予算委員会 第10号
- 発言数
- 577 件
- 登壇者
- 48 名
- 会派数
- 6
- 開催日
- 1972/04/11
会議録
○委員長(徳永正利君) ただいまから予算委員会を開会いたします。 昭和四十七年度一般会計予算 昭和四十七年度特別会計予算 昭和四十七年度政府関係機関予算 以上三案を一括して議題といたします。 この際、参考人の出席要求につきましておはかりいたします。 三案審査のため、法政大学教授伊達秋雄君並びに日本銀行総裁佐々木直君を、本日、参考人として出席を求め意見を聴取することに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(徳永正利君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 —————————————
○委員長(徳永正利君) きのうに引き続き、小平芳平君の質疑を行ないます。小平芳平君。
○小平芳君 きのうに引き続きまして、きょうは、公害に取り組む基本的な政府の姿勢について質問を続けたいと思います。 私は、こうした公害罪あるいは無過失賠償責任、このような法律によって、公害がなくなるとか減っていくというような期待を前提にしているわけではありません。しかし、現実の政府の取り組む姿勢は、きのう私が具体的にあげた休廃止鉱山の公害の現状から見ても、きわめて深刻な状況にあること、もっと積極的な取り組みがなくてはならないこと、その点を強く指摘したいわけであります。 そこで、法務大臣と国家公安委員長と、それから厚生大臣、環境庁長官、通産大臣、この五人の大臣の方に、同じ質問をいたしますので最初に申し上げますが、それは、現在のわが国の産業公害が、公衆の生命、身体に危険を及ぼすような状態にあるかどうか、公衆の生命、身体が産業公害によって危険にさらされているかどうか、その点についてどのように判断をしていらっしゃるか。そして、もし生命、身体に危険があるということでありますならば、捜査当局はどのような活動をすべきか、なさったか、行政当局はどういうことをなさるか、企業はどうすべきか、このような点について御意見を承りたい。お願いします。
○国務大臣(田中角榮君) 産業公害が主体でございますから私からまずお答えを申し上げますが、産業公害が生命、健康に影響があるか、ないかということでございますが、ないとは申し上げられません。だから今度は、無過失公害賠償責任の法制の整備も行なっておるわけでございますから、新しいケースの問題として、政治の上でも行政の上でも、取り組まなければならない問題だと思っております。 この一番大きな問題は、生産地と消費地が直結しておることが経済上一番有利であるということで、大都会に産業が過度に集中をしておるというところに一つの、複合問題というような公害問題が新たに起こっておるわけでございます。もう一つは、戦後、急速な科学技術の発展によりまして、PCBというような、非常に高性能ではございますが、ある意味では人体に影響があるようなものを原材料として使うというような、新しい問題が起こっておるわけでございます。また、薬の公害においてもそのとおりであります。きき方もいいが、一歩間違うと毒になる。 こういう面が公害の問題として取り上げられるわけでございますので、これからは、過密地帯の工場というものを再配置によって移さなければならない。少なくとも、自然の浄化作用によって浄化できるものが、複合するために大きな産業公害となるというようなものは、これは移さなければならないということが一つあります。もう一つは、重化学工業というようなものが主体であり、比較的公害を出しやすかったものが、公害の少ない知識集約的な産業に移りつつあるし、また移さなければならないということがございます。もう一つは、原材料として使われておる、高性能ではあるが毒性もまた強いといわれるPCBのようなものに代替する物質を研究して、これを取り除かなければならないというものもございます。 戦前は工場法というものがございまして、工場法では、いまの労働省所管の事項を中心として、産業上の被害予防というようなものが前提になっておったわけでございますが、ある意味においては、公害というものを除去するための新しい工場法というようなものの制定が必要なのではないだろうかということを考え、いま通産当局としても、こまかく検討いたしておるわけでございます。電気事業法のようなもの、石炭から石油に、石油から別なものにというふうに、まあ地熱発電にでも移れれば公害は全くなくなるわけでございますが、これはコストの問題もあります。立地の問題、コストの問題、いろいろな問題を考えながら、当面する問題をまず片づけて、しかる後は、長期的な日本の産業の見通しをつけ、公害除去に万全を期するという態勢でございます。
○国務大臣(大石武一君) 現段階におきまして、日本における公害は、やはり国民の健康なり生命に重大な影響を与えておると思います。したがいまして、このような国民の健康を、あるいは快的な生活環境を保つことが、何よりの使命であると考えまして努力いたしております。 その一つとしては、御承知のように環境基準なりあるいは排出基準というものをできるだけきびしくしてまいりまして、公害のつのることを少なくしておりますし、この監視体制を強化いたしまして、そして確実に公害の防止に努力したいわけでございます。 それからなお、そのような患者につきまして、あるいは健康被害者救済法等の法律によりまして、健康に非常に被害のありました人々に対しましては、できるだけの援助の手を伸べておる次第でありますが、さらに、今度御審議を賜わりますような無過失責任法のような法律をつくりまして、さらに被害者を守ってまいりたいと考えておる次第でございます。 しかし重大なことは、先ほど通産大臣から申し上げましたように、今後、このような公害病を起こさないことでございます。それはいろいろなことがありますが、申すまでもなく、未然に防止するということが一番の前提ではございますが、その一つの大きな問題に、新しい、今後考えられないような公害病を起こさないようにするということ、それはやはり、その実際の解決としては、これからいろいろな科学技術の進歩によりまして、そういうものによりましていろいろな新しい製品なり物がつくられてまいりましょう。そういうものは、おそらく今後のわれわれの生活に非常に便利なものが多いと思います。しかし、そういうものはたとえいかに便利であっても、そのものがわれわれの健康に有害である限りは、断じてこれを許してはならないと思います。 もう一つは、その製造過程において廃棄物が出てまいりますが、その廃棄物が有害 ある限り、あるいは無害であるという証明がなされない限りは、これは断じてそのような製造を許すべきではないという思想を、具体的に私は政治面にあらわしてまいることが必要だと考えております。同時に、われわれの健康を豊かにする自然環境というものを、やはり豊かにしなければなりません。そういう意味で、今後、われわれを取り巻く大気、水、緑その他を中心とする自然環境を、どのようにして豊かに保全するかということにやはり大きな問題があると思いまして、こういうことに努力してまいりたいと考えております。
○国務大臣(前尾繁三郎君) 公害が現在、健康にいろいろ害をしておるということについては、私も当然そうだと思っております。また、現在の公害罪につきまして、われわれも厳正に適用していかなければならぬ。それにつきましては、検事なりの訓練について十分素養を積むようにというわけでやっておりますが、御承知のように昨年七月一日の施行でありますから、それ以前の事案については適用がありません。その後につきましても、現在までこれを適用したものはありませんが、御承知のように、この罰則を規定したことによって、おそらく一般も非常にそれに関心を持ち、また企業者も、そういう適用をせられることのないようにという、予防的効果が十分あると私は考えております。しかし、なお今後、先ほど申しましたように厳正に適用していくという考えをもって臨んでおるわけであります。
○国務大臣(中村寅太君) お尋ねの件でございますが、公害が直接国民の生命、健康に影響がある事件、すぐ生命をその場で奪うというところまではまいらないと思いますが、やはり生活環境をこわし静かな楽しい生活を破壊する、不愉快な生活を送らなきゃならぬ、そういうことが関連して、健康をこわしていくというようなことになる事件があると思います。そういう点から、昭和四十六年中に公害関係事犯として検挙しました件数が、四百八十二件となっております。その内訳を申し上げますと、大体水質汚濁の関係案件として二百八十二件、それから悪臭の件で百六十件、騒音の件で三十四件、土壌汚染が四件と大気汚染が二件、合計しまして四百八十二件になっております。 国民生活を公害が非常に阻害しておるという実情を見詰めまして、きわめてきびしい態度で今後臨んでいくことが警察の責任であるというようなことで対処しておる次第でございます。
○国務大臣(斎藤昇君) すでに関係大臣からそれぞれお答えがありましたとおり、私も同様でございまして、ことに厚生省は、国民の健康と生命を守るという見地から、遺憾なきを期したいと努力をいたしておるわけでございます。ただ、御承知のように、いままでわからなかったものが、いわゆる公害となって人体に影響を及ぼすというような事態が、次から次へと言っては言い過ぎかもしれませんが、新しく出てまいりますので、したがって、わが国におけるそういった状況だけでなしに、海外の情報等も密にとることにいたしまして、そして絶えず目を周囲に見張ってやっていきたいと、こういう心がまえで臨んでいるわけでございます。
○小平芳平君 各大臣とも、多少の表現の違いはありますが、公害によって国民が生命、健康に危険を受けているということを述べられました。それならば、この公害罪法で、生命、健康に危険が生じたときに捜査をするということを、公害国会のときにるる述べられましたが、なぜ捜査活動が始まっておりませんか。
○政府委員(辻辰三郎君) お答えいたします。 いわゆる公害罪法の該当の事案が、ただいま法務大臣が答弁なさいましたように、現在まで一件もないわけでございますが、その理由として考えられますのは、先ほども法務大臣の御答弁にもありましたように、この公害罪法は、昨年の七月一日から施行されておりますが、その後に排出行為があった、そしてその結果、生命、身体に危険を生ぜしめるというような事態が発生したということが要件でございます。少なくとも、有害物質の排出というものがこの施行後に行なわれてないと犯罪の要件に当たらないということでございますので、これが何よりも、この事犯が現在まで起きていないという原因であろうと考える次第でございます。
○小平芳平君 それでは、カドミウムは排出されております。それは政府の規制した以内のカドミウムの排出であるかもしれませんが、規制内にしても、カドミウムが現に工場から排出されていて、しかも政府の発表では、十八地区で玄米が汚染している。一PPMを越えたカドミウムが排出されている。これはどうですか。
○政府委員(辻辰三郎君) 公害罪法のこの犯罪の構成要件は、御承知のとおり、工場または事業場における事業活動に伴って、人の健康を害する物質を排出し、公衆の生命または身体に危険を生ぜしめたということでございます。そこで、その排出行為によりまして、かような公衆の生命または身体に危険を生ぜしめるという、そこに一つの因果関係が生じなければ、この犯罪というものは成立しないわけでございます。もちろん、この法案の御審議の過程におきまして、一定の、つまり既存の蓄積状態というものを前提にして、その上になお一つの排出があって、その結果、かような生命、身体に危険を生ぜしめるというような事態が発生した場合、これもその関係が、行為者の犯意、故意という関係でよく認識がとれるというような特殊な場合は、これは犯罪が成立する場合があろうかと思いますけれども、一般論といたしましては、この排出行為が、施行後の排出行為のみによりましてかような状態が発生するというときに、この犯罪が成立するわけでございます。かような関係から、現在までこの公害罪法の適用を見た事例がない、かように考える次第でございます。
○小平芳平君 そうすると、法施行前に流された毒物は関係ないわけですか。
○政府委員(辻辰三郎君) それは、行為者の犯意の問題でございます。具体的事例で申し上げますと、すでに有害物質が蓄積されておる、その状態では、まだ人の生命、身体に危険を生ぜしめる状態ではない、それプラス新たに有害物質を排出することによって、人の生命、身体に危険を生ぜしめる状態が発生する、こういう事態の場合には、新たに法施行後排出行為を行なう者におきまして、蓄積条件はこうなっておる、そういうことを十分認識しながら、さらに新たに有害物質を排出することによりましてかような公衆の生命、身体に危険を生ぜしめるという認識がなければ、あるいは当然その認識をすべきであったという過失がなければ、この犯罪が成立しない。かような関係になっておりますので、問題は、事実関係及び行為者の主観的な責任の問題言いかえれば故意、過失があるかどうかという問題に帰着してくる問題であろうと考えるわけでございます。
○小平芳平君 それでは、法務省なり国家公安委員長において、四十六年産米で、十八地区でカドミウム汚染米が出た。この十八地区を具体的に検討されましたか。
○政府委員(辻辰三郎君) さような事件につきまして、検察庁といたしましては、関係機関から捜査の端緒を受けておりません。
○委員長(徳永正利君) 警察庁、だれかやりますか。
○国務大臣(中村寅太君) 承知しておりませんが、調査もしておらぬようでございます。
○小平芳平君 総理はどう思われますか。
○政府委員(辻辰三郎君) 昨年七月に公害罪法が施行されたわけでございますが、私どもの課におきましては、この法律の施行に備えまして、あるいは施行後も、警察その他、海上保安庁でございますとか、府県の関係機関でございますとか、公害関係の機関におきましては、しばしば相互に連絡を持ちながら、公害の一つの監視体制をつくりつつございます。そういう結果でございますけれども、ただいま御指摘のような事案につきまして、検察庁といたしましては、この公害罪法に該当する疑いがあるということで関係機関から通報を受けたり、あるいは検察庁みずからが認知した事例がないわけでございます。
○小平芳平君 生命、身体に危険が生じた。五人の大臣とも、生命、身体に危険が生じている、と。私は具体的に、カドミウムの十八地区のことをこうして問題提起しておりますが、全然捜査することはない。これはどうしたらいいのですか。
○国務大臣(大石武一君) これはお答えになるかどうかわかりませんが、私はこう考えます。 カドミウム汚染地区から、カドミウム含有量一PPM以上の米がとれているということでございます。しかし、これは直ちに、人に大きな、生命、健康に影響を与えるかどうかということについては、まだ十分に確証と検討がなされていないと私は思うのでございます。ただ、そのようなおそれがあるから一PPM以上、いままでの経験とかそういうことによりまして、大体の見当によりまして、一PPM以上は一応食物として扱わないという、私は食糧庁の方針でそうきまっておると思うのでございます。 はたしてどの程度のカドミウムがどれだけ人間に影響を与えるか、健康に与えるかということにつきましては、やはり、これはもちろんわれわれが中心にならなければなりませんが、もう少し努力をして、ほんとうは、もっともっといろいろな生物実験その他を行ないまして、確実な毒性なり、それから人体に及ぼす作用というものを、もう少し確かめる必要があると思います。これが大事なことだと思うのです。そのような検討がまだ十分なされておりません、残念ながら。いままでのような行政の面の機構によりまして、時間的な余裕もなかったこともございますが、今後はそのような努力をして、そのような一PPMの米がはたしてどういう意味があるかということを、もう少し科学的に実証するということが一番大事な問題ではなかろうか。このような米は、一応疑わしいものは手をつけまいという方針から、安全な考え方をとって、その米を食糧にしないということであって、これが直ちに健康に重大な被害を与えるとか、犯罪行為になるとかいうものとは、多少幅があるような気がするわけでございます。
○小平芳平君 そうすると大石長官、公害罪の適用は一PPMでは、ないと。無過失賠償の適用はいかがですか。
○国務大臣(大石武一君) 私は、無過失賠償の責任制度をこの国会に提案しておりますが、その御審議をいただくわけでございますが、そこでいろいろなことを申し上げたいと思いますが、本来の無過失賠償責任制度においては、これは財産は入っておりませんが、しかし近い将来には、私は入れなければならないと思います。そういうことが必要でございますので、もう少しそういう検討をして、ただし、入れるにはどの程度のものがはたして妥当であるか、どのくらいの限度のものが妥当であるかという、もう少し科学的な詰めをしなければならないと思うのです、いろいろなことが。そういう意味で、近い将来には当然、いわゆるカドミウム汚染米も私は無過失の範囲内に入れなければならぬと考えております。いまのところは、まだすぐは入っておらない状態でございます。
○小平芳平君 そうすると、大石長官、一番政府の中でも、閣僚の中でも公害に熱心に取り組まれるという大石長官において、一PPMの米が一八地区でとれた、それは健康に関係ないと言うのですか。単なる財産被害ですか。
○国務大臣(大石武一君) これは、健康に被害を及ぼすおそれはございます。おそれはございますが、まだ、それをどれほど食べたら、どのような機序であるいはどういうことかということが、まだ全然わかっておりません。ですから、これは私どもは、そのような国民の健康の安全性を考えまして、行政的には、その米は食用に供してはならぬ、供さないということにいたしておりますが、これがどのような影響があるかとか、はたして一PPMでいいのか、〇・五PPMでなければならぬのか、あるいは二PPMでもいいのかということを、やっぱりもう少し、さらに私は科学的な確証を得るまで検討しなければならぬと思います。これは、われわれ急がなければならぬ仕事でございます。そういう意味でこれは食べさせないことにしてあるわけでございますから、われわれの直接の、人間の健康被害には関係がないことになります。ただ問題は、そのような米をつくった農民に対して、やはりそのような補償をどうするかということにかかっていると思います。そう考えるわけでございまして、決して健康に関係がないということではないのでございます。
○小平芳平君 関係がないことはないが……。
○国務大臣(大石武一君) つまり、このカドミウム一PPM以上の汚染された米は食用に供さない、食糧に扱わないわけですから、人間が食べることはありません。これは食べません。したがいまして、人間の健康には関係ないと、影響はないと思います。
○小平芳平君 そういうことを言っていたのでは——大石長官、イタイイタイ病の原因はカドミウムですか。
○国務大臣(大石武一君) そのとおりでございます。
○小平芳平君 それなら、関係大ありじゃないですか。ですから、そういう点、私は、政府の一つの姿勢として、この排出基準、排水基準を守っていれば公害罪の適用はないと、こういう考えがもとにあるのじゃありませんか。いかがですか。
○国務大臣(前尾繁三郎君) やはり、基準を守っておれば、犯罪は成立しないと考えていかなければならぬのじゃないかと思います。
○矢追秀彦君 関連。 法務大臣にお伺いしますけれども、いま、基準を守っておれば公害罪というものは適用されないと言われましたが、先ほどから御答弁になっておるこの公害罪の施行が七月一日以降である、こういうことで関連をして申し上げますが、かりにいままで、この公害罪がない時代から病気があった。最近問題になってから、確かに排出基準は守っておったとしても、そういった病気が底流にあった場合、たとえ排出基準以下でも、それにプラスされてカドミウムなりあるいは水銀なりが徐々にでも加わって、もしその人がなくなった、そういったことがはっきりした場合は、これは公害罪の適用を受けますか。その点はどうですか。
○政府委員(辻辰三郎君) 先ほど来申し上げておりますように、公害罪が成立いたしますためには、法施行前の既存の蓄積状態というものが前提になります場合には、それを十分承知しながら、施行後、新たな排出行為をする、そして、新たな排出行為をすれば、そうすればその排出行為によって、前の蓄積状況と相まって、公衆の生命、身体に危険を生ぜしめるということを十分承知しながらあえて行なうとか、あるいは十分承知できるにもかかわらず、過失によってそういう排出をしたという場合に、理論的に成立するわけでございます。もちろん、これは事実関係がたくさんございまして、事実関係に依存する面が非常に多うございまして、一がいに、どのカドミウムに汚染された土壌からできた作物を、どれだけ摂取したからすぐなるとかいうような、簡単な事実関係だけではなかなか、この因果関係というものが立証しにくいものであろうと考えておりますので、私は一応抽象論あるいは理論として、ただいまの考え方を申し上げた次第でございます。
○小平芳平君 そうした排出基準を守っていればいいと言っても、第一、この排出基準なるものが、どうですか、カドミウム、鉛、砒素、これらは環境基準の十倍にきめているのですね。とたんに十倍に薄まるところ、ございますか。工場から排出した。ぱっと十倍になった——。あるいはシアン化合物、有機燐化合物は検出されてはならないものを、なぜ一PPMはいいと、こういうふうにきめるんですか。こんな排出基準をきめておいて、それを守っていれば健康に被害が出るわけはないとは、どういうことですか。
○国務大臣(大石武一君) 私どもは、環境基準をきめまして、それを守れば一応われわれは快適な健康な生活ができるということになっております。しかし、はっきり申し上げますと、この環境基準も、私は必ずしもすべてがこの目的に合っているとは考えておりません。と申しますのは、この公害に対するいろいろな法律というものは、早急につくられました、緊急やむを得ないものとしてつくられたわけでございます。ところが、このような、どの物質がどれだけの害があって、どれだけの人体に影響があるとか、そういうことは、おそらくいままで、ほとんど大部分がその実験をなされておらなかったと思うんです、世界的に。ただ、どうしてもこの公害を防ぐためには、そのようなきびしい基準をつくって押えなきゃならぬというたてまえから、できるだけ世界からいろんな先例なりいろんなもの、いままでのあるだけのデーターを集めましてこのような基準をつくったわけでございますが、そういうわけで、私は今後われわれの環境庁の仕事の一番重大なものの一つは、できるだけ早くこの努力を積み重ねまして、環境基準なり、その環境基準を守るための排出基準というものを最も適正なものにしていかなければならぬと、こう考えておる次第でございます。したがいまして、仰せのとおり環境基準も必ずしも一〇〇%妥当であると一これはもちろん多少弱い面もありますが、あるいは強過ぎるかもしれません、また弱い面もあります。したがいまして、それを守るための排出基準につきましても、いろいろ、多少の矛盾はあることはやむを得ないことと思いますが、できるだけ安全性をとりましてそれを守らなきゃならぬと、いま考えておる次第でございます。 いまのように、環境基準の十倍の排出基準がいいかどうかということになりますと、私も必ずしも知識が十分にありませんので何ともお答えいたしかねますが、大体これで間違いなかろうということできめたのだと考えております。しかしおっしゃるとおり、必ずしもそれが妥当であるかどうか、やはり十分な検討をする必要がございますので、今後われわれが中心となりまして、そのような環境基準のあり方、排出規制のあり方、排出規制にしましても、いわゆるPPMでやることと、それから総量等の問題もございます。そういうようなこともあわせ考えまして、できるだけ早く妥当のものに変えてまいりたいと考えておる次第でございます。
○小平芳平君 大石長官からは、就任以来その御答弁は前々委員会でもお聞きしておりますが、いつになったら実現します。
○国務大臣(大石武一君) いまようやく四十七年度の予算編成を迎えまして、もうすぐ実行できる段階でございます。これにも多少予算が入っておりますが、本格的な研究の基礎というものは、やはり国立公害研究所ができ上がりまして、そこを中心として総合的な基本点をつくりたいと、これが一番のねらいでございます。 しかし、それまでほうっておけませんので、いろいろなものにつきましては、暫定的な基準なり方針、指針というものをきめまして、できるだけの公害の発生を防いでおりますけれども、ほんとうに本格的なそのような基本的な基準の確定する。いまいろいろな方々が研究され発表されまして、それがいろいろ数字が違っておりまして、いろいろな混乱を起こしております、いまの時代には。これはまことに困ったことでございますけれども、それなりにいろいろな分析なり、そういう技術は必ずしも統一されておりませんし、あるいは実験のしかたも統一されておりませんから、このようなことでやむを得ないと思いますけれども、近い将来には、環境庁の発表であるということが一般国民から信頼を受けて、それならよろしいというような体制を早くつくりたいと思うのです。それにはやはり、一日も早くこの国立公害研究所が準備が整いまして設置されて、総合的な活動を開始することが一番望ましい。多少、時間がかかりますけれども。そのようなことをただいま考えておる次第でございます。
○小平芳平君 この玄米一PPMということについても、きわめて私たちは異論があるわけですが、それはそれとしまして水銀の場合は、ないじゃないですか。四十三年八月に暫定対策をきめただけで、水銀の安全基準はどうなっておりますか。現に水俣病が発生しておりますが。
○政府委員(浦田純一君) 水銀の食品中におきまする基準は、これは現在ございませんが、それは水銀が天然に含まれておるといったようなことは許されませんので、あらためてつくるということまでには及ばないかと思っております。
○小平芳平君 アメリカでは〇・五PPM以上のマグロは販売禁止しているのに、なぜ日本人だけはだいじょうぶなんですか。
○政府委員(浦田純一君) 決して、マグロに含まれております水銀が人体に無影響ということを申したのではございませんが、アメリカにおきまするマグロ水銀の基準量と申しますのも、いわば一つのガイドラインとしてきめられたものでございます。日本におきまして、いろいろとマグロの水銀による汚染の状況を調査いたしまして、その結果、〇・五PPMという一応の目安でもって、現在程度のものであるならば人体に特に有害な影響はないというふうに考えておりまして、アメリカはそのガイドラインをつくるに際しましても、私どものほうからの水銀のいろいろな資料というものを参考にもいたしております。むしろ水銀中毒に関しましては、日本の研究というものは世界的にも高く評価されておりまして、たとえばWHOのほうからの、水銀のいろいろな環境汚染、食物汚染の調査につきましては、特に日本がその研究を委託されておるといったようなこともございまして、私どもは、水銀の問題については非常に重大な関心を持っておりますとともに、マグロの水銀汚染に関しますることにつきましても、現在の考え方でもって人体に対する影響はないというふうに考えておる次第でございます。
○小平芳平君 そういうことは自慢にならないのですよね。水俣病が日本にだけ、イタイイタイ病が日本にだけ、カネミ油症患者が日本にだけ発生したと、したがって先進国だなんて、そんなこと、厚生省、自慢になりませんよ。 そこで、水銀は野放しにしておく方針らしいが、PCBの食品についてはいかがですか。この点については、私が前回指摘したときに、一〇PPMの魚を毎日百グラム食べると、千日で一グラムのPCBが体内に蓄積する計算が出る。あるいは〇一七PPMという母乳が発見された。この赤ちゃんは三カ月で六十三ミリグラム、六カ月で百二十六ミリグラム、体内に蓄積してしまう。これはどうして安全と言えますか。
○政府委員(浦田純一君) 確かに、先生がそこで計算されよたうに、算術上ではそういったことが言えるかもしれません。しかし、PCBの毒性を考えます場合に、やはり二つに分けて考える必要があるということでございます。一つは不幸な例でございますけれども、カネミ油症に関する事件でございます。これは、非常に高濃度の二、〇〇〇ないし三、〇〇〇PPMという、非常に高濃度のPCBによっておかされました油を、わりに短期間、たとえばせいぜい三カ月から六カ月以内という短い期間に大量に摂取した結果起こった中毒症でございます。いわば、医学のほうでは、急性中毒、急性毒性ないしは亜急性毒性というふうに考えられておるのでございます。この毒性は、御承知のように、肝臓あるいは皮膚の座瘡、色素沈着、場合によりましては目のほうにも影響があるということでございまして、もう一つの方向といたしましては、慢性の毒性ということでございまして、たとえば一PPMあるいはそれ以下といったように、非常に濃度の薄い場合、しかもそれを長期間にわたって連続摂取する場合、どういった変化が起こるかということでございます。これらにつきましては、いわば慢性毒性というふうに呼ばれておりますが、残念ながら、いまだ世界中に慢性毒性についての確たるデータはそろっておりません。しかし、ほかのものから類推いたしまして、PCBが毒性があるということについては否定されませんので、ただ、これがこのような摂取をした場合に人体にどのような健康上の障害が出るかということでございますが、これについては確たるデータがない。ただいま国立衛生試験所を中心として急遽その解明につとめているところでございます。現在までの大方の試験といたしましては、多少の毒性はありますけれども、なかなか人体に対する有害性については議論の分かれているところでございまして、ひょっとすれば、そうまで心配しなくてもよろしいものかもしれないという意見もございます。
○小平芳平君 じゃ、局長、アメリカではなぜPCBについて、牛乳あるいは肉、卵、母乳、食品の包装紙まで規制を始めている。これはなぜですか。
○政府委員(浦田純一君) アメリカのPCBに関しまする規制の状況を検討いたしますと、この理由といたしましては、これは、さしあたって公衆衛生上、人体の健康に影響があるということではないけれども、これ以上環境汚染が進むということについては問題があるので、その規制をしておるというふうに申しておりまして、もちろん、PCBの規制水準をきめるということにつきましては、それによって人体への摂取ということもある程度防げるわけでございますが、その目的の第一は、先ほど申しましたように、これ以上環境汚染が進むのを防止するという点にねらいがあるようでございます。 それから、わが国といたしましても、現在慢性毒性の結果いかんということを解明待ちでございますけれども、しかしながら、それまでの間、さしあたり、何と申しますか、いわば暫定基準という一つの行政指導上の目標を定めまして、PCBの環境汚染あるいは食物への汚染の尺度をきめてまいりたい。この一、二カ月のうちにそのような暫定基準をつくるように、現在食品衛生調査会に意見を徴している段階でございます。
○小平芳平君 ですから、総理、いまの答弁を聞いていると、アメリカでは環境汚染が進むから食品を規制したと、こう言っているのです。じゃ、日本じゃ環境汚染が進んでおりませんか。アメリカよりもはるかにPCBを使った量が多い、過去の統計をとれば。しかも、狭い国土で、環境汚染がはるかに進んでいる日本の国で、いま各大臣からも、政府委員からも、生命、健康に危険があると、概括的には危険があると言いながら、実際の仕事は進んでいない。これはどう総理は考えますか。
○国務大臣(佐藤榮作君) この公害問題につきましては、私自身どうも知識が十分でございません。したがって、先ほど来私は話を聞いていたと、こういうことで、小平君から総理の答弁をと、こういうように指示されましたが、なかなか立ち上がらなかったのは、私自身十分お答えができないように思ったからであります。しかし、それかといって、この問題について全然無関心ではございません。したがって、公害問題と真剣に取り組むその態度では私はひけはとらないつもりでおりますから、ただいまのような各大臣の考え方をさらに突き進めて、これをもっと掘り下げていくように督励をするつもりでございます。
○小平芳平君 ですから、そういう抽象的なことではだめなんですよね、現在の段階は。もう国民は、いま大臣の言われた危機感以上の、もっと身近に危機感を感じているのです。あなた、母乳がだめですと言われたら、どういう気持ちがしますか。にもかかわらず、実際の作業が慢性毒性は来年の秋でなければ出ないとか、国立公害研究所ができなければ基準が出ないとか、これじゃ困るじゃないですか。被害者が発生してからじゃおそいわけです。したがって、総理からは、すみやかに暫定基準なり立てるように指示をしていただきたいわけです。
○国務大臣(佐藤榮作君) 御趣旨はよくわかりましたし、また、関係大臣もこの席におりますから、小平君の御意見は十分承知しておることと、かように思いますので、私がさらに督励すると、こういうことで進めてまいります。対策を樹立することも進めてまいります。御了承いただきたい。
○小平芳平君 なぜ、それでは母乳にPCBが多いですか。この点はどう判断されますか。
○政府委員(浦田純一君) PCBは非常に安定した化合物でございまして、結局、これは食物連鎖でもって、最終段階にいる人間に蓄積していく、こういうことで、母乳は脂肪も含まれておりますし、非常に分泌の盛んな状態でございますので、PCBが体内に蓄積されたのが母乳を通じて出てくる、こういうことで比較的高い濃度のものが検出されたというふうに承知しております。
○小平芳平君 比較的高い濃度が検出されたなんというもんじゃないじゃないですか。ということは、この環境汚染が進む——したがって環境庁長官と通産大臣にお答え願いたいのですが、環境汚染が進む。そうすると、それが水あるいは大気、そこに散らばったPCBが、小さい魚から大きい魚、あるいは鳥、そうして人間に最後はみんな蓄積されていく、こういうことが発表されているわけでしょう、発見されているわけでしょう。どうこの環境汚染を食いとめるか。とともに、すみやかに、先ほど申しますような安全基準を設定することと、もう一つは、環境汚染をどこで食いとめるか。専門家の研究によりますと、生物連鎖の汚染はこれからが本格的だ。確かに、通産省では生産を中止したと、あるいはする予定だと言われるでしょうが、いまこうした電気器具なんかに使われているPCBが、これから本格的に環境を汚染し、生物に蓄積し、そして人間に最後はたまっていく、こういうふうに指摘されていることも御承知のとおりだと思います。環境規制についてのお考えをお答え願いたい。
○国務大臣(田中角榮君) PCBにつきましては、非常に高性能な物質であるということで二十九年から生産をされたわけでございますが、ことしの四月ないし六月には全部生産はとめるということになっておるわけでございます。しかし、PCBというものが二十九年からでございますから、十七、八年間にわたって五万五千トンも生産をされておるわけでありますから、いま御指摘になったように、環境汚染というものを行なわないように、これを回収するということに対しては精力的にやらなければならぬことは、もう御指摘のとおりでございます。これは開放性及び閉鎖性に使われておるわけでありますが、閉鎖性というのは、これはトランスとかコンデンサーとか、そういうものでございますし、開放性の一番わかりやすいのはノーカーボン紙に使われておった。それが今度古紙として再生されたチリ紙等でもって非常に大きくPCBが検出をされる、人体にも影響を与えるということになっております。製紙工場の排水の中に含まれたものが田子の浦などでは沈でんをしておるということでございます。これを魚が吸収するということでありますので、いまの問題としては、閉鎖性のもの、特に閉鎖性のものでも、これは全部使わぬほうが望ましいんです。しかし、いま代用品がない。代用品ができるまでの間、適切なる代替品ができるまでの間、閉鎖性のもの、しかも完全に回収できるという、電電公社とか、国鉄とか、九電力とか、こういうものに対してのみ使用さしておるわけでございまして、開放性に対してはもう一切使用させないということになっております。ですから、残るのは、いままで使われたものをいかにして回収するかということと、もう一つは、田子の浦の川原に積み込まれておるようなものをどう処置するかという問題が残っておるわけでございます。通産省も、環境庁、また厚生省等とも十分連絡をとりながら、これが環境汚染につながらないような対策はとってまいりたいと、こう思うわけでございます。
○国務大臣(大石武一君) 何ら対策もない、何もないPCBが十数年にわたりまして日本で乱用されたということは残念なことでございますけれども、それが現実の姿でございます。これは明らかに、人間が科学を利用しようとしながら、逆に、科学に振り回された一つのいい例だと思います。しかし、このままでほっておくわけにまいりません。何としても、これはPCBの汚染からわれわれの生命を守らにゃならないのです。どうするかといいますと、一番早い、いまできますことは、何といいましても、PCBの使用を禁示することであります。これ以上使わないことでございます。幸いに、通産省の努力によりまして、その方針が立っておりますので、今後はこれ以上の汚染は広げないようにしなきゃならぬと思います。 それから、いまできますことは、やはりこのPCBに汚染された母乳なら母乳をあまり使わないということ、できるだけですね。あるいは魚もこれはむずかしい問題ですけれども、こういったものをできるだけ人間との間の接触を断つこと、いまできますことでやる以外にございません。ただ、一番問題になりますことは、PCBがどこに、どのような形で散らばっておるかということなんです。これがまだわかっておりません。つまり、PCBの分析の方法がまだ完全に確立しておらないというところに問題がございます。幸いに、厚生省とか企画庁の努力によりまして、きれいな水とか食品の中のPCBは分析する方法が確立いたしましたが、まだ、ヘドロであるとか、あるいは汚水であるとか、そういう中のPCBの完全な分析の方法は確立いたしておりません。ここに問題があるわけでございます。しかし、ほうっておけませんので、御承知のように、厚生省では、この一、二カ月の間に、いままで解明された、確立された分析方法を、完全ではありませんけれども、用いて、一応の暫定標準と申しますか、指針を立てまして、これを土台として一応のPCBのあり方をチェックしていくということに方針はきまっておりますが、これとても完全なものでございません。やはり、やることは、何としても一日も早くこの分析方法を確立して、その方法を日本全国統一した方法によりまして、そうして日本の汚染地区と思われる地域を、あるいは物質を、できるだけ早くそれで総点検をして、どのような状態にあるかという実態を調べることが一番大事だと思います。これをしなければなりません。 もう一つは、何と申しましても、このPCBがどのように人体に影響して、どのような害毒を与えるか、それはどのような量であるか、どういう段階であるかというような生物実験をいま厚生省でやっておりますが、これを一日も早くあり方を確立して、そのPCBの人体への影響というものを、やはりはっきり見きわめなければならないと思うのです。そういうことができ上りますと、初めてこれに対する対策ができると思います。はなはだ迂遠なことで、先遠いような感じがいたしますけれども、いまできることはそれ以外にないのじゃないか。ですから、そういうことを目ざして努力しながら、とりあえず、やはり使用を禁止するとか、できるだけ人間とのPCBの怪しい、疑わしいものとの接触を断つ、こういうこと以外に、いまとる方法はなかろうかと、残念でございますが、そう考えておる次第でございます。
○小平芳平君 長官、水質規制、大気汚染の規制ですね、この中へPCBを入れるんですよ、早く。環境規制しちゃうわけです。そこで、この環境基準を上回るPCB汚染があれば汚染源を突きとめる、こういうふうにすべきじゃないか。
○国務大臣(大石武一君) それはすでに厚生省、科学技術庁で相談いたしまして、一両月じゅうにその指針というものをきめて、それに従って行政的に働いてまいる、いま方針でおります。
○小平芳平君 それから厚生省で食品の安全基準というものを二、三カ月のうちに、暫定基準をと言われておりますが、こうした場合に、沿岸漁業あるいは内海漁業の場合などは、もうほとんど基準を上回っちゃう、アメリカと同じことをやったら、もうほとんど基準を上回っちゃう、こういうような点についてはどうですか。
○国務大臣(斎藤昇君) いま御指摘の、おそらく魚肉の中に含まれる——基準、それを相当上回るものがあるのじゃないかということからのお尋ねであろうと思います。私も、若干は起こるであろう、かように考えます、養殖の魚あるいは沿岸の特定の魚というようなものは。しかし、これは影響がありましても、やはり国民の健康を守るわけでございますから、どの程度漁業者に損害を与えるかというようなことを勘案をいたしまして、その対策は水産庁と一緒になって考えたい、かように考えます。
○小平芳平君 それでは最後に、カネミ油症の患者、このカネミ油症の被害者に対して、あるいはきのう指摘した森永砒素ミルクの被害者にもそうですが、なぜ公害の救済措置がとられないか、なぜ公害に準ずる国の救済措置がとられないか、この点はいかがでしょう。
○国務大臣(斎藤昇君) まあ、準ずると申しますか、そういったような考え方で、必要のあるものは臨みたい、かようにいま考えているわけでありますが、カネミの患者につきましては、これは治療費あるいはその他の出費を会社が現に負担をしてやっております。カネミの油症の治療の確立、あるいはこれが将来どういうような障害を残すかというようなことについての研究は、厚生省自身が国費で大いに進めているわけであります。 森永ミルクにつきましても、森永は、その被害の賠償といいますか、補償といいますか、必要なものは自分のところで出すということになって、患者の名前もわかっているわけでありますから、したがって、厚生省が中心になって、そして患者の方々の意向もくみ入れて、それに必要な補償を森永がやるという態勢にございますから、これは特別な法律というようなものをつくらなくても処理できるであろうと、かように考えて、その方向で進んでいるわけでございます。
○小平芳平君 ちょっと、大臣、はっきりいたしませんでしたが、要するに、水俣病の場合は、チッソの廃液によるわけですね。そこで、水俣病の患者はチッソに補償を要求します。そしてチッソが補償を出します。あるいは阿賀野川の場合は昭和電工が出しました。しかし、国も責任の一半があるというところから、公害病救済のルートに入っているわけでしょう。したがって、砒素ミルクの場合あるいはカネミ油症の場合も企業が補償すべきです。加害者企業が補償すべきです。が、国もその責任の一半をとって、そして被害者救済、公害病患者に対する被害者救済、そういうことを考えるべきではないかと、こういうふうに申し上げているわけです。厚生大臣と環境庁長官からお答え願いたい。
○国務大臣(斎藤昇君) 私が申し上げましたのは、国は無関心ではない、また無関係ではない。そこで、国が中心になって、そうしてその被害をどういうように救済をさせるか。これは、加害者も特定をいたしておりますし、患者も特定をいたしておりますので、その間を取り持って——取り持つといっても、ただあっせんするというだけでなしに、こちらが主導権を持って、そして適切な補償をさせるというように指導を——指導というか、これは実際上やれるという見込みが立っておりますので、その方針でやっているというわけでございます。
○国務大臣(大石武一君) いま国の被害者救済の法律におきましては、医療費と、それから医療手当、介護手当を出しているだけでございます。これも、われわれの希望しますよりはまだ少ない額で、すまないと思っておりますが、現段階ではこのような状態でございます。そのような同じ内容は、十分にいま企業でやっておるようでございますから……。
○小平芳平君 やってない。
○国務大臣(大石武一君) やっておりませんか。それは問題でございます。そのことについては私、考えますけれども、いまのいわゆる被害者救済法ではカネミ油症のようなものは一応適用されないことに法律の上ではなっております。ですから、そういうことで、われわれは、企業に対してそのような手当てをさせなければならぬと思いますが、それについて、もう少し厚生大臣と打ち合わせましていろいろ努力いたします。ただ、いろいろな最終的な補償問題につきましては、いろいろなむずかしいものがございます。当然企業の責任であると思います。ですが、その企業が、はたして大ぜいの患者、被害者が出た場合に耐え得るか、耐え得なかった場合にはどうかと、いろんな問題が出てまいります。そういうような財源につきましては、当然国が直接金を出すと出さないとは別として、国としてもやはりそのような財源については十分に考慮して、対策をいまから立てる必要があると考えております。そういう意味で、PPBSですね、この考え方をもう少しわれわれも早く理解いたしまして、これを現実に生かしまして、そのような原則ですね——財源とか、そういうものを早くつくるようなことに努力してまいりたいと考えている次第でございます。
○委員長(徳永正利君) 以上で小平君の質疑は終わりました。 —————————————
○委員長(徳永正利君) 次に、中沢伊登子君の質疑を行ないます。中沢伊登子君。
○中沢伊登子君 質問に先立ちまして、佐藤総理大臣に一言お尋ねをいたします。 去る九日の日曜日に私が地元に帰っておりましたところ、待っていましたとばかりに近所の奥さんたちや私の友人から、機密保護法ができるのですか、また軍事国家なんてまっぴらですよ、こういうような質問が再三私のところにまいりました。私たちは戦時中のことを思い出して、またあんなことになるのかなあと、たいへん不安にかられております。こんなことはあり得べからざることでございますけれども、総理という立場で、ものをおっしゃると、影響がこんなにも大きいのです。きのう、取り下げるのにやぶさかではない、こういうような御答弁がありましたが、機密保護法ははっきりと撤回されたと、こういうふうに皆さんにお答えしてもよろしゅうございますか。
○向井長年君 関連。 いまの中沢委員の質問ですね。総理、これはわが党の田渕君が八日の日に質問をしたわけでありますが、これは、自民党の中の一部でそういうことを幾らか検討されておるということを耳にいたしまして、おそらく総理はそういうことを考えていないであろう、こういう立場から田渕君が質問をしたのであります。これに対して、総理から、かかるような答弁がありまして、非常に国民は不安を感じておる。しかも、総理はこれに対して、私の信念である、こういうことまで言われた。私は、信念は変えるわけにはいきませんから、これはやむを得ないと思います。しかし、一議員とか、あるいは総理が引退された後においてそういう問題を言われたことについては、これはわれわれはとやかく言うものではありません。しかし、いま総理という立場におられるその佐藤総理がそのことを考えなければならないというようなこと、いま直ちにではないけれども、そういうことは非常に国民に不安を投げかけております。したがって、昨日の社会党の須原君の質問に答えて、撤回にやぶさかではない、こう言われたのですが、やぶさかではないということと撤回するということは、おのずから違う。したがって、明確に総理から、この際撤回するとか、いや取り消すとか、こういうことばを明確にこの場で回答をいただきたい。こう思うわけですが、その点、いかがでしょうか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 関連質問も同時にございましたから、明確に申し上げておきます。 あの発言の当初申しましたように、これは私の持論だが、ただいまさようなことは具体的にあるわけではございませんと、こういうことをはっきり申し上げておりますから、これをお聞き取りの方は、だいじょうぶ御信頼いただけると思っておりましたが、しかし、中沢さんが帰られて、また地元の奥さんからさようなお話を聞かれる、こういうことでたいへん不安に思う、こういうことですが、ただいま政府にはさような考え方が具体化しておらないと、こういうことをはっきり申し上げておきます。ただいま、私の考え方を変えろというお話も、ないではございませんけれども、これはまあ私の個人的な考え方ですから、総理の立場にある者でも個人的な考え方を発表するということはこれは軽率だという、そのおしかりはともかくとして、これはそれなりにしまっておきますが、ただいま具体化する考え方はございませんから、それだけははっきり、具体的にものごとが運んでおらないことだけははっきりしておりますから、それだけをはっきり申し上げておきます。
○中沢伊登子君 私は、参議院議員になりましてから、ほとんどの予算委員会に毎回党を代表して質問をしてまいりました。そして意見を述べたり、要求もしてまいりました。そのつど、総理をはじめ、各大臣は前向きのいい答弁をしてくださいました。私は、必ずや成果があがり、そして実現するものだと実は期待をしておりました。しかし、今日まで満足するものはほとんど何一つながったと言っても過言ではありません。 そこで、ひとつ、いままでのことを思い出してみて、どうなっているかを考えてみたいと思います。そのまず一つが、食品添加物からずっと食品公害に発展をしてまいりました。そして、いまのPCBの問題、もう一つは物価問題と国民の暮らしについて質問をいたしました。昨年、はからずも、総理大臣の新婚時代に百円の月給で八回家が変わったというお話も聞かしていただきました。また、心身障害児や老人問題の福祉行政についても質問をいたしました。あるいは空港の騒音問題や庶民の住宅問題、その他あくどい映画の看板広告追放の問題やトルコ風呂とモーテルの問題については、総理は利用したことがないというお話もございました。そして、たばこの有害表示の問題など、いろいろ質問をしてまいりました。たぶん総理大臣も思い出していただけたかと思いますが、これらについて御感想や御意見を伺いたいと思います。
○国務大臣(佐藤榮作君) 中沢君から、いろいろ政治のあり方について御注文をつけられました。私は私なりに努力してまいりましたけれども、ただいま御指摘のように、十二分にこたえる——十二分はもちろんのこと、十分もこたえることができてない、こういうようなおしかりがある、かように思っております。私、政治のむずかしさ、こういうものをつくづく考えますが、そのうちでもいま庶民の生活に最も大事なもの、これは二つあるんじゃないだろうか、かように思います。いろいろ健康の問題もありますが、健康の問題よりもやはり物価と教育が一番心残りの問題ではないだろうか、かように考えております。これらの点については、なかなか私、うまく効果があがるような措置がとれない、かように思っておりますので、ただいまのモーテル、トルコ風呂等のお話まで出ましたが、これはやはり環境の問題としてさらに政府が取り組まなきゃならない、かように思っております。 ことに、私、物価の問題、関西の方々、ことに中沢君からは毎度この問題と取り組まれておる。私は、最近は季節の野菜が安くなったというばかりじゃなく、一つの条件として、輸入物資が、これが好影響をもたらすんじゃないだろうか、非常に期待をしておりましたが、しかし、なかなかさような効果があらわれておりません。このことはまことに遺憾であります。各方面で、せっかく努力中でございますから、私は、必ずこれは実を結ぶだろう、かように思っております。また実を結ばさなければならないことだと、かように考えておるわけであります。とかく国内の生産者に悪影響がある、こういう点も指摘されておりますが、この前もここで申しましたように、生産者、また消費者なりと、こういう観点から、これは相対立するものではない、利害一致するものだ、こういう立場で必ず解決はできると、私は確信しておりますから、さらにその点を掘り下げていくようにいたしたいものだと、かように思っております。簡単に一言だけお答えしておきます。
○中沢伊登子君 後ほどまた物価の問題に触れたいと思いますが、いまは物価の問題は必ず実を結ばせたい、たいへんうれしいおことばをいただきました。ひとつその辺は、ほんとうに最後までやりとげていただきたいと思います。 私は、そこで、これから二、三の例をとって、時間の許す限り質問をしながら、今度こそはっきりと約束して実現をしていただきたい問題がございます。まず、最近の大きなニュースの一つに、いまお話がありましたPCBの問題がございます。全国民を不安のどん低におとしいれている問題です。先ほども申しましたように、私は食品添加物をまっ先に取り上げて、その後不良食品や、うそつき食品が次々にあらわれるや、死の商人の出現だということもここで申しましたが、その後農薬による汚染食品が出てまいりました。ついに母乳からBHCが検出され、母親に大きなショックを与えました。ところが、それから一年もたたない今日、今度はPCBの問題、そうしてまた赤ん坊に母乳を飲ませてもいいのだとか悪いのだとかいうような議論が、BHCと同じように、いま繰り返されております。また、体内にBHCも残留しているはずですし、複合汚染や相乗毒性もあろうかと思いますが、先ほどの局長の答弁を聞いておりますと、どうにも私どもは納得がまいりませんので、厚生大臣から、この現実をどう考えられるか、御答弁をいただきたいと思います。
○国務大臣(斎藤昇君) 先ほど局長からもお答えいたしましたように、PCBの人体に及ぼす影響、これはまあ学問的にアメリカその他で若干の資料が出ております。まだ確たるものではございません。しかしながら、慢性毒性は恐るべきものがあるということは当然考えられますので、したがって、いま衛生試験所におきましては慢性毒性の試験もいたしておりますが、これには相当結論を得るのに時間がかかります。そこで、いろいろな学者等の意見も参酌をいたしまして、とにかくできるだけ近い機会に、ここ二カ月内の間に食品の暫定規準をきめまして、それを上回るものは摂取しないというようにいたしたい、かように考えております。
○中沢伊登子君 PCBは昭和二十六年から使われ出していたということですけれども、厚生省は、PCBの何ものかをその当時御存じなかったのですか。
○政府委員(浦田純一君) PCBがその毒性に初めて着目されましたのは、一九六六年にスウェーデンのジャンセン博士によってでございます。昭和四十一年に当たると思います。日本でこの事実を知りましたのは、ずっとあとでございます。カネミ油症事件の起こりましたあと、昭和四十四年のころでございます。世界的にPCBは使われておりましたけれども、その慢性毒性に対する調査というのは、ずっとおくれたあとに事件が発表されたわけでございます。
○中沢伊登子君 現在種々さまざまな原料がいろいろなところに使われておりますが、また何か違った毒性のものが出てくる危険性もあるのではないかと思いますが、この点、どうですか。
○政府委員(浦田純一君) そういう点も確かにございますので、たとえば新しい農薬の開発、それらにつきましては、すでに農林省のほうにもお願いいたしまして、きびしい事前のいろいろな慢性毒性あるいは催奇性等に対するきびしいチェックをして、安全であるという確信があるものでなければ許可、登録をさせないといったような措置がすでにとられております。その他の化学的合成品全般につきましても、これから先、開発されるものについてはそのような危険なしといたしません。したがいまして、これにつきましても、通産省その他関係各省にも十分にこちらのほうからも協議を申し入れまして、そして未然に農薬と同様な措置がとれるようにしていくべきであると、またそのようにいたしたいと考えておる次第でございます。
○中沢伊登子君 PCBは、これまで国内で供給されたものが五万三千トンとか五万六千トンとかいわれておりますが、どのようにして回収をなさるんですか。
○国務大臣(田中角榮君) 先ほども申し上げましたが、開放性及び閉鎖性に使われておるわけでございまして、昭和二十九年から生産された総量は五万五千トンでございます。現在、もうストックはほとんどございません。五百トンぐらいでございますし、開放性のものに対しては使用禁止をいたしております。閉鎖性のものに対しても回収が可能であるものに極限をしておるわけであります。鉄道、電電公社、九電力というようなものは、これは、トランスなどは完全に回収ができますので、回収の義務づけを行なっておるわけでございます。で、開放性のものは使用は禁止をいたしました、製造も禁止をしましたが、しかし、これはかつてノーカーボン紙などに使われたものが再生紙として、ちり紙等になっておって、その中にPCBが含まれておる。そして、それが自然に放置をされたものが環境汚染をしておるわけでございますし、また、ノーカーボン紙から再生紙をつくる過程において排出をした水の中にあったものがいま田子の浦などで問題を起こしておるわけでございます。そういう意味で、三菱モンサントも鐘淵化学も、六月をもって、もう生産を全部やめるということでございますので、新しく出るということは考えられないわけです。 ところが、いままでのものをどうするかということでございまして、これは、先ほども申し上げましたように、もうすでにその状況があらわれております、田子の浦などは。いま川原に堆積しておるわけでございますから、これを海の中に入れるようなことのないように埋没せしむるとかというようなことで大きな規模のものは処理ができます。ただ、母乳の中に検出をされるというようなものは家庭環境の中にあるものでありますし、ちり紙などもたくさん買った方もあるでしょうし、そういうものを全部回収するということは非常にむずかしいんですが、電気器具とかテレビの受像機とかラジオとかコンデンサーとか、そういうものの回収に対しては、もう万全を期そうということで、いま検討いたしております。
○中沢伊登子君 通産省では、五万三千トンのうちの三万六千トンは回収可能だが、あとの残りの一万七千トンは回収不能であると、その実情を衆議院で明らかにしておられますね。全くこれは憂うべきことでございます。そこで、いまできるだけの回収をするとおっしゃいましたけれども、もちろん早急に回収すべきではございますけれども、今度は、回収したものの廃棄のしかたが問題だと思います。PCBは分解しないと聞いておりますけれども、廃棄のしかたによっては二次汚染もありますので、厳重に監督をすべきだと思いますが、そのような機構ができておりますか。
○国務大臣(田中角榮君) 回収済みのものの処理に対しては、いまいろいろなことを検討いたしております。またPCBの分解ということに対しても、東大の坂上教授でございますか、非常に優秀な技術を御発表になっております。で、まあ分解もできないわけではありませんから、集中的にやろうということで国の試験研究機関を総動員をして、これが解明、新しい方法を考えるべく努力をいたしております。 そこでコンデンサーとか、それからトランスとか、そういうものを回収する、回収したあと適切なる処理ができるまでの間どうするかという問題がございます。大きな機関は、これに対しては、電電公社その他みな考えております。しかし、先ほど申し上げました、かつて開放性のものに使ったものや閉鎖性のものであっても、テレビ等がみんな放置されておる、これは高熱で処理をするということ以外にないわけでございますが、こういうものに対しても通産省が中心になりまして、環境汚染を食いとめるべく最大の努力をいたしております。
○中沢伊登子君 先ほどもお答えがありましたけれども、PCBのあとに出るもの、あとに使われるもの、これは何か聞いておられませんか。
○国務大臣(田中角榮君) 成功する寸前にあるようでございますし、一部成功しておるようでございますが、非常に高性能なものでありますから、これに代替するものが直ちにできるというような状態ではないわけであります。しかし、見込みなきにあらずということで、いま工業試験所でもこれが完成に全力をあげておる。PCBにかわるものも、多少性能が落ちても、厚みが少し厚くなるというようなことでございますから、高性能なものを使えばトランジスタラジオのようなものもできるわけですし、性能の悪いものを使えば、昔のテレビの受像機のように、三十キロも五十キロもするような大きなものになるわけでございますから、そういう意味で、多少重くなっても害のないものがいいということも言われますし、これだけの高い科学と技術水準をもってこれに代替する物質が見つからぬということは考えられませんので、鋭意これが検討を行なっておるわけであります。
○中沢伊登子君 大石長官は何か聞いておられませんか。
○国務大臣(大石武一君) ただ、できるだけPCBを製造禁止させることと使用を極度に制限するということだけでございますが、その代替品につきましては何も知識ございません。
○中沢伊登子君 私の聞いたところでは、今度ベンジジンというのがいま開発されそうだという話を聞きましたが、化学物質で、そのもの自体は毒性が低くても、生産工程の中でどんな物質が出るのか国民はたいへん不安でございます。新製品に対する品質や構造や機能、そういうものに関する審査制度、これを早急につくって、これに合格をしないものは製造販売をさせないようにすべきだと思いますが、この点、いかがですか。
○国務大臣(大石武一君) いずれ具体的なことは所管の政府委員からお話があると思いますが、その御趣旨は賛成でございます。で、そういう趣旨で、私どもも、去年の十月でございましたが、あの新潟のタンカーの沈没事件がありましたおりに閣議におきまして、そのようなこれからのいろいろな化学製品ですね、こういうものをつくる場合には十分にお互いに注意して、毒性のないもの、そういうものを厳重に検査してつくるというようなことを閣議で決定をいたしまして、各省でそのような申し合わせをしたわけでございます。今後は、やはりお話のような方向に行政を進めまして、先ほど申し上げましたように、毒性のあるものはどのようないいものであっても今後はつくらせない、あるいは、その廃棄物がやはり無毒であるという証明がなされない限りは、これはやはりつくらせないというような方向に行政を持っていくべきだろうと考えてえております。
○中沢伊登子君 通産大臣、お答えいただけるんですか。
○国務大臣(田中角榮君) 新しい化学製品というものは、非常に高い水準で検討しておりますと、性能のいいものはできますが、しかし、使ってみてからいろいろな反作用が出てくることは、これはもう当然のことであります。しかし、工業薬品として青酸カリのようなもの、これはもう非常に毒性の強いものでございますが、これは使わざるを得ないということで使っておるわけであります。これはしかし、この取り扱いその他に対しては別な法律で厳重な管理が行なわれるということでございます。しかし、性能がいいからといって、いまのPCBのように、まあ確かに圧力が非常に強いということで、塗料にまで使われるということであるし、いろいろな高い効能があるわけでありますが、こういうものはそれに匹敵するぐらいの害もあったわけであります。今度、軽工業生産技術審議会というものにはかりまして、新しい化学製品、そういうものに対しては基準をきめてもらおうということで、いま通産省との間に検討を進めておるということでございます。 先ほど御質問がありましたPCBの代替品等につきましてもいろいろなものがあるようでございます。ここにいろいろ書いてございますが、まだ完成したものではございませんので、いずれ必要があれば資料として提出いたします。
○中沢伊登子君 そこで、疑わしい発生源に対して物質の総点検をしていただきたいと思います。この点は総理からひとつ御答弁いただきたいと思います。
○国務大臣(佐藤榮作君) どうも、私も、公害の問題については新しい問題が次々に起こっておりますから、これについての十分の知識を持っておりません。しかし、先ほど来話がありますように、各大臣ともにそれぞれ専門家だとは言えない。それで、やっぱり国民が納得のできるような専門的合意、各省の合意がどうしても必要じゃないか、かように思っております。一応、環境庁をつくったものですから環境庁で相当の権限を持っておりますけれども、なお各省の権限も強いということで、国民から納得のいくような状態にまだございません。しかし、先ほどの小平君に対するお答えにいたしましても、ただいまの中沢君に対するお答えにいたしましても、私が聞いていても、これではどうもいかぬな、かように思っておりますので、政府として、さらに統一した見解ができるように、また十分の機関を整備するように、さらに力をいたしたいと、かように思っております。
○国務大臣(田中角榮君) いままでPCBを大量に使用した工場の総点検を実施するということでございます。そのほか、ヘドロ等についても目下河川敷に堆積中でありますので、環境庁となお検討を進めております。このように、可能な限り最大限の総点検を行なうということで、いま実行段階に入ろうというところでございます。
○中沢伊登子君 そこで次に、PCBの汚染のひどい個所として、ひとつ琶琵湖を取り上げてみたいと思います。 今度、琵琶湖総合開発特別措置法案を提出されておられますが、琵琶湖の汚染状況を聞かせていただきたいと思います。
○政府委員(岡安誠君) 琶琵湖の汚染につきましては、一般的にBOD、COD等によってはかっておりますが、北湖につきましては現在まだ相当程度正常な状態が保たれております。環境庁といたしまして三月に環境基準をきめました、北湖につきましては、AAという最上位のランクづけをいたしまして、それを守ってもらうというふうにいたしております。ただ、南湖につきましては、多少やはり汚濁が進んでおりまして、現在直ちにAAクラスというわけにはまいりませんので、将来AAの状態に持っていくということで、Aクラスということで暫定基準を設けたわけでございます。ただ、BOD、CODの点はそういう程度でございますが、富栄養化、いわゆる燐とか窒素につきましてはやはり相当進んでいるというふうに考えております。特に南湖につきましては、やはり富栄養化の段階に入っているというふうに考えておりますので、今後そのような規制はぜひ強化してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
○中沢伊登子君 琵琶湖の水は、工業用水としても、また、阪神間に住む千二百万人の人にとっても、大切な飲料水なんです。そこで、将来はAAクラスにしてくださるかもしれませんが、まず、いまは開発をするより汚染対策を優先すべきだと思います。それはなぜかといいますと、戦前、一般的な家庭では朝食は大体たきたての御飯とみそ汁とつけものと、つくだ煮と、こういうふうでございました。関西では、特にみそ汁の実は、ほとんどきまって、アサリかシジミを使っておりました。しかも琵琶湖のシジミというのは黄だんの薬になるのだ、こういうようなことがいわれておりまして、アサリやシジミを毎朝売りにくるのを買っていたものでございます。ところが、最近、そのことに関しては、「アッサリー、シンジメー」と、こう聞こえてくると、こういう話が実はあるわけです。それですから、アサリやシジミを食べる人がたいへん少なくなったし、たいへんみんなが心配をしているわけです。で、先ほどのシジミや水こそ——シジミや水が千二百万人の人の命なんですから、この事実を踏まえて、ほんとうにどうされるのか、はっきりしたお答えをいただきたいと思います。
○国務大臣(大石武一君) いま琵琶湖の総合開発が問題になっております。これは、いろいろな水の使い方があるようでございますけれども、何にせよ、やはり琵琶湖の水質を保全することが一番大事だと思います。そういう意味で、いま申しましたように、琵琶湖の環境基準はAAということで一番理想的な——これは川で申しますとヤマメやイワナが住めるような水の程度がAAでございますので、シジミは、もちろんそういうものが十分住めるものでなければならないと思いますが、そういうことで、そのような境環基準を早く達成するように努力してまいりたいと思います。 それには、何と申しましても、この川に入ります汚染源をとめなければなりません。そういうことで、各工場の汚水というものがこれに入らないような、川の水をよごさないように十分処理しなければなりませんし、ですから、流域下水道であるとか、その他いろいろな汚水が入らないようにするということ、それから屎尿処理の問題にしましても十分にこれを処理し、先ほど局長から申しましたように、燐とか窒素も入らない第三次の汚水処理ができるようなところまで持っていかなければならぬ、こういうことにして、水質をまず第一に保全してまいりたい、こう考えております。
○中沢伊登子君 建設大臣。
○国務大臣(西村英一君) 琵琶湖の総合開発の問題ですが、これは、下流の方の利水というよりも、やはり環境保全ということを第一に掲げておる。いまのままでいきますと琵琶湖はたいへんなことになりますから、環境保全が第一の目的。第二の目的は、利水の問題でございます。したがって、私のほうでもいまいろいろ水質を調べておりますが、大体いま政府委員から説明もありましたが、北のほうの北湖のほうはBODにいたしまして大体〇・七、ややいいわけです。それから南湖は、やはりそれよりはだいぶ悪いです。四カ所ぐらいで調べておりますが、瀬田の付近で一・七でございます。だいぶ悪いんです。これをいまほうっておきますと、非常に観光ブームの盛んなところでございますから、いまのままにしておけばたいへんなことになります。琵琶湖総合開発の主目的は環境保全に重点を置くつもりでございます。したがって、屎尿処理等も、下水道の処理にしても十カ年で約六百億円ぐらい使わなければならぬ、かように思っておる次第でございます。
○中沢伊登子君 通産大臣ですか大石長官でございましょうか、あそこに日本コンデンサの使った貯水槽があるとかいう話ですが、これはどうですか。
○政府委員(岡安誠君) お答えいたします。 琵琶湖のほとりに日本コンデンサがございまして、PCBを使いまして電気器具をつくっております。そこからの廃液が工場外のため池に一応出まして、それから琵琶湖に流入をするという状態が続いたわけでございまして、そのため池から相当程度、万をこすようなPCBが発見されております。その対策につきまして、従来周辺の汚染の調査をいたしまして、やはりため池のどろ並びに周辺の土壌にもPCBが出ているということがございましたので、対策といたしましては、日本コンデンサーは、近く製造をとめると言っておりますし、また、ため池等につきましては買収をいたしまして、ヘドロ等につきましては、これをしゅんせつして処理をするというようなことで、今後汚染をしないような措置をとられるというふうに聞いております。
○中沢伊登子君 そこで、もう一つ例をあげてみますと、それは問題の駿河湾の汚染のことです。ここでとれるハマチの奇形を御存じでございますが。私もテレビでは何べんも見ましたけれども、最近は駿河湾で養殖しているハマチの中で五匹に一匹は奇形が出るといわれております。この実物を実は見せてもらったわけですけれども、きょう持ってこようと思ったんですけれども、ちょっと持てませんでした。このハマチの奇形を見ますと、ほんとうにハマチというものは、もういただけなくなります。そんな気がします。日本人は魚をよくいただきますので、PCBの汚染もよけいひどいのだそうですけれども、先ほど申しましたように、貝も魚も水も川も土も海も、すべて汚染されてしまって、一億総汚染化の状態が現状です。国民の健康に対して責任のある大石長官、また総理大臣、このことをどのようになさるか、お伺いをしたいと思います。
○国務大臣(大石武一君) この、特に十数年間の産業優先の行政によりまして、残念ながら日本の川という川は全部よごれてしまいました。それから、回復の困難な沼、湖にしましてもこれが非常によごれ始めております。また、海にいたしても、海岸に行きましてもおっしゃるとおりでございます。ことに瀬戸内海の汚染なんというのはひどいものでございます。これにつきましてはほんとうに頭の痛いところであります。ことに私は、今後環境行政を進めております場合に、いろいろとこれは努力しまして、効果があらわれてまいりますが、大気のほうとか、そのほうについては今後五年、十年たてばずいぶんよくなると私は思います。ただ、この水につきましてはまだ残念ながらあまり自信がございません。水はみんな一本一本川の条件が違いますし、ですから、この大気のように一律の規制はなかなかできにくいものでございます。そういうことで、この水につきましては一番自信がありませんが、しかし一番大事な生命のもとでありますので、これも何とかして、これはりっぱなものにしなければならないと思うんです。 そこで、いろいろと努力いたしておりますが、いま環境庁では、この一本一本の重要な河川につきましては環境基準を全部年度内にこれを設定いたしまして、その環境基準を達成させるように、いろいろと排水の規制をしようと、こう考えておるわけでございまして、その排水の規制も全国一斉のものをつくってございますけれども、これは必ずしも全国一斉では各地の状況に当てはまるというわけにまいりませんので、各県各県に連絡をいたしまして、それに上乗せの基準を設定させまして、よりきびしいものにさしております。 〔委員長退席、理事若林正武君着席〕 幸いに、十八都道府県におきましては上乗せの基準を設定いたしまして努力いたしておるわけでございますが、それだけではとうてい足りません。いま申しましたようにいろいろな原因がございますが、何といっても汚染源の一番大きな対策は、下水道の完備でございます。で、これはおそらくこの下水道が完備をすれば、七割や八割は水の問題が解決すると思うんです。ただこれは、御承知のようにいま政府でも五カ年計画を立てまして一生懸命に努力しておりますが、これではまだまだ半分は五年たっても直りませんので、こういうものもできるだけ繰り上げの工事を努力いたしまして、予算も、日本の国が大きくなりましたから予算も十分使えると思います。そういうことで、できるだけ下水道を早く完備するというような方向に重点を置いてまいりたいと思うわけでございます。
○国務大臣(田中角榮君) 駿河湾のヘドロの中にあるPCBは、先ほど申し上げましたように故紙を使った、開放性のPCBを含んでおるノーカーボン紙等を原料として再生紙をつくったときのものでございます。それで、一部は川原に堆積をしておるわけでございますが、これはいま環境庁と話をしまして、固形化をしてどこかへやったほうがいいのじゃないかということであります。 それからもう一つは、もう開放性のものは使わないわけでありますから、これからPCBがふえるということはないわけであります。ただ、魚に影響があるような、湾内に流出をした過去のものをどうするか、これは科学的に相当高い技術で考えないと、結論は出ない問題でございます。 それから、先ほどお話がございました日本コンデンサの問題は、近く、最近この工場でPCBを使わないということにいたします。ですから、新しいものは流出をしないということであります。あとは、こういうPCBや水銀鉱山等は、ため池をつくって何年間か沈でんをせしめて、流出をする場合には害がないようにという措置はとってあるわけでございますが、この日本コンデンサの問題は、この池をかわかして、そして固形物として固定をしようと、こういうことで、流出をしないように措置をするつもりでございます。
○国務大臣(佐藤榮作君) 先ほど環境庁長官からお答えをいたしましたが、この駿河湾、私は瀬戸内海の沿岸の出身ですが、瀬戸内海、この汚染、あるいはまた天草灘、あるいはまた東京湾、伊勢湾等々、たいへん海水の汚染のはなはだしい状況でございます。これは魚類が生息する、またその魚類を食べるという、そういうときにたいへんな問題が起きつつあります。先ほど冒頭に琵琶湖の環境保全と、こういうことを建設大臣がお答えをいたしましたが、ただいまのように工業の発展、発達等がもたらすこの汚染、汚濁、これはどうもたいへんなもんでございますから、私はいまやっぱり問題になっておる地域、これでは環境保全、これが第一に考えられなきゃならないと、かように思っております。それには何と申しましても、基準はできますけれど、各産業界においてこれに協力する姿勢が望ましいのでございまして、そのことがなければ、幾ら基準をつくったからってこれは何にもならないと、かように思います。ことに衆議院の予算委員会の諸君が瀬戸内海をみずから視察した、国政調査をしたその結果、たいへん瀬戸内海の荒れている状況をつぶさに視察し、これに対する対策なども進言しておりますが、そういう事柄がやはりただいまのような産業界の協力をも得られるゆえんではないだろうか、かように思いますので、産業界自身、これはまあ、公害の発生源だといってただ責任を責めるだけでもいけないと思う。私は、それに相応の対策ももちろん立ててもらい、同時にわが国の産業経済の発展、これをはかっていかなきゃならないんですから、そういう意味からも、この公害は防止する、同時に、基本的には経済の発展もはかると、そこらに調和の方法が、道があるんだと、かように思っておりますので、問題は、やはり関係者がこういう事態についての認識を統一することが何よりも大事なことではないだろうかと、かように思っております。ただいま問題を御指摘になりましたハマチ、これはもう一年生ですから、大体ハマチならその程度で済みますけれど、ブリだとかいうことになれば、これは二年、三年、そういうものになりますから、これもまたたいへんだと思っておりますが、これは一例としておあげになったことだと思いますけれども、私は、いまの産業も大事だ、かようには言うけれど、公害を起こして何の繁栄ぞやと、かように言いたいのでございます。経済の発展も、国民福祉につながってはじめて目的を達するのでございますから、その手段の段階でわれわれの目的を見誤るようなことがあってはならない、このことを間違いないようにいたしたいもんだと、かように思っております。
○中沢伊登子君 先ほどお話のありました下水道の問題ですけれども、これはひとつ国の重点政策としてぜひともこれはやっていただきたいと思います。 それから、国のPCBに対する研究機関というものはあるんでしょうか。あるとすればどんな機関がございますか。
○政府委員(太田暢人君) お答えいたします。 PCBの無害化技術の研究機関といたしましては、工業技術院の傘下にございます研究機関がそれに該当いたすと存じております。またそういうことを現在もやっております。工業技術院の傘下に十六の研究所がございますが……。
○中沢伊登子君 十六。
○政府委員(太田暢人君) はい。
○中沢伊登子君 それに対する予算はどのくらいとってあるんですか。
○政府委員(太田暢人君) 現在のところ、特にPCB問題は最近出てまいりましたので、一般の経常費的なものでそれに充当さしております。
○中沢伊登子君 大蔵大臣、いまお聞きのとおりです。ひとつこういうところには予算をたくさんつけていただきたいと思います。 先ほどもお話がありましたように、坂上教授ですか、あの方がPCBの分解をする酵素を発見された、たいへん私ども朗報だと思って喜んでおりますが、この先生も実は一年海外へ出て行かれるんです。そこで、このPCBに初めから取り組んでおられた愛媛大学の立川助教授とか京都の藤原先生、こういったような民間の学者にも、政府が研究費を助成して研究を進めていただくようにすることはできないものですか。
○政府委員(千葉博君) いまの立川先生、その他の先生方でございますけれども、実はPCBの問題につきましては、科学技術庁におきまして、昨年の六月から私どもにこの特別研究調整費というのがございまして、それによりまして総合的ないろいろ研究を進めておりまして、それでいま先生がおっしゃっておりました各省の研究機関、その連中と、それから立川先生その他の先生も入っていただきまして、それでいま研究を進めておりまして、それで、一部その研究の、特に分析の辺はどうやって分析するかという点が非常にむずかしい問題でございますので、これは一月ごろ成果が出まして、いまやっておりますのは慢性毒性の実態でございます。それとか、実際にどういう経路で人体に入ってくるか、そういったような点も、そういった先生方が入って、それで総合的にいま進めておりまして、一、二カ月のうちにある程度の成果が出るというような調子になっております。
○中沢伊登子君 何ぶんにも事は緊要な問題でありますから、積極的に、専門的な研究員の養成のための予算措置を講じていただきたいと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(水田三喜男君) いまお話がありましたように、PCBの四十六年度の研究費は三千七百三十四万円ということでございましたが、四十七年度はどうするかということにつきましては、いま関係省庁が集まって、この研究の今後の相談をしておるときでございます。その予算は各省からみんな持ち寄る、と言ってはあれですが、環境庁の環境保全総合調査研究促進調整費というようなものが三億五千万ございますし、また科学技術庁の特別研究促進調整費に九億何千万という予算がございますし、それから環境庁の有害物質環境汚染調査費というようなものにも予算がある。この予算をそれぞれさいてこの次の、PCBの研究を、何をどう研究するかということをいま相談しているところでございます。
○中沢伊登子君 またもう一つ公害に対する科学振興を早急にやるように、やっぱり予算をつぎ込んでいただきたいと思います。科学振興を早急にやってほしいと思いますが、いかがですか。 〔理事若林正武君退席、委員長着席〕
○国務大臣(木内四郎君) お答えいたします。 先ほど調整局長からお答えいたしましたように、PCBの問題は、去年のちょうどいまごろ、関係各省に集まっていただいて、その問題を相談をいたしたんです。ところで、このPCBの問題につきましては、どうもカネミ油の事件のときは急性の強度のものでありましたからすぐにわかったんですけれども、一般のものになりますというと、比較的一般に流れておるのは濃度が薄い。それにDDTとかBHCとか、こういう同じ有機性塩素系のものでありまするので、この分析が非常にむずかしい関係などもありまして、今日まで資料が十分になかったわけなんです。そこで、関係各省が集まりまして、まず分析技術の確立をしなきゃならぬという点が一点、それから、一体これによるところの環境汚染の実態とそのメカニズムといいますか、どういう経路をもってこれが人体までくるのかというその経路を究明しなくちゃならぬ、これが第二点ですが、第三点は、いま申しましたように、カネミ油などの場合には急性で多量のものを一時に吸収したんですから、これはすぐに影響はわかってきますけれども、いま局長からもお話ししましたように、慢性の、度の低いものが長きにわたって蓄積してくるというそういう経路、そういうものなどにつきましてはまだ十分にわかっておらぬし、資料がない。そこで、PCBの問題も対策を考究する必要のあることは先ほど来先生からもお話のとおりであり、政府の各大臣からも御答弁しておるとおりなんですが、その基礎になる資料が今日まで非常に十分になかった。ところで、去年のちょうどいまごろというのはまだ環境庁がありませんので、私どもの研究調整費のうちから関係各省に三千七百余万円というものを出しまして、そしてやっていただくことになったのですが、今度環境庁が出てまいりますと、そのほうの予算は、いまお話がありましたように三億五千万円を環境庁に計上してある。それで、それによっていろいろ関係各省の有機化合物の影響などについて調査をされる、もし足らない場合には私のほうの九億五千万円というものがありますから、これはもちろんそういう研究だけではありません、緊急を要する研究の必要のある場合には九億五千万円から出すのでありますが、もし環境庁で三億五千万円で足らないとおっしゃるならば、そのときは第二次的に私のほうから必要な経費を出すにやぶさかではありません。そういうことでいまやっております。去年まで私どものやっておったのにプラス環境庁のほうが第一線に出てこられまして、すでに三億五千万円というものを持っておられる。それから私どもの九億五千万円もありますが、なお、もちろんこれだけで、今後有機化合物などの影響というものは非常に多くなってきますから、それを検討するには足らない場合には、これは大蔵大臣が幾らでも出してくれるものだと私は思っておるのですが、そこで、経費だけじゃなく、このごろはいかに有益な科学の発明であっても、いまのたとえばPCBのように、非常に性能が高い、しかし同時に一方において毒性がある、こういう場合には、このごろはやりのことばで言えば、テクノロジー・アセスメントですか、そういうことによって、そのものに対するプラスの面とマイナスの面を十分に評価して、そうしてマイナスの面を消し得るなら消す、消し得ないなら、あるいは代替物で間に合うなら代替物で、それもできなければ、これはマイナスの面が多いから人間尊重の意味においてこれはもうやめるという、これはテクノロジー・アセスメントの根本の精神ですが、そういうことでやはりやっていかなければならぬ。経費の面は、足らなければ大蔵大臣に出していただいて、この問題に十分に取り組んでまいりたい、かように思っております。
○中沢伊登子君 今お聞きのとおりです。大蔵大臣、せいぜい予算をまた足りないときは出して下さい。お願いしておきます。 そこで、私はもう一つ提案をしたいのです。というのは、このPCBの問題はストックホルムのほうで先に起こった問題ですけれども、日本だけでは頭脳が足らなければ内外の頭脳を集めることももちろんで、諸外国にも呼びかけてこの問題をお互いに研究してみたらどうか、こういうことをひとつ提案をするのと同時に、今度のストックホルムで開かれる第一回人間環境会議にはたいへん大きな期待を寄せているわけですが、この第二回の環境会議は、聞くところによりますと日本に招致を計画している、こういうふうに聞きますが、それは事実ですか。
○国務大臣(大石武一君) この六月の人間環境会議には私が参るものとの前提でお話を申し上げたいと思います。 やはりおっしゃるとおり、いろいろな技術とかそういうものにつきましては各国お互いに共通して、共同で研究開発し合うように努力しなければならぬと思います。そういうことも、できますならば提案をいたしたいと考えております。それから第二回目の会議でございますが、これはまだきまっておりません。開くか開かないかきまっておりません。初めはストロング事務局長が開かないという方針でございましたが、やはり今後は何らかの形でこのような関係をもって開くことがいいではなかろうかという考えに変わってきたようでございます。その場合に、ストロング局長の談話ですが、それは、いま希望しているのは日本とメキシコですが、どっかで、三カ所ぐらいあるんですけれども、日本が一番有力であるということを発言しているそうでございます。私どもとしましては、もちろん日本はこのような公害の問題を一番かかえておりますし、これが各国に対してもいろいろないい——いいとは発言のしかたがおかしいんですが、宣伝になりましょうし、参考にもなりましょうし、やはり日本で開くことが望ましいと考えます。そういうことで、もし開かれるとすれば、おそらくは一九七五年ごろだろうと思いますが、それにつきましては、やはり日本で開きたいと私は考えておりますので、十分に政府内におきまして了解を得ましてから、そのような提案をいたしたいといま考えておる次第でございます。
○中沢伊登子君 いまお聞きのとおりですが、佐藤総理大臣ね、もしかして第二回が開かれるなら、日本に招致をされたらいかがでしょうか。
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいまの公害の問題で、内外の英知を集めるようにしたらと、こういう御提案、私もしごく賛成でございます。したがいまして、ただいまのような国際会議が日本で開くことができればたいへんしあわせだろうと、かように思います。けさもフンボルト財団の方と閣議の前に会ったのですが、やはりドイツあたりも、ずいぶん日本の学者、技術者等に対して積極的に援助してくれております。これなども、話としてするものは、両者の間でやっぱり最近の公害問題、これあたりの話をいたしたのでありますが、たいへん関心を持っておると、かように思いますから、私はいま中沢君が御指摘になったような点が持たれれば、こんなしあわせなことはないと、かように思います。
○中沢伊登子君 それでは、今度次に空港の問題をお伺いしたいと思います。 最近の航空機の発達はたいへん目ざましいものがございますが、それだけにまた、騒音に悩まされる地域住民の耐えがたい苦痛と被害は察するに余りあります。これは、たとえ一日でもそこに住んでみなければ、察するだけではわかりません。沖繩の嘉手納基地から民間空港まで、それぞれに大きな問題をかかえておりますが、これも例をひとつ大阪国際空港にとってみます。大阪国際空港にジェット機が入ってきたのはたしか昭和三十九年の秋ごろだったと思います。以来、騒音に悩み、さまざまな被害を経験した付近の住民は、陳情に陳情を重ねて、もう八年たってまいりました。その間にジェッ機は大型化する一方であり、頻度はさらに高まる一方でした。しかし、政治はこの八年間の陳情にこたえようとせずに、住民生活に忍耐と苦渋をしいて、そしてそれを土台にして、今日ますます空港を拡張し、整備をして、あたかも繁栄を誇るがごときありさまでございます。生活優先、人間尊重などということはてんでできておりません。七日付けの「神戸新聞」によりますと、大阪国際空港騒音対策協議会の幹事会の席上で運輸省の大阪航空局は、大阪空港周辺の空港騒音は現状よりも減らないと、注目の発言をしたと、これは大阪空港を離着陸する航空機、旅客機が、三月に比べ、四月ダイヤではプロペラ機が減り、騒音の大きいジェット機が六十回もふえているためらしいと、こういうような記事を私は拝見したわけですが、運輸大臣や環境庁長官は、こんな空港問題をどういうふうに解決しようとなされておられるか、伺いたいと思います。
○国務大臣(丹羽喬四郎君) 最近の騒音問題、ことに空港周辺の騒音問題で周辺の住民の皆さまに非常に御迷惑をかけております。私も現地にも参りまして、また、いろいろ御陳情もいただいておる次第でございます。騒音の対策をいかにすべきかということをせっかく苦心をしておる最中でございます。ただいまお話がございましたが、実は政府におきましても、四十二年の八月から、御承知のとおり、飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止の法律を制定いたしました。その当時は三億円の予算でございましたが、昨年はすでに三十億八千万円の予算をもちまして、御承知のとおり、学校であるとか病院であるとかの防音施設の補助、あるいはまた、その付近の御住民の、あるいは昼寝をなさる、あるいは共同学習をするというような共同施設に対する助成、あるいはまたテレビの受信障害に対するところの補助、いろいろのことをやってはまいった次第でございます。しかし、御承知のとおり、ことに関西空港、伊丹空港につきましては、あのとおりほんとうに家屋の密集地になっておりますので、付近の方の騒音に対する御不安と申しますか、毎日のそれに対する騒音に悩むということも相当ますます強くなってまいります。一方、御承知のとおり、飛行機の発着回数は非常にふえてまいります。御承知のとおり、四十五年で、すでに大阪で国際線の利用の方だけで七十万人に達する、こういうふうな事情になってきた次第でございまして、この航空公共輸送と住民の方の生活といかに調和させるかということが一番の大きな問題でございまして、そのためには、そういったような助成措置だけではまいりません。やはり飛行機便数を規制する、あるいは夜間におきまする安眠を保っていただきますために、やはり夜間飛行を禁止する等いろいろの措置を講じなければならないので、実は四十三年からそれらの規制措置をしてまいったわけでありますが、その措置を漸次強化してまいりました。しかし、まだまだひどい事態でございます。昨年の暮れに環境庁の勧告もございましたので、実はこれは公共の輸送の利便と、それから住民の皆さまのそういった静穏状態を、いかに環境を保全するかという調整が非常にむずかしい問題でございますが、私は思い切って、この四月一日から、夜の十時から朝の七時まで、ことに密集地帯でございますので、関西空港につきましては、プロペラ機も含めまして、それの間は禁止をするということに決定をいたしました。ただいま郵便だけが四便だけなっておりますが、これは漸次やはり解消してまいるということで、いま郵政省と交渉をして、協議をしている最中でございますから、そういうことをいたしまして、幾ぶんでも安眠の妨げにならぬようにやっておる次第でございますが、何と申しましても、結論的に申しますと、どうしてもやはりいまの日本の空港は、やはり海上であるとかあるいは人家の少ないところに設定する、騒音公害のない空港を建設するのが第一だと思う次第でございまして、便数につきましても、私はいわゆる航空安全の立場からいたしましてもあまり過密なダイヤを組まないように、常に指示をしている次第でございますが、いま御指摘のようなことのないように十分に指導してまいるつもりでいる次第でございます。
○国務大臣(大石武一君) いま運輸大臣からお答えしたような事情でございます。私も環境庁へ参りましてから、たびたび空港の騒音の被害について陳情をいただきました。その結果、いろいろ考えまして、いま飛行機のエンジンを徹底的に改良する以外には騒音を押える方法はありませんので、やはり運輸大臣の申しましたような、発着回数とか、そういうことに趣旨を置かなければならないと考えます。その結果、昨年の末に伊丹空港と羽田空港に対する一応の環境基準の指針というものを勧告したわけでございます。幸いに運輸大臣の決断によりまして、この指針は完全に受け入れてもらいました。伊丹空港では、深夜・早朝の飛行機は停止になりました。非常にうれしいことでございます。これで多少でも、その陳情の方々に対して多少でもおこたえできたかと思う次第でございます。 さらに大事なことは、このほかに、やはり私はいま運輸省で努力しておりますような、移転の問題があると思います。移転補償の問題、これが大事な問題だと思います。これは時間も金もかかりますが、やはりこれが一つの大きな対策だと思います。 もう一つは、とりあえず防音装置のあるような部屋ですね、一部屋なり二部屋なり、こういうことをやはり民家の方々につくってあげることがとりあえず必要ではなかろうか。幸いに、飛行場周辺のいろいろな整備の法律によりまして、学校とか病院とかいろいろな公けの施設に対しましては、いろいろな防音装置ができることになっておりますが、民家に対しては、一般の庶民に対しては何らの手当てがいままでございません。しかし、これはやはり国ができるだけの援助をいたしまして、そのような防音に、夜ゆっくり休めるような、あるいは電話をかけられるような、そういうようなできるだけの施設をしてあげなければならないということも勧告してございますが、それも今年から十分に調査に入って、明年度から予算を要求するという運輸省の方針でございますので、非常にけっこうだったと思っている次第でございます。これですべてが解決したわけではございません、まだまだわずかなことでございますけれども、多少でも行政が役に立っていると、そうお考えになっていただきたいと思うのでございます。
○中沢伊登子君 まあそれも訴訟を起こしたりなんかしながら、やっと八年かかってそこまで来たわけですけれども、まだ今年は調査の段階でございますね。ほんの数件しかやらない、こういう状態ですが、最近関西新国際空港の神戸沖の建設に反対の決議を神戸市会で採択されましたが、運輸省では相当ろうばいしていると報道されていますが、運輸大臣のお考えを聞かしてください。
○国務大臣(丹羽喬四郎君) その前にちょっと、いま環境庁長官からお答えを私にかわっていただいた次第でございますが、民家の防音工事に対する助成、これはぜひ来年はやりたい、法を改正したいというので、大蔵省とも折衝をいたしまして、すでに調査費もとっております。今年は伊丹を中心としまして、あるいは東京、できますれば福岡あたりに民家を指定いたしまして、防音並びに通風、両方面からの研究をいたしまして、どのくらいの費用がかかるかも具体的にやってまいりたい、こういうことでございますので、来年は必ず実行できるように御協力をお願いしたい、こう思う次第でございます。 ただいまのお話でございますが、私も先般関西に参りましたときに、各知事さん、市長さんにお会いいたしました。御承知のとおり、関西において国際空港が必要であるかないかというお話をいたしますると、必要性を否定する方は一人もございません。御承知のとおり、先ほども申しましたとおり、四十五年ですでに七十万人の航空便を御利用になっております。五十年には二百三十万人の推定をしてみている次第でございまして、どうしても今日の国民生活領域の拡大の点からいたしましても、関西空港の必要であることはこれは言うまでもないと思う次第でございますが、それにいたしましても、やはり伊丹のいままでの住民の非常な御苦痛からも察しまして、そういう点で非常に騒音の問題が大きく取り上げられ、いまではまだ位置もきまっておりません、規模もきまっておりませんのにかかわらず、そういうような決議を見ている次第でございます。私どものまあ行政指導力の欠如と申しますとはなはだ恐縮でございますが、そういう点もあるかと思う次第でございますが、どうしてもぜひともひとつ、関西にはひとつ騒音公害のない空港をぜひ建設をいたしたい。それがためには関西の皆さまの御協力を願いまして、そうして納得の上にどうしても建てなくちゃいかぬ、こういうことで私どもやっておる次第でございまして、先般の飛行の問題におきましても、私のほうの航空局の飛行場部にも関西空港に対する要員を確保している次第でございまして、また関西航空局にもそれらの人間を置いておりまして、鋭意調査をしております。地元の方の御了解もいま求めている次第でございますので、どうかそういう意味におきまして、りっぱな、ほんとうの理想的な空港が関西におきまして建設できますように、ひとつ一そうの御協力と御理解をお願いしたい、こう思う次第でございます。
○中沢伊登子君 こんな意見がございます。国際空港について、この狭い国土で、すでに新幹線もあることだし、将来新々幹線というのもできるやに聞いておりますので、国民にこんな忍耐と苦痛を与えながら、しかも危険があるから、もうこれ以上新設はやめたらどうかというような意見が地元でございます。しかし、そうは言いましても、最近の国家的な要求としても、また、国民的な要望としても、さらに空港の建設や新幹線の建設が必要であろうかということは私ども理解をいたします。しかし、そうかといって、なぜ血を流したり、町をあげての反対があるのかと、こういうことを考えてみると、長い間国民感情を無視してきたことや、ひとたびつくってしまえばおしまいだ、言うことはてんで聞いてくれないというような不信感を住民に持たせたところに問題があると思います。今後はどのように国民感情にこたえて、どのようにして納得を得るようになさるか、ここが問題だと思います。運輸大臣は納得を得るような御自信がおありになりますか、どうですか。
○国務大臣(丹羽喬四郎君) ただいまの御指摘でございますが、あくまでもやはり地元の皆様方の御了解をいただくことがまず第一番でございます。民主主義のもとはあくまでも住民の御理解をいただいて、そこで施行するということが第一の肝要でございますので、私はその点につきまして、全力をあげましてそれらの地元の皆様の御納得をいただきまして、一日も早くその国際空港の位置並びに規模をきめてまいりたい。そのことが今日ほんとうに人家稠密しております伊丹空港の周辺にお住まいになる住民の方に対しましても報いる私はゆえんである。ただいまの計画によりますと、国際線は全部、それから国内線も半分は新空港ができましたらばそちらに持ってまいります。そうなりますると騒音規制も十分できます。ただいまも、時間帯の規制もしておりますけれども、それをさらに厳重にいたしましてやっていけると思っておる次第でございます。 また、ちなみに、飛行機の騒音につきましては、漸次製造各国におきましては、騒音の低いような研究を盛んに進めておりまして、すでにもう二十ホンぐらいの低い騒音になってきておる次第でございますので、それもさらに進めてまいる。そういうことによりまして、飛行機に対する、飛行場に対する国民の認識も漸次御了解を得てやってまいりたいと、こういうふうに思っておる次第でございます。
○中沢伊登子君 納得を得させることはなかなかむずかしいと思います。それは騒音だけでなくて、大気汚染にも結び付いておりますので、よほど腹をくくってやらない限り、なかなか住民は納得を得にくいものだと私は思います。 次に、開発という名のもとに自然破壊が次々に行なわれておりますね。そこで開発と自然保護をどうからませて、どうとらえていかれるか、大石長官にお伺いします。
○国務大臣(大石武一君) 御承知のとおり、いままでは日本の経済発展、国土開発ということが行政の中心でございました。その結果、残念ながら秩序ある開発が行なわれませんで、めちゃくちゃな国土の開発が行なわれてまいりました。ことにその中ではさらに観光開発というやはりこれはおそるべき無秩序なものがあったのでございます。しかし、いつまでもこのような状態を見ておくわけにはまいりません。ですから今後はやはり日本の豊かなすばらしい自然がわれわれの子孫にも——われわれの生活にも十分活用されて、またわれわれの子孫にもりっぱに残し得るような方向に持っていかなければならないと思います。幸いに日本の政治も初めて民主主義を基本とした、いわゆるヒューマニズムを土台とした政治の方向に移りつつございます。いまいろいろと混乱しておりますけれども、必ず近くにはそのような方向に進んでまいると信じております。そういうことでこういう考え方を土台としてやはり自然を守るような、たとえば、今後とも日本の国としては、まだまだある程度の世界の国々に劣らないだけの経済の開発をやっていかなければならないでしょう。これはどうしても必要なことでございます。しかし、その開発が秩序ある国土の利用ということになりまして、そうしてまあこれは理想でございますが、この人間尊重の自然の保護と経済の開発とが調和できるような、そのようなところまでぜひ持っていきたいと思います。それにはやはり日本の国土を十分に今後調査検討いたしまして、守るべき、どうしても守らなければならない自然と、それから開発してもよろしいという地域とをはっきりと区別する必要があると思います。そのためには、やはり環境基準、いま環境要領ということばを使っておりますが、日本全土をそのような面で全体的にとらえまして、そしてやはり一つの開発と保護とを分ける基準をつくりたいと、これが私の願いでございます。そういう基準を土台として分けてまいりますが、もちろん経済開発を行なうには自然の保護ということを中心に置きまして開発しなければなりませんが、そのような形で国土の正しい保全と利用のしかたを進めてまいりたいと考えております。
○中沢伊登子君 たとえば採石場などですね、これは全国にあると思いますが、相当に広い山を買って次々に破壊をしているのが現状です。これには既得権があるということで、市も県も手が出せません。川の砂も大半とり尽くしてしまった現在、どうしていけばいいんでしょうか。
○国務大臣(田中角榮君) 採石業が、国土保全の立場からいろいろ批判を受けていることは事実でございます。四十五年の骨材の総量は五億六千五百万トンという数字でございますから、非常に大きい数字でございます。この五億六千五百万トンの骨材の中で、採石でまかなわれるものが二億トンでございます。そういう数字でございますので、採石業者、河川の砂利、砂採取業者がいろいろ問題を起こしておるというので、前国会で法律を制定をしていただきました。今度は国が持っておりました権限を都道府県知事に移管をいたしまして、そして都道府県知事は市町村長の意見を聞いて許可をするということにいたしました。そして業者は採取計画を出さなければならない。で、採取計画を出す場合には、災害防除の立場から計画をきめなければならないということになっておりますので、いままでのような行き過ぎというものは是正をされるという法制上の整備を行なわれたわけでございまして、地元市町村の意見も十分取り入れられると、また、地元市町村の意見が開陳されない限り、この採取計画は許可されない。また業者も登録業者制度になりまして、八千七百件数ぐらいいま全国で採取事業が行なわれているわけでございます。
○中沢伊登子君 それは新しいものについてはそうかもしれませんけれども、私がいま言ったのは、いままでの分で既得権を持っているのはどうなりますかと言っているのです。
○国務大臣(田中角榮君) いままで既得権を持っている業者も登録を必要といたしますから、登録は全部しております。いま登録をすると、新しい法律の適用を受けるわけでありますので、これはいままでのような野放しの状態ということはなくなるわけであります。
○中沢伊登子君 そうしますと、緑を守る会なんていうのがありまして、これ何とかいまやりつつあるのを中止させたいと、非常な運動をしているのですけれども、それが全然聞いてもらえないのです。それは中止させることができますか。
○国務大臣(田中角榮君) 御指摘の問題は、宝塚の周辺だと思いますが、これは法律がもうすでに制定をせられたものでございますし、既存業者であるといっても、知事や市町村長はこの問題には意見を述べることはできるわけでございます。ただ業者が、全然既得権があるのだからということを主張すれば、そこにはいろんな争いが起こりますが、そのかわりにそんなことをすれば、次の許可はしないということになりますから、これは法律ではそういう処置が明定されておらなくとも、現実的にはこれらの問題は救済できるはずでございます。
○中沢伊登子君 じゃ、もう一つ例をとらしてください。 中国縦貫道路の建設の完成はたいへん地元では待望されているわけですけれども、このための自然破壊もまたたいへんなものです。自治大臣の地元もそうでございます。その上、用地買収に多額の費用を出されるわけです。また、出さなければ買えないのかもしれませんけれども、そのために周辺の地価が非常に上がっております。公有地拡大の推進に関する法律案が今度提出されてはおりますけれども、公有地等の先行取得がこれでできるとお思いになりますか、どうですか。人口急増都市には、さなきだに財政が逼迫をしておりまして、学校を建てたり住宅を建てるにしても、超過負担や財源難に追われてたいへん困っておりますが、妙案がございますか。
○国務大臣(渡海元三郎君) 中国縦貫道路沿線地帯の地価が上がっておりますことは、いま御指摘のとおりでございます。公有地の地価が相当上がりまして、公有地取得のために各自治団体が困っておることは、もう御指摘のとおりでございます。しかしながら、先行取得債、あるいは各事業債、また今日までたくわえてまいりました土地開発基金、これらの利用、水田取得債、それらを今後も一そう拡充いたしまして、その資金源に充実を期してまいりたいと思っております。 なお、公有地拡大の推進に関する法律ができましたら、農協関係資金も、法人格を持ちました土地開発公社において獲得することができるような道も開かれ、また、いろいろ税制面その他においての優遇も与えられますので、これを利用しますことによって、公有地拡大を期していきたい、かように考えております。
○中沢伊登子君 それではもう時間がなくなってまいりましたので、物価問題に移りたいと思います。 資本主義的なメカニズムの中で経済成長が速度を速めれば、だれかがどこかで適切な抑制措置をとらない限り、つまり政府が抑制措置をとらない限り、物価は上昇をするものだと思います。まさに佐藤内閣は施政七年、適切な抑制措置をとらないままに物価は上昇し続けてまいりまして、七年間の間に約四〇%値上がりをいたしました。それにもかかわらず、総理は、施政方針では必ず物価には真剣に取り組みますと演説をされ続けてまいりました。また、経企庁長官も、藤山さん以来七人目になるかと思いますが、必ず低生産性部門の生産を上げるように、すなわち、中小企業や農業の体質改善をうたってまいりました。円の切り上げの利点として、輸入政策の活用や流通機構の整備改善も私どもは聞かされてまいりましたが、私どもの期待はみごとに裏切られて、その効果はほとんどあらわれておりません。それで七年間に四〇%も物価が上昇したわけですが、これについての総理と経企庁長官のお答えをいただきたいと思います。
○国務大臣(木村俊夫君) 御指摘のとおり、なかなか物価政策うまくいっていないことは事実でございます。ただ、御承知のような期間に、わが国の経済成長率は非常な、九八%というような上昇率を示しております。また、雇用者所得にいたしましても、これは一三八%というふうな増加をしておりまして、そういう面から実質所得と申しますか、物価上昇を差し引きましても国民一人当たりの実質所得というものは——実質消費といいますか、というものは約六八%上昇しております。そういう面からごらんになりますと、物価安定そのものは確かに不十分ではございますが、国民全体の実質所得と物価上昇、その結果における国民の実質的な消費というものは、いまお示ししたような数字で上がっております。しかし、これは決して私その数字をかれこれ言うのではございません。物価対策のむずかしさというのは、中沢さんも御承知のとおりでございますが、幸いにして最近物価動向も非常に落ちついております。六・一%の改定見通しをしておりましたが、この数日私どもで試算いたしますと、どうやら五・七%の上昇にとどまることに大体確実のようでございます。しかし、これは決して私は十分な結果とは思っておりません。今後、いまいろいろ御指摘になりましたような政策努力を傾注いたしまして、来年度においてはぜひこれを五%そこそこにとどめたいという努力をいたしたいと考えております。
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま木村君から詳細の現状の報告がございました。私は、冒頭にお答えいたしましたように、なかなかこの問題に成果をあげることができなかった。残念に思っております。
○中沢伊登子君 国民はことしこそ低物価政策断行のときだと期待をしております。なぜなら、昨年以来の不況の上に、ことしは生鮮食料品も値下がり状態でございます。本来、不況のときは先んじて物価の引き下げ競争が行なわれるものだと思います。ところが、不況カルテルによって思うように下がらない、その上に、政府が押えることのできる公共料金を一せいに引き上げました。国鉄運賃をはじめとして、次々に、まだこれから引き上げが予想されております。このようにして、物価上昇に一そうの拍車をかけていますが、そこでお尋ねをいたしますが、こんなに一度に値上げが行なわれたのは、引退近い総理が一切をひっかぶっていくのだと、こういうふうに一部言われておりますし、また、一部では偶然の一致だとも言われておりますが、どちらですか。
○国務大臣(佐藤榮作君) これはもうしばしば申し上げますように、公共料金、これはできるだけ抑制するという方針でまいっておりますけれども、公共料金といえども、やはり公共事業の適切なる対価と、こういう問題でございますから、経済情勢とこれは隔絶して、別な問題で解決されるとは思いません。ただいまの偶然の一致と、こう言われる、そのほうが適切じゃないかと思っております。
○中沢伊登子君 それはたいへんなことですね。政治性のなさだということで、大きな責任を感じていただかなくちゃいけないかもしれません。 そこで、昭和四十年の不況のときに結ばれた不況カルテルはどれくらいございましたか、公取委員長に伺います。
○政府委員(谷村裕君) 独禁法によります不況カルテルは、十八件でございます。
○中沢伊登子君 現在そのまま残っているカルテルはどれくらいございますか。
○政府委員(谷村裕君) 昭和四十年の当時に認可いたしましたものは、もうそのあとですぐなくなりまして、また最近の不況によりまして、新しく不況カルテルの認可という問題が独禁法上は出ております。
○中沢伊登子君 それはどれくらいございますか。
○政府委員(谷村裕君) ただいままでに申請があり、私どもが厳重に審査いたしました上で認可いたしたものは九件でございます。
○中沢伊登子君 時間がありませんから、また物価委員会のときに伺いますけれども、カルテル行為の認可を継続して与えることによって既得権化していることが大きな問題だと思いますが、このような既得権化しているものは幾らあるとお思いになりますか。
○政府委員(谷村裕君) 主としてそういうのが問題になりますのは、中小事業の関係で、例の安定事業と称せられるものとして認可されておりますものが、御指摘のような問題であろうかと思います。で、件数で申しますと、大体十年以上にわたっておりますものが、たしか組合の数が多うございますから、二百二十四件ほどあったかと思いますが、業種では大体工業組合で三十業種ぐらいであったと思います。そのうち二十業種が大体繊維関係であるというふうに大ざっぱに申し上げておきます。
○中沢伊登子君 そろそろまたビールのシーズンになりますが、ビールの値上げは再三頭にくるような問題でございました。一昨年のときは、アサヒビールが先導役をつとめて、当時の経企庁長官もだいぶかっかしましたが、結局は押し切られてしまいました。前の宮澤長官のときもついに押し切られてしまいましたが、ことしの見通しはどうなんでしょうか。
○国務大臣(木村俊夫君) まだ時期が早いとみえまして、(笑声)まだ聞いておりません。
○中沢伊登子君 おそらくことしぐらいがまたその時期になるんじゃないかと思いますので、お尋ねをしたわけでございます。 寡占価格対策について、政府は本気になっているのか、その真実を率直に聞きたいと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(木村俊夫君) 寡占価格と申しますと、公取委員会で不況カルテル、そういうものを独禁法によって正式に認可しない範囲のものがございます。私どもいろいろ考えておりますのは、そういう独禁法で正当に合法的に認可を受けたようなカルテルは別といたしまして、市場構造が事実上寡占的であるために価格が下方硬直性といいますか、なかなか下げない、生産性が上がっても下げないというものが管理価格と称してございます。こういうものをいまのオーソドックスな独禁政策や、競争整備条件を整うことによっても、とてもまだむずかしい政策分野がございます。そこで野党のほうからお出しになっておりますような、ああいう寡占価格の規制法案、ああいうものについていろいろ私どもも検討させていただいておりますが、はたしていまの独占禁止法だけでそういう事実上の寡占状態の価格を規制できるかどうか、非常に私は疑問に思います。そういう意味におきまして、かつて総理もある委員会でお答えしましたとおり、現在どおりでいいものか、あるいは独占禁止法の改正、あるいは野党からお出しになっているような、そういうような性格の新しい立法が必要かどうかということについては、まだまだこれは検討の余地がございます。この管理価格の実態調査というものはなかなかむずかしいものですから、関係機関で実態調査を十分尽くしてからそういうような検討を始めたいと、こう考えております。
○中沢伊登子君 時間がありませんからこの程度にいたしますけれども、以上御質問申し上げましたように、物価問題については、まだいろいろ打つべき手があるような感じがいたします。そして、ことしこそ円切り上げを契機に物価の歯どめができると国民は期待しておったのに、ほんとうに残念でございます。政府の根幹ともいうべき方針をもう一ぺん伺って、そろそろ締めくくりに入りたいと思いますが、ついでに最後まで申し上げてしまいます。 以上、数点についてお尋ねをいたしましたところが、私は、佐藤総理大臣、この七年間こうやって御質問申し上げましたが、総理大臣というのは私は佐藤総理大臣お一人しか知らないわけです。(笑声)たいへん御縁が深かったと思います。初めに申したように、予算委員会のたびごとにこうしてまいったわけですが、お聞きのとおり、満足のいくような状態にはなっておりません。最近、それとなく総理の引退の時期が近づいたやに私は仄聞いたします。そこで、あなたも言いっぱなしで引き退らずに、必ずこれはやるという確約をしていただきたいと思うわけです。そしてまた、各大臣にも必ずこれだけはやらせると、こういうような約束をしていただきたいと思います。恥ずかしや散りぞこないの桜かな(笑声)などと言われないように、有終の美をもって、あとどなたが総理になろうとも、やはり佐藤総理大臣はよかったなと、ほんとうに国民の胸によいものを、りっぱな実績を残しておかれるように、決意のほどをお伺いして、私の質問を終わらせていただきます。
○国務大臣(佐藤榮作君) 物価の問題、これはずいぶん中沢君とも議論いたしました。また、御協力も得まして、いろいろ政府を鞭撻賜わりました。私は、今回の円切り上げ、この効果が必ず好影響をもたらすものだと大きく期待をいたしておりましたが、実際は今日までのところあらわれておらないと、それよりもむしろ流通関係においていろいろの欠陥が露呈されたような気がいたしております。新しくその方向にメスを入れなければならぬのじゃないかと。円の切り上げだけではございません。これ私が申し上げるまでもなく、関税の引き下げ、あるいは輸入の自由化等々のいい政策がとられながらも、ただいまのような流通段階において、そういうものがどうも消費者に還元されてない、こういうことでございますから、さらに私どもは、蛮勇をふるってその方向で消費者を守る、そういう立場でこの政治を進めていかなきゃならぬ、かように思っております。
○委員長(徳永正利君) 以上をもちまして中沢伊登子君の質疑は終了いたしました。(拍手) 午後は、午後一時五十分再開することとしまして、休憩いたします。 午後零時四十九分休憩 —————・————— 午後一時五十九分開会
○委員長(徳永正利君) ただいまから予算委員会を再開いたします。 休憩前に引き続き、昭和四十七年度総予算三案に対する質疑を行ないます。 この際、御出席をお願いいたしました伊達参考人にごあいさつを申し上げます。 本日は、お忙しい中を本委員会のためにわざわざ御出席をいただきまして、厚くお礼を申し上げます。 伊達参考人には、委員の質疑にお答えいただくという形で御意見をお述べ願うことといたしたいと存じます。 それでは、昨日に引き続き上田哲君の質疑を行ないます。上田哲君。
○上田哲君 沖繩協定について、国民の知る権利は全うされたとお考えでしょうか。
○参考人(伊達秋雄君) ただいまの御質問ですが、私は、ただいま法政大学の教授で、学問を主にいたしておりまして、実は、あまり政治的なことには関係いたしておりませんので、政治的な判断は、ここで申し上げることは、その任にもありませんので差し控えたいと思うのであります。ただ最初に、これから御質問があると思いますので、最初に私の立場を申し上げて、その上でいろいろな御判断をお願いしたいというふうに思いますので、貴重な時間ではありますが、しばらく私の立場の釈明をお許しを願いたいと思うのであります。 私は、三十年間、正確には二十九年間でありまするが、裁判官をいたしておりました。言うまでもありませんが、裁判官として一党一派に偏せずに、ただこれ憲法及び法律に従って公正な客観的な判断をするということに日夜精進をしてまいりました。裁判官の生きがいというものは、そこにしかないと私は考えて二十九年間つとめてまいりました。したがいまして、御承知のように、砂川事件の判決におきましても、私は政治的な立場を極力払拭して、ただこれ、憲法の精神に従うという立場において、公正に、自己の良心に従って、自己の利害を顧みず私は判決をしたつもりであります。今日、裁判所をやめまして在野の身になりましたけれども、長年の習性抜きがたく、いまだに、政治的なことについては、まことにうといのでありまして、そういう点につきましては、皆さま方の御満足のいただける為答えができるかどうかということは非常に疑わしいのであります。私は、実は、法律的な問題について御質問を承るのであろうと思ってまいりましたので、その点でしたら、あるいは自信を持って、私なりの自信を持って申し上げることはできるかもしれませんが、政治的にかかわる問題については、私はまことにふえてでございます。そういうことを前置きいたしまして、ただいまの御質問に答えるわけでありますので、これは全く私の専門外のしろうと的な、いわば一国民としての感覚、しかしこれは、あくまでも、私は共産党員でもなければ社会党員でもありません。自民党員でもありませんし、いかなる政党にも属しておりません。ただ今日は、一市民として、一学究としてその日を送っております。そういう立場で申し上げたいと思うのです。 私ども、今日の民主社会においては、われわれが国会議員を選び、その国会において政府を選ぶわけでありまして、いわば原理的に申しますと、また形式的に申しますれば、政府というものは国民の代表である、またあらねばならぬということを私はかたく信じております。したがいまして、政府の言うことは、国民を代表して、国民の意に即しておやりくださって、やるんだということの信念、確信、信頼、そういうものを基礎としなければならぬと私は思っています。これこそ、民主主義の社会であり、民主政治であろうと思います。しかしながら、これはあくまでも原則でありまして、また、われわれの希望でありまして、願望であるちう点もまた否定できないのであります。ただ、現実においては、私どもがあの四年間にあるいは三年間に、一票を投じてわれわれの代表を選ぶ、そうすれば、すべてを白紙委任状にまかして、そしてそれに全部をおまかせする——おまかせしたいのでありまするが、必ずしもそれがすべて国民の意思に沿うということが言い得るかどうかということは、必ずしも、原理的には認められても、現実においては認められない場合があるのではないかというふうに考えるのです。そういたしますれば、政府のなす行動——はなはだ私は口はばったいことを申し上げて恐縮でありますが、政府の行動については、やはり時々刻々、その問題、その問題について批判をし、検討を加えなければならないというように考えておるのであります。しかし、私は、原則として、あくまでも政府というものを信頼し、政府は国民の代表であるという、この厳然たる事実を大前提として考えなければならないというふうに私は思っておる。 そこで、たとえば、政府が、沖繩の返還に関する協定について何ら秘密協定はない、裏協定というものはないということを公言いたしました場合、私どもはこれを信じたいのであります。しかし、私どもは、何と申しましても、あの暗い戦時中の時代を過ぎております。そうして、戦争が終わった後に、どういうことがわれわれの前に明らかにされたか、実はいまだから語るというようなことが常にはんらんいたしておるのであります。われわれは、常に、過ぎ去った後において、あのときはああだったということを——数多くの秘密、われわれに隠された政治の現実、歴史というものを知らされております。そういう現実を踏まえて考えてみた場合、私どもは、政府のしたことが、真実をすべて語っておるということは必ずしも言えなかったのじゃないかという危惧を抱かざるを得ないのであります。したがって、政府といたしましては、これは単に私一人の考えではなく、多くの国民の中に、意識的に政府に反対しょうと、反対せんがための反対という立場をとれば、これは論外でありますが、そうではなくて、政府を信頼したいという立場に立ちましても、なおかつ疑問を抱かざるを得ない場合があり得るのではないかというふうに思います。で、政府は、そういうことに対しては、片りん、そういうものはないということに、国民に信頼を与えるような政治をなさなければならないのじゃないかというように考えています。いやしくも、国民に対して疑惑を与えるような行動、態度を示すということは、絶対に避けるべきことであります。これこそ、民主主義政治の政府の側のあり方としての基本的な立場であろうかと思うのであります。そういう観点から見ますと、今回の国会の論争を通じて見ました場合に、私どもは何かあるのではないか、その裏に何かがあるのではないかという疑問を抱かずにはおられません。不幸にして、それは何となく私どもは全部が解明されたとは思い得ないような感じを受けるのであります。真相をもとより知るべくもありません。しかしながら、何かそういう疑惑を私どもは持たざるを得ないような感じが今日いたしておるのは、まことに遺憾と思うのであります。おそらく、こういう考え方は、私一人にとどまらず、一般に多くの人々がお持ちになっておるんではなかろうかという私は推測をいたすのでありまして、今回の問題も、そういう疑惑ということを前提とする、そうして考えなければならない。その上に立って、知る権利という問題もここに強く強調しなければならないという背景というものがあるのではなかろうか、かように私は考えておるのでありまして、それ以上、具体的にどのようなことがひそまれているかということについて、私は何ら知らないのであります。
○和田静夫君 関連。 いま言われたところの知る権利との関係でありますが、この国会のやりとりをずっとお聞きになっておっておわかりかと思うのでありますが、何といっても、国益というような、言ってみれば、抽象的なふえん条項を繰り返して答弁の中で強調する、そういうことによって結果的に政府側がうその答弁をした。これはたいへん重要なことでありまして、イギリスのプロヒューモ事件では、あの内閣の総辞職の直接の理由というのは、御承知のようにスキャンダルにあったのではありません。問題は、国会においてうそをついた、政府側が。そのことによって、ああいう責任のとり方があったのであります。わが国には、これを重視する風潮というのは、たいへん欠けているように思いますが、ひとつ参考人の口から、国会でうそをつくことが憲法論理上どういう扱いになっているのか、御意見を賜われれば幸いだと思います。
○参考人(伊達秋雄君) これは種の——私の答えとしては一種の仮定論になるかと思いますが、うそをついた場合に憲法上どういうことになるか、と。まあ私は、刑法学者というと非常におこがましいのですが、まあ端くれ中の端くれでございますが、うそをついたということ自体が刑法上の犯罪になるというわけでもなかろうと思いますが、これはまさに政治的な問題として解決すべき問題であろうかと思いますし、また、それは一番大きな弊害というものは、まさにいま私が言いましたように、国民の政府に対する信頼、この民主主義政治における一番基本的な、夫婦の中においても、御承知のように——こういう比喩を出してあるいは軽率かもしれませんが——夫婦の中においてもやっぱり相互間の信頼ということが大切であります。それ以上の問題があろうかと思います。そういう一番民主主義の基本的な条件、前提というものを裏切るということは、私は、政治的に非常に大きな罪——罪ということばが当たらないとすれば、大いに批判されるべき問題ではなかろうかと考えます。
○委員長(徳永正利君) 伊達さん、お疲れでしょうから、あそこで、私がお呼びするまで、かけていらっしゃってけっこうですから。
○須原昭二君 関連。 実は、知る権利について、いまお話がございましたですが、マル秘文書というものが、聞くところによりますと、防衛庁なんかは九十万点あるそうです、あるいはまた、外務省では四十万点というように多くあるということを聞いたわけでありますが、政府の機密事項というようなものは、このように拡大することが許されるかどうか。その点について非常に私たちは心配をするわけですが、御意見を承っておきたいと思います。
○参考人(伊達秋雄君) 先ほども申しましたように、私、刑法学者の端くれという立場で、また、やはりこれを守りたいと思っておりますので、いまのようなきわめて政治的な問題については、私はこれ以上答える能力はない。先ほど申しました基本原理ということを十分御理解し、また、守っていただきたいということを心から皆さま方にほんとにお願いをするという気持ちしかございません。
○上田哲君 いま国会で行なわれている国益論争をどのようにお考えになりますか。
○参考人(伊達秋雄君) これも逃げるようでありますが、国益という問題はいろんな角度から考えられると思います。私のえてでない角度からも十分また検討さるべき問題ではなかろうかと思います。しかし、今日ここで問題になっていることは、あのいわゆる知る権利という問題と、それに関連して取材活動が犯罪とされ、逮捕をされ、さらには勾留をされた。やがては、これを起訴するかしないか。万一、起訴された場合には、有罪となるかならないか、刑務所へやられるかやられないかと、こういう犯罪の成立するかどうかという問題、これに刑罰を科すべきかどうかという問題にからんで、さらにもう少し角度を変えて言えば、守られるべき秘密というものがどういうものであるか、また、そういうものをどのような方法で取材するという、その取材の限界というようなことが問題となる。要するに、刑事問題としてこの国益ということが大きく取り上げられておると思うのであります。で、これは御承知のように、ニューヨーク・タイムズのベトナム秘密文書の発表という問題にからんで、アメリカの最高裁判所の判決の中に、このことが大きく論争として取り上げられたところでありまして、そういう角度から申しまして、私は限局して申し上げたいと思うし、また申し上げざるを得ないと思うのでありまするが、この国益というものは、まあ言いかえてみれば、たとえば公共の福祉ということばが憲法にございます。そうして、憲法上保障された基本的人権というものがございます。たとえば、いま問題になっておりまする憲法二十一条の表現の自由というようなきわめて重要な、民主社会にとってきわめて重要な基本的人権というものがあります。それが何らかの理由によって制限をされるということになる。さらに、その制限に違反をした場合に、犯罪となるかならぬか、刑務所にぶち込まれるかどうかという問題に発展していくわけでありますが、その場合に、国益ということがかかわります場合に、その国益というものを判断するのはだれかという問題が出てくると思うのであります。私、新聞で承りました政府側の統一見解ということによりますと、国民を代表するものは国会であり、国会が選んだ政府、したがって政府は国民の代表である。したがって、政府が、たとえばこれが国益なりと考え、これが秘密なりと考えたものは、すなわち国民が認めた国益であり、国民の意思決定による国益であると、あるいはこれは私少しオーバーに言い過ぎたかもしれませんが、そういう趣旨の発表があったように記憶いたしております。もっとも、その次のところには多少調子を変えたものがございますが、それはまあしばらくおきまして……。
○上田哲君 その見解は撤回されました。
○参考人(伊達秋雄君) 撤回された……。
○上田哲君 ええ、最近確かに出ましたけれども、撤回されました。
○参考人(伊達秋雄君) その点について私はこういうことを一つ申し上げておきたいと思うのです。これは法律家として申し上げて、おそらく、ここの国会の議論ではあるいは出なかったのではなかろうかと思いますので申し上げておきたいのですが、法律家として申し上げておきますが、まあ一応そういう形式論が成り立つといたしましょう、仮定論としてみたら。そうなりますと、たとえば法律というものを考えていただけばおわかりになる。法律というものは国会でおきめになります。で、これはまさに、国会はまさにこれこそ国民の代表であります。したがって、法律こそは国民の多数意思によって選択された国家の意思表示と言わざるを得ないと思うのであります。しかも法律をつくる際には、必ずや国会はこれが国益なりとお考えになった上で、その前提でおつくりになることと思うのであります。しからば、その国益なるものが、たとえば、法律によって憲法上保障された国民の基本的人権を制限する、そういうことがまさに国益である、言いかえれば、公共の福祉である、公共の福祉を守るためには必要である、こういうお考えで法律をおつくりになり、それがまさに国民の意思、政府の意思でもあり、国民の意思でもあるということになると思うのでありますが、しからば今日の——これから私の法律論でありまするが、今日の憲法のたてまえにおいて、国会だけが判断した国益が、それが最高であり、動かすべからざるものであるかと申しますと、決してそうでないことは皆さま御承知のとおり。すなわち、言いかえますならば、最高裁判所に違憲審査権というものがありまして、ここにおいて公共の福祉とは何ぞや、国益とは何ぞや、この公共の福祉を守るためにはかような人権を制限する法律もやむを得ない、必要だと、こういう判断はまさに最高裁判所において客観的にきめるものでありまして、決して、国会が考えた公共の福祉、国益というものは最高、唯一無二のものであるということが言えないことは、今日の日本憲法のたてまえ上、当然明々白々であろうと私は思うのであります。いわんや、これは国会がきめた法律、しかもストレートに国民の代表という国会の多数決であります。これがさらに政府——国会にあらずして、さらに政府というたてまえにおいてきめたものが、これがもう決定的に国益であり、決定的に公共の福祉に合するということがはたして言えるかというと、これはさらにさらに問題、疑問になるというふうに私は考えます。そういう意味で、国益というものは、結局最高裁判所がきめるということは、同時にまた、これ、国民の意思を判断してきめると、いわゆる最高裁判所の好んでいうことばによれば、社会通念によってきめるという、その社会通念といいますれば、とりもなおさず国民一般の支配的な考え方という、国民がきめるという立場をとるということになると思います。そういうふうに御理解を願いたいと思うのであります。
○工藤良平君 いまの国益の問題、さらには、それとあわせまして国家機密との関連においてお聞きをいたしたいと思うのでありますが、私は、具体的に、このたびのこの事件のそもそもの出発が外務省の事務官が機密を、国家公務員法に基づいた機密を外部に漏洩をしたということが非常に重要な問題になっているわけでありますが、私も国家公務員の出身でありますので、特にこの点は、今後の運営について気をつけなければならないと思いますのでお聞きをしたいわけなんですが、先ほどからいろいろと論議が行なわれておりますように、国益あるいは機密の問題についても画然とした規定はないように思うんでありますが、そういうように考えますと、国家公務員法でいう機密漏洩という問題が、画一的にこれが判こを押してあるということだけで、物理的なそういう条件だけで国家公務員法の機密漏洩ということを適用して、最高の処分である懲戒免職というものを行なうということが、一体公務員法というたてまえからしてどうなのか、しかもそれが一般的に拡大適用されるということを私は一番おそれるし、その点に対する考え方をひとつお聞きをいたしたい。 それからもう一つは、それに関連をいたしまして、当然起こってまいりますのは、この国家公務員法が知る権利を制限するように運営されてはならないのではないかと思うのでありますけれども、そういう意味から、国家公務員法と国民の知る権利という憲法との関連においてどのようにお考えなのかお聞きをいたしたい。
○和田静夫君 ちょっと委員長、答弁をもらう前に関連で。 このことで、一つどうしても考えなければならないのは、外務省に入る公電の九〇%をこえる部分が、外国では公然資料に載っていること、それがわが国の外務省に入ってくると、その公然な資料の中の三分の二ぐらいが秘密であったり極秘になる。そういう判断で判を押される。それを国家公務員たる者が国民の利益に立って、言ってみれば、憲法九十九条を順守しようとするまじめな、国民にサービスを一生懸命にやろう、国民の知る権利としての情報を提供しよう、その本来的な国家公務員、上司がどういったところで、そのことを果たそうとする、憲法九十九条に生きる国家公務員がそのことをなす。こういうことについて、一体どういうふうにお考えになるかということをひとつ聞いておきたいんです。ちなみに防衛庁では、私も質問をして確かめたのでありますが、あの機密漏洩事件が四十三年にあったあと、たいへん「取扱注意」や、あるいは「秘密」というような取り扱いのものが格上げをされて、先ほども申されたような形で七十万点をこえるような秘密書類がある、こういうことになっている。たとえば厚生省の場合、考えてみますと、どこかでコレラが出たというような問題も、結果的には社会不安をかもし出すのではないかというような形でもって秘密扱いにするなどというようなこともある。そうすると、私たちはこういうことを国民が知る権利を持っているのでありますから、そこに状況を知らせるために、記者の諸君が一生懸命に努力をする。敏腕記者は敏腕記者であるほど、そのことをとる機会を得る。それが即国公法百十一条の違反になる。こういうようなことではたまったものではないという感じがするのですが、そういう点についてどのようにお考えになるか。あるいは沖繩関係の百十数通の、言ってみれば、電信文のうちから蓮見事務官があの部分を選んで抜き出すということは、常識的には、記者の通常的な取材パターンとして、政府関係者から一定のインフォーメーションを得ています。密約なら密約があるぞ、あるいは、あるのではなかろうかという形のインフォーメーションを政府関係者から得る。それを得れば、それを裏づけるための物をとろうと、有能な記者であるなら記者であるほど、そのことをやる。そして物を入手をする。したがって、一定のインフォーメーションの上に、それを前提として今度の場合も国公法違反事件というものが西山記者の上にかぶさってきた。こういうふうに考えるべきでありまして、この辺のことが国公法の適用の問題として一体正常であるかどうか、法律学者の立場から御返答願えれば幸いです。
○参考人(伊達秋雄君) 先ほど申しましたように、私は三十年間裁判官をやっておりまして、事実の認定と真実の発見というのはいかにむずかしいかということをいやというほど痛感させられております。事を認定するにあたりましては戦々恐々といたしております。ドストエフスキーのことばではありませんけれども、ほんとうに極端に申しますと不可知論に近いほどのあれを、憶病な、ティミッドな気持ち、また、そういう意味では神をおそれる気持ちでやってまいりました。したがいまして、具体的な事実を前提として事を論じなきゃならぬ場合について、私はなるべくこれを避けたいと思っております。たとえば裁判批判でも、法律論についての批判ならばけっこうですが、たとえば事実問題を前提とした裁判批判というような場合には、私は非常に慎重な態度をとってまいりました。で、今回の事件も今日まだ捜査中であります。これから万一公判ということになりますれば、そこで十分にまた弁護側の立証を尽くし、また検察官側も立証して、そうして真実に、わからないままにしても、神ではないにしても、人間の能力の限界ではありまするが、ベストを尽くして真実を発見していくということになろうかと思うのです。そういうものが私にいまだわかっておりませんので、私としては、こういう公的な——私的には申し上げること気楽に申し上げられまするが、こういう公的な場では、私はそういう事実がはっきりしない上で論ずるということは避けたいと思うのでありまするが、ただ、多少抽象的なことになりますれば申し上げられますので、その点について、私の許される範囲で抽象的なことを申し上げたいと思うのでありますが、この国公法にいう公務員が知ることができた秘密を漏らした者はということになって、秘密ということばになっております。まあ秘密ということばに対して機密ということばがございます。たとえば今度の刑法の改正案では、国家公務員がそういう機密を漏らした場合について懲役三年という刑を、国公法は懲役一年でありまするが、三年という刑を科する。しかし、ここでは機密ということばが使われております。秘密と機密とどう違うかというようなやかましい問題が出てくると思うんでありますが、まあ従来国公法にいう秘密というのは、比較的ゆるやかな行政事務処理上の立場からくる秘密というわりあいに軽い意味に解されておったんではないかと思うのであります。と申しますのは……。
○委員長(徳永正利君) 御答弁の最中でございますけれども、まことに申しわけございませんが、時間の都合もございますから、御答弁は簡潔に、できたら要領よくお願いいたします。
○参考人(伊達秋雄君) それで、その秘密というものは、いわゆる官庁内部の秘密保持という、そういうたてまえのものであるというふうに考えられてきておったものですから、わりあいに軽く見られておった。ところが、これは実はほんとうの意味で反省されていない考え方でありまして、やはり法律の解釈というものも、実にシリアスな現実の問題、しかもある人が刑罰になるかならぬか、刑務所にぶち込まれるかどうかという、現実のシリアスな問題になりますと、ここに初めて人々はこれは真剣な検討を加えて、ここに初めてほんとうの意味というものが出てくると思うんです。そのほんとうの意味というのは、単に国家公務員法百条をにらんだだけで出てくるものではなくて、憲法という大前提、大原則というものを踏まえて、これを全一体同一的に解釈して初めて出てくる問題だろうと思うんです。こういう点——私にちょっと早くということでしたが、私大切なことですので、特に申し上げてお考えおきを願いたいと思うんですが、たしか地公法——地方公務員法の三十七条ですか、それから六十二条の、あの公務員はストライキをやっても処罰されない、ところが、あおり、そそのかした場合、これは処罰されるという規定になっております。そこで、例の東京都教組事件があって、長谷川さんですか、起訴されたわけですが、これについて、最高裁判所は四十二年四月二日の大法廷の判決であのあおり、そそのかしというのは、いわゆる国語辞典に書いてあるようなあおり、そそのかしという意味ではなくて、すなわちこれを広く解釈すべきではない、そして本来争議というもの自体が罰せられておらない、その争議に随伴するようなあおり、そそのかしが罰せられるということになれば、結局ストライキを罰するということになるのじゃないか、これはストライキを罰しないという法の精神に反する。このことは憲法二十八条の労働基本権を尊重するという、こういう憲法の大精神というものに基づいて、そしてこれは処罰すべきでない。したがって、たとえ地公法にあおり、そそのかしたものを罰すると書いてあっても、それは国語辞典のことばではなくて、憲法との関連において考えるべき、制限して解釈すべきものであって、通常随伴するような行為についてはこれは罰しないのだと。たとえ、ことばそのとおりの意味から言えば当たるにしても罰せられない、こういう判決です。これに対して、私の漏れ聞くところによりますと、これは裁判所は法律に書いてない、法律的に反するような判決をしたという非難があったやに私は聞いております。あるいはさらにこれを契機として地方制度調査会ですか、というものが発展したということも——これは真実かどうか知りませんが、新聞で承っております。かように、必ずしもことばどおりに解釈をすべきものでない、憲法との関連で解釈すべきだ、こういうことになります。そうなりますと、今度の国公法の百十一条ですか、このあおりという意味も、おのずからそこに取材活動、憲法二十一条からくる、すなわち表現の自由、表現の自由を確保するためには、必然的に取材の自由、取材の権利というものが認められる。要するに、国民の知る権利、この民主主義社会における最も基本的な権利、国民が知ることなくして、すべての国民は政治に関与しなければならない、これが民主主義社会の基本原則であります。その関与すべき国民が昔ながらのよらしむべし、知らしむべからずというような、今日の政府にそういうお考えはないということは、もちろん私も確信いたしておりまするが、そういう流れに近いような考え方で知る権利を否定することはできないということは、あくまでも民主社会において国民がすべて政治に関与する、国民の意思によって政治を左右するということが基本原則であるとすれば、そのすべての政治的判断の基礎となるところの事実は、すべて国民に知らせなくちゃならぬ、また国民も知らなければならないということになるのは申すまでもないことでありまして、そういう観点から見まして、そういう憲法二十一条との関連において国公法百十一条というものも考えなければならないし、さらにこれはいま私は取材活動という観点から考えましたが、これから以上十分私は研究していませんから、自信があるわけではありませんが、さらに、公務員自身の秘密を漏らしたという場合でも、これはあくまでも場合によってはということで、そのいかなる場合ということが今後十分検討されなければならぬが、場合によっては、これは罪とならないという場合があり得るのではないか。これは私、刑法学者ですから、はっきり自信を持って申し上げますが、刑法三十五条というものがありまして、正当行為というものは罰せられない。それは要するに、他の優越する、他の大きな利益を守るためにやむを得ずなされた、それをなさなければどうにもならなかった、大きな利益を守るために、またその方法が相当であるというようないろんな条件は加わります。加わりますが、ともかくながら、そういう大きな権利、すなわち、憲法二十一条によって与えられる国民の大きな権利を守るという場合には、たとえ公務員自身が漏洩した場合にも、場合によってはなり得ないということは、論理的には、刑法理論上はあるということだけは私ははっきりと申し上げます。いかなる場合になるかということは、ここで私は具体的事案も知りませんし、いままでそこまでは論ずる勉強のあれは持っておりません。ただ、抽象論として、そういうお考えを前提に置いてお考え願いたいということだけは申し上げます。
○矢山有作君 それじゃ、三点ばかりに分けてお伺いしたいと思うのです。 先ほど先生がおっしゃった問題に関連をする問題ですが、私は、憲法二十一条によって保障されておる言論ないし表現の自由というものは、これは基本的な人権として国民主権のもとでは公共福祉の名をもってもみだりに制限することはできない、こういう立場を踏まえております。したがって、そういう立場から見るならば、私は、国家公務員法第百十一条の存在自体に問題があるのではないか、こう思っております。というのは、国家公務員法というのは、もともといわゆる公務員の内部規律と考えていいんじゃないか。公務員の内部を規律しておる、そういう関係の法律の中で公務員が秘密を守らなかった、それに対して関係した部外者を、これを犯罪の対象にするというこの百十一条というのは、先ほど申しました基本的な立場に立つならば、それと、もう一つは、国家公務員法というものが公務員の内部規律であるという立場に立つならば、私は違憲の疑いが多分にあるのではないか、これが第一点です。 それから、もう一つは、百十一条というものを認めるにいたしましても、これを私は正当な新聞記者の取材活動に適用して処罰しようというのは、これは立法の趣旨を逸脱しておるのじゃないか、こういうふうに思うわけです。この百十一条の規定の本来のねらいというのは、スパイ活動とか、あるいは一つの営利会社が営利を目的にして不正な手段で役所の機密をとろうとする、そういう場合には、なるほど私は適用があると思うのです。しかしながら、そういう場合を想定しておるのであって、国民主権のもとで国民の知る権利が保障されておる中で、その国民の知る権利を代行しておる新聞記者の正当な取材活動にまでこれを適用するというのは、私は法の適用の面からいって違憲の疑いがあるのではないか。これが第二です。 それから次の質問は、すでに西山記者は電文を受け取ったことを認めたわけですね。それからまた蓮見事務官も西山記者に、電文かコピーか、いずれか知りませんが、そういったものを手渡した事実を認めているわけです。したがって、百十一条を適用するという場合の容疑事実の骨子である文書の授受の事実というのは、もうすでに当事者によって明らかにされておるわけです。しかも逃亡のおそれもない。こうなれば、たとえコピーが社会党に流れていっておるんだとしても、それは記者のモラルの問題である。だから犯罪の構成には関係はないはずであります。したがって、捜査当局が国公法の百十一条によって西山記者を逮捕、勾留をしたということは、これは法の適用を誤っている、いわゆる乱用である、こういう点を一つには考えるわけです。それからもう一つは、これはもう事後の問題であるから、私は批判をしてもかまわぬと思いますが、裁判所が十日間の勾留の請求があったことに対してこれを認めたというのは、私が先ほど申し上げたような点からして、裁判所自体が法の適用についての解釈を誤ったんではないか、私はそう思います。 それから第三点といたしまして、高松刑事局長は先般来の答弁で、この婦人が断わるのをとにかく強く要求をして、断わってもまだそのコピーをよこせ、コピーを渡してくれというふうにしつこく言ってコピーを受け取ったのは、これは実質的に窃盗だと、こういう言い方をしておるわけです。で、窃盗とは何ぞやといって私どもが聞きましたら、さすがに刑事局長だからよく御存じでして、他人の財物を窃取する、これが窃盗だと、そうすれば私どもが、西山記者が蓮見事務官からコピーか何かを受け取ったのは、これはしつこくひとついただけぬか、知らしてもらえぬかと言うたにしても、これは私は窃取には当たらぬと、窃盗には関係ないと思う。それを実質的に窃盗だという言い方をなさっておるということについては、私はいろいろ考えてみましたが、どうもこの考え方をやられたのには裏があるという気がするわけです。裏が。その裏についてどういう裏があるとおまえは考えるかとおっしゃられれば、私は私なりの考え方を申しますが、ことさら実質的窃盗だというふうに持っていって強く主張されたのは、どうも私は裏がある、そういう感じがしております。ところが、きのう準抗告が認められて、西山記者が釈放された段階では、窃盗としてはもう今後は追及しない、こういうふうにおっしゃっておりますので、これも参考までに申し上げておきます。
○委員長(徳永正利君) 簡潔に願います。
○矢山有作君 以上三点にわたって御見解が伺いたい。
○参考人(伊達秋雄君) 最初の問題は、私が先ほど申した点と、ただいま御質問の考え方とは、いわば富士山へ登るのに御殿場口から登るか、吉田口から登るかという問題ではなかろうかと、比喩は非常にたいへん悪いかもしれませんが、そういう感じがいたします。多少適用の範囲に幅が——大小の幅があるかもしれませんが、大体同じではなかろうかというふうに思います。問題は具体的な事案ということに、結局はどちらにしても帰着することになると思います。その点は私先ほど申しましたように、事実についてははっきりと確信を持っておりませんので、この点は結論は、捜査中でもありますし、ここでは差し控えたいと思います。私も政治運動をやるときにはまた別のことを言うかもしれませんが、ここではきわめて厳粛に申し上げなきゃならぬと思いますので、さように御了承を願いたいのであります。 それから、ひとつ、ちょっとまああまりまじめくさった話ばかりしても味けないことでございますので、少し脱線をして一言、せっかく来たんですから一つくらいここで、こういうりっぱな席でですね、佐藤さんや福田さん、水田さん、皆さんおえら方のいらっしゃる席で一つぐらい……。
○委員長(徳永正利君) けっこうでございますけれども、あとに時間がございますからなるたけ簡潔にお願いいたします。
○参考人(伊達秋雄君) どうも失礼いたしました。 一つだけ発言させていただきますと、私は、西山記者の勾留をもう打ち切った、釈放した今日の段階で、むしろ捜査の重要性は、知る権利と、佐藤さんがおっしゃったのはあとの流れたぐあいですね。ああいった意味から焦点があったんじゃないか、これは長官も言っておったと私新聞で見ておりますが、そういう点に疑点があったということでありますし、蓮見さんはもう釈放していいんじゃないかと、私、女性だから同情して申し上げるのじゃないので、もう蓮見さんは釈放していいんじゃないか、お願いしたいような気がします。
○矢山有作君 委員長、これで終わります。
○委員長(徳永正利君) それでもう関連は全部終わりですか……。
○矢山有作君 簡単にやります。 私は、先生ね、実質的に西山記者がやったことは窃盗だと言ったのはね、刑事局長が西山記者がやったことは実質的には窃盗だということで突っぱってきたのは、主張されたのは、これはあなたがおっしゃったように、西山記者がそのコピーをどこに流したか、社会党に渡ったそのルートを追及するためには窃盗であるということを言わなきゃ追及できないはずなんです。そうでなければ国公法百十一条だけでいったんではやりにくいはずです。だから私は、高松刑事局長は実質的には窃盗だということで社会党への流れたルートを徹底的に究明しようとしたのだ、私はそう考えるのです。どうでしょうか。
○参考人(伊達秋雄君) 大体先ほど申し上げました事実認定を前提とするということで御了解願いたいと思います。
○上田哲君 言論の自由の問題というのが非常にいま大切な問題になっております。政府と言論機関との関係についてどのようにお考えでございましょうか。
○参考人(伊達秋雄君) 大体その問題については私の申し上げたことで尽きるのではなかろうかと思いまして、私のストックは少ないほうでございますので、これ以上吐き出すとぼろが出るかもしれませんので、まあいままでのことを繰り返して十分——問題は実行だと思うのです。千万言を費やしても、私はここで幾ら大きなことを言っても、これは日本の今日の社会に実現されなければ私は意味がないと思うのです。これを心から私はお願いしたいのです。それをお願いいたします。
○竹田四郎君 関連。
○委員長(徳永正利君) 上田君の、質問者の三問に対してたくさん関連が出ておりますから、もうあと一問だけ、それじゃ関連をお許しします。
○竹田四郎君 せっかく伊達参考人においで願いましたので、国家の国益という問題とそれから機密という問題、この二つがずいぶんこう議論をしたのですが、実は少しも明らかになっていないわけです。官房長官の国会討論会を聞きますと、国益というのは、総理が言ったように、国民が判断する。しかし、国民といってもこれは不特定多数だから国会がそれを判断する。しかし、いまの内閣は議院内閣制だから国会が選んだ内閣が結局は国益は判断するのだ。まあこういうふうな答弁を一回なさいまして、後にこれは若干修正をされたようでありますけれども、まあそういう意味で国益というもの、この点は実はあまり明らかでないわけであります。それから、同時に秘密というもの、国益と秘密というものとはたいへん関連があるわけでありますが、この秘密につきましても、このように秘密の基準という話も出たわけでありますが、これについても実は明らかでない。防衛庁では九十万点ぐらい秘密文書がある。外務省では四十万点もあるというわけでありますけれども、しかし、一体国益と秘密というものの関連、一体どうなのかという点が私に非常によくわからないわけであります。こうした点で、一体まあ防衛庁の機密などというものはいまの憲法下では私はあるべきものではないと思うんです。「知る権利」というのが西独においてたいへん熟してきた権利だと、こういうふうにいわれているわけでありますが、西独のシュピーゲル事件ということについて伊達参考人は御承知でございましょうか。
○委員長(徳永正利君) 簡潔に願います。
○竹田四郎君 はい、わかりました。 これは一九六二年の十月の十日のNATOの演習において、シュピーゲル号の演習、あるいは軍事状況、あるいは将来の軍事計画、こういうようなものを新聞記者が発表をして、それによって逮捕された事件でありますが、その判決の中では、「自由な民主主義的基本秩序にとっては、軍事を含めた国家行為が国民の常時の批判と同意のもとにあるのが本来の姿である」という、この一般的原則を判決は承認し、さらに、「国家利益、軍事秘密の必要性にとって有害とかいう問題は軍事的利益からだけ判断してはならない。むしろ民主主義的原理に由来する公衆の持つ知る権利と討論の権利とが対置されなければならない。国防体制の本質的……
○委員長(徳永正利君) 簡単に願います。
○竹田四郎君 弱点を暴露することは、さしあたって軍事的不利があったとしても、長期的には秘密を保持することよりも重要である。だからといって、通常の場合、詳細な知識を前提とすることはないだろう。しかし、このような討論も、それに必要な最小限の事実を抜きにしては不可能であろう。」……
○委員長(徳永正利君) 竹田君、簡潔に願います。
○竹田四郎君 はい。こういうふうに「西独の知る権利」についてはかなり進んだ軍事的な問題についても知らなくちゃいけない、こういうふうな判決を下しているわけでありますが、かなりこの点では、ほんとうにわれわれが通常軍事機密だと思われている時点にまで及んでいるわけです。そうした点で国益というものと、機密と、「知る権利」、この三つの関係について伊達参考人のお考え方を伺いたいと思います。
○参考人(伊達秋雄君) 私も、例のニューヨーク・タイムズのベトナム秘密文書の発表の問題、これを言論の自由という観点からあのような判決をしたアメリカの最高裁判所に心から敬意を表するものです。はたして、日本であのような問題が起こった場合に、どのような判断が下されるであろうかということについては、必ずしも私は楽観いたしておるわけではありませんが、その点については深く裁判所の健全なる判断というものを期待しておるのであります。 それから、せっかく御質問で、ばらばらになりますけれども、私が答え得る範囲のことを答えるという立場をお許し願うといたしまして、そういう意味で、あるいは御質問の全部に答えることにならないかもしれませんが、私の答え得る限度で答えるということでお許しを願いたいのですが、最初の国家公務員法における「秘密」ということですが、行政官庁で極秘の判を押せばそれが全部秘密になると。これは公務員内部の規律という観点からいいますと、あるいはそういう解釈も考え得るということ、そういうおそれが多分にあったと私は思うのであります。ところが、今回の西山さんの事件の勾留に対する準抗告に対する東京地方裁判所の裁判、すなわち決定というものは、その点は行政官庁で極秘の判を押せばそれがすべて秘密に当たるのじゃないのだというたてまえを明らかにして、これを実質的な違法、それと機密というようなことがどういう関連になるのか、こういう点はまだ明らかにされておりませんけれども、この点は私は、今度の決定に対して非常に高く評価していいんじゃないか。今後はマル秘を押せばそれですべて秘密になるということにはならないと思うのであります。その点は高く評価しています。 それから国益との関係ですが、私も自信を持ったことは申し上げられませんが、ただ、一つこういうことを御参考に私は申し上げておきたいと思って実は参ったのでありますが、実はこれは私もその委員の一人になっておったんですが、刑法改正準備——今日の法制審議会の審議でなしに、その前に小野さんが主宰しまして刑法改正の準備草案というものをつくりました。その準備草案の中にはいわゆるスパイ罪の規定、外国に通報する目的をもって——「軍事上」とはもちろん言えません。今日の日本は御承知のように憲法九条というものが厳然としてある限りは、「軍事上の秘密」ということはこれは言うことはできませんが、そこで「防衛上の秘密」ということばに振りかえておるのでありまするが、その防衛上の秘密、それから外交上の秘密、これの探知収集、違法な探知収集というものを犯罪としていわゆるスパイ罪の規定を置いた。ところが、これが法制審議会の今日の段階ではまだ成文化されておりませんが、慎重審議、再検討を加えた結果、これは取り入れないという結論になったことは、あるいは御承知の方も多いかと思うのでありますが、ここではおそらくいろんな議論がなされた。——内部のことですから私うかがうべくもありませんが、おそらく、防衛上の秘密といったところで、これは軍事上の機密というような——平たくいえばですよ、常識的にいえばそういうものになりがちだ。そうなると、憲法九条の関係でさような機密というものは許さるべきでない。また外交上の秘密といっても、多くはそういう防衛的、あるいは、使うべからざることばでありまするが、「軍事上の秘密」というようなこととほとんど同質的なものになる。そういうことは憲法のたてまえから、今日の平和憲法を守り抜くという今日の日本の憲法上のたてまえからは問題でもある。またさらには、民主主義社会においては基本的に国家機密というようなものはあり得ないんだという考え方も十分取り入れられておったと思うのであります。 私も戦前を生きてまいりましたんで、皆さま方と同様に十分あの暗黒時代のことをまざまざと思い浮かべるのでありまするが、私どもの立場として、たとえば国家機密を守ったのは国防保安法であります。これはまさに死刑をもって処罰をしたという法律であります。この国家機密というものの中にはいろんなものがございますが、たとえば枢密院の会議、御前会議というようなものもありまするが、中には行政各部の機密というものまでも含まれておったのです。さらに、国防保安法以外に、もちろん軍事上の機密というものも保護されておりました。そしてこれはまさに指定、マル秘を押せば機密になるんだという考え方ではもちろんありませんでした。そんなことをしたらたてまえとしてもたいへんなことになります。そこで、これは単にマル秘を押したという形式的秘密を言うんじゃなくて、やっぱり実質的に考えて高度の政治機密という概念になるということは、これは当然であります。ところが裁判所は、はたしてこれが国防保安法にいう「国家機密」に当たるかどうかということになりますと、政治的判断でなかなかしにくいのであります。きわめて政治の機微——ことに戦時中でありまするし、政治の機微になるわけであります。そうしますとどういうことになるかというと、結局裁判所は、行政各部なりあるいは東条さんに伺いを立てまして、これが機密ですかどうですかと、こういう伺いを立て、それでこれは機密でないとおっしゃられればこれは無罪、これは機密だと、こうおっしゃられれば、その理由のいかんを問わず、内容のいかんを問わず、裁判所の判断を待たないでほとんどその言いなりに有罪ということにせざるを得なかった。そうなればまさに裁判権——われわれが保障された裁判所による裁判権というものは、実は東条さん以下行政各部の判断、認識によって左右されるということになる。そういうことは、司法権の根本的な一つの破壊——とまで言いませんけれども、致命的な恥部になるわけでありまして、そういう点からも、国家機密を守るということは非常に問題があるということの苦い経験をわれわれは実は持っておるので、そういう経験も踏まえまして今度の法制審議会ではこれを全面的に廃止するということになったのでありまして、このいきさつは、私どもは今後もしあるいは機密保護法をつくるとかなんとかいう問題が出た際には、そういうことのないことを私ども心から望むのでありますが、そういう場合には十分に私どもの歴史というものを、われわれの苦い経験というものを十分踏まえていただきたいということを私は心からお願い申し上げるのでございます。
○上田哲君 どうぞもうお帰りください。けっこうです。私、総理に質問しますから。
○委員長(徳永正利君) 伊達参考人に申し上げますが、お忙しい中を御出席いただきましてまことにありがとうございました。厚くお礼申し上げます。(拍手)
○上田哲君 総理、いまのお話をどのようにお聞きになりましたか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 久しぶりに大学の講義を聞いたようです。(笑声)
○上田哲君 言論統制ということがあれば暗い時代が起きるという歴史の教訓を含めてのお話と私は受けとめましたが、いかがでしょうか。
○国務大臣(佐藤榮作君) それはお話の中にもありました。はっきりそういうことを言われ、ことに東条首相を引き合いに出されて、そして当時のまっ暗やみな世の中だったことをお話しでございました。
○上田哲君 非常に短い時間で御見解をたださなければなりません。 いま大きく盛り上がっている世論の気持ちというものは、ほんとうのことを言われておこるのは佐藤さんフェアじゃないじゃないかという、そういう声だと私は聞きます。いかがでしょうか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 私はそうは思いませんがね。今回のこの問題で一言私の感じを申し上げると、言論の自由、これは尊重しなければならない。たびたび申しました。取材の自由、これもまた、取材源の秘匿、これもけっこうだと思います。しかし、現に蓮見事務官はあれだけの犠牲を払っておるのです。このことを考えると、やっぱり報道者におきましてもモラルというものはやはり守られていかないとよほど幸、不幸ができてくるのじゃないか。皆さん方はとにかく報道の自由を言われるけれども、蓮見君はほんとうに気の毒な状態にいま置かれておる。これは私はどうも気の毒のように思います。(「そんなことがわかっていたら釈放しろ」と呼ぶ者あり)それはやっぱりその点は、釈放も釈放ですが、それだけではない。おそらくこれは公務員法そのものについてもいろんな議論が出てくるでしょうが、そういうこともやっぱり対等に置いて二つを考えながら御議論なさることが望ましいんじゃないかと、かように私は思いますから、よけいなことのようにお考えかもわからないが、同時に蓮見事務官に思いをいたした、そのことを御披露したわけでございます。私は、おそらく皆さんも議論をしながら、一方的な方向ではないだろうと、かように思います。
○上田哲君 総理、私は一人の元記者としてあなたが総理大臣になられるときを取材をいたしました。それ以来七年間がたったわけでありますが、いま言論の自由の危機を背中に負うてあなたに質問することに私は歴史の課題を感じます。あなたは一番長い総理大臣。そしてこの長期政権が、しかし七年前に比べて、いま新聞、テレビが非常にものが言いにくい状態になっている、こういう状態が起きています。どうお考えですか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 新聞、テレビがものを言いにくい立場になっていると、まあ、それぞれの立場がございますから、私はそうは思いませんけれども、たいへん御自由に、活発な論陣を張っていらっしゃるように思いますけれども、しかし、やっていらっしゃる方はただいまのような感じかもわかりません。それはそれぞれの主観の問題だろうと思います。
○上田哲君 七年前あなたの言われた寛容と調和はどこへ行きました。ことばを聞かないではありませんか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 今日も一同じように、寛容と調和、これは大事なことだと思っております。
○上田哲君 民主社会の健全さは、権力を持つほうが持たない側に十分に言わせるということだと思います。社長を呼ぶぞと記者に言ったり、社長をおこってはいかぬのです。これは基本的な問題です。
○国務大臣(佐藤榮作君) 私は、たびたびこの席でも申しましたように、民主主義の基底、これは言論の自由にあると、かように今日も考えております。
○上田哲君 今回の問題でたった一つの収穫は、言論の自由という憲法レベルの議論がこれだけ真剣に深く語られたということです。このことは守らなければなりません。総理、ひとつお考えがあればこの際全部まとめてお考えの深いところで御見解を表明してください。
○国務大臣(佐藤榮作君) 言論の自由が守られなきゃならないことは、ただいま申したように民主主義の基底だと、かように考えるからであります。私は、そういう意味で、皆さん方の御議論を、気に食わない点もございますが、また私の聞きづらい点もございますけれども、これも、先ほど言われるような寛容と忍耐をもって十分承った次第でございます。これが基本でございますから、さような意味で私がずいぶん謙虚に聞いておること、この事実はそれなりに評価していただきたいと思います。(「そして反省の資料にすると、聞いただけではだめだ。」と呼ぶ者あり)
○委員長(徳永正利君) 不規則発言は御遠慮願います。
○上田哲君 気に食わないとこというのはどこですか。
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいまのような不規則発言の出るところが気に食わない。(笑声)
○上田哲君 言論の自由についてはどう考えるか、もう一ぺん伺わせてください。
○国務大臣(佐藤榮作君) 民主主義の基底であることについて、私は上田君と同じ認識だと、あるいは場合によったら上田君より以上の認識を持っていると、かように御承知願います。
○上田哲君 総理のおことばを私はあえて額面どおり承っておくことにいたします。日本の政治の信頼の問題だからです。言論の自由の基本にかかわる問題だからです。 最後の発言をして特に御答弁を求めません。 これまでの論議で、言論の自由、民主主義の原理というものがこれだけたくさん取り上げられた。日本の国会の権威のために私は前向きに受け取らなきゃならないと思います。「知る権利」というようなことばが国会の論議の中でこれだけまじめに取り上げられた、一つの解釈も与えられたということは、大きく今後に向かって国民の権利の発展のために評価していかなきゃならないんだと思います。国益とか機密とか、取材の自由とか、そうした問題はある程度政府見解を私たちは確定することができた、原理的にはある程度取ることができたというふうに評価をいたします。しかし、問題は、今後の発展にすべてがかかっています。原理の確認ではなくて、いま総理が言われたように、私以上に言論の自由、民主主義の原理を大事にされるということを、どうかひとつ具体的に、実証的に政治姿勢として示していただきたい。国民多数の気持あるいはジャーナリズムのすべての気持ちを含めさせて言わしていただければ、原理はわかったけれども、依然としていつ火をふくかもしれない危険に対して大きな不安というものがいまあると思います。私たちは、民主社会の原理をしっかり守っていくという立場のために、もし政府が機密の壁を高くするというのなら、いかなる困難があってもその壁を乗り越えて民主主義と言論の自由を守る決意であるということを申し上げて私の発言を終わります。(拍手)
○委員長(徳永正利君) 以上で上田君の質疑は終了しました。 —————————————
○委員長(徳永正利君) 次に、細川護熙君の質疑を行ないます。細川護熙君。(拍手)
○細川護熙君 私も上田委員と同じマスコミ出身者の一人として、立場は異なりますけれども、ただ一点、取材の自由というものについて総理並びに法務大臣、法制局長官に伺いたいと思います。 ある一つの重要なニュースを国民のために知らせるということが、国民のために、あるいは国家のためにほんとになるのかならないのかということは、これはベトナムの文書に関するニューヨーク・タイムス等の事件に照らしても、歴史的にというよりか必然的に、歴史的にというよりか宿命的に、常にこれは報道の自由というものをめぐるプレス・サイドと政府との対立の接点になるものであろうという気がいたします。その点について、きのう総理は、これは終局的には同じものであるというようなことを言われましたけれども、私は、その点については認識を異にしておりますけれども、その意味でこれはきわめて古くまた新しい問題であると私は思います。こういった問題は、これからもまた、情報の媒体というものの進歩の中で、同じような形で繰り返し起こってくるであろうという気がいたします。しかし、それはともかく、今回の事件はいろいろな意味でたくさんの重要な問題点をはらんでおりますし、そういう意味から私は、私に与えられた時間もほとんどないので、その中で取材の自由という問題について二、三伺っていきたいと思います。 まずその一点は、この委員会でも何べんかもう議論になりましたけれども、国家公務員法百条にいう「秘密」とは一体何なのかという問題であります。つまり、公務員の守らなければならない「秘密」の定義というものは何なのかということでありますけれども、この問題についてはすでに外務大臣あるいは官房長官もたびたび答弁をされました。しかし、いま一つ私はこの定義というものが不明確であるように思います。まあ、その辺の基準は各省の内規によって違うということはわかりますけれども、私の新聞記者としての体験からいっても、マル秘の文書が役所の机の上にたくさんころがっている、それをもとにして取材をするというようなことは、これはもう日常茶飯事のことでありまして、マル秘の判このあるものはすべてこれは国家公務員法百条にいう「秘密」に当たるということであれば、これはきわめて私は現在の実情にそぐわない解釈ではなかろうかという気がいたします。そういう意味で、東京地裁が今度西山記者の釈放にあたって、国家公務員法にいう「秘密」は形式上の指定によってきまるものではなくて、実質的な秘密であることが必要だという判断を下したことは、これはきわめて当然なことだと思いますけれども、しかし、実質的な秘密であるかどうかということが一々裁判にならないとわからないというようなことでは、これは新聞記者の立場からいうとたいへんに取材がやりにくくなるわけでありまして、この辺について、もうたびたび伺っておりますけれども、重ねて総理の御見解を伺っておきたいと思います。
○国務大臣(佐藤榮作君) 私が、政府の考えるところと、また取材をされる広報関係の方々と目的は一緒だと、こういうことを申しましたのは、どこまでも国民のためにやはり広報活動をしていると、政府もまた国民の利益のためにやっているんだと、こういう意味で、いかにもその道においては、途中においては、政府はないしょにする、それを盗み取ろうとする。いかにも相対立するようだが、そうじゃなくて、大きい立場から見るとそれは一緒だと、こういうことを実は申したのでございます。その点では、おそらく先ほど来話をしている上田君も了承だろうと思います。政府が別に国民と離れて政府だけの機密というものがあろうわけはございません。これは結局国民の利益になるために、そのためにやっておるんです。また、「知る権利」も、これは国民がひとしく願っている「知る権利」、そのために新聞社の広報活動というものが展開されると、かように思いますけれども、その立場において、ときに、自分たちの立場を守ろうというそういう立場で、いかにも相反するようだけど、大局的には、これは一諸なものだと、かように私は思います。だから、この点は誤解のないようにお願いいたします。 また、各省で、いまのその秘密のきめ方がそれぞれございますが、それらの点については官房長官からも答えさせたいと思います。
○国務大臣(竹下登君) お答えいたしますが、私がこの席で申しました「秘密」というもの、そして各省それぞれ異なるという御見解については、いわゆる秘密文書の基準と、こういう内容であろうと思います。さらに細川委員の御質問は、機密というものに対しての法律的背景を踏まえた答弁というものを御要求になっておるような感じがいたしますので、その点は法制局長官からお答えするのが妥当かと思います。
○政府委員(高辻正巳君) 御質疑の、「秘密」とは何ぞやということは、おそらく非常に具体的な形における秘密の内容についての御質疑であるかと思います。しかし、何が「秘密」であるかというのは、実は具体的な事象を離れて「秘密」を確定するわけにこれはどうしてもいかないものでありますので、「秘密」は何であるかといえば、やはりある程度一般的、抽象的な言い方にならざるを得ない。 そこで、御指摘の今度の決定には、いまお話がありましたように、「行政官庁による形式上の秘密指定」があることの一事では足りないと、それ以上に「行政目的を達するために必要かつ相当である実質をそなえていることが要求される」ということを言っております。私はやはり前からお答えをしておりますように、私は前に四十四年の東京高裁の判例を引用いたしました。この判例は、やはり指定、表示がなされたものだけではなしに、「その実体が刑罰による保護に値するものをいう」という判例がありますと、そのあたりが適切ではないかと、「秘密」については、学説、判例いろいろ説があるけれども、このあたりが私どもとしてもいいところではないかというようなふうなことを申し上げましたが、このたびの決定も、その線において同じものであると私どもは考えております。したがって、形式上秘密であるから、だからすべて秘密になるというわけにはまいらない。ただし、それがまさにそういうものであるかどうかは、具体的な係争になった場合には、結局は、やはり裁判所の御判断を仰ぐ以外に道のないこともありましょうけれども、ただむやみやたらに「秘密」と押せばそれがすべて国家公務員法上守られるべき秘密になるというわけではないということだけは申し上げられると思います。
○細川護熙君 先だってから総理は、もし西山記者が新聞紙上であの問題を取り上げたのであれば問題はなかったんだということを繰り返し言っておられますけれども、新聞紙上で書くか書かないかということは、先だってから議論になっておりますように、これは新聞記者自身のモラルの問題でありまして、今度の事件の場合、特に、その取材の方法が適当でなかったということは、これは地裁の決定でも認めておるところでありますけれども、これはまた別の問題として考えるべき問題であって、新聞記者が新聞紙上で問題を取り上げれば問題はないということは、これは新聞記者が機密にアタックをすることは当然の新聞記者としての活動の範囲に含まれるものであってこれは問題がないというふうに受け取ってよろしいですか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 問題がないという、これは当然の仕事をしている、こういうことだと私は理解する。だから、問題があるかもわからぬですよ。しかし、取り上げられておれば——新聞紙上でそれが掲載されておれば、その限りにおいては、とにかく新聞社として責任のある方向で処置されていると、かように私は思うのでございます。ただ、ただいまは御意見、同時に蓮見事務官にも触れられましたが、今回こうして報道の自由と、こういう立場についての御議論はずいぶん展開されておりますけれども、一方で情報を提供した蓮見事務官、これについてはあまり触れる方がございません。私がきょう初めて触れただけでございます。私は、そのこともやっぱり考えないと、この取材の自由というか、その取材ソースは出さないというのが新聞記者のモラルだと思います。したがって、ただいまのような取材のソースが明らかになると、意外なところへ迷惑が及ぶと、こういうことも考えなきゃならぬと、こういうことが私としては申し上げたいのです。そこらのところは誤解がないだろうと思いますが、以上のように考えます。
○細川護熙君 時間もありませんので、一方通行になりますけれども、今度の事件は、機密の保持というものと、知る権利、取材の自由との関係をどう調整するかという問題でありますけれども、この点を総理はどう考えられるか。つまり、ことばをかえて言えば、政府の考える公共の秩序というものと、それから新聞の倫理綱領にいう公共の秩序というものは、これは全くの同義語であると思いますけれども、しかし、場合によっては、その受け取り方が違うこともあり得る。つまり、その立場の違いというものを認識した上で、相手の考える、つまり新聞の考える公共の秩序というものも尊重をする、これは御異論がないと思いますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(佐藤榮作君) これを引き合いに出すと、どうも気にくわないようですが、新聞倫理綱領でもそのことをはっきり言っている。やはり、知る権利はあるが、法秩序を乱ってもと、ここまでは言っておらないように思いますので、おのずから限度があると、かように私は理解しております。
○楠正俊君 関連。 ここに「毎日新聞百年史」というのがございまして、この中の二一二ページに、「編集根本方針」というのが出ておるわけであります。この中から二つ取り出して御議論いたしますが、「あらゆる権力から独立し、左右に偏しない社論と報道とによって、自由にして民主的な社会の確立に寄与する」というのが一つ。それからいま一つは、「あらゆる階層の読者を対象とし、健全な個人の良識にもとらない社論と報道とによって、道義的な社会の確立に寄与する」と、こう書いてあるわけでございます。これを考えておりますと、きょうの新聞なんですが、はなはだ蓮見事務官が気の毒だと思うのですが、西山記者から、再三、ストレートにこれは報道しない、だから何とかそれを私に渡してくれないかと、再三迫って執拗に要求されたと、その事実があるわけですね。絶対に外に出してはいけないものであるのに、出してしまったから、とても心配だったということを蓮見事務官は告白しておるわけであります。また、こういうことを言っておるのですね。断わると、自分の立場が困ることになるかもしれないと、こういうことを蓮見事務官が言っておるわけです。これは新聞に出ておるわけですから。こういうような追い込んだ形で取材をする、それが一体個人の良識にもとらない報道のしかたであるかということを考えるわけであります。目的のためには手段を選ばないと総理も言っておられますが、おのずからやっぱり取材には制限がある。こういう手段でもって取材をするということが、先ほどから話が出ております正当な取材の方法であるかどうかということを私は深く疑問に思うわけであります。 そこで、総理にお伺いしたいのでございますが、こういった良識にもとるような取材の方法によって、「道義的な社会の確立に寄与する」と書いてありますが、一体、これが道義的な社会の確立に寄与する方法であるかないかということを御感想を承りたいと同時に、先ほど言った第一点の「あらゆる権力から独立し、」ということを言っておりますが、西山記者は、私が同僚記者を通じてある条件をつけて横路氏に渡したと、こう言っておるのでありますから、政党というものは権力であるのかないのか、私は権力だと思うのですが、その点もお伺いしたいのでございます。 この二点、これは、私は考えますと、二つとも「編集根本方針」に根本的に相反するものだと私は感じておる次第でございます。そのあたりのことを御感想を承りたいと思います。
○国務大臣(佐藤榮作君) 毎日の百年史、これを目を通されたということです。私もいただいておりますが、机の上においてあるだけです。しかし、そのことはそのこととして、先ほど来ここで問題になっておるように、取材ソースを明らかにしないという、これは新聞人の一つの鉄則でもあるように私は伺っております。私どもの知っておる新聞人の古い方は、そんなソースを明らかにするようなことはないと、これはもう必ず極秘にすると、こういうことを言っております。どうも、しかし、最近はそれが守られていない。したがって、意外なところに迷惑が及んでおる。そうして、本来当然のことというか、本来当然のことが当然に評価されない。これはたいへん報道関係としてお気の毒だし、これらの点はやっぱり改められなきゃならないだろうと、かように思います。いまいろいろお読みになりましたが、問題は、やはり取材ソースを明らかにする、そういうところに問題があるのだと思っております。しかし、これが秘匿されるから何をしてもいいというわけではありません。これは、もう冒頭に申しましたように、おのずからその限度はある、しかし、その上にもやはり取材ソースは明らかにしないと、こういうのが本来のたてまえだと、かように思っております。
○細川護熙君 法律に定めたものでこそありませんけれども、前の博多駅のテレビフィルム事件で最高裁が、また、今度の事件で東京地裁も、報道の自由というものは憲法上十分に尊重されるべきで、社会通念上相当な手段方法でする限り、公務員に情報の提供を求めることは、そそのかしに当たらないという決定を下しております。そこで、この点について、ほんとうに重ねてのお尋ねになりますけれども、取材の自由というものはこれまで同様何らこの事件によって変わることはないということをここで明言をしていただけますか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 問題は全然ございません。ただ、私が国家機密は守らなきゃならないと、そういう発言をいたしましたので、一部では、どうもよほど制限でも加えるのじゃないかと、こういうことを懸念される方があるようでございます。しかし、これはもうただいま具体的にさようなことを考えているわけではないと、また、先ほども中沢君に、はっきり、政府はさような考え方はただいま持っていないと、こういうことを申しておりますから、誤解はないと思っております。したがって、従来同様の取材活動、言論の自由、表現の自由、これは確保されていると、従来どおりと、かように御了承願います。
○細川護熙君 ここで一つ法制局長官に伺っておきますけれども、さっきもちょっと参考人との間で議論が出ておりましたけれども、国家公務員法百条というものは、国家公務員法というものは、元来、さっきも話が出ておりましたように、公務員の内部規律を定めたものでありますけれども、百十一条というものは、これはどういう場合を想定してつくられたものでありますか。つまり、これは読み方によっては、さっきも話が出ていたように、部外者を対象にしてつくったもののように思いますけれども、この点についていかがですか。
○政府委員(高辻正巳君) 公務員法の百十一条でございますが、これは、中身は御承知のとおり、今回の場合について言えば、百九条の十二号でございましたか、秘密の漏洩行為をそそのかす場合についての罰則規定でございます。 経過を申し上げると、この規定は、実は国家公務員法ができた当初はございませんで、昭和二十三年の一部改正のときに入ったわけであります。当時国会でどのようなことが議論されたか、いろいろ調べてもみましたが、あまりそれを知るに足る十分な資料がございません。そういう意味で、立法者の意思が何であるかということは明瞭ではございませんが、しかし、ともかくも、そういう意思いかんにかかわらず、法律というものは現存しておりますので、この違法行為、この場合で言えば、秘密を漏らすことをあえて実行することを他人に慫慂する、それも犯罪を実行するような決意を生ぜしめるような形で慫慂するというような行為は、結局、公務の適正な遂行なり運営に多大の支障を及ぼす、そういうことが確保できない、そういう見地から法律ができ上がったことだけは確かであろうと思います。 百十一条については、新聞にもいろいろ出ておりましたが、別に公務員に、そそのかす場合について、実は身分犯的な制限はございません。したがって、そそのかす者であれば、また、それに該当する者であれば、法律は一応これに刑罰を科するたてまえになっております。 さしあたりそのくらい申し上げればいいのかと思いますが、必要があればさらにお答え申し上げます。
○細川護熙君 これは一つ法務大臣に伺っておきたいと思いますが、今度の事件の場合に、警視庁は外務省からの告発があって初めて事件として取り上げたわけでありますけれども、今後もしかりに同種の事件が起こった場合に、警察当局としては、告発もしくは告訴がなくても百十一条に基づいて捜査をするということになるのかどうか。つまり、告発ということは必要条件であるのかどうか。もし告発があって初めて捜査の対象になり得るということであれば、これはあくまでも理論上のことでありますけれども、理論の上のお話でありますけれども、特だねを書いた記者は、行き過ぎがなくても、役所からの告発によってチェックをされるということになりますけれども、いかがですか。
○国務大臣(前尾繁三郎君) 御承知のように、告発あるいは告訴は犯罪の成立要件ではありません。親告罪以外の場合には、これは当然犯罪が成立するわけでありまするから、告発なり告訴がなくても、犯罪があれば、これは調査をし処罰をしなければならぬ。と申しまして、告発なり告訴があったから直ちに捜査なり処罰をしなければならぬというものではないのでありまして、やはり十分な犯罪の成立の容疑があるということでなければ、告発なり告訴によって捜査が行なわれるということはないのであります。そういう点では、全然告発あるいは告訴によってどうこうということはないとお考え願いたいと思います。
○細川護熙君 しかし、事柄の性質上、実質的に機密という問題ですから、その判断は各省庁ですることであって、告発がないと非常にむずかしいのではないかという気がいたしますけれども、重ねて伺います。
○国務大臣(前尾繁三郎君) 事実上にはそういうことがあるかと思います。告発があれば捜査を始めるという場合が多いと思います。しかし、事柄の本質は何らそれによって変わるものではないと思います。
○細川護熙君 今度の東京地裁の決定の理由の中で、一つだけ私は疑問に思う点があるんですけれども、最後に一つだけこれを伺っておきたいと思います。 それは、つまり、前段では犯罪の成立というものを認めながら、後段で拘置の必要性を認めないとしてこれを取り消しております。しかしながら、刑訴法のたてまえからいえば、犯罪の軽重、あるいは動機、犯行後の状況、そういった捜査の完了というものを待って、初めて検察官が起訴するかどうかということをきめるのであって、そのたてまえからすれば、今度の決定というものは、一方で犯罪の成立を認めながら、一方で捜査の完了を認めないという、一見矛盾をした決定でありまして、法のたてまえというものを——これはあくまでもたてまえをたてまえとして申し上げているのでありますけれども、西山記者の釈放是か非かという問題も別にして、今度の決定は、法のたてまえというものを裁判所みずからがくずしたものであるという感じも持ちますけれども、この点については、司法権の問題であって答えられないということであればそれでもけっこうですけれども、もし御答弁があれば伺っておきたいと思います。
○国務大臣(前尾繁三郎君) 捜査する方面からいいますと、情状とかいろいろなところを調べたいのでありまするから、まだ勾留をして調べたいというのが当然だと思います。そういう点で、検察側では遺憾だというようなことも言っておりますが、一面から言えば、もう裁判所の面から言いますと、犯罪の成立には大体もう構成要件は調査が済んでいる、したがって、今後任意出頭しても証拠を隠滅するおそれは少ない——ないとは申しておりません、少ないと、こういう判断でありますので、われわれとしましては、それに従うべきだと、かように考えております。
○細川護熙君 私も最後に一言だけ申し上げて終わりにしたいと思いますけれども、私は今回の事件で一番問題なのは、かりにこの問題でなくても、将来政府にとって秘密にしておきたいことが新聞記事に出た場合に、調べてみた結果、その情報源が今回の場合と同じように役所の職員であったというケースがまたこれからも起こってくるであろうと思います。そのたびに取材記者が国公法百十一条にいうそそのかしの罪に問われるのであれば、取材の自由というものは大きく制限をされるということになるのでありますけれども、先ほどから総理の御答弁を伺って、十分に今後尊重するということでありますから、私もその御答弁を多として、私の質疑はこれで終わります。
○玉置和郎君 関連。 総括質問の中で、おそらく、与党のこういった問題についての質問は、私はこれが最後だと思いますので、あえていま先輩の西田、白井両議員からお許しを得てそうして関連に立たしていただきたいと思います。ですから、簡単にやりますので、委員長、途中で差しとめることのないようにお願いします。 実は、最後の上田議員の発言でありますが、私は党が違いましても、最後のところはさすが上田君だなと、こう思いまして傾聴したわけであります。それだけに、この際に、知る権利を確保していくという、これは近代国家の私は必須要件だと思います。そこで、総理にお願いするわけでありますが、やっぱり、与党の立場からも、国の行なう行為については公開の原則というこれをなるべく貫いていくという、これをぜひひとつお願いをしたい。そのためには、秘密をできるだけ少なくする、そうして多くのことを国民に知らせる。 しかし、私は、ここで、総理が先ほど蓮見さんの問題に触れられまして、私は私なりに傾聴したのであります。というのは、私自身がこの問題を取り上げておる過程において、蓮見さんの家庭は一体どうしておるんだろうと、こう思いまして、私自身お見舞いに行きたいと思ったんです。ところが、私自身がお見舞いに行くということはまたいろいろな憶測を生むということで遠慮いたしまして、私のほうの関係のある、しかも御近所に住んでいる常見さんという方に行っていただきました。まことにお気の毒であります。まことにお気の毒。そこで、私は、この際に、われわれ国会のほうも、政府のほうも、報道機関も、こういうことでこの一市民の家庭、これをめちゃめちゃにしていいのかどうか。ここで思い出すことばは、君主も家庭に入るを得ずでありまして、これは議会制民主主義をとっております国の根本の姿勢であります。君主も家庭に入るを得ず。国家権力も、またこの国会のわれわれも、第四の権力と言われる報道機関も、そういうふうに家庭の破壊をしていいのかどうかというこの問題、こういった問題は、知る権利とあわせていろいろの問題が提起をされておりまするが、こういった問題についてひとつ最後にもう一度総理に与党質問の形でお聞きをしたい、こう思いまして立たしていただいた次第でございます。
○国務大臣(佐藤榮作君) 蓮見君は、これはまあ一市民と、こう言われるが、そうではなくて、やはり公務員としての資格において問題になっておる、そういうことは理解しなきゃならない。しかし、蓮見君の家庭はたいへんな問題だろうと、かように思いますがゆえに、私はそういうことをも絶えずお互いに理解し合って、そうして、こういう問題を起こさないように、提起しないように実は願いたいのであります。私は、もう、知る権利、報道の自由、国民にまた知らす義務、これはもう高く評価いたしますけれども、これがただいまのようにたいへんな好意ある処置が逆な方向で報いられたと、こういうことになると私はたいへんお気の毒ではないかと思います。それなら政府が直ちに釈放すればいいじゃないかと、こういう御議論がありますけれども、それはあまりにも乱暴な意見のように思いますので、これはやはり公務員法違反、これはこれと、そういうことでやはり全体の問題として社会的秩序を乱さないように、これはやはり取材の自由もその点に限定していただきたいように思います。
○委員長(徳永正利君) 以上で細川君の質疑は終了しました。(拍手) —————————————
○委員長(徳永正利君) 次に、渡辺武君の質疑を行ないます。 渡辺君に申し上げますが、日銀の佐々木総裁がお見えになっておりますから。渡辺君。
○渡辺武君 私は、最初に、報道の自由の問題について総理に伺いたいと思います。 政府は、国家機密認定の基礎となる国益は最終的には国民がきめることだが、具体的には国会の負託を受けた政府がきめるという趣旨のことを述べておられます。この論理は、もし国益についての客観的な基準が明らかでないならば、今回の事件が示しているように、政府がかってに判断した国益なるものを振りかざして国民の基本的権利である言論報道の自由を弾圧する危険な性格を持っております。 そこで、総理に伺いますけれども、国益の客観的な基準は何だと思っておられますか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 先ほど伊達教授の講義を聞いたばかりでございます。これはもう社会通念できまると、こういう話をしておられます。私がいままで言ったことで直さなきゃならないものは、さらにもしも私の提起した事柄が憲法違反なら、違憲審査会、最高裁にそういうことを認定する権限があると、かように言えば、これで間違いはないんじゃないか。先ほどの伊達教授の御意見どおりじゃないかと、かように思います。
○渡辺武君 社会的通念と。まことにこれはあいまいきわまりないと思う。そういうことでいま二人の国民が刑事責任を追及されているというのが実情です。 そこで、外務大臣に具体的に伺いますけれども、いま問題になっている三通の外交文書、これを秘密とした根拠を国益と関連して明らかにしていただきたい。
○国務大臣(福田赳夫君) いま問題になっております文書三通は、これは電報に関するものです。そうして、その電報の内容は、日米両当局で話し合ったその内容であります。その内容が一々漏れるというようなことになりますと、これは対外信用を棄損し、今後の外交執行に非常に重大な影響がある、これはたいへんなことだと、これは秘密にしなければならぬことであると、こういうことであります。
○渡辺武君 結局、外交交渉の内容が漏れるということで、行政上の必要、これが判断の基準になっているんじゃないでしょうか。 ところで、外務省には秘密文書はたくさんあるといわれておりますけれども、その件数はどのくらいありましょうか。
○国務大臣(福田赳夫君) 政府委員がお答え申し上げます。
○政府委員(佐藤正二君) まあ一年に、公信、電信の数が大体三十五万から四十万ぐらいございます。その中に秘扱い——秘及び極秘でございますが、扱いいたしますのが十万近いだろうと思います。
○渡辺武君 そのほかにもあるはずだが、どうですか。
○政府委員(佐藤正二君) 調書類でそのほかにもございますが、大宗は電信及び公信でございます。
○渡辺武君 調書類はどのくらいありますかというのです。
○政府委員(佐藤正二君) 調書類はその一割ぐらいだと存じております。
○渡辺武君 どのくらいの一割かと言っているのです。そのほかにどのくらいありますかと聞いておる。
○政府委員(佐藤正二君) 先ほど御答弁いたしましたとおり、公信、電信類が十万、それの一割ぐらい一万ぐらいのものの調書類があると思います。
○渡辺武君 戦後記録文書のうち、約百五十万点が秘密扱いだといわれておりますけれども、その辺、どうですか。
○政府委員(佐藤正二君) これは歴史的な文書がございます。と申しますか、戦前からの交渉の文書、この分は外交文書の中に入っておりますが、これは極秘の扱いの分がございます。その分をみんな足しますと百五十万件ぐらいになると思います。
○渡辺武君 非常に大きな秘密文書、これがあることが明らかになっておりますけれども、これを秘密だとする判断の基準、それから秘密の内容や範囲、これは法律で特定されておりますか。
○国務大臣(福田赳夫君) 外務省では秘密文書取扱規程というものがありまして、これで秘密文書の扱いをきめておるわけなんです。その規程によりますと、部局長がこの書類は機密であるかどうか、これを判定をいたす、そういうことにいたしております。
○渡辺武君 法律で特定されておりますか。
○国務大臣(福田赳夫君) 別に法律に基準というものはないと思います。
○渡辺武君 国益の客観的な基準もない、まことにあいまいもこだと、それから秘密をきめるその内容や範囲も法律では特定されていない、官庁の中の内規で局長などがかってにきめると、こういうことになっておる。 ところで、そのことを理由にして国会に対しても秘密であるといってなかなか答弁をしないし、追及されればうそを言う。そうして、いま二人の人間が、その中の一人は新聞記者、報道取材の自由、これを、そのことを理由にしていま侵害されていると、こういうことです。これは戦争中の言論統制に道を開くものだというふうに見なきゃならぬと思うのです。同時に、それだけ膨大な秘密文書をかかえていて、そうして公表しないというのは、外務省がまさに秘密外交をやっているということをはっきり示しているんじゃないでしょうか。どうでしょうか。
○国務大臣(福田赳夫君) 外交には秘密はあります。しかし、秘密外交は絶対にやっておりませんです。つまり秘密外交とは、国家間におきまして取りきめをする。その裏に、何か隠された秘密があると、こういうことでありますが、そういうことは一切いたしておりませんです。
○渡辺武君 それでは、総理に伺いますけれども、先ほど、社会的通念、これが国益の判断の基準だとおっしゃいましたけれども、国益の基準は憲法の平和的、民主的な条項ではないでしょうか。憲法を守ることこそ国益じゃないでしょうか。どうでしょう。
○国務大臣(佐藤榮作君) それぞれの立場に立って、それぞれの議論ができると思います。憲法はもちろん守らなければならない。憲法を守ることは国益に合致すると、かように言われれば、それもそのとおりでございます。しかし、やっぱり、 一体、これが、一々の行為が憲法に違反しているか違反していないか、そういう問題になってくると、先ほどの講義ではっきり聞いたように、最終的には最高裁の違憲審査会、そこで最終的な決定がされると、さように御理解をいただきます。
○渡辺武君 最高裁の違憲審査を待つまでもなく、政府が国益に合致するかどうかということをきめる客観的な基準が現在の憲法にあることは、これは明らかだ。積極的にそれを守っていかなきゃならぬと思う。現在の憲法の根幹は、私が申し上げるまでもなく、平和、主権在民、国民の民主的権利、これだと思う。特に二十一条の言論、報道の自由、これは戦争中のあの言論統制の、あの痛ましい結果、どれほどそれが国民の利益と国益を侵害したかという痛ましい結果に基づいて、民主主義の根幹だと、総理自身も言いましたけれども、まさにそのとおりと評価されているものですよ。そのような現行憲法のもとでは、国家機密というものは原則としてあり得ないのではないでしょうか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 共産党と、まさか、私がいま機密問題で議論を展開するとは、実は、思わなかったんです。私は、他の共産国においては、ずいぶん秘密が多い、かように私は考えております。これは他国のことです。日本の場合は、それは違うと、こういうことをおっしゃるでしょうが、私は、実はそういうように思っておりました。しかし、今日、日本共産党はそれと違って、秘密は一切ない、また報道の自由も尊重する、また取材の自由も、それもはっきり尊重する、かように言われること、私どもと同一な考え方であると、私は高く評価し、ほんとうに喜びにたえません。そのことだけお答えを申し上げておきます。
○渡辺武君 私の質問に答えてないじゃないですか。顧みて他を言うという論法でやったら困るですよ。国会の審議進みませんわ。社会主義国の問題については、私も言い分がありますけれども、時間もないから言いませんけれどもね。 私が伺っているのは、言論の自由を尊重するんだとおっしゃるならば、現行憲法のもとでは、国家機密というものは原則としてあり得ないんじゃないかということを伺っている。
○国務大臣(佐藤榮作君) やはり国家機密はあります。
○渡辺武君 どういう場合に、国家機密がありますか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 私どもは、国益を守らなければならない。国益を守るためには、機密も保持しなければならない、かように、私、考えております。
○渡辺武君 原則としてはどうですか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 原則として、ただいまのようなことを基本的に考えております。しかし、秘密がたくさんあってはならない、これが平和憲法の命ずるところでもありますし、私どもはその方向で取り扱っておるつもりでございます。
○渡辺武君 それでは、言論の自由は民主主義の根幹だとか、言論の自由を守りますとかいう立場とははずれてくるじゃないですか。どうですか。
○国務大臣(佐藤榮作君) これは、別に、はずれてはおりません。私どもは、もうはっきり、民主主義の基底は言論の自由にありと、これはもうはっきり申し上げておきます。
○渡辺武君 そういうあいまいな立場というよりも、はっきり言論の自由の上に国家機密を置こうという立場があるからこそ、今回のような事件が起こったんじゃないでしょうか。国会は国権の最高の機関、その国会には審査権、調査権がはっきりある。ところが、官僚がかってにきめた秘密、これをたてにして答弁をしない。資料も出さない。追及されれば、うそを言う。これは明らかに官僚のきめたものを、これを国権の最高機関である国会の上に置いていることじゃないでしょうか。今度の言論の問題でもそうです。新聞記者逮捕の問題でも、官僚がかってにきめた秘密、これをおかしたからといって刑事処分にしようという方向で、事実上、言論の自由を弾圧しているのは、あなた方の立場でしょう。どうですか。それで言論の自由を守りますなんて言えますか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 私は、いまのは渡辺君にしては珍しく論理の飛躍があると思っております。私は、やはり言論の自由、これは守らなければならない、これが民主主義の基底である、こういうことは承認されました。そうして、例外的に国家機密がある、そういうものは守らなければならない、これも私といままでは意見が一致していたように思います。 しかし、その次になってくると、私どもは、その機密を守る。これがすっぱ抜かれる。さようなことでは機密が守られない、保てない、こういうことで、いまのような犯罪を構成していると、かように考えるんですが、そこらが直ちに弾圧だと、言論の自由に対する国家権力の介入だと、かように断ぜられるところに、ちょっと飛躍があるように思います。
○渡辺武君 私が飛躍しているんじゃなくて、総理大臣の立場が間違っているんじゃないですか。 私、ここに、ベトナム秘密文書新聞掲載事件に関するアメリカの最高裁の判決の中身について書いたものを持っています。ここで、最高裁がこういうことを言っている。「政府における秘密は、根本的に反民主主義的であり、官僚政治の過誤を永続化させる。」、こういうことを言っております。私は、アメリカの最高裁がこういう判決を出したから正しいと言っているわけじゃない。しかし、この判決の当該の中身、これは私は正しいと思う。この点について、総理大臣、どうお考えですか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 私は、あまりアメリカのことは知りません。しかし、先ほど、私もよく知らないことだけれど、共産主義の国のことを触れたら、おこられましたが、どうも、アメリカのことに触れることはいかがですかね。外国の話はお互いにやめて、日本の国内の問題で議論しようじゃないですか。
○渡辺武君 論理の内容を聞いているんです。だから、わざわざ断わっているでしょう、アメリカの最高裁できめたから正しいと言っているんじゃないんだと。しかし、ここの論理、この内容についてどう思うかということを言っている。
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま申しましたように、外国のことですから、それはそれなりに、私は、論評いたしません。
○渡辺武君 それは総理大臣の国会答弁としては、私はひきょうな立場だと思う、率直に言わしてもらえば。 この判決は、なお重ねて申しますと、いま言ったように、国家機密というのは根本的に反民主主義的だという立場をとると同時に、しかし、政府がいわば例外的に報道の制限をすることができる場合ということを、また同時に言っております。どういうふうに言っているかといえば、「〔文書〕の公表によって、すでに海上にある輸送船の安全を危くすることと類似するような大事件が不可避的に、しかも直接かつ即座に発生するに違いない、という政府の主張と立証のみが、まさに中間的抑制命令を発することを支持しうるのである。」、こういうことを言っています。この立場も、最高裁が言っている云々ということから離れて、原則的にどう思いますか。
○国務大臣(佐藤榮作君) それはそれなりに評価してしかるべきだと思います。
○渡辺武君 日本の場合を考えてみて、言論の自由を守るという立場に立ち、憲法に基づいて国益を検討する、憲法を基準として判断するというならば、国家機密というものは、原則的にあり得ない。もしかりに政府が秘密だといって報道の自由を若干なりとも制限しようとするならば、これは国民の利益に直接かつ重大な、しかも緊急な侵害が起こるからだということを立証する必要がある。それでなければ憲法違反になる、私はそう思うけれども、どうですか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 大体外交の交渉事、その交渉の内容などは、これは公表しない、これは普通に考えられることであります。また、もう一つ非常に機密の多いのは、国防に関する問題です。自衛隊の、自身ではございますが、軍ではございませんけれども、やはり国防に関する事柄に機密が多い、かように御理解をいただきます。
○渡辺武君 いまおっしゃった、外交上の交渉が漏れるということは、国民の利益にどんな害を与えますか。
○国務大臣(福田赳夫君) 問題になっておる沖繩の電報、これが途中で漏れるというようなことになっておりますると、これは一億国民が一刻も早くと念願をしている沖繩返還協定の成立に非常に大きな支障を来たす、こういうことでございます。
○渡辺武君 外務大臣のこの前の答弁を聞き、また、さっきの答弁を伺っておりますと、外交交渉の過程で内容が漏れるということは、相手国の信頼を傷つけるのだと、相手国にも迷惑があるということを盛んに強調しておられる。つまり行政上、外交上の必要ということが一番の眼目であって、いまおっしゃったような、国民に直接かつ緊急な害がかかわる、こういうことじゃなかったと思うのですね。いまおっしゃったことも、これも国民の基本的な利益、これに直接かつ重大な侵害があるというようなもんじゃないでしょう、どうですか。
○国務大臣(福田赳夫君) 沖繩返還が実現しなかったと、これは一億国民が非常に落胆をする問題だろうと思います。これを実現させるため、これには外交上の機密、これは厳守していかなければならぬ。私はいま、何か直接、また、緊急の何とかという話でありまするが、そういう際にだけ機密が守られるのだというふうには考えておりません。国家には国家の目的があり、行政には行政の目的があります。その目的を達成するためには、どうしても機密を守らなければならない、こういう問題があるのです。さらばこそ公務員はこの機密を守らなければならぬ、これは漏らしてはならぬ、こういうことになっておる。これは皆さんの御審議をしてきめられた法律に、そう書いてあるのであります。
○渡辺武君 いま一億国民が落胆すると言われましたけれども、この交渉の内容が明らかになればなるほど、一億国民は腹が立っておりますよ。こんな協定が結ばれたら、これこそ国民にとっては重大な打撃がある。その秘密的な内容、うしろ暗い内容、あの三通の電報を見てごらんなさい。四百万ドル、これをアメリカが払うというような形を見せておきながら、日本政府が事実上負担するという内容じゃないですか。そういう内容が、これが国民の前に明らかにされることがいやだから、そこであなた方は、さまざまな口実を設けてとれを秘密扱いにしているんじゃないですか、どうでしょう。
○国務大臣(福田赳夫君) 渡辺さんが御指摘になるような経過というものがあった。しかし、われわれはそれを一切拒否したのです。拒否した結果、御審議願いました沖繩返還協定となっておる。そしてこの復元補償につきましては、自発的にアメリカが支払うのだ、こういうふうになっておるんです。経過ではいろいろなことがあります。これは樽爼折衝と、こういうまでに言われる外交交渉でございまするから、そのいきさつの一つ一つをとらえまして、これは秘密外交だと言われるのは、はなはだ心外でございます。
○渡辺武君 もしあなたのおっしゃることがかりに正しいとしたならば、これは公表されたって何の問題も起こらぬじゃないですか。たくさん外務省に秘密文書があるとおっしゃっておる、それが、内容がうしろ暗いものであり、危険なものでなければ、これはよろしく公表すべきだと思う。総理大臣も、沖繩返還がこれが歴史的な偉業だというようなことを盛んにおっしゃっておられるけれども、もしあなた、沖繩の返還にそれだけの自信がおありならば、沖繩返還交渉に関するすべての文書、これを公表すべきだと思うのです、どうですか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 私が言っているのは、沖繩返還交渉という具体的な問題というよりも、機密は外交にはつきものだと、こういうことを申しておるのです。これは野党の諸君もしばしば、外交には機密のあること、これは承知しております、秘密のあることは承知しております、これは皆さんも言われるじゃないですか。私は、そのとおりですよ。これは機密のあること、秘密のあること、これは皆さん方も了承の上だと、かように私は考えております。それが、交渉の経過を一々知らせろ、かような意味には皆さん方もよもや言われないだろうと、かように私は理解しております。 しかし、ただいまの沖繩の問題につきまして、いまの三通ばかりの問題、二通ですか、二通ばかりの問題は、すでにこれは公表されたも同じことになっております。しかしながら、その状態においては、その当時は、これは秘密の書類であった、しかしながら、すでにそれは公表されたと、こういうことでございます。だから、私はいま申し上げますように、外交というものは、最初の基本的外交の態度、同時にまたその結末、これは秘密であってはならない、やはりそれは堂々としなければならない、しかし、その中のやり取りの途中の問題を一々話しするわけにいかない、かように申し上げておるのです。
○岩間正男君 関連。 二つの秘密文書を解除すると言っているんだが、この根拠は何なのか。そうして当然、これは国益については最終的に国民が決定する、こう言っているんですから、そうすれば、ほかの文書だってこれは公表をしなければならないわけです。したがって、これを公表して、それによって国民の判断を仰ぐということをしなければ、あんたたちが、最終的に問題を国民が決定すると言ったって話にならないと思う。そういう意味からいえば、渡辺議員がいま要求した公表の要求は当然正しいと思うのです。当然公表すべきだと思いますが、どうですか。
○国務大臣(福田赳夫君) 二つの往電につきましては、これを機密から解除をいたしたわけです。これはなぜしたかといいますると、もうすでに新聞紙上に出てしまった、これを機密にしておこうといたしましても、それをするよすがもなくなってしまったと、こういうことでございます。
○岩間正男君 新聞に出なければやらなかった、こういうことですな。
○国務大臣(福田赳夫君) そのとおりでございます。
○岩間正男君 これで政府の姿勢はまさに明らかになった。 私は、次に防衛庁長官に伺います。佐藤総理の先ほどの発言にもありましたが、防衛庁も外務省と並んで秘密文書の多いところだが、現在の秘密扱いの文書はどれほどあるか、これをお知らせ願いたい。
○国務大臣(江崎真澄君) 防衛庁は防衛秘密、これは日米安全保障条約に基づく機密保護法によるものです。それから庁秘、これは防衛庁の秘密です。この二つがあるわけです。現在防衛秘密につきましては、機密、極秘、秘と、こう三つに分けておりまするが、機密はありません。それから極秘が約三十件、秘、これが二千九百件、以上であります。 それから庁秘につきましては、機密というのがわりあい数としては多いわけです。五万八千点、極秘が約三万八千点、秘というのが六十四万一千点。で、どうしてそんなに多いんだと、これはまあさっきから議論が出ておるところでありまするが、何といっても陸、海、空の三自衛隊がおります。で、それぞれの出先に配りまするというと、点数は非常に多くなる、件数は比較的少ない、この点はひとつ御理解を願いたいと思います。
○委員長(徳永正利君) 岩間君、関連ですから簡単に願います。
○岩間正男君 これはあなたたちの発表したのは、変わってきましたね。昨年の二月二十五日の衆議院内閣委員会の発表によりますと、庁秘はこれは機密が約六万点、極秘が四万六千点、秘が約七十点。それから防衛上の秘密、これは極秘が二十四件で約百八十点、秘は三千二百九十一件で約九万点、合わせてこれはもう九十万ですね。こういうことになりますというと、これは話にならぬと思うのです。——先ほど七十点と言ったのは、七十万ですから、訂正します。——これが佐藤総理の言う秘密はたくさんないほうがいい、こういうことの内容になるんですか。これはどうなんです。
○国務大臣(江崎真澄君) いま読み上げられましたのは、四十五年の件数ですね。私がさっき申し上げたのは四十六年の件数。まあ私が防衛庁長官になって、またこれを減らすつもりです。なるべくやはり秘密というのは少ないほうが望ましい。しかし、国の防衛に関する以上、これはやはり秘密がないというわけにはいきません。相手がにわかに侵略してきたときにどう対応するか。これはじゃんけんやるようなものですからね。私がグー出すこと、パー出すことがわかっていたら、もう必ずこれはたいへんなことで、負けてしまう。もうじゃんけんやらなくてもいい。やはり私が何を出すかわからぬというところに、岩間さんでも何を出そうかなということで考えられて、これが一つの平和への戦争抑止力になる。大事なところだと思いますから、その点は御了承願います。
○委員長(徳永正利君) 岩間君、関連ですから……。それじゃ、もう一問だけ。
○岩間正男君 公平の原則でやりなさい、公平の原則で。いいですか。ただいまの委員長の運営は、そのもの自身がこれはまあ……。 それであなたは、とにかく秘密文書はなるたけ減らしたい、こういうことを言っているんです。しかし、どうです、何十万件に及ぶこのような点数、こういうものが残っている。しかし、あなたたちの言い分によると、日本の防衛は専守防衛だと言っているんです。この専守防衛の立場ということをあなたたちは自称している。そういう手前からいったら、このような膨大な秘密文書を私は全部公表すべきだというふうに思うのです。ところが、こんな膨大な秘密がそのままに保存されている。これは許されないことではないですか。国民のための専守防衛でしょう。国民になぜ明らかにしないんですか。
○国務大臣(江崎真澄君) なるべく件数を減らすことは、望ましいことだと思います。専守防衛、これはあくまで防衛です。しかし、さっき下世話なお話を申し上げて恐縮でしたが、やはり私は秘密はなくちゃならぬと思うんです。しかし必要以上に件数が多く、点数はまあそれは自衛官自体だけでも二十六万人おるわけですから、どうしても点数自体は多くならざるを得ぬわけですが、極力減らしていきたいという方向については、さように思っております。
○委員長(徳永正利君) まだやるか。(「進行進行」と呼ぶ者あり)では岩間君、もう一問だけ。
○岩間正男君 安保条約の関係で、きのう防衛庁長官はアメリカとの協定、特に安保条約関係については、公表できないと述べていますけれども、安保条約関係のものを秘密にすることが日本のどの法律できめられているんですか、この点を明らかにしてください。
○国務大臣(江崎真澄君) これはどうも専門家の岩間さんにしてはたいへんな御質問なんですが、防衛庁における秘密は、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法、まあことばはきっとおきらいでしょうけれども、そういうものが昭和二十九年六月の九日に制定され、六月の十八日に施行されております。これは防衛秘密——これに該当するものは防衛秘密と言っておるわけです。さっきの伊達法律論によりましても、国会の多数によってこれが制定され、きめられたと。これを国民の利益と考えるものの多数によって制定された以上は、いわゆる総理の、国民によって国益がきめられる、こういうことに合致するたてまえで、こういう法律がきめられておる、こういうわけでございます。(「終わり終わり」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
○岩間正男君 とんでもないことをあなたたちは言っておる。このMSA援助協定ですね、これに伴うところの秘密というものは、武器に関することです。主としてそれでしょう。それ以外の安保に関する秘密は、どういうふうにして国会でこれをきめられたのか、そういうことを私は言っておる。国会へこれ、かけられましたか。それ以外の協定はどうです。そんな武器に関する秘密のそこだけを強調して、それで全体の安保に付属する協定や取りきめ、合意書などの合法性を主張することは許されませんよ。これらはみな国会にはかけられていませんよ。おかしいですよ。
○国務大臣(江崎真澄君) きのう答弁を申し上げた意味はこれでありますと、こういうことを申し上げたんです。
○委員長(徳永正利君) ちょっと速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(徳永正利君) 速記を起こして。
○岩間正男君 そうすると、安保の秘密は国会にはかけられていない。こういう秘密文書はたくさんある。なぜこれを公表しないんです。私は公表すべきだと思う。結局はこれはアメリカの利益ということが優先され、対米追従の侵略的な内容、これが国民の前に明らかになるということが非常に困る。そしてこのような安保体制下の現状では、結局機密保護法や言論統制をたくらむ、そういうことをしなければならない、その根源がまさにここにある。これが日本の現実における姿である。そうしてこの国会の一週間にわたるこの論議、激しい論議の繰り返された根源は、ここにあるんだというふうに私は考えますが、これは佐藤総理は、どう思いますか。はっきり総理の立場から、あなた元締めですから答弁を願います。
○国務大臣(佐藤榮作君) どうも岩間君、私まで引っ張り出されましたが、先ほど来申しましたように、外交には機密がある、また国防についても、防衛についてもやはり機密がある、このことは一応御理解いただきたいと思います。これはおそらくどの党でも同じだろうと思います。それを全部公表しろと、これは少し御無理じゃないかと思います。できるだけそういう秘密事項という——国民の知る権利、知らす権利、そういうものに目をつぶると、こういうことではございませんで、先ほど来防衛庁長官からも申しましたように、これはもうできるだけ秘扱いのものは減らしますと、かように申しておりますから、その方向でいろいろ検討しておること、これだけ御了承をいただいて、秘密のあることだけはやはりやむを得ないものだと、かように御理解いただきます。
○渡辺武君 次に、ベトナム問題について外務大臣に伺います。 きのう外務大臣は、米軍の岩国、横須賀からの直接出撃問題について、事前協議の運用を再検討する必要があると答弁されました。具体的にどのような方向で再検討されるのか伺いたい。
○国務大臣(福田赳夫君) 安保条約は、締結後もうすでに十二年になる。それから、基地の非常に密度の高い沖繩、これがわが国に返って来る、そういうような時点におきまして、私は国会のこの論議、こういうものを注意深く聞いております。そういうようなことに立ちまして、ここで総ざらいをしておく、おさらいをしておく、そういう必要があるんじゃないかなあと、こういうふうに感じておるわけなんです。あの裏のほうに松本善明さんがおられる。私はこの問題について衆議院でいろいろ御意見も聞いたんです。そういう際にも、私多少感ずるところもありました。そういうようなことで、日米間で事前協議をどういうふうにこれから運用していくかということについて話し合ってみたいと、こういうことでございまして、まだ具体的なこれこれというような考え方を持っているわけじゃございませんです。
○渡辺武君 どういう方向で検討するのかということを伺っている。政府は、いままで事前協議は在日米軍の危険な行動をチェックして、日本を戦争に巻き込まさせないための歯どめだということを盛んに強調している。安保国会当時の岸総理大臣も、日本の基地を使っての米軍の作戦行動は、日本の平和と安全に直接関係ある以外は、基地の使用を拒否するのが基本原則だということを言っております。この立場には変わりないですか。
○国務大臣(福田赳夫君) その立場には一向変わりはございませんでございます。
○渡辺武君 それじゃ、いま日本の基地、沖繩の基地からベトナムにアメリカの軍隊が直接出撃して行っている、こういう事態はまことに危険きわまりない。だとするならば、日本からのアメリカ軍のべトナムヘの緊急出撃についていかなる口実を設けても、基地の使用は拒否すべきものだというふうに思います。再検討するというなら、こういう方向で事前協議の運用をきびしくする必要があると思うが、その点どうですか。
○国務大臣(福田赳夫君) 再検討につきまして、まだこれという具体的な内容は固めておりませんです。これは相手のあることでもある。しかし、いま沖繩から、あるいは岩国から、ベトナムに向けて出撃をしたというふうにお話がありましたが、私どもはそういうふうな——沖繩については知りません。しかし、岩国につきましては確認をしております。これは南方に部隊が移駐した、これは事実でございますけれども、これは戦闘作戦の命令を受けていない移動である、こういうことでございます。
○岩間正男君 関連。
○委員長(徳永正利君) ちょっと速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(徳永正利君) 速記を起こして。岩間君。
○岩間正男君 きょうの読売新聞によりますと、政府は事前協議について、「在日米軍が直接ベトナムに移駐することは好ましくないので、第三国を経由して移駐の形をとってほしい」と米側に申し入れることを検討している、こういうふうに伝えているわけでありますが、これは事実でございましょうか。これでは日本側から米軍の出撃をわざわざ事前協議の対象からはずしてやる脱法的な措置であると言われてもしかたがない。国民の目をごまかすものであって、何らこれは基本的な解決にはならないと思うのです。昨日からの国民が心配する、この心配がここに集中されて一昨昨日から論議されている問題ですから、この問題についてはっきりお答え願いたい。
○国務大臣(福田赳夫君) ただいま読み上げられました読売新聞の記事には責任を持ちませんです。私どもはそういうことを申し上げておりません。
○岩間正男君 そういうことを言われてますが、福田外務大臣は、三月二十五日の衆議院予算委員会の第二分科会、戦闘作戦行動かどうかということは、たいへんデリケートな問題だから、割り切った考え方をしなければならないと、こういうように先ほどあなたが指摘された松本さんに答弁しているわけです。一体割り切った考えとはどういうことなんだ。この中身をはっきりおっしゃっていただきたい。これは事前協議の対象になるかどうかきわどい問題を、この際思い切ってその対象からはずすということ、すなわち事前協議条項を大幅にゆるめようとしている、そういうねらいをはっきりうたっていると思うんです。したがって、先ほどの読売新聞に指摘されましたこういう条項とは深い関係があると思う。決して偶然なことではないと思う。したがって、これに対してはっきりした御答弁を願いたい。
○国務大臣(福田赳夫君) 割り切った考え方を持たなければならぬと、そういうようなことばで松本善明さんにお答えしたことがあると、それは私も記憶しております。それは、事前協議の対象になるのかならないのか、そういう論議があいまいのままであっちゃいかぬ、はっきりさしておかなきゃいかぬということなんでありまして、ただ、どういう方向ではっきりさせるか、そういうようなことにつきましてこれを申し上げておるわけじゃない。問題は、とにかく境界線をきちんとしておくと、こういうことだと、こういうことであります。
○岩間正男君 割り切ったと言っても、割り切り方ですね。はっきりこれはアメリカのこのようなやり方を断わるというふうな割り切りなのか、ややっこしいから、もう一切これを許可するという方向なのか、その点、国民は大きな疑惑を持っているんです。 私は具体的にお聞きしますが、外務大臣は、きのうの当委員会において、こういうことを言っています。岩国からの米軍の出撃については、アメリカ側から通告を受けたが、南方へ移動ということなので了承した、結局は了承したと、こういうふうに答弁しているわけですが、通告があった場合、日本側が黙っていれば、結局、黙認ということになるのじゃないんですか。これはいままで繰り返しされてきた黙示の了解、こういうことで、この事前協議の問題は、いつでもこれは事前協議が行なわれないで今日まできているわけでありますが、こういう事態を許していいのかどうか、この点を伺います。
○国務大臣(福田赳夫君) 先日アメリカ大使館から、岩国のF4戦闘機を中心とする部隊を南方に移動させると、こういう通報があったわけであります。私はそれに対しまして、これは作戦命令を受けておるのかと、こういうことでございますが、それに対する答えは、作戦行動命令は受けておりませんと、こういう話です。したがって、事前協議の対象になるべき事項ではないけれども、まあ友邦国である日本国政府に通報しておきますと、こういうことなんです。それを了承したと、それまでのことであります。
○岩間正男君 委員長。
○委員長(徳永正利君) 岩間君、もう一問に限ります。岩間君。
○岩間正男君 それでは、あなたが公表すると言うなら、国民は見守っていますよ。この重大な段階で、日本の基地が使われて、横須賀から、岩国から、直接ベトナムの戦場にこれはもう出撃しているんです。それを、何らのそれに対するチェックもできないという、このあいまいな態度については、国民が非常に見守っている。だから、あなたはそれに対して今度は事前協議の問題をここで公表するんだと言う。いかにもこれで国民は、それなら国民の立場に立ってやってくれるのかと、ところがなかなかそういかないんじゃないか。この点をはっきりあなたはここで明白にすることが第一点であります。 もう一つは、このような公表をするにあたって、私は、新たな問題をはっきりつけ加えて、これは政府の態度を明らかにしてほしいと思う。その新たな問題というのはこういうことなんです。それは、日本の基地からベトナムに出撃し、戦闘作戦に従事しているアメリカの空軍や第七艦隊の空母、または海兵隊がベトナムの戦場から直接日本の基地に帰ってきた場合はどうなるのか。この場合戦時国際法からいっても、日本は当然交戦地域に入ることになる。ベトナム側にはこれまた当然のことながら報復権が認められることになる。そのことについては、政府もしばしばいままで自分の立場を言うときに、急迫不正の侵略があった場合、敵基地を爆撃することも自衛の範囲に入る、これは増田前防衛庁長官の言でありますけれども、これは政府の態度として答えているわけではないですか。これは日本の平和と安全にとって重大な問題だと私は思うのです。このような場合、つまり戦場から日本基地に帰ってくるアメリカの海、空軍、陸上も含みますが……。
○委員長(徳永正利君) 簡単に願います。
○岩間正男君 こういうのは事前協議の対象にするのかしないのか、この問題を日米間の交渉ではっきり詰めていくのが、これは国民の立場に立つ、国益の立場に立つ当然の合意だと私は思うのであります。したがって、とにかくこの事前協議の問題を再検討すると言ったいまであります。この新たな問題について当然これは答えなきゃならないと思いますので、この点をはっきりお伺いしておきたいと思います。
○国務大臣(福田赳夫君) はっきり申し上げ得ることは、事前協議の問題につきましては、これはおさらいをいたします。そしておさらいをする際には、いろんな問題を提起し、討議してみたいと、こういうふうに存じております。いろいろ国会等で御指摘もあります。いまそういう問題も、ものによりましてはそういう検討の題目にする、こういうことでございます。
○渡辺武君 私は、次に、現在の国民生活にとって重大な問題である物価値上がりのおもな原因の一つであるインフレーションの問題について伺いたいと思います。 本題に入る前に一、二の事実を確かめたいと思います。 まず、おもな資本主義国について、消費者物価指数の一九六〇年に比べた一九七一年の上昇率をおっしゃっていただきたい。
○政府委員(宮崎仁君) お答えを申し上げます。 一九六〇年に対して一九七一年までの指標が出ておりまして、この年間平均の上昇率で申し上げます……。
○渡辺武君 いや、いいんです、六〇年に対する七一年の上昇率。
○政府委員(宮崎仁君) 六〇年に対する七一年の上昇率で申し上げますと、日本が八七・六、アメリカが三七・〇、イギリスが六二・九、西ドイツが三七・六、フランスが五六・八、イタリアが五四・三でございます。
○渡辺武君 いま明らかになったように、日本の消費者物価の上昇率というのは、まさに主要資本主義国最高なんですね。 総理大臣、よく聞いていただきたいと思うんですけれども、この十一年間の消費者物価の値上がり八七・六%というのは、十一年前の千円札がいまでは五百三十三円の価値しかないということなんですよ、いいですか。 次に、消費者物価指数と卸売り物価指数について、一九五七年から佐藤内閣のあらわれた一九六四年までの七年間の年平均上昇率と、それから佐藤内閣があらわれた年から一九七一年までの同じく七年間の年平均上昇率とを比較しておっしゃっていただきたい。
○政府委員(宮崎仁君) 一九五七年から一九六四年までの年平均上昇率、総合で申しまして四・〇%、それから一九六四年から一九七一年までの上昇率五・九%ということでございます。 卸売り物価指数につきましては、一九五七年から六四年までで、総合で申しましてマイナス〇・五%、それから六四年から七一年までで一・五%でございます。
○渡辺武君 佐藤首相お聞きのとおり——居眠りされちゃ困りますよ。よく聞いてくださいよ。 いまのこの読まれた点は、佐藤内閣が消費者物価安定について無策であった、というよりも、佐藤内閣こそが物価値上げ内閣だったということをはっきり示していると思います。 ところで、インフレ抑制政策もしくは物価安定対策としての通貨、金融、財政政策について、物価安定推進会議が四十四年一月二十八日に「財政金融政策と物価」と題する提言をしております。提言が特に当面留意すべき点としてあげている四つの点の中の一つ、第一です。これを読んでいただきたい。
○政府委員(宮崎仁君) お答えを申し上げます。 四十四年一月の物価安定政策会議におきまする財政金融と物価に関して御提議がございましたが、その第一の問題は、「財政の警戒的運用」ということでございまして、当時の事情から見まして総需要政策として、警戒的に運用することが物価政策上必要だと、こういう観点からの提言があったわけでございます。
○渡辺武君 その内容を読んでください。「このため」というところがあるでしょう。「財政金融政策の運営について、とくに当面留意すべき点は、下記のとおりである。」
○政府委員(宮崎仁君) はい。 それで「財政の警戒的運用」ということでございまして、第一が総需要管理政策上特に大きな役割りをなすことにかんがみて、来年度の予算編成に際しては、一般会計、特別会計、財政投融資、地方財政全体を通じて警戒的にひとつやってもらいたいということが第一点。
○渡辺武君 いや、それは何月のですか、四十四年のですか。
○政府委員(宮崎仁君) それから第二点は……。
○渡辺武君 ちょっと違うんです。
○委員長(徳永正利君) ちょっと速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(徳永正利君) 速記を起こして。
○国務大臣(木村俊夫君) 四十四年一月二十八日「財政金融政策と物価」と、これだと思いますが、その中で主な項目を拾いますと、特に「国債の減額」
○渡辺武君 いや、私の言いますのは……。
○委員長(徳永正利君) 発言は立ってやってください。
○渡辺武君 いや、立って申し上げたことを重ねて言わなければならぬから、だから申し上げているんです。「このため、財政金融政策の運営について、とくに当面留意すべき点は、下記のとおり」として、(1)とありましょう。
○国務大臣(木村俊夫君) はい、あります。
○渡辺武君 ここをお読みいただきたいということです。
○国務大臣(木村俊夫君) ずいぶん長くなりますが。
○渡辺武君 (1)だけでいいです。
○国務大臣(木村俊夫君) 「従来、消費者物価の上昇は、経済成長に伴う構造的変化に起因するものと認識され、主として生産性向上を主体とする構造政策が推進されてきたが、最近の消費者物価の上昇要因には、心ずしも構造政策のみでは対処しえないものがあると認められるので、景気変動の平準化に努めるとともに、総需要の増加を抑制気味とし、いやしくも、需要圧力による物価上昇をきたさないよう誘導すること。」「また、この観点から、通貨供給の経済活動に及ぼす影響にかんがみ、経済成長と通貨供給量との妥当な関係について検討すること。」以上です。
○渡辺武君 そこで、総理大臣、お聞きのとおりです。私は、物価安定推進会議などの提言がすべて正しいということを言いたくはありません。しかし、いま報告のあった提案の内容は、政府が従来とってきた構造政策では十分でないので、財政金融政策を物価安定対策として重視せよという趣旨であります。総理大臣は、この提言どう思われますか。賛成でしょうか。
○国務大臣(木村俊夫君) 御承知のとおり、昭和四十四年の時点における経済政策、これは非常に成長が高度でございまして、むしろ、現在の時点における経済政策の運営とはおのずから趣を異にしなければならぬ、そういう時点における提言でございます。
○渡辺武君 現在はどうですか。財政金融政策を物価安定対策としては重視しますか、しませんか。
○国務大臣(木村俊夫君) 当然、物価対策の面では経済成長の安定というものは必要でございますから、そういう意味におきまして、総需要の管理、抑制ということは依然として必要だと思います。
○渡辺武君 総理大臣、この国会の施政方針演説の中で、物価対策について、「消費者物価安定のための構造的諸問題の解決について、一そうの努力を注いでまいる所存であります。」と、こういうことを言っておられる。まさに物価安定推進会議が、十分ではないと指摘している構造政策、これをあなたは強調されてきておられる。そうして、物価安定対策としての財政金融政策については一言もお触れになっていらっしゃらない。この点は、軽視しておられるのでしょうか、どうでしょう。
○国務大臣(佐藤榮作君) もちろん、軽視はしておりません。これはもう総体として考えていかなきゃならない問題でございます。
○渡辺武君 軽視しておられないとすれば、具体的に物価安定対策としての通貨・金融財政政策、どうおとりになりますか。特にいま推進会議の提言がいっている経済成長と通貨供給量との妥当な関係、これをどうおはかりになりますか、おっしゃっていただきたい。
○国務大臣(木村俊夫君) 先ほど申し上げましたとおり、昭和四十四年と現在とでは、財政金融政策の方向がおのずから異ならなければなりません。したがって、総需要の管理という面では、確かに機動的かつ適正な財政金融政策が必要でございますが、現時点におきましては、むしろ景気が非常に沈滞しています。したがいまして、そういう意味における財政金融政策とは、やはり現時点において効果的に景気を回復させることである。それがむしろ生産性低下によるコスト・プッシュを避ける道である。そういう意味から現在景気対策をやっておるのでございまして、むしろこの際は、大型の予算の編成あるいは減税、あるいは国債の大幅増加、こういうものが現在における財政金融政策の主眼でなければならぬと思います。
○渡辺武君 それは景気対策としての財政金融政策であって、物価安定対策としての財政金融政策じゃないんじゃないですか。しかも、当時のことだとおっしゃるけれども、物価安定推進会議のあとでできた物価安定政策会議、これが昭和四十五年の一月二十日に、同じように財政金融政策、これを物価安定のために重視しなければならぬのだということを再度強調しております。これは時間もないので読んでいただく必要はないのですが、物価安定対策としての財政金融政策、どういうふうにおとりになるのか、どうですか。これは大蔵大臣にも、日本銀行総裁にもお答えいただきたい。
○国務大臣(木村俊夫君) 先ほど申し上げましたとおり、現在の経済政策運営の主眼というのは、やはり景気の回復ということにまず第一に置いております。そういう意味において、むしろいまこの景気が浮揚いたしませんと生産性は上昇しない。生産性が上昇しないと、おのずからコスト・プッシュが生まれてくる、賃金はそう下降いたしませんから。そういう意味で、現在の経済運営の根本は、やはり景気回復に置くということは変わりございません。そういう意味で、総需要の管理という意味においての財政金融政策、これはもう経済成長の安定ということが必要でございますから、あらゆる場合を通じて必要でございますが、おのずからそのときどきの機動的な運営というものはなければならぬ。こういうことから、現時点ではそういうような基本的方策をとっておるわけでございます。 昭和四十五年のいまおっしゃったその提言は、むしろ一般論を述べておられると、こういうふうに私たちはとっておりまして、その昭和四十七年度における経済運営とはおのずから趣を異にしなければならぬ、こういうふうに考えております。
○国務大臣(水田三喜男君) 四十四年のときのこの提言は、当時は非常に好況下でございましたので、したがって、この総需要を抑制するということに非常に力を置いて、国債の減額と通貨供給の圧縮というようなことによる物価政策というものを提案したと思いますが、私はこれを批評するわけではございませんが、このときのこの政策が、今日の不況とは相当関係のある政策であったというふうに考えます。で、そのときには、いま言ったように、物価の構造面からの対策というようなものだけではいかぬ、やはり通貨政策と金融政策というものを非常に重んじたわけでございますが、それから現在一転して不況というようなことになってしまいますというと、事態が変わってきまして、あのときの政策をいま逆にやらざるを得ない。財政拡大、金融緩和という方向でやらなければ、この不況の回復はできないということになってそういう政策に変わってきておりますが、それなら、それが物価とどういう関係を持つかということになりますと、実体経済面で需給が逼迫していない状態でございますから、そういう政策をとっても、事実上はインフレにつながらない、物価につながらない。しかも、国際収支の黒字のために、非常に金融は緩慢になっておっても、なおかつ卸売り物価はそう上がっていない、安定しているというようなことでございますので、いまやっている政策が、私はこの物価を上げるほど過剰な通貨供給政策をやっているというふうには思われませんし、したがって、不況回復ということがやはりどうしても当面の至上命令であるとするならば、あのときとは財政金融政策は逆なことをやらざるを得ない、また、やって弊害がないんだと、こういうことだろうと思います。
○参考人(佐々木直君) 四十四年、四十五年の場合と経済情勢が違いますことは、ただいま大臣からお話がありましたとおりでございます。 最近の情勢について申し上げますならば、御承知のように多量の外貨の流入によりまして、その代金が散布されております。金融市場における資金需給が非常に緩和してきております。しかしながら、財政の立場といたしましては、いまの景気を引き上げ、それによって生産を高めることによって、物価の安定に資するという方向はこれが正しいと思います。ただ一方、それに相ならいまして、金融の面であまりに緩和が出ますと、これが物価につきまして上昇の方向に働くというおそれがございますので、日本銀行といたしましては、こういうふうにできました過剰流動性につきまして、日本銀行の貸し出しを大幅に回収いたしまして、それと同時に、回収不足分につきましては、売り出し手形の新しい方策を講じまして調整いたしております。したがって——卸売り物価は、三月の時点におきましてなお前年同期に比べまして、わずかでございますが、下がっております。こういう状況でございます。
○渡辺武君 いま国民が困っている問題は、卸売り物価がどうなっておるかということじゃなくて、消費者物価がこの不況下にどんどん上がっているということなんですよ。物価安定政策を最大の政策とするとしょっちゅう言いながら、それについての財政金融政策を、大蔵大臣も経済企画庁長官も本気になって考えていない。そういうことだから、この不況下の物価値上げが起こるのじゃないでしょうか。どうでしょう、総理大臣。
○国務大臣(木村俊夫君) それはちょっと違うと思います。と申しますのは、消費者物価の上昇がいまの通貨供給量の過剰から出ておるとは、私ども見ておりません。したがって、消費者物価の上昇は、かねがね申しましたとおり、とにかく経済成長が非常に急速であった、そのために労働需要に非常に逼迫が起こってきている、それが賃金の平準化に通じ、それがまた、生産性が非常に低い、たとえば中小企業、農業、サービス部門のコストプッシュになり、それがついに消費者物価の上昇につながった、こういうような見方をしておりますので、通貨量の供給過剰が消費物価を上げたとは私ども見ておりません。したがって、卸売り物価の上昇が、御承知のとおり、非常に落ちついておりますのも、その面を証明しておる、こう考えます。
○渡辺武君 いま長官の言われたのは、いわゆる構造政策なるものですね。ところが、もうずいぶん前から、いわゆる構造政策では物価の値上がりは押えられないのだ、だから財政金融政策を重視しなければならぬのだということを物価安定推進会議なども提言している。その点をやらないところに、私は、佐藤内閣が、物価値上げにならざるを得ない原因の一つがあると思う。 そこで、事実を確めたいと思います。一九六〇年から七一年までの間について、実質GNPと総通貨、すなわち現金通貨と預金通貨を合計したものですけれども、これの比率の推移をおっしゃっていただきたい。
○政府委員(近藤道生君) お答え申し上げます。 昭和三十五年の、ただいまおっしゃいました数字は二一%——。毎年、全部申し上げますか。
○渡辺武君 一年おきくらいでけっこうです。
○政府委員(近藤道生君) 三十七年が二五・一%、三十九年が二八・五%、一年飛びまして四十一年が三三・三%、四十三年が三三・二%、四十五年が三七・九%、四十六年が四六・三%。以上でございます。
○渡辺武君 ついでに、現金通貨、預金通貨というのはどういうものか、御説明いただきたい。
○政府委員(近藤道生君) 現金通貨は、銀行券と補助貨幣を足しまして、それから金融機関の手元現金を差し引いたものでございます。預金通貨は、金融機関の手元にございます通知預金、普通預金の合計でございます。
○渡辺武君 いまの御答弁によれば、一九六〇年には、GNPが生産され流通されるために、その二一%の通貨が使われた。ところが、一九七一年には四六・三%の通貨が使われたことになっております。つまりこのことは、実質GNPの増加よりも通貨供給量の増加のほうがはるかに早かった、大きかったということをはっきりと物語っていると思います。このことは、通貨信用が必要量以上に過剰に供給されてきたことを示すものと思いますけれども、どうでしょうか。大蔵大臣、経済企画庁長官、日本銀行総裁に伺いたい。
○政府委員(近藤道生君) ただいまの数字が急速に増加してまいりましたことは、確かに物価上昇に起因することであることは間違いございません。ただそこで、しからば通貨の増発に基づいて物価が上昇したかどうかというお尋ねでございますが、通貨量と物価との関係というものは、これは御高承のように、各国ともたいへんな研究課題として研究はいたしておりますが、かなり密接な関連があることははっきりいたしておりますが、完全に比例するような数字的関係ということは、つかまえられておりません。その間いかなる関係で密接に動くかということは、いわゆるブラックボックスと称せられる部分と存じます。したがいまして、通貨量と物価上昇というものの関係は密接ではございますが、必ずしも必然的なものではないというふうに考えております。
○国務大臣(木村俊夫君) いま大蔵省からお答えしましたが、一つの数字を申しますと、通貨供給量、これは昭和四十年から四十六年、年率平均をとりますと毎年一八・一%、これがふえております。それに伴いまして、実質経済成長率が、やはり同じ期間、年平均一〇・一%。ところが、もし物価とこれを直接結びつけるなら、むしろそういう経済動向を敏感に反応する卸売り物価を見るべきだと思います。卸売り物価は安定しておりまして、その期間、毎年平均上昇率が一・六%、こういうような状況でございます。したがいまして、その間同じく消費者物価はどうかと申しますと、年平均上昇率五・七%、これはむしろ、先ほど申しましたとおり、通貨膨張とかそういう原因でなしに、やはり生産性、構造の面から出ておるということでございます。
○渡辺武君 まあいいでしょう。それじゃ、全部間違った答弁ですね。そんなこと言っておられるから、だから物価の値上がりが押えられないのですよ。いま、物価値上がりがあるから通貨の増発が当然だというような御意見がありましたけれども、名目GNPの中に占める通貨供給量を見ても、やはりふえているのですよ。明らかに、経済成長の速度よりも通貨の供給のほうがはるかに大幅に行なわれてきている。こういうことを示している。 ところで、日本銀行総裁に伺いますけれども、現在の日本銀行券は、金に兌換されない銀行券、つまり不換銀行券だと思いますけれども、どうでしょうか。
○参考人(佐々木直君) お話のとおりに、ただいまの日本銀行券は金に兌換できません。
○渡辺武君 木村経済企画庁長官に伺いますが、前経済企画庁長官の佐藤さんは、昨年の物価委員会での私の質問に答えて、不換銀行券が過剰に発行された場合は、通貨価値は低落し、物価は上がる旨答えております。私、ここにその速記録の抜き書きを持っております。木村長官、この点どうお思いでしょう。
○国務大臣(木村俊夫君) 一般論としては、私は正しい考え方だと思います。
○渡辺武君 それでは、日本銀行総裁に重ねて伺いますけれども、現在通貨価値が安定していると思っていらっしゃいましょうか。それとも、低下していると思っていらっしゃいましょうか。
○参考人(佐々木直君) 通貨価値を何ではかるかということでございますが、これにはいろいろな指標があると思います。その国の通貨の対外価値のほうは、これは為替相場によって計算されます。それから国内価値のほうは、その用途に従いまして、卸売り物価によりはかられ、または消費者物価によってはかられると思います。国民生活に一番関係の深いのは消費者物価であることは、先生のお話のとおりでございます。 これ全体を比べてみますと、対外価値のほうは最近上がっております。それから卸売り物価ではかりましたものは非常に安定しております。これは世界的に見て最も安定しているのでございまして、これが日本の輸出競争力を強めた点であろうかと思います。ただ消費者物価が、残念なことには上がり続けております。これには財政金融政策の適切な運営ももちろん必要でありますけれども、同時に、流通過程その他の問題についても配慮をする必要があり、また、輸入の問題についても考えなければならぬというふうに考えまして、この点について、消費者物価ではかる限りにおいて通貨価値がある程度低下していることは、これは事実でございます。
○渡辺武君 そうしますと、いま明らかにした数字で、実質GNPの増加を上回る通貨の過剰な増発、それに伴う通貨価値の低落と物価の上昇、これが明らかになったと思う。 それでは、なぜこのように過剰な通貨が増発されたのか、その根源を明らかにしたいと思います。 そこで、企業の自己資本比率、これが全産業について、一九六〇年度から七〇年度までどうなっておりましょうか、御報告いただきたいと思います。
○国務大臣(田中角榮君) 戦前六一%でございましたのが、ただいまでは一六・一%、この間のこまかい数字、必要であれば申し上げます。
○渡辺武君 三十五年度はどのくらいでしょう。
○国務大臣(田中角榮君) 三十五年度が二〇・七%、三十六年が二〇・五%、三十七年が二〇・四%、三十八年が二〇・五%、三十九年が一九・七%、四十年が一九%、四十一が一八・四%、四十二年が一七・五%、四十三年が一六・九%、四十四年が二八・八%、四十五年が一六・一%でございます。戦前は六一・四%であります。
○渡辺武君 戦前は六〇%以上、六一・四%。昭和三十五年度を見ても二〇・七%。それがずっと下がって、昭和四十五年度には一六・一%まで下がっている。これは驚くべきことだと思う。しかも日本銀行調べの、資本金十億円以上の大企業の場合には、七一年度の上半期にはさらにその前期よりも低下している、こういう状況です。最近の外国の例はどうでしょうか。
○国務大臣(田中角榮君) 外国の例といたしまして、アメリカ、イギリス、西ドイツを申し上げますと、アメリカは六九年は五五%であります。イギリスは五一・六%、これも六九年です。西ドイツは四〇・六%でございます。戦前の、五五%に対するアメリカの戦前三六年は七九・九%、イギリスは五一・六%に対しまして五八・五%、西ドイツは四〇・六%に対して五五・五%でございます。戦後非常に伸びている国は、御承知のとおり自己資本比率が落ちておる。経済活動が比較的に緩慢な国はそれほど落ちておらないということであります。
○渡辺武君 とにかく、わずか一六・何%の自己資本比率、そのほかは全部銀行その他から借り入れた資本でやっている、こういう状態。まさにこれは異常な状態だと思うのですね。なぜ日本だけがこんな異常な状態におかれているのか、その理由を御説明いただきたい。
○国務大臣(田中角榮君) 一つの大きな理由は、敗戦の二十年には、ほとんど無資本になったということが最も大きな理由でございます。第二は、金利のほうが安い。制度上、金利は損金算入を認めておりますし、配当に対しては、四十年から、小額の五万円以下は非課税と、小額のものだけは非課税を認めたわけでございまして、どうしても経済活動が膨張しますと、借り入れ金をやるほうがその企業としては経理的に楽だ、こういうことが一つございます。そういう意味で、OECDに加盟のときに、資本の自由化には耐えられない状態でありますので、何らか税制上、いろいろな措置を行なわなければならないということで、預金金利と同額まで非課税にしてはどうかという長い議論がございましたけれども、そのままになっておるわけでございまして、ついに一六・一%という最低の状態まで下降したことは事実であります。
○渡辺武君 日本の大企業の高度成長と関係あるのじゃないでしょうか。
○国務大臣(田中角榮君) 高度成長というよりも、二十九年から三十九年まで一〇・四%平均、成長が行なわれております。三十五年から四十五年までの十年間は二・一%という高い成長でございます。そういう意味からいって、高度成長がというのではありませんが、先ほど申し述べましたとおり、経済規模、活動規模が大きくなりますので、さて企業者はどこで自己資本比率を拡大するか、借り入れ金によるほうがいいかということになると、借り入れ金は損金算入になっておりますので、いまの税制上からいうと、どうしても借り入れ金のほうに依存をするということになるわけでございます。
○渡辺武君 先ほど大臣がおっしゃったように、経済成長率の低いところではそれほどじゃないが、成長率の高いところは自己資本比率は低くなっているということでもはっきりしているように、やはりこれは何といっても大企業の高度成長、そのために金をどんどん借りてきて、そうして設備投資その他につぎ込んできたというところに、この自己資本比率の急激な低下の理由があるというふうに普通も見ております。 ところで、この大企業のいわゆるオーバー・ボローイング、これをささえてきたものとして、銀行の、特に都市銀行のオーバー・ローンがあったと思いますが、これの指標として都市銀行の預貸率、これを一九六〇年度から七一年度上期まで、おっしゃっていただきたい、平残預貸率で。
○政府委員(近藤道生君) 平残預貸率で申し上げます。昭和三十五年度の都市銀行、上期が……。
○渡辺武君 いや、下期だけでいいです。一年おきぐらいでいいです。
○政府委員(近藤道生君) 下期が九六・四四でございます。三十七年度が一〇一・二一でございます。
○渡辺武君 それは上期ですか。
○政府委員(近藤道生君) 下期でございます。三十七年度の下期の都市銀行の平残預貸率は——失礼いたしました、一〇六・七四でございます。それから都市銀行の三十九年度平残預貸率、下期が一〇六・九四でございます。それから四十一年度の下期が九八・五四でございます。四十三年度の下期が九六・六八でございます。四十五年度下期が九八・〇八でございます。 以上でございます。 〔委員長退席、理事白井勇君着席〕
○渡辺武君 大蔵省の、この預貸率についての指導基準は何十%くらいですか。
○政府委員(近藤道生君) ただいま一応九〇%ということにいたしておりますが、さらにできるだけこれを低下せしめるという個別指導をもあわせ行なっております。
○渡辺武君 八〇%以下にせよという指導をされたのは、いつからですか。
○政府委員(近藤道生君) 最近は一律の指導をなるべくやめまして、個別に、それぞれの事情ででき得る限りこれを低下せしめるという指導に重点を切りかえております。
○渡辺武君 八〇%以下と指導したのは、いつからですかと伺っている。
○政府委員(近藤道生君) お答え申し上げます。昭和三十二年に一応、八〇%という指導基準を出しております。
○渡辺武君 外国の例、戦前の例、これをおっしゃっていただきたい。戦前は昭和九年ごろでいいです。
○政府委員(近藤道生君) 戦前の預貸率、昭和九年でございますが、六七・六%でございます。 それから諸外国につきましては、昭和四十四年ごろまでの数字が各国ございますが、米国が六七・八%、イギリスが五八・三%西独が一一〇・七%、フランスが一〇八・〇%、イタリアが五六・五%。以上でございます。
○渡辺武君 その計算ですが、日本の預貸率の計算と外国の場合の計算と、計算基準が違うと思いますが、双方の違いをおっしゃっていただきたい。
○政府委員(近藤道生君) お答え申し上げます。 外国の場合に期末の残高でとっております。
○渡辺武君 いや、もう少しあるでしょう。計算のやり方、預貸率の出し方。
○政府委員(近藤道生君) その点以外は、おおむね同じでございます。
○渡辺武君 うそ言っちゃいけませんよ。私があなた方からいただいた資料では、日本の場合は、分母が預金プラス手持ち債券、そうして分子が貸し出し高、こうなっている。外国の場合は、これは預金残高全体だ。分母には手持ち債券が入ってない。分母が小さいんですよ。分母が小さいから、日本の場合で考える実情よりも、これははるかに預貸率は高くなっている。実際は、はるかに低いはずだ。昭和三十二年から八〇%以下という指導をしておきながら、いまに至っても九〇%以上という、べらぼうな預貸率の高さを示している。このことは大蔵大臣、日本の都市銀行がオーバー・ローンに次ぐオーバー・ローンを続けてきた、大企業のオーバー・ボローイングをまかなうために続けてきたということを示していると思いますが、どうでしょう。
○国務大臣(水田三喜男君) やはり高度成長時代は、まだ資本市場が育成されておりませんでしたので、産業資金がもっぱら銀行資金の供給にたよるということでございましたから、これはもう預貸率は年年悪くなっていくし、したがって、この銀行のオーバー・ローンということも、長い間そこから脱却できないで、金融の正常化ということをずいぶん叫ばれましたが、なかなかこれはできませんでした。ようやく、いまになって初めて日銀の貸し出しがなくなってしまうと、だから、ここへきて産業資金の需要が鈍化してきましたし、初めてここで金融の正常化が見られるというところへきたことでございますから、これから、初めてこの預貸率の改善ということも指導のとおりの方向にいくのじゃないかと思っております。
○渡辺武君 大企業が高度成長をやるために、このオーバー・ボローイングで金を借りまくった。それを銀行がオーバー・ローンで資金供給をやってきた。これが私は通貨の過剰な供給の最大の根源だと思う。 ところで、この銀行のオーバー・ローンをささえてきたものが、日本銀行の貸し出し政策その他の放漫な金融政策にあったと思いますが、その点、日銀総裁どう思っていられますか。
○参考人(佐々木直君) 確かに、戦後の荒廃から立ち上がりますときに、国民の蓄積のでき上がるのを待って経済の復興を行なうということでは、国民の日々の生活に非常に支障があるというようなことから、あらゆる資金を動員して復興のための資金を捻出したということは事実でございます。そのときに、たよりになるのが日本銀行の信用であったということもまた事実であります。したがって、戦後長い間、各銀行の資金不足が日本銀行の貸し出しによってまかなわれておりましたことも事実でございます。ただ、そういうやり方をやっておりますと、銀行のほうは、全体として経済の成長復興に伴って必要な資金を、日本銀行の貸し出しによって調達することに慣れてまいりました。いわゆる成長通貨を日銀貸し出しでカバーするのが当然という考え方が出てまいりましたので、昭和三十七年に、経済の復興その他の状況を見まして、これを貸し出しからオペレーションに切りかえる、いわゆる新金融調節方式にかえたわけでございます。 その後、もちろん日本の国際収支の面が必ずしも好調でございませんで、日本の外貨準備が減るというような場合がたびたび起こりました。そういうときには、増加する通貨需要に対する供給ができませんので、やはり日本銀行が買いオペレーションをわりあいに多額にするとか、あるいはまた一時的に貸し出しを増加せざるを得ませんでした。しかしながら、最近の状況では、状況が全く変わりましたので、この機会を利用いたしまして、ぜひ、いまのオーバー・ローンの情勢は改めたいし、また、現実にいま改まっておりますが、この状況が長続きしますように、できるだけの手だてを講じていきたいと、こう考えておるのでございます。
○渡辺武君 確しかに日銀貸し出しは、急速に減っています。また、銀行の預貸率も多少は改善してきている。これはこの数字の上にはっきり出ています。しかし、いま私どもが何よりも見なきゃならないのは、この不況下に、通貨が猛烈な勢いで増発されているという点だと思う。それを明らかにするために、七一年度の実質GNPの増加率はどのくらいか。総通貨の増加率はどのくらいか、おっしゃっていただきたい。
○政府委員(近藤道生君) お答え申し上げます。 七一年の実質GNPの伸び率は六・一%でございます。総通貨の伸び率は二九・七%でございます。
○渡辺武君 総通貨の伸び率二九・七%というのは、この十年間ありましたか。
○政府委員(近藤道生君) ございません。
○渡辺武君 不況で、実質GNPが前年に比べて六・一%しか伸びてない。ところが、日本銀行券を含めた現金通貨と預金通貨、これの伸び率が、二九・七%という異常な伸び率を示している。大蔵大臣、こういうような現象はどうして起こったとお思いでしょうか。
○国務大臣(水田三喜男君) 国際収支の黒字によって、外為会計のほうからの支払い超過というものが、非常に多くなっているということも原因だろうと思います。しかし、それはさっき日銀総裁が言われましたように、これは日銀のほうで調節しておりまして、オペレーションをやったり、通貨が不当に大きくならぬような調節を日銀はやっており、貸し出しを回収しておるというようなことで、したがって、現在のところは卸売り物価が一応安定するという程度の通貨量ということで、私は、いまの状態が特に通貨の過剰状態というふうには思っておりません。
○渡辺武君 外貨の流入が急増して、それが原因で外為会計の払い超が、昨年一年間で四兆四千億円にもなっている。一方で日本銀行は、それを吸収するために銀行への貸し出しを返させる、あるいはまた手持ち債券を売って通貨を吸収した。それでもなおかつ数字にあらわれているのは、総通貨の前年に対する伸び率は二九・七%と、異常な状態でふえているんですよ。そうして、消費者物価はこの不況下に上がっている。卸売り物価を言ったってだめですよ。国民生活は消費者物価が問題ですから。このことは、西ドイツあたりでもう数年前から問題になっている外貨インフレ、これがいま、われわれの目の前で現実に進行しているということを、はっきり示しているのじゃないでしょうか。これは国民生活にとって非常に重大問題です。 ところで、次に移る前に、インフレーションの新しいもう一つの要因を指摘したいと思います。日本銀行は、昭和三十七年の新金融調節方式以来、公開市場操作を行なって、いろいろな債券を購入して、引きかえに資金を供給していると思いますが、これらの有価証券の保有高は、現在どれくらいになっておりましょうか。
○参考人(佐々木直君) 日本銀行が所有しておりますのは国債がおもでございますが、昭和四十七年三月末の国債の保有高のうち、短期国債の保有高が一兆六百二十七億円でございます。それから長期国債が二千四百六億円、その他が十二億円ございまして、総計で一兆三千四十五億ということになっております。
○渡辺武君 外貨がどんどん入ってきて、そのために通貨がどんどん増発されているという状況のもとで、日本銀行が国債、政保債その他を買い入れて、そうして持っている額が一兆三千億円をこえている。つまり、その分だけ通貨はまだ供給されているんですね。今後、四十七年度の予算案によれば、一兆九千五百億円もの公債が発行されるということになっている、長期国債が。また政保債や短期国債、これも大幅に増発されることになっている。これは、やがては日本銀行に買い入れられ、通貨増発の新たな要因になるんじゃないでしょうか。この点、どう思われますか。
○国務大臣(水田三喜男君) 市中の金融緩慢のぐあいから見ましても、私は、本年度の発行予定額一兆九千五百億円の公債を発行しても、別にこれがすぐに日銀にみんな戻っていくというような事態には、いまの金融状態ではならないと思います。
○参考人(佐々木直君) ただいま申し上げました数字は、年度末の数字でございます。日本銀行は、最近、金融調整のために手持ちの債券をずいぶん売却いたしておりまして、その限りにおいては、平均残高では決して高くはございません。現に十日現在におきましては、日本銀行の保有しております国債の総額は千八百五十七億円でございます。年度末をずっととってまいりましたので先ほど御説明申し上げましたような数字でございまして、これは年度末の操作がございますので、水準といたしましては、いまの状態は、過剰流動性を吸収するために日本銀行は手持ちの債券をほとんど売り尽くしておる、それによって資金を吸収しておる、こういう状況だと御理解願いたいのでございます。
○渡辺武君 問題は、いま確かに日本銀行の手持ち公債は減っている、これはいまおっしゃったとおりだと思う。しかし、そういう機構が依然としてあるということが重大なんです。いいですか、大蔵大臣も日本銀行総裁も、日本の通貨金融の歴史、痛い歴史、これを思い起こしていただく必要があると思う。 御承知のように、あの満州侵略戦争を起こすときに、当時、高橋是清が大蔵大臣でしたが、国債の日本銀行引き受け発行というのをやった。そうして政府は、国債を発行して、日本銀行に引き受けさして、戦費を調達して、そうしてこれを軍需品購入に引きかえて市中に通貨をばらまいた。そうして、日本銀行はその市中のお金に対して、自分の手持ち公債を市中消化さして資金を吸収した。当時は不況だったから、したがって通貨の増発は起こらず、インフレーションも起こりませんでした。しかし、だんだん景気が回復し、同時にまた、戦争経済が拡張するに伴って、市中が持っていた公債は、やがて日本銀行の買いオペレーションによって購入されて、そうしてそれと引きかえに通貨が増発されていった。このやり方の創案者である高橋さんは、これは、こういうインフレーション政策に発展することを反対されたために二・二六事件で暗殺されたという、そういう経験がある。 いまの佐藤内閣のやり方は、それは確かに日本銀行引き受けのやり方ではない。国債を出して、まず市中に消化させる。しかし、回り回ってその国債は、やがては日本銀行のオペレーション政策で買い入れる機構がはっきりと残っておる。もし今度、景気が回復していく。そうして一兆九千五百億円もの公債が出されれば、やがてこれは、一時は市中消化ができても、これはやがて日本銀行に持ち込まれて、そうしてインフレーション高進の原因になることは明らかだと思います。どうでしょうか。
○参考人(佐々木直君) ただいまお話しがございました昭和六年以後の財政金融情勢は、いまおっしゃるとおりでございます。ただ、その前に非常に大きな外貨流出がございまして、そのために、その外貨の代金が日本銀行に吸い上げられたという事実がございまして、そういう事実のために、いまのような操作が可能であったというふうに私は思っております。 現在の状態は、国際収支の受け超が大きいために、それによっていわゆる成長通貨の供給は十二分にカバーされておる状況でございます。したがって、いま大体七千億前後と考えられます銀行券の年の増発額、そういう程度のものがもし外貨の増加によって供給されますならば、日本銀行が買いオペに転ずるということは、季節的な調整のためにはあるいは必要かもしれません。しかしながら、長く日本銀行が国債を抱いて、それによってインフレーションの原因になるということは、それは、そういう条件が続く限りにおいては考えられないと思います。もちろんわれわれは中央銀行として、資金の供給量を適切に維持するということが非常に大事なことでございますから、供給の方策はいろいろくふうしなければなりませんけれども、そういう筋を通しますことについては、中央銀行として十分考えてまいるつもりでおります。
○渡辺武君 日本銀行の通貨供給が、供給量が適切でなかったということは、いままでのインフレーションの高進がはっきりと物語っている。しかも、その機構が依然として残っているわけです。われわれはこの危険は十分に指摘しておかなければならぬと思う。 ところで、私は以上を通じて、日本の物価値上がりの主要な原因の一つである、インフレーションのおもな根源について明らかにしてまいりました。要約して申し上げれば、大企業の高度成長のためのオーバー・ボローイング、これをささえる銀行のオーバー・ローン、そうして日本銀行の放漫な金融政策、これが一つ。同時にまた、新たなインフレ要因としての外貨インフレ、そうしてまたもう一つ、いわゆる財政インフレといわれる国債の購入政策、これがおもなものだと思います。 こういう事態に立って、これは、総理大臣、大蔵大臣、経済企画庁長官、日本銀行総裁、それぞれ一体今後、重要な物価政策です、どういうふうに物価安定政策としての通貨・金融財政政策をおとりになるのか、この点を伺いたいと思う。これは総理大臣も答えてくださいよ。
○国務大臣(木村俊夫君) まず、私からお答えいたしますが、おっしゃるとおり総需要の管理と申しますか、適切かつ機動的な財政金融政策、これが経済の成長を安定化する、これが物価政策の最大前提でございます。これについては異論はございません。しかしながら、先ほどいろいろ御指摘ございましたが、まあわが国の卸売り物価と消費者物価、この乖離というものはやはりわが国の経済構造の特殊性に基づいておるという点も御認識願いたいと思います。そういう意味におきまして、この消費者物価の対策につきましては、もちろん通貨供給量のバランスをとることは必要でございますが、また別途にこの構造対策、わが国の産業構造の二重構造という構造政策からこれをスタートしなければなりません。そういう意味で、そういう構造政策をとるとともに、最近における通貨切り上げ、円の切り上げに伴う輸入対策、あるいはいろいろ競争条件の整備等、各般の政策努力を傾注してまいりたいと思います。
○国務大臣(水田三喜男君) まあ実態経済面におきましていまのように需給ギャップの多いときには、ただいまのような財政金融政策で私はやっていっていいと思いますが、これが、いまの不況が克服されて経済が変わってさましたら、この公債政策そのほか一連の金融調整政策については、当然調整を加えなければならないものと考えております。
○国務大臣(佐藤榮作君) 渡辺君から経済の、現在の情勢の分析が行なわれました。また、それらがいまのコストを引き下げることのできない一つの理由として、通貨の面からの幾多の欠陥を指摘になりました。しかし私は、それはそれなりに伺っておきますが、当面しておる現在の経済情勢については、私どもはやっぱり景気を回復することに重点を置かなければならない。 〔理事白井勇君退席、委員長着席〕 しかし、その景気を回復するために重点を置いたからといって、物価は上がりっぱなしでそれでよろしいというのではございません。やはり経済の拡大、これが経済の成長、これを意味し、同じにそれが通貨の安定を来たすように、ただいまの国際通貨からの圧迫があるのだという御指摘もございますから、それと同時にまた、われわれは国内における物価安定、これに対して対処していかなければならぬと、かように思っております。渡辺君が御指摘になったいままでの現象それぞれが必要な状態であると、かようには全部が全部申し上げませんが、しかし、御指摘になったような諸点が、今日の経済界の病根一病源だと、かようにも思いますから、経済を拡大、成長させるについて対策をとりつつ、同時に物価安定への努力をすると、かように御理解いただきます。
○参考人(佐々木直君) ただいまの経済情勢で、財政需要がこの際大きく増加する、これが当面必要であるということを私は考えております。しかしながら、そのもとにおきまして全体としての資金状況を調整するためには、機動性のあります金融政策の活用が必要であります。その点については今後とも情勢に応じて、たとえば、資金の流入が多ければさらに売りオペを活発にするとか、あるいは貸し出しの回収を他の方法で考えるとか、いろいろくふうしてまいりたいと思います。ただ、先ほど先生の御指摘がございましたけれども、債券のオペレーションは、売りも、買いもあるわけでございまして、買いの場合に、日本銀行が最も信用の高い国債を対象とするということは、これは当然のことと考えておりますので、その点は御了解いただきたいと思います。
○委員長(徳永正利君) 以上で渡辺君の質疑は終わりました。(拍手) 佐々木総裁には長い間ありがとうございました。 —————————————
○委員長(徳永正利君) 次に、野末和彦君の質疑を行ないます。野末和彦君。
○野末和彦君 まず、念のためにお聞きしますが、総理、あなたの耳は確かですか、国民の声がよく聞こえますか。
○国務大臣(佐藤榮作君) だいじょうぶです。
○野末和彦君 安心しました。 それでは第一問、国民の政治不信ということがいわれておりますが、総理は、この国民の政治不信をどういうように受けとめておられるか、四つあげますから、一つだけ選んでください。 「国民はいまの政治を信頼している」が一つ。二つ、「幾らか不信である」。三つ目、「全く信用していない」。四つ目、「その他」。一つ選んでください。
○国務大臣(佐藤榮作君) 第一でございます。
○野末和彦君 私と全く反対です。同じ問題を別の角度からお聞きします。今回の機密漏洩事件を含めまして、総理は、国民があなた自身をどのように評価しておられるか、自己批判してほしいのです。次にあげる四つの中から一つだけ、また選んでください。 「国民は総理に対して親近感を持ってほめている」が一です。二番目、「おそれて寄りつかない」。三番目、「軽べつし、ばかにしている」。四番目、「その他」。
○国務大臣(佐藤榮作君) もちろん、その一でございます。
○野末和彦君 これも私と反対です。私は、私の感じでは、国民のかなり多数は、かなり総理を、ばかにしているんじゃないかと思うんです。特に、今回のような事件で、日々総理の見解が変わるということになりますと、なおさら不信感が増す。そこで、なぜこれを言ったかといいますと、中国の古いことばに、政治家のランクを四段階に分けたものがあるんですね。ここにあるんです、御存じと思いますけれども。 これは「老子」という本で、ここに、最高の政治家は「下これ有るを知るのみ」、その次は「親しみてこれを誉む」、その次は「これを畏れ」、その次は「これを侮る」と、こういうふうになっているわけです。ですから、私の受けとめたところによりますと、いまの日本のように、国民が、総理を、かなりあなどっているというような状態は、もちろん総理はそうでないと信じていらっしゃいますが、私の考えでは、中国流に言って、まあ、いわば総理は、政治家の最低ランクに押されてしまうわけですね、どんなお気持ちですか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 民主主義の時代ですから、いろいろの御意見はございます。しかし、国民の声は耳に聞こえますし、私の目も、まだめがねをかけなくてもだいじょうぶですし、この辺もよく見えます。したがって、私のところへずいぶん激励の手紙も参っております。また、電話もかけられております。ただいま言われるように、私をあなどる者は私のそばに来ない。したがって、私はそういう声を聞かない。こういうような批判はあろうかと思いますが、私を激励する、また、私にその姿勢を守れという、ずいぶん思い切った支持すらあります。 以上で私のお答えといたします。
○野末和彦君 大体偉い人のまわりには、茶坊主ばかり集まることになっておりますから、総理がそうお考えになるのも無理はないと思います。しかし、私は実は残念なんです。国民が、何となく総理を、あなどっているような雰囲気があることが実に残念である。というのは、国民は総理を誤解していると思う、過小評価している。本来、総理はもっと評価さるべき人である。というのは、あなたの施政方針演説をはじめとして、国会における答弁を聞いておりますと、総理は、総理の政治姿勢というものは、基本的には非の打ちどころがないと私は思います。たとえば、確認しますけれども、こう言われた。人間性豊かな暮らしを実現をする、人間性豊かな生活環境をつくるとか、あるいは高度の福祉国家の実現を目ざすとか、あるいは国民に奉仕するのが政治であるとか、あるいは台所の主婦を苦しめるようでは、これは政治ではないとか、いろいろ言われておりましたが、この考え方は、もちろん、いまでも変わっておりませんね。
○国務大臣(佐藤榮作君) そのとおりです。
○野末和彦君 それでは、いままでのお答えを前提にして、私はこれから物価問題と住宅、土地政策、それから税金、防衛問題、そして今回の機密漏洩事件に関して、庶民レベルの質問をしたいと思います。 まず、物価問題ですけれども、総理、国民はいまのこの物価高をどういうふうに受けとめておりますか、総理の見解で、三つのうち一つ選んでください。 一つ、「国民は物価高で非常に悩んでいる」。二番目、「さほど苦しんではいない」。三番目、「物価高はもうあきらめきっている」。——どれでしょうか。
○国務大臣(佐藤榮作君) この三つの中から一つ選べとおっしゃっても、これはどうもちょっと実感が出てこないように思います。したがって、私はそれから選ぶわけにいかないと、かように答えます。しかし、今日消費者物価の値上がり、これに困っておることは各党から指摘され、また、政府もまじめにこれにこたえておりますので、国民は、テレビを通じ、政府も苦労しておる、こういうことをよく理解しておると、かように思っております。
○野末和彦君 それでは、総理御自身は、個人的に、いまの物価高はふところぐあいにこたえていますか、それとも、こたえていませんか。どちらでしょうか。
○国務大臣(佐藤榮作君) こたえております。
○野末和彦君 どういう点で、こたえているか、具体的に説明してください。
○国務大臣(佐藤榮作君) 私も家族を持っておりますし、また、子供もいるし、孫もいます。そういうことを考えると、なかなか困難な状態でございます。
○野末和彦君 じゃ、ちょっと奥さまのことをお聞きしますが、奥さまは、やはり物価高で非常に悩んでいらっしゃいますか。
○国務大臣(佐藤榮作君) これは、私ども子供のときからずいぶん苦労してまいりましたから、おそらく悩んでおることだと思っております。
○野末和彦君 それでは、総理のお宅の茶の間では、奥さんとの間に、そういう物価高に関する話題がのぼることがあるわけですね。
○国務大臣(佐藤榮作君) ときおりあります。
○野末和彦君 その場合に、奥さまは、物価高の責任はだれにあるかとおっしゃっておりますか。
○国務大臣(佐藤榮作君) ずいぶん困ったことだなあと、かようには申します。だれの責任とは言いません。
○野末和彦君 さすが総理の奥さまは内助の功が豊かで、総理の気持ちがわかっていらっしゃるというふうに解釈しますが、普通の一般の主婦は、やはり一人残らずといっていいくらいに、この問題に悩んでいるわけですね。つまり、所得もふえました。しかし、所得のふえた分を物価の上昇でもって全部吸い上げられてしまうと、ですから、暮らしにくさの実感というものは増すばかりです。これは庶民感情として当然だと思うんです。そこで、口を開けば、主婦は口ぐせのように、これは佐藤さんにしっかりしてもらわなければだめだと、こう言うわけですが、お宅では奥さまは一言もおっしゃいませんか。
○国務大臣(佐藤榮作君) ずいぶん困った状態だと、かように申しております。
○野末和彦君 困ったなら、政治の最高責任者であるあなた、何とかしてくださいということにはいきませんか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 妻が困ったと、かように申しますのは、私に対する不平だと、かように考えております。
○野末和彦君 その不平に、期待にこたえられない総理というのもつらい立場だと同情しますけれども、とにかく、総理が、孫もいらっしゃって、いろいろと物価問題で悩んでいるというふうにお答えになっても、大部分の国民は、そんなことはないと——切実感がないからですね、なかなか信用しないと思うんです。その点は、総理の不幸な立場だとは思いますけれども、切実感がない。そこで、いかに総理が真剣に物価について考え、悩んでいて、取り組んでいるかということの客観的なテストをさせていただきたいと思いますが、よろしいですか。 それでは、総理、あなたのいま着ておられる、せびろは幾らですか。
○国務大臣(佐藤榮作君) この状態は、私がいまここで答えるとプライバシーになるから、これはひとつやめてください。
○野末和彦君 総理は、プライバシーとおっしゃっても、公人ですから、やはりその程度のことは御存じであったほうがいいと思うんです。もちろん、私のほうで言ってもかまいませんけれども……。
○国務大臣(佐藤榮作君) 存じません。
○野末和彦君 総理のおしゃれのセンスは、いまの若い人もかなり評価しているくらいに抜群です。コンサルタントがいるのかいないのか知りませんけれども、閣僚の皆さんと比べれば、もう総理は段違いにおしゃれです。さすがは一国の最高責任者だと思いますけれども、総理、その生地は、お見受けするところ舶来だと思います。そうですね。そうしますと、仕立て代も一流ですから、一着十万円ないしはそれ以上にすると思いますが、これには異論ありませんか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 先ほど申しましたように、存じません。
○野末和彦君 それでは、私の聞くところでは、とにかく十万以上なんですが、これが問題じゃないのです。同じものが七年前には幾らぐらいでつくれたか、それは大体おわかりになりますか。
○国務大臣(佐藤榮作君) これも存じません。
○野末和彦君 けっこうです。別に知らなくても政治はできると思いますから、けっこうですが、約半分でつくれたのですね、七年前は。総理府の統計局の数字を見ましても、こういう洋服関係は約倍になっているわけです。で、所得も上がりましたけれども、これが倍になるということは、暮らしにくさの実感としては二倍以上、三倍にもなっていると私は思いますけれども、さて、一般庶民には、これは非常にきびしいわけですよ、このせびろ一着の値段でも。 で、総理にお聞きしますが、総理のおっしゃる人間性豊かな生活をするためには、かりにサラリーマンは、せびろを年間何着つくるのが望ましいとお考えですか。もちろん、平均的なことでけっこうですから、おっしゃってください。
○国務大臣(佐藤榮作君) 少なくとも新しい服を着たいと、こういう気持ちはあると、かように私は理解しております。これは一着です。
○野末和彦君 実情はどうでしょうか。いま、サラリーマンが年間平均、せびろを何着つくっているとお思いですか。実情です。
○国務大臣(佐藤榮作君) 検討したことはございません。
○野末和彦君 まあ、いませめて一着ということでしたが、それだけをつくりたいと思っているけれども、一着もなかなか手が回らなくなっているというのが実情だと思います。 そこで、総理、年間総理は——プライバシーに触れますけれども、せびろを去年何着おつくりになりましたか。
○国務大臣(佐藤榮作君) ちょっと覚えておりません。
○野末和彦君 覚えておられぬくらいたくさんおつくりになったと思います。私が国会へ来ましてから、総理のせびろを拝見するたびに、いつもいいものを着ていらっしゃる。そうして私の聞いたところでは、やはり総理は、去年一年——間違っていたらお許し願いたい。あらためて確認するわけですが、去年一年で総理はその十万円以上のせびろを約三十着はおつくりになっているのですが、どんなものでしょう。これは間違っているかもしれませんから……。
○国務大臣(佐藤榮作君) たいへんな間違いのようです。
○野末和彦君 私の調べたのとは全く総理のお答えが違いますから、しかし、これはニュースソースの問題にもなってきますし、ここで言う必要はないと思います。ただ、私が言いたいのは、やはり総理は、物価とか、国民の声が聞こえるとか言っても、やはり雲の上の人に近い、われわれの受けとめ方では。そこで、庶民の生活の実態というか、実情を知らなさ過ぎるのじゃないかというふうに私は思うわけですね。ですから、国民の声を聞いておられると言いながら、国民の心をつかんだ血の通った政治というものを、少なくも国民の立場ではどうしても感じられないわけです。 そこで、総理、いま普通の庶民家庭では、夕食の団らんのときに、たいてい物価高とか公共料金の値上げとか、これが話題になるわけです。話題になって、そのたびに女房はぼやくわけですね。そうすると、これでもって、月給が安いからと、こういうふうになります。そうすると、夫婦げんかになることだってありますね。もう物価値上げの飛ばっちりが夫婦げんかになって、疲れて家へ帰ってきても休息もとれないと、こういう状態もあります。これがはたして人間性豊かな生活と言えるか言えないか、それをお答えください。
○国務大臣(佐藤榮作君) やはり、私は、庶民一般が、少なくとも生活苦、それを感じないようにすること、それがやはり政治の一つの目標だと、かように思っております。 私、いま総理として月給をもらっておりますが、また皆さんも国会議員として、参議院議員として、もらっていらっしゃる。おそらくあなたと私と違いはございません。むしろ、野末君のほうが、各方面で活動、活躍——これは御自由ですから、あるいはずいぶん収入は多いのじゃないだろうかと、かように私思いながらも、先ほどのように、服を三十着もつくるというような質問が、どの辺から出てきたかなと、かように考えている。野末君は、やっぱり幸いな人だなあと、かように私実は思うんです。そういうことを私にやはりたたきつけて、三十着、少なくともそれをつくると、かように言われるが、私はさような状態ではございません。けれども、それだけとにかく収入ができることは、しあわせではないでしょうか。たいへんうらやましい状態です。
○野末和彦君 税金はあとで触れますけれども、総理の半分しか私は収入がありませんから、念のため、それは申し上げておきます。 いずれにしても、物価問題については、もういろいろむずかしい問題もあると思いますが、私がいまお聞きしているのは、国民の声をどの程度、あるいは国民の生活の実態をどの程度総理は御存じかという点ですから。 ここに独身三十歳のサラリーマンがいるわけです。で、結婚するためにアパートをさがすとしまして、この場合、電車で通勤するのに都心まで何時間のところに住むのが望ましいでしょうか。片道で、電車で通勤する一番望ましい時間です。
○国務大臣(佐藤榮作君) 会社にもよりましょうが、大体、会社——いま会社払いですからね、まあ、できるだけ近くのほうが便利なんでしょうが、しかし、遠くても会社が通勤費を持つと、こういうようなことですから、それはちょっとお尋ねになるのに不適当じゃないでしょうか。そういう意味のように考えます。
○野末和彦君 会社が通勤費を持つというのは、総理は実情を御存じないです。これはまあ大蔵委員会でも話が出ますから、かまいませんが、いま、時間を——収入とか、それじゃなくて、通勤費の問題じゃなくて、何時間の通勤時間が一番望ましいかと、それをお聞きしているんです、時間。一時間、そして一時間半、そして二時間と三つに分けますから、どれが一番望ましいでしょう。
○国務大臣(佐藤榮作君) 私は、大体三十分くらいが適当だと、かように思います。しかし、なかなか三十分くらいのところには住まいを得るということはむずかしいだろうと、かように思います。
○野末和彦君 そのとおり、もうたいへんにむずかしいです。しかし、国がつくる公団住宅は片道一時間半のところが平均ですから、総理のお考えになっていることと住宅政策の実情がこれだけ差がある。いかに総理が実情を知らないかということも、これでわかると思うのです。 それで、収入ですがね。その家賃ですね、家賃は収入の何割くらいが正常でしょうか。この現在日本人の暮らしのレベルでいきまして、収入の何割を家賃と見たら普通でしょうか。
○国務大臣(西村英一君) 通勤距離の問題でありましたが、総理はいいところへいっておるのです。大体これは、全国の勤労者を調べていますが、全国は別としまして、東京圏だけで、これが三十分から一時間の間で通っておる人が最も多くて、二四・八%。二五%の人が、四分の一の人が、この三十分から一時間の間で通っておる。それから、ずっとこの統計がありますが、いまの、あれですか、家賃の問題ですね。まあ二割くらいでしょうね。私は、住居は最も大事ですから、やはりこの住居のほうに金をかけたほうがいいと思うんです。いまの人は、やはりその辺がちょっと心得が足らないというような気持ちがいたしますね。もう少し衣食のほうを節約して住居に金をかける——これは生活のもとですからね。だから、二割ぐらいが適当であろうと、それはかけられると、こう思っております。 〔委員長退席、理事初村瀧一郎君着席〕
○野末和彦君 そこで、総理、じゃ、さっきの青年の、独身三十歳の青年ですが、三十歳だと、平均六万円ぐらいだとします。三十分、まあ理想ですから三十分でも一時間でもかまいませんが、三十分から一時間の通勤距離で、収入の二割といいますと、一万二千円ですね。一万二千円のアパート、三十分から一時間で一万二千円のアパートが新婚のためにありますか。
○国務大臣(佐藤榮作君) まず、困難でしょう。
○野末和彦君 困難ですね。ほんとうに困難です。ですから、その通勤——つまり、総理がレベルとしておる住居事情というのは、いま一般の国民には全く手が出ないということになりますね。そこで、この青年は、これはひどいと。いいですか。まじめに働いている、まじめに働いて、税金もきちんと納めている、しかも、悪いこともなにもしてないのだと、そうして模範的日本人とは言わないけれども、ちゃんとやっているのに、こういう国民に快適な生活、結婚しようと思っても快適な新居を、アパート一間でもいいから新居を保証するのがほんとうは政府の仕事じゃないか、これは政府が悪いのだというふうに、この青年はぼくに食ってかかるわけですよ、政府が悪いと。そこで、私は言ったのですよ。総理が、つまり政府が悪いのじゃないのだと、これは総理の責任じゃないのだと、おまえが悪いのだと、おまえ本人の努力が足りないから住めないのだ、そういうふうに言ったのですね。そうしましたら、彼は納得しない。当然、若いから納得しない。彼は、政治が悪い、佐藤総理が悪いと、こう言うわけですよ。それで私は、本人が悪いと、こう言うわけです。非常に困った。この場合、総理としては模範回答はどういうふうにお答えになりますか、ちょっと教えてください。
○国務大臣(佐藤榮作君) 一つ教えていただきたいものですが、本人が悪いとあなたがおっしゃったということは、それはどういうところで本人が悪いと、こういうようにおっしゃったのですか。私はどうも本人には責任はないように思いますけれども。どうも本人が悪いと言われたと、こうおっしゃるのですが、どういうところでしょうかね。私は——まあこれはいいです。とにかく、本人は責任がないことだと思っております。 私はさっき、一万二千円、これ、なかなかむずかしいでしょうと。これ、六畳の間一間、一畳二千円ですか、一万二千円ですね。これ、その部屋を、三十分くらいの距離でさがし当てるということはよほど困難なことだと、かように実は思っております。しかし、私も若い時分に、月給百円取っていた時分に、十八円あるいは二十円の家賃を出したことがございますから、その辺のところが適当だろうと、さっきのことを、いま経験から、思い出しながら考えておるわけでございます。
○野末和彦君 まあ、総理御自身も、困難であることは認めていらっしゃるわけで、そのくらいにいまの一般庶民の生活ぶりは、総理がお考えになっているよりは、やっぱりもっときついんじゃないかというふうに私は考えるわけなんですよ。 そこで、この青年とぼくはいろいろ論争して、本人が悪いと言った意味は、本人の働きが悪い、もっとアルバイトでも何でもして、かせぎが多くなればいいところに住めるという意味で言ったんですけれども、総理は、政治が悪いんだと、本人に責任はないんだとおっしゃっていただいたんで安心しましたよ。ただし、それだったらば、本人に満足できるような生活環境を与えることが政治の役目ですから、こうなるとまた話が平行線になるわけですね。 そこで、ぼくはこの青年から非常にびっくりすることを聞いたんです。つまり、住宅問題について、みんなが、だれもがほんとうに困っているという不公平がないならばそれは文句も言わない、がまんもできるだろう、しかし、現実にはすごい不公平がある。一部の人間、——彼の話の中では、高級官僚とか公社の管理職とか、そういう連中が入っている住宅ですね、それと民間の住宅の格差があり過ぎると。もちろん、それは正当な値段でしょう、高級官僚の方が住んでいるところも正当な値段でしょうが、少なくも格差があり過ぎるんだということなんです。そこで、その一例で、ぼくも驚いたんで、総理にお話ししたいのですが、港区の南麻布に電電公社の三の橋アパートというのが、十階建てで、四十五年に建設されているのですよね。十階建ての電電公社のアパート、これは三DKなんですね。電電公社の管理職が住んでいる三DKなんですが、これ、家賃はお幾らだと推定なさいますか。もちろん、専門家が出てくると思いますが、総理の推定では、三DK、麻布で、幾らですか。
○国務大臣(佐藤榮作君) ちょっと、建設をいつしたのか、そういうこともありますし……。
○野末和彦君 四十五年の建設です。
○国務大臣(佐藤榮作君) 四十五年といえば、相当物価の低いときですし、その時分から……。
○野末和彦君 相当低いって、おととしですよ。
○国務大臣(佐藤榮作君) いや、あ、そうか。——だから、その辺のところは、これはやはり公舎だとか官舎住まいというような場合は償却の問題がございますし、なかなか普通に考えられるようには通用いたしません。私も駅長をやって、駅長官舎の安いのに驚いた、そういう一人ですからね。だから、一応比較するのに、どれと比較するかと、こういうことも考えなきゃならぬ、かように思いますので、これは後ほど説明させます。存じません。
○国務大臣(廣瀬正雄君) 総理は御承知でないと存じますから、私からお答えをいたします。月額五千円でございます。
○野末和彦君 五千円ですね。三DKが五千円です。一等地です、南麻布ですから。参考までに。同じ地区に四十五年に建設された民間のマンションの相場は、敷金、礼金のほかに家賃が八万から十万以上しております。現実に調べてみました。それから、同じ三DKで、もし住宅公団が四十五年ごろにこの土地に公団住宅を建てたとしても、やはり五、六万の家賃はつけなきゃならないんじゃないか、そういうふうに思います。そうすると、これに比べると、電電公社のこの五千円、三DKが五千円というのは異常とも思える安さなんですね。この異常とも思える安さであるというのは、理由は別として、この事実は、総理、お認めになるでしょう。
○国務大臣(佐藤榮作君) ずいぶん安いように思いますが、いま手をあげていますから、電電公社のほうから説明させます。
○説明員(山本正司君) ただいまの御質問にお答えいたします。 いま御指摘の三の橋のアパートは、大正十三年に、当時の逓信省が……。
○野末和彦君 安い理由なんかいいの。別に、聞いたってしようがないから。事実を聞きたいだけです。
○説明員(山本正司君) 五千円でございます。
○野末和彦君 それでは、ついでに聞きます。その安い理由はけっこうですから、同時に、そこに入っている人たちの電話料について聞きますが、この住宅に入っている人は、電話の架設費と基本料金と度数料はどういう支払い方をしているか、その事実を説明してください。
○説明員(山本正司君) 電電公社におきましては、業務上の連絡用のために管理者の住宅に電話をつけておりますが、一カ月五百度以上は有料にするということで、ただいま取り扱っております。
○野末和彦君 ちょっと、もう一回、すみません、もう一回詳しく。 〔理事初村瀧一郎君退席、委員長着席〕 いや、ぼくが聞いたのは、架設費と基本料金と度数料ですね。いまのお答えは、度数料は五百度までがただという意味ですか。で、架設費と基本料金については、もちろん架設は公社がやるんでしょう。それから基本料金も、おそらく公社が負担でしょう。で、度数料が五百度までがただという意味ですね。
○説明員(山本正司君) 業務用の電話でございまして、これは公社の電話でございますので、架設料、基本料は取っておりません。度数料について五百度をこえた場合に料金を徴収いたしております。
○野末和彦君 それが五百度をこえた場合にと言うけれども、私用であろうが業務用であろうが、かける場合に、五百度まで、つまり五百度掛ける七円と、かりにしても三千五百円、基本料金も入れたら約五千円近くを公社が負担しているというのは、ちょっとわれわれの感覚でいくと優遇され過ぎていると思うのですが、なぜここまで優遇されるんですか。業務用だったら、向こうからかかってき、こっちからかける場合もあるでしょうが、ここまでやると、ちょっとどうかと思うのですが、あたりまえでしょうかね、これは。
○説明員(山本正司君) この業務用電話を架設いたしておりますのは、本社でいいますと係長以上の管理職だけでございます。したがいまして夜間、住宅におきましてもいろいろ業務上の連絡等もたくさんございます。ただ、使用に際しましては、私用に使わないように厳正に指導をいたしておるところでございます。
○野末和彦君 これを言い出せば切りがないと思うんです、公私混同しているんですが。家賃が安いことと、電話料金においてこれだけの、月間五千円までは公社が負担している、私をも含めてそれを負担しているという事実をここに、青年から聞いて、総理にお話ししているだけです。そこで、これ電電公社だけではないんです。国鉄、運輸省、各省庁みな、それぞれ家賃はとにかく安い。安い理由はいろいろあるでしょう。しかし、現実に家賃が安くて、電話その他で優遇措置がいろいろある。調べていますから、一々は言いませんが、とにかくデータに基づいてお話ししているわけです。 そこで総理、こういうところに住む人たちは、いわば、われわれが言う高級官僚とか、えらい人でですね。かなり収入も取っている、いわばエリート階級。こういう人たちが、家賃においてはうそみたいに安いマンションに住んでいる。安月給の一般庶民が、ばか高い家賃の民間アパートや公団に住まざるを得ないという、こういう現実はどこか、理屈は通るかもしれないが、少なくも国民感情として矛盾している、不公平だと思うのですが、総理はどうお考えになりますか。
○国務大臣(佐藤榮作君) まあ、それぞれ職場において、住居を必要とする場合があります。たとえば私の経験からいえば、私は国鉄の出身ですが、駅長をやる、やっぱり駅長は官舎に入っております。しかも駅の近くでございます。もう構内と一緒だといってもいいようなところにいる。それから同時に、駅長、助役、そういう者がいる。私が勤務したところが小さな駅ですから、助役と棟割り長屋で一緒に住んでいた。こういう経験はございます。しかし、それかといって、全部の鉄道職員を官舎に収容する、そういうわけにもいかない。したがって、高級な駅長や助役は官舎に入るけれども、駅手——駅手という名前を使っておりましたが、そういう人たちは官舎には入っていない。まあ自分の家から通勤している。こういうような状態でございます。これは一つの例であります。また、電電公社の場合もさっき指摘されましたが、おそらくそういう一つの問題が提供されると、鉄道の場合が提供されると、電電公社、どうして自分たちは住居についてめんどう見てくれないか、こういうようなことで、これまためんどう見るようになる。こういうことも一つの、経過的には理解できる問題ではないだろうかと思います。しかし、それはやっぱりそのうちにそれぞれが出世してまいりますから、やっぱりもっとふやせという議論はありましても、その選択、どういう職をそこへ入れるか、こういうようなことは、そのサークルではおのずからきまってくる。かように私は理解しておりますが、それがどうも不公平にならないように、やっぱりただいまの組合の協力も得て、ただいまのところやられておるのじゃないか、かように私は思っております。したがって、それはそれなりに理解していいのじゃないだろうか、かように思います。しかしながら一般の庶民と申しますか、そういう職場を持たないあるいは中小企業あるいは——まあ、そこらのところが一番問題がむずかしい。こういうところに何とか住宅が、そこまでのめんどうは見られないか、こういうような問題が提起されるのじゃないだろうか、かように私はこの問題については思っております。
○野末和彦君 総理は、初めのお答えは、要するに公社なり国鉄の中だけの話でそこへはいれる人、はいれない人の話のようでしたけれども、私が聞いたのは、一般庶民が見て、お役人はどうしてあんな安いところにはいれて、電話もただでという不満が、不公平感があるわけですよ。それについては、もちろん政府にはそれなりの説明があるでしょうが、ただ私は、それは不公平感としてものすごく大きい。それが政治不信につながっている一つであると思ったから、お話ししたわけですけれども、とにかく割り切れないのは、一方ではこういう幹部職員のために、とにかく金を使って安い高級住宅をつくっていく。一方では、電報料とか電話料を値上げして、赤字は国民に負担させるという姿勢が、少なくも小さい部分ですけれども、あるわけですね。何か、内には甘くて、国民のほうにいつもしわ寄せを持っていく。こういうのはどう考えても割り切れないので、これじゃ、まじめに税金を納めるのがいやになるという声が出てきてもふしぎではない。そこで総理、これが国民に奉仕する政治ですか。
○国務大臣(佐藤榮作君) これは適当でないかと思いますが、私はいま首相官邸の、公邸のほうに住んでおります。しかし私は、家は持っておるわけです。しかし、その公邸に住むことが最近の実情から適当だと思うから、実は住んでおる。そうしてまた皆さん方も、これは議員宿舎にいらっしゃる方と議員宿舎でない方もあるように思います。どうもここらにも、一般の庶民から言えば、総理のくせに公邸に入っている、こういう言われ方があろうかとも思います。また議員も、あれだけの、国家を代表しているとはいいながら、議員宿舎に入っている、議員宿舎の何がどうだと、こういうようなことも言うかもわからない。これは、いろいろそれぞれに立って、それぞれが批判するのでございますから、この民主主義のルールというものは、そういうところにもあるのでしょう。それをとめるわけにはいかないと、かように私は思いますので、そこらに、おのずからまとまってくる良識的なものが出てくるんじゃないだろうか、かように私は思いますので、この論争は、まあこの辺でひとつやめさしていただきたいと思います。
○野末和彦君 つまり、国民に満足感を与えていれば、総理のおことばではないけれども、一人一人が心豊かに暮らせる生活環境を与えていれば、だれも批判はしないのですよ。公邸に住むとか、あるいはだれが安い家賃のところに住むとか、そういうことは言わないのです。だから根本的に総理、民主主義だからそういう批判があるのでなくて、政治が国民に満足を与えていないところに原因があるのですよ。そこを全然誤解なさっては、これじゃ、とてもじゃないけれども国民に奉仕する政治なんてのは口先だけで、基本姿勢は、総理は非の打ちどころがないが、しかし実行の面においてかなり問題があると批判されてしかるべきだと思いますね。 いずれにしても、総理にお聞きすると——まあ総理が家賃とか服の値段を知る必要はありません。しかし、ないけれども、あまりにも国民の生活の実情を知らないということが、やはりこれは国民にとって、非常にそういう政治家を持つことは不幸なことだ。国民はそういう点も、そういうレベルでものを判断すると思うのですね。そこで、財界人との接触もけっこうです、宴会もけっこうですが、やはり国民の声をもっと率直に聞くという姿勢も絶対に必要だと私は思います。で、総理、時間もないことでしょうが、たとえば団地のマーケットに行くとか、ラーメン屋に行くとか、町工場に行くとか、焼き鳥屋に行くとか、時間があったときに、たまにはそういうところに行くということも悪くはないと思うのですが、最高責任者としていかがでしょうか。
○国務大臣(佐藤榮作君) このごろは、なかなか警護が厳重でございまして、焼き鳥屋にも足が運べない。すし屋にもなかなか行けない。ずいぶん窮屈なものです。私は焼き鳥屋、新橋駅の前のほうも知っておりますし、すし屋もずいぶん知っておりますが、なかなか思うようにならないというのが現状でございます。
○野末和彦君 警護が厳重で行けないということになれば、その警護のために日本の政治が悪くなったということも言えるわけですから。しかし、私がいればだいじょうぶですから、一緒に行けば、そんな、別にだれも刺したりなんかしないので、もし御希望なら、警護のために行けないなら、私がいつでも御案内しますから、どうでしょうか、総理、お気持ちありますか。
○国務大臣(佐藤榮作君) たいへんけっこうなことですから、ひとつよろしくお願いします。(笑声)
○野末和彦君 それでは、いや、笑いごとではなく、ひとつ実現したら、引退前の、非常におもしろい話になると思うのです。総理、だからぜひ実現するように、あとで個人的にそれは連絡しましょう。 ところで、総理にお聞きしますが、去年の税金はお幾らでしたか。所得税だけでけっこうですから教え願いたい。
○国務大臣(佐藤榮作君) 秘書に申告さしておりますので、ただいま覚えておりません。前もって御注意があれば、ちゃんと出すのでしたが……。
○野末和彦君 けっこうです。しかし、秘書に申告させておいても、税額がきまった時点で、税が幾らということぐらいの関心を持たなければうそだと思う。それは、もし総理が秘書に一々調べさせなければ税額がわからないとなれば、それは総理自身が、いわゆる重税感が全然ないんだ、だから関心がないんだというふうに私は解釈しますが、よろしいですか。
○国務大臣(佐藤榮作君) よろしゅうございます。
○野末和彦君 よろしいですか。これはしかし、たいへん——税金が重いというのは、一人残らずの国民が感じていることなんですね。総理は、それすらもないということになると、これは一国の政治の責任者、しかも税金問題にしろ、物価問題にしろ、国民が一番悩んでいる問題に対して、自身が自分のことに関心がないということは、これはぼくにはとても想像ができない。政治家としての資格すら疑われるのではないかというくらいに私には思えるんですが、まあ、いいでしょう。問題はそこではないんです。総理の税額がどうかではなくて、政治家の申告額が非常に、国民に何となく不信感を与えているわけですね。あれだけの収入があるはずなのに少ない、と。 そこで、私は、念のために調べようと思ったのです。国税庁に聞いたら、これがマル秘なんですね。国税庁では、国家公務員法の百条をとって、教えてくれないんですよ、これは。なぜ総理の税額がマル秘で、国民に隠さなければならない性質のものなんでしょうかね。
○政府委員(中橋敬次郎君) 現在、所得税法で、所得につきまして税務職員が知りました秘密について、国家公務員法の規定もかぶりますけれども、所得税法につきましてはさらに重い刑罰でもって秘密を守る義務が課せられております。これは申告所得税を十分円滑に推進するためにはいやはり税務職員に対しまして納税者は心配なくすべてのことをあからさまに言っていただいて、それに対しての納税をしていただくということがまず第一の担保であろうということで、こういう秘密を守る義務というのが税務職員に課せられておるのでございます。 なおつけ加えますが、さらにそのほかに、所得税法におきましては、いわゆる高額所得者につきまして、ある程度の一般の人たちの情報を期待するという制度もございます。現在、所得税法について申し上げれば、年額一千万円をこえる所得者につきましては、ある一定期間、確定申告が出ますれば、それを税務署の中に公示をいたしまして、批判を仰ぐという制度もございます。
○野末和彦君 それは申告額の問題で、諸控除を引いてきまった最終的な税額は、絶対に教えないわけでしょう。
○政府委員(中橋敬次郎君) そういう制度を十分効果あらしめますためには、所得というのが一番基本的に共通なものでございます。税額はいろいろ、人的な控除について個々人の事情が違いますし、あるいはまた所得の中にはいろいろな制度がございまするから、一般的に、共通的に普通の人が認識をしまして、あの人の税金が十分納められているのではないのではないかというような疑惑を持つことがあるとすれば、それはやはり所得をもって判断していただくのが一番便利なわけでございます。
○野末和彦君 私がお聞きしたのは——とにかく申告額はある期間見ることはできる。それはわかりました。しかし税額を教えない。税額は絶対に国民に隠さなければならないものかどうかということを考えた。個人の秘密もあるでしょう。そのほかに、いまおっしゃったような事情もあるでしょうが、この個人の税額というのが国家機密の一種であるかどうかをお聞きしたい。
○政府委員(中橋敬次郎君) むしろ国家の機密といいますよりは、納税者のプライバシーの問題でございまして、そのプライバシーを税務職員のほうで侵害するということになれば、正しい申告はなかなかできないということから、こういう守秘義務が設けられているわけでございます。
○野末和彦君 そうなりますと、やはりマル秘の判こが押してあるわけですから、国益上非常にそれは大切なことだと解釈していいわけですね。国家機密というよりも。
○政府委員(中橋敬次郎君) そういうことで納税者に正しい申告をしていただくということが、国家の利益になると思います。
○野末和彦君 そこでですね、ある新聞記者がおりまして、この新聞記者が、非常に政治家の税金は不明朗ではないかという疑いを持って、国民の疑惑を晴らすために、ひとつ、総理は公人でもあるし、ほかの人と違うから、総理の税額を国民に知らせようと、これも国民の知る権利ではないかと、これによって総理の、総理というよりも政治家の税金がガラス張りになれば政治も明るくなるんじゃないかと考えて、記者が国税庁の係に接近した、そうして西山記者と同じようなやり方でその公務員から資料をもらった、で、その資料を新聞あるいはその他のところですっぱ抜いたと。その記者は捕逮されますか。
○政府委員(中橋敬次郎君) ちょっと私からお答えするのは適当ではないのでございまするけれども、先ほど申しましたように、所得税法では、税務職員は守秘義務を課せられておりまして、それに違反すれば刑罰を問われるということになります。それで、それは税務職員に対する守秘義務でございまするので、ほかの人がそういう秘密を漏らすということは、まあこの場合にはないわけでございまするけれども、たとえばこれに対して教唆をしたというような場合には、別法総則の適用があるのではないかというふうに考えております。
○野末和彦君 いや、あるのではないかというより、責任をもって、これが逮捕されるのかどうかが知りたいんですよ。つまり新聞記者がですよ。
○政府委員(高松敬治君) そういう場合の、国家公務員法百条の問題として考えてみますと……。
○野末和彦君 百条はわかっているのです。百十一条。
○政府委員(高松敬治君) 百十一条の問題として考えてみますと、それはこの前からいろいろ御説明申し上げておるように、その取材の手段、方法が何であるかと……。
○野末和彦君 西山記者と同じ方法。だから、逮捕するのかしないのか、それだけ。
○政府委員(高松敬治君) 西山記者と同じ方法ですか。
○野末和彦君 同じやり方で取材したの。
○政府委員(高松敬治君) いや、それは一つは、同じ方法というのが一つの問題ですが、それから、そういうことが国家の機密というか、その刑罰——まず第一に、それが実質的にその刑罰をもって臨むような秘密であるかどうかという点が非常に疑問であろう。だから、その懲戒なり何なりということに一つ問題があろうと思います。それからそのやり方が非常に、まあ西山記者と同じような問題とおっしゃいますけれども、同じようなやり方ということが非常に問題がございまして、そこでそういう違法なやり方でやったときには問題になりますけれども、両方相考えますと、これはまず第一に、刑罰をもって臨む秘密に該当するかどうかというところが一つ非常に問題がございましょう。しかし、たとえば深夜ひそかに税務署に入ってそれを盗み出したということになれば、それは当然、そういうことでございます。
○野末和彦君 だめだ。逮捕するのか、しないのか。それだけなんだよ。それだけ聞かして。それだけでけっこうです。
○政府委員(高松敬治君) いまその秘密の問題からいえば、私は百十一条には大体該当しないであろうというふうに考えます。かりに、それがもし該当するというふうに考えました場合に、その方法、その機密をとった方法いかんによって考えるべき問題ですが、程度からいえば普通は逮捕までいかないということかもしれません。ただ、西山記者と同じ方法だということに限定されますと、多少問題は変わるかもしれません。
○野末和彦君 大体、悩んでいる、しどろもどろするほどの問題じゃないと思うのですよ。総理の税額くらいはわかったところで、逮捕というようなオーバーなことじゃ当然ないんですけれども、私がお聞きしたのは、百十一条で西山記者は逮捕された。で、税金の場合だったらおそらく逮捕されないであろうということになりますと、同じマル秘文書でもってこれだけの差がある。おそらく、実質上の問題だ、内容が問題であるから、というふうに政府はお答えになるでしょう。ただ、その基準ですね、片や逮捕する、片や逮捕しない、この基準はだれがきめてますか。
○政府委員(高松敬治君) かりにそれが実質上の秘密だと、こういうふうに仮定しまして、それでやる場合には、それは捜査に当たる者が逮捕するか、任意捜査でやるかということをまず決定してまいるわけでございます。
○野末和彦君 すると、さっきの国益の問題とか、そういう問題はどうなるんですか。つまり、刑事がそのときそのときできめるのですか、これは。
○政府委員(高松敬治君) 従来のいろんな裁判例その他を見て、そういう判断をきめてまいるわけでございます。前に、たとえば国益の問題で、大阪の徴税とらの巻事件というのがございました。これは裁判所も、国家公務員法にいう機密に当たらないと、こういう解釈をやっているわけでございます。
○野末和彦君 とにかく、そこで、じゃ取材する側からいって、これをやったら逮捕される、これをやったらだいじょうぶだという、このマル秘事項の重みですね、これを調べようと思って、たとえば外務省にさっきの、大臣もおっしゃいましたが、秘密文書取扱規程なんというのを見せてくれと、参考までに。そうすると、これがまた秘密になるわけですよ。そうなると、こちらは取材なんていうのは安心してできない。取材の自由はなくなる。ましてや規定が非常にあいまいでしたね。国益でも何でも、いままでの論議であいまいな規定で逮捕されるということになると、非常にこれは問題であると、そう思いますけれども……。
○政府委員(高松敬治君) この問題につきましては、現在、事件の問題になりますことは、あくまでも取材するその方法が違法であるか、適法であるかというのが現在の問題でございます。適法な方法によって取材してそれを発表するということは、これはまた別の違った問題でございます。さように考えます。
○野末和彦君 だけれども、どうもいろいろ聞いていてもさっぱり実際わからないので、総理御自身の見解が一日一日お変わりになるぐらいですから、確固たる方針とか、信念があってのことじゃないと思うのです、今度の事件は。何となく思いつきというか、行き当たりばったりのところがありますので、まあ、それよりも私はここで私の意見だけ、つまり実質的に秘密であるかどうかというのは、当然、政府がきめるべきことじゃなくて、国民がきめて——政府がきめた判断による逮捕というのは、これは不法だということを、西山記者に対してはそれだけを言っておきます。 そうしてもう一つ釈然としないのは、国会でうそをついて、あやまったアメリカ局長がいる。で、これはまあ、行政上の責任をいずれ問われるか何か知りませんが、このアメリカ局長は、公務員法の九十九条というのを見ますと、信用を傷つけて不名誉なことをしたということに該当しまして、国会の場でうそをついた、しかもそれであやまった、認めたわけですね。外務大臣は認めないけれども、とにかく認めた。これは、いわばオーバーにいえば国会をなめているわけですね。このなめている罪と秘密を漏らした罪は、どっちが重大なんですか、蓮見事務官の罪と、これと。同じ公務員法です。
○国務大臣(福田赳夫君) 吉野局長の答弁についての責任は、これは私が近くその処置をとります。一方、蓮見事務官につきましては、いま検察の手にあると、かように考えております。
○野末和彦君 そこが問題でね、つまり国民に言わせれば、国会でうそをついた罪のほうが重大だと思う。かりにこれが同じ程度だとしたら——同じ程度でもいいですね、少なくも片方、アメリカ局長は、いずれ処分をされるか知らないが、いま、のうのうとしていられる。片や、警察に勾留されている、拘置されている。これはどう考えても釈然としないと私は思うんです。少なくも両方同じ扱いされなきゃうそだと。公務員法九十九と百では違いますけれども、犯した罪の重大さというものは変わらないと当然政府は見ていいいと思うんです。私は、蓮見書記官の罪がそんなにあると思いませんけれども、少なくもやはりこの逮捕は矛盾している、釈放すべきが当然だと思います。しかし、それはしないというお答えでしたから、まあこれについては、今度の事件が両方とも私にとっては少なくも不当なものであって、絶対に承服できないということをお話しして、次に防衛の問題に移ります。 総理はこの施政方針演説の中で「国民の国を守る気概のもと、」というふうに簡単におっしゃっていますが、いま日本国民は国を守る気概があるとお思いですか、それともないとお思いですか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 私は、大多数の方があると、かように私は確信しております。
○野末和彦君 あると思う、そう思える具体的な根拠を、一つでもけっこうですから……。
○国務大臣(佐藤榮作君) これはやはりその国というものを、しばしば自分の母国というようなことばが口から出ます。これは日本の国、これは私の国ですと。このこと自身がもうすでに愛国心の一つのあらわれだと、私はかように理解しております、程度の差はございましても。
○野末和彦君 私は、いま日本の国民は国を守る気概をほんとうは持ちたいけれども、少なくもあんまり持っていないと思います。たとえば、まあ住む家も十分でないとか、アパートに入っていても子供ができたら追ん出されるとか、住まいにも愛着が持てない。あるいは物価高で暮らしにくいとか、税金が不公平じゃないかとか、いろんなことがあるんですね。ましてや生きがいがないとか、そういうことでマージャンとかパチンコがはやる、ギャンブルもブームになるとか、宝くじを売り出せば初日に行列ができるとか、いずれにしてもそういうのは、せつな主義に傾くというのは、現実が暮らしにくくて、将来が不安だからだと私は思うんです。そうしますと、人間感情として、国を守るよりも自分自身のほうが先だという気持ちになるのは、これはもう無理もないと思うんですが、総理はいかがですか。
○国務大臣(江崎真澄君) これは防衛庁長官としては大事なところですから、私が先にお答えをさしていただきます。 総理府の広報室で世論調査をやりました。これは四十三年十月で、ちょっと古いですけれどもね、しかし、「「みずからの国はみずからの手で守る」ということについて、あなたは賛成ですか、反対ですか」という、ちょうどあなたみたいな質問に対して、賛成というのが八一%、反対というのは四%、わからないというのが一五%と、こういうわけです。それから、具体的な証拠はとおっしゃるなら、自分の国は自分で守る、国を守ることは必要であるという主張を、私ども自民党はしきりに政策として唱えているわけですね。それが国会においても多数、支持されておるということは、やはりこの世論調査を裏づける証拠でもある、こんなふうに思っております。
○野末和彦君 世論調査の数字は、世論調査のやり方を見ればいかに当てにならないかわかるんですが、まあとにかく、数字は、数字ですからいいんですが、私はさっきも申し上げたとおり、国民は国を守る気概を持ちたがっていると言いましたね。持ちたいんです。原則的には自分の国は守りたいと思っていても、現実には生活のほうが先だ、国を守るのはあとだという考え方だと思うんです。だって、あれでしょう、幾ら四次防で自衛隊を強化しても、国民がそれを支持しない、バックアップしなければ、自衛隊の強化なんて何の意味もないと思うんですね。専守防衛なんて言ったって、その実はあがらないと、そういうふうにぼくは思うんですね。 そこで、国民の一人一人が心豊かに暮らせる国づくりが先か、防衛力の強化が先か、どっちが先ですか。
○国務大臣(江崎真澄君) 国民が豊かに暮らすことも、もちろんこれは大切ですが、防衛力を整備することも大切なんで、豊かに暮らせるような政策を展開していくところに、また防衛の必要性というものが国民の中にじわじわと浸透していく、こういうふうに思っております。
○野末和彦君 それでは、同じくらいに大切なのはわかりました。じゃあ、国民はどちらを望んでいるとお思いですか。防衛力の強化と豊かな国づくりと、どちらを国民が望んでいるか、それです、総理。
○国務大臣(江崎真澄君) 私から先にお答えいたしましょう。やはり国民は、私は、両方必要であるというふうに考えておる人が多いと思います。
○国務大臣(佐藤榮作君) 国民は、何といっても平和であること、しあわせであること、これを望んでおる、かように思います。 平和であるためには、一体どういうことなのか、かように考えると、先ほど来防衛庁長官からお答えしておるような基礎的な問題がございます。だからその辺は、私は、お尋ねになる御趣旨もそこらではないか、かように思っております。
○野末和彦君 これは、どっちみち論議が平行線ですから、私の考えを言いますと、当然、これは総理の言う国民に奉仕するのが政治なら、国民がまず求めているものを与えるのが先決だ。国民は何を求めているかと言えば、国を守る気概を持ちたいが、しかし、いま持つ気になれない。それよりも豊かな国づくり、住みよい生活環境のほうが先だというふうに国民は考えている。それが先で、そのあとで国を守る気概だというふうに国民は考えていると、私は解釈しているんです。ですから、これはほんとうは総理のおっしゃる福祉国家建設の基本姿勢でなくちゃいかぬと思うんですね。で、四次防なんというものはとんでもないんで、いまの自衛力で専守防衛は十分だ、減らすことはあっても、ふやすのはとんでもないというのが私の考えです。国民もかなり大多数は賛成すると私は思っています。しかし、これは平行線です。 ですから、最後に総理に提案します。まあ引退も間近と聞いておりますけれども、置きみやげに、沖繩恩赦に選挙違反を含めるとか、いろいろなうわさがあります。実際、実現するだろうと思います。しかしそれを聞いても、総理は、御意見としてというふうに、去年と同じようなお答えしかなさらないと思うんですね。ひとつここで、どうでしょうか、沖繩恩赦云々ではなくて、ここで最後に置きみやげに、景気浮揚も兼ねて、国民のためにひとつサービス減税をする気はないか。先日、大蔵省が発表した、発表というか、私ども委員会にきた資料では、去年の不況減税というのは不十分であったということが判明しているんです。大蔵大臣も、ことしは繰り上げてやってもいいということもおっしゃっているんですが、私は繰り上げでない、年内繰り上げでなくて、ことしだけの純粋なるサービスとしての減税、しいて名づけるならば佐藤総理引退記念減税(笑声)、これを、こういう特別なもの、史上前例のない大減税、というのは、大蔵大臣はいつも、減税は去年やったからことしはやらぬと言う。一回やればいいというものじゃないと思うのです。サービスなんですね。奉仕するんだったら、盲腸の手術じゃないんだから、一年に一回でいいんじゃなくて、総理、ひとつこの特別大減税をやる気がないかどうか。 なぜこれをおすすめするかといいますと、私と総理は同じ山口県の出身で、同郷のよしみでもありますけれども、それ以上に引退後の総理のことを考える。いいですか、これも総理はいままで、国民は総理が財界サービスばかりしてきた、国民のほうを向いてくれなかった、しかし、そろそろ引退も迫ったから、ここでどえらいサービスをしてくれるのじゃないかと期待しているのじゃないか。もしこれをしなかったら、国民の積もり積もった怨念が総理にのしかかって、総理は、これは極楽大往生を遂げられないのじゃないかというぐあいに思うのです。ひとつ総理、引退記念減税やる意思がおありかどうか、それをお聞かせ願いたい。
○国務大臣(佐藤榮作君) これはどうも、佐藤引退減税、名前がよろしくないですね、どうも(笑声)。私は、減税は減税、これはまた引退は引退と、区別してやっぱりやるべきで、引退減税、引退するにも、やはりそういう名前まで残したい、これでは一体、政治をやっているのかどうか、同じ同郷の出身ではありますが、これはひとつ一緒にはしないで。 ただ、その減税の問題については、昨年減税をいたしました際に、特にこれを通年減税にいたしましたのも、当時の情勢から申しまして、これはやっぱり通年減税すべきだ、かように実は水田君と相談してやったのでございます。私はそれはそれなりに、これはちょうど年末でありましただけに、効果はあったと思っております。しかし、どうもことしまでその不況は続いておる。どうもその効果は十分ついておらない。だから、ことしになってさらに減税するという、その財源もなかなかない。今度は、うんと思い切って公債を発行してまで、ひとつ景気を振興しよう、こういう政策をとった。そういうために、どうもただいま言われるような減税のほうにまで手が回らなかったと、こういうことはございます。しかし、景気が直ってきて、そして本来の経済状態を取り返せば、お互いの収入もさらにふえますし、国も税金を減税するだけの余力ができるだろうと、かように実は思っております。したがってやっぱり大事なことは、ただいまの予算、これを早く成立させて、効果があがるようにしたい、これがもう何よりも大事なことであります。これは同郷のよしみをもちまして、野末君に特にお願いをいたします。よろしくお願いいたします。
○野末和彦君 いまの、総理、じゃ名前はとっても、実質的にやるのかどうか。前向きに検討するのかどうか。
○国務大臣(佐藤榮作君) いま予算を提案して御審議をいただいております。これをこのままやるのでございまして、さらに減税をつけ加える、こういうようなことは、この際はいたしません。
○野末和彦君 最後にあと十五秒。 それでは、私のほうから——総理は置きみやげをなさらないことがわかりましたから、私のほうで最後にプレゼントします。中国にこういうことばがあります。「功成り名遂げて身退くは天の道なり」。賢明な総理は御存じだと思いますが、私もこのとおりであってほしい、総理の名を惜しむあまり。しかし、現実にあなたはまだ引退の意思を明らかにしないこの時点で、私はこのことばを変えて、あらためてプレゼントしたい。功成らず、名遂げず、身退かず、これ総理の道なり。 私の質問はこれで終わります。
○委員長(徳永正利君) 野末君の質疑は終了いたしました。 以上をもちまして総括質疑は全部終了いたしました。 明日は午前十時、公聴会を開会いたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後六時四十二分散会