公害対策及び環境保全特別委員会 第10号
- 発言数
- 290 件
- 登壇者
- 23 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1972/06/16
会議録
○委員長(加藤シヅエ君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を開会いたします。 まず、委員の異動について御報告いたします。 昨十五日、加瀬完君が委員を辞任され、杉原一雄君がその補欠として選任されました。 —————————————
○委員長(加藤シヅエ君) 大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律案を議題といたします。 前回に引き続き質疑を行ないます。 質疑のある方は順次御発言を願います。
○寺本広作君 短い期間の間に、いわゆる公害の無過失損害賠償責任法案をまとめられるのは、さだめし御苦労であったと存じます。大石長官の御努力に敬意を表したいと思います。 問題としては、大気汚染、水質汚濁に範囲を限られたことであるとか、原因についての因果関係の推定が入っておらぬとかいって、だいぶ問題が残っておるようではございますけれども、私は、自分で工場における労働災害の無過失損害賠償を手がけたことがございますが、工場での、労働災害についての無過失損害賠償の制度を工場法に取り入れるまでは、明治以来、ずいぶん長い間の歴史がございます。それに比べると、今度は非常に短い期間にこれだけまとめられたということは、非常にこれは公害立法の上にやっぱり一つの時期を画することであって、大石長官の御功績だと存じております。そういうことでもございますし、会期もきょう一日ということでございますから、本来であれば、質問をせずに、これは無条件で賛成したほうがいいとも考えましたけれども、実は昨年の八月、水俣病の認定についての行政不服審査の決定にあたりまして、私はこの委員会で長官に二、三の質問をいたしました。その関係と、今度の衆議院での修正部分がどういうふうに運用されていくかということで、やはり関係の人たちは非常に聞きたがっているだろうと思いますので、その点をただしておきたいと思いますから、お許しいただきたいと思います。 昨年の八月、水俣病の認定について、認定基準を緩和して、できるだけ多くの人たちが被害者救済の恩典にあずかれるようにという、大石長官の温情ある御決定がございました。あれ以来現地では、従来であれば視力障害であるとか、歩行困難であるとか、運動障害であるとか、いわゆる有機水銀中毒に随伴するいろいろな徴候、ハンターラッセル症候群といっているそうですが、そういうものがそろっておる人を患者として認定するということでございましたが、昨年の八月の環境庁通達以来は、そういう徴候が全部そろわぬでも、一つでもあれば、それが水俣湾の魚介類の摂取との関係が明らかであれば、患者として認定するようにという通牒が出まして、あれ以来、新たな患者がずいぶんたくさんいまなお認定されつつございます。この事態、新たな患者が認定されるという事態は、この法律が施行になりましたあともおそらく続くと思います。この法律が、十月一日から施行する、こうなっておりますが、十月一日以降も新たな患者の認定は続くものと、こう思います。 そこで、衆議院修正の部分でございますが、政府原案にはなかったわけですけれども、経過措置として、「改正後の水質汚濁防止法第四章の規定は、この法律の施行後に生ずる損害について適用する。」、こうなっております。「施行後に生ずる損害について適用する。」と、こうありますが、水俣病のような病気でございますから、いきなり突発的に出るということでなく、長い間、汚染された魚介類を摂取しておる間に、有機水銀が蓄積されてこういう症状が出てくる、損害が出てくると思います。実際、あの認定を見ておりましても、いつ発生したということは認定の中に入っておりませんので、やはり水俣病だということを認定した時期に損害が発生したものだと、こう思われます。そこで、そこの法律解釈ですね、これは「法律の施行後に生ずる損害」というのは……。
○国務大臣(大石武一君) ちょっと、衆議院の本会議にいま呼ばれました。よろしゅうございましょうか……。
○寺本広作君 それでは、大臣でないと答えられぬ部分は留保さしていただきたいと思いますので、そのつもりでお答えをいただきたいと思います。 そこで、この法律を運用する上で、「法律の施行後に生ずる損害」というのは、認定時期をさすものと理解していいかどうか、その点について伺いたい。
○衆議院法制局参事(川口頼好君) ただいまの御質問の部分は、具体的には非常に微妙な問題が多々あるかと考えております。 そこでこの問題は、裁判所はもちろんのこと、政府で一種の公定解釈というふうなものが、いずれいろんなケースについて具体化されることだと思うのでありまするが、実を申しますと、衆議院段階では、この修正に関連しただけのことを私が申しますと、そういう話が重点になりませんで、いま先生御指摘の部分があまり重点になりませんで、事修正に関する限りは、むしろ原因行為、つまり排出行為でございますね、工場からいろいろ有毒物質が排出される、その排出の時期、御承知のようにその部分に議論が集中いたしまして、そこで、たとえて申しますと病気の、医学的にはいろいろな原因がずっと前から発生しておったらしい、しかし、それがはっきりと医学的に認定されるという時期はこの法律施行後の事態であったというふうな事柄は、私と政府側と意見が食い違いましたからまたこれは迷惑をかける趣旨じゃございませんが、私の考え方では、そういう場合でも、「この法律の施行後に生ずる損害」というので読めるのじゃないかというふうな感じをもって立案をいたしました。しかしこの問題は、ここだけの話に限りますが、あらゆる法律で、実は労働者災害補償法とかその他の関係でも同様な問題がございまして、御参考までに申し上げますと、その部分について、ある程度の時期の判定につきましての基準みたいなものができているように伺っております。 私から、あまり確定的な意見を申し上げることは、控えさせていただきたいと思います。
○寺本広作君 非常にあいまいな御答弁をいただいたわけでございますが、患者本人にとっては、非常にこれは問題だと思うんですよ。ことしの十月一日までに認定を申請するか、十月一日を過ぎて認定するか。損害賠償を受けられるか受けられぬかということは、実は故意過失の立証ができるかどうかということにかかるわけですよ。故意過失が事業主側にあったということを立証するということは、非常に困難です。それで患者としては、必ずこれはその認定を受けた時期が損害の生じた時期だということになれば、いまから申請は見合わして、十月一日以降に持ち込むだろうと思うんですよ。そこいらのところをあいまいにしておくと、これは非常に立法者としての手落ちになると思う。だから解釈を明確にしておかぬと、この法律に賛成ができぬと思うんですがね、どうですか。
○衆議院法制局参事(川口頼好君) きょうたまたま衆議院の議員さんもいらっしゃいませんので、私の、法律家としての一定のそういう意味の考え方は持っておりますが、これは事柄が非延に微妙で、かつ重大でございますので、その部分は、申しわけありませんが、政府側のその問題についての解釈ということでお願いをいたしたい。と申しますのは、これが、衆議院での論議がその部分に突っ込んでなされておりまして、それに私が介入しておりましたら、お話し申し上げてもいいのでありますが、私がさっき申し上げたような事情でありまして、ちょっと遠慮を申し上げたほうがよろしいかと考えております。
○寺本広作君 委員長、政府側にという衆議院の方のお話しですから、政府側の答弁を……。
○政府委員(船後正道君) まず、公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法の認定と、この民事上の損害賠償の関係でございますが、これは原則といたしまして関係はございませんが、また、認定のときというものも、これはあくまでも行政上の特別措置法の運用の問題でございまして、民事上の損害発生のときと関係はございません。 それから次に、無過失責任の損害の発生の時期でございますが、これは私ども一般論といたしまして、被害者が立証すべきものと考えております。その損害が、法施行後に生ずるものであるかどうかという点につきましては、これは、損害は一瞬にして発生するわけのものではございませんので、御指摘の水俣病に限らず、一般の疾病による損害につきましても、あるいは物質的損害につきましても、損害の発生の時期というものはケース・バイ・ケースに決定されるべきものであると、かように考えております。
○寺本広作君 法改正後に生ずる損害、それは原告側において立証責任がある、こういうことでございます。しかし、自分の病気がいつ発生したかということは、医者がこれを決定するものでございまして、なかなか原告側が自分で立証するということは困難であろうと思います。いま企画調整局長から、公害による健康被害者の救済に関する法律と損害賠償は別だと、こういう答弁がありました。この点は非常にやはり問題だと思います。 昨年八月、環境庁の次官の通牒が出ましたとき、私はその点を指摘しておきました。水俣病に二種類あるのか。健康被害者の救済に関する水俣病と、損害賠償の対象たる水俣病と、水俣病に二種類あるのか。それは別個のものだという通牒に書いてあったことは、むしろ書かぬほうがよかったろうということをその際指摘しておきました。これはやはり、この水俣病の概念が二つあるということは、非常に問題だと思います。せっかく大石長官が、水俣病の定義を広げて認定された、しかし、それは損害賠償は受けられぬ、これでは、まさに仏つくって魂入れずというか、竜を描いて目玉を入れぬようなやり方じゃなかろうか、こう思います。 この法律の適用が受けられると、患者は非常に簡単に、事業主の故意過失を立証せずに損害賠償を受けられるから、おそらく水俣病の認定を受けた、この被害者救済法の認定を受けた者は、民事上の賠償を受けられるようになると思います。ところが、この法律を見ていると、その認定の時期もはっきりせぬ、発生の時期も、損害の生じた時期についてもはっきりせぬ。自分で立証せんならぬ。その上、ただし書きがついておりますが、ただし書きには、これは衆議院の修正で、被害者が立証をしなければならぬのが政府原案であったのに、衆議院の修正によると、事業主のほうに本法施行前の排出であることの立証責任が転換されております。その点は非常に被害者に有利のように見えますが、チッソのような会社で、現にもう製造をやめてしまっている、そして廃液も出ないように処分しておるということになると、本法施行前に廃液が出たものであるということを立証することは非常にたやすいことであって、患者としては、せっかく本法施行後に認定を受けたということで本法の保護を受けられるように見えますけれども、実際は実益はちっともない、こういうことになろうかと思います。 いまの水俣のように、製造をもうやめてしまった、廃液も処分してしまったというような場合には、本法施行後認定された患者でも、この法律の保護を受けられるものか、受けられぬものか。衆議院法制局はどういうふうに解釈しておられるか、ちょっとお伺いしたい。
○衆議院法制局参事(川口頼好君) 先ほど政府のほうから、行政的な認定という話と、それから裁判上、つまりこの法律施行後に生ずる損害の客観的な解釈がどうなるかという話とは、論理的には関連がないというふうな趣旨の御答弁がありましたが、私も同様にその辺は考えております。 したがいまして、やや突っ込み過ぎるかもしれませんが、病気というのは、まあ私ども医者じゃございませんけれども、何か、ある日まで何もなくて、ある日突如としてぽっと出てくるというふうなケースは、あまりないだろうと思うのでありまして、むしろ非常に長い経過を経て、医学的にいうと、ずっとからだの中にそういう将来の危険性をはらんでいて、それがある時期に、非常に明瞭な形でこれは病気だというふうな形になるのだろうと想像するわけでございまして、そういったデリケートな部分の認定につきましては、個々のケースによりまして、裁判官が、その「生ずる」というのは、なにも病源が、病気の本源的な源が将来生ずると機械的に解釈する必要はないのでありますから、御要望の向きに一〇〇%報いられるかどうかは申し上げられませんけれども、そのような弾力的な解釈でおそらく裁判所はしてくるであろうというふうに考えております。
○寺本広作君 だんだんと、衆議院の法制局の答弁と政府の環境庁の答弁が歩み寄ってきたように思います。水俣病患者であるという認定と、損害賠償ということは別個のものだ、水俣病の認定というのは公害による健康被害者救済法の認定であって、この民法の特例である損害賠償とは別個の問題だ、こういう答弁のようでございますが、その考え方は、昨年の八月の環境庁次官通牒以来一貫していると思います。しかし、現実には、なかなかそういうふうにはなっておらぬというのが、ほんとうだと思うのです。 というのは、損害賠償を求めるのには、現在では裁判所に訴え出るか、直接当事者と交渉するか、または中央公害審査委員会に持ち出すか、この三つの方法しかないと思います。当事者同士で交渉する場合には、故意過失の立証というのは、そう大きな要件にならぬで片づくと思います。裁判所に出れば、故意過失の立証、こういうものは絶対な要件になってくる。中央公害審査委員会に持ち出しても、おそらく故意過失ということを相当問われるのではないかと思います。これは厚生省の時代に厚生省に設けられました千種委員会での調停を見ておりましても、故意過失の立証がないまま調停しておられるので、裁判の場合より幾らか手ぬるいと言いますか、非常に不十分だという世間の非難を受けた。ああいう調停が出た原因は、故意過失の立証が非常に不十分であったということに原因があると思います。 水俣病でも、阿賀野川の事件でいいますと、これはすでに水俣で有機水銀が、無機水銀が有機水銀に変わり、その有機水銀が魚介類を経て人間に入ってくる、その関連、メカニズムが立証されたあとでありますから、裁判所が、事業主にそういうことのないように注意する義務がある、注意義務の推定を裁判所がやって、そして事業主の過失責任が問われて過失賠償がきまったと思うのです。ところが、そのような科学的な事実が立証される前の水俣病、それがいま問題になっている水俣病だと思います。そういう水俣病について、裁判所がそういう事業主の過失責任を推定したという事実がありません。前例がないわけです。この法律で、その病気の発生時期のことも書かなければならぬし、それから会社側にとっては、この法律施行前に製造はやめたのだというようなことで、いとも反証が楽である。裁判所に持ち出すのには、裁判所では、いま申しましたとおり無機水銀が有機水銀に変わり、有機水銀が魚介類のからだを通して人間に入って水俣病が起こるという、そういうメカニズム発見前の事例として、裁判所も事業主の過失責任を推定しにくいということになりますと、どうしてもやはり水俣病患者というのは、どう救っても助からぬなという感じがいたします。そのことをおそらく患者の人たちも知っておられるのじゃなかろうかと思います。そこで直接交渉に持ち込んで、環境庁長官と熊本県知事にあっせんをしてくれと頼んでおられるのだろうと思います。 さらに、いま企画調整局長御答弁のように、水俣病の、健康被害者を救済するための水俣病であって、賠償は別だぞと、こういう通牒を出されましたけれども、事実としては、結果としてはやはり環境庁長官はその調停を引き受けざるを得ないようになっている。というのは、やはり世間から見ておりますと、環境庁長官は大いに認定基準を緩和して、温情をかけられた、仏もつくられた、しかし魂は入っておらぬじゃないかという、国民感情といいますか、そういうものがあると思うのです。そこで、どうしてもあれは行政機関として、環境庁長官は自分であっせんを引き受けざるを得ないような結果になったのではないかと思います。ただ、これは行政と司法は別だ、損害賠償は司法だから、行政の関知せざるところであると言って逃げられぬようになっているのが、現在の環境庁の立場ではないかと思います。そこいらのところを、大臣の心境はどうかということを聞こうと思ったわけですけれども、おいでになりませんので、これはあとに残させていただきます。 そこで、そのいまの問題と関連して、この衆議院修正の第三項、「(検討)」というサブタイトルのついたところがございます。これで「政府は、公害に係る被害者の救済に関し、その損害賠償を保障する制度について検討を加え、その結果に基づき、すみやかに、必要な措置を講ずるものとする。」と、こう書いてある。本来ならこれは附帯決議程度のものじゃないかと思いますが、やはり事柄が非常に重要だというので、政府にこういうふうに義務づけられたものだと思います。 その中で、これは単純に読むと、その損害賠償を保障する制度というのは、おそらく損害賠償の責任は確定した、しかし事業主に支払う能力はない、そういう場合、支払いの方法を確保するための制度を考えろと、こういうふうに読めるわけですけれども、立法府が政府にこういうことを義務づけした。政府は損害賠償を保障する制度をつくって、すみやかに必要な措置を講じろと、こういうわけですから、その責任が確定したというとにかく救いのあるものでなく、公害の原点に立つと言われる水俣病のように、非常にむずかしい、しかも救いのないものをこの「(検討)」の損害賠償を保障するという制度、その中に入れて、政府がすみやかに必要な措置を講ずる用意があるかどうか、この文章をそういうふうに読めぬかということを、ひとつお尋ねしておきたいと思います。
○衆議院法制局参事(川口頼好君) この問題は、特に衆議院でいま先生が御質問になったようなことを論議されたいきさつはないように記憶いたしまするが、私の法制局としての感じから申しますと、それは全然関係がない。つまり、具体的な損害賠償を無過失でやれるかどうかという経過規定の問題と、それからいま仰せの第三項のこういう一般制度の話とは全く無関係で、かりに、水俣病のすでに発生した患者について、もうこの新法の無過失の損害賠償が認められず、依然として過失責任の立証が要求されるというふうな解釈があったとしましても、この三項の話は全然別に、過去のものも何もかも入れて検討していいものだというふうに考えております。
○政府委員(船後正道君) 衆議院の修正によります附則三項の規定は、ただいま寺本先生が御指摘のような趣旨で設けられたものと解しております。 この損害賠償を保障する制度でございますが、私どもといたしましては、個々の賠償債務というものの存在を前提といたしましてその履行を確保する制度のみならず、広く一般的な、保険あるいは基金と言われておりますような損害賠償を確保する制度も含む、このように考え、今後検討いたしたいと思っております。なお、この損害賠償を保障する制度ということにつきまして、過去の立法例によりますれば、たとえば自動車損害賠償につきましては、損害賠償を保障するというような表現で、加害者不明の場合の損害賠償をいかに処理するかということまで取り扱っております。
○寺本広作君 船後企画調整局長の御答弁で、かろうじてこれは救いの余地が出てきたなという感じがいたします。この衆議院修正の規定による「施行後に生ずる」という問題が認定問題と関係ないとか、挙証責任の転換でも水俣病は助からぬと、助からぬことばかりいままで答弁されておったわけですが、第三項の、この「(検討)」というサブタイトルの損害賠償を保障する制度というのは、賠償責任が確定したものの支払い能力の担保ということだけでなく、もっと広範に考えてよろしいという話でございます。この点は非常にありがたい制度だと、規定だと思います。 大石長官も、いまおられませんけれども、ストックホルムで、ともかく水俣病、イタイイタイ病をああいう事態まで立ち至らせたのは、これは政府の責任だということを世界に向かって言われたわけですから、病気の認定はしてあげた、しかし損害賠償には手がありませんというようなことでは、これは環境庁長官が世界に向かって言われたことが、から手形になる、こう思います。そこで、衆議院修正の二項で救えぬとすると、三項でぜひそういう人たちを救い上げるように政府で十分研究されて、すみやかに必要な措置を講じていただくようにお願いして、私の質問を終わらせていただきます。 なお、大臣にお尋ねしたい部分は留保いたします。
○内田善利君 先日の委員会で、私はこの法律案の審議に基づいて、長崎県の対馬のカドミウム汚染のことについてお聞きしたわけですが、その実情をまずお聞きしたいと思います。
○説明員(川田則雄君) お答えいたします。 対馬につきましては、農林省は二つの調査をやっております。一つは、厚生省、通産省と共同いたしまして、カドミウム汚染の概況を調べる調査でございます。これは四十五年にやりましたが、四十六年の三月三十一日付で地方農政局から農林省がその結果を集めて、そうしてその結果をいろいろ検討した結果、四十六年六月九日に調査結果を公表いたしております。そしてこの公表の際には、関係する県の東京事務所長を農林省に招集してその内容を説明すると同時に、県に通報いたしております。その結果は、玄米が一PPM以上のカドミウムが存在する圃場は、九地点調査いたしたうち三点でございます。それから同年、その概況を把握するという調査と同時に、詳細な調査を実施いたしました。この結果は、四十五年の十二月と四十六年の二月、二回にわたり長崎県が公表いたしております。前の調査は、農林省が公表いたしましたのは、委託事業で長崎県にお願いしたことから、農林省が公表いたしまして、長崎県に連絡したという経緯をとっております。また、あとの調査は長崎県が発表したということにつきましては、これは農林省の補助事業でございまして、事業主体が長崎県であるということから、長崎県で発表いたしております。 そういう結果に基づきまして、農林省といたしましては長崎県と協議いたしまして、まず最初の措置は、米の交換の措置でございます。これは四十五年度産米三・三トンについて、四十六年一月二十九日に交換いたしております。それから次に、配給の措置を講じております。これは四十六年四月から十月にかけまして、約六トンの米を配給をいたしております。そのほか、カドミウムの汚染の改良というものをどういうぐあいにやったらいいかというようなこと、これは将来、そこの改良をするという場合の基準を設定するということに関係いたします。それにつきまして、対策基準調査という試験圃を、その地区に約五カ所設けております。そのほか、長崎県はその地方の米に対するカドミウムの抑制というようなことで、四十六年に事業費を約百七十一万七千円で補助し、また四十七年には、三百十六万八千円で長崎県は補助をいたしております。その他、県としては健康調査を行ない、そういう一連の調査結果から、県としては対策地域の指定、特別地域の指定を行なうというようなことを考えております。 現在までやった調査、それに基づく措置は以上のとおりでございます。
○委員長(加藤シヅエ君) 寺本委員のさっきの保留ですが、大石長官から御答弁を……。
○国務大臣(大石武一君) 要旨だけちょっとおっしゃっていただきたいと思います。
○寺本広作君 実は、昨年の八月、水俣病認定の行政不服審査に当たって、長官が認定基準を緩和して、患者を救えるようにするという通牒をお出しくださった。その際私は、賠償問題が必ずついてくる、それで、損害賠償問題は別だとあの通牒に書かぬほうがよかったということを申し上げておきました。その後、認定を受けた患者の皆さんが、被害者救済の法律の保護を受けられるだけでなく、賠償を求めるという方法に出ておられます。しかも賠償を求めるのに、民事訴訟にいっても、事業主の故意過失を立証することが非常にむずかしい、中央公害審査委員会に聞いても、やはり故意過失というものがある程度立証されないと、なかなかいい調停の結果が出ない。そこで自主交渉ということで、長官と熊本県知事のあっせんということで、長官のところに持ち込まれてたいへん御苦労をかけていると思います。 しかし、せっかく長官がああやって認定基準を広げてやるという措置をとられて、これは損害賠償は別だということで突っ放されたのでは、仏をつくって魂が入らぬということ、竜を描いて目玉が入っておらぬような感じがいたします。そういうことで長官は引き受けてあっせんをおやりくださっているものと、こう思うわけですが、そこでこの法律をそういう目で見てみますと、この法律施行後新たに生ずる損害についてこれを適用すると、こう書いてある。それから水俣病は、いま、長官がおきめいただいた新たな基準で、新たな患者がどんどん出よるわけです。これは、十月一日以降もどんどんそういう患者が出てくるだろうと思う。そうすると、その患者の病気の発生の時点というのは、これはなかなかわからぬです。だから、認定した時点がこの法律の施行後生じた損害になるか。そうすると、いま認定申請しておる者か、十月一日以降に延ばして認定を受けるようになるのです。 ところが、法制局の答弁も局長さんの答弁も、やはり民事と行政は別だ、損害賠償と行政は別だから、その行政認定が十月一日以降になっても、それで新たな、その時点で損害が生じたということにはならぬという、これは非常にむごい答弁だと思います。しかし法律解釈は、そういうことのようです。個々のケースで、いつ病気が発生したということを立証しなければならぬというお話でした。 そこで第二項の、法律施行前に有毒物を出した、原因物質を出したということを事業主が立証したら、これはやっぱりこの法律の保護は受けられぬというふうに、ただし書きでなっておるわけです。ところが、水俣のようにもう製造はやめてしまった、廃液も処分してしまったという事業主にとって、この後段の立証というのは非常に簡単だと思うんです。したがって、それでも患者は助からぬわけです。患者が助かる方法がないわけですね。 そこで第三項の「(検討)」というところの解釈をいま伺ったところです。この第三項によると、「政府は、公害に係る被害者の救済に関し、その損害賠償を保障する制度について検討を加え、その結果に基づき、すみやかに、必要な措置を講ずるものとする。」。これも法制局の答弁は非常に渋いものでしたけれども、企画調整局長さんの答弁が、非常に温情のある答弁でございました。法制局の答弁は、損害賠償を保障する制度は、損害賠償の責任が確定して、支払い能力がない場合の保障をこれは意味するような御答弁でした。しかし企画調整局長さんの答弁は、それだけに限らぬ、損害賠償の責任が確定しない場合でも救済できるような制度を検討します、そしてそのような措置をとりますと、こういうことでした。 そこで、大石長官はストックホルムで、とにかく水俣病、イタイイタイ病をああいう事態までほうっておいたのは政府の責任だ——これは私は政府だけの責任ではなく、地方自治体の責任でもあると、こう痛感するものですからこういうことを質問するわけですが、しかし大石長官は、ああいうふうに世界に向かって言ってこられたわけですから、一項、二項の文言、ただし書き、これはいずれも助からぬ、公害の原点に立つといわれる水俣病患者が、今度の無過失損害賠償責任法では助からぬ、それで、第三項で救っていただけるというなら非常にありがたい。唯一の救いだとこれは思うわけです。それでいま船後局長が、第三項の、政府側が検討してすみやかに必要な措置を講ずるものの中には、いまの事業主の故意過失の立証ができなくて救済の欠くる、そういう患者の救済を含めて検討する、と。その御方針を、まず大臣から確認していただければありがたいのです。
○国務大臣(大石武一君) 私は去年の八月に、水俣病患者の疑いのある者も救済したほうがよろしいということに行政的にきめたわけでございますが、これは、いまでも私は正しいと考えております。 「疑い」というのは、世間でいう一般の、俗に使う疑いとは違いまして、医学的に「疑い」というのは、まず大体水俣病であろう、ただ症状が全部出そろっておらないから多少の問題はあるであろうけれども、ということで、まず七、八分どおりはそういうことを考えなければならぬということが大体「疑い」でございます。そういう意味でやはり私は、一人でも水俣病の疑いがあって放置される者があってはならないと考えまして、あのような拡大解釈的な判断をしたわけでございますが、そのことによって、いままで救済の手もなかった患者の一部が、ある程度救い出されてきたことは非常にけっこうだと思います。私は、そういうものに対して補償がなされるべきだと思います、生活その他の補償につきましては。ただ、これはいまのところは裁判で決定する以外にはないので、そのほうにおまかせしておりますけれども、行政的には、あのような拡大解釈をしたことはいまでも正しいと考えております。 ただ、その結果は、お話しのように自主交渉の仲立ちをしたり、いろいろめんどうくさいこともありますけれども、これはやむを得ないことと思います。だれかがああいうめんどうを見てあげなければなりません。だれもめんどうを見てくれる者がなければ、私どもでもよかろうという気持ちからやったわけでございますが、別に自分の権限とかいうことを何も考えないで、そういう努力をいたしておるわけでございます。 この法律案によって患者の補償がきまらないじゃないかというお考えのようでございますが、私は何らかの形で、この法律案が役に立つかどうかはわかりませんが、必ず水俣病の患者に対しては補償がなされるべきだと、なされると私は確信をいたしております。その補償の関係につきましては、私はあまり専門家でありませんので、おそらく船後企画調整局長がお答えしたことだと思いますが、その答弁が環境庁の考え方だとお考えいただきまして、その辺でひとつ御納得いただきたいと思う次第でございます。
○政府委員(船後正道君) 私の先ほどの説明が、若干舌足らずのように思いますので補足させていただきますが、私どもは、この衆議院修正による附則の三項と二項とは、直接関係があるとは考えておりません。先ほど損害賠償に関する制度で、個々の民事上の債務の履行を担保する制度にとどまらないで、広く保険、基金というような制度まで考えたいと申したまででございまして、決して損害の発生がどうであるかということは申しておりません。そういった広い点につきましては、今後検討の結果、はたして制度に乗るかどうかというような点から検討を進めていくことになるかと思います。
○寺本広作君 船後局長の答弁が少し後退したように思いますな、先ほどの答弁よりも。大石長官、やはりこの公害被害者の、病気の救済と損害賠償は別だというお考えが非常に強いのじゃなかろうかと思います。そういうことで、水俣病として認定は受けたが、損害賠償は受けられぬという事態が考えられる、その場合のことを考えていろいろ答弁が、こう弱くなったり強くなったりするのじゃなかろうかと思います。 私はいままでの裁判のあれを見ておりまして、阿賀野川の裁判というのは、これは事業主の過失を裁判所が推定してくれた。というのは、阿賀野川事件のときは、もう水俣のあの有機水銀が工場から出て、魚介類のからだを通って、人間にそれがとり入れられてくるということが立証されたあとです。会社は無機を使っているけれども、製造工程で無機が有機に変わって、有機が魚介類に入って、人体に蓄積されて水俣病になるということが立証されたあとですから、昭和電工の責任者は当然そういう排出物が出ないようにする義務があった。その義務を怠ったから過失があるということで、あれは賠償金が取れたと思うんです。 水俣病の場合には、そういう病気発生のメカニズムが立証される前のことですから、非常に裁判に持ち込んでも賠償の責任が立証しにくいと思います。それで、この法律で救わぬなら、もうほかに救う方法がないわけですよ。そこで、ほかに故意過失を立証する方法がないものだから、長官のところに持ち込んで何とかしてくださいと言っているのは、もう裁判所に行ってもいかぬ、中央公害審査委員会に行っても方法がないというので、長官のところにお願いに来ていると思うんです。水俣病の認定は受けた、しかし損害賠償は取れぬということは、これは患者が納得せぬだけでなく、国民感情としても、水俣病として認定は受けたけれども賠償は野放しだということではおさまらぬと思うんですよ。そういう追い詰められた気持ちで長官のところに、何とか調停してくださいと言ってお願いしているのが、いまのこの患者の気持ちだと思います。ごめんどうでも長官がそれをとにかく助けてやろうという気持ちでやってくださっているのは、そういう気持ちからじゃないだろうかと思います。 そうしてみると、やはりこの三項の解釈は、損害賠償の責任の確定したものを保障するというだけでなく、やはり水俣病として認定を受け、損害を受けているという、人間の責任関係を抜きにして保護する方法を考えていただけぬかと、そういうふうに三項を読めぬかということをお願いしているのですが、船後調整局長さんの答弁は、先ほどの答弁よりも、いま訂正されたのは少しまた狭くなってきたなという感じがいたします。大臣のお心持ちを伺って、この質問を締めくくりたいと思います。
○国務大臣(大石武一君) 私は、なるほど裁判と行政上の趣旨とは別のものと考えております。しかし私は、行政措置をしたから裁判で補償されないと考えておるということはございません。いま裁判の係争中でございますから、その結果についてはとやかく申し上げるわけにまいりませんけれども、必ず何らかの補償がなされるものと確信いたしております。その証拠に、会社では現に一部分に対しては、和解とかなんとかという形でありますけれども、生活の補償をいたしております。これは、明らかに会社としては責任を認めておるものと考えております。また、現に私が仲に立ちまして、沢田知事と一緒に仲に立ちまして、直接交渉の様子を見ておりますが、明らかに会社でも、その自分の責任は認めております。そういうことですから、私は何らかの補償は患者に対して、和解の形であるか何であるか、あるいは裁判の結果とか、いろんなことによりましょうが、何らかの必ず補償はなされるものと、そう確信いたしておるわけでございます。なお、阿賀野川があのような結末になりましたからには、水俣も当然同じようなケースになると私は考えております。そういう意味で私は補償がなされるものと、そういうことを確信いたしておるわけでございます。
○内田善利君 先ほど答弁いただいたわけですけれども、これはどういう調査をやったかという答弁であって、私の質問しているのは、なぜ本人たちに、一・〇PPM以上の米ですよ、食べてはいけませんよという知らせをしなかったのかということを質問しているわけであって、どういう調査がなされたかということを質問しているわけじゃないのですね。農地局による特殊調査を県までは公表したということですけれども、そのあとはどうなっても農林省はノータッチであるということなのか。そのあとはだれが責任を持って、農家の方々に、こうして調査の結果汚染されておりますよ、来年からはその米を凍結するとか、あるいは来年からはどうするとか、そういう指導はなされなかったのか、その辺をお聞きしているわけです。
○説明員(川田則雄君) ただいまの内田先生の御質問でございますが、三戸の農家の方が、前段の農地局の調査の結果一PPM以上の米が出た。そのことにつきましては、同時にやっているほかの調査もございますし、全体的には、土壤のサンプリングをとるときには、農家の了解のもとにサンプリングをいたしておるわけでございまして、一PPM以上の米が出るということはこれは非常に重要なことでありまして、その結果が末端の農家に知らされなかったということは、非常に申し訳ないことだと。ただここで、私たちが長崎県で調べたところによりますと、三戸の農家のうちの二戸の農家につきましては、四十六年に休耕いたし、またもう一つの農家は、四十六年に転用いたしております。ただ三番目の農家で、これは前原町というところでございますが、この方のところに伝達がいかなかったのかどうか、つくっているという事実があります。 で、農林省としましては、食糧事務所が現在、米の仕分けをいたしまして分析をいたしておりますが、この二戸の農家は知っておるのに、あとの一戸の農家が知らなかったということについてのいきさつは、なかなかさだかではないのでございますが、当時といたしましては、調査その他について、県・市町村十分連絡の上に行なわれたことでありますし、私たちは、県のほうからも報告を受けていることについては、先ほど申し上げましたように、同地区で米について交換あるいは配給の措置をとっておる。また同じく同地区で、長崎県が土壤改良についての補助金を出しておる。そういうように、そこに全般的な対策を次々と県としても打っていっておられる。そういう中で、この一軒の農家の方については知らされなくて、つくっていた。その間の事情、いろいろ複雑なものがあるのだと思いますけれども、こういう結果が出たということは申し訳ないことだと思っております。
○内田善利君 それは県の報告だと思いますけれども、実地調査した結果は、四軒のうち三軒は、特別地域にも対策地域にも指定されていないのです。指定されていないので、ことしになって四十七年産米をつくらないようにしてほしいということを言ってきたから、びっくりしてこういう問題が起きたんですね。 おっしゃるとおり、一軒は、昨年、対策地域に指定されたわけですが、その一軒は、全部のたんぼが対策地域になったのじゃなくて、四十六年度産を試験的に、試験田として対策地域に指定になったわけです。その試験田が今度一・七二PPMが出た。そういう実情で、この家はことしはほかのたんぼもつくらないでほしいと、四十六年に対策地域にして試験田を調査した結果、一・七二PPM出たから、ほかのたんぼも、ことしは、すなわち四十七年産米はつくらないでほしいと、こう言ってきたわけです。ほかの三軒は全部、特別地域はもちろんのこと、対策地域にも指定されてない。そういうことでびっくりしたわけなんで、もう少し農林省はがっちりした調査をやってもらいたいと思うのですね。もしこれが事実でなければ、本人たちがおっしゃったことなんですから、どこかに食い違いがあるかと思います。
○説明員(川田則雄君) 私たちのほうも長崎県を通じて調べておりますが、それによりますと、その一つの、三軒目の前原町の農家の方については県の連絡が、いろいろないきさつがあったかと思いますが、とにかく米をつくっている。それからもう一つは、いま先生がお話になりましたように、米をつくっている農家が、対策地域、特別地域の指定の際に入らなかったというようないきさつがあることも事実でございます。 これについて私たちもよく調べてみましたら、県としては、農地局でやった三軒の調査と、あと農政局がやった細密調査ですね、その二つの結果について対策地域を指定する作業を進めたわけでございますが、一軒の前原町の圃場は、その圃場では一・三三PPMという数字が出ておりまして、それに、その周辺がこれに比べてかなり低い。そういうことから、いろいろと分析上のサンプリングの問題もあるのではないか、そういうことから、これは一応取り除いておいて、さらにことしの秋に分析して、その結果やはり一PPM以上の米が生産されるということであれば、追加指定をしたいと県は申しております。 ただここで、私たちは土壤汚染防止法の施行に基づいて次官通達を出しておりますが、それによりますと、過去において一度でも一PPMの米が生産されたところは、地域に指定するようにというような次官通達を出しております。その後、その措置は、地域指定については環境庁のほうに移っておりますが、私たちのほうといたしましては、長崎県とも打ち合わせをいたしておりまして、そして特別地域に指定するように、また環境庁のほうにも、これは特別地域に入れていただいたほうがいいのじゃないか、そういうような連絡をいたしております。そういうようなことでございますので、近く、長崎県のほうともよく相談いたしておりますから、結論が出て、特別地域の中に指定されることになると思います。
○内田善利君 対馬は要観察地域に、もう一昨々年ですか、いち早く要観察地域に指定されているわけですね。そして、特に向こうは土壤汚染ということが非常に問題になっているわけですが、四十五年産米をこうして調査した結果、裏河内、前原町が一・〇以上の米が出た。私は、特別地域に指定するとか対策地域に指定するとか、そんなことは当然ですけれども、やっぱり本人たちに、この米を食べちゃいけませんよ、このたんぼは一・〇PPM以上ありますよと、当然私は報告すべきであると、こう思うのですけれども、これがなされていないわけです。地域指定の問題も本人たちに伝えなかったということが問題だと思うのですね。そして四十七年産米をつくる段階になって、田植えをする段階になって、つくらないでほしいと、県の対馬支庁からやってきて突然つくらないでほしいと言ってきた。農家の方々は、対策地域あるいは特別地域に指定されておるならば、当然了承されたと思うのですけれども、そういうことが全然ない上に、突然つくってはいけないと、こういうことですから驚いたわけですけれども、その辺はどうなんですか。農地局の調査のほうは、県に東京事務所長を通して連絡したからそれでいいのか、あるいは県がこのことを本人たちに知らせなかったのか、この辺の事実はどうなんですか。
○説明員(川田則雄君) これは、実体的に調査した結果を、その調査をされた農家が知るということは一番重要なことであり、また知らせなければいけないことだと思っております。ただ、先ほどから申し上げておりますが、当時の状況として、調査した結果はすべて公表するというようなことで、私たちも長崎県も十分留意して取り進めておりましたし、また、その間に同じ地区で米の交換、廃棄その他の措置も講じておりますし、また濃度の高い汚染田については、土壤改良資材を県が補助するというようなことを同地区についてやっている。まあそういうことから見て、私は当然そういう措置はとっておったのだろうと思うのですけれども、何らかの行き違いがあったのか、そこのところは、知らされていなかったとすれば、何らかの手落ちまたは行き違いがあったのではないか、そういうように考えます。
○内田善利君 私は、その事実は非常に大事な問題だと思いますね。というのは、この四軒の農家の、一軒の奥さんが関節が痛み出した、足が痛いと言っている。近所の方々は、それはイタイイタイ病じゃないかと言っておられるということなんですから、これは非常に大きな私は行政上のミスじゃないかと、そのように思うわけですね。農地局の調査、農政局の調査が同時に行なわれているわけですけれども、調査されることはもう非常にありがたいことだと思いますけれども、農政局の調査のほうも、二・五ヘクタール一点のサンプリングのはずなんですが、これが一筆ごとに調査されているわけですね。これは農林省の指導なんですか。
○説明員(川田則雄君) これは当時といたしまして、農林省は、大体土壤の概況をつかむには従来から手法がございまして、これによりますと、大体二・五ないし二・二五ヘクタールに一点というのは、いままでの調査よりはるかに密度が高い調査でございまして、実態をつかむという調査では、私たちはこれで十分でないかと考えております。ただ、そのときに、実際にその結果、一PPM以上の米が十一点、八・三二ヘクタール出てまいりました。それで、そのときに農家の方々が、この十一点については非常に詳細な調査をしてほしい、そういうようなことから、その中を細分いたしまして詳細な調査をいたしました。
○内田善利君 ですから、一筆ごとに調査したために、かえって混乱を生じたのじゃないか。このたんぼは一・〇以上だった、その周辺、隣は一・〇以下だったというようなことで、こっちは来年もつくってよろしい、ところがこっちのほうは一・〇以上だからつくってはいけない。そのため、休耕したために草がはえ、害虫が多くなる。その隣の一・〇以下のたんぼまで非常に収穫が減ってきたというようなことで、休耕しているたんぼが飛び飛びにできたという現象が起こっておると思いますが、そういったことで非常に混乱になり、また、こういった農政局の調査、農地局の調査等で対策地域、汚染地域、特別地域が指定されるということになって、つい三軒の家が指定から漏れたのじゃないかというようなことも考えられるわけですね。こういったサンプリングの問題、それから地域指定の問題など、土壤汚染防止法によるサンプリングが行なわれてないためにこのような混乱も起こっておると、このように思うんですが、この点はいかがですか。
○説明員(川田則雄君) 調査というのは、一筆ごとに全部調査すると言えばみな安心いたすわけでございますが、やはり、ある一点が代表するという幅をもって、点数は、いろいろ時間的な問題その他もありますから、代表制の服し得る範囲内で密度をきめるのがいいのではないかと、そういうぐあいに思っております。そういう関係から、土壤汚染防止法では、二・五ヘクタールに一点ごと採取でやるというようなやり方をやりました。ただ、この四十五年度の調査の場合には、農林省のほうも障害性特別調査というようなことで初めて手がけた、そういうような経緯がございまして、一応、推定としては二・五ヘクタール一点でいいのではないか、そういうような調査でやったのでございますが、農家のほうから、個々一筆一筆の全部を具体的に調べてほしいというようなことから、県が一筆調査をやったというような結果になっております。 それで、先生がおっしゃったように、調査は密度をこまかくすればするほど、いろいろまだらになるということがございます。そういうようなことで、密度というのは、やはりある実態を把握するのには適当な密度があるのではないか、そういうぐあいに考えております。
○内田善利君 要観察地域でありますから、足が痛むという、四十五年度から毎日一・〇PPM以上の米を、一年半食べてきた主婦の健康調査ですね、特別一人やるというわけにはいかないと思うんですが、要観察地域の健康調査の中にこの御婦人も入れて、みんな一緒に健康調査をしていただきたいと、このように思いますが、この点は環境庁、いかがでしょう。
○政府委員(船後正道君) ただいま問題になっております、この対馬の厳原地域でございますが、これはかねてからカドミウムの環境汚染の要観察地域に指定されておりまして、暫定対策要領に基づく健康診断が実施されているわけでございます。幸い、いままでの健康調査では、イタイイタイ病あるいはカドミウム中毒を思わせるようなものは発見されておりませんが、四十七年度につきましては近く実施する予定になっておりますので、先生御指摘のいろんな事情というものを十分地元にも伝えまして、遺憾なきを期したいと考えております。
○内田善利君 たくさん、何回も何回も健康調査が行なわれてきましたけれども、まだ五名の方、いまから調査をしなきゃならない方々がいらっしゃるわけですから、全然ないからといって、私はあの土地は安心ならないと思うんですね。というのは、もう土壤そのもの、環境そのものが非常に重金属におかされておりますので、ひとつ健康調査はまだ続けていただきたいと、このように希望するわけです。 また、農林省にお聞きしますけれども、私は三、四年前から、この土壤汚染による対策を講じていただきたいと、土地改良事業、客土事業、そういったことをお願いしてきたわけですが、私の見た目では、三年前と全然変わってない、このように思うんですけれども、いまでも汚染対策計画がどうなっているのかさっぱりわからない状況でありますが、これは県がやるんだと思いますが、この辺はどのようになっておりますか。
○説明員(川田則雄君) 現在環境庁と打ち合わせいたしておって、すでに対策地域の指定が行なわれて対策計画が立てられておるところは、磐梯、それから安中というように聞いております。それから長崎が、いま対策地域の指定を行なっておるというのが実態でございます。
○内田善利君 この汚染対策計画が完了して稲つくりが始まると思いますが、それまでの休耕の間の補償、これはどのようになりますか。
○説明員(川田則雄君) 現在のところ、休耕につきましては、対策地域に指定される前は、生産調整によって対処するようにいたしております。 それから長崎県の場合でございますが、長崎県は、県が休耕に対する補償を行なっております。
○内田善利君 長崎県の場合はことし限りなんですね。あとは全然何らの確認もされてないわけですが、非常に農家の方々はその点について不安に思っているわけですけれども、こういった補償ですね、休耕中の補償については、ひとつあの生産調整の休耕同様、補償をしていただきたいと、このように思いますが、この点はいかがですか。
○説明員(川田則雄君) この点は、一次的には、加害者のあるところは加害者との話し合いによるというようなことになるのではないかと。現在一般的に、そこの土地の休耕あるいは転作等による収入減というものの補償を一般的にするというような措置は、まだ考えておりません。
○内田善利君 環境庁にお聞きしますけれども、この一軒の方が、四十五年産米、一・〇PPM以上のお米を、汚染されているということを知らされずに、今日まで約一年半食べてきたわけですが、関節も痛むというわけですけれども、万一この方がイタイイタイ病ということになれば、この点の補償、これはどのようになりますか。
○国務大臣(大石武一君) これは先のことですからまだわかりませんし、はたしてなるか、ならないか、これは現実には私はならないことを望んでおりますが、わからないことでありますから、どうとも言えませんが、かりに、この一年間にそのような米を食べたことによって、もしそのような将来の障害が起こったとするならば、当然何らかの補償に対する措置は、だれかがとらなければならないと、私はそう考えております。
○内田善利君 それから、この汚染米がまだ各農家に残っているわけですが、これに対する措置はどのようにされましたか。
○説明員(川田則雄君) 先ほど申し上げましたように、前原町の旗原さんというところに十八俵の米が残っております。そのうち、汚染のおそれのある米が八俵で、安全な米が十俵というように報告を受けております。現在その仕分けをして分析をしておりますので、その分析の結果によって、交換とか、廃棄の補償を講じてまいりたいと思います。
○内田善利君 その分析結果はいつごろ出ますか。そして、それまでの間はどうしますか。
○説明員(川田則雄君) 県としましては、先ほど申し上げましたように、十八俵の米があって、八俵汚染されているおそれがある。あと十俵は安全でございますから、その間、その米を食するようにという指導をいたしておるという報告を受けております。
○内田善利君 対馬のカドミウム汚染問題については何回もお聞きしたわけですが、特に米の汚染、土壤の汚染については、この地域特有の環境汚染が非常にひどいので、この土壤汚染の調査は当然のことながら、土地改良ですね、この問題には特に力を入れていただいて、早く現地の方々が安心できるようにしていただきたいと、このように思うわけです。健康被害はいまのところありませんので非常にいいと思っているわけですけれども、油断はならないと、このように思うわけですね。というのは、先ほど申しますように、これは古来からの話になりますけれども、土壤が非常に汚染されているということですから、汚染対策計画については、早く計画を立てていただいて実施していただきたいと、このように思うわけですね。三年の間、対策はゼロという状況ですので、早急に計画を立てて、実施していただきたいと、このように思います。このことについてお伺いして、私の質問を終わります。
○説明員(川田則雄君) 御承知のように、農地局の公害防止対策事業ということで予算化をすでにはかっております。そういうことでございますから、県が対策地域を指定して、対策計画を立て、計画の承認が行なわれた場合には、その計画にのっとって、そういう措置を講じてまいりたいと考えております。
○栗林卓司君 無過失賠償責任の問題、いろいろこれまで御苦労されてこの法案にまとまってきたと思うのですけれども、これまで出た問題かもしれませんが、二、三の問題について、この法案の中身がどういう内容を持っているのだろうかということをお伺いしたいと思います。大気汚染防止法との関係、水質汚濁防止法との関係、これはたいへんそれぞれ出ておりますので、大気汚染防止法に例をとってお伺いしたいと思います。 そこで、二十五条の二項を拝見しますと、新たに健康被害物質が出た場合には、それ以前は適用しないという趣旨の条項がございます。そこでお伺いしたいのは、新たに健康被害物質になる場合というのは、どういう場合なんだろうか。おそらく想像しますと、健康被害が発生したことによって、これは何か対策を打たなければいけないという、新しい健康被害物質の発見の場合と、それから、新しい事業所あるいは新しい設備を開設するときに、そこから新しい健康被害物質が出ることが、実は事前にわかった。おそらくこの二つの場合ではないかという気がいたします。そこで、かりにその新しい事業所とか設備とかは、従来にない新しい健康被害物質がわかった場合に、当然国としてはこれは許可するのだろうか。許可しないとすると、実はこの条項は関係がない。また、関係がないほうがいいのかしれませんけれども、その場合に許可をするか、あるいは条件を付して、その場合でも許可をしていくということになるのだろうか。まず、この点はいかがでしょうか。
○政府委員(船後正道君) 大気汚染防止法の、この新しい二十五条の二項でいっております「健康被害物質」は、この一項にございますとおり「ばい煙、特定物質又は粉じん」でございまして、「生産環境のみに係る被害を生ずるおそれがある」ものは除く、こういうものでございます。ところで、この「ばい煙、特定物質又は粉じん」、これはいずれもこの法律の第二条あるいは第十七条の規定によりまして、内容は政令でもって指定されることになっております。これは、いずれも生活環境または人の健康に被害を及ぼすおそれがあるという見地でもって、規制の対象とされている物質でございますから、したがいまして、そういう規制物質が追加されますと、自動的にこの無過失の対象になり、健康被害物質になる、こういう仕組みになっております。 どういう場合に、それでは規制物質が追加されるかということの問題でございますが、御指摘のように、現在全く存在しない新しい化学物質というようなもの、たとえばPCBのようなものでございますが、こういったものが将来あらわれてくるといったような場合にも指定が考えられます。それから、現在わかっておりますけれども、大気を汚染するというような形態でもってはあまり排出されていないというものが、今後、需要あるいは生産面の変革によりまして、大いに大気汚染のおそれがあるといったような場合には、その面に着目して、規制されることになると思います。いずれにいたしましても、そういうおそれがあるという段階では、われわれといたしましては、今後、時機を失することなく、そういう指定をいたしたいと考えております。
○国務大臣(大石武一君) いまの御質問の御趣旨は私はそのとおりだと思いますが、新しい工場の設備がつくられることになって、そこから新しい物質がつくられ、また、出されるその新しい物質が汚染を起こすおそれがあると考えられる場合には、これはそういうものの製造なり、あるいはそのような設備の運転というものは許可すべきではないと考えます。そのような方針のもとに、去年の十二月でありましたか、新たに化学的製品をつくる場合には特に慎重でなければならぬということを、政府部内できめてございますけれども、それをもっともっと強化いたしまして、近い将来に、いま申しましたような、無害であるという証明がなされない限りは、これは一切製造なり発売をしてはならない、こういう方針をきめなきゃならないと考えております。
○栗林卓司君 製造過程で出てくる新しい有害物質について、長官のお考えのとおりだと思います。ただ実際問題として、政令でそれを指定していく場合を考えますと、結果として健康被害が出ることによって初めてわかるという、おそらくその道をたどらざるを得ないのだろうと思います。そのときに、その被害に対してはこの無過失責任は、この二十五条の二項からいいますと、適用されないことになるわけですね。なぜかといいますと、「一の物質が新たに健康被害物質となった場合には」ということは、政令で指定された場合には、その日以後の当該物質の損害について適用するということですから、指定前については実は無過失責任は追及できないとする。とは言うものの、政令で有害物質がきまるきっかけというものは、実は健康被害が出てから、そうせざるを得ない。この間というのは、結局救済されないことになってしまうのではないか。新しい物質ですから、さあ困った、こういった基準で、ということで政令で指定をされる。その指定をされた以降は、言うなればこの二十五条の対象になっていくわけですから、それ以前は、過失がない限りは責任を負う必要はないということに、ものの理屈から言うと、なっているのじゃないか。その点はいかがでしょうか。
○政府委員(船後正道君) 初めに、先ほど長官が、今後無害であることが証明されない限りそういうものの使用・製造は許すべきでない、こういうことを申し上げましたが、これはやはり新しい立法措置を要する問題ではなかろうかと思います。現在、PCBを契機といたしまして、そういう分解性、蓄積性の物質が非常に問題になっておりますので、通産省でも審議会を設けまして、そういった新たな化学物質を、どのようにして危険を未然に防ぐということが可能か、こういう制度を検討しておるところでございますから、そういう制度ができまして、事前に十分チェックをいたしますれば、再びDDTとかPCBのような問題の発生は防げるのではないか、かように思います。 それから、それ以外の物質につきましては、私どもはやはり現に健康被害が起こってから、おくればせながら指定したというものもございますけれども、最近はやはり先取りいたしまして、たとえば毒物劇物あるいは労働衛生等の関係でもって、すでにある限られた環境では非常に有害性がわかっておる、そういったものが環境に放出された場合は環境に非常に危険であるというものは、先取りして、たとえば大気ではクローム、これは未規制でございますが、これをどうやって規制しようということを先取り的に規定いたしておる、こういうことでございますので、理論的にはおっしゃいますとおり、健康被害物質が指定される以前に生じました損害については、無過失責任にあらず、過失責任ということにはなりますけれども、そういう事態が生じないように、われわれとしては今後行政面で努力してまいりたいと考えております。
○栗林卓司君 行政面の御努力はよく理解するのですけれども、ただ、お伺いした気持ちは、なぜ健康被害物質となった日以後にしか無過失責任が適用されないかというと、それは予測することができないのです。実際問題として。その予測することができないことまで規制されたのでは、社会の安定に結びつかないということが、おそらくその発想の背後にあったのではないかと思ってお伺いしたのです。 それで、それは実はよくわかるんですけれども、ただ、二十五条の無過失責任の本体の部分なんですけれども、こういった場合はどうなのかと思うのですが、大気汚染防止法はきわめて忠実に履行している。にもかかわらず、無過失責任を結果としては問われる。そうすると、事業者の側というものは大気汚染防止法を忠実に履行しているわけですから、それ以上被害が出るということは予測し得ない。にもかかわらず、無過失責任を要請されてくるであろう。そうすると、先ほど申し上げたことと意味は全く同じなんじゃないか。その点で、配慮はわかりますけれども、どうせ本体のところでそこまで突っ込んでしまったなら、あとのほうでは、結局は健康被害の救済ということに結びつくのですから、広げてしまってもよかったのではなかろうかという気がしたものですから、お伺いしたのです。
○政府委員(船後正道君) 第二十五条の二項の立法趣旨は、ただいま栗林先生御指摘のとおりでございます。二十五条のこの本文で無過失責任を課すわけでございますが、無過失というのは、結局、過失責任における注意義務を極限状態まで考えた状態だ。過失と申しますのは、その排出者側におきまして注意義務があって、その注意義務の範囲内であれば過失がない、こういうことになるわけでございますが、そういった注意義務を非常に極限状態まで持っていった場合には、無過失ということになるわけでございます。ところが、どういうものについて注意義務をそれでは極限状態で考えねばならぬかといえば、これはやはり事業者におきまして、あらかじめこういう物質についてであるという認識があるわけでございますから、そういった面で法的安定性というものは、この二十五条の二項をつくりました趣旨と決して矛盾しないというふうに考えております。
○栗林卓司君 いまのお答えなんですが、やっぱり重ねてお伺いしたい気がするのは、大気汚染防止法を忠実に履行しているという中身がどういうことかといいますと、基準があらかじめ設定されて、基準にそぐわない場合には排除命令まで出てくる。それに対する従わない行為に対しては罰則まで適用がある、きわめて強い法律であるわけです。その基準についての信頼度の担保というものは、国もしくは地方公共団体がしている。そういったものについて全く忠実に履行しているということは、善良な管理者が注意義務をぎりぎりまで進めたことが無過失だというお話なんですけれども、ほんとうは少しどこかおかしいんじゃないかという気が残るのではないでしょうか。
○国務大臣(大石武一君) 私は栗林委員と全く同じ考えを持っているのです。先ほど、無害であるという証明がない限りは認めない方針だと申しましたが、これにも限度があります。人間の考えることですから、限度があります。そのわれわれの限度を越えた有害な物質が、やはり出てくるかもしれません。私はそのような場合には、はっきりと有害と認定を受けた日からでなくて、むしろ認定を受けた以前からその物質を排出している企業は、やはりこれは当然責任を問われる責めに任ずべきだという考えを持って、この法律を運用いたしたいと考えておるのです。 いまどういう解釈になるかわかりませんが、将来は、おそらくわれわれの考える有害物質については全部規制する。いつになるか、五年後か十年後かわかりませんが、われわれの考える有害物質についてのいろいろな規制並びに監視が十分行なわれれば、無過失のこの法律案は、私はいまお話があるような未知のものに対するもの以外には、必要がなくなると思うのです。そういう意味で私は将来、未知のものに対してもそのような被害者を保障する道として、この法律が生きてほしいということを考えているわけでございます。そのような解釈をいたしたいと私は思います。
○栗林卓司君 たいへん同感に思います。 重ねてで恐縮ですけれども、今回無過失責任という法律をつくられた現実的な理由というのは、実際に裁判で係争するときに、過失の有無を立証することがなかなか困難である、したがって、その手続を排除して、その救済を早めたいと、こういったことも立法の趣旨にはあったと思うのです。ただ、そこで問題なのは、無過失ということになりますと、当然のことながら大気汚染防止法を履行している、そういう状態に近い。というのは、忠実に履行しているという状態に近いと思います。過失ということになれば、当然それは守るべき基準も守らずにということで、それが故意か過失であるかの区分は別にして、故意過失に当然入ってまいりますから、従来の民法の概念をそこに適用しても、時間がかかっても過失責任が問える。ところが無過失責任ということになりますと、忠実に履行していようといまいと、全部含めるのだ、と。 そこで伺いたいのは、この間、公害関係調整法というものができまして、原因裁定と責任裁定という制度が取り入れられました。この無過失責任の場合には過失の有無は問わないわけですから、原因裁定がされますと、ほぼ自動的に原因裁定まで、額は別にして直結されてくる。そのときに、その加害者といわれているところがどうするかというと、原因裁定についてみずからが裁定の申し入れをするということに、当然なってくるだろう。これは裁判事項ではなくて行政機関として扱うわけですけれども、そのときに、原因裁定の中で過失の有無ということを一切触れないで、原因裁定ができるのだろうか。ということは、ここで言っている過失の有無ということは、大気汚染防止法をあなたは順守したとかしないとかということは、言うならば排出量の問題の認定になるわけですから、そのことに触れずに原因裁定の作業が進むのだろうか。 私、どう考えてみても、やっぱりそこで大気汚染防止法を忠実に履行したのかしないのか、すなわち過失があるのかないのかということが作業の中に入ってきてしまう。そうすると、あたかも裁判所の手続では民法のワクを大きく踏み出して無過失責任をとったように見えながら、実は原因裁定の作業の中では、従来と同じように過失の有無が論ぜざるを得ないと思うのですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
○政府委員(船後正道君) 原因裁定で問題になりますのは、民事で申せば因果関係の有無の問題でございますが、一応、因果関係は故意過失とは別の問題であると、かように解しております。排出しました行為と損害との間に、実際にどういう結びつきがあるかということでございまして、その排出が故意であったとか、過失であったとか、無過失であったとかいうことは、一応問題にならない。排出したというところから始まる問題である。こう思いますので、やはり原因裁定の場合には、一応客観的にその排出と損害というものの結びつき方を検討される、このように思っております。
○栗林卓司君 おっしゃるとおりだと思うのです。ただ、排出がどうかということが、大気汚染防止法を忠実に履行しているかしていないかということと全く同じ問題になるのですから、その意味で、結局その企業なら企業が大気汚染防止法に従って基準を守っていたのか、いなかったのか、善良な管理をしていたのか、していなかったのか、ということが量の測定とからんで結局は追及されてくるのではないかと思うのですが。
○政府委員(船後正道君) 問題は、排出を規制いたしております行政上の基準を守ったかどうかということが、故意過失なりあるいは因果関係にどのような影響があるかということだろうと思うのでございますが、理論的にあるいは一般的に申し上げますと、行政上の基準と民事上の損害賠償とは関係はないわけであります。ただ、行政上の基準といたしまして、たとえば、大気汚染防止法の体系では規制の対象としていないような特定施設があるわけでございます。これは通常、非常に排出が微量でございますので、したがって環境にも影響を与えないだろう、また被害も引き起こさないだろうというような観点から、特定施設は行政上そういった規制の対象になっていないものがある。そういったものにつきましては、問題が生じました場合にどうなるか、私どもこれは一般論でございますが、やはりこういった場合には、非常に微量であって、おそらく違法性というものがその間にはないのではないかというふうに考えておる。そういう意味では若干関係あると思いますけれども、具体的にどうなるかは、やはりケース・バイ・ケースでないと決定しかねる問題であろうと思っております。
○栗林卓司君 無過失賠償責任というのは、大気汚染防止法を忠実に履行していてもなお問われるのだというところが、どちらかというと、いまのお答えですと、狭く何か言われているような気がするのですが、関連して伺います。 二十五条二を見ますと、二行目のところで「当該損害賠償の責任について民法七百十九条第一項の規定の適用がある場合において」と入っております。この「民法七百十九条第一項の規定の適用がある場合において」ということが入っている意味というのは、どういうことだったんでしょうか。
○政府委員(船後正道君) 民法七百十九条は、数人の共同の不法行為でございますので、結局、二以上の事業者の排出行為があって、それが共同しておるという場合でございます。
○栗林卓司君 そこでお伺いしたいのは、無過失というのは不法行為なんでしょうか。当然のこととしてこれは不法行為にはならないと思いますが、したがって二十五条の二というのは、無過失でなおかつ共同の場合は、当然のこととしてこの条項からはずされてくる。そう考えてよろしいのでしょうか。
○政府委員(船後正道君) 故意過失要件は、いわゆる不法行為を成立させる要件の中の一つでございまして、故意過失要件、故意過失がないと故意過失を問わないから不法行為ではないということは言えないわけでございまして、無過失の不法行為というのは、たとえば民法でも七百十七条の工作物の責任、これは不法行為でございます。
○栗林卓司君 そこで、再三申し上げているのは、大気汚染防止法を忠実に履行してなおかつ起こった場合、これは不法行為とは言えないはずだ。大気汚染防止法を履行しない場合は当然それは不法行為になりますけれども、完全に履行したにもかかわらずなお出てしまった、これは無過失賠償責任でいくのだと。その、なおかつ出てしまった部分は、それは不法行為なんでしょうか。
○説明員(古館清吾君) 大気汚染防止法の基準を順守したにもかかわらず健康被害が発生した場合に、賠償責任を負うかどうかという問題でございますけれども、これは非常にむずかしい問題を含んでいるかと思います。 まず第一番に、この大気汚染防止法所定の基準と申しますのは、先ほど船後局長からもお答えがありましたように、一つの取り締まり基準でございます。取り締まり基準で、結局その行政上の観点から健康被害を未然に防止しようということのために、一つの目安、基準を設けまして、そして健康被害の未然防止をはかるというのが趣旨かと思うのです。そういう意味で、まず基準は取り締まり規定である、また、取り締まり基準であるというふうに言われるわけでございます。 ところが、取り締まり基準は、そういうことで目安でございますけれども、一方、企業者が事業活動をする際に有害物質を排出するという場合に、この有害物質を排出することによって危険が生じないように十分な注意義務、これもまた必要でございます。また、民法の故意過失ということは、そういうことで危険防止のための注意義務、これを欠いている場合が故意過失と言われていることは先生御承知のとおりだと思いますけれども、そこで、そういったその注意義務を欠いているかどうかという場合に、行政取り締まり規定を順守しているから、直ちにそれが十分な注意義務を果たしたと、つまり故意過失がないと言えるかどうかという問題になってこようかと思います。 そういたしますると、一がいに、基準を守ったからといいまして十分な注意義務を果たしたと言えない場合もあろうかと思います。また、言える場合もあろうかと思います。といいますのは、その基準に基づく排出量がきわめて少量であるという場合には、それなりの十分な注意義務、危険防止のための注意義務を果たしておりますれば、故意過失はないと言えようかと思います。また、もう一つは、非常に微量な排出という場合には、これは違法性の関係とも問題のあることで、ある場合には違法性がないというふうなことにもなろうかと思います。先ほどもお答えがありましたように、結局そういう意味で、排出基準を守ったかどうかということは、違法性があるかないかという要件との関係でも、いろいろ議論されているわけでございます。 そういうことで、結局、大気汚染防止法所定の排出基準を守っているという場合には、この行政取り締まり規定を守っているということで、行政的な制裁、この点では責任はありませんけれども、民事上の関係では、損害のてん補という角度から、それぞれ不法行為の要件を満たす場合には加害者には賠償責任を負わせるというようなたてまえになっておりますから、ですから、排出基準を守っているからと言いまして、直ちに故意過失がない、あるいは違法性がないということは、一般的に言えないのじゃなかろうかというふうに考えます。
○栗林卓司君 率直に申し上げて、何のことやらよくわからなかったのですけれども、それほどややこしい問題だということはよくわかります。 大体民法の七百十九条の、「数人カ共同ノ不法行為ニ因リテ」、この不法行為というのをどう見るか。これはたまたまですから、見方によっては、無過失には共同行為がないという議論までほんとうは飛んでいってしまうわけですね。その議論をここでするつもりはありません。ただ、いまいろいろおっしゃったのですけれども、これもよく出る例かもしれませんけれども、鉱業法の百九条の二項、それはこことよく似た規定でありますが、七百十九条ということは中に入っておりません。それとこれの違いということは、どこから出てきたんでしょう。
○政府委員(船後正道君) 御指摘の鉱業法の百九条は、民法七百十九条を引用いたしておりません。私どもも、立案過程でその点につきましては検討いたしたということでございますが、鉱業法におきましては、鉱業という業種に限定されております。かつまた、被害の発生するところも地域的に非常に狭いといったような関係から、二以上の鉱業権者の事業活動によって被害が生じた場合には云々という書き方で差しつかえはないといたしましても、大気汚染のような、大気汚染で複数原因者があるという場合を考えますと、非常に範囲が限定しがたいわけでございます。大気は無限に広がっておりますので、どこまでも続いていく。そういった中で共同の責任を負わせる範囲をどうするかということにつきましては、非常にむずかしい問題がございまして、その点については、やはり七百十九条の「共同ノ不法行為」ということの運用にまかせるのが妥当ではないか、という結論に達したわけでございます。 ところで、先生の御承知のとおり、現在七百十九条の解釈といたしまして、学説判例も、その共同ということにつきましては、共謀とか共同の認識とかいうような主観的な要件は必要とせずに、その行為が客観的に関連共同することをもって足りるということになっておりますので、そのような運用をもって、この一つの損害と共同不法行為の責任を持つ者の範囲をきめていただくというのが一番妥当である、かように考えている次第でございます。
○栗林卓司君 別にこの問題、深くお伺いするつもりはありませんけれども、ただ、無過失損害賠償責任の本来の趣旨というのは、どう管理しようと、どう意思があろうと、結果として健康被害が起こったことは、何らかの手段で救済しなければいかぬ、途中の故意過失、意思の有無は一切問わない、こういうところが出発点であった気がいたします。それからすると、ここで民法七百十九条ということが入って、「共同ノ」ということがまず議論になり、さらにまた「不法行為」という、行為の不法性が問題になる。本来は処理を早めるべきものが、かえって法廷なりあるいは原因裁定、責任裁定の段階で、こんがらがる原因になっていきはすまいかという心配があるものですからお伺いしたわけです。 時間がありませんので、あと一点だけお伺いいたしますと、次の二十五条の三ですけれども、「天災その他の不可抗力が競合したとき」はしんしゃくするということがあります。これは一見まことにごもっともな気がいたします。ただ、これは極端な聞き方かもしれませんけれども、先ほどからの聞き方にならって、大気汚染防止法を完全に忠実に履行しておる、なおかつ無過失責任は問われてくるのだといたしますと、完全に履行していながら健康被害が起こってしまう、その原因というのは、天災その他の不可抗力以外に、具体的に何があるとお考えになりますか。
○政府委員(船後正道君) また再び行政上の基準と損害賠償責任の問題に戻るわけでございますが、私ども理想的な状態を申し上げますれば、いかに排出が競合いたしましても絶対に被害が生じないといったような、非常にきびしい排出基準というものが考えられるわけでございますけれども、やはり行政上の排出基準といたしましては、どうしても一般的な状況を想定いたしましてレベルをきめるわけでございます。しかし、現実に損害が起こりますのはどうしても具体的な場合でございまして、具体的にはやはり一般的な基準では当てはまらずに、そこでやむを得ず被害が発生してしまったというときに、はじめて損害賠償が問題になるわけでございまして、今後こういった排出基準が逐次強化されるに伴いまして、私どもは損害賠償というような問題は逐次なくなっていくと、こう思っておるわけでございます。 そういうふうに考えてまいりますと、損害賠償というのはどこまでも排出者の責任を問うわけでございますから、排出者の責めに帰せられないような天災その他の不可抗力というものが原因となったというような場合には、賠償の責任と額について裁判所がその事情をしんしゃくされるという規定は、これは公平上当然必要ではないかと、かように考えております。
○栗林卓司君 時間がありませんので深くお伺いしませんけれども、いろいろこまかい問題を拾っていけば切りがない気がいたしますし、おそらくこの法律のねらいというのは、多分に宣言的なものだと思います。その意味では、係争中の裁判の判例の面でその宣言的な効果がどう及んでいくのか、あるいは今後の産業に対する行政手続の面でこれがどうにじんでいくのか、実は、そこにこの法律のほんとうのねらいと生かし方があるような気はいたします。 それはそれとして、この法律で十分かということになりますと、今後さらに検討すべきものが多々あると思いますし、それはそれで法律のつくり方ということでぜひ至急御検討いただきたいと思います。 そこで行政面にどうにじませていくかということで、先ほどから、たとえば基準といってもそれは一つの目安である、あるいは一般的なものの見方であるというお話がございました。実際問題としてはよく理解できる気がいたします。ところが、具体的に事業所なりあるいは設備なりを直接管理監督していくということになりますと、目安とか一般的な基準ということだけでは済まないし、それではこの法律の趣旨も生きてこないと思います。その意味で通産省として、この法律をどう具体的な行政に今後結びつけておいでになるのか、通産省なりの許認可業務というものをお持ちになっていらっしゃるわけですから、それも含めながら、今後の取り組みをお伺いして質問を終わります。
○説明員(森口八郎君) 先生おっしゃいますとおり、無過失法案が制定されるわけでございますけれども、単に無過失法案が制定されるというだけの問題ではなしに、むしろ無過失法が適用されないような産業界の対応の姿勢ということが、きわめて重要であろうかというふうに考えております。 御存じのとおり、公害国会以来、規制は強化されておりまして、産業界は、それについて対応努力を重ねております。通産省といたしましては、やはり公害を未然に防止するという点が第一ではないかということを考えておりまして、現在国会で御審議をいただきまして、過密地帯から工業をできるだけ移転をさせるというような工業再配置法を今国会に提出をいたしましたわけでございます。こういうような、工業を地方に出すということになりますと、また公害のまき散らしになるのではないかという御指摘もございます。こういうような点につきましては、通産省といたしましては、コンビナートをつくりますときに、できるだけコンビナートの周辺の事情を調査いたしまして、科学的に公害を出さないような指導を企業にいたすということで、これは産業公害総合事前調査というような形で従前から実施をしてきているところでございます。 また、そういうようにやりましても、それでは、いよいよ企業が動き出した、公害防止施設をつくらなければいかぬ、企業側は大いにこれをやろうという考え方があるわけでございますけれども、通産省として当然これにやはり刺激を与え、防止努力を助長するという考え方が重要でございますので、国の財政投融資あるいは税制上、その措置を講じまして、企業側のそういう努力を助長していくということを考えております。 次に、やはり公害を防止いたします場合には、現在公害の防止に対する技術開発がきわめて不十分でございます。生産に対する技術は非常に格段に進歩いたしたわけでございますが、公害防止の技術というものは、ここ数年非常に急速に進歩しつつあるわけでございますが、まだ十分ではございません。通産省の中には工業技術院がございまして、その傘下に各種の試験研究機関がございます。そういう試験研究機関を動員いたしまして、公害に関する研究というものを重点項目として取り上げて実施をしておるところでございます。なお、昨今問題になっております自動車に関しましては、都市内走行は今後は電気自動車に移しかえるというような観点から、電気自動車の開発を大型プロジェクトの一つとして取り上げまして、四十五年度から実施をしてきているところでございます。 なお通産省の、現実に企業の許認可というような面で関係をいたしております業種は、三つございます。一つは鉱業の側面でございます。もう一つは電気事業の側面でございます。それからもう一つは石油精製の側面でございます。大体自由な経済ということを基本にいたしておりますので、企業自体あるいは生産設備自体に対する許認可は非常に少のうございまして、この三つが大体おもなものでございます。 鉱山等につきましては、鉱業権の賦与を中心にいたしまして当然規制をいたしておるわけでございますが、同時に非常に古くから、鉱山の保安に関しましては鉱山保安法がございまして、各地の監督機関等が厳重な監督をいたしております。それから電気につきまして、電気事業法が公害防止ということで施設の監督をいたしておるということでございます。なお、石油精製などにつきましては、低硫黄化対策の推進というような観点から、石油精製設備の認可にあたりましては、重油脱硫設備の設置を義務づけるというようなかっこうで、公害対策に協力をさせておるというのが現状でございます。
○委員長(加藤シヅエ君) 御答弁は、なるべく簡単にしていただくようにお願いいたします。
○加藤進君 無過失賠償責任制度の法案のようなきわめて重要な法案が、国会の会期の最後の日に審議に入るということは、決して好ましい状況ではないと思います。私は、いろいろ政府に所信をただしたい点が多々ございますけれども、きょうは限られた時間でもありますから、特に、この無過失賠償責任の法案についての一番基本になると思うような点を質問したいと思います。 新潟の水俣病裁判で、次のようなことが論告されております。それは、公害に対しての企業の側の負うべき責任、義務という問題であります。責任というよりも、義務でございますけれども、公害に対する企業側の負うべき義務、こういう点でございますけれども、次のような文章がございます。 「およそ、化学工業を営む企業の生産活動においては、日進月歩に開発される化学技術を応用して大量に化学製品を製造するものである以上、その化学反応の過程において、製品が生成されるかたわらいかなる物質が副生されるかも知らず、しかもその副生物のなかには、そのまま企業外に排出するときは、生物、人体等に重大な危害を加えるおそれのある物質が含まれる場合もありうるから、化学企業としては、これらの有害物質を企業外に排出することがないよう、常にこれが製造工場を安全に管理する義務があるというべきである。」、「排出することがないよう、常にこれが製造工場を安全に管理する義務があるというべきである。」、こう言っております。 私は、この企業の立場に立って公害を排出しないための安全な管理と措置、これが正しく義務づけられるかどうか、ここに私は公害防止の一番大きな問題点があると思います。そして、もしこのような義務が怠られた結果起こるべき公害については、これは過失であろう、無過失であろうという問題を越えて、このような公害に対しては、その損害を完全に補償する責任が負わさるべきである、私はこういうふうに理解していいのではないかと思いますが、そういう観点に立ってはじめて私は無過失賠償責任制というものがつくられていかなくてはならぬ。無過失賠償責任制のあるべき姿というのは、いま申し上げたような、企業の側に公害を排出しないような責任が明確にされ、その責任が怠られた場合において起こるべき公害に対して、企業がみずからその責任を負う、これが私は公害に対する被害者救済の一番基本に置かるべき問題であり、それこそ無過失賠償責任制の前提になる、こう考えるわけでございますけれども、その点、長官のお考えはいかがでございましょうか。
○国務大臣(大石武一君) 同感でございます。そのような趣旨のもとに、いまいろいろ基準を、あるいは規制をいたしまして、そうして物質までそえて努力をいたしたわけでございますから、究極は、御趣旨のとおりわれわれも考えております。
○加藤進君 そこで、たとえば、四日市とかあるいは川崎というようなところで公害病の患者が多数発生しています。ところが、このような被害者が裁判に持ち込む場合、一体どの工場の亜硫酸ガスが、どの被害者の体内へ、どんな経路で入ったかなどということを立証することは、ほとんど不可能に近いわけです。この不可能に近いことが、今日の公害裁判において、企業側いわば加害者側から要求される、こういうことが今日、公害裁判を困難にし、長期化している一番の根源である。 したがって、もしこれが、一定の公害地帯に患者が発生した場合、その地帯で病気の原因になるような物質を排出している工場は、すべて加害者と推定するという、いわゆる推定規定が設けられるならば、このような被害者は十分な、いわば救済を受ける可能性がある。裁判においても十分な救済を受ける条件が出てくる。こういうふうに考えるわけでございますけれども、私はこのようないわゆる推定規定が、今度の政府案においては、環境庁の原案に存在し明記されていたものが削除されて、今回国会に提出されている。これは、私はほんとうに被害者の救済の立場に立ってこのよな法案が提出されたのかどうか、疑わざるを得ないわけでございますが、その点について大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(大石武一君) 推定の規定につきましては、われわれがこの法律案をつくる段階におきまして、やはり推定の規定は入れるように考えておりましたが、その後いろいろな事情を勘案いたしまして、そうして最終案にはその規定を抜いたわけでございます。しかし、これは別に私は推定を抜きましても、いまの裁判の動向その他のことによりまして、十分に法律は効果をあげ得ると考えておる次第でございます。しかし、なお詳しいことにつきましては、政府委員よりお答えさせたいと思います。
○政府委員(船後正道君) 環境庁が当初考えました原案では因果関係の推定規定を設けておったのでございますが、これは野党三党の案とほぼ同様、一つの代表的なケースを考えまして法律上の推定規定を設けたのでございます。 それは、先ほど先生が御指摘になりました阿賀野川の裁判でも指摘しておることでございますが、通常、公害にかかわる健康被害の因果関係につきましては、排出の問題、それから疾病原因との関係、いわゆる病因度、それから、その物質が被害者に到達する経路、いわゆる汚染経路、この三つが立証を要する点でございますが、私たちの考えました案では、この汚染経路につきまして、当該事業者の有害物質の排出により被害が生じ得る地域内に、同種の物質による被害が生じているということを立証いたしますれば、当該事業者の排出によって被害が生じたのだという証明にかわるというような規定を設けたのでございます。広く因果関係一般を推定しようというものではございませんでして、直接にある物質がある患者の体内で被害を生じたのだという証明にかえて、このような間接事実の証明をもって足るといたしたのでございます。 したがいまして、先生が先ほどお話しになりましたように、ある物質によりまして、ある地域に被害が生じて、その地域で同種の物質を排出しておる企業がありますれば、その企業との間に因果関係があるというものではございません。あくまでも、その企業の排出がその地域において被害が生じ得るということの立証は要するわけでございます。これは野党の三党の案におきましても同様でございます。 ところが、このような規定を設けるといたしますと、これが拡張解釈されまして、一方では、事業者の排出がきわめて微量でございましても、因果関係があるんだというように推定されるというような解釈も生じてまいりますし、あるいは逆に、ちょうど日弁連の案にございましたように、物質が到達し得る地域というような書き方も考えられるわけでございますから、被害が生じ得る地域と書くことによって、無限に濃度論争を引き起こす可能性があるという御意見もあったわけでございます。他方、公害事案の因果関係につきましては、先ほどの水俣病の新潟の判決におきましても、被害者に因果関係の、あれのすべてにつきまして厳密な科学的な立証を要求いたしておりません。いわゆる蓋然性があれば足りるというような現状になっておりますので、法律上の推定規定を置くといたしました場合に、この推定事実をどのように構成するかということにつきましては、いましばらく検討と申しますか、判例の動向というものを見定めてやっても、実際上裁判には何ら影響するところがないのではないか、このような判断から、今回はこの規定を設けることを見送り、今後の判例動向を待ちまして、法律上いかに明文化するかという点の検討をいたしたいと考えておる次第でございます。
○加藤進君 環境庁の見解は大体わかりました。一つには、推定規定は入れたかったけれども、残念ながら今度の法案の中には入れることができなかったという点が一つあると思います。しかし同時に、推定規定はなくとも、判例を積み重ねていくなら大体同じような効果があるのじゃなかろうか、こういう見解でございますけれども、私は、その点は若干違うと思います。 というのは、新潟水俣病のあのような判決が行なわれたあとにおいてさえ、なかなか裁判は困難で長期化しています。四日市の公害裁判も、これがどのような形において終了するのか、これもまた保証の限りでないわけでございます。こういう場合に、企業側に公害を発生さした責任があり、しかもこれを防止するための義務さえ怠っているというような現状があるわけでございますから、私は被害者の立場に立って、できるだけ被害者の救済に役立つような法規制を明確にしていく必要があるし、そのためには、従来なかったような因果関係についての推定という規定を設けて、かつて新潟水俣病の裁判において、蓋然性を立証できればそれで足り得ると、こういうところまで迫ったわけでございますから、これを法文化して、これを法的に一般化して、全国の被害者の諸君のよりどころにさせていかなくてはならない。これは私は当然な要望ではないかと考えるわけでございまして、私はこの際特にお願いしておくのは、早急にこのような推定規定を明文化して、この法案の中に欠けておる欠点を至急是正するように努力していただきたい、このことをお願いするわけでございますけれども、その点の御見解はいかがでしょう。
○国務大臣(大石武一君) この両法律の改正案は、御承知のとおり非常に不十分なものでございます。ただ、われわれは、これを、今後このような新しい考え方を行政にとり入れる一つの橋頭堡としての手段と考えまして、いろんな時間的な制約もございましたので、現在のもので提案しているわけでございますが、さらに足りないものは十分に補いまして、近い将来には、ほんとに役に立つ総合的なものにいたしたいという考えでございます。そういう意味で、いまの御意見も十分にこれは検討してまいりたいと考えます。
○加藤進君 それでは続いて次に伺いますが、第二番目に、公害のあらわれ方はきわめて多様だと思います。農作物が大きな被害を受ける。漁民は漁民で、魚や貝類もとれない。自然環境は破壊される。生業が奪われる。さまざまあると思います。そういう過程を経て、最後に行き着くものは何かといえば、人の健康、人の生命にまでその被害が及ぶというのが公害の現状だろうと思います。ところが、この公害の救済に役立てなくてはならぬ無過失賠償責任制において、公害の被害を特に人の健康に限定する。他の財産上、あるいは自然環境、生活環境等々における被害については、加害者に対して何らこれを無過失の責任を問うという観点が存在しないのは、一体どういうことなのか。公害企業がその責任において果たさなかった結果起こったいわば被害に対して、この無過失責任の上での賠償は、それは人間の健康にかかわるものだけでけっこうでございます、あとは、その被害についての無過失責任は問いませんというのは、私はまことに片手落ちの感を免れないと思いますが、その点についてはいかがでしょう。
○国務大臣(大石武一君) まことに、いま加藤委員のおっしゃるとおりでございます。われわれは、いまこの法律案は人間の健康被害についてのみ取り扱っておりますけれども、これは近い将来には、お話しのようないろいろな生業なり財産につきましても、当然これは入らなきゃならない。できるだけ早くそのような総合的なものに直したいと考えておるわけでございます。ただ、この場合に、御承知のようにこういう法律案を何とかして出す、こういうものの考え方を立法の一つの、行政の一つの基盤にいたしたかったんです。いま申しましたように総合的な、あらゆる生業なり財産、そういうものを入れますと、とても半年や一年、二年の間では、大きな法律案をつくることができません。それゆえに、取り急ぎましてその橋頭堡をつくりたいという意味から、とりあえずこの健康被害に限ったわけでございます。これが一番重大な問題なのでございますので、限ったわけでございますが、おっしゃるとおり、ごく近い将来には、これを土台としていろいろな総合的な、いろいろな面でほんとうにわれわれの生活環境を守り得るような、そのようなものにいたしたいと考えておるわけでございます。
○加藤進君 続いてお伺いします。 たとえ人の健康に限っても、無過失賠償の制度を設けることは前進だと、こういうふうに言われるわけでございますけれども、その公害の健康に及ぼす被害だけをとってみても、この法案で出されておりますような大気の汚染と水質の汚濁についてだけと限定されるのは、また納得がいきかねる問題でございます。特に、公害基本法では七つの基本的な公害を規定しておるわけでございます。そのうちの大気汚染と水質汚濁だけに限るということに至りましても、被害者の中の救われる者は、そのうちの一部なのであるという感は免れがたいのでございまして、その点におきましても、この無過失賠償責任制の適用範囲はきわめて狭められ、その結果、被害者の救済は不十分であって、逆に言えば、加害者企業はそれによって十分な賠償を与えるような義務なしで済むという結果にならざるを得ないわけでございますけれども、その点についての長官の御見解をお伺いします。
○国務大臣(大石武一君) おっしゃるとおり、公害には七つのものがございますけれども、いわゆる補償を要するような、相当程度以上の人間の健康に影響を及ぼすのは、大体水質と大気、これがほとんど大部分であろうと考えます。そうしてまた、その二つで考え得るあらゆる有害物質についてこれは規制いたしておるわけでございます。それ以外のものにつきましては、なるほど、たとえば悪臭にしましても騒音にしましても、もちろんある程度の人間に影響ございます。しかし、それはどれほどの大きな人間の健康に影響を与えるかということにつきましては、また、それをはかるべき尺度と申しますか、そういうものがまだ医学的に十分にできておらない気がいたしますし、必ずしもそのことが直接人間の大きな健康被害を及ぼすともまた考えておりませんので、そういうものは十分に考慮に入れながら今後の推移を待って努力してまいりますが、とりあえず人間の健康被害に影響を及ぼすというものだけは、できるだけ取り入れる方針でやったわけでございます。
○加藤進君 もう一つ問題があります。それは、無過失賠償責任制の実施の上で、有害物質であり原因物質になる物質が、きわめて限定されておるわけですね。たとえば、政令で有害物質であると規定されておらないものは、この範囲に入ってこない。政令で規定されなければこれは公害の原因物質とはいえないというようなことは、これは科学の技術の発展した今日、生産・製造過程の中から、どのような、いままで予想しておらないような有害物質が排出するやもはかりがたい、こういう状況のもとでの立法でございますから、起こり得るさまざまな可能性を考えながら、有害物質についての広範囲な網を打って、その上でこれに対するやはり規制をしていくということが最も必要ではないか、こういうふうに考えますが、その点についてはどうでしょうか。
○国務大臣(大石武一君) われわれは、現在考え得る有害な物質はみな取り入れたと思っております。ただ問題は、PCBがございますが、これも近く取り入れる方針でございます。もう少しこの分析の方法なりそういうものの確立を待って、ぜひこれを早急に取り入れたいと考えておりますが、それ以外のものはほとんど、われわれは全部網羅しておると考えます。ただ、なるほどおっしゃるように、将来予測し得ない有害な物質が、これはわれわれの生活環境に取り入れたくないと考えておりますが、あるいは起こり得るかもしれません。しかし、そういうものが起こり得るかどうかということは予想がつきませんし、予想がつかないものを法律に入れるということはやはり不可能だと思うんです。ですから、そういうものが出ましたならば、当然早急にそれを取り入れますし、それに対するいわゆる法律の発動は、先ほど栗林委員にお答えしたような方法で持っていきたいと思っておるわけでございまして、考え方は同じでございますけれども、ただ、法律の上で、起こり得るかもしれないという、まだそう考えつかないものはやっぱりちょっと、入れることは不可能じゃないかと考えておる次第でございます。
○加藤進君 もちろん、個々の有害物質がどれこれであるかということは、これは検討を要する問題だと思います。しかし、無過失賠償責任制度という、被害者の救済という立場に立って見るなら、いろいろ起こり得る可能性の全体を検討して、そして、そこから起こる被害に対してはすべてこれを救う、こういう観点で原因物質というものを見ていく必要があるんじゃないかと思います。長官も、PCBだけは別で、いまその作業にかかっておられるということでございますけれども、PCBのような有害物質は、いつどのようにして発生するかもはかりがたいというのが現状でありますから、この状況に適合したような規定をぜひ設けなくてはならぬということが私の真意でございまして、そういう点で、長官の言われるように、そういう事態が起こるならば、即刻これに対してもそのような物質を規定に取り込むと、こういうふうに理解してもよろしゅうございますか。
○国務大臣(大石武一君) そのとおりでございます。
○加藤進君 で、公害をいろいろ受ける被害者の立場から言いますと、その公害がどのような時期に起こってきたのか、それからまた、どんな時期の、どのような状況での被害であったかなどということは、それは問題にはなるのでしょうけれども、被害者を救済する立場から言うなら、これはもう第二義、第三義の問題だと思うんです。ともかく過去であれ現在であれ、被害を受けた者に対して無過失の賠償責任の制度を適用するというのは、これは私は制度の基本でなくてはならぬ。先ほども寺本委員から水俣病の問題が出されましたが、たとえば四日市のいま公害裁判を戦っておられるあの認定患者の皆さん、全国数千に及ぶような患者の皆さん、これは今日このような法の恩典と適用を受けるのかどうか。こういう点について、長官、いかがでしょうか。
○政府委員(船後正道君) ただいまの御質問は、今回の改正法案の経過措置の問題でございますが、この点につきましては衆議院で修正されまして、第二項によりますと、新しい無過失責任の規定は法律施行後に生ずる損害について適用するということを原則といたしまして、ただし書きでもって、その損害の生じた原因である排出が、施行前の排出であることを事業者において証明したときはなお従前の例による、つまり過失主義によるということにいたしております。なお、この際衆議院におきまして修正点に対する説明等いたしておりますが、これでは、やはり法的安定性という点を考えて、法律不遡及の原則を尊重したということに相なっております。
○加藤進君 私は、その点につきましては、この法案そのものがきわめて不十分だという点は認めなくてはならぬと思います。とにかく、公害の被害を現に受けつつある人、受けた人、そして、その加害者は明らかであり、加害者みずからがその賠償の責任を負わなくてはならぬということも明らかでありますから、その点についてこの制度が、いま申し上げましたような点でさらに十分被害者の救済のために生かされるようにせっかくの努力を払っていただきたいし、そういう趣旨をお互いに確認していきたいと考えております。時間もありませんので、私は十分論点を進めるわけにはまいりませんけれども、ともかく被害者の救済が不十分だということは、加害者に対して公害を野放しにさせるという、逆の面を必ず伴ってくるということをわれわれは知らなくてはならぬわけでございます。 そこで、一番初めに申し上げましたような新潟水俣病における判決の中心は何であったかといえば、加害企業に対してその公害防止の義務を負わせ、義務を怠ったものに対しては賠償の責めを負わせる、これが私は基本だと思います。その基本に立って、このような無過失賠償責任制度の法案をさらに内容を前進さしていただいて、私たちの党が常に強調しておりますように、被害者に対しては十分な賠償がすみやかに行なわれるような無過失賠償責任制、そして企業がみずから被害を及ぼさないということになれば、そのような立証をみずからの責任において行ない得るような制度を確立していく、このようなことを私は強く要望いたしまして、時間もまいりましたので、これで質問を終わらせていただきたいと思います。
○委員長(加藤シヅエ君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(加藤シヅエ君) 御異議ないと認めます。 それでは、これより討論に入ります。——別に御発言もないようでございますから、直ちに採決に入ります。 大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(加藤シヅエ君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
○矢野登君 私は、ただいま可決されました大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党四党共同提案の附帯決議案を提出いたします。 案文を朗読いたします。 大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の一部 を改正する法律案に対する附帯決議案 政府は、本法の施行にあたり、特に左の点に つき善処すべきである。 一、無過失損害賠償責任の対象となる被害の範 囲を農業、漁業等に係る生業被害等の財産被 害にまで拡げるようすみやかに検討し、所要 の措置を講ずること。 二、無過失損害賠償責任の制度を、公害対策基 本法に定めるすべての公害に適用するようす みやかに検討を進めること。 三、公害事案について因果関係の推定規定を置 くことについて積極的に検討を進めること。 公害被害に係る複数原因者の賠償責任に関す る規定についても同様とすること。 四、公害についての差止請求及び規制措置請求 等の制度を含む公害防止対策の充実強化を検 討すること。 五、公害の原因となる物質として化学的に未解 決な問題を残しているものについても、すみ やかに大気汚染防止法等による政令指定を行 なうよう検討を進めること。 六、公害被害者に対する訴訟上の救助その他そ の訴訟費用負担の軽減を図るとともに、公害 訴訟において、被害者の利益を正当に保護す るための資料の提供等にかかる措置を検討す ること。 右決議する。 以上でございます。 各位の御賛同をお願いいたします。
○委員長(加藤シヅエ君) ただいま矢野君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行ないます。 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(加藤シヅエ君) 全会一致と認めます。よって、矢野理事提出の附帯決議案は、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決しました。 国務大臣から附帯決議に対して発言を求められております。大石環境庁長官。
○国務大臣(大石武一君) ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を十分に尊重いたしまして、善処してまいります。
○委員長(加藤シヅエ君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(加藤シヅエ君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 —————————————
○委員長(加藤シヅエ君) 自然環境保全法案を議題といたします。 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。大石環境庁長官。
○国務大臣(大石武一君) ただいま議題となりました自然環境保全法案について、その提案の理由を御説明申し上げます。 わが国は、戦後すでに四分の一世紀を経過し、今日世界に類を見ない経済成長を遂げ、国民の物質的、経済的水準も飛躍的に向上したことは周知のとおりであります。しかしながら、その間ややもすると経済的利益が優先し、自然がもともと持っていた復元力あるいは浄化力を越えた無秩序な開発行為により、わが国の良好な自然環境が随所で破壊されるなど、人間環境の悪化が急速に進行しております。 人間が人間らしい健康で文化的な生活を享受するためには、単に経済的な豊かさのみならず、すぐれた自然環境を確保し、これとの交流をはかっていくことが不可欠であることは申すまでもありません。日本独自の繊細ですぐれた文化は、四季おりおりに移り変わる自然との交流によってつちかわれてきたのでありまして、このようなことを考えあわせますとき、今日急速に進行している自然環境の破壊をこのまま放置することはもはや許されるものではなく、これを阻止し、自然環境の保全をはかってまいりますことは、現下の緊急かつ重大な国民的課題であります。 現在、自然保護関連の法律といたしましては、自然公園法、首都圏近郊緑地保全法等がありますが、前者は傑出した自然の風景地をその保護対象とし、また、後者は首都圏の近郊整備地帯における近郊緑地の保全をその保護対象としている等その対象が限定されており、急速かつ全国的に進行しつつある自然環境の破壊を未然に防止する制度としては不十分であると言わざるを得ないのが現状でありまして、これらの事態に対処し、自然環境の適正な保全を総合的に推進するためには、新たな法制を整備する必要がきわめて強いのであります。このような観点に立って、今回、自然環境の保全の基本理念その他、自然環境の保全に関し基本となる事項を定めますとともに、自然公園法その他の自然環境の保全を目的とする法律と相まって、自然環境の適正な保全を総合的に推進するための自然環境保全法案を提案いたした次第であります。 以下、この法律案の内容についてその概要を御説明申し上げます。 第一に、自然環境の保全は、自然環境が人間の健康で文化的な生活に欠くことのできないものであることにかんがみ、広く国民がその恵沢を享受するとともに、将来の国民に自然環境を継承することができるよう適正に行なわれるべきものであるとの自然環境の保全の基本理念を定めるほか、国、地方公共団体、事業者等の責務を明らかにいたしております。さらに、これらとあわせて、国は、自然環境の保全をはかるための基本方針を定め、総合的な自然環境の保全行政を推進することといたしております。 第二に、環境庁長官は、人の活動によって影響を受けることなく原生の状態を維持している土地のうち、一定の地域を原生自然環境保全地域として指定いたしますとともに、この地域における建築物その他の工作物の設置をはじめとして、落枝・落葉を採取する行為に至るまで、自然環境を破壊するおそれのある行為を広く取り上げ、これらの行為を原則として禁止し、人為が加えられることによって原生の自然環境が破壊されることのないようきびしく規制をするとともに、特に必要のある地域については、その地域への立ち入りについても制限を加えることといたしております。 第三に、環境庁長官は、高山性植生または亜高山性植生やすぐれた天然林が相当部分を占める森林の区域など良好な自然環境を有する地域を自然環境保全地域として指定しますとともに、この地域の自然環境を保全するための規制または施策に関する保全計画を策定し、この保全計画に基づいて、自然環境保全地域内に、特別地区または海中特別地区を設け、これらの地区内で行なわれる建築物その他の工作物の設置や土地の形質の変更等一定の行為については、環境庁長官の許可を受けなければならないものといたしております。さらに特別地区内における特定の野生動植物の保護のために特に必要があると認められるときは、野生動植物保護地区を指定し、その地区内における野生動植物の捕獲または採取について制限を加えることとしております。 第四に、都道府県は、国が指定した自然環境保全地域に準ずる土地の区域で、当該区域の自然環境を保全することが特に必要なものを都道府県自然環境保全地域として指定することができるようにするとともに、この地域内においては国の特別地区、野生動植物保護地区の規制の範囲内で、当該地域の自然環境を保全するために必要な規制を加えることができることとし、現在多数の道県において制定済みの自然保護条例の法的根拠を明確にすることにより、国及び都道府県が相協力して自然環境の保全を総合的にはかることができるよう措置いたした次第であります。 このほか、政府がすみやかに良好な都市環境を確保するために必要な自然環境の保全の制度を整備すべき旨の規定を設けるとともに、自然環境保全審議会の設置等について、規定いたしております。 以上が、この法律案を提出する理由でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。 なお、自然保護取締官による注意命令等の権限の執行、自然環境保全のための事業に要する経費に充てるための地方債についての配慮等に関して、衆議院で修正が行なわれております。
○委員長(加藤シヅエ君) 速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(加藤シヅエ君) 速記を起こしてください。 この際、本案の衆議院における修正部分について、衆議院公害対策並びに環境保全特別委員会委員長代理山本幸雄君から説明を聴取いたします。山本代議士。
○衆議院議員(山本幸雄君) 内閣提出の自然環境保全法案に対する衆議院修正の趣旨について、御説明申し上げます。 まず、修正の第一は、基礎調査は、おおむね五年ごとに行なうようにつとめるものとすること。 第二は、知識の普及等の規定を、教育活動等を通じて自然環境の確保の必要性について国民の理解を深めるための措置を講ずべき旨の規定に改めること。 第三は、地域開発施策等において自然環境の保全について配慮するものとしているのを、配慮しなければならないものと改めること。 第四は、環境庁長官または都道府県知事は、その職員のうちから自然保護取締官等を命じ、違反行為等に対する中止命令等の権限の一部を行なわせることができる旨の規定を設けること。 第五は、都道府県は、特別地区の指定等につき行なう環境庁長官との協議には、自然環境の保全に関する計画を添えるものとすること。 第六は、都道府県が自然環境の保全のために起こす地方債については、適切な配慮をするものとすること。 以上であります。 何とぞ御審議のほどをお願いいたします。
○委員長(加藤シヅエ君) これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
○杉原一雄君 私、最近東京都内をあちらこちら歩いておる中で、非常に考え込まされることが幾つかあります。その中で、街路樹のもとに、きわめて狭い土がそのまま出ているようなところがあのですが、その囲まれた小さなところに雑草がはえ茂っている姿を見たり、あるいは清水谷宿舎からくる途中に石垣のところがあるわけですが、その石垣の割れ目に雑草が生き生きとはえ茂っている姿を見たり、あるいは国会図書館の外側のところに、あたかも雑草園と名をつけたいような、雑草を茂りほうだいにしているところがあるわけです。これらの姿を見て、一時は、百姓の子である私は、常に農業をしながら雑草と戦ってきた者としては、忍びがたいものを実は感情的に持っておったのでありますが、最近、光化学スモッグなどといわれる重苦しい雰囲気の中で、この青々とした緑の雑草の姿の中に、雑草をこのままで生かし育ててやりたいというような心境に大きく変化したことを、最近、短かい随筆の中に書きとめたことを思い出すわけであります。 事ほどさように、自然はいま大きく破壊されようといたしております。そこでこの自然を保護したい、自然環境を保全したいという気持ちは、いかなる人にも、いまは空気を求め水を求める以上に熾烈な願いになってきているのではないか。かような観点で、行政的な立場から、あるいは立法の立場から、政府の、自然保護に関する法案の国会への提案を待望しておったわけです。 ところが、たまたま一月三十日の毎日新聞に、「自然保護法要綱まとまる」、「都市の緑は”現状凍結”」、「原生林や干潟も守る」、こういう、非常に国民にとっては待望した立法の内容が提示されました。いま大臣が提案された中身と、ここに概要報告をされた中身とは、かなり違うのです。いまさらこんなことを申し上げる必要もありませんけれども、この報道では、「環境庁は開発による破壊からわが国の自然環境を守るため今通常国会に「自然保護法」(仮称)の提出準備を進めているが、二十九日までに同法案の要綱がほぼまとまった」。その骨子は、一つは、「すぐれた「景観」だけでなく、原生林や干潟、草原、雑木林など「良好な自然環境」も守る」、二番目には、「都市と近郊の緑を重視し、これ以上減らさぬよう”現状凍結”をはかる」、かなりすぐれた提案であります。三番目には、「一切の現状変更を認めない「原生保護地域」と一種、二種、三種の「良好自然環境保全地域」それに近郊緑地にあたる「緑地環境保全地域」の五段階の指定で規制する」。第四番目には、「自然保護取締官を置き、司法警察職員としての権限を与える」云々ということで、当時の環境庁の原案がつくられたわけです。 いよいよ出たなというような、いよいよ私たちが待望する赤ちゃんの誕生を迎えたような喜びを持って見守っておりましたけれども、残念ながら、国会の具体的な審議のペースに乗ったのがきわめて最近であります。そういう状況の中で、いまわれわれがこれをより具体的に審議検討するわけでありますが、かなり困難な問題でございますけれども、限られた時間の中で各野党の皆さんとも相協力して、この質問を展開する中から問題の本質を明らかにし、かつまた、これがもし成立した暁においては、より具体的に各種の希望なり、すべりどめなり、チェックをするようなことなどを含めて、ときには聞きづらいこともあると思いますが、論戦を展開していきたいと実は思っているところであります。 一番初めは、経済企画庁当局にお伺いしますが、四十四年の五月閣議決定された新全国総合開発計画が、この自然保護の問題について相当のページ数をさいておるわけです。たとえば「農山漁村の環境保全のための主要計画課題」、この中で、特にそうした地域の日常生活圏の広域化等について、かなり具体的な提起を実はしているわけであります。こうしたことについて、この自然保護法が誕生した暁において、そうした新全総が目標とする農山漁村の環境保全と同時に日常生活圏の拡大という一つのプログラム設定があるわけですが、そうしたこと等と、いま提起されようとしていることとの間に、相互補完的な関係のみではないだろうと思います、逆に、そうした計画を進めようとすると、かえってこの法律があるいは限界を示す、妨げになる問題があるのではないだろうか、このようなこれは推定でありますが、その点について、新全総を立案計画される経企庁におきましては、いまのこの法案との関係においては、相互補完的な前向きの問題であるという理解に立っておいでになるのかどうか。できれば具体的に問題をえぐっていただいて、経企庁当局の、いわゆる新全総に盛られた精神、プログラム等が明らかにされれば幸いだと思いますが、経企庁の答弁を求めます。
○委員長(加藤シヅエ君) 質問、聞いていらっしゃらなかったと思いますけれども、経企庁の方、どなたかから聞いて御答弁ください。
○政府委員(岡部保君) 申しわけございません。どうも御質問を伺っておりませんでしたものですから、いまうしろから聞いた点でお答えをさせていただきます。 一応、ただいま御審議中の法案と新全総計画との関係でございますが、私ども、この新全総計画とこの本法案との矛盾とか、あるいはそごする点というような考え方は、持っていないわけでございます。本来、新全総計画いわゆる国土の総合開発というものを計画いたしますにあたりまして、私ども自然保護と申しますか、自然環境を保全するということを非常に重要な問題点であると考えております。したがいまして、何と申しますか、いわゆる人間のための豊かな環境というものをつくっていくということを基本目標に掲げて、あらゆる自然の恒久的な保護保存の重要性というものを強調している次第でございます。したがって、原生自然地域あるいは自然環境の保全の地域、こういうような自然環境を保全するということの法的な根拠を与えていただくこの本法案の御趣旨というものは、むしろ新全総計画を実施していく際に、なくてはならない考え方であるというふうに考えておるわけでございます。あと具体的な点につきまして何かあれば、お答えいたします。
○杉原一雄君 おたくから出しております新全総計画というのがあるわけですが、そこで三七ページなり三八ページ等において、いま第二の質問点を含めて申し上げますが、これは「農林漁業地域における環境の整備」の問題、「人口激減山村における生活条件の保全」、次に「離島における環境の保全」、こうした具体的と申しますか、かなり具体的な問題点、それからより具体的には、あるいは生活センターなどをつくるような形でこうしたところの生活環境をよくするとか、そういったことを提起しているわけです。この点は、環境庁長官おりますけれども、しかしこのことが、いまこの法案で提起されている原生自然保護の環境の問題とかいろいろあるわけですが、この法の適用によりまして、こうしたせっかくおつくりになった新全総の計画等が、この法案と相矛盾するようなところは絶対ないかどうかということなんです。 そこらのところを岡部さんに聞いたけれども、あなたがおいでにならなかったわけですけれども、それは保証できますか。いまの計画とプログラム、そう具体化しているわけではないでしょうけれども、この中に出ているだけでもかなり具体的提起があるわけです。すでに行政ベースに乗っているのがありますから、今後それが離島振興の問題としても進んでいくわけですから、その場合に、いまここに提起している自然保護の法律との関係において、触れ合いが全然ないのだと、それならそれでけっこうですが、ここのところを局長、はっきり申してください。
○政府委員(岡部保君) ただいまの先生の御指摘、現実の問題として非常にむずかしいところだと確かに存じます。たとえば新全総計画で「環境保全のための計画」というところで、一番最初に「自然の保護保存」ということで書いておりますところで、この前もたしか衆議院の委員会のときにちょっと触れて御説明申し上げたのでございますが、新全総計画でも、ちょうど本法案と同じような考え方で地域を分けて考えておるわけでございます。といいますのは、この新全総計画の文面では非常にばく然とした表現をいたしておりますけれども、これのもとになりました考え方というのは、大体地域を四段階、厳密に言えば五段階でございますが、大体大きな意味で四段階に分類して考えたわけです。 まず第一の段階といたしましては、原始的な、自然をあるがままに保存すべき地域である、いわゆる何と申しますか、自然系と申しますか、自然を相当に厳密に保護すべき地域であるという考え方でございます。それから第二段階の考えは、国土保全上非常に重要であり、しかも自然保護に十分に意を用いなければならない、つまり自然の破壊があれば復元を十分に考えなければならぬというような地域でございまして、これはちょっと語弊があるかもしれませんが、むしろ広い意味でのレクリエーションの空間になっていくのではなかろうかという考え方でございます。それから第三の地域といたしましては、これが非常に多いわけでございますが、自然を利用して、食糧でありますとかあるいは木材でございますとか、そういうような生産の場に使われておるという、自然と人工の調和をはかるべき地域である。それから第四の地域は、いわゆる市街化区域あるいは工業地帯等、こういうような、むしろ人工的に開発している地域。大きく分けましてその四段階に考えたわけでございます。 そこで、この計画などにも、日本全土の三十七万方キロのうちで、一番原始的な自然をあるがままに保存すべき地域というのは、ここでは六十万ヘクタールを考える。これは現実に計画をいたしました基準年次でございます四十年時点で申しますと、全国で大体三十七万ヘクタールぐらいではないかと思いましたが、これをむしろ拡大の方向で六十万ヘクタールぐらいにする、言うなれば全国土の一・六%ぐらいにふやしていくという考え方。それから第二段階の、いわゆる国土保全上自然を保護し、あまり破壊をしないでレクリエーション等に利用していこうというような地域、これがこの文面では約六百万ヘクタールということでございますが、これも現状では四百万ヘクタール弱の地域かと存じます。これが約一〇%程度のものを一六、七%のウエートに上げていこうと。そこで第三段階目の自然利用と申しますか、これが一般的のあれでございますが、全国土の八七%程度のところを、こういうところから逆に厳密な自然を保護する地域、あるいは国土保全上重要な自然の保護の地域というような地域に移してまいりまして、八七%程度が約七九%ぐらいにこれが逆に減るであろうと、こういうような考え方。あとのいわゆる市街化地域、都市化されたところ、これはやはり現実にふえるわけでございますけれども、これは一%が二%ぐらいになるという、非常にオーダーの少ないところでございます。 そういうような考え方で考えておりまして、結局本法案の考え方と同じようなやはり発想でいろいろ考えているわけでございます。 ただ一番問題なのは、この原生自然環境保全地域と申しますか、あるいは新全総で言っております原始的な自然をあるがままに保存すべき地域というものについては、これは開発行政とあるいは実態と、それほどの問題は私はないのじゃないかと思いますが、そこで第二段階の問題、国土保全上にも重要でございますし、自然も温存しなければいけないという、ここの辺の利用が、たとえば先ほどレクリエーションと申し上げましたけれども、ややもすると人工的な自然の破壊のほうに通じるおそれがある。ここの辺に確かに現実に問題があると思います。 またもう一つには、先ほど申し上げました第三段階の、国土の大半でございますが、こういう、畑地でありますとか農耕地でございますとか、そういうふうなものが逆に、利用されておるものがあまりにも都市化されたり、あるいは自然を破壊され過ぎたりというような危険がある。したがって、でき得ればこういう地域を、自然といわゆる人工との調和というものを何とか保存しなければいけない。それが、うっかりすると人工的であり過ぎるようなおそれがある。そういうような、やはり境界的な地域の点では問題があると存じます。 ただ、いままでの傾向で申し上げれば、どうしても自然を破壊し過ぎるという感じもいたします。したがって、たとえば先ほどもお話ございましたように、離島なんかの問題、私ども離島の振興というものをいろいろお手伝いしているわけでございますけれども、たとえば離島の住民の所得をふやすということが、いわゆる外部の人の観光資源につながるということで、これを放置いたしますと、非常に自然を破壊する観光に通じてしまう。そういうようなことのないように、観光資源に、レクリエーションの場として利用していただくのはいいのですが、それが非常な極端な環境の破壊につながるということがおそろしいので、注意してこれからもまいりたいという、そういうような考え方でございます。
○杉原一雄君 それで計画書にさかのぼるわけですけれども、お手元にあったならば六ページを開いていただいたらいいわけですが、「過密・過疎現象を基本的に解決し、経済社会の飛躍的発展を図るためには、現在進められている種々の対策の成果を踏まえつつ、」、そのあとが非常に気がかりになることばがあるのですね、「国土利用の硬直性を打破し」、抽象的には、このことばはたいして引っかからないわけですけれども、しかしいろいろ政府の、佐藤さんを初め実にことばを上手に使われるから、私推理するわけですけれども、「国土利用の硬直性を打破し、新しい社会へ積極的に対応し、新しい環境を形成するという観点から、国土利用の抜本的な再編成を図る以外にない。」と。硬直性の打破の問題でありますけれども、それが結果的には、この法案が出ると、抽象的表現から推していけば、かえって、ある地域がかくかくの線引きがされるわけですから、より一そう硬直化されるというとらえ方も可能なんですね、抽象的に論理を展開していくと。そういう点で、これは杉原の読み方は間違いだ、ちょっと根性悪いぞということであれば、そういう解釈をこの委員会を通じて明らかにしてほしい、こう思います。
○政府委員(岡部保君) 確かに、ただいま先生のおっしゃいましたように、この文面の解釈ではいろいろ御議論はあると存じます。私どもの、この土地利用の硬直性というものを抜本的に直していくのだということの基本的な考え方は、むしろ、いままでのように非常に部分的な、拠点的な利用というものを避けて、もっと国土全体に広がって利用というものを考えなければいかぬというつもりでこの字句を使っておるわけでございます。したがいまして、たとえばこの計画の、いわゆるプロジェクトの一つの中心といたしまして、全国共通のネットワークというもので国土の利用を広げるのだというようなことが非常に大きな柱になっておりますのですが、そういうような考え方での国土利用の抜本的な変革という考えであったのでございまして、そういうものの中で、逆にいえば変な利用あるいは変な開発というものは、及んではならぬところに手を入れていくというつもりで決して考えたわけではございませんので、この辺は確かに解釈ではいろいろあれがあると思いますけれども、私どもの考え方はそういうつもりでございます。
○杉原一雄君 そこで、これは人の論文を引くのは非常にいやみを感ずるのですけれども、六月一日の朝日の社説では、「日本列島から緑がなくなる」と、こういうことで、例によって五十年後になると都心には緑の木がなくなるだろうという、おそるべき傾向をとらえているわけですけれども、この最後のところでこういう問題提起をしております。 第一点として「一つは、新全国総合開発計画を、本気で洗い直すことである」と、これが非常に大事だと。「そのためには、新全総の、さらに下敷きになる「自然環境保全法案」を重視することだ」という、これは経企庁に対する一つの大きな警告だ。私もまたことしの予算委員会の総括なり一般なり分科会通して、現象と産業別に分けてこうした論理を展開してきたわけですが、きょうたまたまこの法案が出てまいりましたし、そういう点で岡部さんの先ほど来の答弁等非常に重視したいわけですが、まあ心配しなさんなということであれば、それにこしたことはございませんし、重ねてこの朝日では、二番目には「「石油文明」への盲信を改めることだ」、あるいは「車社会への反省」という、三つの問題提起をしているわけですから、私は、これはいま国民の過半数の人たちの気持ちを代表していると思います。でありますから、新全総のいま総点検に入っていることは、木村長官も私への答弁で言明しているところでありますから、ただその総点検が結果的に、先ほどのことばのように、硬直性打破という形で自然破壊の方向に脱兎のごとき勢いで走り出すことにならないように、特段、この審議の過程にあたって経済企画庁に要望しておきたい、こう思います。 そこで環境庁も、いまほどの経済企画庁の岡部局長の答弁等を通じて、いろいろまた御迷惑をかける節があると思いますが、簡単でようございますが、それはこうなんだという、何かしら双方の緊密な意思統一の一端があるならば、その点を明らかにしていただきたいと思います。
○政府委員(首尾木一君) 私どもは、全国の取り残されたすぐれた自然環境というものを保全したいということで、今度の法案を出したわけでございます。したがいまして、それは本来国土総合開発のあり方というものの中に、先ほど経済企画庁からもお話がございましたように、それが基盤になって、その上に開発というものを行なうということでございますから、したがいまして、そういう点ではまさに今後、そういう点についての十分調整といいますか配慮が加えられつつ、国土総合開発計画というものが洗い直される、総点検されるということが必要であろうというふうに考えておるわけでございます。 なお、開発と自然保護との関係でございますが、特に杉原先生先ほどからおっしゃっておられました過疎問題等との関係におきまして、特に住民の福祉の向上への配慮といいますか、そういう点が問題になろうかと思いますが、私どもは、やはりいい自然環境というものを残すということが、地域住民にとりましても最も重要な問題であろうというふうに考えております。と同時に、やはり過疎問題につきまして、現実にそういうところの発展のためにはいろいろ配慮を加えていかなければいけないということで、この法律の中でも、第三十五条に「自然環境保全地域に関する規定の適用に当たつては、当該地域に係る住民の農林漁業等の生業の安定及び福祉の向上に配慮しなければならない。」というような規定を特に設け、また四十六条におきましても、これは都道府県の自然環境保全についてでございますが、そこにも同様の規定を設けております。さらに原生自然環境保全地域というもの、これは最も人為を加えないという地域でございますから、この地域につきましては、当然これは人の活動というのは全面的に禁止されるというような形でやってまいりますが、こういうような点で運用上いささかも支障のないように、できるだけそういう点につきまして十分な配慮を加えつつ、いい自然環境というものを守っていきたい、そういうように考えているわけでございます。
○杉原一雄君 次は、建設省来ておりますか。質問してからあとで来られると困りますから——。 じゃ、私いま質問するよりどころを申し上げますが、四十六年の十月十一日の建設政策懇談会が出した「七〇年代の国土政策の基調」、小林さんもよく御承知のところでございますが、この中で十二ページ、「自然環境の許容限界」というところがあるわけです。おしなべて同感なんですけれどもね、しかし、これは同時にまた大きな問題提起をしておると思います。 「世界の人口は、爆発的な増加を続け、二十一世紀初めには現在の約二倍の七十億人に達し、やがて地球が許容しうる限界に向うといわれている。」と。「この場合に、面積あたりの人口換算からすると、わが国の人口は今日すでにこの地球の限界時の状況に相当する量に達しているものと考えられる。」。この警告は、五十年で緑の木がなくなるという警告と同様に、私は重要な警告だと思います。「事実、国土をすみずみまで利用したとしても」——そのすみずみという利用のしかたの問題が引っかかってくるわけですけれども、「一億余の人々に緑、水、宅地、公共公益施設、レクリエーション空間、主要食糧の必要量を十分確保して余裕のある状況ではない。」、ここから一つの問題が、危惧の状況と期待の状況があらわれてくると思います。その状況把握と同時に、その次に生まれてくる政策の問題が出てくるわけですが、「まして、アメリカの水準に追いつこうとする巨大な生産活動が、これまでのように自然環境への影響を無視したまま行なわれるならば、国土はいたるところで過密、公害などの環境破壊に直面することになろう。美しい海岸はいたるところで埋め立てられ、工場が立ち並び、内海、湾内の多くが汚染され、」云々、「緑の山野も開発の名の下に破壊され、レクリエーションの名の下に踏み荒されよう。巨大な生産と膨大な消費がもたらすところ、廃棄物はやがて国土をおおうに至るだろう。」、こういう、かなり現状分析では正当な判断に立っておいでになります。 でありますから、この判断を基礎にしていわゆる国土利用計画、国土政策、こういうものが出てくるわけですから、万々間違いないと思いますけれども、そのことが行き詰まれば、窮鼠ネコをはむということばがありますが、それが結果的に利用のしかたに大きな反自然的なものが出てくることもまた一つ推定をされるわけです。しかしその際、自然環境保全法という法案が、どっかりと前にはだかるという結果におそらくなるんじゃないか。だから、ここで建設省としては、自然環境保全法がますます限界リミットとして、いわゆる妨害としてはだかるのじゃなくて、それを、一つの大きな輪郭の中で国土利用の問題を考えておられると思うけれども、この現状認識に立った場合にその危惧は若干ありますから、小林部長のほうから、その点についてのひとつ明らかな見解を表明していただければ幸いだと思います。
○政府委員(小林忠雄君) 先ほどの人口の換算からして、わが国の人口が今日すでに地球の限界時の状況に相当する量に達しているということにつきましては、まあいろいろ説があろうかと思いますが、この提言でこういうことを申しました根拠は、地球がささえ得る人口というものは、ある学者の説によりますと二百億人であるという説がございます。その場合に、ヘクタール当たりの人口密度が二百六十人という換算になるわけでございますが、日本の現在の人口密度がヘクタール当たり二百八十人でございますので、日本列島だけとってみれば、そういう状態にすでになっているということを認識する必要があるということでございます。 ここで言わんといたしましたところは、従来の明治以来の日本の政策、特に第二次大戦後の政策、高度成長政策というものはそれなりの必然性があったけれども、こういうような高度成長政策というものが、無限にどこまでも続くという前提のもとに政策を立てるとたいへんなことになる、したがって、そういう自然の限界とか、特に土地と水の限界というようなものをわきまえて、限られた国土の中で、国民のすべてが最高の福祉を享受し得るような利用方法をしなければいけないということを言っているわけでございまして、そのために、保護すべきところは保護する必要がある、したがって、こういう自然環境保護法のようなものは、その一翼として、当然国土政策の一部として必要なものであるということになろうかと思います。
○杉原一雄君 額面どおり受け取ってよろしいということであろうか思いますね。 引き続いて、同じ基調の中で四〇ページには「ナショナル・プログラムの内容」ということも出ておりまして、これをずっと読みこなしてまいりますと、最後に、私たちが期待するような「希少性の高い生物の生存の極限的ななわ張りや人跡まれな完全な自然林は、極力これらを自然のままに保全しなければならない。さらに、失われた自然を回復させ」云々というふうにプログラム設定をしておるわけですから、この点も額面どおり受け取っていいだろうと思いますが、小林審議官のほうで、その辺についての意図、決意を明らかにしていただきたいと思います。 と同時に、四一ページでは「自然環境の現状調査」ということが具体的な設定になっておるわけですが、それらは、去年時点で行政ベースにおりているのかどうか。とりわけ、小林審議官と先般来いろいろな角度からやりとりをしておるわけですから、だから結局新しい国土政策というのは、また円城寺プランというのが出ておるわけですから、そういうものとのからみ合いにおいて、自然環境の現状調査の問題がすでに具体的な作業に入っているのかどうか。もし将来のものならば、いつごろどうなるか。同時に、そのことは結果的には、おたくだけで独走する素材のものではないのですから、その辺のところは、とりわけ環境庁との関連はどうなっているのか。そういう点、プログラムを具体的に実施されるにあたっての建設省の方針ですね、それを実は承りたいと思います。
○政府委員(小林忠雄君) ただいまのところは、先ほど御指摘になりました「自然環境の許容限界」に対応する部分でございます。すなわち、従来のような高度成長がそのまま無限に続くということはあり得ないということを、まず言ったわけでございます。そのためには、その高度成長の、経済発展の行く手をさえぎる幾つかの限界があるということを指摘したわけでございますが、その一つとして自然環境に許容限界があるということを言ったわけでございます。 そこで次に、しからばそういう行く手をさえぎるものに、どのように国土政策が対応していくかという部分の一部といたしまして、ただいまの自然の許容限界に対してどういうことをやっていくかという場合に、国土を、人々が日常活動する生活空間、それから日常活動しない非生活空間とに、さい然と区別をして対応を立てていく必要がある。そのために、一つの自然保護全体としての国土のナショナル・プログラムをつくる必要がある、こういうことを言ったわけでございます。ただいま提案されております自然環境保全法案は、その中のいわば非生活空間の保全にあたる部分があろうかと思うわけであります。残りの生活空間につきましても、これを無限に開発をいたしますと、許容限界を越えて回復不能の状態になる。すなわち、都市地域その他における、いわば建設省の守備範囲におきましても同様の問題がございますので、この法律案の附則にございますように、次の国会には、都市部におきます環境確保のため必要な自然保護の制度について提案をいたすつもりでございます。 それから自然環境の現状調査の問題につきましては、この法律案の第五条におきまして、国が各種の自然環境保全のために講ずべき施策について必要な基礎調査を行なうということになっております。建設省の担当部門といたしましては、一つには、国土地理院が国土全体の地図の作製その他をやっているわけでございますが、従来は地形図をつくるというようなことが中心でございましたが、航空測量とかその他、機械的な進歩によりまして非常に早くそういうことができるようになりましたので、土地利用及び自然の状態の刻々の変化というものをとらえたような調査をいたしていきたい。都市の近郊におきましては、一部そういうような調査及びそれに基づきます地図の製作等をやっているわけでございますが、さらに自然環境の調査というかっこうで、そういう地図の作製等を国土地理院の業務としてやっていきたいと考えております。これが第一点でございます。 もう一つは、開発によるインパクトがどういうように自然に影響し、かつ、それがどの辺が限界であろうかということでございますが、これは全くマクロ的な意味もございますが、建設省の公共事業の執行に当たりまして、たとえば山間部に道路をつくった場合に自然にどのような影響があるか、どの程度までだったら開発の影響に耐えられるか、したがって、道路を築造するその他の開発行為をいたした際に、どのようなルートを選ぶのが適当であるか、いかなる場合には道路をつくるべからざるところであるか、つくった場合にどのような構造にすれば被害が最小限にとまって、また、ある程度の自然環境の回復が可能であるか、こういうような、やや技術的な調査等が必要になってまいると思いますが、こういう点につきましては、来年度以降の重点施策としてひとつ取り上げていきたい。 建設省の公共事業は、いままでは、家はできればできるほどいいということを建設省も考えておりましたし、国民もそういうぐあいに考えていたわけでございますが、今後、このように国民の思想も変わってまいりましたし、そういう環境との対応性を考えずに公共事業をやるということは、おそらく不可能であろうと思いますので、われわれとしては、最もこの点は今後の公共事業施行の死活問題でもございます。最重点の施策として調査をやっていきたい。その際に、全体の自然環境調査という点につきましては、環境庁とも十分御相談をしてやっていきたいと思っております。
○杉原一雄君 一言でいいですから、環境庁側では、いまの小林審議官の答弁をお聞きになって、すでに連絡調整をなさっていることだと思いますが、御決意をひとついただきたいと思います。
○国務大臣(大石武一君) ただいまの建設省の話でございますが、われわれは近いうちに、公共事業につきましては環境アセスメントと申しますか、こういう考えを取り入れて、環境保全についての十分な考慮を取り入れた公共事業を施行するようにしてまいりたいと考えております。このことは、将来なおいろいろ発展いたしまして、その他の観光事業とか、その他いろんなことにも及ぼしたいと思いますが、とりあえず公共事業については、そのような考えでお互いに協調的な態度をとって進んでまいりたいと考えております。
○杉原一雄君 小林審議官が最後に、家はつくればつくるほどよろしいという思想は、ぼくら政治家の活動の中でもかなりウエートを占めてきた考え方でしたが、最後に、しかしながらということで自然第一主義のことを強調されたことは、非常に貴重な発言だと理解しておきたいと思います。 次に、農林省関係おいでになっておりますね。「農業の動向に関する年次報告」がこの間手に渡ったのでありますが、その中で、一八六ページですが、「自然休養村の建設」というのが、四十六年度からすでに計画を進められておるわけですが、この「自然休養」ということば自体が非常に魅力的なことばでありますが、このことは、いま作業、計画、進行状況等いろいろお聞きしたいわけですが時間がありませんけれども、これをお進めになる場合に、いま自然環境保全法というのができますから線引きされるわけですけれども、その辺のところの調整ですね、これは事業の角度からそうした問題点はないのかどうか、この点をお聞きしたいと思います。
○説明員(松元威雄君) 自然休養村と申しますのは、御案内のように農山漁村の持っております自然環境、それからさらに、そのもとで営まれます農林漁業というもの、これは国民のいわば休養の場として、農林漁業というものを理解しながら休養をして、いわば理解を深めながら休養する場ということで活用して、あわせまして、それを通じて農林漁家の所得の増大にも役立たせようと、こういう趣旨であるわけでございます。 したがいまして、これは自然環境を保全するということと同時に、その中で行なわれます農林漁業というもの、二つの面があるわけでございまして、これは事業の進捗状況は簡単に申しますと、四十六年度に調査をいたしまして、今後引き続き調査計画を立てているわけでございますが、本年度以降、これは農林省の事業としますれば、たとえば構造改善事業でございますとか、あるいは第二次の山村振興特別開発事業でございますとか、あるいは林業構造改善事業等の中でいわゆる事業化をしてまいるわけでございますが、その場合に、いま申しました農山漁村の持っております自然環境の保全活用ということと、その中の農林漁業のいわば活用ということ、両者を十分調整するように、当然、この法案ができたわけでございますから、その後におきまして調整を保って事業を進めていくということでございます。
○杉原一雄君 そこで、次のページにわたるのですけれども、「山村、過疎地域の振興」という項目の中で、特に(1)のア、イ、ウ、エですね、エ、「山村における分散小集落の移転を含めて集落整備を図るための集落再編モデル事業を実施したほか、山村地域の今後における開発整備を推進するため、四六年度においては」、そのあとのことばが非常に私抽象的であるだけに心配をするわけですが、「山村地域の類型化と開発戦略のマクロ的検討を実施することとした。」と。このことはいいのですが、このことばが拡大されていくと、ここで権利主張がされると、いまの法案との重なりと申しますか、いろいろな点で紛淆するようなところが出てくるのではないかと思いますが、その辺の解釈、また考え方の限定、そうしたことを実はここで明らかにしてほしいと思います。
○説明員(松元威雄君) ただいまの個所は、御案内のように従来山村につきましては、経済企画庁が山村振興法に基づきまして山村振興計画を立てる。その一環といたしましていろいろな事業をやっているわけでございますが、農林省では山村振興特開事業というものを行なってまいっているわけでございますが、山村のいわば開発事業も、ある意味では一巡をした点もございますので、今後それをさらに拡大してまいっていこう。その場合に、いわゆる従来の指標にかえまして、従来は、ある意味では狭い意味で山村におきます農林漁業を振興しましょうというのが中心にあったわけでございますが、それをもっと広い視野にとらえまして、山村の持つ機能を、ただいま問題になっておりますような自然環境の保全という機能もさらに生かす、その中で、あわせまして農林漁業というものを振興させていこう、両者をうまく調整していこうということで、ただいま類型化ということばが出たわけでございますが、山村の中にもいろんな類型がございます。自然環境を保存して、それを環境的に利用しようというタイプもございますし、あるいはまた、森林資源というものを十分活用しようという型もございます。それから農業中心という型もございます。そこを、いろいろ類型に応じて振興をはかっていこうという趣旨で類型云々ということばを使ったわけでございますが、そういう類型化はいたしますが、その中におきましては、山村の持っておりますそういった自然の環境というものと、その中で行なわれます農林漁業というものを、十分調整しなければいけないということは当然でございますので、いま振興計画でそれを事業化しようとしている段階でございます。
○杉原一雄君 次は主として林野庁関係ですが、これもまた「林業の動向に関する年次報告」、林業白書の中で指摘されておることでございますが、お手元にあるならば七三ページを開いていただきたいのでありますが、この4のところで「国民の自然参入の場としての森林の利用と保護」、かなり書かれたことは胸を打つものがあるわけです。 「わが国では、近年、国民生活の向上および都市化の進展を背景とした国民の自然への積極的参入による人間性の回復の欲求が高まり、余暇の増大や道路網、交通機関等の発達とあいまって、国民の自然参入の場としての森林の重要性がますます高まっている。たとえば、森林が重要な構成要素となっている国立公園および国定公園の利用者数の推移をみると、四〇年から四五年までの間に、国立公園では一億八九〇〇万人から二億八五〇〇万人へと一・五倍」云々という計数をあげながら、そのあとでこういうことを書いているわけですね。「以上のように、わが国の森林は多くの国民から親しまれながら利用されてきており、今後も国民生活の向上と都市化社会の進展に伴って、国民の利用は増加をみせるものとみこまれる。しかしながら、このように国民の自然参入の場としての森林の利用が進むにつれて、次のような問題が生じてきている」、それは第一として、「国民の自然参入の場としての豊かな森林の内容が心ない一部の人々の行為によって破壊されつつあるという事実がみられるほか」云々、あるいは第二として、「モータリゼーションの進展もあって」山にそうした自動車が入って、いろいろなことでいわゆる破壊混乱があるということなど指摘してあるわけです。 だから、この文に関する限りは、まさにきょうの提案理由の背景になる理論的根拠のように私は思いますが、しかし、ただ自然参入の場としていろいろな問題が起こっておることなど具体的指摘があるわけですが、そうした指摘と、この法に対する林野庁当局がかけている期待と申しますか、そういうものが法の立法過程の中で、この立張とこの立法との関連において、いかなる期待をこれにかけておいでになるか。かえって、いや、そうじゃない、林野庁本来は、木をつくり、木を売り、お金をもうけるという悪名があったこともありますから、そういったこと等の反省に立ったこうした問題提起のようにも理解されますが、きょうの審議する法との関係において、この辺のところのかかわり合いはどうなっておるのか、これを林野庁のほうからお答えをいただきたいと思います。
○政府委員(福田省一君) お答えいたします。 ただいま御指摘ございましたように、従来は、森林に対する国民全般の方々の要請というのは、森林から生産されますところの木材に重点が置かれておったことは事実でございます。戦前は、戦争用材としての軍需材、戦後は、荒廃しました都市の復興用材、あるいはまた三十五、六年ごろは、木材価格の高騰を押えるための増産というふうな形で、木材そのものの生産に対する期待が非常に強かったわけでございますが、ただいまここで出ましたように、木材だけでなくて、森林そのものに対する保全の要請、特にその中において、都市の人たちのいこいの場として、レクリエーションの場として、森林に期待する声が非常に強くなってまいってきているわけでございます。 そういうわけでございまして、従来の森林経営に対する私たちのとってきました態度は、木材生産以外に、森林そのものの持っていますところの公益的な機能、たとえば治山治水に対するそういう治山工事、あるいは水源涵養のための保安林とか、その他いろいろと保安林だけでも十七種類あるわけでございます。そういう措置をとってきておりましたけれども、特にレクリエーションの場としての森林、これについての保健休養林的な使命が非常に強くなってきているわけでございます。 そういう意味で、今後は保安林の制度につきましても抜本的な改正を加えていきたいと、こう思っておるのでございますが、ここにありますように、一般の利用される方々によって、自然の中にありますところのいろんな動植物あるいはその他、被害を受ける場が非常に多くなってきております。あるいは車が相当奥山に入り込んできている。そのために、いろいろと樹木そのものが被害を受けますばかりでなくて、車に乗ってきた人たちによって高山植物その他が非常に荒らされるという問題もありますし、また、キャンプ等によりまして山火事が非常にふえておるというふうなこともあるわけでございます。それによりまして、国営林のみならず、民有林の造林された山が一挙に壊滅してしまうと、この復旧にまた数十年はかかるというような問題もあるわけであります。そういうふうなことでございますので、私たちは森林の経営につきましてはこういう面を特に重視し、計画、制度というものをまた今後森林法の中で制度化してまいりたいと思うわけであります。環境庁のおつくりになりましたこの保全法案と、林野庁が持っておりますところの森林法との関連におきまして、事前に環境庁と農林省の間に十分計画を協議調整いたしまして、それに基づいて森林の経営をやるというふうに考えているわけでございます。そういうことで、今後は森林の保護という点につきまして特に万全の措置を講じてまいりたいと思うわけでございます。
○杉原一雄君 それでは、先ほどから法案に一条も触れなかったので、これもおかしいので、最後のほうの四十五条について触れますが、これは法案の字句をいろいろ論議をするのではありません。第四十五条には「都道府県は、条例で定めるところにより、その区域における自然環境が自然環境保全地域に準ずる土地の区域で」云々と、こういうことで、都道府県が条例を制定することによって、国家が追求する自然保護の一端をになって大いにがんばってもらいたいという立法でございますから、問題はございませんけれども、ただ、このことがやはり各都道府県へ反映して、事務当局に伺うと二十何都道府県がもうすでに条例制定をしているわけでありますが、富山のほうではいまようやくこの準備段階に入りました。 この六月県会で条例を制定しようとしているわけですけれども、ときたまたま、六月十三日に県下の市町村長を集めて、公聴会という意味でありますまいけれども、町村長の意見を聞いたそのときに、最も熱烈に発言し、最も熱烈に要望したのは、私の県では山奥の村長さんたちであります。私もよく知っておりますが、この村長さんたちがどういう問題を提起しておりますかというと、山の人たちの犠牲で自然が保全され、平地の人たちが恩恵を受けることになるような条例でもある。条例では規制に伴う損失の補償をうたっているが、山の人たちの犠牲をどこまで補償するのか。また別な村長が、山間地を開発していかなければ過疎化を助長させることになる、最小限の自然の保全は考えるが、開発は必要だ、林道の建設など一つ一つの問題に許可が必要になったのではかなわない、未開発の環境保全については配慮してほしいという、山奥の村長さんたちですが、素朴な訴えを実はしております。 私は現場を知りませんから詳細はわかりませんが、この報道された両村長のことばを、そのまま環境庁に対する質問と受け取っていただいて、長官からこの場を通じて、そのような心配や疑いに対して明確なるお答えを大臣からいただきたいと思います。 第二点として、先ほどから企画庁、建設省、農林省、それぞれの立場から自然保護の必要をみな訴えております。認識においてはそう変わりません。しかしながら、いままで進められてまいりましたGNP第一主義、高度経済成長政策そのものが今日のような状態をかもし出しているわけでありますから、環境庁長官も先ほどからの御答弁をお伺いなさいまして、この法案がねらっている第一条の目的なりこういうものが、このまま実現するには相当の決意ときめのこまがい努力が必要だと私は思いますから、この点についての長官の決意を簡単にお伺いして、私の質問はこれで終わります。
○国務大臣(大石武一君) 最初の御質問の、山村の住民たちの生活を犠牲にしてまで自然を守るのではないかというような心配があるようでございますが、われわれは、そのようなことは考えておりません。決して犠牲をしいるのではなくて、正しい生活環境を保つということが、都会人のレクリエーションだけに使うのでなくて、そこに住む人々の、地域の人々のやはり正しい生活環境を守ることが、われわれの考え方の根本であるということを認識してもらいたいと思います。 それは、いろいろ詳しいことを申し上げなければなりませんが、そのような時間的な余裕もございませんので一切言いませんが、ただ単なる、いわゆるいままでの政策、高度経済成長優先主義の、そのようなものの考え方、開発というようなものの考えでは、断じてそのような山村の人々の生活は救われないということをはっきり申し上げたい。もっと広い見地から、長い立場から、その彼らの持っている、いままでせっかく温存されたりっぱな自然環境を、これを正しく利用することが、将来のりっぱな発展のもとであるということを認識してもらいたいと、こうはっきり思う次第でございます。 それから第二点につきましては、各官庁から、いろいろとあたたかい理解ある答弁を聞きました。非常にうれしく思いました。しかし、このような一部の官庁の理解だけでは、とうていわれわれの日本の正しい豊かな自然環境を完全に守ることは、まだまだ十分でないと思います。一そうあらゆる熱意を持って、全国民の支持のもとに、あるいは理解のもとに、協力のもとに、この日本の正しい自然が守られるように努力してまいりたい、そういう決意でございます。
○内田善利君 この法案が今国会会期末に急に提出されて、きょう一日で審議をして採決するというようなことのようでありますけれども、私は、こういう自然環境保全法のような重要な法案は、十分審議して、国民の納得した上で成立させるべきであると、このように思うわけです。と申しますのは、こういう自然環境保全法のような大事な法案は、国会の初めあたりに提出して十分審議すべきである、私は、公害十四法案が提出された一昨年のあの国会当時提出さるべきであったと、このように思うわけです。急にこの法案を手にして、もう至るところ私は考えなければならないところがあると、そのように思うわけです。 そういった意味で慎重に私は審議していただくようお願いするわけですが、まず基本姿勢として、いま申しましたように、この自然環境保全法案は当然あってしかるべき法律である。このように日本全土が環境が破壊されておる現状で、当然あってしかるべき法案である。私はこの法案自体には問題はないと思いますけれども、内容において、いま申し上げたような姿勢、そういうことが問題ではないかと、このように思うわけです。国民の世論が盛り上がってき、また国際的にも人間環境会議が開かれる、こういった環境から苦しまぎれに急に提出されたと、このように私は思うんですが、この点について、まず環境庁長官の基本姿勢をお伺いして質問に入りたいと思います。
○国務大臣(大石武一君) 日本の自然環境が、高度経済成長の考え方によりまして、無秩序な開発ということによりまして破壊されておりますことは、同じ御認識のことと思います。このような国土の自然をどうかして守りまして、われわれが先祖伝来伝えてこられたこの豊かな自然を、やはりりっぱに温存して子孫に伝えることが、われわれの重大な使命であるとも考えますし、また、いろいろと世界の心ある人々が考えておりますように、このように自然の復元力なり豊かな自然をこわしていきますと、近い将来には人類の運命に大きな影響があるだろうということを考えますと、やはりわれわれはどのようなことがあっても、できる限りの、秩序のない破壊からこの自然を守らねばならないと決意いたしております。 そういう考えで、環境庁が昨年の七月発足いたしましたが、その発足の当時から、われわれは日本のこの自然をどうかして守っていかなければならない、秩序のない破壊から日本を守らぬばならないと決意いたしまして、当時からこのような日本の自然を守る一つの法律をつくることをわれわれは心がけて努力してまいりました。そのとき、いろんな考え方をわれわれも自分で述べたり、あるいはいろんな考え方が、変わったり、進歩したり、進んだりしてまいりました。しかし、日本の国土全土を、やはりこのような秩序あるものの考え方によって、自然の守り方によって、保護したり、利用したり、あるいは活用をしたりしなければならぬという方針のもとに、この法案をつくってまいったわけでございます。 しかし、そのような大きな、日本の全国土を全部調整するような法律は、ちょっと半年や一年や二年ではこれはつくられません。いろいろな、ほかの省庁も言っておりますように、環境容量であるとか、環境のいろんな状態であるとか、そういうものを全地域にわたって調査しない限りは、確実なその利用のしかた、活用のしかたの基準ができないわけでございます。そういうことで、われわれはそういうことを考えまして、五年後あるいは六年後、七年後には、そのような国土を守るような、そのようなものの考え方にあるいは行政に到達いたしたいと考えておるわけでございますが、その前提として、やはり一つの日本の国土、自然というものを守ってまいる心がまえと、その一部の準備を始めなければならないと考えてまいりました。 われわれはいろいろ努力してまいりまして、ことに自然保護局がほんとうに血の出るような努力をいたしまして、あの一月の末には、実は一ころ新聞その他に発表になりましたような、一つの構想を持った内容のものができたわけでございます。しかし御承知のように、法律をつくる場合には各省庁の理解と協力を得なければ、これを法律案にすることはできません。そういうことをわれわれは一月の末から、各役所とあらゆる努力をしてまいりましたが、なかなか思うような協調が得られませんで、ようやく五月になりまして、しかも国会がもう会期延長になるような間ぎわになりまして、ようやくほかの省庁との一応の了解がついたわけでございます。そこではじめて内閣の法制局において法案の審議に入ったわけでございますので、実は、会期延長になりましてからこの法律案が国会に提案されるようなことになりまして、非常に申しわけなく思っている次第でございますけれども、そのようないきさつがあったわけでございます。 しかも、その他の官庁との折衝におきましては、われわれの、以前に考えた構想とはだいぶ後退したものになってしまいました。たとえば、自然公園法とこの新しいわれわれが考えておるいろいろな他の保存すべき地域との間に、二つのものになったんですね。実は一本すっきりしたものを考えておったわけでありますが、いろいろないきさつでこんなことになってしまったわけでございます。われわれも残念でございます。しかし御承知のように、現在の日本の国土の自然の破壊の現状を見ますと、一日もこれはほうっておくわけにいきません。たとえわずかな地域であっても、一本の木であっても、われわれは至急にこれを保存したい、守りたいという気持ちでいっぱいでございます。そういうことで、この法律案は非常に欠点だらけの、必ずしもわれわれの期待どおりのものではありませんけれども、これでもある程度の日本の地域が守り得ると思います。 でありますから、とりあえずこういうものでもとにかく早く法律にいたしまして、これを武器として日本の国土を少しでも守ってまいりたい、緑を少しでも守っていきたい、そうして、できるだけ早い機会にこの内容を充実して、三年、五年、七年の間には、われわれが理想としております日本の全国土に対する、日本の正しい国土の自然を守り得るような行政までこれを高めていきたいと、こういう望みを、悲願を持ちまして、あえて欠点があると知りながら、しかも御審議をいただく時間的な余裕の非常に少ないことをあえて知りながら、御無理をお願いした次第であります。そういう気持ちでおりますので、その点を十分御認識、御了承いただきたいと思う次第でございます。
○内田善利君 それでは、各条おもな点だけまずお尋ねしたいと思いますが、自然環境の保全ですけれども、その自然環境の定義がないわけですが、自然環境とはどういう範囲を言うのか。
○政府委員(首尾木一君) 自然環境とは、自然が、おのずからの徴妙な法則にしたがって相当の範囲にわたって生成、展開した状態で、一般的には、人工的に造成した都市施設等の人為的環境と対比して考えられ、天然の森林地帯や原生林などは、その典形的なものでございます。また、人工植栽など自然に一時的には大幅な人為が加えられた場合でございましても、現に自然的要素が優先して存在している状態は、社会通念上、自然環境として把握することが至当であると考えております。 なお、都市の中に数ヘクタールにわたり自然林等が残されているような場合、そのような場合には、その森林は広義における都市環境の一部ではございますが、同時にまた、それ自体に着目した場合には独立して自然環境を形成しているものと考えられるので、一般的には、自然環境と都市環境とは対立するものとして考えておりますが、厳密な意味においては、これらは対立する概念ではないと考えております。 また、自然環境は、人間が人間らしく健康で文化的な生活を営むためには不可欠なものでございますが、他方において、自然環境との調和をはかりつつ、国土の開発や山村振興等を推進する必要があることも否定できませんので、地域の実情に即し、かつ当該地域における自然環境の特性等を考慮しまして、原則として一切の開発を認めない、厳正に保全すべき地域と、ある程度の開発行為を認めながら自然環境を保全する地域等に区分いたしまして、自然環境の適正な保全をはかろう、かように考えておるわけでございます。 大体、自然環境というものの概念としましては、以上のようなとおりでございます。
○内田善利君 私は、いままでの公害は、環境がまず汚染されたと思うのですね。環境が汚染されて、そのあと健康被害が起こっておるというふうに思うんです。まず環境を保全することが公害を防止する一番重要な問題だと思うんですね。そういった意味で、この自然環境保全法案、非常にあるべき法律であると、このように思うわけですが、まずその第三条ですね、第三条の「自然環境の保全に当たっては、関係者の所有権その他の財産権を尊重するとともに」、こうありますが、この「尊重」ということは具体的にどういうことなのか。それと「国土の保全その他の公益との調整」、この「公益との調整」ということは具体的にどういうことなのか、これに対する国の予算措置はどうなっているのか、お聞きします。
○政府委員(首尾木一君) 第三条は、いわば自然環境保全をいたします際の、一般的な基本的な考え方の一つといたしまして、いわばあたりまえと申しますか、のことを規定をいたしたわけでございまして、「所有権その他の財産権」というのは、これは当然に憲法二十九条によりまして尊重されるというものでございますので、そういうものについて、これに過度の制約が加わるということにつきましては、これは避けなければならないということでありまして、この法律におきましては、原生自然環境保全地域等につきましては、私有地はこれを指定をしないというようなところに一つの具体的な考え方としてあらわれております。それからまた、次の自然環境保全地域等におきまして、許可等を受けられない場合には、受けられないことによって損失を生じた場合には、その損失を補償するといったようなところがその具体的な適用ということになっております。その他、全般といたしまして、こういったようなことには行政の運営の上において配慮をいたしていくという一般的な規定を、配慮規定として書いたわけでございます。 次に「その他の公益との調整」ということでございますが、これは先ほど杉原先生の御質問にもございましたが、たとえば国土総合開発をするというような場合におきましても、全体としてどこを開発し、どこを残すべきかといったような問題もございまして、私どもはやはり残された自然の環境というものをよく守っていきたいというふうに考えておりますが、国土の秩序ある利用あるいは活用といったような観点と、それからこの自然環境の保全といったようなことについての調整ということを全体として頭におきつつ、そういった公益的な事業との調整をはかっていこう、こういうような趣旨でございます。
○内田善利君 予算措置は。
○政府委員(首尾木一君) この第三条の規定は、こういったような一般的な規定でございますので、このために予算措置として幾らを設けたというものではございません。
○内田善利君 次に第五条ですが、「(基礎調査の実施)」ですね、「国は、地形、地質、植生及び野生動物に関する調査その他自然環境の保全のために講ずべき施策の策定に必要な基礎調査を行なうよう努めるものとする。」と、このような努力事項になっているわけですが、今日まで、この法案が策定されるまでの間にどのような調査がなされておるのか、この点、お聞きしたい。
○政府委員(首尾木一君) 具体的な地域の設定のためには、当然に調査を必要といたすわけでございますが、これにつきましては、従来私どもの権限の及ぶ範囲というのが公園関係内に限られておりましたこともございまして、網羅的にこの調査が整っておるというものでございません。従来、各種のいろいろな調査がございまして、そういったような調査を集めまして把握をするよりいたし方がないというような現状になっておりますが、今後この法律が通りますれば、四十七年度以降におきまして、こういったような点についての調査というものをさらに強力に実施をいたしまして、法の運用上遺憾なきを期していきたい、かように考えておるわけでございます。 なお、基礎調査といたしまして、衆議院で御修正もございまして、五年ごとに全国的な基礎調査というものを行なうということになっておりますので、これは四十八年度におきまして要求をいたしたい、かように考えておるわけでございます。
○内田善利君 私はこの「国」というのは、環境庁であろうかと思うのですけれども、やはりこういった基礎調査がなされた上で法律の策定がなされるべきだと思うのですね。何だか絵に描いた餅のような——この法案全体的にですね。いままで手足もなく予算もなかった関係で、できなかったことは認めますけれども、やはりある程度の調査がなされて、こうやるべきだという法律であるべきだと思うのですね。そういった意味では、今後五年に一回ずつそういった調査をされるということでありますが、こういった調査に基づいた自然環境保全でなければならない、私はこのように思うわけですね。 その次に第六条ですけれども、五条にもありますけれども、「施策の策定に必要な基礎調査」と、第六条の「自然環境の保全のために講ずべき施策の策定及びその実施に必要な科学技術の振興を図るため、試験研究の体制の整備、研究開発の推進、研究者の養成等必要な措置を講ずるものとする。」とありますが、これも今後の問題であろうかと思いますけれども、具体的にはどういうことを言っているわけですか。
○政府委員(首尾木一君) すでに公害につきましては、公害研究所の設置が準備されておりますので、この公害研究所への併設、場合によっては独立の自然保護研究所の設置といったようなことで、自然環境保全に必要な試験研究を専門的に行なう研究部門の充実につきまして検討するとともに、既存の大学研究所あるいは関係行政機関の試験研究機関を活用する等、幅広く専門の学者、研究者の知識を活用する組織体系を整備してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
○内田善利君 その次の「(知識の普及等)」というところが衆議院で修正されておるようですけれども、自然を愛護するという立場から、自然環境保全の思想を高めるということですが、まず、原案は「(知識の普及等)」であったわけですが、この「知識」はどういうことをさすわけですか。
○政府委員(首尾木一君) たとえば、自然における生態系の問題でありますとか、あるいは自然の愛護の考え方でありますとか、そういったようなことをさしておるわけでございます。
○内田善利君 日本の国民性か知りませんけれども、外国に比べて自然を破壊する面が非常に強いわけですが、山に登ってはいろいろな自然にあるものを取ったり、あるいはつんだり、簡単にやっている傾向が多いわけですけれども、こういった自然愛護の精神を、学校教育等でカリキュラムに入れて自然愛護の精神を教えていくとか、あるいは生涯教育等でもこういったことを深めていくというようなことでこの修正案が出たのだと思いますが、教育活動に、学校のカリキュラムに入れて、これを、自然愛護の精神をもっと植えつけていかなければならないと、このように思うんですが、その点は長官、どのようにお考えですか。
○国務大臣(大石武一君) 私も同じように考えております。学校のカリキュラムの中にも当然入れなければならないと思います。いままでは、たとえばジョージ・ワシントンの桜の木を切ったことが昔の教科書にありますが、あれは正直なことをほめるだけで、自然愛護のことはむろん入っておりません。ああいうふうなものはだんだんやはり変えまして、自然愛護をカリキュラムの中に入れたものがどうしても必要じゃなかろうかと思います。 おっしゃるとおり、その他学校教育あるいは生涯教育ということをずっとやるべきだと思いますが、そのような面と同時に、片方では、やはり自然を守らなければならないようにするような仕組みを強制をする、国民にですね、むしろ強制的に、そのような自然の愛護あるいは自然を守るための行為をしなければならないようにし向けるようなことも、一つの大事なことだと思います。たとえば、自然の中に入りました場合にはあくまで清潔にするように、いろんなごみをほうったりするようなことをしないように、たとえば、うんと清潔にしておけば不潔にすることができなくなるような、そのようなことも必要でしょうし、いろいろな積極的な面、消極的な面から、いろいろな国民の教育と申しますか、協力と申しますか、そういうことに努力してまいりたいと考えております。
○内田善利君 その次に、第九条ですが、「地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて、国の施策に準じ、当該地域の自然的社会的諸条件に応じて、自然環境を適正に保全するための施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する。」という、この第九条。地方公共団体がこの施策を実施する上における予算はどうなるのか、この責任はどうなるのか、この点。
○政府委員(首尾木一君) 地方公共団体は、国に準じまして、自然環境の保全についての責務を有するわけでございますが、この保全事業、たとえば各種の保全事業につきまして国にかわって行なうというものが規定されておりますが、これにつきましては、補助金というものの規定がございます。それから、地方公共団体が独自でやるものというものにつきましては、これは都道府県の自己財源によって条例に基づいてやります。 それから、さらに特殊のものといたしまして、土地の買い上げという問題がございまして、これは四十七年度の予算で約六十億の土地の買い上げというものを計画をいたしておりまして、これは特に自然状態のすぐれた地域、現在四十七年度は国立公園内でございますが、そういう地域について買い上げまして、地方が交付公債を発行し、国がそれに対して十分の十ないし五分の四、十分の八の補助率でもってこれに補助をやっていくというような制度が、新たに四十七年度から開かれております。したがって、この法律におきまして、地方が自然の環境を保全するために行なう事業についての地方債の発行につきまして、十分配慮をするというような規定を設けておるわけでございます。
○内田善利君 今度は十条の「事業者は、その事業活動の実施に当たって自然環境が適正に保全されるよう必要な措置を講ずるとともに、国及び地方公共団体が実施する自然環境の保全に関する施策に協力しなければならない。」と、こういうことですが、事業者がこういう自然環境保全のための事業を行なう場合には、補償はありませんか。
○国務大臣(大石武一君) これはやはり当然の、これ、書いたことでございまして、その場合には、当然こちらに許可認可の権限もございます。そういうことによって協力をしいるとともに、やっぱり公共的な精神をもって、できるだけ自然環境保全できるような協力をしてもらいたいということをわれわれは考えておるわけでございます。
○内田善利君 このことについてはまたあとで、具体的に事例をあげてお聞きしたいと思います。 実は審議会ですけれども、審議会のメンバーも、衆議院の附帯決議で「自然環境保全審議会の委員の構成にあたっては、自然科学者および社会科学者を含む適正な人選を行なうこと。」と、このように附帯決議をつけておるわけですが、この選定基準はどのようなつもりで、どのような考えでなされるのか。
○国務大臣(大石武一君) 私どもは、この審議会というものは、われわれの諮問にこたえまして、われわれが日本の自然環境を正しく保全するためのいろいろな問題につきまして、その判断を仰ぐ、あるいは諮問をして、いろいろな相談をいたしたいということで、この審議会の運営をそのように運営させていただきたいと思います。そういう意味で、われわれは日本の自然環境保全についての高邁な精神、理想、あるいは理解あるいは知識を持った、そういう方々を審議会の委員にお願いをして、われわれに対する一番正しい忠告者であっていただきたい、こう考えておる次第でございます。
○内田善利君 委員は四十五人で組織されるわけですが、現在あります自然公園審議会、それから鳥獣審議会、これとは別個に委員は構成されますか。
○国務大臣(大石武一君) これは、全部それを改組いたしまして、一本の審議会ということにする方針でございます。 なお、委員は、いままで六十名ございますけれども、その中で、大体各官庁の次官級の人が、役人が約二十人近く入っておりました。今度の場合には、役人は一切入れないで、民間の人々の高邁な方々をお願いしたいと思っておりまして、四十五人あれば用が十分間に合う、十分だろうと考えておる次第でございます。
○内田善利君 二項の「自然環境の保全に関する重要事項を調査審議する。」、この「重要事項」とは何ですか。
○政府委員(首尾木一君) これは、この法律できめておりますもの以外に、自然環境の保全に関し、その指定に応じての重要事項を審議するということをさしておるわけでございます。
○内田善利君 五項に「特別の事項を調査審議するため必要があるときは」とあります。この「特別の事項」とは、どういうことを予想されておりますか。
○政府委員(首尾木一君) いろいろ例はあるかと思いますが、特別の知識を必要とするような事項、特に専門的なことについて研究をする、調査をする必要がある事項といったようなものを意味しておるわけでございます。
○内田善利君 第三章の「原生自然環境保全地域」についてですが、この原生自然環境を現在所有をしている所有形態、こういうものは、どういうものがあるか掌握しておりますか。
○政府委員(首尾木一君) 原生自然環境保全地域は、この法律にございますように、指定をしますのは、国・地方公共団体、都道府県あるいは市町村、そういったようなところを考えておるわけでございます。 追加いたしますが、もしこの中に民有地が含まれているという場合には、先ほども申し上げました買い上げの予算がございますので、そういうもので買い上げました上で、公有地にした上でこの地域を指定をするというような考え方になっておるわけでございます。
○内田善利君 現在の所有形態の状態ですけれども、大体どういう割合ですか。自然公園法の中にも特別区域があるわけですね。
○政府委員(首尾木一君) 現在の自然公園の中に特別保護地区というのがございまして、かなりそういうところにこの原生自然環境保全地域というものが多く存在をいたしております。それからなお、それ以外のところにつきましても、原生保全地域と指定すべきところがありまして、多くの場合、国有林が非常に多いものというふうに考えております。
○内田善利君 民有地ですか、私有地ですか、に対しては買い上げをするということですが、市町村の財産区ですね、それについてはどうなっておりますか。
○政府委員(首尾木一君) 市町村の、これも公有でございますので、そういう地域に該当をいたします。
○内田善利君 その民有地等の買い上げについては、これは予算措置をどのようにされますか。
○政府委員(首尾木一君) ただいまのところ、現在の自然環境保全地域に該当するところの中に、そういったような財産区的なものがあるかどうかということにつきましては、まだ十分に調査をいたしておりませんが、したがいまして、現在私ども考えております買い上げの予算というのは、民有地についてでございますけれども、そういったようなものにつきましては、今後の問題として検討をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
○内田善利君 この十四条の「政令で定める面積以上の面積を有する土地の区域であつて」ということですが、どの程度の面積を考えておられますか。
○政府委員(首尾木一君) 約一千ヘクタールを考えております。
○内田善利君 これは、多少狭い面積でも必要なものは残せますか。その必要があると思うのですけれども。
○国務大臣(大石武一君) これは大体の基準でございますから、別に九百ヘクタールではいけないとか、八百ヘクタールではいけないとは思いません。やっぱり七百ヘクタールでも五百ヘクタールでも、そういう価値のあるものでそれ以上に面積を広げにくいところは、やはりそれなりに考えてこの法律を適用すべきだろうと私は考えます。
○内田善利君 では十六条ですが、十六条の「原生自然環境保全地域に関する保全事業は、国が執行する。」ということですが、この「国」とは環境庁ですか。
○政府委員(首尾木一君) 必ずしも環境庁のみとは考えておりません。
○内田善利君 それでは具体的にどういう……。
○政府委員(首尾木一君) たとえば制札でございますとか、そういったような保全をするための事業につきましては、環境庁が主として行なうわけでございますが、こういったような地域のごく小さい管理小屋でありますとか、そういったような問題につきましては、国有林等の場合には、林野庁におきましてそれを考えるというようなことも含めて考えておるわけでございます。
○内田善利君 それから処分等の制限として、原案の中には十九条に、厚生自然環境保全地域内の土地及びその定着物は、国及び地方公共団体以外のものに対してこれを貸しつけ、交換し、売り払い、譲与し、もしくは出資を目的とし、またはこれに私権を設定することはできない、二項として、前項の規定に反するときは無効とする、こういうことであったわけですけれども、これが本法案には消えてなくなっておる。非常に重要な問題だ、こういう実例が多いと私は思うのですけれども、これがなくなった理由ですね。
○政府委員(首尾木一君) 私どもが当初考えましたときに、そういったようなものを考えたことがありましたのは事実でございますが、これはいろいろ論議の過程におきまして、私どもの考え方が十分に熟しておらない、法文として問題があるということで落としたものでございます。 その理由は、そもそもこの原生保全地域というものは、国がこれを重要なものだということで設定をいたすものでございますから、それを、みずからそういったようなものについて、売るかもしれない、いわば国が信頼できないといったようなことを前提とするような規定を置くというのは適当でないという問題。それからさらに、この問題につきましては、現在、国有財産法あるいは地方自治法におきまして、公有財産につきましてはこれとほぼ同じ関係の規定があるということ。そういったような事情によりまして、このような規定を置く必要がない、また、現在の段階ではこの条文を置くことが適当でないというようなことで私どもが指摘を受けまして、私どももそれが適当だということで落としたわけでございます。
○内田善利君 次に特別地区ですが、特別地区には、これは民有地ですか私有地は入るわけですね。
○政府委員(首尾木一君) 当然入ってございます。
○内田善利君 ところが、この場合の木竹の伐採は、一応の保全計画さえ適合すれば抜き切り等やるのは自由なわけですね。ところがそれでは、どのような方法で切るかわからないのではないかと思うのですが。非常に中途はんぱなものであると、そのように思うのですけれども、この点はいかがですか。
○政府委員(首尾木一君) 法律の第二十五条の第三項で、その地域における木竹の伐採につきましては、事前にその地域における保全計画におきまして、その地域ごとに農林大臣と協議をいたしまして、あらかじめ木竹を伐採できる方法及びその限度を指定をするということにいたしております。その方法と申しますのはこれは択伐でありますとか、あるいは限度といたしましてはどの程度の面積のものでありますとかといったような、どの程度の割合の択伐であるとか、そういったようなことにつきまして、その地域ごとに、それに応じてきめこまかい伐採の限度なり方法なりというものをあらかじめきめておきたいという考え方でございます。 これは、このようにいたしましたのは、今度自然公園よりもさらに地域が広がりまして、林業地帯というものについてこういうものが及んでまいりますので、林業におきましては、長年の投資が行なわれまして、いざ切るときになって許可が受けられないということになりますと、林業そのものが企業的にも成り立っていかないというような面がございましたので、そういう点で林野庁と十分話し合いをいたしまして、このような形での調整をいたしたわけでございます。
○内田善利君 この保全計画ですね、これは環境庁が行なうわけですか。
○政府委員(首尾木一君) 環境庁長官が定めるものでございます。
○内田善利君 具体的にはどういうふうに計画を立てますか。
○政府委員(首尾木一君) 環境庁において原案をつくりまして、林野庁と協議をいたすものでございます。なお、これにつきましては、林野庁の森林法の側におきましても、全国森林計画において自然環境の保全ということを配慮してそれをつくり、それに応じて地域森林計画を都道府県知事が立てるわけでございますが、その地域森林計画の中に、自然環境保全地域に相当する場所についてはこの伐採の方法及び限度を反映をさせまして、それと同じようにやって、森林法の面からもそれが守られるというような仕組みにいたしておるわけでございます。
○内田善利君 やはり、現在は環境庁には手足がないわけですから、林野庁と相談して伐採計画を立てなければならないと思うのです。この保全計画というのは、やはり皆伐でなくて間引きしていく計画を立てるということだと思うのですが、現在手足がないし、ばらばらの環境庁で計画を立てるということは、何といいますか、これも空理空論に、かっこうだけだということになりかねないと、このように思うわけですね。そういった意味で、何らかの手足を持つというような方向を考えていかないと、かっこうだけで、実質はもう許可を受ける必要はないようなことになるんじゃないかと、そのように思うのですが、この点はいかがですか。
○国務大臣(大石武一君) これは、おっしゃるとおりでございます。当分は林野庁とやはり十分に協力しまして、林野庁の協力と理解のもとにこの仕事をやるよりほかに道はございません。そのうちに何らかの、もっと具体的な方法を十分に考究してまいりたいと考えております。
○内田善利君 また、山林所有者の側から見れば、確かに許可を受ければ損失補償がもらえる、しかしそんなことを一々やってはおれないと、まあそういうことで、こういう予算措置もない中途はんぱなことをするよりも、特別地区でも、買い上げをするということは考えられないのか、また、そのほうを望んでいる向きもあると思うのですが、この点はいかがですか。
○国務大臣(大石武一君) 私は、いまの御意見は賛成でございます。ことしは六十億の予算を取りまして、国立公園内の民有地を買い上げることになっておりますけれども、その交付公債が、国債にするのか、どのような種類にするのか、どのような計画でやるのか、そういうことはまだきまっておりませんで、この四十七年度中に大蔵省と環境庁の間でいろいろな相談をいたしまして、四十八年度から具体的なことに入るわけでございます。私は、できるだけことしの交付公債を幅を広げまして、いま申しましたような、必ずしも国立公園でなくても、十分にそのような土地を買い上げることができるような制度にいたしたい、大事なところはぜひとも買い上げるようにいたしたいと、こう考えております。また幸いに衆議院の附帯決議の中にも、そのような環境保全のための地方債を十分に出し得るような努力をせよということが入っておりますので、こういう方面にできるだけわれわれは力を入れてまいりたいと考えます。
○内田善利君 海中特別地区は、どのようなところをとりあえず考えておりますか。
○政府委員(首尾木一君) 海中における海中生物、サンゴでありますとか、そういったような海中生物が富豊なところといったようなものにつきまして、生態系の富豊なところにつきまして指定をしたいというような考え方でございます。
○内田善利君 できるだけこの海中特別地区は指定して、日本の海域の保全を守っていただきたい、このように思うわけですね。いま漁業問題が起こっているのは、海中にいろいろな、ちょっと埋め立てをしただけでも、海の構造が変わる、海の流れが変わっていく、それから海中の自然が破壊されていく、魚が住まなくなる、こういう面もありますので、この海中特別地区の指定は、十分ひとつ指定していっていただきたい、このように思うわけでございます。 その次に四十一条ですが、四十一条は「国の補助」なんですけれども、この「費用の一部を補助することができる。」と、このようになっていますが、これはどの程度を考えておられるのか。
○政府委員(首尾木一君) 現在は、まだ予算の時点におきましてこの法案が固まっておりませんでしたので、本年度の予算としては、これは計上をいたしてございません。で、現在これに相応いたしますものといたしましては、自然公園の関係におきまして、国立公園の事業につきまして都道府県で執行する場合、あるいは国定公園における事業につきまして都道府県が執行する事業につきまして、補助金が計上されているわけでございます。
○内田善利君 次に、衆議院の附帯決議でもついておりますが、附帯決議の二ですけれども、「政府は、この法律の適切な実施運用を図るため、現地管理体制の確立について格段の努力をすべきである。この場合において、司法警察員としての権限を持つ自然保護取締官制度の創設につき、次期国会を目途として検討すること。」と、このようになっておりますが、私もそのとおりだと、このように思うわけですが、公害の場合の監視員のように、監視制度がないと適正なこの法律の運用はできないと、このように思うわけですね。直ちにこの法律は制定されるわけですけれども、その監視員はどのように考えておられるのか。林野庁に当分の間依頼されるのか。そういったことでは環境の保全はなかなかできにくいと、このように思うのですが、この点をお伺いいたしたい。
○国務大臣(大石武一君) 私どもも、このような附帯決議には非常に賛成でございます。 ぜひこのような権限を持った職員というものは必要だと思っておりますけれども、御案内のように、いま環境庁では、ことし六十二人のそういった関係の者しかおりません。かりに来年度非常にふやしたとしても、この倍になるということは、なかなか定員としてはむずかしいです、現実に。しかし、そういうものは何人か、つくらなければならないと思います。できるだけふやしたいと思いますけれども、それだけでは十分に間に合いませんので、やはりこれは林野庁と十分に協力いたしまして、林野庁との話し合いによって、そのような権限の行使ができるような何らかの措置を講じなければならないと、われわれは考えておる次第でございます。
○内田善利君 人員の措置として、予算措置をされるかどうか、この点は。
○政府委員(首尾木一君) この法律は、御案内のように各種の準備がございますので、全面的な施行は四十八年度から施行ということを考えておるわけでございますが、当然に四十八年度予算というものがございますので、その際には、この人員の増強につきまして予算要求をいたしたいというふうに考えております。
○内田善利君 それともう一つは、衆議院でも附帯決議が出されておりますが、自然保護取締官制度を創設するために、次期国会に出す御意図があるかどうか。
○政府委員(首尾木一君) 積極的に検討をいたしたいと考えております。
○内田善利君 それと、もう一つお聞きしたいことは、林野庁見えておりますか——。林野庁にお聞きしたいのですが、林野庁の事業が赤字になっている、独立採算制のために赤字になっているということですが、大体いま赤字はどれくらいあるのか、どういうことで赤字なのか、私は皆目わかりませんのでお聞かせ願いたい。
○政府委員(福田省一君) 林野庁のいまの事業は特別会計制度になっておりまして、終戦後からそういうやり方でございます。つまり、主として木材の販売収入、これは現在で約九割以上でございますが、この木材の販売収入をもちまして一切の支出をまかなっているわけでございます。現在、支出の約六割が人件費でございます。 数年前までは木材価格が非常に上昇しておったのでございますが、最近外材が五割以上入りまして、木材価格は他の物価並みの伸びを示さないということでございまして、収入が非常に横ばいになっているわけでございます。一応伐採量は、先ほど来話が出ていますように計画的に伐採しますので、したがって収入は、木材価格が上がりませんと横ばいでございます。一方、支出のほうの六割を占めております人件費、これが他の産業並みに、仲裁裁定等の結論を得まして人件費は上昇しております。当然、収入と支出のアンバランスが出るわけでございます。四十七年度の予算編成におきましては、収入と支出の差額が約百億の赤字でございます。総予算規模は一千八百億でございます。 実は、この制度は、戦前は木材の販売収入の半分くらいしか森林経営に返ってきてなかったのございます。他の半分は、開拓その他の一般財源に回されておりまして、したがいまして、計画的な造林あるいは治山工事あるいは林道の開設等に回す経費が足らないために、森林経営をやっていく上に支障がありましたために、戦後、いま申し上げましたような特別会計制度にしまして、独立採算制というふうな形になったわけでございます。そういうことが、当初の目的と食い違いまして、逆に最近は、国有林は人件費をまかなうために無計画に森林を伐採しているのじゃないか、というような御指摘を受けるような状態になったわけでございます。 先ほど申し上げましたように、計画は大体閣議決定に基づきまして、五十年間の計画をつくっております。これを森林資源に関する基本計画と申しております。これはやはり考え方としましては、従来の、国民全般皆さんの御要望が、国有林は木材の増産に寄与すべきであるという観点に立っておったのでございまして、それが主流をなしておりました。最近は、森林そのものの公益的な機能に対する要請が非常に強くなってきております。そういう点を加味しまして、閣議決定を本年度内に修正する予定にしております。要するに、自然保護を重点とした森林経営に立ち返るということにいたしまして、伐採その他につきましては十分に規制していくということになるわけです。 そういうことになりますというと、やはりいよいよ赤字ということが大きくなります。そこで、いま申し上げましたような独立採算制、こういう特別会計制度が非常に問題になってくる。やはり近代化し合理化すべきところは十分いたさなければなりません。放漫な経営ではいけませんから、近代化した経営にする。しかしそれは、労働力に対して非常に重圧が加わるようなことはいけません。そういう点を十分加味して、近代化した上でなお足らぬ、たとえば治山事業であるとか造林事業であるとかいうものについては、一般会計からの財政負担をお願いする、こういう方向に持っていくべきではなかろうかというふうに私は考えておるわけでございます。 そういった点を含めまして、ただいま林政審議会におきまして、特別会計制度のあり方について抜本的な検討をお願いしている。近くその答申を得ました上で、政府としての事務局案をつくりまして、各制度の法制化あるいは法律の改正等、あるいはまた四十八年度の予算編成、こういったものに対しまして前向きな検討をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
○内田善利君 常日ごろ大石長官は、林野庁の独立採算制が変わらない限り、林野庁の基本姿勢が転換しない限り、自然の保護はあり得ない、このようにおっしゃっているわけですけれども、この点について、いまもいろいろ林野庁の問題点が説明あったわけですが、私も、この林野庁の会計の方法が変わらない限り、この法律ではいろいろトラブルが起きていたのじゃないか、このように心配するのですけれども、この点はいかがでしょうか。どのようにお考えでしょうか。
○国務大臣(大石武一君) いま林野庁長官からも、独立採算制のもとでは、とうていそのばく大な赤字をなくすこことができないということでございますから、やはりこの制度がよいかどうか。世の中が変わりまして、たとえば国有林なりそういうもののあり方がずっと変わってきたにもかかわらず、この制度が続けられれば、やはり私はどうしても伐採を多くする以外に道はないと思いますから、いま林野庁長官の話もありましたように、林政審議会でも十分その点を検討して、おそらく画期的な、もっと時代に合うような必ず答申が出ると思います。そういうものを土台として、農林大臣なりあるいは内閣におきましては新しい方向に入ると考えておりますので、私はこの独立採算制は、必ず近い将来には方向が変えられると考えておる次第でございます。
○内田善利君 この法案に伴って森林法の一部改正があるわけですけれども、この改正案を見る限り、先ほど申しましたように環境保全とはやはり相いれない部分があるように思うのですが、森林法と自然法境保護との問題、この自然環境保全の問題などからも、森林法自体を変えなければならないのじゃないか、このように思うのですが、この辺は問題ございませんか。
○政府委員(福田省一君) この環境庁で出されました保全法案と関連いたしまして、森林法自体も検討いたさなければならぬところがあるわけでございます。 簡単に申し上げますというと、一つは森林法の中におきまして、特に自然環境保全法案との関連を考慮しまして、森林の有する公益的な維持増進が適切に行われるように配慮するということを明文化するということが一点でございます。 その次に、従来森林法におきましては届け出伐採する、やはり先ほどもちょっと触れましたように、国営におきましても民有林におきましてもすべて十年間、もとは五十年の計画でございますけれども、計画に基づいて計画的に伐採するわけでございますが、この計画どおりに伐採しない場合、あるいは届け出たものが計画に合っていないというふうな場合、そういう場合には、従来は森林法におきましては勧告する制度しかございませんでした。これはもう一歩突っ込みまして、命令をする、計画どおりに伐採しなさい、こういうふうな命令権を出すわけでございます。 なお、この命令に従わぬ場合には罰則を設けるというふうにしたわけでございます。 森林法におきましては、盗伐等がありました場合には、これは罰則はございます。たとえば普通林におきまして言うと、三万円以下の罰金、三年以下の懲役、保安林におきましては、五年以下の懲役または五万円以下の罰金、金額はいまの時代では少ないようでございます。今度の、計画的にやらぬ場合、命令に従わぬ場合の罰則は約二万円ぐらいの罰金ということになりますが、これは自分の山を計画どおりに切らぬ場合の罰金でございますから、窃盗と違いますので、そういう罰金制度をやるというふうなことがおもな点でございます。
○内田善利君 それからもう一つ問題点として、良好な都市環境を確保するために必要な自然環境の保全について、今回見送られたわけですね。東京都の場合も大阪の場合も、連日光化学スモッグ等が起こって、大都市の緑が非常に危機に瀕しているのですが、こういったときに、むしろこの項は入れるべきではなかったかと思うのですね。都市の環境保全ということがやはり重要な問題があると思うのですが、この点が見送られた理由はどういうわけでしょう。
○政府委員(首尾木一君) 私どものこの法案を考えました際に、都市の周辺あるいは都市内における自然環境の保全、人間の生活環境に近いそういう自然環境の保全ということが、やはりすぐれた自然環境の保全と同時に必要である、重要な点であるというふうに考えられましたので、当初は、緑地環境保全地域というふうな形で一章を設けまして、これを案として考えてみたのでございますが、現在、この都市の緑地保全の問題につきましては、建設省におきましてこの問題をすでに検討いたしておりまして、すでに四月には、都市計画中央審議会からも答申が出ております。 これは都市計画とも関連をいたしまして、この都市の中における緑の保全あるいは復元といったようなものを考えておりまして、私どもがそういったものを無視して、一方的に緑地環境保全地域ということをやるということになりますると、これはやはり都市全体の計画との関係におきまして問題もございますので、この点につきましては、その都市計画、先ほども申し上げました審議会の答申が出ましたので、それに基づいてさらに一年検討いたしまして、これを環境庁、建設省ともども十分に検討いたしまして、この問題は今回は見送るという形で、この条文の中では附則の二条で、都市環境の問題につきましては、都市環境の中における自然環境の保全については、すみやかにその制度的な整備をはかるというような附則の規定を特に設けた次第でございます。
○内田善利君 この政令が一年後に出るわけですけれども、施行になるまでに一年かかるわけですが、そうしますと、その間に森林の伐採が、それこそ乱伐が行なわれるじゃないかと、このように心配するわけですが、いままでの公害法案の場合もそういう例があったわけですが、この自然環境保全法でも、一年後ということになりますと、そういうことが起こるじゃないかと、このように心配しますが、この点はいかがですか。
○国務大臣(大石武一君) この法律は、来年度四十八年度から全般的にやるという話をしておりますが、私は、地区の指定はさっさとやらなければならぬと思います。ただ、予算措置に関しましてはいろいろなめんどうなことが、ことしできないものもございますけれども、できるものはことしから、できるだけ早く手をつけてまいりたいということで、地域の指定とかそういうことは、かたっぱしからやりたいと思います。そういうことでよく林野庁とも話しをしてありますので、ことし一年でみんな日本の木を切りまくられるわけでもありますまいし、それから各町村でもみんなでお互いに指導していけば、そういうことは、ある程度心して将来にそなえてやらないだろうという、まあ努力いたしたいと思います。 また、都市近郊の緑地の問題でございますが、これは、なるほど多少宅造なんかで心配の面はございますけれども、これも東京都なりいろいろな大都市の各自治体とも相談をいたしまして、簡単に許可をしないように、そういう方向で持っていきたいと思いますし、できるだけ建設省とも十分の話し合いをしまして、二つの省が努力すればより力強くなりますから、りっぱなものをつくって、来年の通常国会には必ず提案するという決意をいたしておるわけでございます。
○内田善利君 この都市環境を確保するということから、一例をあげますけれども、これは佐賀県の佐賀郡の大和町にあるわけですが、私も十日前ですか二週間ほど前にちょっと行ってみたのですけれども、大体森林が、十三町歩と言っておりましたから、相当広域にわたって森林が伐採され、そうして採石、採砂が行なわれておるわけですね。一日に四百台の車が通って持って行ったというわけですが、そのあとが、私もちょうど頂上まで登りましたが、もうないだろうと思ったら、さらに峠から上にある。写真もとってまいりましたけれども、相当な広域にわたって森林が伐採されておる。 これは土石採取業者が、民有地ですから契約をして土取りを行なったわけですけれども、これを福岡通産局のほうで受理しておるわけですが、その土砂を取ったためにいろいろの公害問題、付近の住民の苦情等が何回も出されておるわけです。それによって、今度はずっと流れて来まして、一級河川ですが、そこの川に流れ込んで、土砂が、私が行きましたときでも、半分ほどもう川の水が流れないようになっておりました。大体三百立方メーター埋まっておる。こういうことでありますが、こういったことが、ここだけじゃなくて、けさのテレビでもありましたようにいろんなところでこういう環境破壊が行なわれておる。 こういうわけなんですが、この問題について若干お聞きしたいと思いますけれども、こういう土砂の採取については今後どのようになるか。この自然環境保全法では何の役にも立たないのか。この点はいかがでしょうか。
○政府委員(首尾木一君) 自然環境保全地域、代表的な地域であります自然環境保全地域の特別地区について申し上げますと、そのような地区における土石の採取は、これは許可制になっておりますので、許可を受けなければ、してはならないことになるわけであります。
○内田善利君 ちょっと、いま答弁をお聞きしていなかったのですけれども、もう一回お願いできますか。
○国務大臣(大石武一君) じゃ、私からお答えいたします。 いままでは、御承知のようにむちゃな自然破壊が行なわれまして、そのようなことが各地で起こっておるのは残念でございます。ですから、われわれはとりあえずそのようなことを防ぎたいという考えから、このような法律案をつくったわけでございますが、これが日本の全面的な、そのような土砂の乱掘とか、あるいは乱伐を必ずしも全部防ぎ得るものではございません。しかし、それでもある程度のものは防ぎ得ると思いますし、また、このような法律案が出まして、そうしてものの考え方、自然保護の考え方が、地方自治体なりあるいは役所なり、あるいは国民の間に広がってまいりますれば、やはりおのずから行政に対する姿勢も変わってまいると思います。そういうことを期待いたしまして、できるだけ今後は、そのようなむちゃな破壊を防いでまいりたいと願っておるわけでございます。
○内田善利君 この問題については、この土取りの業者は非常に良心的で、川に埋まった土砂を取ります、こういうふうに言っておるわけです。通産局にいった契約にも、そういう防止をしますということを、ちゃんと契約書の中にもうたってますし、業者のほうも誠心誠意そのようにやろうとしておるのですけれども、建設省のほうで、この三百立方メーターの土砂は取らんでほしい、そのように言っておるわけですが、この点は、建設省、どのようになっておりますか。
○政府委員(川田陽吉君) 建設省といたしましては、当該地点は一級河川の嘉瀬川の、大臣管理区間の一番北のほうの部分に該当しておりますが、建設省として取らせないということは、そういうことは毛頭考えておりません。小規模の、三百立米でございますから、地元の砂利採取業者に取らせるのが妥当であろうということで、適当な業者をさがしておりましたところ、ちょうど当該町、大和町大字都渡城というところでございますが、地先に適当な業者がおりますので選定をいたしまして、すぐ取らせるようにいま運んでおります。
○内田善利君 これによりますと、地元から業者に、川に流入している土砂を取り除いてくれるように頼んだところ、業者は承知したが、建設省が取ることに反対した。理由は、河床が計画面より低いとのことで取ることに反対した。一応ブルドーザーでならすことにとどめるということになろうが、建設省も現在は土砂を取る方向に向かっているそうであると、このようになっているわけですが、私の見たところでは、一雨降ったら、ちょっと百ミリぐらいの、あるいは五十ミリ以上でも、まだ山の上には砂がいっぱい残っているわけです、それが流れ込んだら、あの川は埋まってしまうのではないかと、このように思うわけですね。ですから、ぜひ早急にこれは取り除いていただきたい。私が質問に入る現時点では、まだそのままだそうです。だから、ぜひともこれを取り除いていただきたいと、このように思うのですが、いかがでしょう。
○政府委員(川田陽吉君) ただいま先生仰せのとおり、建設省の現地の工事事務所では、ブルドーザーを入れて引きならしをしてしまってもよいではないかというような考え方も、一時は確かに持っていたようでございますが、ただいまの時点では、電話で確認してございますが、ただいま私がお答え申し上げましたとおり、現地採取業者を特定いたしまして、至急取り除くようにいたしております。
○内田善利君 それから通産省のほうにお聞きしますが、あのような膨大な土砂を取ることを許可された理由、それをお聞きしたいと思います。
○説明員(佐藤淳一郎君) 採石につきましては、実は昨年、法律改正によりまして、ちょうどいま旧法から新法への移り変わりのときでございますが、したがって本件につきましては、通産局が届け出を受けまして作業をやらせている区域でございますが、従来、確かに先生の御指摘のように、どうしても、こういう土砂採石の需要が急激にふえてきたということもございまして、十分に公害の面に対する配慮が足りなかった点は、十分われわれも反省いたしまして、そういう意味もございまして、新しく法律を改正しまして、今度は届け出じゃなくて認可制をとりますが、こういうような事態があった場合は緊急に計画変更もさせますし、あるいはまた緊急に措置をする、だめな場合には罰則も適用するということで、新しい時代に応じたような改正を昨年いたしたわけでございますけれども、従来の点につきましては確かにわれわれとして反省しなければならない、こう考えております。
○内田善利君 あとの措置は、どこがどのようにするわけですか。
○説明員(佐藤淳一郎君) 本件につきまして採石業者の責めに帰すものにつきましては、当然、補償につきましては当該業者が負担するのが妥当であろうと思いますし、そういうふうに指導してまいりたいと思います。
○内田善利君 これで私の質問を終わりますが、実はこの自然環境保全法案は、やっと手に入って、それこそ内容については私もまだ薄いわけですが、いま逐条いろいろ御質問したわけですけれども、いま見ただけでもいろんな問題が含まれておると思うんですね。そういったことで、この自然環境保全法については、ひとつ今後ともよく附帯決議その他を十分検討して、実施していただくようにお願いするわけです。先ほどの無過失法案の場合も、附帯決議については非常に簡単に、善処するということだけだったわけですが、私は一項目一項目大切な附帯決議が盛られていると思いますので、そこの実施にあたっては十分環境庁長官、次も環境庁長官になられるかどうかわかりませんが、ひとつその点も環境庁においては十分、自然環境保全という立場で国民が安心するようにやっていただくようにお願いしたいと思います。
○国務大臣(大石武一君) ただいまのお話、よく拳拳服膺いたします。そして、私がいつまでも長官しているわけではありませんけれども、環境庁におきましても、十分にこの趣旨は一番大事に考えまして、懸命に努力することと思いますので、ひとつ一生懸命働いてまいりたいと思っておる次第でございます。
○栗林卓司君 私も、この法案はたいへんあわただしい審議になってしまったわけで、内容を拝見しますと、環境保全ということについて環境庁の介入する余地が広がっている、そういう趣旨の法案のようにお見受けいたしますし、自然環境の保全ということは、今日ある意味では一刻を争うという意味で、このあわただしさはよく理解いたしますけれども、ただし、ほんとうはもっと慎重審議をすべきものだと思いますので、委員長のほうから衆議院の該当委員会のほうに、たいへん遺憾であるということはぜひ申し伝えていただきたいと思います。 そういうことで、深くこれはまだ勉強したわけではないので、四点だけお伺いしたいと思います。 一つは、経済企画庁おいでになっていると思いますけれども、いまの新経済社会発展計画が改定作業中だと思いますし、関連して新全総のほうの見直しも進んでおる。そういうものと、ここにあります自然環境保全方針、これは具体的にはどういうぐあいにつながっていくと想定されて——秋と伺っておりますけれども——新経済社会発展計画の改定作業が進むのか、その点まずお伺いしたいと思います。
○政府委員(岡部保君) ただいま先生のおっしゃいました新経済社会発展計画の改定作業でございますが、これにつきましては、まことに申しわけないのでございますが、私、直接担当の局長じゃございませんので、詳細な点について申し上げることはごかんべんいただきたいのでございますけれども、現在、要するにこれからの経済社会の発展というものをどういうふうに考えるのかという点で、いろいろな学識経験者の御意見なども承って、それをもとにいたしまして、新しい考え方、まあ発想の転換と申しますか、新しい考え方でのこれからの進むべき道を求めていこうということで、当然この中には、自然環境を保全するという点、あるいはいわゆる福祉主導型と申しますか、そういうような考え方を十分織り込むという考え方でただいま作業をしている最中でございます。 それから、私の所管でございます新全総計画の総点検作業とこれとの関連でございますが、これは先ほど杉原先生の御質問にもお答え申し上げたわけでございますが、私ども、新全総計画が決して環境問題というのをないがしろにしている、計画自体がないがしろにしているんだという考え方は持っておりません。ただ、この新全総計画に盛り込んでございます考え方としては、自然環境と申しますか環境保全と申しますか、そういうことを十分意を用いて進めるべきだという考え方ではあるのでございますが、現実のいろいろな開発プロジェクトの実態、ここにおいてはいろいろな問題で環境破壊の実例もございます。また、これから進める際に、十分事前に環境問題というものに配慮をしていかなければならないという問題もあるわけでございます。特に、われわれといたしまして現在新全総を総点検するという問題、これは環境問題から端を発したと申しますか、環境問題のからみでこういう実態的に非常に問題があるのではないかという点で、現実の問題としてもう少し見直す必要があるということから、これが始まっております。 もちろん、環境問題と一般的に申しましても、これがいわゆる都市問題にもなりますし、また農村問題にもなりますし、いろいろな面で環境問題というものが関連してくるわけでございますけれども、そういうふうないろいろなテーマにつきまして、むしろ現実的にどういう問題点があって、これをどういうふうに直していかなければならないかという点で十分反省をし、その成果の上で、計画のあるいは見直しをする必要もあるかもわかりませんし、あるいは現実に行なわれている開発行政の点について、大いに考え直さなければいけないようなものがあれば、関係各省とも十分御相談していきたいというような考え方でございます。
○栗林卓司君 確かにそういうことだと思うのですけれども、これはたいへんお答えしづらい抽象的な質問になるかもしれませんが、新全総ということで考えますと、国土の再開発、効果的利用ということが中心的な課題になる。そのときに、これまで新全総を考えていく上での一つの政策課題であったろうと思うのは、過密・過疎問題があったと思います。過疎問題を何とか解決しなければいかぬということ、そこの工業開発を含めた、いわばその地域の環境変化というものを伴わざるを得ない。しかし環境を保全したいという、片方の強い希望ももちろんある。それをどう調整するかということが、実際に実務として進めていく場合の悩みごとじゃないか。 卑近な例ですけれども、ついこの間、伊勢湾のほうに参りましたら、新しく工場が進出をする計画を進めているのだけれども、地元のほうは、名古屋からずっと見ますと、海岸線で工場が並んでいないのはそこしかない、何とか残してくれという話でやっている。こういうことが実際の悩みごとになってくると思います。ところが、一方では自然環境保全ということで、あちらこちらにアンタッチブルな場所がたいへんふえてまいりました。そうすると、どこかで調整しなければいけないし、何をそこで優先するのかという、実はものごとに取り組む前の選択の問題をはっきり踏まえておかなければ、あちこちにいっちゃうと思うんですね。 そこで、たいへんお答えしづらい抽象的なと申しましたのは、そのときに、地域の開発として過密・過疎の問題がある。しかし守るべきは自然環境である。一度くつがえしたら百年もとに戻らない。そういう観点から新全総の見直しをなさいますかということをお伺いしておきたいわけです。
○政府委員(岡部保君) 確かにいまの御指摘の点、われわれも一番頭が痛いところでございます。 私どもの考え方といたしましてはっきり申せることは、先ほど杉原先生の御質問にお答えを申し上げましたように、あるいはこの御審議いただいている法案での、たとえば「原生自然環境保全地域」というような非常にはっきりした点では、これもうっかりすると破壊されるのですけれども、こういう非常にはっきりしたときには、わりに扱いやすい。考え方が非常にまとめやすい。ところが現実に利用をしておって、そこに明らかに破壊すべからざる自然環境があるのだけれども、すでに半人工的と申しますか、半自然的と申しますか、要するに、すでにそういうある程度で調和をしておった地域をこれからどうしていくかというところが一番問題だと思います。 そこで私ども、ほんとう言って、具体的にこういう場合はこうするべきであるということをとてもここで申し上げることはできませんし、もちろんケース・バイ・ケースでいろいろ考えられるのでございますけれども、一つの考え方としては、やはりその地域住民の意思というものをもう少しつかんでいきたい。ただ、これもなかなかむずかしいことでございまして、ある意味で、その地域住民の意向というものを尊重すると口では申しますけれども、これはほんとうの地域住民の意向であるのか、あるいは地域住民の意向にもまして考えなければならぬというあたりの点になりますと、ほんとう言って、ここで一言で何とも申し上げられない点がございます。ただ、われわれとしては、やはり地域住民のほんとうの意向というものをもう少し尊重しなければいかぬということと、でき得る限り自然条件というものを保存していきたいという考え方がベースにあるんだということぐらいしか、どうもちょっとここで申し上げられないのでございますけれども。
○栗林卓司君 確かにむずかしい問題だと思います。ただ私見として申し上げると、住民の感情なり希望を尊重してということは、何か言っているように見えていて、実は何にも言っていない場合が多いんですね。だからほんとうは、自然環境を保全したいという、いわば哲学的な政治目的が前にきて、それを実際に適用する段階で住民の意見を聞かなければ、ほんとうは前に行かないと思いますけれども、住民の意見を聞けばということが最近多過ぎて、むしろいまの御意見でしたら、逆ではなかろうかという気がいたします。それはたいへんむずかしい問題なので、今後ともぜひ御検討いただきたいと思います。 あと環境庁のほうにお伺いしたいのは、先ほどの御質問にも出ておりましたように、環境保全という意味では、都市問題をどうするか、これは非常にむずかしい大問題で、具体的にはどう線引きするかということになってしまうと思いますし、いろんな既得権益とぶつかりますから、これはとても簡単なわけにいかない。しかしなおかつ、日本というのは、大きな変化の中のまっただ中に今日もなおあることは事実ですから、変わっていく方向について、何か誘導はできないだろうか。 そんなところからお伺いしたいのは、たとえば建築基準法というものに、ある定めがありまして、目一ぱいつくってはいかぬとか、いろいろあります。主として消防の面を含めた安全ということからの配慮だと思いますが、ここに環境問題を含めて、たとえば工場をつくる場合に、あるところは全部緑にせいという基準をおつくりになるおつもりはないのか、あるいは取り組んでおいでなのか、その点伺いたいと思います。
○国務大臣(大石武一君) たとえば工場つくる場合には必ず緑を植えることとか、木を植えることとか、そういうことは、そういう法律か何か知りませんが、そういうことを実行させておるようでございます。これをもっともっと立法化いたしまして、おっしゃるとおり緑地保全と申しますか、環境保全のための十分な措置をするという立法化が、当然必要だと思います。こういうことにつきましても、来年の通常国会に提案する新しい都市近郊の環境保全につきましては、十分に建設省とも相談してまいりたいと考えております。
○栗林卓司君 それは、ぜひその方向で御検討していただきたいと思うんですけれども、抽象的に緑をふやせということではなかなか実効があがらないと思いますので、端的には、煙突一本について何平米緑をつくりなさいということだって、ほんとうは一番直接役に立つ大気汚染対策かもしれないし、もっと東京に公園がいっぱいあれば、こういうほんとうに胸の詰まるような空気でなくなるのかもしれませんし、その辺で、いずれここまで財産権について踏み込んできたわけですから、もう一歩踏み込んだ検討をぜひお願いしておきたいと思います。 それから最後に一つだけお伺いいたします。 この法案で、要綱の第十一のところでお伺いいたします。おそらくこれは残っているのかと思いますけれども、原生自然環境保全地域を定めますと、その地域内については、環境庁長官が認めない限り次の行為をしてはいかぬ。これは残っていますね。ここで制限の行為をずっと拝見しますと、原生自然環境保全地域というのは、国有地もしくは地方公共団体が所有するものということですから、国の意思は、ほんとうは直接何の障害物もなしにあらわれていくわけです。にもかかわらず、ここで制限というのは、飛行機の着陸に至るまで、まことにもっていまの御苦労がわかるようなものがたくさん並んでいるわけです。その意味で、この法案を国として生かす課題というのは、こういうことをいろいろ書かなくてはいかぬということを、実は書かなくても済むようにしていくことではないか。これを空洞化することが、実はこういう問題に取り組む一番本筋ではなかろうかと思いますので、この点御意見を伺って、時間もありませんので質問を終わります。
○政府委員(首尾木一君) 先生のおっしゃいますように、大切な地域が国の地域であるといったような場合においては、少なくとも国なり地方公共団体というものは、これにつきましてそういったようなものを荒らさないというのが、法律にあろうとなかろうと、それは重要な問題だというふうに考えておるわけでございます。しかし、ここに掲げました行為は、これは必ずしも国公有地のみではありませんで、もちろん所有者としての管理権に基づきまして、いろいろ物権的な妨害排除の請求でございますとか、そういったようなことはできるわけでございますが、こういったような地域も広いわけでございますので、民間の方々のこういったような行為も、一切この中では行なえないというような意味におきまして、この十七条の各号を定めた次第でございます。
○国務大臣(大石武一君) 原生自然環境保全地域は、これは民有地はないわけでございます。民有地であれば、これは買い上げる方針でございます。そういうことで、おっしゃるとおり、ほんとうはこういうものがあるのはおかしいぐらいだと思いますけれども、ただ、いろんなほかの法律に関係してまいりますので、たとえば鉱業権であるとかいろんなことがありますと、やはりそれについてもいろいろ議論の余地が出てまいると思います。そういうことで、こうしておけば、ここに網さえかけておけば安心していられるということが中心だろうと思いますので、その点を御了承いただきたいと思います。
○加藤進君 おそらくこの法案は、環境庁としては、目の前に進行しておる自然の破壊に対して何とかして自然環境を守りたい、こういう執念の一つのあらわれだと思います。そこで、短い時間でございますけれども、さて、そのようにして提出されたこの法案が、はたして自然環境を守り得る法案になっているかどうか。これは検討を要する問題だと思うわけです。 そこで、私は一つ最初にお尋ねしたいのは、長官は、昨年来たびたび自然破壊の問題が出されるときに、もし自然環境保全法というものが制定された場合には、そんなことをなくして解決することができる、こうたびたびおっしゃったことを私は耳にしています。そのうちの一つとして、長野県の美ケ原の問題があったことは御記憶だと思いますが、この新しい法案によって、従来長野県の企業局を中心とする開発の危険にさらされてきました美ケ原の自然環境を、どのようにして守り得るのか、その点をひとつ具体的にお聞きしたいと思います。
○国務大臣(大石武一君) 美ケ原につきましては、加藤委員もよく御存じのことと思いますが、残念ながら和田峠から扉峠までですね、この間の道路はすでに許可しておりますので、これをわれわれの権限で押えることはできませんでした。しかし、それ以外の、要するに美ケ原の尾根を通って松本へ抜ける道路については、どんなことがあっても私は阻止する考えでおります。それはわれわれの権限でできると思います。この法律を適用するか、しないか、いままでの自然公園法の中でも私はできるような感じがいたしております。なお、この法律ができましたならば、またこれは来年だって改正できるわけですから、あの道路をつくるのは三年あとになりますから、それについてはいろいろ検討いたしまして、何としてもそれは阻止いたしたいと、こう考えておる次第でございます。
○加藤進君 この法案の第二十二条には、自然環境保全地域を指定して環境を守るというところがありますね。もし環境庁にその御決意があるなら、指定を早急にしていただきまして、特にいま申し上げました美ケ原は、亜高山性植生、また、すぐれた自然林が相当部分を占める地域でもございますので、ここを自然環境保全地域として指定するようなことをしていただけないかどうか、この点をひとつお答え願いたい。
○国務大臣(大石武一君) これは十分に検討いたしますが、何とかそのような方向で私は考えを進めてまいりたいと思います。
○加藤進君 その点をぜひ期待しておりますから、よろしく。 そこで、この法案によって、環境庁は、国有林、保安林に対して規制できる権限を持つのでしょうか。その点はいかがですか。
○政府委員(首尾木一君) 保安林に対しましても、それが自然環境保全地域であります場合には、当然環境庁長官の権限が及ぶわけでございます。ただ、保安林におきまして、一般的な木竹の伐採をはじめ各種の行為につきまして、原則として許可制になっておりますが、木竹の伐採につきましては、先ほど御答弁の中で申し上げましたが、これは事前に保全計画の中で定めておる伐採の計画、伐採の限度、方法の範囲内でございますれば、一々の許可は必要としないというような調整ははかっております。 それからもう一点、環境庁長官の許可事項になっておりますが、保安林の中につきましては、森林法のほうでも、土石の採掘でございますとか、そういったような土地の形質の変更ということにつきまして許可を要することになっております。これにつきましては、この法律で、その森林法による保安林区域内の許可を要する行為について許可を受けたものは、重ねてこの法律によって許可を受ける必要はないというような規定が設けられております。 しかし、これはどういうあれかと申しますと、現在の保安林の中におけるいわゆる許可行為というのは、非常に仮設的な工作物、たとえば炭焼き小屋のようなものでございますとか、あるいは非常に小さい道でありますとか、暫定的なそういうもので、永久的工作物というものはつくらせない、許可はしないというような方針になっておりまして、これは保安林の趣旨からきている運用でございますが、そういう形になっておりますので、その程度の小さなものの許可を保安林のほうでやるに過ぎないということであるならば、そのような行為はこちらのほうにおいても当然認められるところでございますから、したがって、重ねて許可を要しないということにいたしたわけでございます。 非常に大きな工作物、たとえば永久的な道路、大きな道路でございますとか、あるいは大きな建造物といったようなものにつきましては、従来も保安林を解除した上でこれをやるということで、許可という範囲でやっておりません。したがいまして、かりに解除されたというような場合のことを想定をいたしてみますと、これはなおその地域が自然環境保全地域でございますれば、当然、自然環境保全地域としての環境庁長官の許可を得る必要がございますので、その点は問題はないというふうに判断をいたしまして、かような調整をいたしたわけでございます。
○加藤進君 端的にお答え願いたいと思いますけれども、林野庁が、もし森林法その他の適用法律に基づいて伐採をする、私たちの感じでは乱伐に当たるような伐採も行なわれておるのでございますが、伐採をする。しかもそれは林野庁の特別会計制度によってやむを得ない、こういう立場でやられる場合に、この法案は、それは困ります、やらせません、こういう歯どめができるのかどうか。その点、簡単にお答え願いたいと思います。
○政府委員(首尾木一君) この法律におきましては、林野庁のほうと、国有林の伐採につきましては経営計画において事前に協議をいたすわけでありますから、その協議の範囲内において伐採をするということは、先ほど申し上げましたように、保全計画の中で許されているところでございますから、それについては、こちらとしても当然その範囲内では許されるというふうに考えております。
○加藤進君 念のためにもう一度確かめます。林野庁と環境庁とがよく協議してやるということでございますけれども、その協議の内容として、環境庁がこういうことはだめだ、こういうふうに断定された場合に、林野庁は、それでは伐採計画はとりやめます、こういうことになるような歯どめとか保証とかいうものが、この法案にあるでしょうか。
○国務大臣(大石武一君) それは、必ずしもそれほど強い歯どめはございません。しかして、これはお互いが理解がついてこのような法案になりました以上は、そういうことはあり得ないと考えます。また林野庁長官も先ほど、先ほどばかりではありません、以前から言明されておりますように、もうむちゃな、むちゃというと失礼でありますが、むちゃな乱伐はやらないということでありますし、そのむちゃな乱伐をさせたいわゆる独立採算制も、これもおそらくは、ごく近いうちにはそういう制度は変わると思いますので、そのようなことはできないわけでございますが、もしそういうことをする場合には、当然この環境庁の勧告権というものがございますから、これによって、それをある程度阻止することもできると考えます。
○加藤進君 その点は、ひとつがんばってください。 そこで具体的にお聞きしたいのですが、日光は御承知のように国立公園ですから、環境庁の管轄下にあるわけですけれども、この日光の柳沢のやや奥地のところに、砂利採取が最近まで行なわれておりました、国立公園の中で。これを環境庁は許可しておられるわけであります。これは許可されたのはいつの日付であるか、これをちょっとお聞きしたいと思います。
○政府委員(首尾木一君) 四十六年の七月に申請がございまして、四十六年の八月七日に環境庁で許可をいたしております。
○加藤進君 許可された理由というのは何でしょうか。
○政府委員(首尾木一君) 河川管理者でございます栃木県の意見といたしまして、河川管理上必要であるということと、風致的な判断といたしましては、利用ルートから離れまして、風致上比較的支障が少ないということで許可をいたしたものでございます。
○加藤進君 私は砂利採取の申請理由書というのを持っておりますけれども、ここには、四十一年の二十六号台風で砂利が堆積し、放置しておいた場合には、大雨が降るとはんらんなどの危険がある、はんらんによってまわりの木が損傷する、こういうのが柳沢の砂利採取の申請理由です。こうなっておるわけですけれども、この書類は、これは事実でしょうか。
○政府委員(首尾木一君) 事実でございます。
○加藤進君 そうしますと、環境庁が砂利採取を許可したのは四十六年八月七日。しかし、ここで風水害、二十六号台風で砂利の堆積が始まって危険だというのは、四十一年なんですけれども、四十一年から今日までそのような採取が行なわれたのであろうか、それとも、それ以前からこのような採取が行なわれておったのでしょうか。
○政府委員(首尾木一君) 正式に許可をいたす前に、許可処分以前に昭和四十二年、四十三年、四十四年、四十五年にわたりまして、総計三万一千三百九立米の採石が行なわれております。
○加藤進君 それではもう一度。別の資料によりますと、砂利販売量がずっと年度別に出されておりますが、その砂利販売の年度の最初は、昭和三十四年になっておるわけです。昭和三十四年以来ずっと引き続き採取されてきて、そしてその中間に四十一年に二十六号台風の結果これこれの危険があるという理由が付されて、そうして許可されたのは四十六年八月七日。これは一体どういうことなんでしょうか。
○政府委員(首尾木一君) 四十六年以前のものにつきましては、これは厚生省国立公園部当時のものでございますが、災害復旧工事として自然公園法第十七条三項のただし書きで運用をいたしております。いわゆる不要許可行為というようなことで運用をいたしておったようでございます。しかしながら、これはかなり大きなものでございますので、環境庁に至りまして、この点については正式に申請をさせ、その内容について許可をいたしたと、こういうような性質のものでございます。
○加藤進君 おそらく、環境庁はあまり十分に事実を御存じなかったと思うんですね。この砂利採取をやる、砂利を売るというのは、環境庁じゃないでしょうね、これは林野庁ですね。そうでしょう。林野庁は三十四年から砂利を売っておられた。こういう事実について環境庁には報告がなかったのでしょうか。その点ひとつ確かめておきたい。
○政府委員(首尾木一君) これは、十分そういう事実について承知をしておらなかったということだそうでございます。
○加藤進君 林野庁の所見はいかがですか。こういうことを、環境庁には報告をなさらないで、国立公園の中で事業をやっておられるわけでございますが、それは政府の部内の中でも秘密で、しかも、こんなことが長いこと続いたということでしょうか。
○政府委員(福田省一君) 環境庁ができる以前の厚生省の関係でございましたから、当然御指摘のようにこれは協議し許可を得たものとは思うのでございますが、的確な資料はただいま持っておりません。 ただ、これは砂利を採取しました動機は、やはり三十四年当時から、あすこは男体山の系統でございまして、非常に土砂の崩壊しやすい場所でございます。それで、たまたまあの柳沢につきましては、地面よりも河床のほうが高くなって、天井川のようなかっこうになっております。そういうことから、ぜひこれは除去しなければならぬということが一つの動機でございまして、また、あそこの場所につきましては、男体山の周囲ずっと治山工事をしてきております。現在でも相当経費をかけて治山工事をやっておるわけでございますが、たまたま、御承知のように最近は川砂利が少なくなって、工事用に山砂利を取るとかいうようなことも出てまいっておるわけであります。その両方の点から、土砂の搬出をしましてその河床を下げる、安定させるということと、砂利の需要にこたえるということから、昭和三十四年当時から販売等が工事と並行したものというふうに私は判断しておるのでございます。しかし、今後はいろいろとそういう面につきましては環境庁とも十分連絡をとりまして、遺憾のないように処置してまいりたいと、かように考えます。
○加藤進君 長官、国立公園の中でいまのような事態が起こっているのです。砂利採取の申請理由は、二十六号台風のために砂利が堆積して、放置しておいたらたいへんなことになる、こういう理由なんです。ところが、林野庁は林野庁で、ずっと前から砂利を採取して、それを売っておるのです。そうして環境庁は、四十六年ごろまでこれを認可していない。こういう事態が、いわばおひざ元で起こっておる。 これは私は許しがたいことだと思うのですね。こういうことが少なくとも今後は起こらない、こういう保証がなければ、これはもう自然環境保全法もまさに絵に描いた餅に終わらざるを得ない、こういう感じを持つわけでございまして、私はいまのような事実について、うそかほんとうかをはっきり御調査をいただきまして、従来そんな背景も状況もわからないままに許可したことについては、遠慮なく一度取り消す、そして防災上ほんとうに必要かどうか十分検討された上に、ひとつ砂利の問題については積極的な解決をはかっていただきたい。これは無理でしょうか。
○国務大臣(大石武一君) 私は、はなはだ申しわけありませんが、その実情を全然知りませんので、いま何と返事申し上げていいかわかりません。しかし、実態をよく調査いたしまして、それで不当なものであれば適当な処置をいたします。そういうことは、この自然環境保全法案と関係あるよりも、それ以前の問題でございます。もし何か不当なことがあれば、それは環境行政としてもまことにやりにくいことでございますから、十分に調査をいたしまして、あとでしかるべき処置もとりますし、また御返事もいたしたいと考えております。
○加藤進君 もう時間がございませんから、この問題につきましては一言だけ申し上げておきますと、現在、日光周辺と申しますか、地域に居住をされる自然環境保護の団体の諸君が、非常な熱意を持って陳情に来ておりますし、これは環境庁にも請願はいっておる問題だと思っております。私も近々現地を視察したいと思っておりますけれども、ここにはさまざまな問題が伏在しておるのではなかろうかと疑われるような点が多々あるわけでございまして、これはひとつ環境庁といたしましても、また林野庁としても、従来のことは従来の問題として処理していただいて、明確な明るいスタートを新たに切ってもらうという点で、ひとつ抜本的な問題についての処置、解決をぜひお願いしたい、こう考えるわけでございます。 そこで、もうこれで終わりますけれども、このような問題一つをとってみましても、法律ができたからといって、必ずしも自然を守ることはできないのでございまして、守るのは人と努力にかかるわけでございますから、その点につきまして環境庁も、林野庁その他との間の意見の調整、あるいは相互に監視し合い監督し合うというくらいの腹がまえを持って、ひとつ地域住民の自然を守るという熱意にこたえていただきまして、わけてもこれは国立公園の中で起こったことでございますから、よそで起こったこととはまた性質が違うし、責任の所在が違うのでございますから、その点、重ねて要望いたしまして私の質問を終わりたいと思います。
○委員長(加藤シヅエ君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(加藤シヅエ君) 御異議ないと認めます。 それではこれより討論に入ります。——別に御発言もないようでございますから、これより直ちに採決に入ります。 自然環境保全法案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(加藤シヅエ君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
○矢野登君 私は、ただいま可決されました自然環境保全法案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党、四党共同提案の附帯決議案を提出いたします。 案文を朗読いたします。 自然環境保全法案に対する附帯決議案 政府は、自然環境保全の重要性にかんがみ、次の事項について努力すべきである。 一、原生自然環境保全地域の指定にあたつては、残された貴重な原生自然状態にある地域について、もれなく指定するよう努めること。 二、この法律の適切な実施運用を図るため、保全地域の現地管理体制の確立について、格段の努力をすべきである。この場合において、司法警察員としての権限を持つ自然保護取締官制度の創設につき、次期国会を目途として検討すること。 三、自然環境保全対策を強力に推進するためには、国または地方公共団体が、保護すベき自然環境を有する土地を買い上げ、これを直接的に管理、保全することが必要である。このような観点から、土地買取り対策の確立について抜本的な検討を行なうこと。 四、自然環境保全審議会の委員の構成にあたつては、自然科学者、社会科学者、林業経営者及び林業労働者を含む適正な人選を行なうこと。 五、自然環境保全基本方針の策定、保全計画の決定を早急に行なうこと。 六、学校教育、社会教育の場を通じて、自然保護思想の普及、徹底を図るよう努めること。 七、森林に対する薬剤散布については、環境汚染への影響にかんがみ、その毒性研究を推進するとともに、規制を強化するよう努めること。 八、無秩序な開発が、回復不可能なまでに自然を破壊している現状にかんがみ、自然環境を保全するための土地利用計画等について積極的に検討すること。また、今後の開発については、自然の生態系に対して重大な影響を及ぼさないよう十分に配慮すること。 九、都市地域における自然環境の破壊が生活環境を極度に悪化させている現状にかんがみ、都市の自然環境の回復、保全について、積極的に検討すること。 右決議する。 以上でございます。 各位の御賛同をお願いいたします。
○委員長(加藤シヅエ君) ただいま矢野君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行ないます。 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(加藤シヅエ君) 全会一致と認めます。よって、矢野君提出の附帯決議案は、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。 ただいまの決議に対し、大石環境庁長官から発言を求められておりますので、この際これを許します。大石環境庁長官。
○国務大臣(大石武一君) ただいまの附帯決議は、まことにごもっともなことで、われわれにとりましてはありがたいことでございます。この御趣旨を十分に体しまして、一生懸命努力いたす決意でございます。
○委員長(加藤シヅエ君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(加藤シヅエ君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 —————————————
○委員長(加藤シヅエ君) これより請願の審査を行ないます。 第七号狩猟者団体法制定に関する請願外百六十一件の請願を便宜一括して議題といたします。 これらの請願につきましては、理事会におきまして慎重に検討いたしました結果、第千五百四号瀬戸内海の環境保全に関する請願、第千九百四十七号名古屋港西五区の渡り鳥渡来地の保存に関する請願外三件、第二千百六十五号自然保護のため山梨県連峰スカイラインの建設計画の中止に関する請願外十一件、第二千百六十九号石鎚山系の自然保全に関する請願外八件及び第三千二十六号東京湾の干潟保護に関する請願外二件は採択することとし、他は留保することに意見が一致いたしました。 右理事会申し合わせのとおり、請願第千五百四号外二十八件は議院の会議に付することを要するものとして内閣に送付するを要するものと決定することに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(加藤シヅエ君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 なお、報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(加藤シヅエ君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 —————————————
○委員長(加藤シヅエ君) 次に継続調査要求に関する件についておはかりいたします。 公害及び環境保全対策樹立に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(加藤シヅエ君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 なお、要求書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(加藤シヅエ君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 —————————————
○委員長(加藤シヅエ君) 次に、委員派遣承認要求に関する件についておはかりいたします。 公害及び環境保全対策に関する調査のため委員派遣を行ないたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(加藤シヅエ君) 御異議ないと認めます。つきましては、派遣委員、派遣地、派遣期間等の決定は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(加藤シヅエ君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 暫時休憩いたします。 午後八時一分休憩 —————・————— 午後十時五十四分開会 〔理事伊部真君委員長席に着く〕
○理事(伊部真君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を再開いたします。 委員の異動について御報告いたします。 本日、杉原一雄君が委員を辞任され、大矢正君がその補欠として選任されました。 —————————————
○理事(伊部真君) 委員長の辞任の件についておはかりをいたします。 加藤委員長より、文書をもって、都合により委員長を辞任いたしたい旨の申し出がございました。 これを許可することに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○理事(伊部真君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。 —————————————
○理事(伊部真君) これより委員長の補欠選任を行ないます。 つきましては、選任の方法はいかがいたしましょうか。
○矢野登君 委員長の選任は、主宰者の指名に一任することの動議を提出いたします。
○理事(伊部真君) ただいまの矢野君の動議に御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○理事(伊部真君) 御異議ないと認めます。 それでは、委員長に大矢正君を指名いたします。(拍手) ————————————— 〔大矢正君委員長席に着く〕
○委員長(大矢正君) それでは一言ごあいさつを申し上げます。 ただいま委員長に指名をされました大矢でございます。このとおりのふつつか者でございますが、皆さま方の御協力によりまして大任が果たし得られまするよう、心からお願いを申し上げる次第でございます。どうぞよろしく。(拍手) —————————————
○委員長(大矢正君) それでは、前委員長の加藤さんからごあいさつをお願いいたしたいと存じます。
○加藤シヅエ君 長い間、委員長として皆さま方に一方ならぬ御支持、御協力をいただき、おかげで大過なく委員長の職責を果たすことのできましたことを厚く御礼を申し上げます。 なお、せんだって、私、永年勤続のゆえをもって、院議をもって表彰されましたにつきましては、委員の皆さまからお心暖かいお祝いをいただきますそうで、まことにありがたく、あわせて御礼を申し上げます。今後ともよろしくお願いいたします。(拍手) —————————————
○委員長(大矢正君) 本日はこれにて散会いたします。 午後十時五十六分散会 —————・—————