予算委員会 第2号
- 発言数
- 236 件
- 登壇者
- 13 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1972/11/02
会議録
○坪川委員長 これより会議を開きます。 昭和四十七年度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十七年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和四十七年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題といたします。 この際、委員長から一言政府に申し上げます。 限られた会期内において、充実した予算委員会の審議を行ないたいと、各党の理事の強い要望でもありますので、委員の質疑に対する答弁は、簡潔明瞭にお願いをいたします。また、出席の時間も厳守されるよう、特に要望いたしておきます。 なお、理事会で申し合わせました質疑の持ち時間につきましても、委員各位の格別の御協力をお願いいたします。 これより質疑に入ります。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石橋政嗣君。
○石橋委員 去る九月二十九日、日中の国交回復を内外に告げる共同声明が採択され、発表されたわけでありますが、長い間この日の一日も早からんことを願って努力を積み重ねてまいりましたわが党といたしましても、心から歓迎し、喜ぶものでございます。 日中両国は一衣帯水の間にある隣国であるといわれながら、また長い間伝統的な交流の歴史を持っておる国でありながら、不幸な歴史をも積み重ねてまいったわけでございまして、ほんとうに近代的な国交を持つようになったというのは、今度が初めてであると言っても決して言い過ぎではないんではないかと思うわけであります。しかも、問題はこれからだと思うのです。国交は確かに回復しましたが、それが直ちに日中の友好関係が確立したということでは、私は必ずしもないのではないか。日中間の友好関係を本物にし、ゆるぎないものにすることができるかどうか、それは主としてこれからの日本のわれわれの心がまえと行動、出方によるものであると、このように自覚する必要があるのではないかと思います。 共同声明の中に、両国は社会制度の相違があるけれども、平和友好関係を樹立すべきであり、また、樹立することが可能だと高らかにうたっておるわけでございますが、私も全く同感であります。 そこで私は、第一に、日中の友好関係を本物にし、ゆるぎないものにするためにはどうしたらよいか、第二に、このことをも含めてでありますが、アジアにおける緊張緩和と世界の平和に貢献するためには、何をなし、何をなすべきではないか、この二点を念頭に置きながらこれから質問をしてみたい、このように思うわけです。 数日来行なわれました総理の所信表明やあるいは質疑に対する答弁をお聞きいたしましても、この二点に関して明快なお答えが私はなかったと思うのであります。せっかく総理は所信表明において、「政治家は、国民にテーマを示して具体的な目標を明らかにし、期限を示して政策の実現に全力を傾けるべきであります。」というりっぱな見解も述べておられることでもございますし、この際、ひとつ具体的にお答えを願いたいと思います。 本論に入ります前に、私、一つだけ、今後のこともありますのでお尋ねをしておきたいことがあるわけです。それは、今度の日中国交正常化問題に関する限り、国論はほぼ統一され、総理は超党派的な支持を得て外交を展開するという非常に恵まれた立場に立つことができたわけでありますが、このようなまたとないチャンスにあたって、あなた自身、この超党派外交の芽ばえといいますか、こういうものをどういうふうに受け取られたか。私は感想を聞こうとは思いません。これを大切に育てるために、どういう心がまえで何をやったかということです。これからは何をしようとしているか、これも具体的にちょっとお尋ねをしておきたいと思います。
○田中内閣総理大臣 日中国交の正常化が行なわれたことによりまして、日中両国の善隣友好の基礎ができたものであるという考えに立っております。二千年の余にわたる長い交流の歴史を持ち、日本の文化は中国文化と言っても過言ではないわけでございます。その中に育っておりながら、日中両国の間に不幸な歴史もあり、しかも、隣国でありながら国交の正常化ができなかったことは、はなはだ遺憾なことであったと思うわけでございます。 しかし、それはそれなりの理由と歴史の上に立ってそのような事態が存在したわけでございますが、御指摘のとおり、善隣友好の基礎をなす正常化を行なうことができたことは、これから両国の長い友好の歴史を進めるスタート台に立つものである、こう考えるものでございます。これからは日中間の意思の疎通をはかり、お互いアジアの平和に貢献し、ひいては人類の平和維持のために努力を続けてまいりたい、その第一歩といたしたい、こう考えております。 超党派的な外交がなし遂げられたということでございますが、今度の問題に対しては本会議でも申し上げたとおり、長いこと交流の継続に、今日のために努力をしてこられた方々に、深い敬意を払っておるわけでございます。戦後の問題の中で外交、防衛、教育というような問題、与野党の意見が一致をしないということで、ほんとうに遺憾だと思っておったわけでございますが、日ソの問題に続いて今度の日中の国交の正常化で、国民的世論を背景にし、しかも野党の皆さんからも理解と声援をいただきながら日中国交の正常化に踏み切ったことは、歴史的にも意義あることだと考えております。外交権をになう政府も、国民皆さまの、野党の皆さんの御意見も十分お聞きをしながら、これからも国民的外交を推進をいたしてまいりたい、こう考えます。
○石橋委員 まあ初めてといってもいいほどのチャンスであったわけです。あなた方が常日ごろ、何かといえば外交は超党派でなくてはならない。その超党派外交ともいえるような事態が目の前に出てきた。その段階で、ほんとうにこの超党派外交というものをこれから大切にしていこうという気があるのかと、私は疑われるようなことのほうが多かったような気がしてしようがないのです。どういうことをなさったか。お礼を申し上げたというだけなんですね。具体的な事実をあげるならば、訪中の前に公式にはもちろん、非公式にも何の連絡も打診もないままに党首会談をやるとかやらぬとか、かってな発言ばかり繰り返しておる。結局はやらなかった。これなどはもう典型的な例だと思うのです。結局はおまえさんたちも賛成するんだろう、それ幸いだ、ついていらっしゃい、こういうふうな態度と受け取ってもやむを得ないような事態が繰り返されておるわけなんです。私は非常に残念に思います。しかしこれは本論ではございませんから、これ以上申し上げません。 本論に入りたいと思うのです。先ほども申し上げましたように、今度の日中国交正常化、非常に喜ばしいことである。しかし、それが直ちに両国の友好関係の確立にそのままつながっていくとか、アジアの緊張緩和にそのままつながっていくということにはならないのではないか。特に最近の一連の政府の言動を見ておると、大きな危惧を持たざるを得ません。 時間が限られておりますから、その危惧を抱く最大のものが何であるか端的に申し上げますが、言うまでもなく日米安保条約の極東条項と佐藤・ニクソン共同声明の中の台湾条項を、依然として固守されておるという点です。何としても私どもには矛盾としか思えないわけなんです。 そこで、最初に確認をしておきたいのですが、安保条約を堅持する、安保条約の円滑かつ効果的な運用について日本政府はアメリカ政府に確約した、これは間違いない事実でございますね。
○田中内閣総理大臣 本会議を通じても申し述べておりますとおり、日米安全保障条約はこれを維持し、堅持をしてまいるということでございます。
○石橋委員 次に確認第二項です。米華相互防衛条約は、これまた現実に有効であるということも確認いたしますか。
○田中内閣総理大臣 アメリカと台湾との条約は、現に存在をしておるものでございます。
○石橋委員 アメリカと台湾との間に現に相互防衛条約が有効に働いておる。これは九月二日のハワイでの記者会見でも田中総理は確認しておるわけです。それでいてなおかつ、安保条約の極東条項を廃棄するつもりはない、改正するつもりもない、佐藤・ニクソン共同声明の中の台湾条項を廃棄するつもりもない、こういうことなんです。これはつじつまが合うのでございますか。確かにこれらの極東条項や台湾条項が国交回復、正常化には支障がなかった、この事実は認めます。だからといって、条約上中国の内政に干渉する条項と義務をそのままにしておいて、これからの両国の友好関係の確立がある、これがわからないのです。ほんとうにそう思っておられるのか。今後の友好関係について何の支障もないと思っておられるのかどうか、お尋ねいたします。
○田中内閣総理大臣 日中の国交の正常化は、日米安全保障条約とはかかわりなく実現をしたものでございます。これは政情が違うとか、信条も違うとか、体制が違うとか、いろいろお互いの国、中国は中国、日本は日本で第三国との間にいろいろなものもございますが、そういうものは別にして、日中の国交の正常化が必要であるという前提に立って、共同声明による国交の正常化がなし遂げられたわけでございます。だから、また別に、いまいろいろ御指摘になっておりますアメリカの問題でございますが、アメリカはもうすでに、私が訪中をする前にニクソン米大統領の北京訪問というものも行なわれておりますし、両国の間には意思の疎通がはかれる状態になっておるわけでございます。でありますので、条約がどうであっても、現に存在するいろいろなものがございましても、そのような、いま御指摘になるようなおそれがないということは、その後の状況の変化によって十分理解できるわけでございます。ですから、日米安全保障条約があることも先方は承知をいたしております。それから私たちも、中ソ同盟条約のあることも理解をいたしております、承知をいたしておりますという、このことに対しては十分意見の交換を行なったわけでございます。 しかし、それは中ソ同盟条約があっても、日中の友好増進のために、善隣友好親善のためにはそんなに気にするものではない、そういうものがあっても、そういうものよりも、日中間の善隣友好関係を推し進めるという両国の意思と努力が必要なんだ、こういう考えでございまして、いまお示しがありました日米安保条約や極東条項や台湾の問題等が、日中のために大きな障害になるという前提に立っておりません。
○石橋委員 こういう話になってまいりますと、条約がどうあろうとかまわないのだというようなことをおっしゃる。まことにふに落ちないわけです。 それじゃもう一歩譲りまして、私は安保条約第六条の中で明記されております極東の範囲ですね、この極東の範囲についての政府の統一見解、国会の場で正式に総理大臣から発表され、国民に伝えられておるこの統一見解、これすらもそのままでいいというお考えでございますか。
○田中内閣総理大臣 極東の範囲というのは、地理的にどこからどこまでということではないわけでございます。フィリピン以北、日本を中心にした周辺地域ということでございまして、いままで御質問に対してお答えをした極東に対する定義といいますか、政府の極東の範囲というものに対する常識的解釈は、従前どおりで間違いはないと思います。
○石橋委員 政府の統一見解は、昭和三十五年の二月二十六日に衆議院の安保特別委員会で岸総理から公式に述べられているのです。いま田中総理が申しましたあとのほう、肝心のところは削除していますね。かかる区域は、「大体においてフィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域であって、韓国及び中華民国の支配下にある地域もこれに含まれる」こう述べているのですよ。だから私は政府の統一見解、国会の場で正式に国民に伝えられたこの統一見解すらも、変えないでだいじょうぶだとおっしゃっているのですかと、こう申し上げているわけです。
○田中内閣総理大臣 先ほど申し上げましたとおり、政府が従前申し述べておるとおりで差しつかえない、こういう考えであります。
○石橋委員 それじゃこの統一見解で示されております、「中華民国の支配下にある地域」とはどこですか。
○田中内閣総理大臣 台湾でございます。
○石橋委員 今度のこの共同声明で、あなたが確認してきたことと矛盾するんじゃないですか。共同声明の中には二項に、「日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。」それから三項に、「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」こういうふうに明記してあるわけですね。ところがいま、「中華民国の支配下にある地域」とはどこですかと言ったら台湾だ。この場合には、中華民国というものの存在もその支配する地域もお認めになるわけですか。これで共同声明の精神は何ら触れることにならないわけですか。
○田中内閣総理大臣 共同声明で、台湾に対する日本政府の基本的な考え方は明確にいたしてございます。現に台湾が存在をするという現実的な問題と、いままで国会で申し述べた極東の範囲の中に台湾というものが入っておるという従前の政府の考え方に変更はないか、変更はない。なければ、台湾は極東の範囲というものに入ります、こう述べておるのであります。
○石橋委員 それはもうここで明らかになったのです、お互いの主張点は。国民の皆さん方は政府とわれわれの主張と聞いて、おかしいと言う私たちの考えを支持するか、あなたたちの言うことをなるほどだと考えるか、それはもう国民の皆さま方に一応おまかせしよう、時間がないから。私は百歩譲ってお尋ねしているわけなんです。あなた方の主張がかりにですよ、通ったとしても——私は通ると思わないけれども、従来の極東の範囲というものに関する政府の統一見解はいじらなければおかしいのじゃないですかと、一歩進めてお聞きしているのですよ。この政府の統一見解、国会において発表されました統一見解の中には明らかに、「中華民国の支配下にある地域もこれに含まれる」こう言っておるのです。これをそのまま踏襲するということは、いまの時点では許されないのじゃないですか。これをもすらだいじょうぶ、変更する必要はない、訂正する必要はないと言うのは、だれだってこれは納得できませんですよ。中華民国というものを認めるのですか。「中華民国の支配下にある地域」というものを認めるのですか。これでは共同声明が死ぬじゃありませんか、こうお伺いしているわけです。
○田中内閣総理大臣 統一見解を出した当時と国際情勢が変わっておることは事実でございますが、今度の日中の国交の正常化は、日米安全保障条約と関係なく締結をせられたものであります、ここまではひとつ理解をしていただきたい。そういうことを前提にして、いままで極東の範囲はということでございますから、岸元総理大臣が述べたとおり、従前の政府の統一見解と同じことでございます、こう申し上げておるのでございます。でございますので、台湾地域というものは従前どおり極東の範囲という解釈の中には入っております。しかし、台湾そのものが情勢が非常に変化をしております。そういう意味で、従前御質問があったり政府がお答えをしておったような状態というものは、全く変わっておるということは事実でございます。
○石橋委員 この極東の範囲というのは、政府の統一見解は、日本の国会で日本の国民に向かって説明なさっているのですよ、政府が。しかも非常に重要な問題なんです。これは読めばすぐわかるわけですが、「在日米軍が日本の施設及び区域を使用して、武力攻撃に対する防衛に寄与し得る区域」なんです。それはどこかという国民の疑問に対して、かかる区域は「大体においてフィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域であって、韓国及び中華民国の支配下にある地域もこれに含まれる」、これが、岸さん以来の一貫して、国民の関心事である、極東の範囲とはどこですかということに対する政府のお答えなんです。これがそのままいいというのはおかしいじゃないですか。「中華民国の支配下にある地域もこれに含まれる」。中華民国というものは認めているのですか。ましてそれの支配する地域というものを認めているのですか。認めているということになれば、明らかに今度のこの日中の共同声明と矛盾するじゃありませんか、こうお聞きしているわけです。だれが聞いたってはっきりしているじゃないですか、この疑問は。
○田中内閣総理大臣 先ほどから申し上げておりますとおり、台湾という地域に対しまして、従前極東の範囲の中に入るということでおりますが、現在の日中の国交正常化というものは、安保条約というものと全然かかわりなく行なわれたものでございますので、現時点における極東の範囲という定義、解釈は従前どおりであるかということでございますから、そのとおりでございますと、こう述べておるのでございます。
○石橋委員 私は単なる表現の問題としてこれをお聞きしているのじゃないですよ。非常に重要な問題だと思います。その影響も私考えてお尋ねしているわけなんです。あっさりと表現なら表現だけでも変えたらいかがですか。そうしないと、あとあと問題になるんじゃないですか。この表現をそのまま使わなければいけないのですか、統一見解について。このまま踏襲するということになったら、新しく問題は起きませんか。私は熟考していただきたいと思います。
○田中内閣総理大臣 先ほど私が申し上げましたが、中華民国政府というような、いままで申し上げておりましたことを台湾地域と、こう申し上げておるわけでございまして、そういうふうに読みかえて、台湾地域というものは極東の範囲に入る、こういうふうに理解をいただきたい。
○石橋委員 そうすると、韓国及び台湾地域もこれに含まれているというふうに改めるとおっしゃるのですね。
○田中内閣総理大臣 中華民国というものは台湾と当然読みかえらるべきでございますので、台湾地域と読みかえるというふうに御理解いただきたい。
○石橋委員 それを読みかえても新しい疑問は起きます。それはもう率直に私は申し上げておきたいと思います。しかし、こちら詰めればあちらというのでは、またあなたも立場がないでしょうから、先ほどのように、国民の皆さん方に、あなたの言っておることが筋が通ると考えられるかどうか、おまかせしたいと思うのです。これを台湾地域と変えましても問題は起きるのです。というのは、先ほど念を押しておりますように、アメリカと相互防衛条約を締結しているのは、明らかにこれは中華民国なんですから、そしてその中華民国防衛の義務をアメリカが果たすために日本の基地を使うのですから、これは明らかに、それじゃそっちのほうはどうなるのですかと私は攻めることができるのです。しかし、一応ここで統一見解を改めるという答えをあなたが率直に出されましたから、この問題は、またあとにゆっくり時間をとって引き続きやることにしたいと思うのです。 これ一つとっても明らかなように、極東条項も台湾条項もそのままで日中の真の友好関係が確保されるなんということはあり得ないのですよ。そんなことを言えばどこかに無理が来るのです。もうすでに一つ大きな無理が来て、あなたは訂正せざるを得なくなった。これはむちゃというものであって、そういう心がまえではほんとうの日中の友好関係、恒久的な友好関係はおぼつかないですよということを申し上げておるわけなんです。 次に移りますが、その前に、この台湾との関係でちょっとお聞きしておきたいと思います。 外務大臣の演説の中で、「政府としては、台湾とわが国との間に人の往来や経済、文化をはじめ各種の民間レベルでの交流を、今後ともでき得る限り継続していくことを希望しており」というふうに述べておられるわけですが、一体どの程度の関係というものが今後保たれるのだろうか、そしてそのことがどの範囲にとどまれば中華人民共和国との関係に影響を及ぼさないのだろうか、これは疑問点なんですよ。率直に私はお尋ねしたいと思うのです。時間がありませんから、これも最初は詰めずに一般的にお聞きします。たとえば政治的にどういうことになるのか。特に諸取りきめ、諸協定というものを中心にお答え願いたいと思う。それから経済的に貿易の面でどういうことになるのか。新たな借款供与というようなものは許されるのか。輸銀の利用は許されるのか。それから、人事の往来、こういう点で旅券その他はどういうような扱いになるのか。それから在日中国人の法的地位といいますか、そういうものはどういうことになるのか。ひとつ政府のほうで時間を節約して、わかりやすくお答え願いたいと思います。
○大平国務大臣 この間本会議で御報告申し上げましたとおり、台湾とは、外交関係を除きまして事務関係はできるだけ維持したいというのが日本政府の希望でございます、と申し上げました。できるだけという表現をいたしましたゆえんのものは、新しくできました日中間の親善友好関係をそこねない範囲でわれわれはできるだけのことをやりたいという趣旨でございます。 それから、政府間の外交関係が維持できなくなりました結果、いままで中華民国政府と日本政府の間に結ばれておりました条約並びに諸協定というものは機能し得なくなったわけでございます。したがって、これらにかわるものをどう考えるかということでございますが、政府間の取りきめはいたそうと思ってもできないわけでございますので、民間レベルにおきまして、いま鋭意先方とお話し合いをいたしまして、民間レベルの取りきめをどのような姿でやるか、御相談中でございます。 人事の交流等につきましては、旅券の交付等につきまして、できるだけ便宜をはかって関係者に不便をかけないように留意いたしたいと、法務当局といろいろ打ち合わせをいたしておるわけでございます。 政府間の外交関係が維持できなくなりました結果、新しい政府借款というものは以後考えられなくなるわけでございます。 輸銀使用の問題につきましては、これをやるともやらぬともまだきめたわけではございませんけれども、プロジェクト、もしそういう申請がございました場合に、これはやるかやらぬか、ケース・バイ・ケースで吟味していきたいと考えておるわけでございます。 いずれにいたしましても、新しい日中間の信頼友好関係をそこねない範囲におきましてできるだけの配慮をいたしまして、実務関係を維持してまいりたいというのがわれわれの希望でございますが、これは相手のあることでございまして、先方がそれに応諾をしていただかなければできないわけでございまして、いま民間レベルの話し合いというものにつきまして、御相談を申し上げておる段階でございます。
○石橋委員 参考のために私は、現在台湾との関係でどの程度の債権があるのかお聞きしておきたいと思うんです。政府借款並びに民間債権ですね。これも外交演説で、「台湾に在留する邦人の生命財産の保護は、台湾における官民の配慮により、今日まで幸いに事なきを得ております」というように報告されておるわけですが、少し具体的にお尋ねしておきたいと思います。
○大平国務大臣 政府借款あるいは輸銀の延べ払いの残高等につきまして、正確な数字は、あとほど御報告いたします。
○石橋委員 それじゃ、その間総理にお尋ねしたいわけですが、今度の共同声明におきまして、中華人民共和国政府は、中日同国国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言しておるわけでございますが、われわれとしても非常に感謝にたえないところであります、ずいぶんいろいろと迷惑をかけておるわけでございますから。賠償の請求を放棄したから、ああよかったよかったということだけでは済まないのじゃないかという感じも率直に持つわけですけれども、この点に関連しての総理の気持ちをひとつお話し願いたいと思います。
○田中内閣総理大臣 日中国交正常化に対して賠償請求を放棄せられたことに対しては、いま石橋さんの述べられたとおり感謝をいたしております。たいへんな御迷惑をかけ損害を与えたわけでございますが、この問題に対しては、周総理も、これから日本に賠償を請求するというようなことになると、日本国民もたいへんな負担をこうむるということになるし、かつて何回も賠償支払いの義務を果たしたことのある中国の歴史の上から見ても、そのような道をとらないということでございまして、この配慮に対しては感謝をすべきでございます。そういう恩讐を越えてという——私と周総理との間に話し合いをしたわけでございますが、まさに恩讐を越えて日中の善隣友好を長く続けたいという意思をお互いに表明をし合ったわけでございますから、やはり恩讐を越えてこのような態度に出た中国にも、日本は将来善隣友好というラインでこたえなければならないという感じでございます。やはりあまり、過去のことをすべて理論どおり片づけなければ、現実にあるものをそのまますべてを片づけなければならないということでは、日中というもののほんとうの前向きな正常化はできないのだという発言、私も同種のことを述べて今度の正常化になったわけでございますが、やはり、わが国、われわれに与えられておる好意というものに対しては好意で報いなければならないということであると存じます。
○石橋委員 それじゃ、そのことと関連して、次のお尋ねをしてみたいと思うのです。 共同声明の中でうたわれております平和友好条約の締結についてであります。大体いつごろまでにこれをつくろうといったようなめどを持っておられるのかどうかというのが第一点。 それから第二番目に、いまの質問と関連をいたしまして、この内容の柱としてどういうものが考えられるのか。たとえば、いまの問題に関連しての経済協力の問題がここに一つ出てくるとか、あるいは不可侵というような問題が出てくるとかいう、大まかなそういう柱というものをどういうふうに考えておられるか、これはあわせてお答え願いたいと思います。
○大平国務大臣 お答え申し上げる前に、先ほどの台湾に対する円借款、延べ払い残高等を御報告いたします。 昭和四十七年九月末現在、円借款の債権残高二百九十億一千万円でございます。うち輸銀との協調融資にかかる市銀の債権が十七億三千万円ございます。それから民間の延べ払い債権残高でございますが、これは恐縮ですが、四十六年十二月末現在一億九千五百万ドル、円に換算いたしまして六百二億八千万円でございます。それから直接投資、これは四十七年六月末九千三百三十万ドル、円に換算いたしまして二百八十七億四千万円でございます。 それから、いまお尋ねの日中平和友好条約でございますが、これは共同声明にもございますように、まず平和友好条約の締結について交渉をしようということに合意したのが共同声明発出の段階。明らかに言えることでございます。日中首脳会談におきまして、この問題につきまして双方の理解は、この前の本会議でも御報告申し上げましたとおり、過去の始末は一切共同声明で終わったという了解でございます。したがいまして、このいま考えておりまする日中平和友好条約というものは、これから先の日中関係の善隣友好関係を律する指針を盛ろうじゃないかという点、これは明らかに首脳会談で合意を見ております。しかし、その内容といたしましてどのようなことを盛り込むべきかという具体的な相談は、まだいたしておりません。 それから、しからばこれをいつ交渉を開始するかということにつきましても、具体的な日取りをきめたわけでございませんで、私どもの心組みといたしましては、大使の交換を終えまして、外交ルートで先方と御相談すべきものと考えております。
○石橋委員 せめてこういうものについてという抱負といいますか、そういうものが個条的に出てくるのじゃないかと思ったわけですが、それすらもないということでございます。まことに心もとない感じがいたします。 次に質問を移すわけですが、次は、私が冒頭申し上げました第二点に入るわけです。結局、世界、特にアジアの平和と繁栄に寄与するために、今後日本は何をなすべきか、何をなしてはならないか、こういう問題です。演説としては非常にりっぱなことが述べられておるわけなんですよ。総理の所信表明でも、「人類の平和と繁栄にさらに貢献すべき義務を負うに至ったことを意味する」。あるいは外務大臣の演説においても、「アジア地域の平和と安定、秩序と繁栄に貢献することが肝要であります。そのためにわれわれは何を行なうべきか、何を行なってはならないかについて、正しい判断をもち慎重に行動すべきであると信じます。」この演説を聞いている限り、わかっちゃおるのだなということなんです。ところが実際に、それじゃ具体的にこれからどういう気持ちで何をやろうとしているのかと聞いていくと、この所信とは全く矛盾すると思われるようなことしか述べられない。たとえば、安保の堅持であります、四次防は絶対に必要であります、そして具体的な行動としてはベトナム侵略戦争への協力というようなものが次々に出てくる。これじゃ、一体演説のがどこまで本気なんですかという疑問を持つのは、何も私だけではないと思う。国民の皆さん方だって、そういう疑問を当然私は持たれると思う。 そこで、最初に包括的にお尋ねしておきたいのですが、安保条約の堅持や、四次防の策定や、あるいはベトナム戦争への協力、こういうものがどうして、日中友好の確立、あるいは人類の平和と繁栄、アジアの平和と安定につながるのか、ひとつ概括的にまず総理大臣から、あとで具体的に質問はしますけれども、国民の皆さんのわかるようにお話し願いたいと思うのです。
○田中内閣総理大臣 日中国交の正常化がアジアの平和に寄与するものであるということは、これはもう御理解いただけると思うのです。あまりめんどうなことを申し上げる必要はないと思うのです。七億、八億も存在する中国大陸と、一億の国民を持ちこのように経済的な基盤を持っておる日本との間に、意思の疎通さえもはかれず、交流さえも行なえなかった時点から、お互いが将来長きにわたって善隣友好を誓い合った、そして四半世紀以上に及ぶこの中国との不正常な状態。中国側に言わせると、五十年、半世紀以上にわたる日中の不正常ということでございますが、このような状態でございましたものに終止符を打って、お互いは何でも話し合おう、そして永久にこれから善隣友好の実をあげましょうという国交の正常化ができたのでありますから、アジアの平和にそのこと自体が大いに寄与することであることは、論をまたないことでございます。 第二の問題は、中国と善隣友好の実をあげるためには、日米安全保障条約や四次防や自衛力の増強というようなものが大きな障害になる、こういうお考えでいま御指摘になられたわけでございますが、日本は憲法において平和憲法を守っております。しかも侵略などは絶対にやりません。これはいま、侵略をやるような感じを持っておる人というのは、日本人全体の中でないと思うのです。一人もないと思うのであります。そういう戦後二十五年余の実績、日本人のものの考え方、平和国民として平和に徹するこの日本の姿勢は、世界に評価をされ理解をされておると思います。私はそういう意味で、現に日本が有しておる安全保障条約や自衛隊というものは、これは持っているからいまのような状態であるから日中友好の妨げになり障害になるものではない、このように考えておるのであります。 もう一つは、日米安全保障条約というものそのものも、先ほども述べたように、国際的情勢も変わっております。しかも米中の間にも交流がもうすでに開かれております。ですから事態は変わっておる。こういう意味で、米中の間も、私は、非常に友好的な雰囲気の中にあり、その意味で、台湾というような問題に対しても、過去に考えたような状態というものは全く起こらない、そういう理解のもとに安保条約をあらためて評価をすべきであるということでございます。 あと残るのはどうかというと、自衛力の漸増という四次防に対してでございますが、これは日本の憲法のもちろんワク内にある。これは全く専守防衛というものでございまして、他国に脅威を与えるようなものでは絶対にないということでございますし、日本が独立国として、だれでも持っておる、世界じゅうのすべての国が持っておる自衛力、防衛力という範疇を脱するような大きな防衛力なのか、それともほかの国がみんな考えておる、独立国としてはだれでも持たなければならない最小限の範囲内にあるのかという問題だけが残っておると思うのでございます。 私は、そういう意味で政府は、四次防も憲法の定める防御的な専守防衛という最小限のものでございますし、脅威を与えるようなものではない。そういうことで、日中国交の正常化というものは、いまの状態で、第三国との間にいろいろ持っておる関係とかその他のものを変更しないでもでき、しかも日中間の善隣友好の関係は増進できる、こう判断をしておるのでございますし、もしそういうことに対していろいろな御議論があれば、これから展開する世界情勢の中で一つずつ合理的に解決ができる問題でございまして、現時点における日本の四次防や日米安全保障体制というものが日中間の障害になるということは全く考えておりません。
○石橋委員 さっぱりわかりません。私のほうで要約してみたいと思うのです。 結局、本会議における総理の所信表明を聞いておりますと、「世界には対決ではなく、話し合いによる緊張緩和を求める動きが始まっております。」こう述べておるわけです。それから、「最近世界的に緊張緩和の動きが見られるとはいえ、わが国が今後とも平和と安全を維持していくためには、米国との安全保障体制を堅持しつつ、自衛上最小限度の防衛力を整備していくことが必要であります。このたび、政府が第四次防衛力整備計画を決定いたしましたのもこのためであります。」こういうふうに述べておられるわけです。緊張緩和というのは、まくらことばではちょっと書いてあるのです。認めておるのです。それとは全然関係なしに、安保堅持が飛び出してくるし、四次防の必要性がうたわれておる。つながりが全然ない。言っておることとやっておることとの結びつきが全然ない。これじゃ幾ら説明をつけ加えられても、ベースがこういうベースなんですから、だれが聞いてもわかりっこないです。だから、緊張緩和ということを言ってはおるが、おなかの中では認めてないということなんじゃないですか。その片りんが所信表明の中で言うならば、「今日の国際社会には、随所に不安定な要因のあることは事実であります」というところなんです。要するに、緊張緩和といろいろとこうあるが、それは表面、上つらのことだけで、一番総理がとらえておるのは、「随所に不安定な要因のある」というこれ。緊張緩和の側一面は無視して、依然として国際情勢は不安定であり、種々の緊張要因の存在が目の前にあるのだ、このほうを一方的に重視している、こういうふうにはっきりおっしゃったほうがわかりやすいですよ。依然として冷戦体制といいますか、延長上に田中総理の発想は立っておる。緊張緩和なんというのは、これは一時的な紆余曲折でそういうのがあるのかもしれぬが、一時的なことだ、こういう発想じゃないのですか。そうじゃないというならば、ひとつもう少しわかりやすく、特に、不安定な要因というものがあるとおっしゃっておりますが、それを、具体的にどういうものをさしておられるのか、あわせてひとつお答え願いたいと思います。
○田中内閣総理大臣 第二次大戦終幕後今日まで二十七年間の世界の情勢を見れば、変わっておることはだれでも明らかでございます。 まず第二次大戦は米ソが、東西が手を握って、日、独、伊三国の枢軸関係に対処したのが第二次大戦でございます。しかしそれが終わった。終わったら平和になったかというと、アメリカを主軸にする世界の民主主義、自由主義諸国家と、ソ連を主軸にする社会主義衛星諸国家と、バランス・オブ・パワー、力の均衡を保った時点が、ずっと長く続いたことは御承知のとおりであります。これは歴史的な事実でございます。それがワルシャワ条約機構になりNATOになってバランスが保たれておったことは、地球上の冷厳なる事実でございます。しかし、その東西の接点において起こった現象がベルリンの壁であり、それからベトナムの問題であり、朝鮮の三十八度線であり、もっと飛び火したのはアメリカとキューバの問題であった、これも事実でございます。 しかし、そういうような状態の中にあったにもかかわらず、四半世紀過ぎた今日、ベルリンの壁を中にしても東西ドイツは話し合いを進めております。そうして独ソ条約はできました。同時に、朝鮮三十八度線の板門店でも赤十字を通じて南北が話し合い機運になっております。きょう、きのう、報道されることにおいては、アジアにおける一番、一日も早く平和的処理をしなければならないといったベトナムの問題も、何とか話し合いをしようという状態が来ておるのでございますから、冷戦的な状態、力の均衡から、話し合いでなければならない——力の均衡を最後まで持っていくと、これは全面的戦争になれば、好むと好まざるとにかかわらず、地球上の全人類が死滅をするような状態になる、そういう事態を踏まえて話し合いをしよう、こういうことになっておることは事実であります。ですから、世界的情勢の変化を、政府はこのように認識をいたしておりますと言っていることは、これは事実なのです。これは人類のためにほんとうに喜ぶべきことであります。 その問題と、そういう状態がもう直ちに来るのであって、全世界のNATOも、それからワルシャワ条約機構も、すべてのものが全部なくなって、軍備も何も全部なくなればいいのだというような状態では、いやしくも国民の生命、財産を預かっておる政府は、そんな考えではおれないのです。それは、やはり方向は的確に把握をしながら、そして世界の平和維持に寄与し、貢献をしながらも、みずからは、もう春が来るからといって、まだ春が来ないうちに裸になって着物を脱いでしまうというわけにはいかないのです。これはやはり政府というものは、春が来たら、少しぐらい暑くとも、ほんとうにもうかぜを引かないのだという自信を持つまで、防衛やそういうものに対しての責任を持たなければならない。そのために、いまの時点において日米安全保障条約、これをなくしてもいいような状態にはありません、こういう認識であります。 これはあなた方の認識と違う。違うけれども、これは、私たちはまだ安全保障条約を必要としておる。しかも四次防というものは、そういう状態の中で最小限日本の安全を守るために必要な自衛力である、こういうことでございますので、そこらをひとつ御理解を賜わりたい。
○石橋委員 それじゃ、これも具体的にお答え願いたいのですが、総理はどのような場合に初めて安定した緊張緩和の状態になったとお認めになるのですか。春風が確かに吹き始めたとおっしゃるが、まだ春ではない、こう言うのですね。春というのは、どういう時点になったら春なのか。そしてまた、そういう状態になった場合には軍事力の増強はストップするのですね。まさか、まだ春じゃない、春じゃないといって、いま一生懸命厚着しておるわけですけれども、そのときも、なおかつ重ねて着物を着るというようなことはないわけですか。その辺は、はっきりひとつお答えを願いたいと思います。
○田中内閣総理大臣 万全な体制をとるという名目のもとに不必要な防衛力を増強するような意思はありません、それは。防衛力の増強といえども国民の犠牲なくしては、できないことでございます。国民の負担が前提である自衛力である、防衛力の漸増であるとしたならば、これは非常に的確な判断と評価によって最小限を維持するということを貫かなければならぬことでございます。ただ、最小限はこれでいいのだという甘い考えを持って不測の事態に対応できなくなった場合のことを考えると、万全な体制をとらなければならないということもまた理解をしていただきたい。 私は、いつまでも地球がこのような状態であればいいなどと考えておりません。戦いに敗れた日本でありますし、再び日本が戦いをしかけようなどという人は、ほんとうに一人もないと思います。私たち自身も兵隊として何年か青春をささげたのでありますから、そういう意味で、日本人はほんとうに戦争をしようなどと思う人は一人もないと思うのです。そういう意味で理想的、合理的な人類の英知によった集団安全保障体制ができることが一番望ましい。私はそういう意味で国連機構というものを尊重いたしております。国連機構というものの中であらゆる平和が維持される、これが望ましいのです。 ところが、いま国連というのはどういうところかというと、とにかくスエズ運河があのような状態になっても、全然これを再開することもできません。これはまだイスラエルは依然としてやっておるのです。そういう状態の中では、やはりお互いが自分の力で自分を守るという最小限の防備はしなければならぬし、自分だけで守るというと負担が多過ぎる、とてもできない、そういう意味で集団安全——理想的ではないが、二国以上の集団安全保障の体制をとろうということ、これはもうイギリスでもフランスでも西ドイツでも、どこでもやっていることなのです。これはもう社会主義国でも、みんなそうです。全部やっているのです。ですから日本も例外じゃないのです。私が例をあげるまでもない。ですから、そういう意味で、日本は高い理想を掲げながら現実を踏まえて、だんだんと理想実現のために努力をしていく、こういうことで理解をいただきたいと思います。
○石橋委員 私がお尋ねしたのは、安定した、緊張緩和の状態になったと判断するのは、どの時点なんですかと具体的にお尋ねしておるわけです。簡潔にひとつ……。
○田中内閣総理大臣 もう非常にむずかしい御質問でございまして、なかなか簡潔にお答えできるようなものではないと思うのです。これはやはり簡潔に言えば、私もあなたも、これはもう何も要らないというぐらいな、国民全体がもう当然である、それで確実に自分たちの独立も、自分たちの生命、財産も確保できるという体制だと思いますが、人類の歴史というものは非常に長い歴史が続いておっても、そういう事態は今日までなかった。だから今度は、第二次戦争というものの後に核兵器が発明をされました。これがとにかく第三次全面大戦ということを前提にして考えて、核兵器戦争ということを考えれば、これはどこの国が勝って、どこの国が負けるなんていう問題じゃないと私は思うのです。そうなると、もうこれは全人類が死滅をする、元も子もなくなる、こういうことだと思うのです。そういう立場から、お互いがやはり第三の道を選ばなければならない。権利を主張するだけじゃだめなんだ。だから東西問題よりも南北問題が世界の平和のためには重要である、こういうように転化をしてきておるのであります。 ですから、少なくとも東西問題から南北問題に世界の重点が移って、南北問題さえ円満に解決できるような状態が来れば、この世における、私は少なくとも理想に近い姿である、お互いが個々に防衛力を持たなければいかぬ、殺人兵器を持ってなくちゃ暮らしていけないというような時代からは遠ざかるものだと思います。
○石橋委員 いろいろおっしゃいますが、結論的には、そういう状態にはとてもたどりつく見込みはないということのようですね、総理の判断は。なかなかむずかしいんだ、こういうことに尽きるようです。 それから、何度も、戦争を望むような国民は一人もおらないとおっしゃいます。そのとおりですよ。一人もと言えばどうかわかりませんけれども……。だからこそ新しい憲法の中で、政府の意思によって戦争というものが再び繰り返されるというようなことがないように、国民が再び戦争の惨禍をこうむることがないようにと、われわれは平和憲法の中でうたい上げている。政府の意思によって——そういう危険性を常に持っているのは政府なんですよ。国民の意思を踏みにじって、そういう危険な方向に行く可能性というものが常にある。それを押えるためには、どうしたらいいかというその立場でわれわれは考えなくちゃならない。 それともう一つ、あなたが所信表明の中で使っておることばをそのまま引用するならば、どうして貢献するかという側面が一つもないのですよ。世界の動きはこうなんだ、こうなんだ。それはどうにもならないものであるかのごとく前提に置いて、だから四次防が必要なんだ。だから軍事力の増強が必要なんだ。——一体そういう緊張緩和の状態に持っていくために日本が何がなせるのか、何がやれるのか。そういうものは、ことばとしてあっても事実として何もないじゃないですか。そのことを私は言っているのです。 特にあなたのいまおっしゃっているような、何といったって世界から緊張状態というものが、不安定な要因というものがなくなることなんかないんだというような発想でいけば、これは歯どめなんかありませんよ。歯どめなんかありませんよ。際限なく軍事力というものは増強される。そういうものなんです。そういう危険性を持っている。だからこそ、シビリアンコントロールなんという問題が出てくるわけなんです。 それじゃ、少し具体的にお尋ねいたします。 あなた方は、盛んに軍事力というものの限界を財政経済の規模というものと結びつけようとします。最近特に引用されているのがGNPとの対比ですね。たかだか一%に及ばない。〇・八%じゃないか。何が多いか。この感覚を私は問題にしたいと思う。 総理、あなたは何度もそういう〇・八%を持ち出しておりますけれども、世界に日本の軍事費程度のものすら、国家予算としてまかなえない国がたくさんあることを御承知ですか。私はよその国の軍事費なんか、この際問題にしません。かつて日本の軍国主義がひどい目にあわした、たとえばビルマとか、タイとか、インドネシアとか、フィリピンとかいう国々の年間の財政規模がどれぐらいなのか御承知か、ひとつお伺いしたい。軍事費じゃありません。年間の国家予算です。国家の財政規模がどれぐらいか、この東南アジアの国々。御承知ですか。ちょっとお尋ねします。
○田中内閣総理大臣 ここには資料は、各国のGNPに対しての防衛費が何%程度であるかというような表はございますが、しかし国家予算全部がどうであるかということは調べてありませんので、調査の上至急申し上げます。
○石橋委員 私も国際的な軍事費の比較も持っています。国防費のGNPに対する対比もみんな持っています。そんなところまでいかない国がたくさんあるということなんです。特にアジアの国、東南アジアの国々、かつて日本の軍国主義によってひどい目にあった国々、そんなところの軍事費なんて比較になりませんよ。日本の軍事費と、それらの国々の軍事費を比較するんじゃなくて、国家予算総額と比較してくださいと私は言っているのです。いいですか。私はここに資料を持っています。どの程度か。 まず日本の一般会計の規模は、当初予算で三百七十億ドル程度ですね。今度の補正を加えますと三百九十三億ドル、ほとんど四百億ドルに近い。これが一般会計。四次防関係では百五十億ドル程度ですね。これにベースアップの分を含めると百七十億ドル程度。それからことしの当初予算、軍事費に関して八千億円、これは二十六億ドル。それから四次防を算術平均して年平均を出しますと、三十億ドルからベースアップ分を入れて三十四億ドル、このぐらいの数字におさまるわけです。いいですか。 これに対してビルマの国家財政の規模がどの程度かというと、一九七一年で三億一千六百万ドルです。それからタイで、非常に大きいほうで十三億四千九百万ドルです。それからマレーシアとかフィリピンとかいうのは、七一年がなくて七〇年を調べてきたのですが、フィリピンが四億九千六百万ドル、これは財政規模ですよ。日本は八千億という、軍事費だけで二十六億ドル。一番大きなタイの財政規模、国家予算に比べても、日本の軍事費だけで倍、こういうことになりませんか。こういう国に向かってGNPの〇・八でございますなんということが説得力を持っておるとお思いになるのですか。 この点で私は、今度あなたから任務を授けられて東南アジア五カ国を回ってきた愛知さんが、やはりすなおにものを見ていると思います。愛知さんの記者会見での見解というものを私ここで詳しく取り次ぐつもりはございませんけれども、結論的に言っていることは、四次防に対する懸念というものを非常に強く持っている、これが一つです。 わが国内では防衛予算は国民総生産の一%に満たないという説明が政府からなされているが、このような説明は通用しなくなっているという感想を述べておられます。次に、日中復交がアジアの緊張緩和に貢献するという立場に立つなら、むしろ防衛力は縮小に向かうべきだというのが各国のきわめて自然な見方であって、それと違った方向を打ち出す場合、それなりの十分な説明が必要であったと述懐しておられます。とにかく決定の時期が悪かった、防衛計画は日中復交によるアジアの情勢の変化を見詰めつつ、手直しを含めて再検討すべきだった、こういう見解を述べておられます。 外務大臣というポストを離れて、特使ではあっても、ある程度自由な立場に立てば、このようなすなおな見方すら出てくるのです。これが見方としては、ほんとうじゃないんですか。それを、世界で三番目というようなGNPを一方において盛んに強調するかと思えば、一方においては、そのGNPのわずか〇・八%でございます。どこに説得力があります。そんな〇・八などという数字を出す前に、アジアの国々がどの程度の財政規模の中でどんなに生活をしているか、こういうことを考え、その中で、日本のこの軍事費がどう映るかということを、もう一回振り返ってみる必要があると私は思うのですが、いかがですか。
○田中内閣総理大臣 日本の防衛費が漸増されてきても、それが、憲法を守っている日本が他の国に影響を及ぼすものではないということに対しては、理解を求むべく手を尽くすべきであることは言うまでもありません。 それからもう一つは、防衛費というもの、自衛費というものは、そのGNPに対する比率、一人当たりの防衛費、それから年度予算内における比率、この三つでもって比較する以外はないのです。これは小さい国は小さい国なりで年間一億ドルにも満たない予算の国もたくさんあります。しかし、その中で半分も防衛費を計上しておる国もあるし、これは国の状態によって年度予算の総額はきまるのでございまして、これは純な防衛比較とすれば、やはり数字で見るべきであるということは当然でございます。 これは、米国は金額においては七百六十五億ドルである。ソ連は九百十億ドルという大きなものを使っておるわけでございます。これは両国とも隣国でございます。しかも比率からいいますと、北朝鮮はGNPに対して一五・八%、ソ連も一五・七%、米国は七・三%、日本は〇・八%であるということは、これはやはり国防費が、防衛費が多いのか小さいのかということを考える一つのめどとしては、勉強するためにもやはりこの程度の比較は十分考えておく必要がある、こう思うわけでございます。 ただ、あなたが御指摘になられたとおり、比率ではなく、金額からいうと二十五億九千八百万ドル。これが七二年でございますから、そういう意味からいうと、ほかの国は、非常に大きい力を持っていると思うじゃないか、それが侵略の力というふうに映らないかという御懸念があると思います。そういうことに対しては、日本は一切そういうことはしないんだと、こういうことをよく言わなければならない問題だと思います。 ですから、どうも日本の防衛費が大き過ぎるという考え方に立っておられる皆さんと、いまの状態で日本の国防費はこの程度はやむを得ず最小限必要であるという考えの相違が出ておるわけでございますが、私はやはりいまの四次防というものは必要である、こういう見解に立っております。
○石橋委員 日本には日本国憲法というものがあるという観念が一つも総理の頭にはない。それがいみじくも暴露されたのが三十日の本会議における答弁なんです。日本の現行憲法のように全く世界に類例のないものをつくろうという考え、こういうものを非難がましく答弁の中で述べておる。これは取り消したら済むという問題じゃありません。あなたの頭の中にこびりついている。 そういう系列の中にもう一つ大平さんの発言もあります。これは参議院の内閣委員会で述べられておるわけですが、外交には力が必要であり、自衛隊もその力の一つに入るんだという、これまた憲法の精神、憲法の規定が踏みにじられるような発想が出てきているのですね。 どうも新しい田中内閣というものは、顔だちや風貌や声音はちょっとハト派風だけれども、実体はワシかタカというのがこの田中内閣の性格じゃないかという気がしてしようがないのです。またあとで中曽根さんの発言も引用しますけれどもね。そういうのがそろっているんじゃないかと思う。そうじゃないとおっしゃるでしょうが、私はそれを裏づけるために、これから具体的に質問を進めてみたいと思うのです。 その前に、四次防の策定にあたって総理大臣は、平和時における防衛力の限界を明らかにせよ、こういう指示をされたそうですが、これは本来四次防策定の前に示されるべきじゃないんですか。その点はどういうお考えからこれが出てきたのですか。やっぱりちょっと心配になってきたんですか、限界を越えやしないか、もう越えたんじゃなかろうかと。その辺はどうなんです。
○田中内閣総理大臣 防衛力の限界ということは相対的な問題でございまして、なかなかこうであるというふうに方程式のようには明確に出ない問題ではございます。しかし、四次防というような、議論の存するものをきめるにあたって、平時における防衛力の限界というものに対して検討を求めておることは事実でございますし、防衛庁でいま検討いたしております。 これがきまってから四次防というものができればよかったじゃないかということでございますが、自分が自分を守るというためにはこれだけのものを負担してもらわなければなりませんということは、国民にそれだけの負担をしいるわけでございますので、そういう意味で、やっぱり納得できるものはできるだけ計算をしておかなければならないということでございまして、これから各国の状態も十分研究をしながら、日本のこれからの国民総生産の伸びがどうなるのか、また、その中で社会保障やいろいろな問題を一体どういうふうに計算しなければならぬのかというような問題も考えながら、防衛力の限界というものに対してはできるだけすみやかに決定をしたい、こう考えます。
○石橋委員 本来、防衛力の限界などというものは先にきめておいて、そして四次防なら四次防の長期計画の策定をやるということ、これがだれでも納得する筋道ですよ。それが逆になっているということは、やはり防衛力の限界の底上げが必要になってきたんじゃないか、それを意図しているんじゃないかというふうに勘ぐられてもやむを得ないのです。事実またそういう疑いを持たれるようなことが出てきているのですよ。あなた方は、今度の四次防は三次防の延長線上のものだ、一部装備の更新をはかろうとするものにすぎないということを盛んに強調していますけれども、実態はそうですか。私にはどうしてもそう思えません。どうも、いままでの憲法解釈をさらにまた拡大して、憲法無視、憲法じゅうりんが行なわれようとしているんじゃないかという気がしてしようがないのです。これを具体的な事実を通じて私は明らかにしていきたいと思うのですが、そのためにまずお伺いしておきたいと思うことがあります。 問題のFST2改ですね、これの国産を中止して、F5Eの輸入に切りかえようとした理由は何でございますか。特に総理が熱心だったということなんでございますけれども、この理由をまずお伺いしたいと思います。
○田中内閣総理大臣 具体的な問題については防衛庁長官からお答えをいたしますが、これは練習機をもうすでに二十機、今年度の予算で計上しておった経緯がございます。その意味で、練習機もまたT2改も同じシステムのもののほうがいい、こういうことを防衛当局が強く求めておったわけでございまして、私は、これを操縦する、現に使用する専門家の意見を尊重いたして決定をしたということでございます。
○石橋委員 それは最終的に国産継続を決定したわけですね。その前に輸入に切りかえようとなさった理由は何ですかと聞いているわけです。
○田中内閣総理大臣 アメリカには現にそれに近い性能を持つ飛行機がある、そういうことで、それを購入してはどうかという議論があったことは事実でございます。しかも、その金額が非常に安いというような面もあったようでございますが、その後いろいろ調査をした結果、防衛当局の考え方を申し上げますと、先ほど申し上げたように、まず練習機と同系列のものがよろしい、しかも、アメリカに現にあるものは、日本でこれからつくろうとするT2改よりも日本的でない、日本は、いろいろと多様化できるように日本的に研究開発をしておるということで、このほうがよろしいということになって、現にこれを使う防衛庁のほうの意見に従ったわけでございます。安いものでもって合理的に輸入できるものは輸入したほうがいいという考えにも立っておったわけでございまして、過程において輸入論があったことは事実でございます。
○石橋委員 総理がいまおっしゃったようなことはもう最初からわかっておるわけなんです。輸入したほうが国産よりもうんと安い。これはもう比べものにならないぐらい安い。だから、値段だけを問題にするなら輸入のほうがいいということは、これはもう昔からわかっておるのです。それから同系列のものだということもわかっておる。そういう討議を重ね、その結果、国産というものが決定し、すでに開発も行なわれた。その段階であらためて輸入に切りかえるという問題が出てきているのですよ。そうすると、新しい要因がなければ納得できないじゃないですか。たとえばアメリカのドル防衛に協力するんだ、こういう要因がその後出てきたから、輸入に切りかえられないかという議論をもう一回やったんだと、はっきりおっしゃったらどうです。
○田中内閣総理大臣 そのとおりでございます。
○石橋委員 日本の装備というものがそういう角度から論ぜられているということを私は明らかにすればいいんですよ。何が必要なのか、次の飛行機として何が選ばれるべきなのか、そういう非常に重要な、ある意味では重要な問題が、アメリカのドル不足を何とかカバーできないか、そんなほうにしゅっとすりかえられてしまって平然とされる。これは最後に戻ったからいいじゃないかという問題じゃないですよ。そんな感覚なら、もう以後こういう問題には口を出さないほうがいいです。そんな感覚で扱われているということがここで私一つ指摘しておきたいと思うのです。 それから次に移ります。T2とFST2改とは一体どちらが本命なんですか。どうもこの辺に変な小手先細工が使われているような気がしてしょうがないので、私は念を押しておくわけです。総理がどう認識しておられるか、まず、専門家の前に、お聞きします。どういうふうにあなたは認識させられているか、ごまかされているのじゃないかと私は心配だから、あなたからまず、どっちが本命だと思っておられるか。
○田中内閣総理大臣 練習機のほうはT2を使うということは、もう去年の国会から政府側は述べておったわけでございます。練習機をつくっておるので、そのためには当然そこから生まれるT2改ということを国産でやろうということで、その前提として二十機の試作ということだと思いましたけれども、まあ、いろいろ最終的な防衛庁当局の意見を聞きましたときには、やはり日本に最も適合する飛行機としてはT2改がいいのです、そういうことですから、輸入よりも高くとも、このほうが合理的であり、メリットが多いということでございますので、やはりT2改のほうが目標だったと私はいま思います。これは常識的に思うだけでございまして、あなたにいま御質問を受けてオウム返しに申し上げると、こういうことでございます。
○石橋委員 総理はそういう点は勘が非常にいいので、ちゃんと答えておられるわけですが、いままでの防衛庁の説明では、この点、ごまかしているのですよ。ついでにT2改をつくるような言い方を終始してきているのです。 それで、今度のこの輸入問題が出たときにも、新聞の報道はこういうふうに伝えているのです。総理からT2改はやめてF5Eに変えたらどうだ、F5Eを輸入したらどうだと言われたら、初めてほんとうはFST2改の生産こそがT2開発の真の目的であったと本音を漏らした、政府首脳にすら本音を知らせず、首脳さえくつがえせないほどの既成事実を積み重ねているわけである。こういう解説が行なわれている。総理はちゃんとこれ読んでいるから、いま私が念を押したら、(田中内閣総理大臣「読んでないのです」と呼ぶ)T2改のほうが主じゃないかと思うというふうに言っておられる。だれが考えたって、実戦機のほうが従で練習機のほうが主、こんなばかなことがありますか。これからつくろうというものに、練習機のほうを主につくるのです、ついでに実戦機のほうを間に合わせにつくるのです、こういうばかばかしい説明がいままで平然と行なわれている。これが問題なんですよ。それを、ほかの問題から、輸入したらどうだ、そんなものをつくらぬで、と言ったら、いや実はと本音を吐く。どこにシビリアンコントロールがあるかということを私は言っているのですよ。世の中、こういう形で進んでいるのです。それに対して政治家が危機を感じないというならどうかしていますよ。自分たちが軍部を押えているのだ、コントロールしているのだなどと思っている思い上がりがおったら、ほんとうにどうかしていますよ。こんな小手先細工を使っている。なぜこんな小手先細工を使わざるを得ないかということがもっと大切なんです。徐々に明らかにしていきますが……。 それを明らかにするために、これは防衛庁長官でけっこうですが、FST2改とは何ぞや、みんなにわかりやすく説明してください。
○増原国務大臣 FST2改といっておりますのは支援戦闘機というものでございます。いま御指摘になりましたことで、ちょっと私からも申し上げたいのです。 練習機——ジェットのいわゆる高等練習機と称しておりますものは、いまはF86Fというものを使っておるわけでございますが、これは音速に達しないものでございます。従来の戦闘機等の性能から申しまして、亜音速の86Fで高等練習機としての用が足りておったわけですが、これがだんだん老朽化してくるということと、戦闘機が104、今度はファントムというふうに超音速になるに伴いまして、練習機も超音速のものが必要であるということになりまして、この超音速の練習機を国産をしたいという考え方でT2というものの検討、研究開発というものが行なわれたわけでございます。 研究開発を行ないまする段階で形の整ってまいりましたT2というものが、大体において最高速度一・六マッハ程度を出し得るのではないか。そうしてこの超音速練習機という形をつくる段階で、相当に操縦性もよろしい、そうしてある程度の航続力を持つというものができ上がりましたので、いま86Fを使っておりまする支援戦闘機、支援戦闘機がこれまた86でありますので、老朽化してまいります。次の段階の支援戦闘機がほしいという段階でありますので、T2の研究開発が整ってまいるに従って、次の支援戦闘機は、このT2を改める、FST2改というものにすることが望ましいということになりまして、そういう意味の研究開発をも進めてくるようになった、こういうことでございます。 FST2改は支援戦闘機でございます。したがいまして、特にわが国の場合には、支援戦闘を行ないまする対象は、不幸どこからかの進攻、侵略というものがありました場合に、陸上自衛隊、海上自衛隊がこれに対して反撃の措置をとるわけでありまするが、これに支援を与えるというものでございまするので、日本の地理的条件からしますると、周辺の海域においてこの支援戦闘をやる。そうして不幸上陸等をされました場合には、海岸に近いと申しますか、そういう陸上においての支援戦闘をやる。したがいまして、これでは爆撃能力を持つ必要があるわけでございます。爆撃の能力、装置を持っておる、こういうものがFST2改でございます。
○石橋委員 FST2改なんて、ややこしいですね。こんな呼び方をいつまでするつもりですか。陸軍を陸上自衛隊とか、戦車を特車とかいうならまだちょっとこれ何とかかっこうもつくけれども、FST2改なんて全く怪ですよ。奇怪ですよ。こういうだれにもなじめないような名称を使わなくちゃならないというところに、このFST2改なるものの本質が隠されているのです。 私はここで問題にしたいのは、速度はいま一・六マッハということでございました。行動半径と武装なんです。その武装の中でも特段、問題にしたいのは、この爆撃装置なんです。この点については時間の節約をいたします。私のほうで、もうすでに久保防衛局長が四十七年十月十一日衆議院の内閣委員会で述べておりますから、これを私朗読して確認だけいたします、防衛庁長官に。 「ところがこのT2改の場合には、慣性航法装置、あるいはレーダー、あるいは電波高度計というものがあることに加えまして、管制計算機をつけました爆撃照準装置を持っております。したがいまして、天候が悪くても爆弾を投下することが可能であるのみならず、精密な攻撃ができるといったようなこと。」云々。 これは前後一ぱい説明があるのですが、時間が短いので、限られておりますので、ポイントのところを取り上げたわけですが、これは間違いないですね。いま私が読み上げた久保防衛局長の説明、これは間違いないですね、FST2改にはこういう装置があるということは。
○増原国務大臣 そういう装備を持っております。
○石橋委員 これが問題なんですよ。なぜFST2改などという奇怪千万な呼び方をしたり、支援戦闘機なんという日本独特の言い方をしてみたりするか。結局、そういうごまかしをやらなくちゃならない時期に来ているのです。四次防が三次防の延長なんかじゃないということを如実に示しているのです。おそらく総理も知らないでしょうから、よく聞いておいてください。あなたたちの知らないうちに、こういうことが着々と既成事実として積み上げられているのです。 FST2改には、いま読み上げましたように、そしてまた増原長官が確認したように、爆撃照準装置というものが取りつけられているのです。しかも、これはF4ファントムを採用する際に、攻撃性を弱める必要があるといってわざわざ取りはずしたものなんです。いいですか。この点については私が当時の増田長官と、昭和四十二年の三月二十五日から二十九日にかけて、同じこの予算委員会で論議した問題なんですよ。憲法上攻撃的な兵器は持てない、攻撃的な兵器の保有は認められない。これは政府もお認めになっているはずです。これから確認しておきましょうか、総理。いいですね。憲法上攻撃的な兵器は保有できない。
○田中内閣総理大臣 憲法の制約は当然ございますから、侵略をするようなそういうものは持てないということは、もう当然でございます。
○石橋委員 そこで、その攻撃的な兵器という範疇に入るのはどこからかという論争が始まったわけなんです。いろいろな角度で論争が行なわれましたが、いまは航空機、軍用機が問題になって、軍用機を焦点に合わせて論議しようというわけです。私は、このFXの問題が出た場合に——これはF4ファントムがきまる前です。F4にするか、F105にするか、F111にするかというような話が出ておったときに、増田さんと私は論争した。そのときは、足の長さというもので論争が始まったわけです。しかし、これはいまちょっとおきます。あとに回します。もう一つは、今度は爆撃装置というものをつけるかつけぬかという論争に発展していったのです。これの決着がついているのが昭和四十三年の十月二十二日の衆議院内閣委員会であります。これは主としてわが党の大出委員が論争の相手なわけですが、この論議を通じて、私の議論から大出委員のやりとりを通じて出ました結論が、佐藤総理大臣、増田長官から国会の場で答弁として行なわれておるわけなんですよ。 その結論は何か。その結論は、一言で言うならば、爆撃装置をつけないということなんです。爆撃装置をつけるということは、どうしてもこれは攻撃的な兵器と見られる可能性が強いし、憲法に触れる可能性があるので、爆撃装置を施しませんということが結論になっているのです。ちょっとその答弁を読んでみましょうか。昭和四十三年十月二十二日の衆議院内閣委員会です。会議録では二〇ページでございますからどうぞ……。 これは増田長官が「私が答えたところは総理も同じ答えをしまして、詰まった答えを申し上げます。それは将来の選ぶべきFは、すなわち将来選ぶからXでございますが、Fというものは爆撃装置は施しませんということが詰まりでございまして、このことばは予算委員会において総理が明瞭にしたことを私ははっきり記憶しております、」これは私のやりとりのことです、私は予算委員会でやったのですから。「私が総理のところに紙を出したのですから。総理が同じく爆撃装置は施しません、こういうふうに言っておるわけでございます。」これが結論になっているのです。 これは引用すればあとに二四ページにもあります。いろいろと何ぼでも、速記録をそこに持ってきておりますから、必要があれば……。 憲法に触れるか触れないかというその限界を、爆撃装置をつけるかつけないかで分けようという結論になった、こういうのです。足が長いか短いかではいろいろ問題がある。行動半径何キロまでなら憲法違反でないか、何キロ以上こえると憲法違反かというのはなかなか問題があるので、爆撃装置をつけない、つけたら憲法違反だということで、これが詰まりでございます、こう言っている。いいですか。そして、そのときの宍戸防衛局長は、その増田長官の答弁を事こまかに今度は補足説明をしているのです。これもちょっといまの新しい久保局長の答弁と対照する必要がありますから、読んで聞かせます。当時の宍戸防衛局長の答弁。二四ぺ−ジです。 「照準器について申し上げますと、F104も86Fも目視照準の照準器があります。ディプレッションといいます、その角度を修正して——目視照準で、コンピューターはございませんけれども、修正する装置がございます。長官がいま爆撃装置をつけないとおっしゃっている意味は、爆撃の専用の装置、これを分けて申し上げますと、空から地上への空対地のレーダー、それから爆撃の計算装置、投下用の計算機あるいは核の場合には核の管制装置が入りますけれども、そういった爆撃計算装置、それにコントロールボックスという三種類がそろって、これは爆撃専用の装置になります。そういうものはF104もF86も持っておりません。それを将来のFXにもつけないということを申されておるのでございまして、ディプレッションのついた目視照準は現在もございますけれども、それを将来も現在と同じように、そこまでなくす、そういうことを申し上げているわけではない、」こういうふうにちゃんと補足説明をしている。爆撃装置というものをつけない。つけると憲法違反だ。爆撃装置とは何ぞや。いま宍戸防衛局長の答弁を私は読みました。ところが今度の久保防衛局長、先ほど増原長官が確認したものによると、これは全部装置しますと言う。爆撃装置を持っております、FST2改は。明らかに従来の政府解釈と食い違っているじゃありませんか。いままでは憲法のワクの中で持てないと言ったものが、今度は堂々とこうやって持っています、堂々と国会で述べられている。どういうことです、総理。こういうことが許されていいのですか。これでも四次防は三次防の延長線上のものだとおっしゃるのですか。私はあなた方が、国防会議の議長である総理大臣も含めて、政治家がほんとうのことを知らされてないということを意味するのじゃないかと思う。いかがです。私のいま言っていることについて総理の見解を述べていただきたい。
○増原国務大臣 まず私から申し上げて、あと総理にお答え願います。 ファントムを採用する際の御議論、政府答弁、いま御指摘のとおりでございます。その際の、FXに爆撃装置をつけない、FXを大体ファントムと考えた場合に、爆撃装置をつけないというふうに、これがいわゆる憲法による攻撃的兵器は持たないという意味であるということは、足の長い短いということを全然考慮しないわけではないのでありまして、足の問題と爆撃装置の問題とが関連をして、ファントムの場合に爆撃装置をつけないという決定になったわけでございます。今度FST2改には爆撃の関連した一連の装置をつけるということにいたしましたのは、これはやはり足の問題と爆撃装置とを関連をして考えまして申したのであります。ファントムの場合には長距離爆撃機ではありませんが、相当の航続距離を持っておりまするので、この周辺の国々の、ごく一部ではありましても、いわゆる相手国の基地を爆撃するというふうな能力を一部持つということもありまして、もともとこのファントム・F4Eは戦闘機、ファイターとして採用するものでもありまするので、そういう憲法上の疑問を生ずるようなおそれを起こしてはいけないということで、爆撃照準装置は取りはずすということに決定をされたわけでございます。FST2改の場合には、御承知の足の長さから申しまして、周辺の基地をたたく、爆撃するというふうな能力はほとんどないといっていい足の距離でございます。そうしてこのFSという、いまFSの86を使っておるわけでございまするが、86を使っておりました時代は、特に当初は世界的にも、こういう短距離の周辺支援戦闘で働きまするようなものには、やはり目視爆撃というものが普通でありまして、爆撃照準器というものはまだ持っていなかったのが、だんだん爆撃照準器が開発をされるようになり、わが日本の専守防衛の立場で考えまする場合には、やはり周辺の海域においてこの支援戦闘機が能力を発揮することが必要であるということで、新しく一般的に開発されておりまする爆撃照準器をつけよう、これは決して、いわゆる基地をたたくという問題、爆撃するということと関連があるわけでありません。そういう意味においてFST2改には爆撃照準器をつけよう。これはファントムを採用しましたときに、爆撃照準器はつけない、攻撃的兵器という、この誤解を受けるというか、おそれを避けるという意味において爆撃照準器を取りはずしたということとは、その場合も足の長さと爆撃照準器、今度のFST2改も足の長さと爆撃照準器というものをかみ合わせてそういう決定をされた。憲法に申しておりまする、攻撃的兵器を持たないという厳粛な制限にはかかるものではないという判断で、そういう装備をつけることにいたしたわけでございます。
○石橋委員 私は、こういううそが国会という神聖な場所で繰り返されることがこわいのですよ。私がこれを調べてなかったら、またそのうそがまかり通っていくのです。責任の重大さも感ずるわけですがね。だから総理、よく聞いておいてくださいよ。ごまかしてまたここで乗り切っていこう——事は憲法違反するかしないかという問題なんです。それをいまのような詭弁でずっと切り抜けて、既成事実を積み重ねてきているのです。そんなことをまたやるなら、幾ら四次防が三次防の延長線上のものであり、装備を更新するにすぎないなんて言ったって、国民はだれも信用しませんよ。いいですか。いまの足の長さの問題ですが、これとても、増原さんさすがに官僚出身だけあって、慎重に、敵の基地をたたく能力はほとんどない——全面的には否定しておりません。全面的に否定するはずはないのですよ。その点は正直なんです。だから足の長さでいけば、何キロまでは合憲で、何キロから先は違憲か、非常に微妙な問題になってくる。しかし、あえて私は予算委員会でこの足の長さを問題にしたのです。ところが、足の長さではなくて爆撃装置だと言ってきたのは政府側ですよ。いいですか。先ほど引用しました昭和四十三年十月二十二日の衆議院内閣委員会の増田長官の答弁をもう一度、今度は別のところを読みます。「衆議院の段階において足が長いのはいけないと言った時代もあります。」これは私とのやりとりです。「しかしつまるところは、最後の決着は同じ理論でございます。同じ理論に戦闘機のXを選ぶ場合に足が長かったりいろいろいたしましても、結局爆撃装置を施しませんということで、私も総理大臣も結論はそういう結びになっております」と、足の長さじゃない、最後のところは爆撃装置を施すか施さないかだと増田さんが答えているんです。私の論争のときには、これは足の長さが主として問題だったんです。大出委員とのやりとりの中で何度も何度も言っているのは、詰まりのところは、詰まりのところは。その詰まりのところという政府解釈。私がやった一年半後です。詰まりのところは爆撃装置をつけるかつけないかで分けるんだ、そういう解釈を国会で政府は国民に向かって言っているじゃありませんか。それをいまになってから、何ですか、爆撃装置はかまわないんだ、足が短けりゃ。足だってそんなに短くないですよ、これは。どこまでいったら短いんですか。どこからが長いんですか。これは重大な問題です。私は、相当な決意をもって総理大臣に答えていただきます。答弁いかんによっては、私は質疑を続けることができません。こんな無責任な回答が繰り返される質疑を続ける必要を認めません。
○田中内閣総理大臣 EJの装備が憲法の制限のワク内でなければならぬということは、もう当然のことでございます。その意味で飛行機が攻撃的であるかないかという問題は重要な問題でございます。いままで御指摘がございましたように、当時の増田防衛庁長官等が述べられたことはよく理解いたしました。私はすなおな気持ちで申し上げるわけでございますが、いずれにしても、いままでの国会における政府側とあなた方との質問の間には、いま述べられたような経緯があったことはよく承知いたしますが、ここで政府側の答弁を求められるということになると、少なくとも渡洋爆撃を行なうようなものであってはならないということは、これは常識的にも、渡洋爆撃できるということになれば、これは基地をたたくことになりますから、攻撃的なものになる。やはり足というものは当然問題になると思います。ですからF4EJの要撃戦闘機というものに対しては爆撃装置をつけてはならないということだったと思います。今度のやつは、T2改は行動半径三百海里、五百五十キロですから、往復すれば二百七十五キロということでございます。そういう意味で、距離的にいうと、これは海外の基地に攻撃的なことを目的としてつくられているものではないということは御理解いただけると思います。 残っている問題はどういうことかというと、攻撃というのは爆撃装置をつければ全部攻撃であると、こう述べておるではないかという問題が一つ、一番最後の問題になります。今度は、政府側の正式答弁とは違う、足さえ短ければ爆撃装置をつけておっても攻撃的な飛行機でないと言っていることと前の答弁とどう違うかという問題だけが残るわけでございます。私は、この問題に対して、いまお話をずっと聞いておりまして考えたのでございますが、この中には、T2改は、侵略が行なわれ、敵が上陸をした場合その部隊をたたくとか、それからいままで御答弁を申し上げております、近海において侵略を受けるような場合、その艦船等に対して防御を行なうということになると、艦船に対しては爆撃をしなければならないということで爆撃装置は装置してございますと、こういうのが、私が知る限り、すなおな本件に対する実情でございます。でございますので、やはり真にどう考えてみても攻撃的なものと防御的なものというものを何海里ということでもって分けることはできないとは思いますが、これは、海外にまで出かけて、他国の領土の上空や領空を侵してまでやれるような足の長さがあるものや、それから爆撃装置と、両方の問題が問題になるのではないかと思います。これは、私はいまの御質問に対して私の考えるところそのまま申し述べておるわけでございますが、そうすると、増田発言とは食い違ってくるぞという問題はございますが、いまの状態から申し上げるとそう申し上げたいのでございます。
○石橋委員 事は憲法に反するか合憲であるかという重大な問題です。その重大な問題について、このように大きな食い違いがある。それがただされない以上、私は質問を続けることはできません。この運営について、理事の皆さん方相談していただきたいと思います。
○坪川委員長 皆さまにおはかりいたしたいと思いますが、石橋委員の持ち時間も残り十分ございますけれども、この問題につきましては、政府より統一見解を新たなる場において求めまして、これらの取り扱い等につきましては、理事会においてそれぞれ協議をいたしたいと思います。 したがいまして、時間ももう参っておりますので休憩いたしまして、引き続き午後零時三十分より委員会を開会いたします。 午後零時五分休憩 ————◇————— 午後零時三十九分開議
○坪川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 この際、午前の石橋君の質疑に関連し、政府から発言を求められております。これを許します。増原防衛庁長官。
○増原国務大臣 休憩前、石橋委員より御要請のありました爆撃照準器に関連する政府の統一見解、可及的すみやかに取りまとめまして御報告を申し上げたいと存じますので、暫時お許しをいただきたいと思います。
○坪川委員長 政府の統一見解がまだ出ませんので、出ました段階で、すみやかに石橋君の残余の質疑を許すこととし、この際、江崎君の質疑を許します。江崎真澄君。
○江崎委員 私は、自民党を代表いたしまして、政府のおもなる施策について御質問をいたすつもりでありましたが、時間が限られておりますので、特に与野党の間で問題になっております案件のみにしぼってお尋ねをいたしたいと思います。 長年の懸案でありました中国との国交正常化ができましたことは、総理も言われますように、従来、中国問題に熱情を傾けてきた人々の努力ももとよりでありまするが、田中首相の英断によりまして、北京をすみやかに訪問し、国交正常化に踏み切られました、この英断に敬意を表するものであります。 田中首相は、首相に就任二カ月で日中国交正常化に踏み切られたのであります。世上、いささか拙速に過ぎるのではないか、即断に過ぎるのではないか、こういう批評があったのでありますが、私たちは、あなたが自民党の幹事長として長年在任をせられ、日中問題のむずかしさ、困難性というものをいやというほど理解しておられることをよく承知いたしております。したがって、田中総理ならばだいじょうぶだという安心感を持ってあなたを北京に送り出すことができたのであります。はたせるかな、首相は堂々と交渉を進められ、りっぱな成果をあげられたのであります。 日本の政治に中国問題がからみます場合、いつも日本の政治は大きな困難に当面したと言っても言い過ぎではないと思います。日清戦争は、明治新政府にとりまして国をあげての試練でありました。試練というのにはあまりにも大きな国の命運をかけた戦いであったといえましょう。古い話ならば元冠の役もあります。日華事変、いわゆる支那事変と称して始まりました中国との戦争がエスカレートして、米英と戦ういわゆる太平洋戦争に及んだことは申し上げるまでもないのであります。 そればかりか、昭和二十六年の九月、サンフランシスコにおいてわが国は平和条約締結の機を迎えたわけでありますが、あのときも中国不参加という難問題にぶつかっております。アメリカは、台湾にのがれた中華民国を支持しました。またイギリスは、中華人民共和国をいち早く承認して、意見が二つに分かれたのが大きな原因でありました。中国との戦争から太平洋戦争になったという認識に立つわが国としては、一日もすみやかに中国と正常な関係に入りたい、これが念願でありましたにもかかわらず、あの平和条約は、中国とは無関係に調印が進められてしまったのであります。 その後、アメリカの大統領顧問ダレス氏が日本を訪れまして、吉田首相に対して、アメリカの上院においては、日本の独立は時期尚早である、平和条約の批准は反対だという議員が相当ある、しかし、戦後、もしアメリカが支援をする台湾を平和条約の対象国として日本が選ぶならば、上院の反対派を説得する用意があるという話があったことも事実であります。 当時、ひたむきに日本の独立をこいねがう総理大臣としては、一日もすみやかに独立を実現するためアメリカ側の勧説に従おう、こういう決意をしたとしても、私は何らふしぎはなかったと思うのであります。まことにやむを得ぬ仕儀であったと思います。自来二十年、中国とは不正常な関係が続いたのでありますが、それがようやく解決をいたしましたことは、まことに喜ばしいことであります。 佐藤首相は、沖繩が返ってくるまでは戦後は終わらないと言われましたが、中国との国交正常化こそは重要な戦後処理の一つであります。この処理が終わったことによってほんとうに戦後は終わった、日本人はひとしくそう思ったに違いありません。この重要な大問題を、就任早々田中総理が解決されましたことは、日本の歴史に永久に残る一大快挙であると言っても言い過ぎではありません。首相の輝かしい功績であると私は確信をもって申し上げたいのであります。 さて、そこで私は、今後田中首相はこの日中国交正常化をどういう形で展開されようとするのか。もとより平和友好条約の形をとる、これはすでに構想として承っておるのでありますが、その基本方針について承りたいのであります。 また先般、佐々木運輸大臣は、航空協定など、いわゆる第九項にいう各種協定のうちの航空協定などは年内にも解決をしたい、こういうことを言っておられるのでありますが、そんなに早く各種協定が順調に進むものでありましょうか。まことに好ましいことでありますが、そういった段取り等につきましても、首相の御見解を承りたいと思います。
○田中内閣総理大臣 日中国交正常化がなし遂げられた今日、最終的には日中間に平和友好条約を結ぶことによって、両国の長い将来に向かっての善隣友好の関係を確保したいと思っておるわけでございます。しかし、その前に、大使館の設置とか、大使の交換とか、航空協定とか、いろいろな問題がございます。これらの問題は、日中政府間で交渉しながら一つずつ解決をしてまいりたい、こう考えます。 また、航空協定につきましては、南回りは三日も四日もかかるということでございますし、鹿児島−上海間は一時間にも満たない距離でございます。また、東京−北京間を結んでも非常に短いものでございますので、航空協定というものは、両国政府の間でできるだけ早く、ほんとうにことし中にもという——日中交流のそのまた橋でございますので、最も早く協定を行ないたいということでございます。 最終的に一言で申し上げますと、日中間は長い歴史に徴して今度こそお互いが手を握り、アジアの平和に寄与できるような信頼できる両国の関係を末長く結んでいくようにいたしたい、こう思います。
○江崎委員 すみやかに各種協定が締結せられることを、心から期待いたしたいと思います。その場合、一番重要な点は、何といっても中国との間に将来永久に干戈を交えない、武力を用いるようなことは、双方どちらからでも絶対あってはならない。いわゆる不可侵条約とでも申しまするか、そういった国民的願望はどういう形で取り上げられるのか、この点を聞いておきたいと思います。
○大平国務大臣 すでに共同声明に相互不可侵がうたわれて、厳粛に合意いたしているわけでございます。そういった指針を平和友好条約の中にどのように書き込んでまいりますか、これはこれからの交渉の課題でございますけれども、そういう問題も、平和友好条約の一つの大きな柱になるであろうと私どもは考えております。
○江崎委員 平和友好条約という以上は、絶対不可侵、こういった精神がはっきりと盛り込まれ、これが両国によって厳粛に尊重をされて、長い友好関係が続けられることを、将来のため子孫のためにも真剣に望むものであります。 さて、共同声明についてでありますが、その前文におきまして、日中国交正常化は、「アジアにおける緊張緩和と世界の平和に貢献する」と述べております。もとより、このことは私どもは理解できるのでありますが、先ほども申し上げましたように、日台条約を締結してから二十年の歴史が流れ、台湾との間には現実的に相当深い交流があります。しかも、この台湾は千五百万人の国民と領土とを有効に支配しておるやはり一つの勢力であることに間違いないと思います。 そこで、私どもとの間には外交関係が消滅をしました。日中国交正常化がもたらされた夜、先方から国交断絶の通告があったのでありますが、この外交関係がなくなったことによって、かえってアジアの緊張、わけても台湾海峡を中心とする日本の利害に緊張がもたらされたのではないかという不安が国民の中にもあると思うのですが、そういう点をわかりやすく御説明願いたいと思います。
○田中内閣総理大臣 中国は七億ともいい八億ともいうのでございます。日本は一億でございますから、これを加えると八億ないし九億ということでございます。地球上の全人類は三十六億といわれておりますから、約四分の一でございます。この四分の一が四半世紀にわたって交流もできなかったということは、アジアに対する大きな不安定要因であったことは申すまでもないことでございます。日中正常化が行なわれたことで、アジアに対して大きな平和をもたらすものであるということはもう事実でございまして、アジア各国がこれを理解しておることでもよく理解いただけると思います。 日中の国交の正常化によって一つの大きな問題が解決したが、その反面、台湾との間に緊張が起こらないか、これは確かに考えられることでございますが、これはいままで台湾政府の非常に理解ある態度、台湾の人々の理解によって混乱が起こらず今日に至っておることは、非常にありがたいことでございます。これからもあらゆる手段を講じて、混乱が起こらないように努力をしなければならぬことは言うをまちません。 しかし、御承知のとおり、中国も武力をもって台湾を解放しようという方針をとっておりません。それから台湾の大陸反攻ということに対しては、米台条約の運用において阻止されておるということでございます。そういう意味から考えまして、日中の国交正常化というものが、台湾海峡を騒がしいものにするということを考えないでいいのではないかと思います。まあ、私たちは日中国交正常化によって、台湾というものが新しい問題点にならないように、あらゆる角度から配慮してまいらなければならない、こう思います。
○江崎委員 総理も言われますように、日中国交正常化の陰に隠れてはおりますが、台湾当局がいわゆる小異を残して大局に立っておられる、邦人の生命財産に全然異常がない、平穏無事であるということについては、私どもも要路の人々に対して深い敬意を払わなければならぬと率直に思います。 ただしかし、ここで心配いたしますことは、政府としましても、日中国交正常化にあたりまして椎名特使を派遣したり、あるいは自民党の有志議員が入れかわり立ちかわって台北を訪問、日本の立場を述べ、了解工作をする場面がありましたが、今後日中国交正常化により、中国との友好関係がだんだん深くなり、だんだん強くなってまいりまする段階において、台湾で何か事が起こった場合どうするか。起こってはならないし、起こらないという確信を私どもも持っております。しかし、現に台湾には三千八百人の邦人が住まっております。一億ドル以上といわれる投下資本が現実にあります。また昨年の統計を見ましても、十万人の旅行者が台湾に、これは観光を主として出かけております。そうすると、毎月一万人近い日本人が、観光目的であるにしろ何であるにしろ、滞在をしておるわけです。もし何か起こった場合、一体どうするのか。国交はありません。国連中心の外交を展開いたしておりますが、国連から離脱しておる台湾での問題については、何とも国連も手の施しようがないでしょう。中国の施政権はまだこの台湾には及んでおりません。こういった現実を詰めてまいりますと、政府当局としては、もし何か起こった場合にどう処置するのか。たとえば、最も友好国であるアメリカ、日本にとっても台湾にとっても友好関係にあるアメリカに、仲介の労を依頼するということもありましょう。あるいはニュージランドとかオーストラリアとか、台湾と条約が現存しておる国々に依頼するということもありましょうが、そういうことでほんとうに不慮の事態に備えることができるかどうか。また、どういうルートで今後この不慮の事態を未然に防止し、何か事が起こったときの用意を立てるのか、これは私、政府としてはっきり態度をお示しになる必要があろうかと思います。お答えを願います。
○大平国務大臣 外交関係が維持できなくなりました関係上、わが国の外交保護権をかの地において行使することは不可能になったわけでございます。したがいまして、間然するところのない外交的保護を、かの地に在留する方々並びに暫定的に渡航される方々の上に行使することは不可能でございます。けれども、私どもといたしましては、台湾の官民の御理解を得ることに万全を期さなければなりませんと同様に、御指摘のように、わが国と外交関係を結んでおりまする友好諸国に日中正常化の趣旨を十分お伝えいたしまして、深い理解を持っていただくことに最善の努力を払いまして、わが国の外交機能全体を通じまして不慮の事態が起こらないように、周到な配慮をしてまいるつもりでございまして、今後鋭意努力してまいりたいと思います。
○江崎委員 この問題は、やはり将来相当な期間にわたって継続する問題であろうかと思います。どうぞ十二分の配慮をされましてそういう事態に立ち至らないように、十二分の努力を願いたいと思います。 さて、次に私、日米安全保障条約の必要性についてお尋ねをしたいわけであります。 私ども、お尋ねするまでもなく、日米安全保障条約の維持は日本の基本方針である、もとよりこれは必要であるという考え方に立っております。安保条約を破棄しろと簡単に社会党の諸君は言われるのでありますが、あの中ソ友好同盟条約にして、現在完全空洞化といわれながら現存をしております。それはどういうことか。かえってどちらかの国がこの条約を破棄するなどと言い出せば、言い出したことによって一そう両国間の緊張が激化するからだと思います。日本の場合は、もとより破棄の意思もありませんし、これを堅持することは、新内閣になってから、総理がニクソン大統領との間にはっきり確認されたところでありますが、軽々に破棄などできるものではありません。いや、それよりも私どもがもっと心配をしなければならぬことは、むしろ今日ではアメリカの側において、この日米安全保障条約はメリットがない、存続の理由がどこにあるだろうかという大きな疑問が出てきておることであります。 〔委員長退席、小平(久)委員長代理着席〕 ニクソンが訪中をいたします前夜、全米に向けて日米安全保障条約を維持すべきか破棄すべきかという大討論会がなされたことは、総理も外務大臣も、文藝春秋等に再録されておりましたのでよく御存じのとおりだと思います。この破棄論者の言わんとするところは、日本に事があった場合、アメリカ市民の犠牲において救援にかけつけるが、日本はアメリカに危機があっても何ら協力をしてくれないじゃないか、ベトナムであれだけどろ沼戦争をしていても、何ら協力をしてくれないではないか、そういうきわめて素朴な疑問に立脚いたしまして、日米安保条約は破棄しかるべきであるなどと言っておるのであります。 こういう雰囲気の中で、私どもは、日米安全保障条約のそもそもよって来る事情を考えてみたいと思います。なるほど日本が占領下から独立への場面では、全くまる腰でした。保安隊はありましたが、全くのまる腰。そこで、最初できた安全保障条約は、日本が基地を提供して、日本の平和と独立を守ってもらうものでありました。しかし、一九六〇年に改定をされました条約は、その条約の表題にもいっておりますように、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」です。したがって、侵略に対決する軍事的な安全保障条約としてよりも、前段の両国の相互協力、ここに意味があったことは、あの安保改定のときしきりにこの場所でも論議をせられたところであります。特に第二条には、「平和的かつ友好的な国際関係の一層の発展に貢献する。」及びとして、「国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済的協力を促進する。」こういうことをいっております。最初のいわゆる基地を提供する条約から、今日では経済協力まで含めたものがいわゆるこの条約である。 こういう点を考えますときに、安保条約の重要性というものを、もっともっと私は国民にわかりやすく説明するべきであると思います。したがって、新内閣として、安保条約を堅持するたてまえに変わりはありませんが、この機会にその決意のほどをお述べ賜わりたいと思います。
○田中内閣総理大臣 私が間々申し上げておりますとおり、独立国が独立を確保してまいるためには、また国民の生命財産を守っていくためには、防衛力を必要とする、自衛力を必要とするということは、これはもう国である限りにおいては、規模の大小を問わず必要なのでございます。でございまするから、日本も平和憲法の中にあっても自衛力を保持しておるわけでございます。 しかし、一つの国の力だけであらゆる状態に対応するということは非常にむずかしいのであります。また、しようとすれば相当大きな犠牲を払わなければなりません。その意味で、人間が考えた英知は、やはり最小限の負担で効率的な防衛が行なわれるような合理的状態を考え出しておるのでございます。それが集団安全保障でございます。でございますので、東西のいずれの国を問わず、集団的な防衛体制をとっておることは事実でございます。しかし、人類の最終的な理想としては、国連を中心とする集団安全保障の道が開かれることが望ましいということもまた事実でございますが、しかし、いまそのような状態にないので、第二の集団安全保障、複数以上の国々がお互いに協定によって守り合うということになっておるわけでございます。ところが、集団安全保障というものは必ず双務的な条約でございます。自分が危ういときには援助してもらいたい、君が危ういときにはわれもまた援助をする、これは当然のことでございます。言うなれば攻守同盟条約でございます。 ところが、日米安全保障条約というものは、アメリカの一部の国民が指摘をしておるように、言うなれば片務条約だといわれております。日本の安全に対してはアメリカは責任を負わなければならないが、アメリカがそのような場合になったとしても、憲法九条もございますので、気持ちとしてはよくわかるのでありますが、お手伝いはできません。これは日米安全保障条約締結の当時、国会で議論をせられたことでございますから記憶にさだかであります。そういうために、日本がこのような条約を続けておる限りにおいては、自主防衛の努力をしない、また協力もしないというようなことで、アメリカの中で相当この条約の改変を求めておることは事実でございますが、しかし、これはお互い二国間において合意に達して長い歴史を持つものであります。もう二十年も定着をしたものでございます。そういう意味で、この安全保障条約というものが日本のためにもアメリカのためにも必要なものである。もちろん、アメリカがNATO諸国と結んでおるようなことからいえば、駐留軍の維持費さえも負担をしておらない日米安全保障条約でございますから、確かにアメリカの言い分もよくわかりますが、平和の理想達成という大きな命題に対する手段としての日米安全保障条約が存在するのでございますので、この条約をどうしても維持してまいりたい、こういう考えは、これはもう二十年の実績の上に立って私はそう申し上げておるのであります。 言うなれば、このような小さな防衛力で、戦後人類の歴史になかったような経済的繁栄をもたらしたのは、やはりこの日米安全保障条約というものの一つのプラス面であるということは、識者がみな評価しておるのでございます。しかも、この日米安全保障条約だけではなく、この陰にある経済協定というものが、戦後の日本の科学技術の振興にいかに寄与したかということも、これは皆さんが評価しておるのでございます。長い間膨大もない開発費をかけて、軍事費をもって開発された科学技術が、この経済協定によって日本に持ち込まれ、しかも工場や施設の撤去をドレーパー使節勧告において中止をし、しかもマーシャルプランによって、日本の戦後の動かなかった設備が動き出したというようなことまで、二十五年の歴史を考えますと、日米安全保障条約は今日の日本にいかに大きな影響をもたらしたものか、現にいかに大きなウエートを持つものかということに対しては、これは国民の大多数が評価をしておることだと思うわけでございます。 私はそういう意味で、いままた新しい立場に立って、新しい視野から、立場から、日米安全保障条約の必要性を国民に訴えてまいらなければならないと、こう考えております。
○江崎委員 現在の日米安全保障条約は自動延長方式をとっておりますので、新しい内閣総理大臣であられる田中首相から、安保条約のメリット、そしてこの条約のもとに、アメリカとの間に国際友好関係を一そう親密に、力強く推進しようというお話を聞きましたことは非常に意味があると思います。また総理としても、これは重要な国の方針として明示をしていただかなければならぬ場面であったと思います。日米安全保障条約は今日では日米友好と協調の象徴になっております。したがいまして、軽々に破棄などということはできない。これは先ほども触れましたように、中ソ同盟条約のように、完全に形骸化したと思われても、どちらかから言い出せば緊張が激化するから言い出さない。これほどの配慮がなされておるのに、軽々に安保条約破棄などということが日本においていわれることは、私どもまことに遺憾に存ずるものであります。 そればかりか、昨日の本会議でしたか、アジア安保の締結などというような構想が一部の人から述べられておったように承りますが、わが国は不可侵条約は結ぶことができましょう。先ほど言われたように、中国との間にも不可侵条約は結ぶことができましょう。しかし、日本の憲法によって、相手の国がどんな危険にさらされても日本は国外派兵はできない、それを助けに行くことができないというたてまえを持っておる以上、日本に危険が訪れたときに、どんな国でもただ簡単に助けに来てくれるだろうか。今後新しいこの種の条約を結ぼうということになれば、少なくとも憲法を改正しなければならないような大きな犠牲をしいられなければ、新しい条約を結ぶことはできないと思います。アメリカはたまたまあの憲法制定の当時占領軍として、また占領司政官としてマッカーサーがおったことによって、日本の憲法をしさいに理解いたしております。しかし、諸外国と不可侵条約は結べても相互防衛条約は結び得ません。よその国にはこの憲法をどう説明しても、なかなか理解がむずかしかろうと思うのです。あえて理解を求めようとすれば、相手は、必ずそれならば国情に合うように憲法を直せというようなことを迫るでありましょう。 こんなふうに考えてまいりますとき、私は、日米安全保障条約は厳として存在させなければならないし、一点の疑問もないものである。この点は全く総理と同じように思います。 さて、話が小さくなりますが、新しい内閣として、この安全保障条約に基づいて日米安保協議委員会を開かれるといううわさを聞くのでありますが、そういうスケジュールがありましょうか。もしまたありとすれば、その議題は何をお話しになるのか、明らかにしていただきたいのであります。
○田中内閣総理大臣 日米安保協議委員会は毎年一回開くということでございましたので、今度も開くことを予定いたしておりましたが、日中の国交の正常化、臨時国会等の日程がございましたので、今日まで開催できなかったわけでございますが、来年の初めには開かなければならない、このようにいま考えております。 それから、先ほど言及がございました憲法との関係、これはほんとうに日本人がいつもよく考えてみなければならぬ問題だと思います。これはいま御指摘ございましたように、日米安全保障条約が、憲法九条を是認をしながら日米間に締結をせられたという特殊事情があります。それだけに、この日米安全保障条約というものはなかなかのものでございます。これと同じものを、ではどこの国とつくろうかといったら、これは全くいま御指摘のように、憲法改正が行なわれなければ、日本のためには大いに自分の国の税金を使うが、自分のためには協力はできないのだというような条約が締結できるはずはありません。そういう意味で、平和友好条約の締結はできます、不可侵条約の締結もできますが、相互防衛というような安全保障、双務条約は、現行の日本の憲法ではできないということなのであります。ですから、アジア太平洋地域においても防衛条約をつくろうということになると憲法の制約がございまして、日本は派兵ができないということに大きな障害がございます。これはもう日米安全保障条約制定当時からの事実でございますので、こういう問題は、時がどんなにたとうとも、日米安全保障条約を評価し、議論をするときには、この成立の過程や意義というものは当然前提として議論がさるべきものである、こう考えます。
○江崎委員 非常に明快な御答弁であります。そういうことを国民各位がよく認識してくれるならば、日米安全保障条約は決して不当なものでない。そればかりか、日本の自衛隊がだんだん武装を充実していく歯どめにさえなっておる、そういう効用も認められると思います。 そこで、私は、午前中行なわれました例の台湾条項の問題についてお尋ねをしてみたいと思います。午前中、台湾条項を安保からはずさないのはどういうことだ、台湾条項の見解を改めないのはどういうことだというので、いろいろ議論が展開されました。私、率直にいいまして、中国側では、私ども訪中先遣団にも周恩来首相は語っておりました、台湾に対して、何か異常な事態がない限り、中国は武力解放はしないというのであります。この方針は、世界的な一つの常識にさえなっております。日本として、台湾にトラブルが起きた、一つの危機が生じたという場合に、日本の危険には何ら関係がないということのほうが私は話がわかりにくいと思うのです。特に沖繩が返ってまいりました今日の状況からしまするならば、台湾にトラブルが起きることは、やはり日本に相当な影響をもたらすものであるに違いありません。今日では米華条約もあり、米軍が顧問団という形で現に台湾にはおります。したがいまして、トラブルが起こることは想像されません、中国が武力解放しないという以上は。それはそういうことはないですね。ありませんが、もしありとするならば、それは中国以外の第三国あるいは第四国というものがあの台湾に向って危機をもたらす、こういう場合以外には考えられないのであります。そんなことはないわけですが、もしかりにあったとして、米華条約が発動をされた。アメリカは台湾を、いま条約が現存する以上、これを守るのだといっていますから、台湾に軍をかりに進めるというような事態、まあこんなことはありませんけれども、あったとして、そのとき、日米安全保障条約に基づいて日本の基地を使わしてもらいたい、こういう申し入れがあったといたします。私は、石橋さんの今朝来のあの議論に少し飛躍があると思う。というのは、その事前協議の段階でわれわれは、いま第三、第四の勢力が台湾に危機をもたらしておる——中国に対して友好関係に入ったのですから、われわれは中国に相談することができます。米華条約によってアメリカは日米安全保障条約に基づき日本の基地を使わしてもらいたいと言ってきたが、これは使わせていいのか悪いのか、どうするのかを聞きます。そのためにある事前協議ですね。ちゃんと歯どめはあるのです。そしてまた現に中国側としても、第三、第四の勢力によって、領土の一部であると称しておる台湾にトラブルが起こることは、決して好ましいことではないと思います。そういうときに合意で、日米安全保障条約に基づいて日本の基地が使われる、これは中国の利害に一向離反しないと思います。 だから、台湾の危機が日本の危機であるという考え方、中国自体が武力解放しないという以上、ここで何も台湾条項を抹殺しなければならぬ、日本の危機には関係がないなどということを、政府として無理に言わなければならぬ必要はない。私は、ハワイで大平外務大臣が言明された、台湾条項はそのままでよろしいという説明は、いま私が御質問申し上げたような理由から合法的であると思いますが、この点、外務大臣いかがでございますか。
○大平国務大臣 日本政府といたしましては、日米安保条約は維持してまいりますということをアメリカにも約束し、国の内外に保証いたしておるわけでございます。このことは、安保条約並びにその関連取りきめ全体を維持していくということでございます。言いかえれば、この安保体制を完全に全体として維持していくということでございますので、極東条項、台湾条項、そういうものも従来のまま維持してまいるということに、そのように御理解をいただきたいと思います。
○江崎委員 お話はよくわかります。要するに、今後中国と友好関係に入った以上、台湾の危険について十分中国側と相談することができる、こういうたてまえにあることを省略して、台湾条項は削れとか、極東条項から台湾は除外すべきだという議論は、何も内政干渉とか、そういうものではないと思います。このことを念のためはっきり申し上げておきたいと思います。 さてそこで、時間がだんだん過ぎますので急ぎますが、ベトナム和平のきざしも見えてまいりました。安保の必要なことはもう先ほど来の議論で十分わかったわけでありまするが、何といってもまだ日本の国内の基地は多過ぎると思うのです。それから佐藤前首相は、内閣末期にサンクレメンテでニクソン大統領と会談をされましたとき、沖繩の基地をなお減少されたいという要請書を持って出られたはずです。ところがそのとき、ニクソン大統領は、そういう話は沖繩が日本に復帰してからにしてもらいたいと言われたと聞いております。ベトナム和平ももう近づいておるようでありまするし、沖繩県となった新生沖繩は、いまや国際海洋博を迎えようとし、新しい意気に燃え立っております。したがって、沖繩の基地もやはり積極的に減らす努力、これは継続されなければならぬと思いまするが、これは外務大臣からでもけっこうですから、その後の経過はどうなっておりますか、率直に、わかりやすく御説明を願います。
○大平国務大臣 方向としては江崎さんおっしゃるとおりでございまして、日本国内にありまする米軍基地を整理統合いたしまして、最近とみに発展を見ておりまする都市化の事情との調節をはかってまいらなければならぬという方針で、日米間で鋭意協議いたしております。
○江崎委員 沖繩はどうですか。
○大平国務大臣 沖繩につきましても同様でございます。
○江崎委員 日中国交正常化あるいは日ソの平和条約締結のきざし等、大きな外交問題が立ちはだかり、外務大臣も片っ端から熱意を示して取り組んでおられますが、どうぞひとつこういう切実な問題につきまして、きめこまかに、特に沖繩の基地については、縮小ができるよう現実的な御配慮と行動をお願いしておきたいと思います。 現在、アジア情勢は緊張緩和の方向にある。これはもう万人の認めるところだと思います。しかし、そうかと思えば、朝鮮半島におきましては、昨年南北赤十字社の会談を手始めに、その後も代表者会談等が数次にわたって行なわれております。また、本年七月には平和統一に関する共同宣言が出されました。ところが、十月十七日韓国ではまた戒厳令がしかれる、国会は解散される、憲法改正の方向が出てくるというわけで、非常に複雑に変転しておるのであります。こういう国際情勢とは、四次防は全然関係がない、三次防の延長である、三次防の古くなった武器を更新し、また足りないものを充実する、そういうものだとして四次防制定に、私も防衛庁長官をしておりますころから取り組んでまいりました。この四次防の中身ですね、これが案外国民に十分知られていません。装備費は五カ年計画で一兆一千億程度、すなわち正面兵力は一兆円をわずかに上回る程度です。これを五年間に分けますから、正面兵力は、古くなったものを新しくするものを含んでせいぜい二千億程度でしかないと言われておりますが、防衛庁長官、この間の数字的経緯を、国民によくわかるように御説明願いたいと思います。
○増原国務大臣 御指摘をいただいたとおりでございまして、四次防策定決定にあたりまして、数字を、またその概略の内訳も御説明をし、発表いたしたのでありまするが、そういう点がなかなかうまく報道に乗らないというふうなところもあり、たいへん残念に思っておるわけであります。 〔小平(久)委員長代理退席、委員長着席〕 四兆六千三百億円という数字、そうしてこれにベースアップ分を加えればということで、五兆一千億とか五兆二千億とかいう数字が普通流布されておるわけでございますが、このたびの四兆六千三百億円というものは、三次防の二兆三千四百億円に比べまして約倍であること、間違いございませんが、これは四十二年度の人件費、諸物価等を基礎にしてつくりました三次防と、四十七年度のそれを基準にしてつくりましたこの四次防との間の、これは日本だけではありません、世界的にもそうでありまするが、大きく変わりました経済情勢、人件費、物件費等の差のあらわれが、たいへん大きく作用をいたしておるわけであります。したがいまして、四十二年度と四十七年度を比べますると、国の予算なども二倍以上、GNPも二倍以上というふうにみな伸びておる。諸種の経費もそれぞれみなほとんど二倍以上にならないものはないという状態になっておるわけでございまするが、その中でもとりわけ人件費の占める地位というものがたいへん高いわけであります。そうしてその人件費の伸びていく状態というものは、全自衛官にいたしますると約二倍であったと思います、そういう状況で伸びておる状況でございます。 したがいまして、この四次防を策定して、主要項目として発表をいたしました正面の装備というものは、御指摘になりましたように一兆一千億程度、五年間のものでございます。そうして、それはたとえば陸における戦車というふうな最も経費を食うものであり、非常に目につくものというものは、一番多いときは九百両程度でありましたものが、六百六十両になり、これを四次防においては減耗分を補てんをし、もとより新しい型の有力な戦車でもって補充をするわけですが、八百二十両程度にしたいというふうなことでございました。数量的には一番多かった九百両の時代よりは相当に下回るというものでございます。 海の艦船にいたしますると、これは三次防と四次防と隻数において同じということでありまするが、トン数は一万五千トンばかりふえるということでございます。しかし、これもたいへん大きなトン数が増加をする——一万五千トンの増加であるということでございます。 空の関係が四次防においていま主力として使っておりまする戦闘機及び支援戦闘機、高等練習機に使っておりますF86系統が、ちょうど四次防の時期に大体更新の時期に達します。これを、ファントムでありますとか、T2改でありますとかいうもので置きかえまするので、三次防と比べまして、航空機関係の経費が八倍以上というたいへんに大きい伸びをするということが一つ目立つわけでございます。そういうものがございますが、これも機数にいたしますると、一番たくさんありました昭和三十一年ごろの約千四十機から、だんだんと減少をいたしておる状況でございます。 そういうことでありますので、経費の内訳は、いわゆる後方関係というものに人件費を中心として相当の金が要り、一線は一兆一千億である。そして、それは三次防と比べて伸びました理由は、これは本会議で総理から相当詳細に御説明をいただきましたが、その間における一般経済情勢の変化、人件費、物件費の値上がり等が大きく作用をして、約倍という額になっておるというふうに御理解を願いたいと思うのであります。
○江崎委員 四兆六千三百億、一口に言いまするが、その中で人件費が一兆八千八百億、建物等の営繕費が一兆六千四百億、そういったものに大きな金額を要する。これはどうも時節柄いたし方のないことだと思います。実際の正面兵力は一兆一千億である。しかも、総理が本会議で言っておられましたように、発展途上国にGNPの一%程度は協力や援助をしていこうというときに、いま日本の安全保障料が、GNPの一%に満たない、〇・八%程度であるということは、これはどうしても必要な経費であると私は思います。 そこで防衛庁長官、私は、自衛隊は災害時だけでなく、もっと民生協力の面に進んで出て、自衛隊のあの真摯な、愛国の至情にあふれたまじめな姿を国民の前に押し出していただきたいと思います。特に陸上自衛隊などは、民生協力の面についてもっと積極的に活動したらいいと思います。のみならず、田中総理がいま唱えておられます日本列島改造論、これなどに、たとえば、道路づくりは何々作戦——私は伊勢湾台風のときの記憶がありまするが、何々作戦としてみおどめをやったんですね。ですから、道路づくりなども思い切って作戦になぞらえて自衛隊が買って出たらいいと思うのです。四次防にこういう民生協力費はどう生かされておりますか。ちょっと時間ももうあとわずかですから、簡単に要点をお答え願います。
○増原国務大臣 四次防においては、特に策定の段階で総理からの指示がありまして、民生協力には特に力を入れろということで主要項目に入れておるわけであります。 主たるものは、施設部隊の持っておりまする器材を増強するほか、普通科の連隊にもこれを若干増強いたしまして、災害派遣のみならず、民生協力のための工事引き受け等もしかり、積極的にやっていこう。大体従来持っておりまするそうした工事能力の五〇%、五割を今度の四次防の民生協力強化でふやしてまいりたい。そうして工事引き受けの面における民生協力を強化していくという考えでございます。
○江崎委員 民生協力の面につきましては、私は今後とも格段の御配慮が必要だと思います。もう時間もありませんから、私そのことはお願いにとどまりますが、社会党の言う国土建設隊、こんな思想は、もうのんで消化してしまったらいいのです。本務はもとより国の独立と平和を守ること、国土建設隊ではプライドが許しません。また、国の平和や安全という重要問題が度外視されておったのでは問題になりませんが、政策としては私は一つの考え方だと思いますから、それは陸上自衛隊などがぐうっと消化してしまう、との意気込みでひとつ自衛隊をお育て願いたいと思います。 それから、国の防衛は、国民の協力がなくて全うできるものではありません。比較的国民が国防に無関心であるということは、広報宣伝といったような問題がわりあいなおざりにされておるんじゃないでしょうか。防衛庁全体という考え方からすれば、装備をすることも大切ですが、この装備を背後から援助するのは何といっても国民の協力です。こういう面にもあわせて十分御配慮を願っておきたいと思うのであります。 そして、もう時間がありませんので最後にお尋ねをします。日本の自衛隊は、憲法上の制約ばかりか、いろんなワクで規制をされております。海外派兵は絶対しない。徴兵制はとらない。これで思うように人を採用することはできません。マンパワーに非常な制限を受けております。また、総理が言われるようにGNPの〇・八%、防衛費は発展途上国に協力する経費程度のものでしかない。こういうわけですが、平和が続きますと、特に日本にいま攻めてくる国がない、そういう考え方が現実としてあるわけですから、そういう平和時においては、防衛力は大体この程度あればだいじょうぶだ。もちろん武器というものは相対的なものですし、日に日に新たになるものでありまするが、およそのめど、たとえば陸上の十八万というものは、これは人員においてはっきり当分これでいこうということが確定されております。やはり海においても空においても同じように、一つのめどが国民にわかりやすく、納得できるように説明されることが必要だと思います。 たとえば、防衛白書を出すといえば、何か好戦的に受け取られる。これがおかしいのですね。むしろ防衛白書を出すことによって、日本の国力に応じた最小限の武装の実態はこうであるという説明を十分にすることが大切だと思います。私は、平和時における防衛力のあり方、限界、これを四次防策定にあたって、総理が防衛庁長官に指示されたことは正しいと思います。いまここですぐ承ろうというわけではありません。大体いつごろまでに防衛庁長官はこれを策定される御決意なのか、見通し等について承りたいのであります。
○増原国務大臣 防衛白書の問題に御言及がありましたが、いま江崎委員の仰せになりましたような趣旨で防衛白書もつくりたいと考えております。そうして、この平和時における防衛力の限界という指示を総理から受けておりまするが、平和時におけるというとたいへん重大であると思うのです。私どもは日米安保条約を基本として持っていくという前提、そうして現在の緊張緩和の傾向が続いていくという見通し、これが平和時であります。そういう見通しのもとにひとつ防衛力のめどをつけたい。総理の指示に応じていま検討をいたしておりまするが、年内にはめどをつけることにいたしたいと、いま鋭意努力をいたしておるところでございます。
○江崎委員 ぜひひとつ、わかりやすく、国民のだれもが理解できるような説得力のあるものをつくり出すように、御努力を願いたいと思います。 以上で私、ちょうど一時間になりますので、質問を終わることといたします。今日の日本の経済的繁栄はもとより、日本の大きな発展は、何といっても長い間平和に恵まれたことが根本の原因であると思います。これは世界の国々に向かって、平和であれば、たとえ資源は少なくても、領土は狭くても、勤労意欲が旺盛でお互いに努力をすれば、国は発展するものであるということを顕示したものである、こういうふうに思うのであります。また、政治的にいうならば、やれ危険であるとか、あぶないとかいわれながら、この平和を存続し得たのは、われわれの先輩や同僚のとってまいりました自民党政府の施策が適切であった、正しかったことを裏づけておると思うのであります。田中総理は今後もどうか平和存続のため一そうの努力を続けられたいのであります。 また総理は、実行力にものをいわせて日本列島改造論をひっさげて立ち上がられましたが、まさに刮目すべき大構想であると思っております。いろいろなことがいわれておりますが、どうぞひとつ勇気をもって実行していただきたいと思います。 このことを心から希望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
○坪川委員長 これにて江崎君の質疑は終了いたしました。 次に、矢野絢也君。
○矢野委員 私は、公明党を代表いたしまして質問をいたしたいと思います。 本来、私は日本列島改造論を中心といたしまして、物価、公害あるいは土地問題、社会保障、こういう問題について具体的にお尋ねをいたしたいと思っておりました。外交あるいは防衛の問題につきましては、このあとの質問者である正木政審会長にゆだねるつもりでありましたけれども、どうも先ほど来からのいろんな応答を伺っておりまして、非常に重大な問題点が二、三あるように思いますので、ポイントだけを外交、防衛問題につきまして伺っておきたい。 とにかく、総理の答弁を伺っておりますと、質問にあまりお答えにならないで、御自分のお考えをるるお述べになる傾向があるように思いますので、時間も限られておりますから、明確に簡単にお答えを願いたいと思います。 けさほど来、安保条約の極東条項の論議がかわされております。話のいきさつとしては、この安保の極東の範囲の中に、昔の統一見解であった、中華民国が支配する地域ということばを台湾ということばに読みかえる、こういうようなことでございましたけれども、私は、この極東条項とも関連いたしまして台湾条項、これについてお尋ねをしてみたいと思います。 まず、台湾条項といいますのは、万が一中国大陸と台湾との間に何らかの紛争があった場合には、わが国は、在日米軍基地をアメリカ軍が使用することにつきまして、つまり在日米軍基地からアメリカ軍が発進することにつきまして、安保の事前協議を前向きに弾力的に運用する、このような約束を佐藤総理が前回になさっておるわけであります。そこで、この問題につきましては、本会議その他で、そういう紛争が起こるようなことはないんだという御説明でありました。私は、紛争が起こるとか起こらないとか、そんなことは別問題にいたしまして、純粋に国際法の法理論の問題として伺っておきたいのでありますけれども、まず外務大臣に伺っておきたいのでありますが、いわゆる純理論の問題として、外国の内部におきまして内戦状態が発生した、この場合、わが国から、その内戦の一方に加担をするような行動をとる、あるいはまた、わが国のアメリカ軍の基地を使用させてその内戦の一方に協力させることをわが国が黙認をする、このようなことば私は内戦の干渉ではないか、平たく言えば内政干渉ではないかと思いますが、その点についての一般論としての、あるいは国際法的な純粋理論としての、内戦干渉あるいは内政干渉についてのお考えを承りたいと思います。
○大平国務大臣 他国に内戦状態が起こる、その場合に、その一方に加担するということは、われわれの外交方針といたしましては許されないことであると思います。 第二に、具体的な場合、安保条約下におきまして、在日米軍の極東の安全に関連いたしまして行動が許されておる場合に、これをどのように処置するかという問題でございます。先ほど私が江崎さんの御質問にも御答弁申し上げましたとおり、安保条約は全体として維持するということを申し上げておるわけでありますから、極東条項につきましても、従前どおり維持してまいるという態度でございます。 そういうたてまえの上におきまして、具体的にそこにいう極東の範囲の極東に安全が脅かされる事態が起きて、アメリカ軍が日本基地を利用いたしまして行動を起こすという事案が起こりました場合、安保条約の体制におきましては、御承知のように、事前協議条項にかかる部面におきましてわが国の判断にゆだねられておるわけでございまして、そういう具体的なケースの場合におきましては、日本政府といたしまして、厳正に国益を踏まえてイエスかノーか判断すべきものと思います。
○矢野委員 私のお尋ねしたことはそういうことじゃございません。一般理論として、外国の内部で内戦が起こった場合、わが国がその一方に加担協力することは、内戦の干渉になるか、あるいは内政の干渉になるかということをお尋ねしておるわけであります。もう一度、なるのかならないのか、明確にお答えを願いたい。
○大平国務大臣 仰せのように、当然内政の干渉になると思います。
○矢野委員 当然のことだと思います。 その場合、今度は具体論になりますが、田中総理は北京を訪問されまして日中国交回復を実現されたわけであります。その限りにおきましては、私どもはこれを高く評価いたしております。しかし、そのときの共同声明に、中国は一つである、そしてまた台湾は中華人民共和国政府の不可分の領土であるという内容の共同声明をお出しになっております。 そこで伺いますが、台湾は中国領土の一部である、この御認識を持っておられるかどうか、重ねて伺います。 それともう一つ、もしそうであるとするならば、先ほど私が一般理論としてお尋ねをしたことがそのまま当てはまって、台湾で何らかの紛争が起こった場合に、わが国がこれに協力、加担するかのごとき——これは現実に起こる、起こらぬは別問題であるということは最初申し上げたとおりでありまして、そのようなわが国の姿勢は、明らかに内政干渉であり内戦の干渉である、将来におけるその可能性を秘めたものであると考えますが、この点についてお伺いしたいと思います。
○大平国務大臣 日中共同声明の第三項に、台湾の領土の帰属について双方の見解が明らかにされております。矢野さんがおっしゃるように、中華人民共和国といたしましては、台湾は中国の不可分の領土の一部であるという見解を再確認いたしております。わがほうといたしましては、その中国の立場を理解しかつ尊重いたします。しかし、これを承認するということは書いてありません。わが国の立場は、ポツダム宣言を受諾した立場におきまして、わが国が放棄した領土の帰属について、わが国が独自の判定を下す立場にございませんことは、従来政府が繰り返し述べてきたところでございますが、ポツダム宣言はカイロ宣言を受けまして、台湾は中国に帰属すべきものであるという見解が述べられておりまして、現に帰属しておるというように私どもは理解いたしていないのでございます。これはあくまで法理論としてそうで、そういう立場を私どもはあそこに明らかにとらせていただいたわけでございます。政治的には一つの中国の立場を貫き、台湾に領土的野心を日本は持たないばかりか、台湾の独立運動等に加担をする意思は毛頭ございませんということを鮮明にいたしておりますけれども、純法律的な冷たい論理の展開といたしましては、共同声明三項に、日本政府の立場を明らかにしておるわけでございまして、台湾をめぐる事態は、政治的な面と、そしてそういう法律的な面におきまして、必ずしもしっくり合致していないのが遺憾ながら現実でございます。
○矢野委員 いま外務大臣は非常に重大な発言をなさいました。少なくとも日本国民は、今回の共同声明におきまして、わが国が台湾の領土の帰属につきましては、明らかにこれは中華人民共和国政府のものである、このようにわが国が承認したものであると理解しております。しかしいまのお話では、承認ではなくして中国のそのような考え方を理解しただけなんだ。確かに共同声明には「理解し、尊重し、」ということばで、承認ということばは使ってありませんけれども、これはきわめて重大な発言だと私は思います。そうして政治的には一つの中国だけれども、純法理的には、冷たい立場でいえばそうではないんだということを言われましたが、そうすると、純法律的には外務大臣は依然として二つの中国の立場をこれからもおとりになろうということですか。明確にお答え願いたい。
○大平国務大臣 台湾の領土の帰属につきましては、るる申し上げておりますとおり、わが国がサンフランシスコにおきましてこれを放棄いたしたところでございまして、その帰属は、本来ならばサンフランシスコ講和条約に調印をいたしました連合国が協議いたしまして、帰属をきめて決着をつけていただくというのが本来の手順だろうと思うのでございますけれども、まだそこまで至っていないわけでございますから、私どもは放棄した立場におきまして、断定的に独自の判定を下す立場にないということを申し上げておるわけでございまして、ポツダム宣言を受諾した日本の立場をそのままただいままで踏襲いたしておりますということを申し上げたわけでございます。これがどのような始末になりますか、これは私もよくわかりません。ただ、政治的に申しますと、先ほどお答え申し上げましたように、中国はあくまで一つであるというたてまえを堅持してまいりますということでございますから、その点は日本政府に、二つの中国を志向する気がまえがあるなどということは厘毫もございませんから、誤解のないようにお願いしたいと思います。
○矢野委員 誤解のないようにと言われましても、話がますますややこしくなるばかりであります。ですから、確かにわが国が台湾という領土を放棄した、放棄したわが国が台湾の帰属についてとやかくは言えない、こういうことをいまおっしゃいました。そうすると、依然として台湾の帰属は未定である、未定であるというか、中華人民共和国のものやら中華民国のものやらどこのものやらわからぬという帰属未定論に逆戻りをされたと理解してよろしゅうございますか、いまのお話は。
○大平国務大臣 でございますから、共同声明におきましては、これは「中華人民共和国の領土の不可分の一部である」という中国の立場を理解し、かつ尊重するという日本の見解を明確に述べてあります。
○矢野委員 ですから、私は重ねて結論的に伺いますけれども、わが国政府は、台湾の領土を中華人民共和国政府のものであるという認識、これはあくまでも政治論的なものであって、純法律的なものでないという解釈をまずしておられるのかどうかをひとつ伺いたい。もうよけいなことは言わなくてもよろしいです。その場合は、純法理論的には台湾はどこに帰属すると日本政府はお考えになっておるかどうか、まずこの二点。もうよけいなお話はけっこうです、サンフランシスコ平和条約云々というのはもう聞き飽きておりますから。
○大平国務大臣 日本政府の見解を問われるならば、共同声明に書いてありますとおり、中国側の立場は十分理解しかつ尊重いたしますと、それから日本政府は、一体あれはどこに帰属すべきものであるかと問われるならば、ポツダム宣言を受諾した立場において、これは中国に帰属すべきものであるという見解を表明いたしました宣言を受諾しておるのでございますから、そういう見解でございますと申し上げます。
○矢野委員 その中国を代表するものは中華人民共和国政府であると、はっきり共同声明で認めていらっしゃるじゃありませんか。なぜそうややこしい話の持っていき方をされるのですか。ですから中国に帰属する、その中国は中華人民共和国政府であるとはっきり日本政府は認めておるじゃありませんか。であるならば、台湾は明らかに政治論的にも法理論的にも中華人民共和国政府の領土である、これを共同声明で日本政府が認めた、こう理解するのはあたりまえじゃありませんか。国民はそう理解しておるじゃありませんか。いまさらなぜそんな逆戻りするようなことをおっしゃるのですか。明確にもう一度お答え願いたい。
○大平国務大臣 ちっとも逆戻りはしていないのです。日本政府はこういう見解でございますということを明確に述べておるわけでございますが、日本政府は台湾の領土はどこに帰属すべきものだということを判定する立場にないということだけを言っているわけでございますから、誤解のないように願います。
○矢野委員 いずれにしても、中華人民共和国政府のほうが台湾は不可分の領土であると言ったことを理解された、こういうことですね。 それで本論に戻ります。いまの問題は非常に重大でありますから、いずれまた正木君のほうから詳しく質問するといたしまして、そういう立場に立ったときに、中国大陸と台湾との間の紛争は、内戦であり内政問題であると日本政府は理解するかどうかを私は一番最初にお聞きしているわけです。そのお答えがまだありません。
○大平国務大臣 政治的に見ますと、当然これは内政問題であると思います。
○矢野委員 その内政問題につきまして、万が一紛争が起こったときに、わが国の領土内にあるアメリカ軍の基地をどうぞお使いくださいという立場は、政治的にけっこうですから、政治的に内政干渉だと私は思いますが、この点はいかがでございますか。
○大平国務大臣 そういう理解に立っておる日本政府といたしまして、そういう事態が起こった場合、私どもが事前協議制を運用するにあたりまして、十分配慮を加えていく立場にあると思います。
○矢野委員 そのときにどう配慮をするのじゃなくして、そのような台湾条項の性質ですね、これは明らかに、事態が発生するしないはともかくとしても、これは内政干渉ではないかと聞いているのです。であるか、でないかだけお答えいただけばいいのです。
○大平国務大臣 政治的に申しますと、当然内政問題であるという理解を持っておりますと、お答え申し上げておいたとおりでございます。
○矢野委員 それでは総理に伺いますけれども、まあ外務大臣、ああだこうだといろいろなややこしいことを言われましたけれども、結論として、この台湾条項というものは、一つの中国の立場に立ち、台湾が中華人民共和国政府の領土であるという認識に立つならば、内政干渉であるということを言っておられるわけであります。総理として、そのような危険と申しますか、不都合きわまるわが国政府のアメリカに対する約束、これをすみやかに取りやめられるべきだと思いますが、御見解いかがでございますか。
○田中内閣総理大臣 法律や協定というものは、事態の変遷に伴って柔軟に適用せらるべきでございます。これは法律解釈そのものでございます。そうあるべきでございます。ですから、日中の国交の正常化が行なわれた以後、それから中国とアメリカとの間に親近の関係ができた現在、いままでのような四角定木な考え方ですべてを律することはできないと思います。ですから、われわれはそれを裏から申し上げて、日中の国交の正常化は、第三国、それは中国とソ連とか、中国とまた別の国とか、日本とアメリカとか、日本と第三国とかという現象とはかかわりなく、そのままの前提において日中の国交の正常化に合意をしたのです。これは向こうも、いままで日本が現に直面しておるものを理解をして正常化に踏み切ったのです。私たちも、中国がいろいろな状態にあることを承知をしながら踏み切ったわけでございますから、そういう意味で、台湾においては、先ほどからるる御質問もございましたし、政府側の意見も述べましたが、中国側は武力解放を行なわない、台湾も大陸反攻はしない——しないというのではなく、アメリカがしないようにという歯どめをしておる、こういう状態でありますので、話し合いが十分できるような状態でございますので、いままでの日米安全保障条約やいろいろな論争において考えたと同じ尺度をもってこれを割り切ろうとしても、そういう事態は起こらないのでございますから、こう答えておるわけでございます。起こる起こらぬは別にして、議論の上でもけっこうだからということで詰めておられるわけであります。台湾は中国の不可分の領土であるか、あるとすれば、台湾と中国の間に紛争が起こるとすればそれは内戦であろう、内戦の一方に加担をすれば内政干渉になるのじゃないか、こういう議論の御質問に対しては、そのような状態が起こらないという前提に立っておるのでございますので、どうもお答えできない。 だから事前協議の場合は、これは先ほどから外務大臣述べておりますとおり、日本が判断をするわけでございます、日本の防衛上、日本のために必要かどうかということを。日本の意思によってイエス、ノーはきまるわけでございますので、その場合は日本が自主的に判断をする、こう理解をしていただきたいと思います。
○矢野委員 そういうふうに日中国交回復には、安保はこれは別問題として行なわれたのだということをおっしゃるわけでありますけれども、そういうことはあまり日本の総理大臣がおっしゃらないほうがいいのでありまして、中国がどういうことを言おうと、わが国政府の姿勢としてどうあるかということを、国民は知りたがっておるわけであります。 それともう一つ念のために申し上げますと、周恩来総理があなたに対して、安保はけっこうでございます、ほんとうによいものでございますなんて言うはずがないのでありまして、少なくとも、当面の日中国交回復というこの大事な問題には、この安保というものはさしあたり問題にしないでおきましょうと言っておるだけでありまして、安保がいいとか悪いとか、四次防がいいとか悪いとか、そんな議論をしておるわけじゃないのです。それをあたかも、あなたのお話であれば、中国だって認めておるじゃないか、こういう言い方は、非常に国民を欺瞞するもはなはだしい。これは明確に訂正されなくてはいけません。それが一つ。 それからもう一つの問題として、現実に起こらないかどうかということは別問題として、私は純法理論的にお尋ねをしておるわけであります。それに対して、起こらないのだから、こういうことは問題でないというお答えであります。起こるか起こらぬか。確かにあなたのおっしゃるとおりそういうことは起こらないだろうと私は思っております。しかし、将来はこれは未知数であります。しかも、わが国の基本姿勢として、起こるか起こらないかわからないようなものに対して、なぜいつまでもこういう台湾条項というよけいな約束を温存しなければならないか、これはもう国民のすべてがふしぎに思っておるわけであります。あえて言えば、そんなに将来問題が起こらないなら、台湾条項なんか意味がないじゃありませんか。意味がないものならはっきりやめたらいいじゃありませんか。起こらないという確信があるなら、紛争なんかないのだというなら、台湾条項なんか完全に無意味じゃありませんか。であるならば、あなたのほうからアメリカに、こういうものは必要ないからもう取りやめますよと通告すればどうですか。 もう一つ、純法理論的にこれは内政干渉かどうかと聞いておることについて明確にお答え願いたい。
○田中内閣総理大臣 自衛力や四次防や日米安全保障条約に対して、周恩来首相がいいと言ったなどということを、私がアクセントをつけて述べておるのじゃ全然ありません。これは誤解がありますから申し上げますと、日米安全保障条約や独立国の持つ防衛という問題に対しては議論をいたしましたということに尽きるのであります。向こうも言ったのです、中ソ同盟条約の問題も。日米安全保障条約がなぜできたのか。中ソ同盟条約ができなかったならば、できなかったかもしれないということさえも述べ合ったのでありますから、これは独立国としていろいろな問題を持っておる、また防衛の手段に対していろいろなことを考えるということは、これはみなあり得るのであります。ですから、そういう問題は議題として議論をいたしましたということでございまして、いまの日米安全保障条約が、周恩来首相がオーケーを与えた、オーケーをもらった、それだからいいのだ、そんなことでは全然ありません。これは事実を述べたということでございますので、御理解をいただきたい。 それから、台湾と中国の問題に対して、これは内政問題でありましょうというのは、これは実際そうなんです。両方ともいままでは——われわれは、今度は中国と国交の正常化ができましたが、その前は、台湾を中国の正統の政府でございます、こう答えておったのです、ここで。それはどちらも正統政府である、中国は一つであるというところに、非常に困難な問題の解決があったんです。日中間の国交の正常化が今日までかかったのも、問題はそれがからんでおる。ですから、そういう事実にあるということでございますので、台湾の領土の問題、いろいろな帰属の問題に対しては、日中間が十分理解をして合意に達せられるような状態で終結を見たわけであります。ですからその状態で、これから時がいろいろな問題を解決するということを待たなければ、すべてのものを四角定木に全部やってしまうというわけにいかないのです。ですから、日本の固有の領土である歯舞、色丹、国後、択捉、これは日本の固有の領土です。領土ですが、これは現に施政権が行なわれておらない。ソ連の占領下にある。こういう問題に対して第三国が言うのとほんとうに同じような状態で、台湾に対してはむずかしい問題があったわけであります。しかし、今度の日中正常化の問題で、両国はびしっと、台湾の問題に対しては結論を出したわけでございますので、現に支配が行なわれておらないということで、かつて、台湾が正統政府でございますと言ったようなことさえもあるこの台湾に対して、すなおに、もし争いがあったらどう思いますかといえば、それは中国は一つでございますから内戦だと思います、こう言っているでしょう。ですから、今度はわれわれは、台湾問題は、アメリカと中国との間の交流もありますし、円満に片づくものだ、時が解決をする、こう考えております。ですから、いま日米安全保障条約そのままでもって日中の正常化が行なわれたので、極東条項も台湾条項もそのままに手つかずでおります、それでいいと思います、こう言っているのですから、それをいま、やめたらどうですかということを申されても、いまのままでいいと思いますということになります。 そうすると、あなたは一番最後にはどうかというと、今度は、内戦が起こったらと。起こらないと思いますと言うと、起こらない起こるは別にして、もし起こったら、仮定の場合でも答えなさい、こういうことでございますから、昔吉田さんなら、仮定の問題には答えません、こうでございますが、しかし、いまこれは事前協議の問題にかかるべきことである。そうすると、事前協議ではノーと言え、イエスはあり得ない。これは御発言、よくわかりますよ、趣旨は。そういう意味でわれわれも日中の正常化を行なったわけですから、よく理解はできますが、いまある制度をそのまま否定をするということにはなりません。だから、それで起こらない——起こったら片っ方に味方をしたことになり内政干渉になるんですか、こう言うのですが、そんなことやりませんし、起こりません、こう述べておるのですから、そこでひとつ御理解をいただきたい。
○矢野委員 これは仮定の質問じゃないのです。起こらないだろうという認識では、私自身も政府と同じだ。しかし、あくまでも日本政府が正式にとっておる態度です、この台湾条項というのは。ですから、純法律的にどうかということを聞いておるのですよ。仮定の問題だとおっしゃるなら、将来台湾と中国の間に問題が起こらぬというのも仮定の問題ですよ。あなたも仮定に基づいて答弁をしておられるわけでありますから。私はあくまでも純理論の問題としてお尋ねしておるわけです。 それと、何か安保条約がどうとか極東条項がどうとか盛んに弁解がましいことを言っておられますけれども、私はまだその問題については触れていないのです。安保がよくないとか極東条項がよくないということは、これから申し上げようと思っておることであって、この台湾条項は内政干渉になるかどうかということだけ、私、聞いているのですよ。ですから、くどいようですけれども、台湾条項というのは、起こる起こらぬは別問題として、純理論的には内政干渉の筋合いを持つものだとあなたが御認識なされば、それで私はこの問題は終わるのです。
○大平国務大臣 純法律問題といたしましては、先ほど申しましたように、安保条約は全体として維持してまいりますから、極東条項を含めまして維持してまいるということでございます。 したがって、問題の地域に紛争が起こった場合にどうするかという、これも純法律的な問題でございますが、在日米軍の発動につきまして私どもがイエスと言うか、ノーと言うかという問題につきましては、自主的に日本政府が国益を踏まえて判断いたしますということでございます。
○矢野委員 この問題に私もあまり時間をとるわけにもいきませんから、法律の権威者である法制局長官に、法律的な立場から、いま申し上げたことについての見解をひとつお述べいただきたい。政治論はけっこうですから。
○吉國政府委員 いま御指摘の台湾条項でございますが、これはもともと、一九六九年当時における日米共同声明の内容でございまして、その当時において日米両首脳が台湾の問題についての認識をお互いに述べ合ったものでございます。したがって、それ自体が内政干渉というような性格のものであるかどうか、これは政治的には、先ほど大平外務大臣から答弁がありましたように、一つの国がございまして、それがAB両派に分かれておる、その純粋に一つの国が二つの団体に分かれてお互いに抗争し合っている場合に、それに一方に加担することは、これは国際法上内政干渉と呼ばれるべき問題かとも思いますけれども、今度のこの問題につきましては、その当時の了解を述べ合ったものでございまして、いまの段階において、それは総理が述べられましたように、実質的な変化を遂げておりますので、それ自体を取り上げて内政干渉に当たるかどうかということを法律的に判定することは、非常に困難であろうと思います。
○矢野委員 いまのお話では、六九年当時の両国の認識を述べ合っているんだということでありまするが、現にこのように一つの中国という立場で、台湾は不可分の領土であるという立場で国交回復が実現したこの時点においても、この台湾条項を取りやめる気持ちはないと政府は明言しておるわけであります。だから、いまのようなお答えじゃ困るのでありまして、現にいま、そのような国交回復が実現した時点において、政府がこういう考え方を事実持っておるわけであります。であるならば、これは内政干渉かどうかということを聞いているわけでありまして、そんな昔の話といまとごっちゃにしてもらっては困る。もう一度答弁してください。
○吉國政府委員 台湾条項は、先ほど申し上げましたように、一九六九年当時の両国の首脳の認識をお互いに述べ合ったものでございます。それが一つの条約であるとか協定であるとかいうものでございまするならば、それをこの段階において改定するというようなこともございましょうけれども、その当時におけるいわば談話を相互に発表したようなものでございます。これについて、それ自体を改定するというような問題は法律的には生じ得ないということを、私としては申し上げざるを得ないのであります。
○矢野委員 法制局長官ともあろうものが、そんなおかしなことを言ってはだめですよ。内政干渉というのは、条約あるいはそういう法的効果を持つ文書、取りきめ、その場合だけ内政干渉が生ずるとは限らないのです。その国の姿勢そのものが、談話であろうが声明であろうがあるいは抗議であろうが、それが内政干渉の性質を持つかどうかということが問われるわけであります。だから、あれは条約でなくて声明だから内政干渉に当たらない、そんなばかな理論はありますか。もう一度答えてください。理屈を曲げたらだめですよ、長官。
○吉國政府委員 この台湾条項と申しまするのは、またもう一ぺん申し上げますが、当時の「米国の中華民国に対する条約上の義務に言及し、米国はこれを遵守するものであると述べた。総理大臣は、台湾地域における平和と安全の維持も日本の安全にとってきわめて重要な要素であると述べた。」という条項でございまして、これは安全保障条約の事前協議条項というものを前提にいたしまして、台湾で事が起こった場合には、その事前協議については、台湾は非常に日本の安全にとっても重要だということをお互いに述べ合ったもあであると思います。これがかりにないといたしましても——先ほどのお話のように、かりにでございますが、かりに台湾で事が起こった場合に、日本にある米軍が出動する場合に事前協議としてどうするか。その場合に、台湾に日本の米軍が出動する、あるいは日本の施設、区域が台湾における米軍の作戦のために使われることが内政干渉になるではないかというお話だと思いますが、それは先ほど来、総理、外務大臣から申し上げましたように、そのときの事前協議において処理をされる問題でございますので、いま直ちにここで、いずれの事態を予想して法律的に割り切って答弁をすることはできないということを、先ほど来私は申し上げておるつもりでございます。
○矢野委員 私は先ほどから、もうほんとうにくどいようですけれども、そういうことが起こる起こらないか別問題として、わが国の基本姿勢として、純法律的にそういうことが内政干渉にならないとして許されるのか、あるいは内政干渉として許されないのかということを聞いているのです。 これは私、残念ながらこの問題であまり時間をとることはできません。ですから、これは委員長にお願いしたいのでありますが、このようなあいまいな答弁では私、納得できません。ですからこれについて、後日でけっこうでございますから、きちっとした政府の見解、これをお出しいただけるように、委員長においてお取り計らいを願いたいと思います。
○坪川委員長 ただいまの問題につきましては、いずれ理事懇談会において協議をいたしたいと思います。
○矢野委員 いや、いま御相談ください。
○坪川委員長 この問題につきましては、いずれあらためまして理事懇談会において協議をいたしたいと思いますが、政府におきましては、政府の見解を別な機会に披露願いたいと思います。 〔「理事懇談会とは何ですか」「留保ですね、それじゃ。はっきりしてください」と呼び、その他発言する者あり〕
○坪川委員長 いずれあらためまして理事会において協議をいたして決定いたしたいと思います。その間、留保をいたします。
○矢野委員 それでは、次の問題に進みたいと思います。 田中総理は日本列島改造論を発表されたわけでありまして、私もそれを熟読いたしました。この中に、たとえば二四ページに、「これまでの生産第一主義、輸出一本ヤリの政策を改め、国民のための福祉を中心にすえて、」あるいはまた二一八ページに、「大都市や産業が主人公の社会ではなく、人間と太陽と緑が主人公となる“人間復権”の新しい時代を」迎えたい、こういうことをお述べになっておられます。 これはまことにけっこうなお話でございまして、いままで私たち野党が政府に要求し続けてきたことを、そのままことばとして本にお書きになっておるのだと私は思うのですけれども、ここで伺っておきたいことは、このような表現をされておる以上は、いままでの、少なくとも今日までの日本の実態について、福祉や公害対策あるいはまた国民生活について、十分でなかったという自覚を持っていらっしゃると私は理解するのでありますけれども、そういう自覚をお持ちでございますか。
○田中内閣総理大臣 戦後、社会保障その他に対して新制度を発足させる等、全力を傾けてきたのではございますが、しかし、日本の社会保障その他完ぺきなものにまでは、まだ至っておりません。そういう意味で、これから長期経済計画等をつくる場合には、その中に社会保障その他十分組み込んだ理想的なものをつくって進めなければならない、こういう考えでございます。でありますので、努力はしてまいりましたが、しかし、理想的なものに到達はしておらないので、まだこれから精力的な努力を積み重ねる必要がある、こういう理解であります。
○矢野委員 そこで、議論の前提といたしまして、お互いに一つの確認が必要ではないかと思うのであります。つまり日本列島改造論は、昭和六十年に、いまから十三年後でございますか、わが国の国民総生産高、つまりGNPを一応一兆ドル、三百四兆円と想定していらっしゃるように思います。この一兆ドルGNPというのは、超大国であるアメリカでさえ、ことしようやく達成できるGNPであります。日本列島の総面積は、これは総理のほうがお得意でしょうけれども、三十七万平方キロメートルです。アメリカは九百三十六万平方キロメートルです。つまり日本の広さというのは、アメリカのたったの四%でございます。その中で住める可住地というものは二割、さらにその部分から農地を除いた非農地ですね、これもそのまた二割。こうなりますと、アメリカの四%の日本の国土、そのまた二割の二割でありますから四%の、たったの一万平方キロメートルのところにアメリカ並みのGNPをのせようというのが、この日本列島改造論の十三年後のビジョンであります。四%の四%、一・六%。大きくいってアメリカの四%の広さのところにアメリカと同じ、しかも、ようやくことしアメリカが到達し得た一兆ドル経済というものをのせたい、これは壮大といえば壮大、まことにごりっぱな決意といえばごりっぱな決意であります。しかし、これはかなり無理な話ではないかと私は思います。しかし、それはあなたがそういうふうに想定していらっしゃるのは自由でありますから、それはそれでいいでしょう。しかし、このちっぽけな日本列島に、いまのアメリカと同じGNPをいかなる形でのせていくのか。これはあなたの日本列島改造論がその答えだということでしょう。 しかし、その前に、そういったことが望ましいのか望ましくないのか。そういうたった四%のところに同じGNPを置くということが望ましいのかどうか、これはやはり真剣にお互い考えてみる必要があるのではないかと思うのですよ。一ぺん総理のお考えを聞きたいと思うのです。
○田中内閣総理大臣 昭和六十年度に三百四兆円にしたいというのではありません。これは間々申し述べておるのでございますが、四十五年度の国民総生産を基準にして十五年間、昭和六十年展望でございますが、十五年間、一〇%平均に成長を確保せば国民総生産は三百四兆円になります、こういう一つの試算数字でございます。八・五%の場合は二百四十八兆円になります、こういうふうにして、これは一つの計算数字なんです。それはどうして一〇%というものを試算数字にとったかというと、二つの理由がございます。 その一つは、昭和二十九年から三十九年までの平均成長率は一〇・四%であります。昭和三十五年から四十五年までの十カ年の平均は一一・一%であります。ですから十八年間の平均成長率は、去年の六%台だけ除きますと、十七年間一〇%以上の成長を続けて今日になっておるのでございます。また、ことしは相当低い成長率だといわれておりますが、経済企画庁は、九・五%から一〇%になるであろう、七・二%の成長率に対して九%ないし一〇%になるかもしれません、こういうことをいわれておるわけでございますので、一〇%成長という潜在的な力はあります、こういうことをいっているわけです。それと、一〇%成長をやるということの潜在力があるんだから、これを八・五%にするのか七・五%にするのかは別にして、長期経済計画を立てなければならない、こういっておるわけであります。 それで、いまの八十何兆円、約九十兆円という国民総生産でございますが、これが非常に小さな表日本、東京、大阪、名古屋というような拠点、また東京を中心にする半径百キロ圏の首都圏、各地の県庁の所在地、こういうごく局限をされたものの中にこれだけのものがおります。ですから、この事態でいまの大拠点中心をそのまま引き伸ばしていくと、いまでさえも公害、物価、宅地の値上がり、いろんな問題があるにもかかわらず、これ以上一〇%ずつの成長を続けるよりも、五%か三%の成長でも続けたとしても、これはもう収拾できないようになります。これは都市集中のメリットとデメリットがちょうど明治百年で一つになって、今度はデメリットのほうが多くなります、こう私は指摘しておるのです。それは、北海道の鉄道はキロ当たり三億五千万円でできるものが、東京や大阪の地下鉄、あなたのところの地下鉄はキロ当たり七十五億かかっているじゃありませんか。しかも、二分の一は税金でもって補助をしておってもまだペイしないで値上げしなければならぬ。値上げを押えろ。値上げを押えられるかどうか、こういう問題になっておるときに、成長をとめるというわけにはまいりません。それは先ほどから申し上げておるように、西欧並みになったとはいいながら、アメリカに比べれば社会資本の蓄積率はまだ四分の一でありますし、月給もまだ三分の一であるし、いろんな問題がございまして、そこに付加するのが社会資本の不足、公害の除去、それから社会福祉の増加ということを考えると、やっぱり成長を続けなければなりません。成長を続けるためには、いまのような局限した拠点中心ではできません。そういう意味で列島改造というものを出したのであって、一〇%成長にするか八%成長にするかは、これから、国民に提供したテーマでありますから、やっぱりお互いがこれを土台にしていろんな具体策を積み重ねていただくということでなければならぬと思うのです。第一東京だって、今度も木村建設大臣が、沼田ダムをやりません、こういうことになると、東京や関東の三千百万人、やがて四千万人になるという関東の人たちに、どうして水が与えられるかという問題がすぐ起こってくるわけでありますので、ほんとうに新しい立場に立って列島改造は必要である、こう述べておるのであります。
○矢野委員 総理は、この話になると、何かほんとうにうれしそうな顔でいろいろと答えられるわけでありますけれども、そのお話しになりたいことは順次伺いますから、心配しなくてもおしゃべりになりたいことは順次伺ってまいりますから、私の質問にだけお答えいただけばそれでけっこうでございます。 そこで、いずれにしてもこの一兆ドルは目ざしているわけじゃない、こういうお話をされたわけでありますけれども、この日本列島改造論全体をささえておるのは、いずれにしても成長はなくてはならない、年率一〇%程度の成長が必要なんだという発想でささえられておるように私は思います。 そこで、産業構造やあるいは経済のやり方を、かりにですよ、いままでのやり方をそのまま引き続いて踏襲していった場合、十三年先に一兆ドルが八千億ドルでもこれはけっこうです。そのような膨大なGNP経済というものを想定したときに、いままでのやり方を延長していけばどういうことになるか。この御認識は持っていらっしゃると私は思うのですよ。 そこで、私の考えはですよ、このままやっていけば、国内ではもう息詰まるような超過密状態が起こるでしょう。これは計算によれば、平地の単位面積当たりで見たときにGNPはアメリカの四十倍のせなければならぬ。あるいは車の保有台数も単位面積当たりアメリカの三十倍である。六〇年代わが国経済が十年かかってつくり上げたGNPは累計をすると一兆ドルです。六〇年代ちょうど十年間で生み出したGNPが、これは一年間で生ずるということになるわけでありまして、十年間の汚染が一年で一ぺんに生ずるということです、いままでのやり方を踏襲すれば。あるいは対外的にも、これはGNPの一割前後が資源輸入であり、製品輸出です。先ほどから論議になっておるように、GNPの一%が海外援助であり防衛費です。これはこのままでいけば、一兆ドルならどういうことになるかということになるわけですね。 ですからあなたが、今日までのわが国経済社会のあり方が、まあ努力したけれどもうまいことなかったという御認識を持っていらっしゃることはいま伺った。うまくなかった。しかし、いままでの延長でいけば十三年後の一兆ドル経済というのは、もう内外ともにたいへんなことになることは、これは論理的に簡単に推測できます。だから、そこであなたは日本列島の改造をやるんだとおっしゃるんだろうと思うんですね。しかし、あなたのいう日本列島の改造というのは、いままでの延長でいけばたいへんなことになるのだということは容易にうなずけることでありますから、相当な決心、相当な発想の転換、あるいはまた国内資源の配分の相当な変更、こういうことがなければこれはできないことであります。いままでと同じ情性でおやりになったら、これは十三年後にはたいへんなことになるということは、お互い認識、知悉しているはずです。本会議で伺っておりますと、だから日本列島改造をやるんだという簡単なお話で、そんな魔法のつえかアラジンのランプみたいなことでは困るのでありまして、このままの延長でいけばたいへんなことになる。これが前提でですよ。だから改造をやるんだというのであれば相当具体的に、いままでとは違うのだということが明らかにならなければ私たち納得できないわけであります。 そこで私、伺っておきたいのでありますけれども、先ほど言いました相当な決意、具体的な発想の転換というものは、まあ今後通常国会等に法案その他で明らかにしていきたいということかもわかりませんが、相当な決心を持っていらっしゃるのかどうか。あと具体的にいろいろお聞きしたいので、まずその決心だけ伺っておきたいのです。
○田中内閣総理大臣 明治から百年間、大都市拠点に集中をすることによって国民総生産と国民所得は増大をしてまいりました。その過程において社会保障や社会資本の蓄積も行なわれてまいりましたのを、今度は分散によってということでございますから、これはもう全く逆な政策をやらなければなりません。そういう意味で、ちょっとやそっとのことではとても実現するとは思いません。これは国民的な協力と理解——流れを変えるということはそう簡単なものではないんです。いままでの国会や何かのいろいろな財政理論の中でも、東京や大阪の地下鉄ならば、キロ当たり百億をかけてもつくらなければならない、みなこういう理論です。ところが、赤字がある鉄道は撤去しなければならぬという理論、これを逆にしなければ、この全国土開発はできないんですから、いかに困難な仕事であるかということは私が述べるまでもない。これは明治から百年間、これと同じ政策をやったのは北海道開発の歴史たった一つなんです。北海道開発のために必要な公共投資は、全額国が負担するという鮮烈な太政官布告があった。これを九十年間やったために、三万九千人の北海道は、九十年間で五百二十万人になった。百年間にたった一つしか政策はないのです。そういう政策を奔流のごとく流れを変えなきゃできないのだというのですから、これはたいへんなことではありますが、やらなかったらどうするか。あなたが指摘したとおりなんです。いま二千百万台の車は、十三年間で黙って四千百万台になります。東京は、われわれが毎朝ここへ通ってくるのに一時間も一時間半もかかるということになるということで、もう生産がどうなるかなどという事態でないことは、これはもう小学校の算術なんです。ですから、そういうことを知っておりながら、その流れを変えないとしたならば、責任ある政治を果たすゆえんではないのです。そういう意味で真剣な問題であります。
○矢野委員 御決意といいますか、少なくともおことばの上では相当重大な決意をしていらっしゃる。しかし、それがほんとうに重大な決心であるかないかは、具体的な内容において確認されなければならないと思うのです。ことばだけで重大な決心をやっているんだというのではしようがないのであります。 そこで伺いたいのですけれども、この田中構想といいますか、この改造論を私なりに整理してみますと、いろんな柱があると思うのです。 第一点は、とにかく想定でなくても、見通しでも何でもいいのですけれども、一兆ドルGNPというものが十三年後に一応想定をされておる。これは少なくとも現在のGNPの四倍程度ですね。そして、この成長を達成する形は、あの改造論を見る限りは、あくまでも工業先行型であるということです。 それから二番目は、公共投資主導型というのが大きな特徴だと思います。とにかく成長するためには物的隘路がいろいろある。水、電力、労働力あるいは公害上の問題、産業立地、こういう物的隘路の解決をしなければならないし、少なくとも一兆ドル経済にあっては二・五倍の工業用地、四倍の工業用水あるいは三・五倍の電力需要が要るのだ。あるいはまた大型港湾、鉄道、道路のネットワークが必要だ。新幹線、高速道路。 三番目の考え方は、新工業都市の建設、大型の臨海コンビナート、資源処理といいますか、あるいは中型のコンビナート、あるいはまた内陸部における加工型と申しますか、そういったコンビナート、こういう新工業都市の建設ということが大きな特徴になっておりますね。いろんなことが書いてあります。それは、太平洋と日本海をつながなきゃいかぬとか、四国にこれから着目しなければならないとか、それなりになかなか敬服に値する意見もありますけれども、そういったことを払いのけて、この特徴といいますか骨格を洗っていけば、この三点になると私は思う。 この三点は、たとえば一兆ドルGNP、これは、はっきり言いまして所得倍増政策とそう変わりません。これは大失敗したのです。工業先行型であるということも、これは所得倍増政策とそう変わらないのですね。それから、公共投資主導型というのも所得倍増政策でうたわれておりましたし、それから太平洋ベル下地帯、これから過疎地帯にいろんな拠点を開発するのだ、これは明らかに新全総の発想です。ですから、アクセサリー的にいろんなものがありますよ。ありますけれども、あなたの理論の骨格をなしておるのは、所得倍増政策で具体的にされた新産都市計画、あるいはまたそれが手直しされて新全総という形になった。一向にこれは変わらないのです、分散だとか高速ネットワークだとかいろんなことをおっしゃいますけれども。しかも、その所得倍増政策なり新産都市なりあるいは新全総というものがどういう結果をもたらしたかは、あなたがいまそこでいみじくもおっしゃったとおりじゃありませんか。私がさっき申し上げたとおり、重大なる事態だ。小学生もわかる算数だなんておっしゃっているが、だれでもわかることが明らかな弊害、欠点というものが出ているのです。 しかし、あなたのいう日本列島改造論、私、十回以上読みました。やはり批判をするからにはよく理解をしなければ、読みもしないで悪口を言うのは私の趣味に合いませんから、よく研究いたしました。いままでの所得倍増政策あるいは新全総と一体どこが違うのか。あなたは先ほど、いままでの惰性、延長でいけば、十三年後、昭和六十年には一兆ドル経済であろうが八千億ドル経済であろうがたいへんなことになる、重大な発想の転換が必要だ、私はそのつもりでおるのだと言われましたが、内容を見れば全然変わっておりません。具体的に違う点を御説明ください。
○田中内閣総理大臣 戦後の所得倍増政策とか、いろいろな政策が失敗だった。失敗じゃないのです。これは成功なんです。世界じゅうにある国の中でたった一つ、膨大もない国際収支の黒字をつくれるような国になってきた。二十五年間で敗戦の中から今日の繁栄を築いた。ヨーロッパの戦勝国と同じ所得水準をつくった。社会保障の制度においても先進ヨーロッパと同じくなった。内容は、量的な問題から質的に転換をするという段階だけであって、三十年時代の日本がよかったか今日の日本がよかったかといえば、だれだって今日の日本がいいということは、これは言うまでもないのです。ですから私が申し上げておりますとおり、最低八千円の賃金ができるとかできないとかといって、国会が大もめをしたのは十年前でしがなかったのです。そういうことから考えてみて、確かに公害もあるし、いろいろな問題はあります。物価の問題もあります。ありますけれども、これだけの高い成長を確保し、しかも国民所得を向上させて、国際収支の対策を行なわなければならないようになったことは、これは政策的には成功なんです。どこの国でもやっていて成功しないものを、日本は短時日に成功していることは事実なんです。 今度は量から質へ、敗戦経済から自立経済へ、自立経済から国際経済へ、量から質の時代に転換をする場合に、いままでの政策でよかったかどうかという問題に逢着しているのであります。だから、いままでのように国民総生産や国民所得を上げて、輸出倍増政策というものがとれてきたのは、明治から百年の流れの中でであります。それは拠点中心主義というものをそのまま、政治の中心地であり、文化の中心地であり、産業の中心地であり、こういうようなとにかく大拠点にすべての人口を集中する、いまのままでいけば昭和六十年には総人口の八〇%ないし八五%は都市に集まるであろうというのがコンピューターによって出ておるわけであります。そうなると、物価の問題や土地の問題や水の不足の問題第一公害の問題がある。いま二千百万台の車が四千万台になって、一体ガソリンを使って都市内を運行できるかどうかという問題であります。できません。そういうことでありますから、いままでも新産業都市とか農村地域工業導入促進法とか、いろいろなことをやってまいりましたが、やはりもう大都市に集中することがメリットであり、そのメリットを追求するのが経済法則であるということではなく、先行投資によって六十年には水が一体幾ら必要である、一次産業人口はどうなる、二次産業人口をどうしなければならない、三次産業人口をどうしなければいかぬ、しかもその状態における社会保障というものはどうなる。いまでは老齢人口は非常に少ないために、制度はできましたが、内容はヨーロッパに比べて二分の一だというような社会保障も、今後十年、十三年後になると、日本の老齢人口は定着してくるのです。そうすると、好むと好まざるとにかかわらず、社会保障は成長経済計画の中でどういうふうに位置するかというものをつくらなければなりません。それをつくるということになりますと、いまの都市集中を是認する形においてはできないのです。 ですから、そういう意味で新産業都市とか、それからこの狭い日本ですから、新幹線、高速道路、まあ九千キロぐらいずつやれば、この問題は三分の二ぐらい片づく問題です。しかも内国海運の問題をこれに加味する、しかもいまの農地の一〇%ないし一五%が新しい生産基盤になると仮定すればどうできるか、地価問題はどこまでいくかということはすぐ計算できるわけでございます。それで、東京や大阪におれば、いまある工場はどうしてもいますぐからでも公害施設の投資をしなければいかぬ。いままでの帳簿価格の何倍もある投資をしなければならないのだが、この困難な中で公害投資をするよりも、やっぱり公害というものは原則的に除去できる体制にして、新しいところに基地を求めるほうがより効率的である。そして一次産業からは三分の二も人口が二次、三次に移動しなければならない、こういうことでありますから、その人たちがみな大都市に来たならば、それこそ地価も、公害ももう収拾がつかないような状態になると思いますので、六十年の展望のために青写真をかいて、流れを変えたらどうですか、こう言っているんですから、特に大阪御出身のあなたにはよくおわかりだと思います。
○矢野委員 どうも答弁が要領を得ない、あまり論理的でないような——そういうことは私が逐次伺ってまいりますから、少しお控えいただきたいと思います。 それで、所得倍増政策あるいは新全総計画は失敗じゃなかったという御認識をお持ちのようです。そういう認識を持ってこれからウルトラ成長経済政策をとろうとなさるのは、これは重大な問題ですよ。確かに一九六八年にわが国が西ドイツを追い抜いた、GNPで。そういう意味では、成長あるいは生産力という面では戦後の一つのピークと申しますか、保守政権の成長という面でのある意味での到達点を示したかもわかりません。しかし、結果として日本国民はどういう感じをいま持っておるんですか。働けば働くほど日本国内には公害がはびこり、自然破壊が行なわれ、そして物価はとめどなく上昇し——昔は退職金で家が建てられた。いまはそんなことできません。土地が上がりました。そのような日本国内におけるさまざまな問題があるわけです。また、国際的にも円問題、ドルがたまり過ぎて困るという難儀な要素をかかえておる。つまり、働けば働くほど人のいやがるごみとドルがたまるというのが、いままでの所得倍増政策なり新全総計画の結論じゃありませんか。確かに生産力という面からいえば総理のおっしゃったとおりです。失敗じゃなかった。生産力は伸びました。しかし人間のしあわせ、社会のしあわせというのは、あなたのように生産力だけで律し切れるものじゃないんです。 だから、おれは改造論を考えているんだとおっしゃるかもわかりません。しかし、いま何だかんだとるるお話しなさいましたけれども、全然そのお話もいままでの新産都市計画と、新全総計画と変わってませんよ。池田総理がこの所得倍増政策を打ち出して、そして全総計画策定のときに、それはもう新都市開発計画でいけ、新都市建設促進計画でいくのだという形で、工業都市という形への拠点開発が行なわれたんですよね。あなたは単にそれを全国的に広げようとしているだけのことですよ。新産都市のときは太平洋ベルト地帯であった。それがあなたの考えでは全国的に、高速道路、新幹線で広がっているだけのことです。この新産都市が結局どういう事態を招いたか。死の海になったじゃありませんか。日本の周辺の海はよごれたじゃありませんか。それから、そういうことが失敗だということが新全総計画、つまりいままでの全総計画を手直しをせざるを得ない事情であったんじゃありませんか。いままでのそういう拠点開発的工業都市建設というようなものじゃだめなんだ。だから農漁村問題だとか、あるいはその他具体的な問題を総合的に開発していかなくてはならぬ。拠点開発方式というものを総合開発方式に、ことばだけでありますけれども、そういうふうな転換をおやりになったわけでしょう。しかし、少なくともいまの御答弁を聞いている限りでは、新産都市計画に逆戻りしている感じです。これは私のきめつけで、そうじゃないと言われるかもわからぬけれども、具体的に聞きましょう。 そこで、まず一つは、佐藤総理は政権の終わりの時分に、福祉なくして成長なしということばを言われました。それは私がいまるる申し上げたような過去の成長経済政策というものは、いかに国民から見たときに裏切られたものであったか。低福祉、低所得であり、自然破壊である。こういう認識を踏まえて、佐藤総理も福祉がなかったら成長というものは意味はないのだということを言われた。ところがあなたの本会議の答弁は、成長と福祉はあたかも両立するかのごとき議論をおっしゃっています。 そこで私お聞きしたいのですけれども、いままでの経済成長、これは経済成長があったけれども、施策がちょっとまずかったので、低福祉といいますか、いろいろな社会的な欠陥が出たんだという御認識なのか。あるいは私たちの考えでは、むしろその低福祉、低所得が成長の条件であり、原因であった、私はむしろそう思っておるわけです。この点について、総理はどうお考えになっていますか。本来は福祉が目的、そのための成長ということでなくちゃならぬ。しかし、結果的には成長が目的になっておった。その成長をささえたのは公害であり、物価高であり、低所得である。低福祉は成長の条件であり、要因であった、国民の意識はそういうふうに見ておりますよ。これについて、いままでのことについてひとつお考えを聞きたい。
○田中内閣総理大臣 日本は戦後、国破れて山河あり、全く惨たんたる状況でございました。その中で一番先にやらなければならぬことは何か。まず食うことでございました。その次は何か、着ることでありました。その次は何か、住むことであった。それからだんだんと人間らしい考え方になってきたわけでございます。まず第一番目には国民総生産を上げ、国民所得を上げ、とにかく失業問題をなくすることである。次三男対策ということが選挙の命題であったじゃありませんか。そういうことでもって、まず働くこと、職場を見つけること、給与を上げることが先だったんです。それで、それが七%といっておったのが一〇%平均いったわけでございます。そういうところで第二に起こったところが、民間の設備投資主導型の経済がずうっと進みましたので、公共投資との間に社会資本のアンバランスができてまいりました。これは急速に都市に人口が集まったので、住宅が不足である。学校が大体不足である。われわれが育った学校は全部三分の一も三分の二もあいておるにもかかわらず、親子が全部都市に移動するために、学校はすし詰めになった、こういう状況で、社会資本のアンバランスがうんと出てきたわけです。 そして、その社会資本のアンバランスを高度成長の中でだんだんと片づけていかなければならないといういまの段階において、社会福祉の問題は当然出てまいります。これは出てくるのはあたりまえなんです。これはもういなかにおれば、自分でもってキュウリでもナスでも八十の老婆がつくるということもありますが、東京におれば、三畳の中でもって壁とにらめっこをしていなければならないということであります。そういう意味で、老人に対する社会福祉などが必要であること、これはあたりまえなんです。生まれたところなどは、みんなお互い村々でもって友だちもおる。都会へ移住してきたら、全く壁との対立でございます。そういう意味で、まず給与水準を上げなければいかぬ、それから社会資本の拡充をしなければならないといいながら、そこで先進国と同じような社会保障の制度を発足せしめた。制度を発足せしめたにしては、私は比較的にスピーディーに社会保障の制度というものはそろっておると思います。 ただ、数字で申し上げますと、制度は西欧並みでございますが、社会福祉の給付その他を対比してみますと、二分の一等々という数字でございます。これは一体どういうふうなのかというと、いままで言ったように、蓄積の順位があったということも一つございますし、社会保障給付の実態というものがまだ明確にきまっておらなかった。先ほどもちょっと申し上げましたが、社会保障給付費の一番低い理由は、老齢人口の比率が非常に少ないということなんです。これは、六十五歳以上人口の比率は、アメリカにおいては一五・六%、イギリスにおいては二〇・一%、西独においては一八・九%、フランスにおいては二〇・二%というのに、日本は一〇・三%なんです。だからそこで、いまの年金の問題に対しても、いますぐ西欧並みに切りかえられないということを言っているのはそういうことでございます。 もう一つは、年金制度が未成熟であるというのは、受給者数の加入者数に対する比率が西独の二〇%、イギリスの二八・八%、アメリカの二三・九%に、日本は驚くべしまだ二・一%なのであります。そういう意味で、これは内容がだんだんとこれからは西欧並みになってまいります。そういう意味で、日本の社会保障というものは最も合理的な制度でやらなければならないと、こう思います。いまの都市集中をそのまま是認しますとイギリスのようになります。(「それはいいよ」と呼ぶ者あり)これは非常に重要な問題だから聞いてください。イギリスは社会保障というのは非常に高い、高いけれどもあのままの状態を是認すると、都市に集中をしてしまって、歳出の六〇%もが社会保障に回らなければならない。その場合にどうなりますか。今度は無制限に下落をするということにもつながるのです。 ですから、そういう事実を踏まえて、恒久的な社会保障というものをやらなければだめなんです。しかも、現在の人の拠出によって拠出をしなかった人の社会保障の道も開かなければならないというのが実態でございますから、そういう意味では、感情論だけではいけません。これはもう全世界各国の例に徴して最も理想的なものに踏み切らなければならぬ。踏み切るには、少なくとも二百億ドルという外貨をいま持っておるということで、これからお互いがほんとうにやろうとすれば、理想的な社会保障は肉づけができる状態にある。これが、成長を上げないでもって、何も蓄積がなくてどうして一体できますか。だから、蓄積というものと成長と社会保障というものは両立せしめなければならない、こう言っているのは理由があるのです。
○矢野委員 私もできるだけ冷静に、かみ合った議論をしようと思って冷静にお尋ねしておったつもりでありますけれども、そんなにこちらの質問をはぐらかして調子のいいお話をなさるなら、私も質問のやり方を変えましょう。 それではひとつ総理に伺いますけれども、確かに成長がなかったら福祉も実現しない、その限りにおいては私はそれに反対するものではありません。しかし、あたかもあなたのお話では、福祉が成長を生み、そして成長は福祉を約束する、まるで完全に両立するかのごとき議論を述べておられます。ひとつ具体的に伺いますけれども、いろいろな投資にも生産力効果の違いがあることはあなたも御存じのとおりです。福祉関連の社会資本が生産力効果の弱いことはあなたも御存じのとおりです。そこで、福祉が成長を生む、そういう場合もあるでしょう。しかし、必ずしもそうじゃない。たとえば福祉優先の政策をとる、そういう場合に、産業優先あるいは生産優先を立地上それで許し得るかということですね。たとえば、瀬戸内海なりどこかの個所を国民公園だとか、これはほんとうに自然保護区域としてきめるんだ。具体的に瀬戸内海にいたしましょう。これはいろいろな意味で国民の福祉に好影響がありますね。瀬戸内海国民公園にするんだ。その場合、それを前提とする限りにおいては、その瀬戸内海における臨海工業地帯というものは、本来は認められないはずのものです。しかし、それにもかかわらず、あなたは福祉と成長とは両立するんだ、こういう理屈を述べておられる。であるならば、あなたの言う福祉というものは、生産に貢献しないたとえば道路——道路などは福祉だとも言えるし、生産のためだとも言える。そのように、あなたの言う成長に貢献する福祉というのは、ほんとうの意味での福祉じゃなくして、生産に貢献し得る福祉だけ、それだけを重点にして伸ばしていきましょうということであって、生産力効果の鈍い福祉というものは、あなたの理論の場合でしたら、当然これは弱くなってくる。この点どうですか。あなたが通産大臣のときに環境庁長官に対してどれだけ圧力をかけたか、これを思い返しながらひとつやってください。
○田中内閣総理大臣 いままでは重工業中心でございましたが、今度は、重工業中心では公害をどうしても生みます。そういうものではだめだというので、知識集約的なものに移らなきゃならない、こう言っております。それからいまあなたが述べたとおり、瀬戸内海の汚染というようなものをなくするためには、自然環境保護のためには、工場の生産、立地等が制限さるべきである、私もほんとうにそう思っているのです。それなんです。そこを、あなたと私がもう紙一重破れば同じになる。これはほんとうなんです。瀬戸内海や大阪湾はいい例なんです。瀬戸内海というものは、四十年に一ぺんしか水が変わらないというところで、赤潮の対策などではない。あのままでもって工場がとにかく立地をする、いままでと同じような状態でもって都合がいいからということで、企業中心でもってやってごらんなさい、瀬戸内海は死の海になります。瀬戸内海だけではない。大阪湾も東京湾もそうだ。だからそういう意味で、では東京や大阪や瀬戸内海で一切生産というものをやらないで、月給も全部ストップしていいのか、こういうと、そうではない。それは、日本の水を求め、一次産業との労働調整を認め、公害の調整の可能な知識集約的産業を全国的に立地しなければならないと、こう言っているのですよ。 また、そうすることによって国民所得が上がっていくのです。いいですか。明治十一年には八三・六%だった一次産業比率が、四十六年には一五・九になったのです。そのかわりに、三十年に二百二十二ドルであった国民所得は、四十六年には千八百ドルになっているのです。だから、この間において社会保障というものがどういうふうにして拡大をしてきたかというのは、数字において非常に明らかなんです。ただ、これは諸外国と比べますと、蓄積のあるものと蓄積のない日本ですから、さっき申し上げたように戦争で敗れて全く何もなくなった、そこへもう人が集中的に集中してきたというので、社会保障施設や内容に対してはうんと遜色があります。遜色はありますけれども、これは成長を続けていけば必ず社会保障の内容の充実は可能である、こういうふうにも申し上げておる。
○矢野委員 あなたがいろいろとお話をされて、こちらの理解を深めたいというお気持ちはわかりますけれども、これはやはりこちらの質問に具体的にお答えをいただくという形で議論を進めていかなければお話になりません。あなたは瀬戸内海に、これは国民公園だ、国定公園だとほんとうに整備するということであれば、そこでの企業の立地はよくないのだ、こういうことをいま言われました。紙一重だ。そうしたら水島はどういうことなんですか。そうするとあれは失敗だったのですか。
○田中内閣総理大臣 水島は失敗であったというのではありませんが、これはいまから考えてみると、もう少し工業立地とかそれから建蔽率の問題とか、そういう問題や環境整備の基準はもっと考えなければならなかったと思います。それはいま考えてみまして、こういうものでもって五つばかりあります。北から言うと、苫小牧があります。それから鹿島があります。四日市があります。水島があります。あとは大分湾であるわけです。これは考えてみて、鹿島と苫小牧は、いま公害問題が早く取り上げられたということもありますが、比較的に調整ができるような状態にあると思います。しかし、四日市というものは御承知のような状態になってしまった。 あとは水島の問題がございます。水島の問題というものが、あれがまた二つも三つもできるということになれば、これはまたたいへんでありますが、少なくとも水島というものに対して公害基準をきびしくするということによって、空気に対する汚染とか水の汚染とかというものに対しては、これは問題を除去することはできると思います。複合公害の問題に対してもまだできます。ただ、無制限にあのような問題が、瀬戸内海というところは立地的に非常に有利なので、べた押しにできるというようになると、これはもうほんとうに取り返しのできないものになる、こう思いまして、私は、水島というものが完全に失敗なものだというふうには考えていただかなくて、あなたもよく御存じのはずでありますから、こういう問題をいまの段階において、水島の問題もあったし、四日市の問題もあったし、それから洞海湾の問題もあるし、大分湾の問題もありますから、だから今度新しく立地されるであろういまの瀬戸内海というものをどうするかという環境基準をきびしくするということでなければならないと、こう思います。
○矢野委員 私の申し上げていることは、少なくとも成長すればそのまま福祉が実現するものじゃない。つまり福祉部門に重点を置いて考えれば、たとえばあの瀬戸内海に水島を臨海工業地帯とすることについては適当でなかったというような考えがいまにして生まれてくるわけですよ。つまり福祉重点に考えていけば、生産拡大のための産業の可能性と申しますか、そういうものがどうしても狭められてくるのです。この認識をあなた持たなくちゃだめだと言っているのです。二言目にはすぐ成長と福祉が両立するかのごとき議論を弄せられるから、私はそのことを指摘しているのです。パイは大きくしなければならぬ、これはわかります。小さいパイよりも大きいパイのほうがいいにきまっている。しかし、この切り方がいままでまず第一番に不公平だったのです。パイを大きくするばっかりで、これは毒入りのパイになったのです。よろしゅうございますか。ごみと泥のたまる、物価高の出てくるおかしなパイになったのです。この認識を持ってこれからの成長を考えなければだめだということを言っているのですよ。これはいま答えなくていいです。 そこで、これからの成長と福祉を、あなたの言うように両立させようとかりにしましょう。これはほんとうはけっこうなことだ。そのためには、まず社会保障分あるいは国民福祉分を先取りしなくちゃならぬ。まずその計画を先に設定する。その部分には、いわゆる成長部門、生産部門は食い込まさない。この姿勢がいままでなかったから、新産都市にしても新全総にしても失敗したんじゃありませんか。そのために、具体的にたとえば社会保障の長期政策、五年間かかって社会保障をこれだけにするんだ、あるいはまた、生活関連公共施設というものを三年なら三年かかってこうするんだ、あるいはまた、地方自治体に権限を与える、財源を豊かにする、これはこういうふうに計画を立てていくんだ、あるいは公害の撲滅のための長期計画はこうなんだ、つまり、成長と福祉を単純に両立させていく行き方をするんじゃなくして、少なくとも成長を達成させるために福祉を犠牲にしたくないというなら、いま私が申し上げた福祉部門について先取りした計画がなければ、あなたの言っていることはこれは全く誇大妄想のたわごとにすぎない。その計画はいまありますか。この日本列島改造論を見ましても、新幹線や高速道路をつくる、コンビナートはあちらこちらにつくる、そうすれば全国的に狭いこの国土がわりかた広く使えるんだ、こういうことが繰り返し書いてあるだけであって、福祉部門を先取りする、そのようなもろもろの長期計画は全然ない。これについてはどういうお考えですか。簡単に答えてください。
○田中内閣総理大臣 昭和四十二年から三年にかけてだと思いますが、自由民主党が都市政策大綱の名において列島改造論の方向を党議として打ち出したわけであります。打ち出しましたけれども、なかなかどうも世論は、これを支持するような、ほんとうに理解をしてもらうようにならなかったのです。ところが、この二、三年間でこの公害問題でもって火がつけられたのです。これを一体どうするんだ。場合によると、このままでいくと生産を停止しなければならない。こういうような機運がほうはいとして起こってまいりましたから、そうなって、角をためて牛を殺してはならぬので、もう一枚書こうといったのが列島改造論でありまして、これでもってすべてが、法律案から全部網羅しているなら、これは政策立案機関も何も要りません。そんな能力はありませんよ。そういうものじゃない。流れを変える場合にはテーマを提供して、国民にそのテーマを提供したら、与野党を問わずこれをたたいて、そしていいものに仕上げてもらわなければ、一人の力なんてたいしたものじゃありません。こっちの方向がいいと思います、御審判をお願いします、こう言っているのですから、これはそういうものを国民的な合意によってやってくれなければだめです。 それから、もう一つ申し上げるのは社会保障の先取り、これは一番重要な問題だと思いまして、普通ならいまごろ新全総、それから長期経済見通しがきまっておるわけでございますが、これを非常に慎重に政府で考えておりますのは、今度あなたが言ったとおり、長期経済計画などというものだけ出してもこれはだめだ、この中で社会福祉長期計画というもののちゃんとした位置とその計画を中へ織り込まない経済計画というものは考えられない、これは時間がかかっても、めんどうなことであってもやってみよう、こういうことでいま取り組んでおるわけでございますので、そういう意味で、あなたのいまの御発言にこたえようとしておるということだけは、ひとつ御理解いただきたいと思います。
○矢野委員 まあ今後の問題として、私がいま申し上げた福祉部門についての先取りの長期計画、これは絶対につくらねばなりませんし、これからつくりたいというお話でありますから、その認識の確認だけをしておきたいと思うのです。いままでのような新産都市計画、新全総ではそういうことはなかったのですよ。当然予想される公害に対する事前予防措置もなかったし、また現に公害が発生しても、事後的にそれを解決する対策もなかったのです。少なくとも、あなたは総理大臣でなかったかもわからないけれども、いままでの計画はそういうことなんです。だから私たちは、いままでのそういう自民党のやり方というものをいやというほど見ておるから、くどいほど言うのです。だから、あなたが幾らそこで言っても、ほんとうにやってもらわなければこれは信用できません。 それからもう一つは、いまあなたがそこで言われたとおり、この日本列島改造論は問題提起の本であって、いろいろな意見を聞きたいのだ、こういうお話ですね。これはぜひそういう姿勢であってもらいたいと思うのですよ。過日の本会議のように、何でもかんでも日本列島改造論ですというように押しつけるような、あれは問題提起でない、押しつけですわ。そういう傲慢な姿勢はとるべきではありません。おれにまかせておけ式では、これは民主主義ではありませんです。 そこで、これはむしろ私のほうから具体的に提案をしたい。こういう問題はいずれにしても、あなたの言うとおり明治百年あるいは戦後十数年の成長経済政策が曲がりかどに来た、だからここで何らかの発想の転換をしなくてはならぬ。非常に事は重大なことですよ。そこで、私はまず総理に提案したいことは、まずあわててはいかぬということです。よろしゅうございますか。実行のための準備体制というものをがっちりつくらなくてはいかぬのです。またその実施プログラムというものをつくらなくてはいかぬのです。何でも日本列島改造論ですと答えれば済むというふうな、これは簡単なものではないのです。よろしゅうございますか。 そこで、そういう落ちついた取り組み方、これがこれからの問題として非常に重大なんですよ。しかし、あなたの日本列島改造論は四カ月前に、総理御就任の前に本が出ましたね。それから四カ月たちましたですよ。その間その体制づくりも、実施プログラムもあまり具体化されておりません。少なくとも結果として、これは四カ月を振り返ったときには、大資本の土地の買い占め、地価の高騰、これだけが目立つだけであります。これだけが目立つ。一般の庶民は、私に金があれば角榮さんの改造論に乗ってどこか土地を買っておきたいが、金がない。ある人は買う。いま百万円持っておる、この人は土地を買おう、これは将来値上がりになって、三百万、五百万になるかもわかりません。大部分の大衆は土地を買う金がないから、これはゼロはいつまでたってもゼロです。だから国民は、むしろ一面ではあなたの改造論に期待をするとともに、一面では非常にいら立たしさと申しますか、おれだけ置き去りされるんではないかという不安感を持っておるのです。ほんとうにこういう大きな仕事を達成するためには、国民の皆さんに落ちこぼれが全然ないように、この日本列島改造論に特定の者が得をしないように、全部がよくなるようにやりますから安心してください、こういう性質でなくてはならないのです。しかし、少なくとも四カ月間を見た限りにおいては、お金を持っている人は土地を買う、特に大資本は土地を買いあさっているじゃありませんか。 そこで、私は具体的に、そういう意味で国民から信頼される、よし、おれも一緒に新しいこの日本の列島改造に協力していくんだという気持ちを持ってもらうためにも、まず政府は、成長とかそういうことよりも、本来政府の使命である公共とかあるいは厚生とか、こういう政府の役割りにほんとうはもっと重点を置く必要があるのです。成長、成長と、まるで三種の神器みたいに言わないで、国民の皆さん、私を信頼してください、特定の者だけもうけさせるようなばかなことはしません、そのためには公共、たとえば生活関連公共事業を充実するとか、役所のサービスをもっと徹底してよくするとか、あるいはまた所得の再配分のための社会保障を、たとえばこの補正予算において具体的に実現するとか、それが全然ないではありませんか。所得減税もないではありませんか。これでは何となく、国民の力のない人々はいら立たしさと申しますか、おれだけこの田中さんの改造論に乗りおくれるんじゃないかという不安感を持つのですよ。 そこで、私は具体的に、まず、こんな壮大なといいますか、大きな仕事をおやりになる前に、ぜひやっておかなくてはいかぬ仕事があると思います。それは何か。現に発生しつつある障害、あるいは予想し得る障害、これに対して、そんなむずかしい話の前に、現に発生しておる障害、予想し得る弊害、これについて、要するに土地と公害です、改造の具体的計画をきめる前に、この問題を解決するんだ、この姿勢をあなたがお示しになれば、国民はほんとうに信頼して、田中さんの改造論、これはわれわれのためになりそうだという気持ちを持ってくれるのですよ。少なくともいままでの自民党さんの国内政治は、あなたが幾らここで言ってもみんなそう思えない。挫折感と失望感がここにどしんと入っているのです。幾らおっしゃってもだめなんです。だから、そういうことじゃないんだというためにも、まず一つの提案として、まるで新しい工業基地は公害のない基地をつくるんだ、公害のない町づくりをするんだなんて、そんな夢みたいなことをおっしゃらないで、東京とか大阪とか、あるいは四日市のコンビナートとか、現にある公害をがっちり解決する、これをまずおやりになったらどうですか。
○田中内閣総理大臣 たいへん示唆に富まれた発言をいただいて、ほんとうにありがとうございました。いままではどうも改造論というと、改造論は反対だという議論ばかりあったが、そうではなく、改造論がほんとうに理解されれば賛成である、こういう建設的な御発言をいただいたことははなはだありがたいことでございます。 私は、公害をなくするために列島改造を提唱しております。それから地価問題を解決するためにやっておるのであります。第三点は、社会福祉の理想的な国家をつくるためには列島改造が不可避であると提案をしておるのでございます。そのためには、公害の除去に対しては徹底的な体制をとってまいります。それから土地の買いあさりという問題に対しては、私も列島改造論を提案してから非常に心を痛めております。ただ、これは私が列島改造というものを提案したから買いあさりが進んだものだとは思っておりません。これは御承知のとおり外貨が、外貨準備百七十億ドルのうち、最近の増加分二十億ドル、円にすれば六、七千億円というものが過剰に流通しておるという議論もあるわけでございます。しかも、このような景気上昇の過程になりますと、過去のパターンからいうと必ず民間の設備投資主導型でございましたが、今度はそういう状態にないわけでございます。その意味で、輸入も拡大をしないということになってあらわれておるわけでございます。 そういう意味で、結局どういうふうにこの余剰の金が回っておるかというと、土地と、もう一つには証券投資という特殊な投資にあらわれておるということで、これを何らかの処置をしなければならぬということは政府も考えておりますし、金融当局も考えており、すべてが考えておるのでございますが、これは外貨の、やはり国際収支対策の一つの面を露呈しておる、こう見なければならぬのであります。しかし、私は少なくとも将来の値上がりというものを見越して買いあさっておるような人に、特別な利得が得られないように処置をするつもりでございます。明確に申し上げておきます。これはいつでも申し上げておりますように、全国的な土地利用計画をかぶせることによって、どんなに高く買っても、そこは緑地帯と指定をされれば売買の可能性さえない土地になるわけでございますので、見込みでもって投資をした者の利益を確保できるような状態ではない。これらに対しては、税制上の問題その他通常国会までには諸般の手続をとりたい、こう思います。 それから、もう一言最後に言わしていただきたいのでありますが、いままで高度成長経済、これは七%といったときに一〇%、ですから、社会保障やすべてのものの計画はあったわけでありますが、これは考えたよりも成長のほうが早かったということであります。これは申すまでもなく民間主導型であった。だから、民間主導型であったためにこうなったのです。ですから今度は、列島改造する場合にはやはり財政主導、先ほど御質問ありました財政主導ということでやらないと、振りかえていかないと、いままでのようにまた行き過ぎがある、いまのコンビナートというような問題と同じようになるので、これはいわゆる財政主導ということで、公害とか工場の立地制限とかというものを強く前提としたい、こういうことを念のために申し上げておきます。
○矢野委員 私がお尋ねしておるのは、国民が安心して日本列島改造論に取り組めるような、事前に必要な措置をとれということを言っているのでありまして、そんな、あなたのお答えになったようなことを聞いているわけじゃないのですよ。そうしなければ、幾らあなたが改造論、改造論とおっしゃっても、現にその弊害のほうが先行して進んでおる。これについての国民の不信感を除去しなければ、国民が支持しない改造論なんというものは、初めからもう失敗はわかり切っておりますよ。 そこで土地の問題、いまおっしゃいましたから具体的に聞きます。 大体四カ月前から買い占めは進んでいるんだとおっしゃいますけれども、これはもう前からの政府の方針というものが、土地は買いだという印象を国民に与えておるからこういうことになるのですよ。それに輪をかけたのが改造論だと申し上げているのです。 そこで、具体的な地価対策として、改造論では、「土地利用計画の確定、地方分散による土地需要の平準化」こういうことが載っておる。これは地価高騰に対する歯どめになりません。地価高騰を平準化するだけ、全国的に土地の値上がりを波及させるだけのことですよ、あなたが幾らそこでおっしゃっても。供給を増大すれば地価は安定するんだ、そんなことはありません。物理的に土地がふえても地価の安定にはならない。それに政治的な何らかの制度が加わらなくてはだめです。幾ら供給を増大しても、大資本が買い占めしてそれを放さなければ、ほんとうの庶民のための供給の増大にならないじゃありませんか。 それからまた土地利用計画ということをいま言われました。これは通常国会で出るのでしょうけれども、これはあらかじめくぎをさしておきますけれども、あなたが改造論で指定しました、たとえば津山とか新見とか横手とか酒田とか、三条とか長岡とか武生とか福知山とか、こういったところですね。おそらくこういったところは、土地利用計画で公園だとかそういうものにはなさらないでしょう。あなた御自身が、ここは内陸部の工業都市として適当なんだとおっしゃっておる。だから資本がそこに集中して上がっているのですよ。あなたがほんとうにそういう将来の買い占めのもうけを規制するのだといえば、あなたが将来工業都市にするのだというところに指定しないで、別のところを内陸部の都市にされれば、これはごりっぱです。これはごりっぱ。これは、あの本を信用して土地を買いに行った人がばかだということになるのでありまして、それだけの勇気があるのなら、これは買い占めでべらもうけさせないための措置だといえますよ。おそらくあなたはそうなさらないでしょう。あなたがおっしゃったような場所は、これは工業都市でございます、あとからまたいろんな形で政府が土地を買いに行ったり、政府が大型の公共投資をやってどんどん上がるのをまた助長して、どうぞもうけてくださいということになるにきまっていますよ。 そこで、具体的な提案として、開発計画を実施のときに、土地を公用収用するときには計画決定二年前の地価によって補償額の算定をする、二年前の地価によって収用価格とする、その基準にする。あなた自身がほめておられるイタリアの庶民経済住宅の用地取得法というのがありますね。あなたはこれをほめておられる。この法律は、いま私が申し上げた開発計画決定の二年前の土地の値段で、それを基準価格とする。これはあなた、改造論の中でほめておられるのです。これをおやりになる勇気がありますか。
○田中内閣総理大臣 私も、特定な地名等をあげるということをしなければよかったなあといま考えておりますが、しかし、列島計画というものを提案する限り、具体的なプロジェクトの例をあげなければ説得力がないことは当然のことなんです。ですから、これはうらはらの問題でございまして、アメリカにもこういう例があるからということでは説得力がありません。ですから、まあ一つのやり方だったと思いますが、今度は土地利用計画をきめるのは、これは政府がきめるのじゃありません。これは市町村長及び府県知事が中心になって、将来の六十年展望の、みずからの県の国土の利用計画はどうあるべきかということでございまして、これは県がきめれば緑地帯にしなければならない、四〇%は道路にしなければならないといって指定をすれば、もう建蔽率ゼロで、全然建築の無価値の土地がどんどんと指定されるわけでありますから、これは値上がりなどというものを予想してやったにしても、全くそれは確保されないということでございます。これは都市計画法や建築基準法に基づいて、東京の多摩川の周辺延べ一割しか建てさせないというために、都心が百万円するときでも、神奈川は二万円であり、一万円であるというように、利用計画を定めることによって地価というものを押えられる。いまのように政府が官衙地区とこのまわりを指定すれば、官衙以外に利用できないということで、この周辺の地価はくぎづけになっておるということと同じことでございまして、土地の利用計画というものは、これは都道府県知事及び市町村長が独自の見解において定めるものであるということで御理解をいただきたい。 それから収用という問題は、これは現在の法律が時価ということになっておりますので、これは、これから新産業都市とか工特地帯の収用をどうするというような問題と同じように、特例法ができるときに、その収用をいつの時点にやれるのか、それは法律上の問題もございますので、十分技術的に考えらるべき問題であります。
○矢野委員 いろんなことをおっしゃっていますけれども、結果的には大資本の思惑買い占め、ぼろもうけをさせることを許すようなことでございますよ。土地の利用計画だって、おそらく私が言いましたとおり、あなたが具体的にあげたところは全部工業都市として指定するにきまっている。さらにまたそういう時価だって、そのときの時価はえらく上がっているにきまっていますよ。それじゃ先ほど言いましたとおり、土地の値上がりを全国的に波及させるだけのことでありまして、あなたが工場を移転させる移転させると言いましても、そんなに土地が上がったのじゃ工場移転ができなくなるよ、まず第一番に。全国的に工場を分散するのだ、あの改造論の発想は。つまり都市といなかの土地の値段の落差を利用して工業を分散したいのだ。この落差が大きなてこになっているのでしょう。その落差がなくなっているじゃありませんか。企業がいなかに行くったって、こんなに上がったのじゃ行けなくなりますよ。ましてや、それに下請がついていけますか。大工場はそれで何とかかんとか政府が援助していなかへ行った。しかし、下請にそれだけの力がありますか、こんなに土地が上がったのじゃ。ましてや、そこの従業員が、いままで長年住んだ家を離れて新しいところで自分の住まいをかまえる。土地が上がったのじゃ手に入らないじゃありませんか。あくまでもこの改造論を成功させるためには、大胆な土地の安定、大資本の思惑買いを許さないこと、これがなければ、これは初めから失敗が目に見えています。だから、もう答えてもらわなくてもいいです。 もう一つ、公害の問題でありますけれども、私は環境庁長官に伺っておきたいのですけれども、せんだって鹿島で、鹿島には公害が出ておらぬ、いまは何も問題はない、公害があるというのはあなた方の見方だ、健康上被害がなければ問題はない、こういう発言をしておられる。田中さんが公害をなくするのだとおっしゃっている、この改造論の公害に対する認識、健康上被害がなければ公害とみなさないというような認識で列島改造をやったのでは、これは東京、大阪の状態が全国的に広がるだけですよ。環境庁長官にこのことばの真意を聞きたい。ほんとうに鹿島は公害がないですか。
○小山国務大臣 お答えします。 鹿島の問題につきましては、御案内のように、過去においてたびたび失敗もありましたし、また、いろいろな、ミスがあったことは事実であります。現状ではどうかと申しますと、現状においては、たとえば大気につきましては、県の報告によりまして、これは基準以下であります。また、水については若干の問題があります。その他、住居と工場との間の接近の問題がありますが、これは、県において現在逐次移転の計画が進んでおりますので、この問題は間もなく解決すると思います。
○矢野委員 もう一度環境庁長官に伺いますけれども、このことばは取り消されますね、そうしたら。鹿島の住民にあやまるべきですよ。鹿島の人人は、少なくとも自分たちのこの郷土を守りたいという純粋な気持ちであなたにいろんな陳情をしたのじゃありませんか。それに対して、何も問題はない、健康上害がなければ公害じゃないんだ、こんな返事が環境庁長官の返事としてあり得ますか。公害がないことはないですよ、これは。具体的に申し上げる時間がありませんけれども、これからまたいろいろな計画が造成され、稼働するじゃありませんか。まだ中途の段階でしょう。中途の段階においていろんな公害がもう出ているじゃありませんか。この席でそのことばを取り消すか、取り消さないか、はっきりしなさい。
○小山国務大臣 おことばですが、健康被害がなければ公害はないと申し上げた記憶はございませんが、いまお話がありましたように、大気については申し上げたとおり。水について若干の問題がある。申し上げたとおり、今後私どもは、この鹿島において、四日市の二の舞いをやっちゃいかぬという決心のもとにやっておるわけであります。したがって、今後鹿島が逐次工場計画が進む段階においては、十分な事前のチェックを用いまして、そしてまた環境基準をきびしくし、それによって、少なくともあそこで健康上の被害を起こさないようにする、これがわれわれの政策でございます。
○矢野委員 土地利用計画のことを先ほど総理はお話しなさいましたけれども、最近政府で線引きをおやりになりました。たとえば工場移転促進地域、ここから工場が出ていくのだという地域。たとえば四日市はその移転促進地域に入っていません。堺のあの埋め立て地、臨海工業地帯の公害を一番ばらまくあの地域は、移転促進地域に入っておりません。こんなことで何が公害対策になりますか。埋め立て地は全部除いてありますよ。そして、昔から一生懸命やった伝統産業、堺といえばこれは刃物ですな。刃物、ほうちょう、そういうような中小企業のかたまっているところは移転促進地域で、おまえたち出ていけ。そして、一番公害をばらまいておる臨海工業地帯のあの埋め立て地は、移転促進地域の線引きになっていない。こんなことで、公害を除去できる土地利用計画、線引きですか。 もう一つ申し上げます。工場移転に伴う禁止効果、誘導効果を目ざした税制の活用、この税制の活用によって、盛んに工場がすいすいと動く、こういう言い方をされておられますけれども、これまた不公平な税制です。都市の中における公害をまき散らす企業とそうでない企業が、床面積で追い出し税が一律に課税される。ほんとうは、出ていかなければいかぬのは公害型企業です。一律に、公害を出さない都市型の企業にも税金がかかる。そうして、この企業が出ていった地方では、二十五年間固定資産税は免税だ。その他あらゆる優遇措置をとる。なぜ、公害をまき散らすような企業をいなかに移すのに、そんな優遇措置をとらなくちゃならないか。現に、その土地で昔から一生懸命その土地の発展のために尽くしてきた地場産業、これは固定資産税を免税してもらえないのです。都市におってはまずい企業で、これが出ていった場合に免税してもらう。その場合、大都市の場合は、公害を出さない企業も一律に追い出し税をかけられる。移転する地域では、昔からその地域の発展のために功労を尽くした企業は、固定資産税その他の免税を受けられない。こんなふざけた不公平な税制度がありますか。この二点、線引きの問題と追い出し税のこの不公平、時間がございませんから簡潔にお答えを願いたい。
○田中内閣総理大臣 線引きの問題、私もまだつまびらかにいたしておりませんが、あなたがいま御指摘になったような個別の問題があれば、そういう問題は、線引きをやり直しても一向差しつかえない問題でございますから、そういう問題をだんだんと理想的なものに仕上げていかなければならぬと思います。(「臨海工業地帯はどうした」と呼ぶ者あり) それからもう一つ、臨海工業地帯に対しては、いまもちょっと不規則発言でございますが、これは、実際に東京湾をどうするか、大阪湾をどうするか、それから瀬戸内海をどうするかということも端的に結論を出さなければならないときに私は来ておると思います。ですから、府県の埋め立ての問題とか、流通的な機構を置くならばいいじゃないかとか、いろいろな問題がありますが、これはやはり過密と公害の問題から言ったら、制限をすべきものは制限をするということに近くきめなければならぬ問題だと思います。個別の問題ではなく、私は必要だと思います。これは、水質の問題を前提にすれば当然そうなる、こう思います。 それから、追い出し税というのは、これは理論的な問題として提案しておりますが、追い出し税という問題が反対であれば、これは必ずしも——追い出し税というのは、私は別な問題だと思っているのです。ただ、地方自治の関係で、工場があるといろいろな公害施設をしなければならないので、下水とかいろいろな問題で負担金を取るようなつもりで、特別財源として追い出し税を取ったらどうかという議論がございますが、最終的に決定しておるものじゃありません。ただ、地盤沈下でどうにもならないとかという地域は、追い出し税よりも、まず地下水のくみ上げは早晩禁止をしたいと思います。これはもうやむを得ず禁止をせざるを得ないのです。 もう一つは、地下水の禁止だけではなく、住居専用地区の中の一定規模以上の事業場等は、これは騒音公害もありますし、トラックの出入りその他でもって通行もできないという問題もございます。そういう意味で、公害の基準を設けて、増設を禁止するとか、ガスや電気や水の増量を許可しないとか、いろいろな制限が起こってくる、こう思います。 それからあとは、誘導地域に対しては税制上の優遇を考える、こういうことであります。
○矢野委員 まあ、線引きの問題はさらに検討するということでありますけれども……。 最後に総理に申し上げたいことは、この日本列島を改造するのは、やはり住民参加でなくてはならないと思うのです。いままでの新産都市や新全総のやり方は、中央で計画を決定いたしまして、それを住民に押しつける。こういうやり方をしますと、利益を受ける側と被害者と、住民を二つに分けてしまって、いままでの政府の押しつけのほうは、いたずらに反対運動を誘発する。これは住民が悪いんじゃないのです。政府が住民の声を聞かないで押しつけている。このやり方がよくない。ほんとうに住民の声を聞いて、公害のないりっぱな町づくりをするんだという筋の通ったお話であれば、全部が全部何も反対するわけじゃない。しかも、国民はそのことについて、いままでのやり方について不信感を持っている。公害が出るんじゃないか、土地が上がるんじゃないか、地場産業がつぶれるんじゃないかというような、いろいろな不信感を持っておるからこういうことになるのですよ。だから、住民参加が原則でなくてはならないと思います。 具体的には、やはり日本列島改造の主体者というものは地方自治体であり、その職員でなくてはならないと思うのです。ところがどうですか、税収の七割を中央が握ってしまって、三割だけ地方自治体に上げて、あと、交付税や補助金で地方団体を拘束する。そのやり方では、これじゃ、住民参加を原則にした地方自治体のほんとうの主体的な改造プランづくりはできませんよ。ですから、そういう意味で、地方自治体強化、権限譲渡、財源強化という方策をほんとうに本気でおとりにならなくてはだめだと私は思いますけれども、この点についての御意見を聞かしてもらいたい。
○田中内閣総理大臣 列島改造の主体は県であり、地方の市町村であるということで、自治体が主体であることはもう御指摘のとおりであります。そうでなければとてもこの大事業はなし遂げられない、こう思っております。 財源に対しては、特別起債、単独起債等も十分考えてまいろうということでございまして、県が土地の利用計画を定め、必要であるならば、これに対して財源措置を行なうということも考えておるわけでございますし、いま、農協等の系統資金との関係、これは農民のほんとうの理解を得なければ、農地の転用や将来の理想的な農工一体という問題はできませんので、そういうことで、系統金融をどうするのか、地方の財源との調整をどうするのかということも考えてまいりたいと思います。 それから、今度御審議をいただいておる中で、地方の単独起債というので一つ申し上げておきたいものがございますが、これは、東京や大阪から出ていくという工場があります。東京では、現に日立の工場が出ていく。このあとへアパートを建てては何にもならないわけですから、これを東京都が将来の改造まで代替地として確保せんとする場合には単独起債を認める、こういう考え方を持っておるわけです。そうすれば、そこに木を植えて緑地にしておけばいいのです。そうして、改造をする場合に代替地に使うということで、地方の財源問題等に対しては十分配慮してまいる。 要は、列島改造というものは自治体が主体であって、そうしてこういう計画をいたしますというなら、税をこのように免税をいたしましょう、交付税を差し上げましょう、水は確保いたしましょう、港湾は、駅は、インターチェンジはつくります、こういうふうに政府が目的達成のための補完的な任務を遂行する。こういうのが最も理想的であり、そうなければならぬ、こう考えております。
○矢野委員 もう時間のようでございますから、私、最後に意見を申し上げて質問を終わらしていただきたいと思います。 私は、最初に、GNP一兆ドル経済を十三年後に想定した場合、いままでのやり方でいくならばたいへんなことになるということを申し上げました。総理はそれに同調されたわけであります。だから日本列島改造論をおれはやるのだということであります。しかし、ことばのみは非常に勇ましくあるわけでございますけれども、私が具体的にお尋ねをした、たとえば土地問題、大資本の買い占め、ほろもうけを規制する方法とても、結果的には、御答弁を伺っている限りではきめ手はございません。今後検討するということでございます。公害問題につきましてもいろいろなことを言われましたけれども、公害企業に対する立地規制、現にある公害を出している企業に対する規制、線引きでもそういうのが除外されている。こういったことからも政府の姿勢が疑われます。 さらにまた、地方自治体の財源についても、あるいは権限譲渡の問題につきましても、政府の方針に協力する自治体に対しては金は上げますよというお話はあったけれども、そうではなくして、住民を主体にした地方自治体による町づくり、県づくり、この計画決定の主体者にまずしなくてはならぬ。そして、その地方自治体が選んだその路線選択を政府は尊重しなくてはならぬということを言っているのです。そうでなければ、結局は住民運動を誘発するだけのもので、そして政府が、住民というのはほんとうに列島改造に協力せぬ不逞のやからであるというような目で見て、もっぱら、住民というのは列島改造の主体者でなくして、説得対象になってしまうのです、いままでのやり方では。説得しなくてはならぬ説得対象にしてはだめです。改造のための協力者であり、当事者にしなくてはだめだ。そのためには、地方自治体に財源と権限をもっと大幅に与えたらどうかということをお尋ねしたら、いや、政府の方針に協力する自治体にはお金を出しますという答弁じゃありませんか。 まあ、私はお答えを聞こうとは思いませんけれども、そういうことで、今後、総理が問題提起の書であると言われた初心に戻られて、何でもかんでも列島改造でやれば解決するのだというような、そんな調子のいい、夢みたいなお話をなさらないで、私に対する御答弁でも、これは重大な問題だから相当な決意でやらなくてはならないのだという姿勢で、特に、成長よりも福祉を先取りする計画を優先させなくてはならぬ。これはひとつ肝に銘じていただきたい。まあ、きょうは総理は、何だか質問に対してほんとうにうれしそうな顔をして、よう聞いてくれたというような顔をしているが、しかし、あれではお答えになっておらないと思うのですよ。これはもう今後の議論に待ちたいと思います。 最後に、委員長にお願いをいたしました中国と台湾の内政干渉に関する純理論的な法律上の見解、これは私の質問を留保させていただきたいと思いますので、委員長のほうでよろしくお取り計らいをお願いいたします。
○坪川委員長 先ほどの保留分を残し、矢野君の質疑は終了いたしました。(拍手) 次に、佐々木良作君。
○佐々木(良)委員 総理が就任以来、日中国交回復と、それから日本列島の改造論という二つの目玉商品をもちまして売り出しのまっ最中、総理の人気と並行的に、二つの危険な徴候が顕著になり始めたと思います。先ほど来お話がありましたが、一つは卸売り物価の急騰傾向でありますし、もう一つは、土地の異常な値上がり機運でありました。 物価の担当大臣である有田経企庁長官にお伺いいたしますが、いまの総理の御発言にかかわらず、物価問題はたいへん国民が心配しておるものでありますが、この二つの徴候をどう受けとめられておられるか、端的に御所見を承ります。
○有田国務大臣 第一に地価の値上がりの問題、これはきわめて重大でありまして、いま総理も言われたように、利用計画と、それから規制の面ですね、それを私のほうで考えておるのですが、また、建設省その他大蔵省方面では税の面を考えて、地価騰貴のあれを……。
○佐々木(良)委員 ちょっと委員長、対策を聞いておるのではありません。田中総理の就任以来、この二つの危険な徴候があらわれており、国民は非常に心配して見ております。それをあなたは、物価の担当大臣としてどう受けとめられておられるか。だいじょうぶと思っておられるのか心配なのか、いずれですかと聞いているのです。
○有田国務大臣 物価問題は、御承知のとおり、国民生活の上において非常に大事な問題でありまして、国民も非常にこれに重大な関心を持っております。したがいまして、最近の物価の問題については、非常に私たちも心配しながらこれに対して取り組んでおるわけです。ところが、幸いにいたしまして消費者物価は、本年、いままでのところでは、季節的の野菜なんかの安定の面もあったと思うのですが、四・五%程度にとどまっておる。比較的、予想したとおりにきております。心配なのは卸売り物価です。卸売り物価は、景気の上昇に伴いまして相当上がって、強調でありました。ことに七月、八月、最近のが非常に急激な上がり方になっております。これに対して、私ども非常に心配して、その対策を考えておるところです。
○佐々木(良)委員 先ほどの矢野委員との質疑応答でも私は承知しましたが、質問をはっきりとお聞きいただきまして、質問に対してひとつはっきりとお答えをいただくように、委員長、重ねて御注意をいただきたいと思います。 この卸売り物価と土地の急上昇の傾向というのは、やはり国民は相当に心配をして見ておるものでありまして、田中総理の決断と実行という積極的な姿勢が、むしろ、従来の自民党政治の経済成長路線の線に沿って積極的に進められている、言うならば、これまでの経済成長の推進者たちが田中政治を先買いしたものだ、こういう認識を私はしております。先ほど矢野質問に対しましてもお答えがありましたけれども、現実に、従来の成長パターンに従って、景気の刺激政策とそれから列島改造論との二つが、要するにその人たちによって先買いされたものだ、こういうふうに私は見るわけであります。 御承知のように、列島改造論というのも、まだあなたのベストセラーの書物があるだけでありまして、お話の十五兆円予算というものはまだ影も形もありません。国の金として使えるものは一文もないわけであります。同時にまた改造計画自身も、国の計画としては何にも発足しておりません。だから、この田中政治の実体はまだ何にも存在しておらないのにかかわらず、先ほどのお話のように、土地の買いあさりだけが存在をいたしておるわけでありまして、言うならば、田中政治に対する思惑買いといったものだと私は思います。 この思惑買いというものが、従来の自民党政治の、いろいろ悪口を言われ、外国からはエコノミックアニマル日本と言われ、あるいはまた日本株式会社論、こういうふうに非難されておる、そういう体質そのものだと思うわけでありまして、その体質をそのまま、むしろ田中さんは勇敢にその方針を、にない手となって進めてくれるに違いない、こういう見方が、この卸売り物価の上昇となり、土地の値上がりと結びついているというふうに判断するのでございますが、あまりまた演説をぶたれては困りますけれども、端的にひとつ御所見を総理に承りたいと思います。
○田中内閣総理大臣 土地が値上がりをしておるということは、物価政策、土地政策としてもたいへん重要なことでございまして、これが抑制に対して腐心をいたしておるわけでございます。 この土地の値上がり、特に三、四カ月来の値上がりというものが、列島改造というものに根ざしておるのだということは、いまも御指摘ございました。週刊誌等にも端的に書いてございますので、私もほんとうにそうなのかどうかということで、ほんとうにそうならたいへんなことだということで、いま各地を調査いたしておるわけでございます。先ほども申し述べましたように、思惑買いをやった人たちが利益を得ることがないように、土地の利用計画その他において十分処置してまいりたい、こう考えております。
○佐々木(良)委員 先ほど申し上げましたように、列島改造論を実施に移すための国家計画も、国家予算も何にも動いておりません。にもかかわらずこの先ばしった傾向は、これは私のデータが違うかもしれませんけれども、私の調べによりますと、ベストセラーのいまの書物の発売以来五カ月ほどの間に、大体平均五〇%程度上がっているというのですよ。過ぎますか。しかし、そう見られるほど、私は、いま異常な状態にあることを痛感いたします。総理大臣も、その周辺の人から離れて、一人で新潟県に帰っていただければわかると思う。私も選挙区に一人帰ってみると、はっきりとそれがわかります。 それから、このことを私は、田中政治そのものの、従来の経済成長謳歌論者が買い占めを行なっておる、先買いをしておる姿勢ではないかということを、たいへん重要視するわけでありますが、その一番の売り出しでありますし、私ども賛成でありましたところの日中国交回復そのものでさえも、御承知のように、中国ストックと称せられる企業の株式の買い上げとなってあらわれている現象、いまでもまだ不況産業のビッグスリーといわれますところの肥料、鉄鋼、繊維株の急騰傾向を御承知だと思います。実体を伴っておらぬと私は思います。 この経済界の積極的な対応姿勢とともに、このような中国に向いた目が、日本政府が中国に向いたとたんに、日本の株式だけが、その中国でおそらくもうかるだろうという企業の株式の暴騰傾向、そのことはひょっとすると、中国大陸への新しいエコノミックアニマル日本のお出ましではないかというふうな心配さえしている者があると私は思いますよ。そんな姿勢を中国、先方自身が許すわけもありませんし、実際の貿易面におきましても、そんなに多くの輸出に見合うような輸入が考えられないのにかかわらず、田中内閣の日中国交回復後そのような大きな株の値上がりを結果しておるということは、それがそのまま、また田中内閣の日中国交回復そのもの自身さえも、成長推進者たちによって買い占められておる現象であって、私は、日本列島改造論の土地の買い占めと似たような不安を抱くわけであります。総理、御不安は全然ございませんか。
○田中内閣総理大臣 長い不正常な、中国と日本が国交の正常化を行なったということでありますから、気持ちの上で明るくなることは、これは当然だと思います。少しぐらいは御祝儀相場というものがあっていいと思いますが、これがいま御指摘がございましたように、中国というものが一方的な日本の市場である、シェア拡大ということで株価に反映しておるというようなことであるならば、これは遺憾なことでございます。もう中国というものは、日本の一つの大きな販売先として考えるべきではない。日中はお互いに話し合いをしながら、そして理解の上に、濶達なしかも正常な経済交流を行なうということでございまして、何かこううまくいくのじゃないかというようなことで考えておるとすれば、政府も、そのような姿勢に対してはたしなめていかなければならないと、こう思います。
○佐々木(良)委員 端的に、田中政治に対する国民的な期待は、言うなれば有言不実行の官僚内閣が続いておったのに対しまして、これにかわって、いわれるとおりの生産第一主義のたてまえの物価、公害、そういう庶民圧迫の政治を、あなたの言われるような決断と実行でもってこれを排除して、人間尊重の政治に変えてくれるであろうという願望を含めたものだと私は思うのです。それがいま言いましたように、物価のつり上げに走り、せっかくの中国問題自身も、かつての戦前の夢のようなかっこうで、日本がまたここに経済進出するのではあるまいか、だからそれに早く乗って買ったほうが得だぞみたいな動きになるとするならば、それはまさに重大だと思います。私は正直言いまして、田中政治自身がいまの庶民の期待にこたえられるかどうかというのは、従来の自民党のそういう成長路線にずぶっとつかっておる体質から、あなた自身が離れられるかどうかということ。ところが、いままでの様子を見ておりますと、列島改造論という景気のいい旗を振りかざして、むしろ従来の経済成長路線を突っ走る勇敢なチャンピオンのような形で登場してきたところに、このようなムードが上がっておるのだと私は思うわけであります。たいへん心配です。 したがいまして、心配で済めばいいのでありますが、以下の内政の二、三の問題につきましては、そのような、あなたが従来の経済成長路線をそのまま踏襲し、それをもっとスピードよく、あるいはもっと有効に前進するにない手でないようにという立場で見ながら、そのことを私は心配して質問を進めたいと思います。 まず第一に物価であります。 総理は、政治目標というものを設定するというお話の中で、「外においてはあらゆる国との平和維持に」「内にあっては国民福祉の向上に最善を尽くす」これを政治目標にすると言っておられます。国民福祉の向上というものの一番中心に、ほんとうはいま物価問題があると思います。それから、端的に申し上げますけれども、あなたの総理府の世論調査がとらえたところによりますと、いま国民の端的な要望は、第一が物価の安定です。第二番目が社会保障の画期的な充実です。第三番目が住宅、土地対策です。第四が大幅な減税と、こういうふうになっております。この四項目が、あなたの総理府がとらえた現在の日本国民の端的な政治に対する願望であり、願いであります。この調査を見るまでもなしに、物価の安定というものが、目下の最大の政治目標にならなければならぬということは、総理もよく御承知のことだと思います。 この物価問題に対して、ほかの言いわけは要りませんが、この物価問題に対して、総理はほんとうにどんな気持ちで取り組まれますか。もし従来と同じようなかっこうで、輸入政策をやるとか、流通機構の改革をやるとか、あるいは公共料金の抑制を行なうとかということだけであり、しかも、根本的には列島改造を行なうことでなければ、そして低生産性部門の合理化、近代化を行なうのでなければ、とても物価というものは安定できないのだ、こういう立場をとられるならば、これはいま物価対策に取り組んでおる姿勢とは私は考えませんけれども、いかがでございますか。
○田中内閣総理大臣 物価問題は、国民の関心の最大なものであるということは理解しております。政府は物価対策に腐心をいたしております。 しかし、この物価対策というものは、これに根本的なメスを入れるということになりますと、なかなかめんどうな問題であるということだけは、これはもう事実でございます。それはなぜかというと、主要工業国のほとんどが、緩慢ながら物価が上がっておるという事実を考えてみますと、日本がどのような状態の中で物価問題に最終的に、王手飛車になるような政策が考えられるかということは、これはなかなかめんどうな問題でございます。しかし、いまあなたが、もう物価に対する教科書に書いてあることは全部さっと申されたのでございますが、私も、それだけではなかなか物価問題は解決をしないと思います。 〔委員長退席、久野委員長代理着席〕 でありますので、これからの長期経済計画というものを、少なくとも五年とか七年とか六十年とかというものを展望にして考える場合、長期的な目で見て日本の消費者物価はどうあるべきか、日本の卸売り物価はどうなるだろうかという見通しをつけて、その中で年次的な政策を進めていくことが必要であろう。もう口でだけ、こういたします、全力を尽くしておりますということだけでは、なかなか解決できない問題だと思います。ですから、物価をゼロにしますというようなことは、とても言ってもできないと思いますので、一体どの程度にできるのか。ことしは、去年の五%台に比べて四%台という状態でございますが、これが三%というような状態でずっと三年、五年の長期的見通しができるのか、四%台になるのか、その中に公共料金がどのように位置するのかというような、特別な要因によって起こる問題は別にしまして、物価に対する長期的な見通し、基本的な実態というものを把握してかからなければならぬという考え方でございまして、ただ物価の個別な問題だけをどうするかというんではなく、経済企画庁を中心にして、長期的な立場に立った日本の物価は一体どういう状態をたどるのか、どういう政策的な介入ができるのかという問題を、いま勉強中でございます。
○佐々木(良)委員 列島改造論は相当中期から長期にかけた見通しの問題であります。この問題については熱を帯びて語られますけれども、いま国民は、十年先のビジョンを求めておるよりも、いまの物価に対しての政治の対策を心から願望、求めておるわけであります。物価担当の有田大臣も言われましたように、やはりいまの上昇傾向は非常に国民心配しております。四%台にとどまればいいが、私は決してそうではなかろう、こう思っておるわけであります。 特に総理は、期限を明示して責任政治を行なう、いいことを言われましたな。期限を明示して責任政治を行なう、私はまさにいい姿勢であると思います。いま期限を明示して責任政治を行なわなければならぬ最大のポイントは物価だと思います。私は、やってみなければ、ことしが四%いくか五%いくかわからぬというようなことではいけないと思う。そして、これまで羅列されたようなやり方ではだめだったことは、あなた自身が承知しておられると思う。そうして、それではだめだから何だというと、列島改造論で根本的にやらなければだめだと言われる。そうすると、結局いまほっておくということですか。現実に、いまお話がありましたように、卸売り物価の異常な上昇傾向というものをどうとらえておられますか。ただ単に、これも言ってしまいますが、景気上昇期における一つの現象とだけ考えておられますか。
○田中内閣総理大臣 卸売り物価は、対前年同月比〇・五、〇・七、〇・九というふうに上がっておるわけでございますから、これはいままで主要工業国に例を見ないほど、消費者物価は上がっておるけれども卸売り物価は横ばいである、こういう特性が破られておるわけでございます。 この内容を見ますと、全然内容がわからないわけではありません。その一番大きなものは鉄鋼であります。第二は繊維であります。第三は木材であります。この三つが押し上げておる一番大きな要因になっておるわけでございますが、鉄鋼は、御承知の不況カルテルの問題がございましたので、これも早急に結論を出さなければならぬ問題だと思います。それから繊維と木材は、これは海外市況の問題でございます。この問題は、特に木材などは、住宅建築が落ち込んでおりましたものが、押し上げられておるという問題もございます。そういう意味で、対策がない問題ではありません。ありませんが、それなりにほっておいてもいい問題では絶対ありません。だから、事態の推移を十分見ながら、この卸売り物価の上昇が、長期的に続かないようにはいたしたいと思います。
○佐々木(良)委員 たとえば、どういう方法がございますか。いまお話のありましたように、私どもが直観的に見ましても、入るべき輸入、むしろ昨年の円の切り上げの際に輸入を期待したのにもかかわらず、輸入が入らなかったということ、それから直ちに始まった不況カルテルと、それからことしになりまして、後半を過ぎましてから、むしろ景気刺激政策のほうが大きな影響を帯びておるような気がいたします。この景気刺激政策については、そのような感じをお持ちになりませんか。特に官公庁を中心とする急速な需要の伸びというものに対して、原因はあまりお感じになりませんか。
○田中内閣総理大臣 去年からことしにかけての予算執行の状況を見ておりますと、相当財政支出も増大してはおりますが、去年の五%台に対して四%台、いま四・五%程度と見ておるわけでございまして、財政支出、財政インフレというような感じは持っておりません。しかし、これはもう十分しさいな検討を進めなければならない、こう思いますが、いまそういうような状態ではないと思います。 ただ、輸入の自由化をしても、なかなかめんどうな状態がございます。すぐ輸入組合をつくってしまってかんぬきを入れてしまうという問題もございます。総代理店の問題も御指摘がございましたから、いろいろなメスを入れております。とにかく、レモンがようやく二年たって暴落をした。今度はウイスキーが二千円ウイスキー、きのう、おとといあたりやっとそこまできているわけであります。 私も、通産大臣をやっていろいろなことを見てまいりましたが、何か戦前、戦中、戦後、形の変わった統制機構のようなものがずっと続いておる。一体流通機構というものはどのぐらいの状態なのかということで、いまいろいろな問題にメスを入れております。これは一度あとから、私は通常国会になれば国会で申し上げたいと思いますが、ほんとうに日本の生産に携わっておる者と管理職は一体どのくらいあるのかと思って、いま行管で計算しております。国の役人、地方の役人、農協の職員、そういうものも全部やっておりますが、これも調査をしてみると、膨大もないものであります。ですから、この流通機構というものをばらばらにして、ほんとうの自由化のメリットというものを消費者価格に反映をせしめるということに対しては、もっともっと一つずつ追跡調査をしていって解決をしてまいりたい、こう思います。
○佐々木(良)委員 これから、危険ならば対策を立てるというお話でありますけれども、現に卸売り物価は、ぐうっと危険な徴候を示していることは事実であります。これが当然に二次製品、三次製品のコストにはね返ってまいりまして、消費者物価を押し上げる要因になるということは常識論だろうと思います。その消費者物価にはね返ってくるということが予想されておるのにかかわらず、御承知のように、米、それから私鉄運賃等の、今度はそのような公共料金の値上げが続いております。それから、私はやはり大型の今度の補正並びに予定されておるところの来年度予算、この刺激予算の影響というものはなかなか重大だと思うわけであります。 そして、たびたびの論議の中で、いわゆる調整インフレをはっきりと否定されますけれども、現在いまたどりつつある道が、やはり調整インフレという道を歩っておるという気がしてしかたがないわけであります。現状がそうでないとするならば、調整インフレでないというのはどの面が調整インフレでないのか、心配ないのか、御説明いただけますか。
○田中内閣総理大臣 物価を引き上げることによって、国際収支のバランスをとろうというような考えは全く持っていないわけです。ですから、調整インフレ的な思想を前提にして経済運営を行なうという考えは全くないのです。(佐々木(良)委員「結果的にいまそうなりつつある」と呼ぶ)学問的にはいろいろな見方があると思います。
○佐々木(良)委員 いずれにいたしましても、物価問題は本気に総理、取り組まれますか、いまの物価問題に。輸入の自由化を促進するとか、流通改善をやるとか、公共料金の抑制をするとか、管理価格を何とかやる、たびたび本会議でもこの委員会での質問に対しましても、それ相応の通り一ぺんの返答をされていることは事実であります。それがこれまで繰り返されておりながら、何も効果をあげておらないことも事実であります。そしてこれらを一つ一つ聞きますと、公共料金の値上げ抑制、そんなことを言ったところで、私鉄運賃云々については受益者負担の原則に従ってとか、そのおのおのについて、これまでやれなかったことに対するそれ相応な理由があることは事実です。それ相応の理由があることは事実。その理由を認めておったから、これまで何もできなかった。これから本気にやられるというならば、その理由から離れて、従来の答弁から離れた状態の中で対策を考えられなければならぬが、本気に取り組まれますかな。本気に取り組まれない感じがするところに、先ほど言いましたように、従来の経済成長路線という体質の中にずぶっとつかっておられて、そのワクの中からだけ対策を考えておられるのでは、私は物価対策に本気に取り組めないというのです。 そのワクから飛び出して、ほんとうに物価対策に取り組まれるということならば、私ども党をあげて協力いたします。何でもいたしますよ。前の佐藤総理のときに私は言った。本気にやられるのならば、あなた自身が本部長にでもなってやりなさい。そして、われわれも協力いたしましょう。知恵も出しましょう。ほんとうを言うと、知恵もこれまでたびたび出ている。佐藤総理自身が、もう知恵の問題ではなくて、やるかやらないかという決断の問題だとさえ言われた。決断と実行の田中総理、ほんとうにお取り組みいただけますか、御返答いただきましょう。
○田中内閣総理大臣 国民の最大の関心が物価であるという現実に徴して、物価と取り組まなければならぬことには、その政治の責めは果たせないことでありますから、これはもうまっ正面から取り組んでまいりたいと、こう思います。しかも、いま御指摘ございましたように、やはり立場立場ではなかなかできない問題であって、これはもう与野党の御協力もいただかなければなりませんし、やはり国民的な理解を求めながら、相当思い切ったことをやらなければこれはだめだと思うのであります。特に、今度はこの国会が、人事院勧告による給与とか、米の問題とか災害とかもありますが、目的とするところは国際収支対策である、こう申し上げております。国際収支対策ということを考えるときに、日本の産業構造そのものからまず手をつけていかなければなりません。 そういうような状態を考えますと、先ほども申し上げたように、長期な計画の中には、物価問題をどうするのか、社会保障政策をどう位置せしむるのかということまで、全部書かざるを得ません。そして、それを維持していくための具体的な政策というものは、これはもういままでのような努力をしますということではできないわけであります。ですからこの間のように、やはり関税の引き下げをやろうといってもなかなかできないということでは、これは物価対策になりません。関税は引き下げる、引き下げるかわりに国内対策はこうしてやります、ですから御尽力ください、しかし、それでもなお物価は三%上がりますよということは、これはやはりもうその場その場誠心誠意答えておれば物価対策になるんだということではとてもだめなわけでありますから、そのいずれかをとらなければならないというところに物価問題はきておると思いますので、実情を明らかにし、具体策も出して御協力を得るようにいたします。 〔久野委員長代理退席、委員長着席〕
○佐々木(良)委員 物価だけにかかわっておれませんから先にいきますが、いま申し上げましたように、物価というのはいま庶民の最大の政治に対する願望であり、これに対する具体的な施策をやらないから、むしろ政治不信が国民の中に蔓延をいたしておると思います。ほんとうに決断と実行をもって迫られるならば、列島改造論もけっこうですけれども、一番手っとり早い、一番端的なこの問題に対して、本気に取り組まれんことを要望いたします。そしてその姿勢さえあるならば、私どもはっきりと協力することを申し上げておきましょう。 次に、いまの問題の福祉の問題に入ります。 先ほど申し上げましたように、田中総理の政治目標がはっきりと国民福祉の向上に最善を尽くすことにある、ここにしぼられておることを私は非常に重要視いたします。私のほうの民社党は、国民福祉四倍増五カ年計画という構想を立てまして、年金、福祉施設、住宅、公園、下水道、公共スポーツ施設など、十五の国民福祉水準の指標をこしらえまして、これを年次計画で五カ年後に実施する目標を設定いたしております。言うなればこれは、あなたの日本列島改造論ということに対しまして、むしろ日本社会改造計画とでもいうものだと私は考えておるわけであります。 政治目標を、総理がほんとうに国民福祉最優先にしぼられるならば、当然にその福祉の内容を何と何と何、そして到達目標をいつごろまでにどの程度に、こういうことを明らかにされねばならぬと思います。何をいつごろまでにどの程度充実をしていくのか、その福祉計画がなければならぬと私は思いますが、あれば概要を承りたいと思います。
○田中内閣総理大臣 社会福祉を向上させていかなければならぬということは、御指摘のとおりでございます。先ほども申し上げましたとおり、まず制度は西欧並みに比肩をするようになったわけでございますが、内容、質の問題に対してはいまだしであります。これは数字からいうと十と五でありますから、半分以下ということでございます。でありますので、この福祉の内容を西欧並みに上げるために努力をしなければならぬことは、言うをまちません。 その中で一番の問題は、福祉の中ではまず年金の問題であります。年金問題の中で一番の問題は老齢年金の問題でございますが、まず年金を充実することによって、老後の保障というもので安心ができるようにしなければならない。ですから、これは一挙にやるわけにいきません。いきませんが、質の問題でありますから、少なくとも年次計画を立てて、この間にはここまでいたします、こういうふうにいたしたい……(佐々木(良)委員「その年次計画はできておりますか」と呼ぶ)これはいま長期経済見通しをつくっておるのでございます。ですから、その中に社会福祉の問題を位置づけをしなければならないということを申し上げておるわけであります。
○佐々木(良)委員 その年次計画をどうして最優先につくられないのですか。あなたの政治目標を福祉優先にしぼると言われる。しぼるならば、あなたが総理大臣になって一番先にやられなければならぬのは、さしあたり福祉の内容、たとえば住宅、いまのお話の年金、それからスポーツ施設、あるいは老人施設、それをどこまでと。私のほうは、これは十五設定したのです。十五を五カ年計画でずっと内容をつくりまして、そして初年度には幾らとこの計画を立てたのです。あなたが福祉を最重点にやろうと言われるのならば、それはいつできるかわからぬ長期計画を待っておるのじゃなくて、その福祉の長期計画を総合的につくられることが、一番先にしなければならぬ仕事ではありませんか。どうしてそれをおやりにならない。
○田中内閣総理大臣 いま長期経済計画を諮問しております。これは十二月の半ばまでには答申が得られると思うのでございます。 ただ、これは年率何%でどのようになるという在来のものではなく、今度は物価の問題、それから福祉の問題等を長期的に位置づけなければならないでしょうと、先ほどからお答えをしておるわけであります。ですが、これはただ福祉だけを五カ年計画、十カ年計画といって積み重ねられるものではないわけであります。ですからそういう意味で、先ほどおしかりを受けておるように、第四次防衛計画だけなぜ先行させるのかというようなおしかりもございますが、そういう意味で、長期経済計画の中には社会福祉計画というものを十分取り入れて、このような成長過程の中にこのように位置づけをする、年次計画はこうなりますということで、いま答申を諮問しておるのでございます。まあ四カ月もたってなぜつくらぬかということでございますが、これはそう計画だけつくっていいというものではございません。実行可能なものであり、それが四十八年度予算からスタートするものでなければならないという意味で、いま諮問をいたしておるわけであります。
○佐々木(良)委員 答申はいつごろあるのですか。
○有田国務大臣 先ほど総理が言われましたように、この八月に、組閣後間もなく、いままでの経済社会発展計画という長期計画がありましたね、それを改めまして、福祉充実、国際協調と、この二つの大きな柱を立てて、そのもとにいま長期計画を立案中なんです。で、審議会がありまして、それぞれの部会を設けてやっております。それはひとり福祉ばかりでなくて、福祉といいましても、やはり環境の改善あるいは公害の問題等々、また立ちおくれた社会資本の充実等々、いろいろな問題がありますから、それらを勘案しながらいま計画を立てつつありまして、少なくとも十二月の中旬までにはその完成を見る、こういう予定であります。
○佐々木(良)委員 従来の長期計画、私ども内容をよく知っています。二回も書き改められた。しかし、その二回も書き改められた長期計画は、これまで実際には、ほんとうは物価にも、福祉にも、その他の年金にも何の影響も及ぼしておりません。その延長で今度三次目の長期計画を立てられてみたところで、私はそれが決していまの間に合うものだとは思いません。総理、もう一ぺんお伺いいたしますが、憲法もはっきりと、日本国民は健康にして文化的な生活を営む権利を有すと、こう書いておりますし、それからさらにまた、二十五条の二項は、社会保障の充実増進について、国は責任を持っていることを明らかにいたしておりますよ。どうして、先ほど総理自身がお話しになったように、その中で四次防衛計画だけができて、その長期計画ができなければ、ほかの国民生活のためのそのような肉づけができないのですか。
○田中内閣総理大臣 先ほども申し上げましたように、長期経済計画というものは在来のようなものであってはならない。その中で、避けがたいものであれば消費者物価はどの程度に推移をさせるのかという数字も、的確に出さなければなりません。そうしなければ、これは国際収支の問題まで想定することができなくなりますので、そういう意味で、いままでは掲上しなかった消費者物価の問題も含めて、いま検討をお願いしているということを申し上げました。そうすると、そういうことが前提になりますので、これから長期的な見通しに立った社会保障の年次計画というものが数字として掲上できると思いますし、またしなければならない。 それで、いままで単年度予算でありましたけれども、めどをつけるためには、租税負担率を一体どうするのか。イギリスのように現に三八・五%のものと、日本の一八・四%はちょうど半分でありますが、一体この率をどのような状態に置いて——高福祉高負担というだけではだめでありまして、年次的に一体この税負担はどうなるのか。社会保険負担率は、現に西ドイツが一三・八%でございますし、フランスが一九・一%であるが、日本の四・四%を年次的にどうすれば一体いいのか。その間に、社会保障給付費の国民所得に対する六・二%というようなものを、一体イギリスの一五%にできるのか、アメリカの八・一%にどうできるのかということが、今度の長期計画の中でどうしても入れなければならぬ、こういう観点で長期的な計画を同時に答申をいただこう、こういうふうに考えておるわけであります。
○佐々木(良)委員 長期的な計画の前に、いま日本の社会福祉の立ちおくれた状態を、少なくとも西欧並みにしたいという願望はあろうと思うのです。そうすると、その指標だけでもできるでしょう。民社党でできるものが政府全部かかってもできないのですか。できるでしょう。その目標をはっきりと立てて、それのための努力をすればいいじゃないですか。「国民の経済白書」というものをまとめた正村公宏という助教授も、新聞でもはっきりと、いま一番いいチャンスだ、三年か五年の暫定計画でいいから、ヨーロッパ並みの社会保障をやることがすぐにでもできると断言しておりますよ。そしてそのやり方さえも言っておる。民社党だけではない。やろうとしないのは政府だけだという感じがあるわけです。厚生大臣に一々お伺いをするわけではありませんけれども、いま総理大臣が言われましたように、社会福祉関係の日本の立ちおくれというのをはっきりとお認めになるでしょう、ヨーロッパと比べて。総理大臣が防衛計画をすぐ外国と比べられますから、われわれも比べてみましょうか。 私の手元にある資料ですから、政府ほどはっきりしてはおりませんけれども、一、二拾ってみますと、老人ホームの収容率というのは、スウェーデンが四・八で、イギリスが四・五に対して日本は一・二で、三分の一か四分の一らしいですね。厚生年金の支給額も、西ドイツやスウェーデンやイギリスの約半分以下だ。水洗便所つきの住宅の割合というのが、イギリスでは九八・二%、西ドイツでは八三・三%だ。これに対して日本はたった一七・一%。ひどいですな。下水道の普及率、この補正関係の——今度予算うんともらいなさいよ、下水道でもなんでも。下水道の普及率は、イギリスは九〇%、西独は六三%なのに、日本はたった二三・五%だそうですよ。 文部大臣さん、聞いていてほしいが、図書館の一館当たりの人口というのがある。西ドイツは五千五百人で、スウェーデンは三千人だそうですけれども、日本は十三万人。文化的にして健康な生活を営む権利を憲法で保障されている日本は、図書館で本を読もうと思っても、西ドイツやスウェーデンに比べて何とはなはだしい格差ではありませんか。それから文部大臣さん、運動場というのがある。国民五万人当たりで運動場が何ぼかというのに対しまして、西ドイツは七・四カ所だそうだ。日本は一カ所だそうだ。体育館の数になると同じ基準にありまして、西ドイツが六・二カ所に対して日本は〇・三カ所だそうですよ。全然なっておらぬじゃないですか。 それから、先ほどの公害の話がありましたが、これはどんなデータかよく知りませんけれども、大気汚染物質量というのがある。一平方キロ当たりにイギリスが三十・八トン、アメリカが三十二・六トンに対して、日本は百六十トンだそうですよ。すさまじい。 私はいま、長期計画ができるのを待っているみたいな、悠々としている状態ではないと思います。しかも田中総理は決断と実行を売り出しだ。よろしいかな。そして列島改造論に対してはあれほどの情熱を燃やしておられる。そして政治目標を福祉にしぼると言われる。その情熱をどうしていまここに——こんなことわけはないじゃないですか。五、六人の大臣が一緒になって役人にやらせさえすれば、私どもが持っているような、少なくとも最初の五カ年計画では何と何とを中心にするか、住宅にするか、スポーツ施設にするか、その中に老人ホームも入れるか、施設も入れるか、その辺、適当なものを十でも二十でもよろしい、そしてそれを、五カ年計画なら五カ年、三カ年計画なら三カ年計画で、そして何年後にここへこれだけ持っていこうという総合福祉計画というものが立たぬわけない。これを立てないというのは、これは総理、どう言われても詭弁だ。いまの経済長期計画ができなければできぬなんて言っておったら、何もできやせぬ。長期経済計画なんてのは、これまで何べん立ったって、あんなものへみたいなもので、一つも役に立ったことも何もありはせぬ。言いわけになっているだけしかありはせぬ。御承知のとおりだ。あれがだめだから、あなた自身が現実に日本列島改造計画なるものをものにされたのじゃないですか。日本列島改造計画もけっこうですよ。けっこうだが、まず福祉に焦点を当てると言われるし、私どもも福祉に焦点を当てなければならぬと思う。日本の政治の流れを変えるのはここだと言うのだ。だから、福祉の五カ年計画、三カ年計画と、目標を立ててやりましょうよ。私は、早急に福祉のそのような意味での長期計画を総合的に立てられることを要望いたします。 そして重ねて私は申し上げます。きっとそのときには財源、原資問題が出てくるわけだ。あなたのいまの日本列島改造論に書いてあるように、福祉は、天からは降ってきません。私もこれは同感だ。しかしそのために、いまの国家予算の編成上、財政投融資計画の編成上、従来のどの部分かが犠牲にされなければならぬかもしれませんよ。なのに、これまでの既得権益をそのままにして次を押そうとするならば、先ほどのように、おかしく、むずかしくなってくるわけだ。それならば、従来の自民党政治体質のワクの中であなたは考えられることになるから、私は困難だと言うのです。発想の転換を行なうというのは前内閣からの基本的な考え方でしょう。発想の転換というのはここだ。福祉は天から降ってこないから、国家予算の編成上あるいは財政投融資計画の中で、従来のどの部分かが犠牲にされなければならぬかもしれないけれども、それを具体的に相談しようじゃありませんか。そして国民の、こっちのほうがいいというその選択を明らかにしようではありませんか。私は、そのような観点でやれば、従来の輸出促進のための政策経費が削減されるかもしれぬと思いますよ。産業基盤整備のための投資がどれだけか削られるかもしれませんよ。歳入面でも、これだけもうかっているじゃないか、もうかっている高度成長企業からは、もうちょっと税金取ろうじゃないかという話も出そうじゃありませんか。そしてそのときに初めて、防衛計画よりも何よりもまっ先に福祉計画を立てて、この福祉計画が大体やれるという前提において防衛計画を考えようじゃありませんか。これが私はほんとうの立て方だと思いますけれども、御異論はありますか。
○田中内閣総理大臣 いま御発言になられたことはよく理解できます。先ほども申し上げましたが、社会資本の蓄積比率ではアメリカの四分の一でございますと、こう間々述べておるのでございます。また社会保障、年金、老人福祉等を見ますと、ヨーロッパ先進工業国と制度においては比肩するまでになりましたが、給付内容その他に対してはまだ二分の一、いまだしでございます。こういうことでございますので、これから経済計画をつくるときには、当然のこととして一まあ経済計画がうまくいったら社会福祉や社会資本の不足を補うというのではなく、もう経済の計画をするときには、そのうちどれだけ社会資本の蓄積に回すか、また社会福祉に回すかという年次計画を同時にスタートさせなければならない、このように申し述べておるのであります。 ただ、あなたから非常に御理解ある御発言をいただきましたので一つ申し上げますと、いまの下水道とか、都市に対する——東京都民、大阪の市民などは、空地とか緑地面積、これは二尺角ぐらいしか持ってないわけです。一平米もないわけであります。そういうものに緑地を与える場合どうするのかということで考えますと、道路そのものがアメリカの都市の三分の一しかないというような状態から考えますと、緑地を無制限に一体ふやせるのかどうかということを考えますと、列島改造というのも一つのテーマでございますし、それから生活環境の整備ということを考えるときには、中核都市二十五万といっておりますが、二十万でも十五万でもいいのです。そういうような新しい中核都市構想というものと青写真を合わせないと、なかなか数字が合わないということでございますので、そういう意味でも、ひとつこれから十分私たちも勉強したいと思います。
○佐々木(良)委員 いま総理の言われることもそのとおりです。ですから、政治目標をしぼるということは、まさにしぼるのです。羅列じゃないんです。先ほど言いましたように、福祉充実の見取り図、青写真をこしらえる。そしてそれをやるためには、いまのように、列島改造論的な計画、考え方でこうしなければなるまい、あるいは財政関係はこうしなければなるまい、こう私は持ってくる。要するに主人公は人間尊重の政治でしょう。われわれが主人公でしょう。だからそこを中心に考える。だからその計画を立てようじゃありませんか。そしてその計画を実行するために、いまのようないろいろな知恵を出し合いましょう。その場合には、あなたの列島改造論も一つの有力な資料になると私は思いますよ。決して頭から否定しはせぬ。あの列島改造論さえやれば何もかもできるみたいな話をされるものだから、こっちは腹が立っていろいろ言いますけれども、列島改造論自身が目的ではなくて、われわれの住むところがよくなることが前提なんですよ。そのよくなる計画を立てずに列島改造論を言うたところで話にはならぬ、こういうことであります。 ついでみたいで恐縮なんですけれども、やはり今国会の中心の四次防問題というのに、私はここで触れざるを得ません。 この四次防という問題に触れるに際しまして、総理、はっきりと申し上げておきますよ。本会議場における春日委員長に対する御答弁なんか見ましても——私は無防備中立論者ではありませんよ。無防備中立論者ではないことをはっきり承知されている。民社党というものは、御承知のように最小限の自衛措置の必要性をはっきりと否定しておらない、認めておるんだという前提に立って、そして私は、むしろこのこと自身、防衛にどれだけ金を回すか、福祉にどれだけ金を回すかという国民の選択を十分にできるようなかっこうで議論するのがこの委員会の目的ですよ。一方的に絶対論ばかり振り回しているのじゃないんです。相対的な議論が行なわれることが中心なんです。 したがいまして、GNPの一%の軍備が過剰でないという総理の御見解、外国の事例から見てもそうだと、こう主張されるそのこと自身を、いまどうこうというのじゃないですけれども、それよりも前に、いま言いましたように、社会保障、生活環境は欧米に比べて相当に劣っておるのだから、その劣っておるのをどのようにして充実するのか、こういうふうな考え方に立っていかなければならぬ、こう思うわけであります。この考え方はよろしいか。それでどうしてこの四次防だけ先行されたんです。先ほどの長期計画もまだできておりはせぬのに、どうしてこれだけ先行された。何か特別の事情があるのですか。
○田中内閣総理大臣 四次防は特別に先行したわけじゃございません。これは、四次防というから何か特別のものをつくっているような気がいたしますが、そうではなく、これは、五カ年間にするから三次防になり、それから三次防が終わったので四次防に入っていくということで、五年間、五年間の区切りをやっておる、こういうふうに見ていただきたいと思うのでございます。 それで、防衛生産から見ましても、なかなか単年度主義ではものができないというものもございますので、結局ことし債務負担で契約をして、来年はその一年次を払い、三年後にものをつくる。軍艦なら四年もかかるというような問題もございますので、結局、単年度主義の中ではどうしても——隧道が長くかかるときには、鉄道や道路の五カ年計画、十カ年計画が必要であるように、財政の仕組みの上でどうしても年次計画というものを幾ばくかの期間を想定して考える。それで一つの目標数字を定めて、それをオーバーしないようにというコントロールの役目もなしておるわけでございます。そういう意味で、いまでも道路五カ年計画、下水道五カ年計画、上水道五カ年計画、公園五カ年計画、治山治水十カ年計画と一ぱい計画があります。そういうものの一環として四次防という、三次防が終わったので次の五カ年間というものをつくったんだというふうに御理解いただきたいと思います。
○佐々木(良)委員 それは総理、ちょっと無理でしょう。四次防を道路の五カ年計画なんかと同じように考えられるのは無理でしょう。それは現実に道路の五カ年計画その他のものは、まあ言うならば単年度計画の、それの説明資料か目標ぐらいのものでありまして、四次防計画の性質とは私は全然違うと思う。だからむしろ私どもが一番疑問に思うのは、いまお話しのように、あなたが一番中心にやられようとする、福祉充実の政治をやろうとするならば、言うならば福祉充実五カ年計画なら五カ年計画、それを策定されるまでどうして待てぬのか。特別な事情がない、三次防のただ単に延長だということであるならば、何も四次防なんか考えなくていいじゃないですか。ことしそのまま一年延期したってちっともかまわぬじゃないですか。であるのにかかわらず、これをどうして延べられぬかということなんです。 ただし、いま私は、理屈のけんかをあまりしようと思いません。私は国民にはっきりと知ってもらいたいことがあるんだ。御承知のように、私の考え方によれば、いまならば、どうしても政治の流れを変えようと言い、自民党も、今度の総選挙にでもなれば必ず、ほんとうに福祉を充実する、人間尊重の政治をやられると言われるのですよ。それを実行しようとするならば、そのための計画をどうして優先されないのか。こういうことを私は繰り返して申し上げている。それよりも前に四次防計画が出るものだから、私どもは、これはどうしてもおかしい、何か別の意図がある、こう思わざるを得ないということなんです。 今年度の防衛費八千億というのはGNPでは〇・九%で、その意味からは、確かに言われるように、外国に比べますと、GNPの比率でいけば低いですよ。しかし御承知のように、先ほど言いましたように、社会保障費自身、これの国民所得に占める割合は日本は今度五・二%というのだ。私もいろいろ調べさせてみたわけです。五・二%に対して、西ドイツは一五・三%、スウェーデンは一三・五%。つまり社会保障費の国民所得に占める割合は、日本はやはりはるかに低いわけなんです。でありますから、特にいまやらなければならぬ政治の現実的な要求であると同時に、日本自身が平和国家としてでき上がって、そして日本国憲法自身がそのような目標を立てておるのでありますから、防衛費よりも何よりも先に社会保障の充実をはかるのが当然のことだ、私はこう思うわけです。 時間がありませんから、参考のために、せっかく調べたから申し上げておきましょう。私ども民社党が、先ほどの五カ年計画で福祉の充実をやろうという考え方の中で、たとえば老齢福祉年金、現在の三千三百円を計画終了日の五年後には三万円にしようということなんですけれども、初年度、つまり来年度——だから厚生省さん、うんと予算要求してくださいよ。厚生省で来年度予算要求に相当する初年度では、これを一万円にしよう、こういうことなんです。その一万円にしようとする場合に、いまいろいろ問題の多いところの支給制限というものを撤廃してみても、年予算は三百五十億円だ。この金額は、本年度の防衛関係費のまあまあ四%だ。この四%を来年度にさきさえすれば、いまの老齢福祉年金がこれだけいけて、そしてそれに四年を積み重ねていくと、いまのようなヨーロッパ並みにいけるではないか。それをほったらかしにして、どうして四次防というのは先取りしなければならぬのか。 厚生年金は、私のほうの五カ年計画では、これを七万円にする方針ですが、このための資金は年約四百四十億円というそろばんが出ているようです。今回の四次防で、防衛庁長官御承知のように、中型ヘリの護衛艦二隻を建造することになっておるようでありますね。それは一隻約二百億円程度というのですから、言うならばこれの約二隻分だ。ヘリの護衛艦をどうしてもつくるという計画を決定する前に、年金を七万円まで上げたらどうだろうかという考え方を、どうしてこれと並行的に相談できないのか。年金だ年金だといわれて、年金の係は確かに厚生省でしょう。それから防衛費の係は確かに防衛庁でしょう。総理大臣自身はそれを調整をするのが役目でありまして、そして政治目標を、いまのように福祉にしぼるというのでありますから、ヘリの護衛艦を二隻どうしてもつくるということを決定する前に、いまのように七万円まで上げようとすれば、大体似たようなものだから、どっちがほんとうに得であろうか、私は国民に聞いてみたらいいと思う。大体、軍艦二隻つくるよりも、それは厚生年金を七万円にしてくれよ、そっちのほうがいいと言うに違いないと思いますがね。 私は最後にい繰り返すようだけれども、総理がどうしてもこの場合に老齢年金よりヘリコプターの軍艦をとるということなら、それがどうしても必要だという理由がもっと国民に説明できて、国民の納得を得なければならぬと思うのです。時間があったらあとで外交問題とともに触れようと思うのですけれども、アジアの緊張が緩和しつつあるということは、そのまま国民にとっていいことなんです。そのいいことを、今度は国民自身にいいように実を結ばなければならぬじゃないですか。アジアの緊張は緩和しつつあるけれども従来と同じように心配の要因がある、こういうことで軍艦もつくるということならば、アジアの緊張緩和傾向というのはちっともいいことじゃないということになってくる。どうしてこの比較をされる余裕を持たれないのか。四次防問題に関してどうですか。
○田中内閣総理大臣 社会保障費を拡大をしていくという方針に対しては、先ほど申し上げたとおり、大いにこれからやってまいりたい、しかも年次計画を定めてまいりたいということを、まず申し上げておきます。 二十八年から四十七年まで——こんなことは申し上げることじゃありませんが、ただ、努力はしてきておるのだ、皆さんの御支援をいただきながら努力をしてきておるのだということを、国民皆さんの前には申し上げなければいかぬと思いますから申し上げますと、二十八年から四十七年まで二十年間の防衛費は、二十八年の対GNP比一・六七%から〇・八八%に、半分になりました。それから逆に社会保障関係費は、二十八年に〇・九九%であったものが四十七年には一・八一%に倍増したわけでありますから、これは下がってくるのと上がってくるのですから、四対一の比率で努力をしておるわけでございます。しかも、防衛関係費と社会保障関係費の一般会計の予算に占める比率を考えますと、二十八年に防衛関係費が七百四十九億から八千二億になったわけでございますが、その一般会計予算に対する比率は六・九八%であります。ところが社会保障関係費は、千二百五十七億が二十年間で一兆六千四百十五億、一五%に上がってはおるわけであります。しかし、これは数字の問題で、あなたが納得するような問題でないということは、私もよく知っています。そういうことでございますので、これからも年次計画で、あなたがいま述べておられるようなことをだんだんと実現をしてまいりたいと思いますので、ひとつ御声援のほどをお願いいたします。
○佐々木(良)委員 最初に言いましたように、私は、国際的にも問題があり、日本の国の中でも一番おかしくなってきておるところのこの成長政策というものに本気に反省を加えられまして、その反省を加えた中で、何よりも人間を中心に置かれて、主人公は人間だというところに置いて、その人間尊重ということを中心に置けば、福祉計画、福祉充実というのがすべてに優先するのですよ。それを大体五カ年間でどこまでいこう、そうするとヨーロッパ並みになるではないかという計画を立てられて、それならば年々どのくらいだろう、何と何と何とをその項目の中心にするか、これを立てられて本気になっていかれるという姿勢があるならば、私ども十分に協力もいたしますよ。しかし、その問題をほっておいて、いまのように、ともかく防衛計画だけは先にいかなければならぬという式でやられますと、これはお互いに話し合いではなくて、完全な対立抗争だけになってしまうと私は思います。この四次防問題に対しては、私はあえて憲法論争や理屈のやりとりをせずに言おうとしておりますものは、その四次防がいま絶対に必要であるかないかというのは、これは神さまでもわかりはしませんよ。しかしながら国民から聞くならば、大体雪解けの方向じゃなかろうかな。それと、いま政治の流れを変えようとする場合に、やはりほしいのは老人ホームだ。年金だ。これとの比較において、どっちをとって、どっちを重点にしたならばできるかというこの選択を迫るのが、私はいまの政治の中心だと思うからなんです。そして同時に私の考え方は、やはり福祉充実ということのほうが、戦争放棄と健康にして文化的な生活を保障しようとするところの新憲法精神そのものだ、こう私は思うからです。 それから、この防衛問題と関連して、私はほんとうは、いま申し上げましたように、私どもは非武装論者ではありませんから、その意味でいきますと、いま四次防問題とからんで、一番私ども民社党としても責任ある態度でたださなければならぬのが、例のシビリアンコントロール問題であります。シビリアンコントロール問題というのは、ほんとうを言うと、いま全然ないがしろにされていると私は思う。新聞さんに書かれたときだけがたがたやったけれども、いま実際にはそうなっていないと思う。したがいまして、むしろ私は、民社党として、このシビリアンコントロール問題ということを最も責任を感じながら議論をしたいわけでありますが、これは時間もありませんから、割愛をさせていただきましょう。 そして今度は、総理の一番得意な、この国会の一番中心であって、解散などやっておるひまはないと言われたところの円対策の問題に入りましょう。 私は、都合によっては、この円対策問題にも幾らでも協力するつもりを持っておりますけれども、はっきりとお伺いいたしますが、総理はいま本気で円の再切り上げを回避するという方針でおられますか。回避できますか。
○田中内閣総理大臣 いま、円の再切り上げは回避できると思います。 それからもう一つは、円の再切り上げは行なってもあまり価値がないという感じでおります。この理由を述べろと言えば、引き続いて述べます。
○佐々木(良)委員 植木大蔵大臣、今年度の黒字幅の見込みと、それから年度末の大体の外貨準備の見込み、どのくらいに立てておられますか。
○植木国務大臣 四十七年度一般会計のですか。
○佐々木(良)委員 一般会計——今年度の黒字幅をどれだけに見ておられるか。
○田中内閣総理大臣 貿易収支の黒字幅は、昨年八十三億ドルでございましたが、ことしはそれ以下にしたいと考えておりますが、なかなか貿管令の発動でうまくいかないといろんな問題が起こるということでございます。十月末の外貨準備高は百七十七億六千四百万ドルでございますので、これからまだ少し積み増しが行なわれるのではないかというような状況でございまして、三月三十一日をめどにして幾らでございますと、なかなか申し上げられないことを御了承いただきたい。
○佐々木(良)委員 それは当初に比べて、やっぱりちっとも改善の見込みがなくて、むしろ急増の傾向ですね。責任感じますか。 そして同時に、これまた時間がないから、こっちからばかり言って恐縮ですけれども、それほど総理は円の再切り上げを回避すると、こう言われますけれども、最初の見込みと違って、これほど黒字幅はいまふえつつありますがね。それにもかかわらず、対策としては、輸出税も結局取りやめですね。輸入の自由化も進めないし、それからさらに、これは問題もありますけれども、アメリカからの武器購入もやめました。こういう状態で、いまさら昨年の六月の円対策八項目や、それからことし五月の七項目、これと大同小異の作文行政の第三次円対策などで、いまお話があったような巨大な貿易黒字幅をどうにかできるとほんとうにお考えになっておりますか。外圧もすさまじくなっておりますよ。御承知のように、アメリカとヨーロッパの接近で、日本は完全に孤立化の傾向で、黒字国の責任論というのが、黒字国制裁論にまで発展しようとしておることは御存じのとおりですよ。 それから、言うまでもないことでありましょうけれども、通貨投機も、御承知のように、東京の外為市場その他の先物取引及び海外情報は、大体円の再切り上げは必至という予想を立てて、時期も早ければ今年末か、おそくとも来年三月までには行なわれるであろう、切り上げ幅は大体一〇%程度、こういう言うならば確定的な予想に近いものを立てておることは、御承知のとおりであります。 私は、このような情勢の中において、いま総理が言われるように、そう簡単ではないと思うが、大蔵大臣、あなたは当局でしょう、通貨当局ですが、ほんとうに円の再切り上げの回避ができると、あなた自信を持っておられますか。イエスかノーかだけでよろしい。
○植木国務大臣 残念ながら、非常に困難な仕事であると考えております。
○佐々木(良)委員 長期経済計画を立てておられるところの有田経企庁長官、あなたは端的にどう思っておられますか。
○有田国務大臣 何とかして回避しなければならぬ、かように考えております。
○佐々木(良)委員 回避しなければならぬとは考えておられましょうけれども、いまのお話ははなはだ困難だろう、こういうことなんです。 中曽根通産大臣、あなたは自由化打ち切り宣言論者とも伝えられております。自由化を打ち切るという方針でこの円の再切り上げは回避できるというお考えに立っておられますか。
○坪川委員長 佐々木君、佐々木君……。
○佐々木(良)委員 あとで求めます。あとで求めます。
○中曽根国務大臣 円の再切り上げの問題は、これは国家の利害関係、あらゆる条件を考えてみまして、全力をふるって回避しなければならぬし、回避できると私は思います。 その理由は二つございますけれども、第一に、いまのような状態で円の再切り上げというようなことが万一行なわれると、非常に低い福祉水準で日本の福祉水準が固定されてしまう、そういう危険性があります。この機会に、やはり社会資本あるいは福祉水準を思い切って上昇させて、西欧並みに引き上げるということをやるチャンスである、そういうことが第一であります。 それから第二に、為替相場による調整ということよりも、経済の実態による調整のほうがはるかに長続きして、それが国のためになる、そういう考えが基本にあるからであります。
○佐々木(良)委員 いまの中曽根大臣の政策論は政策論で私は承りますけれども、先ほど言いましたような、それこそ社会福祉のための充実政策というものが現実に行なわれつつありません。そういう立場から、しかもあなたは、先ほど言いましたように、自由化にも反対をされている。自由化の打ち切り論者とも伝えられておる。その立場で、政策論はわかるけれども、ほんとうに見通しとしてこれが済むとお考えになっておるかどうか。
○中曽根国務大臣 私が、自由化反対論者のように聞こえているというのは間違い、誤解でございます。私は、残っておるのは三十三品目であるけれども、その中に農産物その他がかなりある。農産物の問題については、これは外国、ECあるいはアメリカとの関係、あるいはガットその他においても、各国おのおのの特殊事情は認められておるのであって、それについて国情を無視したことをやることはよろしくない。それで、いつもこの問題がてんめんして農民や国民に波紋を起こしておるということは適当でない。したがって、ヨーロッパの水準に入っておるならば、農産物等一部の問題についてはもう打ち切り宣言したらどうだ、そして無用な不安を農民に与えないほうがよろしい、そういうことを言ったので、資本の自由化あるいは三十三品目の中の一部の自由化等については推進していくべきものである、そう考えております。
○坪川委員長 この際、内閣総理大臣から発言を求められておりますので、これを許します。
○佐々木(良)委員 尋ねますから、私が尋ねてからにしてください。 いまの中曽根大臣のお話はそれでよろしいが、しかしながら現実に見通しとして、私ははなはだきびしいという前提に立ち、しかも自由化という問題は、いま自由化品目が非常にぎりぎりのところに来ていることは承知しておりますよ。したがいまして、それならば逆に話があるんだ。農林大臣のほうに、それを自由化してもいいところの政策をどうしてこれまで充実されないか、そしてそれを優先されないかという話になるわけであります。 総理大臣、ちょっと一分間待ってください。 その前に大平外務大臣、ロジャーズ会談での外圧の状況から考えて、なかなか相当なものだと私は思いますけれども、あなたの印象を端的に伺いましょう。それから総理大臣に私は尋ねます。
○大平国務大臣 ちょうど九月の日米貿易収支じりが発表されました直後でございまして、これは予想に反しまして大幅でありましたので、アメリカ政府側においても深い憂慮を示されたわけでございまして、論議を越えて実行をもってお示しいただきたいという強い希望がございました。
○坪川委員長 植木大蔵大臣……。
○佐々木(良)委員 委員長、私の質問したことだけでよろしい。こっちが聞いているんだから、私の質問に対してお答えいただければいい。私の持ち時間でしょう。それじゃ、この時間を抜いてよろしいか。
○坪川委員長 訂正があるそうです。
○植木国務大臣 訂正させていただきます。 私がさっき申しましたのは、円の切り上げの問題をお扱いになっての御発言と、最初のうちわからなかったのであります。それは私は、いわゆる来年度予算にも関連して将来もまたいろいろやることがあるかという御質問と考えまして、そういう答えをいたしました。 それから、困難と申しました意味は、相当の努力をわれわれがいまやってはおりますが、なおこれがはたして完全にいけるかどうかについては、私は、完全にやらなければならぬ、そう考えてはおりますが、各省との間でそれぞれ骨を折り、また、実際問題としてはいろいろ変わった事情が起きはしないかということを考慮しての上で、なかなかむずかしい問題ではあるが、あくまでもこの再切り上げを避けにゃならぬ、そのために苦慮、苦心惨たんをいたしております。それを、だから困難でありますと、こういうことばで表現したのでございます。
○佐々木(良)委員 よろしいか、総理、この問題については、ほんとうはこの問題だけでないけれども、国会の中の論議が、もう少し責任をもってかみ合う議論をしなければ、これは私は議会政治のためにまことに重大だと思っているのです。 特にこの問題について、私は、昨年の一月の総理の施政方針演説に対する私の党代表の質問、西村委員長にかわってやった質問の中で、昨年の円の切り上げを非常に心配したのですよ。IMF総会のある夏ごろを非常に心配したんだ。そしてその一月の代表質問において、ことしの夏ごろにはへたをするとドルの切り下げか、そうでなかったら円の切り上げに追い込まれるかもしれない、このことに対して政府当局は、はっきりといまから机の中にしまっておく政策をこしらえて、本気になりなさいよということをぼくは言うたんだ。それにもかかわらず、それに対する——当時は佐藤内閣でありまして、それからの答弁は、円の切り上げなどということは頭の片すみにもありませんという答弁をいただいた。ちょうど、言うならば、政治資金規正法に対して小骨一本抜きませんという不謹慎な答弁が行なわれたと同じ答弁をいただいた。私は、正直な意味でそのときにはほんとうに憤慨した。そして私は、八月にあのような事態があったことに対して、それでも政治責任がないということであるならば、一体政治責任というものは何だという感じがあるからであります。 したがって、総理に重ねてお伺いいたします。昨年の十二月の二十日に円の切り上げがありましたときは、あなたは水田蔵相の留守をあずかる臨時蔵相代理でありましたね。そしてその当時、次のような意味の談話を発表されておることを御記憶だと思います。 国民福祉優先の経済資源の配分を再検討する。老人、公害、生活環境対策の充実につとめる。輸入品価格の下落に努力する。流通機構の改善と合理化をはかる。消費者物価の低下を期待する。消費者物価の低下を期待しておるという意味の発言、ことば、そして六月決定の八項目の対策をなお積極的に推進するという談話をわざわざ発表されております。あれから現実に、国民福祉優先の経済資源の配分を再検討するなんということばはいいことばだけれども、ほんとうに実績があがるような再検討がされたか。それから老人、子供、生活環境等の充実に対してどれほどの努力が現実に行なわれておるか。輸入品の値下がりについても、流通機構の改善、合理化なんというのは、それから何にもやられていないじゃないか。あの当時あれだけ大きな国民の犠牲を払って、言うならばそれまでの佐藤内閣の政治責任が国民に大きな犠牲を強要しておいて、そしてこれから再びそのことを繰り返さないということを前提として、あなたは臨時大蔵大臣代理としてこのような覚悟を述べられて、これからの施策を言われた。それから何かこのことをやっておられますか。そして現在、これからも避けようと言われることはよろしい。努力はよろしい。努力はよろしいけれども、いま申し上げましたように、海外市況、海外の情報はいまのように見ておりますし、それから、現実に商売人の方々は、いまの一割程度の切り上げが行なわれることを前提とした取引をやっておるじゃありませんか。それから、すでに外為市場においては思惑に走っておるではありませんか。この思惑に対しまして管理強化なんかやったってたいしたことはない。政治責任を感ぜられておるならば、はっきりと御発言をいただきたい。
○田中内閣総理大臣 昨年末、多国間平価調整という困難な問題が行なわれたわけでございます。その結果、思うようになったというのは、アメリカの景気が回復をしアメリカの失業問題が片づいた。しかし、その結果、アメリカは物価の上昇過程に入っておるということでございまして、日本はあれだけの平価調整をやったにもかかわらず、先ほども御指摘がございましたように、国際収支の黒字幅は依然として縮まらないという状態でございます。縮まらないというのではなく、平価調整の結果はだんだんとあらわれておりまして、輸出は減っております。輸入もだんだんと拡大はしておりますが、しかし、貿易収支の黒字幅というものが大幅に減るという状態にないということは、先ほど十月の外貨じりが百七十七億ドル余りでございますと言ったとおりでございます。 これは、去年私が通産大臣になりましたときに、九月か十月、百億ドルになるかもしらぬということで、七項目を引き継いで推進をしたわけでございます。それで去年の暮れ平価調整を行なったときに、このままでやっておくと、ことしの暮れ、来年の年度末には二百億ドルになるかもしらぬということを、非公式に述べて大問題になったわけでございますが、遺憾ながらその趨勢をたどっておることは事実でございます。だから、そういう意味で政府当局のほうでもいろいろな検討をしたわけでございますが、落ちつくでしょうと言っておったところが落ちつかなかったということで今日の状態でございます。 しかし、平価調整ということをやってもあまりメリットがないということで、この上外圧で円平価の調整ということを求められるような状態にはないような気がいたします。これは、過日のIMF総会でシュバイツアー専務理事が、日本に対してのみ平価調整を求めないと言ったことが、端的にこの間の事情をあらわしておると思います。しかし、日本自体の問題としてこのようなことが続いていって、国際的な場裏で日本が一体経済活動を続けていけるような状態であろうかという真剣な問題に逢着をしておるわけでございますから、そういう意味で、求められるということではなく、これは平価調整ではなく、国際収支対策というものは徹底してやらなければいかぬ。いまあなたがいみじくも述べられましたが、もう二百七十円、二百八十円でもって飛び込み輸出がやられておるということが御指摘のとおり事実であるとしたならば、これは切り上げても何の価値もないということになるわけであります。そこに非常に円平価の調整問題はむずかしい問題にぶつかっておるわけです。 そうして実際において円平価調整が行なわれた場合、日本の全体の経済としてこれに耐え得るかどうかというと、これは中小企業だけではなくたいへんな影響があると思います。そういう意味で、国際収支対策というものがいかに重要であるか、私、当面する最大の問題であると申し上げておるのはそういうことでございます。ですから、この問題が解決しない限り、とても解散など考えられないのですということを申し上げたのは、ほんとうにそういう責任を感じておるわけでございます。ですから去年の八項目、今年の七項目、この前の国会で円対策の法律は流れました。しかし今度、行政的にできるものはやりました。それで第三段の対策を予算とあわせて審議をいただいておるということで、これは円平価の再度の調整ではなく、国際収支対策として、いま残るものは、貿管令の発動を強引にやるということが一番の問題である。もう輸出課徴金はやめたのかということですが、貿管令で価値がないということになれば、そのときに当然輸出課徴金という問題も考えざるを得ないというぐらいに考えております。 ただ、最後に一言だけ申し上げておくのは、輸出課徴金や輸出税を取った西ドイツ等は、そのまま半年後には自動的にその部分が平価調整につながっておるという例に徴して、輸出課徴金に対しては非常に慎重な考慮を払っておるということでございますが、国際収支全体の面から見ると、貿管令に実効があるかどうかという問題と、輸出課徴金、輸出税等の問題は、一つの手段として検討しておる問題でございます。
○佐々木(良)委員 いまアメリカの事情も言われました。ヨーロッパのインフレも原因になっておることば事実だと思います。外国のそのような事情よりもほんとうはこの一年間、このための対策を何にもやっちゃおらぬですよ。それに対する反省があるかということを私はほんとうは言っているわけなんだ。そして正直言って私自身も、いま考えられておるような、ただ、いまたまっておる外貨準備を何とか消そうというそれだけの小手先細工では、これほど大きな貿易収支の不均衡を是正することは不可能だ。むしろその辺に官僚の知恵を集めて、そしてその上に乗っかって、ああでもない、こうでもないと言って、しかもおのおののセクトの中で、自分の従来の既得権益を侵されまいとするこのなわ張り根性の中で、対策なんかやっちゃおらぬ。むしろ外圧という意味は、その意味の外圧だ。日本の政治は本気になってこれをやろうとしておらないではないかという外圧、それが黒字国責任論から制裁論にまで変わろうとしておることだ。 それから、あなたが先ほど言われましたように、外に向かって、どこの国とも平和を維持して仲よくしよう、国際協調を保とうとしているいまのような姿勢ならば、ほんとうにこの国際均衡を保とうという、国際均衡に行こうという方向は出ませんよ。そして、幾ら政策論をぶったところで、その方向の中でどうしても私は逆の意味で外圧というものが、別の意味の外圧がかかってきて、そしてしかたなしに追い込まれてくるという危険性を感じておるわけです。 私の直観を、正直なことを申し上げますと、一番最初に私は、これまでの政治の流れを変えるために、言うならば経済成長オンリーの方向に行こうとしておる、これにあなたがブレーキをかけて、そして福祉路線に方向を向けると言った。その同じ方向に向けようという努力をせずに、従来の方向の中にずぶっとつかっておられる限り、先ほどのように、私はほんとうの福祉路線にもいけないし、そしていまの円対策も打てないし、したがって、世間にいうような政治の流れを変えることはできない。だからそこから飛び出しなさい。いま一番、従来の日本政治の体質が国際的にも国内的にも問題になっているのは、いわゆるエコノミックアニマルでしょう。いわゆる日本株式会社論ですよ。この体質をぶち破らなければほんとうのものはできない。だから、この体質をぶち破ろうという気魄の中でなければ、この国際収支の均衡を保つための施策はできない。 私は、正直言って、今度のこの冬から来年の春にかけまして、この円対策に取り組む姿勢、確かにいまのようなお話がありまして、その姿勢を本気にするならば、効果がすぐ出なくても、私はまだ国際的には余裕があり得ると思う、その姿勢をはっきり打ち出すならば。そういう姿勢を打ち出すことによってほんとうに円対策に取り組む、円切り上げなどはしないという方向に取り組まれるか。あるいは逆に、もうそろそろあきらめムードもあって、この際に円再切り上げをやって、円切り上げに踏み切って、そのメリット、これは当然メリットもあります。いまのように物価問題等を中心として円切り上げに結びつくメリットもありますよ、政策論として。それに立って今度は新しい政策を展開されるか。三番目には、いまのようにやる、やると言って何にもやらずにじりじりっとして、そして最後には、国際的に済まなくなったからどうしようもないということで切り上げに引きずり込まれるか。この三つの路線の、完全にあなたはいま選択の焦点に立っておられると私は思う。その意味じゃ解散する余裕はないかもしれぬ。 しかしながら、そのほんとうの立場の苦悩が日本の政治の中ににじみ出ておるであろうか。私は正直言いましてね、先ほどの輸出税というものもそれほど賛成ではありません。しかしながら、あの輸出税のやりとりを聞いてみても、先ほどの輸入自由化の問題に対する中曽根さんの発言を聞いてみても、おのおの一つずつ考え方はごりっぱですよ。ちょうど公共料金を抑制すると言っておきながらも、しかしながらその利用者負担という考え方もあるなんという考え方も同じことで、先ほどの物価対策と同じことで、これまでやろうと言ってやれなかったことに対してはおのおのの理由があるわけだ。その理由をいま同じように使っておるならば、これは、何も政治を繰り返すことであって、政治の流れを変えることでも何でもない。物価対策にも取り組めないし、本格的な福祉充実の方向にもいけないし、円対策もできない。そこに、あなたは本気になってやられるかどうかというところに中心があるわけです。 それからこの際に、その意味で私ははっきりとしておきたいと思いますことは、円切り上げの外圧ということは、いま言いましたようなエコノミックアニマル、日本の姿勢を改善するための外国からの要求です。そう受け取っていいと思います。そしてその一つは、あなたの得意な農業や中小企業等の低生産性部門の体質改善によって日本の二重構造の経済体制、体質を直すということでしょう。それからもう一つは、日本の国民生活と生活環境の水準を引き上げることでしょう。この二つに対するむしろ国際的な要求が、私は円切り上げというこの形をとってきている、こう見ていい。外圧を単なるいやがらせと見てはいけない。私は、そのように外圧を見るならば、この外圧はそのまま日本国民の庶民全体の内圧でもある、同じことだ、こう思うのです。 ここであなたは今度きっと、それだから列島改造論にとこう持っていかれるのだと思う。よろしいか。私はその意味はよくわかる。しかしながら、列島改造論を提起されている理由はよくわかるけれども、その列島改造論自身にやはり別の意味の問題があるわけだ。したがって、先ほどの矢野さんのお話のように、列島改造論もいいが、いまの問題に対して本気の姿勢を示せという、私はその主張が当然に出てくる、こう思うわけであります。 少し先ばしるようでありますけれども、ついでにお伺いをしておきましょう。もし切り上げといち事態になるならば、もしですよ、もし切り上げという事態になるならば、また大きなしわ寄せがいろいろなところに出ます。その場合のしわ寄せの最大のものは、いま改善をしなければならぬと称せられておるところの低生産性部門にまずしわが寄ってきますよ。中小企業だ。中小企業の中でも、いま輸出にだけたよっておる中小企業は、昨年の切り上げだけでもう合理化の限界がはっきりしてきておりますよ。そいつをもう一ぺんゆすぶられるから、もう転業以外にありませんぞ。それから今度は逆向きに、発展途上国から競争的な品物を輸入される、その発展途上国から入ってくる品物と競争状態になるものをつくっておるところの中小企業、これを一ぺんに圧迫しますよ、安く入ってくるのだから。この中小企業に目に見えるしわ寄せに対しては、この連中はいま対策はありません。大企業は、いま、先ほど言いましたように、対策をちゃんと立てながらもう先物取引をやっておりますよ。しかし、中小企業のいまの連中は、もうこれ、なりそうだ、なりそうだと見ているけれども、対策はありませんぜ。そのような場合に救済措置をはっきりと考えておられますか。私はまさに重大だと思う。政府がみずからの政治でもって政策を失敗した、その失敗した損害を国民に押しつけるだけであって、それに対策なしとするならば、私はこれは政治ではないと思う。その場合に救済措置は、いまは出すべきものではありません。机の引き出しにしまっておきなさい。だけれども、あると断言できますか。
○田中内閣総理大臣 これは円問題、ほんとうに日本が当面しておる最大の問題である。私は特に所信に関する演説で述べましたが、いままでの考え方が、ちょうど都市に集中することによって生産が上がると同じように、日本のあらゆる制度、組織が生産を上げること、国際収支を好転させるように、輸出を増強するようにということで全精力を傾けてきたわけでございます。それが今度は輸出を押えて輸入を拡大しなければならないという、全くいままで例のない問題にぶつかったわけであります。これは先生もいないし前例もない、だから国民的な英知を傾けなければならない、こう言っているのはそれなんです。 ですからいま言ったように、実際円平価の調整が再び行なわれたならば、それは中小企業や零細企業だけではなく、日本全体の企業がこれに耐え得ないような状態である。だからこれはどうしても避けなければいかぬ。避けるためには簡単にはいかない、こういう問題でございますが、まず、先ほども私はあなたの社会保障計画に対しても申し述べましたが、今度長期経済計画をつくるときには、いままでの量的な拡大ではだめなんだ、これはもう質的なものに転化しなければならぬし、それだけではなく、社会保障やいろいろなものを加味した、全く方向を変えるということでないとだめだから、そういうことも含めて答申を願いたい、こう言っていることは、いままでの政府の姿勢としては珍しいくらいに新しいことを求めておるわけでございます。 それともう一つは、やはり日本がすべての原材料を日本に入れて、まあ昭和六十年の石油は七億トンも八億トンも入れるのだ、自由世界の四〇%近くも全部入れるのだというようなことではなかなかやっていけない。そういう意味で、やはり二次製品を入れるようなところまで合弁会社に切りかえるとか、いろいろな問題を踏み切らなければならないのですが、いままでとは全然別な政策に出なければならぬというところに、なかなか政府部内一体が、日本全体が、いまあなたと私が述べておるようなところまで全部向いておらぬという問題、話はわかっておるけれども、各論は反対だ、こういう問題でなかなか困難なところがあります。しかし、円の切り上げは、外圧は私はそれほどではないと思いますので、これは避けていく。それで、その間に一切の産業政策、いろいろなものをやっていく。そして、どうにもならない場合というときには消費者物価を引き下げるとか、そういうものとあわせて、その陰に起こる低生産性部門に対する政策をあわせてやる、こういうことを全部なさなければならないだろうというふうに考えております。
○佐々木(良)委員 そのときにあわせて、たとえば消費者物価を下げる。いまでも消費者物価を下げられるのなら、この苦労はないでしょう。消費者物価を下げようと思ってもできないで、そして次々に鶏と卵の悪循環を繰り返しておるところにあるわけだ。だから、そこはいまのようなところへ逃げてはいけませんぜ。私はまさにもっと深刻だと思う。しかし、もう時間がなくなってしまいまして外交に入らなければならぬので、もう一点だけ伺いましょう。 関連して、低生産性部門の一番中心である農業、これは一口では言えませんけれども、いま何をやろうと思っても一番大きな問題になるのは農業、そうでしょう。先ほどの円対策を進めようと思っても、物価政策を進めようと思っても、それからお話のような列島改造論をやろうと思いましても、その前に日本農業の位置づけを明確に行なわない限り、私はどうしようもないと思います。しかも、ここの抵抗は頑強であって、そしてこれは本質的なものであるから頑強になるのはあたりまえだと思う。その意味で、ほんとうは今後の農業はどういうふうに持っていかれるかということを聞きたかったのでありますけれども、時間がないものでありますから省略いたしましょう。 ただ、私は、列島改造計画の中で簡単に高度生産農業に持っていくという感じを持っておられるようだけれども、簡単に高度生産農業に持っていけるような状態ではなかなかないということを、まず御承知をいただきたいし、それはよく御存じだろうと思う。その中でも最大の問題はまず土地ですよ。まず土地だ。高度、合理的な農業に持っていこうと思いましても、それは農業用地がいまよりも一人当たりが広がらなければならぬでしょう。端的に、人間の数だけ減って、人間の数が減ればしたがってその分だけは持てるだろうというお考えに立っておられるように見えるが、現実には、先ほど来話があるように、いまむしろいい農地は買い占めが次々に行なわれておる。その買い占めによって土地がなくなることもさることながら、土地がなくなるよりも、もう農業をやるために農民自身が手の届くところに農地はなくなりつつありますよ。価格の問題だ。 この二つから、農業の規模拡大というようなことはとてもじゃないができそうにもない状態になろうとしておる。このことを御承知をいただきたいと思うわけであります。そして、私は、ほんとうに夢みたいにいわれるところの新しい農業と農民のための新農村づくりということ、それは逆向きに、いまお話になっておるような列島改造論が、いまのように先取り先取り、産業資本、商業資本に先取りされながら、政治よりも、国家計画よりも先取り先取りされて動く状態の中においては、むしろ農地はそのような産業資本や商業資本に食い荒らされてしまって、そして逆に、残存農地に対しましては、一そう非近代的な三ちゃん農業が残るだけの結果になるのではあるまいか。したがって、改造計画の前に、農地をどうして確保するか、そしてほんとうに食糧自給なら自給という方針を立てられるか、その二つの原則をはっきりと踏まえて、農民と農業の位置づけを明確にして、この分を侵さないという前提に立って、あとの部分に対して、工業の再配置とかその他を考えられたらいいのである。そのような意味で、私は、この農業問題というものは、まさにいまの日本の政治の近代的な方向、経済の近代化を行なおうとしても、一番底辺にあって、一番抵抗があり、しかも、ここにほんとうの意味のあたたかい農政を展開して、この不安をなくしなければ、何をやろうと思っても私はできぬと思う。一言だけ感じを伺いたいと思います。
○田中内閣総理大臣 純農政の立場からだけ論じられておった農政に対して、根本的なメスが入れられた御発言でございまして、まさにそのとおりだと思います。 農業は、私は数字をもって申し上げておるわけでありますが、一次産業比率はいま一五・九%になりました。しかし、アメリカの四%、拡大EC十カ国の六%に比べればまだ一〇%多いわけでございます。この農村というものは水も持っておりますし、土地も持っておりますし、家も持っておりますし、歴史も持っておるわけであります。この農村の中で、一〇%も二次産業や三次産業へ出てくるということで、既成の市街、既成の都市へ集まったら、これはもうどうにもならない物価問題、公害問題、地価の問題等になるわけでございますが、この一〇%を何とかしながら、しかも、一次産業というものの実態をどうするかということを明確に分けて考えなければならぬわけであります。 いま、四十年の農家の所得の平均は、三十万が純農業所得でありまして、三十万は農外所得でございましたが、今度は、四十七年度では三十万の農業所得に対して五十万の農外所得というふうに、どんどんどんどん変わっております。変わっておりますが、これは率直にいってどこの——私たちのいなかでも長男か次男が、だれか一人どこかへつとめておる、そしてあとは七、八反から一町歩のたんぼをやっておる、そして自分の必要な野菜は全部手取りにするというようなところが、理想的ではないが、中農以上とされておるわけであります。しかも、日本は気候風土の関係上、何十町歩もやれるような大農はできないのです。ですから、特別なものということを考えても、これは何十町歩ずつやれば、新潟でも山形でもできますが、その場合は、農民はいまの二割になってしまうということになるのであって、そういうのは非常にむずかしいのでございまして、農政というものは少なくとも純農政の規模をきめ、そして適地適作をやりながら、農村などは将来はやはり農協が下請をして耕作をするようになることは避けられぬのじゃないかと私は思います。 その場合、余剰労働力がうちにおりながら出かせぎに出ないでどうするかということになると、二次産業、三次産業の就業の場を与えるということに、列島改造論を抱き合わせておるわけでありまして、私が申さないうちに先ほど御指摘がございましたが、これはもう不可避なんです。そうしなかったならば、どうしても一次産業自体の高い収益をあげる理想環境を築くわけにはいかないということでございまして、低生産性部門をただ上げるというような単純な政策ではできないので、思い切った政策を進めなければならない、こう思います。
○佐々木(良)委員 時間がありませんから、あとちょっと残した分だけを、外交問題に入りたいのでありますが、内政の最後に、時間がなくてどの委員も触れられない面がありますので、一言だけ私は問題提起だけを行なっておきたいと思います。 せんだって、私、偶然に東海道を夜行列車に乗ってみました。夜行列車に乗ってみますと、グリーン車には若者が一ぱいです。そして、ほんとうはグリーン車以外の箱はがらがらでした。そのグリーン車だけには若者が一ぱい乗っておる。そして、前のいすにこういうふうに足を上げて、しかも、それも男、女。なるほど、私は古くなったかなと思われるほど、何とも言えない状況を拝見いたしました。一ぺん総理もごらんになったらいいと思うのです。私は、この現象に対して、その場合にきっといまの政治からいうと、そんな若者がと、こういうて若者だけがしかられる。この状態を若者だけの責めに帰せらるべきか、むしろその若者に、——この若者は何も金を持っておりませんよ。その若者に金だけをやって、倫理も道徳も何にも教えないおとなにその責めの多くのものが帰せらるべきか、私はまさに重大なる問題があることを承知をいたしました。 最近、平気で親が子を殺す事件が相次いでおりまして、もうニュースバリューさえなくなりつつあります。これらの状況は、決して現在の政治に責任がないとは言い得ません。まじめな人ほどこのことに対して政治の責任をこんこんと言われておりますることは、あなたが新潟に帰られましたならば、その周辺からひしひしと感ぜられることだと思います。経済一辺倒の政治がそのまま物欲万能の世相をつくり上げて、精神面はからっけつになろうとしております。この問題は、ほんとうに党派を越えていま日本の政治が取り組まなければならぬ最も深刻な問題だと私は思います。どうかこの意味におきまして、この問題はみんな各党の委員も言いたくて、やりたくてしょうがないものなのだ。しかも、これは時間の制約で言えないものであります。私は、あらためてこの問題に対する政治の責任をはっきりと提起しておいて、内政を終わりたいと思います。 外交問題。時間がなくなってしまいましたが、まず法制局長官、あなたは今度の共同声明の国会承認云々という問題について、相談は受けられましたか。イエスかノーかだけでいいよ。
○吉國政府委員 外務省から相談を受けました。
○佐々木(良)委員 ほんとかな。ほんとかな。共同声明は、内容はほとんどだれもわからぬまま、おそらく法制局長官にも言われないままに北京に飛んだはずですよ。そして北京の中で大体つくられたんだが、その場合にほんとうに相談があったのだろうか、私は非常に疑問に思うのですが、まあよろしいわ、時間がないから。 相談を受けたとするならば、いまいい悪いというよりも、私は民主主義であればあるほどその手続論というのはたいへん大事だと思うのです。日ソ共同宣言の場合は、はっきりとこれが発効条件の一つになっておる。それを承知で、その理屈をはっきり立てて、今度の承認案件ではないという方針をとられましたか。
○吉國政府委員 共同声明の具体的な内容を見せられて、相談を受けました。それはもちろん、総理以下が帰ってこられてからあとでございます。
○佐々木(良)委員 あとで相談を受けたって、北京の現地において本日から効力を発効するとなっているんだ。法制局長官ともあろうものが、そんな理屈を言ったらあかぬな。つまり、憲法に規定してあるところの国会承認の条約というのは、効力を発効する要件として国会の承認を受けろと書いてある。それはあなた、戻ってきてから、効力を発効してから相談を受けたって、そんなものどうしようもないじゃないか。
○吉國政府委員 もちろん憲法では、仰せられるように、条約の締結については国会の承認を要します。ただ時宜によりましては、事後に承認を得ることもあり得るわけでございます。今度の内容が、非常に厳密な秘密保持のうちに北京において決定せられた関係上、これは事後において私が相談を受けましたことは、手続上はやむを得ないことであったと存じます。
○佐々木(良)委員 時間がないから深追いはいたしますまい。しかし総理、御承知のように、あれは安保の行政協定のときでしたか、ずいぶん問題になりまして、そして地位協定は承認案件としたことがあったと思います。私は、議会政治というものが民主主義政治ということであれば、内容がいいから手続を省略したらいいというものでは断じてないと思うんだ。内容がいい悪いというのは主観の問題です。そして民主主義政治は手続の問題です。あなたたちも御承知のように、党内でも手続がじゃまになってじゃまになってしようがないことがあるでしょう。私も、党内でやりたいことがやれないことがたびたびある、手続がじゃまになって。だけれども、その手続が民主主義政治の根本であります限り、私は十分なる手続は踏まなければならぬものだと思います。 特に、今度の共同声明は実質的に条約と同じことだ。戦争の終了を明確にこれは宣言しておりますし、賠償請求権の放棄ということが、権利、義務に関係があるかどうかという見方は問題があるかもしれません。しかし、少なくとも日華条約の終了が今度これによって決定されるのでありますから——日華条約自身が国会で承認した事件でしょう。私はそのような意味で、ほんとうはこれは事前に国会承認をとる、そのような条約として扱われるのが本筋であったと思います。この問題については、おそらく手続論のほかに交渉のいろいろな問題があったと思います。これをやれば日華条約をどうするかという問題が、それは現実に政治の問題にもなろうしという問題もあったと思う。しかしながら、この問題はやはり私は今後重大なる悪い慣例になると思いますから、一言だけ御発言をいただきましょう。
○田中内閣総理大臣 重要な問題でございますので、本会議で申し上げておるとおりをここでもう一ぺん申し上げます。 日中共同声明は、政治的にはきわめて重要な意味を持つものでございますが、法律的合意を構成する文書ではなく、憲法にいう条約ではないので、この共同声明につき国会の承認を求める必要はないと考えたわけであります。もっとも、この日中共同声明につきましては、事柄の重要性にかんがみ、その内容については、国会において十分御審議を願う所存でございます。 こういうことでございますので、御理解をいただきたい。
○佐々木(良)委員 いまの考え方は、ほんとうは主観なんです。その主観を押しつけてはならぬ。国会承認を要する案件ではございませんので、じゃないんだ。そこに問題がある場合は、やっぱり手続を踏むことのほうがほんとうだ、こういうふうに御理解いただきたい。そして、いま与野党間の中で、国会の中でその善後処置が考えられようとしている。悪いけれども、この際にその自民党政府のしりぬぐいを国会でするなんというのは、私はほんとうにつまらぬみたいな気がするけれども、これはやっぱり始末をつけておかなければ、政府で適当のことを全部やって効力を発効してしまうという前例を残したら、これは重大だと思います。第一、日ソ共同宣言と比べてごらんになると、日ソ共同宣言にははっきりと国会承認を受けて、そのときから効力を発効すると書いてある。どうかひとつその問題については、謙虚に反省をお願いをいたしたいと思います。 日中以後のアジア外交の展開について、私は新しい立場からの方針を承りたかったわけであります。一言だけお伺いしますが、日中共同声明の七項において、お互いに覇権を求めるようなことはすまい、そして大平外務大臣はあのとき説明として、それはむしろ逆に言うならば、新しい安全保障体制を模索しつつあるということだ、こういう説明さえ私は承った気がするわけであります。そのことは、従来の東陣営の集団安全保障と西陣営の集団安全保障と、むしろそれから離れて、新しい両陣営をブリッジするような形での二国間のいろいろな不可侵条約等の構成を行ないながら、新しいブロック間の圧力をなくしようという方向を模索しようということだと私は理解したわけです。アジアの新しい平和体制という意味では、そのことはまさに私は正しいことだと思っておったわけです。 そのことと、それから愛知特使をはじめ、外務大臣自身もその後各国を歴訪されまして、日中国交の回復の問題について、関係各国に理解を求める行動をとられました。私は御苦労さんであり、いい措置だと思います。いい措置ではありますけれども、新聞の伝えるところによりますと、その理解を求められた内容は、日中国交回復は中国と日本との関係だけなんだから、したがって日本とアメリカとの関係も、東南アジアとの関係も、一切従来と同じことなんだ、日中国交だけが回復したのであって、日本と他の関係は同じことなんだということを、一生懸命説明して理解を得られたように聞こえました。それであるならば、一番問題の従来の体制の中に踏みとどまろうという内容と、それから新しい、むしろ日中和解自身が、過去の清算よりも今後の新しいアジアの平和を模索し、新しいアジアの民族の繁栄をさがそうという新しいアジア外交へのスタートの、その将来を目ざす方向と、全然違うことになりはしないかと心配したわけであります。端的に、歴訪をされて、そして理解を求めようとされた内容は何でありましたか、伺いたいと思います。
○大平国務大臣 外交をやってまいります場合に、友好国との間の理解を深めるために、あらゆる努力を惜しまない態度が望ましいと思います。とりわけ今回の日中国交の正常化という問題は、中国という大国と日本との正常化の問題でございまして、国の内外にこの両国が和解をすることによって何をしようとするのか、いま佐々木さんが御指摘のように、どういう指針でもって将来を律していこうとするのかということにつきまして、危惧の念があったと思います。また、この正常化の問題が、たいへん困難な問題であるにかかわらず、意外に短時日の間に成就したことに対して、何かこれには理由があったのではないかというような心配もあったと思うのであります。したがいまして、日本といたしましては、そういう危惧を一掃しておかなければならないと感じたわけでございます。 そこで、いま、これは文字どおり、日中間の正常化の問題でございまして、第三国のかかわりを持った問題ではございませんけれども、日中両国は共同声明にうたわれておるようなこと以外に密約はございません、この共同声明にうたわれておる文言を忠実に実行してまいる方針であるということをるる説明いたしまして、友好諸国の理解を深めてまいったわけでございます。その際、日中両国が将来、どういう指針に従って両国の関係を律してまいるかということは、共同声明にすでに明らかになっておるわけでございまして、御指摘の第七項は、その精神を明らかに内外にいたしたものであると承知いたしております。
○佐々木(良)委員 時間が来たようでありますが、もう一、二分で終わりますから御了承いただきたいと思います。 新聞の伝えるところによりますと、大体ベトナムも私は停戦に近いと思います。この委員会でも本会議でも議論が盛んに繰り返された中に、アジアにどのような不安定要因、どのような危険が存在するかというお話がありました。私は正直言いまして、すでに中ソの対立という状況のこともありまして、中ソ友好同盟条約というのは完全に空洞化しておると思います。それから、日中和解で中国、台湾という不安は解消したと思います。ベトナムの停戦でインドシナ半島が平和に向かおうとしておると思います。朝鮮半島もともかくも南北の対話が始まりつつあると思います。こういう状態は、むしろ緊張緩和としてわれわれが何とか求めて、そして新しい平和の方向に持っていきたいという念願の方向をたどっておるということであると思います。 このような状況の中で、アメリカの軍事力をほんとうにくぎづけしておかなければならぬような不安を、私はいますぐ発見することは困難だ。心配すれば切りがありませんよ。しかし、従来と比べるならば、アメリカの軍事力をいまアジアにくぎづけしておかなければならぬほどの危険というのは、だんだんと薄らぎつつあるというのが常識だろうと思います。 念のために申し上げておきますが、私は安保即時破棄論者ではありません。日米安保条約を即時破棄しようという立場ではございません。段階的解消という方法によって、いま私が言おうとしておりますものは、アメリカの軍事力をアジアにくぎづけしておく必要性ということと、安保条約の中で日本に基地を持ち、日本に駐留権を持つというこの問題との関連において、ここのところがもっと薄まらなければならないのではないかという考え方に立つわけであります。この問題についてのこれまでの議論は、オール・オア・ナッシングの話だけが行きかいしていることは、私は残念だと思います。 アメリカで御承知のように、マクガバン候補らを中心とする、まあ政治的な問題もありましょうけれども、現実にこのマクガバン候補らの国防政策委員会報告というのによりますと、いわゆる有事駐留の方向を原則として再編成して、日本、韓国、台湾、西欧諸国からのアメリカ軍の撤退ないし削減という基本方針が打ち出されて、日米安保体制の変質を考えておる方針が出されておる。いい、悪いは別ですよ。その動きがあること。それから十月六日のグリーン米国国務次官補の記者会見でも、安保という考え方は不可欠なんだけれども、それは同盟国との心理的な役割りが重要なのであって、基地駐留というそのような軍事的な要請というものは、それほど大きな意味を持たないのだということさえも言われておる。私はこの意味で——もう時間がないですから答弁要りませんから、答弁を求めればきっとぶっきらぼうな返事しかできないと思うから答弁は要らぬけれども、ほんとうに私はいま安保の、そのような意味での再検討の時期に来ておると思う。ということは、総理が言われるところの安保と基地駐留という、安保の中の基地駐留という、同じようにひっくるめて戦争抑止力にこれがなっておると言われます。戦争抑止力になっておるとするならば、そのメリットもありましょう。しかし、現実にこの基地と駐留というものが持っておる、むしろ逆の意味のデメリットの分というのが大きくなり過ぎつつある。あるいは相模補給廠の問題は御承知でしょう。私は内政上の最大の問題として、基地紛争というものが今後いろいろな形をたどるに違いないと思います。そしてそのことは、あるいはことばは悪いかもしれませんけれども、一つは、過激派にはっきりと道を開きつつあります。それからもう一つは、この問題がはっきりと日本人の感情をアメリカに対して腹立たしくさせまして、日米友好の関係の阻害要因に発展しつつあることは、いなめない事実だと私は思います。そのような基地と駐留が持っておる内政的なデメリットという問題は、いまほんとうは少々抑止力というメリットがあったとしても、相当に評価しなければならぬ問題だと思います。 さらにもう一つの問題は、先ほど言いましたように、アジアからだんだん不安定要因が解消されて、そのことは、ほんとうを言うとアメリカの引き揚げということに原因があるわけでありますが、そのことのために、いま一時的、過渡的現象と見られますけれども、韓国のあの非常戒厳令の布告の状態、それからフィリピン、タイ、インドネシア、おのおの現存政権が軍事独裁化への形をいまぐっと締めております。このことは、私はたいへん重大だと思う。このことを、それを不安定要因とごらんになるならば、平和論者ではないと思う。私は、新しい平和体制に移行しようとするためのいま過渡的な、非常に重要な、そのような、言うならば軍事独裁姿勢があらわれておるのだと思うわけです。大事なことは、日本の中にある安保体制下の基地とアメリカ軍の駐留ということが、いまのような軍事独裁体制というものの過剰な軍事的背景に移って、むしろそのことが新しい危険を生まないか、新しい危険に発展しないかということのほうを心配するわけであります。ことばが十分でないかもしれません。私は、日本を取り巻くアジアの情勢が大きく緊張緩和の方向に向かおうとする、これがほんとうの動きである。この動きに対して、これまでの政権が軍事独裁化の方向でいまぎりぎりしておること、そのことは事情としてわかるけれども、それが、これまでの安保体制という軍事的な背景を過剰にうしろだてとして行き過ぎてはならぬことです。 そのような意味において、私は、いま安保というものの中から日本の基地と駐留という問題をほんとうに考えなければならぬと思う。特に、沖繩は返還されました。したがいまして、沖繩のあの巨大な基地がそのまま日本の基地と相なっておる。この変質も考えられながら、私は、安保というものに対して、いまほんとうの意味の再検討の時期に来ておる、こう思うわけであります。十分なひとつ御検討を要望いたしまして質問を終わります。(拍手)
○坪川委員長 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。 次回は、来たる六日月曜日午後一時三十分より委員会、正午より理事会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。 午後六時一分散会