるようになるということが、これが一つの大きなかぎになることは当然でありますが、外務大臣として金大中氏の再来日の早く実現するような意味で、一そうこれから次の手を打って努力をしなければならぬと思っておりますが、それについて何か具体的な考えがありますかどうか、お尋ねをしてみたいと思います。
○大平国務大臣 御案内のように、政府といたしまして十項目にわたりまして韓国側に調査結果の報告並びに金大中氏の来日問題も含めて要請いたしてあるわけでございまして、これに対しまして、ただいま捜査中であるので応じかねるというのがいまの段階における先方の態度であるように思います。しかしわれわれはそれを断念しておるわけでは決してないのでありまして、わが国の捜査当局は重要な参考人といたしまして金大中氏等の御来日をいただいて事件の解明をすることが必要であるという不変の態度を持たれておるわけでございまして、その要請に応じまして、私どもは今後とも仰せのように韓国側の協力をその点につきましても求めてまいらなければならぬと考えております。
○堂森委員 時間が経過しますから先に質問を進めたいと思います。 政府は先週第七回の日韓定期閣僚会議の九月開催を延期にきめたというふうに、これはもちろん報道されておるのであります。そのときに大平外務大臣は閣議で、この延期は対韓政策の基本を変えたことを意味するものではないと言明し、経済協力案件も事務レベルで消化していくと述べていると報道しておるのでありますが、それに間違いありませんか。
○大平国務大臣 仰せのとおりでございます。
○堂森委員 そこで、これは金大中氏の事件と日韓経済協力はそもそも次元の違う問題だとして、事件の波紋が日韓関係に何かひび割れを生じないようにしようという政府の態度であると私は思うのです。しかしこのような事なかれ主義の態度でほんとうに日韓両国のよい友好的な関係というものが確立されるであろうかどうかというのは、私は大きな疑問があると思うのでありますが、そういう事なかれ主義というものでおやりになるということについて、非常な疑問を持つのです。 また、きょうの新聞が報道しておりましたが、きのう外務大臣は、正午からの某ホテルで開かれた日本記者クラブ主催の昼食会で当面の外交問題と題して何か話をされた。そのあと記者団の質問に答えて、韓国側の協力が満足でないと不満の意思を表明し、責任ある協力、報告を期待すると韓国側の善処を要望した。むろん当然であります。しかしいまの答弁とはだいぶん違います。また、日韓定期閣僚会議のあり方は事件の有無にかかわらず問題であった、もっと高邁なものにすべきだと述べたと新聞は報道しておる。従来の閣僚会議というものについてはどうも問題があるというふうに、外務大臣は記者団との会見でそういう意味の発言があった、こう報道しておるのであります。 このとおりだとしますると、外務大臣はどのような形の閣僚会議が望ましいと考えておられるのか、従来の日韓閣僚会議のどういう点が問題があるのか、具体的に御答弁を願いたい、こう思います。
○大平国務大臣 前段の点にまずお答えいたしますけれども、本件をうやむやにいたしまして事なかれで当面を糊塗しようということは毛頭外務当局といたしまして考えていないわけなんでございまして、先ほどからも申しますように、この事件の実相を解明いたしまして内外の納得のいく解決をしなければならぬとせっかく考えておるわけなんでございまして、私どもがこれを事なかれ主義で何かうやむやにしようというようなことを考えておるとあなたが御理解でございますならば、それは改めていただきたいと私は思います。 それから第二の点でございまして、複数の閣僚が二国間で集まりまして会議をやっておる例が日本におきましても四つあるわけでございまして、アメリカとカナダ、豪州、韓国と、二国間の問題が多いところでそういう閣僚会議を定期的に持つ取りきめをいたしておるわけでございます。この本来の趣旨は、二国間の問題あるいは二国間で共通の関心を持つ問題あるいは国際情勢その他につきましてごくフランクな討議をする、そして理解を深める、そして二国間の問題の処理が円滑にまいるというようなものが本来こういう閣僚会議のあり方でないかと私はかねがねから考えておるわけでございまして、米国の場合もそうやっておりますし、カナダの場合、豪州の場合もそういうことで運営いたしておるわけでございまして、韓国の場合もそうやりたいのでございますけれども、この閣僚会議の従来の経過を見てみますと、経済協力案件等につきまして閣僚会議で決着をつけるというような場面が往々にしてあったわけでございまして、ある場合には夜を徹してネゴシエーションをやるというような局面がありまして、これは私はあまり好ましい傾向ではない、したがってこれは改善すべきであるということで日韓両政府ともそういう方向でいままで努力をしてまいりまして、去年ソウルで開かれました閣僚会議はほぼそういう線に近いところまでいけたように私は思うのでありまして、だからこういう事件の有無にかかわらず、閣僚会議は本来あるべき姿に改善していきたいという希望をかねがねから持っておるわけでございます。そういう方向で今後運営に当たってみたいということを私は省の内外に申し上げておるわけでございます。
○堂森委員 それじゃことばを変えて外務大臣にお尋ねしますが、今度の金大中氏の事件は、韓国の有力な野党の政治家が組織的な不法手段で東京からソウルに連れていかれた。これは単なる刑事事件ではないということはだれでも常識で考えると思うのです。何か重大な政治的な背景を持っておるものであろうと想像するのは常識であります。そしてその結果、名前をあげてあれでありますが、朴政権というものの独裁的な体質とその暗い側面というものを、それは政府機関が関係があったかなかったかは別にして、日本の国民あるいは世界じゅうの人が、何か韓国の現政権に独裁的な体質があり、それから暗い側面を持った政権であるという印象を強く与えたことは間違いないと思うのです。これは日本の国民の多くはそういう印象を持っておるのです。外務大臣はどうお考えでございますか。これと私は関連して従来の経済協力というものには一大考慮を払わなければならぬ時期が来ておるということを申し上げたいためにこう申すのでありますが、外務大臣はそういう印象を受けられませんか。外務大臣はそんなことを答弁できぬはずはないでしょうが、御答弁願います。
○大平国務大臣 この事件はたいへん不幸な事件であったと思います。したがって、こういうことを繰り返してはならぬわけでございますので、一番大事なことはこの事件を徹底的に解明いたしまして、内外の納得がいく公正な解決をはかるということをすることが政府の任務であると考えておるわけでございまして、そのためにいま努力をいたしておるところでございます。そういう事件が起こったから直ちに対韓政策の基本を変えるあるいは経済協力のやり方を変えるというようなことをやりますと、かえって堂森さんからそういう軽率な外務大臣じゃ困るじゃないかというおしかりを受けるのじゃないかと思うのでありまして、私はこの事件の解明は解明として続けなければならぬ。しかし、そして、こういう雰囲気でございますので、閣僚会議を開く以上はやはり国民の理解と協力を求められる雰囲気のもとで開かれることが私は望ましいと思うわけでございますので、延期をとりあえずいたしたわけでございますが、延期をしたからといってすぐ政策の、日韓関係の基本を変えるというようなことをそう軽々にすべきじゃないと私は思うのでありまして、したがって、この間閣議で御説明申し上げまして、あなたが先ほど言及されたラインで御了解を得ておる次第でございます。
○堂森委員 私はいまお尋ねしたのは、重要な点は、今度の——あなた不幸な事件とおっしゃいました。この事件が起きたが、この事件は単なる刑事事件ではないだろう。そして何かこれは暗い大きな政治的なバックというものがあるような印象を私は持っておる。そして韓国における現政権に独裁的な体質があって、そして暗い側面というものを持っておる政権であるという印象を日本の国民の多くの人に与えておるというふうに私は考えるが、外務大臣はどうお考えになりますか、私のそういう意見に対してどうお考えになりますかということをまず聞いておるわけであります。
○大平国務大臣 問題は二つあると思うのでございまして、この事件がどういう性質のものであるかということをいま解明中なんでございまして、堂森さんは、どうもこういう性格の事件じゃないかという、あなたのお考え方がにじみ出ておるように思うのでございますけれども、いませっかく実態を糾明中でございますので、その糾明を待たしていただきたいと思うのであります。 それから第二は、私ども国と国のおつき合いの場合におきまして、やはり他のおつき合いをいたしまする国に対しまして最高の礼儀をもっておつき合いしなければならぬと思っておるのでございまして、その国がどういう政治信条を持ち、どういう体制を選ぶか、そういうことを私どもが軽々に論議すべき立場にはないわけでございまして、どういう国であろうとそういう国と日本との間柄は公正な関係でありたいと願っておるわけでございまして、政治信条、体制のかきねを越えてあらゆる国と友好関係を持ちたいと念願いたしまして微力ながらつとめておるわけでございまして、韓国の政権につきまして政治的な論評を加えるというようなことは私としては慎しみたいと思います。
○堂森委員 いや大臣、私は何もこの事件が何か韓国の政府機関がやっておるということを言うておるわけじゃないのです。私いろんな想像はしておりますけれども、こんな公式のところでそんなことを言っておるわけじゃないです。ただ、あの事件が単なる刑事事件ではなくて、何かバックに政治的ないわく因縁のあるようなそうした組織的な事件として起きたという印象を日本の国民の多くが持っておると思う。どういう団体かそんなことはわれわれの知るよしもないところです。したがってそういう事件が起きた背景にはやはり韓国の政治情勢に大きな原因があるということは、これはやはり考えるのは常識じゃないでしょうか。何も向こうを批判することじゃない。現実はこうじゃないだろうかと私は考えますが外務大臣はどうかと、こうお尋ねしておるわけです。あなたは何か韓国の政治体制を批判するのはどうかという御答弁でありますが、どうも顧みて他を言うような御答弁でありますが、これ以上時間もありませんから……。 そこでじゃ外務大臣、きのうの参議院における、これは私、新聞の記事でありますから、速記録を読んだわけじゃないですが、日本の韓国に対する経済協力は一政権、朴政権のみのてこ入れのためにやるべきものではないんだ、こういう意味の答弁——間違いかどうか知りませんよ、記事を読みました。しかし現実に日本の経済協力、もう今日では日本がいろんな意味で協力を行なっている民間のベースといいますると、一月から六月の間で何でも全外国資本の投資の九割五分ぐらいは日本の資本が入っておる、これは新聞の記事であります。これは韓国におけるいろんな結果を生んでおると私は思うのです。たとえば権力を持っておる人たちの腐敗堕落が非常に激しいというような報道も盛んになされております。これはアメリカの政府がフィリピン、韓国の経済協力については問題があるということを指摘しておるわけですね。それからロジャーズ前国務長官が何か警告のようなものを与えておるとかいう報道もなされておりました。しかし特に近来最も経済的な協力の度合いの強くなってきた日本の国の外務大臣として、日本が行なってきた経済協力というものがどんな結果を生んでおるかということは、これは私は非常に重大にお考えになる必要があると思うのです。たとえば公害のやかましくない地域あるいは低賃金を求めて日本資本がどっと入ってきたんだという印象を与えておるといろいろな報道は伝えております。とにかくこういう不幸な事件が起きたときにこそ、従来やってきた経済協力というその体制、あり方に、重大な考慮を払う、あるいは反省する、考え直すということは、私はこれは両国のほんとうの親善関係をつくっていく上においても必要なことではないかと思うのであります。ただ口では事なかれ主義でないと言っておられますけれども、やっておられることは事なかれ主義だと私は断定せざるを得ないと思うのでありまして、こういう時期にこそ日本の従来行なってきた対韓政策について再考慮といいますか反省といいますか、そういう時期がきておると私は思うのであります。これは私の考えをあなたに申し上げたのであります。 もう時間がありませんから最後に、この金大中氏の事件というのは一日も早くその真相が究明されなければいかぬし、また金大中氏が日本に再来日して、自由なからだで、そして日本のわれわれに真相をぶちまけてもらうということも、これは大切なことでありましょう。それから日本の主権を守らなければならぬということも、これは当然であります。しかし私はいまの政府の考え方に非常な不満を持つものであります。そしてへっぴり腰である、こういうふうにも私は考えるのであります。と同時に長期的な見通しから見て日本の韓国に対する政策、その基本はやはり経済協力でありますが、この経済協力についても大きな反省をしなければならぬ時期がきておる、こういうふうに私は考えるのでありまして、もう一ぺん重ねて申しまして私の質問を終わります。
○藤井委員長 河上民雄君。
○河上委員 関連で質問さしていただきますが、先般私が本委員会で質問をいたしました際に要求いたしました資料をきょう配付していただいております。「在本邦韓国大使館における韓国中央情報部出身者について」北東アジア課の資料でございますが、これを拝見いたしますと、ほとんど何の答えも出てないのでございます。これでは私が先般要求いたしました趣旨からいいますと非常に遠いのでございますけれども、これはこの末尾のほうにも書いてありますとおり、外務省自身が認めておるように、中央情報部員と思われる者の.氏名及び人数をさらに具体的に御報告をいただきたいと思います。そのことをこの委員会で重ねてお約束をいただきたいのですが、いかがでございますか。
○中江説明員 ただいま先生御指摘の外務省から提出いたしました資料は、この最後に書いてございますようにこれが完結したものというふうには私どもも考えておりませんで、とりあえずいままでにわかったことを御報告させていただきまして、最後に書いてございますように、さらに韓国側に対して御要望のような具体的な回答が得られるように努力を続けていきたい、こう思います。
○河上委員 これは外務省あるいは日本の警察として具体的にいま調べておられるのですか。
○中江説明員 外務省といたしましては、本邦に在勤しております外国の外交官について一々そのバックグラウンドを調査するとか捜査するとか、そういう権限は全くございませんで、むしろ外交官としての尊厳を保つように心がけなければならないという一般国際法の準則に従って行動しているわけでございます。特定の外交官について違法行為なり、あるいは外交官としてなすべからざる職務まで遂行したということについて嫌疑があった場合には、これは必要に応じて捜査をするなりペルソナ・ノン・グラータとして退去を要請するなり、これも国際法に従った措置をとる、この一般の規則外のことまではやらないことでございますので、本件につきましても確認されないままでは公表できないものですから、何らか確認の方法はないかということで調べておるわけですが、韓国大使館からは本邦韓国大使館・総領事館、領事館、いわゆる在外公館の館員は金大中事件には一切関係がないということを正式に言っておりますので、これを前提として、なお元中央情報部員であった者があるかどうかという点については確認の努力は続けざるを得ない、こういうことでございます。
○河上委員 いま配付を受けました資料の中に各国の公館長については履歴書をとっておるということでございますけれども、公使についてはこれはとっておるのですか。
○中江説明員 これは通常要求されますアグレマン、つまり在外公館長、正式にいいますと外交使節そのものでございますが、その外交使節を派遣するにあたっては接受国の事前の同意を求める、またそれを得てから派遣するというのが国際慣例でございますので、通例では自国が相手国にこういう大使を派遣するというときには、こういう人であるということをパーソナルヒストリーをつけてそのアグレマンを要求するというのが慣例であるわけでございますので、特にこちらから要求することなく外交使節、つまり公館長につきましてはそういう個人の背景は情報として必ず提供を受けているわけですが、それ以外の外交使節の随員、いわゆる館員につきましては、それが公使であれ一等書記官であれそういうものは要求するという慣例はございませんし、いままで提出された例はないわけであります。
○河上委員 いずれにせよこれでははなはだ不満でございますので、いま外務省の方も言われたようにあくまでこれは中間的というか過渡的なものとしてさらに完全なものを本委員会に提出されるよう要求していただきたいと思いますし、いまの御答弁でそれを約束されたものだと私は考えたいと思います。 あと一問だけちょっと伺いたいと思いますが、いまの堂森委員の御質問の中にもございましたが、後宮大使が金大中氏と会見をされたわけですけれども、金大中氏の側の証言によれば、ソウルに金大中氏が着いてから御家族の方が日本大使館に再三にわたって電話をしたけれども大使が出てこなかった。後に連絡をするということであったけれども、ついに最後まで連絡はなかった。約二日半ほど新聞記者をはじめとして多くの方、関係方面と連絡がとれる自由な期間があったにもかかわらず、その期間大使が全く連絡をとらなかったということは、これは外務省の訓令に基づくものであったのか、あるいは大使がうっかりしておったのか、その辺を明らかにしていただきたいと思います。
○中江説明員 この件につきましてソウルの後宮大使に当時の事情を照会いたしましたところ、こういうことでございます。 十三日の夜十時半ごろに大使公邸の交換台に、ある韓国人から、金大中氏が帰ってきたから大使に知らせてもらいたいという趣旨の電話がかかってきた。たまたま居合わせました日本人のコックが電話口に出てこれを聞いたわけですけれども、日本人のコックで残念ながらそのことばがよくわからなかったものですから、韓国語ではっきり聞いてもらおうというので、大使公邸はいつも警護されているわけで、守衛詰め所に連絡いたしました。これに応じまして公邸の護衛の警察官が電話に出ましたところが、警察官は、これは当時といたしましてはちょっと想像もつかないことだと思ったんですけれども、とりあえず本署にその事実を連絡いたしました。その間後宮大使は実は入浴中であったそうでありまして、入浴が終わって日本人のコックからいまのことを聞いて、これは相当重要なことではないかというので、直ちに次席の前田公使の家に電話して、どうなのだと言ったときには、すでにラジオが金大中氏の帰国のニュースを報じていた、こういう実情でございまして、そのときにまず第一として、電話の主がはっきりわかっていなかったということと、ラジオニュースで金大中氏が帰国していたという事実が確認できたものですから、後宮大使のほうからは特に金大中氏の家のほうに連絡はしなかった、こういうことでございますので、後宮大使としては金大中氏から帰国の通報があったことを知りながら電話口に出るのを拒んだというものではないということがはっきりしているか、こういうふうに思います。
○河上委員 私は関連質問でございますので、もうあまり繰り返し申しませんけれども、金大中氏の家族のほうでは二度かけたということであります。特にそういうふうにすでにラジオで知っているくらいでございますなら、当然直ちに連絡を積極的にとるべきだと思うのです。そういういきさつの中に今回外務省がこの問題について何か非常に及び腰であるという感じを私は非常に強くするのでございます。この問題は今回金大中氏と後宮大使の会見が実現したこの時点で、あらためてもう一度問題にすべき性質のものだと思うのでございますが、もう時間も参りましたので、私はこれ以上強く申しませんけれども、いまの御答弁ではほんとうの意味の回答になっていないと私は思うのでございます。非常に残念ですけれども、また次の機会にこの点をさらに追及さしていただきたいと思います。
○藤井委員長 石原慎太郎君。
○石原委員 国会の答弁も新聞も明けても暮れても金大中、金大中でございまして、これまた日本独特のヒステリックなセンセーショナリズムの現象だと思いますが、幸か不幸か、今回の金大中事件という不幸で悲劇的な事件の中で国家の主権の問題であるとか外交の尊厳の問題が焦点が当てられましたが、実は冷静に考えてみますと、焦点の当たらない、新聞が書きたがらない小さな問題の中に、今回以上に外交の尊厳、国家の主権の問題が込められているという気がいたします。私はたぶん新聞が書きませんでしょう、そして私たちにとって金大中事件以上に重大な意味合いを持つと思われる問題について御質問いたします。 四月十二日の朝日の北京発電報で、文化大革命の間に中国関係機関に検挙され、抑留中だった六人の邦人の処置決定を伝えられた。そして六人つかまっていたうちの五人が、うち二人が教育釈放、三人が国外追放で帰されました。一人中島正義氏が懲役二十年ということで抑留を続けられております。これは非常に意味合いの深い問題でありますが、政府、外務省はこの六人の身柄について、中国当局がうち五人を釈放する以前に何らかの交渉をなさっていたかどうかをまずお聞きしたいと思います。何らかの交渉といいますのは、国交正常化したのですから、裁判の手続、罪状あるいはその容疑といった問題について、中国側がこれを釈放する以前に当然在外公館の義務としてそういう交渉をなさっていたかどうかをお聞きしたいと思います。
○中江説明員 先生御指摘の中国において抑留されておられました日本人につきましては、国交正常化前でございましたので、まさに御指摘のように、日本赤十字社、国際赤十字社あるいは第三国政府、こういうものの種々のルートを通じまして、中国側にそういう人たちの消息調査、早期釈放、そういうものを要求してまいったのでございますけれども、遺憾ながら当時は何らの回答が得られなかった、こういう実情でございます。
○石原委員 釈放された五人のうちの二人が教育釈放とあります。つまり判決された期限以内に向こうで行なう洗脳、思想教育の効果があがって釈放されるということのようですが、この教育の内容とは一体何であるのかを私たちは当然知る権利があると思います。それについての御判断と、その教育の内容によっては、これは一種の内政干渉とも受け取られ得る、ある意味で国家の主権に関係のある重要な意味合いを持つ事柄になると思いますが、それについてどうお考えでしょうか。 ちなみに、釈放された五人のうちの川崎謙吉氏と中川博氏が教育釈放ということでございますけれども、これからの日中関係のためにも当然国会という権威でいかなる教育が行なわれていたかということを知るべきだと思いますが、いかがお考えでしょうか。
○中江説明員 ただいまおっしゃいました教育釈放という場合の抑留中の教育がどういうものであったかという点については、必ずしも全貌を把握して自信を持って申し上げられる状態ではないのですけれども、私どもが承知しておりますところでは、思想改造という呼び方で呼ばれている一種の教育で、たとえば毛沢東選集を読んで日々これを反省するとか、そういったたぐいの思想改造の教育が行なわれていたというように承知しておりますけれども、釈放されました方から直接その内容についてさらに外務省として具体的に事情を聴取して、その内容に不適当な点があったかどうかということについてまでは現在のところ調べておりません。 他方、またそういう教育を受ける段階で何らかの自由の拘束があったとか、あるいはそれを代償にして強制力に基づく何らかの不法と思われるような行為があったかどうかというような点については、それぞれ釈放された方からの直接の申し出もございませんので、目下のところはそれ以上追及しないでいるというのが現状でございます。
○石原委員 大臣にお伺いしたいのですが、これは外務省としても追及すべき問題だと思います。そうすることが、実はこれからの日中関係における正当な日本の国家の主権の主張につながる一つのよすがだと思いますけれども、いかがお考えでしょうか。つまり教育の内容はいまの限りでも私は非常に心外な気がいたしますが、向こうで行なわれている、向こうが有罪を下した犯罪、向こうが犯罪者と呼んでいる邦人の抑留者に対する思想教育というものの内容をなお詳細にわれわれが関知すべきであると思いますけれども、いかがでしょうか。
○大平国務大臣 先ほども堂森さんにお答え申し上げましたように、わが国といたしましてはおつき合いする国との間の間柄は公正なものでなければならぬと思いますし、御指摘のように日中関係、これから長きにわたって信頼と友好の関係を続けてまいらなければならないものと思うのであります。そういう角度から見まして、いま取り上げられた問題について、どのように配慮してまいるかという点につきましては大切な問題でございますので、とくと検討させていただきたいと思います。
○石原委員 先ほど中江参事官からお答えもありましたが、国交正常化の以前に日赤等を通じて裁判の手続、あるいは罪状、容疑といったものについて日本側から打診をしたけれども、一向にらちがあかなかった。らちがあかないままに国交正常化がされ、国交正常化のあと数カ月費やされながら、その間どうも政府、在外公館としては何もしないまま時が過ぎ、この四月に突然釈放になった。しかし大事なことは一人残されているわけでありまして、四月にこの五人が釈放された時点で、政府としては残された中島正義氏の罪状、容疑、裁判の手続等についてこれからどういう交渉をされるのか、これははっきりただしていく意思があるのかないのかということをお伺いしたいと思います。
○中江説明員 ただいまただ一人不幸にして残されておられます中島正義氏につきましては、国交正常化後いろいろの交渉を中国外交部とやっているわけでございますけれども、一番最初に行なわれましたのは、まず本年の二月九日にその家族との通信を許可してもらいたいということを申し入れました。この家族との通信は四月十二日に許可されました。しかしそのときはすでに懲役二十年の処置を受けて上海の刑務所で服役するということがきまっておったわけであります。この中国の裁判につきましては、これは中国が自国の領域内で一外国人に自国の法令に基づいて行なわれた裁判で、これが公正であったかどうかについては、目下のところ本人はその裁判に服するということで服役中で、しかも二十年と一応なっておりますけれども、服役中のその服役ぶりといいますか、本人の行状いかんによってはこれがさらに軽減されるという見込みを含めて現在服役されている。他方家族から陳情書の転達の希望が五月二十二日にございましたので、中国のほうにこれの転達方を要請しました。これは五月二十五日ですから、三日後にその家族の早期釈放に関する陳情書が関係方面に伝達されました。また家族からの手紙は直接本人に送れるようになったわけです。さらに六月一日には在北京大使館の館員が直接中島氏に面会できるように要請いたしまして、これは六月二十八日に面会に同意するという返事をいただきまして、七月六日に上海の監獄で中島氏と面会していろいろ本人と面談いたしました。さらに七月十七日には家族から中島氏に対する送金を許可するということで、送金も許されるようになりました。ただこういう一連の日本の大使館のとっております行為というのは、これは在外の日本国民を保護するという立場から、本人が非人道的な扱いを受けていないかどうか、あるいはまた領事事務といたしまして直接本人に会っていろいろ面談をし、さらに必要なものについてその要望に応ずることができるかどうかという観点からしておるもので、いま先生の御質問の中のもう一つの、中国が法によってさばいたその裁判そのものの妥当性については、これは本人が弁護士その他を通じてもう一度再考慮あるいは再審をしてほしいとか、あるいは自分の刑に不服であるとか、そういう申し出がない現状では、一応いまの服務を継続しておられる中で日本大使館としてできるだけの援助をしてあげる、こういう姿勢で臨んでいるわけであります。
○石原委員 中国と日本を比べますと、法体系も明らかに違いますし、裁判の形も全く違うと思うのです。この六人のつかまった前後に、二、三年の抑留をされた、逮捕期間が二、三年の被害をこうむった日本人が何人か帰ってきておりますけれども、話の一つに、婦女を陵辱したということで二年間つかまった。実情を聞いてみれば、パーティーの席でつい酔ってある婦人の肩に手をかけた、しかもその相手が六十歳の老婆であったということで、二年間婦女の陵辱ということでつかまったという例があるように、これ一つをもって全体をはかれませんけれども、私たちの常識で考えた妥当な裁判が行なわれたかどうかということも判然としないままに、しかもいまおっしゃいました本人から家族に届いた手紙の内容を、私家族に会ってよく存じておりますが、その中で、決して、そういうこともおそらく書けないのでしょうけれども、裁判の妥当性について認めてもおりませんし、ただ思想教育を受けているということだけは書いております。これは当然外務省も御存じだと思いますが、こういう問題について、これを内政干渉ととられるかどうかということはいろいろ法的な解釈によって異論があると思いますが、しかし私たちごく常識で考えてみて、つまり個人の保護をしなくてはならない、外国における保護をしなくちゃいけない日本の政府、その代表機関である在外公館が、こういった問題について当然外務省からもやってきた手紙の内容を何らかの形で通達をされ、もう少し配慮をし、裁判の手続についても詳細に知り、その上で、はたして中国の裁判で日本から弁護士を送れるかどうか、向こうに弁護士なるものが存在するかどうか存じませんが、われわれ自身が仄聞しても納得のできる配慮というものをすべきだと思うのです。大事なことは、この中島さんは全く日雇いに近い、日本翻訳団に属する通訳でありまして、一航海幾らという形の契約でありますが、あとの五人は大きな大資本のダミーの商事会社に属するみんな重役で、そういう点でも拘束された身柄に対するバックグラウンドが全然違うということは、あるいは向こうによって政治判断をされたかもしれないという憶測も成り立つわけであります。とにかく懲役二十年、いままで六年つかまっていていま六十歳、二十年満期で出てくれば七十四歳、しかも家族はほんとうに赤貧洗うがごときような暮らしをしている。懲役二十年といいますと、いままでの例から見ても正式のスパイに対する懲役年限だと私は思いますが、はたしてこの日本にこういう正式に二十年の科刑をされ得るようなスパイがあるかどうか、国家の何らかの機関に関連したそういう存在があるのかどうか、つまりこの中島氏が国家の機関に関係するスパイであったかどうかお聞きしたいのと、もしそうならば、かつてパワーズの事件にもありましたように、そういう諜報活動は許しがたいことかどういうことか存じませんが、とにかく各国がやっている現状でありまして、たまたま日本の何らかの国益のためにそういう活動をした人間が向こうにっかまり、そういう罪状を下されて、勾留をされているというならば、国家としては、かつてアイゼンハワー・フルシチョフの会談でも国家的な譲歩をしてこれを救出することをアメリカ自身も試みたように、国家がこの庇護にあたるべきだと思います。ましてこれが国家のいかなる機関にも関係のない、いわばわれわれから考えても根拠のないいわれでつかまっている人ならば、ますます国がこれを保護する必要がある。たまたまいかなる財閥の傍系の会社にも属していない個人が、とにかく無実の罪にとらわれ、獄に泣いている、そういう力のない弱い個人に国家の力が及んでこそ初めて国家のある意味があり、政治の愛情があるわけでありまして、そういう点で、私いままでの政府のこの中島問題に関する態度というものは非常におざなりだという気がいたします。まず第一に、はたして中島氏が政府のいかなる機関に関係ある諜報員であったかどうかという事実をお尋ねしたいと思います。
○中江説明員 新憲法のもとで生まれかわった日本は、御承知のとおり平和国家として諸国間の信頼関係のもとに自国の利益を守っていくという体制で進んでおるわけでございまして、いまおっしゃるような諜報機関というようなもので政府機関が何らかの諜報活動をやっているということはないと私は信じます。
○石原委員 信ずるのではなしに、あるかないかということをこの際やはり、一人の人間がこれから十年間つながれるか、つながれないか、その家族が残されて、先ほどお話にもありましたけれども、お金を送ってくれというので、一万円送ろうと思ったけれども、とてもお金がないから五千円送った。この暑いのに扇風機もかけられないような家に、ほんとうに赤貧洗うがごとき暮らしをしている。奥さんに言わせると、自分の亭主がほんとにスパイだったら私はこんな暮らしをしてないでしょう。私もそう思います。ですから私は、これからでもこの問題に取り組んでいただきたいんですが、その前に大事なことは、相手が二十年もの懲役刑を下すそのいわれになっているスパイ行為でありますけれども、まず第一に、はたしてこれが政府のいかなる機関にかかわりある諜報員であるという事実があったかないかということを、政府の権威ではっきりさしていただきたいと思うのです。
○中江説明員 現在まで外務省が入手しております情報によりますと、中島さんが何らかの国家機関に属していた、あるいはその国家機関の行為として何かをやったことが本件の原因になっているという事実はございません。それから再々御指摘の、中島さん個人の非常にお気の毒な立場につきまして御注意いただきました点については、外務省としてもまだ認識の足りなかった点も多々あることを反省いたしますので、さらに一日本人である中島さんのためにできるだけのことをいたすべく、調べさしていただきたいと思います。
○石原委員 これはぜひ大平大臣に聞いていただきたいんですけれども、これは私の一面作家としての非常にセンチメンタルな観察かもしれませんが、この間、暑いときにこの奥さんに会いました。そのとき、もうほんとにその暑さの中で、しかもいろいろな問題で呻吟し、煩悶し、一種の錯乱状態にあるとしかいえない状態です。それで、奥さんは四十七歳か八歳で、言ってみれば最後の女盛りを夫がないままに過ごしている。私は、見て非常に気の毒な気がいたしました。この間も大平派の研修会で大臣は、時と人間関係というものを尊重する、大事にするということをおっしゃいましたが、非常に文学的な表現で、私も共感いたしましたけれども、その時というのはレジャーというような意味だったようですが、しかしそれ以前に、ここではかけがえのない人生の時というものを政治の葛藤のしがらみの中でほんとうに無為に失いつつある、夫であり、二人の子供の父である日本人がいる。同時に、その夫を家庭で持つことができずに、思いやりながら、とにかく和裁をし、ほんとうに赤貧洗うごとき生活をしている妻があり、子供がいるんです。こういうものに国が愛情のある保護をかけてこそ、初めて私は外交が外交としての意味があると思いますし、政府があるという意味があると思うので、まあ日韓問題もけっこうですし、金大中事件もけっこうでありますが、しかしこういう問題にひとつ大臣として御配慮いただきたいのです。この問題をまっ先に取材しました日本の最もすぐれたルポライターである鈴木明氏が、八月号の文芸春秋に書いておりますし、お目にとまったかと思いますが、その中にはんとうに切々としたこの中島夫人の嘆願書が向こうの政府あてに出されております。しかしこういう問題に対して外務省がどれだけの手当をしてきたかというと、どうもあまり感心した成績じゃない。かつて数年前に第一伸栄丸というタンカーがシベリアの沖で弾頭のついてないミサイルで撃たれました。それでも十数人の人間がけがをし、そこで働いていた司厨長のコックさんが、結局右手を失ってもう一生仕事ができないということで、国が何もしてくれないから個人でソビエトの政府を訴えたことがある。これも結局なしのつぶてで、どうにもなっておりませんが、どうも、相手が私たちといささか話し合いの通じることのできる韓国の政情に対して、いろいろ批判もあるでしょうけれども、一応自由主義国家ならばけんけんがくがく、ジャーナリズムはヒステリーみたいに騒ぎますけれども、話の通じにくい体制の国家になってくると、ほんとうにカキのごとく沈黙してしまう。政府も黙る、政治家も黙る、新聞も黙るということで、実はそこで力のない、弱い日本人が泣いている。韓国の政治家の、大統領候補の存否というものは、私たちにとっては必要かもしれませんが、ひとつ大臣、人間関係と時を大事にされるというならば、ここに不遇な日本人が、ほんとうに泣いて、その人生のかけがえのない時を費しているということを、センチメントでもけっこうですから、ひとつ御配慮願いたいと思うのです。それで、奥さんに会いましても、外務省の下の人は会ってくれるけれども、一こうに上の人に会っていただけない。私は実はそのときに、私の責任で、何らかの日に大平外務大臣という、私たちの敬愛する外務大臣にあなたを会わせますという約束を一方的にしてまいりました。どうかひとつ、おひまなときでけっこうでございますから、この夫人に会っていただいて、その窮状を御自身の目と耳で確かめていただきたいと思います。ちなみに、いままでその夫人が折衝しておりました外務省の係官が彼女に言ったことといえば、逃亡を防ぐため、食事から塩を抜かれていて非常にお気の毒である、逃亡すると、足がないと走れないためなんでしょう、食事の中から塩を抜かれているということを聞いて非常にお気の毒であるとか、二十年の刑とはいいますが、相手もああいう国ですから、思想教育がうまく進んだら早く帰ってくるでしょう、あるいは、ことしはあまり騒がずに、五人も帰ってきたところから、まあ来年ぐらい様子を見ましょう、何の根拠でか知らないけれども、こういうことを外務省の係官が夫人に言っている。それはそれなりの立場で言ったのでしょうけれども、しかし、そういう発言が外務省を通じて家族に向かってされる前に、もっともっとすべき配慮というものが私はあると思うのです。どうかそういうものをひとつ頭にとめられて、おっしゃっている他人の時というものを大事にされる意味においても、この不幸な被害者を念頭に置いていただきたいと思いますし、そしてまたこの夫人にぜひお会いいただきたいと思います。ある意味で私は中島氏の罪状が無実ならば、もうすでに刑を宣告されて二十年の懲役にあえいでいるということで、私はこれはかってフランスにありましたドレフュース事件に似た、重い政治的な意味合いを持つ事件であり、被害者であると思います。私は何も安易な人道主義で言っているわけではありませんけれども、しかし、こういう弱い人間に保護を与えてこそ初めて政治が政治のレゾンデートルがあるのではないかという気がするのです。ほんとうにこれについては政治家も政府もそしてジャーナリズムも、すべて沈黙している。ふしぎなぐらい沈黙している。 ここに鈴木氏が調べに調べたあげくに書いた最後の非常に印象的な文章がある。「五年前、六人の日本人が中国大陸で消息を絶ち、先月五人が無事帰国し、一人が残った。この一人について、僕はこの一カ月間考え続けたが、それでもなおいま、確実にいえる情報は、一カ月前中国側が発表した〔中島正義(日中貿易翻訳団所属)=懲役二十年(上海で服役)〕という、たった二行の文字だけである。これ以外に、中島さんについて書かれたたった一行の文章も、僕は知らない。」私も知りません。「そして、いま六十歳の中島さんが今後の日中関係の波の中にどう操まれて生きてゆくのか、残念ながら、それもまた、僕は知らない。」。私も知りません。残念ながら知れません。これを知ることのできる、また知るべき権利と義務を持つものは私は外務省だと思います。そういう点で私たちの云々されています日本の国権なり外交の尊厳というものは、この問題においても十全に主張されますように、ひとつ大臣の御責任で十分御配慮を賜わりたいと思います。お願いいたします。 質問を終わります。
○藤井委員長 石井一君。
○石井委員 私は、比較的スムーズであった日韓関係に今回の金大中事件というものが非常に大きな影響を与えておるということを非常に憂慮する立場から、以下の質問をいたしたい、こういうふうに思うわけでございますが、端的に申しまして、時間があまりにかかり過ぎている、私はそういうふうに思います。先ほど堂森先生とのお話し合いの中にも、たとえば韓国側が回答をよこしてきた、あるいはまた大使と金大中氏との会見を認めた、いろいろ前進があるというふうに見受けられるところもありますけれども、結局は中身というとほとんどからっぽである。きょうの夕刊なども、警視庁自体が全くこれは参考にならないとまで断言しておる。私はこれはもう日韓関係に非常に悪い影響を与えるということを憂慮しているわけでございますが、大臣、同じような立場でやはり今後静観を続けるべきか、やはりこの辺でひとつ何らかの外交的な施策を打つべきだ、こういうふうにお考えになりますか。この点はいかがでございますか。
○大平国務大臣 事件発生以来政府といたしましても最善を尽くしているわけでございまして、石井さんの目から見たら、これは捜査の進捗につきましてたいへんおそいじゃないかという御批判でございますけれども、捜査当局といたしましてもせっかく努力を続けておるわけでございます。私がこの段階で申し上げられますることは、そう一そう急いで事件の解明に当たりますということでございまして、外交的な手があるかといいますと、一番大事なことは、いま私は事件の解明だと思うのでありまして、それを踏まえないとわれわれがこの事件についてどう対処したらいいかという方寸は立たないわけなんでございますので、解明にまず精一ぱいつとめさせていただきたいと思います。
○石井委員 そのお気持ちは私もよくわかるのでございますが、閣僚会議は延期されておる。また国連の会議というものは九月に迫っておる。普通の事件だと三週間という時期は、大体問題がきれいに判明する、こういう時間でございます。今回の場合は非常に複雑なんでありましょうけれども、しかしその調査の進展というものがあまりにもおそい。したがって、外務大臣としては相手国に対する礼儀という考え方もございましていまのような御答弁なんでございましょうけれども、私はここで相手側を督促する意味でも、何か調査団なりもう少し直接の外交的手をお打ちになったほうがいいのではないか、こう思うのでございますが、この点はいかがでございますか。
○大平国務大臣 先方の捜査の状況、そこで把握し得た資料をこちらに提供してもらうということがいまの当面の仕事でございますので、調査団を編成して出したからそういうことが促進されるかどうか、そういう判断の問題だろうと思うのでございまして、私といたしましていま政府として調査団を各国に派遣するというような考えは持っておりません。
○石井委員 大使との会見で同氏は再来日ということを希望されたということを承っておりますけれども、一応のめどがつけば、この人をもう一度原状復帰さすというふうな意味で外交ルートを通して招請される、そういうお気持ちはございますか。
○大平国務大臣 もうすでに申し上げてありますように、本人をよこしてもらいたいということの要請は再三にわたっていたしておるわけでございまして、いま捜査中でございますので応じかねるというのがいままでの先方の態度でございますが、こんりんざいよこさぬとはまだいっていないわけでございます。
○石井委員 そういたしますと、現在の時点においては韓国側の捜査を唯一のたよりにもう少し礼節を尽くす、こういう御姿勢のように私は承るわけでございますが、すでに事件発生後大かた一月経過いたしております。あとどれぐらいのめどで現在の政府の姿勢を変えられる、こういうお気持ちでございますか。
○大平国務大臣 事件の重要な参考人が韓国におられるわけなんでございまして、われわれといたしまして直接事情を聴取するという手だてはいまないわけなんでございますので、御本人を日本によこしてもらいたいということを先方に強く要請する以外にほかに手だてはないわけなんです。そのことをいま努力いたしておるわけでございます。 第二に、それでは一体いつごろになればわかるのかといいましても、事件の解明の過程がいまそういう状況でございますので、いつごろになればはっきりするのだということを腰だめで私が申し上げることは非常に軽率だと思うのでございます。精一ぱい早くやりたいということで努力いたしますという以外に、いまのところお答えようはないことを非常に残念に思いますけれども、お許しをいただきたいと思います。
○石井委員 今回のような韓国側の十項目に対する回答なり、その他内容はともかくといたしまして、次回の回答が出ましてさらに進捗の状況というものが見えないという場合には、私はやはり政府というのはもう少し政策の転換というものが迫られるのじゃないか、時間がたつことによって事態というものがだんだん悪くなってくる、私はそういう感じがいたしましてその点を憂慮いたしておるわけであります。 政府委員にお伺いしますが、この金大中という人はどういう入国のビザでわが国に入国したのか、どういうクラスになっておるのか。ちょっと仄聞いたしましたところ、正規の入国でなく何か赤十字か何か、そういう関連があるとかなんとかいうことを聞きましたが、この点はいかがですか。
○中江説明員 これは法務省の入管当局のほうが正確な情報を提供できるのではないかと思いますが、私が得ております資料では、金大中氏は公用旅券をお持ちになりまして、病気治療及び出版準備という入国目的で本年の一月五日に羽田から入国しておられます。ただ査証がございませんでしたものですから、法務大臣の上陸特別許可によって上陸が許可され、三十日の在留期間がまず与えられ、その後三回にわたって在留期間の更新を受け、三月に一度米国に向け出国され、その間金大中氏の旅券の有効期限が二月十七日で切れましたわけですが、金大中氏は赤十字国際委員会駐日代表事務所発給の身分証明書を取得されまして、あらかじめお持ちになっておりました再入国許可証に基づいて赤十字国際委員会の身分証明書をもって七月十日本邦に入国された、こういうふうに聞いております。
○石井委員 なぜ日本の入国ビザというものを持っておらなかったのですか。
○中江説明員 これはちょっと私つまびらかにいたしませんが、事実といたしまして、最初に一月に羽田に来られたときには査証がなかったという事実だけを私は承知をしております。
○石井委員 公用旅券に病気療養及び出版活動ということですが、それにはやはり政治活動も入るわけでございますか。
○中江説明員 これは入国管理局の判断すべきことかと思いますが、政治活動はこの中には入らないのではないかと思います。特に出版準備といいますのは、たしか御自身の伝記か何かメモアールか何かそういったものの準備だというふうに私は仄聞しておりますけれども、ちょっと正確を期しがたい点がございます。
○石井委員 それから先の理論を展開したいところでございますが、私のきょうの持ち時間はあまりございません。当委員会では委員長発議のもとに事態の推移いかんによっては何らかの意思表明を委員会としてもしなければいけないし、やはりかえって相手を何といいますか、害するということを私たちは懸念しておるわけでございまして、その点はたとえば野党の先生方とは意見を異にいたしておりますが、同じような気持ちで両国の関係ということを非常に憂慮いたしておりますので、私は次の時点にはさらに強力な外交交渉というものをひとつさらに強く継続されますように、特に私の立場からも要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。
○石原委員 関連して、一つだけです。そうすると、いまのビザの問題でお聞きしたいのですが、政治活動というものが、いま言われたように赤十字云々の手続で滞在していた金大中氏が、日比谷で何か演説会を企画されていたり、与野党のいろいろな有力な政治家に会われて懇談されていたようですけれども、そのときの話の内容も伝わっておりますけれども、これは明らかに政治活動として判定できませんか。そうしますと、これは一種の出入国管理令違反ということに解釈してよろしゅうございますか。
○中江説明員 この問題は行政機関の中では法務省のほうの管轄になっておりまして、外務省から違反であるかどうかということについて申し上げる立場にないわけでございます。
○藤井委員長 柴田睦夫君。
○柴田(睦)委員 前回に引き続いて金大中氏の事件について質問するわけですが、きょう委員会に捜査状況の資料が提出されました。これは要点だと思うのですけれども、その捜査状況報告書の全文は発表されるわけですか。
○中江説明員 本日外務省で発表いたしましたものが電報によって受けました報告書の全文でございまして、なお電報でなくて本文そのものが到着いたしまして、すでに発表したものと特に違った点あるいは電報によるくずれその他の間違いがあれば別でございますけれども、そうでない限り本日発表いたしたものが全文でございます。
○柴田(睦)委員 ということは全文が来て、これを確かめて、きょう出されたものと違ったものがあってもこれは発表する、こう理解していいわけですか。
○中江説明員 そのように御理解いただいてけっこうだと思います。
○柴田(睦)委員 報道によりますと、報告の中に事件は韓国のCIAのはね上がり分子がやった、そしてそれを政府筋が認めた、こうなっておりますけれども、そういう内容はあるのですか。
○中江説明員 そのような内容があるということは一切聞いておりません。
○柴田(睦)委員 きょうの東京新聞の朝刊ですが、そのような内容になっているのですが、新聞の内容は確かめているわけですか。
○中江説明員 私どもといたしましては、ソウルで受け取りました報告書の本文といいますか、そのもの自身が東京にきょう夕方着くでしょうから、その上でもし追加すべきもの、修正すべきもの、削除すべきものがあればあらためて発表させていただくつもりでおります。
○柴田(睦)委員 十項目の申し入れがあったわけですけれども、この三名の人の供述調書は出されていないということであるわけです。供述調書はこれは真相を究明する上においてその根本になるものであって、日本政府がこの供述調書を提出するように要求するのはこれは当然だと思うわけです。しかしこの供述調書はもう相当の期間がたっているわけですから当然できているはずですけれども、これがなお出されていないということから見ると、韓国のほうが日本の要求を無視するような、軽視するような態度に出ているのじゃないか、こう見られるのですが、厳重に提出を求める、そういう考えは大臣にはあるわけですか。
○中江説明員 金大中氏以下三人の方の供述内容を知らせてほしいという要求は重ねて続けておりますし、今後とも強く要求していくつもりです。今回の捜査報告書をソウルで受け取りましたときに、韓国側はこれがすべてであと一切出さないといっているわけではございませんで、八月二十七日までの捜査報告として一応これをお渡しするということで、それではあとのものはいつ来るかという点については、これはいますぐ答えられないということですが、その要求した中でこれはだめ、これはもう出せないといったものはないわけでございますので、引き続き強く要求する、こういう方針であります。
○柴田(睦)委員 その引き続き強く要求する中には三名の供述調書、原本は出せないかもしれませんけれども、その写しなり謄本なりもきちんと含めて要求する考えがあるわけですか。
○中江説明員 これは先ほども申し上げました十項目と通常いわれております例示として示しました中に入っておるわけでございまして、三人の供述内容については引き続き要求する方針であります。
○柴田(睦)委員 金大中氏の再来日の見通しについても今度の報告には書いてないということですが、現在金大中氏が韓国にいるわけなんです。そしてこの事件は日本で起きたわけですから、日本が真相を究明する上において金大中氏を来日させなければやはりこの真相の究明というのが進んでいかないということは明らかなわけですが、この真相を積極的に解明するためにともかく早く金大中氏の来日を実現させなければならない、こう思うわけです。非常にときがたってしまったでは真相が薄れてしまう。そういうことから見て早く実現させる方法というものを考えているかどうか、この点をお伺いします。
○中江説明員 金大中氏の来日が必要だという点は、日本が捜査を進めるにあたって被害者である金大中氏が日本に来ていただくことが、その捜査を著しく進捗させる、その捜査に貢献していただく部分が多いということで、捜査に協力していただくという見地から来日を要請しているわけでありまして、これに対して韓国政府が現在までに明らかにいたしましたのは、一つは現在同氏を被疑者ではなくて被害者として韓国において捜査中であるので、いますぐ日本には行っていただくわけにいかないという点と、もう一つは金大中氏は絶対日本に行かせるわけにいかないとは言ってないと、この二点であります。
○柴田(睦)委員 事は刑事事件の捜査というだけの問題でなくて、まさに日本の主権を守るという問題であるわけです。あれだけ大がかりな事件であって組織的な計画的な事件であるし、そしてまた戒厳令というようなもとで、そういった特殊な条件のもとで日本国を出国して韓国に入国する、こういう事件であるわけで、これは単に民間人だけでできるような問題じゃない。政府の介在がなくてはできるものではない、こういうわけであって、これは私たちは日本の主権侵害であるということは明白である、こう考えているわけです。民間人だけでできない事件であれば当然これは日本の主権侵害行為になるということは明らかであるわけで、そういう場合にこの金大中氏を早く来日させるということは、これは日本の主権を守るかどうかということに直接につながる重大な問題であるわけです。せんだって外務大臣はこの来日を要請する権利がないんだという答弁をなさっておりましたけれども、そうした形式的な国際法論の問題ではなくて、主権侵害の疑いが濃厚である。これはもう少なくとも疑いが濃厚であるということはすべての人がもう考えるものだ、私はこう思うのですけれども、こういう段階において日本の主権を守らなければならないという立場から金大中氏の原状回復としての日本に来てもらう、これは国の義務であり、国民に対する責任である、こういうように考えておりますけれども、大臣の見解はいかがですか。
○大平国務大臣 主権は守らなければならない、事件は解明しなければならない、そういう意味で同氏の来日が必要であるという捜査当局の態度はきわめて強いわけでございまして、私どももそういう趣旨でいま鋭意折衝中であるわけでございまして、なるべく早く実現することを期待いたしております。
○柴田(睦)委員 金大中氏自身が来日を求めているということも明らかにされましたし、また拘束をされているのではないということも明らかになっております。そして日本の捜査当局もやはり捜査のためにこの来日を求めるという態度を明らかにしているわけですけれども、それではこの来日ができないほんとうの理由は何かということになりますが、説明によりますと、捜査中であるから来日させられないという回答であったということですけれども、金大中氏に対する捜査、供述調書をつくるとかそういうことがいまでもずっと継続しているのか、普通の犯罪の捜査の場合においては二十日間もその家をあけられないようなそういう調書づくりということは普通は考えられないことであるわけです。この二十日間にわたって捜査が継続しているということも考えられないわけなんですけれども、一体その捜査の都合という具体的な内容については確かめているわけですか。
○中江説明員 先ほど大臣からもお答えがありましたように、日本政府といたしましては、本件に関しまして日本の主権が侵害されたという前提でものを考える事態にまだいっていない。つまり日本の主権が侵害されたということについてはっきりした事実が確認されていない段階では、日本の主権侵害を前提とした金大中氏の引き渡し要求といいますか、来日要求つまり原状回復と、こういう考え方には立っておらないわけでございまして、日本の捜査に協力していただくために来ていただく。その金大中氏がそういう状況での来日要請である現段階では、これは日本に主権がありますのと同様韓国にも主権がありまして、お互いに友好国同士として主権を尊重しつつ交渉するというこの立場からいたしますと、韓国の捜査当局がどういう捜査をしているか、その捜査方法が妥当であるかどうか、迅速であるかどうかというようなことに立ち入ってものを言うということは慎むべきであるという考えでございますので、現在のところは金大中氏が日本の捜査に協力していただけるならば、ぜひ早く来て協力していただきたいと、こういう要請を繰り返しているわけであります。
○柴田(睦)委員 大平外務大臣は主権を守るということを言われました。いまの方にもう一度お伺いしますけれども、主権が侵害されたという前提では考えていない。これは一貫して言われておりますけれども、この主権の侵害につながる、そういう疑いが濃厚である、こういうことは認められますか。そういう可能性があるということは認められますか。
○中江説明員 本件につきましては、韓国で捜査が行なわれておりますのと並行いたしまして、わが国においても独自の捜査を続けておるわけでございまして、捜査中の段階で予断、予測ということはできないというわけでございます。
○柴田(睦)委員 先ほど言いましたように、非常に組織的な、計画的な大がかりな事件である、そういうこと、それからまたKCIAの天下に知られた活動、こうしたものなどがいますべての人が関、心を持っている問題になっているのですけれども、そういう中で日本の当局のほうではこの主権侵害につながるおそれがある、そういう濃厚な疑い、あなた方の立場からいっても、これは主権侵害の方向に発展していくんじゃないか、そういう大きな可能性、それは認められないわけなんですか。
○中江説明員 先ほど申し上げましたように、国と国との関係におきまして主権の侵害があったかなかったかということは、きわめて重要な問題でございますので、こういう重大な問題を、特に隣国である韓国との関係におきまして、十分なる捜査の進まない段階で口にすべきでないというのが、私どもの考え方であります。
○柴田(睦)委員 そういう態度であるならば、結局は、韓国の捜査結果、これを待たなければならない、韓国の言うとおりに、それを正しいものと見なければならない、こういう結果になる、こう思うのですが、いかがですか。
○中江説明員 この事件は、日本において発生した事件でございますし、事件が発生して直ちに日本の捜査当局が捜査を開始しておりまして、韓国側の捜査結果がいかように出ましても、日本は日本独自の主権に基づいてこの違法行為について真相を究明しなければならない。したがって、日本は日本で独自の結論が出るまで真相の究明に努力すべきものだと私どもは考えております。
○柴田(睦)委員 金大中氏が韓国にいるということから、やはり日本の捜査も、一番調べる上において中心人物なんですから、それを調べられないでは、やはりいつも言われる真相究明というものも前進しない。そういう状態の中で、金大中氏を向こうに置いたままでいるということは、結局は、その間の発表は韓国の捜査結果に待たなければならない、こういうことになると思うのです。ということは、韓国の発表をうのみにするよりほかにはない、こういう態度のあらわれではないかと思うのですが、どうですか。
○中江説明員 御指摘のように、金大中氏自身が現在は韓国の管轄下におられるわけでございますので、日本がそこに独自の捜査を直接及ぼすことはできない、これはやむを得ない客観的な情勢かと思います。その限りにおきまして、韓国が行なっております捜査の結果というものは、これは日本として早く知りたいことであると同時に、その結果がそのままうのみにされるとか、それをそのままで日本で有効なものとして扱うかどうかというその判断は、日本独自の捜査の結果なり捜査の過程に照らして判断していくもので、韓国の捜査がそのまま日本でそのものとして評価されるという意味ではないと思います。
○柴田(睦)委員 金大中氏のいない日本での捜査というのは、これは進まない、こう思うわけなんです。今度の報告を見てみましても、大切なところには何ら答えていない。供述調書も入っていませんし、来日の見通しについても書いてない。金大中氏がどういう処遇を受けているかということも明らかにされてはいない。日本国民が求めております真相の究明を韓国側に期待する以外にはない、こういうことに現状ではなっている、こう思うわけです。もともと本件が、国家機関が関係する行為である、こういう疑いがきわめて濃厚なものであることは、いままでの発表によっても明らかなんですけれども、その国家機関を持つ政権が今度の報告をつくるわけであって、ほんとうに真相が、自分たちの問題ですから、日本に対する報告においてほんとうに真相が出されるかどうか、これは常識で考えても非常に疑問だ、こう思うわけでございます。結局、日本が積極的に金大中氏を日本に来てもらって解明を続けなければほんとうの真相は明らかにならない、積極的な態度をとらなければならない、こう考えるわけです。金大中氏の来日を妨げているのは、やはりこれを取り調べている、これを韓国から出させない韓国の政権の行為であるということは明らかであるわけです。どうしても来日を実現させる。いまのままだと、来日させないとは言っていないかもしれませんけれども、来日させる時期がいつのことかわからないし、来日させるかどうかもわからない。こういうことから見た場合に、西ドイツがあの例の事件のときにやったように、経済援助の打ち切り、こういったものも背景にするなど、強力な態度でこの原状回復としての金大中氏を来日させる、こういうことが必要だと思うのですけれども、外務大臣にはそういうお考えはあるのかどうか、伺いたいと思います。
○中江説明員 韓国による日本の主権侵害ということがはっきりしない現段階で日本政府としてなし得ることは、日本の捜査に協力していただくために金大中氏に一日も早く日本に来てもらうという協力要請をしんぼう強く続けるほかはないということでございますし、また、いま先生もおっしゃいましたように、韓国政府として金大中氏を日本に行かせないということは言っていないわけでございますので、これに希望をつなぎまして、重ねてしんぼう強く要請を続ける。それで、西ドイツの場合を例に引かれましたが、西ドイツで例の事件が起きましたときは、たしか数日後か何かであったかと思いますが、相当早い機会に、これは韓国中央情報部の関係した事件であるということがはっきりいたしましたので、西ドイツ政府の交渉態度というものは、国家主権侵害を前提とした交渉ができた。日本の今回の事件につきましては、現段階ではそういうところまで至っていないというのが実情でございます。
○柴田(睦)委員 ともかくこの真相の解明というものを日本が独自に、そうして積極的に行なうということをしないで、韓国の政府機関が関与しているかどうかわからない、こういう態度でいつまでも真相の究明を待つんだ、こういうことでは必ずうやむやにされてしまう、これはもう多くの人たちがそういう懸念を表明しているわけなんです。いままでの捜査の範囲から見ても、この事件の性格から見ても、この主権を守るという立場で厳重な態度をいますぐにとらなければならない、いまではおそ過ぎるというような性質の問題であると思うわけです。ですから私は、この政府の態度が、韓国の言うこと、これに従って、積極性に欠けているし、この問題の将来について解明を誤まるということ、そういうおそれがあるということを特に忠告したいと思うのでございます。 それから、この件が問題になって、この委員会にもきょう韓国中央情報部の出身者についてという資料が出されておりますけれども、このKCIAの日本における活動、この活動については日本の外務当局として、外交的な立場から、どういう目的でどういう活動をしているかというような調査、これはそういう把握はちゃんとしているのかどうか、お伺いしたいと思います。
○中江説明員 外務省の事務当局といたしましては、KCIAというものの日本における活動状況は把握いたしておりません。
○柴田(睦)委員 前回の委員会があった八月二十四日、この日の東京タイムズにこの韓国情報部の活動で、この拉致事件に類するものが六つ例があげられております。そしてこの活動のことについては前回に申し上げましたけれども、そして今回の金大中氏事件などを起こすような活動を常時やっているということは、もう多くの人がそこに注目しているわけなんですけれども、これはやはりこの外交関係の上から見て、韓国の政府機関のこういう行為ですから、これはどういう活動をしているのか、これは当然把握しなければならないと思うのですけれども、そういうことを把握しなければならないということについての見解はどうなんですか。
○中江説明員 外務省として関心を持つ段階に至りますのは、外国の政府機関が日本で何らかの主権的行為を行なうとか、あるいは外国の外交官が日本で違法行為を行なうとか、あるいは通常国際法で認められている職務以外の職務を行なっていることが明らかになった場合とか、そういう場合には当該個人についてあるいはその当該機関について捜査当局と協力して事態の究明に当たるということはございますけれども、確たる証拠あるいは違法行為その他苦情の申し出、そういったものがない段階で、日本で平穏に活動を続けている外交官について一々捜査をするということは外務省としてはいたしておりません。
○柴田(睦)委員 東京タイムズに六つの事件が出ておりますけれども、これらについて把握していないということは、これは当然こういうことが話題になれば調べてみなければならないわけなんですけれども、そういう調べ自体もやっていないわけですか。
○中江説明員 ただいまおっしゃられました東京タイムズの事件というのはちょっと私存じておりませんが、もしそれが何かさらに捜査なり調査を要する事件ということであれば、しかるべきところから外務省にも連絡があるかと思いますが、現在までそういう事件について私どもは承知しておりません。
○柴田(睦)委員 時間が参りましたが、ともかくCIAの活動としてジャーナリズムも取り上げられるような問題、現実に新聞に出ているわけなんです。これを外務省が把握していない、伝わってこないというのは、やはりそこに韓国情報部の活動の中で厳格な態度をとっていないんじゃないか、こう思うわけで、いまちょっと言われましたけれども、新聞にすでに出ているわけなんですから、こういうことをちゃんと調べて、正当な処置をとらなければならないということを申し上げて、終わります。
○藤井委員長 渡部一郎君。
○渡部(一)委員 私は金大中事件に関しまして、少し変わった角度からこの問題を扱ってみたいと存じます。 今回の金大中事件に関しまして、わが国に対する亡命者あるいは政治的逃亡者といわれる人々がクローズアップされてまいったわけでありますが、こういう人々は一体どれぐらいのケースがあるものか、またそれに対してわが国は従来どういう処置をとってこられたか、まずそういう具体的事実について伺いたいと存じます。
○吉岡政府委員 お尋ねの件につきまして過去二年間の実情を調べました結果を御報告申し上げますが、昨年度におきましては亡命ケースに類するものはございませんで、本年に至りまして三件ございまして、第一番目のケースは一月の九日に起きましたケースでございますが、これは台湾人が中国に行きたいというケースでございます。 それから第二番目のケースは、本年の五月十日に起きましたケースでございますが、チェコスロバキア人三名が米国向け亡命を申し出たケースでございます。 それから第三番目のケースでございますが、これは八月の二十日、つい最近でございます。ソ連人でございますが、もともとユダヤ人でございますので、イスラエルへ亡命したいといった件でございます。
○渡部(一)委員 私がこの金大中事件を調べている途中におきまして、わが国の亡命者及び政治的逃亡者の取り扱い、その関係法規を調べてまいりましたところ、特別な国内法等が制定されておらず、法的にも一つのエアポケットのような状況になっていることに突き当たりました。私はここでまとめて法務省のほうに亡命者と政治的逃亡者の取り扱い、その関係法規はどうなっているか、最初に御説明をいただきたいと存じます。
○吉岡政府委員 御質問の点につきましては、現行の国内法令におきましては政治亡命者あるいは政治難民、こういった者を特別に取り扱う国内法規はございません。ただ現行の出入国管理令の第五条第一項第四号におきまして、わが国に入ってくる外国人でわが国のまたは外国の法令に違反いたしまして一年以上の懲役、禁錮及びこれらに相当する刑に処せられたことのある者は一般的にわが国への上陸を拒否されておる次第でございますが、政治犯により刑に処せられた者はその例外となっておりまして、政治犯に処せられた者は上陸を禁止されていないということだけが、現行法令によりまして政治亡命者あるいは政治難民に関連する条項でございます。しかしながら、わが国に政治亡命を希望いたします外国人に対しましては、政治難民の保護に関する国際慣行に従いまして、政治的迫害の主張が十分根拠があるかどうかを慎重に検討いたしまして、根拠があると認められる場合につきましては人権の尊重とわが国の利益、公安を保護するという観点との調和を考慮いたしまして、その在留を適当とする事情がある者につきましては現行の出入国管理令所定の手続によりまして在留を許可することといたしております。また在留が不適当であるとする者につきましても、迫害が待っておるという地域に送還するということは避けるということを基本方針といたしまして対処いたしております。
○渡部(一)委員 ただいまの御答弁は、先ほど法務省の入管局より資料にして提出していただいた分でありますが、私はこれに関して、金大中事件の際、わが国が逃亡犯人引き渡し法というものを持ちながら、逃亡犯人の引き渡しという問題について諸外国との間で引き渡し条約を結んでいないという事実に当たっているわけであります。つまりわが国は、アメリカ政府との間で明治時代の初期、犯人引き渡しに関する条約を結んでおりますけれども、現在は、それらの以外の国とは全くこれらの条約を結んでおりません。アメリカは五十数カ国に対し、イギリスは四十数カ国に対し、こうした条約を結んでいるそうでありますが、わが国の逃亡犯人引き渡し条約を結ばないやり方については、特徴的なものがあるわけであります。逃亡犯人引き渡し条約は、政治犯というものを引き渡さないという点でこれは明らかに国際的に政治犯を引き渡さない原則というものがいまや慣行的にもでき上がっているようでありますが、その意味で、逃亡犯引き渡し条約の締結というものがもし韓国との間で行なわれていたとするならば、金大中氏を政治犯として韓国側が処罰するというおそれをわれわれが感じていなくても済んだであろうし、また金大中氏をこのような無謀なやり方で韓国に引きさらうということについてもブレーキがかけられたであろうし、またこのような国会の審議も不要ではなかったかと私は考えるわけであります。したがいまして、犯人引き渡し条約の締結、そしてその条約の中に含まれる、政治犯を引き渡さない原則、こうしたものをわが国はこの際あらためて諸外国との間で条約として締結するべきものではないかと私は考えるのでありますが、条約局長の御答弁をいただきたいと存じます。
○松永政府委員 今回の金大中氏事件と、いま御指摘がございました逃亡犯罪人の引き渡しに関する条約との関係につきましては、必ずしも問題がはっきりいたさないと存じますが、わが国が従来逃亡犯罪人に関します条約をアメリカ以外の国とは結んでおらないという事情は、一つにはアメリカとの間に結びました条約は、アメリカの法律によりまして、条約がなければ犯罪人の引き渡しが行なわれないというアメリカの法体制になっているということ、それからほかの国の場合には、多くの場合にこの種の条約がなくても、個々のケース、事案が生じました場合に引き渡しの要請を行なって引き渡しを受けるということが可能であるという事情があったからでございます。ただ、先生がいま御指摘がございましたように、最近交通手段も非常に発達をいたしまして、いわゆる国際的な交流がひんぱんに行なわれる、また国際的な犯罪の発生もちょくちょく見られるという事態に至っておりますので、今後犯罪人の引き渡しに関します条約ないし協定の締結というものは、もう少し積極的に考えていくべきであろう、こう考えております。
○渡部(一)委員 ただいま逃亡犯罪人引き渡しの条約の締結に関し、条約局長から前向きの御答弁がございました。私は、これこそまさにこの金大中事件でわが国外交が反省してとるべき大きな処置ではないかと考えるわけであります。その意味で、もし韓国との間で逃亡犯罪人引き渡し条約が成立しており、そして政治犯を引き渡さないという原則が成立しておったとするならば、私は、金大中事件はある意味で起こらなかったのではないか、こう思うわけであります。 そこで、先ほど法務省のお方がお答えをいただきました出入国管理令によるお答えでありますけれども、わが国において国内法規が制定されていない。そしてそれにかわる便法として出入国管理令第五条第一項四号によりまする、すなわち政治犯罪で有罪判決を受けた場合に、強制退去の例外事由となる旨を明らかにしております。つまり強制退去させるための例外的事由として受け取れる。つまり政治犯をわが国に引き取る理由にするという意味であります。これは政治犯罪で有罪判決をその相手国で受けた場合、たとえば金大中氏の例でいえば、金大中氏が韓国においてスパイとか反共法とか国家保安法とかにおいて有罪の判決を受けちゃって、それから日本へ逃げ込んできた場合、そのときはこの出入国管理令によって、わが国としてはそれを政治犯罪で有罪判決を受けた人として受け取る可能性が出てくるわけであります。ところがそれがなければ——これは本国で有罪判決を受けなければいけない。つまりそういうことはどういうことかというと、過去の時点の問題になるわけでありますから、牢屋を破って、突破して逃げてきたような人に対してのみこれは該当する立場でございましょう。結局要するにこういうやり方でやるならば、おれは完全に豚箱へほうり込まれて殺されるという人が逃げたときは助けられるけれども、そうでない大多数の政治犯に関しましては、これを人道的にもかばうということはできない。また欠席裁判を受けて死刑になったなんという人の場合はできるかもしれないけれども、それ以外はできない。こういうようなきびしい、まことに狭い——この出入国管理令でやるということは狭い範囲内でしか政治犯をかばうことはできない、こういう状況があるわけですね。そうしますと、わが国におけるたくさんのある意味での人々が、自分は政治犯ではないかと思いながら暮らしている人がいるとするならば、これはわが国の法秩序あるいは秩序安寧のためにもきわめて遺憾な事態をもたらすものではないか、私はこう思うわけであります。その辺はいかがお考えでありますか。現行のままでよいとお考えになりますか。そうでないとお考えになりますか。
○吉岡政府委員 先ほど五条一項第四号の救済の点を御説明いたしましたが、これはそういった方が日本に参りました場合に特別に上陸を許可するということでございまして、かりに先生御指摘のような方がいろいろの名目で日本に入ってこられました場合に、これに特別に日本在留を許可するかどうかということにつきましては、現行入管令第五十条で法務大臣の特別在留許可という制度がございまして、過去におきましてもその入管令第五十条を活用いたしまして、そういった類似なケースにつきまして救済をやっておったということを御認識いただきたいと思います。
○渡部(一)委員 この法務大臣による特別入国許可というものは、法務大臣の裁量によられるものでありますから、ある意味ではきわめて不安定なものではなかろうかと私は存じます。法務大臣がそういう裁量権を持つということは、諸外国から見れば政治的圧力の対象になるものであります。したがって、わが国は逃亡犯が踏み込んでくるたびに、ある意味であおられる。右からあおられ、左からあおられるという形で、国内でその一人の犯人をめぐってごたごたしなければならない。したがって、そういうやり方であいまいな国内規定をつくっておくということは、わが国の平和外交の基本的な筋を通すためにもまことに不安定な状況をつくり出しているのではないか。その意味では、この辺国内法についてもお考え直しをせられまして、もう少し徹底的な政治亡命者、政治犯罪人の庇護だけでなく、わが国の外交の基本的な筋を明確にするためにも、これに対する明快なる方針というものを公知せしめる必要があるのではないか、こう思いますが、大臣いかがですか。
○大平国務大臣 立法政策の問題として検討する値打ちのある問題だと思いますが、そういう方面私もあまり詳しくございませんので、私の考えとして固まったものもございませんけれども、勉強さしていただきたいと思います。
○渡部(一)委員 大臣が検討、勉強とおっしゃっておりますので、その結果を私は期待してまいりたい、こう思っておるわけであります。 一九五一年に亡命者の地位に関する条約というものがかつてつくられたそうでありますが、多数国間条約として成立をし、また一九五三年には難民の地位に関する条約というものがつくられたそうであります。これらの条約に対してわが国はどういう態度をとっておられるのか。聞くところによれば、これらの亡命者あるいは逃亡者、難民というようなものに対して政府側は、へたにこうした条約に入ればわが国が亡命者天国になるおそれがあるとか、あるいはこれらの亡命者の地位に関する条約に関しては、亡命者の概念の中に地域的、時間的に制約されたものである、つまりヨーロッパで第二次大戦の結果逃げ出した難民というものを救済するためにつくられた条約であるから、そうしたものに入るのはナンセンスであるというようなたぐいの御議論が続いたようであります、今日議事録をひっくり返してみますと。ところが一九六七年になりますと、議定書によりまして、これらの加盟諸国の手によりまして条約は時間的、地域的なバリケードを取り去りまして、一般的なものになったようであります。その際にヨーロッパだけでなく、アメリカもこの条約に参加しているようであります。わが国としても、前回とは事情が違っておりますので、亡命者の地位に関する条約に対する加盟というものはこの際もう一回再検討をされて、私はこうした問題に対するわが国の姿勢を明確にすることが必要ではないかと思いますが、いかがでございますか。
○松永政府委員 いま御指摘がございました一九五一年の難民の地位に関する条約あるいは一九六六年のこの条約につきましての議定書が締結されました経緯及び従来わが国がこれにつきましてとっておりました態度は、先生御指摘のとおりでございます。すなわち、五一年に条約がつくられました際には、第二次大戦及びその後の東欧における諸国の革命に伴いまして発生いたしました大量の難民について、その地位を安定させ、人権を保障するということを内容とする条約が結ばれたわけでございます。それから一九六六年に至りましてつくられました議定書は、時間的あるいは地域的な限定を撤廃いたしたわけでございますが、そのときにこれが作成されました事情は、その当時におきまして、一九六〇年代になりましてからアフリカで大量の難民が発生した。この問題に対処するためにその議定書が作成されたわけでございます。わが国につきましてはそういう大量な難民の発生という状況に対処する必要性というものがございませんでしたので、現在までこの条約に加入しないでまいったわけでございます。 なお、この条約によりますところの問題といたしましては、大量な難民の発生ということを一応想定して作成された条約でございますし、先ほど先生が御指摘になられました政治的な亡命者ということだけでなく、戦争とか動乱とかあるいは革命とかいったような事態から発生してきますところの難民を想定しておりますということと、この条約にわが国が参加、加入いたします場合に、この条約の結果生じます社会的あるいは政治的な影響といったものも十分考慮して、慎重に国内法との関連も検討してまいらなければならないと考えておる次第でございます。
○渡部(一)委員 それは局長、恐縮ですが、まだ御答弁が残っておられるのではないかと存じます。といいますのは、こうした関係国内法も少しずさんである。ある意味で網の目が荒い。そして他の国々との間に犯人引き渡し条約もつくっていない、こういう二つの状況があるわけですね。今度私は三つ目の問題を申し上げた。つまりこういう一九五一年の難民の地位に関する条約のようなものにも加わっていない。こういう多国間条約にも加わっていない。この多国間条約の件もひとつ再検討なさったらいかがか。前に外務省条約局でこれに加わらない事情を説明なさった説明とは、いまの御説明は全く違うように私は思う。ですからその意味でこれはもう一回再検討なさる必要が今回の事件に関与してあるのではないか、こう申し上げたわけであります。
○松永政府委員 私が申し上げましたのは、国内法との技術的な関係もございますので、慎重に検討したいと申し上げたわけでございますけれども、当然のことといたしまして、この条約の締結について私どもとしてはできる限り検討を進めてまいりたい、こう思っているわけでございます。
○渡部(一)委員 そうしますと、ただいまの御答弁で画期的な前進ぶりがうかがわれますので、ぜひともその検討というおことばを単なる検討でなく、一歩前進的な立場で進めていただきたいと私は思うわけであります。この場合に問題になりますのは、政治的亡命の概念をどこで線を引くか、これはわが国の基礎的な方針として当然明確にせざるを得ないと存じます。それは条約を結ぶ、結ばぬにとどまらず、基準を明確にしていないことが日本外交をより政治化させる理由になり、よけいな騒動の種をまくのではないかと私は思うわけでありまして、その点はひとつ外務大臣とされましてもあわせて御検討いただきますようお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○大平国務大臣 検討さしていただきます。
○渡部(一)委員 次に私は、金大中氏が来日されました際の旅券とビザの関係につきまして、先ほども簡単な御説明があったようでありますが、もう一回お伺いいたします。
○吉岡政府委員 金大中氏の今回の入国は一月五日でございますが、アメリカから羽田空港に入国いたしました際に、公用旅券を持っておりましたが、有効な査証を持っておりませんので、翌一月六日法務大臣の上陸特別許可を受けまして、日本に滞在することとなった次第でございますが、在留中の二月十七日に旅券の有効期限が切れましたために、その後は在留期間の更新許可にあたりましては、入管の在留資格証明書を発給いたしまして、またその後同人が米国向け出国に際しましては、わが国への再入国許可にあたりましては、赤十字国際委員会の発給いたしました渡航証明書に許可の証印をいたして出国した次第でございます。
○渡部(一)委員 まことに妙な話でありますが、こういう手続は合法的でありますか。また、こうしたことは常に行なわれている事由でありますか、御答弁いただきたい。
○吉岡政府委員 本来日本を訪問いたします外国人は、それぞれの所属いたします国の旅券を所有することがたてまえとなっておりますが、何らかの理由で旅券を所持できないという場合にはそれにかわる渡航文書といたしまして、赤十字国際委員会の発行する渡航証明書というものを旅券にかわるものとして認めておる次第でございます。これは過去にも数多くの実例がございます。
○渡部(一)委員 そうすると、わが国でそういう措置をとっておられるなら、わが国に対しても赤十字国際委員会発給の渡航証明書があれば、わが国としてはこれを受け入れるわけでありますか。
○吉岡政府委員 わが国としても赤十字渡航証明書がございますなら受け入れております。
○渡部(一)委員 私が非常に妙だと思いますのは、ここであげられている手続というものが、金大中氏の場合、こうした形になっておりますけれども、わが国に入ってまいりますいろいろな方々に対して、ある場合には非常にきびしく、ある場合には非常にやわらかく、私はそういった印象を押えることができないわけであります。私は、これはわが国に入る場合と出る場合に分けまして、どういうものを所持していた場合に受け入れ、どういうものを所持した場合に出国させるのか、それをリストにした上当委員会に出していただくよう要求したいと思います。なぜかといいますと、私ども関係法規を幾らめくってみましても、こうしたシステムでやり得るということを公式的に示されている法令、条例のごときものが私は寡聞にして存じあげないからであります。これは便法の積み上がったものであります。そして、その便法の積み上がった中に適宜にやるというだけでは法治国としての日本はあまりにも妙なやり方ではないかと私は思うのでありまして、この辺明確にしていただきたいと思いますが、委員長よろしくお計らいをお願いしたいと存じます。
○藤井委員長 承知しました。
○吉岡政府委員 赤十字国際委員会の発行いたしますトラベルドキュメントを旅券にかわるものとして認めておるのは、私の承知する限りにおきまして五十数カ国ございます。もとよりわが国の認めました旅券ということが第一義的に重要でございますが、今日の複雑な国際情勢下におきましては、そういった旅券を所持できないという人々も非常にふえてきておるかと思いますので、こういった赤十字国際委員会の発行するトラベルドキュメントを正式の旅券にかわるものとして受け入れているという国がすでに五十数カ国あるということでございまして、日本もその一カ国であるということでございます。
○渡部(一)委員 そろそろ時間が参っておりますので、私も金大中氏の再来訪と申しますか、その点を少し明確にしていただきたいと思っている一人でありますし、また韓国政府から捜査に対する協力、この問題の真相の解明を強く要求するものでございます。 それと私は最後の一問として、外務省の北方アジア課より、昨日韓国内で逮捕され取り調べを受けた日本人及び在日韓国人の一覧表を提出していただきました。それによりますと、在日韓国人及び日本人が韓国において取り調べあるいは逮捕された者が十一件ございます。その中には明らかに日本国から強制連行の形で連れて行かれ、死刑の判決を受けた徐勝という方のような例もあるわけであります。そしてまたここでは不解なことに、国家保安法、反共法というようなスパイ罪の適用を受けた日本人の方もあるわけであります。こうした在外日本人の保護についてどういうふうに意を用いておられるか、私はその努力が足りな過ぎているのではないかという問題が一つ。 それから金大中氏も連れ去られたあげくこうしたやり方で——私、金大中氏だけでなくてこうした方々がいることを見ますと、金大中氏の場合も国家保安法とか反共法とか——国家保安法の法律というのは、わが国にはちょっと考えられないような種類のものでありまして、たとえば国家保安法は冒頭の第一条で、「政府を僣称するか国家を変乱する目的で、結社または集団を構成した者は次の区別に従って処刑する。」「1、首魁は死刑または無期懲役に処する。」「2、幹部または指導的任務に従事した者は死刑無期または五年以上の懲役に処する。」「3、それ以外の者は七年以下の懲役に処する。」というようなきびしいものであります。この法令の可否については私はここで述べようとするものではございません。また反共法においては、第一条「目的」として、「本法は国家再建課業の第一目標である反共体制を強化することによって国家の安全を危地においやる共産系列の活動を封鎖し、国家の安全と国民の自由を確保するのを目的とする。」旨しるされております。こうした容疑というもので、かなり大きな範囲で網をかぶせられるといたしますと、日本国の多数の韓国旅行者たちがこうした法律に触れ、あるいは処罰されるというおそれはきわめて高いわけであります。そうした日本人の保護に対して、外務省当局はどう意を払っておられるのか、またこうしたつかまってしまった人々に対して、どういうふうな形で保護の手を差し延べておられるのか。また逆に言うと今度は、金大中氏もそうした形で処罰されることを——いまは被害者として取り調べられているが、同時に被疑者として取り調べられるおそれも十分にあるのではないか。この二つの疑問でありますが、これにお答えをいただきたいと存じます。
○中江説明員 先生も先刻御承知のように、国家主権といわれるものの非常に重要な部分といいますのは、国家が自国の領域内で排他的な管轄権を行使するということでございます。その中のさらに重要な部分はその国が自国の管轄内で法令を制定し、またそれに基づいて所要な処断をする、これは国家主権の非常に重要な部分かと思います。したがいまして韓国の領域内で韓国が自国の法令に従って自国民、またその法令の適用範囲によりましては外国人を含めて法令を適用し処断するというのは、これはわが国におきましてもわが国内で行なわれた犯罪について、場合によっては日本人のみならず外国人もこれの適用を受けて処断を受けるという場合は多々あるわけでございます。したがいましていま御指摘の日本人あるいは在日韓国人で、たまたま韓国に何かの用で行きましたときに、その管轄下に入ったその韓国で、韓国が自国の法令を適用して法に従って処断するということ自身については日本政府として公に口を差しはさむことはできませんし、不必要にこれに介入すべきでないということは一般原則でございます。その場合に、先ほどあげられました徐勝という方がかりに日本から強制的に連行された、その強制力を行使したのが日本の官憲でなくて外国の官憲であるという場合には、これは重大問題でございます。また日本人によってあるいは、だれかによって、私人によって強制的に連行されたという場合でも、これは日本の法令に対する法令の違反ということになりまして、日本の管轄権のもとでこれを処断しなければならない問題だと思いますが、本日提出いたしました一覧表に掲げられておる人たちにつきましては、この人たちが韓国で韓国の法令に従って処断されるまでの過程において日本の法令違反があったという事実は聞いておりませんし、またそういうことを承知もしておりません。したがってその部分については日本政府として何らかの手だてをするという余地のない問題、こういうふうに心得ております。 今度は韓国に渡りましてから韓国の法令を受けて処断された場合に日本政府はどういう意味でどういう角度から本人の保護のために何らかの措置をとるのかという点は、これはまず第一にその法令が適正に適用されていたかどうか、またその裁判が行なわれましたといたしますれば、その裁判において十分な弁護人をつけるとか、あるいは自由な意思の表明があったか、あるいはその間非人道的な取り扱いがなかったか、そういった面については絶えず注意をするわけでございますが、そういうことのない限り韓国が自国の法令に従って自国内にある内外人を処断すること、裁判に付すること、そういうこと自身は問うことができない。ただその場合に、あげられた例の多くの場合に起きたことでございますけれども、自分の希望する裁判官がほしいというときに裁判官をあっせんしたり、あるいはまた留守宅との通信なり留守宅からの照会に応じてほしいというときに、領事事務の一環として裁判所におもむいていろいろあっせんをしたり、あるいはまた勾留されている間に非人道的な扱いを受けたという苦情がもしありますれば、それについては厳重に警告をし、場合により抗議をする等、一般的な在外国民の保護という仕事はいたしますけれども、本日提出いたしました人たちにつきましては最近は弁護士のあっせんをいたしましたケース、それから必要な資料を日本から韓国に送って、それを弁護人に渡すというようなことの取り計らい、それから本人からの家族への伝言の伝達、そういったことは在ソウルの大使館を通じてやっておりますが、裁判の適否そのものあるいは非人道的な扱い、そういうものについての苦情は受けたケースはございません。 もう一つ、金大中さんについての御質問でございますけれども、これはまず、いま先生の御質問の、韓国が韓国の領域内にある韓国人である金大中氏をどう裁くか、あるいはどういうふうに扱うかというのは、これはもっぱら韓国政府の主権事項でございますので、これは日本政府として何らかの口を差しはさむべき問題ではないと思います。ただ、いま金大中氏について言われておりますのは、供述されたと伝えられる筋書きによりますと、金大中氏はどうも日本で自由を拘束されて日本から連れ出された。ここで、日本における違法行為があったのではないかという容疑。これは金大中氏が被害者として加害者がいるに違いない。これがいま日本で捜査している対象であるかと思います。韓国に入りましてからは、韓国内における金大中氏の強制連行というものが、どこからか入国されて自宅で釈放されるまでの間に違法行為があった、これを韓国政府が調べているという段階だと思います。したがって金大中氏が今回の事件と離れて韓国政府によっていかに取り扱われるかということについては日本政府は何ら関係もないし、口を差しはさむべきでない、こう思います。
○渡部(一)委員 いまのあなたの言ったことがそれこそ大間違いであります。なぜかといえば、強制的に連行された、連れて行かれたという事実を日本が認める限りにおいては——御当人が反共法等の法律によって処罰され処刑されるという重要な可能性というものが出てくるわけですね。ですからもしこれで処罰されたとしたら、不法に行なわれた第一段階の結果御当人は死刑になるというような重大な結果を招くわけですね。その段階で口をはさめないというのは向こうに不法行為がなかった場合です。向こうに明らかに不法行為がある。公人によるか私人によるかそれはわからない。しかし韓国側に不法行為があり、そしてわが.国から金大中氏が連れ去られたという第一原因があって、その第一原因が取り除かれないで、金大中氏をあとどう処罰するかは韓国政府の問題だなんというのは、それは法理論としておっしゃっているのかもしれませんが、全く現実にそぐわない議論だと私は思う。われわれが騒いでいるのもそれなんです、問題は。だからその第一段階の不法に連れ去ったという部分に焦点を合わせて当人をどうしても取り返すというもとのところまで、原状に回復しない限りは、金大中氏は明らかに別の法律で今度は処罰される側に——被害者でなくて被疑者として処罰される側に回る可能性というのはきわめて高い。そうでございましょう。だから私たちは申し上げているのです。それともこのまま現状で推移して、犯人がつかまらないという形で推移して、そして事情が全部おさまったころ、御当人はあくまでも日本に送還しないという立場に置いておいて、そして金大中氏は別の名目で裁判をされ、そして処断をされ、そして当人が死刑になり、それであなたは日本国官吏としておれは使命を果たしたという充実感を持って毎日生きることができるのですか。私はいまの御答弁、全くけしからぬと思うね。私はそういう答弁を求めているのではない。私が求めているのは、日本国政府がこの問題に対して、明らかに国際的な信義を問われている段階なのですから、何が何でも金大中氏の送還については強く要求しなければならない。もし送還しない、送還ができないというのなら、金大中氏を別の形で処刑することについて、韓国政府から、そういうことはしない旨の約束をとるのでなければ、韓国政府は日本に対して謝罪したことにはならぬと私は思うのですが、いかがでしょうか。今度は大臣に答えていただきたい。私はあんないいかげんな答えは聞きたくない。
○中江説明員 私がさっき申し上げましたのは、先生もおっしゃいましたように、法律的に二つの場面を分離して申し上げましたので、あるいは誤解を招いたかもしれませんが、いま日本政府が関心を持っておりますのは、まさしく先生のおっしゃいました第一段階のところでございます。第一段階のところでいまだ真相が究明されていませんために、それが、その次に想定される、あるいは筋書きとして発展するであろうところについて予断ができないというのが実情なのでございまして、いままず、不法に連れ去られたのではないかという容疑について徹底的に真相を究明する必要がある。そういう意味で金大中氏の再来日についても、これを真相究明するためにぜひ協力していただきたいという形で強く要請しているわけです。 その次に、金大中氏をそれでは反共法で云々、国家保安法でどうだというような点については、韓国政府は何ら意思表示をしていませんのみならず、金大中氏はそういった連行された事件のほかに、そういった法律に基づいて容疑者として取り扱うのだというようなことを公にしたことも一度もない段階で、それを予測した形で意見を述べるということは差し控えたいと思って申し上げなかった次第でございます。
○渡部(一)委員 時間がないので、まことに恐縮ですけれども、私が心配なのはそこであります。こんなことで私は押し問答をするつもりはございませんでした、時間もないことですから。外務大臣に最後に締めくくりをしていただきたいと私は思っております。というのは、もしこの第一の段階とおっしゃった、その第一の段階で日本政府の要求が通らなくて、そして、第二の段階になって、今度は当人が被害者から被疑者に移って処刑されたらどうするのですか。そうしたら第一の段階でもやむを得ない、第二の段階でもやむを得ないと日本政府は逃げる気なんでしょうか。私はそれは道義もなければ正義もない、友愛もない、日本国憲法の精神に照らしてもまことにおかしな外交政策になると思いますよ。それはなぜかというと、そういう法律だけを表にした判断というものを正面から立てるからだ。いまみたいな方にやらしておいたら私は危険だと思いますよ。私はほんとうに妙な答弁だと思う。だから町に流れているうわさの中に——私はうわさを述べるのはまことに恐縮ですけれども、もうしばらくすると、犯人はつかまりませんでしたと韓国政府は説明するだろうといううわさが流れています。そうしてそれに対して日本国政府はしかたがないでしょうという。そうしてもうしばらくすると金大中氏は国家保安法違反というので裁判にかけられ、あるいは実質的に処刑されるでしょう、こういううわさが流れております。そういう段取りをあなた方は承認しておられるのですか。そういうふうになったときに日本は——いまは韓国政府の信義が問われ、韓国政府の道義が問われている段階です。しかしそういうふうになったら、今度は日本政府のそれが問われ、日本外交の信義が問われ、東洋の諸国民に対して顔向けならぬじゃありませんか。だから、法律論を単にもてあそぶとそういう結論になることは私もわかります。それは私は頭からはじいているわけではない。しかし、第一段階でがんばると同時に、それらについての見通しをつけることだ。私は内政干渉しろと言っているわけでもありません。それらに対して見通しをつけ、そういう最悪の日本政府がどろをかぶる状況に追い込まれないようにすることが外務省として当然考えるべきことだと私は思いますが、大臣いかがでございますか。
○大平国務大臣 いまのわれわれの任務は事態を究明することでございます。それを急ぐことでございます。そしてこの事件の公正な解決をはかることでございまして、そのために私どもはいまも全力をあげておるわけでございますけれども、今後も最善を尽くしていくつもりでございます。
○藤井委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。 午後七時四分散会