大蔵委員会 第3号
- 発言数
- 66 件
- 登壇者
- 14 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1972/11/08
会議録
○金子委員長 これより会議を開きます。 対外経済関係を調整するための租税特別措置法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。山中吾郎君。
○山中(吾)委員 私は、いま提案になっておる法案が、円対策全体の国内総合政策との関連においてどれだけの効果があるのか、法律の周辺を取り巻く政策との関連においてどう評価するかということを見きわめたいために御質問いたしたいと思います。 時間がないので簡潔に質問を進めていきたいと思いますが、まず端的に政務次官にお聞きいたしたいのですが、第一回の円切り上げ政策は成功したと見るのか失敗したと見るのか、現時点においてどう評価されておるのか。
○大村政府委員 お尋ねの第一回の円切り上げの成果がどうなっているかという点についてでございますが、この種の措置の効果というものは、相当長い時間がかからないと全般的な効果を把握することが困難であるといわれておりますので、まあ一年近く経過しておりますが、その間に起こった状況を顧みましても、確かに輸出のほうにややブレーキがかかってきたという点、また最近におきましては輸入が次第にふえ始めているというような点等から推しまして、ある程度の効果はすでに生じているものと私ども考えているわけでございます。しかし、全般的な効果につきましては、なお若干の時日をこれから要するものと考える次第でございます。
○山中(吾)委員 まああいまいに、ある程度効果が出ているという評価を現時点でされておるようでありますが、植木大蔵大臣の演説を見ましても、大体同じようなあいまいな評価をしておるようであります。長い期間というのも、一年ないし一年半で効果が出なければ失敗したと見る。これはもう学者の通説なんです。そういう点からいって、これはくどく聞く時間がありませんので、まだ失敗したと見きわめていないとすれば、今後これを効果あらしめるためにあらゆる政策を遂行していく方針なのか。あるいは失敗という方向に考えておるならば、再切り上げもという準備を考えておるということになると思う。第一回の円切り上げは功を奏しつつあるので、これからの総合政策のあり方によっては、十分これで黒字の国際経済環境を適正化することは可能なんだ、そのための対策をこれから立てていく方針なのか、それを明確に聞いておきたいと思うのです。
○大村政府委員 ただいま御指摘のとおりでございます。再切り上げを防止するためにさらに最善を尽くしてまいるということで、先月二十日に関係閣僚懇談会の手によりまして新しい円対策の要綱が決定を見たのでございます。そのうち立法事項につきまして、今国会に提案して御審議を願っている。私どもは、立法事項以外の政府で実行できるものにつきましても極力その実施をはかることによりまして、再切り上げをあくまで防ぎたいという気持ちでございます。
○山中(吾)委員 いまの次官の御答弁をよく頭の中に入れて今後見守っていきたい、またわれわれのすべきことを努力していきたいと思います。覚えておいていただきたい。 それで、個々の問題に入っていきたいのでありますが、質問がダブらないようにしていきたいので、いままでの点については触れないことにいたします。 端的に関税引き下げの法案の中で、別表第五の暫定簡易税率表ですね。ここにアルコール飲料についての一覧表がありまして、これについての思い切った引き下げがあります。私はこのことだけについて、一応税行政についての基本的な考え方について大蔵省からお聞きしておきたいのですが、財源をとにかく多くすることだけが目的で、あるいは輸入を多くすることだけが目的で、あるいは輸出を多くすることだけが目的で、その品目の税率を上げ下げすることによって国内の国民の健康状態に対して有害であるかいなかとか、あるいは憲法の思想に基づいて不適当であるかいなかという価値評価というのが税行政には不要なのか、考えてやられるのか、その基本的な価値観というものは税行政に要るのか要らないのか、まずそれをお聞きしておきたいと思います。
○秋吉政府委員 あるいは的確な御答弁でないかもしれませんが、関税につきましては、やはり最近多角的な機能が関税面に期待されるものがふえてはおります。もちろん関税の本体は、財政関税、それから保護関税ということが主体ではないかと思います。最近になりまして、物価対策あるいは消費者対策、公害問題、あるいはさらに南北問題ということで特恵関税制度、こういった点がいろいろ見直されているということでございますが、いま御質問の衛生面的な面、そういった点まではまだ関税機能としては熟していないということではないかと思っております。
○山中(吾)委員 私の質問申し上げておるのは、局長では無理かもしれない。政務次官にお聞きするのがいいのかもしれませんが、たとえば輸入を増加するという方針を持った場合に、バナナなどは国民の栄養にプラスになり、また国内産とは違った栄養価もある。それと関係しながら、その辺は関税を下げて輸入しようというふうな場合には一つの価値観が入っていると思うのですね。ところが、現在日本の飲酒の量というのは非常にふえておる。全国で大体アルコール中毒患者が十万に近づきつつある。しかし、それは日本の清酒はアルコールのパーセンテージが少ないから、ヨーロッパに比べて十分の一以下である。アル中というのはアメリカあたりではたいへんである。それはウイスキーとかそのほかアルコールのパーセンテージが非常に多いからである。こういうものはできるだけ日本の国民の健康保持のために、いろいろな政策があっても、これを安く輸入するということは最後に回すべきではないかということが、価値観が入るかどうかの問題なのです。いま円対策として考えるときに、輸入を多くするために関税を下げるというときにおいても、いまだんだんウイスキーの飲酒の慣行というのはふえておる。私は、これが自由に入ってくると、ヨーロッパと同じようなアルコール中毒患者が百万、二百万になると見ておる。そういうときに何の価値観も入れないで、円対策に便乗して、あるいはどこかの業者のほうの要求かどうかしりませんけれども、何らの価値観も挿入しないで——私はこの法律を見ますと、アルコール飲料の一覧表の三、四ページだけが一番目の中に大きく入っている。こんなにまで一番最初に入れなければならぬのか、円対策で。こういうものこそあとでいいのではないか。これがどれだけ円再切り上げの防止に役に立つのか。そして一方に国内のアルコール分の少ない清酒でなれておる日本国民に、今度はアルコール分の非常に多い、アル中になりやすい外国酒を普及することによって、どれだけ国民の健康状態をマイナスにするか、どれだけアル中をつくるデメリットというものが多いかという評価をされないのか。こういうことを、この法案を見たときに一番私は痛感をするので、次官の御所感を聞いておきたい。
○大村政府委員 確かにこの法案を一見いたしますと、アルコール類ばかり目につくような感がいたすわけでございまするが、とにかく関税も一応財政の範疇に属する手段でございますので、直接的には経済関係が先行するものと考えますが、高度福祉国家を目ざす以上は、やはり憲法の目ざす福祉国家の理念、あるいは国民の健康とかそういった観点も全然考慮の外に置いていいものであるかどうか、その点につきましては、確かに御指摘のような感じがいたす次第でございます。そこで、現在行なわれております制度を、円対策の一環としてとりあえず一律に引き下げることに今回いたしているわけでございますが、なお基本的なあり方につきましては、また引き続きまして根本的な検討を行なう際にそういった点も考慮に入れるようにさせていただきたいと思う次第でございます。 なお、アルコールの点が目につくのは、これは私見でございますが、率できめておりますほうは改正条文も書きやすいわけでございますが、いろいろ分類して額できめておりますほうは、一々書き改めるような条文を用意する必要があるので、条文も長く、またお目に立ちやすいのではないか、これは私の感想でございますが、御参考までに……。
○山中(吾)委員 私の趣旨は、こういうものを下げる必要はないという思想に立っているものですから申し上げておるのでありますが、国内産の清酒の一年間の酒税は幾らですか。
○大倉政府委員 ちょっとただいま資料を調べまして……。
○山中(吾)委員 酒の一年間の税収入です。
○大倉政府委員 酒税収入全体で七千百三十六億円ほど予定いたしております。
○山中(吾)委員 日本酒だけですね。
○大倉政府委員 その点をいま調べております。
○山中(吾)委員 七千百三十六億円という税金は、おそらく酒の価格の二分の一に近いほど高税だと思うのです。そういう酒を飲む人は税金を飲んでおるようなものである。税金を二十年、三十年まじめに一生懸命飲んでおる者がアル中になる。ある意味においては、国家財源に一番奉仕したものがアル中になっておる。これだけ税金を取っておるので、わざわざ外国のアルコールを入れて危険なものをまた飲ます必要はないんじゃないか。私は酒の税金というものについて、日本の税行政に一番疑問があるものだから、国民の健康を守るために、安い酒にすると飲み過ぎるから、高くするために高い税金をかけているんだというならば、健康を守るための趣旨はわかる。そうでなくて、ただ財源を多くするために、酒を飲みたい者は三度のものを二度にしても飲みたい弱点をつかんで高税をかけて、そしてただ財源を多くするために酒税を特別に高くしておるというなら、福祉国家の思想に反する。いずれにしてもこの辺でいいじゃないか。さらにいろいろと考える筋はないと思う。大体農産物その他の関係について外国の圧力があることはわかっておるが、アルコール類の関税を下げろという圧力は一体どこにあったわけですか。どこからこういう要求があるんですか。
○大倉政府委員 お酒に対する税金のあり方でございますが、これまでは、やはり嗜好食品としての常識的な経済価値に着目して国内の税率もきめておられますし、外国の洋酒類につきましても、その観点からきまっておるのではないかと思うのでございまして、先生のおっしゃいますように、健康に害があるから、これを税制によって押えていくんだというふうな配意は、これまではそれほど強くなかったんではないかという感じがいたすわけでございます。そこで、この洋酒の問題でございますが、御説のように、アルコール度は高いわけでございますが、国内産のウィスキーなどもだいぶふえてきておりますので、その辺とのかね合いもございますし、今回は円対策で、既定の関税を見直して、一率に二〇%引き下げることによって円対策の一環に資するという観点で、とりあえず改正を行なおう、こういうととでございますので、基本的な問題につきましては、御指摘のように多々あろうかと思いますが、これはまた別の機会にひとつ検討することにさしていただきたいと思う次第でございます。
○山中(吾)委員 円対策に一番影響の少ない、しかし日本の国民の健康に害のあるものが一番最初に改正法案の三ページも四ページも占めて出ておるものですから、将来に対して警告を発しておきたいと思います。あまりこういうものは——政策というのは、先にすべきものをあとにし、あとにすべきものを先にすることによってその政策は適、不適になると思うので、将来の税行政の問題として、私はその点の検討を要望しておきたい。 このことは、この機会でありますから申し上げますけれども、税の場合には公平の原則という技術上の原則だけがたった一つの原則になっておると思うのでありますけれども、そうでなくて、私はやはり、旧憲法時代から軍事費を調達するために、たばこの専売とか酒税を高くした、そういう歴史的沿革は知っているのですが、それをそのまま伝統的に持ってくるんでなくて、現在の憲法のもとに税行政を考える場合には、憲法との関係における価値観を入れるべきである。その一つのわずかなあらわれとして、私は、最低の生活費は税によって食い込まれない、所得税は食い込まないという一つの価値観が入ってきたことは非常に喜ばしいことだと思っているのです。その他の、憲法の規定しておる人権を行使する面については、やはり税の関係においては軽減を考えるという価値観も入れるべきであり、人権の発達を阻止するような税金の取り方は抑制すべきであるという程度の価値観は大蔵省においても考えるべきである。円対策、公害対策その他の政策税制がこれからたくさん出てくるわけでありますが、その点、少しも考えていないということを非常に遺憾に思って、その一例として申し上げたのであります。 それは、前の機会にも私が、憲法二十六条で国民は教育を受ける権利があるという、その教育を受ける権利という人権が保障されたあとにおいて、しかも義務教育で憲法が無償としておるにもかかわらず、PTAの立場において、小学校、中学校、高等学校の生徒の家計から相当の教育費が支出をされておる、これは当然に課税対象にすべきではないのじゃないか、そういう価値観を持つべきではないかと言ったことに対して、大蔵大臣以下は、家計からの教育費は他の方法で軽減をするものであって、税の問題としては不適当であるという答えを続けてきておる。一方に医師の必要経費というものは免税にしておる。その辺に非常に混乱があると私は思うので、その点を、大蔵省においては、一つの政治の方向からあらわれてきた政策として税制を検討するときに、少なくとも憲法の価値観というものを忘れないで善処していただきたいことを要望しておきたいと思います。よろしいですか。
○大村政府委員 わかりました。
○山中(吾)委員 そこで、私の本論に入りたいと思うのでありますが、この閣僚懇談会決定の「対外経済政策の推進について」、ごく通俗的にいえば円対策ということになると思うのですが、昭和四十七年十月二十日、対外経済政策推進関係閣僚懇談会で決定されておるものがあります。その一の「輸入の拡大」この点については、「関税の一律引下げ」という2の事項は、この改正法の一部に実施をされようとして出てきております。それから二の「輸出の適正化」この点についても、今度の提案の法案の中に一部その実施が具体化して出てきております。「資本の自由化」についても、輸出入銀行に関連をしてこれも今度のこの提案法案にある。最後の「福祉対策の充実」について、これは必ずしも立法事項ではないと思うのでありますけれども、私の見るところにおいては、五の「福祉対策の充実」については、ほとんど肉眼では見えない。顕微鏡で見たらあるかもしれないが、肉眼では見えない。非常に片手落ちである。ここの「社会資本の整備」という点について、国内需要の増大について非常に軽視をしておるがゆえに、円の切り上げの効果もまだなかなか出ていないのではないかというふうに考えておるのでありますが、これはいかがですか。
○大村政府委員 「福祉対策の充実」の点でございますが、この臨時国会に補正予算を提出しておるのでありますが、その中でおよそ四千億円にのぼる公共事業費の追加をお願いしております。その中では、環境の整備あるいはおくれている社会資本の充実、そういった点に特にウエートを置いているわけでございまして、下水道とか都市公園は当初予算のおよそ五〇%の引き上げを行なっておりますし、また国立の療養所の特別会計の予算はほぼ一〇〇%引き上げるというような点におきまして、この趣旨の実現を期している次第でございます。また財政投融資計画五千億の中にも、電話を繰り上げ整備するとか、そういった点にも配意いたしておりますので、その点もひとつ御理解を賜わりたいと存ずる次第であります。
○山中(吾)委員 それは福祉政策に値する福祉政策であるとは思いません。しかし、これについては、多く語ることはまた次にいたしたいと思いますが、福祉政策の中でも、どこかで資本の採算がとれるという方面だけが行なわれておる。私は、この福祉政策のあとに、教育・文化施設の拡大という項目が円対策として入るべきである、そうなければならぬと確信をしておるものでありますけれども、福祉政策の中に教育・文化施設の拡充その他がどこから見ても入ってはいない。日本の未来に、この機会にこれを善用して人材養成の施設、設備の拡大に注意を払うという用意が、この閣僚懇談会の決定事項の中にも非常に希薄である。まことに遺憾に思うのです。そして「福祉対策の充実」の中に少しは入れてあるかと見ましたら、この文章を読んでも何にもそういうものは入っていない。政務次官、もっていかんとする。御意見をお聞きしたい。
○大村政府委員 この文章の五の2に「引き続き、今後とも社会資本の整備、社会保障の充実、」ちょっと先にいって「を強化し、福祉指向型経済への転換を促進する。」という文章がございます。「社会資本」の中には、私は教育・文化の施設が含められるというふうに考えておるのでございまして、今回の補正予算におきましても学校施設の増額にかなりウエートを置いておるわけでございますので、今回の措置は不十分でございますが、この文章の第二項における「引き続き」「促進」ということで、大いにこれから力を投入していきたいという段階でございます。
○山中(吾)委員 「社会資本」の中に含ましめることはできると思うのですが、どこにも出ておりません。補正予算にも、義務教育費の不足分を出しておるだけなんです。何にもありません。次官、もう少し事実を調べてから、またいつか再答弁を願いたいと思います。 そこで、文部省来てますか。——文部省は一体何をしているのかまず聞きたいのでありますが、この円対策の中で、私はこの機会に文教施設設備の拡大をはかるに適するものがうんとあると思うのであります。そこでまず田中総理大臣が、就任直後思いつきで、ドル減らしのために教員十万人を海外に派遣をするという提案を新聞で発表した。おそらく間違いなくそう言ったんだろうと思うのですが、その後の処理はどうなっておりますか。
○岩間政府委員 新聞等で十万人という数字を私ども拝見したのでございますけれども、出どころがどこかがはっきりいたしません。
○山中(吾)委員 いや、田中さんです。
○岩間政府委員 ともかくそういうふうな話が政府の上のほうであったということだけ伺っておるわけでございますが、これに対しまして私ども従来から教員の海外派遣をしており、本年度は九百人ばかり海外へ出しておりまして、非常に効果が商いというふうに判断をいたしております。 そこで、これもちょうどいい機会というわけではございませんけれども、教員は子供相手でとかく視野が狭くなっておるというふうなこともございまして、できるだけ海外というものを見聞させるということも必要ではないかということを考えておった機会でございますので、来年度の予算におきまして、かなり多人数の海外派遣の費用を要求しているような次第でございます。もっとも十万人というのはかなりの人数でございまして、私どもの事務能力あるいはお世話をするエージェント、そういうふうな関係、あるいは海外の受け入れ状況、そういうものを考えますと、私ども来年度やれといわれましてやれる限度と申しますのは一万人程度じゃないかということで、その程度の予算を要求しております。
○山中(吾)委員 田中総理大臣の思いつきの十万人の教員派遣というのは、事実は実現できるものではないということは私もわかっておるのです。十万人出せば、教育を継続するために教員の補充をしなければならぬ。たいへんなことだ。しかし、この機会に教員に世界の事情を知らしめて、世界の中の日本の地位というものを自覚することによって、私は教育に対する使命感がおのずから生まれてくるし、非常に有効なる着想であると思うのです。勤評などをやるよりはよほど賢明な金の使い方であり、最も有効な税金の使い方であると私は思うので、その方向は賛成である。したがって文部省は、総理大臣がそういう着想を述べたならば、それを最大限に善用して、全教員が一度世界を見るという制度を定着せしめる。この機会に活用すべきだと私は思うのです。そのことが貿易収支の黒字を減らし、一方に日本の次代のための金の使い方によって、国際経済の調整に非常に大きな役に立つと思うのです。 そこでお聞きしたいのですが、一人大体百万円の世界視察の金がかかるとすれば、現在小、中、高の教員は六十万人ですか、そうすると全体で何ドルになりますか。——私が計算すればいいのだがめんどうくさいから聞きたい。
○岩間政府委員 来年度は一万人ということで、五十億の予算を要求しておるわけでございます。これは一人当たり約五十万円ということで計算をいたしております。六十万の教員全体としますとその六十倍でございますので、三千億というふうな金額になります。
○山中(吾)委員 そこで私は、教壇に立つ前にすでに教育学部とか教員養成大学において、卒業までに、たとえば全体の世界を見られなければ、東南アジアのあの悲惨な、ヨーロッパの植民地政策の中で教育も奪われ、富も奪われ、統治能力もない、魂をなくしたアジア民族の姿を見せる、そして教壇に立たせるというふうな制度はぜひ実現すべきではないか。そうすると毎年、小学校については大体一万人くらい補充しなければならない、中学校は五千人、高等学校は五千人、大体二万人である。その二万人が教壇に立つ前に、世界を見せるということを制度化して、そして同時にそれがドル減らしになるというならば一番いい制度ではないか。一人百万として大体二万人なら二百億円というものは減らすことができるし、最も有効である。ただ文部省が考えておるように教壇に立ったあと十年、十五年経験した者を論功行賞で出そうとするから、選別に差別が出て、権力に従順な者を選ぶのだとか、あるいはもう退職近い者に世界を見せてもそれはおみやげ話になるだけである。教壇に立つまでに、戦前に兵学校で卒業前に世界を見せた、——これは軍国主義の制度と違いますよ。例を申し上げただけである。世界を見せて教壇に立たせるという制度は、何としても実現をすべきではないか。そういうことを私はこの機会に来年度の予算においても少なくとも芽を出すべきだと思う。こういう情勢の中で。これは世論も認め、また各政党もそれは認めるのだと思うが、そういう用意があるのかどうか。
○木田政府委員 ただいま御指摘のございましたような考え方で、明年度以降、教員志望の学生が、ただ物見遊山でなくて、在学中、外国の大学でやはり広く大学教育を身につけてくる、こういうような趣向を考えてみたいと思っておりまして、現在大蔵省と約五百人ほどの規模で相談をしておるところでございます。
○山中(吾)委員 一応要求をしておるならば非常にけっこうでありますから、ぜひ実現に努力をしていただきたい。その場合は、今度は各国の所在の大使館には、そういう派遣教員の卵の指導その他について、担当書記官などがやはりないと、とても世話できないと思うので、それに関連をした制度一般を、ぜひこの機会に福祉政策の中の教育文化政策として実現することを要望したいので、大蔵省の認識も深めておかなければならないし、政務次官の政治感覚も聞いておかなければならぬので、お聞きしておきたいと思います。
○大村政府委員 この種の構想は前からあったわけでございますが、外貨の保有状況もふえておりますので、積極的に実施するいいチャンスが来ていると私自身思っております。またやるならばお年寄りの方でなく、若い方を優先すべきではないか。その方向でひとつ来年度予算の編成にあたりまして検討さしていただきたいと思います。
○山中(吾)委員 次官、覚えておいてくださいよ。青木主計官、聞いておるですね。 次に、国立大学の研究設備費が非常に貧弱である。現在東京大学が中心で大都市集中の弊害の中に学生がまた東京に集まっておるということも大学紛争の因にもなり、また学問的雰囲気がないから学生の心理が乱れる、いろいろなことが重なって日本特殊の大学学生紛争現象が出ておると思うのであります。それで、日本列島改造論において、工場の分散よりも、大学、教育の分散を先行すべきであるというのが私の持論であります。その方途として地方大学を充実する。各府県に一つあります。これに、七大学を完備をして、医科大学ばかりでなくて、各大学総合大学として完成すれば東京に集まる学生はおらなくなるでしょう。法学部がない県は他に行くのである。医学部がないから他に行くのである。工学部がないから東京の工科に入ってくるのであります。そういう地方大学を充実するといういわゆる大学教育の分散ということが、まず第一にとるべき手段ではないかと思うのでありますが、そういう線も考えながら——各大学の研究設備は非常に貧弱である。しかも、高度の分析機器などは、日本の国産品ではないのです。外国のものを入れないと完備はできないのであります。世界の最高の新しい研究施設設備というものをこの機会に充実する。これはまた円対策、ドル減らしになるのであって、この機会に——大学の数だけはふえた、量は拡大されたが質が非常に低下をしておる、日本の大学教育の実態を分析をして、国産では買えない研究設備、世界最高の研究設備を思い切って外から買い入れて、全国の大学の研究設備の充実をはかることをこの機会にすべきだと思うのです。文部省にそういう用意がありますか。
○木田政府委員 御指摘のように、いま東京に非常にたくさんの大学生が集中をしております。国立大学では学生数の一二%ほどでございますけれども、私立の大学は約四八%、半数近い学生が東京におるわけでございます。そして大学教育の普及を見ました結果、現在四人に一人の青年が大学へ行くという状況になり、進学率が二六%という状況でございます。しかし、これも東京に大学が集中しております結果、東京の男子の青年は五十数%が大学に在籍をしておる。しかし、非常に進学率の低い県におきましてはわずか一割であるというような、進学率についてもかなりアンバランスが目立ち、大学の所在につきましても非常に集中と過疎があるという実態を前にいたしまして、いま全体の高等教育計画と申しますか、そういうものを将来どのように構想するかという検討を鋭意進めておるところでございます。どのように考えてみましても、東京、大阪あるいは広島、神奈川等、現在進学率が男女合わせて四〇%をこえておる府県の実態等を考えますと、今後、数年間に日本全体として相当の進学率のアップというものを考えなければならない。現在四人に一人が大学に入ってきて、一学年に五十万人近い大学生が大学の門をたたくことになっておるわけでありますが、これがやはり近い将来、十万、二十万というふうにふえてくるであろうというふうに考えるのであります。このふえる部分を、従来のように東京あるいは関西に集中させることのないようにする。このためには、現在の法律制度だけではちょっと処置のとりきれないことがございます。大学の認可制度その他のことも考えなければなりません。また、国立大学の整備のしかたにつきましても、基本的に考え方を変えて、全体の構想のもとに進めていくということが必要になってくると思っていまして、いま一両年の間に、ひとつ基本的な高等教育の将来といったような計画目標を樹立したいと鋭意急いでおるところでございます。
○山中(吾)委員 あとの質問に対して、抜けておるのですが、国産品ではない世界最新の大学の研究施設設備をこの機会に輸入する。円対策もかねて世界の最高の研究施設、ことに高度の分析器具などないでしょう、そういうものを輸入することによって設備の充実をはかるということが非常に大事だと思う。非常にいい機会であると思う。これは国策に沿うのですから、大胆に要求したらどうだと聞いておるのです。
○木田政府委員 大学の教育研究設備の整備充実ということは、御指摘のように今後も相つとめてまいらなければならぬ課題であります。教育研究設備は、分野ごとによりましてそれぞれ計測器その他の購入整備あるいは製作をはかるわけでございますが、たとえばロケットのようなものにいたしましても、そうした研究機器の開発をやはり国内の手で進めていくという領域もございますので、全部が全部外国のものに切りかえるというわけにまいりませんが、現在までのところ、大体教育研究設備で外国製を必要とするものについてはそのような購入を進めておるところでございます。そこで今回の補正予算でも、従来設備の追加ということはほとんどございませんでしたが、大蔵省と御相談を申し上げまして大学の研究設備につきましても、六億六千万だったと思っておりますが、研究設備の追加計上をすることにいたした次第でございまして、御指摘のような御趣意に沿いまして今後も大学の研究設備等必要なものについての整備をはかり、そして輸入品等を必要とするものについてはどんどんと購入をさしていただく、このように考えております。
○山中(吾)委員 恐縮ですが、あと二つ……。
○金子委員長 簡潔に願います。
○山中(吾)委員 大蔵政務次官、円対策として私、論議しておるのですが、こういう機会に、私は善用であると思うのでありますが、国産品でない、アメリカその他にずいぶんと研究設備として必要なものがあるからできるだけ購入をするという方針を、教育文化政策の立場で要求があれば全面的に受けるようにしてしかるべきではないかと思うのですが、いかがです。
○大村政府委員 文部省とも相談しまして御趣旨に沿ってやります。
○山中(吾)委員 それから、簡明に質問するから簡明に御答弁願いたいと思います。 在外邦人日本人学校があります。この間も中南米に行って見てみましたが、教員の定員が非常に少ない。各地区に三年あるいは四年くらい定住できるようにもっと文部省から教員を派遣してやる。これもドル減らしなんです。この機会に定員増をして、外国で実業あるいは公務で活躍しておる方の子供たちに日本語を教える、日本の教育をするために、十分の教員の定員を派遣すべきである。非常に少ない。これも円対策の一環として善用すべきテーマであると思うので、それも要求すべきではないか。局長及び次官の御意見をお聞きしておきます。
○岩間政府委員 現在、海外子女のための学校数は三十校でございまして、教員数が百七十名ほどでございます。毎年四十名程度ふやしております。そのふやしております目的は、ただいま御指摘になりましたように、国内と同様の水準まで外国学校の教育を基準に合うようにいたしていくということ、それから引き揚げてまいります教員の補充もございまして、そういうことで毎年四十名ぐらいずつ純増いたしておりますが、引き続きましてその充実をはかってまいりたいというふうに考えております。
○辻(敬)政府委員 在外日本人学校につきましては、海外で活躍をしておられる日本人の生活環境の整備を進める見地から、従来より予算的に見ましても重点的に配慮してまいったところでございます。四十七年度におきましては、ただいま文部省からもお答え申し上げましたように、派遣の教員数をふやしますとか、あるいは新たに現地採用の教員の手当を計上するという措置をとっております。また補習校につきましても教員の増加等いたしております。そのほか、以上は外務省所管の予算でございますが、文部省所管の予算におきましても、教科書あるいは教材の整備等必要経費を計上してございます。全部合わせまして七億三千万程度の予算を計上しておるわけでございます。前年度に比べまして相当大幅な増加になっておるところでございます。
○山中(吾)委員 なお、一般の各省の調査を目的とした役人というのは、非常に片すみに置かれて、不遇の位置にあると思うのです。あるいは不遇の位置ということばは不適当かもしれないが、調査という任務から、諸外国を視察をせしめ、半留学生的な視察をさせるということが非常に重要である。ところが、どうも事務系統の者だけが絶えず海外視察をして、肝心の調査を目的とした調査官級の海外視察というものがなかなかやらされない。これもドル減らしで、思い切って各省、やはりもう世界の中の日本、貿易立国であり、各資源はほとんど外国から受けて工業が発達しておるのであるから、平和国家をもって任じておる、戦争をしないで豊かにしようという国是の中にある日本の行政官は、一度は全部海外を視察させるようにしたらどうか。このドルを単なる産業ベースによらないで、文化ベースで計画的に各省ずっと海外を視察せしめる。十年に一回は見るんだというふうな計画を立ててはどうか、各省全体が。これも一つの積極的な円対策であると私は思うのですが、政務次官、いかがです。
○大村政府委員 全体的には人事院の所管事項ではないかと思いますが、私、私見を申し上げますれば、やはり視野を広めるということは必要でもございます。百聞は一見にしかずということばもありますので、本来なれば専門事項に打ち込んで研究調査できるような方法ですることが望ましいと思うのでありますが、現在までのあり方を検討し、さらにこういうチャンスを生かすいい方法があれば、関係省庁とも相談してその方向で進めたいと思います。
○山中(吾)委員 主計局次長、私の思想に賛成ですか、あなたのほうで全部チェックするのですから。
○辻(敬)政府委員 先ほどから御指摘のございました教育研究の面での国際交流の経費につきましては、従来から予算的にも増額をはかっております。逐次充実拡大をはかってきたところでございます。 それから、ただいまお話のございました一般的な行政官あるいは調査官クラスの問題につきましては、各省においてそれぞれの外国旅費の範囲内で措置をしておるところでございますけれども、なお御指摘の点も合わせまして今後検討してまいりたいと考えております。
○山中(吾)委員 現在は高等学校の生徒が夏休みにハワイにリクリエーションに行ったりする時代なんです。農協の積み立て金で香港あたりにおばあさんが行ったりしておるのです。この時代に、外国を知らないで教壇に立つ資格はない、行政を担当する資格はないと私は思っているのです。時代は変わってきている。したがって、こういう方面にもっと積極的に着眼をすべきである。 大体、円対策について経済ベースだけが偏重されて、一番最後に福祉政策、その次に教育。文化政策の拡充は一つもない。未来に対する目は閉じられておると思う。まことに遺憾である。私がいま申し上げたことを全部行なっても十億ドルくらいしかかからないと見ておるのであります。それくらいはおやりになったらいかがであるか。何分の一かの円再切り上げを防止する大きな役割り、しかも未来に対する、日本の次代に対する責任のある円対策であると思うのであります。各個々の企業に対する利益とは関係ないので、ぜひ検討していただきたいと思うのであります。 私の質問はこれで終わります。ただ、そこに輸銀総裁がおられて、何も答弁をされないのでは申しわけないので、一つだけお聞きしておきます。 この法案の中で、重油、原油については関税の引き下げの除外をするという条文がたしかあったと思うのです。間違いないですね。——私は、これ以上、この狭い日本列島の中で人口が一億あり、世界の公害列島になるときに、この日本列島の中に石油コンビナートをつくるのには反対であります。一歩外へ出れば広大な地域があり、コンビナートの一つ、二つつくったところで公害が発生するような場所なんというのはほとんどない。だから、生産地域にこちらから資金を出して、国内で石油コンビナートをつくるよりも、思い切って外に一つ二つつくるぐらいのことがあってしかるべきではないか。石油、原油の関税引き下げだけを除外するなんという法文を見たときに、まことに遺憾に思った。むしろ外でやるべきである。そうしてできた石油を輸入するというくらいの構想を持つべきである。輸銀の総裁が一つの資金を運営するときには、やはりそれくらいの価値観を持ってしかるべきであると思うのですが、いかがですか、それをお聞きしておきます。
○澄田説明員 ただいまの御指摘の点でございますが、開発途上国等におきまして、あるいはそういった石油その他の資源を保有しておる国におきましても、そういった資源を自国の経済、社会の開発、発展のために役立てるという趣旨から、むしろ自国において精製あるいは製錬、加工というようなことを希望する、そういうケースもふえてきておるように伺っております。いま御指摘のように、日本の立場においてもそうでありますし、さらに開発途上国側においてもそういう要請が高まってきておる、こういうときでありますので、日本に原油で持ってくる、あるいは鉱石で持ってくるというようなことだけでなくて、それを現地で精製し製錬、加工するということも逐次必要になってくるというふうに私も認識しております。 今回御審議願っております日本輸出入銀行法の改正案におきましても、海外投資金融の拡大として、従来は設備だけでございましたものを、長期運転資金も融資ができるというふうにもいたしておりまして、御趣旨のような、日本から投資をして現地で精製する、そういうことができるように、そういう融資がふえるような改正案ということになっておりますので、御趣旨を体して今後努力をいたしていきたいと思います。
○山中(吾)委員 私の質問はこれで終わります。 いま総裁の御意見も聞いて、これは国益に沿うと同時にまた後進国の国益にも沿うので、人口が非常に過疎である広大な地域については、私は決して国家エゴイズムを持っていないので、その方向は正しいと思いますので、その方向の努力を、われわれも、日本政府も、円対策の中で各党も検討すべきではないかと思っておるわけであります。 文教政策について、大体政務次官も私の方向に賛意を表されたようでありますし、大蔵省の各行政官も聞いておられたようでありますから、来年度の予算にどうあらわれるかと大いに期待をして、少なくとも未来に責任を持つ円対策であってほしいということを切望いたしまして、私の質問を終わります。
○金子委員長 この際、暫時休憩いたします。 午前十一時四十一分休憩 ————◇————— 午後一時五十六分開議
○金子委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 対外経済関係を調整するための租税特別措置法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。広瀬秀吉君。
○広瀬(秀)委員 今次の円対策法案について大臣の昨日の答弁は、きわめて安易かつ楽観的立場で、円切り上げを阻止できるかのお考えを表明されました。円の切り上げが、労働者にとっても中小企業者や農民にとっても何らのメリットを与えないばかりか、切り上げ不況が労働者の低賃金からの脱出の障害となり、農民は何らの対策なきまま農産物輸入自由化の脅威にさらされ、中小企業は、直接的被害者たる輸出関連部門はもちろん、それ以外の中小企業も景気後退のしわ寄せと犠牲を強く受けざるを得ない立場にあります。ただ一つ、輸入政策による物価引き下げの効果が期待されたけれども、それすら実現をしない。逆に消費者物価は高騰しつつあります。まさに勤労大衆にとって円の切り上げは罪悪にもひとしいと思います。これが再切り上げをされるということになりましたならば、今回の場合は一そう深刻な打撃をこれらの勤労大衆に与えることは必至であります。 われわれはこの委員会において、円再切り上げを阻止するために多くの提案を行なってまいりました。特に、円対策関係の閣僚懇談会の決定第五項目である福祉対策充実への財政政策を重点的に大胆に進めること、輸出急増による貿易収支のアンバランス、これを是正するためには輸出税を断行する、そして直接的効果をあげるとともに、それを福祉に向けることを主張いたしました。これについて政府の答弁はまことにあいまい、不誠意かつ不十分でありました。 しかも、一方において国内の外貨保有は、二週間で十六億ドルという勢いでドル売りが殺到をしております。九月−十月の貿易収支の黒字は大幅な増加を示しております。外貨準備も急増し、年内にも二百億ドルを突破する情勢になってまいりました。このことは、シュルツ・アメリカ財務長官のIMF総会における国際通貨調整の有効な指標として外貨準備高を使うというような発言に照らしましても、円切り上げに追い込まれる情勢に向かってばく進をしている、こう見なければならない。 にもかかわらず、今回の円対策法案は、貿管令発動における遅疑逡巡とも見合いましてまことに不徹底、不十分な、及び腰のものでしかない。もし円切り上げを阻止し得なかった場合、全責任は、まさに政府のこのような腰の入らない、魂の入らない安易な態度にあったと言わなければならないと思うのであります。 そこで、私どもはこの際、政府に対するきびしい鞭撻を含めまして、この円切り上げに追い込まれない対策を徹底的に実行することを、警告を含めて申し上げる次第であります。大臣のこの点についての所信を最後にお伺いをいたしたいと思うわけであります。この質問は、野党各党代表が一名ずつ質問を終わりましたところでまとめて大臣の決意を込めた答弁をいただきたい、こういうように考えるわけであります。 以上で私の質問を終わります。
○金子委員長 松尾正吉君。
○松尾(正)委員 私もいまの広瀬委員の意見と同感であります。政府は第三次円対策としての法律案を提出して審議してまいりましたが、いままでの質疑で明らかになったことは、この法案で政府は円切り上げを回避できるというきわめて甘い見通しをしておりますけれども、その内容がきわめて不備なものである、円切り上げは避けられないのではないかという点、さらに野党から各種補足すべき指摘があったにもかかわらず、あえてこれを行なおうとしない。したがって、わが公明党は従来から、小手先の外貨減らし策では効果がないこと、成長第一、輸出優先、産業優先の経済政策を国民福祉優先に経済構造を転換して、総合的な対策をもって切り上げ回避をはからなければならない、こういうことを強く主張してまいったのでありますが、依然としてその根本姿勢が改められていないのであります。私は、こんななまぬるいものでは断じて再切り上げの内外の圧力を回避することはできない、こういうふうに考えます。したがって、もし万が一、円の再切り上げが行なわれて国民や中小企業の倒産、転廃業などの重圧がかかるような事態が生じた場合には、われわれ野党の主張を無視した政府が一切の責任を負うべきである、このことを植木大蔵大臣の前で明確に言明して、この答えを伺いたいと思います。答弁は、先ほどの広瀬委員のとおり、最後にまとめて伺いたいと思います。 以上で終わります。
○金子委員長 竹本孫一君。
○竹本委員 政府の希望的観測や楽観的な予測にもかかわらず、われわれは、円対策は非常にむずかしいだけでなく、もうほとんど不可能に近いと判断をしております。特に今回出された法案の程度のものでは問題にならないというふうに私は考えておりますが、特に二、三点を要点だけ申し上げて御意見を承りたい。 第一は、対米姿勢の問題でございますけれども、アメリカは、円の切り上げということからいえば、ドルの切り下げになるわけですね。そのドルは、ドルであるからドルであるということばがありますけれども、ドルは一国通貨、アメリカのドルは国際基軸通貨のドルであるから、いかなる場合においてもドルである姿は変えない。文句があるなら、そちらのほうが円でもマルクでも切り上げなさいという態度を変えてない。そして金との交換性の問題にもきわめて冷淡な態度をとっているし、インフレについてもまじめな取り組みをやっていない。このアメリカの態度を変えさせないではたしてほんとうの円対策が講じ得るものであるかどうか、これが第一の私の疑問であり、御意見を伺いたい。 それから第二は、円問題はやはり一つの大きな通貨外交問題である。その外交に必要なことは、外交の路線がはっきりすることと、その外交の路線を推し進めていく場合の同志国家がなければならぬということなんです。ところが、日本の通貨外交を見ておると、去年もそうでありましたけれども、外交としての認識がない。外交の路線は、アメリカにくっついていくのか、あるいはブレジンスキーなんかも言っておるように、日本の外交路線はアンビギュイティ、あいまいもことしておるということがいわれておりますが、私はそのとおりだと思いますが、特に、十カ国蔵相会議をやりましても、日本の円を守るというか、円の再切り上げを回避するということについてだれがほんとうに協力してくれるのであるか、そういう手がどこに打たれておるか。前回も、最後には一対九でアメリカが孤立するかと思ったら、日本が孤立しておったことは明らかな事実である。今後の問題についても、日本の円を切り上げさせないためにいかなる国際的手が打たれておるか。手を打たないで日本だけが一対九で立ち向かった場合に、あるいはヨーロッパとアメリカまでいま手を握ろうとしておりますが、そういう情勢で、世界のヤマアラシみたいに日本は経済的にもきらわれておる、おそれられておる。そういう中で袋だたきにならないためには、同志、協力者がなければならぬ。孤立した外交は問題にならないと思いますが、その点に対してどういう配慮が行なわれておるか。 三番目は、一番政治に必要なものはタイミングの問題であります。社会資本の充実、社会福祉の充実の絶好のチャンスであると、この間中曽根さんも、本会議だったか、答弁をされましたけれども、しかし、それもいまの段階ではもはや、悪いことではない、必要なことであるし、われわれも大いに強調いたしておりますけれども、タイミングがもうずれてしまった。いまから社会福祉をやって、毎日一億ドルをこえるような思惑活動をどうして押えることができるか。そういう点について一番大事な経済政策のタイミングに対する感覚が全くずれておる。それを一体克服していけるだけの自信がおありであるかということであります。 ポイントは以上三つでありますけれども、しかし、これらの問題の本質は、いまの日本の経済の構造なり体質に問題があるのです。われわれから言うならば、資本主義の社会化や計画化というものはもともと不可能なんです。そういう中でこういう対策を計画的に推進するということ自体にも無理があると思いますけれども、それを越えてもなおやり得る自信があるかということであります。 最後に、先ほども各党から理事の御発言がありましたように、われわれのこうした警告、特に私は、今回田中内閣だけの問題ではなくして、長年にわたる自民党保守政権の体質ということが問題で、どうにもならないところまで追い込まれてしまったのだ、そういう意味での、そして今度のどうにもならない円対策を講じておられるという程度のやり方でありますから、われわれの警告を従来ともに無視してきた大きな政治的責任が円の切り上げの場合には一ぺんに爆発してくると思いますが、それはいかなる形で受けとめられる御意思であるか。 以上の点をお伺いいたしたいと思います。
○金子委員長 小林政子君。
○小林(政)委員 円再切り上げを防ぐためと称して今回政府が提案している対策は、全く問題にならないものでございます。これは、政府が第三次円対策を決定した直後からドル売りが急増している、このこと一つ見ても明らかでございます。円再切り上げを防ぐためには、大企業の成長第一主義、輸出第一主義の政策を、国民生活優先に思い切って大転換をすべきだというふうに考えます。大臣は、この立場に立って思い切ってこれを根本的に転換をしていく用意があるかどうか、お伺いをいたしたいと思います。
○植木国務大臣 ただいま広瀬委員、松尾委員、竹本委員、小林委員の各位から、いろいろ御意見、御質問の御発言がございましたが、私といたしましては、国際収支の均衡のための対策を講ずることが、わが国といたしまして当面の緊急な課題であることは、いまさらあらためて申すまでもないのであります。今後景気の本格的回復や昨年来の通貨調整の効果の浸透に加わりまして、今回の対外経済政策の推進措置を強力に実行することによりまして、国際収支は着実に均衡の方向に向かい、円の再切り上げは必ず避けられると確信していることをあらためて申し上げます。 政府といたしましては、今後とも必要な施策を引き続き実行いたしまして、万全を期してまいる所存でございます。何とぞよろしく御了解を仰ぎたいと思います。
○金子委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。 —————————————
○金子委員長 これより討論に入るのでありますが、本案につきましては、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。 対外経済関係を調整するための租税特別措置法等の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○金子委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。 おはかりいたします。 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○金子委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ————————————— 〔報告書は附録に掲載〕 —————————————
○金子委員長 本日は、これにて散会いたします。 午後二時十一分散会