決算委員会 第3号
- 発言数
- 283 件
- 登壇者
- 22 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1972/03/08
会議録
○委員長(足鹿覺君) ただいまから決算委員会を開会いたします。 まず、委員の異動について御報告いたします。 去る二月十五日、渡辺武君が委員を辞任され、その補欠として塚田大願君が委員に選任されました。 —————————————
○委員長(足鹿覺君) 委員の異動に伴い、理事が一名欠けておりますので、この際理事の補欠選任を行ないたいと存じます。 選任につきましては、先例により委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(足鹿覺君) 御異議ないと認めます。それでは、理事に塚田大願君を指名いたします。 —————————————
○委員長(足鹿覺君) 次に、参考人の出席要求に関する件についておはかりをいたします。 昭和四十四年度決算外二件の審査並びに国家財政の経理及び国有財産の管理に関する調査に資するため、必要に応じ政府関係機関等の役職員の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(足鹿覺君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。 なお、日時及び人選につきましては、これをあらかじめ委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(足鹿覺君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 —————————————
○委員長(足鹿覺君) 昭和四十四年度決算外二件を議題といたします。本日は、国会、法務省、最高裁判所、会計検査院及び行政管理庁の決算につきまして審査を行ないます。 この際、おはかりいたします。議事の都合により、これらの決算の概要説明及び決算検査の概要説明はいずれもこれを省略して会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(足鹿覺君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 —————————————
○委員長(足鹿覺君) それでは、これより質疑に入ります。御質疑のある方は順次御発言願います。
○佐々木静子君 国家公安委員会並びに警察庁にお伺いいたしたいと思います。去る昭和四十六年の十月の二十八日、国家公安委員会は、「被疑者留置規則」——国家公安委員会規則の第四号を改正して、同日、警察庁長官は「留置場において使用する戒具の制式及び使用手続に関する訓令」を定めましたが、右規則の改正は大体次のように承っているわけです。 戒具について、従来は手錠とか捕縄等を使用することができるとあったところを——これは規則第二十条によるものですが、手錠、捕縄、防声具、鎮静衣の四種類の戒具を使用し得るものと定めた。このほかにも留置場規則で改正されたところがございますが、それは後刻お伺いすることといたしまして、戒具についてそのような規則の改正のあったことは間違いございませんですか。
○政府委員(高松敬治君) 間違いございません。
○佐々木静子君 このような改正に基づいて、戒具の制式とか使用手続については警察庁長官が定めるものとして、この規定に基づいて警察庁長官が訓令を定めて、戒具の制式とその使用手続というものをその後引き続いておきめになりましたですか。
○政府委員(高松敬治君) 訓令は、十月二十八日付警察庁訓令第十八号というもので、制式及び使用手続に関する訓令というものを定めております。
○佐々木静子君 この戒具のうち、従来の手錠にかわるものとしてベルト手錠というもの、そして声を発した被疑者に用いる防声具及びあばれたりあるいは自殺のおそれのある被疑者に用いるという、顔だけ出して、首から下、手も足もすっぽり袋に入れてしまって、三カ所をベルトで縛りつけるという鎮静衣の三つ、こういうものが今後使用できるというふうに改められたというふうに私お聞きしているわけでございまして、私は昨年の十 一月に警察庁に伺って、その実物を見せていただいたわけでございますが、また、見せていただくだけではなしに、実際それを身につけるとどういうことになるか、私まあ被疑者のかわりに警察庁でつけさせてもらったわけなんでございます。きょうは、ほかの委員の方々もこの戒具を御存じございませんので、お持ちいただくようにお願いしておったわけなんでございますが、聞くところによると、お持ちいただいてないとかいうような ことでございますが、それはどういう理由に基づくものなんでしょうか。
○政府委員(高松敬治君) 各都道府県で使用いたしますもので、いま私のほうに現物の手持ちがないということでございます。
○佐々木静子君 各都道府県と申しますと、警視庁でもお使いなわけなんでございます。警視庁管内の留置場でもお使いのように伺っているわけなんでございますが、そのとおり間違いございませんね。
○政府委員(高松敬治君) 警視庁でも全部の警察署まで行っているかどうか、ちょっとはっきりしませんが、使ってはおるはずでございます。
○佐々木静子君 それでは、都内の留置場にもかなりの数あると思うわけでございますが、至急一そろい取りそろえていただくわけにいきませんでしょうか。何ぶん口で説明するよりも現物を見たほうが、どういうものであるかということが一見にしてわかるわけでございますから、至急御手配願いたいと思うのですが。
○政府委員(高松敬治君) その点は、私も、いろいろな御議論がございまして、実際にそれを見ていただいたほうがわかりが非常に早いんではないかと思います。できれば持ってきたいと思うのですが、ただ、いまからではちょっと時間がかかりましょうし、昼の休憩その他の時間でございましたら、それまでには何とか手配してごらんに入れてもよろしいかと思います。
○佐々木静子君 これは実は私参りましたときは警察庁の高松刑事局長さんのお部屋で見せていただいたわけでございますので、警察庁の中でもすぐあるんじゃないかと私は思うんですが、これはちょっとお電話一本でお昼まで待たないでもすぐにお届けいただけると思うんでございます。
○政府委員(高松敬治君) 私のほうであのときにお見せいたしましたものはいわば試作品でございまして、現在手元にございません。ただ、別にそれを隠しているとか、あるいはお見せするのがおかしいという、秘密にすべきものだという種類のものではございませんので、もしそういうことであれば、昼の休憩なりそれまでには何とか取り寄せるようにいたしたいと思います。
○佐々木静子君 まあ質問中に手元に入ればよけいけっこうだと思います。
○委員長(足鹿覺君) ちょっと速記とめて。 〔速記中止〕
○委員長(足鹿覺君) 速記起こして。
○政府委員(高松敬治君) すぐ手配をしてみます。ただ、時間がちょっとかかるかもしれませんが。
○佐々木静子君 この戒具、まあ至急お届けいただくということで、現物届きましたら、また現物に基づいて質問を続けたいと思うのでございますが、この戒具について、さきに、昨年の十一月十日に衆議院の内閣委員会において若干質問があったわけでございますが、このときに、政府委員の方は警察庁のほうから、「十二月一日からこの規則を施行する、それに従って準備をしてまいるようにして、特に中心はベルト手錠と申しますか、それを中心にひとつ本年度は整備をやっていってもらいたいというふうな指示をいたしております。」という御答弁があったわけでございます。警察は地方自治体の管轄であるということを考えますと、国家公安委員会の被疑者留置規則を採用するかいなかは各都道府県の公安委員会の権限に属していると思うわけでございますが、そうした体制の中にかかわらず、これを中心にひとつ本年度は整備をやっていってもらいたいというようなことを指示しているという御答弁は、これはいささかおかしいのではないかと思いますが、その間の関係はどうなっているのか、どういう御指示をしていられるのか、御答弁いただきたいと思います。
○政府委員(高松敬治君) 昨年の暮れの会議のときにそういう指示をいたしていることには、間違いございません。 それから、警察法第十二条の規定によりますと、「国家公安委員会は、その権限に属する事務に関し、法令の特別の委任に基いて、国家公安委員会規則を制定することができる。」、それから第五条によりまして、各都道府県についての活動の準則を定めることができる、こういう規定がございます。 で、私どもとしては、たとえば従来「犯罪捜査規範」もそうでございます。「被疑者留置規則」もそうでございます。そういうふうに各都道府県がいろんな活動をします場合に、それが全国まちまちになっては非常にぐあいが悪いというものについては、それぞれそういう国家公安委員会規則なり訓令なりによって都道府県の活動の準則を定めている、こういうことでございます。私の全国捜査課長会議における指示も、そういう国家公安委員会規則について説明をし、そういうことについて各都道府県がそれぞれ実施をしているということについて説明をしたわけでございます。 〔委員長退席、理事小谷守君着席〕
○佐々木静子君 そうしますと、国家公安委員会のほうから、たとえばこの「被疑者留置規則」というものを採用するから都道府県の公安委員会のほうにこれを実施するということをお流しになった場合、地方自治体の管轄である都道府県の公安委員会がこれと異なる結論を出した、まあ戒具は用いたくないという結論をかりに出したとしますと、これは都道府県の公安委員会のほうで自主的にこの戒具を用いないとかいうふうな相異なった方法をとることも可能なわけでございますね。
○政府委員(高松敬治君) 活動の準則でございますから、たとえば戒具の制式その他について若干の変更を加える、改良を加えることは可能であろうかと思います。ただ、大もとといたしまして、こういうものについてはそういう準則に従ってやるというのがたてまえでございます。
○大橋和孝君 ちょっと関連で……。そういうふうないろいろな装具ではありませんけれども、最近はやはり被疑者に対して、どういう場合かは知りませんけれども、薬剤を使ってそしてもうろう状態にさすとか、あるいはまたそういうようなことで取り調べ過程で必要な薬品を使われる、それを使ったらどういうふうになるかということも研究をされているやに聞いておりますが、実際にそういうふうな薬品なりをそういうふうなひとつの装具と同じような形で御使用になっているのかどうか、それからまた、どういうふうないままでの過程があったか。
○政府委員(高松敬治君) 外国でそういう事例があるような話も私ども耳にしますが、わが国においてはそういうものは一切使っておりません。
○大橋和孝君 関連ですから、もうちょっとだけ……。 実際は、最近でそういうものも、まあそう言われないかもしれませんが、そういうふうな取り調べの中でやはり薬剤を使っておられるというのは全然ないんですか。あるやに聞いておりますが、全然ないんですか。
○政府委員(高松敬治君) 私、そういうこと初耳でございますが、そういうことは絶対にないと確信しております。
○佐々木静子君 先ほどの戒具の問題でございますが、私、昨年の十一月に警察庁へお伺いしたときのお話では、先ほど申しましたベルト手錠、そして防声具、鎮静衣の三種類の戒具を全国の留置場——これは千二百ほどあるということでございますが——に、この三種類の戒具をとりあえずは二個ずつ備えつける計画をして、いまその作業を進めているというお話であったのでございますが、その後どういうふうになっておりますか。二個ずつ全部に備わっているのか、あるいはさらにもっとたくさんの数が備わっているのか、その間の事情をお伺いしたいと思います。 〔理事小谷守君退席、委員長着席〕
○政府委員(高松敬治君) 都道府県がそれぞれやっておりまして、はっきりした数を一々つかめなかったんですが、私どもがその後いろいろ調べてみますと、大体ベルト手錠が全国で三百二十ばかりある、それから防声具が百九十一、鎮静衣が百五十ばかりというのが現在持っている数でございます。
○佐々木静子君 重ねて伺いますが、それは全国での数でございますか。
○政府委員(高松敬治君) はい。
○佐々木静子君 さらに、この戒具の使用について、必ず警察署長の指揮を受けてこれを実施すること、緊急やむを得ないときは幹部の指揮を受けてその使用後すみやかに署長に報告をしなければならないということになっておりますが、現在どのくらいこの新しい規則に基づく戒具が使用されているのか。これは、この規則どおりいけば、署長の許可、あるいはその直後すみやかに署長に報告することになっておりますので、まあそういうことから非常に統計がとれやすいのではないかと思うわけですが、その戒具の使用、いまどのくらいに現実に全国的になされているのか、そのことについて伺いたいと思います。
○政府委員(高松敬治君) 私どものほうに報告のありましたのは、全国で十二月以降三件でございます。
○佐々木静子君 数が多ければ伺うのはたいへんですが、三件ですので、どの戒具をどこの警察でどう使ったかということを、まあ三件だけですから、ちょっと簡単に御説明いただきたいと思います。
○政府委員(高松敬治君) 使いました戒具は、ベルト手錠が一件、標準手錠が一件。で、対象は、大体逮捕された者で酒に非常に酔っていてたいへんあばれた、こういう者について使用しております。それから、うち一名は酒に酔ってあばれていて、それで精神病者であったと、で、そのあと精神病院のほうに収容さした、こういう事例でございます。
○佐々木静子君 それで、いま二件伺ったわけですが、もう一件……。ベルト手錠が一件と標準手錠が一件、二件でございますか。標準手錠というのは、もとからある金具の手錠でございますね。
○政府委員(高松敬治君) そうでございます。
○佐々木静子君 まあいまの御報告では、さほど乱用されておらないというようなことで、私安心したわけなんでございますが、そもそも警察に留置されているというのは、これは単なる犯罪の容疑者でありまして、起訴されるか起訴されないかもきまっておらない。まして起訴されてからまた無罪の判決を受けるということもあるわけでございまして、憲法の上からは「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない。」というデュー・プロセスの原則がはっきりとうたわれておるわけでございまして、また有罪の判決を受けるまで何人も無罪の推定を受けているわけでございますが、後ほどお届けいただける防声具というのを見ましても、私実際につけてみたわけでございますが、まるで狂犬が口にかけられているような防声具を人間に用いる。また、手も足も全く動かないというようなミノムシ同然の、ふとん蒸しのような鎮静衣を留置人に着せて、しかもその上からがんじょうなベルトを三カ所も巻きつけるということは、これは明らかに憲法できめている条文にも違反すると思うわけです。私自身、実際これを身につけてみまして、これはたいへんな苦痛だと思ったわけです。私、このベルト手錠をまず身につけてみようと思ったんですが、これはきっちり寸法が合わなければ、腰に手と胴体とが一体となって結びつけられるわけですから、胴のまわりがサイズがうまく合わなければぐっと締められてたいへん苦しい。私はつけてみようと思ったところが、私の胴のまわりのほうが太過ぎてうまくベルトがかからないので、これは苦しいからもうやめてくれということですぐはずしてもらったんですが、被疑者の場合はそうはいかない。そうなると、非常な苦しい思いをして、無理やりにこれを締めつけられるということになる。また防声具のほうも、後ほどお持ちいただいたらはっきりしますが、口とあごとをふさがれるということのほかに頭を締めつけられて、二分間ほど締めあげただけでもあと一時間ほど頭がぼんやりしているというような状態である。まあ鎮静衣のほうは、手も足も全然出ないで首だけ出ているのですから、これも不自由なことはもう言うまでもないことでございまして、こういうふうな残酷な戒具というものは、これは戦前でも留置場において使用は許されておらなかったわけですが、この憲法下、なぜこのような非常に前時代的な人権じゅうりん的な戒具をあえて警察が、しかも法律によらない規則というような国民の目の見えない壁の中でそういうふうな規定をつくられたのか、その点をいまお伺いいたしたいと思います。
○政府委員(高松敬治君) 私どもが今度の国家公安委員会規則の改正を行ないましてそういうふうな制式を定めましたのは、一つは、従来も、暴行なり、あるいは自殺の防止なり、あるいは非常にあばれる、そういう者については「手錠または捕じょう等を用いることができる。」という規定になっておったわけでございます。で、御承知のように、警察の留置場は、留置場自身といたしましても、非常に酒を飲んで人を殺したとか、人にけがをさしたとか、そういう人間が現実に入ってまいります。非常にそれがあばれる、大声を発する、それに対する制止の手段としてそういうものを従来も認めていた。ところが、その手錠と捕縄では、これは佐々木委員おわかりになりますように、大声を発してどなりまくる、あばれまくるという者に対しては何らの効果も出ない。しかし、それを放置しておくわけにはまいらない。そこで従来は、その「手錠、捕じょう等」ということから、あるいは手ぬぐいでサルくつわをかませる、あるいは柔道着のひもを使ってしばる、あるいはふろしき、ハンケチを口の中に入れてサルぐつわをかませるというふうなことを現実にやらざるを得なかった。そうしてまた、そのことがいろいろ問題になりまして、まあ昨年の例で申せば、千住警察署の事件について看守の巡査部長が一名起訴になった、ほかの看守が準起訴手続で請求されておるというふうな事件もございました。これは暴力団員ではございませんけれども、非常に暴力の常習的な男があばれた事件の措置についての問題でございます。そういうふうなことから、私どもとしては、むしろそういうふうないろんな紛議かなくするためにも、看守にもそういう措置を、制止でき阻止できる手段をきっちり与えてやる、そこでそれ以外のものは使わせない、そういうものを認めることによってそれ以外のものを使わせないというのが改正のねらいでございます。代用監獄になりました場合には、監獄法の適用がございまして、その場合には防声具、鎮静衣、皮手錠というようなものが当然使えることになっております。その前の四十八時間以下についての問題が、実はそういう点の規定もなかったし、現実にそういう機材も警察自身持っていなかった、そういうところからいろいろ問題が起きてまいりますので、そこで、いま申し上げましたような趣旨で、ひとつほかのものは使わせない、そのかわりこういうものについては使ってもよろしい、こういうことできっちりやらせる、それを使うについては要件を非常に厳重にいたしまして、署長の指揮を受けてやる、夜その他で署長がそこにいないときには当直責任者その他の責任者の指示を得さしてやらせる、そういうことによって戒具の適正な使用というものを担保してまいる、こういうのが考え方の根本でございます。いま一つ一つ取り上げていろいろおっしゃいましたが、まあ私どもとしてはあれをつくるのにやはり一年半ばかりずっと考えてまいりました。それから、現在刑務所等で使われているものとは非常に違った形のものにいろいろくふうをしてまいった点は、これはお認め願えるだろうと思います。ただ、いまあるものが、さらにこれらはなお不十分かどうか、もっと改善の余地があるかどうかというふうなことになりますと、私どもも今後実際に使用してまいってみてぐあいの悪い点はどんどん直してまいるつもりですけれども、ただ、たいへんあれが残酷なものだ、残虐なものだ、あるいは非人道的なものだというふうには私どもは考えてはおりません。かなり相当程度これは改良を加えてまいった、かように考えておる次第でございます。
○佐々木静子君 先ほどの御答弁で、警察のほうもいろいろと御苦労なさっているということは私もよくわかるわけなんでございますが、しかし、その戒具について何も規則がない、すなわち、いままでの手錠と捕縄しか用いられない時代においても、看守が留置場の中で被疑者を殺してしまった、そのために職権乱用でいま起訴されている人もいる、また準起訴手続にあっている人も最近いるというようなことで、あるいはタオルでサルぐつわをしたところそれが窒息して死んでしまったというような、そういうふうな経過もあるわけでございますが、そのように何もないときにもそういうふうな忌まわしい非常に職権乱用的な事件が起こるわけでございますから、ましてやこの防声具、鎮静衣というようなものを警察官に使用させるというようなことになりましたならば、これは非常におそるべき事態が起こるのではないか——起こらなければむろんよろしいですけれども、起こるのではないかということがこれは当然に常識的に危惧されると思うんでございます。いまたまたまその代用監獄で監獄法の適用を受けた場合には、これは大っぴらに監獄法によって防声具とか鎮静衣を用いることができるという御発言がありましたので、きょうは法務省の矯正局長もお越しいただいておりますから、刑務所内においていま防声具、鎮静衣というようなものが、まあ監獄法の規定にはございますが、現実にはどの程度に使用されているのか、昨年一年間の使用状態などについてお伺いいたしたいと思います。
○政府委員(羽山忠弘君) お答えいたします。 統計の関係で四十五年の集計を持ってまいっておりますので、御報告さしていただくことをお許し願いたいと思います。 使用件数でございますが、全体で約四千件でございます。で、これを未決と既決に分けて申し上げますと、既決すなわち受刑者に対して使用いたしましたのは約三千五百件でございます。それから被告人に対して使用いたしましたのが約六百件でございます。したがいまして、先ほど約四千件と申しましたのは、約四千百件くらいになろうかと思います。内訳は、ここは正確に申し上げますが、防声具が既決が十七件、未決が二十二件、金属手錠が既決が六百三十二件、未決が九十九件、皮手錠が既決が二千七百五十三件、未決が五百二十一件、捕縄が既決が九件、未決が八件、携帯用の捕縄が既決が九十件で、未決が十七件でございます。
○佐々木静子君 それでは、まあ手錠あるいは捕じょうというようなもの、これも多少問題ではあるかと思いますが、いま主として問題にしたいのは防声具と鎮静衣なんでございますが、この防声具は既決で十七件、未決で二十二件。鎮静衣のほうはいかがでございますか。
○政府委員(羽山忠弘君) 四十五年におきましては、鎮静衣を使用したことはございません。
○佐々木静子君 鎮静衣は一度も使用なさっておらないわけですね。それは、いろいろとあばれる収容者もいると思うのでございますが、どういうわけで鎮静衣は使用なさらなかったわけでございますか。
○政府委員(羽山忠弘君) 鎮静衣は、四十四年に一件使用しておりますが、四十五年は使用しておりません。それは非常にあばれる人間は多いのでございますが、警察と比べました場合に、私どもは保護房という特殊な房を持っておりますために、そこに入れるということができますので、そういう関係で鎮静衣が使用されないのではないかというふうに私どもは想像をいたしておるのでございます。
○佐々木静子君 そういたしますと、保護房があれば、鎮静衣は、いま刑務所においても、これは既決の囚人においてもほとんど使用されないで済むというわけでございますね。
○政府委員(羽山忠弘君) これは、そのあばれ方でございまして、たいてい、保護房に入れまして、中で金属手錠その他の手錠を使用いたしまして身体を拘束いたしますと、大体そのままおとなしくなるのでございますが、身体を拘束いたしましても、なおかつ壁に向かって頭を打ちつけるというような一種の精神錯乱状態に似たあばれ方となりますると、やはり鎮静衣を使用せざるを得ない場合もあろうかというふうに想像いたすのでございます。
○佐々木静子君 いろいろな御事情で、昨年は鎮静衣は全国で刑務所は未決、既決を問わず一回もお使いにならなかった、一昨年は一回だけお使いになったというような事情でございますが、この防声具、鎮静衣の使用を許している監獄法自体が、これは法律ができてから五十年以上もたった古色蒼然たる監獄法であって、この人権尊重を旨とした新憲法のもと、非常にこれは新憲法の精神に合いにくいということで、監獄法の改正問題がいま法務省でいろいろと進められている。法務大臣からもたびたび、このような古めかしい監獄法を改めて、近代的な人権擁護の線に沿った監獄法に改めたいということを、法務委員会などにおきましても何回も御答弁いただいておるわけでございますけれども、このような時代において、刑務所ですら昨年は一回も使わなかったということ、一昨年は一回だけ使った、それも精神病的なもうどうにもならぬ人間のときに一回だけ使ったというふうなことにすぎない鎮静衣というようなものを留置場でお使いになる、わざわざ、しかもいままで規則のないものを新たに規則をつくってそういうものを使えるようにするということ、これは非常に時代に逆行する考え方ではないかと思うわけです。特に、この刑務所のほうは、これは未決もございますが、一応有罪の判決を受けて、服役者として収容するために刑務所に入っている。あるいは拘置所におきましても一、これは犯罪の嫌疑を受け、勾留状が出されて、それを収容するための目的で拘置所に入れているわけでございますが、警察の留置場というのは、本人を収容して、そしてそれを捜査の対象とするわけでございまして、これは全く刑務所と拘置所の場合と異なり、その収容者を容疑者として取り調べる、その取り調べに当たる同一人がその収容者を収容するわけでございますから、その点、戒具の持っている危険性というものが全く質的に違ってくるわけでございます。そういう点を矯正局長はどのようにお考えになるか、これを矯正局長お一人に責めても当たらないかとも思いますが、当面責任者として御指導いただいておりますので、どういうわけで刑務所ですらやっておらないことを留置場であえていままで戦前の規則にもなかったようなことを取り調べ官にやらせられるように規則を改めるのか、その点をもう一度お尋ねいたしたいと思います。
○政府委員(高松敬治君) 拘置所あるいは刑務所と警察署の留置場というものを比較いたしました場合に、私どものほうではむしろ面積的にも非常に限られて狭い。それから、同房者その他に対する喧騒その他の迷惑というものは私どものほうの場合には非常に多い。しかも、突発的に絶えず被疑者が入ってくる。御指摘のように、たとえば非常に遠く離れたところに、そういう何ぼあばれてもいいというふうな場所ができれば、私はそのほうがよほどいいかと思います。そういうところで、前にも話が出ましたけれども、外から工業用テレビその他で留置人の動静を感知する、それで足りるではないか、こういうお話がございましたが、私どもも、そういうことが実際問題としてできるのならば、それは非常にいいと思います。私も大賛成でございます。ところが、現実の問題としては、千二百あります警察署の留置場というものは、そういう大きな面積をとるわけにいかない。それから、刑務所の中では酒くらって入ってくるというのはまずないと思いますが、私どものほうではそれは非常に数も多い。だから、そこで留置した場合の、そこの留置場の中における自殺、あるいは逃走、証拠隠滅というふうな問題の防止、それから留置場内における保安と秩序の維持、こういうことのためには、社会的に、社会通念上合理的な範囲においてそれに対してある程度矯正することができるということは当然でなかろうか、そういう点からいえば、むしろ刑務所よりも警察の留置場のほうがそういう必要性が多いということは、現実の必要が生ずることが多いということは、ひとつぜひ御理解いただきたいと思うのです。 それで、法律的に留置規則に反するというお話でございますけれども、しかし、一つは、刑事訴訟法によって逮捕されて、留置をするということは刑訴で認めている点でございます。この手続によって認められたものについて、留置場という営造物を管理している者がそこにおいてとり得る措置という問題でございます。それからもう一つは、先ほども御説明申し上げました警察法第五条二項第十二号というもので、国家公安委員会が警察法に基づくそういう準則を定めることができる、こういうことになっておりますので、私どもは、これは違法あるいは違憲というような措置ではない、かように考えております。ただ、あそこで定めました戒具のうち一番多く使われるのは、標準手錠並びにベルト手錠である。標準手錠は今度は二件報告ではまいっておりますけれども、これは御承知のように金属製で案外あぶない点が多い。そういう点からいえば、これから使われるものの中心はベルト手錠になるであろう。鎮静衣は使われることは比較的少ないだろうと思いますけれども、しかしどうしてもあばれてしょうがないというものについては使わざるを得ないという場合も当然に出てまいろうか、かように考えます。
○佐々木静子君 いま御説明の中で、この規則で十分できるのだということで、私はこまかい条文いまちょっと聞き漏らしたのでございますが、いま警察法の何条でございましたか、規則にゆだねて、条項だけでなしに、条文自身をちょっとお読みいただきたいと思うのでございますが。
○政府委員(高松敬治君) 警察法第五条第二項第十二号でございます。第五条第二項には「国家公安委員会は、前項の任務を遂行するため、左に掲げる事務について、警察庁を管理する。」云々というのがありまして、その十二号に「警察職員の任用、勤務及び活動の基準に関すること。」というのがございます。関係の条文はこれでございます。
○佐々木静子君 この留置場の中で被疑者に戒具を使用することができるということと、「警察職員の任用、勤務及び活動の基準に関すること。」ということと、どういう関係があるんですか。「警察職員の任用、勤務及び活動の基準に関すること。」をきめる規則制定権が認められるといって、国民の留置人に戒具を用いることができるということと、全くこれは異質の問題じゃありませんですか。
○政府委員(高松敬治君) 警察署の留置場において、たとえばどういうふうに監視をする、保安上どうするというふうなことについていろいろ定める必要がございます。つまり、留置場の中における警察の、まあ具体的には監視の活動あるいは署長の責任というような仕事の中身ということになりますけれども、そういうものについての基準を定める、これが「活動の基準」だというふうに従来から解しているわけでございます。同じように、たとえば「犯罪捜査規範」というものがございます。犯罪捜査にあたって、いろいろ、こういう点に留意して行なわなければいかぬ、手続はこうしなければいかぬというふうなものは、やはりこの「活動の基準」というふうなことに基づいて定められているわけでございます。
○佐々木静子君 この「活動の基準」とか「警察職員の任用に関すること」というのは、これは純然たる警察の内部の問題であって、これは外部の国民が警察につかまった場合に、拷問を用いてもいいとか悪いとか、そういうことと全く質の違うことだと私は思うわけです。これはだれが見てもそうじゃないかと思うんです。それは、拷問ということばが行き過ぎであれば、戒具の使用。 で、先ほどの御説明にも言われましたように、逮捕し勾留することは刑事訴訟法でも認められているんだからということですが、それはむろんそうで、私どもも、犯罪の容疑者が逮捕されること、あるいは警察に勾留されることについていま何にも問題にしていないわけでございまして、勾留されてからあとのことを問題にしているわけなんです。いまの御説明では、建物管理規則ですか、庁舎管理規則に基づいてこれは警察ができるということでございますが、一たんこの警察の庁舎の中に入ってしまえばこれは何でも警察ができるかというと、これはとんでもないことでございます。ましてや国民の人権と一番もうぎりぎりの線で関係の深い留置人の取り扱いについて、それほど必要なことであるならば、なぜ国民の目に立たない規則の制定というようなこそくな手段を用いてなさるのか。ほんとうにそれが必要なことであるならば、これはもうだれも反対しない、国会で堂々と法律をお出しになる、あるいは刑事訴訟法の改正をなさる、そういうふうな手段にお出になればいいじゃないですか。なぜそういう手段をとらないで、国民の知らない間に規則の改正というようなことをすみのほうでこそこそっとなさるのか、その点を私ども疑義を持たすにはおられないわけなんです。
○政府委員(高松敬治君) 国家公安委員会の規則によってそういうことを定めるということは、別にその、こそこそっとごまかしちゃえという意味では毛頭ございません。むしろ、そういうことが国家公安委員会という機関によって、そこで規則を定めて、こういう制度の処置をとってもよろしいということを明確に警察の職員に示しているわけでございます。その点では、たいへんこれ、こそこそやっているという問題ではないと思います。 それから、私先ほど申し上げましたのは、そういうふうに逮捕、留置した場合の取り扱いについて、それはいろんな弊害を生まないように、そこで公正な制度をつくっていく必要がある。現実に自殺、逃走、証拠隠滅というもの、あるいは留置場内の保安と秩序の維持ということは現実の問題としては非常に必要でございます。それについて国家公安委員会規則で定める。国家公安委員会規則で定めたからたいへん人権無視だという議論には私はならない。この中身がたいへん人権無視の中身であれば、それはそういう御議論にもなるかと思いますけれども、そういう規則で定めたからそういうことになる、あるいは違憲であるというふうなことには、私はならないと思います。それはやはり、そういう逮捕、留置というものの効果自身の中から、被疑者についてそういう場合にある程度のまあいわば強制的な処置もある場合にはできると、こういうふうに当然解されるところであろう、それが社会通念上合理的な範囲であればいいのだというふうに私どもは考えております。 なお、これを法律にするかどうかという問題は、別個の問題として、これは私どもとしても前からいろいろ検討している問題でございます。これを法律にしたほうがいいのかどうか。片方に監獄法というものがある、それに対してこれは留置場法というものを制定するというふうなことも、一つの考え方であろうかと思います。ただ、先ほど御指摘のような監獄法の改正問題その他がございまして、まあそれらの成り行きを見て、そしてそういう点の検討をさらに深めてまいりたいというふうに考えております。
○佐々木静子君 いま御答弁によると、当然国家公安委員会のほうで留置人に警察としてやっていいことの基準を示したんだというふうな、それは許されることだという御答弁ですが、かりにですよ ——私はその御答弁ちょっと承服できないわけなんですが——かりにそうだとしても、その戒具の使用を警察で許すということでどういう副作用が起こってくるかということは、これはばかでもない限り、警察のほうで、特に刑事局長などにおかれては、十分にこれは推察のついたことだと思うわけなんです。現実に私は、全国の警察官がこの十二月一日からどういうことを言って被疑者を取り調べているか、それはもう資料が尽きないくらいあるわけなんです。私のほうから一々申し上げてもよろしいですが、それをやっていると晩までかかりますから、どういう問題がいま警察庁の留置場で起こっているか、刑事局長のほうで把握なさっている情報を私のほうに報告していただきたい。私が知っている情報を刑事局長がもし御存じなければ、これは全国の警察官を監督なさる立場として非常に怠慢であると思うんです。あるいは、御存じであるならば、どういうことがいま留置場で起こっているか、御存じでありながらおっしゃらないとすれば、これは国民を欺瞞することになると思うんです。把握していることをおっしゃってください。
○政府委員(高松敬治君) 戒具を使用することによって——特に刑務所、拘置所と警察とは非常に違う、それは自白を強制することになりかねない、こういうふうな御質問なり、そういうものは、前からございました。で、私どもは戒具の使用は留置場の中に厳重に眠っている。これは規則の中でも、その点は、戒具の使用は留置場内だけの問題だということで厳重に明示しております。これを自白を強制する手段に使う、あるいはそういうおそれがある、こういう御議論については、私どもとしてはたいへん心外でございます。そういうおそれがあるというふうなことになれば、いままでの手錠だって、あるいはサルぐつわだって、あるいは柔道着だって、みんなそういうことになるでしょう。おそれがあるということであれば、それはすべてがそうなるでありましょう。私どもはむしろ、そういうおそれが生じないように、手段方法をきっちりし、使用する場所をきめて、使用手続を厳格にする、そういうことによってそういうおそれのないようにというのが私どもの改正の趣旨でございます。 で、全国の警察でいまどんなことが起こっているか、非常にたくさんいろいろな問題が起こっているというお話でございますが、私は、そういう点については、全然そういう報告を受けておりませんし、それからまた、そういう戒具の使用を十二月一日からきめた、これによってたいへん警察の行き方が変わってきた、そういうことは全くない、むしろ従来よりよくなっているはずだと、こういうふうに確信いたします。
○佐々木静子君 何も御報告を受けておらないと言われましたが、報告を受けなければそこらの察しがつかないというようであれば、刑事局長あまりにも御怠慢であると思うんです。十一月の末ごろから留置された人たちは、これは東京の池上署でもあります。東京の大崎署、東京玉川署、東京の小岩署、杉並署、調布署、月島署、目白署、これはいずれも取り調べの警察官が被疑者に対して、十二月一日になったらおまえらに戒具をかけてやるぞとおどかしながら調べているわけです。十二月一日以降は、おまえらがおれらの言うことを聞かなければ、戒具はここの留置場にはちゃんと用意してあるぞというようなことを再三取り調べの最中に申し述べているわけです。これをもっと詳しく報告しろとおっしゃれば、これは私のほうも実は、先ほどから申し上げているように、おそろしいほど資料があるわけなんです。もちろん、そう言って戒具を使うぞ、戒具を使うぞ、防声具をかけるぞ、鎮静衣を着せてやるぞと言っておどかしながら取り調べましたとはどの警察官も、刑事局長には、自分はこういう取り調べをしてますという報告はしないでしょう。報告はなかったからといって、そういうことが行なわれておらないというのであれば、これはあまりにも刑事局長がのんき過ぎる。そういう感覚で国民の人権と一番切実な結びつきのあるこの戒具の問題についてお考えになるとすれば、これは大きな判断の誤りではないかと思います。おそらく取り調べた警察官は、だれ一人、自分はこういう取り調べの方法をしてますと刑事局長には言われないでしょうし、刑事局長がおまえはそういう調べ方をしているんじゃないかと言っても、いやそんなことはしておりませんと、これは百人が百人とも刑事局長にはそう言うでしょう。しかし、現実に留置されている多くの留置人、これは横のつながりは別に何の連絡もないわけですが、個々的に、こういう人権侵害を受けた、こういうことでおどかされたというようなこと、あるいは、実はこうやらなかったんだけれども、防声具をつけると言われたので、おそろしくて認めたというようなことが、これは枚挙にいとまがないくらいあるわけです。そういう事実を御存じないというのは、これは刑事局長としてとんでもないことだと思うわけなんです。
○政府委員(高松敬治君) 私はそういうことはないと思っております。それは、戦後いままでのわれわれの刑事警察についての努力というものは、大体そういうことがあり得るはずがないという確信を私に持たせるわけです。たいへん口はぼったいことを申しますけれども、私はそう思います。ただ、いまいろいろ御指摘になりましたようなことが、もしそういうことがあるとするならば、これはまことにゆゆしき問題だ。具体的にどこの警察署のどの被疑者についてどういう問題があったかということを後刻でもお教えいただけば、私としてはそういうことの有無については厳重に調べて、そして、そういうことが私はないと思います、ないと思いますが、それが単なる一方口なのか、あるいは事実そういうことがあったのかという点は調べまして、適当に後刻処置してまいりたい、かように思います。具体的な事例が非常にたくさんおありのようですが、ぜひお知らせいただきたいと思います。
○佐々木静子君 これは、ないと思いますとおっしゃるけれども、現実にこれはあるわけなんです。詳しく言えとおっしゃれば、手元にある資料だけでも、東京の池上署、十二月一日に、きょうから戒具は使われるぞ、おれの言うことを聞けと看守におどかされたという申し入れから始まって、これはもう、こればかり言うていると、警察庁のほうも、これのほうの調べばかりに相当な人件費を使わなければ追っつかないのではないかと思うくらい、現にそう訴えてきている者がたくさんあるわけなんです。しかも、警察庁の刑事局長のお考えでは、これは暴力学生かなんか、もうどうにもならぬやつが警察の留置場にいるんだから、少々の日にあわしてやらにゃいかぬのだというものが、これは腹の底におありになるかもわからない。しかし、これは特殊な人に対する事柄じゃないわけなんです。たとえば、これは古い歴史ですが、戦前の歴史でも、帝人事件の際に時の銀行局長が戒具を——戒具といってもそれは手錠ですが、手錠もかけて留置場で調べられた、あれくらいおそろしいことはなかったということを、帝人事件のあとの述懐をしておられるわけです。もう特殊な人間が留置場に入っているんじゃなくて、われわれから考えれば、銀行局長といえばかなりなエリートであり、そして多くその銀行局長の後にささえている人もいると思う。普通の人よりはしっかりしているんじゃないかと思う。だけど、その人が手錠をかけられて警察で調べられた、あれくらいつらいことはなかったということで、そうして御存じのとおりあのでっち上げの供述を、事実と異なる全く空中楼閣の供述をしいられてそれを認めた。後に無罪の判決が出たわけですが、そういうふうないろいろな問題があるわけでございまして、これはもっと慎重に考えていただきたい。部下から、警察署長からそういう報告を受けていないからそんなことはないと思うということだけで事を処せられては、これはたいへんなことになると思うわけなんです。その点十分にお考えいただきたいと思うわけです。 それからさらに、先ほど来、これは刑務所と違って留置場ではいろいろ設備も悪いし、場所も狭い、だから戒具を用いるのだというお話。というのは、結局留置場に国家予算が十分に使われておらない、非常に予算面で窮屈なことをしている、そのためにそのしわ寄せを、収容された当該留置人に戒具をつけて、その人権をじゅうりんすることによってそのかわりをしているというようなお話なんでございますが、どうしてこの留置場のほうに、刑務所と同じようにということは収容者の数から見ても無理かと思いますが、もう少し、留置人が少なくとも、いかに留置人であっても犬やネコじゃないんですから、人間なんですから、人間らしい留置の方法というようなことに費用をお使いにならないのか。その点につい三どうして警察のほうは留置場の改善ということにもっと努力をなさらないのか。この戒具を使うために一千万近い予算を要求されたということを聞いております。そのようなお金をお使いになるならば、これは一千万やそこらのお金では留置場が一ぺんによくなるはずはございませんけれども、どうしてもっと人間を留置するにふさわしい設備を——これは国の法律で留置するんですから、留置した以上は、これは何も特別いい生活をさす必要はもとよりありませんけれども、人間たるにふさわしい最低の生活の保障ということは、これは必要ではないかと思うんですが、どうしてそちらのほうに努力なさらないのか、それを伺いたいと思います。
○政府委員(高松敬治君) 警察署の留置場がたいへんお粗末であるというお話でございますが、非常に古い警察署もございまして、逐次これを改めていく、そういう意味で、若干古いものが残っておることも事実でございます。しかし、いまのお話のように、留置場の中では人間らしく扱っていない、犬ころやネコ——ネコはどうかわかりませんが、犬ころか何かのようにしか扱っていないというのは、これは私たいへん心外でございます。留置場は、たいへん刑務所のように広い面積を使い、広い土地を使って建てるものでないことは間違いございませんけれども、しかし、普通の人間が普通にそこで留置されて生活を過ごすということについては、大体標準であろうかと、こう思います。 戒具の使用の問題が起こるのは、そこで普通でなく異常な行動に出る、それをどうしようかという問題でございます。戒具の使用も行なわないような設備まで留置場につけなければいかぬ、非常にあばれる者、酒に酔っぱらう者、あるいは自殺をはかる者、こういうふうな者について特別にそういうものをつくらなければいかぬかというところに問題があるんだろうかと思います。通常の留置人が通常にそこで生活するについて、現在の留置場が著しくこれは犬小屋みたいなところである——昔は豚箱と申しましたけれども、そういう豚箱のような留置場であるというふうには、私どもは全然考えておりません。その点の改善はかなり行なわれてまいっておるつもりでございます。
○佐々木静子君 この件について後刻また公安委員長のほうにもお伺いさしていただきたいと思うので、簡単に留置場の問題あと続けたいと思うのでございますが、相当古いのもあって、いま改善につとめているというふうなお話でございますが、これは四十五年の四月十三日の当委員会における政府の答弁によりますと、実は予備費の支出でございますが、昭和四十二年、四十三年、四十四年と相当警察庁関係で、これは警備とか装備のための予備費の支出が実は行なわれておるわけでございます。これは詳しく申し上げますと、四十三年度にしても一億七千五百三十三万八千円という予備費それから四十四年度は、またこれは緊急逮捕などの費用として五億三千六百十六万三千円というような予備費、このような膨大な支出が行なわれているわけでございまして、このことに対して政府の答弁が、このように膨大な予備費を警察のほうに使わなければならないという理由として、昭和四十二年には千四百六十九名、四十三年には六千六百名、四十四年には一万四千七百四十八名に達する、まあ集団行為の検挙者をあげている。たくさんの検挙者をあげている旨答弁をしていられるわけなんです。なるほど、大ぜいの集団検挙者をあげるために警察がいろんな装備など捜査の費用がかかってだんだんと支出が膨大化しているということはやむを得ないと思うんでございますが、ところが一面この留置場における費用ということを調べてみますと、昭和四十四年、四十五年、四十六年、これは一向にこの費用が増額になっておらない。いずれも十一億あるいは十二億の範囲内なんです。これは、捕えるほうには、集団の悪いことをやるやつがたくさんいるから警察費用上げなきゃいかぬということでどんどんどんどん予備費までを繰り越して増額している。どうしてこんなにたくさん予備費を警察に使うのだと言えば、集団の暴力行為をする悪いのがいるので、たくさんつかまえてこなくちゃならない、現にこれだけつかまえたという答弁をしているわけです。つかまえたと言うとことばがおかしいですが、これだけ勾留したという答弁をしておられるわけなんです。それだったら、それを収容する設備についても増額にならなければこれは当然に話がおかしいところが、ちっとも増額になっておらぬ。そのために、結局、声を発する者がいても、それを防ぐ方法がない。留置場自身は、いつまでたってももとの、留置人の数の少なかったときのままの状態で、しかもそれも古びていく。それでは、当然にこれはそのしわ寄せが留置人の上に及んでいるわけでございまして、これは及ばなければふしぎなわけで、どうしてつかまえに行くほうばかり増額して、そして肝心のつかまえた留置人に対する人間らしい生活の保障というようなところに費用を使われないのか、その点について刑事局長はどのように考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
○政府委員(高松敬治君) 留置人の数が多少増減がございましても、御承知のように、警察の留留場自身で留置できる期間というものは、警察の四十八時間、勾留になった場合、代用監獄として最大限使っても二十日、合計二十三日ということになるわけでございます。あと若干起訴後の者が留置されているという事例がございますけれども、留置延べ総人員から言うと、そう大きな変動というものにはなかなかなってまいらないということが一つございます。その点が非常に刑務所と違うところでございます。ただ、一時的に非常にたくさん入って混雑する、こういう場合は、もちろんこれはいま御指摘のようなこともあることはございますけれども、しかし大体そういう性質でございまして、警察署の数というものも、若干減ってはおりますけれども、まあ従来とあまり変わらない。留置場のいろんな費用につきましても、そういう次第で、大体大きく十一億から十二億の間を往来しているというのが実情でございます。しかし、もちろん、たとえば食糧費の問題であるとか、あるいは医師謝金の問題であるとか、われわれとしてももっとこういうものをふやさなければいかぬというものは幾つかございます。それらについてもいろいろ努力をいたしておりますが、予算的に思うようになかなかそれが容認されないという点もございまして、たいへん苦労していることも事実でございます。いまのお話のように、そういうふうにふえているのに留置場をふやさないのはおかしいという御議論は、やや留置場の実態から見まして、それではすぐ何割かふやさなければいけないかどうかというふうになってまいりますと、多少御意見のとおりにはいかないのではなかろうかというふうに考えております。
○佐々木静子君 これは刑事局長が、留置されるのは幾ら長くても二十日ぐらいだから、一番長くて二十三日だから、その間少々苦しくてもたいしたことはないという考えが根底におありになると思うんです。
○政府委員(高松敬治君) いえ、違います。
○佐々木静子君 しかし、実際問題として、これは単にその間二十日間を何とか過ごせばいいという問題ではなくって、その間にその留置されている人間にとっては一生に二度とまずないだろうというような重大な取り調べが行なわれているわけなんです。しかも、その留置している当人である警察官によって取り調べが行なわれているわけです。その取り調べの結果、本人はもとより、その家族とか、その関係人の一生の運命を左右するような重大な事柄がその二十日間に行なわれている。そういう事態を考えるならば、これは単に留置人が二十日間命長らえて済んでおればともかくそれで責任を果たしたというのではなくて、これは日本の将来の裁判の公正のためにも、この二十日間留置人が不当な、みじめな苦しい思いを必要以上に課せられない、そして正しいことを正しい、間違ったことは間違ったと事実にのっとって供述ができるだけの環境をつくり出していくということが警察にとって必要なことではないか。そういうことから考えると、いまの警察は捕えることばかりに多くばく大な費用を使って、これはもういろんな事件の必要からもあるわけですが、どうもここまで、こんなにたくさんの装備が日本の警察になされ、そしてこれだけ多くの捜査費用が使われているのかとがく然とするぐらいの費用が使われておりながら、それをつかまえるだけで、あとそれをつかまえた当事者当人を取り調べる、その間本人を留置するための費用というものに対してあまりにも冷酷ではないか。そういう点についてもっと重々お考えいただきたいと思うわけなんです。
○政府委員(高松敬治君) 御指摘の点については、私どもも日ごろその点を一番留置人の問題については考えているつもりでございます。で、たいへんみじめな思いをする、あるいは一時に被疑者がふえて留置場の中がたいへん混雑する、あるいは非常に狭いスペースに押し込められてしまう、こういうことになれば、当然にほかの警察署に身柄を移すというふうなやり方もやりますし、留置人の留置場内における生活というものが、そういうふうなみじめな思いといいますか、そういう気持ちにならないように、私どもとしてもできるだけ努力をしてまいったつもりでございますし、またこれからもそういう点の努力を続けてまいるつもりでございます。
○佐々木静子君 いまあなたのほうからいろいろと伺ったんですけれども、あなたの御答弁では非常に不十分である。警察の立場のみであって、しかもその一般の留置された人が非常な目にあわされているということについて十分な御認識もない。そういう認識のない上に立った御答弁をここで幾ら伺っても、これは切りのないことだと思いますので、いまもう一度公安委員長にお越しいただいて、公安委員長からもこの点重ねてお聞きしょうと思います。公安委員長はお越しいただけるわけですか。
○委員長(足鹿覺君) 速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(足鹿覺君) 速記を起こして。
○佐々木静子君 それでは、私ぜひともこの点大臣に伺いたいと思いますので、この問題はこのあたりで打ち切りまして、大臣がお越しいただいてから質問を続けたいと思います。 それでは、いまの警察の留置の問題からちょっと方向を変えまして、入国管理のことについて伺いたいわけでございます。 不法入国、あるいは不法上陸、あるいは不法残留者、あるいは刑罰法令違反等の理由で強制退去命令を受けている外国人が、その執行を受けて収容所、つまり各地の入国管理事務所にある留置場及び入国者の収容所に収容されております。これらの外国人のうち、朝鮮人は大村入国者収容所に、朝鮮人以外の外国人は横浜入国者収容所に、いずれも収容されているわけですが、これらの被収容者の処遇について若干お伺いしたいと思うわけです。 この入国者収容所の収容業務ですね、これは被退去強制者を原則として集団で送還するために収容管理しているものであって、その取り扱いは保安上支障がない範囲において自由を与えるのがたてまえということになっておりますので、この被収容者の人権の尊重、あるいは自由の確保というようなことでどのような配慮を用いておられるのか、簡単に答えていただきたいと思います。
○政府委員(吉岡章君) ただいまの御質問でございますが、私のほうで大村及び横浜に収容いたしておりますのは、先ほど御指摘のございましたように、不法入国者、それから不法残留者、あるいは刑罰法令の違反者でございまして、いずれも外国人でございますし、その人たちは日本から遠からず退去する船待ちのために収容いたしておりますので、収容所の保安上差しつかえのない限りなるべく自由を与えて、自由を拘束しないということを原則といたしておりまして、そのことから個個に、たとえば日常生活の規制、あるいは面会、あるいは外界との連絡とかいうようなことも、保安上差しつかえのない限りなるべく自由にするという方針で取り扱っております。
○佐々木静子君 この四十五年度の収容費の決算額を見ますと、大村収容所が四百八十四万九千円、そして横浜収容所が三百二十万三千円ということになっておりまして——この金額の単位ですが、いまの単位私ちょっと間違っておりますね、後日訂正させていただくかわかりませんが、同年度の延べ収容人数、大村が二万六千七百八十三人、そして横浜が一万二千六百九十三人ということから見ますと、大村のほうが延べ人員、人間の数が横浜の二倍以上であるにもかかわらず収容費用というものが一・五倍である。一人当たりの収容費が、これは一日当たりですが、大村が百八十一円、横浜が二百五十二円というふうになっております。なぜ横浜のほうが高くて大村のほうが低くなっているのか、そのことを伺いたいと思います。
○政府委員(吉岡章君) 御指摘の点は、大村と横浜との施設の違いと、それから被収容者の食費等の違いから生じたものと存じます。
○佐々木静子君 この収容費の中に食費もそれじゃ入っているわけでございますか。
○政府委員(吉岡章君) 失礼申し上げました。食費は入っておりません。
○佐々木静子君 四十六年度の収容費、一人当なりどうなっておりますか。
○政府委員(吉岡章君) 予算単価、個々の項目について分かれておりまして、平均トータル出しておりませんけれども、個々の費目で申し上げましょうか。
○佐々木静子君 わからないようでしたら、あとでちょっと計算していただいてお答えいただいたらけっこうでございます。 四十七年度の収容費の見込みは、これは大村のほうが百二十五円、横浜が百六十円となっているわけです。これも横浜と大村とに差があるわけみんでございますが、まあその差もさることながら、四十五年度収容費百八十一円あるいは二百五十二円と比べますといずれも低額になっているのです。それはどういうわけからでしょうか。
○政府委員(吉岡章君) いまの御指摘の大村のほうが横浜より安いというのは、われわれいま調ベましたところによりますと、燃料費、光熱費用が大村のほうが安いことに主たる原因があるのじゃないかと思います。
○佐々木静子君 四十五年度より四十七年度のほうが総体的に低額になっている理由です。
○政府委員(吉岡章君) それは、収容します被収容者の数が予算上減少したということに基づくものでございます。
○佐々木静子君 これ、収容されている人はやっぱり生きている人間ですが、なぜ予算上減少されたわけですか。
○政府委員(吉岡章君) 被収容者の数が年々減る傾向にございますから、予算上被収容者の数を低く見積もったことに原因すると存じます。
○佐々木静子君 いま被収容者の数を四十七年度は低く見積もったという御答弁ですが、これは何人に四十七年度は見積もっておられるわけですか。
○説明員(伊藤卓藏君) 私からちょっと補足させていただきます。 四十五年度を見ますと、大村の場合には一日百八十五名ということで積算されております。ところが、四十六年を見てみますと、大村の場合には百六十五名が積算の基礎になっておりまして、そこに二十名の違いが出てまいります。一方横浜のほうは、四十五年が、東洋人五十五名、欧米人十名、合計六十五名が積算の基礎になっておりますけれども、四十六年度予算を見てみますと、東洋人四十五名、欧米人十名、合計五十五名というのが積算の基礎になっております。したがいまして、減りぐあいと申しますか、積算の基礎になる人員は、大村のほうがずっと減ってきているようでございます。 〔委員長退席、理事小谷守君着席〕
○佐々木静子君 これは私あとでお伺いしたいと思っていたんですが、いま四十七年度の収容所の延べ人員の見込みですね、これは私伺っているところでは、大村収容所は六万二百二十五人、横浜収容所は二万七十五人と、減るどころか、四十五年度の収容者の数よりたいそうふえているわけなんです。私実はこの四十七年度の収容所の人員見込みというものがこれほどふえているのかということをあとでお伺いしょうと思ったところなんですが、それと非常に食い違った御答弁なんですが、これはどういうことになるのですか。
○説明員(伊藤卓藏君) ちょっと私誤解があるかもしれませんので、佐々木先生にお伺いするわけでございますが、延べ収容人員でございますね、延べ収容人員を見ますと、四十五年の延べ収容人員が、大村が私の手持ち資料によりますと六万七千五百二十五人、それから四十六年のほうが六万二百二十五名、こういうことになっているのでございますけれども……。
○佐々木静子君 四十七年度の延べ収容人員の見込みの資料は、これ法務省からいただいたのがあるわけですが、私のほうの資料ではそれよりも少なくなっているように一これも前にいただいた資料から計算したわけですが、これはあとで調べましてお伺いします。私いまの点はあとで質問を続けたいと思います。 この間、私、大村収容所を見せていただきまして、古いほうの大村収容所のほうは相当いたんでいる、すでに新築の収容所がその隣にモダンな建物ができているという様子、近く竣工するということを伺ったわけでございますが、新収容所ができたならば、もとの収容所はもう廃棄なさるわけですね。もう取りこわされて、お使いにならないわけですね。
○政府委員(吉岡章君) お説のとおりでございます。取りこわします。
○佐々木静子君 現在の収容所、これは定員が三百名というふうに承っておりますが、この三百名の定員で今後は十分にまかない得るということでございますね。
○政府委員(吉岡章君) そういう予想で作業しております。
○佐々木静子君 この建築中の新大村収容所における収容者一人当たりの面積、これは幾平方メートルぐらいになっておりますか。
○政府委員(吉岡章君) 大村のほうを申し上げますと、居室のみをとりました場合に、一人当たり二・九八平方メートルになっております。これは旧のほうでございます。
○佐々木静子君 新しいほうはいかがでございますか。
○政府委員(吉岡章君) 新しいほうは四・五五平方メートルでございます。
○佐々木静子君 この収容所における食費の問題でございますが、四十七年度予算を見ますと、東洋人の場合は一日百三十円四十五銭、そして欧米人の場合は一日百八十九円八十四銭となっております。これはなぜ欧米人と東洋人とにこのような食費の開きを法務省はおつけになっているわけですか。
○政府委員(吉岡章君) 予算上便宜的に東洋人と欧米人と区別いたしておりますが、その主たる内容は、米食を主とする者と、しからざる者ということでございまして、東洋人は主として米食をとるという考えでございますから、東洋人すなわち米食を主とする者、欧米人はパン食を主とする者ということで積算してございます。
○佐々木静子君 いま米食というお答えがございました。私、米が上等で麦が粗末だとは申しませんが、私見せていただいたのは米食ではなくて麦食だと思うんです。東洋人は麦食で、欧米人はパン食、こういうふうに頭から定義づけられているところ、これは非常におかしいんじゃないか。私も東洋人の一人でありますが、三度三度麦を食べろと言われれば、それよりもパンを三度三度食べさしてもらったほうがはるかにありがたいと思うんですが、その点はどういうわけで、東洋人、西洋人ということで、しかも、米食とは名前だけで、麦食、そして西洋人の場合はまつ白のパン食を横浜収容所で見せていただいたんでございますけれども、どうしてそういうような区別をなさるのですか。
○政府委員(吉岡章君) 先ほど申し上げましたように、予算上便宜的に東洋人と欧米人と分けてございますが、米食を主としてとりたい者、それからパン食を主としてとりたい者ということでございまして、東洋人の中でもパン食がいいという者は、恒常的にそういうことでございますならば、パン食を支給することになっております。
○佐々木静子君 これは、東洋人の場合でも欧米人の食事を希望する場合はそのように支給するということになっているわけですね。
○政府委員(吉岡章君) 運用上そういうことにしております。
○佐々木静子君 それを伺えて安心したわけです。実は私、横浜の収容所で朝御飯のサンプルを見せていただいたのですけれども、欧米人用としてはまつ白なパン、そうしてバター、なま卵、牛乳。ところが、東洋人用としては、いま申し上げました米が若干入っている麦食、そうしてちょっと色がついた汁に近い、みそ汁という名前になっておりますからみそ汁。これだったら、日本人の場合、まあ十人のうち九人がパン、あるいは十人までが欧米人の食事をとりたいと言うに違いないと私は思って、横浜の所長に、「これじゃ、欧米人の食事のほうがいいんじゃないか、東洋人でもこちらを希望する人のほうが多いのじゃないか」と伺いましたところ、「欧米人が東洋人の食事を希望する場合には、それは認めております。しかし、東洋人が欧米人の食事を希望した場合に、それは認めておりません。」というお返事だったのです。しかし、いま局長のお話を伺って、東洋人が欧米人の食事を希望した場合、これはもう自由にお認めになるという御答弁をいただいて、たいへんありがたく思っているわけで、安心したわけです。そのことを各収容所に局長のほうから今後御徹底いただきたいと思うわけでございます。
○説明員(伊藤卓藏君) 私からちょっと補足説明させていただきます。 局長がただいまお答えしたとおりでございますが、ただ、きょう一日だけはパン食にしてくれとか、今週だけはパン食にしてくれとかということになりますと、ほかの被収容者との関係もございましてちょっと不可能でございますが、たとえ中国人、あるいは韓国人、朝鮮人の方でありましても、西欧風な生活習慣が身についているのでぜひ四欧食でずっとお願いしたいということであれは、これはもう予算執行上も、それから実務上もこれは十分可能でございますので、それは実行しております。ただ、一日だけ、あるいは一食だけと、こういうことになりますと、ちょっと不可能になるという点をちょっと補足説明さしていただきます。
○佐々木静子君 実は、いまも申し上げましたよりに、そのことで私は横浜収容所で伺ったわけなんです。ところが、その欧米人の場合と東洋人の場合とは食費の予算が違うので、欧米人が東洋人の食事を希望する場合は、これは低額になるから問題はないけれども、東洋人が欧米人の食事を希望する場合には、これは予算が高くつく、だから、西洋人の場合はパンを四きれ与えているときでも、東洋人の場合では一きれ減らさなければ金額の数字が合わない、しかしそういうことにするとはっきりとした差がそこに出てくるので、そういうことで東洋人の希望はいれておらぬのだということでございましたが、そうすると、食事の面では東洋人も西洋人も全く区別なく、その希望によって米食、パン食にする、東洋人、西洋人と書いてあるからまぎらわしいので、米食希望者とパン食希望者というふうに分けて、そうして、かりに予算額が違っても、全く人種、民族とは関係なしに平等に扱っておられる、今後扱われるということでございますね。
○政府委員(吉岡章君) 最初にお断わり申し上げましたが、予算上便宜的に東洋人、欧米人ということに分けておりますけれども、それは米食を主とする者、しからざる者ということが内容でございまして、時勢の変転によりまして米食すなわち東洋人ということができない状況になれば、これは米食を主とする者、それからパン食を主とする右という分け方にするのが適当ではないかと存じますし、また、今後とも佐々木委員から御指摘のありました方向で努力いたしたいと存じます。
○佐々木静子君 そうしますと、いま横浜のことだけ申し上げましたけれども、大村収容所においても、パン食希望の場合は、これは欧米人と先ほど表示なすった予算の食費の額において支給されるということを保証なさるわけですね。
○政府委員(吉岡章君) 今後ともそういう方向で努力したいと存じます。
○佐々木静子君 先ほどの局長のお話で、この収容者は船待ちのために収容所に滞在しているものであるから、これは刑務所などのような矯正施設ではなく、できるだけの自由を与え、そして被収容者の人権の尊重あるいは民族的風俗習慣の尊重などということを期しているというふうな趣旨のお話だったと思うのでございます。私も、拝見したところ、そのようにいろいろ御配慮をなさっているということもわかるわけでございますが、ただ感じましたことは、収容所における娯楽室などにおきまして、たとえば大村収容所に置いてある書物なども日本語の本ばかりであって朝鮮語の本が一つもない。あの場合は朝鮮人ばかりなんですから、これは朝鮮語の本も置くべきではないか、いまのような趣旨だとすると。また、横浜収容所においても、東洋人を収容している——おもに中国人でございますが、中国語の本は一冊もない、全部日本語の本で日本の新聞である。そういうふうなことから考えますと、そこら辺についても先ほどのお話とちょっと食い違っているんじゃないか。また、あるいは収容所に掲げてある掲示などを見ますと、これが大村収容所には朝鮮語を用いた掲示というものが私残念ながら発見できなかったわけで、全部日本語で掲示しているわけです。ところが、所長さんに伺いますと、ともかく朝鮮から密入国してきてすぐつかまっている人間がかなり多いのだということで、日本語のわからぬ人のほうがその御説明どおりだとするとかなりに多いんじゃないか。これは朝鮮語の表示も、これは被収容者に知らせる告知板ですから、掲示を用いるべきじゃないか。これは横浜収容所についても同じことが言えるんですが、中国人の収容所には中国語は全然発見されない、全部日本語で表示してあるわけです。ところが、それで全部日本語の表示で横浜収容所は一貫しているというならば、私しいて問題として取り上げたくないと思うんですけれども、欧米人を収容している棟へ参りますと、収容者に対する告知は全部英語を用いている。これはどういうわけなのか。欧米人に対しては日本政府は非常にへりくだった態度で英語を用いている。ところが、朝鮮人あるいは中国人に対しては、朝鮮人独特の風俗習慣、中国人独特の風俗習慣ということを半ば無視して——半ばといいますか、全然無視して、日本語にのみよる掲示を用いている。そこら辺に、私残念ながら、いまの日本の政治のあり方、非常に欧米崇拝、中国人あるいは朝鮮人に対しては、日本人、日本政府の優越的な姿勢というものが残念ながらそこに見られるように感じたわけなんですが、その点について局長はどのようにお考えになっておりますか。
○政府委員(吉岡章君) 御指摘の点に関しましては、大村等につきまして、収容される方の多くが多年日本に住んでおったというようなことのために、あるいはそういうことに気がつかなかったかと存じますが、御指摘の点に関しましては、今後十分注意いたしまして、韓国語の雑誌、表示等、あるいは横浜におきます中国人に対することも改めていきたいと思います。
○佐々木静子君 そのように、ぜひともその民族の風俗習慣なども尊重していただいて、この入管収容所の持っている意味を十分生かしていただきたいと、お願い申し上げる次第です。 そして、いま韓国語というお話がたまたまございましたので、ちょっと伺いたいのでございますが、この間、大村収容所で伺ったところでは、朝鮮人の場合、御承知のとおり、韓国と朝鮮民主主義人民共和国の場合と二つ考えられるわけでございまして、韓国を祖国と考え韓国へ帰国することを希望する人の場合はあまり問題ないようなんでございますが、朝鮮民主主義人民共和国を祖国と考えそちらに帰国したいという希望者に対しましていろいろな問題が起こっているということをかねてから私間接的に聞いているわけでございます。そういうわけで、私、大村収容所で朝鮮民主主義人民共和国を祖国と考えて帰国したいという希望者にはどのように扱っておられますかということをお尋ねいたしましたところ、責任者の方から、「それはもうもちろん、朝鮮民主主義人民共和国のほうへすぐにお帰りいただくように手続をとっております、そこら辺には何らのトラブルはありません」という御回答をいただいて、安心したのでございますけれども、それはそのとおり間違いございませんか。
○政府委員(吉岡章君) その点、間違いございません。
○佐々木静子君 これは、政府のお取り扱いとしてそのようであっても、いままでお聞きしているのでは、これは直接政府には関係ないことで、法務省には関係ないことかもしれませんが、この収容者の中で韓国組、あるいは俗にいうと北朝鮮組というのがあって、韓国組がかりに多数であるとすれば、その間に非常に内部的なトラブルが起こる、場合によればそれがリンチ事件に発展する、そのために、朝鮮民主主義人民共和国のほうへ帰りたいと思っておっても、うっかりそのことが収容所内の中で知れればたいへんなリンチを受けて身の危険を感ずるかもしれない、あるいはそのようなおそれもあったというようなことを、よく仮放免で出てきた人から伺うわけなんですが、その点について法務省とするとどのような御配慮をなさっていらっしゃいますか。
○政府委員(吉岡章君) 朝鮮民主主義人民共和国に帰りたいということをはっきり明示されまして、新潟から出ます北朝鮮向けの帰還船で帰られる方は、大村のほうに収容しなくて、横浜の収容所に収容いたしまして、そういったトラブルを避けることにいたしておりますが、そうした意思表示がはっきりしない方で大村に収容された方があるかと存じます。しかしながら、大村に収容されまして北朝鮮に自費で帰りたいという方は、過去に、実績として、昭和四十三年に一名ございますし、四十四年に三名ございます。それから四十五年に一名、それから四十六年は二十四名ございます。
○佐々木静子君 いまのお話のように、非常に政府としても御配慮いただいていることを伺って、非常にけっこうだと思うわけでございますが、これは日本政府と直接関係のないことでいろいろと配慮なされなければならないわけですけれども、そういうふうな朝鮮の特殊な事情などを十分御配慮いただきまして、それぞれが本国に帰りたい、トラブルなしに安心して希望を申し述べられるというふうな環境を、ぜひ法務省の入管のほうのお力で、十分に本人の意思が尊重されるように、特段の御配慮を今後もお願いしたいと思うわけでございます。 その事柄に関連しまして、これは朝鮮民主主義人民共和国との国交の問題でございます。交流の問題でございますが、これは入管の局長さんにいまお伺いさしていただいて御返答いただくということは、あるいは非常に無理なことかもしれませんけれども、当面の一番の責任者でいらっしゃいますので、お伺いさしていただきたいと思いますが、現在まで未承認の社会主義国への、共産国への国交というものが非常に閉ざされておったわけでございますけれども、これは御承知のとおり、昨年は中国国慶節の代表団が——これは在日外国人が中国へ国慶節をお祝いに代表団を派遣し、そしてその人たちが再入国することを、これは法務省がお認めになったわけでございます。そのように、だんだんと未承認の国ではありますけれども中国との交流、特に在日中国人がその祖国に行き、そして再び自分の生活の根拠である日本に帰ってくるということについてだんだんと緩和された政策を、これは入管のほうでもおとりいただいているわけでございます。これは非常にけっこうなことで、これは世界の趨勢、日本の政治のあり方から見ても、当然そのようになっていかなければならないわけでございますが、現在、この四月十五日のこれは金日成首相の誕生日の祝賀団、これが在日朝鮮人の方々が今度代表団十三人が朝鮮民主主義人民共和国にいらっしゃることになっておりますが、その再入国のことについていま法務省のほうの御許可が出ない、そのためにたいへんに困っている状態でございます。これは、韓国との交通が、いま再入国、在日朝鮮人がもう相当程度自由に往来しているということから見ますと、非常にこれは片手落ちな措置ではないか。これは別にイデオロギーとか政党とかいうような問題を離れて人間として考えた場合に、自分の祖国へ行きたい、自分の祖国の首相のお誕生日のお祝い、六十回目のお祝いに在日朝鮮人を代表して行きたい、それはもう民族として、人間として切なる願いではないかと思うわけでございます。もちろん、行くことはかまわぬが、しかし日本へ帰ることは困るということであれば、日本に生まれ、日本に育ち、日本で生活している人間にとって、これはもう事実上行けないことと同じでございます。その点について、これは入管の局長にすぐ御回答をということは、それはあるいは困難かもしれませんけれども、局長として可能な範囲でできるだけ誠意のあるこの点についての御回答をいただきたいと思います。
○政府委員(吉岡章君) ただいまの点につきましては、一昨日でございますか、予算委員会で前尾法務大臣からも質問に答える形でお答えいたしておりますが、朝鮮民主主義共和国と国交が開けておらない現在においては、金日成首相の六十歳の誕生日にこちらから慶祝に行かれる方々の再入国を認めることは非常に困難であるという御答弁がございましたが、しかし、御承知のとおり、国交が開けておらなくても、現に肉親の方々は三十八度線以北に住んでおられる方々もございますし、人道上のケースとして同情に値するといった場合には個々の審査を経て再入国を許可する状況でございまして、現在いわゆる北朝鮮と韓国との国交関係がまだ雪解けにならない状態にございます今日におきまして、北朝鮮に往来される在日朝鮮人の方々の再入国を一挙にゆるめるということはまだ非常に至難な情勢でございます。
○佐々木静子君 まあいまのお話で、未承認国に帰国した場合の再入国ということはなかなかむずかしいということは私もわかるわけでございますが、しかし、もう中国との間ではかなりな範囲を認めていらっしゃる。修学旅行団までも——までもと言うとたいへん語弊がありますが、中国旅行の人たちの再入国もかなり認めていらっしゃるという事態でございますから、ですから、これはいろいろな事情はあろうと思いますが、朝鮮民主主義人民共和国へ行かれた方の再入国というものもぜひ認めていただきたい。しかも、いままでの例では、三十八度線以北に住んでおられた方というふうに扱われておられるようですけれども、先に親が朝鮮共和国へお帰りになった、子供がそのあとを追って行きたい、あるいは弟が帰った、兄貴があとから行きたい、夫が帰った、妻もあとから行きたいというような、これはもう人道上からも当然許されていいというようなケースがたくさんあるわけでございます。また、この金日成首相の生誕ということも、これはもう朝鮮民族にとりましては、もう自分の親の誕生祝いに行くというのと同じような気持ちでございます。ぜひともそういうふうな朝鮮の方々の希望を、これは人道的見地からもぜひとも入管の局長の立場におかれてできる限りの努力をしていただいて、もう日にちも迫っていることです、ぜひとも実現さしていただきたいということを最後にお願いして、局長に対する質問を終わりたいと思います。
○理事(小谷守君) それでは、先刻の佐々木君の警察庁に対する質疑につきましては、明後十日の総理府所管の審査に国家公安委員長が出席いたしますので、その際あらためて行なうように取り計らいたいと存じます。 暫時休憩いたします。 午後零時十六分休憩 —————・————— 午後一時二十八分開会
○委員長(足鹿覺君) 委員会を再開いたします。 この際おはかりいたします。昭和四十四年度決算外二件の審査のため、来たる三月十日、理化学研究所労働組合執行委員長石塚皓造君を参考人として出席を求めたいと思いますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(足鹿覺君) 御異議ないと認めます。 なお、その手続につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(足鹿覺君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 —————————————
○委員長(足鹿覺君) 昭和四十四年度決算外二件を議題とし、休憩前に引き続き質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
○沢田実君 私は、郵便切手をめぐる問題についてお伺いをしたいわけであります。この切手の問題につきましては、財団法人全国郵便切手普及協会が郵政省から大口の割り当てを受けて不当な利益をむさぼっていたというような問題、あるいは政治駅や政治飛行場が政治への不信感を招いているおり、切手が歴代郵政大臣の地位利用のために発行されていたというような問題、いわゆる大臣切手というような問題について、過去三回にわたって本委員会において、わが党の二宮文造議員が郵政当局の姿勢をただしてまいりました。その結果、あるものは改善され、またあるものは改善されつつあると理解をしておりますが、さらに、本日は、二宮議員のあとを引き受けまして、切手問題の第四弾として切手の模造等について質問をしてまいりたいと思います。 その前に、郵便切手に関する著作権法上の取り扱いについて伺いたいと思います。著作権法の第十条第一項において、「絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物」及び「写真の著作物」を著作物として例示しております。したがって著作権の存続しておる美術の著作物や写真の著作物を郵便切手に使用する場合には、当然その著作者の承諾が必要であろうと思うわけでありますが、郵政省としては、その著作者の承諾を受けているのかどうか、まずお伺いをしたいと思います。
○政府委員(溝呂木繁君) 郵政省といたしまして、切手を発行するにあたりまして、当然その切手の画材になるものについて著作者の承認を得て発行しております。
○沢田実君 郵便切手の図柄、図案等については、一般から懸賞募集をする場合、あるいは郵政省の職員である技芸官が製作する場合等があろうと思いますが、この場合の著作権は一体どこに帰属するのか伺いたいと思います。
○政府委員(溝呂木繁君) ただいまお尋ねのように、郵政省の責任において画材を決定し、つくったものにつきましては、その著作権は郵政省にあるものと思います。
○沢田実君 これらの美術品の著作物や図柄、図案を用いて郵政省が作製した切手の原図、それについては、当然郵政省に著作権があると、こういうふうにいまの答弁で理解をするわけでございますが、その郵便切手を第三者が無断で複製した場合に、著作権の侵害になるかどうか、伺いたいと思います。
○政府委員(溝呂木繁君) 著作権の侵害になるものと思います。
○沢田実君 文化庁の方にお伺いをいたしたいわけでございますが、いらっしゃっていますか。 著作権法第十条第一項には、切手については例示がありませんが、著作権法上、切手についてはどういうふうに取り扱っていらっしゃるか、文化庁の御見解を承りたいと思います。
○説明員(加戸守行君) 著作権法の第十条では、著作物の例示をいたしておりまして、代表的なものを分類いたしまして、抽象的に例示いたしております。たとえば、先生御指摘の「絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物」という一つのジャンルがございます。あるいは「写真の著作物」というジャンルもございます。 で、切手について申し上げますと、切手自体が独立の著作物という概念構成ではございませんで、切手に採用されております先生御指摘のような原図、あるいはかかれました図案、あるいは既存の絵画、写真等が切手の図案として利用されておるわけでございます。したがいまして、大きく分けますと、切手に採用されております模様、図柄を三つに分けることができるんではないかと思います。一つは、たとえば、黒田清輝画伯のかかれたような絵を切手として採用する場合、これは既存の絵画の著作物、美術の著作物の切手への利用の問題でございます。それから第二が、たとえば、国立公園の記念切手のように、国立公園の風景を写真にとったものを切手にする。これは写真著作物の利用の問題でございます。それから第三に、郵政省の職員が、あるいは外部に委託いたしましてつくりました独自の意匠、図案等が切手の模様として採用される場合でございます。これにつきましては、たとえば、簡単な数字の組み合わせ等のような単純な模様の組み合わせでございますと、著作物であるかどうか疑わしい場合もございますけれども、多くは著作権法第十条第一項第四号に規定いたしております「美術の著作物」の一分野として評価できるものが多いのではないかと考えられます。したがいまして、先生の御指摘なさいました例示の中で申し上げますと、「美術の著作物」の一分野として切手に採用されている図案が考えられるのではないかということでございます。
○沢田実君 同じく文化庁に伺いたいわけですが、そういうふうに著作権があるものについては問題ありませんが、いまの御説明のとおりでございますが、著作権の消滅した絵画等を利用して、写真等を利用して、日本郵便あるいは千九百何十何年、十円ないし二十円という金額の表示、そういうものをして、切手というものの図案ですか、原図というんですか一というものをつくった場合には、これは要するに、郵政省の技芸官がつくったような場合ですね、これは著作権があって、それが郵政省に所属するんだと、こういうふうに理解をしてよろしゅうございますか。
○説明員(加戸守行君) ただいま御質問のございました、既存の絵画なり写真をそのままの形で、たとえば日本郵便あるいは十円という表示を入れただけで切手に利用しました場合に、新たな著作物ができ上がるという考え方は、文化庁としてはとってございません。その場合に、既存の絵画、写真にある程度手を加えまして、独自の創作性が加わったと評価できるような原図でございますれば、そこには二次的著作物という概念で、新たに著作物性が備わるという評価もできようかと思います。
○沢田実君 これが現物でございますが、ちょっとごらんをいただきたいと思いますが、これは一九五六年十一月一日発行の「鰕藏」をあしらった十円切手のまぎらわしい模造切手でございます。これは去る九月に銀座の三越六階のサロンで行なわれた琉球切手展、その会場において、一枚百円で——百円と申しましても、こういうふうになっておるわけですが、このような模造シートを百円で売っておりましたものの一枚を切り離して、そこに貼付したものです。 そこで、このような形で、実際に封筒に貼付されて行使された場合に、郵務当局としては、これは不正な使用だという確実な発見ができるかどうか、その辺はいかがでしょう。
○政府委員(溝呂木繁君) ただいまお示しいただきましたこの模造切手ですと、ちょっと大量に処理します郵便局の窓口では発見しにくいんじゃないかというふうに考えられます。
○沢田実君 その「鰕藏」をあしらったもののほかにも、「見返り美人」とか、あるいは「月に雁」とか、「ビードロを吹く娘」とか、同じような模造シートがたくさん出ております。模造シートの裏側を見ますと、一枚一枚に「参考品」というふうに印刷がされております。そうして、このシートの下には、「全日切手商協製造」、こういうふうに印刷がされてあります。一枚一枚を切り離した場合には、行使も可能なような状態でございますが、その行使可能という問題については別問題といたしまして、切手愛好家の間に、これは専門の方はおそらくこういう模造品については関心はないと思いますけれども、特に青少年の間にこれが販売されるというような事実については、郵政当局ではどのようにお考えでしょうか。
○政府委員(溝呂木繁君) 郵政省といたしましては、この郵便切手につきまして、現在郵便法でも、郵便法の八十四条で、行使の目的をもってこの郵便切手等を偽造し、または変造し、その使用のあとを除去した者は云々ということで禁止しておりますので、私どもといたしましては、これが行使の目的で使われるということでありますと、当然郵政省の実害にもなりますし、したがって、いまの郵便法の規定に照らして、ぜひこれを取り締まらなければならないと思っております。しかし、ただいまお尋ねのように、一般の郵趣会の中でこういうものが使われたときに、一体郵政省はどこまでその責任を負うのかということにつきましては、ある程度道義的責任は負うべきだという感じはいたしておりますが、そこまで取り締まるべきかということについては、いささか疑問もあるのではないかというふうに考えております。
○沢田実君 そうしますと、このいわゆる模造切手は、これはおそらく先ほど問題にしました著作権法上の著作物というふうなことにはなっていないと思いますが、郵政省で著作権があると、いわゆる技芸官がおつくりになった等のものを模造してこういうふうに出た場合には、著作権侵害で、郵政省としては何か取り締まりをする御意思がございますか。
○政府委員(溝呂木繁君) 実は、ただいまお尋ねの件につきまして、大きないままで事件がありませんので、過去におけるそういう実績はございませんが、当然著作権が郵政省にあると認められたものについて、しかも、明らかにそれを侵害するような形で、切手が模造といいますか、つくられたということになれば、やはり著作権保護の立場から、何らかの手を打たなければいけないというふうに考えます。
○沢田実君 そうしますと、これはちょっと見て、いま一枚一枚張った場合には、裏の「参考品」がわかりませんから、模造であるかどうか疑わしいわけです。そうしない場合には、模造であるとすぐわかります。こういうふうなつくり方ではなしに、大蔵省印刷局がつくっている程度の、あるいはそれと同じような技術のものはできないかもしれませんが、それに近いような、ほとんど同じものをつくり出した場合、現在の法律では郵政省ではどうしようもありませんか。
○政府委員(溝呂木繁君) 現在の法律の解釈の問題になりますが、「行使の目的を以て」という条文になっておりますので、やはり現在の法体系のもとにおいては、それが郵便に使われるという、そういう意味の行使の目的をもって使われたものならば、これは取り締まりの対象になる、処罰の対象になろうかと思いますが、全く行使の目的を持たないで、単なる郵趣品として持っていた場合には、現行法上では取り締まれないのじゃないか。先ほどの著作権法上からの問題では何らかの手が打てると思いますが、それも禁止する法律はないということになろうかと思います。
○沢田実君 それの突っ込んだ問題についてはあとから法務省にお尋ねしますが、そうしますと、要するに、郵便に張って郵便物を郵送するために使わなければ、これが愛好家のために幾ら模造品でないと信じられて販売をされているような模造品であっても、郵政省としては一向に関係なしと、こういうふうなお考えですか。
○政府委員(溝呂木繁君) 実は、そのつくられた態様によって、これは私どものほうよりも法律のほうの専門のところの問題になろうかと思いますが、それが行使の目的を持つ予備的な行為であるというような場合には、過去の判例においても、それを行使の未遂罪といいますか、予備罪として罰せられたことがありますので、全くこれと同じものが行使されるような状態において流布されている場合には、郵便法のほうの予備罪になりますと、八十五条のほうになりますが、そのほうで取り締まれますが、明らかに郵便に使うという目的を持たない形でそのものが持たれていた場合には、ちょっと取り締まりの対象にはしにくいんじゃないかというふうに私は考えております。
○沢田実君 そうしますと、郵政省の解釈としては、愛好家がどれだけ高い値段で模造品でないとだまされて模造品を買わされても、取り締まりの対象にはならない。要するに、郵便物を郵送するというために使うものでなければその対象にはならない、こういう解釈と理解してよろしゅうございますね。
○政府委員(溝呂木繁君) 現段階においては、そういうふうに解釈しております。
○沢田実君 郵政省の解釈はわかりました。 そこで、先ほど申し上げましたこの全日切手商協というのは、この印刷、いわゆる製造というふうに書いてあるわけですが、この団体は一体どういう団体であるのか、その役員はどういう方であるのか、おわかりになれば、お伺いをしたいと思います。
○政府委員(溝呂木繁君) 実は、いまそれを調べた資料が手元にございませんので、ちょっとお答えしかねるわけでございます。
○沢田実君 それでは後日、そういう関係を調べて、資料として御提出いただけますか。
○政府委員(溝呂木繁君) 後日調べて、結果がわかりましたら御報告いたします。
○沢田実君 実は政務次官、私のほうでお願いをしておいたつもりでございましたが、政務次官の出席について何か手落ちがございまして、いまいらっしゃったわけですが、実はいまこういう模造切手の問題について質問をいたしております。その封筒に貼付してありますのが、この模造切手の一枚を切り抜いて貼付したものでございますが、こういうものが市販されてございます。それについて、市販されていることが現在の法律ではどうしようもないのだというような御答弁でございますが、好ましい姿であるとお考えであるか、あるいは郵政省としては何か手を打たなくちゃならない、こういうふうにお考えであるか、郵政省としてのお考えを承りたいと思います。
○政府委員(松山千惠子君) 手違いでたいへんおくれて出てまいりまして、おわびを申し上げさしていただきたいと思います。 ただいまのお話でございますけれども、こうした模造切手ができておりまして、市販されており、いろいろとやはりこれに対する関心を持っている方々がこれらを集めておられるのだと思います。われわれが考えて、好ましからざる方法でもってこれがまたいろいろとやりとりされ、いろいろ問題を起こすようなことがあるとすれば、それが非常に残念でございますけれども、やはりただいまの法律で、これは何ともなし得ない現段階でございますので、郵政省といたしましても、先生方のいろいろな御意見によりまして、またそれらについて何らかの方法をとらなければならないかどうかというようなことも、今後検討させていただかなければならないと思っております。現時点で、私の立場で、今後方法を必ずとるというようなことは、ここで言明いたしかねるのでございますけれども、その辺で御了承いただきたいと思います。
○沢田実君 いまおいでになったばかりですので、私が希望するような答弁がいま出ないと思いますが、これはずっといろいろ関連して質問いたしてまいりますので、どうかひとつお聞きをいただいて、最後にまた御答弁をいただきますので、お願いしたいと思います。 こういうような模造切手を製造販売しております会社がございますが、そういう会社の会社名、住所、あるいはどういうものを発行しているか、調べたものがございましたら、発表していただきたいと思います。
○政府委員(溝呂木繁君) ただいまはそういう調査したものがございませんので、これも調査いたしまして、結果がわかりましたら御報告したいと思います。
○沢田実君 これは、私のほうでおたくのほうからお聞きをしたのがあるのですが、これは私のほうへお教えくださったものじゃないですか。
○政府委員(溝呂木繁君) 失礼いたしました。先ほど、会社の役員とか、そういったものをも含めてというふうにあれしましたが、会社名だけでございましたら、ここに五つばかりの会社名がございますので、それを御報告いたします。城東スタンプ、これは大阪市城東区今福町にある会社でございます。それから切手経済社、これは新宿区の四谷にある会社でございます。それから切手投資センター、これは渋谷区の渋谷にある会社でございます。それからケネディ・スタンプ、これは新宿区の四谷にある会社でございます。それから服部商会、これが名古屋市中区にある会社でございます。
○沢田実君 その会社がどういう模造切手をつくっているかも御存じでしょう。
○政府委員(溝呂木繁君) ただいまの会社を順に、そのつくっている切手の名前を申し上げますと、城東スタンプでは立太子礼記念の切手をつくっております。それから切手経済社では「見返り美人」、それから「月に雁」、それから切手投資センターでは「ビードロを吹く娘」、写楽の「鰕藏」、それからケネディ・スタンプでは第二回から第五回までの国体の切手でございます。それから服部商会では「見返り美人」と「月に雁」というふうになっております。
○沢田実君 いま五つ発表いただいたわけですが、先ほど私が申し上げた全日切手商協というのがいまの名前に載っておりませんが、これはどういうわけですか。
○政府委員(溝呂木繁君) 失礼いたしました。実は、この調べた私の手元には、いまの先生からお示しのところは入りておりませんので、当然、こういう証拠がある以上は、その会社が切手を販売しているということをつけ加えるべきだと思います。
○沢田実君 いまあなたがおっしゃったのは、写楽の「鰕藏」というのは、切手投資センターが売っているというふうにいま発表なさいました。これをつくっているのは全日切手商協一つなんですよ。それとの関係はどうなっているんですか。あなたのほうでは、これは切手投資センターがつくって売ったというふうに発表になった、これには全日切手商協と書いてありますが。
○政府委員(溝呂木繁君) ただいま私が申し上げました五つの会社は、模造切手の販売人として調べた会社でございますので、ちょっと私の答弁が不十分でございましたが、製造会社は、あるいはこれと違うものが出てきて、したがって、ただいま御指摘のように、この写楽の「鰕藏」をつくっているのは全日本云々という会社であり、販売人が切手投資センターということになろうかと思います。
○沢田実君 そうしますと、製造元は全日切手商協、それで、この五つの会社がおのおの売っていると、こういうことですか。切手商協というのは製造の大もとで、あと全国に販売店があって、それを全国に販売しているんだと、こういう御答弁ですか。
○政府委員(溝呂木繁君) ただいま私の手元では、写楽の「鰕藏」は切手投資センターで販売しているという資料でございます。したがいまして、その私の資料によれば、そこの会社でつくって、この切手投資センターで売っているということで、他の販売会社で売っていないということになっていますが、しかし、この点につきましては、完全な調査でございませんので、さらに、ほかの販売店でも売っているかもしれませんので、調査の結果、御報告したいと思います。
○沢田実君 私の手元に三種類ございますが、この三種類とも全部、「全日切手商協製造」、こういうふうに印刷してあるのです。だから、ここが製造元で、いまおっしゃった五つで販売しているのかということなんですよ。ごらんください。
○政府委員(溝呂木繁君) ただいまのお示しの切手を見ますと、これは「月に雁」であり、「ビードロを吹く娘」、それからいわゆる写楽の「鰕藏」で、これは三つとも全日切手商協製造になっております。したがいまして、私のほうの手元では、「月に雁」は切手経済社で販売し、さらに服部商会で販売しておりますし、「ビードロを吹く娘」というのは切手投資センターで販売し、写楽の「鰕藏」も切手投資センターで販売しているということになりますので、この二つの点から考えますと、先生のおっしゃるように全日切手商協がつくって、それぞれの販売店で販売しているということが明らかかと思います。
○沢田実君 そうしますと、全日切手商協という団体はどういう団体かあなたは明らかにいたしませんが、その団体がこういうものを、模造切手をつくって売るということについては、郵政省に届けか何かしているのかどうか。あるいは、先ほど来お話しのように、現段階ではその必要がないのだ、ただかってにもうつくっているのだ、こういうふうに御理解なのか。
○政府委員(溝呂木繁君) この会社からは何らの届け出は出ておりません。
○沢田実君 いま発表いただいた切手名、これについては著作権上の問題ございませんか。
○政府委員(溝呂木繁君) ただいまの示された分につきましては、これは郵政省のほうの技芸官がつくったものでなくて、もとに原画があってつくった切手でございますので、著作権のほうからいきますと、郵政省にないのではないかというふうに考えております。
○沢田実君 それでは、その点についてはひとまずおきまして、郵政省自体が模造切手をおつくりになったことがあるわけですが、その点について御説明いただきたい。
○政府委員(溝呂木繁君) 先生御指摘の点は、今回の四十六年度において郵便百年記念日にあたってつくった模造切手のことかと思います。これは、御承知のように、明治四年新式郵便が初めて日本に採用されたそのときにつくられた郵便切手というものがあるわけでございますが、ちょうどたまたま去年の四月それが百年になりましたので、一般の目に触れる機会が非常になくなっておりますので、当時を回顧する資料、あるいは記念品ということでもって、当時の切手を模刻印刷カードという形でもって印刷したものでございます。
○沢田実君 その印刷はどのくらいの数印刷しまして、どういうふうなところに配付をしたのか、御説明をいただきたいと思います。
○政府委員(溝呂木繁君) 作製部数は全部で七万部でございまして、その配付先のおもなものは、まず全国の高等学校、中学校、小学校及び郵政機関として郵便局とか、郵政局とか、あるいは研修所という郵政機関があるわけでございますが、そういったところに授業参考資料として配付するために、切手解説書号外という形で約六万二千部配付いたしました。それから郵便創業百年記念の中央式典に参列していただいた招待者の方と、それから同じく郵便創業百年記念に国際郵便切手展というものを東京で催したわけでございますが、そのときの組織委員会の方等に配付したものが八百四十部、それから第三番目に、郵便関係の国際会議等で、そういうときにお互いに交換し合う切手アルバムに貼付用として使ったものが七千百六十部、こういう次第に相なっております。
○沢田実君 いまのお話によりますと、郵便創業百年記念中央式典参列者にはおそらくこういうかっこうで記念品としてお出しになったのじゃないかと、こう思います。それから全国の小学校、中学校、高等学校等の六万二千については、いまの御説明ですと、これですね、こういうふうに貼付をいたしまして。それから郵便関係国際会議等等とおっしゃったのは、おそらくこれに貼付をなさって、こういうように貼付をなさった。そうしますと、七万部印刷なさったのは、これに貼付をなさった、これにカバーを七万部つくっていらっしゃるわけです。これに貼付をなさるにはカバーは要らないわけです。何のためにこのカバーを七万部おつくりになったんですか。
○政府委員(溝呂木繁君) 実は、この企画をいたしました当時は、ただいまお示しのカバー、いわゆるたとうということばで私ども使っております。そのたとうと、ただいまの切手に相当するカード、これとを一緒にして先ほど申しましたようなところに配付する予定でつくりました。しかし、途中におきまして、そういうたとうの中に入れておきますと、それだけが独立して一般の市販、ちまたに流布するということで、いろいろの方面から御注意がございましたので、いささかむだではございましたが、そうなってからのほうの事故をおそれまして、たとうは全部使わずに——全部といいますか、八百四十部には使ったわけでございますが、そのほかは解説書とかアルバムに貼付して、それだけが単独に流布されないような形で処理したわけでございます。したがいまして、初めの計画はいささかずさんであったということは認めざるを得ないと思います。
○沢田実君 計画がずさんであり、途中で変更したということをはっきりおっしゃったんですから、それはよくわかりましたが、そのために会計検査院のほうの、あとの問題になりますが、これで数十万の損害になっております。計画が非常にずさんなためにそうなっております。しかも、いまそういうことをおそれたとおっしゃるのは、こういう模造品をおつくりになること自身に問題がある。この模造品がいまおっしゃった八百四十枚出ておりますが、これがいま相場幾らしているとお思いですか、おそらく御存じないと思いますが、一万円でも手に入らぬそうです。というようなことで、郵政省自身がこういう模造切手をつくって、しかも一少数の八百四十出したところにものすごい暴騰しているわけです。これは、一般の切手と同じように、記念切手と同じように販売なされば、そんなことはないわけです。わざわざこうして模造切手をつくって、そして混乱させるようなことを郵政省自身がおやりになっていらっしゃる。しかも、きょうは決算ですから、経理の面を申し上げますと、非常に経済的にも数十万の明らかな損失と言って私は過言でないと思われるようなやり方をおやりになっていらっしゃる、これはお認めになりますか。
○政府委員(溝呂木繁君) 確かに、当時計画としてたとうつきのカードを印刷したということは、いまになってみますと、そういう一般の切手市場等において問題になるということを見ますと、明らかに当時の計画は妥当を欠くというふうに考えます。
○沢田実君 大蔵省の印刷局がせっかく来てくださっておりますので、お尋ねをいたしますが、いまお話をいたしました模造切手ですが、この郵政省で使用した以外にこれをおつくりになっていらっしゃいますが、どこの注文で、どれだけおつくりになったか、お尋ねをしたいと思います。
○説明員(青山保光君) 郵政百年記念のいわゆる模造切手につきましては、郵政省が直接お使いになるということで七万部の受注をいたしまして製造したわけでございますが、そのほかに、これは郵政省が百年を記念いたしまして、吉川弘文館というところが発行いたしました本の中に貼付するという計画がございました。その分といたしまして一万三千八百部というものを、これは全く同じものでございますが、製造した。ただ、これは当初から本に貼付をするという話でございますので、たとうはございません。中身だけということに相なっております。
○沢田実君 大蔵省の印刷局は、特定の団体を通じないと印刷には応じないというかっこうになっておるわけでございますか。というのは、郵政省が発注をしたり、いまお話の吉川弘文館さんの注文については、直接ではなしに朝陽会を通じて発注ということになっておりますが、そういうふうに、いわゆる普通の一般の会社では印刷局には直接発注できない、そういう形態になっておるわけですか。
○説明員(青山保光君) 御承知のとおり、印刷局は国の機関でございますから、原則としては国、地方公共団体、政府関係機関というような公の機関の受注を受けて製造するというのが原則でございます。ただし、例外的に、それ以外の民間の製品も受注を受けて印刷物を製造する場合もございます。これは、もちろん無制限にするというのじゃないので、民間のものでありましても、公共性の高いものあるいは当局の技術練磨に貢献するものとかというようなものに限定をいたしまして受注をいたします。もちろん、これは優先するのは国の関係でございますから、作業の繁閑等を見まして、手あきがあればそういうものも受ける、こういうたてまえでやっておるわけでありますが、この場合に、朝陽会を通じなければ受けないかどうかというお尋ねでございますけれども、印刷局のやり方といたしましては、代金の授受につきまして、これは国の機関でございますから、代金はすべて前金払いという原則がございます。ただし、国の場合は、これはあと払いでもいいということでございますが、民間からの受注につきましてはすべて前金払い、こういうことに相なっております。ところが、一般のこういう印刷の慣行というものは、あと払いということになっておりますので、一般の慣行とそれから国のやり方というものの調整をする必要があるということで、朝陽会——これは大蔵省所管の財団法人でございまするから、この財団法人を通じて受注をするということになりますと、この財団法人が印刷局に対しまして前払いをする、つまり代金を立てかえるという、こういうことができるわけでございまするので、主としてそういう代金の支払いの時期の関係からいたしまして、原則として朝陽会を通じておるということでございます。もちろん、これは原則でございますので、前払いでもいいというのがございましたならば、あるいはそれ以外の事情によりまして、直接印刷局が受注するというケースもございます。
○沢田実君 そうしますと、一般的に、朝陽会を通じて注文いたします場合に、たとえば、これに相当する記念の切手等がございますが、特定の会社が朝陽会を通じて印刷局に印刷を依頼した場合には、どこかでチェックの方法がございますか。あるいは無条件で印刷なさいますか。
○説明員(青山保光君) 民間の会社が切手を発注するというようなことにつきましては、ちょっとまだそういう実例は、朝陽会等にそういう受注があったという事例はございませんし、全然例のない話でございますが、切手の場合は、大蔵省印刷局が、国が、郵政省が発行するものでございますから、特定の民間の会社が郵便切手を発行するというようなことはないのじゃないかと思います。
○沢田実君 先ほど来お話をしておりますように、あなたがおっしゃるようにそういうことがなければ問題にしません。要するに、模造切手というのは、これは郵政省でもつくりました。この模造切手をいわゆる吉川弘文館から朝陽会を通じて印刷局にお願いしましたら、印刷局でこれを印刷しました。これです、いまおつくりになったのは。ところが、先ほど来お話をしておりますように、こういうような切手を模造いたしましても、行使しなければ、現在の法律ではどうということはないわけです。そうしますと、こういうような参考品というようなちょっと見てわかるようなものではなしに、大蔵省印刷局の技術で、先ほど申し上げましたような特定の会社あるいは団体が朝陽会を通じて大蔵省にいわゆる模造切手の印刷を依頼した場合に、どこかでチェックができますかと申し上げているのです。これは大蔵省印刷局として受注できないとか、これはいいとかいうことが、現在の法律ではおそらくできないでしょう——ということは、模造切手は自由につくっていいということになっているのだから、だからチェックができないでしょうと申し上げているのですが、どうでしょうか。
○説明員(青山保光君) おっしゃるとおりでございます。そういうものを印刷局がチェックするという法律的な保証はございません。しかしながら、かりに朝陽会がそういう話を受けたといたしますれば、朝陽会から当然当局のほうにこういう話があったがどうであろうかということが来るはずでございます。国の大蔵省の主管に属する公益法人が、一般に流布され、行使の目的に供されるおそれのあるような模造切手をつくるということは、決して好ましいことではないと考えますので、先ほどのこの郵政百年の模造切手、これは別に、私のほうはしろうとでございますが、いままでのお話を伺っておりますと、行使の目的でもって製造するというものではないようでございますから、それは別といたしまして、行使の危険があるようなものと、そういう話がありました場合には、当局といたしましては、そういうものの製造に協力するという意思は毛頭ございません。
○沢田実君 いまあなたがおっしゃること、そんなことはあたりまえです。行使の目的ではなしに——行使の目的というのは、いま十円なり二十円なり封筒に張って郵便物の郵送に供するためにつくるのが行使の目的に供するというふうに解釈しているわけですね。ですから、こういう模造切手も、切手愛好家がこれを何ぼで販売しようが、行使の目的というように郵政省は解釈はしていないのです。あなたのほうは、郵政省から頼まれて七万枚と、それから朝陽会の注文で一万三千八百枚、これを印刷しております。それですから、朝陽会で注文したのは吉川弘文館の注文ですが、それ以外の団体がまた注文すれば拒む理由はないでしょうと私は申し上げているのです。何か拒めるのですか、よその団体だったら。
○説明員(青山保光君) 吉川弘文館の件につきまして、これは実は郵政省から話があった件でございます。私どもは吉川弘文館から直接話は聞いておりません。郵政省からこういうような切手をつくるという話がございまして、ただしこれは吉川弘文館の本に張るものであるという公文書も郵政省からいただいておる次第でございますので、そういうものにつきましては製造するということでございます。
○沢田実君 あなたのさっきおっしゃったのは、模造の切手の注文なんか受けたことありませんとおっしゃっているのですが、受けているのです、これは。それから私のほうは、あなたは郵政省だとおっしゃるけれども、あなたのほうの出してくれた書類には朝陽会と書いてある。朝陽会で注文を受けたことについては、大蔵省の印刷局では一々チェックができないでしょう、朝陽会にまかしてあるのでしょうと、ぼくは言っているのですよ。ですから、朝陽会に対して、幾つかの会社、いろいろの会社、団体がこういう印刷を依頼したら、おそらく大蔵省はチェックができないでしょう、現在の段階では。できないならできないでいいのですよ。私はあとで、こういう問題があるので、その法律をつくる必要がないかということをお尋ねしたいのだから。だから、現在だったら、私がこれをつくりたい、あるいはだれかがこれをつくりたいといって朝陽会にお願いをして依頼をすれば、大蔵省印刷局ではこれはつくれるのでしょうと私は申し上げているのです。こんな話をしたからあなた目を光らしているのだけれども、この話をする前では、これつくったことも御存じなかったわけでしょう、局長がそんなこと一々御存じになるはずはない、これは当然だ。だけど、朝陽会から印刷を頼んだものは、吉川弘文館が頼んだものじゃありません。朝陽会からあなたのほうに頼んでいるのだから、朝陽会ではそんなチェックができないでしょうと申し上げている。不可能でしょう、そんなことは。 それはよろしい。しかも、本論からはずれますので、それはその辺にしておきまして、時間もありませんから次をお尋ねいたしますが、表紙をつけた場合の印刷代とこれだけをつくった場合の印刷代との差額はどのくらいになりますか。
○説明員(青山保光君) シート自体が一枚が二十二円ということでございまして、いわゆるたとうと申しておりますカバーが七円、こういう価格になっております。
○沢田実君 そうしますと、七万枚で四十九万円の損害があったと、会計検査院の方、そういうことですか。 それから、いまお話に出ました郵政創業百年記念ということで、こういうふうなものを郵政省では三十巻のものをおつくりになったようですが、それからまた、この中の二十八巻と全く同じものを特別にまた数多くおつくりになったようですが、きょうはこんなことを一々突っ込んで申し上げているような時間がございませんので、簡単に私のほうから申し上げますと、要するに、こういうものを郵政省としては吉川弘文館に印刷をさせて、郵政省が買い上げております。それで、こちらのものについては——三十巻でございますが、各巻とも八百部印刷をさして、郵政省が五百部買い上げている。三百部は吉川弘文館の自由の販売にしているようです。それからこれは一万二千七百部つくりまして、買い上げが三千冊、こういうふうになっているようでございますが、定価は各巻ともいろいろの値段がついているようでございますが、その市販価格、それからそれに対して郵政省が買い上げる買い上げ価格、市販価格に対して何割というような買い上げ方をなさっていらっしゃるのか、あるいはどういう方法で買い上げ価格というものを決定をしていらっしゃるのか、お尋ねをしたいと思います。
○説明員(斎藤義郎君) 郵政省が買い上げます場合には、三十巻各巻ごとに、材料費、これは紙代などがおもでございますが、それから印刷費、これは製本を含んでおります、それから編集関係費、発行所管理費、これは以上の総合の一〇%に当たる経費でございますが、これを算定して、これを基準として買い上げ価格をきめております。
○沢田実君 よくいまの御説明がわからないのですが、要するに、各巻ごとに製造の原価を計算して買い上げ価格をきめるというのですか。
○説明員(斎藤義郎君) 大体そのとおりでございます。
○沢田実君 そうしますと、この二十八巻これと、別刷りにいたしましたこれと、内容は全部同じものです。表紙だけ変えたものです。ところが、定価はこちらは四千五百円、こっちは三千五百円、定価の違うのはあなたがたのほうでは関係ないとおっしゃるかもしれませんが、表紙の色目が違うだけでございます。それで、その買い上げ価格が違うというのは、どういうわけですか。
○説明員(斎藤義郎君)郵政省が買い上げた買い上げ価格の差は百三十円でございます。
○沢田実君 なぜ違うのですかとお尋ねしているのです。
○説明員(斎藤義郎君) 表装が違っておりますものですから、原価計算上そうなるわけでございます。
○沢田実君 そうしますと、要するに、市販の価格とは関係なしに製造原価の特定のパーセントで買い上げをするのだ、だから表紙が違うから違うのだ、こういうことですか。それはぼくはしろうとだから、そう言われればそうかと思いますけれども、そんなことじゃ、しかしちょっと納得できません。というのは、こっちは五百部ですよ、五百部で二千百八十円です。三千部買い上げです。しかも、つくっているのは一万二千七百部つくっているのです。ものすごい数よけいつくっているのです。片一方は八百部です。それだけよけいつくって三千部買い上げたのがかえって高いというのはどういうわけですか。ここのところで価格の論争をしようとは思いませんけれども。要するに、私がこうしてしろうとなりに見た範囲では、三十巻の中で、市販価格が三千五百円にきまっておりますものを、二巻と四巻は二千三百円で買い上げておる。十二巻は二千四百七十円で買い上げておる。二十八巻は二千百八十円で買い上げておる。同じ市販の価格でも買い上げ価格が違う。それから三千四百円で市販されているものでも、五巻と八巻は二千二百円、十三巻は二千四百二十円、それから三千三百円で市販されているもので、十六巻は二千三百円、十九巻は二千三百五十円。同じこの四千五百円のものでも、いま申し上げましたように値段が違っております。で、いま申し上げた同じ内容でも違っております。そういうふうなことを見ますと、製造原価が違うのだからそれは違うのだとおっしゃられれば、われわれそこまで突っ込んではよくわかりませんけれども、買い上げ価格の決定について若干疑問がございます。で、いま申し上げたこれだけ説明してくれませんか。要するに、一万二千七百部というたくさんつくって、三千部買い上げたものが高いのですよ、二千三百十円ですよ。これはたった八百部しかつくらないのですよ、そのうち五百部買い上げたのが二千百八十円です。これはどういう計算ですか。
○説明員(斎藤義郎君) いま二十八巻の場合に限って御説明申し上げます。 これは、お説のとおりこの二十八巻と、それから別製の「日本郵便切手・はがき図録」、これが全く内容が同じでございまして、表装が違うだけでございまして、したがいまして、私たちのほうといたしましては、両方の数量を合算いたしまして一万三千五百部、これを基礎にいたしまして原価計算をしたわけでございます。そういたしますと、第二十八巻は一冊当たり二千百八十円という数字が出てまいりました。ただ、表装の違いがうざいますので、そこに百三十円ぐらいの若干の開きが出てまいった、そういうことでございます。大筋の計算の基礎は全く同じでございます。
○沢田実君 この辺については詳細はわかりませんので、また会計検査院のほうによろしくお願いをしたいと思います。 時間が迫っておりますので急いで質問いたしますが、次に、通信日付印の問題についてお尋ねをいたしたいわけですが、この日付印についても全く同じようなものが複製をされまして市販をされておりますが、これについては郵政省ではどういうお考えですか。
○政府委員(溝呂木繁君) 通信日付印につきましては、ちょっと切手とは事情を異にするというふうに考えております。 現在、通信日付印のほうは、御案内のとおり、刑法の百六十五条の公務所の印章というのに該当しますので、当然それによって取り締まられるものというふうに考えております。
○沢田実君 そうしますと、株式会社切手経済社というものは、こういうのを——これはスポーツ関係の日付印ですが、四枚組みになっておりますけれども、こういうものをつくって販売をしております。いまの御答弁ですと、こういうものは問題になりますか、法律上。
○政府委員(溝呂木繁君) 刑法百六十五条の当然、「行使ノ目的ヲ以テ」という条文でございますので、お示しのようにただそこに並べただけという場合には、あるいは「行使ノ目的」に該当しないかもしれません。しかし、これも、先ほど申し上げましたように、「行使ノ目的」という判断につきましてはいろいろの事態に応じて判断しますので、ここで私がこういう場合はこうということは言い切れませんが、そういったような場合は「行使ノ目的」ではないのじゃないかというふうに考えます。 それから通信日付印の場合は、そうしただけでは何ら郵便のほうに被害がございません。結局、郵便のほうに被害が起きてまいりますのは、切手に通信日付印を押して初めてそこで郵政省がその郵便を引き受けたというときの証拠になるものでございますので、ちょっと切手のようにそれだけで有価物になり、あるいは郵政省の切手を模造する場合とでは、少し私どものほうの実益、実害から言うと違うのじゃないかというふうに考えます。
○沢田実君 そうしますと、全く同じようなものをつくっても、こういうようなことでは問題にならない。こういうものをつくって模造切手に印を押した場合にはどうなりますか。
○政府委員(溝呂木繁君) 模造切手の場合ということでございますが、その模造切手と一緒になってそれが「行使ノ目的」というふうに判断される場合は、当然取り締まりの対象になろうかと思います。
○沢田実君 「行使ノ目的」といって、これは昔のものなんですから、いまおたくのほうで押すわけがないのだ。だから、郵便物にこんなものを貼付するはずがないのです。要するに、私が問題にしておりますのは、切手愛好家、しかも青少年、そういう人たちに、模造切手をつくってこれをぽんと押して、この現物とほとんど変わらないようなものができるわけですよ。そういう場合にも問題になりませんかと申し上げているのです。
○政府委員(溝呂木繁君) 先ほどから答弁申しておりますように、私どもの現在の法律の体系からいえば、「行使ノ目的」というものが常に必要な条件になっておりますので、それがやはり郵便に使われるという状態において問題が出てくるわけでございます。ですから、明らかにそれを趣味品として全然郵便に使う意思なしにお互いに鑑賞し合い、お互いにそれを趣味として持つという場合、それが純然たる場合は現行法上においては取り締まりの対象にならないというふうに考えておるわけでございます。
○沢田実君 それでは、こういうふうなものに、模造切手をつくって模刻の日付印を押してやった場合にはどうなりますか。
○政府委員(溝呂木繁君) ただいまお示しの場合は、これは郵政省で正式にサービスとして初日カバーとして行なっているものと思います。したがいまして、それは正式にいえば、郵政省の業務の一部になります。したがいまして、それに合うように模造切手をつくり、それに模造になる通信日付印を押せば、これは明らかに郵政省の行なっている業務の行使に該当するということで、取り締まりの対象になろうかと思います。
○沢田実君 時間がございませんので、法務省に伺いたいわけですが、法務省の方来ていらっしゃいますか。 いま、いろいろ問題が出ましたように、模造切手について、あるいは模造の日付印についていろいろな問題があるわけですが、模造と偽造については、法務省はどんな見解をお持ちですか。
○政府委員(辻辰三郎君) 一がいに模造あるいけ偽造と申しましても、たいへんこれは抽象的には説明がしにくいわけでございます。御案内のとおり、刑法、あるいは本件の場合には郵便法でございますが、それにそれぞれ、文書の偽造であるとか、切手の偽造であるとかございますが、それは行使の目的をもって本物と一見違わないようなものをつくるんだということが、これが大ざっぱに言いまして偽造の観念であろうと思います。それから、模造ということばでございますが、これは法律の面では、御案内のとおり、通貨及証券模造取締法、あるいは印紙等模造取締法というような法律がございますが、これは、模造ということばはその法律の名前にはございますけれども、観念といたしましては、この両法律とも本物とまぎらわしい外観を有しているということばがこの法律の条文では使ってございます。そういうことで、模造というのは、この二つの法律では、本物とまぎらわしい外観を有するものをつくること、これが模造であろうと思うのでございます。そういうことで、それぞれの法律によりましてこの模造と偽造というものの観念がきまってくるわけでございますけれども、一般的に言いまして、一見通常人が見れば本物であると思われるようなものをつくるというのが偽造であり、模造というのは、もう少し程度の低い、本物とまぎらわしい外観を有するものをつくるということが模造という観念ではなかろうかと思うのでございます。
○沢田実君 行使という考えについては、郵政省では、要するに、郵便物に貼付をいたしまして郵便物が郵送される、それが行使だと、こうおっしゃっております。だから切手愛好家が記念切手等を売買することは、それは行使ではない、こういうふうな解釈のようでございますが、法務省も同じ解釈ですか。
○政府委員(辻辰三郎君) ただいまの御質問は、郵便法八十四条にいう「行使の目的」ということをどう解するかという御質問であろうかと思うのでございますが、これは結論においては郵政当局からお答えになったと変わりないわけでございますが、私ども考えておりますのは、切手というものは、郵便料金を納付した証明書であるというふうに解しておりますので、この場合の行使の目的というのは、郵便料金を納付した証明書として使うんだと、こういう意味であろうと思います。
○沢田実君 したがいまして、そのほうはよろしいんですけれども、要するに、趣味同好者の間で売買される、それは行使というふうに考えないかということです。
○政府委員(辻辰三郎君) これはたいへん抽象的に、すぐに八十四条が全部成立しないというふうに言い切ることは、これは言い切れないかもしれないと思います。具体的な事案に応じて考えていかなきゃならぬと。これは偽造する人の問題でございますけれども、かりに、郵便の趣味に使うんだけれども、しかしこれが、自分がつくったあとにだれかが本物として使うかもしれぬというようなことが容易に予知し得るというような特別の場合におきましては、あるいは郵便法八十四条に該当する場合もあろうかとも思いますが、一般的にはなかなかこの八十四条には該当しないだろうと思います。
○沢田実君 そうしますと……。
○委員長(足鹿覺君) 簡潔に願います。
○沢田実君 日本最初の郵便切手「銭二百文」なんというのは、これは流通しませんから、こういうものは何ぼ精巧なのをつくってもいわゆる行使の目的ではない、これは幾らつくっても行使の目的ではない、こういうふうに解釈されますか。
○政府委員(辻辰三郎君) これはまあこの郵便法八十四条の切手というものが、いわゆる有効な切手に限るかどうかという問題かもしれないと思うのでございますけれども、その点ちょっと私最終的にどうなるか存じませんけれども、少なくとも、いまのお示しのようなケースについては、流通はしていないということであれば、これが料金を納付した証明としては扱われない場合が多いというふうに思います。
○沢田実君 というようなわけで、どうしても、先ほど法務省でおっしゃったように、通貨、証券、印紙等と同じように模造等についての取り締まりをしないと、現在の法律ではいま御説明のようにいろいろな抜け穴があっていろいろな弊害が起こるのじゃないかということが考えられるわけですが、そういうことに対する諸外国の処罰規定等についてはどうなっていましょうか。
○政府委員(辻辰三郎君) その辺の調査が不行き届きかもしれませんが、諸外国で刑法的なものに、切手の偽造または模造、これを処罰の対象として規定いたしておりますのは、フランスでございます。それからアメリカは、合衆国法典という大きな法典の中に、やはりこの切手の偽造、模造、これを処罰の対象といたしております。それから他の国では、おそらく郵便法関係の法規でこういうものをやはり犯罪として規定しておるのではなかろうかと思うのでございますが、私ども一応この刑法典関係のいろいろなものについて調べましたのはただいま申したフランスとアメリカでございます。
○沢田実君 きょうは、会計検査院関係の質問になっているわけでございますので、会計検査院のほうへお尋ねをしたいわけですが、私が指摘しましたのは二点ですね。カバーのむだづかい、それから、いまの御説明でまだよくわかりませんけれども、若干ずさんではないかと考えられるこういうものの買い入れ価格の決定等について、会計検査院ではどんなふうにお考えでしょうか。
○説明員(柴崎敏郎君) 第一のたとうの点でございまするが、これは私どものほうでも郵政当局から事情を過般伺いまして、先生のおっしゃるとおり、これは不経済な事項であると、このように考えております。 それから第二点の価格の差の点でございますけれども、これにつきましては、まだ十分に内容を検討いたしておりませんので、今後詳細にその点を検査し、検討し、判断していきたい、このように考えております。
○沢田実君 すみません、時間が過ぎましたので、これでおしまいにしますから。 これは郵政当局に対してですが、昭和四十六年の六月二十一日に批准をした百四十五カ国加盟による万国郵便条約第十一条に「加盟国の政府は、次の目的のために必要な措置をとること又はその措置を自国の立法機関に提議することを約束する。」と、こういうふうにいたしまして、その(b)において、「いずれかの加盟国の郵政庁が発行する切手類と混同しやすいような偽造又は模造の郵便業務用の切手類を製造し及び流布する詐欺行為を禁止しかつ抑圧すること。」、こういうように規定されております。 で、この条約の趣旨を尊重いたしましてわが国の状況を考えあわせますとき、当然模造切手あるいは模造通信日付印等の製造あるいは輸入販売、頒布等についての取り締まりということが必要ではないかと思いますが、郵便切手類及び通信日付印模造取締法というようなものをつくる御意思があるかどうか、あるいはおつくりになるとすれば、今国会に提出なさるお考えがあるかどうか、あるいは、こういうような万国郵便条約には批准はしておりますけれども、いまのままでほおかぶりしていくおつもりなのかどうか、その点について承りたいと思います。
○政府委員(溝呂木繁君) ただいま御指摘のように、万国郵便条約でもってそういう条項があり、それを私どもは批准したわけでございますので、郵政省としてはその条約を守る道義的義務があろうかと思います。そこで、先ほど私が御説明いたしましたように、現在郵便法の八十四条及び八十五条において行使を目的とする場合についてはすでに規定が済んでおりますので、その分については問題がないかと思います。そこで、御指摘の、さらに進んで行使の目的でないものについてまで模造の取り締まりをするかということになるわけでございますが、現在までの間はそれによる大きな郵政省に対する実害というものは大きくあらわれてまいりませんでしたので、いままでその規定をつくらないできてまいりましたが、しかし、先ほど先生御指摘のように、だんだん日本においても、単に行使の目的をもってだけでは取り締まれないような状態になってきつつありますので、私どもといたしましては、さらに進んでこの万国郵便条約にあるような条文の形において何らかの規制をしたいということで、検討しております。何とか今国会に間に合うようにということで、鋭意現在各省と折衝し、また条文作成について検討しているというのが現段階でございます。
○沢田実君 最後に政務次官に、いまのお話について事務当局ではああいう答弁です、ですから、今国会に提出するというふうなお約束をいただきたいと思いますが、いかがですか。
○政府委員(松山千惠子君) 本省といたしましては、ただいま事務的に法制局といろいろと調整中でございますので、私の希望といたしましても、先生の御指摘の中にいろいろとございましたようなこともありますので、何とか今国会に提出したいということを万般考えておりますけれども、事務的にただいま調整中でございます。できる限りそのような方向に持っていきたいと思っております。
○沢田実君 以上です。 〔委員長退席、理事小谷守君着席〕
○中尾辰義君 最初に、会計検査院に対しまして資料要求をいたします。 一つは、昭和四十五年度決算実地検査の方針。これは各局、課別の方針を含めてお願いをしたいと思います。 二番目が、昭和四十五年度、いわゆる未確認事項ですね、未処理の事項並びにその金額。これは未確認事項掲記の様式によってひとつお願いをいたしたいと思います。 以上二点、委員長、ひとつ資料要求をお願いいたします。
○理事(小谷守君) ただいまの資料の御要求、よろしゅうございますね。
○会計検査院長(白木康進君) ただいまの資料は、全部提出いたさせると思います。
○中尾辰義君 それでは、会計検査院に私は事務的なことで若干お伺いをしたいと思います。 まず最初に、検査院の活動能力につきましてですが、御承知のとおり、検査院は法律によりまして内閣とは独立して行政府の財政執行の状況を監査する機能が与えられておるわけであります。この重要な職責を全うするためには、時代の進展に即応する体制を整えるべきであると、このように思うわけであります。 そこで、近年、御承知のように、非常に財政規模も毎年毎年一七、八%の膨張を続けておりまして、その額の面におきまして、まあ三十七年度は二兆四千億、そして四十七年度は十一兆四千億と、このように膨大にふえておるわけです。それから、この検査の対象になる団体の数も、三十九年度におきましては、政府関係機関が十三、さらに、政府関係以外の全額出資法人が三十三、その他の法人が三十四と、こういうふうになっております。それが四十四年度は、政府関係機関、が十四、政府関係機関以外の全額出資法人が三十九、その他の法人が三十七、このように年を追って、検査の対象団体、さらにその会計も相当ふえておるわけですが、この態勢に応ずるように、どのように検査官は即応体制に努力をしておいでになったのか、また将来このままの体制でいくのか、その辺のところをひとつ見解をお述べ願いたいと思います。
○会計検査院長(白木康進君) お答えいたします。 ただいま御指摘のとおり、国の財政規模も、十年ぐらいの間を比較しますと、非常に大きな膨張を見ております。また経理の——経理と申しますか、行政の内容も非常に複雑化してまいっておりまして、御指摘のように、検査体制をこれに即応さしていくということについていろいろ苦心いたしておるわけでございます。その対策の第一として、定数の増加ということをまっ先に考えるわけでございますが、これはここ数年全然増加しておりません。これは、御承知のように、公務員の定数増加ということが非常に困難な現況でございまして、私どももそういう趣旨から、ここ数年、定数の増加をしないで、その他の方法で何とかこれを強化していくということで、実はがまんしておるわけでございます。 ただ、定数の関係だけについて申しますと、私どもの検査の実態は、約六百何十名の調査官でございます。検査体制の中核をなす調査官の数は逐年ふえてまいっております。四十七年度で申しますと、下級職員の振りかえ増ということで、十二名の調査官を増加することになっております。それからまた、各省におきましては毎年逆に一定の比率で定員の減少をはかっておりますが、会計検査院につきましては、現状維持ということで、これは消極的に、増員ではございませんけれども、何とかその体制を強化するという趣旨でございます。その増員によらないで検査体制を強化するという一番の基本の方策として、調査官の検査能力を充実させるということが必要になるわけでございますが、そのためには、ここ数年、職員の研修ということに従来にない配慮をいたしておりまして、その成果も逐次あがってきておると思います。 なお、人員の増加につきましては、今後におきましても、政府当局に対しましても検査院の実情を訴えまして、なお増加の希望を捨てておるわけではございません。
○中尾辰義君 公務員の増加につきましては、いわゆる総定員法がございまして、むずかしい点もありましょうけれども、やはり、これは国民の予算がどういうふうに効果的に使われておるか、それをあなた方のほうで検査をするわけですが、相当なむだ使いも指摘されておるようですし、その面からいくと相当なプラスもあると、私はこう考えておるわけですから、その点ひとつ努力をしていただきたいと思います。 時間の関係で、まとめてひとつ質疑を申し上げます。 それから、検査院活動に最も大事なのは、現地検査に行く旅費の問題ですが、旅費等はその後どのようになっているのか、改定なさったのか。それが一つと、それから、いまもちょっとお触れになったようですが、技術調査官の充実という点につきまして、どうなっているのか。最近はいろんな科学的な機械もできておりますし、そういう特殊な技術を身につけた調査官、そういうものはどういうふうになっておるのか。その辺のところの、いわゆる技術検査官の陣容といいますか、この人たちをやはり充実をしていかないと、これはなかなか、コンピュータだとか、あるいは電気を使ったいろんな機械がございますし、その辺ちょっとお伺いしておるわけですが。
○会計検査院長(白木康進君) 第一点の旅費の関係でございますが、これは若干ずつ毎年実質的に増加しております。ただ、何と申しましても、定数そのものをふやさないで旅費だけをふやすということについては限界がございまして、現在の定数におきましては、一応検査に支障がない程度の旅費が計上されておるものと考えております。 第二点の、技術関係の検査能力の問題でございますが、現在、技術出身と申しますか、そういう専門の系統の素養のある職員が約百名ぐらいおります。しかしながら、会計検査院という機関の性質上、純粋の技術の専門職を毎年相当数補充するということは、これはいろんな面から非常にむずかしゅうございます。そこで、先ほど来申し上げますように、研修ということで一般事務職員にも、最近の国の各機関あるいは公団等におきます技術関係の進歩と申しますか、実情に対応できるだけの技術的な検査能力の増強ということで、研修に相当の力を注いでおります。また、数年前から技術専門官という職を設けまして、現在一名だけでございますけれども、実際の検査あるいは研修という面で活用しておるわけでございます。 なお、技術の面で検査院がはたして十分な検査ができているだろうかとの御懸念、まことにごもっともと思います。ただ、私どもで非常に検査の重点を置いております公共事業関係でございますが、この関係は、非常に特殊なものは別としまして、建設省関係、農林省関係、あるいは運輸省の港湾関係等につきましても、一応一般調査官が相当高度の技術知識あるいは鑑識眼を備えておりまして、その結果は検査報告に掲記しております不当事項の内容をごらんいただけばある程度御了解願えると思いますが、なお、そういう面で技術関係の検査能力の増強ということは、非常に私ども関心を持ってこれから取り組むつもりでございます。 なお、一言申し上げますと、原子力の関係でありますとか、非常に特殊なもの、これはとても私どもで十分にこれに対する理解能力のある職員を備えるということはできませんが、しかし、そういう関係におきましても、現在の技術水準でありますとか、あるいは世界各国の状況等につきましても勉強いたしまして、まあ現在の状態で、大きな国の浪費ということの起こらないような一つの心証を得るための基準と申しますか、そういう面では特に御心配願うこともなかろうかと、このように考えております。
○中尾辰義君 それは多少御心配もあるわけで、私は質問をしているんですが、技術検査官等に関連して、防衛庁関係についてちょっとお伺いしますが、この防衛庁の兵器関係の検査等について、不当不正というものがなければけっこうです。なければけっこうですが、あの膨大な第三次防にいたしましても二兆三千億からある。この防衛庁関係の不当不正というようなものが、最近全然あなた方の報告には出てこない。これは全然ないのか、どうなのか。あるいは、最近、兵器の高度化に従って、そういうものを検査する技術の点において若干の不備があるんじゃなかろうかというようなことも心配しているわけです。具体的に言いますと、装甲車、あるいは地対空のミサイル、そのほか超音速のいろいろな航空機ですね。今度でも、T2超音速練習機ですか、あれがまた予算委員会で問題になっておりますが、あれは欠陥機ではないかというようなことまで出ているわけで、ですから、この防衛庁関係ではここ数年全然ありませんか、その点。なお、このごろの検査はどういうふうにしてやっているのか、その点をちょっとお伺いしておきたい。
○会計検査院長(白木康進君) ただいまの御質問につきまして一括してお答えいたしますが、お説のとおり、最近、防衛庁関係の不当事項あるいは改善要求事項というものが検査報告に掲記されておりませんが、検査上問題がないかと申しますと、これは毎年いろいろな問題を一応指摘しておりまして、まあ不当事項という形に処理したものがなかったと、こういうふうに御了解願ってもいいかと思います。 御懸念の装備の内容等も非常に最近変わってまいりまして、複雑化、高度化して、お説のように、会計検査院としても、特に性能度というような点では十分に捕捉しかねる面もないとは申しかねます。私、実はこういうことを申してはなはだ申しわけございませんが、そういう面ではここで的確にお答えできませんので、場合によりましたら担当の局長から、技術的な面でどういうふうに対処するのかということをあるいは御説明いたしてもよろしいと思いますが、全般的に見まして、防衛経費の増加あるいは内容の複雑化ということに対応いたしまして、四十二年度以降、従来二課で検査しておりましたのを、一課増設いたしまして、大体陸、海、空ということに専門的に分けまして、機構も強化いたし、人員もしたがって若干配備を増加いたしております。また、検査につきましても、航空機、艦船というような、いわば大ものに重点を置きまして、それから、さっき御指摘のような電子兵器、そういったものに重点を置きまして、かなり重点的な検査を実施しております。これは、普通の防衛庁における検査だけでなくて、製造しておる個所の監督官事務所と申しますか、そういったところにも出向きまして実情も把握するというようなことで、かなり突っ込んだ検査をやっておるわけでございます。その結果といたしまして、不当と断定する事項がなかったために検査報告には掲記してないと、こういうことでございます。
○中尾辰義君 それからもう一つお伺いしますが、会計検査院施行規則の十七条によりますと、顧問制度が一応認められておるわけですが、顧問というのは、従来顧問制度を実際採用というか、顧問にお願いしてやらした例があるのか、それが一つと、この顧問料というのは予算面においてどういうふうになっておるのか、この決算はどうなっているのか、今後顧問制度というものに対してどういうふうな御見解を持っていらっしゃるか、その点ひとつお伺いしたい。
○会計検査院長(白木康進君) 従来、顧問を法律の規定に基づきまして委嘱した実績はございません。これは考え方としては、やはり高度の専門知識を要するような場合に、顧問というような制度を活用してその判断を求めるという考え方でございますけれども、実際に私どもいままで検査いたしました過程から申しますと、ことに最近のように非常に、研究機関と申しますか、そういうものも専門的に細分化されておりまして、特定の顧問というものを設ける場合には、非常にたくさんのものをお願いする必要がある。それは、たとえば公共事業とか電子関係だけに限っても、かなり専門的に多岐にわたっておりますので、顧問を委嘱するということがどうも実情にちょっとぴったりこないような面があるわけでございます。そこで、実際にどうしておるかと申しますと、幸いに政府の各機関で専門的な研究機関がございまして、これはいろいろな機関がございますけれども、私ども検査の結果、たとえば相当高度の分析であるとか、そういったような事案がございます場合には、そういう機関に委嘱して、それでその結果これを不当事項として処理したというケースも少なくございません。まあそういったことで、いわば顧問の委嘱にかえてその目的を果たしておる、こういうことでございます。 なお、予算的に申し上げますと、そういうことでございますので、特に顧問の報酬等の予算を積算することはいたしておりませんで、現在もしそういう事例がかりにあったとすれば、庁費に計上されております普通の謝金というようなものでまかなうことになろうかと思いますが、その程度でございます。
○中尾辰義君 それじゃ、次に検査報告につきましてお伺いしたいのですが、毎年あなたのほうから検査報告が出ておりますが、だんだん簡略化されて、報告そのものがだいぶ薄っぺらなものになっている。私どもこの決算委員会で唯一の参考になるわけですけれども、昔のものはもっと詳しく書いてあった。最近は非常に簡略になったので、どうも理解をするのに非常に一苦労しなければならない、そういう点がある。なぜそういうふうに簡単になったのか、その点ひとつまず御答弁していただきたい。 それじゃ、具体的に言いましょう。たとえば四十二年度決算報告によりますと、不当事項というのは大蔵省関係が百三十四。これは租税に関することですが、百三十四件なんです。そうすると、今度四十五年度の決算報告によりますと、同じような大蔵省の租税関係の不当事項が一件と、こうなっている。前のほうは、四十二年度は各税務署ごとに不当事項を書いてある。だから、私ども非常に便利でいい。よくわかるのです。けれども、一件でこういうふうにまとめられると、どこに何があったのか、一々また大蔵省関係を呼んで調べなければならない。こういうふうに、簡単になり過ぎてしまって、非常にわかりにくい点もあるのですが、その点どういうわけでそうなさったのか、お伺いしたいと思います。
○会計検査院長(白木康進君) 御指摘の点は、まことにごもっともでございまして、ある意味で、ことに租税の関係の処理につきましては、私どももいろいろいわば苦心いたしておると申しますか、そういう実情でございますが、検査報告が毎年かなり薄くなってきておる点は事実でございまして、これはある意味におきまして、私ども一生懸命やっておりますので、その結果薄くなるということであれば、これは国家のためにはなはだけっこうなことでございますけれども、特に記述を簡略化する、内容をはしょるというようなことは、これは中をごらんいただいてもわかりますとおり、そういうことはなかろうかと思います。むしろ、当委員会の従来からの御要望もございまして、できるだけわかりやすく、どうしても文章で書けないときには図面などをつけるという配慮もやりながら実は記述をいたしておるわけでございます。若干、指摘件数の減少とか、そういった関係から薄くなるというようなことが主たるあれじゃないかと思います。 そこで、いまの租税の関係でございますが、これはもう御指摘のとおり、四十二年度までは税務署別に件数を計上しておりましたので、相当件数にのぼっておりましたのが、四十三年度、四十四年度、四十五年度と、一件に整理しているわけでございます。この点は、別に記述を簡略化するとか、あるいは意識的に件数を少なくするとか、そういうことでは全くございませんで、租税の徴収過不足という指摘事項の性質につきましていろいろ検討いたしまして、この検査報告でも、従来、たとえば社会保険の保険料の徴収等は、毎年各社会保険事務所等におきまして個々別々に徴収不足の事態を指摘しておりますけれども、厚生省あるいは労働省というようなところの一件として扱っておりまして、まあ租税の賦課徴収も、大体性質から見ればそういう性質に近いということで、ことさらに租税だけをこまかく分けて出すということは、かえって誤解を招くのではないか。たとえば、大蔵省百何十件といった場合に、大蔵省にそんなにたくさん不当事項がある、不当事項の件数からいえば一番多いようなことになるわけでございますけれども、内容はそういうことでございまして、これを何とか指摘事項の実態に即するような記述に改めたい、こういうことで、結局一件、社会保険料の徴収不足等と同じような扱いにするということに落ち着いておるわけでございます。 なお、若干補足して申し上げますならば、この租税の徴収賦課、現在指摘いたしておりますのは、たとえば国有財産の売却処分でありますとか、あるいは国有財産の賃借料の算定でありますとか、こういった特殊の——特殊と申しますか、本来個別の経理と多少違いまして、租税の徴収不足についての私どもの記述でも、どういう面でどういう過誤があるかということの記述に重点を置いておりますように、多分にこれは、個々の徴税責任者の処理の問題というよりも、現在の国税庁の徴収機構、あるいは徴収の重点の置き方、そういったいわば行政的な面にウエートが非常に高い、こういうことでございます。個々の責任を追及するような不当事項と若干性質が違う。そういうようなことで現在のようなことになっております。 ただ、具体的に、それではどこでどういう過誤があったか、これは現在では——現在と申しますか、四十五年度で申しますと、これは国税局だけになって、税務署は何々税務署ほか何税務署と、数だけに実ははしょっておるわけでございますけれども、この何税務署というものの内訳、あるいは各税務署においてどういう徴収不足があったか、これは御要求によりまして、資料なり御説明なりで十分におわかりいただけるようにいたしたいと思います。
○中尾辰義君 いずれにいたしましても、百数十件もあったのが一件にまとめられると、われわれとしては錯覚を起こしちゃうのですな。不当事項ひっくるめて一件というようなことには、多少見解の相違もありましょうけれども、少しおかしいような感じがするわけです。悪く言えば、大蔵省にはっぱをかけられたのと違うか。そんなはっぱをかけられるような会計検査院ではないと思いますが、あるいは、各税務署なんか出してもらっちゃ困るというような、そういうような考えを持っているかもしれません。いずれにしても、件数からいうと、一件ということには若干私どもも納得しかねる点もありますしね。それは将来検討してください。
○会計検査院長(白木康進君) ちょっとその点について御答弁いたします。 まことにその点はもう御指摘のとおりでございまして、今まで百数十件あったものが一挙に一件になった経過につきましては、その趣旨を本来ならば検査報告に掲記するのがほんとうじゃないかという気もいたしますけれども、従来検査報告という公式文書には不当事項の掲載基準というようなものを掲記したことがございませんので、はなはだ唐突でありますけれども、こういうことになっているわけでございます。 なお、租税の案件だけでなくて、この種の、普通の一般の取り扱い上の過誤に基づく徴収不足といった収入面の事案につきましては、歳出と性質が非常に異なりますので、あるいはこれを一応一般の歳出の不当事項とは別途の形で記述するというようなことも、今後あるいは考える必要があるかもしれないということも考えております。
○中尾辰義君 その不当事項の基準の問題ですがね、補助金等の不当事項につきまして、これは貨幣価値がだんだん変わっていくわけです、インフレですね。そうしますと、これは基準は変わっていくと思いますが、私はよくわからないのでお伺いしますけれども、これは四十三年度は不当の基準は二十万円以上のものと、このように伺っておりますがね。それから、四十四年度は三十万円以上とか。その辺、一体今日はどういうふうになっているのか。それと、やはりそういうことも一応検査報告に書いてもらわないと、こっちはわからない。とにかく、不当基準を上げますと件数は減るわけですからね。そうしますと、件数は減るという、さっきのことにも関係するわけですけれども、件数の面からいうと、さっきの租税関係も百数十件のものが一件と、これは件数は減る。今度、不当基準の額を上げた場合も、前年度の基準でいきますと不当になったけれども、ことしは不当の基準が上がったから件数が減った、こういうことになるのですけれども、ちょっと見たところは、ただ一般的に不当の件数が減った、こういうような錯覚を起こしやすいので、そういうところもやはり親切に、ことしからこういうふうに不当基準も変わったとか、いろいろ報告をしてもらいたいのですがね。その辺の実情はどうなっているのか、ひとつお伺いしたい。
○会計検査院長(白木康進君) ただいまの御指摘も、まことにごもっともでございますが、検査報告にはっきり形であらわれておりますのは、四十四年度の補助金の不当事項でございますが、これは従来四十三年度までは、不当事項として一件に取り上げましたのは一事項二十万円以上、補助金の不当額で二十万円以上のものを取り上げておりましたのが、四十四年度から三十万円以上を一件とするというふうにしておりまして、そのことは検査報告に明記しております。その他の一般のものにつきましては、これも貨幣価値が長い間には相当大幅な変わり方をするわけでございまして、当然私どもの不当事項の取り上げ方の、取り上げ方と申しますか、検査報告に不当事項として記述する事項の金額の一つの基準というものも実質的には変わってくるわけでございます。ものによりましては、はっきり院内で大体この程度というふうにしたものもございます。ただ、どれくらいから上を不当として扱うかということ、逆に申しますと、どれくらいの金額以下のものは不当経理をやっても検査報告には載らないのだというような数字をここに明示することもどうかというようなこともございまして、検査報告にはそういった補助金以外のものについては全然書いておりません。ただ、ただいま御指摘のように、実質的な件数の増減に響くような基準の変更は、従来ともいたしたことはございません。大体貨幣価値に即応して、正確に言いますと、毎年実質上の水準が変わらぬように変えていくということが一番いいわけでございますけれども、その点は執務上の関係その他もございまして、数年にわたって全然基準を変えないというようなことがむしろ実情でございますけれども、大体貨幣価値の実情に即する程度に変えていくということで、結果的に見ますと、別に断わらなくとも、たとえば既往年度との比較をしていただいてもそう支障のないようなことに実質上はなっておるわけでございます。
○塚田大願君 私は、きょうお聞きしたい問題を最初に申し上げておきたいと思うのでありますが、第一は、国立国会図書館の業務と予算、決算との関係についてお聞きしたい。それから第二には、終戦直後アメリカ占領軍に接収されました公文書の問題についてお聞きしたい。この二つの点でございます。 で、第一の問題でありますが、国立国会図書館の業務あるいは予算、決算の関係でありますが、御承知のとおり、国立国会図書館は、国立国会図書館法第十五条によりまして、国会の活動、議員の調査、立法活動に奉仕すべき責任を持っておる。これはもう明確だと思うのであります。そこで、まずお聞きしたいのは、そのための図書購入費並びに立法資料購入費、これは一体どのぐらいあるのか、またこれが対前年度比でどのぐらいの伸びになっておるのか、そのことをまずお聞きしたいと思います。
○国立国会図書館長(久保田義麿君) お答え申し上げます。 当館の図書購入費、本年度の要求額といたしますのは一億一千二百六十一万六千円でございまして、昨年の当初予算に比しまして二〇%の増、それから立法資料購入費、これは六百六十七万七千円、昨年当初予算に比しまして一〇%の増、直接に関係はあるいは薄いかもわかりませんが、科学技術関係資料費というものが一億一千百四十七万六千円、これは五%の増、それから納入出版物代償交付金というものが二千二百七十六万九千円で二〇%増と、こういうことでございます。
○塚田大願君 いまお聞きしますと、国会活動に奉仕するための直接的な費用である立法資料購入費、これが昭和四十五年以降一〇%に伸びがとまったと、こういうお話でございますが、ではその立法資料購入費ですね、いまおっしゃった四十六年度で六百万ぐらいですか、この六百万の立法資料購入費、この内容はどんなふうになっておりますか、それをお聞きしたいと思います。
○国立国会図書館長(久保田義麿君) この立法資料購入費と申しますのは、調査員が直接自分の身の近くにまず置いておかなければならないという資料、それから新聞、雑誌その他、切り抜いたりあるいは特にそこからはずしたりいたしますようなもの、主としてこの内容というのは新聞、雑誌でございますが、なお外国の新聞と申しますものは、エアメールでとるというようなことになりますと非常に高価になりますが、そういうものもこの中に含まれておるわけでございます。なお、参考図書で自分のそばに置いておかなければならぬものといった性格のものが内容でございます。
○塚田大願君 では、いまおっしゃったいわゆる新聞、雑誌の類ですね、こういった類でこの予算の中のどのくらいの比率を占めておりますか。これは昭和四十五年度でもけっこうです。たとえば四十五年度では五百五十二万円でございましたが、その中でそういう新聞、雑誌類の占める比率ですね、費用の。それはどうでしょうか。
○国立国会図書館長(久保田義麿君) お答えいたします。 内外の新聞、通信類が約百種でございます。それから雑誌が約三百種、図書が約七百冊、これを購入する。これは予定でございます。
○塚田大願君 私の聞きたいのは、そういう雑誌、新聞関係の費用がこの図書購入費の中に占める比率ですね、どのぐらいの比率を占めているのか。
○国立国会図書館長(久保田義麿君) これは全館で、この国会分館のほうにも新聞をとっておりますし、それから本館のほうの新聞雑誌課のほうでも新聞はとっております。調査立法考査局も新聞はとっておりますので、いま直ちにこれの全体の、この部分だけの比率というものはちょっと資料がありませんので、お時間を拝借したいと思います。
○塚田大願君 わかりました。それはいずれまた詳細な資料をいただくことにいたしまして、私が試算をいたしました限りにおいては、昭和四十五年度の場合、立法資料購入費が五百五十二万、そのうち新聞、雑誌、法令の追録等のいわゆる定期刊行購読物、これだけで大体七五、六%ある。つまりほとんどがそういう定期刊行物、新聞、雑誌類によってこの資料購入費が使われている。だといたしますと、じゃ、その残りの二四、五%で、つまり百三十万ぐらいでしょうか、そのぐらいの金で国会議員の調査立法活動を援助するということになるわけです。はたしてそれぐらいの、百三十万か四十万の金で、規定されておりますような国会図書館の任務、国会議員の活動を援助することができるのかどうか。それについてはどういうふうにお考えでしょうか。
○国立国会図書館長(久保田義麿君) 国会図書館の国会議員さんに対するサービスと申しますのは、調査立法考査局だけではございませんで、調査立法考査局を中心にいたしまして、国会分館その他の国会図書館全館をあげて奉仕を申し上げている、これが実情でございますが、先ほどちょっと申し上げました立法資料購入費と申しますのは、主としていま新聞、雑誌、要するに身辺に置いて、しかも切り抜いたり捨てたりできる性質のものというもののために、一般の図書費とは別にこういうものを立目しておるわけでございますが、調査員も単にこの立法資料購入費によって買いました資料だけで奉仕を申し上げておるのではなくて、背後に持っておりますばく大な資料というものを全部を駆使いたしまして奉仕申し上げている次第でございます。したがいまして、先ほど申しました図書購入費の一億一千二百万というものも当然使えるわけでございまして、それで買いました資料というものも十分に活用いたしておる次第でございます。
○塚田大願君 何か館長さんのお話を聞くと、たいへん十分にやっておるというふうに聞き取れるのですけれども、どうも一億一千万でございますか、全体の費用、これを見たって、決して私は多くないと思うのですね。たとえば、東大の図書館の費用は約三億円でしょう。これは専門家の皆さんおそらく御承知でしょう。年間の図書資料購入費は三億円です。ところが、国会図書館はたった一億円。それで十分だなんて考えられない。まして、いま館長さんおっしゃったけれども、バックに膨大な資料がある、それはそのとおりでしょう。しかしながら、やはり日進月歩のこの時代に、新しい資料をどんどん購入して新しい水準に追いつかなければ、議員としての立法活動を十分にやれるということじゃないと思うのです。そういう意味で私はこの問題を提起しているわけなんです。決して多くない。十分でないのだ。まして直接的な立法考査局の費用がたったこれっぽっちというのじゃ、問題にならないじゃないか、こういうことを申し上げているわけです。 そこで、さらに具体的な問題に入りたいと思いますが、昭和四十六年度におたくのほうで発行されました「国の刊行物解説目録」というのがございますね。これはずっといままで出されておりまして、前は「官庁刊行物総目録」でございましたか、昔のものは。これはたいへん便利な、議員活動の上で役に立った。こういうものもたいへん私はりっぱな、なかなか図書館としてはよくおやりになったと認めておるのですが、さて、せっかくつくったこれが、必ずしもわれわれの活動に寄与していない。一体これは何部印刷なすったのでしょうか。議員に何部配付なさったのか、それをお聞きしたいと思います。
○国立国会図書館長(久保田義麿君) これは四十六年に刊行いたしましたものでございますが、無償配付が八百部、それから有償、要するに販売いたしましたのは五百部、合計千三百でございますが、これは議員さんのほうには配付はいたしておりません。
○塚田大願君 私は図書館のほうから資料もいただきましたが、いろいろ定期刊行物が出ておる。このうち議員に配られたというのは、大体三分の一あるかないかという状態のようであります。確かに、全部議員に配らなければならないという性質のものではないと思いますけれども、たとえばこのようなものは、国の刊行物、政府の出している刊行物がどんなものが出ているか、そして、それを非常に簡略に解説したこういうものは、非常に議員活動の上では重要なものである。ところが、われわれのところには来ない。で、実はこの間、わが党の資料室がこれをほしいというのでお願いしたところ、これが八百部のものはもうない、だが有料のものがあるからこれを買ってくれというので、それを買って使っておるわけですが、こういう党の政策審議室にも配付しない。議員にもくれない。これでは、私は、第十五条、あるいはこの国立国会図書館法にきめられた任務を十分に果たしていることにならないのではないか、なぜそういうふうになるのか、そこを実はお聞きしたいわけです。おそらく館長は、予算がないとおっしゃるのだろうと思う。予算が足りないのだとおっしゃるなら、やはりそういうふうに率直に言っていただいたほうがいいのではないか、こういうふうに考えておるのですけれども、その辺はどうなんでしょうか。
○国立国会図書館長(久保田義麿君) 私のほうのそういった種類の刊行物と申しますのは、大小とりまぜて約五十種ぐらいございますが、そのうちで直接配付申し上げるほうが適当であろうかと考えました、要するに特に調査立法考査局でつくる資料でございますが、そういった種類のものは、全議員の方々に差し上げております。それから、こういった種類の、申し上げれば公共図書館とか、あるいは大学図書館とか、図書館自体の利用に供すべき性質のものというふうに解釈いたしましたものは、そこで多数の方が同時に御利用いただくということで、そういう種類のものは議員さんのほうには配付いたしておりませんが、特に対議員さんの関係で申しますと、一々こういった部厚いものを議員さん一人々々がお広げになって、それによってわれわれのほうにいろいろとレファレンスをいただくということよりも、何一つおっしゃっていただきましても、私のほうでこういうものはこしらえまして、直ちにうちのほうでレファレンスにお答えできるというふうに考えておりますために、そういった資料を議員さんにお配りいたしてないというのが実情でございます。
○塚田大願君 どうもはっきりわからないのですけれども、こういう重要なものを議員に配らない、あるいは政党の政策審議室にもくれないということは、じゃ何のために国会図書館があるのだというちょっと疑問を抱くのですが、まあ時間の関係もありますから先に進みましょう。 御承知のように、図書館法第二十一条を見ますと、国立国会図書館は全国の図書館活動を援助するということが規定されております。そこで、この責務を国立国会図書館としてはどういうふうにやっておられるのか。そういう点で私いろいろ調べてみました。たとえば、こういう任務を遂行するための図書館学の講習会におたくのほうから講師が派遣をされる。で、その数字を見ますと、四十三年度に三十四名、四十四年度で四十二名、四十五年度で三十七名というふうになっておりすす。しかもこれは、地域的にいうと、遠いところはほとんど行かない。もう東京近辺に大体集中しておる。しかも、なぜこういうふうになるのかということで調べてみますと、やはりこういう場合でも、これは向こう持ちの旅費ですね。旅費を用意して申し込んだ場合にだけ行く、こういうことになっておるから数が非常に少ないのじゃないかと考えられる。しかし、そんな形では、全国で公共図書館が九百十七でありますか、九百以上ある。ところが、年間そういう指導に回られている方が三、四十名だと。これでは全国の図書館活動の改善のための指導援助ということはできないのじゃないかというふうに考えるわけです。 だから、なぜそれがそういうふうになるのか。やはりその点でも、私は予算の問題がここにあるのじゃないか。ちなみに職員の旅費を見ましても、昭和四十五年度では三百六十四万円。図書舘の職員の方が八百人以上おられるそうでありますが、一人当たりにすれば四千幾らにしかすぎない。こんなことでは出張も満足にできないのはあたりまえだろうと思うのです。そんなことで、結局二十一条に規定されている任務も十分国会図書館としては果たすことができない、こういう結果になってるのじゃないかと私は考えるわけですけれども、いずれにしてもこういう状態では私はよろしくない。国立国会図書館という名前からいって、またその職責からいって、この程度の活動であってはいけないのじゃないか、どうしてもこれは改善していく必要がある、もっと積極的に業務を拡充していくべきではないか、そのための必要な予算ならばどんどん請求してやるべきじゃないか、こういうふうに考えているのですけれども、その辺について館長さんなんかどういうふうに考えているか、お聞きしたいのです。
○国立国会図書館長(久保田義麿君) 国立国会図書館の任務の一つといたしまして、一般国民に対する奉仕、したがいまして当然図書館を通じ、全国の図書館というものへの協力援助ということはわれわれの任務でございますので、その点についても十分留意いたしておりますが、ただいまの旅費のお話とともに、講師派遣の問題でございますが、私のほうは行政官庁というわけではございませんで、立法府の機関でありますために、地方の公共図書館に対して指揮監督とか、そういったことはできないわけでございまして、常にやや受け身であり、特に技術的援助に限られていると私は考えております。そのために、われわれのほうから積極的に出向きまして、直接にわれわれの指導を聞けとかというわけにもまいりません。向こうから頼まれますれば、こちらの事務に支障のない限り、できるだけこれに応じておるというのが、ただいま先生のおっしゃいました点でございます。 職員の旅費のほうは、本年は五百二十三万を要求いたしております。この場合に、職員が地方にまいりますときにも、ほとんどが私のほうの用務を持ちながらまいりますけれども、そのときを利用して指導してほしいということで、向こうに参りまして技術指導ということも兼ねてやっております。そういうのはその表に出ていないわけでございます。大体その人数も四十三年で五十八名、百十一件でございましたが、四十四年は四十三人、八十三件、四十五年は六十六人、件数にいたしまして百四件。そのほかに研修旅行というもので五十一名というようなことで出張をさしておる次第でございます。
○塚田大願君 では、次いで印刷カードのことについてお尋ねしたいと思います。 これは二十一条三項に規定されている問題でございまして、この普及はやはり図書館としては重要な任務だろうと思います。ところが、最近、国立国会図書館の印刷カードが値上げをされて、三円から七円に上がった。しかも配付方法が非常にむずかしくなってきたということで、いろいろ意見が出ているようでございます。私もここに持ってまいりましたが、図書館雑誌の昨年の八月号ですか、このカードの問題についてかなり大学の図書館その他から意見が出ておりますね——これじゃ全然使えないじゃないか。しかし、図書館とすればカードの問題は非常に重要な問題であるのは、専門家の皆さんのほうが御存じのはずです。アメリカなどの例を見ますと、アメリカでは図書館が約五万くらいあるそうでございますが、そのうち一万七千館がこのカードを利用している。ですから、普及率は三四%くらいになりますか。ところが、日本の場合は、ほとんど五%くらいしかこれが普及されていない。もっとこれを普及すべき状態にあるにかかわらず、値上げをしたり手続をむずかしくするというようなことから普及がとめられておるという、こういう問題が提起されているわけですけれども、こういう問題について御存じだろうと思いますが、一体どうしてそういうふうになるのか、値上げであるとか、手続をむずかしくするとか。その点についてひとつお聞きしたいと思うのです。やっぱり私は、積極的にこれを拡大し充実していく、この活動は、その必要があるのじゃないかというふうに考えておりますが、ひとつ御意見をお聞かせいただきたい。館長ささん、時間も関係しますから簡潔にひとつお願いします。 〔理事小谷守君退席、委員長着席〕
○国立国会図書館長(久保田義麿君) 印刷カードの問題につきまして、いま先生のおっしゃったこと、私も読みましたし、よく話は承っております。ただこの問題が、値上げの問題よりも、手続がどうのこうのということも問題の提起の一つにありますが、手続についてさほど複雑化したものとは、私のほうではそう解釈いたしておりません。 それから、この印刷カードの販売価格でございますが、三円と申しますのは、約六年ぐらい前から、まる六年間一枚三円で据え置いてきたわけです。しかし、物価の上昇、それから原価計算等をいたしますと、三円ではどうしても——もちろんこれは人件費等を含まない原価計算でございますが、その結果、ワンセットと申しまして初めから全部、選択注文でなくて、セットで注文があった場合については五円、それから選択と申しますのは、このカード一枚というように選択して注文のくる場合につきましては、それを一枚七円ということにこの四月からいたすわけでございますが、これは、私はいろいろと検討いたしましたけれども、価格的にはこの程度はやむを得ないのではないかと、こういうふうに考えまして値上げに踏み切ったわけでございます。
○塚田大願君 その問題については、私納得しかねます。もっと突っ込んだ話もしてみたいと思いますけれども、時間に制約されておりますから、いずれそれはまた伺うことにいたしまして、最後にお聞きしたいのは、予算の節約、留保の問題であります。昭和四十六年度におきまして、国としては一般行政費を八%留保するということになっておりましたが、ただし事業費はそれに適用されておりません。ところが、国会図書館の場合を見ますと、職員の旅費から図書購入費、立法資料購入費、印刷製本等、これもすべて八%の留保になっておる。私はこれは非常に不当ではないかと思っております。むしろ、こういう図書購入費、立法資料購入費、印刷製本費、これはいわば事業費と見るべきであって、それにも八%かけて削ると、もともと大した予算でもないのに、その上に八%の留保をつけるというのでは、これはますます国立国会図書館の仕事というものが制約されているのではないか。そういう意味で、私はそこから、先ほど申しましたような、こういった刊行物の配付等を減らさなければならないというふうに考えるわけですが、この点につきましては館長並びに大蔵省の方はどういうふうにお考えになっているのか。あえて私がこれをお聞きしますのは、これは衆・参の常任委員会の調査室などの場合におきましても、ある程度これが当てはまるのではないか。ですから、単に図書館の問題だけでなく、そういう調査立法活動全体にやはり及ぼす影響は大きいと思いますので、この留保の問題についてどういうふうにお考えなのか、率直な御意見をお聞きしたいと思います。
○国立国会図書館長(久保田義麿君) この留保につきまして、私のほうでも科学技術資料、それから代償金の費用というものの節約は困るということも言っておりますが、したがいまして納入出版物代償金のほうは節約は免除されました。それから科学技術資料のほうは半分ということになっております。実際に、こういった私のほうの図書購入にいたしましても、印刷にしましても、年度の途中でこういうことになるということは非常に困ります。特に科学技術の雑誌のほうは前年度の秋に発注をいたしますものですから、発注はした、予算は削られるということになると、非常にこの点は苦しくなります。そういう意味において、あまり私はこの点については、私のほうも協力はいたしますけれども、必要なものは免除をしていただきたいと、こういうふうに考えております。
○説明員(海原公輝君) お答えいたします。 節約につきましては、大要三つのカテゴリーがあるわけでございます。一つは節約を全く除外するもの、それから軽減率を適用するもの、それから一般原則によるもの、こういうふうになっているわけでございます。そうしまして、まず節約除外のカテゴリーに属しますのは、四十六年度の例で申しますと、生活保護費とかあるいは社会保障に属する給付費、義務教育の教科書費等、並びにいわばそのほかの義務的な経費並びに人件費というふうに、四十六年度の場合には特に施設費というものが加えられております。それから軽減率と申しますのは、いま館長のほうからお話がございましたように、例で申しますと科学資料購入費といったような、実態に即しまして関係各省と御相談申し上げてセットしているわけでございます。で、四十六年度は、先ほど事業費が全部節約除外になっているのにというお話がございましたが、その事業費なる意味でございますが、おそらく公共事業を先生はさしていらっしゃるかと思いますが、昨年におきます景気の沈滞ということをどうにか浮揚させなければならない、こういう政策的意図もございまして、公共事業費は除外の中に入っているわけでございます。それと思想を同じくしまして、従来、施設費系統のものはこれまた節約対象になっておったわけでございますが、それと同様に節約対象除外にしたということに相なっているわけでございます。
○塚田大願君 それじゃあ、いろいろ問題ありますけれども、この問題だけやっておられませんので、第一の問題はこれで終わります。 次に、先ほど申しました第二の問題、つまりアメリカに押収された政府の公文書を一体どうするのかという問題であります。 御承知のように、この問題はだいぶ戦後二十七年間、いろいろ論ぜられてきた面もございますが、とにかく戦前、それから戦時中、さらに戦後の若干の時期にわたります政府関係の公文書が、御承知のとおり、あの占領下の中でアメリカに接収されていったということは、これはもう皆さん御存じのところだと思うのであります。しかし、この資料は、政府関係の公文書というのは、とにかく相当の期間の公文書であります。特に旧陸海軍関係あるいは内務省、特に警保局関係、あるいは占領下の言論弾圧資料、こういった非常に重要な資料でございます。したがって、これはこの国政、立法の上から見ましても、あるいは日本史の研究の上から見ましても、あるいは過去の侵略戦争の忌まわしいあの実体を突きとめる意味におきましても、非常に国家的な重要文書だと思うのであります。そこで私は外務省、あるいは館長さんにも知っていたならばお聞きしたいのですが、こういうものがその後どのように移されたのか、当時どんなふうになっていたのか、されたのか、それをひとつお聞きしたいと思います。
○国立国会図書館長(久保田義麿君) ただいまの、占領軍が押収してアメリカに持ち帰ったドキュメントあるいは図書の問題でございますが、当時どういうふうになっておりましたのかという点につきましては、私はよく存じません。 ただ、私のほうでも、こういうことがあって、アメリカのほうにあるというニュースをキャッチはいたしておりました。戦前のもの、いわゆる占領前の内務省に検閲のために納本されたもの、その図書とドキュメントというのと、もう一つは、戦後のものもあるとは聞いておりますが、それから陸海軍のドキュメント等も向こうにあったようでございます。ただいまのところは、そのドキュメントの大半は日本に返されて、防衛庁の戦史室かどこかにあるやに承っております。なお、その図書と若干のドキュメントというのがアメリカの議会図書館にある、こういうことでございましたので、われわれもこのことについて関心を持ちまして、河野前館長も数年前にアメリカに行かれましたときに、向こうの意向も打診され、また昨年、私のほうから国会分館長がアメリカに参りまして、この点の調査も一応はしてまいりました。 このうち、ドキュメントのほうは、現在徐々にマイクロフィルムにとって整理をしておるようでございますが、このほうは、あるいは整理が済めば返還をしてもよいのではないかというような感触をわれわれのほうで受けております。ただ、これが返された場合に、私のほうがいいのか、国立公文書館のほうがいいのかという点については問題があると思います。 それから図書のほうにつきましては、すでに議会図書館のほうで整理は行なったようでございますが、約二十八万冊ぐらいあるのではないかということでございます。ただ、この二十八万冊というのが、震災後の内務省の検閲のために納本されたもののようでございまして、その数と大体これは一致しますので、その図書は、私のほうの図書館には同じような二十八万冊というものはあるわけでございます。 私のほうで特に問題のものは、発禁本がどの程度アメリカのほうにあるか、こういうことでございますが、発禁本のほうは私のほうも相当数所蔵をいたしております。そこで、私のほうにないものがどの程度あるかということを調べたいということで、アメリカの議会図書館のほうに連絡をとったのでございますが、向こうのほうでは、日本のほうで発禁のどのものが調査してほしいのかということを言ってくれというようなことでございます。ところが、残念なことに、その内務省の発禁本目録というものがわが図書館にないわけでございます。完全にそろっていない。一部はあるのですが、そろっていない。アメリカの図書館にはそろっておるようでございますので、その資料を複製して私のほうにほしいということを向こうに伝えてありますが、まだ向こうからそれについて、複製がこちらにまいっておりません。それがまいりましたら、私のほうでもその点を調べて、その上で判断いたしたい、こう思っております。 それからもう一つの戦後のものは、占領後、検閲のために占領軍のほうに納本されたものがアメリカのほうに持っていかれまして、いまアメリカのメリーランド大学というところにそれがあるように聞いておりました。一昨年の四月かに水害がありまして、その資料がだいぶ破損したということでございました。私のほうも関心を持っておりますので、この水害見舞いもかねまして、カタログを、図書のリストをこちらへくれということを申し送ってあるのでございますが、これについてはまだ返還の返事もございません。以上、そういう次第でございます。
○塚田大願君 図書館としても、当然こういう調査もある程度進めておられるかと思うのでありますけれども、いまおっしゃったが、ドキュメントなんかは大部分返ったと、あと若干がアメリカに残っている程度だろうと、こういうふうなお話でしたけれども、これは違うんじゃないかと思うのです。私のほうで調べました限りにおきましては、あの当時、占領下のアメリカ軍に接収されました公文書類というのは、大体三種類ある。先ほどもちょっと申しましたが、一つは旧陸海軍関係、二つは旧内務省関係、特に警保局、特高関係のもの、それから三つは占領下の言論弾圧資料、大体この三種類ある。ところが、確かに一部返されてきました。それは昭和三十三年、軍関係のものが返されてきた。そして、これは防衛庁の戦史室に保管されておる。おたくのほうにはマイクロフィルムか何かに入っておる。こういう関係だろうと思うのです。これが一体どのくらいの部数なのか、どういう種類のものなのかというのは、これは一般には何もまだ知られておらない。また知らされてもいない。しかし、とにかくこれは一つ返ってきました。 しかし問題は、むしろ旧内務省関係、それから言論弾圧資料、こういうものはほとんど返っていないはずです。この部数が非常にたいへんなものなんです。で、いま館長も二十八万とおっしゃったが、 これはワシントンのアメリカの国会図書館、ここにあるんですね。で、これは私のほうでもリストを、目録をつくってみましたけれども、これはたいへんなものですね。とても二十八万なんで調べようもないでしょうけれども、とにかく、いままで大学の先生であるとか、その他のジャーナリストの方であるとか、特殊の方がアメリカへ行って、ワシントンのこの図書館に行って調べてこられて、びっくりして、いろいろ報告——雑誌その他に書かれておられる。「歴史評論」であるとか、あるいは早稲田大学から出されていた「史観」、こういう雑誌に一部が載っております。しかし、これを見ますと、ほとんどこれは内務省の当時の治安関係の資料でありまして、みんなマル秘あるいは極秘といったような性質のものばかり。ちょっと読み上げてみましても、これは何万種のうちの一部ですから問題になりませんけれども、たとえばこれは早稲田大学の鹿野教授が調べた資料でありますけれども、「検挙索引簿」警視庁特高部、「治安維持法違反起訴者年度別調」、「共産主義特別要視察人一覧表」、「特高関係年・半年報」、「秘密戦に関する書類」、これは陸軍関係ですね。「朝鮮暴挙伝聞録」、これは総務局ですね。「活動写真フィルム検閲時報」、「新聞雑誌処分日誌」、「警察情報綴」、「敗戦処理に関する緊急電報」、「米兵の不法行為」、「各署報告綴」とか、いろいろ多数のいわゆる弾圧資料というものがごっそりあるわけです。それが大体二十八万あるということ、これは刊本だけで二十八万四千と言われておるのですね、正確に言えば。これがそっくりあるということ。 それから三番目の占領下の言論弾圧資料、これは当時のGHQ・CIEの検閲官でありましたゴードン・W・ブランジという人物が検閲しておりましたが、納本関係を全部、自分が帰るときに一括して持ち帰った。これはいわゆるプランジ・コレクションと言われて、先ほどおっしゃたメリーランド大学のマッケルディン図書館というところに保存をされておる。これも単行本にして六万冊、新聞、雑誌一万タイトルと、こういったふうに非常にたくさんのものが行っておると、こういう性質のものなんです。 ですから、大部分返ったんじゃなくて、一部は返されたけれども、大部分はそのままにされておるというのが私は実態ではないか。そういう意味で、図書館あるいは外務省で私はもっと正確な調査をする必要があると思う。所在場所にいたしましても、いま言ったワシントンのアメリカ国会図書館あるいは国立公文書館、それにいまのワシントン郊外のメリーランド大学、さらにはバージニア州のマッカーサー記念館、こういうところに資料が一ばいあることは、行った人が、とにかく民間の方々が行ってこれを見てきておるんです。しかし、実際、権力も何もありませんから、またそんな費用もありませんから、そんなに詳細な何十万部の資料をつくるわけにはいかない。だから、ただほんの一部だけを報告されているにすぎませんけれども、しかし、とにかく非常に重要な文書ばかりだと。刊行物、刊本にしても、いま言ったような旧内務省関係のものが多いようですけれども、いわゆる文書類、たとえば原稿であるとか、ガリ版刷り、タイプ印刷のような、そういったものもたくさんあるので、これなんかは、まず点数なんか調べようがないだろう。アメリカ自身まだほんとうに整理されていないという。 特にこのプランジ・コレクション、言論弾圧機関が持っていった資料の中にはこういうものがあるんですね。谷崎潤一郎氏は当時、新聞か何かの小説だろうと思うのですけれども、「A夫人の手記」というのが発禁になって、検閲で押えられて、発禁の判こが押されているものがアメリカにある。あるいは向坂逸郎氏であるとか、美濃部亮吉氏、いまの都知事ですね、この人たちの論文が、やはりゲラ刷りで発禁の判こが押されて、アメリカの図書館に保存されている。こういった類まであるんですね。ですから、量的にも質的にも非常に重要な日本の文書が、アメリカに持っていってそのままになっておるということは、私はやはり許さるべきではない。 特に私は強調したいのは、アメリカが日本のこういう公文書を持っていっているというのは、明らかに陸戦法規の条約からいっても私はこれは違法だと思うんです。国際条約であります陸戦法規に何と書いてある。陸戦法規の五十三条、国有動産の問題ですけれども、こういうふうに書いているわけであります。「一地方ヲ占領シタル軍ハ、国ノ所有二属スル現金、基金及有価証券、貯蔵兵器、輸送材料、在庫品及糧秣其ノ他総テ作戦動作二供スルコトヲ得ヘキ国有動産ノ外、之ヲ押収スルコトヲ得ス」、つまり作戦上必要なものはしかたがないけれども、それ以外のものは押収してはいけない、こういうことなんですね。これは、戦争が終わった時点でですよ、アメリカがこういう日本の公文書を持っていくということは、これは不法なんです、国際条約からいいましても、陸戦法規からいいましても。それが二十七年間もほうってあったということは、一体どうしてそうなったのか。これはいわば国の主権にもかかわる問題だと思います。これについて政府はどのような責任を感ぜられておるのか。それを、外務省の方が来ておるのじゃないかと思うんですが、お聞きしたいと思います。
○説明員(和智一夫君) お答えいたします。 接収されました図書及び公文書につきましては、平和条約に照らしますと、法律的な権利としては返還要求することはできないということになっております。しかしながら、先方との話し合いによりまして、これを事実上返還していただく、あるいはこれを要請するということ自体は、排除されるものではございませんので、いま先ほど国立図書館長よりお話がありましたとおり、事実上の話し合いも進んでおるようでございますので、これらの成り行き、その他、国立国会図書館とか公文書館とか、関係の方々とよく協議をさしていただきまして、しかるべく措置をいたしたいと、このように考えております。
○塚田大願君 その考え方は、私は間違ってやしないかと思います。とにかく、ここの国際法規に照らして見ましても、こういったものを持っていったこと自体が間違っている。ましてや、美術品や、貴重な絵であるとか、その他がずいぶんあのとき持っていかれた。これは問題になっているととろです。これは作戦上必要なものではないということは明らかです。そういう不当なことをアメリカがやっているのに、日本の政府が要求ができないのだ、お願いするのだという、そういう姿勢で、私は外交というものは成立しないのじゃないか。やはり主権は主権国家として堂々と、発言をし要求すべきものはすると、そうであってこそ初めて国益を守ることができるのであって、国の重要な財産を人のところに持っていかれて、どろぼうされて黙っているなんという、そうしてお願いして返していただくなんという、そんなばかな話はないと思う。私は、堂々と返還を要求して、これをとにかく政府の責任において返してもらうということがあってしかるべきだと思うのですが、どうでしょうか。いま一度お伺いしたいと思います。
○説明員(和智一夫君) お話ではございますが、先ほど申し上げましたとおり、平和条約に照らしますと、こちらとして返還を請求する法律的な権利はないと、かように考えておりますので、あとは事実上の問題といたしまして先方側と話し合うことしかないというふうに考えておりますので、また、そのような方向で先方も多少返還の用意があるというふうに申して——そういう明らかな意思表示ではないにしろ、そういうような徴候があるような様子でもございますので、そのような方向で今後も措置をさしていただきたいというふうに考えておる次第でございます。
○塚田大願君 とにかく、そのことは平行線かもしれません。が、とにかく国民とすれば、これはもう当然返還要求すべき性質のものだというふうに考えます。佐藤さんも沖繩が返ったんだからもう戦後は終わったなんと言っていますが、これが片づかなくて、こんな重要な、ある意味では非常にもっと重要な歴史的な資料です。そういうものを返しもしないで、戦後は終ったなんということにならないと思うので、その点については、ひとつ政府もこれからもっと積極的な姿勢でやっていただきたいと思うのです。 この問題と、返還させるべきものは返還させるという、この原則と、それからもう一つは、私は原則として、せっかく返ってきたら、これを国民に公開をするという原則を明らかにすべきだと思うのです。たとえば、先ほど申しましたように、旧軍関係は防衛庁のほうに持っていかれた、現物は。そうして戦史室で保管をされてしまって、だれも一般の人は見られない。マイクロフィルムは図書館にあるとしても、現物は見ることができないというようなことであってはいけない。私は、返ってきたら、これは国会図書館か何かに保管すべきものではないか。そして国民に一般公開する。そして、ほんとうにこれからの国民の生き方の教訓として当時のものを提供すべきであるというふうに考えていますし、一般の有職者、学者の方々もみんなそう言っておる。そして、先ほど申しました早稲田大学の鹿野教授がアメリカの国会図書館に行ったときに、日本から返還を要求するのはもっともだ、返還してもいいだろう、しかしこの資料を日本に返したら、あなた方がかえって利用できなくなりますよといって、ひやかし的に言ったというんですね。その教授が書いています、こんなことを言われたと。こんなことになったんじゃ意味がないから、返還された以上、これは国民に公開するという原則を私はやはり認めるべきだと思います。 それからもう一つは、時間がないから一緒にやりますが、一体、先ほども申しましたように、館長さんもあまりよく知らない。われわれだって何も知らない。特に、われわれ共産党はアメリカへ入れてくれませんからね。しかし、政府関係者であったらかなり行ける。その他の人もかなり行って現物を見てきている。われわれは見ていないから、実際には何もはっきりしたものを持てない。しかし、どっちにしろ、民間人が行って、あるいは大学の先生が行って、自分のポケットマネーでやるようなことでは、何十万部の重要な資料を調べ切れるものではないと思う。そこで私は提案したいのですが、この重要な国の財産である公文書の資料、目録、これは国の責任においてこれを直ちに調査すべきではないか。調査員を派遣して、そのために予算を組んで、相当大規模なやはり調査を私はすべきである、する必要があるのじゃないか、当面。そういう提案をしたいと思うんですが、その以上二点について御意見を伺いたいと思います。館長さん、あるいは外務省、その他大蔵省でもけっこうですから、どうでしょうか。
○国立国会図書館長(久保田義麿君) 御答弁の前に、ちょっと二十八万冊の問題で……。その公文書の関係は二十八万冊ではない、それは図書のほうだと私どものほうは見ております。それから警保局関係のものは、おそらく公文書の関係になっておりますが、約三百点ぐらいそこにあるようで、その中に入っているのではないかというように私どものほうは伺っております。 それから向こうに行って調べたらどうだというお話でございますが、これは二十八万冊というものを調べるということはたいへんなことでございますし、それから大体私のほうの推定では、これは私どもの図書館に同じものが相当数あるというふうに私のほうは考えておりまして、ただ、先ほど申しましたように、発禁本のうち、われわれが持っておる発禁本以外にどの程度のものがあるのかということは、私どものほうは関心が非常に深い、こういう次第でございますので、私のほうで向こうのほうに調べにいくという考えはいまのところ持っておりません。
○塚田大願君 国民に公開の問題はどうですか。
○国立国会図書館長(久保田義麿君) これは、返ってきました場合に私のほうにくるかどうか、その点は、国立公文書館がございますので、公文書と申しますのはそちらにいくことになっておりますので、私のほうへはこないと思いますが、ただ、いま私どものほうにきております分は、いまでも公開はいたしております。
○塚田大願君 時間も切れましたからこれで終わりますが、とにかくいまの論議はほんのことば口でありまして、何十万冊の問題をここで簡単に片がつく問題ではないと思います。そこで私は、やはりこれは今後、この公文書にしても各省庁にみな関連しているものでしょう、防衛庁なら防衛庁、警察庁なら警察庁というふうに。ですから、これはそれぞれの官庁においても私はこれは問題にしていかなければならない問題です。そういう意味で、きょうはほんの入口に入ったばかりでありますけれども、時間がきましたからこれで質問をとめますが、私どもといたしましては、とにかく国の主権に関するようなこの問題、国の重要な財産であるこういう公文書、これをこのまま全然ほうっておくわけにはいかないと思うのです。それで、私どももこれから国会の各委員会その他におきましてこの問題は十分追及していきたい、このことを申し上げまして、私の質問を終わります。
○委員長(足鹿覺君) 他に御発言もないようですから、国会、法務省、最高裁判所、会計検査院、行政管理庁の決算につきましては、本日はこの程度にいたします。 本日は、これにて散会いたします。 午後四時二十五分散会 —————・—————