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70回国会衆議院1972/10/31

本会議 第4号

発言数
23
登壇者
9
会派数
4
開催日
1972/10/31

会議録

長谷川四郎自由民主党副議長

○副議長(長谷川四郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————  国務大臣の演説に対する質疑   (前会の続)

長谷川四郎自由民主党副議長

○副議長(長谷川四郎君) これより国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。春日一幸君。   〔春日一幸君登壇〕

春日一幸民社党

○春日一幸君 私は、民社党を代表し、総理の所信表明に対し、以下、わが国政の重要課題について政府の所信をただしたいと存じます。  いまや世界政治は、戦後二十数年にわたる東西対立時代から脱却し、新たな多極共存時代を切り開きつつあります。それは過去におけるはかり知れぬむざんな犠牲と、それに対する大きな反省に立った人類の英知によるものであることを銘記せなければなりません。  このほど田中総理が北京におもむき、日中国交正常化を実現したことは、この多極共存時代の歴史の流れに沿うものであり、これは単に日中両国のみならず、アジア並びに世界の平和の基礎を固めるものとして、まことに喜びにたえません。  しかし、この際、私が冷厳に指摘しておきたいことは、それは歴代自民党内閣の対中国敵視政策についてであります。(拍手)  わが国は、この自民党政権のあやまてる中国敵視政策に災いされて、ついこの期に至るまで、国論は対立相克の争いにかり立てられ、ために、とうとい国民のエネルギーはいたずらに浪費させられてまいりました。自民党総裁としての総理の反省はそもどのようなものか。  田中総理は去る九月北京訪問のおり、中国国民に対して、あらためて深い反省の念を表明されましたが、このことは、わが国民に向かっても同様に、従来のその政策のあやまちについて、ここにあらためてそれを反省し、陳謝なさるべきであると思うが、総理の御所見はいかがでありますか。(拍手)  次は、日中共同声明の取り扱いについて質問いたします。  私は、この共同声明は、憲法第七十三条第三項の規定に照らし、当然国会の承認を受けるべき筋合いのものであると確信いたします。なぜかなら、この共同声明の内容は、両国の長年にわたる戦争状態の終結をはじめ、両国の国交正常化、中国による対日戦争賠償請求の放棄等々、国家間の重要な外交関係を取りきめており、それは国民の権利義務に大きな影響を与える事柄を協定したものであって、明らかに条約ないし宣言に何ら異ならぬ権威を持つものであるからであります。  このような内容を持つ国家間の取りきめに対し、今回ここに国会承認を不要とする先例を開くならば、後日、国論に対立のある重要案件について、もしも政府がこの共同声明方式をとる場合、それは国会の承認を必要とする憲法上の義務規定を免責することになり、かくてはわが国政の将来に、はかり知れぬ禍根を植えることになりましょう。(拍手)田中総理が問題の本質と憲法精神を正しく理解するならば、この日中共同声明は、本臨時国会において当然承認の手続をとらざるを得ないものと思うが、何がゆえにこの憲法手続をことさらに避けるのか、総理より明確な御答弁を願います。(拍手)  次は、これからの日中関係について質問いたします。  このほど、日中関係はようやく正常化の第一歩を踏み出しましたが、その全面的解決は、まだ多岐にわたって両国政府の今後の努力にゆだねられております。  そこで、中国問題の核心である台湾問題について、田中総理がこれまでの態度を改め、共同声明の第三項において台湾の帰属を明確にしたことは、けだし賢明でありました。しかし他方、日本政府の代表として当時台湾に渡った椎名特使が、「日本と台湾との関係を維持するという中には外交関係も含まれる」と説明し、台湾問題について、たとえ一時的にせよ二面外交を行なったことは国際的背信行為であって、日本外交の権威をおびただしくそこねたものでありました。  ここに台湾問題は、あの共同声明での確認にかかわらず、中国が台湾を支配するに至っていない現状のもとでは、現実的な問題が残っておることはやむを得ないことではありますが、わが国政府としては、表現はいかがあれ、実質上、あのように復交三原則を承認した以上、今後は筋と現実との判断をあやまたず、明瞭、公正に対処することが必要であると考えます。  この見地から次の諸点を明らかにしていただきたい。  まず、台湾に対する外交関係持続の椎名特使の提言について、政府はその後これをどのように公的に処理したか。その経過と結末を明らかにいたされたい。  次は、台湾との間の貿易関係は、今後どのような方式で行なわれるのか。また、台湾に対して今後とも輸銀資金の使用は認めるのかどうか。特に在台日本人の安全と、台湾に対する政府借款、民間債権について、このような無条約状態に対応して、政府はどのような保障を取りつけておるのか。  以上の諸点を総理より具体的に御説明願いたい。  次は、一九六九年の日米共同声明による台湾条項及び日米安保条約にある極東の範囲について質問いたします。  まことに、あの日米共同声明にある台湾条項なるものは、その後における米中及び日中関係の画期的な変化によって、もはやそれは実質上空文化されたものと断ずべきであります。  よって、政府は、関係国間の無用の疑念を晴らし、かつはその体制上の矛盾を解消するために、この際、台湾条項はすでに消滅したものであることを内外に明らかにすべきであって、いまさらこれをあれこれと遁辞をもてあそぶ筋合いのものではありません。  さらに、日米安保にいう極東条項に対する政府の統一見解によれば、その対象地域には共産諸国の領域は含まないことを明らかにしております。したがって、今般田中内閣が台湾を中国の領土の一部として認めた以上、政府はこの一貫性を貫くためにも、もはや台湾は極東の範囲から除外せなければなりません。これは日中関係の総合的解決を進める上において不可欠の要件であり、それはわが国政府の見解表明によって処理可能な問題でありますから、この際田中総理は決断をもって、率直な見解を明らかにすべきであると思うが、いかがでありますか。ここにあらためて総理の御答弁を求めます。  次は、日中平和条約の締結のあり方について質問いたします。  共同声明第八項にいう平和友好条約の締結は、およそいつをめどに締結する方針か、またその内容はおおむねどのようなものを構想されておるか。ここに国際政治は日々に大きな変化を続け、わが国が共産諸国との間にも安全保障の体制を確立するであろうことは、もはや今日的課題として提起されております。したがって、中国との平和友好条約には、当然相互不可侵、並びに戦争排除に対する相互協力が盛り込まれなければならないと考えるが、これに対する田中総理並びに大平外務大臣の御所見を承りたい。  次は、日中復交後における日本の平和路線と南北問題を含むアジアの平和体制について質問いたします。  あの凄惨な朝鮮戦争とベトナム戦争、これは自由陣営にも共産陣営にも貴重な教訓を与えました。すなわち、力の政策によっては恒久の平和は確立し得ないものであることを、東西南北いずれの陣営もともに体験を積んで、それを切実に学びとったのであります。  わが国もこの新しい時代の展開に対応し、みずからも平和に徹して、アジアの平和体制確立のために身をもって貢献せなければなりません。われわれはその具体化のために、すみやかに日米安保条約の改正とともに、ソ連、中国との平和友好条約を締結し、この多角的二国間安全保障体制を軸に、南北朝鮮の同時国連加盟を推進し、これらを基盤に、アジア全体にまたがる集団安全保障体制の建設に取り組むべきであると考えます。  なおまた、ベトナム和平の実現はもはや決定的な段階と見受けられますが、その和平を恒久的な平和に固めるためには、インドシナ半島の経済復興が急速にかつ的確に行なわれなければなりません。よって、わが国は和平後の現地に国際的な連帯によるインドシナ半島経済復興基金の創設を提唱し、この際、みずからこれに積極的に協力する姿勢を内外に明らかにする必要があると思います。  以上、多角的二国間安全保障体制への移行とインドシナ半島復興のための協力体制に関するこれらの構想について、総理の御見解を伺いたいと存じます。  次は、日米安保条約に対する今後の対処方針について質問いたします。私は、率直に言って、去る九月の日米首脳会談の結果に対して大きな失望を感じました。なぜかなら、田中総理は、あのようなせっかくの機会に、日米関係の新たな発展について何ら具体的な提案をしなかったばかりでなく、逆に、時代錯誤にも、安保堅持を事あらためて再確認して帰ってきたからであります。  申すまでもなく、今日の日米安保条約は、その歴史的経緯に明らかなとおり、それは東西対立の申し子として生まれたものであり、そしてそれは朝鮮戦争、ベトナム戦争、台湾をめぐる衝突の危機という極東における三つの緊張、これを背景としてその存在の意義を持ったものでありました。しかし、現在の国際情勢は、中国の国連復帰、米中の対立緩和、米ソ共存の前進、さらには日中正常化の実現に加え、さらに極東における緊張もそれぞれ平和的解決の方向にあって、日米安保条約を生み出したことごとくの要因は、おおむね解消の方向に転じております。ここに、日本がアジアの指導国として積極的に平和を開拓しようとするならば、みずからリーダーシップを堅持して、まず日米安保体制の現状から冷戦の遺物を除去することがその前提であります。総理は、この際、かのニクソン訪中における日本軽視の頭越し外交に見せつけられた米国の仕打ちを想起する必要がありましょう。政府は、これまでの行きがかりにとらわれず、率直に今日の国際情勢の動向と日米関係の将来を展望し、いまこそ極東条項の削除と駐留なき安保に向かって、この日米安保体制を質的に転換させるため、決断をもって対米交渉に取り組むべきであると思うが、総理の御見解はいかがでありますか。(拍手)  次は、日本の防衛力のあり方について質問いたします。  昨日の野党質問に対する総理の答弁を聞けば、それは、国家の安全をはかり、国防の大事をおもんぱかる者はわれ一人と言わんばかりのいたけだかなものでありました。  同時に、われわれにとって看過し得ない点は、憲法と防衛の関係に触れた答弁において、「日本の現行憲法のように世界に類例のないものをつくろうという考え方はわれわれの考え方とは合わない」と述べたことは、総理が憲法否定の姿勢を国会の場で明らかにしたものであって、きわめて重大であります。(拍手)総理はこの言明に責任を持つか、ここにあらためて御答弁を求めます。  まことに、総理のそのような態度とそのような絶唱が、やがて国土を焦土と化し、国民を敗残の廃墟の中にたたき込んだあの第二次大戦の歴史を忘れてはなりません。原爆で爆砕された唯一の被爆民族が、新生日本の誓いとして悲願を込めて宣言したものが実にわが平和憲法第九条の規定にほかなりません。  独立国に自衛権があり、国に自衛の責務のあることは当然であります。そのゆえにこそ、われわれは、国際平和を誠実に希求する中でわが国の安全をいかに保つべきかについてあらゆる角度から検討し、その対策に肝胆を砕いておるのであります。  総理は、昨日、GNPに対する防衛費の負担割合を、ニュージーランド、豪州、スイス、北欧三国などに比較して引例されましたが、これらの諸国は、人口とともにそのGNPは少ないのでありますから、そこで一かどの自衛力を整える場合、その防衛負担率が割り高になることは当然であります。そのような国柄の比率を、人口一億五百万、GNP八十一兆一千四百二十億のボリュームを持つわが国の比率に比べて論ずるがごときは、まさに数字をあやつって錯覚を誘う悪質きわまる詭弁であって、それは誠実な政策論議とは申されません。(拍手)  このほど、田中総理は記者会見で、GNP一%による防衛構想を述べられましたが、もしもこのような田中構想で防衛費が確保されるならば、それは五年後には年額一兆五千億円に達し、十年後にはGNPの伸長に従って年額三兆円を上回る膨大なものに膨張いたします。かくて、これは間違いなく軍事大国へ突入する道を開くことになりましょう。いま、国民が憂慮し、また世界の各国が、わけてもアジアの周辺諸国が警戒しておることは、日本の防衛力が経済拡大のテンポに合わせて、実にそのように急速に拡大していくことについてであります。  今日の国際情勢は、かねて防衛庁自身が指摘しているごとく、それは、当面日本が侵略される実体的脅威はなく、また近い将来もそのようなことは考えられないという方向にありまするとき、ここに政府が明らかにすべき防衛の課題は、それは平時における自衛力の限界と、平時における自衛隊の任務についてでなければなりません。  私は、この見地に立って、次の諸点について総理の見解を承りたい。  第一に、日本の防衛力の規模は、当分の間第三次防衛力の規模にとどめておくこと。  第二に、防衛の基本的立場を、戦略守勢の防御ではなく、厳に専守防御に徹すること。  第三に、防衛に対するシビリアンコントロールを確保するため、政府は、国会の中に防衛問題を審議する常任委員会の設置について前向きの姿勢を示すとともに、現在の国防会議を国家安全保障会議とし、広く国民の総意が反映できるようにその体制を確立すること。  第四に、長期防衛計画については独立議案として、これを国会の承認事項とすること。  第五に、自衛隊は平時においても建設的機能を保持することとし、よって自衛隊法を改正し、災害、国土開発、公害の除去等の任務をもその基本の一つに加えること。  以上であります。  まことに、国民の意思に根ざさざるいかなる防衛体制も、それは張り子のトラにすぎません。政府は、この際、四次防計画を白紙に戻すとともに、前述の諸点を考慮して、今後の防衛計画をあらためて立て直すべきであると思うが、これに対する総理の御所見を承りたい。(拍手)  次に、アメリカ軍戦闘車両の国内道路通行問題について質問いたします。  ここに車両制限令が道路の使用について一定の制限を行なっておりまするのは、それはもっぱら道路の構造上の理由によるものであります。しかるに、道路を破壊するおそれのあるものとして、道路保全の必要上特に法的な制限を加えていたものに対し、一たび米軍の要請を受けるや、一夜にして法の改正を行なってその制限を撤廃するというがごときは、無原則、無定見もはなはだしきものであって、かくては、法の権威と法の秩序はこの先一体どうなることでありましょう。国民はあ然として、むしろ二の句の継げない思いにあります。事情はいかがあれ、これぞ権力者が権力姿勢をむき出しにあらわしたものであって、かつは、これが対米追随主義、戦争政策への加担を如実に示すものであるだけに、国民は、このような政府の独断に対して大きな憤りとともに、独裁政治に対する警戒の念を一斉に抱き始めております。  言うまでもなく、民主政治の体制のもとにあっては、目的とともにその手段は、これまた同様に大切なものとされております。目的を遂行するために手段を選ばなかった数多くの独裁者たちが、やがてその国家と国民をどのようにして荒廃せしめたか、田中総理はこの際、権力主義独裁政治の歴史とその末路をあらためて想起する必要がありましよう。  かつて、庶民出身のヒトラー伍長は、いつしか総統の地位についたが、やがて独裁者となり、彼もまた決断と実行を誇示することによって権力政治に暴走し、ついにあのような結末を遂げました。  貴下は、絶対多数を背景にして、いまや国家権力のことごとくをその一手に掌握し、ますます決断と実行を豪語しておられます。まことに不安にたえません。  総理の議会制民主政治に対する理念、法秩序に対する認識はどのようなものか。この際、車両制限令の改正を突如断行した事情とあわせて、民主政治の基本について、総理の信念のほどを明らかにいたされたいと存じます。(拍手)  次は、内政問題について質問いたします。  総理は、その所信表明において、政治家の条件に触れ、「政治家は、国民にテーマを示して具体的な目標を明らかにし、期限を示して政策の実現に全力を傾けるべきである」と述べられました。まことに同感であります。  しかし、過去二十数年にわたる自民党政治の実体は、この提言とは全く正反対のものでありました。すなわち、長年にわたる中国敵視政策、国際政治の新しい展開を無視した日米安保体制の堅持、さらには、人間軽視の経済優先政策などなど、まさにこれらはその象徴にほかなりません。かくて国民は、目標のない政治、有言不実行の政治に失望し、今日のぬぐいがたい政治不信の世相を招来いたしました。  ここに私が望むところは、今後総理は、その言明のとおりに、一日先見の明あって、国政の進路に誤りなき目標を設定されまするように、また、その実行にあたっては、特にタイミングを逸せられることのないように、まず冒頭にこのことを御忠告しておきます。  さて、自民党歴代内閣の高度成長政策一直線によって、わが国はいつしか経済大国を誇ることになりましたが、その反面、公害、自然破壊、物価の上昇、地価の暴騰、住宅難、交通禍、過密過疎、外貨の急増と円の切り上げ、社会資本・社会保障の立ちおくれなど、その政治悪のヘドロは、いまや国民生活の身辺にうずたかく堆積し、かくて、産業のすさまじい繁栄のもとで、国民は弱々しく衰弱していこうとしております。このことは、成長は必ずしも福祉につながらないものであることの実証であります。  今日、わが国政に掲げられる政治指標は、それは経済成長主義から脱却して福祉至上主義へ転換し、この路線を直進することにありと思うが、総理の見解はいかがでありますか。  なお、この際、特に指摘しておきたいことは、ここ十数年にわたる貴下の刮目すべきその行政実績についてであります。すなわち、あなたは、高度成長、輸出ドライブの全期間を通じて、池田内閣の政調会長、そして蔵相、続いて佐藤内閣の蔵相となり、その後、党の幹事長をしばしば歴任し、また、通産相の重責をになうなど、それは、自民党政策を立案し、それを推進してきた自由民主党の中心人物であられました。  総理は、その「日本列島改造論」の中で、生活と環境の問題点を次々に列挙して、その改造を必要とする理由を得々として強調されておりますが、なるほど、その一つ一つは、いわく「人口の三二%が国土の一%に集中した」いわく「許容量を越える東京の大気汚染」いわく「時速九キロのくるま社会」いわく「五時間で焼けつくす東京の下町」いわく「生活を脅かす大都市の地価と物価」「一人当たり四畳半の住宅」「過疎と出かせぎでくずれゆく地域社会」などなど、まことにそれは、はだにあわを生ずるほどのそらおそろしき指摘であります。  しかしながら、そのように改造せなければならぬごてごての日本列島にした者は一体だれか。(拍手)貴下はみずからの業績を深く顧みて、みずから苛責するところはありませんか。総理は、厳粛に過去を振り返り、今後に臨むその政策の基本について、この際、反省とともに、あらためて国民に語るところがなければならぬと思うが、これらの諸点について総理の御所見を承りたい。(拍手)  次は、日本改造のビジョンについて質問いたします。  われわれの目ざす国家目標は、軍事大国にあらずして福祉日本の建設にあり、それは健康と暮らしを守る国づくりにほかなりません。したがって、政府は、この際、意識と発想の転換を行ない、福祉日本建設の具体策を策定し、福祉大国への総路線を明示することが、新内閣に与えられた最高の使命ではないかと考えます。  しかるに、田中首相は、あのような日本列島改造論を振りかざし、依然として高度成長路線に拍車をかけようといたしております。すなわち、その改造論では、「福祉は天から降ってくるものではない」という殺し文句で、今後の十年間、年率一〇%の経済成長を想定し、粗鋼は現在の二倍以上、石油精製は四倍、石油化学も四倍、製造業全体の生産規模は現在の四倍以上という、超高度成長を構想し、これに合わせて、表日本と裏日本を縦横に貫く全国新幹線鉄道と、同じく縦貫と輪切りの高速道路の建設、無数の連絡橋と、ダム一千カ所の建設、国際空港、地方空港の拡大整備など、それは産業基盤の大拡張を目ざして、世紀の大土木工事を手当たり次第に計画しておるのであります。  もしも改造論がそのように実施されることになるならば、公害はさらに濃度を加えて、全国的規模で拡散することにはならないか。地価の暴騰、インフレの暴発によって、生活と福祉がいよいよ痛めつけられることにはならないか。さらには、中央集権が強化されて、地方自治が圧殺されるような心配はないか。改造論は、これら国民の不安に対して何ら保障するところがありません。  総理は、一体、経済成長の限界をどこに押える方針か。わけても、産業が生み出す成長の代価としてのさまざまな反福祉、これに対していかなる防除対策を考えておるか。  かつて、マンモスはその巨体を維持し得なくなって死滅しました。また、この先ともにこの現状が続けられるならば、全東京の植物は向こう三十年以内にことごとく枯れ果てるであろうと説かれております。総理は、これらの諸情勢に対して、問題意識はあっても、危機意識がない。  以上の諸点について、この際、総理より明確なる御答弁を願いたい。  さて、日本国憲法は、国民の生存権を保障し、そのための国の社会的使命と政治的義務を規定いたしております。すなわち、人間尊重の政治こそが憲法政治であり、人間疎外の政治は、それは明らかに憲法違反の政治であります。  民社党は、このような観点から、社会改革のビジョンとして、ここに、日本列島改造論に対置する国民福祉四倍増五カ年計画を策定いたしましたが、以下、その関連において、政府の見解をただしたいと存じます。  第一に、無公害社会の建設について質問いたします。  企業成長と公害の発生は、一卵性双生児のごときものであるといわれております。今年六月、ストックホルムで開かれた国連人間環境会議が採択した人間環境宣言こそは、今日の新しい価値観を明確にし、ここに人間が人類史上画期的な意識の転換を行なったものであります。まことに公害先進国のレッテルを張られているわが国は、いまこそ従来のあり方を深く反省せなければなりません。  公害を除去し、環境を保全する上において何よりも肝心なことは、それは公害発生者の責任を徹底的に追求し、公害防止費用発生者負担原則を確立することであり、その完ぺきを期するため、この際公害発生者無過失損害賠償責任制度を立法化して、公害の未然防止と事後救済の措置の完ぺきを期することが、今日の急務であると考えます。  なお、公害防止施設に対しては、税制上、金融上の特別措置を拡充するとともに、また公害検診と公害病患者の救済については、あわせて万全の施策を講ずべきであると思うが、政府の見解はいかがでありますか、総理より御答弁を願います。  第二に、土地政策について質問をいたします。  土地は、人間が生活を営む上で不可欠の基礎であり、言うまでもなく、それは国土そのものであり、実に地球の一部であります。したがって、土地は、人間生活の共同の基盤として全人類が利用するためのものであって、個人がほしいままに所有ずるためのものではありません。国の土地政策は、この観念に基づいて実行せらるべきものと考えます。  ここに明治二年一月元旦、薩長土肥の四藩主は、時の朝廷に向かってみずから版籍の奉還を行ないましたが、その建白書は、土地所有権のあり方を論じ、「其ノ与フ可キハ之ヲ与ヘ、其ノ奪フ可キハコレヲ奪ヒ」とし、さらに、「列藩ノ封土悉ク収メテコレヲ改メ定ムベシ」と、土地利用の公理に徹した建議を行なっておりますが、これこそは土地政策の核心を的確に指摘したものと申さねばなりません。  以上の理念に立って、わが党は、次のような土地政策を緊急に実施する必要があると考えます。  その第一は、地価規制法を制定して、地価を現状で凍結し、今後この凍結地価をこえる売買は認めないこととすること。  第二は、土地利用基本法を制定して、全国的な国土開発、環境保全の基本計画と、これに見合った都道府県、市町村ごとの土地利用計画をおよそ向こう三年以内に策定すること。  その三は、土地利用公社を設けて、土地はこの機関が所有者から買い受けて、これを需要者に売り渡すこととすること。  その四は、土地の有効な利用を促進するため、固定資産税による課税の適正化をはかるとともに、貸しもせず、売りもせぬあき地に対しては空閑地税を創設して、土地の投機的保有を抑止すること。  その五は、譲渡所得に対しては高率の土地増価税を課し、もって土地所有による一切の不労所得は国に吸収することにするなどであります。  以上の土地政策は、現に日本列島改造論の刺激を受けて奔騰しつつある土地ブームを鎮静させるためにも、すみやかに実施を要する緊急課題であると思うが、政府の御所見はいかがでありますか、総理より御答弁を願います。(拍手)  第三に、物価対策について質問いたします。  消費者物価の安定は、福祉大国建設の重要な柱であります。今後日本列島改造論がもしもそのように実施されていくならば、それは投資が投資を呼んで、デマンドプルインフレーションを引き起こし、かくて、忍び寄るインフレは、かけ足のインフレに暴発することになるであろうことが警戒されております。  われわれはこのことを念頭に据えて、この際何はともあれ、物価を抑制するために、管理価格の規制、輸入政策の積極的活用、生鮮食品の流通機構の近代化、公共料金の抑制など、まず政府の意思で実行可能なものから着実に実行をすべきであると思うが、これに対する政府の決意と、その具体策を明らかにいたされたい。  第四に、社会保障の拡充について質問いたします。  わが国の社会保障給付費は、昨日来述べられておりまするとおり、主要国と比較すると二分の一ないし三分の一以下という低位にありまして、それははなはだしき立ちおくれを来たしております。それは実に自民党歴代内閣に、社会保障に対する熱意が欠如していたからにほかなりません。この際、政府は、各種社会保障施設の画期的な拡充をはかるとともに、特に、老後の保障に対する国の施策をすみやかに充実せなければなりません。老後の生活に確固たる保障を立てることは、それは期せずして今日の生活を穏やかにすることになり、かくて、おのずから社会的モラルも確立されることになりましょう。今日ほど社会モラルの退廃した時代はないとさえ嘆かれております。われわれは、六十歳に達したすべての国民が老年生活を豊かに過ごすことのできますよう、厚生年金は五年後には月額七万円を、国民年金は五万円、老齢福祉年金は三万円をそれぞれ給付できるよう、国は五カ年計画を立て、万難を排してこれを実現させるべきであると考えるが、政府の御方針はいかがでありますか、総理より御答弁を願います。  第五に、租税政策について質問いたします。  およそ税金は、国民の生活実費から収奪してはいけません。したがって、所得税は、当面、四人世帯の課税最低限百三十万円をめどに大幅減税を行ない、住民税も、所得税並みにその課税最低限を引き上げるべきであります。さらに、個人企業の事業主報酬経費算入制度は、すでに十分論議の熟した問題でありますから、これは来年度の税制改正において、ぜひとも実現せらるべきであります。なお、付加価値税の創設については、それは物価の値上がりに直結するのみならず、徴税上それは過酷な傾向に走るおそれのあるものでありますから、これは断じて押しとどめなければなりません。  以上、租税政策に対するわが党の見解に対し、総理より御答弁を願います。  第六に、国際収支に関する円対策について質問いたします。  わが国は、昨年十二月、いわゆるスミソニアン体制で二八・八八%と大幅に円を切り上げたにもかかわらず、現実の問題として、日本の対外不均衡はいまに至るも是正されてはおりません。いまにしてわが国は早急に思い切った黒字減らし対策を断行しないならば、円の再切り上げはとうてい避けがたく、かくては、これによってこうむる国家の損失と国民の犠牲、わけても中小企業輸出関係者の被害は、筆舌に絶するほどの大きなものとなりましょう。政府は、このたび輸出貿易管理令の発動、関税率の引き下げ等を柱とする第三次円対策を決定されたのでありますが、これにより、はたしてこの円の再切り上げの危機を乗り切れるかどうか疑問であります。政府の見通しとその確信はどのようなものか、この際、総理より御答弁を願います。  最後に、衆議院の解散、総選挙について総理の所見を伺います。  民主政治は、国民の、国民による、国民のための政治であるといわれております。田中内閣は、この七月に佐藤内閣から政権を引き継がれましたが、それは事実上、自民党の密室の中で、党内派閥間の取引でその首班が交代したにすぎないものであって、肝心の主権者国民は、まだ新内閣に対し何のつながりも持っておりません。したがって、田中内閣は、この際民主政治の原理とそのルールに従って、すみやかに国会を解散して国民の審判を求めるべきであります。  しかるに田中首相は、政治の空白に籍口して、本日までしばしば解散、総選挙を回避するがごとき言辞を用いられてまいりました。まことにそれは権力に満ち足りた権力者の姿勢であり、民主政治の尊厳と議会政治のルールを無視するもはなはだしきものと申さなければなりません。総選挙こそは国民が国政に参加する唯一の機会であり、それが民主政治の真髄であって、これを政治の空白呼ばわりするがごときは、まさにおごり高ぶる者の暴言であります。(拍手)  かつて、ポルトガルのサラザール首相は、チープガバメントと称して議会の論議をいとい、長期にわたって国会を召集せず、また戦時中におけるかの翼賛内閣は、議員の任期を延長してまで国民の国政論議を封殺して、その行政権をほしいままにいたしました。  私は、ここに庶民宰相として期待されたあなたが、もしも庶民の性格と節度を失うならば、あとに残るものはただ権力の骸骨だけになるであろうことを、あえて警告しないではおられません。  総理の御所見はいかがでありますか、あらためていさぎよき決断を期待して、私の質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕

田中角榮自由民主党内閣総理大臣

○内閣総理大臣(田中角榮君) お答えをいたします。  日中正常化についてまずお答えをいたします。  日中関係の正常化が実現をしたことは、アジアのみならず、世界の平和の基礎を固めるものとして画期的なできごとでございます。そのため、多年にわたり努力をしてこられた多くの方々に、重ねて衷心より敬意を表するものでございます。  日中国交正常化の実現は、内外においてその機が熟した結果、両国が合意に達し得たものと考えております。私は、中国と密度の濃い対話を維持して、せっかく実現を見た正常化を、日中両国民の安寧のために、また広くアジア全域の安定のために活用するつもりでございます。  日中共同声明は、国会の承認を求めるべきだという御議論でございますが、先般の日中共同声明は、政治的にはきわめて重要な意味を持つものでございますが、法律的合意を構成する文書ではなく、憲法にいう条約ではないわけでありまして、この共同声明につき、国会の承認を求める必要はないのでございます。もっとも、この日中共同声明につきましては、事柄の重要性にかんがみ、その内容につきましては、国会において十分御審議をいただきたいと考えております。  台湾に対する外交関係。椎名特使の提言、貿易関係、輸銀資金の使用の問題、在台邦人、政府借款等々についてでございます。  まず、台湾とわが国との関係について椎名特使の発言は、自由民主党日中国交正常化協議会の審議内容とその決議に基づいて、同特使の見解を説明したものでございます。日中国交正常化の結果、台湾とわが国との外交関係は維持できなくなりましたが、政府といたしましては、台湾とわが国との間で民間レベルにおける人の往来、貿易、経済関係はじめ各種の交流が、今後とも支障なく継続されていくよう配慮したいと考えております。  延べ払い輸出に対する輸銀融資につきましては、具体的案件に即し慎重に勘案しつつ処理をいたしたいと考えます。  各種の民間交流が続く限り、御質問の各種債権を含め、台湾に在留する邦人の生命、財産等が保護されるよう、できる限り配慮を尽くしてまいります。  それから、台湾条項の消滅、台湾を極東の範囲から除外せよ、駐留なき安保というような問題について、お答えを申し上げます。  今回の日中国交正常化は、安保条約に触れることなく達成をされたものでありますので、台湾が極東の範囲に入ることについては従前どおりであります。しかし、米中間の対話が始まり、台湾をめぐる情勢は質的な変化を遂げ、米中間の武力紛争は考えられない事態になっております。したがって現状のままで問題はありません。日米共同声明のいわゆる台湾条項についても同様でございます。  他方、駐留なき安保に向かって条約を改正してはどうかとの提案がございますが、駐留しておることがわが国の安全保障のため必要な抑止力を構成しておると判断をされますので、かかる効果を失わしめるような提案には、遺憾ながら賛成いたしかねます。  平和条約はいつ締結するのかという問題について、お答えをいたします。  日中平和友好条約は、所要な準備を経て交渉に入りたいと考えております。平和友好条約の具体的内容について予測する段階ではございませんが、その基本的な性格は、将来長きにわたる両国間の平和友好関係を律するような前向きのものとすべきであるというのが、日中双方の一致した見解でございます。  アジア集団安全保障の体制の推進、インドシナ半島経済復興基金の創設に対して御発言がございましたが、アジア集団安全保障体制の建設に取り組むべしという構想、ソ連のブレジネフ提案があると承知をいたしておるのでございますが、諸般の情勢から各国の反応もまちまちであると承知をいたしております。すなわち、まだ機が熟していないというのが現実だろうと思うわけでございます。  インドシナ半島経済復興基金の創設ということにつきましては、御意見として承っておきたいと存じます。  それから、きのうの機内議員に対する答弁につきまして、私の真意に対する御質問がございましたが、私も速記録を見てみまして、十分私の真意を伝えていないような点もございますので、ここにあらためて考え方を申し述べます。  世界に類例のないわが国憲法の平和主義を堅持してまいりますことは、申すまでもないことでございます。その前提には変わりはないのでありますが、無防備中立の考え方と、最小限必要な自衛力を持つという私どもの考え方とは合わないのであります。(拍手)この際、明確にいたしておきます。  第四次防計画を白紙に戻せ等の問題を中心にして、防衛の問題、基本的な立場、戦略守勢の防御ではなく専守防御に徹せよ、シビリアンコントロール、国家安全保障会議への改組、長期防衛計画は国会で承認案件にしてはどうかというような問題にあわせ、国土開発、公害の除去等の任務を加えてはどうかという問題でございますが、その前提となっております安全保障条約の改廃の問題について申し上げますと、これは申し上げるまでもないことでございますが、独立国である以上、独立を保持し、その国民の生命財産を確保してまいるためには防衛力を持たなければならないということは、論のないところでございます。理想的には、国連を中心にした集団安全保障体制が確立することが望ましいことでございます。しかし、現実の状態を見ますと、この機構は完備せられておりません。スエズが閉ざされても、これを開放する力もありませんし、御承知のアラブとイスラエルが毎日報復爆撃をやっておっても、これをとめることのできないような状態においては、最小限自分で自分を守るだけのことはしなければならぬのであります。(拍手)  そういう意味で、最小限度の防衛力を保持するということは当然のことでございますが、しかし、もう一つの理想的な姿としては、自分だけで守るか、複数以上の集団安全保障の道をとるかということでございますが、これは東側、西側を問わず、自分だけで守ろうという国はないのであります。みんな複数以上で集団安全保障体制をとっております。日本だけがその例外になろうということは、それはできません。そういう意味で、国民の生命と財産を守らなければならない、しかし国民負担は最小限度で理想的な防衛体制でなければならないというと、どうしても日米安全保障条約が必要になることは、過去四半世紀近い歴史に明らかなところでございます。(拍手)そういう意味で、いま日中の国交が正常化をしたとか、アジアの緊張が緩和の方向にあるからといって、日米安全保障条約そのものを廃止するがようなことは、とうてい考えられないことでございます。(拍手)  それから、四次防を持ったことによって日本が軍事大国になるのではないかというような考えは全く持っておりませんし、そのようなおそれは全くありません。きのう各国の比較を申し述べたことでも十分御承知がいただけると思うのでございます。  それから、専守防衛ないし専守防御というのは、防衛上の必要からも相手の基地を攻撃することなく、もっぱらわが国土及びその周辺において防衛を行なうということでございまして、これはわが国防衛の基本的な方針であり、この考え方を変えるということは全くありません。なお戦略守勢も、軍事的な用語としては、この専守防衛と同様の意味のものであります。積極的な意味を持つかのように誤解されない——専守防衛と同様の意味を持つものでございます。  それで、シビリアンコントロールの考えということでございますが、これは国会に存在すると考えますので、安全保障を所管する常任委員会が設けられることが望ましいことだと考えておるのでございます。  それから、国防会議を国家安全保障会議に改組する考えはないかということでございますが、現在考えておりません。第四次防のような長期防衛力整備計画は国防会議にはからなければならないことになっております。これは、国会の議決を要する事項とするよりも、行政府の責任において策定することとしたほうが適当であるという考え方を持っておるのでございます。国会においては、国政調査の対象として判断を仰いでいくことが適当だと考えるわけでございます。  それから、自衛隊法に、自衛隊の従たる任務として災害派遣、土木工事の受託等の民生協力を行なうこととされております。先般決定された「四次防の主要項目」においても、「部隊の施設作業能力を増強して災害派遣その他の民生協力のための活動を積極的に実施する」ことが明記されておるわけでございます。  車両制限令の問題で、独断専行的なことにならないかという、たいへん御同情のある御発言でございますが、そういう心配はございません。車両制限令という問題は、これは道路構造を前提として、道路管理者は全く事務的に許可をしなければならぬのであります。あの道路を長い鉄材を積んで走るトラックに対しては、警察に届け出れば、赤い布をつけて、一般の交通に支障のないようににしなさいよといって、自動的にこれは認可されるのであります。にもかかわらず、今度の車両の問題については、道路の構造以外の理由によって許可が与えられないという事態が起こったのであります。それは、私が申し上げるまでもなく、そのような事態を放置せば、条約による日本政府の任務さえも遂行できないということになるわけでございまして、その意味で、車両制限令の問題が解決をせられなければならないようになったことは、十分御承知のはずでございます。そういう意味で、この問題はこの問題として御理解を賜わりたいと存ずるわけでございます。  しかし、わが国の議会制民主政治は、敗戦という高価な代償の上に育ち、四半世紀の実績の上に定着をいたしております。政治は国民全体のものでございまして、七〇年代のどの課題をとっても、国民の参加と協力なくして解決できるものはないのでございます。その意味で、民主政治を大事に育てて後代の人々に引き継いでまいりたい、こう念じておるのが私の基本的な姿勢でございます。(拍手)  経済運営の基本的な方向、また日本列島の改造のビジョン等についての言及がございましたが、明治初年から百年、百年間は、非常に低い国民所得、国民総生産の状態から、どんどんと国民総生産が拡大する状況になってまいりました。しかも、戦争が終幕をする事態においては、非常に困難な状態に立ち至ったわけでございますが、しかし、その後四半世紀の間に今日の経済繁栄をもたらしました。そうして日本人がまず考えなければならぬのは、国民総生産を上げて国民所得をいかにして向上させるかということでございます。三十年代にこの議場で、八千円の最低賃金を確保するためにどうしなければならぬかということを真剣に議論したことを考えれば、まさに今昔の感にたえないではありませんか。  われわれはその意味で、まず、先進工業国であるヨーロッパ諸国と比肩するような国民所得を確保することができました。しかし、その第一の目標である、ヨーロッパ諸国と同じような国民所得を確保することはできたにしても、それは都市集中という一つの姿において基盤が確保されたのであります。しかし、その都市集中が前提である限り、公害の問題が起こってまいりました。地価の問題が起こってまいりました。物価の高騰の問題が起こってまいりました。水の不足が起こってまいりました。交通を確保するためにも、税金の大きな部分をさかなければならないような事態が起こってまいったわけでございます。そこで、ここで第二のスタートを要求されるような事態になったわけでございます。それは申すまでもなく、明治二百年展望に立って、われわれは新しい視野と立場と角度から、日本の新しい政策を必要とするという事態になっておるのであります。(拍手)  その意味で、生産第一主義から生活中心主義へ転換をしなければなりません。公害を伴う重化学工業から知識集約的な産業へと転換をしていかなければならないのであります。そういう努力をしなければならない。また、その努力をすれば、いまわれわれが求めておる問題は解決できるのでございます。それが日本列島改造というテーマでございます。国民皆さんの前にこの問題を提案をして、そして、まず第一番目の国民所得の向上はできましたから、社会資本の拡充を行ない、生活環境を整備し、その土台の上に長期的な日本の社会保障計画を積み重ねようというのが、政治の理想でなくて何でございましょう。(拍手)  そういう立場で、日本列島改造案を提案をしておるのでございますから、新しい経済運営の基本は、成長活用型となり、社会保障を中心とした生活重点的なものに切りかえられていくことで、御了解を賜わりたいと存じます。  また、御質問の無公害社会の建設について申し上げます。  無公害社会の建設は、日本列島改造の目的の一つでございます。公害規制の強化、公害防止技術の開発、工業の全国的再配置、いわゆる工場法の制定等を行なうとともに、産業構造の知識集約化を進めることによって、公害のない成長を確保してまいろうと考えておるのでございます。また、損害賠償保障制度の創設につきましては、公害被害者に救済の実効を期してまいりたいと存じます。  それから土地問題の解決についてでございますが、これは春日さんも申されたとおり、土地の供給量、絶対量を増さなければならないのでございまして、土地需要の平準化をはかることと、全国的視野に立った土地の利用計画をつくってまいらなければなりません。知事及び市町村長を中心とした国土の利用基本法のごときものを早急につくらなければならないと考えております。通常国会には成案を得て御審議をいただきたいのでございますが、皆さんからも適切なる御意見があったら寄せられんことを期待いたします。(拍手)  なお、この基本政策に加えて、投機的な土地の取引を抑制するため、取引の規制、税の活用等についても引き続き検討してまいりたいと存じます。  物価対策について申し上げます。  物価の安定は、国民生活の向上と安定のため、基本的課題でございます。しかし、きのうも申し上げましたとおり、物価は議論の中からだけでは抑制できないのであります。物価というものはどういうことによって起こるかというと、一つには、国民の半分も三分の二もが小さなところに過度に集中をすると公害が起こると同じように、物価問題が不可避の問題として起こるのであります。(発言する者あり)もう一つは、低生産性部門の給与が、高い生産性部門の工業と同じように一律的にアップされるところに、物価は押し上げられるのでございます。その意味で、列島改造によることと、低生産性部門の構造改善、流通機構の近代化、輸入の促進、競争条件の整備等、各般の施策を広範に行なうことによって物価を解決してまいろうと考えております。  社会保障につきましては、先ほども申し上げましたとおり、長期経済計画を立てるときには、その中に長期社会福祉計画もあわせてつくらなければならないと考えております。急速に高齢化社会を迎えておりますので、老人対策は内政上重要な問題でございます。中でも年金制度につきましては、先般公にされた審議会の意見に沿って、年金額の大幅な引き上げを行なってまいりたいと考えます。  年金の充実について長期計画を立てよということでございましたが、先ほど申し上げましたとおり、これからは社会保障に対しても長期計画、また年金に対しても長期計画を考えなければならないと思いますので、十分検討させていただきたいと存じます。  租税政策に対して御提案がございました。夫婦子供二人を給与所得者の場合百三十万円まで免税にしたらどうかということでございます。百三十万円というと、一番高いのが、アメリカの百三十二万四千円というのが、日本よりも高いのでございます。日本は現在は百三万七千円までとなっております。英国においては七十九万九千円、西ドイツにおいては七十七万二千円、フランスは百三万六千円でございますので、その限りにおいてはヨーロッパ三国を上回ってはおりますが、アメリカよりもまだまだ三十万円も少ないわけでございますから、できるだけ所要の調整を加えてまいらなければならない、こう考えます。(「それを数字のごまかしというんだ」と呼ぶ者あり)これは、数字はことしの数字でございますから、数字にごまかしはありません。(拍手)  事業主報酬の問題は、法人企業、個人企業、サラリーマンの税負担のバランスを十分考えながら、早急に具体的結論を得るよう検討してまいります。  国際収支対策につきまして申し上げますと、昨年末、多国間通貨調整が実現し、さらに去る五月以降、緊急対策を実施してまいりましたが、わが国の貿易収支は引き続き大幅な黒字基調を続けておるのでございます。政府が去る十月二十日、対外経済政策の推進について当面とるべき施策を決定し、貿易、資本の自由化、関税の引き下げ、開発途上国への経済協力の拡充等の実施に踏み切り、また、公共投資の追加を含む補正予算を今国会に提出をした次第でございます。  国際収支につきましては、両三年の間に経常収支の黒字幅をGNPの一%にし、この一%に当たる数字は、七〇年度の一番末には開発途上国に対する援助にしようということを世界に明らかにいたしておるわけでございます。この両三年以内に経常収支の黒字幅をGNPの一%以内にとどめるということが基本的に必要でございまして、問題解決まであらゆる努力を続けてまいりたいと考えております。  最後に、解散問題について申し上げますが、私が内閣を組織して以来百十日余でございます。しかし、解決を要する内外の課題は山積をいたしておるのでございます。特に円対策は緊急でございます。国民の審判を受ける前にこれらの諸懸案をぜひ解決しておきたい、こういうのが現在の私の心境でございます。(拍手)   〔国務大臣大平正芳君登壇〕

大平正芳自由民主党外務大臣

○国務大臣(大平正芳君) 私に対する御質問は、日中平和友好条約の内容とその締結のめどについてであったと思います。  それで、すでに総理から御答弁がありましたように、この条約は前向きのものにしたいということで日中双方合意を見ております。言いかえれば、九月二十九日に発出いたしました共同声明におきまして日中間の過去の処理は済んだ、一切済んだというのが両国の了解でございまして、これから将来にわたって日中関係、友好親善関係をよりかたいものにし、アジアの平和と安定に寄与するような方向で何をなすべきかという問題につきまして、この平和友好条約の締結という姿において、より安定した、より重みのあるものにしたいということだけが、いまの段階において合意されておるわけでございます。したがって、その具体的な内容はこれからでございます。  また、この交渉は、大使館ができ、大使の交換を終えまして、外交ルートを通じましていたそうと考えておるわけでございまして、具体的な日時はまだきめたわけじゃございません。(拍手)     —————————————

長谷川四郎自由民主党副議長

○副議長(長谷川四郎君) 堀昌雄君。   〔堀昌雄君登壇〕

堀昌雄日本社会党

○堀昌雄君 私は、日本社会党を代表して、田中総理の所信についてお尋ねをいたします。  質問はすべて田中総理にいたします。総理の答弁を補足される必要があると感じられた閣僚は、補足してお答えをいただいてけっこうであります。  まず最初に、私は、昨日田中総理がわが党の成田委員長あるいは自民党の機内さんにお答えになった答弁の中で、問題の点についてお尋ねをいたします。  ただいま総理は、春日さんの質問に答えて、前言を訂正されましたが、ちょっと私は昨日の御答弁をもう一ぺん読み上げておきたいと思います。  「百四十も国があるのです。その中で、緊張をしておるところの国は別でございますが、全く緊張をしておらないような平和な環境の中にある国でも、一体どのぐらいの国防費や防衛費を計上しているのか。だから、日本の現行憲法のように全く世界に類例のないものをつくろうという考えとか、しかも無防備中立がいいんだという前提に立っての考えとは、われわれの考えは合わないのです。どうしても合わないのです。」こういうふうにお答えになっておるわけであります。  先ほど総理は、憲法の平和主義を堅持してまいりますと、こういうふうにおっしゃったわけでありますが、一体それではあなたが最初におっしゃったことは全部お取り消しになるのかどうか、その点を一つまず明確にしていただかなければならないと思うのであります。(拍手)  その次に、無防備中立ということばをたいへんだびたびお使いになっておるわけでありますけれども、私どもは無防備中立などということを申したことはございません。私どもが申しておりますのは、非武装中立ということを申し上げておるわけであります。非武装中立ということがさっきの憲法の平和主義につながっておるということを皆さんはまずお考えになる必要があるのではないかと思います。  私は、そこで、総理も第九条についてお答えになっておりますけれども、重要なのは九条だけではございません。これは憲法の前文でありますので、まず憲法の前文を申し上げたいと思うのであります。  「日本國民は、正當に選擧された國會における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸國民との協和による成果と、わが國全土にわたつて自由のもたらす恵澤を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が國民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」こういうふうにはっきりと前文で述べられておるわけであります。  さらに、「日本國民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸國民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、壓迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる國際社會において、名譽ある地位を占めたいと思ふ。」このように前文は述べておるのであります。  そこで、まず私は総理にお伺いをしたいのでありますけれども、専守防衛ということは、こちらは守るだけでありますから、どこかの国が攻めてくるというのが前提でなければ、専守防衛ということは成り立ちません。まずその点をはっきりしたいと思うのであります。  私たちの日本を取り巻いております国は、一つはアメリカであります。一つはソ連邦であります。その次に韓国と朝鮮民主主義人民共和国、それから今度の中華人民共和国、こうなっておるわけであります。そこで、台湾は御承知のように、今日中国の領土の一部となっておるのでありますから、本来的には中国と私どもの関係の中で問題の起きない限り起こらないのが筋道でありますが、現在は御承知のように、アメリカがこれに武器を貸与して、そうしてアメリカが、韓国と台湾については、その軍事的な問題についての責任を持っておるわけでありますから、もし韓国や台湾が日本を攻めるということは、言うならば、アメリカが日本を攻めると同じ、同意義でありますから、私たちは、皆さんの立場から、そのようなことが考えられるとは思われないのではないかと思うのであります。そういたしますと、これを除外すれば、中国とそれから北朝鮮とソ連だけが私たちを攻める可能性のある国と、こうなるのではないかと思うのでありますが、いまのこれらの諸国に対して政府がとっております態度は、友好を進めようという態度ではないのでありましょうか。友好を進めようとしておる国が、どうして日本を攻めなければならないでしょうか。私たちは、論理の矛盾が皆さん方の考えの中にあるのではないかということを、まず明らかにしておきたいと思うのであります。(拍手)  その次に、いまの日本の状態を考えてみますと、われわれは、エネルギーの主要な部分であります原油をすべて国外に依存をいたしております。その他日本のあらゆる資源について、日本の現在の生産を維持しております原料は、ほとんどすべてを外国に依存をしておるのであります。食糧についても、小麦、大豆、油、飼料、これらの重要なものを外国に依存をしておるのでありますから、戦争というのは単に戦闘だけではなくて、これらのものが入ってこないという場合を考えるならば、われわれは、もはや戦争ができる立場に日本は置かれていないと考えるのが正しいのではないかと考えるわけであります。(拍手)戦争をもし起こすようなことがあるとするならば、それは戦闘の問題ではなくて、われわれの生活の問題、生命が生きていくかどうかという、この問題にかかわる重大な危機が参るのでありますから、このことを考えれば、憲法の前文が示しておりますように、諸国の公正に信頼し、さらに友好を続けるということの外交の中にわれわれの防衛があるのではないかと私どもは考えておるのでありますから、言うなれば、このことが私たちの非武装中立の土台をなしておるということをまず認識をしてもらいたいと思うのであります。  私は、この八月、下田における日米民間人会議というのに出席をいたしました。そのときに、自由民主党の皆さんの同僚の田川誠一代議士が、アメリカの人たちにこういうことを申されました。いま極東に緊張や不安定があるとするならば、それはアメリカが極東に軍事的な力を持っているからです、アメリカがこのアジアから軍事的に手を引いていくならば、アジアは直ちに平和になるだろうということを、アメリカの人たちにおっしゃいました。私は、自由民主党の中にこのようなりっぱな考え方をおっしゃる方があるということに、心から敬意を表するとともに、(拍手)その考えを持っていらっしゃる方が日中友好について先頭に立ってやってこられた、これらの諸般の反省の上のお考えであるということに深く敬意を表したいと思っておるわけでございます。われわれはそういう意味では、日中問題と同じように、今日、皆さん方は、あるいは観念的だとかいろいろおっしゃっておりますけれども、やがて私は、われわれが申しております非武装中立というのが、全国民のコンセンサスになることは間違いがないと確信をいたしておるわけでございます。(拍手)見解の相違は私はここでは論争をいたしませんが、以上、最初にまず、総理が昨日お答えになりました問題について、私たちの立場を明確にいたして一おきたいと思うのであります。  二番目の問題は、総理がおっしゃっております中に、福祉と成長の関係についての問題がございます。ただいまもいろいろとお答えになりました。その福祉と成長の問題でありますが、ここに一橋大学の都留学長が「田中首相に問う」という文章を書いておいでになりますが、私は、その中からちょっと引用をして申し上げたいと思うのであります。  「フランスのジスカールデスタン蔵相は、自らが主導した去る六月の「経済と人間社会」と題する国際会議で、「成長の人間化」の必要を説くと同時に、その困難を指摘し、「成長率を一%余計に高めようとして、社会をいらだたせ、人工的に不満をつくりだすことが正当化されるだろうか」という疑問」を呈しておられます。  また、「「福祉が成長を生み、成長が福祉を約束する」という好循環が可能となる」と田中総理は述べられていますが、「このくだりを読んで、私は、去る六月のストックホルム会議でヨーロッパ共同体のマンスホルトが語った言葉を想い出しました。彼は、ヨーロッパ共同体が社会資本建設の成長率をGNP成長率の二倍にしようという決意を固めて、さまざまの計画の手だてをつくしたが、やってみた結果は、どうしても前者を後者よりも高めることができなかったと言い、経済の中に仕組まれている体制的なメカニズムの執拗さに注意を喚起したのでした。」「同じ一千億円を使って、1社会保障の充実、2学園都市の建設、3新技術をとり入れた生産設備の建設を、それぞれにやった場合、一〇年程度の時間の幅で考えるなら、GNPに及ぼす生産力効果は、3の場合」要するに生産設備の建設が一番大きいでしょう、と都留さんは指摘をしておられるわけであります。  私も、この問題については全く同感であります。いま、田中総理が、成長が福祉を生み、福祉が成長を生むとおっしゃいましたけれども、「日本列島改造論」の中でいわれておりますような年率一〇%の成長というのは、福祉だけをやっていたり、あるいは社会資本投資をやっていて一〇%の成長というものは、これはたいへん困難な問題であります。当然、民間設備投資を大幅に取り入れてやることなくして、このことは不可能なのでありまして、ここに私は重要な問題が入っておると思うのであります。  そこで、これからが実は私が述べようと思っております本論でございますが、まず総理に確認をさせていただきたいのは、「日本列島改造論」で、「内についていえば、これまでの生産第一主義、輸出一本ヤリの政策を改め、国民のための福祉を中心にすえて、社会資本ストックの建設、先進国なみの社会保障水準の向上などバランスのとれた国民経済の成長をはかることである。」、ただいまの春日さんの御質問にも、生産第一主義をとらない、こうおっしゃっておるわけであります。そこで、これを受けて最後のほうで、「大都市や産業が主人公の社会ではなく、人間と太陽と緑が主人公となる“人間復権”の新しい時代を迎えることは決して不可能ではない。」、こうお触れになっておるわけであります。  総理、これはこのとおりでございましょうか。ひとつ最初にちょっと、これだけ確認をしていただきたい。よろしゅうございますか。——まず御確認をいただきました。  そこで、私は、この総理の御確認をもとにして、これから私の論議を進めたいと思うのであります。  私がきょう皆さんの前で申し上げたいと思いますのは、いまの世の中は資本主義の世の中といわれておるわけであります。資本主義の世の中の仕組みというのは、言うなれば、商品はもうけるためにつくられ、それを売ることも、もうけるために売られる。この場合の世の中の仕組みの中心には、利益を得ることを求めておるところの会社や工場、企業が中心にあって、私たち国民は、それをもうけの対象として売られるという形で存在せざるを得ないのであります。私どもが願っております社会主義の考え方というものは、ちょっとここが違うわけでありまして、品物は国民の必要に応じてつくられる、国民の必要に応じて売られるというのが基本的な社会主義の考え方であります。利益を求めて問題は動いていないわけであります。  そこで、いまの私たちの考えをもっと簡単に申しますならば、国がやっております仕事に、私たちの考えは多くあらわれておるわけであります。国は、御承知のように、学校をつくるのに、利益を求めて学校をつくるわけではありません。保健所をつくるのも、利益を対象でつくっておるわけではありません。国民が必要だから学校がつくられ、保健所がつくられるわけであります。言うなれば、私たちの考えは、このような国のやっております公の部分を少しでも広げることによって、もうけを対象として手段を選ばないいまの企業のやり方、会社のやり方に公の介入をしてまいらなければ人間中心の世の中にならないということを、私はここで申し上げておきたいわけでございます。(拍手)  そこで、私は、こういう考え方で、片方にはもうけのためには手段を選ばない会社、片方には静かにしあわせを求める国民と、二つを対置しながら、これからの問題をお尋ねをしてまいりたいと思うのであります。  そこで、まず物価問題でありますけれども、池田総理が、昭和三十五年十月二十一日に、この壇上から私たちに就任初めての所信を表明されました。その中で、「この経済の成長は、旺盛な設備投資による企業の合理化、近代化を通じて、生産の順調な増加をもたらしますので、物価の騰貴、通貨不安定等のインフレ的現象が生起する心配はないのであります。」と、こういうふうにはっきりとおっしゃったわけであります。いまを去ること八年前でございます。  しかし、皆さん、今日、池田さんがおっしゃったように、物価の騰貴をしなかったでしょうか。昭和三十五年を基準にいたしますと、今日消費者物価は一八七・六という、約倍に近い状態になっておるわけであります。池田総理がここでおっしゃったことは、池田総理としてはそうするつもりはなかったでありましょう。しかし、そうなったのは何か。これは経済の仕組みがそれを今日にもたらしたわけであります。  さらに、佐藤総理が、三十九年十一月二十一日のこの壇上で、同じく就任に際して、最初の所信表明をなされました。「物価問題は、わが国経済の急速な先進国型への移行に伴い発生しました。根本的解決策は、すみやかに経済の成長を安定基調にのせることでありますが、その過程において、農業、中小企業など、生産性の低い部門の近代化、流通機構の改善合理化をはかることが急務であります。」こうおっしゃっておるわけであります。池田総理の当時の高度成長に対して、佐藤さんは強い批判を持っておいでになりました。在野当時の、安定成長をやるべきだといろ考えが、この最初の所信表明にはっきりあらわれているわけであります。  ところが、佐藤総理が総理になられましてからの七年間は、実はたいへんな高度成長をいたしまして、池田さんのときよりも高い、平均一〇・三%という実質の成長率になったわけであります。佐藤さん御自身が高い成長をやろうとお考えになったわけではありません。しかし、経済の仕組みはその佐藤さんの願いを認めなかったわけであります。これが二つ目の問題であります。  さらに物価問題について、ただいまも田中総理がおっしゃったのは、生産性の低い農業、中小企業あるいはサービス業、これらの近代化、合理化だとおっしゃっています。ここで八年前に佐藤総理も同じことをおっしゃっていてなおかつ改善されていないのでは、国民は一体これをどう考えていいのでしょうか。私たちは、このようなことが全く空疎なことばとして国民には聞かれているのではないかと、こう考えるのでありますが、いかがでございましょうか。(拍手)  そこで、これらの問題について考えてまいりますときに、私は、国民が気がついておりません、重大な貨幣価値の損失問題にひとつ触れておきたいと思います。  ことしの三月の、銀行等の国民の個人の預金は二十九兆四千億円でございます。郵便貯金が九兆五千億円、生命保険に六兆二千億、農協関係十三兆四千億と、国民の個人の貯蓄は五十八兆五千億円に達しております。昭和四十六年は、一年間に消費者物価が六・一%上がりました。国民がこれらの貯蓄をしておりましたこの五十八兆五千億円は、一年間で六・一%分貨幣価値がなくなりました。その額は三兆三千億円に達するわけであります。一年間に、三兆三千億円、国民一人一人が全部三万三千円ずつ、この一年間に物価上昇のために自分たちの貯金が値打ちを失っていったわけであります。われわれが失っただけなら問題はありません。しかし、この中で銀行の預金とか生命保険に払っておりますものは全部、会社や企業が借り入れております。借りたほうはどうなるのか。借りております金額は、銀行の預金と生命保険と合わせて三十五兆円でございます。この三十五兆円の借金も、六・一%分だけ貨幣価値がなくなります。借金が減るわけです。国民のほうの貯蓄の価値が減って、それだけ会社のほうの借金が減る。いまの物価の上昇ということは、手を労せずして国民から企業のほうへ金を移しかえる大きな働きをしておるわけでありますから、どうしてもわれわれはこのような物価上昇を食いとめなければ、国民として貯蓄をしていくわけにはまいらない、こう思うのであります。  この物価の問題の中の重要な点は、管理価格の中に実は問題があるわけであります。本来、競争的な資本主義の状態でありますならば、生産性の低いところの商品というものは固定をして、生産性の高いところの商品は値段が下がるというのが、これが資本主義の本来の仕組みなのであります。ところが、だんだんと会社、工場は合併に合併を次いで、巨大寡占化をしてまいります。寡占化をしてくれば、そこでは話し合いによって価格が固定をしてまいりますから、生産性の高いものが実は値段を下げないで固定をして、相対的に生産性の低いものが上がっていくという、こういう形が現在の物価上昇の新しいメカニズムになっておるわけであります。巨大な独占の企業が、このような生産性上昇分を当然国民に、価格の上で還元すべきであるにもかかわらず、これを管理価格の形で温存をして、そうして超過利潤をあげ、その超過利潤でまた大きな設備投資をしていくという、この過程が日本の今日の高度成長をささえてきている。そうして同時に、公害をもたらし、今日の通貨問題をもたらしておるわけでありますから、これらの問題については、私は、政府はすみやかにこれらの管理価格体制にメスを入れることなくして物価対策を論ずることはできないと思います。  総理の所信の中にも、この点は全然触れられておりませんので、特にこの問題点についてのお考えを承っておきたいと思うのであります。(拍手)  次に、公害問題について、企業、会社の側とそれから国民の側の立場で問題になるものを、二点だけ申し上げたいと思います。  いま私が住まっております関西では、関西新国際空港をどうするかということが重要な課題になっておるわけであります。神戸市をはじめといたしまして、芦屋市、西宮市、尼崎市、大阪市、泉南各市と、大阪湾に面しております各市は、いずれも市の議会で、この関西新国際空港の建設に反対の決議をいたしております。言うなれば、住民はすべて反対をしておるわけであります。ところが、賛成をしておる人たちがあります。それは神戸の商工会議所、大阪の商工会議所、泉南、堺等の商工会議所に象徴される財界の方たちであります。  なぜ、住民が反対をし、財界は賛成をするのか。住民は、伊丹空港における騒音公害がその付近住民に耐えがたい公害の被害を与えておることに対して、十分承知をいたしておりますから、もうこのような騒音公害はごめんだというのが、阪神間、大阪から堺に至る住民の願いであります。関西新国際空港をつくるというのであるならば、まず先に伊丹空港の騒音問題が解決をしなければ、私たちは、これらの住民は賛成をしないと考えておるわけであります。ところが、それを無理にもつくりたいのは何か。もうけるために、利益を得るためにつくりたいというのが財界の皆さんの考え方であります。  私は、総理が、人間中心だ、人間復権だとおっしゃるのならば、一体この住民の側に立たれるのか、利益を求めて空港を促進しておる財界の側に立たれるのか、この点について明確な御答弁をいただきたいと思うのであります。(拍手)運輸省は、十一月以降においてこの地域を決定すると申しておりますけれども、きわめて重要な問題であります。総理のひとつ御見解を承りたいと思うのであります。  その次に、瀬戸内海の汚染の問題でありますけれども、ことしは御承知のように、例年に類を見ない赤潮が何回も出てまいりました。赤潮の被害については、昭和四十四年には六十七件、四十五年七十九件、四十六年百三十六件、本年は九月末ですでに百二十四件と、年を追って赤潮の公害は瀬戸内海に広がりつつあります。この赤潮によりまして、ことしの八月には、養殖ハマチ等は七十一億円という膨大な被害を受け、漁民はその生活を脅かされているというのが現状でありますけれども、瀬戸内海の汚染はすみやかに処理をされなければなりません。公害についてはいろいろと所信でも、御答弁でもお答えになっておりますけれども、これらの抽象的なことばでは問題は解決をいたしません。どうかひとつ十分な調査をされて、この瀬戸内海を汚染をしておる工場に対しては、操業停止を含むところの強い姿勢で、この問題の処理をお願いしたいと思うのでありますけれども、総理の御見解を承りたいと思うのであります。(拍手)  その次に、社会保障についてお伺いをいたします。  社会保障の問題は、医療の問題と年金の問題をお伺いいたしますが、国民の命であるとか健康というのは金では買えない問題であります。いまの世の中はすべてのものは金で買えますけれども、これは金では買えません。医療という行為を通じてのみ国民の医療と健康は守られるのであります。  ところが、健康保険制度の問題をはじめとして、現在の政府がとっておられます考えは財政対策に終始をして、人間をいかにして健康にして、そうして楽しく暮らさせるかという問題についての視点を欠いていると思うのであります。医療というものは人間を中心として考えなければならないものでありますから、どうかひとつ田中総理はこの問題について、あるべき医療は一体どういうものであるか、この日本の現状においてあるべき医療を考えるときに、いかなる医療があるべきかということについて、きわめて専門的な分野でありますから、専門的な医師の意見を十分に取り入れられて、ビジョンをひとつ——日本列島改造論だけがビジョンではございません、人間はいかに生きるべきかという問題も一つのビジョンでありますから、これについてのビジョンをお示しをいただきたいと思うのであります。  あわせて、私はこのいまの医療というのは、健康保険の制度によって単価とか点数は全部国がきめておるわけでありますから、言うなれば統制のワクの中に医療があるわけでありますが、その中で製薬業だけはもうけほうだいの自由な体制がとられているわけであります。これは大きな矛盾であります。私は、もしいまのような状態を続けていくならば、当然製薬業についても公的な介入が行なわれてしかるべきではないかと考えるのでありまして、そのことによって初めて医療というものが全体的に社会的なものとなると思うのであります。この問題についての総理の御見解を承りたいと思うのであります。  要するに、この医療の問題も、人間の問題かあるいは経済の問題かということになっておるわけでありますが、この次に申し上げます年金の問題は、総理もすでに年金については、金額をふやそう、あるいはスライド的な発想を取り入れようという御答弁をなすっておるわけでありますけれども、この量の問題はたいへんけっこうでありますから、ぜひやっていただきたいわけでありますが、もう一つ重要なのは、質の問題だと思います。  私は、ここで、九月二十日の神戸地方裁判所が判決をいたしました問題を申し上げたいと思います。  母が障害福祉年金を受けているという理由で、母子家庭に支給されている児童扶養手当がもらえないというのは不合理であり、児童扶養手当法の併給禁止規定は憲法十四条に違反するという判決が、九月二十日に神戸地方裁判所で行なわれました。訴えておられましたのは、夫と離婚をされてマッサージ業をやりながら二人の子供を育てておられる全盲の、全然目の見えない堀木文子さんという御婦人であります。堀木文子さんは全盲の方でありますから、障害福祉年金をもらっておられるのでありますけれども、むすこさんが中学生でありましたので、このむすこさんについて児童扶養手当を福祉事務所に申請をされました。ところが、現在の児童扶養手当法第四条は、併給を禁止をいたしておりますために、福祉事務所はこれを却下をいたしました。  そこで、堀木さんはこれを裁判所に提訴をされて、今日まで公判が続行されておったわけでありますが、九月二十日に裁判所は、この問題は憲法十四条に違反をしておるということで、違憲判決を下しておるわけであります。ところが政府は、これに対して、十月十一日、兵庫県を指導をして、大阪高等裁判所に上告をさせておるのであります。  私は、ちょうどこの前の昭和四十三年八月五日の佐藤総理に対する代表質問で、この壇上から佐藤さんに、当時問題になりました北海道の牧野さんの老齢福祉年金におけるところの併給問題、夫婦併給問題が東京地方裁判所で違憲の判決が下りましたので、この問題を取り上げました。そのときに佐藤総理は、こういう答えをしておられます。「これは廃止する方向で検討したい、かように思っております。そのとおり、ただいま言われますように、これをやめる方向に検討するということをお約束をいたします。」と、裁判の結果がいかようになろうともやめる方向で検討いたしますと私に御答弁をいただいたわけであります。  田中総理はいまの堀木裁判について、児童扶養手当と障害福祉年金の併給について、上告をしておりますいまの厚生省の問題は別として、どのようなお答えがいただけるのか、まず承りたいのであります。(拍手)  同時に、このことは単にこの問題の併給禁止だけの問題ではございません。現在の公的年金には数多くの併給禁止が実は法律の中に出されておるわけでありまして、現在老齢福祉年金につきましては、四十九万五千六百件というのが併給禁止になっております。障害福祉年金についても、二万七千五百件が併給禁止のために受け取られるべきものが受け取られていないというのが実情であります。一体公的年金というのは何のために与えられておるのでありましょうか。この人たちが十分な生活に対する力を持てない社会における弱い人であるから、公の力でこれを救いたいというのが国の考え方ではないのでしょうか。にもかかわらず、予算と財政のワクが優先をして、人間はどっかへ行ってしまって、予算がないから、財政がないから併給禁止をしようというこの考えは、昭和三十六年に国民年金法ができた当時ならいざ知らず、これだけの高度成長した今日、このような考え方が残っておることに私は重大な問題があると思うのであります。(拍手)どうかひとつ、田中総理は、年金の量の問題もさることながら、これらの質的な問題について、公的年金がほんとうにこれらの人々のためにある制度だということを確認をしていただきたいと思うのであります。  さらに、公的年金の中のもう一つの問題は、実は東京の老人ホームで起きておる問題でありますけれども、老齢福祉年金をもらっておられる方が目が見えなくなりました。そこで、障害福祉年金にかえてもらいたい、このほうが給付が高いわけでありますから、かえてもらいたいと申請をしましたけれども、却下をされたという問題があります。調べてみますと、障害福祉年金というのは保険期間中に事故が起きて、そうしてその後になってでなければもらえない。いまのもらっておられる方たちは、この国民年金法ができましたときに、強制適用除外であった五十歳から五十五歳の人あるいはそれ以上の方で当時から障害のあった者に限られておるということでありますけれども、これらの問題も、ただいまの併給禁止だけではなくて、公的年金の性格を考えるときにあらためて検討をしていかなければならない重要な課題だと考えております。  さらに、もう一つつけ加えておきますけれども、寝たきり老人の援護の問題であります。現在、六十五歳以上の寝たきり老人三十五万人、一人だけの寝たきり老人、援護をする人のない老人、介護をする人のない老人が九万五千人もあります。総理は、所信表明の中で、寝たきり老人の援護に触れておられますが、どうかひとつ、この一人でさびしく寝ておられるお年寄りのためにまくら元に無料の電話を国の手でつけていただくわけにはいかないでしょうか。そうすれば、この人たちは不安がなくさびしさをまぎらすことができるのではないかと思います。現在、国は老人電話相談センターというのを四十六年度にわずか二百二十八人の方にやっておるというのでありますけれども、どうか、成長を福祉に還元をすると言われるのならば、この際、ひとっこれらの方たちに一年に一万個ぐらいの電話をつけて、十年計画ぐらいで寝たきり老人のまくら元にはすべて電話があるという世の中にしていただきたいと思いますが、この提案について総理のお考えを承りたいと思うのであります。(拍手)  その次に、通貨問題について簡単に触れておきます。  私は、これ専門でありますが、簡単に申し上げておきますけれども、第三次円対策で私は通貨問題は解決をすると思っておりません。そこで、最近、政府はこの第三次円対策の中で貿易管理令を発動するということをおきめになっておりますけれども、これはこの前、過ぐる大蔵委員会で中曽根通産大臣にお越しいただいて論議をいたしましたけれども、これは緊急避難のための対策でありまして、貿易管理令などというものは恒常的に使えるものではありません。  そこで、私は、もし切り上げになるならば、それだけ私たちが、いろいろと中小企業の皆さんが被害をこうむる、国民に大きな迷惑がかかるわけでありますから、これを回避することのためには、輸出税をひとつこの際行なうべきであるということを提案をしたいわけでございます。一〇%程度の輸出税によってこれらの輸出品から国のほうに税金を取る。ただし、雑貨や繊維のような競争力の弱いものについては例外的な措置を設けて、少なくとも競争力のあるものにこれらの輸出税を取り、その輸出税をあげて社会福祉に還元をすればいいのではないでしょうか。年間四、五千億円と予想される輸出税の収入が期待されるわけであります。これをやるならば、私はほんとうの円対策になると考えるのでありますけれども、総理のお考えを承りたいと思うのであります。(拍手)  そのあとで税の問題でちょっと申し上げておきたいと思います。  ことしの所信表明では、税の問題に一行も触れられておりません。一語も触れられておりません。総理の頭の中には、税金の問題はどこかへ行ったのかと思うのでありますが、国民は税金の問題には重要な関心を持っておるわけであります。  そこで、現在の税はどうなっておるかといいますと、法人税がたいへん安いわけであります。昭和二十七年に四二%でありました法人税は、だんだんと引き下げられまして、四十一年には三五%まで下がってきたのであります。この三五%に下がったのを、たいへん景気がよくなってもなおかつそのままになっておりましたが、私たちの強い要求に基づいて、昭和四十五年に一・七五%引き上げて、現在法人税は三六・七五%というのが日本の法人税であります。これは諸外国に比べて著しく安いのでありまして、アメリカは四八%、西ドイツは五一%、イギリスは四〇%、フランス五〇%と、いずれもたいへん高い法人税であります。諸外国の法人税が高いから、向こうの物価は高いわけです。日本は法人税を安くして、そうしてこれらの法人、会社、企業にたいへんな恩典を与えながら、安い製品をつくらして、それで欧州やアメリカにいまなぐり込んでいるという実情でありますから、私はやはり国際的に公平な税制にすることが、いまの通貨対策上からも、きわめて重要な問題だと考えるわけであります。総理のお考えをまず承りたいのであります。  その次に、交際費の問題について申し上げておきますが、いま一年間に六万三千五百という個人のお仕事をしておられる商売その他の方たちが、法人に、株式会社になっておるわけであります。なぜこんなにたくさんの人が株式会社になるのでしょうか。それは法人税が安いからです。税金が安いからそうなるのです。  それだけではありません。いま交際費というのはどういう規定になっておるかといいますと、租税特別措置法六十三条の五項で、「交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、きょう応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいう。」と、こうありますから、あまり感心したものではないような感じを国民の方々は受けられると思うのでありますけれども、この交際費が、一企業当たり四百万円、どんな会社でも無税になっているわけであります。これが実はたいへん大きな問題でありまして、あとは資本金の千分の二・五が無税でありますが、昭和四十五年度で交際費は一兆七百一億円も使われ、そのうち無税が、七千八百二十三億円無税なのであります。これもやはりさっき申し上げました会社、法人のほうに有利であって、個人にきわめてきびしいいまの税法の一つのあらわれだと思います。総理は、この四百万円の問題について、これを三百万円に引き下げられる意思があるのかどうか、真剣にこの交際費対策を講じられるのかどうかをお伺いをしておきたいと思います。  その問題のもう一つあとに配当控除という制度があります。株式の配当だけ収入のある方を例にとってみますと、本年の税制では、三百四十三万一千六百五十二円、三百四十三万円まで収入が配当だけである人は所得税が無税であります。税金は一円もかかりません。現在四人世帯で考えてみますと、給与所得者の場合には百三万七千円が給与所得者の課税最低限であります。事業所得者の課税最低限は七十万九千八百九十六円とたいへん低いのに、なぜ配当だけの人がこんなに三百四十三万一千円も取っても無税なのでしょうか。もしこれだけ、三百四十三万一千円、月給取りがあれば、その所得税は三十一万六千八百円も取られます。さらに、事業をしておられる方ならば、四十二万八千九百五十六円も取られます。これはいまの会社に関係のある、株を持った人たちに有利な恩典として与えられておるわけでありますが、これも会社、法人に関係のある税制の一つであります。私たちは、このような不公平な、税制が国民の側にはきびしく、会社に関係のあるものにはきわめてゆるやかになっておる実情を改めるべきだと考えるわけであります。  最後に、私は選挙制度の関係について申し上げておきたいと思います。  選挙制度の関係について、昨日の新聞でございましたかも明らかにしておりますけれども、今度の選挙の有権者を調べてみますと、兵庫五区と大阪三区との人口比は一対五ということになってまいりました。このような人口のアンバランスは、有権者の選挙権に重要な関係を持つものであります。選挙は少なくとも民主的に公平な権利の上に立っていなければならないと思うのでありますから、すでに第六次選挙制度審議会が昭和四十五年五月十九日に、参議院の地方区の定数是正について答申をいたしておりますが、私はこの選挙が終わったあとにおいては、これらの衆参の定数のアンバランス是正をひとつぜひやっていただきたいと思いますが、総理はどのようにお考えか、お答えをいただきたいのであります。  それから、もう一つの問題は、今日農村において、たくさんの出かせぎ人が東京その他に来ておられます。この出かせぎの人たちに選挙権が十分に行使されないという問題があります。今日、出かせぎの人たちは百万人をこえるわけでありますけれども、イタリアではすでにこれらの出かせぎの人たちには有給休暇と旅費を国が与えて、郷里に帰って選挙ができる仕組みが行なわれておるわけであります。(拍手)どうかひとつ、われわれの日本におきましても、これらの出かせぎの人たちが、選挙のときに一年一ぺん帰ってきて、家族が団らんの生活の中で選挙ができるような、このような選挙にするということは、私は、きわめて選挙について重大な問題だと思いますので、総理の善処をお願いをいたしたいと思うのであります。  最後に、政治資金の問題について申し上げたいと思うのであります。  私どもの成田委員長も政治資金についてお触れになりましたが、昭和四十六年度じゅうに財界から政治献金がどのように出たかということを具体的に申し上げますと、自由民主党に八十八億六千二百万円、各派閥に四十三億六百五十万円、個人に七十八億三千二百万円、合計二百十億五十万円が、財界から自由民主党の皆さんに届けられたと、自治省の報告は明らかにしておるわけであります。いま申し上げてきた、いまのもうけるために手段を選ばない、節度がないためにエコノミックアニマルといわれておるこの日本の法人企業の問題について、いま田中さんがいろいろとお考えになり、やろうとおっしゃいますけれども、いまの世の中の仕組みの中で、財界といまの政府がどのような形にあるかということで、私は政治の路線はきまってくるのではないかと思うのであります。必要な問題について、ここで最初に私が申し上げましたように、人間と太陽と緑が主人公で、人間復権の政治ができるというのであるならば、やはりこの政治資金の関係を断ち切って、自由民主党が公正な立場で、国民の側に立って公的な介入をなさる以外には、私は、日本列島改造をおっしゃっても、問題は本質的な解決にはならないと思うのでございます。どうかひとつ、そういう問題を含めて、総理の御見解をお願いをいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕

田中角榮自由民主党内閣総理大臣

○内閣総理大臣(田中角榮君) 堀さんにお答えいたします。  第一点は、先ほど春日委員長にお答えを申し上げましたが、きのうの成田委員長に対する答弁の中で、憲法に関する問題に対して誤解を招くようなところがございましたが、先ほど述べましたとおり、世界に類例のないわが国憲法の平和主義を堅持してまいりますことは申すまでもないことでございます。こういうことでございますので、御了承を賜わりたいと存じます。  消費者物価について申し上げますと、経済成長の過程で、給与所得者の所得が、消費者物価の上昇を上回る伸びを示し、国民生活の実質的な水準が着実に向上してきたことは事実でございます。しかし、物価上昇の要因としては、生産性の高い企業の賃金上昇が、中小企業やサービス業など、御指摘のとおり生産性の低い部門に波及するということも否定できない事実でございます。こういう状態の中から物価問題が起こってまいるわけでございます。御指摘のとおり、消費者物価の上昇は、預貯金を減価させ、あるいは利子、年金生活者等の生活を不安定にするというデメリットがございまして、これは物価対策を強力に推進しなければならぬことは申すまでもないことでございます。  物価の上昇を押えるということについては、去年、おととし、五%余の年率でございましたが、今年は四%台の、一%以下低い状態で押え得るのではないかということが考えられるわけでございます。しかし、低生産性部門に対する施策を強化いたしましたり、流通機構の整備を行なったり、自由化を行なったり、いろいろなものがございますが、やはり前々申し上げておりますとおり、過度に拠点に集中しておるという問題にメスを入れながら、いわゆる日本列島改造を踏まえて消費者問題に十分な施策を行なってまいりたい、こう考えます。  第三は、管理価格をやめるべきであるということでございますが、生産性向上の成果が、自由かつ公正な競争を通じて消費者にも還元されることは望ましいことでございます。今後とも管理価格の実態把握につとめるとともに、競争条件の整備等、対策面においても十分配慮してまいりたいと存じます。  公害問題に対して申し上げます。  公害対策は、国民の健康生活を守るため、内政上の重要な課題であることは御指摘のとおりでございます。  関西新空港の問題について御指摘がございましたが、地元及び公共団体の意見等も十分尊重して計画を進めなければならないことは、申すまでもないことでございます。慎重に対処いたしてまいります。  瀬戸内海の赤潮対策について申し上げますと、下水道の整備、工場排水の規制等、瀬戸内海に対する十分な調査を行なって、赤潮というだけではなく、瀬戸内海の汚染に対しては根本的な施策が必要であると考えるわけでございます。  社会保障問題について申し上げます。  日本のあるべき医療の理想図はどうかということでございますが、これは、堀さんがお医者さんでございまして専門家でございます。日本のあるべき医療の理想図をかかなければならないことは、人命に関する問題でもございますので、本件に関しては、鋭意努力を続けてまいりたいと存じます。  第二点の医薬品の問題でございますが、医薬品の特質にかんがみ、安全で有効な医薬品を供給し得るよう公的規制を加えており、薬価基準につきましても、市場価格の下落を反映して年々引き下げが行なわれているところでございます。しかし、医薬分業等の問題、根本的な問題もございますので、十分検討の上、結論を出したいと思います。  公的年金の併給問題について、堀木訴訟の件について御指摘がございました。御承知のとおり、一審で決定をしないということで控訴はいたしておりますが、問題は別といたしまして、障害福祉年金受給者に対する児童扶養手当の併給問題、これは、児童扶養手当についての併給が可能になるよう措置すべきであろうという方向で検討いたしております。  老人対策につきましては、寝たきり老人に対する援護、就労の場の確保等、十分なる処置を必要とするわけでございますし、医療の無料化等も必要でございますが、堀さんの御指摘は、電話を一台ずつつけたらどうかということでございます。この問題に対しては、まだ十分検討いたしておりませんが、せっかくの御指摘でございますので、検討してみたいと思います。  円対策について、貿管令の発動だけでは実効をあげがたい、輸出税を徴収すべきという御議論でございますが、これは、政府もこの問題に対して検討いたしておったのでございます。ただ、先般の円対策につきましては、輸出課徴金については、引き続いて検討しようという立場をとっております。それはなぜかと申し上げますと、西ドイツ等で輸出課徴金制度等を実行したのでございますが、そういう制度をただ実行すると、半年たつと、そのままその部分が平価の切り上げにつながるというようなこともございましたので、学問的にももう少し検討を必要とするというのでございます。ただ、貿管令だけで実効をあげがたいという面は確かにございます。でございますので、貿管令の発動というものと輸出課徴金というのは、うらはらの問題でもありますので、これらの問題は、政府、業界におきましても検討を継続しておるということで御理解をいただきたい、こう思います。角をためて牛を殺すということになってはならないのであります。(拍手)これは理論だけを追うことにきゅうきゅうとして、三カ月後、半年後に輸出課徴金、輸出税というものが、そのまま円平価の切り上げにつながるということになってはならないのです。(拍手)  税の問題に対しての御指摘がございました。法人税は優遇に過ぎるのではないかということでございます。四十五年度から一・七五の付加税率を徴しておりますので、御指摘のとおりでございますが、現在、国税、地方税を合わせて実効税率は四五%強になっておるわけでございます。法人税負担のあり方等は、税のすべての問題とあわせて検討しなければならぬ問題でございます。直接税、所得税中心から、間接税にどの程度ウエートが変えられるのかというような、税の根本的な問題と、時の財政事情等を勘案して検討すべき問題でございます。これはもう堀さん専門家として十分御承知の件でございますので、以上申し述べておきます。  交際費課税につきましては、逐年強化をしてまいりましたことは、御承知のとおりでございますが、来年三月末に現行制度の適用期間が到来をいたしますので、大蔵省を中心にして検討を進めております。  配当控除につきましては、一五%から一二・五%に、そして来年から一〇%に引き下げられることになっておるわけでございますので、これ以上の問題は、税全般の中で勉強すべき問題だと思います。税は検討を必要とするのであります。  それから、政治資金規正法につきましては、せっかくの御指摘がございましたけれども、改正案は、国会に間々提出をされ、廃案になっておる経緯がございますことは御承知のとおりでございます。選挙制度、それから政党の問題、政党のあり方、金のかからない選挙等々、いま選挙制度審議会で御検討いただいておりますので、その結果を待ちたいと思います。  選挙区の定数の是正の問題は、長いこと問題になっておることでございますが、これは、選挙制度をどうするかという問題と定数という問題を切り離してはなかなかできないのでございます。一回、大都市の幾ばくかの選挙区に対して、定数を是正した経緯もございますが、現在選挙制度審議会において審議中でございますし、また、衆参両院を通ずる根本的な選挙制度改善、定数問題、こういうことで検討が続けられておるわけでございますので、この結果を待っていただきたい、こう思います。  それから、出かせぎの実態、出かせぎの投票参加というものに対しては、これは輸送の問題、有給休暇の問題、外国の事例等、さらに勉強する必要があると思いますが、不在者投票制度が積極的に活用がはかられなければなりませんし、いまの制度は少しめんどうなような気もいたします。これは、お互いがこれらの問題に対しては十分承知しておる問題でございますので、出かせぎ等が投票に参加できるように最善の道を開くべきだと考えておるわけでございます。  以上。(拍手)     —————————————

長谷川四郎自由民主党副議長

○副議長(長谷川四郎君) 不破哲三君。   〔不破哲三君登壇〕

不破哲三日本共産党

○不破哲三君 私は、日本共産党を代表して、内外政策の幾つかの重要問題について、総理の所信をただしたいと思います。  まず、日中問題について言えば、日本共産党は、今回の田中首相の訪中によって中国との復交が実現したことを歓迎するものであります。特に、わが党の年来の主張であった一つの中国論及び平和五原則が、日中共同声明の中で確認され、、今後の両国関係の原則的な基礎とされたことは重要な前進であります。  しかし、わが党は、日中復交を歓迎するからといって、この交渉にあたって田中首相がとったすべての態度を是認するものではありません。そこには国の外交の問題として黙視できない幾つかの問題点があります。  その一つは、田中内閣が台湾が中国の領土であることを認めながら、この台湾を日米軍事同盟の対象地域とする安保条約の極東条項の解釈や、日米共同声明の台湾条項の存続に固執していることであります。もし、政府が領土主権の尊重、内政不干渉など、みずから署名した平和五原則に真に忠実であるならば、当然これらの干渉条項の廃棄を明確にすべきであります。(拍手)また、沖繩から中国の領土である台湾に引かれた米軍の海底軍事ケーブル、これが撤去されるべきことも当然であります。(拍手)これらの点について総理の見解を伺いたいと思います。  いま一つは、総理が復交交渉の過程で中国側に日本共産党と手を握らないことを申し入れた問題であります。一国を代表しての復交交渉において、憲法で活動の自由が認められている合法政党の非難を行ない、これに対する特定の態度を相手側に求めるなどは、国民的課題である日中復交交渉を、自民党の党利党略に利用しようとする反民主的な行動にほかなりません。わが党は、この問題について、政府に厳重に抗議し、総理の陳謝を要求いたしましたが、この国会で、総理の責任ある答弁を求めるものであります。(拍手)  次に、日中以後の外交問題について質問いたします。  今日、国際政治の最大の問題は、アメリカのベトナム侵略戦争をいかにして終わらせるかにあります。総理は、所信表明演説で、インドシナ半島に平和が到来しようとしていると述べられました。しかし、現実には、ニクソン政権はベトナム民主共和国との間で、和平協定案に合意し、きょう十月三十一日に調印することを約束しながら、チュー政権の抵抗などを口実にして、この合意を踏みにじって調印を引き延ばし、いまなお野蛮な北爆その他の侵略行動を続けているのであります。総理がまじめにベトナムの平和を願うというのであるならば、いまなすべきことは、ニクソン政権に対して、ベトナム民主共和国との約束を厳格に守り、合意された和平協定に直ちに調印するよう要求することであり、ニクソン政権の侵略戦争継続に協力する行為を一切中止することであります。(拍手)  ところが、田中内閣が今日までとってきた行動は、全くその反対でした。すなわち、内閣成立以来、日本からの米軍の出動やベトナム向け戦車輸送を容認してきたばかりか、和平交渉が重大な局面を迎えたさなかに車両制限令を改悪し、B52の大量沖繩飛来を認めるなど、ベトナム戦争のための在日基地の自由な基地利用を一そう広げる、こういう暴挙さえ行ないました。また、和平協定の問題でも、ニクソン政権に調印を要求せよというわが党の申し入れに応じないだけでなく、協定に反対するチュー政権の意向をアメリカ側に取り次ぐという、まさに和平に逆行する措置さえとったのであります。田中内閣のこうした行動は、国民の意思に反しベトナム侵略戦争に加担し続けた佐藤前内閣の戦争協力政策をそのまま引き継ぐものといわなければなりません。わが党は、政府がこうした態度を根本的に改め、正義と平和を願う国民の総意に立って、ベトナム侵略戦争への一切の協力行為を中止し、合意された和平協定の調印を促進する立場に立つことをあらためて要求するものであります。(拍手)この点について、総理の明確な見解を伺いたいと思います。  さらに、総理が平和外交を口にされるなら、日中復交に続いて、アジアの他の社会主義国との国交問題の解決に努力するのが当然であります。朝鮮民主主義人民共和国、ベトナム民主共和国との国交正常化に取り組む意思と用意があるかどうか、総理の答弁を求めるものであります。  さらに、ここに立ち入って検討する必要があるのは、政府がベトナム戦争協力の法的なよりどころとしている日米安保条約の問題であります。  自民党政府は、この二十年来、在日米軍は日本の安全を守るための軍隊だと宣伝をしてまいりました。しかし、この宣伝の偽りは、今日、アメリカ政府当局者自身が、われわれは日本の直接の防衛に直接に関係する兵力は日本に持っていない、こう言明していることによってもすでに明白であります。現在の沖繩と本土の米軍基地の実態が示しているように、日本の安全どころか、そのときどきのアメリカのアジア侵略の計画に従って、日本を侵略戦争の足場として利用する、このことにこそ安保条約の本質があります。国民の意思とは無関係に他国の侵略戦争に加担させられるというこの状態は、国の真の独立とは決して両立し得ないものであります。日米安保条約を廃棄し、外国の軍事基地のない、平和中立の日本を実現してこそ、日本の戦後を真に終わらせることも、それからまた、自主外交をもってアジアの、平和に積極的に貢献することも、初めて可能になるのであります。(拍手)  ところが、総理は、これら一切を無視して、いまなお日本の平和と安全のために日米安保条約を堅持すると主張しております。アメリカ政府自身が、日本の防衛には直接関係がない軍隊だと、こう説明している米軍を日本に置くこと、そして、ベトナム侵略のような極東の平和を破壊する軍事行動に在日基地を円滑かつ効果的に利用させることが、どういう意味で日本の安全に役立つのか。政府はその根拠を国民の前に納得のいく説明をする義務があります。政府のこれまでの安保弁護論は、米軍のすべての軍事行動を極東の平和のためといって無条件に神聖視する、神聖なものと見る、こういう立場に立ってまいりましたが、この前提が成り立たないことは、ベトナムでの米軍の行動を見れば明白であります。総理の明確な答弁を求めるものであります。  また、わが党は先日、米軍資料に基づいて沖繩に致死性の毒ガス爆弾MC1が貯蔵されている事実を突きとめました。この事実は、核撤去についても国民の疑惑を深めるものであります。わが党は、政府に、毒ガスの撤去とともに、核を含めて沖繩米軍基地の点検を日本政府の責任で実行することを要求しましたが、ここで、この問題に対する総理の責任ある回答を伺いたいと思います。(拍手)  アジア情勢全体についていえば、米中接近その他の現象をもって、アメリカが本質的に力の政策を捨て緊張緩和政策に転じた、こう考える見方がありますが、ニクソン政権は、いろいろの外交的術策を弄しながらも、依然として力の政策を放棄しておらず、ここにインドシナをはじめアジアにおける緊張と戦争の最大の根源があることに、われわれは目をふさぐわけにはいきません。総理は、昨日来、安保や四次防の必要性を声を大にして力説されましたが、その議論の根底にあるのは、アメリカに追随した力の政策論そのものであります。ここに、私は、田中内閣の外交、軍事路線の最大の危険を感ぜざるを得ないのであります。(拍手)  特に、四次防について重視すべき問題は、このような力の政策論を前提にしたこの長期軍事計画が、国会にもかけられずに、政府や国防会議だけで決定され、日本の国策の事実上の前提とされている事実であります。国会を国権の最高機関、こう規定している憲法のたてまえからいっても、四次防はもちろんのこと、国の安全にかかわる基本方針とその長期計画、外国との取りきめなど、すべてを国会の議決の対象とし、国民自身の監視がきくようにすることが当然であります。この問題について総理の所信をただしたいと思います。  次に、経済政策の問題では、公害、高物価、劣悪な社会保障をはじめ国民生活の深刻な諸困難を解決することこそ、国政に課せられた最大の急務であります。  一体何がこれらの困難を生み出したのか、その最大の根源が自民党政府の大企業本位の経済成長第一主義にあったことは、田中総理が自民党の幹事長であった当時、自民党みずからも認めていたところであります。すなわち、昨年五月、田中幹事長名で全国に配布された文書、「統一地方選挙とわれわれの反省」は、われわれは、生産第一主義、企業利益の優先、高度成長政策を再検討し、国民の生命と暮らしを守る政策を即刻かつ全面的に展開すべきである、こう述べておりました。  ところが、今日、田中新内閣が経済政策の中心として提唱している日本列島改造論なるものは、総理のいろいろな弁明にもかかわらず、この反省とは全く反対に、昭和六十年までに国民総生産を四倍以上にすることを至上の目標として、大企業中心の超高度成長、生産第一主義の政治を一そう大規模に推進しようとするものにほかなりません。大資本、財界はもろ手をあげてこれを歓迎していますが、この計画が国民にもたらすものが、生活と環境、国土の一そうの破壊でしかないことは明白であります。(拍手)  総理は、生産第一主義、企業利益優先の政治を改めるという一年前の反省を一体どこへ投げ捨てたのか、所信をただしたいと思います。(拍手)  いま、国民の命と暮らしを守るために断行すべきことは、大企業優先の政治から、国民の利益のために、大企業、大資本の横暴を押える政治への抜本的な転換であります。勇気をもってこの問題に取り組むことこそ、国民の期待にこたえる道であります。(拍手)私は、この見地から、緊急、切実な課題となっている幾つかの問題を提起し、総理の所見を伺いたいと思います。  第一は、公害の問題であります。  一昨年の公害国会で公害関係法の改正が行なわれましたが、それ以後二年間の公害の激化は、いまの公害法が、企業の責任を追及し、公害を防止する上で、まだきわめて不十分であることを実証しています。公害法の不備をそのままにして大規模な工業開発を全国的に強行するならば、日本列島全域に公害を拡散する結果となることは必至であります。四日市の公害判決にも明らかなように、企業の公害防止の責任、特に発生源での公害防止義務を明確にすることをはじめ、公害法を再改正し、真に公害を防止し得る法体系を確立することは、政府と国会が国民に負っている最も厳粛な責任であります。わが党は、今国会に先立って、政府に公害法の抜本的な再改正についての提案を行ないました。総理は、公害法再改正の問題に取り組む意思があるかどうか、見解を伺うものであります。(拍手)  第二に、物価の問題でも、インフレ防止、公共料金引き上げの中止などの措置とあわせて、大企業製品の価格つり上げを拠ることが物価安定に不可欠であることは、衆目の一致して認めるところであります。わが党は、そのために国会に、大企業製品の製造原価や独占利益の実態を調査する機関を設け、この調査に基づいて政府が価格規制の行政指導を強力かつ効果的に行なうことを提唱してまいりました。これに対して佐藤前総理は、民間の価格形成への介入は好ましくないとして、終始反対の態度を表明してきましたが、これは国民の苦しみをよそに大企業の価格つり上げを放任するものであって、企業利益優先の政治の一つの典型であります。総合的な物価対策の推進を唱える以上、政府は、当然、高物価のこの根源にメスを入れる責任があります。総理が強調する強力なリーダーシップなるものは、国民生活にかかわるこの問題においてこそ発揮すべきであると考えますが、総理は、独占価格の規制についていかなる方途を用意しているか、具体的に伺いたいのであります。(拍手)  第三に、年金問題など社会保障の充実についても、大資本本位の現在の仕組みを根本的に改めることが急務であります。わが国の年金は、ヨーロッパ諸国に比べてきわめて立ちおくれた低水準にとどまっています。その根本的な原因が、政府が、年金で老後の生活を保障する、この基本的な立場をとってこなかったことにあることは言うまでもありませんが、具体的に言うならば、第一に、国と資本家の負担の割合が小さいこと、第二に、年金制度において、厚生年金や国民年金の毎年の保険料の大部分が政府の手元に積み立てられ、大企業本位の財政投融資の原資として利用されるという不合理な積み立て方式がとられている、ここに原因があることは明白であります。(拍手)この積み立て額は、現在合計約七兆円にものぼっております。  わが党が主張してきたように、国と資本家の負担を大幅にふやすとともに、年金制度をヨーロッパの諸国並みに、その年に給付する年金総額はその年の保険料総額でまかなうという賦課方式に切りかえるならば、昭和六十一年を待たないでも、また保険料の引き上げをしないでも、厚生年金で月最低四万円、老齢福祉年金三万円という抜本的な引き上げを直ちに実現することが可能になるのであります。(拍手)総理が所信表明演説で述べたように、老後生活のささえとなる年金制度の改善に真剣に取り組む意思があるのなら、賦課方式への切りかえと国庫支出の大幅な増額を断行すべきであります。この点について総理の見解を伺いたいと思います。  以上、私は三つの緊急問題について述べましたが、これらはいずれも、政府の経済政策が従来どおり大企業奉仕の路線に立っているのか、それとも国民の利益を守る政治を目ざしているのか、そのどちらかをはかる試金石ともいうべき問題であります。総理の明確な答弁を求めて、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)   〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕

田中角榮自由民主党内閣総理大臣

○内閣総理大臣(田中角榮君) お答えいたします。  極東条項、台湾条項を廃棄せよ、沖繩−台湾間の米軍海底ケーブルを撤去せよというような御質問でございますが、日中両国間の国交正常化は、海底ケーブルの問題を含め、安保条約に触れることなく達成されたものであり、台湾が極東の範囲に入ることにつきましては、従来とも変わりがないのでございます。  わが国は、台湾を中国を代表する政府として認めることはできません。が同時に、米国その他の諸国が台湾と有している関係を否認する立場にはないわけでございます。  私は、日中国交正常化を実現し、中国側との相互理解を深めるため訪中したのでありまして、私の訪中がそれ以外の目的を有しないことは明らかでございます。したがって、貴党に関する問題などは話題にしておりません。  ベトナム和平に協力し、米軍の侵略に加担するな、ベトナム民主共和国、朝鮮民主主義人民共和国との正常化等についての御発言でございますが、ベトナム和平については、目下関係者が真剣な努力を重ねており、近くこれが実現するものと期待をいたしております。事態が鎮静化すれば、ハノイには本年初め、外務省の担当課長が訪問をしておることでもあり、北ベトナムとの往来は一そうひんぱんになるものと考えております。なお、朝鮮民主主義人民共和国とも、スポーツ、文化、経済と、だんだん交流を積み重ねておることは御承知のとおりでございます。  安保条約を廃棄せよ、沖繩の毒ガスを点検せよ、四次防を撤回せよ、四次防を国会にはかれという問題でございますが、安保条約の目的は、間々申し上げておりますとおり、わが国の安全を確保することにありまして、政府としては、これを堅持してまいるつもりでございます。同様の理由により、四次防を撤回する考えもございませんし、四次防は重大な国防の問題でありますので、国会においてはもとより、広く国民各界各層において議論をしていただきたい、こう考えるのでございます。しかも、防衛問題に対する国会の審議機関としては、各党にもお願いを申し上げておりますが、安全保障に関する常任委員会のごときものを設けていただいて、十分国会で御審議をいただくのが正しいと考えておりますし、政府もそうお願いをしておるのでございます。  御指摘の沖繩の毒ガスは、昨年五月にすべてが撤去をされておることが確認をせられておりますので、念のため御報告を申し上げておきます。  経済政策につきまして申し上げますが、日本列島改造論のねらいは、福祉が成長を生み、成長が福祉を約束するという成長活用の経済運営のもとで、過密と過疎の同時解消、公害の追放、環境の保全、物価の安定などを勇断をもって行ない、国民が安心して暮らせる、住みよい、豊かな日本をつくることにあるのでございます。  なお、日本列島改造論は、御指摘にありましたとおり、四十六年五月、当時幹事長であった私の名前で発表した「統一地方選挙とわれわれの反省」に強調している政策の方向を発展させたものであることを御承知いただきたい、こう思います。  それから、列島改造は、六十年国民総生産を三百四兆円にすることを目的として、とお考えになっておるようでございますが、四十六年の国民総生産を基準にし、六十年まで年率一〇%の成長を続ければ三百四兆円になるし、八・五%の成長を続ければ二百四十八兆円になるという、一つのめどを示した数字であることを誤解のないようにしていただきたい、こう思います。すなわち、日本の持つ潜在成長率を数字で積算をし、それによって農業から転化しなければならない人員を吸収することも可能であるし、なお、われわれの、十五年間において国民総生産を四倍にすることも可能である、そういう数字を前提にして、理想的な将来図を描く基礎数字として提供したものであるということを御理解賜わりたい、こう思います。  公害・物価、社会保障について申し上げますと、汚染の原因者が公害防止費用を負担すべきとの考え方につきましては、わが国の制度は、すでにそのような考え方をしておるところでございますが、公害防止には万全を尽くさなければなりません。また、発生源からの汚染物質の排出等の規制については、これを一そう強化いたしますが、さらに総量規制等、適切かつ合理的な規制方式を検討してまいります。  物価安定のためには、日本列島改造をはじめ、各般の施策を講じてまいります。また、独占禁止法の厳正な運用によって、不当な価格形成は排除してまいりたいと存じます。  また、年金の財政方式につきましては、直ちに賦課方式に移行するのではなく、現行の修正積み立て方式を、実情に即した配慮を加えながら維持していくことが適当だと考えます。  以上。(拍手)

長谷川四郎自由民主党副議長

○副議長(長谷川四郎君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。      ————◇—————  日程第一 裁判官弾劾裁判所裁判員予備員の選挙  日程第二 裁判官訴追委員予備員の選挙  日程第三 検察官適格審査会委員及び同予備委員の選挙  日程第四 国土総合開発審議会委員の選挙  日程第五 東北開発審議会委員の選挙  日程第六 九州地方開発審議会委員の選挙  日程第七 四国地方開発審議会委員の選挙  日程第八 中国地方開発審議会委員の選挙  日程第九 北陸地方開発審議会委員の選挙  日程第十 豪雪地帯対策審議会委員の選挙  日程第十一 離島振興対策審議会委員の選挙  日程第十二 国土開発幹線自動車道建設審議会委員の選挙  日程第十三 北海道開発審議会委員の選挙  日程第十四 日本ユネスコ国内委員会委員の選挙  日程第十五 鉄道建設審議会委員の選挙

長谷川四郎自由民主党副議長

○副議長(長谷川四郎君) 日程第一ないし第十五に掲げました各種委員等の選挙を行ないます。

浜田幸一自由民主党

○浜田幸一君 各種委員等の選挙は、いずれもその手続を省略して、議長において指名せられ、裁判官弾劾裁判所裁判員の予備員、裁判官訴追委員の予備員の職務を行なう順序については、議長において定められんことを望みます。

長谷川四郎自由民主党副議長

○副議長(長谷川四郎君) 浜田幸一君の動議に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

長谷川四郎自由民主党副議長

○副議長(長谷川四郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。  議長は、裁判官弾劾裁判所裁判員の予備員に伊東正義君を指名いたします。  なお、その職務を行なう順序は第二順位といたします。  次に、裁判官訴追委員の予備員に松野幸泰君を指名いたします。  なお、その職務を行なう順序は第二順位といたします。  次に、検察官適格審査会委員に宇野宗佑君を指名いたします。  また、橋口隆君を宇野宗佑君の予備委員に、坂本三十次君を森田重次郎君の予備委員に指名いたします。  次に、国土総合開発審議会委員に久野忠治君を指名いたします。  次に、東北開発審議会委員に阿部昭吾君を指名いたします。  次に、九州地方開発審議会委員に村上勇君を指名いたします。  次に、四国地方開発審議会委員に鹿野彦吉君及び藤木孝雄君を指名いたします。  次に、中国地方開発審議会委員に白浜仁吉君を指名いたします。  次に、北陸地方開発審議会委員に吉田重延君を指名いたします。  次に、豪雪地帯対策審議会委員に森田重次郎君及び斎藤実君を指名いたします。  次に、離島振興対策審議会委員に菊池義郎君を指名いたします。  次に、国土開発幹線自動車道建設審議会委員に橋本登美三郎君、鈴木善幸君、櫻内義雄君及び石田博英君を指名いたします。  次に、北海道開発審議会委員に田中正巳君、地崎宇三郎君及び中川一郎君を指名いたします。  次に、日本ユネスコ国内委員会委員に森喜朗君を指名いたします。  次に、鉄道建設審議会委員に橋本登美三郎君、鈴木善幸君、櫻内義雄君及び石田博英君を指名いたします。      ————◇—————

長谷川四郎自由民主党副議長

○副議長(長谷川四郎君) 御報告いたすことがございます。  議員華山親義君は、去る八月十日逝去せられました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。  同君に対する弔詞は、議長において去る八月十一日贈呈いたしました。これを朗読いたします。   〔総員起立〕  衆議院は議員華山親義君の長逝を哀悼しつつしんで弔詞をささげます     —————————————  故議員華山親義君に対する追悼演説

長谷川四郎自由民主党副議長

○副議長(長谷川四郎君) この際、弔意を表するため、鹿野彦吉君から発言を求められております。これを許します。鹿野彦吉君。   〔鹿野彦吉君登壇〕

鹿野彦吉自由民主党

○鹿野彦吉君 ただいま議長から御報告のありましたとおり、本院議員華山親義君は、去る八月十日逝去されました。まことに哀悼の念にたえません。  華山君は、旧制山形中学校及び山形高等学校を通じて私の大先輩であります。当時、君は俊秀の誉れを高くし、私たち後輩のひとしく憧憬してやまなかったところであります。その後、本院議員として政界に入ってからは、所属政党こそ異にいたしておりましたが、郷土のためには同じ山形っ子として終始労をともにしてまいりました。その華山君が本年二月ごろから健康を害し、御療養のやむなきに至ったことを承り、私は御回復の一日も早からんことを心からお祈りいたしていたのでございます。しかしながら、政治家として責任感の旺盛な君は、一身を政治にささげ、生命のともしびを燃え尽くされてしまったのでしょうか、ついに御本復なされなかったのでありまして、いまここに、諸君の御同意を得、議員一同を代表して哀悼のことばを申し述べますことは、私にとりまして、まことに痛恨やる方ないものを覚えるのであります。(拍手)  華山君は、明治三十三年九月、山形県南陽市に生まれ、長じて山形中学から山形高等学校を経て東京帝国大学法学部に学ばれました。そして大正十五年、大学を卒業いたしました後、内閣統計局に勤務され、統計官として経済問題に取り組んで大いに研さんを積み、将来における飛躍の素地をつちかわれました。その後、外交畑に転じた君は、北京総領事として戦中戦後の困難に遭遇されましたが、特に終戦時には、邦人の引き揚げに最後まで全力を傾注いたし、なみなみならぬ御労苦をなめられたとのことであります。日中国交の正常化が成った今日、私は、往時をしのび、時の流れに新たな感懐を覚えるとともに、歴史の中の一こまとしてかつて君の果たされた役割りにあらためて思いをはせずにはおられません。(拍手)  総領事としての職責を全うした後帰国された君は、官界を去って事業の経営などに携わっておられましたが、昭和三十年、懇望されて山形県副知事の重職につき、以来六年有余にわたって、地方政治に当たってこられました。その間、君は、赤字財政に悩む県政の建て直しと地方自治の伸展に心魂を傾けて大きな成果をあげられたのでありまして、君の残された業績は、いまなお県民の記憶に新たなところであります。  しかしながら、地域格差を是正し、真に大衆の豊かな生活を確保するためには、みずから国政に参画して、平和の基本理念に徹し、大衆の心を心とし、勤労者の苦しみをその苦しみとする政治を実現しなければならないと決意いたし、周囲の強い慰留を断わって副知事の職を辞されました。そして、昭和三十八年十一月、第三十回衆議院議員総選挙が行なわれるや、日本社会党公認候補として勇躍立候補し、選挙民の力強い支持を集めて、みごと当選の栄冠を獲得されたのであります。(拍手)  本院に議席を得られてからの君は、その豊富な知識と貴重な経験を生かして活躍いたし、日本社会党におけるかけがえのない存在として、党の内外に大いに声価を高められました。  華山君が本会議において、あるいは委員会において一たび政策を論ずるとき、その弁舌は熱を帯び、まさに火を吐くかのごとき激しさがあったのでありまして、そのひたむきな情熱と真摯な姿勢は、同僚議員の敬服してやまなかったところでございます。(拍手)  とりわけ、地方行政あるいは決算の分野において示された君の御活躍は出色のものでございました。すなわち、地方行政委員会の委員としては、年来の悲願である地方開発、出かせぎしなくても済む明るく豊かな生活の確立を目ざし、その解決のために人一倍の熱意を傾けて粘り強く尽力されたのでございます。  君は、激務の中にあっても、寸暇をさいて出かせぎ労務者の飯場を訪れ、労務者とひざを交えて語り合い、その実態をつぶさに見聞されておりました。労働者の災害補償や飯場の改善などを政府に迫るその声が、真実の声として、聞く者すべてに強く訴えずにはおかなかったのも、けだし当然のことでございます。  君は、また、わが国社会の大きな課題である過疎対策につきましても、つとにその重要性を強調し、尽力されてきましたが、昭和四十五年には、君をはじめとする与野党同憂の議員の努力が過疎地域対策緊急措置法案の成立となって実を結んだのでありまして、これは地域格差の是正と地方住民の福祉向上をはかる上で、その第一歩を画すべき意義のあるものと申せましょう。  また、決算委員会の委員としても、君は目ざましい活躍をなされ、決算委員会に華山ありと高く評価されておりました。国の決算は、予算執行の結果を示す、いわば政治の鏡でありますが、生来、正義感にあふれ、数字に強い君は、決算の内容を精査して、的確な指摘をなし、政治の姿勢を正すため大きな貢献をされたことは周知のとおりであります。  党においても、君はまた、政策審議会の過疎対策特別委員会の副委員長あるいはまた中小企業対策特別委員会等の委員として精励いたし、政策の立案、推進に対して、その手腕、力量を遺憾なく発揮されました。  かくて、華山君は本院議員に当選すること連続三回、在職八年十一カ月に及び、その間国政に残された功績はまことに偉大なものがあります。  華山君は、福澤諭吉翁の「天は人の上に人をつくらず、人の下に人をつくらず」ということを座右の銘としておられました。そして、この信条そのままに、政治家としては人間の尊厳を基本理念として、何ものにも屈せず、断じてわが道を邁進された正義の人でありました。また一人間としては、お宅の庭でバラづくりにいそしむやさしい心情の持ち主であり、すべての人々に惜しみなく愛情を注がれました。  君が副知事時代のこと、いまは緑地公園となっている山形市の霞城公園には、なお多くの海外からの引き揚げ者が住み込んで困窮した生活を送っておりましたが、君はこれらの人たちに、毎年暮れになると、華山個人が贈り主であることを隠して年越しもちを配っておられたのでございます。君がたぐいない清廉質素な方であっただけに、あとでそれを知った人たちは、だれもが強く心を打たれ、感謝と敬愛の念を新たにしたとのことであります。(拍手)そこには、後日大衆政治家としてその本領を存分に発揮するに至った華山親義君の面目が躍如としていたと思うのであります。  私は、君からあふれ出る政治家としての深い愛情と行動力に対し常に敬意と信頼を寄せていたのでありまして、今後いつまでも相携えて国政に貢献できることを念願しておりました。  君もまた、病床にありながら、政治の動向を見守りつつ、わが国の将来を心にかけ、再起への情熱はいささかも衰えなかったのでありますが、やがて、やるべきことは精一ぱいやってきたという澄み切った心境に達ぜられたのでありましょうか、淡々として七十一年の生涯を閉じてゆかれたのであります。まことに華山君にふさわしい終焉であり、追慕の情ひとしお深いものを覚えずにはおられません。(拍手)  いまや、わが国は外交に内政に新時代を迎え、解決すべき問題が山積しております。  このときにあたり、君のような有為の大衆政治家を失いましたことは、日本社会党のみならず、国家のため、国民のため、大きな損失であり、惜しみてもあまりあるものがあります。(拍手)  ここに、つつしんで君の生前の功績をたたえ、その人となりをしのび、心から御冥福をお祈りして、追悼のことばといたします。(拍手)      ————◇—————

長谷川四郎自由民主党副議長

○副議長(長谷川四郎君) 御報告いたすことがあります。  議員村上信二郎君は、去る八月二十六日逝去せられました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。  同君に対する弔詞は、議長において去る九月一日贈呈いたしました。これを朗読いたします。   〔総員起立〕  衆議院は議員従四位勲三等村上信二郎君の長逝を哀悼しつつしんで弔詞をささげます     —————————————  故議員村上信二郎君に対する追悼演説

長谷川四郎自由民主党副議長

○副議長(長谷川四郎君) この際、弔意を表するため、藤田高敏君から発言を求められております。これを許します。藤田高敏君。   〔藤田高敏君登壇〕

藤田高敏日本社会党

○藤田高敏君 ただいま議長から御報告のありましたとおり、本院議員村上信二郎君は、去る八月二十六日逝去されました。まことに痛恨の念にたえません。  私は、諸君の御同意を得て、議員一同を代表し、つつしんで哀悼のことばを申し述べたいと存じます。(拍手)  私は、村上先生が本年初頭から健康をそこなわれ、二月以降入院加療しておられたことを伺い、病状の御回復の一日も早からんことを心から祈っておりました。そして、いまだ五十三歳という若さと、あのたくましい体力と、そして、あの不撓不屈の精神力をもってすれば、必ずや病魔を克服できるものと信じて疑わなかったのであります。しかし、この私たちの願いもむなしく、先生はついに不帰の客となられました。兄弟愛の人一倍強かった先生が、昨年九月になくなられた御令兄参議院議員村上孝太郎先生のあとを追うかのように去って逝かれたことは、いかに天運とは申せ、その無常をしみじみと感ずるものでございます。  村上先生と私とは、その所属政党を異にし、昭和四十二年、先生が衆議院議員総選挙に立候補されて以来、同じ選挙区において過去二回にわたり選挙戦を相争ってまいりました。そして、本院においては同郷出身の同僚議員として、またともに大蔵委員会の委員として互いに国政を論じ、ときには与党、野党の立場から激しく論議を戦わせたこともありました。  先生は、すぐれた政治哲学を身につけ、豪快ともいうべき政治家としての根性と、国際的視野に立って大所高所からわが国の政治を論じ、国民を指導し得る綿密な頭脳と風格を兼ね備えた方でありました。そして、常に国民を思い、大衆とともに歩まんとする大衆政治家としての素質を持っておられました村上先生に対し、私は主義主張を越えて、心から敬服していたのであります。この意味において、先生の存在は私にとって心の励みともなり、研さんのかてともなっておりました。  村上先生は、瀬戸内海に浮かぶ大島の一角、愛媛県越智郡宮窪町の旧家の御出身で、大正七年十一月、当時司法官であった父君の任地長崎県でお生まれになり、長じて第一高等学校を経て東京帝国大学に学ばれました。そして、卒業後、昭和二十一年に官界に入られ、香川県商工課長、通商産業事務官、防衛庁調達補給課長及び防衛審議官などを歴任されたのであります。この間、終始行政事務に敏腕をふるわれ、情熱を傾けてその職務の遂行に当たられましたが、ときには剣道四段という鍛えられた体躯にものをいわせて、数カ月間ほとんど不眠不休で庁舎に泊まり込み、計画の立案に当たられたこともあったとのことであります。そして、在任中には欧米各国へも長期の出張をされ、国際的視野を広められ、すぐれた行政官としてその将来を大いに嘱目されるところであったのであります。  しかしながら、わが国内外の情勢を見詰め、国の将来に憂いを深くした先生は、官途にとどまることにあきたらず、期するところがあり、みずから政界に進出する決意を固められたのであります。そして、昭和四十二年一月、衆議院議員総選挙に際し、自由民主党公認候補として愛媛県第二区から立候補し、政治の近代化と明るく豊かな国民生活の確保を切々として訴えられました。先生のこの情熱は選挙民の力強い支持を集め、みごと最高点をもって初当選の栄を獲得されたのであります。(拍手)  自来、先生は、本院議員に当選すること二回、在職五年九カ月に及びました。  本院に議席を占められてからの御活躍は、きわめて多方面にわたり、大蔵、決算等の常任委員会や科学技術振興対策特別委員会、公害対策並びに環境保全特別委員会の委員として、先生は該博な知識と豊富な経験を駆使して国政の審議に当たられました。とりわけ財政金融、税制の分野は国のあらゆる政策の基本であるとのお考えから、終始大蔵委員会の委員として研さんを積まれたのであります。  また、総理府の四国地方開発審議会委員として、四国地方の開発促進に尽力し、さらに、自由民主党にあっては、国土開発調査会委員をはじめ、政調各部会の委員、全国組織委員会研修局次長として、党の政策立案に、あるいは党務の処理に、その才幹を遺憾なく発揮されたのであります。  思うに、村上先生は、俊敏にして剛直、みずからを律するにきびしく、克己心の強い方であった反面、情に厚く、あたたかい心の持ち主でありました。  あの引き締まった風貌や鋭いまなざしは、まさに武士を思わせるものがありました。しかし、一たび人に接するや、だれにでも気軽に握手を求め、人なつっこい明るい表情をもって語りかけられたのであります。  先生は、いわゆる先憂後楽を政治信条とされていました。そして、政治は国民一人一人のものであり、政治家は国民大衆への奉仕者でなければならないと語り、直接民衆の声を聞くことが政治家の第一のつとめであるとして、常にあらゆる階層の人々に会うことにつとめられたのであります。そこに、大衆から信頼され、敬愛された政治家村上信二郎先生の真髄があったと申せましょう。(拍手)  また、先生は、郷土愛媛にとってもかけがえのない存在でありました。愛媛県にとって、現下最大の政治課題は、愛媛大学医学部誘致と瀬戸内海大橋架橋の問題でありますが、先生は、これが実現をはかって、粉骨砕身、政治生命をかけて尽瘁されました。  いまや、この御努力がいずれも実を結び、とりわけ大橋架橋は明年度着工の運びとなり、先生の郷里、宮窪の島影で作業船が着々と調査を進めております。このときに先生がそのつち音を聞くこともなく逝去されましたことは、御本人はもちろんのこと、私どもにとりましてもまことに残念しごくであります。(拍手)せめて大橋完成の暁には、渡りぞめの祝賀のテープを先生に切ってもらいたかったと、地元県民はひとしく涙にくれているところであります。(拍手)しかし、県民が長年にわたり熱望してやまなかった夢が、やがて本州−四国のかけ橋として実現し、郷土の輝かしい発展が期せられるのでありまして、この御功績は永久に語り継がれていくことでありましょう。(拍手)  先生は、常日ごろ、口ぐせのように、「からだが二つほしい。一日が四十八時間あったら」と言われていたそうでありますが、政治家の常とは申せ、わが身をいとわず、国民のために、このように超人的な努力を重ねられたことが、先生の死を早からしめたと申せましょう。御遺族の胸中を察するとき、まことに哀惜の情ひとしお深いものがあります。(拍手)  激動する七〇年代にあって、わが国内外の情勢が新たな局面を迎えているとき、若い情熱と確固たる信念に加え、透徹した洞察力を有せられる村上先生の今後の御活躍が大いに期待されていたのでありますが、その先生が政治家として春秋に富む身をもって、雄図半ばにして去って逝かれたことは、ひとり自由民主党のみならず、本院にとっても、国家にとっても大きな損失であり、痛惜のきわみであります。(拍手)  私は、先生とは政治的立場を異にしておりますが、同じ政治の道を歩む者として、その御遺訓を心のかてとし、国民大衆のために全力を傾注することを先生のみたまにお誓いするものであります。(拍手)  ここに村上信二郎先生の御冥福を心からお祈りするとともに、生前の御功績に対し、限りない敬意と感謝の意を表しまして、追悼のことばといたします。(拍手)      ————◇—————

長谷川四郎自由民主党副議長

○副議長(長谷川四郎君) 本日は、これにて散会いたします。    午後五時十九分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  田中 角榮君         法 務 大 臣 郡  祐一君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 植木庚子郎君         文 部 大 臣 稻葉  修君         厚 生 大 臣 塩見 俊二君         農 林 大 臣 足立 篤郎君         通商産業大臣  中曽根康弘君         運 輸 大 臣 佐々木秀世君         郵 政 大 臣 三池  信君         労 働 大 臣 田村  元君         建 設 大 臣 木村 武雄君         自 治 大 臣 福田  一君         国 務 大 臣 有田 喜一君         国 務 大 臣 小山 長規君         国 務 大 臣 二階堂 進君         国 務 大 臣 濱野 清吾君         国 務 大 臣 本名  武君         国 務 大 臣 増原 恵吉君         国 務 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         大蔵省主税局長 高木 文雄君      ————◇—————

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