法務委員会 第30号
- 発言数
- 116 件
- 登壇者
- 21 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1972/06/07
会議録
○松澤委員長 これより会議を開きます。 おはかりいたします。 本日、最高裁判所西村民事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○松澤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ————◇—————
○松澤委員長 法務行政に関する件及び検察行政に関する件について調査を進めます。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鍛冶良作君。
○鍛冶委員 私は、去る五月三十日だったと思いまするが、テルアビブの空港において行なわれた乱射事件について、その犯人はすべて日本人であったということを聞きましたので、われわれにとってたいへんな驚愕を覚えた次第でございます。それで、政府においてもいろいろこれに対して対処せられておると思いまするが、特にこの問題は、法務の責任者である法務大臣として強くお考えがあったであろうと思うし、また、考えてもらわなければならぬものだと考えますので、その点について、二、三所見を伺いたいと思うわけであります。 第一に、この事件が三人の日本人によって行なわれたという事実は、今日疑いのない事実のようでございます。しかも、この三人の日本人は、パレスチナのゲリラ隊といわれるPFLPと聞いておりますが、それらのものに使嗾されたと私は考えまするが、使嗾されて日本人が行なった、こういうものに日本人が特に白羽の矢を立てられたということに、重大なる問題があると思うのであります。 そこで、かようなことが起こりましたために、現在では世界の各国人が日本人というものに対して、たいへんな恐怖を感じておるということであります。ことに、昨日ある人の実例を聞きますると、外国で飛行機に乗りまして、隣に日本人がおるというと、それを避けて横へ行くそうです。ことにこれが婦人に多い。何ゆえにそういうことをするのだと言って聞いてみると、どうも日本人というのは手段を選ばない、また人の命はもちろん、自分の命から大体軽視しておる、こういうあぶない人間に近寄っておったら、何をやられるかしれぬからそばへ寄らない、こういうことを言っておるということでございます。かようなことが世界に流布せられるとすれば、われわれ日本人としてもたいへんなことだと申さなければなりません。 そこで私は、この事件の実相を明らかにするとともに、日本人というものは、そういうめくらめっぽうに手段を選ばず暴挙、騒乱をやるものであるかどうか、また、日本人というものは命を粗末にする、命を捨てるのがやまと魂であると言っておるそうですが、そういうものであるかどうか、こういうことは私は世界に宣明して、ほんとうの日本人というものをこの機会に知らしてもらわなければならぬと考えるわけであります。 そこで、政府といたしましては福永特派大使を派遣して、これに陳謝しもしくは弔意をあらわしたり見舞いをしておられるそうでありまするが、この事件といたしましては、政府の考えはけっこうでありまするけれども、私は法律上考えなければならぬ問題が中心であろうと思うのであります。そうなりますると、その中心の行政の長官である法務大臣にとくと御考慮を願い、また、考えておられることであろうと考えまするので、この問題に対しては、いま私が申し上げましたようなことに対して、法務大臣はどのように考えておいでになりましょうか。そしてまた、法務大臣としての対策を考えておられると思いまするが、おられるかどうか。考えておいでになるならば、どのようなことをお考えになっておるか、この点をまずお伺いいたしたいと思うのであります。
○前尾国務大臣 今回のテルアビブの空港の射殺事件というものは、ほんとうに非常に不幸な事件であります。こういうことが繰り返されてはそれこそたいへんな問題であります。 ただ、この問題についてわれわれは、やはり深いところに根があるのでありまして、いろいろな段階を考えていかないと、問題の解決にはならないというように考えるのであります。外国で行なわれた事件でありまするから、またいろいろなそそのかしを受けたという事件でありまするから、そういうことがどういうふうな形式によって行なわれたか、こういうことがまず第一の問題点であります。 ところで、なるほど岡本何がしは二月の二十九日に日本を出国いたしておるわけであります。その出国につきましては、観光の目的によって出国するということで旅券を持っておるわけであります。率直に言って、年間百万人以上の人が観光の目的で出国するという際におきまして、その一人一人に出入国の管理事務所で一々調べるというようなわけにはまいりません。まず旅券があれば、また事前にいろいろ指名手配でも受けていないと、なかなかそこでつかまえるというわけにはいかぬと思います。またもう一つの問題、昨年の十月から十一月にかけまして、アラブのテロの一員と思われるのが、やはり観光の目的で入国しておるわけであります。それはある映画社が行なっております映画について、あちこちで映画が行なわれた際に、その外国人がその映画の行き先についていったというような問題で、多少不審に思いましたところ、それが一カ月足らずで帰ってしまった。そのあとでいろいろなことを調べておれば、あるいは多少なりとも片りんがわかったかもしれませんが、普通の観光の目的で一カ月足らずで帰ってしまった、こういうような問題でありますが、これまた観光の目的というので、しかもちゃんと旅券を持っておるわけでありまするから、なかなか出入国でそれを拒否するということは、実際問題としてできなかったのではなかろうか。 そうなりますと、私はもう一度出入国についても掘り下げてみなければなりません。率直に申しまして、たとえば観光の目的というようなことで出国いたしましても、一カ月ということで出まして、一年たって帰らなくてもどうしようもない。また、虚偽の記載として考えられるか考えられぬかというような問題、帰ってきました際にどういう処置をとるかという問題について、いま検討さしておりますが、実はそれは簡単に押えるということになりますと、かえって一般の旅客に非常な迷惑を及ぼすというような関係がありますので、もう少しこれは突っ込んで検討していかなければならぬ問題だと私は思っております。 ただ、法務省としましては、出る前にただいま申したような問題があるわけでありまして、これを、少なくとも国内の治安の問題あるいは犯罪者の問題として考えていかなければなりません。ただ、彼が学生であるという点から考えてまいりますと、学校では気がつかなかったであろうか、こういう問題が一つあるわけであります。その点につきましても、彼は出国をいたしましたあとで、友人に託して休学届けを出しておるわけであります。そこで、学校当局としましてはどうも不審に思って親を呼び出した。そして親に聞いてみますと、最近は親のところにも通信があるから、本人の観光の目的で海外に旅行しておることは認めてやってもらいたい、休学についても認めてやってもらいたい、こういう話で、学校当局も、この事件に関する限りは親を呼び出してそれだけの手を尽くしておりますから、そう大きな手落ちがあったとは考えられないわけであります。しかし、こういう問題についても、まだまだ率直に申しまして、管理していかなければならぬ問題があったのではなかろうか。また、これはやはりいろんな人の一つの組織的な活動に違いないのでありまするから、その組織的な活動について警察当局あるいは法務当局として、もっともっとそういうものに対する警戒を厳重にし、あるいはその内部にわたっていろんな真相をつかんでいくべきではなかったろうかというような点につきまして、これまた非常に掘り下げていかなければならぬ問題だと思っております。 したがって、学校としましても、法務当局としましても、警察当局としましても、あるいは出入国管理の関係から申しましても、また外務省の旅券という問題につきましても、その虚を全部つかれてきておる。そういう点について何らか反省をし、改善する道はないであろうかということで、いませっかく検討いたしておるのでありますが、ただいますぐ結論を出して、これならという即効的な方法がないようでありますのは、非常に遺憾に思っておるわけであります。 しかし、なかなか根の深い問題でありまして、そういう意味合いから、あらゆる点からもっともっと掘り下げて検討していかなければならない、今後絶対にそういうことがないのだと断言できるところまでわれわれは追及して考えていくべき問題だ、かように思っておるのでありますが、まだ事件発生後間もありませんのと、まだその他の人間の行動について、すでに本人が二人死んでおりますし、その背後におきます関係が、現在の岡本某が言っておりますのは、はたして信が置けるかどうかというような点もありまして進捗していないということで、今後の問題として大いに深く掘り下げて検討していきたい、私はかように考えておるわけであります。
○鍛冶委員 大体の御趣旨は承りましたが、われわれはほかに情報機関も持っておりませんから、新聞によるほかありませんが、新聞紙上にあらわれておるところから申しますると、ただいま大臣から言われたほかに、なおまだもっと深く論じなければならぬものがあるように思いますので、その点一、二をあげて大臣の御所見なり、また関係官庁の方々の御意見を承りたいと思います。 第一は、岡本公三の供述中に、一九七〇年ごろから京都付近に組織を持っておった、そしてパレスチナゲリラと連絡をとっておって本件を実行した、こういうことばがあるのです。もしこれが事実であるとするならば、二年間もそういうものがわが日本国にあったにもかかわらず、これに気がつかなかったというか、看過せられたということは、はなはだどうも遺憾に存じ、また国民全体もこれに対しては、こういうことではたいへんだという不安を持っておる。世界の人々も、日本でこういうことをやっておって二年もわからぬということになれば、これはどうも困ったものだと考えるかと思いますので、この点の事実をひとつ明らかにしていただきたい。これが一つ。 しかも、いま大臣のおっしゃった映画の関係ということであるかもしれぬが、バッサムという者が来て連絡をとって岡本を連れていったと、名前までもあげておるのでありますが、これがわからなかったということは遺憾がなかったか、また、今後これに対してどのように考えられるか、これをひとつとくと深い考えの上で御答弁を願いたい。 その次に承りたいのは、この三人のほかに丸岡修という者がおったと供述しております。また、昨日来のテレビ、ラジオその他けさの新聞によりますと、このほかにもまだ五人目の者がおって、日本へ来ておるはずだということです。しかも、その者は日本へ戻ってきて要人をねらう計画をしておる、かように申しておる。これはどうもはなはだ穏やかならざることでありますが、こういうことがある以上は、たいへんな問題として注意しなければならぬと思うが、この点の有無及びこれに対する対策を伺いたい。 それからもう一人、重信房子という者も日本に来ておるということだが、これはこれに深い関係があるのだが、わかっておるのかどうかお聞きしたい。 そして、こういう組織があったかないか、もしあったとすればたいへんだが、今日どのようにしておられるか、今後どのようにしてかようなものを絶滅するという確信、手段があるか、この点をお伺いしたいと存じます。
○丸山説明員 私どもの関与しております範囲内で御答弁申し上げたいと思います。 まず、一九七〇年ごろ京都にパレスチナゲリラの出張所とでも申すべき組織があって、これが活動しておって、岡本がこれと連絡があったかということでございますが、私は実はその新聞記事を見ておりませんが、私どもに外務省を経由いたしまして来た、先方のイスラエルの捜査当局が取り調べをいたしました調書の中には、そういう事実はいまのところ出ておりません。したがいまして、この日本の国内にパレスチナゲリラの出先ともいうべき機関があって活動しているという実態につきましては、実は私ども一番関心を持っておるところでありますが、現在までのところ、捜査上そういう事実を裏づけるようなことが出ておらないという状態でございます。 それからバッサムあるいはパッサムという男が日本に来て、これと接触をして、岡本がパレスチナに行く決心を固めた、こういうお話でございますが、これは確かに当初の彼の自供にはそういうことばが出ておりますけれども、その後自供をくつがえしまして、このバッサムという人間に会った事実がないということを言っております。それからこれはまだ非公式でございますが、バッサムというのは、同じくこの共犯で死んでおります奥平という男がおりますが、これのアラブ名であるという一説もございます。 それから三番目の丸岡修でございますが、これはレバノンの中にございますアラブゲリラの訓練所で一緒に訓練を受けた日本人ということで、岡本の供述の中から出ておるわけでありますが、岡本の言によれば、彼が五月の下旬にヨーロッパに向けて、ただいま申し上げました奥平とかあるいは安田、こういうグループと一緒に出発をいたしました時点においてベイルートに残っておるということで、以後は彼の推測になるわけでございますが、おそらく日本に帰ったのではなかろうかということでございます。したがいまして、私どもといたしましては、その丸岡修という名前で出てまいりました実在の人間が国内におるのかどうか、それが彼の言うゲリラの訓練を一緒に受けた人物であるのかどうか、それからいま申しました日本に現実に帰っておるか、あるいは海外におるのかという点について、ただいま調査中でございます。 それから重信房子というのがございますが、これは元赤軍の中央委員をしておりました人物でございまして、昨年の二月にベイルートに向けて出国をいたしました。そしてベイルートでつい最近までアラブゲリラといいますか、解放戦線に協力するような形で生活をしているということが、これは外務省の御協力で判明をいたしております。問題になりますのは、この重信房子が出国をいたします直前に、今回の被疑者の一人でございます奥平剛士と結婚をいたしまして、それで出国をしておるのでございますが、当時実質的な夫婦ではなくて形式的な夫婦関係ということで、奥平を手引きして海外に出させるというための便宜手段ではないかということが言われておったのでございますが、その実情につきましては、いまだ解明されておりません。ただいま調査中でございます。重信房子が日本に帰っておるかどうかということについても、ただいま調査中でございまして、はっきり確認はいたしておりません。 それから、こういった問題についての私どもの立場からの対策でございますが、われわれの捜査陣容も限られておりますので、在来、国内の治安対策という点につきましては重点主義を取りまして、街頭行動その他において指導的な役割りを演ずる各セクトの幹部について、徹底的にこれをマークしてやるという方針でやってまいっております。したがいまして、この方針はそのとおり継続するわけでございますけれども、今回の事案に照らしておわかりいただけますように、いわゆる各セクトの指導的な人物ということではない人物でございます。いずれも多少赤軍なりあるいはその他のセクトにつながりは持っておりますけれども、いわば私どものことばでいいますノンセクトラジカルという部類に属する人物でございまして、いずれも日本の国内における活動につきましては、一部を除きまして、特に過激な行動に出て犯罪を犯し、逮捕されるというような前歴のない者であるということで、今後こういった潜在的な過激グループ、あるいは過激的な人物ということについては、さらに取り締まりの強化を期してまいらなければならないというふうに考えておるわけでございます。そのために、昨年から一般の御協力を得てお願いをしております、いわゆるアパート作戦などによりまして、広く民間の御協力を得てこの実績をあげてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。 それと同時に、いわゆるハイジャッキングあるいはシージャッキングというものを警戒をする、あるいは彼らのいうPBM作戦、こういったものに対応いたしまして、在日公館の警戒、それから空港の警戒、あるいは要人の警護、こういうものを徹底いたしたいというふうに考えております。 それから銃砲、爆発物の規制の取り締まりも、さらに強化してまいらなければならないことは当然のことだと思うわけでございます。また、今回の事案に照らしまして国際的な連絡協調がいかに大事であるかということを、私どもはつぶさに痛感いたしたわけでございまして、それぞれの国の捜査機関とよく連携を保ちまして、こういった過激な、治安を乱すようなおそれのある人物の往来につきましては、よく情報交換をして、未然に防止をする方策を立てたいというふうに考えておるわけでございます。
○鍛冶委員 これは海外で起こった問題で、なかなかいまお話しのとおり、真相をつかむのにははなはだ困難であろうと思いまするが、いずれにいたしましても、いま私が申し上げましたようなことは、日本人が聞いてもこれはたいへんだ、こんなことはあってはたいへんだ、こう思うのでありまするから、こういうものがあったのかないのか、あったとすれば必ず絶滅する、またなかったにしても、今後あのようなことはさせない、起こさない、これだけのことを日本人並びに世界の人々に対して信用させて安心させるべき、日本人としての義務があろうかと思いまするので、この点は、ひとつ深く法務大臣を第一番といたしまして、関係当局の特段の御留意をお願いいたしたいと思います。 時間がありませんから、なおもう一つ申し上げておきたいことは、一体どうして日本人がこういうテロの実行者としての白羽の矢を立てられるようになったのか、この点は、われわれ日本人としてよほど考えなければならぬ問題だと思うのであります。 その次は、いわゆる日本人の魂、われわれがいうやまと魂、これをどうも命を粗末にする考え方だという考えが世界じゅうに響いておるようであります。やまと魂というものは決してそういうものじゃない。いまあらためて申し上げるまでもなく、われわれはやまと魂というもののよりどころを本居宣長の和歌からとっておる。「やまと心を人問わば朝日ににおう山桜花」といわれておるものである。それをどうも命を粗末にするものだということに考えられたのではたいへんだから、この点は、ひとつあらゆる機関が協力して世界に宣明していただかなきゃならぬと思うのです。川端康成氏の、世界でやかましくなった「日本の美」というのも、私はおそらく日本人の心意気をあらわしておるものと思う。また、芭蕉の俳句でいう「もののあわれ」ということも考えますると、やまと魂というものは決してそういうものでないということを、世界に宣明していただきたいと思うのであります。 それと同時に、どうしてこの若者どもはこういうところに来たか。これは教育上の問題、社会上の問題等ありまするが、これらの点をも深く考えて、今後絶対にこういうことの起こらぬことを、そして日本人自身が安心し、世界の人間も、そうであったか、もう日本人はそういうことはあるまいという確信を起こさせるようにしていただきたいと思いまするが、この点に対する法務大臣の御意見を伺いたい。
○前尾国務大臣 ただいまお話しのように、若い、次の世代をになうべき諸君が、外人にそそのかされてテロをやるというようなことは、ちょっとわれわれも想像しなかったわけでありますが、とにかく全学連ということばが世界的なことばになり、むしろ日本の学生が非常に血気にはやってああいう大学紛争のようなこと、ほかの国でも行なわれてはおりますが、むしろ日本が率先して有名になってしまったというような問題、そのあらわれが今回のテルアビブの空港事件というようなものになって、これが最高潮といいますか、頂点であるというふうに考えるものであります。 それにつきましては、従来から言われておりますように、もちろん治安当局のこれに対する対策も考えていかなければなりませんし、教育全体についてもう一度すべて洗い直して、日本人が再出発すべきだということについては言われておるわけですし、広い意味において、日本の政治家もすべてを動員し、あるいは行政官もすべてを動員して考えていかなければならぬ問題ではありますが、これにつきまして、やはり政府が率先してあらゆる対策を考えていくということは当然のことである。そういう意味で、ただいまのお話の趣旨に沿った新しい治安行政といいますか、教育を含めた治安行政をやっていかなければならぬ、かように考えておる次第であります。 さらに、具体的な問題につきましては、先ほど申しましたように、私はもっともっと出入国につきましても、はたして従来どおりで、これ以上にはやむを得ないのであろうかどうかというようなことについて、十分反省して考えていかなければならぬ問題だ、かように思っておる次第でありまして、その点については、早急にもう少し改善していくことを考えたい、こういうことを考えておるということを申し上げてお答えとしたいと思います。
○鍛冶委員 時間ですから、私、この辺で……。
○松澤委員長 小林進君。
○小林(進)委員 私は、ことしの三月二十五日の予算委員会の分科会において、司法試験問題の漏洩に関する疑義の問題と、あわせて司法試験考査委員の任命問題に関する点について御質問をいたしたのでありまするが、一つは、時間がわずかに三十分ということの時間の制約、いま一つは、司法試験管理委員長の津田さんがかぜか何かお引きになって当時お見えにならなかった、こういう二つの事情で、問題の解明をすることができなくて留保しておいたわけでございます。その続きをこれからお伺いをいたしたいと思うのでございますが、今度もどうも与えられた時間が少し足りないようでございますので、その間にひとつ明快な御答弁をいただければ幸いでありまするし、納得がいかなければ、また留保いたしまして次の機会まで持ち越していきたいと思います。 第一問として申し上げたいのでありますが、前回質問の司法試験論文問題に関し、向江璋悦さんから提出された要望書に対し、司法試験管理委員会が出した声明書及び前回の藤島人事課長の答弁において、疑惑を差しはさむ事実は全く発見されなかった、こういうことを言われておるのでありまするけれども、私はその点が納得できないのであります。いかなる方法によりいかなる調査をして、疑惑をはさむ余地がなかったという結論をお出しになったのか、具体的にこの点をお聞かせをいただきたいと思います。
○津田説明員 司法試験第二次試験論文式の筆記試験問題が漏洩されたのではないかということにつきましての疑惑について、向江氏からの要望書をとくと検討いたしまして、司法試験管理委員会といたしましては可能なる限りの調査はいたしました。 〔委員長退席、羽田野委員長代理着席〕 しかしながら、何ぶんにも司法試験管理委員会といたしましては、特別の調査権を持っているわけではございませんので、これはいずれにいたしましても、御要望のあった方々から具体的な資料をちょうだいするのがまず第一だというふうに考えまして、その点につきましては、要望された向江氏あるいは向江氏のもとにおいて調査をされた方につきましても調査をいたしましたが、残念ながら具体的な事実を把握しておられると目される学生あるいは関係者において、そのソースを明らかにすることをされませんでしたので、私どもとしては、そのほかの方法によってできる限りの調査をいたして結論を出した次第でございます。
○小林(進)委員 私はあげ足をとるわけではございませんが、前回の私の質問で、東大の商法第二部の竹内教授の学校における講義と、司法試験の内容がほとんど一致しているじゃないかということに対しまして、藤島人事課長は、「東大の商法二部の講義が六月に開設されまして、そして六月二十六日の講義で、商法二部の最初の手形、小切手関係の講義が行なわれたわけでございます。その席上、手形とは何か、小切手とは何かという講義が行なわれております。しかし、この講義は、商法二部の最初の講義でございまして、これから商法二部の講義を聞こうという新しい学生を対象とした講義でございますので、手形とは何か、小切手とは何かというような基本的な問題を講義するということは当然考えられるわけでございます。」こういうことを言われて、司法試験とは全く関係がないぞ、初歩の段階の講義だぞと言われておるんだが、それから五、六分もたたないうちに、今度はこういうことを言われておる。「その六月二十六日の竹内さんの講義速記録か、」これは私が言ったんですな。あるいは録音があるだろう云々という私の質問に対して、「ただいまの竹内教授の具体的な点でございますが、ちょうど東大の講義が学園紛争でおくれまして、たまたま六月になったわけでございます。そういうことでございまして、商法二部の最初の講義ということになりますと、全部そういう小切手、手形とは何かというような講義から始まるわけでございまして、たまたま試験問題が符合したというふうに私は考えております。」符合していることは認めている。今度は符合したことは認めているが、それは符合はしているけれども偶然の符合であると考えられますという答弁をしている。 そこで、同じ人が同じ日の同じ予算委員会の分科会の、しかも時間的な差異のない中で、一方では全然関係がないような話をしながら、一方では符合しているけれども偶然の一致だ、こういうことになれば、責任ある者の立場からの答弁として、ますますわれわれに疑惑を深めるだけで、ちっとも問題の解明にはなっていないじゃありませんか。この点いかがですか。弁明の余地があったら、管理委員長でなくたって、本人が言っているんですから、ひとつ本人に答弁してもらってもけっこうです。
○藤島説明員 いまのようにこの前お答えいたしたわけでございますが、私、お答えした趣旨は、またちょっと繰り返しになりますけれども、東大の新学期が六月二十一日に始まりまして、そうして竹内教授は商法一部、二部の講座を持っております。そして六月二十三日は商法一部の会社法の講義をやり、六月二十六日、商法二部の中に入っております手形、小切手法の最初の講義が行なわれたわけです。したがいまして、その最初の講義に、初めて商法二部の講義を聞く新しい学生に手形とは何か、小切手とは何かということを講義するのは、講義の順序としてこれは普通のことである。 一方、司法試験の問題は六月十二日に決定されておるわけでございますが、これは竹内教授が決定したものではございませんで、竹内教授も含めた司法試験の商法担当の考査委員六名が合議で決定したものでございまして、その中に為替手形、約束手形及び小切手の異同を論ぜよという司法試験問題が決定されておったわけでございます。 時期的に見ますと、何か非常に接近している感じを受けますけれども、学園紛争の関係で東大の講義が二カ月ぐらいおくれてたまたま六月になったということで、たまたま講義したことと司法試験の問題とが結果的には符合しておりますけれども、講義の順序として、最初の講義に手形とは何か、小切手とは何かということから講義を始めていくのが順序でございまして、何も特にこの司法試験の問題とからませて考えることはないんではないだろうか。そもそも司法試験の問題というものは、学校で講義した中から出るものでございますから、ということでございます。
○小林(進)委員 限られた時間でございますから、答弁を聞きながら、私の質問に合わなかったら、ひとつ委員長から注意してやってください。私はそういう長々とした説明を聞いているんじゃないのだ。最初あなたは、全然初歩の講義であるから、試験問題とは関係がないという答弁をしておきながら、五、六分もたたないうちに、司法試験と初歩の講義とは一致しているけれども、それは偶然の符合でございましょうと言っているから、これは一人の人の答弁にしてはずいぶん矛盾しているじゃないか。その矛盾を解明する答弁をしなさいと言っている。 繰り返しになりますが、向江氏が出した要望書の中において、問題にされているものが二つある。行政法に関する試験問題と商法に関する問題と二つなんだ。そのときにあなたは、行政法に関しては、試験問題を提出した東大の教授と、それと同一の問題を試験の直前において講義をした東大の助教授とは人格が別だから、問題が偶然一致しておっても、人が違うから、これは偶然の一致でございましょう、こう言われるから、しからば商法の問題は一体どうだ、問題はやはり偶然一致しているし、しかも出題者は、教授をした人であり、考査委員じゃないかと言ったら、今度はあなたは、六人を含めてのその中の問題出題者の一人であるから、やはり偶然の一致でございましょう。これでは答弁になりませんよということを私は申し上げていろ。単にこれが偶然の一致と言えるかどうかということを私は聞いている。いいですか、あなたは東大の竹内教授の講義内容について確信があると言われるから、それほど確信があるならば、その確信のある具体的な資料をひとつ提出をしてくれ、テープレコーダーや速記録ぐらいあるだろう、その速記録や録音をひとつ出してくれと言ったら、そんなものはないと言った。そんなものがないのに、一体どうして確信があるのか。しかも問題はちゃんと一致しているのに、なおかつ全然根拠がないと言っている。ではどこに一体われわれを納得せしめ得るような論拠があるのか、私はそれを言っている。 時間がありませんから、もっとつけ加えて言いますならば、もしあなたの立場において資料がないと言うならば、当時の試験問題とほぼ一致をしている竹内教授の講義をちゃんとノートをしている学生がいる。どうです、そのノートを私のほうも提出をしましょうか。これは一致していると言ってあなた方がお認めになって、なるほどこれは偶然の一致とは言えない、まことにこれは符合している、私ども管理者としての手落ちがあるとお認めになるというのなら、提出してもよろしゅうございますが、いかがでございますか。
○津田説明員 先ほど人事課長が申しましたように、大体におきまして、司法試験問題は、学校で講義をした中から出す、また出るのがたてまえであって、それが当然のことだというふうに考えられます。 そこで、今回の竹内教授の問題でありますけれども、この辺につきましては、同教授の講義ノートについて検討いたしたのでありますが、例年手形、小切手について、手形はどういうものか、小切手はどういうものかという点を最初に講義をしておるわけでありまして、この年もその順序に従って講義をしておる、こういうことなんです。 そこで、すでに六月十二日に問題が決定されております場合に、それをもちろん御存じであるということは当然であろうと思うのですけれども、そういう場合に、それではいかなる態度をもって講義に臨めばいいかということは、これは教授としてはきわめてむずかしい問題です。それがヒントを与えるようになってはいけないし、また、ことさらにそれをよけてということでもいけないということであろうと思いますので、そこは、当然たんたんとしてやるべきことだと思うのであります。 したがいまして、この竹内教授の講義が特にヒントを与えたかどうかという問題になりますと、これは教授本人については、全くこのようなことは考えていないというふうに調査した者に申しておりますし、その点についてはいろいろと検討いたしましたが、そういうヒントを与えたという証拠は具体的にありません。したがいまして、証拠のないものをもって、それではヒントを与えたろうということを私どもが認定するわけにはいかない。こういう意味におきまして、これは偶然の符合といいますか、あるいは具体的に内容が符合しているかどうかは問題でありますけれども、とにかく講義は講義、試験問題は試験問題として作成されたものというふうに判断いたした次第でございます。
○小林(進)委員 それでは管理委員長にお尋ねいたしますけれども、あなたはいまの御答弁で、問題の内容の符合しているごとはお認めになったわけでありますね。内容の一致していることは認めるが、ただ、これがいわゆる司法試験に出るとか出ないとかというヒントは与えていないから、やはりこれは偶然の一致と見る以外にはない、こういうふうな御答弁であると解釈してよろしゅうございますか。
○津田説明員 ただいま私はそういうふうに申し上げたつもりはございません。約束手形、為替手形、小切手の異同を論ぜよ、こういう問題に対して、教授の講義の内容は、手形は何であるか、小切手は何であるか、こういうことであります。したがいまして、その三者をどういうふうにまとめて論述するかということは、これは受験生の頭の整理の問題でありますし、また、そこが受験生の学識なり応用能力の問題だと思います。したがいまして、内容が符合しているかどうかという点については、私は、必ずしも符合しているとは言えません。結局学識、応用能力を示すことが司法試験問題として要求されているのでありますし、一方は、手形あるいは小切手は何かということを講義をしておる、こういうことでありますから、内容の一部分については、もちろん同じことを書かなければならぬという問題が起こるかもしれません。しかし、まとめ方の問題であるという意味における司法試験の考査の判定というものとは、私は別種のものだというように考えております。
○小林(進)委員 私は判定を聞いているのではない。いわゆる商法の竹内教授の教室における講義と試験問題とが符合しているのではないかということを聞いている。符合しているじゃないかということを言っておる。あなたは違うとおっしゃるのですか。違うとおっしゃるなら、いまも言うように、そのとき速記した学生のノートがあるから、それをお見せして、あなたはそれを見たら、率直に符合していることをお認めになりますか。それをお聞きしておる。 なおかつ、そればかりじゃない。現にちゃんと試験を受けた東大在学生、これは名前は支障がありますから言いませんが、これがわれわれの関係者の法律事務所を訪れて、ちゃんと自分が、これはいまのノートとは違います、速記録を持ってきて、そして商法の講義についてはこういう証言をしているのです。商法については、六月二十六日に司法試験に出題したような三者の違いについて講義を聞いた、異同についての講義を聞いた、七月三日は試験中ですが、試験中にも続けて講義があった、こういうことも言っておるのでございます。 あなた方は、あなた方の先輩だか後輩だか知りませんけれども、同じ東大閥の、そして竹内教授なる者の一方的な証言を非常に信用されておるようだけれども、私どもでまた反対者のこうしたもろもろの証言を集めてみると、ますます疑惑を深める以外に、何も問題を解明する論拠になっていない。いかがですか。問題の内容は違うのか、偶然の一致であるとはいいながら、符合しているのかどうか、その点をひとつ簡明直截にお聞かせいただきたいと思います。まだ問題は幾つも残っております。
○津田説明員 私どもは、手形あるいは小切手について講義する場合に、為替手形と約束手形の異同、あるいは小切手と為替手形の異同というものは、当然その内容に入ってくると思います。したがいまして、その内容を講義せずしてこれらの講義が完ぺきなものとは、私は言い得ないと思うのであります。 したがいまして、その異同という内容がこの講義の中に入っておったことが、直ちにこれに符合しておるのだというふうには私は言えない。そういたしますと、一年じゅうの教授の講義の中には、試験問題のあるいは定義的な問題もありましょう。そうすれば、それはぴったり合う場合もあるわけです。そういう意味におきまして、直ちに、試験問題と講義内容とが一致するから、疑惑があるというふうに断定することは困難である。 したがいまして、特別の証拠をそれぞれ徴取できますれば、それによってさらに判定する必要はあると思いますけれども、私どもが得られました証拠にはおよそ切りがありますし、また御協力を得られなかった面もあります。したがいまして、私どものできる範囲において調査した結果によって管理委員会は判断したわけであります。
○小林(進)委員 私は、いままでの管理委員長の御答弁には納得がまいりません。まいりませんから、またこの問題はひとつ私どもも調査をし、後日に問題を残しながら、これは留保しておきます。 次の問題にいきますが、先ほども言われたが、論文式の試験問題は学校で教えるから、これはそれから出てくるわけであるから、たまたま符合する点があると言われているが、ここでいう学校とは、これは一体いかなるものをさしているのかどうか。これは例の分科会のときにも、平気で学校、学校ということを言われたが、その学校というものはいかなるものをさすのか。司法試験は大学卒業生のみが受験するものではないはずであります。大学で行なったものから出題を一体しなければならないのかどうか。あなた方のお話を聞いておると、これは必ず学校で教えたものから出題をしなければならぬし、出題をするのが理の当然だというふうに言われているが、この問題は一体どういうふうになっていますか。
○津田説明員 仰せのとおり、司法試験は裁判官あるいは検察官、弁護士になろうとする者の必要な学識、それの応用能力をためすことを目的としている資格試験ということになっております。したがいまして、それはどこに基準があるかといえば、当然いま申し上げたような裁判官、検察官としての学識あるいは応用能力でなければならぬわけであります。 しかしながら、およそ何万という受験者につきましては、これはそういうのが基準であって、ほかにどこから何が出るかわからない、少なくとも法律科目の示されておる範囲においては何が出るかわからないということでは、はなはだ勉強に困ると思いますし、また、そういうことは適当でないと思います。そういたしますと、なるほど学歴のない方もいますけれども、およそ学校において通常講義される内容から試験をするというのが、最も受験者にとって便宜でありますし、また、一般的な方、学生でない方々にとっても、およそそこに標準があるということを知ることによって勉強の基準ができてくると思います。そういう意味におきまして、私どもは学校において講義する、こういうことを言っておるわけです。 しかしながら、その学校において講義するということにつきましても、特定の学説をもって講義される者あるいは特定の定義を用いている方につきましては、極力さような特異説を持っておられる方が考査委員となられることには、私どもも非常にこれを、何と申しますか、そういう方はできるだけなっていただかないようにする、こういうことを考えております。と同時に、出題につきましても、商法については六人の委員でございますから、大体において一般的に講義されている内容のうちから問題を選定するということで、特異の自己の講義内容についてだけの問題点については、他の委員から反対が出て、これは問題として採用することはできないというふうに当然なっていくわけであります。そういう意味のチェックがなされて、通常、先ほど申しました学識、応用能力をためすに適当している問題を考査委員が採用しておる、こういうふうに私どもは判断しております。
○小林(進)委員 私は、そこで言われる大学、学校というのは何かということをお尋ねしているのです。ということは、いま少し具体的に言いますと、いまのその問題の竹内教授、これが読売新聞紙上において、東大で講義されたことを司法試験の問題から除外すれば、東大生に不利になる、こういうことを述べて、そういう大学の中でも、特に東大生の有利になるような試験問題を出すのがあたりまえじゃないか。だから、東大の講義の中から試験問題を出さなければ東大生に不利になるということは、すなわちここでいう大学というのは即東大。しかも、試験委員の中に占めている東大卒業者は、学歴なんか見ると、大体六割から七割くらいのものは東大卒の教授だ。そういうことも含めて、どうも一連の問題は、東大の教授が東大の講義の中から、講義と全く符合する試験問題を出すのはあたりまえだ、東大生を有利にするために当然だという見解が表明されているから、私はあえて聞いたのであります。ここでいう学校というのは東大でございますか。
○津田説明員 先ほど私は一般に講義されているというふうに申し上げたと思いますが、少なくとも各学校に普遍的に講義されているという内容でございまして、特定の学校をさしておるわけではもちろんございません。
○小林(進)委員 それでは、竹内教授の言われた、東大で講義されたのを出すのがあたりまえで、これを除外すれば東大生に不利になるというこの見解は一体どうですか。これに対する所見を承りたいと思います。
○津田説明員 いかなる文献にさようなことが載っておりますか、また竹内教授がそういうふうに述べたかどうか、私はつまびらかにいたしませんが、しかしながら、もし竹内教授が事実そのようなことを申したとすれば、私は適当でないと思います。
○小林(進)委員 これは新聞紙上に書かれたことでございまして、宣誓して証言したようなことではございませんから、それほど厳格なものではないでしょうけれども、しかし、天下に公表されたことですから、全受験生にこの一言がどれだけ大きな影響を与えているかということは、私は十分御考慮いただきたいと思います。 なお、この問題に関連して、問題は幾つもございますけれども、お伺いしておきたいのは、もし大学で講義された問題を出す——私はこれを否定するわけじゃないが、出すということになれば、講義を聞いた人と講義を聞かない人と、そこで有利不利という不公平、格差が生じてくると思いますが、この格差はやむを得ないものとお考えになりますかどうか、お伺いいたしておきます。
○津田説明員 大学の講義の内容を、かりに学歴を持たない人がどういうことによって知り得るか、これは学生よりも不利な地位に立つことは当然であります。しかしながら、それらの人についても、やはり著書等の問題については、私ども考査委員の選任については、著書の内容はどうかというようなことも検討いたしております。したがいまして、その意味に若干の差というものが出てくるかもしれませんけれども、これは先ほど申し上げましたように、その差があるからといって、およそ問題はもうどこから出るかわからない、大学の講義なんというものはおよそ基準にならないということでは、かえって大多数の人が困るし、また、問題の学生でない人も困るという結果を来たすので、これはまあ強く言えば必要悪みたいになるというふうに考えます。
○小林(進)委員 私は、津田さん、あなたのおっしゃるとおりだと思います。そういうことは必要悪であろうと必要善であろうと、やはり学んだ者と学ばざる者、あるいは東大か東大でないか、東大じゃないほかの大学にいる学生は、その講義を聞く以外の者には若干不利になるということはやむを得ないことだと思う。 ところが、同じこの問題に関連して藤島君は何と言った。これはあとでも言いましょうけれども、「受験新報」という、これは三万から出ていて、これはほとんど全受験生に回っているのだが、その雑誌の中で、いわゆる受験者の心得だとか受験者の態度だとかいうものを書いたときに、この国会の分科会で何と言った。その「受験新報」というものは、司法試験の受験者が全部読んでいるわけじゃないのだ、読んだ者と読まない者によって有利不利、公平不公平が出るから、そういう「受験新報」なんかに、いわゆる試験の受け方に対する態度などということを発表することはけしからぬ、だからその考査委員はこれはひとつ除外したのだ、こういう答弁をしている。いまのあなたの答弁と藤島君の答弁と矛盾しているじゃありませんか。一致していないじゃありませんか。藤島君、君に答弁を求めているのだ。委員長の答弁と君の分科会における答弁と違うじゃないですか。一体どういうことなんですか。
○藤島説明員 私は、「受験新報」に掲載された特定考査委員の寄稿の内容について申し上げたわけでございます。
○小林(進)委員 「申し上げたいことは、「受験新報」という受験雑誌は、司法試験を受ける全受験生がすべて読んでいるとは限らないわけでございます。したがって、そういう特定の受験雑誌に具体的な司法試験の採点の問題等を考査委員の先生方が書かれますと、読んだ人と読まない人との間で非常に不公平が出てくる、公正に対して疑惑を招くという問題があるわけでございます。」そこで、いわゆる考査委員をやめてもらったということを言っているじゃないですか。私はこれをさしているのです。いまの津田さんの答弁とあなたの答弁は矛盾しませんか。どんなことでも聞いた人と聞かない人がおる、どんなものでも読んだ人と読まない人がある、だから、こういう受験雑誌なんかで、もろもろの試験に関する問題を言ってもらうことは不公平だから、そういうことを執筆した考査委員はやめてもらったのだ。この主張を正しいとお考えになりますか。あなたの主張が正しいならば、津田さん、あなたの主張は間違っている。矛盾しているじゃありませんか。間違っているなら取り消しなさい。
○津田説明員 特定の雑誌あるいは新聞とかそういう文献、つまり公報的なものでないものにつきまして試験の採点の基準等が示されることは、司法試験管理委員会としては好ましくないと考えております。 その理由は、各考査委員によりまして問題の判断のしかたが違いますし、基準もおのずから違っております。したがって、甲の委員はこういう基準をある文献に発表した、乙の委員はこういう基準をある文献に発表したというようなことがありますと、その特定の考査委員の基準傾向というものをつぶさに知っておるという受験生が得をするのではないかというような疑惑を、受験生一般の中に置くわけです。そういうことは、公平を旨とする司法試験としては適当でないので、この採点の基準等の内容についての意見発表、あるいは問題についての具体的指導というようなものは避けていただくように、司法試験管理委員会から考査委員任命の際御注意をいたしておる次第でございます。 もちろん、考査委員は毎暦年によってほとんどかわっておりますから、翌年それが考査委員として再び選任されるかどうかは、何ら保証はないわけでありまするけれども、しかしながら、やはり考査委員として適任の方はそうたくさんあるわけではありません。したがいまして、その意味におきまして、前年度の委員を踏襲していくという場合がかなり多いわけです。 そういうことでありますと、各委員がいろいろな雑誌にいろいろなことを発表されて、受験者を惑わすと言えば言い過ぎかもしれませんけれども、受験者にいろいろな不安を与えるということは適切でないという意味において、かような御注意を毎回申しておる次第でございます。
○小林(進)委員 いまの御答弁は、これは言論の自由、発表の自由、あるいは思想の自由、そういうことにも関連するたいへんな重大問題だと私は思っております。それをあなたは軽く言われているが、しかし、この問題はまたあとで申し上げますが、たいへんなあなたの間違いですから、納得はできません。 そこで、順序を追うて法務大臣にお伺いいたしますが、かつて司法試験考査委員の委嘱を取り消したというような事実が、昨年の戸田教授以前に前例があるかどうか、あったとすればいかなる理由でお取り消しになったのか、過去の実績をお聞かせ願いたいと思います。
○津田説明員 これは具体的の手続の関係がありますので、私から先に御答弁をさしていただきたいと思います。 司法試験考査委員の任命につきましては、所属の学校その他所属のないときには御本人に直接、あらかじめ内意を伺うことにしております。したがいまして、考査委員としては、内意を伺って、それによって御推薦が適当であるという者につきまして、管理委員会が法務大臣に推薦して法務大臣の任命を受けていただく、こういうことになっておるわけでございます。 ところで、いままで毎年あらためて考査委員を任命いたしておりますから、前年において適当でないと思われた方については、御辞職、つまり御推薦をしないということにしておるわけです。ところが、御推薦をしようというふうに内諾を得るための書面を出したけれども、しかしながら、その後の事情によって御推薦をするのは適当でないというふうな判断ができた方については取り消したということで、任命を取り消したという事実はございません。しかしながら、推薦しないという決意を管理委員会がしたという事案は、私の知っている限りでは今回——今回といいますか、具体的に先般御質問のあったのが初めてだと思います。
○小林(進)委員 内命であろうと、あなたを考査委員に委嘱いたしますと通知を出しておいて、そうして十日もたたないうちに、あなたはやめてくださいという一方的な通知をしてやめさした。それは内命であろうと任命であろうと、とにかくそういう非情なことをおやりになったのが、今回初めてだということを私は承っておけばいいわけであります。 次にお尋ねいたしますが、慶応大学の田中実教授、東北大学の小嶋和司教授、これは「受験新報」誌上でやはり雑感をお書きになった。それはいけないということで、これは取り消しではないが、次の機会のときに任命をおやりにならなかったのだが、どこが一体問題になっているのか、その問題点をお聞かせ願いたい。 また、中央大学の木川統一郎教授も雑誌に投稿したということで、これも次の機会に任命をされなくなっているが、一体この問題点がどこにあるのか、お聞かせ願いたいと思います。いまお聞かせできなければ、書面をもって早急にひとつお聞かせ願いたい。書面をもって、この三人のことをお聞かせいただきたい。 次にお尋ねいたしますが、一体司法試験に関する受験指導というのは、どの範囲においてやったらよろしいのか、その範囲をお聞かせいただきたい。先ほどのあなた方の答弁を聞いていると、われわれは範囲がわからない。大学においてもしかり、受験生においてもしかり。考査委員というものは、一体どの範囲で受験生を指導していいのか、範囲がわからなければ、みなあなた方の一方的行為でぼかんぼかんとやめさせられたり、首を切られたり、任命を取り消されたりしなければならぬことになりますので、範囲をお示しいただきたい。
○津田説明員 ただいまのお尋ねではございますが、具体的な特定の方についてどの点を問題にしてということは、これはやはり任命行為の一種でございまして、何によってあなたを任命しないということを説明することは適当でないと思いますので、その点は御容赦を願いたいと思います。 しかしながら、一般論といたしまして、どういう点までの受験指導ができるかという点につきましてのお尋ねに対してはお答えいたしますが、まず試験を受ける心がまえ、たとえば精神的な面につきまして、前の晩よく眠れとか、一カ所に山をかけず広く読んでおけというような一般的な心がまえについては、もちろんこれは問題はございません。しかしながら、問題は、やはり答案の審査結果の感想というものがよく出てくるわけです。これがきわめて境のむずかしい問題でございまして、私どももすべての関係雑誌を常に検討しておるわけではございませんが、常識的な感想、たとえばいかなる試験でも共通するような問題、字をきれいに書きなさいとか、誤字はいけませんというようなことの心がまえを書くこと、これはもうもちろん問題はない。ただ、やはり書き方いかんの問題でありまするけれども、具体的な問題あるいは出題に対して、こういう内容の答案はよくない、こういう内容の答案はよろしいということを具体例をあげて書くということについては、非常に疑惑を招くおそれがあるのではないか。また採点の基準を公表いたしておりません。これは考査委員会の部外秘になっておりますので、その採点の基準をあからさまに示す、こういうことは私は適当でないと思いますので、そういう点を境というふうにして受験指導なさることが必要であるというふうに考えております。
○小林(進)委員 具体的な問題について指導することは非常にいけないことだとおっしゃった。その問題の事例をあげてまたすぐ質問しますが、その前に私は質問しておきたい。 あなたは考査委員会の委員長だ。考査委員のほかに事務局がある。人事機構がある。考査委員やそういう人事担当の方々が、いわゆる受験に対する指導をおやりになることは一向差しつかえありませんか。皆さん方はもうオールマイティーだから大いに指導しても、ほかの教授はやっちゃいけない、こういうことなのか、お聞かせ願いたい。いまの答弁ではそう聞こえました。
○津田説明員 ただいまのお尋ねは、考査委員ではなくて管理委員かと思いますが、この管理委員その他の関係者、こういうお尋ねだと思います。(小林(進)委員「事務局も含めて」と呼ぶ)そういたしますと、私はそれも適当でないと思います。しかしながら、かつてそういうことをやった時代があることを承知しております。しかしながら、最近はそういう点につきましてみなきわめて神経質でありまして、そういう問題が起こると、必ず司法試験管理委員会にいろいろな抗議的な電話等がかかってまいりまして、注意を促してまいります。それほど受験生は神経質になっておりますので、かつて、数年前のことはもはやよくないと存じまして、管理委員をはじめ事務局の者がこれについて指導したりするということは、厳に差し控えているはずでございます。
○羽田野委員長代理 小林委員に申し上げますが……。
○小林(進)委員 これは重大問題でありますから、ちょっと委員長……。 「新版司法試験受験の手びき」という本がある。これは一九七二年版。その中には、検事総長竹内寿平先生の序と、法務大臣官房人事課長藤島昭氏の序、こうやって受験の新版号の手引き書が出ている。その中で、竹内さんはさだかに「司法試験の受験者諸君のために」云々と書いてある。内容は、なかなか巧妙に差しさわりなく書いてあるが、藤島君のほうは、「司法試験管理委員会の庶務をつかさどる法務大臣官房人事課司法試験係の同人諸君が、この「手びき」の監修をしてきている次第である。法曹を志す人たちが、本書を手びきとして、一人でも多く優秀な人材がこの試験に合格して、法曹陣営に加わられることを念願してやまない。」どうですか、これも津田さん、いまの受験手引きと同じで、この本を読んでひとつみんな法曹界に入りなさい。これは皆さん方がやった本だから一向差しつかえないとおっしゃる。ほかのほうの手引き書はけしからぬ。ほかのほうの手引きはみんな読むわけじゃないからけしからぬ、藤島人事課長の主張は、おれの本だけは読みなさい、この本だけは読みなさいと言う。たいへん矛盾しているのじゃないか。これはいま津田さんがおっしゃった話とはなはだ矛盾していると私は考えるが、皆さん方は矛盾とお考えにならないかどうか。古い話じゃございません。新版書でございます。発行期日は一九七二年二月二十日。私が分科会で質問をするちょっと前に、自分ではちゃんとこういうものを市販をしておりながら、ほかの手引きの本は全部の人が読むわけじゃないからけしからぬと言う。一体そういう主張が通るか通らないものか。 これはわれこそ天皇なり、われこそ神なりという昔の独裁者のやり方だと同じだ。司法の試験をつかさどる管理者の主張が一番正しいのであって、あとはだめなんだ。藤島君即司法の神さまみたいなものの言い方じゃないですか。それでいいんですか法務大臣。私はあなたにもお聞かせを願いたいと思う。
○前尾国務大臣 私、その本の中身をよく見ておりませんから、何ともお答え申し上げるわけにはいきませんが、どういうふうな内容が書いてある本か、おそらく具体的な内容が書いてあるとすれば、多少ただいまの話と矛盾するのではないかというふうにも考えますが、それはよく検討いたしたいと思います。
○羽田野委員長代理 ちょっと小林委員に申し上げますが、予定の時間が約二十分過ぎております。あとの質問者が見えて待っておられますので、もう最後の質問にしていただきたいと思います。
○小林(進)委員 いま重大なときに来ておりますから……。 それでは法務大臣は、この本を読んだ受験生のみが利益になるのは、やはり司法試験を管轄する役人だから、その場合だけはよろしいとおっしゃるのかどうか。問題は内容じゃないと思う。お聞きしておるのは、このような本を監修すること自体が、妥当であるか妥当でないかをまず第一にお聞きしておるのです。それほど試験というものが厳格、至厳なものであるという津田管理委員長のお話ならば、私はこういう受験生の手引きなどという本に、監修者として、これをお読みなさい、これを読んで試験に通りなさいという文章を掲げることは、妥当ではないと私は考える。当然こういうことだったら責任をとる、大臣として処罰すべきであると考えておる。 時間がありませんから、いま一つ具体的な問題としてお尋ねいたしますが、具体的な問題についてやることはよろしくないとおっしゃったが、昭和四十二年の「受験新報」十一月号に、一橋大学の植松教授は実に具体的な事例を出して克明に指導をしておいでになる。しかしこの植松先生は、その後考査委員の任命が取り消されたかといったら、取り消されない。四十六年までずっと続いて考査委員をおやりになっておる。時間がありませんから具体的なことは私は言いませんけれども、その指導は、私の知識をもってしても、とても、戸田教授やその他の教授なんかのイロハのイの字の、行儀をよくしなさいというようなそんな内容のものじゃないのです。実に具体的です。あなたがほしいなら、私のほうで資料を提供いたします。そういう教授を、六年間そのままにしておる。いいですか、それが一つ。 また、いま一つ私が申し上げたいことは、藤島君の前の検事布施健さんが法務大臣官房人事課長をおやりになっておるときに、これも司法試験受験講座の中で、司法試験の実施あるいは問題について実に具体的に対話方式で全部指導しておいでになるじゃないですか。ちゃんと写真まで載っておる。あなたの後輩でございましょうけれども、藤島君の先輩でしょう。択一式試験についても布施さんは指導しておられるが、私はこれを読んで実にりっぱだと思う。ほんとうに命がけで戦っている受験生のために真相を知らしめて、実力は実力なりに合格をさせてやりたいという切々たる気持ちがあらわれています。この布施さんはいま何をおやりになっておるか知りませんが、しかし、あなた方の論法からいけば、これは全くけしからぬ。ということは、言いかえれば、昭和四十二年から四十六年というわずか五年の間にも、そして人事課長という同じポストで試験の事務をやりながらも、積極的にその内容を知らしめている。いわゆる事務担当者として当然知らしめていいことまでもやらせないで、そしてそれを不法行為のごとく、不当なる行為のごとくやめさせて・そして自分だけはかってに手引きを出したりするということなんです。実に差があるじゃないですか。何もそこに根拠がないじゃないですか。 そこで、私は基準をお聞きしたわけだ。あなたも刑事局長からいまも事務次官をおやりになって、長く司法においでになるでありましょうから、そういう経緯はみな御存じでございましょう。どっちが正しいのですか。布施人事課長のこの親切な指導方針がいいのか、いまの藤島君のやり方がいいのか、基準を示してください。基準を示さなければ受験生は安心して試験を受けるわけにはいきません。どっちがいいのですか。
○津田説明員 受験指導と申しますか、受験に関する記述の限界は、先ほど申し上げたとおりであります。 したがいまして、布施元人事課長の雑誌の内容あるいは植松教授の雑誌の内容が、はたしてこれに該当するかどうかということを、私はいまつまびらかにすることができません。したがいまして、それについては判断ができないのですが、もしも先ほど申しました基準を逸脱しておるということになれば、私は適当でないと思いますので、将来の考査委員の任命等については、十分考慮しなければならぬ問題だろうというふうに考えます。
○小林(進)委員 もう委員長に御注意を受けましたが、和田委員の了承を得ましたので、これ一問で終わりますが、法務大臣に私が分科会で御質問したときに、こういう大学の教授たるものを一方的に任命しておきながら、一方的通知でそれを除外するなどということはどうかと思うので、十分ひとつ検討してみましょうという御答弁をいただいておるのでありますが、どういうふうに御検討されてどういう結論をお出しになったのか、私は法務大臣からお聞きをいたしたい。 同時に私は、管理委員長には、いま申し上げました植松さんのこの具体的な指導は間違っていたのか、間違っていたならば、なぜその後五年も六年春考査委員を任命されたのか、その経緯は一体どうなっておるのか。 それから、いま一つ申し上げました、この前の人事課長の布施健さんのこの指導が間違っていないのかどうか、正しいのかどうか。これはいまの藤島姿勢と布施姿勢は全く相反しているのですから、一体法務省の試験管理の責任者としてどちらの方策をお出しになるのか。 あわせて、いま申し上げました学生に対する試験の指導は、どの範囲までだったらよろしいのか、どこまでいったら悪いのかということを、具体的にお示しをいただきたい。これはことばではだめだ。ひとつ文書で明確にいただきたい。さもなければこの問題は永久に解決いたしません。文書でいただきたい。 なお、いま法務大臣の御答弁をいただきましたが、いままでの短い時間の質問を通じて、私は何にも納得できません。さらに疑惑を深めるだけです。なお加えて、こういう人事課長が司法試験管理委員会の実際の事務の責任者として担当しておられるということになりますと、これはとても全国の受験生は安心して試験場に臨むわけにはいかない。早急にひとつ御処置をいただきたい。その御処置がお願いできないならば、それも含めてまた後日質問を繰り返させていただきます。
○前尾国務大臣 先般予算の分科会でのお話の点につきましては、そのときお聞きした限りにおいては、いろいろ調べてみたわけでありまして、ただいまいろいろ応答されたようなことで、私みずからは納得したわけでございます。 ただ、布施さんの手引き、あるいは藤島君の出しておる手引き、そういうようなものについては、私、内容を承知いたしておりませんので、きょう新たにお話を伺ったわけであります。それらの問題につきましては、これは重大な問題でありますから、十分検討して、私としての考えまた法務省としての考え方をきめていきたい、かように考えております。
○羽田野委員長代理 和田耕作君。
○和田(耕)委員 私は、きょうは時間もありませんので、中野刑務所の移転問題について、前尾法務大臣に御質問を申し上げたいと思います。 大臣、中野刑務所は、御案内のとおり中野の駅から六、七百メートルあるかなしかというところにあるわけでございまして、もうだいぶ前から、この移転についての陳情をしてきておるわけでございます。また、現在中野区議会あげて、あるいは区民十数万の陳情書をもって、何とかこの移転の問題について、前向きにひとつ御検討いただきたいという陳情をしておるわけでございます。 この問題について、前尾大臣は、たしか三月でしたか、内閣委員会でこの問題を質問したときに、きわめて前向きの姿勢で御答弁をいただいたことがございましたが、せんだっても法務省へ参りまして、大臣並びに各関係の方にもお話し申し上げたわけですけれども、うわさに聞きますと、だいぶ話も進めてくだすっておるということですが、現在の状況について御質問を申し上げたい。
○前尾国務大臣 中野刑務所につきましては、私も中には入って見ておりませんが、駅から近い場所でありますから、外部からは見ております。いずれにしましても、中野区は広場が非常に少なく、いろいろな問題がありましたときに非常にお困りになるということで、当然考えるべき問題だと思っております。 そういうふうな考え方のもとに、どうすればいいか。一つは移転の問題であります。ただ、移転につきましては、いろいろお話がありますが、率直に言いまして東京都内、これは一つは、現在巣鴨がなくなりました関係で、未決の人を収容する場所、これはやはり裁判所で調べるなり警視庁あるいは検事局で調べる関係もありまして、できるだけ近い場所でなければならないというのが一点。それから分類刑務所といいますか、要するに刑務所に収容するにつきまして、その人に適応した刑務所、どこへ入れたらいいかということがあります。ことに最近は、御承知のように技術を身につける、その技術を身につけさせるのには、その人に一番適応した技術を身につけさせるということが一番大事なことであります。それに従って、今度はどこの刑務所に連れていくか、こういうことになるわけであります。そういう機能を果たしております。したがって、それ以外の部分については、私は何も東京である必要はない。しかし、ただいま申し上げた二点につきましては、これは何としても東京に置いておかなければならぬ。 そうすると、そういうことの果たせる場所がほかにあるかどうか。これは率直に言いまして、これからなかなかそういう場所をさがすといいましてもむずかしいが、東京湾の埋め立てという問題がありまするから、そういうようなときに考え得るかどうかという問題があります。しかし、現在の状態において移転するというと、なかなかそういう場所はない。 さすれば、結局現在の中野刑務所をできるだけ開放できるようなくふうはできないか。ことに高層化、これからは東京都はかなり高層化していかなければならぬ。そういう方式によればどこまでやれるかというので、実は係の諸君からは三分の一とかいろいろ話があります。しかし、私はやはり半分は開放しないといかぬじゃないか。工場とかいろいろなものがありますから、高層化すると非常に不便だという意見もありますが、しかし、そういうものを克服し得ないものではないじゃないかというので、半分を目途として高層化する設計をしてみたらどうかというので、いま検討して設計まで考えてもらうということにいたしておるわけであります。
○和田(耕)委員 東京湾の埋め立て地の問題、これは私、非常にいい案だと思うのですけれども、この案の今後の見込みといいますか、都との話し合いと申しますか、そういう問題についての状況をお伺いしたい。
○伊藤(榮)政府委員 具体的な点につきましては、先ほど大臣が仰せになりました御方針を体して、私ども矯正局と協力しまして詰めをいたしておりますので、私からお答えを申し上げます。 大臣のお考えを体してやっていきます上に、やはり事務的にだんだん詰めてまいりませんと、問題点があまりに多過ぎては何ともしょうがございません。そこでいろいろ考えておるわけでございますが、大臣が仰せになりました中野刑務所が果たしておる、未決監、それから分類センター、既決監、この三つの機能を、どの部分を残してどの部分をどこへ持っていくか、こういう問題がございます。どこかへ持っていくとすれば代替地の問題がございます。それからさらに、そこを立体化する等の措置をとりますと、財源の問題がございます。これらの問題につきましては、中野区だけを相手方としてお話し合いしておりましても、なお隔靴掻痒の感があるわけでございます。 そこで、その後の経過を申し上げますと、先般当委員会におきまして、たしか沖本委員からの御質問だったと思いますけれども、これに対しましても、大臣からただいまと同様の御趣旨のお話がございまして、それから間もなくしました五月の中旬でございますが、中野区の当事者、あのときは区議会の方おそろいで来られまして、ただいま申しますようないろいろな問題点を、そこで洗いざらいぶちまけてお話をしたわけであります。その結果、区の方あるいは区議会の方といたしましては、とりあえず東京都の全幅の協力を得ることがこの問題の解決の第一歩だろう、こういうふうに仰せになりまして、承るところによりますと、その足で都のほうへおいでになったそうであります。その結果、本日午後から東京都の副知事が当省へ、この問題に関して陳情に来られるということでございまして、あるいはただいま先生御指摘の東京湾の埋め立て地のような問題も、話の一環として出るのかと思っておりますけれども、それは詳細は副知事とお目にかかってみました上で、その点も詰めてまいりたい、そういうふうに思っておるわけでございます。 なお、従来話に出ておりました甲府刑務所の移転問題と中野刑務所移転問題と関連させてはどうかという声が、中野区にあるわけでございます。その甲府刑務所移転につきましては、従来なかなか候補地の提示が正式にございませんでしたが、最近数カ所の候補地の提示がございましたので、ちょうど中野区の方がおいでになりましたころと前後いたしまして、現地の刑務所長に対して、これは早急に候補地を検分するように、こういうふうに申しておるわけでございます。東京都の御意向をお伺いし、あるいは甲府の現状を見、あるいは先ほど大臣が仰せになりましたように、私どもの技官を動員いたしましていろいろな配置計画等の検討もいたしておりますので、そういった所与の条件を幾つかそろえまして、次第に問題点を煮詰めていきたい、かように考えておる段階でございます。
○和田(耕)委員 いまの高層化の構想ですけれども、これは私、この前も陳情に参って大臣からお伺いをしたときに、ああこれもいい案だなという感じを持って聞いておりましたけれども、その後いろいろ現地の人たちと検討してみますと、やはりいまの中野というのは一番広場の少ないところで、震災等の問題があれば一番問題の起こると思われるところでございまして、まああれの半分くらいを高層化して収容するということになると、そういうふうな非常事態においては、また新しい問題が出てくるのじゃないか。やはりそういう人たちをこれは守っていかなければならないという問題がある。しかし、そこへ区民の人が避難したいという問題があって、なかなか新しい問題、かえって困る問題が起こってきはしないか、こういう不安なり問題があるわけですね。これはもっともだと思うのですね。あそこを高層化して、そして未決あるいは分類犯の人たちを収容するということは、私はそれだけで見ると非常にいい案だと思うのです。どうせあき地をつくるところですから、高層化してそして半分の、二万なら二万坪のあき地ができるということですけれども、問題は、非常事態が起こったときの処理を考えてみますと、受刑者たちあるいは未決その他の人たちは、これはもう普通の人じゃないわけで、野放しにするわけにはまいらない。野放しにするという事態が起こっても、これはそういう面からの新しい問題も起こってくるということがあるわけでございまして、ひとつ何とか全面移転の形を、東京湾の埋め立て地のほかに、なかなかほかには土地がないと思うのですけれども、これは何とか強力に推進をしていただきたいというふうに思うのです。 きょう東京都の副知事が見えるというお話ですけれども、これはどの程度の下打ち合わせになっておりましょうか。
○伊藤(榮)政府委員 とにかく東京都として、移転問題についてどういうふうに考えておるかという一般論をまずお述べになると思います。それからは私どものほうでいろいろお尋ねしたり、向こうからいろいろな技術的な問題点等のお尋ねがあって、まあ第一回の会見といいますか、そういうような形になると思います。
○和田(耕)委員 まあ東京都のほうも、あそこに中央卸売市場をつくるとか、いろいろなもくろみを持っておるようです。これはその他の問題にも、私どもも直接そういう問題に関連したことがありましたけれども、しかしこの刑務所問題、おっしゃるとおり未決あるいは分類中の人たちを収容する場所というのは、これは東京をあまり離れてはぐあいが悪い。これはむろんわかります。しかし、それは高層化されたビルでもいい。何もこういう囚人だから、特別のところへ入れるということもないと思います。 それで、現在中野刑務所に収容されている人の、この三つの区分はどうなっておりましょうか。未決、既決あるいは分類中の人というのは……。
○伊藤(榮)政府委員 この人数は日々変動しておりまして、的確に申し上げるわけにまいりませんが、大体現在七百五十人前後入っておりまして、そのうち分類中の者が二百人前後、それから未決の者が百五十人前後、こういうような状況とお考えいただいてよろしいかと思います。
○和田(耕)委員 私もかつて学生時代、またその後でも刑務所におったことがありましたけれども、囚人、既決にしても、分類にしても、未決にしても、あんまり町中はよくないですね。これは受刑者の立場を考えて、受刑者の教育ということ、あるいは取り調べ自体を考えましても、町中はやはりよくないです。いろいろなしゃばの空気が直接伝わってくるということはよくない。そういうことですから、これは積極的に法務省としても考えてみなければならぬ問題だと思うのです。地元が騒ぐ、あるいはその他の理由で移転を求めるということですけれども、刑務所の問題は、これは中野だけじゃないと思う、まだたくさんこういうような問題があると思いますけれども、法務省としては、場所としてこういう都心のどまん中というものは、いろいろな意味でよろしくない。都市問題という立場からもよくなければ、法務省の行刑の立場からいってもこれはよくない、取り調べの立場からいってもよくないということですから、積極的にかえ地を見つければかわってやるというようなことでなくて、みずからもそういうことについての努力をしてほしいと私は思うのです。 いまの東京都の問題なんですけれども、これは東京都のほうもいろいろな思惑を持っているようですけれども、これは推進していけば話になる問題だと思うのです。これはひとつ大臣、いまの高層化の問題は、私も大臣から初め話を聞いたときに、これはいい案だと思ったのですけれども、いま申し上げた非常事態というときになると、違った困った問題が出てくるということについては、大臣、どういうふうにお考えになりますか。
○前尾国務大臣 拘置所というものが、そういう性質を持っておるわけですから、もちろん半分にしましても、そういうことも十分考慮に入れて、その非常事態において中に収監しておる者をどういう処理をするか、そういうことも頭に入れて設計しないと、おっしゃるとおりだと思います。しかし、これは刑務所の本質からそういうものでありまするから、その点は十分考慮に入れて、構造をどういうふうにしていくか、そうしてそういう非常事態には、いま申しました七百人程度の人間でありまするから、どういうふうに処理するかというところまで、やはり考えていかなければならぬと思っております。 それはもちろん、私も、何も中央なり繁華のところにあるのがいいとは絶対に思っていないわけです。ただ、とにかく山の中に持っていったらいいじゃないか、山梨県へ持っていって、検事が通ったらいいじゃないかと簡単におっしゃるのですが、そうはいかないので、また分類刑務所は、私は今後相当活用していかなければならぬ制度だと思っておりますので、こういうことの重要性を認識していただいて、そうしてかえ地も、もちろんわれわれも積極的に考えますが、やはり御協力をいませんと、予算にしましても、ただ法務省がかってに移るのだというのでは、これは正直なところ、いままでごらんのとおり、なかなか法務省の予算はつかないわけであります。みんなの人の声に従って、その圧力をかりると言うと悪いかもしれませんが、それによって予算もとり得る、私はそう思っておるものですから、その点は皆さんと協力をして、そうして十分われわれの立場もお考え願って、一体になってこの移転問題を解決したい、かように思っておるわけであります。
○和田(耕)委員 重ねての御質問ですけれども、この東京湾への全面移転という問題、既決の人たちは、これはもうこういう機会に全然離していい問題だと私は思うのです。どこであるかどうかわかりませんけれども、やはりそういう特別の一つの刑務所としてということを前提にして、そうしてとにかく東京湾の埋め立て地を第一の眼目にして、ひとつ全面移転の問題として御考慮をいただけるかどうか、ぜひともそうしていただきたいと思うのですけれども、重ねて御質問いたします。
○前尾国務大臣 それが可能でありましたら、私はそれを第一だと思っております。それについて最善の努力をしたいと思います。
○和田(耕)委員 前尾法務大臣のおられるときに、私はこの問題をめどをつけていただければと思っておるのですけれども、ぜひともひとつそういう御方針で、全面移転ということを前提にしてこの問題の解決をひとつはかっていただきたい。 このことを特にお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
○羽田野委員長代理 中谷鉄也君。
○中谷委員 本日、私は一昨日、六月五日、関西電力海南火力発電所の第三号発電機試運転中の破裂事故について質問をいたしたいと思います。人権擁護、災害防止という観点からお尋ねをいたしたいと思うのであります。 いわゆる和歌山北部臨海工業地帯というのは、二百十万キロワットの完成時における関西電力火力発電所、すなわち三号機、四号機は現在試運転をなし、あるいはまた試運転準備中でありますけれども、出力六十万キロワット、すなわち西日本において国産としては最大の出力を持つところの能力を持つもの、こういうものであります。 そこで、北部臨海工業地帯は年間一千万トンの粗鋼生産額を有するところの住友金属和歌山製鉄所、花王石鹸、海南火力発電所、石油精製工場である富士興産、丸善、東燃の各和歌山工場が、海南から東燃の敷地、すなわち初島までの間十一キロ、その間に概算ほぼ八百の石油タンクが設置されている、そういう状態であります。 そこで、まず最初にお尋ねをいたしたいのでありますけれども、一昨日から海南市及びその隣接であるところの和歌山市においては、人命に被害がなく、約百億近くの損害を出したという物的損害にとどまったのでありますけれども、市民はそういう臨海工業地帯のこういう事故について、非常な不安の中にいるわけであります。 そこで、通産省にまず最初にお尋ねをいたしたいと思います。徹底的な事故調査があってしかるべきと私は思いますけれども、電気事業法にいうところの大臣指定をきれてしかるべきであると考えますが、いかがでありましょうか。
○和田説明員 先生のおっしゃいますとおり、この事故については、非常に地元方面をお騒がせしてはなはだ申しわけないと思っておりますが、電気事業法の百六条に基づく報告規則に基づきまして、工事中の、しかも社会的に非常に影響を与えた事故として、本日大臣指定をする予定になっております。
○中谷委員 事故の調査は、徹底的にその原因が究明されて、防災対策が確立されなければならないと思うのでありますけれども、本省及び通産局からは、どのような検査官を専門的な立場からの調査のために派遣される予定でありますか、お尋ねをいたしたいと思います。 なお、調査に要する、原因究明に要する日数はほぼどの程度なのか、この点についてもお答えをいただきたいと思います。
○和田説明員 この事故の重大性にかんがみまして、事故当日直ちに本省の火力課、施設課から、電気工作物検査官各一名、それから大阪通産局から発電課長が現場に急行しております。まだ現場にいる状態でございます。 それから、事故調査の期間のお尋ねでございますが、これは現場のデータ等を見ないとちょっとはっきりいたしかねる節が多々ございますが、一カ月ぐらいはかかるのじゃなかろうか、こういうふうに思っております。
○中谷委員 調査の主眼、調査の主たる目的をどこに置くか。何点か調査の柱と思われるものが考えられると思いますが、現在予想される事故の原因、すなわち六月五日加速度遮断テストのため無負荷で速度上昇中、午後二時三分ごろ発電機付近から発火して、発電機並びに蒸気タービンの破損事故が発生した、こういうふうな事故でありますけれども、どの点を柱として調査をされますか、この点についてお答えをいただきたいと思います。
○和田説明員 これも現場の状態、あるいは特に試験中でございますのでいろいろなデータもとっておりますので、そういうデータ等を見ないとはっきりわかりませんが、大体想像され得る事故調査の主点といいますのは、タービン、発電機のローターの材質の問題、あるいは振動の問題、それから発電機の冷却に使っております水素関係の問題等が、事故調査の主点になろうかと思います。
○中谷委員 振動の原因、タービンの材質、冷却用水素の関係、こういうことでありますけれども、通常三万六千回転のものを三万九千近く回転をさせてというふうな状態の後に、この事故が起こったわけでありますけれども、ひとつこの機会にお尋ねをいたしておきたいと思います。 振動原因でありますが、地元では異常振動だというふうな説があるわけでありますけれども、これは公有水面埋め立てに伴うところの臨海工業地帯でございますけれども、六十万キロワットの発電機を設置するには、地盤が軟弱に過ぎるというふうな点もあったのかどうか、こういう点にもわたって調査される意思はありますか。
○和田説明員 この点は、初めに建設をいたします際に、六十万キロワットの機械でございますと、どのくらいの重量になるということがわかりますので、埋め立てでありましても、相当深いところは強い岩盤があります。そういうことで、その岩盤をどこまでパイルを打てばどういう地耐力が得られるか、そういうテストを何回もしておりますので、その点は、調査してみないとわかりませんが、たぶんないんじゃないか、こう申しております。
○中谷委員 そこで、調査にほぼ一カ月を要するということでありますけれども、調査の間、すでに和歌山県が申し入れをし、海南市が要望をしている諸点について、通産省の行政指導のあり方についてお尋ねをいたしたいと思います。 一号機、二号機がすでに稼働をしておる。その一号機、二号機は四十五万キロワットの出力を持つもの。三号機が、事故を起こしたところのものが出力六十万キロワットの試運転中、四号機が試運転待ちということ。そこでまず四号機の試運転については、当然三号機の事故原因の究明が徹底的になされて、安全確保の道が開かれた後でなければ、四号機の試運転にかかるべきではない。この点が一点。 なお、三号機の試運転の結果、保安基準その他から見て安全性に疑問があり、疑義があるときには、六十万キロワットという出力を持つところの発電機については、その出力を下げたものにすべきではないか。こういう点を含めて、まず行政指導をされてしかるべきだと思いまするけれども、四号機関係についてお答えいただきたい。
○和田説明員 いま先生御指摘のとおり、三号機につきまして徹底的に事故原因を追及いたしまして、その四号機はまあメーカーは違いますが、大体同種の機械でありますので、安全性が確認されるまでは試運転も開始しないような行政指導をしたいと思っております。
○中谷委員 稼働可能であり、試運転を終了した一号機と二号機については、和歌山県は関西電力に対して、操業の当分の間の中止を申し入れをいたしておりまするけれども、私はこの措置は適切であったと思う。そこで、一号機、二号機については、三号機の原因究明との関係において、通産省としてはどの期間、いつまで操業を中止させるような行政指導をされるかどうか、この点についてお答えいただきたい。
○和田説明員 一号機、二号機は、ともに四十五年から運転開始をしている機械でございます。現在までそうさしたる事故もなく過ぎておるわけでございますが、この三号機でこういう地元をお騒がせするような重大な事故を起こした関係もありまして、三号機の事故の原因の究明の過程において、一号機と二号機がもう安全だということが確認されるまでは、やはり地元感情も考えまして、中止をするような指導をしていきたいと考えております。
○中谷委員 次に、消防庁に私はお尋ねをいたしたいと思うのであります。 現在、先ほど私が申しましたこの和歌山北部臨海工業地帯、住友金属から東亜燃料和歌山工場に至る間の製鉄、石油その他の化学工場、これに対するところの化学消防車の数は、私の記憶では十五台、こういうふうに記憶をいたしておりますが、はたしてこういうふうな臨海工業地帯において、十五台程度や二十台程度の化学消防車で防災、消火の目的を達し得るかどうか。たまたま今度の場合は大事に至らなかったわけで、物損百億円と称されておるわけでありますけれども、かりにこれが大事故になったということになれば、何百人、何千人の命が失われたかもわかりません。この点を地元民は非常に不安を感じ、海南市、和歌山市、和歌山県あげてこの問題に取り組んでおり、企業の責任もまた追及され、企業自身も深刻な反省を迫られておる、こういう問題であります。 そこで、消防庁の御専門の立場から見て、一体これらの臨海工業地帯に対する防災、消火のためには、どの程度の科学消防設備体制、そういうものを必要とするか。現状きわめて私は不十分だと思うのでありまするけれども、これらの点について御所見を承りたいと思うのであります。
○古郡説明員 和歌山県の県北部臨海工業地帯につきまして、いまお話のありましたように、記憶では現在、これは四十六年四月一日現在でございますが、化学車が十六台でございます。それから公設の市の消防で六台でございます。合計二十二台でございます。 まあ私たち、石油コンビナート地帯を中心といたしまして大火災等が起こった場合の事故に対処するために、県、市、企業ともども、それぞれ防災計画等をつくらせまして対処するようにさせております。ただ現在のところ、お示しのとおり必ずしも化学車等は十分ではございません。それで今後とも企業なり、特に市それから県も、この関係につきましては力を入れるように指導中でございます。県におきましても、各種の防災資器材を本年度設置するように現在準備中でございますが、必ずしもまだ十分でございませんので、なお、三者一体となって防災対策を整備するように指導するつもりでございます。
○中谷委員 そこで、和歌山県の問題でありますけれども、地方財政の現状からいって、地方公共団体である県、市、町等の消防力の強化ということは、第一主義的な責任を追う面からいっても当然必要ではありまするけれども、なかなかその財政負担に耐えられないという問題がある。だといたしますると、公害防止が企業の社会的な責任であると同様、防災、火災防止というのも企業に課せられた社会的な責任であろうかと思うのであります。そういう点からいって、私は次の点を特に申し上げて、消防庁の重ねての見解を承りたいと思うのです。 私の見るところでは、これらの臨海工業地帯に対する化学消防車としては、百台を上回るものがなければその目的を達せられないだろうと思う。しかし、現実的な問題として少なくとも、先ほどお話があったような二十二台ということではなしに、企業防災自衛対策として、県民、市民に対する社会的責任を果たすためのものを早急に行政指導されたいという点。これはわれわれのほうでも企業のほうに申し入れをいたします、県、市も当然申し入れをいたしまするけれども、その点が一点。 いま一つ、臨海工業地帯の工場相互間における、この種火災が発生したときの防災訓練というものが不十分ではなかろうかという点、特に火力発電所等の防災訓練というものが、きわめて形式的に流れているのではないかという点、これは地元からそういう非難の声があがっておりまするけれども、この点についてはいかがでありましょうか。
○永瀬説明員 消防法令の規定の中で、石油精製工場に対しましては四台の化学車、これが最大数量でございまして、義務づけられております。以下数量に応じまして三台、二台、一台となっておりますが、今後企業が次第に大型化してまいりますし、またタンク自体も非常に大きくなってまいります。このような場合に災害が起きましたら、非常に大きな事態に立ち至ることは当然考えられますので、私どもの対処といたしましては、大きなタンクに対しましては固定の設備を設けさしております。これは火災が出ましたときに、主としてあわでございますが、この薬剤をタンクに固定装置を使用いたしまして放射いたしまして、そして消すという体制をとっております。しかしながら、タンクが破れましたときには、これは防油提と申しまして、回りを十一堤で取り囲みまして、それ以外に外に油が出ないような措置を講じさしております。しかしながら、この中にもし火災が発生いたしましたら、消すことが非常に困難になってまいります。 したがいまして、工場自体の科学消防体制もなお検討いたしまして、必要であればこれをふやすことも考えなければならぬかと思いますが、また同時に、先生御指摘のように、各工場間の消防力を結集いたしまして、これに対処せざるを得ないという実態であろうかと思います。したがいまして、先ほどお話の工場間の共同防衛組織、これをつくらせております。これの消火訓練、連係動作、これは市町村の消防体制とあわせまして、緊密なものを年数回繰り返させていかなければならないかと思いますが、まだ十分な訓練には至っておりません。 なお、御指摘の火力発電所でございますが、これは多くの油を使いますので、今回は油火災には至っておりませんけれども、油火災の発生する可能性は必ずしもないとは言い切れませんので、この点につきましても、工場の防災体制としての訓練を励行するように指導していきたいと考えております。
○中谷委員 海上保安庁の次長に御出席をいただきましたが、この臨海工業地帯の和歌山下津港を見てみますと、現在ほとんどの公有水面が埋め立てされようとしておる。そういうふうな状態の中で、二十万トンないし三十万トンのタンカーが接岸をする、そういう設備が八カ所程度なされようとしておる。住友金属を入れれば九カ所程度になる。しかも、海南港は特設水路十四メートル水深の中において袋小路のような状態である。七万トンないし八万トンのタンカーがここに接岸をする、こういう状態であります。そういうふうなことを考えてみますと、この和歌山下津港というのは、私、この方面の専門家ではありませんけれども、東京湾、神戸港などにまさるとも劣らないようなたいへんなタンカーの密集地帯だと思います。 そういうふうな中で、海上保安庁が特に自信を持っておられる、いわゆる海上からの放水の船、その三隻のうちの一隻が下津に配置をされておるということは、地元の人間としては非常に信頼をしているわけですけれども、こういうふうな二十万トンないし三十万トンのタンカーが入ってくる。しかも海南からはフェリーボートが出る。和歌山からもフェリーボートが出る。しかも石油精製工場が、現在規模で丸善においては五倍、東燃においては二倍というふうなかっこうでどんどん増設されていく。関西電力においては二百十万キロワットというふうな、おそらく現在においては西日本一の出力を持ったところの発電所ができる。住友金属しかり。こういうふうな状態において、海上保安庁の立場から見たところの和歌山下津港の防災体制というものが、はたして万全なのかどうか、これも地元の者としては非常に心配をいたしておる点であります。これらの点について、ひとつ海上保安庁の御所見を承りたいと思います。
○須賀政府委員 お答え申し上げます。 いま先生の御質問にありましたように、和歌山下津港地方におきましては非常な工場が建ち並び、また石油の基地が建ち並ぶというようなことで、ここは非常に問題が多いところではないかというふうに考えておるわけでございます。先ほど先生からお話がありましたように、三十三年から三隻つくりました私のほうの消防船でございますが、この一隻を横浜あるいは四日市とともに下津港に配置をしておる、こういう現状であるわけでございます。 私のほうといたしまして、いわゆる巡視船艇でございますが、これは陸上でいいますと、パトカーあるいは救急車あるいは消防車といったものを兼ねるものでございますが、この巡視船艇が三百一隻全国にあるわけでございます。これはすべて多かれ少なかれ消防能力を持っておるわけでございますが、この中でわれわれといたしましてA、B、Cのランクをつけておりますが、毎時百トン以上のあわ放水量、あるいは百五十トン以上の放水量を有するものまでをBといっておるわけでございます。この三百一隻の中で、九十七隻がそういうB以上のものになるわけでございまして、これは全体の三二%に当たるわけでございます。このうちのAというのが、先ほどお話し申し上げました下津にあるものでございまして、この能力につきましては、毎時千七百トン以上の放水量を持ち、またあわでありますと、あわ放水量は毎時千トン以上ということでございまして、これは消防車に直しますと大体十四台分に相当する、こういうことが言われておるわけでございます。これは諸外国の例を見まして、長年いろいろ研究の末に開発したものでございまして、現在におきましては、アメリカのコーストガード等も、参考のために視察して感心しておるというわけでございます。 なお、和歌山下津を含めまして瀬戸内海には八十七隻の巡視船艇が配置されておるわけでございますが、このうちの約五〇%に当たるものが、いま言いましたように全国では三二%に当たりますが、瀬戸内海には五〇%のB以上のものが配置されておる、こういうことであるわけでございます。 いま三隻の消防船について申し上げましたが、このほかに七隻の消防艇、これは形は小さいのですが、消防専門の船があるわけでございます。なお、今後建造する船舶巡視艇につきまして、大体毎年二十隻以上代船建造されるわけでございますが、こういうものにつきましては、すべてBクラス以上の消火能力を持たせるということで毎年やっておるわけでございます。 そういうことでございまして、特に下津に配置されておりますところの消防船につきましては、放水の距離は六十メートルまで、あるいは高さは五十メートル近くまでということで、非常に性能がいいものでございまして、陸上における火災についても、その届く範囲において協力するという体制をとっておるわけであります。 今回の関西電力の火災につきましても、五時近くまで、火災が十分に鎮火するまで陸地近くに待機しておった、こういうわけでございます。 以上、海上保安庁の全般の消防能力について、また瀬戸内海の分について申し上げたわけでございます。このほかに、もちろん港湾管理者、あるいは消防機関、あるいはその他民間の団体等においても、いろんな消防能力を施設しているわけでございまして、先生からお尋ねの、はたして万全と言い切ることができるかどうかという点については、若干の疑問があるわけでございますが、今後努力していきたい、こういうふうに考えております。
○中谷委員 もう一度海上保安庁にお尋ねいたしますが、東亜燃料の公有水面埋め立てのこの延長線は八キロに及ぶわけであります。現在計画をされている丸善の公有水面埋め立ては百五十五万平米という、しかも特設水路と並行している、こういうふうな埋め立て計画がある。この和歌山下津港のほとんどが臨海工業地帯として埋め立てられる。そしてそこに石油タンクが立ち並んでおる。これは次長がお話しになったように、全く海上保安庁の努力と能力の限界を越えるものだ、こういうふうに思うわけです。この点について、私はあらためて別な委員会でお尋ねをいたしたいと思いますが、この点について、海上保安庁の努力と能力の限界を越えるという不安を持っているということを申し上げておきたいと思います。 そこで、法務省と警察庁にお尋ねをいたしたいと思いますけれども、今度の物損百億に近いと言われているこの事故、その百億という金額の重さが企業に与えたところの影響というものは、これは決して小さいものではないでしょう。しかし、市民の立場からいいますと、あわやという場合に何十人、何百人の人が生命の危険にさらされる、こういうことについての不安と動揺というものはきわめて大きかったわけであります。そこで警察庁としては、どういう立場において徹底的に事故の調査をされるか、一体これはどのような法条に触れることがそもそも予想されるでしょうか、この点についてひとつ簡単にお答えをいただきたいと思います。
○朝比奈説明員 まだ調査が十分進んでおりませんので、はっきりしたことは申し上げかねますが、事故発生と同時に初動措置を終えましたが、やはりたいへん大きな結果が出ております。幸い、二十人ほどの方が試験に当たっておりましたが、予兆をあらかじめ察知して、それで非常に物的な重大な結果が出ておりますし、また一トンもの重さのものが百メートルも飛んだというふうな結果もございますので、これはやはり十分原因を調査いたしまして、責任があればその責任を追及すべきものだと思います。 お尋ねの、適用すべき容疑の法条といたしましては、業務上過失激発物破裂罪、これは刑法の第百十七条ノ二に出ておりますけれども、おそらくこれが適用になるのではないかという考え方でおります。 それからまた方向といたしましては、やはりどういうところにあったのか、これは専門的にお調べいただくのと協力しながらやらないとわからないと思いますけれども、まあしろうと考えでは、一体設計の点では全然問題がなかったのかどうか、あるいはその設計に従っての設置の際にミスがなかったのかどうか、あるいは先ほどもお話ございましたように、材質の上で何か手抜きがあったのか、ミスがあったのかどうか、それがこの法条に適用になるかどうかというふうな、いろいろな点から調査をしていきたいと思っております。
○中谷委員 法務省の根岸刑事課長にお尋ねをしておきたいと思いますけれども、先ほどの、予想される刑法の条文は、外勤課長がお話しになったと同じようなことだと思いますが、どうでしょうかという点が一点。 それと、私は、この種の捜査については、もう二度とこういう事故が起こらないという観点から、やはり徹底的に警察、検察の立場からの調査があってしかるべきだと思う。そうでなければ市民は不安でしかたがないし、同時に、四日市の臨海工業地帯、水島の臨海工業地帯の住民というものは夜もおちおちと眠れない、これは白昼のできごとでありますけれども、こういうふうなことであります。そういうようなことで、ともかく和歌山地方検察庁は全力をあげて、検察の立場からの原因の究明と、同時にその責任の所在を明らかにすることによって、今後このような事故が起こらないということについての処置をとっていただきたい。この点についての決意をお述べいただきたいと思います。
○根岸説明員 ただいま警察庁のほうからもお話がございましたように、本件の事故を起こしました機械の構造あるいは原因等が明白になりませんと、断定的なことは申し上げられないわけでございますが、一応刑法百十七条ノ二の業務上の過失によって激発物を破裂させた罪ということに該当するおそれがあると思います。 そこで、ただいまお話もございましたが、和歌山地方検察庁といたしましても、幸い人命に損傷はなかったのでございますが、この事件を重視いたしまして、次席検事外一名を現場に派遣いたしまして、警察の捜査に協力をさせております。おそらくこの種の事件は、原因等をめぐって非常に困難な問題がいろいろ出てまいると思うのでございますが、いま先生のおっしゃいましたように、初めから警察と協力いたしまして事件の解明に当たるのが至当と考えて、現在その措置をとっておるところでございます。
○中谷委員 最後に一点だけ、私は通産省にあらためてお尋ねをしておきたいと思うのであります。 何と申しましても、電気事業法の主管官庁は通産省、こういうことに相なるだろうと思うのであります。そこで、和歌山県からの申し入れをすでに関西電力で了承いたしておりまするけれども、先ほどのようなお話しのとおり、一、二号機についての操業の停止、四号機についての試験運転は、三号機の原因が究明されるまではこれは行なわない、この点をあらためて明確にしていただくと同時に、公害防止協定十三条というものが和歌山県と関西電力の間に結ばれているわけです。公害防止協定の十三条は防災に関する規定でありまするけれども、「隣接の他企業とともに、災害防止について、共同防災体制を確立する」ということがあるのでありまするけれども、これは実際消防庁から話があったように、万全に行なわれていない。これは和歌山県と関西電力との、あるいはその他の臨海工業地帯の企業との問題ではありますけれども、私は通産省もこの点について、ひとつ特段の行政指導をしていただきたい、すべきであるという点の申し入れをいたしたいと思います。その点についてお答えをいただきたい点が一点。 第二点は、この三号機の事故原因について徹底的な究明をする。これはもう市民、県民は非常に不安に思っているわけです。その事故原因についての原因、結果は広く県民に対して県を通じ、あるいは市を通じて知らしていただく。われわれはそういうことを知る責任、権利、そういうものがやっぱりあると思うのです。その点について明らかにしてもらうという点、これはひとつ徹底的に行政指導をやっていただきたい。特に、本日大臣指定になったということでありますので、この六十万キロワットという、国産、西日本最大、このような最大出力を持ったところの発電所について、とにかく非常な不安と、もうこういうふうな発電所については出力をうんと下げてもらうか、あるいはそうでなければもう三、四号機についてはやめてもらいたいと、これは従来からあった要望であったわけです。いずれにいたしましても公害防止協定が結ばれた段階においてのこういうふうな事故、まさに、だから公害防止協定の趣旨というものが空文にひとしいのではないかというふうな気持さえも市民は持っている、県民さえも持っている、こういうことであります。 そこで十三条は、特に、「乙は、原油等の燃焼施設については、漏油防止施設、防爆設備の設置および可燃性ガス漏洩検知器の設備等により万全を期するとともに、消防法等関係法令および指針を遵守し、事故の絶無を期するものとする。」ということがありますけれども、絶無どころか、試運転の段階においてもうたいへんな事故が起こった。これは通産省としては、保安基準その他に違反がなかったかどうか、先ほどの三つの柱以外にも、ひとつ徹底的に調査をしてもらいたい。 ことに、和歌山県においては異常振動ということを非常に重視しまして、これは地盤との関係があるのではないかという点についての調査をしているのではないかというふうに私は理解しているわけです。これらの点については、テストをやったからだいじょうぶだと思うという先ほどの御答弁があったと思います。私は、現実に異常振動が起こったんですから、この点もぜひとも調査をしてもらいたい。市民の納得のいく、県民の納得のいく原因の究明とそれに対する対策、この対策が明確でなければ、とうてい三、四号機については、これは私は、もはやこれについての地元の協力などというものはとうてい得られないだろうと思うのです。この点について、最後に通産省の御見解を承っておきたいと思います。
○和田説明員 いま御指摘の四号機、あるいは一、二号機の今後の運転につきましては、先ほど申し上げたとおりでございます。 それから防災体制の整備でございます。これは、今回の事故にもかんがみまして、もう少し詳しく調べてみまして、足らざるところは補えるような強力なる指導をしていきたいと思います。 それから、特に事故原因の調査におきましては、先生御指摘のような点も、地元で非常に御心配になっている向きもおありだと思いますので、その点も含めて十分調査をいたしたいと思います。 それから、結果が出ましたら、当然この事故の社会的に与えた影響にかんがみまして、現地等にはお知らせして、その御了解の上でそのあとのことを運ぶというふうにさせていただきたいと思います。
○中谷委員 終わります。
○羽田野委員長代理 青柳盛雄君。
○青柳委員 私は、借地借家法の規定の運用について、おもに法務省と最高裁に見解を確かめたいと思うのですが、事は借地借家関係でございますので、建設省のほうからまず最初に、問題点をはっきりさせる意味でお尋ねをしておきたいと思います。 昨年の十二月二十八日に建設省は、地代家賃統制令に基づく統制額あるいは停止額にかわる額をきめる告示を行ないました。それは従来の告示を一部改正したものでございますが、一口に言いますと、従来の算定方法が実情に合わなくなっているので、これを是正するという形のものでございます。これはお互いにわかり切った問題でございますので、あえて時間のむだを省略する意味で、そのものずばりお尋ねをするわけですが、従来は、昭和三十八年度の固定資産評価額というものをそれこそ固定をいたしまして、それに一定の倍率を乗じ、さらに税額を賦課するというような形で、地代さらには家賃の統制額をきめたわけでございますが、この三十八年度の固定資産評価額にとめおくということでは実情に合わないということで、当該年度の固定資産税の評価額を基準にし、またこれに対する掛ける率も従来の千分の二十二を千分の五十に上げるというような、地代についてだけいま申し上げておりますが、そういう内容になっております。 そこでまず第一点は、昭和三十八年度の固定資産税評価額というものは、その当時の時価と比較してどんなような状況にあったのか。おそらく安かったであろうということは想像つくのでありますけれども、計数上当時の比較をやったことがあるのかどうなのか、それをお尋ねいたします。
○有賀説明員 お答え申し上げます。 ただいま先生御質問でございましたように、三十八年度の評価額に固定してやっていたのでございますけれども、確かに時価に比較して安かったことは事実でございますけれども、計数上の比較をしておりませんので、ただいまここで、幾らになっておるということを申し上げられないわけでございます。
○青柳委員 それでは、昭和四十六年度の固定資産税の評価額、あるいはこの評価額が課税標準額と違う場合には課税標準額が基準になっておるようでありますから、課税標準額と、その当時、昨年からこの三月まで及んでいたわけですが、その価格と時価との比較はやったことがございますか。
○有賀説明員 お答え申し上げます。 それぞれの土地によりましていろいろ違うと思いますけれども、大体評価額は二分の一程度であるかと存じます。ところが、この評価額の調整がございますので、実際には大都市におきましては、十分の一程度だというふうに私ども考えております。
○青柳委員 その場合の時価というのは、何を標準にされたかわかりませんが、地価公示法に基づきまして、標準地点の一定の時期における正当な価格というものを認定して公示いたしますが、それと時価とはまた違うという観点でおられるのかどうか。時価との比較は、標準額でいえば十分の一だということで、非常に少ないような評価のしかたでございますけれども、その点はいかがですか。
○有賀説明員 お答え申し上げます。 時価と申しましたのは、大体地価公示額を基準にしたものを基礎といたしまして、いま時価というふうに考えております。
○青柳委員 ついでにお尋ねいたしますけれども、大蔵省のほうでは相続税の算定の基準の一つといたしまして路線価格という、そういう概念がございますが、この路線価格と地価公示法の価格との関係なども調べたことがありますか。
○有賀説明員 お答え申し上げます。 路線価につきましても、場所によっていろいろ違うようでございますけれども、大ざっぱに申しまして、路線価のほうは通常の時価の二分の一程度ではなかろうかというふうに見ております。
○青柳委員 そこで、固定資産税の課税標準額が固定資産評価額そのものに近づくのには、おおむね何年くらいかかるという見当で考えておられるか、それもお尋ねいたしたいと思います。
○有賀説明員 場所によりましていろいろ違うと思いますけれども、最近地価も相当に順次上がっておりますので、私ども正確に、大体何年というふうに申し上げかねますけれども、かなりの年数がかかるのではないかというふうに考えております。
○青柳委員 これは計数上おおむね倍率がきまっているわけですから、見当はつくはずだと思うのです。もちろん四十五年度の評価額というものからさらに動いていくわけですから、イタチごっこのような形で固定資産の評価額がどんどん上へ上がっていってしまう。だから四十五年度の評価額程度のものには、何年で近づくかしれないけれども、さらに先へいってしまうからということで、何年もかかると言うのかもしれませんが、おおむね横ばい状態になるかもしれないという期待があれば、何年という計算は出ると思いますけれども、大体この倍率が三割くらいずつ上がっていくと仮定いたしますと、三年くらいで到達するのじゃなかろうかと思うのですが、その点いかがですか。
○有賀説明員 先生おっしゃられるように、まあ三倍くらいでいく場合におきましては、約三年というふうに考えております。
○青柳委員 そこで、「建設月報」の七二年の二月というのを読みますと、その五一ページに、今度の改正の結果、標準的な借家、床面積は三十三・八平方メートル、敷地四十八・三平方メートルについて見ると、地代月額は約二・七倍上昇し、改正前の五百九十四円が千六百二十六円になり、家賃月額は約二・八倍上昇し、改正前の千二百七円が三千三百七十八円に改められたと書いてありますが、この執筆者は住宅局ということになっております。この標準と称するものによって計算すれば、こうなることは間違いないのですか。
○有賀説明員 お答えします。 そのとおりでございます。
○青柳委員 これは文章から見るとよくわかりませんが、おそらく改正前の統制額と改正直後の統制額との比較だろうと思いますが、そのとおりでしょうか。
○有賀説明員 そのとおりでございます。
○青柳委員 先ほどの説明でいきますと、時価の十分の一である。それを標準にして千分の五十を掛け、それからプラス固定資産税と都市計画税を加えるのだから、一般の地代に比べれば決して高いものにはならないだろうということだろうと思うのですが、現実に私のほうで調べた一、二の例を申し上げます。 地代のことで言いますと、東京都品川区南大井六丁目二番四号所在の宅地について見ますと、いままでの統制額は幾らか、ちょっと調べがつかなかったのですけれども、いま支払っている地代は三・三平方メートル一カ月百円。ところが今回の統制額によりますと、これは四十七年一月一日の固定資産税課税標準額を基準とするものですけれども、以下すべてそうですが、百九十八円ということになります。ところが、付近の統制外の地代は百七十円で、二十八円安いわけですね。 次は、同じく東京都品川区二葉町四丁目二番十五号所在の宅地、これは現行の地代は百六十五円で、今回の統制額では三百五十円になります。ところが、付近の統制対象外地代は百六十円で、これは統制額のほうが約倍以上でございますね。 三番目は、大阪市東淀川区木川西之町一丁目から三丁目にまたがる広大な土地の部分を借地しているわけでございますが、従来の統制額が八十七円、これはすべて三・三平方メートル、すなわち 一坪一カ月ということですから、もうそのことばは省略いたします。八十七円で、実際の地代は百二円、今回の統制額によりますと三百四十五円。ところが付近の統制外地代は百二十円で、三分の一ですね。 四番目、大阪市東淀川区元今里町西通一丁目十六番一号所在宅地、従来の統制額は三百五十八円、実際の地代は四百五十二円、今回の統制額でまいりますと千三百三十九円、付近統制外地代は三百円から五百円見当。 五番目、松本市大手一丁目三百八十番地所在宅地、従来の統制額は二十七円、今回の統制額で百五円、付近の統制外地代は二十三円から二十九円。いずれも付近の統制外地代を大幅に上回る統制地代になっている例でございます。 家賃の例を一、二申し上げますと、大阪市東淀川区東淡路町四丁目二百九十八番所在家屋、従来の統制家賃が一カ月三千三百五十七円、実際上の家賃は五千円払っているそうでございます。ところが、四十七年四月の統制額は一万九千百八十四円。そこで家主のほうでは、そのうち一万九千円に値上げするという要求をしてまいりました。付近の同種家屋統制外の家賃は三千四百円から五千円見当です。 二番目、大阪市生野区南生野町二丁目七十三番地所在家屋、従来の家賃二千九百円、四十七年四月統制額一万八千百八十五円、付近の統制外家賃三千円から三千五百円。 これはほんのわずかの例をあげただけでございますけれども、地代家賃統制令の今度の改正によりまして計算される地代あるいは家賃が、現実に統制外の地代あるいは統制外の家賃に比べてはなはだしく上回っている、こういう事実があるわけです。 そこで借地法、借家法の問題に返っていくわけでありますけれども、これはもっぱら法律問題でございますから、法務省並びに裁判所にお尋ねをいたしたいと思います。昭和四十一年に借地法、借家法の一部が改正になりましたが、その際に、借地法で申しますと、十二条の二項という規定が新たに設けられましたのは御承知のとおりです。その提案について説明をしている部分がございます。出席政府委員は当時の民事局長の新谷さんですけれども、こういうことばがあれされております。「地代家賃統制令の適用がある地代または家賃につきまして統制額の定められている場合につきましては、少なくともその額まで増加すべきことは明白でありますので、増額請求にかかる増加額のうち統制額をこえる部分についてのみこれらの規定」すなわち十二条の規定、「を適用することといたしまして、増額請求がありましたときは、その統制額までの地代または家賃は、支払うべきものといたしたのであります。」それで、ほかの文章と合わせて理解いたしますと、これだけ払わなければ履行遅滞になり、債務不履行による契約解除のうき目を受けることになる、こういうことでございます。これは借地法の十二条と附則八項との関連で言ったわけでございますが、借家法も大体それと同趣旨の規定がございます。 そこで、地代家賃統制令の地代とか家賃とかいうものは、自動的にそこまで上がるのではなくて、これは最高額をきめたに過ぎない。地主と借地人とで当事者が合意してそこの部分まで上げてもよろしい、また、裁判所が調停で上げる場合にはその上をいってもよろしい、そういうことでございまして、決して自動的に上がるものではないというのですが、この規定が働いてまいりますと、借地人、借家人のほうでは、これだけ納めないと雁行遅滞になって契約を解除され、土地あるいは家屋の明け渡しを請求されても、これをはねのけることができないということにならざるを得ないと思いますが、この点については、まず法務省はどういう見解をお持ちになっておられますか。
○古館説明員 結論から申しますと、一般的に言いますと、ただいま先生御指摘のとおり、債務不履行として契約解除される結果になろうかと思います。 その理由でございますけれども、地代について申し上げますと、借地法の十二条の二項等の改正に伴いまして附則八項が設けられたわけでございますけれども、この借地法の地代増額請求権と申しますのは、形成権というふうに理解されているわけでございます。したがいまして、借地法十二条二項等の規定が設けられる前におきましては、地主のほうから地代増額請求がございますと、その増額請求によりまして、地代は客観的に相当な額まで上がるという効果が生ずるわけでございます。そういたしますと、借地人がその額に満たない地代を支払っているという場合には債務不履行の責任が生じ、その結果、一般的には契約解除という問題が起きる余地があったわけでございます。 しかし、客観的に相当な額と申しますのは、これは非常に判明しがたい。特に借地人のほうではこれを確知することは非常に困難であるということから、十二条の二項を設けまして、増額請求がありました場合には、借地人がみずから相当と認める額を支払えば、債務不履行の責任は問われないという規定を置いたわけでございます。 ところが、地代家賃統制令の適用のある地代につきまして、統制額が定められております場合におきましては、この統制額に基づく地代といいますのは、裁判によって異なった額が定められない以上、当該地についての適正地代というふうに考えるべきではなかろうか。これは、地代家賃統制令の趣旨から、当該地代家賃統制令所定の統制額というのは、適正地代というふうに考えられるわけでございます。そういたしますと、地代家賃統制令の額を上回る地代の増額請求がなされた場合には、少なくとも増額請求の効果といたしまして、地代家賃統制令所定の統制額まで増額請求の効果が生じているというふうに理解せざるを得ないというふうに考えるわけでございます。 そういうことになりますと、借地人といたしましては、少なくともその増額後の地代相当額といいますのは、地代家賃統制令所定の統制額とは同一ということになりまして、その額を少なくとも支払わなければ債務不履行の責任を問われる。そういうことになりますと、一般的に申し上げますと、借地人といたしましては、地代家賃統制令所定の統制額に満たない地代を支払った場合には、債務不履行の責任を問われ、またその結果契約解除という問題も生ずるということになるわけでございます。 そういうことでございますので、ともかく借地人としましては、少なくとも地代家賃統制令所定の統制額まで支払わなくちゃならないものでございますから、結局十二条の二項の適用との関係について、相当額というのが判然としないということから、附則八項で、統制額をこえる部分につきまして、十二条二項を適用するという規定を置いたわけでございます。
○青柳委員 地代家賃統制令によって定められる統制額は、値上げ要求の基準の最低限度であろうという前提を立てまして、いまのような見解が出てくるようでございますが、まさにこの法律の改正される際の立法者の考え方というのは、いまの説明のとおりであろうと思います。 しかし、先ほど長々と私が申し上げたような事態が起こってきた場合に考えなければならないことは、借地法十二条一項あるいは借家法七条一項の地代または家賃の増減請求権の条件としては、租税とか公課の負担の高騰あるいは低落、さらには土地、家屋の価格の増減、そういったような概念がここへ入ってまいりますけれども、「比隣ノ土地ノ地代若ハ借賃ニ比較シテ」というのもあります。「比隣ノ建物ノ借賃ニ比較シテ」というのもありますが、いずれにしても公租公課の増減あるいは物件、土地、家屋の価格の高低というものが原因で、そして近所との比較があって不相当になる。だからこの近所との比較というのを抜きにして、裁判所は増額請求を認めることはできないわけだと思いますね。ところが、統制額はそれとはおかまいなしに、近所などはもうどうでもよろしいので、一定の計算方法で無慈悲に、機械的にやっていっちゃうわけですね。それはもう裁判所はのまねばいけないのだ、こういうふうにこの規定を読む以外にないのでしょうか。
○古館説明員 一般的には、やはり地代家賃統制令の統制額、これが適正家賃ということでこの規定を理解すべきであろうというふうに考えております。
○青柳委員 一般的にはそうだと言いますけれども、具体的な事実としてあらわれたのは決して相当ではないですね。むしろ近隣の賃料に比較して不相当なものが出ちゃっているのですね。だから、現行の地代のほうがむしろ近隣との比較からいつてもそうおかしくない、幾らか安いかもしれないけれども。とにかく今度は極端に上へ上がってしまう。先ほどの建設省の説明によれば、二・七倍か二・八倍でとまるという見当でございますけれども、実際はそんな状況ではなくて、非常に高く上がっているというのが現状です。これは前年度との比較だから二・七倍で済むのかもしれません。しかし、近隣との比較などは一つもやってないわけですから、近隣との比較をやるのが裁判所ではないかと思うのですね。ところが、この法律を先ほどの説明のように理解しなければならぬものとするならば、もう判断の余地はないわけですね。少なくともそれを上回る判断はできるかもしれませんけれども、それ以下の判断はできないという法律のように解釈するのかどうか、重ねてお尋ねしたいと思います。
○古館説明員 例外的な場合についての御質問のようでございますけれども、二つの場合が考えられるのじゃなかろうかと思うわけでございます。 まず一つは、先ほども言いましたように、一般的に統制額に満たない家賃を支払った場合に債務不履行という効果を発生する。しかし、そのことから直ちに解除権まで発生するというふうに考えられるのかどうかということでございます。この点につきましては、信義則等の原則から、解除権が制限されるという場合もあろうかと思います。 もう一つは、たとえば統制額が市中の地代に比べましてきわめて高いという場合でございます。この場合には、事実関係によっていろいろ結論は変わり得ようかと思います。そういうことで、お答えを差し控えさせていただきたいとは思いますけれども、要するに、借地法の増額請求というのが、客観的に相当な額まで増額が認められるという趣旨からいたしますと、いまの統制額が客観的相当額を著しく上回っているという場合におきましては、この十二条の二項ができます前と同じような問題として、考えられる余地もあろうかというように考えます。
○青柳委員 時間もございませんので、最高裁判所の見解をお知らせ願いたいと思う。
○西村最高裁判所長官代理者 借地法十二条及び附則八項に関する解釈といたしましては、裁判所の一般的な考え方も、ただいま法務省のほうから御説明いたしましたとおりであろうと存じます。 ただ、地代の増額請求あるいはその他不動産の賃貸借に関する訴訟または調停等において、その賃料の統制額が幾らかということが問題になりました場合には、統制額は裁判所を拘束するものではないということになっておるわけでございますから、もちろん具体的な事案、具体的な当該紛争の対象となった契約関係の経緯、内容その他諸般の事情を考慮して、統制額より低い額をもって適正額と認めるという場合があり得ることは、当然のことであろうと思います。
○青柳委員 それで、あとはもう理解のしかた一つになるわけですが、具体的なケースで、裁判所が統制額の範囲内で相当と認める額をきめる。その場合に統制額以下の供託をしている場合は、契約解除の原因もないんだ、成立しないんだという解釈もできるかと思いますが、それでよろしいのでしょうか。
○西村最高裁判所長官代理者 御意見のとおりであろうと存じます。
○青柳委員 時間がありませんから、これで終わります。
○羽田野委員長代理 次回は、来たる九日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後一時五十一分散会