予算委員会 第6号
- 発言数
- 162 件
- 登壇者
- 19 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1972/02/29
会議録
○瀬戸山委員長 これより会議を開きます。 昭和四十七年度一般会計予算、昭和四十七年度特別会計予算、昭和四十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行ないます。小林進君。
○小林(進)委員 私は、与えられた時間の中で主として日本と中国との国交回復の問題、あとの残された時間を物価問題、社会保障あるいは文教政策、そういう順序で御質問を申し上げたいと存じます。 昨日の質問でほとんど問題は出ておるのでございまするけれども、なおしかし、日本と中国との国交回復を真剣に実現しようという立場からは、まだまだ政府の姿勢の中で不明瞭の点が非常に多いのでありまするから、若干重複はいたしまするけれども、中国問題について同じような質問を重ねて申し上げたいと存じます。 まず第一問といたしましては、ニクソン大統領が中国訪問をされたのでございますが、そのニクソンの訪中を政府は一体いかように評価されるかという問題でございます。過去二十二年にわたる米国の中国封じ込め政策の失敗をアメリカは率直に認め、米中対決の時代に訣別をいたしました。これから対話の時代に移行しようということを明らかに示したのでございまして、これは私は歴史の上にもたいへんな転換だというふうに考えているのでありますけれども、どうもきのうからの政府の御答弁には、その評価をなるべく小さく小さく見よう、むしろ政府首脳においても、この米中会談の成功をなるべく期待薄いものにしよう、歓迎をするよりはむしろ不安とあせりの念を持ってこれを見ていられる、収穫のあることよりも収穫のないことを望んでおられるというふうな、そういう態度がちらつくような感じがしてしかたがないのであります。こういう点は、きのうはグリーン次官補が見えられて、その米中会談の真相は外務大臣に詳しく御報告になったはずでありまするから、きのうの御答弁の中で訂正するものがあったらぜひお知らせをいただきたいと思うのでありまするが、そのグリーン次官補の報告を聞く前に、私どもは私どもなりにやはりあの米中会談というものを非常に関心をもってながめてまいりました。私どもの受けた感じといたしましては、中国は依然として一つも原則を曲げていない。これは私どもは、昨年の七月からずっとニクソン訪中に対する中国側の受け取り方がどう出るのか、どういう態度で接するのかということを非常に関心をもって、われわれなりにサウンドをしてきたのでありまするけれども、ちっとも原則は変えていない。対台湾の問題においてしかり、アジア諸国に対する問題においてしかり。超大国のあるいは弱小国家に対する干渉あるいは軍事支配、あるいは軍備を置く、そういうものは根本的に好ましいことではないという中国の原則論、それもそのまま共同声明の中にあらわれているのでございまして、私どもが予見したとおりであります。これに対してアメリカ側の出方はということでありまするが、これは外務大臣のおことばによれば、なに、サンクレメンテで話をしたとおりだ、台湾に対する政策等も、あるいはアジアの弱小諸国家に対する軍事的な擁護の問題もちっともアメリカの基本態度は変わっていない、こういうふうに御答弁になっていたようでございまするが、私どもをして言わしむれば、この原則を変えない中国に対して、変わったのはアメリカだ、アメリカはたいへん変わった、私どもはこういうふうに見ているのであります。先ほどから申し上げましたように、朝鮮戦争以来二十二年、中国を包囲しよう、冷戦構想でいこう、こういう対決の姿勢でいたアメリカが百八十度転換をいたしまして、そして対話方式、平和共存方式でいこうというふうに変わったのでありまするから、私は後世歴史家をして言わしむれば、アメリカのたいへん大きな変換だと見ておるわけでございます。 そういう変換の中で、やはりその変化を一番認めようとしないのが日本の政府、外務省、特に外務官僚。おとといからきのうあたりの外務大臣の新聞談話等を聞いておりますと、変わりがない、変わりがない、こういうふうな姿勢でどうも終始しておられるようでございまして、私は、実にものの見通しが依然としてどうも甘いのではないかという感じがするわけでございます。何でこういうことを申し上げまするかというと、米中の関係が変われば当然日米の関係も変わらなければならぬじゃないか、私はこれを申し上げたいからでございまして、くどいようでありまするけれども、二十二年前の朝鮮戦争の勃発以来、アメリカは、いわゆる中国はアジアにおける脅威だ、世界における脅威だ、それでこれを軍事的に政治的に封じ込めていこうということ、これをアジア政策の基本にしてきたのであります。その中国の基本の姿勢に立ってアメリカはわが国を育成強化してきた。わが国をなぜ一体アメリカは育成強化したかといえば、いわゆる極東の反共の防波堤にする、中国封じ込めの拠点にする、これがアメリカの対日政策なんです。安保条約のねらいの半分もそこにあるのでございましょう。私は全部と言いたいが、全部と言わぬでも、半分はそこにある。いわゆるアメリカの中国封じ込め政策の拠点に日本を活用してきた。だからアメリカにとっては、日本を育成強化することはアメリカの国益に沿っている、沿うと判断をしていたからこそ日本を助けてきた。こうした戦後型のいわゆる日米協調体制は、これは日本には決して不利なことだけではありませんよ、確かに。そのために日本はかさの下に入ってたいへんめざましい経済的な発展も遂げて、今日経済大国にのし上がることができた。これは政府の言い分を認めてもよろしいが、しかしこの戦後型日米協調は、中国封じ込めのアメリカの極東戦略に基づいて組み立てられたものでありますから、アジアの緊張と、日本と中国との不正常な今日の関係、この関係がこのアメリカの政策によってずっと今日まで続けられてきた。そのためにわれわれはたいへん不幸な代償を伴わざるを得なかったわけであります。この日米安保条約とアメリカの中国封じ込め政策のために、日本は利益だけ得たのじゃない、たいへんな犠牲を払ってきた。その歴史的な犠牲は何かといえば、これはもう申し上げるまでもないのです。いわゆる安保条約反対だとか、基地闘争だとか、あるいは沖繩闘争だとか、戦後の国内における騒擾事件に近いような問題は、みなこのアメリカの極東政策を起因にしてでき上がったといってもいいくらい、そういう不幸な事態が続いてきたわけでございますけれども、その中にあって米中関係は、いま政府が何とおっしゃろうとも、まさに雪解けムードの中に入った。包囲作戦から、冷戦構想から、平和共存、平和五原則をのんだ。話し合いでいこう、対話の中に入った。たいへん大きな変換をしたならば、当然私は、日本の中国に対する関係も、アメリカに対する関係も、ここで百八十度といってはなんでありまするけれども、大きく転換をしなければならぬのではないか。緊張緩和、冷戦構造の解消へ、いわゆる主体的に日本も力を進めていかなければならぬときだ。日米協力体制も新しい構築状態に入らなければならないときではないか、かように私は考えておるわけでございまするが、それにつきましても、先ほど申し上げましたグリーン国務次官補も来て、米中会談の内容を詳しく説明されたはずでありますから、きのうの答弁に続いて、ひとつその内容をここでお聞かせを願いたいと思うのであります。
○福田国務大臣 アメリカの中国に対する態度はもう、きょう、きのうのことじゃないのです。三年前ニクソン大統領が出現いたして以来転換をし始めておる。この転換は、小林さんがおっしゃるように、私は百八十度といっていいと思うのです。つまり、対決から対話への動きであります。その決定的な瞬間はどうだといいますと、私は昨年の七月十五日だと思うのです。あれまでに大体の下ごなしができた。そして七月十五日以降キッシンジャー補佐官に、二回にわたって北京政府との間に具体的な詰めをさしておるわけなんです。その大体の結果をサンクレメンテ会談においてわが国の佐藤首相に話しておる。そのときもう大体この構想は固まっておる。ですから、サンクレメンテ会談におきましてニクソン大統領が佐藤首相に話したこと、これがそう変わるはずはない。私はそのことを申し上げておるのです。その前にもう変化があったのです。 きのうグリーン次官補と会談をいたしました。グリーン次官補はコミュニケについての説明をいたしております。特につけ加えておりますのは、アジアの同盟諸国に対するコミットメント、約束事、これは変えません、こういうことです。これを強調いたしておるわけであります。また私から根掘り葉掘り、裏取引があるのかということを尋ねたのです。一切裏取引はありません、中国は非常にものをはっきりいう、問題点はあらゆる問題につきましてコミュニケに、賛成のできた点、また賛成し得なかった点、これを明らかにしております、こういうことであります。結論といたしまして、私は——これはグリーン次官補のことばです。私はこれはアジアの緊張緩和に非常に裨益すると思う、特に日中の関係につきましてはこれはいい影響があるであろう、こういうことを申し添えておるわけでありまして、私は、その会談を通じ、またコミュニケを見、またこの三年間の動きを見まして、これはアジアのために非常にいい訪問であったと、高い評価をいたしておるということをはっきり申し上げさせていただきます。
○小林(進)委員 ニクソン・周恩来会談の中における対台湾条項でございまするけれども、台湾問題はなるほどまあ、サンクレメンテの会談と少しも変わりない、こういうふうに報告されたということでございまするけれども、現在国府は、台湾政府は、重要会議を開きながら非常に動揺しているということが一方から入ってきておる。いわゆる台湾に対するこの米台相互防衛条約というものがありながら、台湾の了承も得ないで、終局的には台湾からアメリカの第七艦隊あるいは軍事力を引き揚げる、漸次減らしながら引き揚げるということは、これはアメリカの台湾防衛に対する責任を白紙に戻したことではないか、たいへんなことだ。こういうことで国府がいま不安、動揺しているということがいわれているのであります。私はこれはほんとうだと思う。米台軍事条約というものは、形は残るだろうけれども、これは形骸に帰した。形だけのもので、実体的にはだんだんなしくずしでなくなってくるまでの、共同声明に見えないきちっとした話し合いというものはできている。中国はこの原則はやかましくいって、必ずそれは取りつけていると私は信じているが、しかし見えないものをお互いに論争してもしようがありませんからこれはやめますが、それにしても、日本の外務省等がいつでも、変化がない、変化がないと、変化がないことを願っているというあのあさましい小役人的な根性は、いかにも国民は了承できない。そこら辺も外務大臣、ひとつよく事実を見ていただきたいと私は思うのであります。 それはそれにいたしましても、こうやってきのうも外務大臣はおっしゃった。対中国関係では日本は進んでいるんだ、アメリカはあとから来るんだ。これも実におかしいのです。国民はそう思っておりません。ニクソンというのはアメリカの最高責任者です。毛沢東主席にも会い、周恩来という総理大臣ともあの長い間の会談を進めておる。これは国家と国家との会談の中における政府交渉の最高首脳部の、最高スタッフの会議なんです。これ以上の政府間交渉がありますか。そういう交渉をアメリカがやっている。ずっと政府の関係は前に進んでいます。その中で日本の政府はどうですか。隣におりながらもまだ政府間交渉の糸口もつかめないじゃないですか。糸口もつかめない。しかし貿易高も多いぞ、人事の交流もあるぞと政府はおっしゃるけれども、それは政府の力じゃない。民間の方々があらゆる犠牲を払いながら、むしろときには政府の弾圧を受けながらも、民間が熱意を込めてこの実績を持ってきたことでありまして、それは政府の言われるような政府間交渉の進展ではひとつもないのでありまして、政府と政府の交渉から見れば、それはずっとアメリカは進んでいる。私はこういうこともすなおにひとつお認めになったらどうかと思うのでありまするが、そういう情勢の中で日本の政府はこの交渉の糸口さえもいまつかめていないじゃないですか。 なぜつかめないのか。きのうも質問に出ましたけれども、それは基本的に日本の政府の姿勢が間違っているからだ。どこが間違っているかといえば、これはすなわち日本の政府が、いわば日本の国家が日中戦争における侵略国家だったということなんだ。これはまことに言いづらいことばでありまするけれども、私はほんとうに新しきものを求めて進むためには、やはり古きをあたためなければいけませんよ。省みてやはり自分のなしたことも深く反省するという立場に立たなければいかぬ。日本は侵略国家です、中国に対しては。敗戦国家です。法的の戦争状態は今日なお終結をしていないのです。これをやはり日本政府が率直に認めるという、そういうことから私は話し合いを進めていかなければならないと思うのでありまして、敗戦国家であり、侵略国家であり、対中国との関係は依然として戦争状態のままに放置せられているという、だれもが承知しているこの事実をまず政府が率直にお認めになる。お認めになれば、これはアメリカやカナダやフランスと、対中国とのいわゆる平和交渉の態度がおのずから変わってこなくちゃいけない。おのずから別な姿勢が出てこなければならないと思うのであります。 あまりどうも演説をやると同僚諸君にしかられますからやめたいと思いまするけれども、私の態度を明確にする意味において私は申し上げたいのでありまするけれども、この国会の中で日中国交回復促進議員連盟というのがあります。総計三百九十三名です、衆参両議員合わせて。自民党の先生方も九十名、百名近くお入りになっている。超党派的に、衆議院も参議院もこれは過半数を占めている。この議員連盟の代表が昨年の九月から十月にかけて中国へ参りました。自民党を代表する議員連盟の代表の先生もおいでになった。団長は藤山先生です。藤山愛一郎先生が行かれた。私は事務幹事ということでついて、一行十九名参りました。そこで中国と、日本の国会における多数の議員連盟の代表とが、日本と中国との国交回復をどうするかという基本問題について真剣な討議をいたしてまいりました。その討議の中で四つの基本原則を定めてきたのであります。 その基本原則の第一がいま申し上げました、中国と日本との国交正常化に臨む基本的な態度の第一としては、まず日本政府が姿勢を直していらっしゃい。姿勢を直していかなければならないということを両国の代表で認め合った。その姿勢を直せということは、いま繰り返し申し上げまするけれども、日本の戦争責任を明らかにするということです。明らかにして、中華人民に対し謙虚な気持ちでおわびをするということです。そこから始めなければならない。第二番目は、中国は一つであり、それは中華人民共和国である。中華人民共和国は中国人民を代表する唯一の合法政府であるということを認めなければだめだ。認めなければ交渉に入れない。第二の原則です。第三番目は、台湾は中華人民共和国の領土の不可分の一部である。台湾問題は中国の内政問題である。これを認めなければ交渉には入れませんよ。第三番目です。第四番目は、日華平和条約、いわゆる日台条約です。すでに中華人民共和国が成立した後に調印されたものである。したがって中国側は、これは不法だ、無効である、廃棄されなければならないという基本原則を掲げている。この原則は中国は譲りませんぞ。この四つであります。この四つは、お互いに客観的立場に立ってものを考えれば当然な主張じゃないかと私は思う。当然なこの主張は、一つ一つこれからお伺いいたしていきますけれども、これは交渉の中で出てくる問題ではありません。この四つの基本原則は、日本と中国との政府間交渉の内容ではなくて、交渉に臨む前の前提条件なんです。この基本条件をのんでいかなければ、日本の国交回復の糸口もこれから先へいったってつかめない、私はそれを申し上げたいのでございます。 そこでまず第一の、交渉に臨む日本政府の姿勢についてでありますが、いままでも政府は、誠心誠意をもって臨むとか、国連憲章の原則にのっとるとか、抽象的論議に終始をしておられますけれども、もはやそんなことばではもう間に合う段階ではございません。日本と中華人民共和国との間にはいまだ戦争状態は終結していないということを国民の前に明らかにすべきであると私は思います。時間がありませんから愛知外務大臣の発言等をここで繰り返すのはやめますけれども、従来は、戦争状態は全中国にわたって全部終了したのであるという、こういう姿勢を政府は持ってきたはずであります。その考えを変更する意思があるかどうか、まずこれを私はお伺いをいたしたいと思うのであります。
○福田国務大臣 まず第一に、日中間には戦後二十六年間にわたる国交の空白というものがある。その間に不信感もできてまいりますれば、あるいは誤解、そういうものも多々あると思う。いま小林さんが御指摘なさるように、私は、何よりもまず、中国国民の間には、再び戦争は日本との間にすまい、また日本の侵略というもの、これを阻止しなければならぬ、こういうことがあると思うのです。これは私は、満州事変から日中戦争に至るあの経緯を見れば当然のことだと思う。私は、わが日本としてこの事態に対しまして深い反省がなければならぬ、こういうふうに考えます。私は参議院でも言ったのです。あの満州事変、日中戦争、あの間に中国の国民にたいへんな迷惑をかけた、これは事実として認識しなければならぬ、このことは私は中国国民に対しまして率直におわびをするべきである、こういうふうに考えておるわけであります。これが私はこの日中問題打開のスタートである、こういうふうに考えます。このおわびの形をどういうふうに具現するか、こういうことにつきましてはいろいろの形がありましょう。平和条約とあなたいまおっしゃる。また平和回復宣言というようなことも考えられるかもしれません。いろいろな形がありますが、要はその実体です。おわびをする、反省をする、その気持ちを率直に伝えなければならぬ。こういうふうに考えます。
○小林(進)委員 外務大臣から非常に明快な御答弁をいただきました。これはいままでにない非常に積極的な前向きのお話だと思います。これは私はちょうだいをいたします。 そこまで御答弁を得たのでありまするから、この問題はこれで終わってもいいのでありまするけれども、やはりこれを確認しておく意味においていま一つこれをくどく申し上げたいと思うのは、どうも日本の政府は、常識的でありますが、事中国に対してはいままで国民の納得のできないような、そういう理屈で終始されてきたという点でございます。中国との国交回復に臨むためには常に、世論でありまする、日本国民が納得をするような、そういう外交の姿勢を持っていただかなければならぬ。その、国民が納得する姿勢というのは、第一には道理にかなった外交です。日本人がなるほどと思う、理屈と常識にかなった外交でなければならぬと思いますし、第二には道義であります。日本人の道義心に訴える外交。中国に迷惑をかけておいて、いままでは——いま初めて、いま初めてというのは何でありますけれども、外務大臣が明確に反省とおわびのことばをお述べになりましたけれども、いままではへ理屈ばかり言っておる。そういうへ理屈の外交であってはだめだ。これではむしろ国民の道義心を低下せしめるだけです。第三番目には、歴史的事実に沿った外交。あの中国戦争に、軍人ばかりじゃない、平服を着た者が一千万人もあの中国大陸に行っているのですから。侵略戦争に参加しているんだから。その一千万人の人たちはここにもいるのです。みんな各人が中国に行って、そのとき何をやってきたか、一人一人が胸に問うてみればみなわかるのです。みんなそういう経験を持っている。その事実を否定するような外交であってはいけないのです。第四番目には、国際法、国際条約、国際慣行に沿った外交でなければならぬのでありまして、超大国の利害に引きずり回されて、国際正義を滅却するような外交をやったのでは後世史家のもの笑いになります。しかるに戦後の日本の対中国政策は、このあたりまえの姿勢をとらないで、いままでは小手先外交に終始をしてきた。言いかえればアメリカの追随外交に終始をしてきたということでございまして、これを軌道に戻すという基本姿勢が一番大切なのではないか。 その反省の資料として——外務大臣のおことばがありましたからだいぶ質問を省略いたしますけれども、その反省の資料として私はまずお尋ねしたいのは、一体、日本が中国に及ぼした損害を、外務省、日本政府はどれくらいであると概算をされているのか、反省の資料として承りたいと思うのであります。
○福田国務大臣 これは実際調査をしてみればたいへん膨大なものにのぼるであろう、こういうふうに見ます。見ますけれども、とにかく日中戦争が済んでから今日までもう二十六年間の空白がある。これは調査するにもしようもありません。率直にいいまして、まだ何らの資料も持っておりませんということであります。
○小林(進)委員 この問題に対して中国側が発表した資料があります。これは私は日本国民に率直に言っていいと思いますが、これを読み上げます。一九五一年の九月六日です。「戦争犯罪人検挙と懲罰について」、国際民主法律家協会の第五次代表大会における中国代表の沈鈞儒報告というものの抜粋が載っております。これによりますと、「遠い昔のことはしばらくおき、単に一九三一年、日本が中国の東北」旧満洲でありますが、「に侵入してから、とくに、一九三七年日本が中国を侵略してから八年間の戦争について見ただけでも、中国の軍隊と人民がうけた損失は一〇〇〇万人以上であり、財産の損失額はアメリカドルで五〇〇億ドルをこえている。一九三七年冬、」これは昭和十二年ですが、「南京が日本軍に占領された一カ月半のあいだに、わが南京の住民(大部分は老人、婦人、児童であった)で日本の戦犯たちに殺害されたものは二三万以上であった。南京の婦女子(老人、妊婦、幼児をふくむ)で強姦されたものおよび強姦されたのち殺されたものは数万人にのぼった。」国際の会議の中に中国代表がこういう報告をしている。これほど残虐な損害を与えておきながら、まだ戦争に対するわび状一言言わないというふうな日本の政府の姿勢を改めないで、どうして一体日中の国交の回復ができますか。 私はこの際、総理大臣にもお尋ねをいたします。これは、もう総理大臣は近く引退されるであろうことは世間の常識になっておりまするから、あまり多くのことは要望いたしませんが、私のこの質問を通じて一つだけ総理にどうしてもお聞き願いたいと思う。その一つであります。 その一つは、一九六二年、これは昭和三十七年です、三十七年の七月五日に、東久邇稔彦、片山哲、石橋湛山というわが日本戦後における三人の元総理大臣——これは鳩山さんもいられたら、鳩山さんも必ず仲間にお入りになったと思いまするが、このときにはもうなくなられておりましたから、生きている戦後の総理大臣はこの三名であります。岸さんは生きておられまするけれども、岸信介さんは入らないことはわかっておる。入らない。岸さんを除いた三人の総理大臣が、「日本国民に訴える」というアピール、同じ同日付で「中国人民諸兄に訴える」というアピールを出しているのであります。その中で、この三人の元総理大臣が何を言っておられるか。まず日本国民に対するアピールの中で、「いまを去る二十五年前、七月七日、盧溝橋事件を契機とし、日本は中国全土に戦火を拡大し、中国に対してはかり知れぬ迷惑をかけました。その責任は、一片の外交上の措置で糊塗しうるものではなく、その道義的責任感こそ、日本国民の日中問題解決に取組む大前提でなければなりません。」こう国民に訴えておられる。同日付で、今度は中国代表に向かっては——中国政府代表です、政府代表に向かっては、「戦争が終ってすでに十七年になるにもかかわらず、日本はいまだにその償いをしていないばかりか、正常な国交関係も結んでおりません。このことは全く日本に責任があり、私共の深く恥とするところであります」こういうアピールを送っておるのであります。私は、この三人の元総理大臣の、国民と中国代表に送ったアピールを、一体総理大臣の佐藤先生はどうおとりになるかということをお聞きしたいのです。これは、この三人の民間から出た——私は官僚とか民間とかいうことは失礼でありまするから言いませんけれども、いみじくも民間から出た三人のこの総理大臣の両国人民に対するアピールは、私はそれぞれ人心を打つものがあると思う。これこそ国民の率直な気持ちを代表していると思う。私は、いま日中国交回復は、この重大なポイントに立ったときに、佐藤総理大臣はこの三人の元総理大臣のこの行為を引き継いで、いつか近く何らかの形でこれに似通った率直なアピールなり宣言なりをお出しになる気持ちが——お出しになったらどうですか。ほんとうに日中国交回復をやるのならば、この先輩の例にならって何らかのアピールをおやりになったほうが一番よいのではないかと考えるわけでありまするから、これに対する総理の御所見を承っておきたいと思うのであります。
○佐藤内閣総理大臣 先ほど福田外務大臣から、さきの戦争についての真に反省したそのことばを発言されました。また、ただいまは過去の三総理大臣のアピールを引き合いに出されまして、そうして現在の内閣はどういう考え方を持っておるかと、こういうお尋ねであります。私は、民間でアピールすることも、これも一つの方法かと思いますけれども、国家における最高の政治機関、この議場を通じて私どもの真の考え方、受け取り方、これを率直に表明することが何よりも、より以上の効果のあることではないかと思います。先ほど外務大臣がこの席をかりて、そうして受け取っておるその所信をたいへん簡単ではありましたが表明をいたしました。私はそれをそのまま受け取っておりますので、以上でわれわれの考え方は明確ではないだろうかと、かように思います。
○小林(進)委員 なお進んでアピールも出していただけばありがたいと思うのでありまするが、そこまでできないとおっしゃればやむを得ませんが、私は日本の姿勢の第二の反省の資料として、これも時間がありませんから省略してもいいのでありまするけれども、ひとつ官房長官に私はお尋ねをいたしたいと思うのであります。 それは劉連仁事件というのが日本に起こった。いま横井庄一さんが十八年の抑留生活からのがれてグアムからお帰りになったといって、まるで日本国内においては英雄的にこれを珍重されている。政府はあげて手厚い処置をされておる。けっこうです。これは非常にけっこうだ。これに対して官房長官はテレビ等を通じて、横井さんの健康を祈るとともに、何か御要望があればすべてその要求に応じたいという非常にやさしい発言をされておる。そのお気持ちがあるならば、この劉連仁事件に対しても、私は時期を失しても、何らか官房長官からこの際お話があってもいいと思う。 時間がありませんから簡単に言いまするけれども、劉連仁事件というのは、これは総理大臣お聞きください。昭和十七年、日本の戦時内閣、当時は岸さんもたしか商工大臣でいられたはずです。賀屋さんもいられたはずです。この人たちが閣議を開いて判こを押して、そして華人労働者移入方針という、言いかえれば中国のじょうぶな労働者を日本にふんだくってきて、そして日本はみんな若い者は兵隊に行くから、そのあとの重労働をやらせようという、こういう閣議決定をされている。その決定に基づいて、昭和十九年、このときには四万人からの中国の労働者を日本へ拉致してきている。そして炭鉱に入れたり、汽船に入れたり、船会社に入れたり、鉄道につとめたり、土建屋につとめたりして、食わせるものも食わせないで虐待をして、七千人からを殺している。その中で、劉連仁さんという方が、これは山東省出身です。昭和十九年、もう、戦争が終わろうとするときに、野らに行こうとするときの朝めしどきに、いわゆる日本人の手先が来て、それを拉致して、強制的に日本へ連れてきた。そして昭和十九年の八月ですか、北海道の明治炭鉱にこれを持っていって入れたんであります。そして強制労働に従事せしめた。飢えと重労働と殴打、なぐられるんです。そして仲間は死んでいくんだ。たまらなくなって、昭和二十年の七月です。八月十五日までがまんしてくれればよかったのだけれども、もうがまんできない。七月に逃亡をしたのであります。仲間の四人と北海道の明治炭鉱を逃亡いたしました。自来、戦争の終わったことも知らないで、昭和三十三年二月、一九五八年の二月まで北海道の山野を逃げ回って歩いたのです。いいですか、十四年間です。そして一九五八年の二月、雪の中へ入っているときに、猟師が来て、ウサギの穴があるじゃないか、何だろうというので、その穴をけとばしてみたら、深過ぎて、ウサギじゃない。鉄砲二、三発撃ってみたら、おかしいじゃないかというので警官を連れて、ついにそれを引き上げた。そうしたら、どうもひげの長いぼうぼうたる、人間ともサルともつかない人間がいたということで調べてみた。それが劉連仁さん事件です。いいですか。横井庄一さんはグアム島の中で十八年生き抜いた。向こうはあったかいです。こっちは北海道ですぞ。零下何十度の北海道ですよ。その北海道の雪の中で十四年間も逃げ回っていた。向こうは日本の兵隊さんで行ったんだ。こっちは日本なんか来る気がないのを、強制労働でだまして日本へ持ってきた。その人に対して日本の政府は何をやりましたか。これは愛知さんもうしろにいられますから、名前をさして悪いけれども、当時は愛知さんは官房長官でいられた。だから私は官房長官に御質問するのです。それが見つかってきたときに、日本政府は、それはスパイだろう、密入国者だろう、そんなのが、戦争中から来たのが生きているはずがないじゃないかというので、いわゆる入管等が中心になってこれに不当圧迫を加えようとしたのでありまするけれども、そのうちに日本の政府の中にある資料が明らかになった。政府の手にその拉致した事実の資料があって、なるほどこれはやっぱり昭和十九年に違法に拉致したんだということが明らかになった。そうしたら今度、それ以後扱うことが冷淡そのものです。北海道道庁も、札幌の市役所も手をつけるな、そして、冷淡そのままに放置している。それは民間団体や赤十字社が、そんな残酷な話があるかといって、日中友好協会等が一生懸命にそれをば看護したり手当てをしたりしましたけれども、そのとき、国会で参議院等にこの問題が持ち出されたときに、当時のアジア局長の板垣修なる者が何と言ったか。契約に基づいて連行されたものだ、そういうふうな言いわけを日本の国会の中でやっているのだ。政府代表がやっているのです。それでもしかし、さすがに民間の国民が承知をしなかった。しなかったら、今度は二カ月もたった四月の八月になったら、当時の官房長官の愛知揆一さんが一体何と言ったか。実に珍しい文書がありますから、ちょっとここで読み上げてみます。これは一九五八年の四月八日です。愛知官房長官から劉連仁氏にあてた手紙です。 「拝啓 劉連仁さんには戦時中日本に入国され、」何が日本に入国されです、あんた。人を小ばかにするのもほどほどに言ってもらわなくちゃならぬ。「入国され、明治鉱業所に入れられて以来、いろいろ苦労をされたことと存じます。殊に他の大多数の華人労務者の方は終戦後すぐ帰国の取計らいをさしたのですが、貴方は山の中に入っておられてそのことを知る由もなく、長い間苦労されたとのことで、まことにお気の毒に存じます。ご家族も一日も早く貴方の帰国を待っておられると存じますので、近々に中国に向け出航する白山丸にお乗り頂くよう手配しております。帰国されましたらゆっくり静養され長くお元気で暮されるよう祈ります。昭和三十三年四月八日 内閣官房長官愛知揆一 劉連仁殿」 入国されだの、終戦のときにおまえが知らぬで逃げ回ったのが、おまえが悪いんだというような話です。白山丸だって、政府がやったんじゃないです、これは。民間の団体が遺骨を送還する船で用意した。その白山丸に乗せて帰したという——官房長官や政府がやったんじゃないのです。民間団体がみんな手厚くあしらったのです。そのときに日本の国民も、あんまり気の毒だというので、民間の人がこうり二つくらいのおみやげを持たしてやったけれども、そのとき政府は何をやったんだ。たった十万円じゃないか。十万円の金も、愛知さんが行ったんじゃないんだ。赤十字か何かに持たしてやったんだ。さすがに劉連仁さんはおこりましたよ。日本の国民のあたたかい気持ちは手にとるようにありがたいけれども、この政府のやり方は何だ、こんな汚らわしい金はちょうだいできませんといって、十万円突っ返した。そうして帰っていった。いまなお生きておられます。山東省の人民公社の役員をして生きておられまするけれども、横井庄一さんの問題で日本が大騒ぎをしているときに、またこの問題がいま中国で火をふいている。何という日本政府というものはかって次第なんだ、人間の命に変わりがあるか、人道の道に二つあるか、こう言っておるのでございますが、これに対して現官房長官はどう御処置されるのか、御所見を承っておきたいと思うのであります。
○竹下国務大臣 ただいまの小林委員の御質問に対してお答えいたします。 私も、質問通告の中に劉連仁さん事件と、こういうことがありまして、きのう一生懸命になって調査をいたしてみました。私自身、この事件の経過につきましてさだかに承知しておったわけではございません。 そこで、これにつきまして、最終的に、いまお読み上げになりました、愛知官房長官が民間、法務省、外務省等と法律上の解釈等についての調整をされた結果、私は、あのような書信が出された。この書信は、読み方によって、最初御指摘になりました文言は別といたしまして、非常にあたたかい内容の感じが含まれておる、このように私は理解をいたしております。 そこで、いずれにいたしましても、横井さんの問題にしても劉連仁さんの問題にいたしましても、戦争という痛ましい悲劇の、いわば犠牲であります。それだけに、今後日中間において二度と再び干戈をまじえてはならないということはおよそ常識であり、そしてこのためにも、先ほど来総理、外務大臣がその基本姿勢をお述べになった精神に基づいて、恒久的な善隣友好関係が樹立されるよう、今後とも一そうの努力をすべきである、このように考えております。
○小林(進)委員 それは官房長官苦心の答弁でございましょうけれども、この読み上げた手紙の中にあたたかい気持ちがみなぎっているなどということは、それは政府だけの受け取り方でございます。私どもは、日本国民としても、こんな、二カ月間もほっぱなしておいて、帰るときに十万円の目くされ金を出して、それで誠実が通りましたなんという、こんな手紙に、だれ一人胸を打たれる者がいますか。まして、こういう屈辱を受けた御本人や中国が、黙ってあなたの答弁を聞いておられますか。そこに私は基本姿勢の問題があるということを申し上げたいんですよ。もっと考えた、国交正常化ができなくても、せめて政府の気持ちですと、横井さんの半分くらいのお手当をやりたいという、何でそういうすなおな答弁ができないのですか、官房長官。人間ならばそれくらいの気持ちが出てこなくちゃいけません。そういう政府の、一つ一つ問題を処理していくあたたかい気持ちが日本と中国との国交回復の道に通ずるんですから。そういうところから糸がほぐれていくのです。いまのように答えるんじゃ、これはどうも糸がほぐれませんな。しかし時間がありませんからつつきません。 こういう、戦中だけではない、戦後においても日本の政府の、中華人民共和国に対する実にけしからぬことが幾つもある。私は、長崎の国旗事件だってその一つだと思います。いろいろありますが、そういうことも含めて、ひとつ基本姿勢は、総理、外務大臣が言われたように、ほんとうにひとつ敗戦責任をとるというふうな、謙虚な気持ちで臨んでいただきたいと私は思うのであります。 次の問題に入りますが、中国承認の問題であります。第二の基本原則であります。中華人民共和国を正統政府と認める、この問題であります。 日本と中国との国交を正常化することには、現在中国にある二つの政権、現在二つあるのであります。その中の中華人民共和国政府を唯一の正統政府としてこれを承認する。これを承認するということは、台湾にある国民政府を否認するということです。そんなことは政府に申し上げませんけれども、一つの国家において二つの政権を認めるなどということは、同時に存立を認めるなどということは国際上あり得ないのでありますから、いずれかの政府を正統と認めるならば、いずれかの政府を、これは事実上の政府として認める以外にはない。正統政府として認めるわけにはいかぬ。そこで私が申し上げたいことは、本来日本政府は、北京政府を正統政府として承認すべきものを台湾政権を承認した出発点に、今日のこの問題の誤りがあったのです。これは、古い歴史をたずねれば、吉田総理大臣も、非常に台湾政府を認めることについて苦労されたという苦心のあとがみんな記録に残っておりますけれども、スタートが、この間違いはここにあった。これを反省するということもなければ——これは事実は別として、基本問題ですから。日本政府の気持ちの中で、その当時の承認のしかたに少し間違いがあったという反省がなければ、日中国交回復の入り口に入るというわけにはいきません。この問題についてきのうも総理大臣の御答弁がありました。総理大臣は、年頭所感の中にもこう言われておる。日中問題の根源は、サンフランシスコの講和条約を締結するときに中国代表を招請すべきだったのだが、当時、連合国の意思が一致せず、実現をしなかった。イギリスとアメリカがぶつかったのです。そこで代表を招請しなかった。しかし、当時は中華民国は国連に議席を持っていたので、日本が中国を代表して中華民国を選んだことは矛盾とは思えないと、こういうことを総理が言われている。きのうもその御答弁が繰り返しあったと思うのでありますが、このお気持ちを政府が変えなければ、これは国交回復に入る道は困難でありますよ。中華人民共和国——相手のほうは、日本が台湾政府を承認したことこそが、日本がいわゆるアメリカ帝国主義と結んで再びアジアを侵略しようとする軍国主義の復活をはかったのであるといっているのであります。当時の記録を見てください。日本の軍国主義は復活したというのは、この日本が、中華人民共和国をりっぱに設立しているものをおいて、アメリカと一緒に国民政府を承認したときから、日本の軍国主義は復活したということばが、中国から出てきた。その軍国主義というのは、いわゆる心情的軍国主義です。それはまだ日本の軍国主義は行動の上にあらわれておると言わないけれども、軍国主義的思想、再び中国大陸を敵対祝する、再び中国大陸を、いわゆるアメリカとのつっかい棒をしながら包囲しよう、侵略しようという、その日本のおそろしい気持ちのあらわれ、それは軍国主義、心情的軍国主義の復活ではないか、これを中国が言いだした、終始一貫今日まで。それから中国は、日本が中国に対して敵性を明らかにしてきた、こういう主張を続けておるのでございまして、日本の政府がこの中国の主張に耳を傾けるという反省がなければ、私は交渉に入るのは困難ではないかと思うのでありまするが、この北京政府を無視して台湾政府を選んだことに間違いがあったと反省される気持ちが一体あるのかないのか、これは総理にお伺いをいたしたいと思うのであります。
○佐藤内閣総理大臣 まあ事柄は、やはり一つの歴史的な事実、それを追ってものごとを判断していかなければならないように思います。私は、サンフランシスコ条約締結の際に中国の代表を招請することはできなかった、これはそのとおりそれが歴史の事実である、かように思っております。また、その当時の状況において、私どもが、中国の代表者として中華民国、これを選んだということは、当時の状況においては私はそれは是認さるべきことではないだろうか、かように思うのでございます。そのことをやはり一応考えないと、直ちに二十数年たった今日、新しく日中国交の正常化をはかる、かように申しましても、歴史的事実を無視する、これを抹殺するわけにはいかない、かように思います。しかし、私どもが当時日華平和条約を結んだ相手方、これは今日においては変わっておる。これは昨年の国連において中華人民共和国が国連の議席を得、同時にまた安保理事会の常任理事国になった。この点からも、中国の代表はやはり中華人民共和国だ、かように私は考えますので、そういう点は、やはり歴史的な事実を追いつつ、しかも変化した状況に応じて私どももそれに対処する、これが当然のことではないだろうか、かように思います。
○小林(進)委員 まあ中華人民共和国は昭和二十四年にもうりっぱにでき上がっている。それが、私どもをおいて台湾政府を正統政府としてお認めになることは間違いですぞときびしく抗議を申し込んできたにもかかわらず、今日まで政府はそれを無視している。その無視をしてきたということが、日中国交回復の正常化の一つのネックになっておることは事実です。歴史的問題という、それは歴史的経過は経過といたしまして、そのネックを日本の側で解きほぐしていかなければ正常化の道に入ることはできません。これはどうしても政府の中に記憶していただかなければいけません。その解決を考えていかなければいけません。 そこで、その問題にこだわっておりますと前へ進みませんから、それはそれとしておいて、——これは私は了承いたしませんよ。政府の考えは私は納得するわけにいきませんが、しからば、いま一歩進んで、国連で中国の正統性を認めたのだから、だから事態は変わったといま総理はおっしゃっておる。ならば、その国連の問題に関連をいたしまして、政府は口を開けば国連中心主義だ、国連の決定は尊重するということを繰り返し言われている。そのことばにうそがないならば、この国連の決定に従って、直ちに北京政府を正統政府としてお認めになったらいいじゃないか。しかし、そこへ行くと、政府は、国連の決定と二カ国間の条約とは異なるという、こういうふうな理屈をお言いになって、今日なお国連の決定に従おうとしないのでありまするから、その歴史的経過は一応認めるとしても、一体国連の決定になぜ従わないのかという、その理由をひとつここで明らかにお教えをいただきたいと思うのであります。
○佐藤内閣総理大臣 いまの日中の国交の正常化をはかろう、こういうことは、私が申し上げるまでもなく、御指摘になりましたように、国連における決定、その状態を踏まえて私どもが進んでいこうとする、こういう道でございます。したがって私は、これは別に矛盾しているとは思いません。
○小林(進)委員 国連の決定と二カ国間条約とは異なるというふうな発言もされていたようでありますけれども、しかし、国連の決定に従ってすみやかに国交回復のために努力をしたいとおっしゃるなら、それはひとつ、すなおにちょうだいいたしましょう。ところが、巷間伝うるところによれば、日本が台湾政府を見限られぬもろもろの事情の中に、現に米国が国民政府との間に米華共同防衛条約というものを結んでいるのだ。日本は、日米安保条約によって、米国政府が台湾防衛に日本の基地から出動を認めている。その基地を提供しなければならぬ。そのために、米国と台湾政府との軍事条約が廃棄されない限り、日本は安保条約に縛られて日台条約を廃棄することもできず、したがって、国民政府を正統政府の地位から引きおろすこともできないのだろう、これが専門家の一致した見方なんでございますが、総理大臣いかがでございましょう。米台条約と日米安保条約との関係であります。——時間がありませんから、大臣、ちょっとお待ちください。 そういうことばの裏には、これをいわゆる事実づけるような一つの事実があるじゃありませんか。それは何かと言えば、一九六九年の日米共同声明の中の韓国条項、台湾条項、この台湾条項というものは、日米首脳が、佐藤総理大臣が一言半句もおろそかにしないという姿勢でつくった苦心の作だ。そして沖繩返還の前提条件だ。台湾を守ろう、日本が守るなら沖繩を返そうという前提条件だ。それを佐藤首相が一方的に台湾条項は必要がなくなったというようなことを言われたから、ホワイトハウスがびっくりしちゃった。米国務省や米議会に対する説明もつかぬということで、米政府が抗議を兼ねて説明を日本政府に求めてきた。これであわてて福田外務大臣が総理大臣が総理大臣の発言を補足修正するというような結果になった、これが最近、真相だという情報が、ずっと事実であるとして飛んでいるのです。 そこで、サンクレメンテの会談で、日米両国が台湾防衛について再確認をされてきた。これはしばしば言われたとおりでありますが、明らかになったわけでありまするが、この事実は、台湾は中国の領土の一部であるということを全く否認したことになるのですよ。これが中華人民共和国を承認できない隘路なんですよ。台湾防衛の責任、これが中国承認のできぬ重大なる足かせ手かせになっている。すなわち、日本政府は、この台湾に対する武力介入の姿勢がある限り、中国との国交回復を望むということばは単にゼスチュアであって、日本政府の真意は依然として中国敵視政策にあると中国側は考えておる。おれの領土の一部を守ると言っておるのだから、これは敵視政策ではないかと考えておる。 そこで、いまの政府の置かれている立場は、北京政府と国交を回復するか、日米安保条約の中の極東条項を守るか、私は、二者択一を迫られておると判断をするのでございますが、この問題はいかがでございましょう。
○福田国務大臣 はっきり申し上げますが、他の国の条約でわが国が規制を受けるということはありません。つまり、米台条約によってわが国が拘束を受けるということはありません。ただ問題は、わが国はわが国の安全を確保しなければならぬ、そういう見地からいいますると、わが国の周辺で起こった問題はわが国の問題でもあるわけであります。米台条約は別といたしまして——米台条約があろうがなかろうが、もし台湾海峡において事が起こった、そういう事態がわが国の安全に影響があるという際におきましては、日米安全保障条約、これに関連を持つわけであります。わが国の基地から米軍が発進をする、これは米台条約に限ろうが限るまいが、これは関係はありませんが、関係があるのは、それがわが国の国益に反する事態であるという際におきましては、わが国は米軍のわが国からの発進を認める、こういうことになる。そういうことをこの一九六九年の共同声明、これはいっておる。 ただ、事態は非常に変わっておるということを私は申し添えます。つまり、いま米中間には緊張緩和ムードが出ておる。あのムードから見まして、台湾海峡にそう大きなことが起こるであろうというようなことはゆめゆめ思いません。思いませんけれども、万一そういう事態があった場合には、米台条約というようなものにはかかわりなく、それがもしわが国の安全に関係があるという際におきましては、わが国からの日米安全保障条約に基づく基地発進ということがあり得る、こういう関係と理解を願いたいのであります。
○小林(進)委員 それは、米台条約と日米安保条約とは関係がない、極東条項に関しても関係がないとおっしゃるならば——この関係は一番疑点のある問題です。中国側も一番疑問を持っておる問題ですが、この問題についてはわが党にもそれぞれ専門家がおりますから、またひとつわれわれの同僚の議員からこの問題は詳しく解明をしていただくことにいたしまして、私は日本と中国との国交を回復するというほんとうのまじめな要望が政府にあるならば、この際結論として申し上げたいことは、一九六九年十一月、佐藤・ニクソン会談における共同声明の中から台湾条項は削除すべきである。中国はいっておるんだから。この中国の不可侵な神聖な領土台湾を、日本の防衛圏、防衛の範囲の中に入れて、これを生命線だなんということは、中国として黙って聞いておられますか。これは日本の軍国主義の復活じゃないですか。これは佐藤総理にしては真意でないかもしれないけれども、相手側から見ればそういう感じを受けている。そこで——生命線ということばはまあ語弊があるかもしれません。まあ重要だということでありますけれども、ことばをいえば、とるほうには、それはことばの問題でありますけれども、そういう言い方は了承できないという、相手方は非常に真剣な気持ちでこれを受けておる。そういう誤解を解くためにおいても——安保条約の中の極東条項のこれは拡大解釈なんだ、拡大解釈だと思われる。すなおに外務大臣の答弁を受け取るとしても、そういう誤解が出てくるんでありますから、その極東条項の拡大解釈、中国に直接向けた攻撃の矢であるというふうにもとられるようなそういう問題、沖繩返還の交換条項であるとも考えておられる。見ている人もいる。見ている、大ぜいの人は。でありまするから、そういう点はこの際削除をいたしまして、そして日本と中国との国交回復に関する不信感を取り除かれたらいかがですか。これが一つです。 第二番目には、日米安保条約そのものについてもこの際改定をすることをお考えになったらどうか。中国を含む極東の安全条項を対米交渉で、もはやアメリカとは中国包囲作戦はなくなったんだ、アメリカは中国と手を握って仲よくしているんだ、対話方式に入ったんですから、そうすれば中国包囲を目的にした極東条項なんか要らないじゃないですか。だから本然の昔に返って、日本の周域だけ、日本の安全だけをアメリカと日本がお互いに守り合うようにしよう、こういう姿に返ってくれば、これは中国も反対もしませんし、疑問も持たないし、不信感も持たないでしょう。日本がみずからの国をアメリカと一緒になって守っていただきましょうというのならいいけれども、こういう中国包囲作戦を目的にした極東条項がある限りは、これはどうしても日本と中国との国交回復の大きなやはり手かせ足かせになる。こういう極東条項を取り除くという、こういう交渉を日米安保条約の中に、おやりになって、そして周辺の国々の不信感を取り除くという謙虚な行動に出られたらどうかということをまずお聞きをいたしておきたいと思うのであります。
○福田国務大臣 まず台湾、いわゆる台湾条項でありますが、これは先ほど申し上げましたとおり、まあ小林さんなんかのことばをかりていえば空洞化する、こういう事態だろうと思います。もう米中が非常な接近を始めた、そういう事態において台湾海峡で大きな問題が起こり得ようとは私は考えない。したがって、日米安保条約の発動というような事態はなかろう、こういうふうに思うのですが、しかし、まだムードの時代であって、問題は定着をしておらないのです。そういうことを考えますときに、まだ理論的な問題といたしまして、台湾海峡に起こる問題がわが国の関心事項である、こういう考え方、これを変えるということは私は妥当ではない、こういうふうに考えております。しかし、実際問題としては、繰り返して申し上げますが、日米安全保障条約が台湾海峡に対して出動をする、発動をする、そういうような事態は万々なかろうか、かように考えております。 それから安保条約の問題でありますが、私は安保条約については、これはアメリカも今度の会談においてその必要なるゆえんをおそらく中国に対しまして力説をしておる、こういうふうに思うのです。また、それに対しまして中国側の反応、こういうものもそうきびしいという状態ではなかったのではないか、こういうふうに考えるわけでございますが、それはそれといたしまして、わが国はわが国の安全を守らなければならぬ。しかし、その安全を守る手段といたしまして憲法第九条の制約があるわけです。また、戦争は再びいたすまいという国民的なコンセンサスもある。そういうようなことで、わが国はあり得べき、想像し得べきわが国侵略に対する抑止力というものを持つことができないのです。これは軽微な抑止力しか持てない。そこで、その抑止力の足らざるところをアメリカの軍事力に依存をする、この体制、これは堅持する必要がある。この立場は必ず中国によっても理解し得られるところではあるまいか、そういうふうに私は考えておる次第でございます。
○小林(進)委員 私は、その抑止力の問題は、わが社会党は全く反対でございますので、その論争に入ることは省略いたしますが、ただ、私がいま申し上げておるのは、この北京政府、中華人民共和国政権を正統な政府として政府は承認なさらなければ日中の国交回復の糸口もつかむことはできませんよと申し上げておる。それはなぜ政府が正統政府として認めないのかというと、そういう日台条約、日米安保条約がそれをじゃまをしておるのではないかというのでありますけれども、それがじゃまでないとおっしゃるならば、この際、中華人民共和国が中国を代表する唯一の正統政府であるということをここでひとつ明確に宣言をしていただきたい。いかがでありますか。これをやっていただきたい。
○福田国務大臣 小林さんこれはよく御承知のことでございますが、わが国の政府は、中国は一つである、中華人民共和国はその中国を代表する政府であるという認識に立ちまして、北京政府との間に国交開始の接触を始めよう、こういう考え方を持っておるのであります。いま中国をめぐる現実、これは小林さんもよく御承知のとおりでありますが、いまの段階といたしましてそういうところまでわれわれは踏み切っておる。今日の段階においては、私どもの交渉の相手は、接触の相手は、何と申しましても中華人民共和国である。それで私は十分理解できるのではないかと思う。それをまたことばをかえて、いろいろ唯一だとかなんとかいうようなことをつけ加える必要もない。もしこの日中交渉、つまり政府間接触によりまして結論が得られまして、中華人民共和国をわが国が承認するという事態になりますれば、それはおのずからわが中華人民共和国は中国の唯一正統の合法の政府となる、こういうことになる。いまこの段階で、まだいろいろな客観——中華人民共和国をめぐる客観的な諸問題がある、そういう段階の問題としては、中国がわれわれの交渉の相手国である。中国は一つであります、中華人民共和国は中国を代表する政府である、こういうことで折衝を始める、それよりほかないじゃないか、こういうふうに思うのです。あとの問題は、あなたの御意見もありましたけれども、おのずから結論の出てくる問題である。その辺は十分政治家として心得ておる問題である、かように御理解願います。
○小林(進)委員 やや外務大臣は一人よがりのお気持ちがなきにしもあらずであって、外務大臣はそれでわかったとお考えになるかもしれませんけれども、相手側の中国はいま一つの国家二つの政府、あるいはあとで申しますけれども、台湾独立の運動も日本の政府要人まで加わってやっておるのだからというような非常に疑問、疑いがあるのであります。だからニクソン大統領との会談の中にも、台湾独立論をニクソン大統領は否定した、台湾の帰属をきめたということで中国は非常に満足の意を表したというくらいで、中国は非常にこの問題を言い張っておるのでありますが、日本の政府は、一国のやっぱり政府だということを明確に言わなければ——何かお話を聞いていると、また北京政府も正統政府と認めるけれども台湾政府とも縁が切れないというものの言い方じゃ、これはだめです、これじゃ。こういう点はやはりきちっとして、中華人民共和国政府が唯一の中国を代表する政府である、これは明確に言わなくちゃいけません。時間もありませんけれども、これはまあ宣言したことにいたしまして——いやもう、先生、まだ言われますか。それを明確にして……。
○福田国務大臣 いや、小林さんはアメリカも中国は一つであり、台湾はその領土であるということを認めたというようなお話ですが、それはそうじゃないのです。これは共同声明よく読んでもらいたい。台湾海峡をめぐる、はさむところの二つの人民は、一つの中国であるということを主張しておるということを承知しておる。それにあえてチャレンジはいたしませんということを言っておる。私は何もアメリカの見解にこだわるものではございませんけれども、いま小林さんがアメリカのことを引用されているものですから、それは共同声明の読み違いじゃありませんか、こういうことを申し上げておる次第でございます。
○小林(進)委員 あとでその問題は議論いたします。時間がありませんからあとで。あとで議論をいたしますが……(発言する等あり)それはまあ突けとおっしゃいますから、時間もないので弱っちゃったけれども、これは外務大臣、そこを私は言っているのです。これは外務省的解釈なんです。だから、あなたの新聞発表やきのうの答弁がみんなうしろ向きだというのはそこなんです。いま台湾政府は驚いているし、台湾は中国の領土の一部だということを認めるけれども、ただ中華人民共和国の一部だとはいわない、中国の一部だ、両方でいってるじゃないかという、それはニクソン的ことばの表現であって、もはやあなた、北京から来る通報から香港から来る通報から、みんな中国は一つだということを認めたといっているじゃないですか。ジュネーブもいっているじゃないですか、あなた。スイスもいっているじゃないですか。世界の新聞見なさいよ、あなた。外務省的感覚だけです。そんなに二つの国がみんな一つだといっているんだから、それはその言い分が、両方の国が言っていることを認めましょうなんという、それはアメリカの考え方なんだといっている三文記者代言的なことを言っておるのはあなただけです。外務省は——急ぎますからやめますが、それは間違いです。そんなことはもう世界が了承できない外務省的感覚です。そこで、そんなものはちょうだいできませんが、まあひとつ唯一の正統政府だということをお認めになったんならそれでよろしい。次へ行きます。 次は、台湾は中国の一つの省であり、中華人民共和国の不可分の領土の一部であるというこの問題なんです。この問題も日中正常化に入る重大なポイントであります。これはしかし、きのうは総理大臣は実にりっぱな御答弁をされた。これは総理大臣の御答弁がありましたが、それでよかったんだ。ところがあとで、どうも外務大臣がちゃらほらちゃらほらごまかしたようなわからぬことを言われたんでありまするから世道人心が動揺し始めたのでありまするから、ここでいま一つ私は申し上げますが、きのうの総理大臣の対台湾帰属問題に対する答弁の速記録を私ここへ持ってまいりましたので読み上げます。これは矢野委員の質問でありまするが、「そこで、第二の問題はそれで済むのですが、ただいま国連において中華人民共和国が中国を代表する政権といわれております。さような立場に立って台湾の帰属を考える場合に、これまた文句の余地はない。中華人民共和国そのものだと、かように考えてしかるべきではないか、かように思っております。」これは総理大臣の答弁です。矢野委員の質問に総理大臣はこうお答えになっている。そこで矢野氏は、「中華人民共和国政府が中国を代表しておるんだ、中華人民共和国政府の領土なんだというお答えがあったように理解してよろしゅうございますか、第三点につきましては。」こういう質問をまた繰り返し質問をしているのに対して佐藤内閣総理大臣は、「そのとおりです。これは中国のものだと、こういうことを申して、中国を代表するものは中華人民共和国だ、これはただいままでの国連においての明確なる結論が出ているのでございますから、ただいま中国の領土といえば中華人民共和国のものだと、かように考えるのは当然でございます。」総理はこう言われておるのであります。この答弁は本日になっても間違いございませんか。このままの御答弁であれば、私どもはありがたくちょうだいいたします。
○佐藤内閣総理大臣 大体ただいま言われたとおり、私の速記をよく読んでいらっしゃると思います。ただ、最後に申し上げましたように、これはただいまのそういうたてまえに立って北京、中華人民共和国と正常化をはかっていこう、こういうことでございますから、それができ上がらないといま申した事柄も実現しない、こういうことになるのです。大事なところはそういうことでございます。
○小林(進)委員 いや、政府間交渉の過程において、それはいろいろ手続上の問題もございましょう。——ございましょう。それはやはり正統な政府の代表者を北京政府に置いたりするためには、台湾から引き揚げるとかいろいろな問題がありましょうから、そういうこまかな技術上の問題、行政上の措置は、それは交渉の過程あるいは交渉の済んだ後でよろしゅうございまするけれども、基本的な姿勢として、いわゆる台湾は中華人民共和国の支配する中国の不可分の領土の一省だということを基本的な立場として、姿勢としてお認めになったならそれでけっこうでございます。その問題でございまするけれども、——外務大臣、あなたは余分なことをおっしゃる必要は何もないです。あなたはちょいちょい、総理大臣がものを言うとそばでどうもわかったようなわからぬことをおっしゃる。——それでけっこうです。それでりっぱなあれですから。その点はひとつ内外に明確にしておいていただかないと、これはもういけません。これは内外に明確にする必要がある。中華人民共和国政府が最もいま関心を寄せている、警戒をしている問題は、日米両国に対して一番警戒している問題は台湾帰属未定論です。それから台湾独立論です。この主張に沿って、この主張に立って台湾独立運動が日本と米国に行なわれておると中国は信じている。なお、日本においては、与党、政府の有力者もこの台湾独立運動に協力をしている者がある、こういう疑点を向こうは持っているのです。米中首脳会談の中でニクソン大統領が、この台湾帰属論を、台湾独立論をこれは否定をされた。あなたが何と言われたところで、ニクソンさんは台湾独立論を否定された。いままではどうも、アメリカとイギリスはいわゆるサンフランシスコ平和条約の中でいわゆる台湾帰属未定論をとっていたのでありまするけれども、その点をアメリカが前進的に認めたということで北京政府は非常に満足をしておるのでありまするが、どうもこの独立論というのは、なるほどわれわれのところへおかしな資料をたくさん送ってくる。たくさん送ってくる。それを見てみまするというと、外務省の中にやはり独立論者がいるのです。台湾帰属未定論者もおるのです。あるいは、どうもこれは日本の放棄によって台湾は無主の先占となったのだ、放棄の時点から台湾に施政を行なっている台湾政府が先占の原則に基づいて領有権をとったのであるから、先占独立論なんというのが日本の中にあるのです。台湾はいずれの国にも所属しないという説があったり、あるいは日本の放棄により台湾は平和条約の当事者になった国際連合の連合国の中の共同領有権に帰したのであるという説が出てきたり、あるいは台湾は一定の領土と一定の人民を有し、国際条約を尊重する意思も能力もあり、完全独立国家としての資格を持っているのである、蒋介石政権が独立宣言をすれば、そのまま完全独立国家になり得るのだ、こういう独立論も出ている。こういうのがいずれの説も全部政府の周辺や与党の中にあって、そして台湾を中国へ返す、中国に所属するということを妨害しようという意見がだんだんひんぱんにでき上がっている。やっている諸君に聞くというと、みんな台湾が反撃するというような論があっているころにはそれはなくなったのでありますけれども、台湾の本国反攻論なんというものがなくなってくると、いろいろなやつが出てきたわけであります。どうも佐藤総理大臣も年頭の所感の中に、歴史的経過はそのまま認めざるを得ないなどとおっしゃって、はてな、これはどっちのほうを向いていらっしゃるのだろうという、われわれの解釈も苦しんだこともありましたけれども、幸いながらいま明確にひとつ中華人民共和国の帰属を基本原則としてお認めになったのでありますから、これは私はありがたくちょうだいいたしまするけれども、中華人民共和国もこの問題については非常に厳格であります。厳格です。この問題について日本の政府がぴかっとした姿勢を示さなければ、外交交渉に臨むわけにいかない。一九四三年十一月二十七日のカイロ宣言によって台湾、澎湖島の中国帰属は明らかになり、ポツダム宣言がカイロ宣言の条項、これを履行することを決定した。この二つの宣言による降伏文書に日本が調印することによって、台湾放棄、中国帰属は具体的にこれは実施されたのだ、この事実を、いまさら小手先のような理屈を言うことはひきょう未練だというのが中国のものの考え方でございまするから、どうかこの点をひとつ、この姿勢をくずさないで、総理は何かものを言いたいような顔をされておりますけれども、この姿勢はおくずしにならないで、きちっとひとつ持続していただきたいと思うのであります。
○佐藤内閣総理大臣 別に小林君と変わった意見を述べるわけじゃございませんが、われわれは、もう中国は一つだ、そういう立場に立っております。このことは蒋総統閣下も、また毛主席閣下も同じことを言っている。したがって、中国は一つだ、その立場に立ってやはりものごとを考えていくべきだ、かように思います。 さらにまた、台湾、澎湖諸島は、サンフランシスコ条約の際これを放棄した地域でございます。したがって、放棄したのでその帰属は明らかでないとしばしば言われますけれども、経過的に見れば、ただいま御指摘になったようにカイロ宣言、ポツダム宣言、これを踏まえて放棄したのでありますから、その行く先はおのずからきまるのではないかと思います。ことに大事なことは、この地域を占拠しておる、施政権を持っておる国民政府と日本はさきに日華平和条約を結んだ、そういういきさつもありますので、これは私は別にただいま帰属について疑問を持つような余地はない、かように思っておりますので、その辺は誤解のないようにお願いいたします。
○小林(進)委員 いま日華平和条約を仰せになりましたから私も言いますけれども、この問題は、これは日華平和条約の第四条の中で、国府も日本政府もともに台湾は中国に帰属することを明らかにしておる。いいですか、日華平和条約の第四条で、日中双方は下関条約の無効を確認し合っていますね。下関条約というのは明治二十七、八年の日清戦争だ。あのときの条約に基づいて中国の領土たる台湾を日本は取ったのだ。その台湾を取ったいわゆる下関条約は無効にするということを、日華平和条約の第四条できめている。無効にすれば、下関条約で取った台湾はおのずから中国本土に返るじゃないですか。中国本土に台湾は返った。だから日華平和条約で台湾を中国に返したのですよ。下関条約は無効だといって返した。その中国本土を中華人民共和国政府がいま事実上支配しているのですから、中華人民共和国の政府に台湾は返った。明確です。日華条約でも明確です。こういうことでありまするから、外務大臣、もう発言は要りません。 私はもう時間もありませんから、その次の第四の、これは日華平和条約の廃棄の問題について……。
○福田国務大臣 いま小林さんのお話の中で、わが外務省において台湾独立運動者がおる、そういうようなお話であり、私、非常に心外に思うのです、さような者はおりませんですから。わが外務省は一切この独立運動には参画してはならない、これはかたくそういう指示をしております。また、たまには独立運動論を私どものところに言ってくる人があります。これに対しましてはかたくこれを戒めておる。このことは、日中国交打開の上に非常に支障を生ずるという小林さんの言動でありますので、私、これははっきりひとつそういうことを申し上げさせていただきたい、かように存じます。
○小林(進)委員 私も外務大臣、特に政府に、台湾の帰属を明確にするとともに、そういう独立運動などというものの疑いは日本において好ましくないということを実は宣言していただきたかったのでありますけれども、いま外務大臣がそれを宣言をしていただきまして、明らかにしていただきまして、これは私も非常にけっこうと思います。ちょうだいをいたしますから、どうか将来ともそういう疑わしい独立運動等は、政府の側においてきちっとかたく禁ずるという厳正な姿勢をひとつとっていただきたいと思います。 次の日華平和条約の廃棄の問題であります。これは、私は日中国交正常化の問題における一番困難なところであると思いまするけれども、やはりこれを避けていくことができません。これはできない。この日華平和条約は不法であり無効であって、廃棄しなければならないという、この廃棄論は、これは中国側が、アメリカと日本との対中国政策の中で違う一番根本です。対中国政策は、アメリカに対しては、外務大臣も言われるように、原則論においてもいわゆる米台軍事条約について、あの共同宣言はそれほどやかましく原則論は表に出さなかった。しかし、日本に対しては、この日華平和条約を廃棄するというのは、これは日本に対する厳格な中国側の姿勢です。姿勢だ。それに対してどうも佐藤内閣のみならず政府の周辺では、みな日華平和条約はそれは虚構条約であり、あるいは擬制条約であるかもしれぬけれども、二十年以上も現に存続をしてきたではないか。事実上、歴史上存在してきたではないか、これはさっきも総理大臣がおっしゃった。存在したじゃないか。それから、しかもその成立は日本の国会において多数決できまったのじゃないか。多数決で日本できまったのだからこれは有効だ、こういう主張をなしている。これは与党自民党に多いのでありますが、これは私はたいへんな間違いだと思うのです。いやしくも国際間の条約を、一国が相手の承認もしないものを自分たちがかってにきめて、国会の中で多数決できまったからこれはもう有効なんだ、合法なんだ、こんなことを言うのは、これは力ずくで他国の領土をふんだくるのと同じです。何も内容において変わりはない。相手国たる中華人民共和国は断じてこれを認めないという。それを日本は、国会の中で多数できめたからこれは有効なんだ——これを国内法から見た条約の合法有効性論というのだ。これほどむちゃな議論はない。それから日台条約廃棄違憲論、そんなことを廃棄するなんていうのは日本の国会できまったのだから憲法違反だ、こういうようなことを自民党の中で言っている人がいる。こういうむちゃな議論に立脚している限りは、日華平和条約の正常化は困難です。ましてやその問題が起きてきて、日本が北京政府を正常、正統な政府と認めれば日台条約は当然放棄されなければならずというしごく当然な結論を出した藤山愛一郎君、わが議運の会長を処分するなどという、こういうことをやっていたのでは、中国側は日本のほんとうの外交姿勢の正しさなんというものを承認いたしません。そこら辺をひとつ大きく反省をしていかなければならぬ。 そこで繰り返して申し上げまするが、日台条約は、一九四九年十月一日、中華人民共和国が成立して蒋政権が台湾に逃げているんだ。人民からも国民からも領土からも追われて台湾へ逃亡して二年続いた。二年半、三年近くたった後に、アメリカの変身です。アメリカの圧力です。それによってこういう擬制条約はできた。なぜアメリカは変身したかといえば、私は申し上げまするが、一九五〇年ですよ。一九五〇年一月まで、当時のトルーマン大統領はこういうことを言っている。台湾問題は中国の内政問題であるから関与しない、こう言っている。このトルーマン大統領のことばを受けてアメリカの国務省も、一九五〇年の二月九日、台湾は中国の一省に編入された、米国政府は、これらの処置はカイロ、ポツダム宣言に沿っていることであるので疑問を持つことはない、連合国は過去四年以来台湾を中国の一部とみなしてきた、ちゃんとこう言っているのであります。これほど明確にアメリカの国務省は言っている。それが一九六二年朝鮮戦争が勃発するというと、みんなアメリカは変わってしまって、そしてイーデン英国当時の首相をだましたり、日本の吉田さんをつかまえてダレス書簡を書かせたり、そういうような擬制的経過を経て、日台条約というものを強制的につくり上げてしまったのでありまするから、この経過から見ても、いかに日台条約というものが道義に反しているか、国民の常識に反しているかを、私は政府も率直にお認めにならなければならないと思うのであります。 そこで佐藤首相にお伺いいたすのでありまするけれども、佐藤首相は年頭の所信に、中国と国交を開くにしても、台湾と日本との間に条約があることと中華民国があることの二つは無視できない要素だ、日華条約についても国交正常化への話し合いの中で解決すべきだと考えておる、こうおっしゃった。このまま見れば前向きなんですよ。ところがサンクレメンテに行って帰ってこられるとこれが後退してしまって、本会議の質問に答えて、中華人民共和国のほうで日華条約を廃棄するのが前提だと言っていることを聞いているが、これを廃棄する考えはないとお答えになっているのであります。これは私はたいへんな答弁だと思うのでございまするが、この点について明確に総理の所信を承っておきたいと思うのであります。
○佐藤内閣総理大臣 先ほど来いろいろお話をしてきたので、小林君にも御了承がいただけたと思ったが、またそこで逆になりました。私が申し上げたいのは、やはりこの日華平和条約を結んだその当時の状況を思い起こして、そうして現状においていかに処理するか、こういうことでございます。ただいまの、現状においての処理を急がれて、今度は日華平和条約を結んだ当時のことをお忘れのようでございますから、やはりそれは思い起こしていただきたいのです。日華平和条約を締結した際は、私が申し上げるまでもなく、中華人民共和国はございましたが、これを承認している国は国際的に二十六カ国です。小さくなったとはいっても、国民政府を承認している国は四十七カ国であります。しかも国連においては国府が、私が申し上げるまでもなく、安保委員会の常任理事国であった。同時にまた、中華人民共和国は侵略国家として非難されておる、そういう状況であったことをやはり思い起こしていただきたいのです。したがって、この日華平和条約自身、これを私どもは当時の状況においては有効に成立しておる、かように考えております。しかし、北京政府がこれを無効だ、不法なものだ、かようにいっていることも、これも承知でございます。それを私は全然無視するわけではありません、さように申しております。しかし、ただいまの経過、歴史的な経過をたどってみて、そうして私どもは、ただいま日中間には戦争状態はもうなくなっている、かように理解しておりますが、ただいまのように全然条約のない状態で、また日華平和条約を無効にして、まさか、戦争状態が続いているとでもおっしゃるのでありましょうか、さようなことは私は北京政府もおっしゃろうとは思いません。そういうことを考えると、私どもが国交の正常化の過程においてこの問題の取り扱い方をきめる、かように申すことは、おわかりがいくのではないだろうか、かように私は思います。
○小林(進)委員 これは日本と中国との国交正常化をおかす一番大きなネックです。これは、総理はどうお考えになろうとも、政府としては、この問題に関する限りは考え方が非常に甘いと私は見ているのです。非常に甘い。しかし、いまの、総理大臣がなるほど日華平和条約の成立するときの国際連合における台湾の地位その他のことをお話しになりました。また、それは、確かに、国際連合の中にアメリカの圧力が当時あって、多数決をするようなことも事実でありましょうけれども、その説をなす中に、いま一方ではこういう言い分もあるのですから。 台湾政府は中国大陸の支配権を当時はもう失ったのだ、人民の支持を失っていたのだ。日本の旧の植民地たる台湾に亡命してきた政権である。人民の支配を失ったあとであるからこれは無権利代理だ。中国政府から見れば無権利なんだ。中国から見れば、中国の人民からは無権利代理、権利のない代理である。そういうものと結んだ日台条約はもちろん不法であり、筋の通らぬ条約であるという説です。 ところが、この説をいまはみんなもう多数はとっているのだ。多数はとっているのです。だから、これが私は今日日本政府がとらなければならない正当な理論なんです。けれども、いまも言うように、だからといって二十二年も前にさかのぼって全部これが無効であったというようなことが、実際上これは国際上に通用するかどうか。現実に台湾も存在している。日本の企業もこれは二億からの投資もしているのだ。金も出しているのですから。しかし、中国は、この台湾におけるもろもろの条項を継承するかどうかわかりませんぞ。これは、そういう問題がこれからの外交交渉の中に生まれてくる問題ではありまするけれども、私の言うのは、そういう行政的な処置のことを言っているのじゃない。基本的な姿勢のことを言っているのです。基本的な態度としては、やはり、原点に返って、そういう大陸の人民や大衆から追われて旧の日本の植民地へ亡命したものをとらえて、これが正統政府でございますなどというような理屈にこだわっている限りは、日中の正常化はできないということを私は繰り返して申し上げる。 そこで、政府に必要なのは、もはや政府とわれわれと理屈を言っている段階じゃないのですよ、総理大臣。私は、ニクソンさんだって実に勇気があったと思う。ああやって、ニクソンさんというのは、第一の反共論者であり、あれはタカ派なんだから。あの語録をつかまえてみれば、中国罵倒論が一番多く出てくると思う。しかし、国際情勢が変わったといえば、その中国へまっ先になって飛んでいって友好の手を差し伸べるのだから。そのために私はたいへんな決意と勇気が要ったと思う。私は、総理大臣がニクソンさんを買われるなら、その勇気と決断力を買わるべきだと思う。中国だってそのとおりです。アメリカ帝国主義は人類の敵だといって、至るところに全部これはスローガンを掲げて、八億の人民にアメリカ帝国主義を人類の敵として教育した。その中国が、いわゆる矛盾論、重慶における交渉から得た毛沢東の矛盾論というものを今度は大衆に流して、話し合いも戦いの一つだ、だからアメリカを迎えて平和のための戦いの話し合いをするのだということをやって、そしてああやって礼節に満ちた、礼儀にかなった、ニクソンさんを迎えた。あの中国の首脳にも私はたいへんな勇気と決断力が要ったと思う。日本の政府にないのはそれですよ。それは台湾もうまくやろう、中国もうまくやろう、北京との正統条約も結ぼうが台湾の日華条約もそのままにしておこう、そんなうまい話が世の中にできるものではございません。いまや世界の大多数の国が中華人民共和国を唯一の合法政府として認めた、台湾を国連から追放した。日台条約の虚構は洗い出されたんだ。その基礎は全くもうぬぐい去られてしまったのであります。残るのは日本政府の決断と実行力だけであります。今日の段階は、中国も台湾もなどというような選択はあり得ない時期であります。あり得ないのです。われわれの前にあるのは、台湾との間もいままでどおりの関係を維持し続けるか、それとも中華人民共和国との国交を回復するかという二者択一しかないのです。二者択一の段階であります。日華条約を残せば中国との国交はあり得ないということ、これはどうか厳粛に考えていただきたい。交渉の過程に出てくる問題ではありません。交渉に入る前提条件です。このことをひとつ厳格に私は政府に考えていただきたい。この決断と勇気がありますか。勇気と決断があったら、どうかここでひとつ意思の表明をしていただきたいと思います。ありますか。
○福田国務大臣 日華平和条約の問題につきまして、中国側が廃棄を要請をする、その要請をする理由、いま小林さんがお話しをされたようなものであろうということは、私はよく承知をしておるのです。しかし、いまわが国は国民政府との間に日華平和条約を結んでおる、こういう状態です。この日華平和条約は、先ほどからお話もあなたからもありましたが、これはもう平穏公正に締結されたものである、こういうものです。私どもは、この問題につきましては、もうこれから、国連加盟問題という問題が出てきた、こういう現実を踏んまえますと、問題になり得る問題であるということはよく承知しております。さらばこそ私どもはかねがね申し上げておる。つまりこれは、政府間接触を早く始めましょうよ、日中間の話し合いにおいて、その過程においてこの問題は解決されるんだ、こういうふうに申し上げておるのです。その考え方でやっていきたい、かように存じます。
○佐藤内閣総理大臣 外務大臣の話で十分おわかりいただけたと思います。まだ北京と交渉が始まっておらない。先ほど来の小林君のお話では、交渉を始める前提条件だ、基礎条件だ、こういうような言い方をしておられますけれども、私は先ほど来申し上げるのは、いままで日本が歩んできた道、それにはおのずから築き上げたものがあるんだ、それが一朝一夕にしてこわれるわけのものではないのだ。私どもは、善隣友好、そういう基本的な考え方でものごとを進めております。しかし、中国に関する限り、中国は一つだ、こういう観点に立って問題を解決しようとしておる。その心組みだけはひとつ理解していただきたいと思います。したがって、ただいまの問題も、北京に参りまして、そうして中華人民共和国と交渉をして、そして問題が幾つもございますが、それらの問題はその過程において処理すべきだ、かように思っておるのでございまして、私はそういう機会が一日も早く来ることを心から望んでおるということをつけ加えて申し上げておきます。
○小林(進)委員 総理、外務大臣のお話を聞きまして、まだ若干私はふに落ちないところがあるのでございますが、時間もありませんから申し上げませんが、ただ、中国並びにわれわれ参りました代表、これは両方で確認し合った話でありまするけれども、中華人民共和国は中国を代表する唯一の正統政府だ、これが一つ。台湾は中国の不可分の領土だ、二つ。だから日台条約は無効であり、廃棄されなければならぬ、三つ。この三つは、三つにして一つなんだ。日本の政府が、いわゆる中国を代表するものは北京政府だ、その中国が一つだということをお認めになっても、日華平和条約を廃棄するということをお認めにならなければ、それは一つだということを認めたことにならないのだというのが、これが厳格なものの考え方であるし、私どももまた、それが論理的には正しいと考えております。その点はひとつ政府のほうで、いま一度も二度も考慮していただきたい。しかし、いままで積み重ねてきたものを、だからといって全部無に帰すというのじゃない。それは外交交渉ですから、交渉の過程ですから、基本の姿勢としてわれわれは認識しなければならない、考えておかなければならぬ問題は、日華条約に対するこの厳格な姿勢でなければならない。政府に言わせれば、廃棄するまでの間の日華条約の有効期間というものは、二十二年でも三年でも認めよということでありましょうけれども、中国の側は、日華条約というものは、一瞬一分といえどもその存在の有効性を認めようという気持ちはございません。そういう間隔をどこで縮めるかということを、これは真剣に考えていただかなければなりません。 時間もありませんから私は結論を急ぎますが、次に、総理のおことばの中に国際信義ということばが出てこなかったのでありまするけれども、一体、中華人民共和国に対する正式承認は、国民政府に対する背信であり国際信義に反する、こういうような意見がまだ与党の中にあるようでありまするけれども、私はこの問題についても、ちょっと所信を述べて政府の考えを承っておきたいと思うのであります。 蒋介石総統の布告で——戦後です。終戦です。その布告で居留民は安全に引き揚げた。そういう点においては、私は恩義を感じていいと思います。恩義はあります。しかしこれは、やはり当時の中国の国内の事情の中では、国共の戦争のさなかですから、日本軍の武装解除、武器の引き渡し、日本人の引き揚げというものを有利に行なうことは、中国にも必要だった。必要だからやはり布告を出して早く日本へ引き揚げさした。それに対してわれわれ日本も、戦後二十五年でありまするか、台湾政府に対しては、あるいは蒋介石総統に対しては多大の援助をいたしてきたのでありますから、国際的の信義はこれは果たしたと言っても私は過言ではないと思う。いまわれわれが果たさなければならぬのは、中華人民と中国大陸に対して国際信義を真剣に考えるときではないか、私はこういうことを言いたいのでございまして、日本としては、国民政府に対して、大陸反攻などこれは断念をして——これは総理大臣、あなたに申し上げたいのであります。あなたに申し上げたい。いまあなたの態度としては、国民政府に対して、大陸反攻などというようなことを断念しなさい、米国の武力に依存することをやめなさい、一つの中国の理念の具現だ。総理も中国は一つだと言うのでありますから、その意見の具現と極東の安全のために、中華人民共和国政府と話し合いをして内政問題の解決に乗り出すべきことを調整、勧告をすべきときだと私は思っておる。これが日本のいまの政府の立場ではないか。これが中国統一の早道でありまするし、私は蒋介石総統もそれくらいのことを考えられているのじゃないかとさえ思っています。また、そういう勧告をすることが、真の蒋介石総統の信義に報い、友情に報いるゆえんであると私は思っています。彼を大義に生かしめる、晩年を全うせしめるべき一番早道ではないか。これが日本のいまの、佐藤さん、総理大臣の、あなたの八年の記録をおさめて政界を去っていかれるときの、なすべき一番大きな残された仕事ではないかと私は思う。政界じゃありません。総理大臣の地位であります。政界はまあ二十年も三十年もやってください、これは。 総理大臣、ちょっと時間がありませんからかけ足で申し上げますけれども、日支が戦争をしているさなか、昭和十五年のときに、当時の内閣の五相会議というもので決定されて、当時の重慶の国民政府と全面の平和交渉を行なったことがある。昭和十五年ですよ。香港から連絡をいたしまして、正式交渉もついたのです。ついたときに、南京には例のかいらい政権の汪兆銘政府というものがあった。その汪兆銘政府にも、日本の政府は全部段取りをつけた、重慶との全面平和の話し合いをするぜという。そのときに、その汪兆銘政権に食い込んでいた当時の日本の軍部が、そんなことは汪兆銘政権に対する国際信義に反する。これは国際信義は、日本の政府が一番使えることばなんです。国際信義に反するから重慶との話はやめなさい。汪兆銘氏は了承しているのだけれども、軍部が横やりを入れて、ついにそれをやらせなかった。そしてこのどろ沼の戦争に突入した。現在の重慶政府がいまの北京政府です。南京の汪兆銘に当たるのが台湾の蒋介石政権です。国際信義という名のもとに横やりを入れている当時の軍部が佐藤総理大臣の周辺にいる。これが一握りの反動派です。こういうものが国際信義に名をかりてやらせない。もう国際信義で国を誤ったんですから、二度とそういう失敗を繰り返さないように、どうぞひとつ早く中華人民共和国に対する正しい姿勢を持っていただきたいということを私はお願いしたいのでありまするが、どうでございましょう。具体的にこの問題は。
○佐藤内閣総理大臣 私は、ただいまの小林君のせっかくのおすすめではございますが、二つの政府間の問題は、これは中国において処理さるべき問題で、われわれ第三国がとやかく言うことではない、かように思っております。もしもそういうことにタッチするというようなことになると、それこそ最も忌まわしい内政干渉、そういうことになるのではないだろうか、かように思いますから、せっかくのおすすめではございますが、これは私はとらないところであります。 ただ私は、申し上げるまでもなく、両国、まあ両政府間において必ず話し合いはつくものだ、かように期待しております。ことに両政府とも、中国は一つだ、かように申しておるのですから、これはもうそれで話し合いはつかないはずはない。そういう意味で、何か日本にあっせんしろというなら、これはしてもよろしい。しかしながら、ただいま言われるように、こちらから出かけてこういうことを交渉しろ、これはひとつ私は慎重であるべきだ、かように思いますので、せっかくのおすすめですが、これはお断わりいたしておきます。
○小林(進)委員 まだ二十分ばかりございまするので特に申し上げたいと思うのでございますが、日本の外交の転換について、これは私は長く考えていたことでございますけれども、外務大臣は、きのうあたりの御答弁の中にも、国際の多極化と言われて、多極化に備えてあらゆる国と仲よくする外交をやらなきゃならぬ、ソ連に行ってモンゴルともやったじゃないか、あるいはバングラデシュもやったじゃないかというふうないろいろなお話もございましたが、私は外交というものは哲学だと思っておるのです。思想だと思っておる。良識であり道徳であると思っておる。 それで、明治以来のわが日本の外交の姿勢を見てみまするというと、近世、わが日本の外交の基本方針は遠交近攻の外交姿勢でありまして、内においては富国強兵だ。富国強兵、兵隊を強めて国を富ませる。外に向かっては、遠くと交わって近くを攻める近攻。いわゆる西欧先進国に追いついて、そして近くの国家を侵略しながら、植民地をつくったり、租借地をつくったり、共同租界をつくったりする。そういう外交が日本のいわゆる政府の外交方針であった。私はいまもこれを繰り返しているんじゃないかと思う。時間がありませんからあれですが、近世百年、日清戦争もやった、日露戦争もやった、第一次大戦もやった、第二次大戦もやった。どこで一体戦争をやった。中国の大陸じゃありませんか。どこから領土をとった。中国じゃありませんか。どこに植民地を設けた。中国じゃありませんか。そうして、われわれはイギリスと日英同盟を結び、あるいはフランスやイタリアや、あるいはソビエトロシア等のあとを継いで、何しろ早くお隣の国に植民地をつくって領土をとらなくちゃならぬ、西欧諸国に負けちゃいけない、こういう略奪戦争、侵略戦争が近世百年のわが日本の歴史だと私は思っている。言い過ぎでありましょうか。私はいまこそ、この新憲法下におけるアジアの平和をほんとうに祈念するというならば、この外交姿勢を哲学的、思想的にやめていかなくちゃならぬじゃないかと思う。今度裏返しにして、同じく遠交近攻でも、せめて、遠くを攻めろとは言わぬけれども、近くと交わる近交です。近くと交わるんです。近隣と交わるんです。八億の国民と交わるんです。百年の侵略を心から反省をして、お隣の中国に一億の日本の国民とがほんとうに平和のうちに手を結ぶという、近くと交わるという、こういう哲学にのっとった外交姿勢をいまこそ日本が樹立するときじゃないか、私はこう考えるのでありますけれども、どうですか。日本の中国政策を反省するならば、ひるがえって百年の近世の外交姿勢をもわれわれはここに思い切って反省をして、これを正しい方向に持っていくときじゃないかと思うのでありますけれども……。
○福田国務大臣 ただいまの小林さんの御意見、これは全く私はそのまま同感でございます。遠交近攻、こういうことばを引かれましたが、これは中国のことばなんです。わが国の外交方針じゃございません。わが国はどこまでも善隣友好でございますから、その辺はとくとひとつ御承知のほどをお願い申し上げます。
○小林(進)委員 時間が参りましたので、外交問題だけで終始いたしまして、社会保障、医療の問題等に及び得なかったのでございますけれども、まだ若干十五分ばかりありますので……。 外交問題につきましては、私は問題のポイントを大きく四つに分けてお伺いいたしたわけでございますけれども、前向きな御答弁をいただいた点は感謝にたえません。なおしかし、どうしてもまだふに落ちない点が一、二あるようでございますけれども、これは私は決して思いつきで言ったのじゃございません。ほんとうに中国との国交を回復する基本的な姿勢でございますので、政府のほうでもさらに御考慮をいただきたいと思います。 なお、私の質問の過程にはだいぶ乱暴なことばもあったようでございますけれども、これは全部愛国の熱情のほとばしるところでございまして、その点はひとつひらに御了承いただきたいと思うのでございます。 それでは、時間も参りましたので、これで失礼させていただきます。
○瀬戸山委員長 これにて小林君の質疑は終了いたしました。 午前の会議はこの程度にとどめ、午後は三時から再開することとし、この際、暫時休憩いたします。 午後零時七分休憩 ————◇————— 午後三時十六分開議
○瀬戸山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 総括質疑を続行いたします。大久保直彦君。
○大久保(直)委員 私は当面、国際問題として大きくクローズアップされております日中問題並びに日朝問題、そして日ソ、最後に繊維問題について、総理並びに政府の見解をお伺いしたいと思っております。 初めに、昨日の予算委員会以来、私はまあ白昼夢を見ると申しますか、非常に奇妙な光景に接して戸惑っておるわけでございますけれども、私ども客観的にながめておりまして、外交問題については総理はくろうとであられる。しかし総理から比べればまだ外務大臣、就任以来日の浅い現外務大臣は、まだしろうとであられるのではないか。その総理の発言を、まあ口は悪いようでございますが、総理から比べればしろうとである外務大臣がチェックをなさるようなこの一昨日以来の質疑応答。また権威から考えましても、外務大臣の発言を総理がチェックするならこれは話はわかります。しかし総理の発言を外務大臣が、まあ足を引っぱるといいますか、何か名ざしもされないのに腰を浮かして答弁に立とうとなさっておられる。こういった光景を拝見しておりまして、実はいま非常に戸惑っておるわけでございますが、もとより総理のお考えとしては、総理と外務大臣の間に見解の相違はあるわけはない。私ども、しかし昨日の予算委員会並びに本日の本会議のやりとりを伺っておりますと、何となくそこに考え方の相違があるような気がいたしております。抽象論になってはきわめて遺憾でありますので、私、昨日の総理の御答弁、ここに記録全文持っておりますので、この内容についてほんとうに総理と外務大臣のお考えに差はないものか、具体的に福田外務大臣にお尋ねをしてまいりたい、このように思います。 わが党の矢野書記長の質問に対しまして、まず平和五原則は受け入れる姿勢がある、この点につきましては外務大臣も全く意見は同じであると思いますので、これは省きます。問題は、矢野委員が四点に分けてお尋ねをした件でございますが、第一に、中国は一つであるという認識を持っておられるかどうか、第二には、台湾は中国の領土であるか、第三は、台湾は中華人民共和国に領土権があるかどうか、第四に、中国大陸と台湾は不可分の領土であるという認識を持っておられるかどうか、この四つの項目別の質問に対しまして答えられました総理の御答弁、これを、外務大臣の見解を伺ってまいりたいと思います。 外務大臣、初めの中国は一つであるという認識を持っておられるかという質問に対しては、総理からは中国は一つであると、こういう明確な御答弁がございました。この点については確認するまでもなくよろしゅうございますね。
○福田国務大臣 中国は一つであると考えております。
○大久保(直)委員 第二に、台湾は中国の領土であるか、この点についても外務大臣も当然中国のものだと御答弁になると思いますが、念のために伺っておきます。
○福田国務大臣 私は外務大臣でありますから、少し詳しく申し上げますが……
○大久保(直)委員 いや、けっこうです、確認だけですから、
○福田国務大臣 詳しく申し上げないと……
○大久保(直)委員 じゃ、こっちも詳しく申し上げます。 詳しく御答弁があるということで、詳しくこちらも伺いますが、総理の御答弁は「台湾はどうだ、こういうことでありますが、サンフランシスコ条約で台湾における領土権、一切の権利、権原を放棄した、そういう立場で私どもはその帰属についてとやかく言う筋はないはずであります。」こういう前置きがございます。「しかしながらこの台湾を占拠している国民政府と講和条約を結んだ、さように考えると、台湾の帰属はもうきまっておるのじゃないか。そこを占拠しておる国民政府は中国は一つだとこう言っている、かように申すと、これは論理的に申しましても、台湾はやはり中国の一部だ、こういうことになるのではないかと、私はかように理解しております。われわれは、権利を放棄した、その状態においてその当時の進め方、国際情勢の進め方から見ましての結論は、はっきり中国に放棄したとは申しませんけれども、しかしこれは当然中国のものだと、かように私は考えております。」こういう御答弁でございましたが、ここまでの段階で、もし詳しく御答弁いただければお願いをしたいと思います。ここまでの段階で。
○福田国務大臣 私ども日本国は、平和条約において台湾、澎湖島を放棄したわけであります。したがいまして総理が言われるとおり、これに対してとやかく言うべき筋合いではございません。しかしながらカイロ宣言がある。またポツダム宣言があります。また中国は、台湾、澎湖島を含んで一つの国としてずっとやってきたいきさつもある。そういうことを顧みますると、台湾は、また澎湖島は、これは中国の一つを形成するものである、かように考えます。
○大久保(直)委員 総理の御答弁で、当然中国のものだということについては全く御異論はないわけですね、外務大臣。
○福田国務大臣 ただいま私が申し上げたような趣旨におきまして、台湾は中国の一部であるということについては、私もそう考えます。
○大久保(直)委員 問題は、ここからが問題なんですが、第三の、台湾は中華人民共和国に領土権があるかどうか、こういう質問に対しまして、総理は「ただいま国連において中華人民共和国が中国を代表する政権といわれております。さような立場に立って台湾の帰属を考える場合に、これまた文句の余地はない。中華人民共和国そのものだと、かように考えてしかるべきではないか、かように思っております。」こういう御答弁でございましたが、外務大臣はよろしゅうございますか。
○福田国務大臣 総理大臣は非常に大きな政治家として常識的な表現を用いられました。しかし、私外務大臣となりますと、もう少し詳しく申し上げなければならぬわけでございますが、領土というものはいやしくも政府に帰属するという考え方、これは私はないと思うのです。やはりどこどこの国に所属する領土である、こういうことなんです。そういう点でどうもまぎらわしいことがありますが、私どもは中国は一つであると、こういうふうに申し上げております。それから台湾は中国の一部である、こういうふうに申し上げております。それで御了解がいくんじゃあるまいか、さように考えます。
○大久保(直)委員 外務大臣は私は外務大臣だということを強調されておりますけれども、戦後長い間自民党政権並びに七年有半の佐藤総理がとってまいりました対中国政策、またこの国会における質疑並びに答弁、そういったかつての経緯を総理は踏んまえての過日の答弁であったと私は理解をいたしております。突如としてこういった問題が切り紋的に答弁されたのではない、いままでの経緯を踏んで、その上での総理の答弁であるがゆえに、私どもは私どもなりの評価をいたしておるわけであります。それを外務大臣が、総理はあまりこまかいことはおっしゃらないとか、また政治家云々というようなことで曲げられる問題では私はないと思っております。 続けて第四点についてお伺いいたしますが、中国大陸と台湾は不可分の領土であるという認識を持っておるか、こういう質問に対しまして、「またこのいわゆる不可分のものと、このことは私は当然の主張であろうと思いますし、また第三国日本が」云々とございますが、「四つの問題については、私は私なりに明快に割り切ったつもりでございます。」こういう総理の御答弁がございました。この、台湾は中国の領土であり、中国とは中華人民共和国そのものだと答弁され、そしていわゆる不可分のものも当然の主張である、こういう答弁でございますけれども、ここに及んで外務大臣の見解をお願いしたいと思います。
○福田国務大臣 お尋ねが、中華人民共和国ということが領土問題に介入をしてくる、その辺が非常にまぎらわしいのです。領土は一体だれのものだというと、その時々を代表する政府のものじゃない。その国のものなんです。国に帰属する、そういう性格のものなんです。そういうことからいいますると、これは中国は一つである、台湾は中国の一部である、そうして台湾は中国大陸とは不可分のものである、こういうことははっきり申し上げることができると思います。
○大久保(直)委員 総理、いまのやりとりをお聞きになっておられて、外務大臣が総理の答弁に何かいちゃもんをつけておられるような感じでございますけれども、私は昨日の委員会を、ここに総理との答弁をなまで聞いておりましたし、総理の御答弁は全く筋の通った答弁である、このように理解をし、またたいへん高く評価をいたしたわけでございますが、この期に及びまして、何か昨日の答弁について外務大臣からいろいろ御発言があった後に御訂正なさるようなお気持ちはあるのですか。昨日の答弁に関して。
○佐藤内閣総理大臣 いま外務大臣がお答えしたことと私がお答えしたこととどうも差がないように私は感じております。何かそのことばの、表現のしかたが違っておるかと、さように思いますけれども、骨子、大体の趣旨は同じなんじゃないか、かように私は理解します。
○大久保(直)委員 そうしますと、ただいま外務大臣の御答弁は、いま総理の発言もありましたように、昨日の総理の答弁と全く差はなく同一のものである、このように私どもは理解してよろしゅうございますか、外務大臣。
○福田国務大臣 お尋ねが中華民国、国民政府とか、あるいは中華人民共和国とか、そういうその国の時々の政府を代表する名称が入ってくるものですからこんがらかるのですが、私ははっきり申し上げます。はっきり申し上げますが、中国は一つであります。また台湾は中国の一部である、したがって台湾は中国大陸と不可分のものである、この点ははっきり申し上げます。
○大久保(直)委員 ごちゃごちゃするということばでございますけれども、私は総理答弁をそのまま読んでいるのであって、私が質問をつくってお尋ねしているわけではないのです。ですからもう一度伺いますが、昨日の本予算委員会における総理答弁は、外務大臣のただいまの見解とあまり差はないということでございますので、ただいまの外務大臣の御答弁は総理の答弁と全く同一のものであると、こういうふうに受け取ってよろしゅうございますか。
○福田国務大臣 おそらく総理は、いろいろお答えをしております。おりますが、せんじ詰めますと、私が申し上げたことと同じことを申し上げておるんじゃないかと私はお聞きしております。
○大久保(直)委員 この問題につきましては、せんじ詰める詰めないの問題ではなくて、きわめて文章は明快でありますし、ただいまの外務大臣の御答弁と、昨日の総理の答弁が全く異質のものであるということは、私一人の感触ではないと思います。この総理答弁と外務大臣の答弁が全くひとしいという確証をいただくまでは、私はこの問題について質問する自信がありません。これ以上質問しても無意味です、これでは。
○瀬戸山委員長 政府の明確な答弁を求めます。総理大臣。
○佐藤内閣総理大臣 昨日の矢野君のお尋ねのうちに、「中華人民共和国政府の領土なんだというお答えがあったように理解してよろしゅうございますか、第三点につきましては。」「そのとおりです。これは中国のものだと、こういうことを申して、中国を代表するものは中華人民共和国だ、これはただいままでの国連においての明確なる結論が出ているのでございますから、ただいま中国の領土といえば中華人民共和国のものだと、かように考えるのは当然でございます。」まあ問題は、なんでしょうね、いま中華人民共和国の領土なんですかと、こういうことについてのただいまのようなあとの説明がないと、政府自身のものだとこれは観念的に成立しない、これが外務大臣の言い分であります。やはり国というもの、そこに問題がある、かように私は思いますが、どうもそういう意味の説明のように思います。(「総理が言うのが正しいんだ、確信持てよ」と呼ぶ者あり)だからいま答えたとおりでございます。
○瀬戸山委員長 委員長から政府に答弁を求めます。 中国は一つであり、台湾は中国の一部である、こういうふうに連日答えられております。中国を代表するものは、国連において、中華人民共和国であるということになっておる、これが政府の今日までの一貫した答弁であると思いますが、間違いありませんか。総理大臣のお答えを委員長として伺います。
○佐藤内閣総理大臣 そのとおりでございます。
○大久保(直)委員 私はことばじりをつかまえていま総理に迫っているのではないのです。といいますのは、長い経緯を踏んで、この問題についてはさんざん論議がなされてきた、そうした過去にのっとって、総理からこういう答弁がきわめて慎重に、しかも明快にあったので、評価をしているわけです。ですからその辺のことばの言い違え云々の問題で処理されることではないと思います。そうすると、いままでの第三点までは、いま総理がお認めになったとおり、中国は一つであり、台湾は中国のものであり、中国の政府は中華人民共和国政府である。第四点は、その台湾は中華人民共和国政府の不可分の領土であると、こういうことでございますが、外務大臣はそれでよろしゅうございますか。
○福田国務大臣 中国は一つである、それから第二は、台湾は中国の一部である、中華人民共和国は国連において認められた政府である、これはそのとおりであります。 〔「そのあと、したがって台湾は、そこが足りないのだよ」と呼び、その他発言する者あり〕
○大久保(直)委員 外務大臣の答弁を求めます。
○瀬戸山委員長 発言者以外の方は御静粛に願います。
○大久保(直)委員 外務大臣の答弁を求めます。 〔「したがってどうなんだ」と呼ぶ者あり〕
○福田国務大臣 したがいまして、私が先ほど申し上げたことは、これはきのう総理がいろいろ長く申し上げましたが、私の言ったような趣旨を表明したものと私は理解しておる、こういうことでございます。
○鈴切委員 議事進行について。佐藤総理はきのうかなり国際情勢にのっとって前向きの発言をされたということは、これは大きく評価をされるものと思っております。ところが外務大臣はこれを打ち消すような御答弁をされました。ちょうどたとえて言うならば、テレビのピントが合わなくて画像が食い違っているような状態では審議が先に進みません。この点について、委員長、政府の統一見解を出すようにお取り計らいを願いたいと思います。
○瀬戸山委員長 委員長からもう一ぺん政府にただしておきます。 中国は一つである、台湾は中国の一部である、これは領土の問題であります、しかも中国を代表する政府は中華人民共和国政府である、論理的にどうなりますか、お答えいただきたいと思います。
○福田国務大臣 ただいま委員長が御発言になりましたことは、私はそのとおりに理解しております。そこでわが国はいまそういうような認識に立ちまして、中国との間に政府間接触を始めたいと、こういうふうに考えておるのです。その政府間接触の過程において、台湾をめぐっていろいろな問題が起こるだろうと思う。それは、これは両国の間で必ず結論を得る問題である、こういうふうに私は申し上げておるわけなんです。そこで総理は、中華人民共和国は台湾は中華人民共和国の領土である、こういう主張をしておる、これには深い理解を示しておる、こういうふうに私は昨日の問答を聞き取っておるわけであります。それでいいんじゃありませんでしょうか。大体そういうことだと私は理解しております。
○大久保(直)委員 くどいようでありますけれども、第一、第二の問題はよろしいと思います。第三は、いわゆる国連において中華人民共和国が中国を代表する政権といわれておるというくだりから始まって、質問は、台湾は中華人民共和国に領土権があるかどうかという質問なんです。その質問に対して、「さような立場に立って台湾の帰属を考える場合に、これまた文句の余地はない。中華人民共和国そのものだと、かように考えてしかるべきではないか、かように思っております。」こういう答弁でありますので、いま問題にいたしておるわけです。私は総理の答弁はまことに筋が通っていると思っているわけなんですけれども、外務大臣はそれでよろしいかと念を押しているのです。簡単にお願いします。
○福田国務大臣 私は、繰り返して申し上げますが、外務大臣ですから、もう少し法的に申し上げるとこういう立場なんです。そこで、この領土というものは政府に所属するんじゃなくて、その国に所属するんだということを前提として申し上げておるのですが、しかし、いま質問が、中華人民共和国に台湾は所属するか、こういう詰めての質問であります。それに対しまして総理がいろいろお答えになっておりますが、私は、そういう主張を中華人民共和国がやっておる、そのことに対して総理は深い理解を示した、こういうふうに理解をいたしております。
○佐藤内閣総理大臣 私の発言が外務大臣の答弁と食い違っているかのように受け取られている向きがありますので、政府としては、できるだけすみやかに速記録を取り調べ、統一した見解を明らかにしたいと思います。御了承願います。
○大久保(直)委員 ただいま総理からの御発言がございましたので、私は、日中問題について、また、引き続く日朝問題につきましては日中問題ときわめて密接な関係にございますので、この両問題を保留さしていただきまして、日ソ、それから繊維問題について質問を続けさしていただきたいと思います。 第二回日ソ定期協議会の共同声明によりますと、日ソ平和条約締結に関する交渉を本年中の都合のよい時期に行なうということに合意いたしておりますが、平和条約締結ということは、言うまでもなく、領土問題の解決なしにはあり得ないと私は認識をいたしておりますが、そこで御確認申し上げますが、日ソ平和条約締結に関する交渉が行なわれるにつきまして、この領土問題に関して、日本及びソ連双方で領土問題で何かの変化が了承された、このように考えてよろしいでしょうか。
○福田国務大臣 日ソ領土問題につきましては、一九五六年の日ソ共同宣言におきまして、平和条約を引き続いて行ないましょうということが合意されております。この合意があるにかかわらず、この平和条約交渉というものは今日まで十六年間行なわれずにきたわけです。その間、政府におきましては、もう繰り返し繰り返し、国後、択捉、歯舞、色丹、この四つの島はわが国の固有の領土である、この固有の領土であるということを内容とした平和条約の締結をいたしましょうという呼びかけをしてきたわけなのでありますが、領土問題はもうすでにきまったことなんだ、議論の余地はない、こういうのでソ連側は突っぱね通して今日に至ってきたわけであります。ところが今年一月、グロムイコ外務大臣が定期協議のため来日いたしまして、私とこの問題の議論をいたしました。私は、グロムイコ外務大臣に対しまして、まあ、ソビエトというあの大きな国から見ますれば、歯舞、色丹、国後、択捉、この四つの島のごときはほんとにつめのあかほどのものではありませんかと、平和条約の締結の代償として考えるときに、言うに足らないものである、ぜひひとつこれは平和条約締結のためにふん切りをつけてもらいたいんだということを強く要請をいたしたわけであります。この際におけるソ連側の反応は、私は、従来と感触的に多少変化があったと、こういうふうに思う。つまり今回は、きまったことというふうには言わない。わがほうにはわがほうの立場があります、非常にむずかしいんですと言って、いわば頭をかかえておるというような表情である。そういう会談の中におきまして、とにかくこの平和条約交渉を年内に始めましょうと、こういうことになったのです。平和条約交渉といえば何だといえば、これは領土確定そのものでございますが、その領土問題が実質課題であるところの平和条約交渉にとにかく乗り出そうということに相なりましたことは、私は、これはずいぶん変わったなあという印象を持たざるを得なかった、こういうふうに思っておるのでありますが、これはどこがどういうふうに変わったというふうに申し上げるわけにはまいりませんけれども、ムード的ですね、心情的にはまあ変化があったかなあというような観察をいたしておるというのが実際のところでございます。
○大久保(直)委員 領土問題につきましては、日ソ両方の主張が全く対立しておるとただいま外務大臣の御答弁にありましたように、きわめて硬直した状態であったわけでございますが、これが平和条約締結の場につけるということは、具体的な変化はないにしろ、何かムード的にもやはり変化が起きつつある、このように了解をいたしたいと思います。 ただいま外務大臣の御答弁の中にありました日ソ共同宣言の第九項で、歯舞、色丹につきましては、「平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする。」という明確な条項がございます。私、ここで確認をいたしておきたいのですが、平和条約が締結されれば、当然引き渡されるわけでございますけれども、この「後に」ということばですが、これは考え方によってはたいへん幅広く解釈されるおそれのあることばだと思うのです。平和条約締結の後に——すぐあとなのか、かなりその辺の認識は多様にわたるのではないか、このように思いますが、政府としては、この「後に」ということはどのようないわゆる時間を考えておられるのか、それについての御見解を承りたいと思います。
○福田国務大臣 ちょっと政府委員のほうからお答え申し上げます。
○有田政府委員 お答え申し上げます。 共同宣言におきましては、「日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、両国間に正常な外交関係が回復された後、平和条約の締結に関する交渉を継続することに同意する。」そのあとに、「ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国の要望にこたえかつ日本国の利益を考慮して、歯舞群島及び色丹島を日本国に引渡すことに同意する。ただし、これらの諸島は、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする。」こう書かれてございます。したがいまして、今後、この共同宣言によりまして、平和条約を締結する際におきまして、現実に引き渡される時期あるいはそれの一連の手続というものはきめられることになるかと存じます。その場合に、ここに書かれております趣旨は、直ちにというふうにわれわれは理解しております。しかしながら、これは現実の島で、現在はソ連人が居住しておりますし、またいろいろ施設もございます。したがいまして、他の領土関係の処理の場合と同様に、若干のタイミングといろいろの打ち合わせが必要かと存じます。これら一切は、来たるべき平和条約において規定されると存じます。しかしながら、ここに書かれております趣旨は、できるだけ早くというふうにわれわれは了解しております。
○大久保(直)委員 ただいまの欧亜局長の御答弁どおりであれば非常によろしいのですけれども、ちょっと甘いのじゃないかと思うのです。「後に」ということは直ちにということであるという見解だけでよろしいのか、この辺をもう少し詰めていかなければならないというふうに、いまの段階では申し上げておくことにしておきたいと思います。 それから、外務大臣も御承知のように、日露講和条約のときに、樺太の割譲に際して、樺太を非武装化地域にするということがこれは第九条にうたわれておりますが、今回の国後、択捉を返す条件として、かりにソ連がこの国後、択捉を非軍事化地域、こういうことを条件としてきた場合、日本としてはこれに応ずることを考えているかどうか、この辺についての見解を伺いたいと思います。
○福田国務大臣 その辺のことは、まあいろいろ考えるところがあります。ありますが、これは日ソ平和交渉、そのいろいろやりとりの中の一つの課題になると、こういうふうに考えておりまして、日本政府がこうこう考えておるのだというようなことをこの席で申し上げるということになりますると交渉に支障があるというふうに存じますので、お許しを願いたい、かように存じます。
○大久保(直)委員 ただ、日ソ間にはかつてそういう先例があったということを十分に踏んまえて交渉に当たられることを強く要望いたしておきたいと存じます。 時間をあまり多くとりたくありませんので、繊維問題に移らせていただきたいと思います。 本年一月四日に調印されました日米繊維協定そのものについては、私はたいへん強いふんまんを持っておるわけでございますけれども、国会を無視した暴挙ともいえるのではないか。いまここでその政府間協定に至るまでのプロセス、田中通産大臣が君子豹変したというようなエピソード等を繰り返して問題にする気はございませんが、私は、今後の繊維業界のために、現状から将来、そして通産行政のあり方という問題に触れて二、三質問をいたしたいと思います。 まあ暴挙と言ったのは、この繊維協定そのものが、国会が承認しておりますガットに明らかに違反しておる。また、この取りきめの実施に際しまして、政府は外為法並びに貿管令の適用云々といっておりますけれども、これは外為法の範囲を逸脱した行為だと私は思います。また、行政権の乱用でもある。そして、行政権の一方的拡大によって立法府を無視するような態度は、明らかにファッショ的な性格をぬぐい去ることができない今回の事態ではなかったか。またさらに重大なことは、業界をしてその反対を押し切り、強権を発動しまして、業界をいわゆる行政訴訟を起こさせるところまで追い詰めたという点については、私は今回の事件について特筆する問題だと思うのです。また、国会答弁において個別方式はとらないとはっきり約束をされておきながら、現実的には個別方式になってしまったというようなことがございますけれども、まず、この日米両国の繊維協定の調印につきまして、私は一言総理から所感を承っておきたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 いま私からの所感、こういうものをお聞きですが、私は、いろいろの問題が起こりながらも、しかしやはり話し合いでものごとは片づくという、そういうことが望ましいことのように思っております。日米間においてもこれまた同様であります。したがって、日米間の繊維協定、これがこの種の状態でものごとが片づいたということ、これは私はたいへん残念に思いますけれども、どうもそこにいかざるを得なかったようにも思いますので、それらで問題が解決することに私はむしろ意義があったように思います。非常な譲歩というようなものでなしにこれが片づいたと、こういうところにやはり評価をしてもらいたい。政府がタッチしたと、こういうことではなくて、それが業界でも、日本の業界でがまんのできる範囲かどうか、そこらのところも考えられて評価していただきたい、かように思います。
○大久保(直)委員 総理の所感は満足できるものではありませんけれども、通産大臣に伺います。 現在一番必要なことは、繊維業界が、この取りきめが強行実施された現在、非常に重大な打撃を受けておる。そこで、最も大事なことはやはり繊維業界そのものの安定した操業の確保ではないか。そういうことに私は思うわけでございますが、特に中小企業にとっては最も必要なことである。しかし政府は、三百七十七億円を計上して設備の買い上げ資金、廃業費用というものを用意されておるようでございますけれども、これは言い方がまずいかもしれませんが、将来に見通しと希望を捨てた転業・廃業者へのいわばお葬式代でございまして、現在のこの苦しい、きびしい状況の中で安定した操業を確保していこうという業者に対してはプラスになっておらぬということを考えますと、この業界にとどまって必死に努力をされておる方々に対しては、やはり別の角度からの措置が講じられなければならないのではないか、このように思うわけでございますが、それについての通産大臣のお考えを聞かしていただきたいと思います。
○田中国務大臣 日米繊維協定は、一月の四日に正式調印が行なわれて実施段階に入っておるわけでございます。二国間のこの種の協定が望ましい理想的な姿でないということは私も理解しております。しかも、昨年の七月一日に自主規制というものに入って半歳しかたっておらないのでございますので、その実効もさだかにならない状態において協定に踏み切るということに問題があることも自覚をいたしておりますが、やはり日米間の貿易というものは両国にとって非常に重要な要素でございます。しかも、対米貿易が日本の総貿易の三〇%以上を占めておるという事実を考えると、輸出先、輸入先の多様化を行なうとしても、三〇%という大きなものがそう簡単に切りかえられるものではないわけでございます。対ソ貿易ということを一口に言いますけれども、対ソ貿易の七倍も八倍もということで、対ソ貿易が八億ドルないし九億ドルでございますが、これに対して、輸出だけで八十億ドル近いということでございますので、非常に大きな金額であるということはおわかりになると思います。そういう意味で、極東四国、日本と韓国、台湾、香港というようなものを含めて規制を行ないたい、規制が両国の合意によって行なわれない場合は一方規制を行なわざるを得ない、一方規制はもう直ちに行ないます。しかもそういうことになると混乱は避けがたいことでございました。そういう意味で、日米両国の真の友好と真の経済交流というものを確保するためにやむを得ずとった措置でございますが、結果としては、たいへんな波乱を起こすだろうと思いましたけれども、これは業界に聞いていただけばいいのでございますが、倒産も非常に少ないし、日米繊維協定の結果、ことしは三〇%から六〇%減るだろうと思っていわれておったものが、六九年対七〇年の実績では対前年度比四・二%増でございましたが、日米繊維協定を行なったにもかかわらず、七〇年対七一年比は一九%増しでございます。そういう意味で、案ずるよりも産むがやすかったという声が一部にあることも事実でございます。しかしそれは、長期的に見て日本とアメリカの間に業界が期待する自主規制というものに移しかえられたんだというような実態を築くために、これからも両国の間に専門家会談を十分開きながら理解を進めて、業界の混乱を来たさないようにしなければならぬことは事実でございます。 しかし、ここで一言だけ申し上げておきたいのは、アメリカと日本というのと同じ姿が、日本と韓国、日本と台湾、日本と香港——日本と中国大陸との国交が開かれるとしたならば、一番問題になるのがこれでございます。この間、私もあまり賛成をしたわけではないですが、これは院の総意でございましたからということで法律が立法されましたが、中国大陸から入ってくる日本向けの生糸を抑制する法律ができたわけでございまして、そういう意味では、やはり避けがたい世界的な現象だったのじゃないかというふうにも考えますし、しかし、そういう問題を前提にしておるにしても、繊維業界に対する問題はたいへんなことでございますので、予算措置は去年、ことし、来年に一部残りますが、一般会計及び緊急融資を含めて二千四十六億円という対米の一年間の輸出に匹敵する措置をとっておるわけでございます。また、この国会には、特定繊維工業構造改善臨時措置法を提出いたしまして御審議をいただくことになっておりますので、私は、この両国間に協定をせられた繊維協定というものがよかったというようになり、いわゆる構造改善のきっかけをつくるとか、そういうことになるように、少なくともこれが繊維企業のために致命的なものになってはならないということで、真剣な対策を考えておるわけでございます。
○大久保(直)委員 そこで重ねて申し上げますが、現有の安全操業の確保という面について何らかの措置を講じられないかという質問をいだしたわけでございますけれども、先ほどの転業や廃業をされていく方に対する措置は、三百七十七億、確かに予算はつきました。しかし大事なことは、いま各業界の方がかかえておりますデッドストック、これをどう解決するかということが非常に重大問題になっている。これをこのままにほっておきますと、日本の繊維業界そのものが暗礁に乗り上げるようなこともあり得るのじゃないか。業界は自衛の措置として、みずからがそのデッドストックを買い上げるようなことをいま準備いたしておるようでございますけれども、政府はこれに対して、この業界自体の買い上げ機関に対する低利の融資または利子の補給等を行なうお考えがあるかどうか、この点をお聞かせ願いたい。
○田中国務大臣 日米二国間協定を締結する前提としましては、あなたがいま御指摘をされたことを十分考え、引き続いて検討をいたしております。このときには、非常に大きなストックが出るのだという業界の申し出もございましたし、われわれもそうなるかもしれない。それに対しては、印パ戦争等もありましたし、そういうところの救恤品として現品を使ってもいいじゃないか。しかも、これから共産圏に対する輸出等にもやはり新しい分野を開拓すべきであるし、商品援助ということでもって繊維がどのぐらい使えるのかということを引き続いて検討いたしております。あのときは、もう大量のものを買い上げなければならないという前提に立って考えておったのですが、あなたも事情を御承知だと思いますが、その後はそれほどの状況でないわけでございます。ほかの商品と比べてもストック量はオーバーしておりません。現状においては、いずれにしても、当初考えたように大量のストックがあり、これを財政的に措置をしなければならないということにはなっておらないようでございますが、そのようなものが起きないように、半年間も調整期間があったわけでございますので、政府が買い上げるのだからそのままおればいいのだということではなく、業界でも自主的にやってもらいたいという行政指導もしております。ですから、いまのところはそれほどの心配はありませんが、どうしても買わなければならないものがあるとしたならば、それを買うためにどうするのか、もちろん政府が直接買い上げるわけにはまいりませんので、協会等をつくってということですが、また、いまの制度でも買い上げは可能であります。可能ではありますが、いまそういうおそれもございません。でございますが、やり得る体制はとってあるということで御理解をいただきたいと、こう思います。
○大久保(直)委員 そうすると、これは大蔵大臣の管轄になりますか、いわゆる業界のそういう買い上げ機関に対しては低利金融並びに利子補給等を行なう考えもある、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
○水田国務大臣 御承知のように、繊維については、三回、政府関係の中小企業金融機関に対しては特別の融資をやっておりまして、今日まで金融上の問題はほとんど起こしておりません。したがいまして、今後、九月二十三日のときの決定で輸出関連産業における滞貨金融も相当やっておりますが、まだ足らないというような部分が起こりましたら、そのときの問題として考慮したいと思います。
○大久保(直)委員 そのときの問題として善処されるという御答弁でありましたので、それ以上突っ込みませんが、最後に、通産大臣、一点だけ伺って私の質問を終わりたいと思うのですけれども、これから問題になるいわゆる多国間協定、これに対しては、昨年のケネディ・田中書簡によって、通産大臣は非常に微妙な回答をなされておりますし、その後これはどういう経過になっておるか、できれば簡単にお願いしたいと思います。
○田中国務大臣 アメリカ政府の内部には多国間協定を推し進めようという考え方はございますが、繊維の綿製品協定もございましたし、日本は必ずしもこれに対しては賛成でない、もうすでに二国間でもって話がついておるのだしという問題で、いままでの考え方を推し進めております。向こう側も、日本が理解しないようなものに対しては、これを強制的に押しつけようという気もありません。ただ、国際的な機関の中では、ガットの場においてこういうものの可否というものを勉強しようじゃないかという問題はございます。日本も勉強もしないということではございません。勉強することはいいにしても、いずれにしても、日本の在来とっておる方針を変えるような段階ではないということはアメリカ側にも通じてございますし、理解も得ております。
○大久保(直)委員 最近のアメリカの意図は、七三年九月でいわゆるLTAが終わりますので、その七三年十月一日からこの多国間協定をもって大々的な規制をしようという意図があるやに聞いておりますので、いま通産大臣御答弁になりましたように、決してそうならないようにひとつ慎重に取り組んでいただきたいと要望いたします。 私、先ほど質問いたしました中国問題並びに朝鮮問題の質問を留保しまして、本日はこれにて終わらせていただきます。
○瀬戸山委員長 日中問題等の質問は保留いたしまして、本日の大久保君の質問は終わりました。 次に、西宮弘君。
○西宮委員 私は、佐藤総理その他関係閣僚に若干お尋ねをいたしますが、一般の庶民がだれでも抱いておるような疑問、そういうきわめて素朴な疑問を取り上げてお尋ねをいたします。いわば国民にかわってお尋ねをいたしますので、どうかそういう意味で、きわめて率直に、真摯にお答えをいただきたいと思います。 第一は沖繩に関連する問題でありますが、質問の第一は、佐藤総理は沖繩返還なったならばちょうちん行列をやるのか、こういうことなんであります。もっとも、その時点ではあるいは佐藤総理はおかわりになっておるかもしれません。したがって私の質問は、ちょうちん行列をやらせたり、あるいはまた、やるように指導したり、そういうことは適当だとお考えでありますかどうですかというふうにお聞きをするわけであります。 〔委員長退席、田中(龍)委員長代理着席〕 と申しますのは、ちょうちん行列は、もしやるならアメリカ側がやるのだろうと思うのですよ。これはすでに日本にも紹介されておりますように、アメリカの新聞報道、あるいはまたアメリカの国会における審議状況等を見ましても、きわめてスムーズに進行しておるわけであります。委員会は満場一致、本会議はわずかに二十二分で議了しておるというような状況で、新聞論調等を見ましても、これがアメリカの国益だというようなことを書いてあるわけです。もしそれと違った、これはアメリカの国益に反する、こういうことで、そういう立場から議論しておるというようなものなどがありましたならば、それをぜひ御披露願いたいと思うのですが、私の知っておりますのは、寡聞にしてそういうことだけなんであります。 そこで、ちょうちん行列なるものも、沖繩百万の県民がこぞって心からお祝いをする、こういうことであるならば、むしろ日本がやるのもけっこうだと思いますが、私はとりあえずは、これはアメリカがやるのを待っていればいいのじゃないかという気がいたしますので、この点はいかがでございますか。
○佐藤内閣総理大臣 沖繩が祖国に復帰する、そういう場合にちょうちん行列をやるかという、私は寡聞にしてまだそういう話を聞いておりません。やるならアメリカでやれとおっしゃるが、どうも、どこでやる、そんなことも私ども考えておりません。何かそんな話があったら逆にひとつ教えていただきたいと思います。
○西宮委員 私は、新聞にしばしばちょうちん行列ということが出るものですから、佐藤総理はお考えじゃないかと思ってお尋ねしたわけですが、私が言いたいと思いましたことは、要するに今回の沖繩返還なるものは、日本ではしきりに、いまだかつて世界の歴史にない、そういうたいへんなすばらしいことが行なわれたのだ、こういうことで絶えず宣伝をされているわけでありますが、もしそのように、世界の歴史にないような、そういう大問題であるならば、当然にアメリカにおいて大規模な反抗運動があってしかるべきだが、そういうことが一向に見られないという点であります。もちろん私は、相手のある外交交渉でありますから、それをやられました政府の皆さんの御苦労もわかります。また、皆さんのおやりになったことに決してけちをつけようというようなつもりはないのでありますが、福田外務大臣は今回もまた、この前の本会議で、世界に前例がない、こういうことを堂々と言っておられるわけでありますが、私はそう言って騒ぐほどの問題ではないのじゃないかという気がするわけであります。したがって私が言いたいのは、そういう姿勢だとアメリカとの交渉でむしろいろいろ問題があるのではないか。アメリカの態度に全く感謝感激、随喜の涙に泣きむせんでいる、こういうことでは、言いたいことも言えないで終わってしまうのではないかという気がするわけです。 そこでお尋ねをしたいのでありますが、先般のサンクレメンテの会談では、基地の縮小については、外務大臣、具体的にどういう主張をなされましたか。
○福田国務大臣 サンクレメンテの会談では、世界情勢も論ぜられれば、また日米二国間の関係も論ぜられ、その中で、二国間の問題としては沖繩の問題が非常に大きな議題になったわけであります。返還期の問題、また核抜きの問題、また基地の問題。御質問がありませんから他の二つは除きまして、基地のことをお答え申し上げますと、この基地問題につきまして私は実は一番骨を折った。私と言ったら語弊がありますが、総理も当然そういうことであります。つまり、基地を縮小整理せよ、こういうわがほうの要請です。これがなかなかアメリカによって理解されないのです。アメリカは、サンクレメンテの会談に先立ちまして、ポンピドー大統領と会う、ブラント首相と会う、あるいはヒース首相とも会う。そうして、これらヨーロッパの首脳のほうは、どうかひとつNATOの軍隊を駐留さしてもらいたい。ドイツのごときは、金まで出しますから一兵も減らしたくないのだという主張をしておる。その直後に日米会談が行なわれまして、わが国の首相から、わが国の外務大臣から、沖繩の基地を縮小整理せい、こう言うんですから、同じ同盟国であるにかかわらず違った主張があるもんだなという印象だったと思います。 そこで私は、誤解があるといけませんので、わが国は日米安全保障条約を必要とするというゆえんをるる述べたわけであります。しかし、わが国が日米安全保障条約を必要とし、したがってわが国に米軍が駐留する、これにとやかく言うものではありませんけれども、その駐留のしかたに問題がある。米軍がわが国に駐留する以上、やはり地域社会の者と融合一体、そういう関係になければならぬ、そういう角度でこの駐留というものが行なわれないと、駐留自体にもまた大きな影響を及ぼす事態になりはしないかということを私はおそれるのです。そういう事態が沖繩等においてほんとうに痛感されるのであるということで、沖繩国会におきまする論議の状況、また濃密なこの米軍の沖繩島における基地の配備の状況、これは地図まで示しまして、これこれこういう状況であるということを、まあ解説をいたしたわけであります。 そういう経過を経まして、まあやっとというか、ずいぶん時間をかけて、アメリカ側もその趣旨を了承いたしまして、沖繩の基地につきましては、これが整理縮小、これはひとつ念頭に置いてやりましょう、こういうことになり、共同声明におきましては、「総理大臣は、大統領に対し、在沖繩米軍施設・区域、特に人口密集地域及び沖繩の産業開発と密接な関係にある地域にある米軍施設・区域が復帰後出来る限り整理縮小されることが必要と考える理由を説明した。」こうなっております。これに対し、「大統領は、双方に受諾しうる施設・区域の調整を安保条約の目的に沿いつつ復帰後行なうに当つてこれらの要素は十分に考慮に入れられるものである旨を答えた。」こういう結末に相なった次第でございます。
○西宮委員 私の質問が少し徹底しなかったかもしれませんが、私がお尋ねをいたしましたのは、具体的にどういう主張をされたか、どことどこを返してくれ、こういうことで、具体的なその返還交渉はどういうのであったか、こういうことなんであります。 先般の沖繩国会の際に、福田外務大臣はたびたび答弁をいたしております。「もうしばらく前から——返還は実現をいたしておりません。おりませんが、その以前たる今日、また今日以前からもこの問題をどういうふうに日米間で打開していくかという問題につきましては千々に頭を砕いておる」。もう頭は相当砕けているんじゃないかという感じがするわけであります。あるいは、「ただいまアメリカ側と話を始めております。ともかく、もうすでに話を始め、鋭意この話を煮詰めております。」とも言っております。あるいは、「先般日本に参りましたコナリー財務長官、ジョンソン次官等にもお話しをしております。」と、こういうことを先般の沖繩国会で答弁をしておるわけです。それならば、もうそのサンクレメンテの会談の際には、相当その具体的な話ができたはずだというふうに私どもは考えざるを得ない。 そこで、いま非常に抽象的なお話だけやったのでありますが、私は、それでは一体これから何を、基地縮小という観点からどういう主張をされるか、こういう点を伺いたいと思うのです。 おそらくまず第一は、たとえばレクリエーションの場所とかそういうことがまず最初に考えられるのじゃないかと思いますけれども、これはまああまりにも当然過ぎて、もうそんなのがいま残っておるのがむしろ言語道断だと言ってもいいと思う。その次は、たとえば米軍人が住んでおります住宅地域の問題ですね。たとえば那覇には六十万坪の土地に千二百戸が住んでおるわけであります。私はこれは、一戸平均五百坪でありますから、まあアメリカの常識では必ずしも広い面積ではないと思います。しかし、あの那覇は三分の一が占領されて、三分の二に沖繩の人たちが住んでおりまして、そこは本土でも想像できないほど密集地域なわけであります。あるいは公園面積等は本土の十分の一だ、こういう状況であるわけであります。そうすると、もういまは戦勝国として沖繩に占領駐留をしておるわけではないのでありますから、私はこういう点も当然に自粛をされてしかるべきだというふうに思うのですが、いかがですか。
○福田国務大臣 お話しのとおり、千々に頭を砕いておる次第でございまして、その返還のプログラムを一体どういうふうにやっていくか、こういうことでございますが、いまアメリカ側としては、まだ返還が実現をしない、その前に返還を実行するということについては、これは返還協定の改定だというたてまえから反対です。私どももそうだろうと思うのです。ですからそういう意図は持っておりません。しかし、事前的に話を進める、これはまあ私は、一向支障はない、こういう考えのもとにもう去年の秋ごろから話をしておるわけなんです。まあ煮詰まってきたものもあります。しかしこれからまたなかなか努力を要するような問題もある、そういうような状態でありますが、まあ一番初め、やはり問題として解決される問題はレクリエーション、そういう関係じゃないか、こういうふうに私は踏んでおるわけでありますが、いずれにいたしましても、五月十五日返還式が行なわれた後、すみやかにアメリカとの間に交渉をいたしまして、最終的な決着を得たい。しかしこれが一挙にどうというわけにはいかぬと思うのです。ぽつぽつそういうことが立ち行なわれる、こういうことかと存じております。
○西宮委員 申し上げたように、レクリエーションのごときは、これはまあ問題外だ。私は、たとえば住宅区域なども、当然沖繩県民の実情を見ながらアメリカとしても自粛すべきだ、また日本もそれを要求すべきだ、こういうことを申し上げたのでありますが、次は最も大事な問題として、いわゆる軍事基地、文字どおり軍事施設として利用されている土地の問題であります。 この点は、いま問題になっております中国との関係等で問題になるわけでありますが、これは防衛庁長官なども何らかのお考えをお持ちだと思いますが、日本の防衛白書には中国の問題を非常に取り上げているわけですね。たとえば、「特にアジアにおいては中共の動向等をめぐり、情勢はますます複雑の度合を強め、」云々、「特に中共および北朝鮮は引き続き硬直した対外姿勢を堅持しているが、アジアにおいて核兵器を開発している唯一の国である中共の動向」が「アジア地域における今後の紛争生起の可能性に大きな影響を与えるものとみられている。」と、これが防衛白書のことばであります。したがって私は、日本の防衛庁、防衛当局の考え方は、このいわゆる中共の脅威、中国の脅威ということを大前提にしていると思うのでありますが、そういうことであるならば、だいぶ事情が変わってきた。こういうことで、この今回の軍事基地の縮小という点について外務大臣はどういう姿勢でお臨みになりますか、簡単にお答えいただきたいと思います。
○福田国務大臣 今回の米中会談によりまして、アジアに緊張緩和のムードが出てきたことは私は事実と思います。しかし、まだこれが具体化しない、固定化しない、こういう段階において、わが国の防衛計画について、この情勢を踏んまえてどうのこうのという議論はまだ少し早いんじゃないか、そういうふうに思うのです。しかし、緊張緩和をもたらしたい、その緊張緩和の波に乗って東南アジアにおける軍事費の負担を軽減いたしたいというアメリカの考え方、いわゆるニクソン・ドクトリンというものも、これはそう急には進まないと思います。しかし、逐次には進んでいく。そういう中の一環といたしまして、日本におけるところの基地問題というものにも変化がくるであろう、こういうふうに考えております。
○西宮委員 次は、防衛庁長官にお尋ねをいたしますが、中国の脅威ということを日本の防衛当局が考えているということをさっき申し上げたのでありますが、アメリカのたとえばサイミントン委員会であるとか、あるいはまた先般のレアード長官の報告とか、これによりますると、むしろ中国の脅威というよりは、ソ連を非常に警戒しているわけですね。ソ連を対象にしているということは明瞭なわけであります。 そこで私はお尋ねをしたいのでありまするが、沖繩の基地はソ連に対してはどういう地位にあるか。何もソ連を仮想敵国にしているというようなことを私は申し上げるわけじゃありません。ただ、沖繩の基地の実態は、ソ連に対する攻撃力というかあるいは抑止力と申しますか、そういう意味で、対ソ連関係においては沖繩の基地というのはどういう実態であるのかというふうに認識をしておられるか、簡単にお答えをいただきたい。
○江崎国務大臣 もともと日本には仮想敵国はないわけであります。また、アメリカとソ連の間も、平和共存路線が今日では可能になっておりまするので、沖繩の基地がソ連に向かっておるというふうには考えておりません。
○西宮委員 私は、いずれにいたしましても、中国の問題ないしはソ連の問題ですね、これを日本あるいはアメリカがそれぞれ脅威として受け取っておるというのが今日までの実態だと思いまするけれども、事態はまさに大きく変わりつつある、こういう点で、十分そういう認識に立ってこれから処置をしてもらいたい、考えてもらいたいということを強く申し上げておきたいと思うのであります。 同時に、外務大臣、こういう心配はないかどうか。逆に、いわゆるニクソン・ドクトリンというようなことで、アジアの地域からアメリカ軍が撤退していく、そこで沖繩に集結をする、だんだん沖繩が、そういう意味で米軍が強化されていく、こういうことになる心配はないかという点が一つの心配でありますので、お尋ねをします。 なお、これに関連をいたしまして、たとえば、米軍が台湾から手を引く、そのかわりを自衛隊がパトロールする。たとえば尖閣列島などを中心にしてパトロールするようになるのじゃないかというような問題があったり、あるいはまた横須賀が第七艦隊の母港になるのではないかというような心配がある。すでにその隊員の住宅確保についてアメリカから申し入れを受けている、こういう点なども聞いておるわけでありますが、そういう点について今後心配はないかどうかということを聞かしてください。
○福田国務大臣 私は、アジアの各地域から米軍の撤退が行なわれまして、それが沖繩に移ってくる、そういうような心配はいたしておりません。沖繩につきましては、もうるるこういう状態であるということを米当局に申し入れてありますので、その点はアメリカ当局もよくわかっておる。さような心配はないと思います。 ただ、いま横須賀のお話がありましたが、米軍は逐次日本の国内における配置を集中しようという考え方を持っておるのです。たとえば関東平野につきまして横田に基地を集中する、そういうような考え方を持っておる。これは私は、基地が整理されるのですからたいへんけっこうなことだ、こういうふうに思っておりますが、同様なことが海軍につきましても行なわれる、そういう傾向はある。佐世保を整理して横須賀にというようなことを考えるとか、いろいろそういう動きはある。しかしこれも増強じゃありません。整理縮小の方同において行なわれるものである、こういうことで、全体といたしましては私はこれはいいことをしてくれる、こういうふうに思っております。
○西宮委員 もう一ぺん簡単にお尋ねをしますが、たとえば横須賀が第七艦隊の母港になる、こういう懸念はありませんか。
○福田国務大臣 母港という意味がどういうことか、あまり統一した見解はございませんけれども、いままで米軍は横須賀で一号、二号、三号、四号、五号、六号というドックを持っておるのです。そのドックを、一昨年、第六号を除いて全部返還をしようというふうに言っておったのです。ただ、その条件としまして、第七艦隊において必要とする場合には優先的に第七艦隊の需要に応じてもらいたい、こういうことを言っておりましたところ、その後、第七艦隊の需要に応じ得るか応じ得られないかという技術的問題がありまして、それで一昨年暮れのそういう発表でございましたけれども、一年延ばそうということになり、今日に至っておる、こういう状態があるのです。しかし、これは一度そういう約束をし、これを発表したことでありますので、大体そういう方向でこの結末を得たい、こういうふうに考えておりますが、決してこれは強化でもない、増強でもない、ただ単に返すのがおくれたというだけのことでございます。
○西宮委員 私の心配は、要するにグアム・ドクトリン等でだんだんに米軍が撤収していく、結局そのしわ寄せが沖繩を含めて日本に及んでくるのではないかということを私は非常に心配するのでお尋ねをしたわけですから、かりそめにもそういうことのないように十分対処をしてもらいたいと思います。 佐藤総理は、きのう公明党の矢野委員の質問の際に、中国の国連参加という大変換があった、あれから、あの前後は区別して考えるべきだ、こういう答弁をされたのでありますが、それではお尋ねをいたしますが、先般のサンクレメンテの共同発表は、それ以前の共同声明、六七年、六九年等の共同声明ですね、それと比べてどこが違ったのかということをお尋ねしたいと思います。
○福田国務大臣 共同声明に関することですから私からお答え申し上げますが、一九六九年の共同声明は、これは沖繩返還要綱ともいうべきものであります。でありますので、沖繩の返還の基本方針、またそれの前提となるところの各種の問題、これが討議されまして、そのまま共同声明として記載をされたということでございますが、今回はそういう沖繩返還の大綱というようなことじゃないのです。論議自身が、先ほど申し上げましたとおりアメリカの大統領が訪中、訪ソをする、それに先立ってヨーロッパ、またアジアの主要同盟国の首脳と会っておきたいという非常に広範な議題を踏んまえての会談である、そういうようなことで、その会談の内容を事こまかにコミュニケに書くことは妥当ではありません。ただ、その間において日米両国間で論議をされた沖繩返還の最終処理を要する問題、これは先ほどの三点です、これを記載する、それにとどめた、こういうことでございます。
○西宮委員 いま外務大臣がお答えになりましたようなことは、これはまあ当然ですよ。時点が違うわけですから、そのとき取り上げた問題が違うということは、もちろん当然であります。ただ、私が聞いておるのは、そうではなしに、たとえば安保条約に対する評価のしかたであるとか、そういう基本的な問題が、特に沖繩の基地に関連してこの質問は始まったわけでありますが、そういう点から申しますると、その根底をなしている安保に対する認識とか評価とかそういう点などは何にも変わっておらない。今度のサンクレメンテの共同発表でも、日米安保条約が果たしてきた重要な役割りを高く評価をするといっておるわけですね。その安保条約の目的に沿いつつ、返還後にいわゆる基地の問題を考えるのだ、こういうふうにいっておるわけですね。したがって、そういう点からいうと、安保条約を高く評価をする、あるいはその安保条約の目的に沿いながら基地の縮小を考えるのだというようなことであれば、その前の六七年、六九年の共同声明などとそういう根本的な認識は何も変わってないのじゃないかという気がするわけです。つまり、佐藤総理のいうところの、中国が国連に参加した、それは大変化で、その前とあととは違うんだ、こういう違いはどこからも出てこないということを申し上げた、その点いかがでしょうか。
○福田国務大臣 安保論議は、今回のサンクレメンテ会談では、沖繩の基地整理縮小というものに関連いたしまして、わがほうより安保体制は必要であるというゆえんを説いたというにとどまるのでありまして、ほかにこれという論議はございません。しかし、西宮さん、いま大統領の北京訪問ということを言われましたが、これは話題に出たわけです。また話題の非常に重要な部分であったわけでありますが、これによってアジアに緊張緩和がもたらされるであろう。したがって、これを歓迎するということにおいて両国首脳の意見は一致をいたしたわけであります。そういう状態は共同発表にも書かれておるのじゃないか、かように存じます。
○西宮委員 外務大臣の答弁をお聞きいたしましても、佐藤総理が言うように、中国が国連に参加をしたということによって、その前とあとがたいへんな違いができたというようなことは全然感ぜられないのでありまして、その点まことに残念であります。私は、こういう国際情勢の変化に伴って沖繩の基地が当然縮小さるべきだということを申し上げたのでありますが、逆に、基地を縮小する、そういうことによって緊張緩和に役立てる、こういうことも可能だと思うのですよ。佐藤総理のこの前の沖繩国会における御答弁を聞きましても、沖繩はあまりにも基地が、その密度が多過ぎる、かような意味で私どももこれはやはり本土並みにしたいということを言ったり、あるいはごしんぼう願わなければならないが、その期間がいかにも長い期間ではごしんぼうできないというようなことを言われたり、だから、本土並みにして、しかもそのスピードを上げるんだというようなことを答弁をされているわけです。これはこの前の主席の選挙の際でありますが、そのときに自民党が掲げた公約は、復帰の際の米軍基地は本土並みを目標とする、こういうことを掲げた。しかも、そのことを佐藤総理はこの前の国会でも答弁をしておられる。私は、いわゆる本土並みの基地を実現するということは当然の政治責任ではないかと考えられる。しかも、それを選挙の公約に掲げて戦かったというようなことを見ると、それはあまりにも当然だという気がするわけでありますが、総理、この点もう一ぺんお答えをいただきたいと思います。
○福田国務大臣 私どもが基地について本土並み本土並みと申しておりますのは、沖繩に駐留する米軍の地位が本土並みになる、こういうことを言っておるわけなんで、あなたのおっしゃるのは、今度は、米軍の駐留の規模が本土並みになるべきだ、こういう御立論のお話のようでありまするが、これはそういうことを願っておる沖繩県民多数あると思います。できる限りそういう方向へというふうに考えますけれども、これはなかなかそう簡単にはいかない。しかし、努力はいたしておる、こういうことを申し上げます。
○西宮委員 それはそういう意味ではなしに、佐藤総理の答弁は、沖繩はあまりにも基地が、その密度が多過ぎる。つまり本土に比べて基地の密度が非常に高い。かような意味で私どももこれをやはり本土並みにいたしたい、こう言っておられるのですよ。だから、その密度が高いという沖繩の現状を本土と同じような密度にしたい、しかもそのスピードを上げたい、こういうことを言っておるので、私は、ぜひそうあってほしい、そうしてもらわなければならぬと考えるわけです。 押し問答してもしかたがないので、次の問題をお尋ねいたします。 この前の日米共同発表の際に、さっき外務大臣も引用されましたけれども、沖繩の産業開発云々でその関係においてできる限り整理縮小することが必要である旨アメリカに申し入れをした、こう書いてあるわけですね。そこでお尋ねをいたします。これは山中長官でもけっこうです。この産業開発に妨げがあるということなんでありますが、どのような妨げがあるか。あるいはもっと端的に言えば、もしこれに基地がなくて、産業開発にそのまま使われたとしたならば、どの程度の生産があげ得たであろうかというようなことを研究したことがありますか。
○山中国務大臣 これは沖繩における米軍の基地が日本の敗戦とともにかりになかったという前提で考えますと、沖繩はやはり農林漁業、主として農業、漁業の島であったろうと思います。本土の一県であったとすれば、やはり他の県に見られるように、人口流出等の過疎県になっていたかもしれません。しかし、逆に沖繩がもし不屈のいわゆる耐える哲学と申しますか、そういうようなものを伝統的に持っておる沖繩人魂というようなものを発揮して、いまのような繁栄を続けていたと仮定をいたしますと、やはり現在の、やむなく基地に接収されたために追い詰められたものの必死の知恵として、基地周辺において、基地から金を自分たちの生活のかてとして得る道を発見して、今日沖繩の経済というものは基地関係が七〇%近い、あるいは三次産業もまたそのようなウエートを示しておる実態になっておるわけでありますが、これらの点は、沖繩の人々がそれをみずから求めて選択した繁栄への唯一の道ではなかったわけであります。したがって、私どもは、今後帰りました場合に、この基地依存形態を、基地の縮小に伴って新しい産業の布陣のために、なお所得が向上しつつ人口も流出しないように、きわめてむずかしい作業に取り組まなければなりません。そのためには、外務大臣に要請をいたしておりまする私の担当大臣としての立場も、琉球政府のつくりました経済発展計画を念頭に置きつつ、たとえば、先ほど来、答弁はありませんでしたが、那覇市の都市計画に最も障害になるもの、県庁所在地たるべき都市において、きわめて放置できない重大な波の上地区の俗称牧港住宅のすみやかな都市計画による利用、こういうようなもの等は外務大臣に訴えまして、答弁はございませんでしたが、外務大臣はその方向について相当のしかも具体的な心証を得ておられるものということを私は承っておりますが、これは単なる都市計画の一例でありますけれども、沖繩の人たちの基地がなかったならばどのような生活水準であったろうか、あるいは基地があったからどうであったかという比較はきわめてむずかしいのでありますが、基地が現在存在するために経済のレベルというものが存在をしておる、それを落とさないで伸ばしつつ基地を縮小して、平和経済のほうに持っていくという使命の方向に基地縮小へ向かっての努力をさらに外交折衝にお願いをしてまいりたいと思います。
○西宮委員 私は外務大臣がこういうことを指摘しながらアメリカに要請したというならば、もし基地に使われないで、いわゆる産業の開発に使ったらどういう成果があがったろうかというようなことは、当然そういう試算をして折衝の材料にすべきだと考えるわけです。 そこで、これは一つの研究でありまするけれども、たとえば、中部の六つの市町村に七十平方キロの基地があるわけでありますが、その半分に軽工業があったと仮定をする。そうすると本土の場合は、臨海工業地帯の生産高は坪当たり四百四十六ドルであります。これはもちろん重工業等もありますから、これをうんと減らして、四百四十六ドル坪当たりでありまするが、三十ドルと計算をしても二億三千万ドルの収益が上がるわけであります。それをいま米軍から受け取っております地代でいうと百三十五万ドルにしかならない、こういうことで、全く比較にもお話にもならないわけであります。私はこういう、沖繩が大きな手かせ足かせをはめられて、しかも日本の高度成長と肩を並べていくということは全く容易なことではないのだということを痛感するにつけましても、基地の縮小ということにほんとうに全力をあげて取り組んでもらわなければならぬということを痛感するので、強調するわけであります。 もう一つだけ簡単にお尋ねをいたしますが、例の那覇空港のP3というのは、もう完全に心配はなくなったのですか、外務大臣ちょっと……。
○福田国務大臣 P3は返還時、つまり五月十五日以前に那覇空港からなくなります。また、それに付随する施設は、わが政府の所有物に移される、こういうことになっております。
○西宮委員 外務大臣は、これは完全無欠な那覇空港になるのだとかそういうことをたびたびこの前答弁をしておられるので、ぜひこれは確保してもらわなければならぬ。ただそれがぐるぐる回って日本国内でたらい回しになっているというような実情等が新聞にも報道されておるので、それではあまり意味がないのじゃないかということを感ずるわけでありまするけれども、とにかくこのP3についても施設だけは残すのだというようなことを言ってきたり、いろいろ向こうから問題を提起しておるようでありますから、先般来の公約どおりぜひやっていただきたいということをお願いしておきます。 沖繩問題の最後に総理に一つだけお尋ねをいたしますが、アメリカ軍が沖繩に参りましてそれから今日まで沖繩におるわけでありますが、一体沖繩県民にアメリカ軍の存在が何かプラスしたことがあるであろうか。総理はどのようにお考えでございますか。
○山中国務大臣 精神的にプラスしたものはほとんどゼロに近いと思います。むしろマイナスだったと思います。しかしながら物質的に、ことに離島の琉球政府の貧弱財政で手の届きかねる島々に対する米軍を利用してのいろいろの施設とかあるいは干ばつ等の救援等の対策、台風救援等についてはあるいは病人の危急、緊急な場合の長距離の離島からの搬出等については、それぞれの島等において米軍がおったために助かったとかあるいは米軍のおかげであったとかいう声も聞かないわけではありません。しかしそれらはマッカーサーでありましたか、いかなる善政を施しても、占領政治は三年が限度であるということで明瞭でありますように、どのようなことが部分的にプラスでありましても、この異常な長い異民族支配というものはプラスを生んだとは考えられない次第であります。
○西宮委員 そういうことでありますならば、とにかく沖繩からは早く米軍がいなくなるということが沖繩にとっては最大の願いであるということは、あまりにも明瞭だと思うのであります。ひとつ基地の縮小ないしは撤去に取り組む総理の決意を伺って、この沖繩問題を終わりにしたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 この沖繩にいる、駐留している米軍、沖繩が祖国に復帰した後には、ここにいる米軍は、従前のような自由自在の米軍としての活動はできなくなってくる。これは安全保障条約の範囲内にとどまる、これはもう数回述べたとおりであります。 そこで一番問題になりますのは、非核、核武装、核撤去の問題があります。毒ガス、また核兵器、これは返還時においてはなくなる、こういうことを約束してくれておりますが、さらにそれを確認する方法はないだろうか。この前サンクレメンテで話ししたことも、特にその点が重要な点であります。アメリカとしても返還に際しては核は完全になくする、このことは実は確約はいたしております。しかし確約だけでなしに、何らかの方法がその上とれるかどうかということが一点。 〔田中(龍)委員長代理退席、委員長着席〕 さらにまた沖繩のいわゆる一番いい場所と申しますか、中部平原地帯というか、このところに軍が駐留しておりますので、したがって沖繩の産業の開発上もずいぶん支障がある。しかも米軍は本土の駐留している密度等から比べてみましてたいへん密度が高い。したがって、そういう点も随時これが縮小されることを心から願っておるわけであります。 私がいままでも申しましたように、この縮小についてわれわれは努力するが、なおそれには相当の時間もかかるだろう、かように思うから、県民もその点については御了承願って、いましばらくごしんぼう願いたい、かように申しております。私はやはり何と申しましても米軍の基地の縮小することが、核兵器の撤去、それに次いでの大事なことではないか、かように思っておるような次第でございます。
○西宮委員 十分満足できるような答弁がいただけなかったことはまことに残念でありますが、なおこれからの問題でもありまするので、どうか本気で取り組んでいただくようにお願いしておきたいと思います。 次に、農業問題についてお尋ねをいたします。 第一に、ちょっと皮肉な言い方かもしれませんけれども、総理、日本では農業は必要だとお考えでございましょうか。
○佐藤内閣総理大臣 皮肉な答弁をするわけじゃございませんが、まことに大事な農業でございます。
○西宮委員 それにしてはあまりにも現状がひど過ぎるという気がするわけであります。たとえば農業の収入、農業によって得る収入、これは四十五年は四十四年よりも減ってしまったわけであります、一戸平均ですね。農業収入がだんだん比率が小さくなって、いわゆる出かせぎその他の農外収入がふえていく、パーセンテージが小さくなる、これは数年来の傾向でありますが、それも困るんだけれども、それだけではなしに、農業収入そのものが四十五年は絶対量が減ってしまった。こういうことでは、この物価騰貴の際に、農民がこれじゃとてもやっていけないということは当然だという気がするわけですね。 私は、私の地元の具体的な例を一つあげたいと思いますが、これは、私の県では代表的な農業地帯であります。そこに四百八十戸の部落があるわけでありますが、その中で、まあまあどうやら農業でやっていける、これならだいじょうぶ農業でやっていけるという農家が百十戸であります。ところが、もうとうてい農業ではやれないんではないかというふうに考えられるのが百六十三戸あるわけであります。しかも、その中の約百戸は、その収入、支出を比べてみて、なぜその収入が足りないのか——つまり、たとえば、去年の災害であるとか、あるいは何か不幸があったとか、そういう明瞭な原因があるものはしばらく別として、そうじゃなしに、何とはなしに収入が支出をまかなえない、そういう農家が百戸余りあるわけであります。これらは、もうどうしようもない、ここ数年間に自分の土地を売って夜逃げでもする以外には道がないというような実情なんであります。 私はそういう問題について少しお尋ねをしたいと思いますが、一つ具体的な問題として、米価の問題。やはりこれは農民が非常に関心を持っておる問題だと思います。この前の臨時国会で佐藤総理が、その点は十分考慮するということを言っておられましたが、あらためて、重ねてお聞きをしておきたいと思います。いかがでしょうか——これは、この前総理が、昨年の十月の国会で明瞭にお答えになったことでありますから、ただ前言を確認をしていただければよろしいわけです。これは、農林大臣は、いま私が申し上げたことをしばしば言っているわけです。そこで、総理にそれを重ねて確認をしたいのです。ですから……。
○赤城国務大臣 経済事情や諸物価、いろいろな事情もありますので、米価を決定する際には、弾力的に慎重に検討いたしたい、こう思っていますし、いま時期ではございませんが、決定するときには、そういうようにしたいと思います。
○西宮委員 いまの農林大臣の答弁に、総理は、御異議があるなら発言をしていただきたいし、御異議がないならば、それを了承いたしておきます。 次は、この間の総理の施政方針演説にもあるわけでありますし、あるいは、農林省のいわゆる農業団地の構想の中にもあるし、その他、農林省の各種の文書に、ことしは、特に、国際競争力にたえる農業ということを強調しておられるわけであります。国際競争にたえる農業、まことにけっこうなことであり、われわれもそうなければならぬと思うわけでありますが、日本の農業はなかなかそこまではいっておらない。いまのような政府のやり方では、さっき申し上げたように、農業の収入さえも減ってしまう。こういう情勢の中では、とうてい、国際競争にたえる農業なんということを簡単に期待するわけにいかない。 自由化の問題でお尋ねをいたしますが、先般農産物についても自由化の方針をきめましたのは、あれは円切り上げを阻止するために当時やったと私は思うのでありますが、この間、たとえばサンクレメンテ等では相当これを強要されたのではないかという心配があるわけでありますが、これは通産大臣でも外務大臣でもけっこうでございますから、お尋ねします。
○田中国務大臣 サンクレメンテ会談におきましても、日本の工業製品及び農産品、一次産品に対しての自由化と関税の引き下げに対して要請があり、この問題に対して協議を行なったことは事実でございます。なお、ホノルル会談に引き続いて行なわれておりました日米間のこれらの問題につきましては、一月の半ばに決着を見、一年間閣僚ベースの会談は休戦をすることに決定をしたわけでございます。 この問題は、御質問がございましたからこの際申し上げておきたいと思いますが、ケネディラウンドの推進ということには、わが国も、基本的に賛成をいたしておるわけでございます。東西問題から南北問題へと移っておりますその焦点は、一次産品国のレベルアップをはかるためにも、世界の平和維持のためにも、一次産品の移動に対して十分の措置を必要とする。それは、無関税主義をとりたいということが一つでございますし、一次産品の輸入制限を行なっておるものは、できるだけこれを自由化すということでございます。特に、二次産業比率の高い主要工業国は、一次産品の輸入の制限は可及的すみやかに撤廃をされたいというのがこの趣旨でございますが、ことしをもってこのケネディラウンドが終わるわけでございますので、引き続いて新しい国際ラウンドの提唱を行なって、日米間には基本的に合意を見ておるわけでございます。世界の平和維持のためにも欠くことのできないことであることは申すまでもないわけでございます。しかし、一次産品国、俗にいう開発途上国と主要工業国とのバランスをとろうというものよりも、いま世界で問題になっておりますものは、アメリカとカナダを含めた北米の二国と日本、それから北米と拡大ECが問題になっておるわけでございます。ECとの問題、この間もよく聞いたわけでございますが、先進工業国の一次産業比率は四%ないし六%であります。アメリカの一次産業比率は四・四%でございますから、四%と四%の人たちが一次産品に対して争うことは、これはまあいろいろな考え方もあると思いますが、日本は一七・四%という高い一次産業比率を持っております。一七・四%という高い一次産業比率を持っておる。言うなれば、農水産国ともいうべき日本が、続人口の四・四%しか持たないアメリカから、オレンジを買え、牛肉を買えと言われておること自体問題がある。こういうことにいろいろな問題があるわけでございます。ですから、日本も、やがては——私は、六十年展望をすると、六十年を待たずして、やはり先進国型の四%ないし六%まで一次産業比率は下がると思います。これは池田内閣時代の発言に対して大問題を起こしましたけれども、いまの総合農政等を進めていけば、当然そういう方向をたどらなければならないと思います。しかし、その過程において、どうしても一次産品を直ちに自由化をするようなことができるわけはありません。少なくとも、自給体制というものもございますし、まあ、カナダなどは小麦を九〇%も減産をいたしておるわけでございます。日本の二〇%の米の減産などとは比較にならない状態でございますが、しかし、一次産業比率が高く、一〇%に近い成長率を十七年間も維持してきた日本においてさえ、一次産品の自由化はむずかしいというのが現状でありますので、やはり、世界の動き等と合わせながら日本の自由化を進めてまいる。これは、自由化を進めるということは避けがたいことだと思いますが、それによる農村恐慌というようなものを起こせるはずはありません。ましてや、完全に消費をするものであって、生産に結びつくものではありません。だから、鉄鉱石を輸入するのとは違うのでありますから、どうしても、自給自足という原則を確立をしながら調整を行なうということでありますので、日米間は一年休戦ということになりましたことは慶賀にたえないことだと思いますが、やはり、アメリカから日本に対しての一次産品の自由化の圧力というものはなかなか強くなってくるというのは事実だと思います。
○西宮委員 自給自足というようなことを重視をするということはたいへんけっこうだと思います。アメリカの圧力が非常に強いと、われわれはその点を非常に心配しているわけですよ。これはぜひ農林大臣に、これに対する決意を伺っておきたいと思うのですが、いま、田中大臣から、数字をあげて、たいへん詳しくお話がありましたけれども、カナダが九〇%の減産をやったなんというのはうそですよ。これは私も行って調べてまいりました。せいぜい五〇%ですね。ひとつ事実認識を改めておいてもらいたい。農業はそれほどむずかしいのですよ、農林大臣。たとえば、第一、アメリカは、いわゆる非自由化品目というのを、十二品目は、これはごっそりたな上げしておくわけですよ。あるいはフランスは三十九品目、デンマークは五十八品目、その他、イギリス、西ドイツ等もそれぞれ十九品目というようなものを、自由化をしないということにたな上げをしておる。そういう点から見ると、私は、日本は少し気前がよ過ぎるのじゃないかという気がするので、これに処する農林大臣の覚悟をひとつお聞きしておきたいと思います。
○赤城国務大臣 国際的あるいは国内的に私は農業というものを見ていますが、国際的に見ますと、日本の農業は、自給自足というか、その方向に進めようという農業であります。アメリカのような農業は、農業そのものが輸出産業みたいになっておる。でありまするから、貿易をする以上は、私は、自由化というのは、これは原則だと思います。お互いに、お互いの国の間であまり障壁を設けないでいくということ。しかし、農業は、国際的に見ると、日本の農業は、アメリカの農業のような、輸出産業のように発達しておりません。あるいは国内的に見ましても、工業生産物のように、日本の農業は生産性が直ちに上がるような事態ではございません。でありますので、自由化は原則として私は賛成でありますが、やはり国際競争力を——先ほど話がありましたように、国際競争にたえ得るような体質改善、こういうことは国際的にも必要であります。国内的にも、他産業との関係から、生産性を向上していくということは必要でありますから、なかなかむずかしい問題でありますが、その方向をたどっていくよりほかないと思います。でありますから、そういう政策を国内で行なおうとして、先ほど話がありましたように、団地的に農業を進めていく、こういうような方針を進めておりますから、そういうものによって国際競争力がだんだん培養していけるまでは、農産物を自由化するということはなかなか困難でございます。 ただいま二十八品目残っております。今度、ガットの場等におきましてもいろいろこの問題が起きると思います。しかし、基幹的な作物においてはできるだけ自由化は延ばしていかざるを得ない、そしてまた、ほかの方法によって、関税やその他によって国際的な協力はしていく、こういう以外には方法はないと私は考えております。
○西宮委員 大臣が言われるように、いわゆる国際競争力をつけてから自由化するというならば、これはけっこうだと思う。それなら問題はないと思うのであります。今度も、国際競争力をつけるための施策として農業団地という構想を出されましたけれども、たぶん政府が三百三十億ぐらいの金を投ずるのだと思いましたが、しかし、たいへんな金を自治体なり農民なりが負担をするということになるので、結局その分は農民の借金になってしまう。こういうことで、いわゆる国際競争力をつけた農業というのが、これが日本には容易に実現できないという点にある。その点については、私ども社会党は、これはもう年来の主張でありますけれども、そういう機械化、近代化というような点には、国が国の責任でぜひそういう施設をつくれ、こういうことを言っているわけです。それでなければ、私は、国際競争のできる農業というようなものはとうてい日本には生まれないと考えるわけですよ。佐藤総理、ちょっと考えてみてください。日本の国政が農民に何を求めてきたか、農民に何をやらしてきたか。私は、振り返ってみると、明治の初年には、国が農民に期待をしたのは租税だと思うのですよ。ほかに税金の取りどころがありませんから、全部農民からの租税でまかなった。次は強兵だと思うのですね。強い兵隊だと思う。その強兵を農民から求めて、戦争をやって、負けてしまった。そこで農民に求めたのは食糧だと思う。その食糧が供給されたということになったならば、今度は労働力だ。今日まで、いわゆる日本の農業政策なるものは、そういう国の立場で農民に要求するもの、そういうものを進めてきた。これが日本の農政だと言って差しつかえないと思うのですよ。それ以外なかったと思う。私は、いまのような状態では、自由化にたえる農業などというものはとうていできないと心から心配するわけです。 具体的な問題として、物統令の問題をお尋ねをいたしますが、企画庁長官がおられませんので、食糧庁長官に一言お尋ねいたしますが、この物統令を廃止することによって、何か、政府の財政で得になることがありますか。
○亀長政府委員 食管会計の財政の上での負担軽減というような趣旨は含まれておりません。
○西宮委員 総理、それならなぜ物統令を廃止して、消費者米価の値上がりを許すということにするのか。ほかの公共料金の値上げなどは、とにもかくにも、赤字で困っておるからというようなことが一応理由になるわけです。ところが、食管会計の場合は、いまの答弁のように、これをやったからといって、一文も得にならないわけですよ。それにもかかわらず、こんなに公共料金が軒並みに値上がりをするというときに、なぜ、米の消費者米価値上がりを予想されるそういう物統令の廃止をやるのかということは、私どもには全くふしぎ千万なんですよ。これはどうなんでしょう。お答えしてください。
○赤城国務大臣 いまのお尋ねによりますと、物統令を廃止すれば消費者米価が直ちに上がるという前提のお話のようでございますが、物統令を適用を廃止をするにつきましては、ずいぶん検討をいたしました。そして、これを廃止するからして、必ずしも消費者米価は上がるというふうには私どもは見ておりません。というのは、需給の調整面から見ましても、物統令を廃止する時期において非常に供給が減るというようなこともございません。そういうようなことで、米が常時上がっておるというようなことは——大体いまのところ見通しがつきますから、これを廃止したから供給が減って消費者米価がすぐに上がるというような見通しを私ども持ちません。むしろ、食生活が非常に変わってきていまして米に対する消費者の欲求といいますか、統一的な米でなくして、やはり品質等に関心を持ちまして、いい米、良質の米をほしいというような傾向が非常に強うございます。でありますので、消費者の選択にこれをまかせていきたいというようなことで、物統令というもので統一的な米というようなことを少し変えていこう、こういうようなことから始まったものでございます。でありますが、その需給の関係から、そう上がるとは思いませんが、そういうことによって、高い米だけを、いい米だけを買わなくちゃならぬというようなものに集中しても困りますから、販売業者の数もふやすというようなことで、販売業者の自由競争も広げていこう、あるいは標準米を提供して、その標準米に従って米を買いたい人は買うようにしていとうというようなこと、流通関係も考えなければならぬというような手を打てば、需給の関係が調整がとれておりますから、消費者米価が直ちに上がるということでもなし、また、手数料が人件費上非常に上がるようなことになりますから、手数料につきましては、予算措置もとって、その分だけは手当てをしていくというようなこと、それから、払い下げ消費者米価といいますか、政府の販売米の払い下げ等につきましても、消費者米価が上がるようなことがないような十分な措置をとろう、こういうようなことをしておりますから、物統令廃止によって直ちに消費者米価が上がるという前提からお話し願うことはいかがかと思う次第であります。
○西宮委員 上がらないかもしれませんけれども、まあ上がらないだろうと農林大臣は言われるわけだけれども、私は、必ず上がると思うのですよ。しかし、上がるかもしれない、上がるおそれがあるということをなぜこの際やらなければならないのか。政府の金が一文ももうかるわけでもないし、しかも、公共料金は軒並み上がる、そういうさなかになぜやらなければならぬのかということが私どもにはとうてい納得できない。これは、生産者も消費者も、特に消費者は、非常な心配を持ってこの問題は反対をしておるわけです。そういうときになぜやらなければならぬのか。全く、これは、いまの内閣のやり方が矛盾をしていると思うのですね。 いま標準価格米ということを言われた。したがって私は、公取の委員長にちょっとお尋ねをいたしますが、そういうことで価格協定をやられるというようなことになると、これは独占禁止法に違反をするという問題になりはしないかと思うのですが、簡単にお答えをいただきたいと思います。
○谷村政府委員 おっしゃるとおり、業者がそれぞれの立場において、たとえば、標準価格米をこういう値段で売りましょうというふうに申し合わせをされれば、独占禁止法違反になります。私どもは、そういう点について、農林省のほうと十分にお打ち合わせを申し上げておりまして、さような形をとらないようにやっていただくことになっております。
○西宮委員 そういうことになれば、全然標準価格米というようなことはあり得ない、こういうことになる。全く、どこを見ても何の得もないことを無理してまでやろうという理由がわからない。 もう少し議論をしたいんですが、残念ながら時間がなくなってまいりましたが、いわゆる宅地並み課税、市街化区域内にある農地に対する宅地並み課税ということについて建設大臣にお尋ねをいたします。 前に、新市街化法を審議をする際に、当時の建設大臣は、市街化区域に入っても、現実に農地であるところには農地としての課税をするということを明確に答弁をされたわけですが、これは、建設大臣、いまでも変わりありませんですな。
○西村国務大臣 市街化区域と市街化調整区域をきめたときに、当時の建設大臣がそういうことを申したということは聞いておりまするが、それは、そのときに、市街化区域、市街化調整区域をきめるときの話でございまして、その後、この市街化区域内における農地と宅地との税のアンバランスがあるということで、政府全体として——これは建設省がきめたものではございませんで、建設省はもちろん介在をいたしまするが、自治省の関係、税制の関係でそういうふうにきめたものでございます。したがいまして、私もいまはそのことは聞いておりまするが、いろいろ議論もございます。また、市街化区域をきめるときは、ある程度の規模をもってきめましたが、やりまするとなかなか、この面積も予定よりは多くなった。したがって、農地との関係でいろいろな問題を受けておることは私も承知をいたしておる次第でございます。
○西宮委員 何だかはっきりしないのだけれども、私も承知をしておるというのだから、前の、当時の建設大臣の答弁と同じだと考えるわけですが、それでは自治大臣、簡単に答えていただいて、これで終わりにしますから……。
○渡海国務大臣 市街化区域のあります農地の課税の適正化の措置、これは、御承知のとおり、市街地における農地と、付近の宅地等と、固定資産税の税負担におきまして著しく不均衡がある、また、土地政策においても問題がある、このような見地から、将来市街地になることが予定されております市街化区域内の農地に対しまして、付近宅地等と税の均衡をはかるために、昨年の税制改正でとられた措置であります。しかしながら、市街化区域内にあります農地におきましても、いろいろの市街化の状況の実情がありますので、これらの実情があるために、その区分に応じまして課税をするように税法できめられております。非常に市街化のおくれております農地に対しましては、一定期間、従来どおり農地としての課税をそのままにして課税をするというふうな措置が行なわれ、また、その後において、宅地並みの課税が行なわれるような時期になりましても、漸減的に、徐々に税負担を加えていく、ふやしていくというような方法によりまして、激変を避けておるというふうな規定になっております。 また、市街化区域内の農地でありましても、将来ともに農地としてあることが適切であるというような地域に対しましては、集団農地として調整区域に編入する、または、施設緑地に指定されますと、従来の税負担をそのままにする、あるいは、市街化区域内の九〇%を占めておりますC農地に対しましては、自治大臣の助言等におきまして減免措置も講じることができる、このような措置をいたしておりますので、当時の建設大臣のおことばにおきましても、直ちに宅地並みの税負担をするものでない、市街化の状況によってやるという精神にも合致して法規制がされたものじゃないか、このように考えております。
○西宮委員 当時の建設大臣の答弁のとおり実態に応じてやる、こういうことであるならば私も了承いたします。 佐藤総理、これは、いわゆる緑の問題は、いまたいへんな問題になってきたわけですよ。同時に、また、あるいは市街地に野菜を供給するという点からいっても、都市の郊外にある農地の問題はたいへん大事な問題だと思う。もちろん、それが、何か、土地の値上がりを待っているという心得違いな人があれば、それには大いに税を課すべきだと思いますよ。しかし、そうじゃなしに、ほんとうに百姓をやっているのだという人には、ぜひそれだけの税金を取るということにしてもらいたいと思います。これはわれわれの党でも提案をいたしておりまするし、新聞等で拝見すると、自民党内でもいろいろ検討されておるようでありますから、どうか、実情に即していい解決をされるようにお願いをしたいと思います。 農業問題について、最後に、森林の問題を一つだけお尋ねをいたします。 これは、佐藤総理に申し上げたいことは、昨年衆参両院で、単独の決議として、林業振興に関する決議というのをやったわけです。それをぜひとも尊重してくれ、こういうことを私は要請をしたいのでありますが、こまかいことを申し上げませんけれども、日本はフィンランドに次いで世界第二の森林国だといわれておる。しかるに、現在は、木材等は、森林資源は世界第一の輸入国になっているわけです。こういうことからいろいろな問題が起こっておるわけでありまして、特に、国有林におきましては、これは三分の一を占めているわけですが、その国有林の荒廃がはなはだしい。その一つは、ことしの予算は昨年よりも減っちゃっているわけです。全体の予算があんなにふえている中で、昨年よりも減ってしまっている。こういうことでは、とても日本の緑を守るということができないと思うのです。 私は、そもそも、この国有林を特別会計にして、木を育てて、売って、それで赤字、黒字というようなことを議論するのは、それだけで議論をするというのは、私は間違いだと思うのですよ。それ以外に緑の効用、これはまさに人類の、民族の死活に関する問題だと思うのですね、そういう緑がなくなるというような問題は。そういう大きな効用を持った問題なんでありますから、ぜひ佐藤総理には、この昨年衆参両院で単独決議をいたしました林業振興に関する決議、満場一致で決議をしたわけですから、これをあくまでも尊重してやるのだ、こういう態度を表明していただきたいと思うわけです。
○佐藤内閣総理大臣 申すまでもなく、国会の満場一致の衆参両院での決議、これを尊重することは当然のことだ、かように思いますので、あらためて私からも、いま御指摘になりました点は確認しておきたいと思います。
○西宮委員 私は、問題点の最後に、いわゆる政治姿勢というような問題についてお尋ねをしたいのでありますが、私の質問の中で、いろいろ失礼にわたる点もあるかもしれません。あるいは佐藤総理の進退について伺うというようなことなどもあるかもしれません。たいへんかけ出しのくせになまいきだなんて言って、おしかりにならないでお聞きを願いたいと思います。よろしゅうございますか。——それでは安心をいたしましたのでお尋ねいたします。 第一は、政治資金規正法の問題でありますが、先般わが党の成田委員長の代表質問に対して、佐藤総理の答弁は、過去三回流れてしまった、だからうっかり出せないのだ、こういう意味の答弁をしておられるのでありますが、しかし私は、これは決してそんなものではないのですよ。政府が通そうという考えを持っておらなかったということが明瞭だと思います。 三回出されたと言われますが、最初に出されたのは昭和四十二年の六月十六日、会期は六月三十日までであります。このときは内容はたいへんよかったわけです。あの当時の自治大臣は藤枝泉介さんでありましたが、これは実は私の高等学校の先輩なんであります。ですから非常にいい案を出したわけです。そこで、私どもはぜひこれを通したいと思ったのでありますが、ところ六回委員会を開いた中で、自民党の方が十名入れかわり立ちかわり質問をして、反対だ反対だということでつぶしちゃった。最後のときには、委員長が雲隠れをしちゃって採決ができないでしまったわけであります。それからその次は、昭和四十三年の五月の十日に出しましたが、会期は二十四日まで。その次は、会期が過ぎてから三日目に、延長された会期の中で三回目は出している。こういうことで、最初から通す考えは全くなかったのだ。こういうことを明白にしておかなければならぬ。総理は御承知だと思うのだけれども、いつもこういう答弁をされるので明白にしておかなければならぬ。私は、こういう問題をまことに次元の低い問題だと思うので、私自身こういうことを取り上げることは非常に不愉快なんでありまするが、私もこれで最後にしたい。総理があんまりこういう問題に関心がなさ過ぎるのじゃないか。 先般の園田委員の質問に対する御答弁を聞いておりましても、参議院で共産党の議長が二兆円だと言って、佐藤派の政治資金は二兆円だと言われてびっくりしたけれども、調べてみたら二億だというので安心したというようなことで、「二億も金を集めて佐藤派がそういう派閥の中の政治活動に使っておるという、そういうことはなかなか国民の理解のできることではないと思います。」なんて言って、全くこれは人ごとみたいなことを言っておられるわけですね。全然人ごとみたいなことを言っておられるわけです。どうしても私は言わざるを得ないわけであります。あるいは選挙区制の問題とからんで、いわゆる車の両輪論だということがよく言われました。しかし、小選挙区をつくったからといって、金がかからぬで済むという保証はどこにもないわけです。実例もないわけです。たとえば、奄美大島の例などを見ても全く実例は逆であります。ところが、佐藤総理はあの審議会に対しましては、政党本位の金のかからない選挙ということで提案をされておりまするが、その政党本位、それをみずから破っているのは、私は佐藤さんではないかということを言わざるを得ないわけであります。 たとえば、昭和三十九年、これは佐藤総理が初めて総理に就任をされた、総裁になられた際であります。そのときの佐藤派の資金を見ますると、これは自民党が使われた総額の三割七分に相当するわけであります。一つの派閥が一つの政党の四割近い金を使って、その政党内に影響を及ぼすということになれば、とうてい政党本位の政治ができるというようなことはあり得ないと思う。そしていわばその金で勝負をいどんで政権の座につかれた。朝日新聞はこれを評して、わが国の首相の地位が金で左右され、金で維持されていると言っても言い過ぎではないということをいわれ、毎日新聞は、金で買う総理・総裁の座は、物価高に悩む国民の嘆きをよそに黒い値上がりを続けておるといっており、読売は、総理のシリーズ問題の中に、具体的にその実情を報告をいたしております。こういうことでは、私は、いわゆる金のかからない政党本位の政治、こういうことを総理が言われましても、どうしてもわれわれには全くうつろにしか聞こえないわけであります。失われた政治への信頼を取り戻すために、私は総理が一大決意をもってこれに当たってもらわなければならぬと考えるわけでありますが、まあ御答弁をいただきたいが、時間がなくなってまいりましたので、私は次へ参りたいと思います。(「やれやれ」と呼ぶ者あり)まだ少し問題がありますので……。 先般、例の四次防の問題に関連をいたしまして、防衛は一瞬の停滞を許さない、だからやったんだという説明がなされました。このことを申しましたらある人が私に言いました。それは二字足りないのだ、防衛は一瞬の停滞を許さないのではなしに、防衛産業は一瞬の停滞を許さないのだ、二字足りないのだと言いました。そうしたら、次の人が私に言いました。二字ではなしに四字足りないのだ、それは防衛産業ではなしに、防衛産業献金は一瞬の停滞を許さないのだ、そう言って私に教えたわけであります。私はたいへんにびっくりいたしました。そんなことはないんじゃないかと思って調べてみると、なるほど、私は昭和四十年来調べたのでありますが、毎年毎年そのいわゆる防衛産業からたいへんな献金がなされておるわけであります。こういうことになりますると、当然にいわゆる産軍癒着の問題が起こってくる。こういうことは当然だと思うのですね。アイゼンハワー大統領が大統領を辞任される際に、一九六一年一月でありますが、大統領を辞任される際にたいへんに悲痛な演説をされている。アメリカが、軍需産業が恒久化して巨大化して、そのためにアメリカの政治はこれによって左右されてしまう、これはまさに祖国がかつて経験したことのない重大な脅威である、こういう演説をしておるのでありますが、まことにそのとおりだと思うのであります。私は、日本にそういう危険が刻々と迫っているということを指摘せざるを得ません。 このいわゆる防衛産業の献金は、自民党の方々の各派閥に献金がされておるのでありますけれども、ふしぎなのは、佐藤派にはないわけであります。しかしこれは、決してないからといって佐藤さん安心をしていただいては困る。それは、私は佐藤総理にぜひ考えていただかなければなりませんのは、いわゆる佐藤派なるもののこの報告がきわめて——きわめてと言うか、最も公正ではないわけであります。つまり、政治資金規正法に基づいた合法的な処置ではありまするけれども、寄付以外のものは発表しなくてよろしい。そういう法の盲点をついて、佐藤派が——私は過去十年間の資料をここに持っておりまするけれども、佐藤派が毎年最も悪いわけであります。たとえば、〇・何%というのではなしに、佐藤派は〇・〇〇何%、PPMと言ったほうがいいと思うのですね、そういう届け出がなされておるわけです。私は、これはいま初めて申し上げるのじゃないですよ。私は数年前にも本会議でも申し上げた。私は、これでは最高指導者としての佐藤さんの御姿勢に欠けるところがあるのじゃないかということを感ぜざるを得ないのでありますが、その点について何か御所見がありましたら一言お聞かせを願います。なければ先に進みます。——格別なさそうですな。それじゃ進行いたします。まあ御答弁にも困るのかもしれません。 この前の沖繩国会の際に、ちょうどあのときは西村防衛大臣がおやめになりました。そのとき、わが党の細谷委員が質問をいたしましたのに対して、佐藤総理はこう答えておられます。「私は、私自身の政治責任については、私自身十分考えておるつもりでございます。これは皆さん方の御意見も十分承っております。したがいまして、ただいまどうこうするということは申しませんけれども、私自身がその責任は私自身で解決する、そういう決意であることをこの機会にはっきり申し上げておきます。」こういう答えをされておるわけであります。 そこで私は、あのように途中でおやめになった大臣、在職中におやめになった大臣、これを調べてみますると、戦後四十五名おられます。その中で、佐藤内閣以前十九年間にやめられた方が三十三名、佐藤内閣七年の間にやめた方が十二名。ところで目立った特徴は、いわゆる大臣としての適格性を問われた、こういうことでやめられた方は、その佐藤内閣以前にはごく少ないのであります。それは政治献金で一名、造船疑獄で一名、それから御承知の泉山三六さん、ただしこの方は、自分の間違いを発見すると直ちに大蔵大臣をやめ、同時に国会議員を辞任をいたしております。もう一人の方は、これは御本人の責任といえるのかどうかちょっとわかりませんので、私は申し上げたいと思うのでありますが、それは例の犬養法務大臣であります。まあこの方も、あるいは本人の適格性を問われたというのかもしれませんが、とにかくこの方は、昭和二十九年の四月二十一日午前十一時二十分に指揮権を発動いたしまして、午後の一時四十分に辞表を提出をいたしております。それから以後、快々として楽しまないで、ついに他界をされたわけでありますが、娘さんの犬養道子さんが、なくなられたときの模様を次のように書いております。「政界の孤児と人は彼を呼ぶ。実際にそうであった。指揮権発動の悪名は高く、実際に、彼のおかした政治的・人間的あやまちは多いであろう。だが彼は自身それを知り、悩み、より純粋な美しい人間的な世界に到達したいと切望していた。グレゴリアンへの愛はその心のいわば象徴である。私も聖歌隊と声を合わせて最後の門出を送った。親しい者の歌うグレゴリアンの曲調に包まれて、パパはその時「孤独の人」ではなかった。」こういうふうに書いておるのでありますが、私は、むやみにぐちっぽい、しめっぽい、そういう追懐談などを聞くよりは、まことに万感無量の思いを込めて、この娘さんは当時をつづっておるのだと思うのであります。私は、しいて言うならばこれだけだと思うのです。 反対に大きな特徴は、佐藤内閣以前にやめた方々の中で十四名は、自分の政治的な見解が違う、こういうことでやめたのであります。たとえば官房長官と対立して罷免をされた平野力三農林大臣、遺家族援護の問題で党と衝突をしてやめた橋本龍伍厚生大臣、文教政策で対立をした天野貞祐文部大臣、麦価、麦の値段、これで対立をいたしました内田信也農林大臣、あるいは吉田総理が懲罰委にかけられるので、これに同調をしたというのでやめさせられた廣川弘禅農林大臣、あるいは国防会議構成法を提案をしたけれども、それが国会で審議未了になったというので直ちに辞表を出した杉原荒太防衛庁長官、あるいは吉田総理の最後には、吉田総理に退陣を促して、吉田総理に断わられるや直ちに辞任をし、同時に党には離党届けを出した安藤正純代議士等々、こういう方々がおるわけですよ。ところが、ふしぎなことに佐藤内閣になってからは、こういう方、つまりみずからの政治信念を貫いて、決然として辞表を出して台閣を去ったというような方は一人もいないわけであります。私は、このことは佐藤総理のリーダーシップのしからしむるところ、たいへんに御同慶にたえないと思うのでありますけれども、私はそうは言い切れないんじゃないか。私は、いわゆる政治感覚がかなりに低下をしているんではないかというふうに感ぜざるを得ないのであります。 たいへん失礼なお尋ねをして恐縮でございますが、たとえば、先般大蔵大臣もあるいは防衛庁長官も、政府修正が行なわれれば辞表を出すということを盛んに言われたわけですね。しかし、辞表を出されたという話をその後聞かない。一体どういう御心境なのか、これはひとつぜひ聞かしていただきたいと思います。どうぞお二人からぜひ……。
○佐藤内閣総理大臣 私がお答えいたします。 いろいろ、私の内閣になってからずいぶん閣僚がやめた、またそれをよく整理されて、またわかりやすく説明された、たいへんその点では私も敬意を表しますが、しかし、必ずしも全部が全部そのとおり当たっているとも思いません。私は、それぞれ違うように思っております。こういう事柄で、どう違うとかこう違うとかいうような議論をするつもりはございませんが、とにかく一身、進退を決するという場合には、それ相応のちゃんと理由があり、またみずからそういうのを理由づけて、そして進退を決するものであります。私自身の進退につきましても、ただいまいろいろ、自分で決すると言っているじゃないか、しかし一体いつ決するのか、そのお尋ねがございませんでしたが、そういう意味を含めての御意見の開陳だったように思っております。 ただいまやめろと、かように仰せになるのなら、私は、ただいまはやめませんとはっきりお答えをいたしておきます。しかし、私自身がやめなければならないような事情になる、そういうときになれば、私自身で責任をとるつもりでございます。このことだけははっきり申し上げておきます。 また、ただいま二人の名ざしで、大蔵大臣並びに防衛庁長官、この進退についてのお話もございました。これは、あえて私がその二人の大臣から答弁させないで私自身がお答えするのは、私自身の責任においてこの問題を処理したつもりでございます。したがいまして、私の責任を問われるということなら、これは別でございますが、ただいま、二人の大臣が私と離れて進退を決せられる、こういうような問題でないことだけ、この点をはっきり申し上げて御了承願いたいと思います。
○西宮委員 お二人にお尋ねをする際も、まことに失礼だということをお断わりをしてお尋ねをしたので、私は、そのことはたいへん失礼なことだと思っております。したがって、総理がかわってお答えをいただいたので、私はその点は満足をいたします。しかし私は、さっき申し上げたように、前の時代と比べて、どこにどういう違いがあるのかわかりませんけれども、あまりにも大きな違いがある。これが私は、そういうみずから政見を異にして、そのために決然として台閣を去った、こういう方が一人もおらないというのは、佐藤総理のリーダーシップのしからしむるところと申し上げましたけれども、私はざっくばらんに申しますならば、むしろ、いわゆる三百議席にあぐらをかいた、いわばぬるま湯につかったようなそういう気持ち、したがってそういうところから、責任感というのはきびしく反省されないのではないかという感じがするわけであります。佐藤総理になられましてから、佐藤総理の手によって選ばれた大臣は、延べ百五十五名であります。これだけの大臣がおられて、私はただ一人の安藤正純はいないのか、そういうことを考えると、まことに感慨無量な気がするわけでございます。 佐藤総理がただいまいみじくも言われましたように、問題はいつやめるか、いつ責任をとるか、そういうことではないのかと言われましたので、私は、実は私の言おうとしたことを先取りをされたわけです。私が伺いたいのもその点であります。先ほど朗読をいたしました細谷委員に対する答弁は、これは明らかに、その政治家の答弁としては進退をきめるということですね。やめるということですね。だから、したがってそうなれば、いつなんだということでありますが、いままで、佐藤総理のやめるではないかといわれました、うわさをされました問題は、沖繩国会を終了したときというのが一つでありました。しかしその以前に、サンクレメンテの会談があるというので、これに出席をするというので、それではそれまではやめないんだなというので、新聞などはたいへん驚いたわけであります。しかし、あのサンクレメンテの会談というのは、そもそもあれはニクソン大統領主催の、新旧総理の歓送迎会だというふうに実は見る人もあったし、私もそういうふうに思っておったのでありますが、ただ、新旧総理の歓送迎会にしては、新のほうが複数の閣僚が行かれましたので、ちょっと戸惑ったわけでございます。 そうなりますると、今度はこの予算が通ったとき、予算が通らないと、いまの経済政策等で困るというので、予算が通ったときということが論議をされております。そうしますと、(「沖繩が返ってくるまではしようがないよ」と呼ぶ者あり)沖繩が返るまでといういわゆる不規則発言がただいまあったわけでありますが、私は、沖繩が返ってきたときおやめになったのでは、これは、サラリーマンでいうならば定年退職だと思うのですよ。私は、サラリーマンが何かの間違いを起こして責任を負う、責任を明らかにすると言いながら定年退職でやめて、それをあわてて責任をとったのだといっても、これは通用しないと思うのですな。 そうすると、私の質問は、総理がみずから取り上げられたように時期の問題なんですが、時期はいかがでございますか。
○佐藤内閣総理大臣 先ほど答えたように、時期は申しませんとはっきり申しておりますので、それで御了承いただきます。
○西宮委員 時期は申しません、ちょっとこれでは、私もこれ以上追及のしようがなくなってしまったわけでありますが、それでは重ねて申し上げます。とにかく先般答弁をされたことは、その責任をとるのだということを明確にされ、そうしてその時期だけが問題だということを言われたので、それでは私は明確にそれをお答えがないと——お答えがないといっても、いまここで答えなくてもよろしいですよ。そういう実際の行動でお示しにならなければ、私は政治道義は地にすたれてしまうと思うのですよ。したがってここで、沖繩国会で答えられたことあるいはきょうお述べになったこと、これは時期はとにかくとして、政治家としてその進退を明らかにするのだ、こういう決意であるというふうに理解してよろしいかどうか、重ねてその点だけお伺いをいたします。
○佐藤内閣総理大臣 先ほど来私の進退問題に触れる、こういうことを前もって知らせていらっしゃったのですから、私はそれに触れたからといって、別に何とも思っておりません。しかし、ただいま申し上げますように、いついつやめる、こういうことを私が申し上げる、そういうつもりはございません。これだけは、ただいま申し上げるようにお断わりしておきます。
○西宮委員 それじゃ、時期がいつだということはお預けにいたしておきましょう。これは委員長にお願いして、ひとつ理事会ででもやってもらいますか。とにかく私はお預けにいたしておきます。 とにかく、私はたいへん失礼なことを申し上げたので、その点はお許しをいただきたいと思いますが、私が申し上げた趣旨は、ほんとうに政治道義が地を払おうとしておるのではないかということを心から憂慮するわけであります。それは、先ほど来ことばを費やしてるる申し上げましたので、十分御理解いただいたと思うのでありますが、こういうことでは全く政治責任、政治感覚、そういうものが麻痺してしまっておる。したがって、国民の政治に対する信頼がますます薄れていくということを衷心心配をいたしますので、お尋ねをし、また総理の見解を伺ったわけでありますから、くどいようでありますが、その点を繰り返し申し上げておきます。 次には……(「まだやるのか」と呼ぶ者あり)まだ時間が十分あるわけです。沖繩恩赦の問題でお尋ねをいたします。 昨年の十月にお尋ねをいたしましたときに、最後にお尋ねをいたしました要点は、この沖繩恩赦が行なわれると仮定をいたしまして、それに選挙違反を含む、そういうことになりますと、それはいま行なわれております選挙粛正運動、そういうのに妨げにならないか、こういう点をお尋ねをいたしましたところが、総理の御答弁は、選挙違反が恩赦の対象になるからといって、明正選挙、明るい正しい選挙、明正選挙と矛盾をするとは思っておりません、こうお答えになっておられます。現在でもそのとおりでございましょうか。
○佐藤内閣総理大臣 現在でもそのとおりでございます。しかし、私はっきり申しておきますが、ただいま沖繩恩赦というようなことは考えておりませんから、中身についてとやかく申すことはございません。しかし、恩赦というものとただいまのような明正選挙、それと選挙違反が恩赦になったからそれをそこなうのだ、こういうような趣旨のものでないこと、これは、恩赦の特質からそういうことは御了承いただきたいと思います。
○西宮委員 佐藤総理はそういうふうにお考えかもしれませんけれども、世間ではそう思っておらないわけですね。したがって、先般もその市民運動の団体から法務大臣にこの問題について申し入れがなされ、あるいは、実は一月の二十日に開かれた選挙制度審議会の総会においてこのことが決定をされたわけであります。私もその審議会の委員の一人であります。私も出席をいたしておりましたけれども、私が提案をしたわけではございません。発言はいたしましたけれども、私がこの問題を持ち出したわけではありません。しかし、皆さんの間からこの問題が期せずして出てまいりまして、そういうことをやられてはたいへんだ、こういうことでこの選挙制度審議会においては、総会においてこのことを決定をして、それは会長と副会長がその旨佐藤総理に申し入れをするということになりまして、二十五日の日に高橋会長と小島副会長が総理に会われて、そういうことをされては選挙粛正のために、選挙運動のためにたいへんな支障を来たす、したがって、これは十分に考慮してほしい、こういうことで申し入れをされたのであります。それに対して報告を聞きますると——報告がその後あったわけでありまするけれども、総理は、その趣旨はよくわかった、十分慎重に考える、こういう答弁をされたと報告を伺ったわけであります。その趣旨がわかったならば、私は、いまお答えのような、それが選挙違反を恩赦で犯罪をパアにしてしまうということが明正選挙の妨げにならない、こういうことはとうてい言えないと思うんですね。私は、それをあえてそれは妨げないと言われるならば、重ねて伺いたいと思うのです。いかがですか。
○佐藤内閣総理大臣 大体恩赦というものは、犯罪を行なった、そういう者を何かの国家の慶事の際にそれを棒引きにしよう、こういうもので、別に奨励するのではございません。私は、そういうのが恩赦だ、かように思っております。これは、別に窃盗の罪人が恩赦になったからといって、窃盗を別にすすめるわけのものじゃない、かようなものだろう、かように理解いたしますので、ただいま言われるように、何か特殊な政治的意図を持つ、こういうことのあるものでないことを、はっきり申し上げておきます。
○西宮委員 私は、そこがまた、さっき指摘をいたしましたようないわゆる政治道義が退廃をするという重大な理由になっていると思うのであります。このいわゆる選挙制度審議会の委員なるものは、これは全部佐藤総理が任命した人ばかりなんですよ。そういう人がこぞって、それはたいへんだということで総理に申し入れをしている。ところがいま伺ってみると、そんなことは問題じゃない、そういうことでは私はたいへんだと思う。 参考に申し上げまするならば、たとえば最近行なわれた三回の恩赦を申し上げると、国連加盟の恩赦では、その当時第一審において選挙違反で有罪の判決を受けておった者が八万四千八百八人であります。それで大赦で救われた者が六が九千六百二十七人。皇太子御成婚の恩赦の際には、第一審で選挙違反の有罪判決を受けておった者が四万九千六百七十四人、恩赦で救われた者が四万五千七百九十七人。明治百年恩赦におきましては、第一審で選挙違反の有罪判決を受けておった者が七万五千七百六十四人、恩赦で救われた者が十四万八千七百三十二人。ただし、この半数はいわゆる道交法違反であります。この際は道交法を取り上げましたので、道交法違反者であります。したがって大体半分の七万何がしということであります。したがって、ここでも選挙違反の大半は、ほとんど九割程度は救われている、こういうことになっております。従来の実例は、いわゆる恩赦なるものは若干の選挙違反以外の者も対象にはいたしておりまするけれども、これは実はいわばていさいをつくろったにすぎないのです。大体九割以上は、この選挙違反が該当になっているわけであります。もし今度沖繩恩赦が行なわれるといたしますると、この前の衆議院の選挙の際の選挙違反の起訴者が九千九十人、それから昨年の地方選挙の起訴者が一万八千五百五十人、参議院の選挙の起訴者が千七百三十三人、大体三万人近いわけであります。こういう人が全部パアになってしまうわけであります。そういうことでは、せっかくその取り締まりに当たっている第一線の警察官などは、もう全くやる気がしなくなってしまう。さらに、そういうことで現に昨年などは、もう来年は沖繩恩赦必至だ、したがってもう金を使うだけ使ってやっただけ得だ、こういう声がちまたにあふれておったということは、当時の新聞などをごらんになるとよくわかるわけであります。私は、そういう実態にもかかわらず、佐藤総理が、それは明正選挙運動には何も支障にならないのだ、こういうことを言っておるならば、まさしく政治道義は地を払ってしまうということを強く警告せざるを得ません。したがって、私は、総理が相変わらずそういうことを言っておられるならば何をか言わんやで、これは外部の運動等を通してこのことを、さらに総理の反省を促さなければならぬと考えます。 最後に一つ伺いますが、これは主税局長がおられましたら伺いたいと思うのでありますが、選挙費用と税金の関係であります。これは少し常識を逸脱すると思われるものがあるのであえて申し上げるわけであります。選挙費用として収入されたものは、これは公職選挙法に基づいて届け出をいたしますると、これには税金がかからないということになっているわけです。前回の選挙の際に、収入が一千万以上あった方を拾ってみますると、Aという方は、北のほうから申し上げますが、A氏は一千四百七十一万八千五百円、支出は、つまり選挙運動の費用は三百二十六万一千四百二十三円。B氏は一千五十四万八千円、支出は二百四十九万三千百十二円。Cという方は一千四百二十万五千円、支出は三百三十七万三千六百三十五円。そういたしますると、この収入、支出を比較いたしますると相当な開きがあるわけでありますが、この開きは、これは全部要するに個人の収入になってしまいまして、これは何ら税の対象にはならぬ、これが現在の税法だと考えまするが、主税局長、それに間違いございませんか。
○高木(文)政府委員 現在、所得税法では、公職選挙法によります、適用を受けます選挙にかかる選挙の候補者が、選挙運動に関して受けられました収入につきましては非課税とするということが所得税法上きまっております。ただ、その場合に、それが選挙に使われる。使われないということと全く無関係に非課税になるという趣旨ではなくて、法の精神は、公職選挙法上の届け出がある、収入の届け出があるというものは選挙に関するものであるという趣旨から、それが当然に選挙に関連して使われるものだという理解のもとにそういう規定が置かれるものと私どもは理解いたしております。
○西宮委員 法の趣旨は……(「時間だ」と呼ぶ者あり)まだあるんですよ。いえいえ、まだあります。法の趣旨はあるいはそういうことだったかもしれません、立法の趣旨は。しかし実際は、いま申し上げたように——私は、さっきA、B、Cと申し上げたが、まだたくさんあるんですよ。ただ代表的なもの——代表的と申しますか、北のほうから拾ってきただけでありまして、たくさんある。これはちっとも、国税庁のほうでも、それじゃそれが実際に選挙に使われたかどうかというようなことは、何ら検査も何もしておりませんよ。 私は、それじゃもう一つだけ例を申しましょう。たとえばある方でありますが、五千七百八十二万七千円の収入があるわけであります。ところが選挙に使った金が六十一万九千九百八十六円であります。私はこの方を知っております。この方は、実際の告示になってからの選挙運動には非常に金を使わないという方で、私はその点を深く敬意を表しておるのであります。ただ六十一万九千円というのは少し何かまゆつばという感じがいたしますが、この方は非常に少ない金で選挙運動をやっておられるということを承知をし、かつ敬意を表しておるわけであります。したがって少ないのだろうと思いますが、同時に、収入のほうは約六千万近いわけでありますよ。この六千万の収入というのも、これも間違いではないと思います。なぜならば、選挙のたびごとに、たとえば十当九落であるとか九当八落であるとかそういうことが巷間うわさをされるのでありますから、間違いではないと思う。そうすると、この方などは六千万近い収入を得て、使った金が百万足らず、こういうことになるので、その差額は全然まるもうけということになるわけですね。 私は、これは選挙運動には金がかかるのだ、そういう趣旨で最初立法をされたのかもしりませんけれども、あまりにも庶民の感覚とは違い過ぎると思う。庶民の場合は、あるいは中小企業等では、一万、二万の収入を目の色を変えて国税庁はさがすじゃありませんか。それほどまでして一万、二万の収入を血眼になってさがしておるのは国税庁です。ところが、この政治家の選挙運動については六千万近いものがまるまるただもうけだ、こういうことになっても全然課税の対象にはならぬ。こういう制度は、私は少なくとも庶民の感覚からいえば妥当なことではないと思う。佐藤総理いかがでございましょうか。
○高木(文)政府委員 ただいまお示しになりました事例を私は詳しく承知いたしておりませんが、もしお示しのように非常に収入があって、そして選挙にそれをお使いにならなかったという事例でありますれば、その所得については雑所得として当然申告をしていただき、また申告がなければ、税務署なり国税局なりで調査をいたすべきものでございますので、そのように処理すべきものと思います。
○瀬戸山委員長 西宮君、時間が切迫しております。
○西宮委員 これで終わりにいたします。 そのように処理すべきものだと言われまするけれども、現実は絶対やっておりません。このことは、国税庁で出されたものあるいは衆議院で出したこの解説書、これなどにもその他明瞭にうたっておるわけであります。したがって私は、これは全く税の対象になっておらぬ、こういうことでぜひ検討してもらいたい、こういうことを申し上げて、これで終わりにいたしたいと思います。
○瀬戸山委員長 これにて西宮君の質疑は終了いたしました。 次回は明三月一日午後零時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。 午後六時二十四分散会