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68回国会参議院1972/05/17

内閣委員会、公害対策及び環境保全特別委員会連合審査会 第1号

発言数
196
登壇者
15
会派数
5
開催日
1972/05/17

会議録

柳田桃太郎自由民主党

○委員長(柳田桃太郎君) ただいまから内閣委員会、公害対策及び環境保全特別委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして私が連合審査会の会議を主宰いたします。  公害等調整委員会設置法案を議題といたします。  御質疑のある方は順次御発言を願います。

伊部真日本社会党

○伊部真君 まず、この法案に関する質問をする前提にお聞きをしておきたいと思いますが、昨日でしたか、衆議院の委員会で環境庁長官がPCBについて大気汚染、水質汚濁の有害物質の中に繰り入れたいというふうな意味の発言があったと聞いておりますが、その内容と繰り入れるとすると、その時期、具体的な内容についてお知らせをいただきたいと思います。

小澤太郎自由民主党環境政務次官

○政府委員(小澤太郎君) 衆議院の委員会におきまして、大石長官からただいま御質問のとおりの発言があったということを私も聞いております。ただし、PCBにつきましては、御承知のとおり、非常にむずかしい問題がたくさんございまして、その人体の影響あるいは汚染のメカニズム、まだまだ検討すべき問題がございますので、いま精力的にこの問題の検討をいたしておりますが、長官のお話のとおりこれが人体に、健康に影響があるということは見通されておりますので、できるだけ近い機会にこれを有害物質として指定いたします。指定いたしますれば、水質汚濁、大気汚染、この両方の適用を受ける、こういうことに相なるわけでございます。

伊部真日本社会党

○伊部真君 昨日でしたか、カネミ油症患者が一人なくなられて計十六名の犠牲者を出したということで、PCBが人体に及ぼす影響というのが明らかになった今日、私は当然に有害物質の中に入れるべきだと思うので、そういう意味では大石長官の発言を私は大いに期待し、具体的実施についてお聞きをしたかったのでありますが、少し長官の発言の内容より後退したような感じがするわけでありますが、長官はこれについて入れるというふうに約束されたというふうに聞いておるわけですけれども、その点はいかがですか。

小澤太郎自由民主党環境政務次官

○政府委員(小澤太郎君) 約束をいたしておるはずでございますが、その時期等について明確に申し上げておらないので、私が申し上げたのはPCBのいわゆる急性の人体被害というものは明らかでございますが、これが慢性ということになりますといろいろ問題がありますので、目下、この点について十分に検討いたしておるわけでございまして、長官の言われるとおりできるだけ早きに及んでこれを有害物質として指定いたしたい、このように考えておるのでございます。

伊部真日本社会党

○伊部真君 いまのようにPCBの人体に及ぼす影響は、急性の場合は明らかだし、慢性の場合に云々という問題については、しばしばこれは公害の委員会で議論しているところでありますし、したがって、それはわれわれも十分承知をしているわけでありますが、しかし、いずれにしても、これは決断をする時期にきていると思うんです。そういう意味で、長官がこれを入れるということを約束されたということは、私歓迎するのでありますが、その点については、ぜひひとつ長官の発言どおり、具体的に、早急に、これが実施されるように要望しておきます。同時に、先般この乳菓の包装紙その他が問題になりまして、大阪で流通を中止を命令をする、その処置をするということを大阪市が決定したというふうに聞いております。これについて、環境庁としては、このようなかなり大量にPCBが含まれておる包装紙の問題についてどのような処置をお考えですか、お聞きをしたいと思います。

小澤太郎自由民主党環境政務次官

○政府委員(小澤太郎君) 環境庁といたしましては、通産省において、至急に、しかも徹底的な処置をされることを期待いたしております。

伊部真日本社会党

○伊部真君 これは、いずれにいたしましても、どの省といわず、具体的に処置をとるということが必要だと思うんです。  それからもう一つ、私はここでもう一度お聞きをしておきたいことは、これもしばしば議論があったことでありますけれども、PCBの汚染に対してどのように処置をすべきかということ、これがまだ方針としてきめられておらないそうです。たとえば琵琶湖の湖岸の日本コンデンサによる草津の一帯の汚染、汚泥の問題があります。あるいは豊中の松下のコンデンサーの三田池の汚染の状態があります。聞くところによりますると、この汚泥を処置をするのに、コンクリートに固めようとしても、あの状態ですと凝固しないというようなことで、たいへん始末に困っているようでありますけれども、しかし、明らかに人体に影響する有害物質といわれるようなものを目の前に、しかも、雨が降れば田畑にずっと広がるという目の前に有害物質を見ておって処置ができないということは、これはいつまでも許されることではないと思います。これは、かなり日数がたっておることでありますから、この問題について私は検討するというだけでは済まされない問題だと思います。さらに環境庁としてのこれの処置の方法についてひとつお答えをいただきたいと思います。

小澤太郎自由民主党環境政務次官

○政府委員(小澤太郎君) PCBの問題につきましては、御承知のとおり、先に官房長官からの指示がございまして、環境庁が中心となりまして、関係省庁でもってこれの対策の会議を持っておりまして、現在、ただいま御指摘の問題を含めて、鋭意対策について検討いたしておる次第でございまして、お話しのとおり、まことにむずかしい問題でございます。そのものの処置についての的確な手段、方法等についての解明もまだ不十分でございます。しかし、これはお説のとおり、放置しておいてしかるべき問題では絶対にありませんので、この検討会を至急に進めまして具体的な措置を進めたいと、こういうことで、せっかくいま努力をしておるような状況でございます。

伊部真日本社会党

○伊部真君 どうもこの点は不満なんでありますが、包装紙の取り扱いにしても、あるいはPCBの入っておる、あるいは使っておる家庭電気器具の取り扱いにしても、この場合でも、製品に対してPCB使用を公示するというふうなことも考えているということでありました。あるいは、いま申し上げたような汚泥について早急に方針をきめたいというふうなことで、そういうふうには答えられておるわけですけれども、具体的に現地のほうでは、たとえば松下電器に行って聞いても、松下電器はこれをどう処置をしていいのかということが、政府なり地方自治体のほうでの方針がきまらない以上はどうにもしようがないということで、そのままその処置に困っておる状態ですね。これはほかのものと違いまして、目の前にあることだし、その池が雨がふえますと流れてくるわけですね。特に草津のコンデンサーのごときは、近くに琵琶湖の汚染という問題が出てきて、たいへん重要な、しかも緊急を要することだと思うのです。したがって、私はある程度のめどをひとつ出していただきたいというふうに思えるわけでありますが、そのことはいかがですか。

小澤太郎自由民主党環境政務次官

○政府委員(小澤太郎君) トランスその他に対するPCBの扱いについては、きょう通産省から来ておりませんので、私から的確な回答はいたしかねると思いますが、この対策を、先ほど申しましたように徹底的に至急にやるということについては、環境庁としても、通産省に強く要望いたしておりまして、直接聞いたわけじゃございませんが、例の包装の問題から通産省がいま全国一斉に点検措置を指令するということになっておるそうでございます。で、私のほうの先ほど申し上げた会議は、五月末には結論を出したいということで、PCB対策の処置でございますが、いま進めておるような次第でございます。

伊部真日本社会党

○伊部真君 この点は、これからもまた委員会で要望していきたいと思いますけれども、とりあえず汚泥処置、その他PCBの製品の回収と、それからそれのもたらす汚泥の処置については、私は早急にひとつ考慮を願いたい。重ねて要望しておきます。  続いて、本日の議題となります公害等調整委員会の設置法案についての質問を行ないたいと思います。  この法案の最も大きなねらいというのは、公害の処理を、紛争処理を可及的迅速に、そして簡易に行なう、特に裁定を導入するということであります。その意味では私、敬意を表するのでありますけれども、しかし、どうもその提案の趣旨が生かされないのではないかという心配があります。それは責任裁定の場合には、この場合、被害者が申請者になって、そして片方のほうでの申請を認めないわけでありますから、その意味ではかなり被害者に配慮していると思うのでありますが、しかし、それが紛争、いわゆる裁定の協議が行なわれている中で、相手側が、企業側がいわば途中で原因裁定に持ち込むという状態になりますと、その原因究明のほうに論議が集中して、かなり時間的にも、あるいは内容的にも、裁定というよりも原因究明の化学的論争というものに落ち込みはしないだろうか。で、そのためにかえってこの迅速化ということの趣旨が生かされないのではなかろうかというふうに思えてなりません。そこで原因裁定の場合も、責任裁定の場合と同じように、被害者だけに申請をするいわば権限ですか、資格を付与するということのほうがいいのではないかと思えるわけでありますが、この点について長官の御意見をいただきたいと思います。

山中貞則自由民主党総理府総務長官

○国務大臣(山中貞則君) 御意見は私もごもっともだと思います。ことに責任裁定は、損害の額を、賠償額を定めるものでありますから、支払うべき立場に立った者が自分はどれだけ支払いたいというようなことを持ってくるのはもともと不遜でありますから、そういうものはおかしいと思うのですね。そこで、私は、できればこの責任裁定もそういう形が貫けないものか。すなわち被害者の立場というものが優先し、確立されて守られていくと思ったんですが、この法律は、御承知のように、前提が大気汚染、水質汚濁だけにとどまっておりませんで、典型公害のすべてを対象としております。今日いろいろの調査をいたしますと、一般市井の人々の一番のいわゆる公害の範疇の中と思われるものの中で苦情が多いのは騒音であります。したがって、騒音に関するケースはいろいろあるだろうと思いますが、騒音、振動、悪臭、地盤沈下等のような問題になりますと、あながち加害者が、すなわち結果的に支払いの立場を要求されるものが大企業であって、そうして被害者が弱い立場の不特定多数の地域住民であるという形式だけにとどまらないケースが出てくる可能性が相当あります。したがって原因裁定については原因が、責任がいずれかにあるかの因果関係を究明するわけでありますので、むしろトラブルがある。しかしその場合に、大気、水質だけならば、これは明らかに被害者と思われる人々だけからの申請で私はよかったと思いますが、しかし一般の典型公害全部ということになりますと、実は、私は、そういうことを言われておりますが、加害者ではございません、この資料のこのとおりでございますと言って、みずからが被害者でないのに被害者という立場をとらされると、これはある意味では、その意味の被害者になる可能性もあります。そこで、よほど自信がなければ、これは持ち込んだ以上は裁定を受けるわけでありますから、おまえはそう言って持ってきたけれども、よく慎重に調べたら、詳細なる検討の結果、やはりおまえさんが犯人だったと言った場合には裁定に従わなければなりませんし、そのとき民事に逃げ込んでみたって、もう因果関係というのは明確にそれで示されていることになるわけでありますので、よほどの覚悟と自信がなくては、私は持ってこれないものであるだろうということと、典型公害のすべてのケースを包含するので、やはり当事者というものが相互にいずれの立場からも自分がそうである、ないということを申し出る道を開いたほうがよかろうという決意をいたしたわけでございます。

伊部真日本社会党

○伊部真君 原因裁定の場合、論争になりますのは、やはり化学的な論争が多いと思います。たとえば、私が、この間の公害の委員会でも質問したのでありますが、具体的に例をとりますと、水質の場合には、たとえば琵琶湖のシジミが五年前と比較すると、もういまは一割しか取れなくなったと、これを漁民から訴えた場合には、この状態は何に原因をしたのか特定をしないで、それを提訴をして審理をしていきますと、あの場合にもたいへん問題になってくるのは、おそらく湖底のいわゆる底質がどのような状態になっているのか、カドミウムあるいはPCB、そういうようなものがこの数年間のうちに蓄積された。しかし、いずれにしても、シジミは水が汚濁されたために減っているということは事実なんですね。そういう問題になってくると、そういう論争になりますと、かなり原因究明の場合に化学的、しかも長時間かかるというようになってこようと思います。したがって、そういう場合に、迅速化に対して非常にブレーキになっていくというように思います。こういうことに対して、私はもう少し解明をいただきたいと同時に、長官、いま地方のいわゆる庶民生活の上で、騒音問題なんかで非常に問題が多いと、こうおっしゃいますが、私は裁定を求める、いわゆる中央で論議をされる中身というものは、ほとんどいま大きな問題として考えられることは、基地公害それから新幹線公害というような問題が庶民生活の中では非常に結びつきが多いのじゃないかと思います。こういう問題を考えると、やはり裁定の場合には、被害者のほうに立った法運営というものを考えて整備されなければいかぬのじゃないか。これが地方のほうにも裁定権がある、裁定制度があるというなら、これはおっしゃる点についても私は議論になると思います。どうも中央だけに裁定権を付与していることから考えれば、これはどうもやはり被害者、加害者という関係は、かなりおっしゃるようなケースではなしに、もっと大きな大企業あるいは大会社というものが対象になって、被害者というものは庶民、国民という側になるのではなかろうかというふうに思うのでありますが、その点いかがですか。

山中貞則自由民主党総理府総務長官

○国務大臣(山中貞則君) 先ほどの答弁の冒頭にも、私、御意見については賛成な点も多いということを申し上げたのは、基本的にはそういう考え方がやはりあってしかるべきだと思うんです。今回、いままでの中央公害審査委員会の権限が当事者間の合意を得て調停、仲裁等が行なわれるにとどまったということから、附帯決議等もよく踏まえて、その後進行状況等を見まして、やはり問題が存するということで、この際、幸いにして、私が一貫して閣僚の地位におりましたので、私の責任としてすみやかにこれを処理しておきたい、そして後顧の憂いなきようにしたいと考えて、今回の法案を提出をいたした次第でございますので、その姿勢を疑われるようなことで法律を出したのでは、これはもう全然立法の価値がないとは言いませんが、これは国民に対して期待にこたえるゆえんではない、当然のことであります。でありますから、私としては三条機関に移行し、不偏不党、中立という立場でもって、厳正に裁定を下していく、行政の、いわば行政における最終審というようなものの権限を今回与えようという決意をしたわけであります。したがって、この裁定の行為を行ないますときには、被害者側、加害者側という立場ではなくて、これは姿勢としてはそうでありますけれども、決定は全く事実に基づき、客観的に、これは裁定がさるべきものでございましょう。しかし、これを設置した目的は、今日の日本が工業先進国に急速になった反面、国民の特定の地域における、あるいは不特定多数の人々が経済的な繁栄の犠牲になって、憲法に定められた基本的な自分たちの生活環境、生存の権利というものに甚大な脅威を受けておる事実というものを、国家もこれを見のがしてはならないし、面をそむけてはならないということでもって取り上げておるわけでございますので、まあ裁定の中で原因裁定だけ、その問題としては当事者ということにしたという点は、先ほど御説明申し上げたとおりでありますが、地方の公害審査委員会等において、これを直ちに裁定を与えるには、やはり同じ物質による同じ健康被害でありましても、地域によってその裁定が斉合性を欠いてやはり困るわけでありますから、とりあえずは中央のほうにおいて、国法に基づいてそれをきちんとさばいていく、やがえはそれによって判例、先例集みたいなものができ上げっていくでありましょうし、地方において法律の範囲内における条例等に基づいてさばいていかれる場合において、将来は地方においてもそのような制度の習熟に伴って、地方の身近な広域自治体の首長の手元における裁定というものが考えられないことは、私もないと思いますが、とりあえずはこの形で出発をいたしてみたいと考えております。

伊部真日本社会党

○伊部真君 事実上出発をしてその実績が出ないと、私も論評はむずかしいと思うのでありますが、私が心配をします点は、簡単にできるだけ迅速にということが生かされなければならぬ、その意味でこの裁定制度というものがあると思うのであります。その場合に、責任裁定の途中で、当事者である片方のほうが、これは故意が入るかどうか、そのときの状況の判断にありますが、原因裁定へ移行させる、そうしていわゆるこの原因究明の論争に入っていくということになって、結果的に、裁判が三審が四審と同じような形になったんでは、これは何にもなりません。おそらくそういうことにはならぬとは思いますけれども、そういう心配がありはしないだろうか、こういう点をひとつ念のためにお聞きをしておきたいと思います。

小澤文雄中央公害審査委員会委員長

○政府委員(小澤文雄君) 原因裁定は確かに因果関係を究明することだけを目的とするものでございますけれども、その責任裁定の場合におきましても、責任を認めるためには、因果関係がはっきりしないというと認めることはできませんので、原因裁定の場合であろうと、責任裁定の場合でありましょうと、因果関係究明のために審理を尽くすということは、全く同じでございます。ただ、責任裁定の場合には、因果関係を究明した上で、ほんとうに因果関係があるという段階になりまして、引き続いて損害の額とか、程度とか、そういうものについての審理をずっと進めていかなければなりません。そして、それによって結論を得た場合に、責任裁定するわけでございますが、原因裁定の場合には、損害の範囲、額などのためにいろいろ審理をする必要がございませんので、まず原因裁定をしておけば、それに基づいてあとはそれを前提にしての当事者間の話し合いだとか、あるいは、そのほか行政的な措置の参考になるとか、いろいろな副産物がございまして、責任裁定による結論を待つまでもなく、目的を達するという場合が相当多かろうと思われますので、それで原因裁定の制度を立案してございますので、決して原因裁定によって、本来責任裁定のときにはしないで、省略してよかった因果関係の究明の手続がそれだけ加重するということにはならないのでございまして、その点御了解いただきたいと思います。この点は、何も裁定に限ったわけじゃございませんので、公害裁判におきましても、やはり因果関係が究明されない限りは、肯定されない限りは企業側に責任があるという判決はないのでございまして、この点は全く変わるところはございませんのでございます。

伊部真日本社会党

○伊部真君 それはいまイタイイタイ病なんかでも、裁判の一つの論争点になっているというふうに私は思うのでありますが、いわゆる原因というものと、因果関係の判断というものとはやはり議論のあるところじゃないか。いわゆる、たとえばカドミウムの汚染というものが、その地域全体にそれによって発生した場合、これは、そのカドミウム自身の人体との影響というものの究明とか、あるいは原因それ自体に対する究明というものがなくても因果関係の判断というものが出てくるのじゃないでしょうか。そういう問題から考えますと、私は、やっぱりいま裁判の中でも議論がありますように、推定で判断できるということから考えますと、私は、どうも責任裁定の場合に、必ずしも厳密な原因究明というものがなくてもできるのではなかろうか。そこで、同一だとおっしゃったのですが、どうも原因裁定が責任裁定の場合に、前提として同じことをやって、それから損害をきめるのだというふうに言われたのでありますが、その点をもう一度お聞きをしたいと思いますが、そのとおりでよろしゅうございますか。

小澤文雄中央公害審査委員会委員長

○政府委員(小澤文雄君) ただいま申し上げましたとおりに、因果関係をはっきりさせた上で責任裁定のほうにいくんだという点は、全く原因裁定の場合と同じでございます。ただ、いま御質問を伺っておりますというと、この因果関係を明らかにするという問題と、それから因果関係を肯定するためにはどの程度の証拠があればいいか、あるいはどの程度の資料があればいいかという問題に入ってきているように思いますが、この問題は別でございまして、因果関係があるなしの問題と、それから因果関係があるということを認定するためにはどの程度の資料があればいいかという問題とは別でございます。それで、因果関係ありと認定するためには、これはおのずから経験則がございまして、これは具体的なイタイイタイ病の例を申しましては、これはいま訴訟も係属中でございますから差しさわりがございますけれども、それに似たようなほかの例を考えるといたしますと、たとえば、ある地域でほかの地域には全然起きないような健康障害あるいは農作物の収穫減といったようなものがあって、それがなぜだろうかということをいろいろ究明する場合に、ほかの原因は思い当たらないけれども、その地域に、他の地域にはない特定の有害物質がたくさんあるということが、そういうことが明らかになったといたします。そうすると、そのほかには例のない特別の被害現象、公害と、それから、そのほかには例がない原因物質とがそこでたまたま全く一致している、そのほかの場所にはそういう一致した例がないといったようなことになりますると、まず普通の経験則からいきますというと、一応は、その有害物質がその公害の原因だと推認するのが普通の経験則の教えるところではないかと思います。それでございますから、そういうときに、それでも、なおかつ、その有害物質がどういう機序を経てどういう化学変化と、どういう生物学上あるいは生理学上のルートを通ってそういう結果になったかという、そこを全部究明しなければ因果関係が認められないということになるとたいへんでございますが、それはいま申しました経験則に従っておのずから限度がございますので、裁判に限らず、裁定の場合にも果てしのない科学論争に引っぱり込まれて被害者の救済がおくれるということはあってはならないものだと考えております。

伊部真日本社会党

○伊部真君 そこで、いま、最後におっしゃったように、果てしない科学論争におちいったのでは、確かにこれは問題だと思うのでありますが、同時に、かなり、これの議論が合意が得られない場合でも生かされてくるということだと思うのでありますけれども、しかし、どうしても私が心配なのは、やはり裁判の屋上屋のような形になったのではどうにもならぬわけでありますが、その点はいまのような方法以外にないのだろうか。たとえば、何といいますか、裁判との結びつきの上でもう少し促進されるというふうなことについての配慮はできないものだろうかというふうに思うわけでありますが、その点はいかがですか。

小澤文雄中央公害審査委員会委員長

○政府委員(小澤文雄君) 責任裁定でございましても、あるいは原因裁定でございましても、因果関係を肯定することが責任を認める前提になるということは同じであることはいま申しましたとおりでございますが、その因果関係を肯定するにいたしましては、いま申しましたいろんな資料と、それから経験則が働きます。そして裁定では、その経験則、それからそれを裏づけた、それに基づいて因果関係を肯定する資料、そういったものが明らかになると思います。そうなりますというと、それがもし引き続いてそれだけで最終的な解決にならないで裁裁になった場合でも、当事者としましては、もちろん裁定に、認定された事実に、裁判の場で拘束されることはございませんけれども、その裁定の理由書に載っている因果関係を認定した経過、そういったようなものによって足りないところを補えば足りるのでございましょうし、訴訟になってから自分の主張をさらに支持し、あるいはさらに発展させていくのに非常に楽になるんじゃないかと思います。それでございますから、結果としては、裁定を経て後に訴訟になった場合には、やはり訴訟も促進されるものと、またそうありたいものと考えております。

伊部真日本社会党

○伊部真君 次の問題に移っていきたいと思うのでありますが、先ほど長官も言われたのでありますが、裁定を求める場合に中央に持ってこなければいけませんね。被害者の場合に、そういう余裕とそういう資力というものがある場合はそういうことでも差しつかえがないかもわかりませんが、被害を受けている当事者が生活的にもたいへん苦労の多いとき、あるいは身体上にも障害がある場合に、これを中央の裁定のほうに持ち込んで、そこでその裁定を受けるという日数をとるということは、たいへんな負担になりはせぬだろうかというふうに思えるわけですね。したがって、当然これは、そういうものについては地方にあれば救われると思います。私は、地方という意味は、必ずしも府県ごとでなくても、ブロック別にでも、少なくとも、やはり遠いところから東京まで出てこなければいかぬというような状態について、もう少し緩和できる方法がありはしないだろうかと思うわけです。  そこでお聞きするわけですが、中央と同じように地方に裁定制度を設けるというのはできないものだろうか。いろいろ裁定の結果が相違をするとおっしゃいますけれども、それはそれでいいんじゃないでしょうか。やはり裁判の場合でもその地域の条件に応じて、あるいはその事件の内容に応じてそれは判決が出るわけでありますから、したがって地方の場合でも相違点ができてあたりまえであって、相違点はむしろあったほうがいいのではなかろうかというふうに思いますが、その点はいかがですか。

山中貞則自由民主党総理府総務長官

○国務大臣(山中貞則君) 調停、仲裁等の場合は、これは当事者の合意があれば、それが最終的に確認されるわけですから、いまの制度のもとで県ごとに違ったり、あるいは北と南とで違ったりしても差しつかえないと思います。しかし、今回の場合は、裁定というきわめて法的なきびしい権能を持って行なう行為に当事者が従うということを前提にしてやっておりますので、県ごとに違うということになりますと、これはやはり原因裁定と責任裁定ともに問題が起きやしないか。  そこでまた、第一点の質問にも関連が出てくるわけでしょうが、当面そういうことを避けるためには、念頭に浮かぶのは、たとえば公取というものが審判をやりますが、そういう場合に、やはり出先で多分に、地域の特性やその地方にだけ起こった問題とか、あるいはそのトラブルに対する主として消費者団体とか、そういうところからの苦情を受け付けるような処理をしております。これも発足早々で、そこまで手が回りかねる状態でありますが、私どもは、日本じゅうがあちこち公害だらけになって、そうしてこの中央公害審査委員会の新しく発足する公害等調整委員会が夜を日に次いで働くような役所にしてしまったんでは、一般の政治行政を含めて私たちは国民のために申しわけないと思います。しかしながら、やはりそういう事態がいままでに全国のあちこちに起こっているという事実を、これまた見のがすわけにはまいりませんので、この公害等調整委員会等が幸いにして国会の御了承を得られまするならば、その運営を通じてみて、ただいまのような御注意等は私どもも初めから考えておる点でございまするし、三条機関として運用のために必要な部門なりがございましたならば、これまた国会のほうに御相談をしなければならないということもあり得るだろうと思います。

伊部真日本社会党

○伊部真君 重ねてお聞きをいたしますが、三条機関でこれから大きな働きをすると好ましくないということはそのとおりなんでございますけれども、しかし、現実にもうそうなっているんじゃないか、いま、現状がですね。ただ、たとえば、この間私明石のほうへ行きましたら、明石のほうでも、新幹線がついてみんな喜んでおるけれども、あの地域の住民はテレビが見えない。せっかく夕飯の一とき子供との団らんですら奪い去ったではないかと。あるいは、新幹線が通ったために家の壁にひびが入った。で、これを騒ぐと、何か金がほしいんであんなこと言っているんではないか、家が古いからひびが入ったんではないかというようなことを近所で言われたり、非常に困った状態が出ているということなんですね。で、これは基地の問題にしても新幹線の問題にしても、そういう苦情をどこへ国民が持っていったらいいのかということがわからぬわけですよ、いまは。これがわかってきますと、私は、やっぱりこの委員会はかなり大きな役割りを果たすし、国民生活と結びついてくると思うんです。好ましい、好ましくないは別にいたしまして。で、そういう場合に、たとえば、いまの場合でも、新幹線の場合、持っていこうとしても、国鉄のほうでは、それは大阪のほうの工事局だとか、あるいはどこだというようなことで振り回すわけですよね。これは、われわれのほうでも、運輸委員会でも議論して注文つけているわけでありますけれども、今度は、そういうことではなしに、こういうものがちゃんと国民の中に入り込みますと、私はそういう役割りを果たすんではないか。そうなると、ちょうどいま労働委員会というのが不当労働行為関係でかなりこれに似たような役割りを果たしてきております。で、そういう不当労働行為が裁定をされるというようなことになりますと、これはやっぱり地域で裁定されて、それと中央との結びつきというものがまだこれは検討の課題になるだろうと思います。この場合でも、日本の場合に、アメリカのNLRBの制度、規模から見ると、予算上からいっても規模上からいってもたいへんな格差があるわけですね。それと同じように、やっぱり私は、好ましくなくても、これがほんとうに国民生活に結びついた機構になってくるというなら、私はやっぱり制度的にももっと地域に根のはやしたもの、そうして予算的にも、この委員が中央で六名とか七名とかいうんじゃなしに、もっと大きな規模での、あるいは機構での出発というものがやはり望ましいんではないか。これから将来の問題ではないんです。いま現実にもうそうなっているというふうに思えるので、そういう意味では、私はどうしても地方に、裁定というものについて、いますぐでなければ早急に考えるべきではないかというふうに思うわけでありますが、その点の見解をいただきたいと思います。

山中貞則自由民主党総理府総務長官

○国務大臣(山中貞則君) まあ司法の部門においては、一審、二審、最終審という、やはり国家としての法律の適用の斉合性というものがはかられていると思います。この場合は、行政の分野におけるまあ国の政治責任ということを果たそうとしておるわけでありますから、将来、そういうことが地方においても裁定行為が行なわれる、その場合において、中央の委員会の裁定は、今度は裁定されたものを持ち込んで二審的なものができる、それでだめなら民事のほうに移っていくというようなことが将来確立されるかもしれないと私は思います。また、あるいはそういうことが好ましいのかもしれないと思いますが、さしあたりは、都道府県等においても、公害で問題になっている県は、県の恥でもありましょうし、比較的きびしい姿勢あるいは体制を持っておるようでありますが、そうでない県は、ほんとうは地域住民の被害があっているのかもしれないのに、また一部、あとでこれは公害なんだということが言われても、県当局が、一、二の例として、そんなことはないと言ってみたり、まだばらばらでありますから、この段階で一挙にそこまで、行政上の第一審的なものを地方に法律の権限として持たしていくということは、単に、水質とか大気汚染とかいう部門の取り締まり面を知事が持つというようなものとは少しく……、相当な拘束、決定権というものを伴うわけでありますから、やや、出発としてはむずかしい感じがいたします。  なお、中央委員の六人の問題は、後ほどまた各委員からも御議論になると思いますが、多ければ多いほどいいとも思いますが、公害の態様が、いろいろの物質にしても態様にしても分かれておりますので、やはり弾力的に三十名の専門委員をケースバイケースで任命、駆使しながら、それらの人々の専門的な——客観的に国民が見てこの人の判断ならばという人々をお願いすることが可能であることを前提にして、それらの人々が、おおむね、専門家の立場から集めましたものについて、中央委員の方々が奇数構成の立場でもってそれを最終的に裁定行為を行なわれるということでやっていけるんではないかというふうにいまのところ判断をいたしておるわけでございます。御意見は私は反対だと言っているわけではございません。

伊部真日本社会党

○伊部真君 それから、先ほど私申し上げたように、裁定を受けようとする被害者が、それが東京である場合に、費用の問題だとか、あるいは事実上、物理的に非常に困難な問題が生じやしないだろうかというふうに思うわけですが、費用とか、それから——費用といいますか、挙証責任も、やっぱり被害者は、自分のほうに有利にやろうと思えば挙証責任を持たざるを得ぬと思いますが、そういう問題を考えますと、費用と身体上の問題が起きると思うのでありますが、そういうものに対する配慮はいかがですか。

小澤文雄中央公害審査委員会委員長

○政府委員(小澤文雄君) 御指摘の点まことにごもっともでございますけれども、まず、費用の点について申し上げますと、もちろん、責任裁定にいたしましても原因裁定にいたしましても、公害責任を肯定する前提としては、争いがある限りは公害原因を証明する責任があり、そして証明するためにはいろいろ証拠調べといったようなことが必要になってくるわけでございますが、この裁定手続の場合は、普通の訴訟手続と違いまして、委員会が職権で事実の調査をしたり、あるいは証拠調べをしたりする道を開いてございます。それで、そういう面からして、当事者の審査のための費用の負担はある程度軽減されるものと思っております。なお、裁定申請についても、申請の費用というものは、訴えを起こすときの訴状に張らなければならない印紙額よりは低く定めることが可能になりますので、そういう点も配慮できると思います。  それからまた遠隔の地から東京へ出てこなければならないかというお尋ねもございましたが、この場合に、必ずしも審問の場所を東京に限るというわけじゃございませんので、事案によりまして地方で審問をする、あるいは地方で証拠調べをするという場合もございます。これは裁定ではございませんが、現に水俣病についての調停が委員会に係属しておりますが、これは新聞によく出てくるあの自主交渉派——調停を拒否して自主交渉しておるというあの人たちじゃありません。あの人たちの分は調停は係属しておりませんけれども、そうでない多数の人の水俣病に関する損害賠償の請求について現に調停が係属しておりますが、これにつきましては、すでに調停委員会が現地の調査を三回いたしまして、それぞれ現地におもむいて患者の人たちにも会い、そこでいろいろな調査をしております。さらに、いままで調停期日を四回開いておりますが、この四回の調停期日は全部現地の水俣市で開いておりまして、患者の方々に不自由なからだで東京まで来てもらわなきゃならぬと、そういう関係にはなっておりません。それからなお、当事者として本人が出られない場合には代理人が出られるということが今度の裁定の手続についても条文に載っておりますし、いろいろな方法がございますが、要は、それぞれの事案に応じて、一番適当な方法で、当事者にとっても負担の少ない方法を選んで処理をしていくということになると思います。

伊部真日本社会党

○伊部真君 いまの説明で大体のところはわかるのでございますけれども、問題が、私とお答えのほうとはどうも行き違うのは、この事案が相当に多くなるんではなかろうかというのと、いまの事案の程度でお考えの場合と、ここにちょっと私は相違があると思うんです。私はどうも、自分が中労委をやった経験があって、どうも中労委の不当労働行為との関係を見てみると、どうもそこら辺に行き違いがあるんですが、中労委の場合は、十一名の三者で三十三名、これを三名構成で手一ぱいで、一人当たり十五、六件持っているというのが現状なんですね。そういう状態になっては困るわけですけれども、しかしそのことを予想せなきゃならぬと思うんでありますが、そうすると、いまの人員が六名で、しかも、これが案件をいたしますとグループに分かれるわけですね。専門委員の方がおられても、これは直接にそれに、裁定の中に入られるということでなしに、それは委員を補助的に助けるわけになろうと思います。そうしますと、そこら辺でどうも、このメンバーとこの人員ではたいへんなのではなかろうか。しかもそれは、出張されるということになりますと、一グループが出張して、あと一グループが残るだけということになりまして、たいへん陣容的にもむずかしいんではなかろうか。したがって、そういう程度といいますか、その規模での中央の状態になれば、やっぱり地方に要るんではないかと、また元に戻ってくるわけでありますけれども、そういう気がしてなりません。したがって、いまのような陣容、これは早急に整備をして、もう少し、といいますか、陣容的には拡大をせなけりゃならぬと思うんでありますが、その点はいかがですか。

山中貞則自由民主党総理府総務長官

○国務大臣(山中貞則君) 中労委のことは、専門家の御意見に私は遠く及ばないんですが、これは、中労委は独立の権能を持って、中労委で最終的に決定をすることが最終処理だと思うんです、間違っていればお教え願いたいと思いますが。この公害に関する紛争の場合は、原因にしても、責任の、いずれの裁定にしても、これは本来、いままで裁判のものとして扱われている分野であったものを、行政としては中央公害審査委員会で、当事者の同意による仲裁、あるいは調定というようなことにとどめていた、そのことを一歩前進をしまして、そして行政が最終審をすることはできないけれども、しかし少なくとも、すべて紛争が、話し合いができないものは全部裁判にいかなければならない、それでは、やはり政治の姿勢として問題ではないかということで、行政上この分野まで踏み切ったという性格の違いはあるのではなかろうかと思いますが、中労委を例に引かれますと、私は勉強不足でございますので、体験者でございませんので、間違いはお許し願いたいと思いますが、そのような意味で、今回は行政が司法の分野においては、ともすれば現象としておくれがちな状態の中で、できれば、私どもの行政のワク内において、その紛争解決に貢献をしたいということが願いであるということでございます。

伊部真日本社会党

○伊部真君 三条機関としての内容は、ほとんど中労委の場合も、不当労働行為の場合も同じことでありまして、結局、命令が出てもそれが不服なれば裁判に移るということでありますので、これと非常によく似たケースであります。ただ違いがありますのは、三者構成ということの相違がありますけれども、それ以外はほとんどそういうことになっているわけでありますから非常に似たことで、労働争議と同じように、私はかなり多くなると思いますので、多くなると思うので、結局中労委のような規模のやはり形というものを持たざるを得ないように追い込まれてくるのではなかろうかというふうに思いますので、そういう意味では、この委員長一名で委員六名という陣容は、私は少し無理じゃないかというような気がしてなりません。その点はぜひ、そういうこともひとつお含みの上で、今後の構成なり予算上の処置なりについてはお考えをいただきたいと思うのであります。  それからもう一点は、いわゆるこの被害者側あるいは加害者側と言われるほうでもそうでありますが、集団の場合、共同当事者の多数の場合に、当事者を選定するというのは、やはり当事者の方々の意見を聴取をして、それに基づいて行なうべきではなかろうかというふうに思うわけですが、その点いかがですか。

小澤文雄中央公害審査委員会委員長

○政府委員(小澤文雄君) ごもっともでございまして、代表当事者を選定するときには、その選定の前に、あらかじめ、あらゆる角度から適当な人を調べて選定することになりますので、その段階では当事者の意見も聞くことになろうと思います。ただ、条文の上には載っておりませんけれども、実際の動き方としてはそうせざるを得ないだろうと思っております。

伊部真日本社会党

○伊部真君 それから、この裁定を受ける場合に、四十二条の十二の二項ですか、いわゆる不受理の件がありますね。これは、被害が軽微であって、といいますか、内容的に軽微なのでということが理由のようでありますけれども、人間の健康に関するような場合には、これはやはり軽微とか軽微でないとかいうことは非常にむずかしいのではなかろうか。それからもう一つは、やはりこういう軽微な事件も、これは中央であるから問題になってくるんですけれども、地方に裁定権があれば、やはり地方での処理ということが生かされるのではなかろうかというふうに思えるわけですね。この受理しない場合についての見解をひとつお聞かせいただきたいと思います。

小澤文雄中央公害審査委員会委員長

○政府委員(小澤文雄君) 四十二条の十二の第二項にございます裁量により受理しないことのできる要件でございますが、御指摘のように、被害の程度が軽微であるということは、これはやはり重要な問題点になりますけれども、しかし受理しないことができるのは、被害の程度が軽微であるというそれ一点ではございませんで、それだけで当然に受理しないということにはならないのでございます。被害の程度が軽微であり、その範囲が限られておる等、被害の態様、規模、紛争の実情その他一切の事情を考慮して受理しないことができる、ということになっておるのでございまして、大体この裁定の制度は、本来のねらいは産業公害から被害者を迅速に救済する、そしてそれによって社会不安をなくそうというのが本来のたてまえでございます。ところで、その対象をそれではどういうふうにきめるかということについては、立案の段階でも非常に苦心したところでございまして、何回か構想を立て直したりしたんでございますが、結局現行法で公害基本法に公害という概念を法定してございます。それをとるといたしますというと、これを産業公害あるいは企業公害というふうにやったんでは、やはり概念があいまいになるのでございましょう。とにかく、基本法でもそういう表現はいたしておりません。それで、かりに企業による公害というようなことを言ってみたところで、現在、日本にある企業で、数の上からいきましたら、大部分のものが零細企業——けっこう株式会社とか、あるいは合名会社という組織は持っておりますけれども、零細なものが数の上ではもう大部分でございます。そういうわけで、企業という形でもとることはできないんでございます。  それでは、実際の公害基本法に載っている紛争の内容はどういうことかと申しますと、われわれの頭に出てきますのは、大規模な産業活動による大気汚染、水質汚濁というものが典型的なものでございますけれども、しかし、あの基本法によりますと、先ほども大臣からお話がございましたように、騒音、振動、悪臭といったようなものがございます。そしてその種のものの中には、もちろん大規模なものもございますけれども、また全く局地的な対人関係の、ほんとうに向こう三軒両隣だけの問題といったようなもの、たとえば隣のお嬢さんがピアノをひくんで、こちらがどうも夜眠れないとか、あるいは隣の大工さんがとんとんと何か細工もんでといをたたくんで、自分のうちの愛犬、かわいがっている犬が神経質になって騒いで困るとか、そういう紛争が、これは実はほんとにそういう苦情なり紛争なんか多いんでございます。おそらくこれは公害対策基本法に言う定義には、やはり公害に当てはまらぬじゃないかと思いますが、それで、そういうものについて救済を求めてきたときに、これはもちろんその申し立てば適法でございます。これがいけないというふうになりませんし、それからそういうものを、それじゃ取り上げないでいいかとなると、それはやはり困りますんで、確かにそういう零細なものでも救済の必要があることは間違いございません。そういうものが救済の必要がないとは言えないんでございますけれども、実は先ほども御指摘になりましたように、当委員会は、この立案されている委員会は七人の構成でできている中央委員会でございまして、それがいわゆるそのような対人的な局地的な社会的影響度の小さなものを全部取り上げて処理するというような体制には必ずしも、残念ながらなっていないんだろうと思います。しかし、もしそのままにしておけば必ずそういうものが出ることは、これは火を見るより明らかでございまして、そういたしますと、せっかくこれだけのりっぱな委員会ができていながら、そしてその委員会は正面から、社会的に影響力の大きな産業公害などの裁定申請を受けて、全力をあげて審理をやっているときに、そのような対人的な、あるいは個人的な小さな、影響度の少ないものによって審理がやはりある程度制約されるということは、何としても残念なことでございまして、もちろん被害の程度が軽微だから取り上げないというんではございません。公害の被害が非常に軽微であっても、しかし社会的に無視できないものはたくさんございます。あるいは公害によって現に人の健康に害を及ぼすなどというものは、これは必ず取り上げなければならないものであって、それが局地的であるとか、あるいは症状が軽いからというわけで取り上げないということはできないんでございますけれども、とかくそうでないもので、先ほど例にあげましたようなものがあり、しかもときにはこういう制度には必ずつきまとうんでございますけれども、一種の偏執狂的な、単なるいやがらせのために、たとえば遠いところにいる人が相手方をただいやがらせるために、自分の出費は一切問わないで一々東京に呼び出さしてやるなんというようなことがあるかもしれませんし、そういうものを全部取り上げるということは困りますので、そういうものはここにありますように、相当でないものについては申請を受理しないで、もっぱら本来の仕事に専念するというふうにしてあるわけでございます。

伊部真日本社会党

○伊部真君 御説明の内容ですと、私もそのとおりだと思うんでありますけれども、必ずしもそういう内容になるかどうか、これが問題だと思うんでありますが、責任裁定を要求するために旅費をつくってまで東京に出てくるというような人がその程度のものであるかどうかということになりますと、ここが問題だと思うんです。したがって、これが運用によっては非常に問題だと思うんでありますけれども、この場合は受理するしないは、どういう形でこれをおきめになるんですか、お聞かせをいただきたいと思います。たとえば合議だとか、あるいは係官の受理をする場でおきめになるのかどうか、具体的にひとつお聞かせをいただきたい。

小澤文雄中央公害審査委員会委員長

○政府委員(小澤文雄君) この申請を受理しないというのは委員会の決定でございますが、この場合には、まだ裁定をするについての裁定委員会は、受理前ですから、組織されてないと思いますので、結局、七人の委員でもって構成される中央委員会自体の会議できまるというふうになろうかと思います。現在でも、普通の調停にいたしましても、調停を受理するかしないかという問題は、調停委員会によらないで、六人全員の合議できめております。

伊部真日本社会党

○伊部真君 この点も、私はどうも運用上ちょっと心配があります。おっしゃられるような隣の犬がどうだとかこうだとかいう程度のことなら、私はそういうことについては理解できるわけですけれども、しかし、そう一がいに言えるかどうかですね。これは、やはりせっぱ詰まって何とかしてほしいという気持ちの者と、やはり受ける者とは、案件が非常に山積している場合もありましょうし、あるいは、この内容の判断は個々非常にまちまちですね。したがって、被害者は被害甚大だと受け取る人とそうでないというのと、客観的に見て争いが起こると思います。私はできたら、本人の十分な理解を得てということを条件にしたいと思ったんですが、先ほどちょっと気になりますのは、いわゆる紛争マニアみたいな形で、そういう形が特殊な状態で出てきた場合という話がありましたが、それならやっぱり特殊な状態がある以外は、原則として、これは受理するということがたてまえでなければいかぬと思うんですが、そういう意味で理解をしてよろしいですね。

山中貞則自由民主党総理府総務長官

○国務大臣(山中貞則君) これは当委員会の基礎的な使命の問題でありますから、申し上げますが、これは受理することが原則であります。したがって、第二項で、「しないことができる。」というのは、あくまでも例外規定でございますから、この第二項を置きませんと、全部受理しなければならないということになった場合に、大気、水質汚染ぐらいならば、私はそれでよろしいと思いますが、先ほど来申しております典型公害のすべてに対して受け付けるということになりますと、どうしてもこの規定は、私はもうなるべくこういうのがないほうがいいと思いますが、一応条文上は置いて、姿勢はあくまでも全部受理するということが前提である。それは間違いもなくその姿勢でおりますから、したがって、「しないことができる。」というのが例外規定として念のために書いてあるということでございますので、姿勢を疑われるような七人の委員長以下の委員が合議をして、めんどうくさいから、こんなことはやめようじゃないかということには、そう簡単なことでは、この委員会の存在の価値を疑われますので、信頼を失った委員会というものはもう私はだめだと思うんです。その意味において、われわれも十分その点は戒心してまいりたいと思います。

伊部真日本社会党

○伊部真君 ぜひ、そういうことで、運用については非常に留意をされなければいかぬと私も思います。  それから、引き続いて一つ、問題が飛ぶわけでありますけれども、環境庁のほうにお聞きをしたいと思いますが、この間、東京都の公害調査によりますと、横田基地の騒音の状態というのがたいへんに大きく取り上げられて報道されておりました。内容的に見ると、瑞穂町では九十ホン、それから昭島市では九十九ないし百ホンの騒音が出て、住民の非常に苦情が多いという状態です。これはやはり私がいまこの席上でとは言いませんけれども、各基地それから自衛隊の基地も含めて、やはり騒音の状況についてひとつ資料を出していただきたい。いまおわかりの点はひとつぜひここで発表いただきたいと思います。

山形操六環境庁大気保全局長

○政府委員(山形操六君) お答えいたします。基地の騒音の問題に関しましては、民間空港と異なっていろいろ利用の形態だとか機数、発着時間等が必ずしも定まっておりませんので、騒音の実態を正確に把握することは非常に困難でございますが、東京都におきまして、先生御指摘のとおり、横田基地における調査がやられておりますので、私どもはそちらのほうで入手いたしておるわけでございますが、最近やりました結果は、まだ数字的にはっきりいただいておりませんが、昨年やりました私どもの手元にあります数字も、やはりいま先生御指摘と同じような数字でございまして、一日の飛行回数はおおむね百回程度、また滑走路延長二キロメートル地点における験音のピーク値、これは中央値で九十五ホンから百ホン程度である、こういう数字を入手しております。

伊部真日本社会党

○伊部真君 私はやはり基地の状態については十分注意をして、ひとつ掌握をしておいていただきたいと思います、横田だけではなしに。  最近ベトナムの北爆が激しくなって、横田基地の発着機数というのはかなりふえたというふうに報じておりますが、その事実はどうですか。

奈良義説防衛施設庁総務部施設調査官

○説明員(奈良義説君) 御説明いたします。特に、最近ベトナムの関係で飛行回数がふえたという実績は私どもつかんでおりません。ただ五月十日以降、私ども実はあそこに騒音測定装置、自動騒音測定装置を置いておりまして、騒音を調べているわけでございますけれども、そのときに飛行機の種類——実は機影を調べてみました。そのときに四十二機飛行機が飛んでいるという記録を私どもとっております。そういったようなことで、特にベトナムの影響を受けて飛行回数がふえておるというふうには理解しておりません。

伊部真日本社会党

○伊部真君 いずれにしても基地の騒音、いわゆる基地公害というのは、かなり住民にとって大きな問題になっておることなんですが、その意味で、基地並びに防衛庁の民間共有の飛行場、たとえば板付だとか羽田だとかというところの騒音というのはかなり問題だと思うんでありますが、それが、今度のこの法案では対象にならないということでありますけれども、私はこれは非常に遺憾なことだと思います。いま私らが聞いておるこの苦情の大きな柱というのは、東海道、山陽の新幹線の騒音、振動の公害あるいはテレビの受像についての障害、これと同じことが飛行場周辺、基地周辺に起きておるというふうなことなんでありますが、この点は対象に入れるべきだと思いますが、長官いかがでございますか。

山中貞則自由民主党総理府総務長官

○国務大臣(山中貞則君) これは環境庁に現在なっておりますが、公害規制立法をつくりますときもその議論がやはりある意味の大きな問題点の一つとしてお互い議論をしたわけであります。私どもとしては、アメリカに対して日米安保条約によって、私どもの立場としては、それを継続し基地を提供しておる立場を政府としてとっておりますので、それに対して基地の騒音等を中心とする、またあるいは水質汚濁等の関係の公害というものも、できれば環境庁なり、あるいはまた今回の紛争処理等において処理して現実にいくことが可能でありますれば、私どももそれはけっこうだと思うのでありますが、やはりどうしても防衛庁あるいは外交当局というものがそこの中に入りませんと問題の処理はできないということから、まず第一に米軍基地がどうしても対象に入りにくい。一方においては、しかし防衛庁自身が持っております自衛隊の基地というものがあります。それもまた国の機関でありますけれども、これが先ほどおっしゃいました国の機関である国鉄公社というものが出しております騒音等について、やはりこれは対象にならざるを符ないわけでありますから、当然ならなきゃならぬと思いますけれども、しかし自衛隊の置かれた特殊な環境、それを一般にどのような訓練をするからこういう騒音が出るんだとかいうようなことを、極端に言うとスクランブル等の場合等のことがありましょうが、そういう問題を政府の他の機関においてチェックし、あるいはまた、それを損害賠償その他まで持っていくことができるかという問題でありますと、やはりまず同じ国民に対して、被害を受けておる実態は変わらないわけでありますから、防衛庁自身がみずからの行政なり、あるいはまた苦情処理なり紛争処理なり、あるいは基地等のそういうような諸施設等なりを通じて、行政上の法制を持っておるわけでありますから、それに対して、やはり防衛庁も政府でありますので、政府の責任機関として、その防衛庁がみずからのこととしてそれを処理する、処理できなければ、防衛庁の存在そのものというものに対する国民の批判がだんだん高まっていくこと、すなわち自分自身の首を締めることになるわけでありますから、ごく良心的にやっていけるものと私どもは信じておりますので、その面についての論議は承知しておりますが、一応防衛庁でみずから律してもらいたいということであるわけでございます。

伊部真日本社会党

○伊部真君 この問題は私非常に重要なことだと思うんです。たとえば今度返ってきた沖繩の那覇空港の問題でも、これはやはりこの適用外になるわけでございますし、あるいは東京も外になる。大阪はこれは適用になりますね、伊丹空港は。そういうふうに同じ飛行場の周辺でも、その共用もしくは防衛庁関係の基地と民間のものとで差があるということは、具体的に住民にとってはたいへんに差別をつけられたことになると思うんです。これはどうも理解がしにくいわけでありますので、その点、防衛庁御出席を願っておると思いますが、防衛庁のほうで、先ほど大臣から防衛庁自身で考えるだろうという話もありましたので、お答えをいただきたいと思います。

長坂強防衛施設庁総務部長

○政府委員(長坂強君) お答え申し上げます。先ほど山中長官から、自衛隊あるいは米軍の行為あるいはそういった防衛施設の特殊性ということから、一般の産業公害と取り扱いを同じにするということは、必ずしも相当でないといった意味の骨子を述べていただきましたが、私ども防衛庁、防衛施設庁にあるものといたしましては、そういった自衛隊の行為、海上演習であるとか、あるいは陸上演習であるとか、あるいは飛行機の操縦その他の演習、あるいは陸上演習場あるいは海上演習場等の、そういう防衛施設、そういうものを運営していく際には、これは一般の実業界などが行なっているようなものとはもっと違った、より重い社会的な責任を持っているのだ。それによって付近の住民の方々に御迷惑をかけるということは、むしろ積極的にその障害を予防するような、そういう措置を講じていかなきゃいかぬのではないかという、そういう重い社会的な責任にこたえる意味におきまして、従来から防衛施設周辺の整備に関する法律とか、あるいは駐留米軍の行為による特別損失の補償法であるとか、あるいは漁業制限に関する法律等を御制定いただきまして、それによりまして、その運用によってそういう障害の軽減とか防止とかをはかっていこうという態度をとってきているわけでございまして、従来まで、昭和四十六年度までで行ないました騒音対策というものは五百四十三億にのぼっております。それから飛行場周辺の民家の移転などにおきましても二千百六十四戸、百五十三億というお金をもちまして、それだけの移転をしております。  それから農耕阻害等の補償なども、例年七千万円程度、人数としまして百人から二百人ぐらいの人々に農耕阻害の補償をやっているというようなことでございまして、そういう趣旨から、さらに今度は個人の防音、従来の騒音対策というのは公共的な学校とか、あるいは公共的な公民館であるとか、あるいは老人のホームであるというような、そういう公共性を持ったものにそういう騒音対策を施してまいったわけでございますけれども、いま御指摘のような個人防音につきましても、これは運輸省と共同研究ということで、四十七年から、それぞれ運輸省とうちのほうに調査費、研究費がつきましたので、これをもちまして真剣にその個人防音としては、どういうような個人住宅に対する有効な防音対策というようなものの設計とか、研究とかいうものを四十七年度中にやりまして、なお、これを事業費として、さらにしっかりしたものを打ち立てたいというような、こういうような態度でおるわけでございます。

伊部真日本社会党

○伊部真君 続いて質問をいたしますが、この特損法もしくは防衛施設周辺の整備法に基づきますと、個人の騒音、たとえばテレビその他の損害に対して処置をするように——いままでは実績としてはありませんね、個人の補償について。これは具体的にこれから個人を対象にした補償問題はやっていくと言われるわけですか、その場合は。防衛庁関係と、いわゆる米軍基地関係と分けてひとつ御説明を願いたいと思います。

長坂強防衛施設庁総務部長

○政府委員(長坂強君) お答え申し上げます。  その個人のテレビ等に関する障害、そういうものに対する対策といたしましては、実は二つございまして、そして一つは、昭和四十六年から始まっておりますところのテレビの受信料、それの減免措置を四十六年度から発足させまして、そして、二分の一の二分の一ですから四分の一、受信料の四分の一の額に相当する額を補償額としてNHKに払っていくという措置を講じております。そしてNHKのほうでは半額を減免する、受信料を個人の方からいただくときは半額にする。それをうちのほうはNHKに対して半額その分を出しておく、という措置をとっております。  それからテレビのフラッター現象というような、飛行機の運航によりまして生じますところのフラッター現象等に対しましては、これは共同アンテナを用いて、そのアンテナに特別なくふうをいたしますと、そのフラッター現象がなくなるというような技術的な研究が得られましたので、そういう特別なアンテナを共同で設置する、その設置の費用を防衛施設庁が出す。これは四十七年度から始めることになっておるわけでございます。  以上でございます。

奈良義説防衛施設庁総務部施設調査官

○説明員(奈良義説君) ただいまの総務部長の説明、ちょっと補足説明させていただきます。  個人に直接といいますか、間接といいますか、なされますそういう措置につきましては、先ほどから個人防音の調査研究というものを四十七年度からやるというお話がございました。そのほかに、実は特損法、いわゆる特別損失の補償に関する法律というのがつくられました昭和二十八年から、たとえば施設の運営とか、あるいは駐留軍等の行為によりまして、農業とか林業とか水産業とかいったような経営上損失をこうむった場合には、それぞれ補償を行なってまいりました。これはいわゆる補助金のような形でございませんで、直接金銭を補償するという形で行なわれてきたものでございます。それから直接個人に、たとえば町村であるとか、あるいは組合であるとかというところにいわゆる補助金という形で出しますけれども、結果的には直接個人の家に何らかの措置が講じられるというようなかっこうでやられますものに、騒音防止電話機の設置というものがございます。これは最近非常に能率のいい電話機ができましてこれをつけて差し上げる、そのときの経費を負担しますとか、あるいは有線放送電話、あるいは有線放送施設といったようなものは、それぞれ組合なり市町村なりがやりますけれども、各戸の家にスピーカーなり電話機なりが取りつけられるという形で行なわれてまいるわけでございます。  それから先ほど説明がございましたテレビの受信料の減免措置に対する補助と、共同受信施設に対する補助でございます。これはそれぞれ各戸に利益が還元されていくわけでございます。  以上でございます。

伊部真日本社会党

○伊部真君 私、先ほど長官に質問した中で一つお答えがないわけですけれども、これはどなたかお答えをいただきたいと思うのは、防衛関係は当然にこの法案の対象にしていいのではないか。なぜ防衛庁関係の防衛施設関係はこれの対象にしないのか。いま、先ほど個々の問題がありましたけれども、その補償で解決のつく場合、あるいは被害者としての救済を求めたいという要求があった場合のことがあると思いますので、今度の場合にこれが除外されているということについて、対象に、裁定の対象にならないということについて、私はどうも理解ができないわけでありますが、先ほど長官の話では、米軍基地関係はいろいろ問題がありましょう。折衝関係もほかのほうにありましょうけれども、防衛庁関係はどうも私わからぬわけでありまして、特に防衛庁との共用しているような羽田あるいは板付あるいは那覇というようなところについて被害が相当多いと思われるので、その点についてひとつお答えをいただきたい。

長坂強防衛施設庁総務部長

○政府委員(長坂強君) お答え申し上げます。  先ほど山中長官から、米軍関係につきましても対外的な折衝事項があるという事項にも触れてお話があったわけでございますが、この防衛施設関係をこの公害の法案の対象外にするということにつきましては、ずいぶん公害紛争処理法の立法当時から議論の対象になっておりまして、その際に、原因行為としての自衛隊の行為、あるいは防衛施設の特殊性というようなものから、一般の産業公害と同じ取り扱いをすることは相当でないという観点、それからまた国が別途もろもろの、先ほど申し上げましたような周辺整備法であるとか、あるいは特別損失の補償法であるとか、あるいは漁業の制限の法律であるとか、そういうものによりまして、先ほど来申し上げておりますような障害防止工事の助成をしたり、あるいは民生安定施設の助成をいたしましたり、あるいは個人の方々が都道府県知事を通じまして移転の申請をしてこられる。それに対する移転の補償をいたしましたり、あるいは、やはりこれも都道府県知事を経由いたしまして損失補償の申請がある。その損失補償額を各地の防衛施設局では、その自分のところの諮問機関でございますところの防衛施設地方審議会にはかりまして補償額を決定する、そういうような制度がございます。それから、そういうような補償額が決定になりました場合におきましての、今度は個人の方がやはり都道府県知事を通じまして内閣総理大臣に対して異議の申し出をする。あるいは増額の請求の訴えをするというような制度が講じてございます。そういうような制度を講じてあることにかんがみまして、この防衛施設についての具体的な措置は、この公害関係の法律では、別な法律で定めるところに従うということにされたのでございます。  それで、なお私ども目下研究——そういうような防衛施設についての一応の、何と申しますか、そういう損失補償制度とか、あるいは都道府県知事を経由してくる制度であるとか、あるいは審議会、諮問機関である中央審議会とか防衛施設の地方審議会につきましては、さらにこれを人の面で学識経験者、財界あるいは実業界とか、あるいは法曹界の方々の有識者に入っていただいておりますが、その中央におきましても、地方から上がってきた事案が処理できるように——中央の審議会は基準だけを定めてございますが、その地方から上がってきた事案もまた審議会にはかるというようなことができますように、この制度のあり方を目下検討をいたしておるところでございます。それでなお、地方、都道府県知事を経由して上がってきております事案で現在のところ処理が済んでいないものは一件もございません。  以上でございます。

伊部真日本社会党

○伊部真君 私がお聞きをしておりますのは、そういう処置がされておるというのは当然のことでありまして、お金の出場だとか、そういうものについての配慮というのは当然のこととして、私が申し上げているのは、ひとしく受け得べき権利というものがこの場合なぜ除外されるのか。防衛庁の施設がその近辺にあるからといって、同じ飛行場である伊丹と羽田とは違ったものになるのか。裁定を受けるときには当然に、同じ裁定を受ける権利——いわゆる第三者ともいうべき機関の裁定を受ける権利というものは、私はひとしくあるのではなかろうかと思います。基地の問題については、これはまだ私も理解をしておりませんけれども、しかしこれはほかのものとの折衝というものがあるから、それはそれなりに一つの暫定期間なりというものが必要だということになれば、それはそうかもわかりませんが、しかし、防衛関係はみずからの国内法でありますから、国内の問題については内部で調整できて、これは少なくとも公害問題については、人体や生命に影響のあるようなこの権利についてはひとしく受けられるような処置をとる——私は当然のことではないかと思うのです。そういうことについて私はどうも理解ができない。もしもこれがお答えできなければ、長官が帰ってからでも私は受けたいと思いますけれども、その点についてできればひとつお答えをいただきたいと思います。

柳田桃太郎自由民主党

○委員長(柳田桃太郎君) 答えられますか。

長坂強防衛施設庁総務部長

○政府委員(長坂強君) ちょっと繰り返しみたいになりますけれども……。

柳田桃太郎自由民主党

○委員長(柳田桃太郎君) ただいまの件は、総務長官がお帰りになりまして質問していただきたいと思います。

伊部真日本社会党

○伊部真君 それでは長官が帰られてから、もう一度ひとつその点は質問をしたいと思います。それに関連する事項が二、三あるわけでありますけれども、それもその時点で行ないたいと思います。  最後になりますが、私は、この委員会の運営上に一番大きな問題というのは、先ほど総務長官も言われましたけれども、やはり委員会の構成——いわゆる委員会に対する期待と、それに対する信頼関係だと思うのです。その意味では、私は、委員会を構成する構成の人員とそのお人というのは、人というのがたいへんに重要なことだと思うのです。私は、現在の委員会のメンバーについてどうのこうの言っているわけではございません。しかし、私は、ぜひひとつお考えをいただきたいのは、その委員会のメンバーを選定される場合には、その国民の期待というもの、信頼を深めるということについて十分な配慮をされないと、これは形をつくって、事実上は運用されない、国民の期待をしたものにならないと思うのです。そこで、私はしばしば思うのでありますけれども、こういう利害関係というのが、私から言わせれば、いわば犯罪側と被害を受ける側というものに大別をされるとすれば、加害者の側に少なくとも縁故関係なり——縁故といいますか、かかわりあいのあった人たちは私は好ましくないと思います。具体的に申し上げますと、会社の顧問をされておったとか、そういうふうなことについてしばしば論議をかもしております、第三者の機関としての人員構成をする場合。したがって、そういう人選については、ひとつぜひ厳正に、そのような点をおもんぱかってやっていただきたいということを私は注文をつけたいと思うのでありますが、いかがでありますか。見解をいただきたいと思います。

柳田桃太郎自由民主党

○委員長(柳田桃太郎君) 本件につきましても、山中総務長官が間もなく帰られますから、一緒に答弁させていただきたいと言っております。

伊部真日本社会党

○伊部真君 それでは、まことにあとの質問の方に申しわけないのでありますが、一応、私、これで質問を打ち切りまして、後ほど、ひとつ適当な機会に、また発言の機会をいただきますようにお願いをいたしまして、一応質問を終わりたいと思います。

柳田桃太郎自由民主党

○委員長(柳田桃太郎君) 三時半まで休憩いたします。    午後三時休憩      —————・—————    午後三時三十六分開会

柳田桃太郎自由民主党

○委員長(柳田桃太郎君) ただいまから内閣委員会、公害対策及び環境保全特別委員会連合審査会を再開いたします。  公害等調整委員会設置法案を議題といたしますす。御質疑のある方は順次発言を願います。

伊部真日本社会党

○伊部真君 先ほど質問をしたんでありますけれども、ちょうど長官がおいでじゃないために回答を受けていないので、お答えをいただきたいと思うんでありますが、防衛庁の施設関係、施設周辺の基地公害ともいうべき、あるいは防衛庁の使用している飛行場周辺の騒音公害がこの裁定の対象の外になっているということは、これは裁定を受ける権利を制限されることになりませんか。特損法あるいは周辺の補償についての法律というのはありますけれども、それは補償する一つのルールでありまして、裁定を受ける権利というものは別だと思います。委員会の裁定を受ける権利というものがたまたまそこに自衛隊が飛行場を共用しているという理由でもって、具体的に言いますと、板付だとか羽田というのは伊丹と差別をされるというのは私は問題だと思うんです。これはいまのところまだ国民の側に知られてないから、これはまだ世論としては起こっておる状態ではないと思いますけれども、これは当然に私国民の側にとって問題になってくることだと思います。対象にすべきことだと思いますが、いかがですか。

山中貞則自由民主党総理府総務長官

○国務大臣(山中貞則君) これは被害を受ける人たちは、いまの場合は騒音公害が主でありますが、どのような空港の周辺に生活していても同じなんですね。ですからいまおっしゃることは私は理論的に当然だと思うのです。ただ、私どもとしては、自衛隊というものが、まず共用飛行場に限って申しますれば、自衛隊というものが、防衛施設周辺整備法によってその自衛隊の飛行場たる施設を使って離着する防衛庁以外の飛行機についても防衛庁の飛行機とみなすと、そういうことで自分たちで責任を負うという立場をとっております。したがって、中央公害審査委員会の法律の第五十条でもそれを受けて、みずからの律するところにまかしておるわけでありますが、今回その条項をいじっておりませんけれども、確かにおっしゃるとおりにいまの防衛施設周辺整備法は、まあみずから律する意味でかぶっているとしても、騒音等の苦情に対する仲裁や裁定というものが及ばないという点は事実でありますから、この点については、やはり新しいこのような三条機関による裁定というものが出発をいたします現実を踏まえて、防衛庁において検討していただきたいと思います。それがどうしてもできないということであれば、また議論のもとに戻って、防衛施設ははたして除外対象とすべきであるやいなや、その点にまた議論が戻ってくることになろうかと考えます。

伊部真日本社会党

○伊部真君 これは防衛庁の長官も一緒におられればもう少しはっきりするんでありますが、私はどうしてもこれは国民の受けるべき権利として当然平等にしてもらいたいと、こう思います。したがって、この点はぜひわれわれが納得できるような、国民が納得するような一つの結論を出していただきたい。この結論についての見通し、ぜひつけていただきたいと思うんでありますが、いかがでしょうか。

山中貞則自由民主党総理府総務長官

○国務大臣(山中貞則君) 政府の役人の天下り、俗に言う天下り問題についても、防衛庁職員は防衛庁長官の許可ということで、そのチェックを受けないことになっておりましたが、その点もやはり累次の国会で問題になりまして、防衛庁としても、総理府人事局、それから人事委員会、そして防衛庁の人事教育局長でありますか、その三者構成による客観的な判断をみずから下すような道を立法化をいたしておるようでありますが、まあいずれそのような形で防衛庁自身がどこまでできるか、そのことをまず一義的には判断の材料として今後検討してまいります。

伊部真日本社会党

○伊部真君 この問題、私はぜひひとつ早急に実現をさしていただきたいと思うんでありますけれども、このいまの回答で私はこれを満足するものではありません。したがって、いずれこの内閣委員会なんかでも議論を引き続いてしていただきたいということを申し上げて、一応これの点については終わります。  それからもう一つは、公害に対するこういう制度がせっかくできましたなれば、これは当然に国民に知らせるということ、単に官報で掲載をするとかいうことではなしに、いま公害問題で、たとえば新幹線にしても、あるいはPCBの問題にしても、いろいろな問題で国民が非常に不安を持っているわけですね。したがって、それを持っていく勘所——これは環境庁のほうへ私前から言っておったんですが、一つには不安があったらそれを持っていく、そして見てもらってだいじょうぶだというふうに相談できるような個所をひとつつくってもらわないといかぬだろうと、そして、それがやっぱり化学的検査というものがあって、いわゆる化学製品でも事前チェックができるよう心、そういう構成にしていただきたいということを申し上げました。同じように、こういう委員会ができましたなれば、国民にこういう委員会ができましたぞと、したがって、皆さんはこういう権利を受けることができます、裁定なり仲裁なり受けることができるということを何らかの形でやっぱり公告する必要があるんじゃないかというふうに思うわけです。で、またぜひそういうふうにしてもらいたい。そうでないと、せっかくのものができましても、まあ条文では公告することにはなっておりますけれども、私は公告のしかたが問題だと思うんです。国民がすべからく了解できるように、知ることができるような方法を講じてもらうということをひとつ考えていただきたいと思います。

山中貞則自由民主党総理府総務長官

○国務大臣(山中貞則君) 公害に対する世論調査などをしてみますと、裁判が長引くという印象を一般的に持っておられるせいもあるかもしれませんが、できれば他の機関で話し合いで解決する道が必要だと、そういう道がほしいという意見が一番多数を占めておりました。そうしてその次に相談をする場所が問題で、その点に対する問いかけでは、どこに相談に行っていいかわからないという意見が一番多うございました。この点は、今後私どもやはり戒心していかなければならない点であります。そこで公害等調整委員会のみずからのいわゆる紋切り型の知らせるという意味と別途に、さまざまな手段を講じて、これはいい意味の政府広報等を活用しながらこの問題が発足をして国民のために活用されるように十分努力をしてみます。

伊部真日本社会党

○伊部真君 最後に、これも先ほど質問をいたしましたけれども、長官に答弁いただくほうがいいということでありまするので、重ねて質問を申し上げますが、この委員会が最も要点といいますか、要諦とすべき点は、やはり被害者が、あるいは国民が信頼をするような構成で運営でなければならぬと思うのです。それが一番重要なことではなかろうかと思うんでありますが、ほかの機関でありますと、公益というのは何らかの合意というものがあるわけですね。ところが、この場合には、公正中立であるかどうかということの合意を得られるような機会がないわけでありますから、したがって、人選についてはよほど配慮していただかなければいかぬのではないかというふうに考えるわけです。そこで私は、私たち自身の経験からいきましても、たとえばその被害者側、あるいは加害者側と考えた場合に、厳密な意味でそれが当てはまるかどうかはわかりませんが、加害者側に非常に縁の深い人たちはこれはやはり人選からは省いていただかなければいかぬだろうと、たとえば大企業の顧問をしているとかと——たとえばの話でありますが、そういうふうに人選の——いま現在おられる方を私どうのこうの申し上げておるのではないんでありますが、ぜひひとつこれからの人選、運用にあたってはそういう点について要望申し上げておきたいと思います。  以上でもって私の質問を終わります。

小平芳平公明党

○小平芳平君 山中長官にお尋ねしますが、いまの伊部委員の発言に対しまして長官はどのようにお考えか、私もその点から質問に入りたいと思っていたわけです。といいますことは、今回のこの三条機関という新しい裁定制度ができるということは確かに前進であろうと考えます。問題は、どのようにして事務局を構成し委員が選ばれていくか、その事務局あるいは委員、特にこの委員の方が信頼される委員でなくては何の意味もないのは当然であります。したがって、どういう観点から選考されますか。

山中貞則自由民主党総理府総務長官

○国務大臣(山中貞則君) いま伊部委員に御答弁申し上げておけば失礼にはならなかったと思いますが、その意味で両方にお答えをさしていただきます。  その御質問は、私の答えは、現在の中央公害審査委員のメンバーを見ていただければその姿勢はわかっていただけると思います。今回の委員の人選についても、両院の同意を得て、承認を得て総理大臣が任命をいたします。したがって、いかなる角度から見られてもりっぱな人であり、かつまたふさわしい人を選びたいと思います。これはこういう席で申し上げるのはふさわしくないかもしれませんが、私はたまたま賞勲行政も一応の担当として、これは国家の栄典行為でございますが、担当いたしておりますけれども、公害に関係をし、また公害問題が関係のあった会社等の責任者であった方々は全部叙勲の対象からはふるいにかけて落としておるわけでございまして、これはまあ別の問題でございますが、そのような姿勢で一貫して臨んでおりますので、この委員の人選については、御要望の線に正しく沿い得るように約束をいたしたいと存じます。

小平芳平公明党

○小平芳平君 まあ、そういうことで一応の御説明はわかりますが、問題はこの公害被害者の意見をどのように取り入れるか。これは過去において森永砒素ミルク事件が起きた。そのときに厚生省が委員を委嘱した。その委員が被害者にとってはきわめて不満な、結論としては……。あるいは水俣病に対しましても審査委員会ができて、しばしば、結局その被害者の根本救済にならずに、被害者を封ずるための働きしかできなかったという批判がきわめて世間一般にも強いし、特に被害者が強くそういうことを主張しておられます。したがって、この被害者の意向を委員の人選にあたっても、また裁定にあたってもどう取り入れられるか、その点についてお伺いしたい。

山中貞則自由民主党総理府総務長官

○国務大臣(山中貞則君) これもまたきわめて重大な基本的な姿勢の問題であります。まあ被害者の方々というものは、今度は申請者、いわゆる当事者になられるわけでありますけれども、問題は、先ほど私の答弁いたしました中で、専門委員三十名をケースバイケースで、客観的にその方面のだれが見ても公正にして最高の権威者である方を委嘱して専門的な研究調査をしてもらう、こういうことを申しましたが、その際は委員会からの申し出によって総理大臣が指名をいたしてまいりますので、きわめてこれまたきびしい人選をいたしますので、ただいまのようなことは、今回の三条機関たる公害等調整委員会に関する限りは絶対にないようにいたしたいと存じます。

小平芳平公明党

○小平芳平君 それは抽象的に言えば、基本的に言えばそういうことになりますが、実際に組織的に被害者、あるいは住民運動をして公害絶滅を戦っている、そういう人の意見を直接組織的に取り上げるという、取り入れるという、そういうことはできないわけですか。

山中貞則自由民主党総理府総務長官

○国務大臣(山中貞則君) まあ、これは表現の問題ではありましょうが、ある公害紛争のケースの中で、専門家も入られて、いわゆる団体行動と申しますか、そういう支援団体的なものをつくっておられる方々の代表ということになると、これは利害の今度は逆な当事者のほうにもなり得ると思いますが、それらの人々の中でも専門家としてやはりりっぱな人がおられるという場合は、これはもう当然あり得ると思うんです。そういう場合においては委員長ほか六名の委員の方々が、この人はこの問題に関する限りぜひ意見を聞く専門委員にしたいと、聞きたいという場合においては委員会が申請をしていただければ、その道はおのずから開けるはずでございます。

小平芳平公明党

○小平芳平君 それで、たとえば具体的に申しますと、厚生省から環境庁に移管された、移ったこのイタイイタイ病研究の鑑別診断班がありますが、このイタイイタイ病の鑑別診断班の委員の方は、診断員の方は、まあイタイイタイ病の権威者です。イタイイタイ病の権威者ですが、この構成メンバーの中には、イタイイタイ病はカドミウムであるという   〔委員長退席、公害対策及び環境保全特別委員長加藤シヅエ君着席〕 学者と、イタイイタイ病はカドミウム原因じゃないという、ビタミンDの不足によって起きたという説と、こういう人が入っているわけですが、そのような点についてはどうお考えですか。

山中貞則自由民主党総理府総務長官

○国務大臣(山中貞則君) どうもほかの役所の委員について批判するのは差し控えたいと思いますが、広く普遍的でない学説——まあ学者にとっては学説でありましょう。そういうある意味においては委員長ほか六名の人々は、厳正中立かつ経験識見豊かな人を選ぶといたしまして、それらの人が、一人でも異議を唱えて、この人は片寄っているというようなことを学者として判断をされた場合に、それを押し切って多数決で人選するというようなことは、私は、この委員会に関する限りはないだろうと思います。したがって、まあよその省の委員会の例でありまして、私はそれを判断する、あるいは批判する立場にございませんから遠慮いたしますが、そのようなそしりは受けないように、りっぱな委員の方々を選んでまいりたいと考えます。

小平芳平公明党

○小平芳平君 それでは、現在までの中央公害審査委員会に対するこの事務ですね、現在までの中央公害審査委員会の実績といいますか、それを御報告いただきたい。

川村皓章中央公害審査委員会事務局長

○政府委員(川村皓章君) お答えを申し上げます。  先生御承知のとおり、現在の公害紛争処理法が施行されましたのが四十五年の十一月からでございまして、現在までにこれに基づいての申請がございましたものは全部で三十二件でございます。そのうち、中央公害審査委員会管轄分は八件でございまして、残りが都道府県の公害審査会に申請されたものでございます。これら三十二件のうち、すでに十四件が処理されておりまして、このうち当事者間に合意の成立いたしましたものが十一件。打ち切られた事件が三件。申請者から事件の取り下げがございましたものが一件。こういう内訳になっております。

小平芳平公明党

○小平芳平君 それからこの事務局はこの両委員会が合体して、どういう形態で、何を進めていかれますか。

川村皓章中央公害審査委員会事務局長

○政府委員(川村皓章君) 合体いたしました場合の事務局でございますが、まず定員でございますが、現在、中央公害審査委員会の定員が十九名、それから土地調整委員会の事務局の定員が十七名でございまして、今度の新委員会の定員は、その合計の三十六名という形になっております。そしてその事務局の機構でございますが、事務局長一名、事務局次長一名、その他の職員が三十四名ということでございまして、それぞれ共通の管理部門と申しますか、総務課的なもの、それ以外は審査官の系列をもって編成する予定でございます。

小平芳平公明党

○小平芳平君 そこで、長官にお尋ねいたしますが、この伊部委員の指摘された点を繰り返しませんので、簡単に三点お尋ねいたしますが、こうした委員、委員会そのものの手不足、あるいは事務局の手不足の場合は、それに対応処置がとれる体制にあるかどうか。それが第一点です。  それから第二点としては、やはり伊部委員が詳しく指摘しておられたですが、東京に一カ所というのは、いかにも公害被害者、特に健康被害者にとってはたいへんなことです。こういう点についてのお考え。  それから第三点としては、この操業差しどめの裁定を求めると、操業一時停止の裁定を求めるということが可能なようになるように検討されてましたかどうですか。以上三点です。

山中貞則自由民主党総理府総務長官

○国務大臣(山中貞則君) まず、委員の数については、大体他の三条機関あるいは八条機関等も、五名ないし六名、あるいは七名ということでございますので、一応この委員の数で出発をいたしまして、専門委員を縦横に駆使するということを答弁いたしておりますが、国民のためにつくる委員会でございますから、どうしてもこれが国民の要望にいわゆる能力不足で沿い得ないという事態は、これは申しわけないことでありますので、その事態になりましたならば、私どもとしてももう一ぺん考え直す必要があるのではないかと考えます。  なお、事務局の定員は、これはどの役所についてもそうでありますが、なかなか定員増というのは困難でございます。むしろ総定員法の何%減というようなのがかかってまいりまして、新設の環境庁が、出発したばかりなのに定員を二名減らされたなんていう、そういう行管の姿勢等も、私は問題があると思いますが、政府としては一応持っておりますので、ここらのことを考えますと、増員というのはそう簡単にはいかないと思いますが、いままでの土地調整委員会の仕事の分量その他から考え、そして今後の権限を、分野を持っていくといたしましても、今後の仕事は大体公害の仕事が中心であろうと考えますので、それらの人員は能率的な配分にしてみたいと思います。なおかつそれでも足らないという場合は、これは委員の数と同じで、その際は行管、大蔵とよく交渉をして、国民の期待に沿い得ない能力では法律に対して申しわけないということでありますから、努力をしなければならぬと考えます。  なお、地方の出先機関に関する第二問でありますが、これはさしあたりいまの体制で出発をさしていただきまして、そして先ほど委員長が言われましたように、それぞれが遠くても地元まで行ってそれぞれ調査をし、あるいは意見を聞いて回って、いまのところは大体現地の要望に応じているようであります。しかし、これが裁定権が与えられたと、こんな強力な委員会ならばということで、ある意味では好ましい現象として全国各地から要望がある、とても出張に行ってこなせないというようなことにもしなるとすれば、これまた、先ほど公取の例を引きましたけれども、何らか、一審をそこでやらなくとも、受け付けをして、そして現地が書類その他の処理をして上に上げていくような、処理能力の段階における事務段階のまず第一番の簡易化、簡素化、あるいは国民の利便に資する道というものも将来考えてみる必要があるかもしれないと思っております。  なお、操業差しとめの問題は、これは公害関係の諸法律、あるいは論議が開始されようとしております公害無過失賠償法、こういうような問題等ともいろいろと関係があるわけでありますが、全面的に、いまのところ、そこまでいわゆる司法的な権限を直ちに行政が行使するという点については、若干のまだ踏み切っていない点がございます。その点は今後の研究課題の一つであろうかと考えます。

小平芳平公明党

○小平芳平君 いま最初に私が申しました点は、信頼される委員の人選、事務局のあり方ということについて申しましたわけですが、それでは次に、現在の薬品あるいは標準物質がはたして信頼が持てるかどうかという点について、二、三の質問をしたいと思います。  これは通産省のほうに伺いますが、試薬は公害関係でどういう場合に用いられるか。公害対策と試薬の働きについて御説明をいただきたい。

山形栄治通商産業省化学工業局長

○政府委員(山形栄治君) お答え申し上げます。  御存じのとおり、試薬は、化学的な方法によりまして物質を検出したりこれを定量的にはかったり、そういう用途に使われる化学薬品の総称でございますが、公害関係といたしましては、試験検査用といたしましていろいろ使われております。たとえば、代表的な例でございますけれども、空気中の亜硫酸ガスがどのくらいあるかという量を調べますときにマラカイトグリーンという試薬を使用しておりますし、シアン化ガスの定量のためにはピクリン酸を使っております。それから空気中の一酸化炭素定量のためといたしましては五酸化沃素とか水酸化バリウム等を使用しておるわけでございますが、このほか工場排水の水質試験につきましては水質汚濁防止法によりましてJISの基準によるということになっておりまして、そのJISの基準によりますと、検出対象物質別に使用いたします試薬の種類、品質等を非常に詳細に定めて現在運用しておるわけでございます。

小平芳平公明党

○小平芳平君 要するに、分析の過程でも、あるいは定量分析にあたっても、いろいろな試薬が使われている。ところが、その試薬がきわめて不信、市販されている試薬が全く信用できないものが半数近くあると。たとえば、見た目でこれはだめだとわかるとか、不純物が入っているとか、あるいは表示と中身が違うというようなものが多数市販されているということが、通産省が調べたらわかったわけですね。その点について御報告いただきたい。

山形栄治通商産業省化学工業局長

○政府委員(山形栄治君) 昨年度、通産省で試薬の実態調査を行なったわけでございますが、その結果によりますと、試薬業者のうち製品検査を行なっている企業は百四十三社中九十五社でございます。かつ、その設備の状況も、十分いろいろ調べたわけでございますけれども、われわれの調べによりますと、その設備が完備しておると思われますものがその七割と推定されたわけでございます。また、ロット検査を経ないで販売ルートに乗せております試薬の比率は二割ぐらい。それから他社のラベル製品につきましては、非常に遺憾なことでございますが、無検査のままで流通さしておりました業者が非常に多いという結果が出ております。また一方、通産省の傘下にございます工業品検査所という機構がございますけれども、そこで行ないました昨年度の試買検査の結果によりますと、その二四%が、いま先生がちょっと御指摘ございましたように、表示と中身が違って、いわゆる不合格であるという結果が出ております。この辺非常に問題が多いと思いますので、われわれといたしましても早急に対策を検討してまいりたいと考えておる次第でございます。

小平芳平公明党

○小平芳平君 これはいかがですか。——硫酸バリウムと思って使ったら炭酸バリウムであったと。そのために死んでしまったと。こういうような事故が起きているでしょう。

山形栄治通商産業省化学工業局長

○政府委員(山形栄治君) ただいま御指摘のように、昭和三十一年二月の三日に茨城県下におきまして、炭酸バリウムと硫酸バリウムとを誤って販売された結果、お一人の方が死亡しておる事件があるわけでございます。私のほうの調査によりますと、ラベルを張り間違えたという、非常に遺憾な行為がこの前提にあるわけでございまして、帳簿の不備から販売先を追跡できなかったような経緯もございまして、警視庁で近県にこれを至急に注意したというような事実がございます。非常に遺憾なことで、重大なことであると私は考えておるわけでございます。

小平芳平公明党

○小平芳平君 したがって、総理府、それから中央公害審査委員会、それから環境庁、みなさんによくお聞きいただきたいと思うんですね。そういう肝心の、基本になる薬品がだめなんですから、手っとり早く言えば、水銀分析に使うその薬品の中に初めから水銀が入っていたというようなことでは、何の意味もなさなくなるわけです、分析そのものが。ですから、これは所管が通産省のようですけれども、政府として私は取り組んでいただきたいということと、それから特に、この試薬業界は中小企業が多いということでもありますが、いまのような状態ではほうっておくわけにいきませんので、そして、そうした試薬品に有効期限もないものですから、したがって、有効年限の規定がないから、製造年月日も入ってないとか、あるいはJISの規格のあるものはむしろ少ないわけですね、全体としては、試薬の中で。しかし、JISの規格のあるものすら強制力はないというようなこと、じゃあ誇大表示として取り締まるかどうかというようなこと、とにかくそういうふうな、硫酸バリウムと炭酸バリウムを間違えて飲ませて死んじゃった。こういうケースがまだまだあるんじゃないかといわれているんですね。公害の場合でしたら、実際は規制内の排出にもかかわらず、そういう薬品の間違いで規制をオーバーしているとなれば直罰を受けなくちゃならない、あるいはこの規制以上に公害を大々的に流しているにもかかわらず、実際は分析の間違いでそれが出なかったということになると、公害はふえる一方、住民の被害は拡大する一方ということになるわけです。したがいまして、ここで、通産省としては規制をやりますか。法規制をやりますか、いかがですか。

山形栄治通商産業省化学工業局長

○政府委員(山形栄治君) ただいま先生のお話のように、試薬業者は非常に数が多く、かつ、ほとんどが中小企業でございます。特に最近、新規の業者等も発生をいろいろとしておりまして、中には相当悪い製造及び販売のしかたをしておるのも確かにおりますので、われわれといたしましては、早急に通産省の中の機構でございます軽工業技術審議会にこれを付議いたしまして、何らかのかっこうでの法規制、登録制等も含めました法規制につき、この審議会の御審議を経ながら前向きに検討していきたい、こう考えておる次第でございます。

小平芳平公明党

○小平芳平君 そう、前向きぐらいでは間に合わないといけませんので、はっきりと次の国会に提出する準備をするとか、それからその審議会の意見もさることながら、業界の代表の意見もあることでしょうから、とにかくこういう信頼できない薬品が出回っていたんじゃ困るわけですから、もう少し具体的に答弁ができませんか。ですから、そういう意味で、私は通産大臣の出席を強く要請しておいたんです。

山形栄治通商産業省化学工業局長

○政府委員(山形栄治君) ちょっと答弁が不明確であったと思いますけれども、先生のお話しのとおり、来国会立法の方向で考えていきたい、こう思っております。

小平芳平公明党

○小平芳平君 次に、標準物質ですね、標準物質についてですが、この標準物質を供給する体制、この点についても先ほどの説明と全く同じで、標準物質が示すところの純度、特性というものが適正でなければ測定器が適正な働きをしない。したがって、公害を正確にとらえることができない。この点についての標準物質の現在の状況はどのようになっておりますか。

山形栄治通商産業省化学工業局長

○政府委員(山形栄治君) 標準物質と申し上げますのは、その組成が明確に定められておりまして、かつ、不純物の含有量がきわめて少ない純粋の物質という形のものの総称でございまして、したがいまして、これは先生のお話しのように、精度の高い分析等の場合に比較対照するために用いるものでございます。現在、この標準物質の品質確保につきましては、おもなものは業界団体、学界団体等がこれを製造またはそれを指導し、これを保管いたしております。各これを必要といたします学界なり産業界等は、このところからそのものを譲り受けまして、自分の製造したものとの比較衡量を行なっておるわけでございますけれども、特に特定の標準試薬につきましては、通産省の傘下の工業品検査所で個別にこれ全部検査いたしておりまして、これは全体の学界、産業界の要望でそういうものについてはそうしてもらいたいということがございましたので、その範囲におきましては十分信頼が置けるんではないかと、こう考えておるわけでございます。  なお、輸入品も相当標準物質は多いわけでございますが、これは各国のそれぞれの、先ほど申し上げましたような団体なり政府機関等ですでに検査を経ておりますものはそれを確認し、その検査を経てないものにつきましては、工業品検査所が試買検査を行なって、その品質の保証をチェックしておるということが現状でございます。

小平芳平公明党

○小平芳平君 それで局長ですね、現在の標準物質は信頼できる標準物質が流通しておりますかどうかという点なんです。

山形栄治通商産業省化学工業局長

○政府委員(山形栄治君) いま申し上げましたように、おもな標準物質、これはいろいろなものがございますけれども、鉱物標準、花崗岩とか玄武岩とかコークスとか、それから原子力用のウラニウム、それからセメント、鉄鋼の関係、銅の関係、そういうことで非常に数多くのものがあるわけですけれども、私が先ほど申し上げましたおもなものといいますのは、いまちょっと例示にあげました三百数十品目はおもなものということで、非常に厳正に品質の保証がはかられておるわけであります。ただ、標準物質といいましても、実際の数は相当多いのでございまして、主として使われているもの以外のものにつきましては、そういうチェックをしておりませんので、これは大体自社試用というかっこうで使っておるのが大部分でございまして、その辺につきましては、公正なる工業品検査所の検査をしておりませんので、その点、若干不備があるんではないか、こう考えるわけでございます。

小平芳平公明党

○小平芳平君 したがって、標準物質の供給体制の確立が必要であるということ。  そこで、山中長官に、それは管轄は違いますけれども、日本の国がいかにも経済繁栄、工業発展といいながら、そういう肝心の試薬すら、肝心の薬品すら全然別のラベルが張られて売られているとか、見た目でこれはだめだとかいうものが相当のパーセントあったとか、こんなことではきわめて困るんではないかと思うんですね。したがって、これは中央公害審査委員会直接の事務にはならないかもしれませんが、その結果がこうあがってくるわけですから、そういう点、どのように考えられますか、感じられますか、長官は。

山中貞則自由民主党総理府総務長官

○国務大臣(山中貞則君) やはり個々の審査を始めますと、そういう問題も、当然、甲論乙駁いたします場合の信感性の問題とか正確性の問題とかということで議論がやはり起こる問題点の一つだろうと思います。ただ、現在は典型公害に限っておりますから、そのほかにも薬品公害あるいは食品添加物その他のもの等についても、やはりこれは環境庁、厚生省、製造元の通産省、ここらのところで、これらの問題の音頭はやっぱり環境庁がひとつとってほしい。そしてやはりすみやかにそういう試薬にしても何にしても、試験するものそのものが間違っておれば、答えが間違っていることは当然のことでありますから、そういう基礎的なものは、もう日本は整備できる能力と体制とがあるんだろうと私は思います。だから、そういうことでぜひ相談をしてもらいたいと、そういうふうに考えております。

小平芳平公明党

○小平芳平君 じゃ、環境庁政務次官ですね、いま私が指摘したような、また山中長官がいま言われたように、試薬そのものが間違っていたんじゃ、出てきたデータが信頼できるわけないんです。したがって、通産省からは、次の国会に提案することを目標にと言われましたが、どのように環境庁はお考えになりますか、感じられますか。

小澤太郎自由民主党環境政務次官

○政府委員(小澤太郎君) 先ほどから伺っておりまして、まことにたいへんな欠陥があるということがよくわかりました。環境庁といたしましては、先ほどからお話しの分析の方法なり、あるいはまた測定の方法、これの統一、こういう問題、いまお話しの試薬の問題、標準の問題こういう基礎になる問題は、私ども公害対策、有害物質の決定なり規制なりということを行ないます基本になる問題でございますから、幸いに通産省においてそのような立法化をはかろうということでございますから、私どもはこれを極力推進いたしまして、このようなことが、日本の現在の科学の水準がこの程度であるということは、実際、私どもはあのPCBの問題を取り上げましても、なかなか対策をきめがたいという、まことに遺憾な状態にありますので、早急にそういうことをやりたい、これが私どもの率直な気持ちでございます。

小平芳平公明党

○小平芳平君 それでは、問題を次に移しますが、公害対策を進めていく上におきまして、活性炭が相当使われているということ、この点については、環境庁あるいは通産省になりますか、どちらか担当のほうから、活性炭はどのように使われているか、また、生産の状況はどういう状況であるかを御報告いただきたい。

山形栄治通商産業省化学工業局長

○政府委員(山形栄治君) 活性炭には粒状のものと粉状のものと二種類ございまして、それぞれによって用途が違っております。  粒状のものは、ビニールの触媒の単体に使ったり、廃ガス中の有毒物質を吸着するときのガス吸着剤として使いましたり、または、飲料水の浄化に使うような場合がおもなる用途でございます。それから、粉状のものは、砂糖などの製造工程の途中におきまして、そういう食料品中の不純物の除去、それから工業薬品のやはり不純物の除去等に粉状は使われております。  生産関係の数字を申し上げますと、現在、製造企業が二十三社、うち大企業が三社、残り二十社は中小企業でございます。生産能力は、昨年におきまして、三万三千トンぐらいでございまして、生産は二万九千トンぐらいございまして、稼働率は約九割でございます。最近、非常に需要もふえてまいりまして、現段階では、この生産能力なり生産等は、数字は相当上回っておると推定されるわけでございます。

小平芳平公明党

○小平芳平君 活性炭の生産等についての御報告がありましたが、環境庁からひとつ、活性炭はどのように——いや、事務当局からお答えください。

山形操六環境庁大気保全局長

○政府委員(山形操六君) お答えいたします。  活性炭の規制のほうの問題でございますが、生産過程において、おもに塩化水素及びばいじんを大気中に排出することが考えられております。そこで、このために大気汚染防止法におきまして、焼成炉から発生する塩化水素及び乾燥炊から発生するばいじんについて規制措置を講じておるところであります。

小平芳平公明党

○小平芳平君 いや、これもよくお聞きいただきたいんですが、各省ともですね。  公害防止をするとなりますと、活性炭の需要が急激にふえている。それから、環境庁にお尋ねしていることは、活性炭がなぜ需要がふえているか、どういうところへ使うかという点なんです。  で、通産省にもう一つ、昭和四十六年の生産量ですか、先ほど。その趨勢をお述べいただきたい。

山形操六環境庁大気保全局長

○政府委員(山形操六君) 失礼いたしました。  御指摘のとおり、活性炭の利用の問題は、排煙脱硫装置等、公害防止に非常にたくさん使われるようになってまいりました。また、水質汚濁防止にも使われてまいって、公害防止のために重要なものとして需要は伸びていると考えております。

山形栄治通商産業省化学工業局長

○政府委員(山形栄治君) 活性炭、先ほどもちょっと申し上げましたように、需要が非常に強いものですから、その後能力も生産も増大いたしております。ごく最近時、本年の二月の生産を対前年比で比較いたしますと、約三割強の増加ということに相なっております。

小平芳平公明党

○小平芳平君 そうして今度はPCBも活性炭によって浄化しようと、水中のPCBも活性炭によって浄化しようというふうなことで、まあ活性炭の性質からいって、PCBが絶対とれないということはないとのお話ですが、現在水道でやっている程度の活性炭を使っていたのではPCBは除去できないというような実験報告もあるわけです。それからまた、実際の水道当局の方にお聞きいたしますと、ほんとうは市民の水道を活性炭で浄化したいんだけれども、価格が高くてそれは使い切れない、水道料金が上がってしまって使い切れないというふうなお話も聞いております。したがって、活性炭の需要はふえる一方でありますが、この点については通産省は何か特別の対策がありますか。この需要に対するお考えはありますか、需要と生産に対する。

山形栄治通商産業省化学工業局長

○政府委員(山形栄治君) 最初にちょっと出ました価格問題について若干触れますと、活性炭の価格は、御指摘のとおり年々上昇いたしておりますが、昭和四十二年ごろの平均がキロ二百十六円ぐらいであったのに対しまして、四十六年にはキロ二百三十九円、これは大体一一%ぐらいの上昇に相なろうかと思います。この価格上昇の大部分は原材料費の値上げでございまして、ちなみにこの活性炭の主原料でございます木炭の価格を、ちょっと日銀資料で申し上げますと、四十二年が一二四の指数であったのに対しまして、四十七年四月、本年四月は一九四と、このアップ率が五七%になっております。これは私のほうの感じでは、先ほどもちょっと触れましたように、生産が三割ぐらい対前年比で上がっておりまして、能力もほぼそれに見合って上がっておるわけでございます。そういう非常に自由に需要に応じて能力が増加しておるために、原材料費の値上がりをその点で吸収しながら、生産が現段階では成長しておる。今後の問題といたしましても、適正なるやはり設備増大をはかるとともに、中小企業がやはり多いわけでございますので、協同組合の結成等をはかると同時に、基調といたしましては、やはり自由な競争原理の発揮ということで需要に応ずるべきではないかと私は考える次第でございます。

小平芳平公明党

○小平芳平君 それはいまの日本経済のもとにおいて、自由な競争で需要に応じていくということでありましょうけれども、先ほど環境庁の局長さんがちょっと触れられたように、この公害を防ぐべき活性炭ですね、公害防止に大きな役割りをしている活性炭がたいへんな公害をまき散らしているんですね。したがって、初めのうちは大気汚染が問題にされた、とてもこんなに粉じんが舞っていてはたまらないということで、地域の人から訴えが強く出ましたが、そこで今度はこの装置をつけた、大気汚染防止の装置をつけた。今度はそれが水に流されてきて、今度は底が埋まってしまうというほど粉じんが流れてくるというんです。ですからこの公害防止のために活性炭の需要が上がる、活性炭の増産のために地域の人は大気と水質のたいへんな公害を受ける。こういうことが循環になってしまったんです。この点についてはどう考えられますか。

小澤太郎自由民主党環境政務次官

○政府委員(小澤太郎君) 先ほど私のほうの担当局長から申し上げましたが、焙焼炉における塩化水素、それから乾燥炉におけるばいじん、これは規制の対象にいたしておりますが、いまお話しの粉じんにつきましては、遺憾ながらまだ規制の対象にいたしておりません。きょうは先生のたいへんないい御指摘を受けましたし、かねがね私どももこの活性炭素の今後の企業の発展状況も考えまして、いわゆる粉じんをいかに処理するか、対策上いかにするかという問題といま取っ組みつつあるわけでございまして、できるだけ早くこれに対する対策もきめていきたい、かように考えております。

小平芳平公明党

○小平芳平君 それからちょっとこれは労働衛生になるわけですけれども、この労働衛生の面からいっても、活性炭の工場はたいへんな問題を抱えているというふうに私は考えておりますが、労働省からひとつお答えいただきたい。

北川俊夫労働省安全衛生部長

○政府委員(北川俊夫君) 活性炭を製造いたします工程の段階で、たとえば原材料を粉砕する、あるいは成型する、焼成する、その段階でたいへん粉じんが立ちます。それにつきましては、労働省といたしましては、じん肺法という法律がございますが、じん肺法で粉じん作業というものを規定いたしております。その中の一つにこれは指定をいたしております。したがいまして、従業員の健康管理につきましては、じん肺防止という関係で特殊の健康診断をいたしますほか、その粉じんが抑制されるように局所排気をする、あるいは発生源を押える、そういう措置をするように法規制、行政指導をいたしております。

小平芳平公明党

○小平芳平君 先ほどちょっと通産省に尋ねるべきだったかもしれませんが、要するに活性炭の原料は、原材料といいますか、タールですね、木炭とタールですね、よろしいですか、それは。

山形栄治通商産業省化学工業局長

○政府委員(山形栄治君) 活性炭につきましては、先ほど申し上げましたように、粉状と粒状と二つございまして、粉状のほうはおもにのこくず、のこぎりで木材をひいたときのくずを原料といたしましてつくるわけでございます。それから粒状のほうにつきましては、いまお話にございましたように、木炭またはヤシがらを原料といたしまして、これに粒をそろえるといいますか、粒をつくる、造粒しますためにタール、ピッチ等を使用するわけでございます。

小平芳平公明党

○小平芳平君 そこで粒状のものを製造している工場では、タールを使うためにガンを発生するおそれがあるのですね。これは、私が調べた工場では、きわめてガンでなくなった人、あるいはガンで手術をした人が多い。なぜそういうようにガンが発生しているのかと、それは、国立がんセンターの生物物理部長の永田親義博士——それはタールはガンの原因になるにきまっている。がんセンターでは毎日——毎日というか、動物にタールを塗ってはガンを発生させて実験をしているのだからというくらいなんですね。あるいは、もうこれはだいぶ前に労働科学研究所から出版された、ここにもタールによるガンについて述べられている。こういうような点からしまして、いま労働衛生の上から規制をして問題ないような答弁を部長さんしますけれども、なかなかそうはなってないですよ。しかも増産、増産でいきますと、周辺の人は公害で迷惑を受け、工場内で働いている人はばたばたガンになる。たいへんな問題じゃありませんか。これはどなたが答弁しますか。

北川俊夫労働省安全衛生部長

○政府委員(北川俊夫君) 先生御指摘のように、タールにつきましては、その成分のベンツピレンが発ガン性のものでございまして、タールそのものが発ガン性物質ということにつきましては、われわれも十分承知をいたしております。ただ、いま話題になっております粒状の活性炭製造の過程で、それに従事する労働者がタールのために発ガンをしたという事例は、われわれはまだ十分把握いたしておりませんので、先生の御指摘もございましたので、今後活性炭製造の各事業所につきまして十分調査をいたしたいと思います。

小平芳平公明党

○小平芳平君 イギリスでは、三・四ベンツピレンですか、いま言われた、この三・四ベンツピレンがガンの犯人だと、ガン発生の犯人だと、イギリスでは煙突掃除をしている人が、あるいは道路鋪装している人がガンになって、そういうところからここに原因があったということがわかった、こういうふうに言われているわけでしょう。ですから、これから検討しますなんというのは、ちょっとおそくないですか。

北川俊夫労働省安全衛生部長

○政府委員(北川俊夫君) 御指摘のように、イギリスではかなりの症例があるようでございますが、その主体は大体皮膚ガンというふうに伺っております。日本ではタールに基づきます職業病としてのガンというのは、いままでのところ報告がございませんし、まだわれわれの把握のしかた、あるいは行政体制としまして不十分な点があったかと思いますので、その点十分留意をいたしまして調査をさせていただきたいと思います。

小平芳平公明党

○小平芳平君 いや、わが国の報告が、先ほど読み上げた労働科学研究所出版部から出版されたものですから——。  それから、以上のようなことで活性炭工場に対して、労働衛生については私は他の委員会でもっと詳しくやるつもりでおりますが、当委員会ではもう時間も参りますので、労働衛生の事題はこれで終わりますが、通産省として、あるいは環境庁として、一方で公害防止を推進する、他方では公害がますますひどく発生する、これをどう断ち切るかということについて、もう少し具体的な、先ほども御答弁がありましたが、いま私がずっと職業について、環境について述べましたので、これについてのもうひとつ具体的なお考えを、環境庁、通産省両方からお答えいただきたい。

小澤太郎自由民主党環境政務次官

○政府委員(小澤太郎君) 公害防止をするために必要な物質をつくる、その工程でさらに公害を出す、こういうふうに連鎖的な公害が起こる、これは御指摘のとおりでございまして、その一つ一つをつぶしていくというのが私どもの考えでございまして、先ほど申し上げましたように、活性炭につきましては、いまこの粉じんについてこれからどういうふうに処置をしていくかということに真剣に取っ組んでおるような次第でございます。  環境庁といたしましては、公害防止の手段となる物質をつくるその工程ももちろん含めて、一つ一つつぶしてまいりたい、こういう考えでございます。

山形栄治通商産業省化学工業局長

○政府委員(山形栄治君) いま環境庁の次官のほうからお話ございましたのに全く同感でございますが、われわれ生産部門を担当しております通産省といたしましても、先ほど申し上げましたように、二十三社の工場全部つかんでおりますので、環境庁及び都道府県と緊密な連絡をとりながら、実態の把握なり防除施設の完備なり、今後の生産の持っていき方、設備の増強のしかたを、緊密に連絡をとりながら進めていきたいと思う次第でございます。

小平芳平公明党

○小平芳平君 それでは最後に総務長官にもう一度お尋ねいたしますが、結局、山中長官が公害に取り組まれてそれで公害国会を終わり、その山中長官がまた今回のこの法案を、設置法を提案されたということで、私は前進をし、一歩一歩の前進を否定しているわけではありませんが、とにかくいま新し発足しようという責任裁定を原因裁定、これがきわめてむずかしい仕事だということですね。結局、じゃいま申しましたような、一例をあげましたような、活性炭の工場で働いている人がガンになった、じゃそれがこのタールによるものなのかどうか、あるいはその周辺の人がぜんそくに、粉じんや排ガスによってのどが痛い、ぜんそくになったという場合の責任裁定、それは人の問題と物質の問題から先ほど問題を提起したわけですが、非常にむずかしくて、しかも時間がかかるのじゃないか、それで裁判よりも手っ取り早く行けるのだというふうな単純なものではなくて、それこそある一つの事案に取り組んで、もう相当の権威者による研究なり相当の努力がなければ解決できない問題が多いではないか、私はこういうように感ずるわけですが。しかもその出される裁定が納得される、国民に信頼される裁定がなされるということが非常にむずかしい問題であるということ。したがって、これらの点に対する長官の基本的なお考えをお聞きして、終わりにします。

山中貞則自由民主党総理府総務長官

○国務大臣(山中貞則君) 私のほうは、環境庁が所管いたします公害諸法規、それの取り締まり対象の物質あるいは現象、そういうものに対するすべての紛争を対象として処理いたしてまいりたいと思いますので、ただいま指摘されましたような、あげられました具体例その他の初歩的な、なお未解決の分野について各行政主管庁がそれぞれの良心と責任において事を処理いたしましたならば、私どもとしてはそれらを受けて、この委員会は当然国民のために活動すべき分野を広げていくべきものと考えておりますので、自動的に法改正が公害諸法規でなされれば、それをそのまま受けていくという形をとってまいりたいと思っております。

栗林卓司民社党

○栗林卓司君 議題になっております公害等調整委員会設置法の問題点というのは三つばかりあるように思います。  一つは、裁定というのはどういう性格でつかまえていったらいいかという問題です。もう一つは、裁定制度自体がどう一体機能していくんだ。三つ目の問題というのは、まあ公害紛争処理というたいへん重要な問題について、当然その担当する機関というのは常識的に強化すべきであるという気がするのですが、これについて行政機構の簡素化という発想がなぜ入ってきたのか。しかも、制度の目的として、中央公害審査委員会と土地調整委員会という異なった二つが統合されていいんだろうか。大体こうした問題があるように思いますけれども、時間に限りがありますので、第一の点を中心に御意見を承りたいと思います。  これは先ほど来の長官の御答弁を伺っていても、その問題の所在については十二分に御理解の点だと思います。司法と行政との関係で、どこまで行政が人っていっていいんだろうか。もちろん三権分立のたてまえではありますけれども、裁判所法三条で、行政機関も前審ができるということになっておりますから、その境界線というのはある部分ではダブっておりますし、たとえていえば海事審判法の審判という問題も、明らかに裁判機能の前審的な一部だと思います。まあそういう意味で、行政のぎりぎりいっぱいのところまで今度は入っていかざるを得ないという御判断のようですけれども、ぎりぎりいっぱいなんだろうか。踏み越してしまったんだろうか。その辺のところを実は伺いたいと思うんです。  そこで、今回原因裁定、責任裁定を含めてここまで踏み込んできたことについて、現在の日本の法体系で考えて支障はなかったのだろうか。この辺をまずお伺いしたいと思います。

山中貞則自由民主党総理府総務長官

○国務大臣(山中貞則君) もちろん、このような、おっしゃるとおりのぎりぎりいっぱいの権限を行政機関で持つわけでありますから、当然法制局にはもちろんでありますが、司法当局とも相談の上、政府といたしましては十分に、ここまでならば可能であり、また、公害対策でここまでいくべきであるという考えで判断を下したのでありますが、法律の専門のことになりますと、間違うといけませんので、専門家の小澤委員長から補足をさしていただきたいと思います。

小澤文雄中央公害審査委員会委員長

○政府委員(小澤文雄君) 仰せのとおり、この裁定制度はその対象が民事上の損害賠償請求の存否、あるいはそれの原因関係、そういうことになりますので、本来司法分野で扱ったものであり、行政機関としては従来ほとんど取り扱わなかったものでございますけれども、しかし、御承知のように、現在の状況で公害がこれほど大きな国民的な問題になりまして、そしてそれが日本の行政組織の取り組まなければならない非常に大きな分野になりました。そうなってきますと、公害紛争自体が、これがやはり行政としても、そのまま全部裁判所におんぶしてしまっていいと言われる性質のものでもございませんので、これはあえて民事紛争ではございますけれども、この限度までは行政としていいのではないか。ただし、それをタッチするためには、行政として十分な独立性、それから公平の確保、そういうことを十分に考えて、そしていやしくも本来の司法機関が判断すべき事項をその前審たる行政機関の判断で曲げるようなことがあってはたいへんでございますから、そういうおそれの絶対にないように、そしてまた、前審である行政機関たる委員会がなした判断が司法機関に対する救済を不当に途絶するようなことのないように、その辺については、立案の当初から法務省、それから最高裁判所とも緊密に協議を続けまして、そしていろいろ問題点がございましたが、この程度ならまず懸念される心配はなかろうということで立案したわけでございます。

栗林卓司民社党

○栗林卓司君 専門家がそろってだいじょうぶだというお墨つきがついているので、たいへん気がひけるのですけれども、今回の提案理由を見ますと、現在の制度というものは紛争当事者の合意に基礎を置くべきものであるけれども、解決にはどうしても限界がある。したがって、紛争解決の迅速を含めた充実強化をはかっていきたいものだということでございました。その必要性は私は何ら否定するものではございません。  そこで、ひとつ伺いたいのは、現在その紛争調停する場合に、日本では当事者の合意に基礎を置く制度として和解の仲介、調停並びに仲裁があります。それから当事者の合意に期待しない制度として決定、命令、判定があります。そこで、今度の裁定というのはどこに入るのか、どこに一番近いものとしてお考えになっていらっしゃいましょうか。

小澤文雄中央公害審査委員会委員長

○政府委員(小澤文雄君) ちょうどその中間くらいになるのではなかろうか、もし、しいて申し上げれば、その中間くらいになるのじゃないかと思います。もちろん裁定のほうはその当事者の合意が前提になっているわけではございません。ただし、裁定がありまして、それに対して当事者がどうしてもそれに承服できないというので、あらためてその内容について民事訴訟を起こすということになるというと、裁定は効力を生じませんし、それからそういうことがなくて、当事者がそれでよかろうということになれば、特段に合意しなくてもその裁定の内容が当事者間の合意と同じ効力を生ずる、こういうたてまえになっております。

栗林卓司民社党

○栗林卓司君 そうしますと、その中間という意味は強制調停ということばに一番近いのでしょうか。

小澤文雄中央公害審査委員会委員長

○政府委員(小澤文雄君) ちょっとむずかしゅうございますが、強制調停ということになりますと、これは、それよりも裁判のほうに近いということになろうかと思います。なぜかと申しますと、強制調停の場合には双方の主張を聞きまして、そしていろいろ利害関係を考え、そして双方の要求なりそれから資力そのほかの実情を考えまして、それでほんとうなら法律を適用し、裁判をするときにはそういう結論にならない場合でも、あえてその中間をとって結論を出す。しかも、その履行方法などについても分割弁済とか、あるいはある条件つきで将来の援助を考える、そういうことをやるのでございますが、しかし、それは調停機関が当事者の合意によらないでそういうことをし、そして、当事者はそれに対して異議がなければ確定するわけでございます。裁定も当事者がそれに対して異議がなければ、終局的に異議がなければ確定する、実質的に異議がなければ確定するということはその点では同じでございますが、ただ裁定の場合には資力やら何やら、いろいろな事情を考えて、この辺がよかろうという、そういう判断じゃございませんで、やはり法律を厳格に適用しまして、その結論がこうなるんだということで判断をいたしますので、その辺が違うわけでございます。

栗林卓司民社党

○栗林卓司君 たいへん慎重なお答えをしなければいけないくらい、これは確かにむずかしい部分だと思います。御案内のように、いまの強制調停というのは、いまの日本の戦後の法律制度ではございません。これが出てきたのは金銭債務臨時調停法、昭和七年、これが初めてで、これを受けて昭和十三年の農地調整法、十七年の戦時民事特別法、終戦になって、戦後はこれが憲法違反に触れるかもしれないということで、民事調停法では決定ということばにかえて、内容は、強制調停になっておりますけれども、その制度はとっておりません。そこでそれとは近くないんだというお答えだと思うんですけれども、金銭債務臨時調停法の場合には、おっしゃったように、債権債務関係を当事者の意見が合わなくてもきめてしまうということが骨子でございました。今度の場合には、もっと重要な因果関係についてきめてしまう。それを国の行政権能の一つとして、別のことばで言うと、力できめてしまうということですから、実はもっとより重要な問題、すなわち裁判の基本に触れる部分に国家の行政権が介入していると見ざるを得ないと思います。   〔委員長代理加藤シヅエ君退席、委員長着席〕 なぜこういうことをるる申し上げるかといいますと、制度というのは、立法のときに考えているようないい形でばかり動くものでは決してない。そう動かなかったときにどう担保していくかというものが中に入っていないと、こういう新しい制度というものは危険きわまりないわけです。そこでお伺いするのですけれども、この強制調停、いま民事調停法に変わりましたけれども、これは憲法違反かどうかという定義をおきました最高裁では合憲という判決もおりましたけれども、裁判官七名は反対意見を述べております。そのときの最高裁が憲法に合っているといった根拠を御存じでしょうか。

小澤文雄中央公害審査委員会委員長

○政府委員(小澤文雄君) 私の理解する限りでは、戦前につくられました御指摘の戦時民事調停法による強制調停というのは最高裁判所でたしか賛成、反対一人かの違いで、これは違憲であって、無効であった、そういう結論になったかと思います。

栗林卓司民社党

○栗林卓司君 補足して申し上げますと、昭和三十一年に最高裁の判決が出まして七名が反対意見ということですから、僅少差で通った。憲法に合っているということで最高裁が引用されたのは二つありました。一つはこれとても裁判である、それからもう一つの理由は抗告、再抗告、特別抗告の道が開かれている。この二つが憲法に合っている。この憲法というのは、何人も裁判を受ける権利があるというところにからんだ問題なんです。私が実はお伺いしたいのは、抗告、再抗告、特別抗告といったものが今回の原因裁定、とりわけ原因裁定については一切書いてない。むしろ行政事件訴訟法に対する不服の道がないということは、逆に丁寧に書いてあるわけです。では一体これはどういうことになるのか。そこまで司法の中深く入った行政に対する法律のワク組みの取り方としてはまことに不自然な気がいたします。なぜこういうことをお伺いするかを一つの例を引いて申し上げますと、今回の法律のまま事態がずっと進行していったとします。そうすると、まず被害者のほうから責任裁定申請がおそらく出ると思います。先ほどのお話のように、責任裁定は中には原因裁定を当然のこととして含むわけですから、申請が出なくても原因裁定作業に入ります。また原因裁定というのは、加害者と思われる人たちからも出せるわけですから、当然この場合には、そちらのほうからも出てくるでしょう。作業は原因裁定にまいります。これが簡単に結着がつくようならこんな問題にならぬ。これはいくところ職権裁定になる。職権裁定も厳密には文章は違いますけれども、裁定事項の拡大ということが別項うたってあって、職権の場合にはそれはないのだと言いますけれども、実際にはどんな申請でも受けてくるわけですから、正しい結論を見つけたいという意味では、拡大された職権裁定になってまいります。その過程で相手が特定しない場合どうかといいますと、四十二条の二十八の三項によって、ある期間を定めて特定命令が出ます。申請者が特定できないとその申請がなかったものとみなされる。これは今日の複雑な公害の実態から言って、被害者にとってはたいへん困った問題になります。また、そこにいかないまでも、とにかく職権裁定である。国の行政機関をもって出した結論なんだということになりますと、これは国の権威をかけた結論になります。しかも問題は、これが被害者にとって有利とは決して限らない。そのときの知識できめるわけですから、これは被害者に有利だというのは願望であって、事実はそうなるかどうかわかりません。じゃ一体これを地方裁判所に出して争った場合にどうかといいますと、「受訴裁判所からの原因認定の嘱託」ということがあります。専門機関に裁定を依頼すると同じような性格でしょうけれども、依頼先というのは国が挙証責任を持った証拠なんです。これが動かせるのだろうか。そうなると、この原因裁定というのは、ここで最終審で確定してしまうわけです。行政機関が最終審していいかということは別な議論で当然ありますけれども、事実上確定してしまう。しかも被害者に有利とは限らない。じゃ加害者に不利だったらほうっておいていいか。それでは法治国ではない。そう考えますと話が戻りますけれども、たとえば強制調停については最高裁が、これが憲法に合っていると言ったときに抗告、再抗告、特別抗告の道があるといった同じ目で今回の御提案の条文を見ますと、なぜそれが抜けているのか。しかも、読んでいて理解が苦しいのは、原因裁定については効力の規定が書いてありません。これも一体どういうことなんですか、あわせて伺いたいと思います。

小澤文雄中央公害審査委員会委員長

○政府委員(小澤文雄君) 一々メモしておりませんので、あるいは全部の点についてのお答えが漏れるかもしれませんが、その意味でひとつお許しいただいて、また御指摘いただきたいと思います。原因裁定は実質的にそれは最終ではないかというお話でございましたが、私どもの立案の段階では、原因裁定が行政として形式上はもちろんのこと、実質的にもそれが最終判断になるとは思っておりませんでした。実はそれが実質上最終判断になるくらい権威のあるものならばこれは非常にけっこうでございますけれども、これは人間のやることでございますから、そこまではとても及ばないだろう。しかし、とにかく国の権力ということは全然考えませんが、国が同意できる限りの、利用できる限りの資料、これはおそらく当事者にまかしておいてはとうてい手の届かないようないろいろな資料があろうかと思いますし、権威のあるいろいろな御見解があろうかと思いますが、手の及ぶ限り御協力いただき、それを使わしていただいて、そうしてこの段階で、現在の段階では一番信頼するに足りるような結論を得たい。そうして特に問題の中心は、おそらく因果関係の問題になろうかと思います。これは責任裁定であろうと、原因裁定であろうとを問わず、その因果関係の究明のためにあらゆる能力を、いまわれわれ国民の持っている、あるいは行政機構の持っているあらゆる能力をそれを駆使して結論を出したい。そういうふうに考えておりますので、しかし、それでもそれが最終ということはもちろんありませんし、そうして規定の上でも、裁定をしたって直ちには別に効力は生じません。効力は生じませんが、効力の規定としては、もしそれに対して三十日以内に民事訴訟が提起されなかったときには、裁定は当事者間の合意と同じような効力を持つ、そういうふうに書いてございます。もしそういうふうにして合意と同じ効力を持つようになれば、さらに実現のためにはあらためて訴訟ということになろうかと思いますが、いまの裁定の内容について民事訴訟——この民事訴訟は第一審の民事訴訟です。公害紛争についてもしこの制度がなければ当事者が当然とらなければならない第一審の民事訴訟ですが、その第一審の民事訴訟が出ればもうこの裁定の効力は発生することなくして終わると、そういうふうに考えております。  それからさいぜんの最高裁判決の御指摘、あるいは私記憶違いだったようでございますが、しかしまだ少し記憶がはっきりしませんので、あるいはまた調べてとも思いますが、確かにこの制度には抗告とか再抗告とかいうような制度、これはもし行政部内で考えるとすれば行政不服審査の申し立てだろうと思いますけれども、そういうものは排除してございます。行政不服審査を認めるかどうかという問題は、これはやはり行政救済を与えるに適当な機構を持ってるかどうかという問題があろうかと思いますが、もし行政不服審査の制度をとるとすれば、これは自分自身が再検討するための異議の申し立てか、あるいは上級監督庁に対する審査の請求か、この二つになろうかと思いますが、上級監督庁というのはございません。これは独立の機関でございますから、審査の請求の方法による行政不服審査の申し立ては考えられない。そうすると残るのは異議でございますけれども、自分自身に対する異議の申し立てということになりますけれども、これも本来の異議というものの一番機能を発揮するのは、大量な処分をしたときにどうしても万一その調査漏れなどがあった場合に、それを是正するときに一番機能を発揮するものなんでございますが、この委員会の裁定はこの法律に書いてありますように、十分の審査、調査を経て結論を出すものでございますから、委員会に関する限りはそう簡単に結論が動かされるものとは思われませんので、それで異議の申し立てという制度も入れてないわけでございます。しかし決して、その異議の申し立てやあるいは審査の請求の制度を導入すればこれがより合憲に近づくとか、あるいはそれを入れなければ憲法上の問題があるとか、そういうふうには考えておりませんでしたので、いまのようになっております。

栗林卓司民社党

○栗林卓司君 これは長官にお伺いしたいんですけれども、正しい結論を出したい、これはもう当然だと思います。ただ、公害というものを考えると、技術の進歩ということとうらはらに起こってきた問題だと、技術の進歩ということは新しい証拠が続々と出てくる可能性があるということ、そうすると、ある時期に出した結論は次のある時期に変わった結論になるかもしれないことは、これは覚悟してかからなければいけない分野なんです。その意味で、みんなでそろって英知を集めるからいいんだと、これは言えない。したがって、もしそれが違った場合にどうしたらいいんだろうか、これは当然この今回の法律の中に入ってなければおかしいと思う。そこで、その技術進歩との見合いで次々に新しい証拠が出てくる可能性について長官の御意見を伺います。

小澤文雄中央公害審査委員会委員長

○政府委員(小澤文雄君) お許しいただきまして、私からお答えさしていただきます。  原因裁定から申しましょう。原因裁定について申し上げますと、原因裁定をして後に確かに御指摘になりましたように、新しい科学的な技術、知見があらわれまして、その角度から見るというと、前の裁定は誤っているということは当然考えられることだろうと思います。その場合に、原因裁定についての拘束力でございますが、それについては規定はございません。原因裁定については、これは一つの判断でございますけれども、これが裁判所を拘束するとか、あるいは当事者間でこれが将来これと異なった主張が絶対にできないとか、そういう手当てはしてございませんので、将来そういう原因裁定の対象になった因果関係を含む法律関係が訴訟で問題になった場合を考えますと、その訴訟では被害者が自分の請求を主張するために出せる資料というのは幾らでもございますので、必ずしも原因裁定の判断に裁判所も拘束されないし、当事者も違ったものを出すことができる。ただ、原因裁定があった時点以後にそういう新しい技術の発展などがないときには、そういうようなものが全然ないとすれば、やはりその段階でも最も権威のあるものでございましょうから、それと違った主張をしても通るはずはないと思いますけれども、御指摘のように、ほんとうに技術が進歩し、科学が進歩して違った結論になれば、これは原因裁定のときにはその最新の技術を主張し、裁判では原因裁定と違った因果関係の認定をしてもらうということは、これは当然可能でございます。  それから責任裁定のほうでございますが、責任裁定につきましては、これは因果関係そのものの判断の宣言はいたしません。責任裁定の中で宣言しておるのは金銭の支払い義務、その点だけでございます。しかし、その前提としては、当然因果関係があることを前提として責任をきめますから、だから理由中にはその判断があるわけでございます。ところで、これがその当時、責任裁定のなされた後に当事者がその内容を納得して、それで裁定が合意の効力を生じたといたします。そうして、そういう合意の効力を生じてから後に科学が進歩して、どうもその責任裁定の前提になった因果関係の判断が現在の時点から見るというと科学上間違っておる、そういう場合が考えられるわけですが、これは非常に困ったことなんでございますけれども、これは必ずしも責任裁定だけの問題ではございませんで、当事者がいま現在の技術に基づいて、あることをこうだと思って何か契約をいたします。その後にこの前提になっているそういう科学的な問題が違って、だんだん学説が違ってきたという場合、あるいは判決の場合もございますが、で、判決をした後、判決の理由になった因果関係の科学的な判断が後の学説でくつがえされた場合、そういういろいろな場合がございますが、判決の場合でもそれはたぶん再審事由にはならないかと思います。そうすると、一たん合意できまり、あるいは裁定できまった内容について、その責任裁定できまった内容については、これは契約の効力、あるいは判決の効力などと同じような、共通のもっと大きな問題になりますので、場合によっては、たとえば事情変更の原則なんというものははたして類推できるかどうか、そこは私まだ自信ございませんですけれども、事情が変わったときには、一たんなされた合意の内容が事情変更の原則であるいは変更されるということも考えられます。これが事情は変更しないのだけれども、科学的な事実が、知見が増加した結果、別の判断になっていったときに、類推できるものかどうか、そこについてはまだ十分な準備はございません。

栗林卓司民社党

○栗林卓司君 科学的進歩といっても、別に目新しいことを言っているんじゃなくて、私ども、ついこの間まで、カドミウムがこんな問題を起こすとはだれ一人知らなかったということを言っておるんです。PCBにしても、つい先日まで、こんな問題だとは意識をしてこなかった。そういう問題に向かっていくわけですから、新しい証拠が出たらどうなるか、たとえば、加害者がある群をなしている、さらに、こっちにもいた、そんな場合にどうするのかということも、一緒に考えておかないといけない分野の問題でしょうということを申し上げているのです。しかも、そういういろんな問題をはらんだ原因裁定について、この条文の中に、それが一体どんな効力なのかということが全く書いてない。それは、おっしゃるように、それが責任裁定になっていった場合には、出てから三十日間に訴訟をされるとかどうこうということは書いてあります。それは、そこにあらわれる姿であって、この問題になる原因裁定については、何にも書いてないんです。しかも、これは事実上の問題としては、強制力を発揮していくんだし、発揮しないとしたら、この責任裁定というのは、四級審の審理制度をつくるだけのことでしょう、実際問題は。それでは困るからこうだということは、責任裁定が出てだめだったら地方裁判所へ行ってくれという言い方では、ほんとうは困るんです。そういうプレッシャーが背後にあればあるほど、この原因裁定というのは事実上の最終審になってしまうと言っているんです。じゃ、その場合どうかといったら、やっぱりこれは、どんな効力があるのかということをはっきり書いておかなきゃいけないし、新しい証拠が出たらどうするんだということも書いておかなきゃいけないし、そのときの抗告はどこへ持っていったらいいんだということをやっぱり書かなきゃいかぬと思うんです。なぜ私がこんなにくどく言うかというと、このことが土地調整委員会には書いてあるんです。なぜこっちに書かなかったのか。法律だったら、当然これは書くべき常識的な文章だと思います。土地調整委員会のほうで書いている内容とあわせて、そこまで書き至らなかった理由がもしあったら、教えていただきたいと思います。

小澤文雄中央公害審査委員会委員長

○政府委員(小澤文雄君) いま、土地調整委員会についてはそういう規定があるというふうに伺いましたが、それは、土地調整委員会の認定した事実は、実質的な証拠があれば裁判所を拘束するというあの規定かと思いますが、この原因裁定につきましては、これは大体、裁定制度そのものが民事上の権利義務関係の判断でございまして、土地調整委員会のやっているのは、あれは行政処分についての判断で、そこは非常に性格が違うんじゃないかと思います。  それで、実はこの立案の段階では、いま仰せられましたようなその点も、いろいろの角度から検討もし、また法務省や裁判所ともいろいろ意見の交換もしてみたんでございますが、結局、これは民事の紛争に関するものでございますから、土地調整委員会の従来の規定のように行政事件についてのものと同じようには考えられないだろうというようなこともございまして、そうはいたしておりません。  それから原因裁定そのものは、先ほども申しましたように、ただ因果関係についての判断でございまして、おっしゃるとおりに、形式上、法律上の効力というものはないわけなんでございます。実質的にはもうこれは非常にその点についての権威のあるものとは考えておりますけれども、形式上は、法律上の効力、民事上の効力はないわけでございます。ですから、それについて特に不服の申し立てをするという余地も少なかろうと思います。また、それに対してかりに裁判所に出訴をしたといたしましても、かりにこの裁定に対して行政訴訟を許すというようなたてまえをとるといたしましても、原因裁定に対しては行政訴訟はできないという、これは海難審判についての最高裁の判例などもございますし、これはできないことで、非常にむずかしいことだろうと思います。そういう関係で、効力に関する規定はないわけでございます。と同時に、いまの実質的証拠に関する規定も設けなかった次第でございます。

栗林卓司民社党

○栗林卓司君 勘ぐった見方をするようですけれども、間違っていたらおしかりいただいてけっこうなんですけれども、三権分立のたてまえの中で、現実の要請から、どうしても司法の畑の言うならば内ぶところまで——この原因裁定というのはいま裁判所がやっている重要な機能なんですから、そこまで入っていくということになると、これを法律事項として書いてしまったらいろんな問題が起きる。したがって、事実行為として書くのが限界ではないかというような配慮が裏にあったんじゃないかと、実は思えてならないんです。そうでなければけっこうですけれども。これは効力がなくて、ただそれだけの認定なんだとおっしゃいますけれども、いま無過失賠償責任ということが議論されております。無過失賠償責任の法律が通りますと、故意過失の有無は問わないことになります。訴訟の中心は因果関係だけです。ところが、ここにきて、因果関係は事実上最終審になってしまうというと、一挙に結論に飛ぶわけです。それでも被害救済が早ければいいんだというにしては、一方でかけられているものは法治国日本だと思います。その意味で、これでいいのかと思いますし、それから、行政機関が前審ができるという意味で四級審だというお考えかもしれませんけれども、もしここの中で抗告という制度が入っていたとすれば、抗告を受けるのは地方裁判所ではございません、最高裁判所です。したがって、これを前審として受けたって、三級審で処理できるわけです。ところがこれはそうなっていないから、結局一工程ふやしただけになってしまうんじゃないか。しかも、そのときにおけるきわめて強力な結論だけが出てしまって、あとこれに対してどう変えていくかということは、非常に困難な作業を地方裁判所から積み上げてこなきゃいかぬ。地方裁判所にその能力があるんだったら、こんな問題になりはしないわけです。それがないから、新しいこういう機関を設けてそこで専門的に英知を集めようということですから、結局これが事実上の最終審になってしまうということを、私は法律の問題としてなおざりに考えていただきたくはないんです。——加害者だけが損して被害者が得していいという法律はつくれないということを申し上げているのですよ。結局、どこかで無理が出て、被害者もまた損をするんです。その意味で、——いろいろ言い過ぎてあれになりましたけれども、抗告ということになると、最高裁が受付場所になって、その分だけ手続が結局短くなるんじゃないか。また、無過失賠償責任との結びつきということを考えても、この原因裁定というのは、法律的な意味というものをはっきりさせておいたほうがいいんじゃないか。  この二点についてはいかがでしょうか。

小澤文雄中央公害審査委員会委員長

○政府委員(小澤文雄君) 抗告というふうに伺いましたけれども、これは最高裁に対する抗告というふうに伺ったんでございますけれども、この原因裁定、そうでは……。

栗林卓司民社党

○栗林卓司君 高等裁判所が受けるわけでしょう、通常は、抗告、上告等は。

小澤文雄中央公害審査委員会委員長

○政府委員(小澤文雄君) いや、この裁定がもし地方裁判所の判決でございますれば、これは、それに対する不服の申し立てば高等裁判所に行き、あるいは、もしこれが高等裁判所の判断でございますれば最高裁判所に行くんでございますけれども、この委員会の裁定は、やはりその意味では普通の行政庁の判断でございまして、行政機関の判断でございまして、それに対してもし抗告というものを制度をつくるとすれば、これは抗告じゃなくて普通の行政訴訟で地方裁判所に行くんじゃないかと、そういうふうに考えるんでございます。ところで、その裁定に対する救済方法として地方裁判所に出訴することにして、いわゆる地方裁判所に行政訴訟を提起するということになるとどういうふうになるのかということを、ずっと突き詰めて考えてみたんでございますけれども、結局、そうしますと、地方裁判所に訴えると。そして、その判決に不服があれば高等裁判所、さらに上告裁判所と行って、そして、それによってその訴えがかりに通ったといたします、裁定が誤りであって裁定の取り消しの請求が理由があるということになったといたしますと、その結果は、その裁定が取り消された状態に戻ります。それは、言いかえれば申請があって裁定がないという状態に戻ります。そうしますと、委員会としてはもう一度裁定をする。ただし、その裁定するときには裁判所の判断には従わなければならない、そういうことになってもう一度裁定するということになります。そうしますというと、これは本来のこの制度の趣旨であります簡易、迅速ということからはますます遠ざかるのでございまして、これはずいぶん検討したのでございますけれども、結局この行政訴訟を通じて裁定そのもののやり直しをするというような、そういう道はとらないで、いきなりもうその問題をすぐ訴訟でいったほうがより結果として早いのではないか、そういう考えでいまのような制度にしたわけでございます。決して四審級をつくるとか、四審級をどうするというようなことを考えたわけではございません。

栗林卓司民社党

○栗林卓司君 いまのお答えとの関係で教えていただきたいんですけれども、土地調整法の五十七条のところに「専属管轄」という規定がございます。読み上げます。「裁定及び裁定の申請の却下の決定に対する訴は、東京高等裁判所の専属管轄とする。」、この考え方といまのお答えは、この土地調整委員会のほうも行政事項でやっているわけだし、行政訴訟で受けたって間違いないんだし、とはいうものの、いろいろ考えてこれは高等裁判所へ持っていったと思うんですね。それとの関係でこれと同じような組み立て方が、何も地方裁判所から上がっていかなくたっていいわけですから、しかも地方裁判所に持っていったって、受託裁判所から依頼が来てここでやらざるを得ないわけですから、その意味で、司法権の前審とはいいながら、事実上は一級審にひとしい専門家としての裁定をしたんだという位置づけが、もしこれが可能ならあったっていいような気がするんですが……。

小澤文雄中央公害審査委員会委員長

○政府委員(小澤文雄君) 御指摘のとおり、土地調整委員会あるいは公正取引委員会、あるいは海難審判所、それぞれそういう趣旨の規定があって、審級省略の制度が取り入れられております。ただ、私どもこの法案につきましては、やはりどうしても紛争の対象が行政処分ではなくて民事紛争である、民事上の権利関係である点から離れることができませんので、それで一審省略ということについてはとうとう最終的にそこに踏み切ることができなかったわけでございます。

栗林卓司民社党

○栗林卓司君 民事紛争そのものだから行政が入っていいのかという問題にほんとうは戻るんだと思います。で、私の意見だけ先に申し上げておきますと、結局こうしたものはいろんな事例を積み上げ、判例を積み上げながら解決の形というものをつくっていくしかない。そこで強化すべきは裁判所ではないかと私は思います。その立場からいろいろお伺いをしているんです。  そこで、戻りますけれども、これは民事訴訟に関係する問題だというんですが、原因裁定というのは刑事事件と全く無関係なんでしょうか。その点はどうお考えですか。

小澤文雄中央公害審査委員会委員長

○政府委員(小澤文雄君) 無関係とは申し上げられません。原因裁定は、そこでその問題になった因果関係についてのあとう限りの資料で判断を下すのでございますから、これは民事であれ刑事であれ、あるいは一般私人間のいろんな取引関係であれ、あるいは行政関係であれ、それぞれの角度からそれぞれ評価されるものだろうと思います。必ずしもそれが絶対にそれに拘束されるというようなそういう効果はございませんけれども、法律的な効果、それによって拘束されるという法律的な効果を規定してはおりませんけれども、実質的には十分尊重されるものと、そういうふうに考えております。

栗林卓司民社党

○栗林卓司君 ですから、私は法律がしろうとだからこう思うのかもしれませんけれども、何でこういう問題が、法務省なりあるいは最高裁なりでとんとんと通ってきてしまったのかどうしても合点がいかないし、将来これが大きな法律問題に発展しなければいいがなあと思うんですけれどもね。  そこで、同じような、これもまた見落としじゃないか——今度は少しまた話がこまかくなりますけれども、そういった点で申し上げますと、今回は事実調査あるいは証拠調べができるようになっております。これは、おっしゃったように、その内容は行政組織法三条によるとはいいながら、裁判に関連した内容ですから、当然憲法の規定に触れてまいります。そこで普通のこれまでの法律のつくり方ですと、身分を明らかにする証票の携帯を必ず求めておりました。これはなぜそれが入っていないんですか。というのは、個人のうちにも入れる、どこにも入れる。法文をつくっているときには、工場に入ることしかあるいは念頭にないかもしれませんけれども、実際には被害者の側、加害者の側、それぞれ多数になってくれば、個人の住宅にも強制的に調べなければいかぬという話が出てくる。そのときに、何にも持たなくてもいいのか。これは従来ほかの法律には全部入っていることなんです。もちろん土地調整法にもその条項があります。ここでなぜそれが落ちているのか伺いたいと思います。

小澤文雄中央公害審査委員会委員長

○政府委員(小澤文雄君) その点は、私どものほうではこれは委員会規則で定めるべき事項だと、そういうふうに考えておりました。

栗林卓司民社党

○栗林卓司君 規則で定めていい問題だとお考えになったんでしょうか。

小澤文雄中央公害審査委員会委員長

○政府委員(小澤文雄君) いまのは、規則で定めていいのではないかと、そういうふうに考えていたわけでございますが。

栗林卓司民社党

○栗林卓司君 こういう基本問題というのは、法律によってどこに書くかということは、私はしろうとだからわかりませんけれども、おのずからなる書き方というのがあるはずです。それで、たとえば今度についても、裁判官の忌避について民事訴訟法と全く同じ内容のことが書いてありますし、それは準裁判行為だと認めているわけだし、当然それの検察行為の一環としていろいろ調べなければいけない。それについてはそれぞれの見合う法律を見れば、覚えておりませんけれども、必ずそこに書いてあるはずだし、その一番基本的なところは憲法にも書いてある。したがって、それは当然のことなんだから、規則に書いておけばという話ではなくて、この法律そのものをどうやって運用していくのかということに実は触れてくる問題だと思うのです。ですから、規則というお答えでございますけれども、それは再検討していただくべきだろうと思います。  そこで、いろいろお伺いしてもきりがないんですけれども、これは内閣委員会と公害環境保全特別委員会の連合審査だし、これはどちらかといえば内閣委員会のほんとうの課題だと思いますので、この辺は各党派をこえて少し議論していただきたい気がします。あまりにその公害対策たいへんだというので、とにかくやろうかだけで臨まれたんでは困ったことになるんじゃないか。あえてこまかく申し上げませんけれども、悪意をもって今回の条文を読んでいきますと、被害者に対してたいへん不利な状況をつくり出すことはそんなにむずかしいことではありません。そのときに、いや好意をもって読めばいいんですけれども、悪意をもって、状況のいかんによっては審判を経ないで結論を出すことができるとか、あるいは相手方を相当の期間特定命令で出さなければいかぬ、これはそれぞれその状況を推則しての文章なんですけれども、悪意をもってとっていけば、こんな強いことはないわけです。それに対するこれまでの再々の質問に対するお答えは、そんなことはありませんと、りっぱな人を集めてりっぱにやるんですと、それはそうしていただかなければ困りますけれども、制度というのはもし悪く動いた場合にどうなるのか。だれも裁判官がおかしな人だとは思っておりません。にもかかわらず、三段階を設け、しかも再審という制度まで持って担保しているわけです。で、しかもこういう利害関係のからみというのは、どこまで行ったって理屈で納得するわけではありませんから、どこで折り合うかがやっぱり大切な社会の仕組みだろうと思うのです。それがここで一発で事実上最終審に近いかっこうできまってしまう。たいへん思い切ったダイナミックな処置のように見えますけれども、法治国日本としてほんとによかったのかしら、これが将来憲法問題に発展しないだろうかということはぜひそれぞれお考えいただきたいと思いますし、以上意見だけ申し上げて質問を終わります。

加藤進日本共産党

○加藤進君 初めに、確認する意味で山中長官にお聞きをしたいんですが、この法案でつくられる公害等調整委員会、この主たる任務は「公害に係る紛争の迅速かつ適正な解決を図る」と、こう書いてあります。この適正、迅速な解決というのは、言うまでもなく被害者の救済を目的としてこのような解決をはかるというふうに私は読み取っていいと思いますけれども、その点いかがでしょうか。

山中貞則自由民主党総理府総務長官

○国務大臣(山中貞則君) もちろん結果的にはそうなるでありましょうし、公害紛争がだらだらと長引いて、加害者も被害者もともに結果が得られないというようなことがあっては国の政治としてなりませんので、その反省の上に立って、しかも一昨年つくりました法律をさらに今回は換骨奪胎し、このような使命を与えて出発させようという私自身の反省にも立っておるわけであります。

加藤進日本共産党

○加藤進君 そうしますと、この法案の運用において、かりそめにも公害の加害者である立場に立つ企業その他に有利にする、そして逆に公害の被害を受けている被害者に対して不利をもたらす、こういう運用は絶対にしないと、こういうことを御確約いただけるでしょうか。

山中貞則自由民主党総理府総務長官

○国務大臣(山中貞則君) 先ほどの栗林委員の質問についても私だいぶ考え込んだんですが、法律というものは、やっぱりつくれば、戦前の治安維持法みたいにひとり歩きをいたします。また、私の手元を実際上は離れるわけでありますが、こうして三条機関としての独立の機構としてここに誕生させるという場合には——環境庁も私の手で偶然つくったわけでありますが——よほど慎重に各方面から見て、そしてことにこれは三条機関でありますから、中立で十分な権能を持って出発させる、そうしないと、あとでもうひとり立ちしたと思っていたのに問題が残っていたというのではたいへんでありますから、私としてはほんとうに謙虚に各方面の意見を行政政府内において徴してきめたつもりでありますので、今後の運用においても、ただいまお話しのような姿勢は一貫して貫いていかれるべきだと信じておりますし、それに十分な体制を与えておくつもりであります。

加藤進日本共産党

○加藤進君 それでは、体制の面においても運用の面においても、慎重にさらに重ねて慎重を期しながら公害被害者に不利をもたらさないように努力する、こう認識していいわけですね。  そこで、この法案の一番眼目になるのは、これはこの委員会が裁定権を持つと、こういう点にあろうかと思います。当然重要な内容として責任裁定の権限が出てくるわけでございますけれども、これは公害の被害を受けた方々の立場からいうなら、当然この裁定を申請する、そして一体このわれわれにもたらされた公害というものの犯人はだれであるか、その犯人に当然のことながらその損害の賠償を要求するのは当然だ、こういう点で、私は責任裁定のこの権限というのは当然活用してもらう必要があると思います。  そこで疑問に思うのは、これは他の委員の質問にもありましたけれども、原因裁定という問題であります。私はいろいろ議論を聞きながら、原因裁定ということばの使い方に相当ニュアンスがあると思うんです。私は小澤さんのお答えの中でもそれがあると思いますけれども、原因裁定とはどう定義したらいいのか、この点ひとつ明確にしてもらいたいと思います。

小澤文雄中央公害審査委員会委員長

○政府委員(小澤文雄君) この原因裁定につきましては、この四十二条の二十七に規定しているとおりでございますけれども、要するに、被害の原因について因果関係を明らかにするということがその実質的な内容でございます。

加藤進日本共産党

○加藤進君 因果関係という問題についてなら、責任裁定の場合にだって因果関係はある程度確定しなくてはならない。すなわち、犯人を確定しなくては賠償も補償もできない、こういう点では、私は、因果関係ということだけなら、それは責任裁定においても当然その内容を持つ、こう言っていいと思うんです。そこで、私は時間の都合上ここで、皆さんと同僚であろうと思いますが、総理府の藤田耕三さんの定義をちょっと御紹介します。「原因裁定は、公害紛争において最も問題の多い被害とその原因とされる行為との間の自然的(事実的)因果関係の存否を判断する裁定」であると、こう言っていますが、この点は間違いないでしょうか。

小澤文雄中央公害審査委員会委員長

○政府委員(小澤文雄君) 若干あるいはことばに補足しなければならぬ点があるかもしれませんけれども、大綱においてそのとおりでございます。

加藤進日本共産党

○加藤進君 そうしますと、この原因裁定の内容はきわめて重要であるし、かつ複雑であるし、厳密なものである、こういうことが言えると思います。「自然的(事実的)因果関係」、これを確定するといういわば裁定をこの委員会が行なうということですね、これは私は一体被害者の側がこれを確認をするのか、あるいは加害者がこの原因裁定なるものを運用するのかということになれば、当然のことながら被害者にはこれは必要ないと思うんです。被害者は犯人をきめてほしい、そしてそこから賠償をとってほしい、こういう裁定をお願いするわけでございますが、それでけっこう。ところが原因裁定、しかしそういう被害とそれをもたらす物質と、これがわが工場から出たものかどうか、そしてこれが人体に入った場合にどのような経過を経て病気を起こすのか、こういういわば事実的因果関係を確定させるということから言うなら、これは被害者ではなく、加害者が要求することなんでしょう。原因裁定を活用するのはまさに加害者ではないか、この点をちょっとお聞きしたいんです。

小澤文雄中央公害審査委員会委員長

○政府委員(小澤文雄君) 仰せのとおり、責任裁定は被害者が、自分の被害はあの加害者の出した公害によるものだからその賠償をしてくれとか、そういうのでございまして、しかし、その場合にも因果関係の主張はございます。自分の被害と加害者の行為との間の因果関係があるということが当然前提になっております。そうして責任裁定で責任をきめるときには、その因果関係は必ず認めなければできません。因果関係を認めずに責任を認めるという余地はないのでございます。ところで、原因裁定で取り扱う因果関係というのも責任裁定の内容をなす因果関係と全く同じでございます。そこに自然的、科学的ということばが出ておりますが、これはもうすべての因果関係がみんなそうなんでございまして、それをいまちょっと伺いますというと、何か非常に詳細な科学的なルートを追跡して全部明らかにしなければいけないのかというふうな考え方があるいは出るかもしれませんけれども、実はそうじゃございませんので、これはたとえば毒物を飲む——たとえで申します——毒物を飲む。毒が出たと、毒が口に入って病気になった、そういう事実がはっきりしておる。その毒がそれはもうだれが飲んでも病気になるというそういうものが、実際それを飲んで病気になったというときには、それはもう毒を飲んだ、病気になったという、それだけでいいのでございまして、そのときにやかましく毒を飲んだときにからだに何%吸収されるのか、その吸収されたものが内臓のどこに循環してどこに沈着してそこからどういう生理的な障害を起こすかなんということは、これは言わぬでも因果関係は認定できるのでございまして、決してそこまで要求する——自然的・科学的因果関係を究明するというのは、そこまではっきりさせようという趣旨ではございません。

加藤進日本共産党

○加藤進君 だからそれなら責任裁定でいいじゃないかと、こういうふうに私はあえて言っておるわけです。  そこで、いまおっしゃいましたけれども、事実的な因果関係ということはそれほど私の言うようにむずかしい問題ではございません。こうおっしゃいますけれども、たとえばここにイタイイタイ病の判決と、それからまた準備書面があります。その中で公害の加害者である三井金属はどういう問題を鑑定に出したか。鑑定申請したか。これはカドミウムとイタイイタイ病との間に因果関係のないことを立証せよ、こういうことが主題でありました。鑑定の事項——人間がカドミウムを口から摂取した場合の体内カドミウム吸収率はどうか——いいですか。人間がカドミウムを口から摂取した場合、必然的にじん尿毛細管の機能障害を生ずるのか。かりに生ずるとすれば、カドミウムがどの程度の量、どの程度の期間人体に蓄積された場合じん尿毛細管の機能障害を生ずるのか等々のことがちゃんと鑑定によって要求されるんですよ。こういうことが、この原因裁定の中に持ち込まれないという法的保証があったら教えていただきたい。

小澤文雄中央公害審査委員会委員長

○政府委員(小澤文雄君) 先ほど申しましたように、毒を飲んで病気になった。だれが飲んでもそんなものを飲めば同じような病気になるということがわかっているときに、それが何%吸収され、どこの経路を通って細胞にどういう生理的な変化を生じて、そしてそういう病気になったのかなんということを明らかにすることは原因裁定の目的では全然ございませんので、大体そういうことを明らかにする必要があるかどうかということは、これはわれわれの経験則できまるものだろうと思います。因果関係の認定も、やはりこれは経験則できまるのでありまして、因果関係を認定するのを、因果関係の認定要件を法律で規定している例はたぶんなかろうかと思います、これは法律の世界じゃなくて経験則でございますから。でございまするから、一般の経験則からいってこれだけの資料があれば、これでもう結論は出るはずだということになれば、特段の事由がない限りはもうそれで結論が出せることになります。しかし、もし何か特段の事由があって、それでもこの場合にはならないんだという何か特段の事情があれば別でございますけれども、そういうことのない限りは、そう詳細にどこまでも追及していくということは必要のないことでございますし、それからかりに追及すれば、そんなことでどこかで追及し尽くせるものじゃございませんので、たとえ飲んだ毒物がからだの中のどこをどう回ってどこの器官に沈着したということがわかりましても、さて沈着してからそれがどういう機能障害を生じたか。血液の中の何%の糖を増加さしたか、減少さしたかなんということに入ってくるでしょうし、それがわかればまたその先がありますし、これはもう際限のないことでございます。そういうことを原因裁定でやるという趣旨ではございませんし、またそういうことをしないという保証を法律で書くということも、これもできない相談で、そもそも法律で書くべきことじゃございませんで、これはもう経験則にまかされておる、そういうふうに考えております。

加藤進日本共産党

○加藤進君 したがって、それは加害者からの申請の内容にも関係するし、またそれをどういう立場から、またどういう範囲においてこれを受け入れるのか。こういう点のやっぱり判断にもかかってくるという意味では、法律的に言うと非常に歯どめが足らない。そういう点においてどの範囲についてまではこの裁定にかかるけれども、どの範囲以上のものについてはそういうことは権限外だといってこれを拒否する、こういうようなことは少なくともこの法案の中には全然ない、こう言っても私はいいと思うんです。  そこで具体的にお聞きしますけれども、公害の被害について被害者がまず責任裁定を委員会に申請するとしますね。すると、機を逸せず、今度は加害者がこれに対して原因裁定を要求する、こういうことはあり得るわけですね。その場合に、責任裁定の審理の途中で原因裁定の要請が出される、こういった場合には、それはそれとして原因裁定は別個であって、責任裁定のほうは責任裁定のほうで逐次進行さして結論を出すと、原因裁定との関係なしに逐次結論を出されるのか。それとも、原因裁定の申請が出された以上は、これを取り上げて、その間責任裁定のほうの裁定についてはしばらくその成り行きを待たれるのか、この点ひとつお聞きしたい。

小澤文雄中央公害審査委員会委員長

○政府委員(小澤文雄君) 責任裁定の申請がありまして審理中に、かりに加害者のほう、加害者と目されているほうから原因裁定の申請があったといたしましても、責任裁定の進行には影響ございません。ただ、もう責任裁定の場合に、責任の前提として、まず、これはもう加害者からの原因裁定の申請があろうとなかろうと、責任裁定をする前提として、因果関係は一応審理して判断しなきゃなりません。因果関係の判断があって、初めて今度は損害額のほうの審理判断に入っていきますが、ところでこれは加害者からでございましょうとあるいは被害者からでございましょうと、原因裁定も同時にやってくれという申請がございますれば、その責任裁定の審理のプロセス、その過程で因果関係が明らかになった段階でそれを、その因果関係の内容を裁定の中に盛り込むことに、裁定の中の宣言に盛り込むことになります。要するに、責任裁定の場合には、主文に因果関係の宣言を一行加えるか加えないかという、それだけの違いになります。

加藤進日本共産党

○加藤進君 その点もいま初めてお聞きするわけで、法案を読んでみても、そういう運用のしかたは全然書いてない。そこで私はこの疑問を提出したわけなんです。で、もう一度あらためて確認したいと思いますけれども、とにかく自分たちに不利な被害者からの裁定の申し出があった。これは困った。われわれはぜひとも原因裁定に持ち込んで、自分たちの企業の責任のないこと、企業は犯人でないということを立証させなくちゃならぬ。こうして原因裁定に持ち込んだ場合にも、いまあなたの御説明になったように、そういう申請はあったにしても、原因裁定の申請はあったにしても、とにかく責任裁定はそれなりにしっかりと早く迅速に出す、これがこの法のたてまえですか。

小澤文雄中央公害審査委員会委員長

○政府委員(小澤文雄君) 先ほど私、ことばが非常に足りませんで、とんでもない誤解と言っては申しわけないですが、とんでもないことになるといけないと思って訂正さしていただきますが、責任裁定の審理の途中に原因裁定が出されても、責任裁定の結論が迅速適正になされることについては全く変わりはございません。ただ、原因裁定の申請がありますと、これは事案によって、あるいはもう最後の裁定で一行だけ因果関係の判断を加える場合もございますし、あるいはそうではなくて、因果関係についての結論が出たときに、中間で原因裁定だけは一ぺん出しておくということもございます。しかし、それは別に、それを出すために責任裁定の審理と違った別の審理をするということはございませんので、これはもうあくまで迅速に責任裁定の結論を出すために必要な限度の調べをするだけでございまして、そしてその結論を途中で裁定で出すということもございます。これが、途中で出せばあるいはもう同種の事案についてのほかのいろんな被害者がございましょうから、そういう人たちがお互いに話をする、あるいは賠償請求をする、そういうときにも非常に便利もありましょうし、そういう意味で途中でやることもございます。必ずしも最初の場合だけじゃございません。しかし、いずれにせよ、原因裁定の申請があろうとなかろうと、責任裁定により簡易迅速にその責任の範囲をはっきりさせるという点には変わりございません。

加藤進日本共産党

○加藤進君 私が重ねてこの問題を質問しますのは、被害者が責任裁定を要請して、そしてまたこれを受けた委員会は、迅速かつ適正にこれを解決しなくちゃならぬ。こういう任務が一方において与えられております。ところが、これに対して公害加害者の側から見ると、これはたいへんなことだ。われわれ公害の犯人でもなんでもない、こういうことを立証させるために原因裁定をとにかく持ち込むということはあり得ることであって、これは裁判途上でもう絶えずこのような問題が出てきておるわけでございますから、そういう申請に対して、この申請が出されても、あるいはこの審理が場合によって何年も何年もかかるということはあり得ると思うのです、これは。そういうことがあっても、そのような原因裁定の進行とはかかわりなく責任裁定のほうは裁定する、こういうふうにはっきりと確約——確信できますか。

小澤文雄中央公害審査委員会委員長

○政府委員(小澤文雄君) 重ねて申し上げますけれども、原因裁定というのは、原因裁定は原因——因果関係についての判断でございますが、この因果関係の判断というのは、責任裁定の中で、過程で行なわれる判断と全く同じでございまして、責任裁定をするについては因果関係の判断をする必要がありますが、その因果関係の判断は加害者側から原因裁定の申請があったからといって、そのためにふえもしなければ減りもいたしません。  ただ、これは責任裁定だけの場合をとって考えまして、加害者側から原因裁定のない、ただ加害者側はただそれの手続に応じているだけ、応戦しているだけという場合を考えてみますと、そういう場合でも加害者が反対の証拠を出す権利はこれは妨げられませんから、ですから、因果関係を問題にしている段階では、被害者側からも資料を出しましょうし、加害者側からも反対の資料を出しましょうし、それで見て、そして委員会としてさらに足りないところは、職権でも事実調査をし、あるいは証拠調べもすることになろうかと思います。予想されるのは、被害者というのは非常に資力の足りない、そういう点についての能力の足りない方が多いという場合——多いだろうと思われますので、そういうときにはおのずから、どんなに努力しても資料の提出に力が届かない。委員会から見るというと、加害者側の出した資料とこれを比較してみて、どうも被害者側のほうの提出した資料に、本来出るべくして出てない資料があるのじゃないか。本来出るべき資料がほかにあるはずだと。こういうものがあるはずなのにそれが出ていないのはどういうわけだろうと。そして、聞いてみても、それはわからないとか、あるいは出す資力がないとかという話が出てくることがあろうかと思います。委員会としては、そういうときに、そのために被害者、本来当然しんしゃくしなければならない資料が被害者から出ないような場合に、これを職権で事実調査をし、あるいは証拠調べをして、そこを補う。そういうことによって正しい結論を出すようにという、そういう手当てはしてございます。そして、その判断について必要な限度での資料を収集し、そしてそれについて判断をし、その結果、因果関係についての結論を出すということになるのでございまして、これは加害者としても、かりに原因裁定の申請をしなくたって、自分のほうで、加害者のほうから自分で資料を出すというのはこれは当然考えられます。それで、加害者のほうから原因裁定の申請をしたために特別に証拠調べをするとか、あるいは特別に被害者側の負担を重くするとか、そういうことは考えられないのでございまして、その点は全く御心配なかろうかと思います。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 関連。  ちょっとお聞きします。責任裁定の審理中に、原因裁定の申請がされたとき、並行審理をするんですか、しないんですか。それが一つ。  それから、並行審理をですね、かりにするにしても、全然責任裁定には影響を持たぬと、こういうんですか。そのところを明確にしておいてください。持たぬといっても、しかし一方で原因裁定でこれは審理が始まるというと、相互影響というものはこれはあり得るわけです。あり得るのです。その点を明確にしておかぬと、それはいまの説明ではとてもしどろもどろで、わかりませんよ。明確にひとつしてください。

小澤文雄中央公害審査委員会委員長

○政府委員(小澤文雄君) 原因裁定の手続と責任裁定の手続とを並行して行なうのかどうかというお尋ねかと思いましたが——。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 ええ。

小澤文雄中央公害審査委員会委員長

○政府委員(小澤文雄君) これはもう並行ということはございませんので、大体因果関係というものは、その当該公害については一つしかないのでございまして、二つあるわけじゃございませんので、それで被害者側から出した因果関係、加害者側から出した因果関係というそういうことは考えられません。もう当該公害に関する限り因果関係があるかないかと。それであとは、それを判断するについて加害者側からの資料の提出、被害者側からの資料の提出、資料の提出は双方それぞれやるでございましょうけれども、手続としてはもう並行じゃなくて、全く合一でございます。

加藤進日本共産党

○加藤進君 それなら責任裁定だけでいいじゃないですか。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 そこのところを明確にしておかなければならぬでしょう。責任裁定は進行中だ、そこに原因裁定の申請がなされた。それは同じ議論でやるかどうかは別として、そうすると何ですか、いまのあなたの答弁からいうと、責任裁定進行中は、原因裁定の申請があってもそれは考慮するだけであって、一切、それは裁定の作業としては取り上げない、こういうことなんですか。そこのところを明確にしておかなきゃね。いまの答弁じゃはっきりしませんよ。

加藤進日本共産党

○加藤進君 簡単に明瞭にやってください。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 相互影響を持つのだから、それは持たざるを得ないのだから、相互影響ないなんてことはあり得ないのです。

小澤文雄中央公害審査委員会委員長

○政府委員(小澤文雄君) 簡単に例を申し上げたほうがいいかと思いますが、責任裁定の申し立てがあったといたします。上流から流れてきたシアンによって健康を害されたと。だからその被害による賠償を求めると、加害者は何の何がしという工場であると、そういうふうな主張があって、その加害者が被申請人——相手方となって委員会に出てきて、自分はシアンを流した覚えはないと、それを否認したといたします。そうすると当然、はたしてシアンが流れてきたのかどうかということが問題になります。そこで被害者のほうでは、医者の診断書を出すといたしましょう。医者の診断書によると、これは飲み水の中にシアンがあって、そのための中毒であると、かりにそういうことが、そういう診断書があるかないか私はわかりませんけれども、かりにそういう診断書が出たとします。そうするとそういう診断書を出させる。そしてその診断書が出たときに、加害者側に対して、それに対する意見を聞くということになりますが、加害者が、いや自分のほうはそういうシアンを流したことはないから、その診断書は間違いであるとかりに言ったといたします。しかし、別の資料によれば加害者の工場はメッキ工場であって、常時シアンを使用しておると。そして、一応のシアンを流すのを防止するシアンだめか何かはあるけれども、それは何かの不注意によればもう簡単に流れると。外へ流出することを防止するだけの設備にはなっていないと、そういうようなことが明らかになったといたします。そうすると、その段階で、ほかにシアンの流れ込む道はないと、そして、被害者はシアンによって被害を受けたと、他に全然その原因となるものは考えられないということになるというと、経験則からいけば、やはり当該シアン工場が加害者ということになろうかと思います。しかし、加害者のほうではそれを承服しないで、それで自分のほうが、自分は覚えがないんだと言って、かりに原因裁定の申請をしたといたします。その原因裁定では、申請人のシアン中毒は加害者と目されておる自分の工場の流したシアンによるものではないと、そういう判断を求めて、そういう申請をしたとします。そういう申請をしてきたとすれば、いまの段階で、これは加害者側の工場の出したシアン中毒によるものであるという、その因果関係が判断できれば、もうそれで原因裁定としては本件被害は加害者側の排出したシアンによるものであるという、そういう宣言をすることになります。この場合には、加害者から申請してきた原因裁定手続と、それから被害者の出している責任裁定手続とはこれは並行しているという——二つの手続があって並行しているものでなんでもないんで、一つの手続で、一つの手続の中でそういう判断するというだけのことでございます。そうして、それから先は、進んで、損害額の審理に入っていくと、そういうことになるのでございまして、それでよろしゅうございましょうか。

加藤進日本共産党

○加藤進君 ますます不明確になってくるわけでございまして、私は具体的な実例を出して質問しますけれども、イタイイタイ病において、裁判の判決はどうなったかというと、いま小澤委員長がおっしゃいましたように、ともかく厳格な、自然科学的な因果関係を確定するまでの必要はない。犯人はだれであるか。その犯人がどのような有害な物質を流して、そしてこれが一定の地域における特別の病気を発生さした、こういう蓋然的な因果関係さえ確定するなら、これで裁判は終わりだと、こう言って判決を出したわけでございます。ところが、これに対して三井金属は何やったのですか。これに承服できぬ、こう言って上訴しておるわけでありまして、さらにもっと原因を明らかにしてほしい。私たちの出したカドミウムが、一体どういう経路で、どれくらいの量で、口の中に入れたらどんなようなイタイイタイ病の症状を発生したかということまで、はっきりと認定してほしいと、こういう鑑定申請が出されたわけであります。ここに第二審の重要な問題が出ておるわけです。したがって、私たちが心配するのは、原因裁定というものは、この加害者企業が鑑定を要求するような内容を受け入れて、鑑定にかわるべき作業を原因裁定において行なうのではないかということを疑問に出しておるわけでありまして、そうでないというなら、はっきりとその確信をいただきたいと思います。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 法律の提案者から聞かなければ困る。ちょっと提案者の責任ある答弁出してください。

加藤進日本共産党

○加藤進君 山中さんどうですか。

小澤文雄中央公害審査委員会委員長

○政府委員(小澤文雄君) 原因裁定を、何か鑑定と同じように考えるというと困るのでございますが、原因裁定というのは、要するに、責任裁定する前提となっている因果関係についての判断をするという、それだけのことでございまして、それで、いま御指摘になりましたいまの裁判の例でございますが、どうも係属中の裁判のことについて、それを例に使うのは非常に申し上げにくいのでございますけれども、要するに、裁定の手続で、委員会が一応もうそれで因果関係についての結論に到達すれば、そうすれば、それだけで、すぐ、原因についても、因果関係についても、申し立てがあれば、その点の判断をいたしますし、申し立てがなければ、損害額の審理のほうに入っていきますし、その点は、たとえ加害者側から原因裁定の申請があったからといって、そのために手続が特におくれるとか、あるいはそのためにまたあらためて原因関係について別の審査を始めるとか、そういうことは全然ございません。

加藤進日本共産党

○加藤進君 時間が迫ってまいりましたので、もっと詰めなくてはならぬ点が多々ありますけれども、とりあえず私が申し上げたいのは、原因裁定とは何かということを私が質問したときに、原因裁定とは自然的、事実的因果関係の存否を判断するものであるという、これが原因裁定と違う点なんだということが明確になったわけであります。加害者は、こういう規定があり、こういう理解が成り立つなら、これを運用するわけでありまして、運用しないという保証はどこにありますか。これを最大限に運用するというところに、この法案の、加害者側に有利にする危険性があると、このことを私は強調しておるわけでありまして、この点はお認めになるでしょう、その点は。  そこで、最後にもう一問だけ申し上げます。今度のこの裁定制度が実施された場合に、いままで行なわれた公害裁判に、どのような新しい問題点を投げかけるのか。いままでの裁判と、これからの裁判と、違うところがあるのかないのか、この点をお聞きしたい。

小澤文雄中央公害審査委員会委員長

○政府委員(小澤文雄君) いまのお尋ねは、裁定と関係のない別の訴訟がすでに初めから進行していて、その途中で……。

加藤進日本共産党

○加藤進君 裁定制度ができる。

小澤文雄中央公害審査委員会委員長

○政府委員(小澤文雄君) 裁定制度ができ、そうしてその同じ問題について当事者が裁定の申請した場合と、そういうふうに考えてよろしゅうございましょうか。

加藤進日本共産党

○加藤進君 そうです。

小澤文雄中央公害審査委員会委員長

○政府委員(小澤文雄君) これは、その裁判が、ことに上訴審、特に上告審なぞに係属しているときに、あらためて裁定の申し立てをするということは、おそらく、これは必要のないことでございまして、ことさらに訴訟遅延の目的でやるなら格別、そうでないのにそれをやるということは普通はなかろうかと思いますが、もし、ことさらに訴訟遅延の目的でそういう裁定の申請をしたとすれば、それは不当な目的の申請でございまして、違法なものになりますから、ですから、そういう原因裁定の申請を加害者がやったとすれば、これは申請そのものが却下されることになろうかと思います。  それから地方裁判所の第一審で、まだ因果関係が、全然、海のものとも山のものともわからないときに、原因裁定の申請を委員会に出したということ、まあ考えられるかとも思いますが、そういう場合には、これは手続の進行状況を見て、あるいは、委員会のほうで審理は裁判のほうに譲り、もう手続を中止するということもございますし、あるいはまた、裁判所のほうが、これは委員会の進行のほうが早かろうというので、そちらのほう、裁判のほうを待っていて、委員会の進行にまかせるという場合もあろうかと思いますが、そういうときに委員会がもし進行するといたしますれば、先ほど申しましたように、これは原因裁定であろうと、責任裁定であろうと、十分の審理をして、まず因果関係を明らかにし、それについての結論を得た上で、その点についての心証を得た上で、さらに損害額のほうに入ると、そういうことになります。

加藤進日本共産党

○加藤進君 わかった部分と、わかりにくい部分とがありましたね。  そこで私、具体的に実例を申します。もう第一審で——第二審はさらに争いつつあるような裁判ではなしに、新潟水俣病の裁判について。加害者側が鑑定申請を出しました。その内容は、厳格な事実関係、自然的因果関係を明らかにせよという内容です。これは御承知のとおり。これに対して判決はどうされたかと言えば、新潟の水俣病裁判ではこう言っています。「裁判所が本件訴訟において、の当否の判断のため専門家の鑑定を採用することとなると、鑑定、再鑑定等がくり返えされ、いわゆる果しなき科学論争に陥ることは必至と考えられるところ、現在の民事訴訟の構造上、裁判に科学論争を必要以上に生のまま持ち込み、裁判所がその当否を判断することは極めて、不適当であるというべきである。」こう言って却下されたわけであります。そうでしょう。これは事実問題です。これが今日のいわば責任裁定、裁定制度のない段階における、裁判所の自主性がはっきりと守られておるという段階です。  そこで、私はこれでお聞きしますけれども、今度の裁定制度ができた場合はどうなりますか。あなたは、裁定制度ができた場合でもあまり変わらないような話をくだくだと言われましたけれども、こういうことになるんじゃないですか。今度、公害被害者が裁判に訴えた場合に、今度は、加害者の側が、因果関係をもっとはっきりしてくれという、その鑑定を申請すると、どうなりますか。ここに第四十二条の三十二項が生きるんです。四十二条の三十二項が生きます。それはこれを受け付けた、いわば裁判を受け付けた受訴裁判所は、中央委員会に対し原因裁定をすることを委嘱することができるんです。できるんでしょう。原因裁定はめんどくさいと、裁判所ではなかなかやりにくいから、ひとつ専門家の集まっている裁定のほうに委嘱する。こうして委員会に委嘱することができるんです。こうして、いままで裁判所が受理して、裁判の範囲外であるとして却下されたものが、今度は受訴裁判所の存在によってこれが生きるんですよ。生きて、これを受訴裁判所は審理しなくちゃならぬ。原因の内容についてまで、因果関係についてまで、検討しなくちゃならぬのでしょう、これは。そうしないんですか。それをしないならしないと、はっきり言ってください。

小澤文雄中央公害審査委員会委員長

○政府委員(小澤文雄君) 御指摘のように、裁判所がすでに因果関係について結論を得、ことさらに際限のない科学論争などには立ち入らないで済むという状態になったときに、この条文ができたからあらためて原因裁定の嘱託をしなければならないと、そういうことにはなりません。これはこの嘱託は裁判所が初めから因果関係について心証を得ず、これをみずからやるよりも、中央委員会に嘱託してやらしたほうが適当である、そういうふうに裁判所自身がお考えになったときだけこれが働くのでございます。

加藤進日本共産党

○加藤進君 だから裁判所がそのような判断をして回していけば、その因果関係の裁定は裁定委員会においてこれを行なうと、そうしてその結果は裁判に響いてくる、こういう関係じゃないですか、これは当然でしょう。そういう意味で裁定委員会は裁判とは無関係じゃないんです。裁判に影響を与える、裁判の自主性というものがこれによって作用を受ける、影響を受ける、このことは言えるんじゃないでしょうか。この点まで考えてもらわなければ、このような法案をつくってもらっちゃ困るんです。

小澤文雄中央公害審査委員会委員長

○政府委員(小澤文雄君) この裁定が裁判所の自主性に影響があるとは全然考えておりません。そういうことは裁判所の現在の実情から考えて、とうてい考えられないことだと思います。

加藤進日本共産党

○加藤進君 これは答弁になっていませんよ。私はこのような法律をたてにして、そうしてやっていくなら、実際上そういう道が残されている、そういう道が保証されている、こういうことを私は言っておるわけでありまして、そういうことは絶対にできないという法的な歯どめがあったら、それは法案のどこにあるのかちょっと教えていただきたい。

小澤文雄中央公害審査委員会委員長

○政府委員(小澤文雄君) これは四十二条の三十二に「受訴裁判所は、必要があると認めるときは、」「嘱託することができる。」ということを書いております。それから民事訴訟法でも、裁判所は証拠調べをするときには当然必要があるものだけをやるのでございまして、必要と認めないものは、たとえ当事者の申請があっても証拠調べをする必要がないと、そういうふうになっておりまして、あくまで裁判所が心証形成に必要な限度でやるわけでございまして、それ以上の証拠調べをするということも、あるいは委員会に対する嘱託をするということも、これは考えられないことでございます。

加藤進日本共産党

○加藤進君 時間が迫りましたから終わりますけれども、裁判所はともかく従来自主的に裁判所の判断に基づいて鑑定申請まで拒否しました。しかし、裁判所がこのような受訴関係の委員会ができた場合に、従来は鑑定は拒否したけれども、この委員会ができたために、これはひとつここに鑑定をまかせようじゃないかといって、この鑑定を持ち込む可能性は少なくとも否定できないんです。こういう点でいわばこの委員会は裁判に対しても、裁判との関連を持って裁判に作用するというふうに私は言わざるを得ないと思います。  もう一つ最後に、一体いま議論をしたような原因裁定というものを加害者の側から言うならどのように運用するかといえば、ここに原因の裁定を持ち込んで、もっともっとはっきりさせてくれと、ただ質的に事柄を判断するばかりではない、蓋然性では困る、もっと科学的に厳密に量的にもはっきりさせてくれということを要求していくという可能性は十分にあるし、またそういう道をこの原因裁定は開いておると思う。すると、どういうことになるかというと、早く問題のめどを立てて、そうして公害被害者を救済しなくてはならぬという法のたてまえに違反して、自然科学的な因果関係をしつこく調べていかなくてはならぬというので、論議に論議が重なる、そうして時間をとる、こうして最後のところは、結局のところ原因ははっきりしませんでした、因果関係は確定しません、したがって犯人も不明なんです、こういう結論が出るという道がちゃんと開けるじゃないですか。こういう原因裁定であるからこそ私はこの裁定は削除すべきである、こういうことを主張して、私の質問を終わります。

柳田桃太郎自由民主党

○委員長(柳田桃太郎君) ほかに御発言もなければ、これをもって本連合審査会は終了することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳田桃太郎自由民主党

○委員長(柳田桃太郎君) 御異議ないと認め、本連合審査会は終了することに決定いたしました。  これにて散会いたします。    午後六時二十五分散会

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