外務委員会 第4号
- 発言数
- 160 件
- 登壇者
- 16 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1973/03/07
会議録
○藤井委員長 これより会議を開きます。 この際、理事補欠選任の件についておはかりいたします。委員辞任に伴いまして、現在理事一名が欠員となっております。これよりその補欠選任を行ないたいと存じますが、先例により委員長において指名するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○藤井委員長 御異議なしと認めます。それでは金子満広君を理事に指名いたします。 ————◇—————
○藤井委員長 次に、千九百七十一年十二月二十日に国際連合総会決議第二千八百四十七号(XXVI)によって採択された国際連合憲章の改正の批准について承認を求めるの件及びアフリカ開発基金を設立する協定の締結について承認を求めるの件、以上両件を議題とし、それぞれ政府から提案理由の説明を聴取いたします。外務大臣大平正芳君。
○大平国務大臣 ただいま議題となりました千九百七十一年十二月二十日に国際連合総会決議第二千八百四十七号(XX VI)によって採択された国際連合憲章の改正の批准について承認を求めるの件につきまして提案の理由を御説明いたします。 国際連合の第二十六回総会は、一九七一年十二月二十日に国際連合の経済社会理事会の構成国の数を増加する国際連合憲章の改正を採択いたしました。 国際連合の経済社会理事会は、国際連合の主要な機関の一つとして、経済的、社会的分野等における国際協力を促進する重要な任務を有するものでありますが、その構成につきましては、さきに一九六三年に改正が行なわれ、現在は総会によって選挙される二十七の加盟国で構成されております。今回の改正は、その後の加盟国の増加に対応し、また、経済的、社会的分野等における活動が増大した国際社会の現状に対応するために同理事会の構成国の数を二十七から五十四に増加するものであります。この改正により、さらに多くの国際連合加盟国が経済社会理事会に参加することとなり、同理事会の機能が強化され、経済的、社会的分野等における国際協力が一そう促進されることが期待されます。 わが国は、経済的、社会的分野等における国際協力の促進が国際の平和及び安全の維持に果たす役割りの重要性にかんがみ、従来より国際連合及びその専門機関のこれらの分野における活動に積極的に参加してまいりましたが、わが国がこの改正を批准することは、国際連合を通じてこれらの分野における国際協力を推進する上で有益であると考えられます。 よって、ここに、この改正の批准について御承認をお願いする次第であります。 次に、アフリカ開発基金を設立する協定の締結について承認を求めるの件につきまして提案の理由を御説明いたします。 アフリカ諸国は、一九六四年にアフリカ開発銀行を設立いたしましたが、同銀行は、通常の貸し付け条件による融資を行なっておりますので緩和された条件による融資を必要とする国に対する融資活動には制約があります。このため、一九六六年以来、経済協力開発機構の開発援助委員会に参加する先進国とアフリカ開発銀行との間で同銀行の活動を補足するための措置について検討が行なわれた結果、新たな国際金融機関を設立することが合意され、昨年十一月二十九日に象牙海岸共和国のアビジャンでアフリカ開発基金を設立する協定が作成されました。 この基金は、国際的に一そうの協力が必要であるとされております後発開発途上国の多いアフリカ諸国を対象とした機関で、既存のアフリカ開発銀行の活動を援助し、 緩和された条件による融資を行なうことによりアフリカ諸国の経済的、社会的開発に貢献しようというものであります。協定は、基金の設立、目的、資金、業務、組織及び運営、特権及び免除等について規定しておりまして、わが国は、本件基金に当初出資として千五百万計算単位を出資することを予定しております。 わが国は、開発途上国に対する経済協力の重要性にかんがみ、従来より、各種の国際機関を通じ、また、二国間の経済協力を通じて開発途上国の経済的、社会的開発に貢献すべく努力してまいりましたところ、わが国がこの協定を締結することは、わが国のこの基本政策にも合致するものであり、また、わが国とアフリカ諸国との友好関係の促進にとっても有益であると考えられます。 よって、ここに、この協定の締結について御承認をお願いする次第であります。 以上両件につき、何とぞ御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
○藤井委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。 両件に関する質疑は後日行なうことといたします。 ————◇—————
○藤井委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。 この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。 国際情勢に関する件について調査のため、本日国際交流基金理事長今日出海君に参考人として御出席いただき、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○藤井委員長 異議なしと認め、さよう決しました。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川崎寛治君。
○川崎委員 けさの新聞あるいはテレビと、いろいろ報道がなされておるわけでありますが、日ソの平和条約交渉について田中総理の親書を新関大使を通して手渡されたということになっておりますが、この点については、たまたま昨年の暮れのソ連邦結成五十周年の記念式典に、私党を代表して参っておりまして、ブレジネフ書記長が三時間余に及びます演説の後半の部分において、日ソ間の懸案のいろいろの問題について七三年中に交渉をいたしますというふうなことを触れたわけでありますが、そこで総理の親書が渡されたということで、昨年の十月外務大臣が参りまして第一回の交渉、今後第二回目の交渉に入ると思うのでありますが、この日ソ平和条約交渉についての第二回目の時期を大体いつに考えておられるのか、それからその交渉の方向並びに総理自身が出かけていって話し合うという計画もあるのかどうか、まずその点についてお尋ねをしたいと思います。
○大平国務大臣 第二回の日ソ間の平和条約締結交渉でございますが、去年の十月の第一回の交渉のときに、明年すなわちことし第二回の交渉をモスクワにおいて行なうということに合意を見ております。ことしの時期をどういう時期にするかにつきましては未定でございまして、国会が終わりました段階で日ソ双方で協議をいたしたいと考えております。 それからこの締結交渉の方向でございますが、わが国といたしましては既定の方針を堅持いたしまして、先方の理解をしんぼう強く求めてまいることに変わりはないのであります。 それから第三点の、総理の訪ソがあり得るかということでございますが、総理が国会終了後どういう国々に御訪問いただくかということにつきましては、これまた国会終了の段階におきまして内閣のほうとよく打ち合わせをいたしたいと思っておりますので、目下のところ未定でございます。
○川崎委員 日ソ間にある戦後のいろいろの諸懸案、そうしますとそれは平和条約の中に盛られるもの、それから条約には盛られないがいろいろと懸案の問題がある。先ほど既定の方針で、こういうことで言われたわけでありますが、その点についてもう少し明らかにしていただきたいと思います。
○大平国務大臣 日ソの間の関係でございますが、これは川崎さんも御承知のとおり、たいへん順調な展開を見ておるわけでございまして、貿易も十億ドルのオーダーを越えるということになってまいりました。人の交流もしたがってまた相当ひんぱんになってまいりました。それからサイベリアを中心にいたしました幾つかのプロジェクトが、すでに経済協力案件として実行に移っておるわけでございます。目下日ソ両国の間でその他の大きな経済協力プロジェクトについて民間レベルで話し合いが行なわれておるわけでございます。この問題につきましては、私ども政府といたしましては、わが国の資源政策から申しまして、できるだけ長期にわたって安定的な供給源を確保してまいる必要がございますので、できるだけ手広く資源外交を展開していく必要を痛感いたしております。隣国のソ連、とりわけサイベリア資源の開発につきましては、そういうたてまえから重大な関心を持っておるわけでございまして、いま問題になっておりまする大きなプロジェクトにつきましても、調査の段階から政府の係官を参加させて検討をいたしておるわけでございまして、私どもは民間の当局者とソ連側との間で煮詰められておりまするものが、満足すべき基本契約というものに煮詰まってまいることを期待いたしておるわけでございまして、それが満足すべきものである限りにおきまして、政府も前向きで御協力を申し上げたいという気持ちでおるわけでございます。 それから一方、北方領土問題というのが御案内のようにあるわけでございますが、経済協力案件と領土問題という問題は、からませる問題でもないし、またからますべき問題ではないと考えておるわけでございまして、経済協力案件は経済協力案件としてそのフィージビリティーをよく検討の上、やるべきものはやってまいらなければならぬというふうに考えておるわけでございます。 領土問題につきましては、御案内のようにただいままでのところ両国の主張は平行のままでございまして、いま私確たる展望を申し上げるという状態ではございません。
○川崎委員 次にはベトナム以後のアジア外交の問題について、いろいろとこれまでも論議が行なわれてまいっておりますが、お尋ねをしてみたい、こういうふうに思います。 まず第一には、田中総理が、日本のアジア外交のたいへん新しい方向として、自主外交だと銘打って本会議における施政方針演説においても述べ、また先般二十三日の本委員会においても、大平外務大臣は、アジア太平洋地域の平和復興会議というものを目ざしてやっていきたい、こういうことを打ち出してまいったわけですね。特に田中総理の全アジアを網羅したアジア国際会議というものを非常に大きく打ち出してまいっておったわけでありますが、先般のベトナムに関しまするパリの国際会議というのはその方向を否定しておる、こう思うのですね。それで、少なくともベトナムの問題というのはベトナム民族自体の問題だ、こういうことでベトナム人民自身にまかせるといいますか、民族自決ということがきわめて大きく打ち出されて、重要な結論が出ておるわけでありますけれども、このアジア国際会議というものがこのように食い違ってしまったということについては、私は、日本政府のアジア外交についての判断はここにたいへん大きな食い違いが出てきておると思うのです。 そこで、それは何かといえば、要するにアジアの諸地域にあります問題、なかんずくベトナム戦争並びにベトナムのこれからの問題について、日本は、特に外務省はアジアを的確につかんでいない、こう私は思うわけです。それはなぜかという問題はこれから後に少しお尋ねをいたしますけれども、つい一、二カ月前に総理がたいへん得意になって言いましたアジアの国際会議、このことについて、今回のパリ国際会議の結論というものから見てどうお考えになるか、お尋ねをいたしたいと思います。
○大平国務大臣 パリで先月二十六日に行なわれました国際会議というものは、和平協定にうたわれておりまする国際会議がございまして、十三者が集まりまして和平協定の実行を保障しようという役割りを持った国際会議でございまして、それ以上のものではないと私どもは考えておるわけでございます。アジアの今後の平和復興というような問題を審議する機関ではないというように考えております。 ただ、この会議の参加国、当事国、関係国が集まってやりました中で流れた情報といたしまして、当事国の中には、今後のベトナムの復興問題につきまして、多数国ベースでやるということよりは、二国間ベースのほうがよろしいんじゃないかというような意見が流れたということは、私も承知いたしておるわけでございます。で、今後アジアの大きな問題を考えるにおきまして、それぞれの国の考え方というものが、すなおに、いうところの国際的な仕組みをつくって、そこでみんなで相談して一つの方向を出そうというような空気に必ずしも固まっていないということは、御指摘のとおり私も感じるのであります。 田中総理が提唱いたしましたものは、今後アジア全体の平和復興というようなことを考える場合に、現在ある地域協力機構というものは、いずれもどうもたすきに長し帯に短しという感じがするので、アメリカもソ連も中国もみんな入ったような、そしてアジア諸国が入ったような、もっと網羅的な仕組みが考えられないかという願望を表明いたしたわけでございまして、総理演説にもうたわれておりますとおり、その可能性をひとつ探求しようじゃないかということでございまして、この課題は今日依然として私どもの課題としてあるわけでございまして、決してこれを断念したわけではないのであります。
○川崎委員 アジアにおける地域機構の将来の問題としてということになりますと、最初打ち出しておりましたベトナム復興に関するアジアの国際会議というものではないということですね。そういう方向ではないんだ……。
○大平国務大臣 アジア太平洋地域という非常に壮大なテーマでございます。
○川崎委員 その中で、わが日本政府がたいへん得意になって進めてまいりましたASPACの問題につきましては、何というか、これはもうたいへん行き詰まった機構になっておると思うのですが、そのASPACの解消あるいは解体というか、改編というか、ASPAC自体をどうしようというふうにお考えなんですか。
○大平国務大臣 ASPAC自体をどうしようかという立場に日本はないわけでございまして、ASPACは御承知のように日本を含めて関係国の自発的な仕組みでございますので、これをどうするかというのは各国が協議してきめなければならぬことでございまして、日本がどうこうするなんという僭越なことはできないと思うのでございます。ただ、私が先ほど申しましたように、ASPACにせよASEANにせよ、いろいろな地域協力機構があるけれども、どうもこれだけでは十分じゃないので、もっとでかいことを考えられないかというのが田中総理の願望なんでございまして、ASPACの処置と直接関係があるわけではございません。
○川崎委員 でっかい構想について話し合うのは私もたいへんけっこうだと思うし、やりたいのですけれども、どうも時間が非常に限られておりまして、外務大臣の答弁、たいへん時間がかかるので思うように議論が進まぬのでして、それで、その問題はこれから繰り返しいろいろな機会にひとつ追及といいますか審議を進めてみたい、こういうふうに思います。 そこでもう一つ、ちょっとベトナムに帰りまして、それではワルトハイム国連事務総長が日本に参りましたときに、田中総理が復興援助として五千万ドルの拠出を決定をした、そしてワルトハイム事務総長にそういうふうに言っておるように新聞には報道されておるわけですね。そうしますと、先ほど言いました多国間のそういう機構はどうも当事者のほうは好ましくないと思っているという。それから国連事務総長というのが今回のパリ国際会議で置かれた姿というのはもうはっきりしておるわけですね。それは国連そのものに対する、つまり日本が国連中心の外交というのをやってきておりますけれども、その国連そのものをどう見たらいいか、あるいは国連外交というものをどう進めなければならないかという基本の問題ともからんでくることではございますが、その五千万ドルを拠出するということをワルトハイム事務総長に通告したということは、国連を通しての復興援助計画というのがあって、そしてそれに日本が五千万ドル出す、そういうふうな形でのコミットをしたのかどうかお伺いをしたいと思うのです。
○大平国務大臣 ワルトハイム氏が訪日いたしまして、国連としてもベトナムの戦後の復興についていろいろ関心を持っておる、また国連部内におきましてもその問題について検討はいたしておるということが一点。しかしながら国連が旗を振ってそういうことが実りあるものになるかならぬか、これは当事国がどう考えるかの問題もありますので、たいへん事務局長といたしましては慎重な口ぶりで、必ず国連がこれをやるんだというような姿勢ではなかったのです。そういう関心を持って勉強はしておる、しかしこれは当事国はじめ関係国の意向もございますので、私から早急に打ち出すというようなつもりはないんだということでございまして、日本政府の立場は、もしかりに国連がそういうことを当事国をはじめ関係国の了解を得てやれるような状況になったら、それはたいへん望ましいことで、国連に対して応分の貢献はする用意はあります、しかし五千万ドルをコミットしたという経緯はございません。
○川崎委員 それじゃ拠出決定をしたということはないわけですね。 それじゃ次に、法眼次官がアジア大使会議に出席をしたあとサイゴンを訪れまして、パリ会議に出ます直前のラム外相とベトナムの復興援助について話し合っておるようでありますね、これは新聞報道ですけれども。そういう事実はあるのですか。
○大平国務大臣 ラム外相と法眼君が会談したことは事実でございまして、私の承知している限りでは一般的な意見の交換をしたと承知しております。
○川崎委員 それはその復興援助の問題については具体的な話し合いはないんですか、あるんですか。
○大平国務大臣 復興援助の問題につきまして、御案内のようにいままで南ベトナムに若干の援助をいたしておりますが、戦火がやみまして、中断しておったようなものはもう相談するまでもなく、これを継続していく必要があるものは私ども考えたらいいと思っておるわけでございますが、今後新しく南ベトナムからこういうことをやってもらいたいというような具体的な要請がその会談であったわけではございません。
○川崎委員 それじゃその援助はもう少し具体的にあとでお尋ねをしますが、その前に、これは先般岡田委員が本委員会でも質問した点に関連をしていきますけれども、パリ協定並びにパリ決議というものは何を目ざしておるか。これは民族の統一、それから南における自決ですね。そうしますと、そのことは、ステータスとしては一民族、一国家、一政府である。ベトナムにおける一民族、一国家、一政府を目ざしている、そういうふうに見ていいわけですね。それから現状は一民族、三政府であるということについて、政府もそう認識をいたしますですね。
○大平国務大臣 パリ協定はその協定に書いてあるとおり理解しておるわけでございまして、あなたの仰せのように、第一条でございますか、ベトナム全体の民族の基本的権利を保障する、究極においてそこを目標にしておるという、ブループリントであると承知いたしておりますが、経過的には南の自決権を認めておるということでございまして、あの協定に三つの当事者がベトナムにおいて参加しておることは承知いたしておりますが、三つの政府とは書いてないわけで、私どもの認識は、とりあえずベトナムは南北の二つの国が経過的にあるというような理解でございます。
○川崎委員 いや、日本政府が承認をするとか承認をしないということじゃなくて、南ベトナムには二つの政府がある。それは協定にちゃんとサインされているのですからね。これはこの間の、これはアジア局長ですかな、金子委員に対して予算の分科会でしたかでやっておった、たいへん失礼なこういうばかげた日本の外務省の答弁なんというのは許されませんよ、ほんとうに。そういう認識だからこのベトナムへの日本のコミットのあり方というのはたいへん間違いをおかしていくわけであって、ベトナムは南と北に分かれておる、ベトナムにベトナム民主共和国があり、南に、日本政府が承認をしておるベトナム共和国、それから臨時革命政府があるわけです。現実には、ベトナム全体を見れば一民族三政府である。私は、最初に申し上げました一民族一国家一政府、それが協定の大原則である、方向である、パリ国際会議では、ベトナム自体の問題は自決でやる、しかも大国は介入せずに自決でいくんだということになった、そのことを認識できないというのであれば、これはたいへん問題だと思うのですね。だから、ベトナムに北を含めますと、ベトナム一民族の中に三政府があるという現状の認識ですよ。お尋ねしますけれども、ベトナム臨時革命政府という、あのパリ協定に調印をした政府は政府でないんだというふうに日本の外務大臣は認識されるのですか。
○大平国務大臣 三つの政権があるということ、この政権ということばを承認と結びつけたり、何か、いろいろ外交的に厳密に、どういう表現を使うかということですね。役人の方々はいろいろそういう点を問題にするわけでございますけれども、あそこに三つの政権があるというのは隠れもない事実でございまして、私ども別に二つの政権、臨時革命政府というのが政権でないという根拠も別にないわけであります。ただ、私が申し上げているのは、日本が今後ベトナムと取り組んでいく場合におきましては、パリ協定というものを踏まえてやっていきますということを申し上げておるので、それで必要で十分でないかと私は考えておるのです。
○川崎委員 ちょっと論点を変えましょう。 ベトナムに二つの国家をつくることはいけない、それをつくる方向にコミットすることはいけない、そのことはパリ協定の精神だと思いますが、いかがですか。
○大平国務大臣 いや、パリ協定を尊重して、それを踏まえてやりますと言っているわけでございまして、私の解釈とか、私の考えとか、川崎さんの考えでなくて、パリ協定に従ってやっていくということです。
○川崎委員 それでは、ベトナム民主共和国の承認問題について、二十三日の本委員会で、国家承認だ、こう条約局長は答弁をしておりますが、国家というのは政府と人民と領土と、こういうことになるわけでありますけれども、では、その国家というベトナム民主共和国の国家の領土はどのようになっておるのですか。
○高島政府委員 私がこの前の委員会で申し上げましたのは、北越、南越ともにそれぞれが各国と外交関係を持つことを容認しております。この事実を法的にとらえまして、私どもはやはり、経過的には——もちろん将来の理想といたしましては、パリ協定にうたっておりますとおり、全ベトナムが一つの国家になることをわれわれも希望するわけでございまするけれども、経過的に、南越、北越ともにそれぞれが各国と多角的な外交関係を結ぶことをお互いに容認しているというのが現状でございます。そういう現状から考えまして、北越も南越もそれぞれ現状では別々な国家として考えざるを得ない。法的に申しますと、そういうふうに考えざるを得ない。その場合に、ただいま先生の御指摘にございました、それでは国家も領域はどこだということでございますけれども、従来の伝統的な国際法の原則から、直ちにきちっとした回答を出すことは、ベトナムのような場合には非常に困難でございます。本来、私ども一般的に国家を承認する場合あるいは政府を承認する場合、その領域がどこどこというふうに、承認する側のほうではっきり画定するということは、従来もやっておりませんし、そのような慣例はございません。これはあくまでも承認される側の国が自主的にきめるべき問題でございまして、私どもはもともと、領域はこうこうであるということを言う立場にございません。またそういうことをしなければ承認ができないというものではございません。
○川崎委員 オーストラリアがベトナム民主共和国を承認しましたときに、チュー大統領が、国家としての承認ならよろしい、こう言っておるのですね。そのことは、いま条約局長が答弁をした方向と同じなんです。つまりベトナムに二つの国家をつくる、その方向なんです。だから、戦後の分裂国家に対する対応のしかたというのは、従来の国際法そのままではなかなかいけないということはもう明白なことであって、そのことを間違えてきたから、自民党政府はこれまで、中国、朝鮮、ベトナムについては全部修正を求められてきている。いまの条約局長の答弁の中からは依然としてそういう方向が、つまり修正をしていくという方向が出ていない。 ではお尋ねをしますが、ベトナム共和国の領域も、先ほどと同じ答弁になると思いますね。そこで、このベトナムの賠償について、当時の藤山外務大臣や当時の条約局長などがいろいろと答弁をされたものの結論を言いますと、将来統一されても、北側に対する賠償の問題は起きないんだ。つまり全ベトナムにおける唯一の合法政府はベトナム共和国である。藤山外務大臣の答弁を当時の議事録から見ますと、「統一された場合当然統一政府が双方の国際上の諸条約、諸協定を引き継いでいくことになるし、また、南ヴィェトナム側からは戦争中の関係はこれで一切終了したという意思表示を受けているので、この意思も引き継がれる訳であるから請求されることはないと思う。」こういうふうにきわめて明快に答えておるのです。ところが、その明快に答えている答えが、いま修正を求められているわけです。そのときには、全ベトナムの政府だと言った。しかし、いま条約局長はそれと違うことを言っておりますね。この答弁といまの条約局長の答弁とは明らかに食い違ってくる、こういうふうにいわざるを得ないと思いますが、その点をひとつ明確に御答弁いただきたいと思います。
○高島政府委員 日本政府がベトナム共和国と賠償協定を締結した当時もいまも、ベトナム共和国は憲法上全ベトナムを領域とするということを申しております。ベトナム賠償協定を締結した当時、わがほうは、そのようなベトナム共和国の態度、それからわがほうの認識を含めまして、ベトナム共和国は全ベトナムを代表するという認識でございました。また、北越につきましては、現在でも、憲法上あくまでも全ベトナムを領域とするというたてまえをとっております。しかし、先ほど申しましたとおり、最近におきまして、特にパリ協定締結後の事態におきまして、南越、北越ともに、そのような憲法上のたてまえにもかかわりませず、それぞれが別個の主体として各国と外交関係を結ぶということを実際上やっております。そういうベトナム共和国及びベトナム民主共和国の態度をわれわれ踏まえまして、そのような観点から、従来のベトナム共和国が全ベトナムを代表する政府であるという立場を変えざるを得ないというふうになってきたわけでございまして、これはわがほうがかってにそういうことをしているわけではございませんで、あくまでもベトナム共和国の側でそのような態度をとり、かつまた北越のほうでもそのような自分の立場を、憲法上の立場にもかかわりませず変えてきているということをわれわれの判断の基準にしているわけでございます。
○川崎委員 だから賠償のときに社会党は、現実に南北に分かれておる、そういう状況の中でそういう賠償のやり方をしてはいかぬ、こういってきつく指摘をし、この点については私たちは反対をしてきたわけですね。そのことが現実にいま問題になってきておる。だから先ほどの北のほうの問題についても、国家として承認をするということをいたしますと、これはたいへんな間違いになるわけであって、現にパリ協定というものを前提に考えますならば、南ベトナムのベトナム民主共和国については政府承認をやります、北ベトナムについては国家承認をやります、こういう形になるわけですか。
○高島政府委員 私ども日本政府がベトナムと初めて国交を結びましたのは一九五二年にベトナム国家が、当時ベトナム国といっておりましたが、ベトナム国家がサンフランシスコ平和条約を批准した時点でございます。そのときにおきまして、わが国はベトナム国を国家として承認したということでございまして、自来ベトナム、いまベトナム共和国といっておりますが、このベトナム共和国を国家として承認し、この政府との間に外交関係を結んでおるわけであります。
○川崎委員 詰めたいのですけれども、割り当てられた時間がきておりますから、最後にひとつ、これは繰り返しこれからもやりますけれども、さっきの復興援助の問題にもう一ぺん返りたいと思うのです。 これは昭和四十八年度の予算では、いま国会にかかっております予算では、十億円のインドシナ地域特別援助費というのが組まれておりますね。これを見てみますと、「インドシナ地域住民の民生の安定と向上に資するため、特別援助費十億円を計上」する、こういうふうになっているわけです。つまり、これはインドシナ地域ということですから、当然南北を分けない全ベトナムだ、こういうふうにまず私は認識します。それで間違いがないかどうかということが一つ。 それから三宅課長が今度ハノイに行くようでありますけれども、当然経済協力なり援助の問題なりというものも話し合われると思います。そういう基本方針というものをどう考えておるのか。それはあるいはそれ以前の問題だというふうに答弁されるかもわかりません。 それから三番目には、私がさっき、外務次官がラム外務大臣と会ったことについてちょっと言及した問題はここにくるわけですが、インドシナ地域住民の民生の安定、こうなりますと、ベトナム共和国、つまりサイゴン政府、チュー政権だけに、南に限っていえば北は切り離します、北は切り離して南に限っていえばチュー政権とだけこの復興援助の問題について話し合うということは、私はこれは協定自体にも反すると思いますし、またこの国会に承認を求めてきておりますインドシナ地域住民のため、こういう——ベトナム共和国への援助ということであればはっきりしますけれども、インドシナ地域住民、こういうことになっているのでありますから、臨時革命政府と、これはどういう形になるかは別としまして、原則論の問題として、援助なり経済協力の問題なりが話し合われる、あるいはそういう要望が出るというふうな場合には、私は当然この問題についても日本としては応ずべきであるというふうに思いますが、先般来の答弁を総合しますと、チュー政権とのみ交渉を持ち、臨時革命政府とは一切持ちません、こういうことを言っておりますが、そのことは、国会に承認を求めてきておるこの予算のたてまえからして、つまり説明の方針からして、私は反すると思います。 それらの点についてひとつ大臣から御答弁願いだいと思います。
○大平国務大臣 その十億円の問題は当然ベトナム全域を対象にいたしておりまして、南ベトナムだけじゃございません。仰せのとおり全体を対象といたしております。 それから三宅君派遣云々の問題でございますが、まだ先方からオーケーがきておりませんので、私どもといたしましてはなるべく早く先方の許可がきて接触を持ちたいと希望いたしておりますが、その場合は双方共通の諸問題について隔意のない意見を交換したいということでございまして、特定の問題と限っておりません。 それから、臨時革命政府なるものと接触を持つつもりかというと、そういうつもりはございません。
○川崎委員 接触を持つつもりはない。しかしいろいろな形で、それは直接のものでないにしても、いろいろな形で、つまり北側に対しては国交関係を結ぶ前にも、復興援助なり経済協力なりについては話し合おうというのですね。そうすると、国交が結ばれない限りは北に対しては復興援助の問題についてはコミットしないということなのかどうか。 それから二番目に、臨時革命政府のほうは、つまり政権は、南ベトナムにおける政府のあり方というものは、これは南ベトナムの人民自身がきめることなのですから、これはこれからの自決の方向を見守らなければいかぬわけでありますけれども、関係は結ばないにしても、そういう援助についても要求があり、要請があるという場合には応じますかどうですかということです。
○大平国務大臣 実際は国際赤十字社等を媒体にいたしまして実行してまいるわけでございますので、ベトナム全土に対しまして援助が効果的に行なわれることを私どもは期待しているわけでございまして、この援助問題につきまして日本政府と臨時革命政府の間で直接コンダクトを持つかと問われるならば、そういう考えはないと申し上げただけです。
○川崎委員 時間が参りましたから、最後に、私は冒頭に、アジアの心を日本政府はつかめないでおる、こういう点を申し上げました。それは具体的には、アジア外交のいろいろの問題についてもっと詰めなければいけないわけです。これは機会を求めまして、機会ごとにやっていきたいと思いますが、最後に、キッシンジャー特別補佐官が参りましたときに、報道を見ますとアメリカ局長が同席しておりますね。アメリカ局長が同席をしておるようでありますが、話し合った問題というのはインドシナ半島の問題であり、中国の問題、ところが同席をしたのはアメリカ局長。これは国民の立場からしますと、奇異な感じがするのですよ。つまりキッシンジャー氏と話し合ったことは、アジアの問題そのものよりも日米間の問題を話し合っておる。これは朝鮮半島の問題、私触れるつもりでおりましたけれども触れられなくなりましたのでこれは次回に譲りますが、その他東南アジア各国の各地域にあります日本の出先機関のあり方あるいはベトナム等でも、私はサイゴンでもいろいろなことを経験をしてきました。あるいは東南アジア各国を回ってみまして、私は日本の出先というのがアジアの心をほんとうにつかんでいないと思うのです。それはアジアは非常に複雑です。歴史的にも宗教的にも、経済発展の段階においてもいろいろ違いますし、また政権のあり方も軍事政権が多い、そういう中でどうアジアに対処していくかということはこれはもうたいへんいま大事な点であって、これらの問題を今後おいおい追及してまいりますけれども、なぜアジア局長が同席しなかったのか、そしてアメリカ局長がなぜ同席をしたのか、たいへん小さな問題でありますけれども、そこに一つのアジア問題というものを、日本の自主的なアジアという考え方ではなくて、日米関係でしかとらえていない。そしてそこから来る判断の誤り、あるいはそういう誤りについてはこれからまた具体的にやりますけれども、その点をひとつ最後にちょっと、時間をオーバーしちゃって次の質問者にはたいへん申しわけないのでありますけれども、ひとつお尋ねしておきたいと思います。
○大平国務大臣 外務省は四地域局を持っておりまして、地域局に配するに国連局であるとか経済局であるとか経済協力局というようなものを配して持っておるわけでございますが、私は日本にとりまして最大の課題はアジアだと思っております。したがって、各地域局は地域局の仕事をいたしますけれども、どの局もアジアというベースメントを忘れないでやっておるわけでございます。したがって、言いかえればどの局もアジアマインドでやっておるということなんです。 それからあのときにキッシンジャー氏との会談の際、アメリカ局長を連れていったというのは私が連れていったわけでございまして、あれはだれか記録係を連れていく必要を感じましたから連れていっただけでございまして、川崎さんが特に取り上げるほどの問題ではないと私は思います。
○川崎委員 終わります。
○藤井委員長 河上民雄君。
○河上委員 私は外務委員会に今度初めて属しましたので、大平外務大臣に御質問をいたしますのはきょうが初めてでございますので、少し初めにいま同僚の川崎委員からお話がありましたような全般的な態度について、御質問というよりも要望を申し上げたいと思っております。 いま川崎委員から指摘されましたように、今日一番大きな問題、緊急の問題になっておりますベトナムに対処する問題に端的に示されておりますように、かつてベトナム賠償問題で自民党政府がとった態度というものが、いま新しいアジア情勢の中で破綻をしている。そこをつじつまをつけるために非常に苦労しているということを見ましても、やはり外交というものは時々刻々の問題を解決することは必要でありますけれども、同時に長い目で見てアジアをどう見るかということを常に考えておかなければいけないのじゃないか。そういう御反省をぜひ持っていただきたい、こういうふうに思うわけであります。 少し昔の話になりますけれども、勝海舟の全集を読みますと、彼は日清戦争の直後生きておったわけですが、日清戦争の勝利にわいております当時の日本の風潮を苦々しく思って、こんなことをやっておるけれども、今度負けるのは日本の番だというふうに書いておるのであります。この勝海舟の予言が的中するのには五十年の歳月を要したわけであります。また皆さんの党のかつて総理、総裁になった石橋湛山氏が東洋経済の論説委員としてその誌上で活躍しておった大正十一年、だいぶ古い話でありますけれども、大正十一年に朝鮮、満州、台湾を捨てよという非常に有名な論説を発表されました。この石橋氏はそのとき、自覚せるアジアの民衆は必ずその満足の日を得るだろう。われわれにはいろいろ道があるようだけれども、結局二つの道しかないのであって、立ち上がったアジア民衆によってその独立を奪い取られるか、みずから進んで植民地を放棄してそしてアジア諸民族の信頼と尊敬をかちうるか、その二つの道しかない。どうせそういうことであるならば後者の道を選んだほうがいいではないかというのがその論旨であります。この石橋湛山氏の予言が的中するためにはわずか二十四年の歳月しか必要としなかったのであります。 私は、この最近のアジア情勢あるいは中国とアメリカとのいわゆる交渉、こういうような事態の中で見ておりますると、十年、二十年という時間は長いようでありますけれども、やはりその一つ一つのとるべき道が将来に非常に大きな災いを残す、あるいは間違いのない道を歩むということになるということをあらためて強く感じておるわけでありまして、その意味で、これは要望でありまするけれども、先ほど川崎委員が質問されましたベトナム問題につきましてもぜひ誤りのない道を選んでいただきたい、こういうふうに希望するわけでございます。 きょうは私に与えられました時間は非常に短いのであまり多くのことは質問できませんけれども、まず日中関係の具体化のスケジュールについて御質問をしたいと思います。 まず、これはすでにこの委員会でも論ぜられていることでありますが、平和友好条約を締結する時期、それから先ほど川崎委員は日ソ交渉について討議する内容を尋ねられたんでありますけれども、平和友好条約を締結する場合に、それに盛り込む内容についてどういうように大臣は考えておられますか、それをまず初めにお尋ねいたします。
○大平国務大臣 日中間の共同声明発出当時の合意といたしまして、日中平和友好条約を締結しようじゃないか、これは将来のこれから先の日中間の関係を安定したベースに置くために締結しようじゃないかという合意を見ておるわけでございまして、いつからやるかはまだ合意に達していないわけでございます。また内容につきましても話し合っておりません。これからわれわれが考究してまいる課題であると考えております。 おまえはどう考えておるんだということでございますが、大事な問題でございますので、どういう内容を盛り込むべきかという課題につきましては目下鋭意検討中でございまして、まだ国会で御披露申し上げる段階ではございません。
○河上委員 先日の新聞の報道によりますと、日本の町議会、村議会、しかも昭和生まれの方々によって構成される訪中団が中国を訪問いたしましたときに、中国の周恩来首相は、航空協定の締結を急ぎたいということを非常に強く強調しておられるのであります。昨年の日中共同声明の趣旨からいいましても、中国の指導者から非公式ではありますけれどもそういう意思が表明されております今日、日本政府においてもこれにこたえるような措置なり動きなりというものが必要ではないかと思うのでありますが、そういう点についていま外務省ではどういうようにしておられるか。また、この三月中に小川大使が初代大使として行かれるやにこれまた新聞報道で拝見しているのでありますけれども、一体こういう航空協定をどのレベルで行なうのか。そういうようなことについてお知らせいただければ幸いだと思います。
○大平国務大臣 航空協定につきましては、去年中国側に日本の案を提示いたしまして、先日中国側から対案の御提示がございました。それで、今朝予備交渉団を北京に立たせたわけでございまして、これから鋭意交渉を詰めてまいるつもりでございます。この妥結を最終的にはどういうレベルでやるかというところまではいま考えてないのでございますが、この交渉団はけさ立たせましたので、その交渉の経過を見まして判断しなければならぬと思っておるわけでございますが、私どもといたしましてはできるだけ早く妥結にもっていきたい。どういうレベルで仕上げるかということまでいま考えていないわけでございますが、できるだけ早く妥結にもっていきたいといま考えておるところでございます。
○河上委員 昨年、外務大臣も田中首相とともに北京に行かれまして、新聞によりますと直行便で二時間少しで行かれたというように聞いておるのでありますが、あのとき私はちょうどアメリカの大学の若い教授と話しておりまして、そのときに彼が、中国と日本というのは非常に近いんだなということを嘆声を漏らすように話しておりました。と申しますのは、ニューヨークとシカゴとの飛行機の時間が大体二時間ちょっとあるので、近代技術で短縮している距離というものを長年にわたって政治的な理由で妨げておったということを、私はあらためて痛感したわけでございます。いま大臣から、航空協定につきまして非常に具体的に進められていることに対して、ぜひこれを進めていただきたいと思う次第でございます。 次に、昨年の日中共同声明の第九項目で日中の交流の問題について触れておられます。「両国間の関係を一層発展させ、人的往来を拡大するため、必要に応じ、また、既存の民間取決めをも考慮しつつ、貿易、海運、航空、漁業等の事項に関する協定の締結を目的として、交渉を行なうことに合意した。」となっております。これと、最近キッシンジャー大統領補佐官が北京を訪れた後に発表されました米中共同コミュニケの後半に、貿易の拡大とともに科学、文化その他の交流を拡大する具体的な計画というようなことばがありますが、それと比較いたしまして、これはことばのニュアンスでありますけれども、交流に関しまして日本の場合はやや経済的な側面にウエートがあり、アメリカの場合はやや文化的な交流にウエートがかかっているような感じを受けるのであります。人的な交流はもとより、経済的な交流関係も深めることは重要でありますが、同時に百年の大計というものを考えた場合に、もう少し文化的な交流に力を注ぐべきではないかというような印象を受けるのであります。その点について大臣はどう考えておられるか。 最近、相撲が向こうへ行く、あるいは浮世絵が行くというようなことも聞いておるのでありますけれども、こういうような個々の人的な往来と同時に、もう少しそれを総合的にというか、一本の太い筋を通す意味で文化協定のようなものを結ぶ意思があるかどうか。特に、今後の日中がほんとうの友好を深めていくためにどうしても必要だと考えられます留学生制度とか、あるいは教授の交換とか、そういうようなことまで含めた協定を結ぶ考えはないか。古くは魯迅あるいは周恩来首相、そしていま活躍しておられる喬冠華氏あたりまで含めまして、中国の日本への留学生というものが日中関係に非常に大きな役割りを果たしておることを考えますときに、そういうことまでお考えになっておられるかどうか、大臣の御意見を承りたいと思います。
○大平国務大臣 政治外交、経済外交も大事でございますけれども、仰せのように文化外交というものが、これはひとり対中国ばかりではなく、世界的に非常に大きな役割りを持つような時代になってきたと思うのであります。いままで、どちらかというと政治外交、経済外交に力点が置かれておったわけでございますけれども、文化外交にもっともっとわれわれはエネルギーをさかなければならぬのじゃないかと考えております。 対中国の場合、それでは文化協定というようなものを結ぶ用意があるかどうかということでございますが、これを拒むつもりは毛頭ないわけでございまして、今後いろいろ交流を進めてまいりましてその必要が出てまいりますならば、そういう話し合いも拒むつもりは毛頭ありません。
○河上委員 それではたとえば留学生制度、教授の交換などについても将来やりたいというような希望を持っておられるかどうか、それを重ねて伺います。
○大平国務大臣 非常に望ましいことだと考えております。 〔委員長退席、西銘委員長代理着席〕
○河上委員 日中関係が正常化いたしましたとき各方面から私どもに寄せられました希望の一つに、中国に戦争の一つの傷あととしてそのまま残留してその後消息が不確かになっておる日本人の消息を確めてほしい、そういうようなルートができるんではないかという希望を持ってそういう問い合わせがよくくるのでございますが、外務省におきましてはこういう問題について、いまどういうように対処しておられるか伺いたいと思います。
○河野説明員 中国におります未帰還者等の問題でございますが、現在中国に最終の消息のございました未帰還者は約二千九百名ございます。このほか御自分の意思で中国に残留したいということで帰国しないと認定いたしましたものが千四十名ございます。また戦時死亡宣告によりまして死亡と認定いたしまして戸籍を処理いたしましたものが約一万三千五百名ございます。厚生省といたしましては、これらの三種類のものにつきまして名簿を作成いたしました上、外務省を通じて北京の大使館に送り、調査の促進をはかりたいと考えております。
○河上委員 東南アジアにおいてもこうした問題はまだまだ解決をしておらないわけでございますので、もちろんあまり昔の傷あとに触れるようなことは必ずしも好ましくありませんけれども、やはりこれを機会に中国側の気持ちを尊重しながら解決されることを希望したいと思うのであります。 そういう意味からいって一緒にこの際お尋ねしたいと思いますけれども、戦時中日本にいた中国人でなくなった方、強制労働などに服せしめられたためになくなった方、あるいは消息不明者の方の調査は当然日本側としてしなくてはならないと思うのでありますが、そうした問題について先方から調査依頼がいままであったことがあるか、また紅十字社を通じて何かそういうような問題についていままで報告あるいは接触をしてきたかどうか、その点をお尋ねしたいと思います。
○河野説明員 戦時中、日本内地で死没されました中国人労務者の問題についてでございますが、この問題につきましては中国政府から調査等につきまして日本政府に対して依頼があったことはなかったものと存じます。ただ民間ルートを通じましてこれらのものの調査につきましての要望があったということに承っております。
○河上委員 われわれはとかく自分の国の人のことだけを考えがちでございますが、その場合は常に相手側の同じような立場にあった人に対しても十分な配慮をすべきだと思いますので、その点をお尋ねいたしましたが、今後そういう点に十分留意されて日本人の消息不明者についてもできるだけ明らかにしていただきたいと思うわけでございます。 最後に、日中関係を進めていく段階で、先般田中総理、大平外相が北京を訪れて日中共同声明発表に努力されまして、それによって一つの新しい時代の出発ということになったと思うのでありますけれども、さらにこの内実を深めていくために周総理を日本に招待するというようなそういう希望を持っておられるかどうか。先般、先ほど申しました日本の訪中団に対しまして周総理は、条件さえ許せば早い時期に日本を訪問したいとの意思を表明しておられます。先般田中総理は中国において、日本の迎賓館が完成したらその第一号賓客として周総理をお迎えしたいというようなことを言われたやに新聞報道では伝えられておるのでありますけれども、私はこういう問題はやはり勢いというものがありますので、周総理がそういう意向を表明せられておりますこのときにあたって、日本側も周総理の訪日招待というものを真剣に考えるべきではないかと思うのでございますが、大平外務大臣のこの問題についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○大平国務大臣 仰せのように去年の九月の田中総理の訪中の際、非公式ではございますけれども周総理の訪日を歓迎する趣旨の御発言があったわけでございます。けれども、正式に政府から招待する手続はまだとっておりません。この問題につきましては今後われわれのほうで双方の事情をよく勘案の上考えていかなければならない問題と思っております。
○河上委員 これは非常に重要な問題でありますから当然慎重に取り組まれると思うのでありますけれども、迎賓館の完成というようなことではなく、この問題自体として真剣に取り組まれるように希望したいと思います。 実は現在の新しい情勢につきまして、アジア諸国の問題、朝鮮あるいはベトナムあるいは台湾条項、一九六九年共同声明における台湾条項の問題などにつきましてお尋ねしたいと考えておりましたけれども、すでに時間が参りましたので、日中関係の具体化のスケジュールにつきましてお尋ねをいたすにとどめざるを得ませんが、残された問題についてはさらに機会を改めてお尋ねしたいと思います。ただ私が冒頭に申しましたように、また川崎委員も強く指摘されましたように、いままで自民党政府がとってきた基本的な態度そのものの修正をいま迫られておるということを十分認識して、これらの問題に当たっていただきたいと思うわけであります。 ただ、最後に一つだけお尋ねいたしますけれども、朝鮮民主主義人民共和国の承認につきまして、先般われわれの同僚議員が質問いたしましたときに、貿易事務所を設置するというような御答弁があったわけですが、この貿易事務所の性格について、いまどういうことを外務省で考えておられるか。かつて北京にございました貿易事務所には、政府の役人が身分を変えておもむいていたわけでありますけれども、朝鮮民主主義人民共和国についても同じような形になるのかどうか、このことだけひとつお尋ねしたいと思います。
○吉田(健)政府委員 お答え申し上げます。 北朝鮮に対する通商代表部という問題につきましては、現段階ではまだ具体的に検討いたしておりません。
○河上委員 いまのお話ですと、先般貿易事務所を設置するというような御答弁もあったわけですけれども、それはかなり後退したように思うのですが、大臣、いかがでございますか。
○大平国務大臣 外務省の立場といたしましては、スポーツ、科学技術、文化、経済の交流を漸次拡大してまいるという方針でいっておるわけでございまして、経済の領域におきましての交流のために貿易事務所を設置するという御提案は、どこからもまだ接していないわけでございます。どういう場面でどなたが言われたか私よく存じませんけれども、外務省に関する限り、まだそういう御相談は受けておりません。
○河上委員 わが党の安宅議員の質問に対しまして、アジア局長が答弁されておるように拝見しておるわけですが、もう時間が参りましたので、この問題はさらに詰めたいと思います。私の質問はこれで終わりますけれども、いまのはちょっと食い違いがあるようなので、これについては少し留保させていただきたいと思います。
○吉田(健)政府委員 ただいまの御質問は、予算委員会の分科会で出た質問でございまして、これに対しましては私は発言いたしておりません。通産省の担当局長から、来年度予算に北朝鮮に対する、ジェトロだったかと思いますが、調査費的なものがついておるのが何であるかという関連で出た問題でございまして、貿易代表部とか通商代表部というところの話まで進んでおりませんし、私はその趣旨の発言をした覚えはございません。
○河上委員 それでは、時間が超過いたしますので、なおこの問題につきましては、後にはっきりさせていただきたいと思います。 以上をもって私の質問を終わります。
○西銘委員長代理 深谷隆司君。
○深谷委員 私は、いま非常に大きな課題になっております日中航空協定について、大臣に伺いたいと思うのです。 御承知のように、田中総理が訪中をして日中国交回復はきわめて敏速に行なわれたわけであります。その中で、特に日中の航空協定については、できるだけすみやかに、しかも最初にこれを行なうのだというような意向が盛られてきたわけでございますが、あれ以来五カ月を経過している今日、どうもこの日中航空協定の締結がおくれている、そういう感じが免れないと私どもは思うわけでございます。きょうも日本側の交渉団が羽田を立って、この問題のために、事務レベルの折衝でありましょうけれども、出発をいたしました。今日の世論などをながめてまいりましても、一体日中航空協定の締結がどういうふうになるのだろうか、いつごろでき上がるのだろうかと、そのめどについて相当の関心が高まっていると思われるわけですが、大臣はこの締結のめどについて、あるいは見通しについて、どのようにお考えになっておられるか、まずその点から質問いたしたいと思います。
○大平国務大臣 航空協定の締結がたいへんおくれているという御指摘でございますけれども、私どもそう考えていないのでございまして、さっそく去年から私どもの案を先方に提示し、せんだっては先方からの対案が示されたわけでございまして、事柄は順調に進んでいると私は考えております。けさ出発いたしました交渉団の仕事は、双方の案を突き合わせまして、まず案文を詰めていくということが第一でございます。問題は付表にある路線をどのようにあんばいしていくかということになろうと思うのでございますが、双方十分の理解をもって仕上げなければならぬわけでございまして、私はそう遠からずこの問題についての結論は出したい、また出し得ると考えております。
○深谷委員 日本国際貿易促進協会の萩原専務理事が二、三日前に記者会見をいたしまして、その中で、中国の要人との会見において、台湾との航空路線の問題が解決をされないと、特に今日のように羽田に台湾の飛行機が飛来をしておるような現状の中で、中国の飛行機が行くという航空協定を結ぶということはきわめて困難であるというような意味の記者会見での発言があったわけでございますが、これについては何か大臣のほうに、もしくは外務省のほうに、それらについての報告といいましょうか、何らかの話があったかどうか、ちょっと伺いたいのです。
○大平国務大臣 国貿促ばかりでなく、各方面からそういう問題の指摘はございますが、私ども問題の所在をよく承知しているつもりです。
○深谷委員 萩原専務理事の感触では、台湾との航空路線の問題がケリがつかぬとなかなか困難だろうというような感触をもって帰ってこられたような印象でございます。このほかにも、いままで、特に最近中国に渡ったさまざまな人たちの話を聞いてみましても、台湾の航空路線の問題がかなり日中航空協定に影響があるやに受けとめている向きが多いと思うのですが、この点について、大臣はどのような感触を持っておられるか伺いたい。
○大平国務大臣 日台関係というのは、中国から申します場合と日本から申します場合とは全然立場が違うわけでございまして、私どもは、従来非常に濃密な関係が実態上ございますので、できるならばこれを引き続き新しい日中関係をそこなわない範囲内において維持したいという希望を持っておるわけでございまして、それに対して中国側がただいまのところ理解を示してくれておるわけでございます。したがって、日台関係の実務関係の維持は今日までどうやら平穏に維持することができたわけでございます。この日台関係の実務関係の維持という中に日台航空路線の問題もあるわけでございまして、そういう性格のものとして私どもは理解しておるわけです。つまり、私どもとしてはこれを維持したいという希望を持っておる。しかし、それは新しい日中の関係をそこなわない、日中の信頼関係をそこなわないというワク内において維持していきたいということを考えておるわけでございまして、これは日本側の措置すべきことでございまして、中国側はそれを承認するとか承認しないというお立場ではないわけなんでございます。そういう問題の性格を十分踏まえた上で私どもとしては処理していかなければならぬ課題であると思っておるわけでございます。つまり、これはいわばネゴシエーションの問題でないということでございます。日本側が新しい日中関係のもとにおいてどのように措置するか、それを中国側がどう理解するかという問題でございまして、交渉すべき性質のものであるとは私は考えておりません。
○深谷委員 最近の報道その他もろもろのものを見ますと、いま大臣が言われたような形でなくて、むしろ中国側の意向としては、どうも日台の航空業務というものがやはり大きな障害になっているというようなニュアンスがひんぴんとあらわれているような感じが私どもはしているわけであります。大臣のいまのお話でいけば、それほど重大な問題じゃない、必ず順調にいくだろう。私たちも順調にいくことを願っているわけでございますが、しかし、どうも最近流れるニュースを検討してみると、この台湾問題というのはかなり微妙に影響していると思わざるを得ないような感じがするわけでございます。 そこで、もう少し具体的に大臣のお考えを伺いたいのですけれども、中国側が考えている台湾から来る飛行機の問題については、日本と台湾との航空業務は現在はともかくとして将来はやめてほしいという方向にあるのか、あるいは一部に言われるように、たとえば羽田で台湾の飛行機と中国の飛行機が一諸に並んでいるようなそういう状態は、新聞なんかでは漫画であると言った中国の要人がいると書いてありましたが、そういう意味で難色を示しているのか、一体どっちなのか私どもちょっと判断しかねるわけですが、その点について一体大臣はどのようにお考えになっているのか。
○大平国務大臣 航空協定の問題もその他の協定の問題も、何よりも基本的には、日中間に国交が開かれて、中国政府と日本政府との間で取りきめる問題でございまして、それにふさわしいものでなければならぬと思うのであります。つまり、それが本体なんでございます。深谷さんが指摘されている日台関係の問題は、いわば日中関係の本体ではないのです。これは日本側が従来いろいろ関係がございますので、新しい日中関係に支障のない限りはひとつ維持いたしたいという希望をわれわれが持っておるわけでございまして、その希望はただいままでのところ中国側も理解を示してくれておるという微妙な関係にあるわけでございます。だから、そういう問題として航空協定に臨んでおるわけでございまして、航空協定の本体は中国と日本との間の航空協定でございまして、日本と台湾との間の航空路線の問題ではないわけなんでございます。これは、繰り返して申し上げますけれども、私どものほうの希望をどのようにして平穏に実現するかという日本政府の問題として非常に考えておるものでございますので、深谷さんにおかれましても、航空協定の本体は日中間の航空協定なんでございますから、そのような御理解をまずもってお願いしたいと思います。
○深谷委員 日本と中国との国交関係の本体は、もちろんいま言われたような形で理解をすべきだと思うのですが、現実の問題としまして、いまの航空協定を締結しなければならぬという重要な時期、しかもどの国を取り上げましても、航空協定を結ぶというのは国家の非常に大きな権益でございますから、これがスムーズにできるかできないかということは、ひいては日中国交関係の将来にまで影響することをやはり考えなければならぬと思うのです。ですから、現実の問題として、中国の要人の方たちが、台湾の飛行機が入っているような状態の中ではどうもそれはできないよと言っているような発言が現にございますから、そういう点を考えた上で、実際に現在のような形のままで中国で理解をしてくれると判断がつくのかどうか。もしつくとしたならば、それについての何らかの根拠がなければおかしい。いままでの経過の中で具体的にそういうような問題についての話し合いでもあったのかどうか、そういう点も含めてひとつお答えを願いたいのです。
○大平国務大臣 新しく開かれました日中関係が非常に大事なんです。だからそれをそこねたらいけないわけでございます。そしてそのベースの上に立って航空協定が締結されるわけでございまして、これが本道でございますから、それにはどんなことがあってもその本筋は守り抜くのが当然な私の任務だと思っておるのでございます。日台関係は、つまり日本側の希望としてそういう希望を持っておる。しかし、その実行は、日中関係をこわしてはならぬというワク内において日本の希望をどういう方法でどの程度まで満たせるかという問題は、私どもが考えなければならぬことで、北京に考えてもらう問題ではないのです。だから、これは私が申し上げたように交渉の問題ではございません。日本政府が新しい日中関係を考えながら措置すべき問題であって、そしてそれは同時に中国側に御理解をいただきたいという希望を持っておるということなんです。たいへん歯切れが悪いのですが、これはそういう性質のものであるということを深谷さんに御理解をいただきたいと思います。
○深谷委員 非常にデリケートな問題であることは私よく承知しておりますから、あまりどうもその点について突き詰めて考えてもあるいは質問しても平行線をたどると思いますけれども、しかし、現実の問題として、先方がそういう問題がけりがつかぬとどうも手を打たないのだという空気がひんぱんに流れているものですから、それだけに私たちは非常に心配をしているわけです。 そこで、もう一度視点を変えてお尋ねしたい、こう思うのですが、日本としてはこれは私どもがお尋ねするまでもないかもしれませんが、台湾との今日までの航空業務というのはこのまま継続したい、そういう前提に立ってこれを考えていくという意味なのか、もう一回それをお尋ねしたい。
○大平国務大臣 毎日毎日千人内外の方々が台湾と日本との間を往復いたしておるわけでございまして、これは隠れもない事実なんでございます。で、でき得るならば、日台間の空路というものも新しい日中関係をそこなわない範囲で維持したいという希望を私は持っております。
○深谷委員 この前大平大臣が中国に行かれたときに、日中国交回復によっていわゆる台湾との平和条約は消滅した、もろもろの条約については失効したこういうようなお考えでございました。そうなると、日本と台湾との今日までの航空業務については、何らかの新しい取りきめをするとかいうような方法を考えなければならないのではないか、こう思うのですが、あるいは事実問題としてこのまま続けていくという考え方もあるかもしれませんけれども、この点についてはどうお考えなんでしょうか。
○大平国務大臣 新しい航空協定を結ぶ道はございません。台湾の航空会社と日航との間の契約で運航いたしておるわけでございまして、発着につきまして運輸大臣がその接点で許可しておるというような、実際上の措置で動いておるわけでございまして、それ以外に道はないわけでございます。
○深谷委員 きょう十時二十分に出発をしたという日本側の交渉団、これは外務省のアジア局参事官を団長とした一行の方々ですが、これは事務レベルでいろんな話し合いをするだろう、こう思うのですが、どの程度の点まで中国側と話し合うように指示をして、どういうような権能を備えて行かれているのか、ちょっと伺いたい。
○大平国務大臣 まず日中相互の航空協定の案文があるわけでございますから、これを突き合わせまして、前文から一条、二条とずっと一致した案文に詰めていかなきゃいかぬわけでございます。私はそれはそう困難な作業ではないと考えておりまして、今度の交渉団にまず第一にそれをお願いしてございます。 それから第二点といたしまして、日本の空の事情、空港の諸条件、そういったことについて中国側に十分、いろいろ御説明して理解を求めておくということもやっていきたまえというようにいたしてあるわけでございまして、それ以上の権限を与えてありません。
○深谷委員 先ほどのお話にまた戻って申しわけないのですが、今度の事務レベルでの折衝をするために行かれた交渉団と中国との話し合いの中で、おそらく台湾の航空路線の問題が出てくるのではないか、こう思うのです。この場合にはどういう形でその話を進めるのか、場合によっては、状況を受けとめるために、様子を見るという意味も含まれているのか、あるいはそれ以上の話をするということもあるのか、お尋ねしたいのです。
○大平国務大臣 それは先ほど申しましたように、この問題は交渉の問題になりませんので、今度の交渉団はいま申しましたようなことをやるわけでございまして、日台間の航空の問題につきましては、あくまで日本政府の問題でございますので、北京政府との間に交渉すべき性質のものではないと心得ておるわけでございまして、これはいずれかの段階で日本政府が決断しなければならない課題であると思っておるわけでございまして、今度の交渉団の任務ではありません。
○深谷委員 まあ国交というものはなくなったのですが、台湾との関係においては交流はこれからも続いていく。現に日本人が相当数おりますし、出入りもしておりますし、企業関係、経済関係も継続をしているわけでございます。そういう点では台湾と日本との航空業務というものはこれからも維持していかなければならぬと思うわけですが、先ほどから何回も申し上げたように、残念ながらそこのところはあまりかみ合わないのですけれども、中国側の意向としては、どうもそういう状態のままでは締結はしにくいというような話になっている。そこで私どもは、こういうような問題についてはやはり高度な政治的な話し合い、高いレベルでの話し合いというものが今後必要になってくるのではないだろうか、こういうような予測を一応持つわけでございます。今後の成り行きを見ないとわかりませんが、いま中国側がいろいろ言っていると伝えられていることも、あくまで個人の感触やら憶測の域を出ておりませんから、そのことにあまりこだわってものごとを論議するということには問題があるかもしれませんけれども、しかし、私どもの一般的な判断としても、やはり政治的な話し合いというものが将来何らかの形で必ず必要になってくるのではないだろうか、こういうように考えるわけでございますが、そういう場合には、この日中航空協定というものはきわめて重要な、日中国交の一番最初の足がかりであるからという観点に立って、場合によっては大平外務大臣がみずから中国に渡って話し合いをするというようなことも考えておられるかどうか、お尋ねしたいと思います。
○大平国務大臣 交渉の問題でないということを深谷委員に先ほどからたびたび申し上げているわけで、いかなるレベルにおいても交渉すべき性質のものであるとは私は考えていないわけでございます。この問題は日中双方の信頼関係の問題でございますので、私ども一番大事なことは、変わらない信頼関係を維持していくということを軸にいたしまして、この問題の処理を日本政府の責任においてやらなければならぬ、そういう問題でございますので、私どもが北京に伺いまして交渉をするという、そういう性質の案件ではないと御承知願いたいと思います。
○深谷委員 一般に流れている憶測を根拠にしてものを言うということには問題があるかもわかりませんが、私どもがやはり受けとめる感じとしては、政治的な話し合いというものがないと、現状のままでそのまま進めていくということはどうも困難なような、そういう気持ちがするわけです。交渉ではないから、相互の理解云々という話もありましたけれども、現実にそういう問題が起こるかもしれないということは十分予測が立つわけで、そういうような場合には日中の国交関係の将来を考えて、まあみずから行こうというようなお気持ちは持ってほしいと私はそう思っておりますが、この問題はその程度にさせておいていただきます。 この際、あわせてお尋ねをしておきたいのですが、今度の交渉団の話し合いの中でも出てくると思いますが、以遠権の問題ですね。これについては日本側がそのメリットを考えて以遠権を要求する、中国側も要求をするということになるだろうと思うのですが、日本側としてはその以遠権についてはどのように考えておられるのか、お話しを願いたい。
○吉田(健)政府委員 以遠権につきましては、いま御指摘のとおり国益上非常に大きな問題がございまして、日本側の立場、また中国側の立場、それぞれ希望路線なり希望の以遠権があるわけでございます。これはこれから話し合って、最も円満な合意を見ようということでございますので、その具体的なものについては、ただいまの段階では差し控えさせていただきたいと思います。
○深谷委員 まあ以遠権というのはたいへん重要な問題でございまして、これによって相当な国益にかかわるわけでございます。私どもとしては、大体このくらいのところまでというような御判断があるいはお話が出るかと期待をしておったのでありますが、これから交渉団が行って交渉をするということでございますから、これ以上申し上げることは避けなければならないというふうに思いますから、これはひとつまた、おいおい話せる範囲で私どもにも伝えていただきたい。たとえば私どもが考えるのは、上海ないしは北京から中近東のほうに行ったり、ヨーロッパのほうへ行ったり東南アジアのほうへ行ったり、あるいは向こうから来る飛行機は、わが国からまたさらにアメリカあたりに回るとか、いろいろその動きが出てくるであろうと思いますが、これは先ほども申したように、たいへん国益に関することでございますから、交渉の過程では明らかにできないということはよくわかりますけれども、今後の状況の推移に従ってどうぞそういうものを明らかにしていただきたい、このように思います。そこで、三月にはいよいよ中国と日本とで大使が交換をされる。日中航空協定の締結がいつごろになるかちょっとわかりませんけれども、そういうような問題を一応別にしても、国交回復して初めて大使が交換されるという歴史的な意義を考えますと、田中総理が直行便で中国に参りましたように、できれば双方の大使がほかを経由しないで直行便で乗り入れてくる、日中友好のデモンストレーションといいましょうか、そういう形のものが望ましいと思うのですが、この点について外務大臣どうお考えでしょう。
○大平国務大臣 双方の大使の赴任に協定の締結が間に合えばいいわけでございますが、深谷さんおっしゃるようにそういうことが望ましいと思いますけれども、そういう運びにまいりますかどうか、いまのところまだ予断を許さない段階であることをまず御承知願いたいと思います。 それから、もしそういうことにならない場合にどうするかという問題でございますが、私といたしましては、そういう段階におきまして中国に赴任する大使に特別の便を用意するというところまでは考えておりません。
○深谷委員 ひとつそういうことも含めて、ぜひこれが実現をされるように、これはきわめて簡単なようですけれども、将来にわたって、あるいは歴史的な意味において実は非常に大事なことだと私は思っております。どうぞそういう点をお考えいただいて、ぜひ直行便で大使が相互に乗り入れるような格別の御配慮を要望しておきたいと思います。 次に、日中国交回復以降、台湾との関係において新たに亜東関係協会が設置をされました。その後の動きについて、あるいは現状についてお話をいただきたいと思います。
○吉田(健)政府委員 台湾から参っております亜東協会はよやく事務所をつくりまして、民間レベルの貿易その他の仕事を開始しておるという現状でございます。わがほうは、これに見合うものとして交流協会を台湾のほうに設置してそういう措置をとっておる、かような状況でございます。
○深谷委員 この事務所の設置場所に関連があるのですが、これもちょっと問題になっておりますが、旧駐日大使館あるいは旧領事館、これらの使用に関連してどのような御配慮をなさっているか。
○吉田(健)政府委員 先方の亜東協会は民間の団体でございますので、外交財産の関係の問題はいまのところ起こっておらないわけでございます。
○深谷委員 この亜東関係協会の事務所は、将来あるいは孤立した建物を持つような場合もあるでしょうが、そういう場合に、後に問題になると思うのですけれども、台湾の旗、青天白日旗を掲揚するというようなことになってくるんじゃないかと思うのです。その場合は、日本政府としてはこの台湾の旗の扱いをどういうふうにお考えになるか。
○吉田(健)政府委員 ただいま申し上げましたように、亜東関係協会は民間の機関でございますので、旗を揚げるというような問題は起こっておりませんし、現時点でも揚げておらない、また揚げないという了解でわれわれは考えておるわけでございます。
○深谷委員 揚げないということであれば特別なトラブルもないかとも思いますが、関連してちょっとお尋ねしておきますが、かつて昭和三十三年長崎で、当時中共の国旗を侮辱したということでえらい騒ぎになったことがありましたね。それと全く逆の立場がこれから台湾の旗について起こり得るだろう、こう予測するわけです。その場合に、台湾の青天白日旗というものをわが国はどういう形で考えるかということは非常に大事なことだろうと思うのですね。その点についてどうでしょうか。
○吉田(健)政府委員 わが国と台湾との外交関係がございません現段階におきましては、日本政府は中華人民共和国の旗を国旗と認めますが、台湾の青天白日旗なるものは、法律的には国旗という取り扱いにはならない。ただ、ただいま御指摘のようなトラブルがかりに万一起きますと、これは政治的には問題になり得るというふうには受け取っております。
○深谷委員 国家の象徴としての尊厳に関するものではないという理解でいいと思いますが、ただ昭和三十三年に起こった長崎の当時中共の国旗に対する問題というのは、その後日本と当時の中共側との貿易関係にきわめて重大な影響をもたらしたわけです。当時の新聞のコピーなども持ってきておりますけれども、日中貿易は停止され、損害もかなり大きなものでありました。そのときは、日本は中共とは国交を回復していないときでありますから、いまあなたがお答えになったような、つまり台湾の旗に対する感覚で受けとめていたのでしょうけれども、しかし現実には経済的な停止を食って、相当大きな打撃を受けた。そのときに岸総理は、こういう言い方をしています。「相互に友好関係のある国の国旗を尊重することは、国際法上当然だが、政治的、外交的関係のない国の国旗を外交関係を結んでいる国と同等に扱うことは、国際法の原理に反している。国旗損壊罪は、独立国として互いに承認しあっている国についてのみ適用される」云々と、このように発言をされておりまして、この発言もかなり向こうを刺激して、それが経済的な貿易停止措置などに発展をしていったわけでございます。こういうことを考えてまいりますと、そうした事態はこれからも十分展開されるのじゃないだろうか、こう想像されるわけです。現に、先ほども申し上げたように、台湾との国交はとだえたけれども交流は続いている。特に経済的な関係、あるいは日本人が現にそこに住んで商売をやっている。そういうような実際の姿を考えてみると、この国旗の扱いというのはきわめて微妙になってくるだろうと思うのです。これについてどうでしょう。
○吉田(健)政府委員 問題は、御指摘のとおり全く重要な点であることは、私たちも十分理解いたしております。そういうことの起こらないように、万全の措置をとりたいと思います。かりに万一そういうことが起これば、これは非常にまずい政治、経済的な関係の問題が起こるということを先ほど申し上げたわけでございます。
○深谷委員 万全の措置を講ずるというそのことばに期待しますけれども、現実に起こってくるとなかなか万全の措置はできないですよね。国の旗を侮辱した場合に、国内法では別に処分はないのですけれども、国際礼譲は遺憾の意を表明するとかいろいろやるわけですね。しかし、国交のない国に対して国際礼譲に基づいて遺憾の意を表明してしまうと、暗黙のうちに国交を認めてしまうといったような弊害もあるし、この点については非常に問題があると思いますが、同時に、こういう問題が起こったときの言い回し方、あるいはそれに対する説明のしかたというのは非常にむずかしい。それによって、昭和三十三年のときのような貿易関係とか、あるいは台湾と現実に交流しているわけですから、さまざまの問題が引き起こされる可能性がありますから、万全を期するというそのことばに期待すると同時に、慎重なる態度でこれから臨んでいただきたい。このように要望しておきたいと思います。 あわせてこれはたいへんむずかしい問題で、大臣にお聞きしてどういうお答えになるかわかりませんけれども、台湾の呼称ですね。国交があった時代には公式に中華民国とかいろいろ呼んでいたわけです。その後は公式の呼称についてはどうもはっきりしていない。最近の文書なんかを見るとなるたけ呼ばないようにしている配慮がうかがえるのですけれども、やはりこれから先の問題を考えるとこの呼称についても政府の一つの立場、見解というものを出していかなければならぬと思うのですが、これについてひとつお話しください。
○吉田(健)政府委員 台湾とわが国との関係につきましては、御指摘のような経緯がありまして現在に至っているわけでございますが、ただいま日本政府のとっております立場といたしましては台湾ということでやっておる次第でございます。
○深谷委員 公式の場で台湾ということばを呼称として使うということですか。
○吉田(健)政府委員 行政上の措置といたしましてはそういう名義を使っております。
○深谷委員 日中国交回復後の在日中国人、日本にいる中国人の国籍の問題、これは非常にむずかしい問題で今後の課題だろうとは思いますけれども、 〔西銘委員長代理退席、委員長着席〕 国交が中華人民共和国と今度はできたわけですから、本来からいえば日本にいる中国人は国交を行なっている国の国籍に直すべきなんですけれども、これはそう簡単にいかない。そこで、たとえば日本にいる中国人が原則としては中華人民共和国の国籍を取得するというたてまえですが、自分はそれを取りたくないというような場合、これは法律上考えてみると無国籍者になってしまう。これを一体どういうふうにこれから処置していくお考えなのか。これからの検討の課題ですから答えの出しようがないという場面もあるかもしれませんが、その点についてちょっと……。
○吉田(健)政府委員 現在日本に在留しておられる台湾系あるいは中国系の方々の法的な地位なり取り扱いに関しましては、法務省がこれを専管して処理いたしておりますが、私たちの見ておるところでは元台湾人、戦前からおられた方は法律第一二六号という法律によりまして在留資格と関係なく日本に在留できるようになっております。また現在いわゆる大陸あるいはその他から来ておられる中国人で日本におられる方々は、それぞれの御希望で国籍を決定されると思いますが、外人登録法上は中国という名前で登録されておるようであります。具体的にどちらのどういう。パスポートを持っておられるかというのはそこで問題残るかと思います。いずれにいたしましても日本政府の考え方としては、本人たちの理由によってできた事態ではございませんので、従来に引き続きその地位なり身分を保障するような措置をできるだけ講じておる次第でございますし、そういう方法が今後も続けられていく、かように了解いたしております。
○深谷委員 いまの在日中国人の国籍の問題については今後まだまだ問題が残っていると思いますけれども、現実に中華人民共和国の国籍を取得したくない。そして従来どおり日本にいたいという人たちも多いわけですから、それらの人たちの保護に対してはできるだけ人道的な保護も含めて御配慮されるように特に要望しておきたいと思います。 時間がありませんのでこれで終わるわけでございますが、いままで大臣並びに局長のお話を伺いながら、私自身としてはまさに今後の台湾との問題を含めた日中問題というのは重要な課題であるし、問題が山積しておるのではないかと思われるのです。昨年田中総理が訪中をしてすみやかに日中国交回復をいたしたこの功績は、大きく私たちは評価いたしておりますが、それに伴っての台湾のさまざまな問題、山積をしている問題についてはどうもまだまだ解決をされていない向きが多いように思われます。これからの日中関係を考えていく場合に、これらの問題についても慎重かつすみやかに検討を加えて、日本の定めといいましょうか立場というものを守っていかないと、せっかくの大きな功績がそういうような問題を中心にひびが入ったりするおそれがありますから、どうぞそういう点については格段の配慮をされるように強く要望をいたしまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
○藤井委員長 寺前巖君。
○寺前委員 戦争が終わっていよいよ二十八年くらいになっているわけです。アメリカ軍は日本へ上陸して戦前や戦中、戦後の一定期間の日本の公文書や発禁本あるいは戦後の場合でいうならば、検閲した文書その他国家の活動の姿を見ることのできる貴重な文書や図書がアメリカに持ち帰ったままになっております。これは日本国民が平和国家を建設する上できわめて貴重なものであるので、また国際的な条約に照らしても、陸戦法規の第五十三条、国有動産の問題の中にも書かれておりますが、「一地方ヲ占領シタル軍ハ、国ノ所有二属スル現金、基金及有価証券、貯蔵兵器、輸送材料、在庫品及糧秣其ノ他総テ作戦動作ニ供スルコトヲ得ヘキ国有動産ノ外、之ヲ押収スルコトヲ得ス。」という、これは国際的な約束ごとですが、それを踏みにじって今日に至るまでアメリカがそれらの文書と図書を持っていっているということについては、いつまでもこのまま日本の国民として放置するわけにはいかないと私は思います。この件に関して昨年の三月、昨年の五月に参議院や衆議院の国会の場においても米軍が接収していった文書、図書などについてすみやかに返すように調査をし、その返還交渉に当たれということが論議になりました。当時の総理大臣は外務省が窓口になってその交渉に当たらせる旨、あるいはまた総理府の総務副長官もそれと同じような、返還に積極的に乗り出すという御回答をなさっております。私は、きょうは外務大臣あるいは総理府副長官あるいは図書館長その他の関係の方々から、それ以外に積極的にどのような返還のための作業をしてきたのか、現在どのような交渉がなされているのか、現状がどうなっているかについてここでお話をいただきたいというふうに思います。外務大臣からひとつお願いします。
○大河原(良)政府委員 昨年春の国会におきます占領中に米側に押収されました図書、公文書等の問題につきまして、昨年の五月以降、米側に対しまして、接収されました図書、公文書等の米国における保管状況につきまして、まず調査方を要請いたしますとともに、返還の問題について当たってまいりました。当初、米側は、これらの図書、公文書等の接収後かなりの時間がたっていること、それから保管されている場所が、アメリカの議会図書館をはじめ各地に分散していること等の理由もありまして、この保管状況の調査は必ずしも十分ではございませんで、また、これらの図書、公文書等のほとんどがすでに米国の財産として登録されているということもあり、返還についてはいろいろな問題があるということを述べておったわけでございます。その後、国内的には、国会図書館はじめ関係当局といろいろ御相談をいたしながら、米側と話を進めてまいっておりましたけれども、最近になりまして、米側のほうから、次のとおりに、関係図書、文書等の保管状況、それから返還に対します感触等を提示してきております。それによりますと、戦争中に発禁になりました図書千八百三十六冊、そのうちの相当数がアメリカの議会図書館に保管されているというふうに見られる。今後一、二カ月中にはこれらの図書が具体的にどこに所在しているかということを発見することが可能であると思う。しかし、これらの図書は議会図書館の蔵書として目録に登録済みの可能性が大きいので、原本そのものではなく、マイクロフィルムの形で返還することになるのではなかろうか。ただ、その返還の際に、マイクロフィルムの提供に際しては、日本側にフィルム化の費用をお願いすることになるであろう、これが図書関係でございます。また、旧内務省警保局関係の公文書約三百点につきましては、すでに米国の議会図書館でマイクロフィルム化を完了いたしておりますので、無償で返還するように努力をいたしましょう。なおそのほかに、米国の議会図書館には日本の旧陸軍関係の文書が約百冊ありますので、この分についても旧内務省警保局関係のものと同様、返還可能であろうと考えられる。他方、メリーランド大学に現在、図書六万冊、新聞一万三千冊及び定期刊行物約一万冊が保管されておるが、これらはいずれも、発行後に検閲のために総司令部に提出されたものであるため、その多くは日本に同一のものがあると推定されます。また、これらのほかにメリーランド大学には、発行前に検閲のため総司令部に提出されたものが、ごく少数でありますが、保管されておりますけれども、その具体的数字は明らかにつかめておりません。さらに、マッカーサー記念館にも若干のものがございますけれども、これにつきまして、総司令部が作成したマッカーサー関係の英文資料だけであって、日本の図書も公文書もこの記念館には保管されていない。それから、ワシントンにありますアメリカの国立公文書館には、米国の公文書、たとえば占領軍総司令部の資料等は保管されているけれども、日本の図書は保管されてない。こういうことが米側との接触によりまして明らかにされております。
○寺前委員 幾つかの点について聞きたいのですが、まず、いまのお話の中で、図書千数百点について、マイクロフィルムに写したものならば、そしてその費用はこちらで持つならば返してもよろしいという話がありました。私は、おそらくこれのことだろうというふうに想像がつきます。私の手元にあるこれは、明治二十一年から昭和十九年に至るところの、内務省警保局の「禁止単行本目録」−要するに発禁本の目録をつくっていて、この中で、国会図書館で現在持っていないところの本を調べてアメリカ側に要求した千数百点の内容を、向こう側からそういうふうに返事をしてきたんだと思いますけれども、そういうふうに解釈していいですか、図書館長。
○宮坂国立国会図書館長 お答え申し上げます。 前回、前図書館長が御報告申し上げましたあと、関係者が集まりまして、ただいま先生がお述べになりました、わが上野図書館を継承いたしました国立国会図書館の目録になくて、警保局の発行いたしました目録に載っておるもの、すなわちアメリカ議会図書館にあると推定されます図書の洗い出し作業をいたしまして、その結果、安寧秩序に関するものが千三百六十三、風俗に関するものが四百七十三、計千八百三十六冊の本がわれわれといたしましては非常な関心を持つ図書ということでございますので、その結果を外務省に申し上げまして、その返還方をお願い申し上げたわけでございます。
○寺前委員 私はこの目録に、図書館が要求したというものを赤マルでつけてもらった。これで昭和十年から十八年にかけての宗教関係に対する発禁状況を調べると、確かに戦争中の宗教関係に対する弾圧の状況がよくわかります。特に昭和十六年ごろの宗教関係の発禁の状況を見ると、前にさかのぼっての発禁の状況あるいは占い術や運勢に対するところの発禁状況など、戦前あるいは戦時中の日本の状況を勉強する上で非常に貴重なものがアメリカに持っていかれたままになっておるというふうにいえると思います。あるいはまた、国内では入手困難と思われる織田作之助の「青春の逆説」とか、秋田雨雀の「太陽と花園」など、文芸作品の初版本が、日本になくて、ずいぶん向こうに持っていかれていることもわかりますし、あるいは反戦派の角花子さんの「命投げ出し非國民取扱ひ責任を國家に問ふ」という珍しい本も出てきますし、南京虐殺の状況などについては、日本では非常に珍しい「南京戦線だより」という山口政八氏の発禁本などがアメリカにあるということがこれらの事実の中から明らかになりました。 そういう意味では、千八百三十六点ですか、そのことを要求されるということは、私は日本の多くの人々にとってはほんとうに大事な問題だというふうに思います。だけれども、日本の土地にあったところの本を、なぜ全面的に返還を要求しないんだろうか。ほんとうに返せというんだったら、図書館にあろうとなかろうと、全面的に返すことを要求すべきではないだろうか。さらにまた、このほかに、新聞雑誌あるいは税関の押収禁止本などもアメリカにたくさんあるということが、すでに調査をされた民間人の方々の中からいわれております。あるいはまた、アメリカ軍が上陸してきたときに、至るところで全部巻き上げていったというのではなくして、内務省関係とか陸海軍の関係について強く調査をすると同時に、満鉄東京支社や東亜経済調査局や東亜研究所など、こういうところの単行書がアメリカの議会図書館にあるということについても、あの早稲田大学の鹿野先生の「史観」という雑誌の中にも書かれております。こういうことを考えたときに、なぜ図書館は積極的に全面的に返還を要求するという態度をとられないのか。私は、ここで指摘されたところのものは貴重なものには違いないけれども、同時に全面的に返還するという立場をとられることを要求したいのですが、館長の意見を聞きたいと思います。
○宮坂国立国会図書館長 全面的返還につきましては、当館といたしましては、当館、国立図書館を管轄しておられます両院の議院運営委員会並びにその下の機関でございます図書館運営小委員長とも十分御相談申し上げて、善処いたしたいと思います。先生のおっしゃられるお気持ちは十分拝承いたしております。 それから、ただいま新聞、雑誌等につきまして御注意ございましたが、この点につきましてはわれわれといたしましては図書のように照合する資料を持っておりませんのでございまするが、いろいろな情報等を照合いたしまして、なるべくすみやかなる機会においてこれらの調査をいたしたいと思いますが、図書館人といたしましては自分のところに欠けておるものを最初にさがし出すわけでございますので、全面的返還もございましょうが、わが国立国会図書館に欠けておるものをいち早く発見していきたいというのが図書館人の希望でございます。 なお、満鉄その他の図書につきましては、むろん私らといたしましても関心を持っておりますが、まだ調査いたしませんので、何とも申し上げる時期でございません。
○寺前委員 私は、戦前や戦中のものだけではなくして、同時に戦後のアメリカ軍の日本におけるところの押収したものについても、堂々と返還を要求すべきだと思います。三田情報センターの森園氏の報告によると、フレンジコレクションと呼ばれているメリーランド大学の図書館には、昭和二十年から二十四年の日本での出版物が網羅的に置かれていると書かれております。児童の図書については、おそらく日本にこれだけのものはなかろうというほどすばらしく並べられているし、私ども共産党の機関誌「前衛」創刊号からの検閲状況が一目りょう然とわかるところのものが、あるときには原稿そのものまでがそこに置かれているというふうに書かれております。まさに戦後史、特に占領期の問題についてここの資料というのはきわめて重要なものがありますし、同時にわれわれのものであります。そのことを返還するという立場をとられるのかとられないのか。私はこの点についても図書館長としての決意を聞きたいと思います。
○宮坂国立国会図書館長 メリーランドの大学にございます、ただいま先生がお述べになりました図書五、六万冊、それから新聞、雑誌各一万、こういう情報でございまして、しかもなお本件は占領中の昭和二十年九月以降数年のものであると聞いておりますので、これらの出版物は、わが図書館といたしましてもこの時期のものは不足しておるのでございまして、図書館の幹部はこれについても非常な関心を持っておりますので、御指示のような点につきましても十分研究いたしまして、善処いたしたいと思います。
○寺前委員 それでは図書館長にちょっと聞きたいのですが、先ほどの電報の話によると、マイクロフィルムにとってお返しするという話にしようかという内容の話があったと思うのです。図書館としては、そういうことでいいと思っておられるのかどうか。
○宮坂国立国会図書館長 これは折衝のことでございますので、私は外交の機微については存じませんものでございますので、何とも申し上げられませんが、一応事の推移を見た上で、重大な問題でございますので、図書館運営小委員長とよく協議をいたしまして、善処いたしたいと思います。
○寺前委員 先ほどの報告の中に、そのほか三百点の返還とか陸軍の関係の百点とか、いろいろな報告がありました。この間うちから、公文書館とかあるいはまた外務省関係で被接収公文書要求の準備状況について、私も皆さんが調査をしておられる状況について調べてみました。 公文書館の要求を見ると二百五十九点、外務省の関係を見ると五百九十七点に及ぶところのものがここには列記されておりました。私もしろうとながら一つずつ見てみると、たとえば公文書館の要求の中にある、昭和十六年十二月十日の「枢密院審査委員会筆記の対米英戦の共同遂行、単独不講和及び新秩序建設協力に関する日独伊間協定締結の件」これなどは開戦直後の姿を研究する上でも非常に重要なものですし、昭和十八年の「帝国(勢力圏を含み)の国力判断」は第二次大戦の研究の基本的資料になるということで、学者の中でも非常に興味を持たれております。昭和十九年の「緊急内務省指令」というのは戦災あるいは治安上の研究に大きな資料になりますし、昭和二十年の「思想対策審議会関係書類」は、総合的にあの終戦の段階にどのような思想対策をやったか、実に貴重な要求がそこには並べられております。 あるいは外務省関係の要求されたところの内容を見ても「大東亜会議録音盤アルバム、第一から第六まで」とか「東条首相野村大使間電信綴」とか「在満文本邦警察統計及び管内状況報告」あるいは「赤色支那誌」 「欧州戦争勃発以後のコミンテルン解消までの状況」など、日本の政府が当時どのように日本の治安を見ておったのか、日本の思想弾圧をやっておったかという問題についても、ほんとうに日本の新しい国家建設にとって重要なものがそこには一ぱい並んでおりますから、この内容についてわれわれも直接この目で見たい、これは多くの国民の要求するところであろうと私は思うのです。 そういう意味では、これらの内容の要求は私は当然のことであるし、積極的に進めてもらいたいと思いますが、先ほど私が提起した早稲田大学の鹿野先生のアメリカでの調査、あるいはきょうもお見えになっておりますが、松浦先生、これは東京の戦災の問題について資料をずっとお集めになっておりますが、昨年行かれた状況から照らしてみても、これらの問題はアメリカに現在あるところの状況から見ると一部分にすぎないということを、具体的な数字を出して言っておられます。このことを考えたときに、現在進めている要求の状況というのは不十分ではないか。 そこで、一つは外務大臣にお聞きしたいと思います。 先ほどの返電では、コピーをお渡ししようという、あるいはマイクロフィルムをお金でもってつくってもらえぬかというような内容の話です。私は、これらのものについてはそういうことでとどめることなく、全面的に返還を要求するという態度をおとりになるのかどうかということについて、外務大臣の見解を聞きたい。これが一つ。 もう一つは、現在出されているところの資料は、昨年の段階から見れば積極的な状況にあります。だけれども、全体としてアメリカに存在するといわれている内容から見ると部分だということを学者の諸君たちが言っておられる。これに対して全面的にアメリカに調査団を派遣して、学者、文化人をそろえ、そしてこの調査をやることによって貴重な財産をわれわれのものにするという態度をとる気があるかどうか。特に第二の問題については、現在メリーランドの大学にあるところの図書館、その図書館の司書をやっておる日本人の人の投書もあります。その投書によると「メリーランド大学の地下室でボイラーの湿気の中、たびたびの洪水にいためつけられて眠っているのがこの戦後の検閲本の状態である。この量およそ十万タイトル。山奥の小学校の学級新聞から手書きの壁新聞まで、電光ニュースの原稿、労働組合のパンフレットなど、うず高く積もっているが、いたみは年々ひどくなる一方で、さわっただけで穴のあく本も出てきている。」事態は、二十八年たった今日ですから緊急を要する事態になってきている。それだけにわれわれの財産であるこれらのものに対して、積極的に調査団を派遣してでも解決をするんだといった態度を外務大臣がおとりになるかどうか。外務大臣と同時に、総理府副長官の見解を聞きたいというように私は思います。
○大平国務大臣 日本政府の立場は、これを権利としてアメリカ側に要求できる立場ではございません。十分先方の理解を得て返還の実をあげなければならぬわけでございますので、そういう立場に立ちまして、まず米国の議会図書館にありまする発禁図書千八百三十六冊、これがあるかないか、これをまずアメリカ側に早急に確認していただかなければならぬと思います。 それから御指摘のメリーランド大学の保管にかかる分につきましても、今後関係方面と協議いたしまして、いかなるものについてアメリカに返還を求めていくかをまず決定いたしまして具体的な交渉を進めるべきであると考えます。 また政府関係公文書でございますが、現在総理府で各省庁の被接収文書の有無、内容等につきまして調査が行なわれておると承知しております。それがまとまり次第、この分についても追って米側に返還方を要求していくことといたしたいと思います。 先生おっしゃるように調査団を派遣するかどうか、まあこれは関係各省とよく相談をしてみなければならない問題だと思います。
○小宮山政府委員 総理府のほうといたしましては、公文書の問題について昨年の十二月七日に関係各省の文書係にお集まりいただいて、各省の接収された公文書について調査をいたしました。二月の末に調査報告が出てまいりましたけれども、はっきり申し上げまして、二、三の省庁以外はなかなか十分な回答が得られませんので、今後とも続けて文書の調査を依頼する予定でございます。
○寺前委員 時間があれですから、最後に大平外務大臣にもう一度聞きたいと思うのです。 先ほど図書館の要求した内容については、これは蔵書になっているからマイクロフィルムでおとりになりませんかというお話の電報だったと思うのです。図書館としては現物を返してもらいたいという要求をいっている。向こうはマイクロフィルムでどうですか、こう来ている。この問題について外務大臣として折衝するにあたって、マイクロフィルムを取りにいくのか、それとも現物を返してもらうということで話をされるのか。私はしっかりした態度をとってもらわなかったら困ると思うのです。これに対する見解を再度聞きたいと思います。
○大平国務大臣 先ほど申しましたように、これは返還の実をあげなければなりませんので、要求することはいかようにも要求いたしますけれども、先方はマイクロフィルムでございますれば返すということをいうてきておるわけでございます。それじゃだめだといって念を押しますか、それを受け取るか、これは関係方面と十分協議いたしまして、先ほどお答え申し上げましたように、まず何を要求するかということをきめて対米折衝に当たらなければならぬと思います。
○寺前委員 時間でございますので終わりたいと思うのですが、先ほども言いましたように、事態はあそこの司書の人がいっておられるように、押えただけでも破壊するというようにそのいたみの状況が非常に激しくなってきておる。こういう事態にあるだけに、貴重なものをいつまでも放置しないように積極的に打って出るという態度を外務大臣がとっていただくことと、それから、どこにあるかわからないという状態にあるんだから、したがって、調査団を派遣するという態度についても積極的にやっていただくということを要望して、終わりたいと思います。
○藤井委員長 永末英一君。
○永末委員 田中総理はソ連政府に向けてまた親書を出されたようでございますが、先ほどの外務大臣の御答弁によりますと、ことし第二回目の日ソ平和条約締結に関するわが国とソ連政府間の交渉を開きたい、こういうお話でございます。そのときに、中ソ間における友好条約というのが現存しているんでございますが、あれは廃棄をしてくれといわれるおつもりですか。
○大平国務大臣 中ソ間の問題は中ソ両国の間の問題でございまして、わが国からとやかくいう筋合いのものでないと心得えております。
○永末委員 あなたのほうの政府では、そういう意味合いでは日ソ平和条約締結にあたっては日米安保条約は無関係、こういう立場ですね。
○大平国務大臣 いままでの日ソ共同宣言も日中間の共同声明も、安保条約とは無関係にでき上がっているわけでございまして、今後の平和条約あるいは平和友好条約の締結交渉におきましても、安保条約とのからみ合いというものは、からむべき性質のものとは私は考えておりません。
○永末委員 日ソ間にこれから締結しようというのは平和条約です。平和条約というのは、戦争状態があって、これを終結せしめて、これから新しい平和の関係をつくる基準をつくるわけでございます。日ソ間にはすでに共同宣言があって戦争状態は終わっておりますが、それはそこまでである。したがってこれから平和条約を結ぶ場合、世の常の交戦国間に交戦状態を終わらせて平和状態を続けていくために、結ばれる平和条約には、やはりタイプがあろうと思うのです。この前の委員会で私はあなたに、そういう場合に軍事条項は入れないなということを申し上げたところ、私の言う軍事条項など意味がよくわからない、こういうお話でございましたが、たとえばソ連とフィンランドとの間の友好条約、これは平和条約の一種でございますが、その中に、フィンランドがドイツ及びその同盟国から攻撃を受けた場合にはフィンランド政府はこれに対して交戦をする、同時にソ連政府はフィンランド政府の相談に応ずる、こういう項目がある。軍事条項と申すのはこれらを含めてのことであって、すなわち、日ソ平和条約を結ぶ場合に、わが国がソ連以外の国から平和を脅かされるような環境に至った場合にソ連がわが国とどういうかかわり合いを持つかということ、そういうこともソ連としては非常に大きな関心事ではなかろうか。そういうものも私は軍事条項の一種だと思います。いよいよソ連との間に平和条約を結ぼうと交渉をされるわけでございますから、わが国の安全保障についてソ連に何ほどかのコミットを期待しつつ結ぶのかどうかということをお答え願いたい。
○高島政府委員 一九五六年の日ソ共同宣言は、名前は共同宣言でございますけれども、実体は、ただいま先生御指摘のとおり、いわゆる平和条約の実を備えたものでございます。したがいまして、これからわが国としてソ連との間に結ばなければならない平和条約、特に共同宣言の中に言及しております平和条約につきまして、わがほうといたしまして一番重視しておりますのは、領土問題でございます。したがいまして、領土問題以外につきましても、もちろん今後締結されるべき平和条約の中に書き込んでいけないという理屈はありませんけれども、いわゆる日本の安全保障に関する問題、いま先生の御指摘の軍事条項のようなもの、これはすべてわが国といたしましては、この日ソ間の平和条約の中に規定すべきものとは考えておりません。
○永末委員 これは重要な点でございますので、外務大臣にひとつ御確認をいただいておきたいのです。 いま局長が申しましたが、この前の共同宣言以上の、それに含まれていない軍事的なあるいは安全保障上の約束は、平和条約をソ連と結ぶ際にはしないと理解してよろしいか。
○大平国務大臣 そう了解しています。
○永末委員 今度は中国のほうでございますけれども、中国とはこれから平和条約を結んでいくわけです。この場合も、中国に対して、中ソ友好条約を失効させるような手だてをとれとは言われないですね。
○大平国務大臣 そのとおりです。
○永末委員 中国との平和条約を結ぶにあたりましては、日ソ共同宣言のようなものはまだないのでございまして、なるほど共同声明は発せられましたが、これは日ソ共同宣言が包んでいる内容とはだいぶ違うのではなかろうかと思われます。 さてそこで、日ソ平和条約の中には、いま私が申したような軍事的な条項、あるいはわが国の安全保障にかかわるような条項は含むつもりですか、いかがですか。
○大平国務大臣 これはこれから先の日中関係を安定した基礎の上に置こうということで、平和友好条約の締結交渉をやろうということを合意しているにすぎないわけでございまして、これがどういう内容を盛り込むかにつきましては、まだそこまで考えがまとまっていないわけでございまして、今後検討しなければいかぬ問題だと思っております。
○永末委員 航空協定は急がれねばならぬということでお話がございました。 さて、まあ航空協定もそうでございますし、私は、通商条約もこれは急がなくてはならぬ問題だと思うのです。すなわちいままでの日中間の貿易は、国と国との貿易からいいますときわめて変則的な貿易でございますので、中国も日本もともに最恵国待遇をしていない。言うならば、同じ品種のものについて、もし輸入なんかが競合する場合には、その関税の高だって違うわけである。たとえば生糸なんかこれは明確にあらわれてくるのでありますけれども。この通商条約を結ぼうとする場合に、平和条約の締結時と、時間的にはどうなりますか。
○大平国務大臣 別に時間的先後をきめたわけではございませんけれども、気持ちといたしましては、実務協定はできるだけ急ぎたいと考えております。
○永末委員 その御答弁は、平和条約ができないまでにも、話がまとまるならば通商条約は締結したい、こういうことだと解釈してよろしいですね。
○大平国務大臣 さようです。
○永末委員 さてそこで、先ほどの問題に返りますけれども、それでは、一体いつごろ、相手方がございますが、わがほうとしてはどれぐらいの時期をめどに進めようとお考えですか。
○大平国務大臣 去年の秋、各省を網羅した東郷ミッションを出しまして、中国側と意思の疎通をはかったわけです。これは日中両国とも制度、慣行が違っておりますので、そういう点について双方十分こなれた理解を持たなければならぬということでありまして、両方ともたいへん稗益するところがあったわけでございます。これから大使がいよいよ赴任いたしまして、本格的な交渉をどういう時期にやるかは先方政府とよく打ち合わせさせたいと思いますが、中国におきましても日本におきましても、目下そういう準備の作業を急いでおる段階でございまして、いまいつごろから始めるかというところまでまだ相談していない段階です。
○永末委員 きのうの閣議でございますか、生糸、なま食肉等の輸入を中国からひとつ促進しようではないかという話が出たと伝えられております。生糸のごときは、昨今相場における投機がきわめてはなはだしくて、中国からの緊急輸入が業界から望まれておるわけであり、なま食肉のごときは多年輸入が望まれておって、いまだに口蹄疫を理由として実現していない現状でございます。しかし、閣議で農林大臣がこの話を出せば、窓口になるのは外務省でございます。したがって、いまの通商条約の締結がお話によりますとまだあすあさっての問題ではない。しかしこれらの問題、とりわけ生糸などは緊急輸入を必要とするわけでございますから、ほかの手段をもって、たとえばわがほうの関税措置法を改定しさえすれば窓口が開けるのか、あるいは外交上通商条約をなお必要とする段階にあるのか、この辺の御感覚はいかがですか。
○大平国務大臣 生糸の場合の関税問題でございますが、これは農林大臣から要望がございまして、私どものこれまでの理解では、貿易協定を結ぶ場合に処置すべき性質のものだと考えておったわけでございますが、それを待たずに、おっしゃるように日本側がイニシアをとってやるべきでないかという議論もありますので、その点はいま政府で検討いたしておるところでございます。 食肉の問題につきましては、これは貿易協定より前の問題でございまして、口蹄疫問題についてどういう対処のしかたをやるかということは、貿易協定の問題とは直接関係しないように私は思うのでございまして、それは鋭意農林省を中心に考えていることと思います。
○永末委員 生糸の問題はひとつ急いでいただきたいのですが、口蹄疫も、いままで国交回復がなかったというある政治的な環境を土台にして議論がされてきた経過があると思うのですね。しかし国交は正常化しておるわけでございますから、おまえのところの肉はあやしい、あやしいということをわがほうが言っているということは、日中友好のためにあまりよくないですね。中国のほうではその肉を食べておるわけですから。ところが、そのなま肉は口蹄疫の疑いがあるとなおわれわれは突っぱねている。だとすれば、正常化しておるわけでございますから、もっと積極的に、得心のいくような調査団の派遣も先方は承知するでしょうし、調査といったって、中国の人が食べておる実情があるとすれば、何もそれを阻害する理由の全部がなくなるのじゃないか。この辺も外務大臣、すなわち外交上考える段階に来ておるんじゃなかろうかと私は思いますが、いかがですか。
○大平国務大臣 仰せのとおりでございまして、いま、先ほど御答弁申し上げましたように、農林省を中心に検討しておることと思います。
○永末委員 最初の問題に返りまして、そういう実務的ないろいろな協定に関する交渉が進められてまいる。そして平和条約につきましてはいずれ総仕上げとしてでき上がらねばならぬのでございますが、その点について私は日米安保条約なり、あるいは日ソ平和条約なりとのからみ合い、この前ソビエトにつきましては、ソビエト政府が持っていると伝えられるアジア集団安全保障の内容についてあなたがまだ御存じないことを伺ったのでありますけれども、わがほうが日中平和条約を結ぶについてわが国の安全保障の面について何ほどかの意向を表明する時期はいつごろになりましょうか。
○大平国務大臣 すべての営みはこの地域の平和をいかにして確保するかということにつながるわけでございまして、私ども絶えずいま御指摘の問題を頭に置きながら政治ばかりでなく経済も文化もいろいろなことを考えていっているわけでございます。 条約面にどのように表現すべきかどうかというような問題は確かにございまして、それはこれから考えていかなければいかぬ課題だと思いますけれども、問題は日本がこういう国柄といたしまして、この地域の安全保障をどう確保するかという点はあらゆる営みの基礎にわれわれは踏まえてやっておりまするし、あらゆる機会にそのことを国々に伝えて理解を求めておるわけでございます。ただ、アジアにおける安全保障はかくあるべきであるという大きなピクチャーをそれではおまえは持っておるかと問われるならば、そういう実効ある壮大な安全保障計画というようなものを、国会で御披露するようなりっぱなものは私はいま持ち合わせておりません。
○永末委員 壮大でなくても正確な構図はひとつぜひお持ちいただく、あるいは大平総理のときにお示しいただくのかもしれませんが、そういう御準備をいただきたいと思います。 終わります。
○藤井委員長 渡部一郎君。
○渡部(一)委員 委員長、議事運営についてでありますけれども、三時間以内にきょうの質疑は全部最後まで入れるという話でしたが、すでに相当時間をオーバーしております。私の時間ははみ出しているわけであります。そうすると、大臣はいま退席されようとしております。こんなことでは質疑応答ができません。ですから、指定の時間を理事会できめられたのであれば、理事会できめられたとおり各委員の時間励行の督励に当たるのは委員長の責務であると私は思います。その点きょうの議事運営については遺憾ながら私は遺憾であると申し上げるしかない。また大臣もあとを控えておられてそわそわして私の質疑応答をされるのでは、魂のこもらない御答弁になる。これは実にまずいので、次回はこういうことのないようにしていただきたいし、次回は特別の御配慮をいただきたいのですが、まずこの点委員長いかがですか。
○藤井委員長 御趣旨ごもっともです。理事会でもお願いしょうと思っていますが、委員各位もひとつ御協力願いまして、常時催促はしたのですけれども、こういう状態になりまして、大臣にもたいへん御迷惑をかけておりますけれども、できるだけひとつ今後時間厳守を皆さんとともに実現確保したい、こう思っております。
○渡部(一)委員 それではもう小言はやめまして、せっかく待っていただいた参考人の方もいらっしゃいますから、さっそく伺うわけでありますが、私は文化交流の問題について大臣の政治的判断をお願いしたいわけであります。 日本は最近評判が悪いと申しますか、エコノミックアニマルであるとか、ジャパンINCなんという日本商社論というような本が堂々とアメリカの商務省の手において発行されておるわけであります。またタイ国においては新聞紙上あるいは学生運動で一斉に日本人の素行あるいは黄禍の特集が行なわれております。また、東南アジアの諸国では商社の買い占めが膨大な量に達していると同時に、これに対する反発というものがひどい次元に到達しております。経済問題と同時に日本人の素行が大きな問題として叫ばれております。そうして日本国内の週刊誌においては、どこへ行けば女が抱けるかということついてに得々と特集が行なわれて、放置されております。また東南アジアの諸国においては膨大な軍国主義批判があることは御存じのとおりであります。また一方では日米安保ただ乗り論がアメリカ国内にあり、またイギリスには犬殺しの日本というキャンペーンがまだ続いております。そうして中国においては過去の日本の軍国主義の残虐な行動の犠牲になった人の記念碑、記念のいろいろな施設というものが存続をしております。私はここにあるこうしたいろいろな暗いイメージの日本、こういうものに対して、こういうものはことごとく過去の日本の軍事第一主義の日本、それから経済進出第一主義の日本の二つの大きな外交の柱がもたらした惨禍である、こう思うわけでありまして、文化交流を中心とした新しい文化外交の展開が大事である、こう思っておるわけでありますが、まずその基本的な、私が幾つかトピック的にあげました問題について、大臣はどうお考えになりますか。
○大平国務大臣 あるがままの日本を正しく各国に理解していただくということはわれわれの望むところでございますが、御指摘のように、数々の局面において日本に対する批判がきびしくなっておることも承知しておりますと同時に、日本の善意、日本の文化のよさ、そういうものに対する理解がないわけでは決してないと思うのであります。 しかし、そういう暗い面が最近とみにやかましく言われるようになったゆえんのものは、われわれが彼らに十分の説明がPRがきかなかったというより前に、あなたが御指摘のように、戦後の日本の経済自立を達成するために、なりふりかまわず急速な経済の成長と輸出第一主義にのっとった日本の行き方がもたらした面が無視できないと思うわけでございまして、まず第一に、日本の国策の方向として最近与野党の間でも特に鼓吹されておりますように、生産第一主義、輸出第一主義から、国民生活第一主義あるいは福祉第一主義のほうに軸心を変えていかなければならぬとうたわれておりますが、そういう方向に日本全体の歩みを変えてまいることが第一だと思います。 第二は、日本自体をよく知っていただくために、とらわれない判断を願うために、海外における十分のPRができますように出版物その他、人の交流その他を通じましてそういうことをやってまいらなければなりませんが、そういう努力がいままで十分であったかというと、遺憾ながら十分でなかったと思うわけでございまして、両々相まちまして日本に対する世界のイメージをよくしてまいるように施策してまいらなければならぬと考えます。
○渡部(一)委員 確かにいま言われたとおり、国策の方向が重大な問題であったわけです。これを除いてこうしたものを食いとめるわけにいかないわけであります。 そしてその二番目に言われた日本が知られる努力、知る努力、そして知的、精神的連帯の上に平和を築いていくという基礎的な方向がなければいけない。このことをユネスコ憲章を引いて外務省の文書の中にも書いてありますけれども、そういうことが大事であったと思います。そして相手国の文化水準を高めるということに関して、人類的な立場から、地球的な立場からやらねばいけなかったと思うわけであります。ところが日本の外務省の今日までおとりになってきた文化交流の事業は、少ないなんというグレードのものでないということに私はもう一回注目をしていただきたいと思うわけであります。 私が四十六年に委員会において、予算委員会でありましたが指摘いたしましたけれども、そのときと状況は比率にいたしますとほとんど変わってないわけであります。 いま文化交流事業に関して、時間がありませんからおたくの文化交流事業部のほうからいただいたデータで話を進めますと、こういうことになっております。 多いほうからいいますと、フランス五百二十七・八億円、ドイツ三百十六・三、アメリカ百十・三、イギリス七十三・二、イタリア六十二・〇、カナダ十三・九、スウェーデン六・七、日本はこれに対して八・七、八億七千万円であります。したがいまして、この比率を見ると、イギリスが大体十倍規模、アメリカになると十二、三倍規模、フランスになりますともうたいへんな、比較にならぬような、五百二十七億円でありますから、とんでもない大きな差になってしまうわけであります。 そして四十七年には、今度は国際交流基金のほうでお出しになる事業費用というものが四億九千五百万、外務省の文化交流関係で出す費用が十三億三百万であります。これは両方足しましても十八億ぐらいのものであります。ところが外務省の海外広報の関係からいただいた資料によりますと、アメリカは国務省が百三十一億、広報庁が六百五十一億、合計約八百億を使っておるわけであります。イギリスは外務省が七十九億、文化振興会が七十三・七億、ドイツは外務省が三百一・五億、フランスは外務省の海外広報関係が十七・四億、外務省の文化関係が二百十三二億、金額、スケールともに話にならぬというか、五十倍から百倍というような規模に開いているわけであります。 そして、人数はと私はこの間伺いました、あまりひどいので。そうしたら、文化事業部の人数は二十二名だそうであります。海外広報のほうは何人でやっておられるかというと、約二十人ぐらいという御返事で、そのとき来られた課長さんは人数はあまり御存じありませんでしたけれども、国際交流基金のほうは四十八年度で九十四人にするというお話でした。これを三つ全部足したといたしましてもこれはせいぜい百三十人ぐらいのものであります。ところがアメリカは何人か。ちょっと申し上げますと、国務省は二百八十三人、広報庁は四千五百四十八人。イギリスは外務省が千二百九十三人、ブリテッシュ・カウンシルが四千人。ドイツは外務省だけで百十八人。そしてフランスは外務省の両方が五十人となっております。ドイツの場合にはこれにゲーテ・インスティチュートのようなものが加わりますから、さらに巨大な数字になるわけであります。金額でもちょっと差があるなんていうものじゃない。もう十倍から五十倍、百倍というランクで違うわけであります。こんなに違っていてまともな外交ができるのか。自衛隊のちっぽけな軍備とそしていまの外務省の役人たちがかけずり回ってやっていることで可能なのか。これはもう根本的に計算も何も違うのじゃないか。本予算案はいろいろな立場で現在審議が続いておりますが、基本的にこの考え方の基礎構造が間違っているんじゃないかと私は思うわけなんですね。私は、大平外務大臣が実力ある外務大臣としてここにお着きになっているわけでありますから、私は、それに対してどうあるべきか、外務大臣にこれに対する見解を伺いたい。そして今後どうあるべきかを伺いたいと思います。
○大平国務大臣 いま各国の広報ないしは文化関係の活動予算について御指摘がありまして、日本はあまりにも貧弱じゃないかという御指摘はそのままそのとおりでございまして、たいへん残念でございますけれども、ただいままでの日本の広報文化外交というのはこういう乏しいものであったということでございます。また日本側におきましても、外国からいろいろ学術、技術、文化等の恩恵を受けることを当然といたしまして、みずから他に与えるというようなことにおいて非常に憶病であったということも率直に反省しなければならぬと思うのでございます。しかし、このように、経済的な実力におきましては先進諸国と比肩するだけのものになった今日、こういう姿でいいとは決して考えていないのでございまして、私どもといたしましては急速に文化外交のワク組みを拡大せにやならぬということで、去年、ことしとその第一歩を踏み出させていただいておるわけでございまして、しかしこれは第一段階でございまして、行く行くはやはり英独仏というようなところを目安にいたしまして、それに劣らないだけのものに逐次持っていかなければならぬと思います。しかしローマは一日にして成らずと申しますか、これを急にやろうといたしましても予算的にも——予算というのは大体飛躍しないものでございますし、人間の養成、配置につきましても急速に間に合うはずのものではございませんので、しばらく時間をかしていただかなければならぬと思うのでございますが、御指摘のような方向に大胆に歩武を進めてまいるという意欲におきまして、われわれ外務省は一段と奮起してまいりたいと考えております。
○渡部(一)委員 おっしゃるとおり、確かにあまり急速にこういうものはふやすべきものでないかもしれません。しかしこまかい議論もしておられませんから、一つだけ例をあげてみますと、昨年は、外務省のまいた日本に関するビラは三百五十万枚です。ことしは何ぽか。数字がまだ上がってきておりませんし、聞いてもお返事がありませんでしたが、私の見るところではおそらく五百万枚を出ない枚数です。こういうのは急速にふやしていいとか悪いとかいう問題でなくて、まるっきり少ないですね。話のはかなんです。ふやす努力がなかったということです。それは株式会社の例をあげるとわかるのです。ソニー、本田。私はこの前も申しましたけれども、彼らは自分の一社の実力で、昭和四十五年段階でソニーは九十億の海外に対する広報宣伝費を使っていました。日本人に向かって、あなたはソニーですか、といわれるほど、日本人の代名詞となるほどソニーとか本田とかは名前がとどろいております。九十億です。それは前から多かったのじゃなくて、ここ数年急速にふえたものです。一年、二年、三年というような間です。ところが日本の外務省は全然ふえてないじゃないですか。国際交流基金なんて、基金の数字だけはばかでかいのですが、実際に使うお金は十何億じゃないですか。前文化庁長官が今度理事長になられた。それに対して私はじっくり見解を伺おうと思って、実は時間がありませんからきょうは言うこともできないのですけれども、これで仕事ができるか、こんなあほな仕事をおれにさせる気かと交流基金側が、それこそけつをまくって帰ってしまってもしかたがない。小さなお金で、十何億です。そんなもので仕事をやるといったってどこから手をつけるのですか。本田やソニーの社長をつれてきて、これで足りると思いますかと聞いてみたらいい。あほみたいな、それこそ想像外のこういうような政治のやり方というものにもういまの発想の転換というものはない、ふざけているというしかないんじゃないでしょうか。私はまだ中身を議論してないです。外ワクを議論して、お金のことだけで話のほかだ。ふやす努力がないんだ。一商品の数年前のPR費にはるかに劣るこんな費用を出してきて、それで画期的な躍進とかローマは一日にして成らずとおっしゃったけれども、これはちょっと御答弁がひど過ぎましたね、大臣。これは大臣に聞くのも無理かと思います。国際交流基金の理事長に一言あなたの胸の内をここで吐露していただきたい。そして外務大臣、これはとんでもないことですよ、こんな予算をつけておいたら。こんな予算はもう言語道断ですよ。これを予算案の中に平気で出してくるなんて、その無神経ぶり、見なかったというしかないけれども、これはもうどうしようもない。もう時間が完全になくなりましたから、最後に、私は一言だけ国際交流基金理事長に御見解を承りたい。いままでの議論を聞いていただいて、そしてあなたの御要望も含めてここでおっしゃっていただきたい。少なくとも野党の議員が言っているような立場で外務大臣には言えるはずですから、言ってください。
○今参考人 私は、国際交流基金というものの創設にあたりまして最初の理事長をお引き受けしたのでありますが、いまの予算というものは実にお話にならないというお話でありましたが、まことにそのとおりでございまして、手も足も出ないぐらいでございます。ただ私は、英、独、仏、米というような国々の予算とまるで雲泥の相違だという、数字的にはそうでありますが、これは中に入ってみますと、この予算は、イギリスなりアメリカなりの英語の普及、これが非常に大きなあらゆる文化交流の中で一番大きな力を持っておる。その相手国に英語を話させる、英語を理解させるということは、文化の理解あるいはその国の理解というものは大事でありますが、それの基礎になるものでありまして、フランスあたりがどんなにフランス語の普及ということに熱心であるか、また英米がそれを上回って熱心であるかということでありまして、かつて池田勇人先生がフランスに参りましたときに、もっとフランス語を日本でやらしてくれ、それにはこっちが相当な援助をするから、もっとフランス語を普及させてくれということが話の中の大きな部分を占めていたと思います。それから事実フランス語の教授というものは年々数十人向こうに半分ごやっかいになってやっておりまして、そういうことが非常に大きな力になる。残念ながら日本語の普及ということはやっておりますけれども、習う人が少ない。教えられる人が少ない。全体としての予算が少ない。また日本語というものが世界語になるには非常にむずかし過ぎるというようないろいろなことがございますが、そのことばだけの予算というものが諸外国はどんなに多いか。ドイツにしましてもそうです。われわれの予算から見ますと実に膨大なる予算であります。いま渡部先生のおっしゃった数字は、アメリカがやや低いように思いますが、アメリカにはプライベートな財団が五千くらいございます。それの総計になりますと基金が八兆円くらいになるのですね。ですから民間団体も相当なものでございます。ところが私のほうの基金は政府から絶大な御援助をいただいておりますけれども、半分は民間と思っておりましたが、何と政府が来年度入れまして百五十億という額でありますが、五分五分という話でしたけれども、せめて一億くらいいただけないかといったところが、現在民間出資額が五百六十万円でございます。ですからいかに国際文化交流というものに対する認識が、確かにわれわれのPRもまだ足りないにしましても、五百六十万円という額は僅少にも僅少をきわめておる、こういう状態でありまして、民間の認識というものがもっともっと大きくなり、これだけ経済が伸びたら、これのまたやり方をいまおっしゃったようなエコノミックアニマルといわれているところにもつと文化的な要素を入れたら、もっとスムーズにいくのではないかとわれわれは思うのでございますけれども、いまの五百六十万円の認識ではとても認識がないと思わざるを得ない。こういうことを考えますと、どうか皆さん御一緒になって、この国際文化交流という問題を、われわれは官も民もないと思いますから、ひとつ何ぶん絶大なる御理解と御支援を願いたいと思うのであります。
○渡部(一)委員 わずか一言のお話でございましたけれども、的確な御指摘ぶりでございますので、外務大臣どうかこの問題については、きょうはもう時間がほんとうにございませんので、残念ながらこれで終わりにいたしますが、十分の措置をおとりになるように要望いたしまして、私の質問を終わらしていただきます。どうもありがとうございました。
○藤井委員長 参考人には御多忙中のところ御出席願いましてまことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。 次回は、明八日正午より理事会、午後三時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後二時一分散会