法務委員会 第6号
- 発言数
- 120 件
- 登壇者
- 9 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1972/03/28
会議録
○委員長(阿部憲一君) ただいまから法務委員会を開会いたします。 まず、委員の異動について報告いたします。 本日、林田悠紀夫君、木島義夫君及び重宗雄三君が委員を辞任され、その補欠として、初村瀧一郎君、土屋義彦君及び石本茂君が選任されました。 —————————————
○委員長(阿部憲一君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。 前回に引き続き、これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
○加瀬完君 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の提案理由の説明を伺ったわけでございますが、この提案理由の中に「裁判所における事件の適正迅速な処理を図る等のため、裁判所の職員の員数を増加しようとする」ということが一つあげられております。これは非常に大切なことでありますけれども、もう一つ半面といいますか、裁判官の資質、能力というものもまた、大切な要件ではないかと思いますが、この点御同意いただけますか。
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) 御指摘のとおり、裁判官は、数のみで事足りるのではございません。資質、能力もきわめて大切な問題であると考えております。
○加瀬完君 そこで、先般の佐々木委員の質問に関連して、若干伺いました点をさらに伺いたいと思いますが、戦後の司法制度は、旧制度に対しまして著しく変わったわけでございます。その一つですね、裁判官の独立の保障というものが非常に強調されたと思いますが、この点もお認めいただけますか。
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) 御指摘のとおり、戦前の明治憲法に比較しまして、新憲法におきましては、飛躍的に司法の独立、裁判官の独立を保障されておるわけでございます。
○加瀬完君 そこで、再任の問題になりますが、十年の任期というものはいままでどう運用されておりましたか。たとえば、任期終了日より先に法廷の期日を指定する等のことが許されておったのではありませんか。これはどういう根拠によったんですか。再任されることが慣行となっておったがために、再任の可否が決せられる以後の法廷期日が予定されておる、そういう慣行が許されておったということにはならないですか。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) ただいま加瀬委員から御指摘ございましたように、任期がまいります、たとえば四月一日に任期がくるといたしまして、そのあとの四月中の期日、あるいは五月の期日、場合によりましてはもう少し先の期日もございます。そういった期日は指定されておったのが実情でございます。そういう実情と申しますのは、まあ事件を担当しております具体的の裁判官といたしましては、再任されるかどうかということの問題はございますけれども、裁判所そのものとしましては継続していくわけでございます。裁判所としての抽象的な立場から、具体的事件の期日を先にそれぞれ指定しておったという実情になるわけでございます。
○加瀬完君 それは裁判所という一つの組織の運営でもありますが、少なくも裁判官の個人の法廷期日をきめる場合は、都合とか、個人的なその他のいろいろな諸般の情勢というものを判断して、あるいは再任をされないかもしれない裁判官が、終了期日になるかもしれないというその以後の期日を予定するということが、少なくも許されておったわけですね。この前の御説明のように、十年という期日で、それ以後、再任されるか、されないかわからないということだったら、その裁判官が、やめさせられるかもしれない裁判官の、個人的な都合も加味して次期の法廷期日がきめられるということはおかしいじゃないですか。再任という前提がなければこの理屈は通らないですよ。いままで、これが慣行として行なわれておったということは、再任されることが原則という、大前提があったから、これが許容されておったということにはなりませんか。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 実際、事実上大部分の方が、九〇%以上の方が再任されておるということは御指摘のとおりでございます。ただ、具体的にその方が再任されることを前提にして、先の期日が指定されておったというふうに見得るかどうかという問題でございますけれども、たとえば四月一日に、東京の地方裁判所から大阪の地方裁判所に転出することがすでにきまっておるような場合がございます。そういう場合でも、東京におります間は、東京の裁判所の第何部の裁判官ということで、四月以降の期日をやはり入れておるわけでございまして、そういったこともございますので、いま御指摘のようなのが実際ではございますけれども、そのことから再任が当然予定されなければ、できない慣行なんだというふうには申し上げるわけにいかないのじゃないだろうかと考えております。
○加瀬完君 それでは、憲法及び裁判所法による「再任されることができる」というのは、どういうことですか。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 裁判官の身分というものが非常に重要でございますので、それについての保障があるわけでございますが、しかしまたあまりにもそれが強大でございますと、まあ司法が特に強くなってしまうというようなこともございまして、チェック・アンド・バランスと申しますか、そういった観点から、裁判官の任期というものが憲法に規定されたというように私どもは承知しております。
○加瀬完君 この裁判官の身分の継続性に関する問題で、憲法改正草案に関する想定問答というのが、法制局においてつくられておりましたね。これによりますと、したがって原則として再任すべきものとする、こう答えよというふうに書いてありますね。いろいろ理由がありまして、したがって原則として再任すべきものとする——憲法改正論争のときには、この裁判官の身分継続に関しては、原則として再任すべきものとするという政府答弁をしているわけです。これはお認めになりますね。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 御指摘のとおりでございまして、特段の事情なき限り、原則として再任されるのがまあ通例であるという意味におきまして、原則として再任されるものであるという趣旨の御説明であったというふうに理解いたしております。
○加瀬完君 それから、同じく帝国憲法改正案の司法の規定に関する想定問答で、これはその当時の司法省の民事局がつくったものの中に、「在任中、とくに裁判官として不適当な行跡のない限り再任されることとなろう」、こういっている。いまの御説明で、特に裁判官として不適当な行跡のない限りは再任されるものだということは、いまもって変わらないと解釈してよろしゅうございますね。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 「不適当な行跡」ということばの問題でございますが、一般的な問題といたしまして、御説のとおりに考えていただいてよろしいのではなかろうかと考えております。
○加瀬完君 すると、再任することができるということは、当然、裁判官として不適当な行跡のない限りは、再任されるべきものだと解していいですね。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) すでに加瀬委員も御承知のように、裁判官の任命ということにつきましては、新しい憲法が制定されました際に、法曹一元的な考え方といったようなものが、その根底にあったわけでございます。で、そういう場合には、裁判官に欠員が生じました際には、やはりその時点における最も適当な方、それがこれまで裁判官をやっておられた方でございますか、あるいは検察官をやっておられた方でございますか、弁護士をやっておられた方であろうが、そういうことは別といたしまして、広く適任の方を求めていくという考え方があったことは、事実ではなかろうかと思うわけでございます。 しかし、実際問題といたしまして、その後の運用におきましては、なかなか弁護士さんあるいは大学の教授等からきていただくわけにまいりませんので、判事補を採用いたしまして、判事補から十年の経過を経て判事になるというような扱いになってきておるわけでございます。これが、いわゆるキャリア的な運用をなされておるというふうに一般にいわれるところでございまして、そういうキャリア的な運用ということでございますれば、やはりその実際の運用という面からまいりますと、いま仰せのようなことになるのではなかろうかと思っております。
○加瀬完君 これは法律が制定されるときのいろいろの議員の質問に対する当局の答弁、したがって、これは将来の、何といいますか、関係において成立した法律の解釈においては、前提として尊重さるべきものだと思うのです。そこで、任期制というものが一応とられておるわけでございますが、いままでの法律を制定する当時の考え方からすれば、これは任期制は、任期中の身分保障にとどまらず、不適当な瑕疵のない限りは身分の継続性を意味しておると考えてよろしゅうございますね。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 実際の運用ということになりますと、先ほど来御説明申し上げておりますように、大部分の方がずっと任期を重ねられまして、六十五歳あるいは七十歳の定年までおつとめになるということでございます。しかし、それはいわゆる運用の実態というものから見た場合の議論でございます。法律の解釈といいますか、法律論ということでございますれば、やはり十年の任期をもって切れて、身分の保障というものは、その在任中の保障でございまして、任期から任期にまたがる、その途中の保障をも含むものではない、ということになるのではなかろうかと思っております。
○加瀬完君 それはあなたの解釈、あなた方の解釈として承ります。しかし、この法律制定のときにはそういう解釈をしておらぬのです。先ほども申し上げましたとおり、原則として再任すべきものだとすると、こういう見方をしている。それから一歩譲っても、裁判官として不適当な行跡のない限りは再任されることとなろうと、再任されるものだと解釈する。したがって、当然瑕疵のない限りは、十年の任期の間だけ身分保障があるのではなくて、十年はさらに次の十年と継続性があるものだと、こう解釈するのが当然じゃないか。法律制定のときには、そういうことでございますよと政府が説明しておる。それを個人的見解で、政府の統一見解がそういうことだというなら別だ。しかし、運用上で適当に、この身分の継続性というものを、そうでないと解釈をするということは許されない。 これは意見になりますので、次に質問を進めますと、それならば、当然継続すべきものを継続させないという条件というものはどういうものだ、こういうことになるわけです。これはこの前伺いましたが、適切な御答弁はございませんでした。それでこちらから具体的に聞きます。 著しく成績の悪い者、老齢とか病気とかで辞意を表明しているような特別の事情がある者、あるいは懲戒処分などをたびたび受けた者、裁判官として職務遂行に不適当と認められた者、いわゆるこういう者は分限令ですでにきめられておるわけですね。分限令できめられていることでなくて一体、再任を拒否される条件というものはどういうものですか。少なくも、裁判官の思想傾向を理由として、再任を拒否するということはできないということは、お認めになりましょうね。そうすると、分限令以外で拒否をするという正当な理由というものはどういうことですか。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 裁判官の適性、適格性ということでございますが、抽象的にはまあ法曹資格というものと一緒に考えられておるわけでございますが、私ども、やはり裁判官は、双方の争いというものをさばく、場合によりましては強大なる国家権力というものも相手にいたしまして、それに対してき然たる立場で判断をして、司法としての国家意思を決定していくという高い次元に立ち、それだけ重大なる職責を有しておるということでございまして、これは申し上げるまでもないわけでございますが、そういう観点から、裁判官たるにふさわしい人を求めていかなければならないということを念願いたしておるわけでございます。といたしますと、じゃ、どういう方をさして言うのかということでございますが、これは修習生に関する最高裁判所の規則にも明文でうたっておりますが、「高い識見と円満な常識を養い、法律に関する理論と実務を身につけなければいけない、そして、法曹たるにふさわしい品位と能力を備えるように努めなければならない。」ということを、修習生の修習の目的としてうたっておるわけでございます。これは修習生の修習の目的でございますけれども、そういうような精神と申しますか、そういうような考え方というものは、これは裁判官になりましても当然のことでございます。さらに判事補を十年やりまして判事に任命されるというときの場合には、それにさらに加えて十年の研さんというものがより高い、より密度の濃い立場をもって要求されていかなければいけない、そういったものが裁判官としての適格であると、これに欠ければやはり欠けるということになるのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
○加瀬完君 裁判官にふさわしくない条項として分限令がある。それから、あとで質問をいたしますが、弾劾裁判所制度がある。弾劾裁判所にもかからない、分限令にもかからない、そのワクの外でふさわしくない条項というのは一体何だ。これは全く人専権を持っておる人の管理感覚によって左右されるということが大幅に出てくる。そうすると、全くこれは恣意によって人事が左右されるということになり得るのじゃないか、こういう心配を持つわけです。 そこで、古いことをたびたび持ち出して恐縮ですが、再任の問題で、再任をさせないということが生ずるのではないかという質問に対して、当時の国務大臣金森徳次郎さん、憲法関係の政府担当大臣でありました方が、「故ナク再任ヲ拒ムト云フヤウナコトハナカラウ」という答弁をいたしております。これは、貴族院憲法改正特別委員会で佐々木惣一さんの質問に対して、「故ナク再任ヲ拒ムト云フヤウナコトハナカラウ」ということを答えている。ゆえなく再任を拒むということはなかろうということはどういうことですか、これは。こう説明をはっきりしているのです。あなた方これを受けて立たなければならぬでしょう。ゆえなく再任を云々ということは、分限令なり弾劾裁判所にかけられたりして処罰をされるということがないもので、かってにその時点の管理者がいろいろなワクをきめて再任を拒むということがあり得ないという答弁じゃないですか。佐々木さんはそう質問しているのです。しかも最高裁判所がどうするかは、「謂ハバ統一體ト云フヤウナ原理ニ依ツテ十分研究サレルコトト思ヒマス」と、こう言っている。 一歩譲っても、再任を拒否するというようなことは、十分研究された成果としてこれはおやりになったことだと思う。それならば、ふさわしくない人というような概括的な御答弁ではなくて、分限令の内容でもなければ弾劾裁判所の対象でなくても、こういうようなものは、これはわれわれは再任を拒みましたということをはっきり示す必要がありますよ。こんなうやむやのうちにやっていては、最高裁が疑惑を世間から持たれることになる。一番名実ともに信頼されなければならぬ最高裁が、説明を聞かなければならないような行政措置をするということは、これは最高裁のためにわれわれはとらない。あわせて弾劾裁判所がどうして設けられたのか。弾劾理由もなければ、分限令にもはずれない者が、再任を拒否されなければならない理由はどこにあるのか、これをひとつ明瞭にしてください。 いままでのあなた方の説明では全然ふに落ちませんよ。私がわからないというより、国民がたくさんわからない。わからないから、再任問題というのば、大きく社会問題になっている。あとでも言いますけれども、あなた方に裁判官をどうするという権利はないわけですからね。公務員の任免権は国民が持っているわけですから、それをあなた方代行しているだけで、したがって、権利者である国民に十分説明をしなければあなた方の立場としても筋が通らないですよ。そうではありませんか。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) まあ裁判官は強い身分の保障がございます。もちろん私どもは、それは法律的には任期中の保障であるというふうに考えておりますが、いずれにいたしましても、裁判官の身分を保持している間は保障があるわけでございまして、そういった保障があるにもかかわらず、特段の事情があった場合には職を退かせる。で、その理由として考えられるものが分限であり、弾劾の制度であろうというふうに考えております。ことに弾劾等につきましては、弾劾理由があるというふうに考えられます場合には、最高裁長官が、みずからそのことを訴追委員会に申し出なければならない、というふうにもなっているわけであります。したがいまして、分限、弾劾の事由に該当すると思われるような方につきましては、これはもう当然そちらのほうの手続でもって、それぞれの処分を仰ぐというべきでありまして、任期終了による再任名簿に載せるかどうかという問題は、これはそういったものの、そとになおかつやはり適任でないという方を、法律は、ある程度のワクではございましょうけれども、予定しているものと思われるわけでございます。そういった方々につきまして、慎重に裁判官会議で御決定の上、名簿の登載をいたさないということで行なわれているのではないかというふうに考えているわけでございます。決して、私どもも事務的な恣意によりまして、名簿登載をどうこうするというものではないわけでございます。
○加瀬完君 ゆえなく再任が拒否されるということはないでしょう。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) ゆえなく再任が拒否される、名簿に登載されないというようなことは、もちろんないものと確信いたしております。
○加瀬完君 それでは、そのゆえとは何ですか。ゆえあった場合、再任拒否されるのでしょう。それでは、再任を拒否されるゆえというのは、どういう内容ですか。私がこの前から聞いているのはそこですよ。ゆえなければ再任を拒否されることはない。それではゆえとは何であるか、明瞭にしてくれというと、その答えは一つもない。どういう場合に再任が拒否されるか、それをひとつはっきり……。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 再任名簿に登載されるかどうかということは、先ほど来御説明を申し上げましたように、高い識見、円満な常識、それからまた、法律理論と実務というものを踏まえた上での、法曹たるにふさわしい品位と能力という観点から評価されて、それに欠けるところがあるかどうかという問題であろうというふうに考えるわけでございます。そうして、そういうものの観点からの評価が行なわれて、欠けるというふうな認定がございますれば、それは名簿に登載されないということになるものと私どもは考えております。
○加瀬完君 そうすると、名簿に登載をされない裁判官は、元裁判官だが、将来裁判官としては不適切だ、不適当だと、こう解していいですね。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 名簿登載の時点におきまして、そのような御判断をいただいたということでございますが、しかしまた、将来そういった点が非常にまあ俗に申しまして、あらたまって、さらに資質の向上を示されたということになれば、これはまた、その時点における別個の問題でございまして、判断する時点において先ほど申し上げたような観点から、おのおのの場合に慎重な判断がなされるということに相なるのではなかろうかと考えております。
○加瀬完君 次に申し上げることは私の質問の本旨ではありませんが、いま、ことばじりをつかまえるようですけれども、いまは不適切だが、しばらく見ておればもう一回裁判官として適切になるかもしれないという程度のものならば、なぜ一体これを指導して、優秀な裁判官の業績を履行できるようにしないのですか。そういう問題が起こる。 今度は私の質問の本筋であります。専門家ではありませんので、あやまちがあったら御訂正をいただきますが、こういう場合はどういうことになりますか。かりに、東京地裁で十年間勤務をいたしておりました裁判官が、簡易裁判所に移った。地裁判事としては不適格だということになります。しかし、簡易裁判所の判事としても同時に不適格になりますか。
○最高裁所長官代理者(矢口洪一君) ちょっと正確に把握いたしかねる点がございますが、判事と判事補というのは少し身分が違いますので、どういうことであろうかと思いますが、いまの御設例でございますと、これは判事として不適格である。しかし、簡易裁判所判事として勤務しておるということでございますれば、これは一応資格としては別個の資格でございます。したがいまして、判事として不適格であること即簡易裁判所判事として不適格であるということにはならないのではないかと考えております。逆の場合は別でございます。
○加瀬完君 それでは簡易裁判所において不適格な場合、その方が地方裁判所に移った場合は不適格になるのですか。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) まあごく常識的な考えでございますが、判事の任命資格というものは、簡易裁判所判事の任命資格よりも、より高次なものであるというふうに考えるのが常識に合うのではないかと思います。そういうふうな常識がそのまま認められ、受け入れられますれば、いまお尋ねのようになるわけでございます。しかし簡易裁判所判事というのは、これは必ずしも法律の資格だけが要求されるのではなくて、まあいわゆる名望家、徳望家という方が一つの要件でございますし、また、簡易裁判所判事制度の特色をなしておりますので、そういう観点から、必ずしも全面的に判事というものが、簡易裁判所判事の上におおいかぶさっていないという観点をとれば、またこれは別個の問題になろうかと思っております。
○加瀬完君 とにかく地方裁判所の裁判官としては不適当だ、その者が簡易裁判所の裁判官であれば適当だということが現行、行なわれておるわけですね。地方裁判所では不適当であるが、簡易裁判所なら適当だという、そのけじめはどこでつけるのですか。国民は全くわかりませんね。地方裁判所なら不適当だから、それは裁判官としての資格はない、しかし簡易裁判所ならよろしい。簡易裁判所であろうとも、扱う職務の内容なり範囲なりは違っておりましても、国民は裁判官に対しまして、裁判を仰ぐということには少しも変わりがないわけでしょう。しかし、地方裁判所では不適当な裁判官が、簡易裁判所では堂々と適当だとして裁判権を行使するということになったら、おかしいじゃないですか。逆にいうならば、簡易裁判所の裁判というものは、そんな不適当な判事補あるいは裁判官にやらせておってもよろしいという、こういう最高裁は御見解ですか。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 先ほども御説明を申し上げましたが、裁判官は十年の間というものは身分の保障がございまして、その意に反して免官されることがないわけでございます。ただ、その意に反して免官され得る場合として、分限の問題と訴追による弾劾裁判の場合があるわけでございます。それがございません限りは、裁判官は身分を保持されるわけでございまして、先ほど御説明申し上げましたように、再任の名簿に登載しないという範囲は、その範囲内に限られないということを申し上げましたが、それは再任任期が切れて、再任するかどうかという時点の問題でございまして、いまの御設例で申し上げますと、地方裁判所の裁判官としては、任期が終了して再任にならなかったけれども、簡易裁判所の裁判官としては、まだ任期が残っておるということでございますと、その方が分限、弾劾という事由に該当しない限りは、これはまさしく裁判官の身分の保障の問題として、その簡易裁判所の裁判官の任期中は、職務を遂行される権利と義務があるということに相なるのではなかろうかと思っております。
○加瀬完君 それは理屈はつけられるわけですけれども、しかし裁判の影響を受ける国民の側からすれば、不適切であるという判定の下された裁判官が、クラスは違っても、別の裁判所では、堂々と裁判官としてまかり通るということは、これは許されませんよ。法の不備でしょう、これは。結局、再任を妨げられることはないという前提で、いままで運用がされてきたので、裁判官の任期が簡易裁判所とこちらでずれてても、再任されないという事態が起こらない限り、問題がないからね。こういう法律がそのまま、いまのような不適切なところを訂正することなく通ったのです。どう考えてもおかしいでしょう。同じ国家が、地方裁判所の裁判官としては、だめだというものを、簡易裁判所では、任期が来ないからまだいい、こんな、同じ人を、同じ雇用者である国家が、二つに使い分けるなんていう合理性はどこにありますか。問題は、再任を妨げられることは、よほどのことがない限りないという前提でありますから、こういう矛盾がこのまままかり通ってきたわけです。 そこで、問題を別にしますが、公務員の選定権が国民固有の権利であるということも、これはお認めになりますね。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) お説のとおりでございます。
○加瀬完君 それならば、再任の拒否の理由は当然、権利者である国民に報告されてしかるべきですね。国民一般に公表できないというなら、こういう曲がりなりにも、国民にかわって出ておって質問している私たちの質問に対して、説明ができないということはおかしいですね。再任拒否理由の公表の義務というものは最高裁にあると思いますが、これは認めますか。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 憲法の十五条が、ただいま加瀬委員がお述べになりましたような、国民の権利を規定しておることはそのとおりでございます。しかし、具体的な任命権ということになりますと、これはそれを受けました憲法付属法あるいは関連法によって、だれが任命するかということがきめられておるわけでございます。まあ私ども最高裁判所としましては、内閣が御任命いただく、それの名簿を提出するという役割りを規定されておるわけでございます。これも同じくやはり憲法によって規定されておるという関係に相なっておるわけでございます。 で、そういった場合に、具体的に規定されている任命権者、あるいは名簿提出の役割りを持ちます最高裁判所が、その名簿に載せなかった理由というものを公表するかどうかということは、これはやはり、別個の観点から考えていかなければいけない問題ではなかろうかというふうに考えております。もちろん、先ほど来重ねて申し上げましたように、裁判官たるにどういう者がふさわしいか、どういうものであることを理念として研さんをいたさなければいけないかということは、それぞれ規定がございますので、それを裏を返していきますれば、どういったものが裁判官に適格であり、また、それに欠けるものが不適であるということは当然、出てくるはずでございますが、それ以上に個々の事案につきまして、理由を本人に告げる、あるいは国民の前に申し上げるということになりますと、これはそれによって生じてまいります弊害というものももちろんございます。私どもとしては、そういった理由は申し上げることを遠慮さしていただくのが至当ではなかろうかという立場を、これまでとってきているものでございます。
○加瀬完君 憲法十五条の一項に、「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。」とあり、われわれの権利なんですよ。その権利者であるわれわれがどうも最高裁のやっていることはおかしい。普通の公務員であれば、本人にも弁明の機会というものを与えなければならないことになっていますね。普通の公務員よりも身分保障を固められておったところの裁判官は、本人の弁解も許されないわけですね。どういう基準でこれは再任を妨げるのかとわれわれが聞いても、お答えにならぬ。裁判官の身分保障というものは、どこにありますか。われわれは、だれでもかれでもみんな再任をさせなければいけないと言っているのじゃない。国の利益から考えて、裁判官にふさわしくない者はやめさせることは当然のことだ、これは。それならそれの理由を明らかにしなさいと言うのですよ。あなた方の義務でしょう。こういうことで再任をさせるわけにはいかないのですということを、どうして明瞭に言って悪いのですか。憲法にはずれないことをやっているなら、法律にはずれないようなやり方をしているなら、堂々と……。あなた方はそれをもう、国会の質問に対して答えられないじゃないですか。新聞紙に公告を出せとか、テレビで放送しろなどということなら、ふざけたことを言うなとおしかりになるのももっともだ。われわれが一対一で聞いている、委員会で聞いている。それに対して答えられないというそんなばかなことがありますか。われわれは最高裁の裁判権というものを尊重する。したがってその裁判権は神聖侵すべからざるものでなければならない、一点の疑惑もあってはならない。そこで身分保障というものを確実に固められておったものが、今後は十年という一つの任期があっても、それは継続性のあるものとして解釈すべきものだといういままでの考え方を変えて、十年で再任する者と再任しない者との区分けをしている。どうして一体区分けをするのですか、こういうふうに聞いていくと、よりふさわしい人をとる。じゃふさわしくない条件というものはどういうものですかというと、それは説明をすると混乱を生ずるとか、説明をするとかえって世間に迷惑をかけるようなお話しかない。何も迷惑かかりませんよ。堂々と言ってくださいよ。ゆえなくしては再任は妨げない。ゆえあるから妨げる。じゃそのゆえというものをはっきりさしてくれ。少なくも国会の質問に対してははっきり答えるべきですよ。答えをわれわれが承知するかしないかということは、これは相対的な問題だから……。誠意を持って答える義務はあなた方にあるはずです。最高裁であろうと何であろうと、国民の権利を代行しているにすぎないのだから、そのことの権利者である国民が、はっきりしなさいよと言ったら、はっきりすることは当然だ。こんなことやっていたら法律通りませんよ。こんなでたらめな、いままで質疑を重ねてきた、こんなでたらめなことがありますか。 もう一回言いますよ。あなたはこういうことを認めた。公務員の任免の選定権は国民固有の権利である。それならばこの固有の権利を持っている国民が再任をさせない裁判官の理由というものは一体どういうものだか説明をしてくださいと伺っている。あなたで答えられなかったら、答えられるのはだれですか。答えられる者をそこで言ってください。総理大臣だかどなたか知りませんが、それならその者が来て答えてもらうまでこれやめましょうよ、質問を。そんなことで通ると思ったら当てが違いますよ。国民のほとんどが疑惑を持っている。再任しないかするかということに疑惑を持っているのじゃない。その理由が不明瞭だということで疑惑を持っている。明瞭にしてください。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) まず法律論を申し上げなければいけないのではないかというふうに思うわけでございますが、任期終了によって再任の名簿に登載するがどうかということでございますが、まあこれはそこに、理屈に走るかとも存じますけれども、そこに載せるという処分は確かにございます。しかし載せないという処分があるわけではないのでございます。載せるという処分をいたしまして、事実上載せられなかった方があるわけでございます。まあ載せないという処分がそこに行なわれるというものではございませんので……。
○加瀬完君 同じことじゃないか。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) そういった観点からまいりますと、その処分の理由というものは、法律的には申し上げるべきものではないというふうに考えておるわけでございます。しかし、それは理屈の問題でございまして、先ほど来お尋ねのように、どういう観点から実際の運用として行なわれておるのであろうかというお尋ねでございますので、申し上げておるわけでございますが、先ほど繰り返し申し上げましたように、裁判官たるにふさわしい適格というものに欠けるというように見られた者が、弾劾、あるいは訴追のところまではいかないけれども、それに欠けると見られますような方が、やはり名簿に登載されない。それが一般的な理由である、というように申し上げるよりほか、しょうがないのじゃないかというように考えております。
○加瀬完君 分限令に該当しない、弾劾裁判所の問題にもされいなということが適格だということですよ。不適格であれば分限令に当然これはかかる。そうでなくて、あなたの説明のように、分限令にはかかりません、弾劾裁判所の問題にもなりませんけれども、とにかく事実上載せるわけにはいかなかったというならば、いままでにきめられておった分限令以外のことで何か重要なその理由があるはずです。なぜならば、いままで再任の機会は何回かあったけれども、再任されなかった人はいままではなかった。それから法律制定のときに再任されることは当然だという説明があった。今度に限って、最近になりましてからこの再任が拒否された、事実上拒否です。そうすると、分限令にあるようなことでもあるかというと、それは関係はない。それじゃ何ですよ、一体理由は。これは自分の身分の安定というのに戦々恐々として、裁判官が裁判するということになったら重大ですよ。時の政治権力が、自分の身分を判断するのじゃないかという疑義を持って、これで公平な裁判ができますか。あるいは世間の思惑ということで自分は首になるんじゃないかという不安感で、正当な裁判が進められますか。だから、裁判は、裁判官の身分の保障ということを十分にいままで裏づけてきたではありませんか。ところが、さっぱり説明のつかない理由によって、再登録されないこともあるということになったら、身分を安定させようという趣旨はなくなってしまうではありませんか。 そういうように、最初にも申しましたが、あなたがお認めになった、戦後の司法制度の旧制度に対して、著しく変わった点は、裁判官の独立の保障ではないか一そうであると答えている。その独立の保障がないのです。一般の公務員がさらに不安定な身分に置かれて、どこに独立の保障がありますか。根本的に憲法の精神をあなた方はじゅうりんしていることにもなります。しろうとの私どもでも判断できることを、専門家のあなた方がどうして判断できないのか。いや、やめたやつは、はなはだ非憲法的だ、反憲法的だというならば、こういう理由だという、その理由をあげてくださいと言っているのです。いまの御説明では納得できません。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 裁判官の独立ということが、裁判の独立のために必要なものであるということは、これは私どももまことにそのとおりだと考えております。そういたしまして、そういったものがあることが必要であるということと、これを守っていくためには十全の努力をしなければいけないということもよく承知いたしておるつもりでございます。戦前の裁判所構成法におきましては、一たん裁判官になりますと、六十三歳でございましたか、定年になるまでは身分の保障が継続したわけでございまして、そういう意味では、裁判官は終身保障を受けておったわけでございます。また、退職いたしましても、裁判官という官を保有いたしまして、退職判事、退職検事ということで終身、一たん裁判官になりました以上は、死ぬまで裁判官ということであったのでございます。ところが、戦後の裁判所法になりまして、新しい憲法の規定を受けまして、その辺の事情が変わってまいりまして、一面におきまして、戦前の裁判官と比べまして、戦後の裁判官は違憲立法審査権というものを付与されました。また、したがいまして、極端に申しますと、下級裁判所の、きょうなったばかりの裁判官でも、違憲立法の判断をいたしまして、場合によっては、違憲であることを理由に法律、命令等を審査できるということになったわけでございます。 で、この観点から見てまいりますと、裁判官の職責は非常に重要さを加えたということは御承知のとおりでございます。また、その以外にも行政府の一部局でございます司法省に属しておりました裁判所が独立いたしまして、名実ともに三権分立の一環としてその地位を得たということも、裁判官の独立、あるいは身分の保障というものの、これは無形のものであるかもしれませんけれども、重要な強力性を加えたということになるのではなかろうかと思います。 しかし、そのようにだけなったわけではございませんので、逆の面から申しますと、裁判官に任期が設けられて、十年ということでその任期が制定されたということでございます。したがいまして、その十年が切れて、次に再任されるかどうかというその一時点をとらえてみますと、それは確かにその時点におきましては、いま申しましたような裁判官の身分の保障といったようなものが、すべて切れてしまうというような制度になっておるわけでございます。ただ繰り返し申し上げておりますように……。
○加瀬完君 質問に答えてくださいよ。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 実際の運用ということになりますと、これはやはりキャリア的な運用をいたしております。最初に裁判官を任用いたします際にも、十分その人を得るようにつとめておりますので、ほとんどの方が再任され、定年までおっとめになるということでございます。しかし、これまでの例から申しましても、三十二年に五名の方、三十三年に一名、三十四年に一名、四十三年に一名、四十四年に二名、そして昨年一名と、以上十一名の方がやはり再任を希望しながらも不適格であるということで、再任されていないという事例があるわけでございまして、私どもは再任制度を運用していきます上において、そのことが裁判官の、独立し、何人にも惑わされることなく、良心に従って裁判をする、という考え方を害することのないように、これは細心の注意を払って慎重にこの制度を運用いたしております。さりとて、やはり十年の任期の制度というものがございます以上は、その制度というものを無視して、戦前の終身身分保障と同様の扱いをするということは、これはいかがなものであろうかということで考えておるわけでございます。
○加瀬完君 あなた、法律の専門家だから、聞かれたことを的確に答えてください。聞かれないことを答えなくていい。さっきから言っているじゃないですか。十年の任期切って、そこで判定を下すことにわれわれ異論を唱えていない。しかし、あくまでも新憲法によっては、特に司法制度においては、裁判官の身分の保障というものが強化されたはずだから、その当時の説明によれば、再任の制度もできたけれども、再任すべきものと解釈していると、それが再任をされない者が出てきた、不適格者が出てきた。あなた方が判定して、国民のためにこれは不適格だという判定を下すことは、これはけっこうだ。しかし、その不適格が、どういう理由で不適格になったのか、はっきりしないので、不適格の理由を説明してくれということを言っておるのだ。この前からそれに対して何も答えておらない。したがって、この問題は、法案の内容には直接関係ないことですから、法案の内容に進まなければなりませんから、きょうはこれで保留しますけれども、そんな答えをしておる限りは絶対に法案もわれわれは通すわけにはまいりません。もっと国民に忠実になってもらいたい。はなはだ不まじめです。不適格理由も国民に告げられないような形でやるならば、これは恣意が通されているはずだ。裁判が、政治的な考え方や、思想的な背景によって、プラスをつけられたり、マイナスをつけられたりでは、国民は安心できない。いずれの機会かに、これはまた、はっきり質問をし直します。 そこで本日の内容に入りますが、最高裁の情勢判断並びに能力を現状でいいと、私どもはいまの御答弁を聞いても判断できない。これを見て、適正、迅速な処理のために、裁判官なりあるいは事務職員なりをふやして——これだけの数字をふやせば、適正迅速な処理ができるという合理的な理由がどこかにありますか、ひとつ伺いましょう。
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) 今年度の増員は裁判官九名——判事補でございますが、裁判官以外の職員三十一名、合計四十名、これが削減分を除きました純増分としての増員でございます。
○加瀬完君 これで合理的にできるかどうかということを聞いているんだ。
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) その点につきましては、審理の適正にして迅速なる期間というものがどれだけであるかということはむずかしい問題でございますが、訴訟が遅延しているということは、社会一般の批判として十分にお受けしなければならないところと考えております。ただ、裁判官を任命いたします場合には、だれでもよいということにはまいりませんで、法律に定められた一定の資格を備えました方の中から、さらに裁判官として適切な資格、能力を備えた方を選ばなければならないということは申し上げるまでもないことと存じます。そのような観点から申し上げますと、最高裁判所といたしましては、現在の審理期間を半減するという点に目標をおきまして、昭和三十年以来増員に努力してまいったわけでございますけれども、現在の裁判官の給源を勘案いたしますと、とうていその要請にこたえるだけの人員が得られないということで増員の当初の要求が必ずしも満たされない。今日の裁判官九名というような点で、現実的な妥協を余儀なくされているということでございまして、これで十分だというわけには申し上げられないわけでございます。
○加瀬完君 限度がありましょうね。九人増員して、どうこれを配置するんですか。どう配置して、迅速適正な裁判が進行するという、めどをつけたのか、その説明をいただきましょう。
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) 本年度の具体的な増員の内容は、業務上過失傷害事件の処理、結局、交通事件による刑法犯の処理の関係で、裁判官のうち判事補五名、公害事件の処理のために判事補四名という増員にとどまらざるを得なかったのでございますが、その具体的な配置は、業務上過失傷害関係で、東京地方裁判所に三名、大阪地方裁判所に二名、公害事件の処理につきまして東京地方裁判所、大阪地方裁判所に各二名の配置をいたしまして、当面の事件処理に当たらせるということが増員可能な範囲での最も適切な配置であると計算いたして、このような計画となったわけでございます。
○加瀬完君 交通事故の多いのは大阪と東京だけじゃないでしょう。公害が大阪と東京だけに出てきているわけじゃないでしょう。公害が問題にされると、交通傷害なり賠償なりの処理をもっと適切にするというなら、少なくも各都道府県の地方裁判所に何名かが配置されるというならうなずける。九名を東京と大阪に配して、これで最小限度の合理性だと、東京と大阪以外はどういうことになりますか。一体こういう計画をのめのめと国会に出すことはおかしいと思うんだよ。全国で九名増員して、それで合理的、迅速的確に裁判処理ができるなんて、どういう計算でそういうのができますか。東京と大阪だけが日本じゃない。交通事故が東京と大阪だけにあるわけじゃない。初め何名、大蔵省なら大蔵省の交渉のときに出したのですか。どう削られて九名になったのですか。あなた方のやり方も悪いかもしらぬけれども、それも聞かない政府のほうも悪いんだから、あわせてこの際聞いておく必要がある。何名要求したか。初めから九名ならあなた方の責任だ。
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) 当初の要求は、判事十七名、これは公害を含む特殊損害賠償事件の処理に充てる要員、判事補四十九名、うち三十四名が特殊損害賠償事件の処理、うち十五名が業務上過失致死傷のいわゆる交通事件の処理に充てる要員として増員の要求をいたし、これらの事件の処理につきまして、十分でないといたしましても、当面の要請に、とにかくこたえていきたいという計算をいたしたわけでございますが、その後の折衝と給源の関係を考えますと、この増員の要求をいたずらに維持いたしましても、増員分を充員できないということが明確になりまして、充員の可能の限度というものを計算いたしました結果、九名にとどまらざるを得なかったというのが現状でございまして、根本には、やはり裁判官任用制度という大きな問題が控えておるということが、原因になろうかと考えておるわけでございます。
○加瀬完君 裁判官の資格者はたくさんいますよ。やめて弁護士になる人はいるけれども、弁護士から裁判官になる人はなかなかいない。こういう問題がもっと究明さるべきもので、試験制度とかそういうものは二の次の問題ですよ。それとともに、十七名、四十何名というものを要求して、それが合わせて九名というようなことで、裁判が所期のあなた方の計画したような進め方ができるかどうかということを、もっと責任持ってこれ考えてもらわなきゃ困ると思うんです。どうしても裁判ができないという説明が十分届いて、大蔵省がこんなに切るということであれば、それ自体やはりこれは政府・与党なり、あなた方、話をしてでも問題にできることだろうと思う。これは議論になりますから——少なくも国民の利益を確保することが裁判の目的とは考えているでしょうな。
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) もちろん法律に保障された権利を守ることが、裁判の最大の目的であることはよく存じておるわけでございます。
○加瀬完君 しかし、現状では、いま御説明のように、裁判官の不足等もあって、国民の権利が十二分に保護されているとは御認定にならないでしょうな。
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) 可能な限りで最大限の努力はいたしておりますが、遺憾ながら、その目標にはるか遠いものであることも認めざるを得ないと考えております。
○加瀬完君 それならば、なおさらもっと最小限度、最高裁の責任で、国民の裁判に関する権利の保護については、保障に事欠くことはないと、こういう体制が進められなければならないと思うんですよ。 私は具体的に二、三、非常に裁判所の手薄のためか、熱意のないためか、国民に被害を与えているといいますか、国民の側からすれば被害を与えられている事実を指摘をしまして、その間の経緯を伺いたいと思います。これは自治省なり建設省なりにも関係のあることでございますから、あわせてひとつ御答弁をいただきます。 自治省に先に伺いますが、公共団体の念書の取り扱いは通常どう行なわれておりますか。公共団体と個人が念書を取りかわしたような場合ですね、その念書はどう扱われておりますか。
○説明員(遠藤文夫君) いわゆる念書と申しますのは、地方団体と住民の間におきまして、いろいろの何といいますか、関係がありました場合に、地方団体側から文書の形で、何らかの形で取りかわすというようなことだろうと思いますけれども、私どものほうとしまして、そのような一般的な念書の扱いをどうするかというようなことにつきまして、特別に指導その他いたした記憶はありません。ただ、私どもといたしましては、そういうようなものは法律上の効力を持っているということではなくて、住民との関係におきまして何らかの形の事実を確認するとか、あるいは場合によっては、紳士協約的な意味を持つような場合が通常ではないかと、一般的には考えております。
○加瀬完君 これは最高裁でも、専門家の方にお答えをいただきますが、念書を条件に契約が成立した。契約を成立させておいて、契約成立後に念書の条件を一方的に破棄するということは、法律的にどう解釈すればよろしいんですか。もっとわかりやすく言えば、だまして念書を取りかわしておいて、契約を成立させておいて、契約が成立したら、念書は知らぬというような形が公共団体でとられだとすると、これは許されますか。法律的にどうです。だれかいないですか、答えてくださる方は——そんなのわかり切ったことだ。再任問題じゃないんだから、そんな協議しなくったって、すらっと言えるよ。
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) 非常に抽象的な条項による仮定の御質問なので、的確なお答えを申し上げることはきわめて困難と存じますが、要は契約の成否と、その履行があったか不履行があったかという判断の問題に帰着いたしますかと存じます。で、その点は非常に困難な問題でございまして、それは契約が破られれば、これはそれに相応した法律上の救済が与えられるべきでありますし、また、その契約の履行しないことについて法律上許されるべき理由があれば、その契約の履行は求め得ないということになろうかと、まあ抽象的なお答えでまことに申しわけないのでございますが、あと訴訟の事件において実質的に主張と証拠によって判断いたしません限り、明快な答えは御容赦いただきたいと思います。
○加瀬完君 これは当面私の伺っている点は、何ら裁判所に関係がないように思われるかもしれませんが、関係が出てまいりますから、ちょっと過程としてお聞きをしたいんですが、茨城県鹿島郡神栖村深芝鈴木和雄と鹿島臨海工業地帯開発組合管理者茨城県知事岩上二郎との間に次のような念書が取りかわされました。念書を読みます。 念 書 鹿島臨海工業地帯開発組合(以下「組合」という)は貴殿が所有する土地を組合が買受けたことに伴い、後日当該地積に対する代替地のうち九、九九一平方メートルを限度として下記により貴殿に売渡すことを約束する。 記 1、代替地の売渡価格は、組合の定める基準(用地の買収等級区分並びに買収価格)により決定する。 2、組合が後日代替地を貴殿に売渡す場合、貴殿は本念書を組合に返還する。 3、組合が代替地の売渡しをしようとする場合において、貴殿の責に帰すべき事由によって、当該売買契約の締結が出さないときは、組合はその後一切の責を負わない。 4、売渡すべき代替地の場所は、鹿島郡神栖村地内、建設省土木研究所鹿島水利試験所の敷地内で、一二四号線(文化新道・西側の位置)沿いとする。 これは四十四年三月三十一日にこういう契約がされました。この契約は鈴木和雄の責めに帰すべき事由がない場合は、効力を失うものではありませんね。最高裁の方、この契約を見れば鈴木和雄の責任でない、責めに帰すべき事由がなくて効力は鈴木和雄のほうにあると、判定してよろしゅうございますね。
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) 個人的な立場での法律上の御質問ですと、お答えできないことはないんでございますが、公の立場で具体的な事案について裁判所でない私から申し上げることは御容赦いただきたいんでございますが。
○加瀬完君 おかしいじゃないですか。いま念書読んだんですよ。念書の内容はそう書いてあるんだから。したがって——もう一回読みましょうか。「貴殿の責に帰すべき事由によって、当該売買契約の締結が出さないときは、組合はその後一切の責を負わない。」ということは、鈴木和雄の責めに帰すべき事由がない場合は、効力があると当然考えてよろしいでしょう。こんなものは公もへったくそもありません。新聞読んでいいか悪いかという判定と同じです。続けて言いますよ。「売渡すべき代替地」は「鹿島郡神栖村地内」の「建設省土木研究所鹿島水利試験所の敷地内で124号線沿い」と、こう書いてありますね。面積は一町歩、こう念書に書いてあるんですから、これはこう認めていいでしょう、念書に書いてあるとおり。こう書いてありますが、と言うんです。 ところが問題は、この代替地が存在しなかったんです。代替対象地は、契約対象とは違って第三者に移っている。一部は山沢治夫所有分として根抵当権が設定されている。他の一部は開発委員長某氏の名義になっている。だから配分はできない対象物件で契約を進めたことになるわけです。これは違約でしょう。そうではありませんか。 そこで鈴木和雄は、区域面積の確認を求めた。ところが組合当局はこれを拒否した。組合というと民間みたいですが、岩上二郎茨城県知事が、これは組合長になってるんですからね。そして鈴木さんはこの念書の内容を図面、売り渡し期日を明確にしてくれと、境界も何もないから境界をはっきりきめて、図面の上でどこからどこということをはっきりしてくれと、これはいつ売り渡してくれるんだかということを明瞭にしてくれという文書を出した。けれども何の返事もありません。それで第一回には念書を破棄すると、こういう組合側から、内容を言えば県側から通達があった。第二回目に、それが都合が悪ければ別のところをという申し出をした。これも拒否した。さらにその後四十四年の十二月十九日、四十五年の一月六日、四十五年の二月十日、同じく二月十七日二月二十四日、三月三日話し合いの申し入れをしたけれども、拒否された。それで拒否する事実について確認を求めた結果、次のような回答が県からまいりました。 鹿島事務所管理課長補佐木村浩、同じく主査小沢正孝の名前の口上書で「昭和四十五年三月十日貴殿に次のとおり申伝えました 一貴殿との移転交渉等の話合いは、今までの経過もあり今後第三者を通じて話合いをして下さい」 この日付は昭和四十五年四月二十四日であります。ところが、今度同日に「お願い」という文書がまたきた。 「昭和四十五年三月十日に申入れました件についてはこれを取消しますから、今後の話合いに応じて下さい」 これは、やっぱり四月二十四日です。これを見て、いままでの経過から見て、鈴木和雄氏の権利はどう考えたって、契約の念書をかわしたものを破棄しているのは、これは鹿島開発組合ですか、そちらのほうに責任があると言わなければなりませんね。 ところが、こういう話し合いの途中で収用法を発動して、結局調査をしたわけです——そして、さらに確認書として——話し合いをしてくださいと言ったあとで、「鹿島臨海工業地帯開発組合管理者岩上二郎と、鹿島郡神栖村大字深芝三千三百六番地の六鈴木和雄との間で成立した覚え書きに基づき、土地売買契約が締結されたことに伴い、鹿島臨海工業地帯開発組合管理者茨城県知事岩上二郎が申請した土地収用法裁決申請書は取り下げることを確認します。」と、こういう方法がとられた。——そこで、とにかく収用法を適用するというやり方で一筆調査を始めたわけですから、鈴木和雄は組合を告訴した。ところが、この告訴は、鈴木和雄の知らない間に和解調停が成立した。和解調停については一回も鈴木和雄に話がなかった、弁護士から。こういう事件。 そこであらためて伺いますが、地方自治体が開発公社とか開発組合をつくって、このごろいろいろ開発をやっている。それは組合という名前で、実態は自治体が背景にありますから、自治体の力でこういう強引な収用法なんかをかぶせておどかして問題の処理にあたっている。これを自治省は、それは収用法は建設省の関係でございます。地方自治体といっても直接ではありませんから、私ども存じませんと言ったって、住民の一体権利というものはどこで保障されるのか、こういうことに全然指導を施さなくていいか。これはいま茨城県の例だが、枚挙にいとまがない。また建設省は収用法のやり方についてどういうように指導しているのか、話し合いの途中で収用法をかけるということはどこにもない。どこ読んだって話し合いの途中で収用法をかけているということはない、しかし、ごらんなさい。こういうやらせ方を黙認するのか、あとから裁判所のほうに頼みたいんだけれども、この和解調書は裁判所の発議によって取りかわされたものかどうか。それから和解調書によって、一回も本人が話し合いされていないのに和解を成立させた。裁判所も中に立っているんですから、この経緯というものはどういうものだったか、これは後刻ひとつ文書で報告してもらいたい。いますぐでなくてもけっこうです。 当然これによって、二百七十万かの代金のうち百万円の弁護士料を鈴木和雄は払っている。話し合いをすなおに組合がやってくれれば、百万円の弁護士料だけは少なくも払わなくて済んだわけです。こういうふうに一方的に自治体を背景にして、自治体の背景でできた開発組合などが、個人に契約の不履行をしいて損害を与える、こういうことが許されていいのか。ほとんどこのごろの公共事業というものは、建設省なり自治省が責任をとってもらわなければ困りますけれども、公共のためという理由で私権がほとんど抹殺されている。あとでも触れますけれども、こういう問題で裁判所が、少なくもこの場合は、鈴木和雄の側に立って、鈴木和雄の権利というものを擁護されるべきだと考えるが、そう考えてよいかどうか。あとの調査は調査して報告してくれませんか。 自治省、建設省、それから最高裁、それぞれ問題点を出しましたので、お答えをいただきます。
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) 案件は具体的に訴訟の事件として裁判所に係属いたしましたので、その処理について、内部的にせよ、行政的な立場にある私どもからいろいろ指揮、監督ないし批判することは、差し控えさしていただきたいと存じますが、その経過につきまして、干渉にわたらない限度では、公平な立場から御報告は申し上げられることと存じます。ただ、内容につきましての批判は差し控えさしていただきまして、当該の訴訟手続の中において裁判所において争い、公明な解決に到達していただきたいことをお願い申し上げたいと存じます。
○加瀬完君 行政行為としてこういうことをやっていいかどうか。そもそも裁判にも何にもならなかった問題です。行政行為が正しければ、こういうことで話し合いの途中収用法をかけるというようなおどかしとか、そういう収用法の運営をしていいのかどうか、これが一点です。これは自治省は直接関係ないとおっしゃるかもしれませんけれども、自治体が背景でこういうことをやっているんだから、こういうばかなことを許していいかどうか。
○説明員(遠藤文夫君) 地方団体の行為——何といいますか、地方団体の関係しますところの土地の買収その他の実施につきまして、関係者が誠実に行なうべきことは当然だと思います。私どもといたしましても、具体的事案につきまして、何といいますか、そのような行為につきまして、誠実に行なうということは、一般的問題としては、適切に指導する機会があれば当然指導すべきということだろうと思いますが、本件につきましては、御指摘でございますので、一度調査させていただきます。
○説明員(西原俊策君) 先生御指摘の件につきまして、事情は十分調査してございませんけれども、収用委員会に裁決申請が一昨年暮れにあったということで、多少経過は聞いておりますので、いままで聞いたことを申し述べたいと思います。 本件につきましては、一昨年ですか、四十五年十二月二十一日に裁決申請があった。年末に和解の成立があったので、四十六年の二月に申請を取り下げておる。こういうことだけを前に報告を受けております。 それで、その間の事情、和解成立の事情、こういったものにつきましては、ちょっと事情を承知いたしておりません。 さらに、先生御指摘になりました、話し合いの途中におきまして一方的に裁決申請に及んだ、こういうような点につきましては、私どもいままで報告を聞いた限りにおきましては、県におきましては、組合でございますけれども、何回も交渉したが、どうしても話がつかないというようなことで、裁決申請に及んだというようなことを前に聞いたことがございます。ただ、もっと細部の点について調査してみませんと、この点については不詳でございますので、さっそく事実を調査いたしたいと思います。
○加瀬完君 自治省には調査して報告をしていただきます。 建設省のほうからお答えですけれども、さっき言ったように話し合いをしていない。昭和四十五年四月十七日になりましても、「昭和四十四年十二月十九日鈴木和雄氏より、代替地の買替契約について、話し合いのうえ、合意に達して、昭和四十四年十二月二十六日まで延期したが、再度四十五年一月六日まで延期を申し入れた。その理由は、代替地となる土地に抵当権が設定されていたためである。」しかし、一月六日まで解除するという約束であったが、「一月六日には話し合いを持たなかった。その後鹿島石油が、鈴木氏所有の土地の一部を使用することになったが、話し合いの解決がつかないため、その一部の使用に止まった。なお引き続き話し合いを進めるべきところ、話し合いをしないままにいたため、(予定日、二月十日、二月十七日、二月二十四日、三月三日)鈴木氏より、三月四日電話にて話し合いの出来ない理由を問われたが、理由は言わず無期延期した。」こういう用地一課の課長補佐兼第一係長の矢屏誠司さんからの通達がきている。 それからさっき言ったように、四十四年の十二月十九日から四十五年一月六日、二月十日、二月十七日、二月二十四日、三月三日話し合いの申し入れをしたが、全部断わっている、組合が断わっている。一切話し合いをしないで、そうしておまえのところは収用法で取るんだから、これから庭先をはかるといってはかられた。そんな法律事情を知らない農家としては、おまえ反対するなら反対しろ、収用法で何でも取るのだとおどかされれば、これは和解でもなんでも気持ちも動くであろうし、あるいは一方的に県の持ってきた書類に調印することになりかねない。そうして二十四日になって訴訟を出したところが、これから話し合いましょうと口上書を寄こした。これでは住民をまるでペテンにかけているようなやり方じゃありませんか。これは鈴木和雄一件じゃないそうです。鹿島開発では、ここに新聞があるけれども、いろいろな問題が出ている。こういうやり方をされては全く困ります。まるで伝家の宝刀みたいに住民をおどかす。宝刀だか魔刀だか知りませんが、宝刀みたいに収用法が使われているということは許せない。これを建設省では十分ひとつ御調査、御指導をいただきたいと思うわけでございます。 で、最高裁にひとつこの際伺っておきますが、経緯はお知らせくださるということでありましたから、それでいいとして、法律的見解としては、代理人が本人の承諾なしに和解調書を作成し、これを成立させるというここは違法ではありませんか。
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) 結論だけ申し上げますれば、その代理権限の中に和解の権限が含まれておりますれば適法でございますが、含まれておりませんければ、これは法律に特別な規定がある場合を除きましては権限外の行為ということになりますので、具体的に授与された代理権の内容につきまして判断いたしませんと、正確なお答えは申し上げかねます。
○加瀬完君 この問題は御調査をして御報告をいただいて、また、私どもも質疑をすることがあれば質疑をしたいと思いますが、次の問題は、これは明らかに裁判所の怠慢によって被害を与えられている事件でありますから、ひとつ伺います。 千葉県成田市の成田空港について東京地裁に訴訟が提起されているはずであります。御存じですか——じゃ具体的に質問を進めます。これは、飛行場の設置については、認可の時点で認可要件が満たされていないので、認可を取り消してもらいたいという訴訟です。それが満四年たちましてもほとんど審理をされておりません。しかも、空港は御存じのように建設が進捗しております。将来、取り消しの判決が下ったときにはこれはどういうことになりますか。緩漫な裁判のために、認可の取り消しがありましても、そのときに飛行場ができているということでは、これは訴訟になりません。 そこで、具体的に伺いますが、航空法三十九条の五号の飛行場の認可の条件によりますと、こうなっていますね。「飛行場にあっては、申請者が、その敷地について所有権その他の使用の権原を有するか、又はこれを確実に取得することができると認められること。」とあります。これは法律ですからお認めいただけると思います。ということは、申請者が敷地を確実に取得できない状態においては飛行場の認可をしてはならないと解してよろしいでしょうね。
○最高裁判所長官代理者(西村宏一君) たいへん恐縮でございますけれども、これも具体的な紛争になっておりますので、私どもといたしましては、法律解釈について意見を述べることは差し控えさしていただきたいと思います。
○加瀬完君 そんなばかなことありますか。あなたは法律の解釈をすりゃいいんだ。飛行場をつくるかこわすかというようなことをわれわれ聞いてるんじゃない。航空法の三十九条の(申請の審査)という項目の第五号で、「飛行場にあっては、申請者が、その敷地について所有権その他の使用の権原を有するか、又はこれを確実に取得することができると認められること。」ということが認可条件になっている。これはお認めにならなきゃいかんですよ、法律ですから。
○最高裁判所長官代理者(西村宏一君) そういう規定のあることはそのとおりでございます。
○加瀬完君 ということは、敷地を確実に取得できない状態においては認可ができないと読み取れるでしょう。これは国会で問題になりまして、内閣法制局長官はこれを確認しています。あらためて伺います。確実に取得できると認められなければだめだということは、敷地を確実に取得できない状態においては認可をしてはならないということでしょう。——当然じゃありませんか。
○最高裁判所長官代理者(西村宏一君) どうもたいへんその辺になると微妙になってまいりまして、やはり具体的な紛争については私どもとしては意見を述べないというたてまえになっておりますので、ひとつ御了承願います。
○加瀬完君 そんなばかなことがありますか。紛争の問題じゃないですよ。法律解釈の問題だ。何を言ってるんだ。
○最高裁判所長官代理者(西村宏一君) この法律解釈は、具体的な紛争事件として、受訴裁判所でなされるべきものでございますので、そういう解釈については、私ども事務当局の者としては意見を述べないことになっておりますので……。
○加瀬完君 それじゃ述べられる者を出しなさい。そんな不謹慎な話がありますか。法律解釈を聞いているんだから、あなたの考えている良心に従って法律解釈を答えればいい。その法律解釈を聞いているのに、法律解釈は述べられないといったら、何のためにいまのポストに……。じゃ、述べられる者を出しなさい。述べられない者じゃ話にならぬ。法律解釈できないなんという話があるか。
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) 純粋な法律上の理論の御説明ということであれば申し上げられないことはない筋合いではございますが、具体的な事件になりました場合に、国会で事務当局が法律解釈を述べますと、やはりそれが事案に微妙な影響を及ぼすことになりまして、結果としていかがかと存ぜられますので、プライベートな場面での御意見でございますと、あるいは返答もできるかと存じますが、この場では、ひとつお許しをいただきたいと、このように思うのでございます。
○加瀬完君 プライベートな話をするんなら、あなた方の部屋に伺って伺いますよ。こういう問題は、一人の私が質問しているわけではない。あとで裁判所の問題に触れますけれども、明々白々なこういう解釈を、四年もたって判決も出さなければ、公判もやらないというのは、一体、これはどういうことだ。だから言っている。
○最高裁判所長官代理者(西村宏一君) 繰り返すようでたいへん恐縮でございますけれども、この解釈について、受訴裁判所で現在担当しておる事件に、私どもが意見を述べることは、やはり裁判の独立の問題に関連してまいるわけでございますので、その点、私どもとしては、意見は申し述べられないということを申すほかないわけでございます。 なお、事件の経過につきまして……。
○加瀬完君 そんなのは聞いてないよ。聞きもしないことは答えるな。 いいですか、「飛行場にあっては、申請者が、その敷地について所有権その他の使用の権原を有するか、又はこれを確実に取得することができると認められること。」と、こうある。この「確実に取得することができると認められる」ということはどういうことだと言ったら、百パーセントの期待権だと、こう法制局長官は答えている。ですから、ほとんど確実に取得できない場合は、飛行場の認可はできないということになっている。そこで、反対が三分の一もありますから「確実に取得することができる」状態ではないではないかというのが、東京地裁に出された訴訟の内容です。それが、いま四年間たちましても、御存じのように、第一滑走路もああいう惨たんたる状態で収用しましたけれども、第二期工事のほうは全然手がつけられておらない。ですから、確実に取得されておる状態にはなっておらない。確実に取得される状態に四年間たってもなっておらないものを、認可したということになれば、その認可の時点において、判断に誤りがあったと解さなけりゃいけない。判断に誤りがあったということは判断の過失。過失による認可は無効であります。こういうように推定されるような内容でありますのに、全然、裁判所が審理を進めない。どういうことになっているんです、これは。これは前もって申し上げてありますからお答えになれると思います。
○最高裁判所長官代理者(西村宏一君) ただいま、四年間審理が進められておらないということでございますので、この事件についていままでの私どものわかりました経過を御報告申し上げます。 お尋ねの事件は、四十二年の五月十二日に訴えが提起されております。第一回の口頭弁論は同年六月十四日に開かれ、起訴状の陳述がされております。その日を第一回の口頭弁論期日といたしまして、九月二十九日が指定されました。ところが、その前々日である九月二十七日に至りまして、原告代理人のほうから主張整理のため延期を求めるという、延期申請書が出されまして、期日は追って指定となっておりまして、その後、追って指定となったまま、当事者双方から期日指定の申し立てがございませんので、裁判所のほうから原告代理人あてにどうなっておるのかということを照会いたしましたところが、代理人のほうでは訴えを取り下げる予定であるということでございました。そして、現に四十二年の十一月から四十六年の一月にかけまして、原告総員千三百五十九人のうち、三百五十六人の方から訴えの取り下げ書が出ておるわけでございます。その後も、当事者のほうからは何らの連絡もなく、そのままになっておりましたところ、四十五年の二月になりまして、四十五年の二月から四十六年の九月にかけまして、同一の空港の土地の問題に関しまして、東京地方裁判所に二件、千葉地方裁判所に六件の訴えが新たに提起されたわけでございます。この新たに提起された事件について、現在審理を続行中でございます。 以上のとおりでございます。
○加瀬完君 四十二年に提起したんでしょう。
○最高裁判所長官代理者(西村宏一君) はい。
○加瀬完君 それで一回公判があって、あと延期という弁護士からの申し立てがあって、それっきりですね。
○最高裁判所長官代理者(西村宏一君) さようでございます。
○加瀬完君 そのように、取り下げたと言うけれども、業を煮やして、もうどうにもならないので、話し合いで土地を売って、いわゆる反対の側からおりた者は、取り下げるということになりましたけれども、まだ残っているのでしょう、何人か。それで、その間に飛行場はずんずんできているわけですね。そうなってくると、これはたしか執行停止の訴訟もついていませんか、工事執行停止の訴訟が。認可の時点で、全然工事が始まらないうちに認可の取り消しが行なわれなければ、どうにもならないですよ、これは。そうすると、裁判所というものは、そういう代理人を通しての訴えがあっても、訴えた者からの申し出がなければ審理をしないということですか。
○最高裁判所長官代理者(西村宏一君) 少なくとも、この事件では、原告の代理人が取り下げの予定であるということで、期日指定の申し立てにもおいでにならず、逐次取り下げ書が出されているということでございますので、裁判所としては、それ以上積極的に進めることはできないのではないかと存じます。
○加瀬完君 取り下げた者は一部でしょう。まだ、大多数の者は、さっきの話の続きになりますけれども、弁護士に頼んでやってもらっているということで、個々の意思表示は弁護士を通して以外ありません。具体的には、三年も五年も放置しておいたために、認可の取り消しの訴訟というものは、いま、下したってどうにもならない事態に追い込まれておるわけですよ。私の言いたいのは、一種の行政訴訟みたいなものですから、これは——いま、行政裁判所というものがあるかないか知りませんが——東京地裁へ訴えられたという経過になろうと思いますが、早急に判断を下さなきゃならないものを、三年も四年も捨てておかれりゃ、取り下げようが、取り下げまいが、実質的にこの訴訟は無効ですよ。それで国民の権利を守ったということになりますか。だから、単に交通賠償をどうするか、簡易裁判所の人員をどうするかということじゃなくて、根本的な、国民の大きな権利を守らなきゃならないような裁判さえもこういう遅滞を生じているのじゃないですか。そういう遅滞のないような運営をするにはどうするかという、根本的なことを考えなければ、この九人ふやして三十人どうこうするなんということは、まるで枝葉末節のことだと私は言いたいと思うんです。ほとんど、この行政訴訟的なものは、こういうふうにだらだら、だらだら引き延ばされて、事実上の無効の状態に追い込まれていますよ。裁判所というのは、そういう政府なり、公共団体なり、そういうものの言い分だけを是と信じて、国民の国家権力に対抗するような私権の主張に対しては耳を傾けないということですか。私権としては非常に弱い国民の、そういう国や公共団体を相手にしての権利の主張というものには、むしろ裁判所が救いの手を出してやるということが裁判所の趣旨じゃないですか。飛行場をつくってはいけませんよという訴訟に対して、飛行場ができ上がるまでうっちゃっといて、国民を保護したということになりますか。それで、法律の解釈を聞けば、いま争訟中の問題ですから答えを出せませんと。われわれは裁判所なんかというものを信用するわけにはいきません、そういう御態度であっては。 その年にすぐ、急いで、裁判所のほうでせっついてでも代理人を出さして判決に運ぶなら——これは認可条件は満たされておらないんですから、少なくも、私どもの土地に飛行場をつくることには認可をしないでくださいという国民の要求というものは通ったでしょう、それが一部の要求であろうとも……。裁判所の怠慢によって、飛行場は完全にもうつくられてしまいました。こういう運営というものをしていくなら、九人ふやすことも私は反対ですよ。国民の側の権利の保護ということには一つも熱意を示さないというようなものは、かえって人数が少ないほうがいい。極端な言い方だけれども、そういうことも言いたくなる。単に成田空港の認可の問題だけじゃありませんよ。公共団体を相手に、あるいは国を相手の行政訴訟的な問題は、裁判所はほとんどその結論を出さない。怠慢じゃありませんか。どうですか。
○最高裁判所長官代理者(西村宏一君) 現在、裁判所として完全に理想的な姿で運営されているということはとうてい申し上げることはできませんけれども、私ども裁判官一同、行政事件はもちろんのこと、全力をあげて努力をいたしておるつもりでございますし、今後ともその努力は続けていきたいというふうに考えております。
○加瀬完君 それなら具体的な例をあげましょう。公職選挙法には、いわゆる短期間に判決を出せという、百日裁判というような趣旨が盛られていますよね。百日裁判できめた選挙違反のためしがありますか。公職選挙法の二百十三条であろうが、一つも履行されておらないじゃないですか。だから、こういう、少なくも選挙だけでも、百日裁判できめるというように人員を配当したいという裁判官の要求なら、われわれはうなずける。公職選挙法できめてあるそれの履行もできないような状態で、そんなことはほおかぶりです。どっち向いてるんですか、一体。最高裁は選挙違反幾らやってもいいということか。百日裁判、きめられている法律ですら守られないような状態であって、そのことについて、こういう点がまずいから裁判要員をふやしてくれとか、裁判の手続をこういうふうにしてくれというふうな要求は一つもないでしょう。これは一体どうしたことでしょう。だから怠慢だと言うのです。法律にきめられていることすらも行なおうとしておらない。しておらないという理由は、今度の要求にも、選挙違反に対する裁判は急ぐから、こういう人員の要請をいたしますという説明は何にもないでしょう。どっちが大事なんですか。自動車事故の処理も大事かもしらぬけれども、日本の運命を決するそれぞれの各級の議員を選ぶ選挙、この選挙を正しい選挙をやらせるということとの軽重を問えばおのずからわかることです。ところが、選挙違反のほうの法律できまっていることの一つもやらぬ、こういう考え方なり態度なりというものは私はどう考えてもうなずけません。これは感想を申し上げておるわけでじゃないですから、最高裁のひとつ御答弁をいただきましょう。
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) 百日裁判の問題が、法律に定められた期間に終えている事件が、きわめて少ないということは、まことに遺憾なことでございまして、先ほど行政局長からも御答弁申し上げましたように、法律の趣旨に忠実ならんと非常な努力をいたしておるわけでございます。ただ、残念ながら、実際の数字といたしましては、百日裁判の事件が非常に期間内に終えたものが少ない。多い年でも、昭和四十二年で、わずか三十五件にとどまっているというような状況は、何とかして裁判所も法律の趣旨を貫徹したいと努力いたしておるわけでございます。ために、会議もいたしまして審理の促進の方法についても協議をいたしておりますが、何ぶんにも裁判というのは、法廷におきまして原告と被告、検察官と被告人というような対立の当事者が、ある場合には闘争いたしますが、事案の真相の発見には、やはり公人の協力関係というものによりまして、期日を定めて進行しなければなりませんので、これを無理に当事者の都合も顧みずに、期日を進行いたしましても、準備その他で必ずしも真相が把握しがたいというような事情、その他法曹人口の不足というような客観的な情勢から、やはり法律に定められた規定が守れず、理想が実現できないということは残念でございますが、これは裁判所ももちろん最も大きな責任がございますが、法によって社会の問題を、刑事にせよ、民事にせよ解決するという意欲がやはり大きく盛り上がっていくことが先決問題だと存じますので、この点については、今後も大いに努力をさせていただくことは、私たちのきわめて重要な責任であると考えますと同時に、政府におかれましても、やはりこの点にも大きな施策の焦点をあてていただきたいと裁判所からもお願い申し上げる次第でございます。
○加瀬完君 あなた方熱意あると認められないでしょう。百日裁判できめられている法律がさっぱり施行されておらない、履行されておらない。にもかかわらず、そういう要員の裁判官の要求というのは、今度何もないでしょう。事務的な権限委譲すれば裁判所でなくてもできるような、交通違反のような問題だけ取り上げて、政治資金規正法とか、あるいは選挙に関するこういう問題は敬して遠ざける、そういう傾向が顕著じゃありませんか。政治資金規正法はともかくとして、公職選挙法はすでに百日裁判できめている。それができないなら、できるような増員要求というものを熱意があるならしなさい。していないということは、私どもは裁判所の熱意がない、あなた方、事務当局の、そういう裁判官の態勢をとろうとする熱意がないと判定せざるを得ない、こう言わざるを得ないわけです。これは答えは要りません。私は二時間の予定で少し延びておりますけれども、一応質問を終わります。
○白木義一郎君 裁判所職員定員法に関連して御質問いたします。 法曹界にいままた波乱の春がやってきたと世間でさまざまのうわさ、批判等が繰り返されておりますが、これは申すまでもなく裁判官の再任拒否問題の再燃であります。この件に関しましては、わが党は最高裁の処置は人間性を無視し、思想、信条の自由さえもそこなうと、昨年の五月に見解を発表しております。ただいまもその理由等詳しく加瀬委員から質問がありました。明快な答弁がなかったことはまことに残念でありますが、この再任問題については、また別の機会に申し述べたいと思いますが、この傾向が裁判所の事務総局にもあるのではないか。その事務総局の機構等に改善の余地がありはしないか、そういう懸念をしておりますので、特に事務総局の機構について若干伺っておきたいと思います。 最近とみに最高裁の処理すべき司法行政事務が広範にわたるのに伴い、諸種の事件が勃発し、迅速な裁判が要望され、裁判官の育成が急務とされておるおりから裁判官が少ない、またその志望者が下り坂であり、かてて加えて再任を拒否するといったような現況を見ておりますと、今後の裁判所のあり方、行く末を心配しないわけにはまいりません。したがって、事務総局の機構の面からお伺いをしておきたいと思いますが、まず、裁判所の職員の欠員状況、その充員計画についてお伺いをしたいと思います。 また、当事者のために迅速な裁判を保障するためには社会情勢の変化等も考慮の上、第一審、第二審の通常事件、平均審理期間の短期目標が立てられ、充員、増員計画もこれに基づいてなされておるものと考えますが、その目標や計画について最高裁判所のお考えを伺っておきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) 最初に最高裁判所の事務総局の機構についてお尋ねでございますので簡単に申し上げますと、事務総局には事務総長の下に事務次長と七つの局がございまして、その局にそれぞれの局長、課長、局付並びに参事、課長補佐というような職員が配置されまして、司法行政の事務、裁判官会議の庶務に属する事項を掌理いたしております。ここに従事いたしております裁判官たる事務局職員は合計三十七名でございます。 次に、裁判所の職員の欠員の状況を申し上げますと、昨年の十二月一日現在で、裁判官の欠員が合計八十七名、裁判官以外の職員の欠員が二百七十名でございます。裁判官の欠員につきましては、判事につきましては、おおむね判事補からの判事への任官及び弁護士からの任官、また、判事補への任官につきましては、判事補から判事に任官される方、また、判事補の途中で簡易裁判所判事に転官される方がありますので、その欠員の補充といたしまして、今年の四月に、司法研修所を終了いたします司法修習生の中から、判事補を新任いたし、また、一部判事補の中に、弁護士から任官を希望するというような人がございますので、このような方で充員いたし、また、簡易裁判所の判事につきましては、判事補から簡易裁判所判事の資格を得て任官いたす人、また、地方裁判所の判事が定年になりました後、なお五年間、簡易裁判所判事としての在職年数がございますので、これらの方からの任官及びいわゆる特別任用といたしまして、多年司法事務に携わりまして、識見、能力、裁判官たるにふさわしい人を選考によりまして、簡易裁判所に任用いたしまして、このような形で今年の四月初めには、これらの欠員が充員できるという計画になっているわけでございます。 次に裁判官以外の職員につきましては、裁判所書記官が七十四名、裁判所速記官五十三名、家庭裁判所調査官四十三名、その他事務官、タイピスト等で一般の職員は二百七十名の欠員があるように申し上げましたが、書記官、速記官、家庭裁判所調査官、これらの方々は相当の訓練を必要といたしますので、書記官研修所、速記官研修所、家庭裁判所調査官研修所のそれぞれの所定の研修を終えた人及び所定の資格の試験に合格した人、また、その他の職員につきましては、高校を卒業した人、その他の人たちから任用して、年度の初めにおおむね充員できるという計画を持っている次第でございます。 次に、審理期間でございますが、これは裁判所職員定員法の一部を改正する法律案関係資料、これが法務省から作成、提出されております。その一一ページをごらんいただきますと、昭和四十三年から四十五年までの民事、刑事事件の各審級における平均審理期間が掲記されておりますが、おおむね申し上げますと、高等裁判所におきましては、民事事件が十七カ月前後、刑事事件が六カ月前後、地方裁判所におきましては、十一カ月ないし一年、刑事事件は六カ月前後、簡易裁判所におきましては、五カ月前後、刑事事件が三カ月ないし四カ月というふうに、多少の長短がございますが、平均の審理期間が、このようなところに定着いたしておる状況でございます。戦前に比べますといろいろな事情がございますが、審理期間がある程度延長いたしておりまして、今日の非常に経済の発展の激しい、また国民の生活上の利益を早急に守る必要のある時代におきまして、必ずしも時代に沿ったとはどうしても申しがたいので、この平均審理期間、個々の事件につきましての相当な審理期間というのはなかなかきめにくいのでございますけれども、平均審理期間を半分に短縮するということを目標に、昭和二十八年以来裁判官及び裁判官以外の職員の増員に極力努力いたしてまいりましたが、先ほどもおしかりをいただきましたように、諸般の事情から必ずしもその増員が人員給源等の関係で思うようにまいっておりません。裁判官につきましては、二十九年以来の総計が二百九十二名、これは判事、判事補、簡易裁判所判事というような三つの種類に分かれておりますが、そのような増員数になっておるわけでございます。まだまだ増員に努力いたしたいわけでございますけれども、現在の法学教育の現状、法学教育のレベル等の観点から、まだ法曹に対するいろいろな需要の観点あるいは大きく申し上げますと、裁判官の任用制度そのもの、待遇というような面から、必ずしも憲法の期待したような司法の構造、任用制度が実現されておりませんために、審理期間半減というような面においても、目標に到達することが困難な状況にあると、このような現状でございます。
○白木義一郎君 そこでただいま御説明を伺ったわけですが、結局各方面のいろいろな問題によってなかなか前進をしない、解決をしないと、こういうことですが、その解決の一端としてこのただいま御説明がありました、事務総局内におけるあなた方裁判官といいますか、この機構及び局付の一覧表を見ますと、この「〇内の数は、いわゆる「あて判」の数を、□内の数は「あて判」以外のものの数を、〔 〕内は、兼務者を示す。」と、こういう注釈がついておりますけれども、この「あて判」あるいは「あて判以外」というのはどういう意味ですか。
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) このマルで示してございます「あて判」と申しますか、「あて判」と申しておりますけれども、これは裁判官の資格を持ちながら事務総局の事務に従事するために、この地位に発令されて仕事をしておる者でございます。次に、この四角で囲んでございます数字の職員、これは裁判官としての資格を要しない裁判所の職員でございますから、特別職の公務員でございますけれども、裁判官の資格を要しない通常の公務員が占めておる職種でございます。なお、この兼務の職は、いわゆる「あて判」の職員が兼務しておる場合もございますし、「あて判」でないところの、裁判官の資格を有しない裁判官以外の公務員が占めておる職もあると、こういうような内容になっておるわけでございます。
○白木義一郎君 そうしますと、この事務総局の中には、相当数のいわゆる「あて判」の方ですね、裁判官の方がいらっしゃるわけですが、これらのあるいは局長あるいは課長等は、どうしても裁判官の資格がなければならないか、あるいは裁判官と兼務ができないかどうか。まあ、われわれ考えますと、こういう事務総局の中に、あくまでも、資格を持った裁判官の方が事務をとる、一方では、裁判官が非常に不足している、こういうようなことを伺うと、その辺がちょっと気になるわけです。したがって、裁判官の資格を持った方が第一線で活躍をすべきであろうと、このように思いますが。
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) まことに御指摘のとおりでございまして、裁判官が一人でも裁判の事務に従事することが望ましいし、それがまた、裁判官を志してまいった者の本懐であるわけでございます。ただ、実際の問題といたしまして、ただいま、事務総局でつかさどっております仕事は、一般に司法行政事務と申されておりますが、いわゆる福祉行政とは違いまして、内部的な管理事務も多いわけでございますけれども、御承知のように、裁判所の行政が裁判官会議というものによって運営をされておりまして、行政の最終意思決定が裁判官会議によってなされます以上、その内容といたしましては、裁判官の人事、裁判官の必要とする、あるいは裁判運営上必要とする施設、その他いろいろ、裁判事務と密接な関係を有するいろいろな機構、そのほかに憲法の七十七条によりまして、規則制定権が裁判所に与えられておりまして、行政は、本来、三権分立のたてまえから、申し上げれば、これは行政府に属すべきものでございますけれども、裁判所の内部の行政につきましては、司法の独立を徹底するために、抽象的な規範の制定と申しますか、立法権と申しますか、規則制定権が与えられておりまして、このような規則の立案、制定につきましては、やはり法律知識を必要とするため、やはり裁判事務の実際の経験者が当たりませんと、裁判の実際の運営上、適切な運営ができない。この規則の制定、執行に伴うところの司法行政というものを円滑に運用するためには、裁判の実務について経験を有するところの裁判官を充てることが適切であるというような観点から、司法行政の重要事項の企画、立案をつかさどらせるために、やむを得ない最小限度の人員を、事務総局の職員に充てているわけでございます。ただ、極力、これは少ないほうがむしろ行政の近代化、合理化の観点からも望ましいので、裁判官以外の一般の職員で代替し得るものについては、逐次、充てております。ただ、これを全部、一般の行政官で行政をすべてつかさどらせることがどうかということになりますと、やはり戦前の苦い経験がございまして、やはり同僚的な気分と申しますか、給与の問題等につきましても、優劣の気風というものができますので、思い上がってはいけませんけれども、調和のとれた運用をいたすためには、やはり、最小限度の裁判官が行政の分野に入って、司法の運営のために努力するということはやむを得ないことではなかろうかと、このように考えられるわけでございます。それで、事務総局の頂点である事務総長は、裁判官の身分をもっては充てておりませんで、この四角じるしということに相なっておるわけでございます。
○白木義一郎君 御説明をいただいてわからないわけではありませんけれども、ただいま加瀬議員の質問あるいは答弁等を伺っていますと、肝心なところへくると、何も御答弁なさらない。これは別に裁判官の資格がなくても済むような気がするわけですけれども、そういうわけにもいかないだろうと思うんですが、そこで、この「あて判」と「あて判以外」の立場の方が事務総局の課長の中にいらっしゃるわけですが、中には欠員もあれば、あるいは兼任もある、こういうことですが、まだまだ——特別職の職員に交代して、十年、二十年と最高裁で働いている職員の道を開くという意味と、それから裁判官の不足を補うというような意味から、さらに、内容を検討あるいは改善すべき余地があるんじゃないかと、このように思うわけです。 そこで、この中で、営繕課とかあるいは用度課、そういったような仕事は、これは当然裁判官がなさらなくてもいいわけです。さらに、ほかに兼任をされているような課もあるようですが、こういうところは職員でまかなえないかどうか。そうすれば、そこの裁判官が第一線に乗り出せる、このように思うんですが、極力、その方向へ進められているとは思いますが、また、なかなか思うようにいかない点もあるだろうと思いますが、なおかつ、現状以外に、そんなところはできたらはずしたいと、職員をもって充てたいというようなところがありましたら、お答えを願いたいんです。
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) いま御指摘の営繕とか、厚生管理官等はすでに裁判官をはずしたわけでございますが、このほかにも職員管理官というような重要なポストがございます。職員の服務一般を管理といってはいかがかと思いますが、実態を見るというような職務につきましても、一般の職員をもってこれから充てていきたい。そこにやはり血の通った人事管理というものができてくるというように考えておりますので、今後、可能な限りは、このような形をとると同時に、参事、課長補佐というような形で、補佐職をこれから充実、強化しまして、それぞれの長のポストを少なくしていくというような形での改善も努力していきたい方向でございます。
○白木義一郎君 ぜひとも、そのような前向きな姿勢でお願いしたいと思います。いままで申しましたように、裁判官の不足を、まあとても十分じゃなさそうですが、補うという意味と、それから後進に道を開くあるいは登用の機会をさらに与えていくというようなことから、ぜひとも御配慮を願いたいと思います。 で、次は、人事の交流についてお伺いしたいと思いますが、裁判所の一般職員は、他の官公庁と比較して、よそへ異動したい、そういったような希望、要望をしても、きわめてそれがかなえられる、あるいは配置転換をされる率が、公務員でありながら非常に少ないと、こういうような現状だそうです。あらためてその点の理由をお聞かせ願いたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) 今日のようなきわめて多様化された時代におきまして、人事の交流ということはきわめて望ましいことでございますが、一面、三権分立という憲法上のたてまえがございまして、裁判所には裁判所特有の服務上の規律と申しますか、執務の精神がございまして、ほかの部門をどうこう言うわけじゃございませんが、やはり国民から期待された執務の態度というものが一つの形をつくっておりまして、なかなか他の部門へ出かけていっても融和しがたい、融和のじょうずな人は、むしろ場合によっては、問題を起こすというようなことがなきにしもあらずというようなこともございますのと、それよりも、たとえば書記官、家庭裁判所調査官等につきましては、特別の号俸の調整といいまして、給与上の特典といいますか、特別の待遇を与えていただいておりまして、職務上の廉潔のための一つの何と申しますか、特別の処遇をいただいておるわけでございますが、このような処遇がございますと、他の部門にかわりました場合に、必ずしも同じような待遇が保障されないというような給与上のアンバランス、その他いろいろ管理職的な手当の問題。それから行政の各省でございますと、一つの庁が一つのピラミッドに形成されておりますが、裁判所の場合には、事件を処理します一つの部と私たち申しておりますが、地方裁判所におきましても、高等裁判所におきましても、事件を配られる第何部というものが一つの独立した官庁の形を形成しておりまして、その中での小さなピラミッドと役職というような形になっておりまして、そこに一つの共同体といいますか、親愛感ができておりますので、なかなかそれを突き破って、他との人事交流ということが望まれながら、実際上はきわめてむずかしい。で、卑近な一事例を申し上げますと、租税調査官を国税庁からお招きしたことがあるんですが、やはり給与上のアンバランスと、なかなか執務についての考え方の相違というようなものから、職員間の融和というものがむずかしいような事態もできましたので、ほんとうは好ましいんですが、現実の問題として隘路があるということを御了承いただきますとともに、やはりこの方面にも推進については心がけていきたい、このように考えておるわけでございます。これは一般の職員でございますが、裁判官につきましても、やはり化石化しないために社会を知るという面からもやはりいろいろな面に出ていくということも、場合によっては好ましいかと存じますが、これもなかなかむずかしい問題がございますので、かたがた充員の困難等も相まちまして、御指摘のような実情にあるわけでございます。
○白木義一郎君 そのような理由で、なおさら裁判所の関係の職員の諸君の、何といいますか、昇進の機会を与えてあげなければならないと思います。 最後に、裁判所の事務総局内の一般職員のうちで、女子は何名ぐらいに現在なっておりますか。
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) 二百十七名在職しております。
○白木義一郎君 それで、その女子職員の住宅問題ですが、独身寮の設備はどういうふうになっておるでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 宿舎の問題でございますが、宿舎につきましては、住居の安定者とそれから住居の不安定者と申しますか、住居を必要とする者と二種類に分かれるわけでございます。ただいまお尋ねの最高裁判所の事務総局の女子職員について現状を申し上げますと、総計二百十七名ございますが、その中で住居の安定者が二百五名ございます、宿舎を必要とする者が木名ほどございまして、これにつきましては、私どもといたしまして、将来官舎を考えなければならないと、かような状況に相なっております。
○白木義一郎君 そうしますと、全然女子の官舎といいますか、寮というものは、現在ないわけですか。
○最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 東京には、現在三鷹市に女子の独身寮と称しておりますが、これが十二戸ございます。
○白木義一郎君 十二戸。いまの御説明では、安定している職員が二百五名、それから住居を必要とする職員が六名と。そうしますと、六人だけはその寮に入っている、そういう計算になりますか。
○最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 先ほど申しました十二戸でございますが、ここに入っております者は、すでに住居が安定しているわけでございます。それで、先ほど申しました六名と申しますのは、これは現在間借りをしておりますとかそういう者でございまして、ただ、非常に通勤距離が遠い、あるいはその居住条件がよくない、そのために、現在はもちろん住まいがあるわけでございますが、それを解消するために、なお住居の必要者と私どもが考えておる数字でございます。
○白木義一郎君 最高裁で、女子職員と男子職員を待遇を区別されるとは思いませんが、なおかつ女子職員の寮の設備等希望者が多くあるようでありますので、なおその点の推進解決をすべきじゃないかと思います。 さらに、この女子職員が結婚した場合には、なかなか宿舎にはいれないと、こういうような現状ですが、当然それは絶対数の不足からきている問題だろうとは思いますけれども、その点について当局の考え方を伺っておきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) まず、前段のお尋ねの件でございますが、私どもといたしましても、ただいまの白木委員の仰せのとおりであると考えますので、今後さらに一段と力を尽くしまして、女子職員の宿舎につきまして、配慮並びに努力を行なっていきたいと存じます。 次に、第二段の御質問の既婚婦人の問題でございますが、既婚婦人の状況をちょっと事務総局についてだけ申しますと、先ほど六名必要者があると申しましたが、その中で独身者が五名で既婚婦人が一名でございます。最高裁判所についてだけ見ますと、少ないわけでございますが、しかし全国的にはなお数が相当あるわけでございます。これは一般的に申しますと、これは申し上げるまでもないことでございますが、日本におきましては、既婚婦人の場合は、夫の勤務する官庁でありますとか、あるいは企業でございますとか、そういうところの官舎あるいは社宅に妻が一緒に同居するというのが通例でございまして、したがいまして、妻のほうで宿舎を見るというよりも、むしろ夫を中心として宿舎を考えますので、それでもって妻が夫のところに同居するというふうな扱いになっておる次第でございます。しかしながら、そうした実情にございますけれども、既婚婦人につきましても、さらに綿密に女子の実情を検討いたしまして、そういった点について、漏れのないような配慮をいたすべきではないかと考えるわけでございまして、御趣旨に沿って努力をいたしたいと考えます。
○白木義一郎君 独身の女子職員が結婚したくも——そのような考え方ですとこれは主人が当然そういう住居に対する責任を持つべきじゃないか、われわれの男の立場であるとまことによくわかるのですが、しかし現状はなかなかそういうわけにいかないだろうと思います。女子職員としてもそれぞれ希望を持ってこの仕事につき、また皆さん方の手足となって仕事にはげんでいる点も考えてあげなければならないと思います。したがって、女子職員が結婚と同時に住居に恵まれて、さらに新しい希望に燃えて最高裁の仕事に従事し、日本の民主主義の確立のために働いていただく、こういうことはお互いに努力をしなければならないと思いますので、なお前向きで検討していただきたいと思います。
○委員長(阿部憲一君) 本案に対する質疑は本日はこの程度といたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後四時四十二分散会